説明

病巣細胞への治療担体もしくは診断試薬の相乗的集積システムを用いた診断・治療用キット

【課題】磁性複合体などを病巣細胞に高濃度で集積でき、微少な病巣の検知が高感度で行え、病巣での温熱発生量を増加させることができ、投与も容易に行えるようにする。
【解決手段】多糖類と磁性金属微粒子とが複合したコロイド状磁性複合物にアビジンを結合した結合体Aと、多糖類と磁性金属微粒子とが複合したコロイド状磁性複合物にビオチンを結合した結合体Bと、病巣細胞と特異的に結合する抗体にビオチンまたはアビジンを結合した結合体Cとを有し、少なくとも、前記結合体Aが、前記複合物にポリアルキレングリコールを介してアビジンを結合したものを含むか、または前記結合体Bが、前記複合物にポリアルキレングリコールを介してビオチンを結合したものを含む診断・治療用キットを用い、結合体Cを投与してこれを病巣細胞に結合させ、ついで結合体Aまたは結合体Bを、さらに結合体Bまたは結合体Aを順次繰り返して投与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、悪性腫瘍などの診断、治療に用いられる磁性金属微粒子などを利用した病巣細胞への治療担体もしくは診断試薬の相乗的集積システムを用いた診断・治療用キットに関し、病巣に磁性金属微粒子などを選択的に集積することができ、病巣における磁性金属微粒子などの集積量を高めることができるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、デキストランなどの多糖類とマグネタイトなどからなる磁性金属微粒子とを複合した磁性複合物が知られており、この磁性複合物を病巣に投与し、交流磁場を与えることで磁性複合物が発熱し、治療が可能であることも、温熱療法として知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、磁性複合体水性ゾルと油脂滴あるいは水不溶性固体微粒子とからなる温熱療法用組成物が開示され、この発明では前記組成物を、カテーテルを用いて患部近傍に注入でき、患者に対する負担が少なく、温熱効果も高いとされている(特許文献2参照)。
【0004】
さらに、多糖のカルボキシルアルキルエーテル化物と磁性金属酸化物とからなる複合体が開示されており、このものでは血液クリアランスが遅く、毒性も低く、核磁気共鳴イメージング(MRI)用血管造影剤に好適であることが示されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】WO90/01939号パンフレット
【特許文献2】特開平6−9411号公報
【特許文献3】WO98/08899号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら先行発明にあっては、患部に組成物等を直接投与するものは現実に実施困難であり、直接投与する以外に目的とする濃度まで磁性金属微粒子を患部に集積することができない問題があった。このため、十分な治療効果が得られない不都合がある。
さらに、特許文献3に開示された多糖のカルボキシルアルキルエーテル化物と磁性金属酸化物とからなる複合体では患部への浸透が不十分で、微少な病巣を検知できない問題もある。
【0006】
本発明における課題は、磁性複合体を病巣細胞に高濃度で集積でき、微少な病巣の検知が高感度で行え、病巣での温熱発生量を増加させることができるとともに投与も容易に行えるようにすることにある。
また、磁性複合体以外の制ガン剤や免疫細胞などを同様に病巣細胞に高濃度に集積できるようすることにもある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、多糖類と物質とが複合した複合物にアビジンを結合した結合体Aと、多糖類と物質とが複合した複合物にビオチンを結合した結合体Bと、病巣細胞と特異的に結合する抗体にビオチンまたはアビジンを結合した結合体Cとを有し、少なくとも、前記結合体Aが、前記複合物にポリアルキレングリコールを介してアビジンを結合したものを含むか、または前記結合体Bが、前記複合物にポリアルキレングリコールを介してビオチンを結合したものを含む病巣細胞への治療担体もしくは診断試薬の相乗的集積システムを用いた診断・治療用キットである。
【0008】
請求項2にかかる発明は、多糖類と物質とが複合した複合物にアビジンを結合した結合体Aと、ビオチンと、病巣細胞と特異的に結合する抗体にビオチンまたはアビジンを結合した結合体Cとを有し、前記結合体Aが、前記複合物にポリアルキレングリコールを介してアビジンを結合したものを含む病巣細胞への治療担体もしくは診断試薬の相乗的集積システムを用いた診断・治療用キットである。
【0009】
請求項3にかかる発明は、アビジンと、多糖類と物質とが複合した複合物にビオチンを結合した結合体Bと、病巣細胞と特異的に結合する抗体にビオチンまたはアビジンを結合した結合体Cとを有し、前記結合体Bが、前記複合物にポリアルキレングリコールを介してビオチンを結合したものを含む病巣細胞への治療担体もしくは診断試薬の相乗的集積システムを用いた診断・治療用キットである。
【0010】
