説明

疎水性直鎖状分子ポリロタキサン及び架橋ポリロタキサン

【課題】有機溶剤に可溶な疎水性直鎖状分子ポリロタキサン、及びこれを用いた架橋ポリロタキサンを提供すること。
【解決手段】疎水性直鎖状分子ポリロタキサンは、環状分子と、この環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子と、この直鎖状分子の両末端に配置され上記環状分子の脱離を防止する封鎖基とを有する。直鎖状分子が疎水性である。直鎖状分子はポリカプロラクトンで、その分子量は5,000〜100,000である。環状分子はα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン又はγ−シクロデキストリンである。
架橋ポリロタキサンは、この疎水性直鎖状分子ポリロタキサンと、ポリマーを環状分子を介して結合して成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリロタキサンに係り、更に詳細には、直鎖状分子が疎水性で、有機溶剤に可溶なポリロタキサン及びこれを用いた架橋ポリロタキサンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ゲル材料は、食品、医療品、生活用品及び工業製品等に幅広く利用されており、これに用いられる高分子化合物の種類も多様であるが、構造という観点から眺めてみると、物理ゲルと化学ゲルのわずか2種類しか存在しない。
【0003】
物理ゲルは、ゼラチンや寒天などのように自然界でよく見られるゲルであり、また、生体組織の大半も多種多様な物理ゲルが占めている。
かかる物理ゲルは、高分子間に働く物理的引力相互作用によってネットワークを構成しているため、温度や溶媒に対する安定性が低い。
【0004】
一方、化学ゲルは、ネットワーク全体が共有結合で直接つながった巨大な1分子であるため、温度や溶媒に対する安定性に優れており、多方面に産業利用されている。
しかし、化学ゲルでは、架橋点が固定されているため、架橋反応において形成される不均一な構造が永久に保持され、機械強度が著しく低いという欠点があった。
【0005】
これに対し、近年では、斬新な手法を用いて物理ゲル、化学ゲルのいずれにも分類されない新しい種類のゲル、即ち「環動ゲル又はトポロジカルゲル」が提案されており、このような環動ゲルには、ポリロタキサンが用いられている。
このポリロタキサンは、環状分子(回転子:rotator)の開口部を直鎖状分子(軸:axis)で串刺し状に貫通して環状分子を直鎖状分子で包接し、且つ環状分子が脱離しないように直鎖状分子の両末端に封鎖基を配置して成るもので、かかるポリロタキサンを複数架橋して成り、環動ゲルに適用可能な架橋ポリロタキサンが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3475252号公報
【0006】
この架橋ポリロタキサンは、直鎖状分子に串刺し状に貫通されている環状分子が当該直鎖状分子に沿って移動可能(滑車効果)なために粘弾性を有し、張力が加わっても、この滑車効果によって当該張力を均一に分散させることができるので、従来の架橋ポリマーとは異なり、クラックや傷が極めて生じ難いという優れた性質を有するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、かかる従来のポリロタキサンにあっては、親水性のある水酸基を多数有しているが、水酸基がグルコース環に結合しているために有機溶剤にも殆ど溶解しない。
このため、ポリロタキサンの適用範囲が狭くなりがちであり、特に耐久性が必要される塗料や接着剤等への適用が困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、有機溶剤に可溶な疎水性直鎖状分子ポリロタキサン、及びこれを用いた架橋ポリロタキサンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、直鎖状分子として疎水性を有するものを採用することにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の疎水性直鎖状分子ポリロタキサンは、環状分子と、この環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子と、この直鎖状分子の両末端に配置され上記環状分子の脱離を防止する封鎖基とを有し、上記直鎖状分子が疎水性であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の疎水性直鎖状分子ポリロタキサンの好適形態は、上記直鎖状分子がポリカプロラクトンであることを特徴とする。
【0012】
