説明

異常検出装置、画像記録装置及びプログラム

【課題】循環流路の異常を簡便かつ高精度に検出する、異常検出装置、画像記録装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】供給用ポンプ24によって供給用タンク40のインク貯留室46に供給されるインクの供給流量に対する、回収用ポンプ34によって回収用タンク50のインク貯留室56から回収されるインクの回収流量の割合を算出し(ステップ408)、算出した割合が予め定められた閾値を超えているか否かを判定し(ステップ410)、閾値を超えた回数が規定値を超えた場合に循環流路20での異常を検出したことを示す異常検出信号をUIパネル185に出力する(ステップ420)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常検出装置、画像記録装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インクを吐出可能なインクジェットプリントヘッドを用いて、被プリント媒体に画像をプリントし、かつインクの供給系中にインクを送るポンプを備えたインクジェットプリント装置において、ポンプの駆動時にその作動状態を検知する検知手段と、検知手段の検知結果が異常であるか否かを判定する判定手段と、判定手段によって異常と判定されたときにエラー処理を行う処理手段と、を備えたことを特徴するインクジェットプリント装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−188864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、循環経路の異常を簡便かつ高精度に検出する、異常検出装置、画像記録装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の異常検出装置を、被記録媒体に対して液滴を吐出することにより該被記録媒体に画像を記録する記録手段に画像記録用の液体を供給すると共に該記録手段に充填されている該液体を回収し、回収した液体を記録手段に供給することにより前記液体を循環させる循環手段と、前記循環手段によって前記記録手段に供給される前記液体の供給量と前記循環手段によって前記記録手段から回収される前記液体の回収量との差に相当する物理量を基準値に追従させるように前記循環手段を制御する制御手段と、前記物理量が前記基準値から予め定められた閾値を超えた場合に異常通知信号を出力する出力手段と、を含んで構成した。
【0006】
請求項1に記載の異常検出装置を、請求項2に記載の発明のように、単位時間毎に前記物理量と前記閾値とを比較する比較手段を更に含み、前記出力手段が、前記比較手段での比較結果に基づいて、前記物理量が前記閾値を超えた回数が連続して予め定められた回数を超えた場合に前記異常通知信号を出力するものとした。
【0007】
請求項1又は請求項2に記載の異常検出装置を、請求項3に記載の発明のように、前記閾値を受け付ける受付手段を更に含み、前記受付手段によって受け付けられた閾値を前記物理量との比較対象に用いるものとした。
【0008】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の異常検出装置を、請求項4に記載の発明のように、前記物理量を前記供給量と前記回収量との差の絶対値としたものとした。
【0009】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の異常検出装置を、請求項5に記載の発明のように、前記供給量に対する前記回収量の割合が上限閾値を超えた場合及び該割合が下限閾値を超えた場合の少なくとも一方の場合に前記差の絶対値が前記閾値を超えたとして前記異常通知信号を出力するものとした。
【0010】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の異常検出装置を、請求項6に記載の発明のように、前記回収量に対する前記供給量の割合が上限閾値を超えた場合及び該割合が下限閾値を超えた場合の少なくとも一方の場合に前記差の絶対値が前記閾値を超えたとして前記異常通知信号を出力するものとした。
【0011】
請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の異常検出装置を、請求項7に記載の発明のように、前記循環手段が、貯留槽に貯留されている前記液体を前記記録手段に圧送することによって供給する供給手段及び前記記録手段から前記液体を吸引することによって前記貯留槽に回収する回収手段を有し、前記制御手段が、前記供給手段によって前記記録手段に供給される前記供給量と前記回収手段によって前記記録手段から回収される前記回収量との差に相当する前記物理量を前記基準値に追従させるように前記供給手段及び前記回収手段を制御するものとした。
【0012】
請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の異常検出装置を、請求項8に記載の発明のように、前記異常通知信号を受けて液漏れの可能性があることを表示する表示手段を更に含んで構成した。
【0013】
請求項9に記載の画像記録装置を、請求項1〜請求項8の何れか1項の異常検出装置と、前記記録手段によって画像が記録された前記被記録媒体を搬送する搬送手段と、を含んで構成した。
【0014】
請求項10に記載のプログラムを、被記録媒体に対して液滴を吐出することにより該被記録媒体に画像を記録する記録手段に画像記録用の液体を供給すると共に該記録手段に充填されている該液体を回収し、回収した液体を記録手段に供給することにより前記液体を循環させる循環手段によって前記記録手段に供給される前記液体の供給量と前記循環手段によって前記記録手段から回収される前記液体の回収量との差に相当する物理量を基準値に追従させるように前記循環手段を制御する制御手段、及び前記物理量が前記基準値から予め定められた閾値を超えた場合に異常通知信号を出力する出力手段として機能させるためのものとした。
【発明の効果】
【0015】
請求項1、請求項9及び請求項10に係る発明によれば、循環手段によって記録手段に供給される液体の供給量と循環手段によって記録手段から回収される液体の回収量との差に相当する物理量が基準値から予め定められた閾値を超えた場合に異常通知信号を出力する構成を有しない場合に比べ、循環経路の異常が簡便かつ高精度に検出される、という効果が得られる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、物理量が閾値を超えた回数が連続して予め定められた回数を超えた場合に異常通知信号を出力する構成を有しない場合に比べ、循環経路の異常が簡便かつ高精度に検出される、という効果が得られる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、閾値を受け付ける受付手段を更に含み、受付手段によって受け付けられた閾値を物理量との比較対象に用いる構成を有しない場合に比べ、利便性が向上する、という効果が得られる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、物理量を供給量と回収量との差の絶対値としない場合に比べ、循環経路の異常が簡便かつ高精度に検出される、という効果が得られる。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、供給量に対する回収量の割合が上限閾値を超えた場合及び該割合が下限閾値を超えた場合の少なくとも一方の場合に差の絶対値が閾値を超えたとして異常通知信号を出力する構成を有しない場合に比べ、循環経路の異常が簡便かつ高精度に検出される、という効果が得られる。
