説明

癌、血管新生及びそれらに関連する炎症経路の置換1,3−シクロペンタジオン多重標的プロテインキナーゼ・モジュレーター

血管新生、癌治療又は該状態に関連した炎症経路に関する多重標的プロテインキナーゼ調節のための組成物及び方法を開示する。開示する化合物及び方法は、置換1,3−シクロペンタジオン化合物に基づくものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロスリファレンス
[001]本特許出願は、米国仮出願No.61/012,506(2007年12月10日出願)に対する優先権を主張する。該優先権出願の内容は、あたかもそれらが完全に本明細書に記載されているかのように、それらの全体で本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の分野
[002]本発明は、一般的に、癌、血管新生(angiogenesis)を治療若しくは抑制するため、そしてプロテインキナーゼ調節に影響されやすい、それらの関連炎症経路をモジュレートするために用いることができる方法及び組成物に関する。より具体的には、本発明は、置換1,3−シクロペンタジオン化合物を用いる方法及び組成物に関する。
【0003】
関連技術の説明
[003]シグナル伝達は、正常なホメオスタシスを維持するために重要な、又は、調整不全である場合には(if dysregulated)、数多くの疾患病理学及び状態に関連した原因的若しくは寄与機構として作用するために重要な、包括的な調節機構を提供する。細胞レベルにおいては、シグナル伝達は、細胞内部での又は細胞外部から細胞内部へのシグナル若しくはシグナリング部分の移動を意味する。シグナルは、その受容体標的に達すると、多くの細胞イベントに必要なリガンド−受容体相互作用を開始することができ、それらの一部はさらにその後のシグナルとして作用することができる。このようなシグナル相互作用は、一連のカスケードとして役立つのみでなく、ホメオスタシス・プロセスの微調整された制御をもたらすことができる、シグナル・イベントの複雑な相互作用ネットワーク若しくはウェブの一部でもある。しかし、このネットワークは調整不全になる可能性があり、それによって、その結果として、細胞活性の変化及び対応細胞内で発現される遺伝子プログラムの変化を生じる可能性がある。例えば、NF−κBシグナル伝達経路を調節する該相互作用キナーゼの単純化バージョンを表示する図1を参照のこと。
【0004】
[004]シグナル伝達受容体は一般に3クラスに分類される。第1クラスの受容体は、細胞膜に浸透する受容体であり、幾らかの固有酵素活性(some intrinsic emzymatic activity)を有する。固有酵素活性を有する、典型的な受容体は、チロシンキナーゼ(例えば、PDGF、インスリン、EGF及びFGF受容体)、チロシンホスファターゼ(例えば、T細胞及びマクロファージのCD45[クラスター・デターミナント−45]タンパク質)、グアニル酸シクラーゼ(例えば、ナトリウム利尿ペプチド受容体)及びセリン/スレオニンキナーゼ(例えば、アクチビン及びTGF−β受容体)である受容体類を包含する。固有チロシンキナーゼ活性を有する受容体は、他の基質のリン酸化だけでなく自己リン酸化が可能である。
【0005】
[005]第2クラスの受容体は、細胞内部で、GTP結合タンパク質及びGTP加水分解タンパク質(G−タンパク質類と呼ばれる)にカップリングする受容体である。G−タンパク質類と相互作用する、このクラスの受容体は、7つの膜貫通ドメインを特徴とする構造を有する。これらの受容体は、セルペンチン受容体と呼ばれる。このクラスの例は、アドレナリン受容体、嗅覚受容体、及びある一定のホルモン受容体(例えば、グルカゴン、アンギオテンシン、バソプレッシン及びブラジキニン)である。
【0006】
[006]第3クラスの受容体は、細胞内に見出され、リガンドと結合すると、核に移動する受容体として記載されることができ、核において該リガンド−受容体複合体は直接に遺伝子転移に影響を及ぼす。
【0007】
[007]受容体チロシンキナーゼ(RTK)として機能するタンパク質類は、4つの主要なドメインを含有する、これらのドメインは(a)膜貫通ドメイン、(b)細胞内リガンド結合ドメイン、(c)細胞内制御ドメイン、及び(d)細胞内チロシンキナーゼ・ドメインである。RTKのアミノ酸配列は、cAMP依存性プロテインキナーゼのアミノ酸配列によって高度に保存される(ATP及び基質結合領域内で)。RTKタンパク質は、それらの細胞外部分における構造特徴に基づいて、システイン富化ドメイン、免疫グロブリン様ドメイン、カドヘリン・ドメイン、ロイシン富化ドメイン、Kringleドメイン、酸性ドメイン、フィブロネクチンIII型リピート(fibronectin type III repeats)、ジスコイジンI様ドメイン、及びEGF様ドメインを包含するファミリーに分類される。これらの多様な細胞外ドメインの存在に基づいて、RTKsは少なくとも14の異なるファミリーに細分されている。
【0008】
[008]リン酸化時に固有チロシンキナーゼ活性を有する、多くの受容体は、シグナル伝達カスケードの他のタンパク質と相互作用する。該他のタンパク質は、c−Src癌原遺伝子内で最初に同定されたドメインに相同であるアミノ酸配列のドメインを含有する。これらのドメインは、SH2ドメインと呼ばれる。
【0009】
[009]SH2ドメイン含有タンパク質とRTKs若しくは受容体関連チロシンキナーゼとの相互作用は、SH2含有タンパク質のチロシンリン酸化を生じる。生じたリン酸化は、その活性の変化(有利に又は不利に)をもたらす。固有酵素活性を有する、幾つかのSH2含有タンパク質は、ホスホリパーゼC−γ(PLC−γ)、癌原遺伝子c−Ras関連GTPアーゼ活性化タンパク質(rasGAP)、ホスファチジルイノシトール−3−キナーゼ(PI3K)、タンパク質チロシンホスファターゼ−1C(PTP1C)、並びにタンパク質チロシンキナーゼ(PTKs)のSrcファミリーのメンバーを包含する。
【0010】
[0010]非受容体タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)は、概して、それ自体酵素活性を有さない細胞受容体にカップリングする。タンパク質相互作用を介しての受容体−シグナル伝達の例は、インスリン受容体(IR)を包含する。この受容体は、固有チロシンキナーゼ活性を有するが、自己リン酸化後に、酵素活性な、SH2ドメイン含有タンパク質(例えば、PI3KまたはPLC−γ)と直接には相互作用しない。その代わりに、主要なIR基質は、IRS−1と呼ばれるタンパク質である。
【0011】
[0011]TGF−βスーパーファミリーの受容体は、プロトタイプ受容体セリン/スレオニン・キナーゼ(RSTK)を代表する。TGF−βスパーファミリーの多機能タンパク質は、アクチビン、インヒビン及び骨形成タンパク質(BMPs)を包含する。これらのタンパク質は細胞の増殖又は分化を誘導及び/又は阻害して、種々な細胞タイプの移動及び接着を調節することができる。TGF−βの1つの主要な効果は、細胞サイクルを通しての進行の調節である。さらに、TGF−βに対する細胞の応答に関与する核タンパク質の1つは、c−Mycであり、これは、Myc結合要素を内蔵する遺伝子の発現に直接影響を及ぼす。PKA、PKC及びMAPキナーゼは、非受容体セリン/スレオニン・キナーゼの3つの主要なクラスを表す。
【0012】
[0012]キナーゼ活性と疾患状態との関係が、多くの実験室において現在研究されている。このような関係は、疾患自体の原因であるか又は疾患関連症状の発現若しくは進行に密接に関連するかのいずれかである。リウマチ性関節炎、自己免疫疾患は、キナーゼと疾患との関係が現在研究されている、1つの例を提供する。
【0013】
[0013]リウマチ性関節炎(RA)は、自己免疫疾患のなかで最も一般的で、最もよく研究されている疾患であり、世界の人口の約1%がこれに罹患しており、この疾患は、他の自己免疫疾患と同様に、不明の理由から増加中である。RAは、関節の進行性の骨及び軟骨破壊を生じる慢性的滑膜炎症を特徴とする。サイトカイン、ケモカイン及びプロスタグランジンは、炎症の重要なメディエーターであり、活性な疾患を有する患者の関節及び血液の両方に豊富に見出される。例えば、PGEは、RA患者の滑液中に豊富に存在する。PGEレベルの上昇は、炎症部位におけるシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)及び誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の誘導によって仲介される。[例えば、van der Kraan PM 及び van den Berg WB.変形性関節炎におけるタンパク同化性及び破壊性メディエーター,Curr Opin Clin Nutr Metab Care,3:205-21 1 , 2000; Choy EHS 及び Panayi GS.リウマチ性関節炎におけるサイトカイン経路と関節炎症,N Eng J Med. 344:907-916, 2001; 及び Wong BR, et al.アレルギー性及び自己免疫性障害の治療としてのターゲッティングSyk,Expert Opin Investig Drugs 13:743-762, 2004.を参照のこと。]
[0014]ヒトにおけるRAの病因と病変形成はまだあまり理解されていないが、3段階で進行すると見なされる。初期段階は、樹状細胞が自己抗原を自己反応性T細胞に与える場合に生じる。T細胞は、サイトカインを介して自己反応性B細胞を活性化して、結果として自己抗体の産生を生じ、次に、これらの自己抗体が関節において免疫複合体を形成する。エフェクター段階では、該免疫複合体がマクロファージ及びマスト細胞上のFcf受容体に結合して、結果として、炎症及び痛みの原因と成るサイトカイン及びケモカインを放出させる。最終段階では、サイトカイン及びケモカインが、プロテアーゼ、酸、及びROS(例えば、O)を放出する滑膜繊維芽細胞、破骨細胞及び多形核好中球を活性化して、補充し、結果として、軟骨及び骨の不可逆的な破壊を生じる。
【0014】
[0015]コラーゲン誘導RAの動物モデルでは、該疾患の開始にはT細胞とB細胞の参加が必要である。B細胞活性化は、抗原受容体誘発後に脾臓チロシンキナーゼ(Syk)及びホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3K)を介してシグナルを発する[Ward SG, Finan P. 治療剤としてのアイソフォーム特異的ホスホイノシチド3−キナーゼ阻害剤,Curr Opin Pharmacol.Aug;3(4):426-34,(2003)]。B細胞上の抗原受容体と結合した後に、Sykは3つのチロシン上でリン酸化される。Sykは、多重の下流シグナル経路への免疫認識受容体のカップリングに重要な役割を果たす72kDaタンパク質−チロシンキナーゼである。この機能は、その触媒活性と、SH2ドメイン含有エフェクタータンパク質との相互作用に参加するその能力との両方の性質である。Tyr−317、−342及び−346のリン酸化は、多重のSH2ドメイン含有タンパク質に対するドッキング部位を作製する。[Hutchcroft, J. E., Harrison, M. L. & Geahlen, R. L. (1992). Association of 72kDaタンパク質−チロシンキナーゼ(Ptk72)とB細胞抗原受容体との会合,J. Biol. Chem. 267: 8613-8619, (1992) 及び Yamada, T., Taniguchi, T., Yang, C, Yasue, S., Saito, H. & Yamamura, H. B細胞抗原・細胞抗原受容体とタンパク質−チロシンキナーゼ−P72(Syk)との会合及び膜IgMの結合による活性化,Eur. J. Biochem. 213: 455-159,(1993)]。
【0015】
[0016]B細胞抗原受容体(BCR)とマクロファージ若しくは好中球Fc受容体との結合を含めた、多様なシグナルに応じたPI3Kの活性化にSykが必要であることが判明している。[Crowley, M. T., et al,. J. Exp. Med. 186: 1027-1039, (1997); Raeder, E. M., et al,, J. Immunol. 163, 6785-6793, (1999); 及び Jiang, K., et al, Blood 101 , 236-244, (2003)を参照のこと]。B細胞では、PI3Kのp85制御サブユニットに対する結合部位を作製する、アダプタータンパク質(例えば、BCAP、CD19又はGab1)のリン酸化を介して、PI3KのBCR刺激活性化が達成されうる。多くのIgG受容体によって伝達されるシグナルは、SykとPI3Kの両方の活性及びクラスター化受容体の部位へのそれらの補充(recruitment)を必要とする。好中球及び単球では、PI3Kと、FcgRIIA上のリン酸化免疫受容体チロシンに基づく活性化モチーフ配列との会合が、該受容体へのPI3K補充の機構として提案されている。そして最近では、SyrとPI3Kとの直接分子相互作用が報告されている。[Moon KD, et al, Sykタンパク質−チロシンキナーゼとホスファチド3−キナーゼとの直接相互作用の分子的基礎,J. Biol. Chem. 280, No. 2, Issue of January 14, pp. 1543-1551, (2005)]。
【0016】
[0017]NSAIDsの化学防御効果の正確な機構はまだ知られていない、しかし、これらの薬物が細胞増殖の阻害、血管新生の阻害及びアポトーシスの誘導を誘起しうることは周知である。[7 Shiff, S. J., and Rigas, B. (1997) Gastroenterology 113, 1992-1998 及び Elder, D. J. E., and Paraskeva, C. (1999) Apoptosis 4, 365-372]。
【0017】
[0018]NSAIDsの最も特徴的な標的は、アラキドン酸からのプロスタグランジン合成を触媒するシクロオキシゲナーゼ(COX)である。2種類の知られたCOXアイソフォーム、COX−1とCOX−2が存在する。COX−1は、大抵の組織中に見出される、構成的発現型酵素であり、結腸直腸腺癌中で変化しないで留まるが、COX−2発現は結腸直腸腺腫及び腺癌中で多様なサイトカイン、ホルモン、ホルボールエステル及び癌遺伝子によってアップレギュレートすることができる[Eberhart,C.E.,Coffey,R.J., Radhika,A.,Giardiello,F.M.,Ferrenbach,S.,及びDuBois,R. N. (1994) Gastroenterology 107, 1 183-1 188]。
【0018】
[0019]大腸癌に対するNSAIDsの化学防御効果の分子的基礎は、アポトーシスに対する癌細胞の感受性を誘導することによるCOX−2の阻害に少なくとも一部は帰因するとされている[Rigas, B., and Shiff, S. J. (2000) Med. Hypotheses 54, 210-215]。家族性腺腫ポリポーシスのマウスモデルにおいてCOX−2の無発現変異(null mutation)は、アポトーシスを修復し、結腸直腸腺腫のサイズと数を減少させた [Oshima, M., Dinchuk, J. E., Kargman, S. L., Oshima, H., Hancock, B., Kwong, E., Trzaskos, J. M., Evans, J. F.,及び Taketo, M. M. (1996) Cell 87, 803-809]。NSAIDスリンダクによるMinマウスの治療によって、腺腫の同様な退縮が観察されている[Labayle, D., Fischer, D., Vielh, P., Drouhin, F., Pariente, A., Bories, C.,Duhamel, O., Trousset, M., 及びAttali, P. (1991) Gastroenterology 101,635-639]。
【0019】
[0020]しかし、NSAIDsのアポトーシス促進性効果に関する観察は、矛盾した結論を導き、NSAIDsがCOX依存性及び非依存性機構によって作用することを示すことになる[Rigas, B., and Shiff, S. J. (2000) Med. Hypotheses 54, 210-215]。例えば、COX活性を有さない大腸癌細胞系に外因性プロスタグランジンを添加しても、スリンダク硫化物(スリンダク由来の代謝産物)のアポトーシス促進性効果を逆転させることはできない [Hanif, R., Pittas, A., Feng, Y., Koutsos, M. L, Qiao, L., Staiano-Coico, L., Shiff, S. I.及びRigas, B. (1996) Biochem. Pharmacol. 52, 237-245]。
【0020】
[0021]さらに、COXsを阻害しない、もう1つのスリンダク代謝産物であるスリンダク・スルホンは、動物モデルにおいて腫瘍成長に影響を及ぼす[Piazza, G. A., Alberts, D. S., Hixson, L. J., Paranka, N. S., Li, H., Finn, T.,Bogert, C, Guillen, J. M., Brendel, K., Gross, P. H., Sped, G., Ritchie, J.,Burt, R. W., Ellsworth, L., Ahnen, D. J., and Pamukcu, R. (1997) CancerRes. 57, 2909-2915]、そしてCOXsを発現する培養された癌細胞において又は発現しない培養された癌細胞においてもアポトーシスを誘発する。
【0021】
[0022]このため、COX−1及びCOX−2の他にNSAIDsの分子標的が存在することを実証する、非常に多くの証拠が今や存在して、癌細胞に対するNSAIDsの化学防御効果とNSAIDsのCOX発現レベルとを関連づけている。最近の研究は、細胞外シグナル制御キナーゼ1/2シグナリングを含めたシグナリング経路に主として関与する、NSAIDsの一連の新しい分子標的を同定している[Rice, P. L., Goldberg, R. J., Ray, E. C, Driggers, L. J., 及び Ahnen, D. J. (200l)Camer Res. 61, 1541-1547), NF-_B (21. Kopp, E., 及び Ghosh, S. (1994) Science 265, 956-959), p70S6 kinase ( Law, B. K., Waltner-Law, M. E., Entingh, A. J., Chytil, A., Aakre, M. E., Norgaard, P., 及び Moses, H. L. (2000) J. Biol. Chem. 275, 38261-38267), p21ras signaling (Herrmann, C, Block, C, Geisen, C, Haas, K., Weber, C, Winde, G., Moroy, T.,及び Muller, O. (1998) Oncogene 17, 1769-1776), 並びに Akt/PKB kinase (Hsu, A. L., Ching, T. T., Wang, D. S., Song, X., Rangnekar, V. M., 及び Chen, C. S. (2000) J. Biol. Chem. 275, 11397-11403]。
【0022】
[0023]COX−2活性の阻害剤が結果としてPGE2産生の減少を生じ、例えばRAのような慢性関節炎状態を有する患者の痛覚緩和に有効であることを、多くの研究が示している。しかし、COX−1とCOX−2の両方が例えば胃腸系及び心臓血管系のような組織における重要な維持機能に関与するので、COX酵素活性を阻害する作用剤の不利な効果に関する懸念が高まっている。それ故、これらの患者における痛覚緩和のための安全な長期間治療アプローチの設計が必要である。COX−2及びiNOS合成のインデューサーはSyk、PI3K、p38、ERK1/2及びNF−kB依存性経路を通してシグナルを伝達するので、これらの経路の阻害剤は自己免疫状態及び特に、RA患者の炎症性及び変形性関節に治療的である可能性がある。
【0023】
[0024]疾患症状とのそれらの関連に関して現在研究されている他のキナーゼは、Aurora、FGFR、MSK、Rse及びSykを包含する。
【0024】
[0025]Aurora−細胞分割の重要な調節剤−は、AuroraA、B及びCを包含するセリン/スレオニンキナーゼのファミリリーである。AuroraAキナーゼとAuroraBキナーゼは、有糸分裂に直接的な、但しそれぞれ異なる役割を有すると同定されている。これらの3アイソフォームの過剰発現は、白血病、結腸直腸癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、メラノーマ及び子宮頚部癌を含めた、多様な範囲のヒト腫瘍種類に関連付けられている。
