異方性タッチ・スクリーン素子
オブジェクトの位置を2次元的に検出するタッチ・センス式位置センサについて記載する。位置センサは第1及び第2抵抗バスバーを有し、これらのバスバーは、これらのバスバーの間の異方導電性領域によって分離される。タッチまたは近接によって異方導電性領域内に生じる電流がバスバーに向かって優先的に流れて検出回路によって検出される。生じる電流、例えば駆動回路によって生じる電流は1つの方向に沿って優先的に流れるので、位置推定値におけるピン・クッション歪みのほとんどがこの1つの方向に閉じ込められる。このような1次元的な歪みは、スカラー補正係数を適用することにより非常に簡単に補正することができるので、複雑なベクトル補正を行なう必要がない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの指またはスタイラスで操作可能な2次元タッチ・センス式表面に関する。デバイスの例として、タッチ・スクリーン及びタッチ・パッド、特にLCD、CRT及び他のタイプのディスプレイを覆うデバイス、またはペン入力タブレット、あるいはマシンの中で使用されてフィードバック制御を行なうためのエンコーダを挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
マシンへのペン入力またはタッチ入力についての開示は、少なくとも1908年にまで遡り、特許文献1(独国特許第203,719号)に具体的に記載されている。
タッチ・スクリーン及びポインティング・デバイスは、パーソナル・コンピュータに関連する形としてだけでなく、携帯情報端末(PDA:personal digital assistant)、ポイント・オブ・セールス(POS:point of sale)端末、電子情報及び発券キオスク、台所電気製品などのような他の電気製品の全ての形態において益々普及し、かつ広まっている。これらのデバイスは低価格製品の中に展開されつつあり、その結果、高レベルの品質及び堅牢性を維持しながら今までよりも更に低い生産コストを実現する必要がある。特に、静電容量タッチ・スクリーンは破損に対する堅牢性が高く評価されるが、高コストであり、かつ希少な構成材料が必要になるという点で不利となる。
【0003】
「2次元静電容量変換器(two−dimensional capacitive transducer)」または「2DCT」という用語は本明細書を通じて、タッチ・スクリーン、タッチ・センス・パッド、近接センス・エリア、オーバーレイがLCDスクリーン、プラズマ・スクリーン、またはCRTスクリーンの表面に取り付けられる構成のディスプレイ・タッチ・スクリーンなど、機械装置またはフィードバック・システムに関するポジション・センス、あるいはこれらに制限されないが他のタイプの制御表面であって、オブジェクトまたは人体パーツの位置に関する少なくとも2次元座標、デカルト座標または他の座標を容量検出機構を使用して報告する機能を備える表面または容積を有する制御表面などを指す。
【0004】
「2次元抵抗変換器(two−dimensional resistive transducer)」または「2DRT」という用語は本明細書全体を通じて、純粋にガルバノ原理に基づき、かつこの分野において「抵抗タッチ・スクリーン」として一般的に、かつ主として知られるタッチ・スクリーンまたはペン入力デバイスを指す。
【0005】
「2DxT」という用語は、2DCTタイプまたは2DRTタイプのいずれかの素子を指す。
「タッチ」という用語は本明細書全体を通じて、所望の出力を生成するために十分な容量信号強度を有する人体パーツまたは機械コンポーネントによるタッチ(touch)または接近(proximity)を指す。「接近(proximity)」という意味の場合、タッチは物理的接触が行なわれない2DCTの「ポイント」を指すこともでき、この場合、2DCTは、正しく反応するためにオブジェクトが十分に接近することによって生じる容量に反応する。
【0006】
「素子(element)」という用語は本明細書全体を通じて、2DCTまたは2DRTのアクティブ検出素子を指す。「電極(electrode)」という用語は、素子の周辺の接続ポイントを指す。
【0007】
「ストライプ(stripe)」という用語は、素子の構成部品であり、かつ2つの端部を有する電気配線導体を指す。ストライプはワイヤとすることができる。ストライプには意図的にガルバニ効果により大きな抵抗を持たすことができ、これに対してワイヤは最小の抵抗を有する。ストライプが一部を構成する素子が物理的に湾曲する場合、ストライプも物理的に湾曲する。
【0008】
「ピン・クッション(pin cushion)」という用語は、2DCTからの信号の歪みの全てを指し、放物線状収差、たる型収差、または他の形態の2次元収差のいずれかである。
【0009】
多くのタイプの2DCTが、「ピン・クッション」または「双曲線状」または「放物線状」として特徴付けられる形状歪みの影響を受けることが知られており、従って報告されるタッチ座標には、検出表面への電気的効果に起因してエラーが生じる。これらの効果は、他の種々の特許、例えばペッパーによる特許文献2(米国特許第4,198,539号)に更に詳細に記載されており、この特許文献を参照することによりこの文献の内容が本発明の開示に含まれる。形状歪みの既知の原因、解決方法、及び解決方法の問題を非常に要領よく纏めたものが、バブらによる特許文献3(米国特許第5,940,065号)及び特許文献4(米国特許第6,506,983号)に記載されており、これらの特許文献を参照することによりこれらの文献の内容が本発明の開示に含まれる。特許文献3(米国特許第5,940,065号)は2つの主要な種類の補正方法、1)検出表面または接続電極の設計または変更を行なう電気機械的方法、2)数学的アルゴリズムを使用して歪みを補正するためのモデル化方法、について簡潔に記載している。
【0010】
電気機械的方法
プレーナ素子のエッジ操作:
キュッフミュラーらは、特許文献5(米国特許第2,338,949号:1940年出願)において、2DRTエレクトログラフにおけるエッジ歪みの問題を、X及びYに非常に長い複数の矩形のテール(tail)を使用して解決しており、これらのテールは小さな使用可能な領域を取り囲む。キュッフミュラーは更に、4つのテールに細長い穴を作って複数のストライプを設けるアプローチを採用している。これらのストライプはユーザ入力領域に侵入することはないが、電流に平行な辺に沿って異方的に電流に対する抵抗を大きくするように作用する。この考えは少し違った形でヤニブらによる特許文献6(米国特許第4,827,084号)に再度、50年近く経った時点で現れている。キュッフミュラーによる発明が現在においても本発明に最も類似する先行技術である。
【0011】
ベッカーは特許文献7(米国特許第2,925,467号)において、2DRTエレクトログラフについて初めて説明し、非線形エッジ効果を、正しい素子のシート抵抗に対して非常に小さい抵抗のエッジ材料を使用することにより無くしている。この方法を使用して2DCTを構成することもできる。
【0012】
ペッパーは特許文献2(米国特許第4,198,539号)、特許文献8(米国特許第4,293,734号)、及び特許文献9(米国特許第4,371,746号)において、2DCTを、素子のエッジ抵抗構造を操作することにより線形化する方法について説明している。
【0013】
タルメッジは特許文献10(米国特許第4,822,957号)において、ペッパーによる発明と同様のエッジ・パターンについて2DRT素子及びピックオフ・シート(pickoff sheet)に関連する形で説明している。種々の方法を使用する他の多くのこのような特許が出願され、この分野は今日では新規の特許が多数出願される非常に注目すべき分野となっている。これらの方法は開発及び再現するのが非常に難しいことが分かっており、かつ熱処理の差によるエラーの問題及び製造上の問題を引き起こし易い。非常に小さい量の局所エラーまたはドリフトによって大きな変化が座標応答に生じ得る。パターニング済みエッジ細片の抵抗が小さいと駆動回路が問題となって駆動回路の消費電力が大きくならざるを得ず、コストが非常に高く付く。ペッパー特許を参照し、かつ同様の動作を行なうと主張する特許が非常に多く見受けられる。ペッパーらの特許がもたらす改善はベッカー特許がもたらす改善とほぼ同じレベルと言える。何故なら、少なくともベッカー特許は製造が容易であり、かつ再現性に優れているからである。
【0014】
ワイヤ素子のエッジ抵抗:ケーブルは特許文献11(米国特許第4,678,869号)において、2軸方向の抵抗分割器チェーンであって、高伝導率の複数の電極がこれらのチェーンに接続される構成の抵抗分割器チェーンを使用するペン入力用2Dアレイを開示し、これらの電極は検出の目的のためにある程度の予期しない抵抗を有し、かつ検出信号は2つの隣接する電極の間に生成される信号に基づいて補間される。予期しない抵抗によって、小さなピン・クッションが応答として生じる。この特許はまた、この方法によって生じるわずかなピン・クッション歪みを補正するアルゴリズムの実行手段について記載している。ケーブルによる方法は、接続スタイラス以外で動作することがない、すなわち、この方法は、ヒトの指に応答する方法としては説明されていない。ケーブル特許は、複数の導体の間を通って交差する構造体を必要とするので、少なくとも3つの構造層(導体、絶縁体、導体)が必要になる。
【0015】
複数の能動エッジ電極:ターナーは特許文献12(米国特許第3,699,439号)において、能動プローブが複数の電極接続を全ての4辺に有して結果を線形化する構成の均一な抵抗型スクリーンを開示している。
【0016】
ヨシカワらは特許文献13(米国特許第4,680,430号)において、そしてウルフは特許文献14(米国特許第5,438,168号)において、各辺(コーナーと反対側の)の複数の電極ポイントを使用して、一方の軸の電極からの電流の他方の軸の電極からの電流との相互作用を小さくすることによりピン・クッション歪みの低減を容易にする2DCTを示唆している。素子は単純なシート抵抗体であるが、このアプローチでは、非常に多くの能動電子接続(複数のダイオードまたは複数のMOSFETから成る線形アレイのような)が素子に非常に近接する各接続ポイントに形成される。
【0017】
ナカムラは特許文献15(米国特許第4,649,232号)において、ヨシカワ及びウルフと同様の内容を、抵抗膜式ピックアップ・スタイラスを使用する形で示唆している。
【0018】
連続スキャン・ストライプ素子:グレニーアスらは特許文献16(米国特許第4,686,332号)及び特許文献17(米国特許第5,149,919号)において、そしてボイエらは特許文献18(米国特許第5,463,388号)において、ランドマイヤーは特許文献19(米国特許第5,381,160号)において、交互に個別に駆動され、かつ検出されるストライプ導体をX軸及びY軸の両方に使用する素子検出方法を示唆しており、これらの導体から指タッチの位置を読み取ることができる素子検出方法、またはピックアップ・デバイス、スタイラス・ペンによる素子検出方法を示唆している。この構成は複数の材料層を含み、かつ特殊な処理を含む。グレニーアスは、複数のストライプの間に補間を適用して高解像度を両方の軸において実現することを示唆している。2つのグレニーアス特許はともに、素子内での導体の交差を可能にする3つ以上の層を必要とする。グレニーアス特許はともに、各ストライプに対する容量測定を利用するが、1つのストライプと別のストライプとの間のクロス・カップリング容量は使用しない。ボイエも特殊な保護面を示唆している。
【0019】
ビンステッドは特許文献20(米国特許第5,844,506号)及び特許文献21(米国特許第6,137,427号)において、個別の細いワイヤをケーブル、アレン、ゲルファイデ、及びグレニーアスが示唆する方法と同様の方法で使用するタッチ・スクリーンを示唆している。ビンステッドは非常に細い行ワイヤ及び列ワイヤを使用して透明性を実現している。この特許も、複数の電極ワイヤの間の補間を行なって高解像度を実現するグレニーアス法を示唆している。スキャン操作では、各ストライプの接地に対する容量の測定を利用するが、1つのストライプと別のストライプとの間のクロス・カップリング容量は使用しない。
【0020】
エバンスは特許文献22(米国特許第4,733,222号)において、複数のストライプが連続してX軸及びY軸の両方向に、外部キャパシタ・アレイも使用して検出信号をキャパシタ分割器の効果によって生成することにより駆動される構成のシステムについても記載している。補間を使用してストライプのみの場合に可能になる解像度よりも高い解像度を評価する。
【0021】
ボルペは特許文献23(米国特許第3,921,166号)において、容量スキャン法を使用する個別のキー機械的キーボードについて記載している。連続して駆動される入力行及び連続して検出される列が設けられる。キーを押下することにより、行と列との間の結合が強くなり、このようにして、nキー・ロールオーバーが実現する。補間の必要はない。2DCTではないが、ボルペはスキャン方式ストライプ素子2DCT技術を予測している。筆者自身の特許文献24(米国特許第6,452,514号)もこの分類のセンサに属する。
【0022】
イタヤは特許文献25(米国特許第5,181,030号)において、接触位置を読み出す抵抗平面に、圧力が加えられた状態で接続される抵抗ストライプを有する2DRTを開示している。ストライプまたは平面は、ストライプまたは平面に形成される1次元的な電圧勾配を有するので、特にストライプ上の接触位置は容易に識別することができる。各ストライプはそれ自体の少なくとも1つの電極接続を必要とする。
【0023】
定周期スキャン方式ストライプ素子:ゲルファイデらは特許文献26(米国特許第5,305,017号)において、絶縁体によって分離される複数の直交する重複金属ストライプ・アレイを使用するタッチ・パッド静電容量方式コンピュータ・ポインティング・デバイスを示唆している。走査線を周期繰り返しパターンとなるように配置して、必要となる駆動回路を最小限に抑える。この発明の配線の周期性によって、このタイプの2DCTを絶対位置の特定に使用しなくて済む。この発明は、マウスに置き換わる形で使用されるタッチ・パッドに適しており、実際の位置判定が必要ではなく、相対運動の検出のみが重要となる。ゲルファイデは、接触位置の2つの逆位相信号の間の信号バランスをとる方法を示唆している。
【0024】
並行読み取りストライプ素子:アレンらは特許文献27(米国特許第5,914,465号)において、行スキャン・ストライプ及び列スキャン・ストライプを有する素子を示唆しており、これらの行スキャン・ストライプ及び列スキャン・ストライプはアナログ回路によって並行に読み取られる。この特許は、連続的にスキャンされる素子よりも雑音が小さく、かつ応答が速い。この方法は特に、マウスに置き換わるタッチ・パッドに適するが、大きなサイズに対して良好に拡張することができない。複数の構造層が、全てのストライプ素子2DCTと同様に必要となる。アレンによる方法には、大規模な集積化及び非常に多くの接続ピンが必要となる。この方法では、補間を行なって、行ストライプの数によって可能になる解像度よりも高い解像度を達成する。
【0025】
「電荷転送型静電容量位置センサ(Charge Transfer Capacitive Position Sensor)」と題された筆者の同時係属中の特許文献28(米国特許出願第60/422837号)は、図12に関連して個々の1次元抵抗ストライプを使用してタッチ・スクリーンを形成する方法について記載している。これらのストライプは並列に、または連続的に読み取ることができる。何故なら、これらのストライプとの接続は互いに独立しているからである。更に、図6に関連して、隣接する集中電極素子と指のようなオブジェクトとの間の補間結合について記載している。特許文献28(米国特許出願第60/422837号)は、本明細書において参照することによりこの出願の内容が本発明の開示に含まれる。
【0026】
数値的方法
ナカムラは特許文献29(米国特許第4,650,926号)において、タブレットのような電気複写装置(electrographic system)の数値的補正を、ルックアップ・テーブル・システムを使用して生の2次元座標データを補正することにより行なうシステムについて記載している。
【0027】
ドラムは特許文献30(米国特許第5,101,081号)において、タブレットのような電気複写装置を遠隔手段を使用して数値的に補正するシステムについて記載している。
【0028】
マクダモットは特許文献31(米国特許第5,157,227号)において、2DxTを複数の保存定数を用いて補正する数値的方法を示唆しており、これらの保存定数を動作中に使用して1つ以上の多項式を利用して制御することにより、報告されるタッチ位置をゾーンまたは象限ごとに補正する。
【0029】
バブらは特許文献3(米国特許第5,940,065号)及び特許文献4(米国特許第6,506,983号)において、2DxTの均一シート素子(2DxT uniform sheet element)を、ゾーンまたは象限ごとに区切ることなく、学習プロセスの間に求められる係数を使用して、個々のユニット毎に線形化して、更に小さなプロセス変動に関する補正を行なう数値的方法を示唆している。バブが開示するこれらの方法は複雑であり、かつ「80個の係数」をもつ4次多項式を含み、これらの多項式の係数は厳密に、かつ時間の掛かる校正手順を経て求める必要がある。この発明者が行った試験では、6次多項式によって正常な使用において許容される精度を実現する必要があり、かつ結果が、熱ドリフトなどに起因して校正後も極めて小さい変動を非常に起こし易いことが判明している。特に、コーナー接続は長期間の座標変動の大きな原因であることが判明している。何故なら、これらの接続は、接続サイズ及び品質に関して大きな寄与因子の特異点として作用するからである。更に、数値的補正方法では、高分解能出力を生成するために高分解能デジタル変換が必要とされる。例えば、14ビットADCにおいては、座標が9ビットに相当する分解能で得られる必要がある。増幅器システム及びADCに必要とされる余分のコスト及び電力は多くの用途において非常に大きくなり得る。
【特許文献1】独国特許第203,719号
【特許文献2】米国特許第4,198,539号
【特許文献3】米国特許第5,940,065号
【特許文献4】米国特許第6,506,983号
【特許文献5】米国特許第2,338,949号
【特許文献6】米国特許第4,827,084号
【特許文献7】米国特許第2,925,467号
【特許文献8】米国特許第4,293,734号
【特許文献9】米国特許第4,371,746号
【特許文献10】米国特許第4,822,957号
【特許文献11】米国特許第4,678,869号
【特許文献12】米国特許第3,699,439号
【特許文献13】米国特許第4,680,430号
【特許文献14】米国特許第5,438,168号
【特許文献15】米国特許第4,649,232号
【特許文献16】米国特許第4,686,332号
【特許文献17】米国特許第5,149,919号
【特許文献18】米国特許第5,463,388号
【特許文献19】米国特許第5,381,160号
【特許文献20】米国特許第5,844,506号
【特許文献21】米国特許第6,137,427号
【特許文献22】米国特許第4,733,222号
【特許文献23】米国特許第3,921,166号
【特許文献24】米国特許第6,452,514号
【特許文献25】米国特許第5,181,030号
【特許文献26】米国特許第5,305,017号
【特許文献27】米国特許第5,914,465号
【特許文献28】米国特許出願第60/422837号
【特許文献29】米国特許第4,650,926号
【特許文献30】米国特許第5,101,081号
【特許文献31】米国特許第5,157,227号
【特許文献32】米国特許第5,730,165号
【特許文献33】米国特許第6,288,707号
【特許文献34】米国特許第6,466,036号
【特許文献35】米国特許第6,535,200号
【特許文献36】米国特許第6,452,514号
【特許文献37】米国特許出願第2003/0132922号
【特許文献38】米国特許第5,457,289号
【非特許文献1】www.qprox.com/downloads/datasheets/qt110_103.pdf
【非特許文献2】www.qprox.com/downloads/datasheets/qt310_103.pdf
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
技術要約
上記方法の全てにおいて、次の不具合のうちの1つ、または組み合わせが生じる。
希少な構成材料または特異な方法を使用すると、製造のために特殊な専門知識または設備が必要になる。
【0031】
ガルバノ原理に基づく簡単な4ワイヤ構成の抵抗タッチ・スクリーンに比べてコストが非常に高い。
直交する導体の交差を可能にする3つ以上の層が必要になる。
【0032】
多くの電極接続が必要になるので配線が高く付く。
線形問題により、複雑なアルゴリズムを修正する必要がある。
制御するのが難しいエッジ・パターンの特殊な線形化が必要になる。
【0033】
小さいか、あるいは大きいタッチ領域に十分に適してはいない。
複合曲線のような複雑な表面形状をなぞることができない。かつ/あるいは
数百ミクロンよりも厚い表面を通して動作することができない。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明によれば、タッチ・センス式位置センサ(touch sensitive position sensor)が提供され、この位置センサは、タッチ・センス式プラットフォームを画定する基板と、基板上に互いに離間して配置される第1及び第2抵抗バスバーと、これらのバスバーの間に配置される異方導電性領域と、を備え、異方導電性領域内に生じる電流はバスバーに向かって優先的に流れる。
