説明

癌の処置のためのインスリン様成長因子結合タンパク質7

被験体における腫瘍を処置する方法は、腫瘍を有するか、腫瘍の危険性があるか、または腫瘍を有すると疑われる被験体を同定する工程、ならびに、腫瘍が、増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達を有する場合、成長および/または生存についてRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路に依存する場合、ならびに/または、活性化もしくは発癌性のBRAFもしくはRASを発現する場合に、有効量のIGFBP7剤を被験体へ投与する工程を含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年9月11日に出願された米国仮特許出願第60/993,211号、および2008年8月27日に出願された米国仮特許出願第61/092,230号の恩典を主張する。両方の先願の全内容は、参照により本明細書中に組み入れられる。
【0002】
技術分野
本発明は、ポリペプチドを含む薬剤を用いる癌の処置に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
活性化しているV-Rafマウス肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログB1(BRAF)の突然変異は、50〜70%のメラノーマ、15%の結腸直腸癌および卵巣癌、ならびに36〜69%の甲状腺乳頭癌を含む、多数のタイプの癌において一般的である(Davies et al., 2002, Nature, 417:949-954(非特許文献1);およびNamba et al., 2003, J. Clin. Endocr. Metab., 88:4393-97(非特許文献2)において概説された)。活性化しているBRAF突然変異はまた、82%までの良性の色素細胞性腫瘍(母斑)においても同定された(Pollock et al., 2003, Nature Genet., 33:19-20(非特許文献3))。最も一般的な、活性化しているBRAF突然変異は、600位でのグルタミン酸からバリンへの置換である(V600E;以前にV599Eとして同定された)。この突然変異によって、恒常的な細胞外シグナル制御プロテインキナーゼ(ERK)のシグナル伝達を刺激する非常に活性なキナーゼが生じる。BRAFV600Eの発現は、培養ヒト線維芽細胞(Zhu et al., 1998, Genes Dev., 12:2997-3007(非特許文献4))およびヒトメラノサイト(Michaloglou et al., 2005, Nature, 436:720-724(非特許文献5))において、ならびに前新生物性母斑においてインビボで(Michaloglou et al., 2005, Nature, 436:720-724(非特許文献5))、老化を誘導することが示された。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Davies et al., 2002, Nature, 417:949-954
【非特許文献2】Namba et al., 2003, J. Clin. Endocr. Metab., 88:4393-97
【非特許文献3】Pollock et al., 2003, Nature Genet., 33:19-20
【非特許文献4】Zhu et al., 1998, Genes Dev., 12:2997-3007
【非特許文献5】Michaloglou et al., 2005, Nature, 436:720-724
【発明の概要】
【0005】
概要
本開示は、インスリン様成長因子結合タンパク質7(IGFBP7)が、増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達を有する細胞、例えば、BRAFまたはRASウイルス癌遺伝子ホモログ(RAS)(例えば、神経芽細胞腫RASウイルス癌遺伝子ホモログ(NRAS)、V-KI-RAS2 Kirstenラット肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ(KRAS)、またはV-HA-RAS Harveyラット肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ(HRAS))の活性化型を発現する細胞において、老化および/またはアポトーシスを誘導するという驚くべき知見に、一部分において、基づく。IGFBP7剤を使用して、腫瘍(例えば、癌)を診断および処置する方法、細胞アポトーシスを誘導する方法、細胞老化を誘導する方法、ならびに細胞増殖を阻害する方法が、本明細書に記載される。
【0006】
一局面において、本出願は、腫瘍を有するか、腫瘍の危険性があるか、または腫瘍を有すると疑われる被験体を同定する工程;および、有効量のIGFBP7剤を被験体へ投与し、それによって腫瘍を処置する工程によって、被験体における腫瘍を処置する方法を特徴とする。ある態様において、腫瘍は、癌(例えば、メラノーマ、癌腫、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、または甲状腺乳頭癌)である。ある態様において、腫瘍は、増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達を有する。ある態様において、腫瘍は、成長および/または生存についてRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路に依存する。ある態様において、腫瘍は、活性化または発癌性のBRAFまたはRAS(例えば、NRAS、KRAS、またはHRAS)を発現する。ある態様において、活性化または発癌性のBRAFは、残基600でバリンからグルタミンへの突然変異を有する(BRAFV600E)。
【0007】
ある態様において、前記方法は、増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達の存在、成長および/または生存についてのRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路への依存、ならびに/または、活性化もしくは発癌性のBRAFもしくはRASを測定するために、被験体由来のサンプルを評価する工程、ならびに、増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達の存在、成長および/または生存についてのRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路への依存、ならびに/または、活性化または発癌性のBRAFもしくはRASに基づいて処置について被験体を選択する工程をさらに含む。ある態様において、サンプルは、腫瘍由来の、細胞、核酸、またはポリペプチドを含む。ある態様において、活性化または発癌性のBRAFは、残基600でバリンからグルタミンへの突然変異を有する(BRAFV600E)。
【0008】
別の局面において、本出願は、有効量のIGFBP7剤を細胞へ投与する工程を含む、増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達を有し、成長および/または生存についてRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路に依存し、ならびに/または、活性化もしくは発癌性のBRAFもしくはRAS(例えば、NRAS、KRAS、もしくはHRAS)を発現する細胞(例えば、腫瘍細胞)において老化を誘導する方法を特徴とする。ある態様において、細胞は腫瘍細胞である。
【0009】
さらなる局面において、本出願は、有効量のIGFBP7剤を細胞へ投与する工程を含む、増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達を有し、成長および/または生存についてRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路に依存し、ならびに/または、活性化もしくは発癌性のBRAFもしくはRAS(例えば、NRAS、KRAS、もしくはHRAS)を発現する細胞(例えば、腫瘍細胞)においてアポトーシスを誘導する方法を特徴とする。
【0010】
別の局面において、本出願は、有効量のIGFBP7剤を細胞へ投与する工程を含む、増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達を有し、成長および/または生存についてRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路に依存し、ならびに/または、活性化もしくは発癌性のBRAFもしくはRAS(例えば、NRAS、KRAS、もしくはHRAS)を発現する細胞(例えば、腫瘍細胞)の増殖を阻害する方法を特徴とする。
【0011】
さらなる局面において、本出願は、有効量のIGFBP7剤を細胞へ投与する工程を含む、増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達を有し、成長および/または生存についてRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路に依存し、ならびに/または、活性化もしくは発癌性のBRAFもしくはRAS(例えば、NRAS、KRAS、もしくはHRAS)を発現する細胞を含有する腫瘍の被験体における成長(例えば、転移性成長)を阻害する方法を特徴とする。
【0012】
別の局面において、本出願は、被験体における腫瘍または癌(例えば、メラノーマ、癌腫、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、または甲状腺乳頭癌)の処置用の医薬の製造におけるIGFBP7剤の使用を特徴とする。ある態様において、腫瘍は、増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達を有し、成長および/または生存についてRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路に依存し、ならびに/または、活性化BRAFもしくはRAS(例えば、NRAS、KRAS、もしくはHRAS)を発現する。ある態様において、腫瘍または癌は転移性である。
【0013】
さらなる局面において、本出願は、被験体における腫瘍または癌(例えば、メラノーマ、癌腫、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、または甲状腺乳頭癌)を処置するための単離されたIGFBP7剤を特徴とする。ある態様において、腫瘍は、増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達を有し、成長および/または生存についてRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路に依存し、ならびに/または、活性化BRAFもしくはRAS(例えば、NRAS、KRAS、もしくはHRAS)を発現する。ある態様において、腫瘍または癌は、転移性である。
【0014】
ある態様において、IGFBP7剤は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:7と少なくとも80%同一(例えば、少なくとも85%、90%、95%、98%、または99%同一)のポリペプチドを含む組成物である。ポリペプチドは、異種部分(例えば、異種ポリペプチド配列)へ結合され得る。ある態様において、IGFBP7剤は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:7の機能的フラグメントまたはドメインを含む。IGFBP7剤は、例えば、局所的に、全身的に、または局部的に(例えば、薬物放出インプラントによって)投与され得る。
【0015】
ある態様において、IGFBP7剤は、IGFBP7またはその活性フラグメントもしくはアナログの発現を誘導する組成物、例えば、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:7と少なくとも80%同一(例えば、少なくとも85%、90%、95%、98%、または99%同一)のポリペプチドをコードする核酸を被験体へ導入することによって投与される。核酸は、ベクター、例えば、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクター)中にあり得る。ある態様において、IGFBP7剤は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:7と少なくとも80%同一(例えば、少なくとも85%、90%、95%、98%、または99%同一)のポリペプチドをコードする核酸、該ポリペプチドを分泌する、細胞を被験体へ導入することによって投与される。
【0016】
別の局面において、本出願は、以下の工程を含む、病巣(例えば、メラノサイト性皮膚病巣)を診断する方法を特徴とする:病巣(例えば、メラノサイト性皮膚病巣)のサンプル(例えば、組織サンプル、細胞サンプル、タンパク質サンプル、または核酸サンプル)を得る工程、およびサンプル中のIGFBP7の発現を測定する工程、ここで、サンプルがIGFBP7を検出可能に発現する場合、病巣は良性(例えば、色素細胞性母斑)と診断され、ここで、サンプルがIGFBP7を発現しない場合、病巣は癌性(例えば、メラノーマ)と診断される。ある態様において、前記方法は、サンプルが、増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達を有するかどうか、成長および/または生存についてRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路に依存するかどうか、ならびに/または、活性化BRAFもしくはRAS(例えば、BRAFV600E)を含有するかどうかを測定する工程、ならびに、サンプルがIGFBP7を発現し、かつ、増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達を有し、成長および/または生存についてRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路に依存し、ならびに/または、活性化BRAFもしくはRASを含有する場合、病巣は良性(例えば、色素細胞性母斑)と診断する工程を含む。サンプルがIGFBP7を発現せず、かつ、増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達を有し、成長および/または生存についてRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路に依存し、ならびに/または、活性化BRAFもしくはRASを含有する場合、病巣は癌性(例えば、メラノーマ)と診断される。ある態様において、前記方法は、サンプルが、増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達を有するかどうか、成長および/または生存についてRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路に依存するかどうか、ならびに/または、活性化BRAFもしくはRAS(例えば、BRAFV600E)を含有するかどうかを測定する工程、ならびに、サンプルがIGFBP7を発現し、かつ、増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達を有し、成長および/または生存についてRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路に依存し、ならびに/または、活性化BRAFもしくはRASを含有する場合、病巣を良性(例えば、色素細胞性母斑)と診断する工程、ならびに、サンプルがIGFBP7を発現し、しかし、増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達を有さず、成長および/または生存についてRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路に依存せず、ならびに/または、活性化BRAFもしくはRASを含有しない場合、病巣を癌性(例えば、メラノーマ)と診断する工程を含む。
【0017】
「ポリペプチド」および「タンパク質」は、交換可能に使用され、長さまたは翻訳後修飾にかかわらず、任意のアミノ酸ペプチド結合鎖を意味する。
【0018】
本明細書において使用される場合、「癌を発症する危険性がある」被験体は、癌を発症する素因、即ち、癌を発症する遺伝性または家族性素因を有するか、または癌を生じさせ得る条件へ曝露された被験体である。上記から、「癌を発症する危険性がある」被験体は全てが被験体であるわけではないことが明らかである。
【0019】
