説明

病原体の一次感染の検出

【課題】病原体の感染、特に病原体の一次感染の検出での試験抗原として好適な融合タンパク質、及び病原生物の感染により生じる抗体、特にIgM抗体の検出と鑑別測定(differentially determining)のための方法を提供する。
【解決手段】IgM抗体の検出と鑑別測定の為には、検出対象の抗体が結合しうる複数のエピトープコピーより成る有効エピトープ密度を有する多量体型試験用抗原の多重抗原を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病原体の感染、特に病原体の一次感染の検出での試験用抗原として好適な融合ポリペプチドに関する。さらに、本発明は、病原体の感染により生起されるIgM抗体の検出および鑑別測定を行う方法に関する。さらに、これらの方法を実施するための試験試薬を提供する。
【背景技術】
【0002】
PCR法だけでなく、免疫学的試験もまた、依然として感染血清診断で主要な役割を果たしている。免疫学を用いれば、異なる免疫グロブリンクラスを特異的に測定することにより、疾患の病期を分析することが可能になる。特定のウイルス抗原に対するIgMおよびIgGの力価を測定することにより、異なる感染期、例えば、急性感染期、再発性感染期、慢性/持続性感染期、または感染後疾患期を区別することが可能になる。例えば、ウイルス糖タンパク質に対するIgG分子は、サイトメガロウイルスの感染の後期にのみ生成される(Schoppel et al. JID (1997) 175, 533-544; Eggers et al., J. Med. Virol. (2001) 63, 135-142)。
【0003】
それぞれの他の免疫グロブリンクラスの存在下でIgGおよびIgMの信頼性の高い特異的検出を行う際のきわめて重要な側面は、検出用抗原の有効エピトープ濃度または有効エピトープ密度である。高い有効エピトープ濃度とは、高いエピトープ密度が存在しかつすべてのエピトープが抗体結合に利用可能であることを意味する。また、これとは対照的に、ポリペプチドアグリゲートは、高いエピトープ濃度を有するが、エピトープが部分的にまたは完全に埋没または隠蔽されていて抗体結合に利用可能でないので、有効エピトープ濃度は低い。高いエピトープ濃度は、特異的IgM認識の前提条件であり、一方、低いエピトープ濃度は、IgGの特異的認識の前提条件である。抗原Aに対するIgM分子を検出する典型的なサンドイッチIgM試験では、多量体型抗原Aが固定化捕捉用抗原として使用される。レポーター基を担持する同多量体型抗原Aは、検出用抗原として使用される。IgMアナライトは、捕捉用抗原および検出用抗原に結合し、それにより、レポーター基は、固相(例えば、ストレプトアビジンでコーティングされたビーズ)上に固定される。Aに対するIgG分子の干渉を回避するために、非標識化単量体型抗原Aを、干渉抑制試薬として試験に追加される(WO98/23955、US6,489,129B1)。同様に、特異的IgGサンドイッチ試験(WO98/23961、US6,645,732B1)は、IgGを検出するための単量体型抗原と、IgMによる干渉を回避するための非標識化多量体型抗原とを含みうる。
【0004】
IgM分子およびIgG分子の特異的検出を可能にする原理は、それぞれの分子構造に基づく。五量体型IgMは、抗原結合用の10個の同一のパラトープを有するが、単量体型IgGは、1分子あたりわずか2個の結合部位を有するにすぎない。IgGの検出は、アナライトへの親和性に基づくが、IgMの検出は、結合活性(avidity)に基づく。前者の場合、結合は、エピトープとパラトープ(すなわち、IgGの抗原結合部位)との高親和性相互作用により達成される。後者の場合、いくつかの低親和性相互作用の協同的増強により達成される(結合活性(avidity)とは、複数の一段解離定数が加算されるのではなく乗算されることを意味する。すなわち、約10−5Mのkを有する比較的弱い相互作用は、2つの非依存性結合事象により増大されて約10−10Mのkを有する高親和性相互作用を生じる)。したがって、経験則として、IgGの検出には単量体型抗原が使用され、IgMの検出にはオリゴ体型/多量体型抗原が使用されると言える。
【0005】
抗原のオリゴ体化または多量体化は、ホモ二官能性またはヘテロ二官能性の架橋剤で単量体型抗原を化学架橋することにより達成可能である。一般的には、オリゴ体化または多量体化は、反応条件(タンパク質および架橋剤の濃度、pH、温度、攪拌速度、反応時間)を調整することにより最適化可能であるが、非常に時間および労力がかかる。それにもかかわらず、バッチが異なると異なる架橋度が得られる可能性があるので、後続の分画および/または検量の手順が必要になる。さらに、架橋度が高くなると、通常、溶解性が減少するので、試験性能の問題を生じる可能性がある。したがって、確実かつ再現可能に多量体型抗原を提供する改良された方法を見いだすことが望まれる。
【0006】
米国特許第6,207,420号には、少なくとも90%の予測溶解確率を有する大腸菌タンパク質を含む担体タンパク質を標的の異種ペプチドまたは異種タンパク質に融合して含んでなる融合配列が記載されている。好ましくは、異種ペプチドまたは異種タンパク質は、細菌内で発現させた場合、通常、不溶性である。
【0007】
WO03/000878には、少なくとも1つの標的ポリペプチドと、その上流に、FkpA、SlyD、およびトリガー因子からなる群より選択される少なくとも1つのFKBPシャペロンとを含む融合タンパク質が記載されている。標的ポリペプチドは、哺乳動物の遺伝子産物または哺乳動物病原体の遺伝子産物でありうる。
【発明の開示】
【0008】
本発明の第1の態様は、
(i)少なくとも1つの多量体化ドメイン、および
(ii)病原体由来の複数コピーのエピトープセグメント、
を含む融合ポリペプチドに関する。
【0009】
該融合ポリペプチド分子は、多量体を形成しうる。多量体は、多量体化ドメインを介して非共有結合性相互作用により会合した複数の単量体型サブユニットを含む。多量体は、例えば、好適な条件下で融合ポリペプチド分子をインキュベートすることにより形成可能である。
【0010】
本発明に係る融合ポリペプチドは、標準的方法に従って多量にかつ再現可能な品質で産生されうる遺伝子的融合体である。融合ポリペプチドおよびそれから形成される多量体は、高い安定性および溶解性を有するので、病原体の感染により生起される抗体を検出する方法での優れた試験用抗原である。好ましくは、融合ポリペプチドは、IgM抗体の測定、より好ましくは、IgM抗体の鑑別測定、最も好ましくは、急性感染および/または一次感染で生起される初期IgM抗体の鑑別測定に使用される。融合ポリペプチドは、レポーター基および/または捕捉基を担持しうるので、検出用抗原および/または捕捉用抗原として使用可能である。さらに、融合ポリペプチドは、干渉抑制試薬としても好適である。
【0011】
本発明に係る融合ポリペプチド分子は、好ましくは1つまたは2つの多量体化ドメイン、より好ましくは1つの多量体化ドメインを含む。多量体化ドメインは、好ましくは融合ポリペプチドのN末端および/またはC末端、より好ましくはN末端に位置する。多量体化ドメインは、個々の融合ポリペプチド分子の多量体化を支援するポリペプチド配列であり、その際、非共有結合性相互作用により会合した複数の単量体型サブユニットで構成された多量体が形成される。複合体に含まれる単量体型サブユニットは、個々のアミノ酸残基をペプチド結合により結合してなる遺伝子的融合タンパク質である。多量体に含まれる単量体型サブユニットは、好ましくは同一である。
【0012】
例えば、多量体化ドメインは、二量体化ドメイン(すなわち、2つのサブユニットの非共有結合性会合を支援するドメイン)、三量体化ドメイン(これは、3つのサブユニットの非共有結合性会合を支援する)、四量体化ドメイン、またはさらに高度の多量体化ドメインでありうる。好ましくは、多量体化ドメインは、二量体化ドメイン、三量体化ドメイン、または四量体化ドメインである。
【0013】
多量体化ドメインは、原核生物または真核生物のシャペロンから、好ましくはATP非依存性シャペロンから選択可能である。多量体化ドメインの具体例は、大腸菌由来のタンパク質FkpA、Skp、およびSecB、または他の原核生物由来のそれらのオルソログである。FkpAは、大腸菌由来のATP非依存性ペリプラズム二量体化シャペロンである。Skpは、大腸菌由来のATP非依存性ペリプラズム三量体化シャペロンである。SecBは、大腸菌由来のATP非依存性サイトゾル四量体化シャペロンである。さらなる好適な多量体化ドメインは、真核生物由来または原核生物由来の熱ショックタンパク質、例えば、ATP非依存性真核生物性サイトゾル/核オリゴ体型シャペロンHsp25である。さらなる好適な多量体化ドメインは、FkpAに構造的に関連するATP非依存性二量体化シャペロンMIP(マクロファージ感染性増強剤)である。大腸菌由来のATP依存性サイトゾル七量体化シャペロンGroELまたは大腸菌由来のATP依存性六量体化シャペロンClpBまたはClpXのようなATP依存性シャペロンもまた、好適である。さらに、多量体化ドメインは、多量体形成能を保持する以上のポリペプチドの断片または変異体から選択可能である。
【0014】
本発明に係る融合ポリペプチドは、複数コピーのエピトープセグメントを含む。エピトープセグメントは、抗体により認識されるアミノ酸配列を含む。したがって、ポリペプチドは、それぞれのエピトープを認識する抗体に対する複数の結合性部位を含む。好ましくは、個々のエピトープセグメントのアミノ酸配列は、同一または実質的に同一である。しかしながら、1つ以上のエピトープセグメントが異なることが可能である。ただし、こうした差異は、検出対象の抗体による認識に悪影響を及ぼすものであってはならない。融合ポリペプチドは、少なくとも2コピー、好ましくは2〜10コピー、より好ましくは2〜6コピー、最も好ましくは2、3、4、5、または6コピーのエピトープセグメントを含む。
