疾患治療剤
【課題】高用量で患者に適用できる自己免疫疾患の治療法の提供。
【解決手段】薬学的に許容される担体と、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤とを含む自己免疫疾患を治療するための医薬組成物であって、剤の用量が10mg〜200mgで対象に投与される医薬組成物の提供。
【解決手段】薬学的に許容される担体と、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤とを含む自己免疫疾患を治療するための医薬組成物であって、剤の用量が10mg〜200mgで対象に投与される医薬組成物の提供。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己免疫疾患の治療に関する。本発明は、既に報告されている剤よりも高投与量で患者に投与され得るヒト化モノクローナル抗体などの剤に関する。前記剤は、有効な治療のために高投与量を必要とする疾患及び特性のいずれかを有する患者に特に有効である。本発明は、抗体などの前記剤を有効濃度で含む医薬組成物と、該剤を含む組成物及び薬剤の使用と、該剤を含む組成物及び薬剤を用いる治療方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
自己免疫は、生物が自身の構成部(サブ分子レベルまで)を「自己」として認識できないことであり、その結果自身の細胞及び組織に対する免疫反応が生じる。かかる異常な免疫反応から生じる任意の疾患は、自己免疫疾患と命名されている。自己免疫疾患としては、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ(RA)、乾癬、乾癬性関節炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、重症筋無力症(MG)、多腺性自己免疫症候群II型(APS−II)、橋本甲状腺炎(HT)、1型糖尿病(T1D)、全身性エリテマトーデス(SLE)、及び自己免疫リンパ増殖症候群(ALS)が挙げられる。
【0003】
自己免疫疾患は、T細胞が「自己」の分子、即ちホストの細胞により産生される分子を認識し該分子に反応するときに生じる。抗原提示細胞(APC)によるプロセシングを受けた自己抗原の提示による「自己反応性」T細胞の活性化は、T細胞のクローン性増殖及び特定の組織への遊走を導き、前記組織においてT細胞は、炎症及び組織破壊を誘導する。
【0004】
通常、T細胞は、自己組織に対して免疫寛容性であり、異種構造が提示されたときにのみ反応する。中枢性免疫寛容及び末梢性免疫寛容は、自己反応性T細胞がその有害な機能を誘発することを免疫系が妨げる2種の機序である。中枢性免疫寛容には負の選択が介在する。このプロセスは、個体発生中の胸腺における自己反応性T細胞のクローン除去を通じた排除を伴う。
【0005】
末梢性免疫寛容は、中枢性免疫寛容が失敗し、自己反応性細胞が胸腺から逃れた場合に利用されるバックアップである。免疫寛容のこの機序は、生涯に亘って持続的に存在し、免疫学的無視(アネルギー)、末梢消失、及び活性抑制の少なくともいずれかを通して自己反応性細胞を抑制する。
【0006】
活性抑制の一部として制御性T細胞(Treg、かつては「サプレッサ細胞」とも称されていた)は、末梢性免疫寛容を維持し、自己免疫を制御する(非特許文献1〜7)。一般に制御性T細胞は、ヘルパーT細胞1型(TH1)及びTH2エフェクタ細胞の活性化及び機能の少なくともいずれかを阻害する。Treg細胞の頻度及び機能のいずれかにおける制御不全が、自己免疫疾患の弱体化を導く場合もある(非特許文献6、及び8〜10)。
【0007】
制御性T細胞の幾つかのサブセットが特徴付けられている。Tregファミリーは2種の重要なサブセット、自然発生サブセット、例えばCD4+CD25+Tregと、末梢性誘導サブセット、Tr1及びTh3Tregとからなる。更にNKTreg及びCD8+Tregが、ヒト及び齧歯類で報告されている(非特許文献11)。
【0008】
胸腺由来のTreg細胞(自然発生型CD4+CD25+Treg)は、自己免疫或いは病原体免疫反応の制御に関与する主な制御性細胞であり、前記細胞は、
i)CD4+T細胞であり、末梢性CD4+T細胞の5%〜10%を構成している、
ii)胸腺で成熟する、
iii)IL−2受容体(CD25)、CD45分子の低分子アイソフォームで、CD152(CTLA−4)、及び転写因子FoxP3と合わせて発現することを一般に特徴とする。
【0009】
Tregの役割は、CD25+細胞の枯渇したCD4+細胞を有する免疫不全ヌードマウスを再構成することを含む実験により最も良く示されている。CD4+CD25−再構成ヌードマウスは、胃炎、卵巣炎、精巣炎、及び甲状腺炎などの様々な器官特異的自己免疫疾患を発現する(非特許文献12)。
【0010】
再構成実験においてCD4+CD25+サブセットをヌードマウスに組み込むとこれら疾患の発症が妨げられる(非特許文献13)。器官特異的自己免疫に対するCD4+CD25+細胞の保護的価値は、出産3日後に実施される新生児胸腺摘出(d3Tx)により惹起される自己免疫(例えば自己免疫胃炎、前立腺炎、卵巣炎、糸球体腎炎、精巣上体炎、及び甲状腺炎)、或いはSCIDマウスを高CD45RB、CD4+CD25−T細胞で再構成することにより惹起される炎症性腸疾患の幾つかの他のモデルにおいても示されている。抗CD25抗体をインビボでマウスに投与することによっても器官限局性自己免疫疾患が誘導される。
【0011】
マウスのCD4+CD25+制御性T細胞の機能における転写因子FoxP3の重要性の発見、及びIPEX(免疫不全、多発性内分泌腺症、腸症、及びX連鎖遺伝)症候群、CD4+CD25+制御性細胞欠損マウス(scurfy症候群)で見られる疾患に類似している重篤な炎症性疾患、の患者がFoxP3に変異を有しているという以前の知見により、自己免疫動物モデル、マウス制御性T細胞とヒトの自己免疫疾患との間に直接的相関が得られた(非特許文献13)。
【0012】
制御性T細胞の薬学的機序は完全には明らかになっていない。CD4+CD25+Tregは、ポリクローナル及び抗原特異的にT細胞活性化を阻害する。TCRを介したCD4+CD25+Tregの活性化を必要とする細胞接触依存性機序により抑制が媒介されるが、Tregは、TCR活性化時或いはマイトジェニック抗体による刺激時に増殖反応を示さない(アネルギー性)(非特許文献14)。一旦刺激されると、それらはCD4+T細胞及びCD8+T細胞の反応を抗原非依存的方法で抑制し、B細胞活性化及びそれらのクローン除去を阻害する能力を有する。
【0013】
CD4+CD25+Tregのサプレッサ活性がTGF−βなどの抗炎症性サイトカインにも部分的に依存することを示す更なるデータが存在する(非特許文献15及び16)。TGF−β分泌の機能的重要性は、TGF−β欠損マウスが自己免疫疾患を発現し、幾つかのモデルにおいて自己免疫の阻止或いはCD4+T細胞の寛容誘導性活性がTGF−βに対する中和抗体の投与によりインビボで取り消されるという知見により更に支持されている。
【0014】
CD4+T細胞サブセットには、抑制機能を有する少なくとも2超の異なる種類の細胞、1型制御性T細胞(Tr1)及びTh3細胞が存在する可能性があり、前記細胞は特異的外因性抗原に曝露された後誘導される(「適応性或いは誘導性制御性T細胞」と呼ばれる)。これら細胞の種類は、そのサイトカイン産生プロファイルに基づいてCD4+CD25+Tregと区別できると思われる。しかしこれら異なる種類間の関係は不明であり、作用機序は重複している。
【0015】
Tr1細胞は、IL−10の存在下におけるTCRの反復刺激により誘導され、中程度の量のTGF−βと共に高レベルのIL−10の産生を介して免疫反応を主にダウンレギュレートすることが示された(非特許文献17)。
【0016】
Th3細胞(抗原の経口送達後EAEモデルで同定された)は、多量のTGF−βと、可変量のIL−4及びIL−10とを産生する。IL−4はそれ自体Th3細胞の分化にとって重要な因子であることが示されており、IL−10を用いて分化するTr1細胞とは対照的である(非特許文献18)。
【0017】
免疫抑制薬剤の使用によるT細胞の機能抑制は、成功裏に自己免疫疾患を治療するために用いられている主な治療ストラテジである。しかし前記薬剤は選択性が乏しいため全身で免疫抑制を誘導し、その結果免疫系の有害な機能だけでなく有用な機能も阻害する。結果として、感染、癌、及び薬剤毒性などの幾つかのリスクが生じる恐れがある。
【0018】
T細胞の機能に干渉する剤は、各種自己免疫疾患治療の中枢を担っている。
【0019】
自己免疫疾患を治療するために制御性T細胞の活性化を目的とする剤を使用するアプローチは、著しく困難であることがこれまでに判明している。アゴニスト性抗CD3抗体OKT−3を用いるTCRを介したTregの活性化(非特許文献19)、或いはスーパーアゴニスト性抗CD28抗体TGN1412を用いる共刺激分子CD28を介したTregの活性化により、制御性T細胞集団及び他の従来のT細胞の完全な枯渇と、IFN−γ、TNF−α、IL−1、及びIL−2を含む炎症促進性サイトカインの全身性誘導及び過剰量の放出とが導かれ、その結果ヒトでは臨床的に明らかなサイトカイン放出症候群(CRS)が生じる(非特許文献20)。
【0020】
5mgのモノクローナル抗体OKT3を最初の2回〜3回注入した後、患者の大部分がサイトカイン放出症候群を発現し、腎移植レシピエントの血液循環において1時間〜2時間以内に高濃度の腫瘍壊死因子α、インターロイキン−2、及びγ−インターフェロンが現れる(非特許文献21)。これにより治療域が狭くなり、自己免疫疾患の治療におけるこの抗体の有用性が限定される。
【0021】
総用量5mg〜10mgのTGN1412(0.1mg抗CD28/kg体重)で処理すると、TGN1412の単回静脈内投与を受けた後90分以内に多臓器不全を伴う全身性炎症反応が導かれる(非特許文献20)。
【0022】
CD4T細胞が自己免疫の開始及び維持において重要な役割を果たしていることは一般に認められている。したがって、CD4T細胞表面分子に対するmAb、特に抗CD4mAbを免疫抑制剤として使用することが提案されている。多くの臨床研究によりこのアプローチの潜在的重要性が確認されているが、前記研究はルーチンな診療における使用に対して抗CD4mAbをより好適にするために対処すべき幾つかの問題も提起している。
【0023】
CD4mAbの幾つかの異なる作用機序が提案されており、例えば(1)CD4−MHC II相互作用の拮抗によるT細胞活性化阻害、(2)CD4の細胞表面発現低下により判定されるCD4受容体調節、(3)後にT細胞活性化を抑制しCD4T細胞のアポトーシス細胞死を誘発し得るT細胞受容体架橋の非存在下におけるCD4受容体を通じた部分的シグナル伝達、(4)CD4T細胞枯渇を導くFc媒介性補体依存性細胞傷害活性(CDC)或いは抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)、及び(5)制御性T細胞の刺激が挙げられる。
【0024】
CD4T細胞枯渇を導くFc媒介性補体依存性細胞傷害活性(CDC)或いは抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)が主に観察される機序であり、IgG1サブクラスの抗体について特に証明されている。TRX−1、TNX−355、IDEC−151、OKTcdr4Aなど他の機序に寄与しているのはほんの僅かなCD4抗体であり、この中でIgG1はTRX−1のみである(非特許文献22〜29)。
【0025】
「高」用量(100mg超を複数サイクル投与)におけるCD4+T細胞の用量依存性枯渇、及び「低」用量(10mg超を複数サイクル投与)における一過性隔離(短期間枯渇)が、幾つかのCD4受容体(非特許文献23及び26)及びHuMax−CD4(非特許文献28及び30)で観察されている。その枯渇活性にもかかわらず、CD4に対するmAbは、研究された自己免疫疾患、例えば関節リウマチにおいて臨床的有用性及び一貫した有効性をもたらすことはできなかった(非特許文献31)。更にCD4+T細胞の枯渇は一般にシナリオ(scenario)と見なされ、これは重篤な免疫抑制を惹起することがある。
【0026】
B−F5抗体(マウスIgG1抗ヒトCD4)を様々な自己免疫疾患で試験した。
【0027】
重篤な乾癬に罹患している少数の患者をマウスB−F5抗体で処理した結果、幾つかの正の効果が報告された(非特許文献32及び33)。
【0028】
関節リウマチ患者では、B−F5を毎日投与するプラセボ対照試験で観察された結果は有意な改善を示さなかった(非特許文献34)。
【0029】
多発性硬化症(MS)患者では、再発寛解型患者を10日間処理した後幾つかの正の効果が観察され、患者の一部は治療の6ヶ月後も再発しなかった(非特許文献35)。同様の効果が非特許文献36でも観察された。
【0030】
重篤なクローン病では、連続して7日間B−F5を投与した患者で有意な改善は見られなかった(非特許文献37)。
【0031】
同種移植片拒絶の予防では、同種移植片拒絶の予防に用いるにはB−F5の生物学的利用能が十分ではないことが報告された(非特許文献38)。
【0032】
臨床的改善を得るために高用量のmAbの使用が必須であるという問題を最初に解決すべきであることが上記から明らかである。該問題は、標的組織におけるmAbへのリンパ球の接近可能性が低いことに特に起因する可能性がある。高用量の使用により、血中リンパ球に対する過剰作用が生じ、不所望の副作用が誘導される恐れがある。
【0033】
ヒトにおいてモノクローナル抗体を用いる治療の別の問題点は、これらの抗体が一般にマウス細胞から得られたものであり、ヒトレシピエントにおいて抗マウス反応を誘発することである。これは前記治療の有効性及び将来開発されるであろうマウスモノクローナル抗体を用いる任意の治療法の有効性さえも低下させるだけでなく、アナフィラキシーのリスクも高める。
【0034】
この問題点は、マウスモノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)をグラフトすることにより得られるヒト化抗体を使用することにより原則として避けることができ、前記相補性決定領域とはヒト免疫グロブリン分子のフレームワーク領域(FR)上に存在する抗原結合特異性を決定する領域である。ヒト化の目的は、CDR配列が由来するマウスモノクローナル抗体と同様の抗原結合性を有し、ヒトにおける免疫原性が非常に低い組み換え抗体を得ることである。
【0035】
場合によっては、抗原結合性(特異性だけでなく、抗原に対する親和性も)を移行させるにはマウス抗体のCDRをヒトフレームワークにおけるヒトCDRに置換するだけで十分である。しかし多くの抗体では幾つかのFR残基が抗原結合にとって重要であり、その理由は前記FR残基が抗体−抗原複合体中の抗原に直接接触するか、或いは前記FR残基がCDRの立体構造延いてはその抗原結合性能に影響を与えるためである。
【0036】
したがってほとんどの場合、マウス抗体の1或いは数個のフレームワーク残基をヒトの対応するFR残基に置換することも必要である。抗マウス反応を防ぐために置換される残基数はできる限り少なくしなければならないため、抗原結合性を保持するためにどのアミノ酸残基(1或いは複数のいずれか)が重要なのかを決定することが問題である。置換するのにより適切な部位を予測するための種々の方法が提案されている。前記方法はヒト化の最初の段階で助けになる可能性のある一般原理を提供するが、最終的な結果は抗体によって異なる。したがって、所定の抗体についてどの置換が所望の結果をもたらすかを予想することは非常に困難である。
【0037】
マウスB−F5抗体のヒト化は既に試みられており、親マウスB−F5に類似するCD4結合性を有するヒト化B−F5(以後hB−F5と称する)を産生することに成功している。
【0038】
したがって、特許文献1ではヒト化抗体BT061(ヒト化B−F5、或いは単にhB−F5)が乾癬及び関節リウマチなどの自己免疫疾患の治療において有用であることが見出されている。前記特許出願は、0.1mg〜10mg、好ましくは1mg〜5mgの用量を投与できるよう配合された非経口投与用組成物について開示している。予想される投与レジメは10日間に亘って1日当たり1mgの用量及び2日に1回5mgの用量を関節リウマチ患者に静脈内投与するレジメである。したがって開示されている最高用量は1回に5mgであり、10日に亘る過程では25mgである。
【0039】
前記研究は非特許文献39においても報告された。関節リウマチに罹患している11人の患者の治療について開示された。患者は150mgのジクロフェナック(Diclophenac)との併用治療により、隔日5mgのBT061を5回静脈内注入することにより治療された。
【0040】
この研究に記載されている抗体は、高用量で用いるのに好適であることが開示されておらず、より多くの患者を治療するために高用量による治療法を見出すことが依然として望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】国際特許公開第2004/083247号
【非特許文献】
【0042】
【非特許文献1】Suri−Payer et al.,J Immunol.157:1799−1805(1996)
【非特許文献2】Asano et al.,J Exp.Med.184:387−396(1996)
【非特許文献3】Bonomo et al.,J.Immunol.154:6602−6611(1995)
【非特許文献4】Willerford et al.,Immunity 3:521−530(1995)
【非特許文献5】Takahashi et al.,Int.Immunol.10:1969−1980(1998)
【非特許文献6】Salomon et al.,Immunity 12:431−440(2000)
【非特許文献7】Read et al.,J Exp.Med.192:295−302(2000)
【非特許文献8】Baecher−Allan et al.,Immunol.Review 212:203−216(2006)
【非特許文献9】Shevach,Annu.Rev.Immunol.18:423−449(2000)
【非特許文献10】Sakaguchi et al.,Immunol.Rev.182:18−32(2001)
【非特許文献11】Fehervari et al.,J.Clin.Investigation 114:1209−1217(2004)
【非特許文献12】Suri−Payeret al.;J.Immunol.160:1212−1218(1998)
【非特許文献13】Sakaguchi et al.,J Immunol.155:1151−1164(1995)
【非特許文献14】Shevach,Nature Rev.Immunol 2:389(2002)
【非特許文献15】Kingsley et al.,J Immunol.168:1080(2002)
【非特許文献16】Nakamura et al.,J Exp.Med.194:629−644(2001)
【非特許文献17】Chen et al.,J.Immunol.171:733−744(2003)
【非特許文献18】Chen et al.,Science 265:1237−1240(1994)
【非特許文献19】Abramowicz et al,N Engl.J Med.1992 Sep 3;327(10):736
【非特許文献20】Suntharalingam et al,N Engl.J Med.2006 Sep 7;355(10):1018−28
【非特許文献21】Abramowicz et al,Transplantation.1989 Apr;47(4):606−8
【非特許文献22】Schulze−Koops et al.,J Rheumatol.25(11):2065−76(1998)
【非特許文献23】Mason et al.,J Rheumatol.29(2):220−9(2002)
【非特許文献24】Choy et al.,Rheumatology 39(10):1139−46(2000)
【非特許文献25】Herzyk et al.,Infect Immun.69(2):1032−43(2001)
【非特許文献26】Kon et al.,Eur Respir J.18(1):45−52(2001)
【非特許文献27】Mourad et al.,Transplantation 65(5):632−41(1998)
【非特許文献28】Skov et al.,Arch Dermatol.139(11):1433−9(2003)
【非特許文献29】Jabado et al.,J Immunol.158(1):94−103(1997)
【非特許文献30】Choy et al.,Rheumatology 41(10):1142−8(2002)
【非特許文献31】Strand et al., Nature Reviews Drug Discovery 6: 75−92, (2007)
【非特許文献32】Robinet et al.,Eur J Dermatol 1996:6:141−6
【非特許文献33】Robinet et al.,J Am Acad Dermatol 1997;36:582−8
【非特許文献34】Wendling et al.J Rheumato1;25(8):1457−61,1998
【非特許文献35】Racadot et al.,J Autoimmun,6(6):771−86,1993
【非特許文献36】Rumbach et al.(Mutt Scler;1(4):207−12,1996)
【非特許文献37】Canva−Delcambre et al.,Aliment Pharmacol Ther 10(5):721−7,1996
【非特許文献38】Dantal et al.Transplantation,27;62(10):1502−6,1996
【非特許文献39】Wijdenes et al.,EULARconference、2005年6月、講演要旨及びポスター発表
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0043】
上記先行技術を考慮して本発明の目的は、既存の治療法に対して未だ十分反応していない自己免疫疾患患者を治療することにある。具体的には本発明の目的は、現在反応していない患者の治療反応を改善するために、高用量で患者に適用できる自己免疫疾患の治療法を見出すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0044】
驚くべきことに本発明者が実施した実験により、他のCD4mAbと比べてIgG1抗体BT061は、一旦標的細胞のCD4に結合すると、ADCCもCDC或いはアポトーシスも誘導しないことが明らかになった。
【0045】
したがって本発明は、薬学的に許容される担体と、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤とを含む自己免疫疾患を治療するための医薬組成物であって、剤の用量が10mg〜200mgで対象に投与される組成物を提供する。
【0046】
本発明は更に、薬学的に許容される担体と、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤とを含む自己免疫疾患を治療するための医薬組成物であって、剤の用量が5mg/m2〜60mg/m2で対象に投与される組成物を提供する。
【0047】
本発明は更に、薬学的に許容される担体と、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤とを含む自己免疫疾患を治療するための医薬組成物であって、剤の用量が1μg/kg〜500μg/kgで対象に投与される組成物を提供する。
【0048】
更に本発明は、薬学的に許容される担体と、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤とを含む医薬組成物であって、剤が10mg/mL〜150mg/mLの濃度で存在する医薬組成物を提供する。
【0049】
本発明の好ましい態様では剤は、ヒト化抗CD4抗体、その断片及びその誘導体のいずれかである。
【0050】
また本発明は、自己免疫疾患を治療するための薬剤の製造における本明細書に定義される剤の使用であって、前記剤が本明細書に定義される用量で対象に投与される使用を提供する。本発明は更に、自己免疫疾患の治療において使用するための本明細書に定義される剤であって、本明細書に定義される用量で対象に投与される剤を提供する。
【0051】
驚くべきことに本発明者らは、ヒト化抗体BT061(ヒト化B−F5、或いは単にhB−F5)が、例えば抗CD3抗体などの他のT細胞相互作用抗体と比べて炎症促進性サイトカインの放出を実質的に調節せず、誘導もしないことを見出したことは、上記投与量から理解される。更に該抗体は、CD4+リンパ球の実質的に長期間に亘る枯渇を引き起こさない。
【0052】
本発明の剤の濃度は、該剤が既知の濃度と比べて高い濃度で存在する限り、特に制限されない。しかし該剤の濃度は、10mg/mL(或いは10mg/mL超)〜150mg/mL、15mg/mL〜150mg/mL、15mg/mL〜100mg/mL、15mg/mL(或いは15mg/mL超)〜75mg/mL、或いは20mg/mL〜60mg/mLが好ましい。該剤の濃度は、(約)10mg/mL、(約)12.5mg/mL、(約)20mg/mL、(約)25mg/mL、(約)50mg/mL、(約)60mg/mL、(約)70mg/mL、(約)80mg/mL、(約)90mg/mL、或いは(約)100mg/mLのいずれか1種が最も好ましい。
【0053】
組成物として対象に適用される場合の投与体積は、特に制限されないが、但し既に知られている投与量と比べて全体的に高投与量を送達し、したがって高用量により利益を得ることができる個体を治療するのに好適であり、該個体は、罹患期間が長く現在の治療法に対する反応が不十分である重篤な場合の個体などであるがこれらに限定されない。具体的には前記投与体積の範囲内である剤の濃度は、本願に記載されている必要な用量を提供するために変動してもよい。
【0054】
投与体積は投与方法に応じて変動する。非経口投与が好ましい。非経口投与の例は、筋肉内投与、静脈内投与、或いは皮下投与である。組成物を静脈内注入により投与する場合、投与体積は0.1mL〜500mL、或いは0.5mL〜500mLであってもよく、好ましくは15mL〜25mL、典型的には約20mLである。組成物を皮下注入或いは筋肉内注入により投与する場合、投与体積は0.1mL〜3mLであってもよく、好ましくは0.5mL〜1.5mLであり、典型的には約1mLである。
【0055】
しかし幾つかの実施形態では、組成物は濃縮形態で提供され、対象個体に必要な強度に希釈されてもよい。これらの状況において組成物は、約1mL、2mL、3mL、4mL、或いは5mLという比較的少ない体積で提供されることが好ましい。代替実施形態では、組成物は必要な強度且つ上記投与体積で提供される(即ちすぐに投与できる)。1つの特定の実施形態では皮下投与用医薬組成物は、医療従事者でなくとも容易に投与できるように、すぐに投与できる形態で提供される。
【0056】
既に述べたように、本発明により想定される高投与量で自己免疫疾患を治療可能な剤を投与できることは知られていなかった。自己免疫疾患を治療可能な剤の投与が一部の個体或いは疾患の種類で有効であることは知られていたが、それが高用量で耐容され得るという認識により、一部の自己免疫疾患及び患者のクラスのより有効な治療法の可能性が開かれた。
【0057】
本発明は、以下の図面を参照してほんの1例として示される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、3人の健常ドナー由来の全血培養物のサイトカイン合成に対するBT061の効果を示す。培養物は、個々の実験において4種の異なる活性化因子を用いて刺激した:CD3=抗CD3抗体、LPS=リポ多糖類、PHA=植物性血球凝集素+抗CD28抗体;SEB=ブドウ球菌エンテロトキシンB+抗CD28抗体。様々なサイトカインを測定して、各種白血球亜集団に対する効果を測定した:Treg細胞(CD3:TGF−β、IL−10);単球/マクロファージ(LPS:IL−10、TNFα、IL−1β);Th2細胞(PHA:IL−4、IL−5、IL−13);Th1細胞(SEB:IL−2、IFNγ)。
【図2】図2は、様々な刺激物により誘発されるサイトカイン合成に対するヒト全血培養物(関節リウマチのドナー)中のBT061の効果を示す。
【図3】図3は、マウスB−F5 VH領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号5)を示す。
【図4】図4は、マウスB−F5 VK領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号6)を示す。
【図5】図5は、ヒト化B−F5のVH領域をコードするプラスミド断片のヌクレオチド配列(配列番号3)を示す。V領域をコードする配列に下線を引き、対応するポリペプチド配列(配列番号17)をヌクレオチド配列の下に示す。
【図6】図6は、ヒト化B−F5のVK領域をコードするプラスミド断片のヌクレオチド配列(配列番号4)を示す。V領域をコードする配列に下線を引き、対応するポリペプチド配列(配列番号2)をヌクレオチド配列の下に示す。
