病原体プロテアーゼをターゲティングする治療システムおよびその使用方法
本発明は、抗病原体ポリペプチドおよびポリヌクレオチド組成物、ならびに使用方法を提供する。一般に、本発明の組成物は、プロドメイン、病原体プロテアーゼ開裂部位、および細胞内病原体のプロテアーゼによるプロポリペプチドの開裂によって活性化されることのできる細胞毒性ドメインを持つ修飾プロポリペプチドを提供する。本発明は、対象であるポリペプチドをコードする核酸、ならびに対象である核酸を含むベクターおよび宿主細胞をさらに提供する。病原体プロテアーゼによるプロポリペプチドの開裂によって、細胞毒性ドメインが活性化されて、病原体に感染した宿主細胞の生存性が低下する。病原体に感染した細胞の生存性を低下させるための対象である核酸およびポリペプチドの使用方法、ならびに病原体に感染した被検体の病原体負荷量を減少させるための方法を提供する。本発明は、対象である方法を実施するためのキットをさらに提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明の分野は、抗病原体組成物、特に感染した宿主細胞内で活性化される抗病原体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
現代医学は、複製サイクルの少なくとも一部を宿主細胞内に持つ病原体の有効な治療法を求めることに力を注いでいる。このような細胞内病原体は、有効な治療によって患者の血流およびその他の体液における細胞外感染性物質を排除するばかりでなく宿主細胞内に存在する病原体を効果的に排除しなければならないために、特有の難しい問題を示す。細胞内病原体の治療のための療法に関するこの後者の局面は、宿主細胞内に分布する標的に作用する薬剤がしばしば感染および未感染の双方の宿主細胞に対して有害であることから、特有の難しい問題を示す。さらに、細胞内病原体はしばしば宿主の免疫系に対して適切な細胞内で持続性および潜在性の感染を起こす。
【0003】
C型肝炎ウイルス(HCV)およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)のようなウイルス性病原体は、治療が困難な傾向のある細胞内病原体の例である。HCVは輸血後の主な病原物質であり、世界的な集団獲得型の非A型、非B型肝炎である。世界中で1億5千万人を超える人々がこのウイルスに感染していると推定される。高い割合の保菌者がこの病原体に慢性的に感染して、多くの患者が慢性肝疾患、いわゆる慢性C型肝炎の段階へと進行する。続いてこのグループは、肝硬変、肝細胞癌、および死に至る末期肝疾患のような重篤な肝疾患のリスクが高まる。
【0004】
HCVはエンベロープを有するフラビウイルス科の+鎖RNAウイルスである。一本鎖HCV RNAゲノムは長さ約9500ヌクレオチドであり、アミノ酸約3000個の一つの大きなポリプロテインをコードする一つのオープンリーディングフレーム(ORF)を持つ。感染した細胞において、このポリプロテインは細胞およびウイルスのプロテアーゼによって多くの位置で開裂して、構造タンパク質および非構造(NS)タンパク質を生じる。HCVの場合、成熟した非構造タンパク質(NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5AおよびNS5B)の生成は2種類のウイルスプロテアーゼの影響を受ける。一つはシス(cis)のNS2−NS3結合を開裂するNS2に分布する金属性プロテアーゼであり、もう一つはNS3のN末端領域に含まれるセリンプロテアーゼであって(以下、NS3プロテアーゼと言う)、NS3-NS4A開裂部位におけるシスおよびその他のNS4A-NS4B、NS4B-NS5A、NS5A-NS5Bの位置におけるトランス(trans)の双方のNS3下流のその後のすべての開裂を介在する。NS4Aタンパク質は多くの機能を持つと思われ、NS3プロテアーゼの補因子として作用し、NS3およびその他のウイルスレプリカーゼ成分の膜限局化に役立つ可能性もある。
【0005】
HCVがウイルスの存続を確立して高い割合の慢性肝疾患を誘発するメカニズムは解明されていない。HCVがどのように宿主免疫系と相互作用してこれを回避するかは明らかでない。さらに、HCVの感染および疾患に対する防御における細胞性および液性免疫の役割は未だに解明されていない。免疫グロブリンが輸血関連ウイルス性肝炎の予防について報告されているが、疾病対策センターは今のところこの目的のために免疫グロブリンを投与することを推奨していない。有効な防御免疫反応がないためにワクチンまたは十分な暴露後予防対策の開発が妨げられているので、当面は抗ウイルス性介入に強く期待される。現在までのところ、このような抗ウイルス性の介入は、例えばリバビリン、ならびに単独またはリバビリンと併用されるインターフェロン-α(IFN-α)を中心とする療法に焦点が絞られている。しかし、必ずしもすべての患者がこれらの療法に応答するわけではなく、慢性HCVの治療のための新規薬剤がこの分野における大きな関心である。
【0006】
つい最近、プロテアーゼおよび複製酵素をコードするHCVを特異的に阻害してウイルスの複製速度を低下させる複数の方法が開発されている。しかし、HCV(およびHIVのようなその他の大半のRNAウイルス)のゲノムは、ウイルスの複製中に突然変異が蓄積した結果として著しい遺伝的異質性を有する。この高い突然変異率は校正活性を持たない誤りがちRNA依存RNAポリメラーゼに帰することができ、例えば、HCVは密接に関連する依然異質な配列の集団、つまり準種として感染した患者体内を循環する。突然変異の分布は一定しないことが報告されているが、この変異性の理由については説明されていない。大半のHCV株と遺伝子型のプロテアーゼ活性は十分に維持されるので、小分子阻害剤による抗ウイルス療法ではこのプロテアーゼが実行可能な標的とされる。実際、プロテアーゼ、RNAヘリカーゼおよびポリメラーゼは異なるHCV単離株の間で極めて類似していて、有効な抗ウイルス標的として推奨されている(Randallら、(2002) Curr. Opin. Infect. Dis. 14: 743-747;Di Bisceglieら、(2002) Hepatology 35: 224-231)。しかし、ポリメラーゼまたはプロテアーゼにおける僅かな変化はAZT、ddI、3TC、およびインジナビルのような現在の抗ウイルス剤に対する耐性を付与することができる(Condra, J. H. (1998) Haemophilia 4: 610-615;Brennerら、(2002) Ann. N.Y. Acad. Sci. 918: 9-15)。このように、薬剤耐性を克服するために、マルチドラッグ、即ち、「カクテル」アプローチが採り入れられている。HIVのようなその他の細胞内病原体を抑制するための同様の方法も問題に直面していて、特にHIVゲノムの突然変異率が高いために問題に直面している。
【0007】
例えば、細胞内感染症、特にHCVおよびHIV感染症を抑制するための新しい方法に関して高い必要性がある。本発明はこれらの必要性およびその他の必要性を満たす。
【0008】
文献
対象の参考文献は、米国特許第6,221,355号、第5,554,528号、および出版物:Baltimore, Nature: 335:739-745 (1988), Harrison et al, Human Gene Therapy 3:461, (1992), Clarkeら、J. Gen. Virol. 78, 2397-2410 (1997), Majorら、Hepatology 25, 1527-1538 (1997), Purcellら、Hepatology 26, 11s-14s (1997), Bartenschlager, Intervirology 40, 378-393 (1997), Blightら、Antivir Ther 3, 71-81 (1998), Rosenら、Mol Med Today 5, 393-399 (1999), Nature 396, 119-122 (1998), Liら、Cell 94, 491-501 (1998), Hanら、J Biol Chem 272, 13432-13436 (1997), Luoら、Cell 94, 481-490 (1998), J Gen Virol 81 Pt 11, 2573-2604 (2000), Hittら、Adv Virus Res 55, 479-505 (2000), Connelly, Curr Opin Mol Ther 1, 565-572 (1999), Wilson, Adv Drug Deliv Rev 46, 205-209 (2001)およびMercer, Nat Med 7, 927-933 (2001)を含む。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本発明は、抗病原体ポリペプチドおよびポリヌクレオチド組成物、ならびに使用方法を提供する。一般に、本発明の組成物は、プロドメイン、病原体プロテアーゼ開裂部位、および細胞内病原体のプロテアーゼによるプロポリペプチドの開裂によって活性化されることができる細胞毒性ドメインを含む修飾プロポリペプチドを提供する。本発明は、対象であるポリペプチドをコードする核酸、ならびに対象である核酸を含むベクターおよび宿主細胞をさらに提供する。病原体プロテアーゼによってプロポリペプチドが開裂する結果、細胞毒性ドメインが活性化されて、病原体に感染した宿主細胞の生存性が低下する。病原体が感染した細胞の生存性を抑制するために対象である核酸およびポリペプチドを用いるための方法、ならびに病原体に感染した被検体の病原体負荷量を抑制するための方法が提供される。本発明は、対象である方法を実施するためのキットをさらに提供する。
【0010】
本発明は、多くの細胞内病原体が病原体のポリペプチドに特異的であって宿主細胞のタンパク質には作用しないプロテアーゼを産生するという点を利用する。例えば、ピコルナウイルス、トガウイルスおよびフラビウイルスなどの多くのウイルスはコードするタンパク質をポリプロテインとしてコードおよび合成して、このポリプロテインはポリプロテイン内の配列に特異性を持つ特異的ウイルスプロテアーゼによって開裂される。
【0011】
本発明の特徴は、抗病原体核酸組成物が細胞内病原体のコードするプロテアーゼを持つ細胞の生存性を特異的に抑制することであり、従って、その組成物および方法は病原体に感染した被検体を有効に治療するために使用することができる可能性がある。
【0012】
本発明のもう一つの特徴は、本発明の組成物がRNAウイルスのようなウイルス性病原体に対して特に有効であり、ウイルス特異的なプロテアーゼおよびその活性が高度に保持されるためにRNAウイルスの様々な遺伝子型および準種に対して有効であることである。
【0013】
本発明の一つの利点は、その方法および組成物が病原体に感染した細胞の生存性を低下させて、未感染の宿主細胞の生存性には実質的な影響を及ぼさないことである。
【0014】
もう一つの利点は、プロテアーゼの開裂部位および細胞内病原体のプロテアーゼが異なる血清タイプおよび遺伝子型を通じて高度に保持されることが期待できるために、本発明の方法および組成物がこれらの血清タイプおよび遺伝子型に対して有効であることができることである。
【0015】
さらにもう一つの利点は、感染性病原体に接触したことのないプロテアーゼ開裂部位がプロテアーゼの基質であり、細胞毒性ドメインの「薬」を活性化することである。従って、耐性を持つ病原体の系統は、遺伝子組換えにより作製されたプロペプチドドラッグの影響を克服するために、プロテアーゼ開裂部位およびプロテアーゼ自体に少なくとも2つの相補的突然変異を持つはずである。これによって、成熟のために活性プロテアーゼを必要とする耐性株の出現の可能性が著しく抑制される。
【0016】
本発明のこれらの利点およびその他の利点については、当業者は、下記に詳細に述べられるように抗病原体組成物の詳細を読めば明らかとなるであろう。
【0017】
定義
本発明についてさらに詳しく説明する前に、本発明が記載される特定の態様に限定されるものではなく、当然、変更可能なものであることが理解されるべきである。本発明の範囲は本明細書に添付される特許請求の範囲によってのみ限定されるものであり、本明細書で用いられる用語は特定の態様のみを説明するために用いられるものであって限定的であることを意図しないことも理解されるべきである。
【0018】
値の範囲が示される場合は、その範囲の上限値と下限値の間にあって、文脈から明らかにそうでないことが明示されない限り下限値の単位の十分の一までの各介在値、およびその記載された範囲内のその他のあらゆる記載値または介在値が本発明に包含されることが理解される。記載される範囲に特別に除外される限界があるならば、その狭い範囲にこれらのより狭い範囲の上限値および下限値が独立して含まれる可能性があり、同じく本発明に包含される。記載される範囲が一つまたは双方の限界値を含む場合、これらの含まれる限界値のいずれかまたは双方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0019】
特記する場合を除いて、本明細書で用いられるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の業者によって一般的に理解される用語と同一の意味を持つ。本明細書に述べられるものと類似または同等の方法および材料も本発明の実践および検査に用いることが可能であるが、本明細書では好ましい方法および材料について記載する。本明細書で述べられるすべての出版物は、その出版物が引用されるものと関連してその方法および/または材料を開示および説明するために、参照として本明細書に組み入れられる。
【0020】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられるように、「一つ(a)」、「および(and)」および「その(the)」という単数形は、文脈からそうでないことが明確に示されない限り、複数の内容を含む。従って、例えば「プロテアーゼ(a protease)」という言及は複数のこのようなプロテアーゼを含み、「そのプロテアーゼ開裂部位(the protease cleavage site)」という言及は一つまたはいくつかのプロテアーゼ開裂部位、および当業者に既知であるその同等物等への言及を含む。
【0021】
本明細書で論じられる出版物は、単にそれらの開示が本出願の出願日の前であるために示されるものである。本明細書は決して、先行発明という理由で本発明に対してこのような出版物に先行する権利が与えられないということの承認として解釈されるべきではない。さらに、提示される出版物の日付は実際の出版日とは異なる可能性があり、独自に確認される必要がある可能性がある。
【0022】
本明細書で用いられる「プロポリペプチド」という用語は、配列特異的なプロテアーゼによってプロテアーゼ開裂部位にて開裂されることのできるあらゆる天然のポリペプチドまたはその変異型を意味する。一般に、プロポリペプチドは、プロテアーゼ開裂部位によって分離されるプロドメインおよび生物活性(例えば、細胞毒性活性)を持つドメインを持つ。プロポリペプチドが開裂すると2つの産物が生じて、プロドメインおよび成熟ポリペプチドが遊離する。開裂による成熟ポリペプチドの遊離は成熟ポリペプチドの細胞毒性活性の「活性化」をもたらし、例えば、開裂によって成熟ポリペプチド上の一つまたはいくつかの活性部位が基質結合において利用可能となる。プロポリペプチドは一般に、成熟ポリペプチドに比べて検出可能な細胞毒性活性を持たないかまたは相対的に低い。このように、プロポリペプチドは典型的な「開裂依存細胞毒性ポリペプチド」である。特に興味深いプロポリペプチドの例としてはチモーゲン、特にタンパク分解性チモーゲン、タンパク分解によって活性化されるトキシン、ならびにBID、プロカスパーゼ3およびプロカスパーゼ8などのタンパク分解によって活性化されるプロアポトーシス分子が含まれる。
【0023】
「プロポリペプチド要素」は、プロドメイン、プロテアーゼ開裂部位、または成熟ポリペプチド(開裂依存細胞毒性ポリペプチドなど)を指す。
【0024】
「開裂依存細胞毒性ポリペプチド」は、プロテアーゼ開裂によって本発明のプロポリペプチドまたは修飾プロポリペプチドから遊離すると、開裂依存細胞毒性ポリペプチドを持つ宿主細胞に対して細胞毒性作用を発現または介在するポリペプチドを示す。「開裂依存細胞毒性ポリペプチド」は、しばしば、プロポリペプチドまたは修飾プロポリペプチドの「細胞毒性ドメイン」として本明細書において言及される。
【0025】
「細胞毒性作用」または「細胞毒性活性」は、細胞死を含めて、宿主細胞の生存性の抑制を促進する影響または活性を指す。このような影響および活性は、例えば、宿主細胞におけるアポトーシスの誘発、宿主細胞タンパク質合成の抑制、宿主細胞の転写の抑制、ゲノムDNAの断片化、膜崩壊、核ラミナの崩壊、細胞の電位の変化などを伴う可能性がある。
【0026】
本明細書で「病原体プロテアーゼ開裂依存細胞毒性ポリペプチド」としても言及される「修飾プロポリペプチド」は、非天然型のプロテアーゼ開裂部位を持つように修飾されているプロポリペプチドを意味して、いくつかの態様では一つまたはいくつかの不活化された内因性プロテアーゼ開裂部位を持つ(即ち、プロテアーゼ開裂部位が未修飾の内因性プロテアーゼ開裂部位を開裂する細胞性プロテアーゼでは開裂されないまたは検出可能なレベルで開裂されないように「不活化」される)。通常、プロポリペプチドのアミノ酸配列は、特にプロテアーゼ開裂部位に関して変化する。一般に、本発明の修飾プロポリペプチドは修飾プロポリペプチド内にそのプロポリペプチドが本来は持たないプロテアーゼ開裂部位を持ち、配列特異的なプロテアーゼが開裂部位に作用するとプロドメインおよび成熟ポリペプチドが放出されて、後者は哺乳動物の宿主細胞に対して細胞毒性である生物活性を示す。大半の場合、修飾プロポリペプチドのプロドメインおよび細胞毒性ドメインはプロポリペプチド固有のものである。
【0027】
プロポリペプチドまたはプロポリペプチド要素(例えば、プロドメイン、成熟ポリペプチド)の「変異型」は、一つまたはいくつかのアミノ酸残基によって変化するプロポリペプチドと定義される。このような変異型は、原型となるプロポリペプチドまたはプロポリペプチド要素のアミノ酸配列に対して「保存的」変化を持つことができ、置換されるアミノ酸はイソロイシンによるロイシンの置換のように構造的または化学的にほぼ等しい特性を持つ。いくつかの態様において、このような変異型はトリプトファンによるグリシンの置換のように「非保存的」変化を持つことができる。同様の変異は、アミノ酸の欠失もしくは挿入、または双方を含むこともできる。プロポリペプチドまたはプロポリペプチド要素の変異型は、プロポリペプチドの関連する基本的構造的特徴(例えば、変異型プロポリペプチド、プロドメイン、開裂部位、および開裂活性化可能細胞毒性ドメイン(成熟ポリペプチド))および生物活性(例えば、開裂活性化可能細胞毒性ドメインの細胞毒性活性)を保持する。
【0028】
(例えば、開裂活性化可能な細胞毒性ドメインの細胞毒性活性の失活を伴わずに)どのアミノ酸残基をいくつ置換、挿入または欠失させるかを決定する指針は、プロポリペプチドまたはプロポリペプチド要素の配列を関連する構造および機能を持つ既知のプロポリペプチドと比較することによって見出すことができる(例えば、GenBankアクセッション番号NP031570のマウスBID相同体、GenBankアクセッション番号AAM48284のニワトリBID相同体、またはGenBankアクセッション番号NP_073175のラットBID相同体は、ヒトBIDを修飾するための指針として用いることができる)。細胞毒性のアッセイ法は容易に実施可能であってしかも直接的であり、どのアミノ酸残基をいくつ置換、挿入または欠失させることができるかを経験的に調べるために容易に応用することができる。
【0029】
「欠失」は、天然のプロポリペプチドのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列に比べて、それぞれ、一つまたはいくつかのアミノ酸もしくはヌクレオチド残基が欠けているアミノ酸またはヌクレオチド配列の変化として定義される。プロポリペプチドおよびプロポリペプチド要素のアミノ酸またはポリヌクレオチド配列の状況において、欠失は約2個、約5個、約10個、約20個まで、約30個まで、または約50個までもしくはそれよりも多くのアミノ酸の欠失を伴うことができる。プロポリペプチドは複数の欠失を含むことができる。
【0030】
「挿入」または「付加」は、一つまたはいくつかのアミノ酸もしくはヌクレオチド残基がそれぞれ天然のプロポリペプチドのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列に比べて付加されるアミノ酸またはヌクレオチド配列の変化として定義される。「挿入」は一般にポリペプチドのアミノ酸配列における一つまたはいくつかのアミノ酸残基の付加を示し、「付加」は挿入またはN末端もしくはC末端に付加するアミノ酸残基を指すことができる。プロポリペプチドおよびプロポリペプチド要素の状況において、アミノ酸またはポリヌクレオチド配列は、約10個まで、約20個まで、約30個まで、または約50個までもしくはそれよりも多くのアミノ酸の挿入または付加である。プロポリペプチドは複数の挿入を伴うことができる。
【0031】
「置換」は、天然のプロポリペプチドのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列に比べて、一つまたはいくつかのアミノ酸またはヌクレオチドがそれぞれ異なるアミノ酸またはヌクレオチドによって置き換えられて生じる。プロポリペプチドまたはプロポリペプチド要素は細胞毒性活性に対して実質的に影響を持たない保存的アミノ酸置換を持つ可能性があることが理解される。保存的置換によって、gly、ala;val、ile、leu;asp、glu;asn、gln;ser、thr;lys、arg;およびphe、tyrのような組み合わせが意図される。
【0032】
「生物学的に活性な」プロポリペプチドまたはプロポリペプチド要素という用語は、天然のプロポリペプチドまたはプロポリペプチド要素の構造的および生化学的機能を持つプロポリペプチドを指す。
【0033】
本発明の修飾プロポリペプチドのプロテアーゼ開裂部位に関する「非天然」、「非内因性」および「異種性」は、修飾のために選択されたプロポリペプチド以外のポリペプチドから派生するプロテアーゼ開裂部位を指すために本明細書において互換的に用いられる。
【0034】
特記する場合を除いて、本発明の抗病原体システムの状況における「プロテアーゼ」という用語は、ポロポリペプチドまたは修飾プロポリペプチドの配列における特定のモチーフを認識および開裂する配列特異的プロテアーゼを示す。プロテアーゼは、グランザイムなどの細胞にとって内因性のゲノムによりコードされるプロテアーゼである細胞性プロテアーゼ、またはHIVもしくはHCVプロテアーゼなどの病原体のゲノムによってコードされるプロテアーゼである病原体プロテアーゼであることができる。
【0035】
「細胞内病原体」は、感染した宿主の細胞内にその複製サイクルの少なくとも一部を持つ病原体である。多くの態様において、細胞内病原体は偏性細胞内病原体であり、その病原体は病原体複製を促進するために宿主細胞内に留まらなければならないことを意味する。細胞内病原体の例には、HIVおよびHCVなどのウイルスがある。
【0036】
本明細書で用いられるように、「調べる(determining)」、「測定する(measuring)」、「評価する(assessing)」、および「アッセイする(assaying)」という用語は互換的に用いられて、定量的および定性的測定の双方を含む。
【0037】
本明細書で互換的に用いられる「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は任意の長さのアミノ酸重合体を指し、コードおよび非コードのアミノ酸、化学的または生化学的に修飾または誘導されたアミノ酸、および修飾ペプチド骨格を持つポリペプチドを含むことができる。この用語には、限定されるものではないが、異種アミノ酸配列を持つ融合タンパク質、時にN末端のメチオニン残基を伴う異種および同種リーダー配列を持つ融合物を含む融合タンパク質;免疫学的にタグ付けされたタンパク質;蛍光タンパク質、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼなどを融合パートナーとして含む融合タンパク質などの検出可能な融合パートナーを持つ融合タンパク質などが含まれる。
【0038】
「核酸分子」および「ポリヌクレオチド」という用語は互換的に用いられて、任意の長さのヌクレオチド重合体を指し、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはそれらの同族体を指す。ポリヌクレオチドは任意の立体構造を持つことができ、既知または未知の何らかの機能を果たす可能性がある。ポリヌクレオチドの非限定的な例には、遺伝子、遺伝子断片、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換え型ポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、制御領域、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、およびプライマーが挙げられる。核酸分子は直鎖状または環状であることができる。
【0039】
本明細書で用いられるように、単離化合物の状況で用いられる場合、「単離される」という用語はその化合物が自然の状態で生じる環境とは異なる環境にある関心対象の化合物を指す。「単離される」は、関心対象の化合物について実質的に濃縮される試料および/または関心対象の化合物が部分的もしくは実質的に精製される試料中にある化合物を含むことを意味する。
【0040】
本明細書で用いられるように、「実質的に純粋」という用語は、その自然の環境から回収されて、それが自然の状態で関連するその他の化合物を少なくとも60%非含有、好ましくは75%非含有、および最も好ましくは90%非含有である化合物を指す。
【0041】
特定のポリペプチドを「コード」する「コード配列」または配列は、例えば、インビボにおいて適切な調節塩基配列(または「制御要素」)の制御下に置いた場合、ポリペプチドへと転写(DNAの場合)および翻訳(mRNAの場合)される核酸分子である。コード配列の境界は、一般に、5'(アミノ)末端の開始コドンおよび3'(カルボキシ)末端の翻訳停止コドンによって定められる。コード配列には、ウイルス由来cDNA、原核性または真核性mRNA、ウイルス性または原核性DNAに由来するゲノムDNA配列、および合成DNA配列が含まれるが、これらに限定されるものではない。転写終了配列は、コード配列の3'に位置する可能性がある。その他の「制御要素」もコード配列に関連する可能性がある。ポリペプチドをコードするDNA配列は、所望のポリペプチドコード配列のDNAコピーとするために、特定の細胞によって好まれるコドンを用いてその特定の細胞内での発現のために至適化することができる。
【0042】
「によってコードされる」は、ポリペプチド配列またはその一部が核酸配列によってコードされるポリペプチドに由来する少なくとも3個ないし5個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも8個ないし10個のアミノ酸、さらにより好ましくは少なくとも15個ないし20個のアミノ酸の配列を含むポリペプチド配列をコードする核酸配列を指す。また、その配列によってコードされるポリペプチドを用いて免疫学的に同定可能なポリペプチド配列も包含される。
【0043】
「機能的に連結する」は、記載されるコンポーネントがそれらの通常の機能を果たすために配置を取る要素の配列を指す。従って、プロテアーゼ部位と機能的に連結する所与のプロポリペプチドはそのプロテアーゼ部位を認識するプロテアーゼによって開裂されて関心対象の生物活性(例えば、細胞毒性)を持つ成熟ポリペプチドを遊離することができる。プロモーターの場合、コード配列に機能的に連結するプロモーターはコード配列の発現に影響を及ぼすであろう。プロモーターまたはその他の制御要素は、それらがその発現を導くように機能する限り、そのコード配列に隣接する必要はない。例えば、転写されてまだ翻訳されていない介在配列はプロモーター配列とコード配列の間に存在することができて、このプロモーター配列は依然、そのコード配列に「機能的に連結する」と考えることができる。
【0044】
「核酸構築物」は、本来は一緒には見出されない一つまたはいくつかの機能単位を持つように構築されている核酸配列を意味する。例としては、環状、直鎖状、二本鎖、染色体外DNA分子(プラスミド)、コスミド(ラムダファージ由来COS配列を持つプラスミド)、非固有核酸配列を含むウイルスゲノムなどが挙げられる。
【0045】
「ベクター」は、遺伝子配列を標的細胞にトランスファーすることができる。典型的には、「ベクター構築物」、「発現ベクター」、および「遺伝子トランスファーベクター」は、関心対象の遺伝子の発現を誘導することができる核酸構築物であり、遺伝子配列を標的細胞にトランスファーすることができる核酸構築物を意味して、このトランスファーはベクターの全体または一部のゲノム組込み、またはベクターを染色体外要素として一過性または遺伝的に維持することによって達成することができる。従って、この用語にはクローニング、および発現媒体、ならびに統合ベクターが含まれる。
【0046】
「発現カセット」は、発現カセットのプロモーターに機能的に関連する関心対象の遺伝子/コード配列の発現を誘導することのできる任意の核酸構築物を含む。このようなカセットは、発現カセットを標的細胞にトランスファーするために、「ベクター」、「ベクター構築物」、「発現ベクター」、または「遺伝子トランスファーベクター」内に構築することができる。従って、この用語には、クローニングおよび発現媒体、ならびにウイルスベクターが含まれる。
【0047】
核酸およびアミノ酸「配列同一性」を確認するための技術は当技術分野において既知である。典型的には、このような技術には遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列の決定および/またはそれによってコードされるアミノ酸配列の決定、ならびにこれらの配列と第二のヌクレオチドまたはアミノ酸配列との比較が含まれる。一般に、「同一性」は、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列のそれぞれヌクレオチド対ヌクレオチドまたはアミノ酸対アミノ酸が完全に対応することを指す。2つまたはそれよりも多い配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、それらの「同一性割合(%)」を測定することによって比較することができる。核酸またはアミノ酸配列に関わらず、2つの配列の同一性割合(%)は、整合させた2つの配列の間の完全一致数を短い方の配列の長さで割って100を掛ける。核酸配列のおおよそのアラインメントは、SmithおよびWatermanの局所的相同性アルゴリズム、Advances in Applied Mathematics 2:482-489 (1981)によって示される。このアルゴリズムは、Dayhoff, Atlas of Protein Sequences and Structure, M. O. Dayhoff編、第5版. 3:353-358, National Biomedical Research Foundation, Washington, D.C., USAによって考案されたスコア行列を用いることによってアミノ酸配列に応用して、Gribskov, Nucl. Acids Res. 14(6):6745-6763 (1986)によって正規化することができる。配列の同一性割合(%)を決定するためのこのアルゴリズムの例示的実施は、Genetics Computer Group(Madison, WI)により「BestFit」ユーティリティーアプリケーションとして提供される。この方法の初期設定パラメータについては、Wisconsin Sequence Analysis Package Program Manual, Version 8 (1995)(Genetics Computer Group, Madison, WIより入手可能)に示されている。本発明に関する同一性割合(%)決定の好ましい方法は、エジンバラ大学(University of Edinburgh)が版権を保持して、John F. CollinsおよびShane S. Sturrokが開発したIntelliGenetics, Inc. (Mountain View, CA)から配布されているプログラムのMPSRCHパッケージを使用することである。スコアリングテーブルにおいて初期設定パラメータを使用する場合は、このパッケージセットからSmith-Watermanアルゴリズムを用いることができる(例えば、ギャップオープンペナルティー 12、ギャップエクステンションペナルティー 1、およびギャップ 6)。得られたデータから、「一致」の値は「配列同一性」を示す。配列間の同一性割合(%)または類似性割合(%)を算出するためのその他の適切なプログラムは当技術分野において一般的に知られていて、例えばもう一つのアラインメントプログラムはBLASTであり、デフォルトパラメータにて用いられる。例えば、BLASTNおよびBLASTPは次のデフォルトパラメータにて使用することができる:遺伝暗号=標準;フィルター=なし;鎖=両方;カットオフ=60;期待値=10;マトリックス=BLOSUM62;ディスクリプション=50シーケンス;ソート=HIGH SCORE;データベース=ノン-リダンダント、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDSトランスレーション+スイスタンパク質+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は次のインターネットアドレスで閲覧することができる:http://www. ncbi.nlm.gov/cgi-bin/BLAST。
【0048】
または、相同性は、相同領域間で安定な二本鎖を形成する条件下でのポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション、その後の一本鎖特異的ヌクレアーゼを用いた消化、および消化断片のサイズ測定によって求めることができる。2つのDNAまたは2つのポリペプチド配列は、上記の方法を用いて測定されるように、配列が一定の長さの分子を通して少なくとも約80%〜約85%、好ましくは少なくとも約85%〜約90%、より好ましくは少なくとも約90%〜約95%、および最も好ましくは少なくとも約95%〜約98%の配列同一性を示す場合に、互いに「実質的に相同」である。本明細書で用いられるように、実質的に相同は、特定のDNAまたはポリペプチド配列に対して完全な同一性を示す配列も指す。実質的に相同なDNA配列は、例えばその特別な系について定義されるように、ストリンジェントな条件下におけるサザンハイブリダイゼーション法で同定することができる。適切なハイブリダイゼーション条件の定義付けは当技術分野に含まれる。例えば、Sambrookら、後記;DNA Cloning、前記;Nucleic Acid Hybridization、前記を参照されたい。
【0049】
2つの核酸断片は、本明細書に述べられるように「選択的にハイブリダイズする」と考えられる。2つの核酸分子間の配列同一性の程度は、このような分子間のハイブリダイゼーションイベントの効果および強度に影響を及ぼす。部分的に一致する核酸配列は、完全に同一の配列が標的分子とハイブリダイズすることを少なくとも部分的に阻害する。完全に一致する配列のハイブリダイゼーションの阻害は、当技術分野において既知であるハイブリダイゼーションアッセイ法を用いて評価することができる(例えば、サザンブロット、ノーザンブロット、溶液ハイブリダイゼーションなど、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第二版、(1989) Cold Spring Harbor, N.Y.を参照されたい)。このようなアッセイ法は、例えば低ストリンジェンシーから高ストリンジェンシーまでの異なる条件を用いて、選択性の程度を変化させて実施することができる。部分的な配列同一性すら持たない二次プローブ(例えば、標的分子との配列同一性が約30%未満であるプローブ)は非特異的結合事象がなければ標的にハイブリダイズしないので、低ストリンジェンシーの条件が用いられる場合は二次プローブを用いて評価することができる。
【0050】
ハイブリダイゼーションに基づく検出系を用いる場合、核酸プローブは標的核酸配列に相補的なものが選択され、その上で、適切な条件の選択によって、プローブおよび標的配列が互いに「選択的にハイブリダイズ」、即ち結合してハイブリッド分子が形成される。「中等度にストリンジェント」な条件下において標的配列に選択的にハイブリダイズすることのできる核酸分子は、一般的には、選択された核酸プローブの配列と少なくとも約70%の配列同一性を持つ少なくとも長さ約10〜14ヌクレオチドの標的核酸配列を検出することのできる条件下においてハイブリダイズする。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、一般的には、選択された核酸プローブの配列と約90〜95%よりも高い配列同一性を持つ少なくとも長さ約10〜14ヌクレオチドの標的核酸配列の検出を可能とする。プローブおよび標的が特定の程度の配列同一性を持つプローブ/標的ハイブリダイゼーションに有用なハイブリダイゼーション条件は、当技術分野において既知であるように求めることができる(例えば、Nucleic Acid Hybridization : A Practical Approach、B. D. HamesおよびS. J. Higgins(編)、 (1985) Oxford; Washington, DC ; IRL Pressを参照されたい)。
【0051】
ハイブリダイゼーションのためのストリンジェントな条件に関して、例えば次の要因:プローブおよび標的配列の長さおよび性状、様々な配列の塩基組成、塩およびその他のハイブリダイゼーション溶液の成分の濃度、ハイブリダイゼーション溶液における遮断物質の有無(例えば、ホルムアミド、硫酸デキストラン、およびポリエチレングリコール)、ハイブリダイゼーションの反応温度および時間のパラメータを変化させることによって、さらには洗浄条件を変化させることによって特定のストリンジェンシーを確立するために多くの同等条件を用いることができることは当技術分野において周知である。ハイブリダイゼーション条件の特定の組み合わせの選択は、当技術分野における標準的方法に従って選択される(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第二版、 (1989) Cold Spring Harbor, N.Y.を参照されたい)。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、50℃またはそれ以上、0.1×SSC(15mM塩化ナトリウム/1.5mMクエン酸ナトリウム)におけるハイブリダイゼーションである。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件のもう一つの例は、50%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート試薬、10%硫酸デキストラン、および20mg/ml変性サケ精子DNAの溶液中で42℃で一晩インキュベートした後、フィルターを約65℃の0.1×SSCで洗浄する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、少なくとも上記の典型的条件と同程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件であり、ここで、条件が上記の具体的なストリンジェントな条件の少なくとも約80%ストリンジェントであれば、一般的には少なくとも約90%ストリンジェントであるならば、条件は少なくともストリンジェントであると見なされる。その他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は当技術分野において既知であり、本発明のこの特定の態様の核酸を同定するためにも用いることができる。
