説明

異種視覚表示構造体、及びその表示方法

【課題】光源下においては、看板、標識、案内板等として認識することができ、停電または消灯による暗闇の中では誘導案内表示、及びメッセージ等を無電力で表示可能な表示構造体であって、互いの表示が干渉し合うことのない、1体で2種類の表示が可能な異種表示構造体の提供。
【解決手段】本発明の異種表示構造体(1)は、光透過性平面基材(2)と、その表面側、または表面側と裏面側との両面に、多孔シート(3)を積層した透視性制御体において、表面側の多孔シートの表面に視覚表示層(A)(5)を設け、さらに透視性制御体の裏面全面には、視覚表示層(B)(6)を設け、この視覚表示層(B)を、蓄光発光性材料含有部(6a)と蓄光発光性材料非含有部(6b)とから構成し、互いの色差(ΔE)を10以下とすることによって得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、看板、標識、案内板に関するものである。本発明を詳しく述べるならば、地下駅舎、地下街、ホテル、デパート、映画館、遊戯施設、公共施設、学校校舎などの大勢の人々に利用される施設において、普段は看板、標識、案内板等として認識されるが、暗闇では誘導案内表示、及びメッセージ等の情報を無電力で切り替え表示する機能を有する表示構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
都市部では特に地下駅舎と地下街、地下街と地下街との連絡通路が緻密に発達していることでその利用者は圧倒的に多い。これらの地下連絡通路やコンコースは景観的特徴が似通っているため、道標・標識・案内板等が随所に設置されているにもかかわらず道がわかり難い。それ故、突発的な停電事故に遭遇した場合に、暗闇の中を移動して目的地まで安全に到達することは至極困難である。また地下通路は閉塞感が強いため、大規模災害による停電の場合には人々が一斉に出口に殺到することで将棋倒しのような事故の同時多発やパニックが心配されている。
【0003】
そこで最近、地下駅舎、連絡通路、コンコース、階段などの床面、または壁面の片隅に、暗闇で蓄光発光する材料を利用した避難誘導板が随所に設けられるようになった。このような避難誘導板や標識は、矢印マークや避難口のシンボルマークなどのシンプルな蓄光発光表示でメッセージ伝達が十分に果たせるものと認識されているため、表札サイズが主流である。しかし、表札サイズの蓄光発光板では、群衆が大挙して出口にひしめき合うような非常事態では群衆の陰となって蓄光発光板の存在が認識できない問題が想定される。これは地下駅舎や地下街に限らず、ホテル、デパート、映画館、遊戯施設、公共施設、学校校舎などでの設置においても同様である。
【0004】
一方、地下駅舎コンコースや地下街通路等は人通りが多いため、その壁面、床面等は有効な広告スペースとして活用され、多様な広告看板が設置されている。仮に、これらの広告看板のうちの一部が、停電時の避難誘導の機能を果たすことができれば、より防災対策の充実した施設の構築が実現可能となる。このような構想に基づき、照明の点灯時においては、看板、標識、案内板等として認識されるが、暗闇では避難誘導案内表示板、及びメッセージ等の表示板と認識できるような、広告看板と避難誘導標識とを兼用する発案がなされている。これらは、例えば、特開2004−163561号公報(特許文献1)においては、複数の孔を有する有孔シートを挟んで、蓄光材を有する第一のイメージ表示層と、光源下で目視可能な第二のイメージ表示層とが形成された表示フィルムの提案があるが、このフィルムでは第二のイメージ表示側から第一のイメージ表示の輪郭が透けて浮き出てしまい、遠目に観察した時に、第二のイメージ表示と重なってしまう不都合がある。また再表2005−050600号公報(特許文献2)においては、光透過制限層としてハーフミラーフィルムを挟んで、蓄光材を有する第一のイメージ表示層と、光源下で目視可能な第二のイメージ表示層とが形成された表示フィルムの提案があるが、ハーフミラーフィルムの金属光沢を第二のイメージ表示層で完全に隠蔽する必要があり、図柄の選定に著しい制約を有するものであった。従って、光源下においては、看板、標識、案内板等として認識されるが、暗闇では誘導案内表示、及びメッセージ等を無電力で表示することができる表示構造体であって、特に平時の看板、標識、案内板等の用途で用いる時に、停電時、或いは消灯時に発現させる特殊表示の輪郭が透けて見えないような表示構造体は存在していなかったのである。
【0005】
【特許文献1】特開2004−163561号公報
【特許文献2】再表2005−050600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、光源下においては、看板、標識、案内板等として認識することができ、停電または消灯による暗闇の中では誘導案内表示、及びメッセージ等を無電力で表示可能な表示構造体であって、特に平時の看板、標識、案内板等の用途使用時に、停電や消灯時に発現させるための特殊表示の輪郭が透けて干渉し合うことのない、1体で2種類の表示が可能な異種表示構造体の提供をしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、光透過性平面基材と、その表面側、または表面側と裏面側との両面に、多孔シートが積層された透視性制御体において、表面側の多孔シートの表面に視覚表示層(A)を設け、さらに透視性制御体の裏面全面には、視覚表示層(B)を設け、この視覚表示層(B)は、蓄光発光性材料含有部と蓄光発光性材料非含有部とから構成し、特に蓄光発光性材料含有部と蓄光発光性材料非含有部との色差(ΔE)を10以下とすることによって、平時の看板、標識、案内板等の用途使用時に、停電や消灯時に発現させるための特殊表示の輪郭が透けて外観に干渉のない、1固体で2種類の表示が可能な表示構造体が得られることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち本発明の異種表示構造体は、光透過性平面基材と、その表面側、もしくは表面側と裏面側との両面に、多孔シートが積層された透視性制御体であって、前記表面側の多孔シートの表面に、視覚表示層(A)が設けられ、さらに前記