「癌を有すると疑われる」被験体は、癌の1つまたは複数の症状を有するものである。癌の症状は、当業者に周知であり、非限定的に以下を含む:体重減少、脱力、過度の疲労、飲食困難、食欲不振、異常なほくろ外観、新たに色素沈着した皮膚領域、皮膚成長、皮膚潰瘍、皮膚しこり、慢性咳、悪化する息切れ、呼吸困難、リンパ節腫大、喀血、血尿、血便、悪心、嘔吐、肝転移、肺転移、骨転移、乳房または乳頭変化、乳頭分泌、腹部膨満、鼓腸、腹水、便秘、腹部膨満感、結腸穿孔、急性腹膜炎(感染症、熱、疼痛)、膣出血、疼痛、吐血、多汗、熱、高血圧、貧血、下痢、黄疸、めまい、悪寒、筋痙攣、結腸転移、肺転移、膀胱転移、肝転移、骨転移、腎転移、膵転移、嚥下困難など。例えば、癌を有すると医師によって診断された患者は、癌を有すると依然として疑われる。
【0020】
用語「癌」は、自律的成長能を有する細胞を指す。このような細胞の例としては、急速に増殖する細胞成長を特徴とする異常な状態または病態を有する細胞が挙げられる。前記用語は、侵襲性の組織病理学的タイプまたは段階にかかわらず、癌性成長物、例えば、腫瘍;発癌性突起、転移性組織、および悪性形質転換細胞、組織、または器官を含むように意味される。種々の器官系、例えば、呼吸器系、心臓血管系、腎臓系、生殖器系、血液系、神経系、肝臓系、胃腸系、および内分泌系の悪性疾患;ならびに、大抵の結腸癌、腎細胞癌、前立腺癌および/または精巣腫瘍、非小細胞肺癌、小腸癌、および食道癌などの悪性疾患を含む腺癌も含まれる。「自然発生する」癌は、被験体への癌細胞の移植によって実験で誘導されない任意の癌を含み、例えば、自然に発生する癌、発癌物質への患者の曝露によって引き起こされる癌、トランスジェニック癌遺伝子の挿入または腫瘍抑制遺伝子のノックアウトから生じる癌、および感染、例えば、ウイルス感染によって引き起こされる癌を含む。用語「癌腫」は、当技術分野において認識されており、上皮または内分泌組織の悪性疾患を指す。
【0021】
特に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同一の意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または均等の方法および材料が本発明の実施および試験において使用され得るが、好適な方法および材料を下記に記載する。本明細書に記載される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によってそれらの全体が組み入れられる。抵触する場合、本明細書が、定義を含んで、制御する。さらに、材料、方法、および実施例は、例示的であるに過ぎず、限定的であるようには意図されない。
【0022】
本発明の1つまたは複数の態様の詳細を、添付の図面および下記の説明に記載する。本発明の他の特徴、目的、および利点は、説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1Aは、細胞増殖に対するBRAFV600Eが媒介する阻止に必要とされる遺伝子についてのゲノム規模shRNAスクリーニングの図式概要である。図1Bは、17個のBRAFV600E/BJ KD細胞株の増殖を示す写真の表示のセットである。記載のshRNAを安定発現する1×104個のBJ線維芽細胞を、12-ウエルプレートフォーマットで培養し、BRAFV600E発現レトロウイルスを感染させ、14日後、クリスタルバイオレットで染色した。NS、非サイレンシング対照shRNA。図1Cは、17個のBRAFV600E/メラノサイトKD細胞株の定量的増殖アッセイを示す棒グラフである。記載のshRNAを安定発現するBJ線維芽細胞に、BRAFV600E発現レトロウイルスを感染させ、14日後、トリパンブルー排除試験によって分析した。BRAFV600E/メラノサイトの成長を、正常なメラノサイトの成長と比較して表す。BRAFV600E/メラノサイトKD細胞株について、BRAFV600E発現がない場合の対応するメラノサイトKD細胞株の成長に対して、値を正規化した。エラーバーは、標準誤差を示す。図1Dは、17個のBRAFV600E/メラノサイトKD細胞株のDNA複製アッセイを示す棒グラフである。DNA複製を、BRAFV600E発現の4日後にBrdU取り込みによってモニタリングした。図1Eは、17個のBRAFV600E/メラノサイトKD細胞株のアポトーシスを示す棒グラフである。アポトーシスを、BRAFV600E発現の4日後にアネキシンV-PE染色によってモニタリングした。図1Fは、17個のBRAFV600E/メラノサイトKD細胞株の各々におけるp16INK4aの誘導およびヒストン3リジン9(H3K9)のアセチル化をモニタリングする免疫ブロット分析を示す免疫ブロットのセットである。β-ACTIN(ACTB)を、ローディング対照としてモニタリングした。
【図2】図2A(上部)は、正常なメラノサイト、BRAFV600E/メラノサイト、IGFBP7 shRNAを安定発現するBRAFV600E/メラノサイト由来のCMにおける、またはIGFBP7を免疫除去するためにα-IGFBP7抗体で処理されたBRAFV600E/メラノサイトCMにおける、IGFBP7レベルの分析である。図2A(下部)は、上述の種々のCMの添加後のナイーブメラノサイトの増殖を示す棒グラフである。増殖を、CM添加の14日後に測定し、未処理メラノサイトの成長に対して正規化した。エラーバーは、標準誤差を示す。図2Bは、精製された組換えIGFBP7(rIGFBP7)のCoomassie染色ゲルである。分子量マーカーの位置を、左側にkDaで示す。図2Cは、処理の14日後のメラノサイトの成長に対するrIGFBP7の効果をモニタリングする増殖アッセイを示す線グラフである。図2Dは、エンプティーベクター(第1列)またはBRAFV600E(第2列)のいずれかを発現するレトロウイルスに感染したメラノサイト、または、BRAFV600E/メラノサイト由来のCM(第3列)またはrIGFBP7(第4列)で処理されたメラノサイトの、β-ガラクトシダーゼ染色を示す12枚の顕微鏡写真のセットである。画像は、10X、20Xおよび40Xの倍率で示される。図2Eは、未処理メラノサイト、または、非サイレンシング(NS)またはIGFBP7 shRNAを安定発現するメラノサイトの成長速度を示す棒グラフのセットである。細胞数を、6日間、毎日モニタリングした。
【図3】図3Aは、ヒトメラノーマ細胞株由来のCMにおけるIGFBP7の発現をモニタリングする免疫ブロット分析(上部)、ならびに、活性化しているBRAFV600E突然変異(SK-MEL-28、MALME-3M、WM793B、WM39、およびWM278)、活性化しているRASQ61R突然変異(SK-MEL-2、SK-MEL-103、およびWM1366)、またはBRAFおよびRASの両方についての野生型(CHL、SK-MEL-31、WM1321、およびWM3211)を含有するヒトメラノーマ細胞株のIGFBP7発現の定量的リアルタイムRT-PCR分析を示す関連の棒グラフ(下部)である。エラーバーは、標準誤差を示す。図3Bは、rIGFBP7での処理の24時間後のヒトメラノーマ細胞株の増殖を示す棒グラフである。増殖を、rIGFBP7を添加しない場合の対応する細胞株の成長に対して正規化した。エラーバーは、標準誤差を示す。図3Cは、rIGFBP7での処理の24時間後のヒトメラノーマ細胞株のアポトーシスを示す棒グラフである。図3Dは、非サイレンシング(NS)、SMARCB1またはBNIP3L shRNAのいずれかを安定発現する、rIGFBP7の存在または非存在下での、SK-MEL-28細胞における、SMARCB1、BNIP3Lおよび活性化カスパーゼ3(act-CASP3)の発現の免疫ブロットのセットである。β-アクチン(ACTB)をローディング対照としてモニタリングした。図3Eは、ChIP分析によって測定された、SK-MEL-28細胞におけるSMARCB1プロモーターへのSTAT1リクルートメントを示す棒グラフである。図3Fは、qRT-PCRによって測定された、NSまたはSTAT1 siRNAでの処理後のSK-MEL-28細胞におけるSMARCB1(左)またはSTAT1(右)mRNAレベルを示す一対の棒グラフである。図3Gは、ChIP分析によって測定された、SK-MEL-28細胞におけるBNIP3LプロモーターへのSMARCB1(左)またはBRG1(右)リクルートメントを示す一対の棒グラフである。図3Hは、SK-MEL-28細胞のアポトーシスを示す線グラフである。SK-MEL-28細胞を、0、2、6、12、または24時間、rIGFBP7と共にインキュベートし、その後、細胞を洗浄し、rIGFBP7を欠いている培地中で培養した。次いで、アポトーシスを24時間後に定量した。
【図4】図4Aは、増加する濃度のrIGFBP7(0.2、1.0、2.0、5.0または10μg/ml)で24時間処理されたSK-MEL-28細胞におけるホスホ-ERKおよび総ERKのレベルをモニタリングする免疫ブロットのセットである。図4Bは、rIGFBP7に対するSK-MEL-28細胞の感受性を示す棒グラフである。細胞に、エンプティー発現ベクターまたは恒常的に活性なERK2突然変異体をトランスフェクトした。細胞成長を、rIGFBP7での処理の24時間後に分析し、rIGFBP7を添加しない場合の対応する細胞株の成長に対して正規化した。エラーバーは、標準誤差を示す。図4Cは、エンプティー発現ベクターまたは恒常的に活性化されるERK2突然変異体が安定にトランスフェクトされたSK-MEL-28細胞におけるBNIP3L、act-CASP3、ホスホ-ERKおよび総ERKの発現をモニタリングする免疫ブロットのセットである。SK-MEL-28細胞を、処理しなかったか、または、細胞を回収する前に24時間、記載のように、10μg/mlのrIGFBP7で処理した。図4Dは、rIGFBP、MEK阻害剤(MEK-i)またはRAF阻害剤(RAF-i)での処理の24時間後の、SK-MEL-28細胞におけるBNIP3L、SMARCB1、act-CASP3、ホスホ-ERKおよび総ERKの発現をモニタリングする免疫ブロットのセットである。
【図5】図5Aは、rIGFBP7で局部的に処置した異種移植マウスの腫瘍体積を示す線グラフである。SK-MEL-28またはSK-MEL-31細胞を、ヌードマウスの側腹部へ皮下注射し、3、6、および9日後に(矢印)、マウスの腫瘍部位に、rIGBP7、または対照としてPBSを注射した。エラーバーは、標準誤差を示す。図5Bは、rIGFBP7で全身的に処置した異種移植マウスの腫瘍体積を示す線グラフである。SK-MEL-28またはSK-MEL-31細胞を、ヌードマウスの側腹部へ注射した。腫瘍が100 mm3のサイズに達した場合、100μgのrIGFBP7を、第6、9、および12日に(矢印)、尾静脈注射によって全身投与した。図5Cは、rIGFBP7による腫瘍成長の用量依存性抑制を示す棒グラフである。SK-MEL-28細胞を、(図5B)に記載されるように、ヌードマウスの側腹部へ注射し、この後に、2、20、50、100、または250μgのrIGFBP7を、尾静脈注射によって全身投与した。腫瘍体積を、注射後の第21日に測定した。
【図6】図6Aは、正常なヒト皮膚(正常皮膚−列1)、母斑(BRAFV600E陽性−列2および3)、ならびにメラノーマ(BRAFV600E−列4および5;ならびにBRAF-野生型−列6および7)サンプルにおけるIGFBP7発現を示す免疫組織化学スライドのセットである。サンプルを、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した(行1)。IGFBP7発現を示す画像を、2X(行2)および/または20X(行3)の倍率で示す。矢印は、正常皮膚におけるIGFBP7陽性メラノサイトを示す。図6Bは、活性化BRAFがどのように老化を促進するかの図式概要である。BRAF-野生型メラノサイトにおいて、BRAF-MEK-ERK経路を介しての正常なシグナル伝達が、IGFBP7の誘導へ至り、これは、次に、オートクリン/パラクリン経路を介してBRAF-MEK-ERK経路を阻害し;結果は、制御された増殖である。BRAFV600E陽性母斑において、BRAF-MEK-ERK経路の恒常的な活性化は、IGFBP7の誘導へ至り、これは、該経路を阻害し、老化遺伝子を活性化する。BRAFV600E陽性メラノーマにおいて、IGFBP7発現は失われ、細胞は、制御されない増殖を受ける。外因性IGFBP7の添加は、BRAF-MEK-ERK経路を阻害し、アポトーシス遺伝子を活性化する。
【図7】図7Aは、ヒトIGFBP7のポリペプチド配列(SEQ ID NO:1;GenBankアクセッション番号NP_001544)である。図7Bは、ヒトIGFBP7 mRNAのヌクレオチド配列(SEQ ID NO:2;GenBankアクセッション番号NM_001553)である。
【図8】図8Aは、ヒトBRAFのポリペプチド配列(SEQ ID NO:3;GenBankアクセッション番号NP_004324)である。図8Bは、ヒトBRAF mRNAのヌクレオチド配列(SEQ ID NO:4;GenBankアクセッション番号NM_004333)である。
【図9】図9Aは、ヒトNRASのポリペプチド配列(SEQ ID NO:5;GenBankアクセッション番号NP_002515)である。図9Bは、ヒトNRAS mRNAのヌクレオチド配列(SEQ ID NO:6;GenBankアクセッション番号NM_002524)である。
【図10】図10Aは、IGFBP7プロモーターの概略図であり;CpGジヌクレオチドの位置が、垂線によってスケールに対して示される。図10Bは、色素細胞性母斑(BRAFV600E)、メラノーマ(BRAF 野生型)、およびメラノーマ(BRAFV600E)におけるIGFBP7プロモーターのビスルファイト配列分析である。各円は、CpGジヌクレオチドを示す:オープンな(白)円は、非メチル化CpG部位を意味し、塗りつぶされた(黒)円は、メチル化CpG部位を示す。各行は、単一クローンを示す。図10Cは、一団の記載のメラノーマ細胞株におけるIGFBP7プロモーターのビスルファイト配列分析である。各円は、CpGジヌクレオチドを示す:オープンな(白)円は、非メチル化CpG部位を意味し、塗りつぶされた(黒)円は、メチル化CpG部位を示す。各行は、単一クローンを示す。図10DはqRT-PCRによって測定された、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤5-アザ-2'-デオキシシチジン(5-aza)での処理後の、メラノーマ細胞株におけるIGFBP7 mRNAレベルを示す棒グラフである。エラーバーは、標準誤差を示す。
【図11】図11Aは、IGFBP7が媒介するアポトーシスに対する、記載されたヒト癌細胞株の感受性を示す棒グラフである。RAS/BRAF突然変異状態を、凡例に示されるように、バーによって示す。図11Bは、MEK阻害剤U0216による成長阻害に対する記載されたヒト癌細胞株の感受性を示す棒グラフである。RAS/BRAF突然変異状態を、凡例に示されるように、バーによって示す。
【図12】図12Aは、異種移植マウスにおける転移性肺腫瘍に対するIGFBP7の効果を測定するための実験プロトコルの概略図である。図12Bおよび12Cは、A375(Fluc-IRES-GFP)細胞の注射後の第6日での、インビボでのGFP発現細胞の濃度を示すマウスの写真の一対の表示である。図12B、PBS対照処置;図12C、IGFBP7処置。図12Dは、実験過程にわたるマウスの生存のKaplan-Meier分析を示すチャートである。
【図13】図13Aは、異種移植マウスにおける転移性肺腫瘍に対するIGFBP7の効果を測定するための実験プロトコルの概略図である。図13Bは、実験過程にわたるマウスの生存のKaplan-Meier分析を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
本開示は、IGFBP7剤を用いて、腫瘍(例えば、癌)を処置する方法、細胞アポトーシスを誘導する方法、細胞老化を誘導する方法、および細胞増殖を阻害する方法を含む。
【0025】
IGFBP7剤
本明細書に記載の方法で使用され得るIGFBP7剤は、IGFBP7ポリペプチド配列および、あるいは、1つまたは複数のポリペプチドまたは非ポリペプチド部分を含む薬剤であり、その結果、該薬剤は、インビトロでヒトBJ初代包皮線維芽細胞の増殖を阻害するrIGFBP7の能力(実施例1を参照のこと)の少なくとも25%(例えば、少なくとも:30%;40%;50%;60%;70%;75%;80%;85%;90%;95%;97%;98%;99%;99.5%、または100%もしくはさらにそれ以上)を有する。例示的な薬剤は、IGFBP7のフラグメントおよびアナログを含む(下記を参照のこと)。IGFBP7ポリペプチド配列は、成熟した可溶性IGFBP7ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:1の残基24〜282、25〜282、26〜282、27〜282、28〜282、または29〜282)、IGFBP7の1つまたは複数のドメイン、またはそのフラグメントもしくは変異体を含み得る。IGFBP7の例示的なフラグメントは、SEQ ID NO:1の残基84〜103由来の配列を含む:

