説明

病状治療用の脳神経マイクロバースト電気刺激

【課題】病状治療用の脳神経マイクロバースト電気刺激の提供。
【解決手段】患者の脳神経の一部に、マイクロバーストあたりのパルス数、インターパルス間隔、マイクロバースト継続時間、およびインターバースト周期を有することを特徴とする電気信号を印加することによって、移植型医療機器を使用して患者の病状を治療するための方法、システム、および装置であって、マイクロバーストあたりのパルス数、インターパルス間隔、マイクロバースト継続時間、またはインターバースト周期のうちの少なくとも1つを選択して、脳神経誘発電位を強化する、方法、システム、および装置を本願で開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、先の同時係属の米国特許出願第60/787,680号(2006年3月29日出願、名称「Synchronized And Optimized Vagus Nerve Stimulation Method」)の優先権を主張するものである。
【0002】
Arthur D.Craigによって本願と同時出願された米国特許出願(名称「Synchronization Of Vagus Nerve Stimulation With The Cardiac Cycle Of A Patient」)が参考として本明細書に援用される。
【0003】
Arthur D.Craigによって本願と同時出願された国際特許出願(名称「Vagus Nerve Stimulation Method」)が参考として本明細書に援用される。
【0004】
(発明の技術分野)
本発明は概して、医療機器システムに関し、さらに具体的には、様々な病状の治療のために脳神経に電気信号を印加するため、およびそのようなシステムにおける改良された電気信号のための医療機器システムに関する。
【背景技術】
【0005】
うつ病およびてんかん等の疾病の治療において、多くの進歩が達成されている。これらの疾病を治療するための電気信号を使用した治療法が有効であることが分かっている。移植型医療機器は、これらの疾病を治療するために、人体の様々な部分(例えば、迷走神経)に治療的刺激を伝達するために効果的に使用されている。本願で使用されるような、「刺激」または「刺激信号」は、患者の体内の神経構造に対する、電気、機械、磁気、電磁、光子、音声、および/または化学信号の印加を指す。信号は、患者の体および環境によって生成される内因性の電気、機械、および化学的活性からの外生信号(例えば、求心性および/または遠心性電気的作用電位)である。言い換えると、本発明において神経に印加される刺激信号(電気、機械、磁気、電磁、光子、音声、または化学的性質であるにかかわらず)は、人工源、例えば、神経刺激装置から印加される信号である。
【0006】
「治療的信号」は、神経組織に変調作用を提供することによって病状を治療する目的で、患者の体に送達される刺激信号を指す。ニューロンの活動への刺激信号の作用は、「変調」と称されるが、簡単にするために、本願では、「刺激する」および「変調する」という用語、およびそれらの変異形が時には交互に用いられる。しかし、一般に、外生信号自体の送達は、神経構造の「刺激」を指す一方で、神経構造の電気的活性に対するその信号の作用は、もしあれば、「変調」と適切に呼ばれる。神経組織に対する刺激信号の変調作用は、興奮性または抑制性であってよく、ニューロンの活動の急性および/または長期的変化を増強することができる。たとえば、神経組織への刺激信号の「変調」作用は、(a)活動電位(求心性および/または遠心性活動電位)の開始、(b)過分極化および/または衝突妨害を含む、内因性または外因性に誘起されたかにかかわらず、活動電位の伝導の抑制または妨害、(c)神経伝達物質/神経修飾物質の放出または取り込みの変化に影響を及ぼす、および(d)脳組織の神経可塑性または神経発生の変化といった作用のうちの1つ以上を含み得る。
【0007】
一部の実施形態では、電気的神経刺激は、患者の皮下に電気装置を移植し、脳神経等の神経に電気信号を送達することによって、提供することができる。一実施形態では、電気的神経刺激は、身体パラメータを感知または検出するステップを伴い、感知された身体パラメータに応じて電気信号が送達される。この種類の刺激は概して、「能動的」、「フィードバック」または「誘発」刺激と呼ばれる。別の実施形態では、患者が神経刺激によって治療できる病状であると診断されると、システムは、身体パラメータを感知または検出せずに動作することができる。この場合、システムは、神経(例えば、迷走神経等の脳神経)に一連の電気パルスを一日中、周期的、断続的、または継続的に、または別の所定の時間間隔にわたって印加することができる。この種類の刺激は概して、「受動的」、「非フィードバック」、または「予防」刺激と呼ばれる。電気信号は、患者の体内に移植されているIMDによって印加することができる。別の代替的実施形態では、信号は、RFまたは無線リンクによって埋込型電極に連結される、患者の体外の外部パルス発生器によって発生させることができる。
【0008】
概して、神経変調を行う神経刺激信号は、1本以上のリード線を介してIMDによって伝達される。リード線は概して、1つ以上の電極においてそれらの遠位端で終結し、次に、電極は、患者の体内の組織に電気的に連結される。例えば、神経刺激信号の伝達のために、多数の電極を人体内の神経または他の組織の様々な点に取り付けることができる。
【0009】
フィードバック刺激の仕組みが提案されている一方で、従来の迷走神経刺激(VNS)は通常、多数のパラメータによって特徴付けられる非フィードバック刺激を伴う。具体的には、従来の迷走神経刺激は通常、「オンタイム」および「オフタイム」によって定義されるバーストにおける一連の電気パルスを伴う。オンタイムの間、定義された電流(例えば、0.5〜2.0ミリアンペア)およびパルス幅(例えば、0.25〜1.0ミリ秒)の電気パルスを、オンタイムの継続時間、通常は具体的な秒数、例えば10〜60秒間、定義された周波数(例えば、20〜30Hz)で送達する。パルスバーストは、神経に電気信号が印加されないオフタイム(例えば、30秒〜5分)によって、互いから分離される。オンタイムおよびオフタイムパラメータは共に、オンタイム対オンタイムおよびオフタイムの組み合わせの比率であり、電気信号が神経に印加される時間の割合を表す、負荷サイクルを定義する。
【0010】
従来のVNSでは、オンタイムおよびオフタイムは、反復する一連の電気パルスバーストが生成されて迷走神経127に印加される、断続的パターンを定義するようにプログラムすることができる。オンタイムの間のパルスの各シーケンスは、「パルスバースト」と呼ぶことができる。バーストの後には、神経に信号が印加されないオフタイム期間が続く。オフタイムを提供して、神経がパルスバーストの刺激から回復し、力を保存することを可能にする。オフタイムがゼロに設定された場合、従来のVNSにおける電気信号は、迷走神経に持続的刺激を提供することができる。あるいは、アイドル時間は、1日以上の長さであってよいが、その場合、パルスバーストは、毎日1回だけ、またはさらに長い間隔で提供される。しかし、典型的には、「オフタイム」の「オンタイム」に対する比は、約0.5から約10に及ぶことができる。
【0011】
オンタイムおよびオフタイムに加えて、従来のVNSにおける電気信号を定義するその他のパラメータを、値の範囲にわたってプログラムすることができる。従来のVNSのパルスバーストにおけるパルスに対するパルス幅は、約250〜500μ秒等の、約1ミリ秒以下の値に設定することができ、パルスバーストにおけるパルス数は、典型的に、約20〜150Hz(すなわち、毎秒20パルスから毎秒150パルス)の範囲の周波数をプログラムすることによって設定される。不均一な周波数もまた、使用することができる。周波数は、低周波数から高周波数の周波数掃引、またはその反対のいずれかによって、パルスバーストの間に変えることができる。あるいは、バースト内の隣接する個別信号間のタイミングは、2つの隣接する信号が周波数の範囲内のいずれの周波数においても生成できるように、無作為に変更することができる。
【0012】
神経刺激は多数の病状の治療において有効であることが証明されているが、この目的により、神経刺激をさらに強化および最適化することが望ましいであろう。例えば、病状の治療を補助するために患者の脳内の誘発電位を強化することが望ましい場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
出願人は、脳内の強化誘発電位を提供することが可能な、脳神経の新しい種類の電気刺激によって、種々の病状に対する改良された治療的神経刺激処理を提供することが可能であると発見した。これに関連した「強化」は、従来の神経刺激、具体的には、20〜30Hzのインターパルス周波数(7〜60秒のバーストの継続時間で、バーストあたり140〜1,800のパルス数をもたらす)を伴う従来のVNSによって生成されるものよりも高い、神経刺激によって前脳内で誘発される電位を指す。この改良された治療法のための電気信号は、従来のVNSにおける電気信号とは実質的に異なる。特に、本発明における電気信号は、限られた数の電気パルスの非常に短いバーストによって特徴付けられる。以降、1秒未満のこのような短いバーストを「マイクロバースト」と呼び、脳神経にマイクロバーストを印加する電気刺激を、「マイクロバースト刺激」と呼ぶ。例えば、患者の迷走神経に、一連のマイクロバーストを備える電気信号を印加することによって、強化迷走神経誘発電位(eVEP)が、脳の治療的に重要な領域で生成される。重要なことには、eVEPは、従来の迷走神経刺激によって生成されない。
【0014】
