癌の検出方法及び検出キット
【課題】癌の検出方法及びそのために用いることができる検出キットを提供すること。
【解決手段】「2−O脱硫酸化アカラン硫酸に結合する抗体」及び/又は「アカラン硫酸に結合する抗体」を生体組織由来の試料に接触させるステップを少なくとも含む、癌の検出方法。この「2−O脱硫酸化アカラン硫酸に結合する抗体」はアカラン硫酸に実質的に結合しないものが好ましく、N−アセチルヘパロザンに実質的に結合しないものが好ましく、ブタ腸由来のヘパリンに実質的に結合しないものが好ましい。また「アカラン硫酸に結合する抗体」はウシ腎臓由来のヘパラン硫酸に実質的に結合しないものが好ましく、ブタ腸由来のヘパリンに実質的に結合しないものが好ましく、マウスのエンジェルブレス−ホーム−スワーン腫瘍組織由来のヘパラン硫酸に実質的に結合しないものが好ましい。
【解決手段】「2−O脱硫酸化アカラン硫酸に結合する抗体」及び/又は「アカラン硫酸に結合する抗体」を生体組織由来の試料に接触させるステップを少なくとも含む、癌の検出方法。この「2−O脱硫酸化アカラン硫酸に結合する抗体」はアカラン硫酸に実質的に結合しないものが好ましく、N−アセチルヘパロザンに実質的に結合しないものが好ましく、ブタ腸由来のヘパリンに実質的に結合しないものが好ましい。また「アカラン硫酸に結合する抗体」はウシ腎臓由来のヘパラン硫酸に実質的に結合しないものが好ましく、ブタ腸由来のヘパリンに実質的に結合しないものが好ましく、マウスのエンジェルブレス−ホーム−スワーン腫瘍組織由来のヘパラン硫酸に実質的に結合しないものが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の検出方法及び検出キットに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願書類中で使用する略号及びその意義は以下の通りである。
GAG:グリコサミノグリカン
HA:ヒアルロン酸
HEP:ヘパリン
HS:ヘパラン硫酸
EHS−HS:マウスのエンジェルブレス−ホーム−スワーン腫瘍組織(Engelbreth-Holm-Swarm sarcoma)由来のHS
Bi−GAG:ビオチン標識GAG
Bi−HEP誘導体:ビオチン標識HEP誘導体
GlcNS:N−硫酸化グルコサミン
GlcNAc:N−アセチルグルコサミン
IdoA:イズロン酸
IdoA(2S):2−O−硫酸化イズロン酸
NAH:N−アセチルヘパロザン
AS:アカラン硫酸
Bi−AS:ビオチン標識AS
RA−AS:還元アミノ化AS
PDP−AS:2−ピリジルジスルフィドプロピオニル化AS
SH−AS:チオプロピオニル化AS
ACH:2−O−脱硫酸化AS
Bi−ACH:ビオチン標識ACH
RA−ACH:還元アミノ化ACH
PDP−ACH:2−ピリジルジスルフィドプロピオニル化ACH
SH−ACH:チオプロピオニル化ACH
NH2−HEP:N−脱硫酸化HEP
NAc−HEP:N−脱硫酸化・N−アセチル化HEP
2DSH:2−O−脱硫酸化HEP
NH2−6SH:(2−O・N)−脱硫酸化HEP
6SH:(2−O・N)−脱硫酸化・N−アセチル化HEP
6DSH:6−O−脱硫酸化HEP
NAc−6DSH:N−アセチル化6DSH
NSH:(2−O・6−O)−脱硫酸化HEP
NAc−NSH;N−アセチル化NSH
NH2−2SH:(6−O・N)−脱硫酸化HEP
2SH:(6−O・N)−脱硫酸化・N−アセチル化HEP
NH2−CDSH:完全脱硫酸化HEP
CDSH:完全脱硫酸化・N−アセチル化HEP
Ch:コンドロイチン
CS:コンドロイチン硫酸
CS−A(S):サメ由来コンドロイチン硫酸A
CS−A(W):クジラ由来コンドロイチン硫酸A
CS−B:コンドロイチン硫酸B
CS−C:コンドロイチン硫酸C
CS−D:コンドロイチン硫酸D
CS−E:コンドロイチン硫酸E
KS:ケラタン硫酸
FITC:フルオレセインイソチオシアネート
HRP:ホースラディッシュペルオキシダーゼ
BSA:ウシ血清アルブミン
KLH:ヘモシアニン
PDP−KLH:2−ピリジルジスルフィドプロピオニル化KLH
FCS:子ウシ胎仔血清
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
TMB:テトラメチルベンジジン
SPDP:N−スクシンイミジル−3−[2−ピリジルジチオ]プロピオン酸
EDC:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
ELISA法:酵素標識抗体測定法
ASは、アフリカマイマイ(学名:Achatina fulica)から単離されたGAGの一種である。ASは、GlcNAcとIdoA(2S)とからなる二糖(-[IdoA(2S)-GlcNAc]-)の繰り返し構造を基本糖鎖構造として有する多糖であり、HS及びHEPと極めて類似した構造を有していることが知られている(非特許文献1)。ASを化学的に脱硫酸化した化合物としては、ACHが知られている(非特許文献2)。ASに結合する抗体としては、MW3G3が知られている(非特許文献3)。しかしながら、「ACHに結合する抗体」は知られていない。また、これらの抗体を癌の検出に用いることも知られていない。
【0003】
【非特許文献1】ヨン S.キム(Yeong S. Kim)ら、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー、(米国)、1996年、第271巻、第20号、p.11750−11755
【非特許文献2】M.イシハラ(M. Ishihara)ら、ザ・ジャーナル・オブ・バイオケミストリー、1997年、第121巻、第2号、p.345−349
【非特許文献3】ジェディー B.テン ダン(Gerdy B. ten Dam)ら、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー、(米国)、2004年、第279巻、p.38346−38352
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新たな癌の検出方法及びそのために用いることができる検出キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、抗ACH抗体や抗AS抗体が、驚くべきことにヒトに由来する癌細胞に結合することを見出し、この知見に基づいて、癌を検出できる方法及びそのために用いることができる検出キットを提供するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、「ACHに結合する抗体」及び/又は「ASに結合する抗体」を生体組織由来の試料に接触させるステップを少なくとも含む、癌の検出方法(以下、「本発明方法」という。)を提供する。
この「ACHに結合する抗体」は、ASに実質的に結合しないものが好ましい。またこの「ACHに結合する抗体」は、NAHに実質的に結合しないものが好ましい。またこの「ACHに結合する抗体」は、ブタ腸由来のHEPに実質的に結合しないものが好ましい。またこの「ACHに結合する抗体」は、ウシ腎臓由来のHSに実質的に結合しないものが好ましい。またこの「ACHに結合する抗体」は、EHS−HSに実質的に結合しないものが好ましい。
またこの「ACHに結合する抗体」は、モノクローナル抗体であることが好ましい。この「ACHに結合する抗体」は、タンパク質とACHとを化学的に結合させてなる物質を抗原として免疫した哺乳動物由来のリンパ球と、哺乳動物由来のミエローマ細胞との細胞融合により形成されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体であることが好ましい。このリンパ球及びミエローマ細胞は、マウス由来であることが好ましい。
またこの「ACHに結合する抗体」の免疫グロブリンクラスはIgMであることが好ましい。またこの「ACHに結合する抗体」は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにおける受託番号がFERM P−20828であるハイブリドーマにより産生される抗体であることが好ましい。
また、この「ASに結合する抗体」は、ウシ腎臓由来のHSに実質的に結合しないものが好ましい。またこの「ASに結合する抗体」は、ブタ腸由来のHEPに実質的に結合しないものが好ましい。またこの「ASに結合する抗体」は、EHS−HSに実質的に結合しないものが好ましい。またこの「ASに結合する抗体」は、ウシ角膜由来のKSに実質的に結合しないものが好ましい。またこの「ASに結合する抗体」は、HAに実質的に結合しないものが好ましい。またこの「ASに結合する抗体」は、NAHに実質的に結合しないものが好ましい。
またこの「ASに結合する抗体」は、モノクローナル抗体であることが好ましい。この「ASに結合する抗体」は、タンパク質とASとを化学的に結合させてなる物質を抗原として免疫した哺乳動物由来のリンパ球と、哺乳動物由来のミエローマ細胞との細胞融合により形成されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体であることが好ましい。このリンパ球及びミエローマ細胞は、マウス由来であることが好ましい。
またこの「ASに結合する抗体」の免疫グロブリンクラスはIgM又はIgGであることが好ましい。またこの「ASに結合する抗体」は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにおける受託番号がFERM P−20823、FERM P−20824、FERM P−20825、FERM P−20826又はFERM P−20827であるハイブリドーマにより産生される抗体であることが好ましい。
【0007】
また、前記の「生体組織」は脊椎動物の生体組織であることが好ましい。また前記の「癌」は、大腸癌又は扁平上皮癌であることが好ましい。
【0008】
また本発明は、「ACHに結合する抗体」及び/又は「ASに結合する抗体」を構成成分として少なくとも含む、癌の検出キット(以下、「本発明キット」という。)を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明方法及び本発明キットは、癌を簡便、迅速かつ安価に検出できることから、極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<1>本発明方法
本発明方法は、「ACHに結合する抗体」及び/又は「ASに結合する抗体」を生体組織由来の試料に接触させるステップを少なくとも含む、癌の検出方法である。
(1)ACHに結合する抗体
ここで用いる「ACHに結合する抗体」は、ACHに結合する抗体である限りにおいて特に限定されない。この「ACHに結合する抗体」は、ASに実質的に結合しないものが好ましく、またNAHに実質的に結合しないものも好ましく、またブタ腸由来のHEPに実質的に結合しないものも好ましく、またウシ腎臓由来のHSに実質的に結合しないものも好ましく、またEHS−HSに実質的に結合しないものも好ましい。なかでも、これらの全ての性質を満たしているものが好ましい。
なお本明細書において「実質的に結合しない」とは、1分子たりとも結合しないことを意味するものではなく、結合が検出できないか又は結合が検出できたとしても弱いものであって本発明が属する技術分野における当業者から見て無視できる程度のものであることを意味する。例えば、ACHに対する結合性を100%としたときに、ある物質への結合性が5%以下である場合には「実質的に結合しない」ということができる。したがって、後述する実施例において示されるACH55は、ACHに結合するが、AS、NAH、ブタ腸由来のHEP、ウシ腎臓由来のHS及びEHS−HSのいずれにも実質的に結合しないものであるということができる。
また、この「ACHに結合する抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれであっても良いが、継続的な生産性の確保や、抗体の均一性の観点からすればモノクローナル抗体であることが好ましい。
【0011】
このような「ACHに結合する抗体」は、抗原としてACH又はその修飾物を用いて、公知の方法で製造することができる。なかでも、タンパク質とACHとを化学的に結合させてなる物質を抗原として用いることが好ましい。この「タンパク質」としては、KLH又はBSAを採用することが好ましい。
【0012】
「ACHに結合する抗体」としてモノクローナル抗体を採用する場合には、例えば、「タンパク質とACHとを化学的に結合させてなる物質」を抗原として哺乳動物を免疫し、当該動物からリンパ球を採取して、これを哺乳動物由来のミエローマ細胞と細胞融合させることによりハイブリドーマを形成させ、当該ハイブリドーマから抗体を採取すればよい。この「リンパ球」及び「ミエローマ細胞」は、マウス由来であることが好ましい。
「ACHに結合する抗体」の免疫グロブリンクラスも特に限定されないが、IgMであることが好ましい。
「ACHに結合する抗体」として最も好ましいのは、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにおける受託番号がFERM P−20828であるハイブリドーマにより産生される抗体である。
(2)ASに結合する抗体
ここで用いる「ASに結合する抗体」は、ASに結合する抗体である限りにおいて特に限定されない。この「ASに結合する抗体」は、ウシ腎臓由来のHSに実質的に結合しないものが好ましく、またブタ腸由来のHEPに実質的に結合しないものも好ましく、またEHS−HSに実質的に結合しないものも好ましく、またウシ角膜由来のKSに実質的に結合しないものも好ましく、またCS及びHAに実質的に結合しないものも好ましく、またNAHに実質的に結合しないものも好ましい。なかでも、これらの全ての性質を満たしているものが好ましい。
「実質的に結合しない」の意義は前記と同様である。例えば、ASに対する結合性を100%としたときに、ある物質への結合性が5%以下である場合には「実質的に結合しない」ということができる。したがって、後述する実施例において示されるAS22は、ASに結合するが、ウシ腎臓由来のHS、ブタ腸由来のHEP、EHS−HS、ウシ角膜由来のKS、HA及びNAHのいずれにも実質的に結合しないものであるということができる。
また、この「ASに結合する抗体」も、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれであっても良いが、継続的な生産性の確保や、抗体の均一性の観点からすればモノクローナル抗体であることが好ましい。
【0013】
このような「ASに結合する抗体」は、抗原としてAS又はその修飾物を用いて、公知の方法で製造することができる。なかでも、タンパク質とASとを化学的に結合させてなる物質を抗原として用いることが好ましい。この「タンパク質」としては、KLH又はBSAを採用することが好ましい。
【0014】
「ASに結合する抗体」としてモノクローナル抗体を採用する場合には、例えば、「タンパク質とASとを化学的に結合させてなる物質」を抗原として哺乳動物を免疫し、当該動物からリンパ球を採取して、これを哺乳動物由来のミエローマ細胞と細胞融合させることによりハイブリドーマを形成させ、当該ハイブリドーマから抗体を採取すればよい。この「リンパ球」及び「ミエローマ細胞」は、マウス由来であることが好ましい。
「ASに結合する抗体」の免疫グロブリンクラスも特に限定されないが、IgM又はIgGであることが好ましい。
「ASに結合する抗体」として最も好ましいのは、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにおける受託番号がFERM P−20823、FERM P−20824、FERM P−20825、FERM P−20826又はFERM P−20827であるいずれかのハイブリドーマにより産生される抗体である。
【0015】
このような「ACHに結合する抗体」や「ASに結合する抗体」は、免疫グロブリンとして精製されたものであっても、未精製のもの(例えば、ハイブリドーマの培養上清、腹水、抗血清そのものなど)であっても良いが、免疫グロブリンとして精製されているものが好ましい。本明細書において「精製」という用語は、いわゆる部分精製(実質的に純粋とまではいえないが、画分中に占める精製目的物質の割合が多数となる程度にまで精製すること)も、完全精製(実質的に純粋となるまで精製すること)も含む概念として用いる。例えば、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)で解析した場合に、免疫グロブリン以外の物質が検出されないか、又は検出されてもごく僅かである場合には、免疫グロブリンとして「精製」されているということができる。
【0016】
免疫グロブリンの精製法としては、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム等による塩析、低温アルコール沈殿およびポリエチレングリコールまたは等電点による選択的沈殿分別法、電気泳動法、DEAE(ジエチルアミノエチル)−誘導体、CM(カルボキシメチル)−誘導体等のイオン交換体を用いたイオン交換クロマトグラフィー、プロテインAやプロテインGなどを用いたアフィニティークロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、抗原を固定化した免疫吸着クロマトグラフィー、ゲル濾過法および超遠心法等を挙げることができる。
【0017】
なお「ACHに結合する抗体」や「ASに結合する抗体」は、免疫グロブリンの分子構造を完全に保持しているものは勿論、抗原結合部位(Fab)を分解しないプロテアーゼ(例えばプラスミン、ペプシン、パパイン等)で処理してFabを含むフラグメントとしたものであっても良い。抗体のFabを含むフラグメントとしては、Fab以外に、Fabc、(Fab')2等が例示される。
【0018】
また「ACHに結合する抗体」や「ASに結合する抗体」は、これらの抗体をコードする遺伝子の塩基配列やこれらの抗体のアミノ酸配列が決定されれば、遺伝子工学的にこれらの抗体、Fabを含むフラグメント、キメラ抗体(例えば「ACHに結合する抗体」や「ASに結合する抗体」のFab部分を含むキメラ抗体等)等を作製することもできる。 以上のような「ACHに結合する抗体」や「ASに結合する抗体」のFabを含むフラグメントやキメラ抗体等も、ACH又はASに結合する限りにおいて、本出願書類における「ACHに結合する抗体」や「ASに結合する抗体」の概念に包含される。製造された抗体がACH又はASに結合するか否か等は、後述する実施例に記載の方法等によって容易に判別することができる。
(3)生体組織由来の試料との接触
本発明方法では、以上のような「ACHに結合する抗体」及び/又は「ASに結合する抗体」を生体組織由来の試料に接触させるステップを少なくとも含んでいる。
【0019】
生体組織由来の試料に接触させる抗体は、「ACHに結合する抗体」及び「ASに結合する抗体」の一方であっても、双方であってもよい。
また、これらの抗体以外の抗体をさらに接触させてもよい。このような抗体としては、例えば「NAHに結合する抗体」等を例示することができる。
【0020】
複数種類の抗体を生体組織由来の試料に接触させる場合には、その目的に応じて、これら複数種類の抗体を混合した状態で生体組織に由来する1つの試料に接触させてもよく、また同一の生体組織に由来する複数の試料に、それぞれの抗体を1種類づつ接触させてもよい。
【0021】
抗体と生体組織由来の試料とを「接触」させる方法は、抗体分子と、生体組織由来の試料中に含有されている分子とが接触する状態となる限りにおいて特に限定されない。
また本発明における「生体組織」は、生体に由来する組織である限りにおいて特に限定されないが、脊椎動物の生体組織であることが好ましい。脊椎動物としては、例えば魚類、両生類、は虫類、鳥類、哺乳類等が例示されるが、哺乳類であることが好ましい。なかでもヒトの生体組織であることがより好ましい。
また「生体組織由来の試料」も、このような生体組織から得ることができる試料である限りにおいて特に限定されない。このような生体組織由来の試料としては、例えば、生体組織そのもの、その生体組織に由来する細胞、その細胞の細胞膜を含有する画分、その生体組織から抽出された分子(例えば糖鎖分子)等を例示することができる。なかでも、その生体組織に由来する細胞であることが好ましい。
(4)癌の検出
「ACHに結合する抗体」及び/又は「ASに結合する抗体」をこのような生体組織由来の試料に接触させ、当該試料における生体組織、細胞、細胞膜画分、生体組織から抽出された分子(例えば糖鎖分子)等への当該抗体の結合を検出することにより、癌を検出することができる。すなわち、これらの抗体が生体組織由来の試料におけるこれらのものに結合すれば、当該生体組織が癌であるということを検出することができる。
抗体の結合の検出は、公知の免疫学的手法により行うことができる。例えば、抗体(又はさらに当該抗体に結合する抗体(二次抗体))に、最終的に何らかの特殊なシグナルとして検出されうる物質を結合させて、これを生体組織由来の試料(生体組織、細胞、細胞膜画分、生体組織から抽出された分子(例えば糖鎖分子)等)に接触させ、洗浄した後に、当該試料に当該シグナルが残存している場合には、その抗体は当該試料に結合したと判断することができる。
【0022】