タッチ・センス式位置センサは検出素子を有し、この検出素子は、第1抵抗バスバーと、第1抵抗バスバーから離れて位置する第2抵抗バスバーと、第1抵抗バスバーと第1抵抗バスバーとの間に延びる異方導電性領域と、を備え、異方導電性領域内に生じる電流がバスバーに向かって優先的に流れる。
【0035】
本発明の典型的な実施形態では、バスバー及び異方導電性領域は、1kΩ〜50kΩの間の抵抗を有する。これらのバスバーは、例えば+/−10%,20%,50%,または100%内で、ほぼ同じ抵抗を有することが好ましい。バスバーの抵抗が、バスバーの間に設けられている異方導電性領域の抵抗よりも小さい場合に有利となる。
【0036】
異方導電性領域は、異方導電性を示し、かつ基板上に支持される分子基板膜を使用してか、あるいは第1抵抗バスバーと第1抵抗バスバーとの間に並列接続される複数の抵抗ストライプを使用してか、あるいは他の方法により形成することができる。
【0037】
抵抗ストライプを使用して異方導電性領域を形成する場合、これらのストライプは抵抗配線の各区分により形成されるか、あるいは例えば基板上に堆積する抵抗材料により形成可能である。更に、抵抗ストライプの幅は、これらの抵抗ストライプの間のギャップよりも広いことが好ましい。
【0038】
本発明の特定の実施形態では、異方導電性領域から離間される導電被覆領域(conductive overlay)が設けられており、導電被覆領域及び異方導電性領域が外部印加圧力によって互いに接触するようになる。
【0039】
特定の実施形態では、第1抵抗バスバーは第1電極と第2電極との間に延び、かつ第1抵抗バスバーは第3電極と第4電極との間に延び、位置センサは更に、第1、第2、第3、及び第4駆動チャネルを、第1、第2、第3、及び第4電極のうちのそれぞれ対応する電極に関連する形で備え、各駆動チャネルはチャネルの電極とオブジェクトの位置との間の抵抗に依存する出力信号を生成するように動作する。これらの出力を処理するためにプロセッサを設けることができ、プロセッサは、これらの駆動チャネルからの出力信号を比較することにより、オブジェクトの位置に関する推定値を生成するように動作する。プロセッサは、これらのバスバーの間に延びる第1方向におけるオブジェクトの位置を、第1及び第2電極に関連する信号の合計、並びに第3及び第4電極に関連する信号の合計についての比例式による解析に基づいて推定するように構成することができる。プロセッサはまた、これらのバスバーに沿って延びる第2方向におけるオブジェクトの位置を、第1及び第3電極に関連する信号の合計、並びに第2及び第4電極に関連する信号の合計についての比例式による解析に基づいて推定するように構成することができる。またプロセッサは、更に、補正を推定位置に検出素子に関連する所定の歪みに基づいて適用するように動作することが好ましい。通常、所定の歪みは1次元的なピン・クッション歪みである。
【0040】
本発明によるタッチ・センス式位置センサは制御パネルに組み込むことができ、更に、その制御パネルを多種多様な異なる装置の一部として組み込むことができることは理解されるであろう。
【0041】
本発明によれば、オブジェクトの位置を2次元的に検出するタッチ・センス式位置センサが提供され、その位置センサは、異方導電性領域によって分離される第1及び第2抵抗バスバーを有し、異方導電性領域は、生成電流がバスバーに向かって優先的に流れるように配置される。生成電流、例えば検出素子に関連する駆動回路によって生成される電流が1つの方向に沿って優先的に流れ、位置推定値のピン・クッション型の歪みの大部分がこの方向に制限される。このような1次元的な歪みはスカラー補正係数を適用することにより補正することができる。
【0042】
本発明は、2DxTとして使用されることになるプラスチック・パネルまたはガラス・パネル、あるいは他の誘電体の背後において容量を検出する新規の導電材料パターンを、タッチ・スクリーンまたは「タッチ・パッド」のいずれかの形態で提供する。
【0043】
本発明は、パターニングされていない4電極素子の特徴の幾つかをストライプ型素子及び数学的補正と組み合わせて新規の種類の異方性2DxT素子または単純には「ストライプ型素子」を実現する。本発明は、前述の2DxTアプローチの不具合を解決するものであり、かつ従来のプロセス及び材料を使用するのでコストが非常に小さい。
【0044】
以後、特に断らない限り、「接続(connection)」または「接続された(connected)」という用語は、ガルバニック接触または容量結合のいずれかを指す。「素子(element)」という用語は、導電材料により作製される物理電気検出素子を指す。「電極(electrode)」という用語は、素子に設けて素子を適切なドライバ/センサ電子機器に接続するガルバニック接続ポイントのうちの1つを指す。「オブジェクト(object)」及び「指(finger)」という用語は、ワイパーまたはポインタまたはスタイラスのような非生物オブジェクト、あるいはヒトの指または他の突起物のいずれかに関して同じ意味に使用され、これらのうちのいずれかが素子に隣接することにより、いずれかの回路経路を通して、ガルバニック効果によるか否かに拘らず、素子の領域から基準回路に戻る形の局所容量結合が形成される。「タッチ(touch)」という用語は、オブジェクトと素子との間の物理的接触、またはオブジェクトと素子との間の自由空間への近接、あるいはオブジェクトと、オブジェクトと素子との間に存在する誘電体(例えば、ガラス)との間の物理的接触、またはオブジェクトと素子との間に存在する中間誘電体層を含む自由空間への近接、のいずれかを含む。特定の回路パラメータまたは配向に関する記述は、本発明を制限するものと捉えられるべきではなく、広い範囲のパラメータを、回路またはアルゴリズムに変更を加えることなく、またはわずかな変更を加えることにより使用することができる。特定のパラメータ及び配向は単に例示としてのみ記述される。
【0045】
電荷転送型静電容量センサに関する筆者の以前の特許、特に特許文献32(米国特許第5,730,165号)、特許文献33(米国特許第6,288,707号)、特許文献34(米国特許第6,466,036号)、特許文献35(米国特許第6,535,200号)、特許文献36(米国特許第6,452,514号)、及び筆者による同時係属中の特許文献28(米国特許仮出願番号60/422837)を参照されたい。特に、これらの特許の各々に記載されている電子検出回路及び電子検出方法は、本明細書に記載する本発明と組み合わせて使用することができるが、これらの方法が全てである訳ではないことに留意されたい。多種多様な容量検出回路を本発明に使用することができる。これらの特許に記載されている種々の電気回路及び検出方法を用いて本発明の電極を駆動して、その結果を分析することができる。
【0046】
また、容量タッチ・スクリーンに対する影絵効果(handshadow effect)を扱い、かつ本発明に適用して2DCTの後処理に役立たせることができる筆者による同時係属中の特許文献37(米国特許出願第2003/0132922号)を参照されたい。
【0047】
「電荷転送型静電容量センサ」と題された筆者による同時係属中の特許文献28(米国特許出願第60/422837号)が(特に当該出願の図12に関連して記載されているように)本発明を考案するための基礎となっており、かつ当該出願の回路構成及びスイッチング方法を、本発明の電極を2DCTモードで駆動するように特に良好に適合させる。本発明は、インクまたは真空蒸着材料のような新規の導電材料パターンであり、このパターンは単一層素子として電気的に配置され、ピン・クッション歪みは1つの軸の方向にのみ生じる。残りのピン・クッション歪みは、アルゴリズムを使用してか、あるいはハードウェアで容易に補正され、以下に説明するようにバブ及びウィルソンによる方法よりも遥かに簡単である。素子パターンは既知の方法を使用して容易に形成され、かつ複合湾曲カバー・レンズなどのような複雑な表面をなぞることができる。パターンは強い異方導電性を、周辺の単方向抵抗導体によって区切られるコア検出領域において示す。
【0048】
本発明の1つの目的は、普通の、安価な材料及び製造プロセスをガルバニック効果を利用する異方導電性と共に使用して2DxT検出素子を提供することにある。
本発明の別の目的は、簡単な、計算コストの低い方法を使用して容易に補正することができるエッジ歪みを有する2DxT検出機構を提供することにある。
【0049】
本発明の1つの目的は、可能な最高解像度を可能な最も簡単なパターンを使用して実現するための位置補間を可能にすることにある。
本発明の別の目的は、非常に粗い生の信号に対するアナログ−デジタル変換(ADC:analog−to−digital converter)の分解能で高い位置解像度を実現し、かつ粒度の粗い結果をもたらす2DxT素子を提供することにある。
【0050】
本発明の別の目的は、熱ドリフトの影響を受け難く、かつ製造プロセスにおいて非常に再現性の良い2DxT素子を提供することにある。
本発明の別の目的は、先行技術に比べて非常に簡単な「学習」校正プロセスしか必要としないか、あるいはデザインの校正を必要とするか、あるいは全く校正を必要としない2DxT素子を提供することにある。
【0051】
本発明の別の目的は、1つの導電材料層しか必要としない2DxT素子を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、最大10mmの厚さ、またはそれ以上の厚さを有する、ガラスまたはプラスチック・シートのような非常に厚い誘電体カバー・レンズの背面の上へのこの層の配置を可能にするか、あるいは空気を介してのポインティングを可能にすることにある。
【0052】
本発明の更に別の目的は、配線要件が非常に簡単な2DxT素子を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、信頼性が高く、密封表面を有し、消費電力が小さく、かつ市販のマイクロ・コントローラ及び普通の駆動電子機器を使用して制御かつ検出することができるセンサを提供することにある。
【0053】
本発明の更に別の特定の好適な態様を、次の非制限的な独立項及び従属項に示す。
1.ポジション・データに関して選択的に表面とのアクセスが行なわれるタイプの装置であって、優先的に流れるガルバニック電流の方向に主要部分を有する導電素子を備える装置。
【0054】
2.項1に記載の装置において、素子は導電境界によって区切られている。
3.項1又は2において、素子は単一層の上に設けられている。
4.項1又は3であって、複数の電極を備える。
【0055】
5.項1〜4のうちのいずれか一項であって、タッチ位置を2次元的に評価することを目的として、前記素子に接続されている回路を備え、接続は電極に対して行なわれる。
6.項1〜5のうちのいずれか一項であって、ピン・クッション歪みを補正する処理手段を備える。
【0056】
7.項6において、補正はスカラー係数である。
8.項6において、補正は一連のスカラー係数に基づく。
9.項6において、補正は次の公式に基づく。
【0057】
Pcy(X,Y)=Py/(k1X2+k2X+k3)
10.タッチ・ポジション位置を求めるために使用される素子を作製する方法であって、素子が導電領域の周辺で異方導電性を有するように作製される、方法。
【0058】
11.項10において、素子は異方性材料により作製される。
12.項10であって、位置歪みの補正を行なう方法を備える。
13.項12において、歪みの補正を行なう方法は1つの軸についてのみ適用される。
【0059】
14.項12において、歪みの補正を行なう方法はスカラー乗算に基づく。
15.項1〜15のうちのいずれか一項において、電子回路に、筆者の特許文献34(米国特許第6,466,036号)に開示されるいずれかの方法による電源を基準とする電荷検出方法を用いる。
【0060】
16.項15において、回路はマイクロ・コントローラを含む。
17.項1〜16のうちのいずれか一項において、素子は、光を透過する抵抗導体により作製される。
【0061】
18.項1〜17のうちのいずれか一項において、素子は、共通のバスバーを共有する複数の異方導電ゾーンを含む。
19.光を透過する異方導電素子を有し、光を透過する基板の遠位側に取り付けられるタッチ・スクリーンであって、近位側がタッチに使用され、複数の電極を有するタッチ・スクリーン。
【0062】
20.項19において、電極は検出回路に導電ゴムを使用して接続されている。
21.項19又は20において、タッチ・スクリーンは電子ディスプレイの上に取り付けられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
本発明を更に深く理解するために、かつ本発明をどのようにして実施することができるかについて示すために、一例として添付図面を参照することとする。
図1a及び1bは補正ハードウェアまたはアルゴリズムを使用する前の2DxT技術に関する先行技術を示している。図1aのピン・クッション効果は良く知られている。この効果は、容量によって生じる、タッチ・ポイントから4つの接続ポイントに向かう電流を共有することにより生じる。この効果は、2DCT(2次元静電容量変換器)及び2DRT(2次元抵抗変換器)の5ワイヤ・タッチ・スクリーンの両方において観察され、5ワイヤ・タッチ・スクリーンは2DCTと同じ電位勾配のガルバニック電位を利用するが、この場合、可撓性の「ピックオフ」カバー・シートは圧力が加えられて湾曲し、2DRTに接続される。これらの素子におけるピン・クッション効果は、タッチ位置が全ての接続ポイントからエッジに沿って離れるにつれて大きくなる。この効果はスクリーン・エッジの中心で最悪となる。図1bに示すように、電流によって複数のベクトルが生成され、これらのベクトルによって、位置に依存する段階的歪みが生じ、放物線曲率の報告位置が生成される。これらのベクトルは普通、直交しない。その代わり、補正の角度及び絶対値は、素子上のタッチ位置によって大きく変化する。
【0064】
この効果を打ち消すために種々の方法が考案されており、特に、上述したような導電スクリーン周辺の非常に低い抵抗のバスバー、特殊なエッジ・パターン、スクリーン・エッジへの複数の接続ポイントなどを使用する方法がある。ビンステッド、ゲルファイデ、ケーブル、及びグレニーアスによる特許に見られるように個別導体によってピン・クッション歪みの問題を、複数の層、高価な回路、及び多い電極接続数を使用する特殊な構成方法を使用することにより大きく解決する。これらのタイプのスクリーンはサイズに良好に対応しておらず、かつ製造コストが高い。このような方法の例は、ペッパーが考案したエッジ・パターンであり、図2に示す。このパターンは複製するのが非常に難しく、熱ドリフトの影響を受け、かつ調整及び製造するために非常に高いコストを要することが分かっている。
【0065】
上述の方法よりも安価、かつ容易に製造が可能で、更には不利な環境における使用に対して非常に安定し、かつ適する新規の静電容量タッチ・スクリーンの製造方法に対する大きな要求がある。特に、家庭用電気製品、携帯電話、及び他の携帯用機器、POS端末などの用途に用いられるこのようなデバイスに対する要求がある。
【0066】
本発明の実施形態は、「ピン・クッション歪み」がないが高価な回路及び高い製造コストを伴う先行技術によるストライプ素子と、パターニングされていない抵抗シート素子との間の中間の特徴を備える素子を提供する。この新規のハイブリッドな解決方法によって、ピン・クッション効果が1つの軸にのみ生じ、他の軸はほとんど歪むことがない。更に、後で分かるように、残りのピン・クッション歪みは、ほぼ直交し、かつ予測可能なベクトルを有し、更には非常に簡単な数値的方法を使用して補正可能であり、ユニット毎の再現性が高く、かつ先行技術における場合よりも熱ドリフトの差による影響を受け難い。
【0067】
図3に示すのは、本発明の1つの実施形態による検出素子に使用される導電材料を表わすパターンである。この図は、4つの電極301,302,303,及び304を有する単一層の上の1つの導電素子を示している。2つの非常に小さい抵抗のバスバー305及び306が、301から302に、及び304から303に向かってそれぞれ横断している。複数のストライプ導体310がバスバー305から306に向かって横断し、この場合のストライプ導体は少なくとも2本であるが、一般的には3本以上である。これらのストライプのうちの2本は各バスバーの両端から他方のバスバーに向かって横断して完全に区切られた表面を形成する。端のストライプもバスバーであると考えることもできるが、これらのストライプは必用に応じて図示されている水平方向バスバーよりも大きい経路抵抗を有することができるので、特異であり、従って本明細書を通じてストライプと呼ぶことにする。
【0068】
本発明の素子は別の構成は、異方性導電率によって特徴付けられ、かつ直線導電セグメントにより形成される包囲区分境界を有するコア領域を有するものとして観察することができる。ストライプの目的は、異方的にガルバニック電流をコア領域内に生じさせることである。一旦、電流が境界経路に達すると、電流は最終的に電極に導かれる。
【0069】
設計に適するストライプ310の数は、検出対象のオブジェクトのサイズに対する素子の幅によって変わり、これについては以下に説明する。電極群に接続されるワイヤ312a〜dは2DCTの場合、素子を駆動/検出回路に接続する。2DRTの場合においては、ワイヤ312a〜dは駆動回路に接続され、検出機能は、図11に示すように、可撓性のユーザ押下型カバー・シートにより得られる。
【0070】
図10は本発明を具体化する別のパターンを示している。このパターンは、ストライプが細いスリットによって分離される(すなわち、ストライプは図3に示すストライプよりも幅が非常に広い)点を除いて図3のパターンとほぼ同じであり、素子は導電材料によってほぼ覆われ、かつ非常に小さい部分−スリット−のみが覆われない。この構成は、以下に更に説明するように、2DRT用途の方に適するが、2DCT用途に使用することもできる。2DCTを使用する場合のこの構成の1つの利点は、ストライプが図3の例における場合よりも大きな表面積を有するので、指と素子との容量結合が大きくなることである。この構成の1つの不具合は、バスバーとバスバーとの間の合計抵抗が特定のシート抵抗に関して相対的に小さくなり、これによってピン・クッション効果が以下に説明されるように悪化し易くなる。
【0071】
図3に示すテスト対象のストライプ及びバスバーの抵抗の比較をすると、バスバーが約40Kオームであり、ストライプが約160Kオームであるが、実際には、これらの値は単なる目安であり、本発明はこれらの値に制限されない。バスバーよりもストライプに大きな抵抗を使用することにより、ピン・クッション効果を抑制し易くなるが、ピン・クッションはいずれにしても数値的に容易にほとんどを補正することができるので、複数の抵抗値のいずれの組み合わせによっても異なる満足度が得られるようになる。本発明を大きな抵抗を有する素子を用いる形で使用することができる点が非常に注目される。何故なら、このような素子では、低いコストかつ小さい電力の駆動兼検出電子機器を用いるだけで済むからである。
【0072】
図4は本発明の典型的な実施形態の集中型モデルを示している。バスバー305及び306は約1K〜50Kオームの抵抗線により構成され、かつ理想的には互いに対して10%以内の精度の抵抗となる。ストライプ310はバスバーの抵抗の約5〜10倍の大きさの抵抗線により構成される。図4には9本のストライプが示されている。コーナー電極301,302,303,及び304を使用して素子を駆動/検出電子機器、すなわち2DCTの場合は容量検出ドライバまたは2DRTの場合はガルバニック・ドライバに接続する。各ストライプ及びバスバーは回路接地に対して所定の大きさの接地浮遊容量(stray background capacitance)401を有する。ストライプは隣接ストライプの間で相互容量を有する。このような接地容量は本質的に良性であり、本発明の性能に影響を及ぼすことが無いことが分かっている。これらの容量は本発明において等しく、あるいは均等に作用する必要はない。何故なら、素子は重ね合わせの原理に従うからであり、そしてこのような寄生値は以下に説明するように、駆動電子機器によって校正することにより容易に取り除かれるからである。
【0073】
位置403に示すのは、2DCTモードにおけるタッチに起因する容量Ct402である。本発明は、本発明によって4つの電極信号に対してレシオメトリックな出力になってCtの絶対値に依存しない位置を生成する回路及び/又はアルゴリズムを使用することができるということからすると、Ctの絶対値がどのような値であっても有効に機能する。2DRTモードでは、カバー・シートによって電位勾配がなくなるが、このとき普通、タッチ圧力を受けた状態でカバー・シートから素子に向かってガルバニック接続が行なわれる際の4つの電極への時間多重駆動信号が使用される。
【0074】
