説明

異方形状粒子および該粒子の製造方法

【課題】2個の金属酸化物粒子が結合した異方形状粒子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】2個の金属酸化物粒子が、金属コロイド粒子を介在して結合してなることを特徴とする異方形状粒子。メルカプト基(チオール基:-SH)含有シラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子(B)と、アミノ基含有シラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子(C)とが、カルボキシル基および/またはカルボキシレート基含有有機化合物で表面処理された金属コロイド粒子(M)を介在させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2個の金属酸化物粒子が結合した異方形状粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微粒子を自己組織化により規則的に配列させた集合体は、その配列構造に依存した特性が期待されることから、機能性材料の開発を目的とした研究が盛んに行われている。
例えば、フォトニック結晶においては,粒子サイズとその配列構造に依存して,光の閉じこめや特定波長のみを透過あるいは反射させることが可能である。また、粒子間の空隙サイズを一定にすることによりサイズ選択的なフィルター材料とすることが期待される。
【0003】
しかしながら、通常用いられる球状微粒子は等方的であるため、球状微粒子を自己組織化させても最密充填構造しか得ることができず、異方形状の粒子を得ることが困難であった。得られたとしても、再現性よく、高収率で得ることは困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような情況のもと、機能性材料として有用な新規のナノサイズの異方形状粒子およびその製造方法の提供を望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は鋭意検討した結果、特定の製造方法によれば、従来にはなかった2個の粒径の異なる金属酸化物粒子が連結した略瓢箪状(達磨状)の異方形状の粒子が得られることを見出した。
【0006】
アミノ基含有シラン化合物で表面処理した粒子径の大きな金属酸化物粒子(A)分散液と、カルボキシル基および/またはカルボキシレート基含有有機化合物で表面を処理した金属コロイド粒子分散液とを混合すると、金属酸化物粒子(A)の表面を、金属コロイド
粒子で単層被覆した複合粒子が得られ、ついで、メルカプト基含有シラン化合物で表面処理した粒子径の小さな金属酸化物粒子(B)分散液を混合し、水酸化ナトリウム水溶液を添加することで、金属酸化物微粒子(B)が、複合粒子表面の金属コロイド粒子と連結し
たのち、金属コロイド粒子とともに、複合粒子表面から脱離し、さらに金属酸化物粒子(B)と粒子径が異なるアミノ基含有シラン化合物で処理した金属酸化物粒子(C)分散液を混合することによって粒子(B)と粒子(C)とが金属コロイド粒子を介在して結合した異方形状の粒子が得られることを見出して本発明を完成するに至った。
【0007】
なお、かかる特異形状の異方形状粒子は、従来存在していなかった。
本発明の構成は、以下の通りである。
[1]2個の金属酸化物粒子が、金属コロイド粒子を介在して結合してなることを特徴とする異方形状粒子。
[2]メルカプト基(チオール基:-SH)含有シラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子(B)と、
アミノ基含有シラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子(C)とが、
カルボキシル基および/またはカルボキシレート基含有有機化合物で表面処理された金属コロイド粒子(M)を介在させて結合してなる[1]の異方形状粒子。
[3]前記金属酸化物粒子(B)の平均粒子径(DB)が20〜400nmの範囲にあり、金属酸
化物粒子(C)の平均粒子径(DC)が100〜1000nmの範囲にあり、前記金属コロイ
ド粒子(M)の平均粒子径(DM)が2〜100nmの範囲にあり、各平均粒子径が下記の関係にある[1]または[2]の異方形状粒子。
【0008】
C ≧ DB> DM
[4]前記金属酸化物粒子(B)の平均粒子径(DB)、金属酸化物粒子(C)の平均粒子
径(DC)および金属コロイド粒子(M)の平均粒子径(DM)が下記の関係にある[1]〜[3]の異方形状粒子。
【0009】
C / DB =2〜10
B / DM =2〜10
[5]前記各金属酸化物粒子がシリカ粒子である[1]〜[4]の異方形状粒子。
[6]前記金属コロイド粒子がIB族、VIII族元素から選ばれる金属の1種以上からなる[1]〜[5]の異方形状粒子。
[7]前記金属がAu、Ag、Cu、Pt、Pdから選ばれる1種以上である[6]の異方形状粒子。
[8]下記の工程(a)〜(d)からなることを特徴とする異方形状粒子の製造方法;
(a)アミノ基含有シラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子(A)分散液と、カルボキシル基および/またはカルボキシレート基含有有機化合物で表面処理された金属コロイド粒子(M)分散液とを混合する工程、
(b)メルカプト基(チオール基:-SH)含有シラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子(B)分散液を混合する工程、
(c)アルカリ金属水溶液を添加する工程、
(d)アミノ基含有シラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子(C)分散液を混合す
