説明

異方導電フィルム用リール、異方導電フィルム巻、及び回路部材の接続方法

【課題】異方導電フィルムを用いて行う回路接続工程で、不良低減や生産効率向上を図ることができる異方導電フィルム用リール、異方導電フィルム巻、及び回路部材の接続方法を提供する。
【解決手段】異方導電フィルム用リール3は、異方導電フィルム5が巻かれて用いられる異方導電フィルム用リールであって、円筒形状をなし外周面に異方導電フィルム5が同心円状に巻き重ねられる巻芯部3aと、巻芯部3aの両端に巻芯部と同心に設けられ、巻芯部3aの円筒軸線Aに直交する面に沿って延在する一対の円形のリール側板3bと、を備えており、リール側板3bには、巻芯部3a側の面3dの円周縁部に沿って、所定の厚みのリング状ガイド板9が取り付けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方導電フィルム用リール、異方導電フィルム巻、及び回路部材の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
相対する多数の電極を有する被接続部材を接続するための接続材料として、異方導電フィルム(以下、ACFということがある)が使用されている。ACFはプリント配線基板、LCD用ガラス基板、フレキシブルプリント基板等の基板や、IC、LSI等の半導体素子やパッケージ等の被接続部材を接続する際、相対する電極同士の導通状態を保ち、かつ、隣接する電極同士の絶縁を保つように電気的接続と機械的固着を行う接続材料である。
【0003】
ACFは、熱硬化性樹脂を含有する接着剤成分と、必要により配合される導電性粒子とを含み、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の支持体(セパレータ)上に、フィルム状に形成され、テープ状にスリットされてから芯材に同一円心状に巻き付けてリール形状の細幅長尺テープ(巻重体)として製品化されていることが多い。従来、ACFとしては、高接着性でかつ高信頼性を示すエポキシ樹脂を用いた熱硬化性樹脂が用いられてきた(例えば、特許文献1)。また、アクリレート誘導体やメタアクリレート誘導体とラジカル重合開始剤である過酸化物を併用した、ラジカル硬化型接着剤が注目されている。ラジカル硬化は、反応活性種であるラジカルが反応性に富むため、短時間硬化が可能である(例えば、特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−113480号公報
【特許文献2】特開2002−203427号公報
【特許文献3】国際公開第98/044067号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、液晶テレビの普及に伴い、液晶テレビの生産は40インチ級以上の大型のものが主流になっている。液晶モジュールも一辺が数十センチメートル〜数百センチメートルの大きなガラスを使用するようになっている。また、生産性向上を目的として、ACFの長尺化やオートチェンジャーを用いた自動リール交換工程の採用などが、各液晶モジュール生産メーカーでは進んでいる。特に、オートチェンジャー方式の採用は作業時間の低減による生産性向上、コスト削減に大きな効果が得られる。
【0006】
しかしオートチェンジャーでACFを引き出す際、ACFを引き出す角度が大きい場合がある。すなわち、フィルム引き出し時において、フィルム先端がリールの回転面に対して斜めの方向に引っ張られる場合がある。特に、リールの回転面に対するフィルムの引っ張り方向の角度(以下「引き出し角度」という)が大きい場合には、リール側板とACF巻重体の間隙にACFが滑り込んでしまう「脱落現象」が発生し易い。そして脱落現象が発生した場合、ACF樹脂がリール側板に付着したり、巻重体そのものに付着したりすることで、ACFのフィルム側面にACF樹脂成分が付着しフィルムの円滑な送り出しを妨げる「ブロッキング」の問題が生じやすい。ブロッキングが発生すれば、このACFを用いる回路接続工程での貼り付け不良の原因となったり、ACFの交換を余儀なくされ、作業工程の増加や生産性の低下に繋がったりするので、大きな問題となる。
