説明

痩身衣類

【課題】着用者の動きを妨げることなく体型補整効果を得ると共に、バストアップや痩身などの体型の改善効果を効率的に得ることができる痩身衣類を提供する。
【解決手段】伸縮性布地によって形成した胴体部10と左右一対の袖11、11とにより上衣を形成し、この上衣に、当て布を一体的に重合して弾性率を高くした高弾性領域20〜23を設けて痩身衣類1を形成する。この高弾性領域は、衣類着用時に人体の胸部や背中の所定の領域を覆う形状に形成され、当て布の弾性率を、痩身衣類1の縦方向よりも横方向を高く構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体の胸部や背中などの表面に密着した状態で着用される痩身衣類に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、着用することにより身体の体型を補整できると共に、姿勢を正しく保つことができる補正用下着が知られている(特許文献1)。しかし、このような補整効果を有する下着などは、伸縮性に乏しい素材で形成されているため、身体の動きを制限してしまう問題があった。
【0003】
また、着用者の動きを妨げることがないように伸縮性の生地により形成し、さらに部分的に緊締力を強くして両肩が後方へ引張られるように構成して、着用者の背筋を伸ばして姿勢を矯正すると共に、肩などの正しい動きをサポートするアンダーシャツが知られている(特許文献2)。
【0004】
しかし、このようなアンダーシャツは着用により体型を補整するものではないし、所望の痩身効果を効率的に得ることはできない。
【特許文献1】特開2003−239105号公報
【特許文献2】特開2005−248391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
着用者が自身の体型の改善を目指し、痩身などの効果を得ることを目的として運動を始める場合、最初は自身の体型や人目が気になるものであるが、運動の際に着用者の動きを妨げるような補整下着を着用することはできない。また、前述のようなアンダーシャツを運動の際に着用しても、効率よく所望の痩身効果を得ることはできない。
【0006】
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、着用することにより、着用者の動きを妨げることなく体型補整効果を得ると共に、バストアップや痩身などの体型の改善効果を効率的に得ることができる痩身衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明者は鋭意研究の結果、着用時に身体に密着するように伸縮性布地により形成した上衣の所定の領域に、当て布を取り付けて弾性率を高くした高弾性領域を設け、この当て布の高弾性方向を所定の方向に向けて配置すると、この高弾性領域によって胴体及び腕を締付けることができ、脂肪を圧迫して所定の方向に集めると共に筋肉に適度な負荷をかけられることを知見し本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、請求項1記載のごとく、縦方向よりも横方向の弾性率が高い伸縮性布地によって形成した胴体部と、長さ方向よりも周方向の弾性率が高い伸縮性布地によって形成した左右一対の袖とにより上衣を形成し、この上衣には、伸縮性布地に当て布を取り付けて弾性率を高くした高弾性領域を形成し、この当て布は、衣類着用時に脇の下から大胸筋の筋腹に至る胸脇領域を覆う形状で、さらに、当て布の弾性率を、上衣の縦方向よりも横方向を高くしたことを最も主要な特徴とする。
【0009】
また、請求項2記載のごとく、前記高弾性領域は、前記胸脇領域に加えて、前記胴体部と前記袖との縫製部の一方の近傍から他方の近傍に至る背面上部領域にも、該背面上部領域を覆う当て布を伸縮性布地に取り付けて形成してなり、さらに、この当て布の弾性率を、上衣の縦方向よりも横方向を高くしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載のごとく、上衣を形成する伸縮性布地の高弾性方向を胴体の横方向及び袖の周方向に向けて配置したことにより、上衣を胸部や腕などの上体に密着させると共に上体を締め付けて着用者の運動に適度な抵抗を与え、さらに、脇の下から大胸筋の筋腹に至る胸脇領域に当て布を取り付けて高弾性領域に形成し、この当て布の弾性率を上衣の縦方向よりも横方向を高くしたことにより、胸脇領域の脂肪を胸部中央側に集めて体型補整効果を得ることができ、さらに、この胸脇の高弾性領域により大胸筋及び脇の下の前鋸筋に負荷を与えて筋肉量を増加させ、基礎代謝の向上によりエネルギの消費を促進し、優れた痩身効果を得ると共に、バストアップ効果を得ることができる。
