癌の免疫療法、および治療の方法
本開示は、能動免疫療法薬で癌患者を治療するための方法に関し、この方法は、少なくとも1つの標的抗原に対する患者の既存の免疫反応性を評価すること、既存の免疫反応性のレベルに基づいて免疫治療レジメンを選択すること、およびそのレジメンに従って能動免疫療法薬を投与することを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子フォーマットで提供された情報の組み込み
本出願は、電子フォーマットの配列表と合わせて出願されている。配列表は、2010年10月22日に作成され、サイズが22KbであるSEQLISTING062WO0.txtというファイル名のファイルとして提供される。この配列表の電子フォーマット中の情報は、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、標的抗原に対するエフェクターT細胞応答を対象中で発生させるための、より有利には、癌の治療において腫瘍抗原を標的とするエフェクターT細胞の誘導、その成長の促進、活性化、および/またはそれ以外の形での刺激を行う免疫原性生成物を利用するための、免疫療法プロトコルの設計および実践の戦略に関する。より詳細には、実施形態は、対象を治療するための治療の過程および方法の決定に関し、ここで、少なくとも1つの標的抗原に対するベースライン免疫反応性の存在または非存在が評価されて、その少なくとも1つの標的抗原を標的とする能動免疫療法薬の1もしくは2つ以上を投与する対象が選別される。ある実施形態では、本明細書で開示される戦略は、主としてリンパ系に限定された疾患を有するか、またはリンパ系を超えての進行が限定的であるか、もしくはそれ以外でリンパ系に限定された疾患を有する患者を、リンパ内投与される能動免疫療法薬での治療のために選別することを含む。
【背景技術】
【0003】
米国癌学会では、今年診断されるであろう新たな癌のケースはおよそ150万であり(膀胱以外のいずれの部位の上皮内癌をも除き、基底および皮膚扁平上皮癌を除く)、米国人男性の約2人に1人、および米国人女性の約3人に1人が、一生のうちのある時点で何らかの種類の癌を有することになると推定している。
【0004】
正常な体細胞は、秩序立った形で成長し、分裂し、死滅する。癌などの細胞増殖性疾患では、細胞は、死滅する代わりに制御不能に成長、分裂を続ける。癌には多くの種類があるが、この疾患の開始は、通常、異常細胞の制御不能な成長に起因する。
【0005】
癌に対する通常の治療の選択肢としては、外科手術、放射線療法、および化学療法が挙げられる。免疫療法と称される治療のさらなる選択肢が、より最近になって確立された。免疫療法は、免疫系による癌細胞認識の補助、および/または癌を破壊するための癌細胞に対する応答の強化が行われるように設計されている。免疫療法としては、能動免疫療法および受動免疫療法が挙げられる。能動免疫療法は、疾患と戦うための身体自体の免疫系を刺激する試みである。受動免疫療法は、一般的には、患者の免疫系に依存して疾患を攻撃するのではなく;その代わりに、患者の体外で作られた免疫系成分(抗体など)を用いる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
様々な種類の癌治療があるにも関わらず、さらなる、より効果的な治療方法が継続して求められている。1つのそのような代替法としては、免疫化によって免疫応答の開始、刺激、および/もしくは増強を行う能力を必要とするか、またはそれが有益である医学的治療の方法が想定される。これらの方法としては、所望される抗原性ポリペプチドに対する免疫応答の発生または刺激に依存するもの、および自然免疫応答の開始または調節に依存するものが挙げられる。従って、癌の治療における一つの手法は、治療用抗癌ワクチンの使用による免疫系の操作である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、癌患者を治療するための方法に関する。本発明のある実施形態は、能動免疫療法薬によって癌患者を治療する方法に関し、ここで、この方法は、少なくとも1つの標的抗原に対する患者の既存の免疫反応性のレベルに基づく免疫療法レジメンの選択であって、ここで、このレジメンは、この少なくとも1つの標的抗原またはそのエピトープを標的とする少なくとも1つの免疫原を投与することを含むものである、選択;ならびに、このレジメンに従う患者の治療、を含む。ある実施形態では、本明細書で述べる方法は、少なくとも1つの標的抗原を標的とする免疫療法レジメンを、この少なくとも1つの抗原に対する患者の既存の免疫反応性の既知レベルに基づいて選択することを含む。
【0008】
ある実施形態では、この方法は、少なくとも1つの標的抗原を標的とする免疫療法レジメンを、この少なくとも1つの抗原に対する免疫反応性が患者に存在するか存在しないかに基づいて選択することを含む。ある実施形態では、この方法は、少なくとも1つの標的抗原を標的とする免疫療法レジメンを、この少なくとも1つの抗原に対する免疫反応性の著しいまたは最小限のレベルを患者が有することに基づいて選択することを含む。ある実施形態は、能動免疫療法薬によって癌患者を治療する方法を含み、この方法は、少なくとも1つの標的抗原に対する患者の既存の免疫反応性のレベルの評価;既存の免疫反応性のレベルに基づく免疫療法レジメンの選択であって、ここで、このレジメンは、この少なくとも1つの標的抗原またはそのエピトープを標的とする少なくとも1つの免疫原を投与することを含むものである、選択;ならびに、このレジメンに従う患者の治療、を含む。
【0009】
ある実施形態では、免疫原は、癌に関連する抗原に対するエフェクターT細胞応答を促進することができる。免疫療法レジメンは、臨床的有用性を達成することができる。臨床的有用性としては、腫瘍の退縮、もしくは疾患の安定化など、またはこれらの組み合わせを含んでよい。既存の免疫反応性のレベルは、四量体アッセイもしくはELISPOTアッセイなど、またはこれらの組み合わせによって測定してよい。
【0010】
ある実施形態では、患者は、二次リンパ器官を超えて進行していない癌を有していてよい。患者は、ステージIIICまたはIV(M1a)のリンパ系疾患を有していてよい。癌は、例えば、黒色腫、腎臓癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、非小細胞肺癌、神経膠芽腫、眼内黒色腫、ホルモン感受性の乳癌、前立腺癌、および卵巣癌、ホルモン不応性の前立腺癌、腎細胞癌、食道癌、または中皮腫などの少なくとも1つであってよい。患者は、HLA‐A2陽性であってよい。
【0011】
ある実施形態では、癌患者の治療のための免疫療法レジメンは、プライム‐ブーストレジメン(prime-boost regimen)を含んでよい。ある実施形態では、免疫療法レジメンは、2つ以上の治療サイクルを含んでよい。免疫原は、患者のリンパ系へ直接送達されるように投与してよい。リンパ系への直接送達は、リンパ節内送達を含んでよい。
【0012】
ある実施形態では、プライム‐ブースト免疫療法レジメンは、免疫応答を誘導する効果量のプラスミドの投与、およびこれに続く、プラスミドによって発現されたエピトープに対応する少なくとも1つのペプチドの効果量の投与を含んでよい。プラスミドは、例えば、pMEL‐TYRまたはpPRA‐PSMなどを含んでよい。プラスミドによって発現された1もしくは複数のエピトープは、例えば、PRAMEエピトープもしくはその類似体、またはPSMAエピトープもしくはその類似体、またはメランAエピトープもしくはその類似体、またはチロシナーゼエピトープもしくはその類似体などの少なくとも1つ、またはこれらの組み合わせを含んでよい。プラスミドによって発現された1もしくは複数のエピトープは、例えば、PRAME425‐433もしくはその類似体、またはPSMA288‐297もしくはその類似体、またはメランA26‐35もしくはその類似体、
またはチロシナーゼ369‐377もしくはその類似体などの少なくとも1つ、またはこれらの組み合わせを含んでよい。プラスミドによって発現された1もしくは複数のエピトープは、メランA26‐35 A27Nva(ENvaAGIGILTV)(配列番号2)、またはメランA26‐35 A27L(ELAGIGILTV)(配列番号3)、またはPRAME425‐433 L426Nva,L433Nle(SNvaLQHLIGNle)(配列番号7)、またはPSMA288‐297 I297V(GLPSIPVHPV)(配列番号9)の少なくとも1つを含む。
【0013】
ある実施形態では、免疫療法レジメンは、免疫賦活薬の投与をさらに含んでよい。ある実施形態では、免疫原は、免疫賦活薬をさらに含んでよい。免疫賦活薬は、例えば、サイトカイン、ケモカイン、共刺激性分子、転写因子、およびシグナル伝達因子など、またはこれらの組み合わせを含んでよい。免疫療法レジメンは、腫瘍の微小環境の免疫抑制性を低下させて臨床的有用性を増進させる薬剤を投与することをさらに含んでよい。
【0014】
ある実施形態では、標的抗原は、メランAを含み、患者は、メランAに対する既存の免疫反応性を有する。免疫療法レジメンは、免疫原を投与して、メランAまたは1もしくは2つ以上のそのエピトープに対するエフェクターT細胞応答を促進させることを含んでよい。患者は、皮膚および/またはリンパ系の疾患を有していてよい。皮膚および/またはリンパ系の疾患は、例えば、ステージIIICまたはIV(M1a)リンパ系疾患であってよい。免疫療法レジメンは、メランA26‐35エピトープもしくはその類似体を標的とすることを含んでよい。癌は、例えば、黒色腫または神経膠芽腫であってよい。
【0015】
ある実施形態では、標的抗原は、PRAMEまたはPSMAの少なくとも1つを含み、患者は、このPRAMEまたはPSMAの少なくとも1つに対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限であり、免疫療法レジメンは、免疫原を投与して、このPRAMEまたはPSMAの少なくとも1つに対するエフェクターT細胞応答を促進することを含んでよい。PRAMEおよびPSMAは、患者の腫瘍組織内で共発現されてよい。免疫療法レジメンは、PRAME425‐433エピトープまたはPSMA288‐297エピトープの少なくとも1つを標的とすることを含んでよい。癌は、前立腺癌、腎臓癌、または黒色腫であってよい。癌は、前立腺癌であってよく、臨床的有用性は、例えば、PSAレベルの低下などを含んでよい。患者は、PRAMEおよびPSMAの両方に対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限であってよく;免疫療法レジメンは:この免疫療法レジメンに従う少なくともPRAMEまたはPSMAを標的とする能動免疫療法薬のさらなる治療サイクルの少なくとも1つを投与すること;患者サンプル内におけるPRAMEおよび/またはPSMA T細胞の増殖を分析すること;抗原特異的T細胞の増殖に基づいて患者をレスポンダーとして分類すること;ならびに、前記レスポンダーにさらなる治療サイクルの少なくとも1つを投与すること、を含む治療法を続いて行うことをさらに含んでよい。ある実施形態では、分析工程は、PRAMEまたはPSMA
T細胞の増殖を示し、この続いて行われる治療法は、免疫療法レジメンの治療サイクルを繰り返すことを含んでよい。この続いて行われる治療法は、免疫賦活薬を投与することをさらに含んでよい。ある実施形態では、分析工程は、PRAMEおよびPSMA T細胞の両方の増殖がないか、または増殖が一時的であることを示し、この続いて行われる治療法は、例えば、免疫療法レジメンの停止を含んでよい。
【0016】
ある実施形態は、癌患者を治療する方法を含み、この方法は:リンパ系を超えての広がりが限定的であり、ならびにリンパ系を超えて広がったいずれの転移も、その数が10以下であって、および1)生命維持に必要である器官中にないか、または2)直径が1センチメートル未満である、疾患ステージの患者を選別すること;ならびに、患者のリンパ系に直接免疫原を投与して、癌に関連する抗原に対するエフェクターT細胞応答を促進させることを含む免疫療法レジメンをその患者に適用することを含む。免疫療法レジメンは、
臨床的有用性を達成することができる。臨床的有用性は、腫瘍の退縮もしくは疾患の安定化など、またはこれらの組合せを含んでよい。患者は、二次リンパ器官を超えて進行していない癌を有していてよい。ある実施形態では、患者は、ステージIIICまたはIV(M1a)リンパ系疾患を有していてよい。癌は、例えば、黒色腫、腎臓癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、非小細胞肺癌、神経膠芽腫、眼内黒色腫、ホルモン感受性の乳癌、前立腺癌、および卵巣癌、ホルモン不応性の前立腺癌、腎細胞癌、食道癌、または中皮腫などの少なくとも1つであってよい。患者は、HLA‐A2陽性であってよい。免疫療法レジメンは、プライム‐ブーストレジメンを含んでよい。プライム‐ブースト免疫療法レジメンは、免疫応答を誘導する効果量のプラスミドの投与、およびこれに続く、プラスミドによって発現されたエピトープに対応する少なくとも1つのペプチドの効果量の投与を含んでよい。プラスミドは、例えば、pMEL‐TYRまたはpPRA‐PSMなどを含んでよい。プラスミドによって発現された1もしくは複数のエピトープは、例えば、PRAMEエピトープもしくはその類似体、またはPSMAエピトープもしくはその類似体、またはメランAエピトープもしくはその類似体、またはチロシナーゼエピトープもしくはその類似体などの少なくとも1つ、またはこれらの組み合わせを含んでよい。プラスミドによって発現された1もしくは複数のエピトープは、例えば、PRAME425‐433もしくはその類似体、またはPSMA288‐297もしくはその類似体、またはメランA26‐35もしくはその類似体、またはチロシナーゼ369‐377もしくはその類似体などの少なくとも1つ、またはこれらの組み合わせを含んでよい。プラスミドによって発現された1もしくは複数のエピトープは、メランA26‐35 A27Nva(ENvaAGIGILTV)(配列番号2)、またはメランA26‐35 A27L(ELAGIGILTV)(配列番号3)、またはPRAME425‐433 L426Nva,L433Nle(SNvaLQHLIGNle)(配列番号7)、またはPSMA288‐297 I297V(GLPSIPVHPV)(配列番号9)の少なくとも1つを含む。免疫療法レジメンは、免疫賦活薬の投与をさらに含んでよい。免疫原は、免疫賦活薬をさらに含んでよい。免疫賦活薬は、例えば、トール様受容体(TLR)リガンド、エンドサイトーシスパターン認識受容体(PRR)リガンド、サイトカイン、ケモカイン、共刺激性分子、転写因子、およびシグナル伝達因子など、またはこれらの組み合わせを含んでよい。免疫療法レジメンは、腫瘍の微小環境の免疫抑制性を低下させて臨床的有用性を促進させる薬剤を投与することをさらに含んでよい。免疫療法レジメンは、2つ以上の治療サイクルを含んでよい。免疫原は、患者のリンパ系に直接送達するように投与してよい。リンパ系への直接の送達は、リンパ節内送達を含んでよい。ある実施形態では、癌に関連する抗原は、メランAを含み、患者は、メランAに対する既存の免疫反応性を有する。患者は、皮膚および/またはリンパ系の疾患を有していてよい。皮膚および/またはリンパ系の疾患は、例えば、ステージIIICまたはIV(M1a)リンパ系疾患であってよい。免疫療法レジメンは、メランA26‐35エピトープもしくはその類似体を標的とすることを含んでよい。癌は、例えば、黒色腫または神経膠芽腫であってよい。ある実施形態では、癌に関連する抗原は、PRAMEまたはPSMAの少なくとも1つを含み、患者は、このPRAMEまたはPSMAの少なくとも1つに対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限である。PRAMEおよびPSMAは、患者の腫瘍組織内で共発現されてよい。免疫療法レジメンは、PRAME425‐433エピトープまたはPSMA288‐297エピトープの少なくとも1つを標的とすることを含んでよい。癌は、例えば、前立腺癌、腎臓癌、または黒色腫であってよい。癌は、前立腺癌であり、臨床的有用性は、例えば、PSAレベルの低下などを含んでよい。患者は、PRAMEおよびPSMAの両方に対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限であり;免疫療法レジメンは:この免疫療法レジメンに従う少なくともPRAMEまたはPSMAを標的とする能動免疫療法薬のさらなる治療サイクルの少なくとも1つを投与すること;患者サンプル中のPRAMEおよび/またはPSMA T細胞の増殖を分析すること;抗原特異的T細胞の増殖に基づいて患者をレスポンダーとして分類すること;ならびに、前記レスポンダーにさらなる治療サイクルの少なくとも1つを投与すること、を含む治
療法を続いて行うことをさらに含んでよい。ある実施形態では、分析工程は、PRAMEまたはPSMA T細胞の増殖を示し、この続いて行われる治療法は、免疫療法レジメンの治療サイクルを繰り返すことを含んでよい。この続いて行われる治療法は、免疫賦活薬を投与することをさらに含んでよい。ある実施形態では、分析工程は、PRAMEおよびPSMA T細胞の両方の増殖がないか、または増殖が一時的であることを示し、この続いて行われる治療法は、例えば、免疫療法レジメンの停止を含んでよい。
【0017】
ある実施形態は、患者における癌の治療に用いるための免疫原を含み、ここで、患者は、メランAに対する既存の免疫反応性を有し、およびここで、免疫原は、メランAに対するエフェクターT細胞応答を促進する能力を有する。患者は、HLA‐A2陽性であってよい。患者は、皮膚および/またはリンパ系の疾患を有していてよく、ここで、治療は、疾患がリンパ器官に局在化されていることの判定をさらに含んでよい。皮膚および/またはリンパ系の疾患は、例えば、ステージIIICまたはIV(M1a)リンパ系疾患であってよい。癌は、例えば、黒色腫または神経膠芽腫であってよい。治療は、メランA26‐35エピトープを標的とすることを含んでよい。
【0018】
ある実施形態は、患者における癌の治療に用いるための免疫原を含み、ここで、患者は、PRAMEおよびPSMAの群から選択される少なくとも1つの抗原に対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限であり、ならびにここで、免疫原は、既存の免疫反応性が存在しないか、または最小限である抗原に対するT細胞エフェクター応答を促進する能力を有する。患者は、HLA‐A2陽性であってよい。PRAMEおよびPSMAは、患者の腫瘍組織内で共発現されてよい。治療は、PRAME425‐433エピトープおよび/またはPSMA288‐297エピトープを標的とすることを含んでよい。癌は、例えば前立腺癌であってよく、治療の臨床的有用性は、例えば、PSAレベルの低下など、またはこれらの組み合わせを含んでよい。この少なくとも1つの標的抗原は、PRAME抗原および/またはPSMA抗原を含んでよく、癌は、例えば、前立腺癌、腎臓癌、または黒色腫であってよい。ある実施形態では、患者は、PRAMEおよびPSMAの両方に対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限であってよく;治療は:少なくともPRAMEまたはPSMAを標的とする能動免疫療法薬のさらなる治療サイクルの少なくとも1つを投与すること;患者サンプル内におけるPRAMEおよび/またはPSMA T細胞の増殖を分析すること;抗原特異的T細胞の増殖に基づいて患者をレスポンダーとして分類すること;ならびに、前記レスポンダーにさらなる治療サイクルの少なくとも1つを投与すること、をさらに含んでよい。ある実施形態では、分析工程は、抗PRAMEまたは抗PSMA T細胞の増殖を示し、この続いて行われる治療法は、免疫療法レジメンにおける続いての治療サイクルを投与することを含む。この続いて行われる治療法は、例えば、免疫賦活薬を投与することを含んでよい。ある実施形態では、分析工程は、PRAMEおよびPSMA T細胞の両方の増殖がないか、または増殖が一時的であることを示し、この続いて行われる治療法は、例えば、免疫療法レジメンの停止を含んでよい。
【0019】
ある実施形態は、患者の癌治療における医薬として用いるための免疫原を含み、ここで、患者は、二次リンパ器官を超えて進行していないか、または超えての広がりが限定的である癌を有し、およびここで、免疫原は、癌と関連する抗原に対するT細胞エフェクター応答を促進する能力を有し、ここで、免疫原は、免疫原の直接のリンパ内投与のためのものである。患者は、HLA‐A2陽性であってよい。患者の疾患ステージは、リンパ系を超えての広がりが限定的であり、ならびにリンパ系を超えて広がったいずれの転移も、その数が10以下であって、および1)生命維持に必要である器官中にないか、または2)直径が1センチメートル未満であるステージであってよい。
【0020】
ある実施形態では、既存の免疫反応性、または存在しないかもしくは最小限である免疫
反応性の測定は、例えば、四量体アッセイもしくはELISPOTアッセイなど、またはこれらの組み合わせによって行ってよい。患者は、二次リンパ器官を超えて進行していないか、または超えての広がりが限定的である癌を有していてよい。患者は、例えば、ステージIIICまたはIV(M1a)リンパ系疾患を有していてよい。癌は、例えば、黒色腫、腎臓癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、非小細胞肺癌、神経膠芽腫、眼内黒色腫、ホルモン感受性の乳癌、前立腺癌、および卵巣癌、ホルモン不応性の前立腺癌、腎細胞癌、食道癌、または中皮腫などの少なくとも1つであってよい。
【0021】
ある実施形態では、治療は、臨床的有用性を達成することができる。臨床的有用性は、例えば、腫瘍の退縮、もしくは疾患の安定化など、またはこれらの組み合わせを含んでよい。
【0022】
ある実施形態では、治療は、プライム‐ブーストレジメンを含んでよい。治療は、2つ以上の治療サイクルを含んでよい。プライム‐ブースト免疫療法レジメンは、免疫応答を誘導する効果量のプラスミドの投与、およびこれに続く、プラスミドによって発現されたエピトープに対応する少なくとも1つのペプチドの効果量の投与を含んでよい。プラスミドによって発現された1もしくは複数のエピトープは、例えば、PRAMEエピトープもしくはその類似体、またはPSMAエピトープもしくはその類似体、またはメランAエピトープもしくはその類似体、またはチロシナーゼエピトープもしくはその類似体などの少なくとも1つ、またはこれらの組み合わせであってよい。PRAMEエピトープは、例えば、PRAME425‐433もしくはその類似体であってよい。PSMAエピトープは、例えば、PSMA288‐297もしくはその類似体であってよい。メランAエピトープは、例えば、メランA26‐35 もしくはその類似体であってよい。チロシナーゼエピトープは、例えば、チロシナーゼ369‐377もしくはその類似体であってよい。プラスミドは、例えば、pMEL‐TYRまたはpPRA‐PSMを含んでよい。この少なくとも1つのペプチドは、例えば、メランA26‐35 A27Nva(ENvaAGIGILTV)(配列番号2)、もしくはメランA26‐35 A27L(ELAGIGILTV)(配列番号3)、PRAME425‐433 L426Nva,L433Nle(SNvaLQHLIGNle)(配列番号7)、もしくはPSMA288‐297ペプチド類似体 PSMA288‐297 I297V(GLPSIPVHPV)(配列番号9)など、またはこれらの組み合わせを含んでよい。
【0023】
ある実施形態では、免疫原は、患者のリンパ系への直接送達のためのものであってよい。リンパ系への直接送達は、例えば、リンパ節内送達を含んでよい。
【0024】
ある実施形態では、治療は、免疫賦活薬の投与をさらに含んでよい。免疫原は、免疫賦活薬をさらに含んでよい。免疫賦活薬は、例えば、サイトカイン、ケモカイン、共刺激性分子、転写因子、シグナル伝達因子;抗原処理および抗原提示に関与する薬剤、TAP1およびTAP2タンパク質、免疫もしくは標準プロテアソーム、ベータ‐2‐ミクログロブリン、およびMHCクラスIもしくはII分子;アポトーシス経路の制御に関与する薬剤、遺伝子制御もしくはサイレンシングに関与する薬剤、例えばDNAメチル化酵素、クロマチン制御分子、RNA制御分子など;トール様受容体(TLR)、ペプチドグリカン、LPSもしくはそれからの類似体、イミキモド(imiquimodes)、非メチル化CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN);それぞれTLR9およびTLR3と結合するAPCおよび自然免疫細胞上のdsRNA、バクテリアdsDNA(CpGモチーフ含有)、および合成dsRNA(ポリI:C);TLRと結合する天然または合成の小有機分子、合成抗ウイルスイミダゾキノリン、イミキモドおよびレシキモド;pAPCもしくはT細胞を活性化する免疫賦活アジュバント、エンドサイトーシスパターン認識受容体(PRR)リガンド、キラヤサポニン、ならびにツカレソールなど、またはこれらの組み合わせを含んでよい。治療は、腫瘍の微小環境の免疫抑制性を低下させて臨床的有用性を
促進させる薬剤を投与することをさらに含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本開示の代表的な実施形態において用いられるプラスミドおよびペプチドの投与スケジュールを示す。
【図2】図2は、投与するための、pMel‐pTyrプラスミドのプラスミド設計、ならびにメランAおよびチロシナーゼペプチドを示す。
【図3】図3は、48+週間にわたる59%の腫瘍縮小を示す。
【図4】図4は、36+週間にわたる60%の腫瘍縮小を示す。
【図5】図5は、36+週間にわたる30%の腫瘍縮小を示す。
【図6A】図6A〜6Bは、疾患ステージと共にベースラインでのメランA/MART‐1 T細胞、および臨床成績を示す。図6Aは、疾患ステージ(ステージIV(M1b,c)またはステージIIICおよびIV(M1a))において、腫瘍応答(リンパ系疾患)のある対象、または腫瘍応答のない対象を示す。図6Bは、図6Aの対象の臨床成績(PD、PR、またはSD)を示す(†2サイクルに対するSD。‡治療継続期間≧1年の対象)。黒丸は、腫瘍応答のない対象を表す。白丸は、腫瘍応答のある対象を表す(リンパ系疾患)。
【図6B】図6A〜6Bは、疾患ステージと共にベースラインでのメランA/MART‐1 T細胞、および臨床成績を示す。図6Aは、疾患ステージ(ステージIV(M1b,c)またはステージIIICおよびIV(M1a))において、腫瘍応答(リンパ系疾患)のある対象、または腫瘍応答のない対象を示す。図6Bは、図6Aの対象の臨床成績(PD、PR、またはSD)を示す(†2サイクルに対するSD。‡治療継続期間≧1年の対象)。黒丸は、腫瘍応答のない対象を表す。白丸は、腫瘍応答のある対象を表す(リンパ系疾患)。
【図7】図7は、MHC多量体染色(四量体アッセイ)によって測定した末梢血液中のエピトープ特異的T細胞の増殖を示す。
【図8】図8は、投与するための、pPRA‐PSMプラスミドのプラスミド設計、ならびにPRAMEおよびPSMAペプチドを示す。
【図9】図9は、36週間にわたる腫瘍縮小を示す。
【図10】図10は、MHC多量体染色によって測定したエピトープ特異的T細胞の増殖と臨床的有用性との関連を示す。
【図11】図11は、臨床成績と免疫応答との関連を示す。PC:前立腺癌、Rcc:腎臓癌、Mel:黒色腫、ESO:食道癌、*ベースラインにてエピトープ特異的T細胞検出。
【図12】図12により、治験担当医による腫瘍成長の評価(白棒グラフ)、および独立の放射線専門医による評価(黒棒グラフ)の比較から、主としてリンパ節に局在化した疾患を有する患者では腫瘍の減少または安定化、内臓転移疾患を有する患者では腫瘍の進行という傾向に関する定性的な一致が示される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
定義
本明細書における用語の使用の文脈から明らかでない限りにおいて、以下に挙げた用語は、本明細書の目的のために、示された意味を一般的に有するものとする。
【0027】
本明細書で用いる場合、「治療」または「治療する」とは、患者への医薬の投与または適用などによる、患者を医学的に治療する行為を意味する。
【0028】
本明細書で用いる場合、「免疫療法レジメン、治療、またはプロトコル」とは、医学的治療の計画、または治療の所望される過程を意味する。本明細書に記載の方法で用いられるレジメン、治療、またはプロトコルは、臨床または医療の場で用いられる治療レジメン
である。レジメンまたはプロトコルは、投与のスケジュール、投与の経路、および投与される特定の試薬のいずれか一部、またはすべてを指定するものであってよい。
【0029】
本明細書で用いる場合、「能動免疫療法」または「能動免疫療法薬」とは、疾患と戦う身体自体の免疫系を刺激する手順または試薬を意味する。これに含まれるのは、能動免疫療法剤、組成物、または生成物である。能動免疫療法薬とは、例えば疾患の治療の提供もしくはその補助による免疫療法薬または治療薬として用いることができる、免疫原、または免疫原性剤、もしくは生成物、もしくは組成物を意味する。ある実施形態では、能動免疫療法剤、生成物、または組成物は、疾患の治癒を提供または補助することができる。ある実施形態では、能動免疫療法剤、生成物、または組成物は、疾患の寛解を提供または補助する。
【0030】
本明細書で用いる場合、「免疫化」とは、抗原に対する免疫系の応答を誘導、または増幅するプロセスを意味する。別の選択肢として、これは、免疫系によって、癌の進行の低減/減少、またはそのような疾患の転移の予防/阻止を行うプロセスを意味する。最初の定義において、これは、制御応答も含んでよいが、保護的および/または治療的免疫応答、特に、炎症誘発性または能動免疫の意味も含んでよい。
【0031】
本明細書で用いる場合、「免疫反応性」とは、免疫受容体と抗原との間の生化学的相互作用、本発明の目的のためには特に、それぞれ、T細胞受容体(TCR)とMHC/抗原複合体を意味する。ある実施形態では、免疫反応性は、免疫応答の一部、またはその結果であってよい。
【0032】
本明細書で用いる場合、「標的抗原を標的とする」とは、標的抗原またはその少なくとも1つの特定のエピトープを認識する免疫応答を促進することを意味する。同様に、「腫瘍または細胞を標的とする」とは、標的とされた腫瘍または細胞によって発現された抗原またはその少なくとも1つの特定のエピトープを認識する免疫応答を促進することを意味する。ある実施形態では、免疫応答は、エフェクターT細胞応答である。ある実施形態では、エフェクターT細胞応答は、細胞傷害性T細胞(CTL)応答を含む。ある実施形態では、本明細書で開示する能動免疫療法薬の治療効果は、エフェクターT細胞によって媒介される。
【0033】
本明細書で用いる場合、「標的細胞」とは、例えば腫瘍細胞または腫瘍血管新生(tumor neovasculature)に関連する細胞など、免疫系の成分が作用し得る癌性病態と関連する細胞を意味する。ある実施形態では、標的細胞は、ワクチンおよび本明細書で開示する方法によって標的とされるべき細胞である。本定義に従う標的細胞としては、これらに限定されないが、腫瘍細胞が挙げられる。さらなる実施形態では、標的細胞は、標的抗原を発現するか、または標的エピトープを提示する細胞である。
【0034】
本明細書で用いる場合、「標的関連抗原(TAA)」とは、標的細胞内に存在するタンパク質またはポリペプチドを意味する。
【0035】
本明細書で用いる場合、「腫瘍関連抗原(TuAA)」とは、標的細胞が腫瘍関連細胞であるTAAを意味する。種々の実施形態では、TuAAは、腫瘍細胞、または腫瘍血管新生、もしくは腫瘍微小環境内のその他の間質細胞などの腫瘍の非癌性細胞と関連する抗原である。
【0036】
「エピトープ」の用語は、抗体または抗原受容体によって認識される抗原上の部位を意味する。T細胞エピトープは、一般に、タンパク質抗原由来の短鎖ペプチドである(非タンパク質抗原も公知であるが)。T細胞エピトープは、MHC分子と結合し、特定のT細
胞によって認識される。ある実施形態では、エピトープとしては、これらに限定されないが、T細胞受容体(TCR)と相互作用を起こすことができるように、細胞表面に提示されたペプチド、クラスI MHCの結合溝と非共有結合したペプチド、を含んでよい。
【0037】
本明細書で用いる場合、「免疫賦活薬」または「免疫賦活アジュバント」とは、免疫系もしくはその細胞、特にそれらのエフェクター機能の活性を、抗原受容体以外との相互作用を通して、向上、増加、促進、または上方調節するいずれの分子をも意味する。「免疫賦活アジュバント」とは、プロフェッショナル抗原提示細胞(pAPC)またはT細胞を活性化するアジュバントを意味し、例えば:TLRリガンド、エンドサイトーシスパターン認識受容体(PRR)リガンド、キラヤサポニン、ツカレソール、サイトカインなどが挙げられる。好ましいアジュバントのいくつかは、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、Marciani, D., J. Drug Discovery Today 8:934-943, 2003、に開示されている。
【0038】
本明細書で用いる場合、「治療サイクル」または「サイクル」とは、1もしくは2つ以上のプライミング/誘導/同調用量、およびそれに続く1もしくは2つ以上のブースティング/増幅用量を意味する。この一連の手順を、in vivoでの強い免疫応答を維持するのに必要な限り繰り返してよい。従って、ある実施形態では、治療サイクルは、2もしくは3つ以上のプライミング/誘導/同調用量、およびそれに続く2もしくは3つ以上のブースティング/増幅用量を含む。ある実施形態では、治療サイクルまたはサイクルは、1つのプライミング/誘導/同調用量、およびそれに続く1もしくは2つ以上のブースティング/増幅用量を含む。他の実施形態では、1つの治療サイクルは、1もしくは2つ以上のプライミング/誘導/同調用量、およびそれに続く1つのブースティング/増幅用量を含む。本明細書で開示する免疫療法レジメン、プロトコル、または治療は、一般に、1もしくは複数のサイクルを含んでいてよい(2もしくは3以上、4もしくは5以上、6もしくは7以上、8もしくは9以上、10もしくは11以上、など)。
【0039】
本明細書で用いる場合、「標的病変部」とは、癌治療法に応答してのサイズの変化、特に縮小を評価することができる十分なサイズである患者体内の腫瘍を意味する。腫瘍サイズは、例えば、腫瘍イメージングまたは直接測定によって特定してよい。腫瘍イメージングは、CTスキャン、MRI、および/またはPETスキャンなどによって実施してよい。皮膚病変部は、直接測定してよい。ある実施形態では、標的病変部は、治療または評価の開始時点にて、その最大寸法が1cm超の大きさである。
【0040】
本明細書で用いる場合、「標的病変部」と対比して用いられる「非標的病変部」とは、治療または評価の開始時点にて、その最大寸法が1cm未満の大きさである腫瘍のことである。
【0041】
本明細書で用いる場合、「リンパ系に限定された」、「リンパ系を超えて進行していない」、および類似の構文は、同一の組織もしくは器官内、または隣接する組織もしくは器官のいずれかである発症部位近傍へまず局部的に広がり、それに続いて二次リンパ器官、特にリンパ節を通して局所的または全身的に、およびその後遠隔内蔵部位へと広がる、悪性疾患の典型的な進行に関するものとして理解されるべきである。ある例では、内臓転移が見られる前に、皮膚または皮下へも転移する。「リンパ系に限定された」および/または「リンパ系を超えて進行していない」の用語は、本明細書で用いる場合、患者体内での疾患進行が実際に限定されること、または外科手術による除去および/またはその他の介入後の疾患の状態を意味するために用いてもよい。従って、これらの用語は、内臓へ広がる前の疾患進行のいずれの時点をも意味し得る。ある実施形態では、これらの用語は、本明細書で述べるより具体的に定められた疾患ステージである患者を意味するために用いてもよい。ある実施形態では、患者は、外科手術もしくはその他の治療に続いて内臓病変部
が除去または切除されたことによってリンパ系に限定された疾患を有することを特徴とする。ある実施形態では、患者は、所定のサイズおよび/または数と比較してサイズおよび/または数が限定的である内臓転移の存在に基づいて、「主としてリンパ系に限定された」疾患を有するか、または単に「リンパ系を超えての進行が限定的である」こと(など)を特徴とする。
【0042】
本開示は、癌腫に対する能動免疫療法薬の利用における大きな進歩、ならびに、癌の治療において腫瘍抗原を標的とするエフェクターT細胞の誘導、その成長の促進、活性化、および/またはそれ以外の形での刺激を行う免疫原性生成物をより有利に利用するための、既存の免疫反応性などの機構に基づくコンパニオンバイオマーカーの発見および使用に関する。本明細書で開示される方法および免疫原によって提供される代表的な進歩としては、これらに限定されないが、免疫療法が効果的であると予測される患者の1もしくは複数のサブセットの識別;容易に観察可能である速度での癌ワクチンによる持続的で客観的な応答の達成;リンパ投与されたリンパ系転移疾患に対する免疫療法薬の選択的効力の最初の観察:免疫療法(少なくともリンパ系転移疾患に対して)の効果を予測する上での、1もしくは複数の標的抗原に対する既存の免疫状態の予後的価値;患者サブセット内での転移疾患における進行を伴わない生存期間の延長、が挙げられる。
【0043】
ある実施形態では、本開示は、標的抗原に対してエフェクターT細胞応答を発生させる薬剤の投与を含む免疫療法レジメンのために患者を識別、または選別する方法に関する。例えば、エフェクターT細胞応答は、CTL応答であってよい。ある実施形態では、本開示は、癌腫を有する患者を治療する方法に関し、ここで、少なくとも1もしくは2つ以上の標的抗原に対する患者の既存の免疫反応性が、免疫療法レジメンのための選別の前に評価される。例えば、ある実施形態では、患者は、特定の免疫療法薬または免疫療法レジメンによる治療について、特定のTuAAもしくはそのエピトープに対する既存の免疫反応性を有するか否かに基づいて選別される。本明細書で開示される方法では、治療レジメンを開始する前の患者の選別または識別は、少なくとも1つの標的抗原に対する既存の免疫反応性のレベル(例:存在もしくは非存在)、すなわち、標的抗原を認識するT細胞の存在もしくは非存在、または、少なくとも1つの特定のそのエピトープに対する既存の免疫反応性のレベルの評価を含んでよい。標的抗原に対する既存の免疫反応性の存在もしくは非存在の測定は、例えば、MHC多量体染色および/またはELISPOTアッセイなどによって行ってよい。ある実施形態では、選別または識別は、標的抗原に対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限である患者の選別または識別を含む。ある実施形態では、選別または識別は、標的抗原に対する既存の免疫反応性を持つ患者の選別または識別を含む。標的抗原に対する患者の免疫反応性または免疫は、測定され、所定の値と比較される。免疫反応性が所定の値と等しいか、またはこれより大きい場合、患者は、標的抗原に対する既存の免疫反応性を持つものとして分類される。免疫反応性が所定の値よりも小さい場合、患者は、標的抗原に対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限であるものとして分類される。所定の値は、例えば、その値の測定に用いられる技術(例えば、MHC多量体染色および/またはELISPOTアッセイなど)、標的抗原に対する「免疫反応性の正常値」など、またはこれらの組み合わせを含む考慮事項に基づいて選択してよい。「免疫反応性の正常値」は、例えば、患者が問題の疾患に罹患する前の同一の患者の値、または特定の地域、年齢群、および/または性別などの健常人(例えば、問題の疾患を持たない人々)の平均値であってよい。ある実施形態では、標的抗原に対する既存の免疫反応性を持つ患者は、アッセイの検出下限よりも少なくとも3倍多い数の抗原特異的T細胞を有する。逆に、標的抗原に対する既存の免疫反応性を持たない患者は、アッセイの検出下限の3倍未満の数の抗原特異的T細胞を有する。代表的な実施形態では、MHC多量体染色(四量体アッセイ)の検出下限は、CD8+ T細胞の総数に対して0.03パーセントの四量体陽性CD8+ T細胞である。
【0044】
本明細書で開示される実施形態は、治療の方法に関し、ここで、疾患がリンパ系を超えて広がっていない患者が、免疫療法試薬の直接のリンパ内投与を含むレジメンによる治療に選別される。代表的な実施形態では、投与は、非疾患リンパ節に対して行なわれる。従って、ある実施形態では、本明細書で開示する方法は、リンパ系に限定されているか(疾患がリンパ系を超えて進行していないか、または外科手術もしくはその他の治療後に限定されているために)、または最小限の度合いでリンパ系を超えているだけである(例:リンパ系を超えた転移病変部を有するが、生命維持に必要である器官にはなく、例えば、これらに限定されないが、軟組織病変部であり、ここで、そのような病変部は、その数が10もしくは9個以下であるか;または、直径が1cm未満であれば、生命維持に必要である器官の転移病変部を必ずしも除外しない)転移疾患を有する患者を選別、または識別することを含む。ある実施形態では、この方法は、内臓転移の存在まで進行していない転移疾患を有する患者を選別、または識別することを含む。発症部位に浸潤性疾患を有する患者は、ある実施形態では除外されるが、一般的には、これらの群から除外されない。ある実施形態では、本明細書で開示する方法に従う選別、または識別は、皮膚病変部のみを有する黒色腫患者の選別、または識別を含む。
【0045】
従って、ある実施形態では、本明細書で開示する方法は、リンパ系の外部に、またはこれを超えて転移疾患/病変部を有する患者の選別、または識別を含む。ある実施形態では、リンパ系を超えて広がったそのような転移病変部は、例えば、軟組織へ広がったが、生命維持に必要である器官には広がっておらず、病変部の数は、10もしくは9個以下である。ある実施形態では、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1個の病変部が存在する。ある実施形態では、リンパ系を超えた転移病変部は、その直径が1センチメートル未満である。ある実施形態では、直径が1センチメートル未満の病変部は、生命維持に必要である器官にあってもよい。
【0046】
ある実施形態では、本明細書で開示する方法は、疾患が発症した器官もしくは組織を超える転移がないか、または隣接する器官もしくは組織にのみ広がった患者の選別、または識別を含む。ある実施形態では、その疾患がリンパ系を超えて生命維持に必要でない器官に広がり、かつその転移病変部が10もしくは9個以下である患者が、本明細書で開示する方法に従う免疫療法薬での治療に選別される。
【0047】
患者の選別
本明細書で考察されるように、患者は、一般的には、HLA型の状態、標的抗原に対する既存の免疫反応性のレベル、および/または疾患がリンパ系に限定されているか、もしくはリンパ系を超えて進行しているかどうか、に基づいて選別してよい。従って、ある実施形態では、患者の選別は、特定のHLA型に対して陽性であることを含んでよく、この場合、免疫療法レジメンは、例えば、これらに限定されないが、HLA‐A2またはHLA‐A*0201などのそのHLA型によって拘束された応答を発生させる。
【0048】
ある実施形態では、患者は、標的抗原に対する既存の免疫反応性が、本明細書で考察されるベースラインまたは所定の値と比較して、非常に大きいか、存在するか、最小限であるか、または存在しないかに従って選別される。標的抗原に対する既存の免疫反応性の存在または非存在は、例えば、MHC多量体染色および/またはELISPOTアッセイなどによって測定してよい。例えば、ある実施形態では、本明細書で開示する方法は、標的抗原に対する既存の免疫反応性を有する患者の選別を含む。従って、標的抗原に対するその免疫反応性が所定の値であるか、これより上であるか、これより非常に上である患者が、標的抗原または1もしくは2つ以上のそのエピトープを標的とする能動免疫療法組成物の投与に選別される。例えば、ある実施形態では、標的抗原に対する既存の免疫反応性のベースラインが、所定の値よりも大きいか、またはこれよりも非常に上である患者、例えば、MHC多量体染色分析によって測定した場合にCD8+T細胞の約0.1%よりも大
きい患者が選別される。従って、ある実施形態では、標的抗原に対する免疫反応性のベースラインが、所定の値よりも大きい患者、例えば、MHC多量体分析によって測定した場合に(CD8+T細胞の総数に対して染色されたT細胞の%で)約0.10%より大きい、約0.11%より大きい、約0.12%より大きい、約0.13%より大きい、約0.14%より大きい、約0.15%より大きい、約0.16%より大きい、約0.17%より大きい、約0.18%より大きい、約0.19%より大きい、および約0.20%より大きい患者が、標的抗原または1もしくは2つ以上のそのエピトープを標的とする能動免疫療法組成物の投与に選別される。
【0049】
ある実施形態では、この方法は、標的抗原に対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限である患者の選別を含む。従って、標的抗原に対するその免疫反応性が、所定の値か、またはそれより低い範囲に入る患者が、標的抗原または1もしくは2つ以上のそのエピトープを標的とする能動免疫療法組成物の投与に選別される。例えば、ある実施形態では、標的抗原に対する既存の免疫反応性のベースラインが所定の値よりも小さい患者、例えば、MHC多量体分析によって測定した場合にCD8+T細胞の約0.1%よりも小さい患者が、既存の免疫を持たないか、またはこれが最小限であるとして特徴付けられ、標的抗原または1もしくは2つ以上のそのエピトープを標的とする能動免疫療法組成物の投与に選別される。例えば、標的抗原に対する免疫反応性のベースラインが、所定の値よりも小さい患者、例えば、MHC多量体分析によって測定した場合に、約0.10%より小さい、約0.09%より小さい、約0.08%より小さい、約0.07%より小さい、約0.06%より小さい、約0.05%より小さい、約0.04%より小さい、約0.03%より小さい、約0.02%より小さい、もしくは約0.01%より小さい、またはバックグラウンドレベルからの区別が不能である患者が、治療に選別される。
【0050】
当業者には明らかであるように、所定の値は、免疫反応性の測定に用いられる技術、および求められる応答に応じて異なる。本明細書の開示事項に基づいて、これらの値は、特定のタイプの分析または測定について当業者に明らかであり、本明細書で述べる方法に有用である追加の、または別の選択肢としての分類/階層化も明らかである。
【0051】
ある実施形態では、選別または識別は、所定のステージを超えて進行していない転移疾患を有する患者の選別または識別をさらに含む。癌のステージは、癌がどの程度まで広がっているかを記述するものである。当業者であれば理解されるように、種々の癌のステージについて特有の専門用語は異なるものの、全般的な基本となる原理は同じである。
【0052】
いずれのタイプの癌腫についても、発症した部位もしくは器官もしくは組織に局在化する癌、周囲の正常組織へ浸潤した癌、リンパ系へ浸潤した癌、血管および毛細血管へ浸潤した癌、遠隔/内臓器官へ転移したもしくは転移していない癌について述べることは有意義である。例えば、黒色腫の場合、ステージで考慮されることが多いのは、腫瘍のサイズおよび/もしくは厚さ、真皮層もしくは皮下組織への侵入の深さ、隣接器官への浸潤の有無、転移したリンパ節の数(転移がある場合)、ならびに遠隔器官への広がりの有無である。例えば、黒色腫のステージをさらに明らかとするために、TNM(Tumor‐Node‐Metastasis,腫瘍‐リンパ節‐転移)の文字が用いられ、ここで、Tの文字は、腫瘍の厚さを表し;Nの文字は、関与するリンパ節の数を表し;Mの文字は、遠隔器官への転移を表す。これらの文字の各々は、厚さ、リンパ節の数、または転移の度合いをそれぞれ示す数値(例:0、1、など)を含んでよい。例えば、転移の評価では、用いられる数値は、転移が起こっていない場合は「0」、または転移が存在する場合は「1」である(例えば、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、Restas, S. and Mastrangelo, MJ, Seminars in Oncology 2007 34(6):491-497、を参照)。
【0053】
例えば、黒色腫のステージは、ステージ0、I、II、III、またはIVであり、少