「最終的に何らかの特殊なシグナルとして検出されうる物質」としては、例えば酵素(ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコースオキシダーゼなど)、放射性同位元素(125I、131I、3Hなど)、蛍光色素(FITC、7−アミノ−4−メチルクマリン−3−酢酸(AMCA)、ジクロロトリアジニルアミノフルオレセイン(DTAF)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、リスアミンローダミンB(Lissamine Rhodamine B)、テキサスレッド(Texas Red)、フィコエリスリン(Phycoerythrin;PE)、ウンベリフェロン、ユーロピウム、フィコシアニン、トリカラー、シアニンなど)、化学発光物質(ルミノールなど)、ハプテン(ジニトロフルオロベンゼン、アデノシン一リン酸(AMP)、2,4−ジニトロアニリンなど)、金属粒子(フェリチン粒子、金コロイド粒子など)、特異的結合対(ビオチンとアビジン類(ストレプトアビジンなど)、レクチンと糖鎖、アゴニストとアゴニストの受容体、HEPとアンチトロンビンIII(ATIII)など)のいずれか一方の物質等が例示される。
【0023】
このようなシグナルの検出は、用いる試料の種類・状態や、「最終的に何らかの特殊なシグナルとして検出されうる物質」の種類等に応じて、公知の方法から当業者が適宜設定して行うことができる。例えば、生体組織の切片標本を試料とした場合には顕微鏡を用いて検出することができ、色素を肉眼で観察したり、金属粒子の密度、放射能のカウント、蛍光強度、蛍光偏光、発光強度等を観察・測定すればよい。また細胞の懸濁液を試料とした場合には、顕微鏡や、フローサイトメトリー等の手法を採用することができる。また、細胞膜画分、生体組織から抽出された分子(例えば糖鎖分子)を試料とした場合には、ELISA法等の手法を採用することができる。
【0024】
本発明方法は、以上のような、「『ACHに結合する抗体』及び/又は『ASに結合する抗体』を生体組織由来の試料に接触させるステップ」を少なくとも含む限りにおいて、他のステップをさらに含んでいてもよい。
本発明方法における検出の対象となる「癌」の種類も特に限定されないが、大腸癌又は扁平上皮癌であることが好ましい。
なお、本発明における「癌の検出」は、癌であるということの検出は勿論、癌の種類の検出(鑑別)等も含む概念である。
例えば、「ACHに結合する抗体」や「ASに結合する抗体」は、癌のなかでも大腸癌や扁平上皮癌の生体組織由来の試料に結合しやすいことから、これらの抗体がある生体組織に結合した場合には「当該生体組織が癌である」ということを検出できるとともに、「当該生体組織が大腸癌又は扁平上皮癌である」ということも検出(鑑別)することができる。
また、同一の生体組織に由来する複数の試料に、複数種類の抗体を1種類づつ接触させることによっても、癌の種類の検出(鑑別)をすることができる。この場合にはその検出(鑑別)の精度をさらに高めうる。例えば、同一の生体組織に由来する複数の試料に、「ACHに結合する抗体」、「ASに結合する抗体」をそれぞれ接触させて、これらの抗体の結合性のパターンを調べることにより、より精度の高い検出(鑑別)をなしうる。例えば後述する実施例に示す通り、ある生体組織に由来する複数の試料に、AS17抗体(ASに結合する抗体)、AS22抗体(ASに結合する抗体)、AS25抗体(ASに結合する抗体)、ACH55(ACHに結合する抗体)のそれぞれを接触させたときに、AS22抗体及びACH55抗体のみが結合し、AS17抗体及びAS25抗体が結合しない場合には、当該生体組織は大腸癌であると検出(鑑別)することができる。また後述の実施例に示すとおり、「NAHに結合する抗体」(例えばNAH46抗体)は癌組織に結合することから、さらにこの抗体を組み合わせることによって、このような癌の検出の精度をさらに高めることができる。
また、ここにいう「癌の検出(鑑別)」は、その可能性の検出(鑑別)をも包含する概念である。すなわち例えば、少なくとも「ACHに結合する抗体」及び/又は「ASに結合する抗体」が生体組織由来の試料に結合した場合には、「当該生体組織が癌である可能性がある」ということを検出できるとともに、「当該生体組織が大腸癌又は扁平上皮癌である可能性がある」ということも検出(鑑別)することができる。
【0025】
また本発明方法は、癌組織において発現している「『ACHに結合する抗体』や『ASに結合する抗体』が認識する糖鎖」の化学構造の検出や分析等の概念を含むものである。例えば、後述するACS22抗体は、NAc−HEP(N−アセチル基、6−O硫酸基及び2−O硫酸基を保持している点が1つの特徴である)とNAc−6DSH(N−アセチル基、N−硫酸基及び2−O硫酸基を保持している点が1つの特徴である)に高い結合性を有している。したがって、ある生体組織由来の試料にACS22抗体を接触させたときに、この抗体が結合すれば、癌の検出ができるとともに、当該癌組織にはN−アセチル基、6−O硫酸基及び2−O硫酸基を保持している糖鎖又はN−アセチル基、N−硫酸基及び2−O硫酸基を保持している糖鎖が発現しているということを検出・分析することができる。
<2>本発明キット
本発明キットは、「ACHに結合する抗体」及び/又は「ASに結合する抗体」を構成成分として少なくとも含む、癌の検出キットである。
【0026】
本発明キットの構成成分である「ACHに結合する抗体」や「ASに結合する抗体」についての説明は、前記<1>と同様である。本発明キットは、このような「ACHに結合する抗体」及び「ASに結合する抗体」の一方のみを含んでいてもよく、双方を含んでいてもよい。
【0027】
本発明キットは、前記の本発明方法に従って使用することができる。本発明キットの構成成分である抗体と生体組織由来の試料との接触方法、「生体組織」や「生体組織由来の試料」の意義、癌の検出の方法、検出対象となる「癌」の種類、「癌の検出」の意義等も、全て前記<1>と同様である。
【0028】
本発明キットは、「ACHに結合する抗体」及び/又は「ASに結合する抗体」を構成成分として少なくとも含む限りにおいて特に限定されず、さらに標識物質の検知試薬等を構成成分として加えることができる。
【0029】
また、これらの構成成分の他に、洗浄液、酵素反応停止液等が含まれていてもよい。さらに本発明キットには、測定バッチ同士の実施レベルを一定水準に保つための陽性コントロール(QCコントロール)を含有させることもできる。
【0030】
これらの構成成分は、それぞれ別体の容器に収容し保存しておくことができる。
【0031】
以下、本発明を実施例により具体的に詳説する。
【実施例1】
【0032】
ACHに結合する抗体の調製
(参考例1) AS及びACHの調製
ASは、Kim, Y. S.らの方法(前記の非特許文献1に記載された方法)に従ってアフリカマイマイ(学名:Achatina fulica)から調製した。得られたASを原料として、Ishihara, M.らの方法(前記の非特許文献2に記載された方法)に従ってACHを調製した。
(参考例2) PDP−KLHの調製
KLHへの2−ピリジルジスルフィド構造の導入は、Carlsson, J.らの方法(Biochem. J., 173, 723 (1978))に従って行った。
【0033】
すなわち、0.1Mリン酸緩衝液(pH 7.5)-0.1M NaClに、終濃度が2.5mg/mlになるようにKLH(シグマ社製) 60mgを溶解した。この溶液に、終濃度が0.238mMになるように5mM SPDP(シグマ社製)エタノール溶液を添加・混合し、30分間室温に保持した。過剰のSPDPを除去するために蒸留水に対して透析した後に、混合液を凍結乾燥し、PDP−KLH 59.4mgを得た。
(参考例3) ウロン酸を介したACH−BSAコンジュゲートの調製
ACH及びBSA(バイエル社製)を、それぞれ0.1M MES緩衝液(pH5.5)に、終濃度が10mg/mlになるように溶解し、ACH溶液及びBSA溶液を得た。ACH溶液 300 μlとBSA溶液 150 μlとを混合し、EDC(PIERCE社製)400 μgを添加した後、撹拌しながら20時間室温に保持した。得られた反応後の溶液は、蒸留水に対して一晩透析した後、凍結乾燥し、ウロン酸を介したACH−BSAコンジュゲート 3.5mgを得た。
(参考例4) Bi−GAG及びBi−HEP誘導体の調製
ASおよび、ACHは参考例1で調製したものを使用した。ブタ皮由来のHA(以下、単に「HA」と記載する)、CS−A(W)、CS−A(S)、CS−B、CS−C、CS−D、CS−E、ウシ腎臓由来のHS(以下、単に「HS」と記載する)、及びウシ角膜由来のKS(以下、単に「KS」と記載する)は、生化学工業株式会社製のものを使用した。NAHは特開2004-18840に記載の方法に従って、大腸菌K5の培養物から調製した。ブタ腸由来のHEP(以下、単に「HEP」と記載する)は、サイエンティフィックプロテインラボラトリーズ社から購入した。また、EHS−HSは、特公平7−53756号公報に記載の方法により調製した。
【0034】
また、各種HEP誘導体(NH2−HEP、NAc−HEP、6DSH、NAc−6DSH、NH2−6SH、6SH、NH2−2SH、2SH、NSH、NAc−NSH、NH2−CDSH、CDSH)は、図1に示す方法で、各種脱硫酸化反応及び/又はN−アセチル化反応を、単独で、又は組み合わせて用いることにより調製した。図中、HEPの6−O、22−O及びN−脱硫酸化は、それぞれ、高野ら、苅谷ら及びAyotte, L.らの方法に従った(Takano, R. et al., J. Carbohydr. Chem. 14, 885 (1995), Takano, R. et al., Carbohydr. Lett. 3, 71 (1998), Kariya, Y. et al., J. Biochem., 123, 240(1998), Ayotte, L. et al., Carbohydr. Res., 145, 267 (1986))。
【0035】
また、N−アセチル化は、 Danishefsky, I.らの方法に従った(Danishefsky, I. et al., Methods Carbohydr. Res., 5, 407(1965))。
【0036】
高野らの方法に従って6−O脱硫酸化を実施すると、副反応として若干のN−脱硫酸化も起きるので、得られた6DSHとNSHの一部はN−アセチル化を行い、NAc−6DSHとNAc−NSHを調製した。
【0037】
上記の各種GAG及び各種HEP誘導体、並びに参考例1で調製したAS及びACHを、それぞれ終濃度が10mg/mlになるように0.1M MES緩衝液(pH5.5)に溶解し、各種GAG溶液及び各種HEP誘導体溶液を得た。これらの各種GAG溶液及び各種HEP誘導体溶液 各1mlに対して、ジメチルスルホキシド(和光純薬工業株式会社製)で20mMに調製したビオチン−LC−ヒドラジド(PIERCE社製)を、それぞれ25μlずつ添加した。続いて、0.1M MES緩衝液(pH5.5)で100mg/mlに調製したEDC溶液を12.5μl添加した。これをよく撹拌した後、室温(15℃〜25℃)で20時間撹拌して反応させた。反応終了後の反応物を、透析膜(商品名:Cellu Sep H1(フナコシ社製)、カットオフ:分子量1,000以下)を、透析液としてダルベッコ・リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2〜7.5、カルシウムイオン等の二価イオン不含;以下、「PBS(−)」という。)をそれぞれ用いて透析に付し、遊離のビオチンを充分に除去し、各種Bi−GAG及び各種Bi−HEP誘導体を得た。透析終了後、Bi−GAG濃度及びBi−HEP誘導体をそれぞれ5ng/mlに調整し、凍結保存した。
(参考例5) ストレプトアビジン固相化マイクロプレートの作製
ストレプトアビジン(Vector社製)をPBS(−)で20μg/mlに希釈し、マキシソープ(登録商標)96ウェルマイクロプレート(ヌンク社製)の各ウェルに50μlずつ加えた。このプレートを18時間、4℃で保存することにより、ストレプトアビジンをプレート上に均一に固相化した後、PBS(−)で2回洗浄した。続いて、ブロッキング剤としてApplieDuo(登録商標、生化学工業株式会社製)を用い、以下の方法によりストレプトアビジンでコーティングされていない部分をブロッキングした。すなわち、防腐剤として0.05%プロクリン300(登録商標、SUPELCO社製)を含むリン酸緩衝液(pH7.2〜7.5:以下、「PB」という)を用いて、ApplieDuo(登録商標)の5倍希釈液(以下、「ブロッキング液」という)を調製し、これを各ウェルに250μlずつ加え、室温で2時間静置した。静置後、ブロッキング液を充分に除去し、37℃で2時間乾燥させることにより、所望するストレプトアビジン固相化マイクロプレートを得た。得られたプレートは乾燥剤とともにアルミラミネート袋に封入し、冷蔵保存した。
(参考例6) 各種GAG固相化マイクロプレート及び各種HEP誘導体固相化マイクロプレートの作製
1) ACH固相化マイクロプレートの作製
参考例3で調製したACH-BSAコンジュゲート (50 ng)を、マキシソープ(登録商標) 96ウェルマイクロプレートに添加し、18時間、4℃に保持した後、防腐剤として0.05%プロクリン300(登録商標)を含むPBS(−)で4倍希釈したブロックエース(登録商標;大日本製薬株式会社製)を用いてブロッキングした。1時間、室温で静置した後、所望のACH固相化マイクロプレートを得た。このACH固相化マイクロプレートは、後述する参考例8において血清中の抗体価を検証のために使用した。
2) 各種Bi−GAG固相化マイクロプレート及び各種Bi−HEP誘導体固相化マイクロプレートの作製
上記参考例4に記載の各種Bi−GAG及び各種Bi−HEP誘導体を、終濃度が1 μg/mlになるように、0.05%プロクリン300(登録商標)を含むPBS(−)で20倍希釈したApplieDuo(登録商標)溶液に溶解した(以下この溶液を、「各種Bi−GAG溶液」及び「各種Bi−HEP誘導体溶液」という)。参考例5で作製したストレプトアビジン固相化マイクロプレートの各ウェルを、300μlの0.05%プロクリン300(登録商標)及び0.05%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを含むPBS(−)(以下、「洗浄緩衝液」と言う)で4回洗浄した。各種Bi−GAG溶液及び各種Bi−HEP誘導体溶液をそれぞれ100 μlずつ各ウェルに分注し、室温で30分間静置したのち、各ウェルを洗浄緩衝液で4回洗浄することにより、所望の各種Bi−GAG固相化マイクロプレート及び各種Bi−HEP誘導体固相化マイクロプレートを得た。これらのプレートは、後述する参考例8におけるクローニング、及び後述する参考例10における反応性試験において使用した。
(参考例7) ACH抗原の調製
1) RA−ACHの調製
参考例1で調製したACH 4.5mgを、2M 塩化アンモニウム水溶液 160μlに溶解した。この溶液に、シアノ水素化ホウ素ナトリウム 12mgを添加し、70℃で2日間、還元アミノ化反応を行った。反応後の溶液に、シアノ水素ホウ素ナトリウム 5mgを添加し、さらに2日間、上記と同一の条件で反応を行った。反応後の溶液を氷浴中で冷却した後、酢酸 32μlを添加して反応を完全に停止させた。2倍量のエタノールを用いた溶媒沈殿法により、RA−ACHを回収した。得られた沈殿を、エタノール洗浄した後に凍結乾燥し、RA−ACHの凍結乾燥物2.1mgを得た。
2) 2−ピリジルジスルフィドプロピオニル化ACHの調製
上記1)で調製したRA−ACH 2.1mgを、0.1M NaCl−0.1M リン酸緩衝液(pH7.5) 1mlに溶解した。この溶液に5mM SPDPエタノール溶液 80μlを添加した後、室温にて一晩静置し、2−ピリジルジスルフィドプロピオニル化反応(PDP反応)を行った。過剰のSPDPを除くために蒸留水を用いて透析を行った後、凍結乾燥し、PDP−ACHの凍結乾燥物 1.7mgを得た。
3) SH−ACHの調製
上記2)で調製したPDP−ACH 1.7mgを、0.1M NaCl−0.1M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5) 160μlに溶解した。この溶液に、終濃度が25mMになるようにジチオスレイトールを添加し、60分間室温にて還元反応を行った。2倍量のエタノールを用いた溶媒沈殿法でSH−ACHを回収した。得られた沈殿を、エタノール洗浄した後に凍結乾燥し、SH−ACHの凍結乾燥物 1.3mgを得た。
4) ジスルフィド結合を介したACH−KLHコンジュゲートの調製
上記3)で調製したSH−ACH 1.3mg及び参考例2で調製したPDP−KLH 0.65mgを、0.1M NaCl−0.1M リン酸緩衝液(pH7.5) 1mlに溶解し、2時間室温にてコンジュゲーション反応を行った。反応中に生成されるピリジル−2−チオンを除くため、上記反応後の溶液を、蒸留水に対して一晩透析した後、凍結乾燥し、ACH−KLHコンジュゲートの凍結乾燥物1.5mgを得た。得られた凍結乾燥物は、後述する参考例8において、ACH抗原として用いた。
(参考例8) ACHに対して反応する抗体を生産するハイブリドーマ細胞株の樹立
1) マウスの免疫化
前記参考例7の4)で得られたACH抗原1mgを少量の蒸留水に溶解し、これをTiterMAX Gold(登録商標;シグマ社製)2mlと混合し、抗原溶液を調製した。また、免疫する動物としては、4匹のBALB/Cマウス(6週齢のメス;日本チャールズリバー社製)を用いた。上記の抗原溶液 100μl/匹 を、2週間毎に2又は3回皮下投与した。血清の抗体価が十分な値に達した時、最終免疫として、アジュバントを含まないACH抗原溶液 100μl/匹を投与した。最終免疫から3日後、免疫したマウスを安楽死させ、脾臓を摘出した。
【0038】
なお、上記において、血清中の抗体価の検証は、以下の方法により行った。すなわち、参考例6の1)で作製したACH固相化マイクロプレート及びアルカリホスファターゼ標識抗マウスIgG+M+A抗体(以下、「ALP−抗マウスIg」という)を用い、ELISA法により血清中の抗体価を検証した。すなわち、PBS(−)で1000倍希釈した血清 50μlをACH固相化マイクロプレートに分注し、37℃で1時間インキュベートした。続いて、PBS(−)で4回洗浄し、10%ブロックエース(登録商標)/PBS(−)で1000倍希釈したALP−抗マウスIg溶液 50 μlを各ウェルに分注した。さらに、PBS(−)で4回洗浄した後、基質溶液(ALPローゼ;株式会社シノテスト製) 50μlを各ウエルに分注し、20分間、室温にて静置した。さらに、発色試薬(株式会社シノテスト製)50μlを添加し、660nmをバックグラウンド補正として、495nmの吸光度を測定した。
2)ハイブリドーマの創製
1)で摘出した脾臓から得られた免疫感作されたリンパ球と、マウスミエローマP3U1細胞(株式会社シマ研究所製)とを、4対1ないし5対1の混合比で混合した後、50%のポリエチレングリコール1500(ロシュ社製)中で共遠心分離することによって細胞融合を実施した。なお、上記の細胞融合に用いるミエローマ細胞には、細胞融合の1週間前より、8−アザグアニンを含んだHAT培地で生育させたものを用いた。細胞融合後、HAT培地中で細胞を生育させた細胞を、以下のクローンの選抜に用いた。
3)クローンの選抜及び評価
3−1) クローニング
クローニングには限界希釈法を採用した。すなわち、細胞数がウエル当り1以下になるようにHAT培地で細胞を希釈し、これを96ウェルマイクロプレートに播種した。これを常法に従って培養し、培養上清液を得た。培養上清液の抗体価の評価を、参考例6の2)で作製したBi−ACH固相化マイクロプレートを用いたELISA法により行い、クローンを選抜した。以上のクローンニングの工程は、少なくとも2回以上実行した。以上の結果として、1つのクローンを選抜し、取得した。
3−2) クローンの評価
上記3)−1で取得したクローンの活性が維持されていることを確認するため、当該クローンを24ウェルプレートの培養スケールにて培養し、得られた培養上清液の抗体価の評価を、参考例6の2)で作製したBi−ACH固相化マイクロプレート、及びHRP標識ヤギ抗マウス免疫グロブリン抗体(以下、「HRP抗マウスIg」という;ダコ社製)を用いたELISA法により行った。以下に詳細を示す。
[クローンの抗体価の評価]
予め洗浄緩衝液によって4回洗浄したBi−ACH固相化マイクロプレートに、培養上清液 100μlを分注し、室温にて1時間静置した。さらに洗浄緩衝液で4回洗浄した後に、反応緩衝液(0.05%プロクリン300(登録商標)を含むPBS(−)で20倍に希釈したApplieDuo(登録商標)溶液)で2000倍に希釈したHRP抗マウスIg 100μlを、各ウェルに分注した。このプレートを室温にて1時間静置した後、洗浄緩衝液で4回洗浄し、TMB溶液(HRP基質溶液;BIOFX社製) 100μlを各ウェルに加え、30分間、常温で酵素反応を行った。反応終了後、発色試薬(BIOFX社製)100μlを各ウェルに添加し、630nmをバックグラウンド補正として、450nmの吸光度を測定した。なお、反応緩衝液をネガティブブランクとして用いた。その結果、当該クローンが抗ACH抗体を生産していることが確認された。樹立したハイブリドーマのクローン番号はACH55であったことから、このハイブリドーマによって産生される抗体を、ACH55抗体と名付けた。上記のハイブリドーマは、平成18年3月1日に独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに受託番号FERM P−20828として受託された。常法に従って抗体の免疫グロブリンクラスを調べた結果、ACH55抗体の免疫グロブリンクラスはIgMであることを確認した。