透視性制御体の裏面全面には、前記視覚表示(A)と異なる、視覚表示層(B)が設けられており、前記視覚表示層(B)は、蓄光発光性材料含有部と蓄光発光性材料非含有部とから構成され、互いの色差ΔE(JIS−Z−8729)が10以下であることが好ましく、また更に前記光透過性平面基材が、厚さ1〜10mmの合成樹脂板であることが好ましく、また更に前記光透過性平面基材が、繊維布帛を芯材として含み、その片面以上に熱可塑性樹脂層を有するシート状積層体であることが好ましく、また更に前記多孔シートが、熱可塑性樹脂からなる穿孔シートであることが好ましく、また更に前記多孔シートが、経糸条、及び緯糸条からなる粗目布帛を芯材として含み、前記経糸条、及び緯糸条の表面が熱可塑性樹脂によって被覆されたメッシュ状シートであることが好ましく、また更に前記視覚表示層(A)がグラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、転写印刷、及びこれらの併用によって形成されていることが好ましく、また更に前記視覚表示層(B)の蓄光発光性材料含有部が、印刷、塗装、賦型物貼付、カッティングシート貼付、及びこれらの併用によって形成されていることが好ましく、また更に前記視覚表示層(B)の蓄光発光性材料非含有部が、印刷、塗装、賦型物貼付、カッティングシート貼付、及びこれらの併用によって形成されていることが好ましく、また更に前記視覚表示層(A)を含む前記多孔シートの表面全面に耐候保護層が設けられていることが好ましい。
【0009】
これら本発明の異種視覚表示構造体の表示方法は、光透過性平面基材と、その表面側、もしくは表面側と裏面側との両面に、多孔シートが積層された透視性制御体であって、前記表面側の多孔シートの表面に、視覚表示層(A)が設けられ、さらに前記透視性制御体の裏面全面には、前記視覚表示(A)と異なる、視覚表示層(B)が設けられており、前記視覚表示層(B)が、蓄光発光性材料含有部と蓄光発光性材料非含有部とから構成され、その色差ΔE(JIS−Z−8729)を10以下とする表示構造体において、前記蓄光発光性材料含有部による蓄光発光を前記多孔シートの孔部を透過して前記視覚表示層(B)をドット状で発光表示することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば昼間もしくは照明時と、夜間もしくは消灯時の状況変化に応じて、視覚表示層(A)と視覚表示層(B)に形成されたいずれかの視覚表示層を、外部に現出させることが可能な異種視覚表示構造体を提供することができ、しかも平時の看板、標識、案内板等の用途使用時に、視覚表示層(B)の影響を受けずに視覚表示層(A)を明瞭に表示ができるため、本発明の異種視覚表示構造体を、看板、標識、案内板等として地下駅舎、地下街、ホテル、デパート、映画館、遊戯施設、公共施設、学校校舎などの施設に適用し、停電時には誘導案内表示やメッセージ等を現出させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の異種視覚表示構造体は、光透過性平面基材の表面側、もしくは表面側と裏面側との両面に、多孔シートを積層した透視性制御体であり、表面側の多孔シートの表面には、視覚表示層(A)が設けられ、さらに透視性制御体の裏面全面には視覚表示(A)と異なる、視覚表示層(B)が設けられており、視覚表示層(B)は、蓄光発光性材料含有部と蓄光発光性材料非含有部とから構成され、互いの色差ΔE(JIS−Z−8729)を10以下とするものである。本発明に用いる光透過性平面基材としては、厚さ1〜10mm、特に厚さ3〜6mmの合成樹脂板であることが好ましく、この光透過性平面基材を視覚表示層(A)付の多孔シートと、視覚表示層(B)との間に設けることによって、本来視覚表示層(A)付の多孔シート側に視覚表示層(B)の輪郭が浮き出て見える外観干渉の問題を、光透過性平面基材の有する光屈折効果によって、あらゆる角度からの観察に対しても視覚表示層(B)の輪郭が浮き出て見える現象を効果的に抑止することができるのである。これらの合成樹脂としてはアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂(PET樹脂)、ビニルエステル樹脂、半硬質ポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂であり、屈折率1.4〜1.6n(JIS K7105)を有する透明樹脂が最も好ましいが、乳濁半透明のもの、あるいは透明色樹脂に光拡散性微粒子を配合したものも使用できる。本発明においてはアクリル樹脂(メタクリレート樹脂)板、及びポリカーボネート樹脂が最も好ましい。光透過性平面基材の厚さが1mm未満だと、視覚表示層(B)の輪郭が視覚表示層(A)側に浮き出て見える現象を効果的に抑止することが出来ないことがある。また厚さが10mmを超えると、得られる異種視覚表示構造体が必要以上に重くなり施工・設置が困難となることがある。
【0012】
また光透過性平面基材としては、繊維布帛を芯材として含み、その片面以上に熱可塑性樹脂層を有するシート状積層体であってもよい。このシート状積層体は具体的に、繊維織布、繊維編布、不織布などの繊維布帛を芯材として、その片面もしくはその両面に、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、フッ素系共重合樹脂から選ばれた、1種以上の熱可塑性樹脂から得られた光透過性のフィルム、またはシートを積層したものである。これらの熱可塑性樹脂のフィルム(シート)厚さは、0.1〜2.0mm、好ましくは0.2〜1.0mmである。また繊維布帛は、ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維)、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ガラス繊維などのモノフィラメント糸条、もしくはマルチフィラメント糸条を用いることができ、これらの糸条は250〜1000デニールであり、これら糸条の交絡によって得られる、粗目、目抜け、非目抜け組織の織布、または編布である。本発明において最も好ましい例は、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)繊維織布(目抜け平織)を芯材として、この両面に0.2〜0.5mmの軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム(シート)を接着剤、または熱ラミネートの手段で積層した厚さ0.5〜2.0mmのターポリン膜材を用いることができる。この軟質ポリ塩化ビニル樹脂シートには光透過性を極端に阻害しない範囲で、顔料、安定剤、充填材、難燃材、耐候安定剤等、公知のPVC用配合剤を任意で添加することができる。これらの光透過性平面基材の光透過度はJIS規格 Z8722試験法にて25〜90%、好ましくは50〜75%である。光透過度が25%未満だと暗闇条件で現出する誘導案内表示やメッセージ等が不鮮明となることがある。
