異音対策確認装置および異音対策確認方法
【課題】車両の異音発生箇所に対策を講じた後、その対策の効果がどの程度であるかを容易に確認することができるようにする。
【解決手段】異音要因を取り除く前と異音要因を取り除いた後との車両の振動を比較することで異音対策が有効に成されたか否かを確認する異音対策確認装置200であって、前記車両の振動を検出する振動センサ10a〜10dと、振動センサ10a〜10dによって検出された振動から特定の周波数帯域の信号を抽出する信号抽出手段と、前記信号抽出手段によって抽出された信号を記憶する信号記憶手段25、26と、特定の走行条件下において異音要因を取り除く前に前記信号記憶手段によって記憶された対策前信号と前記特定の走行条件下おいて異音要因を取り除いた後に前記抽出手段によって抽出された対策後信号とを同期させて個別に出力する出力手段21、22と、を有している。
【解決手段】異音要因を取り除く前と異音要因を取り除いた後との車両の振動を比較することで異音対策が有効に成されたか否かを確認する異音対策確認装置200であって、前記車両の振動を検出する振動センサ10a〜10dと、振動センサ10a〜10dによって検出された振動から特定の周波数帯域の信号を抽出する信号抽出手段と、前記信号抽出手段によって抽出された信号を記憶する信号記憶手段25、26と、特定の走行条件下において異音要因を取り除く前に前記信号記憶手段によって記憶された対策前信号と前記特定の走行条件下おいて異音要因を取り除いた後に前記抽出手段によって抽出された対策後信号とを同期させて個別に出力する出力手段21、22と、を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異音対策確認装置および異音対策確認方法に係り、詳しくは、車両から異音要因を取り除く前後の振動を比較することで、異音対策が有効に行われたか否かを確認する異音対策確認装置および異音対策確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の構成部品などの検査対象物から異常振動が発生している場合、通常、異常振動を発していると思われる部分に耳を近づけて聴取し、その振動音が最も大きく聞こえる箇所が異常振動源、すなわち、不具合(以下、必要に応じて「異音要因」と称する)が発生している箇所(以下、「不具合箇所」と称する)であると推定している。
【0003】
異常振動を検出する従来技術としては、複数の振動センサを用いて、検査対象物から発生する振動を検出し、その検出した振動を2チャンネルの増幅回路を介して検出した信号をステレオタイプのヘッドフォンから聴取し、検査対象物に不具合箇所かあるか否かを検出している。(例えば、下記特許文献1の記載を参照)。
【特許文献1】特開平05−312635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、不具合箇所と推定した箇所に対策(異音要因を取り除くための修理など)を講じた後、その対策が、対策前と対策後とではどの程度の効果があったのかを、再度、作業者の経験に頼って対策後の振動音を聴取する必要が生じる。このため、異音要因の対策に時間がかかるばかりでなく、熟練を要するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、不具合箇所に対策を講じた後、その対策の効果がどの程度であるかを容易に確認することができる異音対策確認装置および異音対策確認方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る異音対策確認装置は、異音要因を取り除く前と異音要因を取り除いた後との車両の振動を比較することで異音対策が有効に成されたか否かを確認する異音対策確認装置であって、前記車両の振動を検出する振動センサと、前記振動センサによって検出された振動から特定の周波数帯域の信号を抽出する信号抽出手段と、前記信号抽出手段によって抽出された信号を記憶する信号記憶手段と、特定の走行条件下において異音要因を取り除く前に前記信号記憶手段によって記憶された対策前信号と前記特定の走行条件下おいて異音要因を取り除いた後に前記抽出手段によって抽出された対策後信号とを同期させて個別に出力する出力手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、上記目的を達成するための本発明に係る異音対策確認方法は、車両の異音要因を持っていると判断される箇所に振動センサを取り付ける段階と、特定の走行条件で車両を走行させる段階と、前記車両を走行させたときの前記車両の振動を検出する段階と、前記車両を走行させたときに検出された振動から特定の周波数帯域の信号を抽出する段階と、抽出した振動を記憶する段階と、前記車両から前記異音要因を取り除く段階と、前記車両から異音要因を取り除いた後に前記特定の走行条件で再度走行させる段階と、前記車両を再度走行させたときの前記車両の振動を検出する段階と、前記車両を再度走行させたときに検出された振動から特定の周波数帯域の信号を抽出する段階と、抽出した振動を記憶する段階と、前記車両の異音要因を取り除く前の振動と前記車両の異音要因を取り除いた後の振動とを同期させて個別に出力する段階と、を含むことを特徴とする。
【0008】
さらに、上記目的を達成するための本発明に係る異音対策確認方法は、車両の異音要因を持っていると判断される箇所に振動センサを取り付ける段階と、特定の走行条件で車両を走行させる段階と、前記車両を走行させたときの前記車両の上下方向の変位を検出する段階と、前記車両を走行させたときの前記車両の振動を検出する段階と、前記車両を走行させたときに検出された前記車両の上下方向の変位を記憶すると共に、検出された振動を記憶する段階と、前記車両から前記異音要因を取り除く段階と、前記車両から異音要因を取り除いた後に前記特定の走行条件で再度走行させる段階と、前記車両を再度走行させたときの前記車両の上下方向の変位を検出する段階と、前記車両を再度走行させたときの前記車両の振動を検出する段階と、前記車両を再度走行させたときに検出された前記車両の振動を記憶する段階と、前記車両を再度走行させたときに検出された前記車両の上下方向の変位を記憶すると共に、検出された振動を記憶する段階と、前記車両の異音要因を取り除く前の振動と前記車両の異音要因を取り除いた後の振動とを同期させて個別に出力する段階と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上のように構成された本発明に係る異音対策確認装置および異音対策確認方法によれば、異音要因の対策前に検出した振動センサの信号と異音要因を取り除いた対策後に検出した振動センサの信号とを同期して出力させることができるので、それぞれの信号を比較することができるようになる。この結果、異音要因の対策を講じた後の、その対策の効果の度合いを容易に確認することができるようになり、探査時間を著しく短縮して探査効率を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明に係る本発明に係る異音確認対策確認装置および異音対策確認方法について、第1実施形態および第2実施形態に分けて、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
これらの実施形態を説明する前に、本発明に係る異音対策確認装置および異音確認探査方法の理解を容易なものとするため、本発明に係る異音対策確認装置が有する機能を用いて行う異音探査の概要を説明しておく。
【0012】
図1は、本発明に係る異音対策確認装置が有する機能(異音探査機能)の概略的な構成の説明に供する図であり、車両の異常振動の発生部分を探索する場合の使用状態を例示したものである。なお、
図1に示すように、異音対策確認装置100は、異音対策確認装置本体110、振動センサ10a〜10d、パーソナルコンピュータ22、およびヘッドフォン21から構成される。
【0013】
異音対策確認装置本体110は、振動センサ10a〜10dを接続するためのセンサ接続端子37a〜37d、振動センサ10a〜10dの入力感度を個別に調整するためのゲイン調整用ボリューム35a〜35d、振動センサ10a〜10dの入力感度を全体的に調整するためのゲイン調整用ボリューム35eを備えている。振動センサ10a〜10dの個別の感度のばらつきはゲイン調整用ボリューム35a〜35dによって調整し、各振動センサが一定の振動を検出したときには一定の大きさの信号が出力されるようにする。個別の感度ばらつきの調整は異音対策確認装置本体110の使用前に予め行なっておくことが好ましい。振動センサ10a〜10dのすべての感度はゲイン調整用ボリューム35eで一括して調整する。なお、振動センサ10aとゲイン調整用ボリューム35aでチャンネル1(CH1)を、振動センサ10bとゲイン調整用ボリューム35bでチャンネル2(CH2)を振動センサ10cとゲイン調整用ボリューム35cでチャンネル3(CH3)を、振動センサ10dとゲイン調整用ボリューム35dでチャンネル4(CH4)をそれぞれ形成する。
【0014】
また、異音対策確認装置本体110は、振動レベルメーター34とピークホールドスイッチ40とがさらに備えられた構成になっている。ピークホールドスイッチ40は、ピークホールド機能のON、OFFを行うためのスイッチである。
【0015】
さらに、異音対策確認装置本体110は、パーソナルコンピュータ22を接続するためのUSB端子36aを備えており、振動センサ10a〜10dが検出した検査対象物の振動はUSB端子36aを介してパーソナルコンピュータ22に入力され、記憶される。
【0016】
さらに、異音対策確認装置本体110は、ヘッドフォン21を接続するためのヘッドフォン用出力端子36bを備えており、ヘッドフォン21で振動センサ10a〜10dが検出した検査対象物の振動音を聞くことができる。異音対策確認装置本体110は、ヘッドフォン21の左右で別々のチャンネルが選択できるように、左耳用のチャンネル選択用スイッチ31a(L−CH)、右耳用のチャンネル選択用スイッチ31b(R−CH)を備えており、ヘッドフォン21の左右の音量を同時に調整できるようにするために音量調整用ボリューム38を備えている。電源スイッチ39は異音対策確認装置本体110の電源のON,OFFを行なうためのスイッチである。
【0017】
車両の異常振動の発生部分を探索する場合には、異音対策確認装置100を次の手順で使用する。ここでは、ハンドル付近から異常振動音(例えば、びびり音など)が聞こえると言うクレームを受けた場合を例示して説明する。
【0018】
ハンドル付近から異常振動音が発生しているということは、通常、ハンドル近傍に設置されているトリム部品(検査対象物)が音源となっている場合が多いと推定される。そこで、音源になっていると推定される不具合箇所に対して振動センサ10a〜10dを取り付ける。具体的には、フロントピラー20aに振動センサ10aを、ハンドル20bに振動センサ10bを、グローブボックス20cに振動センサ10cを、フロントシート20dに振動センサ10dを取り付ける。なお、各振動センサ10a〜10dの取り付けは磁石や両面テープなどの固定手段を用いて行なう。
【0019】
そして、電源スイッチ39、ピークホールドスイッチ40を押して異常振動の探索を開始する。電源スイッチ39およびピークホールドスイッチ40がONされると、振動センサ10a〜10dの検出した振動がその振動の大きさに応じた信号として異音対策確認装置本体110に入力されると共に、入力された振動の中から時系列に発生する振動レベルのピークが振動センサごとに備えられる振動レベルメーター34に保持される。
【0020】
入力された信号はUSB端子36aを介してパーソナルコンピュータ22に出力され、同時に、ヘッドフォン用出力端子36bを介してヘッドフォン21に出力される。異音対策確認装置本体110から出力された信号は、パーソナルコンピュータ22によって記憶され、その記憶した信号は加工されてディスプレイ23に表示される。また、異音対策確認装置本体110から出力された信号はヘッドフォン21を介して左右のスピーカーから音波として出力される。なお、ヘッドフォン21から出力される音量は音量調整用ボリューム38を操作して調整する。
【0021】
車両の異常振動の発生部分、すなわち、不具合箇所は右耳用ヘッドフォン(R−CH)21aと左耳用ヘッドフォン(L−CH)21bから出力された音波を人間が聴取することによって判断する。例えば、チャンネル(R−CH)選択用スイッチ31aをチャンネル1(CH1)に合わせ、チャンネル(L−CH)選択用スイッチ31bをチャンネル2(CH2)に合わせた場合には、右耳用ヘッドフォン21aからはフロントピラー20aから発生している振動音が、左耳用ヘッドフォン21bからはハンドル20bから発生している振動音がそれぞれ同時に聴取することができる。
【0022】
また、不具合箇所は上記のように右耳用ヘッドフォン(R−CH)21aと左耳用ヘッドフォン(L−CH)21bから出力された音波を人間が聴取すると共に、振動レベルメーター34によって時系列に発生する振動レベルのピークの表示を視認することで探索することができる。図1を参照すれば、振動レベルメーター34はチャンネル3(CH3)が一番高いレベルを示していることが分かる。この結果、この表示だけを見ても、チャンネル3に対応する振動センサ10cが不具合箇所、すなわち、グローブボックス20cが不具合箇所であると特定することができる。さらに、パーソナルコンピュータ22を用いた場合には、振動センサ10a〜10dの検出した信号を記憶したり、記憶した信号を加工して、加工した信号を表示したりすることができる。例えば、図4に示すように、振動波形や振動レベルのピークをディスプレイ23に表示することができる。
【0023】
振動センサごとに抽出した信号から異なる任意の二つの信号を選択して同時に人間が聴取・比較しながら、聴覚的に不具合箇所を特定することができることに加えて、振動レベルメーター34によって表示された振動レベルのピークを人間が視認しながら視覚的にも不具合箇所を特定することができる。
【0024】
図2〜図5は、本発明に係る異音対策確認装置を用いた異音探査の説明に供する図である。図2は本発明に係る異音対策確認装置の概略構成を示すブロック図を、図3は図2に示した異音対策確認装置の動作フローチャートを示している。なお、図3のフローチャートは本発明に係る異音対策確認装置の異音探査方法の手順に相当するものである。また、図4は本実施の形態に係る異音対策確認装置によって検出された振動波形の一例を示すグラフおよびその振動波形から取得した振動センサごとの振動レベルのピーク(最大値および最小値)を示す図である。
【0025】
図2に示すように本発明に係る異音対策確認装置100は、振動センサ10a〜10d、信号抽出部11、センサ選択部12、ピークホールド部14、ピーク表示部15、および出力部13を備えている。振動センサ10a〜10dは、図1に示したように検査対象物20a〜20dにそれぞれ取り付けられている。なお、以下の説明では、本発明に直接係る主要な構成要素について説明する。したがって、図1に示した電源スイッチ39、音量調整用ボリューム38に係る詳細な説明は省略する。
【0026】
振動センサ10a〜10dは、検査時に、検査対象物20a〜20dの所望の個所に一時的に取り付け取り外し自在な構成になっており、検査対象物20〜20dにそれぞれ取り付けられる。振動センサ10a〜10dは、検査対象物20a〜20dからそれぞれ発生する振動を検出し、検出した振動をその信号の大きさに比例した電気信号に変換して信号抽出部11に送信する。振動センサとしては、例えば、水晶式センサ(水晶式圧電効果型加速度計)、力平衡式センサ(サーボ加速度計)などの機械電気変換素子を使用することができる。なお、本実施の形態では、4つの振動センサを例にとって説明しているが、振動センサの数は4つのみに制限されることはなく、2つ以上の複数の振動センサを用いることができる。
【0027】
信号抽出部11は、振動センサ10a〜10dからの信号を受信し、受信した信号の中から振動センサごとに特定の周波数帯域の信号を抽出するものであり、信号抽出手段として機能する。
【0028】
信号抽出部11は、振動センサ10a〜10dからの信号を増幅するための増幅器と増幅器から出力される信号の中から特定の周波数の信号のみを通過させるバンドパスフィルタとを含む。増幅器は、増幅率を調整する一般的な増幅率調整回路(図示はしていない)を含み、例えば、図1に示したゲイン調整用ボリューム35e、ゲイン調整用ボリューム35a〜35dに係る回路が該当する。バンドパスフィルタは、抽出したい信号の周波数帯域に応じてそのフィルタの構成を変更することができ、例えば、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、または、これらの組み合わせたものから構成することができる。
【0029】
センサ選択部12は、信号抽出部11からの信号を受信し、受信した信号の中から複数の信号を選択するセンサ選択手段として機能するもの、すなわち、任意の二つの振動センサ(例えば、振動センサ10aと振動センサ10b)からの信号を選択する機能を有するものである。
【0030】
センサ選択部12は、信号が伝達される通信路11a〜11dを切り換えるために人が操作する切換スイッチを含み、切換スイッチは信号抽出部11によって抽出された信号の通信路11a〜11dと出力部13との電気的接続を選択的に切り換えるもので、例えば、ロータリースイッチなどが挙げられる。
【0031】
切り換えスイッチは、2個の独立したスイッチから構成され、それぞれのスイッチは各センサからの信号を個別に切り換えることができるようになっている。切り換えスイッチには、人間が操作することができるようにつまみ(外部からの操作力が直接加えられることによって可動する可動部位)が取り付けられており、例えば、図1に示した左耳用のチャンネル選択用スイッチ31a(L−CH)をチャンネル1(CH1)に、右耳用のチャンネル選択用スイッチ31b(R−CH)をチャンネル2(CH2)に切り換えることができる。
【0032】
出力部13は、センサ選択部12によって選択した複数の信号を個別に出力する出力手段として機能するもの、すなわち、センサ選択部12によって選択された二つの信号を受信し、受信した信号を個別に出力する機能を有するものである。また、信号抽出部11からの信号を受信し、受信した信号を記憶したり、受信した信号を加工して表示したりする機能を持たせても良い。
【0033】
出力部13は、音波出力装置、または、中央演算処理装置および演算に必要なデータを記憶する記憶装置を備えた処理装置であり、例えば、図1に示したヘッドフォン21やパーソナルコンピュータ22が該当する。なお、中央演算処理装置は各種演算処理などを実行するものであり、記憶装置は信号抽出部11から受信した信号を一時的に記憶するために用いられる領域、あるいは、周波数解析を実施するための解析プログラムを記憶するための領域などが設定されているものである。ヘッドフォン21、パーソナルコンピュータ22は、図1に示したようにヘッドフォン用出力端子36b、USB端子36a介して接続される。
【0034】
ピークホールド部14は、信号抽出部11からの信号を受信し、受信した信号に基づいて、時系列に発生する振動レベルのピークを取得するものであり、ピークホールド手段として機能する。ピークホールド部13は、一般的なピークホールド回路から構成され、ピークホールド部14は、ピークホールドの機能を作動させてから停止させるまでの時間内に記憶した振動レベルのピーク(振動レベルの最大値または最小値)を取得するものである。ピークホールド部14は、ピークホールドの機能を作動させてから停止させるまでの時間内の振動レベルのピークを記憶する記憶領域を備えることができる。