【0052】
最初のポリヌクレオチドは、それが二番目のポリヌクレオチドの領域、そのcDNA、その相補物と同一もしくは実質的に同一のヌクレオチド配列を持つ場合、または上記のように配列同一性を示す場合、二番目のポリヌクレオチドから「派生」する。
【0053】
最初のポリペプチドは、それが(i)二番目のポリヌクレオチドから派生する最初のポリヌクレオチドによってコードされる場合、または(ii)上記のように二番目のポリペプチドと配列同一性を示す場合、二番目のポリペプチドから「派生」する。本明細書で用いられる「単位投与剤形」という用語は、被検体(例えば、動物、通常はヒト)への単位用量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、例えば薬学的に許容される希釈剤、担体または賦形剤と連携して所望の効果を十分に発揮する量のプラスミドのように、予め定められた量の物質を含む。本発明の新規の単位投与剤形の仕様は用いられる特定の物質および達成されるべき効果、ならびに宿主内で各化合物と関連するファーマコダイナミクスを含む様々な因子に依存するが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0054】
「治療(treatment)」、「治療する(treating)」、「治療する(treat)」などの用語は、所望の薬学的および/または生理学的効果を得ることを指す。この効果は疾患またはその症状を完全または部分的に阻止する観点から言えば予防的である可能性があり、また/または疾患および/またはその疾患に起因する副作用の部分的もしくは完全治癒の観点から言えば治療的である可能性がある。本明細書で用いられるように「治療」は、哺乳動物、特にヒトにおける疾患のあらゆる治療を網羅して、(a)その疾患に対する素因は持っているがその疾患であると診断されたことはまだない被検体においてその疾患が発症することを防ぐこと;(b)その疾患を阻害する、即ち、疾患の進行を阻止すること;および(c)その疾患を緩和する、即ち、その疾患の退行および/または一つもしくはいくつかの疾患症状の緩和を引き起こすことが含まれる。「治療」は、疾患または状態がない場合であっても、薬学的効果をもたらすための物質の送達を包含することも意味する。例えば、「治療」は増強された効果または所望される効果(病原体負荷量の抑制、CD4数の増加、疾患症状の軽減など)を被検体に提供することのできる修飾されたプロポリペプチドをコードする核酸の送達を包含する。
【0055】
「被検体(subject)」、「宿主(host)」、および「患者(patient)」は本明細書において互換的に用いられて、細胞内病原体に感受性であり、またはこれによる感染症を有して本発明の方法によって治療することのできるヒトまたはヒト以外の動物を指す。一般に、被検体は哺乳動物の被検体である。例示的な被検体には、ヒト、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコおよびウマが含まれ、特にヒトは関心対象であるが、必ずしもこれらに限定されることはない。
【0056】
発明の詳細な説明
本発明は、抗病原体ポリペプチドおよびポリヌクレオチド組成物ならびにその使用方法を提供する。一般に、本発明の組成物は、プロドメイン、病原体プロテアーゼ開裂部位、および細胞内病原体のプロテアーゼによるプロポリペプチドの開裂によって活性化されることのできる細胞毒性ドメインを含む修飾プロポリペプチドを提供する。本発明は、対象であるポリペプチドをコードする核酸、ならびにその対象である核酸を含むベクターおよび宿主細胞をさらに提供する。病原体プロテアーゼによるプロポリペプチドの開裂によって細胞毒性ドメインが活性化して、病原体が感染した宿主細胞の生存性が低下する。病原体感染細胞の生存性を低下させるために対象である核酸およびポリペプチドを使用する方法、ならびに病原体が感染した被検体の病原体負荷量を抑制するための方法を提供する。本発明は、対象である方法を実施するためのキットをさらに提供する。
【0057】
本発明は、いくつかのプロテアーゼ開裂依存細胞毒性分子をコードするポリヌクレオチド配列を使用して病原体に感染した細胞の生存性を低下させることができるという観察所見に基づく。多くの態様において、分子は病原体に特異的なプロテアーゼ開裂部位を含むように操作されているプロポリペプチドをコードして、病原体プロテアーゼによってプロポリペプチドが開裂すると、プロポリペプチドの細胞毒性ドメインが活性化されて病原体を含む細胞が死滅する。従って、本発明はこのようなプロテアーゼ開裂依存細胞毒性分子をコードするポリヌクレオチド、ならびにこのようなポリヌクレオチドおよびこのようなポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを含む発現カセット、ベクターおよび細胞を包含する。
【0058】
本発明の核酸は、病原体、特にウイルス性病原体によってコードされるプロテアーゼを発現している細胞の生存性を低下させるために使用することができる。これらの方法は、病原体のある系統に対するヌクレオチドの有効性を調べるためのアッセイ法として使用することができる。本発明のヌクレオチドは、病原体が感染する被検体の病原体負荷量を抑制するために使用することもできる。このように、対象である方法は、ウイルスが感染した細胞がウイルスにコードされる未感染細胞が本来持たないプロテアーゼを発現するHIVおよびHCVなどのウイルス性疾患の治療に特に有用である。
【0059】
本発明のさらなる説明では、先ず本発明のポリヌクレオチドについて説明して、続いて本発明のポリペプチド、およびポリヌクレオチドを用いて病原体プロテアーゼを発現している細胞の生存性を低下させて病原体に感染した被検体の病原体負荷量を抑制するための方法について説明する。
【0060】
開裂依存細胞毒性ポリペプチド
一つの局面において、本発明は病原体プロテアーゼ開裂依存細胞毒性ポリペプチドを提供する。一般に、このポリペプチドは、プロドメインおよび細胞毒性ドメインを持つ天然のプロポリペプチドまたはその変異型の修飾型である。修飾プロポリペプチドは、プロポリペプチドに固有でない配列特異的プロテアーゼ開裂部位を持ち、この開裂部位はプロドメインと細胞毒性ドメインの間に遺伝子操作によって挿入される。修飾プロポリペプチドの細胞毒性ドメインは、病原体プロテアーゼ、通常は配列特異的病原体プロテアーゼによってプロポリペプチドから開裂するまで、検出可能な細胞毒性活性をほとんどまたは全く持たない。従って、本明細書では細胞毒性ドメインを「開裂依存細胞毒性ポリペプチド」とも呼ぶ。
【0061】
一般に、対象であるポリペプチドは天然のプロポリペプチドまたは生物学的に活性なその変異型の修飾型である。プロポリペプチドは通常はプロテアーゼ、アポトーシス分子、またはヘビ、クモ、細菌、植物もしくは真菌毒素などの毒素のプロポリペプチドである。多くの態様において、プロポリペプチドは細胞毒性活性を持つ「成熟」ポリペプチドの前駆体であり、従って、そのプロポリペプチドは成熟ポリペプチドに比べて細胞内にあれば、顕著な細胞毒性を有する。一般に、プロポリペプチドは、細胞内に存在する場合、標準的試験であるヒト細胞生存性により測定される通り、成熟ポリペプチドの細胞毒性の約20%以下、約10%以下、約5%以下、約2%以下、約1%以下、または約0.5%よりも低い細胞毒性を示す。
【0062】
多くの態様において、プロポリペプチドはヒトプロポリペプチドであるか、またはヒトポリペプチドに由来し、プロドメイン、プロテアーゼ部位、および細胞毒性ドメインの3つのドメインを含む。多くの態様において、プロポリペプチドは、プロカスパーゼ-3(例えば、配列番号:4)、プロカスパーゼ-8(例えば、配列番号:6)、またはBH3相互作用型ドメインデスアゴニスト(BH3 interacting domain death agonist:BID)プロポリペプチド(配列番号:1)などの細胞アポトーシス経路に関与する(Raff, Nature 396,119-122 (1998), Thornberryら、Science 281, 1312-1316 (1998)、Hengartner, Cell 104, 325-328 (2001)、およびFraserら、Cell 85, 781-784. (1996)において総説される)。BIDに基づく修飾プロポリペプチドは特に関心対象である。
【0063】
内因性開裂部位の修飾
一部の態様において、プロポリペプチドは一つまたはいくつかの内因性プロテアーゼ開裂部位を不活化するように修飾される。
【0064】
一般に、プロポリペプチドは、プロポリペプチドをプロドメインおよび細胞毒性ドメインに開裂する配列特異的プロテアーゼに関して、少なくとも1つ、多くの場合は2つ、時には3つ、4つまたは5つもしくはそれよりも多くの内因性認識部位を持つ。これらの「天然(ネイティブ(native))」の認識部位は、その部位を認識する細胞性プロテアーゼによって開裂することができる。これらの天然の部位において開裂するプロテアーゼの正体は不明であることが多いが、プロポリペプチドにおける配列特異的認識部位は明らかであることが多い。例えば、BIDは3つの内部Asp部位(Asp59、Asp75、およびAsp98)の任意の一つまたは複数において開裂して成熟BIDポリペプチドの細胞毒性活性を活性化することができる(Grossら、(1999) J. Biol. Chem 274: 1156-1163;Liら、 (1998) Cell 94: 491-501)。
【0065】
アポトーシスにおけるカスパーゼおよびその他の分子に関する天然の配列特異的プロテアーゼ認識配列は周知である(Earnshawら、(1999) Annu. Rev. Biochem. 68: 383-424)。カスパーゼ8によるBIDの開裂によって形成される優勢p15断片のLQTD/認識モチーフはカスパーゼ8のコンセンサスとほぼ等しい。Liら(Cell 94: 491-501)によると、LQTD59/はカスパーゼ8の開裂部位であり、IEAD75/はグランザイムBの開裂部位である。カスパーゼ6、8、9のコンセンサスは(I/L/V)EXDであり、ここでXは任意のアミノ酸である。カスパーゼ2、3、7のコンセンサスモチーフはDEXDであり、ここでXは任意のアミノ酸である。配列DEMDはカスパーゼ3の代表的認識部位であるが、DQMDも非常によく開裂する。D59での開裂は優勢p15産物を生じ、D75およびD98におけるさらなる開裂はそれぞれ微量のp13およびp11断片を生じる(Grossら、J. Biol. Chem. 274: 1156-1163)。グランザイムBの認識配列も当技術分野において既知である(例えば、Thomasら、Proc. Natl. Acad. Sci. 98: 14985-14990, 2001、およびBarryら、Mol Cell Biol 20: 3781, 2000)。このように、天然の配列特異的プロテアーゼ認識配列は、プロポリペプチドの配列を既知のプロテアーゼ認識配列と比較することによってプロポリペプチドにおいて識別することができる。
【0066】
天然の配列特異的プロテアーゼ認識配列も経験的に識別することができる。例えば、グランザイムBおよび一部のカスパーゼのようにアポトーシスに関与するプロテアーゼはAsp部位にて開裂するので、それぞれが修飾されて例えばGlu部位となる異なるAsp部位を持つ一連の修飾プロポリペプチドが産生される可能性があり、実施例のセクションに述べられる方法または当技術分野において既知であるその他の方法(例えば、Harrisら、J. Biol. Chem. (1998) 273:27346-27373)を用いて活性を調べることができる。
【0067】
プロテアーゼ認識部位が修飾されたプロポリペプチドはその部位での開裂を起こさず、未修飾のプロポリペプチドに比べて細胞内での毒性が低下している。または、プロポリペプチドの開裂部位は生化学的に、例えばプロポリペプチドをグランザイムBまたはカスパーゼのようなプロテアーゼを含むタンパク質抽出物と共にインキュベートして、生じるプロポリペプチドのペプチド断片のC末端またはN末端をペプチドシーケンシングにて調べることによって決定することができる。
【0068】
BIDは、グランザイムBまたはカスパーゼ8のプロテアーゼ、および場合によってはその他のプロテアーゼによって開裂してそのプロアポトーシス性の細胞毒性活性を活性化することができる。プロポリペプチドのプロテアーゼ部位は、一般的には少なくとも4アミノ酸の長さ、少なくとも6アミノ酸の長さ、通常は約7アミノ酸の長さであり、時には8、10、12または14アミノ酸よりも長いプロテアーゼの認識部位内にある。多くの態様において、BIDはCys残基の位置で開裂する。一般に、プロポリペプチドはヒトゲノムをコードするポリペプチドまたはその生物学的な変異型である。
【0069】
好ましい態様において、修飾プロポリペプチドは配列特異的プロテアーゼに関して少なくとも1つ、多くの場合は2つ、時には3つ、4つもしくは5つまたはそれよりも多くの認識部位が変化していて、その結果、成熟ポリペプチドまたは細胞毒性活性を保持したその一部を細胞内に放出することができる。通常、これらの「天然」の認識部位の一つが上記のように病原体プロテアーゼの非天然の認識部位で置換される。さらなる天然の認識部位は、天然の認識部位を認識する細胞プロテアーゼによって開裂しないように変化させることができる。これは、認識部位のアミノ酸を欠失、置換または付加することによって実施することができる。多くの態様において、開裂部位のアミノ酸は修飾される。例えば修飾BIDの場合、BIDアミノ酸配列の59位、75位および98位のAspアミノ酸残基は、例えばGlu残基と置換することができる。多くの態様において、BIDアミノ酸配列の98位の残基は、例えばGlu残基と置換される。これらの位置におけるアミノ酸の置換は、一般に、その部位を未修飾部位に特異的な細胞性プロテアーゼの基質でなくする。当業者に認識されるように、BID配列が変化しているならば(例えば、N末端における伸長または短縮)、アミノ酸の変化は上記の位置に相当する位置である可能性がある。
【0070】
少なくとも一つの配列特異的プロテアーゼに関する少なくとも2つの天然の認識部位が変化した修飾プロポリペプチドは、通常は、単一の天然認識部位が変化した類似の修飾プロポリペプチドよりも細胞内での毒性が低い。このように、多くの態様において、少なくとも2つの天然認識部位が変化した修飾プロポリペプチドは、標準的試験であるヒト細胞生存性により測定される通り、単一の天然認識部位が変化した類似の修飾プロポリペプチドよりも細胞内での毒性が95%よりも低く、90%よりも低く、75%よりも低く、50%よりも低く、35%よりも低く、または20%よりも低い。
【0071】
非内因性、病原体特異的プロテアーゼ開裂部位を付加するための修飾
対象である修飾プロポリペプチドは、一般に、そのプロポリペプチドに固有でない配列特異的プロテアーゼ部位を遺伝子操作によって付加するように修飾される。付加される「非天然(non-native)」プロテアーゼ部位の選択は、その系が一緒に用いられる病原体に依存する。例えば、HCV感染を治療するために用いられるべきプロポリペプチド(またはそのコードするポリヌクレオチド)は遺伝子工学によってHCVプロテアーゼ部位(例えば、NS3セリンプロテアーゼ)を持ち、HIV-1感染を治療するために用いられるべきプロポリペプチド(またはそのコードするポリヌクレオチド)は通常はHIV-1プロテアーゼ認識部位を持つように遺伝子的に操作される。さらに、プロテアーゼ開裂部位は、感染病原体の遺伝子型(例えば、HCVの場合は遺伝子型1、2、3など;HIVの場合は、HIV-1、HIV-2など)に応じてさらに選択することができる。例示的なHCVプロテアーゼ部位は次の通りである:
ここで、「/」は開裂部位であり、開裂部位直前の残基は通常はCysであるがThrであることも可能であり、その部位の最初の残基はAspであるがGluであることも可能であり、さらに開裂部位から後に4番目の位置にある残基はVal、Leu、Ala、TrpまたはTyrのような疎水性アミノ酸である。その部位の最初および開裂部位直前の保存残基は通常はHCVプロテアーゼ開裂部位に存在する。HCVプロテアーゼ、特にプロテアーゼNS3の開裂部位については、Grakoui, A.ら、(Journal of Virology 67: 2832-2843, 1993)およびUrbaniら、(Journal of Biological Chemistry 272: 9204-9209 (1997))においてさらに説明されている。
【0072】
表1は遺伝子工学によってプロポリペプチドに挿入して修飾プロポリペプチドを作成することのできるプロテアーゼ部位の例示的リストを示し、ここで、「---」は開裂部位である。これらの配列は短縮することができることが理解される。多くの態様において、HCVと共に用いるためのベクターにおけるプロテアーゼ開裂部位は
であり、HIV-1と共に用いるためのプロテアーゼ開裂部位は
または
である。
【0073】
(表1)
【0074】
このように、プロポリペプチドは任意のRNAウイルス、または病原体のプロテアーゼにおける配列特異性が既知であるかまたは容易に識別可能である限り、その他の細胞内病原体と共に使用するためにデザインされることができる。
【0075】
追加の病原体特異的プロテアーゼおよび特定の開裂部位について記載されて、本発明に従って用いることができる。
【0076】
例えば、HSV-1成熟プロテアーゼおよびプロテアーゼ開裂部位について述べられている。Hall, M. R. T.およびW. Gibson, Virology, 227: 160 (1997)などを参照されたい;この開示は参照として組み入れられる。さらに、プラスメプシンIおよびIIとして記載される2つのアスパラギン酸プロテイナーゼは、熱帯熱マラリア原虫の消化胞中に見出されている。それぞれのプロテイナーゼ開裂部位も開示されている。Moon, R. P., Eur. J. Biochem., 244:552 (1997)などを参照されたい。さらなる病原体特異的プロテアーゼ開裂部位には、HSV-1プロテアーゼ開裂部位p17-p24
p7-p1
およびpr-RT
が含まれる。
【0077】
当業者は、上記の任意のプロテアーゼ開裂部位は、その部位が意図する病原体特異的プロテアーゼによって特異的に開裂される限り、(例えば、部位特異的突然変異によって)所望通りに修飾することができることを認識する。いくつかの態様において、例えば修飾プロポリペプチドおよびそのコードする核酸のサイズを至適化するために、特異的なタンパク分解性開裂に必要な最小のアミノ酸配列を使用することが望ましい可能性がある。最小開裂部位配列は、多くの病原体特異的プロテアーゼ開裂部位について報告されている。または、所望のタンパク分解性開裂部位における最小配列は突然変異、特に欠失分析および部位特異的突然変異(アラニンスキャニング突然変異など)によって容易に得ることができる。修飾開裂部位は、下記のような標準的プロテアーゼ開裂アッセイ法において容易にアッセイすることができる。
【0078】
本明細書で用いられる「特異的開裂」は、特定のプロテアーゼ開裂部位におけるペプチド結合がプロテアーゼ開裂部位のアミノ酸配列に特異的に結合するプロテアーゼによって特異的に崩壊(即ち、加水分解)することを意味する。プロテアーゼ開裂部位の特異的開裂は、タンパク質断片の分析、プロテアーゼ活性の競合阻害などの様々な手法に従ってアッセイすることができる。
【0079】
病原体プロテアーゼは、セリンエンドペプチダーゼ、システインエンドペプチダーゼ、アスパラギン酸エンドペプチダーゼ、メタロエンドペプチダーゼ、または触媒作用が明らかでないエンドペプチダーゼである可能性がある。多くの態様において、プロテアーゼ部位は、ウイルス配列特異的プロテアーゼのための部位である。特に対象となる態様において、プロテアーゼ部位は、サイトメガロウイルス、I型単純疱疹ウイルス、C型肝炎ウイルス(遺伝子型1、2、3などのHCVを含むHCV)、1型ヒト免疫不全ウイルス、2型ヒト免疫不全ウイルス、およびカポジ症候群関連ヘルペスウイルスプロテアーゼ開裂部位、ピコルナウイルス(口蹄疫ウイルス、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス)、フラビウイルス(西ナイル熱、黄熱、デング熱、日本脳炎、マレー渓谷脳炎、セントルイス脳炎)、トガウイルス(東部ウマ脳炎、西部ウマ脳炎、ベネズエラ脳炎、チクングンヤ、風疹、ロスリバー熱)、カリシウイルス(ノーウォーク物質)、アデノウイルスから選択することができるが、当技術分野ではその他にいくつかの病原体およびそれぞれのプロテアーゼ部位が知られている。本発明の修飾プロポリペプチドのプロテアーゼ認識配列(即ち、プロテアーゼ部位)は、通常は少なくとも6アミノ酸の長さ、少なくとも8アミノ酸、少なくとも10アミノ酸、およびしばしば少なくとも12または14アミノ酸もしくはそれよりも長いアミノ酸の長さである。
【0080】
一般に、非天然のプロテアーゼ認識配列は、プロポリペプチドのアミノ酸の置き換え、プロポリペプチドの2つのアミノ酸残基間への非天然の認識配列の挿入、またはこれらの方法の組み合わせによってプロポリペプチド配列に挿入される。多くの態様において、非天然のプロテアーゼ認識配列は、開裂してプロドメインおよび成熟ポリペプチドを遊離する天然の認識配列と置き換わるか、または部分的に置き換わる。非天然の病原体特異的プロテアーゼ開裂部位の導入方法に関わらず初期のプロポリペプチドに含まれる天然の開裂部位は、修飾プロポリペプチド内において、修飾されていない天然の認識配列を認識する細胞プロテアーゼによってはもはや開裂しないように変更される。
【0081】
HIVまたはHCVプロテアーゼ部位および修飾された内因性プロテアーゼ開裂部位を持つ例示的な修飾プロカスパーゼ-3(配列番号:5)、プロカスパーゼ-8(配列番号:7)およびプロBIDプロポリペプチド(配列番号:2および3)を図6に示す。
【0082】
修飾プロポリペプチドをコードする核酸
本発明は、修飾プロポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する(本明細書では、上記のように「病原体プロテアーゼ開裂依存細胞毒性ポリペプチドとも呼ぶ。遺伝コードおよび核酸を操作するための遺伝子組換え技術は既知であり、修飾プロポリペプチドのポリペプチド配列は上記のように説明されることから、これらの核酸のデザインおよび産生は十分に当業者の技術内である。
【0083】
対象である核酸は、通常、対象である修飾プロポリペプチドをコードする1つのオープンリーディングフレームを含むが、一部の態様では、そのプロポリペプチド発現のための標的細胞がヒト細胞などの真核細胞である可能性があるため、このオープンリーディングフレームはイントロンによって中断される可能性がある。対象である核酸は一般に、核酸に加えてRNA安定性、翻訳効率などを司ることのできる3'および5'非翻訳領域(UTR)を含む転写ユニットの一部である。対象である核酸は、核酸に加えて、プロポリペプチドをコードするRNAの転写および発現を司るプロモーターならびに転写ターミネーターを含む発現カセットの一部でもある。いくつかの態様において、このプロモーターはそのプロポリペプチドが一緒に使用されるべき病原体によって誘導可能である。
【0084】
例示的な真核プロモーターには次が含まれるが、これらに限定されるものではない:マウスメタロチオネインI遺伝子配列のプロモーター(Hamerら、J. Mol. Appl. Gen. 1:273-288, 1982);ヘルペスウイルスのTKプロモーター(McKnight, Cell 31:355-365, 1982);SV40初期プロモーター(Benoistら、Nature (London) 290:304-310, 1981);酵母gall遺伝子配列プロモーター(Johnstonら、Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 79:6971-6975, 1982);Silverら、Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 81:5951-59SS, 1984)、CMVプロモーター、EF-1プロモーター、エクジソン反応性プロモーター、テトラサイクリン反応性プロモーターなど。特にウイルス性プロモーターは一般的に強力なプロモーターであり、特に関心対象である可能性がある。一部の態様において、標的病原体のプロモーターであるプロモーターが用いられる。本発明の使用のためのプロモーターは、それらが導入される細胞タイプ(および/または動物)内で機能するように選択される。
【0085】
いくつかの態様において、細胞内病原体がウイルスである場合、プロモーターは感染しているウイルス性病原体の一つまたはいくつかのウイルス性転写因子に由来するまたはそれによって活性化可能なウイルス性プロモーターである。例えば、感染ウイルスがHIVである場合、本発明の修飾プロポリペプチドの発現を誘導するプロモーターはHIVプロモーター、またはHIVが感染した宿主細胞内での転写を高めるその他のプロモーターである。
【0086】
対象である核酸セグメントは、通常は修飾プロポリペプチドをコードする核酸の構築を促進するために、制限部位、多くのクローニング部位、プライマー結合部位、連結可能末端、遺伝子組換え部位なども含むことができる。
【0087】
多くの態様において、未修飾プロポリペプチドコード核酸から修飾プロポリペプチドコード核酸を作成するためには、標準的な組換えDNA手法(Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology、第3版、Wiley & Sons, 1995;Sambrookら、Molecular Cloning : A Laboratory Manual、第2版、(1989) Cold Spring Harbor, N.Y.)を用いて親抗体フレームワークコード配列をコードする核酸配列において適切なヌクレオチドを置換、欠失、および/または付加する。
【0088】
例えば、突然変異を司る部位を用いて、変異したポリヌクレオチドがプロポリペプチド非天然プロテアーゼ部位をコードするように、プロポリペプチド天然プロテアーゼ部位をコードするポリヌクレオチドに核酸残基を導入/欠失/置換することができる。その他の方法では、PCRが用いられる。一つのPCR法では、修飾プロポリペプチドコード配列を作成するために、「重複伸長PCR」(Hayashiら、Biotechniques. 1994: 312, 314-5)を利用する。この方法において、修飾プロポリペプチドの置換/挿入/欠失したアミノ酸残基をコードする核酸残基コドンは遺伝子操作によってPCRプライマーに組み込まれる。親核酸配列を鋳型として用いる反復重複PCR反応によって、修飾核酸が作成される。これらの多くの方法の産物は修飾フレームワーク領域である。Stratagene(La Jolla, CA)の「クイックチェンジ(Quickchange)」(商標)キットを含めて、核酸を修飾するためのその他のいくつかの方法も用いることができる。
【0089】
本発明は、対象である核酸を含むベクター(「構築物」とも言う)をさらに提供する。本発明の多くの態様において、修飾プロポリペプチドをコードする核酸配列は、その配列が操作によってプロモーターなどを含む発現制御配列に連結された後に宿主内で発現する。対象である核酸も、一般的にエピソームとして、または宿主染色体DNAの不可欠な部分として宿主有機体内で複製可能な発現ベクターに組み込まれる。通例、発現ベクターは、所望のDNA配列を用いてトランスフォームした細胞の検出を可能とするために、例えばテトラサイクリンまたはネオマイシンのような選択マーカーを含む(例えば、本明細書に参照として組み入れられる米国特許第4,704,362号を参照されたい)。単一または二重発現カセットベクターなどのベクターは当技術分野において周知である(Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology、第3版、Wiley & Sons, 1995;Sambrookら、Molecular Cloning : A Laboratory Manual、第2版、(1989) Cold Spring Harbor, N.Y.)。適切なベクターには、ウイルスベクター、プラスミド、コスミド、人工染色体(ヒト人工染色体、細菌人工染色体、酵母人工染色体など)、微小染色体などが含まれる。通常はレトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ関連ウイルスベクターが用いられる。
【0090】
宿主細胞
本発明は、本発明の核酸またはベクターを含むヒト以外の動物の単離されたインビトロ宿主細胞(例えば、構築物の作成および/またはスクリーニングアッセイ法で使用するため)およびインビボにおける宿主細胞を含む宿主細胞を提供する。
【0091】
大腸菌は、本発明の核酸配列のクローニングに有効な原核宿主である。使用に適したその他の微生物宿主には、バチルスサブチリス(Bacillus subtilus)、ならびにサルモネラ菌、セラチア菌および種々のシュードモナス種のようなその他の腸内細菌科のような細菌が含まれる。これらの原核宿主において、一般に宿主細胞に適合する発現制御配列(例えば、複製の起点)を含む発現ベクターを作成することもできる。さらに、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、β-ラクタマーゼプロモーター系、またはλファージに由来するプロモーター系のように、任意の数の様々な周知のプロモーターが含まれる。これらのプロモーターは一般に発現を制御して、選択的にオペレーター配列を持ち、また転写および翻訳の開始および終了のためのリボソーム結合部位配列などを持つ。
【0092】
酵母のようなその他の微生物も発現に使用することができる。サッカロミセス属またはピヒア属は好ましい宿主であり、適切なベクターは3-ホスホグリセレートキナーゼプロモーターまたはその他の解糖酵素遺伝子のプロモーターなどのプロモーターのような発現制御配列、ならびに複製の起点、終止配列および所望の同様の配列を持つ。
【0093】
微生物に加えて、哺乳動物組織の細胞培養物も本発明のポリペプチドを発現および作成するために用いることができる(参照として本明細書に組み入れられるWinnacker,「From Genes to Clones」, VCH Publishers, New York, N.Y. (1987)を参照されたい)。当技術分野では完全な抗体を分泌することのできる多くの適切な宿主細胞系が開発されていることから真核細胞が好ましく、CHO細胞株、各種COS細胞株、HeLa細胞、好ましくは骨髄腫細胞株など、およびトランスフォームしたB細胞またはハイブリドーマが含まれる。これらの細胞の発現ベクターは、複製の起点、プロモーター、エンハンサーのような発現制御配列(Queenら、Immunol. Rev., 89,49-68 (1986)、参照として本明細書に組み入れられる)、ならびにリボソーム結合部位、RNAスプライシング部位、ポリアデニル化部位および転写終止配列のような必要なプロセッシング情報部位を含むことができる。好ましい発現制御配列は、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、ウシ乳頭腫ウイルスなどに由来するプロモーターである。修飾プロポリペプチドが特異的である(即ち、修飾プロポリペプチドが細胞内病原体によって産生されるプロテアーゼのためのプロテアーゼ開裂部位を含む)細胞内病原体による感染を支持することのできる、霊長類の細胞および細胞株を含む哺乳動物細胞が特に関心対象である。
【0094】
対象である修飾プロポリペプチドは、発現の目的に応じて、従来の方法に従って原核生物または真核生物内で発現させることができる。タンパク質の大量生産において、大腸菌、バチルスサブチリス、酵母菌のような単細胞生物、バキュロウイルスベクターと併用される昆虫細胞、または脊椎動物、特に哺乳動物のような高等生物の例えばCOS7細胞などの細胞は発現宿主細胞として用いることができる。いくつかの状況において、天然の折り畳み修飾および転写後修飾がコードされるタンパク質に有利に働く真核細胞内で遺伝子を発現することが望ましい。ポリペプチドは実験室内で合成することもできる。対象であるタンパク質の完全配列のサブセットであるポリペプチドを用いて、機能にとって重要なタンパク質の部分を同定および研究することができる。
【0095】
特別な関心対象の態様において、宿主細胞は、ウイルスのような細胞内病原体が感染することが可能であり、プロポリペプチドの細胞毒性ドメイン開裂産物の細胞毒性に対して感受性である哺乳動物(例えば)ヒトの細胞である。一部の態様において、ヒト細胞はCHOP細胞、huh7細胞またはH9C2細胞であり、細胞は関心対象のウイルスによる感染に対して感受性であることから選択される。
【0096】
修飾プロポリペプチドを用いたスクリーニング方法
本発明は、修飾プロポリペプチドのスクリーニング方法をさらに提供する。多くの態様において、これらの方法は、病原体がコードするプロテアーゼを発現している細胞に対象であるプロポリペプチドまたは対象であるプロポリペプチドをコードする核酸を導入する工程、該プロポリペプチドの発現を可能とする条件下でその細胞をインキュベートする工程、およびその細胞の生存性を測定する工程を伴う、インビトロにおける方法である。その他の態様において、これらの方法は、病原体がコードするプロテアーゼを発現している病原体に感染したヒト以外の動物における対象であるポリペプチドまたは対象であるポリペプチドをコードするヌクレオチドを導入する工程、およびその動物の症状を検査する工程を伴う、インビボにおける方法である。
【0097】
インビトロにおけるアッセイ法
一般に、この方法は、病原体プロテアーゼを発現している細胞への病原体プロテアーゼの認識部位を含む対象である修飾プロポリペプチドをコードする核酸を導入する工程、該プロポリペプチドを発現させるために細胞をインキュベートする工程、および細胞の生存性を測定する工程を伴う。
【0098】
多くの態様において、病原体がコードするプロテアーゼを発現している細胞の20%まで、50%まで、70%まで、80%まで、90%まで、95%まで、98%まで、および99%または99.5%までがこの方法によって生存性が低下している(即ち、死滅する)。細胞の生存性は、通常、それが生存しているか否かによって決定されて、これはトリパンブルーのような色素または蛍光の取り込みに関する試験などの標準的な生存性試験を用いて測定することができる。
【0099】
一般に、修飾プロポリペプチドのプロテアーゼ開裂部位を開裂するプロテアーゼは細胞内病原体が存在する(即ち、細胞が細胞内病原体に感染する)結果として細胞に含まれる。しかし、多くの態様において、標的細胞は関心対象のプロテアーゼに関して遺伝子組換え型である(例えば、天然のウイルスまたは組換え型ウイルスの感染、細胞内でプロテアーゼを発現することのできるウイルスレプリコン、プラスミドまたはその他の遺伝子組換え分子の存在の結果として)。
【0100】
多くの態様において、病原体がコードするプロテアーゼはウイルスなどの細胞内病原体のプロテアーゼである。適切なウイルス性病原体はVirus Taxonomy: The Classification and Nomenclature of Viruses. The Seventh Report of the International Committee on Taxonomy of Viruses, (van Regenmortelら(編)、(2000). Academic Press, SanDiego)において見出すことが可能であり、またはオーストラリア国立大学(Australian National University)のワールドワイドウェブサイトにあるユニバーサルウイルスデータベース(Universal Virus Database)(バージョン2)で閲覧することができる。RNAウイルス、特にHCVのような(+)RNAウイルス、(-)RNAウイルス、およびHIV-1のようなRNA-RTウイルスのプロテアーゼを発現している細胞が対象である。
【0101】
一般に、対象であるプロポリペプチドをコードする核酸は、当技術分野において既知の方法(例えば、ウイルス感染、トランスフェクション、電気穿孔法など、Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology、第3版、Wiley & Sons, 1995;Sambrookら、Molecular Cloning : A Laboratory Manual、第2版、(1989) Cold Spring Harbor, N.Y.にて議論されている)を用いて病原体プロテアーゼを持つ細胞内に導入されて、その細胞はプロポリペプチドが発現するまで1時間、12時間、24時間または実に数日間も、インキュベートされる。
【0102】
多くの態様において、病原体によってコードされるプロテアーゼを発現する標的細胞の生存性を低下させる対象である方法は、病原体がコードするプロテアーゼを発現している細胞の生存性に対する修飾プロポリペプチドの影響を調べるためのアッセイ法において用いられる。一般に、細胞は生存性の測定前に約1時間、3時間、8時間、24時間、または実に48時間もしくはそれよりも長い期間、インキュベートされる。細胞の生存性はそれが生きているか否かによって決定されて、これはトリパンブルーのような色素または蛍光の取り込みに関する試験のような標準的な生存性試験を用いて測定することができる。多くの態様において、このアッセイ法は病原体プロテアーゼを発現している多くの細胞に対して実施されて、細胞生存性は百分率として表される。多くの態様において、このアッセイ法では、病原体がコードするプロテアーゼを発現している細胞の20%まで、50%まで、70%まで、80%まで、90%まで、95%まで、98%まで、および実に99%または99.5%までが未修飾プロポリペプチドが投与される対照群に比べて生存性が低下している(例えば、死滅する)。このような方法は、一般に対象である細胞の生存性を低下させるので、様々なアッセイ法において使用することができる。
【0103】
その系統によってコードされるプロテアーゼを発現している細胞の生存性を低下させるためにもっとも有効なプロポリペプチドを調べるために、対象である方法を用いて多くの異なるプロポリペプチドについてある系統のウイルスなどの特定の病原体によってコードされるプロテアーゼに対するそれらの有効性を個々に調べることができる。
【0104】
その他の態様において、対象である方法は、特定のプロポリペプチドに対して感受性であるか否かを調べるために、多くの異なる病原体(例えばウイルスの系統)によってコードされる多くの異なるプロテアーゼを個々に試験するためにも用いることができる。
【0105】
その他の態様において、対象であるアッセイ法は、病原体にコードされるプロテアーゼを阻害するか否かを調べるために、小分子、ペプチド阻害物質などのような多くの物質を個々に試験するために用いることができる。これらのアッセイにおいて、試験物質は修飾プロポリペプチドと共に病原体プロテアーゼ法を発現している細胞に同時に導入されて、細胞の生存性を調べることができる。多くの態様において、試験物質を投与していない対照群に比べて10%を超える、30%を超える、50%を超える、70%を超える、または実に80%を超えるまたは90%を超えるもしくはそれよりも高い細胞生存性の低下は、その物質が病原体がコードするプロテアーゼを阻害することを示す。細胞生存性を高める物質は、ウイルス感染した被検体の治療に用いることができる。