【0015】
複数の個々の融合ポリペプチドサブユニットよりなる多量体は、好ましくは少なくとも4コピー、より好ましくは少なくとも6コピー、最も好ましくは少なくとも8コピーのエピトープセグメントを含む。多量体は、例えば40コピーまで、好ましくは30コピーまで、最も好ましくは25コピーまでのエピトープセグメントを含みうる。
【0016】
通常、融合ポリペプチドは、単一のエピトープセグメントのみの複数のコピーを含む。この場合、融合ポリペプチドは、単一の抗体特異性を有する。しかしながら、いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドが複数コピーの2種以上の異なるエピトープセグメント、好ましくは2種の異なるエピトープセグメントを含むことも考えられる。この場合、融合ポリペプチドは、いくつかのタイプの抗体特異性を検出するのに好適である。
【0017】
エピトープセグメントの長さは、通常は少なくとも5アミノ酸、好ましくは少なくとも6アミノ酸、より好ましくは少なくとも8アミノ酸である。エピトープセグメントの最大長さは、通常は100〜120アミノ酸、好ましくは80アミノ酸、より好ましくは70アミノ酸である。最も好ましくは、エピトープセグメントは、15〜50アミノ酸の長さを有する。
【0018】
融合ポリペプチド中の個々のエピトープセグメントは、スペーサー配列により分離されていてもよい。スペーサー配列は、好ましくは、エピトープセグメントの由来する病原生物とは異種の配列である。実用目的では、スペーサー配列は、抗体を測定するための試験用抗原としての融合ポリペプチドの使用を仮に妨害したとしてもごくわずかにすぎない配列から選択される。このことは、スペーサー配列が試験対象の抗体に対して非免疫反応性であることを意味する。好ましくは、スペーサー配列は、グリシン残基および/またはセリン残基を含む。特に好ましいのは、ポリグリシンスペーサー配列である。スペーサー配列の長さは、好ましくは1〜10アミノ酸、より好ましくは2〜5アミノ酸、最も好ましくは3または4アミノ酸である。特に好ましいのは、(Gly)スペーサー配列である。
【0019】
さらに、スペーサー配列は、多量体化ドメインとエピトープセグメントとの間に存在していてもよい。このスペーサー配列は、例えば1〜100アミノ酸の長さを有しうる。好ましくは、このスペーサー配列は、多量体化ドメインおよびエピトープセグメントとは異種である。好ましくは、スペーサー配列は、以上に記載したとおりである。
【0020】
融合ポリペプチドのエピトープセグメントは、病原体の感染した生物による免疫反応の過程で産生される抗体に結合しうる病原体由来の抗原配列である。エピトープ配列は、好ましくは、特定の感染段階で生起される抗体により認識されるように選択され、例としては、初期感染状態で抗体により優先的に認識される「初期」エピトープまたは後続の感染状態で優先的に認識される「後期」エピトープが挙げられる。好ましい実施形態では、エピトープセグメントは、該病原体の感染の初期および/または急性期に生起される抗体により特異的に認識されるエピトープを含む。特に好ましい実施形態では、エピトープセグメントは、該病原体の一次感染の初期および/または急性期に生起される抗体により特異的に認識されるエピトープを含む。他のさらなる実施形態では、エピトープセグメントは、該病原体の感染の後期にまたは過去の感染で生起される抗体により特異的に認識されるエピトープを含む。さらに他の実施形態では、エピトープセグメントは、該病原体の持続感染または再発感染で生起される抗体により特異的に認識されるエピトープを含む。
【0021】
エピトープセグメントは、検出可能な免疫反応(すなわち、抗体、特にIgM抗体の産生)を感染の結果として引き起こしうる任意のウイルス性、細菌性、または原生動物性の病原体に由来しうる。例えば、病原体は、
(i)ヘルペスウイルス、例えば、ヒト単純ヘルペスウイルス1型および2型(HHV1およびHHV2)、水痘帯状疱疹ウイルス(HHV3)、エプスタイン・バーウイルス(HHV4/EBV)、またはヒトサイトメガロウイルス(HHV5)、さらにはヒトヘルペスウイルス6型、7型、および8型;
(ii)風疹ウイルス;
(iii)肝炎ウイルス、例えば、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、およびC型肝炎ウイルス(HCV);
(iv)パラミクソウイルス、例えば、麻疹ウイルスおよび流行性耳下腺炎ウイルス;
(v)トキソプラズマ属生物;ならびに
(vi)ボレリア属生物;
からなる群より選択される。
【0022】
これらの病原体に由来する好適なエピトープの例については、以下に詳細に記載されるような多数の文献に記載されている。これらの文献およびそこに引用されている参考文献は、参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【0023】
初期感染の指標となるIgM分子の特異的検出は、ヒトでの多くのウイルス感染、細菌感染、および原生動物感染に関連して臨床上重要である。ヘルペスウイルス科は、例えば、単純ヘルペスウイルス1型および2型(HHV1、HHV2)、水痘帯状疱疹ウイルス(HHV3)、エプスタイン・バーウイルス(HHV4)、ヒトサイトメガロウイルス(HHV5)、ならびにヒトヘルペスウイルス6型、7型、および8型を包含する。ヒトサイトメガロウイルス(HHV5)は、妊娠の日常的診断できわめて重要な役割を果たし、このウイルスに対する体液性免疫も細胞性免疫も有していない産婦が妊娠第一期に一次感染を起こした場合、胎児に重篤な傷害を与える可能性がある。
【0024】
エピトープマッピングを利用して、さまざまなヘルペス抗原で複数のきわめて重要な免疫学的決定基が同定されている。例えば、HCMV抗原pp150、p52、gB、およびpp28中の個々のエピトープの抗体反応性が、Greijer et al., J. Clin. Microbiol. (1999) 37(1), 179-188に概説されている。さらなるエピトープは、Schoppel et al., J. Infect. Dis. (1997) 175 (3), 533-544に記載されている。単純ヘルペスウイルスに関して、免疫優性エピトープは、HSV−2由来の成熟糖タンパク質Gの配列552〜578(Marsden et al., J. Med. Virol. (1998) 56, 79-84; Liljeqvist et al., J. Gen. Virol. (1998) 79, 1215-1224)およびHSV−1由来の糖タンパク質G1の配列112〜127(Tunback et al., J. Gen. Virol. (2000) 81, 1033-1040)にそれぞれマッピングされた。これらのエピトープは、本発明に係る融合ポリペプチドに組込み可能である。
【0025】
妊娠スクリーニングにおいてパラメータとして主要な役割を果たすトキソプラズマ(Toxoplasma gondii)および風疹ウイルスは、ヒトサイトメガロウイルスならびに単純ヘルペスウイルス1型および2型と共にTORCHファミリーを構成する。妊婦(体液性免疫および細胞性免疫の両方を欠如する)が妊娠第一期にこれらの病原体に一次感染すると、胎児の重篤な傷害を引き起こす可能性がある。このため、一次感染と再発感染とを区別する信頼性の高い鑑別診断が必要とされている。以上で述べたように、いくつかのHCMV抗原中の免疫優性決定基は、文献から周知であり、例としては、pp150中の配列595〜636および1011〜1048、p52中の配列266〜293および295〜312、糖タンパク質B中の配列792〜809および60〜81、ならびにpp28中の配列15〜45および130〜160が挙げられる(Greijer et al., 上掲)。同様に、主要エピトープは、風疹ウイルス由来の免疫優性エンベロープタンパク質E1上で同定された。例えば、Terry et al. (Terry et al., Arch. Virol. (1988) 98, 189-197)に報告されているように、アミノ酸243〜286の領域は、3つの中和性エピトープを含有する。他の中和性E1エピトープは、アミノ酸213〜239の領域で特徴付けられた(Mitchell et al., J. Clin. Microbiol. (1992) 30 (7), 1841-1847)。中和能を有する少なくとも1つの免疫優性エピトープは、第2の風疹エンベロープタンパク質E2上で同定された(Green & Dorsett, J. Virol (1986) 57 (3), 893-898)。免疫優性T細胞エピトープおよびいくつかの線状B細胞エピトープは、E2領域31〜105に位置特定された(McCarthy et al., J. Virol. (1993) 67 (2), 673-681; Wolinsky et al., J. Virol. (1991) 65, 3986-3994)。これらのエピトープは、本発明に係る融合ポリペプチドに組込み可能である。
【0026】
トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)由来のいくつかのタンパク質、すなわち、高密度顆粒タンパク質GRA1(p24)、GRA2(p28)、GRA4(p41)、GRA6(p32)、GRA7(p29)、およびGRA8(p35)、表面抗原SAG1(p30)およびSAG2(p22)、ロプトリー抗原ROP1(p66)およびROP2(p54)、マトリックスタンパク質MAG1(p65)、ならびにミクロネームタンパク質MIC3およびMIC5は、免疫優性抗原として同定された(Pfrepper et al., Clin Diagn. Lab. Immunol. (2005) 12 (8), 977-982)。抗トキソプラズマIgM抗体を検出するために、GRA7とGRA8とROP1との組合せがすでに提案されている(Aubert et al., J. Clin.Microbiol. (2000) 38: 1144-1150)。これらのエピトープは、本発明に係る融合ポリペプチドに組込み可能である。