【0035】
ピーク表示部15は、ピークホールド部13からの信号を受信し、振動センサ10〜10dごとに振動レベルのピークを表示するものであり、ピーク表示手段として機能する。
【0036】
ピーク表示部15は、振動レベルのピークを外部から視認できるように表示するための発光素子を含む。例えば、図1に示した振動レベルメーター34が該当する。
【0037】
検査対象物20a〜20dは、不具合検査の対象となるものである。検査対象物として本実施の形態では車両の構成部品を対象としているが、これに限らず、種々の分野における機械装置、電気機器などを対象とすることもできる。なお、本実施の形態では、4つの検査対象物を例にとって説明しているが、これに限らず、少なくとも一つの検査対象物であれば本発明の適用は可能である。
【0038】
次に、本発明に係る異音対策確認装置を用いた異音探査の方法について詳細に説明する。
【0039】
図3は、本実施の形態に係る異音対策確認装置100を用いた異音探査の処理内容を示すフローチャートである。
【0040】
図3に示すように、振動センサ10a〜10dを検査対象物20a〜20dにそれぞれ取り付ける(S300)。振動センサ10a〜10dは、検査対象物20a〜20dの特徴に応じて磁力や粘着力を利用して取り付けられる。このようすることで、検査対象物の特徴に応じて所望の箇所に一時的に取り付け取り外し自在な構成とすることができる。
【0041】
ステップS300の処理の後に、振動センサの感度を調節するために増幅率の設定を行っても良い。増幅率の設定は、あらかじめ実施した試験的計測により、ある程度の増幅率を予想しておき、この予想した増幅率を基準として所望の増幅率に設定しておく。図1で既に述べたように、振動センサ10a〜10dのすべての感度はゲイン調整用ボリューム35eで一括して調整したり、振動センサ10a〜10dの個別の感度はゲイン調整用ボリューム35a〜35dで調整したりする。
【0042】
次に、ピークホールドの設定を入力、すなわち、ピークホールドスイッチ40をONに(S310)。
【0043】
次に、電源スイッチ39をONにすると、振動センサ10a〜10dにより、検査対象物20a〜20dから発生する振動が検出される(S320)。検出された振動は、信号抽出部11に送信される。
【0044】
次に、信号抽出部11は、振動センサ10a〜10dからの信号を受信し、受信した信号の中から特定の周波数帯域の信号を振動センサ10a〜10dごとに抽出する(S330)。抽出した信号は、センサ選択部12に送信される。特定の周波数帯域の信号を抽出する理由は、例えば、検査対象物から微小な時間変化を伴う高周波数帯域の異常振動が発生した場合に、暗騒音(検査対象とする箇所に着目しているときにその検査対象から発生する振動音以外の音)の影響または異常振動が正常な振動に埋もれてしまい、異常振動か否かの判断ができなくなること極力防ぐためである。
【0045】
次に、パーソナルコンピュータ22(出力部13)は、信号抽出部11からの信号を受信し、振動センサ10a〜10dごとの信号を記憶する(S340)。
【0046】
パーソナルコンピュータ22に信号を記憶させる理由は、例えば、車両の走行中に異常振動が発生するような場合、実際に車両を走行させ、異常振動を再現しながら不具合箇所を探査することになる。しかしながら、走行中は暗騒音の影響が大きく、車両の構成部品によっては不具合箇所の特定が難しく何度も車両を走行させて異常振動を再現する必要があり、煩わしさに耐えない。そこで、パーソナルコンピュータ22に信号抽出部11から送信される振動センサごとの信号を記憶させておくと、後に、その記憶した信号を加工して音波として出力したり、振動を解析したりすることができるので何度も車両を走行させる必要がなくなり、便利だからである。
【0047】
また、振動の解析は、パーソナルコンピュータ22が記憶した信号を一般的な周波数解析の処理方法により、振動センサ10a〜10dごとの振動波形を表示したり、振動レベルのピークを抽出して表示したりすることによって行なう(図4参照)。なお、パーソナルコンピュータ22は、必要に応じて適宜用いることができる。
【0048】
次に、ピークホールド部14は、抽出された信号を受信し、時系列に発生する振動レベルのピークを取得する(S350)。なお、ステップS350の処理では、検査開始時からから検査終了時までの振動レベルのピークを取得することになるが、検査の途中であっても、作業者がピークホールド設定ボタン32(図1参照)を押すことによりピークホールドの機能を作動または停止させて所望の検査開始時からの振動レベルのピークを取得することができる。また、ピークホールド部14は、振動レベルのピークを記憶して、ピークホールドの機能を停止させた後、所望の探査時間で取得した振動レベルのピークを表示させることもできる。
【0049】
次に、ピーク表示部15は、ピークホールド部14からの信号を受信し、振動センサ10a〜10dごとの振動レベルのピークを表示する(S360)。振動レベルのピークの表示は、例えば、図1に示すように、振動センサ10a〜10dごとに振動レベルピークメーター34によって表示される。
【0050】
一方、センサ選択部13によって、信号抽出部11からの信号を受信し、受信した信号の中から異なる任意の二つの振動センサからの信号を選択することができる。具体的には、異なる任意の二つの振動センサからの信号の選択は、探査を行っている作業者(以下、「作業者」と称する)が左耳用のチャンネル選択用スイッチ31a、または、右耳用のチャンネル選択用スイッチ31bを操作し、所望の振動センサの信号を選択する。
【0051】
本発明に係る異音対策確認装置本体110には、図1で示したように、左耳用のチャンネル選択用スイッチ31a、右耳用のチャンネル選択用スイッチ31bが備えられているので、この二つのスイッチを操作することにより、異なる任意の二つの振動センサからの信号を選択することができる。なお、上記のように、二つのチャンネル選択用スイッチ31a、31bに限らず、出力部13に対応した複数のチャンネル選択用スイッチを備えるように構成することもできる。
【0052】
次に、選択された信号に基づき不具合の有無を特定、すなわち、不具合箇所を特定する(S370)。不具合箇所を特定する方法は、具体的には、ステップS240の処理で述べたように、右耳側ヘッドフォン21aと右耳用ヘッドフォン21bとで異なる振動センサの信号を選択することができるので、異なる任意の二つの信号から個別に音波を出力させて、作業者は検査対象物20a〜20dから発生する振動の音質や音量をそれぞれ比較しながら聴取すると共に、振動レベルメーター34によって表示される振動レベルのピークの表示を視認しながら、不具合箇所を特定する。
【0053】
具体的には、図1に示すように、振動レベルメーター34のチャンネル3(CH3)に対応する振動センサ10cからの振動レベルのピークが一番大きいことが分かるので、振動センサ10cに取り付けられた検査対象物20cが不具合箇所であると特定される。このように、不具合箇所を特定し、処理を終了する。この場合、ヘッドフォン21にチャンネル3(CH3)からの音波が聴取できるようにチャンネル選択用スイッチ31aまたは31bを設定すれば、チャンネル3からの音波の音量が他のチャンネルからの音波の音量と比較して最も大きな音となって聞こえるはずである。
【0054】
さらに、パーソナルコンピュータ22を用いて、ヘッドフォン21で聴取すると共に、パーソナルコンピュータ22によって記憶した信号の振動波形または表示された振動レベルのピークを視認して不具合箇所を特定することもできる。例えば図4に示したように、振動レベルのピークが一番大きい箇所はチャンネル3(CH3)の振動センサであるので、この結果から、振動センサ10cに取り付けられた検査対象物20cが不具合箇所であることが分かる。このように、不具合箇所を特定し、処理を終了する。
【0055】
以上のように構成される本発明に係る異音対策確認装置が有する異音探査機能およびその機能を用いた異音探査方法では、複数の振動センサからの異なる任意の二つの振動センサの信号を選択し、選択した信号を同時に出力すると共に、振動センサごとの振動レベルのピークを表示するようにしている。この結果、聴取による不具合箇所の特定が不調の場合でも、振動レベルのピークの表示を視認することにより、不具合箇所を特定することができる。したがって、不具合箇所の特定が容易になり、探査時間を著しく短縮して探査効率を大幅に向上させることができる。
【0056】
また、パーソナルコンピュータ22を用いた場合には、信号抽出部11から送信される振動センサごとの信号を記憶させると共に、記憶した信号を加工して表示することができるようにしている。この結果、不具合箇所の特定がさらに容易になり、探査時間を著しく短縮して探査効率を大幅に向上させることができる。
【0057】
なお、本発明に係る異音対策確認装置およびその異音探査方法では、二つの振動センサからの信号を選択した場合を例示して説明してきたが、3つ以上の振動センサからの信号を選択し、これらのセンサからの音を個別に同時に聴取することができるように構成しても良い。
【0058】
次に、本発明に係る異音対策確認装置を用いた異音探査の別態様について説明する。
【0059】
図5〜図7は、本発明に係る異音対策確認装置を用いた異音探査の別態様の説明に供する図である。図5は図1に示した異音対策確認装置の構成要素の一つであるパーソナルコンピュータの概略構成を示すブロック図を、図6は図1に示した異音対策確認装置の動作フローチャートを示し、このフローチャートは本実施の形態に係る異音対策確認装置の探査方法の手順に相当するものである。また、図7は本実施の形態に係る異音対策確認装置によって検出された振動波形の一例を示すグラフおよび当該振動波形に基づき算出される物理量を示す図である。
【0060】
本発明に係る異音対策確認装置を用いた異音探査の別態様では、主としてパーソナルコンピュータ22を用い不具合箇所を特定するようにしている。具体的には、信号抽出部11から送信される振動センサごとの信号を記憶させると共に、記憶した信号を加工して表示し、加工された信号に基づき、不具合箇所を特定するようにしている。主としてパーソナルコンピュータを用いて不具合箇所を特定するようにしている点以外は、異音対策確認装置の構成要素は図1および図2に示すものと全く同じであるので共通する構成要素の説明は省略する。なお、異音対策確認装置の構成要素については、図1および図2に示すものと同じであるので、同一の構成要素については図1および図2に示す参照番号と同一の参照符号を用いて説明する。
【0061】
図5は、本発明に係る異音対策確認装置を用いた異音探査の別態様におけるパーソナルコンピュータ22の概略構成を示すブロック図である。
【0062】
パーソナルコンピュータ22は、CPU22a、RAM22b、ROM22c、ハードディスク22d、ディスプレイ23、および入力装置24を備えており、これらは信号をやり取りするためのバス22eを介して相互に接続されている。
【0063】
パーソナルコンピュータ22は、振動の解析に必要な周波数解析を実施するための解析プログラムに基づいて解析を実行したり、解析結果から得られた情報を加工して表示したりするものである。解析結果から得られる情報は、例えば振動センサごとの振動波形、振動波形から得られる立ち上がりの順番(振動センサ10a〜10dのうち、どの振動センサの振動波形の立ち上がりが時間的に早いのかを示唆する情報)、振動レベルのピーク、RMS(Root Means Square:実効値)値、P−P(Peak to Peak:最大振幅)値などの物理量などであり、周波数解析結果から得られる各種の情報が該当する。
【0064】
CPU22aは、一般的な周波数解析プログラムに基づいて、解析に必要な各種演算処理を実行するものである。
【0065】
RAM22bは、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶するものである。
【0066】
ROMは22c、パーソナルコンピュータ22の基本動作を制御する各種プログラムやパラメータなどの情報をあらかじめ格納しているものである。
【0067】
ハードディスク22dは、OS(オペレーティングシステム)やパーソナルコンピュータ22の所定の動作を制御するためのプログラムやパラメータを格納するものである。ハードディスクには、上記各種の物理量の算出に、解析結果から得られた情報の加工または表示に、その他、周波数解析に必要なプログラムがあらかじめ記憶されている。なお、振動センサごとの振動波形、振動レベルのピーク、RMS値、P−P値などの物理量の算出方法およびそのプログラムは、既に公知であるので詳細な説明は省略する。さらに、ハードディスクは、信号抽出部11から受信した信号を記憶したり、解析結果を記憶したりする記憶領域としても機能する。
【0068】
ディスプレイ23は、例えばCRTディスプレイや液晶ディスプレイなどであり、解析結果によって得られた各種の情報を表示するものである。
【0069】
入力装置24は、マウス、キーボード、またはタッチパネルなどのポインティングデバイスであり、作業者からの入力を受け付けるものである。
【0070】
以上のように構成されたパーソナルコンピュータ22を用いて、本実施の形態に係る異音対策確認装置および異音対策確認装置を用いた異音探査方法が実行される。
【0071】
図6は、本発明に係る異音対策確認装置100(図1参照)を用いた別態様の異音探査の処理内容を示すフローチャートであり、図6の説明において図2に示した処理内容と同一の処理内容の説明は重複記載を避けるため省略する。
【0072】
図6に示すように、まず、振動センサ10a〜10dを検査対象物20a〜20dにそれぞれ取り付ける(S400)。なお、振動センサを取り付ける箇所は、異常振動が発生していると推定される箇所に取り付けられるが、このとき、振動センサを取り付ける前に、ホログラフィ法やビームフォーミング法などを用いて音場の可視化を可能とする音源可視化装置を用い、異常振動が発生していると考えられる領域を推定してから振動センサを取り付けても良い。
【0073】
次に、電源スイッチ39をONにすると、振動センサ10a〜10dにより、検査対象物20a〜20dから発生する振動が検出される(ステップS410)。検出された振動は、信号抽出部11に送信される。
【0074】
次に、信号抽出部11は、振動センサ10a〜10dからの信号を受信し、受信した信号の中から特定の周波数帯域の信号を振動センサ10a〜10dごとに抽出する(ステップS420)。抽出した信号は、パーソナルコンピュータ22に送信される。
【0075】
次に、パーソナルコンピュータ22(出力部13)は、信号抽出部11からの信号を受信し、振動センサ10a〜10dごとの信号を記憶する(ステップS430)。
【0076】
次に、パーソナルコンピュータ22は、記憶した信号に基づき周波数解析を実行して、解析結果から得られた情報をディスプレイ23に表示する(ステップS440〜S460)。具体的には、図7に示すように、振動センサ10a〜10dごとの振動波形(ステップS440)、振動センサ10a〜10dごとの振動レベルのピークを表示(ステップS450)、振動センサ10a〜10dごとに振動波形の立ち上がりの順番を表示する(ステップS460)。
【0077】
次に、ディスプレイ23に表示された情報に基づき不具合の有無を特定、すなわち、不具合箇所を特定する(ステップS470)。不具合箇所を特定する方法は、具体的には、ディスプレイ24に表示された各種物理量、本実施の形態では、振動レベルのピーク、振動波形の立ち上がりの順番を作業者が振動センサ10a〜10dごとに確認し、それぞれの物理量から総合的に判断して不具合箇所を特定する。例えば図7に示したように、振動レベルのピークを参照すると、振動レベルのピークが一番大きい箇所はチャンネル3(CH3)の振動センサであるので、この結果からは、振動センサ10cに取り付けられた検査対象物20cが不具合箇所であると特定される。一方、振動波形の立ち上がりの順番を参照すると、振動波形の立ち上がりが一番早い箇所はチャンネル4(CH4)の振動センサであるので、この結果からは振動センサ10dに取り付けられた検査対象物20dが不具合箇所であると特定される。
【0078】
一般的には、振動レベルのピークが一番大きい箇所が不具合箇所であると特定されるが、振動レベルのピークは、検査対象物の材質やその厚さ、検査対象物と他の部材との接合状態など、種々の要因によって振動の伝播の仕方が異なる場合がある。このような場合、不具合箇所ではないのにもかかわらず、振動の振幅が干渉によって増幅され振動レベルのピークが大きくなったり、検査対象物の材質による振動の伝播速度の違いから振動波形の立ち上がりが早くなったりする。このとき、振動波形を観察して不具合箇所を特定しても良いし、振動レベルのピークから不具合箇所を特定しても良いが、好ましくは、振動波形の立ち上がりが一番早い箇所を不具合箇所として特定する。なお、本実施の形態では、ディスプレイ23に表示された各種物理量から総合的に判断して不具合箇所を特定するようにしている。上記のように不具合箇所を特定して、処理を終了する。
【0079】
このとき、前記各種物理量によって不具合箇所を特定すると共に、既に説明したように、異なる任意の二つの振動センサの信号を比較しながら聴取して不具合箇所を特定しても良い。
【0080】
以上のように構成される本発明に係る異音対策確認装置が有する異音探査機能およびその機能を用いた異音探査方法では、パーソナルコンピュータ22を用いて、信号抽出部11から送信される振動センサごとの信号を記憶させると共に、記憶した信号を加工して振動に関する各種物理量を表示することができるようにしている。この結果、聴取による不具合箇所の特定が不調の場合でも、抽出した信号に基づき得られた各種物理量を視認することにより、不具合箇所を特定することができる。したがって、不具合箇所の特定が容易になり、探査時間を著しく短縮して探査効率を大幅に向上させることができる。
【0081】
以上のように、本発明に係る異音対策確認装置が有する異音探査機能およびその機能を用いた異音探査方法について、二つの態様を例示して説明した。次に、本発明に係る異音確認対策確認装置および異音対策確認方法を第1実施形態および第2実施形態に分けて詳細に説明する。
【0082】
[第1実施形態]
図8〜図11は、本発明の第1実施形態に係る異音対策確認装置およびその対策確認方法の説明に供する図である。図8は本実施の形態に係る異音対策確認装置の概略的な構成の説明に供する図であり、車両の異常振動の発生部分を探索する場合の使用状態を例示したものを、図9は本実施の形態に係る異音対策確認装置の概略構成を示すブロック図を、図10は図9に示した異音対策確認装置の動作フローチャートを示し、このフローチャートは本実施の形態に係る異音対策確認装置の探査方法の手順に相当するものである。また、図11は本実施の形態に係る異音対策確認装置およびその対策確認方法における同期信号の出力に関する説明図である。
【0083】
なお、図1に対応する図8においては、図1で例示した検査対象物が異なる点ものを例示している。また、図8および図9において、図1および図2に示した構成要素と対応する構成要素には、同じ参照番号を付してある。
【0084】
