病理組織検査標本作成用の包埋トレイ
【課題】本体の側面に記録部が設けられたカセットを用いてパラフィンブロック付着体を作成する際に、記録部にパラフィンが付着して該記録部の文字が見え難くなったり、付着したパラフィンを除去する煩雑な作業を必要としない病理組織検査標本作成用の包埋トレイを提供する。
【解決手段】 側壁4の上端からはカセットをパラフィン収容部上に載置し係止する係止壁6が立設され、側壁4と係止壁6の境界にはカセット支承部5が形成され、カセット支承部5がここにパラフィンを滞留させないように狭く又は斜面状に形成され、係止壁6が実質的にカセットの記録部C3を覆わないように低く形成されるとともに、該係止壁6の外周に略水平状の額縁部を備えていないことを特徴とする病理組織検査標本作成用の包埋トレイ1である。
【解決手段】 側壁4の上端からはカセットをパラフィン収容部上に載置し係止する係止壁6が立設され、側壁4と係止壁6の境界にはカセット支承部5が形成され、カセット支承部5がここにパラフィンを滞留させないように狭く又は斜面状に形成され、係止壁6が実質的にカセットの記録部C3を覆わないように低く形成されるとともに、該係止壁6の外周に略水平状の額縁部を備えていないことを特徴とする病理組織検査標本作成用の包埋トレイ1である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は病理組織検査標本作成用の包埋トレイに関し、更に詳しくは、本体の側面に記録部が設けられたカセットを用いてパラフィンブロック付着体を作成する際に、記録部にパラフィンが付着して該記録部の文字が見えにくくなったり、付着したパラフィンを除去する煩雑なトリミング作業を必要としない病理組織検査標本作成用の包埋トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の病理組織検査標本作成用の包埋トレイとしては、図23に示したようなものが多用されている。この包埋トレイTはパラフィン収容部T1と、その周縁に水平状に設けられた、カセットを載置するためのカセット支承部T2と、その周縁に立設されたカセットの動きを止めるためのカセット係止部T3と、その周縁に水平状に設けられた額縁部T4となり、更に、長手方向の額縁部T4の略中央部に横設された把持部T5とから構成されている。
【0003】
また、近年では、方形の容器からなるパラフィン収容部とその周縁に設けられたパラフィンブロック付着体の載置部とからなり、前記載置部が少なくとも2個設けられており、サイズの異なる2種類以上のカセット等に対応できる病理組織検査標本作成用トレイが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記病理組織検査標本作成用トレイを使用して顕微鏡標本を作製するには、図24,図25に示すように、まず、カセット本体C1内に採取した検体Sを収容して蓋C2を取り付けて、記録部C3には被験者の氏名や番号等を記入しておく。次いで、カセット本体C1の底部や蓋C2に穿設された透孔C4から水を流入させて、検体Sを水洗し、次いでアルコールにより検体Sの水分を除去し、キシレンにより後述する液状パラフィンとの親和性を付与する。
【0005】
次に、図26に示すとおり、検体SをトレイTに移して該トレイTのカセット支承部T2にカセット本体C1の底部を載せ、上方からパラフィンPを注入する。この場合、通常パラフィンPの注入作業性の面から、トレイTの額縁部T4からオーバーフローするまで注入される。次いで、パラフィンPを冷却固化させた後、トレイTを取り除くことにより、図27に示したように、検体Sを包埋したパラフィンPがカセット本体C1の底部に付着してなるパラフィンブロックBを得る。その後、ミクロトームでパラフィンに包埋された検体Sをスライスして薄片を得て、これに染色等の所定の処理を施すことにより顕微鏡標本を得るのである。
【0006】
しかしながら、上記の方法では、図27に示すように、カセット本体C1の記録部C3に記載した被験者の氏名や番号等がパラフィンP1により覆われ、記録内容を十分に確認することができないため、このパラフィンP1をナイフで削り取るトリミング作業が不可欠である。しかしながら、固化したパラフィンは硬く、このパラフィンP1の削り取り作業は極めて面倒で、作業性を大きく低下させる。またナイフでの削り取り作業の際に、記録部C3の表面が傷付けられ、この傷が益々パラフィンを強固に付着させ、トリミング作業を一層厄介なものとするばかりでなく、カセット本体C1の外観を損ない、また、繰り返し使用の回数を低下させる原因となる。
【0007】
一方、上記面倒なパラフィンP1のトリミング作業を回避せんとして、パラフィンPが記録部C3を覆わないように、パラフィンPのレベルをカセット係止部T3の下位に止めるように注入しようとする事が考えられるが、この場合は、パラフィンP1の注入に細心の注意が必要で、注入作業が面倒となるとともに、時間が掛かり、結局、作業性の大幅な低下は避けられない。
他方、パラフィンP1のトリミング作業を行わず、記録部C3の記録内容の確認が不十分な状態で作業を進めると、被験者を誤認し、信頼性が大きく損なわれるという重大な結果を招くことになる。
【特許文献1】特開2006−300745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、かかる実情に鑑み、上記問題点を解消するべく鋭意研究の結果、上記現象は、第1に、従来のトレイにおいては、水平部分からなるカセット支承部T2及び額縁部T4が広いためにパラフィンが滞留し易く、ここからパラフィンが盛り上がり易いこと、第2に、カセット係止部T3が不必要に高いことに起因することを突き止め、トレイのカセット支承部を形成する水平部分を極力少なくするとともに、カセット係止部を低くすることにより、初期の目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するためになされたもので、本発明の請求項1は、パラフィン収容部の上端にカセットを載置して使用する病理組織検査標本作成用の包埋トレイであって、前記パラフィン収容部は底部とその周りに立設された側壁とからなる上面が開口した方形の容器からなり、各側壁の上端からはカセットをパラフィン収容部上に載置し係止する係止壁が立設され、側壁と係止壁の境界にはカセット支承部が形成され、カセット支承部がここにパラフィンを滞留させないように狭く又は斜面状に形成され、係止壁が実質的に該記録部を覆わないように低く形成されるとともに、該係止壁の外周に略水平状の額縁部を備えていないことを特徴とする病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0010】
本発明の請求項2は、狭く形成されたカセット支承部の幅が0.3〜3mmであることを特徴とする請求項1記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0011】
本発明の請求項3は、斜面状に形成されたカセット支承部の最小傾斜角度が45°以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0012】
本発明の請求項4は、カセット支承部が断続的に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0013】
本発明の請求項5は、カセット支承部が半球状突起からなることを特徴とする請求項4記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0014】
本発明の請求項6は、副支承部がパラフィン収容部の角部に設けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0015】
本発明の請求項7は、係止壁の高さは、パラフィン収容部上に載置するカセットの高さの4分の1以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0016】
本発明の請求項8は、把持部が、カセットの記録部が配置されない係止壁の上端から横設されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0017】