【0013】
本発明の異種視覚表示構造体に用いる多孔シートは、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂などの単品による熱可塑性樹脂フィルム(例えばポリエステルフィルムとしてPETフィルム)、または複数の熱可塑性樹脂フィルムからなる複層シートが好ましい。多孔シートは穿孔部と非穿孔部からなり、非穿孔部は光遮断性を有することが好ましく、光遮断の手段としては二酸化チタンやカーボンブラックなどの無機顔料添加による着色隠蔽が挙げられるが、本発明においては表面に印刷等(視覚表示1)を施す観点から多孔シートの表面は少なくとも二酸化チタンなどの白顔料によって着色されていることが好ましい。また光遮断性を増すためにシート裏面をカーボンブラック含有インキ、或いはアルミニウム等の金属粉含有インキで印刷して隠蔽層とすることが好ましい。また上記複層シートにおいては表面層を白着色として、裏面層、もしくは中間層をカーボンブラック着色、或いはアルミニウム等の金属粉着色によって隠蔽層としたシートなども使用できる。
【0014】
また、これらの多孔シートはパンチング等の公知の方法により多数の穴開けを、単位面積当りに均等密度数で施した厚さが0.05〜1mm、好ましくは0.1〜0.3mmの穿孔シートであり、孔径は0.5〜5.0mmφ、好ましくは1〜2.5mmφである。孔径が0.5mmφ未満だと、得られる表示構造体において視覚表示層(B)の蓄光発光量が不十分となることがあり、また孔径が5.0mmφを超えると、得られる表示構造体において視覚表示層(A)の鮮明性が不十分となることがある。また多孔シートの穿孔度は0.2〜0.6であり、特に好ましくは0.3〜0.5である。穿孔度は多孔シートの単位面積に対して、その単位面積中に含む穿孔の合計面積の比であり、穿孔度が0.2未満(穿孔の合計面積が20%未満)だと、得られる表示構造体において視覚表示層(B)の蓄光発光量が不十分となることがあり、また穿孔度が0.6を超える(穿孔の合計面積が60%を超える)と、得られる表示構造体において視覚表示層(A)の鮮明性が不十分となることがある。穿孔の形状は円形、楕円形、四角形、六角形などの幾何学形態、及びこれらの幾何学形態が崩れた不規則形態などである。
【0015】
また多孔シートとしては、経糸条と、緯糸条からなる粗目布帛を芯材として含み、この経糸条と緯糸条の表面が熱可塑性樹脂で被覆して得られるメッシュ状シートが使用できる。このメッシュ状シートは具体的に、織布もしくは編布で、特に糸条と糸条との間に隙間を有する粗目布帛を芯材として、その粗目布帛に含む糸条の表面全面を、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、及びこれらの共重合体樹脂から選ばれた1種以上の熱可塑性樹脂で被覆したものである。これらの熱可塑性樹脂被覆は、粗目布帛の単位面積当りの質量に対して20〜100wt%で、その一部が繊維糸条に含浸していてもよい。粗目布帛としてはポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ガラス繊維などのモノフィラメント糸条、もしくはマルチフィラメント糸条を用いることができ、これらの糸条は100〜1000デニール、好ましくは250〜750デニールであり、これら糸条の交絡によって得られる、粗目の織布、または編布である。本発明において最も好ましい例は、ポリエステル繊維、特に黒染のポリエステル繊維による粗目平織物を芯材として、軟質配合のポリ塩化ビニル樹脂ペーストをコーティング、またはディッピングの手段で(含浸)被覆して得たメッシュ状シートを用いることができる。
【0016】
メッシュ状シートは開孔部と非開孔部からなり、非開孔部は熱可塑性樹脂被覆によって光遮断性を有することが好ましく、光遮断の手段としては二酸化チタンやカーボンブラックなどの無機顔料添加による着色隠蔽が挙げられるが、本発明においては表面に印刷等(視覚表示1)を施す観点からメッシュ状シート(多孔シート)の表面は少なくとも二酸化チタンなどの白顔料によって着色されていることが好ましい。また光遮断性を増すためにシート裏面をカーボンブラック含有インキ、或いはアルミニウム等の金属粉含有インキで印刷して隠蔽層とすることが好ましい。またメッシュ状シートにおいては表面層を白着色として、下地層をカーボンブラック着色、或いはアルミニウム等の金属粉着色によって隠蔽層とした2層構成の熱可塑性樹脂被覆であってもよい。また、これらのメッシュ状シート(多孔シート)の開孔部は、厚さが0.05〜1mm、好ましくは0.1〜0.3mmの開孔シートであり、孔サイズは0.5〜5.0mm、好ましくは1〜2.5mmである。孔サイズが0.5mm未満だと、得られる表示構造体において視覚表示層(B)の蓄光発光量が不十分となることがあり、また孔サイズが5.0mmを超えると、得られる表示構造体において視覚表示層(A)の鮮明性が不十分となることがある。またメッシュ状シートの開孔度は0.20〜0.6であり、特に好ましくは0.3〜0.5である。開孔度はメッシュ状シートの単位面積に対して、その単位面積中に含む開孔の合計面積の比であり、開孔度が0.2未満(穿孔の合計面積が20%未満)だと、得られる表示構造体において視覚表示層(B)の蓄光発光量が不十分となることがあり、また開孔度が0.6を超える(穿孔の合計面積が60%を超える)と、得られる表示構造体において視覚表示層(A)の鮮明性が不十分となることがある。開孔の形状は四角形、長方形、菱形もしくは、これらの角のまるまった変形体などである。