【図7】図7は、抗CD3モノクローナル抗体で報告されているレベルと比較した、健常ボランティアにおけるBT061(単回静脈内注入或いは皮下注入)を用いた臨床試験で観察されたTFNα及びIL−6放出を示す。投与量及び回復時間は図に記載されている。図中に「2)」として示したTRX4の結果は、Keymeulen et al.,2005 N.Engl.J.Med.Type 1 Diabetes patientsに報告されている。図中に「3)」として示したTeplizumabの結果は、Herold et al.,2002 N.Engl.J.Med.Type I Diabetes patientsに報告されている。図中に「4)」として示した正常値は、Straub et al.,2007,Athr.&Rheumatに報告されている。「*)」は単一用量を表し、「**)」はピーク濃度に達するまで注入された累積投与量を表す。
【図8】図8は、健常ボランティアにおける単一用量のBT061を静脈内投与或いは皮下投与した後のIL−2及びIFN−γの血漿濃度を示す。ULN=正常上限;LLN=正常下限。
【図9】図9は、単一用量のBT061を静脈内投与することにより処理したボランティアにおけるCD4細胞数(血漿1mL当たりの細胞数)の動態を示す。1用量群当たり3人の患者の平均値を示す。点線は、正常上限(ULN)及び正常下限(LLN)を示す。
【図10】図10は、単一用量のBT061を皮下投与することにより処理したボランティアにおけるCD4細胞数(血漿1mL当たりの細胞数)の動態を示す。1用量群当たり3人の患者の平均値を示す。点線は、正常上限(ULN)及び正常下限(LLN)を示す。
【図11A】図11Aは、実施例7に記載される用量群Iの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を0.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図11Aは、用量群Iの1番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図11B】図11Bは、実施例7に記載される用量群Iの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を0.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図11Bは、用量群Iの2番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図11C】図11Cは、実施例7に記載される用量群Iの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を0.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図11Cは、用量群Iの3番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図11D】図11Dは、実施例7に記載される用量群Iの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を0.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図11Dは、用量群Iの4番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図11E】図11Eは、実施例7に記載される用量群Iの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を0.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図11Eは、用量群Iの5番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図11F】図11Fは、実施例7に記載される用量群Iの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を0.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図11Fは、用量群Iの6番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図11G】図11Gは、実施例7に記載される用量群Iの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を0.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図11Gは、用量群Iの7番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図11H】図11Hは、実施例7に記載される用量群Iの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を0.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図11Hは、用量群Iの8番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図12A】図12Aは、実施例7に記載される用量群IIの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を2.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図12Aは、用量群IIの1番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図12B】図12Bは、実施例7に記載される用量群IIの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を2.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図12Bは、用量群IIの2番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図12C】図12Cは、実施例7に記載される用量群IIの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を2.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図12Cは、用量群IIの3番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図12D】図12Dは、実施例7に記載される用量群IIの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を2.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図12Dは、用量群IIの4番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図12E】図12Eは、実施例7に記載される用量群IIの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を2.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図12Eは、用量群IIの5番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図12F】図12Fは、実施例7に記載される用量群IIの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を2.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図12Fは、用量群IIの6番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図12G】図12Gは、実施例7に記載される用量群IIの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を2.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図12Gは、用量群IIの7番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図12H】図12Hは、実施例7に記載される用量群IIの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を2.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図12Hは、用量群IIの8番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図13】図13は、実施例7に記載される乾癬患者の臨床試験から得られた写真を提供する。写真は、用量群IIのメンバーであった同一患者のものである。パートAに示す写真は治療前に撮影された。パートBに示す写真は治療の28日後に撮影された。
【図14】図14は、実施例8に記載される関節リウマチ患者の臨床試験結果を示す。図は、1.25mg、6.25mg、12.5mg、及び25mgのBT061を皮下投与した用量群の患者のうち少なくともACR20応答が得られた患者の割合の棒グラフを示す。各群6人の患者に抗体が投与され、一方2人の患者にプラセボが投与された。
【図15】図15は、実施例8に記載される関節リウマチ患者の臨床試験結果を示す。図15Aは、25mgのBT061を投与した用量群の患者における圧痛関節数の棒グラフを示す。図15Bは、同用量群の患者における関節腫脹数の棒グラフを示す。各群6人の患者に抗体が投与され、一方2人の患者にプラセボが投与された。
【図16】図16は、実施例8に記載される関節リウマチ患者の臨床試験結果を提供する。図16Aは、25mg皮下投与群における1人のレスポンダにおける個々のパラメータの変化(%)を示す。図16Bは、25mg皮下投与群における1人の非レスポンダにおける個々のパラメータの変化(%)を示す。図中「PatのGA」及び「PhyのGA」はそれぞれ患者の全般的評価及び医師の全般的評価を指す。用語「PAの疼痛」は患者の疼痛評価を指す。
【図17】図17は、実施例8に記載される関節リウマチ患者の臨床試験結果を提供する。図17Aは、1.25mg皮下投与群の患者における圧痛関節数を示す。図17Bは、6.25mg皮下投与群の患者における圧痛関節数を示す。
【図18】図18は、実施例8に記載される関節リウマチ患者の臨床試験結果を提供する。図18Aは、50mg皮下投与群の患者における圧痛関節数を示す。図18Bは、6.25mg皮下投与群の患者における圧痛関節数を示す。
【図19】図19は、B−F5(即ちBT061)のヒト化形態の設計におけるマウスB−F5VK(配列番号8)、FK−001(配列番号9、10、11、及び12)、L4L(配列番号18)、及びL4M(配列番号2)のポリペプチド配列のアラインメントを示す。
【図20】図20は、B−F5のヒト化形態の設計におけるマウスB−F5VH(配列番号7)、M26(配列番号13、14、15、及び16)、H37L(配列番号1)、及びH37V(配列番号17)のポリペプチド配列のアラインメントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
次に、本発明を更に詳細に説明する。
【0060】
本発明で使用するのに好適である剤は、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤である。前記剤は、ポリペプチド、タンパク質、或いは抗体であってもよい。前記剤が抗体である場合、前記剤はモノクローナル抗体であってもよい。前記抗体は、モノクローナル抗CD4抗体であることが好ましい。抗体は、また好ましくはIgG1抗体であってもよく、非修飾IgG1抗体であってもよい。
【0061】
本発明の好ましい態様では、抗CD3抗体と比較して、前記剤は、投与後の対象の血漿中の炎症促進性サイトカイン濃度を実質的に増加させない。具体的には健常対象で測定された血漿濃度と比較して、前記剤の投与後のIFN−γ、TNF−α、IL−6、及びIL−2の少なくともいずれかの濃度は、実質的に上昇しない(表A1参照)。特に表A1に示されている特定のサイトカインのULNをXとすると、本発明の剤の投与後96時間以内のX増加は20倍未満であってもよい。X増加は10倍未満であることが好ましい。投与開始後10分〜投与完了後96時間の間これらの濃度であることがより好ましい。
【0062】
自己免疫患者では、前記剤の投与前のサイトカイン濃度が健常対象で観察されるサイトカイン濃度(表A1で示されているULN)よりも既に高い可能性がある。これは例えば健常対象の細胞の活性化状態に比べて免疫細胞の活性化状態が変化しているためである。この場合前記剤の投与直前の特定のサイトカイン濃度をXとすると、本発明の剤の投与後96時間以内のX増加は20倍未満であってもよい。X増加は10倍未満であることが好ましい。投与開始後10分〜投与完了後96時間の間これらの濃度であることがより好ましい。
【表1】
【0063】
本発明の更に好ましい態様では、前記剤は、実質的に長期に亘って対象の血漿におけるCD4+リンパ球の細胞数を減少させない。具体的には投与後72時間〜96時間の期間内、対象の血漿におけるCD4+リンパ球の細胞数は250細胞/μLを超えていてもよい(或いは少なくとも250細胞/μLである)。
【0064】
処理された患者の少なくとも80%で上記サイトカイン及びCD4+リンパ球に対する効果が見られることが好ましい。
【0065】
免疫系の負の影響、例えばリンパ球細胞数の減少或いはサイトカイン放出の誘導を防ぐため、サブクラスIgG2、IgG3、或いはIgG4の抗体(特にT細胞相互作用抗体)を利用することが当該技術分野において既知であり、その理由はIgG1サブクラスの抗体がより高いFc受容体相互作用を示すためである。Fc突然変異、脱グリコシル化、糖修飾(glycomodification)、或いは糖鎖工学により抗体(特にT細胞相互作用抗体)を改質してFc受容体相互作用を低減することも当該技術分野において既知である。
【0066】
本明細書に記載される実験において本発明者らは、IgG1サブクラスの抗体の回避及び改質が本発明の剤にとって必須ではないことを見出した。具体的には本願に示すデータは、本発明の剤は実質的に且つ長期に亘ってCD4+細胞を枯渇させないか、或いは抗CD3抗体と比べて実質的なサイトカイン放出を誘導しない。
【0067】
したがって本発明の好ましい態様では、前記剤は非修飾IgG1抗体、即ちFc突然変異を含まず、またFc受容体、その断片、及びその誘導体のいずれかの相互作用を低減するために脱グリコシル化、糖修飾(glycomodification)、或いは糖鎖工学に供されていない抗体である。
【0068】
本発明で使用するのに最も好適である抗体は、ヒト化抗CD4抗体、その断片、或いはその誘導体のいずれかであり、これらはCD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能である。CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な抗体の例はBecker et al.,(European Journal of Immunology(2007),Vol.37:pp.1217−1223)で論じられている。
【0069】
一般に本発明で用いられる抗体は、ヒト定常領域(Fc)を更に含む。この定常領域は、IgM、IgG、IgD、IgA、及びIgEを含む免疫グロブリンの任意のクラス、並びにIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む任意のアイソタイプに由来する定常ドメインから選択することができる。好ましい定常領域は、IgG、特にIgG1の定常ドメインから選択される。
【0070】
本発明はまたV領域を含む抗体の任意の断片を含む。これは具体的にはFab、Fab’、F(ab)’2、Fv、及びscFv断片を含む。
【0071】
本発明の特に好ましい態様では抗体は、マウスモノクローナル抗CD4抗体B−F5に由来するヒト化抗CD4抗体、その断片、及びその誘導体のいずれかである。かかる抗体の例はBT061抗体である。
【0072】
BT061抗体、その断片、及びその誘導体
ヒト化抗体BT061(hB−F5)は、マウスB−F5mAbに由来し、以下のポリペプチド配列により定義されるVドメインを有する:
−H鎖Vドメイン:EEQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFSFSDCRMYWLRQAPGKGLEWIGVISVKSENYGANYAESVRGRFTISRDDSKNTVYLQMNSLKTEDTAVYYCSAS YYRYDVGAWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号1)
−L鎖Vドメイン:DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCRASKSVSTSGYSYIYWYQQKPGQPPKLLIYLASILESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQHSRELPWTFG QGTKVEIK(配列番号2)。
【0073】
この抗体の誘導体もまた本発明で使用するのに好適である。誘導体としては、配列番号1或いは配列番号2で表されるポリペプチド配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列により定義されるVドメインを有する誘導体が挙げられる。
【0074】
特に好ましい抗体は、マウスB−F5mAbの相補性決定領域(CDR)を含み、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化するhB−F5の能力を保持している抗体である。VH及びVKドメイン内のCDRの位置を図19及び図20に示す。かかる抗体は、結合特異性及び結合親和性の少なくともいずれかに対して実質的に影響を与えない変異をCDRの配列中に任意的に有していてもよい。
【0075】
一般に本発明で用いられるhB−F5抗体は、ヒト定常領域(Fc)を更に含む。上記のようにこの定常領域は、IgM、IgG、IgD、IgA、及びIgEを含む免疫グロブリンの任意のクラス、並びにIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む任意のアイソタイプに由来する定常ドメインから選択することができる。好ましい定常領域は、IgG、特にIgG1の定常ドメインから選択される。
【0076】
本発明はまたBT061抗体のV領域を含むBT061抗体の任意の断片を含む。これは具体的にはFab、Fab’、F(ab)’2、Fv、及びscFv断片を含む。
【0077】
BT061抗体のH鎖或いはL鎖のVドメインをコードするポリヌクレオチドは、以下の方法で得られる完全H鎖及び完全L鎖を発現させる目的のために、ヒトH鎖或いはヒトL鎖の定常領域をコードするポリヌクレオチドと融合させてもよく、またタンパク質を分泌させるシグナルペプチドをコードする配列を付加してもよい。
【0078】
本発明はまた、選択されたホスト細胞における上記ポリヌクレオチドの転写及び翻訳を制御することを可能にする適切な調節配列に上記ポリヌクレオチドが結合している発現カセットと、本発明のポリヌクレオチド或いは発現カセットを含む組み換えベクターを使用する。
【0079】
組換えDNA及び遺伝子工学の周知の技術によりこれら組換えDNAコンストラクトを得、ホスト細胞に導入することができる。
【0080】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドにより形質転換されているホスト細胞を使用する。本発明の範囲内の有用なホスト細胞は、原核細胞であっても真核細胞であってもよい。好適な真核細胞の中でも例として植物細胞、Saccharomycesなどの酵母細胞、Drosophila或いはSpodopteraなどの昆虫細胞、及びHeLa、CHO、3T3、C127、BHK、COSなどの哺乳類細胞が挙げられる。
【0081】
本発明で用いられる発現ベクターの構築及びホスト細胞の形質転換は、分子生物学の標準的な技術により行うことができる。
【0082】
本発明で用いられるBT061(hB−F5)抗体は、前記抗体の発現に好適な条件下で前記抗体をコードする核酸配列を含む発現ベクターを有するホスト細胞を培養し、前記抗体をホスト細胞培養物から回収することにより得ることができる。
【0083】
ヒト化B−F5の構築
ヒト化B−F5VH領域及びVK領域の設計
マウスB−F5VH領域及びVK領域をコードするDNA配列をそれぞれ図3及び図4に示し、配列識別子を配列番号5及び配列番号6とする。マウスCDRがグラフトされているヒトVH及びVKは、オリジナルのマウスB−F5VH及びVKに最も類似しているヒトVHをデータベースで検索することにより選択した。ヒト抗体(M26;アクセッション番号A36006)のVH領域が、B−F5VHに対して最も高い相同性を有していた。別のヒト抗体(FK−001;NAKATANI et al.,Biotechnology,7(1989),805−810))のVK領域が、B−F5VKに対して最も高い相同性を有していた。
【0084】
4番目の残基がロイシンであるかメチオニンであるかという点が異なる2種のVKを構築し、L4L及びL4Mと命名した。37番目のアミノ酸残基がロイシンであるかバリンであるかという点が異なる2種のVHを構築し、H37L及びH37Vと命名した。B−F5、FK−001、L4L、及びL4Mのポリペプチド配列のアラインメントを図19に示す。B−F5、M26、H37L、及びH37Vのポリペプチド配列のアラインメントを図20に示す。CDRのパッキング(packing)に重要であることが既に報告されているFR残基(Chothia et al.,Nature 342(1989),877;Foote et al.,J.Mol.Biol.,224(1992),487)を四角で囲む。
【0085】
VH及びVKを組み合わせることにより、4種のV領域を設計した。
【0086】
ヒト化B−F5の発現
この後のヒト化B−F5の産生工程は、ヒト化B−B10について米国特許第5,886,152号明細書に開示されているものと同一であった。
【0087】
簡潔に述べると、ヒト化B−F5のH鎖用発現プラスミド(ヒトy−1鎖の定常領域に融合しているVHヒト化領域(TAKAHASHI et al.,Cell,29(1982),671−679))及びL鎖用発現プラスミド(FK−001のK鎖の定常領域に融合しているVKヒト化領域)を別々に構築した。これらのプラスミドでは、ヒト化B−F5の発現はヒトモノクローナルIgM、FK−001遺伝子のプロモータ/エンハンサによりドライブされる。図5及び図6はそれぞれヒト化B−F5のVH領域及びVK領域をコードするプラスミドの断片を示す。V領域をコードする配列に下線を引き、対応するポリペプチド配列をヌクレオチド配列の下に示す。Lipofectinniを用いてマウス骨髄腫Sp2/0(ATCC CRL−1581)に両方のプラスミド及びpSV2neoを同時に導入した。抗ヒトIgG(γ鎖)抗体及び抗ヒトIgK鎖抗体を用いてELISAによりヒトIgGを産生するトランスフェクトーマを選択した。
【0088】
ヒト化B−F5の異なるバージョンの特徴付け
CD4結合活性の評価
4種のhB−F5を産生するトランスフェクトーマの培養上清を回収し濃縮した。プロテインA Sepharoseを用いてアフィニティクロマトグラフィーにより培養上清から様々な抗体を精製し、競合ELISAを用いてビオチン化mB−F5とマイクロタイタープレート上にコーティングされている可溶性CD4との結合に対する前記抗体の阻害活性を測定することにより前記抗体のCD4結合活性を評価した。インキュベート時間は、37℃の場合は2時間及び4℃の場合は一晩である。
【0089】
hB−F5の相対結合活性(mB−F5の結合活性を100%として)を以下の表Aに示す。
【表2】
【0090】
表Aに示した結果から、hB−F5のCD4結合活性を維持するために37番目の残基がロイシンであることが重要であると思われる。その理由は、CD4結合活性が37Leuを37Valに変換することにより数倍低下しているためである。対照的にVKの4番目の残基はCD4結合活性にとってそれ程重要ではないことが見出された。VHの37Leuと37Valとの間の構造的差異は分子モデリングによって明らかに示されてはいないため、CD4結合活性においてH37LがH37Vに対して優位であることは予想外であった。
【0091】
評価のためにH37L/L4L及びH37L/L4Mを選択した。
【0092】
ヒト化B−F5のインビトロにおける生物学的活性の研究
マウスB−F5及びヒト化B−F5(H37L/L4M IgG1及びH37L/L4L IgG1)のインビトロにおける生物学的活性を評価した。IgG2型のヒト化B−F5(H37L/L4M IgG2及びH37L/L4L IgG2)についても試験した。
【0093】
健常ドナー由来の末梢血単核細胞(PBMC)を用いてmB−F5及び4種のhB−F5のインビトロにおける生物学的活性を評価した。PBMCは、マウスB−F5或いはhB−F5の存在下でConA(2.5pg/mL、3日)或いはPPD(10pg/mL、4日)により活性化され、3H−チミジンの取り込みによるPBMCの増殖反応をモニタした。
【0094】
マウスB−F5及びhB−F5は、穏やかにCon−A誘導性増殖を阻害することができたが、活性は、抗体によって、ドナーによって、或いは抗体及びドナーによって異なっていた。またマウスB−F5及びhB−F5は、PPDにより誘導されるAg特異的PBMC増殖を阻害することができた。
【0095】
IgG1型のhB−F5は、mB−F5より有効にPPD誘導性増殖を阻害した(最大70%阻害)。阻害活性がmB−F5と略等しかったIgG2型よりもIgG1型の方が有効であると思われる。IgG1型では、H37L/L4MがH37L/L4Lよりも有効であった。IgG2型のH37L/L4MとH37L/L4Lは略等しい阻害活性を有していた。簡潔に述べるとPPD誘導性PBMC増殖に対するB−F5の阻害活性は以下の通りであった:H37L/L4M IgG1>H37L/L4L IgG1>H37L/L4M IgG2=H37L/L4L IgG2=mB−F5。
【0096】
インビトロにおける生物学的活性及びマウスと同一のアミノ酸数が少ないことを考慮して更なる評価のためにH37L/L4M IgG1を選択した。BT061と命名され、本願の実施例において本発明を説明するために用いられているのはこの抗体である。
【0097】
組成物及び使用
上述の通り本発明で用いられる医薬組成物及び薬剤は、高用量により利益を得ることができる患者の自己免疫疾患を治療可能であることが好ましい。かかる患者としては罹患期間の長い重篤な患者が挙げられるがこれに限定されない。
【0098】
また本発明の1つの態様では、自己免疫疾患に対して有効な薬剤の製造におけるヒト化抗CD4抗体、その断片及びその誘導体のいずれかの使用であって、前記ヒト化抗体がCD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能であり、前記薬剤が10mg/mL〜150mg/mL、好ましくは15mg/mL〜75mg/mL、最も好ましくは20mg/mL〜60mg/mLの濃度の抗体を含む使用を提供する。
【0099】
本発明は更に、自己免疫疾患に対して有効な薬剤の製造におけるヒト化抗CD4抗体、その断片及びその誘導体のいずれかの使用であって、前記ヒト化抗体がCD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能であり、前記薬剤が投与1回当たりの抗体の量10mg〜200mgでの単回用量或いは複数回用量で対象に投与される使用を提供する。
【0100】
また本発明は、薬学的に許容される担体と、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤とを含む自己免疫疾患を治療するための医薬組成物であって、剤の用量が10mg〜100mg、10mg〜80mg、15mg〜80mg、20mg〜75mg、好ましくは20mg〜60mg、最も好ましくは25mg〜60mgで対象に投与される医薬組成物を提供する。
【0101】
本発明の1つの態様では対象は複数回投与を受ける。これら状況では10日間に亘る投与量は、25mg超であるが200mg以下が好ましく、28mg〜100mgがより好ましく、30mg〜100mgが最も好ましい。更に5日間に亘る投与量は、15mg超であるが100mg以下が好ましく、18mg〜100mgがより好ましく、20mg〜100mgが最も好ましい。本発明のこの態様では投与量が皮下投与されることが特に好ましい。
【0102】
用量はまた対象の体重或いは対象の体表面積(BSA)に基づいて算出することもできる。体表面積(BSA)は、既知の方法のいずれかに従って算出することができる。BSA算出法の例は以下の通りである:
Mosteller式:(BSA(m2))=([高さ(cm)×重量(kg)]/3600)1/2
(Mosteller RD:Simplified Calculation of Body Surface Area.N Engl J Med 1987 Oct 22;317(17):1098)
DuBois及びDuBois式:BSA(m2)=0.20247×高さ(m)0.725×重量(kg)0.425
(DuBois D;DuBois EF:A formula to estimate the approximate surface area if height and weight be known.Arch Int Med 1916 17:863−71.)