(参考例9) 抗ACHモノクローナル抗体の調製
1) 抗ACHモノクローナル抗体の生産
目的の抗ACHモノクローナル抗体を生産する方法としては、マウス腹水法を採用した。すなわち、上記参考例8の3)で樹立したハイブリドーマ(クローン番号:ACH55)5×106個を、予めプリスタン(2,6,10,14-Tetrametylpentadecane:東京化成工業株式会社)処理した3匹のBALB/Cマウス(15週齢の雌)の腹腔に注入した。注射後10〜20日の間に、マウスの腹水を数回に分けて採取し、合計約10mlの腹水を得た。
2) 抗ACHモノクローナル抗体の精製
上記1)で得た腹水を、吸着バッファ2(0.5M K2SO4を含む20のmMリン酸緩衝液(pH 7.5))に対して一晩透析した。透析内液をメンブランフィルタ(孔径:0.45 mm)によって濾過し、得られた濾過液を、予め吸着バッファ1(20 mMリン酸緩衝液(pH 7.0))で平衡化したHiTrap IgY Purification HPカラム(5ml;アマシャム・バイオサイエンス社製)にアプライした後、吸着バッファ1でカラムを洗浄した。通過させた洗浄液の280nmの吸収がほぼ0になったとき、20 mMリン酸緩衝液(pH 7.5)をカラムに通過させ、ACH55抗体を溶出した。溶出したACH55抗体をNH4SO4(50%の飽和)を用いて塩析することによって回収した。得られた沈澱物をPBS(−)に対して透析し、精製ACH55抗体 2.2mgを含む透析内液を得た。
(参考例10) 抗ACHモノクローナル抗体の反応性試験
1) ACH55抗体の各種GAGに対する反応性
1)−1 方法
Bi−GAGの固相化量の異なるマイクロプレートを作製するために、固相化に用いるBi−GAG溶液中のBi−GAGの終濃度を、0.001、0.004、0.012、0.037、0.111、0.333、1.000μg/mlと変化させて参考例6の2)と同様の方法で作製したBi−GAG固相化マイクロプレートを、それぞれ洗浄緩衝液で4回洗浄した。その後、各ウェルに、添加剤としてApplieDuo(登録商標;最終希釈率20倍;生化学工業株式会社製)及び防腐剤として0.05%プロクリン300を含有するPBS(−)(以下、「反応液A」という)を用いて濃度0.06 μg/mlに調整したACH55抗体からなる各試験溶液を100μlずつ加え、これを常温で60分間静置し、抗原抗体反応させた。反応終了後、各ウェルを洗浄緩衝液で4回洗浄し、二次抗体溶液として、反応液Aで2000倍に希釈したHRP抗マウスIg溶液を100μlずつ加え、これを常温で60分間静置して抗原抗体反応させた。反応終了後、このプレートを洗浄緩衝液で4回洗浄し、HRPの基質としてTMB溶液(HRP基質溶液、BIOFX社製)を100μlずつ加え、常温で30分間反応させて発色させた。続いて、プレートに反応停止液(BIOFX社製)を100μlずつ加えて反応を停止させた後、TMB分解によって増加する波長450nmの吸光度(対照波長630nm)をウェルリーダーSK−603(登録商標;生化学工業株式会社販売)で測定した。なお、抗体の反応性は、上記の各濃度のBi−GAGを用いて作製したBi−GAG固相化マイクロプレートを用いて上記測定を行った場合の吸光度から、Bi−GAG溶液の代わりにBi−GAGを含まない0.05%プロクリン300(登録商標)を含むPBS(−)で20倍希釈したApplieDuo(登録商標)溶液を用いることの他、参考例6 2)と同様の方法により作製したコントロール測定用マイクロプレートを用いて上記の測定方法に準じて測定を行った場合の吸光度(ブランク値)を減算した吸光度差(以下、単に「吸光度差」と記載する)によって評価した。
1)−2 結果
Bi−GAG固相化マイクロプレートのGAGとして、NAH、AS、ACH、HS、HEP及びEHS−HSを用いた場合の結果を、図2に示す。
【0039】
ACH55抗体は、ACHに対しては、Bi−ACH濃度を0.01μg/mL(0.001μg/ウェル)とした場合においても強く反応(吸光度差=約1.0)した一方で、AS、HEP、HS、NAH及びEHS−HSに対しては、Bi−GAG濃度を1.0μg/mL(0.1μg/ウェル)にまで上げた場合においても反応しなかった(図2)。
【0040】
また、ACH55抗体は上述したHEPの場合と同様に、HA、各種CS(CS−A(W)、CS−A(S)、CS−B、CS−C、CS−D、CS−E)及びKSに対しても反応しなかった。
2) ACH55抗体の各種HEP誘導体に対する反応性
各種HEP誘導体に対する反応性を評価した。Bi−HEP誘導体固相化マイクロプレートのHEP誘導体として、NH2−HEP、NAc−HEP、6DSH、NAc−6DSH、NH2−6SH、6SH、NH2−2SH、2SH、NSH、NAc−NSH、NH2−CDSH及びCDSHを用いた。なおこの試験においては、固相化に用いるBi−HEP誘導体を含む溶液の濃度を1μg/mlに固定した(0.1 μg/ウェル)。結果を図3に示す。
【0041】
ACH55抗体は、CDSHに対しては強く反応し、また、2SH、6SHとNAc−NSHに対しては、極弱く反応した(図3)。
【0042】
ACH55抗体が強く反応したACHは、イズロン酸ユニット(-[IdoA-GlcNAc]-)を主な構成二糖としていることから、ACH55抗体のエピトープは、イズロン酸ユニットから構成されていると考えられる。また、当該抗体が反応しなかったNAHは、グルクロン酸ユニット(- [GlcA-GlcNAc]-)からなるACHのウロン酸C5−エピマーであることから、特にイズロン酸残基がACH55抗体の抗原認識において必須であることが示唆された。さらに、AS(イズロン酸残基の2位水酸基が硫酸化されている)に対して反応性が見られないことから、イズロン酸の硫酸化(IdoA(2S))は、ACH55抗体の抗原に対する反応性を阻害することが示唆された。
【0043】
CDSHはグルクロン酸ユニット及びイズロン酸ユニットにより主に構成される多糖であり、イズロン酸ユニットの存在比は60%以上と高い。したがって、CDSHが当該抗体と反応した結果に矛盾はない。また、この反応性はGlcNAc残基のN−脱アセチル化(NH2−CDSH)及びN−硫酸化(NSH)によって消失したので、グルコサミン残基のアミノ基がアセチル化されていることも、ACH55抗体の抗原の認識において重要であることが示唆された。
【0044】
ASと反応しない抗体ACH55が2SH、6SHやNAc−NSHと弱く反応した理由は、HEPがN−脱硫酸化、2−O脱硫酸化及び6−O脱硫酸化等、複数の修飾を経る過程で、イズロン酸ユニットがHEP誘導体中に顕在化したためと推察した。
【実施例2】
【0045】
ASに結合する抗体の調製
(参考例11) ウロン酸を介したAS−BSAコンジュゲートの調製
ACHに代えてASを用い、前記の参考例3と同様に行った。最終的に、ウロン酸を介したAS−BSAコンジュゲート 3.5mgを得た。
(参考例12) Bi−GAG及びBi−HEP誘導体の調製
ACHに代えてASを用い、前記の参考例4と同様に行った。
(参考例13) ストレプトアビジン固相化マイクロプレートの作製
前記の参考例5と同様に行った。
(参考例14) 各種GAG固相化マイクロプレート及び各種HEP誘導体固相化マイクロプレートの作製
1) AS固相化マイクロプレートの作製
参考例11で調製したAS−BSA(50 ng)を用いて、参考例6の1)と同様に行った。このAS固相化マイクロプレートは、後述する参考例16において血清中の抗体価を検証するために使用した。
2) 各種Bi−GAG固相化マイクロプレート及び各種Bi−HEP誘導体固相化マイクロプレートの作製
参考例6の2)と同様に行った。
(参考例15) AS抗原の調製
1) RA−ASの調製
参考例1で調製したAS 4mgを秤量し、2M 塩化アンモニウム水溶液 160μlに溶解した。この溶液に、シアノ水素化ホウ素ナトリウム12mgを添加し、70℃で2日間、還元アミノ化反応を行った。反応後の溶液に、シアノ水素ホウ素ナトリウム 5mgを添加し、さらに2日間、上記と同一の条件で反応を行った。反応後の溶液を氷浴中で冷却した後、酢酸 32μlを添加して反応を完全に停止させた。2倍量のエタノールを用いた溶媒沈殿法により、RA−ASを回収した。得られた沈殿を、エタノール洗浄した後に凍結乾燥し、RA−ASの凍結乾燥物3.3mgを得た。
2) PDP−ASの調製
上記1)で調製したRA−AS 3.3mgを、0.1M NaCl−0.1M リン酸緩衝液(pH7.5) 1mlに溶解した。この溶液に5mM SPDPエタノール溶液 80μlを添加した後、室温にて一晩静置し、2−ピリジルジスルフィドプロピオニル化反応(PDP反応)を行った。過剰のSPDPを除くために蒸留水を用いて透析を行った後、凍結乾燥し、PDP−ASの凍結乾燥物3.8mgを得た。
3) SH−ASの調製
上記2)で調製したPDP−AS 2.0mgを秤量し、0.1M NaCl−0.1M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)160μlに溶解した。この溶液に、終濃度が25mMになるようにジチオスレイトールを添加し、60分間室温にて還元反応を行った。2倍量のエタノールを用いた溶媒沈殿法でSH−ASを回収した。得られた沈殿を、エタノール洗浄した後に凍結乾燥し、SH−ASの凍結乾燥物1.5mgを得た。
4) ジスルフィド結合を介したAS−KLHコンジュゲートの調製
上記3)で調製したSH−AS 1.5mg及び参考例2で調製したPDP−KLH 0.75mgを、0.1M NaCl−0.1M リン酸緩衝液(pH7.5) 1mlに溶解し、2時間室温にてコンジュゲーション反応を行った。反応中に生成されるピリジル−2−チオンを除くため、上記反応後の溶液を、蒸留水に対して一晩透析した後、凍結乾燥し、AS−KLHコンジュゲートの凍結乾燥物1.9mgを得た。得られた凍結乾燥物は、後述する参考例16において、AS抗原として用いた。
(参考例16) ASに対して反応する抗体を生産するハイブリドーマ細胞株の樹立
1) マウスの免疫化
少量の蒸留水に溶解したAS抗原 1mgとTiterMAX Gold(登録商標;シグマ社製)2mlとを混合し、抗原溶液を調製した。また、免疫する動物としては、4匹のBALB/Cマウス(6週齢のメス;日本チャールズリバー社製)を用いた。上記の抗原溶液 100μl/匹を、2週間毎に2又は3回皮下投与した。血清の抗体価が十分な値に達した時、最終免疫として、アジュバントを含まないAS抗原溶液 100μ1/匹を投与した。最終免疫から3日後、免疫したマウスを安楽死させ、脾臓を摘出した。
【0046】
なお、上記において、血清中の抗体価の検証は、以下の方法により行った。すなわち、参考例14の1)で作製したAS固相化マイクロプレート及びALP−抗マウスIgを用い、ELISA法により血清中の抗体価を検証した。すなわち、PBS(−)で1000倍希釈した血清 50 μlをAS固相化マイクロプレートに分注し、37℃で1時間インキュベートした。続いて、PBS(−)で4回洗浄し、10% ブロックエース(登録商標)/PBS(−)で1000倍希釈したALP−抗マウスIg溶液 50μlを各ウェルに分注した。さらに、PBS(−)で4回洗浄した後、基質溶液(ALPローゼ;株式会社シノテスト製)50μlを各ウェルに分注し、20分間、室温にて静置した。さらに、発色試薬(株式会社シノテスト製)50μlを添加し、660nmをバックグラウンド補正として、495nmの吸光度を測定した。
2)ハイブリドーマの創製
1)で摘出した脾臓から得られた免疫感作されたリンパ球と、マウスミエローマP3U1細胞(株式会社シマ研究所製)とを、4対1ないし5対1の混合比で混合した後、50%のポリエチレングリコール1500(ロシュ社製)中で共遠心分離することによって細胞融合を実施した。なお、上記の細胞融合に用いるミエローマ細胞には、細胞融合の1週間前より、8−アザグアニンを含んだHAT培地で生育させたものを用いた。細胞融合後、HAT培地中で細胞を生育させた細胞を、以下のクローンの選抜に用いた。
3)クローンの選抜及び評価
3−1) クローニング
クローニングには限界希釈法を採用した。すなわち、細胞数がウェル当り1以下になるようにHAT培地で細胞を希釈し、これを96ウェルマイクロプレートに播種した。これを常法に従って培養し、培養上清液を得た。培養上清液の抗体価の評価を、参考例14の2)で作製したBi−AS固相化マイクロプレートを用いたELISA法により行い、クローンを選抜した。以上のクローンニングの工程は、少なくとも2回以上実行した。以上の結果として、6つのクローンを選抜し、取得した。
3−2) クローンの評価
上記3)−1で取得した各クローンの活性が維持されていることを確認するため、当該クローンを24ウェルプレートの培養スケールにて培養し、得られた培養上清液の抗体価の評価を、参考例14の2)で作製したBi−AS固相化マイクロプレート及びHRP抗マウスIgを用いたELISA法により行った。以下に詳細を示す。
[クローンの抗体価の評価]
予め洗浄緩衝液によって4回洗浄した、Bi−AS固相化マイクロプレートに、培養上清液 100μlを分注し、室温にて1時間静置した。さらに洗浄緩衝液で4回洗浄した後に、反応緩衝液(0.05%プロクリン300(登録商標)を含むPBS(−)で20倍に希釈したApplieDuo(登録商標;生化学工業株式会社製)溶液)で2000倍に希釈したHRP抗マウスIg 100μlを、各ウェルに分注した。このプレートを室温にて1時間静置した後、洗浄緩衝液で4回洗浄し、TMB(HRP基質溶液;BIOFX社製)100μlを各ウェルに加え、30分間、常温で酵素反応を行った。反応終了後、発色試薬(BIOFX社製)100μlを各ウェルに添加し、630nmをバックグラウンド補正として、450nmの吸光度を測定した。なお、反応緩衝液をネガティブブランクとして用いた。その結果、各クローンが抗AS抗体を生産していることが確認された。樹立したハイブリドーマのクローン番号はAS17、AS22、AS25、AS38及びAS48であったことから、このハイブリドーマによって産生される抗体を、それぞれAS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、AS38抗体及びAS48抗体と名付けた。上記のハイブリドーマは、平成18年3月1日に独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、受託番号FERM P−20823、FERM P−20824、FERM P−20825、FERM P−20826又はFERM P−20827としてそれぞれ受託された。常法に従って抗体の免疫グロブリンクラスおよびそのサブクラスを調べた結果、AS17抗体はIgG2aに分類され、AS25抗体及びAS38抗体はIgG1に分類され、AS22抗体及びAS48抗体はIgMに分類されることを確認した。
(参考例17) 抗ASモノクローナル抗体の調製
1) 抗ASモノクローナル抗体の生産
目的の抗ASモノクローナル抗体を生産する方法としては、マウス腹水法を採用した。すなわち、上記参考例16の3)で樹立した各ハイブリドーマ(AS17、AS22、AS25、AS38、AS48)それぞれ5×106個を、それぞれ予めプリスタン(2,6,10,14-Tetrametylpentadecane:東京化成工業株式会社)処理した3匹のBALB/Cマウス(15週齢の雌)の腹腔に注入した。注射後10〜20日の間に、マウスの腹水を数回に分けて採取し、合計約10mlの腹水を得た。
2) 抗ASモノクローナル抗体の精製
以下に、IgGタイプ抗体(AS17抗体、AS25抗体及びAS38抗体)の精製方法を示す。すなわち、上記1)により得られた腹水を、それぞれ吸着バッファ1(20 mMリン酸緩衝液(pH 7.0))に対して一晩透析した。透析内液をメンブランフィルタ(孔径:0.45 mm)によって濾過し、得られた濾過液を、予め吸着バッファ1で平衡化したHiTrap Protein G HPカラム(5ml;アマシャム・バイオサイエンス社製)にアプライし、同バッファでカラムを洗浄した。通過液の280nmの吸収がほぼ0になった時、0.1 M グリシンバッファ(pH 2.7)をカラムに通過させ、AS17抗体、AS25抗体及びAS28抗体をそれぞれ溶出した。各抗体を含む溶液をそれぞれ回収し、PBS(−)に対して十分に透析した。透析内液は必要に応じて限外ろ過濃縮等で適切な濃度に適宜調整し、それらを精製抗体として使用した。精製したAS17抗体、AS25抗体及びAS38抗体の量はそれぞれ、30.8mg、4.6mg及び11.5mgであった。
【0047】
以下にIgMタイプ抗体(AS22抗体及びAS48抗体)の精製方法を示す。すなわち、上記1)により得られた腹水を、それぞれ吸着バッファ2(0.5M K2SO4を含む20mM リン酸緩衝液(pH 7.5))に対して一晩透析した。透析内液をメンブランフィルタ(孔径:0.45 mm)によって濾過した後、濾過液を予め吸着バッファ1で平衡化したHiTrap IgY Purification HPカラム(5ml;アマシャム・バイオサイエンス社製)にアプライし、同バッファでカラムを洗浄した。通過液の280nmの吸収がほぼ0になった時、20 mMリン酸緩衝液(pH 7.5)をカラムに通過させ、AS22抗体及びAS48抗体をそれぞれ溶出した。溶出したAS22抗体及びAS48抗体は、塩析(NH4SO4:50%の飽和)することによって回収した。沈澱物をPBS(-)に対して透析し、得られた透析内液を精製抗体として使用した。精製したAS22抗体及びAS48抗体の量はそれぞれ、2.7及び2.2 mgであった。
(参考例18) 各抗ASモノクローナル抗体の反応性試験
各抗ASモノクローナル抗体(精製抗体)の各種GAG及び各種HEP誘導体に対する反応性を検証した。
1) 各精製抗体の反応性試験その1−ASに対する反応性試験
1)−1 方法
Bi−GAGの固相化量の異なるマイクロプレートを作製するために、固相化に用いるBi−AS溶液中のBi−ASの終濃度を、0.001、0.004、0.012、0.037、0.111、0.333、1.000 μg/mlと変化させて参考例14の2)と同様の方法により作製したBi−AS固相化マイクロプレートを、それぞれ洗浄緩衝液で4回洗浄した後、各ウェルに、添加剤としてApplieDuo(登録商標;最終希釈率20倍、生化学工業株式会社製)、防腐剤として0.05%プロクリン300を含むPBS(−)(以下、「反応液A」という)を用いて、それぞれ、0.025 mg/ml(AS17抗体)、0.07mg/ml(AS22抗体)、0.006 mg/ml(AS25抗体)、0.006 mg/ml(AS38抗体)、0.1 mg/ml(AS48抗体)に調製した各精製抗体を含む各試験溶液を100μlずつ加え、これを常温で60分間静置し、抗原抗体反応させた。反応終了後、各ウェルを洗浄緩衝液で4回洗浄し、二次抗体溶液として、反応液Aで2000倍希釈したHRP抗マウスIg(ダコ社製)溶液を100μlずつ加え、これを常温で60分間静置して抗原抗体反応させた。反応終了後、このプレートを洗浄緩衝液で4回洗浄し、HRPの基質としてTMB溶液(HRP基質溶液;BIOFX社製)を100μlずつ 加え、常温で30分間反応させて発色させた。続いて、プレートに反応停止液(BIOFX社製)を100μlずつ 加えて反応を停止させた後、TMB分解によって増加する波長450nmの吸光度(対照波長630nm)をウェルリーダーSK−603(登録商標;生化学工業株式会社販売)で測定した。なお、抗体の反応性は、上記の各濃度のBi−GAGを用いて作製したBi−GAG固相化マイクロプレートを用いて上記測定を行った場合の吸光度から、Bi−GAG溶液の代わりにBi−GAGを含まない0.05%プロクリン300(登録商標)を含むPBS(−)で20倍希釈したApplieDuo(登録商標)溶液を用いることの他、参考例6 2)と同様の方法により作製したコントロール測定用マイクロプレートを用いて上記の測定方法に準じて測定を行った場合の吸光度(ブランク値)を減算した吸光度差(以下、単に「吸光度差」と記載する)によって評価した。
1)−2 結果
結果を、図4に示す。ASに対するAS22抗体とAS48抗体の相対感度は、AS17抗体、AS25抗体及びAS38抗体のそれよりも100倍の強度があった。Bi−AS濃度が1.0 μg/ml(0.1μg/ウェル)のとき、すべての抗体は強い反応性(吸光度差;≧1)を示した。
2) 各精製抗体の反応性試験その2−各種GAGに対する反応性試験
2)−1 方法
用いる各種Bi−GAGの濃度を、1.0 μg/ ml(0.1μg/ウェル)に固定することの他、上記1)−1と同様の方法により、各種GAG及び各種HEP誘導体に対する各精製抗体の反応性を評価した。
2)−2 結果
図5に各種GAGに対する各精製抗体の反応性の結果を示す。
【0048】
上記1)と同様に、各抗体はASに対して強く反応した。いずれの抗体についても、HS及びHEPに対して反応しないことを確認した。また、AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体及びAS38抗体については、その他のGAG、すなわち、ACH、EHS−HS、KS、HA、NAH、CS−A(W)、CS−A(S)、CS−B、CS−C、CS−D、CS−E及びChのいずれに対しても実質的に反応しないことを確認した。一方AS48抗体は、EHS−HS、KS、HA、NAH、CS−A(W)、CS−A(S)、CS−B、CS−C、CS−D、CS−E及びChのいずれに対しても反応しなかったが、ACHに対しては約55%の反応性を有していることを確認した。