【0025】
[0026]繊維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)は、受容体チロシンキナーゼである。この受容体における突然変異は、受容体ダイマー化、キナーゼ活性化、及びFGFのアフィニティ上昇によって構成的活性化をもたらす可能性がある。FGFRは、軟骨形成不全、血管新生及び先天的疾患に関係付けられている。
【0026】
[0027]MSK(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ)1及びMSK2は、in vivoでERK(細胞外シグナル制御キナーゼ)1/2又はp38MAPK(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ)経路のいずれかの下流で活性化されるキナーゼであり、CREB(cAMP応答配列結合タンパク質)及びヒストンH3のリン酸化のために必要である。
【0027】
[0028]Rseは、主に脳において高度に発現される。Brt、BYK、Dtk、Etk3、Sky、Tif又はsea関連受容体チロシンキナーゼとしても知られる受容体チロシンキナーゼであり、その主要な役割は、ニューロンをアポトーシスから保護することである。Rse、Axl、及びMerは、細胞接着分子関連の受容体チロシンキナーゼの新たに同定されたファミリーに属する。GAS6は、このチロシンキナーゼ受容体、Rse、Axl、及びMerのリガンドである。GAS6は、安定期のECにより産生されて、炎症促進刺激がECの接着促進機構(pro-adhesive machinery of EC)を始動させるときに枯渇する、生理学的な抗炎症剤として機能する。
【0028】
[0029]2つのアイソフォームで存在するグリコゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK−3)は、グリコゲン代謝の制御に関与する酵素として同定されて、細胞増殖及び細胞死の調節剤として作用する可能性がある。多くのセリン−スレオニンプロテインキナーゼと違って、GSK−3は、構成的に活性であり、インスリン又は増殖因子に応答して阻害される。筋肉グリコゲン合成のインスリン刺激におけるその役割が、それを糖尿病及び代謝症候群における治療介入の魅力的な標的としている。
【0029】
[0030]GSK−3調節不全(dysregulation)は、インスリン抵抗性の発症における焦点であることが示されてきた。GSK3の阻害は、グルコース処理速度の増加によるだけでなく、ホスホエノールピルビン酸カルボキシナーゼ及びグルコース−6−ホスファターゼのような糖新生遺伝子の肝細胞における阻害により、インスリン抵抗性を改善する。さらに、選択的GSK3阻害剤は、グルコース輸送のインスリン依存的な活性化と筋肉における利用を in vitro と in vivo で増強する。GSK3はまた、インスリン受容体基質−1のセリン/スレオニン残基を直接リン酸化して、それによりインスリンシグナル伝達の障害をもたらす。GSK3は、インスリンシグナル伝達経路において重要な役割を担っていて、それは、インスリンの不存在下で、グリコゲンシンターゼをリン酸化して阻害する[Parker, P. J., Caudwell, F. B., and Cohen, P. (1983) Eur. J. Biochem. 130: 227-234]。増大する証拠は、骨格筋のグルコース輸送活性の調節におけるGSK−3の負の役割を裏付ける。例えば、インスリン抵抗性の齧歯動物を選択的GSK−3阻害剤で急性治療すると、全身のインスリン感受性と筋肉グルコース輸送に対するインスリン作用が改善される。インスリン抵抗性のプレ糖尿病肥満Zuckerラットを特異的なGSK−3阻害剤で慢性治療すると、経口グルコース耐性と全身インスリン感受性が高められて、脂質異常症の回復と骨格筋におけるIRS−1依存性インスリンシグナル伝達の改善が付随して生じる。これらの結果は、筋肉におけるGSK−3の選択的標的指向が肥満関連のインスリン抵抗性の治療に有効な介入法になり得るという証拠を提供するものである。
【0030】
[0031]Sykは、B細胞受容体及びIgE受容体からのシグナル伝達に関わるZAP−70に関連した非受容体チロシンキナーゼである。Sykは、これら受容体内のITAMモチーフへ結合して、Ras、PI3K、及びPLCgシグナル伝達経路を介したシグナル伝達を始動させる。Sykは、細胞内シグナル伝達において不可欠の役割を担うので、炎症疾患及び呼吸障害の重要な標的になる。
【0031】
[0032]血管新生は、新たな毛細血管の発生を含む組織の血管形成のプロセスである。血管新生の調節及び制御は、黄斑変性及び糖尿病性網膜症のような眼障害に関連した、多くの疾患状態にとって重要である。さらに、血管新生は、転移癌の汎発と残存の成功のために重要な要素である。
【0032】
[0033]多くのプロテインキナーゼが、血管新生プロセスに関連付けられている。例えば、最近の研究は、PI3K−Akt−PTENシグナリング・ノード(signaling/node)を脳腫瘍における血管新生を制御するためのインターセプト点(an intercept point)として同定している[Castellino RC and Durden DL., 疾患の機構:PI3K−Akt−PTENシグナリング・ノード−脳腫瘍における血管新生を制御するためのインターセプト点.Nat Clin Pract Neurol. 3(12):682-93, 2007]。さらに、[Blackburn JS, et al., マトリックス・メタロプロテイナーゼのRNA干渉阻害は、腫瘍コラゲナーゼ活性及び血管新生を減ずることによって、メラノーマ転移を予防する。Cancer Res. 67(22): 10849-58 2007]も参照のこと。さらに、例えば、Leeらは、ヒト胃結腸癌モデルにおけるAKT血管新生の関与を実証している[Lee, BL., et al., Aktによる低酸素誘導因子−1の低酸素非依存性アップレギュレーションは、ヒト胃癌における血管新生を助長するCarcinogenesis. 2007 Nov 4.]。
【0033】
[0034]それ故、単数又は多数の選択キナーゼの発現又は活性を調節させ得る方法及び組成物を同定することは有用であろう。様々なプロテインキナーゼ及びキナーゼ経路の間の関連性やそれらの間の相互作用の複雑性を理解することは、多数のキナーゼ又は多数のキナーゼ経路に対して有益な活性を有するプロテインキナーゼ調節剤、調整剤、又は阻害剤として作用することが可能な医薬剤を開発することへの緊急ニーズを高めるものである。1つのキナーゼ又は1つのキナーゼ経路に特異的に標的指向する単剤のアプローチは、例えば、糖尿病や代謝症候群のような、非常に複雑な疾患、状態、及び障害を治療するには不十分であろう。さらに、多数のキナーゼの活性を調節することは、単一のキナーゼ調節では獲得不能な相乗的な治療効果をもたらす可能性がある。
【0034】
[0035]このような調節及び使用は、慢性状態への連続使用を要求しても、例えば、それ自身の状態として、又は多くの疾患及び状態の必須要素としての炎症において必要とされるように、間欠使用を要求してもよい。追加的に、キナーゼの調節剤として作用する組成物は、哺乳動物の身体における多種多様な障害に影響を及ぼすことができる。
【0035】
[0036]現在、疾患状態のための多重標的指向の治療様式の開発を支持して、それによって、単一標的に対するアグレッシブな治療に伴う可能な有害性を減ずるという可能性を付随して、応答性を強化する可能性を提供する傾向がある。[Arbiser, JL.,標的指向治療法は進行癌では何故作用していないのかJ. Clin. Invest., 1 17(10): 2762-65, 2007,及びMa, WW と Hildalgo, M., 胃腸癌における新規な分子標的の利用. World J Gastroenterol. 13(44): 5845 - 56,2007]を参照のこと。本発明は、多くのキナーゼの活性を調整して、それにより数多くの疾患関連症状を治療する手段を提供すると同時に生命の質を高めるために使用することができる置換1,3−シクロペンタジオン化合物について記載する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0036】
【非特許文献1】van der Kraan PM 及び van den Berg WB.著:変形性関節炎におけるタンパク同化性及び破壊性メディエーター,Curr Opin Clin Nutr Metab Care,3:205-21 1 , 2000;
【非特許文献2】Choy EHS 及び Panayi GS.著:リウマチ性関節炎におけるサイトカイン経路と関節炎症,N Eng J Med. 344:907-916, 2001;
【非特許文献3】Wong BR, et al.著:アレルギー性及び自己免疫性障害の治療としてのターゲッティングSyk,Expert Opin Investig Drugs 13:743-762, 2004;
【非特許文献4】Ward SG, Finan P.著:治療剤としてのアイソフォーム特異的ホスホイノシチド3−キナーゼ阻害剤,Curr Opin Pharmacol.Aug;3(4):426-34,(2003);
【非特許文献5】Hutchcroft, J. E., Harrison, M. L. & Geahlen, R. L.著(1992). 72kDaタンパク質−チロシンキナーゼ(Ptk72)とB細胞抗原受容体との会合,J. Biol. Chem. 267: 8613-8619, (1992);
【非特許文献6】Yamada, T., Taniguchi, T., Yang, C, Yasue, S., Saito, H. & Yamamura, H.著:B細胞抗原・細胞抗原受容体とタンパク質−チロシンキナーゼ−P72(Syk)との会合及び膜IgMの結合による活性化,Eur. J. Biochem. 213: 455-159,(1993);
【非特許文献7】Crowley, M. T., et al,. J. Exp. Med. 186: 1027-1039, (1997);
【非特許文献8】Raeder, E. M., et al,, J. Immunol. 163, 6785-6793, (1999);
【非特許文献9】Jiang, K., et al, Blood 101 , 236-244, (2003);
【非特許文献10】Moon KD, et al著, Sykタンパク質−チロシンキナーゼとホスファチド3−キナーゼとの直接相互作用の分子的基礎,J. Biol. Chem. 280, No. 2, January 14発行 pp. 1543-1551 (2005);
【非特許文献11】7 Shiff, S.J.,及び Rigas, B.著:(1997) Gastroenterology 113, 1992-1998;
【非特許文献12】Elder, D. J. E.,及び Paraskeva, C.著:(1999) Apoptosis 4, 365-372;
【非特許文献13】Eberhart,C.E., Coffey,R.J., Radhika,A., Giardiello,F.M., Ferrenbach,S.,及びDuBois,R. N.著:(1994) Gastroenterology 107, 1 183-1 188;
【非特許文献14】Rigas, B.,及び Shiff, S. J.著 (2000) Med. Hypotheses 54, 210-215;
【非特許文献15】Crowley, M. T., et al著:J. Exp. Med. 186: 1027-1039, (1997);
【非特許文献16】Raeder, E. M., et al,著:J. Immunol. 163, 6785-6793, (1999);
【非特許文献17】Jiang, K., et al著:Blood 101 , 236-244, (2003);
【非特許文献18】Oshima, M., Dinchuk, J. E., Kargman, S. L., Oshima, H., Hancock, B., Kwong, E., Trzaskos, J. M., Evans, J. F.,及び Taketo, M. M.著:(1996) Cell 87, 803-809;
【非特許文献19】Labayle, D., Fischer, D., Vielh, P., Drouhin, F., Pariente, A., Bories, C.,Duhamel, O., Trousset, M., 及びAttali, P.著:(1991) Gastroenterology 101,635-639;
【非特許文献20】Rigas, B.,及び Shiff, S. J.著:(2000) Med. Hypotheses 54, 210-215;
【非特許文献21】Hanif, R., Pittas, A., Feng, Y., Koutsos, M. L, Qiao, L., Staiano-Coico, L., Shiff, S. I.及びRigas, B.著:(1996) Biochem. Pharmacol. 52, 237-245;
【非特許文献22】Piazza, G. A., Alberts, D. S., Hixson, L. J., Paranka, N. S., Li, H., Finn, T.,Bogert, C, Guillen, J. M., Brendel, K., Gross, P. H., Sped, G., Ritchie, J.,Burt, R. W., Ellsworth, L., Ahnen, D. J.,及び Pamukcu, R.著:(1997) CancerRes. 57, 2909-2915;
【非特許文献23】Rice, P. L., Goldberg, R. J., Ray, E. C, Driggers, L. J., 及び Ahnen, D. J.著:(200l)Camer Res. 61, 1541-1547);
【非特許文献24】NF-_B (21. Kopp, E., 及び Ghosh, S.著:(1994) Science 265, 956-959);
【非特許文献25】p70S6 キナーズ ( Law, B. K., Waltner-Law, M. E., Entingh, A. J., Chytil, A., Aakre, M. E., Norgaard, P., 及び Moses, H. L.著:(2000) J. Biol. Chem. 275, 38261-38267);
【非特許文献26】p21ras シグナリング(Herrmann, C, Block, C, Geisen, C, Haas, K., Weber, C, Winde, G., Moroy, T.,及び Muller, O.著:(1998) Oncogene 17, 1769-1776);
【非特許文献27】Akt/PKB キナーズ (Hsu, A. L., Ching, T. T., Wang, D. S., Song, X., Rangnekar, V. M., 及び Chen, C. S.著:(2000) J. Biol. Chem. 275, 1 1397-1 1403;
【非特許文献28】Parker, P. J., Caudwell, F. B.,及び Cohen, P.著:(1983) Eur. J. Biochem. 130: 227-23444;
【非特許文献29】Castellino RC 及び Durden DL.著: 疾患の機構:PI3K−Akt−PTENシグナリング・ノード−脳腫瘍における血管新生を制御するためのインターセプト点.Nat Clin Pract Neurol. 3(12):682-93, 2007;
【非特許文献30】Blackburn JS, et al.著:マトリックス・メタロプロテイナーゼのRNA干渉阻害は、腫瘍コラゲナーゼ活性及び血管新生を減ずることによって、メラノーマ転移を予防する。Cancer Res. 67(22): 10849-58 2007;
【非特許文献31】Lee, BL., et al.著: Aktによる低酸素誘導因子−1の低酸素非依存性アップレギュレーションは、ヒト胃癌における血管新生を助長するCarcinogenesis. 2007 Nov 4;
【非特許文献32】Arbiser, JL.著:標的指向治療法は進行癌では何故作用していないのかJ. Clin. Invest., 1 17(10): 2762-65, 2007;
【非特許文献33】Ma, WW と Hildalgo, M.著:胃腸癌における新規な分子標的の利用. World J Gastroenterol. 13(44): 5845 - 56,2007。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
[0037]本発明は、プロテインキナーゼ調節を受けやすい血管新生、癌及びそれらに関連した炎症性経路を治療する又は阻害するために用いることができる方法及び組成物に概して関する。より具体的には、本発明は、置換1,3−シクロペンタジオン化合物を用いる方法及び組成物に関する。
【0038】
[0038]本発明の第1実施態様は、それを必要としている哺乳動物においてプロテインキナーゼ調節に応答する癌を治療する方法について記載する。該方法は、置換1,3−シクロペンタジオン化合物の治療有効量を該哺乳動物に投与することを含む。
【0039】
[0039]本発明の第2実施態様は、それを必要としている哺乳動物においてプロテインキナーゼ調節に応答する癌を治療するための組成物について記載する、この場合、該組成物は置換1,3−シクロペンタジオン化合物の治療有効量を含み、該治療有効量は癌関連プロテインキナーゼを調節する。
【0040】
[0040]本発明の第3実施態様は、それを必要としている哺乳動物においてプロテインキナーゼ調節に応答するする血管新生状態を治療する方法について記載する。該方法は、置換1,3−シクロペンタジオン化合物の治療有効量を該哺乳動物に投与することを含む。
【0041】
[0041]本発明のさらなる実施態様は、それを必要としている哺乳動物においてプロテインキナーゼ調節に応答する血管新生状態を治療するための組成物について記載する、この場合、該組成物は、置換1,3−シクロペンタジオン化合物の治療有効量を含み、該治療有効量は血管新生関連プロテインキナーゼを調節する。
【0042】
[0042]別の実施態様は、癌又は血管新生に関連する炎症を調節する方法について記載する。該方法は、置換1,3−シクロペンタジオン化合物の治療有効量を該哺乳動物に投与することを含む。
【0043】
[0043]血管新生又は癌に関連した炎症を治療するための組成物を、本発明の別の実施態様に記載する。この場合、該組成物は置換1,3−シクロペンタジオン化合物の治療有効量を含み、該治療有効量は炎症関連プロテインキナーゼを調節する。
【0044】
[0044]1実施態様では、本発明は、それを必要とする哺乳動物においてプロテインキナーゼ調節に応答する癌又は血管新生状態を治療するための組成物について記載する、前記組成物は、該組成物中の唯一の置換1,3−シクロペンタジオン化合物としてのシス−n−テトラヒドロ−イソα酸(TH5)の治療有効量を含み;該治療有効量は癌関連プロテインキナーゼ又は血管新生関連プロテインキナーゼを調節する。
【0045】
[0045]1実施態様では、本発明は、それを必要とする哺乳動物においてプロテインキナーゼ調節に応答する癌又は血管新生状態を治療するための組成物について記載する、前記組成物は、該組成物中の置換1,3−シクロペンタジオン化合物の1つ以上の(n)類似体及び任意に、置換1,3−シクロペンタジオン化合物の1つ以上の(ad)類似体の治療有効量から本質的に成り;前記治療有効量は癌関連プロテインキナーゼ又は血管新生関連プロテインキナーゼを調節する。
【0046】
[0046]1実施態様では、本発明は、それを必要とする哺乳動物においてプロテインキナーゼ調節に応答する癌又は血管新生状態を治療するための組成物について記載する、前記組成物は、該組成物中の置換1,3−シクロペンタジオン化合物の1つ以上の(co)類似体の治療有効量から本質的に成り;前記治療有効量は癌関連プロテインキナーゼ又は血管新生関連プロテインキナーゼを調節する。
【0047】
[0047]1実施態様では、本発明は、それを必要としている哺乳動物においてプロテインキナーゼ調節に応答する癌又は血管新生状態を治療するための組成物について記載する;前記組成物は置換1,3−シクロペンタジオン化合物の1つのみの類似体の治療有効量を含み;前記治療有効量は癌関連プロテインキナーゼ又は血管新生関連プロテインキナーゼを調節する。
【0048】