請求項4にかかる発明は、多糖類と物質とが複合した複合物に、アミノ基を少なくとも二つ有するアミノ化ポリアルキレングリコール誘導体を、前記複合物中のカルボキシ基のモル数に対して1〜30倍モル量反応させ、得られた第一の中間体に、カルボキシ基を少なくとも二つ有するカルボキシ化ポリアルキレングリコール誘導体を、前記アミノ化ポリアルキレングリコール誘導体のモル数に対して1〜30倍モル量反応させ、得られた第二の中間体に、アビジンを、前記カルボキシ化ポリアルキレングリコール誘導体のモル数に対して0.5〜5倍モル量反応させて結合体Aとし、多糖類と物質とが複合した複合物に、ポリアルキレングリコール鎖を有するビオチン誘導体を、前記複合物中のアミノ基のモル数に対して0.5〜5倍モル量反応させて結合体Bとし、病巣細胞と特異的に結合する抗体1質量部に、ビオチン0.05〜1質量部を反応させて結合体Cとし、前記結合体A、B及びCを備える病巣細胞への治療担体もしくは診断試薬の相乗的集積システムを用いた診断・治療用キットである。
【0011】
請求項5にかかる発明は、前記複合物が多糖類と磁性金属微粒子とが複合したコロイド状磁性複合物または多糖類と抗ガン剤とが複合した複合物または多糖類と免疫細胞とが複合した複合物である請求項1ないし4のいずれかに記載の病巣細胞への治療担体もしくは診断試薬の相乗的集積システムを用いた診断・治療用キットである。
【0012】
請求項6にかかる発明は、前記コロイド状磁性複合物が、デキストランマグネタイトを含むものである請求項5に記載の病巣細胞への治療担体もしくは診断試薬の相乗的集積システムを用いた診断・治療用キットである。
請求項7にかかる発明は、前記抗体が、モノクローナル抗体である請求項1ないし6のいずれかに記載の病巣細胞への治療担体もしくは診断試薬の相乗的集積システムを用いた診断・治療用キットである。
【0013】
請求項8にかかる発明は、前記ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである請求項1ないし7のいずれかに記載の病巣細胞への治療担体もしくは診断試薬の相乗的集積システムを用いた診断・治療用キットである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、診断・治療用キットのうち、初めに結合体Cを投与することで、病巣細胞に特異的な抗原をターゲットとして結合体Cが病巣細胞に特異的あるいは選択的に結合する。ついで、先に投与した結合体Cがビオチンを有するものであれば、つぎに前記キットのうち、結合体Aを投与する。これにより病巣細胞に結合した結合体Cのビオチンと結合体Aのアビジンが特異的に結合して病巣細胞に結合体Aが結合体Cを介して結合し、前記物質、例えば、磁性金属微粒子が病巣細胞に結合する。
【0015】
ついで、前記キットのうち、結合体Bを投与する。結合体Bのビオチンは結合体Aのアビジンと特異的に結合して、結合体Bが間接的に病巣細胞に結合し、磁性金属微粒子などの前記物質がさらに結合する。以下、結合体Aの投与と結合体Bの投与を交互に繰り返すことで、病巣細胞に例えば、磁性金属微粒子が順次集積してゆく。このような操作を行うことで、投与された結合体Aおよび結合体Bは選択的に目的とする病巣細胞に集中的にネットワーク状に集合し、病巣細胞における磁性金属微粒子などの物質の集積量を高めることができる。
【0016】
さらに、結合体Aとして、前記複合物にポリアルキレングリコールを介してアビジンを結合したものや、結合体Bとして、前記複合物にポリアルキレングリコールを介してビオチンを結合したものを用いることで、標的である病巣細胞および標的ではないその他の細胞への、これら結合体の非特異的な吸着が抑制されるので、病巣細胞においてより選択的に磁性金属微粒子などの物質の集積量を高めることができる。
【0017】
このため、MRI検査においては、微細な病巣を高感度でコントラストよく検出できる。さらに、交流磁場を与えた場合も病巣のみを集中して加熱することができ、高い治療効果が期待できる。
なお、初めに投与する複合体Cがアビジンを有するものであれば、次に複合体Bを投与し、さらに複合体Aを投与することになるが、その作用機序は同様である。
【0018】
また、結合体Aに代えてアビジンを用いるとともに、ビオチンと前記複合物とがポリアルキレングリコールを介して結合した結合体Bを用いた場合や、結合体Bに代えてビオチンを用いるとともに、アビジンと前記複合物とがポリアルキレングリコールを介して結合した結合体Aを用いた場合でも、同様に、磁性金属微粒子などの前記物質を病巣細胞に集中的に集積でき、細胞への結合体Aや結合体Bの非特異的吸着を抑制できる。
さらに、磁性金属微粒子に代えて、制ガン剤や免疫細胞を用いても同様の効果が得られ、これら制ガン剤等を病巣細胞に集中的に集積できるとともに、細胞への結合体Aや結合体Bの非特異的吸着を抑制できるので、治療効果を一層改善できることが期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を詳しく説明するが、初めに磁性金属微粒子を用いた実施形態について例示する。
[結合体A]
結合体Aは、多糖類と磁性金属微粒子とが複合したコロイド状磁性複合物にアビジンを結合したものである。
ここでの多糖類としては、デキストラン、デンプン、プルラン、セルロースなどやこれらのアルカリ処理物、カルボキシアルキル誘導体などが用いられ、カルボキシアルキル化デキストランなどが好ましい。