【0049】
これらの結果から、2−O硫酸化イズロン酸(IdoA(2S))残基がこれらの抗体のエピトープに含まれていることが示唆された。さらに、各抗体が反応性を示さなかったHS及びHEPの分子中には、IdoA(2S)のα(1-4)結合が存在するが、その大部分はGlcNS又はO-硫酸化GlcNSと結合した二糖ユニットとして存在することから、グルコサミン残基の修飾も、これら抗体の反応にとって重要なマイナス要素であることが推察された。
3) 各精製抗体の反応性試験その3−各種HEP誘導体に対する反応性試験
エピトープ解析の一助とするために、前記の参考例14に記載の各種Bi−HEP誘導体固相化プレートを用いることの他、上記2)−1に記載の方法に準じて反応性の評価を行うことにより、抗原のグルコサミン残基のN位の修飾状態が、各抗体の反応性にどのように影響するかを検証した。以下、グルコサミン残基のN位が「NH2−」となっている状態を「未修飾」と記載する。結果を図6に示す。
【0050】
いずれの抗体も2SHと反応した。AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、AS38抗体及びAS48抗体の反応性は、それぞれ172.2%、104.9%、76.4%、31.7%、104.8%であった。2SHは主としてグルクロン酸ユニット(- [GlcA-GlcNAc]-)と2−O硫酸化イズロン酸ユニット(- [IdoA(2S)-GlcNAc]-)により構成されており、また、2−O硫酸化イズロン酸ユニットの存在比が60%以上と高いので、この結果は上記の1)及び2)の結果と矛盾しない。
【0051】
一方、AS17抗体、AS25抗体及びAS38抗体は、NH2−2SHに反応しなかった。NH2−2SHのグルコサミン残基のN位の大部分は未修飾となっている。したがって、これらの抗体のエピトープには、N−アセチル化したグルコサミン残基が含まれていることが示唆された。
【0052】
また、NAc−6DSHのグルコサミン残基のN位の一部はアセチル化されているにもかかわらず、AS17抗体、AS25抗体及びAS38抗体はNAc−6DSHに実質的に反応せず、さらに、NAc−HEPのグルコサミン残基のN位の大部分はアセチル化されているにもかかわらず、これらの抗体はNAc−HEPに実質的に反応しなかったことから、これら抗体の抗原に対する反応性は、グルコサミン残基のN−硫酸化及び/又はO−硫酸化によって阻害されることが示唆された。
【0053】
AS22抗体及びAS48抗体は、NH2−HEP及び6DSHに対して実質的に反応しなかったが、それらをN−アセチル化したNAc−HEP及びNAc−6DSHに対してはASと同程度の反応性を示した。NH2−HEPのグルコサミン残基のN位の大部分は未修飾となっている。また、6DSHのグルコサミン残基のN位の大部分は硫酸化されているが、その調製過程で一部にN−脱硫酸化が起きるため、一部は未修飾となっている。したがって、上記の結果から、AS22抗体及びAS48抗体のエピトープには、N位が何らかの形で修飾されたグルコサミン残基、特にN−アセチル化されたグルコサミン残基が含まれていることが示唆された。また、NAc−HEP及びNAc−6DSHとの反応性から、それぞれ、そのグルコサミン残基のO−硫酸化やN−硫酸化が抗体の反応性に実質的に影響しないことが示唆された。
【0054】
これらの抗体の各種糖鎖に対する反応性を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
なお表1中の「ACS」はASを、「Heparin」はHEPを、「NH2-Heparin」はNH2−HEPを、「NAc-Heparin」はNAc−HEPを、「Acetylated 6DSH」はNAc−6DSHを、「Acetylated NSH」はNAc−NSHを、「NH2-CDSH」はNH2−CDSHを、「Acetylated NAH」はNAHをそれぞれ意味する。
また表1中の「NH2」、「N-Acetyl」、「NS」、「6S」、「2S」は、それぞれ糖鎖骨格中のアミノ基、N−アセチル基、N−硫酸基、6−O硫酸基、2−O硫酸基を示す。また、表1中の◎の記号、○の記号、△の記号及び×の記号は、糖鎖中における当該基の存在量のイメージを示すものである。
◎の記号は当該基が糖鎖中に多く存在するというイメージ、○の記号は当該基が糖鎖中に比較的多く存在するというイメージ、△の記号は当該基が糖鎖中にあまり存在しないというイメージ又は不明であること、×の記号は当該基が糖鎖中に実質的に存在しないというイメージをそれぞれ示す。ただし◎、○及び△は、あくまでイメージであって、当該基の絶対量を意味するものではなく、それぞれの記号相互間において必ずしも同レベルであることを意味しない。
表1中の各抗体の名称の直下に示した数字(左から、0.02、0.05、0.01、0.005、0.15、0.05)は、反応させた各抗体の濃度(μg/ml)を示す。これらの抗体を、左に列記した各種GAGのビオチン標識物(1μg/ml)と反応させてその反応性を評価した。
表1から、例えばACS22抗体は、NAc−HEP(6−O硫酸基及び2−O硫酸基を保持している点が1つの特徴である)とNAc−6DSH(N−硫酸基及び2−O硫酸基を保持している点が1つの特徴である)に高い結合性を有していることがわかる。
【実施例3】
【0057】
フローサイトメトリー
扁平上皮癌由来細胞株であるHSC−4株(Anticancer Res., 2005 Nov-Dec; 25(6B): 4053-4059)、HO−1−u−1株(Oncol. Rep., 2004 Aug; 12(2): 339-345)及びHO−1N−1株(Cancer. Lett. 2000 Apr 14; 151(2): 199-208)、並びに大腸癌由来細胞株であるLS174T株(Clin. Cancer Res., 2006 Mar 1; 12(5): 1606-1614)及びC−1株(Cancer Res. 2001 Jun 1; 61(11): 4620-4627)を生体組織由来の試料として用いた。コントロールとして、大腸癌由来細胞株であるCOLO201株(Cancer Res. 1994 Jan 1; 54(1): 272-275)を用いた。
【0058】
また実験によっては、これらの細胞をへパリチナーゼI(Flavobacterium heparinum由来;生化学工業株式会社製)で処理して用いた。
【0059】
また抗体(一次抗体)として、前記の抗体、及び10E4及びJM403(いずれも抗HSモノクローナル抗体)、3G10(抗−Δ−HSモノクローナル抗体)、NAH46(抗NAHモノクローナル抗体(「抗HS抗体」として販売されている。);いずれも生化学工業株式会社製)を用いた。
【0060】
前記の細胞の懸濁液に、終濃度5μg/ml又は20μg/mlとなるように一次抗体を添加して4℃で30分間インキュベートした。その後、終濃度2%のFCSを含有するPBSで洗浄し、次いで添付の説明書に記載されている推奨希釈倍率(1/20から1/400)に従って1/200に希釈した二次抗体(FITC標識抗マウスイムノグロブリン抗体(Chemicon;カタログ番号AQ326F))を添加して4℃で30分間インキュベートした。その後、終濃度2%のFCSを含有するPBSで洗浄し、フローサイトメトリーにより解析した。なお、一次抗体を用いずに二次抗体のみでインキュベートしたものをコントロールとした。結果を図7〜図20に示す。なお各図とも、左側の一番上のグラフは、解析に付した細胞のポピュレーションを示すものである。また各図とも、左側の一番上以外のグラフの横軸は蛍光強度を、縦軸は細胞数を示す。また各図とも、左側の一番上以外のグラフ中の左側の位置に存在する山型の実線はコントロールを示す。このコントロールよりも実線のピークが右側にシフトしている場合には、一次抗体が細胞に結合している(一次抗体によって細胞が染色されている)ことになる。
【0061】
図7〜図20より、いずれの癌由来細胞株もNAH46で染色されることが示された。
【0062】
そのうちHSC−4株、HO−1N−1株についてはNAH46に加えて、10E4、JM403によっても染色された。この染色性は細胞をヘパリチナーゼIで処理してもほとんど変化しなかった。またC−1株についても、HSC−4株やHO−1N−1株よりは若干弱いながらも10E4、JM403によって染色された。
【0063】
またLS174T株については、NAH46に加えて、10E4、JM403によって染色された。さらに驚くべきことに、LS174T株はAS22、ACH55によっても染色された。この染色性は細胞をヘパリチナーゼ処理してもほとんど変化しなかった。
【0064】
以上の結果から、「ACHに結合する抗体」及び/又は「ASに結合する抗体」を生体組織由来の試料に接触させることにより、癌の検出ができることが示された。
【実施例4】
【0065】
以下の構成成分からなる本発明キットを作製した。
精製したAS22抗体 1本(一次抗体)
精製したACH55抗体 1本(一次抗体)
3.FITC標識した抗マウスイムノグロブリン抗体 1本(二次抗体)
4.AS(標準品) 1本
5.ACH(標準品) 1本
6.洗浄液(PBS) 1本
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】各種HEP誘導体の製造方法の流れを示す図である。
【図2】ACH55抗体の各種GAGに対する反応性を示す図である。横軸のBi−GAG(μg/ml)は、Bi−GAG固相化プレートの作製において用いたBi−GAG溶液におけるBi−GAGの終濃度を示す。
【図3】ACH55抗体の各種HEP誘導体等に対する反応性を示す図である。
【図4】AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、AS38抗体及びAS48抗体の、ASに対する反応性を示す図である。横軸のBi−AS(μg/ml)は、Bi−AS固相化プレートの作製において用いたBi−AS溶液におけるBi−ASの終濃度を示す。
【図5】AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、AS38抗体及びAS48抗体の、各種GAGに対する反応性を示す図である。
【図6】AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、AS38抗体及びAS48抗体の、各種HEP誘導体等に対する反応性を示す図である。
【図7】COLO201株における、各抗体の結合の程度を示す図である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも5μg/mlとした。
【図8】COLO201株における、各抗体の結合の程度を示す図である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも20μg/mlとした。
【図9】HSC−4株における、各抗体の結合の程度を示す図である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも20μg/mlとした。
【図10】HO−1−u−1株における、各抗体の結合の程度を示す図である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも20μg/mlとした。
【図11】HO−1N−1株における、各抗体の結合の程度を示す図である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも20μg/mlとした。
【図12】HSC−4株における、各抗体の結合の程度を示す図(図9と別途独立に試験した結果)である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS22抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46、3G10をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも20μg/mlとした。
【図13】ヘパリチナーゼIで処理したHSC−4株における、各抗体の結合の程度を示す図である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS22抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46、3G10をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも20μg/mlとした。
【図14】LS174T株における、各抗体の結合の程度を示す図である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS22抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46、3G10をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも20μg/mlとした。
【図15】ヘパリチナーゼIで処理したLS174T株における、各抗体の結合の程度を示す図である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS22抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46、3G10をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも20μg/mlとした。
【図16】HSC−4株における、各抗体の結合の程度を示す図(図9及び図12と別途独立に試験した結果)である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46、3G10をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも20μg/mlとした。
【図17】ヘパリチナーゼIで処理したHSC−4株における、各抗体の結合の程度を示す図(図13と別途独立に試験した結果)である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46、3G10をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも20μg/mlとした。
【図18】C−1株における、各抗体の結合の程度を示す図である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46、3G10をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも20μg/mlとした。
【図19】LS174T株における、各抗体の結合の程度を示す図(図14と別途独立に試験した結果)である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46、3G10をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも20μg/mlとした。
【図20】ヘパリチナーゼIで処理したLS174T株における、各抗体の結合の程度を示す図(図15と別途独立に試験した結果)である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46、3G10をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも20μg/mlとした。
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の検出方法及び検出キットに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願書類中で使用する略号及びその意義は以下の通りである。
GAG:グリコサミノグリカン
HA:ヒアルロン酸
HEP:ヘパリン
HS:ヘパラン硫酸
EHS−HS:マウスのエンジェルブレス−ホーム−スワーン腫瘍組織(Engelbreth-Holm-Swarm sarcoma)由来のHS
Bi−GAG:ビオチン標識GAG
Bi−HEP誘導体:ビオチン標識HEP誘導体
GlcNS:N−硫酸化グルコサミン
GlcNAc:N−アセチルグルコサミン
IdoA:イズロン酸
IdoA(2S):2−O−硫酸化イズロン酸
NAH:N−アセチルヘパロザン
AS:アカラン硫酸
Bi−AS:ビオチン標識AS
RA−AS:還元アミノ化AS
PDP−AS:2−ピリジルジスルフィドプロピオニル化AS
SH−AS:チオプロピオニル化AS
ACH:2−O−脱硫酸化AS
Bi−ACH:ビオチン標識ACH
RA−ACH:還元アミノ化ACH
PDP−ACH:2−ピリジルジスルフィドプロピオニル化ACH
SH−ACH:チオプロピオニル化ACH
NH2−HEP:N−脱硫酸化HEP
NAc−HEP:N−脱硫酸化・N−アセチル化HEP
2DSH:2−O−脱硫酸化HEP
NH2−6SH:(2−O・N)−脱硫酸化HEP
6SH:(2−O・N)−脱硫酸化・N−アセチル化HEP
6DSH:6−O−脱硫酸化HEP
NAc−6DSH:N−アセチル化6DSH
NSH:(2−O・6−O)−脱硫酸化HEP
NAc−NSH;N−アセチル化NSH
NH2−2SH:(6−O・N)−脱硫酸化HEP
2SH:(6−O・N)−脱硫酸化・N−アセチル化HEP
NH2−CDSH:完全脱硫酸化HEP
CDSH:完全脱硫酸化・N−アセチル化HEP
Ch:コンドロイチン
CS:コンドロイチン硫酸
CS−A(S):サメ由来コンドロイチン硫酸A
CS−A(W):クジラ由来コンドロイチン硫酸A
CS−B:コンドロイチン硫酸B
CS−C:コンドロイチン硫酸C
CS−D:コンドロイチン硫酸D
CS−E:コンドロイチン硫酸E
KS:ケラタン硫酸
FITC:フルオレセインイソチオシアネート
HRP:ホースラディッシュペルオキシダーゼ
BSA:ウシ血清アルブミン
KLH:ヘモシアニン
PDP−KLH:2−ピリジルジスルフィドプロピオニル化KLH
FCS:子ウシ胎仔血清
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
TMB:テトラメチルベンジジン
SPDP:N−スクシンイミジル−3−[2−ピリジルジチオ]プロピオン酸
EDC:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
ELISA法:酵素標識抗体測定法
ASは、アフリカマイマイ(学名:Achatina fulica)から単離されたGAGの一種である。ASは、GlcNAcとIdoA(2S)とからなる二糖(-[IdoA(2S)-GlcNAc]-)の繰り返し構造を基本糖鎖構造として有する多糖であり、HS及びHEPと極めて類似した構造を有していることが知られている(非特許文献1)。ASを化学的に脱硫酸化した化合物としては、ACHが知られている(非特許文献2)。ASに結合する抗体としては、MW3G3が知られている(非特許文献3)。しかしながら、「ACHに結合する抗体」は知られていない。また、これらの抗体を癌の検出に用いることも知られていない。
【0003】
【非特許文献1】ヨン S.キム(Yeong S. Kim)ら、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー、(米国)、1996年、第271巻、第20号、p.11750−11755
【非特許文献2】M.イシハラ(M. Ishihara)ら、ザ・ジャーナル・オブ・バイオケミストリー、1997年、第121巻、第2号、p.345−349
【非特許文献3】ジェディー B.テン ダン(Gerdy B. ten Dam)ら、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー、(米国)、2004年、第279巻、p.38346−38352
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新たな癌の検出方法及びそのために用いることができる検出キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、抗ACH抗体や抗AS抗体が、驚くべきことにヒトに由来する癌細胞に結合することを見出し、この知見に基づいて、癌を検出できる方法及びそのために用いることができる検出キットを提供するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、「ACHに結合する抗体」及び/又は「ASに結合する抗体」を生体組織由来の試料に接触させるステップを少なくとも含む、癌の検出方法(以下、「本発明方法」という。)を提供する。
この「ACHに結合する抗体」は、ASに実質的に結合しないものが好ましい。またこの「ACHに結合する抗体」は、NAHに実質的に結合しないものが好ましい。またこの「ACHに結合する抗体」は、ブタ腸由来のHEPに実質的に結合しないものが好ましい。またこの「ACHに結合する抗体」は、ウシ腎臓由来のHSに実質的に結合しないものが好ましい。またこの「ACHに結合する抗体」は、EHS−HSに実質的に結合しないものが好ましい。
またこの「ACHに結合する抗体」は、モノクローナル抗体であることが好ましい。この「ACHに結合する抗体」は、タンパク質とACHとを化学的に結合させてなる物質を抗原として免疫した哺乳動物由来のリンパ球と、哺乳動物由来のミエローマ細胞との細胞融合により形成されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体であることが好ましい。このリンパ球及びミエローマ細胞は、マウス由来であることが好ましい。
