説明

癌の診断のための方法およびキットならびに治療価の推定

癌療法のための患者を同定する方法は、診断用量の検出可能な状態に標識された第1結合剤を患者に投与することを含むことができ、この検出可能な状態に標識された結合剤はある分子標的を結合することができる。本方法は、ある細胞標的を結合できる療法用量の第2結合剤を投与するための患者を選択することをも含み、その際、この選択された患者は検出可能な状態に標識された第1結合剤について陽性の読みを示す。さらに本方法は、療法用量の第2結合剤をその患者に投与することを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、一般に癌療法のための患者を同定および/または選択する方法に関する。本発明は、より詳細には、種々の癌療法の治療価を推定するために定量または半定量イメージングを使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 前立腺癌は、米国の男性において癌による死亡の最も一般的な原因のひとつである。2007年には、約219,000の新たな症例の診断およびこの疾患による27,000人の死亡が予想される(NCI SEER data; Cancer Facts and Figures, American Cancer Society)。現時点では、前立腺癌患者については癌が転移すると(前立腺以外への拡散)治療選択肢が著しく限定される。全身療法は主に種々の形式のアンドロゲン(男性ホルモン)枯渇に限定される。大部分の患者は初期の臨床改善を示すであろうが、アンドロゲン非依存性細胞の発現は事実上避けられない。したがって、内分泌療法は対症的であって治癒的ではない(Eisenberger M. A., et al. (1998) NEJM 339: 1036-42)。アンドロゲン非依存性細胞が発現したこれらの患者における全生存中央値はホルモン治療開始から28〜52カ月であった(Eisenberger M. A., et al. (1998)前掲)。アンドロゲン非依存性の発現後はタキサン(taxane)系(すなわちドセタキセル(docetaxel))化学療法のみが生存に有益であることが示され、生存中央値は19カ月である。患者がドセタキセルに応答しなくなると、生存率中央値は12カ月である。
【0003】
[0003] 前立腺癌が局在し、患者の期待余命が10年以上である場合、根治的前立腺切除術がこの疾患の根絶のために最良の機会を提供する。歴史的にこの方法の欠点は、癌が検出される時点までに多くの癌が手術の限界を超えて拡散していることである。しかし、前立腺特異的抗原(prostate−specific antigen)(PSA)試験法の採用により前立腺癌の早期検出が可能になった。その結果、外科処置はより狭い範囲となり、合併症がより少なくなった。大きな重度腫瘍を伴う患者を根治的前立腺切除術により治療できる可能性はより少ない。根治的前立腺切除術に代わるものとして放射線療法も広く用いられている。一般に放射線療法により処置される患者は、より高齢で健康状態がより低い患者、およびより重度でより臨床的に進行した腫瘍を伴う患者である。しかし、外科処置または放射線療法の後に血清PSA濃度が検出可能であれば、持続性癌の指標となる。多くの場合、PSA濃度は放射線治療によって低下する可能性がある。しかし、このPSA濃度はしばしば2年以内に再上昇し、疾患再発のシグナルとなる。
【0004】
[0004] 局所進行した疾患を伴う患者の処置のために、根治的前立腺切除術または放射線治療の前または後にホルモン療法が用いられている。睾丸切除術(睾丸の除去)は血清テストステロン濃度を低下させるが、エストロゲン処置は同様な効果をもつ。
【0005】
[0005] 前立腺特異的膜抗原(Prostate Specific Membrane Antigen)(PSMA)は、ある正常な前立腺上皮細胞、正常な腎近位尿細管細胞、近位小腸およびある星状細胞(脳にみられるもの)の細胞表面に存在する。PSMAは前立腺癌(Pca)細胞において高度にアップレギュレート/過剰発現する。PSMAの発現レベルは前立腺癌の進行と共に上昇し、初期前立腺癌におけるPSMAレベルが高いほど再発の可能性が高いと推測される。さらに、事実上すべての充実性腫瘍がそれらの腫瘍新生血管にPSMAを発現するのに対し、正常な血管内皮はPSMA陰性である。PSMAを認識するモノクローナル抗体が開発された;これには、細胞内ドメインに結合する7E11(Horoszewicz et al. (1987) Anticancer Res. 7: 927-936; U.S. Pat. Nos. 5,162,504; 6,107,090; US 6,150,508;および7,045,605)、および細胞外ドメインを結合する他の抗PSMA抗体が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】U.S. Pat. No. 5,162,504