【0027】
血清診断の他の重要な分野は、HAV、HBV、HCVなどの肝炎ウイルスを対象とする。免疫優性抗原およびそれぞれの免疫優性エピトープは、これらの病原体のいずれについても周知である。例えば、HBVヌクレオキャプシドタンパク質は、慢性B型肝炎での宿主免疫応答の主要な標的であり、いくつかの免疫優性エピトープが特徴付けられている。B型肝炎表面抗原(HBsAg)上の重要なB細胞エピトープは、アミノ酸74〜89、130〜138(Salfeld et al., J. Virol. (1989) 63, 798-808)および107−118(Colucci et al., J. Immunol. (1988) 141, 4376-4380)に位置特定されている。これらのエピトープは、本発明に係る融合ポリペプチドに組込み可能である。
【0028】
免疫優性エピトープは、複数のC型肝炎抗原について特徴付けられている(Carlos et al., Clin. Immunol. (2004) 111, 22-27に概説されている)。例えば、E2 HVR1遺伝子型1a(386〜406)、E2 HVR2遺伝子型1a(472〜485)、E2 HVR1遺伝子型1b(386〜406)、およびE2 HVR2遺伝子型1b(472〜485)の超可変領域のエピトープに加えて、コア(7〜18)、E2(484〜499)、NS3(1248〜1265)、およびNS4(1767〜1786)の免疫優性領域のエピトープもまた、明らかにされている。これらおよび他のHCVエピトープは、本発明に係る融合ポリペプチド中に組込み可能であり、本発明に係る鑑別IgMイムノアッセイを開発するのに有用であることが明らかになるであろう。
【0029】
他の重要なヒト病原体は、麻疹ウイルスおよび流行性耳下腺炎ウイルス(いずれもパラミクソウイルス科に属する)であり、それぞれ、6つの構造タンパク質よりなる。麻疹ウイルスのヌクレオキャプシドタンパク質Nは、体液性免疫応答の主要な標的であり、Nに対するB細胞応答は、麻疹感染を防御するうえできわめて重要である。最近、免疫優性エピトープは、N抗原のC末端内のアミノ酸419〜525にマッピングされた。特に、線状エピトープは、440〜448の配列内に位置特定可能であった(Zvirbliene et al., Arch. Virol. (2007) 152, 25-39)。同様に、流行性耳下腺炎ウイルス由来のヌクレオキャプシド関連タンパク質NPは、主要な抗原決定基を構成し、NPの組換え変異体は、高い抗原性を呈し、流行性耳下腺炎血清診断でのIgMの特異的検出に好適である(Samuel et al., J. Med. Virol. (2002) 66, 123-130)。
【0030】
ボレリア(B.ブルグドルフェリ(B. burgdorferi)、B.ガリニー(B. garinii)、B.アフゼリー(B. afzelii))の免疫診断は、このスピロヘータが容赦なく蔓延することから関心が高まっている。顕著な気候変動を受けて暖冬になりつつあるので、ボレリアの影響は、近い将来、さらに増大すると推測される。ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)VlsE抗原の免疫優性保存領域が報告されており、これは、高感度かつ特異的な血清診断に好適である(Liang et al., J. Clin. Microbiol. (1999) 37 (12), 3990-3996)。いわゆるIR6領域またはC6領域(Liang & Philipp, Infect. Immun. (1999) 67, 6702-6706; Liang et al., J. Immunol. (1999) 163(10) 5566-5573)は、不変26アミノ酸部分を含み、これらは、本発明に係る融合ポリペプチド中に組込み可能である。
【0031】
融合ポリペプチドは、好ましくは、サンプル中の抗体、特にIgM抗体を検出する方法での試験試薬として使用される。この目的では、融合タンパク質は、レポーター基および/またはカップリング基を担持しうる。好適なレポーター基の例は、光学的手段により検出可能な基(例えば蛍光基)、発光基(例えば化学発光基)、または微粒子基(例えば金属(例えば金)粒子もしくはラテックス粒子)である。もちろん、酵素基、放射性基、ハプテン基などのようなさらなるレポーター基もまた、好適である。特に好ましいのは、電気化学発光レポーター基、特定的には、ルテニウム(ビピリジン)基やルテニウム(フェナントロリン)基のようなルテニウム基である。同様に特に好ましいのは、抗ハプテン抗体(例えば抗ジゴキシゲニン抗体)を用いて検出可能なハプテンレポーター基(例えばジゴキシゲニン基)である。
【0032】
さらなる実施形態では、融合ポリペプチドは、少なくとも1つのカップリング基を担持しうる。カップリング基とは、融合ポリペプチドをさらなる化合物または物質(例えば、固相または上記で定義したようなレポーター基)にカップリングさせる基のことである。カップリング基は、共有結合カップリング基または非共有結合カップリング基でありうる。カップリング基は、好ましくは、特異的結合ペアの第1のパートナーであり、結合ペアの第2のパートナーと特異的に相互作用する。好ましい結合ペアは、ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、ビオチン/抗ビオチン抗体、ハプテン/抗ハプテン抗体、および炭水化物/レクチンである。好ましくは、カップリング基は、ビオチン基(ビオチン誘導体、すなわち、ビオチンに構造的に関連しかつストレプトアビジンおよび/またはアビジンへの結合能を保持する化合物を包含する)である。
【0033】
融合ポリペプチドは、従来の手段に従ってレポーター基および/またはカップリング基に結合可能である。例えば、レポーター基および/またはカップリング基を含むコンジュゲーション試薬を調製しうる。この試薬はさらに、ポリペプチド上に存在する基(例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、および/またはチオ基)と反応可能な基を含みうる。カップリング基の具体例は、活性エステル基、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド基またはN−ヒドロキシマレイミド基である。
【0034】
本発明はさらに、上記に記載したような融合ポリペプチドをコードする核酸分子に関する。核酸分子は、好ましくはDNA分子である。核酸分子の安定性を増大させるために、個々のエピトープセグメントをコードする部分(好ましくはアミノ酸レベルで同一である)は、遺伝コードの縮重の範囲内で異なるヌクレオチド配列を有することが好ましく、その場合、同一のアミノ酸をコードする異なるヌクレオチドトリプレットコドンが使用される。より好ましくは、個々の同一のエピトープセグメントをコードする各部分は、他の部分とは異なるヌクレオチド配列を有する。
【0035】
さらに、本発明は、発現制御配列に機能的に連結された、上記に記載されるような少なくとも1つの核酸分子を含む発現ベクターに関する。発現ベクターは、それぞれの宿主細胞内での維持および増殖のための遺伝子エレメント(例えば複製起点)ならびに/または選択マーカー遺伝子をさらに含む原核生物性または真核生物性のベクターでありうる。発現制御配列は、構成的または誘導可能な原核生物性または真核生物性の発現制御配列でありうる。発現制御配列は、所望の宿主細胞内で効率的な発現が行えるように選択される。好適な発現ベクターおよび発現制御配列の例は、当業者に公知であり、Sambrook et al., Molecular Cloning - A Laboratory Manual (1989), Cold Spring Harbour Pressのような標準的教科書に記載されているかまたは市販品として入手可能である。
【0036】
さらに、本発明は、上記に記載されるような核酸分子または発現ベクターでトランスフェクトまたは形質転換された宿主細胞に関する。宿主細胞は、原核細胞、例えば、大腸菌のようなグラム陰性細菌細胞、または真核細胞、例えば、酵母細胞、昆虫細胞、もしくは哺乳動物細胞でありうる。宿主細胞は、上記に記載されるような融合ポリペプチドの組換え調製に使用可能である。好ましくは、組換え産生は、
(i)上記に記載されるような宿主細胞を提供するステップ、
(ii)融合ポリペプチドが発現される条件下で該宿主細胞を培養するステップ、および
(iii)該融合ポリペプチドを単離するステップ、
を含む。
【0037】
以上に述べたように、本発明に係る融合ポリペプチドは、好ましくは、サンプル中の抗体を検出する方法での検出試薬として使用される。抗体は、好ましくはIgM抗体である。より好ましくは、検出は、IgM抗体の鑑別測定を含む。特に好ましい実施形態では、抗体は、病原体の感染、特に一次感染の初期または急性期に生起されるIgM抗体である。
【0038】
さらなる実施形態では、融合ポリペプチドは、サンプル中の抗体を検出する方法での干渉抑制試薬として使用可能である。この実施形態では、抗体は、好ましくはIgG抗体である。
【0039】
本発明はまた、サンプル中の抗体を検出するための試験試薬キットに関する。ただし、このキットは、少なくとも1種の融合ポリペプチドとさらなる試験用成分とを含む。試験試薬は、単一のタイプのエピトープを含む単一の融合ポリペプチド、または2種以上の異なるタイプのエピトープを含む単一の融合ポリペプチド、または単一のタイプのエピトープもしくは2種以上の異なるタイプのエピトープを含む2種以上の融合ポリペプチドを含みうる。本発明に係る融合ポリペプチドは、検出試薬または干渉抑制試薬でありうる。融合ポリペプチドが検出試薬である場合、それは、好ましくは、上記に記載されるようなレポーター基および/またはカップリング基を含む。融合ポリペプチドが干渉抑制試薬である場合、それは、好ましくは、いかなるレポーター基をも含まない。干渉抑制試薬は、その有効エピトープ濃度または有効エピトープ密度が検出試薬の有効エピトープ濃度と異なることを特徴とする。好ましくは、干渉抑制試薬のエピトープ濃度またはエピトープ密度は、検出試薬のものよりも低い。