【0011】
請求項2記載のごとく、胴体部と袖との縫製部近傍の一方から他方に至る領域に当て布を取り付けて高弾性領域を形成し、この当て布の弾性率を上衣の縦方向よりも横方向を高くしたことにより、着用者の肩胛骨及び両肩を中心側に引いて胸を張り、姿勢を矯正し、及び体型の補整の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る痩身衣類の実施の形態について図1乃至図2を参照して説明する。図1は、本発明にかかる痩身衣類の実施形態を示す正面図であり、図2は、その背面図である。
【0013】
本発明に係る痩身衣類1は、胸部、腹部、背中部を覆う胴体部10と、上腕部を覆う一対の袖部11、11とから形成した上衣の所定の箇所に当て布を取り付けて構成されている。
図1及び図2に示す本実施形態の痩身衣類1は、胴体部10が左右の前身頃と三枚の後身頃により形成され、袖部11、11が左右の袖により形成される。
【0014】
左右の前身頃は、左前身頃を上前としてファスナーによってとめる構成となっている。
また、袖部11、11はいわゆるラグラン袖に形成されており、胴体部10と袖部11、11との縫製部は、袖ぐり線11a、11aが脇の下から肩にかかるように斜めになっている。
【0015】
背面は、襟12から縫製部の袖ぐり線11a、11aに沿って左右の肩胛骨を覆い、さらに袖ぐり線11a、11aの途中部から下方に向かって幅を狭くして裾13に至る中央の後身頃と、肩胛骨の下方及び脇の下から左右の背中中部ないし背中下部及び脇腹を覆って裾13に至る左右の後身頃との三枚の後身頃により身体に密着するように構成されている。
【0016】
胴体部10及び袖部11、11は、一定の布帛伸度と弾性率を有する伸縮性布地により、着用した際に身体に密着するように形成する。本発明に用いられる伸縮性布地は、その弾性率に異方性を有しており、その弾性率が高い方向を高弾性方向Aとし、弾性率が低い方向を低弾性方向Bとする。
【0017】
図1に示すように、胴体部10においては、伸縮性布地の高弾性方向Aを痩身衣類1の横方向に向けて配置し、低弾性方向Bを縦方向に向けて配置する。袖部11、11においては、高弾性方向Aを袖部11、11の周方向に向けて配置し、低弾性方向Bを長さ方向に向けて配置する。
【0018】
また、伸縮性布地には、その伸度が高弾性方向Aと低弾性方向Bとで同じか、または低弾性方向Bよりも高弾性方向Aの伸度が高いものを使用する。
痩身衣類1を着用した際に生じる弾性力は、伸縮性布地の弾性率と伸張量の積により与えられる。したがって、伸張量が同じであれば、高弾性方向Aは低弾性方向Bよりも大きい弾性力が得られる。
【0019】
なお、痩身衣類を着用した際の着心地を確保するために、肘を曲げたり伸ばしたりする際の皮膚の伸びに対応して、伸縮性布地の低弾性方向Bの伸度は少なくとも40パーセント程度に構成するのが望ましい。
【0020】
本実施形態において、これらの伸縮性布地として、繊度が40デニール又は50デニールのツーウェイトリコットと呼ばれる伸縮性布地を表地として使用している。
図1及び図2に斜線で示したように、左右の前身頃の襟13から袖ぐり線11a、11aに沿って脇の下に至る部分と、左右の後身頃の背面下部から腰側下部にかけての部分は50デニールの伸縮性布地により形成している。その他の部分は、40デニールの伸縮性布地により形成し、これらの二種の生地により上衣の表面に模様を形成している。
【0021】
上記のごとく、部分的に繊度の異なる伸縮性布地を使用した二枚の前身頃と三枚の後身頃とから上衣を構成することにより、着用者の身体表面に上衣を適合させると共に着用者の動作に対する追従性を向上し、上衣を着用者の身体に確実に密着させる。