本願で使用されるような、「マイクロバースト」という用語は、限られた複数のパルスおよび限られた継続時間を備える治療的電気信号の一部を指す。さらに具体的には、一実施形態では、マイクロバーストは、少なくとも2以上で約25以下の電気パルス、好ましくはバーストにつき2から約20のパルス、さらに好ましくはバーストにつき2から約15のパルスを備えることができる。一実施形態では、マイクロバーストは、わずか1秒、典型的には100ミリ秒未満、好ましくは約10ミリ秒から約80ミリ秒間、続くことができる。治療的電気信号は、神経の不応間隔がマイクロバーストから回復し、別のマイクロバーストによるeVEP刺激を再び受容できるようにする、「インターバースト周期」として知られる時間間隔によって互いから分離される、一連のマイクロバーストを備えることができる。一部の実施形態では、インターバースト周期は、インターバースト周期によって分離される隣接するマイクロバーストと同じくらいの長さ、またはそれより長くてよい。一部の実施形態では、インターバースト周期は、少なくとも100ミリ秒の絶対期間を備えることができる。マイクロバーストにおける隣接するパルスは、「インターパルス間隔」として知られる時間間隔によって分離される。インターパルス間隔は、パルス数および各パルスのパルス幅と共に、第1のパルスの開始から、最後のパルスの終了(および、よって新規インターバースト周期の開始)までのマイクロバーストの長さである、「マイクロバースト継続時間」を決定する。一実施形態では、マイクロバーストは、約2ミリ秒から約1秒等の1.0秒あるいはそれ以下(つまり、1秒以下)のマイクロバースト継続時間、さらに好ましくは約5ミリ秒から約100ミリ秒、さらに好ましくは約10ミリ秒から約80ミリ秒等の、100ミリ秒以下を有することができる。よって、本発明の改良された電気信号は、インターバースト周期、マイクロバースト継続時間、マイクロバーストあたりのパルス数、およびインターパルス間隔によって特徴付けられる。マイクロバーストにおけるパルスは、電流振幅およびパルス幅によってさらに特徴付けることができる。本発明による電気刺激は、任意で、それぞれ脳神経にマイクロバーストが提供される、および提供されない、オンタイムおよびオフタイムを含むことができる。インターバースト周期、バーストの継続時間、マイクロバーストあたりのパルス数、インターパルス間隔、および電流振幅、パルス幅、オンタイム、またはオフタイムのうちの少なくとも1つを選択し、脳神経誘発電位を強化することが可能である。
【0015】
一実施形態では、本発明は、一連のマイクロバーストを備えるパルス電気信号を印加することによって、病状を有する患者を治療する方法であって、前記マイクロバーストのそれぞれは、マイクロバーストにつき2パルスから約25パルスを有すること、約1ミリ秒から約50ミリ秒(約1ミリ秒から約10ミリ秒等)のインターパルス間隔を有すること、1秒未満のマイクロバースト継続時間を有すること、および、A)マイクロバースト継続時間または隣接するマイクロバーストのマイクロバースト継続時間、およびB)少なくとも100ミリ秒から成る群より選択される時間間隔を備えるインターバースト周期によって、隣接するマイクロバーストから分離されること、から成る群より選択される少なくとも1つの特徴を有する、方法を提供する。
【0016】
一実施形態では、本発明は、患者の脳神経に、インターバースト周期によって分離される一連のマイクロバーストを備えるパルス電気信号を印加するステップを含む、移植型医療機器からの電気信号で患者の病状を治療する方法を提供する。各マイクロバーストは、マイクロバーストあたりのパルス数と、インターパルス間隔と、マイクロバースト継続時間とを備える。マイクロバーストは、前記患者の脳神経の一部に印加され、その場合、インターバースト周期、マイクロバースト継続時間、マイクロバーストあたりのパルス数、またはインターパルス間隔のうちの少なくとも1つを選択して、脳神経誘発電位を強化する。
【0017】
一実施形態では、本発明は、患者の少なくとも1つの脳神経に少なくとも1つの電極を連結するステップと、電極に連結されるプログラム可能な電気信号発生器を提供するステップと、インターバースト周期によって分離される一連のマイクロバーストを備えるパルス電気信号を生成するステップとを含む、患者の病状を治療する方法を提供する。各マイクロバーストは、マイクロバーストあたりのパルス数を備え、インターパルス間隔は、マイクロバースト継続時間を有する。方法は、脳神経誘発電位を強化するように、インターバースト周期、マイクロバーストあたりのパルス数、マイクロバースト継続時間、またはインターパルス間隔のうちの少なくとも1つを選択するステップと、病状を治療するように少なくとも1つの電極にパルス電気信号を印加するステップとをさらに含む。
【0018】
一実施形態では、本発明は、インターバースト周期によって分離される一連のマイクロバーストを備える電気信号を生成するステップであって、各マイクロバーストは、マイクロバーストあたりのパルス数、インターパルス間隔、およびマイクロバースト継続時間を備え、インターバースト周期、マイクロバーストあたりのパルス数、マイクロバースト継続時間、またはインターパルス期間のうちの少なくとも1つを選択して脳神経誘発電位を強化するステップと、病状を治療するように患者の脳神経に電気信号を印加するステップとを含む方法を、コンピュータによって実行されると行う命令によりコード化される、コンピュータ可読プログラム記憶装置を提供する。
【0019】
一実施形態では、本発明は、患者の少なくとも1つの脳神経に連結される少なくとも1つの電極と、電極に動作可能に連結され、かつインターバースト周期によって分離される一連のマイクロバーストを備える電気信号を生成することが可能な電気信号発生器を備える、移植型機器とを備える患者の病状を治療するためのシステムであって、各マイクロバーストが、マイクロバーストあたりのパルス数、インターパルス間隔、およびマイクロバースト継続時間を備えるシステムと、電極を使用して前記患者の脳神経の一部に電気信号を印加するステップであって、インターバースト周期、マイクロバーストあたりのパルス数、インターパルス間隔、またはマイクロバースト継続時間のうちの少なくとも1つを選択して、脳神経誘発電位を強化するステップと、を提供する。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
移植型医療機器を使用して患者の病状を治療する方法であって、
患者の脳神経の一部に、マイクロバーストあたりのパルス数と、インターパルス間隔と、インターバースト周期と、マイクロバースト継続時間とを有することを特徴とする電気信号を印加することを含み、該マイクロバーストあたりのパルス数、該インターパルス間隔、該マイクロバースト継続時間、または該インターバースト周期のうちの少なくとも1つを選択することにより、脳神経誘発電位を強化する、方法。
(項目2)
前記インターバースト周期は、少なくとも100ミリ秒であり、マイクロバーストあたりの前記パルス数は、2パルスから約25パルスであり、前記インターパルス間隔は、約50ミリ秒以下であり、前記マイクロバースト継続時間は、約1秒未満である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記マイクロバーストあたりのパルス数が、2から約15であるか、または、前記マイクロバースト継続時間が、約10ミリ秒から約80ミリ秒である、項目2に記載の方法。
(項目4)
電極を提供することと、前記脳神経に該電極を連結することと、該電極に連結されるプログラム可能な電気信号発生器を提供することとをさらに含み、該脳神経に該電気信号を印加することは、該電気信号発生器を用いて電気信号を生成することと、該電極に該電気信号を印加することとを含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記脳神経に前記電気信号を印加することは、第2の期間中に実行され、かつ、第1の期間中に前記電極を使用して該脳神経に1次モードの電気刺激を印加することをさらに含み、該1次モードは、バーストにつき50より多いパルス、または少なくとも約7秒のバーストの継続時間を有する、項目1に記載の方法。
(項目6)
脳神経に前記電気信号を印加することは、前記患者の迷走神経に該電気信号を印加することを含む、項目1に記載の方法。
(項目7)
患者の病状を治療する方法であって、
該患者の少なくとも1つの脳神経に少なくとも1つの電極を連結することと、
該電極に連結されるプログラム可能な電気信号発生器を提供することと、
該患者の脳神経の一部に対して、マイクロバーストあたりのパルス数と、インターパルス間隔と、インターバースト周期と、マイクロバースト継続時間とを有することを特徴とする電気信号を生成することであって、該マイクロバーストあたりのパルス数、該インターパルス間隔、該マイクロバースト継続時間、または該インターバースト周期のうちの少なくとも1つを選択することにより、該電気信号発生器を用いて脳神経誘発電位を強化する、ことと、
病状を治療するために該電極に該電気信号を印加することと
を含む、方法。
(項目8)
前記電気信号は、第1の信号を備え、前記脳神経に該電気信号を印加することは、第1の期間中に実行され、かつ、第2の期間中に該電極を使用して、該脳神経に該第1の信号とは異なる第2の電気信号を印加することをさらに含み、該第2の電気信号は、バーストにつき約50より多いパルス、または少なくとも約7秒のバーストの継続時間を有する、項目7に記載の方法。
(項目9)
コンピュータによって実行されると、方法を行う命令に関してコード化される、コンピュータ可読プログラム記憶装置であって、該方法は、