【特許文献2】U.S. Pat. No. 6,107,090
【特許文献3】US 6,150,508
【特許文献4】US 7,045,605
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】NCI SEER data
【非特許文献2】Cancer Facts and Figures, American Cancer Society
【非特許文献3】Eisenberger M. A., et al. (1998) NEJM 339: 1036-42
【非特許文献4】Horoszewicz et al. (1987) Anticancer Res. 7: 927-936
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0006] 癌の処置には、毒性を含めた有害その他の望ましくない副作用をもつ療法剤の投与がしばしば含まれる。さらに、個々の患者の癌に対する特定の処置の効果は変動する。ある患者において特定の処置がきわめて有効な可能性があり、一方、他の患者においてはそれが癌に対してほとんどまたは全く効果がない可能性がある。さらに、処置の結果が推定不可能かつ変動性であるため、臨床試験は統計的有意性に達するためにきわめて大規模にならざるを得ない。大規模な臨床試験は、実施できないほど経費がかかるか、あるいは他の形で非現実的になる可能性がある。したがって、毒性を緩和し、好ましい結果の可能性を向上させ、臨床試験を容易にする、改善された処置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0007] 本発明は、癌を診断および処置するための方法およびキットを含む。ある観点において、本発明は癌療法のための患者または対象を同定する方法に関する。本方法は、第1分子標的を結合できる第1結合剤を付与することを含み、その際、第1分子標的の存在は癌に関連するか、または癌の指標となる。次いで、組織、細胞(単数または複数)または体液中における第1結合剤の存在を評価することができる。好ましくは、第1結合剤は標識部分を含む。ある態様において、第1結合剤の存在をインビボイメージングにより評価し、あるいは患者から得た生体試料中において第1結合剤の存在をアッセイすることができる。第1結合剤の存在を定性的(たとえば視覚的)、半定量的または定量的に評価することができる。適切な場合、本方法は分子標的または細胞標的を結合できる療法用量の第2結合剤を患者に投与することをも含む。
【0010】
[0008] 本発明のある観点において、本方法は診断用量の検出可能な状態に標識された第1結合剤を患者に投与することを含む。この検出可能な状態に標識された第1結合剤は、癌に関連する分子標的(たとえば癌細胞、または関連細胞、たとえば充実性腫瘍の新生血管)を結合することができる。適切な場合、本方法は分子標的または細胞標的を結合できる療法用量の第2結合剤を患者に投与することをも含む。診断用量の投与の結果(たとえば非侵襲性インビボ診断)に基づいて、療法のための患者または患者たちを選択する。この結果には、イメージングおよび/または他の方法での患者における第1結合剤のレベルの定量および/または位置確認を含めることができる。特定の療法からの有益性が期待されない患者をこうして療法前に同定し、その療法を免れさせ、および/または別の療法に差し向けることができる。1態様において、第2結合剤は第1結合剤と同一の標的分子に結合することができる。さらに他の態様において、療法用第2結合剤は異なる分子をターゲティングすることができる。ある態様において、第1結合剤および第2結合剤は機能的に関連する分子をターゲティングする。たとえば、第1分子標的および第2分子標的は共通の経路の一部であってもよい。
【0011】
[0009] 本発明のある観点において、癌療法のための患者を同定する方法は下記を含む:(i)第1分子標的を結合できる第1結合剤を付与し、その際、第1分子標的は癌に関連する経路から選択され;(ii)患者の組織、細胞または体液中における第1結合剤の存在を評価し;そして(iii)第2分子標的を結合できる療法用量の第2結合剤を投与するための患者を選択し、その際、患者は第1結合剤が存在すれば選択される。
【0012】