【0020】
請求項6に係る発明によれば、回収量に対する供給量の割合が上限閾値を超えた場合及び該割合が下限閾値を超えた場合の少なくとも一方の場合に差の絶対値が閾値を超えたとして異常通知信号を出力する構成を有しない場合に比べ、循環経路の異常が簡便かつ高精度に検出される、という効果が得られる。
【0021】
請求項7に係る発明によれば、供給手段によって記録手段に供給される供給量と回収手段によって記録手段から回収される回収量との差に相当する物理量を基準値に追従させるように供給手段及び回収手段を制御する構成を有しない場合に比べ、循環経路の異常が簡便に検出される、という効果が得られる。
【0022】
請求項8に係る発明によれば、異常通知信号を受けて液漏れの可能性があることを表示する表示手段を有しない場合に比べ、循環経路の異常が容易かつ正確に把握される、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態に係る画像記録装置の構成の一例を示す構成図である。
【図2】実施形態に係る画像記録装置の記録ヘッドの構造例を示す平面透視図であり、(A)は記録ヘッドの平面透視図であり、(B)はその一部の拡大図であり、(C)は記録ヘッドの他の構造例である。
【図3】実施形態に係る画像記録装置の記録ヘッドのインク室ユニットの構成を示す断面図であり、図2(A)及び(B)に示す4−4線に沿った断面図である。
【図4】実施形態に係る画像記録装置の記録ヘッドのノズル配列を示す拡大図である。
【図5】実施形態に係る画像記録装置のインク循環系の構成の一例を示す概略構成図である。
【図6】実施形態に係る画像記録装置の記録ヘッドの正常な機能を保持するために用いられるメンテナンスユニットの構成の一例を示す概略構成図である。
【図7】実施形態に係る画像記録装置の電気系の構成の一例を示すブロック図である。
【図8】実施形態に係る異常検出処理プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図9】実施形態に係る画像記録装置の異常検出結果を報知する画面の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。図1には、本実施形態に係る画像記録装置100が示されている。画像記録装置100は、被記録媒体としての記録材料114(本実施形態では、一例として記録用紙)の片面のみに画像を記録可能とされ、記録材料114を供給する給紙部102、記録材料114に対して浸透抑制処理を行う浸透抑制処理部104、記録材料114に処理液を付与する処理液付与部106、記録材料114に色インクを付与して画像記録を行う記録部108、記録材料114に記録された画像に定着処理を施す定着処理部110及び画像が記録された記録材料114を搬送して排出する排紙部112を備えている。
【0025】
給紙部102には、記録材料114が積載される給紙台120が設けられている。給紙台120の前方(図1における左側)にはフィーダボード122が設けられており、給紙台120に積載された記録材料114は、フィーダボード122によって1番上から順に1枚ずつ送り出される。フィーダボード122によって送り出された記録材料114は、渡し胴124aを経由して浸透抑制処理部104の圧胴126aの表面(外周面)に到達される。
【0026】
渡し胴124a及び圧胴126aには、記録材料114の先端部を保持するグリッパ(図示省略)が設けられている。渡し胴124aのグリッパに保持された記録材料114の先端部が、渡し胴124aと圧胴126aとの接触位置(記録材料114の受け渡し位置)に到達すると、渡し胴124aのグリッパから圧胴126aのグリッパへ記録材料114の先端部の受け渡しが行われる。本実施形態では、1つの圧胴に2個のグリッパが設けられ、1つの渡し胴に1個のグリッパが設けられている。
【0027】
また浸透抑制処理部104には、圧胴126aの回転方向(図1における反時計回り方向)に沿って上流側から順に、圧胴126aの表面に対向する位置に、用紙予熱ユニット128、浸透抑制剤ヘッド130及び浸透抑制剤乾燥ユニット132が各々設けられている。用紙予熱ユニット128及び浸透抑制剤乾燥ユニット132には予め定められた温度範囲に制御されるヒータが設けられており、圧胴126aに保持された記録材料114は、用紙予熱ユニット128や浸透抑制剤乾燥ユニット132に対向する位置を通過する際、これらユニットのヒータによって加熱される。
【0028】
浸透抑制剤ヘッド130は浸透抑制剤を液滴として吐出することで、圧胴126aに保持される記録材料114に浸透抑制剤を付着させるものであり、後述する記録部108の各記録ヘッド140C,140M,140Y,140K,140R,140G,140Bと同一構成のヘッドが適用される。なお、浸透抑制剤としては熱可塑性樹脂ラテックス溶液が好適であるが、これに限られるものではなく、例えば平板粒子(雲母等)や撥水剤(フッ素コーティング剤)などを適用してもよい。また、記録材料114への浸透抑制剤の付着にインクジェットヘッドを用いることに代えて、例えばスプレー方式や塗布方式などの各種方式を適用してもよい。
【0029】
浸透抑制処理部104の後段に配置された処理液付与部106は圧胴126bを備え、浸透抑制処理部104の圧胴126aと処理液付与部106の圧胴126bとの間には、これらに各々接するように渡し胴124bが設けられている。これにより、浸透抑制処理部104の圧胴126aに保持された記録材料114は、浸透抑制処理が行われた後に、渡し胴124bを経由して処理液付与部106の圧胴126bに受け渡される。
【0030】
処理液付与部106には、圧胴126bの回転方向(図1における反時計回り方向)に沿って上流側から順に、圧胴126bの表面に対向する位置に、用紙予熱ユニット134、処理液ヘッド136及び処理液乾燥ユニット138が各々設けられている。処理液付与部106の用紙予熱ユニット134、処理液ヘッド136及び処理液乾燥ユニット138は、前述した浸透抑制処理部104の用紙予熱ユニット128、浸透抑制剤ヘッド130及び浸透抑制剤乾燥ユニット132と各々同様の構成であるので説明を省略する。もちろん、浸透抑制処理部104と異なる構成を適用してもよいことは言うまでもない。
【0031】
なお、処理液付与部106によって記録材料114に付着される処理液としては、例えば、後段の記録部108に配置される各記録ヘッド140C,140M,140Y,140K,140R,140G,140Bから記録材料114に向かって吐出されるインクに含有される色材を凝集させる作用を有する酸性液が挙げられる。また、用紙予熱ユニット134は省略しても良いが、本実施形態のように、記録材料114上に処理液が付与される前に用紙予熱ユニット134のヒータによって記録材料114を予備加熱した場合、処理液の乾燥に要する加熱エネルギーを低く抑えられるので、省エネルギー化が図れる。
【0032】
処理液乾燥ユニット138のヒータの加熱温度は、圧胴126bの回転方向上流側に配置される処理液ヘッド136の吐出動作によって記録材料114の表面に付与された処理液を乾燥させ、記録材料114上に固体状又は半固溶状の凝集処理剤層(処理液が乾燥した薄膜層)が形成されるような温度に設定される。ここでいう「固体状または半固溶状の凝集処理剤層」とは、乾燥後の処理液中に含まれる水の単位面積当りの重量(g/m2)を、乾燥後の処理液の単位面積当りの重量(g/m2)で除算することで求まる含水率が0%以上70%以下の範囲内のものをいう。
【0033】