【0007】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、異方導電フィルムを用いて行う回路接続工程で、不良低減や生産効率向上を図ることができる異方導電フィルム用リール、異方導電フィルム巻、及び回路部材の接続方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の異方導電フィルム用リールは、異方導電フィルムが巻かれて用いられる異方導電フィルム用リールであって、円筒形状をなし外周面に異方導電フィルムが同心円状に巻き重ねられる巻芯部と、巻芯部の両端に巻芯部と同心に設けられ、巻芯部の円筒軸線に直交する面に沿って延在する一対の円形のリール側板と、を備えており、リール側板には、巻芯部側の面の円周縁部に沿って、所定の厚みのリング状部材が取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の異方導電フィルム巻は、リールと、当該リールに巻かれた異方導電フィルムと、を備える異方導電フィルム巻であって、リールは、円筒形状をなし外周面に異方導電フィルムが同心円状に巻き重ねられる巻芯部と、巻芯部の両端に巻芯部と同心に設けられ、巻芯部の円筒軸線に直交する面に沿って延在する一対の円形のリール側板と、を備えており、リール側板には、巻芯部側の面の円周縁部に沿って、所定の厚みのリング状部材が取り付けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の異方導電フィルム用リールから異方導電フィルムが引き出される際、或いは本発明の異方導電フィルム巻の異方導電フィルムが引き出される際には、フィルムの巻重体から送り出されるフィルムが、リール側板とリール側板との間を搬送され、リール側板の円周縁部同士の間を通過して、フィルムが外に引き出される。このフィルムの引き出し時において、引き出し角度が大きい場合を考える。このような場合、リール側板とリール側板との間のフィルムの搬送軌道も、リールの回転面に対して傾斜し易いため、その結果、脱落現象が発生し易いと考えられる。これに対し、本発明に係る上記リール及びフィルム巻では、リール側板の巻芯部側の面の円周縁部には、所定の厚みのリング状部材が取り付けられているので、巻重体から送り出されるフィルムは、対向するリング状部材同士の間を通過するように案内されることになる。従って、引き出し角度が大きい場合にも、リール側板とリール側板との間におけるフィルムの搬送軌道の傾斜が抑えられる。従って、前述の脱落現象が抑制されて、ブロッキングの発生が抑えられ、その結果、異方導電フィルムを用いて回路を接続する工程での不良の低減や、生産効率向上を図ることができる。
【0011】
また、この場合、対向するリング状部材同士の間の間隙は、異方導電フィルムの幅よりも広いこととしてもよい。この構成によれば、引き出されるフィルムをリング状部材同士の間の間隙に円滑に通過させることができる。
【0012】
本発明の回路部材の接続方法は、第1の接続端子を有する第1の回路部材と、第2の接続端子を有する第2の回路部材と、を接続する回路部材の接続方法であって、リールと、当該リールに巻かれた異方導電フィルムと、を備える異方導電フィルム巻から、異方導電フィルムを引き出すフィルム引出工程と、フィルム引出工程で引き出された異方導電フィルムを第1の接続端子と第2の接続端子との間に挟むように第1の回路部材と第2の回路部材とを配置する回路部材配置工程と、第1の回路部材と第2の回路部材とを加熱加圧して、第1の接続端子と第2の接続端子とを異方導電フィルムを介して電気的に接続させる加熱加圧工程と、を備え、異方導電フィルムのリールは、円筒形状をなし外周面に異方導電フィルムが同心円状に巻き重ねられる巻芯部と、巻芯部の両端に巻芯部と同心に設けられ、巻芯部の円筒軸線に直交する面に沿って延在する一対の円形のリール側板と、を備えており、リール側板には、巻芯部側の面の円周縁部に沿って、所定の厚みのリング状部材が取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
この接続方法におけるフィルム引出工程では、フィルムの巻重体から送り出されるフィルムが、リール側板とリール側板との間を搬送され、リール側板の円周縁部同士の間隙を通過して、フィルムが外に引き出される。このフィルムの引き出し時において、引き出し角度が大きい場合を考える。このような場合、リール側板とリール側板との間のフィルムの搬送軌道も、リールの回転面に対して傾斜し易いため、その結果脱落現象が発生し易いと考えられる。これに対し、本発明に係る接続方法のフィルム引出工程では、リール側板の巻芯部側の面の円周縁部には、所定の厚みのリング状部材が取り付けられているので、巻重体から送り出されるフィルムは、対向するリング状部材同士の間を通過するように案内されることになる。従って、引き出し角度が大きい場合にも、リール側板とリール側板との間におけるフィルムの搬送軌道の傾斜が抑えられる。従って、前述の脱落現象が抑制されて、ブロッキングの発生が抑えられ、その結果、異方導電フィルムを用いて回路を接続する工程での不良の低減や、生産効率向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の異方導電フィルム用リール、異方導電フィルム巻、及び回路部材の接続方法によれば、異方導電フィルムを用いて行う回路接続工程で、不良低減や生産効率向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の異方導電フィルム巻の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】(a)〜(d)は、異方導電フィルムの各例を示す断面図である。
