説明

異常系プロセス自動生成方法および異常系プロセス自動生成プログラム

【課題】 異常系プロセスの設計を支援可能とし、ビジネス環境の変化に迅速、かつ柔軟に対応可能とする。
【解決手段】 共通述語・関数テーブル6には、サービス群の処理内容を記述したメタデータを構成する状態表現述語が補償処理を要するかを示すフラグ情報(Compensation式)が記述されている。正常系プロセス生成機能部3は、ビジネスプロセス全体の処理要件を満たすサービスの組み合わせから正常系ビジネスプロセスを生成する。補償処理プロセス生成機能部8は、正常系ビジネスプロセスに対して、共通述語・関数テーブル6のCompensation式から補償処理要件を算出し、補償処理プロセス(異常系ビジネスプロセス)を生成する。ビジネスプロセス変換機能部9は、正常系ビジネスプロセスに異常系ビジネスプロセスを追加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常系プロセス自動生成方法および異常系プロセス自動生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネット上でサービスを提供するための共通技術であるWebサービスが普及してきている。Webサービスでは、サービスのインターフェース記述形式を、WSDL(WebService Description Language)など、システムの解釈可能な形式で定義し、標準化されたメッセージ形式をHTTPなどの標準的なインターネットプロトコルに従ってサービス間で送受信することにより、異なるサービスを容易に接続することを可能にしている。
【0003】
Webサービスの普及により、高度なサービスを短期間で提供することが可能となってきている。すなわち、既存の複数のWebサービスを連携させ、高機能な複合サービスを実現することが可能となってきた。このような複数のWebサービスを連携させるシステム形態をサービス連携と呼ぶ。
【0004】
サービス連携を実現する技術として、WS−BPEL(例えば非特許文献1参照)、WSCI(例えば非特許文献2参照)などのビジネスプロセス記述仕様が提案されている。これらの記述仕様では、どのサービスを、どのような順序で連携するか(ビジネスプロセス)を定義する。
【0005】
上述したサービス連携は、EAI(Enterprise Application Integration)のような企業内のシステム連携、B2B(Business to Business Integration)のような企業間のシステム連携などのシステム開発に今後用いられることが想定される。
【0006】
一方、ビジネス環境の変化、つまり新しいビジネス要件に迅速かつ柔軟に対応できるITシステムが求められている。サービス連携により、ビジネス要件に対応するITシステムを迅速に構築することは可能となる。しかし、上述したサービス連携を実現する技術は、事前にビジネスプロセスを定義する必要があるため、ビジネス要件の変更が起こると、プロセスを変更し、再設計する必要性が生じ、新しいビジネス要件に柔軟に対応できるITシステムを構築することができないという問題がある。
【0007】
このような問題を解決するための従来技術として、プロセス設計支援を行う技術が提案されている(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。特許文献1では、定義した論理プロセスから、情報処理の物理的な実行手段である業務APで構成されたインプリメンテメーションプロセスと、このインプリメンテメーションプロセスに従って業務APを実行するためのスクリプトを自動的に生成することで、システムの再構築を支援することを特徴とする。
【0008】
また、特許文献2では、ワークフローの設計時に考察した作業間の「依存関係(一方の作業の変更が他方に影響を与える関係)」と「参照関係(一方の作業の結果を他方が参照する関係)」を残しておくことにより、ワークフローが変更される場合に、柔軟性や整合性や信頼性がある代替案の作成を容易化する技術である。
【0009】
さらに、特許文献3では、システム仕様記述言語に沿って作成された仕様を部品化しておき、詳細化前のシステムレベルの設計段階において、システム記述言語で記述されたワークフロー等の実行順序制約が規定されたシステム仕様を、適切な部品を検索し、複数のシステム仕様部品を用いて実現するための仕様交換方法を提案している。
【特許文献1】特開平11−175329号公報
【特許文献2】特開平9−22433号公報
【特許文献3】特開2002−304428号公報
【非特許文献1】「http://www-106.ibm/com/developerworks/library/ws-bpel/」