[0010] 本発明のある観点において、癌療法のための患者を同定する方法は下記を含む:(i)癌に関連する経路から第1分子標的および第2分子標的を選択し;(ii)第1分子標的を結合できる第1結合剤を付与し;(iii)患者の組織、細胞または体液中における第1結合剤の量を評価することにより患者をスコアリングし;(iv)第2分子標的を結合できる療法用量の第2結合剤を投与するための患者を選択し、その際、患者はスコアが閾値を超えれば選択され、閾値を超えるスコアは癌の指標となる。
【0013】
[0011] 1観点において、癌療法のための患者を同定する方法は、診断用量の検出可能な状態に標識された第1結合剤を患者に投与することを含む。この検出可能な状態に標識された第1結合剤は、細胞標的または分子標的(たとえば、細胞表面標的、たとえばPSMAの、細胞外部分)を結合することができる。本方法は、細胞標的を結合できる療法用量の第2結合剤を投与するための患者を選択することをも含み、その際、この選択された患者は検出可能な状態に標識された第1結合剤について陽性の読みを示す。
【0014】
[0012] 他の観点において、前立腺癌を処置する方法は、診断用量の検出可能な状態に標識された第1結合剤を患者に投与することを含む。この検出可能な状態に標識された第1結合剤は、分子標的または細胞標的(たとえば、細胞表面標的、たとえばPSMAの、細胞外部分)を結合することができる。本方法は、細胞標的を結合できる療法用量の第2結合剤を選択された患者に投与することをも含み、その際、この選択された患者は検出可能な状態に標識された第1結合剤について陽性の読みを示す。
【0015】
[0013] さらに他の観点において、癌を処置する方法は、細胞標的を結合できる診断用量の検出可能な状態に標識された第1結合剤を患者に投与するための指示を提供すること、および/または生体試料中の腫瘍マーカーもしくは標的分子の発現レベルを評価するための指示を提供することを含む。ある態様において、腫瘍細胞を血液試料または他の体液試料から採集し、そして標的分子の存在および発現レベルを評価する。本方法は、細胞標的を結合できる療法用量の第2結合剤を、患者におけるまたは患者から得た生体試料における第1結合剤のレベルに基づいて選択された患者に投与するための指示を提供することをも含む。
【0016】
[0014] ある観点において、本発明は臨床試験の統計的有意性を改善する方法を含む。1観点において、本発明は臨床試験に必要な患者の数を減らす方法を含む。ある態様において、本方法は診断用量の検出可能な状態に標識された第1結合剤を複数の患者に投与することを含む。この検出可能な状態に標識された第1結合剤は、細胞標的または分子標的を結合することができる。患者または患者たちは、患者における、または患者から得た生体試料における、第1結合剤のレベルに基づいて選択される。診断用量の検出可能な状態に標識された第1結合剤を投与された特定の患者は選択されず、したがって療法用量の第2結合剤を投与されない。本方法は、選択された患者に細胞標的を結合できる療法用量の第2結合剤を投与することをも含む。療法用量の第2結合剤に対して応答する可能性が最も大きい患者または患者たちを選択し、療法用量の第2結合剤に対して好ましい応答を示す可能性がより小さいかまたは可能性が無い患者を選択解除または除外することによって、より少数の処置患者内で統計的有意性に達する試験能力が改善される。
【0017】
[0015] 他の観点において、本発明は癌療法のための患者を選択するキットを含む。ある態様において、キットは、細胞標的を結合できる診断用量の検出可能な状態に標識された第1結合剤を投与するための指示、および/または生体試料における腫瘍マーカーもしくは標的分子の発現レベルを評価するための指示を含む。キットは、選択した患者に療法用量の第2結合剤を投与するための指示をも含む。他の態様において、キットは下記のものを含む:生体試料を検出可能な状態に標識された第1結合剤でアッセイするための指示:この検出可能な状態に標識された結合剤はある分子標的を結合できる;ならびに第2分子標的を結合できる療法用量の第2結合剤を投与する患者を選択するための指示:その際、この選択された患者は検出可能な状態に標識された第1結合剤について陽性の読みを示す。患者または患者たちは、患者における、または患者から得た生体試料における、第1結合剤のレベルに基づいて選択される。
【0018】
[0016] さらに他の観点において、本発明は癌療法のための患者を選択する方法を含み、その際、有毒療法剤を患者に投与せずに患者を選択する。ある態様において、本方法は検出可能な状態に標識された結合剤を患者に投与することを含む。検出可能な状態に標識された結合剤は、細胞標的を結合することができる。本方法は、結合剤および細胞毒性または細胞静止性の療法剤を含む療法用コンジュゲートで処置するための患者を選択することをも含む。患者は、患者における、または患者から得た生体試料における、第1結合剤のレベルに基づいて選択される。
【0019】