なくとも部分的に疾患組織(例えば、腫瘍組織)の局在化に依存し、いくつかのステージでは、リンパ器官を含んでよい。本明細書で用いる場合、リンパ器官としては、例えば、脾臓、リンパ節、リンパ管、などが挙げられる。ステージ0、IA、IBの黒色腫は、腫瘍のサイズまたは厚さを考慮に入れており;転移は関与しておらず、治癒の可能性が高い。ステージIIA、IIB、およびIICの黒色腫は、ステージIで見られるものよりも腫瘍のサイズまたは厚さが増加しており、リンパ節は関与しておらず、治癒可能である。ステージIIIA、IIIB、およびIIICの黒色腫は、腫瘍のサイズまたは厚さ、1もしくは2つ以上のリンパ節の関与の有無、およびこの癌が転移を始めたことを考慮に入れた進行ステージを意味する。ステージIVの黒色腫は、もう1つの進行ステージであり、これは、ステージIIIの黒色腫で考慮に入れた特徴に加えて、「M1」で表される転移、遠隔転移を伴っている。例えば、黒色腫の場合、ステージIV M1aは、黒色腫はリンパ節を超えての進行はしておらず(すなわち、リンパ系疾患)、遠隔の皮膚および皮下組織、またはリンパ節に限定されていることを示し、一方、リンパ節を超えてM1bまたはM1cステージまで進行した疾患は、内臓疾患の典型であり、すなわち、肺までの転移、またはその他のいずれかの内臓部位への転移、またはいずれの部位であっても血清中乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)のレベルが上昇した遠隔転移が発生している。
【0054】
腎細胞癌または腎臓癌のステージは、ステージI、II、III、またはIVである。ステージIおよびIIは、腫瘍のサイズまたは厚さを考慮するものであり、転移は関与していない。ステージIII腎細胞癌は、腫瘍のサイズまたは厚さ、1もしくは2つ以上の近傍のリンパ節の関与の有無、および腎臓または周囲の脂肪組織の血管への癌の浸潤の有無を考慮するものである。ステージIV腎細胞癌は、進行ステージであり、この疾患のステージIIIで考慮に入れた特徴に加えて、副腎、肺、肝臓、骨、または脳への転移を伴う。
【0055】
前立腺癌のステージは、ステージI、II、III、またはIVである。ステージI前立腺癌は、腫瘍の広がりの度合いが、一方の前立腺葉の半分以下であるかどうか、およびPSA(前立腺特異的抗原)のレベルが1ミリリットルあたり10ナノグラム未満であることを考慮するものである。ステージIIA前立腺癌では、腫瘍の広がりの度合いが、ステージIと同様であるか、または一方の前立腺葉の半分を超えて広がっており、ならびにPSAのレベルが、少なくとも1ミリリットルあたり10ナノグラムであるが、1ミリリットルあたり20ナノグラム未満である。ステージIIB前立腺癌では、腫瘍の広がりの度合いが、両方の前立腺葉まで広がっており、ならびにPSAのレベルが、1ミリリットルあたり20ナノグラムかまたはそれより高い。ステージIII前立腺癌では、腫瘍は、前立腺を超えて精嚢まで広がっており、PSAのレベルは様々である。進行ステージの疾患であるステージIV前立腺癌では、腫瘍は、精嚢を超えて近傍のリンパ節、組織、または膀胱、骨盤、もしくは直腸などの器官まで広がっているか、または、骨を含む遠隔のリンパ節、器官、もしくは組織まで転移しており;PSAレベルは様々である。
【0056】
ある実施形態では、本明細書で開示する能動免疫療法生成物を用いて、リンパ節までに局在化した黒色腫または神経膠芽腫などの疾患を治療することができる。ある実施形態では、疾患のリンパ系を超えての広がりが限定的であるか、またはそうでなくても、疾患が外科手術もしくはその他の治療後に(主として)リンパ系に限定されており、ならびにリンパ系を超えて広がったいずれの転移(病変部)も、その数が10以下であり、および生命維持に必要である器官にはないか、または生命維持に必要である器官が関与する場合は、直径が1センチメートル未満である疾患ステージの癌(例えば、神経膠芽腫、黒色腫、前立腺癌、腎細胞癌など)が、本明細書で開示する能動免疫療法薬を用いて治療される。従って、ある実施形態では、転移は、リンパ系を超えているが、生命維持に必要である器官(そのような生命維持に必要である器官の例としては、肺、肝臓、副腎が挙げられる)までの広がりまたは進行はなく、およびそのような転移病変部の数は、10個以下である
。ある実施形態では、転移病変部は、リンパ系を超えて広がっており、ある実施形態では、生命維持に必要である器官までの広がりも含まれ、およびそのような転移病変部は、直径が1センチメートル未満である。
【0057】
ある実施形態では、本明細書で開示する能動免疫療法薬を用いて、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、陽電子放出断層撮影(PET)、骨スキャン、またはX線などの従来のイメージング技術を利用して測定された、臨床上明らかである(肉眼で見える)疾患(例えば、進行黒色腫などの疾患)を治療することができる。ある実施形態では、能動免疫療法生成物を用いて、微視的疾患(すなわち、イメージング技術ではなく、生検によって検出可能である疾患)、微小残存病変の治療、および疾患再発の防止または遅延を行うことができる。ある実施形態では、本明細書で開示する免疫療法生成物を利用して、臨床上明らかである転移病変部の成長が防止される。
【0058】
二次リンパ系への直接投与を含む本明細書で開示する代表的な免疫療法レジメンは、まだリンパ系を超えて進行していないか、またはそれが限定的な度合いでのみ発生している癌に対して特に効果的であることが分かった。リンパ内免疫化は、例えば免疫原に対する感受性という点で有利であることが公知であるが、標的疾患の解剖学的部位に関する利点は、予測可能ではなく、期待されてもいなかった。従って、ある実施形態では、リンパ系に限定された疾患か、または主としてリンパ系に限定された疾患を有する患者が、腫瘍関連抗原を標的とする免疫原のリンパ内投与を含む免疫療法レジメン下での治療に選別される。ある実施形態では、リンパ節への直接投与が用いられる。ある実施形態では、癌はリンパ系までまだ広がっていない。ある実施形態では、この治療により、リンパ系を超えての疾患の広がりを例とする疾患の広がりが阻止、または防止される。
【0059】
免疫反応性の測定
本明細書で開示する方法の実施形態では、能動免疫療法組成物の1もしくは複数の成分に対する患者の免疫応答を容易かつ確実に評価するための方法が用いられる。ある実施形態は、非レスポンダーに対する陽性免疫レスポンダーとして患者を区別または分類することを含む。例えば、少なくとも1つの免疫抗原(または標的抗原)に対する患者の免疫応答は、MHC多量体染色および/またはELISPOTアッセイなどによって測定してよく、患者を陽性免疫レスポンダーとして分類するための所定の基準は、アッセイバックグラウンドと有意の差があり、治療前ベースラインと比較して2倍大きいMHC多量体染色および/または3倍大きいELISPOT反応であってよい。既存の免疫反応性は、アッセイバックグラウンドに対して評価してよい。そのような方法は、本技術分野で公知である。酵素結合免疫スポット(ELISPOT)は、細胞によって放出されたバイオマーカーの検出、または例えば抗体、サイトカイン、ケモカイン、もしくはグランザイムを分泌する細胞など、目的のバイオマーカーを分泌する個々の細胞の検出のための高感度技術である。この技術は、十分に確立されており、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)技術と密接に相関している(その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、Vaquerano et al., Biotechniques. 1998 Nov; 25(5):830-4, 836)。
【0060】
本明細書で用いる場合、MHC多量体染色(例:四量体アッセイ)とは、抗原特異的T細胞の存在を検出するための方法を意味し、ここで、多量体化され、通常は蛍光色素であるレポーター分子と結合したMHC‐ペプチド複合体がT細胞と接触し、MHC‐ペプチド複合体を認識するT細胞受容体(TCR)を発現するT細胞と結合し、レポーター分子を通してその検出が可能となる。例に過ぎないが、多量体は、二量体、五量体、四量体などを含んでよい。そのような試薬は、市販されている。また、本明細書で用いる場合、ELISPOTアッセイ(またはIFN‐ガンマ酵素結合免疫スポットアッセイ)は、ELISPOTアッセイにおいて、特定のエフェクター細胞によるIFN‐ガンマ産生を測定することによるCD8+ CTL応答の評価に用いられる方法を意味する。このアッセイ
では、細胞は、マイクロタイターウェルのプラスチック表面上に固定され、エフェクター細胞が添加される。抗原特異的エフェクター細胞による細胞の結合は、エフェクター細胞によるIFN‐ガンマを含むサイトカインの産生を引き起こす。次に、細胞は染色されて、細胞内IFNガンマの存在が検出され、顕微鏡下にて陽性染色点(スポット)の数がカウントされる。
【0061】
ある実施形態では、応答は、抗原特異的T細胞の表現型に基づいて評価してよく、例えば、フローサイトメトリーを用いて、異なる表現型に関連する表面マーカーを検出する。例えば、エフェクター表現型またはエフェクター/メモリー表現型を持つ抗原特異的T細胞の割合の増加は、抗原特異的T細胞の総数が増加しない場合であっても、陽性応答と見なしてよい。そのような手法は、本技術分野で公知であり、適切な試薬は市販されている。
【0062】
本明細書で開示する能動免疫療法組成物に対する免疫応答を測定または評価するその他の方法としては、例えば、これらに限定されないが、細胞内サイトカイン染色(ICSアッセイ);DTH応答 − 好ましくは抗原特異的DTH、サイトカインアッセイ、細胞増殖アッセイ、および/またはクロム放出アッセイなどが挙げられる。このようなアッセイを実施するための多くの技術が本技術分野で公知である。このようなアッセイは、単に抗原というだけでなく、標的エピトープに対して特異的であり得ることから、エピトープ定量と称される場合もある。標的抗原からの特定のT細胞エピトープの提示を検出する試薬も用いてよい。これらとしては、例えば、T細胞株およびハイブリドーマが挙げられ、より好ましくは、ペプチド‐MHC複合体およびTCR多量体に特異的な抗体である(例えば、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、Li et al., Nature Biotech. 23:349-354, 2005、参照)。適切な試薬は市販されている。
【0063】
ある実施形態では、血液またはその他の体液もしくは分泌物、生検された腫瘍組織、またはリンパ球もしくはサイトカインなどのこれらの一部、などの患者サンプルが、免疫応答のために分析される。ある実施形態では、免疫応答は、DTHのための皮膚検査などの身体の目視観察を用いて測定される。
【0064】
ある実施形態では、1もしくは複数の所望される免疫応答のみが分析される。ある実施形態では、1もしくは複数の所望されない免疫応答のみが分析される。さらなるある実施形態では、所望される免疫応答および所望されない免疫応答の両方が分析される。ある実施形態では、この応答は、これらに限定されないが、腫瘍の縮小、もしくは減少、もしくは退縮、腫瘍の排除、腫瘍進行の阻止、癌の寛解、微小残存病変、臨床応答(固形癌治療効果判定(RECIST)基準によって測定)などが挙げられる。ある実施形態では、患者は、免疫化後、例えば、免疫療法レジメンの少なくとも2サイクルおよび/または臨床的有用性の達成の後の抗原特異的T細胞の増殖に基づいてレスポンダーとして分類される。特定の実施形態では、例えば前立腺癌患者などの患者は、PSA減少に反映される腫瘍退縮に基づいて、レスポンダーとして分類される。
【0065】
メランAに対する既存の免疫反応性
進行黒色腫を有する患者における能動免疫療法の免疫性および臨床成績を評価すると、標的とするメランAエピトープのMHC多量体染色で測定されたメランAに対する既存の免疫反応性を有する対象で、腫瘍応答(例:腫瘍縮小)が観察された。すなわち、臨床成績および/または腫瘍応答は、治療レジメンの開始前または開始時に、既存のメランA/MART‐1 T細胞応答によって予測された。当業者であれば判断することができるように、既存の免疫反応性は、本明細書に開示する、および本技術分野で公知のその他の手段によって測定してよい。
【0066】
従って、ある実施形態は、黒色腫などの癌腫(または神経膠芽腫などの癌)を有する患者を治療する方法に関し、この方法は、少なくとも1つの標的抗原または1もしくは2つ以上のそのエピトープに対する既存の免疫反応性を有する患者の選別であって、ここで、この標的抗原はメランAである、選別、ならびにメランAまたは1もしくは2つ以上のそのエピトープを標的とする能動免疫療法組成物のその患者への投与、を含む。ある実施形態では、この免疫療法組成物はまた、腫瘍に関連する少なくとも1つの追加の抗原または1もしくは2つ以上のそのエピトープも標的とする。ある実施形態では、追加の腫瘍関連抗原は、チロシナーゼである。
【0067】
ある実施形態では、リンパ系に限定された疾患(例えば、M1aステージ転移疾患 −
疾患のステージについては本明細書の他所に記載)を有する患者が、臨床的有用性を示す。ある実施形態では、本明細書で開示する方法は、リンパ系またはリンパ節を超えて進行していない癌腫を有する患者を選別することを含む。ある実施形態では、疾患がリンパ系を超えて進行しているいが、生命維持に必要である器官には広がっておらず、病変部の数が10個以下である患者が、臨床的有用性を示す。ある実施形態では、生命維持に必要である器官に病変部が存在するが、それらの直径は1センチメートル未満である。
【0068】
本明細書で示すように、メランAまたはその特定のエピトープに対する既存の免疫反応性が、メランAを標的とする免疫療法薬による治療に際しての陽性の臨床成績と関連付けられた。従って、ある実施形態では、患者は、患者がメランAに対する既存の免疫反応性を有することに基づいて選別されて、メランAを標的とする能動免疫療法組成物を受ける。従って、ある実施形態では、標的抗原に対する既存の免疫反応性を有する患者が、そのような既存の免疫反応性と陽性の臨床成績が関連付けられる免疫療法レジメンでの治療に選別される。ある実施形態では、標的は、メランAを含み、患者は、メランAに対する既存の免疫反応性を持たないかまたはそれが最小限であり、免疫療法レジメンは、免疫原および免疫賦活薬を共投与して、メランAに対する免疫応答(例:エフェクターT細胞応答)を促進させることを含む。
【0069】
ある実施形態では、癌腫は、例えば黒色腫または神経膠芽腫などのメランA陽性癌であり、少なくとも1つの標的抗原は、メランAである。ある実施形態では、免疫療法剤または組成物はまた、腫瘍に関連する追加の抗原を標的としてもよく、例えば、これらに限定されないが、チロシナーゼまたは1もしくは2つ以上のそのエピトープである。免疫療法レジメンは、プライム‐ブーストプロトコルを含んでよい。ある実施形態では、特定のエピトープが標的とされる。ある実施形態では、標的エピトープは、メランA26‐35を含む。特定の実施形態では、免疫療法レジメンの成分は、別々に、リンパ節内送達される。
【0070】
ある実施形態では、メランA標的抗原に対する既存のベースライン免疫反応性が、MHC多量体染色分析で測定した場合のCD8+T細胞の約0.1%を例とする所定の値を超えている患者が、選別される。ある実施形態では、例に過ぎないが、標的抗原に対するベースライン免疫反応性が、MHC多量体染色分析で測定した場合の約0.10%、約0.11%、約0.12%、約0.13%、約0.14%、約0.15%、約0.16%、約0.17%、約0.18%、約0.19%、約0.20%超(全CD8+T細胞に対する染色されたT細胞の%)を例とする所定の値を超えている患者が、メランAに対する既存の免疫反応性を有するとして特徴付けられる。標的抗原に対する既存の免疫反応性が、CD8+T細胞の約0.10%、または約0.09%、または約0.08%、または約0.07%、または約0.06%、または約0.05%、または約0.04%、または約0.03%、または約0.02%、または約0.01%未満を例とする所定の値未満である患者が、メランAに対する免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限であるとして特徴付けられる。本出願を読む当業者であれば、ベースライン免疫反応性の比較対象とされる
所定の値を、免疫反応性の評価に用いられる特定のアッセイに基づいて選択することができることは理解されるであろう。
【0071】
PRAMEおよびPSMAに対する既存の免疫反応性
PRAMEおよびPSMA陽性固形腫瘍を有する患者における能動免疫療法の免疫性および臨床成績を評価すると、陽性の臨床観察結果(これらに限定されないが、疾患の安定、見掛け上の根治目的手術(apparently curative surgery)の可能化、PSA力価または速度の減少を含む)は、標的抗原またはそのエピトープに対する既存の免疫性の欠如と、および治療の最初の2サイクルの間における血中T細胞の増殖または残留とも関連し得る。臨床的有用性を示す患者の一部は、治療レジメン開始後の早い段階で血中の抗原特異的T細胞の増殖を示した。ある実施形態では、陽性の臨床成績は、エフェクター細胞によって新しく誘導されるT細胞応答によって予測することができる。従って、ある実施形態は、治療的診断手法(theranosticapproach)を含む(例えば、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願番号第11/155,928号(米国特許出願公開番号第2005‐0287068 A1号)を参照)。従って、ある実施形態では、いずれかの抗原に対する応答が増加または維持されない場合、それを基準として用いて、免疫療法剤/組成物による治療の停止、または、例えば免疫賦活アジュバントを含むアジュバントの投与を含む、より強力な免疫原性プロトコルへの治療の改変が行われる。
【0072】
ある実施形態では、例えば前立腺癌または腎細胞癌などで、リンパ系に限定されている疾患を有する患者が、臨床的有用性を示す。ある実施形態では、本明細書で開示する方法は、リンパ系もしくはリンパ節を超えて進行していないか、または、そうでなければ、リンパ系もしくはリンパ節に限定されている癌腫を有する患者を選別することを含む。ある実施形態では、疾患がリンパ系を超えて広がっているが、生命維持に必要である器官までではなく、その病変部が10個以下である患者が、臨床的有用性を示す。ある実施形態では、生命維持に必要である器官に病変部が存在するが、それらの直径は1センチメートル未満である。
【0073】
ある実施形態は、癌腫を有する患者を治療する方法に関し、この方法は、例えばMHC多量体染色および/またはELISPOTアッセイなどによって測定した場合の、PRAMEおよび/もしくはPSMA、またはPRAMEおよび/もしくはPSMAの特定のエピトープに対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限である患者を選別すること、ならびにPRAMEおよび/もしくはPSMA、または一方もしくは両方の抗原の1つ以上のエピトープを標的とする免疫療法組成物をその患者に投与することを含み、ここで、少なくとも1つの標的抗原、または一方もしくは両方の抗原の1つ以上のエピトープに対するエフェクターT細胞応答が発生される。ある実施形態では、免疫療法組成物はまた、その腫瘍に関連する少なくとも1つの追加の抗原、または1つ以上のそのエピトープも標的とする。
【0074】
ある実施形態では、PRAMEおよび/またはPSMAに対する既存のベースライン免疫反応性の最小値が、MHC多量体染色分析で測定した場合のCD8+T細胞の約0.2%を例とする所定の値未満である患者が、選別される。特定の実施形態では、PRAMEおよび/またはPSMAに対するベースライン免疫反応性が、MHC多量体染色分析で測定した場合に約0.20%、約0.15%、約0.14%、約0.13%、約0.12%、約0.11%、約0.10%、約0.09%、約0.08%、約0.07%、約0.06%、約0.05%、約0.04%、約0.03%、約0.02%、もしくは約0.01%未満(全CD8+T細胞に対する染色されたT細胞の%)であるか、またはコントロールと区別することのできない患者が、標的抗原に対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限であるとして特徴付けられる。本出願を読む当業者であれば、ベースライン免疫反応性の比較対象とされる所定の値を、免疫反応性の評価に用いられる特定の
アッセイに基づいて選択することができることは理解されるであろう。
【0075】
ある実施形態では、PRAMEおよび/またはPSMA陽性癌腫を有し、ならびに例えばMHC多量体および/またはELISPOTアッセイなどによって測定した場合の標的抗原もしくはそのエピトープに対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限である患者が選別され、PRAMEおよび/もしくはPSMA抗原、またはその1もしくは2つ以上のエピトープを標的とする能動免疫療法薬が投与される。ある実施形態では、癌腫は、眼内黒色腫を含む黒色腫、ホルモン感受性およびホルモン不応性前立腺癌を含む前立腺癌、例えば腎細胞癌などの腎臓癌、膵臓癌、および結腸直腸癌などから選択される。ある実施形態では、これらの特定の癌を有する患者が治療に選別される。ある実施形態では、能動免疫療法薬はまた、その腫瘍に関連する追加の抗原も標的としてよい。
【0076】
臨床的有用性としては、例えば、これらに限定されないが、腫瘍退縮(部分的または完全な)、疾患の安定化、生存期間の延長、PSA速度(倍加時間)、または発現レベルなどを含んでよい。例えば、ある実施形態では、標的抗原は、PRAMEおよび/またはPSMAを含み、患者は、この標的抗原の少なくとも1つに対する免疫応答を示し、ここで、方法は、免疫抑制性の腫瘍微小環境を減少させて臨床的有用性を促進させる薬剤を共投与することを含む。
【0077】
免疫療法組成物
一般的に、標的とする抗原に対するエフェクターT細胞応答を誘導するいかなる免疫原を用いてもよく、特に、リンパ内送達に適する組成物である。従って、本明細書で述べる実施形態は、抗原、または1もしくは2つ以上のそのエピトープを標的とする能動免疫療法組成物に関する。本明細書で開示する実施形態で意図される抗原は、例えば悪性腫瘍を有する対象の免疫系によってそれに対する応答が開始し、腫瘍を攻撃することによってその成長の阻害、またはその縮小、または減少、または除去を行うことができ、それによってその疾患の治療または治癒が行われるものである。ある場合では、この抗原は、治療を受ける対象に見られる特定の疾患に対応して、エフェクターT細胞応答(細胞性免疫応答とも称される)を発生させることができる。ある実施形態では、この免疫応答は、CTL(細胞傷害性Tリンパ球)応答、すなわち、標的細胞(例:悪性腫瘍細胞)の溶解をもたらす免疫系による細胞傷害性反応である。
【0078】
抗原としては、これらに限定されないが、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、およびこれらの誘導体を含んでよく、また、非ペプチド高分子であってもよい。ある実施形態では、抗原はタンパク質である。ある実施形態では、抗原はペプチドである。ある実施形態では、抗原はポリペプチドである。ある実施形態では、抗原は、タンパク質、ペプチド、またはポリペプチドの誘導体である。従って、本開示の実施形態は、長さが8アミノ酸である抗原、または長さが9アミノ酸である抗原、または長さが10アミノ酸である抗原、または長さが11アミノ酸である抗原、または長さが12アミノ酸である抗原、または長さが13アミノ酸である抗原、または長さが14アミノ酸である抗原、または長さが15アミノ酸である抗原など、長さが8〜15アミノ酸であるペプチド抗原を利用する。そのようなペプチドは、これより長い抗原のエピトープであってよく、すなわち、MHC/HLA分子によって提示されるより大きい分子上の部位に対応するアミノ酸配列を有するペプチドであり、例えば、抗原受容体またはT細胞受容体によって認識され得る。これらの小ペプチドは、当業者にとって利用可能であり、各々のその全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,747,269号および同第5,698,396号;ならびに1995年7月4日出願のPCT出願番号第PCT/EP95/02593号(国際公開第1996/001429号)および1996年2月26日出願の同第PCT/DE96/00351号(国際公開第1996/027008号)の教示事項に従って得ることができる。エピトープ発見のためのさらなる手法は、各々のその全ての内容が
参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,037,135号および同第6,861,234号に記載されている。
【0079】
代表的な抗原としては、PRAME、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、メランA、およびチロシナーゼ、SSX‐2、NYESO‐1、MAGE‐1、MAGE‐3、BAGE、GAGE‐1、GAGE‐2、CEA、RAGE、SCP‐1、Hom/Mel‐40、p53、H‐Ras、HER‐2/neu、BCR‐ABL、E2A‐PRL、H4‐RET、IGH‐IGK、MYL‐RAR、エプスタイン・バール・ウイルス抗原、EBNA、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6およびE7、TSP‐180、MAGE‐4、MAGE‐5、MAGE‐6、p185erbB2、p180erbB‐3、c‐met、nm‐23H1、PSA、TAG‐72‐4、CAM 17.1、NuMa、K‐ras、β‐カテニン、CDK4、Mum‐1、p16、p15、43‐9F、5T4、791Tgp72、アルファ‐フェトプロテイン、β‐HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15‐3\CA27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA‐50、CAM43、CD68\KP1、CO‐029、FGF‐5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp‐175、M344、MA‐50、MG7‐Ag、MOV18、NB/70K、NY‐CO‐1、RCAS1、SDCCAG16、PLA2、TA‐90\Mac‐2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLP、ならびにTPSが挙げられる。本明細書で述べる抗原名の各々は、遺伝子座位に関連している。当業者であれば、ヒトの集団には遺伝的ばらつきが存在し、従っていずれの特定の参照配列も例として見なされるべきであり、関連する座位で見られる天然の変異体は、この抗原名で包含される範囲内であると理解されるべきであることは明らかであろう。ある実施形態では、変異体は、参照分子によって誘導または刺激される応答によって認識することができる。ある実施形態では、参照分子は、変異体によって誘導または刺激される応答によって認識することができる。
【0080】
本開示の実施形態は、腫瘍によって発現される1もしくは複数の抗原、または1もしくは2つ以上のそのエピトープを標的とする、癌の治療のための能動免疫療法組成物に関する。腫瘍関連抗原(TuAA)は、癌細胞自体によって発現されてよく、または腫瘍関連血管新生もしくはその他の間質など、腫瘍の非癌性成分に関連していてもよい。TuAAは、免疫系が未熟で応答することができない胎児発生時に正常細胞で発現される抗原を含んでよく、またはそれらは、通常は正常細胞に極めて低いレベルで存在するが、腫瘍細胞ではそれよりも非常に高いレベルで発現される抗原であってもよい。ある実施形態では、TuAAは、例えば腫瘍血管新生、もしくは腫瘍微小環境内のその他の間質細胞などの腫瘍の非癌性細胞に関連する抗原である。TuAAの発現を用いて、患者の癌の状態や種類を、適切な免疫療法プロトコルまたはレジメンに対応させることができる。
【0081】
ある実施形態では、二価または多価の治療剤が用いられる。そのような二価または多価の治療薬は、腫瘍細胞上の2つ以上の抗原を標的とすることができる。腫瘍細胞上の2つ以上の抗原が標的とされる場合は、抗腫瘍治療薬の効果濃度がそれに従って高められる。血管構造などの腫瘍に関連する間質への攻撃により、腫瘍細胞の、それらを標的とする1もしくは複数の薬剤に対する接触性を高めることができる。従って、正常組織の一部でも発現される抗原さえも、さらに二価または多価の攻撃で標的とされるその他の抗原がその組織によって発現されない場合は、標的抗原としてより強い考慮の対象となり得る。さらに、2つ以上の抗原に対して免疫応答を指向させることにより、これらが適切に選択されれば、認識可能な腫瘍細胞の数が最大化される。さらに、腫瘍の中には、免疫化後にTuAAの発現を喪失するものもあり、これは耐性集団を生ずる。免疫応答が2つ以上のTuAAに対して指向される場合、その逃避のために腫瘍はここで各抗原の発現を同時に喪失する必要があることから、耐性腫瘍が生ずることが非常により困難となる。従って、免疫療法によって癌を治療する場合、TuAAの組み合わせを用いることが有利であり得るも
のであり、それは、対象となる腫瘍細胞の集団の範囲をより完全なものとすること、およびTuAA発現の喪失によって腫瘍が逃避する可能性を低下させることの両方の理由による。好ましい実施形態では、この多価攻撃技術は、腫瘍が、用いられた2、3、4、もしくは5つ以上のTuAAの組み合わせに対して陽性である場合に用いられる。
【0082】
ある実施形態では、抗原の標的エピトープ配列に対応する免疫原性ペプチドが本明細書で意図され、天然配列または交差反応性類似体配列を含んでよい。メランA、チロシナーゼ、PRAME、およびPSMAエピトープの代表的な類似体は、各々その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願番号第11/156,253号(公開番号第20060063913号)、同番号第11/155,929号(公開番号第20060094661号)、同番号第11/156,369号(公開番号第20060057673号)、同番号第11/454,300号(公開番号第US2007‐0060518 A1号)、同番号第12/406,022号、ならびに米国特許第7,605,227号;同第7,511,118号;および同第7,511,119号に開示されている。本明細書で用いられる場合、「交差反応性類似体」とは、バックグラウンドと区別可能であるエフェクター機能(例:細胞溶解またはサイトカイン分泌)を天然ペプチドとの反応性を有するCTLから誘導する、天然ペプチド配列と比較して1〜3つのアミノ酸置換、および/または1つのアミノ酸欠失もしくは付加を含むペプチドを意味し得る。種々の実施形態では、エフェクター機能は、天然ペプチドによって誘導されるものの少なくとも約30%、約50%、約60%、約70%、または約80%である。別の選択肢として、交差反応性は、類似体による免疫化によって発生される、バックグラウンドと区別可能であるCTLからのエフェクター機能(例:細胞溶解またはサイトカイン分泌)を誘導する天然ペプチドの能力によって示され得る。種々の実施形態では、エフェクター機能は、類似体ペプチドによって誘導されるものの少なくとも30%、50%、60%、70%、または80%である。
【0083】
特定の実施形態では、本明細書で開示する方法での使用が意図される標的抗原および/またはその類似体の例としては、表1および本明細書の他所で開示するPRAME425‐433、PSMA288‐297、メランA26‐35、およびチロシナーゼ369‐377が挙げられる。
【0084】
【表1】
【0085】
MART‐1(T細胞によって認識される黒色腫抗原)としても知られるメランAは、黒色腫でも高レベルで発現されるメラニン生合成タンパク質である。メランA/MART‐1は、各々のその全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,994,523号;同第5,874,560号;および同第5,620,886号にTuAAとして開示されている。本明細書で開示するある実施形態では、標的抗原は、表1および本明細書の他所にて開示する、メランA26‐35および/またはその類似体である。メランA類似体の例は、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,605,227号に開示されている。メランA類似体は、これらに限定されないが、以下の配列:E{A、L、Nva、もしくはNle}AGIGILT{V、Nva、もしくはNle}(配列番号10);またはY{M、V、Nva、もしくはNle}DGTMSQ{V、Nva、もしくはNle}(配列番号11)の類似体を含んでよく;および、ここで、配列は、E{AもしくはL}AGIGILTV(配列番号12)またはYMDGTMSQV(配列番号4)ではない。本発明の単離されたペプチド類似体は、ELAGIGILTNva(配列番号13)、ENvaAGIGILTV(配列番号2)、YVDGTMSQNva(配列番号14)、YVDGTMSQV(配列番号15)、およびYMDGTMSQNva(配列番号5)から成る群より選択してよい。ある実施形態では、類似体は、アミノ酸配列ENvaAGIGILTV(配列番号2)から実質的に成る類似体である。さらに他の実施形態では、類似体は、アミノ酸配列YMDGTMSQNva(配列番号5)から実質的に成る類似体である。
【0086】
メラニン生合成酵素であるチロシナーゼは、主としてメラニン細胞で発現され、黒色腫にて非常に高いレベルが観察されることが多い。チロシナーゼは、メラニン細胞分化に最も特異的であるマーカーの1つであると考えられている。これはまた、神経外胚葉から発達した膠細胞でも、メラニン細胞と同様に発現される。従って、チロシナーゼは、多形神経膠芽腫を含む神経膠芽腫に有用であるTuAAでもある。TuAAとしてのチロシナーゼのさらなる詳細は、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,747,271号に開示されている。本明細書で開示するある実施形態では、標的抗原は、表1および本明細書の他所に開示するチロシナーゼ369‐377および/またはその類似体である。
【0087】
MAPE、DAGE、およびOIP4としても知られるPRAMEは、本技術分野において、癌‐精巣(CT)抗原として知られる。しかし、MAGE、GAGE、およびBAGEなど多くのCT抗原とは異なり、これは、急性骨髄性白血病で発現される。TuAAとしてのPRAMEは、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,830,753号に開示されている。ある実施形態では、標的抗原は、表1および本明細書の他所に開示するPRAME425‐433および/またはその類似体である。PRAME類似体の例は、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,511,119号に開示されている。PRAME類似体としては、これらに限定されないが、P0がX、XX、またはXXXであり、ここで、Xは、任意のアミノ酸またはアミノ酸が無いことを指定し;およびP1がS、K、F、Y、T、Orn、またはHseであり;およびP2がL、V、M、I、Nva、Nle、またはAbuであり;およびP3がL、Nva、Nle、またはAbuであり;およびP4がQであり;およびP5がHであり;およびP6がL、Nva、Nle、またはAbuであり;およびP7がIであり;およびP8がG、A、S、またはSarであり;およびP9におけるPΩがL、V、I、A、Nle、Nva、Abu、またはL‐NH2であり;およびPΩ+1がX、XX、またはXXXであり、ここで、Xは、任意のアミノ酸またはアミノ酸が無いことを指定する配列であって;ならびに、ここで、この配列は、SLLQHLIGL(配列番号6)ではない、配列を含むかまたは実質的にそれから成る類似体を含んでよい。PRAME類似体は、{K、F、Y、T、Orn、もしくはHse}LLQHLIGL(配列番号16);またはS{V、M、I、Nva、Nle、もしくはAbu}LQHLIGL(配列番号1
7);またはSL{Nva、Nle、もしくはAbu}QHLIGL(配列番号18);またはSLLQH{Nva、Nle、もしくはAbu}IGL(配列番号19);またはSLLQHLI{A、S、もしくはSar}L(配列番号20);またはSLLQHLIG{V、I、A、Nle、Nva、Abu、もしくはL‐NH2}(配列番号21);または{F、Y、T、Orn、もしくはHse}{Nva、Nle、M、もしくはI}LQHLIGL(配列番号22);またはS{Nva、Nle、もしくはM}LQHLIG{Nva、Nle、もしくはV}(配列番号23);または{K、F、Y、T、Orn、もしくはHse}LLQHLIGV(配列番号24);または{FもしくはT}LLQHLIG{Nle}(配列番号25);または{FもしくはT}{NvaもしくはM}LQHLIG{Nle}(配列番号26)、の配列を含むか、またはそれから実質的に成っていてよい。また、PRAME類似体は、{F、Y、T、Orn、もしくはHse}LLQHLIGL(配列番号27);またはS{Nva、Nle、もしくはM}LQHLIGL(配列番号28);またはSLLQHLIG{Nle、Nva、もしくはL‐NH2}(配列番号29);またはSLLQH{NvaもしくはAbu}IGL(配列番号30);またはS{Nva}LQHLIG{Nle}(配列番号31);または{FもしくはT}{LもしくはNva}LQHLIG{Nle}(配列番号32)、の配列を含むか、またはそれから実質的に成っていてもよい。さらに、類似体は、S{LもしくはNva}LQHLIG{Nle}(配列番号33);またはT{Nva}LQHLIG{Nle}(配列番号34)、の配列を含むか、またはそれから実質的に成っていてよい。類似体は、S{Nva}LQHLIG{Nle}(配列番号31)の配列を含むか、またはそれから実質的に成っていてよい。
【0088】
前立腺特異的膜抗原(PSMA)は、前立腺癌細胞で高度に発現されることが分かっている。しかし、PSMA発現はまた、正常前立腺上皮および非前立腺腫瘍の血管新生にも見られる。抗血管新生製剤(anti-neovasculature preparation)としてのPSMAは、各々その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許仮出願番号第60/274,063号、ならびに米国特許出願番号第10/094,699号(公開番号第20030046714号)および同第11/073,347号(公開番号第20050260234号)に開示されている。TuAAとしてのPSMAは、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,538,866号に開示されている。ある実施形態では、標的抗原は、表1および本明細書の他所に開示するPSMA288‐297および/またはその類似体である。PSMA類似体の例は、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,511,118号に開示されている。PSMA類似体としては、これらに限定されないが:P0がX、XX、またはXXXであり、ここで、Xは、任意のアミノ酸またはアミノ酸が無いことを指定し;およびP1がG、A、S、Abu、またはSarであり;およびP2がL、M、I、Q、V、Nva、Nle、またはAbuであり;およびP3がPまたはWであり;およびP4がSであり;およびP5がIであり;およびP6がPであり;およびP7がVであり;およびP8がHであり;およびP9がP、A、L、S、またはTであり;およびP10におけるPΩがI、L、V、Nva、またはNleであり;およびPΩ+1がX、XX、またはXXXであり、ここで、Xは、任意のアミノ酸またはアミノ酸が無いことを指定する、配列であって;ならびに、ここで、この配列は、GLPSIPVHPI(配列番号8)ではない、配列を含むかまたは実質的にそれから成る類似体を含んでよい。類似体は、{S、Sar、もしくはAbu}LPSIPVHPI(配列番号35);またはG{MもしくはNle}PSIPVHPI(配列番号36);またはG{L、I、Nva、もしくはNle}WSIPVHPI(配列番号37);またはGLWSIPVHP{NvaもしくはV}(配列番号38);またはGLPSIPVH{AもしくはS}I(配列番号39);またはGLPSIPVHP{V、L、Nva、もしくはNle}(配列番号40);またはG{Nle}PSIPVHP{NvaもしくはNle}(配列番号41);またはG{Nva}PSIPVHP{Nva}(配列番号42);またはG{V、Nva、もしくはNle}PSIPVHPV
(配列番号43);または{SarもしくはAbu}LPSIPVHP{VもしくはNva}(配列番号44);またはA{V、I、Nva、もしくはNle}WSIPVHPI(配列番号45);またはAVPSIPVHP{VもしくはNva}(配列番号46);またはA{Nva}PSIPVHPV(配列番号47);またはALWSIPVHP{VもしくはNva}(配列番号48);またはGVWSIPVHP{VもしくはNva}(配列番号49);またはG{Nva}WSIPVHPV(配列番号50)の配列を含むかまたは実質的にそれから成っていてよい。また、類似体は、{Abu}LPSIPVHPI(配列番号51);またはG{V、Nva、もしくはAbu}PSIPVHPI(配列番号52);またはGLPSIPVHP{VもしくはNva}(配列番号53);またはGLWSIPVHP{IもしくはNva}(配列番号54);またはG{Nle}PSIPVHP{Nva}(配列番号55);またはG{NleもしくはNva}PSIPVHPV(配列番号56);または{AもしくはAbu}LPSIPVHP{VもしくはNva}(配列番号57);またはG{Nva}WPSIPVHP{IもしくはV}(配列番号58);またはA{NvaもしくはNle}WSIPVHPI(配列番号59);またはA{VもしくはNva}PSIPVHPV(配列番号:60)の配列を含むかまたは実質的にそれから成っていてもよい。特に、類似体は、{Abu}LPSIPVHPI(配列番号51);またはGLPSIPVHP{VもしくはNva}(配列番号53);またはGLWSIPVHPI(配列番号61);またはG{Nle}PSIPVHP{Nva}(配列番号55)の配列を含むかまたは実質的にそれから成っていてよい。好ましくは、類似体は、GLPSIPVHPV(配列番号9)の配列を含むかまたは実質的にそれから成っていてよい。
【0089】
ある実施形態では、免疫療法レジメンは、2つの特定のペプチド類似体(E‐PRA(配列番号7)およびE‐PSM(配列番号9))の投与を含む。本明細書で用いる場合、E‐PRAとは、PRAME425‐433の類似体、PRAME425‐433 L426Nva L433Nle(配列番号7)を意味し;E‐PSMとは、PSMA288‐297の類似体、PSMA288‐297 I297V(配列番号9)を意味する。これらおよびその他の類似体は、各々その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれ、いずれも発明の名称が「EPITOPE ANALOGS」である米国特許出願番号第11/156,369号(公開番号第20060057673号)および米国特許仮出願番号第60/691,889号に開示されている。
【0090】
ある実施形態では、免疫療法レジメンは、2つの特定のペプチド類似体(E‐MELおよびE‐TYR)の投与を含む。本明細書で用いる場合、E‐MELとは、メランA26‐35の類似体、メランA26‐35 A27Nva(配列番号2)を意味し;E‐TYRとは、チロシナーゼ369‐377の類似体、チロシナーゼ369‐377 V377Nva(配列番号5)を意味する。これらおよびその他の類似体(メランA26‐35 A27L(配列番号3)を含む)は、各々その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれ、いずれも発明の名称が「EPITOPE ANALOGS」である米国特許出願番号第11/156,369号(公開番号第20060057673号)および米国特許仮出願番号第60/691,889号に開示されている。
【0091】
さらなる代表的なエピトープおよびエピトープ類似体は、2001年11月7日出願、発明の名称が「METHODS OF COMMERCIALIZING AN ANTIGEN」である米国特許出願番号第09/999,186号;米国特許出願番号第11/323,572号(公開番号第20060165711号);および米国特許出願番号第11/323,520号(公開番号第20080124352号)、米国特許出願番号第10/117,937号(公開番号第20030220239 A1号);各々2005年2月25日出願の米国特許出願番号第11/067,159号(公開番号第20050221440号)および同第11/067,064号(公開番号第20050142144号);2003年9月5日出願の米
国特許出願番号第10/657,022号(公開番号第20040180354号)ならびに2004年6月17日出願のPCT出願番号第PCT/US2003/027706号(国際公開第04022709 A2号)および2002年4月4日出願の同第PCT/US02/11101号(国際公開第02081646号)、すべて「EPITOPE SEQUENCES」;ならびに、米国特許出願番号第10/292,413号(公開番号第20030228634 A1号)、同第10/837,217号(公開番号第20040203051号)、および米国特許第7,232,682号、に開示されており、各々その全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。免疫治療薬に有用であるエピトープを選択する原理は、米国特許出願番号第09/560,465号(2000年4月28日出願)、同第11/683,397号(公開番号第20070269464号)、同第10/026,066号(公開番号第20030215425 A1号)、同第10/895,523号(公開番号第2005‐0130920号)、同第10/896,325号(公開番号第20070184062号)、および同第10/005,905号(2001年11月7日出願)、すべて発明の名称は「EPITOPE SYNCHRONIZATION IN ANTIGEN PRESENTING CELLS」;同第09/561,571号(2000年4月28日出願)、発明の名称は「EPITOPE CLUSTERS」;米国特許出願番号第11/073,347号(公開番号第20050260234号)、同第11/772,811号(公開番号第20090208537号)、および米国特許第7,252,824号、各々発明の名称は「ANTI-NEOVASCULATURE PREPARATIONS FOR CANCER」;ならびに米国特許出願番号第10/117,937号(2002年4月4日出願;公開番号第20030220239 A1号)、および同第10/657,022号(公開番号第20040180354 A1号)、および同第12/194,478号(公開番号第20090285843号)、すべて発明の名称は「EPITOPE SEQUENCES」;米国特許出願番号第10/956,401号(公開番号第20050069982号)および米国特許第6,861,234号、いずれも発明の名称は「METHOD OF EPITOPE DISCOVERY」、に開示されており、各々その全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。さらに、当業者にとって現在明らかであるかまたは今後明らかになり得る、発明の名称が「METHOD OF EPITOPE DISCOVERY」である米国特許第6,861,234号、および2000年12月7日出願、発明の名称が「EPITOPE SYNCHRONIZATION IN ANTIGEN PRESENTING CELLS」である米国特許出願番号第10/026,066号(公開番号第20030215425号)(各々その全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示の方法によって識別される新しいエピトープが、本明細書で開示する実施形態において有用であることも考慮される。
【0092】
さらなる実施形態は、抗原またはその免疫原性断片をコードする核酸を含む免疫原性組成物に関する。本明細書の他所にて考察するように、いくつかの方法は、1もしくは複数の合成ペプチドと組み合わせて用いられる1もしくは複数のプラスミドを含む免疫療法組成物を、癌の治療に用いている。このプラスミドは、抗原提示細胞(APC)によって取り込まれた際にポリペプチドのためのメッセンジャーRNAの効率的な転写を可能とするプロモーター/エンハンサー配列の支配下に置いてよい。本明細書で開示する実施形態において用いることができるプロモーターは、当業者に公知である。そのようなプロモーターとしては、例えば、ウイルスおよび細胞プロモーターを含む。ウイルスプロモーターとしては、例えば、これらに限定されないが、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1プロモーター、アデノウイルス2型由来の主要後期プロモーター、およびSV40プロモーターを含んでよい。細胞プロモーターの例としては、例えば、これらに限定されないが、マウスメタロチオネイン1プロモーター、伸長因子1アルファ(EF1‐アルファ)、MHCクラスIおよびIIプロモーター、およびCD3プロモーター(T細胞特異的発現に関する、長期的)を含む。本明細書で開示するベクターの設計に用いてよいその他のプロモーターは、当業者であれば容易に決定することができる。本開示の特定の実施形態は、サイトメガロウイルス由来のプロモーター/エンハンサー配列(CMVp)を用いる。