またこの「ACHに結合する抗体」の免疫グロブリンクラスはIgMであることが好ましい。またこの「ACHに結合する抗体」は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにおける受託番号がFERM P−20828であるハイブリドーマにより産生される抗体であることが好ましい。
また、この「ASに結合する抗体」は、ウシ腎臓由来のHSに実質的に結合しないものが好ましい。またこの「ASに結合する抗体」は、ブタ腸由来のHEPに実質的に結合しないものが好ましい。またこの「ASに結合する抗体」は、EHS−HSに実質的に結合しないものが好ましい。またこの「ASに結合する抗体」は、ウシ角膜由来のKSに実質的に結合しないものが好ましい。またこの「ASに結合する抗体」は、HAに実質的に結合しないものが好ましい。またこの「ASに結合する抗体」は、NAHに実質的に結合しないものが好ましい。
またこの「ASに結合する抗体」は、モノクローナル抗体であることが好ましい。この「ASに結合する抗体」は、タンパク質とASとを化学的に結合させてなる物質を抗原として免疫した哺乳動物由来のリンパ球と、哺乳動物由来のミエローマ細胞との細胞融合により形成されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体であることが好ましい。このリンパ球及びミエローマ細胞は、マウス由来であることが好ましい。
またこの「ASに結合する抗体」の免疫グロブリンクラスはIgM又はIgGであることが好ましい。またこの「ASに結合する抗体」は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにおける受託番号がFERM P−20823、FERM P−20824、FERM P−20825、FERM P−20826又はFERM P−20827であるハイブリドーマにより産生される抗体であることが好ましい。
【0007】
また、前記の「生体組織」は脊椎動物の生体組織であることが好ましい。また前記の「癌」は、大腸癌又は扁平上皮癌であることが好ましい。
【0008】
また本発明は、「ACHに結合する抗体」及び/又は「ASに結合する抗体」を構成成分として少なくとも含む、癌の検出キット(以下、「本発明キット」という。)を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明方法及び本発明キットは、癌を簡便、迅速かつ安価に検出できることから、極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<1>本発明方法
本発明方法は、「ACHに結合する抗体」及び/又は「ASに結合する抗体」を生体組織由来の試料に接触させるステップを少なくとも含む、癌の検出方法である。
(1)ACHに結合する抗体
ここで用いる「ACHに結合する抗体」は、ACHに結合する抗体である限りにおいて特に限定されない。この「ACHに結合する抗体」は、ASに実質的に結合しないものが好ましく、またNAHに実質的に結合しないものも好ましく、またブタ腸由来のHEPに実質的に結合しないものも好ましく、またウシ腎臓由来のHSに実質的に結合しないものも好ましく、またEHS−HSに実質的に結合しないものも好ましい。なかでも、これらの全ての性質を満たしているものが好ましい。
なお本明細書において「実質的に結合しない」とは、1分子たりとも結合しないことを意味するものではなく、結合が検出できないか又は結合が検出できたとしても弱いものであって本発明が属する技術分野における当業者から見て無視できる程度のものであることを意味する。例えば、ACHに対する結合性を100%としたときに、ある物質への結合性が5%以下である場合には「実質的に結合しない」ということができる。したがって、後述する実施例において示されるACH55は、ACHに結合するが、AS、NAH、ブタ腸由来のHEP、ウシ腎臓由来のHS及びEHS−HSのいずれにも実質的に結合しないものであるということができる。
また、この「ACHに結合する抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれであっても良いが、継続的な生産性の確保や、抗体の均一性の観点からすればモノクローナル抗体であることが好ましい。
【0011】
このような「ACHに結合する抗体」は、抗原としてACH又はその修飾物を用いて、公知の方法で製造することができる。なかでも、タンパク質とACHとを化学的に結合させてなる物質を抗原として用いることが好ましい。この「タンパク質」としては、KLH又はBSAを採用することが好ましい。
【0012】
「ACHに結合する抗体」としてモノクローナル抗体を採用する場合には、例えば、「タンパク質とACHとを化学的に結合させてなる物質」を抗原として哺乳動物を免疫し、当該動物からリンパ球を採取して、これを哺乳動物由来のミエローマ細胞と細胞融合させることによりハイブリドーマを形成させ、当該ハイブリドーマから抗体を採取すればよい。この「リンパ球」及び「ミエローマ細胞」は、マウス由来であることが好ましい。
「ACHに結合する抗体」の免疫グロブリンクラスも特に限定されないが、IgMであることが好ましい。
「ACHに結合する抗体」として最も好ましいのは、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにおける受託番号がFERM P−20828であるハイブリドーマにより産生される抗体である。
(2)ASに結合する抗体
ここで用いる「ASに結合する抗体」は、ASに結合する抗体である限りにおいて特に限定されない。この「ASに結合する抗体」は、ウシ腎臓由来のHSに実質的に結合しないものが好ましく、またブタ腸由来のHEPに実質的に結合しないものも好ましく、またEHS−HSに実質的に結合しないものも好ましく、またウシ角膜由来のKSに実質的に結合しないものも好ましく、またCS及びHAに実質的に結合しないものも好ましく、またNAHに実質的に結合しないものも好ましい。なかでも、これらの全ての性質を満たしているものが好ましい。
「実質的に結合しない」の意義は前記と同様である。例えば、ASに対する結合性を100%としたときに、ある物質への結合性が5%以下である場合には「実質的に結合しない」ということができる。したがって、後述する実施例において示されるAS22は、ASに結合するが、ウシ腎臓由来のHS、ブタ腸由来のHEP、EHS−HS、ウシ角膜由来のKS、HA及びNAHのいずれにも実質的に結合しないものであるということができる。
また、この「ASに結合する抗体」も、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれであっても良いが、継続的な生産性の確保や、抗体の均一性の観点からすればモノクローナル抗体であることが好ましい。
【0013】
このような「ASに結合する抗体」は、抗原としてAS又はその修飾物を用いて、公知の方法で製造することができる。なかでも、タンパク質とASとを化学的に結合させてなる物質を抗原として用いることが好ましい。この「タンパク質」としては、KLH又はBSAを採用することが好ましい。
【0014】
「ASに結合する抗体」としてモノクローナル抗体を採用する場合には、例えば、「タンパク質とASとを化学的に結合させてなる物質」を抗原として哺乳動物を免疫し、当該動物からリンパ球を採取して、これを哺乳動物由来のミエローマ細胞と細胞融合させることによりハイブリドーマを形成させ、当該ハイブリドーマから抗体を採取すればよい。この「リンパ球」及び「ミエローマ細胞」は、マウス由来であることが好ましい。
「ASに結合する抗体」の免疫グロブリンクラスも特に限定されないが、IgM又はIgGであることが好ましい。
「ASに結合する抗体」として最も好ましいのは、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにおける受託番号がFERM P−20823、FERM P−20824、FERM P−20825、FERM P−20826又はFERM P−20827であるいずれかのハイブリドーマにより産生される抗体である。
【0015】
このような「ACHに結合する抗体」や「ASに結合する抗体」は、免疫グロブリンとして精製されたものであっても、未精製のもの(例えば、ハイブリドーマの培養上清、腹水、抗血清そのものなど)であっても良いが、免疫グロブリンとして精製されているものが好ましい。本明細書において「精製」という用語は、いわゆる部分精製(実質的に純粋とまではいえないが、画分中に占める精製目的物質の割合が多数となる程度にまで精製すること)も、完全精製(実質的に純粋となるまで精製すること)も含む概念として用いる。例えば、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)で解析した場合に、免疫グロブリン以外の物質が検出されないか、又は検出されてもごく僅かである場合には、免疫グロブリンとして「精製」されているということができる。
【0016】
免疫グロブリンの精製法としては、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム等による塩析、低温アルコール沈殿およびポリエチレングリコールまたは等電点による選択的沈殿分別法、電気泳動法、DEAE(ジエチルアミノエチル)−誘導体、CM(カルボキシメチル)−誘導体等のイオン交換体を用いたイオン交換クロマトグラフィー、プロテインAやプロテインGなどを用いたアフィニティークロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、抗原を固定化した免疫吸着クロマトグラフィー、ゲル濾過法および超遠心法等を挙げることができる。
【0017】
なお「ACHに結合する抗体」や「ASに結合する抗体」は、免疫グロブリンの分子構造を完全に保持しているものは勿論、抗原結合部位(Fab)を分解しないプロテアーゼ(例えばプラスミン、ペプシン、パパイン等)で処理してFabを含むフラグメントとしたものであっても良い。抗体のFabを含むフラグメントとしては、Fab以外に、Fabc、(Fab')2等が例示される。
【0018】
また「ACHに結合する抗体」や「ASに結合する抗体」は、これらの抗体をコードする遺伝子の塩基配列やこれらの抗体のアミノ酸配列が決定されれば、遺伝子工学的にこれらの抗体、Fabを含むフラグメント、キメラ抗体(例えば「ACHに結合する抗体」や「ASに結合する抗体」のFab部分を含むキメラ抗体等)等を作製することもできる。 以上のような「ACHに結合する抗体」や「ASに結合する抗体」のFabを含むフラグメントやキメラ抗体等も、ACH又はASに結合する限りにおいて、本出願書類における「ACHに結合する抗体」や「ASに結合する抗体」の概念に包含される。製造された抗体がACH又はASに結合するか否か等は、後述する実施例に記載の方法等によって容易に判別することができる。
(3)生体組織由来の試料との接触
本発明方法では、以上のような「ACHに結合する抗体」及び/又は「ASに結合する抗体」を生体組織由来の試料に接触させるステップを少なくとも含んでいる。
【0019】
生体組織由来の試料に接触させる抗体は、「ACHに結合する抗体」及び「ASに結合する抗体」の一方であっても、双方であってもよい。
また、これらの抗体以外の抗体をさらに接触させてもよい。このような抗体としては、例えば「NAHに結合する抗体」等を例示することができる。
【0020】
複数種類の抗体を生体組織由来の試料に接触させる場合には、その目的に応じて、これら複数種類の抗体を混合した状態で生体組織に由来する1つの試料に接触させてもよく、また同一の生体組織に由来する複数の試料に、それぞれの抗体を1種類づつ接触させてもよい。
【0021】
抗体と生体組織由来の試料とを「接触」させる方法は、抗体分子と、生体組織由来の試料中に含有されている分子とが接触する状態となる限りにおいて特に限定されない。
また本発明における「生体組織」は、生体に由来する組織である限りにおいて特に限定されないが、脊椎動物の生体組織であることが好ましい。脊椎動物としては、例えば魚類、両生類、は虫類、鳥類、哺乳類等が例示されるが、哺乳類であることが好ましい。なかでもヒトの生体組織であることがより好ましい。
また「生体組織由来の試料」も、このような生体組織から得ることができる試料である限りにおいて特に限定されない。このような生体組織由来の試料としては、例えば、生体組織そのもの、その生体組織に由来する細胞、その細胞の細胞膜を含有する画分、その生体組織から抽出された分子(例えば糖鎖分子)等を例示することができる。なかでも、その生体組織に由来する細胞であることが好ましい。
(4)癌の検出
「ACHに結合する抗体」及び/又は「ASに結合する抗体」をこのような生体組織由来の試料に接触させ、当該試料における生体組織、細胞、細胞膜画分、生体組織から抽出された分子(例えば糖鎖分子)等への当該抗体の結合を検出することにより、癌を検出することができる。すなわち、これらの抗体が生体組織由来の試料におけるこれらのものに結合すれば、当該生体組織が癌であるということを検出することができる。
抗体の結合の検出は、公知の免疫学的手法により行うことができる。例えば、抗体(又はさらに当該抗体に結合する抗体(二次抗体))に、最終的に何らかの特殊なシグナルとして検出されうる物質を結合させて、これを生体組織由来の試料(生体組織、細胞、細胞膜画分、生体組織から抽出された分子(例えば糖鎖分子)等)に接触させ、洗浄した後に、当該試料に当該シグナルが残存している場合には、その抗体は当該試料に結合したと判断することができる。
【0022】
「最終的に何らかの特殊なシグナルとして検出されうる物質」としては、例えば酵素(ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコースオキシダーゼなど)、放射性同位元素(125I、131I、3Hなど)、蛍光色素(FITC、7−アミノ−4−メチルクマリン−3−酢酸(AMCA)、ジクロロトリアジニルアミノフルオレセイン(DTAF)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、リスアミンローダミンB(Lissamine Rhodamine B)、テキサスレッド(Texas Red)、フィコエリスリン(Phycoerythrin;PE)、ウンベリフェロン、ユーロピウム、フィコシアニン、トリカラー、シアニンなど)、化学発光物質(ルミノールなど)、ハプテン(ジニトロフルオロベンゼン、アデノシン一リン酸(AMP)、2,4−ジニトロアニリンなど)、金属粒子(フェリチン粒子、金コロイド粒子など)、特異的結合対(ビオチンとアビジン類(ストレプトアビジンなど)、レクチンと糖鎖、アゴニストとアゴニストの受容体、HEPとアンチトロンビンIII(ATIII)など)のいずれか一方の物質等が例示される。
【0023】
このようなシグナルの検出は、用いる試料の種類・状態や、「最終的に何らかの特殊なシグナルとして検出されうる物質」の種類等に応じて、公知の方法から当業者が適宜設定して行うことができる。例えば、生体組織の切片標本を試料とした場合には顕微鏡を用いて検出することができ、色素を肉眼で観察したり、金属粒子の密度、放射能のカウント、蛍光強度、蛍光偏光、発光強度等を観察・測定すればよい。また細胞の懸濁液を試料とした場合には、顕微鏡や、フローサイトメトリー等の手法を採用することができる。また、細胞膜画分、生体組織から抽出された分子(例えば糖鎖分子)を試料とした場合には、ELISA法等の手法を採用することができる。
【0024】
本発明方法は、以上のような、「『ACHに結合する抗体』及び/又は『ASに結合する抗体』を生体組織由来の試料に接触させるステップ」を少なくとも含む限りにおいて、他のステップをさらに含んでいてもよい。
本発明方法における検出の対象となる「癌」の種類も特に限定されないが、大腸癌又は扁平上皮癌であることが好ましい。
なお、本発明における「癌の検出」は、癌であるということの検出は勿論、癌の種類の検出(鑑別)等も含む概念である。
例えば、「ACHに結合する抗体」や「ASに結合する抗体」は、癌のなかでも大腸癌や扁平上皮癌の生体組織由来の試料に結合しやすいことから、これらの抗体がある生体組織に結合した場合には「当該生体組織が癌である」ということを検出できるとともに、「当該生体組織が大腸癌又は扁平上皮癌である」ということも検出(鑑別)することができる。
また、同一の生体組織に由来する複数の試料に、複数種類の抗体を1種類づつ接触させることによっても、癌の種類の検出(鑑別)をすることができる。この場合にはその検出(鑑別)の精度をさらに高めうる。例えば、同一の生体組織に由来する複数の試料に、「ACHに結合する抗体」、「ASに結合する抗体」をそれぞれ接触させて、これらの抗体の結合性のパターンを調べることにより、より精度の高い検出(鑑別)をなしうる。例えば後述する実施例に示す通り、ある生体組織に由来する複数の試料に、AS17抗体(ASに結合する抗体)、AS22抗体(ASに結合する抗体)、AS25抗体(ASに結合する抗体)、ACH55(ACHに結合する抗体)のそれぞれを接触させたときに、AS22抗体及びACH55抗体のみが結合し、AS17抗体及びAS25抗体が結合しない場合には、当該生体組織は大腸癌であると検出(鑑別)することができる。また後述の実施例に示すとおり、「NAHに結合する抗体」(例えばNAH46抗体)は癌組織に結合することから、さらにこの抗体を組み合わせることによって、このような癌の検出の精度をさらに高めることができる。
また、ここにいう「癌の検出(鑑別)」は、その可能性の検出(鑑別)をも包含する概念である。すなわち例えば、少なくとも「ACHに結合する抗体」及び/又は「ASに結合する抗体」が生体組織由来の試料に結合した場合には、「当該生体組織が癌である可能性がある」ということを検出できるとともに、「当該生体組織が大腸癌又は扁平上皮癌である可能性がある」ということも検出(鑑別)することができる。
【0025】
また本発明方法は、癌組織において発現している「『ACHに結合する抗体』や『ASに結合する抗体』が認識する糖鎖」の化学構造の検出や分析等の概念を含むものである。例えば、後述するACS22抗体は、NAc−HEP(N−アセチル基、6−O硫酸基及び2−O硫酸基を保持している点が1つの特徴である)とNAc−6DSH(N−アセチル基、N−硫酸基及び2−O硫酸基を保持している点が1つの特徴である)に高い結合性を有している。したがって、ある生体組織由来の試料にACS22抗体を接触させたときに、この抗体が結合すれば、癌の検出ができるとともに、当該癌組織にはN−アセチル基、6−O硫酸基及び2−O硫酸基を保持している糖鎖又はN−アセチル基、N−硫酸基及び2−O硫酸基を保持している糖鎖が発現しているということを検出・分析することができる。
<2>本発明キット
本発明キットは、「ACHに結合する抗体」及び/又は「ASに結合する抗体」を構成成分として少なくとも含む、癌の検出キットである。
【0026】
本発明キットの構成成分である「ACHに結合する抗体」や「ASに結合する抗体」についての説明は、前記<1>と同様である。本発明キットは、このような「ACHに結合する抗体」及び「ASに結合する抗体」の一方のみを含んでいてもよく、双方を含んでいてもよい。
【0027】
本発明キットは、前記の本発明方法に従って使用することができる。本発明キットの構成成分である抗体と生体組織由来の試料との接触方法、「生体組織」や「生体組織由来の試料」の意義、癌の検出の方法、検出対象となる「癌」の種類、「癌の検出」の意義等も、全て前記<1>と同様である。
【0028】
本発明キットは、「ACHに結合する抗体」及び/又は「ASに結合する抗体」を構成成分として少なくとも含む限りにおいて特に限定されず、さらに標識物質の検知試薬等を構成成分として加えることができる。
【0029】
また、これらの構成成分の他に、洗浄液、酵素反応停止液等が含まれていてもよい。さらに本発明キットには、測定バッチ同士の実施レベルを一定水準に保つための陽性コントロール(QCコントロール)を含有させることもできる。
【0030】
これらの構成成分は、それぞれ別体の容器に収容し保存しておくことができる。
【0031】
以下、本発明を実施例により具体的に詳説する。
【実施例1】
【0032】
ACHに結合する抗体の調製
(参考例1) AS及びACHの調製
ASは、Kim, Y. S.らの方法(前記の非特許文献1に記載された方法)に従ってアフリカマイマイ(学名:Achatina fulica)から調製した。得られたASを原料として、Ishihara, M.らの方法(前記の非特許文献2に記載された方法)に従ってACHを調製した。
(参考例2) PDP−KLHの調製
KLHへの2−ピリジルジスルフィド構造の導入は、Carlsson, J.らの方法(Biochem. J., 173, 723 (1978))に従って行った。
【0033】
すなわち、0.1Mリン酸緩衝液(pH 7.5)-0.1M NaClに、終濃度が2.5mg/mlになるようにKLH(シグマ社製) 60mgを溶解した。この溶液に、終濃度が0.238mMになるように5mM SPDP(シグマ社製)エタノール溶液を添加・混合し、30分間室温に保持した。過剰のSPDPを除去するために蒸留水に対して透析した後に、混合液を凍結乾燥し、PDP−KLH 59.4mgを得た。