Haycock式:BSA(m2)=0.024265×高さ(cm)0.3964×重量(kg)0.5378
(Haycock G.B.,Schwartz G.J.,Wisotsky D.H.Geometric method for measuring body surface area:A height weight formula validated in infants,children and adults.The Journal of Pediatrics 1978 93:1:62−66)
Gehan及びGeorge式:BSA(m2)=0.0235×高さ(cm)0.42246×重量(kg)0.51456
(Gehan EA,George SL,Estimation of human body surface area from height and weight.Cancer Chemother Rep 1970 54:225−35)
Boyd式:BSA(m2)=0.0003207×高さ(cm)0.3×重量(グラム)(0.7285−(0.0188×LOG(グラム))
【0103】
本発明によれば剤の用量は、患者の体表面積に対し5mg/m2〜60mg/m2、好ましくは6mg/m2〜50mg/m2、最も好ましくは8mg/m2〜40mg/m2である。
【0104】
更に用量は、対象の体重に基づいて計算することもできる。本発明によれば対象に投与される剤の用量は、0.1mg/kg〜2mg/kg、好ましくは0.15mg/kg〜1.5mg/kg、最も好ましくは0.2mg/kg〜1mg/kgである。
【0105】
本発明のこれら態様では、用量が対象の体表面積或いは体重に基づく場合、10日間に亘る投与量は、好ましくは10mg/m2〜120mg/m2、より好ましくは16mg/m2〜120mg/m2、或いは0.2mg/kg〜4mg/kg、より好ましくは0.4mg/kg〜4mg/kgである。投与量は皮下投与されることが特に好ましい。
【0106】
治療効果に干渉しない限り、投与頻度は特に限定されない。本発明では以下の基準のうちの少なくとも1種で複数回用量を投与することが好ましい:1日間に1回、2日間に1回、1週間に1回、4週間に1回、6週間に1回、12週間に1回、24週間に1回、1ヶ月間に1回、3ヶ月間に1回、6ヶ月間に1回、或いは1年間に1回。したがって投与は、少なくとも1日間、少なくとも1週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、或いは少なくとも1年の間隔で隔てられてもよい(用量が少なくとも1日に1回、1週間に1回、1ヶ月間に1回、6ヶ月間に1回、或いは1年間に1回服用されることを意味する)。更なる他の方法では、1日間〜31日間に1回、或いは1ヶ月間〜12ヶ月間に1回複数回用量が服用される。
【0107】
治療期間は特に限定されず、自己免疫疾患の治療では典型的に、治療は無期限に継続される、或いは患者が管理可能なレベルに症状が低減するまで継続される。一般に用量は、少なくとも1ヶ月間に亘って対象に投与される。
【0108】
本発明はまた上記で定義したように使用するためのキットであって、対象に同時に、連続して、或いは別個に投与するための上記で定義した通りの複数の薬剤用量を備えるキットを提供する。
【0109】
本発明はまた自己免疫疾患の治療方法であって、上記で定義した医薬組成物を対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0110】
自己免疫疾患の治療方法であって、対象に薬剤を投与する工程を含み、前記薬剤がCD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤を含み、前記薬剤が上記量で対象に投与される治療方法も提供される。
【0111】
剤は、マウスモノクローナル抗CD4抗体B−F5に由来するヒト化抗CD4抗体、その断片及びその誘導体のいずれかであることが好ましい。
【0112】
上述の通り本発明で用いられる医薬組成物及び薬剤は、高用量から利益を得られる患者の自己免疫疾患を治療できることが好ましい。かかる患者としては罹患期間が長い重篤な患者が挙げられるがこれに限定されない。
【0113】
自己免疫疾患は、乾癬、関節リウマチ、多発性硬化症、1型糖尿病、炎症性腸疾患、クローン病、橋本甲状腺炎、自己免疫甲状腺炎、自己免疫重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、心筋炎、及びグラフト対ホスト反応或いはホスト対グラフト反応などの移植関連疾患、或いは一般的な器官寛容性の問題から選択されることが好ましい。
【0114】
本発明の特に好ましい態様では、医薬組成物は自己免疫疾患である乾癬を治療するためのものである。具体的にはかかる医薬組成物は、本明細書で特定される投与量を静脈内投与或いは皮下投与する。
【0115】
乾癬は、罹患者の皮膚上に乾癬病変或いは斑を生じさせる疾患である。罹患者の呈している乾癬レベルを評価及び記録するために乾癬面積及び重症度指数(PASI)のスコアが一般的に用いられている。PASIのスコア付けは、紅斑(E)、浸潤(I)、落屑(D)、並びに4箇所の身体領域(頭部(h)、体幹(t)、上肢(u)、及び下肢(l))の病変の体表面積(A)の評価を含む。以下の表Bはスコア付けシステムがどのように機能するかを示す。
【表3】
【0116】
頭部、上肢、体幹、及び下肢は、それぞれ体表面積の約10%、20%、30%、及び40%に相当するため、PASIスコアは以下の式により算出される。
PASI=0.1(Eh+Ih+Dh)Ah+0.2(Eu+Iu+Du)Au+0.3(Et+It+Dt)At+0.4(El+Il+Dl)Al
【0117】
PASIスコアは、0〜72の範囲である。スコア0は、乾癬ではないことを意味し、一方スコア72は、最も重篤な乾癬であることを表す。
【0118】
この態様の好ましい実施形態では本発明の医薬組成物は、患者のPASIスコアを少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%改善することにより乾癬を治療し得る。対象は治療前に少なくとも10のPASIスコアを有することが好ましい。投与後少なくとも56日間、より好ましくは投与後少なくとも75日間これらの効果が見られ得る。具体的には治療された患者の少なくとも80%でこれらの効果が見られ得る。
【0119】
本発明の更なる態様では、医薬組成物は関節リウマチを治療するためのものである。
【0120】
関節リウマチは、関節及び周辺組織の慢性炎症を惹起する自己免疫疾患であり、他の組織及び体器官にも影響を及ぼす場合がある。
【0121】
治療を受けた患者が示す関節リウマチの改善は、米国リウマチ学会(American College of Rheumatology)(ACR)コアセットのパラメータ(Felson et al.,Arthritis&Rheumatism,1995,38(6),727−735)を用いて一般的に評価されている。このシステムは、圧痛関節数及び腫脹関節数の20%改善、且つ残り5種のACRコアセット測定値:患者及び医師による全般的評価、疼痛、身体障害、及びC反応性タンパク質(CRP)などの急性期反応物質のうち3種の20%改善としてACR20値を定義する。
【0122】
具体的には関節リウマチを治療するための医薬組成物は、本明細書で特定される投与量を筋肉内投与或いは皮下投与することが好ましい。
【0123】
関節炎の現在の治療法としては、例えばアスピリン、イブプロフェン、ナプロキセンなどの非ステロイド抗炎症薬(NSAID)に分類されている疼痛及び炎症を制御するための第1選択薬が挙げられる。関節炎の二次治療としては、コルチコステロイド(例えばプレドニゾン及びデキサメタゾン)、遅効性抗リウマチ薬(SAARD)、或いは疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、例えばメトトレキサート、ペニシリンアミン、シクロホスファミド、金塩、アザチオプリン、レフルノミドなどが挙げられる。
【0124】
体内のコルチゾンホルモンの合成バージョンであるコルチコステロイド(例えばプレドニゾン及びデキサメタゾン)を用いて関節リウマチの進行を阻害する。
【0125】
生物学的応答調節物質(BRM)と呼ばれる別の群の薬剤もまた関節リウマチ治療用に開発されており、TNF−αタンパク質の受容体への結合を通して機能する、或いはTNF−αタンパク質への直接結合を通して機能するTNF−αに対する拮抗剤(アダリムマブ、インフリキシマブ、エタネルセプト)が挙げられる。
【0126】
本発明のこの態様の1つの実施形態では、組成物は、関節リウマチを治療するために現在用いられている薬剤と組み合わせて投与される。具体的には組成物は、上述の薬剤のうち1種、好ましくはメトトレキサートと共に投与される。
【0127】
メトトレキサートなどの既知の薬剤及び本発明の医薬組成物は、同時に、連続して、或いは別個に投与することができる。
【0128】
本発明は、以下の特定の実施形態に関して更に記載される。
【実施例】
【0129】
実施例1−T細胞の増殖に関するBT061の免疫調節能の研究
方法
新鮮末梢血を用いて全血培養を実施した。簡潔に述べると19Gの針を用いて3人の健常ボランティアからヘパリン処理したシリンジに血液を採取した。血液提供後60分以内に前記血液を96ウェル培養プレートに播種した。
【0130】
本発明で用いられる抗体(BT061、ロット番号40588、或いはロット番号70A0013B)を培養物に添加し、次いで5種の異なる濃度の白血球(以下の「試験物質」参照)を刺激した。37℃、5% CO2、加湿雰囲気にて90分間細胞を抗体と相互作用させ、次いで下記a〜dの4種の異なる刺激物質を別々の培養物に添加した。
(a)抗CD3抗体(R&D Systems;50ng/mL);
(b)植物性血球凝集素(PHA、Biochrom KG;3pa/mL)及び抗CD28抗体(Becton−Dickinson;1μg/mL);
(c)リポ多糖類(LPS、Sigma Aldrich製サブタイプ055:B15;1μg/mL);
(d)SE−B(Bernhard−Nocht−Institut;25ng/mL)及び抗CD28抗体(Becton−Dickinson;1μg/mL)
【0131】
37℃、5% CO2(加湿雰囲気)にて24時間全ての全血培養物をインキュベートした。次いでサイトカインのエンドポイントを決定するためにPHA/抗CD28抗体刺激培養物を除く培養上清を回収した。PHA/抗CD28抗体刺激培養物は、Th2細胞を十分に刺激するために48時間インキュベートした。
【0132】
結果を図1に記載する。
【0133】
結果
BT061は、健常ボランティア由来の全血培養物において単球/マクロファージの主な活性、Th1活性、及びTh2活性に対して有意な効果を示さなかった。Treg細胞に対する濃度依存性効果が見られた(TGF−β放出の増加として示された)。
【0134】
特に、前記結果から以下のことが確認される:
・患者における最高150mgの高用量適用に相当する最高50μg/mLの濃度において炎症性サイトカインIL−2は調節されない、
・患者における最高150mgの高用量適用に相当する最高50μg/mLの濃度において炎症性サイトカインIFN−γは誘導されない、
・患者における高用量適用に相当する最高50μg/mLの濃度においてTh1/Th2サイトカインは調節されない、
・辺縁増殖(marginal increment)によりIL−6の非常に散発性であるアップレギュレーションのみが生じ、この意味については議論の余地がある、
・TGF−β放出が増加する(Treg細胞)、
・単球/マクロファージの主な調節活性、Th1活性、及びTh2活性に対して有意な効果は見られない。
【0135】
実施例2−抗破傷風類毒素応答及びサイトカインアッセイのために予備刺激された培養ヒトPBMCに対するBT061の影響試験
方法
増殖アッセイ
96ウェル平底マイクロタイタープレート内にて200μL/ウェル(4×105細胞/ウェル)の体積の新たに単離したPBMCを培養した。試験品(抗CD4 AK BT061)は、20μg/mL、4μg/mL、及び0.8μg/mL(予備試験では更に40μg/mLも)の濃度で用いた。破傷風類毒素は、25μg/mL、5μg/mL、及び1μg/mLの濃度で用いた。陰性対照として細胞培養培地を用いた。全ての培養物を3連で用意した。
【0136】
Con−A刺激には、2.5μg/mLの濃度及び200μL/ウェルの体積を用いた。PBMCの密度を1×106/mLに調整し、1ウェル当たり100μLの体積に分布させた。
【0137】
培養期間の終わりに、0.4μCiの3H−チミジン/ウェルを添加することにより16時間の細胞増殖を検出した。培養期間の終わりに、EDTA溶液を用いて表面から細胞を剥離させ、scatron細胞回収器を用いてグラスファイバーフィルタで細胞を回収した。各ウェル内のDNAに取り込まれた放射能の量をシンチレーションカウンタで測定したところ、それは増殖細胞の数と比例しており、また該増殖細胞数は刺激を受けて細胞周期のS期に入った白血球の数の関数であった。読み出し(readout)パラメータはカウント毎分(cpm)、及びcpm化合物/cpmブランクと定義される各濃度についての刺激指数(SI)であった。
【0138】
サイトカインアッセイ
市販のELISAキットを用い、各メーカの取扱説明書に従って培養上清中の全サイトカインを定量した。用いた試薬を以下の表1に記載する。
【表4】
【0139】
ヒトIL−1 ELISAセットA(Bender)試験キットを用いてメーカの取扱説明書に従って培養上清中のインターロイキン(IL)−1濃度を測定した。キットと共に供給される標準物質により予め定められる試験の範囲は、未希釈サンプルでは1.3pg/mL〜130pg/mLと指定された。
【0140】
OptEIA(BD biosciences)試験キットを用いてメーカの取扱説明書に従って培養上清中のIL−4、IL−5、IL−6、及びIL−10濃度、並びにトランスフォーミング増殖因子(TGF)β1、及び腫瘍壊死因子(TNF)αを測定した。キットと共に供給される標準物質により予め定められる試験の範囲は、未希釈サンプルを測定したとき3.8pg/mL〜330pg/mL(IFN−γ)、6.3pg/mL〜616pg/mL(IL−4、IL−5、IL−10、及びTNF)と指定され、2倍希釈したサンプルを用いたとき7.6pg/mL〜660pg/mL(IL−6)と指定された。
【0141】
各独立した微小培養物に由来するELISAにより決定された2種(単球培養物)或いは8種(PBMC培養物)のサイトカインの測定値は平均及び標準偏差の計算に含まれていた。試験の上限(例えばTNFの場合616pg/mL)を超える力価をこの計算用の値に設定した。計算前に各平均値から試験の下限を減じた。
【0142】
結果
BT061(ヒト化B−F5或いは単にhB−F5とも呼ばれる)は、破傷風類毒素特異的T細胞増殖を用量依存的に抑制することができ、T細胞の総数に対する影響は見られなかった。サイトカイン放出の全身性抑制が見られた。
【0143】
以下の表2は、破傷風類毒素特異的T細胞増殖アッセイにおける抗CD4mAb BT061の影響を示し、3連で測定した。
【0144】
3連で測定した3H−Tdrの取り込みの平均及びSD、各濃度における刺激指数(SI、cpm化合物/cpmnilと定義される)、培地対照に対する独立両側t検定における有意性のレベル(n.s.:有意差無し、*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001)を示す。
【表5】
【表6】
【表7】
【0145】
表2〜4のデータは以下のことを示す:
・破傷風類毒素誘導性T細胞増殖の用量依存的抑制(再現反応)が高用量BT061でさえも見られ、これは、BT061が全ての免疫反応を抑制する訳ではないことを示す。用いられた用量は、患者において最高60mgの高用量適用に相当する、
・Th1/Th2バランスに影響を及ぼすことなしに、サイトカイン放出が全身で抑制される(IFN−γ、IL−5、及びTNF−αの用量依存的減少、IL−1、IL−4、IL−6、IL−10には変化無し)、
・TGF−β放出が増加する。
【0146】
実施例3−BT061(抗CD4mAb)誘導性ADCC(抗体依存性細胞傷害性)についてのフローサイトメトリー試験
HuT78標的細胞をBT061(hB−F5)で標識し、エフェクタとしてのPBMC細胞と共にインキュベートした。30分間インキュベーションした後のDNA色素ヨウ化プロピジウムの取り込みにより死細胞を検出することができた。結果を表5に示す。
【表8】
表中のデータは、高濃度においてさえもBT061(hB−F5)によりADCCが誘導されないことを示す。
【0147】
実施例4−アポトーシス
BT061(抗CD4mAb)誘導性アポトーシスについてのフローサイトメトリー試験において、全血由来のPBMCをBT061或いは陽性対照と共にインキュベートした。
【0148】
7日間インキュベートした後、アポトーシス細胞をAnnexin−V−Fluoresceineで染色することによりアポトーシス細胞の検出を実施した。結果を表6に示す。
【表9】
データは、高濃度のBT061でさえもアポトーシスを誘導しないことを示す。
【0149】
実施例5−補体結合
補体因子C1qの結合についてのフローサイトメトリー試験において、PBMCを単離しBT061(抗CD4mAb)と共にインキュベートし、続いて精製組み換えC1qと共にインキュベートした。
【0150】
ATG(Tecelac)を陽性対照として用いた。
【0151】
C1qに対するFITC標識検出抗体を用いて検出を実施した。結果を以下の表7に示す。
【表10】
データは、高濃度でさえも補体結合が見られないことを示す。
【0152】
実施例6−漸増用量のBT061の安全性及び耐容性
18歳以上75歳以下の健常男性及び女性ボランティアにおいて漸増用量の抗体を用いてBT061の安全性及び耐容性をモニタするための研究を行った。
【0153】
各群3人ずつの10投与量群に分けた30人のボランティアにBT061を静脈内投与した。更に各群3人ずつ5投与量群に分けた15人のボランティアにBT061を皮下投与した。BT061の静脈内投与について以下の表8に示す。
【表11】
0.9%の塩化ナトリウム注入液で最高総体積20mLまで各用量を希釈する。用量を単回持続静脈内注入として2時間に亘って投与する。
【0154】
BT061の皮下用量
BT061の皮下投与について以下の表9に示す。
【表12】
各用量は単回ボーラス注入として注入する。
【0155】
注入後3ヶ月間に亘ってボランティアを評価した。
【0156】
皮下適用では、投与前、投与3時間後、6時間後、12時間後、24時間後、36時間後、48時間後、56時間後、72時間後、88時間後、96時間後、120時間後、144時間後、168時間後、及び75日目に血漿サンプルを採取した。
【0157】
静脈内適用では、投与前、投与30分後、1時間後、2時間後、3時間後、6時間後、12時間後、24時間後、36時間後、48時間後、72時間後、96時間後、120時間後、144時間後、及び168時間後に血漿サンプルを採取した。
【0158】
標準的なELISA法を用いて血漿サンプルを分析し、サイトカインレベルを決定した。分析した関連サイトカインにはIFN−γ、TNF−α、IL−6、及びIL−2が含まれていた。
【0159】
標準的なフローサイトメトリー法を用いて血漿サンプルも分析し、CD4+リンパ球数を測定した。
【0160】
結果
最高60mgの静脈内用量及び皮下用量は一般に耐容性に優れていることが見出された。
【0161】
サイトカインレベル
サイトカイン放出誘導は、ATG、OKT3、CAMPATH−1H、及びヒト化抗CD3mAb(TRX4、Visilizumab、及びTeplizumab)などのT細胞相互作用治療抗体の使用に伴って生じる一般的な即時併発症である。主な症状としては、中等度の発熱、頭痛、及び自己限定性胃腸炎が挙げられる。抗体投与後のサイトカイン誘導と相関する副作用には、抗ヒスタミン剤塩酸ジフェンヒドラミン及び抗炎症剤イブプロフェンの少なくともいずれかなどの更なる薬剤の適用を必要とする。
【0162】
OKT3(ムロモナブ−CD3)、マウスCD3特異的治療モノクローナル抗体を使用した場合、死者が出たという報告さえあり、重篤な副作用により主に免疫低下患者に対するこの抗体の臨床的使用は制限されている。
【0163】
自己免疫疾患の治療のために医療機関で現在用いられているヒト化FcR非結合CD3特異的モノクローナル抗体(Teplizumab及びTRX4)は、OKT3などのFcR結合CD3特異的抗体と比較して、最初の投与後のT細胞の活性化及びFc受容体発現細胞の活性化の少なくともいずれかにより誘導される副作用は減少しているが、T細胞の活性化及びFc受容体発現細胞の活性化が依然としてある程度見られ、これによりサイトカイン依存性副作用に一般に関連しているサイトカイン放出が導かれる。
【0164】
現在の研究ではBT061の静脈内適用或いは皮下適用後に健常ボランティアで見られるサイトカイン誘導は、抗CD3抗体に比べて少なく且つ一過性であることが驚くべきことに見出された。サイトカイン誘導は、投与量増加につれて一般に増加する。しかし40mg〜60mgの最高用量でさえも、他のT細胞相互作用モノクローナル抗体で見られるよりもサイトカイン誘導は著しく少ない(図7A及び図7B)。
【0165】
最高用量(40mg〜60mgのBT061)を用いて投与した後96時間以内のいずれかの時点で観察されたサイトカインの中央ピーク濃度を図7及び図8に示す。
【0166】
各サイトカインの中央ピーク濃度は以下のように算出される。最高サイトカイン濃度の中央値は抗体の投与後に観察された。
【0167】
図7A及び図7Bは、抗CD3モノクローナル抗体、Teplizumab及びTRX4の投与後の放出と比較した、BT061の静脈内投与或いは皮下投与後に健常ボランティアで観察されたTNF−α及びIL−6放出を示す。これらのサイトカインの正常値はStraub et al.,(2007,Arthr.&Rheumat.)から得た。図8は、BT061の静脈内投与或いは皮下投与後のIL−2及びIFN−γ血漿濃度を示す。抗体注入4日以内に測定した40mg及び60mg用量群から中央ピーク濃度を算出した。正常上限(ULN)は、39人の健常対象で測定されたサイトカイン濃度に基づいて算出され、ULN=平均値+2×標準偏差である。
【0168】
