説明

癌の治療におけるSPARC微小環境シグネチャの使用

本発明は、化学療法、放射線療法、手術療法及び併用療法を含む療法への応答を予測するための、マルチパラメトリック抗SPARC抗体ベースの技術を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連事件
本特許出願は、2009年9月18日出願の米国仮特許出願第61/27,969号(これは本明細書中に参照により組み込まれる)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
分泌タンパク質酸性及びシステインリッチ(Secreted protein acidic and rich in cysteine)(オステオネクチン、BM40又はSPARCとしても知られる)(本明細書中で以下「SPARC」)は、細胞形状の変化を引き起こし、細胞周期の進行を阻害し、細胞外マトリックスの合成に影響を与える、マトリックス結合タンパク質である(Bradshawら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 100:6045−6050(2003))。マウスSPARC遺伝子は1986年にクローニングされ(Masonら、EMBO J.5:1465−1472(1986))、全長ヒトSPARC cDNAは、1987年にクローニングされ配列決定された(Swaroopら、Genomics 2:37−47(1988))。SPARC発現は発生的に調節され、正常な発生の間に又は創傷に応答してリモデリングを受けている組織において主に発現される。例えば、高レベルのSPARCタンパク質は、発生中の骨及び歯において発現される(例えば、Laneら、FASEB J.,8,163 173(1994);Yan & Sage,J.Histochem.Cytochem.47:1495−1505(1999)を参照)。
【0003】
SPARCはいくつかの侵襲性癌で上方制御されるが、対応する正常組織には存在しない(Porterら、J.Histochem.Cytochem.,43,791(1995))。SPARC発現は、種々の腫瘍(例えば、膀胱、肝臓、卵巣、腎臓、腸及び乳房)において誘導される。例えば、膀胱癌では、SPARC発現は進行した癌腫に関連している。病期T2以上の浸潤性膀胱腫瘍は、病期T1の膀胱腫瘍(又はそれより低い表在性腫瘍)と比較して高いレベルのSPARCを発現することが示されており、予後がより不良である(例えば、Yamanakaら、J.Urology,166,2495 2499(2001)を参照)。髄膜腫では、SPARC発現は、浸潤性腫瘍のみと関連している(例えば、Rempelら、Clincal Cancer Res.,5,237 241(1999)を参照)。SPARC発現は、上皮内浸潤性乳癌病変の74.5%(例えば、Bellahceneら、Am.J.Pathol.,146,95 100(1995)を参照)及び浸潤性乳管癌の54.2%(例えば、Kimら、J.Korean Med.Sci.,13,652 657(1998)を参照)においても検出されている。SPARC発現は、乳癌における頻繁な微小石灰化とも関連しており(例えば、上記Bellahceneらを参照)、SPARC発現が、骨への乳房転移の親和性を担っている可能性があることを示唆している。
【0004】
驚くべきことに、SPARCは、いくつかの系において抗腫瘍活性を有することも示されている。SPARCは、G1中期で細胞を停止させる強力な細胞周期阻害剤であり(Yan & Sage,J.Histochem.Cytochem.47:1495−1505(1999))、SPARCの誘導性の発現は、in vitroモデル系で乳癌細胞の増殖を阻害することが示されている(Dhanesuanら、Breast Cancer Res.Treat.75:73−85(2002))。同様に、外因性SPARCは、HOSE(ヒト卵巣表層上皮)及び卵巣癌細胞の両方の増殖を、濃度依存的様式で減少させることができる。さらに、SPARCは、卵巣癌細胞においてアポトーシスを誘導する。さらに、卵巣上皮細胞などの細胞上のSPARC受容体が報告されている。その受容体に対するSPARCの結合は、SPARCの腫瘍抑制機能を媒介する組織特異的なシグナル伝達経路を作動させる可能性が高いことが提唱されている(Yiuら、Am.J.Pathol.159:609−622(2001))。精製されたSPARCは、血管新生を阻害し、in vivo異種移植片モデル系において神経芽細胞腫の腫瘍増殖を害することも報告されている(Chlenskiら、Cancer Res.62:7357−7363(2002))。
【0005】
これらの矛盾するように思われる結果は、未成熟SPARCの示差的なスプライシング及び翻訳後修飾から生じるSPARCの多数の形態に起因する可能性がある。結果として、例えば繊維芽細胞SPARCは、血小板SPARCとは異なる分子である。さらに、SPARCは、示差的にグリコシル化される(Kaufmanら、Glycobiology 14(7):609−619(2004)を参照)。SPARCは、多様なプロテアーゼによって容易に分解され、細胞外環境においてターンオーバーを受けると考えられる。細胞外プロテアーゼによるSPARCのターンオーバーは、新規SPARCエピトープの露出を生じる(Lane & Sage,FASEB J.8(2):163−173(1994))。これらの因子は、広い範囲の免疫組織学的染色パターンを生じる。各抗体は、顕著に異なる染色パターンを生じ得る。
【0006】
癌は、以下の3つの型の治療のうち1つ又はそれらの組み合わせによって現在主に治療されている:手術、放射線及び化学療法。手術は一般に、初期段階の癌の治療にのみ有効である。癌を有する個体の50%より多くにとっては、診断される時までに、彼らは有効な手術治療の候補ではなくなっている。放射線治療は、初期及び中期段階の癌で、臨床的に局在化した疾患を示す個体に対してのみ有効であり、転移を有する癌の後期段階には有効ではない。
【0007】
化学療法は、細胞複製又は細胞代謝の破壊を含む。化学療法は有効であり得るが、重篤な副作用(例えば、嘔吐、低い白血球数(WBC)、脱毛、体重減少及び他の毒性作用)が存在する。非常に毒性の高い副作用に起因して、癌を有する多くの個体が、完全な化学療法レジメン(regime)を首尾よく完了することができない。化学療法が誘導する副作用は、個体の生活の質に顕著に影響を与え、治療に対する個体のコンプライアンスに劇的に影響を与え得る。さらに、化学療法剤に関連する有害な副作用は一般に、これらの薬物の投与における主要な用量規制毒性(DLT)である。例えば、粘膜炎は、いくつかの抗癌剤(代謝拮抗細胞傷害剤5−FU、メトトレキサート、及びドキソルビシンなどの抗腫瘍抗生物質が含まれる)に関する主要な用量規制毒性である。重篤な場合、化学療法が誘導するこれらの副作用の多くは、入院につながり得るか、或いは疼痛のための鎮痛薬による治療を必要とし得る。さらに、化学療法に対する耐性の低さは、癌を有する一部の個体において死をもたらし得る。抗癌薬の極端な副作用は、標的特異性が低いことによって引き起こされる。薬物は、意図した標的である腫瘍だけでなく、ほとんどの正常臓器を通って循環する。副作用を引き起こす標的特異性の低さはまた、正確に標的化されるのが一部の薬物だけなので、化学療法の効力を低下させる。化学療法の効力は、標的腫瘍内の抗癌薬の保持の低さによってさらに低下させられる。
【0008】
癌の重篤度及び幅広さに起因して、手術、化学療法及び放射線治療の欠点を克服する、かかる疾患及び障害の有効な治療が強く必要とされている。特に、化学療法に関連する重篤な副作用を考慮すると、腫瘍が化学療法レジメンに応答するか否かを特定することが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本明細書中に記載される発明は、種々のSPARC抗体で観察される不均質な免疫組織学の利用に基づく癌の新規治療方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第一の哺乳動物中の腫瘍を療法により治療する方法を提供し、この方法は以下を含む:
以下を含む、該療法につき2つ以上の予測的SPARC微小環境シグネチャ(SPARC Microenvironmental Signatures;「SMS」)を決定する工程:該療法につき既知の転帰を有する他の哺乳動物から、腫瘍の複数の組織切片を調製する工程;該療法につき既知の転帰を有する他の哺乳動物由来の腫瘍のそれぞれの1以上の組織切片を第一の抗SPARC抗体で免疫染色する工程であって、該第一の抗SPARC抗体は、腫瘍細胞中のSPARCを選択的に染色する、工程;該療法につき既知の転帰を有する他の哺乳動物由来の腫瘍のそれぞれの1以上の組織切片を第二の抗SPARC抗体で免疫染色する工程であって、該第二の抗SPARC抗体は、繊維芽細胞中のSPARCを選択的に染色する、工程;第一の抗SPARC抗体による、該療法につき既知の転帰を有する他の哺乳動物由来の腫瘍のそれぞれの、腫瘍内の腫瘍細胞、繊維芽細胞、炎症細胞、無細胞間質/マトリックス、血管、神経組織及び正常な解剖学的形態、又はそれらの任意の組合わせの免疫染色パターンを決定し、かつ第二の抗体による、腫瘍内の腫瘍細胞、繊維芽細胞、炎症細胞、無細胞間質/マトリックス、血管、神経組織及び正常な解剖学的形態、又はそれらの任意の組合わせの免疫染色を決定することによって、該療法につき既知の転帰を有する他の哺乳動物由来の各腫瘍のSMSを決定する工程;既知の転帰を有する他の哺乳動物由来の各腫瘍の腫瘍SMSを、2つ以上の転帰グループにクラスタリングする工程であって、各転帰グループからのクラスターのSMS重心が予測的SMSを規定する、工程。次に、以下を含むプロセスによって、第一の哺乳動物由来の腫瘍のSMSを決定する:第一の哺乳動物由来の腫瘍の複数の組織切片を調製する工程;該第一の哺乳動物由来の腫瘍の1以上の組織切片を第一の抗SPARC抗体で免疫染色する工程であって、該第一の抗SPARC抗体は、腫瘍細胞中のSPARCを選択的に染色する、工程;該第一の哺乳動物由来の腫瘍の1以上の組織切片を第二の抗SPARC抗体で免疫染色する工程であって、該第二の抗SPARC抗体は、繊維芽細胞中のSPARCを選択的に染色する、工程;第一の抗SPARC抗体による、腫瘍内の腫瘍細胞、繊維芽細胞、炎症細胞、無細胞間質/マトリックス、血管、神経組織及び正常な解剖学的形態、又はそれらの任意の組合わせについて、第一の哺乳動物における腫瘍の免疫染色パターンを決定し、かつ第二の抗体による、腫瘍内の腫瘍細胞、繊維芽細胞、炎症細胞、無細胞間質/マトリックス、血管、神経組織及び正常な解剖学的形態、又はそれらの任意の組合わせの、第一の哺乳動物由来の腫瘍の免疫染色を決定することによって、第一の哺乳動物の腫瘍SMSを決定する工程;及び第一の哺乳動物の腫瘍SMSから(a)で決定した予測的SMSまでのユークリッド距離を決定し、第一の哺乳動物の腫瘍を、最も近い予測的SMSを有する転帰グループの一員として分類する工程。第一の哺乳動物の腫瘍SMSが、該療法に応答する転帰グループにマッピングされる場合、該第一の哺乳動物に対する治療有効量の療法。
【0011】
本発明に従う実施形態には、第一の哺乳動物中の同じ腫瘍型が、研究した全ての「他の哺乳動物」の腫瘍型と同じである実施形態が含まれる。使用され得る任意の適切な療法としては、化学療法、放射線療法、手術療法、代替療法及びそれらの組合わせが挙げられた。適切な療法には、例えば、nab−パクリタキセルを含む療法が挙げられる。適切な腫瘍としては、乳癌、膵臓癌及び黒色腫が挙げられる。クラスタリングは、K平均クラスタリング、自己組織化マップ及び階層的クラスタリングなどを含む任意の適切な方法によって実施され得る。
【0012】
本発明は、化学療法レジメン又は他の適切な療法で哺乳動物中の腫瘍を治療する方法を提供し、この方法は以下を含む:
a.SPARC微小環境シグネチャ(SMS)を得るために腫瘍の複数の組織切片を調製する工程;
b.該腫瘍の組織切片を第一の抗SPARC抗体で免疫染色する工程であって、該第一の抗SPARC抗体は、腫瘍細胞中のSPARCを選択的に染色する、工程;
c.該腫瘍の組織切片を第二の抗SPARC抗体で免疫染色する工程であって、該第二の抗SPARC抗体は、繊維芽細胞中のSPARCを選択的に染色する、工程;
d.第一の抗SPARC抗体による腫瘍内の腫瘍細胞、繊維芽細胞、炎症細胞、無細胞間質/マトリックス、血管、神経組織及び正常な解剖学的形態、又はそれらの任意の組合わせの染色を決定し、かつ第二の抗体による腫瘍内の腫瘍細胞、繊維芽細胞、炎症細胞、無細胞間質/マトリックス、血管、神経組織及び正常な解剖学的形態、又はそれらの任意の組合わせの染色を決定する工程;
e.決定されたSMSが、化学療法レジメン又は他の適切な療法の使用を示す所定のSMSの基準を満たす場合に、治療有効量の療法を投与する工程。
【0013】
