説明

異物除去装置およびこれを備えたペレット製造装置

【課題】樹脂ペレットの製造装置内に発生する水蒸気中の異物を簡単、かつ確実に除去でき、しかも、前記異物の除去に係るコストを低減させることができる異物除去装置およびこれを備えたペレット製造装置を提供することを目的とする。
【解決手段】樹脂ペレットの製造装置2内に発生する水蒸気と該水蒸気に含まれる異物とを通過させ、これら水蒸気と該水蒸気に含まれる異物とのうち、前記異物だけを除去するものであり、
所定量の除去用水3aが貯留された筐体3と、この筐体3の側壁3bに挿通されて、前記除去用水3a中に挿入される除去用パイプ4と、前記筐体3の側壁3cに挿通され、筐体3内の水蒸気を脱気する脱気部5と、前記筐体3に、前記除去用水3aの水面を覆うようにして設けられた防沫板部6とを備え、前記除去用パイプ4のパイプ本体部4cに、複数の排気孔4d、4d…が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ペレットの製造装置内に発生する水蒸気と該水蒸気に含まれる異物とを通過させ、これら水蒸気と該水蒸気に含まれる異物とのうち、前記異物だけを除去する異物除去装置およびこれを備えたペレット製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅の内装部品として、最近では、回り縁や幅木、階段手摺、階段踏板、サッシ枠、家具、テーブル、カウンター等に木質様成形品が用いられている。
この木質様成形品は、天然の木材や、おが屑等を粉砕して得たセルロース系微粉粒に、樹脂を混練・溶融して樹脂ペレットを製造し、この樹脂ペレットを成形装置で所定形状に成形することにより形成される。
【0003】
このような樹脂ペレットの製造技術として、セルロース系微粉粒と樹脂とを混練溶融して混合材料とする混練工程と、この混合材料を多孔円形ノズルからひも状に押し出す押出工程と、押し出された混合材料をペレット状に切断する切断工程とを経て行われる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平07−080907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような混練工程において、前記セルロース系微粉粒と樹脂とを混練した際に高温の熱が発生し、これに伴って水蒸気が発生する場合がある。
この時、前記樹脂ペレットに余分な水分が含まれると、製造される樹脂ペレットの成形性が低下してしまうため、樹脂ペレットの製造装置に吸気装置を設けて水蒸気を吸引し、この水蒸気を熱交換器で冷却して、液体として環境中に排出するようにしている。
【0005】
ところが、前記水蒸気中には、前記樹脂に対して含まれる油分およびこの油分を保持するセルロース系微粉粒(木粉)等の異物が含まれる場合がある。そして、前記水蒸気を環境中に排出するためには、前記異物を除去する必要がある。
【0006】
そこで、前記異物を含む水蒸気を、その内部にステンレス網を設けたレシーバータンクに通すことで、前記異物を除去する技術や、前記水蒸気を熱交換器により冷却してから、吸着マットを備えた分離槽に通すことで、前記異物を吸着させて取り除き、水分のみを排水する技術が試みられている。さらに、これらの装置を連続するラインとして設けて二重に除去作業を行うことも試みられている。
【0007】
しかしながら、前記水蒸気は環境中に排出されるものであることから、さらに厳密に前記異物を除去できる技術の開発が強く望まれていた。
また、前記レシーバータンクや吸着マット等による異物の除去作業は、大掛かりな装置の導入やそのメンテナンスに係るコストが大きいため、除去作業に係る全体的なコストを低減させたいという要望もあった。
【0008】
本発明の課題は、樹脂ペレットの製造装置内に発生する水蒸気中の異物を簡単、かつ確実に除去でき、しかも、前記異物の除去に係るコストを低減させることができる異物除去装置およびこれを備えたペレット製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、例えば図1に示すように、樹脂ペレットの製造装置2内に発生する水蒸気と該水蒸気に含まれる異物とを通過させ、これら水蒸気と該水蒸気に含まれる異物とのうち、前記異物だけを除去する異物除去装置1において、