一方、本発明の活性架橋ポリロタキサンは、上述の如き疎水性直鎖状分子ポリロタキサンと、ポリマーを上記環状分子を介して結合して成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、直鎖状分子として疎水性を有するものを採用することとしたため、有機溶剤に可溶な疎水性直鎖状分子ポリロタキサン、及びこれを用いた架橋ポリロタキサンを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の疎水性直鎖状分子ポリロタキサンにつき詳細に説明する。なお、本明細書において、「%」は特記しない限り質量百分率を表すものとする。
【0015】
上述の如く、本発明の疎水性直鎖状分子ポリロタキサンは、環状分子と、両末端に封鎖基を持つ直鎖状分子を有するものである。
また、直鎖状分子は、疎水性であり、環状分子の開口部を串刺し状に貫通することによって当該環状分子を包接しており、更に、その両末端に配置された封鎖基が包接した環状分子の脱離を防止している。
【0016】
ここで、直鎖状分子は、実質的に直鎖であればよく、回転子である環状分子が回動可能で滑車効果を発揮できるように包接できる限り、分岐鎖を有していてもよい。
また、環状分子の大きさにも影響を受けるが、その長さも環状分子が滑車効果を発揮できる限り特に限定されない。
【0017】
なお、直鎖状分子としては、その両末端に反応基を有するものが好ましく、これにより、上記封鎖基と容易に反応させることができるようになる。
かかる反応基としては、採用する封鎖基の種類などに応じて適宜変更することができるが、水酸基、アミノ基、カルボキシル基及びチオール基などを例示できる。
【0018】
そして、本発明の疎水性直鎖状分子ポリロタキサンにおいて、直鎖状分子は疎水性を有するが、これにより、後述するシクロデキストリンなどの環状分子の水酸基に必ずしも疎水性の修飾基を持たせなくても有機溶剤に可溶となる。
かかる溶剤可溶性の発現は、従来は水系溶剤や有機系溶剤に難溶性ないしは不溶性であったポリロタキサンに対し、有機溶剤という反応場、典型的には架橋場を提供するものである。即ち、本発明のポリロタキサンは、有機溶剤の存在下で他のポリマーとの架橋や修飾基による修飾が容易に行える反応性の向上したものである。
【0019】
かかる疎水性直鎖状分子としては、特に限定されるものではなく、ポリアルキル類、ポリカプロラクトンなどのポリエステル類、ポリエーテル類、ポリアミド類、ポリアクリル類及びベンゼン環を有する直鎖状分子を挙げることができる。
【0020】
また、疎水性直鎖状分子がポリカプロラクトンの場合、その分子量は5,000〜100,000とすることが望ましく、10,000〜50,000が好ましく、10,000〜20,000が更に好ましい。
分子量が5,000未満では、シクロデキストリン等の環状分子の溶剤への非溶解性が強くなって、得られるポリロタキサンの溶解性が低下し、100,000を超えると、溶解性が低下することがある。
【0021】
一方、環状分子としては、上述の如き直鎖状分子に包接されて滑車効果を奏するものである限り特に限定されるものではなく、種々の環状物質を挙げることができる。
また、環状分子は実質的に環状であれば十分であり、「C」字状のように完全な閉環ではないものも含まれる。
【0022】
かかる環状分子としては、反応基を有するものが好ましく、これにより、他のポリマーとの架橋及び修飾基との結合が行い易くなる。
かかる反応基は、用いる架橋剤の種類に応じて適宜変更することができるが、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基及びアルデヒド基などを例示できる。
また、反応基としては、後述する封鎖基を形成する(ブロック化反応)際に、この封鎖基と反応しない基が好ましい。
【0023】
環状分子の具体例としては、種々のシクロデキストリン類、例えばα−シクロデキストリン(グルコース数:6個)、β−シクロデキストリン(グルコース数:7個)、γ−シクロデキストリン(グルコース数:8個)、ジメチルシクロデキストリン、グルコシルシクロデキストリン及びこれらの誘導体又は変性体、並びにクラウンエーテル類、ベンゾクラウン類、ジベンゾクラウン類、ジシクロヘキサノクラウン類及びこれらの誘導体又は変性体を挙げることができる。
【0024】
上述のシクロデキストリン等の環状分子は、その1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
かかる環状分子としては、特にα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンが良好であり、被包接性の観点からはα−シクロデキストリンが好ましい。
【0025】
