説明

異方性磁性フレーク

【課題】異方性磁性フレークを提供する。
【解決手段】本発明は異方性反射磁性フレークに関する。液体キャリヤ内で、かつ外部磁場の作用下で、フレークは互いに並列になるように誘引し、コーティングに高い反射性を付与するリボンを形成し、フレークを物体認証用のセキュリティ機能として利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に薄層顔料フレークに関し、特に外部磁場での薄層磁性フレークの配向に関する。
【背景技術】
【0002】
反射性の金属およびカラー・シフト・フレークは反射性の、およびカラー・シフトするインクまたはペイントに使用される。ペイントを使用して製造されたインクまたはコーティングで印刷された画像の反射パラメータまたはカラー・パラメータは、より少ない反射性キャリヤが充填された隣接するフレーク間の空隙により、固形フレークのパラメータよりも劣る。顔料濃度が増大すると、印刷された画像およびペイントのコーティングの反射性を向上させることはできるが、追加コストがかかり、コーティングの厚さが厚くなり、フレークが互いに重なって、基板に平坦に付着しなくなる。
【特許文献1】米国特許第7300695号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、反射性またはカラー・シフト・フレークを含むコスト効率の高く反射性が高いコーティングを提供することである。本発明の別の目的は、このようなコーティングまたはインク用のフレーク、ならびに前記コーティングを可能にするフレークの製造方法を提供することである。本発明のさらに別の目的は、反射性コーティングを有する物体の認証方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は反射性コーティングを形成するための異方性磁性フレークに関するものである。フレークは50nm〜10μmの範囲の厚さを有し、最長平面寸法が1〜500μmの範囲の二次元形状を有する積層構造を有している。積層構造は、フレークが外部磁場の作用で液体キャリヤ内に堆積される際に、フレークを反射性コーティングの表面と実質的に平行に配向するための磁性体層を備える。磁性体層は最長平面寸法と少なくとも20°の角度をなす面内磁気異方性を備える構造を有している。任意選択として、積層構造は、反射性コーティングに反射性を付与するために50%を超える反射性を有する第1および第2の反射体層を有しており、磁性体層が反射体層の間に隠されている。
【0005】
本発明の一態様は、リボンを製造するのに特に適した特定の二次元形状を有する上記のフレークに関するものである。フレークの形状は互いに実質的に平行な2辺を有している。磁性体層は、前記フレークが前記反射性コーティングを形成しつつ外部磁場の作用で液体キャリヤ内に堆積される際に、1つまたは複数のフレークが同じ構造であるフレークを並列に配向するように、2つの辺と実質的に直交する磁性体層の前記面内異方性を有するように形成される。フレークは高い鏡面反射性を備えるように回折格子を有していない。好ましくは、フレークは正方形の形状を有している。
【0006】
本発明の別の態様は、磁性体層の異方性がフレークの二次元形状の2つの辺と実質的に直交するフレークの製造方法に関するものである。この方法は、(a)磁性材料から形成されて第1および第2の磁性体層を含む、剥離性コーティングを支持する基板を準備するステップと、(b)剥離性コーティングが前記基板に塗布される前または後に、第1の方向と実質的に直交する2辺を有する二次元形状を持つ複数のフレームを有する基板をエンボス加工またはエッチングするステップと、(c)第1の方向に磁気異方性を有する磁性体層を供給するために基板を前記剥離性コーティングで被覆するステップであって、剥離性コーティングは前記基板から除去されるとフレークへと砕けるものであり、(d)剥離性コーティングを基板から除去し、これをフレークへと砕くステップと、を含んでいる。方法の一実施形態では、磁性体層は磁性材料を異なる角度で基板の同じ部分に供給する2つの供給源を使用して堆積される。
【0007】
本発明のさらに別の態様は、固化されたキャリヤとキャリヤ内に分散された複数のフレークとを含むコーティングに関する。全てのフレークが、その2辺が互いに実質的に平行であるように同じ二次元形状を有し、面内の磁気異方性が2辺に実質的に直交するような磁性体層を有している。フレークの部分は、前記フレークがコーティングを形成しつつ外部磁場の作用で液体キャリヤ内に配置される際に、フレーク間に500nm以下の空隙を有して並列するように互いに隣接する少なくとも3つのフレークのリボンを形成する。
【0008】
3つ以上のフレークのリボンは文書、紙幣などのセキュリティ機能として使用できる。本発明は、フレークを含むコーティング内のリボンを識別するステップを含む物体の認証方法を提供する。一実施形態では、リボンを形成するフレークは、物体の認証用に使用される反射光線のパターンを供給するバイナリ格子を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の好ましい実施形態を示す添付図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0010】
磁性フレークは磁性材料を含む顔料フレークである。格子がない正方形の磁性フレークが正方形の対角線に沿って磁化容易軸、すなわち磁気モーメントの方向を有し、正方形の反対側の隅に北と南の磁極を有することは知られている。2007年11月27日にArgoitiaらに交付された米国特許第7300695号明細書の図2aのコピーである図1Aは、液体媒体内にあり、磁場の作用下にある辺42および44を有する長方形の磁性フレーク40を示している。フレーク40は、印加される磁場46の方向に沿った対角線を有するように配向されている。異なるフレークの北と南の磁極は誘引し、フレークは図1Bに示すような隅と隅の連鎖を形成することができる。
【0011】
正方形の、格子がない特定の種類の磁性フレークは、液体キャリヤ内に分散され、磁場による作用を受けると、異なる構造、すなわちリボンを形成することが期せずして発見された。図2を参照すると、リボン48内のフレーク47は、図1Bに示す隅と隅の隣接とは異なり、互いに並列に隣接している。2つのフレーク47の並列的な誘引は、磁極が正方形フレーク47の2つの反対の辺に位置し、磁気モーメントの方向が正方形47の2つの他辺と平行であることを示している。正方形のフレーク47は、フレーク47の辺を磁場46の線に沿って整列させるように磁場46内に配向されている。