【図3】(a)は、異方導電フィルム用リールの一例を示す正面図であり、(b)は、その断面図である。
【図4】リール側板とリング状ガイド部とを示す分解斜視図である。
【図5】(a)は、異方導電フィルム用リールの他の例を示す正面図であり、(b)は、その断面図である。
【図6】異方導電フィルム巻から異方導電フィルムが引き出される状態を示す正面図である。
【図7】(a),(b)は、引き出される異方導電フィルムとリール側板の外周縁部とを拡大して示す断面図である。
【図8】図1の異方導電フィルム巻のVIII-VIII断面図である。
【図9】引き出される異方導電フィルムとリール側板の外周縁部とを拡大して示す断面図である。
【図10】(a),(b)は、異方導電フィルムを用いて回路部材同士を接続する過程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る異方導電フィルム用リール、異方導電フィルム巻、及び回路部材の接続構造体の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明の便宜上、図面では物の形状を誇張して示す場合があり、図面上の寸法比率は実際の物や説明上の数値とは必ずしも一致しない。
【0017】
図1に示すように、異方導電フィルム巻1は、リール3と、リール3に巻かれたテープ状の異方導電フィルム5とを備えている。リール3は、円筒形状の巻芯部3aと、巻芯部3aの両端に設けられた一対の円板状のリール側板3bと、を備えている。リール3の巻芯部3aの円柱外周面に、細幅の長尺テープ状(帯状)とされた異方導電フィルム5が同心円状に巻重ねられ、巻重体6が形成されている。巻重ねられた異方導電フィルム5は一対のリール側板3bの間に挟まれるので、異方導電フィルム5の巻ずれが防止される。また、リール側板3bと巻重体6との間には僅かに間隙h(図9参照)を設け、巻重体6の側面がリール側板3bの内側の面3dに接触しないようになっている。この構成により、巻重体6とリール側板3bとの密着に起因するブロッキングの発生を抑えることができる。
【0018】
異方導電フィルム5は、例えば、半導体チップ(回路部材)を実装基板(回路部材)に実装する際に、接続端子間に挟み込まれ確実な電気的接続を図るために用いられる。異方導電フィルム巻1は、例えば、フィルム供給機能とフィルム巻の自動交換機能とをもつオートチェンジャーに取り付けられて用いられる。すなわち、異方導電フィルム巻1が装着されたオートチェンジャー等において、リール3が回転され異方導電フィルム5の一端が引っ張られることにより、異方導電フィルム5がリール3から巻出され、回路部材の接続に用いられる。
【0019】
異方導電フィルム5は、支持体であるセパレータフィルム5a(図2参照)上に異方導電性接着剤層5b(図2参照)を幅10〜50cm程度に形成した後、一旦巻き取って原反を作製し、この原反を巻きだしカッターの刃等を用いて連続的に幅0.5〜5mm程度の細幅に裁断して、再度巻芯に巻き取られることで作製される。裁断後の異方導電フィルム5の巻き取りの際には、帯電防止材が練りこまれたプラスチック製の巻芯部3aに巻き取る。その後、巻き崩れを防止するため、帯電防止材が練りこまれたプラスチック製の蓋状のリール側板3bを、巻芯部3aの両端面に装着するといった作製方法が一般的である。または、裁断後の異方導電フィルム5を、巻芯部3aとリール側板3bとが一体になったリール3に巻き付ける作製方法も一般的である。
【0020】
まずは、異方導電フィルム巻1の異方導電フィルム5について説明する。異方導電フィルム5は、図2(a)に示すように、支持体テープ(セパレータフィルムとも呼ばれる)5aと、この支持体テープ5a上に積層された異方導電性接着剤層5bと、を有するテープ状異方導電フィルムである。
【0021】
また、図2(b)に示すように、異方導電フィルム5は、用途により、支持体テープ5a上に、異方導電性接着剤層5bと接着材層5cとからなる2層以上の層が積層された構成を持つものとしてもよい。この場合、接着材層5cは、支持体テープ5aと異方導電性接着剤層5bとの間に存在する。また、図2(c)に示すように、異方導電フィルム5には、異方導電性接着剤層5bに異物の付着を防ぐためのカバーレイ5dを、異方導電性接着剤層5bの上に更に設けてもよい。