【0106】
本発明のいくつかの態様において、対象である核酸は、病原体プロテアーゼをコードする核酸(例えば、ウイルス、組換え型ウイルス、プロテアーゼをコードするプラスミドなど)が細胞に投与されるのと同時に、またはその後に投与される。しかし、一部のその他の態様において、プロポリペプチドをコードする対象である核酸は、病原体プロテアーゼをコードする核酸の前に投与される。これらの態様において、対象である核酸は細胞の生存性を高めて、将来のウイルス感染に対して細胞の「防御」を提供する可能性がある。
【0107】
インビボにおけるアッセイ法
一般に、この方法は、例えばヒト病原体に感染したヒト以外の動物モデルへの、病原体プロテアーゼの認識部位を含む修飾プロポリペプチドをコードする核酸の投与を伴う。この状況において、ヒト以外の動物モデルは通常は、ウイルス性病原体のような部位特異的プロテアーゼを発現するヒト病原体に感染させる。哺乳動物、特にマウス、サル、ラット、ネコ、イヌ、モルモットなどのこのような多くの動物モデルが当業者に既知である。マウスモデル、特にHCV(PCT公開国際公開公報第01678号に述べられる)およびHIV感染(米国特許第5,612,018号に述べられる)に関するマウスモデルが関心対象である。
【0108】
多くの態様において、対象である核酸が投与されると動物が発現するその病原体の症状(例えば、病原体が感染した細胞の生存性、病変、出血、挫傷、力価、感染細胞数)が、対象である核酸を投与されていない動物に比べて、20%まで、50%まで、70%まで、80%まで、90%まで、95%まで、98%まで、および実に99%または99.5%まで軽減する。その他の態様において、対象である核酸が投与されると、その動物が発現するその病原体の症状(例えば、CD4数、ALTまたはHAAT活性など)が、対象である核酸を投与されていない動物に比べて、20%まで、50%まで、70%まで、80%まで、90%まで、95%まで、98%まで、および実に99%または99.5%まで増加する。
【0109】
多くの態様において、血液サンプルが動物から採取されて、ウイルス、細胞、タンパク質、または分子のような血液産物の量(ウイルス力価、ウイルスゲノム、ウイルスmRNA、CD4数、ALTまたはHAAT活性など)を調べる。その他の態様において、試験動物から組織のサンプルが採取されて症状(例えば、細胞死、病変、ウイルス力価など)が測定される。
【0110】
細胞内病原体による被検体の感染の治療
本発明は、被検体における細胞内病原体感染症の治療方法も提供する。この状況において、治療は感染した被検体における病原体負荷量の抑制(例えば、ウイルス負荷量またはウイルス力価の抑制)を伴うことができる。本発明は、感受性被検体における細胞内病原体による感染の症状または疾患のリスクを予防または抑制することも企図する。この後者のカテゴリーにおける被検体の例には、臓器移植レシピエント(例えば、肝移植、骨髄またはその他の免疫細胞移植など)が含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。HCV感染を除去してドナーの肝臓および免疫無防備状態またはその他の免疫不全の被検体(例えば、自己免疫疾患、AIDS、遺伝的欠損など)の再感染のリスクを抑えるために、治療として肝移植を受けている被検体を含めて、慢性HCV感染を持つ被検体の治療は特に関心対象である。
【0111】
特に関心対象の一つの態様において、本発明は、病原体が感染した被検体にプロポリペプチドをコードする対象である核酸の投与を伴う。もう一つの態様において、修飾プロポリペプチドが送達される。この後者の態様において、修飾ポリペプチドは感染した宿主細胞へのポリペプチドの細胞内送達を促進するために、さらなる修飾または調製を必要とする可能性がある。関心対象のタンパク質の細胞内送達を実行するための方法は当技術分野において既知であり、例えば米国特許第6,221,355号を参照されたい。
【0112】
治療において用いるための修飾プロポリペプチドは、感染性細胞内病原体に応じて選択される。多くの態様において、病原体は、その病原体が感染する宿主細胞内で発現するコードされた配列特異的プロテアーゼを持つ病原体である。多くの態様において、その病原体は、例えばウイルス、特にRNAウイルスのような細胞内病原体である。このように、この方法は宿主においてプロテアーゼを発現する何らかの病原体に感染する被検体の病原体負荷量の低下に有効である可能性がある。適切なウイルス病原体は、Virus Taxonomy : The Classification and Nomenclature of Viruses. The Seventh Report of the International Committee on Taxonomy of Viruses、(van Regenmortelら(編)(2000) Academic Press, San Diego)において見出すことができる。多くの態様において、対象である方法はHIVおよびHCVに対して用いられる。
【0113】
本発明による治療に企図される具体的な例示的細胞内病原体感染症には、C型肝炎ウイルス(1型、2型、3型HCV遺伝子型などを含むHCV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1およびHIV-2などを含むHIV)、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス(1型および2型を含むHSV)、カポジ症候群関連ヘルペスウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-IおよびHTLV-IIを含むHTLV、黄熱ウイルス、一部のフラビウイルス(エボラウイルスなど)、ライノウイルスなどが含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。さらに、病原体はマラリア、または熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫もしくは四日熱マラリア原虫のようにマラリアに関連する医学的状態を誘発することのできる病原体のいずれか一つであることができる。
【0114】
本発明は、ピコルナウイルス(口蹄疫ウイルス、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス)、フラビウイルス(西ナイル熱、黄熱、デング熱、日本脳炎、マレー渓谷脳炎、セントルイス脳炎)、トガウイルス(東部ウマ脳炎、西部ウマ脳炎、ベネズエラ脳炎、チクングンヤ、風疹、ロスリバー熱)、カリシウイルス(ノーウォーク物質)、アデノウイルス(インフルエンザウイルスはそれらの独自のウイルスプロテアーゼをコードしない)のようなウイルスによって誘発されるか、または関連するその他の疾患、ならびに単純疱疹1型および2型ウイルス(HSV1、HSV2)を含む単純疱疹ウイルス(HSV)、水痘-帯状疱疹ウイルス(VZV;帯状ヘルペス)、ヒトヘルペスウイルス6型、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)などのヘルペス科のウイルスに関連する疾患、およびネコヘルペスウイルス感染症のようなその他のヘルペスウイルス感染症、およびC型肝炎ウイルス(HCV)を含む肝炎ウイルスに関連する疾患の治療の方法をさらに提供する。このようなウイルスによって誘発される臨床状態の例には、特に腎および骨髄移植患者ならびに後天性免疫不全症候群(AIDS)患者において、ヘルペス性角膜炎、ヘルペス性脳炎、口唇ヘルペスおよび性器感染症(単純ヘルペスに誘発される)、水痘および帯状疱疹(水痘帯状疱疹ウイルスに誘発される)、ならびにCMV性肺炎および網膜炎が含まれる。エプスタイン・バーウイルスは単核細胞症を誘発することが可能であり、上咽頭癌、免疫芽球性リンパ腫およびバーキットリンパ腫の原因物質としても示唆されている。
【0115】
病原体は、強毒型、潜在型もしくは弱毒型、またはこれらの型の組み合わせとして存在することができる。被検体は症候性または無症候性であることができる。さらに、被検体が一つまたはいくつかの細胞内病原体による感染を持つ場合、またはそれらの感染に対して感受性である場合、本発明は関連する病原体に対応する一つまたはいくつかの修飾プロポリペプチドの投与を企図する。多数の修飾プロポリペプチドが投与される場合、それらは別々に、同時に、同一もしくは異なる調製剤として、または修飾プロポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(通常はDNA)が投与される場合は同一もしくは異なる核酸分子として投与することができる。
【0116】
用いられる投与量は達成されるべき臨床目標によって異なるが、適切な用量範囲は、病原体負荷量を低下させる対象であるプロポリペプチドをコードする核酸の約1μgないし約1,000μgまたは約10,000μgまでを1回投与で投与することのできる用量である。または、病原体負荷量を低下させる対象であるプロポリペプチドをコードする核酸の目標投与量は、その物質の投与直後の24〜48時間以内に採血される宿主血液のサンプル中におおよそ約0.1〜1000μM、約0.5〜500μM、約1〜100μM、または約5〜50μMの範囲であると考えることができる。
【0117】
当業者は、投与量が具体的な化合物、症状の程度、および副作用に対する被検体の感受性の関数として調節することができることを容易に認識する。所与の化合物における好ましい投与量について、当業者は様々な方法によって容易に求めることができる。
【0118】
病原体負荷量を低下させる対象である修飾プロポリペプチドまたは修飾プロポリペプチドをコードする核酸は、インビボおよびエクスビボの方法を含む薬剤送達に適した任意の有効な方法および経路、ならびに全身性および局所性投与経路を用いて、各個体に投与される。
【0119】
通常の薬学的に許容される投与経路には、鼻内投与、筋内投与、気管内投与、腫瘍内投与、皮下投与、皮内投与、局所適用、静脈内投与、直腸投与、鼻腔投与、経口投与、およびその他の腸管外投与経路が含まれる。所望ならば、投与経路は物質および/または所望の効果に応じて組み合わせる、または調節することが可能である。組成物は単回投与または反復投与として投与することができる。
【0120】
物質は、全身性または局所的経路を含めて、通常の薬剤の送達に適した有効な任意の通常の方法および経路を用いて宿主に投与することができる。一般に、本発明によって企図される投与経路には経腸投与、腸管外投与、または吸入投与が含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0121】
吸入投与以外の腸管外投与経路には、局所投与、経皮投与、皮下投与、眼窩内投与、関節包内投与、脊椎内投与、胸骨内投与、および静脈内投与、即ち、消化管を介する以外の任意の投与経路が含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。腸管外投与は、物質の全身性または局所送達を達成するために実施することができる。全身送達が所望される場合、投与は一般に薬学的調製物の侵襲的投与または全身性に吸収される局所または粘膜投与を伴う。
【0122】
物質は、腸内投与によって被験者に送達することもできる。腸内投与経路には、経口および(例えば、坐剤を用いる)直腸投与が含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0123】
皮膚および粘膜を介する物質の投与方法には、適切な薬学的調製物の局所適用(例えば、核酸の皮膚への送達に関する米国特許第6,087,341号を参照されたい)、経皮透過、注射および表皮投与が含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。経皮透過の場合、吸収プロモーターまたはイオン浸透療法が適切な方法である。電気泳動的透過は、数日間またはそれよりも長い期間にわたって無傷の皮膚を介する電気パルスによってそれらの産物を継続的に送達する市販の「パッチ」を用いて行うことができる。
【0124】
多くの態様において、対象である核酸は、例えば血流中への投与を介して全身性に、または標的臓器の内部もしくは近傍への注射を介して局所的に被検体に投与される。局所投与は、通常、ウイルス感染の位置に依存して、腎被膜下投与、皮下投与、中枢神経系(髄腔内投与を含む)、血管内投与、肝内投与、脾内投与、内臓内投与、腹腔内投与(大網内投与を含む)、または筋内投与が含まれる。いくつかの態様において、投与は肝管、またはリンパ節、骨髄、および身体のその他の臓器内に直接投与される。多くの態様において、投与は、一般に、静脈内投与、門脈内投与、内臓内投与、移植前のドナー肝臓の門脈もしくは肝動脈に(即ち、投与はエクスビボにおいて実施される)、または移植時の血行再建後にインビボにおいて実施される。いくつかの態様において、特に本発明の組成物が動物に投与される場合、修飾プロポリペプチドは感染した被検体の頚静脈または門脈に直接注射により投与される。
【0125】
治療は、宿主を苦しめる病理学的状態に関連する症状の少なくとも改善を意味して、この場合、改善は例えば治療が行われる病理学的状態に関連する症状、病原体負荷量(例えば、病原体力価)などのパラメータの規模の少なくとも低下を示す広い意味で用いられる。従って、治療は、宿主がそれ以上その病理学的状態、または少なくともその病理学的状態を特徴付ける症状に患わされないように、病理学的状態または少なくともそれに関連する症状が発症しないように予防されるなど完全に阻害される、または終結するなど停止される状況も含む。
【0126】
様々な宿主(ここで、「宿主(host)」という用語は本明細書では「被検体(subject)」および「患者(patient)」という用語と互換的に用いられる)が、対象である方法に従って治療可能である。一般に、このような宿主は「哺乳類」または「哺乳綱」であり、これらの用語は肉食目(例えば、イヌおよびネコ)、げっ歯目(例えば、マウス、モルモット、およびラット)、および霊長目(例えば、ヒト、チンパンジー、およびサル)を含む哺乳綱に属する生物を説明するために広い意味で用いられる。多くの態様において、宿主はヒトである。
【0127】
対象であるポリヌクレオチドは裸のポリヌクレオチドとして送達されるか、または送達賦形剤と関連する(「複合する」)ことができる。「関連する」または「複合する」は、ポリヌクレオチドと所与の送達賦形剤の共有結合または非共有結合の双方を包含する。
【0128】
一部の態様において、導入された核酸を宿主の生殖細胞系に伝達させないベクターを使用することが好ましい。これらの態様において、非組込型ベクター(ノンインテグラティブベクター)のような宿主のゲノムに組み込まれないベクターを用いることができる。例えば、プロポリペプチド核酸は、プロポリペプチドを制御するためにCMVプロモーターを用いて非組込型発現ベクターを包含するリポソームによって送達することができる。修飾BIDを制御するプロポリペプチドを用いることも選択肢である。また、非組込型ベクターを裸のDNAとして肝門脈に導入することも可能であり、これは肝細胞によって吸収される。一部の態様において、標的臓器(例えば、肝臓、リンパ節など)の内部または近傍、標的臓器に流入する管または血管内にベクターを直接投与することが好ましい。
【0129】
ウイルス送達賦形剤
対象であるポリヌクレオチドはウイルス送達賦形剤と関連することができる。本明細書で用いられるように、「ウイルス送達賦形剤」は送達されるべきポリヌクレオチドがウイルス粒子に包含されることを意図する。
【0130】
インビボにおける形質転換および遺伝子療法において有用な多くのウイルスゲノムが当技術分野において既知であり、または当技術分野の技術および知識から判断して容易に構築することができる。複製コンピテント、複製欠損、および複製条件ウイルスが含まれる。ウイルスベクターには、アデノウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、レトロウイルス、アデノ関連ウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、および前記の非複製突然変異型/変異体が含まれる。いくつかの態様において、複製欠損ウイルスはゆっくりと複製する細胞および/または最終的に分化した細胞に感染することができ、呼吸器は主にこれらの細胞タイプから構成される。例えば、アデノウイルスはゆっくりと複製する細胞および/または最終的に分化した細胞に効率的に感染する。いくつかの態様において、ウイルスゲノム自体、またはウイルス表面のタンパク質は標的細胞の細胞に特異的または実質的に特異的である。ウイルスゲノムは、機能的にウイルスの複製に不可欠の遺伝子に連結した細胞タイプ特異的なプロモーターおよび/またはエンハンサーを含めることによって標的細胞特異的となるように設計することができる。
【0131】
複製欠損ウイルスをウイルスゲノムとして使用する場合、関心対象のポリヌクレオチドに対応するDNAまたはRNAのいずれかを含むウイルス粒子の産生は、ウイルスの複製および/または産生に不可欠の欠失コンポーネントを提供する遺伝子組換え型細胞株にウイルス構築物を導入することによって産生することができる。好ましくは、遺伝子組換え型ウイルスゲノムを用いて遺伝子組換え型細胞株をトランスフォーメーションしても、例えば、導入されたウイルスゲノムへの遺伝子組換え型細胞株のウイルス性配列の同種組換えによるなど複製コンピテントウイルスの産生には至らない。関心対象の核酸を含む複製欠損ウイルス粒子の産生のための方法は当技術分野において周知であり、例えばRosenfeldら、Science 252:431-434, 1991およびRosenfeldら、Cell 68:143-155, 1992(アデノウイルス);米国特許第5,139,941号(アデノ関連ウイルス);米国特許第4,861,719 号(レトロウイルス);および米国特許第5,356,806号(ワクシニアウイルス)に述べられている。流行性耳下腺炎ウイルスゲノムの操作のための方法および材料、ウイルスの融合およびウイルス複製を司る流行性耳下腺炎ウイルス遺伝子の特徴、ならびに流行性耳下腺炎ウイルスゲノムの構造および配列は、Tanabayashiら、J. Virol. 67:2928-2931, 1993;Takeuchiら、Archiv. Virol., 128:177-183, 1993;Tanabayashiら、Virol. 187:801-804, 1992;Kawanoら、Virol, 179:857-861, 1990;Elango ら、J. Gen. Virol. 69:2893-28900, 1988に述べられている。
【0132】
非ウイルス性送達賦形剤
対象であるポリヌクレオチドは、非ウイルス性送達賦形剤を用いて投与することができる。本明細書で用いられる「非ウイルス性送達賦形剤」(本明細書では「非ウイルス性ベクター」とも言う)は、裸のポリヌクレオチドまたは縮合ポリヌクレオチド(例えば、ポリヌクレオチドおよびカチオン化合物(硫酸デキストランなど)の調製物)、およびウイルス粒子のようなアジュバントと混合した裸または縮合ポリヌクレオチド(即ち、関心対象のポリヌクレオチドはウイルス粒子には含まれないが、形質転換した調製物は裸のポリヌクレオチドおよびウイルス粒子(例えば、アデノウイルス粒子)の双方から構成される)(例えば、Curielら、1992 Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 6:247-52)を参照されたい)を含有する化学的調製物が含まれることを意味する。このように、ウイルス粒子が関心対象のポリヌクレオチドを含まない場合、「非ウイルス性送達賦形剤」はポリヌクレオチドおよびウイルス粒子を含むベクターを含むことができる。
【0133】
「非ウイルス性送達賦形剤」には、細菌プラスミド、ウイルスゲノムまたはその一部、但し、この場合、送達されるべきポリヌクレオチドはカプシドに包含されたりウイルス粒子内に含まれたりしない、およびウイルスゲノムの一部ならびに細菌プラスミドおよび/またはバクテリオファージの一部を含む構築物が含まれる。この用語には、天然および合成のポリマーおよびコポリマーも包含される。この用語は脂質を基剤とする賦形剤をさらに包含する。脂質を基剤とする賦形剤には、Felgnerらによって開示されたカチオン性リポソームが含まれる(米国特許第5,264,618号および第5,459,127号;PNAS 84:7413-7417, 1987;Annals N.Y. Acad. Sci. 772:126-139, 1995);それらは、Schreierら(米国特許第5,252,348号および第5,766,625号)によって開示される通り、人工ウイルスエンベロープを含む中性または負に帯電したリン脂質またはそれらの混合物から構成されることもできる。
【0134】
非ウイルス性送達賦形剤はポリマーを基剤とする担体を含む。ポリマーを基剤とする担体は、天然および合成のポリマーおよびコポリマーを含むことができる。好ましくは、ポリマーは生分解性であり、または被検体から容易に排除することができる。天然に生じるポリマーには、ポリペプチドおよびポリサッカライドが含まれる。合成ポリマーにはポリリシンおよびポリエチレンイミン(PEI;Boussifら、PNAS 92:7297-7301, 1995)が含まれるが、これらの限定されるものではなく、これらの分子は縮合物質としても使用することができる。これらの担体は、水、エタノール、生理食塩液、およびそれらの混合物のような分散液に溶解、分散または懸濁することができる。当技術分野では様々な合成ポリマーが知られていて、使用することができる。
【0135】
「非ウイルス性送達賦形剤」は細菌をさらに含む。様々な細菌をポリヌクレオチドの送達賦形剤として使用することについては述べられている。ブドウ球菌、サルモネラ菌などの非病原性細菌株を含む任意の既知の細菌が送達賦形剤として使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0136】
送達されるべきポリヌクレオチドは、DNA-またはRNA-リポソーム複合調製物として調製することができる。このような複合体は、陽電荷(静電相互作用)によって遺伝物質(DNAまたはRNA)に結合する脂質混合物を含む。本発明において用いることのできるカチオン性リポソームには、3β-[N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]-コレステロール(DC-Chol)、1,2-ビス(オレオイロキシ-3-トリメチルアンモニオプロパン(DOTAP)(例えば、国際公開公報第98/07408号を参照されたい)、リシニルホスファチジルエタノールアミン(L-PE)、リポスペルミンのようなリポポリアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(ドデシルオキシ)-1-プロパンミニウムブロマイド、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイド(DDAB)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、N(1,2,3-ジオレイルオキシ)プロピル-N,N,N-トリエチルアンモニウム(DOTMA)、DOSPA、DMRIE、GL-67、GL-89、リポフェクチン、およびリポフェクトアミンが含まれる(Thieryら、(1997) Gene Ther. 4:226-237;Felgnerら、Annals N.Y. Acad. Sci. 772:126-139, 1995;Eastmanら、Hum. Gene Ther. 8:765-773, 1997)。米国特許第5,858,784号に述べられるポリヌクレオチド/脂質調製物は、本明細書に記載される方法でも使用することができる。これらの脂質の多くは、例えば、Boehringer-MannheimおよびAvanti Polar Lipids(Birmingham, AL)から市販されている。米国特許第5,264,618号、第5,223,263号および第5,459,127号に見られるカチオン性リン脂質も包含される。使用することのできるその他の適切なリン脂質には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルイノシトールなどが含まれる。コレステロールも含むことができる。
【0137】
本発明の修飾プロポリペプチドは、単独の活性物質として投与することもできれば、本明細書で提供されるように一つまたはいくつかのその他の修飾プロポリペプチドと併用して、および/または例えばリバビリンおよび/またはリバビリン誘導体、IFN-α(IFN-α2a、IFN-α2b、PEG-IFN-α2a、PEG-IFN-α2b、コンセンサスIFN)、逆転写酵素阻害物質(AZT、ddI、ddC、d4T、3TO、FTC、DAPD、1592U89またはCS92を含むジデオキシヌクレオシドなど)のようなその他の薬剤;および9-(2-ヒドロキシエトキシメチル)グアニン(アシクロビル)ガンシクロビルまたはペンシクロビル、インターロイキンIIのようなその他の物質と併用して、または骨髄もしくはリンパ球移植片を含むその他の免疫調節物質、またはリンパ球の数および/もしくは機能を十分であるように増加させるレバミゾールもしくはサイモシンのようなその他の薬剤と併用して投与することもできる。
【0138】
本発明の一つまたはいくつかの修飾プロポリペプチドと同時に投与することのできるさらなる薬剤には、Goodman, G.ら(1993)、The Pharmacological Basis of Therapeutics, 第8版. McGraw-Hill Inc. pp. 978-198に開示されるような標準的な抗マラリア薬が含まれる。好ましい抗マラリア薬には、クロロキン、クロログアニジン、ピリメタミン、メフロキン、プリマキインおよびキニーネが含まれる。
【0139】
修飾プロポリペプチドを含む2種類またはそれよりも多い上記の物質の投与は、「カクテル」または「カクテル」療法と言うことができる。
【0140】
多くの態様において、病原体負荷量(例えば、ウイルス負荷量)は、対象である核酸を用いて治療した被検体において、治療前の被検体または治療されない被検体に比べて、10%まで、30%まで、50%まで、70%まで、90%まで、95%まで、または実に99%もしくは95.5%まで被検体の体内で減少させることが可能である。被検体の体内における病原体の負荷量を測定する場合、それはウイルスが感染する被検体の臓器から測定することが可能であり、またはより一般的には血清から測定することが可能である。
【0141】
キット
上記のように、対象である方法を実践するためのキットも本発明によって提供される。対象であるキットには少なくとも次の一つまたはいくつかが含まれる:修飾プロポリペプチドをコードする核酸、およびそれを含むベクター。キットのその他の選択的コンポーネントには次が含まれる:制限酵素、制御プライマーおよびプラスミド;緩衝液、細胞など。このキットの核酸は、その他のプラスミドのライゲーションを促進するための制限部位、多くのクローニング部位、プライマー部位なども持つことができる。キットの様々なコンポーネントは別々の容器に収容することができて、または一部の適合性コンポーネントは所望されるならば予め混合して単一の容器に収容することができる。多くの態様において、経口剤または注射剤など、活性成分の単位用量を含むキットが提供される。
【0142】
上記のコンポーネントに加えて、対象であるキットは一般的に対象である方法を実践するためのキットのコンポーネントの使用に関する説明書をさらに含む。対象である方法の実践のための説明書は、一般に、適切な記録媒体に記録される。例えば、説明書は紙またはプラスチックのような基材に印刷することができる。このように、説明書はパッケージ添付文書として、キットまたはそのコンポーネントの容器のラベリング(即ち、包装または小分け包装に関連する)としてキットに添付することができる。その他の態様において、説明書は、例えばCD-ROM、ディスケットなどの適切なコンピュータ判読可能保存媒体に記録された磁気保存データファイルとして添付される。さらにその他の態様において、実際の説明書はキットには添付されないが、例えばインターネット経由のようなリモートソースから説明書を取得する方法が提供される。この態様の例は、説明書が閲覧可能および/またはダウンロード可能であるウェブアドレスが記載されたキットである。説明書と同様に、説明書を取得するためのこの方法も適切な基材に記録される。
【0143】
実施例
次の実施例は当業者に本発明の作成および使用法の詳細な開示および説明を提供するために示すものであり、本発明者らが彼らの発明と見なすものの範囲を制限する意図はなく、以下の実験が実施されたすべてまたは唯一の実験であることを意味することを意図しない。用いられる数値(例えば、量、温度など)に関しては正確を期すよう努力が払われているが、いくつかの実験上の誤差および逸脱は考慮されるべきである。特記する場合を除いて、部分は重量に基づく部分であり、分子の重量は分子量の平均重量であり、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧またはそれに近いものである。
【0144】
本発明はその具体的態様に関連して述べられているが、当業者は本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な変更を加えることが可能であり、同等物を代用することが可能であることを理解しなければならない。さらに、本発明の目的、精神および範囲に対して特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセスの工程または工程を採用するために多くの修正を加えることが可能である。このような修正はすべて、本明細書に添付される特許請求の範囲内であることが意図される。
【0145】
材料および方法
細胞株:BHK-21細胞はアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(Manassis, VA)から購入した。HEK-293細胞はClontech(Palo Alto, CA)から供給された。H9C2細胞はDr. Henry Klamut(Ontario Cancer Institute, Toronto, Canada)から提供を受けて、CHOP細胞はDr. James Dennis(Samuel Lunenfeld Research Institute, Toronto, Canada)から入手し、エコトロピックPhoenixパッケージング293細胞はDr. Garry Nolan(Stanford University, CA)から供給されて、Huh7細胞はDr. Stanley Lemon(University of Texas, Galveston, TX)から入手した。HCVレプリコン細胞およびそれらの親細胞(HBI-10A、HBIII-H27およびHuh7)は、Dr. Giovanni Migliaccio(IRBM, Rome, Italy)によって作成された。すべての細胞タイプは、Dulbeccoの10%ウシ胎児血清添加最小必須培地(GIBCO/BRL, Gaithersburg, MD)で増殖させた。さらに、HBI-10AおよびHBIII-H27細胞は、G418(GIBCO/BRL, Gaithersburg, MD)800μg/mlの存在下で培養した。
【0146】
抗体:抗ヒトBIDモノクローナル抗体はR & D Systems Inc(Minneapolis, MN)から購入した。抗HCVコアタンパク質モノクローナル抗体はDr. Kohara(Tokyo, Japan)から厚意により提供を受けて、抗HCV NS3タンパク質のモノクローナル抗体はDr. Giovanni Migliaccio(Rome, Italy)から供給された。
【0147】
NS3プロテアーゼ、修飾カスパーゼおよびBID:HCV NS3/NS4Aのコード配列に対応するDNA断片(nt.3420-nt.5474)および単鎖HCVプロテアーゼ(NS4A-NS3)は、NS3およびNS4A遺伝子の5'および3'末端から派生したプライマーペアを用いてp90/HCV FL-long pU(Dr. Charles Riceから提供)からポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって合成した。セリンプロテアーゼの単鎖NS4A-NS3型は既報47の通り構築された。プロテアーゼの2つの型におけるcDNA断片はそれぞれInvitrogen(Carlsbad, CA)のpcDNA1.1発現ベクターにクローニングされた。NS3/NS4Aに対応するDNAは平滑末端ライゲーションによってクローニングされて、NS4A-NS3に対応するDNAは特にBamHIおよびEcoRI部位にクローニングされた。カスパーゼ3、カスパーゼ8およびBIDのコード配列を含むDNA断片は、カスパーゼ3の5'末端に対応するオリゴヌクレオチドプライマーを用いたHela cDNAライブラリー(Invitrogen)からPCRによって合成された。修飾は、既報48の通り、StratageneのQuickChange(商標)部位指向性突然変異生成キットを用いて個々の分子内に導入した。修飾カスパーゼおよびBIDプラスミドを単離して、NS3プロテアーゼ開裂部位の挿入はシーケンシングによって確認した。50%コンフルエンシーのCHOP細胞を、Geneporter(Gene Therapy Systems, San Diego, CA)を用いて異なるプラスミドと共に同時トランスフェクトして、同時トランスフェクトされた細胞における相対的蛍光レベルをFACS分析を用いて比較した。
【0148】
組換え型レトロウイルスの作成:NS3プロテアーゼ(NS4A-NS3)をレトロウイルス発現ベクターであるpBMN-IRES-GFPのBamHIとEcoRIの間に挿入した。組換え型レトロウイルスは、リン酸カルシウムトランスフェクション法を用いて、pBMN-NS3-IRES-GFPの10μgをエコトロピックPhoenixパッケージング細胞株に導入して作成した。高力価のヘルパーフリーレトロウイルスの作成は、一過性トランスフェクションに続いて行われた。組換え型レトロウイルスは、トランスフェクション後48時間に回収された。6穴マイクロタイタープレートを用いて、H9C2細胞を感染多重度(MOI)10にて感染させた(5×105細胞/チャンバー)。細胞は、修飾BIDを用いたアッセイの実施前に24時間、インキュベートした。
【0149】
組換え型アデノウイルスの作成:修飾カスパーゼ3およびBIDは、平滑末端ライゲーションによりpShuttleベクター(Clontech, Palo Alto, CA)のPmeI部位にサブクローニングした。続いて、AdenoX発現キット(Clontech, Palo Alto, CA)に記載される手順を用いて、関心対象の遺伝子をアデノウイルスゲノムに挿入した。GenePorter(Gene Therapy Systems, San Diego, CA)を用いてHEK-293細胞に組換え型アデノウイルスゲノム6mgをトランスフェクトして、組換え型アデノウイルスはClontechによって示される手順を用いて単離して増幅した。関心対象の細胞は、アッセイの実施前に少なくとも24時間にわたって感染多重度10にて感染させた。
【0150】
カスパーゼアッセイ法:チャンバー当たり1×106個のH9C2細胞を分注した6穴マイクロタイタープレートを50%コンフルエンシーまで増殖させて、NS3プロテアーゼまたはEGFPを発現する組換え型レトロウイルスを感染させた。初回レトロウイルス感染後24時間に、続いて細胞に対照または修飾カスパーゼ3もしくはBIDを発現する組換え型アデノウイルスを感染させた。さらに24時間後に細胞を解離液(Sigma, St. Louis, MO)に再懸濁して、400×gにて10分間遠心分離して回収した。ペレットを、ApoAlertカスパーゼ蛍光アッセイキット(Clontech, Palo Alto, CA)として提供される冷却細胞溶解緩衝液の100μlに再懸濁した。細胞溶解物を4℃において18,000×gで3分間、遠心分離して、カスパーゼ3活性の検出のために上清の50μlを96穴マイクロタイタープレートに移した。上清の残りの部分は、タンパク質濃度についてアッセイした。カスパーゼ3活性は、ApoAlertキットの説明書に従って蛍光ペプチド基質(DEVD-AFC)を用いてWallac蛍光計で測定した。
【0151】
蛍光サイトメトリー(FACS)によるアポトーシスの解析:H9C2細胞は、上記のカスパーゼ3アッセイで述べた通り、感染させて加工した。回収した細胞を遠心分離して、冷却PBSで2回洗って、結合緩衝液(PharMingen, La Jolla, CA)の100μlに再懸濁した。続いて、アネキシン(Annexin)V-PEの5μlおよび7-AADの5μl(PharMingen)を細胞懸濁液に加えて、静かに攪拌した。細胞を室温において暗所で15分間染色して、CellQuestソフトウェアを用いてBecton Dickinson蛍光サイトメトリーで解析した。
【0152】
ウェスタンイムノブロット解析:NS3プロテアーゼを発現する組換え型レトロウイルスおよび修飾BIDを発現する組換え型アデノウイルスの双方を感染させたH9C2細胞をRIPA緩衝液で溶解して、続いてAnti-FLAG M2-アガロースアフィニティーゲル(Sigma, St. Louis, MO)を用いて免疫沈降させた。SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動およびウェウスタンイムノブロット解析を実施した。抗ヒトBIDモノクローナル抗体(1:1000希釈)をニトロセルロースペーパーと共にインキュベートして、モノクローナル抗体の結合をECL化学発光(Amersham, Chicago, IL)により検出した。
【0153】
HCVゲノムトランスフェクションおよびHCVレプリコン細胞:HCVゲノム表現型1a(Dr. C. Rice, Rockefeller University, New York, NYより入手)のコード領域(nt.339-nt.9401)を、平滑末端ライゲーションを介してpcDNA1.1発現ベクターにサブクローニングした。Huh7細胞に、GenePorterを用いてHCVゲノム5μgおよびEGFPプラスミド1μgを同時トランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後に同じ細胞に対照アデノウイルスまたは修飾BIDを発現する組換え型アデノウイルスをMOI 10にて感染させた。感染したHuh7細胞の形態学的変化を、アデノウイルス感染後36時間に蛍光顕微鏡で調べた。HCVレプリコン細胞およびそれらの親細胞であるBR-Huh7のそれぞれ5×105個に、対照アデノウイルスまたは修飾BIDを発現する組換え型アデノウイルスをMOI 10にて感染させた。24時間後に、HCVレプリコン細胞の形態学的変化を位相差顕微鏡で観察した。さらに、HCVゲノムをトランスフェクトしたHuh7細胞およびHCVレプリコン細胞をSDS試料緩衝液で溶解して、HCVコアタンパク質に対するモノクローナル抗体(1:10000希釈)およびHCV NS3プロテアーゼに対するモノクローナル抗体(1:25)を用いてウェスタンブロット解析を実施した。モノクローナル抗体の結合は、ECL化学発光(Amersham)により検出した。
【0154】