【0093】
ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル(BGH ポリA)を例とするポリアデニル化シグナルを、コード配列の3’末端に提供して、メッセンジャーRNAの安定性、および翻訳のための核外へ出て細胞質へと入るその移動を増加させてよい。プラスミドの取り込み後の核内への輸送を促進するために、サルウイルス40(SV40)由来の核内移行配列(nuclear import sequence)(NIS)をプラスミドのバックボーンに挿入してよい。プラスミドの設計はまた、免疫刺激性モチーフも含んでよく、例えば、CpG免疫刺激性モチーフを、NIS配列および/またはプラスミドバックボーンに配置してよい。免疫刺激性配列(ISS)とは、非メチル化CpG配列を含むオリゴデオキシリボヌクレオチドを意味する。
【0094】
ある実施形態では、免疫療法レジメンは、組換えプラスミド(pPRA‐PSM)を含む。本明細書で用いる場合、pPRA‐PSMとは、PRAME425‐433およびPSMA288‐297エピトープならびに/またはそれらの類似体(表1および2)を発現する組換えDNAプラスミドを含む、プラスミドPR12(その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、発明の名称が「METHODS AND COMPOSITIONS TO ELICIT MULTIVALENT IMMUNE RESPONSES AGAINST DOMINANT AND SUBDOMINANT EPITOPES, EXPRESSED ON CANCER CELLS AND TUMOR STROMA」である米国特許出願番号第11/454,616号(公開番号第20070004662号)に記載)を意味する。pPRA‐PSMプラスミドは、PRAMEおよびPSMAエピトープを、pAPCによってそれらの発現および提示が可能となる形でコードする。
【0095】
ある実施形態では、免疫療法組成物は、pMEL‐TYRプラスミドを含む。本明細書で用いる場合、pMEL‐TYRとは、メランA26‐35 A27L類似体およびチロシナーゼ369‐377エピトープ(表1および2)を発現するプラスミドpSEM(参照により本明細書に組み込まれる、発明の名称が「EXPRESSION VECTORS ENCODING EPITOPES OF TARGET ASSOCIATED ANTIGENS AND METHODS FOR THEIR DESIGN」である米国特許出願番号第10/292,413号(公開番号第20030228634号)にて詳述され、pMA2Mと称されている)を意味する。pMEL‐TYR、pSEM、およびpMA2Mは、本明細書にて交換可能に用いられることは理解される。pMEL‐TYRプラスミドは、メランAおよびチロシナーゼエピトープを、pAPCによってそれらの発現および提示が可能となる形でコードする。
【0096】
【表2】
【0097】
従って、種々の実施形態では、免疫原性組成物の集合体(assemblages)を含む免疫療法生成物を用いてよい。そのような集合体が、個々の組成物のセットとして1、2、もしくは3つのプラスミドを含んでよく、または単一の組成物が、2もしくは3つ以上のプラスミドを含んでいてもよい。そのような集合体はまた、プラスミドによって発現されるエピトープに対応する複数のペプチドを含んでいてもよい。同様に、それらは、個々のまたは複数のペプチドを含む組成物として提供されてもよい。ある実施形態では、1もしくは複数のプライミング/誘導/同調プラスミドが、対応するブースティング/増幅ペプチドと一緒に販売される。ある実施形態では、複数のプラスミドが、対応するペプチドなしで、一緒に販売される。さらなるある実施形態では、対応するペプチドのセットが、例えば、続いて行われる同調またはプライム応答の増幅ラウンドのために、プラスミドなしで、一緒に販売される。
【0098】
さらなる実施形態では、上記集合体の各々は、これらのプラスミドによって発現されたエピトープに対応する(すなわち、それに対する応答をブースティング/増幅する能力を有する)ペプチドを含む。ある特定の実施形態は、単独のプラスミド、および一方または両方の対応するペプチドを含む(本明細書で言及される特定のプラスミドは二価であるとして記述されるが、それらは、一価の形で増幅されてもよい)。
【0099】
ある実施形態では、臨床的有用性は、向上または増大させることができる。例えば、ある実施形態では、免疫療法レジメンは、腫瘍微小環境を改変してその免疫抑制性を低下させる薬剤を含む。本明細書で用いる場合、腫瘍微小環境とは、癌細胞に隣接する、および
その間にある領域を意味し、細胞外基質、血管細胞、およびその他の非癌細胞を包含する。ある実施形態では、例えば、完全寛解に達していない患者または内臓転移した患者などにおいて、免疫療法剤または組成物を、腫瘍微小環境を改変してその免疫抑制性を低下させる薬剤と組み合わせることによって、臨床的有用性をさらに改善することができる。そのような薬剤としては、例えば、Treg細胞の減少または腫瘍炎症の促進に有用である薬剤、およびTreg活性のダウンレギュレーションまたはその克服が可能である生体応答調節物質(BRM)が挙げられ、本明細書の他所で考察するように免疫賦活薬を含むが、これに限定されない。代表的なTreg減少剤(depleting agents)としては、例えば、IL‐2融合分子(デニロイキンジフティトックス(denileukin diphtitox ))、抗CD25抗体、シクロスホスファミド(cyclosphosphamide )、ゲムシタビン、フルダラビン、およびドキソルビシンなどが挙げられる。ある実施形態では、腫瘍微小環境を改変してその免疫抑制性を低下させる薬剤としては、例えば、シクロホスファミド、フルダラビン、選択的チロシンキナーゼ阻害剤(select tyrosine kinase inhibitors)などの小分子、LIGHT、TLRリガンド、CpG分子、およびPD‐1、CTLA‐4、TGFベータ、IL‐10に対する抗体などの生体分子が挙げられる。Treg細胞を減少させる、または腫瘍炎症を促進する薬剤の投与を含む代表的な方法は、各々その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれ、発明の名称がすべて「METHODS TO ELICIT, ENHANCE
AND SUSTAIN IMMUNE RESPONSES AGAINST MHC CLASS I-RESTRICTED EPITOPES, FOR PROPHYLACTIC AND THERAPEUTIC PURPOSES」である、2006年7月14日出願の米国特許出願番号第60/831,256号;2006年10月27日出願の同第60/863,332号;2007年7月14日出願の同第11/879,078号(公開番号第2008‐0014211号);および2007年7月14日出願のPCT出願公開番号 国際公開第2008/008541号に記載されている。ある実施形態では、Treg活性のダウンレギュレーションまたはその克服が可能である生体応答調節物質(BRM)が投与される。
【0100】
ある実施形態では、免疫賦活薬が、免疫療法レジメンの少なくとも1つの成分と共に投与される。免疫賦活薬は、免疫調節性分子であってよく、これらに限定されないが、TLRリガンド、エンドサイトーシスパターン認識受容体(PRR)リガンドなどである。従って、ある実施形態では、例えば、完全寛解に達していない患者または内臓転移した患者などにおいて、免疫療法レジメンの少なくとも1つの成分を、免疫賦活薬または生体応答調節物質と組み合わせることによって、臨床的有用性をさらに改善することができる。ある実施形態では、応答は、2治療サイクルの治療後に評価される。応答は、例えば、四量体(MHC‐多量体)陽性細胞の増加、サイトカイン分泌(例えば、グランザイムまたはガンマ‐インターフェロンの分泌)の増加、またはエフェクターもしくはエフェクター‐メモリーT細胞の割合の増加によって測定してよい。応答の評価は、末梢血液中の、または腫瘍生検で回収されたT細胞の分析に基づくものであってよい。
【0101】
免疫賦活薬
ある実施形態では、免疫療法レジメンは、腫瘍微小環境を改変してその免疫抑制性を低下させる薬剤を含む。例えば、ある実施形態では、例えば完全寛解に達していない患者または内臓転移した患者などにおいて、免疫療法剤/生成物を、腫瘍微小環境を改変してその免疫抑制性を低下させる薬剤と組み合わせることによって、臨床的有用性をさらに改善することができる。そのような薬剤の例としては、これらに限定されないが、シクロホスファミド、フルダラビン、選択的チロシンキナーゼ阻害剤などの小分子;生体分子、トール様受容体(TLR)リガンド(例:CpGモチーフ;PD‐1、CTLA‐4、TGFベータ、IL‐10などに対する抗体;および/または生体分子、LIGHTなど) が挙げられる。
【0102】
本明細書で開示する実施形態において有用であると考えられる免疫賦活薬としては、限
定されない例として:サイトカイン、ケモカイン、共刺激性分子、転写因子、およびシグナル伝達要素などの免疫応答の制御に関与する薬剤;抗原処理および抗原提示に関与する薬剤;アポトーシス経路の制御に関与する薬剤、またはDNAメチル化酵素、クロマチン制御分子、RNA制御分子などの遺伝子制御もしくはサイレンシングに関与する薬剤が挙げられる。
【0103】
本開示の他の態様では、免疫賦活薬は、限定されない例として、ペプチドグリカン、LPSもしくはそれからの類似体、非メチル化CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG
ODN)などのサイトカインもしくはケモカイン産生を引き起こす分子;それぞれTLR9およびTLR3と結合するAPCおよび自然免疫細胞上の、バクテリアdsDNA(CpGモチーフ含有)および合成dsRNA(ポリI:C)などのdsRNAを含んでよい。
【0104】
本明細書で開示する実施形態において有用であると考えられる免疫賦活薬の1つのクラスは、天然または合成の小有機分子を含み、これらは、自然免疫の経路を刺激することによって免疫調節効果を起こす。マクロファージ、樹状細胞、およびその他の細胞が、いわゆるトール様受容体(TLR)を有することが示されており、これは、微生物上の病原体関連分子パターン(PAMP)を認識する(各々その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、Thoma-Uszynski, S. et al., Science 291: 1544-1547, 2001;Akira, S., Curr. Opin. Immunol. 15: 5-11, 2003)。さらに考えられるのは、完全な合成物である抗ウイルスイミダゾキノリンなどのTLRと結合する小分子であり、例えばミキモドおよびレシキモドであり、これらは、TLR7および8と結合することによって免疫の細胞経路を刺激することが見出されている(各々その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、Hemmi, H. et al., Nat Immunol 3: 196-200, 2002;Dummer, R. et al., Dermatology 207: 116-118, 2003)。免疫賦活薬は、さらに、pAPCまたはT細胞を活性化する免疫賦活アジュバントを含んでよく、例えば:エンドサイトーシスパターン認識受容体(PRR)リガンド、キラヤサポニン、ツカレソールなどが挙げられる。
【0105】
免疫賦活薬は、微生物成分を検出する受容体と直接の相互作用を起こし得る。ある実施形態では、追加の治療分子としては、これらに限定されないが、T‐bet、STAT‐1、STAT‐4、およびSTAT‐6などの転写因子が挙げられる。加えて、シグナル伝達経路の下流で作用する分子も用いてよい。ある実施形態では、標的分子は、TLR、および例えばMyD88、NFκ‐Bなどであるがこれらに限定されないその下流のシグナル伝達分子を含んでよい。サイトカインもまた、本明細書で開示される実施形態での使用が考慮され、例えば、これらに限定されないが、インターフェロン(例:IFN‐ガンマ)、IL‐2、IL‐10、IL‐12、IL‐18、およびTGF‐ベータ GM‐CSF、flt3リガンド(flt3L)、TNF‐アルファなどである。CD40 B7‐1およびB7‐2などの共刺激因子もまた、本明細書で有用であるとして考慮される。共刺激分子と結合する抗体(抗CD40、CTLA‐4、抗OX40など)もまた、本開示の実施形態で有用であるとして考慮される。ある実施形態では、例えば、これらに限定されないが、FOXp3、B7様分子、LAG‐3リガンドなどのチェックポイントタンパク質であり、このような分子もまた、ある実施形態において有用であるとして考慮される。ある実施形態では、クロマチン制御分子およびRNA制御分子もまた考慮される。抗原処理および提示経路に存在するタンパク質、例えば、これらに限定されないが、HLAおよびTAP(抗原処理関連トランスポーター1および2(TAP1およびTAP2))、免疫もしくは標準プロテアソーム、ベータ‐2‐ミクログロブリン、およびMHCクラスIもしくはII分子などもまた、ある実施形態での使用が考慮される。樹状細胞活性化抑制因子SOSC1およびDMNT1などのDNAメチル化経路内のタンパク質もまた、本明細書で開示する実施形態において有用であるとして考慮される。アポトーシス経路に存在するタンパク質もまた、本明細書で開示する実施形態において有用であるとして考
慮される。加えて、例えば、これらに限定されないが、IL‐8、MIP‐3‐アルファ、MIP‐1‐ベータ、MCP‐1、MCP‐3、RANTESなどのケモカインもまた、本明細書で開示する実施形態で用いてよい。ある実施形態では、T細胞および/もしくは分化抗原(例えば、黒色腫分化抗原)の発現の促進または維持に関与する追加の治療分子が、開示する能動免疫療法剤との使用について本明細書にて考慮される。そのような治療分子としては、ある実施形態では、BRAF(セリン/スレオニンキナーゼ B‐Raf)の阻害剤、例えばPLX4720(そこに開示されるBRAF阻害剤に関する全内容について国際公開第2007/002325号も参照されたい)が挙げられ、これは、T細胞の増殖または残留の促進、分化抗原発現レベルの増加、および癌に対するT細胞活性の促進を行うことができる。ある実施形態では、MAPK/細胞外シグナル調節キナーゼ(MEK)阻害剤によるMAPK経路の阻害もまた考慮される。
【0106】
免疫療法の手法
最終的には、1もしくは複数の標的抗原またはエピトープに対するエフェクターT細胞応答を発生させるいずれの免疫療法レジメンも、開示する方法において用いてよい。特に、免疫原のリンパ内投与の工程を含むものが適している。プライム‐ブースト型のプロトコルも有利であると考えられる。1つの「プライム‐ブースト」プロトコルが、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、発明の名称が「Methods and reagents for
vaccination which generate a CD8 T cell immune response」である米国特許第6,663,871号で考察されている。本明細書で開示する方法に適用される代表的な免疫療法レジメンは、免疫応答を発生もしくは同調させる初期組成物、およびその応答を効果レベルまで強化、増大、もしくは向上させる第二組成物を用いる前臨床モデルに基づいている。ある実施形態では、第一および第二組成物は、同一の形態であり、ある実施形態では、第一および第二組成物は、異なる形態である。本明細書で開示する実施形態において考慮される「同調」免疫原は、多くの実施形態において、誘導されたT細胞系列の免疫プロファイルを特に安定化させる誘導を含む。前臨床モデルのすべての特徴がヒトにおける臨床的使用で観察されたわけではないが、発明者らとしては、プライミング/誘導/同調用量は、そうでなければブースティング用量で用いられるペプチド投与の繰り返しによって引き起こされかねない免疫寛容誘導効果の回避に重要であり得ると理解している。プラスミドプライム‐ペプチドブーストレジメンを用いる臨床応答は、プラスミド単独による免疫化後に得られるものよりも優れていることが示されているが(その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、Tagawa et al., "Phase I Study of Intranodal Delivery
of a Plasmid DNA Vaccine for Patients with Stage IV Melanoma" Cancer, July 1, 2003, Vol. 98, Number 1)、例えばタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、プラスミド、RNA、ウイルスベクターなどの単一の形態の免疫原を用いるプライム‐ブーストプロトコルも、本明細書で開示する方法に用いてよい。
【0107】
ある実施形態では、免疫療法レジメンは、プライム‐ブーストプロトコルまたは誘導‐増幅プロトコル(induce-and-amplify protocol)を含んでいてよい。ある実施形態では、免疫療法レジメンは、同調‐増幅プロトコル(entrain-and-amplify protocol)を含んでよい。従って、ある実施形態では、能動免疫療法レジメンは、プラスミド、および1もしくは2つ以上のペプチドまたはその類似体を含み、これらは、対象に癌治療において、そのようなレジメン/プロトコルのいずれを用いて投与してもよい(各々その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、各々発明の名称が「METHOD TO ELICIT, ENHANCE AND SUSTAIN IMMUNE RESPONSES AGAINST MHC CLASS-I RESTRICTED EPITOPES, FOR PROPHYLACTIC OR THERAPEUTIC PURPOSES」である、米国特許出願番号第11/879,078号(公開番号第2008‐0014211号)、および米国特許出願番号第10/871,707号(公開番号第2005‐0079152号)、米国特許出願番号第11/323,572号(公開番号第2006‐0165711号)に開示されるように)。例えば、1もしくは複数の開始用量以外でプラスミドを用いる、プラスミドもしくはペプチド単独
に依存する、または他のタイプのブースティング/増幅試薬を用いるなど、その他の免疫化プロトコルは、本開示の範囲から除外されない。ある実施形態は、2つ以上の標的抗原または1もしくは2つ以上のそれらのエピトープを発現する二価または多価プラスミドを包含する。
【0108】
ある実施形態は、同調‐増幅治療レジメンを用いて多価攻撃を達成するものであり、それによって、攻撃する腫瘍の感受性を高めるという利点が得られる。腫瘍細胞上の2つ以上の抗原が標的とされる場合、抗腫瘍剤の効果濃度が、それに従って高められる。血管構造などの腫瘍に関連する間質への攻撃により、腫瘍細胞の、それらを標的とする1もしくは複数の薬剤に対する接触性も高めることができる。従って、正常組織の一部でも発現される抗原さえも、さらに多価攻撃で標的とされるその他の抗原がその組織によって発現されない場合は、標的抗原としてより強い考慮の対象となり得る。
【0109】
ある実施形態では、本明細書で開示する方法に従って選別された患者に適用される代表的な免疫療法レジメンは、例えばpPRA‐PSMまたはpMEL‐TYRなどのプラスミドによるプライミング、ならびに例えば、それぞれE‐PRAおよびE‐PSM、またはE‐MELおよびE‐TYRなどの対応するペプチド類似体によるブースティングを含む。
【0110】
ある実施形態では、この方法は、例えば1〜6のプライミング/誘導/同調用量を含むレジメンの適用を含んでよい。ある実施形態では、この方法は、複数のプライミング/誘導/同調用量の投与を含んでよく、ここで、前記用量は、1から約7日の期間にわたって投与される。プライミング/誘導/同調用量、ブースティング/増幅用量、またはプライミング/誘導/同調およびブースティング/増幅用量は、複数ペアの注射によって送達してよく、ここで、ペアの第一のメンバーはそのペアの第二のメンバーの約4日以内に投与してよく、およびここで、異なるペアの第一のメンバー間の間隔は、少なくとも約14日であってよい。最後のプライミング/誘導/同調用量と最初のブースティング/増幅用量との間の間隔は、例えば、約7日から約100日の間であってよい。
【0111】
本開示で考慮される場合、T細胞応答に関する「ブースティング/増幅の」または「ブースト/増幅」の用語は、多くの実施形態において、特定の応答に関与するT細胞の細胞数、活性化細胞数、活性のレベル、増幅速度、または類似のパラメータを増加させるためのプロセスを含む。ある実施形態では、免疫療法レジメンまたはプロトコルは、誘導または増幅フェーズ、および抗原発現の変動に対する応答性に基づいて調節してよい。例えば、プライミング/誘導/同調用量を数セット行った後にブースティングまたは増幅を行うのではなく、プライミングまたは誘導または同調用量を、検出可能な応答が得られるまで繰り返し投与し、その後に1もしくは複数のブースティングまたは増幅用量を投与してよい。同様に、計画されたペプチドのブースティング/増幅または維持用量は、それらの効果の減衰、抗原特異的制御性T細胞の数の増加、または何らかのその他の寛容化の証拠の観察が見られた場合は中断してよく、ブースティング/増幅用量を再開する前に、さらなるプライミング/誘導/同調用量を投与してよい。免疫化の方法による免疫応答性を評価およびモニタリングするための診断技術の統合については、各々その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、いずれも発明の名称が「IMPROVED EFFICACY OF ACTIVE IMMUNOTHERAPY BY INTEGRATING DIAGNOSTIC WITH THERAPEUTIC METHODS」である2004年6月17日出願の米国特許仮出願番号第60/580,964号および2005年6月17日出願の米国特許出願番号第11/155,928号(公開番号第20050287068号)に、より詳細に考察されている。
【0112】
ある実施形態では、ベクター組成物が鼠径リンパ節へ注射され、続いてペプチド抗原がボーラス投与される。ある実施形態では、1もしくは2つ以上のプライミング/誘導/同
調組成物、および1もしくは2つ以上のブースティング/増幅組成物の抗原がリンパ内投与される。ある実施形態では、1もしくは2つ以上のプライミング/誘導/同調組成物、または1もしくは2つ以上のブースティング/増幅組成物の抗原がリンパ内投与される。例えば、ある実施形態では、1もしくは2つ以上のブースティング/増幅組成物の抗原がリンパ内投与される。ある実施形態では、1もしくは2つ以上の成分を、通常は数時間から数日の期間にわたって、注入により送達してよい。例えば、ある実施形態では、免疫療法レジメンまたはプロトコルは、1もしくは2つ以上のリンパ節への注射または注入が必要であり、まず、組換えDNAの投与(約0.01から約1mg/kgなど、約0.1から約0.5mg/kgなど、約0.001から約10mg/kg、約0.005から約5mg/kgの用量範囲)をある回数(例:1から10、もしくはそれ以上、2から8、3から6、4、もしくは5など)行うことから開始し、続いて1もしくは2回以上の、例えば2、または3、または4、または5、または6、または7、または8、または9、または10回の、好ましくは免疫学的に不活性である溶媒または製剤中のペプチドの投与(約0.01から約1mg/kgなど、約0.1から約0.5mg/kgなど、好ましくは約0.005から約5mg/kgである、約1mg/kgから約10mg/kgの用量範囲)を行う。用量は、必ずしも対象のサイズに比例して変化させるものではないため、これらの範囲の部分にて、ヒトに対する用量が、低くなる傾向であってよく、マウスに対する用量が、高くなる傾向にあってよい。ある実施形態では、注射時における好ましい濃度のプラスミド(またはプラスミドの効果量)およびペプチド(またはペプチドの効果量)は、一般に、約0.1mg/mlから約10mg/mlであり、約0.5から約5mg/mlなど、約1から約2.5mg/mlなど、または約1mg/mlであり、通常は、対象の種のサイズとは無関係である。しかし、特に強力であるペプチドは、この範囲の下限に近い最適濃度(効果量)を有する場合があり、例えば、約10から約50μg/ml、または約20から約60μg/ml、または約30から約70μg/ml、または約40から約80μg/ml、または約50から約90μg/mlなどの約1から約100μg/mlである。
【0113】
DNAの最後のプライミング/誘導/同調用量とペプチドの最初のブースティング/増幅用量との間の時間はそれほど重要ではない。ある実施形態では、プライミング/誘導/同調とブースティング/増幅との間の時間は、約2週間または約3週間または約1ヶ月など、約7日間もしくはそれ以上であり、数ヶ月を超えてもよい。プライミング/誘導/同調用量および/またはブースティング/増幅用量の複数回の注射を、数日間(2日、または3日、または4日、または5日、または6日、または7日などの、好ましくは2〜7日)にわたる注入に置き換えることで減らしてもよい。注入は、注射によって与えられていたであろう物質と類似の物質のボーラス注入から開始し、続いて緩徐注入(slow infusion)(約24から約12000マイクロリットル/日にて、DNAについては、約25から約2500マイクログラム/日、ペプチドについては、約0.1から約10,000マイクログラム/日を送達)を行うことが有利であり得る。これは、手作業によって、またはインスリンポンプなどのプログラム可能ポンプを用いることによって行ってよい。そのようなポンプは、当業者に公知であり、ある実施形態において望ましいものであり得る、周期的なスパイクおよびその他の用量プロファイルを可能とするものである。
【0114】
その他の治療法
ある実施形態では、本明細書で開示する免疫療法レジメンを、外科手術、放射線療法、化学療法、ホルモン療法などを含むがこれらに限定されないその他の従来の癌治療法と組み合わせてよい。ある実施形態では、本明細書で開示する免疫療法レジメンを、臨床的有用性の向上または増大のために、アジュバントもしくはネオアジュバント療法または治療プロトコルにて用いてよい。ある実施形態では、免疫療法レジメンを、臨床的有用性の向上または増大のために、外科手術、放射線療法、化学療法、生物療法、遺伝子療法、またはホルモン療法などが関与する補助的療法または強化療法などの標準的な腫瘍治療パラダ
イムに組み込んでよい。
【0115】
本明細書で用いる場合、「ネオアジュバント療法治療プロトコル」または「ネオアジュバント療法」とは、外科手術またはその他の続いて行われる治療法の前に行われる治療法または治療を意味する。すなわち、本明細書で述べる免疫療法レジメンの少なくとも1つの治療サイクルを、例えば、これらに限定されないが、外科手術、放射線療法、または直接化学療法などの腫瘍切除治療の前に完了させる。種々の実施形態では、腫瘍切除治療は、当業者である医師の決定に従って、治療サイクル完了後の数日または2週間以内に施してよい。従って、ネオアジュバント治療療法における免疫療法レジメンの使用により、患者の完全および部分寛解率の向上、再発率の低下、および/または無病生存率の中央値の上昇を得ることができ、それによって臨床的有用性が高められる。
【0116】
ある実施形態では、治癒の可能性を高めるために、免疫療法レジメンをアジュバント療法に用いてよい。すなわち、癌を、例えば、これらに限定されないが、外科手術による除去、放射線療法、または癌細胞に対して直接に細胞傷害性である用量での化学療法などの腫瘍切除治療によって完全寛解の状態としてよい。続いて免疫療法レジメンを施すことで、再発率の低下、および無病生存期間の長期化が得られる。免疫療法レジメンは、初期治療完了後の数時間、数日、または数週間以内に施してよい。
【0117】
ある実施形態では、免疫療法レジメンを強化療法として用いてよい。これは、完全寛解が必ずしも得られないという点を除いては、上述のアジュバント療法に類似している。この療法では、免疫療法レジメンは、進行までの期間および無進行生存期間を改善または延長し(部分寛解の場合)、ならびに再発率または再発までの時間を減少させる (完全寛解の場合)。
【0118】
ある実施形態では、免疫療法レジメンは、補助的療法、すなわち腫瘍切除治療とさらに組み合わせてその治療の効果を高めるものとして用いてよい。主たる治療が完了するまで免疫療法レジメンが開始されない上述のアジュバント療法とは対照的に、ここでは、2つの治療が一緒に用いられて、応答率または疾患制御率が高められる(すなわち、部分または完全寛解率)。2つの治療の実際のスケジュールは、上述のものと類似していてよいが、免疫療法レジメンの治療サイクルは、化学療法または放射線療法などの主たる治療のラウンドと交互に行ってよい。ある実施形態では、例えば、プライミング(誘導/同調)およびブースティング(増幅)段階の間の時間、または増幅組成物の過程の間の時間など、免疫療法レジメンの治療サイクルの間の時間に、外科手術を行ってよい。
【0119】
代表的な実施形態では、皮膚または皮下転移を有するが、まだ内臓転移は起こしていない患者において、免疫療法を用いて、疾患の安定化、または発生部位および/もしくはリンパ系での腫瘍量の減少もしくは切除を行い、ならびに皮膚または皮下腫瘍が外科手術で摘出される。
【0120】
代表的な実施形態では、皮膚または皮下転移を有するが、まだ内臓転移は起こしていない患者において、皮膚または皮下腫瘍の摘出の前に、免疫療法を用いて、疾患の安定化、またはリンパ系での腫瘍量の減少もしくは切除を行う。従って、免疫療法レジメンは、腫瘍除去の前に疾患を安定化して長期間の寛解を得るために、ネオアジュバント療法に含まれていてよい(第一にワクチン、第二に標準的な治療)。このような手法に感受性を持つ代表的な癌としては、腎臓癌および黒色腫が挙げられる。
【0121】
黒色腫を例とするいくつかの癌の場合、治療の典型的な過程は、発生部位の腫瘍の外科手術による摘出を含む。そのような治療の過程はまた、様々な固形腫瘍、特に、必ずしもこれに限定されないが、その疾患の初期ステージにも適用可能である。例としては、前立
腺癌および腎臓癌が挙げられる。従って、特定の実施形態では、免疫療法レジメンは、既に発症していた疾患の広がり度合いに応じて、アジュバント療法または強化療法として適用される。
【0122】
組成物の送達方法
ある実施形態では、本開示は、本明細書で開示する免疫療法レジメンの1もしくは2つ以上の治療剤を投与する方法に関する。そのような方法としては、これらに限定されないが:リンパ内、リンパ節内、リンパ節周囲、経口、経皮、静脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、粘膜投与などを含んでよい。投与は、治療効果を有する量にて、投与製剤に適合性を有するいかなる方法で行なってもよい。本開示の免疫原性組成物の効果量または用量は、治療される対象に所望される応答を提供することが見出されている量である。CTL応答を引き起こすためのワクチン送達の特に有用な方法は、各々発明の名称が「A METHOD OF INDUCING A CTL RESPONSE」である米国特許第6,994,851号、同第6,977,074号、同第7,364,729号、ならびに米国特許出願番号第11/418,497号(公開番号第20090035252号)、および同第11/418,397号、ならびに、発明の名称が「A METHOD OF ENHANCING A T-CELL RESPONSE」である米国特許出願番号第12/070,156号(公開番号第20080199458号)に開示されており、これらの各々は、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0123】
ある実施形態において、本明細書で開示する組成物は、リンパ系またはリンパ器官に直接投与される。特定の実施形態では、これは、リンパ節への投与である。輸入リンパ管を同様に用いてよい。リンパ節の選択はそれほど重要ではない。鼠径リンパ節を、そのサイズおよび到達しやすさのために用いてよいが、腋窩および頸部リンパ節、ならびに扁桃腺も同様に有利であり得る。免疫応答の誘導または増幅には、単一のリンパ節への投与で十分であり得る。ある実施形態では、複数のリンパ節への投与により、応答の信頼性および強度を高めることができる。多価応答を促進し、従って複数のブースティング/増幅ペプチドが用いられる実施形態については、各ペプチドを、いずれの場合でも、いずれのリンパ節に投与してもよい。従って、例えば、1つのペプチドを右鼠径リンパ節に、第二のペプチドを左鼠径リンパ節に同時に投与してよい。追加のペプチドの投与は、他のリンパ節に行ってよく、それらが誘導部位でない場合であってもよく、それは、Tリンパ球の遊走のために、開始用量とブースティング/増幅用量とを同じ部位に投与することは必須ではないからである。別の選択肢として、追加のペプチドは、誘導と増幅との間の時間間隔が一般的にはそれほど重要なパラメータではないことから、既に投与したブースティング/増幅ペプチドに用いたものと同じリンパ節に、例えば数日後に投与してもよい。従って、ある実施形態では、この時間間隔は、約1週間より長くてもよい。ブースティング/増幅ペプチドの投与の分離は、それらのMHC結合親和性が類似している場合、一般的には重要性は低いが、親和性が異なるにつれ、重要性は増し得る。種々のペプチドの不適合製剤の場合も、分離投与が有用となり得る。
【0124】
本明細書で開示する免疫療法組成物の成分を患者のリンパ系またはリンパ器官へ導入するために、成分の各々を、リンパ管、リンパ節、脾臓、またはリンパ系のその他の適切な部分へ指向させる。ある実施形態では、各成分は、ボーラス投与される。ある実施形態では、1もしくは2つ以上の成分が、一般的には数時間から数日にわたっての注入によって送達される。特定の実施形態では、免疫療法組成物は、リンパ節へカテーテルまたはニードルを挿入し、そのカテーテルまたはニードルを送達の間を通して維持することにより、鼠径または腋窩リンパ節などのリンパ節へ指向される。適切なニードルまたはカテーテルは、金属またはプラスチック製(例:ポリウレタン、ポリ塩化ビニル(PVC)、テフロン(TEFLON)、ポリエチレンなど)のものが利用可能である。カテーテルまたはニードルを例えば鼠径リンパ節へ挿入する場合、鼠径リンパ節は、Tegaderm(商標)透明ドレッシング材(Tegaderm(商標)、セントポール,ミネソタ州,米国)
を用いて固定された24G3/4のVialon(商標) Insyte W(商標)カニューレおよびカテーテル(ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)、米国)を用いて、超音波検査による制御下にて穿刺される。この手順は、通常、経験のある放射線専門医によって行われる。カテーテル先端部が鼠径リンパ節内部に位置することは、最小体積の生理食塩水を注射することで、リンパ節のサイズが直ちに目に見えて増加することによって確認される。後者の手順により、先端部がリンパ節内部にあることを確認することができる。この手順は、先端部がリンパ節から滑り出していないことを確認するために行ってよく、カテーテルの刺入後、複数の日に繰り返し行ってよい。先端部がリンパ節内部の位置から滑り出している場合は、新しいカテーテルを刺入してよい。
【0125】
免疫原性組成物の対象への送達または投与には、種々のパラメータを考慮してよい。加えて、用量レジメンおよび免疫化スケジュールを用いてよい。一般的に、免疫療法組成物中の成分の量は、患者および抗原によって様々であり、応答を誘導する抗原活性;患者の系内のリンパ液流速;対象の体重および年齢;治療される疾患および/または病態の種類;疾患または病態の重症度;過去の、または同時に行われている治療介入;個人の免疫系の抗体合成能力;所望される保護の度合い;投与方法などの因子に依存し、これらはすべて医師によって容易に決定され得る。
【0126】
一般的に、注入によって送達される場合、本明細書で開示する免疫療法組成物は、約1から約500マイクロリットル/時間、または約24から約12000マイクロリットル/日の速度で送達してよい。免疫療法組成物の濃度は、24時間の間に約0.1マイクログラムから約10000マイクログラムの治療組成物が送達されるものである。流速は、成人の鼠径リンパ節を流れるリンパ液が1分あたりおよそ約100から約1000マイクロリットルであるという知見に基づいている。目的は、リンパ系におけるワクチン製剤の局所濃度を最大化することである。任意の免疫療法薬についてヒトにおける注入の最大効果レベルまたは最適レベルを決定するために、患者に若干量の実験的な検査が行われる。
【0127】
ある実施形態では、本明細書で述べる免疫原性組成物は、ある回数の連続する用量として投与してよい。そのような用量は、2、3、4、またはそれ以上の適切な免疫応答を得るのに必要な回数の用量であってよい。ある実施形態では、免疫原性組成物のこれらの用量は、互いに約数秒または数分以内に、右または左鼠径リンパ節へ投与してよいことが考慮される。例えば、プラスミド(プライム)をまず右リンパ節へ注射し、続いて数秒または数分以内に第二のプラスミドを右または左鼠径リンパ節へ注射してよい。ある実施形態では、1もしくは2つ以上の免疫原を発現する1もしくは2つ以上のプラスミドの組み合わせを投与してよい。ある実施形態では、リンパ節への第一の注射の後に続いて行われる注射は、第一の注射後、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10分、もしくはそれを超える時間以内であってよいが、約30、40、50、もしくは60分を超えない。右および左リンパ節へ別々に2つのペプチドを投与する場合も、同様の考慮が適用される。免疫原性組成物の用量の投与は、例えば、1、2、3、4、5、6、もしくは7、またはそれを超える日数が、連続する投与の間で経過するなど、複数日数の間隔で行われることが望まれ得る。ある実施形態では、組成物の1もしくは複数の続いて行われる投与が、両側の鼠径リンパ節への注射によって、最初の用量の投与後、約1、2、3週、もしくはそれを超える週数以内、または約1、2、3ヶ月、もしくはそれを超える月数以内に施されることが望まれ得る。
【0128】
キット
ある実施形態では、本明細書で開示する免疫療法組成物の成分のすべて、またはサブセットを、キットとして一緒にパッケージするか、またはまとめてよい。ある実施形態では、治療タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、エピトープ、またはそれをコードする核酸を、一緒に、または単一の分子として、または分子のセットとしてパッケージしてよい。
別の選択肢として、本明細書で開示する組成物は、治療薬としての用途のために本明細書で開示するようにそれらを互いに組み合わせて用いることができる方法を説明した印刷物の形態、または機械読み取り用媒体としての説明書と共に、パッケージし、個々に販売してよい。
【0129】
ある実施形態では、キットは、適切な容器手段中に、1もしくは2つ以上の治療剤および本明細書で開示する方法を用いるための説明書を含んでいてよい。ある実施形態では、キットは、単一の容器手段を有していてよく、および/または、例えば癌などの増殖性疾患に起因する疾患もしくは病態の治療のための1もしくは2つ以上の治療剤の免疫学的または治療効果製剤などの追加の化合物のための別個の容器手段を有していてよい。
【0130】
キットの成分が1もしくは2つ以上の溶液として提供される場合、溶液は水溶液であり、滅菌水溶液が特に好ましい。組成物はまた、送達可能および/または注射可能組成物として製剤してもよい。そのような実施形態では、容器手段自体が、シリンジ、ピペット、および/またはその他の器具であってよく、それらから、製剤を対象へ送達もしくは注射してよく、ならびに/またはキットのその他の成分への適用および/もしくはそれらとの混合さえも行ってよい。ある実施形態では、キットの成分は、1もしくは複数の乾燥粉末として提供してよい。成分(例:試薬)が乾燥粉末として提供される場合、粉末は、適切な溶媒を添加することで再構築されてよい。溶媒も別の容器手段中にて提供されてよいことは想定される。ある実施形態では、キットの1もしくは2つ以上の成分は、溶液または乾燥粉末として提供されてよい。
【0131】
ある実施形態では、プラスミドは、治療タンパク質、ペプチド、エピトープ、またはそれらをコードする核酸と一緒に販売されてよい。ある実施形態では、治療タンパク質、ペプチド、エピトープ、またはそれらをコードする核酸のセットが、プラスミドなしで一緒に販売されてよい。ある実施形態では、本明細書で開示する免疫療法レジメンを含む成分の各々は、別々に販売されてよい。
【0132】
容器手段は、一般に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ、および/またはその他の容器手段を含み、その中へ1もしくは2つ以上の治療剤を入れてよい。キットはまた、薬理学的に許容される滅菌バッファーおよび/またはその他の希釈剤を含有する第二の容器手段も含んでいてよい。ある実施形態では、キットはまた、市販用に、本明細書に開示する方法を実践するための物質、およびその他の試薬容器を密封状態で入れるための手段も含んでよい。そのような容器としては、例えば、射出成形もしくは中空成形したプラスチック容器を含んでよく、その中に所望されるバイアルが保持される。容器の数または種類に関わらず、本明細書で述べる1もしくは複数のキットはまた、対象の体内への1もしくは2つ以上の治療剤の注射/投与の補助を行うための器具を含むか、またはこれと共にパッケージされてもよい。そのような器具は、例えば、これらに限定されないが、シリンジ、ポンプ、および/またはそのような医学的に承認された送達用輸送手段のいずれであってもよい。
【0133】
従って、ある実施形態では、単一のエピトープまたはエピトープのセットを標的とするプライミング/同調/誘導およびブースティング/増幅組成物を、一緒にパッケージしてよい。他の場合では、複数のプライミング/同調/誘導組成物を1つのキットにまとめ、対応するブースティング/増幅組成物を、別のキットにまとめてよい。別の選択肢として、組成物は、示された免疫化プロトコルまたは免疫療法レジメンの有益な結果を得るためにそれらを互いに組み合わせて用いることができる方法を説明した、印刷物の形態または機械読み取り用媒体としての説明書と合わせて、パッケージし、個々に販売してよい。さらなる変形は、当業者に明らかであろう。各々その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、各々発明の名称が「COMBINATIONS OF TUMOR-ASSOCIATED ANTIGENS IN DIAGN
OSTICS FOR VARIOUS TYPES OF CANCERS」である米国特許出願番号第11/155,288号(公開番号第20060008468号)および同第11/323,964号(公開番号第2006‐159689号)、ならびに発明の名称が「IMPROVED EFFICACY OF ACTIVE IMMUNOTHERAPY BY INTEGRATING DIAGNOSTIC WITH THERAPEUTIC METHODS」である米国特許出願番号第11/155,928号(公開番号第20050287068号)に記載のように、特定のプロトコルまたはレジメンに用いられ得る組成物のすべてを含むわけではない種々のパッケージング方式を用いることで、例えば、腫瘍抗原発現、または免疫療法薬もしくはその種々の成分に対する観察された応答に基づくなど、治療の個別化の手助けとなる。
【0134】
本出願にて既に開示したものに加えて、以下の出願が、その全ての内容について参照により本明細書に明確に組み込まれる。各々発明の名称が「CANCER IMMUNOTHERAPY AND METHOD OF TREATMENT」である、2009年10月23日出願の米国特許仮出願番号第61/279,621号;2009年10月24日出願の同第61/254,657号;および2009年10月28日出願の同第61/255,850号は、各々、対象において標的抗原に対するエフェクターT細胞応答を発生させる設計および実践のための改良された戦略に関し、各々その全ての内容が参照により本明細書に明確に組み込まれる。抗原に対するクラスI MHC拘束性T細胞応答、ならびに特定のエフェクターおよびメモリーCTL応答の誘導、同調、維持、調節、ならびに増幅に開示する類似体を用いる有用な方法は、米国特許第6,994,851号、同第6,977,074号、および同第7,364,729号、ならびに米国特許出願番号第10/871,707号(公開番号第2005‐0079152号)、および発明の名称が「METHODS TO ELICIT, ENHANCE AND SUSTAIN
IMMUNE RESPONSES AGAINST MHC CLASS I-RESTRICTED EPITOPES, FOR PROPHYLACTIC OR THERAPEUTIC PURPOSE」である米国特許出願番号第11/323,572号(公開番号第2006‐0165711号)に記載されている。類似体はまた、さらに最適化された類似体を得るための研究に用いてもよい。数多くのハウスキーピングエピトープが、各出願の発明の名称が「EPITOPE SEQUENCES」である米国特許出願番号第10/117,937号(公開番号第2003‐0220239 A1号)および同第10/657,022号(公開番号第2004‐0180354号)、ならびにPCT出願番号第PCT/US2003/027706号(公開番号国際公開第04/022709A2号;ならびに2001年4月6日出願の米国特許仮出願番号第60/282,211号;2001年11月7日出願の同第60/337,017号;2002年5月7日出願の同第60/363,210号;および2002年9月5日出願の同第60/409,123号に提供されている。類似体はさらに、これらの出願に記載の種々の方法のいずれにて用いてもよい。本類似体を含んでよいか、または含むエピトープクラスターは、発明の名称が「EPITOPE CLUSTERS」である、2000年4月28日出願の米国特許出願番号第09/561,571号に開示され、より詳細に明らかにされている。本類似体を用い、送達するための方法は、各々発明の名称が「A METHOD OF INDUCING A CTL RESPONSE」である米国特許出願番号第09/380,534号および米国特許第6,977,074号(2005年12月20日発行)およびPCT出願番号第PCT/US98/14289号(公開番号国際公開第99/02183A2号)に記載されている。そのような免疫療法薬のための有益なエピトープを選別する原理は、すべて発明の名称が「EPITOPE SYNCHRONIZATION IN ANTIGEN PRESENTING CELLS」である2000年4月28日出願の米国特許出願番号第09/560,465号、2001年12月7日出願の同第10/026,066号(公開番号第2003‐0215425 A1号)、および2001年11月7日出願の同第10/005,905号、発明の名称が「METHOD OF EPITOPE DISCOVERY」である米国特許第6,861,234号(2005年5月1日発行;米国特許出願番号第09/561,074号);発明の名称が「EPITOPE CLUSTERS」であり、2000年4月28日出願の米国特許出願番号第09/561,571号;発明の名称が「ANTI-NEOVASCULATURE PREPARATIONS FOR CANCER」であり、2002年5月7日出願の米国特許出願番号第10/094,699号
(公開番号第2003‐0046714 A1号);いずれも発明の名称が「EPITOPE SEQUENCES」であり、いずれも2002年4月4日出願の米国特許出願番号第10/117,937号(公開番号第2003‐0220239 A1号)および第PCTUS02/11101号(公開番号国際公開第02/081646A2号);ならびにいずれも発明の名称が「EPITOPE SEQUENCES」であり、いずれも2003年9月5日出願の米国特許出願番号第10/657,022号およびPCT出願番号第PCT/US2003/027706号(公開番号国際公開第04/022709A2号)に開示されている。ワクチンプラスミドの設計全体の態様は、発明の名称が「EXPRESSION VECTORS ENCODING EPITOPES