る工程。
[9]前記金属酸化物粒子(A)の平均粒子径(DA)が100〜2000nmの範囲にあり、前記金属酸化物粒子(B)の平均粒子径(DB)が20〜400nmの範囲にあり、前記金
属酸化物粒子(C)の平均粒子径(DC)が100〜1000nmの範囲にあり、前記金
属コロイド粒子(M)の平均粒子径(DM)が2〜100nmの範囲にあり、各平均粒子
径が下記の関係にある[8]の異方形状粒子の製造方法。
【0010】
A > DC ≧ DB > DM
[10]前記金属酸化物粒子(A)の平均粒子径(DA)、金属酸化物粒子(B)の平均粒子
径(DB)、金属酸化物粒子(C)の平均粒子径(DC)および金属コロイド粒子(M)の平均粒子径(DM)が下記の関係にある[8]または[9]の異方形状粒子の製造方法。
【0011】
A/DB=2〜20
C/DB=2〜10
B/DM=2〜10
[11]前記各金属酸化物粒子がシリカ粒子である[8]〜[10]の異方形状粒子の製造方法。
[12]前記金属コロイド粒子がIB族、VIII族元素から選ばれる金属の1種以上からなる[8]
〜[11]の異方形状粒子の製造方法。
[13]前記金属がAu、Ag、Cu、Pt、Pdから選ばれる1種以上である[12]の異方形状粒子の製造方法。
[14]前記で得られた異方形状粒子を不活性ガス雰囲気下または還元ガス雰囲気下、200〜600℃で加熱処理する[8]〜[13]の異方形状子の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来存在しえなかった機能性材料として有用なナノサイズの新規異方形状粒子を再現性よく、高収率で提供することができる。
このような異方形状粒子は、フォトニック結晶においては、粒子サイズとその配列構造
に依存して、光の閉じ込めや特定波長のみを透過あるいは反射させることが可能である。また、粒子間の空隙サイズを一定にすることによりサイズ選択的なフィルター材料とすることが期待されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について具体的に説明する。
異方形状粒子
本発明に係る異方形状粒子は、2個の金属酸化物粒子が、金属コロイド粒子を介在して
結合してなる
本発明の異方形状粒子の1態様のモデル図を図1に示す。
【0014】
金属酸化物粒子
本発明に用いる金属酸化物粒子としては、SiO2、Al23、ZrO2、TiO2、SiO2・Al23、SiO2・ZrO2等の酸化物粒子、複合酸化物粒子を用いることができる。なかでも、シリカ粒子は真球状の微粒子が得られるので好適に用いることができる。金属酸化物粒子(小さいものを粒子(B)と大きいものを粒子(C)とする)は、同じ金属酸化物であっても異なるものであってもよい。
【0015】
金属酸化物粒子(B)の平均粒子径(DB)が20〜400nm、さらには50〜350
nmの範囲にあることが好ましい。金属酸化物粒子(C)の平均粒子径(DC)が100
〜1000nm、さらには200〜500nmの範囲にあることが好ましい。なお、DC
とDBとは同じであってもよいが、好ましくはDCとDBである。
【0016】
(DB)が小さいと、(DC)によっても異なるが、金属酸化物粒子(B)が小さすぎて真球状の粒子と類似し、異方形状粒子の効果が充分得られないことがある。(DB)が大
きいと、金属酸化物粒子(B)と(C)で大きさが同程度になり、異方形状の粒子の効果が充分得られないことがある。
【0017】
(DC)が小さいと、金属酸化物粒子(B)と(C)との大きさが同程度になり、異方形
状粒子の効果が充分得られないことがある。(DC)が大きすぎても、金属酸化物粒子(B)と(C)との粒子径比が大きく、真球状の粒子と類似し、異方形状粒子の効果が充分得られないことがある。
【0018】
(DB)と(DC)との比(DC/DB)=2〜10、好ましくは2〜5の範囲にあることが望ましい。
金属コロイド粒子(M)
金属コロイド粒子としては、IB族、VIII族元素から選ばれる金属の1種以上からなる金属コロイド粒子が用いられる。具体的には、Au、Ag、Cu、Pt、Pd、Ni、Co、Rh、Ir、Ru、Fe等の金属コロイド粒子が挙げられる。なかでも、Au、Ag、Cu、Pt、Pdの金属コロイド粒子は好適に用いることができ、特にAuコロイド粒子は化学的に安定であり、好適に用いることができる。
【0019】
金属コロイド粒子(M)の平均粒子径(DM)が2〜100nm、さらには5〜50n
mの範囲にあることが好ましい。このとき、金属酸化物粒子(B)および(C)の平均粒
子径との関係はDC≧DB>DMの関係あり、特にDB/DM=2〜10の範囲にあることが
好ましい。
【0020】
(DM)が小さすぎても、大きすぎても、金属酸化物粒子(B)と(C)とを結合する
ことができない場合があり、大きすぎると金属酸化物粒子を結合できたとしても異方形状粒子として不適合となることがある。
【0021】
本発明の異方形状粒子は、金属酸化物粒子(B)はメルカプト基(チオール基:-SH)含有シラン化合物で表面処理され金属酸化物粒子(C)はアミノ基含有シラン化合物で表面処理さ
れ、金属コロイド粒子(M)がカルボキシル基および/またはカルボキシレート基含有有機
化合物で表面処理されたものであると、金属コロイド粒子を介在して、金属酸化物粒子(B)と(C)が強固に結合したものが得られる。
【0022】
メルカプト基含有シラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子(B)
メルカプト基含有シラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子(B)は、金属酸化物粒子(B)の表面を、メルカプト基を有するシラン化合物で処理されている。
【0023】