[0048]1実施態様では、本発明は、それを必要としている哺乳動物においてプロテインキナーゼ調節に応答する癌又は血管新生状態を治療するための組成物について記載する;前記組成物は、ρ(6S)シスnイソα酸、ρ(6S)シスnイソα酸、ρ(6R)シスnイソα酸、ρ(6R)トランスnイソα酸、ρ(6S)トランスnイソα酸、ρ(6R)シスρnイソα酸、ρ(6S)シスnイソα酸、(6S)トランスρnイソα酸、ρ(6R)トランスnイソα酸、ρ(6S)シスcoイソα酸、ρ(6R)シスcoイソα酸、ρ(6R)トランスcoイソα酸、ρ(6S)トランスcoイソα酸、ρ(6R)シスcoイソα酸、ρ(6S)シスcoイソα酸、ρ(6S)トランスcoイソα酸、 ρ(6R)トランスcoイソα酸、ρ(6S)シスadイソα酸、ρ(6R)シスadイソα酸、ρ(6R)トランスadイソα酸、ρ(6S)トランスadイソα酸、ρ(6R)シスadイソα酸、ρ(6S)シスadイソα酸、ρ(6S)トランスadイソα酸、ρ(6R)トランスadイソα酸、テトラヒドロシスnイソα酸、テトラヒドロトランスnイソα酸、テトラヒドロシスnイソα酸、テトラヒドロトランスnイソα酸、テトラヒドロシスcoイソα酸、テトラヒドロトランスcoイソα酸、テトラヒドロシスcoイソα酸、テトラヒドロトランスcoイソα酸、テトラヒドロシスadイソα酸、テトラヒドロトランスadイソα酸、テトラヒドロシスadイソα酸、テトラヒドロトランスadイソα酸、ヘキサヒドロ(6S)シスnイソα酸、ヘキサヒドロ(6R)シスnイソα酸、ヘキサヒドロ(6R)トランスnイソα酸、ヘキサヒドロ(6S)シスnイソα酸、ヘキサヒドロ(6R)シスnイソα酸、ヘキサヒドロ(6S)シスnイソα酸、ヘキサヒドロ(6S)トランスnイソα酸、ヘキサヒドロ(6R)トランスnイソα酸、ヘキサヒドロ(6S)シスcoイソα酸、ヘキサヒドロ(6R)シスcoイソα酸、ヘキサヒドロ(6R)トランスcoイソα酸、ヘキサヒドロ(6S)トランスcoイソα酸、ヘキサヒドロ(6R)シスcoイソα酸、ヘキサヒドロ(6S)シスcoイソα酸、ヘキサヒドロ(6S)トランスcoイソα酸、ヘキサヒドロ(6R)トランスcoイソα酸、ヘキサヒドロ(6S)シスadイソα酸、ヘキサヒドロ(6R)シスadイソα酸、ヘキサヒドロ(6R)トランスadイソα酸、ヘキサヒドロ(6S)トランスadイソα酸、ヘキサヒドロ(6R)シスadイソα酸、ヘキサヒドロ(6S)シスadイソα酸、ヘキサヒドロ(6S)トランスadイソα酸、ヘキサヒドロ(6R)トランスadイソα酸、ルプロン、コルプロン、アドルプロン、プレルプロン、ポストルプロン、及びキサントフモールから成る群から選択された、1つ以上の置換1,3−シクロペンタジオン化合物を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】[0049]図1は、癌、血管新生及び炎症に関連するNF−κBを調節するキナーゼネットワークの一部を図解的に図示する。
【図2】[0050]図2は、Meta−THcを形成する個々のメンバーの化学的構造を図示する。
【図3】[0051]図3は、Meta−THc組成物の典型的なクロマトグラムを図示する。トップ・パネルは、混合物のMeta−THc成分を含むクロマトグラフィー・ピークを同定するが、その後のパネルは、ピークを構成する単離画分のクロマトグラフィー・プロフィルを示す。
【図4】[0052]図4は、癌、血管新生及び炎症に関連するPI3K及び多種多様なキナーゼに対するMeta−THcの阻害効果を図示する。
【図5】[0053]図5は、Meta−THcによる、LPS活性化RAW264.7細胞におけるPGE及び一酸化窒素産生の阻害をグラフで示す。
【図6】[0054]図6は、Meta−THcによる、RAW264.7細胞におけるCOX−2タンパク質発現の阻害をグラフで示す。
【図7】[0055]図7は、Meta−THcが、予め作製されたCOX−2LPS活性化RAW264.7細胞によるPGE産生を阻害しなかったことを実証するグラフ表示を提供する。
【図8】[0056]図8は、LPS活性化RAW264.7細胞核抽出物におけるNF−κB結合のMeta−THcによる阻害を示す典型的なウェスタンブロット分析を提供する。
【図9】[0057]図9は、SW1353ヒト軟骨肉腫細胞系におけるTNFα及びIL1−β誘導MMP−13発現のMeta−THcによる阻害をグラフで示す。
【図10】[0058]図10は、LPS活性化RAW264.7細胞におけるPGE及び一酸化窒素産生に対するMeta−THc類似体の阻害効果をグラフで表示する。
【図11】[0059]図11は、MAPK1キナーゼに対するMeta−THc類似体の阻害効果を示すグラフ表示を提供する。
【図12】[0060]図12は、炎症関連キナーゼのパネルに対するMeta−THc類似体の阻害効果を示すグラフ表示である。
【図13】[0061]図13は、GSKキナーゼに対するMeta−THc類似体の阻害効果を示すグラフ表示を提供する。
【図14】[0062]図14は、血管新生関連キナーゼArgチロシンキナーゼに対するMeta−THc類似体の効果を示すグラフ表示である。
【図15】[0063]図15は、大腸癌進行に関与するキナーゼのパネルに対するMeta−THc類似体の効果を示す。
【図16】[0064]図16は、リウマチ性関節炎のマウス・モデルにおける関節炎指標に対するMeta−THcの効果をグラフで示す。
【図17】[0065]図17は、HT−29、Caco−2及びSW480大腸癌細胞系の増殖に対するMeta−THc類似体の効果をグラフで示す。
【図18】[0066]図18は、ヒトにおけるMeta−THc940mg摂取後の血清中のMeta−THc検出を経時的にグラフで示す。
【図19】[0067]図19は、血清中の検出可能なMeta−THcのプロフィルを対照と対比して示す。
【図20】[0068]図20は、CYP2C91によるMeta−THcの代謝を示す。
【図21】[0069]図21は、β酸:ルプロン、コルプロン、アドルプロン、プレルプロン及びポストルプロンの化学構造を示す。
【図22】[0070]図22は、キサントフモールの化学構造を示す。
【図23】[0071]図23は、種々なTHs(テトラヒドロイソα酸)のジニ係数を示す。
【図24】[0072]図24は、200を超えるヒト・プロテインキナーゼに対するTH1−7と他のキナーゼ薬物とのジニ係数の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
発明の詳細な説明
[0073]本発明は、一般に、プロテインキナーゼ調節に影響されやすい血管新生、癌及びそれらの関連炎症経路を治療又は阻害するために用いられる方法及び組成物に関する。さらに具体的には、本発明は、置換1,3−シクロペンタジオン化合物を用いる方法及び組成物に関する。
【0051】
[0074]本明細書に引用した特許、公開出願及び科学文献は、当業者の知識を確実なものとして、あたかもそれぞれが具体的かつ個別に援用されることが示唆されるかのように同程度まで、それらの全体で本明細書に援用される。本明細書に引用するあらゆる参考文献と本明細書の具体的な教示との間の如何なるコンフリクトも、後者に有利なように解決されよう。同様に、当該技術分野で理解されている単語又は語句の定義と本明細書で具体的に教示される単語又は語句の定義との間の如何なるコンクリフトも、後者に有利なように解決されよう。
【0052】
[0075]本明細書に使用する技術及び科学の用語は、他に定義されなければ、本発明が関連する当該技術分野の当業者により通常理解される意味を有する。本明細書では、当業者に知られている様々な方法論及び材料を参照する。組換えDNA技術の一般原理を説明する標準の参考資料には、Sambrook et al,,「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス、ニューヨーク(1989);Kaufman et al. 監修「医薬のバイオロジーにおける分子及び細胞の方法の手引き(Handbook of Molecular and Cellular Methods in Biology in Medicine)」CRCプレス、ボカラトン(1995);McPherson 監修「定方向突然変異誘発:実践アプローチ(Directed Mutagenesis: A Practical Approach)」IRLプレス、オックスフォード(1991)が含まれる。薬理学の一般原理を説明する標準の参考資料には、「グッドマン・アンド・ギルマンの治療薬の薬理学的基礎(Goodman and Gilman's The Pharmaceutical Basis of Therapeutics)」第11版、マクグローヒルカンパニーズ社、ニューヨーク(2006)が含まれる。
【0053】
[0076]本明細書と付帯の特許請求項において、単数形には、前後関係が明らかに他のやり方で指定しなければ、複数の指示対象(referents)が含まれる。本明細書で使用するかぎり、単数形の冠詞(「a」、「an」、及び「the」)には、特に、前後関係が明らかに他のやり方で指定しなければ、それらが指示する用語の複数形が含まれる。追加的に、本明細書に使用するかぎり、具体的に他のやり方で指定しなければ、単語「又は(or)」は、「及び/又は」の「包含的な」意味で使用されて、「どちらか一方」の「排他的な」意味では使用しない。用語「約」は、本明細書において、「おおよそ」又は「ほぼ」の範囲で「概ね」を意味するために使用する。用語「約」を数的範囲と一緒に使用する場合、それは、示した数値の上下の境界を広げることによって、その範囲を修飾する。一般に、用語「約」は、本明細書において、述べた数値の上下の数値を20%の変動だけ修飾するために使用する。
【0054】
[0077]本明細書に使用するかぎり、ある変数に対する数的範囲の記載(recitation)は、本発明がその範囲内の数値のいずれにも等しい変数で実施し得ることを伝えるためのものである。このように、本来的に不連続である変数では、変数は、その数的範囲のどの整数値にも等しいことができ、その範囲の末端点も含まれる。同様に、本来的に連続である変数では、変数は、その数的範囲のどの実数値にも等しいことができ、その範囲の末端点も含まれる。例として、0と2の間の数値を有すると記載される変数は、本来的に不連続である変数では、0、1、又は2であり得て、本来的に連続である変数では、0.0、0.1、0.01、0.001、又は任意の他の実数値であることができる。
【0055】
[0078]以下、本発明の特定の態様について詳細に言及する。これら特定の態様に関連して本発明を記載しても、本発明をそのような特定の態様に限定することが意図されるものではないことは理解されよう。むしろ、付帯の特許請求項により定義されるような、本発明の要旨及び範囲内に含まれうるような代替物、修飾物及び同等物を包含することが意図される。以下の記載では、本発明の完全な理解をもたらすために、数多くの特定の詳細を示す。本発明は、これらの特定の詳細の一部又は全部がなくても、実施することが可能である。他の例では、本発明を不必要にわかりにくくしないように、周知のプロセス操作については詳しく記載していない。
【0056】
[0079]本発明の実施には、当業者に知られた、任意の好適な物質及び/又は方法を利用することができる。しかし、好ましい材料及び方法について記載する。以下の記載及び実施例において言及する材料、試薬、等は、他に記載しないかぎり、商業的供給源より入手可能である。
【0057】
[0080]本明細書で使用するかぎり、「疾患関連キナーゼ」は、疾患の直接の原因であるか、又はその活性化が問題の疾患の症状を増悪させることに役立つ経路に関連している、個別のプロテインキナーゼ又はキナーゼの群若しくはファミリーを意味する。
【0058】
[0081]語句「プロテインキナーゼ調節は、対象の健康に有益である」は、キナーゼ調節(アップ又はダウンいずれかのレギュレーション)が疾患の症状を軽減する、予防する、及び/又は逆転させることを生じるか、又は二次治療モダリティの活性を増強する事例を意味する。
【0059】
[0082]語句「プロテインキナーゼ調節に応答する癌」は、本発明の化合物の投与が(a)癌細胞においてキナーゼを直接調節し、該調節が結果として対象の健康に有益な効果(例えば、標的癌細胞にアポトーシス若しくは増殖抑制)を生じる;(b)二次キナーゼを調節し、該調節が対象の健康に有益な効果を生じるキナーゼ調節にカスケードする若しくは該キナーゼ調節を与える;又は(c)調節された標的キナーゼは癌細胞を二次治療モダリティ(例えば、化学療法若しくは放射線療法)に影響されやすいものにするような事例を意味する。
【0060】
[0083]本明細書で使用するかぎり、移行句においても、又は特許請求項の本体においても、用語「含む(comprise(s))」及び「含んでなる(comprising)」は、制限のない意味(an open-ended meaning)を有するものと解釈するべきである。即ち、この用語は、「少なくとも有する」又は「少なくとも包含する」と同義に解釈すべきである。プロセスに関連して使用する場合、用語「含んでなる」は、該プロセスが引用した工程を少なくとも含むが、追加の工程を包含することも可能であることを意味する。化合物又は組成物に関連して使用する場合、用語「含んでなる」は、化合物又は組成物が列挙した特徴又は化合物を少なくとも含むが、付加的な特徴又は化合物をも含むことができることを意味する。
【0061】
[0084]本明細書で使用するかぎり、用語「置換1,3−シクロペンタジオン化合物」は、ジヒドロ−(ρ)イソα酸;テトラヒドロイソα酸;ヘキサヒドロイソα酸;β酸;キサントフモール;それらの個々のの類似体;及びそれらの混合物から成る群から選択される化合物を意味する。置換1,3−シクロペンタジオン化合物は化学的に新規に(de novo)合成する又は天然供給源(例えば、ホップ若しくはホップ化合物)から抽出若しくは誘導することができる。
【0062】
[0085]本明細書で使用するかぎり、用語「誘導体」又は「誘導された」物質は、別の物質に構造的に関連して、理論的にはそれより入手可能な化学物質、即ち、別の物質より作製することができる物質を意味する。誘導体には、化学反応を介して入手される化合物を含めることができる。
【0063】
[0086]本明細書で使用するかぎり、「ジヒドロ−イソα酸」又は「ρ−イソα酸」は、表1に示すような、ρ−イソα酸の類似体(イソフムロン(n−)、イソコフムロン(co−)及びイソアドフムロン(ad−)類似体のシス形及びトランス形を包含する)又はそれらの混合物を意味する。例えば、ρ−イソα酸は、ジヒドロ−イソフムロン、ジヒドロ−イソコフムロン、ジヒドロ−アドフムロンの1つ以上の混合物を意味する。
【0064】
[0087]本明細書で使用するかぎり、「テトラヒドロ−イソα酸」又は「Meta−THc」は、表2に示すような、テトラヒドロ−イソα酸の類似体(イソフムロン(n−)、イソコフムロン(co−)及びイソアドフムロン(ad−)類似体のシス形及びトランス形を包含する)又はそれらの混合物を意味する。例えば、テトラヒドロ−イソα酸又はMeta−THcは、テトラヒドロ−アドフムロン、テトラヒドロ−イソコフムロン、テトラヒドロ−イソフムロンの1つ以上の混合物を意味する。
【0065】
[0088]本明細書で使用するかぎり、「ヘキサヒドロ−イソα酸」は、表3に示すような、ヘキサヒドロ−イソα酸の類似体(イソフムロン(n−)、イソコフムロン(co−)及びイソアドフムロン(ad−)類似体のシス形及びトランス形を包含する)又はそれらの混合物を意味する。例えば、ヘキサヒドロ−イソα酸は、ヘキサヒドロ−イソフムロン、ヘキサヒドロ−イソコフムロン、テトラヒドロ−アドフムロンの1つ以上の混合物を意味する。
【0066】
[0089] 本明細書で使用するかぎり、「β酸」は、ルプロン、コルプロン、アドルプロン、プレルプロン、ポストルプロン又はそれらの類似体の1つ以上の任意の混合物を意味する。
【0067】
[0090]本明細書で使用するかぎり、「テトラヒドロ−イソフムロン」はさらに、表2に示すような、それぞれ(+)−(4R,5S)−3,4−ジヒドロキシ−2−(3−メチルブタノイル)−5−(3−メチルブチル)−4−(4−メチルペンタノイル)シクロペンタ−2−エン−1−オン、(−)−(4S,5S)−3,4−ジヒドロキシ−2−(3−メチルブタノイル)−5−(3−メチルブチル)−4−(4−メチルペンタノイル)シクロペンタ−2−エン−1−オンのシス形及びトランス形又は(n−)化合物を当然意味するであろう。
【0068】
[0091]本明細書で使用する「テトラヒドロ−イソコフムロン」は、表2に示すような、それぞれ(+)−(4R,5S)−3,4−ジヒドロキシ−5−(3−メチルブチル)−4−(4−メチルペンタノイル)−2−(3−メチルプロパノイル)シクロペンタ−2−エン−1−オン、(−)−(4S,5S)−3,4−ジヒドロキシ−5−(3−メチルブチル)−4−(4−メチルペンタノイル)−2−(3−メチルプロパノイル)シクロペンタ−2−エン−1−オンのシス形及びトランス形又は(co−)化合物を意味する。
【0069】
[0092] 本明細書で使用する「テトラヒドロ−アドフムロン」は、表2に示すような、それぞれ(+)−(4R,5S)−3,4−ジヒドロキシ−2−(2−メチルブタノイル)−5−(3−メチルブチル)−4−(4−メチルペンタノイル)シクロペンタ−2−エン−1−オン及び(+)−(4R,5S)−3,4−ジヒドロキシ−5−(3−メチルブチル)−4−(4−メチルペンタノイル)−2−ペンタノイルシクロペンタ−2−エン−1−オンのシス形及びトランス形又は(ad−)化合物を当然意味するであろう。
【0070】
[0093]本明細書で使用するかぎり、「化合物」は、それらの化学構造、化学名又は慣用名のいずれかによって同定することができる。化学構造と化学名又は慣用名が矛盾する場合には、化学構造が化合物のアイデンティティの決定詞になる。本明細書に記載する化合物は、1つ以上のキラル中心及び/又は二重結合を含有することができ、それ故、例えば、二重結合異性体(即ち、幾何異性体)、エナンチオマー又はジアステレオマーのような立体異性体として存在することができる。したがって、本明細書に図示した化学構造は、立体異性体的に純粋な形(例えば、幾何異性体的純粋な、エナンチオマー的純粋な若しくはジアステレオマー的純粋な)並びにエナンチオマー混合物及び立体異性体混合物を含めた、図示した又は同定した化合物のあらゆる可能なエナンチオマー及び立体異性体を包含するものである。エナンチオマー混合物及び立体異性体混合物は、当業者に周知の分離方法又はキラル合成方法を用いて、それらの構成要素のエナンチオマー又は立体異性体に分割することができる。該化合物は、エノール形、ケト形及びそれらの混合物を含めた、幾つかの互変異性体形で存在することもできる。したがって、本明細書に図示した化学構造は、図示した又は同定した化合物のあらゆる可能な互変異性体形を包含する。記載する化合物には、1つ以上の原子が天然で慣用的に見出される原子量とは異なる原子量を有する同位体標識化合物も含まれる。本発明の化合物に組み込むことができる同位体の例には、非限定的に、H、H、13C、14C、15N、18O、17O、等が含まれる。化合物は、非溶媒和形だけでなく、水和形が含まれる溶媒和形において、そしてN−オキシドとして存在することができる。一般に、化合物は、水和形、溶媒和形、又はN−オキシドであることができる。ある種の化合物は、多数の結晶形又は非結晶形で存在することができる。また、本発明の範囲内には、化合物の同属体(congeners)、類似体、加水分解産物、代謝産物、及び前駆体若しくはプロドラッグも包含される。一般に、他に指定しないかぎり、すべての物理形態は、本明細書において考慮する使用について同等であり、本発明の範囲内に含まれるように意図される。
【0071】
[0094]本発明による化合物は、塩として存在することができる。特に、化合物の医薬的に受容される塩が考慮される。本発明の「医薬的に受容される塩」は、本発明の化合物と、該化合物と塩(例えば、本明細書において「Mg」又は「Mag」として示されるマグネシウム塩)を形成し、治療条件下の対象により耐容される酸又は塩基のいずれかとの組合せである。一般に、本発明の化合物の医薬的に受容される塩は、1以上の治療指数(最低有毒量の最低治療有効量に対する比)を有するものである。当業者は、最低治療有効量が対象毎に、そして適応症毎に変動するので、それに応じて調整されるものであることを理解するであろう。
【0072】
[0095]本発明による化合物は、、周知の医薬的に受容されるキャリヤー(希釈剤及び賦形剤を包含する)のいずれとも一緒に、医薬的に受容されるビヒクル中で任意に製剤化される[Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Gennaro, Mack Publishing Co., Easton, PA 1990 and Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott, Williams & Wilkins, 1995参照]。本発明の組成物を作製するのに用いられる、医薬的に受容されるキャリヤー/ビヒクルの種類は、該組成物の哺乳動物への投与の形式に依存して変化するものであるが、一般には、医薬的に受容されるキャリヤーは、生理学的に不活性であり、無毒である。本発明による組成物の製剤は、本発明の化合物の1つより多い種類、並びに治療される症状/状態の治療に有用な他のあらゆる薬理学的に有効な成分を含有することができる。
【0073】
表1
ρジヒドロ−イソα酸
【0074】
【化1】