患者の脳神経の一部に対して、マイクロバーストあたりのパルス数と、インターパルス間隔と、インターバースト周期と、マイクロバースト継続時間とを有することを特徴とする電気信号を生成することであって、該マイクロバーストあたりのパルス数、該インターパルス間隔、該マイクロバースト継続時間、または該インターバースト周期のうちの少なくとも1つを選択することにより、該電気信号発生器を用いて脳神経誘発電位を強化する、ことと、
脳神経誘発電位を強化するために電極を使用することによって、該患者の脳神経に該電気信号を提供することと
を含む、コンピュータ可読プログラム記憶装置。
(項目10)
コンピュータによって実行されると項目9に記載の方法を行う命令に関してコード化される、コンピュータ可読プログラム記憶装置であって、前記電気信号は、制御された電流電気信号である、コンピュータ可読プログラム記憶装置。
(項目11)
コンピュータによって実行されると項目9に記載の方法を行う命令に関してコード化される、コンピュータ可読プログラム記憶装置であって、前記電気信号は、マイクロバースト継続時間を有することをさらに特徴とする、コンピュータ可読プログラム記憶装置。
(項目12)
コンピュータによって実行されると項目11に記載の方法を行う命令に関してコード化される、コンピュータ可読プログラム記憶装置であって、前記インターバースト周期は、少なくとも約100ミリ秒であり、前記マイクロバーストあたりのパルス数は、2パルスから約25パルスであり、前記インターパルス間隔は、約1ミリ秒から約50ミリ秒であり、または前記マイクロバースト継続時間は、約1秒以下である、コンピュータ可読プログラム記憶装置。
(項目13)
病状を治療するシステムであって、
患者の少なくとも1つの脳神経に連結される少なくとも1つの電極と、
該電極に動作可能に連結され、かつ、該患者の脳神経の一部に、マイクロバーストあたりのパルス数と、インターパルス間隔と、インターバースト周期と、マイクロバースト継続時間とを有することを特徴とする電気信号を印加することが可能な電気信号発生器を備えている移植型機器であって、該マイクロバーストあたりのパルス数、該インターパルス間隔、該マイクロバースト継続時間、または該インターバースト周期のうちの少なくとも1つを選択することにより、脳神経誘発電位を強化するための該電極を使用して、該脳神経への脳神経誘発電位を強化する、移植型機器と
を備える、システム。
(項目14)
前記電極は、左迷走神経と、右迷走神経と、舌咽神経と、三叉神経とから成る群より選択される少なくとも1つの脳神経に連結される、項目13に記載の病状を治療するシステム。
(項目15)
前記電気信号発生器は、プログラム可能な電気信号発生器である、項目13に記載の病状を治療するシステム。
(項目16)
前記インターバースト周期は、少なくとも100ミリ秒であり、前記マイクロバーストあたりのパルス数は、2パルスから約25パルスであり、前記インターパルス間隔は、約1ミリ秒から約50ミリ秒であり、または前記マイクロバースト継続時間は約2ミリ秒から約1秒である、項目15に記載の病状を治療するシステム。
(項目17)
前記電気信号発生器に少なくとも1つの信号を送達することが可能な検出通信機をさらに備えており、該電気信号発生器は、該少なくとも1つの検出通信機からの電気信号を受信次第、該電気信号を印加することが可能である、項目13に記載の病状を治療するシステム。
(項目18)
移植型医療機器を使用して患者の病状を治療する方法であって、
患者の脳神経の一部に、少なくとも100ミリ秒のインターバースト周期と、マイクロバーストにつき2パルスから約25パルスと、約1ミリ秒から約50ミリ秒のインターパルス間隔と、1秒以下のマイクロバースト継続時間とを有することを特徴とする電気信号を印加することを含む、方法。
(項目19)
脳神経の一部に前記電気信号を印加することは、前記患者の迷走神経に該電気信号を印加することを含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記インターバースト周期、前記バーストあたりのパルス数、前記インターパルス間隔、および前記マイクロバースト継続時間のうちの少なくとも1つを選択することにより、脳神経誘発電位を強化する、項目18に記載の方法。
(項目21)
移植型医療機器を使用して患者の病状を治療する方法であって、
第1の期間中に、患者の迷走神経に第1の電気信号を印加することであって、該第1の電気信号は、バーストにつき約50より多いステップ、または少なくとも約7秒のバーストの継続時間を有する、ことと、
第2の期間中に、該患者の迷走神経に第2の電気信号を印加することであって、該第2の電気信号は、少なくとも100ミリ秒のインターバースト周期と、バーストにつき2から約25パルスと、約1ミリ秒から約50ミリ秒のインターパルス間隔と、約2ミリ秒から約1秒のバーストの継続時間とを有する、ことと
を含む、方法。
(項目22)
移植型医療機器を使用して患者の病状を治療する方法であって、
患者の脳神経の一部にマイクロバースト電気信号を印加することを含み、該マイクロバーストは、脳神経誘発電位を強化する、方法。
(項目23)
前記マイクロバースト電気信号は、マイクロバーストあたりのパルス数と、インターパルス間隔と、インターバースト周期と、マイクロバースト継続時間とを有することを特徴としており、該マイクロバーストあたりのパルス数、該インターパルス間隔、該マイクロバースト継続時間、または該インターバースト周期のうちの少なくとも1つを選択することにより、脳神経誘発電位を強化する、項目22に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明は、添付図面と併せて得られる次の説明を参照することにより理解することができ、図中、類似参照番号は類似要素を同定する。
【0021】
【図1】図1は、本発明の1つの例示的実施形態に従った、患者の体の神経構造に治療的電気信号を提供するための患者の体内に移植される移植型医療機器の定型化図を提供する。
【図2】図2は、本発明の1つの例示的実施形態に従った、移植型医療機器および外部機器を含む医療機器システムのブロック図である。
【図3】図3は、本発明の1つの例示的実施形態に従った、図2の神経刺激装置による神経に対する電気信号の印加に応じた、特定時間における所与の場所での電圧のグラフとしての発火ニューロンの模範的電気信号を図示する。
【図4A】図4A、4B、および4Cは、本発明の1つの例示的実施形態に従った、病状を治療するために脳神経を刺激するための電気信号の模範的波形を図示する。
【図4B】図4A、4B、および4Cは、本発明の1つの例示的実施形態に従った、病状を治療するために脳神経を刺激するための電気信号の模範的波形を図示する。
【図4C】図4A、4B、および4Cは、本発明の1つの例示的実施形態に従った、病状を治療するために脳神経を刺激するための電気信号の模範的波形を図示する。
【図5】図5は、本発明の例示的実施形態に従った、病状を治療するための方法のフローチャート描写を図示する。
【図6】図6は、本発明の代替的な例示的実施形態に従った、病状を治療するための代替的方法のフローチャート描写を図示する。
【図7】図7は、本発明の例示的実施形態に従った、図6の検出プロセスを行うステップのさらに詳しいフローチャート描写を表す。
【図8A】図8は、異なる刺激タイミングを伴う迷走神経誘発電位(VEP)の比較を示す。
【図8B】図8は、異なる刺激タイミングを伴う迷走神経誘発電位(VEP)の比較を示す。
【図8C】図8は、異なる刺激タイミングを伴う迷走神経誘発電位(VEP)の比較を示す。
【図8D】図8は、異なる刺激タイミングを伴う迷走神経誘発電位(VEP)の比較を示す。
【図8E】図8は、異なる刺激タイミングを伴う迷走神経誘発電位(VEP)の比較を示す。
【図9】図9は、患者のECGのQRS波への迷走神経刺激バーストの同期化を図示する。
【図10】図10は、右視床および基底核における初期VEP、および左島皮質における後期VEPの局在性を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の例示的実施形態を本願で説明する。明確にするために、実際の実施の全ての特徴を本明細書で説明するわけではない。そのような実際の実施形態の開発では、実施により異なる設計固有の目標を達成するために、数々の実施固有の決定を行わなければならない。そのような開発努力は、複雑で時間がかかる可能性があるが、それでもなお、本開示の利益を有する当業者にとっては日常的な取り組みとなるであろう。
【0023】
本書は、機能ではなく名前が異なる構成要素を区別することを意図しない。次の説明および請求項では、「を含む」および「含む」は、制限のない方法で使用され、よって、「を含むが、それに限定されない」を意味すると解釈するべきである。また、「連結する」は、直接または間接いずれかの電気接続を意味することを目的とする。「直接接触」、「直接接着」、または「直接連結」を提供するステップは、その間に実質的な減衰媒体がなく、第1の要素の表面が第2の要素の表面に接触することを示す。電気接続を実質的に減衰しない、体液等の少量の物質の存在は、直接接触を無効にしない。「または」という言葉は、それとは反対の使用が明確に記述されない限り、包括的な意味(すなわち、「および/または」)で使用される。
【0024】
本願で使用される「電極」という用語は、刺激電極(すなわち、IMDによって生成される電気信号を組織に伝達するための電極)、検出電極(すなわち、患者の体の生理学的兆候を感知するための電極)、および/または刺激信号を伝達し、ならびに感知機能を行うことが可能である電極を指すことができる。
【0025】