2DCTモードでは、複数のストライプの間にタッチし、かつタッチ位置を補間することも可能である。図5は、指(図示せず)に起因して、平面の403に位置するタッチ容量を有する素子を示している。図6には、ガラスのような基板に接触が行われるときの本発明の断面が示される。指605がタッチすることにより生じる容量603は、図6に示すように、3つの小さい部分容量Ct1、Ct2、及びCt3に分割され、これらの容量の比はストライプ310a,b,c,..の間のタッチの相対位置によって変わる。筆者の同時係属中の特許文献28(米国特許出願第60/422837号)の図6には、抵抗によって接続される2つの隣接電極の間の補間が示されている。当該発明におけるタッチに対する補間は、ストライプ間で厳密に同じ態様でX軸方向に行われるだけでなく、各ストライプに沿ってY軸方向にも行われる(図示せず)。X軸方向の分離抵抗は、各Ct603を有する各ストライプ上から始まって、バスバーに戻って通過して他のストライプに達する経路である。X方向の補間は、2本のYストライプを接続するバスバー抵抗の短いセグメントであって、合計電気バスバー「長」の一部としてのバスバー抵抗の短いセグメントの抵抗に比例する形で行われる。ストライプ自体の抵抗はX位置を求めるために重要ではない。何故なら、各ストライプの両端は文献に記載されているほとんどの2DCT駆動回路において、かつ筆者の種々の先行する特許公報に記載されている電荷転送回路によって駆動される場合には確実に等電位にまで駆動されるからである。従って、これらのストライプが全バスバー長の10%に相当する長さだけ離間する場合、補間が行なわれる部分はX方向の10%となる。
【0075】
図5の素子は90度回転させることができ、上記の説明をY方向に関して行なうことができることに注目されたい。タッチの検出及び位置に関して本発明の素子が配向される好適な角度というものはない。以下に示す説明及び方式では、簡便性を前提とする、すなわち複数のストライプを縦のY方向の向きに揃えるが、素子を90度回転させても同じ物理動作を適用することができ、かつ式は90度の移動が行われても成り立つ。この特許における向きに関する特殊性は説明を簡単にするため以外の何ものでもないので、決してこの特許を制限するものと捉えられてはならない。
【0076】
種々の発明者による文献に詳しく記載されているが、本願発明者が自身の特許文献33(米国特許第6,288,707号)、特許文献34(米国特許第6,466,036号)、及び同時係属中の特許文献28(米国特許出願第60/422837号)に開示するいずれかのタイプとすることが好ましい測定回路は、4つのコーナー電極301,302,303,及び304との標準的な接続を行なうことにより使用される。測定回路は、図3に示す電極群の該当する電極に接続される4つの駆動チャネルを含み、各チャネルは、チャネルの電極とタッチ位置との間の抵抗経路長によって変わる出力信号を生成するように動作する。他の方法では他の方式を使用することができるが、タッチ位置を計算する好適な方法は、筆者の同時係属中の特許文献28(米国特許出願第60/422837号)に開示する方法の適応版である。この方法では、4つのコーナー信号を所定の時点に校正して各コーナーの基本的な信号基準レベルを求める。校正ステップは、例えば生産ラインにおける設計期間の間に1度だけ、または電源投入の度に、あるいは素子へのタッチが行われていない時点を判断する方法を使用して実行することができる。ドリフト補正は、筆者が以前に取得した特許のうちの幾つかの特許、及びQuantum Research Group Ltd(英国)製のQT110デバイス(非特許文献1)のような製品のデータ・シートから知ることができる方法に従って適用することができる。
【0077】
X(すなわち、図3に示す水平方向)に沿ったタッチ位置を図3の素子を使用して計算するために、信号を次のステップに従って処理するが、これらのステップでは、リアルタイムで収集され、かつ4つの電極301,302,303,及び304に接続される信号はそれぞれ、各コーナーに対応して、S301,S302,S303,及びS304であり、基本基準レベルはR301,R302,R303,及びR304である。
【0078】
1)X方向の基準値及び信号を合計する。
RX’=R301+R304(左辺側基準値の和)
RX’’=R302+R303(右辺側基準値の和)
SX’=S301+S304(左辺側信号の和)
SX’’=S302+S303(右辺側信号の和)
2)X方向のデルタ信号、すなわちΔSigX’,ΔSigX’’を計算する。
【0079】
ΔSigX’=SX’−RX’
ΔSigX’’=SX’’−RX’’
3)X方向の位置を示す比Pxを計算する。
【0080】
Px=ΔSigX’’/(ΔSigX’+ΔSigX’’)
上式において、Pxは0から1の範囲であり、‘0’は左端、‘1’は右端である。
X方向に関する公式は、次式のように展開し直すことができる。
【0081】
(式1)Px=(S302+S303−R302−R303)/(S301+S302+S303+S304−R301−R302−R303−R304)
Y方向に沿ったタッチ位置を図3の素子を使用して計算するために、信号を上に示した公式と同様の公式に従って処理する。
【0082】
1)Y方向の基準値及び信号を合計する。
RY’=R303+R304(下辺側基準値の和)
RY’’=R301+R302(上辺側基準値の和)
SY’=S303+S304(下辺側信号の和)
SY’’=S301+S302(上辺側信号の和)
2)Y方向のデルタ信号、すなわちΔSigY’, ΔSigY’’を計算する。
【0083】
ΔSigY’=SY’−RY’
ΔSigY’’=SY’’−RY’’
3)Y方向の位置を示す比Pyを計算する。
【0084】
Py=ΔSigY’’/(ΔSigY’+ΔSigY’’)
上式において、Pyは0から1の範囲であり、‘0’は下端、‘1’は上端である。
Pyに関する公式は、次式のように展開し直すことができる。
【0085】
(式2)Py=(S301+S302−R301−R302)/(S301+S302+S303+S304−R301−R302−R303−R304)
従って、報告されるが未補正の、すなわち「生の」推定位置の完成形は(Px,Py)である。
【0086】
上式は単なる例であり、他のスクリーンに関連して使用される他の式も同様な結果となる。
図6に示すのは、複数のストライプ上で前記ストライプ上に分布容量Ctを生じさせるタッチ601である。結果として生じる素子中の電流によって、複数のストライプ間の結合による局所的分布容量Ctが形成され、この容量はタッチ及びストライプの隣接表面積にほぼ比例する。重ね合わせの原理を適用し(全てのシート状の素子において適用されるように)、そして結果として生じる判定位置に対して正しく重み付けすると、位置がストライプの数によって提供されると考えられる解像度よりも遥かに高い実効解像度で特定される。この効果を使用すると、他のストライプを使用する多くの2DCT、例えば特許文献22(米国特許第4,733,222号(エバンス))の2DCTにおける解像度が著しく向上するが、エバンスが数値的補間を使用するのに対して、本発明は複数のストライプ間の分布容量の物理特性を使用して同じ性能を実現し、計算を更に行なう必要がないか、あるいは各ストライプを個々に電子的に指定する必要がない。補間は素子自体に固有のものである。これは、2DCT抵抗シート素子において発生すると以前から知られている効果である。
【0087】
図7aは、上式1及び2に従ってコーナー電極信号に基づいて計算されるX軸に沿ったY行のタッチの計算位置を示しており、この計算位置は、Y=0.5とY=1との間の9個のY位置に対応する9個の行R0〜R8に沿ったX=0.5(中心)とX=1(右端)との間の異なるX位置で行われる一連のタッチに対応する。図7bは、検出素子の全ての象限における歪みを模式的に表わしている。接触境界線が所定の数のストライプにまたがる形で素子にタッチする指には、指をストライプに直交する方向になぞるときに注目すると、X方向にはむら(cogging)または非線形性は観察されない(X方向は等間隔になっている)。この様子は図8に図式的に示すことができ、図8は、ストライプとX方向に交差する7つの行に関する補正ベクトルをプロットしたものである。非直交、非垂直補正ベクトルは観察されない。
【0088】
この注目すべき結果は、ストライプによって、ほとんどのガルバニック電流がY軸に沿ってのみ配置されるストライプに閉じ込められることにより生じる。この閉じ込め効果によって、素子のどこにも非直交電流ベクトルが生じない。一旦、電流がストライプからバスバーに達すると、電流は90度回転して、2つの最も近いコーナー電極に向かう。この段階では、電流は隣接ストライプに降りて迂回する形で流れて第2のバスバーに達するだけである。これによって、ピン・クッション効果がバスバーに沿って生じる。
【0089】
図7a,7b,及び8から、Y軸では、歪みは線形であり、かつX方向の位置によって変わる単純な倍率を使用して補正することができることが分かる。X方向の各位置に関して、1つのスカラー(ベクトルではない)補正係数が存在し、この補正係数を使用してY方向の補正済みタッチ位置を得ることができる。
【0090】
【数1】
上式では、PyはY方向の生の報告された位置であり、Pcy(x,y)はX及び生のYの関数としてのY方向の補正済み位置であり、
【0091】
【数2】
は、補正係数を求めるX方向の各位置に固有の補正係数である。係数
【0092】
【数3】
は任意の1つの象限(例えば、図7aに示す象限)に関する解を求めるだけでよく、他の3つの象限に関する結果はその解をそのまま映したものになる。補正には、非直交成分が含まれず、かつ1つの係数
【0093】
【数4】
がY(x)の全ての信号に適用されることにより、バブによる手法よりもほぼ2桁だけ計算が簡単になるので、非常に高速の補正を、遅くて安価な、例えば0.50USドル以下のコストのマイクロ・コントローラを使用して行なうことができる。更に、歪み及び補正方法の簡略化は、変動する温度または電気条件の下でも素子を更に安定させ、そして更に素子を再現性良く製造することができることを意味する。バブによる手法とは異なり、素子の補正には曲線フィッティングを可能にするための複数回の試行を行わなくても済む。ストライプ対バスバーの抵抗比を再現することができる限り(絶対値が安定する必要はない)、係数
【0094】
【数5】
はユニット毎に同じになる。ユニット毎に抵抗比が異なる場合は、報告されたタッチ位置の誤差項に対する効果が非常に小さくなり、1つの軸に関する誤差によって他の軸に関する誤差が非常に小さくなるだけである。本発明の素子では通常、誤差項がX方向及びY方向に関して分離されるので、先行技術に比べて大きな効果が得られる。
【0095】
本発明の簡便性を、バブによる手法が必要とする「80個の係数」及び4次多項式と比較すべきであり、バブによる手法における係数は大規模な校正手順により求める必要がある。本発明は1ポイントの校正だけで済むか、あるいはほとんどの場合において、校正を全く必要としない。何故なら、素子歪みが簡単であり、予測可能であり、かつユニット毎に再現性が高いからである。
【0096】
補正係数
【0097】
【数6】
は、簡単かつ高速の補正を行なうための補間を含むルックアップ・テーブルを使用して適用することができる。補正係数
【0098】
【数7】
は、以下の簡単な2次方程式を使用して数学的に計算することもできる。
【0099】
【数8】
上式からY補正の完全な式が以下のように導かれる。
【0100】
(式5)Pcy(X,Y)=Py/(k1X2+k2X+k3)
上式においては、k1,k2,及びk3はピン・クッション歪みの曲率に依存する係数であり、XはX軸に沿った位置であって、中心スクリーンからスタートして左方向または右方向のいずれかに移動する位置の絶対値である。この2次方程式はシミュレーション・モデルにより生成されたものであり、1%以内の精度を有する。この方程式は非常に大きな非線形性を取り扱うことができないが、このような大きな非線形性は必要に応じて補助的な方法を使用して補正することができる。これらの式はバスバーとストライプとの間の抵抗比だけでなく、素子の形状寸法比に依存する。これらの式は抵抗絶対値の影響は受けない。
【0101】
上の解析を2DCTまたは2DRTに同様に適用する。2DRTは通常、2DCTとは、素子が複数の信号によってのみ駆動され、これらの信号が次に、5番目の電極接続を使用するカバー・シートによって消滅して解析が行われるという点で、「逆の」動作を行なう。正しく配置された素子上の電極群は普通、時間多重モードで駆動されて固有の信号をX方向及びY方向に交互に検出することができる。例えば、2つの左辺側の電極をまず接地し、そして2つの右辺側の電極を固定の同じ電位に駆動する。カバー・シートをサンプリングして生のX位置を取得する。下辺側の電極群を次に接地し、そして上辺側の電極群を固定の同じ電位に固定する。カバー・シートをサンプリングして生のY位置を取得する。プロセスを継続して繰り返し、サンプルは、カバー・シートが素子とガルバニック接触していることが検出される場合にのみ有効であると判断される。これは電位差測定を用いる検出方法であり、特許文献に詳しく記載されている。他の2DRTサンプリング方法を使用することができ、この章において記載した手順が好適な方法であると考える必要はなく、かつサンプリング方法が本発明の目的である訳でもない。
【0102】
式5には、1象限における一連の解のみが必要であり、他の3象限に対しては、この結果を映すだけで済む。この結果は図7a及び7bに示されている。図7aは右上象限における歪みを示し、このパターンを他の3つの象限に映して図7bのパターンを生成する。
【0103】
影絵(handshadow):ゾーンに区切る構成の2DCT素子
2DCT影絵現象については、筆者による本出願と同時係属中の特許文献37(米国特許出願第2003/0132922号)及び特許文献38(米国特許第5,457,289号)に記載されている。60×60mmのような「携帯電話サイズ」のスクリーンは通常、影絵の影響を大きく受けることがないので補正作用が保証される。
【0104】
しかしながら、必要であれば、影絵の影響を小さくするための1つの方法が筆者による前述の特許文献37(米国特許出願第2003/0132922号)に記載されているので参照されたい。この文献を参照することによりこの文献の内容が本発明の開示に含まれる。
【0105】
第2の方法では、基本的に本発明の素子を図9に示すように2回繰り返して使用する。しかしながら、図9から分かるように、本素子は、バスバーを効果的に共有して関連部品数を減らすことにより得られる。パターンが、図示の6個の節点(すなわち電極群)301,302,301a,302a,303,及び304上の駆動/検出回路により起動すると、素子は、素子における検出が2つの異なるゾーン、すなわち上側部分及び下側部分で行われるように効果的に分割される。これらのゾーン内部での検出は上述の如く行われる。影絵の容量はタッチ・ポイントの下方で主として生じるので、上側ゾーンのタッチによって影絵が主として下側ゾーンで生じ、この下側ゾーンでは、影絵を前記下側ゾーンからの信号を単純に無視することにより「処理して無くす」ことができる。複数のゾーン間での影絵電流(handshadow current)間のクロス結合はほとんど生じない。
【0106】
大スクリーンでは更に多くのこれらのゾーン、すなわち素子全体の縦方向サイズに適し、かつ問題の深刻度に応じた数のゾーンを利用する。
2DRT用途
図10は、複数のストライプの間にスリットを有する素子を示している。ストライプを分離するこのような方法は、2DRTを使用する場合に特に有用である。2DRTを使用する場合では、カバー・シートを反らせて素子に小さなポイントで接触させる。接触ポイントがこれらのストライプ310のギャップよりも小さい場合には、カバー・シートは電位を検出することができず、接触が失敗することになる。
【0107】
図11は、本発明による抵抗型スクリーンを示しており、このスクリーンでは、カバー・シートがタッチによって、またはスタイラスによって内側に反るときにカバー・シートによって図10のスリットの空いたストライプからガルバニック電位がなくなる。図11の素子は、2DCTに関して上述した通りであるが、動作モードは、他の特許及び公の文献において説明される種々の5ワイヤ・スクリーン・モードに従う。普通、カバー・シートは、この技術分野では公知のように、素子から小さな「マイクロバンプ」スペーサ(図示せず)によって離れるように保持される。
【0108】
必要最低限の2DCT
図12は最小の2DCTの場合を示しており、この2DCTでは、2本のバスバー及び2本のストライプを設け、これらの全ては素子の周辺上に位置する。素子のサイズは検出対象のオブジェクトに比べて非常に大きい訳ではないので、中央部における信号レベルはオブジェクトから各導電部材までの距離に起因して、極めて小さくなることがない。本例は、ピン・クッション歪みが測定されることなく動作する。何故なら、ストライプとバスバーのインピーダンスはオブジェクトといずれかのストライプまたはバスバーとの間で形成される容量結合回路のインピーダンスよりも何桁も小さいからである。この最小の2DCTの場合では、ストライプ及びバスバーは同じ値、または大きく異なる値を有することができ、解像度または線形性に対して観察される影響を最小に抑える。図12の素子がヒトの指によって使用される場合、素子は指の直径の4倍以下の幅または高さとすることが好ましく、これによって適切な信号強度が実現する。図12の素子を使用して「ミニ・マウス・パッド」またはポインタ制御を構成して、例えば付属突起の移動性を最小に抑えた部材に使用することができ、指先または他の付属突起の非常に小さな運動によって電気製品又はGUIを制御することができる。
【0109】
ポイント−スクリーン2DCT動作
2DCT素子は「ポイント・モード」での使用に適し、このモードでは、ユーザは単にスクリーンを指で押すだけである。1つの素子のピン・クッション歪みを容易に補正することができ、かつ1つの素子を容易に使用することができるということは、電界が短い距離内に局在しないことを意味する。その結果、本発明は、メニューを用いるほとんどのグラフィカル・インターフェースにおいて高い精度を実現する「ポイント・スクリーン」デバイスとして使用することができる。
【0110】
この動作モードは、病院のような衛生用途において非常に有用であるだけでなく、スクリーン汚れを防止する普通のコンシューマ用モードにおいても有用である。
2DCT駆動回路
次に図13を参照すると、この図には本発明の2DCT用途の好適な(必須ではないが)駆動回路が示されている。この回路は、筆者による本願と同時係属中の特許文献28(米国特許出願第60/422837号)に示されるものと、4つの電極(または図9の場合の6つの電極など)全てに適用される点を除いて同じタイプである。位置A,A’,A’’,A’’’,B,B’,B’’,B’’’及びC,C’,C’’,C’’’のスイッチ1302,1303,1304の反復スイッチ動作を各電極において同時に行なって、サンプリング・キャパシタCs1305とも呼ぶ4つのキャパシタを同時に使用して電荷を注入して、測定する。この動作はスイッチ・コントローラ1307によって行われる。信号出力は、各電極に関するスイッチング・サイクルの表形式の数字であり、この数字は電圧比較器1301によって決定される閾値電圧Vtを上回る必要がある。各電極に関するサイクル数の集計は、1306の4つのカウンタが行なう。
【0111】
この回路の動作は更に詳細に、筆者による特許文献28(米国特許出願第60/422837号)において説明され、この文献はここで参照することによりその内容が本発明の開示に含まれる。
【0112】
本発明は別の構成として、筆者による特許文献34(米国特許第6,466,036号)に記載されるスイッチング・シーケンス及びスイッチング構成のいずれかを用いることができ、この文献はここで参照することによりその内容が本発明の開示に含まれる。
【0113】
信号処理回路を図14に示すが、この回路では、4つの電極信号が処理回路に入力され、今度はこの回路が座標結果を計算する。論理ブロック、マイクロ・コントローラ、または他のハードウェアまたはソフトウェアを使用して、所望の出力を得るために必要な計算を行なう。図14のブロックは普通、パーソナル・コンピュータ、プロセス・コントローラ、電気製品などのような別のシステムの一部であり、そして出力は大きなプロセスにおける単なる中間結果とすることができる。
【0114】
図15は本発明の好適な実施形態を示しており、この実施形態では、1つのマイクロ・コントローラ1501が図13のスイッチング機能を実行し、更に図14の信号処理も行なう。スイッチング機能は、従来のI/Oポートのソフトウェアで実行するか、あるいはオンチップ・ハードウェア容量変換周辺機器(on−chip hardware capacitive conversion peripheral)によって実行することができる。信号処理はソフトウェアで行なって所望の座標出力を得る。この出力は、大きなプロセスを制御するために使用する単なる中間結果とすることができ、かつ図示の出力はチップ内部の数字としてのみ存在する。
【0115】
別の構成として、本発明は、文献に記載されている任意の容量または抵抗検出回路を使用することができる。勾配に対する素子の応答は普通、駆動回路のタイプに関係なく同じである。本発明は任意の収集方法を使用する訳ではない。
【0116】
材料、作製
2DxT素子は、タッチ・スクリーンの場合はディスプレイを覆うガラス・シートまたはプラスチック・シートの背面上に、あるいはマウス・パッドなどの場合は適切な誘電体基板の上にあって、適切な抵抗を有する透明導体により作製することが好ましい。
【0117】
種々の他の特許に記載されているように、低抵抗のバスバー(両端の間が約200オーム未満)が両方のエッジに必要になることにより、全ての態様の駆動、電力、安定性、及び再現性の問題が生じる。現在広く使用されている抵抗よりも遥かに大きい抵抗を有する材料を使用することが非常に望ましい。米国のCPFilms社が生産するようなほとんどのインジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide))層、または表面に特殊仕様でスパッタ堆積される場合のITO層は約300オーム/スクエア(Ω/□)の抵抗を有する。この抵抗を約500〜2000Ω/□の抵抗になるように大きくして、ストライプ及びバスバーの抵抗が両端の間で25KΩ以上になるように作製されることが非常に望ましい。