メルカプト基を有するシラン化合物としては、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトジメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。なかでも3(γ)−メルカプトプロピルトリメトキシシランは特に好ましい。
【0024】
金属酸化物粒子(B)の処理方法は、従来公知のシランカップリング剤処理と同様に行うことができ、具体的には金属酸化物粒子(B)水分散液にメルカプト基を有するシラン化合物が必要量溶解したアルコール溶液を添加する。ここで、必要量は金属酸化物粒子(B)の粒子径(粒子表面積)によっても異なるが少なくとも金属酸化物粒子(B)の表面を充分に覆うに足る量であることが好ましい。このように、メルカプト基を有するシラン化合物で処理した金属酸化物粒子(B)は表面をチオール基(−SH)により修飾されている。
【0025】
アミノ基含有シラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子(C)
アミノ基含有シラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子(C)は前記金属酸化物粒子(C)の表面を、アミノ基を有するシラン化合物で処理されている。
【0026】
アミノ基を有するシラン化合物としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(フェニル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0027】
金属酸化物粒子(C)の処理方法は、前記粒子(B)と同様に従来公知のシランカップ
リング剤処理と同様に行うことができ、具体的には金属酸化物粒子(C)水分散液にアミノ基を有するシラン化合物が必要量溶解したアルコール溶液を添加する。ここで、必要量は金属酸化物粒子(C)の粒子径(粒子表面積)によっても異なるが少なくとも金属酸化物粒子(C)の表面を充分に覆うに足る量であることが好ましいが、金属酸化物粒子(C)のすくなくとも一部分が処理されていれば,異方形状粒子を調製することができる。
【0028】
カルボキシル基および/またはカルボキシレート基含有有機化合物で表面処理された金属コロイド粒子(M)
カルボキシル基および/またはカルボキシレート基含有有機化合物で表面処理された金属コロイド粒子(M)は、前記金属コロイド粒子が表面をカルボキシル基および/またはカルボキシレート基を有する有機化合物で処理されている。
【0029】
カルボキシル基および/またはカルボキシレート基(−COOH)を有する有機化合物としては、例えば、酢酸、蓚酸、蟻酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコン酸、マレイン酸、フタル酸、アルギン酸、クエン酸等の他、これらの塩、エステルなどが挙げられ
る。
【0030】
金属コロイド粒子(M)の処理方法は前記有機化合物が金属コロイド粒子(M)の表面に吸着あるいは結合すれば特に制限はなく従来公知の方法を採用することができる。例えば金属コロイド粒子(M)の分散液に前記有機化合物を金属コロイド粒子(M)の表面に充分量吸着するに足る量を加えることによって処理することができる。また、Frensの方
法によっても調製することができる。(Frensの方法とは,煮沸した塩化金酸水溶液にク
エン酸ナトリウム水溶液を加えて還元する手法で,調製された金粒子は、表面にクエン酸ナトリウムが吸着しているため、カルボキシアニオン(-COO-)により安定化されている
。)
本発明では、金属コロイド粒子表面のカルボキシル基および/またはカルボキシレート基が、金属酸化物粒子(C)表面のアミノ基および金属酸化物粒子(B)表面のメルカプト基と親和性が高く、これによって、金属酸化物粒子(B)と(C)とを橋渡しするように結合させる。
【0031】
異方形状粒子の製造方法
つぎに、本発明に係る異方形状粒子の製造方法について説明する。
本発明に係る異方形状粒子の製造方法は、下記の工程(a)〜(d)からなることを特徴としている。
【0032】
(a)アミノ基含有シラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子(A)分散液と、カルボキシル基および/またはカルボキシレート基含有有機化合物で表面処理された金属コロイド粒子(M)分散液とを混合する工程、
(b)メルカプト基(チオール基:-SH)含有シラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子(B)分散液を混合する工程、
(c)アルカリ金属水溶液を添加する工程、
(d)アミノ基含有シラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子(C)分散液を混合す
る工程。
[(a)工程]
(i)アミノ基含有シラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子(A)分散液
アミノ基含有シラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子(A)としては、前記アミノ基含有シラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子(C)と同様の粒子を用いることができる。この場合、後述する工程(d)で使用するアミノ基を有するシラン化合物で処理した金属酸化物粒子(C)の平均粒子径(DC)とアミノ基含有シラン化合物で表面処
理された金属酸化物粒子(A)の平均粒子径(DA)とが同じであってもよいが、平均粒
子径(DA)が平均粒子径(DC)より大きいことが好ましい。
【0033】
金属酸化物粒子(A)の平均粒子径(DA)は100〜2000nm、さらには400