OF TARGET-ASSOCIATED ANTIGENS」であり、2000年4月28日出願の米国特許出願番号第09/561,572号;および発明の名称が「XPRESSION VECTORS ENCODING EPITOPES OF TARGET-ASSOCIATED ANTIGENS AND METHODS FOR THEIR DESIGN」であり、2002年11月7日出願の同第10/292,413号(公開番号第2003‐0228634
A1号);いずれも発明の名称が「EXPRESSION VECTORS ENCODING EPITOPES OF TARGET-ASSOCIATED ANTIGENS」である、2002年8月20日出願の米国特許出願番号第10/225,568号(公開番号第20030138808号)、2003年8月13日出願のPCT出願番号第PCT/US2003/026231号(公開番号国際公開第2004/018666号);ならびに発明の名称が「AVOIDANCE OF UNDESIRABLE REPLICATION
INTERMEDIATES IN PLASMID PROPAGATION」である米国特許第6,709,844号に開示されている。特定の癌に対する免疫応答の誘導に特定の有益性を有する具体的な抗原の組み合わせは、すべて発明の名称が「COMBINATIONS OF TUMOR-ASSOCIATED ANTIGENS IN VACCINES FOR VARIOUS TYPES OF CANCERS」である、2003年6月17日出願の米国特許仮出願番号第60/479,554号および2004年6月17日出願の米国特許出願番号第10/871,708号(公開番号第20050118186号)およびPCT特許出願番号第PCT/US2004/019571号(公開番号国際公開第2004/112825号)に開示されている。各々その対応する全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、すべて発明の名称が「ANTI-NEOVASCULATURE PREPARATIONS FOR CANCER」である米国特許第7,252,824号(2007年8月7日発行)、米国特許出願番号第11/073,347号(公開番号第20050260234号)、および同第11/772,811号(公開番号第20090208537号)に開示されるように、腫瘍の血管新生に関連する抗原(例:PSMA、VEGFR2、Tie‐2)もまた、癌性疾患に関して有用である。生体応答調節物質の標的化投与によって免疫応答を誘発、維持、および操作する方法は、2004年12月29日出願の米国特許仮出願番号第60/640,727号に開示されている。免疫応答の誘導においてCD4+細胞をバイパスする方法は、2004年12月29日出願の米国特許仮出願番号第60/640,821号に開示されている。標的生物、細胞、および疾患に関連する代表的な疾患、生物、ならびに抗原およびエピトープは、発明の名称が「METHOD OF INDUCING A CTL RESPONSE」である2001年2月2日出願の米国特許第6,977,074号(2005年12月20日発行)に記載されている。代表的な方法は、いずれも発明の名称が「COMBINATIONS OF TUMOR- ASSOCIATED ANTIGENS IN DIAGNOTISTICS FOR VARIOUS TYPES OF CANCERS」である、2004年6月17日出願の米国特許仮出願番号第60/580,969号、および2006年1月12日公開の米国特許出願番号第20060008468‐A1号に記載されている。方法および組成物は、発明の名称が「COMBINATIONS OF TUMOR- ASSOCAITED ANTIGENS IN COMPOSITIONS FOR VARIOUS TYPES OF CANCER」である、2004年12月29日出願の米国特許仮出願番号第60/640,598号にも開示されている。本類似体の使用を含む免疫化の方法による免疫応答性を評価およびモニタリングするための診断技術の統合については、いずれも発明の名称が「IMPROVED EFFICACY OF ACTIVE IMMUNOTHERAPY BY INTEGRATING DIAGNOSTIC WITH THERAPEUTIC METHODS」である2004年6月17日出願の米国特許仮出願番号第60/580,964号および2005年12月29日公開の米国特許出願番号第2005‐0287068‐A1号に、より詳細に考察されている。免疫原性ポリペプチドをコードするベクターは、発明の名称が「EXPRESSION VECTORS ENCODING EP
ITOPES OF TARGET-ASSOCIATED ANTIGENS AND METHODS FOR THEIR DESIGN」である2002年11月7日出願の米国特許出願番号第10/292,413号(公開番号第2003‐0228634 A1号)、および発明の名称が「METHODS AND COMPOSITIONS TO ELICIT MULTIVALENT IMMUNE RESPONSES AGAINST DOMINANT AND SUBDOMINANT EPITOPES, EXPRESSED ON CANCER CELLS AND TUMOR STROMA」である2005年6月17日出願の米国特許仮出願番号第60/691,579号に開示されている。主題である方法および組成物を含むさらなる有用な開示は、発明の名称が「MULTIVALENT ENTRAIN-AND-AMPLIFY IMMUNOTHERAPEUTICS FOR CARCINOMA」である、2005年6月17日出願の米国特許仮出願番号第60/691,581号に記載されている。上記段落で述べた特許出願および特許の各々は、それが教示する事項すべてについて、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる。さらなる類似体、ペプチド、および方法は、すべて2005年6月17日に出願された、発明の名称が「EPITOPE ANALOGS」である2006年3月16日公開の米国特許出願公開番号第2006‐0057673 A1号および発明の名称が「EPITOPE ANALOGS」であるPCT出願公開番号国際公開第2006/009920号に開示されている。例として、これらに限定されないが、各参考文献は、クラスI MHC拘束性エピトープ、類似体、類似体の設計、エピトープおよび類似体の使用、エピトープの使用および作製の方法、ならびにそれらの発現のための核酸ベクターの設計および使用に関して教示される事項について、参照により組み込まれる。参照により本明細書に明確に組み込まれるその他の特許出願としては:発明の名称が「METHODS TO TRIGGER, MAINTAIN AND MANIPULATE IMMUNE RESPONSES BY TARGETED ADMINISTRATION OF BIOLOGICAL RESPONSE MODIFIERS INTO LYMPHOID ORGANS」であり、2005年12月29日出願の米国特許出願番号第11/321,967号(公開番号第2006‐0153844号)、発明の名称が「METHODS TO ELICIT ENHANCE AND SUSTAIN IMMUNE REPONSES AGAINST MCH CLASS I RESTRICTED EPITOPES, FOR PROPHYLACTIC OR THERAPEUTIC PURPOSES」であり、2005年12月29日出願の米国特許出願番号第11/323,572号(公開番号第2006‐0165711号) ,発明の名称が「METHODS TO BYPASS CD4+ CELLS IN THE INDUCTION OF AN IMMUNE RESPONSE」であり、2005年12月29日出願の米国特許出願番号第11/323,520号(公開番号第2008‐0124352号)、発明の名称が「COMBINATION OF
TUMOR-ASSOCIATED ANTIGENS IN COMPOSITIONS FOR VARIOUS TYPES OF CANCERS」であり、2005年12月29日出願の米国特許出願番号第11/323,049号(公開番号第2006‐0159694号)、発明の名称が「COMBINATIONS OF TUMOR-ASSOCIATED ANTIGENS IN DIAGNOSTICS FOR VARIOUS TYPES OF CANCERS」であり、2005年12月29日出願の米国特許出願番号第11,323,964号(公開番号第2006‐0159689号)、発明の名称が「EPITOPE ANALOGS」であり、2005年6月17日出願の米国特許仮出願番号第60/691,889号である。T細胞応答を高める方法は、米国特許出願番号第12/070,156号(公開番号第2008‐0199485号)に開示されている。前述の開示事項の各々は、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0135】
本明細書で述べる能動免疫療法薬は、例えば皮膚および/またはリンパ系疾患、癌などの患者の疾患の治療に用いられる医薬の製造に用いてよい。
【0136】
以下の実施例は、単に説明することを目的とするものであり、本開示事項またはその種々の実施形態をいかなる形であっても限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0137】
以下の実施例は、本明細書で開示する実施形態の実証のために含められる。当業者であれば、以下の実施例で開示される方法および組成物は、発明者らによって発見された方法が本開示の実践において良好に機能することを表すものであり、従ってその実践のための特定のモードを構成するものであると見なし得ることは理解される。しかし、当業者であ
れば、本開示に照らして、開示する具体的な実施形態に多くの改変を行うことができ、それでも、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、類似または同等の結果を得ることができることが理解できる。
【0138】
実施例1
進行黒色腫を有する患者における能動免疫療法の免疫および臨床成績の評価
非盲検による多施設試験において、3つの成分:2つの標的抗原、メランA/MART‐1およびチロシナーゼの断片を発現する組換えプラスミド(pMEL‐TYR);ならびに2つのペプチド、それぞれの標的CTLエピトープであるメランA/MART‐126‐35およびチロシナーゼ369‐377に対応するエピトープ類似体(それぞれ、E‐MELおよびE‐TYR)、を包含する能動免疫療法生成物(MKC1106‐MTと称する)を、図1に示すように、免疫化レジメンにて試験した。プラスミドの設計およびペプチド類似体は、図2に示す通りである。プラスミドは、4.0mg/mLの濃度の投与用滅菌溶液として製剤した。ペプチドの各々(E‐MELおよびE‐TYR)は、注射の前に、凍結乾燥粉末から1.0mg/mLの濃度の滅菌溶液として製剤した。
【0139】
本試験に登録した患者はすべてHLA‐A2陽性であった。これらの患者はまた、進行(ステージIIIb、IIIc、またはIV)黒色腫を有し、これまでの治療法(例えば、標準的な化学療法、放射線療法、および/または外科手術に対する不応性)を通して進行していることも確認した。
【0140】
メランA/MART‐1およびチロシナーゼ抗原の両方に対する機能的免疫応答を誘発することを目的として、図1に示すような治療スケジュール/プロトコルを用い、多成分能動免疫療法生成物を、プラスミドプライム/ペプチドブースト手法を用いたリンパ節内注射によって送達した。両側の鼠径リンパ節へ投与されるプラスミドの用量は、注射1回あたり1200マイクログラムに固定した。低用量ペプチドコホートに7例、高用量コホートに11例の合計で18例の患者に投与した。低用量ペプチドコホートは、注射1回あたりメランA/MART1およびチロシナーゼペプチドの各々が100マイクログラムという「低用量」を受けた。高用量ペプチドコホートは、注射1回あたりメランA/MART1およびチロシナーゼペプチドの各々が300マイクログラムという「高用量」を受けた。
【0141】
第一の治療サイクルでは、プラスミド‐プライミング治療を、第1日、4日、15日、および18日に施し、続いてペプチド‐ブースト治療を、第29日および32日に施した。これに続いて、第二の治療サイクルを行った。臨床評価は、各治療サイクル後に行った(1サイクル=6週間)。各プロトコルにおいて非進行者である患者については、状態(疾患進行(PD))が変化するまで追加の治療サイクルを継続し、最大で48週間にわたる8治療サイクルを受け得るものとした。免疫応答は、この2つの免疫化抗原の選択的エピトープに特異的である末梢血液中のCD8+T細胞のパーセントを測定することにより、ベースラインにて、および治療法全体を通して評価した。臨床応答は、RECIST(固形癌治療効果判定基準)の基準を用いて分類した。その状態を少なくとも8週間維持した患者は、安定疾患(SD)を有するとして評価し;または、該当する場合、4週間での繰り返しの評価によって確認される腫瘍サイズの測定可能な変化に基づいて、部分応答(PR)または完全応答(CR)として評価した。
【0142】
10例の患者が、治療法の2もしくは3以上のサイクルを完了した(低用量の患者2例と高用量の患者8例)。評価した患者はすべて、腫瘍生検において標的抗原を共発現した。6例の患者(低用量コホートの患者1例と高用量コホートの患者5例)が、RECIST基準によって定められる腫瘍応答を示した。これらの6例の患者のうち、3例が部分応答(PR)を示し、3例が安定疾患(SD)を示した。PRの患者3例のうち2例は、治
療法の8サイクルを完了し;3例目のPR患者は、さらなるサイクルを含めて合計で治療法の9サイクルを完了した(≧1年)。この3例のPR患者は、合わせた標的病変部にて、59%(図3)、60%(図4)、および30%(図5)の腫瘍縮小を示した。3例のSD患者のうちの1例は、治療法の8サイクルを完了し、残りの2例の患者は、治療法の2サイクルの後、進行を示した。
【0143】
腫瘍応答を示したこれら6例の患者のうち5例は、リンパ系転移を有するステージIIICまたはIVであった(3例のPRおよび2例のSD)(図6A;白丸;ステージIIICおよびIV:M1a)。この中で、4例の患者は、治療法の8または9サイクルを完了し、その全員が、リンパ系疾患を有し、ベースラインでのメランA特異的T細胞の存在を示した(図6B 白丸;ステージIIICおよびIV:M1a;PR/SD)。ステージIIICリンパ系疾患を有するがベースラインにてメランA特異的T細胞は存在しない5人目の患者は、治療法の2サイクルにてSDを達成し、この2サイクル後は試験を継続せず、その後進行した(図6A;白丸;ステージIIICおよびIV:M1a)。ステージIV(M1b)の6例目の患者は、治療法の2サイクルにてSDを達成し、この2サイクル後は試験を継続せず、その後進行した(図6A;白丸;ステージIV:M1b、M1c)。
【0144】
この結果は、免疫化によって血液中の抗原特異的T細胞の数が上昇した患者のパーセントとして定義される免疫応答率は、MHC多量体染色によって測定した場合、治療した患者すべてにおいて50%が得られたことを示している(図7)。退縮病変部の2つの生検のうちの1つでは、CD8+T細胞の高密度の浸潤が見られ、約1%のTIL(腫瘍浸潤リンパ球)がメランAエピトープに特異的であった。加えて、この腫瘍生検は、CD8+およびCD4+T細胞の大量の浸潤を示した。
【0145】
レジメンを繰り返し投与することは、安全であり、少なくとも1サイクルを完了したすべての患者、および少なくとも8サイクル(1年)を完了した4例の患者で、良好な耐容性が示された。薬物関連の重篤な有害事象(SAE)は報告されなかった。最も多く報告された有害事象(AE)は、主として、注射領域の疼痛(片側および両側の鼠径部)、ならびに疲労感(断続的)、熱、意識朦朧、発疹、そう痒症、紅潮、および紅斑を伴うグレード1または2の有害事象であった。
【0146】
サブセット分析により、疾患ステージおよびベースラインでの特異的T細胞に基づいて、試験において全体として最良の臨床応答を示した患者集団を識別した。メランA/MART‐1特異的T細胞をベースラインで有する患者8例のなかで、4例の患者(すべてリンパ系転移疾患を有する)が、持続的な(≧1年)臨床応答(RECISTで測定可能なPRまたはSD、および腫瘍退縮)を達成し、一方他の4例の患者(すべて内臓疾患を有する)は、急速な疾患進行を示し、治療の2サイクルを完了しなかった。ベースラインにて測定可能な特異的T細胞を持たない残りの患者10例では、いずれも持続的な応答を達成しなかった。
【0147】
皮膚および/またはリンパ系疾患(ステージIIICおよびIV M1a)を有する患者7例のうち4例が、持続的な臨床応答を示した。臨床応答における疾患ステージの役割をさらに支持するものとして、内臓疾患(M1b、M1c)を有する患者11例は、いずれも持続的な臨床応答を示さなかった。持続的な臨床応答を示したこれらの患者4例の中では、いずれも混合応答を示さず、ここで、これらの4例の患者のいずれでも新しい病変部が発生することはなく、このことは、そのような患者の自然の進行が播種性転移疾患であることから、微小転移病巣に対する活性を示唆している。合わせて考えると、これらの結果は、測定可能な疾患の場合(リンパ系転移疾患など)におけるこの薬剤の臨床的な適用性を支持するだけでなく、以下の2つの適応に対して適用可能である微小転移疾患に対
するその効果も示唆するものである:1)再発までの時間を延長するためのアジュバント療法(例えば、一次治療後に微小残存病変を有する患者において);2)進行疾患において、新たな転移病変部の発生を防止することによって腫瘍の進行を遅延させるための、補助的療法または単独療法。
【0148】
実施例2
PRAMEおよびPSMA陽性固形腫瘍を有する患者における能動免疫療法の免疫および臨床成績の評価
組織発現およびエピトープ免疫原性に関する証拠を蓄積すると、PRAME(黒色腫の選択的抗原)およびPSMA(前立腺特異的膜抗原)が、多様な固形腫瘍の能動免疫療法に適用できる可能性のある標的であることが示唆される。
【0149】
従って、第二のフェーズ1、非盲検による多施設研究において、腫瘍組織内でPRAMEおよびPSMAを共発現し、多様な腫瘍型の進行癌、転移疾患、および/または進行不応性疾患を有するHLA‐A2陽性の患者を、PRAMEおよびPSMA抗原を標的とする能動免疫療法生成物で治療した。能動免疫療法生成物(MKC1106‐PPと称する)は、3つの成分:2つの標的抗原の断片を発現する組換えプラスミド(pPRA‐PSM);ならびにそれぞれの標的抗原に対応する2つのペプチド類似体(E‐PRAおよびE‐PSM)、を包含していた(図8)。プラスミドは、4.0mg/mLの濃度の滅菌溶液として製剤し、ペプチドの各々(E‐PRAおよびE‐PSM)は、凍結乾燥粉末から滅菌溶液(それぞれ、0.5mg/mLおよび1.0mg/mLの濃度)として製剤した。PRAMEおよびPSMA抗原の両方に対する機能的免疫応答を誘発することを目的として、免疫療法レジメンの3つの成分の各々を、プライム/ブーストプロトコルにて、両側の鼠径リンパ節内注射によって送達した。プラスミドおよびペプチドの投与スケジュールを図1に示す。
【0150】
様々な腫瘍型を有する合計で26例の患者(前立腺癌11例、腎臓癌2例、黒色腫11例、およびその他の癌2例)に投与を行い:低および高用量ペプチドコホートにそれぞれ13例ずつとした。24例の患者が、少なくとも1治療サイクルを完了し、免疫応答の評価が可能であると判断した。用いた2つのペプチド用量は:それぞれ、E‐PRAおよびE‐PSMについて、22.5および30マイクログラムのペプチド/注射の「低用量」、および150および300マイクログラムのペプチド/注射の「高用量」とした。両側注射におけるプラスミド用量は、1200マイクログラム/注射に固定した。
【0151】
対象は、2治療サイクル後(12週間)に臨床評価を受けた。非進行者(すなわち、疾患進行が観察されない;レスポンダー)であると判定された患者については、治療法を継続し、2治療サイクルを超えて、最大で6治療サイクル(36週間にわたる)を受け得るものとした。免疫応答は、この2つの免疫化抗原、PRAMEおよびPSMAに特異的である末梢血液中のCD8+T細胞のパーセントを、四量体アッセイおよびELISPOTアッセイを用いて測定することにより、ベースラインにて、および治療法全体を通して評価した。
【0152】
7例の患者が、治療法の4もしくはそれ以上のサイクルを少なくとも6ヶ月かけて完了し、持続的な臨床応答の新たなエビデンスが示された(低用量の患者3例および高用量の患者4例):10例の前立腺癌患者のうちの4例;腎臓癌の両患者、および11例の黒色腫患者のうちの1例。図9は、治療開始後36週での、リンパ系転移疾患を有する前立腺癌患者における腫瘍縮小を示す。24例の評価可能患者のうち15例が、免疫化プロトコルの開始に続いて、免疫化抗原に対して特異的なT細胞の一時的なまたは継続的な増殖を示した。
【0153】
臨床的有用性は、四量体アッセイで測定される抗原特異的T細胞の著しい増殖に関連することが観察された。特に、持続的な臨床応答のエビデンスを示した患者は、レジメンの開始後、早い段階で、およびより大きい比率で、血液中の特異的T細胞の増殖を示す傾向にあった。治療の開始後、最初の評価を受けるまでに(12週)、持続的な臨床的有用性(治療の少なくとも4サイクルにわたってのSD)が、疾患進行を示した17例の患者(図10および表3)と比べて、7例の評価可能患者(図10および表3)で観察された。疾患進行を示した17例の患者のうち(表3)、14例の患者が、治療の開始時および治療の過程にて血液中に測定可能なT細胞を有し(図10参照;N=14);残りの3例の患者は、疾患進行が早すぎて、治療開始後に血液中の測定可能なT細胞を得ることができなかった。加えて、評価を受け、持続的な臨床応答のエビデンスを示した患者のうちの半分が、最初の2サイクル(12週間)を通して、およびそれを超えて、血液中T細胞の存続を示したが、これと比較して、治療法の最初の2サイクルに相当する同一の時間間隔内に進行を示した患者では、0%であった(17例の患者のうち0例)(図11;*ベースラインにてエピトープ特異的T細胞を検出)。最後に、特異的T細胞の増殖、および持続的な臨床応答を示した患者は、ベースラインでの抗原特異的T細胞のパーセントが低いか、またはこれを持たない傾向にあり、このことは、十分なT細胞免疫性を持つ患者において、エフェクター能を有するT細胞応答が新たに誘導されていることを示唆している。加えて、データは、治療を行ったにも関わらず急速に進行した疾患を有する患者において、既存のT細胞応答が損なわれていることを示唆している。
【0154】
【表3】
【0155】
標的発現分析により、ほぼ100%の前立腺癌腫瘍サンプルならびに腎臓癌および黒色腫患者からの大部分の腫瘍組織において、PRAMEおよびPSMAの共発現が確認された。最良の臨床成績は:PSA低下に反映される腫瘍退縮を示した前立腺癌患者1例(30+週)、PSA速度の変化を伴う安定疾患の前立腺癌患者2例(36+週)、ネオアジュバント療法における、摘出後に疾患のエビデンスを示さない腎臓癌患者1例(72+週)、および72+週において安定疾患を示す転移黒色腫患者1例(M1cステージ)を含む。
【0156】
全体として、この結果は、免疫化によって血液中の抗原特異的T細胞の数が上昇した患者のパーセントとして定義される免疫応答率は、評価可能な患者の中で60%超であったことを示している。免疫化レジメンは、治療法の6サイクル(9ヶ月)を完了した5例の患者で、良好な耐容性が示された。7例の患者が、「部分応答」(RECIST)、またはPSA倍加時間の変化、または「安定疾患」(少なくとも6ヶ月間)として定められる臨床応答を達成し:4例は前立腺癌患者、2例は腎臓癌患者、そして1例は黒色腫患者であった。両方の抗原に対する免疫応答を開始し、それが治療法の最初の2サイクルを通して継続した患者は、臨床的有用性を示す可能性が高かった。
【0157】
薬物関連の重篤な有害事象(SAE)は報告されなかった。最も多く報告された有害事象(AE)は、主として、注射領域の疼痛(片側および両側の鼠径部)、ならびに疲労感(断続的)、熱、意識朦朧、発疹、そう痒症、紅潮、および紅斑を伴うグレード1または2の有害事象であった。
【0158】
ある実施形態では、本開示の特定の実施形態について述べ、これを請求するために用いられる、成分の量、分子量などの特性、反応条件などを表す数字は、場合によっては、「約」の用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。従って、ある実施形態では、記載された説明および添付の請求項に示される数値パラメータは、特定の実施形態によって得ることが求められている所望されるパラメータに応じて様々であり得る概略値である。ある実施形態では、数値パラメータの解釈は、報告される有意の桁数を考慮し、通常の丸め法を適用することで行われるべきである。本開示のある実施形態の広い範囲を定める数値範囲およびパラメータは概略値であるが、具体的な例に示される数値は、実用上可能な限り正確に報告されている。本開示のある実施形態に提示される数値は、それぞれの試験測定に見られる標準偏差にやむを得ず起因する一定の誤差を含む場合がある。
【0159】
実施例3
黒色腫試験からの画像データの独立したレビュー
客観的な応答、特に腫瘍縮小は、癌ワクチンの試験において一般的には観察されてこなかった。例えば、最近承認されたPROVENGEは、ワクチンレシピエントの中で4.1ヶ月という比較的少ない生存期間の延長に基づくものであり;この薬剤の使用に測定可能な抗腫瘍効果は伴っていなかった(D. Longo, N. Engl. J. Med. 363:479-481, 2010;P.W. Kantoff, N. Engl. J. Med. 363:411-422, 2010)。従って、上述の試験において客観的な応答が発生したことは驚くべきことであり、登録した患者の数が少ないことを考えると、そのような観察結果は予想されていなかった。これらの観察結果が予想外の性質のものであったことから、黒色腫試験の結果のレビューを、独立した病理学研究所に依頼した。CTスキャンおよびその他のイメージングの解釈は、評価すべき病変部の選択などの方法に応じて定量的には異なるものであり、従って独立した判読値も異なるが、定性的な結果は一貫しているはずである。従って、各々の独立した判読がすべての詳細にわたって正確に一致することは期待されないが、全体としての結論は一貫したものであることが期待される。癌治療の効力試験におけるイメージングの結果の独立した判読を行うことは求められているが、これはフェーズI試験としては特殊である。
【0160】
レビューにおいて、独立の放射線専門医は、腫瘍型およびイメージの時系列は知らされたが、治療を含むその他のすべての患者情報は知らされなかった。独立の放射線専門医は、イメージングが得られた試験の対象すべてについてのデジタル化CTスキャンに基づき、標的および非標的病変部の選択、それらの測定、およびRECIST(v.1.0)基準に従う最良の応答の評価に関して完全に自身の責任で行った(応答を示した対象の1例は皮膚病変部のみを有していたため(ステージIIIC疾患;図6Aおよび6B参照)、CTスキャンは撮らなかった)。図12から分かるように、腫瘍変化の最大パーセントの対象ごとの比較から、治験担当医および独立の判読による結果が一貫したものであったこ
とを示している。従って、この評価によって、Pt1〜Pt4およびPt6(Pt5は評価不可であった)は、RECIST基準による客観的応答を示し(Pt6の応答は比較的短期間であった)、Pt7からPt11は、治療にも関わらず疾患が進行した。図12の患者(Pt)1からPt4は、メランAに対する既存の免疫を有するとして識別され、ステージIV:M1aリンパ系疾患を有すると分類された患者であった(図6Aおよび図6B参照)。図6Aおよび図6Bにて内臓標的病変を持つステージIV:M1bまたはM1c疾患を有するとして分類された患者は、図12のPt5からPt11を含む。
【0161】
独立の判読から、Pt1からPt4に対して、肺、肝臓、および軟部組織を含むリンパ系外部のいくつかの病変部も報告され、これらは治験担当医からは報告されなかったものであった。これらの病変部は、治療の期間にわたってそのサイズも数も変化せず、全体としてその最大寸法は1cm未満であった(非標的病変部)。これらの観察結果は、主としてリンパ系疾患を有するが、それ以外に低内臓腫瘍量を有する患者にとって、この免疫療法が有用であり得ることを示すものであった。さらに、これらは、この治療によってさらなる転移を阻止することが可能であるという見解についても一貫していた。
【0162】
ある実施形態では、本開示の特定の実施形態を説明する文脈(特に以下の請求項のいくつかの文脈)で用いられる「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」、ならびに類似の指示語は、単数および複数の両方を含むものとして解釈してよい。本明細書における数値範囲の列挙は、その範囲内に含まれる各別々の数値に個別に言及する簡潔な方法として用いることを単に意図している。特に断りのない限り、各個別の数値は、それが個別に本明細書に列挙されているかのごとく、本明細書に組み込まれる。本明細書で述べる方法はすべて、本明細書にて特に断りのない限り、または文脈からそうでないことが明らかでない限り、適切ないずれの順序で実施してもよい。特定の実施形態に関して本明細書で提供されるあらゆる例または例示的言語(例:「など(such as)」)の使用は、本開示をより詳細に説明することを単に意図するものであり、別に請求される本開示の範囲を限定するものではない。本明細書におけるいずれの言語も、請求されない要素のいずれかが本開示の実践に不可欠であることを示すものとして解釈されるべきではない。
【0163】
本明細書で開示する本開示の別の選択肢としての要素または実施形態のグループ化は、限定するものとして解釈してはならない。各グループのメンバーは、個々に、またはそのグループの他のメンバーとの、もしくは本明細書で見出される他の要素とのいずれかの組み合わせとして言及され、請求されてよい。グループの1もしくは2つ以上のメンバーが、便宜上および/または特許性の理由により、グループに含まれるか、またはグループから除外される場合があることは予見される。そのようないずれの含有または除外が行われる場合でも、本明細書は、その中にそのようなグループを改変された形で含むものと見なされ、従って、補正請求項で用いられるすべてのマーカッシュグループの記載された説明を満足している。
【0164】
本明細書で記述されるのは、本開示の実践において発明者らが知る最良のモードを含む本開示の特定の実施形態である。これらの実施形態の変形は、前述の説明を読むことで当業者には明らかとなるであろう。当業者であればそのような変形を必要に応じて用いることができ、本開示が、具体的に本明細書にて説明される以外に実践可能であることが考慮される。従って、本開示の多くの実施形態は、適用法による許可に従い、添付の請求項に列挙される主題のすべての改変および均等物を含む。さらに、上述の要素のそのすべての可能な異なる組み合わせのいずれも、本明細書にて特に断りのない限り、または文脈からそうでないことが明らかでない限り、本開示に包含される。
【0165】
さらに、本明細書全体を通して、数多くの特許および印刷刊行物が参考にされている。上記の引用参考文献および印刷刊行物の各々は、それらの内容が本明細書に直接存在する
開示事項と矛盾しない範囲内で、個々にその全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0166】
上記の段落は、本開示の全般的な概念を実践にいかに適用することができるかを説明することを意図するものであり、可能な変形の網羅的なまたは限定的な列挙として見なされるべきではない。確かに、多くのさらなる変形または改変が、特定の免疫療法組成物および免疫化レジメン/プロトコルの特性から提案されるものであり、それらは当業者にとって明らかであろう。従って、それに限定されないが、例として、本開示の別の選択肢としての構成を、本明細書の教示事項に従って用いてよい。個々の実施形態は、そのような別の選択肢のいずれも、特に含んでも、除外してもよい。従って、本開示は、示され、記述されたものだけに限定されるものではない。
【技術分野】
【0001】
電子フォーマットで提供された情報の組み込み
本出願は、電子フォーマットの配列表と合わせて出願されている。配列表は、2010年10月22日に作成され、サイズが22KbであるSEQLISTING062WO0.txtというファイル名のファイルとして提供される。この配列表の電子フォーマット中の情報は、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、標的抗原に対するエフェクターT細胞応答を対象中で発生させるための、より有利には、癌の治療において腫瘍抗原を標的とするエフェクターT細胞の誘導、その成長の促進、活性化、および/またはそれ以外の形での刺激を行う免疫原性生成物を利用するための、免疫療法プロトコルの設計および実践の戦略に関する。より詳細には、実施形態は、対象を治療するための治療の過程および方法の決定に関し、ここで、少なくとも1つの標的抗原に対するベースライン免疫反応性の存在または非存在が評価されて、その少なくとも1つの標的抗原を標的とする能動免疫療法薬の1もしくは2つ以上を投与する対象が選別される。ある実施形態では、本明細書で開示される戦略は、主としてリンパ系に限定された疾患を有するか、またはリンパ系を超えての進行が限定的であるか、もしくはそれ以外でリンパ系に限定された疾患を有する患者を、リンパ内投与される能動免疫療法薬での治療のために選別することを含む。
【背景技術】
【0003】
米国癌学会では、今年診断されるであろう新たな癌のケースはおよそ150万であり(膀胱以外のいずれの部位の上皮内癌をも除き、基底および皮膚扁平上皮癌を除く)、米国人男性の約2人に1人、および米国人女性の約3人に1人が、一生のうちのある時点で何らかの種類の癌を有することになると推定している。
【0004】
正常な体細胞は、秩序立った形で成長し、分裂し、死滅する。癌などの細胞増殖性疾患では、細胞は、死滅する代わりに制御不能に成長、分裂を続ける。癌には多くの種類があるが、この疾患の開始は、通常、異常細胞の制御不能な成長に起因する。
【0005】
癌に対する通常の治療の選択肢としては、外科手術、放射線療法、および化学療法が挙げられる。免疫療法と称される治療のさらなる選択肢が、より最近になって確立された。免疫療法は、免疫系による癌細胞認識の補助、および/または癌を破壊するための癌細胞に対する応答の強化が行われるように設計されている。免疫療法としては、能動免疫療法および受動免疫療法が挙げられる。能動免疫療法は、疾患と戦うための身体自体の免疫系を刺激する試みである。受動免疫療法は、一般的には、患者の免疫系に依存して疾患を攻撃するのではなく;その代わりに、患者の体外で作られた免疫系成分(抗体など)を用いる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
様々な種類の癌治療があるにも関わらず、さらなる、より効果的な治療方法が継続して求められている。1つのそのような代替法としては、免疫化によって免疫応答の開始、刺激、および/もしくは増強を行う能力を必要とするか、またはそれが有益である医学的治療の方法が想定される。これらの方法としては、所望される抗原性ポリペプチドに対する免疫応答の発生または刺激に依存するもの、および自然免疫応答の開始または調節に依存するものが挙げられる。従って、癌の治療における一つの手法は、治療用抗癌ワクチンの使用による免疫系の操作である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、癌患者を治療するための方法に関する。本発明のある実施形態は、能動免疫療法薬によって癌患者を治療する方法に関し、ここで、この方法は、少なくとも1つの標的抗原に対する患者の既存の免疫反応性のレベルに基づく免疫療法レジメンの選択であって、ここで、このレジメンは、この少なくとも1つの標的抗原またはそのエピトープを標的とする少なくとも1つの免疫原を投与することを含むものである、選択;ならびに、このレジメンに従う患者の治療、を含む。ある実施形態では、本明細書で述べる方法は、少なくとも1つの標的抗原を標的とする免疫療法レジメンを、この少なくとも1つの抗原に対する患者の既存の免疫反応性の既知レベルに基づいて選択することを含む。
【0008】
ある実施形態では、この方法は、少なくとも1つの標的抗原を標的とする免疫療法レジメンを、この少なくとも1つの抗原に対する免疫反応性が患者に存在するか存在しないかに基づいて選択することを含む。ある実施形態では、この方法は、少なくとも1つの標的抗原を標的とする免疫療法レジメンを、この少なくとも1つの抗原に対する免疫反応性の著しいまたは最小限のレベルを患者が有することに基づいて選択することを含む。ある実施形態は、能動免疫療法薬によって癌患者を治療する方法を含み、この方法は、少なくとも1つの標的抗原に対する患者の既存の免疫反応性のレベルの評価;既存の免疫反応性のレベルに基づく免疫療法レジメンの選択であって、ここで、このレジメンは、この少なくとも1つの標的抗原またはそのエピトープを標的とする少なくとも1つの免疫原を投与することを含むものである、選択;ならびに、このレジメンに従う患者の治療、を含む。
【0009】
ある実施形態では、免疫原は、癌に関連する抗原に対するエフェクターT細胞応答を促進することができる。免疫療法レジメンは、臨床的有用性を達成することができる。臨床的有用性としては、腫瘍の退縮、もしくは疾患の安定化など、またはこれらの組み合わせを含んでよい。既存の免疫反応性のレベルは、四量体アッセイもしくはELISPOTアッセイなど、またはこれらの組み合わせによって測定してよい。
【0010】
ある実施形態では、患者は、二次リンパ器官を超えて進行していない癌を有していてよい。患者は、ステージIIICまたはIV(M1a)のリンパ系疾患を有していてよい。癌は、例えば、黒色腫、腎臓癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、非小細胞肺癌、神経膠芽腫、眼内黒色腫、ホルモン感受性の乳癌、前立腺癌、および卵巣癌、ホルモン不応性の前立腺癌、腎細胞癌、食道癌、または中皮腫などの少なくとも1つであってよい。患者は、HLA‐A2陽性であってよい。
【0011】
ある実施形態では、癌患者の治療のための免疫療法レジメンは、プライム‐ブーストレジメン(prime-boost regimen)を含んでよい。ある実施形態では、免疫療法レジメンは、2つ以上の治療サイクルを含んでよい。免疫原は、患者のリンパ系へ直接送達されるように投与してよい。リンパ系への直接送達は、リンパ節内送達を含んでよい。
【0012】
ある実施形態では、プライム‐ブースト免疫療法レジメンは、免疫応答を誘導する効果量のプラスミドの投与、およびこれに続く、プラスミドによって発現されたエピトープに対応する少なくとも1つのペプチドの効果量の投与を含んでよい。プラスミドは、例えば、pMEL‐TYRまたはpPRA‐PSMなどを含んでよい。プラスミドによって発現された1もしくは複数のエピトープは、例えば、PRAMEエピトープもしくはその類似体、またはPSMAエピトープもしくはその類似体、またはメランAエピトープもしくはその類似体、またはチロシナーゼエピトープもしくはその類似体などの少なくとも1つ、またはこれらの組み合わせを含んでよい。プラスミドによって発現された1もしくは複数のエピトープは、例えば、PRAME425‐433もしくはその類似体、またはPSMA288‐297もしくはその類似体、またはメランA26‐35もしくはその類似体、
またはチロシナーゼ369‐377もしくはその類似体などの少なくとも1つ、またはこれらの組み合わせを含んでよい。プラスミドによって発現された1もしくは複数のエピトープは、メランA26‐35 A27Nva(ENvaAGIGILTV)(配列番号2)、またはメランA26‐35 A27L(ELAGIGILTV)(配列番号3)、またはPRAME425‐433 L426Nva,L433Nle(SNvaLQHLIGNle)(配列番号7)、またはPSMA288‐297 I297V(GLPSIPVHPV)(配列番号9)の少なくとも1つを含む。
【0013】
ある実施形態では、免疫療法レジメンは、免疫賦活薬の投与をさらに含んでよい。ある実施形態では、免疫原は、免疫賦活薬をさらに含んでよい。免疫賦活薬は、例えば、サイトカイン、ケモカイン、共刺激性分子、転写因子、およびシグナル伝達因子など、またはこれらの組み合わせを含んでよい。免疫療法レジメンは、腫瘍の微小環境の免疫抑制性を低下させて臨床的有用性を増進させる薬剤を投与することをさらに含んでよい。
【0014】
ある実施形態では、標的抗原は、メランAを含み、患者は、メランAに対する既存の免疫反応性を有する。免疫療法レジメンは、免疫原を投与して、メランAまたは1もしくは2つ以上のそのエピトープに対するエフェクターT細胞応答を促進させることを含んでよい。患者は、皮膚および/またはリンパ系の疾患を有していてよい。皮膚および/またはリンパ系の疾患は、例えば、ステージIIICまたはIV(M1a)リンパ系疾患であってよい。免疫療法レジメンは、メランA26‐35エピトープもしくはその類似体を標的とすることを含んでよい。癌は、例えば、黒色腫または神経膠芽腫であってよい。
【0015】
ある実施形態では、標的抗原は、PRAMEまたはPSMAの少なくとも1つを含み、患者は、このPRAMEまたはPSMAの少なくとも1つに対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限であり、免疫療法レジメンは、免疫原を投与して、このPRAMEまたはPSMAの少なくとも1つに対するエフェクターT細胞応答を促進することを含んでよい。PRAMEおよびPSMAは、患者の腫瘍組織内で共発現されてよい。免疫療法レジメンは、PRAME425‐433エピトープまたはPSMA288‐297エピトープの少なくとも1つを標的とすることを含んでよい。癌は、前立腺癌、腎臓癌、または黒色腫であってよい。癌は、前立腺癌であってよく、臨床的有用性は、例えば、PSAレベルの低下などを含んでよい。患者は、PRAMEおよびPSMAの両方に対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限であってよく;免疫療法レジメンは:この免疫療法レジメンに従う少なくともPRAMEまたはPSMAを標的とする能動免疫療法薬のさらなる治療サイクルの少なくとも1つを投与すること;患者サンプル内におけるPRAMEおよび/またはPSMA T細胞の増殖を分析すること;抗原特異的T細胞の増殖に基づいて患者をレスポンダーとして分類すること;ならびに、前記レスポンダーにさらなる治療サイクルの少なくとも1つを投与すること、を含む治療法を続いて行うことをさらに含んでよい。ある実施形態では、分析工程は、PRAMEまたはPSMA
T細胞の増殖を示し、この続いて行われる治療法は、免疫療法レジメンの治療サイクルを繰り返すことを含んでよい。この続いて行われる治療法は、免疫賦活薬を投与することをさらに含んでよい。ある実施形態では、分析工程は、PRAMEおよびPSMA T細胞の両方の増殖がないか、または増殖が一時的であることを示し、この続いて行われる治療法は、例えば、免疫療法レジメンの停止を含んでよい。
【0016】
ある実施形態は、癌患者を治療する方法を含み、この方法は:リンパ系を超えての広がりが限定的であり、ならびにリンパ系を超えて広がったいずれの転移も、その数が10以下であって、および1)生命維持に必要である器官中にないか、または2)直径が1センチメートル未満である、疾患ステージの患者を選別すること;ならびに、患者のリンパ系に直接免疫原を投与して、癌に関連する抗原に対するエフェクターT細胞応答を促進させることを含む免疫療法レジメンをその患者に適用することを含む。免疫療法レジメンは、
臨床的有用性を達成することができる。臨床的有用性は、腫瘍の退縮もしくは疾患の安定化など、またはこれらの組合せを含んでよい。患者は、二次リンパ器官を超えて進行していない癌を有していてよい。ある実施形態では、患者は、ステージIIICまたはIV(M1a)リンパ系疾患を有していてよい。癌は、例えば、黒色腫、腎臓癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、非小細胞肺癌、神経膠芽腫、眼内黒色腫、ホルモン感受性の乳癌、前立腺癌、および卵巣癌、ホルモン不応性の前立腺癌、腎細胞癌、食道癌、または中皮腫などの少なくとも1つであってよい。患者は、HLA‐A2陽性であってよい。免疫療法レジメンは、プライム‐ブーストレジメンを含んでよい。プライム‐ブースト免疫療法レジメンは、免疫応答を誘導する効果量のプラスミドの投与、およびこれに続く、プラスミドによって発現されたエピトープに対応する少なくとも1つのペプチドの効果量の投与を含んでよい。プラスミドは、例えば、pMEL‐TYRまたはpPRA‐PSMなどを含んでよい。プラスミドによって発現された1もしくは複数のエピトープは、例えば、PRAMEエピトープもしくはその類似体、またはPSMAエピトープもしくはその類似体、またはメランAエピトープもしくはその類似体、またはチロシナーゼエピトープもしくはその類似体などの少なくとも1つ、またはこれらの組み合わせを含んでよい。プラスミドによって発現された1もしくは複数のエピトープは、例えば、PRAME425‐433もしくはその類似体、またはPSMA288‐297もしくはその類似体、またはメランA26‐35もしくはその類似体、またはチロシナーゼ369‐377もしくはその類似体などの少なくとも1つ、またはこれらの組み合わせを含んでよい。プラスミドによって発現された1もしくは複数のエピトープは、メランA26‐35 A27Nva(ENvaAGIGILTV)(配列番号2)、またはメランA26‐35 A27L(ELAGIGILTV)(配列番号3)、またはPRAME425‐433 L426Nva,L433Nle(SNvaLQHLIGNle)(配列番号7)、またはPSMA288‐297 I297V(GLPSIPVHPV)(配列番号9)の少なくとも1つを含む。免疫療法レジメンは、免疫賦活薬の投与をさらに含んでよい。免疫原は、免疫賦活薬をさらに含んでよい。免疫賦活薬は、例えば、トール様受容体(TLR)リガンド、エンドサイトーシスパターン認識受容体(PRR)リガンド、サイトカイン、ケモカイン、共刺激性分子、転写因子、およびシグナル伝達因子など、またはこれらの組み合わせを含んでよい。免疫療法レジメンは、腫瘍の微小環境の免疫抑制性を低下させて臨床的有用性を促進させる薬剤を投与することをさらに含んでよい。免疫療法レジメンは、2つ以上の治療サイクルを含んでよい。免疫原は、患者のリンパ系に直接送達するように投与してよい。リンパ系への直接の送達は、リンパ節内送達を含んでよい。ある実施形態では、癌に関連する抗原は、メランAを含み、患者は、メランAに対する既存の免疫反応性を有する。患者は、皮膚および/またはリンパ系の疾患を有していてよい。皮膚および/またはリンパ系の疾患は、例えば、ステージIIICまたはIV(M1a)リンパ系疾患であってよい。免疫療法レジメンは、メランA26‐35エピトープもしくはその類似体を標的とすることを含んでよい。癌は、例えば、黒色腫または神経膠芽腫であってよい。ある実施形態では、癌に関連する抗原は、PRAMEまたはPSMAの少なくとも1つを含み、患者は、このPRAMEまたはPSMAの少なくとも1つに対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限である。PRAMEおよびPSMAは、患者の腫瘍組織内で共発現されてよい。免疫療法レジメンは、PRAME425‐433エピトープまたはPSMA288‐297エピトープの少なくとも1つを標的とすることを含んでよい。癌は、例えば、前立腺癌、腎臓癌、または黒色腫であってよい。癌は、前立腺癌であり、臨床的有用性は、例えば、PSAレベルの低下などを含んでよい。患者は、PRAMEおよびPSMAの両方に対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限であり;免疫療法レジメンは:この免疫療法レジメンに従う少なくともPRAMEまたはPSMAを標的とする能動免疫療法薬のさらなる治療サイクルの少なくとも1つを投与すること;患者サンプル中のPRAMEおよび/またはPSMA T細胞の増殖を分析すること;抗原特異的T細胞の増殖に基づいて患者をレスポンダーとして分類すること;ならびに、前記レスポンダーにさらなる治療サイクルの少なくとも1つを投与すること、を含む治
療法を続いて行うことをさらに含んでよい。ある実施形態では、分析工程は、PRAMEまたはPSMA T細胞の増殖を示し、この続いて行われる治療法は、免疫療法レジメンの治療サイクルを繰り返すことを含んでよい。この続いて行われる治療法は、免疫賦活薬を投与することをさらに含んでよい。ある実施形態では、分析工程は、PRAMEおよびPSMA T細胞の両方の増殖がないか、または増殖が一時的であることを示し、この続いて行われる治療法は、例えば、免疫療法レジメンの停止を含んでよい。
【0017】