本実施の形態では、パーソナルコンピュータ22を用い、検査対象物の異音要因を取り除く前(対策前)の振動と検査対象物の異音要因を取り除いた後(対策後)の振動とを時系列に同期させて出力するようにしている。そして、この出力した結果に基づいて、対策前に検出した信号と対策後に検出した信号とを比較して、その対策の効果がどの程度かを確認することができるようにしている。
【0085】
第1実施形態の説明をする前に、本実施の形態に係る異音対策確認装置およびその対策確認方法の理解を容易なものとするために、本発明に係る異音対策確認装置およびその対策確認方法の概要を簡単に説明しておく。
【0086】
図8は、車両の異常振動の発生部分を探索する場合を例示したものである。車両の異常振動の発生部分を探索する場合には、異音対策確認装置200を次の手順で使用する。なお、本実施の形態における車両の異常振動の発生部分を探索する手順は、基本的には既に説明した異音対策確認装置が有する機能を用いて行う異音探査の手順と同様の手順で行うので、同様の手順については重複記載を避けるため省略する。
【0087】
ここでは、車両が定められた進路を進行(走行)したとき、リアサスペンション付近から異常振動音が聞こえると言うクレームを受けた場合を例示して説明する。
【0088】
リアサスペンション付近から異常振動音が発生しているということは、通常、リアサスペンション近傍の部品(図8は、リアサスペンションメンバーにおける各部位を検査対象物とした例を示している)が音源となっている場合が多いと推定される。そこで、音源になっていると推定される不具合箇所に対して振動センサを取り付ける。このとき、既に説明したように、音源可視化装置を用いて不具合箇所を推定してから取り付けても良い。
【0089】
ここで、本実施の形態では、振動センサ10dを音源となっていると推定される不具合箇所とは異なる箇所に取り付ける。具体的には、音源になっていると推定される不具合箇所である部位21aに振動センサ10aを、部位21bに振動センサ10bを、部位21cに振動センサ10cを取り付ける。そして、振動センサ10dを、車両が定められた進路を走行しているときに、進行している路面の形態(路面の形態)に応じて入力される振動を検出することが可能な部位21dに取り付ける。図8では、路面の凹凸に応じてタイヤから入力される振動を良好に検出することが可能なリアサスペンションメンバーの部位21dに取り付けた例を示している。なお、各振動センサ10a〜10dの取り付けは磁石や両面テープなどの固定手段を用いて行なう。
【0090】
そして、電源スイッチ39、ピークホールドスイッチ40を押して異常振動の探索を開始する。異音対策確認装置本体110の電源スイッチ39がONされると、センサ接続端子37a〜37dを介して、振動センサ10a〜10dの検出した振動がその振動の大きさに応じた信号として異音対策確認装置本体110に入力される。
【0091】
入力された信号はUSB端子36aを介してパーソナルコンピュータ22に入力され、同時に、ヘッドフォン用出力端子36bを介してヘッドフォン21に出力され、入力された信号の中から抽出された時系列に発生する振動レベルのピークが振動センサごとに備えられる振動レベルメーター34に保持される。
【0092】
また、パーソナルコンピュータ22に入力された信号は、不具合箇所の対策前(異音要因を取り除く前)の信号として記憶され、記憶した信号は加工されてディスプレイ23に表示される。また、ヘッドフォン21に入力された信号は、ヘッドフォン21の右耳用ヘッドフォン(R−CH)21aと左耳用ヘッドフォン(L−CH)21bから音波として出力される。
【0093】
不具合箇所の特定は、既に説明したように、右耳用ヘッドフォン(R−CH)21aと左耳用ヘッドフォン(L−CH)21bから出力された音波を人間が聴取すると共に、振動レベルメーター34によって時系列に発生する振動レベルのピークの表示を視認することで探索するか、またはパーソナルコンピュータ22によって解析された解析結果を視認することによって不具合箇所を特定する。例えば、図8を参照すれば、振動レベルメーター34はチャンネル3(CH3)が一番高いレベルを示していることが分かる。この結果、この表示だけを見ても、チャンネル3に対応する振動センサ10cが不具合箇所、すなわち、部位21cが不具合箇所であると特定することができる。なお、振動レベルメーター34におけるチャンネル4(CH4)の表示が一番高いレベルを示しているが、チャンネル4に対応する部位21dは不具合箇所と推定される箇所ではないので除外している。
【0094】
以上のように、部位21cを不具合箇所と特定した後、不具合の対策、すなわち、異音要因に応じた対策(修理など)を行う(以下、異音要因に対策を講じる前を「対策前」、異音要因に対策を講じた後を「対策後」と称して説明する)。そして、異音要因を取り除く作業を行った後、対策前に車両が走行した進路と同じ進路を走行させて、不具合箇所であった部位21cの振動を再度検出すると共に、振動センサ10dによって路面の凹凸に応じて入力される部位21dの振動を検出する。検出した信号は、対策後に検出した信号としてパーソナルコンピュータ22に記憶される。
【0095】
そして、作業者によってパーソナルコンピュータ22に所定の指示情報が入力されると、当該指示情報に基づきパーソナルコンピュータ22は、対策前に検出した信号と対策後に検出した信号とを同期させて出力する。そして、この出力した信号に基づき、不具合の対策の効果がどの程度であるかを確認する。例えば、同期させて出力した信号(以下、「同期信号」と称する)を、スピーカーなどの音波出力装置(図示はしない)を用いて出力して比較したり、またはセンサ接続端子37a〜37dとパーソナルコンピュータ22とを電気的に接続することによって、異音対策確認装置本体110を介してヘッドフォン21から聴取して比較したりすることができる。
【0096】
このように本実施の形態に係る異音対策確認装置では、振動センサごとに抽出した信号から異なる任意の二つの信号を人間が聴覚的・視覚的に比較して不具合箇所を特定することができることに加えて、異なる時間において検出した信号が時系列に同期して出力されるので、不具合の対策の効果を容易に確認することができる。
【0097】
次に、図9を参照して、本実施の形態に係る異音対策確認装置200について詳細に説明する。本実施の形態では、パーソナルコンピュータ22を用い、検査対象物の異音要因を取り除く前(対策前)の振動と検査対象物の異音要因を取り除いた後(対策後)の振動とを時系列に同期させて出力するようにしている。以下では、既に説明した異音対策確認装置が有する機能を用いて行う異音探査に関する構成要素と同じ構成要素については重複記載を避けるため詳細な説明は省略する。
【0098】
図9に示すように本実施の形態に係る異音対策確認装置200は、振動センサ10a〜10d、異音対策確認装置本体110、パーソナルコンピュータ22、ヘッドフォン24を備えている。振動センサ10a〜10dは、図8に示した検査対象物21a〜21dにそれぞれ取り付けられている。
【0099】
振動センサ10a〜10dは、車両が定められた進路を進行したとき(特定の走行条件下で車両を走行させたとき)の検査対象物の振動を検出するものとして使用される。なお、振動センサ10dは、車両が前記定められた進路を進行しているときに、進行している路面の形態に応じて入力される振動を検出することが可能な検査対象物20dに取り付けられている。
【0100】
異音対策確認装置本体110は、振動センサ10a〜10dから出力された信号に基づいて、検査対象物20a〜20cが異音要因を持っているか否かを探査する異音探査手段として機能する。異音対策確認装置本体110は、図2に示した異音対策確認装置100から、振動センサ10a〜10dと出力部13とを除く構成要素を備えているものであり、図1に示す異音対策確認装置本体110が該当する。
【0101】
本実施の形態におけるパーソナルコンピュータ22は、図9に示すように、対策前信号記憶部25、対策後信号記憶部26、および同期信号出力部27を備えている。これらはパーソナルコンピュータ22を構成する、図5に示したCPU22a、RAM22b、ROM22c、およびハードディスク22dが連携することによって機能するものである。なお、CPU22aは上記各部の制御や必要な演算処理を実行するものであり、ROM22bはパーソナルコンピュータ22の基本動作や上記各部を制御する各種プログラムやパラメータなどをあらかじめ格納しているものである。また、ハードディスク22dは、対策前信号記憶部25、対策後信号記憶部26を含む。以下、対策前信号記憶部25、対策後信号記憶部26、および同期信号出力部27について詳細に説明する。
【0102】
対策前信号記憶部25は、振動センサ10a〜10dが検出した振動に伴って振動センサ10a〜10dから出力された信号(振動信号)を時系列に記憶するものであり、対対策前信号記憶手段として機能する。対策前信号記憶部25には、対策前における検査対象物20a〜20cから検出した信号と、対策前における検査対象物20dから検出した信号とが、振動センサ10a〜10cごとに対応付けられて記憶される。
【0103】
対策後信号記憶部26は、異音対策確認装置本体110によって検査対象物21a〜21dが異音要因を持っていると判断されたとき(本実施の形態では、既に説明したように、検査対象物21cが異音要因を持っている例を示している)には、異音要因を取り除いた後に、前記定められた進路を進行したときに振動センサ10a〜10dが検出した振動に伴って振動センサ21a〜21dから出力された信号を時系列に記憶するものであり、対策後信号記憶手段として機能する。対策後信号記憶部26には、対策後における検査対象物20a〜20cから検出した信号と、対策後における検査対象物20dから検出した信号とが、振動センサ10a〜10cごとに対応付けられて記憶される。
【0104】
同期信号出力部27は、対策前信号記憶部25に記憶されている信号と対策後信号記憶部26に記憶されている信号とを時系列に同期させて出力するものであり、信号出力手段として機能する。同期信号出力部27から出力される同期信号は、スピーカーなどの音波出力装置(図示はしない)を用いて音波として出力したり、またはセンサ接続端子37a〜37dとパーソナルコンピュータ22とを電気的に接続することによって、異音対策確認装置本体110を介してヘッドフォン21から音波として出力したりすることができる。
【0105】
検査対象物21a〜21cは、不具合検査の対象となるものである。検査対象物として本実施の形態では車両の構成部品を対象としているが、これに限らず、種々の分野における機械装置、電気機器などを対象とすることもできる。なお、本実施の形態では、3つの検査対象物を一例として説明しているが、これに限らず、検査対象物は少なくとも一つあれば本発明の適用は可能である。
【0106】
次に、図10を参照して、本発明の第1実施形態に係る異音対策確認装置の異音対策確認方法について詳細に説明する。
【0107】
図10は、本実施の形態に係る異音対策確認装置200の処理内容を示すフローチャートであり、図10において図3および図6に示した処理内容と同一の処理内容は重複記載を避けるため省略する。
【0108】
図10に示すように、まず、振動センサ10a〜10dを検査対象物21a〜21dにそれぞれ取り付ける(S500)。なお、振動センサ10a〜10cは異常振動が発生していると推定される検査対象物21a〜21bに、振動センサ10dは車両が定められた進路を進行しているときに、進行している路面の形態に応じて入力される振動を良好に検出することが可能な検査対象物21dに取り付ける。
【0109】
次に、車両を定められた進路に沿って走行させ、電源スイッチ39をONにすると、振動センサ10a〜10dにより、検査対象物20a〜20dから発生する振動が検出され、検出された振動は電気信号に変換されて異音対策確認装置本体110を介してパーソナルコンピュータ22に送信される(ステップS510)。なお、本処理内容において、車両が前記定められた進路を走行する場合、探査時間内において、車両の上下方向の変位が極端に大きくなる少なくとも1つの凹凸がある路面を走行させることが望ましい。
【0110】
例えば、車両を前記定められた進路に沿って走行させる場合、図11に示すように、探査の開始直後に車両が上下方向に大きく変位する凹凸を有した箇所P1を通過させ、探査の終了直後にも車両が上下方向に大きく変位する凹凸を有した箇所P2を通過させるように車両を走行させる。詳細は後述するが、車両が前記凹凸を有する箇所P1、P2を通過したときに振動センサ10dから出力された信号が、対策前信号記憶部25に記憶されている信号と対策後信号記憶部26に記憶されている信号とを時系列に同期させて出力するためのトリガとしての役割を果たすことになる。
【0111】
次に、パーソナルコンピュータ22は、異音対策確認装置本体110を介して受信した信号、すなわち、振動センサ10a〜10dが検出した振動に伴って振動センサ10a〜10dから出力された信号を時系列に記憶する(ステップS520)。このとき、振動センサ10a〜10cから出力された信号と振動センサ10dから出力された信号とが対応付けられて対策前信号記憶部25に記憶される。なお、対策前信号記憶部25には、一の路面を走行した場合に検出した信号と他の路面を走行した場合に検出した信号とが、それぞれ区分して記憶するように構成しても良い。
【0112】
次に、不具合の有無を特定、すなわち、不具合箇所を特定する(ステップS530)。不具合箇所を特定する方法は、既に説明したので本処理内容の説明は省略する(図3におけるステップS370、図6におけるステップS460の処理内容を参照)。なお、本実施の形態では、図8に示すように、振動レベルメーター34の表示を見ると、振動レベルのピークが一番大きい箇所はチャンネル4(CH4)の振動センサ10dである。
【0113】
しかしながら、振動センサ10dは車両が走行している路面の形態に応じて入力される振動を検出するための検査対象物21dに取り付けられているので、チャンネル4(CH4)に関する情報は除外して、不具合箇所を特定するようにする。
【0114】
したがって、振動レベルのピークが一番大きい箇所はチャンネル3(CH3)の振動センサであるので、この結果からは、振動センサ10cに取り付けられた検査対象物20cが不具合箇所であると特定することができる(もちろん、既に説明したように、ディスプレイ23に表示された各種物理量から総合的に判断して不具合箇所を特定するようにしても良い)。
【0115】
次に、不具合箇所に対して、異音要因に応じた対策を行う(ステップS540)。
【0116】
次に、再び車両を前記定められた進路に沿って走行させ、対策後の検査対象物21a〜21dの振動を検出する(ステップS550)。本処理内容では、ステップS500〜S510までの処理内容と実質的に同じ処理を実行することによって対策後の振動を検出する。なお、対策後は、不具合箇所および車両が走行している路面の形態に応じて入力される振動を良好に検出することが可能な検査対象物にのみ、振動センサを取り付けて検出するようにしても良い。
【0117】
次に、パーソナルコンピュータ22は、振動センサ10a〜10dが検出した振動に伴って振動センサ10a〜10dから出力された信号を時系列に記憶する(ステップS560)。このとき、振動センサ10a〜10cから出力された信号と振動センサ10dから出力された信号とが対応付けられて対策後信号記憶部26に記憶される。なお、対策前信号記憶部25には、一の路面を走行した場合に検出した信号と他の路面を走行した場合に検出した信号とが、それぞれ区分して記憶するように構成しても良い。
【0118】
次に、作業者は、入力装置24に対して、対策前信号記憶部25に記憶されている信号と対策後信号記憶部26に記憶されている信号とを出力させるための指示情報を入力する。そして、同期信号出力部27は、前記指示情報に基づき、対策前信号記憶部25に記憶されている信号と対策後信号記憶部26に記憶されている信号とを時系列に同期させて出力する(ステップ570)。
【0119】
ここで、対策前信号記憶部25に記憶されている信号と対策後信号記憶部26に記憶されている信号とを時系列に同期させて出力するための処理について詳細に説明しておく。
【0120】
振動センサ10dの対策前信号記憶部25に記憶されている信号および対策後信号記憶部26に記憶されている信号には、ステップS510の処理で説明したように、車両が路面の前記凹凸を有する箇所P1、P2(図11参照)を通過することによって検出された大きな振動レベルを有する信号が2つ存在するはずである。この2つの大きな振動レベルを対策前信号記憶部25に記憶されている信号と対策後信号記憶部26に記憶されている信号とを時系列に同期させて出力するトリガとして機能させるようにする。
【0121】
具体的には、振動センサ10c(不具合箇所に取り付けられていた振動センサ)の対策前信号記憶部25に記憶されている信号および対策後信号記憶部26に記憶されている信号の中から、振動センサ10dから検出された振動レベルが最初に所定の振動レベル(一般的な路面上では検出されることのない振動レベル)に達した(または超過した)ときを第1のトリガ(凹凸を有する箇所P1を通過したときに検出された信号を第1のトリガとする)、振動センサ10dから検出された振動レベルが次に所定の振動レベルに達した(または超過した)ときを第2のトリガ(凹凸を有する箇所P2を通過したときに検出された信号を第2のトリガとする)として、前記第1のトリガから前記第2のトリガまでの探査時間内に検出した信号を抜き出して出力するようにする。具体的には、図11に示す同期信号出力範囲において検出した信号が出力される。
【0122】
この結果、対策前信号記憶部25に記憶されている信号と対策後信号記憶部26に記憶されている信号とを時系列に同期させて出力することができる。既に説明したように、同期信号出力部27から出力される同期信号は、スピーカーなどの音波出力装置(図示はしない)を用いて音波として出力したり、またはセンサ接続端子37a〜37dとパーソナルコンピュータ22とを電気的に接続することによって、異音対策確認装置本体110を介してヘッドフォン21から出力したりするように構成しても良い。
【0123】
次に、作業者は、前記同期信号に基づき、対策前に検出した信号と対策後に検出した信号とを比較・検討し、対策の効果がどの程度あったかを確認して(ステップS580)処理を終了する。
【0124】
本実施の形態では、振動センサ10c(不具合箇所に取り付けられていた振動センサ)の対策前信号記憶部25に記憶されている信号および対策後信号記憶部26に記憶されている信号の中から、振動センサ10dから検出された振動レベルが最初に所定の振動レベルに達した(または超過した)ときを第1のトリガ、振動センサ10dから検出された振動レベルが次に所定の振動レベルに達した(または超過した)ときを第2のトリガとして、前記第1のトリガから前記第2のトリガまでの探査時間内に検出した信号を抜き出して出力するようにすると説明したが、これに限らず、第1実施形態で説明したように、対策後の振動を検出している際、前記第1のトリガを契機として、対策前信号記憶部25に記憶されている信号を同期させて出力するように構成しても良い。このようにすることで、対策後における振動を検出すると共に、対策前信号記憶部25に記憶されている信号を出力することができる。この結果、車両を走行させて対策後の振動を検出している際でも、対策前に検出した振動を聴取することができるので、対策効果を確認する時間を短縮することができる。
【0125】
[第2実施形態]