【0075】
【化2】

【0076】
【化3】

【0077】
【化4】

【0078】
表2
テトラヒドロ−イソα酸
【0079】
【化5】

【0080】
【化6】

【0081】
表3
ヘキサヒドロ−イソα酸
【0082】
【化7】

【0083】
【化8】

【0084】
【化9】

【0085】
[0096]用語「調節する(modulate)」又は「調節(modfulation)]は、本明細書では、酵素の発現又は活性をそれに関連する化合物、成分、等によりアップ又はダウンレギュレーションすることを意味するために用いられる。
【0086】
[0097]本明細書に使用するかぎり、用語「プロテインキナーゼ」は、ドナー分子由来のリン酸基をタンパク質のアミノ酸残基へ移すことができるトランスフェラーゼ・クラスの酵素を表す。プロテインキナーゼとファミリー/群の命名法の詳細な考察については、その全体で本明細書に援用される、Kostich, M., el ah, Human Members of the Eukaryotic Protein Kinase Family, Genome Biology 3(9):researchOO43.1-0043.12, 2002 を参照のこと。
【0087】
[0098]キナーゼの典型的な、非限定的例は、Abl, Abl(T3151), ALK, ALK4, AMPK, Arg, Arg, ARK5, ASKl, Aurora-A, Axl, Blk, Bmx, BRK, BrSKl , BrSK2, BTK, CaMKI, CaMKII, CaMKIV, CDKl/cyclinB, CDK2/cyclinA, CDK2/cyclinE, CDK3/cyclinE, CDK5/p25, CDK5/p35, CDK6/cyclinD3, CDK7/cyclinH/MATl, CDK9/cyclin Tl, CHKl, CHK2, CKl(y), CK1δ, CK2, CK2α2, cKit(D816V), cKit, c-RAF, CSK, cSRC, DAPKl , DAPK2, DDR2, DMPK, DRAKl , DYRK2, EGFR, EGFR(L858R), EGFR(L861Q), EphAl, EphA2, EphA3, EphA4, EphA5, EphA7, EphA8, EphBl, EphB2, EphB3, EphB4, ErbB4, Fer, Fes, FGFRl , FGFR2, FGFR3, FGFR4, Fgr, Fltl , Flt3(D835Y), Flt3, Flt4, Fms, Fyn, GSK3β, GSK3α, Hck, HIPKl, HIPK2, HIPK3, IGF-1R, IKKβ, IKKα, IR, IRAKI , IRAK4, IRR, ITK , JAK2, JAK3, JNKlαl , JNK2α2, JNK3, KDR, Lck, LIMKl, LKBl, LOK, Lyn, Lyn, MAPKl, MAPK2, MAPK2, MAPKAP-K2, MAPKAP-K3, MARK l, MEKl, MELK, Met, MINK, MKK4, MKK6, MKK7β, MLCK, MLKl, Mnk2, MRCKβ, MRCKα, MSKl, MSK2, MSSKl, MSTl , MST2, MST3, MuSK, NEK2, NEK3, NEK6, NEK7, NLK , p70S6K, PAK2, PAK3, PAK4, PAK6, PAR-lBα, PDGFRβ, PDGFRα, PDKl, PI3Kβ, PI3Kδ, PI3Kγ, Pim-1, Pim-2, PKA(b), PKA, PKBβ, PKBα, PKBγ, PKCμ, PKCβI, PKCβII, PKCα, PKCγ, PKCδ, PKCε, PKCζ, PKCη, PKCθ, PKCι, PKD2, PKGlβ, PKGlα, Plk3, PRAK, PRK2, PrKX, PTK5, Pyk2, Ret, RIPK2, ROCK-I, ROCK-II, ROCK-II, Ron, Ros, Rse, Rskl, Rskl, Rsk2, Rsk3, SAPK2a, SAPK2a(T106M), SAPK2b, SAPK3, SAPK4, SGK, SGK2, SGK3, SIK, Snk, SRPKl, SRPK2, STK33, Syk, TAKl, TBKl, Tie2, TrkA, TrkB, TSSKl, TSSK2, WNK2, WNK3, Yes, ZAP-70, ZIPKを包含する。幾つかの実施態様では、該キナ−ゼは ALK, Aurora-A, Axl, CDK9/cyclin Tl, DAPKl, DAPK2, Fer, FGFR4, GSK3β, GSK3α, Hck, JNK2α2, MSK2, p70S6K, PAK3, PI3Kδ, PI3Kγ, PKA, PKBβ, PKBα, Rse, Rsk2, Syk, TrkA,及びTSSKlであることができる。さらに他の実施態様では、該キナーゼは、ABL, AKT, AURORA, CDK, DBF2/20, EGFR, EPH/ELK/ECK, ERK/MAPKFGFR, GSK3, IKKB, INSR, JAK DOM 1/2, MARK/PRKAA, MEK/STE7, MEKK/STE1 1 , MLK, mTOR, PAK/STE20, PDGFR, PI3K, PKC, POLO, SRC, TEC/ATK,及び ZAP/SYKから成る群から選択される。
【0088】
[0099]本発明の方法及び組成物は、本発明の方法の利益を享受する可能性がある、如何なる哺乳動物による使用のためにも意図される。そのような哺乳動物の中で最も重要なのはヒトであるが、本発明は、そのように限定されることを意図せず、獣医学の使用に適用可能である。このように、本発明によれば、「哺乳動物」又は「必要としている哺乳動物」には、ヒトだけでなく非ヒト哺乳動物、特に、非限定的に、ネコ、イヌ、及びウマを含めた家畜動物が包含される。
【0089】
[00100]本明細書で使用するかぎり、「癌」は、未分化細胞(anaplastic cells)の増殖を特徴とする、種々な良性若しくは悪性の新生物のいずれをも意味し、該未分化細胞は、悪性の場合には、周囲組織に浸潤して、新たな身体部位に転移する。本発明の範囲内で考慮される、癌の典型的な非限定的例は、脳癌、乳癌、大腸癌、腎臓癌、白血病、肝臓癌、肺癌、及び前立腺癌を包含する。本発明の範囲内で考慮される、癌関連プロテインキナーゼの典型的な非限定的例は、ABL, AKT, AMPK, Aurora, BRK, CDK, CHK, EGFR, ERB, FGFR, IGFR, KIT, MAPK, mTOR, PDGFR, PI3K, PKC,及び SRCを包含する。
【0090】
[00101]用語「血管新生」は、新しい血管の成長−身体内で生じる重要な自然のプロセスを意味する。多くの重篤な疾患状態において、身体は血管新生を制御することができず、時には病的な血管新生として知られる状態になる。新しい血管が過剰に成長すると、血管新生依存性疾患が生じる。血管新生関連障害の例は、慢性炎症(例えば、リウマチ性関節炎若しくはクローン病)、糖尿病(例えば、糖尿病性網膜症)、黄斑変性、乾癬、子宮内膜症、眼障害及び癌を包含する。「眼障害」(例えば、角膜及び網膜の新血管新生)は、発育異常、疾患、損傷、年齢又は毒素に由来する、眼の構造又は機能の障害を意味する。本発明の範囲内で考慮される、眼障害の典型的な非限定的例は、網膜症、黄斑変性、又は糖尿病性網膜症を包含する。眼障害関連キナーゼは、非限定的に、AMPK, Aurora, EPH, ERB, ERK, FMS, IGFR, MEK, PDGFR, PI3K, PKC, SRC, 及び VEGFRを包含する。
【0091】
[00102]病的な血管新生に関連する又は.病的な血管新生に由来する又は新血管新生によって促進される、如何なる状態又は障害(例えば、新血管新生に依存する腫瘍)も、置換1,3−シクロペンタジオン化合物による治療を受け入れることができる。
【0092】
[00103]治療を受け入れることができる状態及び障害は、非限定的に、癌;増殖性網膜症(例えば、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑障害、後水晶体線維増殖症);慢性関節炎に見られるような、過剰な血管結合組織増殖;乾癬;及び血管形成異常(例えば、血管腫)等を包含する。
【0093】
[00104]本発明の組成物及び方法は、原発性及び転移性の両方の充実性腫瘍(癌腫、肉腫、白血病及びリンパ腫を包含する)の治療に有用である。血管新生の部位に生じる腫瘍の治療が興味深い。このように、該方法は、非限定的に、胸部、結腸、直腸、肺、中咽頭、下咽頭、食道、胃、膵臓、肝臓、胆嚢と胆管、小腸、尿路(腎臓、膀胱及び尿路上皮を包含する)、女性生殖管(子宮頸管、子宮及び卵巣並びに絨毛癌及び妊娠性トロホブラスト疾患を包含する)、男性生殖管(前立腺、精嚢、精巣及び胚細胞腫瘍を包含する)、内分泌腺(甲状腺、副腎及び下垂体を包含する)及び皮膚の癌腫、並びに血管腫、メラノーマ、肉腫(骨及び軟組織から生じる肉腫並びにカポジ肉腫)及び脳、神経、眼及び髄膜の腫瘍(星状細胞腫、神経膠腫、神経膠芽腫、網膜芽細胞腫、神経細胞腫、神経芽細胞腫、シュワン細胞腫及び髄膜腫を包含する)を含めた、あらゆる新生物の治療に有用である。本発明の方法はさらに、例えば白血病のような造血器悪性腫瘍(即ち、緑色腫、プラズマ細胞腫、及び菌状息肉腫のプラークと腫瘍及び皮膚T細胞リンパ腫/白血病)から生じる充実性腫瘍の治療のため並びにリンパ腫(ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の両方)の治療にも有用である。さらに、本発明の方法は、単独で用いた場合又は放射線療法、他の化学療法及び/又は抗血管新生剤と組み合わせて場合のいずれにしろ、上記腫瘍からの転移を低減するために有用である。
【0094】
[00105]本明細書で使用するかぎり、「治療する」とは、本発明の化合物を投与された個人の症状を、本発明によって治療されなかった個人の症状と比較して、緩和する、予防する及び/又は逆転することを意味する。本明細書に記載する化合物、組成物及び方法は、その後の療法を決定するために熟練した開業医(医師又は獣医)によって臨床的評価を続けながら、用いるべきであることを開業医は理解するであろう。そのため、開業医は、治療後に、肺の炎症の治療に何らかの改善があるか否かを標準的方法論に従って評価するであろう。このような評価は、特定の治療用量、投与形式等を増大する、軽減する又は続けるかどうかの評価を助けて、知識を与えるであろう。
【0095】
[00106]本発明の化合物を投与される対象が特定の外傷性状態(traumatic state)に苦しむ必要がないことは、理解されるであろう。実際に、本発明の化合物は、症状が発現する前に、予防的に投与することができる。用語「治療的」、「治療的に」及びこれらの用語の置換は、治療的、緩和的並びに予防的使用を包含するために用いられる。従って、本明細書で使用するかぎり、「症状を治療する又は緩和すること」は、本発明の化合物が投与された個人の症状を、そのような投与を受けていない個人の症状と比較して、抑制する、予防する、及び/又は逆転させることを意味する。
【0096】
[00107]用語「医薬的に受容される」は、本発明の化合物が、該組成物の他の成分と適合して、そのレシピエントに有害でないという意味で用いられる。
【0097】
[00108]用語「治療有効量」は、求める治療結果を達成するのに有効な投与量での治療を示すために用いられる。さらに、当業者は、本発明の化合物の治療有効量は、微調整によって、及び/又は本発明の化合物の1つより多くを投与することによって、又は本発明の化合物を別の化合物とともに投与することによって低下又は増加させてよいことを理解するであろう。例えば、Meiner, C. L.「臨床治験:設計、実施、及び解析(Clinical Trials: Design, Conduct, and Analysis)」疫学及び生物統計学の研究論文(Monographs in Epidemiology and Biostatistics)第8巻、オックスフォード大学出版局、アメリカ(1986)を参照のこと。それ故、本発明は、所与の哺乳動物に固有の、特別な緊急事態(particular exigencies)に合わせて投与/治療を調整するための方法を提供する。以下の実施例に例示するように、治療有効量は、例えば、比較的少ない量で開始することによって、そして有益な効果を同時に評価しながら、段階的に増加することによって経験的に容易に決定することができる。
【0098】
[00109]当業者には、本発明による化合物の投与の回数は、例えば、年齢、体重、及び該哺乳動物の状態、及び選択する投与経路といったような、他の臨床要因を包含する、任意の所与時点におけるその患者の特別な医学的状態に基づいて、患者毎に変動するものであることが理解されよう。
【0099】
[00110]本明細書で使用するかぎり、「症状」は、患者により体験されて、特別な疾患に関連している、身体機能のあらゆる感覚又は変化、即ち、「X」に付随して、「X」の存在の指標とみなされるものを意味する。症状が、疾患毎に、又は状態毎に変化するものであることは認められて、理解される。非限定的な例を挙げれば、自己免疫障害に関連した症状には、疲労、眠気、不定愁訴、臓器若しくは組織の大きさの増加(例えば、グレイブス病における甲状腺肥大)、又は臓器若しくは組織の機能低下をもたらす臓器若しくは組織の破壊(例えば、糖尿病では、膵臓の島細胞が破壊される)が含まれる。
【0100】
[00111]本明細書に使用する「炎症」又は「炎症状態」は、毛細血管拡張、白血球浸潤、発赤、発熱、疼痛、腫脹、及びしばしば機能喪失を特徴として、有害な作用体や傷害された組織の排除を始動させる機序として役立つ、細胞損傷に対する局所応答を意味する。炎症又は炎症状態の代表的な症状には、関節に限定すれば、発赤、触ると温かい腫脹関節、関節の疼痛及び硬直、及び関節機能の損失が含まれる。全身性の炎症応答は、例えば、発熱、悪寒、疲労/体力喪失、頭痛、食欲喪失、及び筋肉硬直のような、「風邪様の(flu-like)」症状をもたらす可能性がある。
【0101】
[00112]本発明の第1態様は、それを必要とする哺乳動物におけるプロテインキナーゼ調節に応答する癌の治療方法を提供する、この場合、該方法は、該哺乳動物に置換1,3−シクロペンタジオン化合物の治療有効量を投与することを含む。本発明の幾つかの実施態様では、置換1,3−シクロペンタジオン化合物は、ジヒドロ−(ρ)イソα酸;テトラヒドロイソα酸;ヘキサヒドロイソα酸;β酸;それらの個々の類似体;及びそれらの混合物から成る群から選択される。この態様の他の実施態様では、置換1,3−シクロペンタジオン化合物は、テトラヒドロ−イソフムロン、テトラヒドロ−イソコフムロン、及びテトラヒドロ−アドフムロンから成る群から選択される。
【0102】
[00113] この態様の他の実施態様では、調節されるプロテインキナーゼは、Abl(T315I), Aurora-A, Bmx, BTK, CaMKI, CaMKIδ, CDK2/cyclinA, CDK3/cyclinE, CDK9/cyclin Tl, CKl (y), CKlγl, CKlγ2, CKlγ3, CKlδ, cSRC, DAPKl, DAPK2, DRAKl, EphA2, EphA8, Fer, FGFR2, FGFR3, Fgr, Flt4, JNK3, PI3K, Pim-1 , Pim-2, PKA, PKA(b), PKBβ, PKBα, PKBγ, PRAK, PrKX, Ron, Rskl, Rsk2, SGK2, Syk, Tie2, TrkA, 及びTrkBから成る群から選択される。
【0103】
[00114]さらに他の実施態様では、キナーゼ調節に応答する癌は、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、大腸癌、肺癌、リンパ腫、メラノーマ、前立腺癌、甲状腺癌、及び子宮癌から成る群から選択される。本発明の方法によって治療可能な、他の癌種類は、上述してある。
【0104】
[00115]本発明の第2態様は、それを必要とする哺乳動物におけるプロテインキナーゼ調節に応答する血管新生状態を治療する方法について記載する。該方法は、該哺乳動物に置換1,3−シクロペンタジオン化合物の治療有効量を投与することを含む。本発明の幾つかの実施態様では、置換1,3−シクロペンタジオン化合物は、ジヒドロ−(ρ)イソα酸;テトラヒドロイソα酸;ヘキサヒドロイソα酸;β酸;それらの個々の類似体;及びそれらの混合物から成る群から選択される。この態様の他の実施態様では、置換1,3−シクロペンタジオン化合物は、テトラヒドロ−イソフムロン、テトラヒドロ−イソコフムロン、及びテトラヒドロ−アドフムロンから成る群から選択される。
【0105】
[00116]この態様の1実施態様では、調節されるプロテインキナーゼは、非限定的に、ATK, MAPK, PRAK, PI3K, PKC, GSK, FGFR, BTK, PDK, SYK, MSK 及び IKKbを包含する、血管新生の制御に関連したプロテインキナーゼである。
【0106】
[00117]この第2態様の別の実施態様では、該方法は一般に、哺乳動物に血管新生を低減するための有効量で置換1,3−シクロペンタジオン化合物を投与することを含む。in vivoで血管新生を低減するための有効量は、治療されない(例えば、プラセボ治療された)対照に比較して、血管新生を少なくとも約5%〜100%低減する任意の量である。
【0107】
[00118]血管新生が低減されるかどうかは、任意の既知方法を用いて、判断することができる。血管新生に対する作用剤の効果を判断する方法は、当該技術分野で知られており、このような方法には、非限定的に、血管形成因子と共に植え付けられた移植片中への新血管新生の阻害;角膜若しくは前眼房における血管成長の阻害;in vitroでの内皮細胞の増殖、遊走若しくは管形成の阻害;ニワトリ絨毛尿膜アッセイ;ハムスター頬嚢(cheek pouch)アッセイ;ポリビニルアルコール・スポンジディスク・アッセイが包含される。このようなアッセイは当該技術分野で周知であり、例えば、Auerbach et al. (Pharmacol. Ther. 51(1): 1-1 1(1991))及びこれに引用された参考文献を含めた、多くの刊行物に記載されている。
【0108】
