説明

異物噛み込み検知器と異物噛み込み検知器を具備したヒートシール装置及び製袋機

【課題】ヒートシール工程における異物噛み込み検知では、品種変更時にフィルム厚みの変化の影響を考慮し、閾値の設定変更が必要となるが、その様な製造ミスに繋がる可能性のある、煩わし操作の必要のない、段取り工程での負荷とならない、検知方法を提供することを課題とする。
【解決手段】1対の熱溶融層を持つフィルムを対峙させ、加熱されたシールバーで挟みこみ、一定時間、熱と圧力を付加することにより、前記フィルムを溶融接着させるヒートシールにおいて、フィルム加圧時に発生するシール面への異物の噛み込みに依る、シール面圧力分布の変化を、シールバーのひずみ量として検出する計測手段と、通常時のシールバーのひずみ量から一定値を加算、減算して設定した上下の閾値と、計測されたひずみを比較する演算手段と計測されたひずみが上下の閾値の範囲を外れた時に、警報を鳴らす警報発生手段を備えた異物噛み込み検知器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱溶融層を持つ一対の多層フィルムを、加熱体(以後シールバーと記す)で挟みこみ、熱と圧力を付加して、溶融接着させるヒートシール工程において、接着不良の原因となるシールバー間への異物の噛み込みの検知器と異物噛み込み検知器を具備したヒートシール装置及び製袋機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明において対象とされる、ヒートシール工程を含む代表的な産業用装置として、軟包装袋を生産する製袋機が挙げられる。軟包装袋の種類により様々な製袋機が存在する。一例としてスタンディングパウチ製造用の製袋機があり、その構成および製造工程としては、広幅の胴材フィルムが原反から繰り出しローラによって連続的に送り出され、中央でスリットされ、分離したフィルムがそれぞれ一対のダンサーロールをそれぞれ通る。このダンサーロールは、連続的に原反から送り出されるフィルムを、この後の間欠送りによる工程に対して、貯留し、張力を維持するためのものである。
【0003】
底材フィルムが、胴材とは別に設けられた原反から送り出され、幅方向に折り重ねられ、パンチにより穿孔され、前記一対の胴材フィルム間に挟まれて重ねあわされる。この4層に重ね合わされた胴材フィルムと底材フィルムが、縦シール部に導かれ、流れ方向にヒートシールされ、次に横シール部に導かれ、幅方向にヒートシールされ、その後スリッターを通り、最後にカッターにより、一定ピッチで流れ方向に切断され、製袋される(特許文献1)。
【0004】
この際、ヒートシール時に異物を噛みこむと、異物を噛みこんだ部分が熱伝導不足による接着不良となり、内容物充填後の液漏れに繋がる恐れがある。異物噛み込みを、オペレータによるライン監視により発見するのは困難が生じ、検査においても目視検査では発見が容易ではなく、耐圧試験等の検査は抜き出し検査となってしまい、全数検査に対応していないため、どうしても検査の漏れが発生してしまうという問題がある。
【0005】
この異物噛み込みを自動検知する方法として、サーボモータにリンクを介して、上下シールバーが連結されており、シールバーが離反状態の初期位置から、サーボモータが一方向に回転することにより上下シールバーが互いに接近していき、対接するとトルク制御に移行して、サーボモータは回転を停止し、シールバーに挟まれた一対のフィルムは、一定圧で加熱され、所定のシール時間を過ぎると、サーボモータは逆回転をして初期位置に戻るという機構のヒートシール装置について、異物噛み込み検知方法が提案されている(特許文献2)。
【0006】
その方法は、トルク制御に移行してから一定時間後(サーボモーターが停止している範囲で)のパルス値を読み込み、あらかじめ設定しておいた閾値と比較する方法である。異物噛み込み時には、トルク制御に移行する時のシールバーの変位が通常時より小さく、したがってエンコーダーによって読み込まれるパルス値も小さくなる。
【0007】
異物を噛みこんでいない状態のサーボモータ−停止時のパルス値を基準に設定した閾値を基に、この閾値より大きければ正常、小さければ、異物を噛みこんだ異常状態と判断する方法である。なお、トルク制御に移行してから、一定時間後のパルス値を読み込んでいるのは、シールバーが対接した直後、衝撃等によりパルス値が乱れる恐れがあるためである。
