説明

異音診断システム

【課題】音を取得する測定範囲及びその測定範囲で異音が発生している場合にはそのことが容易に把握できる異音診断システムを提供すること。
【解決手段】実物に重畳して画像を表示するヘッドマウントディスプレイ1を備えている。指向性マイク5R、5Lは、装着者51の頭部の動きに連動させることによって、装着者51の視野に対応した測定範囲502から発生した音を測定音として取得する。また、管理サーバ300には測定音が異音であるか否かを判断するための基準音が記憶されている。管理サーバ300は、指向性マイク5R、5Lが取得した測定音と基準音とを比較することによって、測定音が異音であるか否かを判断する。ヘッドマウントディスプレイ1は、測定音の測定範囲502を示すとともに、管理サーバ300が測定音を異音であると判断した場合には、異音が発生していることを示した異音画像を生成し表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異音が発生しているか否かを診断する異音診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
異音が発生する可能性がある検査対象物から異音が発生しているか否かを判断する方法として、検査者の聴覚で判断する方法がある。しかし、この方法では、検査者によって判断が異なる虞がある。すなわち、ある検査者は異音が発生していないと判断したが、他の検査者は異音が発生していると判断することがある。そこで、特許文献1に記載の発明では、指向性マイクを用いて、その指向性マイクで取得した音のデータと、予め記憶されている異音のデータとを比較することによって、指向性マイクで取得した音、すなわち検査対象物から異音が発生しているか否かを判断している。さらに、どの検査対象物から異音が発生しているのかを特定している。そして、異音が発生していると判断した場合には、ノート型パソコンのディスプレイに警告表示をする。これによって、検査者はどの検査対象物から異音が発生していることを把握でき、検査者ごとに異音が発生しているか否かの判断が異なることを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−151330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、指向性マイクを用いているとはいえ、どの範囲の音を指向性マイクが取得しているのかを一見して把握できない。それにともない、異音が発生している範囲を特定するのに時間がかかってしまうという問題点があった。
【0005】
本発明は以上の問題点に鑑みてなされたものであり、音を取得する測定範囲及びその測定範囲で異音が発生している場合には、そのことが容易に把握でき、且つ、手を使って作業をするのに支障がない異音診断システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の異音診断システムは、実物に重畳して画像を表示するヘッドマウントディスプレイと、前記ヘッドマウントディスプレイを装着した装着者の頭部の動きに連動させることによって、前記装着者の視野に対応した測定範囲から発生した音を測定音として取得する音取得手段と、前記測定音が異音であるか否かを判断するための基準音を記憶する基準音記憶手段と、前記音取得手段が取得した前記測定音と前記基準音記憶手段に記憶されている前記基準音とを比較することによって、前記測定音が異音であるか否かを判断する異音判断手段と、前記測定範囲を示すとともに、前記異音判断手段が前記測定音を異音であると判断した場合には、異音が発生していることを示した画像を生成する画像生成手段とを備え、前記ヘッドマウントディスプレイは、前記画像生成手段が生成した画像を表示することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2の異音診断システムは、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記装着者の頭部の動きに連動させることによって、前記装着者の視野に対応した範囲を撮像する撮像手段と、前記測定音が異音である場合には、前記撮像手段が撮像した画像に含まれている物に対応付けて、前記画像生成手段が生成した画像を記憶する異音画像記憶手段と、その異音画像記憶手段に記憶されている画像を表示する表示手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3の異音診断システムは、請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記基準音記憶手段には、異音が発生する可能性がある部位が複数ある検査対象物について、前記基準音として、前記各部位に対する各異音が、それぞれの部位に対応付けて記憶されており、前記異音判断手段は、前記基準音記憶手段に記憶されている前記各異音と前記測定音とを比較することによって、前記測定音が異音であるか否かを判断するとともに、異音であると判断する場合には、その異音が前記検査対象物のどの部位から発生しているのかも判断し、前記画像生成手段は、前記異音判断手段によって異音が発生していると判断された部位に対応した画像を生成することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4の異音診断システムは、請求項2又は3に記載の発明の構成に加え、異音が発生する可能性がある部位が複数ある検査対象物におけるそれら部位の位置を示した目印画像を記憶する目印画像記憶手段をさらに備え、前記ヘッドマウントディスプレイは、前記撮像手段が撮像した画像における前記検査対象物に相当する画像の位置に基づいて、前記検査対象物と重なるように前記目印画像記憶手段に記憶されている前記目印画像を表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の異音診断システムによれば、実物に重畳して画像を表示するヘッドマウントディスプレイを備えている。また、音取得手段は、ヘッドマウントディスプレイを装着した装着者の頭部の動きに連動させることによって、装着者の視野に対応した測定範囲から発生した音を測定音として取得する。また、基準音記憶手段には測定音が異音であるか否かを判断するための基準音が記憶されている。そして、異音判断手段は、音取得手段が取得した前記測定音と前記基準音記憶手段に記憶されている前記基準音とを比較することによって、前記測定音が異音であるか否かを判断する。画像生成手段は、測定音の測定範囲を示すとともに、異音判断手段が測定音を異音であると判断した場合には、異音が発生していることを示した画像を生成する。そして、ヘッドマウントディスプレイは、前記画像生成手段が生成した画像を表示する。