【0012】
一般的に、従来の非回折フレークは最長の平面寸法に沿って容易軸を有しているのに対して、本発明のフレークは最長平面寸法と角度をなして容易軸、または磁気異方性を有している。
【0013】
フレークの製造方法によって引き起こされる磁気異方性は予期せぬ作用によることがある。結晶磁気異方性、応力誘導磁気異方性、および基板の微細構造によって誘起される磁気異方性などのあり得る種類の磁気異方性は、「Hitchihikers’ Guide to Magnetism」Bruce M.Moskowitz、Environmental Magnetism Workshop、1991年6月5〜8日、に記載されている。
【0014】
図3Bを参照すると、フレークの製造方法は、剥離性コーティングを支持するための基板が準備される基板準備ステップ510を含んでいる。基板をエンボス加工/エッチングするステップ520で、例えば、双方ともArgoitiaらに交付され、参照として本明細書に組み込まれている、2005年6月7日に交付された米国特許第6902807号明細書、および2008年5月8日に公刊された米国特許出願第20080107856号明細書で教示されているように、任意選択でコーティングを有する基板には基板にエンボス加工またはエッチングされる複数のフレームが設けられる。フレームの形状および配向は異方性の方向に関連しており、フレームの二次元形状は互いに実質的に平行で、所望の異方性の方向と実質的に直交する2つの辺を有している。
【0015】
次いで、双方ともPhillipsらに交付され、参照として本明細書に組み込まれている、2005年1月4日に交付された米国特許第6838166号、および2004年10月26日に交付された米国特許第6808806号に開示されているように、コーティング・ステップ530で、基板に剥離性コーティングが被覆される。剥離性コーティングは、第1および第2の反射体層と、磁性材料から形成された磁性体層とを含んでいる。磁性体層は、所望の方向の磁気異方性を有するように堆積される。次いで、コーティング除去ステップ540で、剥離性コーティングが基板から除去され、砕かれて本発明の異方性磁性フレークが得られる。
【0016】
方法の一実施形態では、基板準備ステップ510で準備された基板が、ステップ510の後の基板エンボス加工/エッチング・ステップ520でパターニングされる。図3Aを参照すると、基板501は絶縁トレンチ503によって分離された正方形502のパターンを有している。一例として、基板501はポリエステルから製造され、正方形502は、コーティング内での正方形の配向をトラッキングする目的で「JDSU」のロゴが刻印された20x20μmの正方形である。基板501は、図9A〜9Cを参照してさらに記載するように、必ずしも正方形ではないトレンチ503の異なるパターンを有していてもよい。
【0017】
コーティング・ステップ530中に形成された剥離性コーティングは、図10および11を参照してさらに記載するように、1つまたは複数の磁性体層、および任意選択で非磁性体層を含んでいる。非磁性体層は従来のどの薄膜堆積技術を使用して堆積されてもよい。このような技術の非限定的な例には、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、またはPECVD、または下流PECVDなど、プラズマを援用した(PE)それらの変形形態、スパッタリング、電解蒸着、ゾル−ゲル、および実質的に均質な連続薄膜層を形成するためのその他の同様の蒸着方法が含まれる。磁性体層を堆積するには、以下に記載するようにこれらの方法が実行される。
【0018】
方法の一実施形態では、コーティング・ステップ530は、基板の同じ部分に異なる角度で磁性材料を供給するために少なくとも2つの供給源を使用して磁性体層を堆積するステップを含んでいる。
【0019】
一例として、方法の一実施形態では、コーティング・ステップ530は、移動する基板の同じ部分に同時に2つ以上の異なる角度で磁性材料を供給するために少なくとも2つの供給源を使用して磁性体層を堆積するステップを含んでいる。図4Aおよび4Bは、方向602に移動する基板601の表面上への磁性材料の堆積を概略的に示している。磁性材料は2つの磁性材料供給源603および604から同時に基板601に供給されるので、磁性材料供給源603と604とを結ぶ線610は方向602と実質的に直交している。磁性材料の装入物は磁性材料供給源603および604、すなわちるつぼに装入され、加熱される。装入物の温度が上昇すると、その蒸気圧も上昇し、その結果、蒸発速度が高まる。磁性材料の蒸気は2つの流れ605でるつぼから出て、ほとんどが基板601の方向に向かう。流れ605は基板601と密接した真空室内のゾーン606で交わる。低温基板601上の蒸発凝固物が基板601の下に磁性薄膜層608を生成する。重なる2つの蒸気の流れ605は異なる角度で同時に基板601の部分に到達する。当方の理解では、これらの流れは磁性材料の核形成および成長をもたらし、凝固粒子の微晶質構造を生成するので、磁性体層608は蒸発源603と604とを結ぶ線に対して直交する方向602の面内磁気異方性を獲得する。磁性体層608を含む堆積した除去可能なコーティングは次いで基板601から剥離され、図3Aに示すようにトレンチ503に沿って個々の正方形のフレークへと粉々に砕かれる。その結果、個々のフレークの磁性体層は、正方形の一辺と実質的に平行で、正方形の別の辺と直交する配向の磁気異方性をもたらす微晶質構造または磁区構造を有する。
【0020】
方法の一実施形態では、コーティング・ステップ530は図5Aおよび5Bに示す磁性体層の堆積を含んでいる。基板の同じ部分に異なる角度で磁性材料を供給するための少なくとも2つの磁性材料供給源が使用され、2つ以上の磁性材料供給源103および104は基板の移動方向102に沿って配置され、基板101に対して異なる角度に向けられているので、2つの上記の流れ105は異なる時間に異なる角度で基板101の部分に到達する。
【0021】