【0020】
磁性金属微粒子としては、鉄、コバルト、ニッケルなどの磁性金属の酸化物などの平均粒径3〜50nmの微粒子がコロイド状に分散された状態のものが用いられ、なかでもマグネタイト、フェライトの微粒子を含むものが好ましい。
多糖類と磁性金属微粒子とを複合してコロイド状磁性複合物を得るには、磁性金属微粒子がコロイド状に分散された水性液に多糖類を添加し、中性あるいは弱酸性条件下に加熱処理するなどの方法が採用される。
【0021】
コロイド状磁性複合物としては、市販の製品、例えばカルボキシデキストランで被覆されたマグネタイトの親水性コロイド液(一般名:フェルカルボトラン、商品名:リゾビスト、バイエル薬品社製)などのデキストランマグネタイトを含む水性液等を使用することができる。
アビジンとしては、例えば、ピアス社、シグマ社などから販売されている試薬のアビジン、ストレプトアビジンなどのアビジン誘導体を使用することができる。アビジンは、周知のように、低分子の塩基性糖タンパク質で、分子内に4個のビオチン結合サイトを有しており、ビオチンと極めて高いアフィニティを有するものである。
【0022】
前記コロイド状磁性複合物とアビジンとからなる結合体Aの作製は、例えば、コロイド状磁性複合物水性液にアビジンと、縮合剤(EDC:1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド ハイドロクロリド)を加え、撹拌したのち、透析により低分子物を除去する方法などで行われる。
【0023】
結合体Aとしては、さらにコロイド状磁性複合物とアビジンとをポリアルキレングリコールを介して間接的に結合したものを用いるのが好ましい。このようにポリアルキレングリコールが導入された結合体Aは、標的である病巣細胞および標的ではないその他の細胞への非特異的な吸着が抑制されるので、特異的結合を介して、病巣細胞により選択的に磁性金属微粒子を集積できる。なお、ここで言う非特異的な吸着とは、抗原−抗体間の結合や、ビオチン−アビジン間の結合のような特異的な結合の形成以外によるものを指し、これは以下においても同様である。
【0024】
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等公知のものが例示できるが、原料の入手性および本発明の効果に優れることから、ポリエチレングリコールが好ましい。
【0025】
コロイド状磁性複合物とアビジンとを結合するポリアルキレングリコールは、1分子でも良いし2分子以上でも良い。2分子以上である場合には、これら複数のポリアルキレングリコールはすべて同一の種類でも良いし、一部が異なる種類であるか又はすべて互いに異なる種類であっても良い。異なる種類である場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択し得る。
結合体Aの作製の容易さを考慮すると、コロイド状磁性複合物とアビジンとを結合するポリアルキレングリコールは、同一種類の3分子以下であることが好ましい。
【0026】
結合体Aの作製に使用するポリアルキレングリコールは、数平均分子量(Mn)が100〜1000のものが好ましい。
また、結合体Aにおいて、コロイド状磁性複合物とアビジンとを連結しているポリアルキレングリコール残基の数平均分子量の合計は、500〜20000であることが好ましい。
一般に、数平均分子量の大きいポリアルキレングリコールは入手が困難であるが、例えば上記範囲内の数平均分子量であるポリアルキレングリコールを、複数分子結合させて、これを介してコロイド状磁性複合物とアビジンとを連結することにより、数平均分子量の大きいポリアルキレングリコールでコロイド状磁性複合物とアビジンとを連結したものとほぼ同様の結合体Aが得られる。
【0027】
このようにスペーサーとしてポリアルキレングリコールが導入された結合体Aは、例えば、以下のように作製できる。
コロイド状磁性複合物溶液に、分子の両末端にアミノ基を有するアミノ化ポリアルキレングリコール誘導体と、前記と同様の縮合剤を加え、撹拌したのち、透析により低分子物を除去することで、前記アミノ化ポリアルキレングリコール誘導体の一方のアミノ基が結合したポリアルキレングリコール化コロイド状磁性複合物(以下、「第一の中間体」と言うことがある)を得る。この第一の中間体は、前記アミノ化ポリアルキレングリコール誘導体に由来する未反応のアミノ基を有する。
次いで、第一の中間体の水溶液に、分子の両末端にカルボキシ基を有するカルボキシ化ポリアルキレングリコール誘導体と、前記と同様の縮合剤を加え、撹拌したのち、透析により低分子物を除去することで、前記カルボキシ化ポリアルキレングリコール誘導体の一方のカルボキシ基が、第一の中間体中の前記アミノ化ポリアルキレングリコール誘導体に由来する未反応のアミノ基とアミド結合したコロイド状磁性複合物(以下、「第二の中間体」と言うことがある)を得る。この第二の中間体は、前記カルボキシ化ポリアルキレングリコール誘導体に由来する未反応のカルボキシ基を有する。