キメラシンドビスウイルス感染およびプラーク解析:Huh7細胞(5×105個)に、対照アデノウイルスまたは修飾BIDを発現する組換え型アデノウイルスをMOI 10にて感染させた。24時間後に同じ細胞に対して野生型シンドビスウイルスまたはHCV NS3プロテアーゼを発現するキメラシンドビスウイルスをMOI 0.1にて感染させた。感染した細胞を30℃でインキュベートして、シンドビスウイルス感染後72時間に位相差顕微鏡を用いて細胞形態学を観察した。感染した細胞の上清をシンドビスウイルスの感染後72時間に回収して、Filocamoらが示す通り、ウイルス力価をプラーク解析により測定した。プラークは、6穴プレートにて1×105個のBHK-21細胞に感染後2日にニュートラルレッドで染色してカウントした。
【0155】
実施例1
HCVのNS3/NS4Aプロテアーゼを標的とするためのFASアポトーシス経路のコンポーネントの修飾
本発明者らは、NS3/NS4A認識部位と置き換えることによって、プロカスパーゼ3およびBIDの内因性開裂部位を修飾した(図1A)。NS5A/NS5B開裂配列(AEDVVCCSMSYS;配列番号:20)は、StratageneのQuickChange突然変異生成キット(図1)を用いて、プロカスパーゼ3およびプロ-BIDのコード配列(それぞれ、配列番号:28および内列番号:26)を突然変異生成の基質として、プロカスパーゼ3の25位および172位、ならびにBID分子の62位の位置にあるアミノ酸を置き換えるために導入した。さらに、BID分子は、カスパーゼ8およびグランザイムBによる開裂を受けやすい内因性部位を除去するために、60位および75位のアミノ酸がアスパラギン酸(D)からグルタミン酸(E)に置換されている(Liら、Cell 94, 491-501 (1998))。加えて、開裂することのできないBID分子は、68C69Sのアミノ酸を68F69Fに変異させることによって陰性対照として調製して、開裂がアポトーシス活性に必要であることを確認するためにこの変異体を使用した。すべての構築物は先ず、CMVプロモーターの制御下において遺伝子を発現してT抗原と共に細胞株の複製の起点を含むpcDNA1.1ベクター内にクローニングした。
【0156】
実施例2
NS3プロテアーゼの存在下における修飾カスパーゼおよびBID分子の一過性発現によってアポトーシスが起こる
修飾アポトーシスエフェクターがNS3プロテアーゼ(即ち、NS3/NS4Aプロテアーゼ)の存在下において細胞死を誘発することができるかどうかを調べるために、CHOP細胞にNS3/NS4AプロテアーゼおよびEGFPを発現しているベクターと共に異なる修飾カスパーゼ3またはBID構築物を同時トランスフェクトした。FACS(蛍光活性化細胞走査)解析を用いて、本発明者らは同時トランスフェクトした細胞における異なる蛍光レベルをモニタリングすることによって細胞死の量を評価することができた。生細胞はEGFPを含んで蛍光を発したが、死細胞はEGFPを培地中に放出した結果、蛍光性を失った。修飾プロカスパーゼ3およびBIDを含む発現ベクターを、NS3/NS4Aプロテアーゼの存在下および非存在下においてこの系で検査した。修飾プロカスパーゼ3のみをトランスフェクトしたCHOP細胞は、天然のプロカスパーゼ3自体に比較して最小限の細胞毒性を示すと思われた。しかし、172位のアミノ酸に修飾開裂部位を持つプロカスパーゼ3のコード配列を含むベクターおよびNS3/プロテアーゼを発現しているプラスミドの同時トランスフェクションは細胞毒性であると思われた。25位、または25位および172位の双方のアミノ酸に修飾開裂部位を持つプロカスパーゼ3コード領域、ならびにNS3プロテアーゼ遺伝子の同時トランスフェクションは、これらのアッセイでは低毒性であった。従って、プロカスパーゼ3のNS3プロテアーゼ依存性プロセッシングを活性化するためには、プロカスパーゼ3の172位のアミノ酸にNS5A/5B開裂部位を導入することのみが必要であることが明らかとなった。
【0157】
修飾するために本発明者らが選択した二番目のアポトーシス分子はBIDであった。この分子は正常な状態でカスパーゼ8によって開裂および活性化されて、ミトコンドリアからのチトクロームcの放出を刺激する。修飾BIDのコード配列のみをトランスフェクトしたCHOP細胞は、細胞毒性作用を示さなかった。CHOP細胞に修飾BIDおよびNS3プロテアーゼ双方のコード領域を同時トランスフェクトした場合、細胞は速やかに死滅することが観察された。タンパク分解性に開裂することのできないBIDの68F69F変異型は、NS3プロテアーゼの存在下または非存在下において細胞死を起こすことができなかった。上記の実験に基づいて、本発明者らはそれぞれ172位および62位の位置に修飾開裂部位を持つプロカスパーゼ3およびBID分子を発現している組換え型アデノウイルスを作成した。
【0158】
異なる構築物がウイルスプロテアーゼの存在下において細胞死を誘発できるかどうかを調べるために、NS3/NS4Aプロテアーゼ、EGFP、および修飾プロカスパーゼまたはBID分子のコード領域をトランスフェクトしたCHOP細胞を用いた一過性アッセイを行った。24時間後、EGFP陽性生細胞のFACS解析によって細胞死をスコア化した。(-)は、細胞死がないことを示して、(+)は5%〜15%細胞死を示し、(+++)は>30%細胞死を示す。同様の実験において、NS3プロテアーゼを発現しない細胞の毒性を予防するためには、BIDの98位Aspの開裂部位を変化させてこの部位のタンパク融解性開裂を防がなければならないことが明らかとなった。これらのデータは表2に示す。
【0159】
(表2)一過性発現アッセイ法を用いた細胞死の分析
【0160】
実施例3
修飾プロカスパーゼ3およびBID分子を発現している組換え型アデノウイルスは構成的にNS3/NS4Aプロテアーゼを合成するラット細胞株をターゲットとする
修飾プロカスパーゼ3または修飾BIDのいずれかを発現した組換え型アデノウイルスはClontechのAdeno-Xシステムを用いて作成された。さらに、本発明者らは、LTRプロモーターの制御下におけるHCV NS3プロテアーゼ(NS4A-NS3)およびIRES内部転写シグナル由来のEGFPを発現した組換え型レトロウイルスも構築した。ラット筋線維芽細胞(H9C2)にNS3プロテアーゼおよびEGFP、またはEGFP単独のいずれかを発現した組換え型レトロウイルスを感染させた。レトロウイルスの感染後約24時間に、同じ細胞に対照または修飾プロカスパーゼ3もしくは修飾BIDのいずれかを発現した組換え型アデノウイルスを感染させた。H9C2細胞はレトロウイルスのエコトロピック株ならびにヒトアデノウイルスの双方が効率的に感染できることから、これらの実験ではこのH9C2細胞が選択された。さらに24時間後、感染したH9C2細胞を蛍光顕微鏡下で可視化して、写真を撮影して、形態学的変化を記録した(図2)。NS3プロテアーゼ単独、修飾カスパーゼ3単独、または修飾BID単独のいずれかを発現しているH9C2細胞は、偏光またはUV蛍光顕微鏡下で可視化した際に正常な形態を有していると思われた(図2A、2B、2D)。しかし、NS3プロテアーゼおよび修飾プロカスパーゼ3または修飾BIDの双方を発現した細胞は、アポトーシスの視覚的指標である膜の泡状化および核の凝集を示した(図2C、2E)。修飾プロカスパーゼ3および修飾BID分子の双方がNS3プロテアーゼの存在下において細胞死を誘発したが、修飾BIDがアポトーシス経路の有力な活性化物質であると思われた。
【0161】
修飾BID分子が実際のNS3プロテアーゼによって加工および活性化されることを確認するために、H9C2細胞に先ずNS3プロテアーゼおよびEGFP、またはEGFP単独のいずれかを発現した組換え型レトロウイルスを感染させた。24時間後、続いて同じ細胞に対照アデノウイルスまたは修飾BIDを発現した組換え型アデノウイルスを感染させた。これらの実験において、修飾BID分子は遺伝子工学により炭素末端にFLAGエピトープタグを加えた。さらに24時間後に感染した細胞を融解して、セファロースビーズに結合させたFLAG抗体を用いて免疫沈降を行った。タンパク質産物をPAGEによって分離して、ポリクローナルBID抗体を用いたイムノブロット分析によって検出した(図3A)。修飾BIDのみを発現する細胞は、未開裂BID分子の特徴である24kDaの単一の断片を生じた(レーン4)。一方、修飾BIDおよびNS3プロテアーゼの双方を発現した細胞は24kDaの未開列断片および16kDaの開裂断片を含み、修飾BID分子がNS3プロテアーゼによって適切に加工されたことが示された。
【0162】
本発明者らは、アポトーシス経路がNS3加工されたBIDによって活性化されることも確認した。NS3プロテアーゼを含むまたは欠く細胞をアデノウイルス感染後の異なる時期に溶解して、Clonetechの蛍光カスパーゼ3活性アッセイキットを用いてそれらのカスパーゼ3活性を測定した。NS3プロテアーゼおよび修飾BIDの双方を発現しているH9C2細胞は、感染後8時間頃からカスパーゼ3活性の増加を示した(図3B)。しかし、NS3単独または修飾BID単独を発現している細胞はカスパーゼ3活性が低いことが明らかとなった。「空」のレトロウイルスおよびアデノウイルス対照を感染させたH9C2細胞はごく微量のカスパーゼ3活性を示した。NS3プロテアーゼ、修飾BID、または双方を発現しているH9C2細胞におけるアポトーシスの量は、組換え型アデノウイルスの感染後24時間にアネキシンV染色により定量した。アネキシンVはアポトーシスを受けている細胞外表にあるホスファチジルセリンを標識するアポトーシスのマーカーであり、アネキシンV抗体を加えてFACSにより着色を定量する。組換え型NS3および修飾BIDの双方が発現した場合、対照ウイルスが感染した細胞よりも50%多くの細胞がアネキシンV陽性であり、NS3単独または修飾BID単独のいずれかを発現している細胞は対照バックグラウンドに対して2〜5%多いのみであった(図3C)。最後に、NS3プロテアーゼおよび修飾BIDの同時発現によって生じるアポトーシスはカスパーゼ阻害物質であるVAD-fmkで逆行させることができた。NS3または対照レトロウイルスに感染したH9C2細胞を続いて修飾BIDを発現している組換え型アデノウイルスに感染させて、VAD-fmkの異なる濃度で処理した。組換え型アデノウイルスを24時間感染させた後に、アネキシンVで染色してアポトーシス細胞数を測定した。この場合も、VAD-fmkの非存在下において修飾BIDのみを発現している細胞はわずかに5%アネキシンV陽性であった(図3D)。NS3プロテアーゼおよび修飾BIDの双方を発現したH9C2細胞は60%アネキシンV陽性であった。10μMおよび20μMのVAD-fmk阻害物質を加えたところ、アネキシンV陽性細胞の数が、それぞれ、42%および34%低下した(図3D)。カスパーゼ3活性およびアネキシンV染色が増加したことから、これらの結果はHCVプロテアーゼ(NS3)および修飾BIDを含む標的細胞においてアポトーシスが誘発されるという本発明者らの仮説を追認するものであった。
【0163】
実施例4
HCVゲノムおよび修飾BIDを発現している肝細胞はアポトーシスを起こす
本発明者らは、上記の方法がHCVウイルスゲノムを含むヒト肝細胞においてアポトーシスを選択的に誘発することができるかどうかを調べることに決定した。C型肝炎ウイルスの培養系がないので、本発明者らはヒト肝細胞(Huh7)にHCVゲノム全体を発現する発現プラスミドおよびEGFPを発現するもう一つのレポーターベクターを同時トランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞における加工されたHCVウイルスタンパク質の存在は、HCVコアタンパク質およびNS3タンパク質に対するモノクローナル抗体を用いたイムノブロット解析により確認した(図4K、レーン3;図4L、レーン2)。トランスフェクション後48時間に、Huh7細胞に対照アデノウイルスまたは修飾BIDを発現する組換え型アデノウイルスのいずれかを感染させた。36時間のアデノウイルス感染後にUV蛍光顕微鏡により細胞を観察した。HCVゲノムのcDNAコピーをトランスフェクトしたHuh7細胞または修飾BID単独を発現している組換え型アデノウイルスを感染させたHuh7細胞は、形態学的変化を示さなかった(図4A、4B)。しかし、修飾BIDおよびHCVゲノムまたはNS3プロテアーゼのいずれかを発現するHuh7細胞は細胞ウサギアポトーシスの明らかな指標である膜の泡状か、核の凝集および細胞崩壊を示した(図4C、4D)。比較的少量のNS3プロテアーゼであっても、修飾BIDを活性化してアポトーシスを誘発することができた。
【0164】
実施例5
HCVレプリコンを持つ肝細胞は修飾BIDの存在下においてアポトーシスを受ける
2つのグループがHuh7肝細胞細胞株におけるHCVレプリコンの系の開発を報告している(Lohmannら、Science 285, 110-113. (1999);Blightら、Science 290, 1972-1974 (2000))。これらの系は、HCVの5'UTR、選択のためのネオマイシン遺伝子、脳心筋炎ウイルス(EMC)由来IRESの制御下におけるHCVの非構造遺伝子、およびHCVの3'UTRからなる。この系では、NS3プロテアーゼを含む非構造的タンパク質が翻訳および開裂される。2種類の異なるHCVレプリコン細胞株(HBI-10AおよびHBIII-27)、ならびにHuh7親細胞に、修飾BIDを発現している組換え型アデノウイルスまたは対照アデノウイルスのいずれかを感染させた。24時間感染時に、位相差顕微鏡下で細胞を観察した(図4E〜4J)。レプリコン細胞株およびHuh7細胞はいずれも、対照アデノウイルスの感染後に形態学的な変化を示さなかった(図4E、4G、4I)。同様に、修飾BIDを発現しているHuh7細胞も視認可能な変化を示さず、修飾BID自体はこれらの細胞においてほとんど毒性を示さないことが示唆された(図4J)。一方、HBI-10AおよびHBIII-27レプリコン細胞株はいずれも、修飾BIDを発現しているアデノウイルスの感染後に強い細胞毒性を示した(図4F、4H)。細胞死は、トリパンブルー染色を用いて定量した。Huh7親細胞は修飾BIDアデノウイルスの感染後に5%よりも低い細胞死を示したが、レプリコン細胞株であるHBI-10AおよびHBIII-27に同じ組換え型ウイルスを感染させると、24時間後には細胞の87%および80%が死滅した(データは示さない)。これらの結果は、上記の系がレプリコンの系から派生するHCVの非構造的タンパク質を持つヒト肝細胞を選択的に破壊することができることを実証した。
【0165】
実施例6
修飾BIDはHCVのNS3プロテアーゼを発現するキメラシンドビスウイルスのHuh7細胞への感染を予防する
本発明者らの修飾BIDを用いた遺伝子療法アプローチはNS3プロテアーゼを発現している細胞におけるアポトーシスをうまく活性化することができるが、この系を用いることに関する重要な問題点の一つはアポトーシスの過程で後に他の細胞に感染することので着る多量のウイルスが放出される可能性があることである。一方、HCV感染前に修飾BIDで細胞を前処理すると予防効果があり、ウイルス組立前のアポトーシスの誘発によってウイルス負荷量を減少させる可能性がある。この仮説を検証するために、本発明者らはシンドビスウイルスの構造タンパク質の前駆ポリペプチドのアミノ末端に融合したHCV-NS3(NS3-C-PE2-6K-E1)を持つポリタンパク質を合成するキメラシンドビスウイルス(MutA)から構成されるHCVのモデルを得た。NS3-CおよびC-PE2の接合部には、遺伝子工学によりNS3プロテアーゼの開裂部位(EDVVCC/SMSY)を付加して、シンドビスウイルスの組立にはHCVプロテアーゼによるこの部位の加工が必要であった。従って、細胞培養中で複製するためには、キメラシンドビスウイルス(MutA)はNS3活性を必要とした。本発明者らの実験では、先ずHuh7細胞に対照アデノウイルスまたは修飾BIDを発現している組換え型アデノウイルスを感染させた。24時間後に、続いて同じ細胞を野生型シンドビスウイルスまたはキメラシンドビスウイルス(MutA)のいずれかで刺激した。加工したシンドビスウイルスによる感染細胞の溶解は、72時間感染後に位相差顕微鏡を用いて調べた。対照アデノウイルスまたは修飾BIDのみを発現している組換え型アデノウイルスのいずれかに感染したHuh7細胞は、顕微鏡下において、正常を呈した(図5A、5B)。一方、野生型シンドビスウイルスに感染した細胞は、修飾BIDの存在に関わらず、散在性、繊維状、および球形の外観を呈した(図5E、5F)。対照アデノウイルスおよびキメラシンドビス(MutA)に感染したHuh7細胞は、野生型シンドビスウイルスに感染した細胞と同じ細胞変性効果を示した(図5C)。しかし、修飾BIDを発現しているアデノウイルスと共にプレインキュベートした後にキメラシンドビス(MutA)で刺激した細胞は正常であることが明らかとなった(図5D)。この結果は、修飾BIDを用いた細胞の前処理が、その後、細胞をキメラシンドビスウイルス感染から保護することができることを示した。キメラシンドビスウイルスによる刺激に対する修飾BIDの予防効果は、プラークアッセイによって定量された(図5G)。これらの結果は、修飾BIDがHCV NS3プロテアーゼによる活性化後にアポトーシスを誘発して、その後のシンドビスウイルスの複製および組立を防止することを示唆する。従って、修飾BID療法系は、感染の初期段階および限定的段階の前または期間中に肝臓におけるHCVの全体的なウイルス負荷量の抑制において潜在的予防効果を持つ可能性がある。
【0166】
さらに、Huh7細胞に対照アデノウイルスまたはBIDを発現している組換え型アデノウイルスを10 pfu/細胞の感染多重度(MOI)にて感染させた。24時間後に、同じ細胞を野生型シンドビスウイルス(SBV)またはNS3キメラシンドビスウイルス(SBV MutA)で0.1 pfu/細胞のMOI にて刺激した。シンドビスウイルスの感染後72時間に上清を回収した。2日後にニュートラルレッドで細胞を染色した後、BHK-21細胞を用いたプラークアッセイにより力価を測定した。独立した4回のアッセイからシンドビスウイルスの平均力価(pfu、プラーク形成単位)を求めて、表3に示した。
【0167】
(表3)修飾BIDの存在下におけるNS3キメラシンドビスウイルスを用いたプラークアッセイ法
【0168】
実施例6
HCV感染マウスにおけるHCVウイルス負荷量の減少
PCT公開国際公開公報第0167854号に述べられるように、ヒト肝細胞を含むキメラ肝臓を持つマウスにHCVを接種した。修飾BID構築物(配列番号:2をコードする)の最適な投与経路を調べるために、GFPをコードするアデノウイルスの5×109pfuを試験マウスに腹腔内(IP)、頸動脈内(IJ)および門脈内(PV)に注射した。これらのマウスの肝臓を蛍光下で調べた結果(図7)、頸動脈内および門脈注射が適切な投与経路であることが明らかとなった。
【0169】
HCVに感染したこれらのマウスに、図8に示す指定の時期のアデノウイルスベクターにおけるHCVプロテアーゼ開裂配列を含む修飾BIDをIJまたはIPにて注射する。肝細胞を0週に移植して、8週および10週にHCVを接種して、修飾BIDをコードする薬5×109pfuのアデノウイルスを注射した(0日)。マウスは一般に3つのグループに分割して、1群にはHCVおよび修飾BIDをコードするベクターを投与して、2群および3群は対照とした。各群のマウスは約2〜5匹であった。アポトーシスまたはウイルス感染に起因する肝損傷は、血清中のALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)活性およびヒトα抗トリプシン(HAAT)活性を測定することによって測定した;血清ヒトα1抗トリプシンも投与後の残存機能ヒト肝細胞の指標を提供した。血清中ウイルス負荷量(HCV)は、第三者の検査機関(Provincial Laboratory of Public Health of Alberta)においてRoche Amplicor Systemを用いたRT-PCRにより盲検試料として測定した。ウイルス力価は、ゲノムRNAの単位として対数スケールにて示した。5日および10日目に、BIDが発現していることを示すために一つの修飾BIDポリペプチドに見られるFLAGエピトープを測定した。メカニズムの確認として肝細胞のアポトーシスの測定にはTUNELアッセイ法を用いた。
【0170】
HCVに感染したマウスは異なる程度のHCV感染を示して、その結果、異なるレベルのゲノムRNAを有した。修飾BIDアデノウイルスを投与したマウスは、修飾BIDによるHCV感染肝細胞のアポトーシスのために、対照マウスに比べてALT値の上昇を示した(図9)。修飾BIDを投与したマウスは1.6の対数まで(即ち、95%を超えて)血清HCVの減少を示した(図10)。より多くのマウス(5匹)を用いた実験により、これらの結果が確認された(結果は図11に示す)。このように、HCVにより感染したマウスのウイルス負荷量は対象である核酸によって抑制された。
【0171】
実施例7
HCV感染マウスIIにおけるHCVウイルス負荷量の減少
別の実験では、上記の実施例6に示す通り、4匹のマウスにHCVを感染させて、修飾BIDをコードするベクター(mBID)を投与した。別の7匹のマウスを対照とした。すべてのマウスについて、ALT活性、HAAT活性およびウイルス力価を測定した。
【0172】
HCVを感染させてmBIDを投与したマウスにおけるウイルス力価を下の表4に示す。
【0173】
(表4)
* <600は検出不可能。
【0174】
A17およびA77のマウスは血清の分離後に死亡して、対照マウスはウイルス力価の顕著な低下を示さなかった。
【0175】
従って、2匹または4匹のマウスでは、ウイルス負荷量が1ml当たり約1×104pfuから検出不可能な量まで減少した。
【0176】
D98E修飾を伴うおよび伴わない修飾BIDを比較するインビボにおけるデータを比較して、表5に示す。
【0177】
(表5)
* <600は検出不可能。
【0178】
ウィルコクソンの順位和検定により示される通り、D98E突然変異を持つ修飾BIDは、D98E突然変異を持たない修飾BIDよりもより有効であった(P<0.05)。
【0179】
実施例8
HIV感染細胞の生存性の低下
本発明の修飾プロポリペプチドがHIV感染細胞を特異的に死滅させることができることを示すために、HIVプロテアーゼ部位を修飾したBID(配列番号:3よび27)をコードするアデノウイルスベクターについて試験を行う。
【0180】
約5×106個のJurkat T細胞にHIV(NLHX株;感染性ウイルス1ml当たり約1×105〜1×106個)を感染させる。細胞をRPMI培地で増殖させる。感染後約4〜7日に、プレートから培地を除去して、上記と同一のプロトコールに従って、HIV開裂配列を持つ修飾BID-ポリペプチド(図6Cに示す、配列番号:3および27)をコードするアデノウイルスベクターを細胞に感染させる。HIV感染細胞のほぼ100%がこの方法によって死滅することが期待される。対照として、同じくベクターを用いてHIV未感染の細胞に感染させるためにベクターを用いる。この対照では1%よりも少ない細胞が死滅する。
【0181】
実施例9
HIV感染マウスにおけるHIVウイルス負荷量の抑制
マウスは、米国特許第5,612,018号によって提供される方法に従って、調製してHIVに感染させる。これらのHIV感染マウスに対して、指定の時期に図6Cに示す通りHIVプロテアーゼ開裂配列を含む修飾BIDをコードするアデノウイルスベクターをIJまたはIPにより注射する。HIVウイルス負荷量およびCD4数を測定する。これらのマウスの血漿では、HIV力価が低下して、CD4数が増加する。
【0182】
実施例10
HIVおよびHCVの診断
本発明のベクターは、HIVまたはHCVの診断に使用される。この方法において、細胞内病原体(例えば、HIVまたはHCV)に感染することのできる試験細胞を、その病原体に対する適切なプロテアーゼ開裂部位を持つ修飾プロポリペプチドをコードする対象である核酸に接触させる。対象である核酸に接触させた細胞が生存性の低下(例えば、死滅またはアポトーシスの完了など)を示すならば、対象であるプロポリペプチドをコードするプラスミドベクター、およびTUNELのような細胞アポトーシスを検出するための方法を使用する。
【0183】
上記の結果および考察から、対象である本発明が細胞内病原体に誘発される疾患の治療のための重要な新しい方法を提供することは明らかである。特に、対象である本発明は、遺伝子工学的に病原体プロテアーゼ依存性細胞毒性分子を付加した修飾プロポリペプチドをコードする核酸を用いて被検体を治療するための系を提供する。このように、対象である方法および系は、研究、医療、治療およびその他の応用分野を含む様々な異なる応用分野において使用を見出す。従って、本発明は当技術分野に大きく貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】HSV NS3セリンプロテアーゼによって認識される特異的開裂部位を持つように遺伝子操作されているプロカスパーゼ3、プロカスパーゼ8およびBIDの分子を図式的に示す。
【図2】一連の写真(パネルA〜E)は、本発明の組換え型レトロウイルスおよびアデノウイルスをトランスフェクトしたH9C2ラット筋線維芽細胞を示す。細胞は、穂不満偏光顕微鏡(左側パネル)またはUV蛍光顕微鏡(右側パネル)を用いて検査した。図2、パネルA:細胞をレトロウイルス(NS4A-NS3)に感染させて、続いて外来遺伝子を持たない対照組換え型アデノウイルスを感染させた。図2、パネルB:細胞をEGFPを発現している対照レトロウイルスに感染させた後、修飾カスパーゼ3を発現しているアデノウイルスを感染させた。図2、パネルC:細胞をNS4A-NS3を発現しているレトロウイルスに感染させて、修飾カスパーゼ3を発現しているアデノウイルスに感染させた。図2、パネルD:細胞をEGFPを発現している対照レトロウイルスに感染させた後、修飾BIDを発現しているアデノウイルスに感染させた。図2、パネルE:細胞をNS4A-NS3を発現しているレトロウイルスに感染させた後、修飾BIDを発現しているアデノウイルスに感染させた。
【図3】実施例3の結果を示す写真(パネルA)、折れ線グラフ(パネルB)、および棒グラフ(パネルCおよびD)である。図3、パネルA:NS3プロテアーゼ、およびカルボキシル末端にFLAGエピトープを含む修飾BIDの双方を発現しているH9C2細胞の細胞融解物を、抗FLAGアガロースビーズを用いた免疫沈降法に供した。続いて、ヒトBIDに対するモノクローナル抗体を用いてイムノブロット解析を実施した:レーン1、レトロウイルス-NS3および外来遺伝子を発現しないアデノウイルス対照に順次感染させた細胞;レーン2、レトロウイルス-NS3および修飾BIDを含むアデノウイルスを順次感染させた細胞;レーン3、レトロウイルス-EGFPおよびアデノウイルス対照を順次感染させた細胞;レーン4、レトロウイルス-EGFPおよびアデノウイルス-修飾BIDを順次感染させた細胞。修飾BIDは、NS3プロテアーゼの存在下において開裂した(レーン2)。図3、パネルB:NS3セリンプロテアーゼ、修飾BIDを発現しているH9C2細胞のカスパーゼ3活性。修飾BIDおよびNS3プロテアーゼの双方を持つ細胞はカスパーゼ3の活性が亢進した。図3、パネルC:セリンプロテアーゼ、修飾BID、または両者のいずれかを発現しているH9C2細胞を、感染後24時間にアポトーシスのマーカーであるアネキシンVで染色した。アネキシンV陽性細胞の割合はFACS分析により測定した。NS3プロテアーゼおよび修飾BIDの双方が存在する場合、50%を超える細胞がアネキシンVについて陽性であった。図3、パネルD:異なる量のVAD-fmk(カスパーゼ阻害物質)の存在下において、NS3セリンプロテアーゼ、修飾BID、または両者のいずれかを発現しているH9C2細胞を感染後24時間にアネキシンVで染色した。アネキシンV陽性細胞の割合をFACS分析で測定した。VAD-fmk阻害物質は、アネキシンV染色により測定される通り、アポトーシスの量を減少させた。
【図4】一連の写真(パネルA〜L)である。HCVゲノムをトランスフェクトしたHuh7ヒト肝細胞、またはHCVレプリコンを含むHuh7細胞株は、修飾BIDアデノウイルスに感染するとアポトーシスを起こした。Huh7細胞にHCVゲノム遺伝子型1aをトランスフェクトして、続いて外来遺伝子を発現しないアデノウイルス対照または修飾BID分子を発現する組換え型アデノウイルスを感染させた。アデノウイルスの感染36時間後に、蛍光顕微鏡によりHuh7細胞の形態学的変化を観察した。図4、パネルA:対照ベクターのみを用いた細胞のトランスフェクション、続いて、修飾BIDを発現している組換え型アデノウイルスを感染させた。図4、パネルB:HCVゲノムをトランスフェクトして、続いて野生型アデノウイルスを感染させた細胞。図4、パネルC:HCVゲノムをトランスフェクトして、続いて修飾BIDを発現している組換え型アデノウイルスを感染させた細胞。矢印は死細胞を示す。図4、パネルD:NS3プロテアーゼの遺伝子をトランスフェクトして、続いて修飾BIDを発現している組換え型アデノウイルスを感染させた細胞。矢印は死細胞を示す。HCVレプリコン細胞株に、対照アデノウイルスまたは修飾BIDを発現している組換え型アデノウイルスを感染させた。アデノウイルス感染後24時間に、位相差顕微鏡を用いて細胞の形態学的変化を観察した。図4、パネルE:HBI-10Aレプリコンを含むHuh7細胞に対照アデノウイルスを感染させた。図4、パネルF:HBI-10Aレプリコンを含むHuh7細胞に修飾BIDを発現しているアデノウイルスを感染させた。図4、パネルG:HBIII-27レプリコンを含むHuh7細胞に対照アデノウイルスを感染させた。図4、パネルH:HBIII-27レプリコンを含むHuh7細胞に修飾BIDを発現しているアデノウイルスを感染させた。図4、パネルIおよびJ:それぞれ、対照アデノウイルスまたは修飾BIDを発現している組換え型アデノウイルスを感染させたHuh7細胞。図4、パネルK:抗HCVコア抗体を用いたイムノブロット分析は、HCVゲノムをトランスフェクトしたHuh7細胞においてウイルスタンパク質が発現して加工されることを示す。レーン1、pcDNA1.1-HCVコア発現ベクターをトランスフェクトした細胞;レーン2、pcDNA1.1ベクターのみをトランスフェクトした細胞;レーン3、HCVゲノム遺伝子型1aをトランスフェクトした細胞。図4、パネルL:レプリコン細胞株およびそれらのHuh7親細胞を溶解して、HCV NS3プロテアーゼに対するモノクローナル抗体を用いてイムノブロット解析を実施した。レーン1、HBI-10Aレプリコン細胞株;レーン2、HBIII-27レプリコン細胞株;レーン3、Huh7親細胞。
【図5】パネルA〜Fの一連の写真である。修飾BID分子は、C型肝炎ウイルスモデルを用いた低感染多重度での刺激から肝細胞を保護するための予防策として用いることができる。Huh7細胞を対照アデノウイルスまたは修飾BIDを発現している組換え型アデノウイルスに24時間、感染させた。続いて、これらの細胞を野生型シンドビスウイルスまたはキメラシンドビスウイルス(MutA)のいずれかを用いて0.1 pfu/細胞のMOIにて刺激した。シンドビスウイルスを用いた感染後72時間に、位相差顕微鏡を用いて細胞形態学の変化を調べた。図5、パネルA:Huh7細胞を、外来遺伝子を発現しない対照組換え型アデノウイルスに感染させた。細胞死は認められなかった。図5、パネルB:Huh7細胞を、修飾BIDを発現している組換え型アデノウイルスに感染させた。細胞死は認められなかった。図5、パネルC:細胞を、外来遺伝子を発現しない対照アデノウイルスに感染させて、次にキメラシンドビスウイルス(MutA)に感染させた。細胞死が認められた。図5、パネルD:細胞を先ず修飾BIDを発現しているアデノウイルスに感染させて、続いて、キメラシンドビスウイルス(MutA)で刺激した。細胞死は認められなかった。図5、パネルEおよびF:細胞を、外来遺伝子を発現しない対照アデノウイルスまたは修飾BIDを発現している組換え型アデノウイルスにそれぞれ感染させて、続いて、野生型シンドビスウイルスで刺激した。いずれも場合も、細胞死が認められた。
【図6】配列アラインメントを示すパネルA〜Cの一連の図式シリーズである。図6、パネルA:BID(上段;配列番号:1)およびHCV NS3開裂部位を持つ修飾BID(下段;配列番号:2)、図6、パネルB:カスパーゼ3(上段;配列番号:4)およびHCV NS3開裂部位を持つカスパーゼ3(下段;配列番号:5)、ならびに図6、パネルC:BID(上段;配列番号:1)およびHIVプロテアーゼ開裂部位を持つ修飾BID(下段;配列番号:3および配列番号:27)。
【図7】アデノウイルスGFPを注射したSCIDマウスの肝細胞の蛍光画像を示す。
【図8】修飾BIDをコードするベクターおよび対照ベクターの投与に関するタイムライン、ならびに実施した分析を示す。
【図9】アデノウイルス-mBID投与後のヒト-α1抗トリプシンの変化のグラフを示す。
【図10】アデノウイルス-mBID投与後のHCVウイルス負荷量における変化のグラフを示す。
【図11】個々のマウスにおけるアデノウイルス-mBID投与後のHCVウイルス負荷量の変化のグラフを示す。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明の分野は、抗病原体組成物、特に感染した宿主細胞内で活性化される抗病原体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
現代医学は、複製サイクルの少なくとも一部を宿主細胞内に持つ病原体の有効な治療法を求めることに力を注いでいる。このような細胞内病原体は、有効な治療によって患者の血流およびその他の体液における細胞外感染性物質を排除するばかりでなく宿主細胞内に存在する病原体を効果的に排除しなければならないために、特有の難しい問題を示す。細胞内病原体の治療のための療法に関するこの後者の局面は、宿主細胞内に分布する標的に作用する薬剤がしばしば感染および未感染の双方の宿主細胞に対して有害であることから、特有の難しい問題を示す。さらに、細胞内病原体はしばしば宿主の免疫系に対して適切な細胞内で持続性および潜在性の感染を起こす。
【0003】
C型肝炎ウイルス(HCV)およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)のようなウイルス性病原体は、治療が困難な傾向のある細胞内病原体の例である。HCVは輸血後の主な病原物質であり、世界的な集団獲得型の非A型、非B型肝炎である。世界中で1億5千万人を超える人々がこのウイルスに感染していると推定される。高い割合の保菌者がこの病原体に慢性的に感染して、多くの患者が慢性肝疾患、いわゆる慢性C型肝炎の段階へと進行する。続いてこのグループは、肝硬変、肝細胞癌、および死に至る末期肝疾患のような重篤な肝疾患のリスクが高まる。
【0004】
HCVはエンベロープを有するフラビウイルス科の+鎖RNAウイルスである。一本鎖HCV RNAゲノムは長さ約9500ヌクレオチドであり、アミノ酸約3000個の一つの大きなポリプロテインをコードする一つのオープンリーディングフレーム(ORF)を持つ。感染した細胞において、このポリプロテインは細胞およびウイルスのプロテアーゼによって多くの位置で開裂して、構造タンパク質および非構造(NS)タンパク質を生じる。HCVの場合、成熟した非構造タンパク質(NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5AおよびNS5B)の生成は2種類のウイルスプロテアーゼの影響を受ける。一つはシス(cis)のNS2−NS3結合を開裂するNS2に分布する金属性プロテアーゼであり、もう一つはNS3のN末端領域に含まれるセリンプロテアーゼであって(以下、NS3プロテアーゼと言う)、NS3-NS4A開裂部位におけるシスおよびその他のNS4A-NS4B、NS4B-NS5A、NS5A-NS5Bの位置におけるトランス(trans)の双方のNS3下流のその後のすべての開裂を介在する。NS4Aタンパク質は多くの機能を持つと思われ、NS3プロテアーゼの補因子として作用し、NS3およびその他のウイルスレプリカーゼ成分の膜限局化に役立つ可能性もある。
【0005】
HCVがウイルスの存続を確立して高い割合の慢性肝疾患を誘発するメカニズムは解明されていない。HCVがどのように宿主免疫系と相互作用してこれを回避するかは明らかでない。さらに、HCVの感染および疾患に対する防御における細胞性および液性免疫の役割は未だに解明されていない。免疫グロブリンが輸血関連ウイルス性肝炎の予防について報告されているが、疾病対策センターは今のところこの目的のために免疫グロブリンを投与することを推奨していない。有効な防御免疫反応がないためにワクチンまたは十分な暴露後予防対策の開発が妨げられているので、当面は抗ウイルス性介入に強く期待される。現在までのところ、このような抗ウイルス性の介入は、例えばリバビリン、ならびに単独またはリバビリンと併用されるインターフェロン-α(IFN-α)を中心とする療法に焦点が絞られている。しかし、必ずしもすべての患者がこれらの療法に応答するわけではなく、慢性HCVの治療のための新規薬剤がこの分野における大きな関心である。
【0006】
つい最近、プロテアーゼおよび複製酵素をコードするHCVを特異的に阻害してウイルスの複製速度を低下させる複数の方法が開発されている。しかし、HCV(およびHIVのようなその他の大半のRNAウイルス)のゲノムは、ウイルスの複製中に突然変異が蓄積した結果として著しい遺伝的異質性を有する。この高い突然変異率は校正活性を持たない誤りがちRNA依存RNAポリメラーゼに帰することができ、例えば、HCVは密接に関連する依然異質な配列の集団、つまり準種として感染した患者体内を循環する。突然変異の分布は一定しないことが報告されているが、この変異性の理由については説明されていない。大半のHCV株と遺伝子型のプロテアーゼ活性は十分に維持されるので、小分子阻害剤による抗ウイルス療法ではこのプロテアーゼが実行可能な標的とされる。実際、プロテアーゼ、RNAヘリカーゼおよびポリメラーゼは異なるHCV単離株の間で極めて類似していて、有効な抗ウイルス標的として推奨されている(Randallら、(2002) Curr. Opin. Infect. Dis. 14: 743-747;Di Bisceglieら、(2002) Hepatology 35: 224-231)。しかし、ポリメラーゼまたはプロテアーゼにおける僅かな変化はAZT、ddI、3TC、およびインジナビルのような現在の抗ウイルス剤に対する耐性を付与することができる(Condra, J. H. (1998) Haemophilia 4: 610-615;Brennerら、(2002) Ann. N.Y. Acad. Sci. 918: 9-15)。このように、薬剤耐性を克服するために、マルチドラッグ、即ち、「カクテル」アプローチが採り入れられている。HIVのようなその他の細胞内病原体を抑制するための同様の方法も問題に直面していて、特にHIVゲノムの突然変異率が高いために問題に直面している。
【0007】
例えば、細胞内感染症、特にHCVおよびHIV感染症を抑制するための新しい方法に関して高い必要性がある。本発明はこれらの必要性およびその他の必要性を満たす。
【0008】
文献