【0011】
このように、測定音が取得されている測定範囲がヘッドマウントディスプレイの装着者の視野に重畳されて表示されるので、その装着者は、測定範囲を容易に把握できる。その測定範囲は、装着者の視野に対応したものである。すなわち、装着者が向いた方向が測定範囲となるので、装着者のどの方向を向いていたとしても、測定範囲を容易に把握できる。この際、異音判断手段によって、測定音が異音であると判断された場合には、そのことを示した画像が装着者の視野に重畳して表示されるので、異音がどの範囲で発生しているのかを容易に把握できる。さらに、測定範囲及び異音を示した画像はヘッドマウントディスプレイに実物に重畳して表示されるので、手を使って作業をするのに支障がない。
【0012】
また、請求項2の異音診断システムによれば、撮像手段が、装着者の頭部の動きに連動させることによって、装着者の視野に対応した範囲を撮像する。そして、測定音が異音である場合には、撮像手段が撮像した画像に含まれている物に対応付けて、画像生成手段が生成した画像が異音画像記憶手段に記憶される。表示手段は、その異音画像記憶手段に記憶されている画像を表示する。その画像は、撮像手段が撮像した画像に含まれている物に対応付けられたものである。したがって、表示手段が表示する画像を視認することによって、いつでも、どの物から異音が発生していたのかを特定できる。
【0013】
また、請求項3の異音診断システムによれば、基準音記憶手段には、異音が発生する可能性がある部位が複数ある検査対象物について、基準音として、各部位に対する各異音が、それぞれの部位に対応付けて記憶されている。また、異音判断手段は、基準音記憶手段に記憶されている各異音と測定音とを比較することによって、測定音が異音であるか否かを判断するとともに、異音であると判断する場合には、その異音が検査対象物のどの部位から発生しているのかも判断する。そして、画像生成手段は、異音判断手段によって異音が発生していると判断された部位に対応した画像を生成する。これにより、検査対象物のどの部位から異音が発生しているのかを容易に把握できる。
【0014】
また、請求項4の異音診断システムによれば、目印画像記憶手段には、異音が発生する可能性がある部位が複数ある検査対象物におけるそれら部位の位置を示した目印画像が記憶されている。そして、ヘッドマウントディスプレイは、撮像手段が撮像した画像における検査対象物に相当する画像の位置に基づいて、検査対象物と重なるように目印画像記憶手段に記憶されている目印画像を表示する。したがって、検査対象物の異音が発生する可能性がある各部位を検査しようとする装着者は、部位の位置を示した目印画像が検査対象物に重畳されて表示されるので、どの部位を検査すればよいのか容易に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】異音診断システム50の概略構成を示した図である。
【図2】第一実施形態の異音診断システム50が適用される場面を説明するための図である。
【図3】ヘッドマウントディスプレイ1の電気的及び光学的構成を示す説明図である。
【図4】管理サーバ300の電気的構成を示す説明図である。
【図5】HDD324に記憶されている基準音を示した図である。
【図6】第一実施形態のヘッドマウントディスプレイ1の制御部110が実行する処理を示したフローチャートである。
【図7】第一実施形態の管理サーバ300の制御部320が実行する処理を示したフローチャートである。
【図8】ヘッドマウントディスプレイ1に、測定範囲502を示した測定範囲画像600が表示されていることを示した図である。
【図9】ヘッドマウントディスプレイ1に、正常画像601が検査対象物501と重なるように表示されていることを示した図である。
【図10】ヘッドマウントディスプレイ1に、異音画像602が検査対象物501と重なるように表示されていることを示した図である。
【図11】HDD324に、検査対象物501ごとに正常品か不良品かが対応付けられて記憶されていることを示した図である。
【図12】HDD324に、各部位に対する各異音の周波数スペクトルをそれぞれ異音スペクトルとして記憶されていることを示した図である。
【図13】第二実施形態の異音診断システム50が適用される場面を説明するための図である。
【図14】フラッシュメモリ102に記憶されている目印画像900を示した図である。
【図15】第二実施形態のヘッドマウントディスプレイ1の制御部110が実行する処理を示したフローチャートである。
【図16】図15のフローチャート中の目印画像表示処理のサブルーチンを示したフローチャートである。
【図17】第二実施形態の管理サーバ300の制御部320が実行する処理を示したフローチャートである。
【図18】ヘッドマウントディスプレイ1に、ハンマー700で叩くように指示する画像が表示されていることを示した図である。
【図19】ヘッドマウントディスプレイ1に、叩かれたボルト811〜818の位置に正常画像601を重ねて表示されていることを示した図である。
【図20】ヘッドマウントディスプレイ1に、叩かれたボルト811〜818の位置に異音画像602を重ねて表示されていることを示した図である。
【図21】各ボルト811〜818が正常に締結されているか否かを示した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第一実施形態)
以下、本発明に係る異音診断システムの第一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の異音診断システム50の概略構成を示した図である。図1に示すように、異音診断システム50は、ヘッドマウントディスプレイ1と、管理サーバ300とをネットワーク302を介して接続して構成している。そして、ヘッドマウントディスプレイ1は装着者51に装着される。
【0017】
図2は、本実施形態の異音診断システム50が適用される場面を説明するための図である。図2に示すように、ベルト状の検査対象物製造ライン500に自動車のエンジンなど同種の複数の検査対象物501a〜501d・・・(以下、これらを総称するときは検査対象物501という。)が載せられている。検査対象物製造ライン500は長手方向に可動し、それに伴って、検査対象物501が移動している。それら検査対象物501の各々には、外部に識別情報が付されているとともに、内部には可動部が備えられている。そして、その可動部が正常に可動するかを検査するために、その可動部が試験的に可動している。そして検査対象物製造ライン500の脇において、ヘッドマウントディスプレイ1を装着した装着者51が、検査員として、検査対象物501の可動部が正常に可動しているのかを検査している。その検査方法に関して、異音診断システム50は、検査対象物501の可動部の可動音を測定音として取得し、その測定音が正常音であるか否かを判定し、その判定結果をヘッドマウントディスプレイ1に表示する。そして装着者51は、測定音が異音であると判定された検査対象物501に対して、不良品であることを示したシールを貼付している。以下、異音診断システム50の詳細について説明する。