ある実施形態は、患者における癌の治療に用いるための免疫原を含み、ここで、患者は、メランAに対する既存の免疫反応性を有し、およびここで、免疫原は、メランAに対するエフェクターT細胞応答を促進する能力を有する。患者は、HLA‐A2陽性であってよい。患者は、皮膚および/またはリンパ系の疾患を有していてよく、ここで、治療は、疾患がリンパ器官に局在化されていることの判定をさらに含んでよい。皮膚および/またはリンパ系の疾患は、例えば、ステージIIICまたはIV(M1a)リンパ系疾患であってよい。癌は、例えば、黒色腫または神経膠芽腫であってよい。治療は、メランA26‐35エピトープを標的とすることを含んでよい。
【0018】
ある実施形態は、患者における癌の治療に用いるための免疫原を含み、ここで、患者は、PRAMEおよびPSMAの群から選択される少なくとも1つの抗原に対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限であり、ならびにここで、免疫原は、既存の免疫反応性が存在しないか、または最小限である抗原に対するT細胞エフェクター応答を促進する能力を有する。患者は、HLA‐A2陽性であってよい。PRAMEおよびPSMAは、患者の腫瘍組織内で共発現されてよい。治療は、PRAME425‐433エピトープおよび/またはPSMA288‐297エピトープを標的とすることを含んでよい。癌は、例えば前立腺癌であってよく、治療の臨床的有用性は、例えば、PSAレベルの低下など、またはこれらの組み合わせを含んでよい。この少なくとも1つの標的抗原は、PRAME抗原および/またはPSMA抗原を含んでよく、癌は、例えば、前立腺癌、腎臓癌、または黒色腫であってよい。ある実施形態では、患者は、PRAMEおよびPSMAの両方に対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限であってよく;治療は:少なくともPRAMEまたはPSMAを標的とする能動免疫療法薬のさらなる治療サイクルの少なくとも1つを投与すること;患者サンプル内におけるPRAMEおよび/またはPSMA T細胞の増殖を分析すること;抗原特異的T細胞の増殖に基づいて患者をレスポンダーとして分類すること;ならびに、前記レスポンダーにさらなる治療サイクルの少なくとも1つを投与すること、をさらに含んでよい。ある実施形態では、分析工程は、抗PRAMEまたは抗PSMA T細胞の増殖を示し、この続いて行われる治療法は、免疫療法レジメンにおける続いての治療サイクルを投与することを含む。この続いて行われる治療法は、例えば、免疫賦活薬を投与することを含んでよい。ある実施形態では、分析工程は、PRAMEおよびPSMA T細胞の両方の増殖がないか、または増殖が一時的であることを示し、この続いて行われる治療法は、例えば、免疫療法レジメンの停止を含んでよい。
【0019】
ある実施形態は、患者の癌治療における医薬として用いるための免疫原を含み、ここで、患者は、二次リンパ器官を超えて進行していないか、または超えての広がりが限定的である癌を有し、およびここで、免疫原は、癌と関連する抗原に対するT細胞エフェクター応答を促進する能力を有し、ここで、免疫原は、免疫原の直接のリンパ内投与のためのものである。患者は、HLA‐A2陽性であってよい。患者の疾患ステージは、リンパ系を超えての広がりが限定的であり、ならびにリンパ系を超えて広がったいずれの転移も、その数が10以下であって、および1)生命維持に必要である器官中にないか、または2)直径が1センチメートル未満であるステージであってよい。
【0020】
ある実施形態では、既存の免疫反応性、または存在しないかもしくは最小限である免疫
反応性の測定は、例えば、四量体アッセイもしくはELISPOTアッセイなど、またはこれらの組み合わせによって行ってよい。患者は、二次リンパ器官を超えて進行していないか、または超えての広がりが限定的である癌を有していてよい。患者は、例えば、ステージIIICまたはIV(M1a)リンパ系疾患を有していてよい。癌は、例えば、黒色腫、腎臓癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、非小細胞肺癌、神経膠芽腫、眼内黒色腫、ホルモン感受性の乳癌、前立腺癌、および卵巣癌、ホルモン不応性の前立腺癌、腎細胞癌、食道癌、または中皮腫などの少なくとも1つであってよい。
【0021】
ある実施形態では、治療は、臨床的有用性を達成することができる。臨床的有用性は、例えば、腫瘍の退縮、もしくは疾患の安定化など、またはこれらの組み合わせを含んでよい。
【0022】
ある実施形態では、治療は、プライム‐ブーストレジメンを含んでよい。治療は、2つ以上の治療サイクルを含んでよい。プライム‐ブースト免疫療法レジメンは、免疫応答を誘導する効果量のプラスミドの投与、およびこれに続く、プラスミドによって発現されたエピトープに対応する少なくとも1つのペプチドの効果量の投与を含んでよい。プラスミドによって発現された1もしくは複数のエピトープは、例えば、PRAMEエピトープもしくはその類似体、またはPSMAエピトープもしくはその類似体、またはメランAエピトープもしくはその類似体、またはチロシナーゼエピトープもしくはその類似体などの少なくとも1つ、またはこれらの組み合わせであってよい。PRAMEエピトープは、例えば、PRAME425‐433もしくはその類似体であってよい。PSMAエピトープは、例えば、PSMA288‐297もしくはその類似体であってよい。メランAエピトープは、例えば、メランA26‐35 もしくはその類似体であってよい。チロシナーゼエピトープは、例えば、チロシナーゼ369‐377もしくはその類似体であってよい。プラスミドは、例えば、pMEL‐TYRまたはpPRA‐PSMを含んでよい。この少なくとも1つのペプチドは、例えば、メランA26‐35 A27Nva(ENvaAGIGILTV)(配列番号2)、もしくはメランA26‐35 A27L(ELAGIGILTV)(配列番号3)、PRAME425‐433 L426Nva,L433Nle(SNvaLQHLIGNle)(配列番号7)、もしくはPSMA288‐297ペプチド類似体 PSMA288‐297 I297V(GLPSIPVHPV)(配列番号9)など、またはこれらの組み合わせを含んでよい。
【0023】
ある実施形態では、免疫原は、患者のリンパ系への直接送達のためのものであってよい。リンパ系への直接送達は、例えば、リンパ節内送達を含んでよい。
【0024】
ある実施形態では、治療は、免疫賦活薬の投与をさらに含んでよい。免疫原は、免疫賦活薬をさらに含んでよい。免疫賦活薬は、例えば、サイトカイン、ケモカイン、共刺激性分子、転写因子、シグナル伝達因子;抗原処理および抗原提示に関与する薬剤、TAP1およびTAP2タンパク質、免疫もしくは標準プロテアソーム、ベータ‐2‐ミクログロブリン、およびMHCクラスIもしくはII分子;アポトーシス経路の制御に関与する薬剤、遺伝子制御もしくはサイレンシングに関与する薬剤、例えばDNAメチル化酵素、クロマチン制御分子、RNA制御分子など;トール様受容体(TLR)、ペプチドグリカン、LPSもしくはそれからの類似体、イミキモド(imiquimodes)、非メチル化CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN);それぞれTLR9およびTLR3と結合するAPCおよび自然免疫細胞上のdsRNA、バクテリアdsDNA(CpGモチーフ含有)、および合成dsRNA(ポリI:C);TLRと結合する天然または合成の小有機分子、合成抗ウイルスイミダゾキノリン、イミキモドおよびレシキモド;pAPCもしくはT細胞を活性化する免疫賦活アジュバント、エンドサイトーシスパターン認識受容体(PRR)リガンド、キラヤサポニン、ならびにツカレソールなど、またはこれらの組み合わせを含んでよい。治療は、腫瘍の微小環境の免疫抑制性を低下させて臨床的有用性を
促進させる薬剤を投与することをさらに含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本開示の代表的な実施形態において用いられるプラスミドおよびペプチドの投与スケジュールを示す。
【図2】図2は、投与するための、pMel‐pTyrプラスミドのプラスミド設計、ならびにメランAおよびチロシナーゼペプチドを示す。
【図3】図3は、48+週間にわたる59%の腫瘍縮小を示す。
【図4】図4は、36+週間にわたる60%の腫瘍縮小を示す。
【図5】図5は、36+週間にわたる30%の腫瘍縮小を示す。
【図6A】図6A〜6Bは、疾患ステージと共にベースラインでのメランA/MART‐1 T細胞、および臨床成績を示す。図6Aは、疾患ステージ(ステージIV(M1b,c)またはステージIIICおよびIV(M1a))において、腫瘍応答(リンパ系疾患)のある対象、または腫瘍応答のない対象を示す。図6Bは、図6Aの対象の臨床成績(PD、PR、またはSD)を示す(†2サイクルに対するSD。‡治療継続期間≧1年の対象)。黒丸は、腫瘍応答のない対象を表す。白丸は、腫瘍応答のある対象を表す(リンパ系疾患)。
【図6B】図6A〜6Bは、疾患ステージと共にベースラインでのメランA/MART‐1 T細胞、および臨床成績を示す。図6Aは、疾患ステージ(ステージIV(M1b,c)またはステージIIICおよびIV(M1a))において、腫瘍応答(リンパ系疾患)のある対象、または腫瘍応答のない対象を示す。図6Bは、図6Aの対象の臨床成績(PD、PR、またはSD)を示す(†2サイクルに対するSD。‡治療継続期間≧1年の対象)。黒丸は、腫瘍応答のない対象を表す。白丸は、腫瘍応答のある対象を表す(リンパ系疾患)。
【図7】図7は、MHC多量体染色(四量体アッセイ)によって測定した末梢血液中のエピトープ特異的T細胞の増殖を示す。
【図8】図8は、投与するための、pPRA‐PSMプラスミドのプラスミド設計、ならびにPRAMEおよびPSMAペプチドを示す。
【図9】図9は、36週間にわたる腫瘍縮小を示す。
【図10】図10は、MHC多量体染色によって測定したエピトープ特異的T細胞の増殖と臨床的有用性との関連を示す。
【図11】図11は、臨床成績と免疫応答との関連を示す。PC:前立腺癌、Rcc:腎臓癌、Mel:黒色腫、ESO:食道癌、*ベースラインにてエピトープ特異的T細胞検出。
【図12】図12により、治験担当医による腫瘍成長の評価(白棒グラフ)、および独立の放射線専門医による評価(黒棒グラフ)の比較から、主としてリンパ節に局在化した疾患を有する患者では腫瘍の減少または安定化、内臓転移疾患を有する患者では腫瘍の進行という傾向に関する定性的な一致が示される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
定義
本明細書における用語の使用の文脈から明らかでない限りにおいて、以下に挙げた用語は、本明細書の目的のために、示された意味を一般的に有するものとする。
【0027】
本明細書で用いる場合、「治療」または「治療する」とは、患者への医薬の投与または適用などによる、患者を医学的に治療する行為を意味する。
【0028】
本明細書で用いる場合、「免疫療法レジメン、治療、またはプロトコル」とは、医学的治療の計画、または治療の所望される過程を意味する。本明細書に記載の方法で用いられるレジメン、治療、またはプロトコルは、臨床または医療の場で用いられる治療レジメン
である。レジメンまたはプロトコルは、投与のスケジュール、投与の経路、および投与される特定の試薬のいずれか一部、またはすべてを指定するものであってよい。
【0029】
本明細書で用いる場合、「能動免疫療法」または「能動免疫療法薬」とは、疾患と戦う身体自体の免疫系を刺激する手順または試薬を意味する。これに含まれるのは、能動免疫療法剤、組成物、または生成物である。能動免疫療法薬とは、例えば疾患の治療の提供もしくはその補助による免疫療法薬または治療薬として用いることができる、免疫原、または免疫原性剤、もしくは生成物、もしくは組成物を意味する。ある実施形態では、能動免疫療法剤、生成物、または組成物は、疾患の治癒を提供または補助することができる。ある実施形態では、能動免疫療法剤、生成物、または組成物は、疾患の寛解を提供または補助する。
【0030】
本明細書で用いる場合、「免疫化」とは、抗原に対する免疫系の応答を誘導、または増幅するプロセスを意味する。別の選択肢として、これは、免疫系によって、癌の進行の低減/減少、またはそのような疾患の転移の予防/阻止を行うプロセスを意味する。最初の定義において、これは、制御応答も含んでよいが、保護的および/または治療的免疫応答、特に、炎症誘発性または能動免疫の意味も含んでよい。
【0031】
本明細書で用いる場合、「免疫反応性」とは、免疫受容体と抗原との間の生化学的相互作用、本発明の目的のためには特に、それぞれ、T細胞受容体(TCR)とMHC/抗原複合体を意味する。ある実施形態では、免疫反応性は、免疫応答の一部、またはその結果であってよい。
【0032】
本明細書で用いる場合、「標的抗原を標的とする」とは、標的抗原またはその少なくとも1つの特定のエピトープを認識する免疫応答を促進することを意味する。同様に、「腫瘍または細胞を標的とする」とは、標的とされた腫瘍または細胞によって発現された抗原またはその少なくとも1つの特定のエピトープを認識する免疫応答を促進することを意味する。ある実施形態では、免疫応答は、エフェクターT細胞応答である。ある実施形態では、エフェクターT細胞応答は、細胞傷害性T細胞(CTL)応答を含む。ある実施形態では、本明細書で開示する能動免疫療法薬の治療効果は、エフェクターT細胞によって媒介される。
【0033】
本明細書で用いる場合、「標的細胞」とは、例えば腫瘍細胞または腫瘍血管新生(tumor neovasculature)に関連する細胞など、免疫系の成分が作用し得る癌性病態と関連する細胞を意味する。ある実施形態では、標的細胞は、ワクチンおよび本明細書で開示する方法によって標的とされるべき細胞である。本定義に従う標的細胞としては、これらに限定されないが、腫瘍細胞が挙げられる。さらなる実施形態では、標的細胞は、標的抗原を発現するか、または標的エピトープを提示する細胞である。
【0034】
本明細書で用いる場合、「標的関連抗原(TAA)」とは、標的細胞内に存在するタンパク質またはポリペプチドを意味する。
【0035】
本明細書で用いる場合、「腫瘍関連抗原(TuAA)」とは、標的細胞が腫瘍関連細胞であるTAAを意味する。種々の実施形態では、TuAAは、腫瘍細胞、または腫瘍血管新生、もしくは腫瘍微小環境内のその他の間質細胞などの腫瘍の非癌性細胞と関連する抗原である。
【0036】
「エピトープ」の用語は、抗体または抗原受容体によって認識される抗原上の部位を意味する。T細胞エピトープは、一般に、タンパク質抗原由来の短鎖ペプチドである(非タンパク質抗原も公知であるが)。T細胞エピトープは、MHC分子と結合し、特定のT細
胞によって認識される。ある実施形態では、エピトープとしては、これらに限定されないが、T細胞受容体(TCR)と相互作用を起こすことができるように、細胞表面に提示されたペプチド、クラスI MHCの結合溝と非共有結合したペプチド、を含んでよい。
【0037】
本明細書で用いる場合、「免疫賦活薬」または「免疫賦活アジュバント」とは、免疫系もしくはその細胞、特にそれらのエフェクター機能の活性を、抗原受容体以外との相互作用を通して、向上、増加、促進、または上方調節するいずれの分子をも意味する。「免疫賦活アジュバント」とは、プロフェッショナル抗原提示細胞(pAPC)またはT細胞を活性化するアジュバントを意味し、例えば:TLRリガンド、エンドサイトーシスパターン認識受容体(PRR)リガンド、キラヤサポニン、ツカレソール、サイトカインなどが挙げられる。好ましいアジュバントのいくつかは、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、Marciani, D., J. Drug Discovery Today 8:934-943, 2003、に開示されている。
【0038】
本明細書で用いる場合、「治療サイクル」または「サイクル」とは、1もしくは2つ以上のプライミング/誘導/同調用量、およびそれに続く1もしくは2つ以上のブースティング/増幅用量を意味する。この一連の手順を、in vivoでの強い免疫応答を維持するのに必要な限り繰り返してよい。従って、ある実施形態では、治療サイクルは、2もしくは3つ以上のプライミング/誘導/同調用量、およびそれに続く2もしくは3つ以上のブースティング/増幅用量を含む。ある実施形態では、治療サイクルまたはサイクルは、1つのプライミング/誘導/同調用量、およびそれに続く1もしくは2つ以上のブースティング/増幅用量を含む。他の実施形態では、1つの治療サイクルは、1もしくは2つ以上のプライミング/誘導/同調用量、およびそれに続く1つのブースティング/増幅用量を含む。本明細書で開示する免疫療法レジメン、プロトコル、または治療は、一般に、1もしくは複数のサイクルを含んでいてよい(2もしくは3以上、4もしくは5以上、6もしくは7以上、8もしくは9以上、10もしくは11以上、など)。
【0039】
本明細書で用いる場合、「標的病変部」とは、癌治療法に応答してのサイズの変化、特に縮小を評価することができる十分なサイズである患者体内の腫瘍を意味する。腫瘍サイズは、例えば、腫瘍イメージングまたは直接測定によって特定してよい。腫瘍イメージングは、CTスキャン、MRI、および/またはPETスキャンなどによって実施してよい。皮膚病変部は、直接測定してよい。ある実施形態では、標的病変部は、治療または評価の開始時点にて、その最大寸法が1cm超の大きさである。
【0040】
本明細書で用いる場合、「標的病変部」と対比して用いられる「非標的病変部」とは、治療または評価の開始時点にて、その最大寸法が1cm未満の大きさである腫瘍のことである。
【0041】
本明細書で用いる場合、「リンパ系に限定された」、「リンパ系を超えて進行していない」、および類似の構文は、同一の組織もしくは器官内、または隣接する組織もしくは器官のいずれかである発症部位近傍へまず局部的に広がり、それに続いて二次リンパ器官、特にリンパ節を通して局所的または全身的に、およびその後遠隔内蔵部位へと広がる、悪性疾患の典型的な進行に関するものとして理解されるべきである。ある例では、内臓転移が見られる前に、皮膚または皮下へも転移する。「リンパ系に限定された」および/または「リンパ系を超えて進行していない」の用語は、本明細書で用いる場合、患者体内での疾患進行が実際に限定されること、または外科手術による除去および/またはその他の介入後の疾患の状態を意味するために用いてもよい。従って、これらの用語は、内臓へ広がる前の疾患進行のいずれの時点をも意味し得る。ある実施形態では、これらの用語は、本明細書で述べるより具体的に定められた疾患ステージである患者を意味するために用いてもよい。ある実施形態では、患者は、外科手術もしくはその他の治療に続いて内臓病変部
が除去または切除されたことによってリンパ系に限定された疾患を有することを特徴とする。ある実施形態では、患者は、所定のサイズおよび/または数と比較してサイズおよび/または数が限定的である内臓転移の存在に基づいて、「主としてリンパ系に限定された」疾患を有するか、または単に「リンパ系を超えての進行が限定的である」こと(など)を特徴とする。
【0042】
本開示は、癌腫に対する能動免疫療法薬の利用における大きな進歩、ならびに、癌の治療において腫瘍抗原を標的とするエフェクターT細胞の誘導、その成長の促進、活性化、および/またはそれ以外の形での刺激を行う免疫原性生成物をより有利に利用するための、既存の免疫反応性などの機構に基づくコンパニオンバイオマーカーの発見および使用に関する。本明細書で開示される方法および免疫原によって提供される代表的な進歩としては、これらに限定されないが、免疫療法が効果的であると予測される患者の1もしくは複数のサブセットの識別;容易に観察可能である速度での癌ワクチンによる持続的で客観的な応答の達成;リンパ投与されたリンパ系転移疾患に対する免疫療法薬の選択的効力の最初の観察:免疫療法(少なくともリンパ系転移疾患に対して)の効果を予測する上での、1もしくは複数の標的抗原に対する既存の免疫状態の予後的価値;患者サブセット内での転移疾患における進行を伴わない生存期間の延長、が挙げられる。
【0043】
ある実施形態では、本開示は、標的抗原に対してエフェクターT細胞応答を発生させる薬剤の投与を含む免疫療法レジメンのために患者を識別、または選別する方法に関する。例えば、エフェクターT細胞応答は、CTL応答であってよい。ある実施形態では、本開示は、癌腫を有する患者を治療する方法に関し、ここで、少なくとも1もしくは2つ以上の標的抗原に対する患者の既存の免疫反応性が、免疫療法レジメンのための選別の前に評価される。例えば、ある実施形態では、患者は、特定の免疫療法薬または免疫療法レジメンによる治療について、特定のTuAAもしくはそのエピトープに対する既存の免疫反応性を有するか否かに基づいて選別される。本明細書で開示される方法では、治療レジメンを開始する前の患者の選別または識別は、少なくとも1つの標的抗原に対する既存の免疫反応性のレベル(例:存在もしくは非存在)、すなわち、標的抗原を認識するT細胞の存在もしくは非存在、または、少なくとも1つの特定のそのエピトープに対する既存の免疫反応性のレベルの評価を含んでよい。標的抗原に対する既存の免疫反応性の存在もしくは非存在の測定は、例えば、MHC多量体染色および/またはELISPOTアッセイなどによって行ってよい。ある実施形態では、選別または識別は、標的抗原に対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限である患者の選別または識別を含む。ある実施形態では、選別または識別は、標的抗原に対する既存の免疫反応性を持つ患者の選別または識別を含む。標的抗原に対する患者の免疫反応性または免疫は、測定され、所定の値と比較される。免疫反応性が所定の値と等しいか、またはこれより大きい場合、患者は、標的抗原に対する既存の免疫反応性を持つものとして分類される。免疫反応性が所定の値よりも小さい場合、患者は、標的抗原に対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限であるものとして分類される。所定の値は、例えば、その値の測定に用いられる技術(例えば、MHC多量体染色および/またはELISPOTアッセイなど)、標的抗原に対する「免疫反応性の正常値」など、またはこれらの組み合わせを含む考慮事項に基づいて選択してよい。「免疫反応性の正常値」は、例えば、患者が問題の疾患に罹患する前の同一の患者の値、または特定の地域、年齢群、および/または性別などの健常人(例えば、問題の疾患を持たない人々)の平均値であってよい。ある実施形態では、標的抗原に対する既存の免疫反応性を持つ患者は、アッセイの検出下限よりも少なくとも3倍多い数の抗原特異的T細胞を有する。逆に、標的抗原に対する既存の免疫反応性を持たない患者は、アッセイの検出下限の3倍未満の数の抗原特異的T細胞を有する。代表的な実施形態では、MHC多量体染色(四量体アッセイ)の検出下限は、CD8+ T細胞の総数に対して0.03パーセントの四量体陽性CD8+ T細胞である。
【0044】
本明細書で開示される実施形態は、治療の方法に関し、ここで、疾患がリンパ系を超えて広がっていない患者が、免疫療法試薬の直接のリンパ内投与を含むレジメンによる治療に選別される。代表的な実施形態では、投与は、非疾患リンパ節に対して行なわれる。従って、ある実施形態では、本明細書で開示する方法は、リンパ系に限定されているか(疾患がリンパ系を超えて進行していないか、または外科手術もしくはその他の治療後に限定されているために)、または最小限の度合いでリンパ系を超えているだけである(例:リンパ系を超えた転移病変部を有するが、生命維持に必要である器官にはなく、例えば、これらに限定されないが、軟組織病変部であり、ここで、そのような病変部は、その数が10もしくは9個以下であるか;または、直径が1cm未満であれば、生命維持に必要である器官の転移病変部を必ずしも除外しない)転移疾患を有する患者を選別、または識別することを含む。ある実施形態では、この方法は、内臓転移の存在まで進行していない転移疾患を有する患者を選別、または識別することを含む。発症部位に浸潤性疾患を有する患者は、ある実施形態では除外されるが、一般的には、これらの群から除外されない。ある実施形態では、本明細書で開示する方法に従う選別、または識別は、皮膚病変部のみを有する黒色腫患者の選別、または識別を含む。
【0045】
従って、ある実施形態では、本明細書で開示する方法は、リンパ系の外部に、またはこれを超えて転移疾患/病変部を有する患者の選別、または識別を含む。ある実施形態では、リンパ系を超えて広がったそのような転移病変部は、例えば、軟組織へ広がったが、生命維持に必要である器官には広がっておらず、病変部の数は、10もしくは9個以下である。ある実施形態では、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1個の病変部が存在する。ある実施形態では、リンパ系を超えた転移病変部は、その直径が1センチメートル未満である。ある実施形態では、直径が1センチメートル未満の病変部は、生命維持に必要である器官にあってもよい。
【0046】
ある実施形態では、本明細書で開示する方法は、疾患が発症した器官もしくは組織を超える転移がないか、または隣接する器官もしくは組織にのみ広がった患者の選別、または識別を含む。ある実施形態では、その疾患がリンパ系を超えて生命維持に必要でない器官に広がり、かつその転移病変部が10もしくは9個以下である患者が、本明細書で開示する方法に従う免疫療法薬での治療に選別される。
【0047】
患者の選別
本明細書で考察されるように、患者は、一般的には、HLA型の状態、標的抗原に対する既存の免疫反応性のレベル、および/または疾患がリンパ系に限定されているか、もしくはリンパ系を超えて進行しているかどうか、に基づいて選別してよい。従って、ある実施形態では、患者の選別は、特定のHLA型に対して陽性であることを含んでよく、この場合、免疫療法レジメンは、例えば、これらに限定されないが、HLA‐A2またはHLA‐A*0201などのそのHLA型によって拘束された応答を発生させる。
【0048】
ある実施形態では、患者は、標的抗原に対する既存の免疫反応性が、本明細書で考察されるベースラインまたは所定の値と比較して、非常に大きいか、存在するか、最小限であるか、または存在しないかに従って選別される。標的抗原に対する既存の免疫反応性の存在または非存在は、例えば、MHC多量体染色および/またはELISPOTアッセイなどによって測定してよい。例えば、ある実施形態では、本明細書で開示する方法は、標的抗原に対する既存の免疫反応性を有する患者の選別を含む。従って、標的抗原に対するその免疫反応性が所定の値であるか、これより上であるか、これより非常に上である患者が、標的抗原または1もしくは2つ以上のそのエピトープを標的とする能動免疫療法組成物の投与に選別される。例えば、ある実施形態では、標的抗原に対する既存の免疫反応性のベースラインが、所定の値よりも大きいか、またはこれよりも非常に上である患者、例えば、MHC多量体染色分析によって測定した場合にCD8+T細胞の約0.1%よりも大
きい患者が選別される。従って、ある実施形態では、標的抗原に対する免疫反応性のベースラインが、所定の値よりも大きい患者、例えば、MHC多量体分析によって測定した場合に(CD8+T細胞の総数に対して染色されたT細胞の%で)約0.10%より大きい、約0.11%より大きい、約0.12%より大きい、約0.13%より大きい、約0.14%より大きい、約0.15%より大きい、約0.16%より大きい、約0.17%より大きい、約0.18%より大きい、約0.19%より大きい、および約0.20%より大きい患者が、標的抗原または1もしくは2つ以上のそのエピトープを標的とする能動免疫療法組成物の投与に選別される。
【0049】
ある実施形態では、この方法は、標的抗原に対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限である患者の選別を含む。従って、標的抗原に対するその免疫反応性が、所定の値か、またはそれより低い範囲に入る患者が、標的抗原または1もしくは2つ以上のそのエピトープを標的とする能動免疫療法組成物の投与に選別される。例えば、ある実施形態では、標的抗原に対する既存の免疫反応性のベースラインが所定の値よりも小さい患者、例えば、MHC多量体分析によって測定した場合にCD8+T細胞の約0.1%よりも小さい患者が、既存の免疫を持たないか、またはこれが最小限であるとして特徴付けられ、標的抗原または1もしくは2つ以上のそのエピトープを標的とする能動免疫療法組成物の投与に選別される。例えば、標的抗原に対する免疫反応性のベースラインが、所定の値よりも小さい患者、例えば、MHC多量体分析によって測定した場合に、約0.10%より小さい、約0.09%より小さい、約0.08%より小さい、約0.07%より小さい、約0.06%より小さい、約0.05%より小さい、約0.04%より小さい、約0.03%より小さい、約0.02%より小さい、もしくは約0.01%より小さい、またはバックグラウンドレベルからの区別が不能である患者が、治療に選別される。
【0050】
当業者には明らかであるように、所定の値は、免疫反応性の測定に用いられる技術、および求められる応答に応じて異なる。本明細書の開示事項に基づいて、これらの値は、特定のタイプの分析または測定について当業者に明らかであり、本明細書で述べる方法に有用である追加の、または別の選択肢としての分類/階層化も明らかである。
【0051】
ある実施形態では、選別または識別は、所定のステージを超えて進行していない転移疾患を有する患者の選別または識別をさらに含む。癌のステージは、癌がどの程度まで広がっているかを記述するものである。当業者であれば理解されるように、種々の癌のステージについて特有の専門用語は異なるものの、全般的な基本となる原理は同じである。
【0052】
いずれのタイプの癌腫についても、発症した部位もしくは器官もしくは組織に局在化する癌、周囲の正常組織へ浸潤した癌、リンパ系へ浸潤した癌、血管および毛細血管へ浸潤した癌、遠隔/内臓器官へ転移したもしくは転移していない癌について述べることは有意義である。例えば、黒色腫の場合、ステージで考慮されることが多いのは、腫瘍のサイズおよび/もしくは厚さ、真皮層もしくは皮下組織への侵入の深さ、隣接器官への浸潤の有無、転移したリンパ節の数(転移がある場合)、ならびに遠隔器官への広がりの有無である。例えば、黒色腫のステージをさらに明らかとするために、TNM(Tumor‐Node‐Metastasis,腫瘍‐リンパ節‐転移)の文字が用いられ、ここで、Tの文字は、腫瘍の厚さを表し;Nの文字は、関与するリンパ節の数を表し;Mの文字は、遠隔器官への転移を表す。これらの文字の各々は、厚さ、リンパ節の数、または転移の度合いをそれぞれ示す数値(例:0、1、など)を含んでよい。例えば、転移の評価では、用いられる数値は、転移が起こっていない場合は「0」、または転移が存在する場合は「1」である(例えば、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、Restas, S. and Mastrangelo, MJ, Seminars in Oncology 2007 34(6):491-497、を参照)。
【0053】
例えば、黒色腫のステージは、ステージ0、I、II、III、またはIVであり、少
なくとも部分的に疾患組織(例えば、腫瘍組織)の局在化に依存し、いくつかのステージでは、リンパ器官を含んでよい。本明細書で用いる場合、リンパ器官としては、例えば、脾臓、リンパ節、リンパ管、などが挙げられる。ステージ0、IA、IBの黒色腫は、腫瘍のサイズまたは厚さを考慮に入れており;転移は関与しておらず、治癒の可能性が高い。ステージIIA、IIB、およびIICの黒色腫は、ステージIで見られるものよりも腫瘍のサイズまたは厚さが増加しており、リンパ節は関与しておらず、治癒可能である。ステージIIIA、IIIB、およびIIICの黒色腫は、腫瘍のサイズまたは厚さ、1もしくは2つ以上のリンパ節の関与の有無、およびこの癌が転移を始めたことを考慮に入れた進行ステージを意味する。ステージIVの黒色腫は、もう1つの進行ステージであり、これは、ステージIIIの黒色腫で考慮に入れた特徴に加えて、「M1」で表される転移、遠隔転移を伴っている。例えば、黒色腫の場合、ステージIV M1aは、黒色腫はリンパ節を超えての進行はしておらず(すなわち、リンパ系疾患)、遠隔の皮膚および皮下組織、またはリンパ節に限定されていることを示し、一方、リンパ節を超えてM1bまたはM1cステージまで進行した疾患は、内臓疾患の典型であり、すなわち、肺までの転移、またはその他のいずれかの内臓部位への転移、またはいずれの部位であっても血清中乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)のレベルが上昇した遠隔転移が発生している。
【0054】
腎細胞癌または腎臓癌のステージは、ステージI、II、III、またはIVである。ステージIおよびIIは、腫瘍のサイズまたは厚さを考慮するものであり、転移は関与していない。ステージIII腎細胞癌は、腫瘍のサイズまたは厚さ、1もしくは2つ以上の近傍のリンパ節の関与の有無、および腎臓または周囲の脂肪組織の血管への癌の浸潤の有無を考慮するものである。ステージIV腎細胞癌は、進行ステージであり、この疾患のステージIIIで考慮に入れた特徴に加えて、副腎、肺、肝臓、骨、または脳への転移を伴う。
【0055】
前立腺癌のステージは、ステージI、II、III、またはIVである。ステージI前立腺癌は、腫瘍の広がりの度合いが、一方の前立腺葉の半分以下であるかどうか、およびPSA(前立腺特異的抗原)のレベルが1ミリリットルあたり10ナノグラム未満であることを考慮するものである。ステージIIA前立腺癌では、腫瘍の広がりの度合いが、ステージIと同様であるか、または一方の前立腺葉の半分を超えて広がっており、ならびにPSAのレベルが、少なくとも1ミリリットルあたり10ナノグラムであるが、1ミリリットルあたり20ナノグラム未満である。ステージIIB前立腺癌では、腫瘍の広がりの度合いが、両方の前立腺葉まで広がっており、ならびにPSAのレベルが、1ミリリットルあたり20ナノグラムかまたはそれより高い。ステージIII前立腺癌では、腫瘍は、前立腺を超えて精嚢まで広がっており、PSAのレベルは様々である。進行ステージの疾患であるステージIV前立腺癌では、腫瘍は、精嚢を超えて近傍のリンパ節、組織、または膀胱、骨盤、もしくは直腸などの器官まで広がっているか、または、骨を含む遠隔のリンパ節、器官、もしくは組織まで転移しており;PSAレベルは様々である。
【0056】
ある実施形態では、本明細書で開示する能動免疫療法生成物を用いて、リンパ節までに局在化した黒色腫または神経膠芽腫などの疾患を治療することができる。ある実施形態では、疾患のリンパ系を超えての広がりが限定的であるか、またはそうでなくても、疾患が外科手術もしくはその他の治療後に(主として)リンパ系に限定されており、ならびにリンパ系を超えて広がったいずれの転移(病変部)も、その数が10以下であり、および生命維持に必要である器官にはないか、または生命維持に必要である器官が関与する場合は、直径が1センチメートル未満である疾患ステージの癌(例えば、神経膠芽腫、黒色腫、前立腺癌、腎細胞癌など)が、本明細書で開示する能動免疫療法薬を用いて治療される。従って、ある実施形態では、転移は、リンパ系を超えているが、生命維持に必要である器官(そのような生命維持に必要である器官の例としては、肺、肝臓、副腎が挙げられる)までの広がりまたは進行はなく、およびそのような転移病変部の数は、10個以下である
。ある実施形態では、転移病変部は、リンパ系を超えて広がっており、ある実施形態では、生命維持に必要である器官までの広がりも含まれ、およびそのような転移病変部は、直径が1センチメートル未満である。
【0057】
ある実施形態では、本明細書で開示する能動免疫療法薬を用いて、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、陽電子放出断層撮影(PET)、骨スキャン、またはX線などの従来のイメージング技術を利用して測定された、臨床上明らかである(肉眼で見える)疾患(例えば、進行黒色腫などの疾患)を治療することができる。ある実施形態では、能動免疫療法生成物を用いて、微視的疾患(すなわち、イメージング技術ではなく、生検によって検出可能である疾患)、微小残存病変の治療、および疾患再発の防止または遅延を行うことができる。ある実施形態では、本明細書で開示する免疫療法生成物を利用して、臨床上明らかである転移病変部の成長が防止される。
【0058】
二次リンパ系への直接投与を含む本明細書で開示する代表的な免疫療法レジメンは、まだリンパ系を超えて進行していないか、またはそれが限定的な度合いでのみ発生している癌に対して特に効果的であることが分かった。リンパ内免疫化は、例えば免疫原に対する感受性という点で有利であることが公知であるが、標的疾患の解剖学的部位に関する利点は、予測可能ではなく、期待されてもいなかった。従って、ある実施形態では、リンパ系に限定された疾患か、または主としてリンパ系に限定された疾患を有する患者が、腫瘍関連抗原を標的とする免疫原のリンパ内投与を含む免疫療法レジメン下での治療に選別される。ある実施形態では、リンパ節への直接投与が用いられる。ある実施形態では、癌はリンパ系までまだ広がっていない。ある実施形態では、この治療により、リンパ系を超えての疾患の広がりを例とする疾患の広がりが阻止、または防止される。
【0059】
免疫反応性の測定
本明細書で開示する方法の実施形態では、能動免疫療法組成物の1もしくは複数の成分に対する患者の免疫応答を容易かつ確実に評価するための方法が用いられる。ある実施形態は、非レスポンダーに対する陽性免疫レスポンダーとして患者を区別または分類することを含む。例えば、少なくとも1つの免疫抗原(または標的抗原)に対する患者の免疫応答は、MHC多量体染色および/またはELISPOTアッセイなどによって測定してよく、患者を陽性免疫レスポンダーとして分類するための所定の基準は、アッセイバックグラウンドと有意の差があり、治療前ベースラインと比較して2倍大きいMHC多量体染色および/または3倍大きいELISPOT反応であってよい。既存の免疫反応性は、アッセイバックグラウンドに対して評価してよい。そのような方法は、本技術分野で公知である。酵素結合免疫スポット(ELISPOT)は、細胞によって放出されたバイオマーカーの検出、または例えば抗体、サイトカイン、ケモカイン、もしくはグランザイムを分泌する細胞など、目的のバイオマーカーを分泌する個々の細胞の検出のための高感度技術である。この技術は、十分に確立されており、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)技術と密接に相関している(その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、Vaquerano et al., Biotechniques. 1998 Nov; 25(5):830-4, 836)。
【0060】
本明細書で用いる場合、MHC多量体染色(例:四量体アッセイ)とは、抗原特異的T細胞の存在を検出するための方法を意味し、ここで、多量体化され、通常は蛍光色素であるレポーター分子と結合したMHC‐ペプチド複合体がT細胞と接触し、MHC‐ペプチド複合体を認識するT細胞受容体(TCR)を発現するT細胞と結合し、レポーター分子を通してその検出が可能となる。例に過ぎないが、多量体は、二量体、五量体、四量体などを含んでよい。そのような試薬は、市販されている。また、本明細書で用いる場合、ELISPOTアッセイ(またはIFN‐ガンマ酵素結合免疫スポットアッセイ)は、ELISPOTアッセイにおいて、特定のエフェクター細胞によるIFN‐ガンマ産生を測定することによるCD8+ CTL応答の評価に用いられる方法を意味する。このアッセイ
では、細胞は、マイクロタイターウェルのプラスチック表面上に固定され、エフェクター細胞が添加される。抗原特異的エフェクター細胞による細胞の結合は、エフェクター細胞によるIFN‐ガンマを含むサイトカインの産生を引き起こす。次に、細胞は染色されて、細胞内IFNガンマの存在が検出され、顕微鏡下にて陽性染色点(スポット)の数がカウントされる。
【0061】
ある実施形態では、応答は、抗原特異的T細胞の表現型に基づいて評価してよく、例えば、フローサイトメトリーを用いて、異なる表現型に関連する表面マーカーを検出する。例えば、エフェクター表現型またはエフェクター/メモリー表現型を持つ抗原特異的T細胞の割合の増加は、抗原特異的T細胞の総数が増加しない場合であっても、陽性応答と見なしてよい。そのような手法は、本技術分野で公知であり、適切な試薬は市販されている。
【0062】
本明細書で開示する能動免疫療法組成物に対する免疫応答を測定または評価するその他の方法としては、例えば、これらに限定されないが、細胞内サイトカイン染色(ICSアッセイ);DTH応答 − 好ましくは抗原特異的DTH、サイトカインアッセイ、細胞増殖アッセイ、および/またはクロム放出アッセイなどが挙げられる。このようなアッセイを実施するための多くの技術が本技術分野で公知である。このようなアッセイは、単に抗原というだけでなく、標的エピトープに対して特異的であり得ることから、エピトープ定量と称される場合もある。標的抗原からの特定のT細胞エピトープの提示を検出する試薬も用いてよい。これらとしては、例えば、T細胞株およびハイブリドーマが挙げられ、より好ましくは、ペプチド‐MHC複合体およびTCR多量体に特異的な抗体である(例えば、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、Li et al., Nature Biotech. 23:349-354, 2005、参照)。適切な試薬は市販されている。
【0063】
ある実施形態では、血液またはその他の体液もしくは分泌物、生検された腫瘍組織、またはリンパ球もしくはサイトカインなどのこれらの一部、などの患者サンプルが、免疫応答のために分析される。ある実施形態では、免疫応答は、DTHのための皮膚検査などの身体の目視観察を用いて測定される。
【0064】
ある実施形態では、1もしくは複数の所望される免疫応答のみが分析される。ある実施形態では、1もしくは複数の所望されない免疫応答のみが分析される。さらなるある実施形態では、所望される免疫応答および所望されない免疫応答の両方が分析される。ある実施形態では、この応答は、これらに限定されないが、腫瘍の縮小、もしくは減少、もしくは退縮、腫瘍の排除、腫瘍進行の阻止、癌の寛解、微小残存病変、臨床応答(固形癌治療効果判定(RECIST)基準によって測定)などが挙げられる。ある実施形態では、患者は、免疫化後、例えば、免疫療法レジメンの少なくとも2サイクルおよび/または臨床的有用性の達成の後の抗原特異的T細胞の増殖に基づいてレスポンダーとして分類される。特定の実施形態では、例えば前立腺癌患者などの患者は、PSA減少に反映される腫瘍退縮に基づいて、レスポンダーとして分類される。
【0065】
メランAに対する既存の免疫反応性
進行黒色腫を有する患者における能動免疫療法の免疫性および臨床成績を評価すると、標的とするメランAエピトープのMHC多量体染色で測定されたメランAに対する既存の免疫反応性を有する対象で、腫瘍応答(例:腫瘍縮小)が観察された。すなわち、臨床成績および/または腫瘍応答は、治療レジメンの開始前または開始時に、既存のメランA/MART‐1 T細胞応答によって予測された。当業者であれば判断することができるように、既存の免疫反応性は、本明細書に開示する、および本技術分野で公知のその他の手段によって測定してよい。
【0066】
従って、ある実施形態は、黒色腫などの癌腫(または神経膠芽腫などの癌)を有する患者を治療する方法に関し、この方法は、少なくとも1つの標的抗原または1もしくは2つ以上のそのエピトープに対する既存の免疫反応性を有する患者の選別であって、ここで、この標的抗原はメランAである、選別、ならびにメランAまたは1もしくは2つ以上のそのエピトープを標的とする能動免疫療法組成物のその患者への投与、を含む。ある実施形態では、この免疫療法組成物はまた、腫瘍に関連する少なくとも1つの追加の抗原または1もしくは2つ以上のそのエピトープも標的とする。ある実施形態では、追加の腫瘍関連抗原は、チロシナーゼである。
【0067】
ある実施形態では、リンパ系に限定された疾患(例えば、M1aステージ転移疾患 −
疾患のステージについては本明細書の他所に記載)を有する患者が、臨床的有用性を示す。ある実施形態では、本明細書で開示する方法は、リンパ系またはリンパ節を超えて進行していない癌腫を有する患者を選別することを含む。ある実施形態では、疾患がリンパ系を超えて進行しているいが、生命維持に必要である器官には広がっておらず、病変部の数が10個以下である患者が、臨床的有用性を示す。ある実施形態では、生命維持に必要である器官に病変部が存在するが、それらの直径は1センチメートル未満である。
【0068】
本明細書で示すように、メランAまたはその特定のエピトープに対する既存の免疫反応性が、メランAを標的とする免疫療法薬による治療に際しての陽性の臨床成績と関連付けられた。従って、ある実施形態では、患者は、患者がメランAに対する既存の免疫反応性を有することに基づいて選別されて、メランAを標的とする能動免疫療法組成物を受ける。従って、ある実施形態では、標的抗原に対する既存の免疫反応性を有する患者が、そのような既存の免疫反応性と陽性の臨床成績が関連付けられる免疫療法レジメンでの治療に選別される。ある実施形態では、標的は、メランAを含み、患者は、メランAに対する既存の免疫反応性を持たないかまたはそれが最小限であり、免疫療法レジメンは、免疫原および免疫賦活薬を共投与して、メランAに対する免疫応答(例:エフェクターT細胞応答)を促進させることを含む。
【0069】
ある実施形態では、癌腫は、例えば黒色腫または神経膠芽腫などのメランA陽性癌であり、少なくとも1つの標的抗原は、メランAである。ある実施形態では、免疫療法剤または組成物はまた、腫瘍に関連する追加の抗原を標的としてもよく、例えば、これらに限定されないが、チロシナーゼまたは1もしくは2つ以上のそのエピトープである。免疫療法レジメンは、プライム‐ブーストプロトコルを含んでよい。ある実施形態では、特定のエピトープが標的とされる。ある実施形態では、標的エピトープは、メランA26‐35を含む。特定の実施形態では、免疫療法レジメンの成分は、別々に、リンパ節内送達される。
【0070】
ある実施形態では、メランA標的抗原に対する既存のベースライン免疫反応性が、MHC多量体染色分析で測定した場合のCD8+T細胞の約0.1%を例とする所定の値を超えている患者が、選別される。ある実施形態では、例に過ぎないが、標的抗原に対するベースライン免疫反応性が、MHC多量体染色分析で測定した場合の約0.10%、約0.11%、約0.12%、約0.13%、約0.14%、約0.15%、約0.16%、約0.17%、約0.18%、約0.19%、約0.20%超(全CD8+T細胞に対する染色されたT細胞の%)を例とする所定の値を超えている患者が、メランAに対する既存の免疫反応性を有するとして特徴付けられる。標的抗原に対する既存の免疫反応性が、CD8+T細胞の約0.10%、または約0.09%、または約0.08%、または約0.07%、または約0.06%、または約0.05%、または約0.04%、または約0.03%、または約0.02%、または約0.01%未満を例とする所定の値未満である患者が、メランAに対する免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限であるとして特徴付けられる。本出願を読む当業者であれば、ベースライン免疫反応性の比較対象とされる
所定の値を、免疫反応性の評価に用いられる特定のアッセイに基づいて選択することができることは理解されるであろう。
【0071】
PRAMEおよびPSMAに対する既存の免疫反応性
PRAMEおよびPSMA陽性固形腫瘍を有する患者における能動免疫療法の免疫性および臨床成績を評価すると、陽性の臨床観察結果(これらに限定されないが、疾患の安定、見掛け上の根治目的手術(apparently curative surgery)の可能化、PSA力価または速度の減少を含む)は、標的抗原またはそのエピトープに対する既存の免疫性の欠如と、および治療の最初の2サイクルの間における血中T細胞の増殖または残留とも関連し得る。臨床的有用性を示す患者の一部は、治療レジメン開始後の早い段階で血中の抗原特異的T細胞の増殖を示した。ある実施形態では、陽性の臨床成績は、エフェクター細胞によって新しく誘導されるT細胞応答によって予測することができる。従って、ある実施形態は、治療的診断手法(theranosticapproach)を含む(例えば、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願番号第11/155,928号(米国特許出願公開番号第2005‐0287068 A1号)を参照)。従って、ある実施形態では、いずれかの抗原に対する応答が増加または維持されない場合、それを基準として用いて、免疫療法剤/組成物による治療の停止、または、例えば免疫賦活アジュバントを含むアジュバントの投与を含む、より強力な免疫原性プロトコルへの治療の改変が行われる。
【0072】