【0008】
しかしながらこの方法では、変位に相当するパルス値を検出しているため、製袋で使用するフィルムの厚さに応じて閾値を変更しないと、誤検知が発生してしまう。そのため、品種変更時の段取り時間が長くなってしまい、また操作ミスの機会が増えてしまうことになる。
【0009】
上記のように製袋工程中のヒートシール工程における異物噛み込みは、通常の検査では発見が難しく、よって内容物充填後に不具合が発見されることが多く、製袋品提供先、最終ユーザーに対する品質保証の観点から自動検知装置が必要となっている。
【0010】
自動検知装置として特許文献2に記載の方法の様に、フィルムを挟みこみ、加熱、押し圧するシールバーの、変位に相当する信号を出力して、異物噛み込みを判定する方法がある。しかしながら、変位に相当する信号を出力して異物噛み込みを判定する場合、フィルムの厚みの変化を考慮しなければならず、品種変更によりフィルムの厚みが変化した場合、それに対応して、閾値を設定変更する必要があり、段取り時間、操作ミスの機会の増加に繋がってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−170989号公報
【特許文献2】特開2005−104512号号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明では、ヒートシール工程における異物噛み込み検知では、品種変更時にフィルム厚みの変化の影響を考慮し、閾値の設定変更が必要となるが、その様な製造ミスに繋がる可能性のある、煩わし操作の必要のない、段取り工程での負荷とならない、検知方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、1対の熱溶融層を持つフィルムを対峙させ、加熱されたシールバーで挟みこみ、一定時間、熱と圧力を付加することにより、前記フィルムを溶融接着させるヒートシールにおいて、フィルム加圧時に発生するシール面への異物の噛み込みに依る、シール面圧力分布の変化を、シールバーのひずみ量として検出する計測手段と、通常時のシールバーのひずみ量から一定値を加算、減算して設定した上下の閾値と、計測されたひずみを比較する演算手段と計測されたひずみが上下の閾値の範囲を外れた時に、警報を鳴らす警報発生手段を備えたことを特徴とする異物噛み込み検知器である。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の異物噛み込み検知器を具備したことを特徴とするヒートシール装置である。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の異物噛み込み検知器を具備したことを特徴とする製袋機である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の異物噛み込み検知器と異物噛み込み検知器を具備したヒートシール装置及び製袋機は、異物噛み込みを、シールバーの変位ではなく、シールバーのシール面の圧力分布の変化により検出する。通常時では、シール面の圧力分布は等分布荷重が作用しているが、異物を噛み込むことにより、シール面の当たりが変化して、異物中心に荷重が強く作用することになる。シールバーはシール時に、シール面から作用する力によりひずみが生じているが、シール面から作用する力の分布が変化すると、シールバーのひずみも変化する。
【0017】
このひずみの変化を、異物噛み込みと判断して、異物噛み込みを検知する。シールバーの変位により異物噛み込みを検知する場合、フィルムの厚みの変化について大きく影響を受けるが、シールバーに作用する力の分布の変化で異物噛み込みを検知する場合には、フィルムの厚みの変化はシールバーに作用する力の分布の変化にほとんど影響を与えないため、フィルムの厚みを考慮する必要がない。このため、品種変更時に検出装置の閾値設定変更をする必要がなく、段取り時間、操作ミスの機会が増加することもない。
【0018】