処理液付与部106の後段に配置された記録部108は圧胴126cを備え、処理液付与部106の圧胴126bと記録部108の圧胴126cとの間には、これらに各々接するように渡し胴124cが設けられている。これにより、処理液付与部106の圧胴126bに保持された記録材料114は、処理液が付与されて固体状又は半固溶状の凝集処理剤層が形成された後に、渡し胴124cを経由して記録部108の圧胴126cに受け渡される。
【0034】
記録部108には、圧胴126cの回転方向(図1における反時計回り方向)に沿って上流側から順に、圧胴126cの表面に対向する位置に、CMYKRGBの7色のインクに各々対応した記録ヘッド140C,140M,140Y,140K,140R,140G,140Bと、溶媒乾燥ユニット142a,142bが各々設けられている。なお、以下では、記録ヘッド140C,140M,140Y,140K,140R,140G,140Bを区別して説明する必要がない場合は末尾のアルファベットを省略して「記録ヘッド140」と称する。
【0035】
本実施形態では、各記録ヘッド140として、前述の浸透抑制剤ヘッド130や処理液ヘッド136と同様に、インクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)を適用している。すなわち、各記録ヘッド140は、それぞれ対応する色のインク滴を圧胴126cに保持された記録材料114に向けて吐出する。
【0036】
各記録ヘッド140は、それぞれ圧胴126cに保持される記録材料114における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有し、そのインク吐出面には画像形成領域の全幅に亘ってインク吐出用のノズル(図2の符号161を参照)が複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている。各記録ヘッド140は圧胴126cの回転方向(記録材料114の搬送方向)と略直交する方向に延在するように固定設置されている。なお、本実施形態では上記のようにCMYKRGBの7色のインクを用いて画像を記録する構成を例に挙げているが、これに限らず、インクの色やその組み合わせは変更しても良く、例えば必要に応じて淡インク(例えばライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インク)や濃インク、特別色インクを追加してもよい。また、各色のヘッドの配置順序についても図1に示した順序に限られるものではない。
【0037】
上記のように、記録材料114の画像形成領域の全幅をカバーするノズル列を有するフルラインヘッドがインクの各色毎に設けられた構成では、記録材料114の搬送方向(副走査方向)について、記録材料114と各記録ヘッド140を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録材料114の画像形成領域に画像を記録できる。これにより、記録材料114の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドを用いる場合と比較して画像を高速に記録可能であり、プリント生産性が向上する。
【0038】
また、溶媒乾燥ユニット142a,142bは、前述した用紙予熱ユニット128、134や浸透抑制剤乾燥ユニット132、処理液乾燥ユニット138のように、予め定められた温度範囲に制御されるヒータを含んで構成される。後述するように、記録材料114上に形成された固体状又は半固溶状の凝集処理剤層上にインク滴が付着すると、記録材料114上にはインク凝集体(色材凝集体)が形成されると共に、色材と分離されたインク溶媒が広がり、凝集処理剤が溶解した液体層が形成される。このようにして記録材料114上に残った溶媒成分(液体成分)は、記録材料114の反り返りだけでなく、画像劣化を招く要因となる。そこで本実施形態では、各記録ヘッド140から各色のインク滴が記録材料114上に付着された後、溶媒乾燥ユニット142a,142bのヒータによって熱を与えることで溶媒成分を蒸発させる乾燥処理を行っている。
【0039】
また、記録部108の後段に配置された定着処理部110は圧胴126dを備え、記録部108の圧胴126cと定着処理部110の圧胴126dとの間には、これらに各々接するように渡し胴124dが設けられている。これにより、記録部108の圧胴126cに保持された記録材料114は、記録部108で各色のインク滴が付着された後に、渡し胴124dを経由して記録部108の圧胴126cに受け渡される。定着処理部110には、圧胴126dの回転方向(図1における反時計回り方向)に沿って上流側から順に、圧胴126dの表面に対向する位置にインラインセンサ144,加熱ローラ148a,148bがそれぞれ設けられている。
【0040】
なお、本実施形態の定着処理部110では、画像記録後に、加熱ローラ148a,148bによる加熱及び加圧によって定着処理が行われるが、これに限られるものではなく、例えば透明UVインクを付着させた後にUV光を照射することで、透明UVインクの硬化によって記録材料114に画像を定着させる等の他の構成を適用してもよい。
【0041】
定着処理部110の後段に配置された排紙部112には、定着処理が施された記録材料114を受ける排紙胴150と、該記録材料114を積載する排紙台152と、排紙胴150に設けられたスプロケットと排紙台152の上方に設けられたスプロケットとの間に掛け渡され、複数の排紙用グリッパを備えた排紙用チェーン154と、が設けられている。
【0042】
次に、記録ヘッド140について説明する。一例として図2(A),(B)に示すように、本実施形態に係る記録ヘッド140は、インク滴の吐出口であるノズル161と、各ノズル161に対応する圧力室162等から成る複数のインク室ユニット163がマトリクス状に(2次元的に)配置された構成とされ、これにより、ヘッド長手方向(記録材料114の搬送方向と直交する主走査方向)に沿った実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化、ひいては記録材料114上に形成されるドットピッチの高密度化を実現している。なお、記録ヘッド140は図2(A)に示す構成に限られるものではなく、例えば図2(C)に示すように、複数のノズル161が2次元に配列された短尺のヘッドブロック160を千鳥状に配列して繋ぎ合わせた構成でもよいし、図示は省略するが、短尺のヘッドを一列に並べた構成でもよい。
【0043】
圧力室162はその平面形状が略正方形とされ、対角線上の両隅部にノズル161と供給口164が設けられている。一例として図3に示すように、各圧力室162は供給口164を介して共通流路165と連通されている。共通流路165はインク供給源である供給用タンク40(図5参照)と連通しており、供給用タンク40から供給されるインクは共通流路165を介して各圧力室162に分配供給される。圧力室162の天面を構成すると共に、共通電極としての機能を兼ね備えた振動板166には、個別電極167を備えた圧電素子168が接合されており、圧電素子168は個別電極167に駆動電圧が印加されると変形し、この圧電素子168の変形に伴ってノズル161からインク滴が吐出される。そして、ノズル161からのインク滴の吐出に伴い、共通流路165から供給口164を通って新しいインクが圧力室162に供給される。
【0044】