方法の一実施形態では、コーティング・ステップ530は図6Aおよび6Bに示すように、静止した基板上に磁性体層を堆積するステップを含んでいる。2つの磁性材料供給源203および204は、基板の同じ部分に2つの異なる角度で磁性材料を供給するように、基板201の領域206に到達する重なる蒸気の流れ205を生成する。あるいは、図6Aおよび6Bに示した基板201は移動可能であってもよい。
【0022】
方法の一実施形態では、基板は、コーティング・ステップ530での磁性体層の堆積中に、好ましくは所望の磁気異方性の方向に移動する。
【0023】
方法の一実施形態では、コーティング・ステップ530は、図7に示すように湾曲した基板上に磁性体層を堆積するステップを含んでいる。基板701は、ロールコータ内のローラ702の周囲に部分的に巻回されている。磁性材料の流れ703は電子ガンなどの磁性材料供給源704から発される。シールド705は、基板がローラ702に達する前に材料が湾曲した基板701上に堆積することを防止する。基板の表面が湾曲しているため、蒸発の流れを通って移動する基板701の同じ部分がかなり異なる角度で磁性材料を受ける。基板701上に堆積した磁性材料の層は、基板の移動方向に沿って配向された磁気異方性を有していることが経験的に実証されている。何故ならば、剥離性コーティングを基板から除去し、それを砕いて製造されたフレークは、外部磁場にさらされると並列の配向を呈するからである。
【0024】
もちろん、本明細書に記載の異なる実施形態の特徴を組み合わせることもできる。一例として、図4Aに示した実施形態が図7に示したように曲折された基板601を使用してもよい。
【0025】
方法の一実施形態では、コーティング・ステップ530は、所望の方向の異方性を付与するために磁性材料を磁場内で焼結するステップを含んでいる。別の実施形態では、新たに堆積された磁性体層のイオン衝撃を同じ目的で使用される。一例として、参照として本明細書に組み込まれている、Kun Zhangの「Stress induced magnetic anisotropy of Xe−ion−irradiated Ni thin films」、Nucl.Instr.and Meth.Phys.Res.,B243(2006)、51〜57ページ、によって教示された磁性材料のXeイオン照射がある。衝撃によって磁性材料の微細構造に歪みを生ずる物理的変化が起きる。
【0026】
図3Bを参照して本明細書に記載する方法は、所定の二次元形状を有し、この形状の最長平面寸法の方向とは異なっていてもよい所望の方向に配向された磁気異方性を有する磁性フレークを提供する。本発明の異方性磁性フレークは、50nm〜10μmの厚さと、1〜500μmの範囲の直径、すなわち形状900の2点の間の最長距離を有する二次元形状900とを有している。
【0027】
本発明の一実施形態では、前述の方法を使用して製造されたフレークは反射性コーティングを形成するための格子がない、反射性の異方性磁性フレークである。フレークは、液体キャリヤ内に分散され、外部磁場の作用を受けるとリボンを形成可能であるような特定の形状と磁気異方性とを有している。フレークは2つの反射体層と、その間の磁性体層とを有しており、格子がない平滑な表面を有しているが、印はあってもよい。印は記号、ロゴなどを含んでもよい。好ましくは、印は面内の磁気異方性の方向と対称である。一例として、文字「B」、「C」、「D」、および数字「3」および「8」は水平の対称軸を有している。磁気異方性の方向が水平の対称軸の方向と一致するこのような文字を有する異方性磁性フレークは並列された文字を有するリボンを形成する。文字はリボンを支持する基板を反転したり、観察角度を変えなくても拡大すると容易に読み取ることができる。文字「T」、「A」、「H」、「W」、「V」、「O」などは垂直の対称軸を有している。フレークの磁気異方性が垂直の対称軸と一致する場合は、リボン上の文字は別の文字の下の文字を容易に読み取ることができる。印を有する異なるフレークを含むコーティングの場合は、文書上で容易に識別できるリボンを形成するために、フレークの大部分は、全てが同じ垂直または水平の対称軸を有する対称の印を有する異方性の磁性フレークであることが好ましい。好ましくは、対称の印を有する異方性フレークの量は全フレークの少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%である。一実施形態では、18−241に教示されているように、フレークを所望の配向にするため、コーティングはフレークがその片面に疎水性コーティングを有するように、非対象の印を有する異方性フレークを含んでいる。このようなフレークのリボンも文書を反転させなくても拡大すると容易に読み取ることができる。
【0028】
図9A〜9Cを参照すると、フレークは2辺が互いに実質的に平行な二次元形状を有しており、例えば正方形930は2つの平行な辺938を有している。フレークは、2つの互いに平行な辺938と実質的に直交する方向936に磁気異方性を有するように製造される。このようなフレークが液体キャリヤ内に分散され、外部磁場からの作用を受けると、これらのフレークは図2に示すようなリボンを形成する。
【0029】
好ましくは、フレークは正方形の形状を有するが、辺が等しくない長方形、平行四辺形900、六角形940、八角形950、または互いに実質的に平行な2辺を有するその他のどのような形状もリボンを形成するのに適している。磁気異方性の方向932、942、または952は、最長の平面寸法934、944、または952とそれぞれ少なくとも20°の角度を形成する。
【0030】
二次元形状に応じて、参照として本明細書に組み込まれている、2008年3月19日に出願された米国特許出願第12/051164号明細書に教示されているように、あるフレークにはフレークの右表を上方に折り曲げるために疎水性コーティングが必要なこともある。一例として、フレークの表面に疎水性コーティングを施した平行四辺形の形状の磁性フレーク900は、図9Cに示すようにこのようなコーティングがないフレークよりも良好な配列の、図9Bに示すリボンを形成する。
【0031】