【0018】
先ずヘッドマウントディスプレイ1の外観構成について図2を参照して説明する。ヘッドマウントディスプレイ1は、内部又は外部に記憶されている各種情報を画像信号に変換し、この画像信号に基づいて生成した画像光(以下、「画像光」という。)を装着者51の眼に導いて走査する光走査部10(図3参照)を備え、装着者51が頭部に装着した状態で光走査部10を動作させることによって、画像光を装着者51の網膜上で2次元方向に走査させることにより、装着者51に情報に対応する画像を視認させることができるように構成している。なお、このヘッドマウントディスプレイ1の具体的構成については、後に詳述する。
【0019】
また、このヘッドマウントディスプレイ1は、画像を表示している最中であっても装着者51の視野の中で、その画像を表示している領域を含めて、装着者51が外界を視認できるように構成している。すなわち、このヘッドマウントディスプレイ1は、実物に重畳して画像を表示するものであり、外光を透過しつつ、情報に応じた画像光を装着者51の眼に投射するシースルー型のヘッドマウントディスプレイである。
【0020】
また、本実施形態のヘッドマウントディスプレイ1は、そのフレームに装着者51の視野に対応した範囲を撮像する撮像手段としてのCCDセンサ2を備えている。このCCDセンサ2は、不良品と判定された検査対象物501(識別情報)を撮像するためのものである。このCCDセンサ2により装着者51の頭部の動きに連動して装着者51の視野に対応した範囲を撮像することができる。なお、図2に示すように、ヘッドマウントディスプレイ1は、外界の明るさを検出する輝度センサ8と、CCDセンサ2の撮像範囲を照らすLED3とを備えており、輝度センサ8により外界の明るさが所定の明るさを下回ったことが検知されたときに、LED3がCCDセンサ2の撮像範囲を照らすこととなる。
【0021】
また、ヘッドマウントディスプレイ1のフレームの左右には、指向性マイク5R、5Lが固定されている。その指向性マイク5R、5Lは、一定の範囲から発生した音を測定音として取得し、それ以外の範囲から発生した音については測定音の波形に影響が出ないように音圧レベルを下げて取得する。すなわち、所定の指向性を有している。上述したように指向性マイク5R、5Lは、ヘッドマウントディスプレイ1のフレームの左右に固定されているので、装着者51の頭部の動きに連動される。このようにして、指向性マイク5R、5Lの二つ合わせた統合指向性(以下、測定範囲という。)は、装着者51の視野に対応させている。具体的には、図2に示すように、装着者51の正面に検査対象物501を置いたときに、その検査対象物501から発生した可動音を取得し、かつ、それ以外の検査対象物501から発生した可動音については、その音圧レベルを下げて取得するように、測定範囲502が定められている。すなわち、指向性マイク5R、5Lによって、装着者51の正面にある検査対象物501からの可動音のみ取得するのと同等の効果がある。なお、上述したCCDセンサ2の撮像範囲は測定範囲502と同等に設定されている。なお、指向性マイク5R、5Lは、本発明の「音取得手段」に相当する。
【0022】
ここで、本実施形態に係るヘッドマウントディスプレイ1の電気的構成等について、図3を参照して説明する。図3は、本実施形態に係るヘッドマウントディスプレイ1の電気的及び光学的構成を示す説明図である。
【0023】
図3に示すように、このヘッドマウントディスプレイ1は、当該ヘッドマウントディスプレイ1全体の動作を統括制御する制御部110と、この制御部110から供給される画像信号に基づいて生成した画像光を2次元的に走査することにより画像を表示することによって、画像信号に応じた画像を視認させる光走査部10とを備えている。
【0024】
光走査部10は、この制御部110から供給される画像信号をドットクロック毎に読み出し、読み出した映像信号に応じて強度変調された画像光を生成して出射する画像光生成部20を備えている。さらに、その画像光生成部20と装着者51の眼Eとの間には、画像光生成部20で生成され、光ファイバ100を介して出射されるレーザビーム(画像光)を平行光化するコリメート光学系61と、このコリメート光学系61で平行光化された画像光を画像表示のために水平方向(第1方向)に往復走査する第1光走査部として機能する水平走査部70と、水平走査部70で水平方向に走査された画像光を垂直方向(第1方向と略直交する第2方向)に往復走査する第2光走査部として機能する垂直走査部80と、水平走査部70と垂直走査部80との間に設けられたリレー光学系75と、このように水平方向と垂直方向に走査(2次元的に走査)された画像光をハーフミラー95を介して瞳孔Eaへ出射するためのリレー光学系90とが設けられている。
【0025】
また、画像光生成部20には、パーソナルコンピュータ(図示略)等の外部装置から供給される画像信号が、インターフェース104と制御部110とを介して入力され、それに基づいて画像を合成するための要素となる各信号等を発生する信号処理回路21が設けられ、この信号処理回路21において、青(B)、緑(G)、赤(R)の各画像信号22a〜22cが生成され、出力される。また、信号処理回路21は、水平走査部70で使用される水平駆動信号23と、垂直走査部80で使用される垂直駆動信号24とをそれぞれ出力する。
【0026】
さらに、画像光生成部20は、信号処理回路21からドットクロック毎に出力される3つの画像信号(B,R,G)22a〜22cをそれぞれ画像光にする画像光出力部として機能する光源部30と、これらの3つの画像光を1つの画像光に結合して任意の画像光を生成するための光合成部40を備えている。
【0027】
光源部30は、青色の画像光を発生させるBレーザ34及びBレーザ34を駆動するBレーザドライバ31と、緑色の画像光を発生させるGレーザ35及びGレーザ35を駆動するGレーザドライバ32と、赤色の画像光を発生させるRレーザ36及びRレーザ36を駆動するRレーザドライバ33とを備えている。なお、各レーザ34、35、36は、例えば、半導体レーザや高調波発生機構付き固体レーザとして構成することが可能である。なお、半導体レーザを用いる場合は駆動電流を直接変調して、画像光の強度変調を行うことができるが、固体レーザを用いる場合は、各レーザそれぞれに外部変調器を備えて画像光の強度変調を行う必要がある。
【0028】