[0017] 他の観点において、本発明は処置グループの患者を選択する方法を含み、その際、有毒療法剤を患者に投与せずに患者を選択する。ある態様において、本方法は第1グループの患者に結合剤を投与することを含み、その際、結合剤は検出可能な状態に標識されており、細胞標的を結合することができ、第1グループの患者はある状態を伴うかまたはその疑いがある。本方法は、結合剤および細胞毒性または細胞静止性の療法剤を含む療法用コンジュゲートでその状態を処置するための患者を選択することをも含む。患者は、その患者における、またはその患者から得た生体試料における、第1結合剤のレベルに基づいて選択される。
【0020】
[0018] さらに他の観点において、本発明は癌療法のためのキットを含む。キットは、患者に対する診断用量の検出可能な状態に標識された第1結合剤を含み、この検出可能な状態に標識された結合剤はある分子標的を結合できる。キットは、ある分子標的を結合できる療法用量の第2結合剤を投与する患者を選択するための指示をも含み、その際、この選択された患者は検出可能な状態に標識された第1結合剤について陽性の読みを示す。他の態様において、キットは下記のものを含む:検出可能な状態に標識された第1結合剤:この検出可能な状態に標識された結合剤はある分子標的を結合できる;および第2分子標的を結合できる療法用量の第2結合剤を投与する患者を選択するための指示:その際、この選択された患者は検出可能な状態に標識された第1結合剤について陽性の読みを示す。
【0021】
[0019] 他の態様において、前記の観点はいずれも、または本明細書に記載する方法もしくはキットはいずれも、下記のうち1以上の特徴を含むことができる。
[0020] 標的は細胞内標的または細胞表面標的であってもよい。種々の態様において、状態または癌は前立腺癌であり、細胞表面標的は前立腺特異的膜抗原(PSMA)である。他の態様において、癌は前立腺以外の癌であり、細胞表面標的はその特定のタイプの癌の細胞に存在することが知られているマーカーである。1例示態様において、前立腺以外の癌には、PSMAを発現する新生血管に付随する充実性腫瘍を含めることができ、細胞表面標的は新生血管細胞上のPSMAであってもよい。
【0022】
[0021] 好ましい態様において、患者の選択は、第1結合剤を用いて分子標的または細胞標的を検出することを含む。患者の選択は、患者における分子標的または細胞標的の定量を含むことができ、あるいは患者における細胞標的の定性アッセイを含むことができる。本明細書に記載するように、細胞標的または療法標的の発現レベルはインビトロで(たとえば診断アッセイ)またはインビボで(たとえばインビボイメージング)、その標的を結合できる検出可能な状態に標識された第1結合剤を用いて測定することができる。診断アッセイは患者から分離した生体試料について実施されることがしばしばある。好ましくは、侵襲が最小限の方法でこれらの試料を入手する:たとえば血清試料または尿試料。インビボイメージング法は、人体における特定の疾患の状態を判定するための非侵襲的方法を提供する。標準的なイメージング法には磁気共鳴イメージング、コンピューター断層撮影スキャン、PET、SPECTなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
[0022] ある態様において、インビトロで生体試料中の細胞標的または療法標的の発現レベルを測定する。一般に、患者から得た生体試料中のマーカーのレベルは、健康な個体から得た同様な試料中の同一マーカーのレベルと異なる(すなわち、上昇または低下している)。試料はいずれかの生物源に由来するもの、たとえば組織、抽出物、または細胞(たとえば腫瘍細胞)を含む細胞培養物、細胞溶解物、および生理的流体、たとえば全血、血漿、血清、唾液、水晶体液、脳脊髄液、汗、尿、乳汁、腹水、滑液、腹膜液などであってよい。試料を使用前に処理することができる;たとえば、血液から血漿を調製する、粘稠な流体を希釈するなど。たとえば、対象から得た細胞または細胞を含有する体液を、放射性標識あるいは他の形の検出可能および/または測定可能な第1結合剤と、インビトロで接触させることができる。他の態様において、検出可能な状態に標識された第1結合剤を患者に投与し、検出可能な標識のレベルをインサイチュ(in situ)で観察する。その方法はインビボまたはエクスビボ非侵襲法であってもよい。
【0024】
[0023] 多様な態様において、診断(たとえば、同定または選択)法はいずれも、療法用量の第2結合剤を患者に投与することをも含むことができる。第1結合剤および/または第2結合剤は、抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体であってもよい。抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体は、PSMAの細胞外ドメインを結合できるものであってもよい。