[00119]本発明の第1態様及び第2態様の両方に関する別の実施態様では、本発明はさらに、病的な血管新生に関連した又は病的な血管新生に起因する状態又は障害の治療方法を提供する。癌療法に関連して、本発明の方法による血管新生の低減は、腫瘍サイズの縮小及び腫瘍転移の減少をもたらす。腫瘍サイズの縮小が達成されるかどうかは、例えば、標準的映像方法のような方法を用いて腫瘍のサイズを測定することによって決定することができる。転移が減少するかどうかは、任意の既知方法を用いて知ることができる。腫瘍サイズに対する作用剤の効果を評価する方法は、周知であり、例えば、コンピューター化断層撮影方法及び磁気共鳴映像方法のような映像方法を包含する。この実施態様によると、置換1,3−シクロペンタジオン化合物の有効量をそれを必要とする哺乳動物に投与して、治療されない(例えば、プラセボ治療された)対照に比較して、in vivoで腫瘍サイズの少なくとも約5%以上の縮小を生じる。
【0109】
[00120]本発明の第3態様は、癌又は血管新生に関連した炎症を調節する方法について記載する。該方法は、哺乳動物に置換1,3−シクロペンタジオン化合物の治療有効量を投与することを含む。1実施態様では、置換1,3−シクロペンタジオン化合物の有効量をそれを必要とする哺乳動物に投与して、治療されない(例えば、プラセボ治療された)対照に比較して、炎症又は炎症関連症状(例えば、疼痛)の少なくとも約10%以上の緩和を生じる。炎症の緩和が達成されたかどうかは、例えば、臨床的観察によって、或いはPGE、一酸化窒素又は炎症の種々なDNA若しくはタンパク質マーカーの調節又は阻害を測定することによって判断することができる。
【0110】
[00121]本発明の第4態様は、それを必要とする哺乳動物においてプロテインキナーゼ調節に応答する若しくは影響されやすい血管新生、癌及び/又はそれらの関連炎症経路を治療する又は阻害する組成物について記載する。該組成物は、置換1,3−シクロペンタジオン化合物の治療有効量を含み;この場合、該治療有効量が血管新生関連プロテインキナーゼ、癌関連プロテインキナーゼ及び/又は炎症関連プロテインキナーゼを調節する。本発明のこの態様の幾つかの実施態様では、ジヒドロ−(ρ)−イソα酸;テトラヒドロイソα酸;ヘキサヒドロイソα酸;β酸;それらの個々の類似体;及びそれらの混合物から成る群から、置換1,3−シクロペンタジオン化合物を選択する。この態様の他の実施態様では、テトラヒドロ−イソフムロン、テトラヒドロ−イソコフムロン、及びテトラヒドロ−アドフムロンから成る群から、置換1,3−シクロペンタジオン化合物を選択する。
【0111】
[00122]この態様に用いる組成物は、アンチオキシダント、ビタミン、ミネラル、タンパク質、脂肪及び炭水化物から成る群から選択される1つ以上のメンバー、又はコーティング、等張剤、吸収遅延剤、結合剤、接着剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、フレーバー剤、甘味剤、吸収剤(absorbants)、界面活性剤及び乳化剤から成る群から選択される、医薬的に受容される賦形剤をさらに含むことができる。
【0112】
[00123]この第4態様の他の実施態様では、該組成物は、コーティング、等張剤、吸収遅延剤、結合剤、接着剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、フレーバー剤、甘味剤、吸収剤、界面活性剤及び乳化剤から成る群から選択される、医薬的に受容される賦形剤をさらに含む。
【0113】
[00124]本発明の方法を実施するには、上記化合物を経口的に、非経口的に、吸入スプレーによって、局所的に、直腸から、鼻腔から、膣から、又は埋め込みリザーバー(an implanted reservoir)を介して投与することができる。
【0114】
[00125]経口投与用組成物は、非限定的に、カプセル剤、錠剤、粉末、エマルジョン並びに水性懸濁液、分散系及び溶液を包含する、任意の経口的に受容される投与形であってよい。経口用の錠剤の場合には、一般に用いられるキャリヤーは、ラクトース及びコーンスターチを包含する。例えば、ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤も、典型的に加えられる。カプセル形での経口投与のためには、有用な希釈剤はラクトース及び乾燥コーンスターチを包含する。水性懸濁液又はエマルジョンを経口投与する場合は、有効成分を油相中に乳化剤又は懸濁化剤と共に懸濁又は溶解させることができる。必要な場合には、ある種の甘味剤、フレーバー剤又は着色剤を加えることができる。
【0115】
[00126]治療用組成物中のキャリヤーは、該組成物の有効成分と適合可能である(そして好ましくは、該組成物を安定化することができる)そして治療される対象に有害でない意味で「受容可能」でなければならない。例えば、1,3−シクロペンタジオン化合物と特有の高溶解性複合体を形成する可溶化剤(例えば、シクロデキストリン)又は1種類以上の可溶化剤を、融合二環式複素環式化合物をデリバリーするための医薬的賦形剤として用いることができる。他のキャリヤーの例には、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、ラウリル硫酸ナトリウム及びD&C Yellow#10が包含される。
【0116】
[00127]本発明に関連して対象、特にヒトへの本発明の置換1,3−シクロペンタジオン化合物の投与量は、対象における血管新生、腫瘍サイズ/進行又は炎症を妥当な期間にわたって治療的に緩和するために充分であるべきである。該投与量は、他にも考慮すべき事柄があるが、用いる特定の置換1,3−シクロペンタジオン化合物の効力、対象の状態並びに治療される対象の体重によって、決定されるであろう。
【0117】
[00128]例えば、血管新生の低減における置換1,3−シクロペンタジオン化合物の有効量を決定するには、投与経路、放出系(例えば、ピル、ゲル又は他のマトリックス)の動力学及び置換1,3−シクロペンタジオン化合物の効力が、所望の血管新生抑制効果を不利な副作用を最少にして達成するために考慮される。置換1,3−シクロペンタジオン化合物は、治療される対象に、該治療される対象の臨床状態に合わせて、典型的に1日から数週間までの範囲の期間にわたって投与される。
【0118】
[00129]当業者に容易に明らかであるように、置換1,3−シクロペンタジオン化合物の投与量は、標準(standard)に比較した、それらの効力(potency)及び/又は有効性(efficacy)に従って調節される。例えば、実施例17を参照のこと。投与量は、1日に1〜20回と仮定して、約0.01mg〜1000mg、又は約0.1〜100mg、又は約0.5〜50mg、又は約1〜25mgの範囲内であることができ、そして約0.1mg〜10000mgの総1日量に至るまでであることができる。全身効果のために局所適用する場合には、約0.01mg〜1000mg、又は約0.1〜100mg、又は約0.5〜50mg、又は約1〜25mgの範囲内の用量を全身デリバリーするように、パッチ又はクリームを設計する。局所用製剤(例えば、クリーム)の目的が、局所的な血管新生抑制効果を与えるためである場合には、該用量は、一般に、約0.001mg〜10mg又は約0.01〜10mg又は約0.1mg〜10mgの範囲内である。
【0119】
[00130]投与経路に関係なく、置換1,3−シクロペンタジオン化合物の用量を適当な期間にわたって、例えば、1〜24時間の間に、1日〜数日間、等にわたって、投与することができる。さらに、複数の用量を、選択した期間にわたって投与することができる。適当な用量を1日当たりの適当な分割用量(subdoses)で、特に予防的投与計画では、投与することができる。正確な治療レベルは、治療される対象の反応に依存するであろう。
【0120】
[00131]本発明の全ての態様に係わる幾つかの実施態様では、置換1,3−シクロペンタジオン化合物を単独で、又は1つ以上の他の置換1,3−シクロペンタジオン及び/又は他の治療剤(血管新生の阻害剤を包含する);及び任意に癌化学療法剤との組み合わせ療法で投与する。
【0121】
[00132]1実施態様では、組成物中の唯一の置換1,3−シクロペンタジオン化合物として、置換1,3−シクロペンタジオン化合物の個々の(n)、(co)及び(ad)類似体の1つ以上を含有する組成物の有効量を、それを必要とする哺乳動物に投与する。置換1,3−シクロペンタジオン化合物の(n)、(co)及び(ad)類似体は表1〜3に表示する。例えば、組成物は、組成物中の唯一の置換1,3−シクロペンタジオン化合物として、TH5((n)類似体)のみを含むことができる。別の組成物は、組成物中の唯一の置換1,3−シクロペンタジオン化合物として、シス−TH5及びトランス−TH7(両方ともテトラヒドロ−イソα酸の(n)類似体)を含むことができる。別の組成物は、組成物中の唯一の置換1,3−シクロペンタジオン化合物として、TH1及びTH2(両方ともテトラヒドロ−イソα酸の(co)類似体)を含むことができる。別の組成物は、組成物中の唯一の置換1,3−シクロペンタジオン化合物として、TH4及びTH6(両方ともテトラヒドロ−イソα酸の(ad)類似体)を含むことができる。図2は、TH化合物の化学構造を示す。
【0122】
[00133]別の実施態様では、置換1,3−シクロペンタジオン化合物の1つ以上の(n)類似体を含有する組成物の有効量を、置換1,3−シクロペンタジオン化合物の1つ以上の(ad)類似体と組み合わせて、本発明の方法に従って投与する。例えば、組成物は、TH4((ad)類似体)とTH5((n)類似体)を含むことができる。100μg/mlでのTH4とTH5がBMXキナーゼをほぼ完全に阻害することが判明している。他の組成物は、TH5とTH6;TH7とTH4;及びTH7とTH6を含有することができる。
【0123】
[00134]組成物中に置換1,3−シクロペンタジオン化合物の1つ以上の類似体を用いることの利点は、一定の標的に対して活性の低い類似体を用いることの有害な副作用なしに、特定の類似体の高用量を用いることができることである。別の利点は、選択性又は特異性が達成されることである。例えば、テトラヒドロ−イソコフムロン(即ち、TH1)は、動物とin vitro炎症モデルの両方においてあまり好ましくない。しかし、TH1とTH2は、ある一定の癌の治療において、高いジニ係数(図23〜24参照)を有するために、より特異的であり、好ましい。ジニ係数は、キナーゼのパネルに対するキナーゼ阻害剤の選択性の尺度である(Craczyk P., J Med Chem. Nov. 15:50(23)5773-9 (2007))。簡単に説明すると、非選択性阻害剤は、零に近いジニ係数を特徴とするが、高選択性化合物は、1に近いジニ係数を示す。さらに、TH4とTH5はBMXの阻害において100μg/mlで高活性である(BMXをほぼ完全に阻害する)が、TH1、TH2はこれに比べて約50%の活性を有することが観察されている。これと同じタイプの選択性がTRKB, PrKX, CKl delta, BTK, JAK3, RSK l, CDK2/cyclinE, EGFR(L858R), NEK, PKB β, Arg, Src(l- 530), TrkA, Rsk4に関しても観察される。さらに、図23に示すように、TH7のジニ係数プロフィルは中程度であるが、TH7は、該投与量範囲にわたって、TH4及びTH5によく似た作用を有することが観察されている。TH1〜7のジニ係数はまた、抗癌性薬物又は血管新生抑制薬物として機能することが知られた化合物類のジニ係数と比較されている(図24)。これらのデータはさらに、TH1〜7が個々に、それらの混合物であるTHIAAよりも高選択性のプロテインキナーゼ阻害剤であることを示している。置換1,3−シクロペンタジオン化合物の2つ以上の類似体の組成物を用いることの別の利点は、単独のみの類似体を用いる場合よりも多くのキナーゼ標的を調節すること(modulation of more kinase targets)である。
【0124】
[00135]したがって、本発明の全ての態様に係わる幾つかの実施態様では、置換1,3−シクロペンタジオン化合物の類似体の下記典型的な組み合わせを検討する、これらの組み合わせは、各組み合わせの後ろの括弧内に記入した利点を有すると期待される:(i)テトラヒドロ−イソフムロン シスとトランス:TH5+TH7(利点:多くの標的);(ii)テトラヒドロ−イソアドフムロン シスとトランス:TH4+TH6(利点:多くの標的);(iii)(n)ファミリーと(ad)ファミリー:TH5+TH4;TH5+TH6;TH7+TH4;TH7+TH6(利点:多くの標的);(iv)テトラヒドロ−イソコフムロン シスとトランス:TH1+TH2(利点:高いジニ係数);及び(v)(n)ファミリーと(co)ファミリー:TH1+TH5;TH2+TH5;TH1+TH7;TH2+TH7(利点:多くの標的)。
【0125】
[00136]他の組み合わせ療法に関しては、本発明の置換1,3−シクロペンタジオン化合物を、非限定的に、アルキル化剤(例えば、シスプラチン、シクロホスファミド、アルトレタミン);DNA鎖破壊剤(例えば、ブレオマイシン);DNAトポイソメラーゼII阻害剤(インターカレーター、例えば、アムサクリン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン及びミトキサントロンを包含する);非インターカレーティング・トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド及びテニポシド);DNAマイナーグルーブバインダー プリカマイシン;アルキル化薬(ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、シクロホスファミド、イソファミド、メクロルエタミン、メルファラン、ウラシルマスタードを包含する);アジリジン(例えば、チオテーパ);メタンスルホネートエステル(例えば、ブスルファン);ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン);白金錯体(例えば、シスプラチン、カルボプラチン);生体内還元性アルキレーター(例えば、マイトマイシン、プロカルバジン、ダカルバジン及びアルトレタミン);代謝拮抗薬(例えば、メトトレキセート及びトリメトレキセートのような葉酸拮抗薬を包含する);ピリミジン拮抗薬(例えば、フルオロウラシル、フルオロデオキシウリジン、CB3717、アザシチジン、シタラビン);フロクスウリジン・プリン拮抗薬(メルカプトプリン、6−チオグアニン、フルダラビン、ペントスタチンを包含する);糖改質類似物質(シクトラビン、フルダラビンを包含する);リボヌクレオチド還元酵素阻害剤(ヒドロキシ尿素を包含する);チューブリン相互作用剤(ビンクリスチン、ビンブラスチン及びパクリタキセルを包含する);副腎コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン、デクサメタゾン、メチルプレドニゾロン及びプロドニゾロン);ホルモン遮断薬(エストロゲン、結合型エストロゲン、エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベステロール、クロロトリアニセン及びイデネストロールを包含する);プロゲスチン(例えば、ヒドロキシプロゲステロン カプロエート、メドロキシプロゲステロン及びメゲストロール);アンドロゲン(例えば、テストステロン、テストステロン プロピオネート); フルオキシメステロン、メチルテストステロン エストロゲン、結合型エストロゲン及びエチニルエストラジオール及びジエチルスチルベステロール、クロロトリアニセン及びイデネストロール;プロゲスチン(例えば、ヒドロキシプロゲステロン カプロエート、メドロキシプロゲステロン及びメゲストロール);アンドロゲン(例えば、テストステロン、テストステロン プロピオネート); フルオキシメステロン、メチルテストステロン;等を包含する適当な化学療法剤と組み合わせて用いることができる。
【0126】
[00137]置換1,3−シクロペンタジオン化合物は、他の血管新生抑制剤と組み合わせて投与することができる。さらに、本発明の置換1,3−シクロペンタジオン化合物は、非限定的に、血管新生抑制ステロイド(例えば、ヘパリン誘導体及びグルココルチコステロイド);トロンボスポンジン;サイトカイン(例えば、IL−12);フマギリンとその合成誘導体(例えば、AGM12470);インターフェロン−α;エンドスタチン;溶解性成長因子受容体;成長因子に指向される中和モノクローナル抗体;等を包含する血管新生抑制剤と組み合わせて用いることができる。
【0127】
[00138]下記実施例は、本発明のある一定の好ましい実施態様を詳しく説明することを意図するものであり、本発明を決して限定するものではない。当業者は、定型的な実験だけを使用して、本明細書に記載の特定の物質及び手順に対する数多くの同等物を認識するか、又は確認することができるであろう。
【実施例1】
【0128】
プロテインキナーゼに対するMeta−THcの効果
[00139]上述したように、キナーゼは、リン酸基をドナー分子(通常は、ATP)からタンパク質(通常は、スレオニン、セリン又はチロシン)のアミノ酸残基に移す、転移酵素クラスの酵素を意味する。キナーゼは、酵素制御のためのシグナル伝達に用いられる、即ち、これらは、例えば、コレステロール生合成、アミノ酸形質転換又はグリコーゲン代謝回転に関与する酵素のような酵素を阻害又は活性化することができる。大抵のキナーゼはリン酸化に関して単独種類のアミノ酸残基に特殊化されているが、幾つかのキナーゼは、それらが2種類の異なるアミノ酸をリン酸化することができるという点で、二重の活性を示す。
【0129】
[00140]方法: Meta−THc製剤のキナーゼ阻害(対照の%として報告)に関する用量反応性を、以下の表1に示すような、86種の選択したキナーゼに対して、約1、10、25及び50μg/mlにおいて試験した。ヒトキナーゼ活性に対する本発明の方法の阻害効果を、Kinase ProfilerTM Assay (Upstate Cell Signaling Solutions, Upstate USA, Inc.,Charlottesville, VA., USA)において試験した。特定のキナーゼに関するアッセイ・プロトコルは、本明細書に援用されるwww.upstate.com/img/pdf/kp protocols full.pdfに要約されている。
【0130】
[00141]結果: Meta−THcは、試験したキナーゼの多くに関してキナーゼ活性の用量依存性阻害を示し、それぞれ、1、5、25及び50μg/mlにおいて7%、16%、77%及び91%のFGFR2阻害を示した。FGFR3及びTrkAに対しても、それぞれ、1、5、25及び50μg/mlにおいて同様な結果[即ち、FGFR3(0%、6%、61%及び84%)及びTrkA(24%、45%、93%及び94%)]が観察された。
【0131】
[00142]検査したキナーゼに対するMeta−THcの阻害効果を下記表4に示す。
【0132】
【化10】