【非特許文献2】「http://www.w3.org/TR/wsci」
【非特許文献3】「C.Peltz,"web service orchestration",http://devresource.hp.com/drc/technical_white_papers/WSOrch/WSOrchestration.pdf」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来技術のサービス連携技術では、上述したとおり、事前にビジネスプロセスを定義する必要があるため、ビジネス要件の変更が起こると、プロセスを変更し、再設計する必要性が生じ、新しいビジネス要件に柔軟に対応できるITシステムを構築することができないという問題があった。
【0011】
この問題に対する解決方法として、上述したプロセス設計支援技術が存在するが、いずれも部分的な解決方法を示しているに過ぎない。例えば、特許文献1では、プロセスの実装を自動生成することで迅速なシステム再構築の実現を可能としているが、ビジネス要件の変更に対して、論理プロセスの再設計が必須となる。
【0012】
また、特許文献2では、ワークフローが変更される場合に、柔軟性や整合性、信頼性などを有する代替案の作成が可能であるが、システム構築において、最も開発コストが高く、開発時間のかかる異常計処理の作成については何ら考慮されていない。同様に、特許文献3では、異常系処理の生成を考慮していない。
【0013】
このように、従来技術によるプロセス設計支援技術は、設計から実装の自動化による下流肯定の効率化や要件から設計の自動化による上流工程の効率化を行うことで、迅速、かつ柔軟なシステムの構築を支援する技術であるが、いずれも正常系のプロセスにのみ主眼をおいており、部分的な技術に過ぎない。異常系処理の設計/実装は、正常系処理に比べて多くの時間とコストがかかっている。特に、ビジネスプロセスをITシステムとして一から実装する場合において、約80%の時間が異常系プロセスの実装に割かれていると言われている(例えば非特許文献3参照)。すなわち、従来技術によるプロセス設計支援技術では、システム全体の20%の中で効率化を行っているにすぎず、本質的な問題解決にならないという問題がある。
【0014】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、異常系プロセスの設計を支援可能とし、ビジネス環境の変化に迅速、かつ柔軟に対応することができる異常系プロセス自動生成方法および異常系プロセス自動生成プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決するために、本発明は、事前状態と事後状態を定義したサービスを格納したサービステーブルと、前記サービステーブルにおける状態を表現する状態表現述語を、その補償処理の実行が必要であるか否かを示すフラグ情報と対応させて格納する述語テーブルと、をメモリ上に備え、複数のサービスの組み合わせから構成される正常系プロセスの例外発生時に実行すべき異常系プロセスを生成するコンピュータにおける異常系プロセス自動生成方法であって、正常系プロセスにおける各状態を構成する各述語に対し、前記述語テーブルのフラグ情報に基づいて補償処理が必要か判定するステップと、補償処理要件を満たすサービスを前記サービステーブルから抽出するステップと、抽出されたサービスに基づいて異常系プロセスを生成するステップと、からなる異常系プロセス自動生成方法である。
【0016】
本発明は、上記に記載の発明において、前記補償処理要件は、前記正常系プロセスにおける各状態において、補償処理が必要な述語を逆転した状態式であることを特徴とする。
【0017】
本発明は、事前状態と事後状態を定義したサービスを格納したサービステーブルと、前記サービステーブルにおける状態を表現する状態表現述語を、その補償処理の実行が必要であるか否かを示すフラグ情報と対応させて格納する述語テーブルと、をメモリ上に備え、複数のサービスの組み合わせから構成される正常系プロセスの例外発生時に実行すべき異常系プロセスを生成するコンピュータに、正常系プロセスにおける各状態を構成する各述語に対し、前記述語テーブルのフラグ情報に基づいて補償処理が必要か判定するステップと、補償処理要件を満たすサービスを前記サービステーブルから抽出するステップと、抽出されたサービスに基づいて異常系プロセスを生成するステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムである。
【0018】