【0022】
また、図2(d)に示すように、異方導電フィルム5は、支持体テープ5a上に、異方導電性接着剤層5bと薄膜層5eとからなる2層以上の層が積層された構成としてもよい。この場合、異方導電性接着剤層5bが、支持体テープ5aと薄膜層5eとの間に存在する。
【0023】
通常、異方導電性接着剤層5bは、使用時に加熱・加圧され、流動、固化することにより、被接着部材である基板等を接続する。例えば、ドライバーICに使用される異方導電接着剤として、バンプ上導電粒子捕捉効率を向上させるために、導電粒子を含まない接着剤層と異方導電性接着剤層の2層からなる構造で、かつガラスとドライバーICの線膨張係数の差から生じるガラスの反りを抑制するために、内部応力を緩和できるような特性を持つものが好適に使用され、FPCに使用される異方導電接着剤として、アクリルゴムやエラストマ成分を含有し、FPCに対する接着性が良好な特性を持つものが好適に使用される。また、フィルム表面のタック性を調整したり、絶縁性を向上させることを目的として、1〜3μmの厚みを有する導電粒子を含まない薄膜層を前記各異方導電性接着剤層の表面に設けた2層以上の層からなる構造のものも好適に使用される。
【0024】
異方導電フィルム5の支持体テープ5aとしては、例えば、一般に市販されている離型処理がなされたポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンイソフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリオレフィン系フィルム、ポリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリアミドフィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、合成ゴム系フィルム、液晶ポリマーフィルム等の各種フィルムを使用することが可能である。
【0025】
支持体テープ5a上に設けられた異方導電性接着剤層5bが容易に除去できるように、支持体テープ5aの表面に剥離処理剤をコーティングしてもよい。支持体テープ5aの厚さは、特に限定はないが、4μm〜200μmが好ましい。また、支持体テープ5aの幅は、異方導電性接着剤層5bの幅よりも広く設定すればよく、例えば、500μm〜30mmが好ましい。
【0026】
異方導電性接着剤層5bに用いられる異方導電接着剤としては、熱や光により硬化性を示す材料が広く適用できる。接続後の耐熱性や耐湿性に優れていることから、架橋性材料の使用が好ましい。なかでもエポキシ系接着剤は、短時間硬化が可能で接続作業性がよく、分子構造上接着性に優れている等の特徴から好ましい。エポキシ系接着剤は、例えば高分子量エポキシ、固形エポキシと液状エポキシ、ウレタンやポリエステル、アクリルゴム、NBR、ナイロン等で変性したエポキシを主成分とし、硬化剤や触媒、カップリング剤、充填剤等を添加してなるものが一般的である。
【0027】
また、異方導電性接着剤層5bには、導電粒子が含まれている。接続部材における導電材料として用いられるこのような導電粒子としては、Au,Ag,Pt,Ni,Cu,W,Sb,Sn,はんだ等の金属粒子やカーボン等があり、またこれら導電粒子を核材とするか、あるいは非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等の高分子等からなる核材に前記したような材質からなる導電層を被覆形成したものでもよい。さらに導電材料を絶縁層で被覆してなる絶縁被覆粒子や、導粒電子と絶縁粒子の併用等の適用も可能である。
【0028】
異方導電性接着剤層5bの厚さは、特に限定はなく、使用する接着剤及び被着対象に合わせて適宜選択するが、5μm〜100μmが好ましい。また、異方導電性接着剤層5bの幅は、使用用途に合わせて調整すればよいが、一般には0.5mm〜5mm程度である。
【0029】
また、異方導電フィルム5の幅は、0.5mm〜3mmであることが好ましく、その中でも0.5mm〜1.5mmであることが更に好ましい。このような狭い幅の異方導電フィルム5にあっては、後述する「脱落現象」の問題が比較的発生し易く、「脱落現象」を効果的に抑制する必要性が特に高い。従って、特に上記のような幅を有する異方導電フィルム5は、本発明に係る異方導電フィルム巻1に適用して「脱落現象」を抑制することが好ましい。
【0030】