【0133】
【化11】

【0134】
【化12】

【実施例2】
【0135】
Meta−THc成分の単離と同定
[00143]Meta−THcサンプルの成分を単離し、同定するために、高速向流分離を行なった。テトラヒドロイソα酸を含有する修飾ホップ抽出物は、Hopsteiner (Yakima, WA)から純粋な固体として入手した。この物質を希薄なHSO(aq)pH=2.0とヘキサンとに分配して、ヘキサンによって数回抽出した。ヘキサンを回収して、乾燥させ(NaSO)、濾過して、NaSOを除去し、真空濃縮して、ワックス状固体を得た。
【0136】
[00144]高速向流(HSCCC)装置: 半分取用遠心分離コイル(semi-preparative centrifuge coils)(総容量325ml)を組み込んだPharma-Tech Research Corporation CCC-1000モデル向流クロマトグラムで分離を行なった。Rheodyne手動注入器を10.0mlサンプル・ループと共に用いて該系にサンプルを注入した。Shimadzu LC-20AT Pump(4溶媒の間で切り替え可能)をShimadzu CBM-20A 系コントローラと共に用いた。Pharma-Tech CCC-1000 からの流れはShimadzu SPD-lOAVvp UV-VIS 検出器(254nmでモニターリング)を通過して、大規模分画キット(1,000mlまでの画分量を可能にする)を組み込んだShimadzu FRC-1OA 画分回収器に達した。
【0137】
[00145]CCC−1000は、頭−尾配置及び下降式で操作した。上部固定相(酢酸メチル)を下部固定相(0.1Mトリエタノールアミン−pH7.4)を通して1.0ml/分の流速度で、該コイルの回転を680RPMに一定に維持しながら、汲み出した。サンプルを下部固定相10.0ml中に溶解して、直接、系に注入した。
【0138】
[00146]二相溶媒系の調製: 脱イオン水1.0L中にトリエタノールアミン13.25mlを溶解することによって、0.1Mトリエタノールアミン−pH7.4緩衝液を調製した。希薄な塩酸によって、pHを7.4に調節した。大型分離ロートを用いた混合と沈降を繰り返して、水性緩衝液に酢酸メチルを完全に混合し、上部相に下部相の少量を加え、この逆も行なって、溶液が確実に飽和されるようにした。
【0139】
[00147]結果: 図3は、Meta−THc組成物の典型的なクロマトグラムを示す。上部パネルは、混合物のMeta−THc成分を含むクロマトグラフィー・ピークを同定し、その後のパネルは、ピークを構成する単離画分のクロマトグラフィー・プロフィルを説明する。
【0140】
[00148]各画分の均質性%、各画分中に単離された量及びHSCCC精製にかけられた物質の初期量を基準とした回収%を以下の表5に示す。
【0141】
【化13】

【実施例3】
【0142】
プロテインキナーゼに対するMeta−THcの効果
[00149]方法: Meta−THc製剤及び個々の成分のキナーゼ阻害(対照の%として報告)に関する用量反応性を、以下の表1に示すような、190種の選択したキナーゼに対して、約1、5、25、50及び100μg/mlにおいて試験した。ヒトキナーゼ活性に対する本発明の阻害効果を、Kinase ProfilerTM Assay (Upstate Cell Signaling Solutions, Upstate USA, Inc.,Charlottesville, VA., USA)において試験した。特定のキナーゼに関するアッセイ・プロトコルは、http://www.upstate.com/img/pdf/kp protocols full.pdf(2006年6月12日に最後の訪問)に要約されている。
【0143】
[00150]結果: 試験したキナーゼに対するMeta−THcの阻害効果を、以下の表6〜11に示す。
【0144】
【化14】