【0026】
ある態様において、IGFBP7ポリペプチドは、天然のIGFBP7ポリペプチドの全部または一部と実質的に同一の配列を含む。本明細書に記載されるIGFBP7ポリペプチド配列に「実質的に同一の」ポリペプチドは、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:7によって示されるIGFBP7ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも65%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%、例えば、100%)同一であるアミノ酸配列を有する。さらに、50個、例えば、1、3、5、10、15、20、25、30、または40個までのアミノ酸挿入、欠失、または置換、例えば、保存的アミノ酸置換を有するIGFBP7ポリペプチドが、本明細書に記載される組成物および方法において有用である。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非帯電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、ならびに芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。
【0027】
2つのアミノ酸配列間の同一性の割合は、ncbi.nlm.nih.gov/BLASTで一般に公開されている、BLAST 2.0プログラムを使用して測定され得る。配列比較は、デフォルトパラメータ(BLOSUM 62マトリクス、ギャップ存在コスト(gap existence cost)は11、残基当たりのギャップコスト(per residue gap cost)は1、およびラムダ比は0.85)を使用して行われる。BLASTプログラムにおいて使用される数学アルゴリズムは、Altschul et al., 1997, Nucleic Acids Research, 25:3389-3402に記載されている。
【0028】
本明細書に記載される方法に有用なIGFBP7ポリペプチドは、組換えポリペプチドおよび天然のポリペプチドであり得るが、これらに限定されない。IGFBP7ポリペプチドは、任意のヒトまたは哺乳類種から得ることができ、開示される活性を有する選択的スプライシング形態および他のアイソフォームを含み得る。ヒトIGFBP7ポリペプチドと類似性を有する非ヒトIGFBP7ポリペプチドが、チンパンジー(例えば、GenBankアクセッション番号XP_517274)、アカゲザル(例えば、GenBankアクセッション番号XP_001083041、XP_001082658)、ウシ(例えば、GenBankアクセッション番号XP_873466)、イヌ(例えば、GenBankアクセッション番号XP_850270、XP_861128)、マウス(例えば、GenBankアクセッション番号Q61581)、およびラット(例えば、GenBankアクセッション番号NP_001013066)において同定された。
【0029】
また、IGFBP7ポリペプチドの部分が、融合タンパク質を作製するために無関係のポリペプチド(例えば、マーカーポリペプチドまたは精製タグ)へ融合されている融合タンパク質も、新規の方法において有用である。例えば、前記ポリペプチドは、精製を容易にするためにペプチドタグ(例えば、細菌によって発現されたポリペプチドの精製を容易にするためにヘキサヒスチジンタグまたはFLAGタグ、または、真核細胞において発現されたポリペプチドの精製を促進するために赤血球凝集素タグまたはFLAGタグ)へ融合され得る。また、例えば、第1部分および第2部分を含むポリペプチドも有用であり;第1部分は、例えば、IGFBP7ポリペプチドを含み、第2部分は、例えば、検出可能なマーカーまたは血清蛋白質、例えば、免疫グロブリン定常領域、またはヒト血清アルブミンを含む。
【0030】
IGFBP7のアミノ末端領域(SEQ ID NO:1の残基81まで)は、他のインスリン様成長因子結合タンパク質(IGFBP)と相同性を有する領域を含有する。この領域は、残基32、35、40、48、57、59、60、63、71、および81で保存システイン残基ならびに残基56〜63で保存「GCGCCxxC」ドメインを含む(Kim et al., 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. 94:12981-86を参照のこと)。IGFBP7の他の保存ドメインとしては、残基118〜156辺りのKazal型セリンプロテアーゼインヒビターおよびフォリスタチン様ドメイン(Conserved Domain Databaseアクセッション番号cd00104)、および、残基160-162〜248辺りの免疫グロブリンドメイン、細胞接着分子サブファミリー(Conserved Domain Databaseアクセッション番号cd00931)が挙げられる。保存残基およびドメインは、IGFBP7ポリペプチドのフラグメント、アナログ、および変異体を作製する場合に使用され得る。
【0031】
IGFBP7剤は、ポリペプチド上の1つまたは複数の部位に、例えば、アミノもしくはカルボキシ末端に、1つまたは複数の化学的修飾(例えば、翻訳後修飾)を有し得る。化学的修飾の方法は、当業者に周知であり、1つまたは複数の特性、例えば、IGFBP7剤の活性、安定性、保持、または薬物動態を変化させるために使用され得る。例示的な修飾としては、グリコシル化およびPEG化が挙げられる。IGFBP7は、SEQ ID NO:1の残基171〜173に推定上のN-グリコシル化部位を含有する。IGFBP4のペグ化が、US 2006/0100144に記載されている。同様の修飾および方法が、IGFBP7剤で使用され得る。
【0032】
IGFBP7剤はまた、IGFBP7ポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:7)、その機能的フラグメント、または変異体のペプチド模倣型(peptidomimemtic version)であり得る。これらのポリペプチドは、ペプチド模倣物を作製するための当技術分野において公知の方法に従って修飾され得る。例えば、Kazmierski, W.M., ed., Peptidomimetics Protocols, Human Press (Totowa NJ 1998);Goodman et al., eds., Houben-Weyl Methods of Organic Chemistry: Synthesis of Peptides and Peptidomimetics, Thiele Verlag (New York 2003);およびMayo et al., J. Biol. Chem., 278:45746 (2003)を参照のこと。ある場合において、本明細書に開示されるペプチドおよびフラグメントのこれらの修飾されたペプチド模倣型は、非ペプチド模倣ペプチドと比較して、インビボでの増強された安定性を示す。
【0033】
ペプチド模倣物を作製するための方法は、ペプチド配列中のアミノ酸の1つまたは複数、例えば全部をD-アミノ酸エナンチオマーで置き換えることを含む。このような配列は、本明細書において「レトロ(retro)」配列と呼ばれる。別の方法において、アミノ酸残基のN末端からC末端への順序が逆にされ、その結果、オリジナルペプチドのN末端からC末端へのアミノ酸残基の順序が、修飾ペプチド模倣物においてC末端からN末端へのアミノ酸残基の順序となる。このような配列は、「インベルソ(inverso)」配列と呼ばれ得る。
【0034】
ペプチド模倣物は、レトロ型およびインベルソ型の両方、即ち、本明細書に開示されるペプチドの「レトロ−インベルソ(retro-inverso)」型であり得る。新規のペプチド模倣物は、ペプチド模倣物におけるN末端からC末端へのアミノ酸残基の順序がオリジナルペプチドにおけるC末端からN末端へのアミノ酸残基の順序に対応するように配置されたD-アミノ酸から構成され得る。
【0035】
ペプチド模倣物を作製するための他の方法は、ペプチド中の1つまたは複数のアミノ酸残基を、化学的に異なるが認識されるアミノ酸の機能的アナログ、即ち、人工アミノ酸アナログで置き換えることを含む。人工アミノ酸アナログとしては、β-アミノ酸、β-置換β-アミノ酸(「β3-アミノ酸」)、アミノ酸のリンアナログ、例えば、α-アミノホスホン酸およびα-アミノホスフィン酸、ならびに非ペプチド結合を有するアミノ酸が挙げられる。人工アミノ酸は、ペプチド模倣物、例えば、ペプトイドオリゴマー(例えば、ペプトイドアミドまたはエステルアナログ)、β-ペプチド、環状ペプチド、オリゴウレアもしくはオリゴカルバメートペプチド;またはヘテロ環式環分子を作製するために使用され得る。
【0036】
また、本明細書に記載されるIGFBP7剤、例えば、天然のIGFBP7ポリペプチド、または、天然のアミノ酸配列が変化もしくは欠失されているIGFBP7ポリペプチドの形態(例えば、IGFBP7のフラグメントもしくはアナログ)をコードする核酸分子も、本明細書に開示される方法において有用である。ある核酸は、通常の生理学的条件下で可溶性であるポリペプチドをコードし得る。IGFBP7剤は、当技術分野において公知の任意の手段によって細胞内で発現され(例えば、外因性に発現され)得る。IGFBP7剤を発現する細胞を作製するために、当技術分野において公知の任意の種々の技術を使用して、細胞は、トンラスフェクト、形質転換、または形質導入され得る。当業者に公知の任意の多数のトランスフェクション、形質転換、および形質導入プロトコル、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York. N.Y.,において、または市販される多数のキット(例えば、Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, Calif.)において概説されるものが使用され得る。このような技術は、安定または一過性形質転換体を生じさせ得る。1つの好適なトランスフェクション技術は、エレクトロポレーションであり、これは、市販の装置を使用して、哺乳類細胞、酵母細胞および細菌を含む、種々の細胞型において行われ得る。エレクトロポレーションについての最適条件(電圧、抵抗およびパルス長を含む)は、特定の宿主細胞型について実験的に決定され、エレクトロポレーションを最適化するための一般的なガイドラインは、製造業者から得ることができる。
【0037】
IGFBP7剤を投与する例示的な方法は、本明細書に記載されるIGFBP7剤をコードする核酸を被験体へ導入することを含む。ある態様において、IGFBP7剤をコードする核酸は、ベクター内に、例えば、IGFBP7剤を発現する核酸を含むウイルスとして、含有される。例示的なウイルスベクターとしては、アデノウイルス(Altaras et al., 2005, Adv. Biochem. Eng. Biotechnol., 99:193-260において概説される)、アデノ随伴ウイルス(Park et al., 2008, Front. Biosci., 13:2653-59において概説される;Williams, 2007, Mol. Ther., 15:2053-54も参照のこと)、パルボウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス(Tai et al., 2008, Front. Biosci., 13:3083-95において概説される)、および単純ヘルペスウイルスが挙げられる。核酸の送達方法は、Patil et al., 2005, AAPS J., 7:E61-77において概説されており、これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0038】
ある態様において、IGFBP7ポリペプチドを発現させる核酸が、直接、癌細胞へ、または癌細胞の近くの細胞へ、投与される。ある態様において、IGFBP7ポリペプチドを発現させる核酸が、エクスビボで細胞へ投与され、これは、次いで、被験体へ腫瘍の近くに投与される。
【0039】
IGFBP7剤は、当技術分野において公知の任意の手段によって、例えば、化学合成、組換え法、またはIGFBP7を天然に産生する細胞からの単離によって、製造され得る。ポリペプチドを含む分子の精製および単離方法も、当業者に周知である。培養細胞からIGFBP7を精製する例示的な方法は、Yamauchi et al., 1994, Biochem J., 303:591-598に記載されている。
【0040】
IGFBP7のフラグメントおよびアナログの製造
フラグメントの作製
タンパク質のフラグメントは、いくつかの方法で、例えば、組換えによって、タンパク質分解消化によって、または化学合成によって製造され得る。ポリペプチドの内部または末端フラグメントは、ポリペプチドをコードする核酸の一方の末端(末端フラグメントについて)または両方の末端(内部フラグメントについて)から、1つまたは複数のヌクレオチドを除去することによって作製され得る。突然変異DNAの発現によって、ポリペプチドフラグメントが産生される。従って、「末端をニブリングする(end-nibbling)」エンドヌクレアーゼでの消化によって、フラグメントのアレイをコードするDNAが作製され得る。タンパク質のフラグメントをコードするDNAはまた、ランダム剪断、制限消化または上述の方法の組み合わせによって作製され得る。
【0041】
フラグメントはまた、従来のMerrifield固相f-Mocまたはt-Boc化学などの当技術分野において公知の技術を使用して化学的に合成され得る。例えば、本発明のペプチドは、任意に、フラグメントの重複がない所望の長さのフラグメントへ分割され得、または所望の長さの重複するフラグメントへ分割され得る。
【0042】
アナログの作製:ランダム法による改変DNAおよびペプチド配列の製造
タンパク質のアミノ酸配列変異体は、タンパク質またはタンパク質の特定のドメインもしくは領域をコードするDNAのランダム突然変異誘発によって作製され得る。有用な方法としては、PCR突然変異誘発および飽和突然変異誘発が挙げられる。ランダムアミノ酸配列変異体のライブラリーもまた、縮重オリゴヌクレオチド配列のセットの合成によって作製され得る。(変異体のライブラリー中のタンパク質をスクリーニングする方法は、本明細書中の他の箇所にある。)
【0043】
PCR突然変異誘発
PCR突然変異誘発において、低下したTaqポリメラーゼ忠実度が、DNAのクローン化フラグメントへランダム突然変異を導入するために使用され得る(Leung et al., 1989, Technique 1 : 11-15)。これは、ランダム突然変異を導入する非常に強力でありかつ比較的迅速な方法である。突然変異されるDNA領域は、例えば、dGTP/dATPの比率5を使用し、PCR反応へMn2+を添加することによって、Taq DNAポリメラーゼによるDNA合成の忠実度を低下させる条件下で、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して増幅される。増幅されたDNAフラグメントのプールを、好適なクローニングベクター中へ挿入し、ランダム突然変異体ライブラリーが得られる。
【0044】
飽和突然変異誘発
飽和突然変異誘発は、クローン化DNAフラグメント中への多数の単一塩基置換の迅速な導入を可能にする(Mayers et al., 1985, Science 229:242)。この技術は、例えば、インビトロでの一本鎖DNAの化学処理または照射による、突然変異の発生と、相補的DNA鎖(complimentary DNA strand)の合成とを含む。突然変異頻度は、処理の厳しさを調節することによって調節され得、本質的に全ての可能性のある塩基置換が、得られ得る。この手順は突然変異体フラグメントについての遺伝的選択を含まないので、中性置換、ならびに機能を変化させるものの両方が得られる。点突然変異の分布は、保存配列エレメントに偏らない。
【0045】
縮重オリゴヌクレオチド
相同体のライブラリーはまた、縮重オリゴヌクレオチド配列のセットから作製され得る。縮重配列の化学合成は、自動DNA合成機において行われ得、次いで、合成遺伝子が、好適な発現ベクターへ連結される。縮重オリゴヌクレオチドの合成は、当技術分野において公知である(例えば、Narang, SA (1983) Tetrahedron 39:3;Itakura et al. (1981) Recombinant DNA, Proc 3rd Cleveland Sympos. Macromolecules, ed. AG Walton, Amsterdam: Elsevier pp273-289;Itakura et al. (1984) Annu. Rev. Biochem. 53:323;Itakura et al. (1984) Science 198: 1056;Ike et al. (1983) Nucleic Acid Res. 11:477を参照のこと)。このような技術は、他のタンパク質の定向進化において利用されてきた(例えば、Scott et al. (1990) Science 249:386-390;Roberts et al. (1992) PNAS 89:2429-2433;Devlin et al. (1990) Science 249: 404-406;Cwirla et al. (1990) PNAS 87: 6378-6382;ならびに米国特許第5,223,409号、第5,198,346号、および第5,096,815号を参照のこと)。
【0046】
アナログの作製:定方向突然変異誘発による改変DNAおよびペプチド配列の製造
非ランダムのまたは定方向の、突然変異誘発技術が、特定の領域において特定の配列または突然変異を提供するために使用され得る。これらの技術は、例えば、タンパク質の既知のアミノ酸配列の残基の欠失、挿入、または置換を含む変異体を作製するために使用され得る。突然変異についての部位は、例えば、(1)先ず、保存アミノ酸で、次に、達成された結果によっては、よりラジカルな選択肢で置換すること、(2)標的残基を欠失させること、または(3)位置された部位の隣へ同一または異なるクラスの残基を挿入すること、または選択肢1〜3の組み合わせによって、個々にまたは連続して修飾され得る。
【0047】
アラニンスキャンニング突然変異誘発
アラニンスキャンニング突然変異誘発は、突然変異誘発について好ましい位置またはドメインである、所望のタンパク質の特定の残基または領域の同定についての有用な方法である;Cunningham and Wells (Science 244:1081-1085, 1989)。アラニンスキャンニングにおいて、標的残基の残基または基が、同定され(例えば、帯電した残基、例えば、Arg、Asp、His、Lys、およびGlu)、中性のまたは負に帯電したアミノ酸(最も好ましくは、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えられる。アミノ酸の置換は、アミノ酸と細胞内または細胞外の周囲水性環境との相互作用に影響を与え得る。置換に対する機能的感受性を示すそれらのドメインは、次いで、置換の部位でまたは置換の部位についてさらなるまたは他の変異体を導入することによってリファインされる。従って、アミノ酸配列変異を導入するための部位が予め決定されるが、突然変異自体の性質は予め決定される必要がない。例えば、所定の部位での突然変異の性能を最適化するために、アラニンスキャンニングまたはランダム突然変異誘発が、標的コドンまたは領域で行われ得、発現された所望のタンパク質サブユニット変異体が、所望の活性の最適な組み合わせについてスクリーニングされる。
【0048】
オリゴヌクレオチド媒介突然変異誘発
オリゴヌクレオチド媒介突然変異誘発は、DNAの置換、欠失、および挿入変異体を作製するための有用な方法である;例えば、Adelman et al., (DNA 2:183, 1983)を参照のこと。簡潔に記載すると、所望のDNAが、突然変異をコードするオリゴヌクレオチドをDNAテンプレートへハイブリダイズさせることによって改変され、ここで、テンプレートは、所望のタンパク質の未改変のまたはネイティブなDNA配列を含有するプラスミドまたはバクテリオファージの一本鎖形態である。ハイブリダイゼーション後、DNAポリメラーゼを使用し、前記テンプレートの完全な第二相補鎖を合成し、これは、従って、前記オリゴヌクレオチドプライマーを組み込み、所望のタンパク質DNAにおける選択された改変をコードする。一般的に、長さが少なくとも25ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドが使用される。最適なオリゴヌクレオチドは、突然変異をコードするヌクレオチドのいずれかのサイド上に、テンプレートに対して完全に相補的である12〜15ヌクレオチドを有する。これは、オリゴヌクレオチドが、一本鎖DNAテンプレート分子へ適切にハイブリダイズすることを確実にする。オリゴヌクレオチドは、Crea et al. (Proc. Natl. Acad. Sci. (1978) USA, 75: 5765) によって記載されたものなどの、当技術分野において公知の技術を使用して容易に合成される。
【0049】
カセット突然変異誘発
変異体を作製するための別の方法である、カセット突然変異誘発は、Wells et al. (Gene (1985) 34:315)によって記載された技術に基づく。出発材料は、突然変異されるタンパク質サブユニットDNAを含むプラスミド(または他のベクター)である。突然変異を誘発されるタンパク質サブユニットDNA中のコドンが同定される。同定された突然変異部位の各サイド上に、独特な制限エンドヌクレアーゼ部位が存在しなければならない。このような制限部位が存在しない場合、それらは、所望のタンパク質サブユニットDNA中の好適な位置にそれらを導入するために上述のオリゴヌクレオチド媒介突然変異誘発法を使用して、作製され得る。制限部位がプラスミドへ導入された後、プラスミドはこれらの部位で切断され、それは直線化される。前記制限部位の間のDNAの配列をコードし、しかし所望の突然変異を含有する、二本鎖オリゴヌクレオチドが、標準手順を使用して合成される。2つの鎖は、標準技術を使用して、別々に合成され、次いで一緒にハイブリダイズされる。この二本鎖オリゴヌクレオチドが、カセットと呼ばれる。このカセットは、前記直線化されたプラスミドの末端に相当する3'および5'末端を有するように設計され、その結果、それは、該プラスミドへ直接連結され得る。このプラスミドは、ここで、突然変異された所望のタンパク質サブユニットDNA配列を含有している。
【0050】