とりわけ、てんかんおよびその他の運動障害、うつ病、不安障害およびその他の精神神経疾患、認知症、頭部外傷、昏睡状態、片頭痛、肥満、摂食障害、睡眠障害、心疾患(うっ血性心不全および心房細動等)、高血圧、内分泌障害(糖尿病および低血糖症等)、および疼痛を含む、体の神経系の1つ以上の構造に関する、またはそれによって媒介される多数の病状を治療するために、脳神経刺激が提案されている。例えば、米国特許第4,867,164号、5,299,569号、5,269,303号、5,571,150号、5,215,086号、5,188,104号、5,263,480号、6,587,719号、6,609,025号、5,335,657号、6,622,041号、5,916,239号、5,707,400号、5,231,988号、および5,330,515号を参照。治療の選択肢として脳神経刺激が提案または示唆されている数々の障害にもかかわらず、(全てではないにしても)多くの脳神経に対する詳細な経路が比較的不明のままであるという事実により、所与の障害に対する有効性の予測が困難または不可能となる。さらに、たとえそのような経路が既知であっても、特定の疾患に関する特定の経路を調節する正確な刺激パラメータは、概して予測することができない。
【0026】
一実施形態では、本発明は、病状を治療する方法を提供する。病状は、てんかん、精神神経疾患(うつ病を含むがそれに限定されない)、摂食障害/肥満、外傷性脳損傷/昏睡状態、中毒性障害、認知症、睡眠障害、疼痛、片頭痛、内分泌/膵臓障害(糖尿病を含むがそれに限定されない)、運動性障害、高血圧、うっ血性心不全/心臓毛細血管増殖、聴覚障害、狭心症、失神、声帯障害、甲状腺障害、肺障害、および生殖内分泌障害(不妊症を含む)から成る群より選択することが可能である。
【0027】
一実施形態では、本発明は、インターバースト周期によって分離される一連のマイクロバーストを備えるパルス電気信号を患者の脳神経に印加するステップを含む、移植型医療機器を使用して患者の病状を治療する方法を提供する。一実施形態では、インターバースト周期は、それぞれ少なくとも100ミリ秒を備える。別の実施形態では、インターバースト周期は、少なくとも、インターバースト周期によって分離される2つのマイクロバーストのうちの1つの長さを備える。別の実施形態では、インターバースト周期は、次第に小さくなるインターバースト周期によって分離されるマイクロバーストを提供することによって、特定患者において決定することができる。インターバースト周期は、eVEPが有意に減退または消滅する時間間隔よりも大きい、任意の時間間隔として提供することができる。各マイクロバーストは、マイクロバーストあたりのパルス数、インターパルス間隔を備え、マイクロバースト継続時間を有する。一実施形態では、マイクロバーストあたりのパルス数は、2から約25パルスに及ぶことができ、別の実施形態では、マイクロバーストあたりのパルス数は、2から約20パルス、好ましくは2から約15パルスに及ぶことができる。マイクロバーストを患者の脳神経の一部に印加し、インターバースト周期、マイクロバーストあたりのパルス数、インターパルス間隔、またはマイクロバースト継続時間のうちの少なくとも1つを選択して、脳神経誘発電位を強化する。マイクロバースト内のパルスはまた、パルス幅および電流振幅も備えることができる。代替的実施形態では、方法はまた、その間にマイクロバーストが患者に印加されないオフタイム、およびその間にマイクロバーストが患者に印加されるオンタイムを備えることもできる。
【0028】
マイクロバースト継続時間およびインターバースト周期の合計で割られる1として定義される、バースト周波数を参照することが便利な場合があり、当業者であれば、インターバースト周期は、代案として、あるパルスを別のパルスから分離する絶対時間としてよりもむしろ、パルスの周波数の点で説明することができることが認識されるであろう。
【0029】
別の代替的実施形態では、方法は、第1の期間中に、患者の脳神経に従来の迷走神経刺激等の1次モードの脳神経刺激を印加するステップと、第2の期間中に、患者の脳神経にマイクロバースト刺激等の2次モードの脳神経刺激を印加するステップとを含み得る。従来の迷走神経刺激信号は、電流振幅、パルス幅、周波数、オンタイム、およびオフタイムによって定義することができる。従来の迷走神経刺激信号は、典型的に、バーストにつき約50より多いパルス、および少なくとも約7秒のバーストの継続時間を有する。一実施形態では、第1の期間は従来の迷走神経刺激オンタイムに相当し、第2の期間は従来の迷走神経刺激のオフタイムに相当する。別の実施形態では、第1の期間および第2の期間は部分的に重複することが可能である。別の実施形態では、第1の期間および第2の期間のうちの一方は、第1の期間および第2の期間のうちの他方によって完全に重複されることが可能である。
【0030】
本発明の実施形態の移植型医療機器(IMD)システムは、患者データ/パラメータ(例えば、心拍数、呼吸数、脳活動パラメータ、疾患進行または退行データ、生活の質データ等の、生理学的データ、副作用データ)、および治療パラメータデータ等の様々な形態のデータを取得、保存、および処理することが可能であるソフトウェアモジュールを提供する。治療パラメータは、IMDによって伝達される治療的電気信号を定義する電気信号パラメータ、薬剤パラメータ、および/またはその他任意の治療処置パラメータを含むことができるが、それらに限定されない。代替的実施形態では、「治療パラメータ」は、IMDによって送達される治療的電気信号を定義する電気信号パラメータを指すことができる。治療的電気信号に対する治療パラメータはまた、電流振幅、パルス幅、インターバースト周期、バーストあたりのパルス数、インターパルス間隔、バーストの継続時間、オンタイム、およびオフタイムも備えることができるが、それらに限定されない。
【0031】
そのようには限定されないが、本発明の実施形態を実施することが可能なシステムを下記に説明する。図1は、本発明の1つ以上の実施形態を実施するための、定型化された移植型医療システム(IMD)100を表す。絶縁された導電性リード線アセンブリ122に接続するためのヘッダ116を伴う容器または外郭構造を備える本体112を有する、電気信号発生器110が提供される。発生器110は、ペースメーカパルス発生器に対する移植手順と同様である、皮膚直下に移植外科医によって形成されるポケットまたは空洞中で、患者の胸部に移植される(点線145で示される)。
【0032】
好ましくは、少なくとも1つの電極ペアを有する複数の電極を備える、神経電極アセンブリ125は、好ましくは複数のリードワイヤ(各電極に対して1本のワイヤ)を備えるリード線アセンブリ122の遠位端に伝導的に接続される。電極アセンブリ125中の各電極は、独立して動作することができ、またあるいは、他の電極と連動して動作することができる。一実施形態では、電極アセンブリ125は、少なくとも陰極および陽極を備える。別の実施形態では、電極アセンブリは、1つ以上の単極電極を備える。
【0033】
リード線アセンブリ122は、その近位端で、発生器110のヘッダ116上のコネクタに取着される。電極アセンブリ125は、患者の頸部内または別の場所、例えば、患者の横隔膜付近または道/胃接合部における迷走神経127に外科的に連結することができる。三叉および/または舌咽神経等のその他の(または付加的な)脳神経もまた、特定の代替的実施形態において電気信号を送達するために使用することができる。一実施形態では、電極アセンブリ125は、双極刺激電極ペア126、128(すなわち、陰極および陽極)を備える。適切な電極アセンブリは、Model 302電極アセンブリとして、米国テキサス州ヒューストンのCyberonics.Inc.より入手可能である。しかし、当業者であれば、多くの電極設計が本発明で使用され得ることを十分理解するであろう。一実施形態では、2つの電極が迷走神経を包み、電極アセンブリ125は、1990年12月25日にReese S.Terry,Jr.に対して発行され、本願と同一の出願人に譲渡された、米国特許第4,979,511号で開示されているもの等の、らせん状固着テザ130によって迷走神経127に固定することができる。リード線アセンブリ122は、胸部および頸部の運動と共に屈曲する能力を保持しながら、周囲の組織への縫合接続(図示せず)によって固定することができる。
【0034】
代替的実施形態では、電極アセンブリ125は、温度感知要素および/または心拍数センサ要素を備えることができる。その他の身体パラメータに対するその他のセンサもまた、能動的刺激を誘発するために採用することができる。受動的および能動的両方の刺激を、本発明による単一のIMDによって、組み合わせる、または送達することができる。いずれか、または両方のモードが、観察下の特定患者を治療するために適切な場合がある。
【0035】
代替的実施形態では、センサリード線アセンブリ162およびセンサ160を備えるセンサアセンブリ165を、患者の身体パラメータを検出するために採用することができる。
【0036】
電気パルス発生器110は、当技術分野で周知のプログラミングソフトウェアを使用するコンピュータ150等の外部機器(ED)でプログラムすることができる。プログラミングワンド155をEDの一部としてコンピュータ150に連結し、コンピュータ150とパルス発生器110との間の無線周波数(RF)通信を促進することができる。プログラミングワンド155およびコンピュータ150は、後者が移植された後に、発生器110との非侵襲性通信を可能にする。コンピュータ150がMedical Implant Communications Service(MICS)帯域幅における1つ以上のチャネルを使用するシステムでは、プログラミングワンド155を省略して、コンピュータ150とパルス発生器110との直接の間のより便利な通信を可能にすることができる。
【0037】
本願で説明される治療的電気刺激信号は、別々に、または別の種類の治療と組み合わせて、脳神経誘発電位を強化することによって、病状を治療するために使用することができる。例えば、本発明による電気信号は、様々な薬剤等の化学剤と組み合わせて印加し、様々な病状を治療することができる。さらに、電気刺激は、生物または化学剤に関する治療と組み合わせて行うことができる。電気刺激治療はまた、磁気刺激治療等の他の種類の治療と組み合わせて行うこともできる。