Teplizumab及びTRX4(それぞれHerold et al.,2002,New Engl.J.Med及びKeymeulen et al.,2005 New Engl.J.Medから得られた結果)に比べて、BT061はサイトカイン放出を僅かに且つ一過的にしか誘導しなかった。TNF−α及びIL−6濃度は僅かに増加した。図7は、BT061(40mg及び60mg)の適用後血漿中で検出されたIL−6及びTNF−αサイトカイン濃度の中央ピーク値が、CD3特異的治療抗体Teplizumab及びTRX4で処理した後に見られる値より低いことを示す。
【0169】
更に抗CD3mAbとは対照的に、BT061はTRX4の適用について報告されているように(Keymeulen et al.2005)IFN−γ及びIL−2レベルを実質的に増加させなかった(図8)。
【0170】
CD4+リンパ球
更に該試験は、採取した血漿サンプル中のCD4陽性リンパ球数の研究も含んでいた。
【0171】
静脈内投与の結果を以下の表9、表10、及び表11に示す。表12は、皮下投与による試験の結果を示す。この結果を図9及び図10にグラフで示す。
【表13】
【表14】
【0172】
具体的には図9は、BT061の単回静脈内投与で処理されたボランティアのCD4細胞数(細胞/mL血漿)を示す。データ点は、各用量群における3人の患者の平均値を示す。点線は、正常上限(ULN)及び正常下限(LLN)を示す。健常ボランティアの細胞数に基づいてULN及びLLN(平均値+(或いは−)標準偏差)を算出したところ、正常下限(LLN)は443CD4細胞/μLであり、正常上限(ULN)は1324CD4細胞/μLであった。
【0173】
図10は、BT061の単回皮下投与で処理されたボランティアのCD4細胞数(細胞/mL血漿)を示す。図9と同様に、データ点は各用量群における3人の患者の平均値を示す。点線は、正常上限(ULN)及び正常下限(LLN)を示す。
【表15】
【表16】
【0174】
当該技術分野において既知である多くのCD4特異的モノクローナル抗体(Strand et al.,2007で概説されている抗体など)でCD4陽性リンパ球枯渇を介した免疫抑制が達成される。これらの抗体の問題点は、処理された個体が免疫低下(immuno−compromised)状態になり、他の感染症に罹患しやすくなることである。
【0175】
対照的に、この研究はBT061がCD4陽性細胞の広範囲に亘る持続性枯渇を誘導しないことを示した。CD4陽性リンパ球の一過性減少が観察されたが、抗体の投与後72時間以内に末梢血における正常値に回復した。
【0176】
BT061の適用後72時間の時点では、静脈内投与群の4人のボランティアにおけるCD4細胞数は、以下のように正常値を下回るCD4数を示した:100μg静脈内投与群のボランティア1名:400CD4細胞/μL;5mg投与群のボランティア1名:419CD4細胞/μL;10mg投与群のボランティア1名:440CD4細胞/μL;及び20mg投与群のボランティア1名:392CD4細胞/μL。
【0177】
しかしこれらの値は正常値をほんの僅か下回っていた。静脈内投与群の残りの26人のボランティアにおけるCD4細胞数は、BT061投与72時間後正常値の範囲内であった。
【0178】
皮下投与群では、72時間後、15人のボランティアのうち1人のみが正常値を下回るCD4細胞数を示した。
【0179】
結論として、CD4特異的mAbの枯渇とは対照的に、高用量BT061でさえもCD4陽性細胞の一過性減少を誘導するのみであり、後にその低下は全身で回復する。一過性減少及び急速な正常値への全身性回復から、CD4陽性細胞の枯渇ではなくCD4陽性細胞の一過的再分布が生じていると結論付けられる。
【0180】
実施例7−中等度〜重篤な慢性乾癬に罹患している患者におけるBT061の臨床試験
中等度〜重篤な慢性乾癬に罹患している患者56人についてhB−F5 BT061の自己免疫疾患を治療する能力を試験した。試験は、hB−F5の安全性及び有効性を評価するための単一用量漸増試験を含む。
【0181】
試験条件は以下の通りである:
56人の患者を各群8人ずつの7種の用量群に分けた。5種の用量群(用量群I〜V)に抗体或いはプラセボを静脈内投与し、2種の用量群(用量群VI〜VII)に抗体或いはプラセボを皮下投与した。各用量群の2人の患者にプラセボを投与し、各用量群の残り6人にはある用量のBT061を投与した。用量群Iでは6人の患者に0.5mgBT061を静脈内投与した。用量群II〜Vでは6人の患者にそれぞれ2.5mg、5mg、10mg、或いは20mgのBT061を投与した。皮下投与の用量群VI及びVIIでは6人の患者にそれぞれ12.5mg或いは25mgのBT061を投与した。
【0182】
静脈内投与では、医学的に認められている手順に従って前腕静脈に抗体/プラセボを注入する。この場合perfusor(Fresenius Pilot C,Fresenius AG,Germany)を通して2時間に亘って単回持続静脈内注入として全体積を投与する。各容量の抗体を0.9%の塩化ナトリウム注入液(B.Braun Melsungen AG,Germany)で最高総体積20mLまで各抗体用量を希釈する。
【0183】
皮下投与では、単回皮下注入として抗体を投与する。同手順をプラセボにも適用する。
【0184】
乾癬面積及び重症度指数(PASI)スコアを用いて各患者が示す乾癬レベルを記録する。上述のようにPASIスコアが高くなるにつれて乾癬レベルも高くなる。試験の登録患者は、中等度〜重篤な慢性乾癬、即ち10以上のPASIスコアを有する。
【0185】
試験前に患者のPASIスコアを評価して0日目の「基準」値を得、試験中5日目、7日目、14日目、21日目、28日目、42日目、56日目、及び75日目にPASIスコア評価を繰り返した。
【0186】
用量群I
用量群Iの6人の患者に0.5mgのBT061を単回静脈内適用し、用量群Iの2人の患者にプラセボを投与した。各患者の体重当たりの用量及び体表面積(BSA)当たりの用量を表13に示す。体表面積は本明細書に記載されたMosteller式に従って算出した。
【0187】
PASIスコアの基準からの改善率と共に用量群Iの患者のPASIスコアを表13に示す。
【0188】
用量群II
用量群IIの6人の患者に2.5mgのBT061を単回静脈内適用し、用量群IIの2人の患者にプラセボを投与した。各患者の体重当たりの用量及び体表面積(BSA)当たりの用量を表14Aに示す。
【0189】
PASIスコアの基準からの改善率と共に用量群IIの患者のPASIスコアを表14Aに示す。
【0190】
用量群III
用量群IIIの6人の患者に5.0mgのBT061を単回静脈内適用し、用量群IIIの2人の患者にプラセボを投与した。各患者の体重当たりの用量及び体表面積(BSA)当たりの用量を表14Bに示す。
【0191】
PASIスコアの基準からの改善率と共に用量群IIIの患者のPASIスコアを表14Bに示す。
【0192】
用量群IV
用量群IVの6人の患者に10.0mgのBT061を単回静脈内適用し、用量群IVの2人の患者にプラセボを投与した。各患者の体重当たりの用量及び体表面積(BSA)当たりの用量を表14Cに示す。
【0193】
PASIスコアの基準からの改善率と共に用量群IVの患者のPASIスコアを表14Cに示す。
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【0194】
更に個々の患者について時間に対するPASIスコアをグラフ形式で図11A〜図11H、及び図12A〜図12Hに示す。図11A〜図11Hに示すグラフは用量群Iの患者のPASIスコアを表し、図12A〜図12Hに示すグラフは用量群IIの患者のPASIスコアを表す。
【0195】
表13及び表14A〜表14Cに示した結果から分かるように、用量群I及び用量群IIの全患者の75%のPASIスコアが明らかに改善されている、即ち単回投与後基準値に対して少なくとも40%改善されている。用量群I及び用量群IIの患者の25%にはプラセボが投与されたことに留意すべきである。
【0196】
実際に両用量群で50%の患者のPASIスコアが少なくとも50%改善され、用量群IIの患者の1人(即ち表14Aの患者3)は56日目でPASIスコアが88%改善された。更に低用量でさえも治療効果が持続し、多くの患者で試験の終わりである投与後75日目でも依然として改善が見られた。
【0197】
用量群IIIの患者もまたPASIスコアの改善が見られ、処理後8人中6人の患者でPASIスコアが20%超改善し、これら6人中2人は30%超改善した。しかしより低用量の抗体を投与した用量群I及び用量群IIの患者で見られた程著しい改善ではなかった。用量群IVの患者でも多少の効果が見られた。具体的には用量群IVの患者1、患者4、患者5、及び患者8(表14Cに示された)のPASIスコアは明らかに改善されたが、この効果は用量群I〜用量群IIIの患者に比べて限定されていた。
【0198】
PASIスコアが少なくとも40%、50%、60%、及び75%改善した患者数を表15に示す。
【表21】
【0199】
図13A及び図13Bは、処理前及び処理後の写真によって乾癬レベルが改善されたことを証明する。図13Aは、投与前の用量群IIの患者の皮膚の乾癬領域を示す。図13Bは、投与28日後の同乾癬領域を示す。図13Bの黒線で囲んだ領域における改善が著しい。
【0200】
これらの結果からBT061が中等度〜重篤な慢性乾癬を有効に治療することが明らかに分かる。
【0201】
この研究の結果は、高用量の本発明の抗体のヒトにおける耐容性が一般に優れていることを示す上記実施例6に記載された結果と併せて、本明細書に記載される用量で自己免疫疾患を有効に治療する本発明の医薬組成物の能力を示す。
【0202】
実施例8−関節リウマチ患者におけるBT061の臨床試験
BT061の関節リウマチを治療する能力について、関節リウマチ患者で試験した。試験は12群に分けられた96人の患者についての複数回投与試験を含む。各群2人の患者にプラセボを投与し、6人の患者にBT061を投与した。患者は6週間に亘って週1回投与を受けた。
【0203】
患者を抗体皮下投与群と抗体静脈内投与群に分けた。皮下投与群には1.25mg、6.25mg、12.5mg、25mg、50mg、75mg、及び100mgを投与する。静脈内投与群には0.5mg、2mg、6.25mg、12.5mg、及び25mgを投与する。
【0204】
1.25mg皮下投与群では、患者に101、102、103、104、105、106、107、及び108という番号を付けた。6.25mg皮下投与群では患者に201〜208の番号を付けた。12.5mg皮下投与群では患者に301〜308の番号を付けた。25mg皮下投与群では患者に401〜408の番号を付けた。50mg皮下投与群では患者に501〜508の番号を付けた。6.25mg皮下投与群では患者に601〜608の番号を付けた。
【0205】
静脈内投与手順及び皮下投与手順は、乾癬試験について実施例7で記載した手順と同様であった。
【0206】
ACRパラメータ、具体的には圧痛関節数、腫脹関節数、後のC反応性タンパク質(CRP)及び赤血球沈降速度(ESR)のレベルを調べることにより関節リウマチのレベルを毎週記録した。試験前にこれらパラメータについて評価して0日目の「基準」値を得、試験期間中及び投与期間終了後8日目、22日目、及び43日目(即ち追跡(FU)8日目、FU22日目、及びFU43日目)にも繰り返し評価した。
【0207】
以下の表に試験から得られたデータを示す。具体的には表16〜表21は、試験期間中の圧痛関節数及び腫脹関節数を示す。
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【0208】
図14は1.25mg、6.25mg、12.5mg、及び25mgのBT061皮下投与群患者のうち試験期間中関連ACRパラメータが少なくとも20%改善された患者の割合、及び7週間目で少なくともACR20の応答があった患者の割合を示す。
【0209】
具体的には25mg皮下投与群患者の50%(即ちプラセボ投与を受けた患者2人を含む8人のうち4人)で、6週間目に関連ACRパラメータが少なくとも20%改善された。この割合は7週間目で8人中5人の患者に増加した、即ち8人中5人の患者でACR20が達成された。この用量群の患者の1人は、5週間目及び6週間目で関連ACRパラメータが50%超改善された(完全なデータは示さない)。
【0210】
他の用量群の患者でも正の結果が得られた。6.25mg皮下投与患者の1人は4週間目で関連ACRパラメータが少なくとも50%改善され、一方別の患者は3週間目で関連ACRパラメータが少なくとも70%改善された(完全なデータは示さない)。
【0211】
図15A及び図15Bは、6週間に亘る25mgBT061皮下投与群患者が呈した圧痛関節数及び腫脹関節数を示す。数人の患者において処理期間中圧痛関節数及び腫脹関節数が減少する。この用量群の1人のレスポンダ患者及び1人の非レスポンダ患者の結果をそれぞれ図16A及び図16Bに示す。レスポンダは、圧痛関節数、腫脹関節数、及び疼痛レベルの有意な改善を示す。
【0212】
圧痛関節数及び腫脹関節数の減少はまた他の用量群患者でも見られる。図17A、図17B、図18A、及び図18Bは、試験期間中及びその後数週間に亘る1.25mg皮下投与群、6.25mg皮下投与群、50mg皮下投与群、及び6.25mg静脈内投与群における圧痛関節数を示す。
【0213】
これらの結果は、関節リウマチ治療における本明細書に記載される用量範囲内の本発明の剤の有効性を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己免疫疾患の治療に関する。本発明は、既に報告されている剤よりも高投与量で患者に投与され得るヒト化モノクローナル抗体などの剤に関する。前記剤は、有効な治療のために高投与量を必要とする疾患及び特性のいずれかを有する患者に特に有効である。本発明は、抗体などの前記剤を有効濃度で含む医薬組成物と、該剤を含む組成物及び薬剤の使用と、該剤を含む組成物及び薬剤を用いる治療方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
自己免疫は、生物が自身の構成部(サブ分子レベルまで)を「自己」として認識できないことであり、その結果自身の細胞及び組織に対する免疫反応が生じる。かかる異常な免疫反応から生じる任意の疾患は、自己免疫疾患と命名されている。自己免疫疾患としては、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ(RA)、乾癬、乾癬性関節炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、重症筋無力症(MG)、多腺性自己免疫症候群II型(APS−II)、橋本甲状腺炎(HT)、1型糖尿病(T1D)、全身性エリテマトーデス(SLE)、及び自己免疫リンパ増殖症候群(ALS)が挙げられる。
【0003】
自己免疫疾患は、T細胞が「自己」の分子、即ちホストの細胞により産生される分子を認識し該分子に反応するときに生じる。抗原提示細胞(APC)によるプロセシングを受けた自己抗原の提示による「自己反応性」T細胞の活性化は、T細胞のクローン性増殖及び特定の組織への遊走を導き、前記組織においてT細胞は、炎症及び組織破壊を誘導する。
【0004】
通常、T細胞は、自己組織に対して免疫寛容性であり、異種構造が提示されたときにのみ反応する。中枢性免疫寛容及び末梢性免疫寛容は、自己反応性T細胞がその有害な機能を誘発することを免疫系が妨げる2種の機序である。中枢性免疫寛容には負の選択が介在する。このプロセスは、個体発生中の胸腺における自己反応性T細胞のクローン除去を通じた排除を伴う。
【0005】
末梢性免疫寛容は、中枢性免疫寛容が失敗し、自己反応性細胞が胸腺から逃れた場合に利用されるバックアップである。免疫寛容のこの機序は、生涯に亘って持続的に存在し、免疫学的無視(アネルギー)、末梢消失、及び活性抑制の少なくともいずれかを通して自己反応性細胞を抑制する。
【0006】
活性抑制の一部として制御性T細胞(Treg、かつては「サプレッサ細胞」とも称されていた)は、末梢性免疫寛容を維持し、自己免疫を制御する(非特許文献1〜7)。一般に制御性T細胞は、ヘルパーT細胞1型(TH1)及びTH2エフェクタ細胞の活性化及び機能の少なくともいずれかを阻害する。Treg細胞の頻度及び機能のいずれかにおける制御不全が、自己免疫疾患の弱体化を導く場合もある(非特許文献6、及び8〜10)。
【0007】
制御性T細胞の幾つかのサブセットが特徴付けられている。Tregファミリーは2種の重要なサブセット、自然発生サブセット、例えばCD4+CD25+Tregと、末梢性誘導サブセット、Tr1及びTh3Tregとからなる。更にNKTreg及びCD8+Tregが、ヒト及び齧歯類で報告されている(非特許文献11)。
【0008】
胸腺由来のTreg細胞(自然発生型CD4+CD25+Treg)は、自己免疫或いは病原体免疫反応の制御に関与する主な制御性細胞であり、前記細胞は、
i)CD4+T細胞であり、末梢性CD4+T細胞の5%〜10%を構成している、
ii)胸腺で成熟する、
iii)IL−2受容体(CD25)、CD45分子の低分子アイソフォームで、CD152(CTLA−4)、及び転写因子FoxP3と合わせて発現することを一般に特徴とする。
【0009】
Tregの役割は、CD25+細胞の枯渇したCD4+細胞を有する免疫不全ヌードマウスを再構成することを含む実験により最も良く示されている。CD4+CD25−再構成ヌードマウスは、胃炎、卵巣炎、精巣炎、及び甲状腺炎などの様々な器官特異的自己免疫疾患を発現する(非特許文献12)。
【0010】
再構成実験においてCD4+CD25+サブセットをヌードマウスに組み込むとこれら疾患の発症が妨げられる(非特許文献13)。器官特異的自己免疫に対するCD4+CD25+細胞の保護的価値は、出産3日後に実施される新生児胸腺摘出(d3Tx)により惹起される自己免疫(例えば自己免疫胃炎、前立腺炎、卵巣炎、糸球体腎炎、精巣上体炎、及び甲状腺炎)、或いはSCIDマウスを高CD45RB、CD4+CD25−T細胞で再構成することにより惹起される炎症性腸疾患の幾つかの他のモデルにおいても示されている。抗CD25抗体をインビボでマウスに投与することによっても器官限局性自己免疫疾患が誘導される。
【0011】
マウスのCD4+CD25+制御性T細胞の機能における転写因子FoxP3の重要性の発見、及びIPEX(免疫不全、多発性内分泌腺症、腸症、及びX連鎖遺伝)症候群、CD4+CD25+制御性細胞欠損マウス(scurfy症候群)で見られる疾患に類似している重篤な炎症性疾患、の患者がFoxP3に変異を有しているという以前の知見により、自己免疫動物モデル、マウス制御性T細胞とヒトの自己免疫疾患との間に直接的相関が得られた(非特許文献13)。
【0012】
制御性T細胞の薬学的機序は完全には明らかになっていない。CD4+CD25+Tregは、ポリクローナル及び抗原特異的にT細胞活性化を阻害する。TCRを介したCD4+CD25+Tregの活性化を必要とする細胞接触依存性機序により抑制が媒介されるが、Tregは、TCR活性化時或いはマイトジェニック抗体による刺激時に増殖反応を示さない(アネルギー性)(非特許文献14)。一旦刺激されると、それらはCD4+T細胞及びCD8+T細胞の反応を抗原非依存的方法で抑制し、B細胞活性化及びそれらのクローン除去を阻害する能力を有する。
【0013】
CD4+CD25+Tregのサプレッサ活性がTGF−βなどの抗炎症性サイトカインにも部分的に依存することを示す更なるデータが存在する(非特許文献15及び16)。TGF−β分泌の機能的重要性は、TGF−β欠損マウスが自己免疫疾患を発現し、幾つかのモデルにおいて自己免疫の阻止或いはCD4+T細胞の寛容誘導性活性がTGF−βに対する中和抗体の投与によりインビボで取り消されるという知見により更に支持されている。
【0014】
CD4+T細胞サブセットには、抑制機能を有する少なくとも2超の異なる種類の細胞、1型制御性T細胞(Tr1)及びTh3細胞が存在する可能性があり、前記細胞は特異的外因性抗原に曝露された後誘導される(「適応性或いは誘導性制御性T細胞」と呼ばれる)。これら細胞の種類は、そのサイトカイン産生プロファイルに基づいてCD4+CD25+Tregと区別できると思われる。しかしこれら異なる種類間の関係は不明であり、作用機序は重複している。
【0015】
Tr1細胞は、IL−10の存在下におけるTCRの反復刺激により誘導され、中程度の量のTGF−βと共に高レベルのIL−10の産生を介して免疫反応を主にダウンレギュレートすることが示された(非特許文献17)。
【0016】
Th3細胞(抗原の経口送達後EAEモデルで同定された)は、多量のTGF−βと、可変量のIL−4及びIL−10とを産生する。IL−4はそれ自体Th3細胞の分化にとって重要な因子であることが示されており、IL−10を用いて分化するTr1細胞とは対照的である(非特許文献18)。
【0017】
免疫抑制薬剤の使用によるT細胞の機能抑制は、成功裏に自己免疫疾患を治療するために用いられている主な治療ストラテジである。しかし前記薬剤は選択性が乏しいため全身で免疫抑制を誘導し、その結果免疫系の有害な機能だけでなく有用な機能も阻害する。結果として、感染、癌、及び薬剤毒性などの幾つかのリスクが生じる恐れがある。
【0018】
T細胞の機能に干渉する剤は、各種自己免疫疾患治療の中枢を担っている。
【0019】
自己免疫疾患を治療するために制御性T細胞の活性化を目的とする剤を使用するアプローチは、著しく困難であることがこれまでに判明している。アゴニスト性抗CD3抗体OKT−3を用いるTCRを介したTregの活性化(非特許文献19)、或いはスーパーアゴニスト性抗CD28抗体TGN1412を用いる共刺激分子CD28を介したTregの活性化により、制御性T細胞集団及び他の従来のT細胞の完全な枯渇と、IFN−γ、TNF−α、IL−1、及びIL−2を含む炎症促進性サイトカインの全身性誘導及び過剰量の放出とが導かれ、その結果ヒトでは臨床的に明らかなサイトカイン放出症候群(CRS)が生じる(非特許文献20)。
【0020】
5mgのモノクローナル抗体OKT3を最初の2回〜3回注入した後、患者の大部分がサイトカイン放出症候群を発現し、腎移植レシピエントの血液循環において1時間〜2時間以内に高濃度の腫瘍壊死因子α、インターロイキン−2、及びγ−インターフェロンが現れる(非特許文献21)。これにより治療域が狭くなり、自己免疫疾患の治療におけるこの抗体の有用性が限定される。
【0021】
総用量5mg〜10mgのTGN1412(0.1mg抗CD28/kg体重)で処理すると、TGN1412の単回静脈内投与を受けた後90分以内に多臓器不全を伴う全身性炎症反応が導かれる(非特許文献20)。
【0022】