【0022】
図3は、本発明に係る痩身衣類を裏返した状態で示す正面図であり、図4は、本発明に係る痩身衣類を裏返した状態で示す背面図である。
【0023】
胴体部10の内の腹部と背中及び袖部11、11には、裏地として140デニールのパワーネットを使用し、これを表地に重ね合わせて縫製し又は貼り付ける。
胴体部10の内の胸部には胸パッド14、14を取り付け、さらに、左右の袖部11、11の袖ぐり線11a、11aに沿って襟12から胸パッド14、14の側方を通り脇の下にかけての領域には、裏地として280デニールのパワーネットを使用し、これを表地に重ね合わせて縫製し又は貼り付ける。
また、胸パッド14、14の間から首にかけての胸央領域24は表地のみにより構成して弾性率を低くし、着用者の胸部を過度に圧迫しないようにしている。
【0024】
次に、痩身衣類1に形成される高弾性領域について説明する。
【0025】
図3及び図4に示すように、上衣の所定の箇所には、伸縮性の当て布を取り付けて弾性率を高く構成した高弾性領域を形成する。この高弾性領域は、上衣を構成する伸縮性布地の表地と裏地の間に当て布を挟み込んで、縫製し又は貼り付けるなどして形成する。
【0026】
高弾性領域を形成する当て布は、その弾性率に異方性を有し、その弾性率が高い方向を高弾性方向Cとし、弾性率が低い方向を低弾性方向Dとする。また、当て布の布帛伸度は、高弾性方向Cと低弾性方向Dとで同じか、または低弾性方向Dよりも高弾性方向Cの伸度を大きく構成する。
【0027】
本実施形態の高弾性領域を形成する当て布としては、例えば繊度が280デニール又は320デニールのパワーネットを使用する。
【0028】
本実施形態において、高弾性領域は胴体部10の内の胸部の両脇と背中及び袖部11、11に形成されている。
【0029】
胸部の高弾性領域は、脇の下から左右の胸パッド14、14の側方にかけての胸脇領域20、20に280デニールのパワーネットからなる当て布を取り付けて形成する。この胸脇領域20、20は、大胸筋の筋腹を部分的に覆うと共に人体の脇の下にある前鋸筋を覆う領域で、当て布の高弾性方向Cは痩身衣類1の略横方向を向くように配置する。
【0030】
背面の高弾性領域は、袖ぐり線11a、11aから始まって肩胛骨を通り、ゆるやかに斜め下方へ伸びて背中中央で合わさる背面上部領域21に当て布を取り付けて形成する。さらに、背面には、背中下部全体を覆う背面下部領域22にも高弾性領域を形成する。
背面上部領域21及び背面下部領域22を形成する当て布は、図4に示したように、その高弾性方向Cが痩身衣類1の略横方向を向くように配置する。
【0031】
袖部11、11の高弾性領域は、上腕の背面側を覆う上腕領域23、23に当て布を取り付けて形成する。上腕領域23、23を形成する当て布は、図4に示したように、その高弾性方向Cが袖部11の周方向を向くように配置する。
【0032】
上記のごとく構成した痩身衣類は以下に示す効果を奏する。
【0033】
上衣を伸縮性布地により形成して身体表面に密着させ、胸脇領域20、20に当て布を取り付けて着用者の前鋸筋及び大胸筋の筋腹を覆う高弾性領域を形成し、当て布の高弾性方向Cを痩身衣類1の略横方向を向くように配置したことにより、この当て布によって胸脇の脂肪を中央側に寄せてバストアップなどの体型補整効果を得ると共に、前鋸筋及び大胸筋を圧迫して負荷を与えてエネルギの消費を促進し、優れた痩身効果を得ることができる。
【0034】
また、上衣を形成する伸縮性布地の高弾性方向Aを胴体部10の横方向及び袖11、11の周方向に向けて配置したことにより、着用時に胸部や腕を締め付けるようにして圧迫し、着用者の動きに抵抗を与えることで継続的に負荷をかけてエネルギの消費を促進し、優れた痩身効果を得ることができる。
【0035】
背面上部領域21に当て布を取り付けて、胴体部10と袖11、11との縫製部の一方の近傍から他方の近傍に至る高弾性部を形成し、当て布の高弾性方向Cを痩身衣類1の横方向を向くように配置したことにより、着用者の両肩を中心側に引張り、胸を張るようにして姿勢を正すことで体型を美しく見せると共に、胸を張ることにより前鋸筋及び大胸筋をより強く圧迫して負荷を与え、エネルギの消費を促進して優れた痩身効果を得ることができる。
