説明

疲労推定装置及びそれを搭載した電子機器

【課題】疲労レベルの推定を安価で手軽に行うことが可能な疲労推定装置、疲労警告装置および電子機器を提供。
【解決手段】ユーザーの活動の頻度を活動度として継続的に検知する体動検知部2を備え、体動検知部2により検知された活動度を、この活動度に基づきユーザーの疲労レベルを推定する疲労検知部3に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の体動から疲労レベルを推定することを実現する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生活行動を常時計測することで、生体リズムの乱れを含めたさまざまな生体情報を分析することができる。たとえば、特許文献1に記載された技術では、腰部中央の定められた方向に体動解析装置を取り付け、被験者の行動情報を取り込む。つまり、特許文献1に記載された技術は、3軸の加速度センサが搭載された体動解析装置を腰部の定められた方向に取り付けることで、腰の向きが判り、屈んでいるのか横になっているのかが判別できるようになっている。さらに、特許文献1に記載された技術では、加速度センサの出力信号におけるAC成分の周波数と振幅とから、被験者が歩行または走行のいずれの状態にあるのか区別も可能としている。
【0003】
また、被験者の体に取り付けた加速度センサの情報から、身体運動の激しさを割り出し、被験者が睡眠または起床のいずれにあるのかを推定する方法も従来から行われている。さらに、最もよく知られたものに歩数計も挙げられる。
【0004】
さらに、心身疾患の推定は、脳内のホルモンを測定したり、血流を測定する機器を用いたりすることでも、ある程度実現可能である。また、さまざまなテストやアンケートを行うことでも実現可能である。
【0005】
たとえば、疲労の推定は、たとえばATMT法(Advanced Trial Making Test法)により実現することができる。このATMT法は、ディスプレイ上に現れた数字を順にタッチし、その時に要した時間から疲労のレベルを計測するものである。また、疲労を含めた心身疾患を推定する方法として、アンケートがよく用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−178073号公報(1995年7月18日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、疲労に起因する生体情報の変化については、十分研究されていなかった。このため、従来技術では、被験者の生活行動を常時計測することで、被験者の疲労を直接検出することができなかった。また、従来技術で疲労を検出しようとすると、コストがかかったりあるいは疲労検出に手間がかかったりして、手軽に疲労を検出することができなかった。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、疲労レベルの推定を安価で手軽に行うことが可能な疲労推定装置、疲労警告装置および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の疲労推定装置は、ユーザーの活動の頻度を活動度として継続的に検知する活動度検知手段を備え、活動度を時間で微分することによって活動度から長期的な変動成分を取り除き、長期的な変動成分が取り除かれた活動度について、継続的に高い値を示す時間に比べて短時間だけ低い値を示す傾向を判断することで疲労レベルを推定する疲労レベル推定手段に対して、上記活動度検知手段により検知された活動度を出力することを特徴としている。
【0010】
また、本発明の疲労推定装置は、ユーザーの活動の頻度を活動度として継続的に検知する活動度検知手段を備え、活動度の回帰曲線を求めるとともに、求めた回帰曲線を活動度の長期的な変動成分として取り除き、長期的な変動成分が取り除かれた活動度について、継続的に高い値を示す時間に比べて短時間だけ低い値を示す傾向を判断することで疲労レベルを推定する疲労レベル推定手段に対して、上記活動度検知手段により検知された活動度を出力することを特徴としている。
【0011】
また、本発明の疲労推定装置は、ユーザーの活動の頻度を活動度として継続的に検知する活動度検知手段を備え、活動度に基づきユーザーの疲労レベルを推定し、推定された疲労レベルが取り得る範囲を所定の範囲に補正する疲労レベル推定手段に対して、上記活動度検知手段により検知された活動度を出力することを特徴としている。
【0012】
また、本発明の疲労推定装置は、ユーザーの身体の全部あるいは一部における運動の加速度が変化した回数を、ユーザーの活動の頻度を示す活動度として継続的に検知する活動度検知手段を備え、上記活動度検知手段により検知された活動度を、この活動度に基づきユーザーの疲労レベルを推定する疲労レベル推定手段に出力することを特徴としている。
【0013】
また、本発明の疲労推定装置は、ユーザーの活動の頻度を活動度として継続的に検知する活動度検知手段を備え、上記活動度検知手段により検知された活動度を、この活動度に基づきユーザーの疲労レベルを推定する疲労レベル推定手段に出力し、ユーザーに対する問診の結果得られた、ユーザーの疲労に関する実疲労レベル情報を、上記疲労レベル推定手段により推定される疲労レベルに関する推定疲労レベル情報と対応付けることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、活動度検知手段および疲労レベル推定手段という簡易な構成により、ユーザーの疲労レベルを推定することができるので、安価にユーザーの疲労レベルを推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る構成を示すブロック図である。
【図2(a)】人が疲労感を伴うときの典型的な体動データを示すグラフである。
【図2(b)】人が疲労感を伴うときの典型的な体動データを示すグラフである。
【図2(c)】慢性疲労症候群患者の体動データを示すグラフである。
【図2(d)】図2(c)に示す体動データの差分を示すグラフである。
【図3(a)】人が疲労感を伴わないときの典型的な体動データを示すグラフである。
【図3(b)】人が疲労感を伴わないときの典型的な体動データを示すグラフである。
【図3(c)】人が疲労感を伴わないときの典型的な体動データを示すグラフである。
【図3(d)】図3(c)に示す体動データからトレンドを除去した体動データを示すグラフである。
【図4(a)】人が覚醒時に小さく動く状態を示す図である。
【図4(b)】人が疲労時に静止する状態を示す図である。
【図4(c)】人が自由に活動する状態を示す図である。
【図4(d)】人が自由に活動する状態を示す図である。
【図5】手首に取り付けた加速度センサから得られる1軸の出力を、加速度の変化を見るためにハイパスフィルタを通過させた後のデータを示す図である。
【図6(a)】体動データの歪度および平均と、疲労レベルとに関して、5つのサンプルを比較した表である。
【図6(b)】推定された疲労レベルと、アンケートの結果得られた実際の疲労レベルを定量的に示した数値との相関関係を示す図である。
【図6(c)】推定された疲労レベルをシグモイド関数に入力することで得られる出力値と、実際の疲労レベルを定量的に示した数値との相関関係を示す図である。
【図7】シグモイド関数およびアークタンジェント関数を示す図である。
【図8(a)】手首に取り付けた加速度センサからの3軸出力を、一定時間測定した結果を示す図である。
【図8(b)】3軸出力のベクトル和をハイパスフィルタに通過させた後の出力を示す図である。
【図9(a)】本発明の疲労推定方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【図9(b)】疲労レベルを演算するための具体的な処理を示すフローチャートである。
【図10(a)】本発明の疲労警告装置を搭載した携帯電話の外観の一例を示す図である。
【図10(b)】本発明の疲労警告装置を搭載した携帯電話の外観の一例を示す図である。
【図10(c)】本発明の疲労警告装置を搭載した携帯電話の外観の一例を示す図である。
【図11(a)】図1における体動検知部が搭載された腕時計を、腕に装着した状態を示す図である。
【図11(b)】本発明品を普段使用するイメージを示す図である。
【図12(a)】本発明の疲労警告装置を搭載した携帯電話において表示される警告メッセージを示す図である。
【図12(b)】本発明の疲労警告装置を搭載した携帯電話において表示される警告メッセージを示す図である。
【図12(c)】本発明の疲労警告装置を搭載した携帯電話において表示される警告メッセージを示す図である。
【図12(d)】本発明の疲労警告装置を搭載した携帯電話において表示される警告メッセージを示す図である。
【図12(e)】本発明の疲労警告装置を搭載した携帯電話において表示される警告メッセージを示す図である。
【図12(f)】本発明の疲労警告装置を搭載した携帯電話において表示される警告メッセージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔1.疲労時の活動の変化について〕
まず、疲労時における人の活動の変化について説明する。人は、疲労を感じると動作を減らそうとする。しかし、その人が置かれている状況や本人の意思から、活動をやめることができない場合が多い。したがって、疲労時に人が継続的に活動しようとする状況においても、その人が無意識のうちに、動作が単発的に減る現象が見られる。
【0017】
また、疲労時に動作が減少する現象は体のあらゆる部分で起こるが、手首については、疲労時における動作の減少を効果的に取得できる。特に、単位時間内に手首を動かした回数を数えると、疲労時における動作の減少を少ないデータ数で効率的に取得できる。
【0018】
この疲労時における動作の減少は、動作を平均的に見ても明確にはわからないものであった。しかしながら、発明者らの鋭意研究により、人の動作を細かく分析すると、疲労時と非疲労時との間で、人の動作に違いが生じていることが判明した。
【0019】
このような疲労時における動作の減少について、図2、図3、および図4を用いてより具体的に説明する。
【0020】