療法の使用を示す、本発明が提供する所定のSMSには、第一の抗体での少なくとも49%の間質染色ポジティブと、第二の抗体での少なくとも66の繊維芽細胞スコア、41の繊維芽細胞強度、26の腫瘍強度、51の炎症細胞強度、55の炎症細胞スコア、33の血管%、54の腫瘍スコア、64の血管強度、54の繊維芽細胞%、64の血管強度、43の炎症細胞%及び62の間質スコアの染色とを有する免疫染色を含むものが挙げられ、ここで、療法はnab−パクリタキセルを含むレジメンであり、腫瘍は膵臓癌である。即ち、療法が使用されるべきであることを示す、腫瘍におけるSPARC発現からのこれら16の基準を含むSMSを使用する。本発明に従う、所定のSMSのこのグループ中のかかる所定のSMSには、腫瘍におけるSPARC発現の2〜15のこれら基準のみからなるものも含まれる。
【0014】
当業者は、さらなる所定のSMSが、他の一連の腫瘍のクラスター分析によって同定できることを容易に理解するであろう。
【0015】
本発明はまた、化学療法レジメン又は他の適切な療法に対する哺乳動物中の腫瘍の応答を予測するためのキットも提供し、これは以下を含む:
a.第一の抗SPARC抗体による免疫染色(該第一の抗SPARC抗体は、腫瘍細胞中のSPARCを選択的に染色する)、及び
b.第二の抗SPARC抗体による免疫染色(該第二の抗SPARC抗体は、繊維芽細胞中のSPARCを選択的に染色する)。
【0016】
本発明はまた、化学療法又は他の適切な療法に対する応答、及び腫瘍を有する哺乳動物が低リスクの腫瘍の進行又は腫瘍による死を有するか否かを予測する方法を提供し、この方法は以下を含む:SPARC微小環境シグネチャ(SMS)を得るために腫瘍の複数の組織切片を調製する工程;該腫瘍の組織切片を第一の抗SPARC抗体で免疫染色する工程であって、該第一の抗SPARC抗体は、腫瘍細胞中のSPARCを選択的に染色する、工程;該腫瘍の組織切片を第二の抗SPARC抗体で免疫染色する工程であって、該第二の抗SPARC抗体は、繊維芽細胞中のSPARCを選択的に染色する、工程;第一の抗SPARC抗体による腫瘍内の腫瘍細胞、繊維芽細胞、炎症細胞、無細胞間質/マトリックス、血管、神経組織及び正常な解剖学的形態、又はそれらの任意の組合わせの染色を決定し、かつ第二の抗体による腫瘍内の腫瘍細胞、繊維芽細胞、炎症細胞、無細胞間質/マトリックス、血管、神経組織及び正常な解剖学的形態、又はそれらの任意の組合わせの染色を決定する工程;並びに所定のSMSが存在する場合に、化学療法に対するポジティブ応答、又は低リスクの進行若しくは死が存在することを予測する工程。
【0017】
本発明はまた、化学療法レジメンに対する哺乳動物中の腫瘍の応答(病理学的応答、全生存又は無進行生存として規定される応答を含むが、これらに限定されない)を予測する方法を提供する:腫瘍の組織切片を抗SPARC抗体で免疫染色する工程(該抗SPARC抗体は、MAB941モノクローナル抗体によって認識されるエピトープを認識する);及び抗SPARC抗体による組織切片中の腫瘍細胞の染色が存在する場合、化学療法レジメンに対する不良な応答を予測する工程。特に、本発明は、化学療法レジメンに対する膵臓癌腫の応答を予測する方法を提供し、この化学療法レジメンは、アルブミン結合ナノ粒子パクリタキセル及びゲムシタビンを投与することを含む。
【0018】
本発明はまた、化学療法レジメンに対する哺乳動物中の腫瘍の応答を予測する方法を提供し、この方法は以下を含む:腫瘍の組織切片を、AF941ポリクローナル抗体によって認識される免疫優性エピトープを認識する抗SPARC抗体で免疫染色する工程;及び抗SPARC抗体による組織切片中の腫瘍細胞の染色が存在する場合、化学療法レジメンに対するポジティブ応答を予測する工程。特に、本発明は、化学療法レジメンに対する腫瘍の応答を予測する方法を提供し、この化学療法レジメンは、アルブミン結合ナノ粒子パクリタキセル及びゲムシタビンを投与することを含む。
【0019】
本発明により提供される方法のいずれか1つには、哺乳動物がヒト患者である方法も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、2つの異なる抗SPARC抗体、モノクローナル(A)、ポリクローナル(B)によって生成されたSPARC免疫染色の異なるパターンを示す。
【図2】図2は、nab−パクリタキセルベースのレジメンで治療した、D染色パターンを示すか又は示さないかのいずれかの乳癌患者についての生存曲線を示す。
【図3】図3は、乳癌患者における無進行生存(PFS)データのK平均クラスタリングからのヒートダイアグラムを示す。
【図4A】図4Aは、乳癌における無進行生存(PFS)に対するTN(A)ステータスの影響を反映する生存曲線を示す。
【図4B】図4Bは、乳癌における無進行生存(PFS)に対するER(B)ステータスの影響を反映する生存曲線を示す。
【図4C】図4Cは、乳癌における無進行生存(PFS)に対するPR(C)ステータスの影響を反映する生存曲線を示す。
【図5】図5は、乳癌におけるPFSに対するSMS(SPARC微小環境シグネチャ)及びTNステータスの影響を反映する生存曲線を示す。
【図6】図6は、乳癌におけるPFSに対するSMS及びERステータスの影響を反映する生存曲線を示す。
【図7】図7は、乳癌におけるPFSに対するSMS及びPRステータスの影響を反映する生存曲線を示す。
【図8】図8は、5つの生存カテゴリーを使用した、乳癌患者における応答データのクラスタリングからのヒートダイアグラムを示す。
【図9】図9は、2つの生存カテゴリーを使用した、乳癌患者における応答データのクラスタリングからのヒートダイアグラムを示す。
【図10】図10は、患者を良好な予後のSMS群及び不良な予後のSMS群に分けた、膵臓癌におけるPFSデータのK平均クラスタリングからのヒートダイアグラムを示す。
【図11A】図11は、SMSに基づく、膵臓癌におけるPFS(A)及び全生存(OS)(B)に関する生存曲線を示す。
【図11B】図11は、SMSに基づく、膵臓癌におけるPFS(A)及び全生存(OS)(B)に関する生存曲線を示す。
【図12A】図12は、CA19ステータスに基づく、膵臓癌におけるPFS(A)及び全生存(OS)(B)に関する生存曲線を示す。
【図12B】図12は、CA19ステータスに基づく、膵臓癌におけるPFS(A)及び全生存(OS)(B)に関する生存曲線を示す。
【図13】図13は、膵臓癌における、PFSに対するSMS及びCA19ステータスの影響を反映する生存曲線を示す。
【図14】図14は、膵臓癌における、OSに対するSMS及びCA19ステータスの影響を反映する生存曲線を示す。
【図15】図15は、患者を良好なPFS群及び不良なPFS群に分けた、黒色腫患者におけるPFSデータのK平均クラスタリングからのヒートダイアグラムを示す。
【図16】図16は、SMSに基づく、黒色腫におけるPFS(A)及び全生存(OS)(B)に関する生存曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書中で使用する場合、用語「腫瘍」とは、良性であれ悪性(癌性)であれ、原発部位の病変であれ転移であれ、任意の新生物成長、増殖又は細胞塊をいう。本明細書中で使用する場合、用語「癌」とは、正常な増殖制御に対する感受性を失った細胞の増殖によって引き起こされる又は特徴付けられる、増殖性障害をいう。同じ組織型の癌は通常同じ組織に起源し、それらの生物学的特徴に基づいて種々のサブタイプに分割され得る。癌の4つの一般的カテゴリーは、癌腫(上皮組織由来)、肉腫(結合組織又は中胚葉由来)、白血病(造血組織由来)及びリンパ腫(リンパ組織由来)である。200を超える異なる型の癌が知られており、身体の全ての臓器及び組織が罹患し得る。癌の定義を限定しない癌の具体例には、黒色腫、白血病、星状細胞腫、神経膠芽腫、網膜芽細胞腫、リンパ腫、神経膠腫、ホジキンリンパ腫及び慢性リンパ球性白血病が含まれ得る。種々の癌に罹患し得る臓器及び組織の例には、膵臓、乳房、甲状腺、卵巣、子宮、精巣、前立腺、甲状腺、下垂体、副腎、腎臓、胃、食道又は直腸、頭頸部、骨、神経系、皮膚、血液、鼻咽頭組織、肺、泌尿器、子宮頸部、膣、外分泌腺及び内分泌腺が含まれる。或いは、癌は、多中心性でも、未知の原発部位の癌(CUPS)でもよい。
【0022】
本明細書中で使用する場合、「癌性細胞」とは、形質転換事象を受け、その増殖が、その形質転換事象前と同程度まではもはや制御されない、細胞をいう。
【0023】
本明細書中で使用する場合、「医薬」は、患者又は試験対象に投与され得る、効果を生じ得る組成物である。その効果は、化学的、生物学的又は物理的であり得、患者又は試験対象は、ヒト又は非ヒト動物(例えば、げっ歯類又はトランスジェニックマウス)であり得る。この組成物は、合成により製造された、天然に見出される、又は部分的に合成起源の、別個の分子組成を有する有機又は無機の低分子を含み得る。この群に含まれるのは、ヌクレオチド、核酸、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、又はこれらの実体の少なくとも1つを含む複合体である。医薬は、有効組成物単独からなってもよく、医薬上許容される賦形剤と組み合わせてもよい。
【0024】
本明細書中で使用する場合、「医薬上許容される賦形剤」には、生理学的に適合性の、任意の及び全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌(antibacterial)剤、抗菌(antimicrobial)剤若しくは抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれる。賦形剤は、静脈内、腹腔内、筋内、髄腔内又は経口投与に適したものであり得る。賦形剤には、無菌の注射可能な溶液又は分散物の即時調製のための、無菌の水性溶液又は分散物が含まれ得る。医薬の調製のためのかかる媒体の使用は、当該分野で公知である。
【0025】
本明細書中で使用する場合、医薬、薬物又は療法の「有効量」又は「薬理学的有効量」又は「治療有効量」とは、投与されると、それが使用される期間にわたって、送達された医薬、薬物又は療法が治療レベルの濃度に達する、量をいう。これは、送達様式、投薬期間、医薬を受ける対象の年齢、体重、一般的健康、性別及び食餌に依存し得る。どの用量が「薬理学的有効量」であるかの決定は、当業者の能力の範囲内の慣用の最適化を必要とする。癌細胞又は癌性細胞は、癌細胞を死滅させる又は腫瘍サイズを低下させる、癌増殖全体を低下させる(即ち、血管要素(angio element)の低下によって)及び/又は転移を阻害するレジメンの能力に基づいた所与の治療レジメン又は化学療法剤に対して「感受性」又は「抵抗性」として記載され得る。治療レジメンに抵抗性の癌細胞は、そのレジメンに応答しない可能性があり、増殖を継続し得る。治療レジメンに感受性の癌細胞は、細胞死、腫瘍サイズの低下、全増殖(腫瘍量)の低下又は転移の阻害を生じるレジメンに対して応答し得る。
【0026】
本明細書中で使用する場合、「治療レジメン」又は「療法」とは、癌性細胞にとって有害な少なくとも1種の剤の投与をいう。本発明に従う使用に適した治療レジメンには、「化学療法レジメン」、「放射線療法レジメン」、「代替療法レジメン」及びそれらの組合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
本明細書中で使用する場合、「化学療法」とは、癌性細胞を破壊するほど有害な少なくとも1種の化学療法剤の投与をいう。臨床医に入手可能なかかる化学療法剤は多数存在する。化学療法剤は、単一のボーラス用量で対象に投与してもよく、より小さい用量で経時的に投与してもよい。単一の化学療法剤を使用してもよく(単剤療法)、1より多い剤を組合わせて使用してもよい(併用療法)。化学療法は、ある種の型の癌を治療するために単独で使用してもよい。或いは、化学療法は、本明細書中に記載するような放射線療法又は代替療法(例えば免疫療法)などの、他の型の治療と組合わせて使用してもよい。さらに、化学療法増感剤(chemosensitizer)を、化学療法剤との併用療法として投与してもよい。
【0028】