【0118】
低抵抗材料により作製されるバスバー及びストライプの抵抗を大きくする1つの方法では、蛇行経路またはジグザグ・パターンを使用して抵抗経路長を長くする。従来の低抵抗ITOまたは錫酸化物コーティングをエッチングするか、あるいはパターニングして所望のボイドを形成して(「スイスチーズ」アプローチ)抵抗を大きくする。ストライプ及びバスバーを適切に薄く作製して、抵抗が更に最適になるように十分に大きくすることができる。
【0119】
しかしながら、理想の材料は約500〜1000Ω/□以上の固有抵抗を有するか、あるいは調整してそのような抵抗にすることができる。Agfa社のOrgacon(登録商標)導電ポリマーは、このような高い固有抵抗を有する1つの材料であり、更に透明でもあるので、ディスプレイを覆うタッチ・スクリーンに使用することができる。特に低いコストの材料はエレクトロニクス業界では良く知られているカーボン系インクであるが、不透明であるので、この材料はタブレットまたはマウス・パッド用途の方に適している。
【0120】
上述したように、いかなる特定の素子抵抗値に関する要件もなく、かつ駆動回路は、難しさの程度が異なるほとんど全ての構成に適合させることができる。原理的には、唯一の要件は、素子が非ゼロの抵抗を有することである。しかしながら、バスバーの抵抗は、Y軸方向のピン・クッション歪みを低減するために複数のストライプの合計の並列抵抗値と同程度になるか、あるいは小さくなるようにすることが好ましい。ストライプの数が多くなることによって通常、ストライプ当たりの抵抗が大きくなって同じ効果が得られことを意味し、ピン・クッション歪みはこれらのストライプの間の合計分岐抵抗に関連し、分岐抵抗はこれらのストライプの等価並列抵抗値である。これらのバスバーの中心に近く位置するストライプはピン・クッション歪みに対して不均等な影響を及ぼす。
【0121】
素子をパターニングしてバスバー及びストライプを形成する操作は、適切なステンシル・マスクを使用する蒸着法を用いて不所望のコーティング領域が生じないようにするか、あるいはシルク・スクリーニング技術を用いて所望パターンを形成するか、あるいはパッド・プリンティングまたはレーザ・スクライブ、または化学エッチング、または化学反応、またはパターニング層の形成を可能にする他の任意のプロセスを用いることにより実行することができる。Agfa社のOrgacon(登録商標)導電ポリマーの場合、パターンは、次亜塩素酸ナトリウムを使用して強制的に領域を化学反応により、実際の材料を除去することなく非導電物とすることにより形成することができる。
【0122】
素子の形成では、適切な材料をディスプレイの前面に配置されるガラス・シートの上に蒸着堆積させるような普通のタッチ・スクリーン製造方法またはタッチ・パッド製造方法が必要となる。
【0123】
インモールド成形(IMD:In−Mold Decorating)では、射出成形金型または金型鋳物の内部に配置されるグラフィック・シートまたはグラフィック層を、液体樹脂を流し込む前に使用する必要がある。一旦成形されると、層は結果として生じる樹脂片の一体化部分となる。2DCTの場合、本発明によるタイプの導電素子はディスプレイ・カバー用金型の内部に配置され、流し込みが行なわれると、導電層が溶けてカバーの一方の側に融着する。このようにして、複合曲線を有する構造を含む複雑なカバー構造を形成することができ、これらの構造は非常に低いコストの一体型2DCTを含む。
【0124】
電極接続は、コーナーに接合するワイヤによってか、あるいは導電ゴム製ピラーによって、あるいは金属バネなどを使用して行なうことができる。導電ゴムは、駆動回路を含む下層のPCBからの接続を非常に低いコストで行なうための選択法である。図16はこのような構成方法を断面で示す。ディスプレイ1601はカバー・レンズ1602及び検出素子300を通して眺めることができる。素子300は少なくとも4つのコーナー電極を通して、更に複数の導電ゴム製ポストを経てPCB1604に接続され、これらの導電ゴム製ポストのうちの、2つのポスト1603a,1603bが図示されている。アセンブリ全体はネジ、クランプ、または他の固定方式(図示せず)によって圧縮されながら配置されるので、ゴム製ポストが圧縮されてPCB1604と素子300とが強制的に接触するようになる。
【0125】
素子は異方導電性を有する分子材料により作製することもできる。例えば、導電ポリマーは、他の方向よりも1つの方向において遥かに大きい導電率を有すると考えることができる。ナノ構造に基づくこのような材料は文献、例えばヘルシンキ工科大学から刊行された文献に記載されている。
【0126】
2DxTストライプの重み付け
本発明の1つの実施形態では、複数のストライプの重み付けを行なってスクリーンの中心に近い複数のストライプを互いに更に離間させるか、あるいは複数のストライプに大きな抵抗を持たせるか、あるいは複数のストライプをこれらの両方の構成となるようにする。このようにすることによって、固有のピン・クッション歪みの大きさを低減することができる。しかしながら、試験を行ったところ、実際にこの構成を実施すると、これが、信号が素子の中心部で検出できない、かつ/あるいは結果として生じる抵抗が大きくなり、隣接トレースとの指による結合が弱くなることによって駆動問題が生じることも意味することが判明した。実際、このアプローチは有効であるようには思われないが、ここでは実施形態を網羅するためにのみ記載される。
【0127】
2DCTによる収集操作
2DCTに関連する問題には、素子の動作周波数の周波数、または動作周波数の所定の高調波の周波数を有する外部静電気発生源または外部無線発信源による干渉が含まれる。これらの問題は、変調動作周波数を信号収集に使用してエイリアシング信号−雑音またはビート信号−雑音を低減するか、あるいは防止することにより緩和することができる。この操作では、周波数ホップ、チャープ波、または擬似ランダム周波数変調を使用することができる。これらの方法は「拡散スペクトラム」変調として知られる。
【0128】
事後処理では、多数決フィルタリング、中央値フィルタリング、平均化処理などを使用して、周波数変調によって既に減衰している雑音の残留効果を低減することができる。
低周波干渉は局所電源電界などにより生じ得る。この形の干渉は、収集操作を干渉源、例えば50または60Hzに同期させることにより低減することができ、これについてはQuantum Research Group社(英国)のQT310デバイス(非特許文献2)のデータ・シートに記載されている。
【0129】
2DCT用駆動シールド
素子には、LCDディスプレイ、VFDスイッチ動作などによる干渉を低減する駆動シールド技術を適用することができる。このためには、導体板を素子と干渉源との間に位置させて素子の背後で使用する必要がある。駆動シールドはまた、素子の背後の運動による信号障害から素子を保護するように機能する。駆動背面シールドは2DCTの作製に広く使用される。
【0130】
2DCTのウェイクアップ
多くの用途において、「ウェイクアップ」機能を有することが望ましく、これにより、デバイス全体が「スリープ状態」になるか、あるいは休止状態またはバックグランド状態になる。このような場合においては、人体パーツに非常に近い部分からのウェイク信号を所定の距離だけ離すことが望ましい場合が多い。
【0131】
素子は、ユニットがバックグランド状態になっている間に、ポジション位置に関係なく1つの大容量電極として駆動することができる。この状態の間、電子ドライバ・ロジックは信号の非常に小さい変化を検出するが、この変化は、2D座標として処理することができるほどには十分ではないが、オブジェクトまたはヒトが近くに位置していることを判断するためには十分である。次に、電子機器がシステム全体をウェイクアップさせ、素子を駆動して素子が再度実際の2DCTとして機能するようにする。
【0132】
タブレット、マウス・パッドの使用:注入モード
2DCTモードの本発明の素子はマウス・パッドとしてか、あるいはタブレットタイプの入力デバイスとして適する。これらの機能では、光学的に透明である必要はない。スタイラスを素子に使用して素子からの放射電界を検出するか、あるいは信号を素子に注入するか、あるいはヒトの指として機能させる。
【0133】
注入モードでは、本発明の素子は単に逆に動作する。ワイヤでつないだペンからの信号が、接触ポイントを取り囲む領域の素子に容量的に注入される。次に、注入された信号に比例した信号が4つのコーナー電極に出力され、これらのコーナー電極から、信号を検出して、文献に既に記載されているほとんど任意のタイプの測定回路に送信し、次に処理して接触ポイントを示す結果を生成する。ピン・クッションの影響は注入モードでは、2DRTモードまたは2DCTモードで行われる態様とほぼ同じ態様で作用する。ベクトル勾配は同じである。
【0134】
2DxTの未補正モード
多くの用途では結果を線形化する必要はない。これらの用途は基本的に、例えばメニュー・ボタンを検出する機能などを提供する低解像度のヒューマン・インターフェースを含む用途である。このような用途では、素子及び関連する信号収集回路は線形化ステップを必要とせず、かつ単に生の出力を生成する。更に別のシステム・ロジックによって2D座標境界がタッチ・ボタンとして解釈され、この場合の境界はソフトウェア開発時に定義される。
【0135】
ストライプ対バスバーの抵抗比が十分に大きい場合、生の処理結果の精度はそのまま使用しても許容できるレベルである。例えば、結果として生じる素子の座標誤差は5%に過ぎないが再現性が良い場合、素子はディスプレイ上の未補正メニュー・ボタンを検出するために完全に適しており、この場合、ボタンは素子の高さの10%未満も占めない。ボタンが、素子の水平中心線の近傍にほぼ位置するか、あるいは左辺または右辺に沿ってほぼ位置する場合、歪みは無視することができると考えられ、無視できる場合は、線形化補正は適用する必要がない。
【0136】
要約
本発明はその基本換算要素としての素子であり、この素子の目的は異方導電性を利用する改良型2D検出デバイスと、任意選択の形で、生の計算座標結果の歪みを補正する方法と、を提供することにある。動作モード(限定されないが、ガルバニック・モードまたは容量モード)、素子の使用、及び素子がパッシブ・タッチのスタイラスまたはセンサからの信号の受信体として使用されるかどうかは、本発明にとって最も重要である訳ではない。重要なのは、素子の異方構造及び素子が生成する位置誤差の形態、及び誤差を補正するための本明細書に記載する任意の方法である。
【0137】
本発明の実施形態の検出素子の重要な態様は、これらの素子がコアを有する単層として作製することができ、コアには第1の所定方向に大きなガルバニック電流が流れるが、コアは第1の方向に直交する第2の方向の導電性を小さくするように作用する、すなわちコアが異方導電性を有することに加えて、コアが抵抗境界によって区分されて素子全体が形成される。素子は更に、4つの電極をコーナーに有し、かつこれらの電極は電子回路が駆動する、かつ/あるいは検出してタッチ位置を示す結果出力を生成する。
【0138】
この技術分野の当業者には明らかなように多くの変形を加えることができ、これらの変形には、本明細書において特に概要が示される検出方法または切り替え順序の種々の組み合わせが含まれる。本明細書に開示する方法は、ドリフト補正、校正、スイッチ閉じ時間を短くすることによる湿気の抑制などの方法を含む、筆者による先行特許のいずれかによって示唆される方法と組み合わせることができる。特に、容量検出方法を含む筆者自身の先行技術に開示される特徴を種々組み合わせることができることに留意されたく、これらの方法の全てが本明細書において参照することにより本発明の開示に含まれる。更に、Quantum Research Group社(英国)のデータ・シートに記載されている容量製品にも注目されたく、これらの製品の多くは本発明に密接に関係する特徴を有する。
【0139】
本発明をペッパーが開示するように特異な形状に変形することも可能である。このような変形はオブジェクトの位置の検出に有用である、例えばシリンダー状、球形、または他の湾曲表面に沿った位置が重要となり得る産業設定において有用であることが分かる。
【0140】
本発明の特定の実施形態について記載してきたが、多くの変形/追加、及び/又は代替を本発明の技術思想及び技術範囲から逸脱しない範囲において行い得ることが分かるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1a】先行技術による4つのコーナー電極及び「ピックオフ」可撓性カバー・シートを有する抵抗膜により作製されるパターニングされていない単一素子型2次元変換器に見られる典型的なピン・クッション歪み効果を模式的に示す図
【図1b】図1aの素子を線形化するために必要な正規化ベクトルを模式的に示す図。
【図2】図1a及び1bに示す種類の歪みの影響を受けるスクリーンのピン・クッション効果を補正するように構成される既知の容量または抵抗タッチ・スクリーン・エッジ・パターンを示す図。
【図3】本発明の1つの実施形態による検出素子を形成するために使用される導電材料を表わす2次元パターンを模式的に示す図。
【図4】図3の検出素子を表わす電気回路を模式的に示す図。
【図5】図3の検出素子においてタッチ位置が識別される様子を模式的に示す図。
【図6】図5の検出素子のタッチ位置での縦断面を模式的に示す図。
【図7a】図3及び5の検出素子の1象限における行毎の線形性プロットを模式的に示す図。
【図7b】図3及び5の検出素子に関連する歪みを模式的に示す図。
【図8】図7a及び7bに示す歪みを線形化するために必要な正規化ベクトルを模式的に示す図。
【図9】本発明の別の実施形態による検出素子を形成するために使用される導電材料を表わす2次元パターンを模式的に示す図。
【図10】本発明の更に別の実施形態による検出素子を形成するために使用される導電材料を表わす2次元パターンを模式的に示す図。
【図11】抵抗タッチ・スクリーンの一部を形成する図10の検出素子の縦断面を模式的に示す図。
【図12】本発明の更に別の実施形態による検出素子を形成するために使用される導電材料を表わす2次元パターンを模式的に示す図。
【図13】電荷転送方法に基づいて駆動チャネルに結合された図5の検出素子を模式的に示す図。
【図14】図13の駆動チャネルから出力される信号を受信し、かつ推定タッチ位置を信号に基づいて計算するように構成されたプロセッサを模式的に示す図。
【図15】4つのサンプリング・キャパシタに接続されているマイクロ・コントローラを模式的に示す図であって、マイクロ・コントローラ及びキャパシタは図13及び14の検出チャネル及びプロセッサを実現するように構成されている図。
【図16】タッチ検出スクリーンを形成するように液晶ディスプレイの上に配置される、本発明の1つの実施形態による静電容量位置センサを縦断面で模式的に示す図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの指またはスタイラスで操作可能な2次元タッチ・センス式表面に関する。デバイスの例として、タッチ・スクリーン及びタッチ・パッド、特にLCD、CRT及び他のタイプのディスプレイを覆うデバイス、またはペン入力タブレット、あるいはマシンの中で使用されてフィードバック制御を行なうためのエンコーダを挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
マシンへのペン入力またはタッチ入力についての開示は、少なくとも1908年にまで遡り、特許文献1(独国特許第203,719号)に具体的に記載されている。
タッチ・スクリーン及びポインティング・デバイスは、パーソナル・コンピュータに関連する形としてだけでなく、携帯情報端末(PDA:personal digital assistant)、ポイント・オブ・セールス(POS:point of sale)端末、電子情報及び発券キオスク、台所電気製品などのような他の電気製品の全ての形態において益々普及し、かつ広まっている。これらのデバイスは低価格製品の中に展開されつつあり、その結果、高レベルの品質及び堅牢性を維持しながら今までよりも更に低い生産コストを実現する必要がある。特に、静電容量タッチ・スクリーンは破損に対する堅牢性が高く評価されるが、高コストであり、かつ希少な構成材料が必要になるという点で不利となる。
【0003】
「2次元静電容量変換器(two−dimensional capacitive transducer)」または「2DCT」という用語は本明細書を通じて、タッチ・スクリーン、タッチ・センス・パッド、近接センス・エリア、オーバーレイがLCDスクリーン、プラズマ・スクリーン、またはCRTスクリーンの表面に取り付けられる構成のディスプレイ・タッチ・スクリーンなど、機械装置またはフィードバック・システムに関するポジション・センス、あるいはこれらに制限されないが他のタイプの制御表面であって、オブジェクトまたは人体パーツの位置に関する少なくとも2次元座標、デカルト座標または他の座標を容量検出機構を使用して報告する機能を備える表面または容積を有する制御表面などを指す。
【0004】
「2次元抵抗変換器(two−dimensional resistive transducer)」または「2DRT」という用語は本明細書全体を通じて、純粋にガルバノ原理に基づき、かつこの分野において「抵抗タッチ・スクリーン」として一般的に、かつ主として知られるタッチ・スクリーンまたはペン入力デバイスを指す。
【0005】
「2DxT」という用語は、2DCTタイプまたは2DRTタイプのいずれかの素子を指す。
「タッチ」という用語は本明細書全体を通じて、所望の出力を生成するために十分な容量信号強度を有する人体パーツまたは機械コンポーネントによるタッチ(touch)または接近(proximity)を指す。「接近(proximity)」という意味の場合、タッチは物理的接触が行なわれない2DCTの「ポイント」を指すこともでき、この場合、2DCTは、正しく反応するためにオブジェクトが十分に接近することによって生じる容量に反応する。
【0006】
「素子(element)」という用語は本明細書全体を通じて、2DCTまたは2DRTのアクティブ検出素子を指す。「電極(electrode)」という用語は、素子の周辺の接続ポイントを指す。
【0007】
「ストライプ(stripe)」という用語は、素子の構成部品であり、かつ2つの端部を有する電気配線導体を指す。ストライプはワイヤとすることができる。ストライプには意図的にガルバニ効果により大きな抵抗を持たすことができ、これに対してワイヤは最小の抵抗を有する。ストライプが一部を構成する素子が物理的に湾曲する場合、ストライプも物理的に湾曲する。
【0008】
「ピン・クッション(pin cushion)」という用語は、2DCTからの信号の歪みの全てを指し、放物線状収差、たる型収差、または他の形態の2次元収差のいずれかである。
【0009】
多くのタイプの2DCTが、「ピン・クッション」または「双曲線状」または「放物線状」として特徴付けられる形状歪みの影響を受けることが知られており、従って報告されるタッチ座標には、検出表面への電気的効果に起因してエラーが生じる。これらの効果は、他の種々の特許、例えばペッパーによる特許文献2(米国特許第4,198,539号)に更に詳細に記載されており、この特許文献を参照することによりこの文献の内容が本発明の開示に含まれる。形状歪みの既知の原因、解決方法、及び解決方法の問題を非常に要領よく纏めたものが、バブらによる特許文献3(米国特許第5,940,065号)及び特許文献4(米国特許第6,506,983号)に記載されており、これらの特許文献を参照することによりこれらの文献の内容が本発明の開示に含まれる。特許文献3(米国特許第5,940,065号)は2つの主要な種類の補正方法、1)検出表面または接続電極の設計または変更を行なう電気機械的方法、2)数学的アルゴリズムを使用して歪みを補正するためのモデル化方法、について簡潔に記載している。
【0010】
電気機械的方法
プレーナ素子のエッジ操作:
キュッフミュラーらは、特許文献5(米国特許第2,338,949号:1940年出願)において、2DRTエレクトログラフにおけるエッジ歪みの問題を、X及びYに非常に長い複数の矩形のテール(tail)を使用して解決しており、これらのテールは小さな使用可能な領域を取り囲む。キュッフミュラーは更に、4つのテールに細長い穴を作って複数のストライプを設けるアプローチを採用している。これらのストライプはユーザ入力領域に侵入することはないが、電流に平行な辺に沿って異方的に電流に対する抵抗を大きくするように作用する。この考えは少し違った形でヤニブらによる特許文献6(米国特許第4,827,084号)に再度、50年近く経った時点で現れている。キュッフミュラーによる発明が現在においても本発明に最も類似する先行技術である。
【0011】
ベッカーは特許文献7(米国特許第2,925,467号)において、2DRTエレクトログラフについて初めて説明し、非線形エッジ効果を、正しい素子のシート抵抗に対して非常に小さい抵抗のエッジ材料を使用することにより無くしている。この方法を使用して2DCTを構成することもできる。
【0012】
ペッパーは特許文献2(米国特許第4,198,539号)、特許文献8(米国特許第4,293,734号)、及び特許文献9(米国特許第4,371,746号)において、2DCTを、素子のエッジ抵抗構造を操作することにより線形化する方法について説明している。
【0013】