【0145】
【化15】

【0146】
【化16】

【0147】
【化17】

【0148】
【化18】

【0149】
【化19】

【0150】
【化20】

【0151】
【化21】

【0152】
【化22】

【0153】
【化23】

【0154】
【化24】

【0155】
【化25】

【0156】
【化26】

【0157】
【化27】

【0158】
【化28】

【0159】
【化29】

【0160】
【化30】

【0161】
【化31】

【0162】
【化32】

【0163】
【化33】

【0164】
【化34】

【0165】
【化35】

【0166】
【化36】

【0167】
【化37】

【0168】
【化38】

【0169】
【化39】

【0170】
【化40】

【0171】
【化41】

【0172】
【化42】

【実施例4】
【0173】
PI3K活性に対するMeta−THcの効果
[00151]ヒトPI3K−β、PI3K−γ及びPI3K−δ活性に対するMeta−THcの阻害効果を実施例1の手順及びプロトコルに従って試験した。全ての化合物を1、5、25及び50μg/mlで試験した。結果は、癌、血管新生及び炎症における付加的なプロテインキナーゼ関与に対する試験結果と比較して、PI3K活性のキナーゼ阻害を比較する図4として、グラフに示す。
【実施例5】
【0174】
Meta−THcによるPGE及び一酸化窒素の阻害
[00152]LPS活性化RAW264.7細胞を培地中のPGE及び一酸化窒素に関して分析した。
【0175】
[00153]物質: Meta−THcとその類似体は、Metagenics(San Clemente, CA)から提供された。LPSは、Sigma(Sigma,St.Louis,MO)から購入した。Meta−THcの濃度は、3種類の主要なn−、ad−及びco−Meta−THc類似体の各々のシス及びトランス・ジアステレオマーの活性に基づいて算出した。他の化学物質は全て、Sigma(St.Louis,MO)から購入された分析用グレードであった。
【0176】
[00154]細胞培養と刺激: マウスマクロファージRAW264.7細胞系は、ATCC(Manassas,VA)から購入して、それらの使用説明書に従って維持した。熱不活化胎仔ウシ血清(FBS)、ペニシリン及びストレプトマイシン溶液、及びダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)は、Mediatech(Herndon,VA)から購入した。96ウェル・プレートにおいて8x10細胞/ウェルの密度で、細胞を増殖させ、継代培養して、翌日には90%コンフルエンスに達した。試験化合物を無血清培地中の細胞に、0.1%ジメチルスルホキシド(DMSO)の最終濃度で加えた。試験化合物と共に1時間インキュベーションした後に、LPS(1μg/ml)又はDMEM培地のみを該細胞に加えて、インキュベーションを指示された時間続けた。LPSによって4時間刺激した後に、培地を回収し、PGEを測定した(Assay Designs, Ann Harbor,MI)。一酸化窒素産生の測定のためには、LPS刺激の20時間後に、培地を回収して、硝酸/亜硝酸レベル(nitratate/nitrite levels)を測定した(Cayman Chemicals, Ann Harbor,MI)。
【0177】
[00155]結果: Meta−THcは、LPS活性化RAW264.7細胞におけるPGE及び一酸化窒素産生を阻害した、これを図5に示す。
【実施例6】
【0178】
Meta−THcによる直接的COX−2阻害の欠如
[00156]この目的は、COX−2酵素活性の直接阻害を判定することであった。
【0179】
[00157]物質: 試験化合物は、DMSO中に用意して、−20℃において保存した。Meta−THcは、Metagenics(San Clemente, CA)から提供された。セレコキシブの商業的製剤(Celebrex(登録商標), G. D. Searle & Co., Chicago, IL)を用いた、そして全ての濃度は活性物質に基づくものであったが、レシピエントも含めて考慮された。LPSはSigma-Aldrich(St.Louis,MO)から購入した。
【0180】
[00158]細胞培養: マウスマクロファージRAW264.7細胞系は、ATCC(Manassas,VA)から購入して、それらの使用説明書に従って維持した。96ウェル・プレートにおいて8x10細胞/ウェルの密度で、細胞を継代培養して、90%コンフルエンスに達しさせた。LPS(1μg/ml)又はDMEM単独を細胞培地に加えて、20時間インキュベートした。試験化合物をLPSと共に無血清培地中の細胞に、0.1%DMSOの最終濃度で加えた。試験化合物と共に1時間インキュベートした後に、細胞培地を取り出して、LPS(1μg/ml)と共に試験化合物を含む新鮮な培地と交換して、1時間インキュベートした。培地をウェルから取り出して、PGE合成に関して分析した。
【0181】
[00159]PGE分析: PGEの定量には、商業的な非放射性手段を用いた(Cayman Chemical, Ann Arbor, MI)。サンプルをEIA緩衝液で10倍に希釈して、製造業者の勧める手段を改変せずに用いた。PGE濃度はピコグラム(pg)/mlで表した。このアッセイについての製造業者の仕様書は、<10%のアッセイ内変動係数、1%未満のPGD及びPGFとの交差反応性、及び10〜1000pg/mlの範囲にわたる直線性を包含する。
【0182】
[00160]結果: 結果は、Meta−THcが特異的なCOX−2酵素阻害剤ではないことを示唆する、これらの結果は図6に示す。
【実施例7】
【0183】
Meta−THcによるCOX−2タンパク質の阻害
[00161]LPSによって刺激したRAW264.7細胞からの細胞抽出物を、ウェスタン・ブロットによってCOX−2タンパク質に関して分析した。
【0184】
[00162]物質: 試験化合物は、DMSO中に用意して、−20℃において保存した。Meta−THcは、Metagenics(San Clemente, CA)から提供された。COX−2に対して発生した抗体は、Cayman Chemical(Ann Arbor, MI)から購入した。アクチンに対して発生した抗体は、Sigmaから購入した。西洋ワサビペルオキシダーゼに結合した二次抗体は、Amersham Biosciences(Piscataway, NJ)から購入した。
【0185】
[00163]細胞培養: マウスマクロファージRAW264.7細胞系は、ATCC(Manassas,VA)から購入して、それらの使用説明書に従って維持した。試験化合物を無血清培地中の細胞に、0.1%DMSOの最終濃度で加えた。試験化合物と共に1時間インキュベートした後に、LPS(1μg/ml)又はDMEMのみを細胞ウェルに加えて、インキュベーションを16時間続けた。
【0186】
[00164]COX−2のウェスタン・ブロット分析: 細胞を冷PBSで洗浄して、溶解緩衝液(Bio-Rad)100μlで溶解した。変性(denaturing)後に、サンプルをSDS−PGE上で分離させ、ニトロセルロース膜に移した。一次抗体と共に、続いて二次抗体と共にのインキュベーションは、室温において、それぞれ1時間行なった。化学発光をPierce Biotechnology(Rockford, IL)からのSuperSignal West Femto Maximum Sensitivity Substrateを用いて行なった。ウェスタン・ブロット画像はオートラジオグラム(Kodak, BioMax film)を用いて現像した。デンシトメトリーはKodak(登録商標)ソフトウェアを用いて行なった。
【0187】
[00165]結果: 結果は、Meta−THcがLPS活性化RAW264.7細胞においてCOX−2タンパク質発現を阻害したことを示した。これらの結果は、図7にグラフで示す。
【実施例8】
【0188】
NF−κB DNA結合
[00166]LPSによって2時間刺激したRAW264.7細胞からの核抽出物をNF−κB活性に関して分析した。
【0189】
[00167]物質: 試験化合物は、DMSO中に用意して、−20℃において保存した。Meta−THcは、Metagenics(San Clemente, CA)から提供された。パルテノライドはSigma-Aldrich(St.Louis,MO)から購入した。
【0190】
[00168]細胞培養: マウスマクロファージRAW264.7細胞系は、ATCC(Manassas,VA)から購入して、それらの使用説明書に従って維持した。細胞は、6ウェル・プレートにおいて1.5x10細胞/ウェルの密度で継代培養して、約2日間で90%コンフルエンスに達しさせた。試験化合物を無血清培地中の細胞に、0.1%DMSOの最終濃度で加えた。試験化合物と共に1時間インキュベーションした後に、LPS(1μg/ml)又はDMEMのみを細胞培地に加えて、インキュベーションをさらに2時間続けた。
【0191】
[00169]NF−κB結合: 核抽出物を、本質的にDignam et al[Nucl Acids Res 1 1 :1475-1489, (1983)]が述べているように、調製した。簡単に説明すると、細胞を冷PBSで2回洗浄して、次に緩衝液A(10mM HEPES,pH7.0;1.5mM MgCl;10mM KCl;0.1%NP−40;アプロチニン5μg/ml;ペプスタチンA 1μg/ml;ロイペプチン5μg/ml;フェニルメタンスルホニルフルオリド 1mM)を加えて、氷上に15分間静置させた。緩衝液Aによって溶解工程を繰り返した。4℃における5分間の10,000xgでの遠心分離後の上清は細胞質画分であった。残りのペレットは緩衝液C(20mM HEPES、pH7.0;1.5mM KCl;420mM KCl;25%グリセロール;0.2M EDTA;アプロチニン5μg/ml;ペプスタチンA 1μg/ml;ロイペプチン5μg/ml;フェニルメタンスルホニルフルオリド 1mM)中に再懸濁させて、超音波処理した(5秒間隔で、5x2秒間)。核抽出物画分は、4℃における5分間の10,000xgでの遠心分離後の上清として回収した。核抽出物のDNA結合活性を、電気泳動移動度シフト解析(EMSA)をATP(p32)標識NF−κBコンセンサス・オリゴヌクレオチド配列(5’AGTTGAGGGGACTTTCCCAGGGC)と共に用いて評価した。ゲルに対してオートラジオグラフィを行なった。
【0192】
[00170]結果: 結果は、Meta−THcがLPS活性化RAW264.7細胞におけるNF−κBの核転位を阻害したことを示した。これらの結果は、図8に示す。
【実施例9】
【0193】
MMP−13発現の阻害
[00171]ヒト軟骨肉腫細胞を、培地中でのMMP−13分泌に関して分析した。
【0194】
[00172]物質: ヒトTNFαとIL−1βは、Sigma(St.Louis, MO)から入手した。Meta−THcの濃度は、3種類の主要なn−、ad−及びco−Meta−THc類似体の各々のシス及びトランス・ジアステレオマーの活性並びに他のマイナーなRIAA類似体の活性に基づいて算出した。MMP−13測定のためのアッセイ・キットは、Amersham Biosciences(Piscataway,NJ)から購入した。
【0195】
[00173]細胞培養: ヒト軟骨肉腫細胞系、SW1353を、ATCC(Manassas,VA)から購入して、製造業者の使用説明書に従って、10%血清の存在下のL−15培地中で維持した。96ウェル・プレートにおいて8x10細胞/ウェルの密度で細胞を増殖させ、継代培養して、一晩かけて約80%コンフルエンスに達しさせた。培地中の試験化合物を0.1%DMSOの最終濃度で細胞に加えた。試験化合物と共に1時間インキュベートした後に、TNFα(10ng/ml)又はIL−1β(10ng/ml)又は培地のみを細胞ウェルに加えて、インキュベーションを20〜24時間続けた。その後に、上清培地をMMP−13測定のために回収した(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)。
【0196】
[00174]結果: Meta−THcは、SW1353細胞においてTNFα及びIL−1β誘導MMP−13発現を用量依存的に阻害した。これらの結果は図9に示す。
【実施例10】
【0197】
Meta−THc類似体によるPGE及び一酸化窒素の阻害
[00175]LPS活性化RAW264.7細胞を培地中でPGE及び一酸化窒素に関して分析した。
【0198】
[00176]物質: 実施例5に記載したとおり。
【0199】
[00177]細胞培養と刺激: 実施例5に記載したとおり。
【0200】
[00178]結果: Meta−THc類似体は、LPS活性化RAW264.7細胞におけるPGE及び一酸化窒素産生を阻害した。結果は図10に示す。
【実施例11】
【0201】
炎症関連キナーゼのMeta−THc類似体阻害
[00179]この目的は、Meta−THc成分が炎症関連キナーゼを阻害するかどうかを判定することであった。
【0202】
[00180]物質: 実施例1に記載したとおり。
【0203】
[00181]結果: 選択したキナーゼに対するMeta−THc成分の用量依存的阻害効果を図11〜13に示す。
【実施例12】
【0204】
血管新生関連ArgチロシンキナーゼのMeta−THc類似体阻害
[00182]この目的は、Meta−THc成分が血管新生関連Argチロシンキナーゼを阻害するかどうかを判定することであった。
【0205】
[00183]物質: 実施例1に記載したとおり。
【0206】
[00184]結果: 選択したキナーゼに対するMeta−THc成分の用量依存的阻害効果を図14に示す。
【実施例13】
【0207】
大腸癌関連キナーゼのMeta−THc類似体阻害
[00185]この目的は、Meta−THc成分が大腸癌関連キナーゼを阻害するかどうかを判定することであった。
【0208】
[00186]物質: 実施例1に記載したとおり。
【0209】
[00187]結果: 選択したキナーゼに対するMeta−THc成分の用量依存的阻害効果を図15に示す。
【実施例14】
【0210】
コラーゲン誘導リウマチ性関節炎マウスモデルにおける試験化合物の効果
[00188]この実施例は、リウマチ性関節炎モデルでの炎症及び関節炎症状の軽減におけるMeta−THcの効力を実証した、このような炎症及び症状は、一部は、幾らかのプロテインキナーゼによって仲介されることが知られている。
【0211】
[00189]モデル: 雌DBA/Jマウス(10/グループ)を明暗の標準的条件下で収容して、任意に食餌を摂らせる。0日目に、スクアレン中にII型コラーゲン100μgと結核菌(Mycobacterium tuberculosis)100μgを含有する混合物をマウスに皮内注射した。21日目に追加免疫注射を繰り返した。22〜27日目にマウスを関節炎徴候に関して検査して、反応していないマウスは試験から除去した。マウスを、28日目に開始して42日目に終了する14日間にわたって、胃管栄養法によって1日1回、試験化合物によって処理した。この実施例で用いる試験化合物は、10mg/kg(lo)、50mg/kg(med)若しくは250mg/kg(hi)でのMeta−THc;20mg/mlでのセレコキシブ;及び10mg/kgでのプレドニゾロンであった。
【0212】
[00190] 関節炎の総体症状を、以下に記載するような関節炎指標を用いて、各足に関して評価した(0〜4にスコア化)。この関節炎指標では、0=関節炎の徴候なし;1=浮腫及び/又は紅斑:1本の指;2=浮腫及び/又は紅斑:2つの関節;3=浮腫及び/又は紅斑:2つより多い関節;並びに4=関節強直と変形を付随する、全ての足及び指の重度な関節炎。
【0213】
[00191]組織学的検査: 該実験の終了時に、マウスを安楽死させ、肢1本を摘出し、緩衝化ホルマリン中に入れて保存した。関節炎指標の分析が有望であると分かった後に、H&E染色による組織学的分析のために、各処置グループから無差別に2匹を選択した。軟組織、関節及び骨の変化を、4のスコアが重度の損傷を意味する4点スケールでモニターした。
【0214】
[00192]サイトカイン分析: 該実験の終了時に、サイトカイン分析のために、マウスから血清を回収した。低い(約0.2〜0.3ml/マウス)サンプル量で、10匹のマウスからのサンプルを無差別に、それぞれ5匹の2プールに配分した。これは、反復分析が可能であるように行なった;各分析は少なくとも2回行なった。マウス特異的試薬( R&D Systems, Minneapolis,MN)を製造業者の使用説明書に従って用いて、TNFα及びIL−6を分析した。26プールのうちの5プールのみが、TNFαの検出可能なレベルを生じた;ビヒクル処置対照動物グループはそれらのうちにあった。
【0215】
[00193]結果: 図16は、関節炎指標に対するMeta−THcの効果を示す。ここでは、セレコキシブに関しては有意な低減が観察された(32日目〜42日目)、250mg/kgのMeta−THc(34日目〜42日目)及び50mg/mlのMeta−THc(34日目〜40日目)も、抗関節炎剤としてのMeta−THcの有効性を実証した。
【実施例15】
【0216】
in vitroでの癌細胞増殖に対する試験化合物の効果
[00194]この実験は、本発明の幾らかのMeta−THc試験化合物に関して、in vitroでの癌細胞増殖に対する直接の阻害効果を実証した。
【0217】
[00195]方法: 結腸直腸癌細胞系HT−29、Caco−2及びSW480を96ウェルプレート中に3x10細胞/ウェルで接種し、一晩インキュベートして、細胞をプレートに付着させた。試験物質の各濃度を8回繰り返した。72時間後に、CyQUANT(登録商標) Cell Proliferation Assay キットを用いて、細胞を生存細胞総数に関して分析した。DMSO溶媒対照と相対的な生存細胞減少率を算定した。グラフに示した値は、8回観察の平均値±95%信頼区間である。
【0218】
[00196]結果: 図17は、Meta−THc化合物の阻害効果をグラフで示す。
【実施例16】
【0219】
経口投与後の血清中のMeta−THc検出
[00197]この実験の目的は、Meta−THcが経口投与後にヒトにおいて代謝されるかどうか、そして検出可能であるかどうかを決定することであった。
【0220】
[00198]方法: 投与前の血液採取後に(following a predose blood draw)、遊離酸としてMeta−THc940mgをデリバリーするソフトゲル(THIAA188mg/ソフトゲル)(PR Tetra Standalone Softgel. OG# 2210 KP-247. Lot C42331111)5個を服用させ、直後に、フルーツヨーグルト1容器を食べさせた。カフェイン抜きコーヒーを例外として、Meta−THc摂取後の次の4時間にわたって、追加の食物は食べさせなかった。凝固促進剤を含まないCorvac Serum Separator管中に45分間間隔でサンプルを採取した。サンプルを室温において45分間凝固させ、1800xgでの遠心分離によって、4℃において10分間、血清を分離した。血清0.3mlに、0.5%HOAcを含むMeCN0.9mlを加えて、−20℃に45〜90分間維持した。該混合物を15000xgで、4℃において10分間、遠心分離した。遠心分離後に、二相が明白であった;HPLC分析のために、上部相0.6mlをサンプリングした。分析物添加サンプル(spiked samples)を用いて、回収率を決定した、回収率は95%超であった。
【0221】
[00199] 結果: 結果は、図18〜20にグラフで示す。図18は、Meta−THc940mgの摂取後の時間にわたって、血清中のMeta−THcの検出をグラフで示す。図19は、摂取から225分間後に、in vitroで試験した、そのようなMeta−THcレベルに匹敵するレベルで、Meta−THcが血清中で検出されたことを実証する。図20は、CYP2C91によるMeta−THcの代謝を示す。
【実施例17】
【0222】
ホップ誘導体の血管新生抑制活性の評価
[00200]ex vivoでのラット大動脈輪血管新生アッセイ
[00201]試験物質と化学物質: 試験物質のイソα酸(IAA)、ρ−イソα酸(RIAA)、テトラヒドロイソα酸(THIAA)、ヘキサヒドロイソα酸(HHIAA)、β酸(BA)及びキサントフモール(XN)は、Metaproteomics, Gig Harbor, WA.によって提供された。全ての標準的化学物質、培地及び試薬は、特に指定しないかぎり、Sigma, St.Louis, MOから購入した。
【0223】
[00202]方法: 清潔にしたラット大動脈輪をラット尾間質のI型コラーゲンゲル(1.5mg/ml)中に包埋した。この最終コラーゲン溶液は、I型コラーゲン(2 mg/ml, Collagen R; Serva, Heidelberg, Germany)7.5量に、10倍濃縮DMEM1量、炭酸水素ナトリウム溶液(15.6mg/ml)1.5量及び、pHを7.4に調節するための水酸化ナトリウム溶液(1M)0.1量を混合することによって得た。コラーゲン包埋ラット大動脈輪をシリンダ型アガロース・ウェル中で処理して、25mM NaHCO3、1%グルタミン、100U/mlペニシリン及び100g/mlストレプトマイシンを補充した無血清MCDB−131(Invitrogen)8mlを含有する60mm細菌学的ポリスチレン皿中に3通りに入れた。これらのex vivo有機型培養物(organo-typic cultures)を単一化合物によって処置した。空気−CO(95%:5%)雰囲気下、37℃において9日間培養した後に、該大動脈輪を光学顕微鏡(25 拡大率, Carl Zeiss AxioCam HR Workstation, KSlOO 3.0 ソフトウェア)下で写真撮影した。新血管新生を、観察された血管新生応答のマーカーとして評価した。
【0224】
[00203]統計的分析: 対照と、ジメチルスルホキシド対照に合わせて標準化した後の2つの試験濃度とに対して、処置あたり6回観察で、変動分析を行なった。第1種誤差の確率を公称5%レベルに設定した。
【0225】
【化43】