本発明の請求項9は、パラフィン収容部の形状が左右非対称であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の病理検査標本作成用の包埋トレイは、カセット支承部がここにパラフィンを滞留させないように狭く又は斜面状に形成され、且つ、係止壁が実質的に該記録部を覆わないように低く形成され、さらに、該係止壁の外周に略水平状の額縁部を備えていないので、パラフィンは切りっ放しの係止壁により下方に切り落とされる。また、記録部の下方にはパラフィンが滞留し盛り上がるような水平部分が実質的に存在せず、その結果、パラフィンが記録部を覆うようなことがなくなる。従って、付着したパラフィンを削り取るトリミング作業が不要で、作業性が高められるとともに、記録内容を容易且つ確実に確認することができる。
【0019】
カセット支承部の幅が0.3〜3mmであると、この部分にはパラフィンが滞留せず、固化したパラフィンの滞留や盛り上がりを防ぎ、記録部の確認を容易にするとともにカセットを確実に載置することができるので好ましい。また、幅が3mmを超えたとしても、カセット支承部が最小傾斜角度45°以上の斜面であれば同様の効果が得られる。
【0020】
カセット支承部が断続的に形成されていれば、このカセット支承部の間からもパラフィンが滑り落ちるため、パラフィンの滞留がますます起こり難くなる。カセット支承部の形状としては半球状突起を例示でき、この場合はパラフィンが流れやすくなり、且つ、最置するカセットを十分支承できる。
【0021】
副支承部がパラフィン収容部の角部に設けられると、カセット又はトレイの寸法安定性が悪い場合であってもカセットをしっかり支承でき、好適なパラフィンブロックを作成することができる。なお、パラフィンは副支承部上で多少滞留して盛り上がるが、通常の場合、角部には被験者番号等を記載しないため、盛り上がったパラフィンにより記録が読めなくなることはない。
【0022】
この係止壁の高さはカセットの高さの4分の1以下が好ましく、この程度であると、実質上記載された文字がパラフィンで覆われるようなこともない。
【0023】
また、把持部をカセットの記録部が配置されない壁部の係止壁の上端から横設すれば、例え把持部の上にパラフィンが盛り上がったとしても記録部に記載された被験者番号等を覆うことがなく、且つ該トレイを扱いやすくなるので、作業性は大巾に向上する。
【0024】
さらに、パラフィン収容部の形状を左右非対称とすれば、顕微鏡標本を作製したとき、パラフィンの形状で標本の左右が判別できるため、標本の取り違え等の危険性が減少し、検査の信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の病理検査標本作成用の包埋トレイ(以下、単に包埋トレイと記す)は、パラフィン収容部の上端にカセットを載置して使用される。本発明の包埋トレイは、パラフィン収容部が底部とその周りに立設された側壁とからなる上面が開口した方形の容器からなり、各側壁の上端からはカセットをパラフィン収容部上に載置し係止する係止壁が立設され、側壁と係止壁の境界にはカセット支承部が形成され、カセット支承部がここにパラフィンを滞留させないように狭く又は斜面状に形成され、係止壁が実質的に該記録部を覆わないように低く形成されるとともに、該係止壁の外周に略水平状の額縁部を備えていないことを特徴とする。
【0026】
本発明の包埋トレイは液状(溶融)パラフィンに耐える耐熱性素材から作られ、かかる素材としては、ステンレス等の金属、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール等の樹脂等が挙げられる。
【0027】
パラフィン収容部は、パラフィンブロックの脱型を容易にするため、通常、側壁が底部から開口部に向かって末広がりのテーパー状の容器からなる。
【0028】
各側壁の上端からはカセットをパラフィン収容部上に載置し係止する係止壁が立設される。係止壁の高さは、カセットの側部を覆うパラフィンを減らし、記録部に記載された文字等を確実に読み取るために、実質的に該記録部を覆わないように低く形成される。
具体的な係止壁の高さはカセットの大きさに応じて適宜決定すればよく、特に限定されないが、記録部に記載する文字の大きさ等を考慮すると、好ましくは該カセットの高さの4分の1以下、より好ましくは5分の1以下であれば、記録部に記載される文字等が隠される恐れが少なく、記録部は実質的に覆われず、また、通常、固化したパラフィンがカセット本体の底部の透孔を埋めて十分に係合するので好適なパラフィンブロックを得ることができる。
【0029】
係止壁は全周に渡って高さを同一にしてもよいが、好ましくはその一部を低く形成してパラフィン排出部とすることも可能である。このようにすると、パラフィン排出部から余分なパラフィンが排出され、固化後のパラフィンの盛り上がりが抑えられる。パラフィン排出部の大きさは特に限定されないが、他の部分より0.5〜1mm程度低い部分を幅1〜2mm程度の巾で設けるのが好ましい。
【0030】
本発明において、パラフィン収容部の上にカセットを載置するために、側壁と係止壁の境界にはカセット支承部が形成される。このカセット支承部は狭く又は斜面状に形成され、これによりカセット支承部にはパラフィンが滞留せず、従ってパラフィンが盛り上がった状態で固化し記録部の文字が隠される恐れがなくなる。具体的には、カセット支承部の幅は0.3〜3mm程度が好ましく、より好ましくは0.5〜2mm、更に好ましくは0.5〜0.8mmである。0.3mm未満ではカセットや包埋トレイの製造上の寸法誤差によりカセットの底部がカセット支承部より小さくなってしまう場合があり、カセットが十分に支承されずパラフィン収容部内に落ち込んでしまうおそれがある。また、3mmを超えるとパラフィンがこのカセット支承部の上に滞留し、盛り上がった状態で固化してしまう傾向がある。
【0031】
カセット支承部が斜面状に形成されていると、パラフィンはこの斜面に沿って滑り落ちようとし滞留しないので好ましい。特にカセット支承部の幅が大きい場合に好適な効果が得られる。この場合、カセット支承部の最小傾斜角度が45°以上とするのが好ましい。45°未満であるとカセット支承部の幅によってはパラフィンが滞留してしまう恐れがある。なお、傾斜角度の上限は特に無く、90°よりも小さければカセットを載置することが可能ではあるが、あまり傾斜角度が大きいとパラフィン収容部自体が深くなり過ぎて扱い難くなる。実際的には、側壁の傾斜角度よりも10〜40°程度小さい程度が適当である。
【0032】
本発明の包埋トレイにおいて、カセット支承部をその全周に連続して設けてもよいが、断続的に設けることもできる。この場合、カセット支承部の間隙からもパラフィンが滑り落ちるため、一段と滞留しにくくなり、パラフィンの盛り上がりが抑制される。更に好ましくは、このカセット支承部を半球状突起とする。この場合、パラフィンは半球状突起の表面を滑り落ちることとなり、パラフィンの盛り上がりが更に抑制される。
【0033】
パラフィン収容部の各上端角部には副支承部を設けてもよい。該副支承部は、カセットを載置できる形状であれば特に制限されないが、パラフィン収容部の角部をやや内側に陥入させ、この部分の上端をカセット支承部とする構造が例示できる。
なお、パラフィンはこの副支承部の上で盛り上がってカセットの角部を覆う場合があるが、検体を識別するための被験者番号等は、通常の場合、記録部の中央部寄りに記載されるため、両端部で盛り上がったパラフィンにより隠される恐れは殆どない。しかしながら、この恐れを更に小さくするため、少なくとも記録部が配置される側壁に接する副支承部はできるだけ小さい方が好ましい。
【0034】
本発明の包埋トレイを扱いやすくするため、側壁又は係止壁に把持部を横設してもよい。把持部は、包埋トレイの製造工程を考慮すると、係止壁の上端に設けるのが容易であるが、パラフィンはこの把持部の上でも盛り上がるため、カセットの記録部が配置されない係止壁の上端から横設するのが好ましい。このようにすると、把持部の上でパラフィンが盛り上がったとしても記録部の文字を隠すことはないので特に不都合はない。
【0035】
パラフィン収容部の形状は、左右非対称とすることにより、ミクロトームでスライスされた薄片の左右が明確に区別されるので、作業性が高められ、また左右誤認により検体を取り違えるといったトラブルが防止されるので、検査の信頼性が向上する。
左右非対称とする方法は特に限定されないが、例えば、角部のアール半径を変える(大きくする)方法や、記録部が配置されない辺の側壁を波形にする方法が採用できる。