さらに、このようにポリアルキレングリコール誘導体同士がアミド結合で結合した前記第二の中間体の水溶液に、アビジンと前記と同様の縮合剤を加え、撹拌したのち、透析により低分子物を除去することで、第二の中間体中の前記カルボキシ化ポリアルキレングリコール誘導体に由来する未反応のカルボキシ基とアビジンが結合し、スペーサーとしてポリアルキレングリコールが2分子導入された結合体Aが得られる。
【0028】
第一の中間体の調製においては、コロイド状磁性複合物中のカルボキシ基のモル数に対して、好ましくは1〜30倍モル量、より好ましくは10〜30倍モル量のアミノ化ポリアルキレングリコール誘導体を反応させる。
また、第二の中間体の調製においては、前記アミノ化ポリアルキレングリコール誘導体のモル数に対して、好ましくは1〜30倍モル量、より好ましくは10〜30倍モル量のカルボキシ化ポリアルキレングリコール誘導体を反応させる。
また、結合体Aの調製においては、前記カルボキシ化ポリアルキレングリコール誘導体のモル数に対して、好ましくは0.5〜5倍モル量、より好ましくは0.7〜2.5倍モル量のアビジンを反応させる。
反応させる原料の使用量を上記のようにすることで、効率的に第一及び第二の中間体、並びに結合体Aが得られる。
【0029】
ここでは、ポリアルキレングリコール2分子を介してコロイド状磁性複合物とアビジンとが間接的に結合した結合体Aについて説明したが、同様の手法で、スペーサーとしてのポリアルキレングリコールの分子数は任意に調整できる。
また、アミノ化ポリアルキレングリコール誘導体としてはアミノ基を分子の両末端に有するもの、カルボキシ化ポリアルキレングリコール誘導体としてはカルボキシ基を分子の両末端に有するものが、反応性が良好である点でそれぞれ好ましいが、アミノ基及びカルボキシ基の位置はこれに限定されるものではなく、分子末端でなくても良い。そして、アミノ基及びカルボキシ基の数は、それぞれ少なくとも二つであれば良く、目的に応じて選択すれば良い。
【0030】
また、ポリアルキレングリコールを結合体Aに導入する方法も、ここに示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の公知の手法を適用しても良い。例えば、ポリアルキレングリコール鎖を有するアビジン誘導体と前記と同様の縮合剤をコロイド状磁性複合物溶液に加え、撹拌したのち、透析により低分子物を除去することでも、スペーサーとしてポリアルキレングリコールが導入された結合体Aが得られる。
この時、前記アビジン誘導体は、コロイド状磁性複合物中のカルボキシ基のモル数に対して、好ましくは0.5〜5倍モル量、より好ましくは0.7〜2.5倍モル量反応させる。
【0031】
結合体A作製の各工程における反応条件は、特に限定されないが、例えば、反応温度は3〜40℃であることが好ましく、10〜30であることがより好ましく、15〜25℃であることが特に好ましい。
反応時間は0.5〜48時間であることが好ましく、2〜36時間であることがより好ましく、4〜30時間であることが特に好ましい。
また、反応溶媒は使用する原料を考慮して適宜選定すれば良く、各原料を溶解するものが好ましく、水溶液又は水溶性の有機溶媒がより好ましく、各種緩衝液やN,N−ジメチルスルホキシドが特に好ましい。反応溶媒は混合溶媒でも良い。
【0032】
結合体Aとしては、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、それらの組み合わせおよび比率は目的に応じて適宜選択し得る。
また、結合体A全量に占める、ポリアルキレングリコールが導入されたものの比率は高いほど好ましく、結合体Aが、すべてポリアルキレングリコールが導入されたものであることが最も好ましい。
【0033】
[結合体B]
結合体Bは、多糖類と磁性金属微粒子とが複合したコロイド状磁性複合物にビオチンを結合したものである。ここでのコロイド状磁性複合物は、前記結合体Aでのコロイド状磁性複合物と同様のものが用いられる。
ビオチンとしては、例えば、ピアス社などから市販されているビオチン、ビオチン誘導体を使用することができる。
【0034】
前記コロイド状磁性複合物とビオチンとからなる結合体Bの作製は、例えば、コロイド状磁性複合物水性液にビオチンと、縮合剤(EDC:1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド ハイドロクロリド)を加え、撹拌したのち、透析により低分子物を除去する方法などで行われる。
【0035】
結合体Bとしては、さらにコロイド状磁性複合物とビオチンとをポリアルキレングリコールを介して間接的に結合したものを用いるのが好ましい。このようにポリアルキレングリコールが導入された結合体Bは、前記のポリアルキレングリコールが導入された結合体Aと同様に、標的である病巣細胞および標的ではないその他の細胞への非特異的な吸着が抑制されるので、特異的結合を介して、病巣細胞により選択的に磁性金属微粒子を集積できる。
【0036】
コロイド状磁性複合物とビオチンとを結合するポリアルキレングリコールの分子数や種類は、前記のポリアルキレングリコールが導入された結合体Aの場合と同様である。
【0037】