コンビナトリアル突然変異誘発
コンビナトリアル突然変異誘発もまた、突然変異体を作製するために使用され得る。例えば、相同体または他の関連タンパク質の群についてのアミノ酸配列が、好ましくは、最も高い相同性を可能にするように整列される。整列された配列の所定の位置にあるアミノ酸の全てが、コンビナトリアル配列の縮重セットを作製するために選択され得る。変異体の多様なライブラリーは、核酸レベルでのコンビナトリアル突然変異誘発によって作製され、多様な遺伝子ライブラリーによってコードされる。例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物が、遺伝子配列中へ酵素的に連結され得、その結果、可能性のある配列の縮重セットが、個々のペプチドとして、または代わりに、縮重配列のセットを含有するより大きな融合タンパク質のセットとして、発現可能となる。
【0051】
ペプチドフラグメントまたは相同体のライブラリーをスクリーニングするための主要なハイスループット法
作製された突然変異体遺伝子産物をスクリーニングするための種々の技術が、当技術分野において公知である。大きな遺伝子ライブラリーをスクリーニングするための技術は、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターへクローニングすること、得られたベクターのライブラリーで好適な細胞を形質転換すること、および、所望の活性、例えば、ヒトBJ増殖の阻害の検出が測定される条件下で遺伝子を発現させることをしばしば含む。下記に記載の技術の各々は、例えば、ランダム突然変異誘発技術によって作製された多数の配列をスクリーニングするためのハイスループット分析に適用可能である。
【0052】
活性化している突然変異
本明細書に記載される方法および組成物は、増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達を有し、成長および/または生存についてRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路に依存し、ならびに/または、BRAFシグナル伝達経路において活性化している突然変異(例えば、活性化しているBRAFもしくはRAS(例えば、NRAS、HRAS、もしくはKRAS))を有する細胞を含む癌の処置に特に有用である(例えば、Dhomen and Marais, 2007, Curr. Opin. Genet. Dev., 17:31-39を参照のこと)。BRAFは、MAPキナーゼ細胞外シグナル制御キナーゼ(MEK)を活性化し、これは、次に、細胞外シグナル制御キナーゼ1および2(ERK1およびERK2)をリン酸化および活性化する。活性化しているBRAF突然変異が、試験したメラノーマサンプルの大部分において、ならびにいくつかの他のタイプの癌由来のサンプルにおいて、見られた。活性化しているRAS突然変異が、メラノーマ、多発性骨髄腫、結腸直腸癌、濾胞状癌、濾胞性腺腫、白血病、乳癌、卵巣癌、胃癌、肺癌、膀胱癌、膵臓癌、肺腺癌、胆嚢癌、胆管癌、甲状腺癌、および種々の癌腫を含む、いくつかの癌において見られた。
【0053】
細胞におけるRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達の増加は、例えば、細胞または細胞溶解物におけるこれらのタンパク質のリン酸化型の存在を検出することによって測定され得る。リン酸化BRAF、MEKおよびErkについて特異的な抗体は、例えば、Cell Signaling Technology, Inc. (Danvers, Massachusetts) およびSanta Cruz Biotechnology, Inc. (Santa Cruz, California) より市販されている。
【0054】
成長および/または生存についてRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路に依存する細胞は、例えば、薬理学的手段(例えば、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤R115777、MEK1/2阻害剤PD184352、MEK阻害剤U0216(Cell Signaling)、MEK阻害剤PD98054(Calbiochem)、RAF阻害剤GW5074(Sigma)、BAY 43-9006、CI-1040、ヒポテマイシン(hypothemycin)、またはPD0325901)(Solit et al., 2006, Nature, 439:358-362;Alessi et al., 1995, J. Biol. Chem., 270:27489-94)または遺伝学的手段(例えば、ドミナントネガティブRas、MEK1 shRNA、または該経路の成分に対して阻害性のヌクレオチドでのトランスフェクション)によって、Ras-BRAF-MEK-Erk経路の成分の発現または活性が人工的に阻害される場合に、低下した成長および/または生存を示す。
【0055】
活性化BRAFタンパク質は、以下の特性の1つまたは複数を有する:増加したキナーゼ活性、インビボまたはインビトロでのERKへの増加したシグナル伝達、NIH 3T3細胞のトランスフォーメーション、およびヒト包皮線維芽細胞(例えば、BJ線維芽細胞または初代包皮線維芽細胞)の低下した増殖。例示的な活性化しているBRAF点突然変異は、以下を含む:GluでのVal600の置換(V600E;例えば、BRAFコード配列のヌクレオチド1799でのT→A転換によって引き起こされる)、IleでのArg462の置換(R462I;例えば、BRAFコード配列のヌクレオチド1385でのG→T転換によって引き起こされる)、SerでのIle463の置換(I463S;例えば、BRAFコード配列のヌクレオチド1388でのT→G転換によって引き起こされる)、GluでのGly464の置換(G464E;例えば、BRAFコード配列のヌクレオチド1391でのG→A転位によって引き起こされる)、GluでのLys601の置換(K601E;例えば、ヌクレオチド1801でのA→G転位によって引き起こされる)、ValでのGly465の置換(G465V)、Arg(L596R)またはVal(L596V)でのLeu596の置換、Arg(G468R)またはAla(G468A)でのGly468の置換、およびGlyでのAsp593の置換(D593G)。染色体再構築によって引き起こされた、活性化しているBRAF突然変異もまた、同定された。例えば、AKAP9およびBRAFタンパク質の融合が報告され、これは、染色体7qの逆位によって引き起こされ、AKAP9遺伝子のエクソン1〜8とBRAFのエクソン9〜18とのインフレーム融合が生じる(Ciampi et al., 2005, J. Clin. Invest, 115:94-101)。
【0056】
活性化RASタンパク質は、以下の特性の1つまたは複数を有する:インビボまたはインビトロでのRAF(例えば、BRAF)への増加したシグナル伝達、NIH 3T3細胞のトランスフォーメーション、およびヒト包皮線維芽細胞(例えば、BJ線維芽細胞または初代包皮線維芽細胞)の低下した増殖。例示的な活性化しているNRAS点突然変異は、ArgでのGly13の置換(G13R;コドン13でのG→C突然変異によって引き起こされる)およびArgでのGln61の置換(Q61R;コドン61でのCAA→CGA突然変異によって引き起こされる)を含む。Bos et al., 1985, Nature, 315:726-730;Davis et al., 1984, Cytogenet. Cell Genet., 37:448-449;Taparowsky et al., 1983, Cell, 34:581-586;Yuasa et al., 1984, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 81:3670-74もまた参照のこと。)例示的な活性化しているHRAS点突然変異は、ValでのGly12の置換(G12V;コドン12でのGGC→GTC突然変異によって引き起こされる)およびLysでのGln61の置換(Q61K;コドン61でのCAG→AAG突然変異によって引き起こされる)を含む。例示的な活性化しているKRAS点突然変異は、CysでのGly12の置換(G12C;ヌクレオチド34でのG→T転換によって引き起こされる)、ArgでのGly12の置換(G12R;コドン12でのG→C転換によって引き起こされる)、AspでのGly13の置換(G13D;コドン13でのG→A転位によって引き起こされる)、ThrでのAla59の置換(A59T;コドン59でのG→A転位によって引き起こされる)、AspでのGly12の置換(G12D)、ValでのGly12の置換(G12V)、SerでのGly12の置換(G12S;コドン12でのG→A転位によって引き起こされる)、Gly11の挿入(G11-INS;エクソン1における3-bp挿入によって引き起こされる)、およびArgでのGly13の置換(G13R;コドン13でのG→C転換によって引き起こされる)を含む。
【0057】
恒常的に活性化されたERK突然変異体としては、ERK2Q103AおよびERK2L73P,S151Dを含む(Emrick et al., 2006, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:18101-06;Emrick et al., 2001, J. Biol. Chem., 276:46469-79)。例示的な活性化MEK1突然変異体は、MEK1EEである(Tournier et al., 1999, Mol. Cell Biol., 19:1569-81)。
【0058】
活性化しているBRAF、RAS、ERK、またはMEK突然変異は、被験体由来のサンプルにおける突然変異核酸の存在をアッセイすることによって検出され得る。BRAF突然変異を検出するための例示的な市販のアッセイは、Mutector(登録商標)突然変異検出キット(Trimgen, Sparks, MD;カタログ番号GP04、MH1001-01、MH1001-02、MH1001-03、MH1001-04)である(Xing et al., 2004, Clin. Endocrinol. Metab., 89:2867-72;Ichii-Nakato et al., 2006, J. Invest. Dermatol, 126:2111-18)。KRAS突然変異を検出するための例示的な市販のアッセイは、DxS Ltd. (Manchester, UK)から入手可能である。
【0059】
突然変異核酸を検出する他の例示的な方法としては、以下が挙げられる:直接配列決定;制限フラグメント分析(Cohen et al., 2003, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 44:2876-78);一本鎖高次構造多型ゲル電気泳動(Lee et al., 2003, Br. J. Cancer., 89:1958-60);部位特異的突然変異誘発/制限分析(Alsina et al., 2003, Clin. Cancer Res., 9:6419-25;Goydos et al., 2005, J. Am. Coll. Surg., 200:362-370);配列特異的PCR(Deng et al., 2004, Clin. Cancer Res., 10:191-195);リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応および融解曲線分析(Ikenoue et al., 2004, Cancer Genet. Cytogenet., 149:68-71);ギャップリガーゼ連鎖反応(Goldenberg et al., 2004, Mod. Pathol, 17:1386-91);突然変異アレル特異的PCR増幅(MASA)(Lilleberg et al., 2004, Ann. NY Acad. Sci., 1022:250-256;Sapio et al., 2006, Eur. J. Endocrinol., 154:341-348);アレル特異的PCR(Burger et al., 2006, Eur. Urol., 50:1102-09);リアルタイムアレル特異的PCR(Jarry et al., 2004, Mol. Cell. Probes., 18:349-352;Yancovitz et al., 2007, J. Mol. Diagn., 9:178-183);PCR制限断片長多型(RFLP)解析(Hayashida et al., 2004, Thyroid, 14:910-915;Chung et al., 2006, Clin. Endocrinol. (Oxf.), 65:660-666);ミスマッチライゲーションアッセイ(Busby and Morris, 2005, J. Clin. Pathol., 58:372-375);リガーゼ検出反応(Turner et al., 2005, J. Cutan. Pathol., 32:334-339);高分解能アンプリコン融解分析(Willmore- Payne et al., 2005, Hum. Pathol., 36:486-493);変性剤キャピラリー電気泳動(Hinselwood et al., 2005, Electrophoresis, 26:2553-61);ループ-ハイブリッド移動度シフトアッセイ(Matsukuma et al., 2006, J. Mol. Diagn., 8:504-512);単一塩基伸長分析(Kann et al., 2006, Clin. Chem., 52:2299-2302);オリゴヌクレオチドマイクロアレイ(Kim et al., 2007, J. Mol. Diagn., 9:55-63);in situハイブリダイゼーション;in situ増幅;および、ヌクレオチド多型、例えば、一塩基多型を検出する他の公知の手段。US 2006/0246476、US 2006/0252041、US 2007/0020657、およびUS 2007/0087350もまた参照のこと。ある態様において、いくつかの突然変異核酸の存在または非存在が、(例えば、連続してまたは同時に)アッセイされる。
【0060】
活性化しているBRAF、RAS、ERK、またはMEK突然変異はまた、突然変異タンパク質の存在をアッセイすることによって検出され得る。突然変異タンパク質を検出するための例示的な方法としては、以下を使用する免疫学的方法:突然変異特異的抗体(Fensterle et al., 2004, BMC Cancer, 4:62;Kawakami et al., 2005, Cancer Metastasis Rev., 24:357-66);突然変異特異的抗体を含有するアレイ;および質量分析(例えば、MS/MSまたはMALDI-TOF質量分析)(Powell et al., 2005, J. Pathol., 205:558-64)が挙げられる。ある態様において、いくつかの突然変異タンパク質の存在または非存在が、(例えば、連続してまたは同時に)アッセイされる。
【0061】
活性化しているBRAF、RAS、ERK、またはMEK突然変異はまた、BRAFまたはRAS活性についてサンプルをアッセイすることによって検出され得る(例えば、US 2006/0211073を参照のこと)。または、活性化しているBRAF、RAS、ERK、またはMEK突然変異の存在は、突然変異タンパク質によって生じる遺伝子発現の特徴的パターンを検出することによって推測され得る。
【0062】
被験体由来のサンプルは、非限定的に、生検材料、吸引物、血液、血漿、リンパ液、尿、唾液、または他の体液を含む、任意のタイプのものであり得る。サンプルは、しばしば、被験体の細胞、例えば、被験体の腫瘍、病巣、または疑わしい癌性組織由来の細胞を含む。しかし、本明細書に記載される検出方法の多くは、対応する野生型核酸またはタンパク質が存在する場合でさえ、細胞フリーのサンプル中の微量の突然変異核酸またはタンパク質を検出するのに十分に高感度である。細胞を含有するサンプルは、アッセイの前に、固定され得るかまたは別の方法で処理され得る。
【0063】
癌診断法
ある癌(例えば、活性化BRAFまたはRASを有する癌)の診断は、IGFBP7の発現について、疑わしい腫瘍由来のサンプル(例えば、1つまたは複数の細胞)を試験することによって達成され得る。増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達を有し、成長および/または生存についてRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路に依存し、ならびに/または、活性化BRAFもしくはRASを含有し、かつ、(例えば、該被験体由来の非癌性細胞もしくは組織由来のサンプルまたは参照値(例えば、正常な細胞もしくは組織サンプルから得られる)と比較して)IGFBP7を実質的にまたは検出可能に発現しないサンプルは、癌性と診断される。同様に、増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達を有さず、成長および/または生存についてRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路に依存せず、ならびに/または、活性化BRAFもしくはRASを含有せず、かつ、(例えば、該被験体由来の非癌性細胞もしくは組織由来のサンプルまたは参照値(例えば、正常な細胞もしくは組織サンプルから得られる)と比較して)IGFBP7を実質的にまたは検出可能に発現しないサンプルは、癌性と診断され得る。
【0064】
本明細書に記載される診断方法は、任意の器官または組織の病巣または疑わしい腫瘍について使用され得る。器官または組織が皮膚である場合、サンプルは、メラニン細胞を含有し得る。増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達を有し、成長および/または生存についてRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路に依存し、ならびに/または、活性化BRAFもしくはRASを含有し、かつ、IGFBP7を実質的に発現するメラニン細胞は、色素細胞性母斑(ほくろ)と診断され;増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達を有し、成長および/または生存についてRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路に依存し、ならびに/または、活性化BRAFもしくはRASを発現し、しかし、IGFBP7を実質的に発現しないメラニン細胞は、メラノーマと診断される。増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達を有さず、成長および/または生存についてRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路に依存せず、ならびに/または、活性化BRAFもしくはRASを含有せず、しかし、IGFBP7を実質的にまたは検出可能に発現するメラニン細胞もまた、メラノーマと診断される。前記アッセイは、組織切片(例えば、凍結組織切片)を用いて使用され得、従って、組織学的分析および臨床診断について有用である。前記方法は、特定の組織固定法を必要とせず、何故ならば、前記アッセイは、固定されていない細胞もしくは組織で、または数種類の固定剤、例えば、メタノール/アセトン固定、もしくはホルムアルデヒド固定で機能するためである。前記アッセイは、パラフィン切片、例えば、復元されたパラフィン切片で機能し得る。他の有用な組織固定法は、当業者に公知である。
【0065】
サンプルにおけるIGFBP7の発現を検出するための方法は、例えば、抗体または他の結合性タンパク質を使用して、タンパク質を検出することおよびmRNAまたはcDNAを検出すること、または活性アッセイを使用することを含む。RT-PCRおよびマイクロアレイ分析を含む、任意の種々の分子技術を使用して、IGFBP7 mRNAまたはcDNAを検出することも可能である。
【0066】
当技術分野において公知の遺伝子発現分析法の例としては、以下が挙げられる:DNAアレイまたはマイクロアレイ(Brazma and Vilo, FEBS Lett., 2000, 480, 17-24;Celis et al., FEBS Lett., 2000, 480, 2-16)、SAGE(遺伝子発現連続分析)(Madden et al., Drug Discov. Today, 2000, 5, 415-425)、READS(消化cDNAの制限酵素増幅)(Prashar and Weissman, Methods Enzymol., 1999, 303, 258-72)、TOGA(総遺伝子発現分析)(Sutcliffe et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97, 1976-81)、タンパク質アレイおよびプロテオミクス(Celis et al., FEBS Lett., 2000, 480, 2-16;Jungblut et al., Electrophoresis, 1999, 20, 2100-10)、発現配列タグ(EST)配列決定(Celis et al., FEBS Lett., 2000, 480, 2-16;Larsson et al., J. Biotechnol., 2000, 80, 143-57)、サブトラクティブRNAフィンガープリンティング(SuRF)(Fuchs et al., Anal. Biochem., 2000, 286, 91-98;Larson et al., Cytometry, 2000, 41, 203-208)、サブトラクティブクローニング、ディファレンシャルディスプレイ(DD)(Jurecic and Belmont, Curr. Opin. Microbiol., 2000, 3, 316-21)、比較ゲノムハイブリダイゼーション(Carulli et al., J. Cell Biochem. Suppl., 1998, 31, 286-96)、FISH(蛍光インサイチューハイブリダイゼーション)技術(Going and Gusterson, Eur. J. Cancer, 1999, 35, 1895-904)、ならびに質量分析法(To, Comb. Chem. High Throughput Screen, 2000, 3, 235-41において概説される)。
【0067】