(参考例3) ウロン酸を介したACH−BSAコンジュゲートの調製
ACH及びBSA(バイエル社製)を、それぞれ0.1M MES緩衝液(pH5.5)に、終濃度が10mg/mlになるように溶解し、ACH溶液及びBSA溶液を得た。ACH溶液 300 μlとBSA溶液 150 μlとを混合し、EDC(PIERCE社製)400 μgを添加した後、撹拌しながら20時間室温に保持した。得られた反応後の溶液は、蒸留水に対して一晩透析した後、凍結乾燥し、ウロン酸を介したACH−BSAコンジュゲート 3.5mgを得た。
(参考例4) Bi−GAG及びBi−HEP誘導体の調製
ASおよび、ACHは参考例1で調製したものを使用した。ブタ皮由来のHA(以下、単に「HA」と記載する)、CS−A(W)、CS−A(S)、CS−B、CS−C、CS−D、CS−E、ウシ腎臓由来のHS(以下、単に「HS」と記載する)、及びウシ角膜由来のKS(以下、単に「KS」と記載する)は、生化学工業株式会社製のものを使用した。NAHは特開2004-18840に記載の方法に従って、大腸菌K5の培養物から調製した。ブタ腸由来のHEP(以下、単に「HEP」と記載する)は、サイエンティフィックプロテインラボラトリーズ社から購入した。また、EHS−HSは、特公平7−53756号公報に記載の方法により調製した。
【0034】
また、各種HEP誘導体(NH2−HEP、NAc−HEP、6DSH、NAc−6DSH、NH2−6SH、6SH、NH2−2SH、2SH、NSH、NAc−NSH、NH2−CDSH、CDSH)は、図1に示す方法で、各種脱硫酸化反応及び/又はN−アセチル化反応を、単独で、又は組み合わせて用いることにより調製した。図中、HEPの6−O、22−O及びN−脱硫酸化は、それぞれ、高野ら、苅谷ら及びAyotte, L.らの方法に従った(Takano, R. et al., J. Carbohydr. Chem. 14, 885 (1995), Takano, R. et al., Carbohydr. Lett. 3, 71 (1998), Kariya, Y. et al., J. Biochem., 123, 240(1998), Ayotte, L. et al., Carbohydr. Res., 145, 267 (1986))。
【0035】
また、N−アセチル化は、 Danishefsky, I.らの方法に従った(Danishefsky, I. et al., Methods Carbohydr. Res., 5, 407(1965))。
【0036】
高野らの方法に従って6−O脱硫酸化を実施すると、副反応として若干のN−脱硫酸化も起きるので、得られた6DSHとNSHの一部はN−アセチル化を行い、NAc−6DSHとNAc−NSHを調製した。
【0037】
上記の各種GAG及び各種HEP誘導体、並びに参考例1で調製したAS及びACHを、それぞれ終濃度が10mg/mlになるように0.1M MES緩衝液(pH5.5)に溶解し、各種GAG溶液及び各種HEP誘導体溶液を得た。これらの各種GAG溶液及び各種HEP誘導体溶液 各1mlに対して、ジメチルスルホキシド(和光純薬工業株式会社製)で20mMに調製したビオチン−LC−ヒドラジド(PIERCE社製)を、それぞれ25μlずつ添加した。続いて、0.1M MES緩衝液(pH5.5)で100mg/mlに調製したEDC溶液を12.5μl添加した。これをよく撹拌した後、室温(15℃〜25℃)で20時間撹拌して反応させた。反応終了後の反応物を、透析膜(商品名:Cellu Sep H1(フナコシ社製)、カットオフ:分子量1,000以下)を、透析液としてダルベッコ・リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2〜7.5、カルシウムイオン等の二価イオン不含;以下、「PBS(−)」という。)をそれぞれ用いて透析に付し、遊離のビオチンを充分に除去し、各種Bi−GAG及び各種Bi−HEP誘導体を得た。透析終了後、Bi−GAG濃度及びBi−HEP誘導体をそれぞれ5ng/mlに調整し、凍結保存した。
(参考例5) ストレプトアビジン固相化マイクロプレートの作製
ストレプトアビジン(Vector社製)をPBS(−)で20μg/mlに希釈し、マキシソープ(登録商標)96ウェルマイクロプレート(ヌンク社製)の各ウェルに50μlずつ加えた。このプレートを18時間、4℃で保存することにより、ストレプトアビジンをプレート上に均一に固相化した後、PBS(−)で2回洗浄した。続いて、ブロッキング剤としてApplieDuo(登録商標、生化学工業株式会社製)を用い、以下の方法によりストレプトアビジンでコーティングされていない部分をブロッキングした。すなわち、防腐剤として0.05%プロクリン300(登録商標、SUPELCO社製)を含むリン酸緩衝液(pH7.2〜7.5:以下、「PB」という)を用いて、ApplieDuo(登録商標)の5倍希釈液(以下、「ブロッキング液」という)を調製し、これを各ウェルに250μlずつ加え、室温で2時間静置した。静置後、ブロッキング液を充分に除去し、37℃で2時間乾燥させることにより、所望するストレプトアビジン固相化マイクロプレートを得た。得られたプレートは乾燥剤とともにアルミラミネート袋に封入し、冷蔵保存した。
(参考例6) 各種GAG固相化マイクロプレート及び各種HEP誘導体固相化マイクロプレートの作製
1) ACH固相化マイクロプレートの作製
参考例3で調製したACH-BSAコンジュゲート (50 ng)を、マキシソープ(登録商標) 96ウェルマイクロプレートに添加し、18時間、4℃に保持した後、防腐剤として0.05%プロクリン300(登録商標)を含むPBS(−)で4倍希釈したブロックエース(登録商標;大日本製薬株式会社製)を用いてブロッキングした。1時間、室温で静置した後、所望のACH固相化マイクロプレートを得た。このACH固相化マイクロプレートは、後述する参考例8において血清中の抗体価を検証のために使用した。
2) 各種Bi−GAG固相化マイクロプレート及び各種Bi−HEP誘導体固相化マイクロプレートの作製
上記参考例4に記載の各種Bi−GAG及び各種Bi−HEP誘導体を、終濃度が1 μg/mlになるように、0.05%プロクリン300(登録商標)を含むPBS(−)で20倍希釈したApplieDuo(登録商標)溶液に溶解した(以下この溶液を、「各種Bi−GAG溶液」及び「各種Bi−HEP誘導体溶液」という)。参考例5で作製したストレプトアビジン固相化マイクロプレートの各ウェルを、300μlの0.05%プロクリン300(登録商標)及び0.05%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを含むPBS(−)(以下、「洗浄緩衝液」と言う)で4回洗浄した。各種Bi−GAG溶液及び各種Bi−HEP誘導体溶液をそれぞれ100 μlずつ各ウェルに分注し、室温で30分間静置したのち、各ウェルを洗浄緩衝液で4回洗浄することにより、所望の各種Bi−GAG固相化マイクロプレート及び各種Bi−HEP誘導体固相化マイクロプレートを得た。これらのプレートは、後述する参考例8におけるクローニング、及び後述する参考例10における反応性試験において使用した。
(参考例7) ACH抗原の調製
1) RA−ACHの調製
参考例1で調製したACH 4.5mgを、2M 塩化アンモニウム水溶液 160μlに溶解した。この溶液に、シアノ水素化ホウ素ナトリウム 12mgを添加し、70℃で2日間、還元アミノ化反応を行った。反応後の溶液に、シアノ水素ホウ素ナトリウム 5mgを添加し、さらに2日間、上記と同一の条件で反応を行った。反応後の溶液を氷浴中で冷却した後、酢酸 32μlを添加して反応を完全に停止させた。2倍量のエタノールを用いた溶媒沈殿法により、RA−ACHを回収した。得られた沈殿を、エタノール洗浄した後に凍結乾燥し、RA−ACHの凍結乾燥物2.1mgを得た。
2) 2−ピリジルジスルフィドプロピオニル化ACHの調製
上記1)で調製したRA−ACH 2.1mgを、0.1M NaCl−0.1M リン酸緩衝液(pH7.5) 1mlに溶解した。この溶液に5mM SPDPエタノール溶液 80μlを添加した後、室温にて一晩静置し、2−ピリジルジスルフィドプロピオニル化反応(PDP反応)を行った。過剰のSPDPを除くために蒸留水を用いて透析を行った後、凍結乾燥し、PDP−ACHの凍結乾燥物 1.7mgを得た。
3) SH−ACHの調製
上記2)で調製したPDP−ACH 1.7mgを、0.1M NaCl−0.1M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5) 160μlに溶解した。この溶液に、終濃度が25mMになるようにジチオスレイトールを添加し、60分間室温にて還元反応を行った。2倍量のエタノールを用いた溶媒沈殿法でSH−ACHを回収した。得られた沈殿を、エタノール洗浄した後に凍結乾燥し、SH−ACHの凍結乾燥物 1.3mgを得た。
4) ジスルフィド結合を介したACH−KLHコンジュゲートの調製
上記3)で調製したSH−ACH 1.3mg及び参考例2で調製したPDP−KLH 0.65mgを、0.1M NaCl−0.1M リン酸緩衝液(pH7.5) 1mlに溶解し、2時間室温にてコンジュゲーション反応を行った。反応中に生成されるピリジル−2−チオンを除くため、上記反応後の溶液を、蒸留水に対して一晩透析した後、凍結乾燥し、ACH−KLHコンジュゲートの凍結乾燥物1.5mgを得た。得られた凍結乾燥物は、後述する参考例8において、ACH抗原として用いた。
(参考例8) ACHに対して反応する抗体を生産するハイブリドーマ細胞株の樹立
1) マウスの免疫化
前記参考例7の4)で得られたACH抗原1mgを少量の蒸留水に溶解し、これをTiterMAX Gold(登録商標;シグマ社製)2mlと混合し、抗原溶液を調製した。また、免疫する動物としては、4匹のBALB/Cマウス(6週齢のメス;日本チャールズリバー社製)を用いた。上記の抗原溶液 100μl/匹 を、2週間毎に2又は3回皮下投与した。血清の抗体価が十分な値に達した時、最終免疫として、アジュバントを含まないACH抗原溶液 100μl/匹を投与した。最終免疫から3日後、免疫したマウスを安楽死させ、脾臓を摘出した。
【0038】
なお、上記において、血清中の抗体価の検証は、以下の方法により行った。すなわち、参考例6の1)で作製したACH固相化マイクロプレート及びアルカリホスファターゼ標識抗マウスIgG+M+A抗体(以下、「ALP−抗マウスIg」という)を用い、ELISA法により血清中の抗体価を検証した。すなわち、PBS(−)で1000倍希釈した血清 50μlをACH固相化マイクロプレートに分注し、37℃で1時間インキュベートした。続いて、PBS(−)で4回洗浄し、10%ブロックエース(登録商標)/PBS(−)で1000倍希釈したALP−抗マウスIg溶液 50 μlを各ウェルに分注した。さらに、PBS(−)で4回洗浄した後、基質溶液(ALPローゼ;株式会社シノテスト製) 50μlを各ウエルに分注し、20分間、室温にて静置した。さらに、発色試薬(株式会社シノテスト製)50μlを添加し、660nmをバックグラウンド補正として、495nmの吸光度を測定した。
2)ハイブリドーマの創製
1)で摘出した脾臓から得られた免疫感作されたリンパ球と、マウスミエローマP3U1細胞(株式会社シマ研究所製)とを、4対1ないし5対1の混合比で混合した後、50%のポリエチレングリコール1500(ロシュ社製)中で共遠心分離することによって細胞融合を実施した。なお、上記の細胞融合に用いるミエローマ細胞には、細胞融合の1週間前より、8−アザグアニンを含んだHAT培地で生育させたものを用いた。細胞融合後、HAT培地中で細胞を生育させた細胞を、以下のクローンの選抜に用いた。
3)クローンの選抜及び評価
3−1) クローニング
クローニングには限界希釈法を採用した。すなわち、細胞数がウエル当り1以下になるようにHAT培地で細胞を希釈し、これを96ウェルマイクロプレートに播種した。これを常法に従って培養し、培養上清液を得た。培養上清液の抗体価の評価を、参考例6の2)で作製したBi−ACH固相化マイクロプレートを用いたELISA法により行い、クローンを選抜した。以上のクローンニングの工程は、少なくとも2回以上実行した。以上の結果として、1つのクローンを選抜し、取得した。
3−2) クローンの評価
上記3)−1で取得したクローンの活性が維持されていることを確認するため、当該クローンを24ウェルプレートの培養スケールにて培養し、得られた培養上清液の抗体価の評価を、参考例6の2)で作製したBi−ACH固相化マイクロプレート、及びHRP標識ヤギ抗マウス免疫グロブリン抗体(以下、「HRP抗マウスIg」という;ダコ社製)を用いたELISA法により行った。以下に詳細を示す。
[クローンの抗体価の評価]
予め洗浄緩衝液によって4回洗浄したBi−ACH固相化マイクロプレートに、培養上清液 100μlを分注し、室温にて1時間静置した。さらに洗浄緩衝液で4回洗浄した後に、反応緩衝液(0.05%プロクリン300(登録商標)を含むPBS(−)で20倍に希釈したApplieDuo(登録商標)溶液)で2000倍に希釈したHRP抗マウスIg 100μlを、各ウェルに分注した。このプレートを室温にて1時間静置した後、洗浄緩衝液で4回洗浄し、TMB溶液(HRP基質溶液;BIOFX社製) 100μlを各ウェルに加え、30分間、常温で酵素反応を行った。反応終了後、発色試薬(BIOFX社製)100μlを各ウェルに添加し、630nmをバックグラウンド補正として、450nmの吸光度を測定した。なお、反応緩衝液をネガティブブランクとして用いた。その結果、当該クローンが抗ACH抗体を生産していることが確認された。樹立したハイブリドーマのクローン番号はACH55であったことから、このハイブリドーマによって産生される抗体を、ACH55抗体と名付けた。上記のハイブリドーマは、平成18年3月1日に独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに受託番号FERM P−20828として受託された。常法に従って抗体の免疫グロブリンクラスを調べた結果、ACH55抗体の免疫グロブリンクラスはIgMであることを確認した。
(参考例9) 抗ACHモノクローナル抗体の調製
1) 抗ACHモノクローナル抗体の生産
目的の抗ACHモノクローナル抗体を生産する方法としては、マウス腹水法を採用した。すなわち、上記参考例8の3)で樹立したハイブリドーマ(クローン番号:ACH55)5×106個を、予めプリスタン(2,6,10,14-Tetrametylpentadecane:東京化成工業株式会社)処理した3匹のBALB/Cマウス(15週齢の雌)の腹腔に注入した。注射後10〜20日の間に、マウスの腹水を数回に分けて採取し、合計約10mlの腹水を得た。
2) 抗ACHモノクローナル抗体の精製
上記1)で得た腹水を、吸着バッファ2(0.5M K2SO4を含む20のmMリン酸緩衝液(pH 7.5))に対して一晩透析した。透析内液をメンブランフィルタ(孔径:0.45 mm)によって濾過し、得られた濾過液を、予め吸着バッファ1(20 mMリン酸緩衝液(pH 7.0))で平衡化したHiTrap IgY Purification HPカラム(5ml;アマシャム・バイオサイエンス社製)にアプライした後、吸着バッファ1でカラムを洗浄した。通過させた洗浄液の280nmの吸収がほぼ0になったとき、20 mMリン酸緩衝液(pH 7.5)をカラムに通過させ、ACH55抗体を溶出した。溶出したACH55抗体をNH4SO4(50%の飽和)を用いて塩析することによって回収した。得られた沈澱物をPBS(−)に対して透析し、精製ACH55抗体 2.2mgを含む透析内液を得た。
(参考例10) 抗ACHモノクローナル抗体の反応性試験
1) ACH55抗体の各種GAGに対する反応性
1)−1 方法
Bi−GAGの固相化量の異なるマイクロプレートを作製するために、固相化に用いるBi−GAG溶液中のBi−GAGの終濃度を、0.001、0.004、0.012、0.037、0.111、0.333、1.000μg/mlと変化させて参考例6の2)と同様の方法で作製したBi−GAG固相化マイクロプレートを、それぞれ洗浄緩衝液で4回洗浄した。その後、各ウェルに、添加剤としてApplieDuo(登録商標;最終希釈率20倍;生化学工業株式会社製)及び防腐剤として0.05%プロクリン300を含有するPBS(−)(以下、「反応液A」という)を用いて濃度0.06 μg/mlに調整したACH55抗体からなる各試験溶液を100μlずつ加え、これを常温で60分間静置し、抗原抗体反応させた。反応終了後、各ウェルを洗浄緩衝液で4回洗浄し、二次抗体溶液として、反応液Aで2000倍に希釈したHRP抗マウスIg溶液を100μlずつ加え、これを常温で60分間静置して抗原抗体反応させた。反応終了後、このプレートを洗浄緩衝液で4回洗浄し、HRPの基質としてTMB溶液(HRP基質溶液、BIOFX社製)を100μlずつ加え、常温で30分間反応させて発色させた。続いて、プレートに反応停止液(BIOFX社製)を100μlずつ加えて反応を停止させた後、TMB分解によって増加する波長450nmの吸光度(対照波長630nm)をウェルリーダーSK−603(登録商標;生化学工業株式会社販売)で測定した。なお、抗体の反応性は、上記の各濃度のBi−GAGを用いて作製したBi−GAG固相化マイクロプレートを用いて上記測定を行った場合の吸光度から、Bi−GAG溶液の代わりにBi−GAGを含まない0.05%プロクリン300(登録商標)を含むPBS(−)で20倍希釈したApplieDuo(登録商標)溶液を用いることの他、参考例6 2)と同様の方法により作製したコントロール測定用マイクロプレートを用いて上記の測定方法に準じて測定を行った場合の吸光度(ブランク値)を減算した吸光度差(以下、単に「吸光度差」と記載する)によって評価した。
1)−2 結果
Bi−GAG固相化マイクロプレートのGAGとして、NAH、AS、ACH、HS、HEP及びEHS−HSを用いた場合の結果を、図2に示す。
【0039】
ACH55抗体は、ACHに対しては、Bi−ACH濃度を0.01μg/mL(0.001μg/ウェル)とした場合においても強く反応(吸光度差=約1.0)した一方で、AS、HEP、HS、NAH及びEHS−HSに対しては、Bi−GAG濃度を1.0μg/mL(0.1μg/ウェル)にまで上げた場合においても反応しなかった(図2)。
【0040】
また、ACH55抗体は上述したHEPの場合と同様に、HA、各種CS(CS−A(W)、CS−A(S)、CS−B、CS−C、CS−D、CS−E)及びKSに対しても反応しなかった。
2) ACH55抗体の各種HEP誘導体に対する反応性
各種HEP誘導体に対する反応性を評価した。Bi−HEP誘導体固相化マイクロプレートのHEP誘導体として、NH2−HEP、NAc−HEP、6DSH、NAc−6DSH、NH2−6SH、6SH、NH2−2SH、2SH、NSH、NAc−NSH、NH2−CDSH及びCDSHを用いた。なおこの試験においては、固相化に用いるBi−HEP誘導体を含む溶液の濃度を1μg/mlに固定した(0.1 μg/ウェル)。結果を図3に示す。
【0041】
ACH55抗体は、CDSHに対しては強く反応し、また、2SH、6SHとNAc−NSHに対しては、極弱く反応した(図3)。
【0042】
ACH55抗体が強く反応したACHは、イズロン酸ユニット(-[IdoA-GlcNAc]-)を主な構成二糖としていることから、ACH55抗体のエピトープは、イズロン酸ユニットから構成されていると考えられる。また、当該抗体が反応しなかったNAHは、グルクロン酸ユニット(- [GlcA-GlcNAc]-)からなるACHのウロン酸C5−エピマーであることから、特にイズロン酸残基がACH55抗体の抗原認識において必須であることが示唆された。さらに、AS(イズロン酸残基の2位水酸基が硫酸化されている)に対して反応性が見られないことから、イズロン酸の硫酸化(IdoA(2S))は、ACH55抗体の抗原に対する反応性を阻害することが示唆された。
【0043】
CDSHはグルクロン酸ユニット及びイズロン酸ユニットにより主に構成される多糖であり、イズロン酸ユニットの存在比は60%以上と高い。したがって、CDSHが当該抗体と反応した結果に矛盾はない。また、この反応性はGlcNAc残基のN−脱アセチル化(NH2−CDSH)及びN−硫酸化(NSH)によって消失したので、グルコサミン残基のアミノ基がアセチル化されていることも、ACH55抗体の抗原の認識において重要であることが示唆された。
【0044】
ASと反応しない抗体ACH55が2SH、6SHやNAc−NSHと弱く反応した理由は、HEPがN−脱硫酸化、2−O脱硫酸化及び6−O脱硫酸化等、複数の修飾を経る過程で、イズロン酸ユニットがHEP誘導体中に顕在化したためと推察した。
【実施例2】
【0045】
ASに結合する抗体の調製
(参考例11) ウロン酸を介したAS−BSAコンジュゲートの調製
ACHに代えてASを用い、前記の参考例3と同様に行った。最終的に、ウロン酸を介したAS−BSAコンジュゲート 3.5mgを得た。
(参考例12) Bi−GAG及びBi−HEP誘導体の調製
ACHに代えてASを用い、前記の参考例4と同様に行った。
(参考例13) ストレプトアビジン固相化マイクロプレートの作製
前記の参考例5と同様に行った。
(参考例14) 各種GAG固相化マイクロプレート及び各種HEP誘導体固相化マイクロプレートの作製
1) AS固相化マイクロプレートの作製
参考例11で調製したAS−BSA(50 ng)を用いて、参考例6の1)と同様に行った。このAS固相化マイクロプレートは、後述する参考例16において血清中の抗体価を検証するために使用した。