なお、本実施形態では、ノズル161からインク滴を吐出させる吐出力発生手段として圧電素子168を用いているが、これに代えて圧力室162内にヒータを設け、ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させるサーマル方式を適用しても良い。 一例として図4に示すように、本実施形態に係る記録ヘッド140は、上述した構成のインク室ユニット163が、主走査方向に沿う行方向と、主走査方向に対して直交しない一定角度θを成す傾斜した列方向と、に沿って一定の配列パターンでマトリクス状に多数配列されていることで、投影ノズルピッチの高密度化を実現している。すなわち、主走査方向に対して一定角度θを成す方向に沿ってインク室ユニット163が一定のピッチdで複数配列されていることで、主走査方向に沿った投影ノズルピッチPはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル161が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱われる。これにより、主走査方向に沿って1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)にも及ぶ高密度にノズルが配列されたに等しい記録ヘッドが得られる。
【0045】
また、本実施形態では、画像が記録され得る幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、各ノズルからインク滴を吐出させて記録材料114の幅方向(記録材料114の搬送方向と略直交する方向)に沿った1ライン(1列のドットによるラインまたは複数列のドットから成るライン)を記録する際のノズル駆動方式としては、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを一方から他方に向けて順次駆動する、(3)ノズルを複数ブロックに分割し、ブロック毎に一方から他方に向けて順次駆動する、等の何れかが適用される。なお、本明細書では、上記何れかの駆動方式によって記録材料114の幅方向に沿った1ラインを記録させるためのノズルの駆動を主走査と定義する。
【0046】
なお、図2(A),(B)に示すようなマトリクス状に配置されたノズル161を駆動する場合は、上記(3)の主走査(ノズル駆動方式)が好ましい。具体的には、図4に示すノズル161-11、161-12、16-13、161-14、161-15、161-16を1つのブロックとし(他にはノズル161-21、…、161-26を1つのブロック、ノズル161-31、…、161-36を1つのブロック、…として)、記録材料114の搬送速度に応じてノズル161-11、161-12、…、161-16を順次駆動することで記録材料114の幅方向に1ラインを記録する。
【0047】
一方、本明細書では、上述したフルラインヘッドと記録材料114とを相対移動させることによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるラインまたは複数列のドットから成るライン)の記録を繰り返し行うことを副走査と定義する。そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。すなわち、本実施形態では記録材料114の搬送方向が副走査方向、それに直交する記録材料114の幅方向が主走査方向となる。
【0048】
なお、ノズル161の配置構造は図示の例に限定されない。例えば、副走査方向に1列のノズル列を有する配置構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。また、本発明のはライン型ヘッドによる記録方式に限定されず、記録材料114の幅方向の長さに満たない短尺のヘッドを記録材料114の幅方向に走査させて当該幅方向の記録を行い、1回の幅方向の記録が終わると記録材料114を幅方向と略直交する方向に予め定められた量だけ移動させて、次の記録領域の記録材料114の幅方向の記録を行い、この動作を繰り返して記録材料114の記録領域の全面にわたって記録を行うシリアル方式に適用することも可能である。
【0049】
次に、画像記録装置100のインク供給系の構成を説明する。図5には、本実施形態に係る画像記録装置100のインク循環系の構成の一例を示す概略構成図が示されている。同図に示すように、インクタンク13は、管路13Aを介してバッファタンク14と連結されている。インクタンク13及びバッファタンク14は共に大気に開放されている。管路13Aには、ポンプ13B及びフィルタ13Cが設けられている。インクタンク13に貯留されたインクは、ポンプ13Bを駆動させることにより、バッファタンク14へ供給される。バッファタンク14には、インクタンク13からのインク供給により、予め定められた量のインクが貯留されている。
【0050】
バッファタンク14は、供給用タンク40と第1流路22を介して連結されている。また、バッファタンク14は、回収用タンク50と第2流路32を介して連結されている。第1流路22には、バッファタンク14から供給用タンク40にインクを圧送して供給するように送液を行う供給用ポンプ24が設けられ、供給用ポンプ24とバッファタンク14とを連結する第1流路22にはフィルタFが設けられている。また、第2流路32には、回収用タンク50からバッファタンク14にインクを吸引して回収するように送液を行う回収用ポンプ34が設けられている。なお、本実施形態に係る画像記録装置100では、ポンプ13B、供給用ポンプ24及び回収用ポンプ34の各々に、駆動源としてステッピングモータ24A,34A,13B’(図7参照)が設けられている。
【0051】
供給用タンク40は、供給用流路23及びマニホールド25介して記録ヘッド140に連通され、回収用タンク50は、回収用流路33及びマニホールド26を介して記録ヘッド140に連通されている。
【0052】
供給用タンク40の内部には、インクが貯留されるインク貯留室46が設けられており、このインク貯留室46には、インク貯留室46内の圧力を検出する供給側圧力検出器43が設けられている。また、インク貯留室46には、第1流路22及び供給用流路23が連通している。
【0053】
回収用タンク50の内部には、インクが貯留されるインク貯留室56が設けられており、このインク貯留室56には、インク貯留室56内の圧力を検出する回収側圧力検出器53が設けられている。また、インク貯留室56には、第2流路32及び回収用流路33が連通している。
【0054】
記録ヘッド140は、各々インク滴を吐出するノズル161を有する複数のヘッドバー140’に分割されており(図2の例では3分割)、各々のヘッドバー140’にインクを供給するための供給口23A及びインクを排出するための排出口33Aが構成されている。供給用流路23は、供給口23Aの手前のマニホールド25で分岐され、各々の供給口23から各ヘッドバー140’へインクが供給される。また、各排出口33Aからの各々の回収用流路33は、回収用タンク50の手前のマニホールド26で合流されている。
【0055】
なお、本実施形態では、記録ヘッド140が複数のヘッドバー140’に分割されている例について説明したが、記録ヘッド140は分割されず単体であってもよい。
【0056】
供給用流路23には、供給口23A毎に分岐された各々に供給用流路23を開閉する供給用バルブV1が設けられている。回収用流路33には、排出口33A毎に分岐された各々に回収用流路33を開閉する回収用バルブV2が設けられている。
【0057】
バッファタンク14、第1流路22、供給用タンク40及び供給用流路23により供給系流路が構成され、回収用流路33、回収用タンク50及び第2流路32により、回収系流路が構成されている。供給系流路、ヘッド112、回収系流路及びバッファタンク14により、インク供給系の循環流路20が構成されている。
【0058】
