説明

異常検出装置

【課題】コンパクト化や軽量化を追求することができ、また、外部振動や周囲環境温度等の外的条件への耐性を高めることができて、移動設備に搭載された転動部材の異常検出に好適な異常検出装置を提供すること。
【解決手段】移動体の転動部材の転動動作時の物理量を検出する物理量検出素子のみを有するセンサユニットを設ける。センサユニットは、前記物理量検出素子の出力信号に所定の処理を施す信号処理回路とは、別体とされ、前記転動部材の機構部品に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄道車両等の移動設備に組み込まれた転がり軸受等の転動部材の物理量を検出するセンサユニット、及びセンサユニットにより検出された物理量を基に転動部材の異常の有無を判定する移動設備用異常検出装置に関し、特に、装置のコンパクト化や外部振動に対する耐久性を向上させるための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受等の転動部材では、構成部品の摩耗や破損が、動作時の振動や温度等の物理量の変化として現れる。
そこで従来より、機械設備等に搭載された転がり軸受の異常の有無を判定する異常検出装置として、転がり軸受の動作時の物理量として振動を検出して電気信号として出力する加速度センサー等の振動検出素子と、この振動検出素子の出力信号に対してフィルタ処理や増幅処理や波形成形処理や信号デジタル化処理等を実施して実測デジタル信号として出力する信号処理回路と、この信号処理回路の出力する実測デジタル信号に対して規定の評価処理を実施することで転動部材における異常の有無を判定する制御装置としてのコンピュータとを備えた構成のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平3−221354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の異常検出装置は、一般に、異常の有無の判定対象となる設備が、建家内に固定設置される機械設備であることを前提としたもので、屋外で移動する車両等の移動設備にそのまま流用することは、難しい。
【0005】
例えば、異常検出装置を設置する設備が、車両等の場合は、建家内に固定設置される機械設備の場合と異なり、走行時に路面等から車体に加わる外部振動が異常検出装置に加わるため、異常検出装置の各構成部品が外部振動で脱落したり破損することの無いように、部品の取付け強度を向上させたり、部品自体に耐振性能の高いものを選択しておくことが、重要課題となる。
【0006】
また、建家内に設置される設備は、通常、周囲環境温度が5〜50℃で設計されるが、屋外を走行する車両等では、周囲環境温度が−20〜100℃というより厳しい環境となる可能性があり、異常検出装備に使用する各部品は、周囲環境温度に対する耐久性も見直しが必要になる。
【0007】
また、車両の走行性能を妨げるばね下荷重の増大を抑制するために、ばね下の転がり軸受等に装備する振動検出素子等は、コンパクト化及び軽量化が重要課題となる。
【0008】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、移動設備に搭載された転動部材の異常検出に好適なセンサユニット及び異常検出装置を提供することである。即ち、車両等の移動設備においてばね下の転動部材等に装備される物理量検出素子は、単独のユニットとして、コンパクト化や軽量化を追求して、移動設備の走行性能を妨げるばね下荷重の増大を抑制することができ、また、移動設備に作用する外部振動や周囲環境温度に対する耐久性が高く、移動設備において安定した異常検出処理を長期に渡って維持できるセンサユニット及び移動設備用異常検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、以下のような構成により達成される。
【0010】
(1)移動体の転動部材の転動動作時の物理量を検出する物理量検出素子のみを有し、
前記物理量検出素子の出力信号に所定の処理を施す信号処理回路とは、別体とされ、前記転動部材の機構部品に取り付けられることを特徴とするセンサユニット。