タルメッジは特許文献10(米国特許第4,822,957号)において、ペッパーによる発明と同様のエッジ・パターンについて2DRT素子及びピックオフ・シート(pickoff sheet)に関連する形で説明している。種々の方法を使用する他の多くのこのような特許が出願され、この分野は今日では新規の特許が多数出願される非常に注目すべき分野となっている。これらの方法は開発及び再現するのが非常に難しいことが分かっており、かつ熱処理の差によるエラーの問題及び製造上の問題を引き起こし易い。非常に小さい量の局所エラーまたはドリフトによって大きな変化が座標応答に生じ得る。パターニング済みエッジ細片の抵抗が小さいと駆動回路が問題となって駆動回路の消費電力が大きくならざるを得ず、コストが非常に高く付く。ペッパー特許を参照し、かつ同様の動作を行なうと主張する特許が非常に多く見受けられる。ペッパーらの特許がもたらす改善はベッカー特許がもたらす改善とほぼ同じレベルと言える。何故なら、少なくともベッカー特許は製造が容易であり、かつ再現性に優れているからである。
【0014】
ワイヤ素子のエッジ抵抗:ケーブルは特許文献11(米国特許第4,678,869号)において、2軸方向の抵抗分割器チェーンであって、高伝導率の複数の電極がこれらのチェーンに接続される構成の抵抗分割器チェーンを使用するペン入力用2Dアレイを開示し、これらの電極は検出の目的のためにある程度の予期しない抵抗を有し、かつ検出信号は2つの隣接する電極の間に生成される信号に基づいて補間される。予期しない抵抗によって、小さなピン・クッションが応答として生じる。この特許はまた、この方法によって生じるわずかなピン・クッション歪みを補正するアルゴリズムの実行手段について記載している。ケーブルによる方法は、接続スタイラス以外で動作することがない、すなわち、この方法は、ヒトの指に応答する方法としては説明されていない。ケーブル特許は、複数の導体の間を通って交差する構造体を必要とするので、少なくとも3つの構造層(導体、絶縁体、導体)が必要になる。
【0015】
複数の能動エッジ電極:ターナーは特許文献12(米国特許第3,699,439号)において、能動プローブが複数の電極接続を全ての4辺に有して結果を線形化する構成の均一な抵抗型スクリーンを開示している。
【0016】
ヨシカワらは特許文献13(米国特許第4,680,430号)において、そしてウルフは特許文献14(米国特許第5,438,168号)において、各辺(コーナーと反対側の)の複数の電極ポイントを使用して、一方の軸の電極からの電流の他方の軸の電極からの電流との相互作用を小さくすることによりピン・クッション歪みの低減を容易にする2DCTを示唆している。素子は単純なシート抵抗体であるが、このアプローチでは、非常に多くの能動電子接続(複数のダイオードまたは複数のMOSFETから成る線形アレイのような)が素子に非常に近接する各接続ポイントに形成される。
【0017】
ナカムラは特許文献15(米国特許第4,649,232号)において、ヨシカワ及びウルフと同様の内容を、抵抗膜式ピックアップ・スタイラスを使用する形で示唆している。
【0018】
連続スキャン・ストライプ素子:グレニーアスらは特許文献16(米国特許第4,686,332号)及び特許文献17(米国特許第5,149,919号)において、そしてボイエらは特許文献18(米国特許第5,463,388号)において、ランドマイヤーは特許文献19(米国特許第5,381,160号)において、交互に個別に駆動され、かつ検出されるストライプ導体をX軸及びY軸の両方に使用する素子検出方法を示唆しており、これらの導体から指タッチの位置を読み取ることができる素子検出方法、またはピックアップ・デバイス、スタイラス・ペンによる素子検出方法を示唆している。この構成は複数の材料層を含み、かつ特殊な処理を含む。グレニーアスは、複数のストライプの間に補間を適用して高解像度を両方の軸において実現することを示唆している。2つのグレニーアス特許はともに、素子内での導体の交差を可能にする3つ以上の層を必要とする。グレニーアス特許はともに、各ストライプに対する容量測定を利用するが、1つのストライプと別のストライプとの間のクロス・カップリング容量は使用しない。ボイエも特殊な保護面を示唆している。
【0019】
ビンステッドは特許文献20(米国特許第5,844,506号)及び特許文献21(米国特許第6,137,427号)において、個別の細いワイヤをケーブル、アレン、ゲルファイデ、及びグレニーアスが示唆する方法と同様の方法で使用するタッチ・スクリーンを示唆している。ビンステッドは非常に細い行ワイヤ及び列ワイヤを使用して透明性を実現している。この特許も、複数の電極ワイヤの間の補間を行なって高解像度を実現するグレニーアス法を示唆している。スキャン操作では、各ストライプの接地に対する容量の測定を利用するが、1つのストライプと別のストライプとの間のクロス・カップリング容量は使用しない。
【0020】
エバンスは特許文献22(米国特許第4,733,222号)において、複数のストライプが連続してX軸及びY軸の両方向に、外部キャパシタ・アレイも使用して検出信号をキャパシタ分割器の効果によって生成することにより駆動される構成のシステムについても記載している。補間を使用してストライプのみの場合に可能になる解像度よりも高い解像度を評価する。
【0021】
ボルペは特許文献23(米国特許第3,921,166号)において、容量スキャン法を使用する個別のキー機械的キーボードについて記載している。連続して駆動される入力行及び連続して検出される列が設けられる。キーを押下することにより、行と列との間の結合が強くなり、このようにして、nキー・ロールオーバーが実現する。補間の必要はない。2DCTではないが、ボルペはスキャン方式ストライプ素子2DCT技術を予測している。筆者自身の特許文献24(米国特許第6,452,514号)もこの分類のセンサに属する。
【0022】
イタヤは特許文献25(米国特許第5,181,030号)において、接触位置を読み出す抵抗平面に、圧力が加えられた状態で接続される抵抗ストライプを有する2DRTを開示している。ストライプまたは平面は、ストライプまたは平面に形成される1次元的な電圧勾配を有するので、特にストライプ上の接触位置は容易に識別することができる。各ストライプはそれ自体の少なくとも1つの電極接続を必要とする。
【0023】
定周期スキャン方式ストライプ素子:ゲルファイデらは特許文献26(米国特許第5,305,017号)において、絶縁体によって分離される複数の直交する重複金属ストライプ・アレイを使用するタッチ・パッド静電容量方式コンピュータ・ポインティング・デバイスを示唆している。走査線を周期繰り返しパターンとなるように配置して、必要となる駆動回路を最小限に抑える。この発明の配線の周期性によって、このタイプの2DCTを絶対位置の特定に使用しなくて済む。この発明は、マウスに置き換わる形で使用されるタッチ・パッドに適しており、実際の位置判定が必要ではなく、相対運動の検出のみが重要となる。ゲルファイデは、接触位置の2つの逆位相信号の間の信号バランスをとる方法を示唆している。
【0024】
並行読み取りストライプ素子:アレンらは特許文献27(米国特許第5,914,465号)において、行スキャン・ストライプ及び列スキャン・ストライプを有する素子を示唆しており、これらの行スキャン・ストライプ及び列スキャン・ストライプはアナログ回路によって並行に読み取られる。この特許は、連続的にスキャンされる素子よりも雑音が小さく、かつ応答が速い。この方法は特に、マウスに置き換わるタッチ・パッドに適するが、大きなサイズに対して良好に拡張することができない。複数の構造層が、全てのストライプ素子2DCTと同様に必要となる。アレンによる方法には、大規模な集積化及び非常に多くの接続ピンが必要となる。この方法では、補間を行なって、行ストライプの数によって可能になる解像度よりも高い解像度を達成する。
【0025】
「電荷転送型静電容量位置センサ(Charge Transfer Capacitive Position Sensor)」と題された筆者の同時係属中の特許文献28(米国特許出願第60/422837号)は、図12に関連して個々の1次元抵抗ストライプを使用してタッチ・スクリーンを形成する方法について記載している。これらのストライプは並列に、または連続的に読み取ることができる。何故なら、これらのストライプとの接続は互いに独立しているからである。更に、図6に関連して、隣接する集中電極素子と指のようなオブジェクトとの間の補間結合について記載している。特許文献28(米国特許出願第60/422837号)は、本明細書において参照することによりこの出願の内容が本発明の開示に含まれる。
【0026】
数値的方法
ナカムラは特許文献29(米国特許第4,650,926号)において、タブレットのような電気複写装置(electrographic system)の数値的補正を、ルックアップ・テーブル・システムを使用して生の2次元座標データを補正することにより行なうシステムについて記載している。
【0027】
ドラムは特許文献30(米国特許第5,101,081号)において、タブレットのような電気複写装置を遠隔手段を使用して数値的に補正するシステムについて記載している。
【0028】
マクダモットは特許文献31(米国特許第5,157,227号)において、2DxTを複数の保存定数を用いて補正する数値的方法を示唆しており、これらの保存定数を動作中に使用して1つ以上の多項式を利用して制御することにより、報告されるタッチ位置をゾーンまたは象限ごとに補正する。
【0029】
バブらは特許文献3(米国特許第5,940,065号)及び特許文献4(米国特許第6,506,983号)において、2DxTの均一シート素子(2DxT uniform sheet element)を、ゾーンまたは象限ごとに区切ることなく、学習プロセスの間に求められる係数を使用して、個々のユニット毎に線形化して、更に小さなプロセス変動に関する補正を行なう数値的方法を示唆している。バブが開示するこれらの方法は複雑であり、かつ「80個の係数」をもつ4次多項式を含み、これらの多項式の係数は厳密に、かつ時間の掛かる校正手順を経て求める必要がある。この発明者が行った試験では、6次多項式によって正常な使用において許容される精度を実現する必要があり、かつ結果が、熱ドリフトなどに起因して校正後も極めて小さい変動を非常に起こし易いことが判明している。特に、コーナー接続は長期間の座標変動の大きな原因であることが判明している。何故なら、これらの接続は、接続サイズ及び品質に関して大きな寄与因子の特異点として作用するからである。更に、数値的補正方法では、高分解能出力を生成するために高分解能デジタル変換が必要とされる。例えば、14ビットADCにおいては、座標が9ビットに相当する分解能で得られる必要がある。増幅器システム及びADCに必要とされる余分のコスト及び電力は多くの用途において非常に大きくなり得る。
【特許文献1】独国特許第203,719号
【特許文献2】米国特許第4,198,539号
【特許文献3】米国特許第5,940,065号
【特許文献4】米国特許第6,506,983号
【特許文献5】米国特許第2,338,949号
【特許文献6】米国特許第4,827,084号
【特許文献7】米国特許第2,925,467号
【特許文献8】米国特許第4,293,734号
【特許文献9】米国特許第4,371,746号
【特許文献10】米国特許第4,822,957号
【特許文献11】米国特許第4,678,869号
【特許文献12】米国特許第3,699,439号
【特許文献13】米国特許第4,680,430号
【特許文献14】米国特許第5,438,168号
【特許文献15】米国特許第4,649,232号
【特許文献16】米国特許第4,686,332号
【特許文献17】米国特許第5,149,919号
【特許文献18】米国特許第5,463,388号
【特許文献19】米国特許第5,381,160号
【特許文献20】米国特許第5,844,506号
【特許文献21】米国特許第6,137,427号
【特許文献22】米国特許第4,733,222号
【特許文献23】米国特許第3,921,166号
【特許文献24】米国特許第6,452,514号
【特許文献25】米国特許第5,181,030号
【特許文献26】米国特許第5,305,017号
【特許文献27】米国特許第5,914,465号
【特許文献28】米国特許出願第60/422837号
【特許文献29】米国特許第4,650,926号
【特許文献30】米国特許第5,101,081号
【特許文献31】米国特許第5,157,227号
【特許文献32】米国特許第5,730,165号
【特許文献33】米国特許第6,288,707号
【特許文献34】米国特許第6,466,036号
【特許文献35】米国特許第6,535,200号
【特許文献36】米国特許第6,452,514号
【特許文献37】米国特許出願第2003/0132922号
【特許文献38】米国特許第5,457,289号
【非特許文献1】www.qprox.com/downloads/datasheets/qt110_103.pdf
【非特許文献2】www.qprox.com/downloads/datasheets/qt310_103.pdf
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
技術要約
上記方法の全てにおいて、次の不具合のうちの1つ、または組み合わせが生じる。
希少な構成材料または特異な方法を使用すると、製造のために特殊な専門知識または設備が必要になる。
【0031】
ガルバノ原理に基づく簡単な4ワイヤ構成の抵抗タッチ・スクリーンに比べてコストが非常に高い。
直交する導体の交差を可能にする3つ以上の層が必要になる。
【0032】
多くの電極接続が必要になるので配線が高く付く。
線形問題により、複雑なアルゴリズムを修正する必要がある。
制御するのが難しいエッジ・パターンの特殊な線形化が必要になる。
【0033】
小さいか、あるいは大きいタッチ領域に十分に適してはいない。
複合曲線のような複雑な表面形状をなぞることができない。かつ/あるいは
数百ミクロンよりも厚い表面を通して動作することができない。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明によれば、タッチ・センス式位置センサ(touch sensitive position sensor)が提供され、この位置センサは、タッチ・センス式プラットフォームを画定する基板と、基板上に互いに離間して配置される第1及び第2抵抗バスバーと、これらのバスバーの間に配置される異方導電性領域と、を備え、異方導電性領域内に生じる電流はバスバーに向かって優先的に流れる。
タッチ・センス式位置センサは検出素子を有し、この検出素子は、第1抵抗バスバーと、第1抵抗バスバーから離れて位置する第2抵抗バスバーと、第1抵抗バスバーと第1抵抗バスバーとの間に延びる異方導電性領域と、を備え、異方導電性領域内に生じる電流がバスバーに向かって優先的に流れる。
【0035】
本発明の典型的な実施形態では、バスバー及び異方導電性領域は、1kΩ〜50kΩの間の抵抗を有する。これらのバスバーは、例えば+/−10%,20%,50%,または100%内で、ほぼ同じ抵抗を有することが好ましい。バスバーの抵抗が、バスバーの間に設けられている異方導電性領域の抵抗よりも小さい場合に有利となる。
【0036】
異方導電性領域は、異方導電性を示し、かつ基板上に支持される分子基板膜を使用してか、あるいは第1抵抗バスバーと第1抵抗バスバーとの間に並列接続される複数の抵抗ストライプを使用してか、あるいは他の方法により形成することができる。
【0037】
抵抗ストライプを使用して異方導電性領域を形成する場合、これらのストライプは抵抗配線の各区分により形成されるか、あるいは例えば基板上に堆積する抵抗材料により形成可能である。更に、抵抗ストライプの幅は、これらの抵抗ストライプの間のギャップよりも広いことが好ましい。
【0038】
本発明の特定の実施形態では、異方導電性領域から離間される導電被覆領域(conductive overlay)が設けられており、導電被覆領域及び異方導電性領域が外部印加圧力によって互いに接触するようになる。
【0039】
特定の実施形態では、第1抵抗バスバーは第1電極と第2電極との間に延び、かつ第1抵抗バスバーは第3電極と第4電極との間に延び、位置センサは更に、第1、第2、第3、及び第4駆動チャネルを、第1、第2、第3、及び第4電極のうちのそれぞれ対応する電極に関連する形で備え、各駆動チャネルはチャネルの電極とオブジェクトの位置との間の抵抗に依存する出力信号を生成するように動作する。これらの出力を処理するためにプロセッサを設けることができ、プロセッサは、これらの駆動チャネルからの出力信号を比較することにより、オブジェクトの位置に関する推定値を生成するように動作する。プロセッサは、これらのバスバーの間に延びる第1方向におけるオブジェクトの位置を、第1及び第2電極に関連する信号の合計、並びに第3及び第4電極に関連する信号の合計についての比例式による解析に基づいて推定するように構成することができる。プロセッサはまた、これらのバスバーに沿って延びる第2方向におけるオブジェクトの位置を、第1及び第3電極に関連する信号の合計、並びに第2及び第4電極に関連する信号の合計についての比例式による解析に基づいて推定するように構成することができる。またプロセッサは、更に、補正を推定位置に検出素子に関連する所定の歪みに基づいて適用するように動作することが好ましい。通常、所定の歪みは1次元的なピン・クッション歪みである。
【0040】
本発明によるタッチ・センス式位置センサは制御パネルに組み込むことができ、更に、その制御パネルを多種多様な異なる装置の一部として組み込むことができることは理解されるであろう。
【0041】
本発明によれば、オブジェクトの位置を2次元的に検出するタッチ・センス式位置センサが提供され、その位置センサは、異方導電性領域によって分離される第1及び第2抵抗バスバーを有し、異方導電性領域は、生成電流がバスバーに向かって優先的に流れるように配置される。生成電流、例えば検出素子に関連する駆動回路によって生成される電流が1つの方向に沿って優先的に流れ、位置推定値のピン・クッション型の歪みの大部分がこの方向に制限される。このような1次元的な歪みはスカラー補正係数を適用することにより補正することができる。
【0042】
本発明は、2DxTとして使用されることになるプラスチック・パネルまたはガラス・パネル、あるいは他の誘電体の背後において容量を検出する新規の導電材料パターンを、タッチ・スクリーンまたは「タッチ・パッド」のいずれかの形態で提供する。
【0043】
本発明は、パターニングされていない4電極素子の特徴の幾つかをストライプ型素子及び数学的補正と組み合わせて新規の種類の異方性2DxT素子または単純には「ストライプ型素子」を実現する。本発明は、前述の2DxTアプローチの不具合を解決するものであり、かつ従来のプロセス及び材料を使用するのでコストが非常に小さい。
【0044】
以後、特に断らない限り、「接続(connection)」または「接続された(connected)」という用語は、ガルバニック接触または容量結合のいずれかを指す。「素子(element)」という用語は、導電材料により作製される物理電気検出素子を指す。「電極(electrode)」という用語は、素子に設けて素子を適切なドライバ/センサ電子機器に接続するガルバニック接続ポイントのうちの1つを指す。「オブジェクト(object)」及び「指(finger)」という用語は、ワイパーまたはポインタまたはスタイラスのような非生物オブジェクト、あるいはヒトの指または他の突起物のいずれかに関して同じ意味に使用され、これらのうちのいずれかが素子に隣接することにより、いずれかの回路経路を通して、ガルバニック効果によるか否かに拘らず、素子の領域から基準回路に戻る形の局所容量結合が形成される。「タッチ(touch)」という用語は、オブジェクトと素子との間の物理的接触、またはオブジェクトと素子との間の自由空間への近接、あるいはオブジェクトと、オブジェクトと素子との間に存在する誘電体(例えば、ガラス)との間の物理的接触、またはオブジェクトと素子との間に存在する中間誘電体層を含む自由空間への近接、のいずれかを含む。特定の回路パラメータまたは配向に関する記述は、本発明を制限するものと捉えられるべきではなく、広い範囲のパラメータを、回路またはアルゴリズムに変更を加えることなく、またはわずかな変更を加えることにより使用することができる。特定のパラメータ及び配向は単に例示としてのみ記述される。
【0045】
電荷転送型静電容量センサに関する筆者の以前の特許、特に特許文献32(米国特許第5,730,165号)、特許文献33(米国特許第6,288,707号)、特許文献34(米国特許第6,466,036号)、特許文献35(米国特許第6,535,200号)、特許文献36(米国特許第6,452,514号)、及び筆者による同時係属中の特許文献28(米国特許仮出願番号60/422837)を参照されたい。特に、これらの特許の各々に記載されている電子検出回路及び電子検出方法は、本明細書に記載する本発明と組み合わせて使用することができるが、これらの方法が全てである訳ではないことに留意されたい。多種多様な容量検出回路を本発明に使用することができる。これらの特許に記載されている種々の電気回路及び検出方法を用いて本発明の電極を駆動して、その結果を分析することができる。
【0046】
また、容量タッチ・スクリーンに対する影絵効果(handshadow effect)を扱い、かつ本発明に適用して2DCTの後処理に役立たせることができる筆者による同時係属中の特許文献37(米国特許出願第2003/0132922号)を参照されたい。
【0047】