本発明は、上記に記載の発明において、前記補償処理要件は、前記正常系プロセスにおける各状態において、補償処理が必要な述語を逆転した状態式であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、事前状態と事後状態を定義したサービスを格納したサービステーブルと、前記サービステーブルにおける状態を表現する状態表現述語を、その補償処理の実行が必要であるか否かを示すフラグ情報と対応させて格納する述語テーブルと、をメモリ上に備えておき、正常系プロセスにおける各状態を構成する各述語に対し、述語テーブルのフラグ情報に基づいて補償処理が必要か判定し、補償処理要件を満たすサービスをサービステーブルから抽出し、抽出されたサービスに基づいて異常系プロセスを生成する構成とした。これにより、異常系プロセスの設計を支援可能とし、ビジネス環境の変化に迅速、かつ柔軟に対応することができる。
【0020】
また、この発明によれば、上記の補償処理要件は、正常系プロセスにおける各状態において、補償処理が必要な述語を逆転した状態式である構成とした。これにより、フラグ情報が真である場合、すなわち補償処理が要する場合には、状態表現述語を逆転させて異常系プロセスを生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態によるプロセス設計支援システムを示すブロック図である。図において、プロセス設計支援システム1は、ワークフローなどのビジネスプロセスにより実現されるシステムについて、要求条件(要求仕様)からビジネスプロセスの設計を自動生成することで、設計作業を支援するシステムである。プロセス設計支援システム1は、処理要件記述部2、正常系プロセス生成機能部3、プロセス合成機能部4、サービス検索機能部5、共通述語・関数テーブル6、サービスメタデータテーブル7、補償処理プロセス生成機能部8およびビジネスプロセス変換機能部9から構成されている。
【0022】
処理要件記述部2は、ビジネスプロセスを設計するために、設計者によるビジネスプロセス全体の処理要件記述を支援する。GUIなどのユーザインターフェースを備えていても良い。正常系プロセス生成機能部3は、処理要件記述部2からの入力である処理内容記述言語によって記述された形式的な処理要件から、正常系ビジネスプロセスを生成する。処理内容記述言語は、処理前に処理実行者が満たさなくてはならない条件(事前状態)と処理実行後に処理実行者に生じている状態(事後状態)を論理式として表現することによって定義する。この論理式の定義には、状態表現述語を用いる。
【0023】
プロセス合成機能部4は、処理内容記述言語によって記述された形式的な処理要件を実現するサービスの組み合わせを算出(プロセス合成)する。サービス検索機能部5は、ある事前条件から事後状態へと遷移させることを条件としたサービスをサービスメタデータテーブル7から検索する。共通述語・関数テーブル6は、サービスメタデータテーブル7において、事前状態、事後状態を表現するために用いられる状態表現述語の定義と補償処理を要するものであるかを示すフラグ情報(Compensation式)とが記述されているテーブルである。サービスメタデータテーブル7は、事前に用意されるサービス群(プロセス構成部品)に対して、処理内容記述言語によりメタデータが記述されているテーブルである。
【0024】
補償処理プロセス生成機能部8は、正常系ビジネスプロセスを入力として、共通述語・関数テーブル6のCompensation式から補償処理要件を算出し、補償処理プロセスを生成する。ビジネスプロセス変換機能部9は、正常系ビジネスプロセスに異常系ビジネスプロセスを追加し、ビジネスプロセス実行エンジン上で実行可能なビジネスプロセスへ変換する。このような変換対象となるビジネスプロセスとしては、例えば、従来技術で説明したWS−BPELのような標準ビジネスプロセス記述仕様がある。
【0025】
次に、図2は、本実施形態によるサービスメタデータテーブル7の一例を示す概念図である。図において、サービスメタデータテーブル7では、サービスID、サービス名、事前状態および事後状態から構成され、あるサービスの処理内容が「事前状態から事後状態への状態遷移」として記述される。図示では、例えば、サービスAは、「入力Xをチェックされていない状態から、チェックされている状態へ遷移させる」処理を行うサービスであることを示している。
【0026】
次に、図3は、本実施形態による、正常系ビジネスプロセス生成の処理手順を説明するためのフローチャートである。まず、処理要件記述部2は、処理内容記述言語を用いて、ビジネスプロセス全体の処理要件(どのような処理を実現したいか)を記述する(Sa10)。次に、プロセス合成機能部4は、ビジネスプロセス全体の処理要件である、事前状態から事後状態へと遷移させるサービスの組み合わせを算出する(Sa12)。そして、正常系プロセス生成機能部3は、組み合わせたサービスを表現する正常系ビジネスプロセスを生成する(Sa14)。