図2(a)および図2(b)に、人が疲労感を伴うときの典型的な体動データを示し、図3(a)〜図3(c)に人が疲労感を伴わないときの典型的な体動データを示す。いずれも、横軸が経過した時間を示し、縦軸は手首に取り付けた加速度センサから得た体動データを示す。
【0021】
なお、体動データとは、人の活動の頻度(活動度)を定量的に示すデータであり、その具体的な測定方法については後述する。
【0022】
これらの図面の縦軸については、値が大きいほど体動データが高いことを示し、値が小さいほど体動データが低いことを示している。また、体動データの値が0であれば、人がまったく動いていないことを意味している。程度の差こそあれ、人は、安静にしていても覚醒時には小さく動くので(図4(a)参照)、体動データはある程度高くなる。一方、人は、睡眠時にはほとんど動かないため、体動データは0に近づく。
【0023】
そして、発明者らは、鋭意研究の結果、覚醒時で疲労時には、図2(a)に示すように、ある程度高い値の体動データが継続する中で、短時間だけ周囲(直前・直後の時間)に比べて低い値の体動データが得られる傾向があることを発見した。
【0024】
さらに、覚醒時で疲労をあまり感じないときは、図3(a)に示すように、短時間だけ周囲と比べて低い値の体動データが得られる傾向が現れないことが多い。あるいは、図3(c)に示すように、短時間だけ周囲に比べて低い値の体動データが得られることもあれば、短時間だけ周囲に比べて高い値の体動データが得られ、体動データが幅広く分布することもある。
【0025】
このような体動データの傾向が得られるのは、次のように理論づけられる。
【0026】
覚醒時においては、人はある程度の活動をしているために、その活動に応じた体動データが得られる。しかし、疲労時において、人は、その活動を継続する意思があっても、実際は維持することができないためしばしば静止し(図4(b)参照)、図2(a)および図2(b)において破線の○印で囲った部分に示されるように、体動データが周囲に比べて短時間だけ低くなる現象が見られる。これは、たとえば、マラソンなど長時間の運動を行った場合、運動開始時には連続して運動し続けられるが、長時間続けると疲れて頻繁に休憩したくなることと類似している。
【0027】
また、疲労を感じないときには、本人の意思どおり活動を継続することができるため、疲労時のように短時間だけ体動データが低くなる現象は見られない。あるいは、その人が置かれている状況によって、自由に活動することができるため(図4(c)および図4(d)参照)、体動データが幅広く分布する。
【0028】
以上のように、体動データには疲労のレベルが強く反映されるため、体動データから、人の疲労レベルを推定できる。より具体的に説明すれば、相対的に低い体動データを検出することで、疲労レベルを推定できる。
【0029】
〔2.疲労度の推定方法について〕
次に、上述の疲労時における活動の変化に基づいて、人の疲労の度合い(疲労レベル)を推定するための具体的な方法について説明する。
【0030】
〔2−1.体動データの測定方法について〕
まず、体動データの測定方法について、図5を用いて説明する。図5は、手首に取り付けた加速度センサから得られる1軸の出力を、加速度の変化を見るためにハイパスフィルタを通過させた後のデータを示している。ハイパスフィルタに加速度センサの出力を通すことで、常に現れる重力方向の成分をキャンセルすることができる。
【0031】
ここで、図2(a)、図3(a)等で示した体動データは、図5で示すハイパスフィルタ通過後の加速度センサの出力(加速度データ)が、0.01Gの閾値を通過した単位時間当たりの回数を記録したデータである。
【0032】
たとえば、図5のグラフにおける左端から右端までの時間が単位時間であるとすれば、加速度センサの出力は閾値を4回通過しているので、体動データは4と計測される。このように測定された体動データは、一般にzero crossing dataと呼ばれ、睡眠・覚醒の検出や生活リズムの分析等に使用される。
【0033】
なお、図5に示すデータは、体動データの変化を効率的に見るために、加速度センサの出力をハイパスフィルタに通過させているが、必ずしもハイパスフィルタを通過させる必要はない。たとえば、加速度センサの出力値そのものから、加速度センサの出力値に関する移動平均値を引くことで、同じく体動データの変化を効率的に見ることもできる。
【0034】
また、疲労レベルを推定するためには、必ずしもzero crossing dataを測定する必要はない。詳細は後述するが、加速度センサから得られる3軸出力のベクトル和から体動データを求めると、軸の偏りがない、より精度の高い体動データが得られる。なお、加速度センサの1軸出力で評価しても十分精度の高い体動データを得ることができ、複雑な計算が不要で安価に疲労レベルを推定することができる。よって、本実施形態では、加速度センサの1軸出力から体動データを得る実施形態を中心に説明する。
【0035】
〔2−2.疲労レベルの演算方法について〕
図2(a),図3(a),および図3(c)に示す体動データにより示される人の活動の違いは、次に説明する方法を取ることで、推定することができる。
【0036】
まず、体動データのトレンドを除去する。トレンドの除去は、たとえば以下に説明するように行うことができる。なお、「トレンド」とは、体動データの長期的な変動の傾向を意味する。
【0037】
すなわち、体動データをさらに短時間に区切り、それぞれの区間のデータの1次近似を最小2乗法を用いて算出することで、体動データの回帰曲線を求める。この回帰曲線により、体動データのトレンドを把握することができる。
【0038】
そして、図2(a),図3(a),および図3(c)の体動データにより示される値x(ti)に対して、体動データの回帰曲線における値をxtr(ti)とすると、トレンドを除去した体動データy(ti)は、次のようにして表せる。
【0039】
y(ti) = x(ti) - xtr(ti)
ただし、tiは各データの時刻である。
【0040】
このようにしてトレンドを除去すると、図2(a)に示す体動データからは、図2(b)に示す体動データが得られ、図3(a)に示す体動データからは、図3(b)に示す体動データが得られ、図3(c)に示す体動データからは、図3(d)に示す体動データが得られる。
【0041】
そして、トレンドを除去すると、体動データの変化がより顕著となる。さらに、体動データの変化は、体動データの歪度Skewを次の式に従い計算することにより、明確に見ることができる。
【0042】
【数1】

【0043】
たとえば、疲労時のトレンドを除去した体動データの歪度は−0.0118と負であるのに対して、非疲労時のトレンドを除去した体動データの歪度はそれよりも大きく、正の値を示す。すなわち、歪度は、疲労と大きく関係しているといえる。
【0044】
ここで、歪度が小さいということは、データの中で突出して低い値が、突出して大きい値よりも多いことを意味している。つまり、疲労レベルが高いときに歪度が小さくなるということは、図2(a)、図3(a)、および図3(c)の体動データにより示される疲労の傾向とよく一致している。
【0045】
そして、体動データの歪度および平均と、疲労レベルとに関して、5つのサンプルを比較した表を図6(a)に示す。なお、図6(a)に示す「実際の疲労レベル」は、アンケートの結果得られた疲労のレベルを定量的に示す情報であり、実疲労レベル情報としても表現できる。
【0046】
また、歪度(Skew)から直接疲労度のレベル(Fatigue)を計算するには、以下に示す計算式に当てはめれば、そこそこの傾向が得られる。
【0047】
Fatigue=50−50×Skew
上記計算式により推定された疲労レベルと、上述したアンケートの結果得られた実際の疲労レベルを定量的に示した数値との相関関係を図6(b)に示す。また、上記推定された疲労レベルをシグモイド関数に入力することで得られる出力値と、実際の疲労レベルを定量的に示した数値との相関関係を図6(c)に示す。
【0048】
図6(b)および図6(c)を参照すると、5つのサンプルのうち4つのサンプルについては、計算式により推定された疲労レベルと、実際の疲労レベルとが良好な相関関係を示していることがわかる。一方で、1つのサンプルについてはそれほど相関関係がないことがわかる。
【0049】
なお、Fatigue=50−50×Skewという計算式に従って疲労レベルを推定すると、精度良く疲労レベルを推定できないことがある。これは、体動データの平均の大きさによって歪度への影響に差があるためで、体動データの平均が、歪度の次に重要なファクターとなる。
【0050】
そこで、たとえば、以下に示す計算式を用いること、さらに高い精度で疲労レベルを推定できる。
【0051】
Fatigue=0.732×Mean+58.321×Skew−4.028×Mean×Skew+33.370
ここで、Meanは体動データの平均値を示し、Skewはトレンドが除去された体動データの歪度を示す。
【0052】
歪度だけで疲労を推定すると、単純な計算式で疲労レベルを推定できるので、少ない負荷で疲労レベルの推定ができるが、統計的な解析方法を組み合わせることで、精度よく疲労レベルを推定することができる。また、統計的な解析方法は、平均と歪度を用いる方法だけに限らない。
【0053】
たとえば、以下に示すように、体動データの標準偏差や尖度などを用いることで、さらに高い精度で疲労レベルを推定することができる。
【0054】
Fatigue=3.436×mean+16.392×sd+(-62.426)×skew
+4.409×kurtosis+(-0.615)×mean×sd
+1.199×mean×skew+(-0.173)×mean×kurtosis
+(-35.000)
ただし、
mean : 過去30分のZero Crossing Dataの平均値
sd :トレンドを除去した過去30分のZero Crossing Dataの標準偏差
skew : トレンドを除去した過去30分のZero Crossing Dataの歪度
kurtosis :トレンドを除去した過去30分のZero Crossing Dataの尖度