【0036】
背面下部領域22に当て布を取り付けて、着用者の背中下部を覆う高弾性領域を形成し、当て布の高弾性方向Cを痩身衣類1の横方向を向くように配置したことにより、着用者の背中下部を引き締めて圧迫し、腰回りを細く見せると共に、負荷をかけることによりエネルギの消費を促進して優れた痩身効果を得ることができる。
【0037】
袖部11、11の上腕領域23に当て布を取り付けて、着用者の上腕三頭筋を覆う高弾性領域を形成し、当て布の高弾性方向Cを袖部11、11の周方向を向くように配置したことにより、着用者の上腕三頭筋を引き締めて圧迫し、腕を細く見せると共に、負荷をかけることによりエネルギの消費を促進して優れた痩身効果を得ることができる。
【0038】
また、胸パッド14、14の間の胸央領域24を40デニールの伸縮性布地のみによって弾性力を低く形成したことにより、胸脇領域20、20により中央側に脂肪を寄せやすく、また胸部を過剰に圧迫することが無く、バストアップなどの体型補整効果を効率的に得ると共に着心地に優れる。
【0039】
本実施形態において、痩身衣類1は、上衣を表地と裏地とにより形成し、これらの間に当て布を挟み込み、さらに胸パッドを取り付けて素肌に直に着用することができるように構成され、水着として水中で使用することもできるものである。
一方、胸パッドを取り付けず、肌着などの上に着用するように構成することもできる。この場合、男性用としても使用することができる。
【0040】
また、本実施形態の痩身衣類1に使用される伸縮性布地や当て布として、スリミッシュ(富士紡ホールディングス株式会社 登録商標)加工を施した生地を用いると、さらに優れた痩身効果が期待できる。
【0041】
なお、本実施形態の痩身衣類1には、人体の胸部、背中上部、背中下部及び上腕部に対応する部位に所定の形状の当て布を取り付けて高弾性領域を形成しているが、本発明の痩身衣類に形成される高弾性領域の形状は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形や応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る痩身衣類の実施形態を示す正面図である。
【図2】本発明に係る痩身衣類の実施形態を示す背面図である。
【図3】本発明に係る痩身衣類を裏返した状態で示す正面図である。
【図4】本発明に係る痩身衣類を裏返した状態で示す背面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 痩身衣類
10 胴体部
11 袖部
11a 袖ぐり線
12 襟
13 裾
14 胸パッド
20 胸脇領域
21 背面上部領域
22 背面下部領域
23 上腕領域
24 胸央領域
A、C 高弾性方向
B、D 低弾性方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向よりも横方向の弾性率が高い伸縮性布地によって形成した胴体部と、長さ方向よりも周方向の弾性率が高い伸縮性布地によって形成した左右一対の袖とにより上衣を形成し、
この上衣には、伸縮性布地に当て布を取り付けて弾性率を高くした高弾性領域を形成し、
この当て布は、衣類着用時に脇の下から大胸筋の筋腹に至る胸脇領域を覆う形状で、さらに、当て布の弾性率を、上衣の縦方向よりも横方向を高くしたことを特徴とする痩身衣類。
【請求項2】
前記高弾性領域は、前記胸脇領域に加えて、前記胴体部と前記袖との縫製部の一方の近傍から他方の近傍に至る背面上部領域にも、該背面上部領域を覆う当て布を伸縮性布地に取り付けて形成してなり、さらに、この当て布の弾性率を、上衣の縦方向よりも横方向を高くしたことを特徴とする請求項1記載の痩身衣類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−2013(P2008−2013A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−172731(P2006−172731)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(000114628)ヤーマン株式会社 (31)
【Fターム(参考)】