なお、シクロデキストリンの水酸基に疎水性の修飾基を導入すれば、本発明の疎水性直鎖状分子ポリロタキサンの溶剤可溶性を更に向上させることができる。
更に導入された疎水性の修飾基が官能基を有していることにより、他のポリマーとの反応性を向上させることが可能になる。
【0026】
本発明の疎水性直鎖状分子ポリロタキサンにおいて、直鎖状分子に包接される環状分子の個数(包接量)は、直鎖状分子がポリカプロラクトンで環状分子がシクロデキストリンの場合、その最大包接量を1とすると、0.06〜0.61が好ましく、0.11〜0.48が更に好ましく、0.24〜0.41がいっそう好ましい。
0.06未満では滑車効果が発現しないことがあり、0.61を超えると、環状分子が密に配置され過ぎて環状分子の可動性が低下することがあり、またシクロデキストリン自体の溶剤非溶解性が強化されてしまい、得られるポリカプロラクトンの溶解性も低下することがある。
【0027】
次に、封鎖基は、上述の如き直鎖状分子の両末端に配置されて、環状分子が直鎖状分子によって串刺し状に貫通された状態を保持できる基であれば、如何なる基であってもよい。
かかる基としては、「嵩高さ」を有する基又は「イオン性」を有する基などを挙げることができる。またここで、「基」とは、分子基及び高分子基を含む種々の基を意味する。
【0028】
「嵩高さ」を有する基としては、球形の基や側壁状の基を例示できる。
また、「イオン性」を有する基のイオン性と、環状分子の有するイオン性とが相互に影響を及ぼし合い、例えば反発し合うことにより、環状分子が直鎖状分子に串刺しにされた状態を保持することができる。
【0029】
このような封鎖基の具体例としては、2,4−ジニトロフェニル基、3,5−ジニトロフェニル基などのジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類及びピレン類、並びにこれらの誘導体又は変性体を挙げることができる。
【0030】
次に、本発明の疎水性直鎖状分子ポリロタキサンの製造方法について説明する。
上述の如き、疎水性直鎖状分子ポリロタキサンは、(1)環状分子と疎水性直鎖状分子とを混合し、環状分子の開口部を疎水性直鎖状分子で串刺し状に貫通して疎水性直鎖状分子に環状分子を包接させる工程と、(2)得られた擬ポリロタキサンの両末端(疎水性直鎖状分子の両末端)を封鎖基で封鎖して、環状分子が串刺し状態から脱離しないように調整する工程、で処理することにより得られる。
【0031】
以上のような製造方法によって、上述の如く有機溶剤に対する溶解性に優れた本発明のポリロタキサンが得られる。
かかる有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、イソプロピルアルコールやブチルアルコールなどのアルコール類、酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル類、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテルやジオキサンなどのエーテル類、トルエンやキシレンなどの炭化水素溶剤などを挙げることができ、本発明の疎水性直鎖状ポリロタキサンは、これらの2種以上を混合した溶媒についても良好な溶解性を示す。
【0032】
次に、本発明の架橋ポリロタキサンについて説明する。
本発明の架橋ポリロタキサンは、上述した本発明の疎水性直鎖状分子ポリロタキサンをポリマーと架橋して成るものであり、このポリマーは疎水性直鎖状分子ポリロタキサンの環状分子を介して疎水性直鎖状分子ポリロタキサンと結合している。
【0033】
ここで、疎水性直鎖状分子ポリロタキサンと環状分子を介して架橋されるポリマーとしては、特に限定されるものではないが、主鎖又は側鎖に水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、ビニル基、チオール基又は光架橋基、及びこれらの任意の組合せに係る基を有するものが好ましい。
なお、光架橋基としては、ケイ皮酸、クマリン、カルコン、アントラセン、スチリルピリジン、スチリルピリジニウム塩及びスチリルキノリン塩などを例示できる。
【0034】
また、本発明では、2種以上のポリマーを混合使用してもよいが、この場合、少なくとも1種のポリマーが環状分子を介して疎水性直鎖状分子ポリロタキサンと結合していることを要する。
更に、かかるポリマーは、ホモポリマーでもコポリマーでもよい。コポリマーの場合、2種以上のモノマーから構成されるものでもよく、ブロックコポリマー、交互コポリマー、ランダムコポリマー又はグラフトコポリマーのいずれであってもよい。
【0035】