図12〜図14は、本発明の第2実施形態に係る異音対策確認装置およびその対策確認方法の説明に供する図である。図12は本実施の形態に係る異音対策確認装置の概略構成を示すブロック図を、図13は図12に示した異音対策確認装置の動作フローチャートを示し、このフローチャートは本実施の形態に係る異音対策確認装置の対策確認方法の手順に相当するものである。また、図14は図12に示した変位検出部28の変更形態を例示したものを示す図である。
【0126】
なお、第1実施形態と第2実施形態とでは、図9に対応する図12において変位検出部28が設けられている点だけが異なっている。その他の構成要素は、図9と全く同じであるので共通する構成要素の説明は省略する。また、図12および図14において、図9に示した構成要素と対応する構成要素には、同じ参照番号を付してある。また、以下の説明では、図8に示した車両の異常振動の発生部分を探索する場合の使用状態を例示したものを、図11に示した異音対策確認装置および異音対策確認方法異音対策確認方法における同期信号の出力に関する説明図を参照しながら説明する。
【0127】
図12に示すように本実施の形態に係る異音対策確認装置300は、振動センサ10a〜10d、異音対策確認装置本体110、パーソナルコンピュータ23、ヘッドフォン24を備えている。振動センサ10a〜10dは、検査対象物21a〜21dにそれぞれ取り付けられている。
【0128】
パーソナルコンピュータ22は、対策前信号記憶部25、対策後信号記憶部26、同期信号出力部27、および変位検出部28を備える。
【0129】
変位検出部28は、定められた進路を進行したときに、車両の上下方向の変位を検出するものであり、変位センサ(以下、「変位検出手段」と称する)として機能する。変位検出部28としては、例えば、加速度信号から変位を算出する積分計算プログラムなどに基づき、検査対象物の上下方向の変位を算出する変位算出手段が挙げられる。
【0130】
変位検出部28によって検出された変位は、検査対象物20a〜20cから検出した信号と対応付けられて、対策前信号記憶部25(または対策後信号記憶部26)に振動センサ10a〜10cごとに記憶される。
【0131】
なお、上述した第1実施形態では、振動センサ10dから出力された信号(通常は加速度信号を意味する)をそのまま用いて同期信号を出力させるためのトリガとして使用した例を説明したが、本実施の形態では、振動センサ10dから出力された信号に基づき、検査対象物21dの上下方向の変位を算出し、算出された変位を用いて同期信号を出力させるためのトリガとして使用する。
【0132】
なお、本実施の形態では、変位検出部28はパーソナルコンピュータ22に備えられていると説明したが、これに限らず、図14に示す異音対策確認装置400ように、振動センサ20dと異音対策確認装置本体110との間に取り付け取り外し自在に構成された積分回路装置(加速度信号から変位を算出することが可能な装置)を含む変位検出部28を接続しても良い。この場合、振動センサから出力された信号を直接検出して、検査対象物21dの上下方向の変位を算出する。
【0133】
また、変位検出部28と同じ機能を有するレーザー変位計(図示はしない)などの変位検出手段を用いて、車両が走行している進路における路面の形態を直接的に検出しても良い。これは、結果的に、定められた進路を進行したときにおける車両の上下方向の変位と実質的に同様の変位を検出していることになるからである。レーザー変位計を用いる場合には、レーザー変位計を車両のフロントバンパー、リアバンパー、またはボディサイドなどに装着して、前記路面の形態を検出することが望ましい。
【0134】
次に、図13を参照して、本発明の第2実施形態に係る異音対策確認装置の異音対策確認方法について詳細に説明する。
【0135】
図13は、本実施の形態に係る異音対策確認装置300の処理内容を示すフローチャートであり、図13において図10に示した処理内容と同一の処理内容は重複記載を避けるため省略する。
【0136】
図13に示すように、まず、振動センサ10a〜10dを検査対象物21a〜21dにそれぞれ取り付ける(S600)。
【0137】
次に、車両を定められた進路に沿って走行させ、電源スイッチ39をONにすると、振動センサ10a〜10dにより、検査対象物20a〜20dから発生する振動が検出され(ステップS605)、検出された振動は電気信号に変換されて異音対策確認装置本体110を介してパーソナルコンピュータ22に送信される。なお、本処理内容において、車両が前記定められた進路を走行する場合、探査時間内において、車両の上下方向の変位が極端に大きくなる少なくとも1つの凹凸がある路面を走行させることが望ましい。
【0138】
例えば、車両を前記定められた進路に沿って走行させる場合、図11に示すように、探査の開始直後に車両が上下方向に大きく変位する凹凸を有した箇所P1を通過させ、探査の終了直後にも車両が上下方向に大きく変位する凹凸を有した箇所P2を通過させるように車両を走行させる。詳細は後述するが、車両が前記凹凸を通過したときに振動センサ10dから出力された信号に基づき算出された検査対象物21dの上下方向の変位が、対策前信号記憶部25に記憶されている信号と対策後信号記憶部26に記憶されている信号とを時系列に同期させて出力するためのトリガとしての役割を果たすことになる。
【0139】
次に、パーソナルコンピュータ(変位検出部28)22は、異音対策確認装置本体110を介して受信した信号のうち、振動センサ10dによって検出した振動に伴って振動センサ10dから出力された信号に基づき、検査対象物21dの上下方向の変位を算出する(ステップS610)。本実施の形態では、変位算出部22dに入力される信号は、車両が定められた進路を進行しているときに、進行している路面の形態に応じて入力される振動に伴って振動センサ10dから出力される信号(検査対象物21dから検出される振動)を例にとって説明している。したがって、変位検出部28は、振動センサ10dから出力された信号に基づく変位を算出する。
【0140】
次に、パーソナルコンピュータ22は、異音対策確認装置本体110を介して送信された信号、すなわち、振動センサ10a〜10dが検出した振動に伴って振動センサ10a〜10dから出力された信号とステップS620の処理において算出された変位とを時系列に記憶する(ステップS615)。このとき、振動センサ10a〜10dから出力された信号とステップS620の処理において算出された変位とが対応付けられて対策前信号記憶部25に記憶される。
【0141】
次に、不具合の有無を特定、すなわち、不具合箇所を特定する(ステップS620)。不具合箇所を特定する方法は、既に説明したので本処理内容の説明は省略する
次に、不具合箇所に対して、異音要因に応じた対策を行う(ステップS625)。
【0142】
次に、再び車両を前記定められた進路に沿って走行させ、対策後の検査対象物21a〜21dの振動を検出する(ステップS630)。本処理内容では、ステップS600〜S605までの処理内容と実質的に同じ処理を実行することによって対策後の振動を検出する。
【0143】
次に、パーソナルコンピュータ(変位検出部28)22は、異音対策確認装置本体110を介して送信された信号のうち、振動センサ10dによって検出した振動に伴って振動センサ10dから出力された信号に基づき、検査対象物21dの上下方向の変位を算出する(ステップS635)。
【0144】
次に、パーソナルコンピュータ22は、異音対策確認装置本体110を介して送信された信号、すなわち、振動センサ10a〜10dが検出した振動に伴って振動センサ10a〜10dから出力された信号とステップS620の処理において算出された変位とを時系列に記憶する(ステップS640)。このとき、振動センサ10a〜10dから出力された信号とステップS620の処理において算出された変位とが対応付けられて対策前信号記憶部25に記憶される。
【0145】
次に、作業者は、入力装置24に対して、対策前信号記憶部25に記憶されている信号と対策後信号記憶部26に記憶されている信号とを出力させるための指示情報を入力する。そして、同期信号出力部27は、前記指示情報に基づき、対策前信号記憶部25に記憶されている信号と対策後信号記憶部26に記憶されている信号とを時系列に同期させて出力する(ステップ645)。
【0146】
ここで、対策前信号記憶部25に記憶されている信号と対策後信号記憶部26に記憶されている信号とを時系列に同期させて出力するための処理について詳細に説明しておく。
【0147】
振動センサ10dの対策前信号記憶部25に記憶されている信号および対策後信号記憶部26に記憶されている信号には、ステップS605の処理で説明したように、車両が路面の前記凹凸を有する箇所P1、P2(図11参照)を通過することによって検出された大きな振動レベルを有する信号に基づき算出された変位が2つ存在するはずである。この2つの大きな変位レベルを対策前信号記憶部25に記憶されている信号と対策後信号記憶部26に記憶されている信号とを時系列に同期させて出力するトリガとして機能させるようにする。
【0148】
具体的には、振動センサ10c(不具合箇所に取り付けられていた振動センサ)の対策前信号記憶部25に記憶されている信号および対策後信号記憶部26に記憶されている、変位検出部28から算出された変位の中から、振動センサ10dから検出された振動レベルが最初に所定の変位レベルに達した(または超過した)ときを第1のトリガ(凹凸を有する箇所P1を通過したときに検出された信号を第1のトリガとする)、振動センサ10dから検出された変位レベルが次に所定の振動レベルに達した(または超過した)ときを第2のトリガ(凹凸を有する箇所P2を通過したときに検出された信号を第2のトリガとする)として、前記第1のトリガから前記第2のトリガまでの時間内に検出した信号を抜き出して出力するようにする。具体的には、図11に示す同期信号出力範囲において検出した信号が出力される。
【0149】
この結果、対策前信号記憶部25に記憶されている信号と対策後信号記憶部26に記憶されている信号とを時系列に同期させて出力することができる。既に説明したように、同期信号出力部27から出力される同期信号は、スピーカーなどの音波出力装置(図示はしない)を用いて音波として出力したり、またはセンサ接続端子37a〜37dとパーソナルコンピュータ22とを電気的に接続することによって、パーソナルコンピュータ22から出力される同期信号を、異音対策確認装置本体110を介してヘッドフォン21から出力したりするように構成しても良い。
【0150】
次に、作業者は、同期信号出力部27から出力された信号に基づき、対策前に検出した信号と対策後に検出した信号とを比較(ステップS650)し、対策の効果がどの程度あったかを確認して処理を終了する。
【0151】
本実施の形態では、振動センサ10c(不具合箇所に取り付けられていた振動センサ)の対策前信号記憶部25に記憶されている信号および対策後信号記憶部26に記憶されている信号の中から、振動センサ10dから検出された振動レベルが最初に所定の振動レベルに達した(または超過した)ときを第1のトリガ、振動センサ10dから検出された振動レベルが次に所定の振動レベルに達した(または超過した)ときを第2のトリガとして、前記第1のトリガから前記第2のトリガまでの探査時間内に検出した信号を抜き出して出力するようにすると説明したが、これに限らず、第1実施形態で説明したように、対策後の振動を検出している際、前記第1のトリガを契機として、対策前信号記憶部25に記憶されている信号を同期させて出力するように構成しても良い。このようにすることで、対策後における振動を検出すると共に、対策前信号記憶部25に記憶されている信号を出力することができる。この結果、車両を走行させて対策後の振動を検出している際でも、対策前に検出した振動を聴取することができるので、対策効果を確認する時間を短縮することができる。
【0152】
なお、以上の処理内容では、変位検出部28がパーソナルコンピュータ22に備えられている例をとって説明したが、これに限らず、図14に示すように、積分回路装置を含む変位検出部28、または変位検出部28と同じ機能を有するレーザー変位計(図示はしない)などの変位検出手段を用いて、車両が走行している進路における路面の形態を直接的に検出し、レーザー変位計によって検出された所定の変位レベルを、同期信号を出力するためのトリガとしても良い。
【0153】
第1実施形態および第2実施形態では、実際に車両を走行させて異音対策の確認を行う実施形態について説明したが、これに限らず、シャシーダイナモなどの測定装置を用い、仮想の走行条件下で車両を動作させて当該車両の振動を取得し、特定の走行条件下における、異音要因の対策前に検出した振動センサの信号と異音要因を取り除いた対策後に検出した振動センサの信号とを比較することができる。
【0154】
また、第1実施形態および第2実施形態では、対策前振動記憶部25に記憶されている信号と対策後振動記憶部26とに記憶されている信号とを出力するトリガとして、車両の上下方向の変位を例にとって説明したが、これに限らず、ある一定の車速または一定のエンジン回転数に到達したことを、同期信号を出力するためのトリガとしても良い。
【0155】
以上のように、第1実施形態または第2実施形態に係る異音対策確認装置およびその異音対策確認方法では、複数の振動センサから所望の複数の振動センサの信号を選択しながら、選択した信号を別々の出力手段から出力させることができることに加えて、異音要因の対策前に検出した振動センサの信号と異音要因を取り除いた対策後に検出した振動センサの信号とを比較することができる。この結果、不具合箇所の特定がより容易になると共に、異音要因の対策を講じた後、その対策の効果が容易に確認することができるので、探査時間を著しく短縮して探査効率を向上させると共に、不具合箇所の対策の作業効率を大幅に向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明は、検査対象物から発生する異常振動を探査する技術分野において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】本発明に係る異音対策確認装置の概略的な構成の説明に供する図であり、車両の異常振動の発生部分を探索する場合の使用状態を例示した図である。
【図2】本発明に係る異音対策確認装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る異音対策確認装置の異音探査機能の動作フローチャートである。
【図4】本発明に係る異音対策確認装置によって検出された振動波形の一例を示すグラフおよびその振動波形から取得した振動センサごとの振動レベルのピーク(最大値および最小値)を示す図である。
【図5】本発明に係る異音対策確認装置の構成要素の一つであるパーソナルコンピュータの概略構成を示すブロック図である。
【図6】本発明に係る異音対策確認装置の異音探査の動作フローチャートである。
【図7】本発明に係る異音対策確認装置によって検出された振動波形の一例を示すグラフおよび当該振動波形に基づく各種物理量を示す図である。
【図8】第1実施形態に係る異音対策確認装置の概略的な構成の説明に供する図であり、車両の異常振動の発生部分を探索する場合の使用状態を例示した図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る異音対策確認装置の概略構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第1実施形態に係る異音対策確認装置の動作フローチャートである。
【図11】本発明に係る異音対策確認装置および異音対策確認方法異音対策確認方法における同期信号の出力に関する説明図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る異音対策確認装置の概略構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る異音対策確認装置の動作フローチャートである。
【図14】本発明の第2実施形態に係る異音対策確認装置の一変形形態の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0158】
振動センサ 10a,10b,10c,10d、
検査対象物 20a,20b,20c,20d,21a,21b,20c,20d、
信号抽出部 11、
センサ選択部 12、
出力部 13、
ピークホールド部 14、
ピーク表示部 15、
ヘッドフォン21、
パーソナルコンピュータ22、
対策前信号記憶部 25、
対策後信号記憶部 26、
同期信号出力部 27
異音探査装置本体 110。
【技術分野】
【0001】
本発明は、異音対策確認装置および異音対策確認方法に係り、詳しくは、車両から異音要因を取り除く前後の振動を比較することで、異音対策が有効に行われたか否かを確認する異音対策確認装置および異音対策確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の構成部品などの検査対象物から異常振動が発生している場合、通常、異常振動を発していると思われる部分に耳を近づけて聴取し、その振動音が最も大きく聞こえる箇所が異常振動源、すなわち、不具合(以下、必要に応じて「異音要因」と称する)が発生している箇所(以下、「不具合箇所」と称する)であると推定している。
【0003】
異常振動を検出する従来技術としては、複数の振動センサを用いて、検査対象物から発生する振動を検出し、その検出した振動を2チャンネルの増幅回路を介して検出した信号をステレオタイプのヘッドフォンから聴取し、検査対象物に不具合箇所かあるか否かを検出している。(例えば、下記特許文献1の記載を参照)。
【特許文献1】特開平05−312635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、不具合箇所と推定した箇所に対策(異音要因を取り除くための修理など)を講じた後、その対策が、対策前と対策後とではどの程度の効果があったのかを、再度、作業者の経験に頼って対策後の振動音を聴取する必要が生じる。このため、異音要因の対策に時間がかかるばかりでなく、熟練を要するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、不具合箇所に対策を講じた後、その対策の効果がどの程度であるかを容易に確認することができる異音対策確認装置および異音対策確認方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る異音対策確認装置は、異音要因を取り除く前と異音要因を取り除いた後との車両の振動を比較することで異音対策が有効に成されたか否かを確認する異音対策確認装置であって、前記車両の振動を検出する振動センサと、前記振動センサによって検出された振動から特定の周波数帯域の信号を抽出する信号抽出手段と、前記信号抽出手段によって抽出された信号を記憶する信号記憶手段と、特定の走行条件下において異音要因を取り除く前に前記信号記憶手段によって記憶された対策前信号と前記特定の走行条件下おいて異音要因を取り除いた後に前記抽出手段によって抽出された対策後信号とを同期させて個別に出力する出力手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、上記目的を達成するための本発明に係る異音対策確認方法は、車両の異音要因を持っていると判断される箇所に振動センサを取り付ける段階と、特定の走行条件で車両を走行させる段階と、前記車両を走行させたときの前記車両の振動を検出する段階と、前記車両を走行させたときに検出された振動から特定の周波数帯域の信号を抽出する段階と、抽出した振動を記憶する段階と、前記車両から前記異音要因を取り除く段階と、前記車両から異音要因を取り除いた後に前記特定の走行条件で再度走行させる段階と、前記車両を再度走行させたときの前記車両の振動を検出する段階と、前記車両を再度走行させたときに検出された振動から特定の周波数帯域の信号を抽出する段階と、抽出した振動を記憶する段階と、前記車両の異音要因を取り除く前の振動と前記車両の異音要因を取り除いた後の振動とを同期させて個別に出力する段階と、を含むことを特徴とする。