【0036】
本発明の包埋トレイでパラフィンブロックを作成するカセットは側面に記録部を有するカセットであれば特に限定はなく、代表的なカセットとして、図21,図24に示した如く、側面にミクロトームのアダプターに係止するためのアダプター係止部C5を有するカセット,図22, 図25に示したような、斜面状の記録部を有するカセット等が挙げられる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を図面に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されないことは云うまでもない。
【0038】
実施例1
本実施例の包埋トレイ1は、図1〜図3に示すように、底部3とそれを取り囲む側壁4とから形成される方形の容器からなるパラフィン収容部2と、前記側壁4の上端、即ち、パラフィン収容部2の開口部に立設された係止壁6と、長辺側の係止壁6の上端から横設された把持部7からなる。
図4の部分拡大図に示すように、側壁4と係止壁6の境界にはカセット支承部5が形成される。本実施例におけるカセット支承部5は側壁4の上端から僅かな幅だけ横設された幅が狭い水平部分であるので、パラフィンはカセット支承部5の上には滞留しにくくなっている。
【0039】
図4は本実施例の包埋トレイ1の断面図を実線で示すと共に、検体SとカセットCを破線で示した図である。なお、図4におけるカセットCは図21及び図24に示したものである。この包埋トレイ1は、破線で示したように、検体Sをパラフィン収容部2に投入するとともに、カセット本体C1をカセット支承部5の上に載置して使用する。この場合、カセット本体C1の記録部C3は把持部7が設けられていない辺、具体的には図4における左右の辺(図1における右辺と左辺)のいずれかに配置されるが、本図においては右辺に配置されている。
【0040】
本実施例の包埋トレイ1の左右の辺において、係止壁6には水平状の額縁部がなく、云わば切りっ放しであるとともに、側壁4からその上端の係止壁6までパラフィンが滞留するような幅広の水平部分がない。従って、図5で示したように、本実施例の包埋トレイ1を用いて使用したパラフィンブロックBでは、パラフィンは切りっ放しの係止壁6の上端により下方に切り落とされるとともに、水平部に固化したパラフィンが盛り上がって記録部に記載される被験者番号等Nが隠されることもない。
なお、図5では、把持部6の上に余分なパラフィンP1が盛り上がっているが、把持部6はカセットの記録部が配置されない係止壁6の上端から横設されており、当然、このパラフィンP1が記録部の文字等Nを隠すことはない。
【0041】
本実施例においてパラフィン収容部の大きさは、開口部が40mm×28mm、底部が36.6mm×25.6mm、高さが8mmである。パラフィン収容部の上端に立設された係止壁の高さは1.2mmであり、その上端から横設される把持部7は2mm×20mmであり、カセット支承部の幅は0.2mmである。なお、使用する予定のカセットの高さは6.4mmであるので、係止壁の高さはカセットの高さの4分の1以下(1.2/6.4)である。
【0042】
実施例2
本実施例の包埋トレイ1は、図6〜図8に示すように、底部3とそれを取り囲む側壁4とから形成される方形の容器からなるパラフィン収容部2と、前記側壁4の上端、即ち、パラフィン収容部2の開口部に立設された係止壁6と、係止壁6の上端から横設された把持部7からなる。把持部7の両側には、パラフィン排出部6aが設けられている。
図9の部分拡大図に示すように、側壁4と係止壁6の境界にはカセット支承部5が形成される。本実施例におけるカセット支承部5は側壁4の上端から斜面状に形成されているので、パラフィンはカセット支承部5の上には滞留しにくくなっている。
【0043】
図9は本実施例の包埋トレイ1の断面図を実線で示すと共に、検体SとカセットCを破線で示した図である。なお、図4におけるカセットCは図21及び図24に示したものである。この包埋トレイ1は、破線で示したように、検体Sをパラフィン収容部2に投入するとともに、カセット本体C1をカセット支承部5の上に載置して使用する。この場合、カセット本体C1の記録部C3は把持部7が設けられていない辺、具体的には図9における左右の辺(図5における右辺と左辺)のいずれかに配置されるが、本図においては右辺に配置されている。
【0044】
本実施例の包埋トレイ1の左右の辺において、係止壁6には水平状の額縁部がなく、云わば切りっ放しであるとともに、側壁4からその上端の係止壁6までパラフィンが滞留するような水平部分がない。従って、図10で示したように、本実施例の包埋トレイ1を用いて使用したパラフィンブロックBでは、パラフィンは切りっ放しの係止壁6の上端により下方に切り落とされるとともに、水平部に固化したパラフィンが盛り上がって記録部に記載される被験者番号等Nが隠されることもない。
なお、図10では、把持部6の上に余分なパラフィンP1が盛り上がっているが、把持部6はカセットの記録部が配置されない係止壁6の上端から横設されており、当然このパラフィンP1が記録部の文字等Nを隠すことはない。
【0045】
本実施例においてパラフィン収容部の大きさは、開口部が40mm×28mm、底部が36.6mm×25.6mm、高さが8mmである。パラフィン収容部の上端に立設された係止壁の高さは1.2mmであり、その上端から横設される把持部7は2mm×20mm、パラフィン排出部6aは巾1.5mm、高さ0.5mmである。カセット支承部の幅は0.3mmであり、その最小傾斜角度は45°である。なお、使用する予定のカセットの高さは6.4mmであるので、係止壁の高さはカセットの高さの4分の1以下(1.2/6.4)である。
【0046】
実施例3
本実施例の包埋トレイ1は、図11〜図13に示すように、底部3とそれを取り囲む側壁4とから形成される方形の容器からなるパラフィン収容部2と、前記側壁4の上端、即ち、パラフィン収容部2の開口部に立設された係止壁6と、係止壁6の上端から横設された把持部7からなる。
図14の部分拡大図に示すように、側壁4と係止壁6の境界にはカセット支承部5が形成される。本実施例におけるカセット支承部5は側壁4と係止壁6の境界を外側からプレス加工により押し込んで内側に突出させることにより形成されている。また、カセット支承部5は断続的に形成されているので、パラフィンはカセット支承部5の間隙からも滑り落ち、一段と滞留しにくくなっている。
【0047】
パラフィン収容部2の右側及び左上の角部は若干内側に陥入されてアール処理されており、その上端からは水平に副支承部5aが延設されている。そして、左下の角部は他の角部と比較して大きく嵌入されており、その上端から延設される副支承部5aも大きくされている。これによりパラフィン収容部2は左右非対称とされており、パラフィンブロックBから顕微鏡標本を作製した後も、その検体を含むパラフィンの形状を見ることによりその検体の向きを判断できる。
【0048】
図14は本実施例の包埋トレイ1の断面図を実線で示すと共に、検体SとカセットCを破線で示した図である。なお、図14におけるカセットCは図22及び図25に示したものである。この包埋トレイ1は、破線で示したように、検体Sをパラフィン収容部2に投入するとともに、カセット本体C1をカセット支承部5及び副支承部5aの上に載置して使用する。この場合、カセット本体C1の記録部C3は把持部7が設けられていない辺、具体的には図14における左右の辺(図11における右辺と左辺)のいずれかに配置されるが、本図においては右辺に配置されている。
【0049】
本実施例の包埋トレイ1の左右の辺において、係止壁6には水平状の額縁部がなく、云わば切りっ放しであるとともに、側壁4からその上端の係止壁6まで、副支承部5aを除き、パラフィンが滞留するような水平部分がない。従って、図15で示したように、本実施例の包埋トレイ1を用いて使用したパラフィンブロックBでは、パラフィンは切りっ放しの係止壁6の上端により下方に切り落とされるとともに、水平部に固化したパラフィンが盛り上がって記録部に記載される被験者番号等Nが隠されることもない。
なお、図15では、パラフィンブロックBの角部においてパラフィンPが副支承部5aの上部で少し盛り上がっているが、この程度の盛り上がりは特に問題ではなく、また、通常の場合、被験者番号等Nは記録部C3の中央寄りに記録されるため、実質的に記録の読み取りには支障がない。また、把持部6の上に余分なパラフィンP1が盛り上がっているが、把持部6はカセットの記録部が配置されない係止壁6の上端から横設されており、当然、このパラフィンP1が記録部の文字等Nを隠すことはない。