本明細書中で使用する場合、「化学療法剤」又は「抗癌薬」とは、癌を治療するために使用され得、一般に、癌性細胞を直接死滅させる能力を有する医薬をいう。化学療法剤の例には、アルキル化剤、代謝拮抗薬、天然産物、ホルモン及びアンタゴニスト、並びに種々の剤(miscellaneous agent)が含まれる。代替名の例は括弧中に示す。アルキル化剤の例には、メクロレタミン、スクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン(L−サルコリシン)及びクロラムブシルなどのナイトロジェンマスタード;ヘキサメチルメラミン及びチオテパなどのエチレンイミン及びメチルメラミン;ブスルファンなどのスルホン酸アルキル;カルムスチン(BCNU)、セムスチン(メチル−CCNU)、ロムスチン(CCNU)及びストレプトゾシン(ストレプトゾトシン)などのニトロソウレア;リン酸エストラムスチンなどのDNA合成アンタゴニスト;並びにダカルバジン(DTIC、ジメチル−トリアゼノイミダゾールカルボキサミド)及びテモゾロミドなどのトリアジンが挙げられる。代謝拮抗薬の例には、メトトレキサート(アメトプテリン)などの葉酸アナログ;フルオロウラシン(fluorouracin)(5−フルオロウラシル、5−FU、5FU)、フロクスウリジン(フルオロデオキシウリジン、FUdR)、シタラビン(シトシンアラビノシド)及びゲムシタビンなどのピリミジンアナログ;メルカプトプリン(6−メルカプトプリン、6−MP)、チオグアニン(6−チオグアニン、TG)及びペントスタチン(2’−デオキシコホルマイシン、デオキシコホルマイシン)、クラドリビン及びフルダラビンなどのプリンアナログ;並びにアムサクリンなどのトポイソメラーゼ阻害剤が挙げられる。天然産物の例には、ビンブラスチン(VLB)及びビンクリスチンなどのビンカアルカロイド;パクリタキセル及びドセタキセル(Taxotere)などのタキサン;エトポシド及びテニポシドなどのエピポドフィロトキシン;トポテカン及びイリノテカンなどのカンプトテシン;ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン、ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン(マイトマイシンC)、イダルビシン、エピルビシンなどの抗生物質;L−アスパラギナーゼなどの酵素;並びにインターフェロンα及びインターロイキン2などの生物学的応答調節物質が挙げられる。ホルモン及びアンタゴニストの例には、ブセレリンなどの黄体形成放出ホルモン(luteinising releasing hormon)アゴニスト;プレドニゾン及び関連製剤などの副腎皮質ホルモン;カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン及び酢酸メゲストロールなどのプロゲスチン;ジエチルスチルベストロール及びエチニルエストラジオール並びに関連製剤などのエストロゲン;タモキシフェン及びアナストロゾールなどのエストロゲンアンタゴニスト;プロピオン酸テストステロン及びフルオキシメステロン並びに関連製剤などのアンドロゲン;フルタミド及びビカルタミドなどのアンドロゲンアンタゴニスト;並びにリュープロリドなどの性腺刺激ホルモン放出ホルモンアナログが挙げられる。種々の剤の例としては、サリドマイド;シスプラチン(cis−DDP)、オキサリプラチン及びカルボプラチンなどの白金配位錯体;ミトキサントロンなどのアントラセンジオン;ヒドロキシウレアなどの置換尿素;プロカルバジン(N−メチルヒドラジン、MIH)などのメチルヒドラジン誘導体;ミトタン(o,p’−DDD)及びアミノグルテチミドなどの副腎皮質抑制剤;ベキサロテンなどのRXRアゴニスト;並びにイマチニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤が挙げられる。化学療法剤のこれら及びさらなる例の代替名及び商標名、並びに投薬及び投与レジメンを含むそれらの使用方法は、当業者に公知であろう。特に、本発明に従う使用に適した化学療法剤には、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセルが含まれるが、これに限定されない。
【0029】
ABI−007としても知られるAbraxaneTMは、好ましい化学療法剤である。AbraxaneTMは、パクリタキセルのアルブミン−ナノ粒子製剤である。ビヒクルとしてのアルブミンナノ粒子の使用は、生理食塩水で再構成したときにコロイドの形成を生じる。臨床研究に基づいて、AbraxaneTMの使用は、TaxolTMと比較して低下した過敏症反応によって特徴付けられることが示されている。従って、AbraxaneTMを受ける患者には前投薬は必要ない。
【0030】
アルブミン−ナノ粒子製剤の別の利点は、毒性の乳化剤を排除することによって、TaxolTMで可能なものよりもより頻繁な間隔でより高い用量のパクリタキセルを投与することが可能である点である。増強された効力は、(i)より高い耐容量(300mg/m)、(ii)より長い半減期、(iii)延長された局所腫瘍アベイラビリティ及び/又は(iv)in vivo放出AbraxaneTMの持続の結果として、固形腫瘍で見られた可能性がある。
【0031】
ポジティブ応答は、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、なおより好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも25%又はそれ以上の計量(metric)の改善によって示される、病理学的応答(腫瘍サイズ又は腫瘍量の低下)、全生存又は無進行生存が挙げられるがこれらに限定されないものとして規定される。或いは、計量は、療法なし又は事前療法又は代替療法と比較して統計的に有意な量の改善を示す。
【0032】
ネガティブ応答には、病理学的進行、全体生存の低下又は無進行生存の低下が含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
本明細書中で使用する場合、用語「放射線療法レジメン」又は「放射線療法」とは、癌性細胞を死滅させるための放射線の投与をいう。放射線は、細胞内の種々の分子と相互作用するが、細胞死を生じる主な標的はデオキシリボ核酸(DNA)である。しかし、放射線療法はしばしば、細胞膜及び核膜並びに他のオルガネラにも損傷を生じる。DNA損傷は通常、糖−リン酸骨格における一本鎖及び二本鎖の破壊を含む。さらに、細胞機能を破壊し得る、DNA及びタンパク質の架橋も存在し得る。放射線の型に依存して、DNA損傷のメカニズムは、生物学的効果比と同様に変動し得る。例えば、重粒子(即ち、プロトン、中性子)は、DNAを直接損傷し、より高い生物学的効果比を有する。電磁放射線は、細胞水のイオン化によって主に生成される短寿命のヒドロキシルフリーラジカルを介して作用する間接的イオン化を生じる。放射線の臨床適用は、体外照射(外部線源から)及びブラキセラピー(患者中に移植又は挿入された放射線源を使用する)からなる。体外照射はX線及び/又はγ線からなるが、ブラキセラピーは、崩壊して、α粒子、又はγ線と共にβ粒子を放出する、放射性核種を使用する。
【0034】
放射線療法はさらに、放射線増感剤として作用する化学療法剤との併用化学療法で使用され得る。個々の患者に適した放射線療法の具体的選択は、組織及び癌の病期を考慮して、ケアの現場で当業者により決定され得る。
【0035】
本明細書中で使用する場合、「代替療法レジメン」又は「代替療法」には、例えば、生物学的応答調節物質(ポリペプチド−、炭水化物−及び脂質−生物学的応答調節物質が含まれる)、毒素、レクチン、血管新生抑制剤、受容体型チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、IressaTM(ゲフィチニブ)、TarcevaTM(エルロチニブ)、ErbituxTM(セツキシマブ)、メシル酸イマチニブ(GleevecTM)、プロテオソーム(proteosome)阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、VelcadeTM);PTK787(ZK222584)などのVEGFR2阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤(例えば、ZM447439);ラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)阻害剤、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤、ラパマイシン阻害剤(例えば、シロリムス、RapamuneTM);ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、ティピファニブ、Zarnestra);マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤(例えば、BAY 12−9566;硫酸化多糖テコガラン(tecogalan));血管新生阻害剤(例えば、AvastinTM(ベバシズマブ);TNP−4などのフマギリンアナログ;カルボキシアミノトリアゾール;BB−94及びBB−2516;サリドマイド;インターロイキン−12;リノミド(linomide);ペプチド断片;並びに血管増殖因子及び血管増殖因子受容体に対する抗体);血小板由来増殖因子受容体阻害剤、プロテインキナーゼC阻害剤、マイトジェン活性化キナーゼ阻害剤、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ阻害剤、ラウス肉腫ウイルス形質転換癌遺伝子(SRC)阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、低分子量低酸素誘導因子阻害剤、ヘッジホッグ阻害剤、及びTGF−βシグナル伝達阻害剤が含まれ得る。さらに、免疫療法剤も、代替療法レジメンとして考慮されるであろう。例としては、ケモカイン、ケモタキシン、サイトカイン、インターロイキン又は組織因子が挙げられる。適切な免疫療法剤には、予め形成された抗体を含む血清又はγグロブリン;非特異的免疫賦活剤;能動的特異的免疫療法;及び養子免疫療法も含まれる。さらに、代替療法には、ポリヌクレオチド(アンチセンス分子が含まれる)、ポリペプチド、抗体、遺伝子治療ベクターなどの、他の生物学ベースの化学実体が含まれ得る。かかる代替療法は、単独若しくは併用で、又は本明細書中に記載される他の治療レジメンと組合わせて投与され得る。代替療法レジメンで使用されるこれらの剤及び代替療法レジメンで使用される剤のさらなる例の代替名及び商標名、並びに投薬及び投与レジメンを含むそれらの使用方法は、当分野に精通した医師に公知であろう。さらに、併用療法において代替療法レジメン(投薬及び投与レジメンを含む)で使用される化学療法剤及び他の剤の使用方法も、当業者に公知であろう。
【0036】
特に、適切な代替療法レジメンには、例えば、Her2に対する抗体(例えば、Trastuzumab)、EGF又はEGF受容体に対する抗体、VEGFに対する抗体(例えば、Bevacizumab)又はVEGF受容体に対する抗体、CD20に対する抗体などの、癌細胞の表面上の分子に対する抗体が含まれるが、これらに限定されない。治療剤はさらに、補体活性化、細胞媒介性細胞傷害、アポトーシス誘導、細胞死誘導及びオプソニン化のうち1以上を媒介する、任意の抗体又は抗体断片を含み得る。例えば、かかる抗体断片は、完全又は部分Fcドメインであり得る。
【0037】
本明細書中で使用する場合、用語「組織切片」とは、顕微鏡スライドに載せるため及び任意の適切なプロトコルで染色するために適した組織サンプルの薄い切片をいう。本明細書中で使用する場合、「組織切片を免疫染色する」とは、細胞及び(are)細胞内マトリックスの成分への抗体の結合から生じる、組織切片の細胞及び細胞内マトリックスの染色をいう。本明細書中で使用する場合、構造を「支配的に(predominantly)」又は「選択的に(preferentially)」(例えば、繊維芽細胞を上回って癌細胞を)染色するためには、組織切片中の選択的に染色された構造の免疫染色は、任意の適切な系により病理学者によって分類された強度のものでなければならない(例えば以下を含む:当業者により顕微鏡で観察された場合には3/3、1/3の強度のみでの十分な他の全ての構造の染色、又は0/3(染色なし)を示す)。
【0038】
本明細書中で使用する場合、用語「エピトープ」とは、抗体が結合する三次元構造、特に、抗体に標的化されるアミノ酸配列をいう。本明細書中で使用する場合、用語「MAB941モノクローナル抗体によって認識されるエピトープ」とは、MAB941モノクローナル抗体が結合する、SPARC中のアミノ酸配列をいう。(SPARCモノクローナル抗体(R&D Systems、Minneapolis、MN)、カタログ番号MAB941)
【0039】
本明細書中で使用する場合、「免疫優性(imunodominant)エピトープ」とは、最大の集合的結合活性でポリクローナル抗血清中の抗体が結合する三次元構造をいう。特に、そのポリクローナル抗体を使用する免疫染色プロトコルでの染色パターンを担うエピトープ。本明細書中で使用する場合、用語「AF941ポリクローナル(polyconal)抗体によって認識される免疫優性SPARCエピトープ」とは、AF941ポリクローナル抗血清によって最大の結合活性で見出される、SPARCペプチド及びアミノ酸配列をいう。従って、これらのSPARCペプチド及びアミノ酸配列への結合及びそれらの染色が生じ、免疫染色の大部分が観察される。(SPARCポリクローナル抗体(R&D Systems、Minneapolis、MN)、カタログ番号AF941)
【0040】
「抗体」とは、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二量体、多量体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)を意味するが、これらに限定されない。抗体は、マウス、ヒト、ヒト化、キメラ、又は他の種由来のものであり得る。抗体は、特異的抗原を認識しそれに結合し得る、免疫系によって産生されるタンパク質である。標的抗原は一般に、複数の抗体上のCDRによって認識される多数の結合部位(エピトープともいう)を有する。異なるエピトープに特異的に結合するそれぞれの抗体は、異なる構造を有する。従って、1つの抗原は、1つより多い対応する抗体を有し得る。
【0041】