【0038】
ここで図2を参照すると、本発明の1つの例示的実施形態に従って、IMD200のブロック図描写が提供される。IMD200(図1の発生器110等)は、IMD200の動作の様々な側面を制御することが可能な制御器210を備えることができる。制御器210は、内部データまたは外部データを受信し、刺激ユニット220に、病状を治療するために患者の体の標的組織に電気信号を生成および送達させることが可能である。例えば、制御器210は、外部から操作者より手動命令を受信することができ、または、内部計算およびプログラミングに基づいて、電気信号を生成および送達させることができる。制御器210は、IMD200の実質的に全ての機能に影響を及ぼすことが可能である。
【0039】
制御器210は、プロセッサ215、メモリ217等の様々な構成要素を備えることができる。プロセッサ215は、ソフトウェアコンポーネントの様々な実行を行うことが可能な、1つ以上のマイクロコントローラ、マイクロプロセッサ等を備えることができる。メモリ217は、多数の種類のデータ(例えば、内部データ、外部データ命令、ソフトウェアコード、状態データ、診断データ等)を保存することができる、様々なメモリ部分を備えることができる。メモリ217は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、電気的に消去可能なプログラム可能読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ等のうちの1つ以上を備えることができる。
【0040】
IMD200はまた、リード線を介して1つ以上の電極に電気信号を発生および送達することが可能な刺激ユニット220も備えることができる。リード線アセンブリ122(図1)等のリード線アセンブリは、IMD200に連結することができる。治療は、制御器210からの命令に基づいて刺激ユニット220によって、リード線アセンブリ122を備えるリード線へ送達することができる。刺激ユニット220は、電気信号発生器、リード線が「受ける」インピーダンスを制御するためのインピーダンス制御回路、組織への電気信号の送達に関する命令を受信するその他の回路等の、様々な回路を備えることができる。刺激ユニット220は、リード線アセンブリ122を備えるリード線にわたって電気信号を送達することが可能である。
【0041】
IMD200はまた、電力供給230も備えることができる。電力供給230は、バッテリ、電圧調整器、コンデンサ等を備えて、治療的電気信号を送達するステップを含む、IMD200の動作に対する電力を提供する。電力供給230は、一部の実施形態では再充電可能であってよい電源を備える。他の実施形態では、非再充電可能電源を使用することができる。電力供給230は、電子動作および電気信号の生成および送達機能を含む、IMD200の動作に対する電力を提供する。電力供給230は、リチウム/塩化チオニル電池、またはリチウム/フッ化炭素(LiCFx)電池を備えることができる。移植型医療機器の技術分野で周知のその他のバッテリ種類もまた、使用することができる。
【0042】
IMD200はまた、IMD200と様々な装置との間の通信を促進することが可能な通信ユニット260も備えることができる。特に、通信ユニット260は、EDを備えることができるコンピュータ150およびワンド155(図1)等の外部ユニット270に対する電子信号の送信および受信を提供することが可能である。通信ユニット260は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0043】
一実施形態では、IMD200はまた、様々な患者パラメータを検出することができる検出ユニット295を備えることもできる。例えば、検出ユニット295は、患者の1つ以上の身体パラメータに関するデータを取得および/または分析することが可能である、ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェアを備えることができる。検出ユニット295によって得られるデータに基づいて、IMD200は、脳神経の一部に電気信号を伝達して、てんかん、うつ病、またはその他の病状を治療することができる。一実施形態では、検出ユニット295は、患者からのフィードバック反応を検出することが可能であってもよい。フィードバック反応は、IMD200への磁気信号入力、タップ入力、無線データ入力等を含むことができる。フィードバックは、疼痛および/または有毒閾値を示すことができ、閾値は、特定患者に対する不快感の許容限度であってよい。「患者パラメータ」という用語は、一部の実施形態ではIMD200に連結されるセンサを伴うことができる、様々な身体パラメータを指すことができるが、それらに限定されない。
【0044】
別の実施形態では、検出ユニット295は、患者の心周期の1つ以上の身体パラメータに関するデータを取得および/または分析することが可能である、ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェアを備えることができる。検出ユニット295によって得られるデータに基づいて、IMD200は、脳神経の一部に電気信号を伝達して、てんかん、うつ病、またはその他の病状を治療することができる。
【0045】
外部ユニット270は、IMD200の電気信号パラメータをプログラムすることが可能であるEDであってよい。一実施形態では、外部ユニット270は、データ収集プログラムを実行することが可能なコンピュータシステムである。外部ユニット270は、例えば診察室内の基地局にて、医師等の医療提供者によって制御することができる。代替的実施形態では、外部ユニット270は、医療提供者によって制御される別の外部ユニット270よりも少ないIMD200の動作の制御を提供するシステムにおいて、患者によって制御することができる。患者によって、または医療提供者によって制御されるかにかかわらず、外部ユニット270は、コンピュータ、好ましくは手持ちサイズのコンピュータまたはPDAであってよいが、あるいは、電子通信およびプログラミングが可能であるその他任意の装置、例えば、手持ちサイズのコンピュータシステム、PCコンピュータシステム、ラップトップコンピュータシステム、サーバ、携帯情報端末(PDA)、Appleによるコンピュータシステム等を備えることができる。外部ユニット270は、IMDの動作をプログラムするために、IMD200に様々なパラメータおよびプログラムソフトウェアをダウンロードすることができ、またIMD200から様々な状態条件およびその他のデータを受信およびアップロードすることもできる。IMD200における外部ユニット270と通信ユニット260との間の通信は、概して図2の線277によって表される、無線またはその他の種類の通信を介して発生することができる。これは、例えば、RFエネルギーによって発生器110と通信するためにワンド155(図1)を使用して、発生することができる。あるいは、ワンドは、一部のシステム、例えば、外部ユニット270がMICS帯域幅において動作するシステムでは、省略することができる。
【0046】
一実施形態では、外部ユニット270は、ローカルデータベースユニット255を備えることができる。任意で、または代案として、外部ユニット270はまた、外部ユニット270から分離してよいデータベースユニット250にも連結することができる(例えば、手持ちサイズの外部ユニット270に無線で繋がれる集中データベース)。データベースユニット250および/またはローカルデータベースユニット255は、様々な患者データを保存することが可能である。このデータは、患者の体および/または治療パラメータデータより収集される患者パラメータデータを備えることができる。データベースユニット250および/またはローカルデータベースユニット255は、複数の患者に対するデータを備えることができ、かつ、日付表示形式、疾患の重症度の表示形式等の種々の方式で、整理および保存することができる。データベースユニット250および/またはローカルデータベースユニット255は、一実施形態では関係型データベースであってよい。医師は、外部ユニット270を使用して様々な患者管理機能を行うことができ、それは、IMD200からのデータ、および/またはデータベースユニット250および/またはローカルデータベースユニット255からのデータを取得および/または分析するステップを備えることができる。データベースユニット250および/またはローカルデータベースユニット255は、様々な患者データを保存することができる。
【0047】
図2のIMD200のブロック図で図示されるブロックのうちの1つ以上は、ハードウェアユニット、ソフトウェアユニット、ファームウェアユニット、またはそれらの任意の組み合わせを備えることができる。加えて、図2で図示される1つ以上のブロックは、回路ハードウェアユニット、ソフトウェアアルゴリズム等を表すことができる他のブロックと組み合わせることができる。加えて、図2で図示される様々なブロックと関連するいずれの数の回路またはソフトウェアユニットも、プログラム可能ゲートアレイ、ASIC素子等のプログラム可能素子に組み込むことができる。
【0048】
