説明

異方性膜用アゾ化合物

【課題】広範囲な色表現が可能な偏光膜に有用である主に短波長領域に吸収を有する異方性膜用アゾ化合物を提供する。
【解決手段】膜中における最大吸収波長が、下記式(1)で表される波長λ(k)nmよりも短いアゾ化合物であって、分子の主吸収軸と分子長軸のなす角度θが1.5度以下である異方性膜用アゾ化合物。


(式(1)中、定数A、B、C、Dおよびδλは、以下の値を有する。
A=−18.069
B=40.645
C=0.79764
D=−2.0793
δλ=67
kは、アゾ化合物分子の長短軸比を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光素子や液晶素子(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)などの発光型の表示素子、タッチパネルなどの入出力素子に具備される偏光板等に有用な異方性膜用アゾ化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LCDなどの平面型ディスプレイはテレビ受像機に広く用いられるようになり、従来のCRTを用いたテレビに置き換わろうとしている。また、現在のテレビシステムであるNTSC(National Television System Committee)(全米テレビジョン放送方式標準化委員会が策定したアナログテレビジョン標準方式)の色再現性は、CRTの蛍光体の特性を基準に決められたものであり、実在する物体の色の約半分しか表現できないという問題があった。一方、デジタルカメラやカムコーダーなどの撮像装置は、NTSCで定義された範囲よりも広範囲な色表現(色再現)が近年可能となり、その情報をより正確に再現する拡張色空間に対応したディスプレイが望まれている。
【0003】
このような背景において、LCDなどのCRTに代わる平面型ディスプレイは、原理上CRTよりも高彩度色の表現が可能なデバイスであり、平面型ディスプレイが有する高機能性を生かした新動画用拡張色空間の規格化が進められてきた。その結果、国際規格IEC61966−2−4として「動画用拡張色域YCC色空間(Extended-gamut YCC color space for video application-xyYCC)」が発行された。
【0004】
xyYCC色空間は、実在する物体色のほぼ全てが表現できる規格であり、これにより色鮮やかな物体の素材感や立体感までも表現できるようになった。
【0005】
しかし、拡張された色空間情報を従来のLCDで表示しようとした場合、LCDに使用される各種部材の特性が充分でないため、xyYCC色空間に対応したディスプレイを構築するために幾つかの改良が進められている。
【0006】
その例として、
(1)RGB3原色の色純度が良好なバックライトの採用、
(2)RGB3原色に補色を加えたマイクロカラーフィルターの採用
などが挙げられる。
(1)の代表的な手段としてはLEDの採用や冷陰極管に用いられる蛍光体の発光波長の最適化であり、(2)ではイエロー、シアンを追加したマイクロカラーフィルターの採用が挙げられる(特許文献1、2等参照)。
【0007】
このように、LCDの色再現性を支配する因子は、発光に関係する部材や可視光波長領域に吸収を有する部材であるが、マイクロカラーフィルターと同様に可視光波長領域に吸収を有する偏光フィルムについては、まだ充分な検討が進められていない状況にある。
【0008】
xyYCC拡張色空間への対応には、バックライトやマイクロカラーフィルターの改良内容から推定されるように、可視光波長領域の両端部に当たる短波長領域と長波長領域の特性を改善することが必要である。
【0009】
しかしながら、従来の偏光フィルムは、可視光波長領域における吸光度や二色性などの光学特性が一定でないため、特定の波長や色におけるコントラスト比が低下する問題があった。特に、青色光の補色である短波長領域(380nm〜500nm)の二色性が低いために、青色光の色純度が低下し、色再現性が十分に得られないことがあった。
【0010】
また、拡張色空間対応ディスプレイ以外においても、液晶プロジェクタや車載用液晶パネルの場合には、高温時の耐久性の問題からヨウ素ではなく、二色性を有する有機化合物が用いられている。しかし、短波長領域に吸収を有する化合物は、分子構造の一般的な特徴として、長波長領域に吸収を有する化合物よりもπ共役の広がりが小さい、つまり分子長が短い傾向がある。通常、二色性化合物において十分なアスペクト比を得るためには、分子長が長いことが必要とされるため、これらを両立することが難しい。これに起因して、これまでに使用されてきた偏光フィルムでは短波長領域の二色性が低く、この点においても、短波長領域で高い二色性を有する化合物の開発が望まれていた。また、これらの用途においては、額縁故障あるいは額縁むらと呼ばれる、温湿度変化に伴うフィルムの収縮などに起因する欠陥が生じる問題があるために、高温時の耐久性が必要とされること、また、この問題を解決する変性ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール誘導体)などの高分子材料と二色性物質の組み合わせが重要となってきていることからも、新規の二色性化合物の開発が望まれている。
【0011】
例えば、特許文献3では、Direct Yellow44などを用いて、短波長領域の吸収特定の改良を試みているが、これらの色素では高い二色性を発現しにくいという問題があった。
【特許文献1】特開2007−73290号公報
【特許文献2】特開2007−25285号公報
【特許文献3】特開昭62−70802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、広範囲な色表現が可能な偏光膜に有用である主に短波長領域に吸収を有する異方性膜用アゾ化合物を提供することを課題とする。
また、本発明は特に該アゾ化合物の最大吸収波長における二色比がヨウ素等よりも高いアゾ化合物を提供することを課題とする。
また、本発明は耐久性に優れた異方性膜用アゾ化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らが鋭意検討した結果、膜中における最大吸収波長が、下記式(1)で表される波長λ(k)nmよりも短いアゾ化合物であって、かつ、分子の主吸収軸と分子長軸のなす角度θが1.5度以下であるアゾ化合物を用いることにより、上記課題が解決できることがわかり本発明に到達した。
【0014】
すなわち、本発明は、膜中における最大吸収波長が、下記式(1)で表される波長λ(k)nmよりも短いアゾ化合物であって、分子の主吸収軸と分子長軸のなす角度θが1.5度以下であることを特徴とする異方性膜用アゾ化合物、に存する。
【0015】
【数2】