対象の参考文献は、米国特許第6,221,355号、第5,554,528号、および出版物:Baltimore, Nature: 335:739-745 (1988), Harrison et al, Human Gene Therapy 3:461, (1992), Clarkeら、J. Gen. Virol. 78, 2397-2410 (1997), Majorら、Hepatology 25, 1527-1538 (1997), Purcellら、Hepatology 26, 11s-14s (1997), Bartenschlager, Intervirology 40, 378-393 (1997), Blightら、Antivir Ther 3, 71-81 (1998), Rosenら、Mol Med Today 5, 393-399 (1999), Nature 396, 119-122 (1998), Liら、Cell 94, 491-501 (1998), Hanら、J Biol Chem 272, 13432-13436 (1997), Luoら、Cell 94, 481-490 (1998), J Gen Virol 81 Pt 11, 2573-2604 (2000), Hittら、Adv Virus Res 55, 479-505 (2000), Connelly, Curr Opin Mol Ther 1, 565-572 (1999), Wilson, Adv Drug Deliv Rev 46, 205-209 (2001)およびMercer, Nat Med 7, 927-933 (2001)を含む。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本発明は、抗病原体ポリペプチドおよびポリヌクレオチド組成物、ならびに使用方法を提供する。一般に、本発明の組成物は、プロドメイン、病原体プロテアーゼ開裂部位、および細胞内病原体のプロテアーゼによるプロポリペプチドの開裂によって活性化されることができる細胞毒性ドメインを含む修飾プロポリペプチドを提供する。本発明は、対象であるポリペプチドをコードする核酸、ならびに対象である核酸を含むベクターおよび宿主細胞をさらに提供する。病原体プロテアーゼによってプロポリペプチドが開裂する結果、細胞毒性ドメインが活性化されて、病原体に感染した宿主細胞の生存性が低下する。病原体が感染した細胞の生存性を抑制するために対象である核酸およびポリペプチドを用いるための方法、ならびに病原体に感染した被検体の病原体負荷量を抑制するための方法が提供される。本発明は、対象である方法を実施するためのキットをさらに提供する。
【0010】
本発明は、多くの細胞内病原体が病原体のポリペプチドに特異的であって宿主細胞のタンパク質には作用しないプロテアーゼを産生するという点を利用する。例えば、ピコルナウイルス、トガウイルスおよびフラビウイルスなどの多くのウイルスはコードするタンパク質をポリプロテインとしてコードおよび合成して、このポリプロテインはポリプロテイン内の配列に特異性を持つ特異的ウイルスプロテアーゼによって開裂される。
【0011】
本発明の特徴は、抗病原体核酸組成物が細胞内病原体のコードするプロテアーゼを持つ細胞の生存性を特異的に抑制することであり、従って、その組成物および方法は病原体に感染した被検体を有効に治療するために使用することができる可能性がある。
【0012】
本発明のもう一つの特徴は、本発明の組成物がRNAウイルスのようなウイルス性病原体に対して特に有効であり、ウイルス特異的なプロテアーゼおよびその活性が高度に保持されるためにRNAウイルスの様々な遺伝子型および準種に対して有効であることである。
【0013】
本発明の一つの利点は、その方法および組成物が病原体に感染した細胞の生存性を低下させて、未感染の宿主細胞の生存性には実質的な影響を及ぼさないことである。
【0014】
もう一つの利点は、プロテアーゼの開裂部位および細胞内病原体のプロテアーゼが異なる血清タイプおよび遺伝子型を通じて高度に保持されることが期待できるために、本発明の方法および組成物がこれらの血清タイプおよび遺伝子型に対して有効であることができることである。
【0015】
さらにもう一つの利点は、感染性病原体に接触したことのないプロテアーゼ開裂部位がプロテアーゼの基質であり、細胞毒性ドメインの「薬」を活性化することである。従って、耐性を持つ病原体の系統は、遺伝子組換えにより作製されたプロペプチドドラッグの影響を克服するために、プロテアーゼ開裂部位およびプロテアーゼ自体に少なくとも2つの相補的突然変異を持つはずである。これによって、成熟のために活性プロテアーゼを必要とする耐性株の出現の可能性が著しく抑制される。
【0016】
本発明のこれらの利点およびその他の利点については、当業者は、下記に詳細に述べられるように抗病原体組成物の詳細を読めば明らかとなるであろう。
【0017】
定義
本発明についてさらに詳しく説明する前に、本発明が記載される特定の態様に限定されるものではなく、当然、変更可能なものであることが理解されるべきである。本発明の範囲は本明細書に添付される特許請求の範囲によってのみ限定されるものであり、本明細書で用いられる用語は特定の態様のみを説明するために用いられるものであって限定的であることを意図しないことも理解されるべきである。
【0018】
値の範囲が示される場合は、その範囲の上限値と下限値の間にあって、文脈から明らかにそうでないことが明示されない限り下限値の単位の十分の一までの各介在値、およびその記載された範囲内のその他のあらゆる記載値または介在値が本発明に包含されることが理解される。記載される範囲に特別に除外される限界があるならば、その狭い範囲にこれらのより狭い範囲の上限値および下限値が独立して含まれる可能性があり、同じく本発明に包含される。記載される範囲が一つまたは双方の限界値を含む場合、これらの含まれる限界値のいずれかまたは双方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0019】
特記する場合を除いて、本明細書で用いられるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の業者によって一般的に理解される用語と同一の意味を持つ。本明細書に述べられるものと類似または同等の方法および材料も本発明の実践および検査に用いることが可能であるが、本明細書では好ましい方法および材料について記載する。本明細書で述べられるすべての出版物は、その出版物が引用されるものと関連してその方法および/または材料を開示および説明するために、参照として本明細書に組み入れられる。
【0020】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられるように、「一つ(a)」、「および(and)」および「その(the)」という単数形は、文脈からそうでないことが明確に示されない限り、複数の内容を含む。従って、例えば「プロテアーゼ(a protease)」という言及は複数のこのようなプロテアーゼを含み、「そのプロテアーゼ開裂部位(the protease cleavage site)」という言及は一つまたはいくつかのプロテアーゼ開裂部位、および当業者に既知であるその同等物等への言及を含む。
【0021】
本明細書で論じられる出版物は、単にそれらの開示が本出願の出願日の前であるために示されるものである。本明細書は決して、先行発明という理由で本発明に対してこのような出版物に先行する権利が与えられないということの承認として解釈されるべきではない。さらに、提示される出版物の日付は実際の出版日とは異なる可能性があり、独自に確認される必要がある可能性がある。
【0022】
本明細書で用いられる「プロポリペプチド」という用語は、配列特異的なプロテアーゼによってプロテアーゼ開裂部位にて開裂されることのできるあらゆる天然のポリペプチドまたはその変異型を意味する。一般に、プロポリペプチドは、プロテアーゼ開裂部位によって分離されるプロドメインおよび生物活性(例えば、細胞毒性活性)を持つドメインを持つ。プロポリペプチドが開裂すると2つの産物が生じて、プロドメインおよび成熟ポリペプチドが遊離する。開裂による成熟ポリペプチドの遊離は成熟ポリペプチドの細胞毒性活性の「活性化」をもたらし、例えば、開裂によって成熟ポリペプチド上の一つまたはいくつかの活性部位が基質結合において利用可能となる。プロポリペプチドは一般に、成熟ポリペプチドに比べて検出可能な細胞毒性活性を持たないかまたは相対的に低い。このように、プロポリペプチドは典型的な「開裂依存細胞毒性ポリペプチド」である。特に興味深いプロポリペプチドの例としてはチモーゲン、特にタンパク分解性チモーゲン、タンパク分解によって活性化されるトキシン、ならびにBID、プロカスパーゼ3およびプロカスパーゼ8などのタンパク分解によって活性化されるプロアポトーシス分子が含まれる。
【0023】
「プロポリペプチド要素」は、プロドメイン、プロテアーゼ開裂部位、または成熟ポリペプチド(開裂依存細胞毒性ポリペプチドなど)を指す。
【0024】
「開裂依存細胞毒性ポリペプチド」は、プロテアーゼ開裂によって本発明のプロポリペプチドまたは修飾プロポリペプチドから遊離すると、開裂依存細胞毒性ポリペプチドを持つ宿主細胞に対して細胞毒性作用を発現または介在するポリペプチドを示す。「開裂依存細胞毒性ポリペプチド」は、しばしば、プロポリペプチドまたは修飾プロポリペプチドの「細胞毒性ドメイン」として本明細書において言及される。
【0025】
「細胞毒性作用」または「細胞毒性活性」は、細胞死を含めて、宿主細胞の生存性の抑制を促進する影響または活性を指す。このような影響および活性は、例えば、宿主細胞におけるアポトーシスの誘発、宿主細胞タンパク質合成の抑制、宿主細胞の転写の抑制、ゲノムDNAの断片化、膜崩壊、核ラミナの崩壊、細胞の電位の変化などを伴う可能性がある。
【0026】
本明細書で「病原体プロテアーゼ開裂依存細胞毒性ポリペプチド」としても言及される「修飾プロポリペプチド」は、非天然型のプロテアーゼ開裂部位を持つように修飾されているプロポリペプチドを意味して、いくつかの態様では一つまたはいくつかの不活化された内因性プロテアーゼ開裂部位を持つ(即ち、プロテアーゼ開裂部位が未修飾の内因性プロテアーゼ開裂部位を開裂する細胞性プロテアーゼでは開裂されないまたは検出可能なレベルで開裂されないように「不活化」される)。通常、プロポリペプチドのアミノ酸配列は、特にプロテアーゼ開裂部位に関して変化する。一般に、本発明の修飾プロポリペプチドは修飾プロポリペプチド内にそのプロポリペプチドが本来は持たないプロテアーゼ開裂部位を持ち、配列特異的なプロテアーゼが開裂部位に作用するとプロドメインおよび成熟ポリペプチドが放出されて、後者は哺乳動物の宿主細胞に対して細胞毒性である生物活性を示す。大半の場合、修飾プロポリペプチドのプロドメインおよび細胞毒性ドメインはプロポリペプチド固有のものである。
【0027】
プロポリペプチドまたはプロポリペプチド要素(例えば、プロドメイン、成熟ポリペプチド)の「変異型」は、一つまたはいくつかのアミノ酸残基によって変化するプロポリペプチドと定義される。このような変異型は、原型となるプロポリペプチドまたはプロポリペプチド要素のアミノ酸配列に対して「保存的」変化を持つことができ、置換されるアミノ酸はイソロイシンによるロイシンの置換のように構造的または化学的にほぼ等しい特性を持つ。いくつかの態様において、このような変異型はトリプトファンによるグリシンの置換のように「非保存的」変化を持つことができる。同様の変異は、アミノ酸の欠失もしくは挿入、または双方を含むこともできる。プロポリペプチドまたはプロポリペプチド要素の変異型は、プロポリペプチドの関連する基本的構造的特徴(例えば、変異型プロポリペプチド、プロドメイン、開裂部位、および開裂活性化可能細胞毒性ドメイン(成熟ポリペプチド))および生物活性(例えば、開裂活性化可能細胞毒性ドメインの細胞毒性活性)を保持する。
【0028】
(例えば、開裂活性化可能な細胞毒性ドメインの細胞毒性活性の失活を伴わずに)どのアミノ酸残基をいくつ置換、挿入または欠失させるかを決定する指針は、プロポリペプチドまたはプロポリペプチド要素の配列を関連する構造および機能を持つ既知のプロポリペプチドと比較することによって見出すことができる(例えば、GenBankアクセッション番号NP031570のマウスBID相同体、GenBankアクセッション番号AAM48284のニワトリBID相同体、またはGenBankアクセッション番号NP_073175のラットBID相同体は、ヒトBIDを修飾するための指針として用いることができる)。細胞毒性のアッセイ法は容易に実施可能であってしかも直接的であり、どのアミノ酸残基をいくつ置換、挿入または欠失させることができるかを経験的に調べるために容易に応用することができる。
【0029】
「欠失」は、天然のプロポリペプチドのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列に比べて、それぞれ、一つまたはいくつかのアミノ酸もしくはヌクレオチド残基が欠けているアミノ酸またはヌクレオチド配列の変化として定義される。プロポリペプチドおよびプロポリペプチド要素のアミノ酸またはポリヌクレオチド配列の状況において、欠失は約2個、約5個、約10個、約20個まで、約30個まで、または約50個までもしくはそれよりも多くのアミノ酸の欠失を伴うことができる。プロポリペプチドは複数の欠失を含むことができる。
【0030】
「挿入」または「付加」は、一つまたはいくつかのアミノ酸もしくはヌクレオチド残基がそれぞれ天然のプロポリペプチドのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列に比べて付加されるアミノ酸またはヌクレオチド配列の変化として定義される。「挿入」は一般にポリペプチドのアミノ酸配列における一つまたはいくつかのアミノ酸残基の付加を示し、「付加」は挿入またはN末端もしくはC末端に付加するアミノ酸残基を指すことができる。プロポリペプチドおよびプロポリペプチド要素の状況において、アミノ酸またはポリヌクレオチド配列は、約10個まで、約20個まで、約30個まで、または約50個までもしくはそれよりも多くのアミノ酸の挿入または付加である。プロポリペプチドは複数の挿入を伴うことができる。
【0031】
「置換」は、天然のプロポリペプチドのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列に比べて、一つまたはいくつかのアミノ酸またはヌクレオチドがそれぞれ異なるアミノ酸またはヌクレオチドによって置き換えられて生じる。プロポリペプチドまたはプロポリペプチド要素は細胞毒性活性に対して実質的に影響を持たない保存的アミノ酸置換を持つ可能性があることが理解される。保存的置換によって、gly、ala;val、ile、leu;asp、glu;asn、gln;ser、thr;lys、arg;およびphe、tyrのような組み合わせが意図される。
【0032】
「生物学的に活性な」プロポリペプチドまたはプロポリペプチド要素という用語は、天然のプロポリペプチドまたはプロポリペプチド要素の構造的および生化学的機能を持つプロポリペプチドを指す。
【0033】
本発明の修飾プロポリペプチドのプロテアーゼ開裂部位に関する「非天然」、「非内因性」および「異種性」は、修飾のために選択されたプロポリペプチド以外のポリペプチドから派生するプロテアーゼ開裂部位を指すために本明細書において互換的に用いられる。
【0034】
特記する場合を除いて、本発明の抗病原体システムの状況における「プロテアーゼ」という用語は、ポロポリペプチドまたは修飾プロポリペプチドの配列における特定のモチーフを認識および開裂する配列特異的プロテアーゼを示す。プロテアーゼは、グランザイムなどの細胞にとって内因性のゲノムによりコードされるプロテアーゼである細胞性プロテアーゼ、またはHIVもしくはHCVプロテアーゼなどの病原体のゲノムによってコードされるプロテアーゼである病原体プロテアーゼであることができる。
【0035】
「細胞内病原体」は、感染した宿主の細胞内にその複製サイクルの少なくとも一部を持つ病原体である。多くの態様において、細胞内病原体は偏性細胞内病原体であり、その病原体は病原体複製を促進するために宿主細胞内に留まらなければならないことを意味する。細胞内病原体の例には、HIVおよびHCVなどのウイルスがある。
【0036】
本明細書で用いられるように、「調べる(determining)」、「測定する(measuring)」、「評価する(assessing)」、および「アッセイする(assaying)」という用語は互換的に用いられて、定量的および定性的測定の双方を含む。
【0037】
本明細書で互換的に用いられる「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は任意の長さのアミノ酸重合体を指し、コードおよび非コードのアミノ酸、化学的または生化学的に修飾または誘導されたアミノ酸、および修飾ペプチド骨格を持つポリペプチドを含むことができる。この用語には、限定されるものではないが、異種アミノ酸配列を持つ融合タンパク質、時にN末端のメチオニン残基を伴う異種および同種リーダー配列を持つ融合物を含む融合タンパク質;免疫学的にタグ付けされたタンパク質;蛍光タンパク質、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼなどを融合パートナーとして含む融合タンパク質などの検出可能な融合パートナーを持つ融合タンパク質などが含まれる。
【0038】
「核酸分子」および「ポリヌクレオチド」という用語は互換的に用いられて、任意の長さのヌクレオチド重合体を指し、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはそれらの同族体を指す。ポリヌクレオチドは任意の立体構造を持つことができ、既知または未知の何らかの機能を果たす可能性がある。ポリヌクレオチドの非限定的な例には、遺伝子、遺伝子断片、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換え型ポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、制御領域、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、およびプライマーが挙げられる。核酸分子は直鎖状または環状であることができる。
【0039】
本明細書で用いられるように、単離化合物の状況で用いられる場合、「単離される」という用語はその化合物が自然の状態で生じる環境とは異なる環境にある関心対象の化合物を指す。「単離される」は、関心対象の化合物について実質的に濃縮される試料および/または関心対象の化合物が部分的もしくは実質的に精製される試料中にある化合物を含むことを意味する。
【0040】
本明細書で用いられるように、「実質的に純粋」という用語は、その自然の環境から回収されて、それが自然の状態で関連するその他の化合物を少なくとも60%非含有、好ましくは75%非含有、および最も好ましくは90%非含有である化合物を指す。
【0041】
特定のポリペプチドを「コード」する「コード配列」または配列は、例えば、インビボにおいて適切な調節塩基配列(または「制御要素」)の制御下に置いた場合、ポリペプチドへと転写(DNAの場合)および翻訳(mRNAの場合)される核酸分子である。コード配列の境界は、一般に、5'(アミノ)末端の開始コドンおよび3'(カルボキシ)末端の翻訳停止コドンによって定められる。コード配列には、ウイルス由来cDNA、原核性または真核性mRNA、ウイルス性または原核性DNAに由来するゲノムDNA配列、および合成DNA配列が含まれるが、これらに限定されるものではない。転写終了配列は、コード配列の3'に位置する可能性がある。その他の「制御要素」もコード配列に関連する可能性がある。ポリペプチドをコードするDNA配列は、所望のポリペプチドコード配列のDNAコピーとするために、特定の細胞によって好まれるコドンを用いてその特定の細胞内での発現のために至適化することができる。
【0042】
「によってコードされる」は、ポリペプチド配列またはその一部が核酸配列によってコードされるポリペプチドに由来する少なくとも3個ないし5個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも8個ないし10個のアミノ酸、さらにより好ましくは少なくとも15個ないし20個のアミノ酸の配列を含むポリペプチド配列をコードする核酸配列を指す。また、その配列によってコードされるポリペプチドを用いて免疫学的に同定可能なポリペプチド配列も包含される。
【0043】
「機能的に連結する」は、記載されるコンポーネントがそれらの通常の機能を果たすために配置を取る要素の配列を指す。従って、プロテアーゼ部位と機能的に連結する所与のプロポリペプチドはそのプロテアーゼ部位を認識するプロテアーゼによって開裂されて関心対象の生物活性(例えば、細胞毒性)を持つ成熟ポリペプチドを遊離することができる。プロモーターの場合、コード配列に機能的に連結するプロモーターはコード配列の発現に影響を及ぼすであろう。プロモーターまたはその他の制御要素は、それらがその発現を導くように機能する限り、そのコード配列に隣接する必要はない。例えば、転写されてまだ翻訳されていない介在配列はプロモーター配列とコード配列の間に存在することができて、このプロモーター配列は依然、そのコード配列に「機能的に連結する」と考えることができる。
【0044】
「核酸構築物」は、本来は一緒には見出されない一つまたはいくつかの機能単位を持つように構築されている核酸配列を意味する。例としては、環状、直鎖状、二本鎖、染色体外DNA分子(プラスミド)、コスミド(ラムダファージ由来COS配列を持つプラスミド)、非固有核酸配列を含むウイルスゲノムなどが挙げられる。
【0045】
「ベクター」は、遺伝子配列を標的細胞にトランスファーすることができる。典型的には、「ベクター構築物」、「発現ベクター」、および「遺伝子トランスファーベクター」は、関心対象の遺伝子の発現を誘導することができる核酸構築物であり、遺伝子配列を標的細胞にトランスファーすることができる核酸構築物を意味して、このトランスファーはベクターの全体または一部のゲノム組込み、またはベクターを染色体外要素として一過性または遺伝的に維持することによって達成することができる。従って、この用語にはクローニング、および発現媒体、ならびに統合ベクターが含まれる。
【0046】
「発現カセット」は、発現カセットのプロモーターに機能的に関連する関心対象の遺伝子/コード配列の発現を誘導することのできる任意の核酸構築物を含む。このようなカセットは、発現カセットを標的細胞にトランスファーするために、「ベクター」、「ベクター構築物」、「発現ベクター」、または「遺伝子トランスファーベクター」内に構築することができる。従って、この用語には、クローニングおよび発現媒体、ならびにウイルスベクターが含まれる。
【0047】
核酸およびアミノ酸「配列同一性」を確認するための技術は当技術分野において既知である。典型的には、このような技術には遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列の決定および/またはそれによってコードされるアミノ酸配列の決定、ならびにこれらの配列と第二のヌクレオチドまたはアミノ酸配列との比較が含まれる。一般に、「同一性」は、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列のそれぞれヌクレオチド対ヌクレオチドまたはアミノ酸対アミノ酸が完全に対応することを指す。2つまたはそれよりも多い配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、それらの「同一性割合(%)」を測定することによって比較することができる。核酸またはアミノ酸配列に関わらず、2つの配列の同一性割合(%)は、整合させた2つの配列の間の完全一致数を短い方の配列の長さで割って100を掛ける。核酸配列のおおよそのアラインメントは、SmithおよびWatermanの局所的相同性アルゴリズム、Advances in Applied Mathematics 2:482-489 (1981)によって示される。このアルゴリズムは、Dayhoff, Atlas of Protein Sequences and Structure, M. O. Dayhoff編、第5版. 3:353-358, National Biomedical Research Foundation, Washington, D.C., USAによって考案されたスコア行列を用いることによってアミノ酸配列に応用して、Gribskov, Nucl. Acids Res. 14(6):6745-6763 (1986)によって正規化することができる。配列の同一性割合(%)を決定するためのこのアルゴリズムの例示的実施は、Genetics Computer Group(Madison, WI)により「BestFit」ユーティリティーアプリケーションとして提供される。この方法の初期設定パラメータについては、Wisconsin Sequence Analysis Package Program Manual, Version 8 (1995)(Genetics Computer Group, Madison, WIより入手可能)に示されている。本発明に関する同一性割合(%)決定の好ましい方法は、エジンバラ大学(University of Edinburgh)が版権を保持して、John F. CollinsおよびShane S. Sturrokが開発したIntelliGenetics, Inc. (Mountain View, CA)から配布されているプログラムのMPSRCHパッケージを使用することである。スコアリングテーブルにおいて初期設定パラメータを使用する場合は、このパッケージセットからSmith-Watermanアルゴリズムを用いることができる(例えば、ギャップオープンペナルティー 12、ギャップエクステンションペナルティー 1、およびギャップ 6)。得られたデータから、「一致」の値は「配列同一性」を示す。配列間の同一性割合(%)または類似性割合(%)を算出するためのその他の適切なプログラムは当技術分野において一般的に知られていて、例えばもう一つのアラインメントプログラムはBLASTであり、デフォルトパラメータにて用いられる。例えば、BLASTNおよびBLASTPは次のデフォルトパラメータにて使用することができる:遺伝暗号=標準;フィルター=なし;鎖=両方;カットオフ=60;期待値=10;マトリックス=BLOSUM62;ディスクリプション=50シーケンス;ソート=HIGH SCORE;データベース=ノン-リダンダント、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDSトランスレーション+スイスタンパク質+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は次のインターネットアドレスで閲覧することができる:http://www. ncbi.nlm.gov/cgi-bin/BLAST。
【0048】
または、相同性は、相同領域間で安定な二本鎖を形成する条件下でのポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション、その後の一本鎖特異的ヌクレアーゼを用いた消化、および消化断片のサイズ測定によって求めることができる。2つのDNAまたは2つのポリペプチド配列は、上記の方法を用いて測定されるように、配列が一定の長さの分子を通して少なくとも約80%〜約85%、好ましくは少なくとも約85%〜約90%、より好ましくは少なくとも約90%〜約95%、および最も好ましくは少なくとも約95%〜約98%の配列同一性を示す場合に、互いに「実質的に相同」である。本明細書で用いられるように、実質的に相同は、特定のDNAまたはポリペプチド配列に対して完全な同一性を示す配列も指す。実質的に相同なDNA配列は、例えばその特別な系について定義されるように、ストリンジェントな条件下におけるサザンハイブリダイゼーション法で同定することができる。適切なハイブリダイゼーション条件の定義付けは当技術分野に含まれる。例えば、Sambrookら、後記;DNA Cloning、前記;Nucleic Acid Hybridization、前記を参照されたい。
【0049】
2つの核酸断片は、本明細書に述べられるように「選択的にハイブリダイズする」と考えられる。2つの核酸分子間の配列同一性の程度は、このような分子間のハイブリダイゼーションイベントの効果および強度に影響を及ぼす。部分的に一致する核酸配列は、完全に同一の配列が標的分子とハイブリダイズすることを少なくとも部分的に阻害する。完全に一致する配列のハイブリダイゼーションの阻害は、当技術分野において既知であるハイブリダイゼーションアッセイ法を用いて評価することができる(例えば、サザンブロット、ノーザンブロット、溶液ハイブリダイゼーションなど、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第二版、(1989) Cold Spring Harbor, N.Y.を参照されたい)。このようなアッセイ法は、例えば低ストリンジェンシーから高ストリンジェンシーまでの異なる条件を用いて、選択性の程度を変化させて実施することができる。部分的な配列同一性すら持たない二次プローブ(例えば、標的分子との配列同一性が約30%未満であるプローブ)は非特異的結合事象がなければ標的にハイブリダイズしないので、低ストリンジェンシーの条件が用いられる場合は二次プローブを用いて評価することができる。
【0050】
ハイブリダイゼーションに基づく検出系を用いる場合、核酸プローブは標的核酸配列に相補的なものが選択され、その上で、適切な条件の選択によって、プローブおよび標的配列が互いに「選択的にハイブリダイズ」、即ち結合してハイブリッド分子が形成される。「中等度にストリンジェント」な条件下において標的配列に選択的にハイブリダイズすることのできる核酸分子は、一般的には、選択された核酸プローブの配列と少なくとも約70%の配列同一性を持つ少なくとも長さ約10〜14ヌクレオチドの標的核酸配列を検出することのできる条件下においてハイブリダイズする。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、一般的には、選択された核酸プローブの配列と約90〜95%よりも高い配列同一性を持つ少なくとも長さ約10〜14ヌクレオチドの標的核酸配列の検出を可能とする。プローブおよび標的が特定の程度の配列同一性を持つプローブ/標的ハイブリダイゼーションに有用なハイブリダイゼーション条件は、当技術分野において既知であるように求めることができる(例えば、Nucleic Acid Hybridization : A Practical Approach、B. D. HamesおよびS. J. Higgins(編)、 (1985) Oxford; Washington, DC ; IRL Pressを参照されたい)。
【0051】
ハイブリダイゼーションのためのストリンジェントな条件に関して、例えば次の要因:プローブおよび標的配列の長さおよび性状、様々な配列の塩基組成、塩およびその他のハイブリダイゼーション溶液の成分の濃度、ハイブリダイゼーション溶液における遮断物質の有無(例えば、ホルムアミド、硫酸デキストラン、およびポリエチレングリコール)、ハイブリダイゼーションの反応温度および時間のパラメータを変化させることによって、さらには洗浄条件を変化させることによって特定のストリンジェンシーを確立するために多くの同等条件を用いることができることは当技術分野において周知である。ハイブリダイゼーション条件の特定の組み合わせの選択は、当技術分野における標準的方法に従って選択される(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第二版、 (1989) Cold Spring Harbor, N.Y.を参照されたい)。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、50℃またはそれ以上、0.1×SSC(15mM塩化ナトリウム/1.5mMクエン酸ナトリウム)におけるハイブリダイゼーションである。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件のもう一つの例は、50%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート試薬、10%硫酸デキストラン、および20mg/ml変性サケ精子DNAの溶液中で42℃で一晩インキュベートした後、フィルターを約65℃の0.1×SSCで洗浄する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、少なくとも上記の典型的条件と同程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件であり、ここで、条件が上記の具体的なストリンジェントな条件の少なくとも約80%ストリンジェントであれば、一般的には少なくとも約90%ストリンジェントであるならば、条件は少なくともストリンジェントであると見なされる。その他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は当技術分野において既知であり、本発明のこの特定の態様の核酸を同定するためにも用いることができる。
【0052】
最初のポリヌクレオチドは、それが二番目のポリヌクレオチドの領域、そのcDNA、その相補物と同一もしくは実質的に同一のヌクレオチド配列を持つ場合、または上記のように配列同一性を示す場合、二番目のポリヌクレオチドから「派生」する。
【0053】
最初のポリペプチドは、それが(i)二番目のポリヌクレオチドから派生する最初のポリヌクレオチドによってコードされる場合、または(ii)上記のように二番目のポリペプチドと配列同一性を示す場合、二番目のポリペプチドから「派生」する。本明細書で用いられる「単位投与剤形」という用語は、被検体(例えば、動物、通常はヒト)への単位用量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、例えば薬学的に許容される希釈剤、担体または賦形剤と連携して所望の効果を十分に発揮する量のプラスミドのように、予め定められた量の物質を含む。本発明の新規の単位投与剤形の仕様は用いられる特定の物質および達成されるべき効果、ならびに宿主内で各化合物と関連するファーマコダイナミクスを含む様々な因子に依存するが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0054】
「治療(treatment)」、「治療する(treating)」、「治療する(treat)」などの用語は、所望の薬学的および/または生理学的効果を得ることを指す。この効果は疾患またはその症状を完全または部分的に阻止する観点から言えば予防的である可能性があり、また/または疾患および/またはその疾患に起因する副作用の部分的もしくは完全治癒の観点から言えば治療的である可能性がある。本明細書で用いられるように「治療」は、哺乳動物、特にヒトにおける疾患のあらゆる治療を網羅して、(a)その疾患に対する素因は持っているがその疾患であると診断されたことはまだない被検体においてその疾患が発症することを防ぐこと;(b)その疾患を阻害する、即ち、疾患の進行を阻止すること;および(c)その疾患を緩和する、即ち、その疾患の退行および/または一つもしくはいくつかの疾患症状の緩和を引き起こすことが含まれる。「治療」は、疾患または状態がない場合であっても、薬学的効果をもたらすための物質の送達を包含することも意味する。例えば、「治療」は増強された効果または所望される効果(病原体負荷量の抑制、CD4数の増加、疾患症状の軽減など)を被検体に提供することのできる修飾されたプロポリペプチドをコードする核酸の送達を包含する。
【0055】
「被検体(subject)」、「宿主(host)」、および「患者(patient)」は本明細書において互換的に用いられて、細胞内病原体に感受性であり、またはこれによる感染症を有して本発明の方法によって治療することのできるヒトまたはヒト以外の動物を指す。一般に、被検体は哺乳動物の被検体である。例示的な被検体には、ヒト、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコおよびウマが含まれ、特にヒトは関心対象であるが、必ずしもこれらに限定されることはない。
【0056】
発明の詳細な説明
本発明は、抗病原体ポリペプチドおよびポリヌクレオチド組成物ならびにその使用方法を提供する。一般に、本発明の組成物は、プロドメイン、病原体プロテアーゼ開裂部位、および細胞内病原体のプロテアーゼによるプロポリペプチドの開裂によって活性化されることのできる細胞毒性ドメインを含む修飾プロポリペプチドを提供する。本発明は、対象であるポリペプチドをコードする核酸、ならびにその対象である核酸を含むベクターおよび宿主細胞をさらに提供する。病原体プロテアーゼによるプロポリペプチドの開裂によって細胞毒性ドメインが活性化して、病原体が感染した宿主細胞の生存性が低下する。病原体感染細胞の生存性を低下させるために対象である核酸およびポリペプチドを使用する方法、ならびに病原体が感染した被検体の病原体負荷量を抑制するための方法を提供する。本発明は、対象である方法を実施するためのキットをさらに提供する。
【0057】
本発明は、いくつかのプロテアーゼ開裂依存細胞毒性分子をコードするポリヌクレオチド配列を使用して病原体に感染した細胞の生存性を低下させることができるという観察所見に基づく。多くの態様において、分子は病原体に特異的なプロテアーゼ開裂部位を含むように操作されているプロポリペプチドをコードして、病原体プロテアーゼによってプロポリペプチドが開裂すると、プロポリペプチドの細胞毒性ドメインが活性化されて病原体を含む細胞が死滅する。従って、本発明はこのようなプロテアーゼ開裂依存細胞毒性分子をコードするポリヌクレオチド、ならびにこのようなポリヌクレオチドおよびこのようなポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを含む発現カセット、ベクターおよび細胞を包含する。
【0058】
本発明の核酸は、病原体、特にウイルス性病原体によってコードされるプロテアーゼを発現している細胞の生存性を低下させるために使用することができる。これらの方法は、病原体のある系統に対するヌクレオチドの有効性を調べるためのアッセイ法として使用することができる。本発明のヌクレオチドは、病原体が感染する被検体の病原体負荷量を抑制するために使用することもできる。このように、対象である方法は、ウイルスが感染した細胞がウイルスにコードされる未感染細胞が本来持たないプロテアーゼを発現するHIVおよびHCVなどのウイルス性疾患の治療に特に有用である。
【0059】
本発明のさらなる説明では、先ず本発明のポリヌクレオチドについて説明して、続いて本発明のポリペプチド、およびポリヌクレオチドを用いて病原体プロテアーゼを発現している細胞の生存性を低下させて病原体に感染した被検体の病原体負荷量を抑制するための方法について説明する。
【0060】
開裂依存細胞毒性ポリペプチド
一つの局面において、本発明は病原体プロテアーゼ開裂依存細胞毒性ポリペプチドを提供する。一般に、このポリペプチドは、プロドメインおよび細胞毒性ドメインを持つ天然のプロポリペプチドまたはその変異型の修飾型である。修飾プロポリペプチドは、プロポリペプチドに固有でない配列特異的プロテアーゼ開裂部位を持ち、この開裂部位はプロドメインと細胞毒性ドメインの間に遺伝子操作によって挿入される。修飾プロポリペプチドの細胞毒性ドメインは、病原体プロテアーゼ、通常は配列特異的病原体プロテアーゼによってプロポリペプチドから開裂するまで、検出可能な細胞毒性活性をほとんどまたは全く持たない。従って、本明細書では細胞毒性ドメインを「開裂依存細胞毒性ポリペプチド」とも呼ぶ。
【0061】
一般に、対象であるポリペプチドは天然のプロポリペプチドまたは生物学的に活性なその変異型の修飾型である。プロポリペプチドは通常はプロテアーゼ、アポトーシス分子、またはヘビ、クモ、細菌、植物もしくは真菌毒素などの毒素のプロポリペプチドである。多くの態様において、プロポリペプチドは細胞毒性活性を持つ「成熟」ポリペプチドの前駆体であり、従って、そのプロポリペプチドは成熟ポリペプチドに比べて細胞内にあれば、顕著な細胞毒性を有する。一般に、プロポリペプチドは、細胞内に存在する場合、標準的試験であるヒト細胞生存性により測定される通り、成熟ポリペプチドの細胞毒性の約20%以下、約10%以下、約5%以下、約2%以下、約1%以下、または約0.5%よりも低い細胞毒性を示す。