【0017】
本発明の異種視覚表示構造体において、視覚表示層(A)は、絵画、イラスト、写真、文字など表示内容に特に限定は無く、これらはグラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、転写印刷のいずれかの手段によって、多孔シート(メッシュ状シート)の表面に形成されるものであるが、特にコンピューターで処理された画像データの出力によるインクジェット印刷が好適である。本発明の異種視覚表示構造体は、予め多孔シート(メッシュ状シート)表面に視覚表示層(A)を設け、この視覚表示層(A)が設けられた多孔シート(メッシュ状シート)を、光透過性平面基材の表面に積層したものである。また本発明においてこの多孔シート(メッシュ状シート)は、光透過性平面基材の表面、及び裏面とに積層して用いることができる。この場合、光透過性平面基材裏面側に積層する多孔シート(メッシュ状シート)に限っては黒色〜暗灰色などの黒系色であることが好ましい。光透過性平面基材を介在して2層の多孔シートを任意に積層すると、上下各々の穿孔(開孔)部の重なりがランダムにずれることにより、視覚表示層(A)の穿孔(開孔)から裏面多孔シート(メッシュ状シート)の黒色〜暗灰色などの黒系色の非穿孔部(非開孔部)の一部が、はみ出して見え、それが視覚表示層(A)の穿孔部(開孔部)の縁取り効果となって、絵画、イラスト、写真、文字などの表示をより鮮明に引き立たせることができるのである。これら視覚表示層(A)付き多孔シート(メッシュ状シート)と、光透過性平面基材との積層は、公知の接着剤の使用によって行うことができるが、視覚表示層(A)を定期的に別の視覚表示層に交換する必要がある場合には、分離が容易な粘着剤、粘着テープによる固定、或いは雌雄凹凸部材、例えばマジックテープなどによる固定、クリップ固定、ネジ止め固定等が好ましい。
【0018】
本発明の異種視覚表示構造体において、視覚表示層(B)は、蓄光発光性材料含有部と蓄光発光性材料非含有部とによって形成されるものであり、特に蓄光発光性材料含有部と蓄光発光性材料非含有部との色差ΔE(JIS−Z−8729)は10以下、好ましくは6以下である。色差ΔEが10を超えると、視覚表示層(A)側面からの目視観察で、裏面の視覚表示層(B)の輪郭が浮き出て外観に干渉し、視覚表示層(A)の障害となることがある。色差ΔEを10以下にするには、例えば、蓄光発光性材料含有部の色が青緑系ならば、蓄光発光性材料非含有部も青緑系として調色・調整することが好ましい。蓄光発光性材料としては公知の蓄光性夜光体(蓄光顔料・夜光顔料)粒子で、緑系の燐光発光色タイプ、青系の燐光発光色タイプの粒子が使用できる。青系の燐光発光色タイプとしては、二価金属アルミン酸塩(例えば、アルミン酸ストロンチウム)の母体結晶に、希土類元素を賦活剤として二価の金属に対し、0.001〜10モル%加えた粒子である。二価の金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛などであり、希土類元素としてはセリウム、プラセオジム、ネオジム、サマルウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムなどであり、具体的には、SrAl:Eu,Dy、SrAl1425:Eu,Dy、CaAl:Eu,Nd、SrAl141425:Eu,Dy等を例示できるが、特に酸化アルミナストロンチウム(SrAl:Eu,Dy)系の蓄光性夜光体粒子が好ましい。また、硫化カルシウム/ビスマス系[CaS:Bi(紫青色発光)]、硫化カルシウム・ストロンチウム/ビスマス系[CaSrS:Bi(青色発光)]、硫化亜鉛/銅系[ZnS:Cu(緑色発光)]、硫化亜鉛・カドミウム/銅系[ZnCdS:Cu(黄色〜橙色発光)]等の硫化物系蓄光性蛍光体も使用することができる。
【0019】
蓄光発光性材料含有部は、印刷、塗装、賦型物貼付、カッティングシート貼付、及びこれらの併用によって形成される。これらは具体的に、蓄光発光性材を含む塗料、特に透明〜乳濁系の合成樹脂溶液中に蓄光発光性材粒子を均一に分散させた塗料を用いてのスクリ−ン印刷、グラビア印刷、またこれらの塗料を用いてのスプレー塗装、ハケ塗り塗装であり、これら印刷、及び塗装には紫外線硬化型樹脂を用いることによって、UV硬化処理を行うことができる。また、透明〜乳濁系の合成樹脂中に蓄光発光性材粒子を均一に分散させた組成物を加工して得られる賦型物、例えば軟質ポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂組成物中に蓄光発光性材粒子を均一に練り込んで一定の厚さのシートに加工し、それから任意の形状に切り出した賦型物の貼付、ペースト状ポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂組成物中に蓄光発光性材粒子を均一に分散させた液体を、任意の形状の型枠中に注入した状態で固化させて得た賦型物の貼付、またカッティングシートは、ペースト状ポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂組成物中に蓄光発光性材粒子を均一に分散させた液体を、0.1〜0.5mm厚のシート状に加工し、これに透明系色の粘着剤を塗布したものである。蓄光発光性材料含有部に含む蓄光発光性材料量は20〜60質量%であり、蓄光発光性材料含有部の厚さ設定に応じて、単位面積中に含む蓄光発光性材料量の濃度を、薄い膜に対しては高濃度に、厚い膜に対してはやや低い濃度に調整すればよい。また、蓄光発光性材料非含有部は、上記、蓄光発光性材料含有部の形成に用いられる、印刷用塗料、塗装用塗料、賦型物、カッティングシートのいずれかの材料において、蓄光発光性材を含まないもので、蓄光発光性材料含有部との色差ΔEを10以下に調色・調整されたものである。視覚表示層(B)の半分以上が蓄光発光性材含有部である時は、視覚表示層(B)の全面を蓄光発光性材含有部で形成し、蓄光発光させない部分のみを、蓄光発光性材料非含有材料によって被覆して隠蔽してもよく、またその反対に、視覚表示層(B)の蓄光発光性材含有部面積が半分以下である時は、視覚表示層(B)の全面を蓄光発光性材非含有部で形成し、蓄光発光させる部分のみを蓄光発光性材料含有材料によって被覆してもよい。