【0050】
本実施例においてパラフィン収容部の大きさは、開口部が40mm×28mm、底部が36.6mm×25.6mm、高さが8mmである。パラフィン収容部の上端に立設された係止壁の高さは1.2mmであり、その上端から横設される把持部7は2mm×20mmである。カセット支承部の幅(突出高さ)は0.5mmであり、その最小傾斜角度は45°である。なお、使用する予定のカセットの高さは6.4mmであるので、係止壁の高さはカセットの高さの4分の1以下(1.2/6.4)である。
【0051】
実施例4
本実施例の包埋トレイ1は、図16〜18に示すように、底部3とそれを取り囲む側壁4とから形成される方形の容器からなるパラフィン収容部2と、前記側壁4の上端、即ち、パラフィン収容部2の開口部に立設された係止壁6からなる。
図19の部分拡大図に示すように、側壁4と係止壁6の境界にはカセット支承部5が形成される。本実施例におけるカセット支承部5は側壁4と係止壁6の境界の中央付近に突設した半球状突起により形成されている。従って、パラフィンはカセット支承部5の表面から滑り落ちやすく、一段と滞留しにくくなっている。
【0052】
パラフィン収容部2の右側の角部は若干内側に陥入されてアール処理されており、左側の角部は右側の角部と比較して大きく嵌入されている。これによりパラフィン収容部2は左右非対称とされており、パラフィンブロックから顕微鏡標本を作製した後も、その検体を含むパラフィンの形状を見ることによりその検体の向きを判断できる。
前記アール処理等された角部の上端からは、それぞれ副支承部5aが延設されている。
【0053】
図19は、本実施例の包埋トレイ1の断面図を実線で示すと共に、検体SとカセットCを破線で示した図である。なお、図19におけるカセットCは図21及び図24に示したものである。この包埋トレイ1は、破線で示したように、検体Sをパラフィン収容部2に投入するとともに、カセット本体C1をカセット支承部5及び副支承部5aの上に載置して使用する。本実施例の場合、包埋トレイ1のいずれの辺にも把持部7が設けられていないため、任意の辺に記録部C3を配置でき、言い換えると、カセットCのいずれの側面に被験者番号等Nを記載しても、盛り上がったパラフィンPにより隠される恐れがない。
【0054】
本実施例の包埋トレイ1の上下左右の各側壁4,4において、副支承部5aを除き、パラフィンが滞留するような水平部分がない。従って、図20で示したように、本実施例の包埋トレイ1を用いて使用したパラフィンブロックBでは、固化したパラフィンが盛り上がって記録部に記載される被験者番号等Nが隠されることもない。
なお、図20で示したように、パラフィンブロックBの角部ではパラフィンPが副支承部5aの上部で少し盛り上がっているが、この程度の盛り上がりは特に問題ではなく、また、通常の場合、被験者番号等Nは記録部C3の中央寄りに記録されるため、実質的に記録の読み取りには支障がない。
【0055】
本実施例においてパラフィン収容部の大きさは、開口部が40mm×28mm、底部が36.6mm×25.6mm、高さが8mmである。パラフィン収容部の上端に立設された係止壁の高さは0.8mmであり、カセット支承部の幅(突出高さ)は0.5mmである。なお、使用する予定のカセットの高さは6.4mmであるので、記録部が配置される側壁の係止壁の高さはカセットの高さの4分の1以下(0.8/6.4)である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
叙上のとおり、本発明の病理組織検査標本作成用の包埋トレイは、本体の側面に記録部が設けられたカセットを用いてパラフィンブロック付着体を作成する際に、記録部にパラフィンが付着して該記録部の文字が見え難くなることがなく、また、付着したパラフィンを除去する煩雑なトリミング作業が不要であるため、病理組織検査標本を作成する作業性や検査の信頼性が大幅に高められ、その有用性は頗る大である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の包埋トレイの実施例1を示す平面図である。
【図2】実施例1の側面図である。
【図3】実施例1の正面図である。
【図4】実施例1(図1)のA−A断面図である。
【図5】実施例1の包埋トレイを使用して作成したパラフィンブロックである。
【図6】本発明の包埋トレイの実施例2を示す平面図である。
【図7】実施例2の側面図である。
【図8】実施例2の正面図である。
【図9】実施例2(図6)のB−B断面図である。
【図10】実施例2の包埋トレイを使用して作成したパラフィンブロックである。
【図11】本発明の包埋トレイの実施例3を示す平面図である。
【図12】実施例3の側面図である。
【図13】実施例3の正面図である。
【図14】実施例3(図11)のC−C断面図である。
【図15】実施例3の包埋トレイを使用して作成したパラフィンブロックである。
【図16】本発明の包埋トレイの実施例4を示す平面図である。
【図17】実施例4の側面図である。
【図18】実施例4の正面図である。
【図19】実施例4(図16)のD−D断面図である。
【図20】実施例4の包埋トレイを使用して作成したパラフィンブロックである。
【図21】カセットの一例を示す斜視図である。
【図22】カセットの他の例を示す斜視図である。
【図23】従来の包埋トレイの例を示す斜視図である。
【図24】カセット内に検体を入れた状態を示す断面図である。
【図25】カセット内に検体を入れた状態を示す断面図である。
【図26】従来の顕微鏡標本の作製方法を示す説明図である。
【図27】従来の顕微鏡標本の作製方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0058】
1 包埋トレイ
2 パラフィン収容部
3 底部
4 側壁
5 カセット支承部
5a 副支承部
6 係止壁
6a パラフィン排出部
7 把持部
C カセット
C1 本体
C2 蓋
C3 記録部
C4 透孔
C5 アダプター係止部
P パラフィン
P1 余分なパラフィン
S 検体
T 従来のトレイ
T1 底部
T2 カセット支承部
T3 カセット係止部
T4 額縁部
T5 把持部
B パラフィンブロック
N 被験者番号等
【技術分野】
【0001】
本発明は病理組織検査標本作成用の包埋トレイに関し、更に詳しくは、本体の側面に記録部が設けられたカセットを用いてパラフィンブロック付着体を作成する際に、記録部にパラフィンが付着して該記録部の文字が見えにくくなったり、付着したパラフィンを除去する煩雑なトリミング作業を必要としない病理組織検査標本作成用の包埋トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の病理組織検査標本作成用の包埋トレイとしては、図23に示したようなものが多用されている。この包埋トレイTはパラフィン収容部T1と、その周縁に水平状に設けられた、カセットを載置するためのカセット支承部T2と、その周縁に立設されたカセットの動きを止めるためのカセット係止部T3と、その周縁に水平状に設けられた額縁部T4となり、更に、長手方向の額縁部T4の略中央部に横設された把持部T5とから構成されている。
【0003】
また、近年では、方形の容器からなるパラフィン収容部とその周縁に設けられたパラフィンブロック付着体の載置部とからなり、前記載置部が少なくとも2個設けられており、サイズの異なる2種類以上のカセット等に対応できる病理組織検査標本作成用トレイが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記病理組織検査標本作成用トレイを使用して顕微鏡標本を作製するには、図24,図25に示すように、まず、カセット本体C1内に採取した検体Sを収容して蓋C2を取り付けて、記録部C3には被験者の氏名や番号等を記入しておく。次いで、カセット本体C1の底部や蓋C2に穿設された透孔C4から水を流入させて、検体Sを水洗し、次いでアルコールにより検体Sの水分を除去し、キシレンにより後述する液状パラフィンとの親和性を付与する。
【0005】