【0040】
本発明はまた、サンプル中の病原生物に対する抗体を検出する方法に関する。この方法は、
(a)上記に記載されるような少なくとも1種の融合ポリペプチドとさらなる試験用成分とを含む試験試薬と共に該サンプルをインキュベートするステップ、ならびに
(b)サンプル成分と試験試薬との反応を評価することにより該サンプル中の該抗体の存在および/または濃度を測定するステップ、
を含む。
【0041】
試験試薬は、好ましくは、検出試薬と少なくとも1種の干渉抑制試薬とを含み、ステップ(b)は、所望のサンプル成分(すなわち、検出対象のタイプの抗体)と検出試薬との反応を測定することを含む。ただし、望ましくないサンプル成分(例えば、対象でない感染期に特有なIgG抗体および/またはIgM抗体のような異なるクラスの抗体)は、少なくとも1種の干渉抑制試薬により捕捉される。好ましい実施形態では、検出対象の抗体は、IgM抗体、より好ましくは、感染、特に一次感染の初期および/または急性期に生起されるIgM抗体である。この場合、試験試薬は、好ましくは、IgG抗体を捕捉するための干渉抑制試薬ならびに/または感染の後期におよび/もしくは再発感染で生起されるIgM抗体を捕捉するための干渉抑制試薬をさらに含む。ただし、干渉抑制試薬は、レポーター基を担持しない。干渉抑制試薬は、その有効エピトープ濃度または有効エピトープ密度が検出試薬の有効エピトープ濃度または有効エピトープ密度と異なることを特徴とする。感染の初期および/または急性期に生起されるIgM抗体を鑑別検出するために検出試薬を提供する場合、干渉抑制試薬の有効エピトープ濃度または有効エピトープ密度は、より低い。例えば、干渉抑制試薬のエピトープ濃度またはエピトープ密度は、検出試薬のエピトープ密度の50パーセントを超えないことが望ましい。
【0042】
好ましくは、サンプルは、検出試薬に接触させる前に干渉抑制試薬と共にプレインキュベートされる。
【0043】
IgG干渉抑制試薬の例は、単量体型エピトープ含有フラグメントを含む抗原である。好ましい実施形態では、IgG干渉抑制試薬は、大腸菌由来のSlyDのような単量体型シャペロンドメインと、病原体由来の単一コピーのエピトープ含有フラグメントとを含む融合ポリペプチドである。IgG干渉抑制試薬中に存在するエピトープは、検出試薬中に存在するものと同一でありうる。
【0044】
後期IgM抗体を捕捉ひいてはクエンチするための干渉抑制試薬の例は、複数のエピトープを含む多量体型抗原である。しかしながら、この実施形態では、干渉抑制試薬は、検出試薬よりも少ない数のエピトープを含む。好ましくは、干渉抑制試薬は、少なくとも2つのエピトープかつそれぞれの検出試薬のエピトープ数の半分までのエピトープを含む。驚くべきことに、そのような多量体型干渉抑制試薬は、所望の初期IgM抗体の検出に顕著な悪影響を及ぼすことなく後期IgM抗体(これは、検出対象の初期抗体よりも高いエピトープ親和性を有することが見いだされた)を捕捉ひいてはクエンチしうることが判明した。したがって、例えば、IgM干渉抑制試薬は、2〜6コピー、例えば、2、3、4、または6コピーのエピトープを含みうる。一方、初期IgM検出試薬は、少なくとも8コピー、例えば、少なくとも12または16コピーのエピトープ含有フラグメントを含みうる。干渉抑制試薬は、例えば、SlyDのような単量体型シャペロンドメインと複数のエピトープとを含む融合ポリペプチド、または多量体化ドメインと単一のエピトープもしくは2コピーのエピトープとを含む融合ポリペプチドでありうる。IgM干渉抑制試薬中に存在するエピトープは、好ましくは、検出試薬中に存在するものと同一でありうる。
【0045】
本発明に係る方法は、好ましくは、二重抗原サンドイッチ試験として実施される。ただし、試験試薬は、上記に記載されるような2つの融合ポリペプチドを含み、第1の融合ポリペプチドは、レポーター基を担持するか、またはレポーター基に結合しうるカップリング基を担持する。第2の融合ポリペプチドは、固相に結合されるか、または固相に固定するためのカップリング基を担持する。この実施形態では、抗体アナライトは、第1および第2の融合ポリペプチドと複合体を形成させて該固相上の該複合体を検出することにより測定される。
【0046】
さらなる好ましい実施形態では、本発明に係る方法は、間接試験として実施される。ただし、試験試薬は、固相に固定するためのカップリング基を担持する1種の融合ポリペプチドと、測定対象の抗体クラス(例えば抗ヒトIgM抗体)を認識するレセプターと、を含み、レセプターは、レポーター基を担持し、抗体は、融合ポリペプチドおよびレセプターと共に固相上に複合体を形成することにより測定される。他の選択肢として、間接試験は、固定されたかまたは固定可能なレセプターと、レポーター基を含む融合ポリペプチドとの使用を含みうる。
【0047】
以上で説明したように、本発明は、IgM抗体の鑑別診断を可能にする。したがって、さらなる実施形態は、感染の後期におよび/または再発感染で生起されるIgM抗体の特異的測定に関する。この実施形態では、検出試薬は、上記に記載されるような低いエピトープ密度を有する少なくとも1種の多量体型抗原、例えば、好ましくは、「初期」IgM抗体に対する試験での干渉抑制試薬として好適でありうる2〜6コピー、例えば、2、3、4、または6コピーのエピトープを含む融合ポリペプチド(ただし、レポーター基および/またはカップリング基を担持する)を含む。さらに、試験は、好ましくは、上記に記載されるようなIgG抗体を捕捉するための干渉抑制試薬ならびに/または感染の初期、特に一次感染および/もしくは急性感染の初期に生起されるIgM抗体を捕捉するための干渉抑制試薬を含む。好ましくは、「初期」IgM抗体に対する干渉抑制試薬は、「初期」IgM抗体を測定するための試験試薬(ただし、レポーター基を有していない)に対応する。他の選択肢として、鑑別IgM測定は、鑑別分析、すなわち、単一のタイプのIgM抗体(例えば「初期」抗体)のみを検出するための試験試薬の存在下での第1の試験およびすべてのIgM抗体を検出するための試験試薬を用いる第2の試験として実施可能である。
【0048】
他のさらなる実施形態では、検出対象の抗体は、IgG抗体である。この場合、検出試薬は、単量体型抗原、例えば、上記に記載されるような単量体型融合タンパク質である。さらに、試験試薬は、多量体型IgM抗体を捕捉するための干渉抑制試薬を含む。この干渉抑制試薬は、上記に記載されるような本発明に係る融合ポリペプチドの複合体で構成される抗原であり、各融合ポリペプチドは、多量体化ドメインと複数コピーのエピトープとを含む。干渉抑制試薬は、好ましくは、レポーター基を含有していない。
【0049】
本発明のさらなる態様は、サンプル中のIgM抗体を鑑別検出する方法に関する。ただし、サンプルは、干渉IgM抗体および/または干渉IgG抗体から選択される干渉抗体を含みうる。この方法によれば、多重抗原(すなわち、検出対象の抗体が結合しうる複数のエピトープコピーを含む抗原)を含む試験試薬が使用される。好ましくは、試験用抗原は、レポーター基を含む。
【0050】
本発明に係る方法は、検出対象のタイプのIgM抗体に適合化された所定の有効エピトープ密度および/または有効エピトープ濃度を有する多量体型試験用抗原の使用に基づく。試験用抗原は、好ましくは、試験用抗原への望ましくないタイプのIgM抗体の結合を排除するように適合化された干渉抑制試薬と組み合わされる。
【0051】
試験用抗原の有効エピトープ密度または有効エピトープ濃度は、検出対象のタイプのIgM抗体、例えば、感染(好ましくは一次感染)の初期もしくは急性期に生起されるIgM抗体、あるいは他の選択肢としては感染の後期に生起されるIgM抗体、過去の感染で生起されるIgM抗体、および/または持続感染もしくは再発感染で生起されるIgM抗体に適合化される。好ましくは、鑑別IgM抗体検出は、干渉IgM抗体に特異的に結合する抗原および/または干渉IgG抗体に特異的に結合する抗原を含みうる少なくとも1種の干渉抑制試薬の存在下で行われる。
【0052】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、
(a)サンプルを、
(i)IgM抗体に特異的に結合する少なくとも1種のレセプターR1、
(ii)鑑別検出対象のIgM抗体に特異的に結合する少なくとも1種のレセプターR2(ただし、R2は、レポーター基を担持する)、
(iii)場合により、干渉IgM抗体に特異的に結合する少なくとも1種のレセプターR3、および
(iv)場合により、IgG抗体に特異的に結合するレセプターR4、
を含む試験試薬と共にインキュベートするステップ、
(b)以下の複合体:
(i)R1と鑑別検出対象のIgM抗体とR2とを含む複合体(該複合体は、レポーター基を担持する)、
(ii)場合により、R3と干渉IgM抗体とを含む複合体(それによりR2への干渉IgM抗体の干渉結合を抑制する)、
(iii)場合により、R4と干渉IgG抗体とを含む複合体(それによりR2への干渉IgG抗体の干渉結合を抑制する)、
を形成させるステップ、ならびに
(c)R2により鑑別検出対象のIgM抗体に結合されたレポーター基を該サンプル中のIgM抗体の指標として測定するステップ、
を含む。
【0053】