〜1200nmの範囲にあることが好ましい。
(DA)が小さいと、工程(d)の後、得られた異方形状粒子から必要に応じて金属酸
化物粒子(A)を分離する際に分離が困難となることがある。(DA)が大きすぎると、
中間工程での異方性粒子の生成効率が低く、最終的に得られる異方形状粒子の生成量が少なく、効率的ではない。このため(DA)は他の粒子と分離が容易な範囲で小さくしてお
くことが好ましい。
【0034】
金属酸化物粒子(A)分散液の濃度は、特に制限はないが、通常、固形分として0.1〜20重量%の範囲にあることが好ましい。
(ii)カルボキシル基および/またはカルボキシレート基含有有機化合物で表面処理された金属コロイド粒子(M)分散液
カルボキシル基および/またはカルボキシレート基含有有機化合物で表面処理された金
属コロイド粒子(M)としては前記したものを用いることができる。
【0035】
この分散液の濃度も特に制限はないが、通常、固形分として0.1〜20重量%の範囲にあることが好ましい。
アミノ基含有シラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子(A)分散液と、カルボキシル基および/またはカルボキシレート基含有有機化合物で表面処理された金属コロイド粒子(M)分散液とを混合すると金属酸化物粒子(A)の表面に金属コロイド粒子(M)が集合し、アミノ基とカルボキシル基および/またはカルボキシレート基とが結合して自己組織化する。
【0036】
この時の混合比は各粒子の平均粒子径によっても異なるが金属酸化物粒子(A)の表面に金属コロイド粒子(M)の全量が1層に層をなして吸着する量に近似した量であることが好ましい。
[(b)工程]
ついで、表面をメルカプト基を有するシラン化合物で処理した金属酸化物粒子(B)分散液を混合する。
(iii)メルカプト基含有シラン化合物で表面処理した金属酸化物粒子(B)分散液
メルカプト基含有シラン化合物で表面処理した金属酸化物粒子(B)としては、前記したものが挙げられる。分散液の濃度は特に制限はないが、通常、固形分として0.1〜20重量%の範囲にあることが好ましい。
【0037】
(a)工程で得られた分散液に、メルカプト基含有シラン化合物で表面処理した金属酸化
物粒子(B)分散液を混合すると、金属酸化物粒子(A)の表面に金属コロイド粒子(M)が結合した粒子の表面、すなわち金属コロイド粒子(M)粒子層の外表面に、メルカプト基含有シラン化合物で表面処理した金属酸化物粒子(B)が吸着する。
【0038】
分散液の混合量は、(a)工程で得られた粒子の金属コロイド粒子(M)粒子層の外表面
に、メルカプト基含有シラン化合物で表面処理した金属酸化物粒子(B)の全量が1層に層をなして吸着する量に近似した量であることが好ましい。
[(c)工程]
(b)工程で得られた分散液に、アルカリ金属水溶液を添加する。
【0039】
アルカリ金属としてはNaOH、KOH等を用いる。アルカリ金属の水溶液を添加するとアミノ基とカルボキシル基および/またはカルボキシレート基の結合が切断され、表面がチオール基(−SH)により修飾された金属酸化物粒子(B)1個とカルボキシル基および/またはカルボキシレート基含有有機化合物で表面処理された金属コロイド粒子(M)とが、1〜10個程度結合した粒子(異方性金属酸化物粒子)が生成する。なお、このとき、遊離される金属酸化物粒子(A)は、必要に応じて分離しておくことが好ましい。分離方法としては、適切な速度の遠心分離により上ずみ(異方性金属酸化物粒子が含まれている)と沈殿(金属酸化物粒子(A)が含まれている)とに分け、別個に回収する。
【0040】
[(d)工程]
ついで、アミノ基含有シラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子(C)分散液を混合する。アミノ基含有シラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子(C)としては前記したアミノ基含有シラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子(C)を用いることができる。
【0041】
このときの分散液の濃度は特に制限はないが、通常、固形分として0.1〜20重量%の範囲にあることが好ましい。
分散液の混合量は、金属酸化物粒子(C)と前記(c)工程で生成する異方性金属酸化物
粒子の数との比(金属酸化物粒子(C):異方性金属酸化物粒子)=1:1程度の比とな
るように混合する。
【0042】
このようにして金属酸化物粒子(C)と異方性金属酸化物粒子とが1:1で結合した、すなわち、金属酸化物粒子(B)と金属酸化物粒子(C)とが金属コロイド粒子を介在させて結合した本発明に係る異方形状粒子が得られる。
【0043】
本発明の異方形状粒子の製造方法では、さらに、(d)工程で得られた異方形状粒子を不
活性ガス雰囲気下または還元ガス雰囲気下、200〜600℃で加熱処理する工程(e)を設けてもよい。
【0044】
不活性ガスとしては、N2、Ar、Xe、Neなどのガスが挙げられ、還元ガスとして
は、H2等が好適である。
このような加熱処理をすることによって各金属酸化物粒子、金属コロイド粒子の表面処理に用いた処理剤を除去したり、金属酸化物粒子(B)、金属酸化物粒子(C)と金属コロイド粒子との結合(接合)を促進させることができる。このような加熱処理した異方形状粒子は金属酸化物粒子(B)、金属酸化物粒子(C)が容易に金属コロイド粒子と遊離することがなく、異方形状を維持することができるので、生成した異方形状粒子の安定性が増大し、多くの用途に使用が可能となる。
【0045】
このような新規異方形状粒子は、たとえば、フォトニック結晶においては、粒子サイズとその配列構造に依存して、光の閉じ込めや特定波長のみを透過あるいは反射させることが可能である。また、粒子間の空隙サイズを一定にすることにより、サイズ選択的なフィルター材料とすることが期待される。