図6には、本実施形態に係る画像記録装置100の記録ヘッド140の正常な機能を保持するために用いられるメンテナンスユニットの構成の一例が模式的に示されている。同図に示すように、画像記録装置100には、ノズル161の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するためのキャップ174と、記録ヘッド140のインク吐出面の清掃手段としてクリーニングブレード176が設けられている。記録ヘッド140は、これらキャップ174及びクリーニングブレード176を含むメンテナンスユニットに対し、図示を省略した移動機構によって相対移動されるように構成されており、必要に応じて画像記録のための位置からメンテナンスユニットの上方のメンテナンス位置へ移動される。キャップ174は、図示を省略した昇降機構によって記録ヘッド140に対して相対的に昇降変位される。記録ヘッド140は、電源OFF時や印刷待機時に、キャップ174が予め定められた上昇位置まで上昇されて密着されることで、ノズル161の先端面がキャップ174によって覆われる。
【0059】
また、画像記録中又は待機中の特定のノズル161の使用頻度が低く、特定のノズル161からインク滴が吐出されない状態がある時間以上継続すると、ノズル161近傍に滞留しているインク中の溶媒が蒸発することでインク粘度が増大し、圧電素子168が動作してもノズル161からインク滴が吐出されない不吐出状態に陥る恐れが生ずる。このため、本実施形態では、不吐出状態になる前に(インク粘度が、圧電素子168の動作によりインク滴が吐出される範囲から逸脱する前に)圧電素子168を動作させ、その劣化インク(ノズル近傍に滞留している粘度が上昇したインク)を排出すべくキャップ174(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、ダミー吐出ともいう)が行われる。
【0060】
また、記録ヘッド140内のインク(圧力室162内)に気泡が混入した場合にも、圧電素子168が動作してもノズル161からインク滴が吐出されない状態となる。本実施形態では、このような場合に記録ヘッド140のノズル161の先端面をキャップ174で覆い、吸引ポンプ177を作動させることで圧力室162内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収用タンク178へ送液する吸引動作が行われる。この吸引動作(粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出し)は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも行われる。なお、吸引動作は圧力室162内のインク全体に対して行われ、インク消費量が大きいので、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
【0061】
また、クリーニングブレード176はゴムなどの弾性部材で構成されており、図示を省略したブレード移動機構により記録ヘッド140のインク吐出面に摺動される。インク吐出面にインク滴または異物が付着した場合、クリーニングブレード176をインク吐出面に摺動させることでインク吐出面が拭き取られ、インク吐出面が清掃される。
【0062】
図7には、本実施形態に係る画像記録装置100の電気系の構成の一例が示されている。同図に示すように、画像記録装置100はシステム制御部182を備え、システム制御部182には、ポンプ用モータドライバ59A,59B,59C、通信インターフェース(I/F)部180、メモリ184、UIパネル185、モータドライバ186、ヒータドライバ188及びプリント制御部190が各々接続されている。なお、プリント制御部190とシステム制御部182とを統合して1つのプロセッサで構成することも可能である。
【0063】
通信I/F部180は、ホストコンピュータ196から送られる画像データを受信するインターフェース部である。通信I/F部180における通信プロトコルとしてはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワーク等のシリアルインターフェースや、セントロニクス等のパラレルインターフェースの何れかが適用される。ホストコンピュータ196から送出された画像データは通信I/F部180を介して画像記録装置100に取り込まれ、メモリ184に一旦記憶される。
【0064】
メモリ184は、システム制御部182を通じてデータの読み書きが行われる一次記憶部と、半導体素子から成るEEPROMやハードディスクなど磁気記憶媒体などの二次記憶部と、を含んで構成されている。このように構成されたメモリ184は、画像データの一時記憶領域として利用されると共に、プログラムの展開領域及びCPU(中央処理装置)の演算作業領域としても利用される。また、メモリ184には、システム制御部182のCPUが実行する処理に必要な各種データ等が記憶されている。
【0065】
UIパネル185は、ディスプレイ上に透過型のタッチパネルが重ねられたタッチパネルディスプレイ等から構成され、各種情報がディスプレイの表示面に表示されると共に、利用者がタッチパネルに触れることにより情報や指示が受け付けられる。なお、本実施形態では、UIパネル185を適用した形態例を挙げて説明しているが、これに限らず、液晶ディスプレイなどの表示部とテンキーや操作ボタンなどが設けられた操作部とが別々に設けられた形態としてもよい。
【0066】
システム制御部182は、CPU及びその周辺回路等から構成され、予め定められたプログラムに従って画像記録装置100の全体を制御する制御装置として機能すると共に、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システム制御部182は、ホストコンピュータ196との情報の授受、メモリ184に対するアクセス、UIパネル185で受け付けられた情報や指示の取得及びUIパネル185による情報の表示等を行うと共に、搬送系のモータ198やヒータ199を制御するための制御信号を生成する。
【0067】
また、システム制御部182はプログラム格納部182Aを内蔵している。プログラム格納部182Aには各種制御プログラムが格納されており、システム制御部182の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、CPUによって実行される。プログラム格納部はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記憶媒体のうちの1つ又は複数を備えてもよい。なお、プログラム格納部182Aは動作パラメータ等の記億手段と兼用してもよい。また、プログラム格納部182Aには、システム制御部182のCPUによって後述する異常吐出検出処理を行うための異常吐出検出プログラムも格納されている。
【0068】
モータドライバ186にはモータ198が接続されており、モータドライバ186はシステム制御部182からの指示に従ってモータ198を駆動する。なお、図7に示すモータ198は実際には複数個のモータから成り、例えば図1に示す圧胴126a〜126dや渡し胴124a〜124d、排紙胴150を駆動するモータ等が含まれている。ヒータドライバ188にはヒータ199が接続されており、ヒータドライバ188はシステム制御部182からの指示に従ってヒータ199を駆動する。なお、図7に示すヒータ199についても実際には複数個のヒータから成り、例えば図1に示す用紙予熱ユニット128,134や浸透抑制剤乾燥ユニット132、処理液乾燥ユニット138、溶媒乾燥ユニット142a,142bのヒータ、加熱ローラ148a,148bに内蔵されるヒータ等が含まれている。
【0069】