(2) 前記物理量検出素子は、前記転動部材の転動動作時に発生する振動を検出する振動センサであることを特徴とする(1)のセンサユニット。
(3) 前記物理量検出素子は、前記転動部材またはその近傍の温度を検出する温度センサであることを特徴とする(1)記載のセンサユニット。
(4) 移動体の転動部材の転動動作時の物理量を検出する物理量検出素子を有するセンサユニットと、
前記物理量検出素子の出力信号に所定の処理を施す信号処理回路と、
前記信号処理回路の出力信号を基に、前記転動部材の異常判定を行う制御装置と、を備えた移動設備用異常検出装置であって、
前記センサユニットは、前記信号処理回路及び前記制御装置とは別体とされ、前記転動部材の機構部品に取り付けられることを特徴とする移動設備用異常検出装置。
(5) 前記信号処理回路に搭載するコンデンサは、セラミックコンデンサとしたことを特徴とする(4)に記載の移動設備用異常検出装置。
(6) 前記信号処理回路は、前記制御装置から独立して前記移動設備に取付けられる別体の中継ユニットであることを特徴とする(4)又は(5)に記載の移動設備用異常検出装置。
(7) 前記移動設備が鉄道車両であり、前記転動部材が鉄道車両に搭載された回転軸を支承する転がり軸受装置であることを特徴とする(4)〜(6)の何れか一つに記載の移動設備用異常検出装置。
(8) 前記物理量検出素子は、前記転動部材の転動動作時に発生する振動を検出する振動センサであることを特徴とする(4)〜(7)の何れか一つに記載の移動設備用異常検出装置。
(9) 前記物理量検出素子は、前記転動部材またはその近傍の温度を検出する温度センサであることを特徴とする(4)〜(7)の何れか一つに記載の移動設備用異常検出装置。
(10) 前記信号処理回路と前記制御装置は、一体に構成されていることを特徴とする(4)〜(9)の何れか一つに記載の移動設備用異常検出装置。
【0011】
ここで、上記の移動設備とは、鉄道車両や自動車等の車両や、携帯用のVTR機器や携帯型パソコンを意味する。また、転動部材とは、回転等の転動を行う回転転動部材の他、直線的な面状を転動する直線転動部材も含む意であり、具体的には、転がり軸受や滑り軸受等の構成部品、或いは、ボールねじや、リニアガイド等の直動機構の構成部品などが該当する。
また、転動部材の転動動作時の物理量とは、転動部材の回転又は直線移動等の転動状態に応じて変化する物理量で、例えば、転動部材の発生する音や振動、更には、回転数や温度、転動部材構成部品上に生じる歪み等が考えられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のセンサユニット及び移動設備用異常検出装置によれば、物理量検出素子を信号処理回路や制御装置から切り離して、単独のセンサユニットとしているため、物理量検出素子に対して、移動設備への取付け構造を含めて、コンパクト化や軽量化を追求して、車両等の移動設備においてばね下の転動部材等にセンサユニットを組み付ける場合でも、移動設備の走行性能を妨げるばね下荷重の増大を抑制することができる。
しかも、車両等のばね下部位は、外気に暴露され、車両走行時に走行軌道等から作用する振動が直に作用するため、外部振動や周囲環境温度等の外的条件が厳しくなるが、物理量検出素子は専用の取付けケースに収容するため、その取付けケースによってそれらの外的条件の適正な緩和を図ることができ、外部振動や周囲環境温度等の外的条件に対する物理量検出素子の耐久性を向上させることができ、その結果、移動設備において安定した異常検出処理を長期に渡って維持できるようになる。
さらに、信号処理回路や制御装置は、センサユニットから切り離された別のユニットとなるため、センサユニットの取付け位置から離して、移動設備上でも厳しい外的条件が作用しない部位を設置位置に選択することができ、信号処理回路や制御装置への外的条件の影響を抑えて、これらの信号処理回路や制御装置の動作安定性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明によれば、信号処理回路においては、トリマ及びタンタルやアルミを用いた電解コンデンサを搭載する従来の場合と比較して、コンデンサ自体の耐衝撃性や周囲環境温度への耐性が向上する。