【0046】
[実施例]
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定するものではない。
【0047】
[実施例1]
表面処理金属酸化物粒子(A-1)の調製
水/エタノール/アンモニアの混合溶液50mL(モル比3.75/3.10/0.219)に、テトラエトキシシラン6.23mLをくわえ、振とう器(旋回モード)を用いて2時間攪拌し、いわゆるStoeber法によりシリカ粒子分散液を調製した。これをエタノールで洗浄した後、110℃で3時間真空乾燥してシリカ粒子(A-1)を調製した。
シリカ粒子(A-1)の平均粒子径は1000nmであった。
【0048】
シリカ粒子(A-1)450mgに、トルエン45.0mLおよび3−アミノプロピルトリ
エトキシシラン4.44mLを加え終夜攪拌した。これをエタノールで洗浄した後、110℃で2.5時間真空乾燥して表面処理金属酸化物粒子(A-1)を調製した。
【0049】
表面処理金属酸化物粒子(B-1)の調製
水/エタノール/アンモニアの混合溶液250mL(モル比3.75/3.10/0.0625)に、テトラエトキシシラン15.38mLをくわえ、振とう器を用いて2時間攪拌し、いわゆるStoeber法によりシリカ粒子分散液を調製した。これをエタノールで洗浄した後、110℃で3時間真空乾燥してシリカ粒子(B-1)を調製した。シリカ粒子(B-1)の平均粒子径は220nmであった。
【0050】
ついで、シリカ粒子(B-1)450mgに、トルエン45.0mLおよび3−メルカプト
プロピルトリメトキシシラン3.53mLを加え終夜攪拌した。これをエタノールで洗浄
した後、110℃で2.5時間真空乾燥して表面処理金属酸化物粒子(B-1)を調製した。
【0051】
表面処理金属酸化物粒子(C-1)の調製
水/エタノール/アンモニアの混合溶液100mL(モル比3.75/3.10/0.219)に、テトラエトキシシラン6.23mLをくわえ、振とう器(旋回モード)を用いて2時間攪拌した。これをエタノールで洗浄した後、110℃で3時間真空乾燥してシリカ粒子(C-1)を調製した。シリカ粒子(C-1)の平均粒子径は480nmであった。
【0052】
シリカ粒子(C-1)450mgに、トルエン45.0mLおよび3−アミノプロピルトリ
エトキシシラン4.44mLを加え終夜攪拌した。これをエタノールで洗浄した後、110℃で2.5時間真空乾燥して表面処理金属酸化物粒子(C-1)を調製した。
【0053】
表面処理金属コロイド粒子(M-1)の調製
塩化金酸水溶液(0.340g/L、750mL)を30分間還流した後、クエン酸ナトリウム水溶液(38.8mmol/L、65mL)を加え、溶液の色が深青色から深赤色に変化するのを確認し、さらに30分間還流した。溶液中に含まれている過剰のクエン酸ナトリウムを除去するため、室温まで冷却した後、両性イオン交換樹脂50mLを添加した。1時間放置後、グラスフィルターを用いてイオン交換樹脂を除去して表面処理金属コロイド粒子(M-1)分散液を調製した。表面処理金属コロイド粒子(M-1)の平均粒子径は20nmであった。
【0054】
異方形状粒子(1)の調製
表面処理金属コロイド粒子(M-1)分散液21.6mLに、表面処理金属酸化物粒子(A-1)15mgの水分散液を加え6時間撹拌した(工程a)。撹拌後水洗してから、溶媒をメタノールに置換した。これを、表面処理金属酸化物粒子(B-1)61.2mgのメタノール分
散液に加え1時間還流した(工程b)。還流後メタノールで洗浄してから溶媒を水に置換した。ついで、0.01mol/L NaOH水溶液を加えて分散液のNaOH濃度を0.002mol/Lに調整し、10分間撹拌した(工程c)。撹拌後、遠心分離(2000rpm、5分間)によりシリカ粒子(A-1)を分離して上ずみ液を回収し、この上ずみ液を水洗した。上ずみに含まれていた粒子の走査型電子顕微鏡写真(SEM)を図2に示した。粒子は、表面処理金属酸化物粒子(B-1)の表面の一部に金コロイド粒子が結合した異方性粒子であった。
【0055】
ついで、この表面処理金属酸化物粒子(B-1)の表面の一部に金コロイド粒子が結合した
異方性粒子0.5mgの水分散液を、表面処理金属酸化物粒子(C-1)26mgの水分散液
に混合して終夜撹拌し、その後水洗した。得られた異方形状粒子(1)の走査型電子顕微鏡
(SEM)写真を図3に示した。
【0056】
特性評価(1)
得られた異方形状粒子(1)の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図4に示す。
特性評価(2)
異方形状粒子(1)のシリカ粒子接合部分の組成をエネルギー分散形X線分析装置(EDS)による測定した。結果を図5および表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
図5および表1より、接合部にAuが存在することが示された。
[実施例2]
表面処理金属酸化物粒子(B-2)の調製
水/エタノール/アンモニアの混合溶液250mL(モル比3.75/3.10/0.0582)に、テトラエトキシシラン15.58mLをくわえ、振とう器(旋回モード)を用いて2時間攪拌し、いわゆるStoeber法によりシリカ粒子分散液を調製した。これをエタノールで洗浄した後、110℃で3時間真空乾燥してシリカ粒子(B-2)を調製した。シリカ粒子(B-2)の平均粒子径は110nmであった。
【0059】
ついで、シリカ粒子(B-2)450mgに、トルエン45.0mLおよび3−メルカプト
プロピルトリメトキシシラン3.53mLを加え終夜攪拌した。これをエタノールで洗浄した後、110℃で2.5時間真空乾燥して表面処理金属酸化物粒子(B-2)を調製した。
【0060】