試験は、二重抗原サンドイッチアッセイ方式または上記に記載されるような間接方式で実施可能である。二重抗原サンドイッチ方式では、レセプターR1は、検出対象のIgM抗体に特異的に結合する多量体型抗原でありうる。間接試験方式では、レセプターR1は、サンプル中の任意のIgM、特定的には任意のヒトIgMに特異的に結合するレセプター、例えば、抗ヒトIgM抗体でありうる。所望のタイプのIgM抗体の結合は、好ましくは固相上で検出される。この目的のために、レセプターR1は、好ましくは、固相に固定するためのカップリング基、例えば、上記に記載されるようなカップリング基、好ましくはビオチンを担持する。標識化レセプターR2のレポーター基は、上記に記載されるようなレポーター基、好ましくは電気化学発光基である。干渉抑制試薬、すなわち、レセプターR3および/またはR4を用いる場合、それらは、好ましくは、レセプターR1および/またはR2を添加する前にサンプルと共にプレインキュベートされる。
【0054】
IgG干渉抑制レセプターR4は、好ましくは単量体型レセプター、すなわち単一のエピトープコピーを含む抗原である。試験用レセプターR2およびIgM干渉抑制レセプターR3は、多量体型レセプター、すなわち複数のエピトープコピーを含む抗原である。しかしながら、R2およびR3は、異なる有効エピトープ密度または有効エピトープ濃度を有し、したがって、異なるタイプのIgM抗体に優先的に結合する。感染(好ましくは一次感染)の初期または急性期に生起されるIgM抗体の鑑別測定を行う場合、標識化レセプターR2は、例えば、検出対象のIgM抗体により認識される少なくとも6個、好ましくは少なくとも8個、より好ましくは少なくとも12個のエピトープコピー、40個まで、好ましくは30個まで、最も好ましくは25個までのエピトープコピーを含みうる。「後期」IgM抗体に特異的な干渉抑制レセプターR3は、例えば、試験用レセプターR2のエピトープ密度またはエピトープ濃度の多くとも1/2、好ましくは多くとも1/3、最も好ましくは多くとも1/4、さらにはそれ以下でありうる有効エピトープ密度または有効エピトープ濃度を有する。この実施形態では、干渉抑制レセプターR3は、2〜8個、好ましくは3〜6個のエピトープコピーを含みうる。
【0055】
多量体型試験用レセプターR2は、好ましくは、本発明の第1の態様に関連して上記に記載されるような融合ポリペプチドである。多量体型干渉抑制レセプターR3もまた、上記に記載されるような融合ポリペプチドでありうる。しかしながら、本発明のこの実施形態では、従来の多量体型試験用抗原、例えば、ホモ二官能性またはヘテロ二官能性の架橋剤を用いて単量体型の抗原またはエピトープを化学架橋することにより得られる多量体型抗原もまた使用可能であることに留意すべきである。他の選択肢として、多量体型抗原は、ペプチドエピトープ配列を結合してなる担体分子(例えば担体ポリペプチド)、または多量体型ペプチド、例えば、Lee et al. (Nature Biotechnology 23 (2005), 1517-1526)(その内容は、参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されるような分岐状多量体型ペプチドでありうる。
【0056】
本発明の他のさらなる態様は、サンプル中の病原体に対するIgM抗体を鑑別検出するための試験試薬に関する。ただし、サンプルは、干渉IgM抗体および/または干渉IgG抗体から選択される干渉抗体を含みうる。試験試薬は、
(i)IgM抗体に特異的に結合する少なくとも1種のレセプターR1と、
(ii)鑑別検出対象のIgM抗体に特異的に結合する少なくとも1種のレセプターR2(ただし、R2は、レポーター基を担持する)と、
(iii)場合により、干渉IgM抗体に特異的に結合する少なくとも1種のレセプターR3と、
(iv)場合により、IgG抗体に特異的に結合するレセプターR4と、
を含む。
【0057】
以下の図および実施例により本発明についてさらに説明する。
【実施例】
【0058】
実施例1: 融合ポリペプチド試験試薬の作製
1. 材料および方法
1.1. 材料および試薬
塩化グアニジン(Guanidinum-Cl)(GdmCl)は、NIGU (Waldkraiburg, Germany)から購入した。Complete(登録商標)EDTAフリープロテアーゼ阻害剤錠剤、イミダゾール、およびEDTAは、Roche Diagnostics GmbH (Mannheim, Germany)製であり、他のすべての化学物質は、Merck (Darmstadt, Germany)製の分析グレード品であった。限外濾過メンブレン(YM10、YM30)は、Amicon (Danvers, MA, USA)から購入し、マイクロダイアライズメンブレン(VS/0.025μm)および限外濾過ユニット(biomax ultrafree濾過装置)は、Millipore (Bedford, MA, USA)製であった。粗製溶解物を濾過するためのセルロースニトレートメンブレンおよびセルロースアセテートメンブレン(1.2μm/0.45μm/0.2μm)は、Sartorius (Goettingen, Germany)製であった。
【0059】
1.2 発現カセットのクローニング
Skp、FkpA、およびSlyDの配列をSwissProt(UniProt)データベースから検索した(SkP:SwissProt登録番号P11457;FkpA:SwissProt登録番号P45523;SlyD:SwissProt登録番号P0A9K9)。大腸菌Skp、FkpA、およびSlyDに対する遺伝子を大腸菌株BL21(DE3)からPCRにより増幅し、制限切断し、そしてpET24a発現ベクター(Novagen, Madison, Wisconsin, USA)中にライゲーションした。ジスルフィド架橋を介する共有結合性アダクトの生成を回避するために、SlyDの高システインC末端部(166〜196)を除去し、末端切断型SlyD AA1〜165(配列番号1)を融合パートナーとして使用した。標的分子のサイトゾル内発現を確実に行うために、ペリプラズム性シャペロンFkpAおよびSkpのシグナル配列を省略した。したがって、FkpA AA26〜270(配列番号2)およびSkp AA21〜161(配列番号3)を融合ポリペプチド中のモジュールとして使用した。Scholz et al. (J. Mol. Biol. 345 (2005), 1229-1241)に記載されるように融合タンパク質用の発現カセットをデザインした。QuikChange(Stratagene, La Jolla, USA)および標準的PCR法を用いて、点突然変異、欠失・挿入変異体、または制限部位を生成させた。組換えタンパク質変異体はすべて、Ni−NTA支援精製および再折畳みを容易にするためにC末端ヘキサヒスチジンタグを含有していた。
【0060】
1.3 融合タンパク質変異体の発現、精製、および再折畳み
実質的に同一のプロトコルを用いることにより、すべてのポリペプチド融合変異体を精製した。特定のpET24a発現プラスミドを保有する大腸菌BL21(DE3)細胞をLB培地+カナマイシン(30μg/ml)中37℃で1.5のOD600になるまで増殖させ、1mMのイソプロピル−β−D−チオガラクトシドを添加することによりサイトゾル内過剰発現を誘導した。誘導の3時間後、遠心分離(5000gで20分間)により細胞を回収し、−20℃で凍結保存した。細胞溶解のために、冷却された50mMリン酸ナトリウム pH8.0、7.0M GdmCl、5mMイミダゾール中に凍結ペレットを再懸濁させ、懸濁液を氷上で2時間攪拌して細胞溶解を完了させた。遠心分離および濾過(セルロースニトレートメンブレン、0.45μm/0.2μm)の後、5.0mM TCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)を含む溶解バッファーで平衡化されたNi−NTAカラム上に溶解物をアプライした。後続の洗浄ステップをそれぞれの標的タンパク質に合わせて適合化し、50mMリン酸ナトリウム pH8.0、7.0M GdmCl、5.0mM TCEP中10〜25mMイミダゾール(SlyDおよびFkpA融合タンパク質)から30mMイミダゾール(Skp融合タンパク質)までの範囲内で行った。少なくとも10〜15体積の洗浄バッファーをアプライした。次に、50mMリン酸ナトリウム pH7.8、100mM NaCl、10mMイミダゾール、5.0mM TCEPでGdmCl溶液を置換し、マトリックス結合タンパク質のコンフォメーション的再折畳みを誘発した。共精製プロテアーゼの再活性化を回避するために、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Complete(登録商標)EDTAフリー、Roche)を再折畳みバッファーに含めた。全量15〜20カラム体積の再折畳みバッファーを終夜反応に適用した。次に、3〜5カラム体積の50mMリン酸ナトリウム pH7.8、100mM NaCl、40mMイミダゾールで洗浄することにより、TCEPおよびComplete(登録商標)EDTAフリー阻害剤カクテルの両方を除去した。次に、同一のバッファー中の250mMイミダゾールにより天然タンパク質を溶出させた。Schagger and von Jagow (Anal. Biochem. 166 (1987), 368-379)に記載されるトリシン−SDS−PAGEによりタンパク質含有画分を純度に関して評価し、プールした。最後に、タンパク質をサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex HiLoad, Amersham Pharmacia)に付し、タンパク質含有画分をプールし、Amiconセル(YM10)で濃縮した。
【0061】
以下のSkp融合ポリペプチドを作製した:
Skp−ppUL32−X1(配列番号4)およびSkp−ppUL32−X4(配列番号5)
これらの融合ポリペプチドは、Skp融合モジュールと、1コピー(X1)または4コピー(X4)のヒトサイトメガロウイルス(HMCV)エピトープppUL32とを含む。このエピトープは、HCMV大型構造ホスホタンパク質pp150(Uniprot ID P08318)のアミノ酸587〜640に対応する。