このようにスペーサーとしてポリアルキレングリコールが導入された結合体Bは、例えば、ポリアルキレングリコールが2分子の場合であれば、先に説明したポリアルキレングリコールが導入された結合体Aの作製方法において、アミノ化ポリアルキレングリコール誘導体に代わり、カルボキシ化ポリアルキレングリコール誘導体を反応させて第一の中間体とし、カルボキシ化ポリアルキレングリコール誘導体に代わり、アミノ化ポリアルキレングリコール誘導体を反応させて第二の中間体とし、アビジンに代わりビオチンを反応させて結合体Bとすること以外は、前記結合体Aと同様に作製できる。
そして、スペーサーとしてのポリアルキレングリコールの分子数の調整も、ポリアルキレングリコールが導入された結合体Aと同様に行うことができる。
【0038】
また、ポリアルキレングリコールが導入された結合体Bの作製方法は、ここに示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の公知の手法を適用しても良い。例えば、ポリアルキレングリコール鎖を有するビオチン誘導体と前記と同様の縮合剤をコロイド状磁性複合物溶液に加え、撹拌したのち、透析により低分子物を除去することでも、スペーサーとしてポリアルキレングリコールが導入された結合体Bが得られる。
この時、前記ビオチン誘導体は、コロイド状磁性複合物中のアミノ基のモル数に対して、好ましくは0.5〜5倍モル量、より好ましくは0.7〜2.5倍モル量反応させる。
【0039】
結合体B作製の各工程における反応条件は、前記結合体A作製の各工程における反応条件と同様で良い。
【0040】
結合体Bとしては、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、それらの組み合わせおよび比率は目的に応じて適宜選択し得る。
また、結合体B全量に占める、ポリアルキレングリコールが導入されたものの比率は高いほど好ましく、結合体Bが、すべてポリアルキレングリコールが導入されたものであることが最も好ましい。
【0041】
本発明においては、少なくとも、前記結合体Aが、ポリアルキレングリコールが導入されたものを含むか、または前記結合体Bが、ポリアルキレングリコールが導入されたものを含む。そして、ポリアルキレングリコールが導入されたものを含む結合体Aと、ポリアルキレングリコールが導入されたものを含む結合体Bとを併用することが好ましい。
結合体A及びBの全量に占める、ポリアルキレングリコールが導入されたものの比率は高いほど好ましく、結合体Aとしてすべてポリアルキレングリコールが導入されたものと、結合体Bとしてすべてポリアルキレングリコールが導入されたものとを併用することが特に好ましい。
【0042】
[結合体C]
結合体Cは、病巣細胞と特異的に結合する抗体にビオチンまたはアビジンを結合したものである。ここでの病巣細胞とは、診断・治療対象となる肝臓ガン、乳ガン、膵ガンなどのガン細胞など病変細胞を指し、この病巣細胞と特異的に結合する抗体とは、この病巣細胞に特異的に発現する抗原に対するモノクローナル抗体などの抗体を言う。具体例としては、乳ガン細胞(SK−BR3など)の表面に形成される受容体として知られるHER2タンパク質に対するモノクローナル抗体であるハーセプチン、膵ガン細胞(SUIT−2など)の表面に形成される受容体として知られるEGFRタンパク質に対するモノクローナル抗体であるセツキシマブ(Cetuximab)などである。
【0043】
このような抗体に前記ビオチンまたはアビジンを結合させたものが結合体Cであり、この結合体Cの作製は、例えば、前記抗体に市販のビオチンラベリングキットなどを用いて抗体のアミノ基などにビオチンを結合させる方法などで行われる。
この時、前記抗体1質量部に対して、好ましくは0.05〜1質量部、より好ましくは0.1〜0.5質量部のビオチンを反応させる。
反応条件は、抗体が失活しない範囲内において適宜選択すれば良く、例えば、反応温度は−10〜30℃であることが好ましく、−5〜20であることがより好ましく、−5〜10℃であることが特に好ましい。
反応時間は0.2〜15時間であることが好ましく、0.5〜10時間であることがより好ましく、1〜5時間であることが特に好ましい。
反応溶媒は結合体Aの場合と同様で良い。
【0044】
本発明の診断・治療用キットは、多糖類と磁性金属微粒子とが複合したコロイド状磁性複合物にアビジンを結合した結合体Aと、ビオチンと、病巣細胞と特異的に結合する抗体にビオチンまたはアビジンを結合した結合体Cとを有し、前記結合体Aが、前記コロイド状磁性複合物にポリアルキレングリコールを介してアビジンを結合したものを含むものであっても良く、もしくはアビジンと、多糖類と磁性金属微粒子とが複合したコロイド状磁性複合物にビオチンを結合した結合体Bと、病巣細胞と特異的に結合する抗体にビオチンまたはアビジンを結合した結合体Cとを有し、前記結合体Bが、前記コロイド状磁性複合物にポリアルキレングリコールを介してビオチンを結合したものを含むものであっても良い。
ここでの結合体A、結合体Bおよび結合体Cは、先に述べたものと同様のものである。
すなわち、結合体Aおよび結合体Bとしては、ポリアルキレングリコールが導入されたものの比率が高いほど好ましく、すべてポリアルキレングリコールが導入されたものであることが特に好ましい。
また、アビジンおよびビオチンとして、先に説明したような市販品を使用することができる。
【0045】