次に、リール3について説明する。図1及び図3に示すように、リール3は、プラスチック製の円筒形状の巻芯部3aと、巻芯部3aを挟むように当該巻芯部3aの両端に設けられた一対のプラスチック製の円板状のリール側板3bと、を備えている。巻芯部3a及びリール側板3bをなすプラスチックには、帯電防止材が練り込まれてもよい。リール側板3bは、巻芯部3aの円筒軸線A(リール3の回転軸線)に直交する面(リール3の回転面)に平行に、巻芯部3aと同心円上に延在している。
【0031】
図4にも示すように、各リール側板3bの内側の面3d(巻芯部3a側の面)には、引き出される異方導電フィルム5をガイドするリング状ガイド板9がそれぞれ取り付けられている。リング状ガイド板9は、リール側板3bの内側の面3dにおいて、リール側板3bの外周縁部に沿って一様の幅と高さで延在する所定の厚みのリング形状の部材である。リング状ガイド板9は巻芯部3aと同心円上に位置し、長方形断面をなす。リング状ガイド板9の材料としては、アクリル、ポリスチレン、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、シリコーン等を使用することができる。リング状ガイド板9,9同士の間の間隙が、異方導電フィルム5の幅よりも広くなるように、リング状ガイド板9,9の厚みが設定されている。リール側板3bへのリング状ガイド板9の取り付け方法としては、接着剤を用いて貼り付ける方法が採用可能である。
【0032】
なお、リング状ガイド板9とリール側板3bとを一体に形成する方法も考えられるが、図4に示されるようにリング状ガイド板9を別体で準備しリール側板3bに取り付ける方法が、以下の観点からより好ましい。すなわち、リング状ガイド板9とリール側板3bとを別体とすれば、リール側板3bを共通部品とし、異方導電フィルム5の幅に合わせた寸法のリング状ガイド板9を作製することにより、幅が異なる各種の異方導電フィルム5に対応することが可能である。従って、特に、フィルム幅が異なる複数種類の異方導電フィルム巻1を製造する場合に、リール側板3bの部品共通化による生産コスト低減のメリットが得られる。
【0033】
また、使用できるリール3のサイズは 異方導電フィルムのサイズによって任意に設定することが可能である。一般的にはリール側板3bの直径が50mm〜300mm、リール側板3bの厚みが0.5〜5.0mmのものが用いられる。
【0034】
なお、リール3の構造は、図3に示すように、巻芯部3aとリール側板3bとが独立した別体の部品からなる構造であってもよいが、図5に示すように、巻芯部3aとリール側板3bとが一体として成形された構造であってもよい。
【0035】
続いて、前述のリング状ガイド板9が取り付けられた異方導電フィルム巻1による作用効果について説明する。
【0036】
図6及び図7(b)に示すように、異方導電フィルム巻1が装着されたオートチェンジャー等においては、異方導電フィルム5の一端がB方向に引っ張られることにより、異方導電フィルム5がリール3から連続的に引き出される。このとき、巻重体6から送り出される異方導電フィルム5は、リール側板3b同士の間の搬送軌道F2を通過して、外に引き出される。
【0037】
ここで、前述したとおり、図8に示すように、リール側板3bと巻重体6との間には間隙hが設けられることで、巻重体6とリール側板3bとの密着に起因するブロッキングの発生を抑えている。ところが、このような間隙hの存在により、引き出される異方導電フィルム5が当該間隙hに滑り込んでしまう「脱落現象」が発生し易くなってしまうという一面もある。オートチェンジャーの仕様によっては、異方導電フィルム5を引き出す際に、図7(a)に示すように、リール3の回転面Cに対して斜め方向に異方導電フィルム5を引っ張る場合があり、引き出し角度αが大きい場合がある。そして、引き出し角度αが大きい場合は、特に、脱落現象が発生する可能性が大きくなる。
【0038】
脱落現象が発生した場合、異方導電フィルム5の異方導電性接着剤成分がリール側板3bに付着したり、巻重体6に付着したりすることでブロッキングが発生する場合がある。このようなブロッキングが発生すれば、この異方導電フィルム5を用いる回路接続工程での不良の原因となったり、異方導電フィルム巻の交換を余儀なくされ、作業工程の増加や生産性の低下に繋がったりするので、大きな問題となる。
【0039】