磁性体層は、ニッケル、コバルト、鉄、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、エルビウム、およびその他の合金または酸化物など、強磁性およびフェリ磁性材料などのどの磁性材料からも形成できる。例えば、コバルト・ニッケル合金を使用することができ、ニッケルとコバルトはそれぞれ約80%と約20%の重量%の比率である。コバルト・ニッケル合金中のこれらの金属のそれぞれの前記比率は約10重量%増減して変更可能であり、それでも所望の結果を達成する。したがって、コバルトは約70重量%から約90重量%の量で、およびニッケルは、約10重量%から約30重量%の量で合金中に存在することができる。合金のその他の例には、Fe/Si、Fe/Ni、FeCo、Fe/Ni/Mo、およびその組み合わせが含まれる。SmCo5、NdCo5、Sm2Co17、Nd2Fe14B、Sr6Fe2O3、TbFe2、Al−Ni−Co、およびそれらの組み合わせの種類の硬磁性体、ならびにFe3O4、NiFe2O4、MnFe2O4、CoFe2O4の種類のスピネルフェライト、またはYIG、またはGdIGの種類のガーネット、およびそれらの組み合わせも使用することができる。磁性材料はその反射または吸収特性、ならびにその磁気特性について選択できる。反射体として機能するために使用する場合は、磁性材料は実質的に半透明であるような厚さで堆積される。吸収体として使用する場合は、磁性材料は実質的に半透明でないような厚さで堆積される。吸収体として使用される場合の磁性材料の典型的な厚さは約2nmから約20nmである。
【0032】
磁性体層を磁性粒子および非磁性粒子、または、例えばゾル−ゲル技術を使用して堆積したコバルト添加酸化亜鉛薄膜などの非磁性媒体内の磁性粒子を有する材料から形成してもよい。
【0033】
このような広範囲の磁性材料を使用することができるが、「軟」磁性体が好ましい。本明細書で用いられる「軟」磁性体は、強磁性の特性を示すが、磁力にさらされた後は残留磁気が実質的にゼロであるいずれかの材料のことである。軟磁性体は印加された磁場に迅速に反応するが、磁性標識は極めて低く(保持力(Hc)=0.05−300エールステッド(Oe))またはゼロであり、または、磁場が除去された後は極めて低い磁力線を保持する。同様に、本明細書で用いられる「硬磁性体」(永久磁石とも呼ばれる)は、強磁性の特性を示し、磁力にさらされた後に長く持続する残留磁気を有するいずれかの材料のことである。強磁性材料は、透磁率が1よりも大幅に高く、磁気ヒステリシス性を呈するいずれかの材料である。
【0034】
好ましくは、本発明のフレークおよびフォイル内の磁性体層を形成するために使用される磁性材料は、約2000Oe未満の保磁力、より好ましくは約300Oe未満の保磁力を有している。保磁力とは、外部磁場によって消磁される材料の能力である。保磁力の値が高いほど、磁場が除去された後に材料を消磁するために必要な磁場は高くなる。使用される磁性体層は好ましくは、保磁力が高い「硬」磁性材料(消磁し難い)ではなく「軟」磁性材料(消磁しやすい)である。本発明による磁気カラー・シフト設計のフォイル、顔料または染料の保磁力は、好ましくは約50Oeから約300Oeである。これらの保磁力は標準の記録材料よりも低い。顔料フレークに軟磁性材料を使用することによって、フレ−クが凝集せずに分散しやすくなる。
【0035】
磁性体層は約200オングストロームから約10,000オングストローム、好ましくは約500から約1,500オングストロームの適切な物理的厚さを有するように形成することができる。しかし、本明細書の開示内容に照らして、最適な磁性体層の厚さは使用される特定の磁性材料、およびその使用目的に応じて変化することが当業者には理解されよう。
【0036】
異方性磁性フレークは、前述のように配向された磁気異方性を有する磁性体層を含め、1つまたは複数の実質的に連続した薄膜層を有している。図10を参照すると、異方性の反射磁性フレーク(RMF)20は、前述のような異方性を有する磁性体層22の両方の主要面上に2つの反射体層24と26とを含んでいる。反射体層24および26は様々な反射性材料から構成することができる。現在好ましい材料は、反射性が高く、使用しやすいので1つまたは複数の金属、1つまたは複数の合金、またはそれらの組み合わせであるが、非金属の反射性材料も使用できよう。反射体層に適した金属材料の非限定的な例には、アルミニウム、銀、銅、金、プラチナ、錫、チタン、パラジウム、ニッケル、コバルト、ロジウム、ニオビウム、クロム、およびそれらの合金または組み合わせが含まれる。反射体層は、約40から約2、000nm、好ましくは約60から約1、000nmの適切な物理的厚さを有するように形成することができる。反射体層は少なくとも40%、好ましくは60%より大きい反射率を有している。
【0037】
任意選択で、異方性の反射磁性フレークは、反射体層上に堆積された2つの保護層(図10には図示せず)を含んでいる。保護層は硫化亜鉛(ZnS)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、二酸化チタン(TiO2)、ダイアモンド・ライク・カーボン、酸化インジウム(In2O3)、酸化インジウム−錫(ITO)、五酸化タンタル(Ta2O5)、酸化セリウム(CeO2)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ユウロビウム(Eu2O3)、酸化鉄(II、III)(Fe3O4)、および酸化第二鉄(Fe2O3)などの酸化鉄、窒化ハフニウム(HfN)、炭化ハフニウム(HfC)、酸化ハフニウム(HfO2),酸化ランタン(La2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ネオジウム(Nd2O3)、酸化プラセオジウム(Pr6O11)、酸化サマリウム(Sm2O3)、三酸化アンチモン(Sb2O3),一酸化ケイ素(SiO)、三酸化セレニウム(Se2O3)、酸化錫(SnO)、三酸化タングステン(WO3)、それらの組み合わせなどの材料から形成される誘電体層である。
【0038】
任意選択として、本発明の異方性の反射磁性フレークは、カラー・シフト光学効果をもたらすために、磁性体層と磁性体層の2つの表面上の2つの反射体層とから形成されたRMF342と、RMF342の反射体層によって支持された2つの誘電体層344および346と、誘電体層344および346によって支持された2つの吸収体層348および350とを含む、図11に示すカラー・シフト・フレーク300である。磁性体層、反射体層、および誘電体層に適する材料は、図10を参照して上に列挙した材料と同じである。カラー・シフト・フレークを使用して形成されたコーティングは内部にリボンが形成される反射率が高いカラー・シフト・コーティングである。