さらに、本発明の診断・治療用キットでは、結合体Aおよび結合体Bをなす前記物質としては、磁性金属微粒子以外に、タンパク質結合パクリタキセル小粒子懸濁液(例えば、「AB1−007]など)や、抗ガン剤を封入したミセル化ナノ粒子などの抗ガン剤、Tリンパ球などの免疫細胞を用いることができる。
【0046】
つぎに、本発明の診断・治療用キットを使用した診断、治療方法について説明する。
ここでは、診断、治療の対象となる病巣細胞がガン細胞で、磁性金属微粒子を用いた例を示す。
診断、治療の対象となるガン細胞(例えば、膵ガン細胞SUIT−2)に特異的に発現する抗原(例えば、EGFRタンパク質)に対する抗体(例えば、セツキシマブ)にアビジンを結合した結合体Cを初めに投与する。投与方法は、静脈内投与など経血管投与で行われ、これにより容易にガン細胞に到達する。
投与された結合体Cは、その抗体(例えば、セツキシマブ)が抗原(例えば、EGFRタンパク質)に結合することで、ガン細胞(例えば、膵ガン細胞SUIT−2)に結合する。
【0047】
次いで、結合体Bを投与する。投与方法は、静脈内投与などが用いられる。投与された結合体Bは、そのビオチンと結合体Cのアビジンとが選択的に結合し、ガン細胞−結合体C−結合体Bのチェーン状の連鎖結合物が形成される。この時、結合体Bとして、ポリアルキレングリコールが導入されたものが含まれる場合には、このような結合体Bは、診断、治療の対象となるガン細胞だけでなく、その他の細胞への非特異的な吸着が抑制されるので、ガン細胞においてより選択的に前記のチェーン状連鎖結合物が形成される。そして、結合体Bには磁性金属微粒子が含まれているので、ガン細胞に高選択的に磁性金属微粒子が結合した状態となる。
【0048】
つぎに、結合体Aを投与する。投与方法は、静脈内投与などが用いられる。投与された結合体Aは、そのアビジンが前記連鎖複合物の末端の結合体Bのビオチンと選択的に結合して、ガン細胞−結合体C−結合体B−結合体Aのネットワーク状の連鎖結合物が形成される。この時、結合体Aとして、ポリアルキレングリコールが導入されたものが含まれる場合には、このような結合体Aは、診断、治療の対象となるガン細胞だけでなく、その他の細胞への非特異的な吸着が抑制されるので、ガン細胞においてより選択的に前記のネットワーク状連鎖結合物が形成される。そして、結合体Aには磁性金属微粒子が含まれているので、ガン細胞に高選択的に磁性金属微粒子が結合した状態となる。
【0049】
以下、結合体Bと結合体Aとを交互に繰り返し投与することで、前記連鎖複合物にはさらに結合体Aと結合体Bが結合し、巨大な連鎖結合物となる。
このようにして得られた連鎖結合物では、ガン細胞に結合する磁性金属微粒子量が増加していく。
【0050】
そして、ガン細胞と結合体Cとの結合が抗原−抗体反応であり、結合体Cと結合体Bとの結合および結合体Bと結合体Aとの結合はアビジンとビオチンとの特異的な結合であるので、対象となるガン細胞以外の細胞にこれら結合体が結合することがない。
さらに、ポリアルキレングリコールが導入された結合体Aや結合体Bを用いることで、細胞への非特異的な吸着が抑制されるので、ガン細胞により選択的に磁性金属微粒子を集積できる。
このように、高選択的にかつ集中的に無駄なく磁性金属微粒子を、狙ったガン細胞に結合させることができる。
【0051】
このため、MRI検査においては、微細なガン病巣を高感度でコントラストよく検出できる。さらに、交流磁場を与えた場合もガン病巣のみを集中して加熱することができ、高い治療効果が期待できる。
また、結合体Cにビオチンが結合されているものを投与した場合では、結合体Aを投与し、ついで結合体Bを投与することで、ガン細胞−結合体C−結合体A−結合体Bの連鎖結合物が形成することとなって、同様の作用機序を発揮する。
【0052】
また、結合体Aに代えてアビジンを用いた診断・治療用キットでも、ビオチンを有する結合体Cを投与し、ついでアビジンを投与し、さらに結合体Bを投与し、以下アビジンと結合体Bを交互に繰り返して投与することで、同様の作用効果が得られる。ここで、結合体Bとして、ポリアルキレングリコールが導入されたものが含まれるので、前記と同様に、ガン細胞においてより選択的に磁性金属微粒子を集積できる。
アビジンを有する結合体Cを投与した場合では、ついで結合体Bを投与し、さらにアビジンを投与し、以下結合体Bとアビジンを交互に繰り返して投与することで、同様の作用効果が得られる。
【0053】
さらに、結合体Bに代えてビオチンを用いた診断・治療用キットでも、アビジンを有する結合体Cを投与し、ついでビオチンを投与し、さらに結合体Aを投与し、以下ビオチンと結合体Aを交互に繰り返して投与することでも同様の作用効果が得られる。ここでも、結合体Aとして、ポリアルキレングリコールが導入されたものが含まれるので、前記と同様に、ガン細胞においてより選択的に磁性金属微粒子を集積できる。
ビオチンを有する結合体Cを投与した場合では、ついで結合体Aを投与し、さらにビオチンを投与し、以下結合体Aとビオチンを交互に繰り返して投与することでも同様の作用効果が得られる。
【0054】
さらに、磁性金属微粒子に代えて、抗ガン剤や免疫細胞を用いた場合でも、同様の作用機序によって、抗ガン剤や免疫細胞が病巣細胞に集積することになる。
【実施例】