なお、機械設定値のシール圧力を変更した場合、シールバーのひずみに変化が生じるが、一般的にヒートシール工程において、シール圧力がある一定値以上ならばシール強度に影響を与えることはなく、通常の生産において、品種変更により機械設定値のシール圧力を変更することはほとんどない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】縦シールユニットの概略図。
【図2】シールバーと、シールバーに作用する力および生じるひずみについてのモデル図
【図3】シールバーの概略図及び、ひずみゲージの配置図。
【図4】切り欠き入りのシールバーの概略図。
【図5】計測されたひずみ時間波形の概略図。
【図6】安定時における、異物噛み込み時のひずみの時間波形変化の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明を実施するための形態を、図面を用いて詳細に説明する。本発明による異物噛み込み検知器を、スタンディングパウチ用製袋機の縦シールユニットに設置した。
【0021】
縦シールユニットの概略図を図1に示す。上側ヒーターブロック4に上側シールバー1が固定され、下側ヒーターブロック5に下側シールバー2が固定され、ヒーターブロックによってシールバーは加熱される。シールバーには、熱伝対7が設置してあり、温調機と接続されており、設定された温度に加熱される。
【0022】
上側下側シールバー1,2の材質は共に、真鍮であり、上側シールバー1、上側ヒーターブロック4を含む上側ユニット6が、サーボモータにリンクを介して接続された上下動シャフト3に連結されている。シールバーは上下動して、上下シールバー1,2間の重ねられたウェブフィルムを加熱、押し圧して、溶融接着させる。
【0023】
図2は、このシールバーと、シールバーに作用する力および生じるひずみについてモデル化した図である。縦シールユニットの構造から、上側シールバー1は、端部2点で自由支持された梁とモデル化することができる。ウェブフィルムを加熱、押し圧している時、上側シールバーは、下側シールバー2から、シール面に等分布荷重aを受ける。
【0024】
この荷重によりシールバーは、たわみ、シール面側では圧縮方向bにひずみ、ヒーターブロック4,5側では引張り方向Cにひずむ。このひずみを計測するために、シールバーにひずみゲージを貼り付けた。
【0025】
図3は使用したシールバーの概略図及び、貼り付けたひずみゲージ8、9、10、
11,12の配置図である。図に示す様に、ひずみゲージ8、12は薄肉部へ、ひずみゲージ9、10、11は加熱圧着部18側面へ均等に配置して流れ方向のひずみを計測する様に貼り付けた。
【0026】
薄肉部に貼り付けた目的は剛性が低いため、作用する力の変化に対してひずみが大きく変化することが考えられるため、加熱圧着部18側面に均等に貼り付けた目的は、異物噛み込み箇所付近は作用する力が大きく増加するため、この変化をひずみ変化で検出するためである。
【0027】
図4に示す様に、ひずみゲージ貼り付け部に切り欠き部13,14,15,16,17を設けたシールバーを用いても良い。切り欠き部を設けた目的は、ひずみゲージ貼り付け部の剛性を低くすることで、作用する力の変化に対するひずみの変化を大きくするためである。もちろん、異物噛み込みのない状態でシールした時のシール面の当たりが、ヒートシールの結果に影響を与えない範囲で、切り欠き部を設ける必要がある。
【0028】
貼り付けたひずみゲージをブリッジボックス内蔵型データロガーに接続して、製袋機の機械設定値をショットスピード(1分間あたりのシール回数)85spm(shot per minute)、シールバー温度170℃、シール圧力1MPaに設定して、ウェブフィルムを流して、ひずみを測定した。
【0029】
計測されたひずみ時間波形の概略図を図5に示す。製袋機が作動すると同時にひずみは小刻みに上下しながら、全体的に上昇していく。そして時間T1を経てひずみがε3まで上昇すると、その後ひずみの全体的な上昇はなくなり、ひずみε3付近より小刻みに下降、上昇を繰り返し安定する。
【0030】
この、ひずみの全体的な上昇はシールバーの温度変化に起因するものであり、製袋機が作動しヒートシールを始めると、シールバーはシール時にウェブフィルムに熱を奪われ温度が下降していき、一定時間を経ると、ある一定値に達する。ひずみの全体的な上昇は、このシールバーの温度変化と連動している。
【0031】