【0062】
多くの態様において、プロポリペプチドはヒトプロポリペプチドであるか、またはヒトポリペプチドに由来し、プロドメイン、プロテアーゼ部位、および細胞毒性ドメインの3つのドメインを含む。多くの態様において、プロポリペプチドは、プロカスパーゼ-3(例えば、配列番号:4)、プロカスパーゼ-8(例えば、配列番号:6)、またはBH3相互作用型ドメインデスアゴニスト(BH3 interacting domain death agonist:BID)プロポリペプチド(配列番号:1)などの細胞アポトーシス経路に関与する(Raff, Nature 396,119-122 (1998), Thornberryら、Science 281, 1312-1316 (1998)、Hengartner, Cell 104, 325-328 (2001)、およびFraserら、Cell 85, 781-784. (1996)において総説される)。BIDに基づく修飾プロポリペプチドは特に関心対象である。
【0063】
内因性開裂部位の修飾
一部の態様において、プロポリペプチドは一つまたはいくつかの内因性プロテアーゼ開裂部位を不活化するように修飾される。
【0064】
一般に、プロポリペプチドは、プロポリペプチドをプロドメインおよび細胞毒性ドメインに開裂する配列特異的プロテアーゼに関して、少なくとも1つ、多くの場合は2つ、時には3つ、4つまたは5つもしくはそれよりも多くの内因性認識部位を持つ。これらの「天然(ネイティブ(native))」の認識部位は、その部位を認識する細胞性プロテアーゼによって開裂することができる。これらの天然の部位において開裂するプロテアーゼの正体は不明であることが多いが、プロポリペプチドにおける配列特異的認識部位は明らかであることが多い。例えば、BIDは3つの内部Asp部位(Asp59、Asp75、およびAsp98)の任意の一つまたは複数において開裂して成熟BIDポリペプチドの細胞毒性活性を活性化することができる(Grossら、(1999) J. Biol. Chem 274: 1156-1163;Liら、 (1998) Cell 94: 491-501)。
【0065】
アポトーシスにおけるカスパーゼおよびその他の分子に関する天然の配列特異的プロテアーゼ認識配列は周知である(Earnshawら、(1999) Annu. Rev. Biochem. 68: 383-424)。カスパーゼ8によるBIDの開裂によって形成される優勢p15断片のLQTD/認識モチーフはカスパーゼ8のコンセンサスとほぼ等しい。Liら(Cell 94: 491-501)によると、LQTD59/はカスパーゼ8の開裂部位であり、IEAD75/はグランザイムBの開裂部位である。カスパーゼ6、8、9のコンセンサスは(I/L/V)EXDであり、ここでXは任意のアミノ酸である。カスパーゼ2、3、7のコンセンサスモチーフはDEXDであり、ここでXは任意のアミノ酸である。配列DEMDはカスパーゼ3の代表的認識部位であるが、DQMDも非常によく開裂する。D59での開裂は優勢p15産物を生じ、D75およびD98におけるさらなる開裂はそれぞれ微量のp13およびp11断片を生じる(Grossら、J. Biol. Chem. 274: 1156-1163)。グランザイムBの認識配列も当技術分野において既知である(例えば、Thomasら、Proc. Natl. Acad. Sci. 98: 14985-14990, 2001、およびBarryら、Mol Cell Biol 20: 3781, 2000)。このように、天然の配列特異的プロテアーゼ認識配列は、プロポリペプチドの配列を既知のプロテアーゼ認識配列と比較することによってプロポリペプチドにおいて識別することができる。
【0066】
天然の配列特異的プロテアーゼ認識配列も経験的に識別することができる。例えば、グランザイムBおよび一部のカスパーゼのようにアポトーシスに関与するプロテアーゼはAsp部位にて開裂するので、それぞれが修飾されて例えばGlu部位となる異なるAsp部位を持つ一連の修飾プロポリペプチドが産生される可能性があり、実施例のセクションに述べられる方法または当技術分野において既知であるその他の方法(例えば、Harrisら、J. Biol. Chem. (1998) 273:27346-27373)を用いて活性を調べることができる。
【0067】
プロテアーゼ認識部位が修飾されたプロポリペプチドはその部位での開裂を起こさず、未修飾のプロポリペプチドに比べて細胞内での毒性が低下している。または、プロポリペプチドの開裂部位は生化学的に、例えばプロポリペプチドをグランザイムBまたはカスパーゼのようなプロテアーゼを含むタンパク質抽出物と共にインキュベートして、生じるプロポリペプチドのペプチド断片のC末端またはN末端をペプチドシーケンシングにて調べることによって決定することができる。
【0068】
BIDは、グランザイムBまたはカスパーゼ8のプロテアーゼ、および場合によってはその他のプロテアーゼによって開裂してそのプロアポトーシス性の細胞毒性活性を活性化することができる。プロポリペプチドのプロテアーゼ部位は、一般的には少なくとも4アミノ酸の長さ、少なくとも6アミノ酸の長さ、通常は約7アミノ酸の長さであり、時には8、10、12または14アミノ酸よりも長いプロテアーゼの認識部位内にある。多くの態様において、BIDはCys残基の位置で開裂する。一般に、プロポリペプチドはヒトゲノムをコードするポリペプチドまたはその生物学的な変異型である。
【0069】
好ましい態様において、修飾プロポリペプチドは配列特異的プロテアーゼに関して少なくとも1つ、多くの場合は2つ、時には3つ、4つもしくは5つまたはそれよりも多くの認識部位が変化していて、その結果、成熟ポリペプチドまたは細胞毒性活性を保持したその一部を細胞内に放出することができる。通常、これらの「天然」の認識部位の一つが上記のように病原体プロテアーゼの非天然の認識部位で置換される。さらなる天然の認識部位は、天然の認識部位を認識する細胞プロテアーゼによって開裂しないように変化させることができる。これは、認識部位のアミノ酸を欠失、置換または付加することによって実施することができる。多くの態様において、開裂部位のアミノ酸は修飾される。例えば修飾BIDの場合、BIDアミノ酸配列の59位、75位および98位のAspアミノ酸残基は、例えばGlu残基と置換することができる。多くの態様において、BIDアミノ酸配列の98位の残基は、例えばGlu残基と置換される。これらの位置におけるアミノ酸の置換は、一般に、その部位を未修飾部位に特異的な細胞性プロテアーゼの基質でなくする。当業者に認識されるように、BID配列が変化しているならば(例えば、N末端における伸長または短縮)、アミノ酸の変化は上記の位置に相当する位置である可能性がある。
【0070】
少なくとも一つの配列特異的プロテアーゼに関する少なくとも2つの天然の認識部位が変化した修飾プロポリペプチドは、通常は、単一の天然認識部位が変化した類似の修飾プロポリペプチドよりも細胞内での毒性が低い。このように、多くの態様において、少なくとも2つの天然認識部位が変化した修飾プロポリペプチドは、標準的試験であるヒト細胞生存性により測定される通り、単一の天然認識部位が変化した類似の修飾プロポリペプチドよりも細胞内での毒性が95%よりも低く、90%よりも低く、75%よりも低く、50%よりも低く、35%よりも低く、または20%よりも低い。
【0071】
非内因性、病原体特異的プロテアーゼ開裂部位を付加するための修飾
対象である修飾プロポリペプチドは、一般に、そのプロポリペプチドに固有でない配列特異的プロテアーゼ部位を遺伝子操作によって付加するように修飾される。付加される「非天然(non-native)」プロテアーゼ部位の選択は、その系が一緒に用いられる病原体に依存する。例えば、HCV感染を治療するために用いられるべきプロポリペプチド(またはそのコードするポリヌクレオチド)は遺伝子工学によってHCVプロテアーゼ部位(例えば、NS3セリンプロテアーゼ)を持ち、HIV-1感染を治療するために用いられるべきプロポリペプチド(またはそのコードするポリヌクレオチド)は通常はHIV-1プロテアーゼ認識部位を持つように遺伝子的に操作される。さらに、プロテアーゼ開裂部位は、感染病原体の遺伝子型(例えば、HCVの場合は遺伝子型1、2、3など;HIVの場合は、HIV-1、HIV-2など)に応じてさらに選択することができる。例示的なHCVプロテアーゼ部位は次の通りである:
ここで、「/」は開裂部位であり、開裂部位直前の残基は通常はCysであるがThrであることも可能であり、その部位の最初の残基はAspであるがGluであることも可能であり、さらに開裂部位から後に4番目の位置にある残基はVal、Leu、Ala、TrpまたはTyrのような疎水性アミノ酸である。その部位の最初および開裂部位直前の保存残基は通常はHCVプロテアーゼ開裂部位に存在する。HCVプロテアーゼ、特にプロテアーゼNS3の開裂部位については、Grakoui, A.ら、(Journal of Virology 67: 2832-2843, 1993)およびUrbaniら、(Journal of Biological Chemistry 272: 9204-9209 (1997))においてさらに説明されている。
【0072】
表1は遺伝子工学によってプロポリペプチドに挿入して修飾プロポリペプチドを作成することのできるプロテアーゼ部位の例示的リストを示し、ここで、「---」は開裂部位である。これらの配列は短縮することができることが理解される。多くの態様において、HCVと共に用いるためのベクターにおけるプロテアーゼ開裂部位は
であり、HIV-1と共に用いるためのプロテアーゼ開裂部位は
または
である。
【0073】
(表1)
【0074】
このように、プロポリペプチドは任意のRNAウイルス、または病原体のプロテアーゼにおける配列特異性が既知であるかまたは容易に識別可能である限り、その他の細胞内病原体と共に使用するためにデザインされることができる。
【0075】
追加の病原体特異的プロテアーゼおよび特定の開裂部位について記載されて、本発明に従って用いることができる。
【0076】
例えば、HSV-1成熟プロテアーゼおよびプロテアーゼ開裂部位について述べられている。Hall, M. R. T.およびW. Gibson, Virology, 227: 160 (1997)などを参照されたい;この開示は参照として組み入れられる。さらに、プラスメプシンIおよびIIとして記載される2つのアスパラギン酸プロテイナーゼは、熱帯熱マラリア原虫の消化胞中に見出されている。それぞれのプロテイナーゼ開裂部位も開示されている。Moon, R. P., Eur. J. Biochem., 244:552 (1997)などを参照されたい。さらなる病原体特異的プロテアーゼ開裂部位には、HSV-1プロテアーゼ開裂部位p17-p24
p7-p1
およびpr-RT
が含まれる。
【0077】
当業者は、上記の任意のプロテアーゼ開裂部位は、その部位が意図する病原体特異的プロテアーゼによって特異的に開裂される限り、(例えば、部位特異的突然変異によって)所望通りに修飾することができることを認識する。いくつかの態様において、例えば修飾プロポリペプチドおよびそのコードする核酸のサイズを至適化するために、特異的なタンパク分解性開裂に必要な最小のアミノ酸配列を使用することが望ましい可能性がある。最小開裂部位配列は、多くの病原体特異的プロテアーゼ開裂部位について報告されている。または、所望のタンパク分解性開裂部位における最小配列は突然変異、特に欠失分析および部位特異的突然変異(アラニンスキャニング突然変異など)によって容易に得ることができる。修飾開裂部位は、下記のような標準的プロテアーゼ開裂アッセイ法において容易にアッセイすることができる。
【0078】
本明細書で用いられる「特異的開裂」は、特定のプロテアーゼ開裂部位におけるペプチド結合がプロテアーゼ開裂部位のアミノ酸配列に特異的に結合するプロテアーゼによって特異的に崩壊(即ち、加水分解)することを意味する。プロテアーゼ開裂部位の特異的開裂は、タンパク質断片の分析、プロテアーゼ活性の競合阻害などの様々な手法に従ってアッセイすることができる。
【0079】
病原体プロテアーゼは、セリンエンドペプチダーゼ、システインエンドペプチダーゼ、アスパラギン酸エンドペプチダーゼ、メタロエンドペプチダーゼ、または触媒作用が明らかでないエンドペプチダーゼである可能性がある。多くの態様において、プロテアーゼ部位は、ウイルス配列特異的プロテアーゼのための部位である。特に対象となる態様において、プロテアーゼ部位は、サイトメガロウイルス、I型単純疱疹ウイルス、C型肝炎ウイルス(遺伝子型1、2、3などのHCVを含むHCV)、1型ヒト免疫不全ウイルス、2型ヒト免疫不全ウイルス、およびカポジ症候群関連ヘルペスウイルスプロテアーゼ開裂部位、ピコルナウイルス(口蹄疫ウイルス、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス)、フラビウイルス(西ナイル熱、黄熱、デング熱、日本脳炎、マレー渓谷脳炎、セントルイス脳炎)、トガウイルス(東部ウマ脳炎、西部ウマ脳炎、ベネズエラ脳炎、チクングンヤ、風疹、ロスリバー熱)、カリシウイルス(ノーウォーク物質)、アデノウイルスから選択することができるが、当技術分野ではその他にいくつかの病原体およびそれぞれのプロテアーゼ部位が知られている。本発明の修飾プロポリペプチドのプロテアーゼ認識配列(即ち、プロテアーゼ部位)は、通常は少なくとも6アミノ酸の長さ、少なくとも8アミノ酸、少なくとも10アミノ酸、およびしばしば少なくとも12または14アミノ酸もしくはそれよりも長いアミノ酸の長さである。
【0080】
一般に、非天然のプロテアーゼ認識配列は、プロポリペプチドのアミノ酸の置き換え、プロポリペプチドの2つのアミノ酸残基間への非天然の認識配列の挿入、またはこれらの方法の組み合わせによってプロポリペプチド配列に挿入される。多くの態様において、非天然のプロテアーゼ認識配列は、開裂してプロドメインおよび成熟ポリペプチドを遊離する天然の認識配列と置き換わるか、または部分的に置き換わる。非天然の病原体特異的プロテアーゼ開裂部位の導入方法に関わらず初期のプロポリペプチドに含まれる天然の開裂部位は、修飾プロポリペプチド内において、修飾されていない天然の認識配列を認識する細胞プロテアーゼによってはもはや開裂しないように変更される。
【0081】
HIVまたはHCVプロテアーゼ部位および修飾された内因性プロテアーゼ開裂部位を持つ例示的な修飾プロカスパーゼ-3(配列番号:5)、プロカスパーゼ-8(配列番号:7)およびプロBIDプロポリペプチド(配列番号:2および3)を図6に示す。
【0082】
修飾プロポリペプチドをコードする核酸
本発明は、修飾プロポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する(本明細書では、上記のように「病原体プロテアーゼ開裂依存細胞毒性ポリペプチドとも呼ぶ。遺伝コードおよび核酸を操作するための遺伝子組換え技術は既知であり、修飾プロポリペプチドのポリペプチド配列は上記のように説明されることから、これらの核酸のデザインおよび産生は十分に当業者の技術内である。
【0083】
対象である核酸は、通常、対象である修飾プロポリペプチドをコードする1つのオープンリーディングフレームを含むが、一部の態様では、そのプロポリペプチド発現のための標的細胞がヒト細胞などの真核細胞である可能性があるため、このオープンリーディングフレームはイントロンによって中断される可能性がある。対象である核酸は一般に、核酸に加えてRNA安定性、翻訳効率などを司ることのできる3'および5'非翻訳領域(UTR)を含む転写ユニットの一部である。対象である核酸は、核酸に加えて、プロポリペプチドをコードするRNAの転写および発現を司るプロモーターならびに転写ターミネーターを含む発現カセットの一部でもある。いくつかの態様において、このプロモーターはそのプロポリペプチドが一緒に使用されるべき病原体によって誘導可能である。
【0084】
例示的な真核プロモーターには次が含まれるが、これらに限定されるものではない:マウスメタロチオネインI遺伝子配列のプロモーター(Hamerら、J. Mol. Appl. Gen. 1:273-288, 1982);ヘルペスウイルスのTKプロモーター(McKnight, Cell 31:355-365, 1982);SV40初期プロモーター(Benoistら、Nature (London) 290:304-310, 1981);酵母gall遺伝子配列プロモーター(Johnstonら、Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 79:6971-6975, 1982);Silverら、Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 81:5951-59SS, 1984)、CMVプロモーター、EF-1プロモーター、エクジソン反応性プロモーター、テトラサイクリン反応性プロモーターなど。特にウイルス性プロモーターは一般的に強力なプロモーターであり、特に関心対象である可能性がある。一部の態様において、標的病原体のプロモーターであるプロモーターが用いられる。本発明の使用のためのプロモーターは、それらが導入される細胞タイプ(および/または動物)内で機能するように選択される。
【0085】
いくつかの態様において、細胞内病原体がウイルスである場合、プロモーターは感染しているウイルス性病原体の一つまたはいくつかのウイルス性転写因子に由来するまたはそれによって活性化可能なウイルス性プロモーターである。例えば、感染ウイルスがHIVである場合、本発明の修飾プロポリペプチドの発現を誘導するプロモーターはHIVプロモーター、またはHIVが感染した宿主細胞内での転写を高めるその他のプロモーターである。
【0086】
対象である核酸セグメントは、通常は修飾プロポリペプチドをコードする核酸の構築を促進するために、制限部位、多くのクローニング部位、プライマー結合部位、連結可能末端、遺伝子組換え部位なども含むことができる。
【0087】
多くの態様において、未修飾プロポリペプチドコード核酸から修飾プロポリペプチドコード核酸を作成するためには、標準的な組換えDNA手法(Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology、第3版、Wiley & Sons, 1995;Sambrookら、Molecular Cloning : A Laboratory Manual、第2版、(1989) Cold Spring Harbor, N.Y.)を用いて親抗体フレームワークコード配列をコードする核酸配列において適切なヌクレオチドを置換、欠失、および/または付加する。
【0088】
例えば、突然変異を司る部位を用いて、変異したポリヌクレオチドがプロポリペプチド非天然プロテアーゼ部位をコードするように、プロポリペプチド天然プロテアーゼ部位をコードするポリヌクレオチドに核酸残基を導入/欠失/置換することができる。その他の方法では、PCRが用いられる。一つのPCR法では、修飾プロポリペプチドコード配列を作成するために、「重複伸長PCR」(Hayashiら、Biotechniques. 1994: 312, 314-5)を利用する。この方法において、修飾プロポリペプチドの置換/挿入/欠失したアミノ酸残基をコードする核酸残基コドンは遺伝子操作によってPCRプライマーに組み込まれる。親核酸配列を鋳型として用いる反復重複PCR反応によって、修飾核酸が作成される。これらの多くの方法の産物は修飾フレームワーク領域である。Stratagene(La Jolla, CA)の「クイックチェンジ(Quickchange)」(商標)キットを含めて、核酸を修飾するためのその他のいくつかの方法も用いることができる。
【0089】
本発明は、対象である核酸を含むベクター(「構築物」とも言う)をさらに提供する。本発明の多くの態様において、修飾プロポリペプチドをコードする核酸配列は、その配列が操作によってプロモーターなどを含む発現制御配列に連結された後に宿主内で発現する。対象である核酸も、一般的にエピソームとして、または宿主染色体DNAの不可欠な部分として宿主有機体内で複製可能な発現ベクターに組み込まれる。通例、発現ベクターは、所望のDNA配列を用いてトランスフォームした細胞の検出を可能とするために、例えばテトラサイクリンまたはネオマイシンのような選択マーカーを含む(例えば、本明細書に参照として組み入れられる米国特許第4,704,362号を参照されたい)。単一または二重発現カセットベクターなどのベクターは当技術分野において周知である(Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology、第3版、Wiley & Sons, 1995;Sambrookら、Molecular Cloning : A Laboratory Manual、第2版、(1989) Cold Spring Harbor, N.Y.)。適切なベクターには、ウイルスベクター、プラスミド、コスミド、人工染色体(ヒト人工染色体、細菌人工染色体、酵母人工染色体など)、微小染色体などが含まれる。通常はレトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ関連ウイルスベクターが用いられる。
【0090】
宿主細胞
本発明は、本発明の核酸またはベクターを含むヒト以外の動物の単離されたインビトロ宿主細胞(例えば、構築物の作成および/またはスクリーニングアッセイ法で使用するため)およびインビボにおける宿主細胞を含む宿主細胞を提供する。
【0091】
大腸菌は、本発明の核酸配列のクローニングに有効な原核宿主である。使用に適したその他の微生物宿主には、バチルスサブチリス(Bacillus subtilus)、ならびにサルモネラ菌、セラチア菌および種々のシュードモナス種のようなその他の腸内細菌科のような細菌が含まれる。これらの原核宿主において、一般に宿主細胞に適合する発現制御配列(例えば、複製の起点)を含む発現ベクターを作成することもできる。さらに、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、β-ラクタマーゼプロモーター系、またはλファージに由来するプロモーター系のように、任意の数の様々な周知のプロモーターが含まれる。これらのプロモーターは一般に発現を制御して、選択的にオペレーター配列を持ち、また転写および翻訳の開始および終了のためのリボソーム結合部位配列などを持つ。
【0092】
酵母のようなその他の微生物も発現に使用することができる。サッカロミセス属またはピヒア属は好ましい宿主であり、適切なベクターは3-ホスホグリセレートキナーゼプロモーターまたはその他の解糖酵素遺伝子のプロモーターなどのプロモーターのような発現制御配列、ならびに複製の起点、終止配列および所望の同様の配列を持つ。
【0093】
微生物に加えて、哺乳動物組織の細胞培養物も本発明のポリペプチドを発現および作成するために用いることができる(参照として本明細書に組み入れられるWinnacker,「From Genes to Clones」, VCH Publishers, New York, N.Y. (1987)を参照されたい)。当技術分野では完全な抗体を分泌することのできる多くの適切な宿主細胞系が開発されていることから真核細胞が好ましく、CHO細胞株、各種COS細胞株、HeLa細胞、好ましくは骨髄腫細胞株など、およびトランスフォームしたB細胞またはハイブリドーマが含まれる。これらの細胞の発現ベクターは、複製の起点、プロモーター、エンハンサーのような発現制御配列(Queenら、Immunol. Rev., 89,49-68 (1986)、参照として本明細書に組み入れられる)、ならびにリボソーム結合部位、RNAスプライシング部位、ポリアデニル化部位および転写終止配列のような必要なプロセッシング情報部位を含むことができる。好ましい発現制御配列は、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、ウシ乳頭腫ウイルスなどに由来するプロモーターである。修飾プロポリペプチドが特異的である(即ち、修飾プロポリペプチドが細胞内病原体によって産生されるプロテアーゼのためのプロテアーゼ開裂部位を含む)細胞内病原体による感染を支持することのできる、霊長類の細胞および細胞株を含む哺乳動物細胞が特に関心対象である。
【0094】
対象である修飾プロポリペプチドは、発現の目的に応じて、従来の方法に従って原核生物または真核生物内で発現させることができる。タンパク質の大量生産において、大腸菌、バチルスサブチリス、酵母菌のような単細胞生物、バキュロウイルスベクターと併用される昆虫細胞、または脊椎動物、特に哺乳動物のような高等生物の例えばCOS7細胞などの細胞は発現宿主細胞として用いることができる。いくつかの状況において、天然の折り畳み修飾および転写後修飾がコードされるタンパク質に有利に働く真核細胞内で遺伝子を発現することが望ましい。ポリペプチドは実験室内で合成することもできる。対象であるタンパク質の完全配列のサブセットであるポリペプチドを用いて、機能にとって重要なタンパク質の部分を同定および研究することができる。
【0095】
特別な関心対象の態様において、宿主細胞は、ウイルスのような細胞内病原体が感染することが可能であり、プロポリペプチドの細胞毒性ドメイン開裂産物の細胞毒性に対して感受性である哺乳動物(例えば)ヒトの細胞である。一部の態様において、ヒト細胞はCHOP細胞、huh7細胞またはH9C2細胞であり、細胞は関心対象のウイルスによる感染に対して感受性であることから選択される。
【0096】
修飾プロポリペプチドを用いたスクリーニング方法
本発明は、修飾プロポリペプチドのスクリーニング方法をさらに提供する。多くの態様において、これらの方法は、病原体がコードするプロテアーゼを発現している細胞に対象であるプロポリペプチドまたは対象であるプロポリペプチドをコードする核酸を導入する工程、該プロポリペプチドの発現を可能とする条件下でその細胞をインキュベートする工程、およびその細胞の生存性を測定する工程を伴う、インビトロにおける方法である。その他の態様において、これらの方法は、病原体がコードするプロテアーゼを発現している病原体に感染したヒト以外の動物における対象であるポリペプチドまたは対象であるポリペプチドをコードするヌクレオチドを導入する工程、およびその動物の症状を検査する工程を伴う、インビボにおける方法である。
【0097】
インビトロにおけるアッセイ法
一般に、この方法は、病原体プロテアーゼを発現している細胞への病原体プロテアーゼの認識部位を含む対象である修飾プロポリペプチドをコードする核酸を導入する工程、該プロポリペプチドを発現させるために細胞をインキュベートする工程、および細胞の生存性を測定する工程を伴う。
【0098】
多くの態様において、病原体がコードするプロテアーゼを発現している細胞の20%まで、50%まで、70%まで、80%まで、90%まで、95%まで、98%まで、および99%または99.5%までがこの方法によって生存性が低下している(即ち、死滅する)。細胞の生存性は、通常、それが生存しているか否かによって決定されて、これはトリパンブルーのような色素または蛍光の取り込みに関する試験などの標準的な生存性試験を用いて測定することができる。
【0099】
一般に、修飾プロポリペプチドのプロテアーゼ開裂部位を開裂するプロテアーゼは細胞内病原体が存在する(即ち、細胞が細胞内病原体に感染する)結果として細胞に含まれる。しかし、多くの態様において、標的細胞は関心対象のプロテアーゼに関して遺伝子組換え型である(例えば、天然のウイルスまたは組換え型ウイルスの感染、細胞内でプロテアーゼを発現することのできるウイルスレプリコン、プラスミドまたはその他の遺伝子組換え分子の存在の結果として)。
【0100】
多くの態様において、病原体がコードするプロテアーゼはウイルスなどの細胞内病原体のプロテアーゼである。適切なウイルス性病原体はVirus Taxonomy: The Classification and Nomenclature of Viruses. The Seventh Report of the International Committee on Taxonomy of Viruses, (van Regenmortelら(編)、(2000). Academic Press, SanDiego)において見出すことが可能であり、またはオーストラリア国立大学(Australian National University)のワールドワイドウェブサイトにあるユニバーサルウイルスデータベース(Universal Virus Database)(バージョン2)で閲覧することができる。RNAウイルス、特にHCVのような(+)RNAウイルス、(-)RNAウイルス、およびHIV-1のようなRNA-RTウイルスのプロテアーゼを発現している細胞が対象である。
【0101】
一般に、対象であるプロポリペプチドをコードする核酸は、当技術分野において既知の方法(例えば、ウイルス感染、トランスフェクション、電気穿孔法など、Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology、第3版、Wiley & Sons, 1995;Sambrookら、Molecular Cloning : A Laboratory Manual、第2版、(1989) Cold Spring Harbor, N.Y.にて議論されている)を用いて病原体プロテアーゼを持つ細胞内に導入されて、その細胞はプロポリペプチドが発現するまで1時間、12時間、24時間または実に数日間も、インキュベートされる。
【0102】
多くの態様において、病原体によってコードされるプロテアーゼを発現する標的細胞の生存性を低下させる対象である方法は、病原体がコードするプロテアーゼを発現している細胞の生存性に対する修飾プロポリペプチドの影響を調べるためのアッセイ法において用いられる。一般に、細胞は生存性の測定前に約1時間、3時間、8時間、24時間、または実に48時間もしくはそれよりも長い期間、インキュベートされる。細胞の生存性はそれが生きているか否かによって決定されて、これはトリパンブルーのような色素または蛍光の取り込みに関する試験のような標準的な生存性試験を用いて測定することができる。多くの態様において、このアッセイ法は病原体プロテアーゼを発現している多くの細胞に対して実施されて、細胞生存性は百分率として表される。多くの態様において、このアッセイ法では、病原体がコードするプロテアーゼを発現している細胞の20%まで、50%まで、70%まで、80%まで、90%まで、95%まで、98%まで、および実に99%または99.5%までが未修飾プロポリペプチドが投与される対照群に比べて生存性が低下している(例えば、死滅する)。このような方法は、一般に対象である細胞の生存性を低下させるので、様々なアッセイ法において使用することができる。
【0103】
その系統によってコードされるプロテアーゼを発現している細胞の生存性を低下させるためにもっとも有効なプロポリペプチドを調べるために、対象である方法を用いて多くの異なるプロポリペプチドについてある系統のウイルスなどの特定の病原体によってコードされるプロテアーゼに対するそれらの有効性を個々に調べることができる。
【0104】
その他の態様において、対象である方法は、特定のプロポリペプチドに対して感受性であるか否かを調べるために、多くの異なる病原体(例えばウイルスの系統)によってコードされる多くの異なるプロテアーゼを個々に試験するためにも用いることができる。
【0105】
その他の態様において、対象であるアッセイ法は、病原体にコードされるプロテアーゼを阻害するか否かを調べるために、小分子、ペプチド阻害物質などのような多くの物質を個々に試験するために用いることができる。これらのアッセイにおいて、試験物質は修飾プロポリペプチドと共に病原体プロテアーゼ法を発現している細胞に同時に導入されて、細胞の生存性を調べることができる。多くの態様において、試験物質を投与していない対照群に比べて10%を超える、30%を超える、50%を超える、70%を超える、または実に80%を超えるまたは90%を超えるもしくはそれよりも高い細胞生存性の低下は、その物質が病原体がコードするプロテアーゼを阻害することを示す。細胞生存性を高める物質は、ウイルス感染した被検体の治療に用いることができる。
【0106】
本発明のいくつかの態様において、対象である核酸は、病原体プロテアーゼをコードする核酸(例えば、ウイルス、組換え型ウイルス、プロテアーゼをコードするプラスミドなど)が細胞に投与されるのと同時に、またはその後に投与される。しかし、一部のその他の態様において、プロポリペプチドをコードする対象である核酸は、病原体プロテアーゼをコードする核酸の前に投与される。これらの態様において、対象である核酸は細胞の生存性を高めて、将来のウイルス感染に対して細胞の「防御」を提供する可能性がある。
【0107】
インビボにおけるアッセイ法
一般に、この方法は、例えばヒト病原体に感染したヒト以外の動物モデルへの、病原体プロテアーゼの認識部位を含む修飾プロポリペプチドをコードする核酸の投与を伴う。この状況において、ヒト以外の動物モデルは通常は、ウイルス性病原体のような部位特異的プロテアーゼを発現するヒト病原体に感染させる。哺乳動物、特にマウス、サル、ラット、ネコ、イヌ、モルモットなどのこのような多くの動物モデルが当業者に既知である。マウスモデル、特にHCV(PCT公開国際公開公報第01678号に述べられる)およびHIV感染(米国特許第5,612,018号に述べられる)に関するマウスモデルが関心対象である。
【0108】
多くの態様において、対象である核酸が投与されると動物が発現するその病原体の症状(例えば、病原体が感染した細胞の生存性、病変、出血、挫傷、力価、感染細胞数)が、対象である核酸を投与されていない動物に比べて、20%まで、50%まで、70%まで、80%まで、90%まで、95%まで、98%まで、および実に99%または99.5%まで軽減する。その他の態様において、対象である核酸が投与されると、その動物が発現するその病原体の症状(例えば、CD4数、ALTまたはHAAT活性など)が、対象である核酸を投与されていない動物に比べて、20%まで、50%まで、70%まで、80%まで、90%まで、95%まで、98%まで、および実に99%または99.5%まで増加する。
【0109】
多くの態様において、血液サンプルが動物から採取されて、ウイルス、細胞、タンパク質、または分子のような血液産物の量(ウイルス力価、ウイルスゲノム、ウイルスmRNA、CD4数、ALTまたはHAAT活性など)を調べる。その他の態様において、試験動物から組織のサンプルが採取されて症状(例えば、細胞死、病変、ウイルス力価など)が測定される。
【0110】
細胞内病原体による被検体の感染の治療
本発明は、被検体における細胞内病原体感染症の治療方法も提供する。この状況において、治療は感染した被検体における病原体負荷量の抑制(例えば、ウイルス負荷量またはウイルス力価の抑制)を伴うことができる。本発明は、感受性被検体における細胞内病原体による感染の症状または疾患のリスクを予防または抑制することも企図する。この後者のカテゴリーにおける被検体の例には、臓器移植レシピエント(例えば、肝移植、骨髄またはその他の免疫細胞移植など)が含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。HCV感染を除去してドナーの肝臓および免疫無防備状態またはその他の免疫不全の被検体(例えば、自己免疫疾患、AIDS、遺伝的欠損など)の再感染のリスクを抑えるために、治療として肝移植を受けている被検体を含めて、慢性HCV感染を持つ被検体の治療は特に関心対象である。
【0111】
特に関心対象の一つの態様において、本発明は、病原体が感染した被検体にプロポリペプチドをコードする対象である核酸の投与を伴う。もう一つの態様において、修飾プロポリペプチドが送達される。この後者の態様において、修飾ポリペプチドは感染した宿主細胞へのポリペプチドの細胞内送達を促進するために、さらなる修飾または調製を必要とする可能性がある。関心対象のタンパク質の細胞内送達を実行するための方法は当技術分野において既知であり、例えば米国特許第6,221,355号を参照されたい。
【0112】
治療において用いるための修飾プロポリペプチドは、感染性細胞内病原体に応じて選択される。多くの態様において、病原体は、その病原体が感染する宿主細胞内で発現するコードされた配列特異的プロテアーゼを持つ病原体である。多くの態様において、その病原体は、例えばウイルス、特にRNAウイルスのような細胞内病原体である。このように、この方法は宿主においてプロテアーゼを発現する何らかの病原体に感染する被検体の病原体負荷量の低下に有効である可能性がある。適切なウイルス病原体は、Virus Taxonomy : The Classification and Nomenclature of Viruses. The Seventh Report of the International Committee on Taxonomy of Viruses、(van Regenmortelら(編)(2000) Academic Press, San Diego)において見出すことができる。多くの態様において、対象である方法はHIVおよびHCVに対して用いられる。
【0113】
本発明による治療に企図される具体的な例示的細胞内病原体感染症には、C型肝炎ウイルス(1型、2型、3型HCV遺伝子型などを含むHCV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1およびHIV-2などを含むHIV)、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス(1型および2型を含むHSV)、カポジ症候群関連ヘルペスウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-IおよびHTLV-IIを含むHTLV、黄熱ウイルス、一部のフラビウイルス(エボラウイルスなど)、ライノウイルスなどが含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。さらに、病原体はマラリア、または熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫もしくは四日熱マラリア原虫のようにマラリアに関連する医学的状態を誘発することのできる病原体のいずれか一つであることができる。
【0114】
本発明は、ピコルナウイルス(口蹄疫ウイルス、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス)、フラビウイルス(西ナイル熱、黄熱、デング熱、日本脳炎、マレー渓谷脳炎、セントルイス脳炎)、トガウイルス(東部ウマ脳炎、西部ウマ脳炎、ベネズエラ脳炎、チクングンヤ、風疹、ロスリバー熱)、カリシウイルス(ノーウォーク物質)、アデノウイルス(インフルエンザウイルスはそれらの独自のウイルスプロテアーゼをコードしない)のようなウイルスによって誘発されるか、または関連するその他の疾患、ならびに単純疱疹1型および2型ウイルス(HSV1、HSV2)を含む単純疱疹ウイルス(HSV)、水痘-帯状疱疹ウイルス(VZV;帯状ヘルペス)、ヒトヘルペスウイルス6型、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)などのヘルペス科のウイルスに関連する疾患、およびネコヘルペスウイルス感染症のようなその他のヘルペスウイルス感染症、およびC型肝炎ウイルス(HCV)を含む肝炎ウイルスに関連する疾患の治療の方法をさらに提供する。このようなウイルスによって誘発される臨床状態の例には、特に腎および骨髄移植患者ならびに後天性免疫不全症候群(AIDS)患者において、ヘルペス性角膜炎、ヘルペス性脳炎、口唇ヘルペスおよび性器感染症(単純ヘルペスに誘発される)、水痘および帯状疱疹(水痘帯状疱疹ウイルスに誘発される)、ならびにCMV性肺炎および網膜炎が含まれる。エプスタイン・バーウイルスは単核細胞症を誘発することが可能であり、上咽頭癌、免疫芽球性リンパ腫およびバーキットリンパ腫の原因物質としても示唆されている。