【0025】
[0024] ある態様において、検出可能な標識は、177Lu、111インジウム、67Cu、18F、99mTc、124I、125Iおよび131Iからなる群から選択される同位体を含む。検出可能な標識は、陽電子放射断層撮影(PET)剤であってもよく、これには124I、89Zrなどが含まれるが、これらに限定されない。特定の態様において、第1および/または第2の抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体は放射性標識されている。放射性標識は、177Lu、111インジウム、67Cu、18F、99mTc、124I、125I、131I、および99mTcのうち少なくとも1つであってもよい。他の態様において、第1結合剤は当業者に既知の色素または他のいずれかの検出可能な作用物で標識されていてもよい。
【0026】
[0025] 多様な態様において、抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体は、ATCC寄託受理番号HB−12101で寄託されたハイブリドーマ、ATCC寄託受理番号HB−12109で寄託されたハイブリドーマ、ATCC寄託受理番号HB−12127で寄託されたハイブリドーマ、ATCC寄託受理番号HB−12126で寄託されたハイブリドーマからなる群から選択されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体である。第1結合剤および/または第2結合剤は、標的(たとえば細胞表面標的)に対して少なくとも約10−9Mの親和性をもつ。第1結合剤と第2結合剤は実質的に同一であってもよい。
【0027】
[0026] ある態様において、患者の選択は患者の腫瘍部位の標的(たとえば細胞表面標的)の量を定量することを含む。定量には定量法または半定量法を利用できる。患者の選択は、検出可能な状態に標識された第1結合剤のインビボイメージングを含むことができる。患者の選択は、患者における標的(たとえば細胞表面標的)の定性分析を含むことができる。本方法は、診断用量の検出可能な状態に標識された第1結合剤と併せた造影剤の投与を含むことができる。それは、他の形の解剖学的イメージング様式(たとえば、CTおよび/またはMRI)をも含むことができ、これらを第1結合剤のイメージングと組み合わせることができる(たとえば、PET−CT、SPECT−CT、平面イメージ−MRなど)。
【0028】
[0027] 特定の態様において、選択した患者に療法用量の第2結合剤を投与する;診断用量の第1結合剤と第2療法剤の間に時間間隔に関して何ら制限は無い。好ましい態様においては、この間隔を3カ月以下、または1カ月以下、または2週間以下にすべきである。
【0029】
[0028] 種々の態様において、キットは(たとえば、診断用量および/または療法用量の)検出可能な状態に標識された第1結合剤、第2結合剤、および/または造影剤を含むことができる。第1結合剤と第2結合剤は実質的に同一であってもよい。
【0030】
[0029] 本明細書に記載する種々の態様は相補的であってもよく、本明細書に含まれる教示を考慮して当業者が理解できる様式で組み合わせるか、または併用することができる。本発明の他の観点は以下の図面および記述から明らかになるであろう;これらはすべて本発明の原理を例示によって説明するにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】[0030] 図1は、骨スキャン用99mTc−MDPおよび177Lu−J591mAbの投与後に撮影した同一患者の全身イメージを示す(それぞれ、左2つおよび右2つのイメージ)。
【図2】[0031] 図2は、図1においてイメージングした患者からの経時血中PSA濃度のグラフを示す。ゼロ日目が処置日を表わす。
【図3】[0032] 図3は、ある患者についての経時PSA量のグラフを示す。ゼロ日目が処置日を表わす。
【図4】[0033] 図4は、ある患者についての経時PSA量のグラフを示す。ゼロ日目が処置日を表わす。
【図5】[0034] 図5は、99mTc−MDP(骨スキャン)および177Lu−J591mAbの投与後に撮影した全身スキャンイメージを示す(それぞれ、左2つおよび右2つのイメージ)。
【図6】[0035] 図6は、図5においてイメージングした患者からの経時PSA濃度のグラフを示す。ゼロ日目が処置日を表わす。
【図7】[0036] 図7は、99mTc−MDP(骨スキャン)および177Lu−J591mAbの投与後に撮影した全身スキャンイメージを示す(それぞれ、左2つおよび右2つのイメージ)。