抗体には、全長免疫グロブリン分子、又は全長免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分(即ち、目的の標的の抗原又はその一部を免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子)が含まれる。標的には、癌細胞、又は自己免疫疾患に関連する自己抗原を産生する他の細胞が含まれる。
【0042】
本明細書中に開示する免疫グロブリンは、任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD及びIgA)又はサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)の免疫グロブリン分子であり得る。免疫グロブリンは、任意の種由来であり得る。
【0043】
「抗体断片」は、所望の生物活性を維持する、全長抗体の部分を含む。「抗体断片」は一般に、その抗原結合領域即ち可変領域である。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片;ダイアボディ(diabody);直鎖抗体;Fab発現ライブラリーにより産生される断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、CDR(相補性決定領域)、及び癌細胞抗原、ウイルス抗原若しくは微生物抗原に免疫特異的に結合する上記のいずれかのエピトープ結合断片、単鎖抗体分子;並びに抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。
【0044】
本明細書中で言及するモノクローナル抗体には、具体的には、それが所望の生物活性を示す限り、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種由来又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同であるが、鎖の残部が、別の種由来又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同である「キメラ」抗体、並びにかかる抗体の断片が含まれる(米国特許第4,816,567号)。本明細書中で目的とするキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、旧世界ザル又は類人猿)由来の可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列とを含む、「霊長類化」抗体が含まれる。
【0045】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」及び「ADCC」とは、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)が、標的細胞上の結合抗体を認識し、続いてその標的細胞の溶解を引き起こす、細胞媒介性の反応をいう。ADCCを媒介する主な細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現するが、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。目的の分子のADCC活性を評価するために、in vitro ADCCアッセイが実施され得る(米国特許第5,003,621号;米国特許第5,821,337号)。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核球(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。
【0046】
「細胞死を誘導する」抗体は、生存細胞を非生存にする抗体である。in vitroの細胞死は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)又は補体依存性細胞傷害(CDC)によって誘導される細胞死を識別するために、補体及び免疫エフェクター細胞の非存在下で実施され得る。従って、細胞死に関するアッセイは、熱不活化血清を使用して(即ち、補体の非存在下)、かつ免疫エフェクター細胞の非存在下で実施され得る。抗体が細胞死を誘導できるか否かを決定するために、ヨウ化プロピジウム(PI)、トリパンブルー又は7AADの取り込みによって評価される膜一体性の喪失が、未処理の細胞と比較して評価され得る。細胞死誘導抗体は、BT474細胞におけるPI取り込みアッセイにおいてPI取り込みを誘導する抗体である。
【0047】
「アポトーシスを誘導する」抗体は、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞断片化及び/又は膜小胞(アポトーシス小体と呼ばれる)形成によって決定されるプログラム細胞死を誘導する抗体である。
【0048】
本明細書中で使用する場合、「化学療法増感剤」又は「増感剤」は、化学療法剤、放射線療法治療又は代替療法レジメンの治療効果を増強し得、従って、かかる治療又は剤の効力を改善し得る、医薬である。治療に対する腫瘍又は癌性細胞の感受性又は抵抗性はまた、例えば、腫瘍サイズ、腫瘍量又は転移の発生をある期間にわたり測定することによって、ヒト又はげっ歯類などの動物において測定され得る。例えば、ヒトについて約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月又は約6ヶ月、マウスについて約2〜4週間、約3〜5週間又は4〜6週間。組成物又は治療方法は、治療感受性の増加又は抵抗性の減少が、かかる組成物又は方法なしの治療感受性又は抵抗性と比較して、約10%以上、例えば、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%又はそれ以上から約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約15倍、約20倍又はそれ以上までである場合、その治療的療法に対する腫瘍又は癌性細胞の応答を増感し得る。治療的療法に対する感受性又は抵抗性の決定は、当該分野で慣用であり、当業者の技術範囲内である。
【0049】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、相互交換可能に使用され得、ペプチド結合又は改変されたペプチド結合によって共有結合した少なくとも2つのアミノ酸からなる化合物(例えば、ペプチドにさらなる所望の特性(例えば、増加した半減期)を提供し得るペプチドアイソスター(改変されたペプチド結合))をいう。ペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含み得る。本明細書中に記載されるペプチド又はタンパク質を構成するアミノ酸は、天然プロセス(例えば翻訳後プロセシング)又は当該分野で周知の化学的修飾技術のいずれかによって修飾されていてもよい。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖及びアミノ末端若しくはカルボキシル末端を含む、ペプチド中の任意の場所に生じ得る。同じ型の修飾が、所与のペプチド中のいくつかの部位に、同程度又は異なる程度で存在し得ることが理解される。
【0050】
組織アレイは、当業者に公知の任意の適切な方法によって製造され染色され得る。例えば、ホルマリン固定したパラフィン包埋腫瘍ブロックからの組織コア(1つのブロックにつき最も代表的な領域からの2つのコア)をアレイして(Beecher Instruments、Silver Spring、Md)、それぞれ2.0mmの大きさのコアの組織マイクロアレイを創出することができ、それを正に荷電したスライド上に置いた。次いで、検体を載せたスライドを60℃のオーブン中に1時間置き、冷却し、脱パラフィン処理し、キシレン及び段階的エタノール溶液〜水で再水和する。全てのスライドを3%過酸化水素水溶液中で5分間クエンチして、内在性ペルオキシダーゼに対しブロックする。抗原賦活化(antigen retrieval)は、任意の適切な技術(例えば、検体をクエン酸溶液(pH6.1)(コードS1699、Dako、Carpinteria、Calif)中に、野菜蒸し器を使用して94℃で20分間置き、次いで15分間冷却する加熱法)によって実施できる。次いで、スライドを、適切な抗体を使用する免疫組織化学で使用するために、Dako Autostainer免疫染色システムに置く。この方法は、以下を連続して適用することに基づく:(1)局在化させる抗原に対する一次抗体、(2)ビオチン化連結抗体、(3)酵素コンジュゲート化ストレプトアビジン、及び(4)基質色素源(DAB)。次いで、スライドを、Richard−Allanヘマトキシリン(Kalamazoo、Mich)で対比染色し、段階的エタノール溶液中で脱水し、上にカバーガラスを載せた。
【0051】
2色二重免疫染色は、当業者に公知の任意の適切なプロトコルを使用して実施できる。例えば、限定ではないが、パラフィン包埋した組織ブロックを4μmに切断し、正に荷電したスライド上に置くことができる。次いで、検体を載せたスライドを60℃のオーブン中に1時間置き、冷却し、脱パラフィン処理し、キシレン及び段階的エタノール溶液〜水で再水和した。次いで、全てのスライドを3%過酸化水素水溶液中で5分間クエンチして、内在性ペルオキシダーゼに対しブロックする。抗原賦活化は、当業者に公知の任意の適切な技術を使用して実施できる。例えば、野菜蒸し器を使用して、検体をクエン酸溶液(pH6.1)中に94℃で25分間(既に言及した個々の抗体についての20分間と比較)置き、15分間冷却する加熱法により。次いで、スライドを、免疫組織化学で使用するために、例えば、Dako Autostainer免疫染色システムに置くことができる。
【0052】
第一の一次抗体を、室温で30分間インキュベートする。検出システムEnVision+デュアルリンク(Dako、コードK4061)を30分間インキュベートする。最後に、DAB色素源を添加する。第二の一次抗体を適用する前に、無血清タンパク質ブロック(Dako、コードX0909)を添加して、バックグラウンド及び一次抗体間のクロスオーバーを最小化する。第二の一次抗体を室温で1時間インキュベートする。EnVision+デュアルリンク(Dako、コードK4061)を検出システムとして再度使用し、30分間インキュベートした。2種の抗体による染色が容易に識別できるように、NovaRED(Vector Laboratories、Burlingame、Calif)を第二の一次と共に使用できる。次いで、スライドを、Richard−Allanヘマトキシリンで対比染色し、段階的エタノール溶液中で脱水し、上にカバーガラスを載せる。
【0053】
腫瘍及び繊維芽細胞のSPARC染色の正確な識別についてアッセイするために適切な抗SPARC抗体は、組織マイクロアレイを使用して同定できる。当該分野で公知の標準的方法で製造されたモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体が使用できる。
【0054】
選択されたブロックからの二連の0.6mmコアを含む組織マイクロアレイは、Beecher Instruments Micro Tissue Arrayerを使用して構築できる。4マイクロメートルの厚さの切片を、完成したアレイブロックから切り出し、シラン処理したガラススライドに移すことができる。次いで、これらのアレイからの切片を、ヘマトキシリン及びエオシンで染色して、妥当性を評価することができる。マイクロ波抗原賦活化は、加圧調理器(Nordic Ware)中で10mMクエン酸塩緩衝液(pH6.0)中にスライドを置き、緩衝液が加圧下で沸騰するまで4分間、高出力でマイクロ波照射することからなり得る。この時点で、マイクロ波照射を停止させ、スライドを加圧調理器中でさらに20分間インキュベートし、その後取り出してリンスした。プロテアーゼ抗原賦活化は、供給業者の推奨するプロトコルに従ってプロテアーゼ−1溶液(Ventana)中で4分間インキュベートすることからなる。
【0055】
エピトープマッピングも、当業者に公知の標準的技術を使用して実施できる。例えば、Ed Harlow及びDavid LaneによるUsing Antibodies(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,USA,1999;これは、その全体が本明細書に参照により組み込まれる)中の「Epitope Mapping」、第11章からのプロトコル。エピトープをマッピングすることにより、エピトープ特異的抗体が、標準的な技術によって容易に産生できる。
【0056】
第一の抗SPARC抗体及び第二の抗SPARC抗体で腫瘍の組織切片を免疫染色することによってSPARC微小環境シグネチャ(SMS)を決定するための方法論(第一の抗SPARC抗体は、腫瘍細胞中のSPARCを選択的に染色し、第二の抗SPARC抗体は、繊維芽細胞中のSPARCを選択的に染色する)。SPARC発現の7つの構成要素(component)を、2つの異なる抗体を使用して決定した:腫瘍内の腫瘍細胞、繊維芽細胞、炎症細胞、無細胞間質/マトリックス(間質)、血管、神経及び他の正常な解剖学的形態。腫瘍の構成要素のそれぞれについて、各視野中の染色細胞の割合、染色強度(0〜4)及びスコア(従属変数)を決定した(患者1人当たりの合計変数:7構成要素×2抗体×3スコア=42の変数がスコアリングされる)。