【0039】
適切な吸収体の非限定的な例には、クロム、アルミニウム、ニッケル、銀、銅、パラジウム、白金、チタン、バナジウム、コバルト、鉄、錫、タングステン、モリブデン、ロジウム、およびニオビウム、ならびにそれらの対応酸化物、硫化物、および炭化物などの金属吸収体が含まれる。他の適切な吸収材料には、炭素、黒鉛、ケイ素、ゲルマニウム、サーメット、酸化第二鉄、またはその他の金属酸化物、誘電マトリクス内で混合された金属、および可視スペクトル内で均一な、または選択的な吸収体として作用可能なその他の物質が含まれる。フレーク300の吸収体を形成するために、上記の吸収体材料の様々な組み合わせ、混合物、組成物または合金を使用してもよい。
【0040】
上記の吸収体材料に適する合金の例には、インコネル(NiCr−Fe)、ステンレス鋼、ハステロイ(例えばNi−Mo−Fe;Ni−Mo−Fe−Cr;Ni−Si−Cu)、および炭素と混合したチタン(Ti/C)、タングステンと混合したチタン(Ti/W)、ニオビウムと混合したチタン(Ti/Nb)、およびケイ素と混合したチタン(Ti/Si)、およびそれらの組み合わせなどのチタン合金が含まれる。前述のように、吸収体層は吸収性の酸化金属、硫化金属、炭化金属、またはそれらの組み合わせからも構成することができる。例えば、好ましい吸収性硫化物材料は硫化銀である。吸収体層用の適切な化合物の他の例には、窒化チタン(TiN)、酸窒化チタン(TiNxOy)、炭化チタン(TiC)、窒化炭化チタン(TiNxCz)、酸窒化炭化チタン(TiNxOyCz)、ケイ化チタン(TiSi2),ホウ化チタン(TiB2)などのチタン化合物、およびそれらの組み合わせが含まれる。TiNxOyおよびTiNxOyCzの場合は、好ましくはx=0から1、y=0から1、およびz=0から1であり、ただしTiNxOyの場合はx+y=1、TiNxOyCzの場合はx+y+x=1である。TiNxCyの場合は、好ましくはx=0から1、およびz=0から1であり、ただしx+z=1である。あるいは、吸収体層をTiのマトリクス内に配置されたチタン合金から構成することができ、またはチタン合金のマトリクス内に配置されたTiから構成することができる。
【0041】
任意選択で、リボンを形成する異方性磁性フレークは、一例として、反射体層を支持しない、前述のような形状と異方性とを有するニッケル製の磁性体層を有している。しかし、コーティングの反射率を高めるために、少なくとも1つの反射体層が望ましい。
【0042】
従来のフレークの磁気特性と本発明のフレークとを比較するため、2種類のフレークが製造された。
【0043】
従来の方法を使用して、図3に示すようにパターン形成されたウエブ基板に、バッチ・コータ内で剥離性の薄膜コーティング、MgF/Al/Ni/Al/MgFが被覆された。堆積されたコーティングは基板から剥離され、全ての小片が絶縁トレンチ503に沿って砕かれるまで粉砕された。その結果生じたフレークは、20重量%の濃度で透明な紫外線硬化インク・ビークルと混合され、磁性顔料が生成された。インクはペーパー・カード上にスクリーン印刷され、紫外光内で硬化された。図8Aの顕微鏡画像はフレークの不規則な配向を示している。それに加えて、同じ種類のフレークがより低い濃度(2重量%)でインク・ビークルと混合され、別のペーパー・カードに印刷され、図8Bに示すように2つの永久磁石801と802との間に挿入された。そこでフレークは対角線が磁場の方向803に実質的に沿うように配向された。
【0044】
図4Aおよび4Bに示した本発明の方法を使用して、格子がない異方性の反射性磁性フレークが製造され、基板601は図7に示すようにロールコータ内で湾曲された。基板上にMgF/Al/Ni/Al/MgFの剥離性コーティングが堆積され、次いで基板から剥離され、全ての小片が砕かれて正方形になるまで粉砕された。結果として生じたフレークは10重量%の濃度の同じインク・ビークルと混合され、ペーパー・カードに印刷された。図8Cに示すように、2つの磁石801と802との間に磁性フレークを含む湿ったプリントが挿入された。本発明によって正方形の一辺の方向に磁気モーメントを有するように製造されたフレークは、その一辺が印加された磁場803の方向と平行に配向された。フレークの濃度が高まると、図8Dに示す長いリボンになるように組み込むことが可能になる。濃度をさらに高めると、フレークは互いに接近し(図8E)、ペーパー・カードに反射率の高いコーティングを形成する。
【0045】
本明細書では反射性フレークとも呼ばれる本発明の格子のない異方性の反射性磁性フレークは、特に印刷産業で望まれる反射性の高いコーティングを形成するために設計されている。金属顔料の反射率を高めるための従来の方法には、脂肪酸などの界面活性剤によって金属フレークの表面を修正することが含まれる。界面活性剤はフレークの表面エネルギを縮小し、コーティングの界面でフレークを浮遊させる。しかし、界面活性剤はコーティングの摩耗を大幅に低減する。長いリボン内に組み込まれ、印刷された標章全体にわたってインクの界面と平行に広がることが多い磁気配向された正方形のフレークは、顔料の全反射面をフルに活用する。任意選択で、フレークがカラー・シフト異方性反射磁性フレークである場合は、コーティングはカラー・シフト効果をもたらす。反射性フレークは、コーティングに高い鏡面反射性を付与するために実質的に平滑な表面を有している。フレークは格子を有していないが、印を有することができる。
【0046】
参照として本明細書に組み込まれている、2006年11月23日に公刊されたArgoitiaの米国特許出願第20060263539号明細書で、回折格子または別個のストライプから形成された磁性体層を有する磁性フレークは、格子溝またはストライプを印加された磁場の線に沿って整列させるように配向することが教示されている。しかし、外部磁場の方向と平行な辺を有するように、連続的な磁性体層を有する平滑な表面のフレークを如何にして整列させるかについてはこれまで知られていなかった。さらに、如何にしてフレークを幅が等しい長く平坦なリボンに組み込むかも知られていなかった。