【0016】
(式(1)中、定数A、B、C、Dおよびδλは、以下の値を有する。
A=−18.069
B=40.645
C=0.79764
D=−2.0793
δλ=67
kは、アゾ化合物分子の長短軸比を表す。)
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、偏光膜などの異方性膜に有用な、主に短波長領域で二色性が高く、耐久性に優れたアゾ化合物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明の異方性膜用アゾ化合物(以下「本発明のアゾ化合物」と称す場合がある。)の実施の形態を詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に特定はされない。
【0019】
本発明のアゾ化合物は、異方性膜に好適に用いられる。
異方性膜とは、色素等の化合物を含有する膜の厚み方向および任意の直交する面内2方向の立体座標系における合計3方向から選ばれる任意の2方向における電磁気学的性質に異方性を有する膜である。電磁気学的性質としては、吸収、屈折などの光学的性質、抵抗、容量などの電気的性質などが挙げられる。吸収、屈折などの光学的異方性を有する膜としては、例えば、直線偏光膜、円偏光膜、位相差膜、導電異方性膜などがある。
【0020】
本明細書において単に異方性膜という場合には、本発明の異方性膜用アゾ化合物を含有する層を指し、通常、この層にはさらに低分子材料および/または高分子材料を含有するが、例えば本発明の異方性膜用アゾ化合物のみから構成される層であってもよい。
本発明の異方性膜用アゾ化合物は、いわゆる色素としての機能も有する化合物であって、本発明の異方性膜用アゾ化合物を含有する異方性膜は、色素膜としても機能し得るものである。なお、ここでいう色素とは、一般に、可視光波長領域において吸収を有する化合物を意味する。
【0021】
本発明の異方性膜用アゾ化合物を用いて製造された異方性膜は、主たる効果として吸収異方性を有する機能性膜に用いられることが好ましく、偏光膜に用いられることがより好ましい。
【0022】
本発明の異方性膜用アゾ化合物は、膜中における最大吸収波長が、下記式(1)で表される波長λ(k)nmよりも短いアゾ化合物であって、分子の主吸収軸と分子長軸のなす角度θが1.5度以下であることを特徴とする。
【0023】
[式(1)]
まず、式(1)について説明する。
【数3】

【0024】
<A、B>
式(1)中、定数A、Bは、真空中のポリキスアゾベンゼンに対するRobin-Simpson式の定数と同様のものであり、以下の値を有する。
A=−18.069
B=40.645
【0025】
ここで、Robin-Simpson式とは、下記式(2)で表され、下記非特許文献1および2に記載されているポリキスアゾベンゼンの吸収波長λとアゾ基の数n+1との関係式である。
【0026】
(Robin-Simpson式)
【数4】

【0027】
非特許文献1:M.B.Robin,W.T.Simpson,“Assignment of Electronic Transitions
in Azo Dye Prototypes”,Journal of Chemical Physics,36(3),
580-588,(1962).
非特許文献2:飛田満彦、「色彩科学」、丸善(1998)
【0028】
<C、D>
上記式(1)中、定数C、Dは、ポリキスアゾベンゼンの長短軸比とアゾ基数の関係に関する定数である。
下表にあるように、ポリキスアゾベンゼンのアゾ基の数を振り、前述同様の計算で分子長短軸比を計算した。
【表1】

【0029】
定数C、Dは、長短軸比kとアゾ基数n+1の関係を一次関数n=Ck+Dに最小二乗法にてフィットすることで求められる。
C=0.79764
D=−2.0793
【0030】
<δλ>
上記式(1)中、定数δλは、置換基および膜とアゾ化合物との相互作用による標準的な吸収波長変化に相当し、以下の値を有する。
δλ=67
【0031】
このように、式(1)の右辺第一項は、ポリキスアゾベンゼンの長短軸比と吸収波長の関係式そのものである。
非特許文献2に記載されているように、電子供与性置換基であっても電子受容性置換基であっても置換基が置換すれば吸収波長が長波長移動すること、また、ベンゼン環をナフタレン環に変えても吸収波長が長波長移動することが知られている。このことからも、ポリキスアゾベンゼンと同じ長短軸比を有するアゾ化合物がポリキスアゾベンゼンの吸収波長よりも短い吸収波長を有することは、原理的に困難であると考えられていた。
この課題を解決するため、例えば特許文献3(特開昭62−70802号公報)に記載のDirect Yellow44のように、2つのアゾ化合物を非共役結合でつなぐことで、長短軸比を大きくしながらも吸収波長を短くできることが知られている。しかし、前述の如く、この化合物は高い二色性を発現しにくいという問題があった。
【0032】
<k>
kはアゾ化合物分子の長短軸比を表す。本発明でいう分子長短軸比とは以下の手順で得られる計算値である。
【0033】
1.遊離酸の形を有するアゾ化合物分子の基底状態の構造最適化を行う。分子の電子状態計算には基底状態に対してPBE0汎関数を用いた密度汎関数(DFT)法を採用し、垂直励起状態に対してはPBE0汎関数を用いた時間依存密度汎関数(TDDFT)法を採用する。基底状態・垂直励起状態計算には基底関数として6-31G*を用いる(以下、これを「TDDFT(PBE0)/6-31G*レベルで求めた垂直励起状態」という)。すべての電子状態計算は、量子化学計算プログラム「Gaussian03」(Gaussian社製)を用いて実行する。
【0034】
2.得られた基底状態の最適化構造において、原点を、各原子の質量を等価と見なしたときの重心に移動し、各原子の質量を等価と見なした慣性モーメント(質量等価慣性モーメントと呼ぶ)を定義し、質量等価慣性テンソルが対角化されるように分子を回転し、質量等価慣性主軸系((XiP,YiP,ZiP),i=原子)・主慣性テンソルを決定する。ここで質量等価慣性半径(RX,RY,RZ)は以下の式(3)のように定義する。
【0035】
【数5】