これに対して、異方導電フィルム巻1では、リング状ガイド板9を取り付けることによって、脱落現象の発生を抑制することができる。図7(a)は、リング状ガイド板9が無い場合において、引き出される異方導電フィルム5とリール側板3bの外周縁部とを拡大して示す断面図である。図7(b)は、リング状ガイド板9が有る場合において、引き出される異方導電フィルム5とリール側板3bの外周縁部とを拡大して示す断面図である。まず、図7(a)に示すように、異方導電フィルム巻1からリング状ガイド板9を除いた状態を考える。この状態では、リール側板3b同士の間における異方導電フィルム5の搬送軌道F1が、回転面Cに対して傾斜するので(傾斜角度θ1)、脱落現象が起こりやすい。その一方、図7(b)に示すように、リング状ガイド板9が存在する場合には、巻重体6から送り出される異方導電フィルム5が、リング状ガイド板9同士の間に案内されながらリール側板3bの外周縁部を通過するので、搬送軌道F2の回転面Cに対する傾斜は軽減される(傾斜角度θ2;θ2<θ1)。従って、リング状ガイド板9の存在により、脱落現象が発生する可能性を抑えることができる。よって、脱落現象に起因する異方導電フィルム5のブロッキングの発生が抑えられ、その結果、異方導電フィルム5を用いて回路を接続する工程での不良の低減や、生産効率向上を図ることができる。
【0040】
すなわち、異方導電フィルム巻1では、オートチェンジャーによるフィルム巻き出し時に生じる引き出し角度にバラツキがある場合にも、異方導電フィルム5をリング状ガイド板9の間を経由させることで、搬送軌道F2を是正させることが出来る。従って、脱落現象及びブロッキングを抑制し、LCDモジュール製造工程、特に現在主流となっている40インチ級以上の大型LCDモジュール製造工程における回路基板の貼り付け不具合を改善することが出来る。従って、異方導電フィルムによるLCDモジュール生産における効率を向上することができる。
【0041】
続いて、以上のような作用効果を効果的に奏するためのリング状ガイド板9等の寸法について説明する。
【0042】
図9に示すように、リング状ガイド板9の厚みをaとし、リング状ガイド板9の幅(径方向の寸法)をbとする。また、リング状ガイド板9同士の間の間隙をcとし、リール側板3b同士の間の距離(面3d同士の間の距離)をdとし、異方導電フィルム5の幅をfとする。リング状ガイド板9の厚みaは、300〜1000μmとすることで前述の効果が得られるが、その中でも特に、厚みaを500〜1000μmの範囲とすることが望ましい。厚みaが1000μmを越えてくると、リール側板3b同士の間の距離dが異方導電フィルム5の幅fに対して広くなりすぎるため、使用中に巻き崩れが発生する可能性が高くなる。リング状ガイド板9の幅bについては特に規定するものではないが、異方導電フィルム5のリール巻取りの作業時における作業性などの観点から、幅bは10mm以下が望ましい。また、前述のとおり、リング状ガイド板9同士の間の間隙cは、異方導電フィルム5の幅fよりも広くする。これにより、引き出される異方導電フィルム5をリング状ガイド板9同士の間の間隙に円滑に通過させることができる。
【0043】
続いて、図10を参照し、上述の異方導電フィルム5を用いて第1回路部材101と第2回路部材102とを接続する接続方法について説明する。以下の説明の接続構造体100は、例えば、LCDモジュールに用いられる一部品である。
【0044】
図10(b)に示す接続構造体100は、互いに電気的に接続された第1回路部材101と第2回路部材102とを備えている。第1回路部材101は表面から突出する複数の第1接続端子101aを有しており、第2回路部材102は表面から突出する複数の第2接続端子102aを有している。そして、第1回路部材101と第2回路部材102との間には、異方導電性接着剤層5bが挟み込まれている。例えば、第1回路部材101は半導体チップであり、第2回路部材102は実装基板である。
【0045】
この接続構造体100の製造工程にあっては、図10(a)に示すように、第1接続端子101aが、それぞれの第2接続端子102aに対向するように配置される。一方、オートチェンジャーによって、異方導電フィルム巻1から異方導電フィルム5が引き出される(フィルム引出工程)。そして、第1回路部材101と第2回路部材102との間には、異方導電性接着剤層5bが挟まれる(回路部材配置工程)。この異方導電性接着剤層5bは、前述の異方導電フィルム巻1から異方導電フィルム5が巻出され、支持体テープ5aが剥離されたものである。
【0046】
この図10(a)の状態から、第1回路部材101と第2回路部材102とが加熱加圧される(加熱加圧工程)ことで、図10(b)に示すように、各第1接続端子101aと各第2接続端子102aは、異方導電性接着剤層5bに含まれる導電粒子を挟み込んだ状態で接触する。また隣接する第1接続端子101a及び第2接続端子102aの間には、異方導電性接着剤層5bが充填される。このようにして、各第1接続端子101aと各第2接続端子102aとの電気的接続が図られ、接続構造体100が完成する。
【0047】