かかるポリマーの具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、澱粉及びこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン及び他のオレフィン系単量体との共重合樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂などのポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合体などのアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ナイロン(登録商標)などのポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどのポリジエン類、ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類、及びこれらの誘導体を挙げることができる。
誘導体としては、上述した水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、ビニル基、チオール基又は光架橋基及びこれらの組合せに係る基を有するものが好ましい。
【0036】
なお、本発明において、疎水性直鎖状分子ポリロタキサンと上記ポリマーとの配合比は、用途や所望物性などに応じて適時変更することができるが、代表的には、重量比で(疎水性直鎖状分子ポリロタキサン/ポリマー)が1/20〜10/1とすることができる。
【0037】
本発明の架橋ポリロタキサンにおいて、ポリロタキサンの環状分子とポリマーとの結合は、架橋剤による化学結合であることが好ましい。
架橋剤としては、分子量が2000未満、好ましくは1000未満、更に好ましくは600未満、いっそう好ましくは400未満のものを用いることができる。
【0038】
かかる架橋剤の具体例としては、塩化シアヌル、トリメソイルクロリド、テレフタロイルクロリド、エピクロロヒドリン、ジブロモベンゼン、グルタールアルデヒド、フェニレンジイソシアネート、ジイソシアン酸トリレイン、ジビニルスルホン、1,1’−カルボニルジイミダゾール又はアルコキシシラン類を挙げることができ、本発明では、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
なお、上述の如く、疎水性直鎖状分子ポリロタキサンの疎水性直鎖状分子としてポリカプロラクトンを用いる場合、その分子量を5,000〜100,000とすることが好ましいが、特に疎水性直鎖状分子架橋ポリロタキサンの場合、ポリカプロラクトンの分子量を5,000〜20,000とすることが好ましく、5,000〜10,000とすることが更に好ましい。
【0040】
図1は、本発明の疎水性直鎖状分子ポリロタキサンを概念的に示す模式図である。
同図において、この疎水性直鎖状分子ポリロタキサン5は、疎水性直鎖状分子6と、環状分子7と、直鎖状分子6の両末端に配置された封鎖基8を有し、直鎖状分子6は環状分子7の開口部を貫通して環状分子7を包接している。
【0041】
また、図2は、本発明の架橋ポリロタキサンを概念的に示す模式図である。
同図において、この架橋ポリロタキサン1は、ポリマー3と上記疎水性直鎖状分子ポリロタキサン5を有する。そして、このポリロタキサン5は、環状分子7を介して架橋点9によってポリマー3及びポリマー3’と結合している。
【0042】
このような構成を有する架橋ポリロタキサン1に対し、図2(A)の矢印X−X’方向の変形応力が負荷されると、架橋ポリロタキサン1は、図2(B)に示すように変形してこの応力を吸収することができる。
即ち、図2(B)に示すように、環状分子7は滑車効果によって直鎖状分子6に沿って移動可能であるため、上記応力をその内部で吸収可能である。
【0043】
このように、本発明の架橋ポリロタキサンは、図示したような滑車効果を有するものであり、従来のゲル状物などに比し優れた伸縮性や粘弾性、機械的強度を有するものである。
また、この架橋ポリロタキサンの前駆体である本発明の疎水性直鎖状分子ポリロタキサンは、上述の如く有機溶剤への溶解性が改善されており、有機溶剤中での架橋などが容易である。
【0044】
よって、本発明の架橋ポリロタキサンは、有機溶剤が存在する条件下で容易に得ることができ、特に、本発明の疎水性直鎖状分子ポリロタキサンと有機溶剤可溶性のポリマーとを架橋させることにより、容易に製造することができる。
従って、本発明の架橋ポリロタキサンは、その適用範囲が拡大されており、例えば、有機溶剤に可溶な塗膜ポリマーを用いる塗料や接着剤、特に耐洗車性、耐引っ掻き性、耐チッピング性、耐衝撃性及び耐候性の要求される自動車用の塗料、樹脂基材及び接着剤、並びに家電用の塗料や樹脂基材等についても適用可能であり、これらの用途においても優れた滑車効果を発現できるものである。
【0045】