【0020】
本発明の異種視覚表示構造体において、視覚表示層(A)を含む多孔シートの表面全面に、耐候保護層が設けられていることが好ましい。耐候保護層とは、視覚表示層(A)の色褪せを抑制する効果、視覚表示層(A)の煤塵汚れ付着を抑制する効果を本発明の異種視覚表示構造体に附帯させるものであり、この耐候保護層は、透明性を有する塗膜、もしくは透視性を有するフィルムの積層によって形成される。透明性を有する塗膜、及び透視性を有するフィルムには、視覚表示層(A)の色褪せ抑制効果を向上させるために、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤など公知の紫外線吸収剤を少なくとも含み、更に公知のヒンダードアミン系光安定剤を併用し、更に必要に応じて公知の酸化防止剤を用いることができ、これらの総添加量は耐候保護層に対して0.05〜5質量%が好適である。耐候保護層は具体的に、アクリル樹脂、アクリル−シリコン共重合体樹脂、アクリル−フッ素共重合体樹脂、フッ素系共重合体樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、アクリル−ウレタン共重合体樹脂、架橋型ウレタン樹脂の1種以上を溶解して含む溶液の塗布・乾燥によって得られる、0.001〜0.1mm厚さの透明な塗膜、もしくはこれらの樹脂の1種以上を熱溶融して成型した、厚さ0.01〜0.5mmの単層透明フィルム、もしくは複層化透明フィルムである。また耐候保護層表面に、微粒子シリカ(特にコロイダルシリカ)、光触媒性物質(特に二酸化チタン)、有機シリケート化合物(メチル、またはエチルシリケートの加水分解縮合物)から選ばれた1種以上による薄膜を形成することによって、更に汚れ防止性に優れた表示構造体を得ることができる。
【0021】
以下、本願発明の異種視覚表示構造体を具体的に説明する。
図1は、本願発明の異種視覚表示構造体の光源下における状態を表す図であり、多孔シート(3)の表面に星型(5角星)マークの視覚表示層(A)(5)が、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、転写印刷などの手段によって設けられたものであり、多孔シート(3)は穿孔(3b)を有する熱可塑性樹脂からなる穿孔シート(3a)、もしくは開孔(3d)を有するメッシュ状シート(3c)のいずれかである。これらの穿孔(3b)部、及び開孔(3d)部は視覚表示層(A)(5)の星型(5角星)マークの構成の一部を表示するための印刷が部分的に欠落した状態にあり、この穿孔(3b)部、及び開孔(3d)部に表示されて、ドット状に観察されるのは視覚表示層(B)の一部である。
【0022】
図2は、本願発明の異種視覚表示構造体(図1)の無光源下(停電、または消灯時)における状態を表すものであり、多孔シート(3)の表面は無光源の状態で星型(5角星)マークの視覚表示層(A)(5)は観察されない。多孔シート(3)の、穿孔(3b)部、または開孔(3d)部に表示されて、ドット状に観察されるのは視覚表示層(B)の一部である。視覚表示層(B)は蓄光発光性材料含有部(6a)及び蓄光発光性材料非含有部(6b)とによって構成され、蓄光発光性材料非含有部(6b)は星型(6角星)マークを形成し、その余白を蓄光発光性材料含有部(6a)で形成したものである。図2は、穿孔(3b)部、または開孔(3d)部に表示されて、観察される蓄光発光性材料がドット状に燐光発光することによって、星型(6角星)マークを暗部とする陰影表示を行うことを表す図である。
【0023】
図3は、本願発明の異種視覚表示構造体(1)の具体的構成の1例を表すものである。1層の多孔シート(3)が、光透過性平面基材(2)の表面側に積層された、透視性制御体(4)構造を形成して有し、多孔シート(3)には視覚表示層(A)(5)が形成され、さらに透視性制御体(4)構造の裏面側には視覚表示層(B)(6)が形成されていることを示す図である。光透過性平面基材(2)は、合成樹脂板(2a)、またはシート状積層体(2b)の何れかであり、また、多孔シート(3)は、熱可塑性樹脂からなる穿孔シート(3a)、またはメッシュ状シート(3c)の何れかである。
【0024】
図4は、更に本願発明の異種視覚表示構造体(1)の具体的構成の1例を表すものである。2層の多孔シート(3)が、光透過性平面基材(2)の表面側と裏側とに積層された、透視性制御体(4)構造を形成して有し、表面側の多孔シート(3)には視覚表示層(A)(5)が形成され、さらに透視性制御体(4)構造の裏面側の多孔シート(3)には、視覚表示層(B)(6)が形成されていることを示す図である。光透過性平面基材(2)は、合成樹脂板(2a)、またはシート状積層体(2b)の何れかであり、また、2枚の多孔シート(3)は、熱可塑性樹脂からなる穿孔シート(3a)、メッシュ状シート(3c)から選ばれた1種以上である。
【実施例1】
【0025】
1).白顔料で着色された0.05mm厚の白PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂層と、黒顔料で着色された0.05mm厚の黒PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂層とからなる0.1mm厚の白/黒ツートンフィルムに、直径2mmφの円孔を、等間隔で多数個パンチングした、穿孔度34の多孔シートを用いた。(穿孔度は多孔シートの単位面積に対して、その単位面積中に含む穿孔の合計面積との比である。)この多孔シートの白PET面に、溶剤系インク使用のインクジェット印刷機を用いて青色の星型マーク(1辺2cmの5角星)、赤色の星型マーク(1辺2cmの5角星)、黄色の星型マーク(1辺2cmの5角星)が交互に描かれた視覚表示層(A)を形成した。