ある実施形態では、例えば前立腺癌または腎細胞癌などで、リンパ系に限定されている疾患を有する患者が、臨床的有用性を示す。ある実施形態では、本明細書で開示する方法は、リンパ系もしくはリンパ節を超えて進行していないか、または、そうでなければ、リンパ系もしくはリンパ節に限定されている癌腫を有する患者を選別することを含む。ある実施形態では、疾患がリンパ系を超えて広がっているが、生命維持に必要である器官までではなく、その病変部が10個以下である患者が、臨床的有用性を示す。ある実施形態では、生命維持に必要である器官に病変部が存在するが、それらの直径は1センチメートル未満である。
【0073】
ある実施形態は、癌腫を有する患者を治療する方法に関し、この方法は、例えばMHC多量体染色および/またはELISPOTアッセイなどによって測定した場合の、PRAMEおよび/もしくはPSMA、またはPRAMEおよび/もしくはPSMAの特定のエピトープに対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限である患者を選別すること、ならびにPRAMEおよび/もしくはPSMA、または一方もしくは両方の抗原の1つ以上のエピトープを標的とする免疫療法組成物をその患者に投与することを含み、ここで、少なくとも1つの標的抗原、または一方もしくは両方の抗原の1つ以上のエピトープに対するエフェクターT細胞応答が発生される。ある実施形態では、免疫療法組成物はまた、その腫瘍に関連する少なくとも1つの追加の抗原、または1つ以上のそのエピトープも標的とする。
【0074】
ある実施形態では、PRAMEおよび/またはPSMAに対する既存のベースライン免疫反応性の最小値が、MHC多量体染色分析で測定した場合のCD8+T細胞の約0.2%を例とする所定の値未満である患者が、選別される。特定の実施形態では、PRAMEおよび/またはPSMAに対するベースライン免疫反応性が、MHC多量体染色分析で測定した場合に約0.20%、約0.15%、約0.14%、約0.13%、約0.12%、約0.11%、約0.10%、約0.09%、約0.08%、約0.07%、約0.06%、約0.05%、約0.04%、約0.03%、約0.02%、もしくは約0.01%未満(全CD8+T細胞に対する染色されたT細胞の%)であるか、またはコントロールと区別することのできない患者が、標的抗原に対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限であるとして特徴付けられる。本出願を読む当業者であれば、ベースライン免疫反応性の比較対象とされる所定の値を、免疫反応性の評価に用いられる特定の
アッセイに基づいて選択することができることは理解されるであろう。
【0075】
ある実施形態では、PRAMEおよび/またはPSMA陽性癌腫を有し、ならびに例えばMHC多量体および/またはELISPOTアッセイなどによって測定した場合の標的抗原もしくはそのエピトープに対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限である患者が選別され、PRAMEおよび/もしくはPSMA抗原、またはその1もしくは2つ以上のエピトープを標的とする能動免疫療法薬が投与される。ある実施形態では、癌腫は、眼内黒色腫を含む黒色腫、ホルモン感受性およびホルモン不応性前立腺癌を含む前立腺癌、例えば腎細胞癌などの腎臓癌、膵臓癌、および結腸直腸癌などから選択される。ある実施形態では、これらの特定の癌を有する患者が治療に選別される。ある実施形態では、能動免疫療法薬はまた、その腫瘍に関連する追加の抗原も標的としてよい。
【0076】
臨床的有用性としては、例えば、これらに限定されないが、腫瘍退縮(部分的または完全な)、疾患の安定化、生存期間の延長、PSA速度(倍加時間)、または発現レベルなどを含んでよい。例えば、ある実施形態では、標的抗原は、PRAMEおよび/またはPSMAを含み、患者は、この標的抗原の少なくとも1つに対する免疫応答を示し、ここで、方法は、免疫抑制性の腫瘍微小環境を減少させて臨床的有用性を促進させる薬剤を共投与することを含む。
【0077】
免疫療法組成物
一般的に、標的とする抗原に対するエフェクターT細胞応答を誘導するいかなる免疫原を用いてもよく、特に、リンパ内送達に適する組成物である。従って、本明細書で述べる実施形態は、抗原、または1もしくは2つ以上のそのエピトープを標的とする能動免疫療法組成物に関する。本明細書で開示する実施形態で意図される抗原は、例えば悪性腫瘍を有する対象の免疫系によってそれに対する応答が開始し、腫瘍を攻撃することによってその成長の阻害、またはその縮小、または減少、または除去を行うことができ、それによってその疾患の治療または治癒が行われるものである。ある場合では、この抗原は、治療を受ける対象に見られる特定の疾患に対応して、エフェクターT細胞応答(細胞性免疫応答とも称される)を発生させることができる。ある実施形態では、この免疫応答は、CTL(細胞傷害性Tリンパ球)応答、すなわち、標的細胞(例:悪性腫瘍細胞)の溶解をもたらす免疫系による細胞傷害性反応である。
【0078】
抗原としては、これらに限定されないが、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、およびこれらの誘導体を含んでよく、また、非ペプチド高分子であってもよい。ある実施形態では、抗原はタンパク質である。ある実施形態では、抗原はペプチドである。ある実施形態では、抗原はポリペプチドである。ある実施形態では、抗原は、タンパク質、ペプチド、またはポリペプチドの誘導体である。従って、本開示の実施形態は、長さが8アミノ酸である抗原、または長さが9アミノ酸である抗原、または長さが10アミノ酸である抗原、または長さが11アミノ酸である抗原、または長さが12アミノ酸である抗原、または長さが13アミノ酸である抗原、または長さが14アミノ酸である抗原、または長さが15アミノ酸である抗原など、長さが8〜15アミノ酸であるペプチド抗原を利用する。そのようなペプチドは、これより長い抗原のエピトープであってよく、すなわち、MHC/HLA分子によって提示されるより大きい分子上の部位に対応するアミノ酸配列を有するペプチドであり、例えば、抗原受容体またはT細胞受容体によって認識され得る。これらの小ペプチドは、当業者にとって利用可能であり、各々のその全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,747,269号および同第5,698,396号;ならびに1995年7月4日出願のPCT出願番号第PCT/EP95/02593号(国際公開第1996/001429号)および1996年2月26日出願の同第PCT/DE96/00351号(国際公開第1996/027008号)の教示事項に従って得ることができる。エピトープ発見のためのさらなる手法は、各々のその全ての内容が
参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,037,135号および同第6,861,234号に記載されている。
【0079】
代表的な抗原としては、PRAME、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、メランA、およびチロシナーゼ、SSX‐2、NYESO‐1、MAGE‐1、MAGE‐3、BAGE、GAGE‐1、GAGE‐2、CEA、RAGE、SCP‐1、Hom/Mel‐40、p53、H‐Ras、HER‐2/neu、BCR‐ABL、E2A‐PRL、H4‐RET、IGH‐IGK、MYL‐RAR、エプスタイン・バール・ウイルス抗原、EBNA、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6およびE7、TSP‐180、MAGE‐4、MAGE‐5、MAGE‐6、p185erbB2、p180erbB‐3、c‐met、nm‐23H1、PSA、TAG‐72‐4、CAM 17.1、NuMa、K‐ras、β‐カテニン、CDK4、Mum‐1、p16、p15、43‐9F、5T4、791Tgp72、アルファ‐フェトプロテイン、β‐HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15‐3\CA27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA‐50、CAM43、CD68\KP1、CO‐029、FGF‐5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp‐175、M344、MA‐50、MG7‐Ag、MOV18、NB/70K、NY‐CO‐1、RCAS1、SDCCAG16、PLA2、TA‐90\Mac‐2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLP、ならびにTPSが挙げられる。本明細書で述べる抗原名の各々は、遺伝子座位に関連している。当業者であれば、ヒトの集団には遺伝的ばらつきが存在し、従っていずれの特定の参照配列も例として見なされるべきであり、関連する座位で見られる天然の変異体は、この抗原名で包含される範囲内であると理解されるべきであることは明らかであろう。ある実施形態では、変異体は、参照分子によって誘導または刺激される応答によって認識することができる。ある実施形態では、参照分子は、変異体によって誘導または刺激される応答によって認識することができる。
【0080】
本開示の実施形態は、腫瘍によって発現される1もしくは複数の抗原、または1もしくは2つ以上のそのエピトープを標的とする、癌の治療のための能動免疫療法組成物に関する。腫瘍関連抗原(TuAA)は、癌細胞自体によって発現されてよく、または腫瘍関連血管新生もしくはその他の間質など、腫瘍の非癌性成分に関連していてもよい。TuAAは、免疫系が未熟で応答することができない胎児発生時に正常細胞で発現される抗原を含んでよく、またはそれらは、通常は正常細胞に極めて低いレベルで存在するが、腫瘍細胞ではそれよりも非常に高いレベルで発現される抗原であってもよい。ある実施形態では、TuAAは、例えば腫瘍血管新生、もしくは腫瘍微小環境内のその他の間質細胞などの腫瘍の非癌性細胞に関連する抗原である。TuAAの発現を用いて、患者の癌の状態や種類を、適切な免疫療法プロトコルまたはレジメンに対応させることができる。
【0081】
ある実施形態では、二価または多価の治療剤が用いられる。そのような二価または多価の治療薬は、腫瘍細胞上の2つ以上の抗原を標的とすることができる。腫瘍細胞上の2つ以上の抗原が標的とされる場合は、抗腫瘍治療薬の効果濃度がそれに従って高められる。血管構造などの腫瘍に関連する間質への攻撃により、腫瘍細胞の、それらを標的とする1もしくは複数の薬剤に対する接触性を高めることができる。従って、正常組織の一部でも発現される抗原さえも、さらに二価または多価の攻撃で標的とされるその他の抗原がその組織によって発現されない場合は、標的抗原としてより強い考慮の対象となり得る。さらに、2つ以上の抗原に対して免疫応答を指向させることにより、これらが適切に選択されれば、認識可能な腫瘍細胞の数が最大化される。さらに、腫瘍の中には、免疫化後にTuAAの発現を喪失するものもあり、これは耐性集団を生ずる。免疫応答が2つ以上のTuAAに対して指向される場合、その逃避のために腫瘍はここで各抗原の発現を同時に喪失する必要があることから、耐性腫瘍が生ずることが非常により困難となる。従って、免疫療法によって癌を治療する場合、TuAAの組み合わせを用いることが有利であり得るも
のであり、それは、対象となる腫瘍細胞の集団の範囲をより完全なものとすること、およびTuAA発現の喪失によって腫瘍が逃避する可能性を低下させることの両方の理由による。好ましい実施形態では、この多価攻撃技術は、腫瘍が、用いられた2、3、4、もしくは5つ以上のTuAAの組み合わせに対して陽性である場合に用いられる。
【0082】
ある実施形態では、抗原の標的エピトープ配列に対応する免疫原性ペプチドが本明細書で意図され、天然配列または交差反応性類似体配列を含んでよい。メランA、チロシナーゼ、PRAME、およびPSMAエピトープの代表的な類似体は、各々その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願番号第11/156,253号(公開番号第20060063913号)、同番号第11/155,929号(公開番号第20060094661号)、同番号第11/156,369号(公開番号第20060057673号)、同番号第11/454,300号(公開番号第US2007‐0060518 A1号)、同番号第12/406,022号、ならびに米国特許第7,605,227号;同第7,511,118号;および同第7,511,119号に開示されている。本明細書で用いられる場合、「交差反応性類似体」とは、バックグラウンドと区別可能であるエフェクター機能(例:細胞溶解またはサイトカイン分泌)を天然ペプチドとの反応性を有するCTLから誘導する、天然ペプチド配列と比較して1〜3つのアミノ酸置換、および/または1つのアミノ酸欠失もしくは付加を含むペプチドを意味し得る。種々の実施形態では、エフェクター機能は、天然ペプチドによって誘導されるものの少なくとも約30%、約50%、約60%、約70%、または約80%である。別の選択肢として、交差反応性は、類似体による免疫化によって発生される、バックグラウンドと区別可能であるCTLからのエフェクター機能(例:細胞溶解またはサイトカイン分泌)を誘導する天然ペプチドの能力によって示され得る。種々の実施形態では、エフェクター機能は、類似体ペプチドによって誘導されるものの少なくとも30%、50%、60%、70%、または80%である。
【0083】
特定の実施形態では、本明細書で開示する方法での使用が意図される標的抗原および/またはその類似体の例としては、表1および本明細書の他所で開示するPRAME425‐433、PSMA288‐297、メランA26‐35、およびチロシナーゼ369‐377が挙げられる。
【0084】
【表1】
【0085】
MART‐1(T細胞によって認識される黒色腫抗原)としても知られるメランAは、黒色腫でも高レベルで発現されるメラニン生合成タンパク質である。メランA/MART‐1は、各々のその全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,994,523号;同第5,874,560号;および同第5,620,886号にTuAAとして開示されている。本明細書で開示するある実施形態では、標的抗原は、表1および本明細書の他所にて開示する、メランA26‐35および/またはその類似体である。メランA類似体の例は、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,605,227号に開示されている。メランA類似体は、これらに限定されないが、以下の配列:E{A、L、Nva、もしくはNle}AGIGILT{V、Nva、もしくはNle}(配列番号10);またはY{M、V、Nva、もしくはNle}DGTMSQ{V、Nva、もしくはNle}(配列番号11)の類似体を含んでよく;および、ここで、配列は、E{AもしくはL}AGIGILTV(配列番号12)またはYMDGTMSQV(配列番号4)ではない。本発明の単離されたペプチド類似体は、ELAGIGILTNva(配列番号13)、ENvaAGIGILTV(配列番号2)、YVDGTMSQNva(配列番号14)、YVDGTMSQV(配列番号15)、およびYMDGTMSQNva(配列番号5)から成る群より選択してよい。ある実施形態では、類似体は、アミノ酸配列ENvaAGIGILTV(配列番号2)から実質的に成る類似体である。さらに他の実施形態では、類似体は、アミノ酸配列YMDGTMSQNva(配列番号5)から実質的に成る類似体である。
【0086】
メラニン生合成酵素であるチロシナーゼは、主としてメラニン細胞で発現され、黒色腫にて非常に高いレベルが観察されることが多い。チロシナーゼは、メラニン細胞分化に最も特異的であるマーカーの1つであると考えられている。これはまた、神経外胚葉から発達した膠細胞でも、メラニン細胞と同様に発現される。従って、チロシナーゼは、多形神経膠芽腫を含む神経膠芽腫に有用であるTuAAでもある。TuAAとしてのチロシナーゼのさらなる詳細は、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,747,271号に開示されている。本明細書で開示するある実施形態では、標的抗原は、表1および本明細書の他所に開示するチロシナーゼ369‐377および/またはその類似体である。
【0087】
MAPE、DAGE、およびOIP4としても知られるPRAMEは、本技術分野において、癌‐精巣(CT)抗原として知られる。しかし、MAGE、GAGE、およびBAGEなど多くのCT抗原とは異なり、これは、急性骨髄性白血病で発現される。TuAAとしてのPRAMEは、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,830,753号に開示されている。ある実施形態では、標的抗原は、表1および本明細書の他所に開示するPRAME425‐433および/またはその類似体である。PRAME類似体の例は、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,511,119号に開示されている。PRAME類似体としては、これらに限定されないが、P0がX、XX、またはXXXであり、ここで、Xは、任意のアミノ酸またはアミノ酸が無いことを指定し;およびP1がS、K、F、Y、T、Orn、またはHseであり;およびP2がL、V、M、I、Nva、Nle、またはAbuであり;およびP3がL、Nva、Nle、またはAbuであり;およびP4がQであり;およびP5がHであり;およびP6がL、Nva、Nle、またはAbuであり;およびP7がIであり;およびP8がG、A、S、またはSarであり;およびP9におけるPΩがL、V、I、A、Nle、Nva、Abu、またはL‐NH2であり;およびPΩ+1がX、XX、またはXXXであり、ここで、Xは、任意のアミノ酸またはアミノ酸が無いことを指定する配列であって;ならびに、ここで、この配列は、SLLQHLIGL(配列番号6)ではない、配列を含むかまたは実質的にそれから成る類似体を含んでよい。PRAME類似体は、{K、F、Y、T、Orn、もしくはHse}LLQHLIGL(配列番号16);またはS{V、M、I、Nva、Nle、もしくはAbu}LQHLIGL(配列番号1
7);またはSL{Nva、Nle、もしくはAbu}QHLIGL(配列番号18);またはSLLQH{Nva、Nle、もしくはAbu}IGL(配列番号19);またはSLLQHLI{A、S、もしくはSar}L(配列番号20);またはSLLQHLIG{V、I、A、Nle、Nva、Abu、もしくはL‐NH2}(配列番号21);または{F、Y、T、Orn、もしくはHse}{Nva、Nle、M、もしくはI}LQHLIGL(配列番号22);またはS{Nva、Nle、もしくはM}LQHLIG{Nva、Nle、もしくはV}(配列番号23);または{K、F、Y、T、Orn、もしくはHse}LLQHLIGV(配列番号24);または{FもしくはT}LLQHLIG{Nle}(配列番号25);または{FもしくはT}{NvaもしくはM}LQHLIG{Nle}(配列番号26)、の配列を含むか、またはそれから実質的に成っていてよい。また、PRAME類似体は、{F、Y、T、Orn、もしくはHse}LLQHLIGL(配列番号27);またはS{Nva、Nle、もしくはM}LQHLIGL(配列番号28);またはSLLQHLIG{Nle、Nva、もしくはL‐NH2}(配列番号29);またはSLLQH{NvaもしくはAbu}IGL(配列番号30);またはS{Nva}LQHLIG{Nle}(配列番号31);または{FもしくはT}{LもしくはNva}LQHLIG{Nle}(配列番号32)、の配列を含むか、またはそれから実質的に成っていてもよい。さらに、類似体は、S{LもしくはNva}LQHLIG{Nle}(配列番号33);またはT{Nva}LQHLIG{Nle}(配列番号34)、の配列を含むか、またはそれから実質的に成っていてよい。類似体は、S{Nva}LQHLIG{Nle}(配列番号31)の配列を含むか、またはそれから実質的に成っていてよい。
【0088】
前立腺特異的膜抗原(PSMA)は、前立腺癌細胞で高度に発現されることが分かっている。しかし、PSMA発現はまた、正常前立腺上皮および非前立腺腫瘍の血管新生にも見られる。抗血管新生製剤(anti-neovasculature preparation)としてのPSMAは、各々その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許仮出願番号第60/274,063号、ならびに米国特許出願番号第10/094,699号(公開番号第20030046714号)および同第11/073,347号(公開番号第20050260234号)に開示されている。TuAAとしてのPSMAは、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,538,866号に開示されている。ある実施形態では、標的抗原は、表1および本明細書の他所に開示するPSMA288‐297および/またはその類似体である。PSMA類似体の例は、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,511,118号に開示されている。PSMA類似体としては、これらに限定されないが:P0がX、XX、またはXXXであり、ここで、Xは、任意のアミノ酸またはアミノ酸が無いことを指定し;およびP1がG、A、S、Abu、またはSarであり;およびP2がL、M、I、Q、V、Nva、Nle、またはAbuであり;およびP3がPまたはWであり;およびP4がSであり;およびP5がIであり;およびP6がPであり;およびP7がVであり;およびP8がHであり;およびP9がP、A、L、S、またはTであり;およびP10におけるPΩがI、L、V、Nva、またはNleであり;およびPΩ+1がX、XX、またはXXXであり、ここで、Xは、任意のアミノ酸またはアミノ酸が無いことを指定する、配列であって;ならびに、ここで、この配列は、GLPSIPVHPI(配列番号8)ではない、配列を含むかまたは実質的にそれから成る類似体を含んでよい。類似体は、{S、Sar、もしくはAbu}LPSIPVHPI(配列番号35);またはG{MもしくはNle}PSIPVHPI(配列番号36);またはG{L、I、Nva、もしくはNle}WSIPVHPI(配列番号37);またはGLWSIPVHP{NvaもしくはV}(配列番号38);またはGLPSIPVH{AもしくはS}I(配列番号39);またはGLPSIPVHP{V、L、Nva、もしくはNle}(配列番号40);またはG{Nle}PSIPVHP{NvaもしくはNle}(配列番号41);またはG{Nva}PSIPVHP{Nva}(配列番号42);またはG{V、Nva、もしくはNle}PSIPVHPV
(配列番号43);または{SarもしくはAbu}LPSIPVHP{VもしくはNva}(配列番号44);またはA{V、I、Nva、もしくはNle}WSIPVHPI(配列番号45);またはAVPSIPVHP{VもしくはNva}(配列番号46);またはA{Nva}PSIPVHPV(配列番号47);またはALWSIPVHP{VもしくはNva}(配列番号48);またはGVWSIPVHP{VもしくはNva}(配列番号49);またはG{Nva}WSIPVHPV(配列番号50)の配列を含むかまたは実質的にそれから成っていてよい。また、類似体は、{Abu}LPSIPVHPI(配列番号51);またはG{V、Nva、もしくはAbu}PSIPVHPI(配列番号52);またはGLPSIPVHP{VもしくはNva}(配列番号53);またはGLWSIPVHP{IもしくはNva}(配列番号54);またはG{Nle}PSIPVHP{Nva}(配列番号55);またはG{NleもしくはNva}PSIPVHPV(配列番号56);または{AもしくはAbu}LPSIPVHP{VもしくはNva}(配列番号57);またはG{Nva}WPSIPVHP{IもしくはV}(配列番号58);またはA{NvaもしくはNle}WSIPVHPI(配列番号59);またはA{VもしくはNva}PSIPVHPV(配列番号:60)の配列を含むかまたは実質的にそれから成っていてもよい。特に、類似体は、{Abu}LPSIPVHPI(配列番号51);またはGLPSIPVHP{VもしくはNva}(配列番号53);またはGLWSIPVHPI(配列番号61);またはG{Nle}PSIPVHP{Nva}(配列番号55)の配列を含むかまたは実質的にそれから成っていてよい。好ましくは、類似体は、GLPSIPVHPV(配列番号9)の配列を含むかまたは実質的にそれから成っていてよい。
【0089】
ある実施形態では、免疫療法レジメンは、2つの特定のペプチド類似体(E‐PRA(配列番号7)およびE‐PSM(配列番号9))の投与を含む。本明細書で用いる場合、E‐PRAとは、PRAME425‐433の類似体、PRAME425‐433 L426Nva L433Nle(配列番号7)を意味し;E‐PSMとは、PSMA288‐297の類似体、PSMA288‐297 I297V(配列番号9)を意味する。これらおよびその他の類似体は、各々その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれ、いずれも発明の名称が「EPITOPE ANALOGS」である米国特許出願番号第11/156,369号(公開番号第20060057673号)および米国特許仮出願番号第60/691,889号に開示されている。
【0090】
ある実施形態では、免疫療法レジメンは、2つの特定のペプチド類似体(E‐MELおよびE‐TYR)の投与を含む。本明細書で用いる場合、E‐MELとは、メランA26‐35の類似体、メランA26‐35 A27Nva(配列番号2)を意味し;E‐TYRとは、チロシナーゼ369‐377の類似体、チロシナーゼ369‐377 V377Nva(配列番号5)を意味する。これらおよびその他の類似体(メランA26‐35 A27L(配列番号3)を含む)は、各々その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれ、いずれも発明の名称が「EPITOPE ANALOGS」である米国特許出願番号第11/156,369号(公開番号第20060057673号)および米国特許仮出願番号第60/691,889号に開示されている。
【0091】
さらなる代表的なエピトープおよびエピトープ類似体は、2001年11月7日出願、発明の名称が「METHODS OF COMMERCIALIZING AN ANTIGEN」である米国特許出願番号第09/999,186号;米国特許出願番号第11/323,572号(公開番号第20060165711号);および米国特許出願番号第11/323,520号(公開番号第20080124352号)、米国特許出願番号第10/117,937号(公開番号第20030220239 A1号);各々2005年2月25日出願の米国特許出願番号第11/067,159号(公開番号第20050221440号)および同第11/067,064号(公開番号第20050142144号);2003年9月5日出願の米
国特許出願番号第10/657,022号(公開番号第20040180354号)ならびに2004年6月17日出願のPCT出願番号第PCT/US2003/027706号(国際公開第04022709 A2号)および2002年4月4日出願の同第PCT/US02/11101号(国際公開第02081646号)、すべて「EPITOPE SEQUENCES」;ならびに、米国特許出願番号第10/292,413号(公開番号第20030228634 A1号)、同第10/837,217号(公開番号第20040203051号)、および米国特許第7,232,682号、に開示されており、各々その全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。免疫治療薬に有用であるエピトープを選択する原理は、米国特許出願番号第09/560,465号(2000年4月28日出願)、同第11/683,397号(公開番号第20070269464号)、同第10/026,066号(公開番号第20030215425 A1号)、同第10/895,523号(公開番号第2005‐0130920号)、同第10/896,325号(公開番号第20070184062号)、および同第10/005,905号(2001年11月7日出願)、すべて発明の名称は「EPITOPE SYNCHRONIZATION IN ANTIGEN PRESENTING CELLS」;同第09/561,571号(2000年4月28日出願)、発明の名称は「EPITOPE CLUSTERS」;米国特許出願番号第11/073,347号(公開番号第20050260234号)、同第11/772,811号(公開番号第20090208537号)、および米国特許第7,252,824号、各々発明の名称は「ANTI-NEOVASCULATURE PREPARATIONS FOR CANCER」;ならびに米国特許出願番号第10/117,937号(2002年4月4日出願;公開番号第20030220239 A1号)、および同第10/657,022号(公開番号第20040180354 A1号)、および同第12/194,478号(公開番号第20090285843号)、すべて発明の名称は「EPITOPE SEQUENCES」;米国特許出願番号第10/956,401号(公開番号第20050069982号)および米国特許第6,861,234号、いずれも発明の名称は「METHOD OF EPITOPE DISCOVERY」、に開示されており、各々その全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。さらに、当業者にとって現在明らかであるかまたは今後明らかになり得る、発明の名称が「METHOD OF EPITOPE DISCOVERY」である米国特許第6,861,234号、および2000年12月7日出願、発明の名称が「EPITOPE SYNCHRONIZATION IN ANTIGEN PRESENTING CELLS」である米国特許出願番号第10/026,066号(公開番号第20030215425号)(各々その全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示の方法によって識別される新しいエピトープが、本明細書で開示する実施形態において有用であることも考慮される。
【0092】
さらなる実施形態は、抗原またはその免疫原性断片をコードする核酸を含む免疫原性組成物に関する。本明細書の他所にて考察するように、いくつかの方法は、1もしくは複数の合成ペプチドと組み合わせて用いられる1もしくは複数のプラスミドを含む免疫療法組成物を、癌の治療に用いている。このプラスミドは、抗原提示細胞(APC)によって取り込まれた際にポリペプチドのためのメッセンジャーRNAの効率的な転写を可能とするプロモーター/エンハンサー配列の支配下に置いてよい。本明細書で開示する実施形態において用いることができるプロモーターは、当業者に公知である。そのようなプロモーターとしては、例えば、ウイルスおよび細胞プロモーターを含む。ウイルスプロモーターとしては、例えば、これらに限定されないが、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、EF1プロモーター、アデノウイルス2型由来の主要後期プロモーター、およびSV40プロモーターを含んでよい。細胞プロモーターの例としては、例えば、これらに限定されないが、マウスメタロチオネイン1プロモーター、伸長因子1アルファ(EF1‐アルファ)、MHCクラスIおよびIIプロモーター、およびCD3プロモーター(T細胞特異的発現に関する、長期的)を含む。本明細書で開示するベクターの設計に用いてよいその他のプロモーターは、当業者であれば容易に決定することができる。本開示の特定の実施形態は、サイトメガロウイルス由来のプロモーター/エンハンサー配列(CMVp)を用いる。
【0093】
ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル(BGH ポリA)を例とするポリアデニル化シグナルを、コード配列の3’末端に提供して、メッセンジャーRNAの安定性、および翻訳のための核外へ出て細胞質へと入るその移動を増加させてよい。プラスミドの取り込み後の核内への輸送を促進するために、サルウイルス40(SV40)由来の核内移行配列(nuclear import sequence)(NIS)をプラスミドのバックボーンに挿入してよい。プラスミドの設計はまた、免疫刺激性モチーフも含んでよく、例えば、CpG免疫刺激性モチーフを、NIS配列および/またはプラスミドバックボーンに配置してよい。免疫刺激性配列(ISS)とは、非メチル化CpG配列を含むオリゴデオキシリボヌクレオチドを意味する。
【0094】
ある実施形態では、免疫療法レジメンは、組換えプラスミド(pPRA‐PSM)を含む。本明細書で用いる場合、pPRA‐PSMとは、PRAME425‐433およびPSMA288‐297エピトープならびに/またはそれらの類似体(表1および2)を発現する組換えDNAプラスミドを含む、プラスミドPR12(その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、発明の名称が「METHODS AND COMPOSITIONS TO ELICIT MULTIVALENT IMMUNE RESPONSES AGAINST DOMINANT AND SUBDOMINANT EPITOPES, EXPRESSED ON CANCER CELLS AND TUMOR STROMA」である米国特許出願番号第11/454,616号(公開番号第20070004662号)に記載)を意味する。pPRA‐PSMプラスミドは、PRAMEおよびPSMAエピトープを、pAPCによってそれらの発現および提示が可能となる形でコードする。
【0095】
ある実施形態では、免疫療法組成物は、pMEL‐TYRプラスミドを含む。本明細書で用いる場合、pMEL‐TYRとは、メランA26‐35 A27L類似体およびチロシナーゼ369‐377エピトープ(表1および2)を発現するプラスミドpSEM(参照により本明細書に組み込まれる、発明の名称が「EXPRESSION VECTORS ENCODING EPITOPES OF TARGET ASSOCIATED ANTIGENS AND METHODS FOR THEIR DESIGN」である米国特許出願番号第10/292,413号(公開番号第20030228634号)にて詳述され、pMA2Mと称されている)を意味する。pMEL‐TYR、pSEM、およびpMA2Mは、本明細書にて交換可能に用いられることは理解される。pMEL‐TYRプラスミドは、メランAおよびチロシナーゼエピトープを、pAPCによってそれらの発現および提示が可能となる形でコードする。
【0096】
【表2】
【0097】
従って、種々の実施形態では、免疫原性組成物の集合体(assemblages)を含む免疫療法生成物を用いてよい。そのような集合体が、個々の組成物のセットとして1、2、もしくは3つのプラスミドを含んでよく、または単一の組成物が、2もしくは3つ以上のプラスミドを含んでいてもよい。そのような集合体はまた、プラスミドによって発現されるエピトープに対応する複数のペプチドを含んでいてもよい。同様に、それらは、個々のまたは複数のペプチドを含む組成物として提供されてもよい。ある実施形態では、1もしくは複数のプライミング/誘導/同調プラスミドが、対応するブースティング/増幅ペプチドと一緒に販売される。ある実施形態では、複数のプラスミドが、対応するペプチドなしで、一緒に販売される。さらなるある実施形態では、対応するペプチドのセットが、例えば、続いて行われる同調またはプライム応答の増幅ラウンドのために、プラスミドなしで、一緒に販売される。
【0098】
さらなる実施形態では、上記集合体の各々は、これらのプラスミドによって発現されたエピトープに対応する(すなわち、それに対する応答をブースティング/増幅する能力を有する)ペプチドを含む。ある特定の実施形態は、単独のプラスミド、および一方または両方の対応するペプチドを含む(本明細書で言及される特定のプラスミドは二価であるとして記述されるが、それらは、一価の形で増幅されてもよい)。
【0099】
ある実施形態では、臨床的有用性は、向上または増大させることができる。例えば、ある実施形態では、免疫療法レジメンは、腫瘍微小環境を改変してその免疫抑制性を低下させる薬剤を含む。本明細書で用いる場合、腫瘍微小環境とは、癌細胞に隣接する、および
その間にある領域を意味し、細胞外基質、血管細胞、およびその他の非癌細胞を包含する。ある実施形態では、例えば、完全寛解に達していない患者または内臓転移した患者などにおいて、免疫療法剤または組成物を、腫瘍微小環境を改変してその免疫抑制性を低下させる薬剤と組み合わせることによって、臨床的有用性をさらに改善することができる。そのような薬剤としては、例えば、Treg細胞の減少または腫瘍炎症の促進に有用である薬剤、およびTreg活性のダウンレギュレーションまたはその克服が可能である生体応答調節物質(BRM)が挙げられ、本明細書の他所で考察するように免疫賦活薬を含むが、これに限定されない。代表的なTreg減少剤(depleting agents)としては、例えば、IL‐2融合分子(デニロイキンジフティトックス(denileukin diphtitox ))、抗CD25抗体、シクロスホスファミド(cyclosphosphamide )、ゲムシタビン、フルダラビン、およびドキソルビシンなどが挙げられる。ある実施形態では、腫瘍微小環境を改変してその免疫抑制性を低下させる薬剤としては、例えば、シクロホスファミド、フルダラビン、選択的チロシンキナーゼ阻害剤(select tyrosine kinase inhibitors)などの小分子、LIGHT、TLRリガンド、CpG分子、およびPD‐1、CTLA‐4、TGFベータ、IL‐10に対する抗体などの生体分子が挙げられる。Treg細胞を減少させる、または腫瘍炎症を促進する薬剤の投与を含む代表的な方法は、各々その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれ、発明の名称がすべて「METHODS TO ELICIT, ENHANCE
AND SUSTAIN IMMUNE RESPONSES AGAINST MHC CLASS I-RESTRICTED EPITOPES, FOR PROPHYLACTIC AND THERAPEUTIC PURPOSES」である、2006年7月14日出願の米国特許出願番号第60/831,256号;2006年10月27日出願の同第60/863,332号;2007年7月14日出願の同第11/879,078号(公開番号第2008‐0014211号);および2007年7月14日出願のPCT出願公開番号 国際公開第2008/008541号に記載されている。ある実施形態では、Treg活性のダウンレギュレーションまたはその克服が可能である生体応答調節物質(BRM)が投与される。
【0100】
ある実施形態では、免疫賦活薬が、免疫療法レジメンの少なくとも1つの成分と共に投与される。免疫賦活薬は、免疫調節性分子であってよく、これらに限定されないが、TLRリガンド、エンドサイトーシスパターン認識受容体(PRR)リガンドなどである。従って、ある実施形態では、例えば、完全寛解に達していない患者または内臓転移した患者などにおいて、免疫療法レジメンの少なくとも1つの成分を、免疫賦活薬または生体応答調節物質と組み合わせることによって、臨床的有用性をさらに改善することができる。ある実施形態では、応答は、2治療サイクルの治療後に評価される。応答は、例えば、四量体(MHC‐多量体)陽性細胞の増加、サイトカイン分泌(例えば、グランザイムまたはガンマ‐インターフェロンの分泌)の増加、またはエフェクターもしくはエフェクター‐メモリーT細胞の割合の増加によって測定してよい。応答の評価は、末梢血液中の、または腫瘍生検で回収されたT細胞の分析に基づくものであってよい。
【0101】
免疫賦活薬
ある実施形態では、免疫療法レジメンは、腫瘍微小環境を改変してその免疫抑制性を低下させる薬剤を含む。例えば、ある実施形態では、例えば完全寛解に達していない患者または内臓転移した患者などにおいて、免疫療法剤/生成物を、腫瘍微小環境を改変してその免疫抑制性を低下させる薬剤と組み合わせることによって、臨床的有用性をさらに改善することができる。そのような薬剤の例としては、これらに限定されないが、シクロホスファミド、フルダラビン、選択的チロシンキナーゼ阻害剤などの小分子;生体分子、トール様受容体(TLR)リガンド(例:CpGモチーフ;PD‐1、CTLA‐4、TGFベータ、IL‐10などに対する抗体;および/または生体分子、LIGHTなど) が挙げられる。
【0102】
本明細書で開示する実施形態において有用であると考えられる免疫賦活薬としては、限
定されない例として:サイトカイン、ケモカイン、共刺激性分子、転写因子、およびシグナル伝達要素などの免疫応答の制御に関与する薬剤;抗原処理および抗原提示に関与する薬剤;アポトーシス経路の制御に関与する薬剤、またはDNAメチル化酵素、クロマチン制御分子、RNA制御分子などの遺伝子制御もしくはサイレンシングに関与する薬剤が挙げられる。
【0103】
本開示の他の態様では、免疫賦活薬は、限定されない例として、ペプチドグリカン、LPSもしくはそれからの類似体、非メチル化CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG
ODN)などのサイトカインもしくはケモカイン産生を引き起こす分子;それぞれTLR9およびTLR3と結合するAPCおよび自然免疫細胞上の、バクテリアdsDNA(CpGモチーフ含有)および合成dsRNA(ポリI:C)などのdsRNAを含んでよい。
【0104】
本明細書で開示する実施形態において有用であると考えられる免疫賦活薬の1つのクラスは、天然または合成の小有機分子を含み、これらは、自然免疫の経路を刺激することによって免疫調節効果を起こす。マクロファージ、樹状細胞、およびその他の細胞が、いわゆるトール様受容体(TLR)を有することが示されており、これは、微生物上の病原体関連分子パターン(PAMP)を認識する(各々その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、Thoma-Uszynski, S. et al., Science 291: 1544-1547, 2001;Akira, S., Curr. Opin. Immunol. 15: 5-11, 2003)。さらに考えられるのは、完全な合成物である抗ウイルスイミダゾキノリンなどのTLRと結合する小分子であり、例えばミキモドおよびレシキモドであり、これらは、TLR7および8と結合することによって免疫の細胞経路を刺激することが見出されている(各々その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、Hemmi, H. et al., Nat Immunol 3: 196-200, 2002;Dummer, R. et al., Dermatology 207: 116-118, 2003)。免疫賦活薬は、さらに、pAPCまたはT細胞を活性化する免疫賦活アジュバントを含んでよく、例えば:エンドサイトーシスパターン認識受容体(PRR)リガンド、キラヤサポニン、ツカレソールなどが挙げられる。
【0105】
免疫賦活薬は、微生物成分を検出する受容体と直接の相互作用を起こし得る。ある実施形態では、追加の治療分子としては、これらに限定されないが、T‐bet、STAT‐1、STAT‐4、およびSTAT‐6などの転写因子が挙げられる。加えて、シグナル伝達経路の下流で作用する分子も用いてよい。ある実施形態では、標的分子は、TLR、および例えばMyD88、NFκ‐Bなどであるがこれらに限定されないその下流のシグナル伝達分子を含んでよい。サイトカインもまた、本明細書で開示される実施形態での使用が考慮され、例えば、これらに限定されないが、インターフェロン(例:IFN‐ガンマ)、IL‐2、IL‐10、IL‐12、IL‐18、およびTGF‐ベータ GM‐CSF、flt3リガンド(flt3L)、TNF‐アルファなどである。CD40 B7‐1およびB7‐2などの共刺激因子もまた、本明細書で有用であるとして考慮される。共刺激分子と結合する抗体(抗CD40、CTLA‐4、抗OX40など)もまた、本開示の実施形態で有用であるとして考慮される。ある実施形態では、例えば、これらに限定されないが、FOXp3、B7様分子、LAG‐3リガンドなどのチェックポイントタンパク質であり、このような分子もまた、ある実施形態において有用であるとして考慮される。ある実施形態では、クロマチン制御分子およびRNA制御分子もまた考慮される。抗原処理および提示経路に存在するタンパク質、例えば、これらに限定されないが、HLAおよびTAP(抗原処理関連トランスポーター1および2(TAP1およびTAP2))、免疫もしくは標準プロテアソーム、ベータ‐2‐ミクログロブリン、およびMHCクラスIもしくはII分子などもまた、ある実施形態での使用が考慮される。樹状細胞活性化抑制因子SOSC1およびDMNT1などのDNAメチル化経路内のタンパク質もまた、本明細書で開示する実施形態において有用であるとして考慮される。アポトーシス経路に存在するタンパク質もまた、本明細書で開示する実施形態において有用であるとして考
慮される。加えて、例えば、これらに限定されないが、IL‐8、MIP‐3‐アルファ、MIP‐1‐ベータ、MCP‐1、MCP‐3、RANTESなどのケモカインもまた、本明細書で開示する実施形態で用いてよい。ある実施形態では、T細胞および/もしくは分化抗原(例えば、黒色腫分化抗原)の発現の促進または維持に関与する追加の治療分子が、開示する能動免疫療法剤との使用について本明細書にて考慮される。そのような治療分子としては、ある実施形態では、BRAF(セリン/スレオニンキナーゼ B‐Raf)の阻害剤、例えばPLX4720(そこに開示されるBRAF阻害剤に関する全内容について国際公開第2007/002325号も参照されたい)が挙げられ、これは、T細胞の増殖または残留の促進、分化抗原発現レベルの増加、および癌に対するT細胞活性の促進を行うことができる。ある実施形態では、MAPK/細胞外シグナル調節キナーゼ(MEK)阻害剤によるMAPK経路の阻害もまた考慮される。
【0106】
免疫療法の手法
最終的には、1もしくは複数の標的抗原またはエピトープに対するエフェクターT細胞応答を発生させるいずれの免疫療法レジメンも、開示する方法において用いてよい。特に、免疫原のリンパ内投与の工程を含むものが適している。プライム‐ブースト型のプロトコルも有利であると考えられる。1つの「プライム‐ブースト」プロトコルが、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、発明の名称が「Methods and reagents for
vaccination which generate a CD8 T cell immune response」である米国特許第6,663,871号で考察されている。本明細書で開示する方法に適用される代表的な免疫療法レジメンは、免疫応答を発生もしくは同調させる初期組成物、およびその応答を効果レベルまで強化、増大、もしくは向上させる第二組成物を用いる前臨床モデルに基づいている。ある実施形態では、第一および第二組成物は、同一の形態であり、ある実施形態では、第一および第二組成物は、異なる形態である。本明細書で開示する実施形態において考慮される「同調」免疫原は、多くの実施形態において、誘導されたT細胞系列の免疫プロファイルを特に安定化させる誘導を含む。前臨床モデルのすべての特徴がヒトにおける臨床的使用で観察されたわけではないが、発明者らとしては、プライミング/誘導/同調用量は、そうでなければブースティング用量で用いられるペプチド投与の繰り返しによって引き起こされかねない免疫寛容誘導効果の回避に重要であり得ると理解している。プラスミドプライム‐ペプチドブーストレジメンを用いる臨床応答は、プラスミド単独による免疫化後に得られるものよりも優れていることが示されているが(その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、Tagawa et al., "Phase I Study of Intranodal Delivery
of a Plasmid DNA Vaccine for Patients with Stage IV Melanoma" Cancer, July 1, 2003, Vol. 98, Number 1)、例えばタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、プラスミド、RNA、ウイルスベクターなどの単一の形態の免疫原を用いるプライム‐ブーストプロトコルも、本明細書で開示する方法に用いてよい。
【0107】