【0008】
さらに、上記目的を達成するための本発明に係る異音対策確認方法は、車両の異音要因を持っていると判断される箇所に振動センサを取り付ける段階と、特定の走行条件で車両を走行させる段階と、前記車両を走行させたときの前記車両の上下方向の変位を検出する段階と、前記車両を走行させたときの前記車両の振動を検出する段階と、前記車両を走行させたときに検出された前記車両の上下方向の変位を記憶すると共に、検出された振動を記憶する段階と、前記車両から前記異音要因を取り除く段階と、前記車両から異音要因を取り除いた後に前記特定の走行条件で再度走行させる段階と、前記車両を再度走行させたときの前記車両の上下方向の変位を検出する段階と、前記車両を再度走行させたときの前記車両の振動を検出する段階と、前記車両を再度走行させたときに検出された前記車両の振動を記憶する段階と、前記車両を再度走行させたときに検出された前記車両の上下方向の変位を記憶すると共に、検出された振動を記憶する段階と、前記車両の異音要因を取り除く前の振動と前記車両の異音要因を取り除いた後の振動とを同期させて個別に出力する段階と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上のように構成された本発明に係る異音対策確認装置および異音対策確認方法によれば、異音要因の対策前に検出した振動センサの信号と異音要因を取り除いた対策後に検出した振動センサの信号とを同期して出力させることができるので、それぞれの信号を比較することができるようになる。この結果、異音要因の対策を講じた後の、その対策の効果の度合いを容易に確認することができるようになり、探査時間を著しく短縮して探査効率を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明に係る本発明に係る異音確認対策確認装置および異音対策確認方法について、第1実施形態および第2実施形態に分けて、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
これらの実施形態を説明する前に、本発明に係る異音対策確認装置および異音確認探査方法の理解を容易なものとするため、本発明に係る異音対策確認装置が有する機能を用いて行う異音探査の概要を説明しておく。
【0012】
図1は、本発明に係る異音対策確認装置が有する機能(異音探査機能)の概略的な構成の説明に供する図であり、車両の異常振動の発生部分を探索する場合の使用状態を例示したものである。なお、
図1に示すように、異音対策確認装置100は、異音対策確認装置本体110、振動センサ10a〜10d、パーソナルコンピュータ22、およびヘッドフォン21から構成される。
【0013】
異音対策確認装置本体110は、振動センサ10a〜10dを接続するためのセンサ接続端子37a〜37d、振動センサ10a〜10dの入力感度を個別に調整するためのゲイン調整用ボリューム35a〜35d、振動センサ10a〜10dの入力感度を全体的に調整するためのゲイン調整用ボリューム35eを備えている。振動センサ10a〜10dの個別の感度のばらつきはゲイン調整用ボリューム35a〜35dによって調整し、各振動センサが一定の振動を検出したときには一定の大きさの信号が出力されるようにする。個別の感度ばらつきの調整は異音対策確認装置本体110の使用前に予め行なっておくことが好ましい。振動センサ10a〜10dのすべての感度はゲイン調整用ボリューム35eで一括して調整する。なお、振動センサ10aとゲイン調整用ボリューム35aでチャンネル1(CH1)を、振動センサ10bとゲイン調整用ボリューム35bでチャンネル2(CH2)を振動センサ10cとゲイン調整用ボリューム35cでチャンネル3(CH3)を、振動センサ10dとゲイン調整用ボリューム35dでチャンネル4(CH4)をそれぞれ形成する。
【0014】
また、異音対策確認装置本体110は、振動レベルメーター34とピークホールドスイッチ40とがさらに備えられた構成になっている。ピークホールドスイッチ40は、ピークホールド機能のON、OFFを行うためのスイッチである。
【0015】
さらに、異音対策確認装置本体110は、パーソナルコンピュータ22を接続するためのUSB端子36aを備えており、振動センサ10a〜10dが検出した検査対象物の振動はUSB端子36aを介してパーソナルコンピュータ22に入力され、記憶される。
【0016】
さらに、異音対策確認装置本体110は、ヘッドフォン21を接続するためのヘッドフォン用出力端子36bを備えており、ヘッドフォン21で振動センサ10a〜10dが検出した検査対象物の振動音を聞くことができる。異音対策確認装置本体110は、ヘッドフォン21の左右で別々のチャンネルが選択できるように、左耳用のチャンネル選択用スイッチ31a(L−CH)、右耳用のチャンネル選択用スイッチ31b(R−CH)を備えており、ヘッドフォン21の左右の音量を同時に調整できるようにするために音量調整用ボリューム38を備えている。電源スイッチ39は異音対策確認装置本体110の電源のON,OFFを行なうためのスイッチである。
【0017】
車両の異常振動の発生部分を探索する場合には、異音対策確認装置100を次の手順で使用する。ここでは、ハンドル付近から異常振動音(例えば、びびり音など)が聞こえると言うクレームを受けた場合を例示して説明する。
【0018】
ハンドル付近から異常振動音が発生しているということは、通常、ハンドル近傍に設置されているトリム部品(検査対象物)が音源となっている場合が多いと推定される。そこで、音源になっていると推定される不具合箇所に対して振動センサ10a〜10dを取り付ける。具体的には、フロントピラー20aに振動センサ10aを、ハンドル20bに振動センサ10bを、グローブボックス20cに振動センサ10cを、フロントシート20dに振動センサ10dを取り付ける。なお、各振動センサ10a〜10dの取り付けは磁石や両面テープなどの固定手段を用いて行なう。
【0019】
そして、電源スイッチ39、ピークホールドスイッチ40を押して異常振動の探索を開始する。電源スイッチ39およびピークホールドスイッチ40がONされると、振動センサ10a〜10dの検出した振動がその振動の大きさに応じた信号として異音対策確認装置本体110に入力されると共に、入力された振動の中から時系列に発生する振動レベルのピークが振動センサごとに備えられる振動レベルメーター34に保持される。
【0020】
入力された信号はUSB端子36aを介してパーソナルコンピュータ22に出力され、同時に、ヘッドフォン用出力端子36bを介してヘッドフォン21に出力される。異音対策確認装置本体110から出力された信号は、パーソナルコンピュータ22によって記憶され、その記憶した信号は加工されてディスプレイ23に表示される。また、異音対策確認装置本体110から出力された信号はヘッドフォン21を介して左右のスピーカーから音波として出力される。なお、ヘッドフォン21から出力される音量は音量調整用ボリューム38を操作して調整する。
【0021】
車両の異常振動の発生部分、すなわち、不具合箇所は右耳用ヘッドフォン(R−CH)21aと左耳用ヘッドフォン(L−CH)21bから出力された音波を人間が聴取することによって判断する。例えば、チャンネル(R−CH)選択用スイッチ31aをチャンネル1(CH1)に合わせ、チャンネル(L−CH)選択用スイッチ31bをチャンネル2(CH2)に合わせた場合には、右耳用ヘッドフォン21aからはフロントピラー20aから発生している振動音が、左耳用ヘッドフォン21bからはハンドル20bから発生している振動音がそれぞれ同時に聴取することができる。
【0022】
また、不具合箇所は上記のように右耳用ヘッドフォン(R−CH)21aと左耳用ヘッドフォン(L−CH)21bから出力された音波を人間が聴取すると共に、振動レベルメーター34によって時系列に発生する振動レベルのピークの表示を視認することで探索することができる。図1を参照すれば、振動レベルメーター34はチャンネル3(CH3)が一番高いレベルを示していることが分かる。この結果、この表示だけを見ても、チャンネル3に対応する振動センサ10cが不具合箇所、すなわち、グローブボックス20cが不具合箇所であると特定することができる。さらに、パーソナルコンピュータ22を用いた場合には、振動センサ10a〜10dの検出した信号を記憶したり、記憶した信号を加工して、加工した信号を表示したりすることができる。例えば、図4に示すように、振動波形や振動レベルのピークをディスプレイ23に表示することができる。
【0023】
振動センサごとに抽出した信号から異なる任意の二つの信号を選択して同時に人間が聴取・比較しながら、聴覚的に不具合箇所を特定することができることに加えて、振動レベルメーター34によって表示された振動レベルのピークを人間が視認しながら視覚的にも不具合箇所を特定することができる。
【0024】
図2〜図5は、本発明に係る異音対策確認装置を用いた異音探査の説明に供する図である。図2は本発明に係る異音対策確認装置の概略構成を示すブロック図を、図3は図2に示した異音対策確認装置の動作フローチャートを示している。なお、図3のフローチャートは本発明に係る異音対策確認装置の異音探査方法の手順に相当するものである。また、図4は本実施の形態に係る異音対策確認装置によって検出された振動波形の一例を示すグラフおよびその振動波形から取得した振動センサごとの振動レベルのピーク(最大値および最小値)を示す図である。
【0025】
図2に示すように本発明に係る異音対策確認装置100は、振動センサ10a〜10d、信号抽出部11、センサ選択部12、ピークホールド部14、ピーク表示部15、および出力部13を備えている。振動センサ10a〜10dは、図1に示したように検査対象物20a〜20dにそれぞれ取り付けられている。なお、以下の説明では、本発明に直接係る主要な構成要素について説明する。したがって、図1に示した電源スイッチ39、音量調整用ボリューム38に係る詳細な説明は省略する。
【0026】
振動センサ10a〜10dは、検査時に、検査対象物20a〜20dの所望の個所に一時的に取り付け取り外し自在な構成になっており、検査対象物20〜20dにそれぞれ取り付けられる。振動センサ10a〜10dは、検査対象物20a〜20dからそれぞれ発生する振動を検出し、検出した振動をその信号の大きさに比例した電気信号に変換して信号抽出部11に送信する。振動センサとしては、例えば、水晶式センサ(水晶式圧電効果型加速度計)、力平衡式センサ(サーボ加速度計)などの機械電気変換素子を使用することができる。なお、本実施の形態では、4つの振動センサを例にとって説明しているが、振動センサの数は4つのみに制限されることはなく、2つ以上の複数の振動センサを用いることができる。
【0027】
信号抽出部11は、振動センサ10a〜10dからの信号を受信し、受信した信号の中から振動センサごとに特定の周波数帯域の信号を抽出するものであり、信号抽出手段として機能する。
【0028】
信号抽出部11は、振動センサ10a〜10dからの信号を増幅するための増幅器と増幅器から出力される信号の中から特定の周波数の信号のみを通過させるバンドパスフィルタとを含む。増幅器は、増幅率を調整する一般的な増幅率調整回路(図示はしていない)を含み、例えば、図1に示したゲイン調整用ボリューム35e、ゲイン調整用ボリューム35a〜35dに係る回路が該当する。バンドパスフィルタは、抽出したい信号の周波数帯域に応じてそのフィルタの構成を変更することができ、例えば、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、または、これらの組み合わせたものから構成することができる。
【0029】
センサ選択部12は、信号抽出部11からの信号を受信し、受信した信号の中から複数の信号を選択するセンサ選択手段として機能するもの、すなわち、任意の二つの振動センサ(例えば、振動センサ10aと振動センサ10b)からの信号を選択する機能を有するものである。
【0030】
センサ選択部12は、信号が伝達される通信路11a〜11dを切り換えるために人が操作する切換スイッチを含み、切換スイッチは信号抽出部11によって抽出された信号の通信路11a〜11dと出力部13との電気的接続を選択的に切り換えるもので、例えば、ロータリースイッチなどが挙げられる。
【0031】
切り換えスイッチは、2個の独立したスイッチから構成され、それぞれのスイッチは各センサからの信号を個別に切り換えることができるようになっている。切り換えスイッチには、人間が操作することができるようにつまみ(外部からの操作力が直接加えられることによって可動する可動部位)が取り付けられており、例えば、図1に示した左耳用のチャンネル選択用スイッチ31a(L−CH)をチャンネル1(CH1)に、右耳用のチャンネル選択用スイッチ31b(R−CH)をチャンネル2(CH2)に切り換えることができる。
【0032】
出力部13は、センサ選択部12によって選択した複数の信号を個別に出力する出力手段として機能するもの、すなわち、センサ選択部12によって選択された二つの信号を受信し、受信した信号を個別に出力する機能を有するものである。また、信号抽出部11からの信号を受信し、受信した信号を記憶したり、受信した信号を加工して表示したりする機能を持たせても良い。
【0033】
出力部13は、音波出力装置、または、中央演算処理装置および演算に必要なデータを記憶する記憶装置を備えた処理装置であり、例えば、図1に示したヘッドフォン21やパーソナルコンピュータ22が該当する。なお、中央演算処理装置は各種演算処理などを実行するものであり、記憶装置は信号抽出部11から受信した信号を一時的に記憶するために用いられる領域、あるいは、周波数解析を実施するための解析プログラムを記憶するための領域などが設定されているものである。ヘッドフォン21、パーソナルコンピュータ22は、図1に示したようにヘッドフォン用出力端子36b、USB端子36a介して接続される。
【0034】
ピークホールド部14は、信号抽出部11からの信号を受信し、受信した信号に基づいて、時系列に発生する振動レベルのピークを取得するものであり、ピークホールド手段として機能する。ピークホールド部13は、一般的なピークホールド回路から構成され、ピークホールド部14は、ピークホールドの機能を作動させてから停止させるまでの時間内に記憶した振動レベルのピーク(振動レベルの最大値または最小値)を取得するものである。ピークホールド部14は、ピークホールドの機能を作動させてから停止させるまでの時間内の振動レベルのピークを記憶する記憶領域を備えることができる。
【0035】
ピーク表示部15は、ピークホールド部13からの信号を受信し、振動センサ10〜10dごとに振動レベルのピークを表示するものであり、ピーク表示手段として機能する。
【0036】
ピーク表示部15は、振動レベルのピークを外部から視認できるように表示するための発光素子を含む。例えば、図1に示した振動レベルメーター34が該当する。
【0037】
検査対象物20a〜20dは、不具合検査の対象となるものである。検査対象物として本実施の形態では車両の構成部品を対象としているが、これに限らず、種々の分野における機械装置、電気機器などを対象とすることもできる。なお、本実施の形態では、4つの検査対象物を例にとって説明しているが、これに限らず、少なくとも一つの検査対象物であれば本発明の適用は可能である。
【0038】
次に、本発明に係る異音対策確認装置を用いた異音探査の方法について詳細に説明する。
【0039】
図3は、本実施の形態に係る異音対策確認装置100を用いた異音探査の処理内容を示すフローチャートである。
【0040】
図3に示すように、振動センサ10a〜10dを検査対象物20a〜20dにそれぞれ取り付ける(S300)。振動センサ10a〜10dは、検査対象物20a〜20dの特徴に応じて磁力や粘着力を利用して取り付けられる。このようすることで、検査対象物の特徴に応じて所望の箇所に一時的に取り付け取り外し自在な構成とすることができる。
【0041】
ステップS300の処理の後に、振動センサの感度を調節するために増幅率の設定を行っても良い。増幅率の設定は、あらかじめ実施した試験的計測により、ある程度の増幅率を予想しておき、この予想した増幅率を基準として所望の増幅率に設定しておく。図1で既に述べたように、振動センサ10a〜10dのすべての感度はゲイン調整用ボリューム35eで一括して調整したり、振動センサ10a〜10dの個別の感度はゲイン調整用ボリューム35a〜35dで調整したりする。
【0042】
次に、ピークホールドの設定を入力、すなわち、ピークホールドスイッチ40をONに(S310)。
【0043】
次に、電源スイッチ39をONにすると、振動センサ10a〜10dにより、検査対象物20a〜20dから発生する振動が検出される(S320)。検出された振動は、信号抽出部11に送信される。
【0044】
次に、信号抽出部11は、振動センサ10a〜10dからの信号を受信し、受信した信号の中から特定の周波数帯域の信号を振動センサ10a〜10dごとに抽出する(S330)。抽出した信号は、センサ選択部12に送信される。特定の周波数帯域の信号を抽出する理由は、例えば、検査対象物から微小な時間変化を伴う高周波数帯域の異常振動が発生した場合に、暗騒音(検査対象とする箇所に着目しているときにその検査対象から発生する振動音以外の音)の影響または異常振動が正常な振動に埋もれてしまい、異常振動か否かの判断ができなくなること極力防ぐためである。
【0045】
次に、パーソナルコンピュータ22(出力部13)は、信号抽出部11からの信号を受信し、振動センサ10a〜10dごとの信号を記憶する(S340)。
【0046】
パーソナルコンピュータ22に信号を記憶させる理由は、例えば、車両の走行中に異常振動が発生するような場合、実際に車両を走行させ、異常振動を再現しながら不具合箇所を探査することになる。しかしながら、走行中は暗騒音の影響が大きく、車両の構成部品によっては不具合箇所の特定が難しく何度も車両を走行させて異常振動を再現する必要があり、煩わしさに耐えない。そこで、パーソナルコンピュータ22に信号抽出部11から送信される振動センサごとの信号を記憶させておくと、後に、その記憶した信号を加工して音波として出力したり、振動を解析したりすることができるので何度も車両を走行させる必要がなくなり、便利だからである。
【0047】
また、振動の解析は、パーソナルコンピュータ22が記憶した信号を一般的な周波数解析の処理方法により、振動センサ10a〜10dごとの振動波形を表示したり、振動レベルのピークを抽出して表示したりすることによって行なう(図4参照)。なお、パーソナルコンピュータ22は、必要に応じて適宜用いることができる。
【0048】
次に、ピークホールド部14は、抽出された信号を受信し、時系列に発生する振動レベルのピークを取得する(S350)。なお、ステップS350の処理では、検査開始時からから検査終了時までの振動レベルのピークを取得することになるが、検査の途中であっても、作業者がピークホールド設定ボタン32(図1参照)を押すことによりピークホールドの機能を作動または停止させて所望の検査開始時からの振動レベルのピークを取得することができる。また、ピークホールド部14は、振動レベルのピークを記憶して、ピークホールドの機能を停止させた後、所望の探査時間で取得した振動レベルのピークを表示させることもできる。