【0047】
反射性コーティングを形成するため、キャリヤおよびキャリヤ内に分散された複数のフレークが物体の表面に付与され、次いでフレークをコーティングの表面と平行に配向するために磁場が印加される。
【0048】
キャリヤは典型的には、キャリヤが蒸発または硬化する前にフレークがある程度移動できる期間だけ液相である。例えば、インクは蒸発してフレークを凝固させる揮発性キャリヤを有することもあれば、透明なペイント・ベースなどの透明ペイント・キャリヤが硬化してフレークを硬化させることもありうる。同様に、未硬化の熱硬化性樹脂、または加熱された熱可塑性樹脂によって、フレークが硬化または冷却する前にそれぞれ、表面に塗布する前、塗布中、または塗布後にフレークを配向させることが可能でありうる。一例として、キャリヤはアクリル樹脂を使用したキャリヤである。その他のキャリヤは当業者には既に知られている。
【0049】
キャリヤの例には、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリ(エトキシエチレン)、ポリ(メトキシエチレン)、ポリ(アクリル)酸、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(オキシエチレン)、ポリ(無水マレイン酸)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、アラビアガムおよびペクチンなどのポリ(サッカライド)、ポリビニルブチラールなどのポリ(アセタール)、塩化ポリビニルおよび塩化ポリビニレンなどのポリ(ビニルハライド)、ポリブタジエンなどのポリ(ジエン)、ポリエチレンなどのポリ(アルケン)、ポリメチルアクリレートなどのポリ(アクリレート)、ポリメチルメタクリレートなどのポリ(メタクリレート)、ポリ(オキシカルボニルオキシヘクサメチレン)などのポリ(カーボネート)、ポリエチレンテレフタレートなどのポリ(エステル)、ポリ(ウレタン)、ポリ(シロキサン)、ポリ(スルフィド)、ポリ(スルフォン)、ポリ(ビニルニトリル)、ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(スチレン)、ポリ(2、5 ジヒドロキシ−1、4−フェニレンエチレン)などのポリ(フェニレン)、ポリ(アミド)、天然ゴム、フォルムアルデヒド樹脂、その他のポリマーおよびポリマー混合物、溶剤を含むポリマー、ならびにフォトポリマーが含まれる。
【0050】
コーティングが確実に少なくとも40%の高い反射率を有するようにするため、フレークは50%を超える、好ましくは60%超える反射率を有する反射体層を有し、フレークはコーティングされた物体の表面を、フレークの密度が十分に高い前提で表面が実質的に空いた状態を残さずに、互いに隣接するフレークでタイリングするための特定の形状および磁気異方性を有している。
【0051】
特定の形状および磁気異方性を有するため、フレークの一部は互いに並列になるように誘引し、図2を参照して前述し、かつ図8Dに示すように1つまたは複数のリボンを形成する。リボンは、フレーク間の空隙が500nm以下の並列に隣接する少なくとも3つのフレークを有するものと理解される。1〜20μmの範囲のサイズのフレークの場合には空隙は認められなかった。フレークが20〜500μmの範囲のサイズを有する場合は、空隙のサイズがゼロから500nmまでばらつきがある。もちろん、リボンの形成はキャリヤ内のフレークの密度に依存する。
【0052】
反射性が高いコーティングを形成するには、コーティングの下の物体表面のほぼ全てが反射性フレークによって覆われるべきであり、コーティングが、反射性フレークがない場合の物体の表面上のキャリヤの反射率に対応する低い局部反射率を有する空間がないか、僅かな空間しかフレーク間に残さない。したがって、フレークの骨材表面、すなわち観察者に向けられる全てのフレーク表面の合計はコーティング下の表面積の少なくとも80%である。好ましくは、フレークの骨材表面はコーティング下の表面積の90%を超える。このようなフレーク密度は、図8Eに示すフレークのタイル配列を実質的に形成するフレークのリボンで物体の表面全体を実質的にカバーする。タイル配列は、リボン間の空隙が4μm以下で並列されるように、互いに隣接する少なくとも2つのリボンを含むものと理解されたい。
【0053】
従来のフレークを使用してこのようなカバー範囲を付与するため、次のレベルのフレークが先行レベルの不規則に分散されたフレーク間の空隙を部分的にカバーするように、複数レベルのフレークを有する厚いコーティングが必要である。それに加えて、高密度のフレークはフレークが重複する高い確率および高いコーティング・コストと関連する。有利には、本発明のフレークは薄く、コスト効率が高い高反射性コーティングを供給する。さらに、リボン内に整列されたフレークは、超過コストまたは努力なしで物体にセキュリティ機能を付与する。リボンは物体の認証のために使用可能である。いずれかのリボンがコーティング内に存在するか否かを識別するため、コーティングによって反射される画像には従来の画像識別技術が適用された。
【0054】
一実施形態では、セキュリティ機能として使用できる良好に画成されたリボンを有するコーティングを形成するため、キャリヤ内に非周期的線形格子を有する異方性の反射磁性フレークが分散される。非周期的線形格子を有するフレークは、前述の非回折、異方性、反射磁性フレークと同じ積層構造および二次元形状を有している。この実施形態のフレークは反射性の、またはカラー・シフト特性を有するものでよく、これらのフレークは回折カラーの存在を低減する非対称で非周期的な格子構造を有している。
【0055】
格子は、規則的間隔を隔てた基本的に同一の平行な細長い素子の任意の集合体である。ある場合には、格子は同一ではない平行な細長い素子の非周期的で不規則な間隔を隔てた集合体であってもよい。格子は回折、ホログラフ、反射、バイナリなどであってもよい。格子は格子の特徴を有する画像であることもできる。ホログラフ格子は、セキュリティの用途および当分野向けに梱包産業におけるホログラムの製造用に広く使用されている。回折格子はさらにパッケージングにも使用される。回折フレークは、回折格子を有する基板の表面の光学スタックを堆積することによって製造される。これらのフレークは光が照射されると回折カラーを生じる。磁性回折フレークは、それ自体を磁性回折フレークの格子が印加された磁場の方向と平行になるように配向する。インク内に分散され、磁場内に整列されて、異なるサイズの無形回折フレークは図1Bに示したものと同様の連鎖を形成する。