図3は、本発明の一実施形態に従った、神経に沿った活動電位の伝搬中の特定時間における神経上の所与の点での電圧のグラフとしての、発火ニューロンの模範的電気信号の定型化描写を提供する。典型的なニューロンは、膜透過イオンチャネルタンパクによって維持される、約−70mVの静止膜電位を有する。ニューロンの一部が約−55mVの発火閾値に達すると、局所性におけるイオンチャネルタンパクは、約+30mVまで膜を脱分極化する、細胞外ナトリウムイオンの急速な進入を可能にする。次いで、脱分極化の波は、ニューロンに沿って伝搬する。所与の場所での脱分極化の後、カリウムイオンチャネルが開いて、細胞内カリウムイオンが細胞から出て行くことを可能にし、膜電位を約−80mVまで下げる(過分極化)。膜透過タンパク質が、ナトリウムおよびカリウムイオンをそれらの開始細胞内および細胞外濃度に戻し、後の活動電位が発生することを可能にするためには、約1ミリ秒が必要とされる。
【0049】
再び図1を参照すると、IMD100は、本発明の実施形態では、1つ以上のプログラムされたパラメータに従って、迷走神経127等の脳神経に印加するためにパルス電気信号を生成することができる。一実施形態では、電気信号を定義するパラメータは、インターバースト周期、バーストあたりのパルス数、インターパルス間隔、バーストの継続時間、電流量、パルス幅、オンタイム、およびオフタイムから成る群より選択することができる。これらのパラメータに対する適切な範囲は、種々の値を備えることができる。特に、本発明によるマイクロバースト信号におけるインターバースト周期は、一実施形態では、100ミリ秒以上、好ましくは100ミリ秒から10分、さらに好ましくは1秒から5秒であってよい。別の実施形態では、インターバースト周期は、インターバースト周期が分離する2つの隣接するマイクロバーストのうちの1つのマイクロバースト継続時間以上であってよい。マイクロバーストを備えるパルス数は、2から約20パルス、さらに具体的には2から約15パルス等、約2から約25パルスに及ぶことができる。本発明における適切なインターパルス間隔は、約1ミリ秒から約50ミリ秒、さらに好ましくは約2ミリ秒から約10ミリ秒に及ぶことができる。適切なマイクロバースト継続時間は、約2ミリ秒から約1秒、好ましくは約100ミリ秒未満、さらに好ましくは約5ミリ秒から約100ミリ秒、なおさらに好ましくは約10ミリ秒から約80ミリ秒に及ぶことができる。
【0050】
電流量およびパルス幅に対する範囲は、従来のVNS信号に対するものと同様の値、例えば、0.10〜6.0ミリアンペア、好ましくは0.25〜3.0ミリアンペア、さらに好ましくは0.5〜2.0ミリアンペアの電流量を備えることができる。パルス幅は、約0.05から約1.0ミリ秒、好ましくは0.25から約0.5ミリ秒に及ぶことができる。パルス幅およびインターパルス間隔の記載の値を考慮すると、2−パルスマイクロバーストが1.1ミリ秒ほどの少ないマイクロバースト継続時間を備えることが可能である一方で、25パルスのマイクロバーストは約1,275ミリ秒程も長く続くことが可能であるが、100ミリ秒以下のマイクロバースト継続時間が好ましい。しかし、本発明の実施形態では、マイクロバーストは継続時間がわずか1秒である。
【0051】
一実施形態では、本発明のマイクロバースト信号を継続的に神経に印加することができ、神経にインターバースト周期(例えば、好ましい実施形態では1から5秒)のみによって分離されるマイクロバーストが印加される。代替的実施形態では、従来のVNS治療と関連する「オンタイム」および「オフタイム」の概念は、オンタイムの継続時間中に、神経にインターバースト周期によって分離されるマイクロバーストが印加され、その後、神経に電気信号が印加されないオフタイム期間が続く、オンタイム間隔を提供するために使用することができる。よって、例えば、各マイクロバーストが5ミリ秒のインターパルス間隔によって分離される3パルスを備える、1秒のインターバースト周期によって分離される一連のマイクロバーストを、5分のオンタイムにわたって患者の迷走神経に印加することができ、その後、神経に電気信号が印加されない10分のオンタイムが続く。一部の実施形態では、オンタイムは、約100ミリ秒から約60分に及ぶことができる。そのような実施形態では、オフタイムは、200ミリ秒から24時間以上に及ぶことができる。
【0052】
さらなる実施形態では、マイクロバースト刺激のオフタイム中に、従来の脳神経刺激等の代替的刺激技法を行うことが可能である。従来の脳神経刺激もまた、概して、オンタイムおよびオフタイムを伴い、マイクロバースト刺激のオンタイムは、従来の脳神経刺激のオフタイム中であってよい。
【0053】
マイクロバースト刺激および代替的刺激技法の両方を行う場合、オンタイム、オフタイム、または2つの刺激型の両方は、部分的または全体的に重複してよい。
【0054】
本発明の一実施形態に従った模範的パルス波形を図4A〜4Cに示す。本発明による電気信号におけるパルス波形は、方形波、二相パルス(能動的および受動的荷電平衡二相パルスを含む)、三相波形等を含む、当技術分野で周知の種々の形状を含むことができる。一実施形態では、パルスは、第2相が第1相とは反対の極性の荷電平衡相である、方形二相波形を備える。
【0055】
本発明によるマイクロバースト刺激は、マイクロバーストは、迷走神経刺激等の従来の神経刺激におけるパルスバーストと比べて、パルス数およびマイクロバースト継続時間の両方が顕著に短い。従来のVNSが、典型的に、7〜60秒の期間にわたる、20〜30Hzの周波数のパルスバースト(140から1,800以上のパルスを有するバーストをもたらす)を伴う一方で、対照的に、本発明によるマイクロバーストには、約1ミリ秒からわずか1秒のマイクロバースト継続時間があり得る。さらに、各マイクロバーストは、少なくとも2および約25のパルスを備え、パルスのそれぞれは約1から約50ミリ秒、さらに典型的には約2から約10ミリ秒のインターパルス間隔によって、隣接するパルスから分離される。本発明のこの側面によるマイクロバーストにおける個々のパルスは、パルス幅およびパルス電流が従来のVNS信号パルスと類似してよい一方で、マイクロバーストにおけるパルス数は、従来のVNS療法におけるパルスバーストよりも顕著に少ない。結果として、マイクロバーストもまた、従来の神経刺激療法におけるパルスバースト(少なくとも7秒、典型的には20〜60秒)よりもはるかに継続時間が短い(1秒未満、典型的には、約10ミリ秒から約80ミリ秒等の100ミリ秒未満)。さらに、ほとんどの場合、パルスを分離するインターパルス間隔は、従来の神経刺激よりも短い(典型的に、従来のVNSに対する30〜50ミリ秒と比べて、マイクロバーストに対して2〜10ミリ秒)。本発明のパルスバーストは、従来の神経刺激信号よりも、パルス数およびマイクロバーストの全継続時間の療法が有意に短いため、「マイクロバースト」と称される。
【0056】
記述のとおり、本発明者により、本発明のこの側面によるマイクロバーストは、従来の迷走神経刺激信号によって生成されるVEPよりも有意に大きい、患者の脳内に強化迷走神経誘発電位(eVEP)を提供することが可能であることが発見されている。しかし、このeVEPは、パルス数がパルスの最適数を超えて増加するにつれて減衰する。よって、例えば、下記で論じられるサルモデルでは、マイクロバーストが2〜5パルスを超えた場合、eVEPが減少し始め、15より多くのパルスが提供された場合は、eVEPが高度に減少する。eVEP作用を維持するため、本発明のこの側面は、神経の不応間隔がマイクロバーストから回復できるようにするために、マイクロバーストにおける少数のパルス、ならびに隣接するマイクロバーストから各マイクロバーストを分離するインターバースト周期を必要とする。適切なインターバースト周期を提供することにより、電気信号における後続マイクロバーストが、eVEPを生成することが可能であることを確実にする。一実施形態では、インターバースト周期は、インターバースト周期によって分離される隣接するマイクロバースト継続時間と同じくらいか、またはそれより長い。別の実施形態では、インターバースト周期は、約1秒から約5秒等の、少なくとも100ミリ秒である。各マイクロバーストは、一部の実施形態では、迷走神経上の内因性求心性活動を模倣することを目的とする、一連のパルスを備える。一実施形態では、マイクロバーストは、各心臓および呼吸周期と関連する求心性迷走神経活動電位を刺激することができる。
【0057】
迷走神経との関連で誘発電位を上記で論じたが、強化誘発電位は、任意の脳神経、例えば、三叉神経または舌咽神経のマイクロバースト刺激によって生成することが可能であり、本発明の精神および範囲内にとどまる。よって、本発明は、ある実施形態では患者の迷走神経にマイクロバースト刺激を提供するステップとして提示される一方で、マイクロバースト刺激もまた、他の脳神経、特に三叉神経および舌咽神経に印加することもできる。
【0058】
中枢迷走神経求心性経路は、前脳内で活動を生成する前に、2つ以上のシナプスを伴う。各シナプス移動は、促進および非線形時間フィルタの潜在的部位であり、それに対して、マイクロバーストにおけるインターパルス間隔の順序が最適化される。理論に縛られずに、マイクロバーストの使用は、シナプス促進を増強し、入力刺激連続を「調整」して前脳誘発電位を最大限化することによって、VNSの有効性を強化すると考えられる。
【0059】
例えば、図8に示されるように、サル視床で測定された迷走神経誘発電位(VEP)は、迷走神経上の単一刺激パルス(図8A)によって誘発された場合はかろうじて見え、従来の神経刺激(図8B)のように、単一刺激が30Hzで連続して提示された場合は本質的になくなる。しかし、図の中央および下パネル中の一連のトレースで示されるように、サルにおいて(この場合、図8Eとして示される、0.3Hz)、適切なインターパルス間隔(この場合、6.7ミリ秒が第1のインターパルス間隔に対して最適であった、図8Dに示す)、および心電図R−Rサイクル(連続心拍のR波間の期間)を近似するインターバースト周期(すなわち、バースト周波数)において、パルスのマイクロバースト(2〜6パルス、1秒以上のマイクロバースト継続時間、図8C)を使用することによって、VEPは大いに強化(eVEPをもたらす)および最適化される。