【図8A】[0037] 図8Aは、図7においてイメージングした患者からの経時PSA濃度の半対数グラフを示す。ゼロ日目が処置日を表わす。
【図8B】図8Bは、図7においてイメージングした患者からの経時PSA濃度の算術グラフを示す。ゼロ日目が処置日を表わす。
【図9】[0038] 図9は、99mTc−MDPおよび177Lu−J591mAbの投与後に撮影した全身スキャンイメージを示す(それぞれ、左2つおよび右2つのイメージ)。
【図10A】[0039] 図10Aは、図9においてイメージングした患者からの経時PSA濃度の半対数グラフを示す。ゼロ日目が処置日を表わす。
【図10B】図10Bは、図9においてイメージングした患者からの経時PSA濃度の算術グラフを示す。ゼロ日目が処置日を表わす。
【図11】[0040] 図11は、処置後のPSA応答−対−J591イメージングスコア(0〜3+)のグラフを示す。
【図12】[0041] 図12は、J591イメージングスコア(0〜3+)とPSA応答の相関性を表わすグラフを示す。
【図13】[0042] 図13Aおよび13Bは、腫瘍ターゲティング指数(TTI)法を用いて定量したイメージの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[0043] 本明細書には、癌療法などの療法に適した患者または患者たちを同定する方法を提示する。本発明の観点は、患者または対象における癌の存在を診断し、療法のための癌を伴う患者または対象を選択する方法およびキットに関する。本発明の観点は、多様な癌について採用できる。癌には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:膵臓癌、黒色腫、乳癌、肺癌、気管支癌、結腸直腸癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳または中枢神経系の癌、末梢神経系の癌、食道癌、子宮頚癌、子宮または子宮内膜の癌、口腔または咽頭の癌、肝癌、腎癌、睾丸癌、胆道癌、小腸または虫垂の癌、唾液腺癌、甲状腺癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、血液組織の癌、神経膠腫、リンパ腫など。
【0033】
[0044] 本発明のある態様は、分子標的の存在、発現レベルを検出することにより癌を診断する方法に関するものであり、その際、分子標的は癌に関連する特定の経路に由来する。ある態様において、本方法は、そのスコアが癌の指標となる一定の閾値を超える存在、量または発現レベルをスコアリングすることを含む。本方法は、癌を診断し、患者または対象に癌療法が有益であるかどうかを推定するために使用できる。本方法は、癌を伴う疑いのある患者の診断および処置法に使用できる。分子標的はいずれかの癌関連経路、たとえば癌の調節に関与する経路に由来するものであってもよい。ある態様において、本方法は、インビボイメージングおよび/または診断アッセイあるいは生体試料を用いて、患者における腫瘍マーカーまたは標的の発現レベルを評価することを含む。“マーカー”は変化する可能性のある核酸またはタンパク質であり、その変化は癌に関連する。その変化は、正常または健康な組織または細胞(たとえば対照)におけるそれの量、構造および/または活性と比較した癌組織または癌細胞における量、構造および/または活性における変化であってもよく、癌などの疾病状態と関連する。癌により産生されるマーカー分子には、モノクローナル免疫グロブリン、ホルモン、分泌型血清タンパク質、抗原、酵素およびイソ酵素、細胞表面マーカー、糖タンパク質および炭水化物、細胞外マトリックスタンパク質、ムチンならびに核酸(たとえば、mRNA、DNA、マイクロRNA)が含まれる。ある態様において、標的遺伝子(単数または複数)のメチル化状態の検出を使用できる。癌マーカーは可溶性マーカーとして分類される場合があり、これらは体液、たとえば血液、血漿、血清、滲出液および尿中に出現する。他の癌マーカーは細胞に随伴するタンパク質および核酸であり、これらは血清その他の体液中に何ら有意量で放出されないことを特徴とする。細胞または組織に随伴する腫瘍マーカーは、癌細胞を含有する組織試料中、またはそのような細胞を含有する生体試料中に検出できる。本明細書中で用いる用語“腫瘍マーカー”は、癌性増殖または腫瘍の存在または程度の指標として用いられる。腫瘍マーカーの例には、前立腺癌に関するPSA、卵巣癌に関するCA 125、消化器癌に関するCA 195が含まれるが、これらに限定されない。腫瘍マーカーは癌特異的マーカー(たとえば、CA19−9、CA 125、CEA)または組織特異的マーカー(たとえば、前立腺癌に関するPSA、乳癌に関するCA15−3)であってもよい。