新規の方法は、いくつかのタイプの癌、例えば、メラノーマ、甲状腺癌(例えば、甲状腺乳頭癌、未分化甲状腺癌、濾胞状癌、濾胞性腺腫)、結腸直腸癌、肺癌(例えば、腺癌、非小細胞肺癌)、リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫)、多発性骨髄腫、白血病、乳癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、膵臓癌、胆嚢癌、胆管癌、および他の癌腫を診断および処置するために使用され得る。癌を診断する方法は、当業者に周知である。ある態様において、新規の方法は、増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達を有し、成長および/または生存についてRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路に依存し、ならびに/または、活性化もしくは発癌性のBRAFもしくはRASを含有する、任意のタイプの腫瘍、癌、または新生物について有用であり得る。
【0068】
薬学的製剤
本明細書に記載されるIGFBP7剤(これらの全ては、本明細書において、「活性化合物」と呼ばれ得る)は、薬学的組成物へ組み込まれ得る。このような組成物は、典型的に、活性化合物、および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。「薬学的に許容される担体」は、薬学的投与と適合性の、溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤、ならびに吸収遅延剤などを含み得る。補足の活性化合物もまた、組成物中へ組み込まれ得る。
【0069】
新規の方法における使用のための新規の組成物が、一般的には、被験体へ、具体的には、それらの被験体の特定の細胞または組織へ送達され得る、多数の方法が存在する。例えば、本明細書に記載されるIGFBP7剤は、被験体または被験体の組織へ、注射され得る。別の例において、IGFBP7剤をコードするベクター(例えば、プラスミドまたはウイルス)が、被験体の細胞または組織中へ導入され得る。次いで、ベクターは、その組織中の細胞に入り、IGFBP7剤を発現させる。このようなプラスミドの送達特異性は、それらと器官または組織特異的親和性とを結び付けることによって増強され得、その結果、それらは、優先的に特定の型の細胞に入る。しかし、IGFBP7は細胞外で作用し得るので、ベクターを、直接、腫瘍細胞へ送達する必要はない。ベクターは、腫瘍の周囲の組織へ送達され得る。腫瘍処置のためのタンパク質を発現させる方法は、例えば、Cross and Burmester, 2006, Clin. Med. Res., 4:218-227;Lejuene et al., 2007, Expert Rev. Anticancer Ther. 7:701-713;およびBloquel et al., 2004, J. Gene Med., 6:S11-S23に記載されている。
【0070】
化合物ならびにそれらの生理学的に許容される塩および溶媒和物は、経口、局所、頬、非経口もしくは直腸投与、または吸入もしくは吹送(口または鼻のいずれかを介する)による投与を目的として、製剤化され得る。
【0071】
化合物は、一般的に、注射による、例えば、ボーラス注射または持続注入による、非経口投与を目的として製剤化される。注射用の製剤は、単位投薬形態で、例えば、アンプル中にまたは複数回用量容器中に、添加された防腐剤と共に存在し得る。組成物は、油性または水性ビヒクル中の、懸濁液、溶液またはエマルジョンなどの形態をとり得、懸濁化剤、安定剤および/または分散剤などの製剤化剤(formulatory agent)を含有し得る。または、有効成分は、使用前の、好適なビヒクル、例えば、滅菌されたパイロジェンフリー水を用いて構成される粉末形態であり得る。組成物が特定の処置領域における使用を意図される場合、処置領域以外での化合物の活性に関連する副作用をできる限り減らすために、組成物は、腫瘍部位への1つまたは複数の局部注射によって投与され得る。
【0072】
前述の製剤に加えて、化合物はまた、デポー調製物として製剤化され得る。このような長時間作用型の製剤は、埋め込み(例えば、皮下にまたは筋肉内に)によってまたは筋肉内注射によって投与され得る。従って、例えば、化合物は、好適なポリマー性もしくは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂を用いて、または難溶性誘導体として、例えば、難溶性塩として、製剤化され得る。デポー調製物は、例えば、埋め込みによってまたは筋肉内注射によって投与され得る、IGFBP7剤を分泌する包埋または封入された細胞または組織を含み得る。
【0073】
組成物は、必要に応じて、有効成分を含有する単位投薬形態を1つまたは複数含有し得るパックまたはディスペンサー装置中に存在し得る。パックは、例えば、金属またはプラスチックホイル、例えば、ブリスターパックを含み得る。パックまたはディスペンサー装置には、投与説明書を添えてもよい。
【0074】
本発明の処置組成物はまた、それらの多くが当業者に公知である、担体または賦形剤を含有し得る。このような製剤を作製する方法は、周知であり、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, University of the Sciences in Philadelphia (USIP), 2005において見ることができる。
【0075】
組成物はまた、当技術分野において公知の方法を使用して、活性化合物の細胞内送達を目的として製剤化され得る。例えば、組成物は、形質膜を横切って活性化合物を送達するリポソームまたは他の担体を含み得る。膜透過性ペプチド、例えば、Tatまたはアンテナペディアで覆われている小胞もまた、使用され得る。細胞内送達を増強するための多数の他の方法が、当業者によく知られている。
【0076】
本明細書に記載される薬学的組成物および方法は、独立してまたは互いに組み合わせて使用され得ることが、認識される。即ち、被験体は、一時的に重複するかまたは重複しないレジメンで、1つまたは複数の薬学的組成物、例えば、IGFBP7剤を含む薬学的組成物が投与され得、1つまたは複数の本明細書に記載される処置方法へ供され得、または両方が施され得る。処置が一時的に重複する場合、処置は、一般的に、任意の順序で行われ得、同時(例えば、同時に複合組成物で一緒に、または同時にしかし別個の組成物として、投与される)であり得るか、または分散され得る。例えば、本明細書に記載される障害に苦しむ被験体には、異常細胞を選択的に死滅させる細胞傷害剤と、一態様において、処置剤、細胞傷害剤、造影剤などと結合または連結され得る抗体(例えば、本発明の抗体)との両方が、同時にまたは連続して投与され得る。
【0077】
有効用量
IGFBP7剤の毒性および処置効果は、培養細胞または実験動物を使用し、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%において処置的に有効な用量)を測定する、標準的な薬学的手順によって測定され得る。毒性効果と処置効果との用量比は、処置指数であり、それは、LD50/ED50の比として表され得る。大きな処置指数を示す阻害剤が好ましい。毒性副作用を示す阻害剤が使用され得る一方、このような化合物が罹患組織の部位を標的とする送達システムを設計し、非標的細胞への潜在的な損傷を最小化し、それによって、副作用を減らすように、注意することができる。
【0078】
細胞培養アッセイおよび動物実験から得られるデータが、ヒトにおける使用についての投薬量範囲の定式化に使用され得る。このような化合物の投薬量は、好ましくは、毒性をほとんどまたは全く有さないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投薬量は、使用される投薬形態および使用される投与経路に依存して、この範囲内で変化し得る。新規の方法において使用される化合物について、処置的に有効な用量は、最初は細胞培養アッセイから推測され得る。用量はまた、細胞培養物において測定されるようなIC50(即ち、症状の最大半量阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿中濃度範囲を達成するように、動物モデルにおいて計算され得る。このような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用され得る。
【0079】
実施例
材料および方法
細胞株および培養物
初代包皮線維芽細胞(BJ)およびヒトメラノーマ細胞株をATCCから得、37℃で5% CO2下において、10%ウシ胎仔血清が補われたダルベッコ改変イーグル培地中で成長させた。ヒト初代メラノサイトを、Cascade Biologicsから得、供給業者の推奨通りに成長させた。
【0080】
レトロウイルスおよびプラスミド
エンプティーベクターまたはBRAFV600Eを発現するレトロウイルスを、プラスミドpBABE-zeo(Addgene)およびpBABE-zeo/BRAFV600Eから作製した(Michaloglou et al., 2005, Nature, 436:720-724)。活性化ERK2突然変異体、ERK2Q103AおよびERK2L73P,S151D(Emrick et al., 2006, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:18101-06;Emrick et al., 2001, J. Biol. Chem., 276:46469-79)ならびにMEK1突然変異体MEK1EE(Tournier et al., 1999, Mol. Cell Biol., 19:1569-81)を恒常的に発現するプラスミドもまた得た。
【0081】
shRNAスクリーニング
ヒトshRNAmirライブラリー(リリース1.20;Open Biosystems)を、University of Massachusetts Medical School shRNAライブラリーコアファシリティーから得た。各々が約6000個のshRNAクローンを含む、10個のレトロウイルスプールを、約2.6×105 pfu/mlの力価で作製した。これらのレトロウイルスストックを、PhoenixGP(商標)パッケージング細胞株(Grignani, 1998, Cancer Res., 58:14-19)への同時トランスフェクション後に作製した。PFF線維芽細胞(1.2×106)に、100 mmプレートにおいて前記レトロウイルスストックを0.2のMOIで形質導入し、2日後、7日間、ピューロマイシン(1.5μg/ml)に対する耐性について選択した。次いで、全ての細胞が感染する条件下で、細胞に、BRAFV600Eを保有するレトロウイルスを感染させた(MOI 20)。BRAFV600E誘導細胞増殖の阻止を回避した細胞は、コロニーを形成した。これらをプールし拡大し、shRNAを配列分析によって同定した。候補shRNAを同定するために、形質導入ウイルスのshRNA領域を、PCR増幅し(プライマーであるPSM2フォワード、