【0049】
次に、ピーク表示部15は、ピークホールド部14からの信号を受信し、振動センサ10a〜10dごとの振動レベルのピークを表示する(S360)。振動レベルのピークの表示は、例えば、図1に示すように、振動センサ10a〜10dごとに振動レベルピークメーター34によって表示される。
【0050】
一方、センサ選択部13によって、信号抽出部11からの信号を受信し、受信した信号の中から異なる任意の二つの振動センサからの信号を選択することができる。具体的には、異なる任意の二つの振動センサからの信号の選択は、探査を行っている作業者(以下、「作業者」と称する)が左耳用のチャンネル選択用スイッチ31a、または、右耳用のチャンネル選択用スイッチ31bを操作し、所望の振動センサの信号を選択する。
【0051】
本発明に係る異音対策確認装置本体110には、図1で示したように、左耳用のチャンネル選択用スイッチ31a、右耳用のチャンネル選択用スイッチ31bが備えられているので、この二つのスイッチを操作することにより、異なる任意の二つの振動センサからの信号を選択することができる。なお、上記のように、二つのチャンネル選択用スイッチ31a、31bに限らず、出力部13に対応した複数のチャンネル選択用スイッチを備えるように構成することもできる。
【0052】
次に、選択された信号に基づき不具合の有無を特定、すなわち、不具合箇所を特定する(S370)。不具合箇所を特定する方法は、具体的には、ステップS240の処理で述べたように、右耳側ヘッドフォン21aと右耳用ヘッドフォン21bとで異なる振動センサの信号を選択することができるので、異なる任意の二つの信号から個別に音波を出力させて、作業者は検査対象物20a〜20dから発生する振動の音質や音量をそれぞれ比較しながら聴取すると共に、振動レベルメーター34によって表示される振動レベルのピークの表示を視認しながら、不具合箇所を特定する。
【0053】
具体的には、図1に示すように、振動レベルメーター34のチャンネル3(CH3)に対応する振動センサ10cからの振動レベルのピークが一番大きいことが分かるので、振動センサ10cに取り付けられた検査対象物20cが不具合箇所であると特定される。このように、不具合箇所を特定し、処理を終了する。この場合、ヘッドフォン21にチャンネル3(CH3)からの音波が聴取できるようにチャンネル選択用スイッチ31aまたは31bを設定すれば、チャンネル3からの音波の音量が他のチャンネルからの音波の音量と比較して最も大きな音となって聞こえるはずである。
【0054】
さらに、パーソナルコンピュータ22を用いて、ヘッドフォン21で聴取すると共に、パーソナルコンピュータ22によって記憶した信号の振動波形または表示された振動レベルのピークを視認して不具合箇所を特定することもできる。例えば図4に示したように、振動レベルのピークが一番大きい箇所はチャンネル3(CH3)の振動センサであるので、この結果から、振動センサ10cに取り付けられた検査対象物20cが不具合箇所であることが分かる。このように、不具合箇所を特定し、処理を終了する。
【0055】
以上のように構成される本発明に係る異音対策確認装置が有する異音探査機能およびその機能を用いた異音探査方法では、複数の振動センサからの異なる任意の二つの振動センサの信号を選択し、選択した信号を同時に出力すると共に、振動センサごとの振動レベルのピークを表示するようにしている。この結果、聴取による不具合箇所の特定が不調の場合でも、振動レベルのピークの表示を視認することにより、不具合箇所を特定することができる。したがって、不具合箇所の特定が容易になり、探査時間を著しく短縮して探査効率を大幅に向上させることができる。
【0056】
また、パーソナルコンピュータ22を用いた場合には、信号抽出部11から送信される振動センサごとの信号を記憶させると共に、記憶した信号を加工して表示することができるようにしている。この結果、不具合箇所の特定がさらに容易になり、探査時間を著しく短縮して探査効率を大幅に向上させることができる。
【0057】
なお、本発明に係る異音対策確認装置およびその異音探査方法では、二つの振動センサからの信号を選択した場合を例示して説明してきたが、3つ以上の振動センサからの信号を選択し、これらのセンサからの音を個別に同時に聴取することができるように構成しても良い。
【0058】
次に、本発明に係る異音対策確認装置を用いた異音探査の別態様について説明する。
【0059】
図5〜図7は、本発明に係る異音対策確認装置を用いた異音探査の別態様の説明に供する図である。図5は図1に示した異音対策確認装置の構成要素の一つであるパーソナルコンピュータの概略構成を示すブロック図を、図6は図1に示した異音対策確認装置の動作フローチャートを示し、このフローチャートは本実施の形態に係る異音対策確認装置の探査方法の手順に相当するものである。また、図7は本実施の形態に係る異音対策確認装置によって検出された振動波形の一例を示すグラフおよび当該振動波形に基づき算出される物理量を示す図である。
【0060】
本発明に係る異音対策確認装置を用いた異音探査の別態様では、主としてパーソナルコンピュータ22を用い不具合箇所を特定するようにしている。具体的には、信号抽出部11から送信される振動センサごとの信号を記憶させると共に、記憶した信号を加工して表示し、加工された信号に基づき、不具合箇所を特定するようにしている。主としてパーソナルコンピュータを用いて不具合箇所を特定するようにしている点以外は、異音対策確認装置の構成要素は図1および図2に示すものと全く同じであるので共通する構成要素の説明は省略する。なお、異音対策確認装置の構成要素については、図1および図2に示すものと同じであるので、同一の構成要素については図1および図2に示す参照番号と同一の参照符号を用いて説明する。
【0061】
図5は、本発明に係る異音対策確認装置を用いた異音探査の別態様におけるパーソナルコンピュータ22の概略構成を示すブロック図である。
【0062】
パーソナルコンピュータ22は、CPU22a、RAM22b、ROM22c、ハードディスク22d、ディスプレイ23、および入力装置24を備えており、これらは信号をやり取りするためのバス22eを介して相互に接続されている。
【0063】
パーソナルコンピュータ22は、振動の解析に必要な周波数解析を実施するための解析プログラムに基づいて解析を実行したり、解析結果から得られた情報を加工して表示したりするものである。解析結果から得られる情報は、例えば振動センサごとの振動波形、振動波形から得られる立ち上がりの順番(振動センサ10a〜10dのうち、どの振動センサの振動波形の立ち上がりが時間的に早いのかを示唆する情報)、振動レベルのピーク、RMS(Root Means Square:実効値)値、P−P(Peak to Peak:最大振幅)値などの物理量などであり、周波数解析結果から得られる各種の情報が該当する。
【0064】
CPU22aは、一般的な周波数解析プログラムに基づいて、解析に必要な各種演算処理を実行するものである。
【0065】
RAM22bは、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶するものである。
【0066】
ROMは22c、パーソナルコンピュータ22の基本動作を制御する各種プログラムやパラメータなどの情報をあらかじめ格納しているものである。
【0067】
ハードディスク22dは、OS(オペレーティングシステム)やパーソナルコンピュータ22の所定の動作を制御するためのプログラムやパラメータを格納するものである。ハードディスクには、上記各種の物理量の算出に、解析結果から得られた情報の加工または表示に、その他、周波数解析に必要なプログラムがあらかじめ記憶されている。なお、振動センサごとの振動波形、振動レベルのピーク、RMS値、P−P値などの物理量の算出方法およびそのプログラムは、既に公知であるので詳細な説明は省略する。さらに、ハードディスクは、信号抽出部11から受信した信号を記憶したり、解析結果を記憶したりする記憶領域としても機能する。
【0068】
ディスプレイ23は、例えばCRTディスプレイや液晶ディスプレイなどであり、解析結果によって得られた各種の情報を表示するものである。
【0069】
入力装置24は、マウス、キーボード、またはタッチパネルなどのポインティングデバイスであり、作業者からの入力を受け付けるものである。
【0070】
以上のように構成されたパーソナルコンピュータ22を用いて、本実施の形態に係る異音対策確認装置および異音対策確認装置を用いた異音探査方法が実行される。
【0071】
図6は、本発明に係る異音対策確認装置100(図1参照)を用いた別態様の異音探査の処理内容を示すフローチャートであり、図6の説明において図2に示した処理内容と同一の処理内容の説明は重複記載を避けるため省略する。
【0072】
図6に示すように、まず、振動センサ10a〜10dを検査対象物20a〜20dにそれぞれ取り付ける(S400)。なお、振動センサを取り付ける箇所は、異常振動が発生していると推定される箇所に取り付けられるが、このとき、振動センサを取り付ける前に、ホログラフィ法やビームフォーミング法などを用いて音場の可視化を可能とする音源可視化装置を用い、異常振動が発生していると考えられる領域を推定してから振動センサを取り付けても良い。
【0073】
次に、電源スイッチ39をONにすると、振動センサ10a〜10dにより、検査対象物20a〜20dから発生する振動が検出される(ステップS410)。検出された振動は、信号抽出部11に送信される。
【0074】
次に、信号抽出部11は、振動センサ10a〜10dからの信号を受信し、受信した信号の中から特定の周波数帯域の信号を振動センサ10a〜10dごとに抽出する(ステップS420)。抽出した信号は、パーソナルコンピュータ22に送信される。
【0075】
次に、パーソナルコンピュータ22(出力部13)は、信号抽出部11からの信号を受信し、振動センサ10a〜10dごとの信号を記憶する(ステップS430)。
【0076】
次に、パーソナルコンピュータ22は、記憶した信号に基づき周波数解析を実行して、解析結果から得られた情報をディスプレイ23に表示する(ステップS440〜S460)。具体的には、図7に示すように、振動センサ10a〜10dごとの振動波形(ステップS440)、振動センサ10a〜10dごとの振動レベルのピークを表示(ステップS450)、振動センサ10a〜10dごとに振動波形の立ち上がりの順番を表示する(ステップS460)。
【0077】
次に、ディスプレイ23に表示された情報に基づき不具合の有無を特定、すなわち、不具合箇所を特定する(ステップS470)。不具合箇所を特定する方法は、具体的には、ディスプレイ24に表示された各種物理量、本実施の形態では、振動レベルのピーク、振動波形の立ち上がりの順番を作業者が振動センサ10a〜10dごとに確認し、それぞれの物理量から総合的に判断して不具合箇所を特定する。例えば図7に示したように、振動レベルのピークを参照すると、振動レベルのピークが一番大きい箇所はチャンネル3(CH3)の振動センサであるので、この結果からは、振動センサ10cに取り付けられた検査対象物20cが不具合箇所であると特定される。一方、振動波形の立ち上がりの順番を参照すると、振動波形の立ち上がりが一番早い箇所はチャンネル4(CH4)の振動センサであるので、この結果からは振動センサ10dに取り付けられた検査対象物20dが不具合箇所であると特定される。
【0078】
一般的には、振動レベルのピークが一番大きい箇所が不具合箇所であると特定されるが、振動レベルのピークは、検査対象物の材質やその厚さ、検査対象物と他の部材との接合状態など、種々の要因によって振動の伝播の仕方が異なる場合がある。このような場合、不具合箇所ではないのにもかかわらず、振動の振幅が干渉によって増幅され振動レベルのピークが大きくなったり、検査対象物の材質による振動の伝播速度の違いから振動波形の立ち上がりが早くなったりする。このとき、振動波形を観察して不具合箇所を特定しても良いし、振動レベルのピークから不具合箇所を特定しても良いが、好ましくは、振動波形の立ち上がりが一番早い箇所を不具合箇所として特定する。なお、本実施の形態では、ディスプレイ23に表示された各種物理量から総合的に判断して不具合箇所を特定するようにしている。上記のように不具合箇所を特定して、処理を終了する。
【0079】
このとき、前記各種物理量によって不具合箇所を特定すると共に、既に説明したように、異なる任意の二つの振動センサの信号を比較しながら聴取して不具合箇所を特定しても良い。
【0080】
以上のように構成される本発明に係る異音対策確認装置が有する異音探査機能およびその機能を用いた異音探査方法では、パーソナルコンピュータ22を用いて、信号抽出部11から送信される振動センサごとの信号を記憶させると共に、記憶した信号を加工して振動に関する各種物理量を表示することができるようにしている。この結果、聴取による不具合箇所の特定が不調の場合でも、抽出した信号に基づき得られた各種物理量を視認することにより、不具合箇所を特定することができる。したがって、不具合箇所の特定が容易になり、探査時間を著しく短縮して探査効率を大幅に向上させることができる。
【0081】
以上のように、本発明に係る異音対策確認装置が有する異音探査機能およびその機能を用いた異音探査方法について、二つの態様を例示して説明した。次に、本発明に係る異音確認対策確認装置および異音対策確認方法を第1実施形態および第2実施形態に分けて詳細に説明する。
【0082】
[第1実施形態]
図8〜図11は、本発明の第1実施形態に係る異音対策確認装置およびその対策確認方法の説明に供する図である。図8は本実施の形態に係る異音対策確認装置の概略的な構成の説明に供する図であり、車両の異常振動の発生部分を探索する場合の使用状態を例示したものを、図9は本実施の形態に係る異音対策確認装置の概略構成を示すブロック図を、図10は図9に示した異音対策確認装置の動作フローチャートを示し、このフローチャートは本実施の形態に係る異音対策確認装置の探査方法の手順に相当するものである。また、図11は本実施の形態に係る異音対策確認装置およびその対策確認方法における同期信号の出力に関する説明図である。
【0083】
なお、図1に対応する図8においては、図1で例示した検査対象物が異なる点ものを例示している。また、図8および図9において、図1および図2に示した構成要素と対応する構成要素には、同じ参照番号を付してある。
【0084】
本実施の形態では、パーソナルコンピュータ22を用い、検査対象物の異音要因を取り除く前(対策前)の振動と検査対象物の異音要因を取り除いた後(対策後)の振動とを時系列に同期させて出力するようにしている。そして、この出力した結果に基づいて、対策前に検出した信号と対策後に検出した信号とを比較して、その対策の効果がどの程度かを確認することができるようにしている。
【0085】
第1実施形態の説明をする前に、本実施の形態に係る異音対策確認装置およびその対策確認方法の理解を容易なものとするために、本発明に係る異音対策確認装置およびその対策確認方法の概要を簡単に説明しておく。
【0086】
図8は、車両の異常振動の発生部分を探索する場合を例示したものである。車両の異常振動の発生部分を探索する場合には、異音対策確認装置200を次の手順で使用する。なお、本実施の形態における車両の異常振動の発生部分を探索する手順は、基本的には既に説明した異音対策確認装置が有する機能を用いて行う異音探査の手順と同様の手順で行うので、同様の手順については重複記載を避けるため省略する。
【0087】
ここでは、車両が定められた進路を進行(走行)したとき、リアサスペンション付近から異常振動音が聞こえると言うクレームを受けた場合を例示して説明する。
【0088】
リアサスペンション付近から異常振動音が発生しているということは、通常、リアサスペンション近傍の部品(図8は、リアサスペンションメンバーにおける各部位を検査対象物とした例を示している)が音源となっている場合が多いと推定される。そこで、音源になっていると推定される不具合箇所に対して振動センサを取り付ける。このとき、既に説明したように、音源可視化装置を用いて不具合箇所を推定してから取り付けても良い。
【0089】
ここで、本実施の形態では、振動センサ10dを音源となっていると推定される不具合箇所とは異なる箇所に取り付ける。具体的には、音源になっていると推定される不具合箇所である部位21aに振動センサ10aを、部位21bに振動センサ10bを、部位21cに振動センサ10cを取り付ける。そして、振動センサ10dを、車両が定められた進路を走行しているときに、進行している路面の形態(路面の形態)に応じて入力される振動を検出することが可能な部位21dに取り付ける。図8では、路面の凹凸に応じてタイヤから入力される振動を良好に検出することが可能なリアサスペンションメンバーの部位21dに取り付けた例を示している。なお、各振動センサ10a〜10dの取り付けは磁石や両面テープなどの固定手段を用いて行なう。
【0090】
そして、電源スイッチ39、ピークホールドスイッチ40を押して異常振動の探索を開始する。異音対策確認装置本体110の電源スイッチ39がONされると、センサ接続端子37a〜37dを介して、振動センサ10a〜10dの検出した振動がその振動の大きさに応じた信号として異音対策確認装置本体110に入力される。
【0091】
入力された信号はUSB端子36aを介してパーソナルコンピュータ22に入力され、同時に、ヘッドフォン用出力端子36bを介してヘッドフォン21に出力され、入力された信号の中から抽出された時系列に発生する振動レベルのピークが振動センサごとに備えられる振動レベルメーター34に保持される。
【0092】
また、パーソナルコンピュータ22に入力された信号は、不具合箇所の対策前(異音要因を取り除く前)の信号として記憶され、記憶した信号は加工されてディスプレイ23に表示される。また、ヘッドフォン21に入力された信号は、ヘッドフォン21の右耳用ヘッドフォン(R−CH)21aと左耳用ヘッドフォン(L−CH)21bから音波として出力される。
【0093】
不具合箇所の特定は、既に説明したように、右耳用ヘッドフォン(R−CH)21aと左耳用ヘッドフォン(L−CH)21bから出力された音波を人間が聴取すると共に、振動レベルメーター34によって時系列に発生する振動レベルのピークの表示を視認することで探索するか、またはパーソナルコンピュータ22によって解析された解析結果を視認することによって不具合箇所を特定する。例えば、図8を参照すれば、振動レベルメーター34はチャンネル3(CH3)が一番高いレベルを示していることが分かる。この結果、この表示だけを見ても、チャンネル3に対応する振動センサ10cが不具合箇所、すなわち、部位21cが不具合箇所であると特定することができる。なお、振動レベルメーター34におけるチャンネル4(CH4)の表示が一番高いレベルを示しているが、チャンネル4に対応する部位21dは不具合箇所と推定される箇所ではないので除外している。
【0094】
以上のように、部位21cを不具合箇所と特定した後、不具合の対策、すなわち、異音要因に応じた対策(修理など)を行う(以下、異音要因に対策を講じる前を「対策前」、異音要因に対策を講じた後を「対策後」と称して説明する)。そして、異音要因を取り除く作業を行った後、対策前に車両が走行した進路と同じ進路を走行させて、不具合箇所であった部位21cの振動を再度検出すると共に、振動センサ10dによって路面の凹凸に応じて入力される部位21dの振動を検出する。検出した信号は、対策後に検出した信号としてパーソナルコンピュータ22に記憶される。