CD4T細胞が自己免疫の開始及び維持において重要な役割を果たしていることは一般に認められている。したがって、CD4T細胞表面分子に対するmAb、特に抗CD4mAbを免疫抑制剤として使用することが提案されている。多くの臨床研究によりこのアプローチの潜在的重要性が確認されているが、前記研究はルーチンな診療における使用に対して抗CD4mAbをより好適にするために対処すべき幾つかの問題も提起している。
【0023】
CD4mAbの幾つかの異なる作用機序が提案されており、例えば(1)CD4−MHC II相互作用の拮抗によるT細胞活性化阻害、(2)CD4の細胞表面発現低下により判定されるCD4受容体調節、(3)後にT細胞活性化を抑制しCD4T細胞のアポトーシス細胞死を誘発し得るT細胞受容体架橋の非存在下におけるCD4受容体を通じた部分的シグナル伝達、(4)CD4T細胞枯渇を導くFc媒介性補体依存性細胞傷害活性(CDC)或いは抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)、及び(5)制御性T細胞の刺激が挙げられる。
【0024】
CD4T細胞枯渇を導くFc媒介性補体依存性細胞傷害活性(CDC)或いは抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)が主に観察される機序であり、IgG1サブクラスの抗体について特に証明されている。TRX−1、TNX−355、IDEC−151、OKTcdr4Aなど他の機序に寄与しているのはほんの僅かなCD4抗体であり、この中でIgG1はTRX−1のみである(非特許文献22〜29)。
【0025】
「高」用量(100mg超を複数サイクル投与)におけるCD4+T細胞の用量依存性枯渇、及び「低」用量(10mg超を複数サイクル投与)における一過性隔離(短期間枯渇)が、幾つかのCD4受容体(非特許文献23及び26)及びHuMax−CD4(非特許文献28及び30)で観察されている。その枯渇活性にもかかわらず、CD4に対するmAbは、研究された自己免疫疾患、例えば関節リウマチにおいて臨床的有用性及び一貫した有効性をもたらすことはできなかった(非特許文献31)。更にCD4+T細胞の枯渇は一般にシナリオ(scenario)と見なされ、これは重篤な免疫抑制を惹起することがある。
【0026】
B−F5抗体(マウスIgG1抗ヒトCD4)を様々な自己免疫疾患で試験した。
【0027】
重篤な乾癬に罹患している少数の患者をマウスB−F5抗体で処理した結果、幾つかの正の効果が報告された(非特許文献32及び33)。
【0028】
関節リウマチ患者では、B−F5を毎日投与するプラセボ対照試験で観察された結果は有意な改善を示さなかった(非特許文献34)。
【0029】
多発性硬化症(MS)患者では、再発寛解型患者を10日間処理した後幾つかの正の効果が観察され、患者の一部は治療の6ヶ月後も再発しなかった(非特許文献35)。同様の効果が非特許文献36でも観察された。
【0030】
重篤なクローン病では、連続して7日間B−F5を投与した患者で有意な改善は見られなかった(非特許文献37)。
【0031】
同種移植片拒絶の予防では、同種移植片拒絶の予防に用いるにはB−F5の生物学的利用能が十分ではないことが報告された(非特許文献38)。
【0032】
臨床的改善を得るために高用量のmAbの使用が必須であるという問題を最初に解決すべきであることが上記から明らかである。該問題は、標的組織におけるmAbへのリンパ球の接近可能性が低いことに特に起因する可能性がある。高用量の使用により、血中リンパ球に対する過剰作用が生じ、不所望の副作用が誘導される恐れがある。
【0033】
ヒトにおいてモノクローナル抗体を用いる治療の別の問題点は、これらの抗体が一般にマウス細胞から得られたものであり、ヒトレシピエントにおいて抗マウス反応を誘発することである。これは前記治療の有効性及び将来開発されるであろうマウスモノクローナル抗体を用いる任意の治療法の有効性さえも低下させるだけでなく、アナフィラキシーのリスクも高める。
【0034】
この問題点は、マウスモノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)をグラフトすることにより得られるヒト化抗体を使用することにより原則として避けることができ、前記相補性決定領域とはヒト免疫グロブリン分子のフレームワーク領域(FR)上に存在する抗原結合特異性を決定する領域である。ヒト化の目的は、CDR配列が由来するマウスモノクローナル抗体と同様の抗原結合性を有し、ヒトにおける免疫原性が非常に低い組み換え抗体を得ることである。
【0035】
場合によっては、抗原結合性(特異性だけでなく、抗原に対する親和性も)を移行させるにはマウス抗体のCDRをヒトフレームワークにおけるヒトCDRに置換するだけで十分である。しかし多くの抗体では幾つかのFR残基が抗原結合にとって重要であり、その理由は前記FR残基が抗体−抗原複合体中の抗原に直接接触するか、或いは前記FR残基がCDRの立体構造延いてはその抗原結合性能に影響を与えるためである。
【0036】
したがってほとんどの場合、マウス抗体の1或いは数個のフレームワーク残基をヒトの対応するFR残基に置換することも必要である。抗マウス反応を防ぐために置換される残基数はできる限り少なくしなければならないため、抗原結合性を保持するためにどのアミノ酸残基(1或いは複数のいずれか)が重要なのかを決定することが問題である。置換するのにより適切な部位を予測するための種々の方法が提案されている。前記方法はヒト化の最初の段階で助けになる可能性のある一般原理を提供するが、最終的な結果は抗体によって異なる。したがって、所定の抗体についてどの置換が所望の結果をもたらすかを予想することは非常に困難である。
【0037】
マウスB−F5抗体のヒト化は既に試みられており、親マウスB−F5に類似するCD4結合性を有するヒト化B−F5(以後hB−F5と称する)を産生することに成功している。
【0038】
したがって、特許文献1ではヒト化抗体BT061(ヒト化B−F5、或いは単にhB−F5)が乾癬及び関節リウマチなどの自己免疫疾患の治療において有用であることが見出されている。前記特許出願は、0.1mg〜10mg、好ましくは1mg〜5mgの用量を投与できるよう配合された非経口投与用組成物について開示している。予想される投与レジメは10日間に亘って1日当たり1mgの用量及び2日に1回5mgの用量を関節リウマチ患者に静脈内投与するレジメである。したがって開示されている最高用量は1回に5mgであり、10日に亘る過程では25mgである。
【0039】
前記研究は非特許文献39においても報告された。関節リウマチに罹患している11人の患者の治療について開示された。患者は150mgのジクロフェナック(Diclophenac)との併用治療により、隔日5mgのBT061を5回静脈内注入することにより治療された。
【0040】
この研究に記載されている抗体は、高用量で用いるのに好適であることが開示されておらず、より多くの患者を治療するために高用量による治療法を見出すことが依然として望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】国際特許公開第2004/083247号
【非特許文献】
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【非特許文献14】Shevach,Nature Rev.Immunol 2:389(2002)
【非特許文献15】Kingsley et al.,J Immunol.168:1080(2002)
【非特許文献16】Nakamura et al.,J Exp.Med.194:629−644(2001)
【非特許文献17】Chen et al.,J.Immunol.171:733−744(2003)
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【非特許文献39】Wijdenes et al.,EULARconference、2005年6月、講演要旨及びポスター発表
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0043】
上記先行技術を考慮して本発明の目的は、既存の治療法に対して未だ十分反応していない自己免疫疾患患者を治療することにある。具体的には本発明の目的は、現在反応していない患者の治療反応を改善するために、高用量で患者に適用できる自己免疫疾患の治療法を見出すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0044】
驚くべきことに本発明者が実施した実験により、他のCD4mAbと比べてIgG1抗体BT061は、一旦標的細胞のCD4に結合すると、ADCCもCDC或いはアポトーシスも誘導しないことが明らかになった。
【0045】
したがって本発明は、薬学的に許容される担体と、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤とを含む自己免疫疾患を治療するための医薬組成物であって、剤の用量が10mg〜200mgで対象に投与される組成物を提供する。
【0046】
本発明は更に、薬学的に許容される担体と、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤とを含む自己免疫疾患を治療するための医薬組成物であって、剤の用量が5mg/m2〜60mg/m2で対象に投与される組成物を提供する。
【0047】
本発明は更に、薬学的に許容される担体と、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤とを含む自己免疫疾患を治療するための医薬組成物であって、剤の用量が1μg/kg〜500μg/kgで対象に投与される組成物を提供する。
【0048】
更に本発明は、薬学的に許容される担体と、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤とを含む医薬組成物であって、剤が10mg/mL〜150mg/mLの濃度で存在する医薬組成物を提供する。
【0049】
本発明の好ましい態様では剤は、ヒト化抗CD4抗体、その断片及びその誘導体のいずれかである。
【0050】
また本発明は、自己免疫疾患を治療するための薬剤の製造における本明細書に定義される剤の使用であって、前記剤が本明細書に定義される用量で対象に投与される使用を提供する。本発明は更に、自己免疫疾患の治療において使用するための本明細書に定義される剤であって、本明細書に定義される用量で対象に投与される剤を提供する。
【0051】
驚くべきことに本発明者らは、ヒト化抗体BT061(ヒト化B−F5、或いは単にhB−F5)が、例えば抗CD3抗体などの他のT細胞相互作用抗体と比べて炎症促進性サイトカインの放出を実質的に調節せず、誘導もしないことを見出したことは、上記投与量から理解される。更に該抗体は、CD4+リンパ球の実質的に長期間に亘る枯渇を引き起こさない。
【0052】
本発明の剤の濃度は、該剤が既知の濃度と比べて高い濃度で存在する限り、特に制限されない。しかし該剤の濃度は、10mg/mL(或いは10mg/mL超)〜150mg/mL、15mg/mL〜150mg/mL、15mg/mL〜100mg/mL、15mg/mL(或いは15mg/mL超)〜75mg/mL、或いは20mg/mL〜60mg/mLが好ましい。該剤の濃度は、(約)10mg/mL、(約)12.5mg/mL、(約)20mg/mL、(約)25mg/mL、(約)50mg/mL、(約)60mg/mL、(約)70mg/mL、(約)80mg/mL、(約)90mg/mL、或いは(約)100mg/mLのいずれか1種が最も好ましい。
【0053】
組成物として対象に適用される場合の投与体積は、特に制限されないが、但し既に知られている投与量と比べて全体的に高投与量を送達し、したがって高用量により利益を得ることができる個体を治療するのに好適であり、該個体は、罹患期間が長く現在の治療法に対する反応が不十分である重篤な場合の個体などであるがこれらに限定されない。具体的には前記投与体積の範囲内である剤の濃度は、本願に記載されている必要な用量を提供するために変動してもよい。
【0054】
投与体積は投与方法に応じて変動する。非経口投与が好ましい。非経口投与の例は、筋肉内投与、静脈内投与、或いは皮下投与である。組成物を静脈内注入により投与する場合、投与体積は0.1mL〜500mL、或いは0.5mL〜500mLであってもよく、好ましくは15mL〜25mL、典型的には約20mLである。組成物を皮下注入或いは筋肉内注入により投与する場合、投与体積は0.1mL〜3mLであってもよく、好ましくは0.5mL〜1.5mLであり、典型的には約1mLである。
【0055】
しかし幾つかの実施形態では、組成物は濃縮形態で提供され、対象個体に必要な強度に希釈されてもよい。これらの状況において組成物は、約1mL、2mL、3mL、4mL、或いは5mLという比較的少ない体積で提供されることが好ましい。代替実施形態では、組成物は必要な強度且つ上記投与体積で提供される(即ちすぐに投与できる)。1つの特定の実施形態では皮下投与用医薬組成物は、医療従事者でなくとも容易に投与できるように、すぐに投与できる形態で提供される。
【0056】
既に述べたように、本発明により想定される高投与量で自己免疫疾患を治療可能な剤を投与できることは知られていなかった。自己免疫疾患を治療可能な剤の投与が一部の個体或いは疾患の種類で有効であることは知られていたが、それが高用量で耐容され得るという認識により、一部の自己免疫疾患及び患者のクラスのより有効な治療法の可能性が開かれた。
【0057】
本発明は、以下の図面を参照してほんの1例として示される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、3人の健常ドナー由来の全血培養物のサイトカイン合成に対するBT061の効果を示す。培養物は、個々の実験において4種の異なる活性化因子を用いて刺激した:CD3=抗CD3抗体、LPS=リポ多糖類、PHA=植物性血球凝集素+抗CD28抗体;SEB=ブドウ球菌エンテロトキシンB+抗CD28抗体。様々なサイトカインを測定して、各種白血球亜集団に対する効果を測定した:Treg細胞(CD3:TGF−β、IL−10);単球/マクロファージ(LPS:IL−10、TNFα、IL−1β);Th2細胞(PHA:IL−4、IL−5、IL−13);Th1細胞(SEB:IL−2、IFNγ)。
【図2】図2は、様々な刺激物により誘発されるサイトカイン合成に対するヒト全血培養物(関節リウマチのドナー)中のBT061の効果を示す。
【図3】図3は、マウスB−F5 VH領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号5)を示す。
【図4】図4は、マウスB−F5 VK領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号6)を示す。
【図5】図5は、ヒト化B−F5のVH領域をコードするプラスミド断片のヌクレオチド配列(配列番号3)を示す。V領域をコードする配列に下線を引き、対応するポリペプチド配列(配列番号17)をヌクレオチド配列の下に示す。
【図6】図6は、ヒト化B−F5のVK領域をコードするプラスミド断片のヌクレオチド配列(配列番号4)を示す。V領域をコードする配列に下線を引き、対応するポリペプチド配列(配列番号2)をヌクレオチド配列の下に示す。
【図7】図7は、抗CD3モノクローナル抗体で報告されているレベルと比較した、健常ボランティアにおけるBT061(単回静脈内注入或いは皮下注入)を用いた臨床試験で観察されたTFNα及びIL−6放出を示す。投与量及び回復時間は図に記載されている。図中に「2)」として示したTRX4の結果は、Keymeulen et al.,2005 N.Engl.J.Med.Type 1 Diabetes patientsに報告されている。図中に「3)」として示したTeplizumabの結果は、Herold et al.,2002 N.Engl.J.Med.Type I Diabetes patientsに報告されている。図中に「4)」として示した正常値は、Straub et al.,2007,Athr.&Rheumatに報告されている。「*)」は単一用量を表し、「**)」はピーク濃度に達するまで注入された累積投与量を表す。
【図8】図8は、健常ボランティアにおける単一用量のBT061を静脈内投与或いは皮下投与した後のIL−2及びIFN−γの血漿濃度を示す。ULN=正常上限;LLN=正常下限。
【図9】図9は、単一用量のBT061を静脈内投与することにより処理したボランティアにおけるCD4細胞数(血漿1mL当たりの細胞数)の動態を示す。1用量群当たり3人の患者の平均値を示す。点線は、正常上限(ULN)及び正常下限(LLN)を示す。
【図10】図10は、単一用量のBT061を皮下投与することにより処理したボランティアにおけるCD4細胞数(血漿1mL当たりの細胞数)の動態を示す。1用量群当たり3人の患者の平均値を示す。点線は、正常上限(ULN)及び正常下限(LLN)を示す。
【図11A】図11Aは、実施例7に記載される用量群Iの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を0.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図11Aは、用量群Iの1番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図11B】図11Bは、実施例7に記載される用量群Iの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を0.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図11Bは、用量群Iの2番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図11C】図11Cは、実施例7に記載される用量群Iの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を0.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図11Cは、用量群Iの3番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図11D】図11Dは、実施例7に記載される用量群Iの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を0.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図11Dは、用量群Iの4番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図11E】図11Eは、実施例7に記載される用量群Iの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を0.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図11Eは、用量群Iの5番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図11F】図11Fは、実施例7に記載される用量群Iの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を0.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図11Fは、用量群Iの6番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図11G】図11Gは、実施例7に記載される用量群Iの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を0.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図11Gは、用量群Iの7番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図11H】図11Hは、実施例7に記載される用量群Iの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を0.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図11Hは、用量群Iの8番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図12A】図12Aは、実施例7に記載される用量群IIの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を2.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図12Aは、用量群IIの1番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図12B】図12Bは、実施例7に記載される用量群IIの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を2.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図12Bは、用量群IIの2番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図12C】図12Cは、実施例7に記載される用量群IIの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を2.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図12Cは、用量群IIの3番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図12D】図12Dは、実施例7に記載される用量群IIの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を2.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図12Dは、用量群IIの4番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図12E】図12Eは、実施例7に記載される用量群IIの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を2.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図12Eは、用量群IIの5番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図12F】図12Fは、実施例7に記載される用量群IIの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を2.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図12Fは、用量群IIの6番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図12G】図12Gは、実施例7に記載される用量群IIの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を2.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図12Gは、用量群IIの7番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図12H】図12Hは、実施例7に記載される用量群IIの乾癬患者の臨床試験から得られたデータを示し、この試験では患者を2.5mgのBT061或いはプラセボを静脈内注入することにより処理した。図12Hは、用量群IIの8番の患者のPASIスコアのグラフを提供する。