表面処理金属酸化物粒子(C-2)の調製
水/エタノール/アンモニアの混合溶液100mL(モル比3.75/3.10/0.219)に、テトラエトキシシラン6.23mLをくわえ、振とう器(旋回モード)を用いて2時間攪拌した。これをエタノールで洗浄した後、110℃で3時間真空乾燥してシリカ粒子(C-2)を調製した。シリカ粒子(C-2)の平均粒子径は320nmであった。
【0061】
シリカ粒子(C-2)450mgに、トルエン45.0mLおよび3−アミノプロピルトリ
エトキシシラン4.44mLを加え終夜攪拌した。これをエタノールで洗浄した後、110℃で2.5時間真空乾燥して表面処理金属酸化物粒子(C-2)を調製した。
【0062】
表面処理金属コロイド粒子(M-2)の調製
塩化金酸水溶液(0.340g/L、750mL)を30分間還流した後、クエン酸ナトリウム水溶液(38.8mmol/L、90mL)を加え、溶液の色が深青色から深赤色に変化するのを確認し、さらに30分間還流した。溶液中に含まれている過剰のクエン酸ナトリウムを除去するため、室温まで冷却した後、両性イオン交換樹脂50mLを添加した。1時間放置後、グラスフィルターを用いてイオン交換樹脂を除去して表面処理金属コロイド粒子(M-2) 分散液を調製した。表面処理金属コロイド粒子(M-2)の平均粒子径は
10nmであった。
【0063】
異方形状粒子(2)の調製
表面処理金属コロイド粒子(M-2)分散液21.6mLに、実施例1と同様にして調製し
た表面処理金属酸化物粒子(A-1)15mgの水分散液を加え6時間撹拌した(工程a)。
撹拌後水洗してから、溶媒をメタノールに置換した。これを、表面処理金属酸化物粒子(B
-2)61.2mgのメタノール分散液に加え1時間還流した(工程b)。還流後メタノー
ルで洗浄してから溶媒を水に置換した。ついで、0.01mol/LのNaOH水溶液を加えて分散液のNaOH濃度を0.002mol/Lに調整し、10分間撹拌した(工程c)。撹拌後、遠心分離(2000rpm、5分間)によりシリカ粒子(A-1)を分離して
上ずみ液を回収し、この上ずみ液を水洗した。上ずみに含まれていた粒子の走査型電子顕微鏡写真(SEM)を観察したところ、粒子は、表面処理金属酸化物粒子(B-2)の表面
の一部に金コロイド粒子(M-2)が結合した異方性粒子であった。
【0064】
ついで、この表面処理金属酸化物粒子(B-2)の表面の一部に金コロイド粒子が結合した
異方性粒子0.5mgの水分散液を、表面処理金属酸化物粒子(C-2)26mgの水分散液
に混合して終夜撹拌し、その後水洗した。得られた異方形状粒子(2)の走査型電子顕微鏡
(SEM)写真を観察したところシリカ粒子(B-2)とシリカ粒子(C-2)との接合部に金コロイド粒子(M-2)が存在する異方形状粒子であった。
【0065】
[実施例3]
表面処理金属酸化物粒子(B-3)の調製
水/エタノール/アンモニアの混合溶液100mL(モル比3.75/3.10/0.0625)に、テトラエトキシシラン15.58mLをくわえ、振とう器(旋回モード)を用いて2時間攪拌し、いわゆるStoeber法によりシリカ粒子分散液を調製した。これをエタノールで洗浄した後、110℃で3時間真空乾燥してシリカ粒子(B-3)を調製した。シリカ粒子(B-3)の平均粒子径は320nmであった。
【0066】
ついで、シリカ粒子(B-3)450mgに、トルエン45.0mLおよび3−メルカプト
プロピルトリメトキシシラン3.53mLを加え終夜攪拌した。これをエタノールで洗浄した後、110℃で2.5時間真空乾燥して表面処理金属酸化物粒子(B-3)を調製した。
【0067】
表面処理金属酸化物粒子(C-3)の調製
水/エタノール/アンモニアの混合溶液50mL(モル比3.75/3.10/0.250)に、テトラエトキシシラン6.23mLをくわえ、振とう器(旋回モード)を用いて2時間攪拌した。これをエタノールで洗浄した後、110℃で3時間真空乾燥してシリカ粒子(C-3)を調製した。シリカ粒子(C-3)の平均粒子径は800nmであった。
【0068】
シリカ粒子(C-3)450mgに、トルエン45.0mLおよび3−アミノプロピルトリ
エトキシシラン4.44mLを加え終夜攪拌した。これをエタノールで洗浄した後、110℃で2.5時間真空乾燥して表面処理金属酸化物粒子(C-3)を調製した。
【0069】
異方形状粒子(3)の調製
実施例1と同様にして表面処理金属コロイド粒子(M-1)分散液21.6mLに、表面処
理金属酸化物粒子(A-1)15mgの水分散液を加え6時間撹拌した(工程a)。撹拌後水
洗してから、溶媒をメタノールに置換した。これを、表面処理金属酸化物粒子(B-3)61
.2mgのメタノール分散液に加え1時間還流した(工程b)。還流後メタノールで洗浄してから溶媒を水に置換した。ついで、0.01mol/L NaOH水溶液を加えて分散液のNaOH濃度を0.002mol/Lに調整し、10分間撹拌した(工程c)。撹拌後、遠心分離(2000rpm、5分間)によりシリカ粒子(A-1)を分離して上ずみ液
を回収し、この上ずみ液を水洗した。上ずみに含まれていた粒子の走査型電子顕微鏡写真(SEM)を観察したところ、粒子は、表面処理金属酸化物粒子(B-3)の表面の一部に
金コロイド粒子(M-1)が結合した異方性粒子であった。
【0070】
ついで、この表面処理金属酸化物粒子(B-3)の表面の一部に金コロイド粒子が結合した
異方性粒子0.5mgの水分散液を、表面処理金属酸化物粒子(C-3)26mgの水分散液
に混合して終夜撹拌し、その後水洗した。得られた異方形状粒子(3)の走査型電子顕微鏡
(SEM)写真を観察したところシリカ粒子(B-3)とシリカ粒子(C-3)との接合部に金コロイド粒子(M-1)が存在する異方形状粒子であった。
【0071】
[実施例4]
表面処理金属コロイド粒子(M-3)の調製