およびPSM2リバース、

を使用)、pGEM-T Easy(Promega)へクローニングした。1プール当たり平均48個のクローンを配列決定した(プライマーPSM2-seq、

を使用)。個々のPFFまたはメラノサイトノックダウン細胞株を、候補遺伝子に対する単一のshRNAでの6×104細胞の安定形質導入、続いてBRAFV600E発現レトロウイルスでの感染によって作製した。個々のshRNAを、Open Biosystemsライブラリーから得たか、または合成した。
【0082】
定量的リアルタイムRT-PCR
トータルRNAを、レトロウイルス形質導入およびピューロマイシン選択の7日後に、TRIZOL(商標)(Invitrogen)を使用して単離した。逆転写を、製造業者の説明書通りにSuperScript(商標)II逆転写酵素(Invitrogen)を使用して行い、続いて、定量的リアルタイムPCRを、Platinum SYBR(商標)Green qPCR SuperMix-UDG with Rox(Invitrogen)を使用して行った。
【0083】
増殖アッセイ
図1Bに示される増殖アッセイについて、shRNAを安定発現する1×104個の細胞を12-ウエルプレートフォーマットにおいて培養し、BRAFV600E発現レトロウイルスを感染させ、14日後にクリスタルバイオレットで染色した。全ての他の定量的増殖アッセイについて、細胞生存度を、該当する図の凡例に示される時点でのトリパンブルー排除試験によって測定した。該当する図の凡例に示されるように、値を細胞成長の割合として表した。図2Aに示される増殖アッセイについて、CMを3日毎に補充し、合計14日のCM処理後に増殖を測定した。特に明記しない限り、rIGFBP7を、10μg/mlの濃度で培養培地へ添加した。
【0084】
アポトーシスアッセイ
PFF線維芽細胞またはメラノサイトまたはshRNAノックダウン誘導体(5×105細胞)にBRAFV600E発現レトロウイルスを感染させ、4日後、総細胞集団を、アネキシンV-PE(BD Biosciences)で染色した。rIGFBP7処理後のメラノーマ細胞におけるアポトーシスをモニタリングするために、5×105個の細胞を24時間rIGFBP7(10μg/ml)で処理し、アネキシンV-PEで染色した。
【0085】
DNA複製アッセイ
PFF線維芽細胞またはメラノサイトまたはshRNAノックダウン誘導体(5×105細胞)にBRAFV600E発現レトロウイルスを感染させ、約4日後、総細胞集団を、BrdU取り込みについて染色した。簡潔に記載すると、BRAFV600E発現レトロウイルスでの4日感染の終了の4時間前に、細胞を20μM BrdU(Sigma)と共にインキュベートし、BrdU取り込みを可能にし、この時点で、細胞を70%エタノールで固定し、0.2% Triton(商標)X-100を使用して透過処理し、2N HClで処理し、BrdU抗体(Ab-3、Oncogene)を使用してプローブし、次いで、これを、抗マウスIgG Texas Red結合抗体(Calbiochem)を使用して検出した。
【0086】
抗体および免疫ブロット分析
細胞抽出物を作製するために、細胞をLaemmliバッファー中に溶解させ;ホスホ−タンパク質のために、細胞を、ホスファターゼ阻害剤カクテル(Sigma)の存在下において溶解させた。馴化培地を作製するために、細胞を24時間、Opti-MEM(商標)(Invitrogen)中で成長させ、培地を回収し、Centricon(商標)plus 20チューブ(Millipore)を使用して濃縮した。馴化培地を、ゲルをロードする前の細胞数に対して正規化した。図3Dおよび4Cに示される実験については、rIGFBP7を10μg/mlの濃度で培養培地へ添加した。図4DのMEK/RAF阻害剤実験については、SK-MEL-28細胞を、細胞を回収する前の24時間、2μg/mlもしくは10μg/mlのrIGFBP7、20μMもしくは40μMのMEK阻害剤PD98054(Calbiochem)、または5 nMもしくは10 nMのRAF阻害剤GW5074(Sigma)で処理した。タンパク質を、SDS-PAGEによって分解し、ニトロセルロースに移した。ブロットを、以下の抗体でプローブした:α-p16(Abcam)、α-アセチル化H3K9(Upstate)、α-IGFBP7(Santa Cruz)、α-SMARCB1(Abnova)、α-BNIP3L(Proscience)、α-BRAFV600E(Santa Cruz)、α-切断カスパーゼ-3 p11(Santa Cruz)、α-β-アクチン(Sigma)、α-ホスホ-ERK(Cell Signaling)、またはα-ERK(Cell Signaling)。
【0087】
組換えIGFBP7の発現および精製
C末端Flagタグ融合タンパク質を発現する、ヒトIGFBP7発現ベクターpFASTBAC-1/IGFBP7(Oh, et al., 1996, J. Biol. Chem., 271:30322-25)を使用し、製造業者の説明書通りにBac-to-Bac(商標)バキュロウイルス発現系(Invitrogen)を使用して、組換えバキュロウイルスを作製した。次いで、組換えバキュロウイルス構築物を、バキュロウイルス産生のためにSf9細胞(Invitrogen)へトランスフェクトし、組換えIGFBP7タンパク質を産生するために増幅した。IGFBP7発現Sf9細胞由来の馴化培地を回収し、α-Flag M2ビーズ(Sigma)と共にインキュベートし、結合されたタンパク質を、α-Flagペプチドを使用して溶離した。
【0088】
老化関連β-ガラクトシダーゼアッセイ
ベクターまたはBRAFV600Eのいずれかを発現するレトロウイルスに感染したメラノサイト、または、BRAFV600E/メラノサイトCMまたはrIGFBP7(10μg/ml)で14日間処理されたメラノサイトを、PBSで2回洗浄し(室温で5分)、3%ホルムアルデヒドで固定し(室温で5分)、PBSでさらに3回洗浄した。次いで、細胞を、37℃(0% CO2)で一晩、SA-β-Gal染色液(1 mg/mL X-Gal(5-ブロモ-4-クロロ-3-インドイルb-D-ガラクトシド)、40 mMクエン酸/リン酸ナトリウム(pH 6.0)、5 mMフェロシアン化カリウム、5 mMフェリシアン化カリウム、150 mM NaCl、および2 mM MgCl2)中でインキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、Zeiss Axiovert(商標)40 CFL顕微鏡において視覚化した。画像を、QCapture(商標)Proバージョン5ソフトウエア(QImaging Corporation)を使用して取り込んだ。
【0089】
ChIPアッセイ
クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイを、rIGFBP7処理の24時間後に作製した抽出物を使用して行った。以下の抗体を使用した:α-BRG1(de La Serna et al., 2000, Mol. Cell. Biol., 20:2839-51)、α-ホスホ-STAT1(Upstate)、ならびにα-SMARCB1およびα-STAT1(Santa Cruz)。SMARCB1プロモーターについてのChIP実験のために、転写開始部位の約2.4 kb上流に配置されたSTAT1結合部位にわたるプライマーを使用した。BNIP3LプロモーターについてのChIP実験のために、約2 kbのBNIP3Lプロモーターをカバーした一連のプライマー対を使用した;rIGFBP7の添加後、SMARCB1およびBRG1が、転写開始部位付近のBNIP3Lプロモーターへリクルートされた。ChIP生成物を、Platinum SYBR(商標)Green qPCR SuperMix-UDG with Rox(Invitrogen)を使用して定量的リアルタイムPCRによって分析した。倍差異(fold difference)の計算を、以前記載されたように行った(Pfaffl, 2001, Nucleic Acids Res., 29:e45)。
【0090】
腫瘍形成アッセイ
5×106個のSK-MEL-28またはSK-MEL-31細胞を、100μlの無血清DMEM中に懸濁し、胸腺欠損Balb/c (nu/nu)マウス(Taconic)の右側腹部へ皮下注射した。3、6、および9日後に、マウスの腫瘍部位に、総体積100 μlの、20μgのrIGBP7、または、対照としてPBSを注射した。腫瘍寸法を3日毎に測定し、腫瘍体積を、式π/6×(長さ)×(幅)2を使用して計算した。全身投与実験では、5×106個のSK-MEL-28またはSK-MEL-31細胞をヌードマウスの側腹部へ注射し、腫瘍が100 mm3のサイズに達した場合に、総体積100μlの、100μgのrIGFBP7を、第6、9、および12日に尾静脈注射によって送達した。腫瘍寸法を3日毎に測定した。Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)ガイドラインに従って、動物実験を行った。
【0091】
免疫組織化学
研究はUMass Medical Center施設内倫理委員会によって承認された。正常皮膚(n=5)、母斑(n=20)および悪性メラノーマ(原発性(n=7)および転移性(n=13))由来の保管されていた材料を、UMass Medical Center, Worcester, MAの病理学ファイルから回収した。全ケースの組織切片を、再検討し、診断が皮膚病理学者によって確認された。全ての患者データをデアイデンティファイした(de-identify)。
【0092】
5ミクロン厚の切片を免疫組織化学研究のために切断し、これらを、熱誘導エピトープ回収バッファーおよびIGFBP7に対する一次抗体(1:20希釈;Santa Cruz)を用いて標準技術を使用して行った。好適な陽性および陰性対照を含めた。陽性染色は、細胞質中のIGFBP7の発現を確認することによって示された。有意な核染色は示されなかった。全ての染色されたスライドが、皮膚病理学者によって検討された。遺伝子型解析のためのゲノムDNAを、ISSバッファー(20X SSC pH 7.0、3 M NaCl、0.3Mクエン酸ナトリウム、1M NaCl、および10% SDS)ならびに40μl/mlの20 mg/mlプロテイナーゼKおよび4μl/mlの0.1M DTTを使用して、10個の10μm厚切片から単離した。簡潔に記載すると、組織サンプルをスライドからこすり落とし、61℃で一晩、プロテイナーゼKおよびDTTを含むISSバッファー中でインキュベートした。翌日、サンプルをフェノール−クロロホルムで2回抽出し、第2ラウンドはPhase Lock Gel(Eppendorf)を使用し、次いで、サンプルを、エタノールを使用して沈殿させた。ゲル電気泳動、続いてPCR増幅およびTAクローニング(Promega)によって、ゲノムDNAを定量し、その完全性を確認した。BRAF遺伝子のエクソン15におけるV600E突然変異(T1796A)を同定するために、多数のクローンを配列決定した(プライマー:フォワードプライマー:

、リバースプライマー:

)。
【0093】
ビスルファイト配列決定
ビスルファイト処理(暗所において行った)の間、ヒドロキノンを125 mMの濃度で使用したこと、およびビスルファイト反応後、DNAをQIAQUICK(商標)カラム(Qiagen)で脱塩したことを除いては、ビスルファイト修飾を基本的には記載された通りに行った(Frommer et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:1827-31)。6個のクローンを、各々の細胞株またはヒト組織サンプルについて配列決定した。5-アザ-2'-デオキシシチジン(5-aza)処理について、メラノーマ細胞株を、48時間、10μM 5-aza(Calbiochem)で処理した。
【0094】
実施例1.ゲノム規模のshRNAスクリーニングはBRAFV600Eが媒介する老化およびアポトーシスのために必要とされる因子を同定する
BRAFV600Eが初代細胞の増殖を阻止するために必要とされる遺伝子を同定するために、ゲノム規模のスモールヘアピンRNA(shRNA)スクリーニングを行った(図1Aに図式的に示される)。一次スクリーニングを、ヒト初代包皮線維芽細胞(PFF)において行った。約28,000個の遺伝子に対する約62,400個のshRNAを含むヒトshRNAライブラリーを10個のプールに分割し、これをレトロウイルス粒子中へパッケージングし、PFFを安定に形質導入するために使用した。次いで、全ての細胞が感染する条件下で、細胞にBRAFV600Eを発現するレトロウイルスを感染させた。BRAFV600Eが媒介する細胞増殖の阻止を回避した細胞は、コロニーを形成した。これらをプールして拡大し、shRNAを配列分析によって同定した。陽性候補は、候補遺伝子に対する単一のshRNAを用いるPFFの安定な形質導入、BRAFV600E発現レトロウイルスでの感染、および細胞増殖の定量によって確認した。次いで、確認された候補shRNAを、BRAFV600Eを発現する初代ヒトメラノサイトにおいて増殖の阻止を回避するそれらの能力について二次スクリーニングにおいて試験した。
【0095】
スクリーニングは、shRNAが媒介するノックダウン後、BRAFV600Eを発現するPFF(BRAFV600E-PFF)およびメラノサイト(BRAFV600E-メラノサイト)が増殖することを可能にした17個の遺伝子を同定した。これらの遺伝子を表1に列挙し、17個のBRAFV600E-PFFノックダウン(KD)細胞株の増殖アッセイを図1Bに示す。以前の研究(Zhu et al., 1998, Genes Dev., 12:2997-3007)から予想されたように、対照である非サイレンシング(NS)shRNA(BRAFV600E-PFF-NS)を含有するPFFについてのPFFにおけるBRAFV600Eの発現は、細胞増殖を効果的に阻害した(図1B)。しかし、意義深いことに、この阻止は、17個のBRAFV600E-PFF KD細胞株の全てにおいて克服された。定量的リアルタイムRT-PCR(qRT-PCR)によって、全ての場合において、前記標的遺伝子の発現が、対応するPFFおよびメラノサイトKD細胞株において減少したことが確認された。17個の遺伝子の全てについて、同一の標的遺伝子対する第2の無関係のshRNAもまた、BRAFV600E発現後PFFが増殖することを可能にした。
【0096】
(表1)細胞増殖に対するBRAFV600E誘導の阻止に必要とされる遺伝子