【0036】
3.ある主軸を中心とした質量等価慣性半径のうち、最大値を分子長軸長(L)・その主軸を短軸方向、最小値を分子短軸長(S)・その主軸を長軸方向と定義する。
4.L/Sより分子長短軸比(k)を決定する。
【0037】
長短軸比kは、通常2〜8程度の値を有するものであり、好ましくは4〜8程度の値のものである。
【0038】
[最大吸収波長]
本発明においては、本発明の異方性膜用アゾ化合物の膜中における最大吸収波長が、上記式(1)で表される波長λ(k)nmよりも短いことを特徴とする。
ここで、膜中における最大吸収波長の測定方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0039】
a.異方性膜の作製
蒸留水に本発明の異方性膜用アゾ化合物(好ましくは塩型)を加えて撹拌し、染色液とする。染色液に、吸収波長に影響を及ぼさない、染色を促進するための助剤(例えば、硫酸ナトリウム等)を加えてもよい。ポリビニルアルコールフィルムを染色液に浸漬して染色し、余剰の染料を洗浄した後、ホウ酸水溶液中で6倍に延伸する。延伸後、余剰のホウ酸を洗浄し乾燥することで異方性膜を得る。
具体的には例えば、蒸留水に本発明の異方性膜用アゾ化合物を加えて撹拌溶解して、染色液とし、ポリビニルアルコールフィルム(OPLフィルム、日本合成化学工業社製、膜厚75μm)を50℃の染色液に浸漬して染色する。このとき、染色液中のアゾ化合物濃度及び染色時間は、得られる異方性膜の最大吸収波長における単体透過率が35%から50%の間になる濃度及び時間に調整するが、染色液中のアゾ化合物濃度は0.01〜1重量%、染色時間は30秒〜10分の範囲内で調整する。染色後、50℃の水浴で余剰の染料を洗浄した後、50℃の4重量%ホウ酸水溶液中で6倍に延伸する。延伸後、室温の水浴中で余剰のホウ酸を洗浄し、送風乾燥することで異方性膜を得る。
【0040】
b.異方性膜の最大吸収波長の測定
プリズム偏光子を入射光学系に配した分光光度計で、異方性膜の透過率を測定した後、次式Azが最大となる波長を最大吸収波長とする。プリズム偏光子を入射光学系に配した分光光度計としては、例えば、島津製作所社製 紫外・可視・近赤外分光光度計「SolidSpec−3700」などが挙げられる。
二色比(D)=Az/Ay
Az=−log(Tz)
Ay=−log(Ty)
Tz:異方性膜の吸収軸方向の偏光に対する透過率
Ty:異方性膜の偏光軸方向の偏光に対する透過率
【0041】
本発明のアゾ化合物の膜中における最大吸収波長は、通常350nm以上であり、好ましくは380nm以上であり、また、通常500nm以下であり、好ましくは480nm以下である。
【0042】
また、本発明において、この最大吸収波長は、上記式(1)で表される波長λ(k)nmよりも短いものであるが、その差は好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、特に好ましくは30nm以上である。
【0043】
[角度θ]
上述の通り、特許文献3(特開昭62−70802号公報)に記載のDirect Yellow44は、この色素の膜中における最大吸収波長が上記式(1)で表される波長λ(k)nmよりも短い色素であるにも関わらず、高い二色比が得られていなかった。
【0044】
本発明者らの検討の結果、アゾ化合物の膜中における最大吸収波長が、上記式(1)で表される波長λ(k)nmよりも短いだけでなく、さらに、分子の主吸収軸と分子の長軸のなす角度θを規定することにより、二色比が高いアゾ化合物を得られることがわかった。
【0045】
本発明でいう、分子長軸と分子主吸収軸とのなす角度θとは以下の手順で得られる計算値である。
前述同様にTDDFT(PBE0)/6-31G*レベルで求めた垂直励起状態の内、励起波長が200nmより長波長領域かつ基底状態との間の振動子強度が最大である垂直励起状態と基底状態との間の遷移モーメントの方向を主吸収軸とし、この主吸収軸と分子長軸方向との間のなす角度をθと定義する。
【0046】
θは1.5度以下であればよいが、好ましくは1.0度以下、さらに好ましくは0.5度以下である。
θが上記上限を超えると、分子が配向していても二色性が低くなる等の問題があり好ましくない。
【0047】
[本発明の異方性膜用アゾ化合物]
膜中における最大吸収波長が、前記式(1)で表される波長λ(k)nmよりも短いアゾ化合物であって、分子の主吸収軸と分子長軸のなす角度θが1.5度以下である本発明の異方性膜用アゾ化合物を得るための方法としては、特に制限はないが、例えば、以下のような方法が挙げられる。
・アゾ化合物の分子内に、アミド結合(−NH−CO−)を導入する。
・アゾ化合物の分子内に、−NH−CO−CH=CH−基を導入する。
・スルホ基等の置換基を分子長軸に沿って導入する。
・アゾ−ヒドラゾン互変異性におけるヒドラゾン体生成を抑制させる。
【0048】
以下、本発明の異方性膜用アゾ化合物をさらに具体的に説明する。
なお、本明細書において置換基を有していてもよいとは、置換基を1または2以上有していてもよいことを意味する。また、本明細書において「置換基の総炭素数」という場合には、その置換基中に含まれる炭素原子の数を表し、その置換基がさらなる置換基を有している場合には、さらなる置換基に含まれる炭素数も含めたすべての炭素数である。
【0049】
<本発明の異方性膜用アゾ化合物の好適例>
本発明の異方性膜用アゾ化合物としては、特にアゾ基を1〜4個有する化合物が好ましく、1〜3個を有する化合物がより好ましい。
また、本発明の異方性膜用アゾ化合物は、下記式(i)および/または(ii)で表される部分構造を有するアゾ化合物であることが好ましい。
【0050】
【化3】