【0095】
そして、作業者によってパーソナルコンピュータ22に所定の指示情報が入力されると、当該指示情報に基づきパーソナルコンピュータ22は、対策前に検出した信号と対策後に検出した信号とを同期させて出力する。そして、この出力した信号に基づき、不具合の対策の効果がどの程度であるかを確認する。例えば、同期させて出力した信号(以下、「同期信号」と称する)を、スピーカーなどの音波出力装置(図示はしない)を用いて出力して比較したり、またはセンサ接続端子37a〜37dとパーソナルコンピュータ22とを電気的に接続することによって、異音対策確認装置本体110を介してヘッドフォン21から聴取して比較したりすることができる。
【0096】
このように本実施の形態に係る異音対策確認装置では、振動センサごとに抽出した信号から異なる任意の二つの信号を人間が聴覚的・視覚的に比較して不具合箇所を特定することができることに加えて、異なる時間において検出した信号が時系列に同期して出力されるので、不具合の対策の効果を容易に確認することができる。
【0097】
次に、図9を参照して、本実施の形態に係る異音対策確認装置200について詳細に説明する。本実施の形態では、パーソナルコンピュータ22を用い、検査対象物の異音要因を取り除く前(対策前)の振動と検査対象物の異音要因を取り除いた後(対策後)の振動とを時系列に同期させて出力するようにしている。以下では、既に説明した異音対策確認装置が有する機能を用いて行う異音探査に関する構成要素と同じ構成要素については重複記載を避けるため詳細な説明は省略する。
【0098】
図9に示すように本実施の形態に係る異音対策確認装置200は、振動センサ10a〜10d、異音対策確認装置本体110、パーソナルコンピュータ22、ヘッドフォン24を備えている。振動センサ10a〜10dは、図8に示した検査対象物21a〜21dにそれぞれ取り付けられている。
【0099】
振動センサ10a〜10dは、車両が定められた進路を進行したとき(特定の走行条件下で車両を走行させたとき)の検査対象物の振動を検出するものとして使用される。なお、振動センサ10dは、車両が前記定められた進路を進行しているときに、進行している路面の形態に応じて入力される振動を検出することが可能な検査対象物20dに取り付けられている。
【0100】
異音対策確認装置本体110は、振動センサ10a〜10dから出力された信号に基づいて、検査対象物20a〜20cが異音要因を持っているか否かを探査する異音探査手段として機能する。異音対策確認装置本体110は、図2に示した異音対策確認装置100から、振動センサ10a〜10dと出力部13とを除く構成要素を備えているものであり、図1に示す異音対策確認装置本体110が該当する。
【0101】
本実施の形態におけるパーソナルコンピュータ22は、図9に示すように、対策前信号記憶部25、対策後信号記憶部26、および同期信号出力部27を備えている。これらはパーソナルコンピュータ22を構成する、図5に示したCPU22a、RAM22b、ROM22c、およびハードディスク22dが連携することによって機能するものである。なお、CPU22aは上記各部の制御や必要な演算処理を実行するものであり、ROM22bはパーソナルコンピュータ22の基本動作や上記各部を制御する各種プログラムやパラメータなどをあらかじめ格納しているものである。また、ハードディスク22dは、対策前信号記憶部25、対策後信号記憶部26を含む。以下、対策前信号記憶部25、対策後信号記憶部26、および同期信号出力部27について詳細に説明する。
【0102】
対策前信号記憶部25は、振動センサ10a〜10dが検出した振動に伴って振動センサ10a〜10dから出力された信号(振動信号)を時系列に記憶するものであり、対対策前信号記憶手段として機能する。対策前信号記憶部25には、対策前における検査対象物20a〜20cから検出した信号と、対策前における検査対象物20dから検出した信号とが、振動センサ10a〜10cごとに対応付けられて記憶される。
【0103】
対策後信号記憶部26は、異音対策確認装置本体110によって検査対象物21a〜21dが異音要因を持っていると判断されたとき(本実施の形態では、既に説明したように、検査対象物21cが異音要因を持っている例を示している)には、異音要因を取り除いた後に、前記定められた進路を進行したときに振動センサ10a〜10dが検出した振動に伴って振動センサ21a〜21dから出力された信号を時系列に記憶するものであり、対策後信号記憶手段として機能する。対策後信号記憶部26には、対策後における検査対象物20a〜20cから検出した信号と、対策後における検査対象物20dから検出した信号とが、振動センサ10a〜10cごとに対応付けられて記憶される。
【0104】
同期信号出力部27は、対策前信号記憶部25に記憶されている信号と対策後信号記憶部26に記憶されている信号とを時系列に同期させて出力するものであり、信号出力手段として機能する。同期信号出力部27から出力される同期信号は、スピーカーなどの音波出力装置(図示はしない)を用いて音波として出力したり、またはセンサ接続端子37a〜37dとパーソナルコンピュータ22とを電気的に接続することによって、異音対策確認装置本体110を介してヘッドフォン21から音波として出力したりすることができる。
【0105】
検査対象物21a〜21cは、不具合検査の対象となるものである。検査対象物として本実施の形態では車両の構成部品を対象としているが、これに限らず、種々の分野における機械装置、電気機器などを対象とすることもできる。なお、本実施の形態では、3つの検査対象物を一例として説明しているが、これに限らず、検査対象物は少なくとも一つあれば本発明の適用は可能である。
【0106】
次に、図10を参照して、本発明の第1実施形態に係る異音対策確認装置の異音対策確認方法について詳細に説明する。
【0107】
図10は、本実施の形態に係る異音対策確認装置200の処理内容を示すフローチャートであり、図10において図3および図6に示した処理内容と同一の処理内容は重複記載を避けるため省略する。
【0108】
図10に示すように、まず、振動センサ10a〜10dを検査対象物21a〜21dにそれぞれ取り付ける(S500)。なお、振動センサ10a〜10cは異常振動が発生していると推定される検査対象物21a〜21bに、振動センサ10dは車両が定められた進路を進行しているときに、進行している路面の形態に応じて入力される振動を良好に検出することが可能な検査対象物21dに取り付ける。
【0109】
次に、車両を定められた進路に沿って走行させ、電源スイッチ39をONにすると、振動センサ10a〜10dにより、検査対象物20a〜20dから発生する振動が検出され、検出された振動は電気信号に変換されて異音対策確認装置本体110を介してパーソナルコンピュータ22に送信される(ステップS510)。なお、本処理内容において、車両が前記定められた進路を走行する場合、探査時間内において、車両の上下方向の変位が極端に大きくなる少なくとも1つの凹凸がある路面を走行させることが望ましい。
【0110】
例えば、車両を前記定められた進路に沿って走行させる場合、図11に示すように、探査の開始直後に車両が上下方向に大きく変位する凹凸を有した箇所P1を通過させ、探査の終了直後にも車両が上下方向に大きく変位する凹凸を有した箇所P2を通過させるように車両を走行させる。詳細は後述するが、車両が前記凹凸を有する箇所P1、P2を通過したときに振動センサ10dから出力された信号が、対策前信号記憶部25に記憶されている信号と対策後信号記憶部26に記憶されている信号とを時系列に同期させて出力するためのトリガとしての役割を果たすことになる。
【0111】
次に、パーソナルコンピュータ22は、異音対策確認装置本体110を介して受信した信号、すなわち、振動センサ10a〜10dが検出した振動に伴って振動センサ10a〜10dから出力された信号を時系列に記憶する(ステップS520)。このとき、振動センサ10a〜10cから出力された信号と振動センサ10dから出力された信号とが対応付けられて対策前信号記憶部25に記憶される。なお、対策前信号記憶部25には、一の路面を走行した場合に検出した信号と他の路面を走行した場合に検出した信号とが、それぞれ区分して記憶するように構成しても良い。
【0112】
次に、不具合の有無を特定、すなわち、不具合箇所を特定する(ステップS530)。不具合箇所を特定する方法は、既に説明したので本処理内容の説明は省略する(図3におけるステップS370、図6におけるステップS460の処理内容を参照)。なお、本実施の形態では、図8に示すように、振動レベルメーター34の表示を見ると、振動レベルのピークが一番大きい箇所はチャンネル4(CH4)の振動センサ10dである。
【0113】
しかしながら、振動センサ10dは車両が走行している路面の形態に応じて入力される振動を検出するための検査対象物21dに取り付けられているので、チャンネル4(CH4)に関する情報は除外して、不具合箇所を特定するようにする。
【0114】
したがって、振動レベルのピークが一番大きい箇所はチャンネル3(CH3)の振動センサであるので、この結果からは、振動センサ10cに取り付けられた検査対象物20cが不具合箇所であると特定することができる(もちろん、既に説明したように、ディスプレイ23に表示された各種物理量から総合的に判断して不具合箇所を特定するようにしても良い)。
【0115】
次に、不具合箇所に対して、異音要因に応じた対策を行う(ステップS540)。
【0116】
次に、再び車両を前記定められた進路に沿って走行させ、対策後の検査対象物21a〜21dの振動を検出する(ステップS550)。本処理内容では、ステップS500〜S510までの処理内容と実質的に同じ処理を実行することによって対策後の振動を検出する。なお、対策後は、不具合箇所および車両が走行している路面の形態に応じて入力される振動を良好に検出することが可能な検査対象物にのみ、振動センサを取り付けて検出するようにしても良い。
【0117】
次に、パーソナルコンピュータ22は、振動センサ10a〜10dが検出した振動に伴って振動センサ10a〜10dから出力された信号を時系列に記憶する(ステップS560)。このとき、振動センサ10a〜10cから出力された信号と振動センサ10dから出力された信号とが対応付けられて対策後信号記憶部26に記憶される。なお、対策前信号記憶部25には、一の路面を走行した場合に検出した信号と他の路面を走行した場合に検出した信号とが、それぞれ区分して記憶するように構成しても良い。
【0118】
次に、作業者は、入力装置24に対して、対策前信号記憶部25に記憶されている信号と対策後信号記憶部26に記憶されている信号とを出力させるための指示情報を入力する。そして、同期信号出力部27は、前記指示情報に基づき、対策前信号記憶部25に記憶されている信号と対策後信号記憶部26に記憶されている信号とを時系列に同期させて出力する(ステップ570)。
【0119】
ここで、対策前信号記憶部25に記憶されている信号と対策後信号記憶部26に記憶されている信号とを時系列に同期させて出力するための処理について詳細に説明しておく。
【0120】
振動センサ10dの対策前信号記憶部25に記憶されている信号および対策後信号記憶部26に記憶されている信号には、ステップS510の処理で説明したように、車両が路面の前記凹凸を有する箇所P1、P2(図11参照)を通過することによって検出された大きな振動レベルを有する信号が2つ存在するはずである。この2つの大きな振動レベルを対策前信号記憶部25に記憶されている信号と対策後信号記憶部26に記憶されている信号とを時系列に同期させて出力するトリガとして機能させるようにする。
【0121】
具体的には、振動センサ10c(不具合箇所に取り付けられていた振動センサ)の対策前信号記憶部25に記憶されている信号および対策後信号記憶部26に記憶されている信号の中から、振動センサ10dから検出された振動レベルが最初に所定の振動レベル(一般的な路面上では検出されることのない振動レベル)に達した(または超過した)ときを第1のトリガ(凹凸を有する箇所P1を通過したときに検出された信号を第1のトリガとする)、振動センサ10dから検出された振動レベルが次に所定の振動レベルに達した(または超過した)ときを第2のトリガ(凹凸を有する箇所P2を通過したときに検出された信号を第2のトリガとする)として、前記第1のトリガから前記第2のトリガまでの探査時間内に検出した信号を抜き出して出力するようにする。具体的には、図11に示す同期信号出力範囲において検出した信号が出力される。
【0122】
この結果、対策前信号記憶部25に記憶されている信号と対策後信号記憶部26に記憶されている信号とを時系列に同期させて出力することができる。既に説明したように、同期信号出力部27から出力される同期信号は、スピーカーなどの音波出力装置(図示はしない)を用いて音波として出力したり、またはセンサ接続端子37a〜37dとパーソナルコンピュータ22とを電気的に接続することによって、異音対策確認装置本体110を介してヘッドフォン21から出力したりするように構成しても良い。
【0123】
次に、作業者は、前記同期信号に基づき、対策前に検出した信号と対策後に検出した信号とを比較・検討し、対策の効果がどの程度あったかを確認して(ステップS580)処理を終了する。
【0124】
本実施の形態では、振動センサ10c(不具合箇所に取り付けられていた振動センサ)の対策前信号記憶部25に記憶されている信号および対策後信号記憶部26に記憶されている信号の中から、振動センサ10dから検出された振動レベルが最初に所定の振動レベルに達した(または超過した)ときを第1のトリガ、振動センサ10dから検出された振動レベルが次に所定の振動レベルに達した(または超過した)ときを第2のトリガとして、前記第1のトリガから前記第2のトリガまでの探査時間内に検出した信号を抜き出して出力するようにすると説明したが、これに限らず、第1実施形態で説明したように、対策後の振動を検出している際、前記第1のトリガを契機として、対策前信号記憶部25に記憶されている信号を同期させて出力するように構成しても良い。このようにすることで、対策後における振動を検出すると共に、対策前信号記憶部25に記憶されている信号を出力することができる。この結果、車両を走行させて対策後の振動を検出している際でも、対策前に検出した振動を聴取することができるので、対策効果を確認する時間を短縮することができる。
【0125】
[第2実施形態]
図12〜図14は、本発明の第2実施形態に係る異音対策確認装置およびその対策確認方法の説明に供する図である。図12は本実施の形態に係る異音対策確認装置の概略構成を示すブロック図を、図13は図12に示した異音対策確認装置の動作フローチャートを示し、このフローチャートは本実施の形態に係る異音対策確認装置の対策確認方法の手順に相当するものである。また、図14は図12に示した変位検出部28の変更形態を例示したものを示す図である。
【0126】
なお、第1実施形態と第2実施形態とでは、図9に対応する図12において変位検出部28が設けられている点だけが異なっている。その他の構成要素は、図9と全く同じであるので共通する構成要素の説明は省略する。また、図12および図14において、図9に示した構成要素と対応する構成要素には、同じ参照番号を付してある。また、以下の説明では、図8に示した車両の異常振動の発生部分を探索する場合の使用状態を例示したものを、図11に示した異音対策確認装置および異音対策確認方法異音対策確認方法における同期信号の出力に関する説明図を参照しながら説明する。
【0127】
図12に示すように本実施の形態に係る異音対策確認装置300は、振動センサ10a〜10d、異音対策確認装置本体110、パーソナルコンピュータ23、ヘッドフォン24を備えている。振動センサ10a〜10dは、検査対象物21a〜21dにそれぞれ取り付けられている。
【0128】
パーソナルコンピュータ22は、対策前信号記憶部25、対策後信号記憶部26、同期信号出力部27、および変位検出部28を備える。
【0129】
変位検出部28は、定められた進路を進行したときに、車両の上下方向の変位を検出するものであり、変位センサ(以下、「変位検出手段」と称する)として機能する。変位検出部28としては、例えば、加速度信号から変位を算出する積分計算プログラムなどに基づき、検査対象物の上下方向の変位を算出する変位算出手段が挙げられる。
【0130】
変位検出部28によって検出された変位は、検査対象物20a〜20cから検出した信号と対応付けられて、対策前信号記憶部25(または対策後信号記憶部26)に振動センサ10a〜10cごとに記憶される。
【0131】
なお、上述した第1実施形態では、振動センサ10dから出力された信号(通常は加速度信号を意味する)をそのまま用いて同期信号を出力させるためのトリガとして使用した例を説明したが、本実施の形態では、振動センサ10dから出力された信号に基づき、検査対象物21dの上下方向の変位を算出し、算出された変位を用いて同期信号を出力させるためのトリガとして使用する。
【0132】
なお、本実施の形態では、変位検出部28はパーソナルコンピュータ22に備えられていると説明したが、これに限らず、図14に示す異音対策確認装置400ように、振動センサ20dと異音対策確認装置本体110との間に取り付け取り外し自在に構成された積分回路装置(加速度信号から変位を算出することが可能な装置)を含む変位検出部28を接続しても良い。この場合、振動センサから出力された信号を直接検出して、検査対象物21dの上下方向の変位を算出する。
【0133】
また、変位検出部28と同じ機能を有するレーザー変位計(図示はしない)などの変位検出手段を用いて、車両が走行している進路における路面の形態を直接的に検出しても良い。これは、結果的に、定められた進路を進行したときにおける車両の上下方向の変位と実質的に同様の変位を検出していることになるからである。レーザー変位計を用いる場合には、レーザー変位計を車両のフロントバンパー、リアバンパー、またはボディサイドなどに装着して、前記路面の形態を検出することが望ましい。
【0134】
次に、図13を参照して、本発明の第2実施形態に係る異音対策確認装置の異音対策確認方法について詳細に説明する。
【0135】
図13は、本実施の形態に係る異音対策確認装置300の処理内容を示すフローチャートであり、図13において図10に示した処理内容と同一の処理内容は重複記載を避けるため省略する。
【0136】
図13に示すように、まず、振動センサ10a〜10dを検査対象物21a〜21dにそれぞれ取り付ける(S600)。
【0137】
次に、車両を定められた進路に沿って走行させ、電源スイッチ39をONにすると、振動センサ10a〜10dにより、検査対象物20a〜20dから発生する振動が検出され(ステップS605)、検出された振動は電気信号に変換されて異音対策確認装置本体110を介してパーソナルコンピュータ22に送信される。なお、本処理内容において、車両が前記定められた進路を走行する場合、探査時間内において、車両の上下方向の変位が極端に大きくなる少なくとも1つの凹凸がある路面を走行させることが望ましい。
【0138】