「電荷転送型静電容量センサ」と題された筆者による同時係属中の特許文献28(米国特許出願第60/422837号)が(特に当該出願の図12に関連して記載されているように)本発明を考案するための基礎となっており、かつ当該出願の回路構成及びスイッチング方法を、本発明の電極を2DCTモードで駆動するように特に良好に適合させる。本発明は、インクまたは真空蒸着材料のような新規の導電材料パターンであり、このパターンは単一層素子として電気的に配置され、ピン・クッション歪みは1つの軸の方向にのみ生じる。残りのピン・クッション歪みは、アルゴリズムを使用してか、あるいはハードウェアで容易に補正され、以下に説明するようにバブ及びウィルソンによる方法よりも遥かに簡単である。素子パターンは既知の方法を使用して容易に形成され、かつ複合湾曲カバー・レンズなどのような複雑な表面をなぞることができる。パターンは強い異方導電性を、周辺の単方向抵抗導体によって区切られるコア検出領域において示す。
【0048】
本発明の1つの目的は、普通の、安価な材料及び製造プロセスをガルバニック効果を利用する異方導電性と共に使用して2DxT検出素子を提供することにある。
本発明の別の目的は、簡単な、計算コストの低い方法を使用して容易に補正することができるエッジ歪みを有する2DxT検出機構を提供することにある。
【0049】
本発明の1つの目的は、可能な最高解像度を可能な最も簡単なパターンを使用して実現するための位置補間を可能にすることにある。
本発明の別の目的は、非常に粗い生の信号に対するアナログ−デジタル変換(ADC:analog−to−digital converter)の分解能で高い位置解像度を実現し、かつ粒度の粗い結果をもたらす2DxT素子を提供することにある。
【0050】
本発明の別の目的は、熱ドリフトの影響を受け難く、かつ製造プロセスにおいて非常に再現性の良い2DxT素子を提供することにある。
本発明の別の目的は、先行技術に比べて非常に簡単な「学習」校正プロセスしか必要としないか、あるいはデザインの校正を必要とするか、あるいは全く校正を必要としない2DxT素子を提供することにある。
【0051】
本発明の別の目的は、1つの導電材料層しか必要としない2DxT素子を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、最大10mmの厚さ、またはそれ以上の厚さを有する、ガラスまたはプラスチック・シートのような非常に厚い誘電体カバー・レンズの背面の上へのこの層の配置を可能にするか、あるいは空気を介してのポインティングを可能にすることにある。
【0052】
本発明の更に別の目的は、配線要件が非常に簡単な2DxT素子を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、信頼性が高く、密封表面を有し、消費電力が小さく、かつ市販のマイクロ・コントローラ及び普通の駆動電子機器を使用して制御かつ検出することができるセンサを提供することにある。
【0053】
本発明の更に別の特定の好適な態様を、次の非制限的な独立項及び従属項に示す。
1.ポジション・データに関して選択的に表面とのアクセスが行なわれるタイプの装置であって、優先的に流れるガルバニック電流の方向に主要部分を有する導電素子を備える装置。
【0054】
2.項1に記載の装置において、素子は導電境界によって区切られている。
3.項1又は2において、素子は単一層の上に設けられている。
4.項1又は3であって、複数の電極を備える。
【0055】
5.項1〜4のうちのいずれか一項であって、タッチ位置を2次元的に評価することを目的として、前記素子に接続されている回路を備え、接続は電極に対して行なわれる。
6.項1〜5のうちのいずれか一項であって、ピン・クッション歪みを補正する処理手段を備える。
【0056】
7.項6において、補正はスカラー係数である。
8.項6において、補正は一連のスカラー係数に基づく。
9.項6において、補正は次の公式に基づく。
【0057】
Pcy(X,Y)=Py/(k1X2+k2X+k3)
10.タッチ・ポジション位置を求めるために使用される素子を作製する方法であって、素子が導電領域の周辺で異方導電性を有するように作製される、方法。
【0058】
11.項10において、素子は異方性材料により作製される。
12.項10であって、位置歪みの補正を行なう方法を備える。
13.項12において、歪みの補正を行なう方法は1つの軸についてのみ適用される。
【0059】
14.項12において、歪みの補正を行なう方法はスカラー乗算に基づく。
15.項1〜15のうちのいずれか一項において、電子回路に、筆者の特許文献34(米国特許第6,466,036号)に開示されるいずれかの方法による電源を基準とする電荷検出方法を用いる。
【0060】
16.項15において、回路はマイクロ・コントローラを含む。
17.項1〜16のうちのいずれか一項において、素子は、光を透過する抵抗導体により作製される。
【0061】
18.項1〜17のうちのいずれか一項において、素子は、共通のバスバーを共有する複数の異方導電ゾーンを含む。
19.光を透過する異方導電素子を有し、光を透過する基板の遠位側に取り付けられるタッチ・スクリーンであって、近位側がタッチに使用され、複数の電極を有するタッチ・スクリーン。
【0062】
20.項19において、電極は検出回路に導電ゴムを使用して接続されている。
21.項19又は20において、タッチ・スクリーンは電子ディスプレイの上に取り付けられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
本発明を更に深く理解するために、かつ本発明をどのようにして実施することができるかについて示すために、一例として添付図面を参照することとする。
図1a及び1bは補正ハードウェアまたはアルゴリズムを使用する前の2DxT技術に関する先行技術を示している。図1aのピン・クッション効果は良く知られている。この効果は、容量によって生じる、タッチ・ポイントから4つの接続ポイントに向かう電流を共有することにより生じる。この効果は、2DCT(2次元静電容量変換器)及び2DRT(2次元抵抗変換器)の5ワイヤ・タッチ・スクリーンの両方において観察され、5ワイヤ・タッチ・スクリーンは2DCTと同じ電位勾配のガルバニック電位を利用するが、この場合、可撓性の「ピックオフ」カバー・シートは圧力が加えられて湾曲し、2DRTに接続される。これらの素子におけるピン・クッション効果は、タッチ位置が全ての接続ポイントからエッジに沿って離れるにつれて大きくなる。この効果はスクリーン・エッジの中心で最悪となる。図1bに示すように、電流によって複数のベクトルが生成され、これらのベクトルによって、位置に依存する段階的歪みが生じ、放物線曲率の報告位置が生成される。これらのベクトルは普通、直交しない。その代わり、補正の角度及び絶対値は、素子上のタッチ位置によって大きく変化する。
【0064】
この効果を打ち消すために種々の方法が考案されており、特に、上述したような導電スクリーン周辺の非常に低い抵抗のバスバー、特殊なエッジ・パターン、スクリーン・エッジへの複数の接続ポイントなどを使用する方法がある。ビンステッド、ゲルファイデ、ケーブル、及びグレニーアスによる特許に見られるように個別導体によってピン・クッション歪みの問題を、複数の層、高価な回路、及び多い電極接続数を使用する特殊な構成方法を使用することにより大きく解決する。これらのタイプのスクリーンはサイズに良好に対応しておらず、かつ製造コストが高い。このような方法の例は、ペッパーが考案したエッジ・パターンであり、図2に示す。このパターンは複製するのが非常に難しく、熱ドリフトの影響を受け、かつ調整及び製造するために非常に高いコストを要することが分かっている。
【0065】
上述の方法よりも安価、かつ容易に製造が可能で、更には不利な環境における使用に対して非常に安定し、かつ適する新規の静電容量タッチ・スクリーンの製造方法に対する大きな要求がある。特に、家庭用電気製品、携帯電話、及び他の携帯用機器、POS端末などの用途に用いられるこのようなデバイスに対する要求がある。
【0066】
本発明の実施形態は、「ピン・クッション歪み」がないが高価な回路及び高い製造コストを伴う先行技術によるストライプ素子と、パターニングされていない抵抗シート素子との間の中間の特徴を備える素子を提供する。この新規のハイブリッドな解決方法によって、ピン・クッション効果が1つの軸にのみ生じ、他の軸はほとんど歪むことがない。更に、後で分かるように、残りのピン・クッション歪みは、ほぼ直交し、かつ予測可能なベクトルを有し、更には非常に簡単な数値的方法を使用して補正可能であり、ユニット毎の再現性が高く、かつ先行技術における場合よりも熱ドリフトの差による影響を受け難い。
【0067】
図3に示すのは、本発明の1つの実施形態による検出素子に使用される導電材料を表わすパターンである。この図は、4つの電極301,302,303,及び304を有する単一層の上の1つの導電素子を示している。2つの非常に小さい抵抗のバスバー305及び306が、301から302に、及び304から303に向かってそれぞれ横断している。複数のストライプ導体310がバスバー305から306に向かって横断し、この場合のストライプ導体は少なくとも2本であるが、一般的には3本以上である。これらのストライプのうちの2本は各バスバーの両端から他方のバスバーに向かって横断して完全に区切られた表面を形成する。端のストライプもバスバーであると考えることもできるが、これらのストライプは必用に応じて図示されている水平方向バスバーよりも大きい経路抵抗を有することができるので、特異であり、従って本明細書を通じてストライプと呼ぶことにする。
【0068】
本発明の素子は別の構成は、異方性導電率によって特徴付けられ、かつ直線導電セグメントにより形成される包囲区分境界を有するコア領域を有するものとして観察することができる。ストライプの目的は、異方的にガルバニック電流をコア領域内に生じさせることである。一旦、電流が境界経路に達すると、電流は最終的に電極に導かれる。
【0069】
設計に適するストライプ310の数は、検出対象のオブジェクトのサイズに対する素子の幅によって変わり、これについては以下に説明する。電極群に接続されるワイヤ312a〜dは2DCTの場合、素子を駆動/検出回路に接続する。2DRTの場合においては、ワイヤ312a〜dは駆動回路に接続され、検出機能は、図11に示すように、可撓性のユーザ押下型カバー・シートにより得られる。
【0070】
図10は本発明を具体化する別のパターンを示している。このパターンは、ストライプが細いスリットによって分離される(すなわち、ストライプは図3に示すストライプよりも幅が非常に広い)点を除いて図3のパターンとほぼ同じであり、素子は導電材料によってほぼ覆われ、かつ非常に小さい部分−スリット−のみが覆われない。この構成は、以下に更に説明するように、2DRT用途の方に適するが、2DCT用途に使用することもできる。2DCTを使用する場合のこの構成の1つの利点は、ストライプが図3の例における場合よりも大きな表面積を有するので、指と素子との容量結合が大きくなることである。この構成の1つの不具合は、バスバーとバスバーとの間の合計抵抗が特定のシート抵抗に関して相対的に小さくなり、これによってピン・クッション効果が以下に説明されるように悪化し易くなる。
【0071】
図3に示すテスト対象のストライプ及びバスバーの抵抗の比較をすると、バスバーが約40Kオームであり、ストライプが約160Kオームであるが、実際には、これらの値は単なる目安であり、本発明はこれらの値に制限されない。バスバーよりもストライプに大きな抵抗を使用することにより、ピン・クッション効果を抑制し易くなるが、ピン・クッションはいずれにしても数値的に容易にほとんどを補正することができるので、複数の抵抗値のいずれの組み合わせによっても異なる満足度が得られるようになる。本発明を大きな抵抗を有する素子を用いる形で使用することができる点が非常に注目される。何故なら、このような素子では、低いコストかつ小さい電力の駆動兼検出電子機器を用いるだけで済むからである。
【0072】
図4は本発明の典型的な実施形態の集中型モデルを示している。バスバー305及び306は約1K〜50Kオームの抵抗線により構成され、かつ理想的には互いに対して10%以内の精度の抵抗となる。ストライプ310はバスバーの抵抗の約5〜10倍の大きさの抵抗線により構成される。図4には9本のストライプが示されている。コーナー電極301,302,303,及び304を使用して素子を駆動/検出電子機器、すなわち2DCTの場合は容量検出ドライバまたは2DRTの場合はガルバニック・ドライバに接続する。各ストライプ及びバスバーは回路接地に対して所定の大きさの接地浮遊容量(stray background capacitance)401を有する。ストライプは隣接ストライプの間で相互容量を有する。このような接地容量は本質的に良性であり、本発明の性能に影響を及ぼすことが無いことが分かっている。これらの容量は本発明において等しく、あるいは均等に作用する必要はない。何故なら、素子は重ね合わせの原理に従うからであり、そしてこのような寄生値は以下に説明するように、駆動電子機器によって校正することにより容易に取り除かれるからである。
【0073】
位置403に示すのは、2DCTモードにおけるタッチに起因する容量Ct402である。本発明は、本発明によって4つの電極信号に対してレシオメトリックな出力になってCtの絶対値に依存しない位置を生成する回路及び/又はアルゴリズムを使用することができるということからすると、Ctの絶対値がどのような値であっても有効に機能する。2DRTモードでは、カバー・シートによって電位勾配がなくなるが、このとき普通、タッチ圧力を受けた状態でカバー・シートから素子に向かってガルバニック接続が行なわれる際の4つの電極への時間多重駆動信号が使用される。
【0074】
2DCTモードでは、複数のストライプの間にタッチし、かつタッチ位置を補間することも可能である。図5は、指(図示せず)に起因して、平面の403に位置するタッチ容量を有する素子を示している。図6には、ガラスのような基板に接触が行われるときの本発明の断面が示される。指605がタッチすることにより生じる容量603は、図6に示すように、3つの小さい部分容量Ct1、Ct2、及びCt3に分割され、これらの容量の比はストライプ310a,b,c,..の間のタッチの相対位置によって変わる。筆者の同時係属中の特許文献28(米国特許出願第60/422837号)の図6には、抵抗によって接続される2つの隣接電極の間の補間が示されている。当該発明におけるタッチに対する補間は、ストライプ間で厳密に同じ態様でX軸方向に行われるだけでなく、各ストライプに沿ってY軸方向にも行われる(図示せず)。X軸方向の分離抵抗は、各Ct603を有する各ストライプ上から始まって、バスバーに戻って通過して他のストライプに達する経路である。X方向の補間は、2本のYストライプを接続するバスバー抵抗の短いセグメントであって、合計電気バスバー「長」の一部としてのバスバー抵抗の短いセグメントの抵抗に比例する形で行われる。ストライプ自体の抵抗はX位置を求めるために重要ではない。何故なら、各ストライプの両端は文献に記載されているほとんどの2DCT駆動回路において、かつ筆者の種々の先行する特許公報に記載されている電荷転送回路によって駆動される場合には確実に等電位にまで駆動されるからである。従って、これらのストライプが全バスバー長の10%に相当する長さだけ離間する場合、補間が行なわれる部分はX方向の10%となる。
【0075】
図5の素子は90度回転させることができ、上記の説明をY方向に関して行なうことができることに注目されたい。タッチの検出及び位置に関して本発明の素子が配向される好適な角度というものはない。以下に示す説明及び方式では、簡便性を前提とする、すなわち複数のストライプを縦のY方向の向きに揃えるが、素子を90度回転させても同じ物理動作を適用することができ、かつ式は90度の移動が行われても成り立つ。この特許における向きに関する特殊性は説明を簡単にするため以外の何ものでもないので、決してこの特許を制限するものと捉えられてはならない。
【0076】
種々の発明者による文献に詳しく記載されているが、本願発明者が自身の特許文献33(米国特許第6,288,707号)、特許文献34(米国特許第6,466,036号)、及び同時係属中の特許文献28(米国特許出願第60/422837号)に開示するいずれかのタイプとすることが好ましい測定回路は、4つのコーナー電極301,302,303,及び304との標準的な接続を行なうことにより使用される。測定回路は、図3に示す電極群の該当する電極に接続される4つの駆動チャネルを含み、各チャネルは、チャネルの電極とタッチ位置との間の抵抗経路長によって変わる出力信号を生成するように動作する。他の方法では他の方式を使用することができるが、タッチ位置を計算する好適な方法は、筆者の同時係属中の特許文献28(米国特許出願第60/422837号)に開示する方法の適応版である。この方法では、4つのコーナー信号を所定の時点に校正して各コーナーの基本的な信号基準レベルを求める。校正ステップは、例えば生産ラインにおける設計期間の間に1度だけ、または電源投入の度に、あるいは素子へのタッチが行われていない時点を判断する方法を使用して実行することができる。ドリフト補正は、筆者が以前に取得した特許のうちの幾つかの特許、及びQuantum Research Group Ltd(英国)製のQT110デバイス(非特許文献1)のような製品のデータ・シートから知ることができる方法に従って適用することができる。
【0077】
X(すなわち、図3に示す水平方向)に沿ったタッチ位置を図3の素子を使用して計算するために、信号を次のステップに従って処理するが、これらのステップでは、リアルタイムで収集され、かつ4つの電極301,302,303,及び304に接続される信号はそれぞれ、各コーナーに対応して、S301,S302,S303,及びS304であり、基本基準レベルはR301,R302,R303,及びR304である。
【0078】
1)X方向の基準値及び信号を合計する。
RX’=R301+R304(左辺側基準値の和)
RX’’=R302+R303(右辺側基準値の和)
SX’=S301+S304(左辺側信号の和)
SX’’=S302+S303(右辺側信号の和)
2)X方向のデルタ信号、すなわちΔSigX’,ΔSigX’’を計算する。
【0079】
ΔSigX’=SX’−RX’
ΔSigX’’=SX’’−RX’’
3)X方向の位置を示す比Pxを計算する。
【0080】
Px=ΔSigX’’/(ΔSigX’+ΔSigX’’)
上式において、Pxは0から1の範囲であり、‘0’は左端、‘1’は右端である。
X方向に関する公式は、次式のように展開し直すことができる。
【0081】
(式1)Px=(S302+S303−R302−R303)/(S301+S302+S303+S304−R301−R302−R303−R304)
Y方向に沿ったタッチ位置を図3の素子を使用して計算するために、信号を上に示した公式と同様の公式に従って処理する。
【0082】
1)Y方向の基準値及び信号を合計する。
RY’=R303+R304(下辺側基準値の和)
RY’’=R301+R302(上辺側基準値の和)
SY’=S303+S304(下辺側信号の和)
SY’’=S301+S302(上辺側信号の和)
2)Y方向のデルタ信号、すなわちΔSigY’, ΔSigY’’を計算する。
【0083】
ΔSigY’=SY’−RY’
ΔSigY’’=SY’’−RY’’
3)Y方向の位置を示す比Pyを計算する。
【0084】
Py=ΔSigY’’/(ΔSigY’+ΔSigY’’)
上式において、Pyは0から1の範囲であり、‘0’は下端、‘1’は上端である。
Pyに関する公式は、次式のように展開し直すことができる。
【0085】
(式2)Py=(S301+S302−R301−R302)/(S301+S302+S303+S304−R301−R302−R303−R304)
従って、報告されるが未補正の、すなわち「生の」推定位置の完成形は(Px,Py)である。
【0086】
上式は単なる例であり、他のスクリーンに関連して使用される他の式も同様な結果となる。
図6に示すのは、複数のストライプ上で前記ストライプ上に分布容量Ctを生じさせるタッチ601である。結果として生じる素子中の電流によって、複数のストライプ間の結合による局所的分布容量Ctが形成され、この容量はタッチ及びストライプの隣接表面積にほぼ比例する。重ね合わせの原理を適用し(全てのシート状の素子において適用されるように)、そして結果として生じる判定位置に対して正しく重み付けすると、位置がストライプの数によって提供されると考えられる解像度よりも遥かに高い実効解像度で特定される。この効果を使用すると、他のストライプを使用する多くの2DCT、例えば特許文献22(米国特許第4,733,222号(エバンス))の2DCTにおける解像度が著しく向上するが、エバンスが数値的補間を使用するのに対して、本発明は複数のストライプ間の分布容量の物理特性を使用して同じ性能を実現し、計算を更に行なう必要がないか、あるいは各ストライプを個々に電子的に指定する必要がない。補間は素子自体に固有のものである。これは、2DCT抵抗シート素子において発生すると以前から知られている効果である。
【0087】
図7aは、上式1及び2に従ってコーナー電極信号に基づいて計算されるX軸に沿ったY行のタッチの計算位置を示しており、この計算位置は、Y=0.5とY=1との間の9個のY位置に対応する9個の行R0〜R8に沿ったX=0.5(中心)とX=1(右端)との間の異なるX位置で行われる一連のタッチに対応する。図7bは、検出素子の全ての象限における歪みを模式的に表わしている。接触境界線が所定の数のストライプにまたがる形で素子にタッチする指には、指をストライプに直交する方向になぞるときに注目すると、X方向にはむら(cogging)または非線形性は観察されない(X方向は等間隔になっている)。この様子は図8に図式的に示すことができ、図8は、ストライプとX方向に交差する7つの行に関する補正ベクトルをプロットしたものである。非直交、非垂直補正ベクトルは観察されない。