(式(i)中、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
【0051】
【化4】

(式(ii)中、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
【0052】
Arの芳香族炭化水素基としては、フェニレン基またはナフチレン基などが挙げられる。
また、Arの芳香族炭化水素基としては、フェニル基またはナフチル基などが挙げられる。
【0053】
これらの芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、スルホ基、カルボキシ基、水酸基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、アミノ基、置換基を有していてもよいアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいアリールアミノ基、置換基を有していてもよいアシルアミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、カルバモイル基、置換基を有していてもよいアルキルカルバモイル基、置換基を有していてもよいアリールカルバモイル基、スルファモイル基、置換基を有していてもよいアルキルスルファモイル基、置換基を有していてもよいアリールスルファモイル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基などが挙げられる。
【0054】
Ar、Arの芳香族炭化水素基の置換基としてのアルコキシ基は、置換基の総炭素数が通常1以上、通常6以下、好ましくは4以下である。該アルコキシ基に置換していてもよい基としては、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、スルホ基およびカルボキシ基などが挙げられる。
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、2,3−ジヒドロキシプロポキシ基等の置換基を有していてもよいアルコキシ基が挙げられ、特に置換基を有していてもよい低級アルコキシ基が好ましい。
【0055】
Ar、Arの芳香族炭化水素基の置換基としてのアルキルアミノ基は、−NR4142で表され、R41は、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R42は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。該アルキル基は、置換基の総炭素数が通常1以上、通常10以下、好ましくは7以下である。該アルキル基に置換していてもよい基としては、置換基を有していてもよいフェニル基、炭素数が1から4のアルコキシ基、水酸基、スルホ基、カルボキシ基およびハロゲン原子などが挙げられる。該フェニル基に置換していてもよい基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、スルホ基、カルボキシ基、水酸基などが挙げられる。該アルキルアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、4−カルボキシベンジルアミノ基等が挙げられる。
【0056】
Ar、Arの芳香族炭化水素基の置換基としてのアリールアミノ基は、−NR4344で表され、R43は、置換基を有していてもよいフェニル基または置換基を有していてもよいナフチル基を表し、R44は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基または置換基を有していてもよいナフチル基を表す。該アルキル基の好ましい置換基の総炭素数、有していてもよい置換基の例は、前記R41およびR42のアルキル基の場合に例示したものと同様である。該フェニル基は、置換基の総炭素数が通常6以上、通常12以下、好ましくは8以下である。該ナフチル基は、置換基の総炭素数が通常10以上、通常14以下、好ましくは12以下である。該フェニル基および該ナフチル基に置換していてもよい基としては、炭素数が1から4のアルキル基、炭素数が1から4のアルコキシ基、水酸基、スルホ基、カルボキシ基およびハロゲン原子などが挙げられる。該アリールアミノ基の具体例としては、フェニルアミノ基、フェニルメチルアミノ基、4−スルホフェニルアミノ基等が挙げられる。
【0057】
Ar、Arの芳香族炭化水素基の置換基としてのアシルアミノ基は、−NH−COR45で表され、R45は置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルケニル基、または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。該アルキル基および該アルコキシ基は、それぞれ、置換基の総炭素数が通常1以上、通常6以下、好ましくは4以下である。該アルケニル基は、置換基の総炭素数が通常2以上、通常12以下、好ましくは10以下である。該フェニル基は、置換基の総炭素数が通常6以上、通常10以下、好ましくは8以下である。該アルキル基、該アルコキシ基、該アルケニル基および該フェニル基に置換していてもよい基としては、炭素数が1から4のアルキル基、炭素数が1から4のアルコキシ基、水酸基、スルホ基、カルボキシ基およびハロゲン原子などが挙げられる。該アシルアミノ基の具体例としては、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、4−カルボキシベンゾイルアミノ基、フマロイルアミノ基等が挙げられる。
【0058】
Ar、Arの芳香族炭化水素基の置換基としてのアルキル基は、置換基の総炭素数が通常1以上、通常6以下、好ましくは4以下である。該アルキル基に置換していてもよい基としては、炭素数が1から4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、スルホ基およびカルボキシ基などが挙げられる。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基等が挙げられ、特に置換基を有していてもよい低級アルキル基が好ましい。
【0059】
Ar、Arの芳香族炭化水素基の置換基としてのアルケニル基は、置換基の総炭素数が通常2以上、通常12以下、好ましくは10以下である。該アルケニル基に置換していてもよい基としては、炭素数が1から4のアルキル基、フェニル基、スルホ基が置換したフェニル基およびカルボキシ基などが挙げられる。該アルケニル基の具体例としては、トランス−2−カルボキシエテニル基、トランス−2−(2−スルホフェニル)エテニル基等が挙げられる。
【0060】
Ar、Arの芳香族炭化水素基の置換基としてのアルキルカルバモイル基は、−CO−NHR46で表され、R46は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。該アルキル基の好ましい置換基の総炭素数、有していてもよい置換基の例は、前記R41およびR42のアルキル基の場合に例示したものと同様である。該アルキルカルバモイル基の具体例としては、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基等が挙げられる。
【0061】
Ar、Arの芳香族炭化水素基の置換基としてのアリールカルバモイル基は、−CO−NHR47で表され、R47は置換基を有していてもよいフェニル基または、置換基を有していてもよいナフチル基を表す。該フェニル基およびナフチル基の好ましい置換基の総炭素数、有していてもよい置換基の例は、前記R43およびR44のフェニル基およびナフチル基の場合に例示したものと同様である。該アリールカルバモイル基の具体例としてはフェニルカルバモイル基、ナフチルカルバモイル基等が挙げられる。
【0062】
Ar、Arの芳香族炭化水素基の置換基としてのアルキルスルファモイル基は、−CO−NHR68で表され、R68は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。該アルキル基の好ましい置換基の総炭素数、有していてもよい置換基の例は、前記R41およびR42のアルキル基の場合に例示したものと同様である。該アルキルスルファモイル基の具体例としては、メチルスルファモイル基、エチルスルファモイル基等が挙げられる。
【0063】
Ar、Arの芳香族炭化水素基の置換基としてのアリールスルファモイル基は、−CO−NHR69で表され、R69は置換基を有していてもよいフェニル基または、置換基を有していてもよいナフチル基を表す。該フェニル基およびナフチル基の好ましい置換基の総炭素数、有していてもよい置換基の例は、前記R43およびR44のフェニル基およびナフチル基の場合に例示したものと同様である。該アリールスルファモイル基の具体例としてはフェニルスルファモイル基、ナフチルスルファモイル基等が挙げられる。
【0064】
Ar、Arの芳香族炭化水素基の置換基としてのフェニル基は、置換基の総炭素数が通常6以上、通常10以下、好ましくは8以下である。該フェニル基に置換していてもよい基としては、炭素数が1から4のアルコキシ基、水酸基、スルホ基およびカルボキシ基などが挙げられる。該置換基を有していてもよいフェニル基の具体例としては、フェニル基、3−スルホフェニル基、4−スルホフェニル基等が挙げられる。
【0065】
Ar、Arの芳香族炭化水素基の置換基としてのアリールオキシ基は、置換基の総炭素数が通常6以上、通常12以下、好ましくは10以下である。該アリールオキシ基を構成するアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましい。このアリールオキシ基が有していてもよい置換基としては、炭素数が1から4のアルキル基、炭素数が1から4のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホ基、水酸基などが挙げられる。該置換基を有していてもよいアリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、2−ナフトキシ基、p−トリルオキシ基、p−メトキシフェノキシ基、o−カルボキシフェノキシ基等が挙げられる。
【0066】
<分子量>
本発明の異方性膜用アゾ化合物の分子量としては、遊離酸の形で、1500以下が好ましく、1300以下がより好ましく、1200以下が特に好ましい。
尚、本発明の異方性膜用アゾ化合物は、通常、水溶性の化合物である。
【0067】
<塩型について>
本発明の異方性膜用アゾ化合物は、遊離酸の形(遊離酸型)のまま使用してもよく、酸基の一部が塩型になっているものであってもよい。また、塩型の化合物と遊離酸型の化合物が混在していてもよい。また、製造時に塩型で得られた場合はそのまま使用してもよいし、所望の塩型に変換してもよい。塩交換の方法としては、公知の方法を任意に用いることができ、例えば以下の方法が挙げられる。
【0068】
1)塩型で得られた化合物の水溶液に塩酸等の強酸を添加し、化合物を遊離酸の形で酸析せしめたのち、所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液)で化合物の酸性基を中和し塩交換する方法。
2)塩型で得られた化合物の水溶液に、所望の対イオンを有する大過剰の中性塩(例えば塩化ナトリウム、塩化リチウム)を添加し、塩析ケーキの形で塩交換を行う方法。
3)塩型で得られた化合物の水溶液を、強酸性陽イオン交換樹脂で処理し、化合物を遊離酸の形で酸析せしめたのち、所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液)で化合物の酸性基を中和し塩交換する方法。
4)予め所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液)で処理した強酸性陽イオン交換樹脂に、塩型で得られた化合物の水溶液を作用させ、塩交換を行う方法。
【0069】
また、本発明の異方性膜用アゾ化合物の酸性基が遊離酸型をとるか、塩型を取るかは、化合物のpKaと化合物溶液のpHに依存する。そのため、本発明の異方性膜用アゾ化合物の酸性基は、遊離酸型、いずれかの塩型、酸性基が2つ以上ある場合には遊離酸型と塩型の混合または2種類以上の塩型の混合など、さまざまな型を取りうる。特に、異方性膜中でのアゾ化合物の酸性基は、後述する異方性膜用組成物の好ましいpHや異方性膜用アゾ化合物を含んだ基材の解離性の塩を含む溶液での処理の影響を受けて、異方性膜を作成する工程で用いたものとは異なる塩型をしていることもありうる。
【0070】
上記の塩型の例としては、Na、Li、K等のアルカリ金属の塩、アルキル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムの塩、または有機アミンの塩が挙げられる。
【0071】
有機アミンの例として、炭素数1〜6の低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換された炭素数1〜6の低級アルキルアミン、カルボキシ置換された炭素数1〜6の低級アルキルアミン等が挙げられる。
【0072】
これらの塩型の場合、その種類は1種類に限られず複数種混在していてもよい。また、化合物の一分子内に複数種混在してもよいし、組成物中に複数種混在していてもよい。
【0073】
本発明の異方性膜用アゾ化合物の酸性基の好ましい型としては、アゾ化合物の製造工程、後述する異方性膜用組成物の内容や好ましいpHなどによって異なるが、水に対して高溶解度が必要な場合(例えば、基材へのアゾ化合物の移行能を高めるため、異方性膜用組成物中において高い化合物濃度が必要な場合など)には、リチウム塩、トリエチルアミン塩、水溶性基が置換した有機アミン塩であるか、またはこれらの塩を分子中に1以上有することが好ましい。一方、水に対して低溶解度が必要な場合(例えば、アゾ化合物の製造工程においてアゾ化合物溶液から該アゾ化合物を析出させたい場合など)には、遊離酸の型、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩であるか、またはこれらの塩を分子中に1以上有することが好ましい。
【0074】
<本発明の異方性膜用アゾ化合物の具体例>
本発明の異方性膜用アゾ化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下の具体例は、遊離酸の形で記載する。
【0075】
【化5】