光合成部40は、光源部30から入射する画像光を平行光にコリメートするように設けられたコリメート光学系41、42、43と、このコリメートされた画像光を合成するためのダイクロイックミラー44、45、46と、合成された画像光を光ファイバ100に導く結合光学系47とを備えている。
【0029】
各レーザ34、35、36から出射したレーザ光は、コリメート光学系41、42、43によってそれぞれ平行化された後に、ダイクロイックミラー44、45、46に入射される。その後、これらのダイクロイックミラー44、45、46により、各画像光が波長に関して選択的に反射・透過される。
【0030】
具体的には、Bレーザ34から出射した青色画像光は、コリメート光学系41によって平行光化された後に、ダイクロイックミラー44に入射される。Gレーザ35から出射した緑色画像光は、コリメート光学系42を経てダイクロイックミラー45に入射される。Rレーザ36から出射した赤色画像光は、コリメート光学系43を経てダイクロイックミラー46に入射される。
【0031】
それら3つのダイクロイックミラー44、45、46にそれぞれ入射した3原色の画像光は、波長選択的に反射または透過して結合光学系47に達し、集光され光ファイバ100へ出力される。
【0032】
水平走査部70及び垂直走査部80は、光ファイバ100から入射された画像光を画像として投影可能な状態にするために、水平方向と垂直方向に走査して走査画像光とするものである。
【0033】
水平走査部70は、画像光を水平方向に走査するための反射面を有する共振型偏向素子71と、この共振型偏向素子71を共振させ、共振型偏向素子71の反射面を揺動させる駆動信号を発生する駆動信号発生器としての水平走査駆動回路72と、共振型偏向素子71から出力される変位信号に基づいて、共振型偏向素子71の反射面の揺動範囲及び揺動周波数等の揺動状態を検出する水平走査角検出回路73とを有している。
【0034】
本実施形態において、水平走査角検出回路73は、検出した共振型偏向素子71の揺動状態を示す信号を制御部110へ入力するようにしている。
【0035】
垂直走査部80は、画像光を垂直方向に走査するための偏向素子81と、この偏向素子81を駆動させる垂直走査制御回路82と、この垂直走査制御回路82による反射面の揺動範囲及び揺動周波数等の揺動状態を検出する垂直走査角検出回路83とを備えている。
【0036】
また、水平走査駆動回路72と垂直走査制御回路82は、信号処理回路21から出力される水平駆動信号23と垂直駆動信号24に基づいてそれぞれ駆動し、垂直走査角検出回路83は、検出した偏向素子81の揺動状態を示す信号を制御部110へ入力するようにしている。
【0037】
そして、後に詳述する制御部110は、信号処理回路21の動作を制御することによって、これら水平駆動信号23と垂直駆動信号24とを調整することによって、水平走査部70と垂直走査部80に画像光の走査角を変更させて、表示する画像の輝度を調整するようにしている。
【0038】
こうして変更された走査角度は水平走査角検出回路73および垂直走査角検出回路83からの検出信号に基づいて制御部110により検出され、信号処理回路21と水平走査駆動回路72とを介して水平駆動信号23にフィードバックされると共に、信号処理回路21と垂直走査制御回路82とを介して垂直駆動信号24にフィードバックされる。
【0039】
また、水平走査部70と垂直走査部80との間での画像光を中継するリレー光学系75を備えており、共振型偏向素子71によって水平方向に走査された光は、リレー光学系75によって偏向素子81の反射面に収束され、偏向素子81によって垂直方向に走査されて、2次元的に走査された走査画像光として、リレー光学系90へ出射される。
【0040】
リレー光学系90は、正の屈折力を持つレンズ系91、94を有している。垂直走査部80から出射された表示用の走査画像光は、レンズ系91によって、それぞれの画像光がその画像光の中心線を相互に略平行にされ、かつそれぞれ収束画像光に変換される。そして、レンズ系94によってそれぞれほぼ平行な画像光となると共に、これらの画像光の中心線が装着者51の瞳孔Eaに収束するように変換される。
【0041】
なお、本実施形態においては、光ファイバ100から入射された画像光を、水平走査部70で水平方向に走査した後、垂直走査部80によって垂直方向に走査することとしたが、水平走査部70と垂直走査部80との配置を入れ替え、垂直走査部80によって垂直方向に走査した後、水平走査部70で水平方向に走査するようにしてもよい。
【0042】
また、制御部110は、CPU101と、不揮発性メモリであるフラッシュメモリ(図中においてはFlash Memoryと示す。)102と、RAM103とを備えている。そして、これらCPU101、フラッシュメモリ102、RAM103は、データ通信用のバスにそれぞれ接続されており、このデータ通信用のバスを介して各種情報の送受信を行う。
【0043】
また、この制御部110は、当該ヘッドマウントディスプレイ1の電源スイッチSW、検査対象物501を撮像するCCDセンサ2、外界の明るさ(輝度)を検知する輝度センサ8、輝度センサ8により外界の明るさが所定の明るさを下回ったことが検知されたときに、CCDセンサ2の撮像範囲を照らすLED3、装着者51によって操作可能な操作スイッチ7、他の装置との通信を制御するための通信制御回路9、パーソナルコンピュータ等の外部装置と接続可能なインターフェース104とも接続されている。
【0044】
CPU101は、フラッシュメモリ102に記憶されている各種情報処理プログラムを実行することにより、ヘッドマウントディスプレイ1を構成する図示しない各種回路を動作させて、ヘッドマウントディスプレイ1が備える各種機能を実行させる演算処理装置である。
【0045】
フラッシュメモリ102は、ヘッドマウントディスプレイ1により表示する画像の表示制御を行う際に画像光生成部20、水平走査部70、垂直走査部80等を動作させるための情報処理プログラム等、制御部110がヘッドマウントディスプレイ1全体の動作を統括制御するためにCPU101により実行される各種情報処理プログラムを記憶している。
【0046】
ここで、本実施形態に係る管理サーバ300の電気的構成等について、図4を参照して説明する。図4は、本実施形態に係る管理サーバ300の電気的構成を示す説明図である。
【0047】
図4に示すように、この管理サーバ300は、当該管理サーバ300全体の動作を統括制御する制御部320と、外部装置との通信を行うための通信制御回路325とを備えている。
【0048】