次に、図26に示すとおり、検体SをトレイTに移して該トレイTのカセット支承部T2にカセット本体C1の底部を載せ、上方からパラフィンPを注入する。この場合、通常パラフィンPの注入作業性の面から、トレイTの額縁部T4からオーバーフローするまで注入される。次いで、パラフィンPを冷却固化させた後、トレイTを取り除くことにより、図27に示したように、検体Sを包埋したパラフィンPがカセット本体C1の底部に付着してなるパラフィンブロックBを得る。その後、ミクロトームでパラフィンに包埋された検体Sをスライスして薄片を得て、これに染色等の所定の処理を施すことにより顕微鏡標本を得るのである。
【0006】
しかしながら、上記の方法では、図27に示すように、カセット本体C1の記録部C3に記載した被験者の氏名や番号等がパラフィンP1により覆われ、記録内容を十分に確認することができないため、このパラフィンP1をナイフで削り取るトリミング作業が不可欠である。しかしながら、固化したパラフィンは硬く、このパラフィンP1の削り取り作業は極めて面倒で、作業性を大きく低下させる。またナイフでの削り取り作業の際に、記録部C3の表面が傷付けられ、この傷が益々パラフィンを強固に付着させ、トリミング作業を一層厄介なものとするばかりでなく、カセット本体C1の外観を損ない、また、繰り返し使用の回数を低下させる原因となる。
【0007】
一方、上記面倒なパラフィンP1のトリミング作業を回避せんとして、パラフィンPが記録部C3を覆わないように、パラフィンPのレベルをカセット係止部T3の下位に止めるように注入しようとする事が考えられるが、この場合は、パラフィンP1の注入に細心の注意が必要で、注入作業が面倒となるとともに、時間が掛かり、結局、作業性の大幅な低下は避けられない。
他方、パラフィンP1のトリミング作業を行わず、記録部C3の記録内容の確認が不十分な状態で作業を進めると、被験者を誤認し、信頼性が大きく損なわれるという重大な結果を招くことになる。
【特許文献1】特開2006−300745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、かかる実情に鑑み、上記問題点を解消するべく鋭意研究の結果、上記現象は、第1に、従来のトレイにおいては、水平部分からなるカセット支承部T2及び額縁部T4が広いためにパラフィンが滞留し易く、ここからパラフィンが盛り上がり易いこと、第2に、カセット係止部T3が不必要に高いことに起因することを突き止め、トレイのカセット支承部を形成する水平部分を極力少なくするとともに、カセット係止部を低くすることにより、初期の目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するためになされたもので、本発明の請求項1は、パラフィン収容部の上端にカセットを載置して使用する病理組織検査標本作成用の包埋トレイであって、前記パラフィン収容部は底部とその周りに立設された側壁とからなる上面が開口した方形の容器からなり、各側壁の上端からはカセットをパラフィン収容部上に載置し係止する係止壁が立設され、側壁と係止壁の境界にはカセット支承部が形成され、カセット支承部がここにパラフィンを滞留させないように狭く又は斜面状に形成され、係止壁が実質的に該記録部を覆わないように低く形成されるとともに、該係止壁の外周に略水平状の額縁部を備えていないことを特徴とする病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0010】
本発明の請求項2は、狭く形成されたカセット支承部の幅が0.3〜3mmであることを特徴とする請求項1記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0011】
本発明の請求項3は、斜面状に形成されたカセット支承部の最小傾斜角度が45°以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0012】
本発明の請求項4は、カセット支承部が断続的に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0013】
本発明の請求項5は、カセット支承部が半球状突起からなることを特徴とする請求項4記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0014】
本発明の請求項6は、副支承部がパラフィン収容部の角部に設けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0015】
本発明の請求項7は、係止壁の高さは、パラフィン収容部上に載置するカセットの高さの4分の1以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0016】
本発明の請求項8は、把持部が、カセットの記録部が配置されない係止壁の上端から横設されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【0017】
本発明の請求項9は、パラフィン収容部の形状が左右非対称であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の病理検査標本作成用の包埋トレイは、カセット支承部がここにパラフィンを滞留させないように狭く又は斜面状に形成され、且つ、係止壁が実質的に該記録部を覆わないように低く形成され、さらに、該係止壁の外周に略水平状の額縁部を備えていないので、パラフィンは切りっ放しの係止壁により下方に切り落とされる。また、記録部の下方にはパラフィンが滞留し盛り上がるような水平部分が実質的に存在せず、その結果、パラフィンが記録部を覆うようなことがなくなる。従って、付着したパラフィンを削り取るトリミング作業が不要で、作業性が高められるとともに、記録内容を容易且つ確実に確認することができる。
【0019】
カセット支承部の幅が0.3〜3mmであると、この部分にはパラフィンが滞留せず、固化したパラフィンの滞留や盛り上がりを防ぎ、記録部の確認を容易にするとともにカセットを確実に載置することができるので好ましい。また、幅が3mmを超えたとしても、カセット支承部が最小傾斜角度45°以上の斜面であれば同様の効果が得られる。
【0020】
カセット支承部が断続的に形成されていれば、このカセット支承部の間からもパラフィンが滑り落ちるため、パラフィンの滞留がますます起こり難くなる。カセット支承部の形状としては半球状突起を例示でき、この場合はパラフィンが流れやすくなり、且つ、最置するカセットを十分支承できる。
【0021】
副支承部がパラフィン収容部の角部に設けられると、カセット又はトレイの寸法安定性が悪い場合であってもカセットをしっかり支承でき、好適なパラフィンブロックを作成することができる。なお、パラフィンは副支承部上で多少滞留して盛り上がるが、通常の場合、角部には被験者番号等を記載しないため、盛り上がったパラフィンにより記録が読めなくなることはない。
【0022】
この係止壁の高さはカセットの高さの4分の1以下が好ましく、この程度であると、実質上記載された文字がパラフィンで覆われるようなこともない。
【0023】
また、把持部をカセットの記録部が配置されない壁部の係止壁の上端から横設すれば、例え把持部の上にパラフィンが盛り上がったとしても記録部に記載された被験者番号等を覆うことがなく、且つ該トレイを扱いやすくなるので、作業性は大巾に向上する。
【0024】
さらに、パラフィン収容部の形状を左右非対称とすれば、顕微鏡標本を作製したとき、パラフィンの形状で標本の左右が判別できるため、標本の取り違え等の危険性が減少し、検査の信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の病理検査標本作成用の包埋トレイ(以下、単に包埋トレイと記す)は、パラフィン収容部の上端にカセットを載置して使用される。本発明の包埋トレイは、パラフィン収容部が底部とその周りに立設された側壁とからなる上面が開口した方形の容器からなり、各側壁の上端からはカセットをパラフィン収容部上に載置し係止する係止壁が立設され、側壁と係止壁の境界にはカセット支承部が形成され、カセット支承部がここにパラフィンを滞留させないように狭く又は斜面状に形成され、係止壁が実質的に該記録部を覆わないように低く形成されるとともに、該係止壁の外周に略水平状の額縁部を備えていないことを特徴とする。
【0026】
本発明の包埋トレイは液状(溶融)パラフィンに耐える耐熱性素材から作られ、かかる素材としては、ステンレス等の金属、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール等の樹脂等が挙げられる。