【0062】
Skp−pp150−X1(配列番号6)およびSkp−pp150−X4(配列番号7)
これらの融合ポリペプチドは、Skp融合モジュールと、1コピー(X1)または4コピー(X4)のHMCV pp150エピトープ(これはHCMV pp150のアミノ酸999〜1048に対応する)を含む。
【0063】
Skp−p52−X1(配列番号8)およびSkp−p52−X4(配列番号9)
これらの融合ポリペプチドは、Skp融合モジュールと、1コピー(X1)または4コピー(X4)のHMCV p52エピトープ(これはHCMVポリメラーゼアクセサリータンパク質p52(Uniprot ID P16790)のアミノ酸254〜293に対応する)とを含む。
【0064】
1.4 分光学的測定
Uvikon XL複光束分光光度計を用いてタンパク質の濃度測定を行った。Pace et al. (Protein Sci. 4 (1995), 2411-2423)に記載の手順を用いることにより、モル吸光係数(ε280)を測定した。
【0065】
1.5 融合タンパク質へのルテニウム部分のカップリング
N−ヒドロキシ−スクシンイミド活性化ルテニウム標識を用いて約10mg/mlのタンパク質濃度で融合タンパク質のリシンのε−アミノ基を修飾した。それぞれの融合タンパク質に応じて、標識:タンパク質モル比を2:1から7:1まで変化させた。反応バッファーは、150mMリン酸カリウム(pH8.0)、50mM塩化カリウム、1mM EDTAであった。反応を室温で10分間行い、10mMの最終濃度になるように緩衝化L−リシンを添加することにより停止させた。標識の加水分解的不活性化を回避するために、それぞれのストック溶液を無水DMSO(seccosolvグレード, Merck, Germany)中に調製した。反応バッファー中20%までのDMSO濃度で、試験したすべての融合タンパク質の耐容性は良好であった。カップリング反応の後、粗製タンパク質コンジュゲートをゲル濾過カラム(Superdex 200 HiLoad)に通すことにより、未反応遊離標識および有機溶媒を除去した。
【0066】
1.6 シャペロン融合タンパク質の免疫反応性
HMCV由来の抗原p52およびpp150に対するIgM抗体を検出するために、シャペロン融合モジュールを使用した。この抗体は、CMV感染時に多量にヒト血清中に生起される。μキャプチャー方式を用いて自動化Elecsys(登録商標)2010アナライザーにより免疫反応性を検証した(すなわち、特異的な抗IgM IgGを介して全IgM集団を捕捉し固相に固定する)。
【0067】
Elecsys(登録商標)イムノアッセイによるシグナル検出は、電気化学発光に基づく。ビオチンコンジュゲート化IgM捕捉用抗体は、ストレプトアビジン被覆磁気ビーズの表面上に固定され、一方、シグナリング抗原は、発光部分として錯体化ルテニウムカチオンを保有する。抗p52/抗pp150 IgM抗体の存在下で、発色性ルテニウム錯体は、固相に架橋され、白金電極での励起の後、620nmの光を放出する。シグナル出力は、任意光単位で表す。Elecsys(登録商標)用抗原として使用するために、研究対象の可溶性p52/pp150融合タンパク質を濃縮し、Scholz et al. (2005), 上掲に記載のN−ヒドロキシ−スクシンイミド活性化ルテニウム部分で修飾した。イムノアッセイ測定でのシャペロン融合変異体の濃度は、約20〜100ng/mlであった。少なくとも5つの陰性血清を対照として使用した。偽陽性の結果を最小限に抑えるために、化学重合非標識化シャペロンモジュールを抗干渉物質としてサンプルに添加した。
【0068】
2. 結果
2.1 高い発現収率
Skp、FkpA、SlyD、およびそれらの融合変異体をBL21(DE3)大腸菌株中で多量に過剰発現させた。合成速度が速いため、標的タンパク質は、大腸菌のサイトゾル内に封入体として部分的に蓄積した。マトリックス結合再折畳みは、Skp、FkpA、SlyD、およびそれらの融合変異体を非常に高い収率で再生(regeneration)するのに適した方法であることが判明した。本質的には、再生プロトコルは、SlyD融合タンパク質用に開発された方法(Scholz et al. (2005), 上掲; Scholz et al., Biochemistry 45 (2006), 20-33)に従った。結合精製・再折畳みプロトコルの後、1gの大腸菌湿潤細胞から20mg超の標的タンパク質が取得可能であった。一例として、SDS−PAGEにより実証されるSkp−p52−X4の精製を図1に示す。
【0069】
実施例2: CMV IgM試験
CMVに対するIgM抗体を測定するための試験を開発した。この試験は、急性感染期/初期一次感染期と後期感染期または再発性感染との鑑別を可能にする。検出試薬は、三量体化ドメインSkpと4つのCMVエピトープ(UL32または150のいずれか)とをそれぞれ含む3ユニットの融合ポリペプチドをルテニウム(ビピリジン)(BPRu)で標識化してそれぞれ含む複合体を含んでなる。したがって、検出試薬の多量体型分子は、12個のエピトープコピーを含む。試験は、干渉抑制試薬、すなわち、単量体型IgG干渉抑制試薬SlyD−X(ここで、XはUL32または150エピトープである)、二量体型または四量体型のIgM干渉抑制試薬(FkpA−X)および(FkpA−X2)(ここで、FkpAは二量体化ドメインであり、XはエピトープUL32またはpp150である)、ならびに三量体型または六量体型のIgM干渉抑制試薬(Skp−X)および(Skp−X2)(ここで、Skpは三量体化ドメインであり、XはUL32またはpp150エピトープである)の不在下または存在下で行われる。
【0070】
1. 材料および方法
1.1 成分
バッファーB1
変形例1
50mM MESバッファー pH6.5、150mM NaCl;1mM EDTA、0.1%メチルイソチアゾロンおよびオキシピリドン(oxypyrione)、ポリドカノール(prolidocanol)、ならびに0.2%ウシ血清アルブミン(BSA)
1mg/Lビオチン化モノクローナルMab抗ヒトIgM
変形例2
同変形例1+2mg/L SlyD−pp(UL32)×1および2mg/ml SlyD−pp(150)×1
変形例3
同変形例1+2mg/L FkpA−pp(UL32)×1および2mg/ml FkpA−pp(150)×1
変形例4
同変形例1+2mg/L Skp−pp(UL32)×1および2mg/ml Skp−pp(150)×1。
【0071】
バッファーB2
50mM MESバッファー pH6.5、150mM NaCl;1mM EDTA、0.1%メチルイソチアゾロンおよびオキシピリドン、ポリドカノール、ならびに0.2%ウシ血清アルブミン(BSA)
B2中の免疫学的成分: ルテニル化CMV抗原
40ng/ml Skp−(pp150)×4−BPRuおよび40ng/ml Skp−(UL32)×4−BPRu。
【0072】
2. Elecsys 2010装置を用いる試験手順
10μl希釈血清サンプル(Elecsys Diluent Universalで1:20希釈)+75μlバッファーB1。9分間のインキュベーション時間の後、75μlバッファーB2および40μlストレプトアビジンコーティングビーズを添加する。9分後、混合物を測定セルに移し、ECLシグナルを測定する。
【0073】
3. 結果
試験結果を表1および2に示す。
【表1】

【表2】

【0074】
4. 結果の解析
非感染者由来、急性感染患者由来、および過去の感染患者由来の血清を記載のμキャプチャー方式に基づく免疫学的アッセイに付した。結果を表1にまとめる。第1の列(変形例1)は、いかなる干渉抑制試薬もクエンチングモジュールも不在の状態で得られたシグナルを示している。CMV陰性ヒト血清を用いた場合のカウント数は、約700程度であり、陰性血清と陽性血清とが明確に識別される。第2の列(変形例2)は、単量体型クエンチングモジュールSlyD−Xの存在下で得られたシグナルを示している。残留シグナル強度(%単位)により実証されるように、SlyD−Xのクエンチング効果は、急性血清および過去の感染血清のいずれを用いた場合にも無視しうる。これは、期待したとおりである。なぜなら、単量体としてのSlyD−Xは、多価IgM分子と効率的に相互作用できないはずであるからである。
【0075】
第3の列(変形例3)は、二量体型クエンチングモジュールFkpA−Xの存在下で得られたシグナルを示している。残留シグナル強度は、急性血清を用いた場合、FkpA−Xの無視しうるクエンチング効果を実証し、過去の感染血清を用いた場合、FkpA−Xの有意なクエンチング効果を実証する。この知見は、SlyD−Xと対比してFkpA−Xがより高いエピトープ(X)密度であることを反映する。明らかに、FkpA−Xは、過去のCMV感染に由来する成熟IgM分子とは有意に相互作用するが、急性CMV感染に由来する未成熟初期IgM分子とはかなり弱く相互作用する。
【0076】
最後から2番目の列(変形例4)では、三量体型干渉抑制試薬Skp−Xのクエンチング効果が強調される。いくらかのシグナルクエンチングが急性血清で見いだされるが、かなり高いシグナルクエンチングが過去の感染血清で観測される。これは、クエンチングモジュールSkp−Xと初期および後期の両方のIgM分子との相互作用の指標となる。Skp−Xと後期IgM分子との相互作用は、初期IgM分子との相互作用よりもかなり高いので、急性感染の指標となる初期IgM抗体の鑑別検出が可能である。
【0077】
要約すると、SlyD−X、FkpA−X、およびSkp−Xは、エピトープXに対するIgM分子と相互作用することにより、Skp−X4がシグナリング抗原として使用されるシグナルμキャプチャーアッセイをクエンチする。相対クエンチング効率は、有効エピトープ密度に対応してSlyD−X<FkpA−X<Skp−Xの順序で増加する。クエンチング効率は、成熟IgM分子(過去の感染に由来する)を用いた場合は高く、未成熟IgM分子(急性感染に由来する)を用いた場合はかなり低い。