従って、信号処理回路を外的条件が厳しい位置に設置される物理量検出素子に近づけて配備しても、外的条件の影響によってコンデンサの動作不良や破損等の不都合が発生することを防止できる。
そして、信号処理回路を物理量検出素子に近づけて配置することによって、物理量検出素子と信号処理回路との間の信号伝送路長を短縮して、外部ノイズの影響による検出精度の低下を防止することができ、異常検出処理の精度向上に貢献する。
【0014】
また、本発明によれば、信号処理回路が専用の取付けケースによって外部振動や周囲環境温度等の外的条件から適正な保護を受けることができるため、信号処理回路の装備位置を、比較的安易に、センサユニットの側近に設置することが可能になり、センサユニットや中継ユニットの配置設計が容易になる。
また、物理量検出素子、信号処理回路、制御装置が互いに独立したユニットとして装備されることになるため、これらを収容するそれぞれの取付けケースは、個々の取付け位置における外的条件に相応して、断熱性や耐振強度等を個別に設定することができ、それぞれの取付けケースに対して、コストアップを招く過剰品質に陥ることを防止し、装置全体としてのコスト低減を図ることができる。
【0015】
また、本発明によれば、特に、移動設備が鉄道車両で、転動部材が鉄道車両に搭載された車軸等の回転軸を支承する転がり軸受装置である場合に、コンパクト化や外的条件への耐性向上といった本発明の効果が有用となる。
また、センサユニットのコンパクト化の点では、物理量検出素子として振動検出素子のみを取付けケースに収容させた構成、或いは、物理量検出素子として温度検出素子のみを取付けケースに収容させた構成とすると良い。
このようにすることで、物理量検出素子の装備数を必要最小限に抑えて、最大限にコンパクト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態に係る移動設備用異常検出装置を詳細に説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1乃至図3は本発明に係る移動設備用異常検出装置の第1実施形態を示したもので、図1は第1実施形態の移動設備用異常検出装置の概略構成図、図2は図1に示したセンサユニットを取り付けた車両軸受部の要部断面図、図3は図1に示した信号処理回路の構成例の説明図である。
【0018】
移動設備用異常検出装置1は、移動設備3に搭載された転動部材5の構成部品に組み付けられて転動部材5の転動動作時の物理量を検出して電気信号として出力する物理量検出素子7と、この物理量検出素子7の出力信号に対してフィルタ処理、増幅処理、波形成形処理、信号デジタル化処理等を実施して実測デジタル信号として出力する信号処理回路9と、この信号処理回路9の出力する実測デジタル信号に対して規定の評価処理(例えば、転動部材5の正常動作時に物理量検出素子7及び信号処理回路9を介してサンプリングした基準信号との比較による評価処理)を実施することで転動部材5における異常の有無を判定する制御装置11と、物理量検出素子7の出力信号を信号処理回路9に渡す信号伝送路としてのケーブル13と、信号処理回路9の出力する実測デジタル信号を制御装置11に渡す信号伝送路15とを備えた構成である。
【0019】
本実施形態において、移動設備3とは鉄道車両であり、転動部材5とは、鉄道車両の車軸21を回転自在に支承する円錐ころ軸受装置である。
また、本実施形態において、転動部材5としての円錐ころ軸受装置は、図2に示すように、内周に車軸21が嵌合する内輪22と、車軸21が挿通する軸箱23に外周が嵌合する外輪24と、内外輪間に転動自在に配置された複数個の転動体としての円錐ころ25と、円錐ころ25を保持する保持器26と、内外輪の端部を封止する密封装置27と、内輪22の軸方向の位置決めのために内輪22に端部に当接される円環28と、車軸21端部に螺着して円環28を内輪22側に押圧固定する締め付けナット29とを備えた構成である。
外輪24は、車軸21の端部を覆うように、着脱可能な蓋24aが装備されている。
【0020】