【0027】
パラフィン収容部は、パラフィンブロックの脱型を容易にするため、通常、側壁が底部から開口部に向かって末広がりのテーパー状の容器からなる。
【0028】
各側壁の上端からはカセットをパラフィン収容部上に載置し係止する係止壁が立設される。係止壁の高さは、カセットの側部を覆うパラフィンを減らし、記録部に記載された文字等を確実に読み取るために、実質的に該記録部を覆わないように低く形成される。
具体的な係止壁の高さはカセットの大きさに応じて適宜決定すればよく、特に限定されないが、記録部に記載する文字の大きさ等を考慮すると、好ましくは該カセットの高さの4分の1以下、より好ましくは5分の1以下であれば、記録部に記載される文字等が隠される恐れが少なく、記録部は実質的に覆われず、また、通常、固化したパラフィンがカセット本体の底部の透孔を埋めて十分に係合するので好適なパラフィンブロックを得ることができる。
【0029】
係止壁は全周に渡って高さを同一にしてもよいが、好ましくはその一部を低く形成してパラフィン排出部とすることも可能である。このようにすると、パラフィン排出部から余分なパラフィンが排出され、固化後のパラフィンの盛り上がりが抑えられる。パラフィン排出部の大きさは特に限定されないが、他の部分より0.5〜1mm程度低い部分を幅1〜2mm程度の巾で設けるのが好ましい。
【0030】
本発明において、パラフィン収容部の上にカセットを載置するために、側壁と係止壁の境界にはカセット支承部が形成される。このカセット支承部は狭く又は斜面状に形成され、これによりカセット支承部にはパラフィンが滞留せず、従ってパラフィンが盛り上がった状態で固化し記録部の文字が隠される恐れがなくなる。具体的には、カセット支承部の幅は0.3〜3mm程度が好ましく、より好ましくは0.5〜2mm、更に好ましくは0.5〜0.8mmである。0.3mm未満ではカセットや包埋トレイの製造上の寸法誤差によりカセットの底部がカセット支承部より小さくなってしまう場合があり、カセットが十分に支承されずパラフィン収容部内に落ち込んでしまうおそれがある。また、3mmを超えるとパラフィンがこのカセット支承部の上に滞留し、盛り上がった状態で固化してしまう傾向がある。
【0031】
カセット支承部が斜面状に形成されていると、パラフィンはこの斜面に沿って滑り落ちようとし滞留しないので好ましい。特にカセット支承部の幅が大きい場合に好適な効果が得られる。この場合、カセット支承部の最小傾斜角度が45°以上とするのが好ましい。45°未満であるとカセット支承部の幅によってはパラフィンが滞留してしまう恐れがある。なお、傾斜角度の上限は特に無く、90°よりも小さければカセットを載置することが可能ではあるが、あまり傾斜角度が大きいとパラフィン収容部自体が深くなり過ぎて扱い難くなる。実際的には、側壁の傾斜角度よりも10〜40°程度小さい程度が適当である。
【0032】
本発明の包埋トレイにおいて、カセット支承部をその全周に連続して設けてもよいが、断続的に設けることもできる。この場合、カセット支承部の間隙からもパラフィンが滑り落ちるため、一段と滞留しにくくなり、パラフィンの盛り上がりが抑制される。更に好ましくは、このカセット支承部を半球状突起とする。この場合、パラフィンは半球状突起の表面を滑り落ちることとなり、パラフィンの盛り上がりが更に抑制される。
【0033】
パラフィン収容部の各上端角部には副支承部を設けてもよい。該副支承部は、カセットを載置できる形状であれば特に制限されないが、パラフィン収容部の角部をやや内側に陥入させ、この部分の上端をカセット支承部とする構造が例示できる。
なお、パラフィンはこの副支承部の上で盛り上がってカセットの角部を覆う場合があるが、検体を識別するための被験者番号等は、通常の場合、記録部の中央部寄りに記載されるため、両端部で盛り上がったパラフィンにより隠される恐れは殆どない。しかしながら、この恐れを更に小さくするため、少なくとも記録部が配置される側壁に接する副支承部はできるだけ小さい方が好ましい。
【0034】
本発明の包埋トレイを扱いやすくするため、側壁又は係止壁に把持部を横設してもよい。把持部は、包埋トレイの製造工程を考慮すると、係止壁の上端に設けるのが容易であるが、パラフィンはこの把持部の上でも盛り上がるため、カセットの記録部が配置されない係止壁の上端から横設するのが好ましい。このようにすると、把持部の上でパラフィンが盛り上がったとしても記録部の文字を隠すことはないので特に不都合はない。
【0035】
パラフィン収容部の形状は、左右非対称とすることにより、ミクロトームでスライスされた薄片の左右が明確に区別されるので、作業性が高められ、また左右誤認により検体を取り違えるといったトラブルが防止されるので、検査の信頼性が向上する。
左右非対称とする方法は特に限定されないが、例えば、角部のアール半径を変える(大きくする)方法や、記録部が配置されない辺の側壁を波形にする方法が採用できる。
【0036】
本発明の包埋トレイでパラフィンブロックを作成するカセットは側面に記録部を有するカセットであれば特に限定はなく、代表的なカセットとして、図21,図24に示した如く、側面にミクロトームのアダプターに係止するためのアダプター係止部C5を有するカセット,図22, 図25に示したような、斜面状の記録部を有するカセット等が挙げられる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を図面に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されないことは云うまでもない。
【0038】
実施例1
本実施例の包埋トレイ1は、図1〜図3に示すように、底部3とそれを取り囲む側壁4とから形成される方形の容器からなるパラフィン収容部2と、前記側壁4の上端、即ち、パラフィン収容部2の開口部に立設された係止壁6と、長辺側の係止壁6の上端から横設された把持部7からなる。
図4の部分拡大図に示すように、側壁4と係止壁6の境界にはカセット支承部5が形成される。本実施例におけるカセット支承部5は側壁4の上端から僅かな幅だけ横設された幅が狭い水平部分であるので、パラフィンはカセット支承部5の上には滞留しにくくなっている。
【0039】
図4は本実施例の包埋トレイ1の断面図を実線で示すと共に、検体SとカセットCを破線で示した図である。なお、図4におけるカセットCは図21及び図24に示したものである。この包埋トレイ1は、破線で示したように、検体Sをパラフィン収容部2に投入するとともに、カセット本体C1をカセット支承部5の上に載置して使用する。この場合、カセット本体C1の記録部C3は把持部7が設けられていない辺、具体的には図4における左右の辺(図1における右辺と左辺)のいずれかに配置されるが、本図においては右辺に配置されている。
【0040】
本実施例の包埋トレイ1の左右の辺において、係止壁6には水平状の額縁部がなく、云わば切りっ放しであるとともに、側壁4からその上端の係止壁6までパラフィンが滞留するような幅広の水平部分がない。従って、図5で示したように、本実施例の包埋トレイ1を用いて使用したパラフィンブロックBでは、パラフィンは切りっ放しの係止壁6の上端により下方に切り落とされるとともに、水平部に固化したパラフィンが盛り上がって記録部に記載される被験者番号等Nが隠されることもない。
なお、図5では、把持部6の上に余分なパラフィンP1が盛り上がっているが、把持部6はカセットの記録部が配置されない係止壁6の上端から横設されており、当然、このパラフィンP1が記録部の文字等Nを隠すことはない。
【0041】
本実施例においてパラフィン収容部の大きさは、開口部が40mm×28mm、底部が36.6mm×25.6mm、高さが8mmである。パラフィン収容部の上端に立設された係止壁の高さは1.2mmであり、その上端から横設される把持部7は2mm×20mmであり、カセット支承部の幅は0.2mmである。なお、使用する予定のカセットの高さは6.4mmであるので、係止壁の高さはカセットの高さの4分の1以下(1.2/6.4)である。
【0042】
実施例2
本実施例の包埋トレイ1は、図6〜図8に示すように、底部3とそれを取り囲む側壁4とから形成される方形の容器からなるパラフィン収容部2と、前記側壁4の上端、即ち、パラフィン収容部2の開口部に立設された係止壁6と、係止壁6の上端から横設された把持部7からなる。把持部7の両側には、パラフィン排出部6aが設けられている。