2) 各種Bi−GAG固相化マイクロプレート及び各種Bi−HEP誘導体固相化マイクロプレートの作製
参考例6の2)と同様に行った。
(参考例15) AS抗原の調製
1) RA−ASの調製
参考例1で調製したAS 4mgを秤量し、2M 塩化アンモニウム水溶液 160μlに溶解した。この溶液に、シアノ水素化ホウ素ナトリウム12mgを添加し、70℃で2日間、還元アミノ化反応を行った。反応後の溶液に、シアノ水素ホウ素ナトリウム 5mgを添加し、さらに2日間、上記と同一の条件で反応を行った。反応後の溶液を氷浴中で冷却した後、酢酸 32μlを添加して反応を完全に停止させた。2倍量のエタノールを用いた溶媒沈殿法により、RA−ASを回収した。得られた沈殿を、エタノール洗浄した後に凍結乾燥し、RA−ASの凍結乾燥物3.3mgを得た。
2) PDP−ASの調製
上記1)で調製したRA−AS 3.3mgを、0.1M NaCl−0.1M リン酸緩衝液(pH7.5) 1mlに溶解した。この溶液に5mM SPDPエタノール溶液 80μlを添加した後、室温にて一晩静置し、2−ピリジルジスルフィドプロピオニル化反応(PDP反応)を行った。過剰のSPDPを除くために蒸留水を用いて透析を行った後、凍結乾燥し、PDP−ASの凍結乾燥物3.8mgを得た。
3) SH−ASの調製
上記2)で調製したPDP−AS 2.0mgを秤量し、0.1M NaCl−0.1M 酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)160μlに溶解した。この溶液に、終濃度が25mMになるようにジチオスレイトールを添加し、60分間室温にて還元反応を行った。2倍量のエタノールを用いた溶媒沈殿法でSH−ASを回収した。得られた沈殿を、エタノール洗浄した後に凍結乾燥し、SH−ASの凍結乾燥物1.5mgを得た。
4) ジスルフィド結合を介したAS−KLHコンジュゲートの調製
上記3)で調製したSH−AS 1.5mg及び参考例2で調製したPDP−KLH 0.75mgを、0.1M NaCl−0.1M リン酸緩衝液(pH7.5) 1mlに溶解し、2時間室温にてコンジュゲーション反応を行った。反応中に生成されるピリジル−2−チオンを除くため、上記反応後の溶液を、蒸留水に対して一晩透析した後、凍結乾燥し、AS−KLHコンジュゲートの凍結乾燥物1.9mgを得た。得られた凍結乾燥物は、後述する参考例16において、AS抗原として用いた。
(参考例16) ASに対して反応する抗体を生産するハイブリドーマ細胞株の樹立
1) マウスの免疫化
少量の蒸留水に溶解したAS抗原 1mgとTiterMAX Gold(登録商標;シグマ社製)2mlとを混合し、抗原溶液を調製した。また、免疫する動物としては、4匹のBALB/Cマウス(6週齢のメス;日本チャールズリバー社製)を用いた。上記の抗原溶液 100μl/匹を、2週間毎に2又は3回皮下投与した。血清の抗体価が十分な値に達した時、最終免疫として、アジュバントを含まないAS抗原溶液 100μ1/匹を投与した。最終免疫から3日後、免疫したマウスを安楽死させ、脾臓を摘出した。
【0046】
なお、上記において、血清中の抗体価の検証は、以下の方法により行った。すなわち、参考例14の1)で作製したAS固相化マイクロプレート及びALP−抗マウスIgを用い、ELISA法により血清中の抗体価を検証した。すなわち、PBS(−)で1000倍希釈した血清 50 μlをAS固相化マイクロプレートに分注し、37℃で1時間インキュベートした。続いて、PBS(−)で4回洗浄し、10% ブロックエース(登録商標)/PBS(−)で1000倍希釈したALP−抗マウスIg溶液 50μlを各ウェルに分注した。さらに、PBS(−)で4回洗浄した後、基質溶液(ALPローゼ;株式会社シノテスト製)50μlを各ウェルに分注し、20分間、室温にて静置した。さらに、発色試薬(株式会社シノテスト製)50μlを添加し、660nmをバックグラウンド補正として、495nmの吸光度を測定した。
2)ハイブリドーマの創製
1)で摘出した脾臓から得られた免疫感作されたリンパ球と、マウスミエローマP3U1細胞(株式会社シマ研究所製)とを、4対1ないし5対1の混合比で混合した後、50%のポリエチレングリコール1500(ロシュ社製)中で共遠心分離することによって細胞融合を実施した。なお、上記の細胞融合に用いるミエローマ細胞には、細胞融合の1週間前より、8−アザグアニンを含んだHAT培地で生育させたものを用いた。細胞融合後、HAT培地中で細胞を生育させた細胞を、以下のクローンの選抜に用いた。
3)クローンの選抜及び評価
3−1) クローニング
クローニングには限界希釈法を採用した。すなわち、細胞数がウェル当り1以下になるようにHAT培地で細胞を希釈し、これを96ウェルマイクロプレートに播種した。これを常法に従って培養し、培養上清液を得た。培養上清液の抗体価の評価を、参考例14の2)で作製したBi−AS固相化マイクロプレートを用いたELISA法により行い、クローンを選抜した。以上のクローンニングの工程は、少なくとも2回以上実行した。以上の結果として、6つのクローンを選抜し、取得した。
3−2) クローンの評価
上記3)−1で取得した各クローンの活性が維持されていることを確認するため、当該クローンを24ウェルプレートの培養スケールにて培養し、得られた培養上清液の抗体価の評価を、参考例14の2)で作製したBi−AS固相化マイクロプレート及びHRP抗マウスIgを用いたELISA法により行った。以下に詳細を示す。
[クローンの抗体価の評価]
予め洗浄緩衝液によって4回洗浄した、Bi−AS固相化マイクロプレートに、培養上清液 100μlを分注し、室温にて1時間静置した。さらに洗浄緩衝液で4回洗浄した後に、反応緩衝液(0.05%プロクリン300(登録商標)を含むPBS(−)で20倍に希釈したApplieDuo(登録商標;生化学工業株式会社製)溶液)で2000倍に希釈したHRP抗マウスIg 100μlを、各ウェルに分注した。このプレートを室温にて1時間静置した後、洗浄緩衝液で4回洗浄し、TMB(HRP基質溶液;BIOFX社製)100μlを各ウェルに加え、30分間、常温で酵素反応を行った。反応終了後、発色試薬(BIOFX社製)100μlを各ウェルに添加し、630nmをバックグラウンド補正として、450nmの吸光度を測定した。なお、反応緩衝液をネガティブブランクとして用いた。その結果、各クローンが抗AS抗体を生産していることが確認された。樹立したハイブリドーマのクローン番号はAS17、AS22、AS25、AS38及びAS48であったことから、このハイブリドーマによって産生される抗体を、それぞれAS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、AS38抗体及びAS48抗体と名付けた。上記のハイブリドーマは、平成18年3月1日に独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、受託番号FERM P−20823、FERM P−20824、FERM P−20825、FERM P−20826又はFERM P−20827としてそれぞれ受託された。常法に従って抗体の免疫グロブリンクラスおよびそのサブクラスを調べた結果、AS17抗体はIgG2aに分類され、AS25抗体及びAS38抗体はIgG1に分類され、AS22抗体及びAS48抗体はIgMに分類されることを確認した。
(参考例17) 抗ASモノクローナル抗体の調製
1) 抗ASモノクローナル抗体の生産
目的の抗ASモノクローナル抗体を生産する方法としては、マウス腹水法を採用した。すなわち、上記参考例16の3)で樹立した各ハイブリドーマ(AS17、AS22、AS25、AS38、AS48)それぞれ5×106個を、それぞれ予めプリスタン(2,6,10,14-Tetrametylpentadecane:東京化成工業株式会社)処理した3匹のBALB/Cマウス(15週齢の雌)の腹腔に注入した。注射後10〜20日の間に、マウスの腹水を数回に分けて採取し、合計約10mlの腹水を得た。
2) 抗ASモノクローナル抗体の精製
以下に、IgGタイプ抗体(AS17抗体、AS25抗体及びAS38抗体)の精製方法を示す。すなわち、上記1)により得られた腹水を、それぞれ吸着バッファ1(20 mMリン酸緩衝液(pH 7.0))に対して一晩透析した。透析内液をメンブランフィルタ(孔径:0.45 mm)によって濾過し、得られた濾過液を、予め吸着バッファ1で平衡化したHiTrap Protein G HPカラム(5ml;アマシャム・バイオサイエンス社製)にアプライし、同バッファでカラムを洗浄した。通過液の280nmの吸収がほぼ0になった時、0.1 M グリシンバッファ(pH 2.7)をカラムに通過させ、AS17抗体、AS25抗体及びAS28抗体をそれぞれ溶出した。各抗体を含む溶液をそれぞれ回収し、PBS(−)に対して十分に透析した。透析内液は必要に応じて限外ろ過濃縮等で適切な濃度に適宜調整し、それらを精製抗体として使用した。精製したAS17抗体、AS25抗体及びAS38抗体の量はそれぞれ、30.8mg、4.6mg及び11.5mgであった。
【0047】
以下にIgMタイプ抗体(AS22抗体及びAS48抗体)の精製方法を示す。すなわち、上記1)により得られた腹水を、それぞれ吸着バッファ2(0.5M K2SO4を含む20mM リン酸緩衝液(pH 7.5))に対して一晩透析した。透析内液をメンブランフィルタ(孔径:0.45 mm)によって濾過した後、濾過液を予め吸着バッファ1で平衡化したHiTrap IgY Purification HPカラム(5ml;アマシャム・バイオサイエンス社製)にアプライし、同バッファでカラムを洗浄した。通過液の280nmの吸収がほぼ0になった時、20 mMリン酸緩衝液(pH 7.5)をカラムに通過させ、AS22抗体及びAS48抗体をそれぞれ溶出した。溶出したAS22抗体及びAS48抗体は、塩析(NH4SO4:50%の飽和)することによって回収した。沈澱物をPBS(-)に対して透析し、得られた透析内液を精製抗体として使用した。精製したAS22抗体及びAS48抗体の量はそれぞれ、2.7及び2.2 mgであった。
(参考例18) 各抗ASモノクローナル抗体の反応性試験
各抗ASモノクローナル抗体(精製抗体)の各種GAG及び各種HEP誘導体に対する反応性を検証した。
1) 各精製抗体の反応性試験その1−ASに対する反応性試験
1)−1 方法
Bi−GAGの固相化量の異なるマイクロプレートを作製するために、固相化に用いるBi−AS溶液中のBi−ASの終濃度を、0.001、0.004、0.012、0.037、0.111、0.333、1.000 μg/mlと変化させて参考例14の2)と同様の方法により作製したBi−AS固相化マイクロプレートを、それぞれ洗浄緩衝液で4回洗浄した後、各ウェルに、添加剤としてApplieDuo(登録商標;最終希釈率20倍、生化学工業株式会社製)、防腐剤として0.05%プロクリン300を含むPBS(−)(以下、「反応液A」という)を用いて、それぞれ、0.025 mg/ml(AS17抗体)、0.07mg/ml(AS22抗体)、0.006 mg/ml(AS25抗体)、0.006 mg/ml(AS38抗体)、0.1 mg/ml(AS48抗体)に調製した各精製抗体を含む各試験溶液を100μlずつ加え、これを常温で60分間静置し、抗原抗体反応させた。反応終了後、各ウェルを洗浄緩衝液で4回洗浄し、二次抗体溶液として、反応液Aで2000倍希釈したHRP抗マウスIg(ダコ社製)溶液を100μlずつ加え、これを常温で60分間静置して抗原抗体反応させた。反応終了後、このプレートを洗浄緩衝液で4回洗浄し、HRPの基質としてTMB溶液(HRP基質溶液;BIOFX社製)を100μlずつ 加え、常温で30分間反応させて発色させた。続いて、プレートに反応停止液(BIOFX社製)を100μlずつ 加えて反応を停止させた後、TMB分解によって増加する波長450nmの吸光度(対照波長630nm)をウェルリーダーSK−603(登録商標;生化学工業株式会社販売)で測定した。なお、抗体の反応性は、上記の各濃度のBi−GAGを用いて作製したBi−GAG固相化マイクロプレートを用いて上記測定を行った場合の吸光度から、Bi−GAG溶液の代わりにBi−GAGを含まない0.05%プロクリン300(登録商標)を含むPBS(−)で20倍希釈したApplieDuo(登録商標)溶液を用いることの他、参考例6 2)と同様の方法により作製したコントロール測定用マイクロプレートを用いて上記の測定方法に準じて測定を行った場合の吸光度(ブランク値)を減算した吸光度差(以下、単に「吸光度差」と記載する)によって評価した。
1)−2 結果
結果を、図4に示す。ASに対するAS22抗体とAS48抗体の相対感度は、AS17抗体、AS25抗体及びAS38抗体のそれよりも100倍の強度があった。Bi−AS濃度が1.0 μg/ml(0.1μg/ウェル)のとき、すべての抗体は強い反応性(吸光度差;≧1)を示した。
2) 各精製抗体の反応性試験その2−各種GAGに対する反応性試験
2)−1 方法
用いる各種Bi−GAGの濃度を、1.0 μg/ ml(0.1μg/ウェル)に固定することの他、上記1)−1と同様の方法により、各種GAG及び各種HEP誘導体に対する各精製抗体の反応性を評価した。
2)−2 結果
図5に各種GAGに対する各精製抗体の反応性の結果を示す。
【0048】
上記1)と同様に、各抗体はASに対して強く反応した。いずれの抗体についても、HS及びHEPに対して反応しないことを確認した。また、AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体及びAS38抗体については、その他のGAG、すなわち、ACH、EHS−HS、KS、HA、NAH、CS−A(W)、CS−A(S)、CS−B、CS−C、CS−D、CS−E及びChのいずれに対しても実質的に反応しないことを確認した。一方AS48抗体は、EHS−HS、KS、HA、NAH、CS−A(W)、CS−A(S)、CS−B、CS−C、CS−D、CS−E及びChのいずれに対しても反応しなかったが、ACHに対しては約55%の反応性を有していることを確認した。
【0049】
これらの結果から、2−O硫酸化イズロン酸(IdoA(2S))残基がこれらの抗体のエピトープに含まれていることが示唆された。さらに、各抗体が反応性を示さなかったHS及びHEPの分子中には、IdoA(2S)のα(1-4)結合が存在するが、その大部分はGlcNS又はO-硫酸化GlcNSと結合した二糖ユニットとして存在することから、グルコサミン残基の修飾も、これら抗体の反応にとって重要なマイナス要素であることが推察された。
3) 各精製抗体の反応性試験その3−各種HEP誘導体に対する反応性試験
エピトープ解析の一助とするために、前記の参考例14に記載の各種Bi−HEP誘導体固相化プレートを用いることの他、上記2)−1に記載の方法に準じて反応性の評価を行うことにより、抗原のグルコサミン残基のN位の修飾状態が、各抗体の反応性にどのように影響するかを検証した。以下、グルコサミン残基のN位が「NH2−」となっている状態を「未修飾」と記載する。結果を図6に示す。
【0050】
いずれの抗体も2SHと反応した。AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、AS38抗体及びAS48抗体の反応性は、それぞれ172.2%、104.9%、76.4%、31.7%、104.8%であった。2SHは主としてグルクロン酸ユニット(- [GlcA-GlcNAc]-)と2−O硫酸化イズロン酸ユニット(- [IdoA(2S)-GlcNAc]-)により構成されており、また、2−O硫酸化イズロン酸ユニットの存在比が60%以上と高いので、この結果は上記の1)及び2)の結果と矛盾しない。
【0051】
一方、AS17抗体、AS25抗体及びAS38抗体は、NH2−2SHに反応しなかった。NH2−2SHのグルコサミン残基のN位の大部分は未修飾となっている。したがって、これらの抗体のエピトープには、N−アセチル化したグルコサミン残基が含まれていることが示唆された。
【0052】
また、NAc−6DSHのグルコサミン残基のN位の一部はアセチル化されているにもかかわらず、AS17抗体、AS25抗体及びAS38抗体はNAc−6DSHに実質的に反応せず、さらに、NAc−HEPのグルコサミン残基のN位の大部分はアセチル化されているにもかかわらず、これらの抗体はNAc−HEPに実質的に反応しなかったことから、これら抗体の抗原に対する反応性は、グルコサミン残基のN−硫酸化及び/又はO−硫酸化によって阻害されることが示唆された。
【0053】
AS22抗体及びAS48抗体は、NH2−HEP及び6DSHに対して実質的に反応しなかったが、それらをN−アセチル化したNAc−HEP及びNAc−6DSHに対してはASと同程度の反応性を示した。NH2−HEPのグルコサミン残基のN位の大部分は未修飾となっている。また、6DSHのグルコサミン残基のN位の大部分は硫酸化されているが、その調製過程で一部にN−脱硫酸化が起きるため、一部は未修飾となっている。したがって、上記の結果から、AS22抗体及びAS48抗体のエピトープには、N位が何らかの形で修飾されたグルコサミン残基、特にN−アセチル化されたグルコサミン残基が含まれていることが示唆された。また、NAc−HEP及びNAc−6DSHとの反応性から、それぞれ、そのグルコサミン残基のO−硫酸化やN−硫酸化が抗体の反応性に実質的に影響しないことが示唆された。
【0054】
これらの抗体の各種糖鎖に対する反応性を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
なお表1中の「ACS」はASを、「Heparin」はHEPを、「NH2-Heparin」はNH2−HEPを、「NAc-Heparin」はNAc−HEPを、「Acetylated 6DSH」はNAc−6DSHを、「Acetylated NSH」はNAc−NSHを、「NH2-CDSH」はNH2−CDSHを、「Acetylated NAH」はNAHをそれぞれ意味する。
また表1中の「NH2」、「N-Acetyl」、「NS」、「6S」、「2S」は、それぞれ糖鎖骨格中のアミノ基、N−アセチル基、N−硫酸基、6−O硫酸基、2−O硫酸基を示す。また、表1中の◎の記号、○の記号、△の記号及び×の記号は、糖鎖中における当該基の存在量のイメージを示すものである。
◎の記号は当該基が糖鎖中に多く存在するというイメージ、○の記号は当該基が糖鎖中に比較的多く存在するというイメージ、△の記号は当該基が糖鎖中にあまり存在しないというイメージ又は不明であること、×の記号は当該基が糖鎖中に実質的に存在しないというイメージをそれぞれ示す。ただし◎、○及び△は、あくまでイメージであって、当該基の絶対量を意味するものではなく、それぞれの記号相互間において必ずしも同レベルであることを意味しない。
表1中の各抗体の名称の直下に示した数字(左から、0.02、0.05、0.01、0.005、0.15、0.05)は、反応させた各抗体の濃度(μg/ml)を示す。これらの抗体を、左に列記した各種GAGのビオチン標識物(1μg/ml)と反応させてその反応性を評価した。
表1から、例えばACS22抗体は、NAc−HEP(6−O硫酸基及び2−O硫酸基を保持している点が1つの特徴である)とNAc−6DSH(N−硫酸基及び2−O硫酸基を保持している点が1つの特徴である)に高い結合性を有していることがわかる。
【実施例3】
【0057】
フローサイトメトリー
扁平上皮癌由来細胞株であるHSC−4株(Anticancer Res., 2005 Nov-Dec; 25(6B): 4053-4059)、HO−1−u−1株(Oncol. Rep., 2004 Aug; 12(2): 339-345)及びHO−1N−1株(Cancer. Lett. 2000 Apr 14; 151(2): 199-208)、並びに大腸癌由来細胞株であるLS174T株(Clin. Cancer Res., 2006 Mar 1; 12(5): 1606-1614)及びC−1株(Cancer Res. 2001 Jun 1; 61(11): 4620-4627)を生体組織由来の試料として用いた。コントロールとして、大腸癌由来細胞株であるCOLO201株(Cancer Res. 1994 Jan 1; 54(1): 272-275)を用いた。
【0058】
また実験によっては、これらの細胞をへパリチナーゼI(Flavobacterium heparinum由来;生化学工業株式会社製)で処理して用いた。
【0059】
また抗体(一次抗体)として、前記の抗体、及び10E4及びJM403(いずれも抗HSモノクローナル抗体)、3G10(抗−Δ−HSモノクローナル抗体)、NAH46(抗NAHモノクローナル抗体(「抗HS抗体」として販売されている。);いずれも生化学工業株式会社製)を用いた。
【0060】
前記の細胞の懸濁液に、終濃度5μg/ml又は20μg/mlとなるように一次抗体を添加して4℃で30分間インキュベートした。その後、終濃度2%のFCSを含有するPBSで洗浄し、次いで添付の説明書に記載されている推奨希釈倍率(1/20から1/400)に従って1/200に希釈した二次抗体(FITC標識抗マウスイムノグロブリン抗体(Chemicon;カタログ番号AQ326F))を添加して4℃で30分間インキュベートした。その後、終濃度2%のFCSを含有するPBSで洗浄し、フローサイトメトリーにより解析した。なお、一次抗体を用いずに二次抗体のみでインキュベートしたものをコントロールとした。結果を図7〜図20に示す。なお各図とも、左側の一番上のグラフは、解析に付した細胞のポピュレーションを示すものである。また各図とも、左側の一番上以外のグラフの横軸は蛍光強度を、縦軸は細胞数を示す。また各図とも、左側の一番上以外のグラフ中の左側の位置に存在する山型の実線はコントロールを示す。このコントロールよりも実線のピークが右側にシフトしている場合には、一次抗体が細胞に結合している(一次抗体によって細胞が染色されている)ことになる。