ある実施形態では、免疫療法レジメンは、プライム‐ブーストプロトコルまたは誘導‐増幅プロトコル(induce-and-amplify protocol)を含んでいてよい。ある実施形態では、免疫療法レジメンは、同調‐増幅プロトコル(entrain-and-amplify protocol)を含んでよい。従って、ある実施形態では、能動免疫療法レジメンは、プラスミド、および1もしくは2つ以上のペプチドまたはその類似体を含み、これらは、対象に癌治療において、そのようなレジメン/プロトコルのいずれを用いて投与してもよい(各々その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、各々発明の名称が「METHOD TO ELICIT, ENHANCE AND SUSTAIN IMMUNE RESPONSES AGAINST MHC CLASS-I RESTRICTED EPITOPES, FOR PROPHYLACTIC OR THERAPEUTIC PURPOSES」である、米国特許出願番号第11/879,078号(公開番号第2008‐0014211号)、および米国特許出願番号第10/871,707号(公開番号第2005‐0079152号)、米国特許出願番号第11/323,572号(公開番号第2006‐0165711号)に開示されるように)。例えば、1もしくは複数の開始用量以外でプラスミドを用いる、プラスミドもしくはペプチド単独
に依存する、または他のタイプのブースティング/増幅試薬を用いるなど、その他の免疫化プロトコルは、本開示の範囲から除外されない。ある実施形態は、2つ以上の標的抗原または1もしくは2つ以上のそれらのエピトープを発現する二価または多価プラスミドを包含する。
【0108】
ある実施形態は、同調‐増幅治療レジメンを用いて多価攻撃を達成するものであり、それによって、攻撃する腫瘍の感受性を高めるという利点が得られる。腫瘍細胞上の2つ以上の抗原が標的とされる場合、抗腫瘍剤の効果濃度が、それに従って高められる。血管構造などの腫瘍に関連する間質への攻撃により、腫瘍細胞の、それらを標的とする1もしくは複数の薬剤に対する接触性も高めることができる。従って、正常組織の一部でも発現される抗原さえも、さらに多価攻撃で標的とされるその他の抗原がその組織によって発現されない場合は、標的抗原としてより強い考慮の対象となり得る。
【0109】
ある実施形態では、本明細書で開示する方法に従って選別された患者に適用される代表的な免疫療法レジメンは、例えばpPRA‐PSMまたはpMEL‐TYRなどのプラスミドによるプライミング、ならびに例えば、それぞれE‐PRAおよびE‐PSM、またはE‐MELおよびE‐TYRなどの対応するペプチド類似体によるブースティングを含む。
【0110】
ある実施形態では、この方法は、例えば1〜6のプライミング/誘導/同調用量を含むレジメンの適用を含んでよい。ある実施形態では、この方法は、複数のプライミング/誘導/同調用量の投与を含んでよく、ここで、前記用量は、1から約7日の期間にわたって投与される。プライミング/誘導/同調用量、ブースティング/増幅用量、またはプライミング/誘導/同調およびブースティング/増幅用量は、複数ペアの注射によって送達してよく、ここで、ペアの第一のメンバーはそのペアの第二のメンバーの約4日以内に投与してよく、およびここで、異なるペアの第一のメンバー間の間隔は、少なくとも約14日であってよい。最後のプライミング/誘導/同調用量と最初のブースティング/増幅用量との間の間隔は、例えば、約7日から約100日の間であってよい。
【0111】
本開示で考慮される場合、T細胞応答に関する「ブースティング/増幅の」または「ブースト/増幅」の用語は、多くの実施形態において、特定の応答に関与するT細胞の細胞数、活性化細胞数、活性のレベル、増幅速度、または類似のパラメータを増加させるためのプロセスを含む。ある実施形態では、免疫療法レジメンまたはプロトコルは、誘導または増幅フェーズ、および抗原発現の変動に対する応答性に基づいて調節してよい。例えば、プライミング/誘導/同調用量を数セット行った後にブースティングまたは増幅を行うのではなく、プライミングまたは誘導または同調用量を、検出可能な応答が得られるまで繰り返し投与し、その後に1もしくは複数のブースティングまたは増幅用量を投与してよい。同様に、計画されたペプチドのブースティング/増幅または維持用量は、それらの効果の減衰、抗原特異的制御性T細胞の数の増加、または何らかのその他の寛容化の証拠の観察が見られた場合は中断してよく、ブースティング/増幅用量を再開する前に、さらなるプライミング/誘導/同調用量を投与してよい。免疫化の方法による免疫応答性を評価およびモニタリングするための診断技術の統合については、各々その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、いずれも発明の名称が「IMPROVED EFFICACY OF ACTIVE IMMUNOTHERAPY BY INTEGRATING DIAGNOSTIC WITH THERAPEUTIC METHODS」である2004年6月17日出願の米国特許仮出願番号第60/580,964号および2005年6月17日出願の米国特許出願番号第11/155,928号(公開番号第20050287068号)に、より詳細に考察されている。
【0112】
ある実施形態では、ベクター組成物が鼠径リンパ節へ注射され、続いてペプチド抗原がボーラス投与される。ある実施形態では、1もしくは2つ以上のプライミング/誘導/同
調組成物、および1もしくは2つ以上のブースティング/増幅組成物の抗原がリンパ内投与される。ある実施形態では、1もしくは2つ以上のプライミング/誘導/同調組成物、または1もしくは2つ以上のブースティング/増幅組成物の抗原がリンパ内投与される。例えば、ある実施形態では、1もしくは2つ以上のブースティング/増幅組成物の抗原がリンパ内投与される。ある実施形態では、1もしくは2つ以上の成分を、通常は数時間から数日の期間にわたって、注入により送達してよい。例えば、ある実施形態では、免疫療法レジメンまたはプロトコルは、1もしくは2つ以上のリンパ節への注射または注入が必要であり、まず、組換えDNAの投与(約0.01から約1mg/kgなど、約0.1から約0.5mg/kgなど、約0.001から約10mg/kg、約0.005から約5mg/kgの用量範囲)をある回数(例:1から10、もしくはそれ以上、2から8、3から6、4、もしくは5など)行うことから開始し、続いて1もしくは2回以上の、例えば2、または3、または4、または5、または6、または7、または8、または9、または10回の、好ましくは免疫学的に不活性である溶媒または製剤中のペプチドの投与(約0.01から約1mg/kgなど、約0.1から約0.5mg/kgなど、好ましくは約0.005から約5mg/kgである、約1mg/kgから約10mg/kgの用量範囲)を行う。用量は、必ずしも対象のサイズに比例して変化させるものではないため、これらの範囲の部分にて、ヒトに対する用量が、低くなる傾向であってよく、マウスに対する用量が、高くなる傾向にあってよい。ある実施形態では、注射時における好ましい濃度のプラスミド(またはプラスミドの効果量)およびペプチド(またはペプチドの効果量)は、一般に、約0.1mg/mlから約10mg/mlであり、約0.5から約5mg/mlなど、約1から約2.5mg/mlなど、または約1mg/mlであり、通常は、対象の種のサイズとは無関係である。しかし、特に強力であるペプチドは、この範囲の下限に近い最適濃度(効果量)を有する場合があり、例えば、約10から約50μg/ml、または約20から約60μg/ml、または約30から約70μg/ml、または約40から約80μg/ml、または約50から約90μg/mlなどの約1から約100μg/mlである。
【0113】
DNAの最後のプライミング/誘導/同調用量とペプチドの最初のブースティング/増幅用量との間の時間はそれほど重要ではない。ある実施形態では、プライミング/誘導/同調とブースティング/増幅との間の時間は、約2週間または約3週間または約1ヶ月など、約7日間もしくはそれ以上であり、数ヶ月を超えてもよい。プライミング/誘導/同調用量および/またはブースティング/増幅用量の複数回の注射を、数日間(2日、または3日、または4日、または5日、または6日、または7日などの、好ましくは2〜7日)にわたる注入に置き換えることで減らしてもよい。注入は、注射によって与えられていたであろう物質と類似の物質のボーラス注入から開始し、続いて緩徐注入(slow infusion)(約24から約12000マイクロリットル/日にて、DNAについては、約25から約2500マイクログラム/日、ペプチドについては、約0.1から約10,000マイクログラム/日を送達)を行うことが有利であり得る。これは、手作業によって、またはインスリンポンプなどのプログラム可能ポンプを用いることによって行ってよい。そのようなポンプは、当業者に公知であり、ある実施形態において望ましいものであり得る、周期的なスパイクおよびその他の用量プロファイルを可能とするものである。
【0114】
その他の治療法
ある実施形態では、本明細書で開示する免疫療法レジメンを、外科手術、放射線療法、化学療法、ホルモン療法などを含むがこれらに限定されないその他の従来の癌治療法と組み合わせてよい。ある実施形態では、本明細書で開示する免疫療法レジメンを、臨床的有用性の向上または増大のために、アジュバントもしくはネオアジュバント療法または治療プロトコルにて用いてよい。ある実施形態では、免疫療法レジメンを、臨床的有用性の向上または増大のために、外科手術、放射線療法、化学療法、生物療法、遺伝子療法、またはホルモン療法などが関与する補助的療法または強化療法などの標準的な腫瘍治療パラダ
イムに組み込んでよい。
【0115】
本明細書で用いる場合、「ネオアジュバント療法治療プロトコル」または「ネオアジュバント療法」とは、外科手術またはその他の続いて行われる治療法の前に行われる治療法または治療を意味する。すなわち、本明細書で述べる免疫療法レジメンの少なくとも1つの治療サイクルを、例えば、これらに限定されないが、外科手術、放射線療法、または直接化学療法などの腫瘍切除治療の前に完了させる。種々の実施形態では、腫瘍切除治療は、当業者である医師の決定に従って、治療サイクル完了後の数日または2週間以内に施してよい。従って、ネオアジュバント治療療法における免疫療法レジメンの使用により、患者の完全および部分寛解率の向上、再発率の低下、および/または無病生存率の中央値の上昇を得ることができ、それによって臨床的有用性が高められる。
【0116】
ある実施形態では、治癒の可能性を高めるために、免疫療法レジメンをアジュバント療法に用いてよい。すなわち、癌を、例えば、これらに限定されないが、外科手術による除去、放射線療法、または癌細胞に対して直接に細胞傷害性である用量での化学療法などの腫瘍切除治療によって完全寛解の状態としてよい。続いて免疫療法レジメンを施すことで、再発率の低下、および無病生存期間の長期化が得られる。免疫療法レジメンは、初期治療完了後の数時間、数日、または数週間以内に施してよい。
【0117】
ある実施形態では、免疫療法レジメンを強化療法として用いてよい。これは、完全寛解が必ずしも得られないという点を除いては、上述のアジュバント療法に類似している。この療法では、免疫療法レジメンは、進行までの期間および無進行生存期間を改善または延長し(部分寛解の場合)、ならびに再発率または再発までの時間を減少させる (完全寛解の場合)。
【0118】
ある実施形態では、免疫療法レジメンは、補助的療法、すなわち腫瘍切除治療とさらに組み合わせてその治療の効果を高めるものとして用いてよい。主たる治療が完了するまで免疫療法レジメンが開始されない上述のアジュバント療法とは対照的に、ここでは、2つの治療が一緒に用いられて、応答率または疾患制御率が高められる(すなわち、部分または完全寛解率)。2つの治療の実際のスケジュールは、上述のものと類似していてよいが、免疫療法レジメンの治療サイクルは、化学療法または放射線療法などの主たる治療のラウンドと交互に行ってよい。ある実施形態では、例えば、プライミング(誘導/同調)およびブースティング(増幅)段階の間の時間、または増幅組成物の過程の間の時間など、免疫療法レジメンの治療サイクルの間の時間に、外科手術を行ってよい。
【0119】
代表的な実施形態では、皮膚または皮下転移を有するが、まだ内臓転移は起こしていない患者において、免疫療法を用いて、疾患の安定化、または発生部位および/もしくはリンパ系での腫瘍量の減少もしくは切除を行い、ならびに皮膚または皮下腫瘍が外科手術で摘出される。
【0120】
代表的な実施形態では、皮膚または皮下転移を有するが、まだ内臓転移は起こしていない患者において、皮膚または皮下腫瘍の摘出の前に、免疫療法を用いて、疾患の安定化、またはリンパ系での腫瘍量の減少もしくは切除を行う。従って、免疫療法レジメンは、腫瘍除去の前に疾患を安定化して長期間の寛解を得るために、ネオアジュバント療法に含まれていてよい(第一にワクチン、第二に標準的な治療)。このような手法に感受性を持つ代表的な癌としては、腎臓癌および黒色腫が挙げられる。
【0121】
黒色腫を例とするいくつかの癌の場合、治療の典型的な過程は、発生部位の腫瘍の外科手術による摘出を含む。そのような治療の過程はまた、様々な固形腫瘍、特に、必ずしもこれに限定されないが、その疾患の初期ステージにも適用可能である。例としては、前立
腺癌および腎臓癌が挙げられる。従って、特定の実施形態では、免疫療法レジメンは、既に発症していた疾患の広がり度合いに応じて、アジュバント療法または強化療法として適用される。
【0122】
組成物の送達方法
ある実施形態では、本開示は、本明細書で開示する免疫療法レジメンの1もしくは2つ以上の治療剤を投与する方法に関する。そのような方法としては、これらに限定されないが:リンパ内、リンパ節内、リンパ節周囲、経口、経皮、静脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、粘膜投与などを含んでよい。投与は、治療効果を有する量にて、投与製剤に適合性を有するいかなる方法で行なってもよい。本開示の免疫原性組成物の効果量または用量は、治療される対象に所望される応答を提供することが見出されている量である。CTL応答を引き起こすためのワクチン送達の特に有用な方法は、各々発明の名称が「A METHOD OF INDUCING A CTL RESPONSE」である米国特許第6,994,851号、同第6,977,074号、同第7,364,729号、ならびに米国特許出願番号第11/418,497号(公開番号第20090035252号)、および同第11/418,397号、ならびに、発明の名称が「A METHOD OF ENHANCING A T-CELL RESPONSE」である米国特許出願番号第12/070,156号(公開番号第20080199458号)に開示されており、これらの各々は、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0123】
ある実施形態において、本明細書で開示する組成物は、リンパ系またはリンパ器官に直接投与される。特定の実施形態では、これは、リンパ節への投与である。輸入リンパ管を同様に用いてよい。リンパ節の選択はそれほど重要ではない。鼠径リンパ節を、そのサイズおよび到達しやすさのために用いてよいが、腋窩および頸部リンパ節、ならびに扁桃腺も同様に有利であり得る。免疫応答の誘導または増幅には、単一のリンパ節への投与で十分であり得る。ある実施形態では、複数のリンパ節への投与により、応答の信頼性および強度を高めることができる。多価応答を促進し、従って複数のブースティング/増幅ペプチドが用いられる実施形態については、各ペプチドを、いずれの場合でも、いずれのリンパ節に投与してもよい。従って、例えば、1つのペプチドを右鼠径リンパ節に、第二のペプチドを左鼠径リンパ節に同時に投与してよい。追加のペプチドの投与は、他のリンパ節に行ってよく、それらが誘導部位でない場合であってもよく、それは、Tリンパ球の遊走のために、開始用量とブースティング/増幅用量とを同じ部位に投与することは必須ではないからである。別の選択肢として、追加のペプチドは、誘導と増幅との間の時間間隔が一般的にはそれほど重要なパラメータではないことから、既に投与したブースティング/増幅ペプチドに用いたものと同じリンパ節に、例えば数日後に投与してもよい。従って、ある実施形態では、この時間間隔は、約1週間より長くてもよい。ブースティング/増幅ペプチドの投与の分離は、それらのMHC結合親和性が類似している場合、一般的には重要性は低いが、親和性が異なるにつれ、重要性は増し得る。種々のペプチドの不適合製剤の場合も、分離投与が有用となり得る。
【0124】
本明細書で開示する免疫療法組成物の成分を患者のリンパ系またはリンパ器官へ導入するために、成分の各々を、リンパ管、リンパ節、脾臓、またはリンパ系のその他の適切な部分へ指向させる。ある実施形態では、各成分は、ボーラス投与される。ある実施形態では、1もしくは2つ以上の成分が、一般的には数時間から数日にわたっての注入によって送達される。特定の実施形態では、免疫療法組成物は、リンパ節へカテーテルまたはニードルを挿入し、そのカテーテルまたはニードルを送達の間を通して維持することにより、鼠径または腋窩リンパ節などのリンパ節へ指向される。適切なニードルまたはカテーテルは、金属またはプラスチック製(例:ポリウレタン、ポリ塩化ビニル(PVC)、テフロン(TEFLON)、ポリエチレンなど)のものが利用可能である。カテーテルまたはニードルを例えば鼠径リンパ節へ挿入する場合、鼠径リンパ節は、Tegaderm(商標)透明ドレッシング材(Tegaderm(商標)、セントポール,ミネソタ州,米国)
を用いて固定された24G3/4のVialon(商標) Insyte W(商標)カニューレおよびカテーテル(ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)、米国)を用いて、超音波検査による制御下にて穿刺される。この手順は、通常、経験のある放射線専門医によって行われる。カテーテル先端部が鼠径リンパ節内部に位置することは、最小体積の生理食塩水を注射することで、リンパ節のサイズが直ちに目に見えて増加することによって確認される。後者の手順により、先端部がリンパ節内部にあることを確認することができる。この手順は、先端部がリンパ節から滑り出していないことを確認するために行ってよく、カテーテルの刺入後、複数の日に繰り返し行ってよい。先端部がリンパ節内部の位置から滑り出している場合は、新しいカテーテルを刺入してよい。
【0125】
免疫原性組成物の対象への送達または投与には、種々のパラメータを考慮してよい。加えて、用量レジメンおよび免疫化スケジュールを用いてよい。一般的に、免疫療法組成物中の成分の量は、患者および抗原によって様々であり、応答を誘導する抗原活性;患者の系内のリンパ液流速;対象の体重および年齢;治療される疾患および/または病態の種類;疾患または病態の重症度;過去の、または同時に行われている治療介入;個人の免疫系の抗体合成能力;所望される保護の度合い;投与方法などの因子に依存し、これらはすべて医師によって容易に決定され得る。
【0126】
一般的に、注入によって送達される場合、本明細書で開示する免疫療法組成物は、約1から約500マイクロリットル/時間、または約24から約12000マイクロリットル/日の速度で送達してよい。免疫療法組成物の濃度は、24時間の間に約0.1マイクログラムから約10000マイクログラムの治療組成物が送達されるものである。流速は、成人の鼠径リンパ節を流れるリンパ液が1分あたりおよそ約100から約1000マイクロリットルであるという知見に基づいている。目的は、リンパ系におけるワクチン製剤の局所濃度を最大化することである。任意の免疫療法薬についてヒトにおける注入の最大効果レベルまたは最適レベルを決定するために、患者に若干量の実験的な検査が行われる。
【0127】
ある実施形態では、本明細書で述べる免疫原性組成物は、ある回数の連続する用量として投与してよい。そのような用量は、2、3、4、またはそれ以上の適切な免疫応答を得るのに必要な回数の用量であってよい。ある実施形態では、免疫原性組成物のこれらの用量は、互いに約数秒または数分以内に、右または左鼠径リンパ節へ投与してよいことが考慮される。例えば、プラスミド(プライム)をまず右リンパ節へ注射し、続いて数秒または数分以内に第二のプラスミドを右または左鼠径リンパ節へ注射してよい。ある実施形態では、1もしくは2つ以上の免疫原を発現する1もしくは2つ以上のプラスミドの組み合わせを投与してよい。ある実施形態では、リンパ節への第一の注射の後に続いて行われる注射は、第一の注射後、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10分、もしくはそれを超える時間以内であってよいが、約30、40、50、もしくは60分を超えない。右および左リンパ節へ別々に2つのペプチドを投与する場合も、同様の考慮が適用される。免疫原性組成物の用量の投与は、例えば、1、2、3、4、5、6、もしくは7、またはそれを超える日数が、連続する投与の間で経過するなど、複数日数の間隔で行われることが望まれ得る。ある実施形態では、組成物の1もしくは複数の続いて行われる投与が、両側の鼠径リンパ節への注射によって、最初の用量の投与後、約1、2、3週、もしくはそれを超える週数以内、または約1、2、3ヶ月、もしくはそれを超える月数以内に施されることが望まれ得る。
【0128】
キット
ある実施形態では、本明細書で開示する免疫療法組成物の成分のすべて、またはサブセットを、キットとして一緒にパッケージするか、またはまとめてよい。ある実施形態では、治療タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、エピトープ、またはそれをコードする核酸を、一緒に、または単一の分子として、または分子のセットとしてパッケージしてよい。
別の選択肢として、本明細書で開示する組成物は、治療薬としての用途のために本明細書で開示するようにそれらを互いに組み合わせて用いることができる方法を説明した印刷物の形態、または機械読み取り用媒体としての説明書と共に、パッケージし、個々に販売してよい。
【0129】
ある実施形態では、キットは、適切な容器手段中に、1もしくは2つ以上の治療剤および本明細書で開示する方法を用いるための説明書を含んでいてよい。ある実施形態では、キットは、単一の容器手段を有していてよく、および/または、例えば癌などの増殖性疾患に起因する疾患もしくは病態の治療のための1もしくは2つ以上の治療剤の免疫学的または治療効果製剤などの追加の化合物のための別個の容器手段を有していてよい。
【0130】
キットの成分が1もしくは2つ以上の溶液として提供される場合、溶液は水溶液であり、滅菌水溶液が特に好ましい。組成物はまた、送達可能および/または注射可能組成物として製剤してもよい。そのような実施形態では、容器手段自体が、シリンジ、ピペット、および/またはその他の器具であってよく、それらから、製剤を対象へ送達もしくは注射してよく、ならびに/またはキットのその他の成分への適用および/もしくはそれらとの混合さえも行ってよい。ある実施形態では、キットの成分は、1もしくは複数の乾燥粉末として提供してよい。成分(例:試薬)が乾燥粉末として提供される場合、粉末は、適切な溶媒を添加することで再構築されてよい。溶媒も別の容器手段中にて提供されてよいことは想定される。ある実施形態では、キットの1もしくは2つ以上の成分は、溶液または乾燥粉末として提供されてよい。
【0131】
ある実施形態では、プラスミドは、治療タンパク質、ペプチド、エピトープ、またはそれらをコードする核酸と一緒に販売されてよい。ある実施形態では、治療タンパク質、ペプチド、エピトープ、またはそれらをコードする核酸のセットが、プラスミドなしで一緒に販売されてよい。ある実施形態では、本明細書で開示する免疫療法レジメンを含む成分の各々は、別々に販売されてよい。
【0132】
容器手段は、一般に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ、および/またはその他の容器手段を含み、その中へ1もしくは2つ以上の治療剤を入れてよい。キットはまた、薬理学的に許容される滅菌バッファーおよび/またはその他の希釈剤を含有する第二の容器手段も含んでいてよい。ある実施形態では、キットはまた、市販用に、本明細書に開示する方法を実践するための物質、およびその他の試薬容器を密封状態で入れるための手段も含んでよい。そのような容器としては、例えば、射出成形もしくは中空成形したプラスチック容器を含んでよく、その中に所望されるバイアルが保持される。容器の数または種類に関わらず、本明細書で述べる1もしくは複数のキットはまた、対象の体内への1もしくは2つ以上の治療剤の注射/投与の補助を行うための器具を含むか、またはこれと共にパッケージされてもよい。そのような器具は、例えば、これらに限定されないが、シリンジ、ポンプ、および/またはそのような医学的に承認された送達用輸送手段のいずれであってもよい。
【0133】
従って、ある実施形態では、単一のエピトープまたはエピトープのセットを標的とするプライミング/同調/誘導およびブースティング/増幅組成物を、一緒にパッケージしてよい。他の場合では、複数のプライミング/同調/誘導組成物を1つのキットにまとめ、対応するブースティング/増幅組成物を、別のキットにまとめてよい。別の選択肢として、組成物は、示された免疫化プロトコルまたは免疫療法レジメンの有益な結果を得るためにそれらを互いに組み合わせて用いることができる方法を説明した、印刷物の形態または機械読み取り用媒体としての説明書と合わせて、パッケージし、個々に販売してよい。さらなる変形は、当業者に明らかであろう。各々その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、各々発明の名称が「COMBINATIONS OF TUMOR-ASSOCIATED ANTIGENS IN DIAGN
OSTICS FOR VARIOUS TYPES OF CANCERS」である米国特許出願番号第11/155,288号(公開番号第20060008468号)および同第11/323,964号(公開番号第2006‐159689号)、ならびに発明の名称が「IMPROVED EFFICACY OF ACTIVE IMMUNOTHERAPY BY INTEGRATING DIAGNOSTIC WITH THERAPEUTIC METHODS」である米国特許出願番号第11/155,928号(公開番号第20050287068号)に記載のように、特定のプロトコルまたはレジメンに用いられ得る組成物のすべてを含むわけではない種々のパッケージング方式を用いることで、例えば、腫瘍抗原発現、または免疫療法薬もしくはその種々の成分に対する観察された応答に基づくなど、治療の個別化の手助けとなる。
【0134】
本出願にて既に開示したものに加えて、以下の出願が、その全ての内容について参照により本明細書に明確に組み込まれる。各々発明の名称が「CANCER IMMUNOTHERAPY AND METHOD OF TREATMENT」である、2009年10月23日出願の米国特許仮出願番号第61/279,621号;2009年10月24日出願の同第61/254,657号;および2009年10月28日出願の同第61/255,850号は、各々、対象において標的抗原に対するエフェクターT細胞応答を発生させる設計および実践のための改良された戦略に関し、各々その全ての内容が参照により本明細書に明確に組み込まれる。抗原に対するクラスI MHC拘束性T細胞応答、ならびに特定のエフェクターおよびメモリーCTL応答の誘導、同調、維持、調節、ならびに増幅に開示する類似体を用いる有用な方法は、米国特許第6,994,851号、同第6,977,074号、および同第7,364,729号、ならびに米国特許出願番号第10/871,707号(公開番号第2005‐0079152号)、および発明の名称が「METHODS TO ELICIT, ENHANCE AND SUSTAIN
IMMUNE RESPONSES AGAINST MHC CLASS I-RESTRICTED EPITOPES, FOR PROPHYLACTIC OR THERAPEUTIC PURPOSE」である米国特許出願番号第11/323,572号(公開番号第2006‐0165711号)に記載されている。類似体はまた、さらに最適化された類似体を得るための研究に用いてもよい。数多くのハウスキーピングエピトープが、各出願の発明の名称が「EPITOPE SEQUENCES」である米国特許出願番号第10/117,937号(公開番号第2003‐0220239 A1号)および同第10/657,022号(公開番号第2004‐0180354号)、ならびにPCT出願番号第PCT/US2003/027706号(公開番号国際公開第04/022709A2号;ならびに2001年4月6日出願の米国特許仮出願番号第60/282,211号;2001年11月7日出願の同第60/337,017号;2002年5月7日出願の同第60/363,210号;および2002年9月5日出願の同第60/409,123号に提供されている。類似体はさらに、これらの出願に記載の種々の方法のいずれにて用いてもよい。本類似体を含んでよいか、または含むエピトープクラスターは、発明の名称が「EPITOPE CLUSTERS」である、2000年4月28日出願の米国特許出願番号第09/561,571号に開示され、より詳細に明らかにされている。本類似体を用い、送達するための方法は、各々発明の名称が「A METHOD OF INDUCING A CTL RESPONSE」である米国特許出願番号第09/380,534号および米国特許第6,977,074号(2005年12月20日発行)およびPCT出願番号第PCT/US98/14289号(公開番号国際公開第99/02183A2号)に記載されている。そのような免疫療法薬のための有益なエピトープを選別する原理は、すべて発明の名称が「EPITOPE SYNCHRONIZATION IN ANTIGEN PRESENTING CELLS」である2000年4月28日出願の米国特許出願番号第09/560,465号、2001年12月7日出願の同第10/026,066号(公開番号第2003‐0215425 A1号)、および2001年11月7日出願の同第10/005,905号、発明の名称が「METHOD OF EPITOPE DISCOVERY」である米国特許第6,861,234号(2005年5月1日発行;米国特許出願番号第09/561,074号);発明の名称が「EPITOPE CLUSTERS」であり、2000年4月28日出願の米国特許出願番号第09/561,571号;発明の名称が「ANTI-NEOVASCULATURE PREPARATIONS FOR CANCER」であり、2002年5月7日出願の米国特許出願番号第10/094,699号
(公開番号第2003‐0046714 A1号);いずれも発明の名称が「EPITOPE SEQUENCES」であり、いずれも2002年4月4日出願の米国特許出願番号第10/117,937号(公開番号第2003‐0220239 A1号)および第PCTUS02/11101号(公開番号国際公開第02/081646A2号);ならびにいずれも発明の名称が「EPITOPE SEQUENCES」であり、いずれも2003年9月5日出願の米国特許出願番号第10/657,022号およびPCT出願番号第PCT/US2003/027706号(公開番号国際公開第04/022709A2号)に開示されている。ワクチンプラスミドの設計全体の態様は、発明の名称が「EXPRESSION VECTORS ENCODING EPITOPES
OF TARGET-ASSOCIATED ANTIGENS」であり、2000年4月28日出願の米国特許出願番号第09/561,572号;および発明の名称が「XPRESSION VECTORS ENCODING EPITOPES OF TARGET-ASSOCIATED ANTIGENS AND METHODS FOR THEIR DESIGN」であり、2002年11月7日出願の同第10/292,413号(公開番号第2003‐0228634
A1号);いずれも発明の名称が「EXPRESSION VECTORS ENCODING EPITOPES OF TARGET-ASSOCIATED ANTIGENS」である、2002年8月20日出願の米国特許出願番号第10/225,568号(公開番号第20030138808号)、2003年8月13日出願のPCT出願番号第PCT/US2003/026231号(公開番号国際公開第2004/018666号);ならびに発明の名称が「AVOIDANCE OF UNDESIRABLE REPLICATION
INTERMEDIATES IN PLASMID PROPAGATION」である米国特許第6,709,844号に開示されている。特定の癌に対する免疫応答の誘導に特定の有益性を有する具体的な抗原の組み合わせは、すべて発明の名称が「COMBINATIONS OF TUMOR-ASSOCIATED ANTIGENS IN VACCINES FOR VARIOUS TYPES OF CANCERS」である、2003年6月17日出願の米国特許仮出願番号第60/479,554号および2004年6月17日出願の米国特許出願番号第10/871,708号(公開番号第20050118186号)およびPCT特許出願番号第PCT/US2004/019571号(公開番号国際公開第2004/112825号)に開示されている。各々その対応する全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、すべて発明の名称が「ANTI-NEOVASCULATURE PREPARATIONS FOR CANCER」である米国特許第7,252,824号(2007年8月7日発行)、米国特許出願番号第11/073,347号(公開番号第20050260234号)、および同第11/772,811号(公開番号第20090208537号)に開示されるように、腫瘍の血管新生に関連する抗原(例:PSMA、VEGFR2、Tie‐2)もまた、癌性疾患に関して有用である。生体応答調節物質の標的化投与によって免疫応答を誘発、維持、および操作する方法は、2004年12月29日出願の米国特許仮出願番号第60/640,727号に開示されている。免疫応答の誘導においてCD4+細胞をバイパスする方法は、2004年12月29日出願の米国特許仮出願番号第60/640,821号に開示されている。標的生物、細胞、および疾患に関連する代表的な疾患、生物、ならびに抗原およびエピトープは、発明の名称が「METHOD OF INDUCING A CTL RESPONSE」である2001年2月2日出願の米国特許第6,977,074号(2005年12月20日発行)に記載されている。代表的な方法は、いずれも発明の名称が「COMBINATIONS OF TUMOR- ASSOCIATED ANTIGENS IN DIAGNOTISTICS FOR VARIOUS TYPES OF CANCERS」である、2004年6月17日出願の米国特許仮出願番号第60/580,969号、および2006年1月12日公開の米国特許出願番号第20060008468‐A1号に記載されている。方法および組成物は、発明の名称が「COMBINATIONS OF TUMOR- ASSOCAITED ANTIGENS IN COMPOSITIONS FOR VARIOUS TYPES OF CANCER」である、2004年12月29日出願の米国特許仮出願番号第60/640,598号にも開示されている。本類似体の使用を含む免疫化の方法による免疫応答性を評価およびモニタリングするための診断技術の統合については、いずれも発明の名称が「IMPROVED EFFICACY OF ACTIVE IMMUNOTHERAPY BY INTEGRATING DIAGNOSTIC WITH THERAPEUTIC METHODS」である2004年6月17日出願の米国特許仮出願番号第60/580,964号および2005年12月29日公開の米国特許出願番号第2005‐0287068‐A1号に、より詳細に考察されている。免疫原性ポリペプチドをコードするベクターは、発明の名称が「EXPRESSION VECTORS ENCODING EP
ITOPES OF TARGET-ASSOCIATED ANTIGENS AND METHODS FOR THEIR DESIGN」である2002年11月7日出願の米国特許出願番号第10/292,413号(公開番号第2003‐0228634 A1号)、および発明の名称が「METHODS AND COMPOSITIONS TO ELICIT MULTIVALENT IMMUNE RESPONSES AGAINST DOMINANT AND SUBDOMINANT EPITOPES, EXPRESSED ON CANCER CELLS AND TUMOR STROMA」である2005年6月17日出願の米国特許仮出願番号第60/691,579号に開示されている。主題である方法および組成物を含むさらなる有用な開示は、発明の名称が「MULTIVALENT ENTRAIN-AND-AMPLIFY IMMUNOTHERAPEUTICS FOR CARCINOMA」である、2005年6月17日出願の米国特許仮出願番号第60/691,581号に記載されている。上記段落で述べた特許出願および特許の各々は、それが教示する事項すべてについて、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる。さらなる類似体、ペプチド、および方法は、すべて2005年6月17日に出願された、発明の名称が「EPITOPE ANALOGS」である2006年3月16日公開の米国特許出願公開番号第2006‐0057673 A1号および発明の名称が「EPITOPE ANALOGS」であるPCT出願公開番号国際公開第2006/009920号に開示されている。例として、これらに限定されないが、各参考文献は、クラスI MHC拘束性エピトープ、類似体、類似体の設計、エピトープおよび類似体の使用、エピトープの使用および作製の方法、ならびにそれらの発現のための核酸ベクターの設計および使用に関して教示される事項について、参照により組み込まれる。参照により本明細書に明確に組み込まれるその他の特許出願としては:発明の名称が「METHODS TO TRIGGER, MAINTAIN AND MANIPULATE IMMUNE RESPONSES BY TARGETED ADMINISTRATION OF BIOLOGICAL RESPONSE MODIFIERS INTO LYMPHOID ORGANS」であり、2005年12月29日出願の米国特許出願番号第11/321,967号(公開番号第2006‐0153844号)、発明の名称が「METHODS TO ELICIT ENHANCE AND SUSTAIN IMMUNE REPONSES AGAINST MCH CLASS I RESTRICTED EPITOPES, FOR PROPHYLACTIC OR THERAPEUTIC PURPOSES」であり、2005年12月29日出願の米国特許出願番号第11/323,572号(公開番号第2006‐0165711号) ,発明の名称が「METHODS TO BYPASS CD4+ CELLS IN THE INDUCTION OF AN IMMUNE RESPONSE」であり、2005年12月29日出願の米国特許出願番号第11/323,520号(公開番号第2008‐0124352号)、発明の名称が「COMBINATION OF
TUMOR-ASSOCIATED ANTIGENS IN COMPOSITIONS FOR VARIOUS TYPES OF CANCERS」であり、2005年12月29日出願の米国特許出願番号第11/323,049号(公開番号第2006‐0159694号)、発明の名称が「COMBINATIONS OF TUMOR-ASSOCIATED ANTIGENS IN DIAGNOSTICS FOR VARIOUS TYPES OF CANCERS」であり、2005年12月29日出願の米国特許出願番号第11,323,964号(公開番号第2006‐0159689号)、発明の名称が「EPITOPE ANALOGS」であり、2005年6月17日出願の米国特許仮出願番号第60/691,889号である。T細胞応答を高める方法は、米国特許出願番号第12/070,156号(公開番号第2008‐0199485号)に開示されている。前述の開示事項の各々は、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0135】
本明細書で述べる能動免疫療法薬は、例えば皮膚および/またはリンパ系疾患、癌などの患者の疾患の治療に用いられる医薬の製造に用いてよい。
【0136】
以下の実施例は、単に説明することを目的とするものであり、本開示事項またはその種々の実施形態をいかなる形であっても限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0137】
以下の実施例は、本明細書で開示する実施形態の実証のために含められる。当業者であれば、以下の実施例で開示される方法および組成物は、発明者らによって発見された方法が本開示の実践において良好に機能することを表すものであり、従ってその実践のための特定のモードを構成するものであると見なし得ることは理解される。しかし、当業者であ
れば、本開示に照らして、開示する具体的な実施形態に多くの改変を行うことができ、それでも、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、類似または同等の結果を得ることができることが理解できる。
【0138】
実施例1
進行黒色腫を有する患者における能動免疫療法の免疫および臨床成績の評価
非盲検による多施設試験において、3つの成分:2つの標的抗原、メランA/MART‐1およびチロシナーゼの断片を発現する組換えプラスミド(pMEL‐TYR);ならびに2つのペプチド、それぞれの標的CTLエピトープであるメランA/MART‐126‐35およびチロシナーゼ369‐377に対応するエピトープ類似体(それぞれ、E‐MELおよびE‐TYR)、を包含する能動免疫療法生成物(MKC1106‐MTと称する)を、図1に示すように、免疫化レジメンにて試験した。プラスミドの設計およびペプチド類似体は、図2に示す通りである。プラスミドは、4.0mg/mLの濃度の投与用滅菌溶液として製剤した。ペプチドの各々(E‐MELおよびE‐TYR)は、注射の前に、凍結乾燥粉末から1.0mg/mLの濃度の滅菌溶液として製剤した。
【0139】
本試験に登録した患者はすべてHLA‐A2陽性であった。これらの患者はまた、進行(ステージIIIb、IIIc、またはIV)黒色腫を有し、これまでの治療法(例えば、標準的な化学療法、放射線療法、および/または外科手術に対する不応性)を通して進行していることも確認した。
【0140】
メランA/MART‐1およびチロシナーゼ抗原の両方に対する機能的免疫応答を誘発することを目的として、図1に示すような治療スケジュール/プロトコルを用い、多成分能動免疫療法生成物を、プラスミドプライム/ペプチドブースト手法を用いたリンパ節内注射によって送達した。両側の鼠径リンパ節へ投与されるプラスミドの用量は、注射1回あたり1200マイクログラムに固定した。低用量ペプチドコホートに7例、高用量コホートに11例の合計で18例の患者に投与した。低用量ペプチドコホートは、注射1回あたりメランA/MART1およびチロシナーゼペプチドの各々が100マイクログラムという「低用量」を受けた。高用量ペプチドコホートは、注射1回あたりメランA/MART1およびチロシナーゼペプチドの各々が300マイクログラムという「高用量」を受けた。
【0141】
第一の治療サイクルでは、プラスミド‐プライミング治療を、第1日、4日、15日、および18日に施し、続いてペプチド‐ブースト治療を、第29日および32日に施した。これに続いて、第二の治療サイクルを行った。臨床評価は、各治療サイクル後に行った(1サイクル=6週間)。各プロトコルにおいて非進行者である患者については、状態(疾患進行(PD))が変化するまで追加の治療サイクルを継続し、最大で48週間にわたる8治療サイクルを受け得るものとした。免疫応答は、この2つの免疫化抗原の選択的エピトープに特異的である末梢血液中のCD8+T細胞のパーセントを測定することにより、ベースラインにて、および治療法全体を通して評価した。臨床応答は、RECIST(固形癌治療効果判定基準)の基準を用いて分類した。その状態を少なくとも8週間維持した患者は、安定疾患(SD)を有するとして評価し;または、該当する場合、4週間での繰り返しの評価によって確認される腫瘍サイズの測定可能な変化に基づいて、部分応答(PR)または完全応答(CR)として評価した。
【0142】
10例の患者が、治療法の2もしくは3以上のサイクルを完了した(低用量の患者2例と高用量の患者8例)。評価した患者はすべて、腫瘍生検において標的抗原を共発現した。6例の患者(低用量コホートの患者1例と高用量コホートの患者5例)が、RECIST基準によって定められる腫瘍応答を示した。これらの6例の患者のうち、3例が部分応答(PR)を示し、3例が安定疾患(SD)を示した。PRの患者3例のうち2例は、治
療法の8サイクルを完了し;3例目のPR患者は、さらなるサイクルを含めて合計で治療法の9サイクルを完了した(≧1年)。この3例のPR患者は、合わせた標的病変部にて、59%(図3)、60%(図4)、および30%(図5)の腫瘍縮小を示した。3例のSD患者のうちの1例は、治療法の8サイクルを完了し、残りの2例の患者は、治療法の2サイクルの後、進行を示した。
【0143】
腫瘍応答を示したこれら6例の患者のうち5例は、リンパ系転移を有するステージIIICまたはIVであった(3例のPRおよび2例のSD)(図6A;白丸;ステージIIICおよびIV:M1a)。この中で、4例の患者は、治療法の8または9サイクルを完了し、その全員が、リンパ系疾患を有し、ベースラインでのメランA特異的T細胞の存在を示した(図6B 白丸;ステージIIICおよびIV:M1a;PR/SD)。ステージIIICリンパ系疾患を有するがベースラインにてメランA特異的T細胞は存在しない5人目の患者は、治療法の2サイクルにてSDを達成し、この2サイクル後は試験を継続せず、その後進行した(図6A;白丸;ステージIIICおよびIV:M1a)。ステージIV(M1b)の6例目の患者は、治療法の2サイクルにてSDを達成し、この2サイクル後は試験を継続せず、その後進行した(図6A;白丸;ステージIV:M1b、M1c)。
【0144】
この結果は、免疫化によって血液中の抗原特異的T細胞の数が上昇した患者のパーセントとして定義される免疫応答率は、MHC多量体染色によって測定した場合、治療した患者すべてにおいて50%が得られたことを示している(図7)。退縮病変部の2つの生検のうちの1つでは、CD8+T細胞の高密度の浸潤が見られ、約1%のTIL(腫瘍浸潤リンパ球)がメランAエピトープに特異的であった。加えて、この腫瘍生検は、CD8+およびCD4+T細胞の大量の浸潤を示した。
【0145】
レジメンを繰り返し投与することは、安全であり、少なくとも1サイクルを完了したすべての患者、および少なくとも8サイクル(1年)を完了した4例の患者で、良好な耐容性が示された。薬物関連の重篤な有害事象(SAE)は報告されなかった。最も多く報告された有害事象(AE)は、主として、注射領域の疼痛(片側および両側の鼠径部)、ならびに疲労感(断続的)、熱、意識朦朧、発疹、そう痒症、紅潮、および紅斑を伴うグレード1または2の有害事象であった。
【0146】
サブセット分析により、疾患ステージおよびベースラインでの特異的T細胞に基づいて、試験において全体として最良の臨床応答を示した患者集団を識別した。メランA/MART‐1特異的T細胞をベースラインで有する患者8例のなかで、4例の患者(すべてリンパ系転移疾患を有する)が、持続的な(≧1年)臨床応答(RECISTで測定可能なPRまたはSD、および腫瘍退縮)を達成し、一方他の4例の患者(すべて内臓疾患を有する)は、急速な疾患進行を示し、治療の2サイクルを完了しなかった。ベースラインにて測定可能な特異的T細胞を持たない残りの患者10例では、いずれも持続的な応答を達成しなかった。
【0147】
皮膚および/またはリンパ系疾患(ステージIIICおよびIV M1a)を有する患者7例のうち4例が、持続的な臨床応答を示した。臨床応答における疾患ステージの役割をさらに支持するものとして、内臓疾患(M1b、M1c)を有する患者11例は、いずれも持続的な臨床応答を示さなかった。持続的な臨床応答を示したこれらの患者4例の中では、いずれも混合応答を示さず、ここで、これらの4例の患者のいずれでも新しい病変部が発生することはなく、このことは、そのような患者の自然の進行が播種性転移疾患であることから、微小転移病巣に対する活性を示唆している。合わせて考えると、これらの結果は、測定可能な疾患の場合(リンパ系転移疾患など)におけるこの薬剤の臨床的な適用性を支持するだけでなく、以下の2つの適応に対して適用可能である微小転移疾患に対