【0097】
以前の研究(Michaloglou et al., 2005, Nature, 436:720-724)から予想されたように、初代メラノサイトにおけるBRAFV600Eの発現は、細胞増殖を効果的に阻止した(図1C)。対照的に、BRAFV600Eは、17個のメラノサイトKD細胞株の全てにおいて細胞増殖を阻止しなかった。従って、本発明者が同定した17個の遺伝子は、BRAFV600EがPFFおよび初代メラノサイトの両方の増殖を阻止するために必要とされる。
【0098】
メラノサイトにおけるBRAFV600Eの発現後、細胞の大部分は老化し(図1D)、以前の研究と一致した(Michaloglou et al., 2005, Nature, 436:720-724)。しかし、約10%の細胞はアポトーシスが起こった(図1E)。これらの2つの経路における17個の遺伝子の役割を特定するために、アポトーシスおよび老化アッセイを、BRAFV600E発現後、各々のメラノサイトKD細胞株において行った。図1Eの結果は、17個の遺伝子のうちの3つのみが、アポトーシスのために必要とされることを示している:BNIP3L、これは、プロアポトーシス性BCL2ファミリータンパク質をコードする;SMARCB1、これは、SWI/SNFクロマチンリモデリング複合体の成分をコードする;およびインスリン成長因子結合タンパク質7(IGFBP7)、これは、IGF結合タンパク質に対して低い相同性を有する分泌タンパク質をコードする。対照的に、17個の遺伝子のうちの1つ、BNIP3L以外の全てが、BRAFV600Eが成長停止を誘導するために必要とされ(図1D)、老化の特徴的なマーカーであった(下記を参照のこと)。同一の結果が、PFFにおいて得られた。
【0099】
細胞周期阻害剤p16INK4aが、複製的および癌遺伝子誘導老化において重要な役割を果たすことが提案されている(Ben-Porath and Weinberg, 2005, Int. J. Biochem. Cell Biol., 37:961-976において概説された)。例えば、p16INK4aは、活性化BRAFの発現後メラノサイトにおいて誘導され、色素細胞性母斑において発現され、メラノーマにおいてはしばしば欠失している(Michaloglou et al., 2005, Nature, 436:720-724;Piccinin et al., 1997, Int. J. Cancer, 74:26-30)。従って、本発明者のスクリーニングにおいて同定された遺伝子がp16INK4a誘導に必要とされるかどうかを測定した。図1Fは、p16INK4aレベルが、非サイレンシングshRNAを発現する対照メラノサイトにおいてBRAFV600E発現後に実質的に増加したことを示している。意義深いことに、p16INK4a発現は、17個のメラノサイトKD細胞株のうちの16個においてBRAFV600Eによっては誘導されなかった。唯一の例外は、BNIP3Lについてノックダウンされた細胞株であり、これは上述したように、特にアポトーシスに関与する。別の十分に特徴づけられた老化マーカー、ヒストンH3リジン9(H3K9)アセチル化の喪失(Narita et al., 2006, Cell, 126:503-514)がまた、対照メラノサイトにおいてBRAFV600E発現後に生じたが、BNIP3L KD細胞株以外のメラノサイトKD細胞株のいずれにおいても生じなかった(図1F)。
【0100】
実施例2.分泌タンパク質であるIGFBP7はオートクリン/パラクリン経路を介して老化およびアポトーシスを誘導する
スクリーニングにおいて同定された17個の遺伝子は、公知の腫瘍抑制因子(TP53、MEN1、NF2、およびSMARCB1)、プロアポトーシス性タンパク質(BNIP3L)、細胞周期調節因子(BUB1)、およびRAS-RAF-MEK-ERKシグナル伝達経路の調節因子(PEA15、RAP1GAP、およびHSPA9)をコードした。予想外なことに、老化およびアポトーシスの両方の誘導に必要とされる前記遺伝子の1つは、IGFBP7であり、これは、分泌タンパク質をコードする(Wilson et al., 1997, J. Clin. Endocrinol. Metab., 82:1301-1303)。この結果は、細胞増殖に対するBRAFV600E媒介の阻止は、IGFBP7が細胞外で機能するオートクリン/パラクリン経路を介して生じ得るという可能性を高めた。
【0101】
IGFBP7が実際に分泌されることを確認し、IGFBP7が細胞外で機能するかどうかを問うために、BRAFV600E-メラノサイト由来の馴化培地(CM)の、老化を誘導する能力を分析した。図2A(上部パネル)の免疫ブロットは、メラノサイトにおけるBRAFV600Eの発現後、CMにおけるIGFBP7のレベルが実質的に増加したことを示している。ナイーブメラノサイトへの、BRAFV600E-メラノサイト由来のCMの添加は、細胞増殖を阻止し、これは、主として老化の誘導から生じた(図2A、下部パネル、下記図2Dを参照のこと)。
【0102】
2つの実験によって、IGFBP7の活性化はBRAF-MEK-ERKシグナル伝達の下流にあることが確認された。先ず、IGFBP7のBRAFV600Eが媒介する誘導は、MEK阻害剤の添加によって阻止された。次に、恒常的に活性化されるERK突然変異体(ERK2Q103AまたはERK2L73P,S151D)の発現は、IGFBP7転写を活性化するに十分であった。
【0103】
IGFBP7プロモーターは、二量体AP-1(JUN/FOS)転写因子のコンセンサス結合部位を含有する。JUN(c-Junとしても公知)は、RAF-MEK-ERKシグナル伝達によって活性化され(Leppa et al., 1998, EMBO J., 17:4404-13)、このことは、AP-1がIGFBP7のBRAFV600Eが媒介する誘導に関与している可能性を高める。クロマチン免疫沈降(ChIP)分析によって、JUNが、BRAFV600E発現に応答してIGFBP7プロモーターへ結合し、JUNのsiRNAが媒介するノックダウンが、BRAFV600E/メラノサイトにおけるIGFBP7の転写誘導を無効にしたことが確認された。
【0104】
次に、IGFBP7が、BRAFV600Eが媒介する細胞増殖の阻止を担う分泌タンパク質であることが確認された。1つの実験において、BRAFV600E-メラノサイトを、IGFBP7を標的とするshRNAで処理した。図2Aは、IGFBP7が、IGFBP7 shRNAを発現するBRAFV600E-メラノサイトのCMに存在しなかったこと(上部パネル)、および、このCMは、ナイーブメラノサイトの細胞増殖を阻害しなかったこと(下部パネル)を示している。第2の実験において、α-IGFBP7抗体を用いての免疫除去は、BRAFV600E-メラノサイトのCMからIGFBP7を効果的に除去した(上部パネル)。免疫除去されたCMもまた、ナイーブメラノサイトの細胞増殖を阻害しなかった(下部パネル)。
【0105】
IGFBP7が細胞増殖を阻止することができたことを確認するために、精製した組換えIGFBP7(rIGFBP7)を、バキュロウイルス感染した昆虫細胞から精製した。図2Bは、発現および精製後に、約33 kDaのポリペプチドが検出されたことを示している(rIGFBP7の予想されるサイズ)。rIGFBP7の添加によって、用量依存性の様式で、初代メラノサイトの増殖が阻止された(図2C)。成長が停止した細胞は、拡大された平坦な形態を有し、老化関連β-ガラクトシダーゼが陽性に染色された(図2D)。総括すると、図2A〜2Dの結果は、BRAFV600Eの発現後に、メラノサイトは、増加した量のIGFBP7を合成および分泌し、これは、次いで、オートクリン/パラクリン経路を介して老化を誘導するように作用することを示している。
【0106】
初代メラノサイトは低レベルのIGFBP7を発現するという知見(図2Aおよび下記を参照のこと)は、通常の条件下で、IGFBP7がメラノサイト増殖を調節し得るという可能性を高めた。この考えを試験するために、未処理メラノサイト、非サイレンシングshRNAを発現する対照メラノサイト、およびIGFBP7 shRNAを発現するメラノサイトの増殖速度を比較した。図2Eの結果は、メラノサイト増殖が、IGFBP7ノックダウン後に増加したことを示している。従って、正常なメラノサイトは低レベルのIGFBP7を発現し、これは増殖を抑止する。高レベルで存在する場合、例えば、BRAFV600Eの発現後にIGFBP7は老化を誘導する。
【0107】
実施例3.IGFBP7が媒介するアポトーシスに対する活性化しているBRAF突然変異を含有するメラノーマ細胞株の選択的感受性
次に、一団のヒトメラノーマ細胞株において細胞増殖を阻止するIGFBP7の能力を分析した。前記細胞は、活性化しているBRAF突然変異(BRAFV600E;SK-MEL-28、MALME-3M、WM793B、WM39およびWM278)、活性化しているRAS突然変異(RASQ61R;SK-MEL-2、SK-MEL-103、およびWM1366)、またはBRAFおよびRASの両方についての野生型(CHL、SK-MEL-31、WM1321およびWM3211)のいずれかを含有した。各細胞株について、CMにおけるIGFBP7の存在を、免疫ブロット分析によって測定し(図3A)、IGFBP7誘導成長阻害に対する感受性を、増殖アッセイにおいて測定した(図3B)。結果は、IGFBP7発現と、BRAFまたはRASの状態に相関するIGFBP7が媒介する成長阻害に対する感受性との間の、顕著な逆相関を明らかにしている。最も重要なことには、活性化しているBRAF突然変異を有するメラノーマ細胞株は、IGFBP7を発現せず、IGFBP7が媒介する成長阻害に対して非常に感受性が高かった。対照的に、野生型BRAFおよびRASを有する細胞は、IGFBP7を発現し、IGFBP7が媒介する成長阻害に対して比較的低感受性であった。最後に、活性化しているRAS突然変異を含有するメラノーマ細胞株は、低レベルのIGFBP7を発現し、IGFBP7が媒介する成長阻害に対して部分的に感受性であった。
【0108】
IGFBP7が媒介する細胞増殖の阻止を、アポトーシスおよび老化についてさらに分析した。意義深いことに、活性化しているBRAF突然変異を有するメラノーマ細胞株において、rIGFBP7はアポトーシスを強力に誘導し、生存している老化細胞は検出不可能であった(図3C)。従って、IGFBP7は主として、初代メラノサイトにおいては老化を、BRAFV600E陽性メラノーマ細胞においてはアポトーシスを誘導した。
【0109】
この異なる応答の基礎を理解するために、17個の同定された遺伝子の発現を、初代メラノサイトおよびBRAFV600E陽性SK-MEL-28メラノーマ細胞において分析した。定量的RT-PCRによって、初代メラノサイトにおいてBRAFV600Eの発現は、アポトーシス(BNIP3L、IGFBP7およびSMARCB1)および老化(PEA15、IGFBP7、MEN1、FBXO31、SMARCB1、およびHSPA9)に関与する7個の遺伝子の転写の上方制御を生じさせたことが示された。7個の遺伝子全てのBRAFV600Eが媒介する誘導は、IGFBP7のノックダウンでは生じなかった。メラノサイトへのrIGFBP7の添加後、IGFBP7を除く前記7個の遺伝子のうちの6個が誘導された。意義深いことに、SK-MEL-28細胞へのrIGFBP7の添加後、IGFBP7またはPEA15のいずれも上方制御されなかった。BRAF-MEK-ERKシグナル伝達の公知の調節因子である(Formstecher et al., 2001, Dev. Cell, 1 :239-250)、PEA15は、老化に必要とされる(図1Fを参照のこと)。従って、IGFBP7処理されたSK-MEL-28細胞におけるPEA15誘導の欠如は、それらが老化を受けないことを説明し得る。BNIP3Lは、BRAFV600Eの発現またはrIGFBP7の添加後、初代メラノサイトにおいてのみ中程度に上方制御され、このことは、IGFBP7処理されたメラノサイトにおける比較的低レベルのアポトーシスと一致している(図1Eを参照のこと)。
【0110】
実施例4.IGFBP7はBNIP3Lの上方制御を介してアポトーシスを誘導する
上述したように、BRAFV600Eが媒介するアポトーシスは、IGFBP7、SMARCB1、およびBNIP3Lに依存し、このことは、これら3つのタンパク質がアポトーシスに必要とされる共通の経路の成分である可能性を高めた。一連の実験を行い、この考えを確認し、経路の順序を確立した。図3Dは、SK-MEL-28細胞へのrIGFBP7の添加後、SMARCB1およびBNIP3Lの発現が有意に増加し、カスパーゼ3活性化によって証明されたようにアポトーシスが生じたことを示している。SMARCB1 shRNAの発現は、BNIP3Lの誘導およびアポトーシスを阻止した。対照的に、BNIP3L shRNAの発現は、rIGFBP7添加後のSMARCB1の誘導を依然として生じさせたが、アポトーシスは生じなかった。総括すると、これらの結果は、IGFBP7がSMARCB1の発現を増加させ、次に、これがBNIP3Lの増加された発現を導き、アポトーシスに至る経路を明らかにしている(図3D、下部パネル)。
【0111】
BRAFV600E/メラノサイトにおいて、SMARCB1およびBNIP3Lの誘導は、IGFBP7ノックダウン後に阻止された。さらに、ナイーブメラノサイトへのBRAFV600E発現メラノサイト由来のCMの添加は、SMARCB1およびBNIP3Lを実質的に上方制御し、これはIGFBP7を欠いた種々の対照CMでは生じなかった。従って、BRAFV600E/メラノサイトにおいて、SMARCB1およびBNIP3Lの誘導はまた、IGFBP7に依存しIGFBP7の下流にある。
【0112】
BNIP3LおよびSMARCB1のIGFBP7が媒介する誘導についての機構の基礎を、次に確認した。STAT1は、あるSMARCB1誘導性の転写応答に関与し、SMARCB1プロモーターは、転写開始部位の約2.4 kb上流に配置されたSTAT1結合部位を含有する(Hartman et al., 2005, Genes Dev., 19:2953-68)。SMARCB1転写のIGFBP7が媒介する誘導におけるSTAT1の潜在的な役割を調べた。ChIP実験によって、SK-MEL-28細胞へのrIGFBP7の添加後、STAT1はSMARCB1プロモーターへリクルートされたことが明らかになり(図3E)、shRNAが媒介するノックダウン実験によって、STAT1はSMARCB1のIGFBP7が媒介する上方制御に必要とされたことが確認された(図3F)。
【0113】
上述したように、SMARCB1はIGFBP7によるBNIP3Lの上方制御に必要とされる(図3D)。ChIP実験によって、rIGFBP7の添加後、SMARCB1、ならびにSWI/SNF複合体の必須サブユニット、BRG1(Bultman et al., 2000, Mol. Cell, 6:1287-95)が、転写開始部位付近のBNIP3Lプロモーターへリクルートされたことが明らかとなった(図3G)。SMARCB1のノックダウン後、BRG1(および、予想通りに、SMARCB1)はBNIP3Lプロモーターと結合しなかった。総括すると、これらの結果は、IGFBP7は少なくとも一部分において、SMARCB1の細胞内レベルを増加させ、SMARCB1を含有するSWI/SNFクロマチンリモデリング複合体の形成へ至り、これがBNIP3Lプロモーターへリクルートされ、BNIP3L転写活性化を促進することによってBNIP3L転写を刺激することを示している。
【0114】
最後に、アポトーシスがrIGFBP7の継続的な存在に依存するかどうか、または、rIGFBP7への一時的な曝露後に不可逆的になるかどうかを確認した。SK-MEL-28細胞を、種々の長さの時間の間rIGFBP7と共にインキュベートした後、細胞を洗浄してrIGFBP7を欠く培地中で培養し、24時間後にアポトーシスを定量した。図3Hに示される結果は、rIGFBP7とのインキュベーションの6時間後に、細胞が不可逆的にアポトーシスが確定されたことを示しており、これはrIGFBP7の除去後でさえ生じた。
【0115】
実施例5.IGFBP7はBRAF-MEK-ERKシグナル伝達を阻止しアポトーシス経路を活性化する
上述したように、BRAFV600E陽性のメラノーマ細胞において、BRAF-MEK-ERKシグナル伝達が過度に活性化され、該細胞はこの経路に非常に依存性となる。従って、BRAF shRNA(Hoeflich et al., 2006, Cancer Res., 999-1006)またはBRAFの阻害剤(Sharma et al., 2005, Cancer Res., 65:2412-2421)もしくはMEKの阻害剤(Solit et al., 2006, Nature, 439:358-362)でのBRAFV600E陽性のメラノーマ細胞の処理は、細胞増殖を阻止する。IGFBP7が少なくとも一部分において、BRAF-MEK-ERKシグナル伝達を阻害することによって、細胞増殖を阻止するかどうかを確認した。
【0116】
この考えを試験するために、rIGFBP7を、BRAFV600E陽性のSK-MEL-28メラノーマ細胞へ添加し、総および活性化ERK(ホスホ-ERK)のレベルを分析した。図4Aの免疫ブロット実験は、rIGFBP7の添加が、ホスホ-ERKの用量依存性な喪失を生じさせることを示しており、このことは、BRAF-MEK-ERKシグナル伝達が阻害されたことを示している。
【0117】
同様に、メラノサイトにおけるBRAFV600Eの発現は、ホスホ-ERKレベルを著しく減少させ、これは、IGFBP7 shRNAを発現するBRAFV600E/メラノサイトにおいて生じなかった。さらに、ナイーブメラノサイトへのBRAFV600E/メラノサイト由来のCMの添加は、ホスホ-ERKのレベルを実質的に減少させ、これは、IGFBP7を欠いた種々の対照CMでは生じなかった。rIGFBP7はまた、成長因子誘導ERK活性化を阻止した。総括するとこれらの結果は、IGFBP7がBRAF-MEK-ERKシグナル伝達を阻害することを示している。
【0118】
SK-MEL-28細胞へのrIGFBP7の添加は、低下したホスホ-ERKレベルおよびアポトーシスと一致して、活性化MEK1/2のレベルを減少させた。さらに、恒常的に活性化されるMEK1突然変異体(MEK1EE)の異所性の発現は、IGFBP7がERK活性化を阻止するのを防止した。これらの結果は、IGFBP7が、BRAFによるMEKのリン酸化を阻止することを実証している。最後に、SK-MEL-28細胞へのIGFBP7の添加は、RAF阻害タンパク質(RKIP)の上方制御を生じさせ、これはBRAFを含むいくつかのRAFタンパク質と相互作用し、RAFが媒介するMEKのリン酸化を阻害することが示された(例えば、Park et al., 2005, Oncogene, 24:3535-40を参照のこと)。SK-MEL-28細胞におけるRKIPのノックダウン後、rIGFBP7はMEKまたはERKの活性化を阻止しなかった。総括するとこれらの結果は、IGFBP7は、BRAFがMEKをリン酸化することを妨げるRKIPを誘導することによって、BRAF-MEK-ERKシグナル伝達を阻害することを示している。
【0119】
BRAF-MEK-ERKシグナル伝達の阻害と、細胞増殖に対するIGFBP7が媒介する阻止との間の関係を確立するために、rIGFBP7に対する感受性を、恒常的に活性化されるERK2突然変異体(ERK2Q103AまたはERK2L73P,S151D)において分析した。図4Bは、SK-MEL-28細胞におけるERK2およびERK2(左)またはMEK1(右)突然変異体のいずれかの発現が、IGFBP7が媒介する細胞増殖の阻止を実質的に克服したことを示している。恒常的に活性化されるERK2突然変異体の発現はまた、メラノサイトにおいてBRAFV600EおよびIGFBP7が誘導する老化を阻止した。さらに、恒常的に活性化されるERK2突然変異体の異所性発現はホスホ-ERK2レベルを増加させ、BNIP3LのIGFBP7が媒介する上方制御およびアポトーシスの誘導を妨げた(図4C)。
【0120】
上記の結果は2つの結論に至った。第1に、IGFBP7は少なくとも一部分において、BRAF-MEK-ERKシグナル伝達の阻害によって細胞増殖を阻止した。第2に、BRAF-MEK-ERKシグナル伝達の阻害は、IGFBP7が媒介するアポトーシス経路の活性化に必要とされた。図4Dは、MEKまたはRAFの化学的阻害剤の添加がBRAF-MEK-ERKシグナル伝達を阻止したことを示している。しかしrIGFBP7とは異なって、MEKおよびRAF阻害剤は、BINP3Lレベルを増加させず、またはアポトーシスを有効に誘導せず、このことは、BRAF-MEK-ERKシグナル伝達の阻害は、IGFBP7が媒介するアポトーシスを誘導するのに十分ではないことを示している。従って、IGFBP7は、アポトーシス経路の誘導に必要とされる第2の独立した活性を有する。
【0121】
実施例6.IGFBP7は異種移植マウスにおいてBRAFV600E陽性腫瘍の成長を抑制する
BRAFV600E陽性ヒトメラノーマ細胞株の増殖を阻害するIGFBP7の能力(図3Bを参照のこと)は、IGFBP7が、活性化しているBRAF突然変異を含有する腫瘍の成長を抑制し得るという可能性を高めた。この可能性の第1の試験として、活性化しているBRAF突然変異を含有する(SK-MEL-28)または欠く(SK-MEL-31)ヒトメラノーマ細胞を、ヌードマウスの側腹部へ皮下注射した。3、6、および9日後、マウスの腫瘍部位に、rIGFBP7、または対照としてPBSを注射した。図5Aの結果は、rIGFBP7が、BRAFV600E陽性腫瘍の成長を実質的に抑制したが、野生型BRAFを含有する腫瘍に対しては効果を有さなかったことを示している。
【0122】
腫瘍成長がまたrIGFBP7の全身投与によって抑制され得るかどうかも測定した。SK-MEL-28またはSK-MEL-31細胞をヌードマウスの側腹部へ注射し、腫瘍が100 mm3サイズに達した場合に、100μgのrIGFBP7を、第6、9、および12日に、尾静脈注射によって注射した。図5Bの結果は、rIGFBP7の全身投与がBRAFV600E陽性腫瘍の成長を完全に抑制したが、野生型BRAFを含有する腫瘍は影響されなかったことを示している。rIGFBP7で処置したマウスにおいて、BRAFV600E陽性腫瘍は、デオキシウリジン三リン酸ニックエンド標識(TUNEL)陽性であり、これは腫瘍成長の抑制がアポトーシスから生じたことを示している。全身投与されたrIGFBP7による腫瘍成長の抑制は用量依存性であり、腫瘍成長の阻害に必要とされたものよりも高い濃度を、明らかな副作用無しに送達することができた(図5C)。
【0123】
実施例7.IGFBP7発現の喪失はBRAFV600E陽性メラノーマについて重要である
上記で示されたように、BRAFV600E陽性のメラノーマ細胞株は、IGFBP7を発現せず、IGFBP7が媒介するアポトーシスに対して感受性が非常に高い。これらの結果は、IGFBP7が腫瘍抑制因子として機能し、IGFBP7の喪失がBRAFV600E陽性のメラノーマの発達に必要とされ得るという可能性を高めた。この可能性を調べるために、本発明者は、一連のヒト皮膚、母斑、およびメラノーマサンプルについてIGFBP7発現の免疫組織化学分析を行った。
【0124】
図6および表2の結果は、培養した初代メラノサイトにおける結果と一致して(図2Aを参照のこと)、正常な皮膚メラノサイトは、低いが検出可能なレベルのIGFBP7を発現したことを示している。メラノサイトにおけるBRAFV600Eの発現はIGFBP7レベルを増加させたという知見と一致して(図2A)、BRAFV600E陽性母斑は、高レベルのIGFBP7を発現した。意義深いことに、BRAFV600E陽性のメラノーマは、検出可能なレベルのIGFBP7を発現しなかった。対照的に、活性化BRAFを欠くメラノーマにおいて、IGFBP7が明確に発現された。
【0125】
(表2)ヒト皮膚、母斑、およびメラノーマサンプルにおける、BRAFV600EおよびIGFBP7の状態