また、ここで挙げた計算式の係数や使用する統計値は、あくまで一例であり、計測機器や対象者、計測する身体の部位によって異なる可能性が生じることはいうまでもない。
【0055】
さらに、疲労推定に使用する体動データは必ずしも連続している必要は無く、途中ある程度途切れていても問題ない。
【0056】
〔2−3.慢性疲労症候群患者の体動データの傾向〕
また、図2(c)は、慢性疲労症候群患者の体動データを示す図である。図2(c)に示すように、慢性疲労症候群患者の体動データに関しては、健常者に比べて早い落ち込みと緩やかな立ち上がりが比較的多く見られることが、発明者らの鋭意研究の結果判明した。
【0057】
ここで、図2(d)は、図2(c)に示す体動データの差分を示すグラフであり、図2(c)に示す体動データの長期的な変動成分を取り除いたデータを示すものといえる。図2(d)に示すように、体動データが急に落ち込む部分は、差分値が短時間だけ負の値を示し、体動データが緩やかに立ち上がる部分は、差分値は長時間小さな正の値を示す。このような体動データの特徴も、体動データの差分値を統計的に解析することで把握することができる。たとえば、体動データが早い落ち込みと緩やかな立ち上がりを示す場合、体動データの歪度は小さくなる。
【0058】
なお、図2(a)および図2(c)に示す体動データの特徴は一見したところ異なるが、差分を除去することで類似した特長が見られるため、いずれも疲労時の体動の特徴を現しているといえる。
【0059】
以上に説明した疲労から来る体動データの変化(相対的に低い活動状況に基づいた変化)は、統計的手法以外でも把握することができ、たとえば、周波数解析のひとつであるウェーブレット解析を行い、特異的な波形を見る方法(WTMM法 : Wavelet Transform Modulus Maxima)を用いてもよい。
【0060】
〔2−4.推定された疲労レベルの整形処理〕
以上で挙げた計算式により疲労レベルを推定できるが、上記計算式のままだと、推定された疲労レベルの最低値が0を下回る場合や、最高値が100を上回る場合が起こりうる。たとえば、図6(a)に示す5つのサンプルのうちでは、実際の疲労レベルが0の場合の推定された疲労レベルが−0.306となっており、0を下回っている。
【0061】
こういった状況が生じた場合、疲労レベルの推定に支障をきたす場合がある。そこで、疲労レベルの推定を行う場合には、決められた範囲(本実施形態の場合は、0から100の間)内に疲労レベルを収める整形処理を行えばよい。
【0062】
さらに、その処理にあたっては、特定の数値付近(たとえば50付近)に高い感度を持たせた関数を用いると、ユーザーの疲労の変化を明確に見ることができる。そのような処理に適しているのが、シグモイド関数の出力を利用する方法である。以下に、シグモイド関数の一例を示す。
【0063】
【数2】

【0064】
シグモイド関数は、図7の実線で示すとおり、50付近は傾きが1に近く、50から離れるにしたがって傾きが緩やかになり、いかなる値に対しても0から100に収めることができる特徴を有する。
【0065】
このように、シグモイド関数は、50付近の傾きが最も急で感度が高いので、50付近の微妙な特徴の変化を明確にできる。しかも、全体にわたって傾きが正になっているので、値の大小が逆転することもない。
【0066】
このような特徴を持つシグモイド関数を用いると、先ほどのように疲労レベルが−0.306と算出されても、0に近い正の値、すなわち7.48に疲労レベルを補正することができる。同様のシグモイド関数を用いた補正により、30.07,50.17と算出された疲労レベルは、図6(a)に示すように、それぞれ26.96,50.22と補正され、シグモイド関数を用いる前の値と大きく相違することもない。
【0067】
このような特徴を持つ関数はシグモイド関数以外にも挙げればきりが無く、用途に応じて使い分ければよい。シグモイド関数以外にひとつ選ぶとすると、図7において破線で示すアークタンジェント関数を挙げることができる。図7に示すシグモイド関数を用いた場合は、100以上又は0以下の値は、それぞれかなり100又は0に近づくが、100以上又は0以下でも疲労レベルの違いを明確にしたい場合は、アークタンジェント関数を使うほうが適しているといえる。
【0068】
また50付近の感度を上げる手法について説明したが、当然ながら感度を高める部分は50付近に限る必要は無く、用途に応じて感度を高めたい部分を変えればよい。
【0069】
たとえば、図7における一点鎖線は、下記のシグモイド関数を示している。このシグモイド関数によれば、80〜90付近の感度が高められる。
【0070】
【数3】

【0071】
また、このようなフィルタ(シグモイド関数、アークタンジェント関数等)を用いると計算に負荷がかかるのであれば、0から100の範囲に収める方法として、一律的に、0以下の値は0とし、100以上の値は100にする方法を用いてもよい。
【0072】
〔2−5.体動データの変形例〕
疲労レベルを推定するために用いる体動データは、zero crossing dataに限る必要はなく、閾値を1つに定める必要もない。たとえば、zero crossing dataとは別のデータとして、図8(a)や図8(b)に示す加速度センサからの出力データ(加速度データ)をそのまま使ってもよい。
【0073】
ここで、図8(a)は、手首に取り付けた加速度センサからの3軸出力を、一定時間測定したものである。縦軸は1Gを単位とする加速度で、動きが全く無ければ、3軸出力のベクトル和は、地球の重力加速度と同じ1Gとなる。
【0074】
図8(b)は、この3軸出力のベクトル和をハイパスフィルタに通過させた後の出力を示す図である。通常、動きが無ければ、図8(b)に示す加速度データは0で一定であるが、手首の動きに応じて0以外の値が出力される。
【0075】
図8(a)や図8(b)に示す加速度データを用いて疲労レベルを推定することは、たとえば次に述べる手法をとることで実現できる。すなわち、図8(a)や図8(b)に示す加速度データに、たとえば0.05G刻みという具合で複数の閾値を設ける。そして、それぞれの閾値について、加速度データが、当該閾値を超える値から当該閾値を下回る値に変化した時刻から、当該閾値を下回る値から当該閾値を超える値に変化した時刻までの経過時間(図の矢印で示した部分)を算出する。そして、この経過時間の統計量として、たとえば平均や分散を解析する。

人が活発な動きをする場合は、高い閾値に関する上記経過時間の平均が短くなり、分散も小さくなる。一方、人の動きが活発でなくなると、高い閾値に関する上記経過時間が長くなる傾向があり、分散も大きくなる。
【0076】
よって、図2に示すような疲労時には、加速度センサの出力が高い閾値を超えることが多く、上記経過時間の平均が短くなる。一方で、短時間だけ周囲に比べて低い値の出力が加速度センサから得られるため、分散が大きくなる。加速度センサの出力に設けた各閾値について、同様の分析を行うことで、より高い精度で疲労のレベルを見ることができる。
【0077】
〔2−6.まとめ〕
以上で挙げたように、被験者が疲労しているか否かによって活動状況は変化し、その変化は、継続的に測定された体動データにおける、相対的に低い体動データの現れ方にみられる。この体動データの変化を判別する方法は、統計的手法に限らず、DFA(Detrend Fluctiation Analysis)やWTMM(Wavelet Transform Modulus Maxima)といったフラクタルを評価する方法でも可能であり、より高い精度で体動データの変化を判別できる場合もある。しかし、これらの方法を用いると計算量が増えるため、携帯機器などで疲労レベルを評価する場合は、2つ程度の統計値(たとえば、平均と歪度)から疲労レベルを推定する方法が、精度と計算量とから判断して最も適している。そこで、以下では、平均と歪度という2つの統計値を用いて、疲労レベルを推定する機能を搭載した疲労警告装置の例について説明する。
【0078】
〔3.装置構成について〕
まず、図1を用いて、本発明の疲労推定装置の一実施形態に係る構成について説明する。本実施形態の疲労推定装置1は、図1に示すように、体動検知部(活動度検知手段)2と、疲労検知部(疲労レベル推定手段)3とを備えている。そして、本実施形態の疲労警告装置10は、図1に示すように、疲労推定装置1と、疲労警告判定部(疲労警告判定手段)11と、疲労提示部(疲労提示手段)12とを含むことにより構成される。
【0079】
体動検知部2は、ユーザーの体の動き(体動)を検知するものであり、手首に取り付ける腕時計型の形状を有している。そして、体動検知部2は、加速度センサ(活動度検知手段)4と、第1データ蓄積部(活動度検知手段)5と、データ送信部(活動度検知手段)6とを備えている。
【0080】
加速度センサ4は、手首の加速度をセンシングするものであり、この加速度センサ4により得られた加速度データは、一定時間、第1データ蓄積部5に蓄積される。そして、第1データ蓄積部5に蓄積されたデータは、データ送信部6を介して疲労検知部3に送信される。このように第1データ蓄積部5に加速度データを一旦蓄積することで、データ送信部6による加速度データの送信が短時間途絶えても、途絶えた時間に対応する加速度データを第1データ蓄積部5から読み出し、加速度データを途切れることなくデータ送信部6から疲労検知部3に送信することができる。
【0081】
疲労検知部3は、携帯可能な小型機器により実現され、携帯電話の内部に設けられることが好ましい。そして、疲労検知部3は、データ受信部(疲労レベル推定手段)7と、第2データ蓄積部(疲労レベル推定手段)8と、疲労レベル演算部(疲労レベル推定手段)9とを備えている。
【0082】
データ受信部7は、体動検知部2のデータ送信部6から送信された加速度データを受信するものである。このデータ受信部7が受信した加速度データは、第2データ蓄積部8に蓄積される。そして、疲労レベル演算部9は、第2データ蓄積部8に蓄積された加速度データおよび上述した計算式を用いて、疲労レベル(Fatigue)を演算する。
【0083】
そして、疲労警告判定部11は、疲労レベル演算部9により演算された疲労レベル(Fatigue)に基づき、ユーザーに警告を発するか否かを判定する。この疲労警告判定部11における判定処理については、後述する。
【0084】