【図13】図13は、実施例7に記載される乾癬患者の臨床試験から得られた写真を提供する。写真は、用量群IIのメンバーであった同一患者のものである。パートAに示す写真は治療前に撮影された。パートBに示す写真は治療の28日後に撮影された。
【図14】図14は、実施例8に記載される関節リウマチ患者の臨床試験結果を示す。図は、1.25mg、6.25mg、12.5mg、及び25mgのBT061を皮下投与した用量群の患者のうち少なくともACR20応答が得られた患者の割合の棒グラフを示す。各群6人の患者に抗体が投与され、一方2人の患者にプラセボが投与された。
【図15】図15は、実施例8に記載される関節リウマチ患者の臨床試験結果を示す。図15Aは、25mgのBT061を投与した用量群の患者における圧痛関節数の棒グラフを示す。図15Bは、同用量群の患者における関節腫脹数の棒グラフを示す。各群6人の患者に抗体が投与され、一方2人の患者にプラセボが投与された。
【図16】図16は、実施例8に記載される関節リウマチ患者の臨床試験結果を提供する。図16Aは、25mg皮下投与群における1人のレスポンダにおける個々のパラメータの変化(%)を示す。図16Bは、25mg皮下投与群における1人の非レスポンダにおける個々のパラメータの変化(%)を示す。図中「PatのGA」及び「PhyのGA」はそれぞれ患者の全般的評価及び医師の全般的評価を指す。用語「PAの疼痛」は患者の疼痛評価を指す。
【図17】図17は、実施例8に記載される関節リウマチ患者の臨床試験結果を提供する。図17Aは、1.25mg皮下投与群の患者における圧痛関節数を示す。図17Bは、6.25mg皮下投与群の患者における圧痛関節数を示す。
【図18】図18は、実施例8に記載される関節リウマチ患者の臨床試験結果を提供する。図18Aは、50mg皮下投与群の患者における圧痛関節数を示す。図18Bは、6.25mg皮下投与群の患者における圧痛関節数を示す。
【図19】図19は、B−F5(即ちBT061)のヒト化形態の設計におけるマウスB−F5VK(配列番号8)、FK−001(配列番号9、10、11、及び12)、L4L(配列番号18)、及びL4M(配列番号2)のポリペプチド配列のアラインメントを示す。
【図20】図20は、B−F5のヒト化形態の設計におけるマウスB−F5VH(配列番号7)、M26(配列番号13、14、15、及び16)、H37L(配列番号1)、及びH37V(配列番号17)のポリペプチド配列のアラインメントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
次に、本発明を更に詳細に説明する。
【0060】
本発明で使用するのに好適である剤は、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤である。前記剤は、ポリペプチド、タンパク質、或いは抗体であってもよい。前記剤が抗体である場合、前記剤はモノクローナル抗体であってもよい。前記抗体は、モノクローナル抗CD4抗体であることが好ましい。抗体は、また好ましくはIgG1抗体であってもよく、非修飾IgG1抗体であってもよい。
【0061】
本発明の好ましい態様では、抗CD3抗体と比較して、前記剤は、投与後の対象の血漿中の炎症促進性サイトカイン濃度を実質的に増加させない。具体的には健常対象で測定された血漿濃度と比較して、前記剤の投与後のIFN−γ、TNF−α、IL−6、及びIL−2の少なくともいずれかの濃度は、実質的に上昇しない(表A1参照)。特に表A1に示されている特定のサイトカインのULNをXとすると、本発明の剤の投与後96時間以内のX増加は20倍未満であってもよい。X増加は10倍未満であることが好ましい。投与開始後10分〜投与完了後96時間の間これらの濃度であることがより好ましい。
【0062】
自己免疫患者では、前記剤の投与前のサイトカイン濃度が健常対象で観察されるサイトカイン濃度(表A1で示されているULN)よりも既に高い可能性がある。これは例えば健常対象の細胞の活性化状態に比べて免疫細胞の活性化状態が変化しているためである。この場合前記剤の投与直前の特定のサイトカイン濃度をXとすると、本発明の剤の投与後96時間以内のX増加は20倍未満であってもよい。X増加は10倍未満であることが好ましい。投与開始後10分〜投与完了後96時間の間これらの濃度であることがより好ましい。
【表1】
【0063】
本発明の更に好ましい態様では、前記剤は、実質的に長期に亘って対象の血漿におけるCD4+リンパ球の細胞数を減少させない。具体的には投与後72時間〜96時間の期間内、対象の血漿におけるCD4+リンパ球の細胞数は250細胞/μLを超えていてもよい(或いは少なくとも250細胞/μLである)。
【0064】
処理された患者の少なくとも80%で上記サイトカイン及びCD4+リンパ球に対する効果が見られることが好ましい。
【0065】
免疫系の負の影響、例えばリンパ球細胞数の減少或いはサイトカイン放出の誘導を防ぐため、サブクラスIgG2、IgG3、或いはIgG4の抗体(特にT細胞相互作用抗体)を利用することが当該技術分野において既知であり、その理由はIgG1サブクラスの抗体がより高いFc受容体相互作用を示すためである。Fc突然変異、脱グリコシル化、糖修飾(glycomodification)、或いは糖鎖工学により抗体(特にT細胞相互作用抗体)を改質してFc受容体相互作用を低減することも当該技術分野において既知である。
【0066】
本明細書に記載される実験において本発明者らは、IgG1サブクラスの抗体の回避及び改質が本発明の剤にとって必須ではないことを見出した。具体的には本願に示すデータは、本発明の剤は実質的に且つ長期に亘ってCD4+細胞を枯渇させないか、或いは抗CD3抗体と比べて実質的なサイトカイン放出を誘導しない。
【0067】
したがって本発明の好ましい態様では、前記剤は非修飾IgG1抗体、即ちFc突然変異を含まず、またFc受容体、その断片、及びその誘導体のいずれかの相互作用を低減するために脱グリコシル化、糖修飾(glycomodification)、或いは糖鎖工学に供されていない抗体である。
【0068】
本発明で使用するのに最も好適である抗体は、ヒト化抗CD4抗体、その断片、或いはその誘導体のいずれかであり、これらはCD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能である。CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な抗体の例はBecker et al.,(European Journal of Immunology(2007),Vol.37:pp.1217−1223)で論じられている。
【0069】
一般に本発明で用いられる抗体は、ヒト定常領域(Fc)を更に含む。この定常領域は、IgM、IgG、IgD、IgA、及びIgEを含む免疫グロブリンの任意のクラス、並びにIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む任意のアイソタイプに由来する定常ドメインから選択することができる。好ましい定常領域は、IgG、特にIgG1の定常ドメインから選択される。
【0070】
本発明はまたV領域を含む抗体の任意の断片を含む。これは具体的にはFab、Fab’、F(ab)’2、Fv、及びscFv断片を含む。
【0071】
本発明の特に好ましい態様では抗体は、マウスモノクローナル抗CD4抗体B−F5に由来するヒト化抗CD4抗体、その断片、及びその誘導体のいずれかである。かかる抗体の例はBT061抗体である。
【0072】
BT061抗体、その断片、及びその誘導体
ヒト化抗体BT061(hB−F5)は、マウスB−F5mAbに由来し、以下のポリペプチド配列により定義されるVドメインを有する:
−H鎖Vドメイン:EEQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFSFSDCRMYWLRQAPGKGLEWIGVISVKSENYGANYAESVRGRFTISRDDSKNTVYLQMNSLKTEDTAVYYCSAS YYRYDVGAWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号1)
−L鎖Vドメイン:DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCRASKSVSTSGYSYIYWYQQKPGQPPKLLIYLASILESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQHSRELPWTFG QGTKVEIK(配列番号2)。
【0073】
この抗体の誘導体もまた本発明で使用するのに好適である。誘導体としては、配列番号1或いは配列番号2で表されるポリペプチド配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド配列により定義されるVドメインを有する誘導体が挙げられる。
【0074】
特に好ましい抗体は、マウスB−F5mAbの相補性決定領域(CDR)を含み、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化するhB−F5の能力を保持している抗体である。VH及びVKドメイン内のCDRの位置を図19及び図20に示す。かかる抗体は、結合特異性及び結合親和性の少なくともいずれかに対して実質的に影響を与えない変異をCDRの配列中に任意的に有していてもよい。
【0075】
一般に本発明で用いられるhB−F5抗体は、ヒト定常領域(Fc)を更に含む。上記のようにこの定常領域は、IgM、IgG、IgD、IgA、及びIgEを含む免疫グロブリンの任意のクラス、並びにIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む任意のアイソタイプに由来する定常ドメインから選択することができる。好ましい定常領域は、IgG、特にIgG1の定常ドメインから選択される。
【0076】
本発明はまたBT061抗体のV領域を含むBT061抗体の任意の断片を含む。これは具体的にはFab、Fab’、F(ab)’2、Fv、及びscFv断片を含む。
【0077】
BT061抗体のH鎖或いはL鎖のVドメインをコードするポリヌクレオチドは、以下の方法で得られる完全H鎖及び完全L鎖を発現させる目的のために、ヒトH鎖或いはヒトL鎖の定常領域をコードするポリヌクレオチドと融合させてもよく、またタンパク質を分泌させるシグナルペプチドをコードする配列を付加してもよい。
【0078】
本発明はまた、選択されたホスト細胞における上記ポリヌクレオチドの転写及び翻訳を制御することを可能にする適切な調節配列に上記ポリヌクレオチドが結合している発現カセットと、本発明のポリヌクレオチド或いは発現カセットを含む組み換えベクターを使用する。
【0079】
組換えDNA及び遺伝子工学の周知の技術によりこれら組換えDNAコンストラクトを得、ホスト細胞に導入することができる。
【0080】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドにより形質転換されているホスト細胞を使用する。本発明の範囲内の有用なホスト細胞は、原核細胞であっても真核細胞であってもよい。好適な真核細胞の中でも例として植物細胞、Saccharomycesなどの酵母細胞、Drosophila或いはSpodopteraなどの昆虫細胞、及びHeLa、CHO、3T3、C127、BHK、COSなどの哺乳類細胞が挙げられる。
【0081】
本発明で用いられる発現ベクターの構築及びホスト細胞の形質転換は、分子生物学の標準的な技術により行うことができる。
【0082】
本発明で用いられるBT061(hB−F5)抗体は、前記抗体の発現に好適な条件下で前記抗体をコードする核酸配列を含む発現ベクターを有するホスト細胞を培養し、前記抗体をホスト細胞培養物から回収することにより得ることができる。
【0083】
ヒト化B−F5の構築
ヒト化B−F5VH領域及びVK領域の設計
マウスB−F5VH領域及びVK領域をコードするDNA配列をそれぞれ図3及び図4に示し、配列識別子を配列番号5及び配列番号6とする。マウスCDRがグラフトされているヒトVH及びVKは、オリジナルのマウスB−F5VH及びVKに最も類似しているヒトVHをデータベースで検索することにより選択した。ヒト抗体(M26;アクセッション番号A36006)のVH領域が、B−F5VHに対して最も高い相同性を有していた。別のヒト抗体(FK−001;NAKATANI et al.,Biotechnology,7(1989),805−810))のVK領域が、B−F5VKに対して最も高い相同性を有していた。
【0084】
4番目の残基がロイシンであるかメチオニンであるかという点が異なる2種のVKを構築し、L4L及びL4Mと命名した。37番目のアミノ酸残基がロイシンであるかバリンであるかという点が異なる2種のVHを構築し、H37L及びH37Vと命名した。B−F5、FK−001、L4L、及びL4Mのポリペプチド配列のアラインメントを図19に示す。B−F5、M26、H37L、及びH37Vのポリペプチド配列のアラインメントを図20に示す。CDRのパッキング(packing)に重要であることが既に報告されているFR残基(Chothia et al.,Nature 342(1989),877;Foote et al.,J.Mol.Biol.,224(1992),487)を四角で囲む。
【0085】
VH及びVKを組み合わせることにより、4種のV領域を設計した。
【0086】
ヒト化B−F5の発現
この後のヒト化B−F5の産生工程は、ヒト化B−B10について米国特許第5,886,152号明細書に開示されているものと同一であった。
【0087】
簡潔に述べると、ヒト化B−F5のH鎖用発現プラスミド(ヒトy−1鎖の定常領域に融合しているVHヒト化領域(TAKAHASHI et al.,Cell,29(1982),671−679))及びL鎖用発現プラスミド(FK−001のK鎖の定常領域に融合しているVKヒト化領域)を別々に構築した。これらのプラスミドでは、ヒト化B−F5の発現はヒトモノクローナルIgM、FK−001遺伝子のプロモータ/エンハンサによりドライブされる。図5及び図6はそれぞれヒト化B−F5のVH領域及びVK領域をコードするプラスミドの断片を示す。V領域をコードする配列に下線を引き、対応するポリペプチド配列をヌクレオチド配列の下に示す。Lipofectinniを用いてマウス骨髄腫Sp2/0(ATCC CRL−1581)に両方のプラスミド及びpSV2neoを同時に導入した。抗ヒトIgG(γ鎖)抗体及び抗ヒトIgK鎖抗体を用いてELISAによりヒトIgGを産生するトランスフェクトーマを選択した。
【0088】
ヒト化B−F5の異なるバージョンの特徴付け
CD4結合活性の評価
4種のhB−F5を産生するトランスフェクトーマの培養上清を回収し濃縮した。プロテインA Sepharoseを用いてアフィニティクロマトグラフィーにより培養上清から様々な抗体を精製し、競合ELISAを用いてビオチン化mB−F5とマイクロタイタープレート上にコーティングされている可溶性CD4との結合に対する前記抗体の阻害活性を測定することにより前記抗体のCD4結合活性を評価した。インキュベート時間は、37℃の場合は2時間及び4℃の場合は一晩である。
【0089】
hB−F5の相対結合活性(mB−F5の結合活性を100%として)を以下の表Aに示す。
【表2】
【0090】
表Aに示した結果から、hB−F5のCD4結合活性を維持するために37番目の残基がロイシンであることが重要であると思われる。その理由は、CD4結合活性が37Leuを37Valに変換することにより数倍低下しているためである。対照的にVKの4番目の残基はCD4結合活性にとってそれ程重要ではないことが見出された。VHの37Leuと37Valとの間の構造的差異は分子モデリングによって明らかに示されてはいないため、CD4結合活性においてH37LがH37Vに対して優位であることは予想外であった。
【0091】
評価のためにH37L/L4L及びH37L/L4Mを選択した。
【0092】
ヒト化B−F5のインビトロにおける生物学的活性の研究
マウスB−F5及びヒト化B−F5(H37L/L4M IgG1及びH37L/L4L IgG1)のインビトロにおける生物学的活性を評価した。IgG2型のヒト化B−F5(H37L/L4M IgG2及びH37L/L4L IgG2)についても試験した。
【0093】
健常ドナー由来の末梢血単核細胞(PBMC)を用いてmB−F5及び4種のhB−F5のインビトロにおける生物学的活性を評価した。PBMCは、マウスB−F5或いはhB−F5の存在下でConA(2.5pg/mL、3日)或いはPPD(10pg/mL、4日)により活性化され、3H−チミジンの取り込みによるPBMCの増殖反応をモニタした。
【0094】
マウスB−F5及びhB−F5は、穏やかにCon−A誘導性増殖を阻害することができたが、活性は、抗体によって、ドナーによって、或いは抗体及びドナーによって異なっていた。またマウスB−F5及びhB−F5は、PPDにより誘導されるAg特異的PBMC増殖を阻害することができた。
【0095】
IgG1型のhB−F5は、mB−F5より有効にPPD誘導性増殖を阻害した(最大70%阻害)。阻害活性がmB−F5と略等しかったIgG2型よりもIgG1型の方が有効であると思われる。IgG1型では、H37L/L4MがH37L/L4Lよりも有効であった。IgG2型のH37L/L4MとH37L/L4Lは略等しい阻害活性を有していた。簡潔に述べるとPPD誘導性PBMC増殖に対するB−F5の阻害活性は以下の通りであった:H37L/L4M IgG1>H37L/L4L IgG1>H37L/L4M IgG2=H37L/L4L IgG2=mB−F5。
【0096】
インビトロにおける生物学的活性及びマウスと同一のアミノ酸数が少ないことを考慮して更なる評価のためにH37L/L4M IgG1を選択した。BT061と命名され、本願の実施例において本発明を説明するために用いられているのはこの抗体である。
【0097】
組成物及び使用
上述の通り本発明で用いられる医薬組成物及び薬剤は、高用量により利益を得ることができる患者の自己免疫疾患を治療可能であることが好ましい。かかる患者としては罹患期間の長い重篤な患者が挙げられるがこれに限定されない。
【0098】
また本発明の1つの態様では、自己免疫疾患に対して有効な薬剤の製造におけるヒト化抗CD4抗体、その断片及びその誘導体のいずれかの使用であって、前記ヒト化抗体がCD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能であり、前記薬剤が10mg/mL〜150mg/mL、好ましくは15mg/mL〜75mg/mL、最も好ましくは20mg/mL〜60mg/mLの濃度の抗体を含む使用を提供する。
【0099】
本発明は更に、自己免疫疾患に対して有効な薬剤の製造におけるヒト化抗CD4抗体、その断片及びその誘導体のいずれかの使用であって、前記ヒト化抗体がCD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能であり、前記薬剤が投与1回当たりの抗体の量10mg〜200mgでの単回用量或いは複数回用量で対象に投与される使用を提供する。
【0100】
また本発明は、薬学的に許容される担体と、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤とを含む自己免疫疾患を治療するための医薬組成物であって、剤の用量が10mg〜100mg、10mg〜80mg、15mg〜80mg、20mg〜75mg、好ましくは20mg〜60mg、最も好ましくは25mg〜60mgで対象に投与される医薬組成物を提供する。
【0101】
本発明の1つの態様では対象は複数回投与を受ける。これら状況では10日間に亘る投与量は、25mg超であるが200mg以下が好ましく、28mg〜100mgがより好ましく、30mg〜100mgが最も好ましい。更に5日間に亘る投与量は、15mg超であるが100mg以下が好ましく、18mg〜100mgがより好ましく、20mg〜100mgが最も好ましい。本発明のこの態様では投与量が皮下投与されることが特に好ましい。
【0102】
用量はまた対象の体重或いは対象の体表面積(BSA)に基づいて算出することもできる。体表面積(BSA)は、既知の方法のいずれかに従って算出することができる。BSA算出法の例は以下の通りである:
Mosteller式:(BSA(m2))=([高さ(cm)×重量(kg)]/3600)1/2
(Mosteller RD:Simplified Calculation of Body Surface Area.N Engl J Med 1987 Oct 22;317(17):1098)
DuBois及びDuBois式:BSA(m2)=0.20247×高さ(m)0.725×重量(kg)0.425
(DuBois D;DuBois EF:A formula to estimate the approximate surface area if height and weight be known.Arch Int Med 1916 17:863−71.)