内部に所定量の除去用水3aが貯留された筐体3と、この筐体3の側壁3bに挿通されて、前記除去用水3a中に挿入される除去用パイプ4と、前記筐体3の側壁3cに挿通され、筐体3内の水蒸気を脱気する脱気部5と、前記筐体3に、前記除去用水3aの水面を覆うようにして設けられた防沫板部6とを備え、
前記除去用パイプ4は、前記側壁3bに挿通された挿通部4aと、この挿通部4aから延出して前記防沫板部6を貫通する延出部4bと、この延出部4bから延出し、かつ、前記除去用水3aに浸漬するパイプ本体部4cとから構成されており、
前記パイプ本体部4cには複数の排気孔4d、4d…が設けられていることを特徴とする。
【0010】
ここで、前記樹脂ペレットは、天然の木材や、おが屑等を粉砕して得たセルロース系微粉粒に、樹脂を混練・溶融して混合材料とし、この混合材料を多孔円形ノズルからひも状に押し出すとともに、この混合材料をペレット状に切断して形成される。
また、このような樹脂ペレットに顔料等を併せて混合し、所定の成形技術によって成形することで、天然の木目に極めて近い木目模様が形成された木質様成形品を製造することができる。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、内部に所定量の除去用水3aが貯留された筐体3と、この筐体3の側壁3bに挿通されて、前記除去用水3a中に挿入される除去用パイプ4と、前記筐体3の側壁3cに挿通され、筐体3内の水蒸気を脱気する脱気部5と、前記筐体3に、前記除去用水3aの水面を覆うようにして設けられた防沫板部6とを備え、
前記除去用パイプ4は、前記側壁3bに挿通された挿通部4aと、この挿通部4aから延出して前記防沫板部6を貫通する延出部4bと、この延出部4bから延出し、かつ、前記除去用水3aに浸漬するパイプ本体部4cとから構成されており、
前記パイプ本体部4cには複数の排気孔4d、4d…が設けられていることから、樹脂ペレットの製造装置2内に発生する水蒸気中の異物を簡単、かつ確実に除去でき、しかも、前記異物の除去に係るコストを低減させることができる。
【0012】
すなわち、前記筐体3に貯留された除去用水3a中に前記除去用パイプ4のパイプ本体部4cを浸漬させ、この除去用パイプ4に前記樹脂ペレットの製造装置2内に発生した水蒸気と該水蒸気に含まれる異物とを通過させる。これにより、前記除去用パイプ4のパイプ本体部4cに設けられた複数の排気孔4d、4d…から前記水蒸気と該水蒸気に含まれる異物とが徐々に排出されるようになっている。
この時、前記水蒸気は前記樹脂ペレットの製造装置2から高温の状態でパイプ本体部4cにまで達するため、このパイプ本体部4cの複数の排気孔4d、4d…から除去用水3a中に排出された際に冷却されつつも、ある程度の温度を保った状態となる。このような場合、前記除去用水3aの中で、温度の低い方は下に、温度の高い方は上に分かれて位置するようになるので、ある程度の温度を保った前記水蒸気は除去用水3a中の上方に位置するようになる。
そして、前記除去用水3aの上方に位置する前記水蒸気は湯気のように立ちのぼり、前記除去用水3aの水面よりも上の筐体3内に充満する。この筐体3内に充満した水蒸気は、前記脱気部5より脱気して前記筐体3内から排出されるようになっている。
また、前記水蒸気に含まれる異物は、前記パイプ本体の複数の排気孔4d、4d…から排出されることによって前記除去用水3aに混入して留まるようになっており、この時点で、前記異物は前記水蒸気と分離されて除去された状態となる。
さらに、前記水蒸気に含まれる異物は、前記複数の排気孔4d、4d…から排出される際に、気泡に包まれた状態で水面に浮かび上がってくる場合がある。このような場合には、前記筐体3に、前記除去用水3aの水面を覆うようにして設けられた防沫板部6によって、水面に浮かび上がってきた気泡が破裂した際に、前記異物の飛散を防ぐことができるので、前記筐体3内に充満する水蒸気と再び混ざり合うことがない。