2).厚さが均一に5mmで、屈折率1.49n(JIS K7105)の透明なアクリル平板(光透過性平面基材)の裏面に、蓄光発光性材料非含有のスクリーン印刷により、5角の星型よりも大型の星型マーク(6角)を蓄光発光性材料非含有部として印刷形成した。次にアクリル平板(光透過性平面基材)の裏面全面に、蓄光発光性材料含有のスクリーン印刷によって、蓄光発光性材料含有部を印刷形成した。これをアクリル平板の表面から観察すると、蓄光発光性材料非含有の星型マーク(1辺3cmの6角)の周囲全てが蓄光発光性材料含有部である視覚表示層(B)であり、蓄光発光性材料含有部と蓄光発光性材料非含有部との色差ΔE(JIS−Z−8729)は2.3であった。
〈蓄光発光性材料非含有インキ〉
セイコーアドバンス社製の紫外線硬化型スクリーンインキHUG(エポキシアクリレート系)の標準色ホワイトをベースに標準色グリーン5%、及び標準色イエロー1.5%を配合してパステルグリーン(メロン色)を調色した組成物を使用した。
〈蓄光発光性材料含有インキ〉
セイコーアドバンス社製の紫外線硬化型スクリーンインキHUG(エポキシアクリレート系)の標準色クリアーをベースにイージーブライト社製の蓄光発光性材料:品番EZCB−50E(SrAl1425:EU,Dy)を、インキ固形分に対し40質量%配合した組成物を使用した。
3).次に1)で得た視覚表示層(A)付き多孔シートの、黒PET面にアクリル系粘着剤をグラビア塗布し、これを2)で得た、裏面に視覚表示層(B)が設けられたアクリル平板(光透過性平面基材)の表面に積層した。さらに視覚表示層(A)付き多孔シート面側全面に、厚さ50μmのフッ化ビニリデン透明フィルムを粘着剤(紫外線吸収剤配合)を用いて積層して視覚表示層(A)と視覚表示層(B)を具備する、縦方向65cm×横方向95cmサイズの表示体を得た。
4).3)で得られた表示体を、視覚表示層(B)を背面として暗室内の壁に掛け、紫外線領域の波長を有する光源ランプを用いて表示体のディスプレイを行った。この時、視覚表示層(A)に描かれた、青色の星型マーク(5角星)、赤色の星型マーク(5角星)、黄色の星型マーク(5角星)のパターンが鮮やかに表示され、視覚表示層(B)のパターンによる視覚表示層(A)外観への図柄干渉は認められなかった。
5).4)の状態のまま視覚表示層(A)の表示を行い、1時間後に光源照射を停止したところ、室内は完全な暗闇となって視覚表示層(A)は全く見えなくなり、今まで視覚表示層(A)が表示されていた位置に突如、視覚表示層(B)のパターンである、1辺3cmの6角の星型マークが多数現出表示された。この視覚表示層(B)は多孔シートの孔部を透過して、黄緑色の燐光発光によってドット状で表示され、燐光発光しない暗黒部分によって星型形状が表示されたものであった。
【実施例2】
【0026】
1).実施例1の多孔シート(白/黒ツートンの穿孔シート)を、次の2)に示すメッシュ状シートに変更した以外は、実施例1と同様にして、視覚表示層(A)と視覚表示層(B)を具備する、縦方向65cm×横方向95cmサイズの表示体を得た。この表示体において、視覚表示層(B)のパターンによる視覚表示層(A)外観への図柄干渉は認められなかった。この表示体を、実施例1と同様に紫外線領域の波長を有する光源ランプを用いて視覚表示層(A)のディスプレイを行い、1時間後に光源照射を停止したところ、室内は完全な暗闇となって視覚表示層(A)は全く見えなくなり、今まで視覚表示層(A)が表示されていた位置に突如、視覚表示層(B)のパターンが現出表示された。この視覚表示層(B)はメッシュ状シートの開孔部を透過して、黄緑色の燐光発光によってドット状で表示され、燐光発光しない暗黒部分によって星型形状が表示されたものであった。
2).〈メッシュ状シート〉
黒染のポリエステル繊維マルチフィラメント糸条(250デニール)を経糸条、及び緯糸条とし、経糸条、及び緯糸条の打込本数が25本/1インチである平織物を基布として用い、これを、白色ペースト状ポリ塩化ビニル樹脂組成物(ペーストPVC、フタル酸系可塑剤、バリウム系複合金属安定剤、炭酸カルシウム系充填剤、二酸化チタン白顔料などからなる公知の配合を広く用いることができる。)で被覆し、これを加熱してゲル化させることによって、白色に着色されて表面が樹脂被覆された開孔度30のメッシュ状シート(質量130g/m)を得た。この開孔は1辺が0.7mmサイズの角のとれた四角形であり、メッシュ状シート1インチ長当りに含む開孔の分布は各々24個である。
【実施例3】
【0027】
1).実施例1のアクリル平板(光透過性平面基材)を、次の2)に示すシート状積層体に変更した以外は、実施例1と同様にして、視覚表示層(A)と視覚表示層(B)を具備する、縦方向65cm×横方向95cmサイズの表示体を得た。この表示体において、視覚表示層(B)のパターンによる視覚表示層(A)外観への図柄干渉は認められなかった。この表示体を、実施例1と同様に紫外線領域の波長を有する光源ランプを用いて視覚表示層(A)のディスプレイを行い、1時間後に光源照射を停止したところ、室内は完全な暗闇となって視覚表示層(A)は全く見えなくなり、今まで視覚表示層(A)が表示されていた位置に突如、視覚表示層(B)のパターンが現出表示された。この視覚表示層(B)は多孔シートの孔部を透過して、黄緑色の燐光発光によってドット状で表示され、燐光発光しない暗黒部分によって星型形状が表示されたものであった。
2).〈シート状積層体〉
ポリエステル繊維マルチフィラメント糸条(420デニール)を経糸条、及び緯糸条とし、経糸条、及び緯糸条の打込本数が18本/1インチであるラッセル織物を基布として用い、基布の両面を、0.15mm厚のポリ塩化ビニル樹脂組成物フィルム(ストレートPVC、フタル酸系可塑剤、バリウム系複合金属安定剤、炭酸カルシウム系充填剤、二酸化チタン白顔料などからなる公知の配合を広く用いることができる。)で積層被覆して、厚さが0.35mmの光透過性のシート状積層体を得た。
【実施例4】
【0028】
実施例3で用いた多孔シート(白/黒ツートンの穿孔シート)を、実施例2で用いたメッシュ状シートに変更した以外は、実施例1と同様にして、視覚表示層(A)と視覚表示層(B)を具備する、縦方向65cm×横方向95cmサイズの表示体を得た。この表示体において、視覚表示層(B)のパターンによる視覚表示層(A)外観への図柄干渉は認められなかった。この表示体を、実施例1と同様に紫外線領域の波長を有する光源ランプを用いて視覚表示層(A)のディスプレイを行い、1時間後に光源照射を停止したところ、室内は完全な暗闇となって視覚表示層(A)は全く見えなくなり、今まで視覚表示層(A)が表示されていた位置に突如、視覚表示層(B)のパターンが現出表示された。この視覚表示層(B)はメッシュ状シートの開孔部を透過して、黄緑色の燐光発光によってドット状で表示され、燐光発光しない暗黒部分によって星型形状が表示されたものであった。