【0027】
次に、図4は、上記正常系ビジネスプロセス自動生成の適応例を示す概念図である。また、図5は、サービス部品の処理内容記述(サービスメタデータ)の一例を示す概念図である。処理要件記述部2から入力されるビジネスプロセス全体として、図4に示すような処理用件(「今いる場所に一番近いレストランを予約する」)があったとする。この場合、事前状態(Condition(S))は、「ポータルサイトのユーザ名とユーザパスワードと自身の現在位置を知っている」、「そのポータルサイトに認証されておらず、あるレストランを知らない状態である」であり、事後状態(Condition(S))は、「現在位置にもっとも近いレストランを知り、それを予約した状態」である。そして、図5に示すサービス部品群がサービスメタデータテーブル7に記憶されている場合、どの順序でこれらのサービス部品を呼び出せば、処理要件が満たされるかを、プロセス合成処理部4、サービス検索機能部5で論理的に導出する。図示の例の場合には、認証サービス(Sa)→レストラン検索サービス(Srs)→レストラン予約サービス(Srr)の順に実行すればよいことが導出される。
【0028】
次に、異常系ビジネスプロセスの自動生成について説明する。ビジネスプロセスの正常系を構成する各処理の結果を、例外(異常)発生時に打ち消す処理の実行順序を示したプロセスを補償処理プロセスと呼ぶ。つまり、補償処理プロセスとは、正常系処理で行われていた結果、一旦変更されてしまった状態(アプリケーションとして整合性のない状態)を、元の状態(アプリケーションとして整合性のある状態)に戻す処理プロセスである。
【0029】
本実施形態では、この異常系処理が正常系処理に対する補償処理により実現する。すなわち、サービスのメタデータを構成する状態表現述語に対して、それが補償処理を要するものであるかを示すフラグ情報(Compensation式)を予め付加しておくことにより、正常系ビジネスプロセスを補償する処理要件をこのCompensation式から算出し、前述した処理ステップに従って、算出した処理要件から、異常系ビジネスプロセスを正常系ビジネスプロセスに対する補償処理プロセスとして生成する。
【0030】
図6は、本実施形態による共通述語・関数テーブル6の一例を示す概念図である。共通述語・関数テーブル6は、サービスメタデータテーブル7において、事前条件、事後条件を表現するために用いられる状態表現述語に対して、補償処理を要するものであるかを示すフラグ情報(Compensation式)を記述したテーブルである。図示において、例えば、「stored(x):xの内容が保存されている」という状態表現述語は、「stored(x)∧¬sent(x)」が真になる場合に、異常発生時において、補償処理が必要となることを意味している。
【0031】
このように、状態表現述語に対して、補償処理の必要性に関するメタデータを付加しておくことで、正常系ビジネスプロセスから異常系ビジネスプロセス(補償処理プロセス)を生成する処理の流れは、以下のようになる。
【0032】
図7は、本実施形態による異常系(補償処理)ビジネスプロセス自動生成の概要、つまり、補償処理プロセス生成処理部8の処理を示す概念図である。また、図8は、本実施形態による異常系ビジネスプロセス自動生成の処理手順を説明するためのフローチャートである。補償処理プロセス生成処理部は、まず、正常系ビジネスプロセスの全パスを検索し、その中で起こりうる例外発生を抽出する(Sb10)。正常系ビジネスプロセスの状態遷移列中の全ての例外発生ポイントとなる状態に対して以下の処理を行う。
【0033】
次に、例外発生ポイントの状態で出現している状態表現述語に対して、共通述語・関数テーブルにて関連付けられたCompensation式を計算(評価)する(Sb12)。Compensation式は、補償が必要な場合に真となるように設定されている。次に、評価結果が真であるか否かを判断する(Sb14)。そして、Compensation式が真である場合には、その状態表現述語で示された状態を戻す必要があると判断し、状態表現述語を逆転させた式(補償処理要件)を計算する(Sb16)。例えば、状態S2(a∧b∧¬c)において、bのCompensation式が真の場合、事前状態:a∧b∧¬c、事後状態:a∧¬b∧¬cという補償プロセスの処理要件を示す式を算出する。
【0034】