もし、疲労警告判定部11でユーザーに警告を発する必要があると判定された場合、疲労提示部12にその情報が送られ、後述するように、ユーザーに対して疲労のレベルに応じた警告やメッセージが伝えられる。
【0085】
なお、図1で示す構成は、あくまで本発明を実現するための一例であり、他の構成であってもよい。たとえば、図1においては、体動検知部2と、疲労警告判定部11および疲労提示部12とが分離された構成とされているが、これはユーザーにできるだけ負担をかけないために体動検知部2を小型化し、かつ、ユーザーにできるだけ豊富な情報が伝えられるよう、疲労提示部12を大きくするためである。しかし、体動検知部2と、疲労警告判定部11および疲労提示部12とは、一体化してもよい。
【0086】
また、体動検知部2および疲労検知部3が同一の機器内において実現される場合は、第1データ蓄積部5、データ送信部6、およびデータ受信部7は省略してもよい。また、疲労警告判定部11および疲労提示部12と、疲労レベル演算部9との間に、データ送受信の構成を設けることで、疲労検知部3と、疲労警告判定部11および疲労提示部12とを別々の機器で実現することも可能である。また、疲労提示部12を省略し、ネットワークを介して医療機関やユーザーの管理者に疲労のレベルや危険度を送信する構成を採用してもよい。
【0087】
以上で示した実施形態は、身体の一部(手首)の活動度から疲労レベルを推定するものであるが、同様のセンサを手首のみならず全身に装着して、疲労レベルを推定することも、もちろん可能である。手首は、比較的動かすことが多いため、体動データを測定することに適するが、乗り物に乗るなど外的要因で動くことも多く、その場合、疲労レベルの推定精度が低下する。
【0088】
たとえば、手首は、睡眠中であれば、本来ほとんど動きがないが、乗り物に乗っていると乗り物のゆれに応じて動くことがあり、そのゆれによる加速度を元に疲労レベルを推定しても意味がない。このように、外的要因による振動を活動度と誤って判断しないためには、全身(たとえば、腰部や脚部や体幹や頭部など)の加速度を測定し、乗り物のゆれによる振動を、全身の加速度から相殺するのが良い。
【0089】
また、手首の加速度から疲労レベルの推定ができない場合、加速度測定位置に関する第2・第3の候補(腰部や脚部や体幹や頭部など)の動きから、疲労レベルを推定することも考えられる。たとえば、医療従事者は、手洗い時に感染症を懸念して、腕時計をはずして手首まで手を洗う必要があり、状況によっては、その後しばらく腕時計を装着しないことも考えられる。その場合は、手首以外の部分における活動度を測定し、その活動度から疲労レベルの推定を行うことで、途切れることなく正しく疲労の推定を行うことできる。
【0090】
また、図1では、体動検知部2のセンサとして加速度センサ4を使用しているが、図2、図3、および図4で説明した疲労時の体動データの傾向を検出する方法は、加速度センサを用いる方法に限定されない。
【0091】
たとえば、位置情報を検出することで、疲労時の体動データの傾向を検出することも可能である。この場合は、ユーザーの体に取り付ける位置情報センサから出力される位置情報を、たとえばUWB(Ultra Wide Band)による通信手段を用いて受信すれば、迅速にユーザーの位置情報を検出することができる。このように位置情報を検出する場合は、時系列に位置情報の変化を求めることで、各時間におけるユーザーの速度情報に変換でき、さらにその速度情報の変化を取ることで、ユーザーの加速度の情報に変換することができる。
【0092】
また、ビデオカメラ等の撮像手段を用いて、ユーザーの体動を撮影した画像情報を取得することでも、原理的にユーザーの疲労を検出することが可能である。このように画像情報を用いる場合は、画像認識処理により、まず被験者の体の一部(たとえば腕や頭部)の動きを常に監視する。そして、加速度センサの出力を疲労レベルの推定に用いる場合と同様に、体の一部の移動変化量を時間で2回微分することにより、該当する身体の一部の加速度を取ることができる。画像情報から加速度を取得した後は、加速度センサを用いる場合と同様の手順にて疲労レベルを推定すればよい。
【0093】
このようにカメラを用いると、ユーザーを拘束することなくユーザーの体動を把握できる点にメリットはあるが、ユーザーはカメラの周辺に常に居る必要があり、画像情報から体動データを得るために膨大な計算量が必要となる場合がある。また、UWBを用いると、迅速にユーザーの体動を撮影した画像情報を取得することができ、効率的に疲労レベルを推定することが可能となる。
【0094】
本実施形態の疲労推定装置1では、より高い精度で簡易に疲労レベルを推定できるという点で、加速度センサ4により体動データを測定している。
【0095】
〔4.処理フロー〕
図9(a)に、上述した疲労推定装置1または疲労警告装置10により実現される疲労推定方法に関するフローチャートを示す。
【0096】
先ず、加速度センサ4により、加速度データの計測が開始される(S1)。その後、加速度センサ4は、加速度データを取得し続ける一方で(S2)、加速度データの測定開始から一定時間(たとえば30分)経過しているか否かを判断する。このようにして、測定開始から一定時間経過するまでに加速度センサ4により測定された加速度データが、第1データ蓄積部5に蓄積される。
【0097】
この第1データ蓄積部5に蓄積された加速度データは、上述したとおり、データ送信部6およびデータ受信部7を介して、第2データ蓄積部8に蓄積される。そして、疲労レベル演算部9は、第2データ蓄積部8に蓄積された加速度データを用いて、上述した計算式に基づき、疲労レベルを演算する(S4)。
【0098】
疲労レベルを演算するための処理フローを、図9(b)に示す。先ず、疲労レベル演算部9は、第2データ蓄積部8に蓄積された加速度データを取得し(S11)、この加速度データから、ハイパスフィルタを用いて重力による影響を除去する(S12)。
【0099】
そして、疲労レベル演算部9は、S12において重力による影響が除去された加速度データが、所定の閾値を通過する回数を数えることで(S13)、zero crossing data、すなわち体動データを取得する。
【0100】
その後、疲労レベル演算部9は、体動データの平均値(Mean)を算出する処理(S14a)と、体動データからトレンドを除去する処理(S14b)および体動データの歪度Skewを算出する処理(S14c)とを、並行して行う。
【0101】
そして、疲労レベル演算部9は、S14aで算出した平均値Mean、およびS14cで算出した歪度Skewを用いて、下式に基づき疲労レベルFatigueを算出する(S15)。
【0102】
Fatigue=0.732×Mean+58.321×Skew−4.028×Mean×Skew+33.370
以上のステップを踏むことによって、疲労レベルFatigueの演算が完了する(S16)。
【0103】
そして、疲労警告判定部11は、演算された疲労レベルFatigueが一定値(たとえば70%)以上あり(S5)、かつ、最後に警告を発してから一定時間(たとえば2時間)以上経過しているかを判断する(S6)。なお、ここにいう「警告」とは、ユーザーが疲労していることを、画面表示等によりユーザーやその関係者に伝えることを意味しており、詳細については後述する。
【0104】
そして、疲労提示部12は、S5およびS6のいずれにおいても「Yes」の判断がなされた場合に、所定の画面にユーザーが疲労している旨の警告を表示する(S7)。また、S5およびS6のいずれか一方において「No」の判断がなされた場合、疲労提示部12は、上記警告を発しない。
【0105】
そして、加速度センサ4は、S7における警告画面の表示が終了したら、加速度データの計測を終了する(S8)。
【0106】
なお、以上に説明したフローに従うと、疲労レベルの推定に必要な加速度データが第2データ蓄積部8に蓄積されるまで、次回の疲労レベルの推定を行うことができない。しかしながら、第2データ蓄積部8に過去に蓄積された加速度データを用いることで、任意の時刻における疲労レベルを、ある程度推定することができる。
【0107】
また、精度の良い疲労レベル推定に必要な時間より、短い間隔で疲労レベルを推定すると、ユーザーの要求に応じて疲労レベルが出力できてよい。しかしながら、ユーザーが参照する疲労レベルの数が多くなって、しかもその疲労レベルが似通ったものになるので、疲労が蓄積されているか、あるいは疲労が回復しているかという傾向が、ユーザーに的確に伝わらない場合がある。
【0108】
そこで、本実施形態では、一旦警告を発してから一定時間(2時間)が経過するまでは、警告を発しない仕様としている。これは、一旦疲労警告を発すれば、ユーザーは疲労回復のための対応(休憩等)を講じると考えられるためである。また、休憩を取ったところですぐに疲労が回復するとは考えられず、疲労が回復するまでの間に疲労警告を繰り返してもそれほど意味がないからである。
【0109】
また、ユーザーへ警告を行うだけでなく、ユーザーに対して問診を行うようにしても好適である。
【0110】
たとえば、体動データの傾向からユーザーが疲労していると判断された場合、ユーザーが疲労を自覚しているか否か、すなわち症状を伴うものであるのか否かに関して、問診の結果得られた実疲労レベル情報を、疲労レベル演算部9により推定された疲労レベルを示す推定疲労レベル情報に対応づけてもよい。これにより、医師がユーザーの疲労を診断する上で、意義深いデータを収集することが可能となる。
【0111】
あるいは、疲労レベルを求めるための演算式における係数や、疲労レベルを推定するためのアルゴリズムを、動的に較正・補正し、疲労レベルの推定精度を向上させることができる。さらに、患者の自覚症状の程度も問診し、推定された疲労レベルに対応付けるとなお良い。
【0112】
この場合、問診結果を疲労レベルに対応付ける処理は、具体的には次のようにして実現可能である。まず、疲労レベルの推定を、間欠的あるいは継続的に行う際に、推定された疲労レベルをその時の時刻情報とともに第2データ蓄積部8に記録する。
【0113】