【0078】
本発明者らの知見は、初期および後期の感染(例えばウイルス感染)の明確な識別を可能にする。Skp−X4検出用モジュール(12個のエピトープコピー)のような高いエピトープ密度を有する標識化検出試薬と、SlyD−X(1個のエピトープコピー)タイプ、FkpA−X(2個のエピトープコピー)タイプ、またはSkp−X(3個のエピトープコピー)タイプのより低いエピトープ密度を有する非標識化クエンチングモジュールとを用いることにより、初期および後期の感染の識別を行うことが可能であり、これは、臨床的に重要である。これまで、この識別は、異なるIgM画分間で行うことはできなかったが、IgG結合活性試験を行うことにより試みられてきた。簡潔に述べると、非変性濃度のカオトロピック剤(例えば、尿素または塩化グアニジンなど)の不在下および存在下でIgGを検出する。カオトロープは、未成熟(「初期」)IgG分子の結合を優先的に減少させるが、成熟高親和性(「後期」)IgG分子の結合性にはごくわずかに影響を及ぼすにすぎない。カオトロープの存在下および不在下でのシグナルの高さの比から、高親和性(カオトロープ耐性)IgG分子の分率が得られる。結合活性試験では、高いパーセントは、高親和性IgG分子の分率が圧倒的に高いことを反映し、低いパーセントは、低親和性(初期)IgG分子の分率が圧倒的に高いことを反映する。したがって、結合活性試験では、高いパーセントは、後期感染の指標となり、一方、低いパーセントは、初期感染の指標となる。
【0079】
表1および2の最後の列は、市販のIgG結合活性アッセイ(RADIM)に供された急性血清および過去の感染血清の結果をまとめたものである。急性血清は、低い残留シグナル(<20%)を呈し、一方、過去の感染血清は、高い残留シグナル(>60%)を呈することが明らかである。これらの結果は、本発明に係るクエンチングアプローチときわめてよく一致する。これは、注目に値する。なぜなら、本発明に係るアプローチは、IgM分子の鑑別検出に重点をおき、一方、結合活性アッセイは、一般にIgG分子の鑑別検出に重点をおいているからである。異なるアプローチにより得られる情報は、補完的である。すなわち、未成熟免疫グロブリン(初期免疫応答に付随する)は、IgG結合活性アッセイ(最後の列)では高いクエンチングを引き起こすが、本発明に係るSkp−X抑制アッセイ(最後から2番目の列)ではかなり低いクエンチングを引き起こす。
【0080】
成熟免疫グロブリン(過去の感染または再発感染に付随する)は、IgG結合活性アッセイ(最後の列)では低いクエンチングを引き起こすが、本発明に係るSkp−X抑制アッセイではかなり高いクエンチングを引き起こす。未成熟免疫グロブリン(急性感染または初期感染に付随する)は、IgG結合活性アッセイでは高いクエンチングを引き起こすが、本発明に係るSkp−X抑制アッセイでは低いクエンチングを引き起こす。したがって、初期および後期の感染を鑑別したり、初期の感染を検出したりすることが重要な場合は常に、IgM分子の鑑別検出に基づく本発明に係るアプローチは、診断分野に有益な情報を追加する。
【0081】
配列表
配列番号1:SlyDのアミノ酸配列(AA 1〜165)
配列番号2:FkpAのアミノ酸配列(AA 26〜270)
配列番号3:Skpのアミノ酸配列(AA 21〜161)
配列番号4:Skp−ppUL32−X1のアミノ酸配列(ppUL32=HCMV pp150、AA 587〜640)
配列番号5:Skp−ppUL32−X4のアミノ酸配列
配列番号6:Skp−pp150−X1のアミノ酸配列(pp150=HCMV pp150、AA 999〜1048)
配列番号7:Skp−pp150−X4のアミノ酸配列
配列番号8:Skp−pp150−X1のアミノ酸配列(p52=HCMV p52、AA 254〜293)
配列番号9:Skp−p52のアミノ酸配列、AA 254〜293。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】SDS−PAGEにより実証されるSkp−p52−X4の精製。レーン1、Invitrogen製のタンパク質標準Mark 12 Unstained;レーン3、過剰生産性大腸菌株BL21/DE 3のカオトロピック粗製溶解物;レーン5、IMACフロースルー;レーン6、イミダゾール洗浄画分;レーン8、イミダゾール溶出画分;レーン9、ゲル濾過(Superdex 200)後のSkp−p52−X4。Skp−p52−X4は、方法の項に記載される単純な一段階プロトコルにより高収率で精製および再折畳みが可能である。
【図2−1】図2A〜2I:アミノ酸配列(配列表参照)。
【図2−2】図2A〜2I:アミノ酸配列(配列表参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のもの:
(i)少なくとも1つの多量体化ドメイン、および
(ii)病原体由来の複数コピーのエピトープセグメント
を含む、融合ポリペプチド。
【請求項2】
前記多量体化ドメインが、二量体化ドメイン、三量体化ドメインまたは四量体化ドメインである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記多量体化ドメインが、原核生物または真核生物シャペロン、好ましくはATP非依存性シャペロンである、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記多量体化ドメインが、大腸菌由来のFkpA、SkpおよびSecB、または他の原核生物由来のそのオルソログからなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
エピトープ含有フラグメントを、少なくとも2コピー、好ましくは2〜10コピー、より好ましくは2、3、4、5または6コピー含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
エピトープセグメントの長さが、5〜120アミノ酸、好ましくは15〜50アミノ酸である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記エピトープセグメント同士が、スペーサー配列により分離されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記スペーサー配列が、1〜10アミノ酸の長さを有し、かつ好ましくはグリシンおよび/またはセリン残基を含む、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記エピトープセグメントが、前記病原体の感染の初期または急性期に生起される抗体により特異的に認識されるエピトープ、特に該病原体の一次感染の初期または急性期に生起される抗体により特異的に認識されるエピトープを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記エピトープセグメントが、前記病原体の感染の後期または過去の感染において生起される抗体により特異的に認識されるエピトープを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項11】
前記エピトープセグメントが、前記病原体の持続感染または再発感染において生起される抗体により特異的に認識されるエピトープを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項12】
前記エピトープ含有フラグメントが、ウイルス、細菌または寄生生物病原体に由来するものである、請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項13】
前記病原生物が、以下のもの:
(i)ヘルペスウイルス、例えばヒト単純ヘルペスウイルス1型および2型(HHV1およびHHV2)、水痘帯状疱疹ウイルス(HHV3)、エプスタイン・バーウイルス(HHV4/EBV)またはヒトサイトメガロウイルス(HHV5)、ならびにヒトヘルペススイルス6型、7型および8型;
(ii)風疹ウイルス;
(iii)肝炎ウイルス、例えばA型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV);
(iv)パラミクソウイルス、例えば麻疹ウイルスおよび流行性耳下腺炎ウイルス;
(v)トキソプラズマ属生物;および
(vi)ボレリア属生物
からなる群より選択される、請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
前記病原体が、妊娠中のリスクに関連する病原体、特にヒトサイトメガロウイルス、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)および風疹ウイルスより選択される、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項15】
少なくとも1つのレポーター基および/またはカップリング基を担持している、請求項1〜14のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項16】
ビオチンカップリング基を担持している、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項17】
電気化学発光レポーター基、特にルテニウムレポーター基、またはハプテンレポーター基、特にジゴキシゲニンレポーター基を担持している、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項18】
多量体として存在する、請求項1〜17のいずれか1項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする核酸分子。
【請求項20】