【実施例5】
【0029】
実施例1の表示体において、アクリル平板(光透過性平面基材)裏面と、視覚表示層(B)との間にも、実施例1と同じ白/黒ツートンフィルムによる多孔シートを1層追加し、アクリル平板(光透過性平面基材)の裏面側に黒PET面を向けて積層した。これ以外は実施例1と同様にして、視覚表示層(A)と視覚表示層(B)を具備する、縦方向65cm×横方向95cmサイズの表示体を得た。この表示体において、黒色の多孔シートを1層追加したことによって視覚表示層(A)の図柄がより鮮明となって見え、しかも、視覚表示層(B)のパターンによる視覚表示層(A)外観への図柄干渉は認められなかった。この表示体を、実施例1と同様に紫外線領域の波長を有する光源ランプを用いて視覚表示層(A)のディスプレイを行い、1時間後に光源照射を停止したところ、室内は完全な暗闇となって視覚表示層(A)は全く見えなくなり、今まで視覚表示層(A)が表示されていた位置に突如、視覚表示層(B)のパターンが現出表示された。この視覚表示層(B)はアクリル平板の表裏に介在する2層の多孔シートの孔部を透過して黄緑色の燐光発光によってドット状で表示され、燐光発光しない暗黒部分によって星型形状が表示されたものであった。
【実施例6】
【0030】
実施例2の表示体において、アクリル平板(光透過性平面基材)裏面と、視覚表示層(B)との間にも、実施例2と同じ規格のメッシュ状シートで、但し黒に着色したものを1層追加した。それ以外は実施例2と同様にして、視覚表示層(A)と視覚表示層(B)を具備する、縦方向65cm×横方向95cmサイズの表示体を得た。この表示体において、黒色のメッシュ状シート(多孔シート)を1層追加したことによって視覚表示層(A)の図柄がより鮮明となって見え、しかも、視覚表示層(B)のパターンによる視覚表示層(A)外観への図柄干渉は認められなかった。この表示体を、実施例1と同様に紫外線領域の波長を有する光源ランプを用いて視覚表示層(A)のディスプレイを行い、1時間後に光源照射を停止したところ、室内は完全な暗闇となって視覚表示層(A)は全く見えなくなり、今まで視覚表示層(A)が表示されていた位置に突如、視覚表示層(B)のパターンが現出表示された。この視覚表示層(B)はアクリル平板の表裏に介在する2層のメッシュ状シート(多孔シート)の孔部を透過して黄緑色の燐光発光によってドット状で表示され、燐光発光しない暗黒部分によって星型形状が表示されたものであった。
【実施例7】
【0031】
実施例3の表示体において、シート状積層体の裏面と、視覚表示層(B)との間にも、実施例1と同じ白/黒ツートンフィルムによる多孔シートを1層追加し、シート状積層体の裏面側に黒PET面を向けて積層した。それ以外は実施例1と同様にして、視覚表示層(A)と視覚表示層(B)を具備する、縦方向65cm×横方向95cmサイズの表示体を得た。この表示体において、黒色の多孔シートを1層追加したことによって視覚表示層(A)の図柄がより鮮明となって見え、しかも、視覚表示層(B)のパターンによる視覚表示層(A)外観への図柄干渉は認められなかった。この表示体を、実施例1と同様に紫外線領域の波長を有する光源ランプを用いて視覚表示層(A)のディスプレイを行い、1時間後に光源照射を停止したところ、室内は完全な暗闇となって視覚表示層(A)は全く見えなくなり、今まで視覚表示層(A)が表示されていた位置に突如、視覚表示層(B)のパターンが現出表示された。この視覚表示層(B)はシート状積層体の表裏に介在する2層の多孔シートの孔部を透過して、黄緑色の燐光発光によってドット状で表示され、燐光発光しない暗黒部分によって星型形状が表示されたものであった。
【実施例8】
【0032】
実施例4の表示体において、シート状積層体の裏面と、視覚表示層(B)との間にも、実施例2と同じ規格のメッシュ状シートで、但し黒に着色したものを1層追加した。それ以外は実施例1と同様にして、視覚表示層(A)と視覚表示層(B)を具備する、縦方向65cm×横方向95cmサイズの表示体を得た。この表示体では、黒色のメッシュ状シートを1層追加したことによって視覚表示層(A)の図柄がより鮮明となって見え、しかも、視覚表示層(B)のパターンによる視覚表示層(A)外観への図柄干渉は認められなかった。と同様に紫外線領域の波長を有する光源ランプを用いて視覚表示層(A)のディスプレイを行い、1時間後に光源照射を停止したところ、室内は完全な暗闇となって視覚表示層(A)は全く見えなくなり、今まで視覚表示層(A)が表示されていた位置に突如、視覚表示層(B)のパターンが現出表示された。この視覚表示層(B)はシート状積層体の表裏に介在する2層のメッシュ状シートの開孔部を透過して、黄緑色の燐光発光によってドット状で表示され、燐光発光しない暗黒部分によって星型形状が表示されたものであった。
【比較例1】
【0033】
実施例1の視覚表示層(B)において、蓄光発光性材料非含有部の印刷を省略し、蓄光発光性材料含有部のみとした以外は実施例1と同様とした。アクリル平板(光透過性平面基材)と、蓄光発光性材料含有部の色差ΔE(JIS−Z−8729)は26.6であった。この表示体において、蓄光発光性材料非含有部の印刷を省略したことによって、視覚表示層(A)の図柄に、視覚表示層(B)のパターンによる図柄干渉が生じ、視覚表示層(A)の外観印象が悪いものとなった。
【比較例2】
【0034】
実施例1の視覚表示層(B)において、蓄光発光性材料非含有部のインキを、セイコーアドバンス社製の紫外線硬化型スクリーンインキHUG(エポキシアクリレート系)の標準色ホワイトをベースに標準色レッド20%を配合してピンクに調色したインキ組成物に変更した以外は実施例1と同様とした。蓄光発光性材料非含有部と、蓄光発光性材料含有部との色差ΔE(JIS−Z−8729)は14.8であった。この表示体において、蓄光発光性材料非含有部と、蓄光発光性材料含有部との色差ΔEが10を超えたことによって、視覚表示層(A)の図柄に、視覚表示層(B)のパターンによる図柄干渉が生じ、視覚表示層(A)の外観印象が悪いものとなった。