【0126】
IGFBP7発現の喪失がエピジェネティックサイレンシングの結果であるかどうかを測定するために、ビスルファイト配列分析を行った。図10Aは、IGFBP7プロモーターが、BRAFV600E陽性のメラノーマにおいては密に過剰メチル化されたが、BRAFV600E陽性母斑または活性化BRAFを欠くメラノーマにおいては密に過剰メチル化されなかったことを示している。一団のメラノーマ細胞株における同様の分析によって、IGFBP7プロモーターは、BRAFV600E陽性のメラノーマ細胞株においては密に過剰メチル化され、NRASQ61R陽性メラノーマ細胞株においては中程度に過剰メチル化されたことが示された(図10B)。DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤5-アザ-2'-デオキシシチジンでのこれらの細胞株の処理は、BRAFV600EおよびNRASQ61R陽性の細胞株においてはIGFBP7発現を回復したが、BRAF/RAS-野生型細胞株においては効果を有さなかった(図10C)。
【0127】
総括するとこれらの結果は、BRAFV600E陽性メラノーマの発達の間にIGFBP7発現が失われ(例えば、プロモーター過剰メチル化を含むエピジェネティックサイレンシングから)、母斑の特徴であるBRAFV600Eが媒介する老化からの回避が可能になることを示唆している。
【0128】
実施例8.IGFBP7の機能性ペプチド誘導体
IGFBP7のペプチド誘導体の阻害活性を評価した。以前の観察(Sato et al., 1999, J Cell Biochem. 1999 Nov 1;75(2): 187-95)に基づいて、20アミノ酸ペプチド

を作製した。このペプチドを、以前記載された通りに(Akaogi et al., Cell Growth Differ. 1996 Dec;7(12): 1671-7)アッセイした場合に血管内皮細胞において索状構造物を誘導するその能力について試験した。前記20アミノ酸ペプチドは、全長IGFBP7と同様の活性を有し、血管内皮細胞において索状構造物を誘導した。
【0129】
実施例9.IGFBP7およびIDO阻害剤での併用処置
リンパ球浸潤について陽性のメラノーマ患者は、よりよい予後、減少した再発を有し、ほとんど転移を有さない。メラノーマにおいて免疫監視を改善し得る進歩は、メラノーマ患者のクオリティオブライフの改善において顕著な効果を有する。マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路が、しばしばヒトメラノーマにおいて活性化され、自律的細胞増殖などの悪性の表現型へ至る。上述したスクリーニングによって、酵素インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)に影響を与えるBIN1という名称の遺伝子が同定された。IDOは、トリプトファン代謝において第1工程を異化し、従って、T細胞がそれらの活性のために依存するトリプトファンプールを激減させる。BRAFV600Eおよび野生型 BRAFを有するメラノーマサンプルにおけるIDOレベルおよびリンパ球浸潤を分析する。BRAF-MEK-ERK経路阻害剤(例えば、本明細書に記載のIGFBP7剤)と組み合わせてのIDO阻害剤の使用は、メラノーマの処置についてさらなる効果を提供し得る。
【0130】
実施例10.ヒト癌細胞株はIGFBP7が媒介するアポトーシスに感受性である
アポトーシスを誘導するIGFBP7の能力を、National Cancer Institute(NCI)から得られたヒト癌細胞株のNCI 60パネルにおいて評価した。前記パネルは、以下に対応する細胞株を含む:乳癌(MDA-MB-231、HS 578T、BT-549、T47-D、MCF7)、卵巣癌(NCI-ADR-RES、OVCAR-3、OVCAR-5、OVCAR-8、OVCAR-4、SK-OV-3、IGROV1)、前立腺癌(DU-145、PC-3)、腎臓癌(TK-10、CAKI-1、A496、ACHN、RXF-393、786-0、SN12C、UO-31)、非小細胞肺癌(NCI-H460、HOP-62、A549-ATCC、NCI-H226、EKVX、NCI-H322M、HOP-92、NCI-H522)、中枢神経系(CNS)癌(SF-295、SF-268、SF-539、SNB-19、SNB-75、U251)、結腸癌(HCT-15、SW-620、COLO205、HT29、HCC-2998、HCT-116、SM-12)、メラノーマ(SK-MEL-28、SK-M2L-2、LOX IMVI、M14、MALM-3M、SK-MEL-5、UACC-257、UACC-62、MDA-MB-435)、および造血癌(CCRF-CEM、K-562、MOLT-4、SR、RPMI-8226)。これらの細胞株は、広範囲に特徴づけられており、BRAFおよびRAS(例えば、NRAS、KRAS、またはHRAS)を含む、多数のヒト癌遺伝子についてのそれらの突然変異状態が公知である(ワールドワイドウェブのdiscover.nci.nih.gov/cellminer/mutationGeneLoad.doを参照のこと)。
【0131】
上述したように、rIGFBP7を発現させ精製した。rIGFBP7処理後のアポトーシスをモニタリングするために、5×105個の細胞を24時間、rIGFBP7(10μg/ml)で処理し、アネキシンV-PEで染色した。結果を図11Aに示す。rIGFBP7は、BRAF突然変異を含有する細胞株の11/11(100%)およびRAS突然変異を含有する細胞株8/13(61.5%)においてアポトーシスを誘導した。1つの細胞株は、BRAFおよびRAS突然変異の両方を含有し、この細胞株は、rIGFBP7が媒介するアポトーシスに感受性であった。BRAFおよびRAS突然変異を含有しなかった細胞株のうち、4/34(11.8%)のみが、rIGFBP7が媒介するアポトーシスに感受性であった。
【0132】
Ras-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路への上記細胞株の成長の依存も測定した。各細胞株の1.5×105個の細胞を24時間、20μMのMEK阻害剤U0216(Cell Signaling)で処理し、細胞株の成長を測定した。結果を図11Bに示す。U0216は、BRAF突然変異を含有する細胞株の11/11(100%)およびRAS突然変異を含有する細胞株の11/13(84.6)において成長を阻害した。BRAFおよびRAS突然変異の両方を含有した1つの細胞株は、U0216による成長阻害に感受性であった。BRAFおよびRAS突然変異を含有しなかった細胞のいずれも(0/34)、U0216による成長阻害に感受性ではなかった。
【0133】
実施例11.IGFBP7は異種移植片転移を抑制し生存を増強する
IGFBP7が転移性メラノーマを処置するために使用し得るかどうかの第1の試験として、転移性疾患の十分に確立されたマウスモデルを使用した。ここで、ヒトメラノーマ細胞は、尾静脈注射後に肺転移を形成する(例えば、Collisson et al., 2003, Cancer Res., 63:5669-73;Hoeflich et al., 2006, Cancer Res., 66:999-1006;Zimmerman et al., 1987, Cancer Res., 47:2305-10を参照のこと)。これらの実験のためにA375(Fluc-IRES-GFP)細胞を使用した。これらは、Fluc-IRES-GFPレポーター構築物を安定発現する非常に転移性の高い、BRAF陽性のヒトメラノーマ細胞株である(ここで、Flucはホタルルシフェラーゼ遺伝子であり、IRESは内部リボソーム侵入部位であり、GFPは緑色蛍光タンパク質である)(Collisson et al., 2003, Cancer Res., 63:5669-5673)。Fluc-IRES-GFPの存在により、連続的な生物発光光学イメージングによって生きている動物において経時的に腫瘍成長を定量することが可能になる。
【0134】
2つの処置レジメンを試験した。1セットの実験において、IGFBP7の投与をA375-Fluc細胞の注射の3日後に開始し、この時転移性疾患は顕著であった(図12A)。これらの実験において、7×105個のA375(Fluc-IRES-GFP)細胞を、10匹の無胸腺Balb/c (nu/nu)マウス(Taconic)の尾静脈へ注射した。第3、6および9日に、100μgの精製した組換えIGFBP7(n=5マウス)、または、対照としてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(n=5マウス)のいずれかを、尾静脈を介してマウスに注射した。第6日にXenogenブランド生物発光イメージングシステムを使用することによって、転移性腫瘍負荷量の定量についてマウスを分析した。予想されたように、PBSが注射されたマウスは転移性肺腫瘍を示し(図12B)、一方、rIGFBP7が注射されたマウスは肺転移の証拠を示さなかった(図12C)。マウスを30日間にわたって生存度について毎日モニタリングし、転移性疾患を抑制する全身投与されたIGFBP7の能力を、生存アッセイ(Kaplan-Meier分析)によって評価した。図12Dは、5匹の対照マウスが全てA375(Fluc-IRES-GFP)細胞の注射の20日後に死亡し、一方、rIGFBP7が注射されたマウスは、第30日でも依然として生存可能であったことを示している。
【0135】
実験の第2のセットにおいては、IGFBP7の投与をA375(Fluc-IRES-GFP)細胞の注射の前および直後の両方で開始し、転移を予防するおよび/または初期転移性疾患を処置するように予防的に機能するIGFBP7の能力を試験した(図13A)。これらの実験において、100μgの精製した組換えIGFBP7(または、対照としてPBS)をマウスの尾静脈へ注射した(各群について、マウスn=5)。1日後、マウスに7×105個のA375(Fluc-IRES-GFP)細胞を注射し、続いて第3および6日に100μgを注射した。マウスを30日間にわたって生存度について毎日モニタリングし、転移性疾患を抑制する全身投与されたIGFBP7の能力を、生存アッセイ(Kaplan-Meier分析)によって評価した。図13Bの結果は、PBSで処置されたマウスは、A375(Fluc-IRES-GFP)細胞の注射後18日以内に死亡し、一方、rIGFBP7が注射されたマウスは、第30日でも依然として生存可能であったことを示している。これらの予備結果は、転移性メラノーマを処置および予防するためにrIGFBP7を使用する可能性を強く支持している。
【0136】
他の態様
多数の本発明の態様を記載した。それにもかかわらず、種々の修飾が、本発明の精神および範囲を逸脱することなく成され得ることが理解される。従って、他の態様は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図1F】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図2D】

【図2E】

【図3A】

【図3B】

【図3C】

【図3D】

【図3E】

【図3F】

【図3G】

【図3H】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における腫瘍を処置する方法であって、
腫瘍を有するか、腫瘍の危険性があるか、または腫瘍を有すると疑われる被験体を同定する工程;
腫瘍の細胞が、増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達を有するかどうか、成長および/または生存についてRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路に依存するかどうか、ならびに/または、活性化もしくは発癌性のBRAFもしくはRASを発現するかどうかを測定する工程;ならびに
腫瘍が、増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達を有する場合、成長および/または生存についてRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路に依存する場合、ならびに/または、活性化もしくは発癌性のBRAFもしくはRASを発現する場合、有効量のIGFBP7剤を被験体へ投与し、それによって腫瘍を処置する工程
を含む、方法。
【請求項2】
腫瘍が癌である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
癌がメラノーマである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
癌が、癌腫、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸癌、結腸直腸癌、または甲状腺乳頭癌である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
癌が、活性化または発癌性のBRAFまたはRASを発現する、請求項2記載の方法。
【請求項6】
活性化または発癌性のBRAFがBRAFV600Eである、請求項2記載の方法。
【請求項7】
発癌性のBRAFがBRAFV600Eである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
IGFBP7剤が、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:7と少なくとも80%同一のポリペプチドを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
ポリペプチドが、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:7と少なくとも85%同一である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
ポリペプチドが、異種部分へ結合されている、請求項8記載の方法。
【請求項11】
異種部分が、異種ポリペプチド配列である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
IGFBP7剤が、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:7と少なくとも80%同一のポリペプチドからなる、請求項1記載の方法。
【請求項13】
ポリペプチドが、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:7と少なくとも85%同一である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
IGFBP7剤が、SEQ ID NO:1の機能的フラグメントまたはドメインを含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
IGFBP7剤が、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:7に少なくとも85%同一のポリペプチドをコードする核酸を被験体へ導入することによって投与される、請求項1記載の方法。
【請求項16】
核酸がウイルスベクター中にある、請求項15記載の方法。
【請求項17】
ウイルスベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、またはレンチウイルスベクターである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
IGFBP7剤が、局所的に、全身的に、または局部的に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項19】
IGFBP7剤が、薬物放出インプラントによって局部的に投与される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達を有し、成長および/または生存についてRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路に依存し、ならびに/または、活性化もしくは発癌性のBRAFもしくはRASを発現する細胞の増殖を阻害する方法であって、有効量のIGFBP7剤を細胞へ投与する工程を含む方法。
【請求項21】
細胞が腫瘍細胞である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
被験体における腫瘍の処置用の医薬の製造におけるIGFBP7剤の使用。
【請求項23】
腫瘍がメラノーマである、請求項22記載の使用。
【請求項24】
腫瘍が、増加したRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達を有し、成長および/または生存についてRas-BRAF-MEK-Erkシグナル伝達経路に依存し、ならびに/または、活性化もしくは発癌性のBRAFもしくはRAS(例えば、NRAS)を発現する、請求項22記載の使用。
【請求項25】
メラノサイト性皮膚病巣を診断する方法であって、
メラノサイト性皮膚病巣のサンプルを得る工程;
サンプル中のIGFBP7の発現を測定する工程;および
サンプルが活性化BRAFまたはRASを含有するかどうかを測定する工程;
を含み、
ここで、サンプルがIGFBP7を発現しかつ活性化BRAFまたはRASを含有する場合、病巣は色素細胞性母斑と診断され、
サンプルがIGFBP7を発現せずかつ活性化BRAFまたはRASを含有する場合、病巣はメラノーマと診断され、
サンプルがIGFBP7を発現しかつ活性化BRAFまたはRASを含有しない場合、病巣はメラノーマと診断される、
方法。
【請求項26】
サンプルが細胞である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
発現がmRNAの発現である、請求項25記載の方法。
【請求項28】
発現がタンパク質の発現である、請求項25記載の方法。
【請求項29】
被験体におけるメラノーマを処置する方法であって、
メラノーマを有するか、メラノーマの危険性があるか、またはメラノーマを有すると疑われる被験体を同定する工程;および
有効量のIGFBP7剤を被験体へ投与し、それによってメラノーマを処置する工程
を含む、方法。
【請求項30】
IGFBP7剤が、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:7と少なくとも80%同一のポリペプチドを含む組成物である、請求項29記載の方法。

【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−507801(P2011−507801A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524988(P2010−524988)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/076043
【国際公開番号】WO2009/036188
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(505231659)ユニバーシティ オブ マサチューセッツ (23)
【Fターム(参考)】