【0057】
スコアリングは、ポジティブ細胞の割合と染色強度とを組み合わせたものである。ポジティブに染色された細胞がない又はポジティブに染色された構成要素がない場合、スコアをネガティブとした。染色強度が何であれ<10%の細胞がポジティブであった場合、強度が2+以下で<20%の細胞がポジティブであった場合、又は強度が1+で<30%の細胞がポジティブであった場合、スコアを「弱くポジティブ」とした。強度が4+で10〜40%の細胞がポジティブであった場合、強度が3+で10〜50%の細胞がポジティブであった場合、強度が2+で20〜70%の細胞がポジティブであった場合、又は強度が4+以下で10〜40%の細胞がポジティブであった場合、又は強度が1+以下で>30%の細胞がポジティブであった場合、スコアを「中程度にポジティブ」とした。強度が4+で>40%の細胞がポジティブであった場合、又は強度が3+で>50%の細胞がポジティブである場合、強度が2+で>70%の細胞がポジティブであった場合、スコアを「強くポジティブ」とした。
【0058】
ElementspringTMソフトウェアスイート中のクラスタリングプログラム及びNexusTMアレイ分析プログラムを使用して、このデータをマイニングした。さらに、ANOVA又はt検定(独立(unpaired))統計をパラメータについて決定し、示唆されたクラスタリングは、種々の転帰パラメータに関する識別力を有した。
【0059】
階層的クラスタリングは、データの良好な「初回通過(first pass)」分析を提供する、広く使用されるデータマイニング技術である。これは、いくつかの技術のうち1つを反復して使用すること、1つのデータポイント(即ち、測定されたパラメータ値)又は「エレメント」で開始すること、及びエレメントをそれらの最も近いものと組み合わせて、クラスター及びクラスターの関連(association)を段階的に構築すること、を含む。最終結果は階層ツリーである(例えば図3)。クラスター間の距離は、それらの平均発現パターン間の距離によって規定される。クラスターの視覚的表示は、全ての生物学者によく知られる、容易に理解される階層ツリー又はダイアグラムの形態で生成される。ツリー構造により、エレメント間又はエレメントセット間の発現パターンがどれほど似ているかを視覚的に理解することが容易になる。
【0060】
非階層的クラスタリング技術は、エレメントの数NをK個のクラスターにグループ化する。2つの例は、K平均クラスタリング及び自己組織化マップである。K平均クラスタリングは、所定の数(K)のクラスター、又は「重心」から開始し、3工程のプロセスを含む。第一に、エレメントを重心にランダムに割り当てる。次いで第二に、平均クラスター間距離及び平均クラスター内距離を計算する。最後に、エレメントを1つのクラスターから別のクラスターに移動させる。工程2及び3を、クラスター内距離が最小化し、かつクラスター間距離が最大化するまで繰り返し、典型的には、K個の球状(round shaped)クラスターを生じる。新たなエレメントを、最も近い重心を有するクラスター中にグループ化する。重心は、クラスター中の全ての点の平均である。K平均クラスタリングは、グループの数がわかっている場合にエレメントをクラスタリングするのに優れている。例えば、癌性組織及び非癌性組織を含むデータセットを、K平均クラスタリングに従って分析して、2群の遺伝子(癌と共に変化するもの及び変化しないもの)を同定することができよう。
【0061】
自己組織化マップ(SOM)は、ニューラルネットワーク技術によりノードをn次元の「エレメント空間」に繰り返しマッピングすることで生成される。この技術は、分析前に部分的構造が課される(クラスター及び次元の数を割り当てなければならない)ので、予備知識を組み込む。次いで、ランダムベクトルが生成され、各ノードに加えられる。次に、これらのベクトルとランダムに選択した遺伝子との間の距離を計算する。遺伝子に最も近いベクトルが更新され、それをエレメントのベクトルにより近づける。このプロセスを、それ以上の変更が加わらなくなるまで、何回でも繰り返される。このプロセスは、大きい次元のエレメント空間を、より管理可能で理解可能なものに変換する。
【0062】
SPARC微小環境シグネチャ(SMS)とは、組織学的位置、強度、及び各抗体での免疫染色の頻度によって示される、2つの抗SPARC抗体での染色パターンを意味する。「クラスタリング」とは、それらの臨床転帰に基づいてSMSをグループ化し、1つのグループを別のグループから識別することに寄与するSMS構成要素を同定するための、任意の適切なクラスタリング方法の使用を意味する。適切な方法には、例えば、K平均、自己組織化マップ及び階層的クラスタリングが挙げられる(これらは全て、当業者に公知の市販のソフトウェアによって実施できる)。「重心」は、クラスターグループを規定するパラメータの範囲である。この適用では、これ(in)は具体的に、種々のSMSグループを識別するSMS構成要素値(例えば、「レスポンダー」として分類されるための基準)をさす。転帰グループへの割り当ては、あなたのグループを規定する入手可能なデータをどの重心が最もよく示すかを決定するプロセスである。
【0063】
全てのクラスタリング技術は特定の条件下では優れているが、それらには当業者に公知の制限もある。例えば、階層的クラスタリングは、現実性を反映しているかどうかわからないデータに対して、厳格な関係構造を課す。K平均クラスタリング及びSOM生成は、所定数のクラスターを必要とする。これは、特定の状況ではよく機能するが、遺伝子の関連を決定するなどの先の見えない予備データ分析に関しては、クラスターの適切な数を前もって決めることができない。K平均クラスタリングには、超球状(fairly round)クラスターを生成する点でさらなる制限があり、閉じた又は幾何学的形状のクラスターの同定が不正確になる。最後に、クラスタリングはエレメントのグループ間の関連を示すが、クラスター内のエレメント間の関連性(作用の方向など)についての結論を引き出すことはできない。
【0064】
エレメントの数を減少させることは、上記分類法が適用され得る前に実施されることが望まれる重要な工程である。これは、学習の正確さを改善するために、可能な限り多くの判別情報を保存するために実施すべきである。適切に規定されたエレメントは、同じクラスの全てのサンプルについて同じ発現パターンを有し、異なるクラスに属するサンプルとは異なる発現パターンを有するはずである。クラス予測のための「最短収縮重心(nearest shrunken centroid)」法は、各クラスの原型として「収縮」重心を使用し、各クラスを最もよく特徴付けるエレメントのサブセットを同定する。この方法は、閾値との比較によって、クラス重心のそれぞれを、全てのクラスについての全重心に向けて「収縮させる」。この収縮は、ノイズのあるエレメントの影響を排除することによって分類をより正確にし、結果として、エレメントを自動的に選択する。新たなサンプルのエレメントプロフィールは、これらのクラス重心のそれぞれと比較される。二乗距離において、それに最も近い重心を持つクラスは、その新たなサンプルのための予測されたクラスである。
【0065】
分類のために適切なエレメントを選択する際に考慮する因子が2つ存在する:クラス内の距離及びクラス間の距離である。同じクラス中の全てのサンプルについてのエレメントのレベルが小さい分散できわめて一貫しているが、異なるクラスのサンプル間では大きく異なっている場合、そのエレメントは、分類のための良好な候補とみなされる。遺伝子は、異なるクラスに関する判別情報を有する。最短収縮重心法では、クラス内の分散をさらに考慮に入れて、クラス内の遺伝子の良好性を評価した。クラス重心とエレメントの全重心との間の差異は、各クラス内の分散によって分割されて、より低い分散でより大きい重みをエレメントに与える。閾値は、得られた正規化されたクラス重心の差異に適用される。これが全てのクラスについて小さい場合、これはゼロに設定され、エレメントが排除されることを意味する。これにより、最終的な予測モデルで使用されるエレメントの数が減らされる。
【0066】
相関ルールは、エレメント間の関連性、ある遺伝子といくつかの他のグループのエレメントとの間の関連性を同定するために使用でき、最終的に、特定の処理作用(treatment action)を示し得る。第一工程は、データを離散化して、Boolean又は三次(tertiary)表示に変換する。次いでカットオフ値が定められ、それに対して、データが上方制御又は下方制御されたと分類される。カットオフ値よりも高い値を有する、上方制御された遺伝子は、「1」の値を割り当てられる。カットオフ値よりも低い値を有する、下方制御された遺伝子は、「0」の値を割り当てられる。或いは、2つのカットオフ値が割り当てられ得、遺伝子は、上方制御された(1の値を割り当てられる)、下方制御された(−1の値を割り当てられる)又は変化なし(0の値を割り当てられる)として分類され得る。
【0067】
任意の適切な用量の血管新生阻害剤が使用され得る(例えば、少なくとも1週間の投薬サイクルで、約5mg/kg〜約15mg/kgの用量で投与されるAvastin)。
【0068】
疎水性化学療法剤は、1.0以下、好ましくは2.0以下、最も好ましくは5.0以下のHLB(HLBは、親水性/親油性バランス数である)を有し、例えば薬剤エポチロン、ドセタキセル、パクリタキセルが含まれる。タキサンなどの微小管阻害剤としては、エポチロン、ドセタキセル、パクリタキセル及びそれらの組合わせが挙げられる。「それらの組合わせ」とは、1種より多い薬物(例えば、ドセタキセル及びパクリタキセル)を含む剤形の投与、並びにエポチロン、ドセタキセル及びパクリタキセルの、連続的ではあるが時間的には別個の投与(例えば、1つのサイクルでのドセタキセルの使用及び次のサイクルでのパクリタキセルの使用)の両方をいう。特に好ましい化学療法剤は、タンパク質結合薬物の粒子を含み、例えば、タンパク質結合薬物粒子を構成するタンパク質がアルブミンを含むものが挙げられるがそれに限定されず、化学療法剤の50%より多くがナノ粒子形態であるものが挙げられる。最も好ましくは、化学療法剤は、アルブミン結合パクリタキセルの粒子、例えばAbraxaneTMを含む。適切なナノ粒子製剤は、少なくとも約50%の活性剤をナノ粒子の形態で含む製剤であるが、それに限定されない。他の適切なナノ粒子製剤は、少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、又はなおより好ましくは少なくとも約90%の活性剤を、ナノ粒子の形態で含む。さらに、かかるナノ粒子製剤は、最も好ましくは、少なくとも約95%〜少なくとも約98%の活性剤を、ナノ粒子の形態で含むことができる。
【0069】
Her2陽性乳癌に適した療法には、以下を含むレジメンも含まれる:各28日サイクルの1日目、8日目、15日目に125mg/mのネオアジュバントnab−パクリタキセル、各28日サイクルの1日目にカルボプラチンAUC6を6サイクル;4mg/kg負荷とその後の2mg/kg/wkのTrastuzumab、及び5mg/kg/wkのBevacizumab;その後の原発性腫瘍の外科的除去;並びに術後治療有効量のTrastuzumab及びBevacizumabを52週間。Her2陰性乳癌に適した療法は、例えば、nab−パクリタキセル(175mg/m)、ゲムシタビン(2000mg/m)及びエピルビシン(50mg/m)による14日間を6サイクル含む術前療法;その後の外科的除去;並びに(14日間を4サイクル)及びnab−パクリタキセル(220mg/m)+ゲムシタビン(2000mg/m)を含む術後療法、を含む。
【0070】
以下の実施例は本発明をさらに説明するが、本発明の範囲を何ら限定するものでないと解釈すべきことは当然である。
【実施例】
【0071】
実施例1
本研究の目的は、腫瘍微小環境中のどのSPARC異性体及び機能が患者の転帰に関与するかを評価すること、及び特に、SPARC免疫染色のパターンとナノ粒子アルブミン結合(nab)パクリタキセル(即ち、Abraxane(登録商標))を用いた患者の転帰との間に相関があるかどうかを決定することであった。
【0072】
nab−パクリタキセルは、腫瘍細胞に進入するために、内皮細胞gp60−アルブミン受容体輸送及び腫瘍が分泌するSPARCへの結合を含む、アルブミン輸送の内在性経路を利用できる。頭頸部癌における最初の前臨床研究及び小規模の後向き臨床研究は、腫瘍組織における内在性SPARCの増加が、nab−パクリタキセル治療に対する有望な応答を予測し得ることを示唆した(Desaiら、2009,Trans Onc.2,59−64)。
【0073】
4つの前向き研究が、SPARC腫瘍免疫染色パターン即ち「SPARC微小環境シグネチャ」(SMS)が、nab−パクリタキセルレジメンで治療したときに再発のリスクが低い患者と高い患者を識別できるかどうかを試験した。
【0074】
4つの臨床試験から患者の転帰を評価した(表1)。
【0075】
【表1−1】