Haycock式:BSA(m2)=0.024265×高さ(cm)0.3964×重量(kg)0.5378
(Haycock G.B.,Schwartz G.J.,Wisotsky D.H.Geometric method for measuring body surface area:A height weight formula validated in infants,children and adults.The Journal of Pediatrics 1978 93:1:62−66)
Gehan及びGeorge式:BSA(m2)=0.0235×高さ(cm)0.42246×重量(kg)0.51456
(Gehan EA,George SL,Estimation of human body surface area from height and weight.Cancer Chemother Rep 1970 54:225−35)
Boyd式:BSA(m2)=0.0003207×高さ(cm)0.3×重量(グラム)(0.7285−(0.0188×LOG(グラム))
【0103】
本発明によれば剤の用量は、患者の体表面積に対し5mg/m2〜60mg/m2、好ましくは6mg/m2〜50mg/m2、最も好ましくは8mg/m2〜40mg/m2である。
【0104】
更に用量は、対象の体重に基づいて計算することもできる。本発明によれば対象に投与される剤の用量は、0.1mg/kg〜2mg/kg、好ましくは0.15mg/kg〜1.5mg/kg、最も好ましくは0.2mg/kg〜1mg/kgである。
【0105】
本発明のこれら態様では、用量が対象の体表面積或いは体重に基づく場合、10日間に亘る投与量は、好ましくは10mg/m2〜120mg/m2、より好ましくは16mg/m2〜120mg/m2、或いは0.2mg/kg〜4mg/kg、より好ましくは0.4mg/kg〜4mg/kgである。投与量は皮下投与されることが特に好ましい。
【0106】
治療効果に干渉しない限り、投与頻度は特に限定されない。本発明では以下の基準のうちの少なくとも1種で複数回用量を投与することが好ましい:1日間に1回、2日間に1回、1週間に1回、4週間に1回、6週間に1回、12週間に1回、24週間に1回、1ヶ月間に1回、3ヶ月間に1回、6ヶ月間に1回、或いは1年間に1回。したがって投与は、少なくとも1日間、少なくとも1週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、或いは少なくとも1年の間隔で隔てられてもよい(用量が少なくとも1日に1回、1週間に1回、1ヶ月間に1回、6ヶ月間に1回、或いは1年間に1回服用されることを意味する)。更なる他の方法では、1日間〜31日間に1回、或いは1ヶ月間〜12ヶ月間に1回複数回用量が服用される。
【0107】
治療期間は特に限定されず、自己免疫疾患の治療では典型的に、治療は無期限に継続される、或いは患者が管理可能なレベルに症状が低減するまで継続される。一般に用量は、少なくとも1ヶ月間に亘って対象に投与される。
【0108】
本発明はまた上記で定義したように使用するためのキットであって、対象に同時に、連続して、或いは別個に投与するための上記で定義した通りの複数の薬剤用量を備えるキットを提供する。
【0109】
本発明はまた自己免疫疾患の治療方法であって、上記で定義した医薬組成物を対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0110】
自己免疫疾患の治療方法であって、対象に薬剤を投与する工程を含み、前記薬剤がCD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤を含み、前記薬剤が上記量で対象に投与される治療方法も提供される。
【0111】
剤は、マウスモノクローナル抗CD4抗体B−F5に由来するヒト化抗CD4抗体、その断片及びその誘導体のいずれかであることが好ましい。
【0112】
上述の通り本発明で用いられる医薬組成物及び薬剤は、高用量から利益を得られる患者の自己免疫疾患を治療できることが好ましい。かかる患者としては罹患期間が長い重篤な患者が挙げられるがこれに限定されない。
【0113】
自己免疫疾患は、乾癬、関節リウマチ、多発性硬化症、1型糖尿病、炎症性腸疾患、クローン病、橋本甲状腺炎、自己免疫甲状腺炎、自己免疫重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、心筋炎、及びグラフト対ホスト反応或いはホスト対グラフト反応などの移植関連疾患、或いは一般的な器官寛容性の問題から選択されることが好ましい。
【0114】
本発明の特に好ましい態様では、医薬組成物は自己免疫疾患である乾癬を治療するためのものである。具体的にはかかる医薬組成物は、本明細書で特定される投与量を静脈内投与或いは皮下投与する。
【0115】
乾癬は、罹患者の皮膚上に乾癬病変或いは斑を生じさせる疾患である。罹患者の呈している乾癬レベルを評価及び記録するために乾癬面積及び重症度指数(PASI)のスコアが一般的に用いられている。PASIのスコア付けは、紅斑(E)、浸潤(I)、落屑(D)、並びに4箇所の身体領域(頭部(h)、体幹(t)、上肢(u)、及び下肢(l))の病変の体表面積(A)の評価を含む。以下の表Bはスコア付けシステムがどのように機能するかを示す。
【表3】
【0116】
頭部、上肢、体幹、及び下肢は、それぞれ体表面積の約10%、20%、30%、及び40%に相当するため、PASIスコアは以下の式により算出される。
PASI=0.1(Eh+Ih+Dh)Ah+0.2(Eu+Iu+Du)Au+0.3(Et+It+Dt)At+0.4(El+Il+Dl)Al
【0117】
PASIスコアは、0〜72の範囲である。スコア0は、乾癬ではないことを意味し、一方スコア72は、最も重篤な乾癬であることを表す。
【0118】
この態様の好ましい実施形態では本発明の医薬組成物は、患者のPASIスコアを少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%改善することにより乾癬を治療し得る。対象は治療前に少なくとも10のPASIスコアを有することが好ましい。投与後少なくとも56日間、より好ましくは投与後少なくとも75日間これらの効果が見られ得る。具体的には治療された患者の少なくとも80%でこれらの効果が見られ得る。
【0119】
本発明の更なる態様では、医薬組成物は関節リウマチを治療するためのものである。
【0120】
関節リウマチは、関節及び周辺組織の慢性炎症を惹起する自己免疫疾患であり、他の組織及び体器官にも影響を及ぼす場合がある。
【0121】
治療を受けた患者が示す関節リウマチの改善は、米国リウマチ学会(American College of Rheumatology)(ACR)コアセットのパラメータ(Felson et al.,Arthritis&Rheumatism,1995,38(6),727−735)を用いて一般的に評価されている。このシステムは、圧痛関節数及び腫脹関節数の20%改善、且つ残り5種のACRコアセット測定値:患者及び医師による全般的評価、疼痛、身体障害、及びC反応性タンパク質(CRP)などの急性期反応物質のうち3種の20%改善としてACR20値を定義する。
【0122】
具体的には関節リウマチを治療するための医薬組成物は、本明細書で特定される投与量を筋肉内投与或いは皮下投与することが好ましい。
【0123】
関節炎の現在の治療法としては、例えばアスピリン、イブプロフェン、ナプロキセンなどの非ステロイド抗炎症薬(NSAID)に分類されている疼痛及び炎症を制御するための第1選択薬が挙げられる。関節炎の二次治療としては、コルチコステロイド(例えばプレドニゾン及びデキサメタゾン)、遅効性抗リウマチ薬(SAARD)、或いは疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、例えばメトトレキサート、ペニシリンアミン、シクロホスファミド、金塩、アザチオプリン、レフルノミドなどが挙げられる。
【0124】
体内のコルチゾンホルモンの合成バージョンであるコルチコステロイド(例えばプレドニゾン及びデキサメタゾン)を用いて関節リウマチの進行を阻害する。
【0125】
生物学的応答調節物質(BRM)と呼ばれる別の群の薬剤もまた関節リウマチ治療用に開発されており、TNF−αタンパク質の受容体への結合を通して機能する、或いはTNF−αタンパク質への直接結合を通して機能するTNF−αに対する拮抗剤(アダリムマブ、インフリキシマブ、エタネルセプト)が挙げられる。
【0126】
本発明のこの態様の1つの実施形態では、組成物は、関節リウマチを治療するために現在用いられている薬剤と組み合わせて投与される。具体的には組成物は、上述の薬剤のうち1種、好ましくはメトトレキサートと共に投与される。
【0127】
メトトレキサートなどの既知の薬剤及び本発明の医薬組成物は、同時に、連続して、或いは別個に投与することができる。
【0128】
本発明は、以下の特定の実施形態に関して更に記載される。
【実施例】
【0129】
実施例1−T細胞の増殖に関するBT061の免疫調節能の研究
方法
新鮮末梢血を用いて全血培養を実施した。簡潔に述べると19Gの針を用いて3人の健常ボランティアからヘパリン処理したシリンジに血液を採取した。血液提供後60分以内に前記血液を96ウェル培養プレートに播種した。
【0130】
本発明で用いられる抗体(BT061、ロット番号40588、或いはロット番号70A0013B)を培養物に添加し、次いで5種の異なる濃度の白血球(以下の「試験物質」参照)を刺激した。37℃、5% CO2、加湿雰囲気にて90分間細胞を抗体と相互作用させ、次いで下記a〜dの4種の異なる刺激物質を別々の培養物に添加した。
(a)抗CD3抗体(R&D Systems;50ng/mL);
(b)植物性血球凝集素(PHA、Biochrom KG;3pa/mL)及び抗CD28抗体(Becton−Dickinson;1μg/mL);
(c)リポ多糖類(LPS、Sigma Aldrich製サブタイプ055:B15;1μg/mL);
(d)SE−B(Bernhard−Nocht−Institut;25ng/mL)及び抗CD28抗体(Becton−Dickinson;1μg/mL)
【0131】
37℃、5% CO2(加湿雰囲気)にて24時間全ての全血培養物をインキュベートした。次いでサイトカインのエンドポイントを決定するためにPHA/抗CD28抗体刺激培養物を除く培養上清を回収した。PHA/抗CD28抗体刺激培養物は、Th2細胞を十分に刺激するために48時間インキュベートした。
【0132】
結果を図1に記載する。
【0133】
結果
BT061は、健常ボランティア由来の全血培養物において単球/マクロファージの主な活性、Th1活性、及びTh2活性に対して有意な効果を示さなかった。Treg細胞に対する濃度依存性効果が見られた(TGF−β放出の増加として示された)。
【0134】
特に、前記結果から以下のことが確認される:
・患者における最高150mgの高用量適用に相当する最高50μg/mLの濃度において炎症性サイトカインIL−2は調節されない、
・患者における最高150mgの高用量適用に相当する最高50μg/mLの濃度において炎症性サイトカインIFN−γは誘導されない、
・患者における高用量適用に相当する最高50μg/mLの濃度においてTh1/Th2サイトカインは調節されない、
・辺縁増殖(marginal increment)によりIL−6の非常に散発性であるアップレギュレーションのみが生じ、この意味については議論の余地がある、
・TGF−β放出が増加する(Treg細胞)、
・単球/マクロファージの主な調節活性、Th1活性、及びTh2活性に対して有意な効果は見られない。
【0135】
実施例2−抗破傷風類毒素応答及びサイトカインアッセイのために予備刺激された培養ヒトPBMCに対するBT061の影響試験
方法
増殖アッセイ
96ウェル平底マイクロタイタープレート内にて200μL/ウェル(4×105細胞/ウェル)の体積の新たに単離したPBMCを培養した。試験品(抗CD4 AK BT061)は、20μg/mL、4μg/mL、及び0.8μg/mL(予備試験では更に40μg/mLも)の濃度で用いた。破傷風類毒素は、25μg/mL、5μg/mL、及び1μg/mLの濃度で用いた。陰性対照として細胞培養培地を用いた。全ての培養物を3連で用意した。
【0136】
Con−A刺激には、2.5μg/mLの濃度及び200μL/ウェルの体積を用いた。PBMCの密度を1×106/mLに調整し、1ウェル当たり100μLの体積に分布させた。
【0137】
培養期間の終わりに、0.4μCiの3H−チミジン/ウェルを添加することにより16時間の細胞増殖を検出した。培養期間の終わりに、EDTA溶液を用いて表面から細胞を剥離させ、scatron細胞回収器を用いてグラスファイバーフィルタで細胞を回収した。各ウェル内のDNAに取り込まれた放射能の量をシンチレーションカウンタで測定したところ、それは増殖細胞の数と比例しており、また該増殖細胞数は刺激を受けて細胞周期のS期に入った白血球の数の関数であった。読み出し(readout)パラメータはカウント毎分(cpm)、及びcpm化合物/cpmブランクと定義される各濃度についての刺激指数(SI)であった。
【0138】
サイトカインアッセイ
市販のELISAキットを用い、各メーカの取扱説明書に従って培養上清中の全サイトカインを定量した。用いた試薬を以下の表1に記載する。
【表4】
【0139】
ヒトIL−1 ELISAセットA(Bender)試験キットを用いてメーカの取扱説明書に従って培養上清中のインターロイキン(IL)−1濃度を測定した。キットと共に供給される標準物質により予め定められる試験の範囲は、未希釈サンプルでは1.3pg/mL〜130pg/mLと指定された。
【0140】
OptEIA(BD biosciences)試験キットを用いてメーカの取扱説明書に従って培養上清中のIL−4、IL−5、IL−6、及びIL−10濃度、並びにトランスフォーミング増殖因子(TGF)β1、及び腫瘍壊死因子(TNF)αを測定した。キットと共に供給される標準物質により予め定められる試験の範囲は、未希釈サンプルを測定したとき3.8pg/mL〜330pg/mL(IFN−γ)、6.3pg/mL〜616pg/mL(IL−4、IL−5、IL−10、及びTNF)と指定され、2倍希釈したサンプルを用いたとき7.6pg/mL〜660pg/mL(IL−6)と指定された。
【0141】
各独立した微小培養物に由来するELISAにより決定された2種(単球培養物)或いは8種(PBMC培養物)のサイトカインの測定値は平均及び標準偏差の計算に含まれていた。試験の上限(例えばTNFの場合616pg/mL)を超える力価をこの計算用の値に設定した。計算前に各平均値から試験の下限を減じた。
【0142】
結果
BT061(ヒト化B−F5或いは単にhB−F5とも呼ばれる)は、破傷風類毒素特異的T細胞増殖を用量依存的に抑制することができ、T細胞の総数に対する影響は見られなかった。サイトカイン放出の全身性抑制が見られた。
【0143】
以下の表2は、破傷風類毒素特異的T細胞増殖アッセイにおける抗CD4mAb BT061の影響を示し、3連で測定した。
【0144】
3連で測定した3H−Tdrの取り込みの平均及びSD、各濃度における刺激指数(SI、cpm化合物/cpmnilと定義される)、培地対照に対する独立両側t検定における有意性のレベル(n.s.:有意差無し、*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001)を示す。
【表5】
【表6】
【表7】
【0145】
表2〜4のデータは以下のことを示す:
・破傷風類毒素誘導性T細胞増殖の用量依存的抑制(再現反応)が高用量BT061でさえも見られ、これは、BT061が全ての免疫反応を抑制する訳ではないことを示す。用いられた用量は、患者において最高60mgの高用量適用に相当する、
・Th1/Th2バランスに影響を及ぼすことなしに、サイトカイン放出が全身で抑制される(IFN−γ、IL−5、及びTNF−αの用量依存的減少、IL−1、IL−4、IL−6、IL−10には変化無し)、
・TGF−β放出が増加する。
【0146】
実施例3−BT061(抗CD4mAb)誘導性ADCC(抗体依存性細胞傷害性)についてのフローサイトメトリー試験
HuT78標的細胞をBT061(hB−F5)で標識し、エフェクタとしてのPBMC細胞と共にインキュベートした。30分間インキュベーションした後のDNA色素ヨウ化プロピジウムの取り込みにより死細胞を検出することができた。結果を表5に示す。
【表8】
表中のデータは、高濃度においてさえもBT061(hB−F5)によりADCCが誘導されないことを示す。
【0147】
実施例4−アポトーシス
BT061(抗CD4mAb)誘導性アポトーシスについてのフローサイトメトリー試験において、全血由来のPBMCをBT061或いは陽性対照と共にインキュベートした。
【0148】
7日間インキュベートした後、アポトーシス細胞をAnnexin−V−Fluoresceineで染色することによりアポトーシス細胞の検出を実施した。結果を表6に示す。
【表9】
データは、高濃度のBT061でさえもアポトーシスを誘導しないことを示す。
【0149】
実施例5−補体結合
補体因子C1qの結合についてのフローサイトメトリー試験において、PBMCを単離しBT061(抗CD4mAb)と共にインキュベートし、続いて精製組み換えC1qと共にインキュベートした。
【0150】
ATG(Tecelac)を陽性対照として用いた。
【0151】
C1qに対するFITC標識検出抗体を用いて検出を実施した。結果を以下の表7に示す。
【表10】
データは、高濃度でさえも補体結合が見られないことを示す。
【0152】
実施例6−漸増用量のBT061の安全性及び耐容性
18歳以上75歳以下の健常男性及び女性ボランティアにおいて漸増用量の抗体を用いてBT061の安全性及び耐容性をモニタするための研究を行った。
【0153】
各群3人ずつの10投与量群に分けた30人のボランティアにBT061を静脈内投与した。更に各群3人ずつ5投与量群に分けた15人のボランティアにBT061を皮下投与した。BT061の静脈内投与について以下の表8に示す。
【表11】
0.9%の塩化ナトリウム注入液で最高総体積20mLまで各用量を希釈する。用量を単回持続静脈内注入として2時間に亘って投与する。
【0154】
BT061の皮下用量
BT061の皮下投与について以下の表9に示す。
【表12】
各用量は単回ボーラス注入として注入する。
【0155】
注入後3ヶ月間に亘ってボランティアを評価した。
【0156】
皮下適用では、投与前、投与3時間後、6時間後、12時間後、24時間後、36時間後、48時間後、56時間後、72時間後、88時間後、96時間後、120時間後、144時間後、168時間後、及び75日目に血漿サンプルを採取した。
【0157】
静脈内適用では、投与前、投与30分後、1時間後、2時間後、3時間後、6時間後、12時間後、24時間後、36時間後、48時間後、72時間後、96時間後、120時間後、144時間後、及び168時間後に血漿サンプルを採取した。
【0158】
標準的なELISA法を用いて血漿サンプルを分析し、サイトカインレベルを決定した。分析した関連サイトカインにはIFN−γ、TNF−α、IL−6、及びIL−2が含まれていた。
【0159】
標準的なフローサイトメトリー法を用いて血漿サンプルも分析し、CD4+リンパ球数を測定した。
【0160】
結果
最高60mgの静脈内用量及び皮下用量は一般に耐容性に優れていることが見出された。
【0161】
サイトカインレベル
サイトカイン放出誘導は、ATG、OKT3、CAMPATH−1H、及びヒト化抗CD3mAb(TRX4、Visilizumab、及びTeplizumab)などのT細胞相互作用治療抗体の使用に伴って生じる一般的な即時併発症である。主な症状としては、中等度の発熱、頭痛、及び自己限定性胃腸炎が挙げられる。抗体投与後のサイトカイン誘導と相関する副作用には、抗ヒスタミン剤塩酸ジフェンヒドラミン及び抗炎症剤イブプロフェンの少なくともいずれかなどの更なる薬剤の適用を必要とする。
【0162】
OKT3(ムロモナブ−CD3)、マウスCD3特異的治療モノクローナル抗体を使用した場合、死者が出たという報告さえあり、重篤な副作用により主に免疫低下患者に対するこの抗体の臨床的使用は制限されている。
【0163】
自己免疫疾患の治療のために医療機関で現在用いられているヒト化FcR非結合CD3特異的モノクローナル抗体(Teplizumab及びTRX4)は、OKT3などのFcR結合CD3特異的抗体と比較して、最初の投与後のT細胞の活性化及びFc受容体発現細胞の活性化の少なくともいずれかにより誘導される副作用は減少しているが、T細胞の活性化及びFc受容体発現細胞の活性化が依然としてある程度見られ、これによりサイトカイン依存性副作用に一般に関連しているサイトカイン放出が導かれる。
【0164】
現在の研究ではBT061の静脈内適用或いは皮下適用後に健常ボランティアで見られるサイトカイン誘導は、抗CD3抗体に比べて少なく且つ一過性であることが驚くべきことに見出された。サイトカイン誘導は、投与量増加につれて一般に増加する。しかし40mg〜60mgの最高用量でさえも、他のT細胞相互作用モノクローナル抗体で見られるよりもサイトカイン誘導は著しく少ない(図7A及び図7B)。
【0165】
最高用量(40mg〜60mgのBT061)を用いて投与した後96時間以内のいずれかの時点で観察されたサイトカインの中央ピーク濃度を図7及び図8に示す。
【0166】
各サイトカインの中央ピーク濃度は以下のように算出される。最高サイトカイン濃度の中央値は抗体の投与後に観察された。
【0167】
図7A及び図7Bは、抗CD3モノクローナル抗体、Teplizumab及びTRX4の投与後の放出と比較した、BT061の静脈内投与或いは皮下投与後に健常ボランティアで観察されたTNF−α及びIL−6放出を示す。これらのサイトカインの正常値はStraub et al.,(2007,Arthr.&Rheumat.)から得た。図8は、BT061の静脈内投与或いは皮下投与後のIL−2及びIFN−γ血漿濃度を示す。抗体注入4日以内に測定した40mg及び60mg用量群から中央ピーク濃度を算出した。正常上限(ULN)は、39人の健常対象で測定されたサイトカイン濃度に基づいて算出され、ULN=平均値+2×標準偏差である。
【0168】
Teplizumab及びTRX4(それぞれHerold et al.,2002,New Engl.J.Med及びKeymeulen et al.,2005 New Engl.J.Medから得られた結果)に比べて、BT061はサイトカイン放出を僅かに且つ一過的にしか誘導しなかった。TNF−α及びIL−6濃度は僅かに増加した。図7は、BT061(40mg及び60mg)の適用後血漿中で検出されたIL−6及びTNF−αサイトカイン濃度の中央ピーク値が、CD3特異的治療抗体Teplizumab及びTRX4で処理した後に見られる値より低いことを示す。
【0169】
更に抗CD3mAbとは対照的に、BT061はTRX4の適用について報告されているように(Keymeulen et al.2005)IFN−γ及びIL−2レベルを実質的に増加させなかった(図8)。
【0170】
CD4+リンパ球
更に該試験は、採取した血漿サンプル中のCD4陽性リンパ球数の研究も含んでいた。
【0171】
静脈内投与の結果を以下の表9、表10、及び表11に示す。表12は、皮下投与による試験の結果を示す。この結果を図9及び図10にグラフで示す。
【表13】
【表14】
【0172】
具体的には図9は、BT061の単回静脈内投与で処理されたボランティアのCD4細胞数(細胞/mL血漿)を示す。データ点は、各用量群における3人の患者の平均値を示す。点線は、正常上限(ULN)及び正常下限(LLN)を示す。健常ボランティアの細胞数に基づいてULN及びLLN(平均値+(或いは−)標準偏差)を算出したところ、正常下限(LLN)は443CD4細胞/μLであり、正常上限(ULN)は1324CD4細胞/μLであった。
【0173】
図10は、BT061の単回皮下投与で処理されたボランティアのCD4細胞数(細胞/mL血漿)を示す。図9と同様に、データ点は各用量群における3人の患者の平均値を示す。点線は、正常上限(ULN)及び正常下限(LLN)を示す。
【表15】
【表16】
【0174】
当該技術分野において既知である多くのCD4特異的モノクローナル抗体(Strand et al.,2007で概説されている抗体など)でCD4陽性リンパ球枯渇を介した免疫抑制が達成される。これらの抗体の問題点は、処理された個体が免疫低下(immuno−compromised)状態になり、他の感染症に罹患しやすくなることである。
【0175】
対照的に、この研究はBT061がCD4陽性細胞の広範囲に亘る持続性枯渇を誘導しないことを示した。CD4陽性リンパ球の一過性減少が観察されたが、抗体の投与後72時間以内に末梢血における正常値に回復した。
【0176】
BT061の適用後72時間の時点では、静脈内投与群の4人のボランティアにおけるCD4細胞数は、以下のように正常値を下回るCD4数を示した:100μg静脈内投与群のボランティア1名:400CD4細胞/μL;5mg投与群のボランティア1名:419CD4細胞/μL;10mg投与群のボランティア1名:440CD4細胞/μL;及び20mg投与群のボランティア1名:392CD4細胞/μL。
【0177】
しかしこれらの値は正常値をほんの僅か下回っていた。静脈内投与群の残りの26人のボランティアにおけるCD4細胞数は、BT061投与72時間後正常値の範囲内であった。
【0178】
皮下投与群では、72時間後、15人のボランティアのうち1人のみが正常値を下回るCD4細胞数を示した。
【0179】
結論として、CD4特異的mAbの枯渇とは対照的に、高用量BT061でさえもCD4陽性細胞の一過性減少を誘導するのみであり、後にその低下は全身で回復する。一過性減少及び急速な正常値への全身性回復から、CD4陽性細胞の枯渇ではなくCD4陽性細胞の一過的再分布が生じていると結論付けられる。
【0180】
実施例7−中等度〜重篤な慢性乾癬に罹患している患者におけるBT061の臨床試験
中等度〜重篤な慢性乾癬に罹患している患者56人についてhB−F5 BT061の自己免疫疾患を治療する能力を試験した。試験は、hB−F5の安全性及び有効性を評価するための単一用量漸増試験を含む。
【0181】
試験条件は以下の通りである:
56人の患者を各群8人ずつの7種の用量群に分けた。5種の用量群(用量群I〜V)に抗体或いはプラセボを静脈内投与し、2種の用量群(用量群VI〜VII)に抗体或いはプラセボを皮下投与した。各用量群の2人の患者にプラセボを投与し、各用量群の残り6人にはある用量のBT061を投与した。用量群Iでは6人の患者に0.5mgBT061を静脈内投与した。用量群II〜Vでは6人の患者にそれぞれ2.5mg、5mg、10mg、或いは20mgのBT061を投与した。皮下投与の用量群VI及びVIIでは6人の患者にそれぞれ12.5mg或いは25mgのBT061を投与した。
【0182】
静脈内投与では、医学的に認められている手順に従って前腕静脈に抗体/プラセボを注入する。この場合perfusor(Fresenius Pilot C,Fresenius AG,Germany)を通して2時間に亘って単回持続静脈内注入として全体積を投与する。各容量の抗体を0.9%の塩化ナトリウム注入液(B.Braun Melsungen AG,Germany)で最高総体積20mLまで各抗体用量を希釈する。
【0183】
皮下投与では、単回皮下注入として抗体を投与する。同手順をプラセボにも適用する。
【0184】
乾癬面積及び重症度指数(PASI)スコアを用いて各患者が示す乾癬レベルを記録する。上述のようにPASIスコアが高くなるにつれて乾癬レベルも高くなる。試験の登録患者は、中等度〜重篤な慢性乾癬、即ち10以上のPASIスコアを有する。
【0185】
試験前に患者のPASIスコアを評価して0日目の「基準」値を得、試験中5日目、7日目、14日目、21日目、28日目、42日目、56日目、及び75日目にPASIスコア評価を繰り返した。
【0186】
用量群I
用量群Iの6人の患者に0.5mgのBT061を単回静脈内適用し、用量群Iの2人の患者にプラセボを投与した。各患者の体重当たりの用量及び体表面積(BSA)当たりの用量を表13に示す。体表面積は本明細書に記載されたMosteller式に従って算出した。
【0187】
PASIスコアの基準からの改善率と共に用量群Iの患者のPASIスコアを表13に示す。
【0188】
用量群II
用量群IIの6人の患者に2.5mgのBT061を単回静脈内適用し、用量群IIの2人の患者にプラセボを投与した。各患者の体重当たりの用量及び体表面積(BSA)当たりの用量を表14Aに示す。
【0189】
PASIスコアの基準からの改善率と共に用量群IIの患者のPASIスコアを表14Aに示す。
【0190】
用量群III
用量群IIIの6人の患者に5.0mgのBT061を単回静脈内適用し、用量群IIIの2人の患者にプラセボを投与した。各患者の体重当たりの用量及び体表面積(BSA)当たりの用量を表14Bに示す。
【0191】
PASIスコアの基準からの改善率と共に用量群IIIの患者のPASIスコアを表14Bに示す。
【0192】
用量群IV
用量群IVの6人の患者に10.0mgのBT061を単回静脈内適用し、用量群IVの2人の患者にプラセボを投与した。各患者の体重当たりの用量及び体表面積(BSA)当たりの用量を表14Cに示す。
【0193】
PASIスコアの基準からの改善率と共に用量群IVの患者のPASIスコアを表14Cに示す。
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【0194】
更に個々の患者について時間に対するPASIスコアをグラフ形式で図11A〜図11H、及び図12A〜図12Hに示す。図11A〜図11Hに示すグラフは用量群Iの患者のPASIスコアを表し、図12A〜図12Hに示すグラフは用量群IIの患者のPASIスコアを表す。
【0195】
表13及び表14A〜表14Cに示した結果から分かるように、用量群I及び用量群IIの全患者の75%のPASIスコアが明らかに改善されている、即ち単回投与後基準値に対して少なくとも40%改善されている。用量群I及び用量群IIの患者の25%にはプラセボが投与されたことに留意すべきである。
【0196】
実際に両用量群で50%の患者のPASIスコアが少なくとも50%改善され、用量群IIの患者の1人(即ち表14Aの患者3)は56日目でPASIスコアが88%改善された。更に低用量でさえも治療効果が持続し、多くの患者で試験の終わりである投与後75日目でも依然として改善が見られた。
【0197】
用量群IIIの患者もまたPASIスコアの改善が見られ、処理後8人中6人の患者でPASIスコアが20%超改善し、これら6人中2人は30%超改善した。しかしより低用量の抗体を投与した用量群I及び用量群IIの患者で見られた程著しい改善ではなかった。用量群IVの患者でも多少の効果が見られた。具体的には用量群IVの患者1、患者4、患者5、及び患者8(表14Cに示された)のPASIスコアは明らかに改善されたが、この効果は用量群I〜用量群IIIの患者に比べて限定されていた。
【0198】
PASIスコアが少なくとも40%、50%、60%、及び75%改善した患者数を表15に示す。
【表21】
【0199】
図13A及び図13Bは、処理前及び処理後の写真によって乾癬レベルが改善されたことを証明する。図13Aは、投与前の用量群IIの患者の皮膚の乾癬領域を示す。図13Bは、投与28日後の同乾癬領域を示す。図13Bの黒線で囲んだ領域における改善が著しい。
【0200】
これらの結果からBT061が中等度〜重篤な慢性乾癬を有効に治療することが明らかに分かる。
【0201】
この研究の結果は、高用量の本発明の抗体のヒトにおける耐容性が一般に優れていることを示す上記実施例6に記載された結果と併せて、本明細書に記載される用量で自己免疫疾患を有効に治療する本発明の医薬組成物の能力を示す。
【0202】
実施例8−関節リウマチ患者におけるBT061の臨床試験
BT061の関節リウマチを治療する能力について、関節リウマチ患者で試験した。試験は12群に分けられた96人の患者についての複数回投与試験を含む。各群2人の患者にプラセボを投与し、6人の患者にBT061を投与した。患者は6週間に亘って週1回投与を受けた。
【0203】
患者を抗体皮下投与群と抗体静脈内投与群に分けた。皮下投与群には1.25mg、6.25mg、12.5mg、25mg、50mg、75mg、及び100mgを投与する。静脈内投与群には0.5mg、2mg、6.25mg、12.5mg、及び25mgを投与する。
【0204】
1.25mg皮下投与群では、患者に101、102、103、104、105、106、107、及び108という番号を付けた。6.25mg皮下投与群では患者に201〜208の番号を付けた。12.5mg皮下投与群では患者に301〜308の番号を付けた。25mg皮下投与群では患者に401〜408の番号を付けた。50mg皮下投与群では患者に501〜508の番号を付けた。6.25mg皮下投与群では患者に601〜608の番号を付けた。
【0205】
静脈内投与手順及び皮下投与手順は、乾癬試験について実施例7で記載した手順と同様であった。
【0206】
ACRパラメータ、具体的には圧痛関節数、腫脹関節数、後のC反応性タンパク質(CRP)及び赤血球沈降速度(ESR)のレベルを調べることにより関節リウマチのレベルを毎週記録した。試験前にこれらパラメータについて評価して0日目の「基準」値を得、試験期間中及び投与期間終了後8日目、22日目、及び43日目(即ち追跡(FU)8日目、FU22日目、及びFU43日目)にも繰り返し評価した。
【0207】
以下の表に試験から得られたデータを示す。具体的には表16〜表21は、試験期間中の圧痛関節数及び腫脹関節数を示す。
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【0208】
図14は1.25mg、6.25mg、12.5mg、及び25mgのBT061皮下投与群患者のうち試験期間中関連ACRパラメータが少なくとも20%改善された患者の割合、及び7週間目で少なくともACR20の応答があった患者の割合を示す。
【0209】
具体的には25mg皮下投与群患者の50%(即ちプラセボ投与を受けた患者2人を含む8人のうち4人)で、6週間目に関連ACRパラメータが少なくとも20%改善された。この割合は7週間目で8人中5人の患者に増加した、即ち8人中5人の患者でACR20が達成された。この用量群の患者の1人は、5週間目及び6週間目で関連ACRパラメータが50%超改善された(完全なデータは示さない)。