【0076】
【化6】

【0077】
<異方性膜用アゾ化合物の合成方法>
本発明の異方性膜用アゾ化合物は、それ自体周知の方法に従って製造することができる。
例えば上記例示化合物No.(I−7)で示されるアゾ化合物は下記(1)〜(3)の工程に従って製造することができる。
【0078】
(1)4−アミノ−4’−ニトロスチルベン−2,2’−ジスルホン酸ナトリウムをN−メチル−2−ピロリドンに室温にて溶解し、桂皮酸クロライドと炭酸ナトリウムを添加し、室温にて2時間アシル化を行う。反応終了後、水に排出し、塩析によりアシル化物を取り出す。
(2)得られたアシル化物を水に溶解し、60〜70℃に昇温し、水硫化ナトリウムを添加して、還元反応を行う。反応終了後室温まで降温し、塩析により還元された化合物を取り出す。
(3)得られた化合物を常法{例えば細田豊著「新染料化学」(昭和48年12月21日、技報堂発行)第396頁〜第409頁等参照}に従ってジアゾ化し、フェノールにカップリングさせることにより上記例示化合物No.(I−7)で示されるアゾ化合物が得られる。
【0079】
[異方性膜用組成物]
異方性膜を製造するにあたって、異方性膜用組成物を用いることができる。
異方性膜用組成物は、本発明の異方性膜用アゾ化合物と、通常さらに溶剤を含有し、本発明のアゾ化合物が溶剤に溶解もしくは分散されたものである。
この組成物中または以下に詳述する異方性膜において、本発明の異方性膜用アゾ化合物を2種以上組み合わせて使用したり、ヨウ素や公知の二色性化合物等の他の二色性物質を組み合わせて使用することもできる。さらに、製造される異方性膜に所望の性能を与えたり、製造に好適な組成物とするために、種々の溶剤、添加剤等を適宜組み合わせて使用することができる。更には配向を低下させない程度に紫外線吸収化合物や近赤外線吸収化合物などの他の化合物と混合して用いることもできる。これにより、異方性膜の耐久性の向上、色相の補正、偏光性能の向上を図ると共に、各種の色相を有する異方性膜を製造することができる。
【0080】
異方性膜用組成物に用いる溶剤としては、水、水混和性のある有機溶剤、或いはこれらの混合物が適している。有機溶剤の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性溶剤等の単独または2種以上の混合溶剤が挙げられる。
【0081】
これらの溶剤に本発明の異方性膜用アゾ化合物を溶解する場合の濃度としては、化合物の溶解性や会合状態の形成濃度にも依存するが、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。
【0082】
また、異方性膜用組成物は、化合物の溶解性向上等のため、必要に応じて界面活性剤等の添加剤を加えることができる。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系のいずれも使用可能である。その添加濃度は通常0.01重量%以上、10重量%以下が好ましい。
【0083】
さらに、本発明に係る異方性膜用組成物は、基材への染着性などの向上ため、必要に応じて添加剤を用いることができる。具体的には、浅原照三編「新染料加工講座 第7巻 染色II」共立出版株式会社、1972年6月15日発行、233頁から251頁や山下雄也、根本嘉郎共著「高分子活性剤と染色助剤の界面化学」株式会社誠文堂新光社、1963年9月5日発行、94頁から173頁などに記載の繊維用染色に用いられる染色助剤、およびその手法や前述の界面活性剤、アルコール類、グリコール類、尿素、塩化ナトリウム、ボウ硝等の無機塩などである。その添加濃度は通常0.01重量%以上、10重量%以下が好ましい。
【0084】
[異方性膜]
本発明の異方性膜用アゾ化合物を用いて異方性膜を製造することができる。
この異方性膜は、本発明の異方性膜用アゾ化合物の他に、必要に応じてその他の化合物、例えば、公知の青色二色性染料、ヨウ素等や上記のような界面活性剤等の添加剤を含有していてもよい。もちろん、本発明の異方性膜用アゾ化合物であるアゾ化合物同士を組み合わせて含有していてもよい。
【0085】
異方性膜の作製方法としては、次の(a)〜(d)の方法等が挙げられる。
(a)延伸したポリビニルアルコールなどの高分子基材を、本発明の異方性膜用アゾ化合物を含有する溶液(異方性膜用組成物)等で染色する方法。
(b)ポリビニルアルコールなどの高分子基材を、本発明の異方性膜用アゾ化合物を含有する溶液(異方性膜用組成物)等で染色した後、延伸する方法。
(c)ポリビニルアルコールなどの高分子基材を、本発明の異方性膜用アゾ化合物を含有する溶液(異方性膜用組成物)等の溶液に溶解し、フィルム状に成膜した後に延伸する方法。
(d)本発明の異方性膜用アゾ化合物を適当な溶剤に溶解して、成膜用(異方性膜形成用)組成物を調製し、この成膜用組成物を用いてガラス板等の各種基材表面に湿式成膜法にて成膜し、成膜用組成物中に含まれる異方性膜用アゾ化合物を配向・積層させる方法。
【0086】
本発明においては上記(a)〜(d)のいずれを用いてもよいが、(a)〜(c)のいずれかを用いるのが特に好ましい。
【0087】
以下に、本発明の異方性膜用アゾ化合物を用いて異方性膜を製造する方法について説明するが、特に、本発明の異方性膜用アゾ化合物において好ましく用いられる上記(a)〜(c)のいずれかの方法により異方性膜を作製する場合について詳述する。
なお、上記(d)の方法により異方性膜を作製する方法や、その場合に用いられる成膜用組成物については、公知の方法および組成物を適宜用いることができるが、例えば、国際公開第2006/107035号パンフレット等に記載の方法および組成物等が挙げられる。
【0088】
本発明の異方性膜用アゾ化合物を用いて、異方性膜を形成する場合、例えば前記(a)〜(c)のいずれの方法においても、本発明の異方性膜用アゾ化合物を適当な溶剤に溶解して使用する。溶剤としては、前記異方性膜用組成物に含有する溶剤が挙げられる。
【0089】
なお、前記(a)、(b)の方法における異方性膜用アゾ化合物溶液で染色する基材や、前記(c)の方法において異方性膜用アゾ化合物とともに延伸されてなる基材としては、ポリビニルアルコール系の樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン/酢酸ビニル(EVA)樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコールなど、異方性膜用アゾ化合物との親和性の高い高分子材料が好ましい。
【0090】
ポリビニルアルコールの種類としては、一般的に高分子量かつ高ケン化度のものが、偏光度や二色性などの光学特性の観点から好ましいが、温湿度による収縮による欠陥を抑止することや光学特性と耐環境性能の両立を図るなどの目的から、二色性物質の種類とポリビニルアルコールのケン化度や変性度(疎水性共重合成分比)を適宜調整したポリビニルアルコール誘導体を選択することができる。
【0091】