ポンプ用モータドライバ59Aには供給用ポンプ24の駆動源としてのステッピングモータ24Aが接続されており、ポンプ用モータドライバ59Aはシステム制御部182からの指示に従ってステッピングモータ24Aを駆動する。また、ポンプ用モータドライバ59Bには回収用ポンプ24の駆動源としてのステッピングモータ34Aが接続されており、ポンプ用モータモータドライバ59Bはシステム制御部182からの指示に従ってステッピングモータ34Aを駆動する。更に、ポンプ用モータドライバ59Cにはポンプ13Bの駆動源としてのステッピングモータ13B’が接続されており、ポンプ用モータモータドライバ59Cはシステム制御部182からの指示に従ってステッピングモータ13B’を駆動する。
【0070】
プリント制御部190にはヘッドドライバ194、処理液ヘッドドライバ195、浸透抑制剤ヘッドドライバ197、画像バッファメモリ192が各々接続されている。プリント制御部190は、システム制御部182からの指示に従い、メモリ184に記憶されている画像データから画像記録用のデータや、浸透抑制剤吐出用の信号、処理液吐出用の信号を生成するための処理を行う信号処理機能を有しており、生成された画像記録用のデータ(ドットデータ)はヘッドドライバ194に供給され、生成された浸透抑制剤吐出用の信号は浸透抑制剤ヘッドドライバ197に供給され、生成された処理液吐出用の信号は処理液ヘッドドライバ195に供給される。また、プリント制御部190で上記の信号処理が行われる際には、画像データやパラメータ等のデータが画像バッファメモリ192に一時的に格納される。
【0071】
ヘッドドライバ194には記録ヘッド140が接続されており、ヘッドドライバ194は、プリント制御部190から供給された画像記録用のデータに基づいて記録ヘッド140の圧電素子168に印加するための駆動信号を生成すると共に、該駆動信号を圧電素子168に印加して圧電素子168を駆動する駆動回路を含んで構成される。また、圧電素子168を駆動して記録ヘッド140からインク滴を吐出させる際には、ヘッドドライバ194によって記録ヘッド140の吐出液滴量や吐出タイミングの制御も行われる。これにより、要求に応じたサイズのドットが要求に応じた配置で記録材料114に記録される。なお、ヘッドドライバ194は、記録ヘッド140の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んで構成してもよい。
【0072】
また、浸透抑制剤ヘッドドライバ197には浸透抑制剤ヘッド130が接続されており、浸透抑制剤ヘッドドライバ197はプリント制御部190から供給された浸透抑制剤吐出用の信号に従って、浸透抑制剤ヘッド130から浸透抑制剤を吐出させる。また、処理液ヘッドドライバ195には処理液ヘッド136が接続されており、処理液ヘッドドライバ195はプリント制御部190から供給された処理液吐出用の信号に従って、処理液ヘッド136から処理液を吐出させる。
【0073】
次に本実施形態の作用として、まず記録材料114に画像を記録する場合の画像記録装置100の各部の動作を説明する。記録材料114に画像を記録する場合、給紙部102の給紙台120からフィーダボード122に記録材料114が送り出される。記録材料114は、渡し胴124aを経由して浸透抑制処理部104の圧胴126aに保持され、用紙予熱ユニット128によって予備加熱され、浸透抑制剤ヘッド130から吐出された浸透抑制剤が付着される。その後、圧胴126aに保持された記録材料114は、浸透抑制剤乾燥ユニット132によって加熱され、浸透抑制剤の溶媒成分(液体成分)が蒸発することで乾燥される。
【0074】
上記の浸透抑制処理が行われた記録材料114は、浸透抑制処理部104の圧胴126aから渡し胴124bを経由して処理液付与部106の圧胴126bに受け渡される。圧胴126bに保持された記録材料114は、用紙予熱ユニット134によって予備加熱され、処理液ヘッド136から吐出された処理液が付着される。その後、圧胴126bに保持された記録材料114は、処理液乾燥ユニット138によって加熱され、処理液の溶媒成分(液体成分)が蒸発することで乾燥される。これにより、記録材料114上には固体状又は半固溶状の凝集処理剤層が形成される。
【0075】
ここで、記録材料114に形成された凝集処理剤層上にインク滴が着弾すると、インク滴の飛翔エネルギーと表面エネルギーとのバランスにより、インク滴と凝集処理剤層との接触面は予め定められた面積になる。インク滴が凝集処理剤上に着弾した直後に凝集反応が始まるが、この凝集反応は、インク滴と凝集処理剤層との接触面から始まると共に接触面近傍のみで起こり、インク着弾時における予め定められた接触面積で付着力を得た状態でインク内の色材が凝集されるため、色材移動が抑止される。このインク滴に隣接して他のインク滴が着弾しても先に着弾したインクの色材は既に凝集化しているので後から着弾するインクとの間で色材同士が混合せず、ブリードが抑止される。なお、色材の凝集後には、分離されたインク溶媒が広がり、凝集処理剤が溶解した液体層が記録材料114上に形成される。そして、圧胴126cに保持された記録材料114は溶媒乾燥ユニット142a,142bによって加熱され、記録材料114上でインク凝集体と分離した溶媒成分(液体成分)が蒸発することで乾燥される。この結果、記録材料114の反り返りが防止されると共に、溶媒成分に起因する画像品質の劣化が抑制される。
【0076】
記録部108によって色インクが付与されて画像が記録された記録材料114は、記録部108の圧胴126cから渡し胴124dを経由して定着処理部110の圧胴126dに受け渡され、加熱ローラ148a,148bによって加熱及び押圧処理が施される。更に、その後、記録材料114は圧胴126dから排紙胴150に受け渡され、排紙用チェーン154によって排紙台152まで搬送される。このようにして画像が記録された記録材料114は、排紙用チェーン154によって排紙台152の上方に搬送され、排紙台152上に積載される。
【0077】
次に、画像記録時のインクの循環動作について説明する。
【0078】
画像記録装置100の画像記録時の循環流路20では、常時、以下のようにしてインクの循環が行われている。
【0079】
画像記録装置100の画像記録時の循環流路20では、インク供給側の圧力をインク回収側の圧力よりも予め定められた量だけ高く設定することにより、供給用タンク40側から記録ヘッド140を経て回収用タンク50側へインクが送液される。ここで、インク貯留室46内の圧力の大きさをPin、インク貯留室56内の圧力の大きさをPout、インクが吐出されるノズル161の背圧(負圧)の大きさをPnzlとすると、Pin+Hin>Pnzl>Pout+Hout(mmHO)として(Hinは、ノズル面と供給側圧力検出器43との間の高低差により生じる圧力差(水頭圧)、Houtは、ノズル面と回収側圧力検出器53との間の高低差により生じる圧力差(水頭圧))、ノズル161に予め定められた大きさの背圧を付与する。供給用タンク40のインク貯留室46及び回収用タンク50のインク貯留室56の圧力の大きさは、供給側圧力検出器43により検出されたインク貯留室46内の圧力の大きさ及び回収側圧力検出器53により検出されたインク貯留室56内の圧力の大きさに基づいて、供給用ポンプ24、回収用ポンプ34により、インク貯留室46,56の圧力が、各々予め定められた圧力の大きさPin、Poutとなるようにシステム制御部182によって制御され、これにより、循環流路20内でインクが循環する。このように、本実施形態に係る画像記録装置100では、供給用ポンプ24及び回収用ポンプ34の駆動条件を一定に保つためにフィードバック制御が行われる。
【0080】