以上のように、樹脂ペレットの製造装置2内に発生する水蒸気を、前記除去用パイプ4から、前記除去用水3aを介して前記脱気部5へと通過させるだけで、前記水蒸気を筐体3内から排出して、前記水蒸気に含まれる異物だけを簡単、かつ確実に除去することができる。
しかも、前記水蒸気を前記除去用パイプ4から、前記除去用水3aを介して前記脱気部5へと通過させるだけで、前記水蒸気に含まれる異物だけを簡単、かつ確実に除去することができるので、従来とは異なり、大掛かりな装置の導入やそのメンテナンスを行う必要がなく、コストの低減を図ることが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、例えば図1に示すように、請求項1に記載の異物除去装置1において、
前記除去用水3aを排出するための排水口3dが、前記筐体3の下部に設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、前記除去用水3aを排出するための排水口3dが、前記筐体3の下部に設けられていることから、前記筐体3に貯留されている除去用水3aの入れ替え作業を容易に行うことが可能となり、前記除去用水3aの排出に伴って、この除去用水3aに混入した前記異物を、前記筐体3内から簡単に排出することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、例えば図1に示すように、請求項1または2に記載の異物除去装置1において、
前記筐体3の上部には、この筐体3を密閉する蓋体3eが被せられていることを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、前記筐体3の上部には、この筐体3を密閉する蓋体3eが被せられていることから、前記筐体3内に充満する水蒸気が外部に放出されることがないので、前記脱気部5から効率良く脱気することが可能となる。また、前記異物が混入した除去用水3aを排出した際に、前記蓋体3eを開けて筐体3内に注水するだけで、前記除去用水3aの入れ替え作業を容易に行うことができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、例えば図1に示すように、請求項1に記載の異物除去装置1において、
前記脱気部5は、前記筐体3の側壁3cに挿通された脱気用パイプ5aと、この脱気用パイプ5aに接続された二次吸気装置5bを備えていることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、前記脱気部5は、前記筐体3の側壁3cに挿通された脱気用パイプ5aと、この脱気用パイプ5aに接続された二次吸気装置5bを備えていることから、この二次吸気装置5bによって前記筐体3内の除去用水3aの水面上に充満する水蒸気を吸引することができるので、前記異物だけを除去用水3a中に混入させたまま留めておくことが可能となる。したがって、前記水蒸気と異物とを分離させて、このうち異物だけを簡単に、かつ確実に除去できる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、例えば図1に示すように、請求項1〜4のいずれか一項に記載の異物除去装置1を備えたペレット製造装置2であって、
前記樹脂ペレットの製造装置2に、この製造装置2内に発生する水蒸気と該水蒸気に含まれる異物とを吸引する一次吸気装置2aが設けられており、
この一次吸気装置2aには、吸気用ホース2bを介して前記除去用パイプ4の挿通部4aが接続されていることを特徴とする。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、前記樹脂ペレットの製造装置2に、この製造装置2内に発生する水蒸気と該水蒸気に含まれる異物とを吸引する一次吸気装置2aが設けられており、