制御部320は、CPU321と、各種プログラム等が記憶されたROM322と、RAM323と、ハードディスクドライブ(図中においてはHDDと示し、以下、HDDという。)324とを備えている。そして、これらCPU321、ROM322、RAM323、HDD324は、データ通信用のバスにそれぞれ接続されており、このデータ通信用のバスを介して各種情報の送受信を行う。また、この制御部320は、他の装置との通信を制御するための通信制御回路325とも接続されている。そして制御部320は、通信制御回路325を介してヘッドマウントディスプレイ1と通信を行う。
【0049】
CPU321は、ROM322に記憶されている各種情報処理プログラムを実行することにより、管理サーバ300を構成する図示しない各種回路を動作させて、管理サーバ300が備える各種機能を実行させる演算処理装置である。ROM322は、制御部320が管理サーバ300全体の動作を統括制御するためにCPU321により実行される各種情報処理プログラムを記憶している。
【0050】
HDD324は、各種のデータが記憶されている。具体的には、HDD324には、検査対象物501の可動部の可動音が正常の場合におけるその可動音(以下、基準音という)が記憶されている。図5は、HDD324に記憶されている基準音を示した図である。基準音は、複数の周波数の音が複合されている。そこで図5に示すように、基準音は、横軸が周波数で、縦軸が各周波数に対応した音圧レベルからなる周波数スペクトルとして記憶されている。なお図5では、一定の音圧レベル(以下、基準レベルという。)以上の周波数に対応したスペクトルが示している。図5に示すように、基準音は、周波数fa、fb、fcの音の音圧レベルが基準レベル以上となっている。この基準音は、指向性マイク5R、5Lが取得した測定音が正常音であるか否かを判定するために用いられる。なおHDD324は、本発明の「基準音記憶手段」に相当する。
【0051】
続いて、検査対象物501が正常に可動するか否かを判定するための、ヘッドマウントディスプレイ1の制御部110と管理サーバ300の制御部320が実行する正常判定処理について図面を参照して説明する。図6は、ヘッドマウントディスプレイ1の制御部110が実行する処理を示したフローチャートである。また、図7は、管理サーバ300の制御部320が実行する処理を示したフローチャートである。なお、正常判定処理は装着者51によって、ヘッドマウントディスプレイ1の操作スイッチ7に設けられたスタートスイッチが操作されたときに開始される。
【0052】
先ず、図8に示すように、ヘッドマウントディスプレイ1の制御部110は、指向性マイク5R、5Lによる測定範囲502(図2参照)を示した測定範囲画像600を表示する(図6のS10)。装着者51は検査対象物501に重畳して表示されている測定範囲画像600を視認することによって、これからどの検査対象物501を検査するのかを把握できる。続いて制御部110は、CCDセンサ2によって測定範囲502にある検査対象物501を撮像する(図6のS11)。続いて制御部110は、指向性マイク5R、5Lによって、測定範囲502にある検査対象物501から発生する可動音を測定音として取得する(図6のS12)。そして制御部110は、CCDセンサ2による撮像画像と、測定音とをネットワーク302を介して管理サーバ300に送信する(図6のS13)。
【0053】
管理サーバ300の制御部320は、その撮像画像と測定音とを、通信制御回路325にて受信する(図7のS30)。そして制御部320は、受信した測定音を高速フーリエ変換(FFT)して、周波数スペクトルに変換する(図7のS31)。制御部320は、その測定音の周波数スペクトルと、HDD324に記憶されている基準音の周波数スペクトル(図5参照)とを比較して、測定音が正常音であるか否かを判定する(図7のS32)。具体的には、測定音の周波数スペクトルにおいて、図5に示す周波数fa、fb、fc以外の周波数で基準レベル以上の音圧レベル(以下、異音スペクトルという。)があるかを判定する。すなわち、異音スペクトルがない場合には測定音は正常音であると判定し、異音スペクトルがある場合には測定音は異音であると判定する(図7のS32)。なお、S32は本発明の「異音判断手段」に相当する処理である。そして制御部320はその判定結果を、ネットワーク302を介して、ヘッドマウントディスプレイ1の制御部110に送信する(図7のS33)。
【0054】
ヘッドマウントディスプレイ1の制御部110は、測定音が正常音であるか否かの判定結果を受信する(図6のS14)。そして、その判定結果が正常音であることを示す結果である場合には(図6のS15:YES)、正常であることを示す青色の正常画像601を生成して、図9に示すように、その正常画像601を検査対象物501と重なるように表示する(図6のS16)。これによって、装着者51はその検査対象物501が正常に可動することを容易に把握できる。一方制御部110は、判定結果が異音であることを示す結果である場合には(図6のS15:NO)、異音であることを示す赤色の異音画像602を生成して、図10に示すように、その異音画像602を検査対象物501と重なるように表示する(図6のS17)。これによって、装着者51はその検査対象物501から異音が発生していることを容易に把握でき、その検査対象物501は不良品であることを示すシールをその検査対象物501に貼付できる。そして、後にそのシールが貼付されている検査対象物501を回収、点検することができる。ヘッドマウントディスプレイ1の制御部110は、装着者51によって操作スイッチ7に設けられた終了スイッチが操作されるまで、上述した処理(図6のS10〜S17)を実行する(図6のS18:NO)。そして、終了スイッチが操作された場合には(図6のS18:YES)、終了通知を管理サーバ300に送信し(S19)、図6のフローチャートに示した処理を終了する。なお、S16及びS17は本発明の「画像生成手段」に相当する処理である。
【0055】
一方、管理サーバ300の制御部320は、図7のS33の処理の後、S30にて受信した撮像画像を、S32の判定結果と対応付けてHDD324に記憶する(図7のS34)。図11は、そのときのHDD324に記憶される内容を示した図である。図11に示すように、検査対象物501ごとに正常品か不良品かが対応付けられて記憶されていることがわかる。そして、ディスプレイ等の表示手段にこの情報を表示させることによって、各検査対象物501が正常品か不良品であるかを、何時でも確認することができる。なお、S34は本発明の「異音画像記憶手段」に相当する処理である。管理サーバ300の制御部320は、装着者51によって操作スイッチ7に設けられた終了スイッチが操作され終了通知が受信されるまで、上述した処理(図7のS30〜S34)を実行する(図7のS35:NO)。そして、終了スイッチが操作され終了通知が受信された場合には(図7のS35:YES)、図7のフローチャートに示した処理を終了する。