ひずみの小刻みな上下動の時間幅は、ショットスピードとほぼ同じオーダであり、このひずみの小刻みな上下動がシール時のひずみに対応している。なお、シール時にひずみゲージ設置箇所は圧縮方向にひずむため、ε3からの下降幅がシール時のひずみに対応していることになる。
【0032】
機械設定値のショットスピードを70spm、100spm、シールバー温度を230℃と変更して、ウェブフィルムを流し、ひずみを計測したが、シール時のひずみに変化はなく、また波形の大きな乱れもなかった。これより、実機での生産時に品種変更でシール圧以外の機械設定値であるショットスピード、シールバー温度を変更しても、計測されるひずみに影響を与えることがないことが分かる。
【0033】
次に、製袋機を作動して、ウェブフィルムを流し、ひずみが安定してから、シールバー間に厚さ0.6mmの薄紙を手で保持して、シール時に挟みこみ、ひずみの変化を計測した。
【0034】
図5に計測されたひずみ時間波形の変化の概略図を示す。なお、このひずみ時間波形を計測するひずみゲージは異物噛み込み箇所付近に貼り付けられていた。時間T2後に薄紙をシール時に挟み込み始めると、ひずみε3−ε2からひずみε3−ε1に増加していることが確認できた。異物噛み込み箇所付近で当たりが強くなり、作用する力が増加していることを、検出していることが分かる。
【0035】
異物噛み込み箇所を変更して、ひずみを計測すると、異物噛み込み箇所付近の測定点で
はひずみが増加、異物噛み込み箇所から離れた測定点では、逆にひずみが減少しているという傾向を確認できた。また、薄肉部での測定点ではひずみ変化が大きい傾向を確認できた。
【0036】
最後にひずみゲージをPLC(Programmable Logic Controler)に接続し、またPLCにアラームを接続し、一定時間後(ひずみ安定後)に、一定の時間間隔で最大値と最小値を繰り返し読み込み、その都度その差を演算して、ひずみを計測し、異物噛み込みのない状態で計測したひずみから一定値を加算、減算した上下の閾値を設定して、計測されたひずみが、その閾値の範囲内にあるかどうか比較演算し、範囲外である場合はアラームを鳴らし、製袋機を非常停止する様にプログラミングした。
【0037】
製袋機を作動して、ウェブフィルムに厚さ0.18mmのビニールテープを貼り付けて、製袋機に流した。その結果、ビニールテープを貼り付けた箇所を縦シールユニットがヒートシールした結果、アラームが鳴り、製袋機は非常停止した。
【符号の説明】
【0038】
1・・・上側シールバー
2・・・下側シールバー
3・・・上下動シャフト
4・・・上側ヒーターブロック
5・・・下側ヒーターブロック
6・・・上側ユニット
7・・・熱伝対
8・・・ひずみゲージ
9・・・ひずみゲージ
10・・・ひずみゲージ
11・・・ひずみゲージ
12・・・ひずみゲージ
13・・・切り欠き部
14・・・切り欠き部
15・・・切り欠き部
16・・・切り欠き部
17・・・切り欠き部
18・・・加熱圧着部
a・・・等分布荷重
b・・・圧縮方向
c・・・引張り方向
A・・・平面図
B・・・側面図
C・・・裏平面図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の熱溶融層を持つフィルムを対峙させ、加熱されたシールバーで挟みこみ、一定時間、熱と圧力を付加することにより、前記フィルムを溶融接着させるヒートシールにおいて、
フィルム加圧時に発生するシール面への異物の噛み込みに依る、シール面圧力分布の変化を、シールバーのひずみ量として検出する計測手段と、
通常時のシールバーのひずみ量から一定値を加算、減算して設定した上下の閾値と、計測されたひずみを比較する演算手段と
計測されたひずみが上下の閾値の範囲を外れた時に、警報を鳴らす警報発生手段
を備えたことを特徴とする異物噛み込み検知器。
【請求項2】
請求項1に記載の異物噛み込み検知器を具備したことを特徴とするヒートシール装置。
【請求項3】
請求項1に記載の異物噛み込み検知器を具備したことを特徴とする製袋機。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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