例えば、車両を前記定められた進路に沿って走行させる場合、図11に示すように、探査の開始直後に車両が上下方向に大きく変位する凹凸を有した箇所P1を通過させ、探査の終了直後にも車両が上下方向に大きく変位する凹凸を有した箇所P2を通過させるように車両を走行させる。詳細は後述するが、車両が前記凹凸を通過したときに振動センサ10dから出力された信号に基づき算出された検査対象物21dの上下方向の変位が、対策前信号記憶部25に記憶されている信号と対策後信号記憶部26に記憶されている信号とを時系列に同期させて出力するためのトリガとしての役割を果たすことになる。
【0139】
次に、パーソナルコンピュータ(変位検出部28)22は、異音対策確認装置本体110を介して受信した信号のうち、振動センサ10dによって検出した振動に伴って振動センサ10dから出力された信号に基づき、検査対象物21dの上下方向の変位を算出する(ステップS610)。本実施の形態では、変位算出部22dに入力される信号は、車両が定められた進路を進行しているときに、進行している路面の形態に応じて入力される振動に伴って振動センサ10dから出力される信号(検査対象物21dから検出される振動)を例にとって説明している。したがって、変位検出部28は、振動センサ10dから出力された信号に基づく変位を算出する。
【0140】
次に、パーソナルコンピュータ22は、異音対策確認装置本体110を介して送信された信号、すなわち、振動センサ10a〜10dが検出した振動に伴って振動センサ10a〜10dから出力された信号とステップS620の処理において算出された変位とを時系列に記憶する(ステップS615)。このとき、振動センサ10a〜10dから出力された信号とステップS620の処理において算出された変位とが対応付けられて対策前信号記憶部25に記憶される。
【0141】
次に、不具合の有無を特定、すなわち、不具合箇所を特定する(ステップS620)。不具合箇所を特定する方法は、既に説明したので本処理内容の説明は省略する
次に、不具合箇所に対して、異音要因に応じた対策を行う(ステップS625)。
【0142】
次に、再び車両を前記定められた進路に沿って走行させ、対策後の検査対象物21a〜21dの振動を検出する(ステップS630)。本処理内容では、ステップS600〜S605までの処理内容と実質的に同じ処理を実行することによって対策後の振動を検出する。
【0143】
次に、パーソナルコンピュータ(変位検出部28)22は、異音対策確認装置本体110を介して送信された信号のうち、振動センサ10dによって検出した振動に伴って振動センサ10dから出力された信号に基づき、検査対象物21dの上下方向の変位を算出する(ステップS635)。
【0144】
次に、パーソナルコンピュータ22は、異音対策確認装置本体110を介して送信された信号、すなわち、振動センサ10a〜10dが検出した振動に伴って振動センサ10a〜10dから出力された信号とステップS620の処理において算出された変位とを時系列に記憶する(ステップS640)。このとき、振動センサ10a〜10dから出力された信号とステップS620の処理において算出された変位とが対応付けられて対策前信号記憶部25に記憶される。
【0145】
次に、作業者は、入力装置24に対して、対策前信号記憶部25に記憶されている信号と対策後信号記憶部26に記憶されている信号とを出力させるための指示情報を入力する。そして、同期信号出力部27は、前記指示情報に基づき、対策前信号記憶部25に記憶されている信号と対策後信号記憶部26に記憶されている信号とを時系列に同期させて出力する(ステップ645)。
【0146】
ここで、対策前信号記憶部25に記憶されている信号と対策後信号記憶部26に記憶されている信号とを時系列に同期させて出力するための処理について詳細に説明しておく。
【0147】
振動センサ10dの対策前信号記憶部25に記憶されている信号および対策後信号記憶部26に記憶されている信号には、ステップS605の処理で説明したように、車両が路面の前記凹凸を有する箇所P1、P2(図11参照)を通過することによって検出された大きな振動レベルを有する信号に基づき算出された変位が2つ存在するはずである。この2つの大きな変位レベルを対策前信号記憶部25に記憶されている信号と対策後信号記憶部26に記憶されている信号とを時系列に同期させて出力するトリガとして機能させるようにする。
【0148】
具体的には、振動センサ10c(不具合箇所に取り付けられていた振動センサ)の対策前信号記憶部25に記憶されている信号および対策後信号記憶部26に記憶されている、変位検出部28から算出された変位の中から、振動センサ10dから検出された振動レベルが最初に所定の変位レベルに達した(または超過した)ときを第1のトリガ(凹凸を有する箇所P1を通過したときに検出された信号を第1のトリガとする)、振動センサ10dから検出された変位レベルが次に所定の振動レベルに達した(または超過した)ときを第2のトリガ(凹凸を有する箇所P2を通過したときに検出された信号を第2のトリガとする)として、前記第1のトリガから前記第2のトリガまでの時間内に検出した信号を抜き出して出力するようにする。具体的には、図11に示す同期信号出力範囲において検出した信号が出力される。
【0149】
この結果、対策前信号記憶部25に記憶されている信号と対策後信号記憶部26に記憶されている信号とを時系列に同期させて出力することができる。既に説明したように、同期信号出力部27から出力される同期信号は、スピーカーなどの音波出力装置(図示はしない)を用いて音波として出力したり、またはセンサ接続端子37a〜37dとパーソナルコンピュータ22とを電気的に接続することによって、パーソナルコンピュータ22から出力される同期信号を、異音対策確認装置本体110を介してヘッドフォン21から出力したりするように構成しても良い。
【0150】
次に、作業者は、同期信号出力部27から出力された信号に基づき、対策前に検出した信号と対策後に検出した信号とを比較(ステップS650)し、対策の効果がどの程度あったかを確認して処理を終了する。
【0151】
本実施の形態では、振動センサ10c(不具合箇所に取り付けられていた振動センサ)の対策前信号記憶部25に記憶されている信号および対策後信号記憶部26に記憶されている信号の中から、振動センサ10dから検出された振動レベルが最初に所定の振動レベルに達した(または超過した)ときを第1のトリガ、振動センサ10dから検出された振動レベルが次に所定の振動レベルに達した(または超過した)ときを第2のトリガとして、前記第1のトリガから前記第2のトリガまでの探査時間内に検出した信号を抜き出して出力するようにすると説明したが、これに限らず、第1実施形態で説明したように、対策後の振動を検出している際、前記第1のトリガを契機として、対策前信号記憶部25に記憶されている信号を同期させて出力するように構成しても良い。このようにすることで、対策後における振動を検出すると共に、対策前信号記憶部25に記憶されている信号を出力することができる。この結果、車両を走行させて対策後の振動を検出している際でも、対策前に検出した振動を聴取することができるので、対策効果を確認する時間を短縮することができる。
【0152】
なお、以上の処理内容では、変位検出部28がパーソナルコンピュータ22に備えられている例をとって説明したが、これに限らず、図14に示すように、積分回路装置を含む変位検出部28、または変位検出部28と同じ機能を有するレーザー変位計(図示はしない)などの変位検出手段を用いて、車両が走行している進路における路面の形態を直接的に検出し、レーザー変位計によって検出された所定の変位レベルを、同期信号を出力するためのトリガとしても良い。
【0153】
第1実施形態および第2実施形態では、実際に車両を走行させて異音対策の確認を行う実施形態について説明したが、これに限らず、シャシーダイナモなどの測定装置を用い、仮想の走行条件下で車両を動作させて当該車両の振動を取得し、特定の走行条件下における、異音要因の対策前に検出した振動センサの信号と異音要因を取り除いた対策後に検出した振動センサの信号とを比較することができる。
【0154】
また、第1実施形態および第2実施形態では、対策前振動記憶部25に記憶されている信号と対策後振動記憶部26とに記憶されている信号とを出力するトリガとして、車両の上下方向の変位を例にとって説明したが、これに限らず、ある一定の車速または一定のエンジン回転数に到達したことを、同期信号を出力するためのトリガとしても良い。
【0155】
以上のように、第1実施形態または第2実施形態に係る異音対策確認装置およびその異音対策確認方法では、複数の振動センサから所望の複数の振動センサの信号を選択しながら、選択した信号を別々の出力手段から出力させることができることに加えて、異音要因の対策前に検出した振動センサの信号と異音要因を取り除いた対策後に検出した振動センサの信号とを比較することができる。この結果、不具合箇所の特定がより容易になると共に、異音要因の対策を講じた後、その対策の効果が容易に確認することができるので、探査時間を著しく短縮して探査効率を向上させると共に、不具合箇所の対策の作業効率を大幅に向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明は、検査対象物から発生する異常振動を探査する技術分野において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】本発明に係る異音対策確認装置の概略的な構成の説明に供する図であり、車両の異常振動の発生部分を探索する場合の使用状態を例示した図である。
【図2】本発明に係る異音対策確認装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る異音対策確認装置の異音探査機能の動作フローチャートである。
【図4】本発明に係る異音対策確認装置によって検出された振動波形の一例を示すグラフおよびその振動波形から取得した振動センサごとの振動レベルのピーク(最大値および最小値)を示す図である。
【図5】本発明に係る異音対策確認装置の構成要素の一つであるパーソナルコンピュータの概略構成を示すブロック図である。
【図6】本発明に係る異音対策確認装置の異音探査の動作フローチャートである。
【図7】本発明に係る異音対策確認装置によって検出された振動波形の一例を示すグラフおよび当該振動波形に基づく各種物理量を示す図である。
【図8】第1実施形態に係る異音対策確認装置の概略的な構成の説明に供する図であり、車両の異常振動の発生部分を探索する場合の使用状態を例示した図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る異音対策確認装置の概略構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第1実施形態に係る異音対策確認装置の動作フローチャートである。
【図11】本発明に係る異音対策確認装置および異音対策確認方法異音対策確認方法における同期信号の出力に関する説明図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る異音対策確認装置の概略構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る異音対策確認装置の動作フローチャートである。
【図14】本発明の第2実施形態に係る異音対策確認装置の一変形形態の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0158】
振動センサ 10a,10b,10c,10d、
検査対象物 20a,20b,20c,20d,21a,21b,20c,20d、
信号抽出部 11、
センサ選択部 12、
出力部 13、
ピークホールド部 14、
ピーク表示部 15、
ヘッドフォン21、
パーソナルコンピュータ22、
対策前信号記憶部 25、
対策後信号記憶部 26、
同期信号出力部 27
異音探査装置本体 110。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異音要因を取り除く前と異音要因を取り除いた後との車両の振動を比較することで異音対策が有効に成されたか否かを確認する異音対策確認装置であって、
前記車両の振動を検出する振動センサと、
前記振動センサによって検出された振動から特定の周波数帯域の信号を抽出する信号抽出手段と、
前記信号抽出手段によって抽出された信号を記憶する信号記憶手段と、
特定の走行条件下において異音要因を取り除く前に前記信号記憶手段によって記憶された対策前信号と前記特定の走行条件下おいて異音要因を取り除いた後に前記抽出手段によって抽出された対策後信号とを同期させて個別に出力する出力手段と、
を有することを特徴とする異音対策確認装置。
【請求項2】
さらに、前記出力手段にから出力された信号を音波として出力する音波出力手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の異音対策確認装置。
【請求項3】
さらに、前記車両の上下方向の変位を検出する変位センサを有し、
前記出力手段は、前記変位センサによって検出された変位のうち、あらかじめ定められた大きさの変位を基準として、前記対策前信号と前記対策後信号とを同期させて個別に出力することを特徴とする請求項1または2に記載の異音対策確認装置。
【請求項4】
前記変位センサは、前記振動センサから出力された信号に基づき、前記車両の上下方向の変位を算出するセンサであることを特徴とする請求項3に記載の異音対策確認装置。
【請求項5】
前記変位センサは、前記車両の上下方向の変位を検出するレーザー変位計であることを特徴とする請求項3に記載の異音対策確認装置。
【請求項6】
前記振動センサは、検査時に、前記車両の所望の個所に一時的に着脱自在な機能を有していることを特徴とする請求項1に記載の異音対策確認装置。
【請求項7】
車両の異音要因を持っていると判断される箇所に振動センサを取り付ける段階と、
特定の走行条件で車両を走行させる段階と、
前記車両を走行させたときの前記車両の振動を検出する段階と、
前記車両を走行させたときに検出された振動から特定の周波数帯域の信号を抽出する段階と、
抽出した振動を記憶する段階と、
前記車両から前記異音要因を取り除く段階と、
前記車両から異音要因を取り除いた後に前記特定の走行条件で再度走行させる段階と、
前記車両を再度走行させたときの前記車両の振動を検出する段階と、
前記車両を再度走行させたときに検出された振動から特定の周波数帯域の信号を抽出する段階と、
前記車両の異音要因を取り除く前の振動と前記車両の異音要因を取り除いた後の振動とを同期させて個別に出力する段階と、
を含むことを特徴とする異音対策確認方法。
【請求項8】
車両の異音要因を持っていると判断される箇所に振動センサを取り付ける段階と、
特定の走行条件で車両を走行させる段階と、
前記車両を走行させたときの前記車両の上下方向の変位を検出する段階と、
前記車両を走行させたときの前記車両の振動を検出する段階と、
前記車両を走行させたときに検出された前記車両の上下方向の変位を記憶すると共に、検出された振動を記憶する段階と、
前記車両から前記異音要因を取り除く段階と、
前記車両から異音要因を取り除いた後に前記特定の走行条件で再度走行させる段階と、
前記車両を再度走行させたときの前記車両の上下方向の変位を検出する段階と、
前記車両を再度走行させたときの前記車両の振動を検出する段階と、
前記車両の異音要因を取り除く前の振動と前記車両の異音要因を取り除いた後の振動とを同期させて個別に出力する段階と、
を含むことを特徴とする異音対策確認方法。
【請求項1】
異音要因を取り除く前と異音要因を取り除いた後との車両の振動を比較することで異音対策が有効に成されたか否かを確認する異音対策確認装置であって、
前記車両の振動を検出する振動センサと、
前記振動センサによって検出された振動から特定の周波数帯域の信号を抽出する信号抽出手段と、
前記信号抽出手段によって抽出された信号を記憶する信号記憶手段と、
特定の走行条件下において異音要因を取り除く前に前記信号記憶手段によって記憶された対策前信号と前記特定の走行条件下おいて異音要因を取り除いた後に前記抽出手段によって抽出された対策後信号とを同期させて個別に出力する出力手段と、
を有することを特徴とする異音対策確認装置。
【請求項2】
さらに、前記出力手段にから出力された信号を音波として出力する音波出力手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の異音対策確認装置。
【請求項3】
さらに、前記車両の上下方向の変位を検出する変位センサを有し、
前記出力手段は、前記変位センサによって検出された変位のうち、あらかじめ定められた大きさの変位を基準として、前記対策前信号と前記対策後信号とを同期させて個別に出力することを特徴とする請求項1または2に記載の異音対策確認装置。
【請求項4】
前記変位センサは、前記振動センサから出力された信号に基づき、前記車両の上下方向の変位を算出するセンサであることを特徴とする請求項3に記載の異音対策確認装置。
【請求項5】
前記変位センサは、前記車両の上下方向の変位を検出するレーザー変位計であることを特徴とする請求項3に記載の異音対策確認装置。
【請求項6】
前記振動センサは、検査時に、前記車両の所望の個所に一時的に着脱自在な機能を有していることを特徴とする請求項1に記載の異音対策確認装置。
【請求項7】
車両の異音要因を持っていると判断される箇所に振動センサを取り付ける段階と、
特定の走行条件で車両を走行させる段階と、
前記車両を走行させたときの前記車両の振動を検出する段階と、
前記車両を走行させたときに検出された振動から特定の周波数帯域の信号を抽出する段階と、
抽出した振動を記憶する段階と、
前記車両から前記異音要因を取り除く段階と、
前記車両から異音要因を取り除いた後に前記特定の走行条件で再度走行させる段階と、
前記車両を再度走行させたときの前記車両の振動を検出する段階と、
前記車両を再度走行させたときに検出された振動から特定の周波数帯域の信号を抽出する段階と、
前記車両の異音要因を取り除く前の振動と前記車両の異音要因を取り除いた後の振動とを同期させて個別に出力する段階と、
を含むことを特徴とする異音対策確認方法。
【請求項8】
車両の異音要因を持っていると判断される箇所に振動センサを取り付ける段階と、
特定の走行条件で車両を走行させる段階と、
前記車両を走行させたときの前記車両の上下方向の変位を検出する段階と、
前記車両を走行させたときの前記車両の振動を検出する段階と、
前記車両を走行させたときに検出された前記車両の上下方向の変位を記憶すると共に、検出された振動を記憶する段階と、
前記車両から前記異音要因を取り除く段階と、
前記車両から異音要因を取り除いた後に前記特定の走行条件で再度走行させる段階と、
前記車両を再度走行させたときの前記車両の上下方向の変位を検出する段階と、
前記車両を再度走行させたときの前記車両の振動を検出する段階と、
前記車両の異音要因を取り除く前の振動と前記車両の異音要因を取り除いた後の振動とを同期させて個別に出力する段階と、
を含むことを特徴とする異音対策確認方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−225590(P2007−225590A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−298185(P2006−298185)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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