【0056】
反射格子を有する磁性フレークが図12に示されている。格子素子の幅は互いに等しくない。W≠W≠W≠W≠Wであり、またそれらの高さもH≠H≠Hである。単一の顔料フレークは、磁場内にフレークを配向するために僅かな(通常は1つから4つ)の溝だけを必要とする。フレークのサイズは2x2μmから200x200μmの範囲であることができる。格子素子の高さH(図12)は10nmから100nmの範囲であることができる。格子素子の幅は10nmから90nmの範囲内であることができる。インク・ビークル内に分散され、外部磁界にさらされる、全て同じ形状を有する長方形の磁性反射性格子フレークは、それ自体を磁場の方向に沿って配向し、図13に示したものと同じ幅の長いリボン状構造で組み込まれる。
【0057】
磁気異方性の方向は非周期的格子の方向である。したがって、コーティング内にリボンを形成するため、非周期的格子を有する異方性の反射磁性フレークは、互いに実質的に平行な2辺を有する二次元形状と、2辺と実質的に直交する非周期的格子とを有している。
【0058】
薄膜組成物MgF/Al/Ni/Al/MgFが、20x20μm平方のエンボス・パターンを有する構造化された基板の上面に堆積された。全ての正方形は4つの平坦なエンボス素子(丘)と3つの狭いデボス(谷)素子とから構成されている。エンボス素子とデボス素子の幅は、フレークから反射する光の回折成分を縮減するための異なったものにされた。被覆構造が基板から剥離され、粉砕された。図13を参照すると、フレークは透明なインク・ビークル470と混合され、シルク・スクリーンが透明のポリエステル・カードに印刷され、平行な磁場にさらされた。インク成分は紫外光ランプで固化され、顕微鏡によって分析された。図13に示すように、正方形の磁性反射フレーク480は、幅が一定で、印刷されたコーティングの一つの側面から他の側面に広がることが多い連続的な良好に画成されたリボンを形成する。
【0059】
図14は、印刷されたコーティング420を有する、紙幣430などの物体の認証方法を示している。コーティング420は、参照として本明細書に組み込まれている、2008年4月22日に出願された米国出願第12/107152号に開示されているバイナリ(ファンアウト)格子を有する回折性、異方性の反射磁性フレークを含んでいる。フレークは、インク表面上に整列するように親油性、疎水性材料でコーティングされている。リボン、およびバイナリ格子によって付与されるパターンを識別するため、レーザ400からの単色光線410がリボンを含む印刷されたコーティング420を照射する。所定のパターンを形成する反射光線440が、コンピュータ460または読み取り器に接続された画像センサまたはCCDカメラ450で受光される。コンピュータ460は紙幣430を認証するためにパターンを解読する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1Aは先行技術による外部磁場における従来の磁性フレークの簡略平面図である。図1Bは図1Aに示した外部磁場における磁性フレークから形成された連鎖の簡略平面図である。
【図2】外部磁場における本発明の異方性磁性フレークによって形成されたリボンの簡略平面図である。
【図3A】本発明の異方性磁性フレークの製造に使用される基板の斜視図である。
【図3B】本発明によるフレーク製造方法のフローチャートである。
【図4】図4Aは本発明の一実施形態による磁性材料の堆積の図である。図4Bは図4Aに示した基板の平面図である。
【図5】図5Aは本発明の一実施形態による磁性材料の堆積の側面図である。図5Bは図5Aに示した基板の平面図である。
【図6】図6Aは本発明の一実施形態による磁性材料の堆積の側面図である。図6Bは図6Aに示した基板の平面図である。
【図7】本発明の一実施形態による磁性材料の堆積の側面図である。
【図8A】磁場がない場合の不規則に整列された従来のフレークの顕微鏡画像である。
【図8B】磁場における従来のフレークの顕微鏡画像である。
【図8C】磁場における本発明の異方性磁性フレークの顕微鏡画像である。キャリヤ内でのフレーク密度は10重量%である。
【図8D】磁場においてリボンを形成する本発明の異方性磁性フレークの顕微鏡画像である。
【図8E】磁場における高反射率のコーティングを形成する本発明の異方性磁性フレークの顕微鏡画像である。
【図9】図9Aは成形されたフレークの簡略平面図である。図9Bは疎水性コーティングを有する本発明のフレークによって形成されたリボンの簡略平面図である。図9Cは疎水性コーティングを有さない本発明のフレークによって形成されたリボンの簡略平面図である。
【図10】本発明の実施形態によるフレークの簡略断面図である。
【図11】本発明の実施形態によるフレークの簡略断面図である。
【図12】反射性格子を有する磁性フレークの断面図である。
【図13】リボン状構造の顕微鏡写真である。
【図14】物体認証方法を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
46 磁場
47 フレーク
48 リボン
101 基板
102 移動方向
103 磁性材料供給源
104 磁性材料供給源
105 蒸気の流れ
201 基板
203 磁性材料供給源
204 磁性材料供給源
205 蒸気の流れ
206 領域
300 フレーク
342 RMF(反射磁性フレーク)
344 誘電体層
346 誘電体層
348 吸収体層
350 吸収体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射性コーティングを形成するための異方性磁性フレークであって、
50nm〜10μmの範囲の厚さを有し、
最長平面寸法が1〜500μmの範囲の二次元形状を有し、
フレークが外部磁場の作用で液体キャリヤ内に堆積される際に、前記フレークを反射性コーティングの表面と実質的に平行に配向するための磁性体層を含む積層構造を備え、
前記磁性体層が、前記最長平面寸法と少なくとも20°の角度をなす面内磁気異方性を備える構造を有する異方性磁性フレーク。