【0055】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
(ストレプトアビジンが結合したポリエチレングリコール化デキストランマグネタイト:結合体Aの作製)
デキストランマグネタイト(270mg、バイエル薬品社製:リゾビスト(0.5mL))にN,N−ジメチルスルホキシド(10mL)溶液を加え、両末端にアミノ基を有するアミノ化ポリエチレングリコール誘導体(4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン、3.4mL(3.3g)、前記デキストランマグネタイト中のカルボキシ基のモル数に対して約20倍モル量)と縮合剤(EDC、0.71g)を加え、室温で6時間撹拌したのち3日間透析し、低分子物を除去して、末端にアミノ基を有するポリエチレングリコール化デキストランマグネタイト(II)を得た。引き続き、前記デキストランマグネタイト(II)水溶液(4mL)に、両末端にカルボキシ基を有するカルボキシ化ポリエチレングリコール誘導体(III)(ポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル、Mn600、0.30mL(0.36g)、前記ポリエチレングリコール誘導体(I)のモル数に対して約20倍モル量)と縮合剤(EDC、0.11g)を加え、室温で24時間撹拌したのち3日間透析し、低分子物を除去して、末端にカルボキシ基を有するポリエチレングリコール化デキストランマグネタイト(IV)水溶液を得た。さらに、前記デキストランマグネタイト(IV)水溶液(2mL)に、ストレプトアビジン(1.2mg、前記ポリエチレングリコール誘導体(III)のモル数に対して約等モル量)と縮合剤(EDC、3.7mg)とを加え、室温で2時間撹拌して、ストレプトアビジンが結合したポリエチレングリコール化デキストランマグネタイトである結合体Aを得た。
【0056】
(ビオチンが結合したポリエチレングリコール化デキストランマグネタイト:結合体Bの作製)
デキストランマグネタイト(54mg、バイエル薬品社製:リゾビスト(0.1mL))を水(1mL)で希釈した後、ポリエチレングリコール鎖を有するビオチン誘導体(V)(ピアス社製:EZ−Link Amino−PEO−ビオチン、50mg、前記デキストランマグネタイト中のアミノ基のモル数に対して約等モル量)と縮合剤(EDC、25mg)を加え、室温で一晩撹拌したのち3日間透析し、低分子物を除去して、ビオチンが結合したポリエチレングリコール化デキストランマグネタイトである結合体Bを得た。
【0057】
(ビオチン化セツキシマブ:結合体Cの作製)
市販のビオチンラベリングキット(コスモ・バイオ社販売)を使用し、そのキットのNH−反応性ビオチン(2mg)をN,N−ジメチルスルホキシド(0.59mL)に溶解させ、得られた溶液のうちの0.135mLと、セツキシマブ(2mg)とを緩衝液中で氷冷下、2時間反応させ、脱塩カラムを用いた遠心分離によりビオチン化セツキシマブである結合体Cを得た。
【0058】
[参考例1]
(検証実験)
膵ガン細胞(SUIT−2)に対して、(1)コントロールとしてデキストランマグネタイト(バイエル薬品社製:リゾビスト)水溶液を加えたもの、(2)ポリエチレングリコール鎖を有するデキストランマグネタイト水溶液を加えたもの、(3)ビオチン化セツキシマブ(結合体C)と、次いでストレプトアビジンが結合したポリエチレングリコール化デキストランマグネタイト水溶液(結合体A)を順に加えたもの、をそれぞれ調製した。次いで(1)〜(3)から膵ガン細胞を回収して、その磁化量を磁化特性評価装置により測定した。
その結果、(2)から回収した膵ガン細胞は、(1)から回収した膵ガン細胞よりも磁化量が低くなったことから、デキストランマグネタイトは膵ガン細胞に非特異的に吸着するが、ポリエチレングリコールが導入されたデキストランマグネタイトは、膵ガン細胞への非特異的吸着が低減されることが確認された。
また、(3)から回収した膵ガン細胞は、(1)から回収した膵ガン細胞よりも磁化量が高くなったことから、ストレプトアビジンが結合したポリエチレングリコール化デキストランマグネタイトは、そのストレプトアビジンが、膵ガン細胞に特異的に結合したビオチン化セツキシマブのビオチンに、特異的に結合することが確認された。このように、ポリエチレングリコールが導入された結合体を用いることで、細胞への非特異的な吸着が抑制でき、ガン細胞においてより選択的にマグネタイトを集積できた。
(1)〜(3)から回収した膵ガン細胞の磁化量測定データを図1に示す。
【0059】
[実施例2]
6cmシャーレにおけるメディウム5%FBSDMEM中の膵ガン細胞(SUIT−2)に対して、実施例1で作製した結合体Cを、濃度5μg/mlのものを1ml加えて4℃で60分間反応させ、次いで、実施例1で作製した結合体Aを100倍希釈したものを1ml加えて4℃で30分間反応させ、次いでさらに、実施例1で作製した結合体Bを100倍希釈したものを1ml加えて4℃で30分間反応させ、次いでさらに実施例1で作製した結合体Aを加えて4℃で30分間反応させた。そして、膵ガン細胞を回収して、参考例1と同様に、その磁化量を磁化特性評価装置により測定した。測定データを図2に示す。
【0060】
[参考例2]