高分子材料と異方性膜用アゾ化合物の相互作用を制御する具体的手法としては、高分子材料と異方性膜用アゾ化合物の各々にプロトン供与性の−OH、−NH、−NHR、−NHCO−、−NHCONH−などに対し、プロトン受容性の−N=N−、−OH、−NH、−NRR’、−OR、−CN、−C≡C−およびフェニル基やナフチル基などの芳香環を官能基として組み合わせることにより、有効なものにすることができる(RおよびR’は任意の置換基である)。さらに官能基の密度を調整することで、二色性や染着性の向上に効果が得られる。
【0092】
前記(a)〜(c)の方法における、染色および成膜並びに延伸は、一般的な下記の方法で行うことができる。
【0093】
上記の異方性膜用組成物および必要に応じて塩化ナトリウム、ボウ硝等の無機塩、界面活性剤等の染色助剤を加えた染浴中に、通常35℃以上、通常80℃以下で、通常10分以下、高分子フィルムを浸漬して染色し、次いで必要に応じてホウ酸処理し、乾燥する。あるいは、高分子重合体を水および/またはアルコール、グリセリン、ジメチルホルムアミド等の親水性有機溶媒に溶解し、本発明に係る異方性膜用組成物を添加して原液染色を行い、この染色原液を流延法、溶液塗布法、押出法等により成膜して染色フィルムを作製する。溶媒に溶解させる高分子重合体の濃度としては、高分子重合体の種類によっても異なるが、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上程度で、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下程度である。また、溶媒に溶解する異方性膜用アゾ化合物の濃度としては、高分子重合体に対して通常0.1重量%以上、好ましくは0.8重量%以上程度で、通常5重量%以下、好ましくは2.5重量%以下程度である。
【0094】
上記のようにして染色および成膜して得られた未延伸フィルムは、適当な方法によって一軸方向に延伸する。延伸処理することによって異方性膜用アゾ化合物分子が配向し、二色性が発現する。一軸に延伸する方法としては、湿式法にて引っ張り延伸を行う方法、乾式法にて引っ張り延伸を行う方法、乾式法にてロール間圧縮延伸を行う方法等があり、いずれの方法を用いて行ってもよい。延伸倍率は2倍以上、9倍以下にて行われるが、高分子重合体としてポリビニルアルコールおよびその誘導体を用いた場合は3倍以上、6倍以下の範囲が好ましい。
【0095】
延伸配向処理したあとで、該延伸フィルムの耐久性向上と偏光度向上の目的でホウ酸処理を実施する。ホウ酸処理により、異方性膜の光線透過率と偏光度が向上する。ホウ酸処理の条件としては、用いる親水性高分子重合体および異方性膜用アゾ化合物の種類によって異なるが、一般的にはホウ酸濃度としては、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上程度で、通常15重量%以下、好ましくは10重量%以下程度である。また、処理温度としては通常30℃以上、好ましくは50℃以上で、通常80℃以下の範囲にあることが望ましい。ホウ酸濃度が1重量%未満であるか、処理温度が30℃未満の場合は、処理効果が小さくなることがあり、また、ホウ酸濃度が15重量%を超えるか、処理温度が80℃以上を超える場合は異方性膜がもろくなり好ましくないことがある。
【0096】
(a)〜(c)のいずれかの方法により得られる異方性膜の膜厚は通常50μm以上、特に80μm以上で、200μm以下が好ましく、特に100μm以下であることが好ましい。
【0097】
本発明の異方性膜用アゾ化合物を含有する異方性膜は、光吸収の異方性を利用し、直線偏光、円偏光、楕円偏光等を得る偏光膜として機能するほか、膜形成プロセスと基材や異方性膜用アゾ化合物を含有する組成物の選択により、屈折率異方性や伝導異方性などの各種異方性膜として機能化が可能となり、様々な種類の、多様な用途に適用可能な偏光素子とすることができる。
【0098】
異方性膜を偏光素子として使用する場合、前記(a)〜(d)に代表される方法で作成された異方性膜そのものを使用してもよく、また該異方性膜上に保護層、粘着層、反射防止層、位相差層など、様々な機能をもつ層を積層形成し、積層体として使用してもよい。
【0099】
本発明の異方性膜を基板上に形成して偏光素子として使用する場合、形成された異方性膜そのものを使用してもよく、また上記の様な保護層のほか、粘着層或いは反射防止層、配向膜、位相差フィルムとしての機能、輝度向上フィルムとしての機能、反射フィルムとしての機能、半透過反射フィルムとしての機能、拡散フィルムとしての機能などの光学機能をもつ層など、様々な機能をもつ層を湿式成膜法などにより積層形成し、積層体として使用してもよい。
【0100】
これら光学機能を有する層は、例えば以下の様な方法により形成することが出来る。
【0101】
位相差フィルムとしての機能を有する層は、例えば特開平2−59703号公報、特開平4−230704号公報などに記載の延伸処理を施したり、特開平7−230007号公報などに記載された処理を施したりすることにより形成することができる。
【0102】
また、輝度向上フィルムとしての機能を有する層は、例えば特開2002−169025号公報や特開2003−29030号公報に記載されるような方法で微細孔を形成すること、或いは、選択反射の中心波長が異なる2層以上のコレステリック液晶層を重畳することにより形成することができる。
【0103】
反射フィルムまたは半透過反射フィルムとしての機能を有する層は、蒸着やスパッタリングなどで得られた金属薄膜を用いて形成することができる。
【0104】
拡散フィルムとしての機能を有する層は、上記の保護層に微粒子を含む樹脂溶液をコーティングすることにより、形成することができる。
【0105】
また、位相差フィルムや光学補償フィルムとしての機能を有する層は、ディスコティック液晶性化合物、ネマティック液晶性化合物などの液晶性化合物を塗布して配向させることにより形成することができる。
【0106】
本発明の異方性膜用アゾ化合物を用いた異方性膜は、広範囲な色表現が可能で、高耐熱性の偏光素子を得ることができるという点から、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイだけでなく液晶プロジェクタや車載用表示パネル等、高耐熱性が求められる用途にも好適に使用することができる。
【実施例】
【0107】
次に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0108】
なお、以下の実施例中、二色比は、プリズム偏光子を入射光学系に配した分光光度計で異方性膜の透過率を測定した後、次式により計算した。
二色比(D)=Az/Ay
Az=−log(Tz)
Ay=−log(Ty)
Tz:異方性膜の吸収軸方向の偏光に対する透過率
Ty:異方性膜の偏光軸方向の偏光に対する透過率
【0109】
また、最大吸収波長は、このAzが最大となる波長として求めた。
【0110】
本発明の異方性膜用アゾ化合物のうち、前記具体例のアゾ化合物の長短軸比kおよび式(1)で計算される波長λ(k)nmとポリビニルアルコールフィルム中での最大吸収波長λmax(PVA)、分子長軸と分子吸収軸とのなす角度θを以下の表に纏めた。
【0111】
【表2】