この一次吸気装置2aには、吸気用ホース2bを介して前記除去用パイプ4の挿通部4aが接続されていることから、前記樹脂ペレットの製造装置2内の余分な水分を取り除くことができ、これによって、前記樹脂ペレットの製造装置2で製造される樹脂ペレットの成形性を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、樹脂ペレットの製造装置内に発生する水蒸気を、筐体の側壁に挿通する除去用パイプから、筐体内の除去用水を介して、筐体の側壁に挿通する脱気部へと通過させるだけで、前記水蒸気だけを筐体内から排出して、前記水蒸気に含まれる異物だけを前記除去用水に混入させて留めておくことができるので、水蒸気に含まれる異物を簡単に、かつ確実に除去することができる。
しかも、前記水蒸気を前記除去用パイプから、前記除去用水を介して前記脱気部へと通過させるだけで、前記水蒸気に含まれる異物だけを簡単、かつ確実に除去することができるので、従来とは異なり、大掛かりな装置の導入やそのメンテナンスを行う必要がなく、コストの低減を図ることが可能となる。
また、前記樹脂ペレットの製造装置に、この製造装置内に発生する水蒸気と該水蒸気に含まれる異物とを吸引する一次吸気装置が設けられており、この一次吸気装置には、吸気用ホースを介して前記除去用パイプの挿通部が接続されていることから、前記樹脂ペレットの製造装置内の余分な水分を取り除くことができ、これによって、前記樹脂ペレットの製造装置で製造される樹脂ペレットの成形性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明に係る異物除去装置1およびこれを備えたペレット製造装置2の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態の異物除去装置1およびこれを備えたペレット製造装置2は、木材から得られるセルロース系微粉粒と樹脂とを含む木質様成形品の製造装置の一部として設けられている。
【0023】
本実施の形態の異物除去装置1は、図1に示すように、樹脂ペレットの製造装置2内に発生する水蒸気と該水蒸気に含まれる異物とを通過させ、これら水蒸気と該水蒸気に含まれる異物とのうち、前記異物だけを除去するものであり、
内部に所定量の除去用水3aが貯留された筐体3と、この筐体3の側壁3bに挿通されて、前記除去用水3a中に挿入される除去用パイプ4と、前記筐体3の側壁3cに挿通され、筐体3内の水蒸気を脱気する脱気部5と、前記筐体3に、前記除去用水3aの水面を覆うようにして設けられた防沫板部6とを備え、
前記除去用パイプ4は、前記側壁3bに挿通された挿通部4aと、この挿通部4aから延出して前記防沫板部6を貫通する延出部4bと、この延出部4bから延出し、かつ、前記除去用水3aに浸漬するパイプ本体部4cとから構成されており、
前記パイプ本体部4cには複数の排気孔4d、4d…が設けられている。
【0024】
ここで、本実施の形態の樹脂ペレットとは、天然の木材や、おが屑等を粉砕して得たセルロース系微粉粒に、樹脂を混練・溶融して混合材料とし、この混合材料を多孔円形ノズルからひも状に押し出すとともに、この混合材料をペレット状に切断して形成されるものである。また、このような樹脂ペレットに顔料等を併せて混合し、所定の成形技術によって成形することで、天然の木目に極めて近い木目模様が形成された木質様成形品を製造することができる。
【0025】
また、前記セルロース系微粉粒とは、例えば、天然木や廃材等の木材の粗粉砕物、バカスの祖粉砕物、稲藁の粗粉砕物等における各種植物細胞体の原料材粗粉砕物を出発原料とし、これを磨砕処理することによって得ることができる。
【0026】
磨砕処理とは、粉砕処理と研磨処理とを併せ持つ処理を言うものであり、これら粉砕処理と研磨処理とを同時に行う処理であっても、粉砕処理を行った後、研磨処理を行う二工程からなる処理であってもよい。すなわち、ここで言う磨砕処理とは、粗粉砕物から微粉砕物にする粉砕処理と、微粉砕された粉粒を、繊維状態のものが絡み合い、その表面が繊毛で覆われている状態の粉粒形状から、表面に繊毛が少ない状態となるように表面研磨する研磨処理とを併せた処理を指す。
【0027】
前記セルロース系微粉粒は、上記のように磨砕処理により粒径状に形成されることで、通常の木粉のような繊毛上の突出部分が少なくなり、水(湿気を含む)や溶剤などを吸着しにくくなっている。