【0115】
病原体は、強毒型、潜在型もしくは弱毒型、またはこれらの型の組み合わせとして存在することができる。被検体は症候性または無症候性であることができる。さらに、被検体が一つまたはいくつかの細胞内病原体による感染を持つ場合、またはそれらの感染に対して感受性である場合、本発明は関連する病原体に対応する一つまたはいくつかの修飾プロポリペプチドの投与を企図する。多数の修飾プロポリペプチドが投与される場合、それらは別々に、同時に、同一もしくは異なる調製剤として、または修飾プロポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(通常はDNA)が投与される場合は同一もしくは異なる核酸分子として投与することができる。
【0116】
用いられる投与量は達成されるべき臨床目標によって異なるが、適切な用量範囲は、病原体負荷量を低下させる対象であるプロポリペプチドをコードする核酸の約1μgないし約1,000μgまたは約10,000μgまでを1回投与で投与することのできる用量である。または、病原体負荷量を低下させる対象であるプロポリペプチドをコードする核酸の目標投与量は、その物質の投与直後の24〜48時間以内に採血される宿主血液のサンプル中におおよそ約0.1〜1000μM、約0.5〜500μM、約1〜100μM、または約5〜50μMの範囲であると考えることができる。
【0117】
当業者は、投与量が具体的な化合物、症状の程度、および副作用に対する被検体の感受性の関数として調節することができることを容易に認識する。所与の化合物における好ましい投与量について、当業者は様々な方法によって容易に求めることができる。
【0118】
病原体負荷量を低下させる対象である修飾プロポリペプチドまたは修飾プロポリペプチドをコードする核酸は、インビボおよびエクスビボの方法を含む薬剤送達に適した任意の有効な方法および経路、ならびに全身性および局所性投与経路を用いて、各個体に投与される。
【0119】
通常の薬学的に許容される投与経路には、鼻内投与、筋内投与、気管内投与、腫瘍内投与、皮下投与、皮内投与、局所適用、静脈内投与、直腸投与、鼻腔投与、経口投与、およびその他の腸管外投与経路が含まれる。所望ならば、投与経路は物質および/または所望の効果に応じて組み合わせる、または調節することが可能である。組成物は単回投与または反復投与として投与することができる。
【0120】
物質は、全身性または局所的経路を含めて、通常の薬剤の送達に適した有効な任意の通常の方法および経路を用いて宿主に投与することができる。一般に、本発明によって企図される投与経路には経腸投与、腸管外投与、または吸入投与が含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0121】
吸入投与以外の腸管外投与経路には、局所投与、経皮投与、皮下投与、眼窩内投与、関節包内投与、脊椎内投与、胸骨内投与、および静脈内投与、即ち、消化管を介する以外の任意の投与経路が含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。腸管外投与は、物質の全身性または局所送達を達成するために実施することができる。全身送達が所望される場合、投与は一般に薬学的調製物の侵襲的投与または全身性に吸収される局所または粘膜投与を伴う。
【0122】
物質は、腸内投与によって被験者に送達することもできる。腸内投与経路には、経口および(例えば、坐剤を用いる)直腸投与が含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0123】
皮膚および粘膜を介する物質の投与方法には、適切な薬学的調製物の局所適用(例えば、核酸の皮膚への送達に関する米国特許第6,087,341号を参照されたい)、経皮透過、注射および表皮投与が含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。経皮透過の場合、吸収プロモーターまたはイオン浸透療法が適切な方法である。電気泳動的透過は、数日間またはそれよりも長い期間にわたって無傷の皮膚を介する電気パルスによってそれらの産物を継続的に送達する市販の「パッチ」を用いて行うことができる。
【0124】
多くの態様において、対象である核酸は、例えば血流中への投与を介して全身性に、または標的臓器の内部もしくは近傍への注射を介して局所的に被検体に投与される。局所投与は、通常、ウイルス感染の位置に依存して、腎被膜下投与、皮下投与、中枢神経系(髄腔内投与を含む)、血管内投与、肝内投与、脾内投与、内臓内投与、腹腔内投与(大網内投与を含む)、または筋内投与が含まれる。いくつかの態様において、投与は肝管、またはリンパ節、骨髄、および身体のその他の臓器内に直接投与される。多くの態様において、投与は、一般に、静脈内投与、門脈内投与、内臓内投与、移植前のドナー肝臓の門脈もしくは肝動脈に(即ち、投与はエクスビボにおいて実施される)、または移植時の血行再建後にインビボにおいて実施される。いくつかの態様において、特に本発明の組成物が動物に投与される場合、修飾プロポリペプチドは感染した被検体の頚静脈または門脈に直接注射により投与される。
【0125】
治療は、宿主を苦しめる病理学的状態に関連する症状の少なくとも改善を意味して、この場合、改善は例えば治療が行われる病理学的状態に関連する症状、病原体負荷量(例えば、病原体力価)などのパラメータの規模の少なくとも低下を示す広い意味で用いられる。従って、治療は、宿主がそれ以上その病理学的状態、または少なくともその病理学的状態を特徴付ける症状に患わされないように、病理学的状態または少なくともそれに関連する症状が発症しないように予防されるなど完全に阻害される、または終結するなど停止される状況も含む。
【0126】
様々な宿主(ここで、「宿主(host)」という用語は本明細書では「被検体(subject)」および「患者(patient)」という用語と互換的に用いられる)が、対象である方法に従って治療可能である。一般に、このような宿主は「哺乳類」または「哺乳綱」であり、これらの用語は肉食目(例えば、イヌおよびネコ)、げっ歯目(例えば、マウス、モルモット、およびラット)、および霊長目(例えば、ヒト、チンパンジー、およびサル)を含む哺乳綱に属する生物を説明するために広い意味で用いられる。多くの態様において、宿主はヒトである。
【0127】
対象であるポリヌクレオチドは裸のポリヌクレオチドとして送達されるか、または送達賦形剤と関連する(「複合する」)ことができる。「関連する」または「複合する」は、ポリヌクレオチドと所与の送達賦形剤の共有結合または非共有結合の双方を包含する。
【0128】
一部の態様において、導入された核酸を宿主の生殖細胞系に伝達させないベクターを使用することが好ましい。これらの態様において、非組込型ベクター(ノンインテグラティブベクター)のような宿主のゲノムに組み込まれないベクターを用いることができる。例えば、プロポリペプチド核酸は、プロポリペプチドを制御するためにCMVプロモーターを用いて非組込型発現ベクターを包含するリポソームによって送達することができる。修飾BIDを制御するプロポリペプチドを用いることも選択肢である。また、非組込型ベクターを裸のDNAとして肝門脈に導入することも可能であり、これは肝細胞によって吸収される。一部の態様において、標的臓器(例えば、肝臓、リンパ節など)の内部または近傍、標的臓器に流入する管または血管内にベクターを直接投与することが好ましい。
【0129】
ウイルス送達賦形剤
対象であるポリヌクレオチドはウイルス送達賦形剤と関連することができる。本明細書で用いられるように、「ウイルス送達賦形剤」は送達されるべきポリヌクレオチドがウイルス粒子に包含されることを意図する。
【0130】
インビボにおける形質転換および遺伝子療法において有用な多くのウイルスゲノムが当技術分野において既知であり、または当技術分野の技術および知識から判断して容易に構築することができる。複製コンピテント、複製欠損、および複製条件ウイルスが含まれる。ウイルスベクターには、アデノウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、レトロウイルス、アデノ関連ウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、および前記の非複製突然変異型/変異体が含まれる。いくつかの態様において、複製欠損ウイルスはゆっくりと複製する細胞および/または最終的に分化した細胞に感染することができ、呼吸器は主にこれらの細胞タイプから構成される。例えば、アデノウイルスはゆっくりと複製する細胞および/または最終的に分化した細胞に効率的に感染する。いくつかの態様において、ウイルスゲノム自体、またはウイルス表面のタンパク質は標的細胞の細胞に特異的または実質的に特異的である。ウイルスゲノムは、機能的にウイルスの複製に不可欠の遺伝子に連結した細胞タイプ特異的なプロモーターおよび/またはエンハンサーを含めることによって標的細胞特異的となるように設計することができる。
【0131】
複製欠損ウイルスをウイルスゲノムとして使用する場合、関心対象のポリヌクレオチドに対応するDNAまたはRNAのいずれかを含むウイルス粒子の産生は、ウイルスの複製および/または産生に不可欠の欠失コンポーネントを提供する遺伝子組換え型細胞株にウイルス構築物を導入することによって産生することができる。好ましくは、遺伝子組換え型ウイルスゲノムを用いて遺伝子組換え型細胞株をトランスフォーメーションしても、例えば、導入されたウイルスゲノムへの遺伝子組換え型細胞株のウイルス性配列の同種組換えによるなど複製コンピテントウイルスの産生には至らない。関心対象の核酸を含む複製欠損ウイルス粒子の産生のための方法は当技術分野において周知であり、例えばRosenfeldら、Science 252:431-434, 1991およびRosenfeldら、Cell 68:143-155, 1992(アデノウイルス);米国特許第5,139,941号(アデノ関連ウイルス);米国特許第4,861,719 号(レトロウイルス);および米国特許第5,356,806号(ワクシニアウイルス)に述べられている。流行性耳下腺炎ウイルスゲノムの操作のための方法および材料、ウイルスの融合およびウイルス複製を司る流行性耳下腺炎ウイルス遺伝子の特徴、ならびに流行性耳下腺炎ウイルスゲノムの構造および配列は、Tanabayashiら、J. Virol. 67:2928-2931, 1993;Takeuchiら、Archiv. Virol., 128:177-183, 1993;Tanabayashiら、Virol. 187:801-804, 1992;Kawanoら、Virol, 179:857-861, 1990;Elango ら、J. Gen. Virol. 69:2893-28900, 1988に述べられている。
【0132】
非ウイルス性送達賦形剤
対象であるポリヌクレオチドは、非ウイルス性送達賦形剤を用いて投与することができる。本明細書で用いられる「非ウイルス性送達賦形剤」(本明細書では「非ウイルス性ベクター」とも言う)は、裸のポリヌクレオチドまたは縮合ポリヌクレオチド(例えば、ポリヌクレオチドおよびカチオン化合物(硫酸デキストランなど)の調製物)、およびウイルス粒子のようなアジュバントと混合した裸または縮合ポリヌクレオチド(即ち、関心対象のポリヌクレオチドはウイルス粒子には含まれないが、形質転換した調製物は裸のポリヌクレオチドおよびウイルス粒子(例えば、アデノウイルス粒子)の双方から構成される)(例えば、Curielら、1992 Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 6:247-52)を参照されたい)を含有する化学的調製物が含まれることを意味する。このように、ウイルス粒子が関心対象のポリヌクレオチドを含まない場合、「非ウイルス性送達賦形剤」はポリヌクレオチドおよびウイルス粒子を含むベクターを含むことができる。
【0133】
「非ウイルス性送達賦形剤」には、細菌プラスミド、ウイルスゲノムまたはその一部、但し、この場合、送達されるべきポリヌクレオチドはカプシドに包含されたりウイルス粒子内に含まれたりしない、およびウイルスゲノムの一部ならびに細菌プラスミドおよび/またはバクテリオファージの一部を含む構築物が含まれる。この用語には、天然および合成のポリマーおよびコポリマーも包含される。この用語は脂質を基剤とする賦形剤をさらに包含する。脂質を基剤とする賦形剤には、Felgnerらによって開示されたカチオン性リポソームが含まれる(米国特許第5,264,618号および第5,459,127号;PNAS 84:7413-7417, 1987;Annals N.Y. Acad. Sci. 772:126-139, 1995);それらは、Schreierら(米国特許第5,252,348号および第5,766,625号)によって開示される通り、人工ウイルスエンベロープを含む中性または負に帯電したリン脂質またはそれらの混合物から構成されることもできる。
【0134】
非ウイルス性送達賦形剤はポリマーを基剤とする担体を含む。ポリマーを基剤とする担体は、天然および合成のポリマーおよびコポリマーを含むことができる。好ましくは、ポリマーは生分解性であり、または被検体から容易に排除することができる。天然に生じるポリマーには、ポリペプチドおよびポリサッカライドが含まれる。合成ポリマーにはポリリシンおよびポリエチレンイミン(PEI;Boussifら、PNAS 92:7297-7301, 1995)が含まれるが、これらの限定されるものではなく、これらの分子は縮合物質としても使用することができる。これらの担体は、水、エタノール、生理食塩液、およびそれらの混合物のような分散液に溶解、分散または懸濁することができる。当技術分野では様々な合成ポリマーが知られていて、使用することができる。
【0135】
「非ウイルス性送達賦形剤」は細菌をさらに含む。様々な細菌をポリヌクレオチドの送達賦形剤として使用することについては述べられている。ブドウ球菌、サルモネラ菌などの非病原性細菌株を含む任意の既知の細菌が送達賦形剤として使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0136】
送達されるべきポリヌクレオチドは、DNA-またはRNA-リポソーム複合調製物として調製することができる。このような複合体は、陽電荷(静電相互作用)によって遺伝物質(DNAまたはRNA)に結合する脂質混合物を含む。本発明において用いることのできるカチオン性リポソームには、3β-[N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]-コレステロール(DC-Chol)、1,2-ビス(オレオイロキシ-3-トリメチルアンモニオプロパン(DOTAP)(例えば、国際公開公報第98/07408号を参照されたい)、リシニルホスファチジルエタノールアミン(L-PE)、リポスペルミンのようなリポポリアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(ドデシルオキシ)-1-プロパンミニウムブロマイド、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイド(DDAB)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、N(1,2,3-ジオレイルオキシ)プロピル-N,N,N-トリエチルアンモニウム(DOTMA)、DOSPA、DMRIE、GL-67、GL-89、リポフェクチン、およびリポフェクトアミンが含まれる(Thieryら、(1997) Gene Ther. 4:226-237;Felgnerら、Annals N.Y. Acad. Sci. 772:126-139, 1995;Eastmanら、Hum. Gene Ther. 8:765-773, 1997)。米国特許第5,858,784号に述べられるポリヌクレオチド/脂質調製物は、本明細書に記載される方法でも使用することができる。これらの脂質の多くは、例えば、Boehringer-MannheimおよびAvanti Polar Lipids(Birmingham, AL)から市販されている。米国特許第5,264,618号、第5,223,263号および第5,459,127号に見られるカチオン性リン脂質も包含される。使用することのできるその他の適切なリン脂質には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルイノシトールなどが含まれる。コレステロールも含むことができる。
【0137】
本発明の修飾プロポリペプチドは、単独の活性物質として投与することもできれば、本明細書で提供されるように一つまたはいくつかのその他の修飾プロポリペプチドと併用して、および/または例えばリバビリンおよび/またはリバビリン誘導体、IFN-α(IFN-α2a、IFN-α2b、PEG-IFN-α2a、PEG-IFN-α2b、コンセンサスIFN)、逆転写酵素阻害物質(AZT、ddI、ddC、d4T、3TO、FTC、DAPD、1592U89またはCS92を含むジデオキシヌクレオシドなど)のようなその他の薬剤;および9-(2-ヒドロキシエトキシメチル)グアニン(アシクロビル)ガンシクロビルまたはペンシクロビル、インターロイキンIIのようなその他の物質と併用して、または骨髄もしくはリンパ球移植片を含むその他の免疫調節物質、またはリンパ球の数および/もしくは機能を十分であるように増加させるレバミゾールもしくはサイモシンのようなその他の薬剤と併用して投与することもできる。
【0138】
本発明の一つまたはいくつかの修飾プロポリペプチドと同時に投与することのできるさらなる薬剤には、Goodman, G.ら(1993)、The Pharmacological Basis of Therapeutics, 第8版. McGraw-Hill Inc. pp. 978-198に開示されるような標準的な抗マラリア薬が含まれる。好ましい抗マラリア薬には、クロロキン、クロログアニジン、ピリメタミン、メフロキン、プリマキインおよびキニーネが含まれる。
【0139】
修飾プロポリペプチドを含む2種類またはそれよりも多い上記の物質の投与は、「カクテル」または「カクテル」療法と言うことができる。
【0140】
多くの態様において、病原体負荷量(例えば、ウイルス負荷量)は、対象である核酸を用いて治療した被検体において、治療前の被検体または治療されない被検体に比べて、10%まで、30%まで、50%まで、70%まで、90%まで、95%まで、または実に99%もしくは95.5%まで被検体の体内で減少させることが可能である。被検体の体内における病原体の負荷量を測定する場合、それはウイルスが感染する被検体の臓器から測定することが可能であり、またはより一般的には血清から測定することが可能である。
【0141】
キット
上記のように、対象である方法を実践するためのキットも本発明によって提供される。対象であるキットには少なくとも次の一つまたはいくつかが含まれる:修飾プロポリペプチドをコードする核酸、およびそれを含むベクター。キットのその他の選択的コンポーネントには次が含まれる:制限酵素、制御プライマーおよびプラスミド;緩衝液、細胞など。このキットの核酸は、その他のプラスミドのライゲーションを促進するための制限部位、多くのクローニング部位、プライマー部位なども持つことができる。キットの様々なコンポーネントは別々の容器に収容することができて、または一部の適合性コンポーネントは所望されるならば予め混合して単一の容器に収容することができる。多くの態様において、経口剤または注射剤など、活性成分の単位用量を含むキットが提供される。
【0142】
上記のコンポーネントに加えて、対象であるキットは一般的に対象である方法を実践するためのキットのコンポーネントの使用に関する説明書をさらに含む。対象である方法の実践のための説明書は、一般に、適切な記録媒体に記録される。例えば、説明書は紙またはプラスチックのような基材に印刷することができる。このように、説明書はパッケージ添付文書として、キットまたはそのコンポーネントの容器のラベリング(即ち、包装または小分け包装に関連する)としてキットに添付することができる。その他の態様において、説明書は、例えばCD-ROM、ディスケットなどの適切なコンピュータ判読可能保存媒体に記録された磁気保存データファイルとして添付される。さらにその他の態様において、実際の説明書はキットには添付されないが、例えばインターネット経由のようなリモートソースから説明書を取得する方法が提供される。この態様の例は、説明書が閲覧可能および/またはダウンロード可能であるウェブアドレスが記載されたキットである。説明書と同様に、説明書を取得するためのこの方法も適切な基材に記録される。
【0143】
実施例
次の実施例は当業者に本発明の作成および使用法の詳細な開示および説明を提供するために示すものであり、本発明者らが彼らの発明と見なすものの範囲を制限する意図はなく、以下の実験が実施されたすべてまたは唯一の実験であることを意味することを意図しない。用いられる数値(例えば、量、温度など)に関しては正確を期すよう努力が払われているが、いくつかの実験上の誤差および逸脱は考慮されるべきである。特記する場合を除いて、部分は重量に基づく部分であり、分子の重量は分子量の平均重量であり、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧またはそれに近いものである。
【0144】
本発明はその具体的態様に関連して述べられているが、当業者は本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な変更を加えることが可能であり、同等物を代用することが可能であることを理解しなければならない。さらに、本発明の目的、精神および範囲に対して特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセスの工程または工程を採用するために多くの修正を加えることが可能である。このような修正はすべて、本明細書に添付される特許請求の範囲内であることが意図される。
【0145】
材料および方法
細胞株:BHK-21細胞はアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(Manassis, VA)から購入した。HEK-293細胞はClontech(Palo Alto, CA)から供給された。H9C2細胞はDr. Henry Klamut(Ontario Cancer Institute, Toronto, Canada)から提供を受けて、CHOP細胞はDr. James Dennis(Samuel Lunenfeld Research Institute, Toronto, Canada)から入手し、エコトロピックPhoenixパッケージング293細胞はDr. Garry Nolan(Stanford University, CA)から供給されて、Huh7細胞はDr. Stanley Lemon(University of Texas, Galveston, TX)から入手した。HCVレプリコン細胞およびそれらの親細胞(HBI-10A、HBIII-H27およびHuh7)は、Dr. Giovanni Migliaccio(IRBM, Rome, Italy)によって作成された。すべての細胞タイプは、Dulbeccoの10%ウシ胎児血清添加最小必須培地(GIBCO/BRL, Gaithersburg, MD)で増殖させた。さらに、HBI-10AおよびHBIII-H27細胞は、G418(GIBCO/BRL, Gaithersburg, MD)800μg/mlの存在下で培養した。
【0146】
抗体:抗ヒトBIDモノクローナル抗体はR & D Systems Inc(Minneapolis, MN)から購入した。抗HCVコアタンパク質モノクローナル抗体はDr. Kohara(Tokyo, Japan)から厚意により提供を受けて、抗HCV NS3タンパク質のモノクローナル抗体はDr. Giovanni Migliaccio(Rome, Italy)から供給された。
【0147】
NS3プロテアーゼ、修飾カスパーゼおよびBID:HCV NS3/NS4Aのコード配列に対応するDNA断片(nt.3420-nt.5474)および単鎖HCVプロテアーゼ(NS4A-NS3)は、NS3およびNS4A遺伝子の5'および3'末端から派生したプライマーペアを用いてp90/HCV FL-long pU(Dr. Charles Riceから提供)からポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって合成した。セリンプロテアーゼの単鎖NS4A-NS3型は既報47の通り構築された。プロテアーゼの2つの型におけるcDNA断片はそれぞれInvitrogen(Carlsbad, CA)のpcDNA1.1発現ベクターにクローニングされた。NS3/NS4Aに対応するDNAは平滑末端ライゲーションによってクローニングされて、NS4A-NS3に対応するDNAは特にBamHIおよびEcoRI部位にクローニングされた。カスパーゼ3、カスパーゼ8およびBIDのコード配列を含むDNA断片は、カスパーゼ3の5'末端に対応するオリゴヌクレオチドプライマーを用いたHela cDNAライブラリー(Invitrogen)からPCRによって合成された。修飾は、既報48の通り、StratageneのQuickChange(商標)部位指向性突然変異生成キットを用いて個々の分子内に導入した。修飾カスパーゼおよびBIDプラスミドを単離して、NS3プロテアーゼ開裂部位の挿入はシーケンシングによって確認した。50%コンフルエンシーのCHOP細胞を、Geneporter(Gene Therapy Systems, San Diego, CA)を用いて異なるプラスミドと共に同時トランスフェクトして、同時トランスフェクトされた細胞における相対的蛍光レベルをFACS分析を用いて比較した。
【0148】
組換え型レトロウイルスの作成:NS3プロテアーゼ(NS4A-NS3)をレトロウイルス発現ベクターであるpBMN-IRES-GFPのBamHIとEcoRIの間に挿入した。組換え型レトロウイルスは、リン酸カルシウムトランスフェクション法を用いて、pBMN-NS3-IRES-GFPの10μgをエコトロピックPhoenixパッケージング細胞株に導入して作成した。高力価のヘルパーフリーレトロウイルスの作成は、一過性トランスフェクションに続いて行われた。組換え型レトロウイルスは、トランスフェクション後48時間に回収された。6穴マイクロタイタープレートを用いて、H9C2細胞を感染多重度(MOI)10にて感染させた(5×105細胞/チャンバー)。細胞は、修飾BIDを用いたアッセイの実施前に24時間、インキュベートした。
【0149】
組換え型アデノウイルスの作成:修飾カスパーゼ3およびBIDは、平滑末端ライゲーションによりpShuttleベクター(Clontech, Palo Alto, CA)のPmeI部位にサブクローニングした。続いて、AdenoX発現キット(Clontech, Palo Alto, CA)に記載される手順を用いて、関心対象の遺伝子をアデノウイルスゲノムに挿入した。GenePorter(Gene Therapy Systems, San Diego, CA)を用いてHEK-293細胞に組換え型アデノウイルスゲノム6mgをトランスフェクトして、組換え型アデノウイルスはClontechによって示される手順を用いて単離して増幅した。関心対象の細胞は、アッセイの実施前に少なくとも24時間にわたって感染多重度10にて感染させた。
【0150】
カスパーゼアッセイ法:チャンバー当たり1×106個のH9C2細胞を分注した6穴マイクロタイタープレートを50%コンフルエンシーまで増殖させて、NS3プロテアーゼまたはEGFPを発現する組換え型レトロウイルスを感染させた。初回レトロウイルス感染後24時間に、続いて細胞に対照または修飾カスパーゼ3もしくはBIDを発現する組換え型アデノウイルスを感染させた。さらに24時間後に細胞を解離液(Sigma, St. Louis, MO)に再懸濁して、400×gにて10分間遠心分離して回収した。ペレットを、ApoAlertカスパーゼ蛍光アッセイキット(Clontech, Palo Alto, CA)として提供される冷却細胞溶解緩衝液の100μlに再懸濁した。細胞溶解物を4℃において18,000×gで3分間、遠心分離して、カスパーゼ3活性の検出のために上清の50μlを96穴マイクロタイタープレートに移した。上清の残りの部分は、タンパク質濃度についてアッセイした。カスパーゼ3活性は、ApoAlertキットの説明書に従って蛍光ペプチド基質(DEVD-AFC)を用いてWallac蛍光計で測定した。
【0151】
蛍光サイトメトリー(FACS)によるアポトーシスの解析:H9C2細胞は、上記のカスパーゼ3アッセイで述べた通り、感染させて加工した。回収した細胞を遠心分離して、冷却PBSで2回洗って、結合緩衝液(PharMingen, La Jolla, CA)の100μlに再懸濁した。続いて、アネキシン(Annexin)V-PEの5μlおよび7-AADの5μl(PharMingen)を細胞懸濁液に加えて、静かに攪拌した。細胞を室温において暗所で15分間染色して、CellQuestソフトウェアを用いてBecton Dickinson蛍光サイトメトリーで解析した。
【0152】
ウェスタンイムノブロット解析:NS3プロテアーゼを発現する組換え型レトロウイルスおよび修飾BIDを発現する組換え型アデノウイルスの双方を感染させたH9C2細胞をRIPA緩衝液で溶解して、続いてAnti-FLAG M2-アガロースアフィニティーゲル(Sigma, St. Louis, MO)を用いて免疫沈降させた。SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動およびウェウスタンイムノブロット解析を実施した。抗ヒトBIDモノクローナル抗体(1:1000希釈)をニトロセルロースペーパーと共にインキュベートして、モノクローナル抗体の結合をECL化学発光(Amersham, Chicago, IL)により検出した。
【0153】
HCVゲノムトランスフェクションおよびHCVレプリコン細胞:HCVゲノム表現型1a(Dr. C. Rice, Rockefeller University, New York, NYより入手)のコード領域(nt.339-nt.9401)を、平滑末端ライゲーションを介してpcDNA1.1発現ベクターにサブクローニングした。Huh7細胞に、GenePorterを用いてHCVゲノム5μgおよびEGFPプラスミド1μgを同時トランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後に同じ細胞に対照アデノウイルスまたは修飾BIDを発現する組換え型アデノウイルスをMOI 10にて感染させた。感染したHuh7細胞の形態学的変化を、アデノウイルス感染後36時間に蛍光顕微鏡で調べた。HCVレプリコン細胞およびそれらの親細胞であるBR-Huh7のそれぞれ5×105個に、対照アデノウイルスまたは修飾BIDを発現する組換え型アデノウイルスをMOI 10にて感染させた。24時間後に、HCVレプリコン細胞の形態学的変化を位相差顕微鏡で観察した。さらに、HCVゲノムをトランスフェクトしたHuh7細胞およびHCVレプリコン細胞をSDS試料緩衝液で溶解して、HCVコアタンパク質に対するモノクローナル抗体(1:10000希釈)およびHCV NS3プロテアーゼに対するモノクローナル抗体(1:25)を用いてウェスタンブロット解析を実施した。モノクローナル抗体の結合は、ECL化学発光(Amersham)により検出した。
【0154】
キメラシンドビスウイルス感染およびプラーク解析:Huh7細胞(5×105個)に、対照アデノウイルスまたは修飾BIDを発現する組換え型アデノウイルスをMOI 10にて感染させた。24時間後に同じ細胞に対して野生型シンドビスウイルスまたはHCV NS3プロテアーゼを発現するキメラシンドビスウイルスをMOI 0.1にて感染させた。感染した細胞を30℃でインキュベートして、シンドビスウイルス感染後72時間に位相差顕微鏡を用いて細胞形態学を観察した。感染した細胞の上清をシンドビスウイルスの感染後72時間に回収して、Filocamoらが示す通り、ウイルス力価をプラーク解析により測定した。プラークは、6穴プレートにて1×105個のBHK-21細胞に感染後2日にニュートラルレッドで染色してカウントした。
【0155】
実施例1
HCVのNS3/NS4Aプロテアーゼを標的とするためのFASアポトーシス経路のコンポーネントの修飾
本発明者らは、NS3/NS4A認識部位と置き換えることによって、プロカスパーゼ3およびBIDの内因性開裂部位を修飾した(図1A)。NS5A/NS5B開裂配列(AEDVVCCSMSYS;配列番号:20)は、StratageneのQuickChange突然変異生成キット(図1)を用いて、プロカスパーゼ3およびプロ-BIDのコード配列(それぞれ、配列番号:28および内列番号:26)を突然変異生成の基質として、プロカスパーゼ3の25位および172位、ならびにBID分子の62位の位置にあるアミノ酸を置き換えるために導入した。さらに、BID分子は、カスパーゼ8およびグランザイムBによる開裂を受けやすい内因性部位を除去するために、60位および75位のアミノ酸がアスパラギン酸(D)からグルタミン酸(E)に置換されている(Liら、Cell 94, 491-501 (1998))。加えて、開裂することのできないBID分子は、68C69Sのアミノ酸を68F69Fに変異させることによって陰性対照として調製して、開裂がアポトーシス活性に必要であることを確認するためにこの変異体を使用した。すべての構築物は先ず、CMVプロモーターの制御下において遺伝子を発現してT抗原と共に細胞株の複製の起点を含むpcDNA1.1ベクター内にクローニングした。
【0156】
実施例2
NS3プロテアーゼの存在下における修飾カスパーゼおよびBID分子の一過性発現によってアポトーシスが起こる
修飾アポトーシスエフェクターがNS3プロテアーゼ(即ち、NS3/NS4Aプロテアーゼ)の存在下において細胞死を誘発することができるかどうかを調べるために、CHOP細胞にNS3/NS4AプロテアーゼおよびEGFPを発現しているベクターと共に異なる修飾カスパーゼ3またはBID構築物を同時トランスフェクトした。FACS(蛍光活性化細胞走査)解析を用いて、本発明者らは同時トランスフェクトした細胞における異なる蛍光レベルをモニタリングすることによって細胞死の量を評価することができた。生細胞はEGFPを含んで蛍光を発したが、死細胞はEGFPを培地中に放出した結果、蛍光性を失った。修飾プロカスパーゼ3およびBIDを含む発現ベクターを、NS3/NS4Aプロテアーゼの存在下および非存在下においてこの系で検査した。修飾プロカスパーゼ3のみをトランスフェクトしたCHOP細胞は、天然のプロカスパーゼ3自体に比較して最小限の細胞毒性を示すと思われた。しかし、172位のアミノ酸に修飾開裂部位を持つプロカスパーゼ3のコード配列を含むベクターおよびNS3/プロテアーゼを発現しているプラスミドの同時トランスフェクションは細胞毒性であると思われた。25位、または25位および172位の双方のアミノ酸に修飾開裂部位を持つプロカスパーゼ3コード領域、ならびにNS3プロテアーゼ遺伝子の同時トランスフェクションは、これらのアッセイでは低毒性であった。従って、プロカスパーゼ3のNS3プロテアーゼ依存性プロセッシングを活性化するためには、プロカスパーゼ3の172位のアミノ酸にNS5A/5B開裂部位を導入することのみが必要であることが明らかとなった。
【0157】
修飾するために本発明者らが選択した二番目のアポトーシス分子はBIDであった。この分子は正常な状態でカスパーゼ8によって開裂および活性化されて、ミトコンドリアからのチトクロームcの放出を刺激する。修飾BIDのコード配列のみをトランスフェクトしたCHOP細胞は、細胞毒性作用を示さなかった。CHOP細胞に修飾BIDおよびNS3プロテアーゼ双方のコード領域を同時トランスフェクトした場合、細胞は速やかに死滅することが観察された。タンパク分解性に開裂することのできないBIDの68F69F変異型は、NS3プロテアーゼの存在下または非存在下において細胞死を起こすことができなかった。上記の実験に基づいて、本発明者らはそれぞれ172位および62位の位置に修飾開裂部位を持つプロカスパーゼ3およびBID分子を発現している組換え型アデノウイルスを作成した。
【0158】
異なる構築物がウイルスプロテアーゼの存在下において細胞死を誘発できるかどうかを調べるために、NS3/NS4Aプロテアーゼ、EGFP、および修飾プロカスパーゼまたはBID分子のコード領域をトランスフェクトしたCHOP細胞を用いた一過性アッセイを行った。24時間後、EGFP陽性生細胞のFACS解析によって細胞死をスコア化した。(-)は、細胞死がないことを示して、(+)は5%〜15%細胞死を示し、(+++)は>30%細胞死を示す。同様の実験において、NS3プロテアーゼを発現しない細胞の毒性を予防するためには、BIDの98位Aspの開裂部位を変化させてこの部位のタンパク融解性開裂を防がなければならないことが明らかとなった。これらのデータは表2に示す。
【0159】
(表2)一過性発現アッセイ法を用いた細胞死の分析
【0160】
実施例3
修飾プロカスパーゼ3およびBID分子を発現している組換え型アデノウイルスは構成的にNS3/NS4Aプロテアーゼを合成するラット細胞株をターゲットとする
修飾プロカスパーゼ3または修飾BIDのいずれかを発現した組換え型アデノウイルスはClontechのAdeno-Xシステムを用いて作成された。さらに、本発明者らは、LTRプロモーターの制御下におけるHCV NS3プロテアーゼ(NS4A-NS3)およびIRES内部転写シグナル由来のEGFPを発現した組換え型レトロウイルスも構築した。ラット筋線維芽細胞(H9C2)にNS3プロテアーゼおよびEGFP、またはEGFP単独のいずれかを発現した組換え型レトロウイルスを感染させた。レトロウイルスの感染後約24時間に、同じ細胞に対照または修飾プロカスパーゼ3もしくは修飾BIDのいずれかを発現した組換え型アデノウイルスを感染させた。H9C2細胞はレトロウイルスのエコトロピック株ならびにヒトアデノウイルスの双方が効率的に感染できることから、これらの実験ではこのH9C2細胞が選択された。さらに24時間後、感染したH9C2細胞を蛍光顕微鏡下で可視化して、写真を撮影して、形態学的変化を記録した(図2)。NS3プロテアーゼ単独、修飾カスパーゼ3単独、または修飾BID単独のいずれかを発現しているH9C2細胞は、偏光またはUV蛍光顕微鏡下で可視化した際に正常な形態を有していると思われた(図2A、2B、2D)。しかし、NS3プロテアーゼおよび修飾プロカスパーゼ3または修飾BIDの双方を発現した細胞は、アポトーシスの視覚的指標である膜の泡状化および核の凝集を示した(図2C、2E)。修飾プロカスパーゼ3および修飾BID分子の双方がNS3プロテアーゼの存在下において細胞死を誘発したが、修飾BIDがアポトーシス経路の有力な活性化物質であると思われた。
【0161】