【0112】
[実施例1]
蒸留水100重量部に例示化合物No.(I−1)の構造を有する異方性膜用アゾ化合物のナトリウム塩0.05重量部と無水硫酸ナトリウム0.02重量部を加えて撹拌溶解し、染色液とした。ポリビニルアルコールフィルム(OPLフィルム、日本合成化学工業社製、膜厚75μm)を、50℃の染色液に1分間浸漬して染色し、50℃の水浴で余剰の染料を洗浄した後、50℃の4重量%ホウ酸水溶液中で6倍に延伸した。延伸後、室温の水浴中で余剰のホウ酸を洗浄し、送風乾燥することで異方性膜を得た。
【0113】
【化7】

【0114】
この異方性膜の最大吸収波長は415nmであり、その波長での単体透過率は41%、二色比は49.3であった。この値を図1に示す。図1より、このアゾ化合物は、同じ吸収波長で比較するとヨウ素と同等以上の二色性を有しており、本発明の異方性膜用アゾ化合物は、ヨウ素と同等以上の二色性を有するアゾ化合物であることがわかる。
【0115】
[実施例2]
例示化合物No.(I−1)の代りに、例示化合物No.(I−2)の異方性膜用アゾ化合物のナトリウム塩を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法を用いて異方性膜を得た。
【0116】
【化8】

【0117】
この異方性膜の最大吸収波長は410nmであり、その波長での単体透過率は47%、二色比は45.2であった。この値を図1に示す。図1より、このアゾ化合物は、同じ吸収波長で比較するとヨウ素と同等以上の二色性を有しており、本発明の異方性膜用アゾ化合物は、ヨウ素と同等以上の二色性を有するアゾ化合物であることがわかる。
【0118】
[実施例3]
例示化合物No.(I−1)の代りに、例示化合物No.(I−3)の異方性膜用アゾ化合物のナトリウム塩を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法を用いて異方性膜を得た。
【0119】
【化9】

【0120】
この異方性膜の最大吸収波長は395nmであり、その波長での単体透過率は40%、二色比は35.7であった。この値を図1に示す。図1より、このアゾ化合物は、同じ吸収波長で比較するとヨウ素と同等以上の二色性を有しており、本発明の異方性膜用アゾ化合物は、ヨウ素と同等以上の二色性を有するアゾ化合物であることがわかる。
【0121】
[実施例4]
例示化合物No.(I−1)の代りに、例示化合物No.(I−4)の異方性膜用アゾ化合物のナトリウム塩を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法を用いて異方性膜を得た。
【0122】
【化10】

【0123】
この異方性膜の最大吸収波長は395nmであり、その波長での単体透過率は44%、二色比は32.2であった。この値を図1に示す。図1より、このアゾ化合物は、同じ吸収波長で比較するとヨウ素と同等以上の二色性を有しており、本発明の異方性膜用アゾ化合物は、ヨウ素と同等以上の二色性を有するアゾ化合物であることがわかる。
【0124】
[実施例5]
例示化合物No.(I−1)の代りに、例示化合物No.(I−5)の異方性膜用アゾ化合物のナトリウム塩を用いたことと、染色時間を10分にしたこと以外は、実施例1と同様の方法を用いて異方性膜を得た。
【0125】
【化11】

【0126】
この異方性膜の最大吸収波長は420nmであり、その波長での単体透過率は44%、二色比は46.7であった。この値を図1に示す。図1より、このアゾ化合物は、同じ吸収波長で比較するとヨウ素と同等の二色性を有しており、本発明の異方性膜用アゾ化合物は、ヨウ素と同等の二色性を有するアゾ化合物であることがわかる。
【0127】
[実施例6]
例示化合物No.(I−1)の代りに、例示化合物No.(I−6)の異方性膜用アゾ化合物のナトリウム塩を用いたことと、染色時間を5分にしたこと以外は、実施例1と同様の方法を用いて異方性膜を得た。
【0128】
【化12】

【0129】
この異方性膜の最大吸収波長は420nmであり、その波長での単体透過率は41%、二色比は47.1であった。この値を図1に示す。図1より、このアゾ化合物は、同じ吸収波長で比較するとヨウ素と同等の二色性を有しており、本発明の異方性膜用アゾ化合物は、ヨウ素と同等の二色性を有するアゾ化合物であることがわかる。
【0130】
[実施例7]
例示化合物No.(I−1)の代りに、例示化合物No.(I−7)の異方性膜用アゾ化合物のナトリウム塩を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法を用いて異方性膜を得た。
【0131】
【化13】

【0132】
この異方性膜の最大吸収波長は415nmであり、その波長での単体透過率は41.1%、二色比は60.7であった。この値を図1に示す。図1より、このアゾ化合物は、同じ吸収波長で比較するとヨウ素と同等以上の二色性を有しており、本発明の異方性膜用アゾ化合物は、ヨウ素と同等以上の二色性を有するアゾ化合物であることがわかる。
【0133】
[実施例8]
例示化合物No.(I−1)の代りに、例示化合物No.(I−8)の異方性膜用アゾ化合物のナトリウム塩を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法を用いて異方性膜を得た。
【0134】
【化14】