次に、サービスメタデータテーブルを参照し、補償処理要件を満たすサービスの組み合わせを算出し(Sb18)、該組み合わせたサービスを表現するビジネスプロセス(補償プロセス)を生成する(Sb20)。次に、全ての例外発生ポイントの評価が終了したか否かを判断し(Sb22)、終了していない場合には、ステップSb12へ戻り、上述した処理を繰り返す。そして、全ての例外発生ポイントの評価が終了した場合には、ビジネスプロセス変換機能部9において、正常系ビジネスプロセスに上記ビジネスプロセス(補償プロセス)を追加する(Sb24)。
【0035】
また、上述した異常系ビジネスプロセスの自動生成の適用例を、前述した図4に示す適用例を用いて説明する。ここで、図9は、上述した正常系ビジネスプロセスを入力とした補償プロセスの生成過程示す概念図である。また、図10は、この適用例における共通述語・関数テーブルを示す概念図である。
【0036】
正常系ビジネスプロセスとしては、図4に示すとおり、事前状態(S0)から、事後状態(SF)までには、認証サービス(Sa)、レストラン検索サービス(Srs)、レストラン予約サービス(Srr)の順に行えばよいことがわかっている。
【0037】
ステップSb10では、上記正常系ビジネスの全パスを検索し、その中で起こりうる例外発生を抽出する。この例では、図9に示すように、事前状態(S0)から、事後状態(SF)までにおいての状態をS1及びS2と定義している。ここで、S0では、例外発生が起こりえないため、例外発生が起こるポイントとして、S1及びS2、SFが抽出されることになる。
【0038】
次にステップSb12において、上記抽出されたポイントS1、S2、SFにおいて、共通述語・関数テーブルを用いて、それぞれの述語及びそれに関連付けられたCompensation式を評価する。例えば、状態S1では、hasID(x)、hasLocation(x)、hasRestaurantLoc(x)、authenticated(x)、reserved(x)のそれぞれに対して、Compensation式が真となるものはないため、ステップSb22へ進む。これをステップSb10で抽出されたポイント全て(ここではS2、SF)に対して行う。この適用例においては、状態SFにおける「reserved(x):レストランの予約をしている」のCompensation式が真となる。
【0039】
ステップSb16では、状態表現述語を逆転した式を補償処理要件として計算(算出)する。この適用例では、状態SFの「reserved(x):レストランの予約をしている」を逆転した式、つまり、状態SFを事前状態とし、状態SFのうち「reserved(x):レストランの予約をしている」を「¬reserved(x):レストランの予約をしていない」とした状態を事後状態とする補償処理要件を求める。
【0040】
次に、ステップSb18では、サービスメタデータテーブル7を参照して、上記補償処理要件を満たすサービスの組み合わせを求める。ここで、図5に示すサービスメタデータテーブルには、その要件を満たすSca:レストランキャンセスサービスがあるので、当該サービスが抽出され、場合によっては複数のサービスの組み合わせを表現する異常系ビジネスプロセスがステップSb20で求められることになる。しかし、ここでは、一つのサービスが抽出されただけなので、当該サービスが異常系ビジネスプロセスとなる。
【0041】
ステップSb22で全てのポイントに対して処理が終了すれば、ステップSb24で、先に求めた正常系ビジネスプロセスに、上記求められた異常系ビジネスプロセスが追加される。この適用例では状態SFの位置に異常系ビジネスプロセスが追加されることになる。
【0042】
上述した実施形態によれば、事前に用意したプロセス部品(サービス)群に対して、そのサービスの処理内容を、状態表現述語を用いた論理式によって定義する処理内容記述言語で記述したメタデータを付加することにより、ビジネスプロセス全体の処理要件から、最適なサービスを検索して合成する(組み合わせる)ことで、正常系ビジネスプロセスを生成することができる。
【0043】
また、サービスのメタデータを構成する状態表現述語に対して、それが補償処理を要するものであるかを示すフラグ情報(Compensation式)を付加することにより、正常系ビジネスプロセスを補償する処理要件を算出し、その処理要件に対して、正常系ビジネスプロセス自動生成手段を再帰的に用いることで、異常系ビジネスプロセスを生成することができる。
【0044】