【0061】
図7〜図20より、いずれの癌由来細胞株もNAH46で染色されることが示された。
【0062】
そのうちHSC−4株、HO−1N−1株についてはNAH46に加えて、10E4、JM403によっても染色された。この染色性は細胞をヘパリチナーゼIで処理してもほとんど変化しなかった。またC−1株についても、HSC−4株やHO−1N−1株よりは若干弱いながらも10E4、JM403によって染色された。
【0063】
またLS174T株については、NAH46に加えて、10E4、JM403によって染色された。さらに驚くべきことに、LS174T株はAS22、ACH55によっても染色された。この染色性は細胞をヘパリチナーゼ処理してもほとんど変化しなかった。
【0064】
以上の結果から、「ACHに結合する抗体」及び/又は「ASに結合する抗体」を生体組織由来の試料に接触させることにより、癌の検出ができることが示された。
【実施例4】
【0065】
以下の構成成分からなる本発明キットを作製した。
精製したAS22抗体 1本(一次抗体)
精製したACH55抗体 1本(一次抗体)
3.FITC標識した抗マウスイムノグロブリン抗体 1本(二次抗体)
4.AS(標準品) 1本
5.ACH(標準品) 1本
6.洗浄液(PBS) 1本
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】各種HEP誘導体の製造方法の流れを示す図である。
【図2】ACH55抗体の各種GAGに対する反応性を示す図である。横軸のBi−GAG(μg/ml)は、Bi−GAG固相化プレートの作製において用いたBi−GAG溶液におけるBi−GAGの終濃度を示す。
【図3】ACH55抗体の各種HEP誘導体等に対する反応性を示す図である。
【図4】AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、AS38抗体及びAS48抗体の、ASに対する反応性を示す図である。横軸のBi−AS(μg/ml)は、Bi−AS固相化プレートの作製において用いたBi−AS溶液におけるBi−ASの終濃度を示す。
【図5】AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、AS38抗体及びAS48抗体の、各種GAGに対する反応性を示す図である。
【図6】AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、AS38抗体及びAS48抗体の、各種HEP誘導体等に対する反応性を示す図である。
【図7】COLO201株における、各抗体の結合の程度を示す図である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも5μg/mlとした。
【図8】COLO201株における、各抗体の結合の程度を示す図である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも20μg/mlとした。
【図9】HSC−4株における、各抗体の結合の程度を示す図である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも20μg/mlとした。
【図10】HO−1−u−1株における、各抗体の結合の程度を示す図である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも20μg/mlとした。
【図11】HO−1N−1株における、各抗体の結合の程度を示す図である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも20μg/mlとした。
【図12】HSC−4株における、各抗体の結合の程度を示す図(図9と別途独立に試験した結果)である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS22抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46、3G10をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも20μg/mlとした。
【図13】ヘパリチナーゼIで処理したHSC−4株における、各抗体の結合の程度を示す図である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS22抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46、3G10をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも20μg/mlとした。
【図14】LS174T株における、各抗体の結合の程度を示す図である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS22抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46、3G10をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも20μg/mlとした。
【図15】ヘパリチナーゼIで処理したLS174T株における、各抗体の結合の程度を示す図である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS22抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46、3G10をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも20μg/mlとした。
【図16】HSC−4株における、各抗体の結合の程度を示す図(図9及び図12と別途独立に試験した結果)である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46、3G10をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも20μg/mlとした。
【図17】ヘパリチナーゼIで処理したHSC−4株における、各抗体の結合の程度を示す図(図13と別途独立に試験した結果)である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46、3G10をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも20μg/mlとした。
【図18】C−1株における、各抗体の結合の程度を示す図である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46、3G10をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも20μg/mlとした。
【図19】LS174T株における、各抗体の結合の程度を示す図(図14と別途独立に試験した結果)である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46、3G10をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも20μg/mlとした。
【図20】ヘパリチナーゼIで処理したLS174T株における、各抗体の結合の程度を示す図(図15と別途独立に試験した結果)である。左側の上から2番目のグラフから下に向かって順に、AS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、ACH55抗体をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。また、右側の一番上のグラフから下に向かって順に10E4、JM403、NAH46、3G10をそれぞれ一次抗体として用いた結果を示す。なお、一次抗体の終濃度はいずれも20μg/mlとした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
「2−O脱硫酸化アカラン硫酸に結合する抗体」及び/又は「アカラン硫酸に結合する抗体」を生体組織由来の試料に接触させるステップを少なくとも含む、癌の検出方法。
【請求項2】
「2−O脱硫酸化アカラン硫酸に結合する抗体」が、アカラン硫酸に実質的に結合しないものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
「2−O脱硫酸化アカラン硫酸に結合する抗体」が、N−アセチルヘパロザンに実質的に結合しないものである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
「2−O脱硫酸化アカラン硫酸に結合する抗体」が、ブタ腸由来のヘパリンに実質的に結合しないものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
「2−O脱硫酸化アカラン硫酸に結合する抗体」が、ウシ腎臓由来のヘパラン硫酸に実質的に結合しないものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
「2−O脱硫酸化アカラン硫酸に結合する抗体」が、マウスのエンジェルブレス−ホーム−スワーン腫瘍組織由来のヘパラン硫酸に実質的に結合しないものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
「2−O脱硫酸化アカラン硫酸に結合する抗体」が、モノクローナル抗体である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
「2−O脱硫酸化アカラン硫酸に結合する抗体」が、タンパク質と2−O脱硫酸化アカラン硫酸とを化学的に結合させてなる物質を抗原として免疫した哺乳動物由来のリンパ球と、哺乳動物由来のミエローマ細胞との細胞融合により形成されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
リンパ球及びミエローマ細胞が、マウス由来である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
「2−O脱硫酸化アカラン硫酸に結合する抗体」の免疫グロブリンクラスがIgMである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
「2−O脱硫酸化アカラン硫酸に結合する抗体」が、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにおける受領番号がFERM AP−20828であるハイブリドーマにより産生される抗体である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
「アカラン硫酸に結合する抗体」が、ウシ腎臓由来のヘパラン硫酸に実質的に結合しないものである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
「アカラン硫酸に結合する抗体」が、ブタ腸由来のヘパリンに実質的に結合しないものである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
「アカラン硫酸に結合する抗体」が、マウスのエンジェルブレス−ホーム−スワーン腫瘍組織由来のヘパラン硫酸に実質的に結合しないものである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
「アカラン硫酸に結合する抗体」が、ウシ角膜由来のケラタン硫酸に実質的に結合しないものである、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
「アカラン硫酸に結合する抗体」が、ヒアルロン酸に実質的に結合しないものである、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
「アカラン硫酸に結合する抗体」が、N−アセチルヘパロザンに実質的に結合しないものである、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
「アカラン硫酸に結合する抗体」が、モノクローナル抗体である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
「アカラン硫酸に結合する抗体」が、タンパク質とアカラン硫酸とを化学的に結合させてなる物質を抗原として免疫した哺乳動物由来のリンパ球と、哺乳動物由来のミエローマ細胞との細胞融合により形成されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
リンパ球及びミエローマ細胞がマウス由来である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
「アカラン硫酸に結合する抗体」の免疫グロブリンクラスがIgM又はIgGである、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
「アカラン硫酸に結合する抗体」が、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにおける受領番号がFERM AP−20823、FERM AP−20824、FERM AP−20825、FERM AP−20826又はFERM AP−20827であるハイブリドーマにより産生される抗体である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
生体組織が、脊椎動物の生体組織である、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
癌が、大腸癌又は扁平上皮癌である、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
「2−O脱硫酸化アカラン硫酸に結合する抗体」及び/又は「アカラン硫酸に結合する抗体」を構成成分として少なくとも含む、癌の検出キット。
【請求項1】
「2−O脱硫酸化アカラン硫酸に結合する抗体」及び/又は「アカラン硫酸に結合する抗体」を生体組織由来の試料に接触させるステップを少なくとも含む、癌の検出方法。
【請求項2】
「2−O脱硫酸化アカラン硫酸に結合する抗体」が、アカラン硫酸に実質的に結合しないものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
「2−O脱硫酸化アカラン硫酸に結合する抗体」が、N−アセチルヘパロザンに実質的に結合しないものである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
「2−O脱硫酸化アカラン硫酸に結合する抗体」が、ブタ腸由来のヘパリンに実質的に結合しないものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
「2−O脱硫酸化アカラン硫酸に結合する抗体」が、ウシ腎臓由来のヘパラン硫酸に実質的に結合しないものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
「2−O脱硫酸化アカラン硫酸に結合する抗体」が、マウスのエンジェルブレス−ホーム−スワーン腫瘍組織由来のヘパラン硫酸に実質的に結合しないものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
「2−O脱硫酸化アカラン硫酸に結合する抗体」が、モノクローナル抗体である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
「2−O脱硫酸化アカラン硫酸に結合する抗体」が、タンパク質と2−O脱硫酸化アカラン硫酸とを化学的に結合させてなる物質を抗原として免疫した哺乳動物由来のリンパ球と、哺乳動物由来のミエローマ細胞との細胞融合により形成されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
リンパ球及びミエローマ細胞が、マウス由来である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
「2−O脱硫酸化アカラン硫酸に結合する抗体」の免疫グロブリンクラスがIgMである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
「2−O脱硫酸化アカラン硫酸に結合する抗体」が、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにおける受領番号がFERM AP−20828であるハイブリドーマにより産生される抗体である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
「アカラン硫酸に結合する抗体」が、ウシ腎臓由来のヘパラン硫酸に実質的に結合しないものである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
「アカラン硫酸に結合する抗体」が、ブタ腸由来のヘパリンに実質的に結合しないものである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
「アカラン硫酸に結合する抗体」が、マウスのエンジェルブレス−ホーム−スワーン腫瘍組織由来のヘパラン硫酸に実質的に結合しないものである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
「アカラン硫酸に結合する抗体」が、ウシ角膜由来のケラタン硫酸に実質的に結合しないものである、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
「アカラン硫酸に結合する抗体」が、ヒアルロン酸に実質的に結合しないものである、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
「アカラン硫酸に結合する抗体」が、N−アセチルヘパロザンに実質的に結合しないものである、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
「アカラン硫酸に結合する抗体」が、モノクローナル抗体である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
「アカラン硫酸に結合する抗体」が、タンパク質とアカラン硫酸とを化学的に結合させてなる物質を抗原として免疫した哺乳動物由来のリンパ球と、哺乳動物由来のミエローマ細胞との細胞融合により形成されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
リンパ球及びミエローマ細胞がマウス由来である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
「アカラン硫酸に結合する抗体」の免疫グロブリンクラスがIgM又はIgGである、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
「アカラン硫酸に結合する抗体」が、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにおける受領番号がFERM AP−20823、FERM AP−20824、FERM AP−20825、FERM AP−20826又はFERM AP−20827であるハイブリドーマにより産生される抗体である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
生体組織が、脊椎動物の生体組織である、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
癌が、大腸癌又は扁平上皮癌である、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
「2−O脱硫酸化アカラン硫酸に結合する抗体」及び/又は「アカラン硫酸に結合する抗体」を構成成分として少なくとも含む、癌の検出キット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2007−298420(P2007−298420A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127069(P2006−127069)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(304031427)愛知県 (36)
【出願人】(000195524)生化学工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(304031427)愛知県 (36)
【出願人】(000195524)生化学工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】
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