【0034】
[0045] ある態様において、患者を、または患者から得た生体試料を、特異的分子標的の存在について評価する。本明細書中で用いる用語“評価”は、いずれかの形の測定を含み、ある分子が存在するか否かを判定することを含む。用語“判定(determining)”、“測定(measuring)”、“鑑定(evaluating)”、“評価(assessing)”、および“アッセイ(assaying)”は互換性をもって用いられ、癌関連標的の存在または不存在を確証するための定量、定性およびイメージング判定を含む。評価は相対的または絶対的であってよい。ある態様において、本方法は第1分子標的のレベルをスコアリングまたは定量することを含む。ある態様において、本方法はそのレベルが標準試料(たとえば、健康な対象、または健康な対象から得た生体試料)と比較してより高いかまたはより低いかを、定量的、半定量的または定性的に判定することを含む。ある態様において、本方法は定量的腫瘍ターゲティング指数(TTI)を判定することを含む。
【0035】
[0046] ある態様において、本方法は診断用量の検出可能な状態に標識された第1結合剤を患者に投与することを含む。検出可能な状態に標識された第1結合剤は、たとえば細胞標的または分子標的に結合することができる。ある態様において、細胞標的(本明細書中で療法標的とも呼ぶ)は細胞表面標的の細胞外部分である。分子標的または細胞標的(たとえば、細胞表面標的の細胞外部分)に結合できる療法用量の第2結合剤を投与するための1以上の患者を選択する。患者または患者たちは、その患者における、またはその患者から得た生体試料における、第1結合剤のレベルに基づいて選択される。本発明は、本明細書に提示する方法に従って患者を同定および/または処置する際に使用するためのキットをも含む。
【0036】
[0047] 多様な態様において、方法は下記を含むことができる:(i)癌を発症しつつあるか、癌を伴うか、または伴う疑いがある第1グループの1以上の患者を同定し;(ii)診断用量の検出可能な状態に標識された第1結合剤を第1グループの各患者に投与し、その際、検出可能な状態に標識された第1結合剤は癌に関する分子標的または細胞標的を結合でき;(iii)第1グループの各患者における検出可能な状態に標識された第1結合剤のレベルを観察し(たとえば、標的を定量的または半定量的に測定する);(iv)患者において観察した検出可能な状態に標識された第1結合剤のレベルに基づいて、第1グループから癌療法のための第2グループの患者を選択し;そして(v)療法用量の第2結合剤を第2グループの1以上の患者に投与する。本明細書に提示するある方法において、診断用量の検出可能な状態に標識された第1結合剤を1以上の患者に投与する。次いで、検出可能な状態に標識された第1結合剤を投与して選択された患者に、療法用量の第2結合剤を投与する。
【0037】
[0048] 他の態様において、方法は下記を含む:(i)癌を発症しつつあるか、癌を伴うか、または伴う疑いがある第1グループの1以上の患者を同定し;(ii)第1グループの各患者について生体試料を入手し;(iii)第1グループの各患者において第1結合剤の存在について生体試料をアッセイし、その際、第1結合剤は癌に関する分子標的または細胞標的を結合でき;(iv)各生体試料における第1結合剤のレベルを評価し(たとえば、標的を定量的または半定量的に測定する);(v)患者において観察した第1結合剤のレベルに基づいて、第1グループから癌療法のための第2グループの患者を選択し;そして(vi)療法用量の第2結合剤を第2グループの1以上の患者に投与する。ある態様において、第1結合剤は標識部分を含む(たとえば、検出可能な状態に標識されている)。生体試料は血液または他の体液、たとえば尿、脳脊髄液、精液などであってもよい。
【0038】
[0049] キットおよび方法を含めた多様な態様において、第1結合剤および第2結合剤またはその療法標的結合部分は実質的に同一であり、あるいは実質的に同一であってもよい。あるいは、療法用第2結合剤は第1結合剤とは異なる分子標的または細胞標的に結合してもよく、その際、これら2種類の異なる標的は機能的に関連している。ある態様において、第1結合剤は特定の疾患と関連するゲノミクス、プロテオミクス、メタボロミクスまたはエピゲノミクスシグネチャーのメンバーまたはメンバー類を認識できる。シグネチャーには、たとえばタンパク質またはタンパク質集合体の存在および/またはレベルおよび/または翻訳後修飾;核酸の存在および/またはレベル;ならびに核酸の統合性もしくはメチル化状態または他のパラメーターが含まれる。例示態様において、第1結合剤は、機能性経路、シグナル伝達経路または調節経路における特定の代謝産物または他の遺伝子もしくは遺伝子産物のレベルを同定できる。