【0056】
以上、本実施形態の異音診断システム50によれば、測定音が取得されている測定範囲502がヘッドマウントディスプレイ1の装着者51の視野に重畳されて表示されるので、その装着者51は、測定範囲502を容易に把握できる。その測定範囲502は、装着者51の視野に対応したものである。すなわち、装着者51が向いた方向が測定範囲502となるので、装着者51のどの方向を向いていたとしても、測定範囲502を容易に把握できる。この際、測定音が異音であると判断された場合には、そのことを示した異音画像602が装着者51の視野に重畳して表示されるので、異音が検査対象物501で発生しているのかを容易に把握できる。さらに、測定範囲502及び異音画像602はヘッドマウントディスプレイ1に検査対象物501に重畳して表示されるので、装着者51は、手を使って作業をするのに支障がない。
【0057】
また、異音診断システム50によれば、CCDセンサ2が撮像した撮像画像を、検査対象物501が正常品か不良品かを対応付けて記憶される。そして、ディスプレイ等の表示手段にこの撮像画像を表示させることによって、各検査対象物501が正常品か不良品であるかを、何時でも確認することができる。
【0058】
(変形例)
第一実施形態では、検査対象物501が正常品か不良品かを判定していたが、不良品である場合に、その検査対象物501のどの部位が原因なのかまでは特定していなかった。検査対象物によっては、異音が発生する可能性がある部位が複数ある場合もある。そこで、このような検査対象物について、基準音として、各部位に対する各異音を、それぞれの部位に対応付けてHDD324に記憶する。例えば、図12に示すように、各部位に対する各異音の周波数スペクトルをそれぞれ異音スペクトルとして記憶する。そして、管理サーバ300の制御部320は、図7のS32において、測定音の周波数スペクトルについて、HDD324に記憶されている異音スペクトルを有しているかを判定する。異音スペクトルを有している場合には、その異音スペクトルがどの部位に対するものかを示した情報を、ヘッドマウントディスプレイ1の制御部110に送信する。ヘッドマウントディスプレイ1の制御部110は、図13に示すように、異音が発生していると判断された部位に対応した画像を生成して表示する。これにより、検査対象物のどの部位から異音が発生しているのかを容易に把握できる。
【0059】
(第二実施形態)
次に、本発明に係る異音診断システムの第二実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態の異音診断システム50の構成は、第一実施形態のそれと同じである(図1、図3、図4参照。)。ただし、ヘッドマウントディスプレイ1の制御部110が実行する処理、管理サーバ300の制御部320が実行する処理、及び、管理サーバ300のHDD324に記憶されている情報が第一実施形態とは異なっている。また、本実施形態の異音診断システム50が適用される場面は、第一実施形態とは異なっている。以下、本実施形態の異音診断システム50について、第一実施形態と異なる部分を中心にして説明する。
【0060】
先ず、本実施形態の異音診断システム50が適用される場面について図13を参照して説明する。図13に示すように、本実施形態の異音診断システム50は、車両800の車輪部分810のボルト811〜818が緩んでいないか否かを診断する際に適用される。具体的には、ヘッドマウントディスプレイ1を装着した装着者51は、ハンマー700にて、各ボルト811〜818を叩いていく。そして、異音診断システム50は、そのときに発生する音を測定音として取得して、その測定音について、ボルトが緩んでいないことを示した正常音であるか否かを判定し、その判定結果をヘッドマウントディスプレイ1に表示する。以下、本実施形態の異音診断システム50の詳細について説明する。
【0061】
本実施形態のヘッドマウントディスプレイ1の構成は、図3に示す第一実施形態と同じである。ただし、図13に示すように、装着者51の正面に車輪部分810を置いたときに、その車輪部分810の方向から発生した音を取得し、かつ、それ以外の方向から発生した音については、その音圧レベルを下げて取得するように、指向性マイク5R、5Lの測定範囲502が定められている。すなわち、指向性マイク5R、5Lによって、装着者51の正面にある車輪部分810からの音のみ取得するのと同等の効果がある。なお、CCDセンサ2の撮像範囲は測定範囲502と同等に設定されている。
【0062】
また、制御部110のフラッシュメモリ102に記憶されている情報が第一実施形態のそれとは異なっている。具体的には、装着者51が車輪部分810の叩く目印となる目印画像900が記憶されている。図14は、その目印画像900を示した図である。なお、説明の便宜のために、図14には目印画像900の基準点X2と車輪部分810の基準点X1が一致するように車輪部分810も示している。図14に示すように、目印画像900は車輪部分810と重ねたときに、ボルト811〜818の位置を示したボルト位置画像901〜908を含んでいる。ボルト位置画像901はボルト811に対応し、ボルト位置画像902はボルト812に対応し、ボルト位置画像903はボルト813に対応し、ボルト位置画像904はボルト814に対応している。また、ボルト位置画像905はボルト815に対応し、ボルト位置画像906はボルト816に対応し、ボルト位置画像907はボルト817に対応し、ボルト位置画像908はボルト818に対応している。なお、フラッシュメモリ102は本発明の「目印画像記憶手段」に相当する。なお、ヘッドマウントディスプレイ1他の構成については、第一実施形態と同じなので説明を省略する。
【0063】
一方、本実施形態の管理サーバ300の構成は、図4に示す第一実施形態と同じである。ただし、HDD324に記憶されている情報が第一実施形態のそれとは異なっている。具体的にHDD324には、車輪部分810の基準点X1に対する各ボルト811〜818の位置情報が記憶されている。また、HDD324には、各ボルト811〜818に対して、正常に締結されているか否かが診断された場合に、診断済み情報が記憶される記憶領域が設けられている。なお、管理サーバ300の他の構成については、第一実施形態と同じなので説明を省略する。
【0064】
続いて、ボルト811〜818が正常に締結されているか否かを判定するための、ヘッドマウントディスプレイ1の制御部110と管理サーバ300の制御部320が実行する正常判定処理について図面を参照して説明する。図15は、ヘッドマウントディスプレイ1の制御部110が実行する処理を示したフローチャートである。また、図16は、図15のフローチャート中の目印画像表示処理のサブルーチンを示したフローチャートである。また、図17は、管理サーバ300の制御部320が実行する処理を示したフローチャートである。なお、正常判定処理は装着者51によって、ヘッドマウントディスプレイ1の操作スイッチ7に設けられたスタートスイッチが操作されたときに開始される。