また別の観点からは、本発明の架橋ポリロタキサンは、疎水性直鎖状分子ポリロタキサンの架橋対象である上記ポリマーの物性を損なうことなく、当該ポリマーと当該ポリロタキサンとを複合体化したものである。
従って、以下に説明する本発明の架橋ポリロタキサンの製造方法によれば、上記ポリマーの物性と疎水性直鎖状分子ポリロタキサン自体の物性を併有する材料が得られるのみならず、ポリマー種を選択することにより、所望の機械的強度などを有する材料、特にゲル状物などを得ることができる。
なお、本発明の架橋ポリロタキサンは、架橋対象のポリマーが疎水性であり、その分子量が余り大きくない場合、例えば分子量が数千程度までなら有機溶剤に溶解する。
【0046】
次に、本発明の架橋ポリロタキサンの製造方法について説明する。
この架橋ポリロタキサンは、まず上述の如く疎水性直鎖状分子ポリロタキサンを製造し、(a)得られた疎水性直鎖状分子ポリロタキサンをポリマーと混合し、(b)ポリマーの少なくとも一部を物理的及び/又は化学的に架橋し、(c)ポリマーの少なくとも一部とポリロタキサンとを環状分子を介して結合させる、ことにより製造できる。
なお、本発明の疎水性直鎖状分子ポリロタキサンは、有機溶剤に可溶であるため、(a)工程〜(c)工程を有機溶剤中で円滑に行うことができる。
【0047】
なお、(b)工程においては、化学架橋することが好ましく、これは上述如き架橋剤によって行うことができる。また、(b)工程と(c)工程をほぼ同時に実施してもよい。
【0048】
(a)工程の混合工程は、用いるポリマーに依存するが、溶媒無しで又は溶媒中行うことができる。使用可能な溶媒としては、特に限定されるものではないが、水、トルエン、キシレン、ベンゼン、アニソール、シクロヘキサン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド及びアセトニトリルなどを挙げることができる。
【0049】
(b)工程の架橋工程は、用いるポリマーに応じて従来公知の架橋条件下で行えばよい。
例えば、(ア)ポリマーがエポキシ基のような活性な置換基を有している場合は、加熱又はアミンや酸無水物のような活性水素の存在下で架橋反応を起こせばよい。また、光酸発生剤、光塩基発生剤の存在下で光照射を行うことでも架橋反応を起こすことができる。
(イ)ポリマーがビニル基のような不飽和二重結合を有している場合は、熱又は光ラジカル発生剤の存在下で加熱又は光照射を行うことにより架橋反応を起こせる。
(ウ)ポリマーが上述の光架橋基を有している場合は、加熱又は光照射によって架橋反応を起こせる。
(エ)ポリマーが水酸基、アミノ基、カルボキシル基などを有している場合は、多置換イソシアネート類やカルボジイミド類、トリアジン類、シラン類の存在により架橋官能を起こすことができる。
(オ)ポリマーが各種の基を有していない場合は、電子線照射によって架橋反応を生じさせることができる。
【0050】
(c)工程の結合工程は、ポリマーが主鎖及び/又は側鎖に有する基、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、ビニル基、チオール基及び光架橋基などと、環状分子が有する基、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、ビニル基、チオール基及び光架橋基などとを化学反応させることにより、行うことができる。
この結合工程の条件は、ポリマーが有する基、環状分子が有する基などに影響を受けるが、上述の架橋条件を適用することができる。
【0051】
なお、本発明の架橋ポリロタキサンは、上述の製造方法において、ポリマーを対応するモノマーから得、得られたポリマーを用いることによっても製造することができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
(1)PCLのTEMPO酸化によるPCL−カルボン酸の調製
分子量5,000のPCL(ポリカプロラクトン)10g、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル)100mg、臭化ナトリウム1gをアセトン100mlに溶解した。市販の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度5%)5mlを添加し、室温で10分間攪拌した。残余の次亜塩素酸ナトリウムを分解させるためにエタノールを最大5mlまでの範囲で添加して反応を終了した。
次いで、溶液をエバポレーターで留去し、250mlの温エタノールに溶解させてから冷凍庫(約−4℃)中に一晩静置し、PCL−カルボン酸のみを析出させ、回収し乾燥させた。
【0054】
(2)PCL−カルボン酸とα−CDを用いた包接錯体の調製