【0060】
パルスのペアの使用は、小径求心性小径の刺激による中枢反応を生成するための標準生理学的ツールである。しかし、本開示によれば、インターパルス間隔の適切なシーケンスを伴うマイクロバーストは、神経刺激の作用を大いに強化する。適切なインターバースト周期を選択することによって、神経刺激用の電気信号は、それぞれeVEPを提供する一連のマイクロバーストを備えることができる。図8に図示されるように、10ミリ秒未満のマイクロバースト継続時間は、サルにおいて最大VEPを生成し、約6〜9ミリ秒の第1のインターパルス間隔は、最大促進を生成するため、本開示によれば、約10〜20ミリ秒の全継続時間を伴う、および約6〜9ミリ秒のインターパルス間隔および同様の継続時間の後のマイクロバーストを伴うパルスのマイクロバーストは、サルモデルにおいて最適VEPを生成するであろう。理論に縛られないが、そのようなマイクロバーストは、本強化および最適化療法が誘発することができる中枢反応を誘発する小径求心性迷走神経繊維において、自然に発生する活動電位のパターンを刺激するため、eVEPが生じることができる(下記参照)。1つのマイクロバーストを次のマイクロバーストから分離する適切なインターバースト周期の選択は、実験的に行うことができるが、前述のように、少なくとも100ミリ秒(1秒から5秒等の、100ミリ秒から10分等)、および少なくともマイクロバースト継続時間に等しい不応期間が最も望ましい。
【0061】
インターパルス間隔のシーケンスは、患者の心拍変動(HRV)(心臓および呼吸タイミングを反映する)により、また個々の患者間でも変化してよく、よって、一実施形態では、パルス数、オンタイムの継続時間、オフタイムの継続時間、マイクロバースト周波数、インターパルス間隔、インターバースト周期、およびマイクロバースト継続時間を、各患者に対して最適化することができる。初期用法に対する標準マイクロバーストシーケンスとして、5〜10ミリ秒のインターパルス間隔での2または3パルスのマイクロバーストが、内因性心臓活動後の短いピークを近似する。インターバースト周期もまた、eVEPが低下し始めるまで、マイクロバーストに安定して減少しているインターバースト周期を提供することによって、決定することができる。一実施形態では、インターパルス間隔は、一連の等間隔(すなわち、最も単純な連続)または漸増間隔であり、図9に図示されるように、減速シナプス後電位のパターンを刺激する。代替的な実施形態では、インターパルス間隔は、マイクロバーストを通して減少することができ、またはあらかじめ選択された範囲内、例えば5〜20ミリ秒で、無作為に決定することができる。従来の神経刺激方法論のこの変更は、多くの異なる病状に適用できる神経刺激の有効性の有意な強化をもたらすことができる。
【0062】
最適化は、表面電極を使用して、視床および前脳のその他の領域が起源である遠方界VEPを記録し、記録された電位を最大化するために刺激パラメータを変えることによって、達成することができる。図1に図示されるように、典型的に体性感覚または聴性誘発電位を記録するために臨床で使用されるような、標準EEG記録機194および16または25鉛電極配置(そのうちの5つの電極190を示し、リード線192がEEG記録機194と電気的に連通している)は、VEPが記録され、EEG記録198として同定されることを可能にする。神経刺激の刺激バーストタイミングを、所望であれば、平均8から12のエポックを同期化するために使用することが可能である。マイクロバーストを定義する際に、多様なパルス数、インターパルス間隔、マイクロバースト継続時間、およびインターバースト周期の作用を試験することによって、マイクロバーストにおけるeVEPの最高最低振幅を各患者において最適化することが可能である。
【0063】
神経刺激は、個別患者において、EEG表面電極により測定されるような最大作用を生成する選択された刺激パラメータによって、最適化することが可能である。電流振幅およびパルス幅はまず、個別パルスによって誘発されるVEPのサイズを測定することによって、最適化される(マイクロバーストとは対照的に)。次いで、マイクロバーストに対するパルス数、インターパルス間隔、マイクロバースト継続時間、およびインターバースト周期は、マイクロバーストによって誘起されるeVEPのサイズを測定することによって以前に決定された電流振幅およびパルス幅を使用して、最適化される。
【0064】
図8に示される、麻酔をかけたサルの視床、線条体、および島皮質で記録された大型eVEPが、ヒト患者において誘発された場合に十分大きいため、eVEPsは、ヒト患者の頭皮に隣接して電極を使用して検出される標準EEGにおいて観察可能であり、外生電気信号の信号パラメータの変更の作用を示すために、標準EEGを使用することができる。この方式で、マイクロバーストに対する神経刺激電気信号パラメータを実験的に最適化または調整するために、EEGを使用することができる。理論に縛られずに、右視床および線条体で記録されるeVEPは、神経刺激の抗てんかん作用にとって重要であるが、別の電位(左島皮質内)は、神経刺激の抗うつ病作用にとって最も重要であると考えられる。右または左前部電極上の局所EEG局在性を使用することによって(図10)、本発明のこの側面によるマイクロバーストに対する神経刺激電気信号パラメータは、個別患者に対する各領域におけるeVEPを測定することによって、適切に最適化することが可能である。
【0065】
これら2つの区域(それぞれ右視床/線条体および左島皮質)からeVEPを誘発するための最適マイクロバーストパラメータは異なってよい。両eVEPは、覚醒ヒト患者においてEEG記録方法で同定可能であるため、適切な区域を、てんかんまたはうつ病患者におけるパラメトリック最適化に容易に使用することができる。
【0066】
図10で表される局所EEG局在性は、神経刺激の抗てんかん作用と関連する右視床および基底核における初期VEPが、他の病状の治療と関連する場合のある左視床および島皮質における後期VEPから区別されることを可能にする。
【0067】
一実施形態では、本発明は、2つ以上の脳神経のうちのそれぞれに少なくとも1つの電極を連結するステップを含むことができる。(これに関連して、2つ以上の脳神経とは、異なる名称または数字表示を有する2つ以上の神経を意味し、特定神経の左右のバージョンを指さない)。一実施形態では、少なくとも1つの電極を、いずれか、または両方の迷走神経、あるいは、いずれか、または両方の迷走神経の枝に連結することができる。「動作可能に」連結されるという用語は、直接または間接的に連結するステップを含むことができる。2つ以上の脳神経を伴う、この実施形態またはその他における神経のそれぞれは、2つの神経の間で独立してよい特定の活性モダリティにしたがって刺激することができる。
【0068】
刺激に対する別の活性化モダリティは、患者が許容できる最大振幅までIMD100の出力をプログラムすることである。刺激は、その後に刺激のない比較的長い間隔が続く所定の期間にわたってサイクルをオンおよびオフにすることができる。脳神経刺激システムが患者の体の完全に外部にある場合、迷走神経127等の脳神経との直接接触の欠如、および患者の皮膚の付加的インピーダンスに起因する減衰を克服するために、より高い電流振幅を必要とすることがありえる。外部システムは典型的に、移植型のものよりも大きい電力消費を必要とするが、バッテリを手術なしで交換できるという点で利点がある。
【0069】
図1および2で示されるもの等の、脳神経刺激を提供するためのシステムを再度参照すると、刺激は、少なくとも2つの異なるモダリティにおいて提供することができる。脳神経刺激がプログラムされたオフタイムおよびオンタイムのみに基づいて提供される場合、刺激は、受動的、不活性、または非フィードバック刺激と呼ぶことができる。対照的に、刺激は、患者の体または精神の変化に従って、1つ以上のフィードバックループによって始動させることができる。この刺激は、能動的またはフィードバックループ刺激と呼ぶことができる。一実施形態では、フィードバックループ刺激は、患者が手動でプログラムされたオンタイム/オフタイムサイクル外のパルスバーストの活性化を引き起こす、手動始動刺激であってよい。患者は、IMD100を手動で起動し、迷走神経127等の脳神経を刺激して、病状の急性発作を治療することができる。患者はまた、医師によって確立された範囲内で、脳神経に印加される信号の強度を変えることを許可されてもよい。
【0070】
IMD100の患者起動は、例えば、埋込型装置におけるリードスイッチを操作するための外部制御磁石の使用を伴うことができる。移植型医療機器の手動および自動起動のその他のある技法は、本願と同一の出願人に譲渡された、Baker,Jr.らに対する米国特許第5,304,206号(「‘206特許」)に開示されている。‘206特許によれば、電気信号発生器110を手動で起動または動作停止するための手段は、発生器の容器の内面に搭載され、移植部位上の患者による軽いタップを検出するように構成される、圧電要素等のセンサを含むことができる。患者の体内の電気信号発生器110の場所の上方の皮膚を速く連続して1回以上タップすることは、電気信号発生器110の起動のための信号として、埋込型医療機器100内にプログラムすることができる。わずかに長い時間によって間隔をあけられる2回のタップは、例えば電気信号発生器110を動作停止したいことを示すようにIMD100にプログラムすることができる。患者には、主治医によって指図または入力されるプログラムによって決定することができる程度までの、動作の限られた制御を与えることができる。患者はまた、他の適切な技法または装置を使用して、IMD100を起動することもできる。
【0071】