【0226】
[00204]結果: RIAAとTHIAAの両方は20μg/mlと5μg/ml[これは5μg/ml又は50μg/mlであるべきでは?]において血管増殖を有効に阻害したが、HHIAAとBAは20μg/ml濃度のみにおいて有効であった。キサントフモールはこのアッセイにおいて有効ではなく、IAAは高濃度では血管増殖を実際に増加させた。
【0227】
[00205]遊走創傷治癒アッセイ
[00206]方法: 該アッセイの1日前に、5x10内皮細胞を6ウェルプレートに蒔いて、適当な完全培地中で一晩増殖させた。次に、コンフルエントなHUVEC単層を引っ掻いて、傷を付けた。次に、各薬物20μg/mlで細胞を処置した。傷を付けた後そして6時間後に、各傷の2つの異なる場を位相差顕微鏡によって写真撮影した。各傷の幅の測定を各実験条件下で行なった。実験の開始時に、傷サイズを測定して、100%とスコアを付けた。6時間後に、残留する傷の幅を測定して、平均の傷閉鎖率(average percent wound closure)を計算した。
【0228】
【化44】

【0229】
[00207]結果: 6試験物質のうち、HHIAAのみが創傷閉鎖の阻害に失敗した。試験物質のうちで最も活性であったのはXNであり、これにTHIAA、BA、IAA及びRIAAが続いた。
【0230】
[00208]増殖アッセイ
[00209]方法: 該アッセイの1日前に、1x10内皮細胞を24ウェルプレートに4通りに蒔いて、適当な完全培地中で一晩増殖させた。次に、各薬物の10μg/mlと20μg/mlで細胞を処置した。6時間、48時間及び72時間後に、次に細胞をPBS200μl中に再懸濁させて、超音波処理した。該超音波処理サンプル100μlを96ウェルマイクロプレートに移して、Hoechst33258(2μg/ml)100μlを加えた。標準曲線作成のために、0.3125、0.625,1.25、2.15、5、10及び20μg/mlの濃度を有するDNA標準試薬100μlを用いた。染料の希釈と濃縮を選択して、DNA定量アッセイの最大の直線性と感度を得るために重大である、適当な染料/塩基対比率を得た。約10分間のインキュベーション時間後に、蛍光強度を測定した。全ての研究は一般に、室温において、溶液を光から保護して行なった。蛍光分光分析測定をSpectramax Gemini XSによって行なった。Hoechst33258を360nmにおいて励起させ、蛍光発光を458nmにおいて検出した。DNA標準較正曲線の蛍光強度に応じて、蛍光値をDNA濃度に換算した。
【0231】
【化45】

【0232】
[00210]結果: HHIAAは、試験作用剤のなかで最も活性であり、両方の濃度及び全ての時点において増殖を阻害した。THIAAとXNは72時間までに同じような阻害を生じ、これに続く阻害をRIAAが生じた。BAもIAAも、このアッセイにおいて増殖を有効に阻害しなかった。
【0233】
[00211]結論
【0234】
【化46】

【0235】
[00212]6試験物質のうちで、3物質が3アッセイの全てにおいて血管新生抑制活性を示した(表15)。THIAAが該3物質のうちで最も有効であり、これにRIAAとBAが続いた。
【0236】
[00213]本発明をここで詳しく説明してきたが、付帯請求項の要旨又は範囲から逸脱することなく、これに多くの変化及び変更がなされうることは、当業者に明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする哺乳動物においてプロテインキナーゼ調節に応答する癌の治療方法であって、該哺乳動物に置換1,3−シクロペンタジオン化合物の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項2】
置換1,3−シクロペンタジオン化合物が、テトラヒドロ−イソフムロン、テトラヒドロ−イソコフムロン、及びテトラヒドロ−アドフムロンから成る群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
調節されるプロテインキナーゼが、Abl(T315I)、Aurora-A、染色体X中の骨髄チロシンキナーゼ遺伝子(Bmx)、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)、カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼ−I(CaMKI)、CaMKIδ、大腸癌キナーゼ−2/サイクリンA(CDK2/cyclinA)、CDK3/サイクリンE、CDK9/サイクリンTl、カゼインキナーゼ−1(y) (CK1(y))、CK1γ1、CK1γ2、CK1γ3、CK1δ、cSRC、死関連プロテインキナーゼ−1(DAPKl)、DAPK2、DRAKl、エフリン受容体−A2(EphA2)、EphA8、癌原遺伝子チロシン−プロテインキナーゼFER(Fer)、繊維芽細胞成長因子受容体−2(FGFR2)、FGFR3、癌原遺伝子チロシン−プロテインキナーゼFGR(Fgr)、チロシン−プロテインキナーゼ受容体FLT4(Flt4)、c−JunNH2−末端キナーゼ−3(JNK3)、ホスファチジルイノシトール−3−キナーゼ (PI3K)、癌原遺伝子セリン/スレオニン−プロテインキナーゼ−1(Pim-1)、Pim-2、プロテインキナーゼA(PKA)、PKA(b)、プロテインキナーゼB−β(PKBβ)、PKBα、PKBγ、p38−調節/活性化プロテインキナーゼ(PRAK)、ヒトX染色体コード化プロテインキナーゼX (PrKX)、Ron、リボソームS6キナーゼ−1(Rskl)、リボソームS6キナーゼ−2(Rsk2)、セリン/スレオニン−キナーゼ−2(SGK2)、脾臓チロシンキナーゼ(Syk)、免疫グロブリンとEGFリピートを有するチロシンキナーゼ−2(Tie2),TrkA、及びTrkBから成る群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
キナーゼ調節に応答する癌が、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、大腸癌、肺癌、リンパ腫、メラノーマ、前立腺癌、甲状腺癌及び子宮癌から成る群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
置換1,3−シクロペンタジオン化合物を、コーティング剤、等張性及び吸収遅延剤、結合剤、接着剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、フレーバー剤、甘味剤、吸収剤、界面活性剤及び乳化剤から成る群から選択される、製薬的に受容される賦形剤をさらに含む組成物として投与する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
該組成物が、酸化防止剤、ビタミン、ミネラル、タンパク質、脂肪、及び炭水化物から成る群から選択される1つ以上のメンバーをさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項7】
置換1,3−シクロペンタジオン化合物を、化学療法剤と組み合わせて投与する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
それを必要とする哺乳動物におけるプロテインキナーゼ調節に応答する血管新生状態の治療方法であって、該哺乳動物に、置換1,3−シクロペンタジオン化合物の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項9】
置換1,3−シクロペンタジオン化合物が、ジヒドロ−(ρ)イソα酸;テトラヒドロイソα酸;ヘキサヒドロイソα酸;β酸;それらの個々の類似体;及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項10】
置換1,3−シクロペンタジオン化合物が、テトラヒドロ−イソフムロン、テトラヒドロ−イソコフムロン、及びテトラヒドロ−アドフムロンから成る群から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項11】
調節されるプロテインキナーゼが、ATK、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)、p38−調節/活性化プロテインキナーゼ(PRAK)、ホスファチジルイノシトール−3−キナーゼ (PI3K)、プロテインキナーゼC(PKC)、グリコーゲン・シンターゼ・キナーゼ(GSK)、上皮増殖因子受容体(FGFR)、BTK、ホスホイノシチド依存性キナーゼ(PDK)、脾臓チロシンキナーゼ(SYK)、マイトジェン−及びストレス−活性化プロテインキナーゼ(MSK)及び1−kBキナーゼ−b(IKKb)から成る群から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項12】
置換1,3−シクロペンタジオン化合物を、コーティング剤、等張性及び吸収遅延剤、結合剤、接着剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、フレーバー剤、甘味剤、吸収剤、界面活性剤及び乳化剤から成る群から選択される、製薬的に受容される賦形剤をさらに含む組成物として投与する、請求項7記載の方法。
【請求項13】
該組成物が、酸化防止剤、ビタミン、ミネラル、タンパク質、脂肪、及び炭水化物から成る群から選択される1つ以上のメンバーをさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項14】
置換1,3−シクロペンタジオン化合物を、血管新生抑制剤と組み合わせて投与する、請求項7記載の方法。
【請求項15】
それを必要とする哺乳動物におけるプロテインキナーゼ調節に応答する癌を治療するための組成物であって、唯一の置換1,3−クロペンタジオン化合物としてのシス−n−テトラヒドロ−イソα酸(TH5)の治療有効量を組成物中に含み;前記治療有効量が癌関連プロテインキナーゼを調節する組成物。
【請求項16】
それを必要とする哺乳動物におけるプロテインキナーゼ調節に応答する癌を治療するための組成物であって、組成物中の置換1,3−シクロペンタジオン化合物の1つ以上の(n)類似体と場合によっては、置換1,3−シクロペンタジオン化合物の1つ以上の(ad)類似体との治療有効量から本質的に成り;前記治療有効量が癌関連プロテインキナーゼを調節する組成物。
【請求項17】
それを必要とする哺乳動物におけるプロテインキナーゼ調節に応答する癌を治療するための組成物であって、組成物中の置換1,3−シクロペンタジオン化合物の1つ以上の(co)類似体の治療有効量から本質的に成り;前記治療有効量が癌関連プロテインキナーゼを調節する組成物。
【請求項18】
それを必要とする哺乳動物におけるプロテインキナーゼ調節に応答する血管新生状態を治療するための組成物であって、唯一の置換1,3−シクロペンタジオン化合物としてのシス−n−テトラヒドロ−イソα酸(TH5)の治療有効量を組成物中に含み;前記治療有効量が血管新生関連プロテインキナーゼを調節する組成物。
【請求項19】
それを必要とする哺乳動物におけるプロテインキナーゼ調節に応答する血管新生状態を治療するための組成物であって、組成物中の置換1,3−シクロペンタジオン化合物の1つ以上の(n)類似体と場合によっては、置換1,3−シクロペンタジオン化合物の1つ以上の(ad)類似体との治療有効量から本質的に成り;前記治療有効量が血管新生関連プロテインキナーゼを調節する組成物。
【請求項20】
それを必要とする哺乳動物におけるプロテインキナーゼ調節に応答する血管新生状態を治療するための組成物であって、組成物中の置換1,3−シクロペンタジオン化合物の1つ以上の(co)類似体の治療有効量から本質的に成り;前記治療有効量が血管新生関連プロテインキナーゼを調節する組成物。
【請求項21】
それを必要とする哺乳動物におけるプロテインキナーゼ調節に応答する癌を治療するための組成物であって、置換1,3−シクロペンタジオン化合物の唯一の類似体の治療有効量を含み;前記治療有効量が癌関連プロテインキナーゼを調節する組成物。
【請求項22】
それを必要とする哺乳動物におけるプロテインキナーゼ調節に応答する血管新生状態を治療するための組成物であって、置換1,3−シクロペンタジオン化合物の唯一の類似体の治療有効量を含み;前記治療有効量が血管新生関連プロテインキナーゼを調節する組成物。
【請求項23】
置換1,3−シクロペンタジオン化合物の類似体が、ρ(6S)シスnイソα酸、ρ(6S)シスnイソα酸、ρ(6R)シスnイソα酸、ρ(6R)トランスnイソα酸、ρ(6S)トランスnイソα酸、ρ(6R)シスρnイソα酸、ρ(6S)シスnイソα酸、(6S)トランスρnイソα酸、ρ(6R)トランスnイソα酸、ρ(6S)シスcoイソα酸、ρ(6R)シスcoイソα酸、ρ(6R)トランスcoイソα酸、ρ(6S)トランスcoイソα酸、ρ(6R)シスcoイソα酸、ρ(6S)シスcoイソα酸、ρ(6S)トランスcoイソα酸、ρ(6R)トランスcoイソα酸、ρ(6S)シスadイソα酸、ρ(6R)シスadイソα酸、ρ(6R)トランスadイソα酸、ρ(6S)トランスadイソα酸、ρ(6R)シスadイソα酸、ρ(6S)シスadイソα酸、ρ(6S)トランスadイソα酸、ρ(6R)トランスadイソα酸、テトラヒドロシスnイソα酸、テトラヒドロトランスnイソα酸、テトラヒドロシスnイソα酸、テトラヒドロトランスnイソα酸、テトラヒドロシスcoイソα酸、テトラヒドロトランスcoイソα酸、テトラヒドロシスcoイソα酸、テトラヒドロトランスcoイソα酸、テトラヒドロシスadイソα酸、テトラヒドロトランスadイソα酸、テトラヒドロシスadイソα酸、テトラヒドロトランスadイソα酸、ヘキサヒドロ(6S)シスnイソα酸、ヘキサヒドロ(6R)シスnイソα酸、ヘキサヒドロ(6R)トランスnイソα酸、ヘキサヒドロ(6S)トランスnイソα酸、ヘキサヒドロ(6R)シスnイソα酸、ヘキサヒドロ(6S)シスnイソα酸、ヘキサヒドロ(6S)トランスnイソα酸、ヘキサヒドロ(6R)トランスnイソα酸、ヘキサヒドロ(6S)シスcoイソα酸、ヘキサヒドロ(6R)シスcoイソα酸、ヘキサヒドロ(6R)トランスcoイソα酸、ヘキサヒドロ(6S)トランスcoイソα酸、ヘキサヒドロ(6R)シスcoイソα酸、ヘキサヒドロ(6S)シスcoイソα酸、ヘキサヒドロ(6S)トランスcoイソα酸、ヘキサヒドロ(6R)トランスcoイソα酸、 ヘキサヒドロ(6S)シスadイソα酸、ヘキサヒドロ(6R)シスadイソα酸、ヘキサヒドロ(6R)トランスadイソα酸、ヘキサヒドロ(6S)トランスadイソα酸、ヘキサヒドロ(6R)シスadイソα酸、ヘキサヒドロ(6S)シスadイソα酸、ヘキサヒドロ(6S)トランスadイソα酸、ヘキサヒドロ(6R)トランスadイソα酸、ルポロン、コルプロン、アドルプロン、プレルプロン、ポストルプロン、及びキサントフモールから成る群から選択される、請求項21又は請求項22に記載の組成物。

【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図24】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図23】
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【公表番号】特表2011−506464(P2011−506464A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538119(P2010−538119)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/086208
【国際公開番号】WO2009/076428
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(503465937)メタプロテオミクス, エルエルシー (19)
【Fターム(参考)】