【0076】
【表1−2】

【0077】
全体として、この方法は、以下を連続して適用することに基づく:(1)局在化させる抗原に対する一次抗体、(2)ビオチン化連結抗体、(3)酵素コンジュゲート化ストレプトアビジン、及び(4)基質色素源(DAB)。次いで、スライドを、Richard−Allanヘマトキシリン(Kalamazoo、Mich)で対比染色し、段階的エタノール溶液中で脱水し、上にカバーガラスを載せる。全てのスライドは、自動染色装置(Dako Cytomation Autostainer、Dako、Carpinteria、CA)を使用して染色した。
【0078】
本実施例における免疫染色は、以下に記載のように実施した。SPARCに対する一連の抗体を評価した。詳細な免疫組織学的評価は、American Board of Pathology認定の病理学者が実施した。染色スコアは0〜4+のスケールで割り当てた。4+が最もポジティブである。腫瘍のどの構成要素がSPARC活性に重要であるかは未知であったので、腫瘍、血管、繊維芽細胞、間質細胞、炎症細胞及び正常な解剖学的構造における染色を含む、種々の構成要素の分解を実施した。
【0079】
ホルマリン固定したパラフィン包埋腫瘍ブロックからの組織コア(1つのブロックにつき最も代表的な領域からの2つのコア)をアレイして(Beecher Instruments、Silver Spring、Md)、それぞれ2.0mmの大きさのコアの組織マイクロアレイを創出し、それを正に荷電したスライド上に置く。検体を載せたスライドを60℃のオーブン中に1時間置き、冷却し、脱パラフィン処理し、キシレン及び段階的エタノール溶液〜水で再水和する。全てのスライドを3%過酸化水素水溶液中で5分間クエンチして、内在性ペルオキシダーゼに対しブロックする。
【0080】
染色が見られない場合に抗原賦活化を実施し、同じ視野中の正常組織の染色を内部ポジティブコントロールとする。抗原賦活化は、検体をクエン酸溶液(pH6.1)(コードS1699、Dako、Carpinteria、Calif)中に、野菜蒸し器を使用して94℃で20分間置き、次いで15分間冷却する加熱法によって実施する。次いで、スライドを、適切な抗体を使用する免疫組織化学で使用するために、Dako Cytomation Autostainer(Dako、Carpinteria、CA)などの免疫染色システムに置く。
【0081】
SPARCに対する異なる親和性を有する2つの抗体をこの研究のために特定した:モノクローナル抗体(本明細書中で以下「M」で示す)(SPARCモノクローナル抗体(R&D Systems、Minneapolis、MN)、カタログ番号MAB941ロット番号ECH045011、トリスベースの希釈液で1:100希釈)及びポリクローナル抗体(本明細書中で以下「P」で示す)(SPARCポリクローナル抗体(R&D Systems、Minneapolis、MN)、カタログ番号AF941ロット番号EWN04、トリスベースの希釈液で1:50希釈)。腫瘍の組織切片をスライド上に調製し、標準的な免疫染色プロトコルを使用して染色した。簡潔に述べると、ホルマリン固定したパラフィン包埋腫瘍ブロックからの組織コア(1つのブロックにつき最も代表的な領域からの2つのコア)をアレイして(Beecher Instruments、Silver Spring、Md)、それぞれ2.0mmの大きさのコアの組織マイクロアレイを創出し、それを正に荷電したスライド上に置いた。次いで、検体を載せたスライドを60℃のオーブン中に1時間置き、冷却し、脱パラフィン処理し、キシレン及び段階的エタノール溶液〜水で再水和した。次いで、全てのスライドを3%過酸化水素水溶液中で5分間クエンチして、内在性ペルオキシダーゼに対しブロックした。抗原賦活化は、野菜蒸し器を使用して、検体をクエン酸溶液(pH6.1)中に94℃で25分間(既に言及した個々の抗体についての20分間と比較)置き、15分間冷却する加熱法により実施する。次いで、スライドを、免疫組織化学で使用するために、例えば、免疫染色システム(Dako、Carpinteria、CA)に置く。
【0082】
全てのスライドを3%過酸化水素水溶液中で5分間クエンチして、内在性ペルオキシダーゼに対しブロックした。緩衝液リンスの後、スライドを抗体M又はネガティブコントロール試薬と共に30分間インキュベートした。マウス西洋ワサビペルオキシダーゼポリマーキット(Mouse MACH 3 HRP Polymer Kit、Biocare Medical、Concord、CA)を、1試薬につき20分間インキュベートした。もう一度緩衝液リンスした後、DAB色素源(Dako、Carpinteria、CA)を10分間適用した。ヘマトキシリンを使用してスライドを対比染色した。抗体Pで検体を免疫染色するために同じプロトコルを使用したが、1試薬につき15分間インキュベートしたアビジン−ビオチン検出キット(Biocare Medical、Concord、CA)を、HRP検出キットの代わりに使用した。
【0083】
一連の腫瘍におけるSPARC発現の詳細な病理学的評価は、委員会認定の病理学者が実施した。免疫組織化学により決定されるSPARC発現レベルを、種々の腫瘍構成要素についてスコアリングした。スコアは0〜3のスケールでSPARC発現レベルに割り当て、3を最もポジティブなスコアとした。これは、当該分野で一般に実施され、当業者に周知である。使用したモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体は、表2に示すように、異なるSPARC発現パターンを検出した。
【0084】
【表2】

【0085】
ポリクローナル抗体は、繊維芽細胞関連SPARCの選択的な染色を実証したが、モノクローナル抗体は、腫瘍関連SPARCを選択的に染色した(図1)。
【0086】
これらの染色優先性から、以下のパターンを定め、一連の腫瘍におけるそれらの予測値について分析した:
A、いずれかの構成要素で3+が見出された場合。
B、モノクローナル抗SPARC抗体により、いずれかの構成要素で3+が見出された場合。
C、モノクローナル抗SPARC抗体により、いずれかの構成要素で3+が見出された場合。
D、両方の抗SPARC抗体で、腫瘍細胞で3+が見出された場合。
E、両方の抗SPARC抗体で、繊維芽細胞で3+が見出された場合。
【0087】
ロジスティック回帰及び比例ハザードを使用して、種々の腫瘍におけるSPARC染色パターンに対し、SMSと応答、無進行生存(PFS)及び全生存(OS)との間の任意の相関を同定する。
【0088】
分析した第一の腫瘍セットは、切除不能な病期IVの黒色腫を有する患者における、カルボプラチン及びnab−パクリタキセル(別名ABI−007)の第II相試験であった(N057E研究)。Dパターン、とより良い全生存との間に、統計的に有意な相関が存在した(図2)。
【0089】
腫瘍の第二のセットは、nab−パクリタキセル用量で治療した、進行した膵臓腺癌患者由来であった(CA040研究)。研究した32人の患者は、全範囲の応答を有した(表3.奏効率)。
【0090】
【表3】

【0091】
ポリクローナル抗体による腫瘍の染色は、この第二のセットの腫瘍(進行した膵臓癌)において、治療に対する応答性を予測した(片側t検定、p=0.027)。さらに、モノクローナル抗体による腫瘍細胞の染色は、より悪い全生存及び無進行生存を予測した。さらに、Bパターンの染色は、これらの膵臓腺癌患者において、このレジメンによる最悪の無進行生存を予測した。
【0092】
本実施例は、SPARC免疫組織化学が、nab−パクリタキセルベースの化学療法に対する応答を予測するための有益な方法であることを実証している。
【0093】
実施例2
SPARC免疫染色からの染色パターンデータのより体系的な分析を行い、予後情報を生じたパターンを同定した。実施例1で研究したのと同じ腫瘍セットからの染色パターンデータを、種々の形態のクラスター分析を使用してマイニングし、種々の腫瘍におけるSPARC染色パターンに対し、応答、無進行生存(PFS)及び全生存(OS)について、最も特徴的なSPARC発現の構成要素(免疫染色パターンにより示される)を同定した。上述のように、予後に影響を与えることがわかったパターンを、「SPARC微小環境シグネチャ」(「SMS」)という。
【0094】
SPARC発現を、7つの腫瘍構成要素において、2つの異なる抗体を使用して決定した:腫瘍内の腫瘍細胞、繊維芽細胞、炎症細胞、無細胞間質/マトリックス(間質)、血管、神経及び他の正常な解剖学的形態。次いで、腫瘍構成要素のそれぞれについて、染色細胞の割合、染色強度(0〜4)及び「スコア」を決定した。「スコア」は、染色細胞の割合と染色強度とを組み合わせたものである。ポジティブに染色された細胞がない又はポジティブに染色された構成要素がなかった場合、スコアを「ネガティブ」とした。20%の細胞がポジティブで強度が2+以下であった場合、スコアを「弱くポジティブ」とし、30%の細胞がポジティブ又は強度が1+以下であった場合も、「弱くポジティブ」とした。強度が4+で10〜40%の細胞がポジティブであった場合、強度が3+で10〜50%の細胞がポジティブであった場合、強度が2+で20〜70%の細胞がポジティブであった場合、又は強度が4+以下で20〜40%の細胞がポジティブであった場合、又は強度が1+以下で>30%の細胞がポジティブであった場合、スコアを「中程度にポジティブ」とした。強度が4+で>40%の細胞がポジティブであった場合、又は強度が3+で>50%の細胞がポジティブであった場合、強度が2+で>70%の細胞がポジティブであった場合、スコアを「強くポジティブ」とした。
【0095】
Elementspring(登録商標)ソフトウェアスイート中のクラスタリングプログラム及びNexus(登録商標)アレイ分析プログラムを使用して、このデータをマイニングした。さらに、ANOVA又はt検定(独立)統計をパラメータについて決定し、示されたクラスタリングは識別力を有した。
【0096】
SMSパターンを、BRE73乳癌研究からの染色データで同定した。K平均クラスター分析は、優れたPFSを有する患者を、免疫染色に基づいて識別した。24ヶ月でのPFSは、「不良な」SPARCパターンを示す患者について56%であったのに対し、「良好な」SPARC良好パターンを有する患者では91%のPFSであった。
【0097】
さらに、これらの患者を予後グループに分類したパラメータを特定した(表4)(「カットオフ値」は、良好な予後グループに分類される必要がある値である)(図3も参照)。
【0098】
【表4】