なお、上述した実施形態においては、プロセス設計支援システム1は、コンピュータシステム内で実行される。そして、上述したプロセス設計支援システム1による一連の処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。すなわち、プロセス設計支援システム1における、各処理手段、処理部は、CPU等の中央演算処理装置がROMやRAM等の主記憶装置に上記プログラムを読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、実現されるものである。
【0045】
ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態によるプロセス設計支援システムを示すブロック図である。
【図2】本実施形態によるサービスメタデータテーブル7の一例を示す概念図である。
【図3】本実施形態による、正常系ビジネスプロセス生成の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【図4】本実施形態による正常系ビジネスプロセス自動生成の適応例を示す概念図である。
【図5】サービス部品の処理内容記述(サービスメタデータ)の一例を示す概念図である。
【図6】本実施形態による共通述語・関数テーブル6の一例を示す概念図である。
【図7】本実施形態による異常系(補償処理)ビジネスプロセス自動生成の概要を示す概念図である。
【図8】本実施形態による異常系ビジネスプロセス自動生成の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【図9】上述した正常系ビジネスプロセスを入力とした補償プロセスの生成過程示す概念図である。
【図10】この適用例における共通述語・関数テーブルを示す概念図である。
【符号の説明】
【0047】
1 プロセス設計支援システム
2 処理要件記述部
3 正常系プロセス生成機能部
4 プロセス合成機能部
5 サービス検索機能部
6 共通述語・関数テーブル
7 サービスメタデータテーブル
8 補償処理プロセス生成機能部
9 ビジネスプロセス変換機能部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
事前状態と事後状態を定義したサービスを格納したサービステーブルと、前記サービステーブルにおける状態を表現する状態表現述語を、その補償処理の実行が必要であるか否かを示すフラグ情報と対応させて格納する述語テーブルと、をメモリ上に備え、複数のサービスの組み合わせから構成される正常系プロセスの例外発生時に実行すべき異常系プロセスを生成するコンピュータにおける異常系プロセス自動生成方法であって、
正常系プロセスにおける各状態を構成する各述語に対し、前記述語テーブルのフラグ情報に基づいて補償処理が必要か判定するステップと、
補償処理要件を満たすサービスを前記サービステーブルから抽出するステップと、
抽出されたサービスに基づいて異常系プロセスを生成するステップと、
からなる異常系プロセス自動生成方法。
【請求項2】
前記補償処理要件は、前記正常系プロセスにおける各状態において、補償処理が必要な述語を逆転した状態式であることを特徴とする請求項1に記載の異常系プロセス自動生成方法。
【請求項3】
事前状態と事後状態を定義したサービスを格納したサービステーブルと、前記サービステーブルにおける状態を表現する状態表現述語を、その補償処理の実行が必要であるか否かを示すフラグ情報と対応させて格納する述語テーブルと、をメモリ上に備え、複数のサービスの組み合わせから構成される正常系プロセスの例外発生時に実行すべき異常系プロセスを生成するコンピュータに、
正常系プロセスにおける各状態を構成する各述語に対し、前記述語テーブルのフラグ情報に基づいて補償処理が必要か判定するステップと、
補償処理要件を満たすサービスを前記サービステーブルから抽出するステップと、
抽出されたサービスに基づいて異常系プロセスを生成するステップと、
を実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項4】
前記補償処理要件は、前記正常系プロセスにおける各状態において、補償処理が必要な述語を逆転した状態式であることを特徴とする請求項3に記載のコンピュータプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−221352(P2006−221352A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33267(P2005−33267)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000102728)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ (438)
【Fターム(参考)】