上述の如く調製したPCL−カルボン酸0.2gをアセトン50mlに溶解し、この一方で7.25gのα−CD(シクロデキストリン)を50mlの水に溶解した。両者を70℃に加熱した後、PCL溶液をCD水溶液に少量ずつ加え、70℃で17分間超音波処理した。次いで、10時間静置して得られた沈殿を回収し、乾燥させた。
【0055】
(3)α−CDの減量及びアダマンタンアミンとBOP試薬反応系を用いた包接錯体の封鎖
室温で、DMF(ジメチルホルムアミド)10mlにBOP(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウム・ヘキサフルオロフォスフェート)試薬3g、HOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)1g、アダマンタンアミン1.4g、ジイソプロピルエチルアミン1.25mlをこの順番に溶解させた。
得られた溶液を、DMF/DMSO混合溶媒(75/25)20mlに分散させた(2)で得られた包接錯体14gに加え、速やかに十分振り混ぜた。スラリー状になった試料を冷蔵庫中で一晩静置し、次いで、DMF/メタノール=1:1の混合溶液50mlを加えて十分に混合し、遠心分離して上澄みを捨てた。このDMF/メタノール混合溶液による洗浄を2回繰り返した後、更にメタノール100mlを用いた洗浄を同様の遠心分離により2回繰り返した。
得られた沈殿を真空乾燥した後、50mlのDMSOに溶解し、得られた透明溶液を700mlの水中に滴下してポリロタキサンを析出させた。析出したポリロタキサンを遠心分離で回収し、真空乾燥又は凍結乾燥させた。このDMSOに溶解−水中で析出−回収−乾燥のサイクルを2回繰り返し、精製ポリロタキサンを最終的に得た。
【0056】
得られた精製ポリロタキサンをH−NMR及びGPC(ゲル浸透クロマトグラフ)で同定し、所望のポリロタキサンであることを確認した。なお、α−CDの包接量は0.06であった。
本例のポリロタキサンの原料、CD包接量などを表1に示す。
【0057】
(実施例2)
(1)PCLのTEMPO酸化によるPCL−カルボン酸の調製
分子量5,000のPCL10g、TEMPO100mg、臭化ナトリウム1gをアセトン100mlに溶解した。市販の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度5%)5mlを添加し、室温で10分間攪拌した。残余の次亜塩素酸ナトリウムを分解させるためにエタノールを最大5mlまでの範囲で添加して反応を終了した。
次いで、溶液をエバポレーターで留去し、250mlの温エタノールに溶解させてから冷凍庫(約−4℃)中に一晩静置し、PCL−カルボン酸のみを析出させ、回収し乾燥させた。
【0058】
(2)PCL−カルボン酸とα−CDを用いた包接錯体の調製
上述の如く調製したPCL−カルボン酸0.2gをアセトン50mlに溶解し、この一方で7.25gのα−CDを50mlの水に溶解した。両者を70℃に加熱した後、PCL溶液をCD水溶液に少量ずつ加え、70℃で17分間超音波処理した。次いで、10時間静置して得られた沈殿を回収し、乾燥させた。
【0059】
(3)アダマンタンアミンとBOP試薬反応系を用いた包接錯体の封鎖
室温で、DMF50mlにBOP試薬3g、HOBt1g、アダマンタンアミン1.4g、ジイソプロピルエチルアミン1.25mlをこの順番に溶解させておき、(2)で得られた包接錯体14gを添加した後、速やかに十分振り混ぜた。スラリー状になった試料を冷蔵庫中で一晩静置し、次いで、DMF/メタノール=1:1の混合溶液50mlを加えて十分に混合し、遠心分離して上澄みを捨てた。このDMF/メタノール混合溶液による洗浄を2回繰り返した後、更にメタノール100mlを用いた洗浄を同様の遠心分離により2回繰り返した。
得られた沈殿を真空乾燥した後、50mlのDMSOに溶解し、得られた透明溶液を700mlの水中に滴下してポリロタキサンを析出させた。析出したポリロタキサンを遠心分離で回収し、真空乾燥又は凍結乾燥させた。このDMSOに溶解−水中で析出−回収−乾燥のサイクルを2回繰り返し、精製ポリロタキサンを最終的に得た。
【0060】
得られた精製ポリロタキサンをH−NMR及びGPCで同定し、所望のポリロタキサンであることを確認した。なお、α−CDの包接量は0.61であった。
本例のポリロタキサンの原料、CD包接量などを表1に示す。
【0061】
(実施例3)
PCLの分子量を100,000とした以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例のポリロタキサンを得た。CD包接量は0.06であった。
本例のポリロタキサンの原料、CD包接量などを表1に示す。
【0062】
(実施例4)
PCLの分子量を100,000とした以外は、実施例2と同様の操作を繰り返し、本例のポリロタキサンを得た。CD包接量は0.61であった。