修飾BID分子が実際のNS3プロテアーゼによって加工および活性化されることを確認するために、H9C2細胞に先ずNS3プロテアーゼおよびEGFP、またはEGFP単独のいずれかを発現した組換え型レトロウイルスを感染させた。24時間後、続いて同じ細胞に対照アデノウイルスまたは修飾BIDを発現した組換え型アデノウイルスを感染させた。これらの実験において、修飾BID分子は遺伝子工学により炭素末端にFLAGエピトープタグを加えた。さらに24時間後に感染した細胞を融解して、セファロースビーズに結合させたFLAG抗体を用いて免疫沈降を行った。タンパク質産物をPAGEによって分離して、ポリクローナルBID抗体を用いたイムノブロット分析によって検出した(図3A)。修飾BIDのみを発現する細胞は、未開裂BID分子の特徴である24kDaの単一の断片を生じた(レーン4)。一方、修飾BIDおよびNS3プロテアーゼの双方を発現した細胞は24kDaの未開列断片および16kDaの開裂断片を含み、修飾BID分子がNS3プロテアーゼによって適切に加工されたことが示された。
【0162】
本発明者らは、アポトーシス経路がNS3加工されたBIDによって活性化されることも確認した。NS3プロテアーゼを含むまたは欠く細胞をアデノウイルス感染後の異なる時期に溶解して、Clonetechの蛍光カスパーゼ3活性アッセイキットを用いてそれらのカスパーゼ3活性を測定した。NS3プロテアーゼおよび修飾BIDの双方を発現しているH9C2細胞は、感染後8時間頃からカスパーゼ3活性の増加を示した(図3B)。しかし、NS3単独または修飾BID単独を発現している細胞はカスパーゼ3活性が低いことが明らかとなった。「空」のレトロウイルスおよびアデノウイルス対照を感染させたH9C2細胞はごく微量のカスパーゼ3活性を示した。NS3プロテアーゼ、修飾BID、または双方を発現しているH9C2細胞におけるアポトーシスの量は、組換え型アデノウイルスの感染後24時間にアネキシンV染色により定量した。アネキシンVはアポトーシスを受けている細胞外表にあるホスファチジルセリンを標識するアポトーシスのマーカーであり、アネキシンV抗体を加えてFACSにより着色を定量する。組換え型NS3および修飾BIDの双方が発現した場合、対照ウイルスが感染した細胞よりも50%多くの細胞がアネキシンV陽性であり、NS3単独または修飾BID単独のいずれかを発現している細胞は対照バックグラウンドに対して2〜5%多いのみであった(図3C)。最後に、NS3プロテアーゼおよび修飾BIDの同時発現によって生じるアポトーシスはカスパーゼ阻害物質であるVAD-fmkで逆行させることができた。NS3または対照レトロウイルスに感染したH9C2細胞を続いて修飾BIDを発現している組換え型アデノウイルスに感染させて、VAD-fmkの異なる濃度で処理した。組換え型アデノウイルスを24時間感染させた後に、アネキシンVで染色してアポトーシス細胞数を測定した。この場合も、VAD-fmkの非存在下において修飾BIDのみを発現している細胞はわずかに5%アネキシンV陽性であった(図3D)。NS3プロテアーゼおよび修飾BIDの双方を発現したH9C2細胞は60%アネキシンV陽性であった。10μMおよび20μMのVAD-fmk阻害物質を加えたところ、アネキシンV陽性細胞の数が、それぞれ、42%および34%低下した(図3D)。カスパーゼ3活性およびアネキシンV染色が増加したことから、これらの結果はHCVプロテアーゼ(NS3)および修飾BIDを含む標的細胞においてアポトーシスが誘発されるという本発明者らの仮説を追認するものであった。
【0163】
実施例4
HCVゲノムおよび修飾BIDを発現している肝細胞はアポトーシスを起こす
本発明者らは、上記の方法がHCVウイルスゲノムを含むヒト肝細胞においてアポトーシスを選択的に誘発することができるかどうかを調べることに決定した。C型肝炎ウイルスの培養系がないので、本発明者らはヒト肝細胞(Huh7)にHCVゲノム全体を発現する発現プラスミドおよびEGFPを発現するもう一つのレポーターベクターを同時トランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞における加工されたHCVウイルスタンパク質の存在は、HCVコアタンパク質およびNS3タンパク質に対するモノクローナル抗体を用いたイムノブロット解析により確認した(図4K、レーン3;図4L、レーン2)。トランスフェクション後48時間に、Huh7細胞に対照アデノウイルスまたは修飾BIDを発現する組換え型アデノウイルスのいずれかを感染させた。36時間のアデノウイルス感染後にUV蛍光顕微鏡により細胞を観察した。HCVゲノムのcDNAコピーをトランスフェクトしたHuh7細胞または修飾BID単独を発現している組換え型アデノウイルスを感染させたHuh7細胞は、形態学的変化を示さなかった(図4A、4B)。しかし、修飾BIDおよびHCVゲノムまたはNS3プロテアーゼのいずれかを発現するHuh7細胞は細胞ウサギアポトーシスの明らかな指標である膜の泡状か、核の凝集および細胞崩壊を示した(図4C、4D)。比較的少量のNS3プロテアーゼであっても、修飾BIDを活性化してアポトーシスを誘発することができた。
【0164】
実施例5
HCVレプリコンを持つ肝細胞は修飾BIDの存在下においてアポトーシスを受ける
2つのグループがHuh7肝細胞細胞株におけるHCVレプリコンの系の開発を報告している(Lohmannら、Science 285, 110-113. (1999);Blightら、Science 290, 1972-1974 (2000))。これらの系は、HCVの5'UTR、選択のためのネオマイシン遺伝子、脳心筋炎ウイルス(EMC)由来IRESの制御下におけるHCVの非構造遺伝子、およびHCVの3'UTRからなる。この系では、NS3プロテアーゼを含む非構造的タンパク質が翻訳および開裂される。2種類の異なるHCVレプリコン細胞株(HBI-10AおよびHBIII-27)、ならびにHuh7親細胞に、修飾BIDを発現している組換え型アデノウイルスまたは対照アデノウイルスのいずれかを感染させた。24時間感染時に、位相差顕微鏡下で細胞を観察した(図4E〜4J)。レプリコン細胞株およびHuh7細胞はいずれも、対照アデノウイルスの感染後に形態学的な変化を示さなかった(図4E、4G、4I)。同様に、修飾BIDを発現しているHuh7細胞も視認可能な変化を示さず、修飾BID自体はこれらの細胞においてほとんど毒性を示さないことが示唆された(図4J)。一方、HBI-10AおよびHBIII-27レプリコン細胞株はいずれも、修飾BIDを発現しているアデノウイルスの感染後に強い細胞毒性を示した(図4F、4H)。細胞死は、トリパンブルー染色を用いて定量した。Huh7親細胞は修飾BIDアデノウイルスの感染後に5%よりも低い細胞死を示したが、レプリコン細胞株であるHBI-10AおよびHBIII-27に同じ組換え型ウイルスを感染させると、24時間後には細胞の87%および80%が死滅した(データは示さない)。これらの結果は、上記の系がレプリコンの系から派生するHCVの非構造的タンパク質を持つヒト肝細胞を選択的に破壊することができることを実証した。
【0165】
実施例6
修飾BIDはHCVのNS3プロテアーゼを発現するキメラシンドビスウイルスのHuh7細胞への感染を予防する
本発明者らの修飾BIDを用いた遺伝子療法アプローチはNS3プロテアーゼを発現している細胞におけるアポトーシスをうまく活性化することができるが、この系を用いることに関する重要な問題点の一つはアポトーシスの過程で後に他の細胞に感染することので着る多量のウイルスが放出される可能性があることである。一方、HCV感染前に修飾BIDで細胞を前処理すると予防効果があり、ウイルス組立前のアポトーシスの誘発によってウイルス負荷量を減少させる可能性がある。この仮説を検証するために、本発明者らはシンドビスウイルスの構造タンパク質の前駆ポリペプチドのアミノ末端に融合したHCV-NS3(NS3-C-PE2-6K-E1)を持つポリタンパク質を合成するキメラシンドビスウイルス(MutA)から構成されるHCVのモデルを得た。NS3-CおよびC-PE2の接合部には、遺伝子工学によりNS3プロテアーゼの開裂部位(EDVVCC/SMSY)を付加して、シンドビスウイルスの組立にはHCVプロテアーゼによるこの部位の加工が必要であった。従って、細胞培養中で複製するためには、キメラシンドビスウイルス(MutA)はNS3活性を必要とした。本発明者らの実験では、先ずHuh7細胞に対照アデノウイルスまたは修飾BIDを発現している組換え型アデノウイルスを感染させた。24時間後に、続いて同じ細胞を野生型シンドビスウイルスまたはキメラシンドビスウイルス(MutA)のいずれかで刺激した。加工したシンドビスウイルスによる感染細胞の溶解は、72時間感染後に位相差顕微鏡を用いて調べた。対照アデノウイルスまたは修飾BIDのみを発現している組換え型アデノウイルスのいずれかに感染したHuh7細胞は、顕微鏡下において、正常を呈した(図5A、5B)。一方、野生型シンドビスウイルスに感染した細胞は、修飾BIDの存在に関わらず、散在性、繊維状、および球形の外観を呈した(図5E、5F)。対照アデノウイルスおよびキメラシンドビス(MutA)に感染したHuh7細胞は、野生型シンドビスウイルスに感染した細胞と同じ細胞変性効果を示した(図5C)。しかし、修飾BIDを発現しているアデノウイルスと共にプレインキュベートした後にキメラシンドビス(MutA)で刺激した細胞は正常であることが明らかとなった(図5D)。この結果は、修飾BIDを用いた細胞の前処理が、その後、細胞をキメラシンドビスウイルス感染から保護することができることを示した。キメラシンドビスウイルスによる刺激に対する修飾BIDの予防効果は、プラークアッセイによって定量された(図5G)。これらの結果は、修飾BIDがHCV NS3プロテアーゼによる活性化後にアポトーシスを誘発して、その後のシンドビスウイルスの複製および組立を防止することを示唆する。従って、修飾BID療法系は、感染の初期段階および限定的段階の前または期間中に肝臓におけるHCVの全体的なウイルス負荷量の抑制において潜在的予防効果を持つ可能性がある。
【0166】
さらに、Huh7細胞に対照アデノウイルスまたはBIDを発現している組換え型アデノウイルスを10 pfu/細胞の感染多重度(MOI)にて感染させた。24時間後に、同じ細胞を野生型シンドビスウイルス(SBV)またはNS3キメラシンドビスウイルス(SBV MutA)で0.1 pfu/細胞のMOI にて刺激した。シンドビスウイルスの感染後72時間に上清を回収した。2日後にニュートラルレッドで細胞を染色した後、BHK-21細胞を用いたプラークアッセイにより力価を測定した。独立した4回のアッセイからシンドビスウイルスの平均力価(pfu、プラーク形成単位)を求めて、表3に示した。
【0167】
(表3)修飾BIDの存在下におけるNS3キメラシンドビスウイルスを用いたプラークアッセイ法
【0168】
実施例6
HCV感染マウスにおけるHCVウイルス負荷量の減少
PCT公開国際公開公報第0167854号に述べられるように、ヒト肝細胞を含むキメラ肝臓を持つマウスにHCVを接種した。修飾BID構築物(配列番号:2をコードする)の最適な投与経路を調べるために、GFPをコードするアデノウイルスの5×109pfuを試験マウスに腹腔内(IP)、頸動脈内(IJ)および門脈内(PV)に注射した。これらのマウスの肝臓を蛍光下で調べた結果(図7)、頸動脈内および門脈注射が適切な投与経路であることが明らかとなった。
【0169】
HCVに感染したこれらのマウスに、図8に示す指定の時期のアデノウイルスベクターにおけるHCVプロテアーゼ開裂配列を含む修飾BIDをIJまたはIPにて注射する。肝細胞を0週に移植して、8週および10週にHCVを接種して、修飾BIDをコードする薬5×109pfuのアデノウイルスを注射した(0日)。マウスは一般に3つのグループに分割して、1群にはHCVおよび修飾BIDをコードするベクターを投与して、2群および3群は対照とした。各群のマウスは約2〜5匹であった。アポトーシスまたはウイルス感染に起因する肝損傷は、血清中のALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)活性およびヒトα抗トリプシン(HAAT)活性を測定することによって測定した;血清ヒトα1抗トリプシンも投与後の残存機能ヒト肝細胞の指標を提供した。血清中ウイルス負荷量(HCV)は、第三者の検査機関(Provincial Laboratory of Public Health of Alberta)においてRoche Amplicor Systemを用いたRT-PCRにより盲検試料として測定した。ウイルス力価は、ゲノムRNAの単位として対数スケールにて示した。5日および10日目に、BIDが発現していることを示すために一つの修飾BIDポリペプチドに見られるFLAGエピトープを測定した。メカニズムの確認として肝細胞のアポトーシスの測定にはTUNELアッセイ法を用いた。
【0170】
HCVに感染したマウスは異なる程度のHCV感染を示して、その結果、異なるレベルのゲノムRNAを有した。修飾BIDアデノウイルスを投与したマウスは、修飾BIDによるHCV感染肝細胞のアポトーシスのために、対照マウスに比べてALT値の上昇を示した(図9)。修飾BIDを投与したマウスは1.6の対数まで(即ち、95%を超えて)血清HCVの減少を示した(図10)。より多くのマウス(5匹)を用いた実験により、これらの結果が確認された(結果は図11に示す)。このように、HCVにより感染したマウスのウイルス負荷量は対象である核酸によって抑制された。
【0171】
実施例7
HCV感染マウスIIにおけるHCVウイルス負荷量の減少
別の実験では、上記の実施例6に示す通り、4匹のマウスにHCVを感染させて、修飾BIDをコードするベクター(mBID)を投与した。別の7匹のマウスを対照とした。すべてのマウスについて、ALT活性、HAAT活性およびウイルス力価を測定した。
【0172】
HCVを感染させてmBIDを投与したマウスにおけるウイルス力価を下の表4に示す。
【0173】
(表4)
* <600は検出不可能。
【0174】
A17およびA77のマウスは血清の分離後に死亡して、対照マウスはウイルス力価の顕著な低下を示さなかった。
【0175】
従って、2匹または4匹のマウスでは、ウイルス負荷量が1ml当たり約1×104pfuから検出不可能な量まで減少した。
【0176】
D98E修飾を伴うおよび伴わない修飾BIDを比較するインビボにおけるデータを比較して、表5に示す。
【0177】
(表5)
* <600は検出不可能。
【0178】
ウィルコクソンの順位和検定により示される通り、D98E突然変異を持つ修飾BIDは、D98E突然変異を持たない修飾BIDよりもより有効であった(P<0.05)。
【0179】
実施例8
HIV感染細胞の生存性の低下
本発明の修飾プロポリペプチドがHIV感染細胞を特異的に死滅させることができることを示すために、HIVプロテアーゼ部位を修飾したBID(配列番号:3よび27)をコードするアデノウイルスベクターについて試験を行う。
【0180】
約5×106個のJurkat T細胞にHIV(NLHX株;感染性ウイルス1ml当たり約1×105〜1×106個)を感染させる。細胞をRPMI培地で増殖させる。感染後約4〜7日に、プレートから培地を除去して、上記と同一のプロトコールに従って、HIV開裂配列を持つ修飾BID-ポリペプチド(図6Cに示す、配列番号:3および27)をコードするアデノウイルスベクターを細胞に感染させる。HIV感染細胞のほぼ100%がこの方法によって死滅することが期待される。対照として、同じくベクターを用いてHIV未感染の細胞に感染させるためにベクターを用いる。この対照では1%よりも少ない細胞が死滅する。
【0181】
実施例9
HIV感染マウスにおけるHIVウイルス負荷量の抑制
マウスは、米国特許第5,612,018号によって提供される方法に従って、調製してHIVに感染させる。これらのHIV感染マウスに対して、指定の時期に図6Cに示す通りHIVプロテアーゼ開裂配列を含む修飾BIDをコードするアデノウイルスベクターをIJまたはIPにより注射する。HIVウイルス負荷量およびCD4数を測定する。これらのマウスの血漿では、HIV力価が低下して、CD4数が増加する。
【0182】
実施例10
HIVおよびHCVの診断
本発明のベクターは、HIVまたはHCVの診断に使用される。この方法において、細胞内病原体(例えば、HIVまたはHCV)に感染することのできる試験細胞を、その病原体に対する適切なプロテアーゼ開裂部位を持つ修飾プロポリペプチドをコードする対象である核酸に接触させる。対象である核酸に接触させた細胞が生存性の低下(例えば、死滅またはアポトーシスの完了など)を示すならば、対象であるプロポリペプチドをコードするプラスミドベクター、およびTUNELのような細胞アポトーシスを検出するための方法を使用する。
【0183】
上記の結果および考察から、対象である本発明が細胞内病原体に誘発される疾患の治療のための重要な新しい方法を提供することは明らかである。特に、対象である本発明は、遺伝子工学的に病原体プロテアーゼ依存性細胞毒性分子を付加した修飾プロポリペプチドをコードする核酸を用いて被検体を治療するための系を提供する。このように、対象である方法および系は、研究、医療、治療およびその他の応用分野を含む様々な異なる応用分野において使用を見出す。従って、本発明は当技術分野に大きく貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】HSV NS3セリンプロテアーゼによって認識される特異的開裂部位を持つように遺伝子操作されているプロカスパーゼ3、プロカスパーゼ8およびBIDの分子を図式的に示す。
【図2】一連の写真(パネルA〜E)は、本発明の組換え型レトロウイルスおよびアデノウイルスをトランスフェクトしたH9C2ラット筋線維芽細胞を示す。細胞は、穂不満偏光顕微鏡(左側パネル)またはUV蛍光顕微鏡(右側パネル)を用いて検査した。図2、パネルA:細胞をレトロウイルス(NS4A-NS3)に感染させて、続いて外来遺伝子を持たない対照組換え型アデノウイルスを感染させた。図2、パネルB:細胞をEGFPを発現している対照レトロウイルスに感染させた後、修飾カスパーゼ3を発現しているアデノウイルスを感染させた。図2、パネルC:細胞をNS4A-NS3を発現しているレトロウイルスに感染させて、修飾カスパーゼ3を発現しているアデノウイルスに感染させた。図2、パネルD:細胞をEGFPを発現している対照レトロウイルスに感染させた後、修飾BIDを発現しているアデノウイルスに感染させた。図2、パネルE:細胞をNS4A-NS3を発現しているレトロウイルスに感染させた後、修飾BIDを発現しているアデノウイルスに感染させた。
【図3】実施例3の結果を示す写真(パネルA)、折れ線グラフ(パネルB)、および棒グラフ(パネルCおよびD)である。図3、パネルA:NS3プロテアーゼ、およびカルボキシル末端にFLAGエピトープを含む修飾BIDの双方を発現しているH9C2細胞の細胞融解物を、抗FLAGアガロースビーズを用いた免疫沈降法に供した。続いて、ヒトBIDに対するモノクローナル抗体を用いてイムノブロット解析を実施した:レーン1、レトロウイルス-NS3および外来遺伝子を発現しないアデノウイルス対照に順次感染させた細胞;レーン2、レトロウイルス-NS3および修飾BIDを含むアデノウイルスを順次感染させた細胞;レーン3、レトロウイルス-EGFPおよびアデノウイルス対照を順次感染させた細胞;レーン4、レトロウイルス-EGFPおよびアデノウイルス-修飾BIDを順次感染させた細胞。修飾BIDは、NS3プロテアーゼの存在下において開裂した(レーン2)。図3、パネルB:NS3セリンプロテアーゼ、修飾BIDを発現しているH9C2細胞のカスパーゼ3活性。修飾BIDおよびNS3プロテアーゼの双方を持つ細胞はカスパーゼ3の活性が亢進した。図3、パネルC:セリンプロテアーゼ、修飾BID、または両者のいずれかを発現しているH9C2細胞を、感染後24時間にアポトーシスのマーカーであるアネキシンVで染色した。アネキシンV陽性細胞の割合はFACS分析により測定した。NS3プロテアーゼおよび修飾BIDの双方が存在する場合、50%を超える細胞がアネキシンVについて陽性であった。図3、パネルD:異なる量のVAD-fmk(カスパーゼ阻害物質)の存在下において、NS3セリンプロテアーゼ、修飾BID、または両者のいずれかを発現しているH9C2細胞を感染後24時間にアネキシンVで染色した。アネキシンV陽性細胞の割合をFACS分析で測定した。VAD-fmk阻害物質は、アネキシンV染色により測定される通り、アポトーシスの量を減少させた。
【図4】一連の写真(パネルA〜L)である。HCVゲノムをトランスフェクトしたHuh7ヒト肝細胞、またはHCVレプリコンを含むHuh7細胞株は、修飾BIDアデノウイルスに感染するとアポトーシスを起こした。Huh7細胞にHCVゲノム遺伝子型1aをトランスフェクトして、続いて外来遺伝子を発現しないアデノウイルス対照または修飾BID分子を発現する組換え型アデノウイルスを感染させた。アデノウイルスの感染36時間後に、蛍光顕微鏡によりHuh7細胞の形態学的変化を観察した。図4、パネルA:対照ベクターのみを用いた細胞のトランスフェクション、続いて、修飾BIDを発現している組換え型アデノウイルスを感染させた。図4、パネルB:HCVゲノムをトランスフェクトして、続いて野生型アデノウイルスを感染させた細胞。図4、パネルC:HCVゲノムをトランスフェクトして、続いて修飾BIDを発現している組換え型アデノウイルスを感染させた細胞。矢印は死細胞を示す。図4、パネルD:NS3プロテアーゼの遺伝子をトランスフェクトして、続いて修飾BIDを発現している組換え型アデノウイルスを感染させた細胞。矢印は死細胞を示す。HCVレプリコン細胞株に、対照アデノウイルスまたは修飾BIDを発現している組換え型アデノウイルスを感染させた。アデノウイルス感染後24時間に、位相差顕微鏡を用いて細胞の形態学的変化を観察した。図4、パネルE:HBI-10Aレプリコンを含むHuh7細胞に対照アデノウイルスを感染させた。図4、パネルF:HBI-10Aレプリコンを含むHuh7細胞に修飾BIDを発現しているアデノウイルスを感染させた。図4、パネルG:HBIII-27レプリコンを含むHuh7細胞に対照アデノウイルスを感染させた。図4、パネルH:HBIII-27レプリコンを含むHuh7細胞に修飾BIDを発現しているアデノウイルスを感染させた。図4、パネルIおよびJ:それぞれ、対照アデノウイルスまたは修飾BIDを発現している組換え型アデノウイルスを感染させたHuh7細胞。図4、パネルK:抗HCVコア抗体を用いたイムノブロット分析は、HCVゲノムをトランスフェクトしたHuh7細胞においてウイルスタンパク質が発現して加工されることを示す。レーン1、pcDNA1.1-HCVコア発現ベクターをトランスフェクトした細胞;レーン2、pcDNA1.1ベクターのみをトランスフェクトした細胞;レーン3、HCVゲノム遺伝子型1aをトランスフェクトした細胞。図4、パネルL:レプリコン細胞株およびそれらのHuh7親細胞を溶解して、HCV NS3プロテアーゼに対するモノクローナル抗体を用いてイムノブロット解析を実施した。レーン1、HBI-10Aレプリコン細胞株;レーン2、HBIII-27レプリコン細胞株;レーン3、Huh7親細胞。
【図5】パネルA〜Fの一連の写真である。修飾BID分子は、C型肝炎ウイルスモデルを用いた低感染多重度での刺激から肝細胞を保護するための予防策として用いることができる。Huh7細胞を対照アデノウイルスまたは修飾BIDを発現している組換え型アデノウイルスに24時間、感染させた。続いて、これらの細胞を野生型シンドビスウイルスまたはキメラシンドビスウイルス(MutA)のいずれかを用いて0.1 pfu/細胞のMOIにて刺激した。シンドビスウイルスを用いた感染後72時間に、位相差顕微鏡を用いて細胞形態学の変化を調べた。図5、パネルA:Huh7細胞を、外来遺伝子を発現しない対照組換え型アデノウイルスに感染させた。細胞死は認められなかった。図5、パネルB:Huh7細胞を、修飾BIDを発現している組換え型アデノウイルスに感染させた。細胞死は認められなかった。図5、パネルC:細胞を、外来遺伝子を発現しない対照アデノウイルスに感染させて、次にキメラシンドビスウイルス(MutA)に感染させた。細胞死が認められた。図5、パネルD:細胞を先ず修飾BIDを発現しているアデノウイルスに感染させて、続いて、キメラシンドビスウイルス(MutA)で刺激した。細胞死は認められなかった。図5、パネルEおよびF:細胞を、外来遺伝子を発現しない対照アデノウイルスまたは修飾BIDを発現している組換え型アデノウイルスにそれぞれ感染させて、続いて、野生型シンドビスウイルスで刺激した。いずれも場合も、細胞死が認められた。
【図6】配列アラインメントを示すパネルA〜Cの一連の図式シリーズである。図6、パネルA:BID(上段;配列番号:1)およびHCV NS3開裂部位を持つ修飾BID(下段;配列番号:2)、図6、パネルB:カスパーゼ3(上段;配列番号:4)およびHCV NS3開裂部位を持つカスパーゼ3(下段;配列番号:5)、ならびに図6、パネルC:BID(上段;配列番号:1)およびHIVプロテアーゼ開裂部位を持つ修飾BID(下段;配列番号:3および配列番号:27)。
【図7】アデノウイルスGFPを注射したSCIDマウスの肝細胞の蛍光画像を示す。
【図8】修飾BIDをコードするベクターおよび対照ベクターの投与に関するタイムライン、ならびに実施した分析を示す。
【図9】アデノウイルス-mBID投与後のヒト-α1抗トリプシンの変化のグラフを示す。
【図10】アデノウイルス-mBID投与後のHCVウイルス負荷量における変化のグラフを示す。
【図11】個々のマウスにおけるアデノウイルス-mBID投与後のHCVウイルス負荷量の変化のグラフを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロポリペプチドのプロドメインとプロポリペプチドの成熟ポリペプチドドメインの間に操作によって挿入された配列特異的プロテアーゼ開裂部位を持つ修飾プロポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸であって、
該プロテアーゼ開裂部位が該プロポリペプチドに固有ではなく、該成熟ポリペプチドドメインが該プロポリペプチドのプロテアーゼ部位での開裂によって細胞毒性を示す核酸。
【請求項2】
プロテアーゼ部位がウイルス配列特異的プロテアーゼに対する部位である、請求項1記載の核酸。
【請求項3】
プロポリペプチドに固有の配列特異的プロテアーゼ開裂部位が細胞プロテアーゼによる開裂を阻止するように修飾される、請求項1記載の核酸。
【請求項4】
プロテアーゼ部位がサイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス1型、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト免疫不全ウイルス1型、ヒト免疫不全ウイルス2型、およびカポジ症候群関連ヘルペスウイルスプロテアーゼ開裂部位から選択されるウイルス配列特異的プロテアーゼに対する部位である、請求項3記載の核酸。
【請求項5】
プロテアーゼ開裂部位がHCVにコードされるプロテアーゼである、請求項3記載の核酸。
【請求項6】
プロテアーゼ部位が配列番号:8〜21および配列番号:23〜25から選択される、請求項1記載の核酸。
【請求項7】
細胞毒性活性がアポトーシスの誘因である、請求項1記載の核酸。
【請求項8】
プロポリペプチドがカスパーゼプロポリペプチドまたはBH3相互作用ドメインデスアゴニスト(BH3 interacting domain death agonist:BID)プロポリペプチドである、請求項1記載の核酸。
【請求項9】
修飾BH3相互作用ドメインデスアゴニストプロポリペプチド(プロ-BID)がプロ-BIDのプロドメインとプロ-BIDの成熟BIDドメインの間に操作によって挿入された配列特異的プロテアーゼ開裂部位を持つ修飾プロ-BIDをコードするヌクレオチド配列を含む核酸であって、
該プロテアーゼ開裂部位が該プロ-BIDに固有でなく、該成熟BIDドメインが該プロ-BIDのプロテアーゼ部位での開裂によって細胞毒性を示す核酸。
【請求項10】
修飾グランザイムBプロテアーゼ認識部位がグランザイムBによって開裂しないように修飾プロ-BIDがグランザイムBプロテアーゼ認識部位で修飾される、請求項9記載の核酸。
【請求項11】
プロ-BIDの98位のAspアミノ酸残基が修飾されて天然のその他の任意のアミノ酸残基となる、請求項10記載の核酸。
【請求項12】
天然のその他のアミノ酸がGluアミノ酸残基である、請求項11記載の核酸。
【請求項13】
59位および75位のさらなるAspアミノ酸残基が天然のその他の任意のアミノ酸に修飾される、請求項11記載の核酸。
【請求項14】
天然のその他のアミノ酸がGluアミノ酸残基である、請求項11記載の核酸。
【請求項15】
配列特異的プロテアーゼ認識部位がHIVプロテアーゼまたはHCVプロテアーゼに対する部位である、請求項9記載の核酸。
【請求項16】
修飾プロ-BIDが配列番号:2、配列番号:3および配列番号:27から選択される配列を持つ、請求項15記載の核酸。
【請求項17】
請求項1記載の核酸によってコードされるプロポリペプチド。
【請求項18】
請求項1記載の核酸を含む発現カセット。
【請求項19】
請求項18記載の発現カセットを含むベクター。
【請求項20】
ベクターがアデノウイルスベクターである、請求項19記載のベクター。
【請求項21】
請求項19記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項22】
病原体によってコードされるプロテアーゼを発現している細胞の生存性を低下させる方法であって、
該プロテアーゼの認識部位を含むプロポリペプチドをコードする請求項20記載のベクターを該細胞に導入する工程、および
該プロポリペプチドの発現を可能とする条件下において該細胞をインキュベートする工程
を含む方法。
【請求項23】
細胞が病原体に感染して、プロテアーゼが病原体にコードされるプロテアーゼである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
病原体がウイルス性病原体である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
ウイルス性病原体がHCV病原体であり、プロテアーゼがHCVプロテアーゼである、請求項24記載の方法。
【請求項26】
ウイルス性病原体がHIV-1病原体であり、プロテアーゼがHIV-1プロテアーゼである、請求項24記載の方法。
【請求項27】
細胞が肝レシピエントに移植される肝臓の細胞である、請求項22記載の方法。
【請求項28】
病原体によってコードされるプロテアーゼを発現している細胞の生存性に対する修飾プロポリペプチドの影響を測定するための方法であって、
該プロテアーゼの認識部位を含むプロポリペプチドをコードする請求項20記載のベクターを該細胞に導入する工程、
該プロポリペプチドの発現を可能とする条件下において該細胞をインキュベートする工程、および
該細胞の生存性を測定する工程
を含む方法。
【請求項29】
プロテアーゼをコードする病原体に感染した被検体の病原体負荷量を減少させる方法であって、該プロテアーゼの認識部位を含むプロポリペプチドをコードする請求項20記載のベクターを該被検体に投与する工程を含む方法。
【請求項30】
病原体がウイルス性病原体である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
ウイルス性病原体がHCVであり、プロテアーゼがHCVプロテアーゼである、請求項30記載の方法。
【請求項32】
ウイルス性病原体がHIV-1であり、プロテアーゼがHIV-1プロテアーゼである、請求項30記載の方法。
【請求項33】
投与が全身性である、請求項29記載の方法。
【請求項34】
投与工程が頚静脈または門脈内に行われる、請求項29記載の方法。
【請求項35】
被検体が臓器移植レシピエントである、請求項29記載の方法。
【請求項36】
臓器が肝臓である、請求項35記載の方法。
【請求項37】
請求項1記載の核酸、およびプロテアーゼの発現に関連する疾患の治療における該核酸の使用に関する説明書を含むキット。
【請求項1】
プロポリペプチドのプロドメインとプロポリペプチドの成熟ポリペプチドドメインの間に操作によって挿入された配列特異的プロテアーゼ開裂部位を持つ修飾プロポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸であって、
該プロテアーゼ開裂部位が該プロポリペプチドに固有ではなく、該成熟ポリペプチドドメインが該プロポリペプチドのプロテアーゼ部位での開裂によって細胞毒性を示す核酸。
【請求項2】
プロテアーゼ部位がウイルス配列特異的プロテアーゼに対する部位である、請求項1記載の核酸。
【請求項3】
プロポリペプチドに固有の配列特異的プロテアーゼ開裂部位が細胞プロテアーゼによる開裂を阻止するように修飾される、請求項1記載の核酸。
【請求項4】
プロテアーゼ部位がサイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス1型、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト免疫不全ウイルス1型、ヒト免疫不全ウイルス2型、およびカポジ症候群関連ヘルペスウイルスプロテアーゼ開裂部位から選択されるウイルス配列特異的プロテアーゼに対する部位である、請求項3記載の核酸。
【請求項5】
プロテアーゼ開裂部位がHCVにコードされるプロテアーゼである、請求項3記載の核酸。
【請求項6】
プロテアーゼ部位が配列番号:8〜21および配列番号:23〜25から選択される、請求項1記載の核酸。
【請求項7】
細胞毒性活性がアポトーシスの誘因である、請求項1記載の核酸。
【請求項8】
プロポリペプチドがカスパーゼプロポリペプチドまたはBH3相互作用ドメインデスアゴニスト(BH3 interacting domain death agonist:BID)プロポリペプチドである、請求項1記載の核酸。
【請求項9】
修飾BH3相互作用ドメインデスアゴニストプロポリペプチド(プロ-BID)がプロ-BIDのプロドメインとプロ-BIDの成熟BIDドメインの間に操作によって挿入された配列特異的プロテアーゼ開裂部位を持つ修飾プロ-BIDをコードするヌクレオチド配列を含む核酸であって、
該プロテアーゼ開裂部位が該プロ-BIDに固有でなく、該成熟BIDドメインが該プロ-BIDのプロテアーゼ部位での開裂によって細胞毒性を示す核酸。
【請求項10】
修飾グランザイムBプロテアーゼ認識部位がグランザイムBによって開裂しないように修飾プロ-BIDがグランザイムBプロテアーゼ認識部位で修飾される、請求項9記載の核酸。
【請求項11】
プロ-BIDの98位のAspアミノ酸残基が修飾されて天然のその他の任意のアミノ酸残基となる、請求項10記載の核酸。
【請求項12】
天然のその他のアミノ酸がGluアミノ酸残基である、請求項11記載の核酸。
【請求項13】
59位および75位のさらなるAspアミノ酸残基が天然のその他の任意のアミノ酸に修飾される、請求項11記載の核酸。
【請求項14】
天然のその他のアミノ酸がGluアミノ酸残基である、請求項11記載の核酸。
【請求項15】
配列特異的プロテアーゼ認識部位がHIVプロテアーゼまたはHCVプロテアーゼに対する部位である、請求項9記載の核酸。
【請求項16】
修飾プロ-BIDが配列番号:2、配列番号:3および配列番号:27から選択される配列を持つ、請求項15記載の核酸。
【請求項17】
請求項1記載の核酸によってコードされるプロポリペプチド。
【請求項18】
請求項1記載の核酸を含む発現カセット。
【請求項19】
請求項18記載の発現カセットを含むベクター。
【請求項20】
ベクターがアデノウイルスベクターである、請求項19記載のベクター。
【請求項21】
請求項19記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項22】
病原体によってコードされるプロテアーゼを発現している細胞の生存性を低下させる方法であって、
該プロテアーゼの認識部位を含むプロポリペプチドをコードする請求項20記載のベクターを該細胞に導入する工程、および
該プロポリペプチドの発現を可能とする条件下において該細胞をインキュベートする工程
を含む方法。
【請求項23】
細胞が病原体に感染して、プロテアーゼが病原体にコードされるプロテアーゼである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
病原体がウイルス性病原体である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
ウイルス性病原体がHCV病原体であり、プロテアーゼがHCVプロテアーゼである、請求項24記載の方法。
【請求項26】
ウイルス性病原体がHIV-1病原体であり、プロテアーゼがHIV-1プロテアーゼである、請求項24記載の方法。
【請求項27】
細胞が肝レシピエントに移植される肝臓の細胞である、請求項22記載の方法。
【請求項28】
病原体によってコードされるプロテアーゼを発現している細胞の生存性に対する修飾プロポリペプチドの影響を測定するための方法であって、
該プロテアーゼの認識部位を含むプロポリペプチドをコードする請求項20記載のベクターを該細胞に導入する工程、
該プロポリペプチドの発現を可能とする条件下において該細胞をインキュベートする工程、および
該細胞の生存性を測定する工程
を含む方法。
【請求項29】
プロテアーゼをコードする病原体に感染した被検体の病原体負荷量を減少させる方法であって、該プロテアーゼの認識部位を含むプロポリペプチドをコードする請求項20記載のベクターを該被検体に投与する工程を含む方法。
【請求項30】
病原体がウイルス性病原体である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
ウイルス性病原体がHCVであり、プロテアーゼがHCVプロテアーゼである、請求項30記載の方法。
【請求項32】
ウイルス性病原体がHIV-1であり、プロテアーゼがHIV-1プロテアーゼである、請求項30記載の方法。
【請求項33】
投与が全身性である、請求項29記載の方法。
【請求項34】
投与工程が頚静脈または門脈内に行われる、請求項29記載の方法。
【請求項35】
被検体が臓器移植レシピエントである、請求項29記載の方法。
【請求項36】
臓器が肝臓である、請求項35記載の方法。
【請求項37】
請求項1記載の核酸、およびプロテアーゼの発現に関連する疾患の治療における該核酸の使用に関する説明書を含むキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2006−502710(P2006−502710A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−531337(P2004−531337)
【出願日】平成15年8月27日(2003.8.27)
【国際出願番号】PCT/CA2003/001317
【国際公開番号】WO2004/019990
【国際公開日】平成16年3月11日(2004.3.11)
【出願人】(503342432)ケイエムティー ヒパテック インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年8月27日(2003.8.27)
【国際出願番号】PCT/CA2003/001317
【国際公開番号】WO2004/019990
【国際公開日】平成16年3月11日(2004.3.11)
【出願人】(503342432)ケイエムティー ヒパテック インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
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