図9の部分拡大図に示すように、側壁4と係止壁6の境界にはカセット支承部5が形成される。本実施例におけるカセット支承部5は側壁4の上端から斜面状に形成されているので、パラフィンはカセット支承部5の上には滞留しにくくなっている。
【0043】
図9は本実施例の包埋トレイ1の断面図を実線で示すと共に、検体SとカセットCを破線で示した図である。なお、図4におけるカセットCは図21及び図24に示したものである。この包埋トレイ1は、破線で示したように、検体Sをパラフィン収容部2に投入するとともに、カセット本体C1をカセット支承部5の上に載置して使用する。この場合、カセット本体C1の記録部C3は把持部7が設けられていない辺、具体的には図9における左右の辺(図5における右辺と左辺)のいずれかに配置されるが、本図においては右辺に配置されている。
【0044】
本実施例の包埋トレイ1の左右の辺において、係止壁6には水平状の額縁部がなく、云わば切りっ放しであるとともに、側壁4からその上端の係止壁6までパラフィンが滞留するような水平部分がない。従って、図10で示したように、本実施例の包埋トレイ1を用いて使用したパラフィンブロックBでは、パラフィンは切りっ放しの係止壁6の上端により下方に切り落とされるとともに、水平部に固化したパラフィンが盛り上がって記録部に記載される被験者番号等Nが隠されることもない。
なお、図10では、把持部6の上に余分なパラフィンP1が盛り上がっているが、把持部6はカセットの記録部が配置されない係止壁6の上端から横設されており、当然このパラフィンP1が記録部の文字等Nを隠すことはない。
【0045】
本実施例においてパラフィン収容部の大きさは、開口部が40mm×28mm、底部が36.6mm×25.6mm、高さが8mmである。パラフィン収容部の上端に立設された係止壁の高さは1.2mmであり、その上端から横設される把持部7は2mm×20mm、パラフィン排出部6aは巾1.5mm、高さ0.5mmである。カセット支承部の幅は0.3mmであり、その最小傾斜角度は45°である。なお、使用する予定のカセットの高さは6.4mmであるので、係止壁の高さはカセットの高さの4分の1以下(1.2/6.4)である。
【0046】
実施例3
本実施例の包埋トレイ1は、図11〜図13に示すように、底部3とそれを取り囲む側壁4とから形成される方形の容器からなるパラフィン収容部2と、前記側壁4の上端、即ち、パラフィン収容部2の開口部に立設された係止壁6と、係止壁6の上端から横設された把持部7からなる。
図14の部分拡大図に示すように、側壁4と係止壁6の境界にはカセット支承部5が形成される。本実施例におけるカセット支承部5は側壁4と係止壁6の境界を外側からプレス加工により押し込んで内側に突出させることにより形成されている。また、カセット支承部5は断続的に形成されているので、パラフィンはカセット支承部5の間隙からも滑り落ち、一段と滞留しにくくなっている。
【0047】
パラフィン収容部2の右側及び左上の角部は若干内側に陥入されてアール処理されており、その上端からは水平に副支承部5aが延設されている。そして、左下の角部は他の角部と比較して大きく嵌入されており、その上端から延設される副支承部5aも大きくされている。これによりパラフィン収容部2は左右非対称とされており、パラフィンブロックBから顕微鏡標本を作製した後も、その検体を含むパラフィンの形状を見ることによりその検体の向きを判断できる。
【0048】
図14は本実施例の包埋トレイ1の断面図を実線で示すと共に、検体SとカセットCを破線で示した図である。なお、図14におけるカセットCは図22及び図25に示したものである。この包埋トレイ1は、破線で示したように、検体Sをパラフィン収容部2に投入するとともに、カセット本体C1をカセット支承部5及び副支承部5aの上に載置して使用する。この場合、カセット本体C1の記録部C3は把持部7が設けられていない辺、具体的には図14における左右の辺(図11における右辺と左辺)のいずれかに配置されるが、本図においては右辺に配置されている。
【0049】
本実施例の包埋トレイ1の左右の辺において、係止壁6には水平状の額縁部がなく、云わば切りっ放しであるとともに、側壁4からその上端の係止壁6まで、副支承部5aを除き、パラフィンが滞留するような水平部分がない。従って、図15で示したように、本実施例の包埋トレイ1を用いて使用したパラフィンブロックBでは、パラフィンは切りっ放しの係止壁6の上端により下方に切り落とされるとともに、水平部に固化したパラフィンが盛り上がって記録部に記載される被験者番号等Nが隠されることもない。
なお、図15では、パラフィンブロックBの角部においてパラフィンPが副支承部5aの上部で少し盛り上がっているが、この程度の盛り上がりは特に問題ではなく、また、通常の場合、被験者番号等Nは記録部C3の中央寄りに記録されるため、実質的に記録の読み取りには支障がない。また、把持部6の上に余分なパラフィンP1が盛り上がっているが、把持部6はカセットの記録部が配置されない係止壁6の上端から横設されており、当然、このパラフィンP1が記録部の文字等Nを隠すことはない。
【0050】
本実施例においてパラフィン収容部の大きさは、開口部が40mm×28mm、底部が36.6mm×25.6mm、高さが8mmである。パラフィン収容部の上端に立設された係止壁の高さは1.2mmであり、その上端から横設される把持部7は2mm×20mmである。カセット支承部の幅(突出高さ)は0.5mmであり、その最小傾斜角度は45°である。なお、使用する予定のカセットの高さは6.4mmであるので、係止壁の高さはカセットの高さの4分の1以下(1.2/6.4)である。
【0051】
実施例4
本実施例の包埋トレイ1は、図16〜18に示すように、底部3とそれを取り囲む側壁4とから形成される方形の容器からなるパラフィン収容部2と、前記側壁4の上端、即ち、パラフィン収容部2の開口部に立設された係止壁6からなる。
図19の部分拡大図に示すように、側壁4と係止壁6の境界にはカセット支承部5が形成される。本実施例におけるカセット支承部5は側壁4と係止壁6の境界の中央付近に突設した半球状突起により形成されている。従って、パラフィンはカセット支承部5の表面から滑り落ちやすく、一段と滞留しにくくなっている。
【0052】
パラフィン収容部2の右側の角部は若干内側に陥入されてアール処理されており、左側の角部は右側の角部と比較して大きく嵌入されている。これによりパラフィン収容部2は左右非対称とされており、パラフィンブロックから顕微鏡標本を作製した後も、その検体を含むパラフィンの形状を見ることによりその検体の向きを判断できる。
前記アール処理等された角部の上端からは、それぞれ副支承部5aが延設されている。
【0053】
図19は、本実施例の包埋トレイ1の断面図を実線で示すと共に、検体SとカセットCを破線で示した図である。なお、図19におけるカセットCは図21及び図24に示したものである。この包埋トレイ1は、破線で示したように、検体Sをパラフィン収容部2に投入するとともに、カセット本体C1をカセット支承部5及び副支承部5aの上に載置して使用する。本実施例の場合、包埋トレイ1のいずれの辺にも把持部7が設けられていないため、任意の辺に記録部C3を配置でき、言い換えると、カセットCのいずれの側面に被験者番号等Nを記載しても、盛り上がったパラフィンPにより隠される恐れがない。
【0054】
本実施例の包埋トレイ1の上下左右の各側壁4,4において、副支承部5aを除き、パラフィンが滞留するような水平部分がない。従って、図20で示したように、本実施例の包埋トレイ1を用いて使用したパラフィンブロックBでは、固化したパラフィンが盛り上がって記録部に記載される被験者番号等Nが隠されることもない。
なお、図20で示したように、パラフィンブロックBの角部ではパラフィンPが副支承部5aの上部で少し盛り上がっているが、この程度の盛り上がりは特に問題ではなく、また、通常の場合、被験者番号等Nは記録部C3の中央寄りに記録されるため、実質的に記録の読み取りには支障がない。
【0055】