そして、疲労警告判定部11により所定レベル(70%)以上の疲労レベルが検出された場合、疲労提示部12により、自覚症状の程度を求める画面表示を行う。そして、疲労警告装置10における操作入力部(図示せず)を介してユーザーに入力された疲労の自覚症状の程度を取得し、その取得された自覚症状の程度に関する情報(実疲労レベル情報)を、その時の時刻情報とともに第2データ蓄積部8に蓄積する。
【0114】
このようなデータ蓄積を行うことで、推定された疲労レベルに関する推定疲労レベル情報と、実疲労レベル情報とを、時刻に関して対応づけることができる。
【0115】
〔5.疲労推定装置および疲労警告装置の装着例〕
次に図10および図11を用いて、本実施形態に係る疲労推定装置および疲労警告装置の装着例を示す。
【0116】
図10(a)〜図10(c)は、図1を用いて説明した疲労警告装置を搭載した携帯電話の外観の一例である。以後、これを「本発明品付き携帯電話」と呼び、本発明の機能を持った電子機器全般を「本発明品」と称して区別する。本発明品付き携帯電話の記載内容に関しては、電話に関する記載を除く全ての内容について、本発明品の構成を説明する記載として理解されたい。
【0117】
本発明品付き携帯電話201は、図10(a)に示すように、折り畳み式のものであり、本体部202と蓋体部203とにより構成される。本発明品付き携帯電話201に関しては、本実施形態の疲労推定装置1および疲労警告装置10が搭載されている点以外は、一般に流布している携帯電話と大きく異なったところはない。
【0118】
本体部202は、図10(c)に示すように、携帯電話操作用のキーが配列されたものであり、蓋体部203の表示部203aは、携帯電話の各種機能の表示を行う。
【0119】
通常、本発明品付き携帯電話201を使用しないとき、ユーザーは、本発明品付き携帯電話201を図10(a)に示すように折り畳まれた状態とし、ズボンなどのポケットなどにしまっておく。そして、ユーザーが、本発明品付き携帯電話201を使用するときは、図10(a)の状態から、図10(b)の状態を経て図10(c)の状態まで本発明品付き携帯電話201を開く。
【0120】
この本発明品付き携帯電話201では、表示部203aにおける画面表示により、ユーザーに対する疲労警告を行うことができる。この疲労警告をユーザーが確認する際には、電話着信時や、メール受信・送信時とほとんど同じ動作で疲労警告を確認することができる。すなわち、図10(a)の状態から、図10(b)の状態を経て図10(c)の状態まで本発明品付き携帯電話201を開き、表示部203aにおける画面表示を視認することで、自分の疲労状態を知ることができる。
【0121】
なお、本発明品付き携帯電話201で疲労警告を行う方法は、上述の方法に限定されるものではない。たとえば蓋体部203に小型の表示部があれば、その表示部に疲労の状態を表示してもよい。これにより、本発明品付き携帯電話201を開くことなく疲労状態を確認することができる。ただし、表示部203aを用いる方が、小型の表示部を用いるよりも、大きな画面に疲労の状態を詳細に表示できるので、疲労状態を正確にユーザーに伝えることができる。
【0122】
もちろん、表示部203aにおける画面表示に限らず、音やバイブレーションで疲労の状態をユーザーに伝えたり、あるいはそれらを組み合わせたり、さまざまな方法で疲労の状態をユーザーに提示することができる。
【0123】
たとえば、70%の疲労レベルが検出された場合は、短いビープ音を鳴らすと共に、表示部203aに休憩を促すメッセージ表示を行ってもよい。そして、90%以上の高い疲労レベルが検出された場合は、本発明品付き携帯電話201の折り畳み状態から蓋体部203が開かれる動作を検出する等、ユーザーによるメッセージの確認処理が検出されるまで、ビープ音やバイブレーションを用いて疲労警告を継続するようにしてもよい。これにより、確実にユーザーへの拾う警告を行うことができる。
【0124】
また、図11(a)は、図1における体動検知部2が搭載された腕時計を、腕に装着した状態を示す図である。
【0125】
体動検知部2を搭載した腕時計の外観は、一見通常の腕時計と大きく違わず、時刻の確認も可能である。しかし、体動検知部2を搭載した腕時計は、その内部に図1で示した加速度センサ4、第1データ蓄積部5、およびデータ送信部6が搭載されている点において、通常の腕時計とは異なる。
【0126】
図11(b)に、本発明品を普段使用するイメージ図を示す。本発明品を使用する際には、図11(b)に示すように、本発明品付き携帯電話201をズボンのポケットなどに入れてユーザーの身近に携帯しておき、体動検知部2を搭載した腕時計204を常に手首に装着する。
【0127】
基本的に、本発明品付き携帯電話201と腕時計204とは、頻繁に通信を行うため両者間は通信ができる範囲内に無ければならない。しかしながら、体動検知部2には、第1データ蓄積部5が備わっている。よって、第1データ蓄積部5が加速度データを蓄積しうる間は、本発明品付き携帯電話201と腕時計204との間における通信が途絶えても、途切れることなくユーザーの加速度データを取得することができる。
【0128】
なお、図11(b)では、本発明品付き携帯電話201と腕時計204とが分離した構成を示しているが、必ずしもこれら2つの構成は分離させなくてもよい。たとえば、加速度センサを搭載した携帯電話をユーザーに普段から携帯させれば、本発明の疲労警告装置に係る機能を、その携帯電話のみで実現することができ、部品点数を減らすメリットが得られる。ただし、手首の加速度を用いれば、最も高い精度でユーザーの疲労レベルの推定できるので、本実施形態では本発明品付き携帯電話201と腕時計204とを分離する構成を採用している。
【0129】
〔6.警告処理について〕
本発明品付き携帯電話は、疲労レベル演算部9で演算された疲労レベルが、たとえば70%以上であると疲労警告判定部11により判定された場合は、電話着信時と同様の呼び出し音を発するとともに、図12(a)に示すように休憩を促すメッセージを表示部203aに表示する。
【0130】
疲労の警告レベルについては、複数設定してもよい。たとえば、疲労レベル演算部9で演算された疲労レベルが90%以上であると疲労警告判定部11により判定された場合は、図12(b)に示すように、さらに緊急度の高いメッセージを表示してもよい。
【0131】
なお、疲労は、休憩を取ってもすぐに回復するものではない。よって、疲労レベルの推定をたとえば30分間隔で行うとともに、疲労警告のメッセージを一度表示したら、同じレベルの疲労警告は2時間程度表示しないようにすることが好ましい。これにより、ユーザーが何度も疲労警告を確認することの煩雑さを解消することができる。
【0132】
さらに、疲労警告は、常に緊急性を要するものでもない。たとえば、図12(c)に示すように、疲労レベルに応じて、休憩をそれとなくユーザーに提案するようなメッセージを終業時刻前に表示することで、ユーザーは、そのメッセージに応じて落ち着いてその後の行動を判断することもできる。
【0133】
また、図12(d)に示すように、疲労レベルの時間的な推移を示すグラフを表示部203aに表示することで、ユーザーは、自分の疲労レベルの時間的推移を確認することができる。
【0134】
さらに、疲労推定の結果を伝える者は、何も本発明品を装着している者に限る必要はない。また、本発明品は、携帯電話のみに搭載が限られるものでもない。装着者以外に疲労推定の結果を伝える実施例について、以下に説明する。
【0135】
本発明品の装着者をスポーツ選手とし、疲労推定の結果をその選手の監督に伝える実施例について、図12(e)を用いて説明する。図12(e)に示すように、選手が疲労していることを伝えるメッセージを図12(e)に表示することで、監督は、疲労しているか否かを、直接選手に問い合わせたり、経験や勘に頼ることなく、適切なタイミングで選手を交代させることができる。
【0136】
このように疲労推定の結果を監督に伝える場合、疲労提示部12は携帯電話の表示部に限定しなくてもよい。すなわち、通知機能のある電子機器に疲労提示部12を設け、この疲労提示部12を用いて疲労推定の結果を監督に伝えればよい。また、使用環境が競技場であるという点から、水やホコリの影響が避けられず、疲労提示部12を電子機器に設けることがふさわしくない場合も考えられる。このような場合は、疲労推定の結果を、音声により伝達すればよい。
【0137】
また、装着者以外に疲労推定の結果を伝える別の例として、疲労レベルの推定結果を示す疲労レベル情報を、後述するようにネットワークを介して外部に送信する送信手段(図示せず)を、本発明品に設けてもよい。
【0138】
たとえば、図12(f)に示すように、疲労警告判定部11が判定した疲労推定の結果を医療機関に連絡していることを示すメッセージを、表示部203aに表示してもよい。このように、即座に疲労レベルの推定結果を示す疲労レベル情報を医療機関に送信することで、重大な結果を引き起こす前にユーザーの疲労に対処でき、ユーザーの負担を低減することができる。
【0139】
また、本発明の機能を持った電子機器は、携帯電話に限られるものでなく、パソコンや車載機器としてもよい。疲労レベルを推定する機能を持ったパソコンを業務で使うことで、業務中にユーザーが疲労を感じていると判断されれば、パソコンに設けられた疲労提示部12からユーザーに休憩を促すことができ、過労の問題を避けることができる。また、車載機器に疲労レベルを推定する機能を持たせることで、車載機器に設けられた疲労提示部12から運転のし過ぎや休憩のタイミングをユーザーに知らせることができ、事故を未然に防ぐことができる。
【0140】
また、本発明品を用いた疲労レベルの推定は、必ずしもリアルタイムに行う必要はない。たとえば、疲労レベルを推定した結果を示すデータを一定期間だけ蓄積しておき、その蓄積されたデータを基に、たとえば家庭用PCを用いて疲労レベルの推定を行ってもよい。これにより、過去の一定期間における、疲労レベルの経時的な推移を事後的に把握することができる。
【0141】
また、疲労レベルを推定するためのフローチャートを実行するためのプログラムは、将来的により高精度な疲労レベルの推定ができるように、処理ステップを後から追加できるようにしておくことが望ましい。特に、本実施形態で示したような携帯電話を用いれば、携帯電話本来の通信機能によりサーバーから簡単にプログラムをダウンロードして、疲労レベルを推定するためのプログラムを更新することができるので、処理ステップを後から追加するのに好適である。