【請求項2】
前記磁性体層が回折格子のない連続磁性体層であり、前記二次元形状が互いに実質的に平行な2つの辺を有し、
前記フレークが前記反射性コーティングを形成しつつ外部磁場の作用で液体キャリヤ内に堆積される際に、1つまたは複数のフレークが同じ構造である前記フレークを並列に配向するように、前記磁性体層の前記面内磁気異方性が前記2つの辺と実質的に直交する請求項1に記載のフレーク。
【請求項3】
前記二次元形状が、等しい辺または等しくない辺を有する長方形の形状であり、前記磁性体層の前記面内磁気異方性が前記長方形の形状の辺と実質的に平行である請求項2に記載のフレーク。
【請求項4】
カラー・シフト光学効果を付与するため、前記磁性体層によって支持される第1および第2の反射体層と、前記第1および第2の反射体層によって支持される第1および第2の誘電体層と、前記第1および第2の誘電体層によって支持される第1および第2の吸収体層とをそれぞれ備える請求項1に記載のフレーク。
【請求項5】
請求項2に記載のフレークを製造する方法であって、
a)磁性材料から形成された磁性体層を含む、剥離性コーティングを支持する基板を準備するステップと、
b)前記剥離性コーティングが前記基板に塗布される前または後に、第1の方向と実質的に直交する2辺を有する前記二次元形状を持つ複数のフレームを有する前記基板をエンボス加工またはエッチングするステップと、
c)前記第1の方向に磁気異方性を有する前記磁性体層を供給するために前記基板を前記剥離性コーティングで被覆するステップであって、前記剥離性コーティングは前記基板から除去されるとフレークへと砕けるものであり、
d)前記剥離性コーティングを前記基板から除去し、これをフレークへと砕くステップと、を含む方法。
【請求項6】
前記ステップ(c)で前記基板が前記第1の方向に移動する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記基板が湾曲している請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ(c)が、前記磁性材料を異なる角度で前記基板の同じ部分に供給する、前記磁性材料の少なくとも2つの供給源を使用するステップを含む請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記磁性材料の前記少なくとも2つの供給源が前記磁性材料を前記基板の前記同じ部分に同時に供給する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記磁性材料の前記少なくとも2つの供給源が前記磁性材料を前記基板の前記同じ部分に別の時間に供給する請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(c)が、前記基板を第1の方向に移動し、前記2つの供給源を連結する線が前記第1の方向と実質的に直交するように配置された2つの磁性材料供給源を使用するステップを含む請求項5に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(c)が、前記基板を第1の方向に移動し、前記2つの供給源を連結する線が前記第1の方向と実質的に平行であるように配置された2つの磁性材料供給源を使用するステップを含む請求項5に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(c)が、前記磁性材料を磁場内で焼結するステップを含む請求項5に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(c)が、前記磁性材料のXeイオン照射を含む請求項5に記載の方法。
【請求項15】
固化されたキャリヤと前記キャリヤ内に分散された、請求項1に記載の構造を有する複数のフレークとを備えるコーティングであって、
前記複数のフレークの全てのフレークが、その2辺が互いに実質的に平行であるように同じ二次元形状を有し、面内の磁気異方性が前記2辺に実質的に直交するような前記磁性体層を有し、
前記フレークの部分は、前記フレークが前記コーティングを形成しつつ外部磁場の作用で液体キャリヤ内に配置される際に、フレーク間に500nm以下の空隙を有して並列するように互いに隣接する少なくとも3つのフレークのリボンを形成するコーティング。
【請求項16】
前記フレークの前記部分が、リボン間の4μm以下の空隙を有して並列するように互いに隣接する2つ以上のリボンを形成し、これによりフレークのタイル配列を形成する請求項15に記載のコーティング。
【請求項17】
リボンを識別するステップを含む、請求項15に記載のコーティングを有する物体の認証方法。
【請求項18】
反射率が40%を超える第2の反射体層をさらに備える請求項1に記載のフレーク。
【請求項19】
印をさらに備える請求項2に記載のフレーク。
【請求項20】
前記印が前記面内磁気異方性の方向に対して対称である請求項19に記載のフレーク。
【請求項21】
ステップ(b)が前記基板に印をエンボス加工またはエッチングするステップを含む請求項5に記載の方法。
【請求項22】
前記磁性体層が、互いに平行で、最長平面寸法と少なくとも20°の角度をなす複数の隆起と溝とを備える非周期的線形回折格子構造を有する請求項1に記載のフレーク。
【請求項23】
前記複数のフレークが各々対称の印を有し、前記複数のフレークが、前記コーティング内に印を有する全てのフレークの少なくとも70%を形成する請求項15に記載のコーティング。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−102620(P2009−102620A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−241108(P2008−241108)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(502151820)ジェイディーエス ユニフェイズ コーポレーション (90)
【氏名又は名称原語表記】JDS Uniphase Corporation
【住所又は居所原語表記】430 N. McCarthy Boulevard, Milpitas, California, 95035, USA
【Fターム(参考)】