塩化金酸水溶液(0.340g/L、750mL)を30分間還流した後、クエン酸ナトリウム水溶液(38.8mmol/L、45mL)を加え、溶液の色が深青色から深赤色に変化するのを確認し、さらに30分間還流した。溶液中に含まれている過剰のクエン酸ナトリウムを除去するため、室温まで冷却した後、両性イオン交換樹脂50mLを添加した。1時間放置後、グラスフィルターを用いてイオン交換樹脂を除去して表面処理金属コロイド粒子(M-3) 分散液を調製した。表面処理金属コロイド粒子(M-3)の平均粒子径は
30nmであった。
【0072】
異方形状粒子(4)の調製
表面処理金属コロイド粒子(M-3)分散液21.6mLに、実施例1と同様にして調製し
た表面処理金属酸化物粒子(A-1)15mgの水分散液を加え6時間撹拌した(工程a)。
撹拌後水洗してから、溶媒をメタノールに置換した。これを、実施例1と同様にして調製した表面処理金属酸化物粒子(B-1)61.2mgのメタノール分散液に加え1時間還流した(工程b)。還流後メタノールで洗浄してから溶媒を水に置換した。ついで、0.01mol/L NaOH水溶液を加えて分散液のNaOH濃度を0.002mol/Lに調整し、10分間撹拌した(工程c)。撹拌後、遠心分離(2000rpm、5分間)によりシリカ粒子(A-1)を分離して上ずみ液を回収し、この上ずみ液を水洗した。上ずみに含
まれていた粒子の走査型電子顕微鏡写真(SEM)を観察したところ、粒子は、表面処理金属酸化物粒子(B-1)の表面の一部に金コロイド粒子(M-3)が結合した異方性粒子であった。
【0073】
ついで、この表面処理金属酸化物粒子(B-1)の表面の一部に金コロイド粒子(M-3)が結合した異方性粒子0.5mgの水分散液を、表面処理金属酸化物粒子(C-1)26mgの水分
散液に混合して終夜撹拌し、その後水洗した。得られた異方形状粒子(4)の走査型電子顕
微鏡(SEM)写真を観察したところシリカ粒子(B-1)とシリカ粒子(C-1)との接合部に金コロイド粒子(M-1)が存在する異方形状粒子であった。
【0074】
[実施例5]
表面処理金属コロイド粒子(M-4)の調製
水960mLを還流した後、塩化白金酸水溶液(2.10g/L、60mL)を加え30分間還流した。ついで、クエン酸ナトリウム水溶液(38.8mmol/L、20mL)を加え、さらに4時間還流し、いわゆるTurkevichらの法により白金コロイド粒子分散液を調製した。溶液中に含まれている過剰のクエン酸ナトリウムを除去するため、室温まで冷却した後、両性イオン交換樹脂60mLを添加した。1時間放置後、グラスフィルターを用いてイオン交換樹脂を除去して表面処理金属コロイド粒子(M-4) 分散液を調製した。表面処理金属コロイド粒子(M-4)の平均粒子径は20nmであった。
【0075】
異方形状粒子(5)の調製
実施例1において、表面処理金属コロイド粒子(M-1) 分散液の代わりに表面処理金属コロイド粒子(M-4) 分散液を用いた以外は同様にして異方形状粒子(5)を調製した。
【0076】
得られた異方形状粒子(5)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を観察したところシリカ
粒子(B-1)とシリカ粒子(C-1)との接合部に白金コロイド粒子(M-4)が存在する異方形状粒
子であった。
【0077】
[実施例6]
表面処理金属酸化物粒子(B-4)の調製
酸化チタンゾル(触媒化成工業(株)製:NEOSUNVEIL PW-6030、平均粒子径60nm
、TiO濃度10重量%)を110℃で3時間真空乾燥して酸化チタン粒子(B-4)を調
製した。
【0078】
ついで、酸化チタン粒子(B-4)450mgに、トルエン45.0mLおよび3−メルカ
プトプロピルトリメトキシシラン3.53mLを加え終夜攪拌した。これをエタノールで洗浄した後、110℃で2.5時間真空乾燥して表面処理金属酸化物粒子(B-4)を調製し
た。
【0079】
異方形状粒子(6)の調製
実施例2と同様にして調製した表面処理金属コロイド粒子(M-2)分散液21.6mLに
、実施例1と同様にして調製した表面処理金属酸化物粒子(A-1)15mgの水分散液を加
え6時間撹拌した(工程a)。撹拌後水洗してから、溶媒をメタノールに置換した。これを、表面処理金属酸化物粒子(B-4)61.2mgのメタノール分散液に加え1時間還流し
た(工程b)。還流後メタノールで洗浄してから溶媒を水に置換した。ついで、0.01mol/L NaOH水溶液を加えて分散液のNaOH濃度を0.002mol/Lに調整し、10分間撹拌した(工程c)。撹拌後、遠心分離(2000rpm、5分間)によりシリカ粒子(A-1)を分離して上ずみ液を回収し、この上ずみ液を水洗した。上ずみに含
まれていた粒子の走査型電子顕微鏡写真(SEM)を観察したところ、粒子は、表面処理金属酸化物粒子(B-4)の表面の一部に金コロイド粒子が結合した異方性粒子であった。
【0080】
ついで、この表面処理金属酸化物粒子(B-4)の表面の一部に金コロイド粒子(M-2)が結合した異方性粒子0.5mgの水分散液を、実施例2と同様にして調製した表面処理金属酸化物粒子(C-2)26mgの水分散液に混合して終夜撹拌し、その後水洗した。得られた異
方形状粒子(6)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を観察したところ酸化チタン粒子(B-4)とシリカ粒子(C-2)との接合部に金コロイド粒子(M-2)が存在する異方形状粒子であった。
【0081】
用いた各粒子の特性を表2に示す。
【0082】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明に係る異方形状粒子のモデル図を示す
【図2】実施例1で調製した異方形状粒子(前駆体)のSEM写真を示す。