【0028】
さらに、前記樹脂とは、硬質樹脂や軟質樹脂のことであり、塩化ビニル樹脂、発泡塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂等が用いられる。また、樹脂は廃材の樹脂から得るようにしてもよい。
【0029】
前記筐体3は、内部に所定量の除去用水3aが貯留されており、本実施の形態では、ステンレス等の防錆性を有する金属によって直方体状に形成されている。
ここで、前記除去用水3aの所定量とは、前記除去用パイプ4のパイプ本体部4cを浸漬でき、かつ、前記防沫板部6に接触することがないように貯留された量を示す。
また、この直方体状に形成された筐体3の上部は、この筐体3を密閉する蓋体3eが被せられている。
さらに、前記筐体3に貯留された除去用水3aを排出するための排水口3dが、前記筐体3の下部に設けられている。
【0030】
前記除去用パイプ4は、上述したように、前記筐体3の側壁3bに挿通された挿通部4aと、この挿通部4aから延出して前記防沫板部6を貫通する延出部4bと、この延出部4bから延出し、かつ、前記除去用水3aに浸漬するパイプ本体部4cとから構成されており、前記パイプ本体部4cには複数の排気孔4d、4d…が設けられている。
【0031】
前記脱気部5は、前記筐体3の側壁3cに挿通された脱気用パイプ5aと、この脱気用パイプ5aに接続された二次吸気装置5bを備えている。
【0032】
また、前記二次吸気装置5bは、本実施の形態では真空ポンプが用いられており、この真空ポンプとは、真空装置内の気体に圧力や速度などを付与しながらより高い圧力の外部へ輸送して排出するものであり、前記筐体3内に充満する水蒸気を除去できる。
なお、この二次吸気装置5bに後続して、前記水蒸気を冷却する熱交換器(図示せず)が設けられており、この熱交換器によって冷却された水蒸気は液体となって排出される。
【0033】
前記防沫板部6は、前記筐体3に、前記除去用水3aの水面を覆うようにして設けられており、本実施の形態ではパンチングメタルが用いられている。
なお、このパンチングメタルとは、一般的に、金属板をプレス加工して、丸穴、角穴などを開けたものであり、光や空気、視線の透過性を備えたものである。特に本実施の形態では、前記除去用水3a中から気泡に包まれて浮かび上がってくる異物の飛散を防止するために設けられ、透過させる対象としては、前記除去用パイプ4から排出され、前記異物を含まない水蒸気である。
【0034】
以上のような構成の異物除去装置1を備えたペレット製造装置2は、天然の木材や、おが屑等を粉砕して得たセルロース系微粉粒に、樹脂を混練・溶融して混合材料とし、この混合材料を多孔円形ノズルからひも状に押し出すとともに、この混合材料をペレット状に切断して形成する装置2である。
また、このペレット製造装置2には、この製造装置2内に発生する水蒸気と該水蒸気に含まれる異物とを吸引する一次吸気装置2aが設けられており、この一次吸気装置2aには、吸気用ホース2bを介して前記除去用パイプ4の挿通部4aが接続されている。
【0035】
前記一次吸気装置2aは、本実施の形態では、前記二次吸気装置5bと同じく真空ポンプが用いられており、この真空ポンプとは、真空装置内の気体に圧力や速度などを付与しながらより高い圧力の外部へ輸送して排出するものであり、前記製造装置2内に発生する水蒸気および該水蒸気に含まれる異物を除去できる。
このような一次吸気装置2aによれば、前記樹脂ペレットの製造装置2内の余分な水分を取り除くことができ、これによって、前記樹脂ペレットの製造装置2で製造される樹脂ペレットの成形性を向上させることが可能となる。
【0036】
以上のような構成の異物除去装置1およびペレット製造装置2によって、該ペレット製造装置2で発生した水蒸気中に含まれる異物を除去するには、まず、前記ペレット製造装置2によって、前記セルロース系微粉粒と樹脂とを混練・溶融して、樹脂ペレットを製造していく。
ここで、このようにセルロース系微粉粒と樹脂とを混練した際、これらセルロース系微粉粒と樹脂に高温の熱が発生し、これに伴って水蒸気が発生する。また、この水蒸気には異物が含まれている。