転動部材5の転動動作時の物理量としては、円錐ころ軸受の回転動作時に、回転状態に応じて変化する物理量で、例えば、円錐ころ軸受の発生する音や振動、更には、回転数や温度、転動部材5の構成部品上に生じる歪み等が考えられる。 但し、本実施形態では、転動部材5の転動動作時の物理量として、振動のみを検出対象としている。
従って、装備する物理量検出素子7は、振動検出素子のみである。
【0021】
本実施形態の場合、唯一の物理量検出素子7である振動検出素子は、図1及び図2に示すように、信号処理回路9や制御装置11とは別に専用の取付けケース17に収容して、信号処理回路9や制御装置11とは別に転動部材5の構成部品である蓋24aに固定可能な独立したセンサユニット31としている。
このセンサユニット31は、転動部材5としての軸受装置の蓋24aに取り付けられている。
【0022】
物理量検出素子7として、取付けケース17に収容する振動検出素子は、圧電素子を利用したもの(具体的には、両持ち梁構造であるバイモルフ型、片持ち梁型、円環型等の各種の形態のものを使用可能である)、歪みゲージ式のもの、静電容量型、ピエゾ抵抗型、マイクロマシニングを利用したもの、ICパッケージかされたもの等、各種のものを使用することができる。
【0023】
また、本実施形態においては、信号処理回路9及び制御装置11は、一体の処理ユニット18として取り扱えるように、1つの取付けケース19に収容している。
制御装置11には、所定のプログラムによって評価処理を実施可能な汎用のパソコン、或いは評価プログラムを予め組み込んだ1チップ型又は1ボード型のマイクロコンピュータが使用される。
【0024】
図3は、物理量検出素子7を出力信号の電荷出力を電圧出力に変換するために信号処理回路9に搭載される増幅回路である。
この増幅回路は、オペアンプ36によって、物理量検出素子7の出力電圧を増幅して出力するもので、物理量検出素子7の端子がオペアンプ36の正端子と負端子に接続されている。
また、オペアンプ36の負端子と出力接点間には、並列に、抵抗R1及びコンデンサC1が接続されている。
本実施形態の場合、信号処理回路9に搭載するコンデンサは、差動増幅回路上のコンデンサC1を含めて、全てのコンデンサがセラミックコンデンサであり、トリマ及びタンタルやアルミを用いた電解コンデンサは使用していない。
【0025】
以上説明した移動設備用異常検出装置1では、物理量検出素子7を信号処理回路9や制御装置11から切り離して、単独のユニット31としているため、物理量検出素子7に対して、移動設備3への取付け構造を含めて、コンパクト化や軽量化を追求して、車両等の移動設備3においてばね下の転動部材5等にセンサユニットを組み付ける場合でも、移動設備3の走行性能を妨げるばね下荷重の増大を抑制することができる。
しかも、車両等のばね下部位は、外気に暴露され、車両走行時に走行軌道等から作用する振動が直に作用するため、外部振動や周囲環境温度等の外的条件が厳しくなるが、物理量検出素子7は専用の取付けケース17に収容するため、その取付けケース17によってそれらの外的条件の適正な緩和を図ることができ、外部振動や周囲環境温度等の外的条件に対する物理量検出素子7の耐久性を向上させることができ、その結果、移動設備3において安定した異常検出処理を長期に渡って維持できるようになる。
【0026】
さらに、信号処理回路9や制御装置11は、センサユニット31から切り離された別のユニット18となるため、センサユニット31の取付け位置から離して、移動設備3上でも厳しい外的条件が作用しない部位を設置位置に選択することができ、信号処理回路9や制御装置11への外的条件の影響を抑えて、これらの信号処理回路9や制御装置11の動作安定性を向上させることができる。
【0027】
また、信号処理回路9においては、使用するコンデンサを全てセラミックコンデンサとしていて、トリマ及びタンタルやアルミを用いた電解コンデンサを搭載する従来の場合と比較して、コンデンサ自体の耐衝撃性や周囲環境温度への耐性が向上する。
従って、信号処理回路9を外的条件が厳しい位置に設置される物理量検出素子7に近づけて配備しても、外的条件の影響によってコンデンサの動作不良や破損等の不都合が発生することを防止できる。