【0065】
先ずヘッドマウントディスプレイ1の制御部110は、フラッシュメモリ102に記憶されている目印画像900を車輪部分810に重ねて表示する目印画像表示処理を実行する(図15のS41)。詳細は図16の目印画像表示処理のサブルーチンのフローチャートに従って実行する。以下、目印画像表示処理を説明する。
【0066】
先ずCCDセンサ2によって車輪部分810を撮像する(図16のS411)。続いて、その撮像画像に写っている車輪部分810に相当する画像を抽出し、その抽出した画像から車輪部分810の基準点X1を検出する(図16のS412)。そしてその基準点X1とフラッシュメモリ102に記憶されている目印画像900の基準点X2とが一致するように、目印画像900を表示し(図16のS413)、このサブルーチンを終了する。これにより、目印画像900が車輪部分810に重ねて表示されることになる。すなわち装着者51は、自身の頭が多少動いたとしても、目印画像900は車輪部分810に重ねて表示され続けるので、装着者51が誤った位置をハンマー700で叩いてしまうことを防止できる。尚、基準点X1は車輪に設けられたマーカでも良い。
【0067】
説明を図15のフローチャートの処理に戻り、S411にて撮像した撮像画像に目印画像900を重ねて表示した画像(以下、重畳画像という。)を、管理サーバ300の制御部320に送信する(図15のS42)。
【0068】
管理サーバ300の制御部320は、その重畳画像を受信する(図17のS61)。これにより制御部320は、装着者51がボルト811〜818の締結状態を診断する準備ができていることを把握できる。続いて制御部320は、上記診断済み情報がHDD324に記憶されていないボルト811〜818のいずれかを選択する(図17のS62)。その選択方法は、ボルト811、ボルト812・・・というように予め定めた順番に従って選択しても良いし、乱数を用いてランダムに選択しても良い。続いて制御部320は、S62にて選択したボルト811〜818の位置情報をHDD324から読み出す(測定点検出)(図17のS63)。そして、その位置情報をヘッドマウントディスプレイ1の制御部110に送信する(図17のS64)。
【0069】
ヘッドマウントディスプレイ1の制御部110は、その位置情報を受信し(図15のS43)、図18に示すように、その位置情報で示される位置をハンマー700で叩くように指示する画像を表示する(図15のS44)。装着者51は、その画像を視認することによって、どの位置をハンマー700で叩けばよいのか把握できる。そして装着者51によってボルト811〜818がハンマー700で叩かれた場合には、そのときに発生した音を測定音として指向性マイク5R、5Lで取得する(図15のS45)。続いて、その測定音を管理サーバ300の制御部320に送信する(図15のS46)。
【0070】
管理サーバ300の制御部320は、その測定音を通信制御回路325にて受信する(図17のS65)。そして制御部320は、受信した測定音を高速フーリエ変換(FFT)して、周波数スペクトルに変換する(図17のS66)。制御部320は、その測定音の周波数スペクトルと、HDD324に記憶されている基準音の周波数スペクトル(図5参照)とを比較して、測定音が正常音であるか否かを判定する(図17のS67)。具体的には、測定音の周波数スペクトルにおいて異音スペクトルがあるかを判定する。すなわち、異音スペクトルがない場合には測定音は正常音であると判定し、異音スペクトルがある場合には測定音は異音であると判定する(図17のS67)。なお、S67は本発明の「異音判断手段」に相当する処理である。そして制御部320はその判定結果を、ネットワーク302を介して、ヘッドマウントディスプレイ1の制御部110に送信する(図17のS68)。
【0071】
ヘッドマウントディスプレイ1の制御部110は、測定音が正常音であるか否かの判定結果を受信する(図15のS47)。そして、その判定結果が正常音であることを示す結果である場合には(図15のS48:YES)、正常であることを示す青色の正常画像601を生成して、図19に示すように、その正常画像601を叩かれたボルト811〜818の位置に重ねて表示する(図15のS49)。これによって、装着者51はそのボルト811〜818が正常に締結されていることを容易に把握できる。一方制御部110は、判定結果が異音であることを示す結果である場合には(図15のS48:NO)、異音であることを示す赤色の異音画像602を生成して、図20に示すように、その異音画像602を叩かれたボルト811〜818の位置に重ねて表示する(図15のS50)。これによって、装着者51はそのボルト811〜818から異音が発生していることを容易に把握でき、そのボルト811〜818は緩んでいることを把握できる。したがって、装着者51は、ボルト811〜818を正常に締結し直すことができる。ヘッドマウントディスプレイ1の制御部110は、装着者51によって操作スイッチ7に設けられた終了スイッチが操作されるまで、上述した処理(図15のS41〜S50)を実行する(図15のS51:NO)。そして、終了スイッチが操作された場合には(図15のS51:YES)、終了通知を管理サーバ300に送信し(S52)、図15のフローチャートに示した処理を終了する。なお、S49及びS50は本発明の「画像生成手段」に相当する処理である。
【0072】
一方、管理サーバ300の制御部320は、図17のS68の処理の後、S61にて受信した重畳画像における叩かれたボルト811〜818の位置に、S67の判定結果を重ねてHDD324に記憶する(図17のS69)。図21は、そのときのHDD324に記憶される内容を示した図である。図21に示すように、ボルト811〜818ごとに正常に締結されているか否かが対応付けられて記憶されていることがわかる。そして、ディスプレイ等の表示手段にこの情報を表示させることによって、各ボルト811〜818が正常に締結されているか否かを、何時でも確認することができる。なお、S69は本発明の「異音画像記憶手段」に相当する処理である。続いて、S62で選択したボルト811〜818に対して、診断済み情報をHDD324に記憶する(図17のS69)。管理サーバ300の制御部320は、装着者51によって操作スイッチ7に設けられた終了スイッチが操作されるまで、上述した処理(図17のS61〜S70)を実行する(図17のS70:NO)。そして、終了スイッチが操作され終了通知が受信された場合には(図17のS70:YES)、図17のフローチャートに示した処理を終了する。