この時、前記樹脂ペレットに余分な水分が含まれると、製造される樹脂ペレットの成形性が低下してしまうため、前記ペレット製造装置2に一次吸気装置2aを設けて前記水蒸気を吸引する。
【0037】
前記吸引された水蒸気は、前記一次吸気装置2aに接続された吸気用ホース2bを通過して、前記異物除去装置1の除去用パイプ4に達するようになっている。
前記除去用パイプ4に達した水蒸気は、まず、筐体3内に挿通している挿通部4aから延出部4bを通過し、防沫板部6の位置を通過してパイプ本体部4cに至る。
前記パイプ本体部4cに至った水蒸気は、このパイプ本体部4cに設けられた複数の排気孔4d、4d…から、前記筐体3に貯留された除去用水3a中に排出されていくようになっている。
前記除去用水3a中に排出された水蒸気のうち、前記水蒸気は、前記樹脂ペレットの製造装置2から高温の状態でパイプ本体部4cにまで達するため、前記パイプ本体部4cの複数の排気孔4d、4d…から除去用水3a中に排出された際に冷却されつつも、ある程度の温度を保った状態となる。このような場合、前記除去用水3aの中で、温度の低い方は下に、温度の高い方は上に分かれて位置するようになるので、ある程度の温度を保った前記水蒸気は除去用水3a中の上方に位置するようになる。そして、前記除去用水3aの上方に位置する前記水蒸気は湯気のように立ちのぼり、前記除去用水3aの水面よりも上の筐体3内に充満する。
また、前記異物は、前記除去用水3a中に混入して留まるようになっており、この異物が気泡に包まれた状態で水面に浮かび上がってきた場合にも、前記防沫板部6によって、気泡の破裂による異物の飛散を防ぐことができる。これによって、前記異物は該防沫板部6よりも上方に飛散しないので、この異物と前記筐体3内に充満する水蒸気とを分離させることが可能となる。
【0038】
前記筐体3には、この筐体3を密閉する蓋体3eが被せられており、これによって、前記筐体3内に充満する水蒸気が外部に放出されることがないので、後述するように、脱気部5から効率良く脱気することが可能となる。また、前記異物が混入した除去用水3aを排出した際に、前記蓋体3eを開けて筐体3内に注水するだけで、前記除去用水3aの入れ替え作業を容易に行うことができる。
さらに、前記筐体3に貯留された除去用水3aを排出するための排水口3dが、前記筐体3の下部に設けられており、これによって、前記筐体3に貯留されている除去用水3aの入れ替え作業を容易に行うことが可能となり、前記除去用水3aの排出に伴って、この除去用水3aに混入した前記異物を、前記筐体3内から簡単に排出することができる。
すなわち、前記筐体3に貯留されている除去用水3aの入れ替えを行うことによって、前記異物の除去作業を簡単に行うことができるようになっている。
なお、前記排水口3dから排出された異物の混入した除去用水3aは、一旦、廃棄用ドラム缶(図示せず)等に貯留され、天日によって乾かされてから産業廃棄物として処理される。
【0039】
一方、前記筐体3内に充満した水蒸気は、前記筐体3の側壁3cに挿通された脱気部5へと通過しいていくようになっている。
この脱気部5に、前記筐体3の側壁3cに挿通された脱気用パイプ5aと、この脱気用パイプ5aに接続された二次吸気装置5bとを設けており、これによって、前記二次吸気装置5bによって前記筐体3内の除去用水3aの水面上に充満する水蒸気を吸引することができるので、前記異物だけを除去用水3a中に混入させたまま留めておくことが可能となり、前記水蒸気に含まれる異物を分離させて、簡単に、かつ確実に除去できるようになっている。
なお、この二次吸気装置5bに後続して、前記水蒸気を冷却する熱交換器を設けており、この熱交換器によって冷却された水蒸気は液体となって環境中に排出されるようになっている。
【0040】
以上のようにして、前記ペレット製造装置2で発生した水蒸気中に含まれる異物を、異物除去装置1によって除去することができる。
【0041】