ところで、本実施形態に係る画像記録装置100では、循環流路20からインクが漏れる場合や循環流路20に異物が混入して流路が詰まる場合などのように循環流路20で異常が発生する場合が想定される。そこで、本実施形態に係る画像記録装置10では、その異常を検出する異常検出処理がシステム制御部182によって実行される。以下では、システム制御部182によって実行される異常検出処理について、図8を参照して説明する。なお、この異常検出処理は、プログラム格納部182Aに格納されている異常検出処理プログラムがシステム制御部182のCPUによって実行されることで実現される。
【0081】
ステップ400では、循環流路20においてインクが循環するように供給用ポンプ24及び回収用ポンプ34の駆動を開始させ、次のステップ402にて、インク貯留室46,56の各々の内部の圧力の大きさがインク貯留室46,56毎に予め定められた目標値に到達するまで待機する。
【0082】
次のステップ404では、供給側圧力検出器43によって検出された圧力の大きさ及び回収側圧力検出器53によって検出された圧力の大きさを取得した後、ステップ406に移行し、上記ステップ402の処理で肯定判定となってから予め定められた時間(一例として100ms)が経過したか否かを判定し、否定判定となった場合にはステップ404に戻る一方、肯定判定となった場合にはステップ408に移行する。
【0083】
ステップ408では、供給用ポンプ24によって供給用タンク40のインク貯留室46に供給されるインクの供給流量に対する、回収用ポンプ34によって回収用タンク50のインク貯留室56から回収されるインクの回収流量の割合(小数点未満を切り捨てた値)を算出する。例えば、単位時間あたりの供給流量が20ml/secで単位時間あたりの回収流量が10ml/secの場合、上記の割合は0.5(百分率では50%)ということなる。これは、供給用ポンプ24によって供給用タンク40に供給されているインクが半分しか回収されていないことを意味する。
【0084】
なお、本実施形態では、上記の供給流量をステッピングモータ24Aの単位時間あたりの回転数から導出し、上記の回収流量をステッピングモータ34Aの単位時間あたりの回転数から導出している。具体的な例としては、ステッピングモータ24Aの単位時間あたりの回転数と供給流量とを対応付けて構成された供給流量導出用テーブル及びステッピングモータ34Aの単位時間あたりの回転数と回収流量とを対応付けて構成された回収流量導出用テーブルをメモリ184に予め記憶しておき、上記ステップ408の処理において、供給流量導出用テーブルを用いて供給流量を導出し、回収流量導出用テーブルを用いて回収流量を導出する形態例が挙げられる。また、テーブルではなく演算式を用いて供給流量及び回収流量を算出してもよい。更に、ステッピングモータの回転数から供給流量及び回収流量を導出する形態例に代えて、供給側圧力検出器43によって検出されたインク貯留室46内の圧力の大きさから供給流量を導出し、回収側圧力検出器53によって検出されたインク貯留室56内の圧力の大きさから回収流量を導出してもよい。この場合もテーブルを用いた導出形態と演算式を用いた導出形態とが考えられる。
【0085】
次のステップ410では、上記ステップ408の処理によって算出された割合が予め定められた閾値を超えているか否かを判定し、肯定判定となった場合にはステップ412に移行する一方、否定判定となった場合にはステップ414に移行する。なお、本実施形態では、上記ステップ410の具体的な処理として次の処理を行っている。つまり、上記ステップ408の処理によって算出された割合が予め定められた上限閾値を上回った場合及び上記ステップ408の処理によって算出された割合が予め定められた下限閾値を下回った場合に肯定判定とし、上記ステップ408の処理によって算出された割合が予め定められた上限閾値を上回らなかった場合及び上記ステップ408の処理によって算出された割合が予め定められた下限閾値を下回らなかった場合に否定判定としている。また、本実施形態では、インク貯留室46内の目標圧力値として予め定められた目標値に対するインク貯留室56内の目標圧力値として予め定められた目標値の割合に対して、記録ヘッド140を用いての画像の記録が正常に行えるものとして予め定められた値を加算して得た値を“上限閾値”とし、インク貯留室46内の目標圧力値として予め定められた目標値に対するインク貯留室56内の目標圧力値として予め定められた目標値の割合から、記録ヘッド140を用いての画像の記録が正常に行えるものとして予め定められた値を減算して得た値を“下限閾値”としている。上限閾値及び下限閾値は、実際に画像記録装置100を用いた試験を通じて得られた実測値に基づいて定めても良いし、コンピュータによるシミュレーションによって得られた推定値に基づいて定めても良い。
【0086】
ステップ412では、変数iを1インクリメント(カウントアップ)した後、ステップ416に移行する。ステップ414では、現時点での変数iを初期値である“0”にリセット(カウント値をリセット)した後、ステップ416に移行する。ステップ416では、変数iの値(カウント値)が規定値(一例として“10”)を超えているか否かを判定し、否定判定となった場合にはステップ404に戻る一方、肯定判定となった場合にはステップ418に移行する。上記の規定値は、循環流路20に異常が生じていないとみなせる上限値であり、換言すると、この上限値に1を加えた値が循環流路20に異常が生じているとみなせる値ということになる。なお、上記の規定値は、実際に画像記録装置100を用いた試験を通じて得られた実測値に基づいて定めても良いし、コンピュータによるシミュレーションによって得られた推定値に基づいて定めても良い。
【0087】
ステップ418では、循環流路20においてインクの循環が停止するように供給用ポンプ24及び回収用ポンプ34の駆動を停止させた後、ステップ420に移行し、循環流路20での異常を検出したことを示す異常検出信号をUIパネル185に出力し、本異常検出処理プログラムを終了する。UIパネル185は、上記ステップ420の処理によって入力された異常検出信号に応じてディスプレイに循環流路20での異常を検出したことを示すメッセージを表示する。この場合、例えば、図9に示すように、インク漏れが発生している可能性があることを利用者に報知するメッセージをディスプレイに表示する、という形態例が挙げられる。なお、図9の例では、画面上に“OK”ボタンが表示され、利用者がタッチパネルを介して“OK”ボタンに触れることによりディスプレイ上のメッセージが消されて、前画面に戻る。
【0088】
なお、上記実施形態では、供給流量に対する回収流量の割合を算出する場合の形態例を挙げて説明したが、これに限らず、例えば、回収流量に対する供給流量の割合を算出しても良い。但し、この場合、上記実施形態で説明した上限閾値及び下限閾値も変更する必要がある。つまり、上限閾値としては、インク貯留室56内の目標圧力値として予め定められた目標値に対するインク貯留室46内の目標圧力値として予め定められた目標値の割合に対して、記録ヘッド140を用いての画像の記録が正常に行えるものとして予め定められた値を加算して得た値を適用し、下限閾値としては、インク貯留室56内の目標圧力値として予め定められた目標値に対するインク貯留室46内の目標圧力値として予め定められた目標値の割合から、記録ヘッド140を用いての画像の記録が正常に行えるものとして予め定められた値を減算して得た値を適用すれば良い。
【0089】