本実施例においてパラフィン収容部の大きさは、開口部が40mm×28mm、底部が36.6mm×25.6mm、高さが8mmである。パラフィン収容部の上端に立設された係止壁の高さは0.8mmであり、カセット支承部の幅(突出高さ)は0.5mmである。なお、使用する予定のカセットの高さは6.4mmであるので、記録部が配置される側壁の係止壁の高さはカセットの高さの4分の1以下(0.8/6.4)である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
叙上のとおり、本発明の病理組織検査標本作成用の包埋トレイは、本体の側面に記録部が設けられたカセットを用いてパラフィンブロック付着体を作成する際に、記録部にパラフィンが付着して該記録部の文字が見え難くなることがなく、また、付着したパラフィンを除去する煩雑なトリミング作業が不要であるため、病理組織検査標本を作成する作業性や検査の信頼性が大幅に高められ、その有用性は頗る大である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の包埋トレイの実施例1を示す平面図である。
【図2】実施例1の側面図である。
【図3】実施例1の正面図である。
【図4】実施例1(図1)のA−A断面図である。
【図5】実施例1の包埋トレイを使用して作成したパラフィンブロックである。
【図6】本発明の包埋トレイの実施例2を示す平面図である。
【図7】実施例2の側面図である。
【図8】実施例2の正面図である。
【図9】実施例2(図6)のB−B断面図である。
【図10】実施例2の包埋トレイを使用して作成したパラフィンブロックである。
【図11】本発明の包埋トレイの実施例3を示す平面図である。
【図12】実施例3の側面図である。
【図13】実施例3の正面図である。
【図14】実施例3(図11)のC−C断面図である。
【図15】実施例3の包埋トレイを使用して作成したパラフィンブロックである。
【図16】本発明の包埋トレイの実施例4を示す平面図である。
【図17】実施例4の側面図である。
【図18】実施例4の正面図である。
【図19】実施例4(図16)のD−D断面図である。
【図20】実施例4の包埋トレイを使用して作成したパラフィンブロックである。
【図21】カセットの一例を示す斜視図である。
【図22】カセットの他の例を示す斜視図である。
【図23】従来の包埋トレイの例を示す斜視図である。
【図24】カセット内に検体を入れた状態を示す断面図である。
【図25】カセット内に検体を入れた状態を示す断面図である。
【図26】従来の顕微鏡標本の作製方法を示す説明図である。
【図27】従来の顕微鏡標本の作製方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0058】
1 包埋トレイ
2 パラフィン収容部
3 底部
4 側壁
5 カセット支承部
5a 副支承部
6 係止壁
6a パラフィン排出部
7 把持部
C カセット
C1 本体
C2 蓋
C3 記録部
C4 透孔
C5 アダプター係止部
P パラフィン
P1 余分なパラフィン
S 検体
T 従来のトレイ
T1 底部
T2 カセット支承部
T3 カセット係止部
T4 額縁部
T5 把持部
B パラフィンブロック
N 被験者番号等
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラフィン収容部の上端にカセットを載置して使用する病理組織検査標本作成用の包埋トレイであって、前記パラフィン収容部は底部とその周りに立設された側壁とからなる上面が開口した方形の容器からなり、各側壁の上端からはカセットをパラフィン収容部上に載置し係止する係止壁が立設され、側壁と係止壁の境界にはカセット支承部が形成され、カセット支承部がここにパラフィンを滞留させないように狭く又は斜面状に形成され、係止壁が実質的に該記録部を覆わないように低く形成されるとともに、該係止壁の外周に略水平状の額縁部を備えていないことを特徴とする病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項2】
狭く形成されたカセット支承部の幅が0.3〜3mmであることを特徴とする請求項1記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項3】
斜面状に形成されたカセット支承部の最小傾斜角度が45°以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項4】
カセット支承部が断続的に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項5】
カセット支承部が半球状突起からなることを特徴とする請求項4記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項6】
副支承部がパラフィン収容部の角部に設けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項7】
係止壁の高さは、パラフィン収容部上に載置するカセットの高さの4分の1以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項8】
把持部が、カセットの記録部が配置されない係止壁の上端から横設されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項9】
パラフィン収容部の形状が左右非対称であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項1】
パラフィン収容部の上端にカセットを載置して使用する病理組織検査標本作成用の包埋トレイであって、前記パラフィン収容部は底部とその周りに立設された側壁とからなる上面が開口した方形の容器からなり、各側壁の上端からはカセットをパラフィン収容部上に載置し係止する係止壁が立設され、側壁と係止壁の境界にはカセット支承部が形成され、カセット支承部がここにパラフィンを滞留させないように狭く又は斜面状に形成され、係止壁が実質的に該記録部を覆わないように低く形成されるとともに、該係止壁の外周に略水平状の額縁部を備えていないことを特徴とする病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項2】
狭く形成されたカセット支承部の幅が0.3〜3mmであることを特徴とする請求項1記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項3】
斜面状に形成されたカセット支承部の最小傾斜角度が45°以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項4】
カセット支承部が断続的に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項5】
カセット支承部が半球状突起からなることを特徴とする請求項4記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項6】
副支承部がパラフィン収容部の角部に設けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項7】
係止壁の高さは、パラフィン収容部上に載置するカセットの高さの4分の1以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項8】
把持部が、カセットの記録部が配置されない係止壁の上端から横設されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【請求項9】
パラフィン収容部の形状が左右非対称であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2008−145118(P2008−145118A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329125(P2006−329125)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(591242450)村角工業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(591242450)村角工業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】
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