本実施の形態の異物除去装置1によれば、樹脂ペレットの製造装置2内に発生する水蒸気を、筐体3の側壁3bに挿通する除去用パイプ4から、筐体3内の除去用水3aを介して、筐体3の側壁3cに挿通する脱気部5へと通過させるだけで、前記水蒸気だけを筐体3内から排出して、前記水蒸気に含まれる異物だけを前記除去用水3aに混入させて留めておくことができるので、水蒸気に含まれる異物を簡単に、かつ確実に除去することができる。
しかも、前記水蒸気を前記除去用パイプ4から、前記除去用水3aを介して前記脱気部5へと通過させるだけで、前記水蒸気に含まれる異物だけを簡単、かつ確実に除去することができるので、従来とは異なり、大掛かりな装置の導入やそのメンテナンスを行う必要がなく、コストの低減を図ることが可能となる。
また、本実施の形態のペレット製造装置2によれば、この製造装置2内に発生する水蒸気と該水蒸気に含まれる異物とを吸引する一次吸気装置2aが設けられており、この一次吸気装置2aには、吸気用ホース2bを介して前記除去用パイプ4の挿通部4aが接続されていることから、前記樹脂ペレットの製造装置2内の余分な水分を取り除くことができ、これによって、前記樹脂ペレットの製造装置2で製造される樹脂ペレットの成形性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の異物除去装置およびこれを備えたペレット製造装置を示す概念図。
【符号の説明】
【0043】
1 異物除去装置
2 ペレット製造装置
3 筐体
3a 除去用水
4 除去用パイプ
4c パイプ本体部
5 防沫板部
6 脱気部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂ペレットの製造装置内に発生する水蒸気と該水蒸気に含まれる異物とを通過させ、これら水蒸気と該水蒸気に含まれる異物とのうち、前記異物だけを除去する異物除去装置において、
内部に所定量の除去用水が貯留された筐体と、この筐体の側壁に挿通されて、前記除去用水中に挿入される除去用パイプと、前記筐体の側壁に挿通され、筐体内の水蒸気を脱気する脱気部と、前記筐体に、前記除去用水の水面を覆うようにして設けられた防沫板部とを備え、
前記除去用パイプは、前記側壁に挿通された挿通部と、この挿通部から延出して前記防沫板部を貫通する延出部と、この延出部から延出し、かつ、前記除去用水に浸漬するパイプ本体部とから構成されており、
前記パイプ本体部には複数の排気孔が設けられていることを特徴とする異物除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の異物除去装置において、
前記除去用水を排出するための排水口が、前記筐体の下部に設けられていることを特徴とする異物除去装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の異物除去装置において、
前記筐体の上部には、この筐体を密閉する蓋体が被せられていることを特徴とする異物除去装置。
【請求項4】
請求項1に記載の異物除去装置において、
前記脱気部は、前記筐体の側壁に挿通された脱気用パイプと、この脱気用パイプに接続された二次吸気装置を備えていることを特徴とする異物除去装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の異物除去装置を備えたペレット製造装置であって、
前記樹脂ペレットの製造装置に、この製造装置内に発生する水蒸気と該水蒸気に含まれる異物とを吸引する一次吸気装置が設けられており、
この一次吸気装置には、吸気用ホースを介して前記除去用パイプの挿通部が接続されていることを特徴とするペレット製造装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−150649(P2006−150649A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−341720(P2004−341720)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000114086)ミサワホーム株式会社 (288)
【Fターム(参考)】