そして、信号処理回路9を物理量検出素子7に近づけて配置することによって、物理量検出素子7と信号処理回路9との間の信号伝送路長を短縮して、外部ノイズの影響による検出精度の低下を防止することができ、異常検出処理の精度向上に貢献する。
【0028】
従って、移動設備3としての鉄道車両の転がり軸受の異常の有無に対して、コンパクトな装置構成で、長期に渡って、高精度な判定を下すことができる。
また、装備する物理量検出素子7を振動検出素子のみに限定したことで、物理量検出素子7の装備数を必要最小限に抑えて、最大限にコンパクト化を図ることができる。
【0029】
また、信号処理回路9は、デジタル信号への変換に限定されず、アナログ信号処理を行ってアナログ信号を出力したり、物理量検出素子7の出力をA/D変換し、デジタル信号処理、及び出力を行ったりしてもよい。信号処理回路9は、物理量検出素子7の出力信号を制御装置11の入力にあわせて信号処理を行うものであり、入力にあわせて種々の処理を行うように構成することが可能である。
【0030】
また、制御装置11は、前記に限定されず、出力信号のFFT処理やエンベロープ処理を行い異常検出をしたり、アナログ信号を入力信号として用いて比較処理を行ったり、A/D変換によるデジタル信号への変換後に比較処理を行ったりして異常診断を行ってもよい。すなわち、制御装置11は、信号処理回路9からの出力信号を入力信号として異常検出を行えればよい。
【0031】
(第2実施形態)
図4は、本発明に係る移動設備用異常検出装置の第2実施形態の概略構成を示したものである。
この第2実施形態の移動設備用異常検出装置41は、転動部材5の転動動作時の物理量として、温度のみを検出するように構成したもので、センサユニット31の取付けケース17に収容する物理量検出素子を、温度検出素子42に交換した点以外は、全て、第1実施形態と共通である。
共通の構成には、同一番号を付して、説明を省略する。
【0032】
本実施形態の場合も、センサユニット31に装備する物理量検出素子は、温度検出素子42のみとしていて、物理量検出素子の装備数を最小限にすることによって、第1実施形態と同様に、センサユニット31のコンパクト化の追求に適した構成となっている。
【0033】
なお、物理量検出素子として取付けケース17に収容する温度検出素子としては、具体的には、NTC、PTC、CTR、シリコン等の各種サーミスタ、測温抵抗体(感温抵抗)、白金抵抗、温度IC等を使用できる。
【0034】
なお、以上の実施形態では、センサユニット31内に装備する物理量検出素子を1つだけとした。しかし、センサユニット31内に、複数個又は複数種の物理量検出素子を装備しても良い。
例えば、振動検出素子と温度検出素子の双方を備えた構成、或いは更に回転検出素子等を加えて、検出する物理量の種類を更に増加させた構成とすることができ、組み合わせる物理量検出素子の種類や装備数は、要求される検出精度に応じて、任意に調整可能である。
【0035】
また、転動部材の動作時の物理量として回転量を検出する回転検出素子は、ホール効果を利用したもの(ホール素子、ホールIC等)や磁気抵抗を利用したもの(MR素子等)が利用できる。
【0036】
また、二方向以上の振動を測定する場合は、一個の素子で多方向の検出ができる振動検出素子を選んでも良いし、単方向の振動を検出する振動検出素子を二個以上装備するようにしても良い。
【0037】
車軸の回転速度や回転方向を検出する場合は、車軸の一部に凹凸の歯を加工するか、多極着磁された永久磁石(プラスチック磁石やゴム磁石)を付けて、それに対向する箇所に検出素子を対向配置すれば良い。
【0038】
(第3実施形態)
図5は、本発明に係る移動設備用異常検出装置の第3実施形態を示したものである。
この移動設備用異常検出装置44は、信号処理回路9を、制御装置11とは別に専用の取付けケース46に収容して、制御装置11とは別に移動設備3に取付け可能な独立した中継ユニット47としたもので、その結果、制御装置11も独立した制御ユニット49となる。以上のように、信号処理回路9と制御装置11を別のユニットにした点以外の構成は、第1実施形態と同様である。その結果、 第1実施形態と共通の構成については、同番号を付して、説明を省略する。
【0039】