【0142】
疲労は、うつ病や慢性疲労症候群などさまざまな神経系疾患に共通した症状である。また、近年、疲労に伴う事故や過労から来る疾患が問題となっている。そのため、いつでも手軽に疲労を検出することができると、上記で挙げたような神経疾患の早期発見や症状の程度の判断が可能となり、また疲労に伴う事故を未然に防ぐことが出来、非常に意義深いことである。
【0143】
上記の実施形態では、疲労レベルの演算を携帯電話側で行っていた。しかし、疲労レベルの演算は複雑な計算を含むため、携帯電話で行うには負荷が大きい場合もある。そのため、体動データの取得および蓄積を携帯電話で行うとともに、取得した体動データを定められたサーバーに送信し、そのサーバーもしくはそのサーバーに接続されたワークステーションで疲労レベルを演算してもよい。そして、演算された疲労レベルをユーザーの携帯電話に送信することで、疲労レベルを携帯電話において表示したり、携帯電話から疲労警告を発したりしても良い。また、サーバーで演算された疲労レベルを、医療機関やユーザーの管理者、ユーザーの親戚や友人など、ユーザー以外に送っても良い。
【0144】
〔7.補足〕
さらに、本実施形態の疲労推定装置により実行される疲労推定方法は、コンピュータにて実行されるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に、疲労推定プログラムとして記録することもできる。この結果、本実施形態の疲労推定方法を行うプログラムを記録した記録媒体を持ち運び自在に提供することができる。
【0145】
記録媒体としては、マイクロコンピュータで処理が行われるために図示しないメモリ、たとえばROMのようなプログラムメディアであってもよく、図示しない外部記憶装置としてのプログラム読取装置が設けられ、そこに記録媒体を挿入することで読み取り可能なプログラムメディアであってもよい。
【0146】
いずれの場合においても、格納されているプログラムはマイクロプロセッサがアクセスして実行させる構成であってもよいし、プログラムを読み出し、読み出されたプログラムは、マイクロコンピュータの図示されていないプログラム記憶エリアにダウンロードされて、そのプログラムが実行される方式であってもよい。この場合、ダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納されているものとする。
【0147】
ここで、上記プログラムメディアは、本体と分離可能に構成される記録媒体であり、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスクやハードディスク等の磁気ディスク並びにCD−ROM/MO/MD/DVD等の光ディスクのディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュROM等による半導体メモリを含めた固定的にプログラムを担持する媒体であってもよい。
【0148】
また、この場合、インターネットを含む通信ネットワークを接続可能なシステム構成であることから、通信ネットワークからプログラムをダウンロードするように流動的にプログラムを担持する媒体であってもよい。なお、このように通信ネットワークからプログラムをダウンロードする場合には、そのダウンロード用のプログラムは予め受信機に格納しておくか、あるいは別の記録媒体からインストールされるものであってもよい。
【0149】
このように、本発明の疲労推定装置は、ユーザーの活動の頻度を活動度として継続的に検知する活動度検知手段を備え、上記活動度検知手段により検知された活動度を、この活動度に基づきユーザーの疲労レベルを推定する疲労レベル推定手段に出力する。
【0150】
本発明者らは、鋭意研究の結果、人が疲労を感じている際には、活動度に一定の傾向が現れるという知見を得た。本発明の疲労推定装置によれば、活動度検知手段により、ユーザーの活動度を自動的に検知できる。そして、疲労レベル推定手段は、活動度に基づきユーザーの疲労レベルを推定するので、この疲労レベル推定手段によれば、活動度検知手段が自動的に検知する活動度に基づき、自動的に疲労レベルが推定される。
【0151】
このように、本発明の疲労推定装置では、活動度検知手段によりユーザーの活動度が自動的に検知されるとともに、疲労レベル推定手段により、検知された活動度から疲労レベルが自動的に推定される。よって、手軽にユーザーの疲労レベルを推定することができる。
【0152】
また、活動度検知手段および疲労レベル推定手段という簡易な構成により、ユーザーの疲労レベルを推定することができるので、安価にユーザーの疲労レベルを推定することができる。
【0153】
本発明の疲労推定装置は、上記構成の疲労推定装置において、上記疲労レベル推定手段は、継続的に高い値を示す活動度が、この高い値を示す時間に比べて短時間だけ低い値を示す傾向を判断することで、疲労レベルを推定することが好ましい。
【0154】
すなわち、人が疲労を感じていると、継続的に高い値を示す活動度が、この高い値を示す時間に比べて短時間だけ低い値を示す傾向が顕著にあらわれる。疲労レベル推定手段においては、この傾向を判断して疲労レベルを推定するので、ユーザーの疲労を的確に捉え、疲労レベルの推定を的確に行うことができる。
【0155】
また、上記疲労レベル推定手段は、上記活動度を統計的に解析することで、上記活動度の傾向を判断することが好ましい。
【0156】
すなわち、疲労時において活動度に表れる傾向は、たとえば活動度の歪度や平均を計算するというように、活動度の統計的な解析を行うことで的確に捉えることができる。よって、活動度を統計的に解析すれば、ユーザーの疲労レベルの推定をより的確に行うことができる。
【0157】
また、上記疲労レベル推定手段は、上記活動度の長期的な変動成分を取り除き、この変動成分が取り除かれた活動度における上記傾向を判断することが好ましい。
【0158】
すなわち、健常者の疲労時における活動度の傾向と、慢性疲労症候群患者の疲労時における活動度の傾向は、活動度の長期的な変動成分を取り除くことで類似した特徴が表れる。よって、上記構成では、疲労レベル推定手段が、活動度の長期的な変動成分を取り除き、この変動成分が取り除かれた活動度における傾向を判断するので、慢性疲労症候群患者の疲労も把握することができる。
【0159】
なお、上記疲労レベル推定手段は、上記活動度を時間で微分することで、この活動度の長期的な変動成分を取り除くことができる。または、上記活動度の時間における差分値を求めることで、この活動度の長期的な変動成分を取り除いてもよい。または、上記活動度の回帰曲線を求め、この回帰曲線を、当該活動度の長期的な変動成分として上記活動度から取り除いてもよい。
【0160】
さらに、上記疲労レベル推定手段は、上記疲労レベルが取り得る範囲を所定の範囲に補正することが好ましい。
【0161】
上記構成によれば、疲労レベル推定手段により推定される疲労レベルの取り得る範囲が、所定の範囲に補正される。よって、この補正後の所定の範囲を、ユーザーが実際に感じている疲労のレベルを定量的に示す値が取り得る範囲と一致させることにより、推定された疲労レベルの値をより適切なものとすることができる。
【0162】
さらに、上記疲労レベル推定手段は、特定の数値付近における入力値の変化に対して、特定の数値付近でない入力値に対する感度よりも高い感度で出力値を変化させる関数を用いて、上記疲労レベルが取り得る範囲を所定の範囲とすることが好ましい。
【0163】
上記構成によれば、上記特定の数値を、疲労レベルの変化を明確に把握したい数値とし、上記関数の入力値を推定された疲労レベルそのものとすれば、この関数の出力値は、疲労レベルの変化を明確に把握したい数値付近の変化に関して、大きく変化することとなる。よって、当該関数の出力値を判断すれば、疲労レベルをより的確に判断することができる。
【0164】
なお、このような関数としては、たとえばシグモイド関数を一例として挙げることができる。
【0165】
また、上記活動度検知手段は、上記活動度を、ユーザーの身体の全部あるいは一部における運動の加速度に基づいて検知することが好ましい。
【0166】
すなわち、ユーザーが疲労している際には、ユーザーの身体の運動が減少する。よって、ユーザーの身体の全部あるいは一部における運動の加速度を検知すれば、ユーザーの疲労時における運動の減少を的確に検知することができ、より的確に疲労レベルを推定することが可能となる。
【0167】
さらに、上記活動度検知手段は、上記活動度を、上記加速度が変化した回数として検知することが好ましい。
【0168】
また、上記活動度検知手段は、上記加速度が変化した回数を、加速度が所定の閾値を通過する回数として検知することが好ましい。
【0169】
すなわち、加速度が所定の閾値を通過する回数により加速度が変化した回数を検知すれば、少ないデータ量で、加速度が変化した回数を把握することができる。よって、効率的にユーザーの活動度を検知し、疲労レベルを推定することが可能となる。
【0170】
さらに、上記活動度検知手段は、上記加速度を、ユーザーの身体の全部あるいは一部の位置情報の時間的な変化に基づいて検知してもよい。
【0171】
さらに、上記加速度は、ユーザーの身体の全部あるいは一部における運動の、3次元的に得られた加速度であってもよい。
【0172】
上記構成によれば、より精度の高い加速度を得ることができる。よって、より精度良く疲労レベルを推定することができる。
【0173】
また、上記加速度は、ユーザーの身体の全部あるいは一部における運動の1次元方向について得られた加速度であってもよい。
【0174】
ユーザーの運動の1次元方向についての加速度に基づいて活動度を検知することで、活動度を示すデータ量を少なくすることができる。よって、効率的にユーザーの活動度を検知し、疲労レベルを推定することが可能となる。
【0175】
なお、「1次元方向の運動」とは、x軸・y軸・z軸の3軸に関する方向でユーザーの運動を定義した場合における、x軸・y軸・z軸のうち1軸に関する方向へのユーザーの運動を意味する。1次元方向の運動を評価するためには、1軸出力の加速度センサを用いれば十分である。
【0176】