本例のポリロタキサンの原料、CD包接量などを表1に示す。
【0063】
(比較例1)
(1)PEGのTEMPO酸化によるPEG−カルボン酸の調製
分子量5,000のPEG(ポリエチレングリコール)10g、TEMPO100mg、臭化ナトリウム1gを水100mlに溶解した。市販の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度5%)5mlを添加し、室温で10分間攪拌した。残余の次亜塩素酸ナトリウムを分解させるためにエタノールを最大5mlまでの範囲で添加して反応を終了した。
50mlの塩化メチレンを用いた抽出を3回繰り返して無機塩以外の成分を抽出した後、エバポレーターで塩化メチレンを留去し、250mlの温エタノールに溶解させてから冷凍庫(約−4℃)中に一晩放置し、PEG−カルボン酸のみを析出させ、回収し乾燥させた。
【0064】
(2)PEG−カルボン酸とα−CDを用いた包接錯体の調製
上述の如く調製したPEG−カルボン酸3g及びα−CD12gをそれぞれ別に用意した70℃の温水50mlの水に溶解させた後に混合し、十分に振り混ぜた。次いで、冷蔵庫(4℃)中で一晩静置し、クリーム状に析出した包接錯体を凍結乾燥し、回収した。
【0065】
(3)α−CDの減量及びアダマンタンアミンとBOP試薬反応系を用いた包接錯体の封鎖
室温で、DMF10mlにBOP試薬3g、HOBt1g、アダマンタンアミン1.4g、ジイソプロピルエチルアミン1.25mlをこの順番に溶解させた。
得られた溶液を、DMF/DMSO混合溶媒(75/25)20mlに分散させた(2)で得られた包接錯体14gに加え、速やかに十分振り混ぜた。スラリー状になった試料を冷蔵庫中で一晩静置し、次いで、DMF/メタノール=1:1の混合溶液50mlを加えて十分に混合し、遠心分離して上澄みを捨てた。このDMF/メタノール混合溶液による洗浄を2回繰り返した後、更にメタノール100mlを用いた洗浄を同様の遠心分離により2回繰り返した。
得られた沈殿を真空乾燥した後、50mlのDMSOに溶解し、得られた透明溶液を700mlの水中に滴下してポリロタキサンを析出させた。析出したポリロタキサンを遠心分離で回収し、真空乾燥又は凍結乾燥させた。このDMSOに溶解−水中で析出−回収−乾燥のサイクルを2回繰り返し、精製ポリロタキサンを最終的に得た。
【0066】
得られた精製ポリロタキサンをH−NMR及びGPCで同定し、所望のポリロタキサンであることを確認した。なお、α−CDの包接量は0.06であった。
本例のポリロタキサンの原料、CD包接量などを表1に示す。
【0067】
(比較例2)
(1)PEGのTEMPO酸化によるPEG−カルボン酸の調製
分子量5,000のPEG(ポリエチレングリコール)10g、TEMPO100mg、臭化ナトリウム1gを水100mlに溶解した。市販の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度5%)5mlを添加し、室温で10分間攪拌した。残余の次亜塩素酸ナトリウムを分解させるためにエタノールを最大5mlまでの範囲で添加して反応を終了した。
50mlの塩化メチレンを用いた抽出を3回繰り返して無機塩以外の成分を抽出した後、エバポレーターで塩化メチレンを留去し、250mlの温エタノールに溶解させてから冷凍庫(約−4℃)中に一晩放置し、PEG−カルボン酸のみを析出させ、回収し乾燥させた。
【0068】
(2)PEG−カルボン酸とα−CDを用いた包接錯体の調製
上述の如く調製したPEG−カルボン酸3g及びα−CD12gをそれぞれ別に用意した70℃の温水50mlの水に溶解させた後に混合し、十分に振り混ぜた。次いで、冷蔵庫(4℃)中で一晩静置し、クリーム状に析出した包接錯体を凍結乾燥し、回収した。
【0069】
(3)アダマンタンアミンとBOP試薬反応系を用いた包接錯体の封鎖
室温で、DMF50mlにBOP試薬3g、HOBt1g、アダマンタンアミン1.4g、ジイソプロピルエチルアミン1.25mlをこの順番に溶解させておき、(2)で得られた包接錯体14gを添加した後、速やかに十分振り混ぜた。スラリー状になった試料を冷蔵庫中で一晩静置し、次いで、DMF/メタノール=1:1の混合溶液50mlを加えて十分に混合し、遠心分離して上澄みを捨てた。このDMF/メタノール混合溶液による洗浄を2回繰り返した後、更にメタノール100mlを用いた洗浄を同様の遠心分離により2回繰り返した。
得られた沈殿を真空乾燥した後、50mlのDMSOに溶解し、得られた透明溶液を700mlの水中に滴下してポリロタキサンを析出させた。析出したポリロタキサンを遠心分離で回収し、真空乾燥又は凍結乾燥させた。このDMSOに溶解−水中で析出−回収−乾燥のサイクルを2回繰り返し、精製ポリロタキサンを最終的に得た。
【0070】