この第3実施形態の構成では、信号処理回路9が専用の取付けケース46によって外部振動や周囲環境温度等の外的条件から適正な保護を受けることができるため、信号処理回路9の装備位置を、比較的安易に、センサユニット31の側近に設置することが可能になり、センサユニット31や中継ユニット47の配置設計が容易になる。
また、物理量検出素子7、信号処理回路9、制御装置11が互いに独立したユニット47,49として装備されることになるため、これらを収容するそれぞれの取付けケースは、個々の取付け位置における外的条件に相応して、断熱性や耐振強度等を個別に設定することができ、それぞれの取付けケースに対して、コストアップを招く過剰品質に陥ることを防止し、装置全体としてのコスト低減を図ることができる。
【0040】
なお、中継ユニット47と制御ユニット49との間の信号伝送路15が長大になる場合、ノイズの影響や出力信号の誤差の軽減のために、信号伝送路15のインピーダンスを小さく設定したり、或いは、出力信号を電流出力に変換するなどの工夫をすると良い。
【0041】
以上の第3実施形態の移動設備用異常検出装置44を、移動設備3としての鉄道車両の車軸用の転がり軸受の異常検出に使用する場合、上記のセンサユニット31,中継ユニット47,制御ユニット49は、図6に示すような配置とすることが好ましい。
センサユニット31は、転動部材である軸受装置の物理量を鋭敏に検出できるように、車輪及び車軸が装着される台車51上で、軸受装置により近い位置に各軸受装置毎に配備し、中継ユニット47はばね下荷重に含まれないように、また、車両走行時の台車51の振動や周囲環境温度等の外的条件の影響を弱めるために、台車51から離れた車体53上に配備する。更に、制御ユニット49は、更に外的条件の影響を受けにくい、車内55の中央部等に配置すると良い。
このような配置をすると、センサユニット31と中継ユニット47との間のケーブル13は、外部ノイズの影響を受けにくいように、短めにすることができ、センサユニット31からの検出信号のS/N比の向上によって、異常の有無の判定精度を向上させることができる。
【0042】
図6に示したように、中継ユニット47の装備数は台車51毎に1台とし、1台の中継ユニット47で同一の台車51に装備されている複数個のセンサユニット31からの信号を処理させることで、中継ユニット47を装備数を減らして、装置構成の簡略化や、低コスト化を図ることができる。
但し、中継ユニット47を、各センサユニット31毎に個別に装備するようにしても良い。
また、制御ユニット49は、一つの車体53毎に1台装備するようにしたが、処理能力に余裕がある場合には、複数の車体毎に1台の制御ユニット49を装備するようにしても良い。
【0043】
(第4実施形態)
図7は、本発明に係る移動設備用異常検出装置の第4実施形態を示したものである。
この実施形態の移動設備用異常検出装置61は、図5に示した第3実施形態の移動設備用異常検出装置44を更に改良したもので、中継ユニット47に信号処理回路9の出力信号を無線送信する無線送信回路63を装備すると共に、制御ユニット49には無線送信回路63の出力信号を受信して制御装置11に渡す無線受信回路65を装備して、中継ユニット47と制御ユニット49との間の信号伝達をワイヤレス化したものである。
このようにすることで、長距離間のケーブル配線が不要になり、移動設備用異常検出装置61の設置作業工程を大幅に軽減することができる。また、ケーブルの断線等による不都合の発生を回避し、保守を容易にすることもできる。
【0044】
なお、センサユニット31の装備位置は、上記の蓋24aに限らない。例えば、軸箱23や、密封装置27に装備するようにしても良い。密封装置27にセンサユニット31を装備する場合は、取付けスペースが小さく、しかも強度が軸箱23や蓋24aと比較して小さいので、小型化の必要性が高く、本発明の効果を十分に活かすことができる。
また、上記の各実施形態のように、転動部材5の構成部品(例えば、上記の例では、軸受装置の蓋24a)に直に組み付ける形態に限らない。転動部材5の動作時に発生する物理量を検出できれば良く、転動部材5を支持する移動設備3上の適宜機構部品に装備位置を設定するようにしても良い。
【0045】