【図3】実施例1で調製した異方形状粒子のSEM写真を示す。
【図4】実施例1で調製した異方形状粒子のTEM写真を示す。
【図5】実施例1で調製した異方形状粒子(1)のエネルギー分散形X線分析装置による分析結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個の金属酸化物粒子が、金属コロイド粒子を介在して結合してなることを特徴とする
異方形状粒子。
【請求項2】
メルカプト基(チオール基:-SH)含有シラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子(B)と、
アミノ基含有シラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子(C)とが、
カルボキシル基および/またはカルボキシレート基含有有機化合物で表面処理された金属コロイド粒子(M)を介在させて結合してなることを特徴とする請求項1に記載の異方形
状粒子。
【請求項3】
前記金属酸化物粒子(B)の平均粒子径(DB)が20〜400nmの範囲にあり、金属酸化物粒子(C)の平均粒子径(DC)が100〜1000nmの範囲にあり、前記金属コロイド粒子(M)の平均粒子径(DM)が2〜100nmの範囲にあり、各平均粒子径が下記の関係にあることを特徴とする請求項1または2に記載の異方形状粒子。
C ≧ DB> DM
【請求項4】
前記金属酸化物粒子(B)の平均粒子径(DB)、金属酸化物粒子(C)の平均粒子径
(DC)および金属コロイド粒子(M)の平均粒子径(DM)が下記の関係にあることを特徴とする請求項1〜3に記載の異方形状粒子。
C / DB =2〜10
B / DM =2〜10
【請求項5】
前記各金属酸化物粒子がシリカ粒子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかにに記載の異方形状粒子。
【請求項6】
前記金属コロイド粒子がIB族、VIII族元素から選ばれる金属の1種以上からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の異方形状粒子。
【請求項7】
前記金属がAu、Ag、Cu、Pt、Pdから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項6に記載の異方形状粒子。
【請求項8】
下記の工程(a)〜(d)からなることを特徴とする異方形状粒子の製造方法;
(a)アミノ基含有シラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子(A)分散液と、カルボキシル基および/またはカルボキシレート基含有有機化合物で表面処理された金属コロイド粒子(M)分散液とを混合する工程、
(b)メルカプト基(チオール基:-SH)含有シラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子(B)分散液を混合する工程、
(c)アルカリ金属水溶液を添加する工程、
(d)アミノ基含有シラン化合物で表面処理された金属酸化物粒子(C)分散液を混合す
る工程。
【請求項9】
前記金属酸化物粒子(A)の平均粒子径(DA)が100〜2000nmの範囲にあり、
前記金属酸化物粒子(B)の平均粒子径(DB)が20〜400nmの範囲にあり、前記金
属酸化物粒子(C)の平均粒子径(DC)が100〜1000nmの範囲にあり、前記金
属コロイド粒子(M)の平均粒子径(DM)が2〜100nmの範囲にあり、各平均粒子
径が下記の関係にあることを特徴とする請求項8に記載の異方形状粒子の製造方法。
A > DC ≧ DB > DM
【請求項10】
前記金属酸化物粒子(A)の平均粒子径(DA)、金属酸化物粒子(B)の平均粒子径
(DB)、金属酸化物粒子(C)の平均粒子径(DC)および金属コロイド粒子(M)の平均粒子径(DM)が下記の関係にあることを特徴とする請求項8または9に記載の異方形
状粒子の製造方法。
A/DB=2〜20
C/DB=2〜10
B/DM=2〜10
【請求項11】
前記各金属酸化物粒子がシリカ粒子であることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の異方形状粒子の製造方法。
【請求項12】
前記金属コロイド粒子がIB族、VIII族元素から選ばれる金属の1種以上からなることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の異方形状粒子の製造方法。
【請求項13】
前記金属がAu、Ag、Cu、Pt、Pdから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項12に記載の異方形状粒子の製造方法。
【請求項14】
前記で得られた異方形状粒子を不活性ガス雰囲気下または還元ガス雰囲気下、200〜600℃で加熱処理することを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載の異方形状子の製造方法。

【図1】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−308371(P2008−308371A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159137(P2007−159137)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2007年1月20日 日本分析化学会北海道支部、日本化学会北海道支部、日本エネルギー学会北海道支部、触媒学会北海道地区発行の「北海道支部2007年冬季研究発表会 講演要旨集」に発表
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】