【0099】
予測されたように、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)及びトリプルネガティブ(Triple Negative(TN))ステータスは、PFSを予測した(図4A〜C)。驚くべきことに、SMSは、独立したリスク因子として(即ち、既知のリスク因子ER/PR/トリプルネガティブステータスとは独立して(表5))機能した。
【0100】
【表5】

【0101】
さらに、SMSを既知のリスク因子に加えた場合、研究したnab−パクリタキセルベースのレジメンについて、低リスクグループに基づくPFSと高リスクグループに基づくPFSとの間の層別化又は識別が改善された(図5〜7)。24ヶ月でのPFSは、0、1及び2個のリスク因子を有するグループ間で有意に異なっていた。しかし、トリプルネガティブステータスへのSPARC SMSの追加は、さらに、低リスク患者(0リスク因子)と高リスク患者(2リスク因子)とを識別した(異なる数のリスク因子について対数ランクのp値:0因子 対 2因子、p=0.0009;1因子 対 2因子、p=0.039)(図5)。また、1個のリスク因子を有するグループは、特徴的であり、中間のリスクを有することが見出された。
【0102】
ERへのSPARC SMSクラスターの追加は、さらに、低リスク患者(0リスク因子)と高リスク患者(2リスク因子)とを識別した(異なる数のリスク因子について対数ランクのp値:0因子 対 2因子、p=0.0001;1因子 対2因子、p=0.026)(図6)。
【0103】
ERへのSPARC SMSクラスターの追加は、さらに、低リスク患者(0リスク因子)と高リスク患者(2リスク因子)とを識別した(異なる数のリスク因子について対数ランクのp値:0因子 対 2因子、p=0.0004;1因子 対 2因子、p=ns.)(図7)。これらの結果は、療法に対する応答、進行又は死を予測する先行技術のマーカーとSMSとの組合わせが、かかるマーカーの予後の正確さを改善できることを実証している。
【0104】
応答は、部分完全(pCR)、完全奏効(CR)、部分応答(PR)、(SD)、(PD)、入手できず(N/A)と分類した(表7)。応答に関するSMSを、クラスター分析でも同定した(図8)。
【0105】
【表6】

【0106】
或いは、応答転帰が示され得、レスポンダー(pCR、CR、PR;n=72)及び非レスポンダー(SD、PD;n=7)にグループ分けできた。応答の二成分分類について、SMSをクラスター分析でも同定した(図9)。
【0107】
応答SMSに関与するパラメータを、クラスター分析で同定した(図9)(表7)。
【0108】
【表7】

【0109】
CA040膵臓癌試験からのデータも分析した。さらに、この分析は、同じ患者からの細胞学的検体に拡張できた。
【0110】
階層的クラスタリングを膵臓癌データに対して実施して、患者をSMSに基づいて2つのグループに分けた。これらのグループを、PFS及びOS転帰について分析した。クラスタリングにより、SPARC低リスク構成要素が、総合して、高リスク構成要素よりもSPARCにおいて有意に高い(約33%)ことが明らかである(合計スコア839 対 629、有意な平均の合計)。試験した全ての区画(腫瘍細胞、繊維芽細胞、炎症細胞、血管及び無細胞間質)にわたる個々の構成要素は、低リスクグループについてSPARCがより高かった。
【0111】
さらに、ポジティブ細胞の割合を使用し、0+=0、1+=25、2+=50、3+=75、4+=100として強度を数値化し、「ネガティブ」=0、「弱くポジティブ」=33、「中程度にポジティブ」=66「強くポジティブ」=100としてスコアを数値化することで、以下の全体的結果が得られた(ここでも、最も重要なパラメータが同定された(図10)(表8)及びカットオフ値(表9)。
【0112】
【表8】

【0113】
従って、カットオフ値は以下であった
【0114】
【表9】

【0115】
SMSは、OSについては不良であるがPFSについては不良でない良好な転帰を識別できた(図11A及びB)。CA19−9レベルは、膵臓癌における迅速な進行の既知のリスク因子であり、試験において、CA19−9レベルはPFSグループとOSグループとを分類できた(図12)。しかし、リスク因子SPARC不良とCA19−92000U/mlとの間には相関がなかった。従って、SPARC及びCA19−1は、全生存についての独立した予後因子であることが見出された(表10)。
【0116】
【表10】

【0117】
驚くべきことに、CA 19−1レベルと合わせたSMSは、層別化PFS及びOSを改善した(図13及び14)。
【0118】
SMSの有用性のさらなる分析を、ABX054試験からの進行した黒色腫患者で行った。ここでも、予後パラメータ(表11)を、階層的クラスタリングを使用して同定した(図15及び16)。
【0119】
【表11】

【0120】
実施例3
これは、SMSを生成するためのK平均クラスタリングの使用及び個体をリスクグループに分類するためのその使用の予言的実施例である。
【0121】
まず、各SMS構成要素についての重心を、トレーニングセットを使用して規定する必要がある。7人の個体の各々に対するM%腫瘍及びP%腫瘍などのSMSの2つの構成要素のスコアからなる仮想データセットを考慮する:
【0122】
【表12】

【0123】
このデータセットは、2つのクラスター(例えば、レスポンダー及び非レスポンダー)にグループ分けされる。感覚的な最初の区分を見出すための第一工程として、2人の個体のM%腫瘍値及びP%腫瘍値を最も遠ざけ(ユークリッド距離測定を使用)、既知の異なる応答を用い、最初のクラスター平均を規定し、以下を与える:
【0124】
【表13】

【0125】
次に残りの個体を連続して試験し、クラスター平均へのユークリッド距離に関して、最も近いクラスターに割り当てる。新たな成員を追加するたびに、平均ベクトルを再計算する。これにより、以下の一連の工程が導かれる:
【0126】
【表14】

【0127】
ここで最初の区分が変更され、この時点で2つのクラスターが以下の特徴を有する:
【0128】
【表15】

【0129】
各個体が数学的に又は現実世界のいずれかで正しいクラスターに割り当てられたことを確信することはまだできない。次の工程は、それ自身のクラスター平均までの各個体の距離と反対のクラスターのクラスター平均までの各個体の距離とを比較することによって、クラスターの数学的性質を検討する。結果として:
【0130】
【表16】

【0131】
個体3のみが、それ自体のクラスターよりも反対のクラスターの平均に近い。言い換えると、各個体のそれ自体のクラスター平均までの距離は、他のクラスターの平均までの距離よりも(that)小さいはずである(これは個体3には当てはまらない)。従って、個体3は、もう一方のクラスターに再配置され、新たな区分を生じる:
【0132】
【表17】