また、上記加速度は、ユーザーの手首の運動についての加速度であることが好ましい。
【0177】
すなわち、疲労時に運動が減少する傾向は、手首において顕著に現れる。よって、ユーザーの手首の運動についての加速度を検知することで、活動度を的確に検知し、より的確に疲労レベルを推定することが可能となる。
【0178】
さらに、上記活動度検知手段は、腕時計内に設けられていることが好ましい。
【0179】
すなわち、腕時計は、通常手首に取り付けられるものなので、活動度検知手段を腕時計内に設けることで、手首の加速度を的確に検知することができる。これにより、活動度を的確に検知し、より的確に疲労レベルを推定することが可能となる。
【0180】
また、上記活動度検知手段は、上記活動度を、ユーザーの身体の全部あるいは一部の位置情報に基づいて検知してもよい。
【0181】
すなわち、疲労時においてユーザーの身体の運動が減少する傾向は、ユーザーの位置情報を判断することでも検知することができる。すなわち、身体の運動が減少すれば、当然にユーザーの位置もそれほど変化しなくなる。よって、この位置が変化しなくなる傾向を位置情報に基づいて検知することで、ユーザーの疲労を検知することができる。
【0182】
また、位置情報によれば、ユーザーの位置を判断することができるので、ユーザーの疲労レベルとともにユーザーの位置も把握することができる。
【0183】
また、上記活動度検知手段は、上記活動度を、ユーザーの身体の全部あるいは一部を撮影した画像情報に基づいて検知してもよい。
【0184】
すなわち、ユーザーの身体の全部あるいは一部を撮影した画像情報は、ユーザーを拘束することなく、たとえばビデオカメラ等の撮影手段により取得することができる。よって、ユーザーに不快感を与えることなく、疲労レベルの推定を行うことができる。
【0185】
さらに、ユーザーに対する問診の結果得られた、ユーザーの疲労に関する実疲労レベル情報を、上記疲労レベル推定手段により推定される疲労レベルに関する推定疲労レベル情報と対応付けることが好ましい。
【0186】
すなわち、ユーザーに対して問診を行った結果得られる、ユーザーの疲労に関する実疲労レベル情報は、ユーザーの疲労を示す情報として信頼性が最も高いものである。よって、この情報を、疲労レベル推定手段により推定される疲労レベルに関する推定疲労レベル情報と対応付けることで、より的確にユーザーの疲労レベルを判断でき、的確な処置を行うことができる。
【0187】
さらに、上記疲労レベル推定手段は、疲労推定装置と分離されたサーバー内に設けられていることが好ましい。
【0188】
すなわち、疲労レベル推定手段において実行される、活動度に基づきユーザーの疲労レベルを推定する処理をサーバー内で実現することにより、疲労推定装置自体の構成をコンパクトにすることができる。
【0189】
また、サーバー内で推定された疲労レベルを、ユーザー以外の者に送信することができるので、ユーザー本人が自分の疲労に対処できなくても、疲労レベルの送信を受けた者がその疲労に対処することができる。
【0190】
また、本発明の疲労警告装置は、上記構成の疲労推定装置と、上記疲労レベル推定手段により推定された疲労レベルの程度を判定し、ユーザーの疲労に関する警告を発するか否かを判定する疲労警告判定手段と、上記疲労警告判定手段の判定結果に基づき、上記警告を提示する疲労提示手段とを備えていることを特徴としている。
【0191】
上記構成によれば、疲労警告判定手段によりユーザーの疲労に関する警告を発するか否かが疲労警告判定手段により判定され、その判定結果に基づき、疲労提示手段から疲労警告が提示される。
【0192】
よって、ユーザーやそれ以外の者は、疲労提示手段により提示された疲労警告を判断することで、手軽にユーザーの疲労レベルを知ることができる。これにより、疲労が原因で生じるトラブルを回避できる。
【0193】
また、上記疲労提示手段は、所定のタイミング毎に、上記警告を提示することを特徴としている。
【0194】
すなわち、ユーザーが疲労を回復するための処置を講じても、ある程度の時間が経過しなければ、疲労は回復しない。よって、疲労が完全に回復していない状態で疲労提示手段から疲労警告を発しても、ユーザーにとっては煩わしい警告となりかねない。
【0195】
よって、疲労回復のために十分な時間を所定タイミングとし、所定タイミング毎に疲労警告を疲労提示手段から発することで、ユーザーの煩わしさを低減することができる。
【0196】
さらに、上記疲労提示手段は、上記疲労レベル推定手段により疲労レベルが推定される対象者以外の者に対して、上記警告を提示してもよい。
【0197】
上記構成によれば、ユーザー本人が自分の疲労に対処できなくても、疲労提示手段により提示される疲労警告を確認した者が、その疲労に対処することができる。
【0198】
また、本発明の電子機器は、上記構成の疲労推定装置、または上記構成の疲労警告装置を備えていることを特徴としている。
【0199】
上記構成の疲労推定装置または疲労警告装置を電子機器に設ければ、日常生活の中で違和感無く疲労レベルの推定を行うことができる。
【0200】
また、上記電子機器は、上記疲労レベル推定手段により推定された疲労レベルを示す推定疲労レベル情報を、外部に送信する送信手段を備えていることが好ましい。
【0201】
上記構成によれば、推定疲労レベル情報が外部に送信されるので、その推定疲労レベル情報の送信先にてユーザーの疲労レベルを知ることができる。よって、ユーザー本人が自分の疲労に対処できなくても、推定疲労レベル情報の送信先で、当該情報を確認した者が、その疲労に対処することができる。
【0202】
また、上記電子機器は、携帯電話であることが好ましい。携帯電話は、一般的にユーザーが肌身離さず携帯するものであるので、活動度検知手段を携帯電話内に設ければ、活動度を正確に検知することができる。
【0203】
また、本発明の疲労推定方法は、上記課題を解決するため、疲労推定装置に設けられた活動度検知手段により、ユーザーの活動の頻度を活動度として継続的に検知する活動度検知ステップと、上記活動度検知ステップにおいて検知された活動度を、ユーザーの疲労レベルを推定する疲労レベル推定手段に出力する疲労レベル出力ステップとを備えていることを特徴としている。
【0204】
上記疲労推定方法によれば、本発明の疲労推定装置と同様の作用効果を得ることができる。
【0205】
また、本発明の疲労推定プログラムは、上記課題を解決するため、本発明の疲労推定方法を実行するための疲労推定プログラムであって、コンピュータに上記の各ステップを実行させることを特徴とする。
【0206】
本発明の疲労推定プログラムをインストールすることで、任意のコンピュータを用いて疲労レベルを推定することができる。
【0207】
さらに、疲労推定プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶させることにより、任意のコンピュータ上で疲労推定プログラムを実行させることができる。
【0208】
なお、本発明の疲労推定装置は、ユーザーの活動状況を継続的に検知し、検知された活動状況に基づいて疲労を検出する構成であってもよい。
【0209】
上記構成の疲労推定装置においては、継続的な活動状況中に相対的に低い活動状況に基づいて疲労を検出することが好ましい。また、相対的に低い活動状況は、継続的な活動状況より長期的な変動成分を取り除くことで得ることが好ましい。
【0210】
さらに、相対的に低い活動状況は、検知された活動状況を統計的に解析することで得てもよい。このように長期的な変動成分を取り除く方法としては、活動状況の微分又は差分値を求めればよい。
【0211】
また、長期的な変動成分としては、回帰曲線を用いることが好ましい。
【0212】
さらに、算出された疲労度は、所定の範囲内に収める処理が行われることが好ましい。このように算出された疲労度を所定の範囲に収める処理においては、特定の数値周辺に高い感度を持たせることが好ましい。
【0213】
また、活動状況は、身体の全部あるいは一部の加速度により取得されることが好ましい。なお、活動状況は、身体の全部あるいは一部の位置情報により取得されてもよいし、身体の全部あるいは一部の画像情報により取得されてもよい。
【0214】
さらに、活動状況は、上記加速度の変化に基づいて取得されることが好ましい。また、上記加速度は、上記位置情報の変化に基づいて取得されてもよい。
【0215】
さらに、上記加速度の変化は、該加速度が所定値と交差する回数をカウントすることで取得されてもよい。
【0216】
また、上記身体の一部として、手首の活動状況を取得することが好ましい。また、上記加速度は、1次元の加速度であることが好ましい。
【0217】
さらに、所定の疲労を検出すると、ユーザーに通知することが好ましい。この通知は、定められたタイミングで行われることが好ましい。また、所定の疲労を検出すると、疲労を検出したユーザーとは別のユーザーに対して通知することが好ましい。
【0218】
また、本発明の電子機器は、上記構成の疲労推定装置を搭載した構成であってもよい。この電子機器は、通信機能を持つことが好ましく、携帯電話であればより好ましい。さらに、疲労推定プログラムを後から追加することが可能であれば好ましい。なお、本発明の状態推定装置は、手首の活動状況を取得する機能を持った腕時計として構成することが好ましい。
【0219】
また、本発明の疲労推定装置は、ユーザーの体動からユーザーの動作を活動度として継続的に検知する活動度検知手段を備え、上記活動度検知手段により検知された活動度を、この活動度に基づきユーザーの疲労レベルを推定する疲労レベル推定手段に出力する構成である。
【0220】
また、上記疲労レベル推定手段は、継続的に高い値を示す活動度が、この高い値を示す時間に比べて数十秒程度低い値を示す傾向を判断することで、疲労レベルを推定することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0221】
本発明によれば、疲労レベルの推定を安価で手軽に行うことができる。よって、本発明によれば、近年問題となっている疲労が原因で生じる種々の症状を早期発見したり、疲労に伴う事故を未然に防いだりすることができる。
【符号の説明】
【0222】
1 疲労推定装置