また、上記実施形態では、供給用ポンプ24によって供給用タンク40のインク貯留室46に供給されるインクの供給流量に対する、回収用ポンプ34によって回収用タンク50のインク貯留室56から回収されるインクの回収流量の割合が閾値を超えているか否かを判定する場合の形態例を挙げて説明したが、これに限らず、例えば、インク貯留室56内の目標圧力値として予め定められた目標値とインク貯留室46内の目標圧力値として予め定められた目標値との差の絶対値を閾値として、この閾値と、供給流量と回収流量との差の絶対値とを比較し、この差の絶対値が閾値を超えているか否かを判定するようにしてもよい。このように、閾値との比較対象とする物理量は、上記割合に限らず、供給流量と回収流量との差に対応する物理量であれば如何なる物理量であってもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、閾値を固定とした場合の形態例を挙げて説明したが、これに限らず、例えば、利用者が要求する閾値をUIパネル185によって受け付けて、受け付けた閾値と上記ステップ408の処理によって算出された割合とを比較するようにしてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、UIパネル185に異常を検出したことを示すメッセージを表示する形態例を挙げて説明したが、これに限らず、例えば、システム制御部182によって異常検出信号が出力された場合に、異常検出信号が出力されたことを示す出力済み情報をメモリ184に記憶し、UIパネル185又はホストコンピュータ196を介した利用者からの要求に応じてシステム制御部182がメモリ184から出力済み情報を読み出して予め定められた処理(例えば、ホストコンピュータ196に出力済み情報を送信する処理)を実行してもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、異常検出信号の出力先をUIパネル185としたが、これに限らず、異常検出信号をホストコンピュータ196に送信しても良い。この場合、ホストコンピュータ196は、異常検出信号を受信した際に、例えば自身にディスプレイが接続されている場合にはそのディスプレイによる可視表示を行い、自身に音声再生装置が接続されている場合にはその音声再生装置による可聴表示を行い、自身にプリンタが接続されている場合にはプリンタによる永久可視表示を行ってもよい。また、可視表示、可聴表示及び永久可視表示の少なくとも2つ以上を組み合わせて実行してもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、システム制御部182によって異常検出処理プログラムが実行されることにより異常検出処理プログラムの各ステップを実現するソフトウェア的な形態を例示したが、これに限らず、各種回路(一例として、ASIC(Application Specific Integrated Circuit))を接続して構成されるハードウェア的な形態や、ソフトウェア的な形態とハードウェア的な形態とを組み合わせた形態が挙げられる。
【0094】
また、上記実施形態では、異常検出処理プログラムがプログラム格納部182Aに予め記憶されている場合の形態例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらのプログラムをCD−ROMやDVD−ROM、USBメモリなどのコンピュータによって読み取られる記録媒体に格納した状態で提供する形態を適用してもよいし、有線又は無線による通信手段を介して配信する形態を適用しても良い。
【符号の説明】
【0095】
20 循環流路
24 供給用ポンプ
34 回収用ポンプ
100 画像記録装置
140 記録ヘッド
161 ノズル
182 システム制御部
185 UIパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体に対して液滴を吐出することにより該被記録媒体に画像を記録する記録手段に画像記録用の液体を供給すると共に該記録手段に充填されている該液体を回収し、回収した液体を記録手段に供給することにより前記液体を循環させる循環手段と、
前記循環手段によって前記記録手段に供給される前記液体の供給量と前記循環手段によって前記記録手段から回収される前記液体の回収量との差に相当する物理量を基準値に追従させるように前記循環手段を制御する制御手段と、
前記物理量が前記基準値から予め定められた閾値を超えた場合に異常通知信号を出力する出力手段と、
を含む異常検出装置。
【請求項2】
単位時間毎に前記物理量と前記閾値とを比較する比較手段を更に含み、
前記出力手段は、前記比較手段での比較結果に基づいて、前記物理量が前記閾値を超えた回数が連続して予め定められた回数を超えた場合に前記異常通知信号を出力する請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項3】
前記閾値を受け付ける受付手段を更に含み、
前記受付手段によって受け付けられた閾値を前記物理量との比較対象に用いる請求項1又は請求項2に記載の異常検出装置。
【請求項4】
前記物理量を前記供給量と前記回収量との差の絶対値とした請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の異常検出装置。
【請求項5】
前記供給量に対する前記回収量の割合が上限閾値を超えた場合及び該割合が下限閾値を超えた場合の少なくとも一方の場合に前記差の絶対値が前記閾値を超えたとして前記異常通知信号を出力する請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の異常検出装置。
【請求項6】
前記回収量に対する前記供給量の割合が上限閾値を超えた場合及び該割合が下限閾値を超えた場合の少なくとも一方の場合に前記差の絶対値が前記閾値を超えたとして前記異常通知信号を出力する請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の異常検出装置。
【請求項7】
前記循環手段は、貯留槽に貯留されている前記液体を前記記録手段に圧送することによって供給する供給手段及び前記記録手段から前記液体を吸引することによって前記貯留槽に回収する回収手段を有し、
前記制御手段は、前記供給手段によって前記記録手段に供給される前記供給量と前記回収手段によって前記記録手段から回収される前記回収量との差に相当する前記物理量を前記基準値に追従させるように前記供給手段及び前記回収手段を制御する請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の異常検出装置。
【請求項8】
前記異常通知信号を受けて液漏れの可能性があることを表示する表示手段を更に含む請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の異常検出装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8の何れか1項の異常検出装置と、
前記記録手段によって画像が記録された前記被記録媒体を搬送する搬送手段と、
を含む画像記録装置。
【請求項10】
コンピュータを、
被記録媒体に対して液滴を吐出することにより該被記録媒体に画像を記録する記録手段に画像記録用の液体を供給すると共に該記録手段に充填されている該液体を回収し、回収した液体を記録手段に供給することにより前記液体を循環させる循環手段によって前記記録手段に供給される前記液体の供給量と前記循環手段によって前記記録手段から回収される前記液体の回収量との差に相当する物理量を基準値に追従させるように前記循環手段を制御する制御手段、及び
前記物理量が前記基準値から予め定められた閾値を超えた場合に異常通知信号を出力する出力手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−183806(P2012−183806A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50297(P2011−50297)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】