【0133】
その後、応答に基づく個体の再配置を行ない、数学的に再度試験する。ここで、再配置の反復を、再配置がそれ以上起こらなくなるまで、この新たな区分から継続する。しかし、この実施例では、各個体はこのとき、他のクラスターのクラスター平均よりもそれ自体のクラスター平均に近く、反復を停止して、最終クラスター解として最後の区分を選択する。
【0134】
次いで、任意の新たな個体を、それらにより近い重心に基づいて、レスポンダー又は非レスポンダーとして分類できよう。
【0135】
さらに、この実施例を通じて2つの構成要素を使用したが、トレーニングセットを処理した後、最も特徴的な構成要素を任意の適切な方法で決定でき、それらの構成要素のみを使用して、重心を規定し、新たな個体を分類する。
【0136】
刊行物、特許出願及び特許を含む、本明細書中に引用した全ての参考文献は、それぞれの参考文献が参照によって組み込まれることが個々にかつ具体的に示されているのと同程度又はその全体が本明細書中に記載されているのと同程度まで、参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0137】
本発明の説明に関して(特に、以下の特許請求の範囲に関して)、用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書中に特記しないか文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈すべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」は、特記しない限り、オープンエンドの用語(即ち、「〜を含むがそれらに限定されない」を意味する)と解釈すべきである。本明細書中の値の範囲の記述は、本明細書中に特記しない限り、その範囲内に入る各個別の値に個々に言及する省略方法として働くことのみを意図しており、各個別の値は、それが本明細書中に個々に記述されているかのように本明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中に特記しない又は文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施できる。本明細書中に提供される任意の及び全ての例又は例示的語句(例えば、「など(such as)」)の使用は、本発明をよりよく説明することのみを意図しており、特段特許請求されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書中の全ての語句は、特許請求されていない任意の要素を本発明の実施に必須のものとして示していると解釈すべきではない。
【0138】
発明を実施するための発明者が知る最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書中に記載されている。これらの好ましい実施形態のバリエーションは、上述の説明を読めば当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者がかかるバリエーションを適宜使用することを予期しており、本発明者らは、本明細書中に具体的に記載されたのとは異なる方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法によって許容されるとおり、本明細書中に添付した特許請求の範囲に記載される対象の全ての改変及び等価物を含む。さらに、その全ての可能なバリエーションでの上記要素の任意の組合わせが、本明細書中に特記しない又は文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学療法レジメンで哺乳動物中の腫瘍を治療する方法であって、
a.免疫組織学のために腫瘍の複数の組織切片を調製する工程;
b.該腫瘍の1以上の組織切片を第一の抗SPARC抗体で免疫染色する工程であって、該第一の抗SPARC抗体は、腫瘍細胞中のSPARCを選択的に染色する、工程;
c.該腫瘍の1以上の組織切片を第二の抗SPARC抗体で免疫染色する工程であって、該第二の抗SPARC抗体は、繊維芽細胞中のSPARCを選択的に染色する、工程;
d.第一の抗SPARC抗体による腫瘍内の腫瘍細胞、繊維芽細胞、炎症細胞、無細胞間質/マトリックス、血管、神経組織及び正常な解剖学的形態、又はそれらの任意の組合わせの染色を決定し、かつ第二の抗体による腫瘍内の腫瘍細胞、繊維芽細胞、炎症細胞、無細胞間質/マトリックス、血管、神経組織及び正常な解剖学的形態、又はそれらの任意の組合わせの染色を決定し、それにより、SPARC微小環境シグネチャ(SMS)を決定する工程;
e.腫瘍SMSが所定のSMSの基準を満たす場合に、治療有効量の化学療法レジメンを投与する工程、
を含む、方法。
【請求項2】
所定のSMSが、第一の抗体での少なくとも49%の間質染色ポジティブと、第二の抗体での少なくとも66の繊維芽細胞スコア、41の繊維芽細胞強度、26の腫瘍強度、51の炎症細胞強度、55の炎症細胞スコア、33の血管%、54の腫瘍スコア、64の血管強度、54の繊維芽細胞%、64の血管強度、43の炎症細胞%及び62の間質スコアの染色とを有する複合プロフィールでの免疫染色を含み、療法がnab−パクリタキセルを含むレジメンであり、腫瘍が膵臓癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
腫瘍が、口腔腫瘍、咽頭腫瘍、消化器系腫瘍、呼吸器系腫瘍、骨腫瘍、軟骨腫瘍、骨転移、肉腫、皮膚腫瘍、黒色腫、乳房腫瘍、生殖器系腫瘍、泌尿器腫瘍、眼窩腫瘍、脳及び中枢神経系の腫瘍、神経膠腫、内分泌系腫瘍、甲状腺腫瘍、食道腫瘍、胃腫瘍、小腸腫瘍、結腸腫瘍、直腸腫瘍、肛門腫瘍、肝臓腫瘍、胆嚢腫瘍、膵臓腫瘍、喉頭腫瘍、肺の腫瘍、気管支腫瘍、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、子宮頸部腫瘍、子宮体腫瘍、卵巣腫瘍、外陰部腫瘍、膣腫瘍、前立腺腫瘍、前立腺癌腫、精巣腫瘍、陰茎の腫瘍、膀胱腫瘍、腎臓の腫瘍、腎盂の腫瘍、尿管の腫瘍、頭頸部腫瘍、副甲状腺癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病及び慢性骨髄性白血病からなる群より選択される、請求項1又は2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
腫瘍が膵臓癌である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
哺乳動物がヒトである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
化学療法レジメンがパクリタキセルを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
化学療法レジメンがnab−パクリタキセルを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
化学療法レジメンに対する哺乳動物中の腫瘍の応答を予測する方法であって、
a.SPARC微小環境シグネチャ(SMS)を得るために腫瘍の複数の組織切片を調製する工程;
b.該腫瘍の1以上の組織切片を第一の抗SPARC抗体で免疫染色する工程であって、該第一の抗SPARC抗体は、腫瘍細胞中のSPARCを選択的に染色する、工程;
c.該腫瘍の1以上の組織切片を第二の抗SPARC抗体で免疫染色する工程であって、該第二の抗SPARC抗体は、繊維芽細胞中のSPARCを選択的に染色する、工程;
d.第一の抗SPARC抗体による腫瘍内の腫瘍細胞、繊維芽細胞、炎症細胞、無細胞間質/マトリックス、血管、神経組織及び正常な解剖学的形態、又はそれらの任意の組合わせの染色を決定し、かつ第二の抗体による腫瘍血管及び腫瘍間質の染色を決定する工程;
e.所定のSMSが免疫染色によって実証される場合に、該化学療法レジメンに対するポジティブ応答を予測する工程、
を含む、方法。
【請求項9】
所定のSMSが、第一の抗体での少なくとも82%の間質染色ポジティブと、第二の抗体での少なくとも87の繊維芽細胞スコア、68の繊維芽細胞強度、49の腫瘍強度、42の炎症細胞強度、67の炎症細胞スコア、68の血管%、76の腫瘍スコア、46の血管強度、51の繊維芽細胞%、75の血管強度、59の炎症細胞%及び62の間質スコアの染色とを有する複合プロフィールでの免疫染色を含み、療法がnab−パクリタキセルを含むレジメンであり、腫瘍が膵臓癌である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
腫瘍が、口腔腫瘍、咽頭腫瘍、消化器系腫瘍、呼吸器系腫瘍、骨腫瘍、軟骨腫瘍、骨転移、肉腫、皮膚腫瘍、黒色腫、乳房腫瘍、生殖器系腫瘍、泌尿器腫瘍、眼窩腫瘍、脳及び中枢神経系の腫瘍、神経膠腫、内分泌系腫瘍、甲状腺腫瘍、食道腫瘍、胃腫瘍、小腸腫瘍、結腸腫瘍、直腸腫瘍、肛門腫瘍、肝臓腫瘍、胆嚢腫瘍、膵臓腫瘍、喉頭腫瘍、肺の腫瘍、気管支腫瘍、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、子宮頸部腫瘍、子宮体腫瘍、卵巣腫瘍、外陰部腫瘍、膣腫瘍、前立腺腫瘍、前立腺癌腫、精巣腫瘍、陰茎の腫瘍、膀胱腫瘍、腎臓の腫瘍、腎盂の腫瘍、尿管の腫瘍、頭頸部腫瘍、副甲状腺癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病及び慢性骨髄性白血病からなる群より選択される、請求項8又は9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
腫瘍が膵臓腫瘍である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
哺乳動物がヒトである、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
化学療法レジメンがパクリタキセルを含む、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
化学療法レジメンがnab−パクリタキセルを含む、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
腫瘍を有する哺乳動物が、該腫瘍の低リスクの進行を有するか否かを予測する方法であって、
a.SPARC微小環境シグネチャ(SMS)を得るために腫瘍の複数の組織切片を調製する工程;
b.該腫瘍の1以上の組織切片を第一の抗SPARC抗体で免疫染色する工程であって、該第一の抗SPARC抗体は、腫瘍細胞中のSPARCを選択的に染色する、工程;
c.該腫瘍の1以上の組織切片を第二の抗SPARC抗体で免疫染色する工程であって、該第二の抗SPARC抗体は、繊維芽細胞中のSPARCを選択的に染色する、工程;
d.第一の抗SPARC抗体による腫瘍内の腫瘍細胞、繊維芽細胞、炎症細胞、無細胞間質/マトリックス、血管、神経組織及び正常な解剖学的形態、又はそれらの任意の組合わせの染色を決定し、かつ第二の抗体による腫瘍内の腫瘍細胞、繊維芽細胞、炎症細胞、無細胞間質/マトリックス、血管、神経組織及び正常な解剖学的形態、又はそれらの任意の組合わせの染色を決定する工程;及び
e.腫瘍SMSが所定のSMSの基準を満たす場合に、低リスクの進行が存在すると決定する工程、
を含む、方法。
【請求項16】
腫瘍が乳癌であり、所定のSMSが、第一の抗体での少なくとも82%の間質染色ポジティブと、第二の抗体での少なくとも87の繊維芽細胞スコア、68の繊維芽細胞強度、49の腫瘍強度、42の炎症細胞強度、67の炎症細胞スコア、68の血管%、76の腫瘍スコア、46の血管強度、51の繊維芽細胞%、75の血管強度、59の炎症細胞%及び62の間質スコアの染色とを有する複合プロフィールでの免疫染色を含み、療法がnab−パクリタキセルを含むレジメンであり、腫瘍が膵臓癌である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
腫瘍が、口腔腫瘍、咽頭腫瘍、消化器系腫瘍、呼吸器系腫瘍、骨腫瘍、軟骨腫瘍、骨転移、肉腫、皮膚腫瘍、黒色腫、乳房腫瘍、生殖器系腫瘍、泌尿器腫瘍、眼窩腫瘍、脳及び中枢神経系の腫瘍、神経膠腫、内分泌系腫瘍、甲状腺腫瘍、食道腫瘍、胃腫瘍、小腸腫瘍、結腸腫瘍、直腸腫瘍、肛門腫瘍、肝臓腫瘍、胆嚢腫瘍、膵臓腫瘍、喉頭腫瘍、肺の腫瘍、気管支腫瘍、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、子宮頸部腫瘍、子宮体腫瘍、卵巣腫瘍、外陰部腫瘍、膣腫瘍、前立腺腫瘍、前立腺癌腫、精巣腫瘍、陰茎の腫瘍、膀胱腫瘍、腎臓の腫瘍、腎盂の腫瘍、尿管の腫瘍、頭頸部腫瘍、副甲状腺癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病及び慢性骨髄性白血病からなる群より選択される、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
腫瘍が膵臓癌である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
腫瘍が乳癌である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
哺乳動物がヒトである、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
哺乳動物が、パクリタキセルを含む化学療法レジメンで治療される、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
化学療法レジメンがnab−パクリタキセルを含む、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
第一の哺乳動物由来の腫瘍を療法により治療する方法であって、
a.以下を含む、該療法につき2つ以上の予測的SMSを決定する工程:
i.該療法につき既知の転帰を有する他の哺乳動物から、腫瘍の複数の組織切片を調製する工程;
ii.該療法につき既知の転帰を有する他の哺乳動物由来の腫瘍のそれぞれの1以上の組織切片を第一の抗SPARC抗体で免疫染色する工程であって、該第一の抗SPARC抗体は、腫瘍細胞中のSPARCを選択的に染色する、工程;
iii.該療法につき既知の転帰を有する他の哺乳動物由来の腫瘍のそれぞれの1以上の組織切片を第二の抗SPARC抗体で免疫染色する工程であって、該第二の抗SPARC抗体は、繊維芽細胞中のSPARCを選択的に染色する、工程;
iv.第一の抗SPARC抗体による、該療法につき既知の転帰を有する他の哺乳動物由来の腫瘍のそれぞれに、該療法につき既知の転帰を有する他の哺乳動物由来の腫瘍内の腫瘍細胞、繊維芽細胞、炎症細胞、無細胞間質/マトリックス、血管、神経組織及び正常な解剖学的形態、又はそれらの任意の組合わせの免疫染色パターンを決定し、かつ第二の抗体による、該療法につき既知の転帰を有する他の哺乳動物由来の腫瘍内の腫瘍細胞、繊維芽細胞、炎症細胞、無細胞間質/マトリックス、血管、神経組織及び正常な解剖学的形態、又はそれらの任意の組合わせの免疫染色を決定することによって、該療法につき既知の転帰を有する他の哺乳動物由来の各腫瘍のSMSを決定する工程;
v.該療法につき既知の転帰を有する他の哺乳動物由来の各腫瘍の腫瘍SMSを、2つ以上の転帰グループにクラスタリングする工程であって、各転帰グループのSMS重心が予測的SMSを規定する、工程;
b.以下を含むプロセスによって、第一の哺乳動物由来の腫瘍のSMSを決定する工程:
i.第一の哺乳動物由来の腫瘍の複数の組織切片を調製する工程;
ii.該第一の哺乳動物由来の腫瘍の1以上の組織切片を第一の抗SPARC抗体で免疫染色する工程であって、該第一の抗SPARC抗体は、腫瘍細胞中のSPARCを選択的に染色する、工程;
iii.該第一の哺乳動物由来の腫瘍の1以上の組織切片を第二の抗SPARC抗体で免疫染色する工程であって、該第二の抗SPARC抗体は、繊維芽細胞中のSPARCを選択的に染色する、工程;
iv.第一の抗SPARC抗体による、該第一の哺乳動物由来の腫瘍内の腫瘍細胞、繊維芽細胞、炎症細胞、無細胞間質/マトリックス、血管、神経組織及び正常な解剖学的形態、又はそれらの任意の組合わせについて、第一の哺乳動物における腫瘍の免疫染色パターンを決定し、かつ第二の抗体による、該第一の哺乳動物由来の腫瘍内の腫瘍細胞、繊維芽細胞、炎症細胞、無細胞間質/マトリックス、血管、神経組織及び正常な解剖学的形態、又はそれらの任意の組合わせの、第一の哺乳動物由来の腫瘍の免疫染色を決定することによって、第一の哺乳動物の腫瘍SMSを決定する工程;
c.第一の哺乳動物のSMSから(a)で決定した予測的SMSまでの該腫瘍のユークリッド距離を決定し、第一の哺乳動物由来の腫瘍を、最も近い予測的SMSを有する転帰グループの一員として分類する工程;
d.第一の哺乳動物のSMS由来の腫瘍が、該療法に応答する転帰グループにマッピングされる場合、治療有効量の療法を該第一の哺乳動物に投与する工程、
を含む、方法。
【請求項24】
第一の哺乳動物由来の腫瘍が、前記療法につき既知の転帰を有する他の哺乳動物由来の腫瘍と同じ型の腫瘍である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
療法がnab−パクリタキセルを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
第一の哺乳動物由来の腫瘍が膵臓癌である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記療法につき既知の転帰を有する他の哺乳動物由来の各腫瘍の腫瘍SMSのクラスタリングが、K平均、自己組織化マップ及び階層的クラスタリングの1以上によって実施される、請求項23に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図1】
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【公表番号】特表2013−505268(P2013−505268A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529971(P2012−529971)
【出願日】平成22年9月20日(2010.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/049545
【国際公開番号】WO2011/035274
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(508235494)アブラクシス バイオサイエンス リミテッド ライアビリティー カンパニー (22)
【Fターム(参考)】