【0073】
以上、本実施形態の異音診断システム50によれば、車輪部分810に重ねて目印画像900がヘッドマウントディスプレイ1に表示される。その目印画像900は、各ボルト811〜818に対応したボルト位置画像901〜908を含んでいる。したがって装着者51は、どの部位をハンマー700で叩けばすればよいのか容易に把握できる。また、装着者51の頭が多少動いたとしても、目印画像900は車輪部分810に重ねて表示され続けるので、装着者51が誤った位置をハンマー700で叩いてしまうことを防止できる。さらに、車輪部分810のハンマー700で叩く位置を示した画像もヘッドマウントディスプレイ1に表示されるので、装着者51は、どのボルト811〜818を叩けばよいのかを容易に把握できる。
【0074】
また、ボルト811〜818を叩いたときに発生する測定音が異音であると判断された場合には、そのことを示した異音画像602が装着者51の視野に重畳して表示されるので、ボルト811〜818が緩んでいることを容易に把握できる。さらに、目印画像900及び異音画像602はヘッドマウントディスプレイ1に車輪部分810に重畳して表示されるので、装着者51は、手を使って作業をするのに支障がない。
【0075】
また、異音診断システム50によれば、重畳画像における叩かれたボルト811〜818の位置に、S67の判定結果が重ねて記憶される。そして、ディスプレイ等の表示手段にこの情報を表示させることによって、各ボルト811〜818が正常に締結されているか否かを、何時でも確認することができる。
【0076】
なお、本発明に係る異音診断システムは、上記実施形態に限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々変形してもよい。例えば、上記実施形態では、測定音が正常音か異音かを、測定音の周波数スペクトルに異音スペクトルの有無によって判断していた。さらに正確に測定音が正常音か異音かを判断するために、測定音の周波数スペクトルの基準レベル以上の周波数が、基準音のそれ(fa、fb、fc)と近似しているかも判断してもよい。すなわち、測定音の周波数スペクトルの基準レベル以上の周波数が、基準音のそれ(fa、fb、fc)と近似している場合且つ測定音の周波数スペクトルに異音スペクトルが無い場合に、測定音は正常音と判断する。それ以外は異音と判断する。また、上記実施形態では、正常音を基準音としていたが、反対に、異音を基準音としてもよい。この場合、異音の周波数スペクトルと、測定音の周波数スペクトルを比較して、測定音の周波数スペクトルが異音の周波数スペクトルと近似しているときに、測定音は異音と判断する。それ以外は正常音と判断する。
【0077】
また、上記実施形態では、正常判定処理の一部を管理サーバ300が実行していたが、ヘッドマウントディスプレイ1にて正常判定処理の全部を実行してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 ヘッドマウントディスプレイ
2 CCDセンサ(撮像手段)
5R、5L 指向性マイク(音取得手段)
50 異音診断システム
51 装着者
102 フラッシュメモリ(目印画像記憶手段)
110 制御部
300 管理サーバ
320 制御部
324 HDD(基準音記憶手段)
501 検査対象物
502 測定範囲
600 測定範囲画像
601 正常画像
602 異音画像
700 ハンマー
810 車輪部分
811〜818 ボルト
900 目印画像
S32、S67 異音判断手段
S16、S17、S49、S50 画像生成手段
S34、S69 異音画像記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実物に重畳して画像を表示するヘッドマウントディスプレイと、
前記ヘッドマウントディスプレイを装着した装着者の頭部の動きに連動させることによって、前記装着者の視野に対応した測定範囲から発生した音を測定音として取得する音取得手段と、
前記測定音が異音であるか否かを判断するための基準音を記憶する基準音記憶手段と、
前記音取得手段が取得した前記測定音と前記基準音記憶手段に記憶されている前記基準音とを比較することによって、前記測定音が異音であるか否かを判断する異音判断手段と、
前記測定範囲を示すとともに、前記異音判断手段が前記測定音を異音であると判断した場合には、異音が発生していることを示した画像を生成する画像生成手段とを備え、
前記ヘッドマウントディスプレイは、前記画像生成手段が生成した画像を表示することを特徴とする異音診断システム。
【請求項2】
前記装着者の頭部の動きに連動させることによって、前記装着者の視野に対応した範囲を撮像する撮像手段と、
前記測定音が異音である場合には、前記撮像手段が撮像した画像に含まれている物に対応付けて、前記画像生成手段が生成した画像を記憶する異音画像記憶手段と、
その異音画像記憶手段に記憶されている画像を表示する表示手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の異音診断システム。
【請求項3】
前記基準音記憶手段には、異音が発生する可能性がある部位が複数ある検査対象物について、前記基準音として、前記各部位に対する各異音が、それぞれの部位に対応付けて記憶されており、
前記異音判断手段は、前記基準音記憶手段に記憶されている前記各異音と前記測定音とを比較することによって、前記測定音が異音であるか否かを判断するとともに、異音であると判断する場合には、その異音が前記検査対象物のどの部位から発生しているのかも判断し、
前記画像生成手段は、前記異音判断手段によって異音が発生していると判断された部位に対応した画像を生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の異音診断システム。
【請求項4】
異音が発生する可能性がある部位が複数ある検査対象物におけるそれら部位の位置を示した目印画像を記憶する目印画像記憶手段をさらに備え、
前記ヘッドマウントディスプレイは、前記撮像手段が撮像した画像における前記検査対象物に相当する画像の位置に基づいて、前記検査対象物と重なるように前記目印画像記憶手段に記憶されている前記目印画像を表示することを特徴とする請求項2又は3に記載の異音診断システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−197361(P2010−197361A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46101(P2009−46101)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】