また、本実施形態において、移動設備は、上記実施形態に示した鉄道車両に限らない。例えば、自動車等の車両も含むものとする。また、車両だけでなく、車載等により形態される携帯用のVTR機器や携帯型パソコンにも、本発明を適用可能なため、本発明における移動設備に、これらの携帯用機器も含めるものとする。
【0046】
また、本実施形態において、転動部材は、上記実施形態に示した円錐ころ軸受装置に限らない。例えば、円錐ころ以外の転動体を使用した各種の転がり軸受装置も該当する。更に、転動部材は、軸受に限らず、転動体等の回転による転動を行う回転転動部材の他、直線的な摺接面状を滑動する直線転動部材も含む意であり、具体的には、転がり軸受や滑り軸受等の構成部品、或いは、ボールねじや、リニアガイド等の直動機構の構成部品などが該当する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る移動設備用異常検出装置の第1実施形態の概略構成図である。
【図2】図1に示したセンサユニットを取り付けた車両軸受部の要部断面図である。
【図3】図1に示した信号処理回路の構成例の説明図である。
【図4】本発明に係る移動設備用異常検出装置の第2実施形態の概略構成図である。
【図5】本発明に係る移動設備用異常検出装置の第3実施形態の概略構成図である。
【図6】図5に示したセンサユニット及び中継ユニットを配置した車両の概略構成図である。
【図7】本発明に係る移動設備用異常検出装置の第4実施形態の概略構成図である。
【符号の説明】
【0048】
1 移動設備用異常検出装置
3 移動設備(鉄道車両)
5 転動部材(円錐ころ軸受)
7 物理量検出素子(振動検出素子)
9 信号処理回路
11 制御装置(コンピュータ)
13 ケーブル(信号伝送路)
15 信号伝送路(ケーブル)
17 取付けケース
18 取付けケース
19 取付けケース
21 車軸
31 センサユニット
41 移動設備用異常検出装置
42 温度検出素子
44 移動設備用異常検出装置
47 中継ユニット
49 制御ユニット
51 台車
53 車体
55 車内
61 移動設備用異常検出装置
63 無線送信回路
65 無線受信回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転動部材の転動動作時の物理量を検出する物理量検出素子と、
前記物理量検出素子の出力信号に所定の処理を施す信号処理回路と、
前記信号処理回路の出力信号を基に、前記転動部材の異常判定を行う制御装置と、
を備えた異常検出装置であって、
前記信号処理回路に搭載するコンデンサは、全てセラミックコンデンサであり、タンタル及びアルミを用いた電解コンデンサでないことを特徴とする異常検出装置。
【請求項2】
前記信号処理回路は、前記物理量検出素子の出力信号に、フィルタ処理、増幅処理、波形処理を施して前記制御装置に出力する中継ユニットであることを特徴とする請求項1に記載の車両用異常検出装置。
【請求項3】
前記信号処理回路は、前記物理量検出素子の出力信号をディジタル信号、又は、電流出力に変換して、前記制御装置に送信することを特徴とする請求項1又は2に記載の異常検出装置。
【請求項4】
前記信号処理回路は、出力信号をワイヤレスで制御装置に送信することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の異常検出装置。
【請求項5】
前記異常検出装置は、移動設備用であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−322441(P2007−322441A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209634(P2007−209634)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【分割の表示】特願2002−361146(P2002−361146)の分割
【原出願日】平成14年12月12日(2002.12.12)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】