同一のエピトープセグメントをコードする前記核酸分子の一部分同士が、遺伝コードの縮重の範囲内で異なるヌクレオチド配列を有する、請求項19に記載の核酸。
【請求項21】
発現制御配列と機能的に連結された、請求項19または20に記載の少なくとも1つの核酸を含む、発現ベクター。
【請求項22】
請求項19もしくは20に記載の核酸分子、または請求項21に記載の発現ベクターを用いてトランスフェクトまたは形質転換されている、宿主細胞。
【請求項23】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の融合ポリペプチドの調製方法であって、以下のステップ:
(i)請求項22に記載の宿主細胞を用意するステップ;
(ii)該融合ポリペプチドが発現される条件下で該宿主細胞を培養するステップ;および
(iii)該融合ポリペプチドを回収するステップ
を含む、上記方法。
【請求項24】
請求項18に記載の多量体型融合ポリペプチドの調製方法であって、複数の単量体型融合ポリペプチドを適切な条件下で組み立てて、多量体を形成させるステップを含む、上記方法。
【請求項25】
サンプル中の抗体の検出方法での検出試薬としての、請求項1〜18のいずれか1項に記載の融合ポリペプチドの使用。
【請求項26】
前記抗体がIgM抗体である、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
IgM抗体の鑑別測定(differential determination)のための、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記抗体が、病原体の感染の、特に一次感染の初期または急性期に生起されるIgM抗体である、請求項26または27に記載の使用。
【請求項29】
サンプル中の抗体の検出方法での干渉抑制試薬としての、請求項1〜18のいずれか1項に記載の融合ポリペプチドの使用。
【請求項30】
前記抗体がIgG抗体である、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
サンプル中の抗体を検出するための試験試薬キットであって、請求項1〜18のいずれか1項に記載の少なくとも1つの融合ポリペプチドおよびさらなる試験用構成要素を含む、上記キット。
【請求項32】
前記融合ポリペプチドが検出試薬である、請求項31に記載の試験試薬。
【請求項33】
前記融合ポリペプチドが干渉抑制試薬である、請求項31に記載の試験試薬。
【請求項34】
サンプル中の、病原体に対する抗体の検出方法であって、以下のステップ:
(i)該サンプルを、請求項1〜18のいずれか1項に記載の少なくとも1つの融合ポリペプチドおよびさらなる試験用構成成分を含む試験試薬とともにインキュベートするステップ;および
(ii)サンプル成分と該試験試薬との反応を評価することにより、該サンプル中の該抗体の存在および/または濃度を明らかにするステップ
を含む、上記方法。
【請求項35】
前記試験試薬が検出試薬および少なくとも1つの干渉抑制試薬を含み;ステップ(b)が所望のサンプル成分と検出試薬との反応を測定するステップを含み、ここで、所望でないサンプル成分は、該少なくとも1つの干渉抑制試薬により捕捉される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
検出対象の抗体が、一次感染の初期または急性期に生起されるIgM抗体であり、前記試験試薬が、レポーター基および/もしくはカップリング基を担持する請求項1〜18のいずれか1項に記載の少なくとも1つの融合ポリペプチドを含む、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
前記試験試薬が、IgG抗体を捕捉するための干渉抑制試薬および/または感染の後期および/もしくは再発感染において生起されるIgM抗体を捕捉するための干渉抑制試薬をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記試験試薬が、レポーター基を担持する第1の融合ポリペプチドおよび固相への固定化のためのカップリング基を担持する第2の融合ポリペプチドを含み、第1および第2の融合ポリペプチドとの複合体を形成させ、固相上で該複合体を検出することにより抗体を測定する、請求項34〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記試験試薬が、固相への固定化のためのカップリング基を担持する融合ポリペプチドおよびレポーター基を担持する測定対象の抗体を認識するレセプターを含み、固相上で融合ポリペプチドとレセプターとの複合体を形成させることにより抗体を測定する、請求項34〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記試験試薬が、レポーター基を担持する融合ポリペプチドおよび固相への固定化のためのカップリング基を担持する測定対象の抗体を認識するレセプターを含み、固相上で融合ポリペプチドとレセプターとの複合体を形成させることにより抗体を測定する、請求項34〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
サンプル中の、病原体に対するIgM抗体を鑑別検出するための方法であって、該サンプルは、干渉IgM抗体および/または干渉IgG抗体より選択される干渉抗体を含んでもよく、以下のステップ:
(a)サンプルを、以下のもの:
(i)IgM抗体に特異的に結合する少なくとも1つのレセプターR1、
(ii)鑑別的に検出される対象のIgM抗体に特異的に結合し、レポーター基を担持する、少なくとも1つのレセプターR2、
(iii)場合により、干渉IgM抗体に特異的に結合する少なくとも1つのレセプターR3、および
(iv)場合により、IgG抗体に特異的に結合するレセプターR4
を含む試験試薬とともにインキュベートするステップ、
(b)以下の複合体:
(i)R1、鑑別的に検出される対象のIgM抗体およびR2を含む複合体であって、レポーター基を担持する複合体、
(ii)場合により、R3および干渉IgM抗体を含む複合体であって、これによりR2に対する該干渉IgM抗体の干渉的結合を抑制するもの、
(iii)場合により、R4および干渉IgG抗体を含む複合体であって、これによりR2に対する該干渉IgG抗体の干渉的結合を抑制するもの
を形成させるステップ、ならびに
(c)該サンプル中の鑑別的に検出される対象のIgM抗体の指標として、R2によって該IgM抗体に結合しているレポーター基を測定するステップ
を含む、上記方法。
【請求項42】
レセプターR4が単量体型レセプターである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
レセプターR2とR3とが、異なる有効エピトープ密度または濃度を有する多量体型レセプターである、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
検出対象のIgM抗体が、感染の、好ましくは一次感染の初期もしくは急性期に生起されるIgM抗体であり、干渉IgM抗体が、感染の後期もしくは過去の感染において生起されるIgM抗体であるか、かつ/または持続感染もしくは再発感染において生起されるIgM抗体である、請求項41〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
レセプターR2が、検出対象のIgM抗体により認識される、少なくとも6エピトープコピー、好ましくは少なくとも8エピトープコピー、より好ましくは少なくとも12エピトープコピーを含む多量体型レセプターである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
レセプターR3が、レセプターR2のエピトープ密度または濃度と比較して少なくとも2分の1倍低い有効エピトープ密度または濃度を有する多量体型レセプターである、請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
レセプターR1が、固相への固定化のためのカップリング基を担持している、請求項41〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
存在する場合、レセプターR3およびR4を、レセプターR1および/またはR2が添加される前にサンプルとともにプレインキュベートする、請求項41〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
レセプターR2が、請求項1〜18のいずれか1項に記載の融合ポリペプチドである、請求項41〜48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
サンプル中の、病原体に対するIgM抗体を鑑別検出するための試験試薬であって、該サンプルは、干渉IgM抗体および/または干渉IgG抗体より選択される干渉抗体を含んでもよく、以下のもの:
(i)IgM抗体に特異的に結合する少なくとも1つのレセプターR1、
(ii)鑑別的に検出される対象のIgM抗体に特異的に結合し、レポーター基を担持する、少なくとも1つのレセプターR2、
(iii)場合により、干渉IgM抗体に特異的に結合する少なくとも1つのレセプターR3、および
(iv)場合により、IgG抗体に特異的に結合するレセプターR4
を含む、上記試験試薬。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【公開番号】特開2008−263983(P2008−263983A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−108513(P2008−108513)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】