【0210】
他の用量群の患者でも正の結果が得られた。6.25mg皮下投与患者の1人は4週間目で関連ACRパラメータが少なくとも50%改善され、一方別の患者は3週間目で関連ACRパラメータが少なくとも70%改善された(完全なデータは示さない)。
【0211】
図15A及び図15Bは、6週間に亘る25mgBT061皮下投与群患者が呈した圧痛関節数及び腫脹関節数を示す。数人の患者において処理期間中圧痛関節数及び腫脹関節数が減少する。この用量群の1人のレスポンダ患者及び1人の非レスポンダ患者の結果をそれぞれ図16A及び図16Bに示す。レスポンダは、圧痛関節数、腫脹関節数、及び疼痛レベルの有意な改善を示す。
【0212】
圧痛関節数及び腫脹関節数の減少はまた他の用量群患者でも見られる。図17A、図17B、図18A、及び図18Bは、試験期間中及びその後数週間に亘る1.25mg皮下投与群、6.25mg皮下投与群、50mg皮下投与群、及び6.25mg静脈内投与群における圧痛関節数を示す。
【0213】
これらの結果は、関節リウマチ治療における本明細書に記載される用量範囲内の本発明の剤の有効性を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に許容される担体と、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤とを含む自己免疫疾患を治療するための医薬組成物であって、前記剤の用量が10mg〜200mgで対象に投与されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
剤の用量が15mg〜80mgで対象に投与される請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
剤の用量が20mg〜60mgで対象に投与される請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
薬学的に許容される担体と、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤とを含む自己免疫疾患を治療するための医薬組成物であって、剤の用量が対象の体表面積に対し5mg/m2〜60mg/m2で前記対象に投与されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項5】
剤の用量が6mg/m2〜50mg/m2で前記対象に投与される請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
剤の用量が8mg/m2〜40mg/m2で対象に投与される請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
薬学的に許容される担体と、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤とを含む自己免疫疾患を治療するための医薬組成物であって、前記剤の用量が0.1mg/kg〜2mg/kgで対象に投与されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項8】
剤の用量が0.15mg/kg〜1.5mg/kgで対象に投与される請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
剤の用量が0.2mg/kg〜1mg/kgで対象に投与される請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
自己免疫疾患が、乾癬、関節リウマチ、多発性硬化症、1型糖尿病、炎症性腸疾患、クローン病、自己免疫甲状腺炎、自己免疫重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、及びグラフト対ホスト反応、又は一般的な器官寛容性の問題などの移植関連疾患から選択される請求項1から9のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項11】
自己免疫疾患が乾癬である請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
医薬組成物が患者の乾癬面積及び重症度指数(PASI)スコアを少なくとも40%改善することにより乾癬を治療することができる請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
医薬組成物が患者の乾癬面積及び重症度指数(PASI)スコアを少なくとも50%改善することにより乾癬を治療することができる請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
自己免疫疾患が関節リウマチである請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項15】
医薬組成物が非経口投与用である請求項1から14のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項16】
医薬組成物が筋肉内投与用、静脈内投与用、又は皮下投与用である請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
医薬組成物が静脈内投与用であり、0.5mL〜500mLの投与体積で又は0.5mL〜500mLの投与体積に希釈するための形態で提供される請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項18】
投与体積が15mL〜25mLである請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
医薬組成物が皮下投与用であり、0.1mL〜3mLの投与体積で提供される請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項20】
投与体積が0.5mL〜1.5mLである請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
医薬組成物が筋肉内投与用であり、0.1mL〜3mLの投与体積で提供される請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項22】
投与体積が0.5mL〜1.5mLである請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
単回用量として又は複数回用量の一部として用いるための請求項1から22のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項24】
医薬組成物が複数回用量の一部であり、各用量が1日間に1回、2日間に1回、1週間に1回、2週間に1回、4週間に1回、8週間に1回、12週間に1回、24週間に1回、48週間に1回、6ヶ月間に1回、又は1年間に1回投与される請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項25】
自己免疫疾患が乾癬であり、用量が2週間に1回投与される請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
自己免疫疾患が乾癬であり、用量が4週間に1回投与される請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項27】
自己免疫疾患が関節リウマチであり、用量が2週間に1回投与される請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項28】
自己免疫疾患が関節リウマチであり、用量が4週間に1回投与される請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項29】
薬学的に許容される担体と、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤とを含む医薬組成物であって、前記剤が10mg/mL〜150mg/mLの濃度で存在することを特徴とする医薬組成物。
【請求項30】
剤が15mg/mL〜75mg/mLの濃度で存在する請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
剤が20mg/mL〜60mg/mLの濃度で存在する請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
医薬組成物の体積が0.5mL〜500mLである請求項29から31のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項33】
医薬組成物の体積が15mL〜25mLである請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
医薬組成物の体積が0.5mL〜3mLである請求項29から31のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項35】
医薬組成物の体積が1mL〜1.5mLである請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
投与開始後10分〜投与終了後96時間の期間内に、対象の血漿サイトカイン濃度が投与直前の濃度の20倍未満増加し、前記サイトカインがIFN−γ、TNF−α、IL−6、及びIL−2から選択される請求項1から35のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項37】
投与開始後10分〜投与終了後96時間の期間内に、対象の血漿サイトカイン濃度が正常上限(ULN)値の20倍未満増加し、前記サイトカインがIFN−γ、TNF−α、IL−6、及びIL−2から選択され、前記ULN値がそれぞれ3.8pg/mL、2.8pg/mL、4.4pg/mL、及び19.4pg/mLである請求項1から35のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項38】
投与後72時間〜96時間の期間内、対象の血漿CD4+リンパ球細胞数が少なくとも200細胞/μLである請求項1から37のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項39】
血漿CD4+リンパ球細胞数が少なくとも250細胞/μLである請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項40】
剤が皮下投与され、前記剤の用量が最高39.5mgである請求項38及び39のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項41】
剤が皮下投与され、前記剤の用量が最高39.5mgであり、投与後0時間〜72時間の期間内、対象の血漿CD4+リンパ球細胞数が少なくとも300細胞/μLである請求項1から37のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項42】
投与後72時間〜30日の期間内、対象の血漿CD4+リンパ球細胞数が少なくとも300細胞/μLである請求項1から37のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項43】
剤がヒト化モノクローナル抗体、その断片、及びその誘導体のいずれかである請求項1から42のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項44】
剤が抗CD4抗体、その断片、及びその誘導体のいずれかである請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
剤がヒト化抗CD4抗体、その断片、及びその誘導体のいずれかであって、前記ヒト化抗CD4抗体、その断片、及びその誘導体のいずれかが以下のポリペプチド配列により定義されるVドメイン:
−H鎖Vドメイン:
EEQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFSFSDCRMYWLRQAPGKGLEWIGVISVKSENYGANYAESVRGRFTISRDDSKNTVYLQMNSLKTEDTAVYYCSASYYRYDVGAWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号1)
−L鎖Vドメイン:
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCRASKSVSTSGYSYIYWYQQKPGQPPKLLIYLASILESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQHSRELPWTFGQGTKVEIK(配列番号2)
又は配列番号1及び配列番号2で表されるポリペプチド配列と少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含むVドメインを有する請求項1から44のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項46】
剤がマウスモノクローナル抗CD4抗体B−F5由来のヒト化抗CD4抗体である請求項1から45のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項47】
自己免疫疾患の治療方法であって、対象に医薬組成物を投与する工程を含み、前記医薬組成物がCD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤を含み、前記剤が請求項1から9のいずれかに記載の用量で前記対象に投与されることを特徴とする治療方法。
【請求項48】
自己免疫疾患が請求項10、11、及び14のいずれかに記載の疾患である請求項47に記載の治療方法。
【請求項49】
剤がマウスモノクローナル抗CD4抗体B−F5由来のヒト化抗CD4抗体、その断片、及びその誘導体のいずれかである請求項47及び48のいずれかに記載の治療方法。
【請求項50】
剤がヒト化抗CD4抗体、その断片、及びその誘導体のいずれかであって、前記ヒト化抗CD4抗体、その断片、及びその誘導体のいずれかが以下のポリペプチド配列により定義されるVドメイン:
−H鎖Vドメイン:
EEQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFSFSDCRMYWLRQAPGKGLEWIGVISVKSENYGANYAESVRGRFTISRDDSKNTVYLQMNSLKTEDTAVYYCSASYYRYDVGAWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号1)
−L鎖Vドメイン:
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCRASKSVSTSGYSYIYWYQQKPGQPPKLLIYLASILESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQHSRELPWTFGQGTKVEIK(配列番号2)
又は配列番号1及び配列番号2で表されるポリペプチド配列と少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含むVドメインを有する請求項47及び48のいずれかに記載の治療方法。
【請求項51】
自己免疫疾患が乾癬であり、用量が1週間に1回投与される請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項52】
自己免疫疾患が関節リウマチであり、用量が1週間に1回投与される請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項53】
投与後3時間〜6時間の期間内、対象の血漿CD4+リンパ球細胞数が250細胞/μL未満である請求項1から52のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項54】
投与後72時間〜96時間の期間内、対象の血漿CD4+リンパ球細胞数が投与直前の前記対象の血漿CD4+リンパ球細胞数の50%以上である請求項1から53のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項55】
改善が医薬組成物の単回用量投与後56日間見られる請求項12及び13のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項56】
改善が医薬組成物の単回用量投与後75日間見られる請求項12及び13のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項1】
薬学的に許容される担体と、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤とを含む自己免疫疾患を治療するための医薬組成物であって、前記剤の用量が10mg〜200mgで対象に投与されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
剤の用量が15mg〜80mgで対象に投与される請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
剤の用量が20mg〜60mgで対象に投与される請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
薬学的に許容される担体と、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤とを含む自己免疫疾患を治療するための医薬組成物であって、剤の用量が対象の体表面積に対し5mg/m2〜60mg/m2で前記対象に投与されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項5】
剤の用量が6mg/m2〜50mg/m2で前記対象に投与される請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
剤の用量が8mg/m2〜40mg/m2で対象に投与される請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
薬学的に許容される担体と、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤とを含む自己免疫疾患を治療するための医薬組成物であって、前記剤の用量が0.1mg/kg〜2mg/kgで対象に投与されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項8】
剤の用量が0.15mg/kg〜1.5mg/kgで対象に投与される請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
剤の用量が0.2mg/kg〜1mg/kgで対象に投与される請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
自己免疫疾患が、乾癬、関節リウマチ、多発性硬化症、1型糖尿病、炎症性腸疾患、クローン病、自己免疫甲状腺炎、自己免疫重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、及びグラフト対ホスト反応、又は一般的な器官寛容性の問題などの移植関連疾患から選択される請求項1から9のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項11】
自己免疫疾患が乾癬である請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
医薬組成物が患者の乾癬面積及び重症度指数(PASI)スコアを少なくとも40%改善することにより乾癬を治療することができる請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
医薬組成物が患者の乾癬面積及び重症度指数(PASI)スコアを少なくとも50%改善することにより乾癬を治療することができる請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
自己免疫疾患が関節リウマチである請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項15】
医薬組成物が非経口投与用である請求項1から14のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項16】
医薬組成物が筋肉内投与用、静脈内投与用、又は皮下投与用である請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
医薬組成物が静脈内投与用であり、0.5mL〜500mLの投与体積で又は0.5mL〜500mLの投与体積に希釈するための形態で提供される請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項18】
投与体積が15mL〜25mLである請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
医薬組成物が皮下投与用であり、0.1mL〜3mLの投与体積で提供される請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項20】
投与体積が0.5mL〜1.5mLである請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
医薬組成物が筋肉内投与用であり、0.1mL〜3mLの投与体積で提供される請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項22】
投与体積が0.5mL〜1.5mLである請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
単回用量として又は複数回用量の一部として用いるための請求項1から22のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項24】
医薬組成物が複数回用量の一部であり、各用量が1日間に1回、2日間に1回、1週間に1回、2週間に1回、4週間に1回、8週間に1回、12週間に1回、24週間に1回、48週間に1回、6ヶ月間に1回、又は1年間に1回投与される請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項25】
自己免疫疾患が乾癬であり、用量が2週間に1回投与される請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
自己免疫疾患が乾癬であり、用量が4週間に1回投与される請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項27】
自己免疫疾患が関節リウマチであり、用量が2週間に1回投与される請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項28】
自己免疫疾患が関節リウマチであり、用量が4週間に1回投与される請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項29】
薬学的に許容される担体と、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤とを含む医薬組成物であって、前記剤が10mg/mL〜150mg/mLの濃度で存在することを特徴とする医薬組成物。
【請求項30】
剤が15mg/mL〜75mg/mLの濃度で存在する請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
剤が20mg/mL〜60mg/mLの濃度で存在する請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
医薬組成物の体積が0.5mL〜500mLである請求項29から31のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項33】
医薬組成物の体積が15mL〜25mLである請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
医薬組成物の体積が0.5mL〜3mLである請求項29から31のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項35】
医薬組成物の体積が1mL〜1.5mLである請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
投与開始後10分〜投与終了後96時間の期間内に、対象の血漿サイトカイン濃度が投与直前の濃度の20倍未満増加し、前記サイトカインがIFN−γ、TNF−α、IL−6、及びIL−2から選択される請求項1から35のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項37】
投与開始後10分〜投与終了後96時間の期間内に、対象の血漿サイトカイン濃度が正常上限(ULN)値の20倍未満増加し、前記サイトカインがIFN−γ、TNF−α、IL−6、及びIL−2から選択され、前記ULN値がそれぞれ3.8pg/mL、2.8pg/mL、4.4pg/mL、及び19.4pg/mLである請求項1から35のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項38】
投与後72時間〜96時間の期間内、対象の血漿CD4+リンパ球細胞数が少なくとも200細胞/μLである請求項1から37のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項39】
血漿CD4+リンパ球細胞数が少なくとも250細胞/μLである請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項40】
剤が皮下投与され、前記剤の用量が最高39.5mgである請求項38及び39のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項41】
剤が皮下投与され、前記剤の用量が最高39.5mgであり、投与後0時間〜72時間の期間内、対象の血漿CD4+リンパ球細胞数が少なくとも300細胞/μLである請求項1から37のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項42】
投与後72時間〜30日の期間内、対象の血漿CD4+リンパ球細胞数が少なくとも300細胞/μLである請求項1から37のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項43】
剤がヒト化モノクローナル抗体、その断片、及びその誘導体のいずれかである請求項1から42のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項44】
剤が抗CD4抗体、その断片、及びその誘導体のいずれかである請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
剤がヒト化抗CD4抗体、その断片、及びその誘導体のいずれかであって、前記ヒト化抗CD4抗体、その断片、及びその誘導体のいずれかが以下のポリペプチド配列により定義されるVドメイン:
−H鎖Vドメイン:
EEQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFSFSDCRMYWLRQAPGKGLEWIGVISVKSENYGANYAESVRGRFTISRDDSKNTVYLQMNSLKTEDTAVYYCSASYYRYDVGAWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号1)
−L鎖Vドメイン:
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCRASKSVSTSGYSYIYWYQQKPGQPPKLLIYLASILESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQHSRELPWTFGQGTKVEIK(配列番号2)
又は配列番号1及び配列番号2で表されるポリペプチド配列と少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含むVドメインを有する請求項1から44のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項46】
剤がマウスモノクローナル抗CD4抗体B−F5由来のヒト化抗CD4抗体である請求項1から45のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項47】
自己免疫疾患の治療方法であって、対象に医薬組成物を投与する工程を含み、前記医薬組成物がCD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤を含み、前記剤が請求項1から9のいずれかに記載の用量で前記対象に投与されることを特徴とする治療方法。
【請求項48】
自己免疫疾患が請求項10、11、及び14のいずれかに記載の疾患である請求項47に記載の治療方法。
【請求項49】
剤がマウスモノクローナル抗CD4抗体B−F5由来のヒト化抗CD4抗体、その断片、及びその誘導体のいずれかである請求項47及び48のいずれかに記載の治療方法。
【請求項50】
剤がヒト化抗CD4抗体、その断片、及びその誘導体のいずれかであって、前記ヒト化抗CD4抗体、その断片、及びその誘導体のいずれかが以下のポリペプチド配列により定義されるVドメイン:
−H鎖Vドメイン:
EEQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFSFSDCRMYWLRQAPGKGLEWIGVISVKSENYGANYAESVRGRFTISRDDSKNTVYLQMNSLKTEDTAVYYCSASYYRYDVGAWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号1)
−L鎖Vドメイン:
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCRASKSVSTSGYSYIYWYQQKPGQPPKLLIYLASILESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQHSRELPWTFGQGTKVEIK(配列番号2)
又は配列番号1及び配列番号2で表されるポリペプチド配列と少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含むVドメインを有する請求項47及び48のいずれかに記載の治療方法。
【請求項51】
自己免疫疾患が乾癬であり、用量が1週間に1回投与される請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項52】
自己免疫疾患が関節リウマチであり、用量が1週間に1回投与される請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項53】
投与後3時間〜6時間の期間内、対象の血漿CD4+リンパ球細胞数が250細胞/μL未満である請求項1から52のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項54】
投与後72時間〜96時間の期間内、対象の血漿CD4+リンパ球細胞数が投与直前の前記対象の血漿CD4+リンパ球細胞数の50%以上である請求項1から53のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項55】
改善が医薬組成物の単回用量投与後56日間見られる請求項12及び13のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項56】
改善が医薬組成物の単回用量投与後75日間見られる請求項12及び13のいずれかに記載の医薬組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図11F】
【図11G】
【図11H】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図12F】
【図12G】
【図12H】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図13】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図11F】
【図11G】
【図11H】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図12F】
【図12G】
【図12H】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図13】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2011−515345(P2011−515345A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−550183(P2010−550183)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/052811
【国際公開番号】WO2009/124815
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(390035378)バイオテスト・アクチエンゲゼルシヤフト (13)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/052811
【国際公開番号】WO2009/124815
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(390035378)バイオテスト・アクチエンゲゼルシヤフト (13)
【Fターム(参考)】
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