この接続構造体100において用いられる異方導電フィルム5は、前述の異方導電フィルム巻1のリール3から引き出されたものである。従って、オートチェンジャーによる引き出し角度にバラツキがある場合にも、異方導電フィルム5の脱落現象が発生する可能性を抑えることができる。よって、脱落現象に起因する異方導電フィルム5のブロッキングの発生が抑えられ、その結果、第1回路部材101と第2回路部材102とを接続する工程での不良の低減や、生産効率向上を図ることができる。
【0048】
また、このような接続構造体100の製造工程は、LCDモジュール製造工程、特に現在主流となっている40インチ級以上の大型LCDモジュール製造工程に適用することができ、貼り付け不具合や異方導電フィルムの吸着不具合等を改善することが出来る。従って、異方導電フィルムを用いたLCDモジュール生産における効率を向上することができ、スループットも向上することが出来る。また、脱落現象で生じる異方導フィルムのロスも低減することができるため、歩留まりも向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の異方導電フィルム用リール、異方導電フィルム巻、及び回路部材の接続方法によれば、例えば、LCDモジュール製造工程、特に現在主流となっている40インチ級以上の大型LCDモジュール製造工程において、不良の低減や生産効率向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0050】
1…異方導電フィルム巻、3…異方導電フィルム用リール、3a…巻芯部、3b…リール側板、3d…巻芯部側の面、5…異方導電フィルム、9…リング状ガイド部(リング状部材)、101…第1回路部材、101a…第1接続端子、102…第1回路部材、102a…第1接続端子、A…円筒軸線。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
異方導電フィルムが巻かれて用いられる異方導電フィルム用リールであって、
円筒形状をなし外周面に前記異方導電フィルムが同心円状に巻き重ねられる巻芯部と、
前記巻芯部の両端に前記巻芯部と同心に設けられ、前記巻芯部の円筒軸線に直交する面に沿って延在する一対の円形のリール側板と、
を備えており、
前記リール側板には、前記巻芯部側の面の円周縁部に沿って、所定の厚みのリング状部材が取り付けられていることを特徴とする異方導電フィルム用リール。
【請求項2】
対向する前記リング状部材同士の間の間隙は、前記異方導電フィルムの幅よりも広いことを特徴とする請求項1に記載の異方導電フィルム用リール。
【請求項3】
リールと、当該リールに巻かれた異方導電フィルムと、を備える異方導電フィルム巻であって、
前記リールは、
円筒形状をなし外周面に前記異方導電フィルムが同心円状に巻き重ねられる巻芯部と、
前記巻芯部の両端に前記巻芯部と同心に設けられ、前記巻芯部の円筒軸線に直交する面に沿って延在する一対の円形のリール側板と、
を備えており、
前記リール側板には、前記巻芯部側の面の円周縁部に沿って、所定の厚みのリング状部材が取り付けられていることを特徴とする異方導電フィルム巻。
【請求項4】
対向する前記リング状部材同士の間の間隙は、前記異方導電フィルムの幅よりも広いことを特徴とする請求項3に記載の異方導電フィルム巻。
【請求項5】
第1の接続端子を有する第1の回路部材と、第2の接続端子を有する第2の回路部材と、を接続する回路部材の接続方法であって、
リールと、当該リールに巻かれた異方導電フィルムと、を備える異方導電フィルム巻から、前記異方導電フィルムを引き出すフィルム引出工程と、
前記フィルム引出工程で引き出された前記異方導電フィルムを前記第1の接続端子と前記第2の接続端子との間に挟むように前記第1の回路部材と前記第2の回路部材とを配置する回路部材配置工程と、
前記第1の回路部材と前記第2の回路部材とを加熱加圧して、前記第1の接続端子と前記第2の接続端子とを前記異方導電フィルムを介して電気的に接続させる加熱加圧工程と、
を備え、
前記異方導電フィルムの前記リールは、
円筒形状をなし外周面に前記異方導電フィルムが同心円状に巻き重ねられる巻芯部と、
前記巻芯部の両端に前記巻芯部と同心に設けられ、前記巻芯部の円筒軸線に直交する面に沿って延在する一対の円形のリール側板と、
を備えており、
前記リール側板には、前記巻芯部側の面の円周縁部に沿って、所定の厚みのリング状部材が取り付けられていることを特徴とする回路部材の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−126711(P2011−126711A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38863(P2010−38863)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】