【比較例3】
【0035】
実施例1の表示体において、視覚表示層(B)付き光透過性平面基材(アクリル平板)の積層向きを反転して、視覚表示層(A)/多孔シート/視覚表示層(B)/光透過性平面基材(アクリル平板)の構成とした。この表示体において、視覚表示層(B)付き光透過性平面基材(アクリル平板)の積層向きを反転して積層したことによって、視覚表示層(A)の図柄に、視覚表示層(B)のパターンによる図柄干渉が生じ、視覚表示層(A)の外観印象が悪いものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
上記実施例1〜8、及び比較例1〜3によって明らかなように、本願発明の異種視覚表示構造体は、昼間もしくは照明時と、夜間もしくは消灯時の状況変化に応じて、視覚表示層(A)と視覚表示層(B)に形成されたいずれかの視覚表示層を、外部に現出させることができる特別な表示構造体を提供することができ、しかも平時の看板、標識、案内板等の用途使用時に、視覚表示層(B)の影響を受けずに、視覚表示層(A)を明瞭、かつ鮮明に表示ができるため、本発明の異種視覚表示構造体を、看板、標識、案内板等として地下駅舎、地下街、ホテル、デパート、映画館、遊戯施設、公共施設、学校校舎などの施設に適用すれば、不慮の停電時には誘導案内表示やメッセージ等を即座に現出させることができるので、安全・保安対策上、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】異種視覚表示構造体の光源下(照明時)での観察状態を示す図
【図2】異種視覚表示構造体の無光源下(停電時・消灯時)での観察状態を示す図
【図3】異種視覚表示構造体の具体的構成の1例を表す図
【図4】異種視覚表示構造体の具体的構成の1例をさらに表す図
【符号の説明】
【0038】
1 異種視覚表示構造体
2 光透過性平面基材
2a 合成樹脂板
2b シート状積層体
3 多孔シート
3a 熱可塑性樹脂からなる穿孔シート
3b 熱可塑性樹脂からなる穿孔シートの穿孔部
3c メッシュ状シート
3d メッシュ状シートの開孔部
4 透視性制御体
5 視覚表示層(A)
6 視覚表示層(B)
6a 蓄光発光性材料含有部
6b 蓄光発光性材料非含有部
7 耐候保護

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性平面基材と、その表面側、もしくは表面側と裏面側との両面に、多孔シートが積層された透視性制御体であって、前記表面側の多孔シートの表面に、視覚表示層(A)が設けられ、さらに前記透視性制御体の裏面全面には、前記視覚表示(A)と異なる、視覚表示層(B)が設けられており、前記視覚表示層(B)は、蓄光発光性材料含有部と蓄光発光性材料非含有部とから構成され、互いの色差ΔE(JIS−Z−8729)が10以下であることを特徴とする異種視覚表示構造体。
【請求項2】
前記光透過性平面基材が、厚さ1〜10mmの合成樹脂板である、請求項1に記載の異種視覚表示構造体。
【請求項3】
前記光透過性平面基材が、繊維布帛を芯材として含み、その片面以上に熱可塑性樹脂層を有するシート状積層体である、請求項1に記載の異種視覚表示構造体。
【請求項4】
前記多孔シートが、熱可塑性樹脂からなる穿孔シートである請求項1〜3の何れか1項に記載の異種視覚表示構造体。
【請求項5】
前記多孔シートが、経糸条、及び緯糸条からなる粗目布帛を芯材として含み、前記経糸条、及び緯糸条の表面が熱可塑性樹脂によって被覆されたメッシュ状シートである請求項1〜3の何れか1項に記載の異種視覚表示構造体。
【請求項6】
前記視覚表示層(A)がグラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、転写印刷、及びこれらの併用によって形成されている請求項1〜5の何れか1項に記載の異種視覚表示構造体。
【請求項7】
前記視覚表示層(B)の蓄光発光性材料含有部が、印刷、塗装、賦型物貼付、カッティングシート貼付、及びこれらの併用によって形成されている請求項1〜6の何れか1項に記載の異種視覚表示構造体。
【請求項8】
前記視覚表示層(B)の蓄光発光性材料非含有部が、印刷、塗装、賦型物貼付、カッティングシート貼付、及びこれらの併用によって形成されている請求項1〜7の何れか1項に記載の異種視覚表示構造体。
【請求項9】
前記視覚表示層(A)を含む前記多孔シートの表面全面に、耐候保護層が設けられている請求項1〜8の何れか1項に記載の異種視覚表示構造体。
【請求項10】
光透過性平面基材と、その表面側、もしくは表面側と裏面側との両面に、多孔シートが積層された透視性制御体であって、前記表面側の多孔シートの表面に、視覚表示層(A)が設けられ、さらに前記透視性制御体の裏面全面には、前記視覚表示層(A)と異なる、視覚表示層(B)が設けられており、前記視覚表示層(B)が、蓄光発光性材料含有部と蓄光発光性材料非含有部とから構成され、互いの色差ΔE(JIS−Z−8729)を10以下とする表示構造体において、前記蓄光発光性材料含有部による蓄光発光を前記多孔シートの孔部を透過して前記視覚表示層(B)を、ドット状で発光表示することを特徴とする異種視覚表示構造体の表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−186526(P2009−186526A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23444(P2008−23444)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(507397571)株式会社環境システムプランニング (2)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【出願人】(507397917)株式会社ソーエー (2)
【出願人】(594102544)萬産業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】