6cmシャーレにおけるメディウム5%FBSDMEM中の膵ガン細胞(SUIT−2)に対して、実施例1で作製した結合体Cを加えて4℃で60分間反応させ、次いで、実施例1で作製した結合体Aを加えて4℃で30分間反応させ、次いでさらに、ポリエチレングリコールが導入されたデキストランマグネタイトを加えて4℃で30分間反応させ、次いでさらに同様のポリエチレングリコールが導入されたデキストランマグネタイトを加えて4℃で30分間反応させた。そして、膵ガン細胞を回収して、参考例1と同様に、その磁化量を磁化特性評価装置により測定した。測定データを図2に示す。
【0061】
図2に示すように、実施例2で回収した膵ガン細胞の磁化量は、参考例2で回収した膵ガン細胞の磁化量よりも高く、ポリエチレングリコールが導入された結合体A及びBを繰り返し使用することで、デキストランマグネタイトが効果的に集積でき、ポリエチレングリコールの導入により、デキストランマグネタイトの膵ガン細胞への非特異的吸着が効果的に抑制されていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】参考例1における膵ガン細胞の磁化量測定データを示すグラフである。
【図2】実施例2及び参考例2における膵ガン細胞の磁化量測定データを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖類と物質とが複合した複合物にアビジンを結合した結合体Aと、
多糖類と物質とが複合した複合物にビオチンを結合した結合体Bと、
病巣細胞と特異的に結合する抗体にビオチンまたはアビジンを結合した結合体Cとを有し、
少なくとも、前記結合体Aが、前記複合物にポリアルキレングリコールを介してアビジンを結合したものを含むか、または前記結合体Bが、前記複合物にポリアルキレングリコールを介してビオチンを結合したものを含む病巣細胞への治療担体もしくは診断試薬の相乗的集積システムを用いた診断・治療用キット。
【請求項2】
多糖類と物質とが複合した複合物にアビジンを結合した結合体Aと、
ビオチンと、
病巣細胞と特異的に結合する抗体にビオチンまたはアビジンを結合した結合体Cとを有し、
前記結合体Aが、前記複合物にポリアルキレングリコールを介してアビジンを結合したものを含む病巣細胞への治療担体もしくは診断試薬の相乗的集積システムを用いた診断・治療用キット。
【請求項3】
アビジンと、
多糖類と物質とが複合した複合物にビオチンを結合した結合体Bと、
病巣細胞と特異的に結合する抗体にビオチンまたはアビジンを結合した結合体Cとを有し、
前記結合体Bが、前記複合物にポリアルキレングリコールを介してビオチンを結合したものを含む病巣細胞への治療担体もしくは診断試薬の相乗的集積システムを用いた診断・治療用キット。
【請求項4】
多糖類と物質とが複合した複合物に、アミノ基を少なくとも二つ有するアミノ化ポリアルキレングリコール誘導体を、前記複合物中のカルボキシ基のモル数に対して1〜30倍モル量反応させ、得られた第一の中間体に、カルボキシ基を少なくとも二つ有するカルボキシ化ポリアルキレングリコール誘導体を、前記アミノ化ポリアルキレングリコール誘導体のモル数に対して1〜30倍モル量反応させ、得られた第二の中間体に、アビジンを、前記カルボキシ化ポリアルキレングリコール誘導体のモル数に対して0.5〜5倍モル量反応させて結合体Aとし、
多糖類と物質とが複合した複合物に、ポリアルキレングリコール鎖を有するビオチン誘導体を、前記複合物中のアミノ基のモル数に対して0.5〜5倍モル量反応させて結合体Bとし、
病巣細胞と特異的に結合する抗体1質量部に、ビオチン0.05〜1質量部を反応させて結合体Cとし、
前記結合体A、B及びCを備える病巣細胞への治療担体もしくは診断試薬の相乗的集積システムを用いた診断・治療用キット。
【請求項5】
前記複合物が多糖類と磁性金属微粒子とが複合したコロイド状磁性複合物または多糖類と抗ガン剤とが複合した複合物または多糖類と免疫細胞とが複合した複合物である請求項1ないし4のいずれかに記載の病巣細胞への治療担体もしくは診断試薬の相乗的集積システムを用いた診断・治療用キット。
【請求項6】
前記コロイド状磁性複合物が、デキストランマグネタイトを含むものである請求項5に記載の病巣細胞への治療担体もしくは診断試薬の相乗的集積システムを用いた診断・治療用キット。
【請求項7】
前記抗体が、モノクローナル抗体である請求項1ないし6のいずれかに記載の病巣細胞への治療担体もしくは診断試薬の相乗的集積システムを用いた診断・治療用キット。
【請求項8】
前記ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである請求項1ないし7のいずれかに記載の病巣細胞への治療担体もしくは診断試薬の相乗的集積システムを用いた診断・治療用キット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−209049(P2009−209049A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50693(P2008−50693)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】