【0088】
この注目すべき結果は、ストライプによって、ほとんどのガルバニック電流がY軸に沿ってのみ配置されるストライプに閉じ込められることにより生じる。この閉じ込め効果によって、素子のどこにも非直交電流ベクトルが生じない。一旦、電流がストライプからバスバーに達すると、電流は90度回転して、2つの最も近いコーナー電極に向かう。この段階では、電流は隣接ストライプに降りて迂回する形で流れて第2のバスバーに達するだけである。これによって、ピン・クッション効果がバスバーに沿って生じる。
【0089】
図7a,7b,及び8から、Y軸では、歪みは線形であり、かつX方向の位置によって変わる単純な倍率を使用して補正することができることが分かる。X方向の各位置に関して、1つのスカラー(ベクトルではない)補正係数が存在し、この補正係数を使用してY方向の補正済みタッチ位置を得ることができる。
【0090】
【数1】
上式では、PyはY方向の生の報告された位置であり、Pcy(x,y)はX及び生のYの関数としてのY方向の補正済み位置であり、
【0091】
【数2】
は、補正係数を求めるX方向の各位置に固有の補正係数である。係数
【0092】
【数3】
は任意の1つの象限(例えば、図7aに示す象限)に関する解を求めるだけでよく、他の3つの象限に関する結果はその解をそのまま映したものになる。補正には、非直交成分が含まれず、かつ1つの係数
【0093】
【数4】
がY(x)の全ての信号に適用されることにより、バブによる手法よりもほぼ2桁だけ計算が簡単になるので、非常に高速の補正を、遅くて安価な、例えば0.50USドル以下のコストのマイクロ・コントローラを使用して行なうことができる。更に、歪み及び補正方法の簡略化は、変動する温度または電気条件の下でも素子を更に安定させ、そして更に素子を再現性良く製造することができることを意味する。バブによる手法とは異なり、素子の補正には曲線フィッティングを可能にするための複数回の試行を行わなくても済む。ストライプ対バスバーの抵抗比を再現することができる限り(絶対値が安定する必要はない)、係数
【0094】
【数5】
はユニット毎に同じになる。ユニット毎に抵抗比が異なる場合は、報告されたタッチ位置の誤差項に対する効果が非常に小さくなり、1つの軸に関する誤差によって他の軸に関する誤差が非常に小さくなるだけである。本発明の素子では通常、誤差項がX方向及びY方向に関して分離されるので、先行技術に比べて大きな効果が得られる。
【0095】
本発明の簡便性を、バブによる手法が必要とする「80個の係数」及び4次多項式と比較すべきであり、バブによる手法における係数は大規模な校正手順により求める必要がある。本発明は1ポイントの校正だけで済むか、あるいはほとんどの場合において、校正を全く必要としない。何故なら、素子歪みが簡単であり、予測可能であり、かつユニット毎に再現性が高いからである。
【0096】
補正係数
【0097】
【数6】
は、簡単かつ高速の補正を行なうための補間を含むルックアップ・テーブルを使用して適用することができる。補正係数
【0098】
【数7】
は、以下の簡単な2次方程式を使用して数学的に計算することもできる。
【0099】
【数8】
上式からY補正の完全な式が以下のように導かれる。
【0100】
(式5)Pcy(X,Y)=Py/(k1X2+k2X+k3)
上式においては、k1,k2,及びk3はピン・クッション歪みの曲率に依存する係数であり、XはX軸に沿った位置であって、中心スクリーンからスタートして左方向または右方向のいずれかに移動する位置の絶対値である。この2次方程式はシミュレーション・モデルにより生成されたものであり、1%以内の精度を有する。この方程式は非常に大きな非線形性を取り扱うことができないが、このような大きな非線形性は必要に応じて補助的な方法を使用して補正することができる。これらの式はバスバーとストライプとの間の抵抗比だけでなく、素子の形状寸法比に依存する。これらの式は抵抗絶対値の影響は受けない。
【0101】
上の解析を2DCTまたは2DRTに同様に適用する。2DRTは通常、2DCTとは、素子が複数の信号によってのみ駆動され、これらの信号が次に、5番目の電極接続を使用するカバー・シートによって消滅して解析が行われるという点で、「逆の」動作を行なう。正しく配置された素子上の電極群は普通、時間多重モードで駆動されて固有の信号をX方向及びY方向に交互に検出することができる。例えば、2つの左辺側の電極をまず接地し、そして2つの右辺側の電極を固定の同じ電位に駆動する。カバー・シートをサンプリングして生のX位置を取得する。下辺側の電極群を次に接地し、そして上辺側の電極群を固定の同じ電位に固定する。カバー・シートをサンプリングして生のY位置を取得する。プロセスを継続して繰り返し、サンプルは、カバー・シートが素子とガルバニック接触していることが検出される場合にのみ有効であると判断される。これは電位差測定を用いる検出方法であり、特許文献に詳しく記載されている。他の2DRTサンプリング方法を使用することができ、この章において記載した手順が好適な方法であると考える必要はなく、かつサンプリング方法が本発明の目的である訳でもない。
【0102】
式5には、1象限における一連の解のみが必要であり、他の3象限に対しては、この結果を映すだけで済む。この結果は図7a及び7bに示されている。図7aは右上象限における歪みを示し、このパターンを他の3つの象限に映して図7bのパターンを生成する。
【0103】
影絵(handshadow):ゾーンに区切る構成の2DCT素子
2DCT影絵現象については、筆者による本出願と同時係属中の特許文献37(米国特許出願第2003/0132922号)及び特許文献38(米国特許第5,457,289号)に記載されている。60×60mmのような「携帯電話サイズ」のスクリーンは通常、影絵の影響を大きく受けることがないので補正作用が保証される。
【0104】
しかしながら、必要であれば、影絵の影響を小さくするための1つの方法が筆者による前述の特許文献37(米国特許出願第2003/0132922号)に記載されているので参照されたい。この文献を参照することによりこの文献の内容が本発明の開示に含まれる。
【0105】
第2の方法では、基本的に本発明の素子を図9に示すように2回繰り返して使用する。しかしながら、図9から分かるように、本素子は、バスバーを効果的に共有して関連部品数を減らすことにより得られる。パターンが、図示の6個の節点(すなわち電極群)301,302,301a,302a,303,及び304上の駆動/検出回路により起動すると、素子は、素子における検出が2つの異なるゾーン、すなわち上側部分及び下側部分で行われるように効果的に分割される。これらのゾーン内部での検出は上述の如く行われる。影絵の容量はタッチ・ポイントの下方で主として生じるので、上側ゾーンのタッチによって影絵が主として下側ゾーンで生じ、この下側ゾーンでは、影絵を前記下側ゾーンからの信号を単純に無視することにより「処理して無くす」ことができる。複数のゾーン間での影絵電流(handshadow current)間のクロス結合はほとんど生じない。
【0106】
大スクリーンでは更に多くのこれらのゾーン、すなわち素子全体の縦方向サイズに適し、かつ問題の深刻度に応じた数のゾーンを利用する。
2DRT用途
図10は、複数のストライプの間にスリットを有する素子を示している。ストライプを分離するこのような方法は、2DRTを使用する場合に特に有用である。2DRTを使用する場合では、カバー・シートを反らせて素子に小さなポイントで接触させる。接触ポイントがこれらのストライプ310のギャップよりも小さい場合には、カバー・シートは電位を検出することができず、接触が失敗することになる。
【0107】
図11は、本発明による抵抗型スクリーンを示しており、このスクリーンでは、カバー・シートがタッチによって、またはスタイラスによって内側に反るときにカバー・シートによって図10のスリットの空いたストライプからガルバニック電位がなくなる。図11の素子は、2DCTに関して上述した通りであるが、動作モードは、他の特許及び公の文献において説明される種々の5ワイヤ・スクリーン・モードに従う。普通、カバー・シートは、この技術分野では公知のように、素子から小さな「マイクロバンプ」スペーサ(図示せず)によって離れるように保持される。
【0108】
必要最低限の2DCT
図12は最小の2DCTの場合を示しており、この2DCTでは、2本のバスバー及び2本のストライプを設け、これらの全ては素子の周辺上に位置する。素子のサイズは検出対象のオブジェクトに比べて非常に大きい訳ではないので、中央部における信号レベルはオブジェクトから各導電部材までの距離に起因して、極めて小さくなることがない。本例は、ピン・クッション歪みが測定されることなく動作する。何故なら、ストライプとバスバーのインピーダンスはオブジェクトといずれかのストライプまたはバスバーとの間で形成される容量結合回路のインピーダンスよりも何桁も小さいからである。この最小の2DCTの場合では、ストライプ及びバスバーは同じ値、または大きく異なる値を有することができ、解像度または線形性に対して観察される影響を最小に抑える。図12の素子がヒトの指によって使用される場合、素子は指の直径の4倍以下の幅または高さとすることが好ましく、これによって適切な信号強度が実現する。図12の素子を使用して「ミニ・マウス・パッド」またはポインタ制御を構成して、例えば付属突起の移動性を最小に抑えた部材に使用することができ、指先または他の付属突起の非常に小さな運動によって電気製品又はGUIを制御することができる。
【0109】
ポイント−スクリーン2DCT動作
2DCT素子は「ポイント・モード」での使用に適し、このモードでは、ユーザは単にスクリーンを指で押すだけである。1つの素子のピン・クッション歪みを容易に補正することができ、かつ1つの素子を容易に使用することができるということは、電界が短い距離内に局在しないことを意味する。その結果、本発明は、メニューを用いるほとんどのグラフィカル・インターフェースにおいて高い精度を実現する「ポイント・スクリーン」デバイスとして使用することができる。
【0110】
この動作モードは、病院のような衛生用途において非常に有用であるだけでなく、スクリーン汚れを防止する普通のコンシューマ用モードにおいても有用である。
2DCT駆動回路
次に図13を参照すると、この図には本発明の2DCT用途の好適な(必須ではないが)駆動回路が示されている。この回路は、筆者による本願と同時係属中の特許文献28(米国特許出願第60/422837号)に示されるものと、4つの電極(または図9の場合の6つの電極など)全てに適用される点を除いて同じタイプである。位置A,A’,A’’,A’’’,B,B’,B’’,B’’’及びC,C’,C’’,C’’’のスイッチ1302,1303,1304の反復スイッチ動作を各電極において同時に行なって、サンプリング・キャパシタCs1305とも呼ぶ4つのキャパシタを同時に使用して電荷を注入して、測定する。この動作はスイッチ・コントローラ1307によって行われる。信号出力は、各電極に関するスイッチング・サイクルの表形式の数字であり、この数字は電圧比較器1301によって決定される閾値電圧Vtを上回る必要がある。各電極に関するサイクル数の集計は、1306の4つのカウンタが行なう。
【0111】
この回路の動作は更に詳細に、筆者による特許文献28(米国特許出願第60/422837号)において説明され、この文献はここで参照することによりその内容が本発明の開示に含まれる。
【0112】
本発明は別の構成として、筆者による特許文献34(米国特許第6,466,036号)に記載されるスイッチング・シーケンス及びスイッチング構成のいずれかを用いることができ、この文献はここで参照することによりその内容が本発明の開示に含まれる。
【0113】
信号処理回路を図14に示すが、この回路では、4つの電極信号が処理回路に入力され、今度はこの回路が座標結果を計算する。論理ブロック、マイクロ・コントローラ、または他のハードウェアまたはソフトウェアを使用して、所望の出力を得るために必要な計算を行なう。図14のブロックは普通、パーソナル・コンピュータ、プロセス・コントローラ、電気製品などのような別のシステムの一部であり、そして出力は大きなプロセスにおける単なる中間結果とすることができる。
【0114】
図15は本発明の好適な実施形態を示しており、この実施形態では、1つのマイクロ・コントローラ1501が図13のスイッチング機能を実行し、更に図14の信号処理も行なう。スイッチング機能は、従来のI/Oポートのソフトウェアで実行するか、あるいはオンチップ・ハードウェア容量変換周辺機器(on−chip hardware capacitive conversion peripheral)によって実行することができる。信号処理はソフトウェアで行なって所望の座標出力を得る。この出力は、大きなプロセスを制御するために使用する単なる中間結果とすることができ、かつ図示の出力はチップ内部の数字としてのみ存在する。
【0115】
別の構成として、本発明は、文献に記載されている任意の容量または抵抗検出回路を使用することができる。勾配に対する素子の応答は普通、駆動回路のタイプに関係なく同じである。本発明は任意の収集方法を使用する訳ではない。
【0116】
材料、作製
2DxT素子は、タッチ・スクリーンの場合はディスプレイを覆うガラス・シートまたはプラスチック・シートの背面上に、あるいはマウス・パッドなどの場合は適切な誘電体基板の上にあって、適切な抵抗を有する透明導体により作製することが好ましい。
【0117】
種々の他の特許に記載されているように、低抵抗のバスバー(両端の間が約200オーム未満)が両方のエッジに必要になることにより、全ての態様の駆動、電力、安定性、及び再現性の問題が生じる。現在広く使用されている抵抗よりも遥かに大きい抵抗を有する材料を使用することが非常に望ましい。米国のCPFilms社が生産するようなほとんどのインジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide))層、または表面に特殊仕様でスパッタ堆積される場合のITO層は約300オーム/スクエア(Ω/□)の抵抗を有する。この抵抗を約500〜2000Ω/□の抵抗になるように大きくして、ストライプ及びバスバーの抵抗が両端の間で25KΩ以上になるように作製されることが非常に望ましい。
【0118】
低抵抗材料により作製されるバスバー及びストライプの抵抗を大きくする1つの方法では、蛇行経路またはジグザグ・パターンを使用して抵抗経路長を長くする。従来の低抵抗ITOまたは錫酸化物コーティングをエッチングするか、あるいはパターニングして所望のボイドを形成して(「スイスチーズ」アプローチ)抵抗を大きくする。ストライプ及びバスバーを適切に薄く作製して、抵抗が更に最適になるように十分に大きくすることができる。
【0119】
しかしながら、理想の材料は約500〜1000Ω/□以上の固有抵抗を有するか、あるいは調整してそのような抵抗にすることができる。Agfa社のOrgacon(登録商標)導電ポリマーは、このような高い固有抵抗を有する1つの材料であり、更に透明でもあるので、ディスプレイを覆うタッチ・スクリーンに使用することができる。特に低いコストの材料はエレクトロニクス業界では良く知られているカーボン系インクであるが、不透明であるので、この材料はタブレットまたはマウス・パッド用途の方に適している。
【0120】
上述したように、いかなる特定の素子抵抗値に関する要件もなく、かつ駆動回路は、難しさの程度が異なるほとんど全ての構成に適合させることができる。原理的には、唯一の要件は、素子が非ゼロの抵抗を有することである。しかしながら、バスバーの抵抗は、Y軸方向のピン・クッション歪みを低減するために複数のストライプの合計の並列抵抗値と同程度になるか、あるいは小さくなるようにすることが好ましい。ストライプの数が多くなることによって通常、ストライプ当たりの抵抗が大きくなって同じ効果が得られことを意味し、ピン・クッション歪みはこれらのストライプの間の合計分岐抵抗に関連し、分岐抵抗はこれらのストライプの等価並列抵抗値である。これらのバスバーの中心に近く位置するストライプはピン・クッション歪みに対して不均等な影響を及ぼす。
【0121】
素子をパターニングしてバスバー及びストライプを形成する操作は、適切なステンシル・マスクを使用する蒸着法を用いて不所望のコーティング領域が生じないようにするか、あるいはシルク・スクリーニング技術を用いて所望パターンを形成するか、あるいはパッド・プリンティングまたはレーザ・スクライブ、または化学エッチング、または化学反応、またはパターニング層の形成を可能にする他の任意のプロセスを用いることにより実行することができる。Agfa社のOrgacon(登録商標)導電ポリマーの場合、パターンは、次亜塩素酸ナトリウムを使用して強制的に領域を化学反応により、実際の材料を除去することなく非導電物とすることにより形成することができる。
【0122】
素子の形成では、適切な材料をディスプレイの前面に配置されるガラス・シートの上に蒸着堆積させるような普通のタッチ・スクリーン製造方法またはタッチ・パッド製造方法が必要となる。
【0123】
インモールド成形(IMD:In−Mold Decorating)では、射出成形金型または金型鋳物の内部に配置されるグラフィック・シートまたはグラフィック層を、液体樹脂を流し込む前に使用する必要がある。一旦成形されると、層は結果として生じる樹脂片の一体化部分となる。2DCTの場合、本発明によるタイプの導電素子はディスプレイ・カバー用金型の内部に配置され、流し込みが行なわれると、導電層が溶けてカバーの一方の側に融着する。このようにして、複合曲線を有する構造を含む複雑なカバー構造を形成することができ、これらの構造は非常に低いコストの一体型2DCTを含む。
【0124】
電極接続は、コーナーに接合するワイヤによってか、あるいは導電ゴム製ピラーによって、あるいは金属バネなどを使用して行なうことができる。導電ゴムは、駆動回路を含む下層のPCBからの接続を非常に低いコストで行なうための選択法である。図16はこのような構成方法を断面で示す。ディスプレイ1601はカバー・レンズ1602及び検出素子300を通して眺めることができる。素子300は少なくとも4つのコーナー電極を通して、更に複数の導電ゴム製ポストを経てPCB1604に接続され、これらの導電ゴム製ポストのうちの、2つのポスト1603a,1603bが図示されている。アセンブリ全体はネジ、クランプ、または他の固定方式(図示せず)によって圧縮されながら配置されるので、ゴム製ポストが圧縮されてPCB1604と素子300とが強制的に接触するようになる。
【0125】
素子は異方導電性を有する分子材料により作製することもできる。例えば、導電ポリマーは、他の方向よりも1つの方向において遥かに大きい導電率を有すると考えることができる。ナノ構造に基づくこのような材料は文献、例えばヘルシンキ工科大学から刊行された文献に記載されている。
【0126】
2DxTストライプの重み付け
本発明の1つの実施形態では、複数のストライプの重み付けを行なってスクリーンの中心に近い複数のストライプを互いに更に離間させるか、あるいは複数のストライプに大きな抵抗を持たせるか、あるいは複数のストライプをこれらの両方の構成となるようにする。このようにすることによって、固有のピン・クッション歪みの大きさを低減することができる。しかしながら、試験を行ったところ、実際にこの構成を実施すると、これが、信号が素子の中心部で検出できない、かつ/あるいは結果として生じる抵抗が大きくなり、隣接トレースとの指による結合が弱くなることによって駆動問題が生じることも意味することが判明した。実際、このアプローチは有効であるようには思われないが、ここでは実施形態を網羅するためにのみ記載される。
【0127】
2DCTによる収集操作
2DCTに関連する問題には、素子の動作周波数の周波数、または動作周波数の所定の高調波の周波数を有する外部静電気発生源または外部無線発信源による干渉が含まれる。これらの問題は、変調動作周波数を信号収集に使用してエイリアシング信号−雑音またはビート信号−雑音を低減するか、あるいは防止することにより緩和することができる。この操作では、周波数ホップ、チャープ波、または擬似ランダム周波数変調を使用することができる。これらの方法は「拡散スペクトラム」変調として知られる。
【0128】
事後処理では、多数決フィルタリング、中央値フィルタリング、平均化処理などを使用して、周波数変調によって既に減衰している雑音の残留効果を低減することができる。
低周波干渉は局所電源電界などにより生じ得る。この形の干渉は、収集操作を干渉源、例えば50または60Hzに同期させることにより低減することができ、これについてはQuantum Research Group社(英国)のQT310デバイス(非特許文献2)のデータ・シートに記載されている。
【0129】
2DCT用駆動シールド
素子には、LCDディスプレイ、VFDスイッチ動作などによる干渉を低減する駆動シールド技術を適用することができる。このためには、導体板を素子と干渉源との間に位置させて素子の背後で使用する必要がある。駆動シールドはまた、素子の背後の運動による信号障害から素子を保護するように機能する。駆動背面シールドは2DCTの作製に広く使用される。
【0130】
2DCTのウェイクアップ
多くの用途において、「ウェイクアップ」機能を有することが望ましく、これにより、デバイス全体が「スリープ状態」になるか、あるいは休止状態またはバックグランド状態になる。このような場合においては、人体パーツに非常に近い部分からのウェイク信号を所定の距離だけ離すことが望ましい場合が多い。