【0135】
この異方性膜の最大吸収波長は415nmであり、その波長での単体透過率は41.0%、二色比は57.9であった。この値を図1に示す。図1より、このアゾ化合物は、同じ吸収波長で比較するとヨウ素と同等以上の二色性を有しており、本発明の異方性膜用アゾ化合物は、ヨウ素と同等以上の二色性を有するアゾ化合物であることがわかる。
【0136】
[実施例9]
例示化合物No.(I−1)の代りに、例示化合物No.(I−9)の異方性膜用アゾ化合物のナトリウム塩を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法を用いて異方性膜を得た。
【0137】
【化15】

【0138】
この異方性膜の最大吸収波長は420nmであり、その波長での単体透過率は42.5%、二色比は81.4であった。この値を図1に示す。図1より、このアゾ化合物は、同じ吸収波長で比較するとヨウ素と同等以上の二色性を有しており、本発明の異方性膜用アゾ化合物は、ヨウ素と同等以上の二色性を有するアゾ化合物であることがわかる。
【0139】
[比較例1]
例示化合物No.(I−1)のナトリウム塩の代りに、下記式(A)で表される「クリソフェニン」(CI−24895、東京化成社製)を脱塩精製して用いたこと以外は、実施例1と同様の方法を用いて異方性膜を得た。
【0140】
【化16】

【0141】
この異方性膜の最大吸収波長は455nmであり、その波長での単体透過率は41.3%、二色比は42.3であった。この値を図1に示す。図1より、このアゾ化合物は、同じ吸収波長で比較するとヨウ素より低い二色性であることが分かった。
なお、クリソフェニンの長短軸比は4.903、分子長軸と分子吸収軸とのなす角度θが0.4度と小さかったが、前記式(1)から計算される波長λ(k)は448nmであり、ポリビニルアルコールフィルム中の最大吸収波長455nmの方が長い値を示した。
【0142】
[比較例2]
例示化合物No.(I−1)のナトリウム塩の代りに、下記式(B)で表される「Direct Yellow 44」(CI−29000、東京化成社製)を脱塩精製して用いたこと以外は、実施例1と同様の方法を用いて異方性膜を得た。
【0143】
【化17】

【0144】
この異方性膜の最大吸収波長は415nmであり、その波長での単体透過率は43.2%、二色比は38.5であった。この値を図1に示す。図1より、このアゾ化合物は、同じ吸収波長で比較するとヨウ素より低い二色性であることが分かった。
なお、Direct Yellow 44の長短軸比は4.551で、前記式(1)から計算される波長λ(k)は441nmであり、ポリビニルアルコールフィルム中の最大吸収波長415nmの方が短かったが、分子長軸と分子吸収軸とのなす角度θが1.9度と1.5度よりも大きかった。
【0145】
[比較例3]
例示化合物No.(I−1)のナトリウム塩の代りに、下記式(C)で表される「Congo Red」(CI−22120、東京化成社製)を脱塩精製して用いたこと以外は、実施例1と同様の方法を用いて異方性膜を得た。
【0146】
【化18】

【0147】
この異方性膜の最大吸収波長は530nmであり、その波長での単体透過率は40.1%、二色比は49.0であった。この値を図1に示す。図1より、このアゾ化合物は、同じ吸収波長で比較するとヨウ素より低い二色性であることが分かった。
【0148】
なお、Congo Redの長短軸比は3.829で、前記式(1)から計算される波長λ(k)は425nmであり、ポリビニルアルコールフィルム中の最大吸収波長530nmの方が長く、かつ、分子長軸と分子吸収軸とのなす角度θが2.0度と1.5度よりも大きかった。
【0149】
[比較例4]
例示化合物No.(I−1)のナトリウム塩の代りに、下記式(D)で表される「Brilliant Yellow」(CI−24890、東京化成社製)を脱塩精製して用いたこと以外は、実施例1と同様の方法を用いて異方性膜を得た。
【0150】
【化19】

【0151】
この異方性膜の最大吸収波長は430nmであり、その波長での単体透過率は38.8%、二色比は40.3であった。この値を図1に示す。図1より、このアゾ化合物は、同じ吸収波長で比較するとヨウ素より低い二色性であることが分かった。
なお、Brilliant Yellowの長短軸比は3.750、分子長軸と分子吸収軸とのなす角度θが0.4度と小さかったが、前記式(1)から計算される波長λ(k)は423nmであり、ポリビニルアルコールフィルム中の最大吸収波長430nmの方が長い値を示した。
【0152】
[比較例5]
例示化合物No.(I−1)のナトリウム塩の代りに、下記式(E)で表される「Stilbazo」(東京化成社製)を脱塩精製して用いたこと以外は、実施例1と同様の方法を用いて異方性膜を得た。
【0153】
【化20】

【0154】
この異方性膜の最大吸収波長は445nmであり、その波長での単体透過率は38.2%、二色比は33.0であった。この値を図1に示す。図1より、このアゾ化合物は、同じ吸収波長で比較するとヨウ素より低い二色性であることが分かった。
なお、Stilbazoの長短軸比は3.699、分子長軸と分子吸収軸とのなす角度θが1.0度と小さかったが、前記式(1)から計算される波長λ(k)は422nmであり、ポリビニルアルコールフィルム中の最大吸収波長445nmの方が長い値を示した。
【0155】
[参考例1]
二色性は、可視光波長領域のどの波長であっても高いことが望ましいが、比較対象としてヨウ素型偏光板の二色性と同等以上であれば十分価値があると考えられる。下表は、非特許文献3より抜粋したヨウ素の吸収波長と二色比の関係である。
【0156】
【表3】

【0157】
上記の値と、実施例1〜9の本発明の異方性膜用アゾ化合物の二色比とから、本発明の異方性膜用アゾ化合物は、偏光膜等に有用な十分な二色性を有することが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】本発明の異方性膜用アゾ化合物および比較例化合物の二色比を、ヨウ素の二色比と比較したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜中における最大吸収波長が、下記式(1)で表される波長λ(k)nmよりも短いアゾ化合物であって、分子の主吸収軸と分子長軸のなす角度θが1.5度以下であることを特徴とする、異方性膜用アゾ化合物。
【数1】

(式(1)中、定数A、B、C、Dおよびδλは、以下の値を有する。
A=−18.069
B=40.645
C=0.79764
D=−2.0793
δλ=67
kは、アゾ化合物分子の長短軸比を表す。)
【請求項2】
分子内に下記式(i)で表される構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の異方性膜用アゾ化合物。
【化1】

(式(i)中、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
【請求項3】
分子内に下記式(ii)で表される構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の異方性膜用アゾ化合物。
【化2】

(式(ii)中、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
【請求項4】
膜中における最大吸収波長が、350〜500nmであることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の異方性膜用アゾ化合物。

【図1】
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【公開番号】特開2009−149868(P2009−149868A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302241(P2008−302241)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】