得られた精製ポリロタキサンをH−NMR及びGPCで同定し、所望のポリロタキサンであることを確認した。なお、α−CDの包接量は0.61であった。
本例のポリロタキサンの原料、CD包接量などを表1に示す。
【0071】
(比較例3)
PEGの分子量を100,000とした以外は、比較例1と同様の操作を繰り返し、本例のポリロタキサンを得た。CD包接量は0.06であった。
本例のポリロタキサンの原料、CD包接量などを表1に示す。
【0072】
(比較例4)
PEGの分子量を100,000とした以外は、比較例2と同様の操作を繰り返し、本例のポリロタキサンを得た。CD包接量は0.61であった。
本例のポリロタキサンの原料、CD包接量などを表1に示す。
【0073】
[性能評価]
各例のポリロタキサンの有機溶剤(酢酸ブチル、ブチルセロソルブ)への溶解性を下記の条件下で調査した。得られた結果を表1に示す。
(試験条件)
各有機溶剤を50℃に加温し、これに各例のポリロタキサンを徐々に添加し、溶解性を目視にて確認した。
なお、表1中、「○」は「透明且つ固形分無し」、「×」は「透明だが固形分有り」を意味する。
【0074】
【表1】

【0075】
表1から明らかなように、本発明の範囲に含まれる実施例1〜4のポリロタキサンは、酢酸ブチルやブチルセロソルブの有機溶剤に可溶であるが、比較例1〜4ののポリロタキサンはこれら溶剤への溶解性に劣ることが分かる。
よって、実施例1〜4のポリロタキサンは、各種有機溶剤を必要とする塗料、接着剤及び油脂などへ適用性に優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の疎水性直鎖状分子ポリロタキサンを概念的に示す模式図である。
【図2】本発明の架橋ポリロタキサンを概念的に示す模式図である。
【符号の説明】
【0077】
1 架橋ポリロタキサン
3、3’ ポリマー
5 ポリロタキサン
6 直鎖状分子
7 環状分子
8 封鎖基
9 架橋点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状分子と、この環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子と、この直鎖状分子の両末端に配置され上記環状分子の脱離を防止する封鎖基とを有するポリロタキサンにおいて、
上記直鎖状分子が疎水性であることを特徴とする疎水性直鎖状分子ポリロタキサン。
【請求項2】
上記直鎖状分子がポリカプロラクトンであることを特徴とする請求項1に記載の疎水性直鎖状分子ポリロタキサン。
【請求項3】
上記ポリカプロラクトンの分子量が5,000〜100,000であることを特徴とする請求項2に記載の疎水性直鎖状分子ポリロタキサン。
【請求項4】
上記環状分子が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンから成る群より選ばれた少なくとも1種のシクロデキストリンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の疎水性直鎖状分子ポリロタキサン。
【請求項5】
上記シクロデキストリンの包接量は、上記直鎖状分子がシクロデキストリンを包接する最大量である最大包接量を1とすると、0.06〜0.61であることを特徴とする請求項4に記載の疎水性直鎖状分子ポリロタキサン。
【請求項6】
溶剤に可溶であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の疎水性直鎖状分子ポリロタキサン。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の疎水性直鎖状ポリロタキサンを製造するに当たり、
(1)環状分子と疎水性直鎖状分子とを混合し、環状分子の開口部を疎水性直鎖状分子で串刺し状に貫通して疎水性直鎖状分子に環状分子を包接させ、
(2)得られた擬ポリロタキサンの両末端である上記疎水性直鎖状分子の両末端を封鎖基で封鎖して、環状分子が串刺し状態から脱離しないように調整する、
ことを特徴とする疎水性直鎖状ポリロタキサンの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の疎水性直鎖状分子ポリロタキサンと、ポリマーを上記環状分子を介して結合して成ることを特徴とする架橋ポリロタキサン。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−63398(P2007−63398A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−250984(P2005−250984)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】