するその効果も示唆するものである:1)再発までの時間を延長するためのアジュバント療法(例えば、一次治療後に微小残存病変を有する患者において);2)進行疾患において、新たな転移病変部の発生を防止することによって腫瘍の進行を遅延させるための、補助的療法または単独療法。
【0148】
実施例2
PRAMEおよびPSMA陽性固形腫瘍を有する患者における能動免疫療法の免疫および臨床成績の評価
組織発現およびエピトープ免疫原性に関する証拠を蓄積すると、PRAME(黒色腫の選択的抗原)およびPSMA(前立腺特異的膜抗原)が、多様な固形腫瘍の能動免疫療法に適用できる可能性のある標的であることが示唆される。
【0149】
従って、第二のフェーズ1、非盲検による多施設研究において、腫瘍組織内でPRAMEおよびPSMAを共発現し、多様な腫瘍型の進行癌、転移疾患、および/または進行不応性疾患を有するHLA‐A2陽性の患者を、PRAMEおよびPSMA抗原を標的とする能動免疫療法生成物で治療した。能動免疫療法生成物(MKC1106‐PPと称する)は、3つの成分:2つの標的抗原の断片を発現する組換えプラスミド(pPRA‐PSM);ならびにそれぞれの標的抗原に対応する2つのペプチド類似体(E‐PRAおよびE‐PSM)、を包含していた(図8)。プラスミドは、4.0mg/mLの濃度の滅菌溶液として製剤し、ペプチドの各々(E‐PRAおよびE‐PSM)は、凍結乾燥粉末から滅菌溶液(それぞれ、0.5mg/mLおよび1.0mg/mLの濃度)として製剤した。PRAMEおよびPSMA抗原の両方に対する機能的免疫応答を誘発することを目的として、免疫療法レジメンの3つの成分の各々を、プライム/ブーストプロトコルにて、両側の鼠径リンパ節内注射によって送達した。プラスミドおよびペプチドの投与スケジュールを図1に示す。
【0150】
様々な腫瘍型を有する合計で26例の患者(前立腺癌11例、腎臓癌2例、黒色腫11例、およびその他の癌2例)に投与を行い:低および高用量ペプチドコホートにそれぞれ13例ずつとした。24例の患者が、少なくとも1治療サイクルを完了し、免疫応答の評価が可能であると判断した。用いた2つのペプチド用量は:それぞれ、E‐PRAおよびE‐PSMについて、22.5および30マイクログラムのペプチド/注射の「低用量」、および150および300マイクログラムのペプチド/注射の「高用量」とした。両側注射におけるプラスミド用量は、1200マイクログラム/注射に固定した。
【0151】
対象は、2治療サイクル後(12週間)に臨床評価を受けた。非進行者(すなわち、疾患進行が観察されない;レスポンダー)であると判定された患者については、治療法を継続し、2治療サイクルを超えて、最大で6治療サイクル(36週間にわたる)を受け得るものとした。免疫応答は、この2つの免疫化抗原、PRAMEおよびPSMAに特異的である末梢血液中のCD8+T細胞のパーセントを、四量体アッセイおよびELISPOTアッセイを用いて測定することにより、ベースラインにて、および治療法全体を通して評価した。
【0152】
7例の患者が、治療法の4もしくはそれ以上のサイクルを少なくとも6ヶ月かけて完了し、持続的な臨床応答の新たなエビデンスが示された(低用量の患者3例および高用量の患者4例):10例の前立腺癌患者のうちの4例;腎臓癌の両患者、および11例の黒色腫患者のうちの1例。図9は、治療開始後36週での、リンパ系転移疾患を有する前立腺癌患者における腫瘍縮小を示す。24例の評価可能患者のうち15例が、免疫化プロトコルの開始に続いて、免疫化抗原に対して特異的なT細胞の一時的なまたは継続的な増殖を示した。
【0153】
臨床的有用性は、四量体アッセイで測定される抗原特異的T細胞の著しい増殖に関連することが観察された。特に、持続的な臨床応答のエビデンスを示した患者は、レジメンの開始後、早い段階で、およびより大きい比率で、血液中の特異的T細胞の増殖を示す傾向にあった。治療の開始後、最初の評価を受けるまでに(12週)、持続的な臨床的有用性(治療の少なくとも4サイクルにわたってのSD)が、疾患進行を示した17例の患者(図10および表3)と比べて、7例の評価可能患者(図10および表3)で観察された。疾患進行を示した17例の患者のうち(表3)、14例の患者が、治療の開始時および治療の過程にて血液中に測定可能なT細胞を有し(図10参照;N=14);残りの3例の患者は、疾患進行が早すぎて、治療開始後に血液中の測定可能なT細胞を得ることができなかった。加えて、評価を受け、持続的な臨床応答のエビデンスを示した患者のうちの半分が、最初の2サイクル(12週間)を通して、およびそれを超えて、血液中T細胞の存続を示したが、これと比較して、治療法の最初の2サイクルに相当する同一の時間間隔内に進行を示した患者では、0%であった(17例の患者のうち0例)(図11;*ベースラインにてエピトープ特異的T細胞を検出)。最後に、特異的T細胞の増殖、および持続的な臨床応答を示した患者は、ベースラインでの抗原特異的T細胞のパーセントが低いか、またはこれを持たない傾向にあり、このことは、十分なT細胞免疫性を持つ患者において、エフェクター能を有するT細胞応答が新たに誘導されていることを示唆している。加えて、データは、治療を行ったにも関わらず急速に進行した疾患を有する患者において、既存のT細胞応答が損なわれていることを示唆している。
【0154】
【表3】
【0155】
標的発現分析により、ほぼ100%の前立腺癌腫瘍サンプルならびに腎臓癌および黒色腫患者からの大部分の腫瘍組織において、PRAMEおよびPSMAの共発現が確認された。最良の臨床成績は:PSA低下に反映される腫瘍退縮を示した前立腺癌患者1例(30+週)、PSA速度の変化を伴う安定疾患の前立腺癌患者2例(36+週)、ネオアジュバント療法における、摘出後に疾患のエビデンスを示さない腎臓癌患者1例(72+週)、および72+週において安定疾患を示す転移黒色腫患者1例(M1cステージ)を含む。
【0156】
全体として、この結果は、免疫化によって血液中の抗原特異的T細胞の数が上昇した患者のパーセントとして定義される免疫応答率は、評価可能な患者の中で60%超であったことを示している。免疫化レジメンは、治療法の6サイクル(9ヶ月)を完了した5例の患者で、良好な耐容性が示された。7例の患者が、「部分応答」(RECIST)、またはPSA倍加時間の変化、または「安定疾患」(少なくとも6ヶ月間)として定められる臨床応答を達成し:4例は前立腺癌患者、2例は腎臓癌患者、そして1例は黒色腫患者であった。両方の抗原に対する免疫応答を開始し、それが治療法の最初の2サイクルを通して継続した患者は、臨床的有用性を示す可能性が高かった。
【0157】
薬物関連の重篤な有害事象(SAE)は報告されなかった。最も多く報告された有害事象(AE)は、主として、注射領域の疼痛(片側および両側の鼠径部)、ならびに疲労感(断続的)、熱、意識朦朧、発疹、そう痒症、紅潮、および紅斑を伴うグレード1または2の有害事象であった。
【0158】
ある実施形態では、本開示の特定の実施形態について述べ、これを請求するために用いられる、成分の量、分子量などの特性、反応条件などを表す数字は、場合によっては、「約」の用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。従って、ある実施形態では、記載された説明および添付の請求項に示される数値パラメータは、特定の実施形態によって得ることが求められている所望されるパラメータに応じて様々であり得る概略値である。ある実施形態では、数値パラメータの解釈は、報告される有意の桁数を考慮し、通常の丸め法を適用することで行われるべきである。本開示のある実施形態の広い範囲を定める数値範囲およびパラメータは概略値であるが、具体的な例に示される数値は、実用上可能な限り正確に報告されている。本開示のある実施形態に提示される数値は、それぞれの試験測定に見られる標準偏差にやむを得ず起因する一定の誤差を含む場合がある。
【0159】
実施例3
黒色腫試験からの画像データの独立したレビュー
客観的な応答、特に腫瘍縮小は、癌ワクチンの試験において一般的には観察されてこなかった。例えば、最近承認されたPROVENGEは、ワクチンレシピエントの中で4.1ヶ月という比較的少ない生存期間の延長に基づくものであり;この薬剤の使用に測定可能な抗腫瘍効果は伴っていなかった(D. Longo, N. Engl. J. Med. 363:479-481, 2010;P.W. Kantoff, N. Engl. J. Med. 363:411-422, 2010)。従って、上述の試験において客観的な応答が発生したことは驚くべきことであり、登録した患者の数が少ないことを考えると、そのような観察結果は予想されていなかった。これらの観察結果が予想外の性質のものであったことから、黒色腫試験の結果のレビューを、独立した病理学研究所に依頼した。CTスキャンおよびその他のイメージングの解釈は、評価すべき病変部の選択などの方法に応じて定量的には異なるものであり、従って独立した判読値も異なるが、定性的な結果は一貫しているはずである。従って、各々の独立した判読がすべての詳細にわたって正確に一致することは期待されないが、全体としての結論は一貫したものであることが期待される。癌治療の効力試験におけるイメージングの結果の独立した判読を行うことは求められているが、これはフェーズI試験としては特殊である。
【0160】
レビューにおいて、独立の放射線専門医は、腫瘍型およびイメージの時系列は知らされたが、治療を含むその他のすべての患者情報は知らされなかった。独立の放射線専門医は、イメージングが得られた試験の対象すべてについてのデジタル化CTスキャンに基づき、標的および非標的病変部の選択、それらの測定、およびRECIST(v.1.0)基準に従う最良の応答の評価に関して完全に自身の責任で行った(応答を示した対象の1例は皮膚病変部のみを有していたため(ステージIIIC疾患;図6Aおよび6B参照)、CTスキャンは撮らなかった)。図12から分かるように、腫瘍変化の最大パーセントの対象ごとの比較から、治験担当医および独立の判読による結果が一貫したものであったこ
とを示している。従って、この評価によって、Pt1〜Pt4およびPt6(Pt5は評価不可であった)は、RECIST基準による客観的応答を示し(Pt6の応答は比較的短期間であった)、Pt7からPt11は、治療にも関わらず疾患が進行した。図12の患者(Pt)1からPt4は、メランAに対する既存の免疫を有するとして識別され、ステージIV:M1aリンパ系疾患を有すると分類された患者であった(図6Aおよび図6B参照)。図6Aおよび図6Bにて内臓標的病変を持つステージIV:M1bまたはM1c疾患を有するとして分類された患者は、図12のPt5からPt11を含む。
【0161】
独立の判読から、Pt1からPt4に対して、肺、肝臓、および軟部組織を含むリンパ系外部のいくつかの病変部も報告され、これらは治験担当医からは報告されなかったものであった。これらの病変部は、治療の期間にわたってそのサイズも数も変化せず、全体としてその最大寸法は1cm未満であった(非標的病変部)。これらの観察結果は、主としてリンパ系疾患を有するが、それ以外に低内臓腫瘍量を有する患者にとって、この免疫療法が有用であり得ることを示すものであった。さらに、これらは、この治療によってさらなる転移を阻止することが可能であるという見解についても一貫していた。
【0162】
ある実施形態では、本開示の特定の実施形態を説明する文脈(特に以下の請求項のいくつかの文脈)で用いられる「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」、ならびに類似の指示語は、単数および複数の両方を含むものとして解釈してよい。本明細書における数値範囲の列挙は、その範囲内に含まれる各別々の数値に個別に言及する簡潔な方法として用いることを単に意図している。特に断りのない限り、各個別の数値は、それが個別に本明細書に列挙されているかのごとく、本明細書に組み込まれる。本明細書で述べる方法はすべて、本明細書にて特に断りのない限り、または文脈からそうでないことが明らかでない限り、適切ないずれの順序で実施してもよい。特定の実施形態に関して本明細書で提供されるあらゆる例または例示的言語(例:「など(such as)」)の使用は、本開示をより詳細に説明することを単に意図するものであり、別に請求される本開示の範囲を限定するものではない。本明細書におけるいずれの言語も、請求されない要素のいずれかが本開示の実践に不可欠であることを示すものとして解釈されるべきではない。
【0163】
本明細書で開示する本開示の別の選択肢としての要素または実施形態のグループ化は、限定するものとして解釈してはならない。各グループのメンバーは、個々に、またはそのグループの他のメンバーとの、もしくは本明細書で見出される他の要素とのいずれかの組み合わせとして言及され、請求されてよい。グループの1もしくは2つ以上のメンバーが、便宜上および/または特許性の理由により、グループに含まれるか、またはグループから除外される場合があることは予見される。そのようないずれの含有または除外が行われる場合でも、本明細書は、その中にそのようなグループを改変された形で含むものと見なされ、従って、補正請求項で用いられるすべてのマーカッシュグループの記載された説明を満足している。
【0164】
本明細書で記述されるのは、本開示の実践において発明者らが知る最良のモードを含む本開示の特定の実施形態である。これらの実施形態の変形は、前述の説明を読むことで当業者には明らかとなるであろう。当業者であればそのような変形を必要に応じて用いることができ、本開示が、具体的に本明細書にて説明される以外に実践可能であることが考慮される。従って、本開示の多くの実施形態は、適用法による許可に従い、添付の請求項に列挙される主題のすべての改変および均等物を含む。さらに、上述の要素のそのすべての可能な異なる組み合わせのいずれも、本明細書にて特に断りのない限り、または文脈からそうでないことが明らかでない限り、本開示に包含される。
【0165】
さらに、本明細書全体を通して、数多くの特許および印刷刊行物が参考にされている。上記の引用参考文献および印刷刊行物の各々は、それらの内容が本明細書に直接存在する
開示事項と矛盾しない範囲内で、個々にその全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0166】
上記の段落は、本開示の全般的な概念を実践にいかに適用することができるかを説明することを意図するものであり、可能な変形の網羅的なまたは限定的な列挙として見なされるべきではない。確かに、多くのさらなる変形または改変が、特定の免疫療法組成物および免疫化レジメン/プロトコルの特性から提案されるものであり、それらは当業者にとって明らかであろう。従って、それに限定されないが、例として、本開示の別の選択肢としての構成を、本明細書の教示事項に従って用いてよい。個々の実施形態は、そのような別の選択肢のいずれも、特に含んでも、除外してもよい。従って、本開示は、示され、記述されたものだけに限定されるものではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における癌の治療に用いるための免疫原であって、前記患者は、メランAに対する既存の免疫反応性を有し、および、前記免疫原は、メランAに対するエフェクターT細胞応答を促進することができる、前記免疫原。
【請求項2】
患者における癌の治療に用いるための免疫原であって、前記患者は、PRAMEおよびPSMAの群より選択される少なくとも1つの抗原に対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限であり、および、前記免疫原は、既存の免疫反応性が存在しないか、または最小限である前記抗原に対するT細胞エフェクター応答を促進することができる、前記免疫原。
【請求項3】
患者における癌の治療にて医薬として用いるための免疫原であって、前記患者は、二次リンパ器官を超えて進行していないか、または超えての広がりが限定的である癌を有し、および、前記免疫原は、前記癌に関連する抗原に対するT細胞エフェクター応答を促進することができ、前記免疫原は、前記免疫原の直接のリンパ内投与のためのものである、前記免疫原。
【請求項4】
前記患者が、リンパ系を超えての広がりが限定的であり、リンパ系を超えて広がったいずれの転移も、その数が10以下であって、および1)生命維持に必要である器官中にないか、または2)直径が1センチメートル未満である疾患ステージにある、請求項3に記載の免疫原。
【請求項5】
前記患者が、皮膚および/またはリンパ系疾患を有し、前記治療が、前記疾患がリンパ器官に局在化されていることの判定をさらに含む、請求項1に記載の免疫原。
【請求項6】
前記皮膚および/またはリンパ系疾患が、ステージIIICまたはIV(M1a)リンパ系疾患である、請求項1または5に記載の免疫原。
【請求項7】
前記治療が、メランA26‐35エピトープを標的とすることを含む、請求項1、5、または6のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項8】
前記癌が、黒色腫または神経膠芽腫である、請求項1、または5〜7のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項9】
PRAMEおよびPSMAが、前記患者の腫瘍組織内で共発現される、請求項2に記載の免疫原。
【請求項10】
前記治療が、PRAME425‐433エピトープおよび/またはPSMA288‐297エピトープを標的とすることを含む、請求項2または9に記載の免疫原。
【請求項11】
前記癌が、前立腺癌であり、臨床的有用性が、PSAレベルの低下を含む、請求項2、または9〜10のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項12】
前記少なくとも1つの標的抗原が、PRAME抗原および/またはPSMA抗原を含み、前記癌が、前立腺癌、腎臓癌、または黒色腫である、請求項2、または9〜11のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項13】
前記患者が、PRAMEおよびPSMAの両方に対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限であり;および前記治療が:
少なくともPRAMEまたはPSMAを標的とする能動免疫療法薬のさらなる治療サイクルの少なくとも1つを投与すること;
患者サンプル中のPRAMEおよび/またはPSMA T細胞の増殖を分析すること;
抗原特異的T細胞の前記増殖に基づいて前記患者をレスポンダーとして分類すること;ならびに、
前記レスポンダーにさらなる治療サイクルの少なくとも1つを投与すること、
をさらに含む、請求項2、または9〜12のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項14】
前記分析工程が、抗PRAMEまたは抗PSMA T細胞の増殖を示し、および前記の、続いて行われる治療法が、前記免疫療法レジメンの、続いての治療サイクルを投与すること含む、請求項13に記載の免疫原。
【請求項15】
前記の、続いて行われる治療法が、免疫賦活薬を投与することを含む、請求項14に記載の免疫原。
【請求項16】
前記分析工程が、PRAMEおよびPSMA T細胞の両方の増殖がないか、または増殖が一時的であることを示し、および前記の、続いて行われる治療法が、前記免疫療法レジメンの停止を含む、請求項13に記載の免疫原。
【請求項17】
前記治療が、臨床的有用性を達成する、請求項1から16のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項18】
前記臨床的有用性が、腫瘍縮退または疾患の安定化を含む、請求項17に記載の免疫原。
【請求項19】
前記既存の免疫反応性、または存在しないか、もしくは最小限である免疫反応性が、四量体アッセイまたはELISPOTアッセイによって測定される、請求項1、2、および5〜18のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項20】
前記患者が、二次リンパ器官を超えて進行していないか、または超えての広がりが限定的である癌を有する、請求項1、2、および5〜19のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項21】
前記患者が、ステージIIICまたはIV(M1a)リンパ系疾患を有する、請求項1から20のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項22】
前記癌が、黒色腫、腎臓癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、非小細胞肺癌、神経膠芽腫、眼内黒色腫、ホルモン感受性の乳癌、前立腺癌、および卵巣癌、ホルモン不応性の前立腺癌、腎細胞癌、食道癌、または中皮腫の少なくとも1つである、請求項1から21のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項23】
前記治療が、プライム‐ブーストレジメンを含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項24】
前記治療が、2つ以上の治療サイクルを含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項25】
前記プライム‐ブースト免疫療法レジメンが、免疫応答を誘導する効果量のプラスミドの投与、およびこれに続く、前記プラスミドによって発現されたエピトープに対応する少なくとも1つのペプチドの効果量の投与を含む、請求項23に記載の免疫原。
【請求項26】
前記プラスミドによって発現された前記エピトープが、PRAMEエピトープもしくはその類似体、またはPSMAエピトープもしくはその類似体、またはメランAエピトープもしくはその類似体、またはチロシナーゼエピトープもしくはその類似体の少なくとも1つである、請求項25に記載の免疫原。
【請求項27】
前記PRAMEエピトープが、PRAME425‐433もしくはその類似体であり、または前記PSMAエピトープが、PSMA288‐297もしくはその類似体であり、または前記メランAエピトープが、メランA26‐35もしくはその類似体であり、または前記チロシナーゼエピトープが、チロシナーゼ369‐377もしくはその類似体である、請求項26に記載の免疫原。
【請求項28】
前記プラスミドが、pMEL‐TYRまたはpPRA‐PSMを含む、請求項25に記載の免疫原。
【請求項29】
前記少なくとも1つのペプチドが、メランA26‐35 A27Nva(ENvaAGIGILTV)(配列番号2)、またはメランA26‐35 A27L(ELAGIGILTV)(配列番号3)を含む、請求項25に記載の免疫原。
【請求項30】
前記少なくとも1つのペプチドが、PRAME425‐433 L426Nva,L433Nle(SNvaLQHLIGNle)(配列番号7)を含む、請求項25に記載の免疫原。
【請求項31】
前記少なくとも1つのペプチドが、PSMA288‐297ペプチド類似体 PSMA288‐297 I297V(GLPSIPVHPV)(配列番号9)を含む、請求項25に記載の免疫原。
【請求項32】
前記免疫原の前記患者への投与が、前記リンパ系への直接の送達を含む、請求項1から31のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項33】
前記リンパ系への直接送達は、リンパ節内送達を含む、請求項32に記載の免疫原。
【請求項34】
前記治療が、免疫賦活薬の投与をさらに含む、請求項1から33のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項35】
前記免疫原が、免疫賦活薬をさらに含む、請求項1から34のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項36】
前記免疫賦活薬が、サイトカイン、ケモカイン、共刺激性分子、転写因子、シグナル伝達成分;抗原処理および抗原提示に関与する薬剤、TAP1およびTAP2タンパク質、免疫もしくは標準(standard)プロテアソーム、ベータ‐2‐ミクログロブリン、およびMHCクラスIもしくはII分子;アポトーシス経路の制御に関与する薬剤、遺伝子制御もしくはサイレンシングに関与する薬剤、例えばDNAメチル化酵素、クロマチン制御分子、RNA制御分子など;トール様受容体(TLR)、ペプチドグリカン、LPSもしくはそれからの類似体、イミキモド(imiquimodes)、非メチル化CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN);それぞれTLR9およびTLR3と結合するAPCおよび自然免疫細胞上のdsRNA、バクテリアdsDNA(CpGモチーフ含有)、および合成dsRNA(ポリI:C);TLRと結合する天然または合成の小有機分子、合成抗ウイルスイミダゾキノリン、イミキモドおよびレシキモド;pAPCもしくはT細胞を活性化する免疫賦活アジュバント、エンドサイトーシスパターン認識受容体(PRR)リガンド、キラヤサポニン、ならびにツカレソールから成る群より選択される、請求項35に
記載の免疫原。
【請求項37】
前記治療が、前記腫瘍の微小環境の免疫抑制性を低下させて臨床的有用性を促進する薬剤を投与することをさらに含む、請求項1から36のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項38】
前記患者が、HLA‐A2陽性である、請求項1から37のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項39】
能動免疫療法薬で癌患者を治療する方法であって、
少なくとも1つの標的抗原に対する患者の既存の免疫反応性のレベルの評価;
既存の免疫反応性の前記レベルに基づく免疫療法レジメンの選択であって、前記レジメンは、前記少なくとも1つの標的抗原またはそのエピトープを標的とする少なくとも1つの免疫原を投与することを含む、選択;ならびに、
前記レジメンに従う前記患者の治療、
を含む、前記方法。
【請求項40】
前記免疫原が、前記癌に関連する抗原に対するT細胞エフェクター応答を促進することができる、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記免疫療法レジメンが、臨床的有用性を達成する、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記臨床的有用性が、腫瘍縮退または疾患の安定化を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
既存の免疫反応性の前記レベルが、四量体アッセイまたはELISPOTアッセイによって測定される、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記患者が、二次リンパ器官を超えて進行していない癌を有する、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記患者が、ステージIIICまたはIV(M1a)リンパ系疾患を有する、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記癌が、黒色腫、腎臓癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、非小細胞肺癌、神経膠芽腫、眼内黒色腫、ホルモン感受性の乳癌、前立腺癌、および卵巣癌、ホルモン不応性の前立腺癌、腎細胞癌、食道癌、または中皮腫の少なくとも1つである、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
前記免疫療法レジメンが、プライム‐ブーストレジメンを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項48】
前記免疫療法レジメンが、2つ以上の治療サイクルを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項49】
前記免疫原の投与が、前記患者のリンパ系への直接送達を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項50】
前記リンパ系への直接送達が、リンパ節内送達を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記患者が、HLA‐A2陽性である、請求項39に記載の方法。
【請求項52】
前記標的抗原が、メランAを含み、および前記患者が、メランAに対する既存の免疫反
応性を有し、ならびに前記免疫療法レジメンが、免疫原を投与してメランAまたはそのエピトープに対するエフェクターT細胞応答を促進することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項53】
前記患者が、皮膚および/またはリンパ系疾患を有する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記皮膚および/またはリンパ系疾患が、ステージIIICまたはIV(M1a)リンパ系疾患である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記免疫療法レジメンが、メランA26‐35エピトープまたはその類似体を標的とすることを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記癌が、黒色腫または神経膠芽腫である、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
前記標的抗原が、PRAMEまたはPSMAの少なくとも1つを含み、および前記患者が、PRAMEまたはPSMAの少なくとも1つに対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限であり、ならびに前記免疫療法レジメンが、前記免疫原を投与して、PRAMEまたはPSMAの少なくとも1つに対するエフェクターT細胞応答を促進することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項58】
PRAMEおよびPSMAが、前記患者の腫瘍組織内で共発現される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記免疫療法レジメンが、PRAME425‐433エピトープまたはPSMA288‐297エピトープの少なくとも1つを標的とすることを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記癌が、前立腺癌、腎臓癌、または黒色腫である、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
前記癌が、前立腺癌であり、前記臨床的有用性が、PSAレベルの低下を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
癌患者を治療する方法であって:
リンパ系を超えての広がりが限定的であり、ならびにリンパ系を超えて広がったいずれの転移も、その数が10以下であって、および1)生命維持に必要である器官中にないか、または2)直径が1センチメートル未満である、疾患ステージの患者を選別すること;ならびに、
前記患者のリンパ系に直接免疫原を投与して、前記癌に関連する抗原に対するT細胞エフェクター応答を促進させることを含む免疫療法レジメンを前記患者に適用すること、
を含む、前記方法。
【請求項1】
患者における癌の治療に用いるための免疫原であって、前記患者は、メランAに対する既存の免疫反応性を有し、および、前記免疫原は、メランAに対するエフェクターT細胞応答を促進することができる、前記免疫原。
【請求項2】
患者における癌の治療に用いるための免疫原であって、前記患者は、PRAMEおよびPSMAの群より選択される少なくとも1つの抗原に対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限であり、および、前記免疫原は、既存の免疫反応性が存在しないか、または最小限である前記抗原に対するT細胞エフェクター応答を促進することができる、前記免疫原。
【請求項3】
患者における癌の治療にて医薬として用いるための免疫原であって、前記患者は、二次リンパ器官を超えて進行していないか、または超えての広がりが限定的である癌を有し、および、前記免疫原は、前記癌に関連する抗原に対するT細胞エフェクター応答を促進することができ、前記免疫原は、前記免疫原の直接のリンパ内投与のためのものである、前記免疫原。
【請求項4】
前記患者が、リンパ系を超えての広がりが限定的であり、リンパ系を超えて広がったいずれの転移も、その数が10以下であって、および1)生命維持に必要である器官中にないか、または2)直径が1センチメートル未満である疾患ステージにある、請求項3に記載の免疫原。
【請求項5】
前記患者が、皮膚および/またはリンパ系疾患を有し、前記治療が、前記疾患がリンパ器官に局在化されていることの判定をさらに含む、請求項1に記載の免疫原。
【請求項6】
前記皮膚および/またはリンパ系疾患が、ステージIIICまたはIV(M1a)リンパ系疾患である、請求項1または5に記載の免疫原。
【請求項7】
前記治療が、メランA26‐35エピトープを標的とすることを含む、請求項1、5、または6のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項8】
前記癌が、黒色腫または神経膠芽腫である、請求項1、または5〜7のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項9】
PRAMEおよびPSMAが、前記患者の腫瘍組織内で共発現される、請求項2に記載の免疫原。
【請求項10】
前記治療が、PRAME425‐433エピトープおよび/またはPSMA288‐297エピトープを標的とすることを含む、請求項2または9に記載の免疫原。
【請求項11】
前記癌が、前立腺癌であり、臨床的有用性が、PSAレベルの低下を含む、請求項2、または9〜10のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項12】
前記少なくとも1つの標的抗原が、PRAME抗原および/またはPSMA抗原を含み、前記癌が、前立腺癌、腎臓癌、または黒色腫である、請求項2、または9〜11のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項13】
前記患者が、PRAMEおよびPSMAの両方に対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限であり;および前記治療が:
少なくともPRAMEまたはPSMAを標的とする能動免疫療法薬のさらなる治療サイクルの少なくとも1つを投与すること;
患者サンプル中のPRAMEおよび/またはPSMA T細胞の増殖を分析すること;
抗原特異的T細胞の前記増殖に基づいて前記患者をレスポンダーとして分類すること;ならびに、
前記レスポンダーにさらなる治療サイクルの少なくとも1つを投与すること、
をさらに含む、請求項2、または9〜12のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項14】
前記分析工程が、抗PRAMEまたは抗PSMA T細胞の増殖を示し、および前記の、続いて行われる治療法が、前記免疫療法レジメンの、続いての治療サイクルを投与すること含む、請求項13に記載の免疫原。
【請求項15】
前記の、続いて行われる治療法が、免疫賦活薬を投与することを含む、請求項14に記載の免疫原。
【請求項16】
前記分析工程が、PRAMEおよびPSMA T細胞の両方の増殖がないか、または増殖が一時的であることを示し、および前記の、続いて行われる治療法が、前記免疫療法レジメンの停止を含む、請求項13に記載の免疫原。
【請求項17】
前記治療が、臨床的有用性を達成する、請求項1から16のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項18】
前記臨床的有用性が、腫瘍縮退または疾患の安定化を含む、請求項17に記載の免疫原。
【請求項19】
前記既存の免疫反応性、または存在しないか、もしくは最小限である免疫反応性が、四量体アッセイまたはELISPOTアッセイによって測定される、請求項1、2、および5〜18のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項20】
前記患者が、二次リンパ器官を超えて進行していないか、または超えての広がりが限定的である癌を有する、請求項1、2、および5〜19のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項21】
前記患者が、ステージIIICまたはIV(M1a)リンパ系疾患を有する、請求項1から20のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項22】
前記癌が、黒色腫、腎臓癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、非小細胞肺癌、神経膠芽腫、眼内黒色腫、ホルモン感受性の乳癌、前立腺癌、および卵巣癌、ホルモン不応性の前立腺癌、腎細胞癌、食道癌、または中皮腫の少なくとも1つである、請求項1から21のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項23】
前記治療が、プライム‐ブーストレジメンを含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項24】
前記治療が、2つ以上の治療サイクルを含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項25】
前記プライム‐ブースト免疫療法レジメンが、免疫応答を誘導する効果量のプラスミドの投与、およびこれに続く、前記プラスミドによって発現されたエピトープに対応する少なくとも1つのペプチドの効果量の投与を含む、請求項23に記載の免疫原。
【請求項26】
前記プラスミドによって発現された前記エピトープが、PRAMEエピトープもしくはその類似体、またはPSMAエピトープもしくはその類似体、またはメランAエピトープもしくはその類似体、またはチロシナーゼエピトープもしくはその類似体の少なくとも1つである、請求項25に記載の免疫原。
【請求項27】
前記PRAMEエピトープが、PRAME425‐433もしくはその類似体であり、または前記PSMAエピトープが、PSMA288‐297もしくはその類似体であり、または前記メランAエピトープが、メランA26‐35もしくはその類似体であり、または前記チロシナーゼエピトープが、チロシナーゼ369‐377もしくはその類似体である、請求項26に記載の免疫原。
【請求項28】
前記プラスミドが、pMEL‐TYRまたはpPRA‐PSMを含む、請求項25に記載の免疫原。
【請求項29】
前記少なくとも1つのペプチドが、メランA26‐35 A27Nva(ENvaAGIGILTV)(配列番号2)、またはメランA26‐35 A27L(ELAGIGILTV)(配列番号3)を含む、請求項25に記載の免疫原。
【請求項30】
前記少なくとも1つのペプチドが、PRAME425‐433 L426Nva,L433Nle(SNvaLQHLIGNle)(配列番号7)を含む、請求項25に記載の免疫原。
【請求項31】
前記少なくとも1つのペプチドが、PSMA288‐297ペプチド類似体 PSMA288‐297 I297V(GLPSIPVHPV)(配列番号9)を含む、請求項25に記載の免疫原。
【請求項32】
前記免疫原の前記患者への投与が、前記リンパ系への直接の送達を含む、請求項1から31のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項33】
前記リンパ系への直接送達は、リンパ節内送達を含む、請求項32に記載の免疫原。
【請求項34】
前記治療が、免疫賦活薬の投与をさらに含む、請求項1から33のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項35】
前記免疫原が、免疫賦活薬をさらに含む、請求項1から34のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項36】
前記免疫賦活薬が、サイトカイン、ケモカイン、共刺激性分子、転写因子、シグナル伝達成分;抗原処理および抗原提示に関与する薬剤、TAP1およびTAP2タンパク質、免疫もしくは標準(standard)プロテアソーム、ベータ‐2‐ミクログロブリン、およびMHCクラスIもしくはII分子;アポトーシス経路の制御に関与する薬剤、遺伝子制御もしくはサイレンシングに関与する薬剤、例えばDNAメチル化酵素、クロマチン制御分子、RNA制御分子など;トール様受容体(TLR)、ペプチドグリカン、LPSもしくはそれからの類似体、イミキモド(imiquimodes)、非メチル化CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN);それぞれTLR9およびTLR3と結合するAPCおよび自然免疫細胞上のdsRNA、バクテリアdsDNA(CpGモチーフ含有)、および合成dsRNA(ポリI:C);TLRと結合する天然または合成の小有機分子、合成抗ウイルスイミダゾキノリン、イミキモドおよびレシキモド;pAPCもしくはT細胞を活性化する免疫賦活アジュバント、エンドサイトーシスパターン認識受容体(PRR)リガンド、キラヤサポニン、ならびにツカレソールから成る群より選択される、請求項35に
記載の免疫原。
【請求項37】
前記治療が、前記腫瘍の微小環境の免疫抑制性を低下させて臨床的有用性を促進する薬剤を投与することをさらに含む、請求項1から36のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項38】
前記患者が、HLA‐A2陽性である、請求項1から37のいずれか一項に記載の免疫原。
【請求項39】
能動免疫療法薬で癌患者を治療する方法であって、
少なくとも1つの標的抗原に対する患者の既存の免疫反応性のレベルの評価;
既存の免疫反応性の前記レベルに基づく免疫療法レジメンの選択であって、前記レジメンは、前記少なくとも1つの標的抗原またはそのエピトープを標的とする少なくとも1つの免疫原を投与することを含む、選択;ならびに、
前記レジメンに従う前記患者の治療、
を含む、前記方法。
【請求項40】
前記免疫原が、前記癌に関連する抗原に対するT細胞エフェクター応答を促進することができる、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記免疫療法レジメンが、臨床的有用性を達成する、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記臨床的有用性が、腫瘍縮退または疾患の安定化を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
既存の免疫反応性の前記レベルが、四量体アッセイまたはELISPOTアッセイによって測定される、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記患者が、二次リンパ器官を超えて進行していない癌を有する、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記患者が、ステージIIICまたはIV(M1a)リンパ系疾患を有する、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記癌が、黒色腫、腎臓癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、非小細胞肺癌、神経膠芽腫、眼内黒色腫、ホルモン感受性の乳癌、前立腺癌、および卵巣癌、ホルモン不応性の前立腺癌、腎細胞癌、食道癌、または中皮腫の少なくとも1つである、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
前記免疫療法レジメンが、プライム‐ブーストレジメンを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項48】
前記免疫療法レジメンが、2つ以上の治療サイクルを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項49】
前記免疫原の投与が、前記患者のリンパ系への直接送達を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項50】
前記リンパ系への直接送達が、リンパ節内送達を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記患者が、HLA‐A2陽性である、請求項39に記載の方法。
【請求項52】
前記標的抗原が、メランAを含み、および前記患者が、メランAに対する既存の免疫反
応性を有し、ならびに前記免疫療法レジメンが、免疫原を投与してメランAまたはそのエピトープに対するエフェクターT細胞応答を促進することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項53】
前記患者が、皮膚および/またはリンパ系疾患を有する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記皮膚および/またはリンパ系疾患が、ステージIIICまたはIV(M1a)リンパ系疾患である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記免疫療法レジメンが、メランA26‐35エピトープまたはその類似体を標的とすることを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記癌が、黒色腫または神経膠芽腫である、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
前記標的抗原が、PRAMEまたはPSMAの少なくとも1つを含み、および前記患者が、PRAMEまたはPSMAの少なくとも1つに対する既存の免疫反応性を持たないか、またはそれが最小限であり、ならびに前記免疫療法レジメンが、前記免疫原を投与して、PRAMEまたはPSMAの少なくとも1つに対するエフェクターT細胞応答を促進することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項58】
PRAMEおよびPSMAが、前記患者の腫瘍組織内で共発現される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記免疫療法レジメンが、PRAME425‐433エピトープまたはPSMA288‐297エピトープの少なくとも1つを標的とすることを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記癌が、前立腺癌、腎臓癌、または黒色腫である、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
前記癌が、前立腺癌であり、前記臨床的有用性が、PSAレベルの低下を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
癌患者を治療する方法であって:
リンパ系を超えての広がりが限定的であり、ならびにリンパ系を超えて広がったいずれの転移も、その数が10以下であって、および1)生命維持に必要である器官中にないか、または2)直径が1センチメートル未満である、疾患ステージの患者を選別すること;ならびに、
前記患者のリンパ系に直接免疫原を投与して、前記癌に関連する抗原に対するT細胞エフェクター応答を促進させることを含む免疫療法レジメンを前記患者に適用すること、
を含む、前記方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2013−508415(P2013−508415A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535437(P2012−535437)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/053879
【国際公開番号】WO2011/050344
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.TEFLON
【出願人】(503208552)マンカインド コーポレイション (50)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/053879
【国際公開番号】WO2011/050344
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.TEFLON
【出願人】(503208552)マンカインド コーポレイション (50)
【Fターム(参考)】
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