一部の実施形態では、手動開始刺激以外のフィードバック刺激システムを本発明で使用することができる。脳神経刺激システムは、刺激リード線および電極アセンブリと共に、その近位端でヘッダに連結される、感知リード線を含むことができる。センサは、感知リード線の遠位端に連結することができる。センサは、心周期センサを含むことができる。センサはまた、迷走神経127等の脳神経等の神経における活動を感知するための神経センサを含むこともできる。
【0072】
一実施形態では、センサは、病状の兆候に対応する身体パラメータを感知することができる。センサが病状の兆候を検出するために使用されるものである場合、センサから信号を処理および分析するために、信号分析回路をIMD100に組み込むことができる。病状の兆候を検出し次第、処理されたデジタル信号をIMD100内のプロセッサに供給し、迷走神経127等の脳神経に対する電気信号の印加を始動することができる。別の実施形態では、関心の症状の検出は、受動的刺激プログラムから異なる刺激パラメータを含む刺激プログラムを始動することができる。このことは、より高い電流刺激信号を提供するステップ、またはオンタイムのオフタイムに対するより高い比を提供するステップを伴うことができる。
【0073】
ここで図5を参照すると、本発明の1つの例示的実施形態に従った、病状を治療するための方法のフロー図描写が提供される。電極を脳神経の一部に連結して、脳神経誘発電位を強化することができる。一実施形態では、1つ以上の電極を電気接触して、または脳神経の一部に近接して配置し、脳神経の一部に刺激信号を送達することができる(ブロック710)。電極は、右または左迷走神経の本幹、またはその任意の幹のうちの少なくとも1つに動作可能に連結することができる。次いで、IMD100は、インターバースト周期、マイクロバーストあたりのパルス数、インターパルス間隔、およびマイクロバースト継続時間によって特徴付けられる制御された電気信号を生成することができ、その場合、インターバースト周期、マイクロバーストあたりのパルス数、インターパルス間隔、またはマイクロバースト継続時間のうちの少なくとも1つを選択して、脳神経誘発電位を強化する(ブロック720)。このことは、患者の特定の状態に基づいて前もってプログラムされた所定の電気信号を含むことができる。例えば、医師は、患者に特有のデータに基づいて患者の脳神経誘発電位を強化するために、提供する刺激の種類を前もってプログラムすることができる。次いで、IMD100は、制御電流マイクロバースト信号等の信号を生成し、患者の神経系の1つ以上の部分に影響を及ぼすことができる。
【0074】
次いで、IMD100は、脳神経の一部に刺激信号を送達することができる(ブロック730)。電気信号の印加は、右または左迷走神経の主幹、またはその任意の枝に送達することができる。一実施形態では、刺激信号の印加は、求心性作用を推進するように設計することができる。さらに、IMD100による刺激は、病状に関する事象または症状を軽減することができる。
【0075】
検出プロセス等の付加的な機能を、代案として、本発明の実施形態と共に採用することができる。検出プロセスは、IMD100の動作を調整するために身体機能の外部検出または内部検出を使用することができるように、採用することができる。
【0076】
ここで図6を参照すると、本発明の代替的実施形態に従った方法のブロック図描写が図示される。IMD100は、データベース検出プロセスを行うことができる(ブロック810)。検出プロセスは、患者の種々の種類のバイタルサインまたはその他の身体パラメータを検出するステップを包含することができる。検出プロセスを行うためのステップのさらに詳しい描写を図7に提供し、付随の描写は下記である。検出プロセスを行うと、IMD100は、刺激が示されたかどうかを決定することができる(ブロック820)。刺激が示されていないと決定されると、検出プロセスが継続される(ブロック830)。
【0077】
刺激が示されたと決定されると、患者の状態に関するデータに基づいて、刺激の種類についての決定が行なわれる(ブロック840)。刺激の種類は、メモリ217に保存することができる検索表の検索を行うステップ等の、種々の方式で決定することができる。あるいは、刺激の種類は、外部ユニット270等の外部ソースからの入力、または患者からの入力によって決定することができる。さらに、刺激の種類の決定はまた、刺激が送達される場所について、場所を決定するステップを含むこともできる。したがって、刺激信号を送達するために使用することができる特定電極の選択が行なわれる。
【0078】
送達される刺激の種類を決定すると、IMD100は、1つ以上の選択された電極に電気信号を送達することによって、刺激を行う(ブロック850)。刺激の伝達時に、IMD100は、刺激の結果を監視、保存、またはコンピュータで計算することができる(ブロック860)。例えば、計算に基づいて、刺激のために伝達される信号の種類の調整を行うことができるという、決定を行うことができる。さらに、計算は、付加的な刺激を送達する必要性を反映することができる。加えて、刺激の結果に関するデータを、後の抽出またはさらなる分析のために、メモリ217に保存することができる。また、一実施形態では、実時間またはほぼ実時間の通信を提供して、刺激結果または刺激ログを外部ユニット270に通信することができる。
【0079】
ここで図7を参照すると、図6のブロック810の検出プロセスを行うステップのさらに詳しいブロック図描写が図示される。システム100は、患者の1つ以上のバイタルサインまたはその他の身体パラメータを監視することができる(ブロック910)。この検出は、IMD100に動作可能に連結することができる、人体内部に備わっているセンサによって行うことができる。別の実施形態では、これらの因子は、外部手段によって行うことができ、通信ユニット260を介して外部機器によってIMD100に提供することができる。一実施形態では、センサは、胸郭拡大を同定することによって吸気を決定するために使用することができる、ひずみゲージを含むことができる。胸郭拡大の開始を検出することによって、ひずみゲージは吸気の開始を検出することができる。ひずみゲージはまた、胸部が収縮している時を同定することによって、呼気を検出することもできる。
【0080】
様々な信号の収集時に、信号に関するデータを所定の保存データと比較する、比較を行うことができる(ブロック920)。理論的または保存閾値との収集されたデータの比較に基づいて、IMD100は、オンタイムブロックを開始する適切な時間に到達したかどうかを決定することができる(ブロック930)。図7に表される決定に基づいて、IMD100は、図6に表されるように、さらなる刺激が示されたかどうかを続けて決定することができる。
【0081】
加えて、外部機器は、そのような計算を行ない、結果または付随する命令をIMD100に通信することができる。IMD100はまた、刺激する神経の特定の場所または枝を決定することもできる。IMD100はまた、伝達される刺激の種類を示すこともできる。例えば、検出された定量化可能なパラメータに基づいて、マイクロバースト電気信号を、単独で、または別の種類の治療と組み合わせて提供することができる。例えば、マイクロバースト電気信号が単独で伝達されるという決定を行うことができる。あるいは、特定種類の病状に基づいて、従来の治療的VNS信号と組み合わせたマイクロバースト電気信号が、患者の治療法として望ましいという決定を行うことができる。
【0082】
本願で開示および請求される方法および装置の全ては、本開示に照らして過度の実験なしで製作および実行することができる。本発明の方法および装置は特定の実施形態について説明したが、当業者であれば、添付の請求項によって定義されるような、本発明の概念、精神、および範囲から逸脱することなく、方法および装置に、かつ本願で説明される方法のステップまたはステップの順序において、変化を適用できることが明白となるであろう。特に、本発明の原則を、迷走神経以外、またはそれに加えて、選択された脳神経に適用して、てんかん、うつ病、またはその他の病状を有する患者の治療において特定の結果を達成できることが、明白となるべきである。
【0083】
本発明は、本願の教示の利益を有する当業者にとって明白な、異なるが同等の方式で、変更および実践することができるため、上記で開示された特定の実施形態は、例示的なものに過ぎない。なおさらに、下記の請求項で説明される以外に、本願で示される構成または設計の詳細に対して制限は意図されない。したがって、上記で説明された特定の実施形態は、改造または変更することができ、そのような全ての変更は、本発明の範囲および精神内であると考えられることが明らかである。したがって、本願で求められる保護を下記の請求項で説明する。
【0084】
本発明は、様々な変更および代替的形態の影響を受けやすい一方で、その具体的実施形態を図面で一例として示し、本願で詳しく説明する。しかし、具体的実施形態の本願での説明は、本発明を開示される特定形態に限定することを目的としないが、それとは逆に、添付の請求項によって定義されるような本発明の精神および範囲内にある全ての変更、同等物、および代替案を対象とすることが意図であると理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−31708(P2013−31708A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−242653(P2012−242653)
【出願日】平成24年11月2日(2012.11.2)
【分割の表示】特願2009−503279(P2009−503279)の分割
【原出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(508289486)
【Fターム(参考)】