2 体動検知部(活動度検知手段)
3 疲労検知部(疲労レベル推定手段)
4 加速度センサ(活動度検知手段)
5 第1データ蓄積部(活動度検知手段)
6 データ送信部(活動度検知手段)
7 データ受信部(疲労レベル推定手段)
8 第2データ蓄積部(疲労レベル推定手段)
9 疲労レベル演算部(疲労レベル推定手段)
10 疲労警告装置
11 疲労警告判定部(疲労警告判定手段)
12 疲労提示部(疲労提示手段)
201 発明品付き携帯電話
202 体部
203 蓋体部
203a 表示部
204 腕時計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの活動の頻度を活動度として継続的に検知する活動度検知手段を備え、
活動度を時間で微分することによって活動度から長期的な変動成分を取り除き、長期的な変動成分が取り除かれた活動度について、継続的に高い値を示す時間に比べて短時間だけ低い値を示す傾向を判断することで疲労レベルを推定する疲労レベル推定手段に対して、上記活動度検知手段により検知された活動度を出力することを特徴とする疲労推定装置。
【請求項2】
ユーザーの活動の頻度を活動度として継続的に検知する活動度検知手段を備え、
活動度の回帰曲線を求めるとともに、求めた回帰曲線を活動度の長期的な変動成分として取り除き、長期的な変動成分が取り除かれた活動度について、継続的に高い値を示す時間に比べて短時間だけ低い値を示す傾向を判断することで疲労レベルを推定する疲労レベル推定手段に対して、上記活動度検知手段により検知された活動度を出力することを特徴とする疲労推定装置。
【請求項3】
ユーザーの活動の頻度を活動度として継続的に検知する活動度検知手段を備え、
活動度に基づきユーザーの疲労レベルを推定し、推定された疲労レベルが取り得る範囲を所定の範囲に補正する疲労レベル推定手段に対して、上記活動度検知手段により検知された活動度を出力することを特徴とする疲労推定装置。
【請求項4】
上記疲労レベル推定手段は、特定の数値付近における入力値の変化に対して、特定の数値付近でない入力値に対する感度よりも高い感度で出力値を変化させる関数を用いて、上記疲労レベルが取り得る範囲を所定の範囲とすることを特徴とする請求項3に記載の疲労推定装置。
【請求項5】
上記活動度検知手段は、上記活動度を、ユーザーの身体の全部あるいは一部における運動の加速度に基づいて検知することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の疲労推定装置。
【請求項6】
ユーザーの身体の全部あるいは一部における運動の加速度が変化した回数を、ユーザーの活動の頻度を示す活動度として継続的に検知する活動度検知手段を備え、
上記活動度検知手段により検知された活動度を、この活動度に基づきユーザーの疲労レベルを推定する疲労レベル推定手段に出力することを特徴とする疲労推定装置。
【請求項7】
上記活動度検知手段は、上記加速度が変化した回数を、加速度が所定の閾値を通過する回数として検知することを特徴とする請求項6に記載の疲労推定装置。
【請求項8】
上記活動度検知手段は、上記加速度を、ユーザーの身体の全部あるいは一部の位置情報の時間的な変化に基づいて検知することを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の疲労推定装置。
【請求項9】
上記加速度は、ユーザーの身体の全部あるいは一部における運動の、3次元的に得られた加速度であることを特徴とする請求項5ないし8のいずれか1項に記載の疲労推定装置。
【請求項10】
上記加速度は、ユーザーの身体の全部あるいは一部における運動の1次元方向について得られた加速度であることを特徴とする請求項5ないし8のいずれか1項に記載の疲労推定装置。
【請求項11】
上記加速度は、ユーザーの手首の運動についての加速度であることを特徴とする請求項5ないし10のいずれか1項に記載の疲労推定装置。
【請求項12】
上記活動度検知手段が腕時計内に設けられていることを特徴とする請求項11に記載の疲労推定装置。
【請求項13】
上記活動度検知手段は、上記活動度を、ユーザーの身体の全部あるいは一部の位置情報に基づいて検知することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の疲労推定装置。
【請求項14】
上記活動度検知手段は、上記活動度を、ユーザーの身体の全部あるいは一部を撮影した画像情報に基づいて検知することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の疲労推定装置。
【請求項15】
ユーザーの活動の頻度を活動度として継続的に検知する活動度検知手段を備え、
上記活動度検知手段により検知された活動度を、この活動度に基づきユーザーの疲労レベルを推定する疲労レベル推定手段に出力し、
ユーザーに対する問診の結果得られた、ユーザーの疲労に関する実疲労レベル情報を、上記疲労レベル推定手段により推定される疲労レベルに関する推定疲労レベル情報と対応付けることを特徴とする疲労推定装置。
【請求項16】
上記疲労レベル推定手段は、疲労推定装置と分離されたサーバー内に設けられていることを特徴とする請求項1ないし15のいずれか1項に記載の疲労推定装置。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれか1項に記載の疲労推定装置と、
上記疲労レベル推定手段により推定された疲労レベルの程度を判定し、ユーザーの疲労に関する警告を発するか否かを判定する疲労警告判定手段と、
上記疲労警告判定手段の判定結果に基づき、上記警告を提示する疲労提示手段とを備えていることを特徴とする疲労警告装置。
【請求項18】
上記疲労提示手段は、所定のタイミング毎に、上記警告を提示することを特徴とする請求項17に記載の疲労警告装置。
【請求項19】
上記疲労提示手段は、上記疲労レベル推定手段により疲労レベルが推定される対象者以外の者に対して、上記警告を提示することを特徴とする請求項17または18に記載の疲労警告装置。
【請求項20】
請求項1ないし16のいずれか1項に記載の疲労推定装置、または請求項17ないし19のいずれか1項に記載の疲労警告装置を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項21】
上記疲労レベル推定手段により推定された疲労レベルを示す推定疲労レベル情報を、外部に送信する送信手段を備えていることを特徴とする請求項20に記載の電子機器。
【請求項22】
携帯電話であることを特徴とする請求項20または21に記載の電子機器。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図2(c)】
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【図2(d)】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図3(c)】
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【図3(d)】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図4(c)】
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【図4(d)】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図6(c)】
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【図7】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【図9(a)】
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【図9(b)】
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【図10(a)】
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【図10(b)】
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【図10(c)】
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【図11(a)】
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【図11(b)】
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【図12(a)】
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【図12(b)】
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【図12(c)】
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【図12(d)】
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【図12(e)】
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【図12(f)】
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【公開番号】特開2011−251137(P2011−251137A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158353(P2011−158353)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【分割の表示】特願2008−517864(P2008−517864)の分割
【原出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】