【0131】
素子は、ユニットがバックグランド状態になっている間に、ポジション位置に関係なく1つの大容量電極として駆動することができる。この状態の間、電子ドライバ・ロジックは信号の非常に小さい変化を検出するが、この変化は、2D座標として処理することができるほどには十分ではないが、オブジェクトまたはヒトが近くに位置していることを判断するためには十分である。次に、電子機器がシステム全体をウェイクアップさせ、素子を駆動して素子が再度実際の2DCTとして機能するようにする。
【0132】
タブレット、マウス・パッドの使用:注入モード
2DCTモードの本発明の素子はマウス・パッドとしてか、あるいはタブレットタイプの入力デバイスとして適する。これらの機能では、光学的に透明である必要はない。スタイラスを素子に使用して素子からの放射電界を検出するか、あるいは信号を素子に注入するか、あるいはヒトの指として機能させる。
【0133】
注入モードでは、本発明の素子は単に逆に動作する。ワイヤでつないだペンからの信号が、接触ポイントを取り囲む領域の素子に容量的に注入される。次に、注入された信号に比例した信号が4つのコーナー電極に出力され、これらのコーナー電極から、信号を検出して、文献に既に記載されているほとんど任意のタイプの測定回路に送信し、次に処理して接触ポイントを示す結果を生成する。ピン・クッションの影響は注入モードでは、2DRTモードまたは2DCTモードで行われる態様とほぼ同じ態様で作用する。ベクトル勾配は同じである。
【0134】
2DxTの未補正モード
多くの用途では結果を線形化する必要はない。これらの用途は基本的に、例えばメニュー・ボタンを検出する機能などを提供する低解像度のヒューマン・インターフェースを含む用途である。このような用途では、素子及び関連する信号収集回路は線形化ステップを必要とせず、かつ単に生の出力を生成する。更に別のシステム・ロジックによって2D座標境界がタッチ・ボタンとして解釈され、この場合の境界はソフトウェア開発時に定義される。
【0135】
ストライプ対バスバーの抵抗比が十分に大きい場合、生の処理結果の精度はそのまま使用しても許容できるレベルである。例えば、結果として生じる素子の座標誤差は5%に過ぎないが再現性が良い場合、素子はディスプレイ上の未補正メニュー・ボタンを検出するために完全に適しており、この場合、ボタンは素子の高さの10%未満も占めない。ボタンが、素子の水平中心線の近傍にほぼ位置するか、あるいは左辺または右辺に沿ってほぼ位置する場合、歪みは無視することができると考えられ、無視できる場合は、線形化補正は適用する必要がない。
【0136】
要約
本発明はその基本換算要素としての素子であり、この素子の目的は異方導電性を利用する改良型2D検出デバイスと、任意選択の形で、生の計算座標結果の歪みを補正する方法と、を提供することにある。動作モード(限定されないが、ガルバニック・モードまたは容量モード)、素子の使用、及び素子がパッシブ・タッチのスタイラスまたはセンサからの信号の受信体として使用されるかどうかは、本発明にとって最も重要である訳ではない。重要なのは、素子の異方構造及び素子が生成する位置誤差の形態、及び誤差を補正するための本明細書に記載する任意の方法である。
【0137】
本発明の実施形態の検出素子の重要な態様は、これらの素子がコアを有する単層として作製することができ、コアには第1の所定方向に大きなガルバニック電流が流れるが、コアは第1の方向に直交する第2の方向の導電性を小さくするように作用する、すなわちコアが異方導電性を有することに加えて、コアが抵抗境界によって区分されて素子全体が形成される。素子は更に、4つの電極をコーナーに有し、かつこれらの電極は電子回路が駆動する、かつ/あるいは検出してタッチ位置を示す結果出力を生成する。
【0138】
この技術分野の当業者には明らかなように多くの変形を加えることができ、これらの変形には、本明細書において特に概要が示される検出方法または切り替え順序の種々の組み合わせが含まれる。本明細書に開示する方法は、ドリフト補正、校正、スイッチ閉じ時間を短くすることによる湿気の抑制などの方法を含む、筆者による先行特許のいずれかによって示唆される方法と組み合わせることができる。特に、容量検出方法を含む筆者自身の先行技術に開示される特徴を種々組み合わせることができることに留意されたく、これらの方法の全てが本明細書において参照することにより本発明の開示に含まれる。更に、Quantum Research Group社(英国)のデータ・シートに記載されている容量製品にも注目されたく、これらの製品の多くは本発明に密接に関係する特徴を有する。
【0139】
本発明をペッパーが開示するように特異な形状に変形することも可能である。このような変形はオブジェクトの位置の検出に有用である、例えばシリンダー状、球形、または他の湾曲表面に沿った位置が重要となり得る産業設定において有用であることが分かる。
【0140】
本発明の特定の実施形態について記載してきたが、多くの変形/追加、及び/又は代替を本発明の技術思想及び技術範囲から逸脱しない範囲において行い得ることが分かるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1a】先行技術による4つのコーナー電極及び「ピックオフ」可撓性カバー・シートを有する抵抗膜により作製されるパターニングされていない単一素子型2次元変換器に見られる典型的なピン・クッション歪み効果を模式的に示す図
【図1b】図1aの素子を線形化するために必要な正規化ベクトルを模式的に示す図。
【図2】図1a及び1bに示す種類の歪みの影響を受けるスクリーンのピン・クッション効果を補正するように構成される既知の容量または抵抗タッチ・スクリーン・エッジ・パターンを示す図。
【図3】本発明の1つの実施形態による検出素子を形成するために使用される導電材料を表わす2次元パターンを模式的に示す図。
【図4】図3の検出素子を表わす電気回路を模式的に示す図。
【図5】図3の検出素子においてタッチ位置が識別される様子を模式的に示す図。
【図6】図5の検出素子のタッチ位置での縦断面を模式的に示す図。
【図7a】図3及び5の検出素子の1象限における行毎の線形性プロットを模式的に示す図。
【図7b】図3及び5の検出素子に関連する歪みを模式的に示す図。
【図8】図7a及び7bに示す歪みを線形化するために必要な正規化ベクトルを模式的に示す図。
【図9】本発明の別の実施形態による検出素子を形成するために使用される導電材料を表わす2次元パターンを模式的に示す図。
【図10】本発明の更に別の実施形態による検出素子を形成するために使用される導電材料を表わす2次元パターンを模式的に示す図。
【図11】抵抗タッチ・スクリーンの一部を形成する図10の検出素子の縦断面を模式的に示す図。
【図12】本発明の更に別の実施形態による検出素子を形成するために使用される導電材料を表わす2次元パターンを模式的に示す図。
【図13】電荷転送方法に基づいて駆動チャネルに結合された図5の検出素子を模式的に示す図。
【図14】図13の駆動チャネルから出力される信号を受信し、かつ推定タッチ位置を信号に基づいて計算するように構成されたプロセッサを模式的に示す図。
【図15】4つのサンプリング・キャパシタに接続されているマイクロ・コントローラを模式的に示す図であって、マイクロ・コントローラ及びキャパシタは図13及び14の検出チャネル及びプロセッサを実現するように構成されている図。
【図16】タッチ検出スクリーンを形成するように液晶ディスプレイの上に配置される、本発明の1つの実施形態による静電容量位置センサを縦断面で模式的に示す図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチ・センス式位置センサであって、
タッチ・センス式プラットフォームを画定する基板と、
前記基板上に互いに離間して配置される第1及び第2抵抗バスバーと、
これらのバスバーの間に配置される異方導電性領域と、
を備え、前記異方導電性領域内に生じる電流はバスバーに向かって優先的に流れる、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項2】
請求項1に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、これらのバスバーはそれぞれ、1kΩ〜50kΩの間の抵抗を有する、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、これらのバスバーはほぼ同じ抵抗を有する、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、前記異方導電性領域は、1kΩ〜50kΩの間の抵抗を有するこれらのバスバーの間の抵抗領域となる、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、これらのバスバーの各々の抵抗は、前記異方導電性領域がこれらのバスバーの間に形成する抵抗よりも小さい、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、前記異方導電性領域は、異方導電性を有し、かつ基板上に支持される分子基板膜を含む、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項7】
請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、前記異方導電性領域は、これらのバスバーの間に並列接続される複数の抵抗ストライプを含む、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項8】
請求項7に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、前記複数の抵抗ストライプは抵抗配線の各区分により形成されている、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項9】
請求項7に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、前記複数の抵抗ストライプは、基板上に堆積する抵抗材料により形成されている、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項10】
請求項7、8又は9に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、前記複数の抵抗ストライプは、前記複数の抵抗ストライプのうちの隣接する抵抗ストライプの間に形成されているギャップよりも広い幅を有する、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項11】
請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載のタッチ・センス式位置センサであって、更に、前記異方導電性領域から離間する導電被覆領域を備え、前記導電被覆領域及び前記異方導電性領域が外部印加圧力によって互いに接触するようになる、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項12】
請求項1〜11のうちのいずれか一項に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、前記第1抵抗バスバーは第1電極と第2電極との間に延び、かつ前記第1抵抗バスバーは第3電極と第4電極との間に延び、位置センサは、更に、第1、第2、第3、及び第4駆動チャネルを、前記第1、第2、第3、及び第4電極のうちのそれぞれ対応する電極に関連する形で備え、各駆動チャネルはチャネルの電極とオブジェクトの位置との間の抵抗に依存する出力信号を生成するように動作する、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項13】
請求項12に記載のタッチ・センス式位置センサであって、更に、前記複数の駆動チャネルからの前記出力信号を比較することにより、オブジェクトの位置に関する推定値を生成するように動作するプロセッサを備える、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項14】
請求項13に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、前記プロセッサは、これらのバスバーの間に延びる第1方向におけるオブジェクトの位置を、前記第1及び第2電極に関連する信号の合計、並びに前記第3及び第4電極に関連する信号の合計についての比例式による解析に基づいて推定するように構成されている、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、前記プロセッサは、これらのバスバーに沿って延びる第2方向におけるオブジェクトの位置を、前記第1及び第3電極に関連する信号の合計、並びに前記第2及び第4電極に関連する信号の合計についての比例式による解析に基づいて推定するように構成されている、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項16】
請求項13,14,又は15に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、前記プロセッサは、更に、補正を推定位置に前記プラットフォームに関連する所定の歪みに基づいて適用するように動作する、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項17】
請求項16に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、前記所定の歪みは1次元的なピン・クッション歪みである、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項18】
請求項1〜17のうちのいずれか一項に記載のタッチ・センス式位置センサを組み込んだ制御パネル。
【請求項19】
請求項18に記載の制御パネルを有する装置。
【請求項1】
タッチ・センス式位置センサであって、
タッチ・センス式プラットフォームを画定する基板と、
前記基板上に互いに離間して配置される第1及び第2抵抗バスバーと、
これらのバスバーの間に配置される異方導電性領域と、
を備え、前記異方導電性領域内に生じる電流はバスバーに向かって優先的に流れる、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項2】
請求項1に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、これらのバスバーはそれぞれ、1kΩ〜50kΩの間の抵抗を有する、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、これらのバスバーはほぼ同じ抵抗を有する、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、前記異方導電性領域は、1kΩ〜50kΩの間の抵抗を有するこれらのバスバーの間の抵抗領域となる、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、これらのバスバーの各々の抵抗は、前記異方導電性領域がこれらのバスバーの間に形成する抵抗よりも小さい、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、前記異方導電性領域は、異方導電性を有し、かつ基板上に支持される分子基板膜を含む、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項7】
請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、前記異方導電性領域は、これらのバスバーの間に並列接続される複数の抵抗ストライプを含む、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項8】
請求項7に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、前記複数の抵抗ストライプは抵抗配線の各区分により形成されている、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項9】
請求項7に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、前記複数の抵抗ストライプは、基板上に堆積する抵抗材料により形成されている、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項10】
請求項7、8又は9に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、前記複数の抵抗ストライプは、前記複数の抵抗ストライプのうちの隣接する抵抗ストライプの間に形成されているギャップよりも広い幅を有する、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項11】
請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載のタッチ・センス式位置センサであって、更に、前記異方導電性領域から離間する導電被覆領域を備え、前記導電被覆領域及び前記異方導電性領域が外部印加圧力によって互いに接触するようになる、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項12】
請求項1〜11のうちのいずれか一項に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、前記第1抵抗バスバーは第1電極と第2電極との間に延び、かつ前記第1抵抗バスバーは第3電極と第4電極との間に延び、位置センサは、更に、第1、第2、第3、及び第4駆動チャネルを、前記第1、第2、第3、及び第4電極のうちのそれぞれ対応する電極に関連する形で備え、各駆動チャネルはチャネルの電極とオブジェクトの位置との間の抵抗に依存する出力信号を生成するように動作する、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項13】
請求項12に記載のタッチ・センス式位置センサであって、更に、前記複数の駆動チャネルからの前記出力信号を比較することにより、オブジェクトの位置に関する推定値を生成するように動作するプロセッサを備える、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項14】
請求項13に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、前記プロセッサは、これらのバスバーの間に延びる第1方向におけるオブジェクトの位置を、前記第1及び第2電極に関連する信号の合計、並びに前記第3及び第4電極に関連する信号の合計についての比例式による解析に基づいて推定するように構成されている、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、前記プロセッサは、これらのバスバーに沿って延びる第2方向におけるオブジェクトの位置を、前記第1及び第3電極に関連する信号の合計、並びに前記第2及び第4電極に関連する信号の合計についての比例式による解析に基づいて推定するように構成されている、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項16】
請求項13,14,又は15に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、前記プロセッサは、更に、補正を推定位置に前記プラットフォームに関連する所定の歪みに基づいて適用するように動作する、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項17】
請求項16に記載のタッチ・センス式位置センサにおいて、前記所定の歪みは1次元的なピン・クッション歪みである、タッチ・センス式位置センサ。
【請求項18】
請求項1〜17のうちのいずれか一項に記載のタッチ・センス式位置センサを組み込んだ制御パネル。
【請求項19】
請求項18に記載の制御パネルを有する装置。
【図1a】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2007−503037(P2007−503037A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523671(P2006−523671)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003437
【国際公開番号】WO2005/020056
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(303033185)
【氏名又は名称原語表記】PHILIPP,Harald
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003437
【国際公開番号】WO2005/020056
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(303033185)
【氏名又は名称原語表記】PHILIPP,Harald
【Fターム(参考)】
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