【0039】
[0050] 第2療法剤はその経路の同一または異なる分子をターゲティングすることができる。たとえば、第1結合剤はアンドロゲン受容体(AR)のレベルを同定することができ、一方、第2療法剤はアンドロゲンシグナル伝達経路のいずれかのポイントに作用することができる。他の態様において、第1結合剤は好ましい治療方法またはターゲティング療法と関連するゲノミクス、プロテオミクス、メタボロミクスまたはエピゲノミクスシグネチャーのメンバーまたはメンバー類を認識できる。たとえば第1結合剤をインビボイメージングまたは診断アッセイに用いて、関連するゲノミクス、プロテオミクス、メタボロミクスまたはエピゲノミクスシグネチャーの存在を反映させ、これによりその患者のための療法の選択を指示することができる。ある態様において、経路のシグネチャーは多数の経路をターゲティングする多数の化合物を用いる併用療法を指示することができる。ある態様において、第1結合剤のレベルは療法用第2結合剤に対する応答を推定させるものであることを示すことができる。
【0040】
[0051] 本発明のある観点において、検出可能な状態に標識された第1結合剤および第2結合剤は療法標的を結合することができる。療法標的は、直接または間接的に癌などの状態と関連するものであってよい。適切な療法標的には、いずれかの細胞外または細胞内分子または構造体が含まれる。ある態様において、療法標的は抗原である。療法標的は、たとえば細胞表面分子(たとえばPSMA)の細胞外部分であってもよい。他の態様において、療法標的はシグナル伝達に関与する酵素(たとえばチロシンキナーゼ)である。
【0041】
[0052] 第1結合剤および/または第2結合剤は、結合対のメンバー、たとえば受容体/リガンド、抗体/抗原、酵素/基質、小分子/リガンドなどを含むことができる。第1結合剤および/または第2結合剤は、診断標的および/または療法標的を結合するように設計および/または選択されたペプチドまたはアプタマーを含むことができる。アプタマーには、核酸(たとえば、DNAまたはRNA)アプタマーまたはペプチドアプタマーが含まれる。ある態様において、第1結合剤および/または第2結合剤は、細胞表面受容体に対するリガンド、あるいは細胞会合分子に対する基質、あるいは療法標的を結合できる抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体である。例示態様において、第1結合剤および/または第2結合剤は抗体またはその誘導体である。他の態様において、第1結合剤および/または第2結合剤は小分子またはその誘導体である。小分子は膜を通過して細胞内部の標的に到達するという利点をもつ。たとえば、第1結合剤および/または第2結合剤は可逆的チロシンキナーゼ阻害薬(たとえば、ゲフィチニブ(gefitinib)またはイレッサ(Iressa(登録商標)))または不可逆的チロシンキナーゼ阻害薬を含むことができる。チロシンキナーゼ阻害薬は、チロシンキナーゼ受容体上のATP結合部位に結合して、その受容体の活性化およびその受容体からのシグナル伝達を阻止する。小分子の例には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:イマチニブ(Imatinib)またはグリベック(Gleevec(登録商標))、これはbcr−ablのATP結合部位に結合する;ゲフィチニブまたはイレッサ(登録商標)、これは上皮増殖因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼドメインの選択的阻害薬である;エルロチニブ(Erlotinib)またはタルセバ(Tarceva(登録商標))、これは上皮増殖因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼのアデノシン三リン酸(ATP)結合部位に可逆的に結合する;ボルテゾミブ(bortezomib)またはベルケード(Velcade(登録商標))、これはトリペプチド系遮断薬であり、26Sプロテアソームまたは他のいずれかの小分子(たとえば、推論設計により合成されたもの)の触媒作用部位を結合する。ある態様において、第1結合剤および/または第2結合剤はホルモン、たとえばテストステロン(たとえばジヒドロテストステロン)であってもよい。たとえば、検出可能な状態に標識された第1結合剤はPETイメージング剤などのイメージング剤にコンジュゲートしたジヒドロテストステロンであってもよい。
【0042】
[0053] ある態様において、第1結合剤および/または第2結合剤は療法標的の少なくとも一部に対して親和性をもつことができ、その親和性は約10−7、10−8、10−9、または10−10Mより強い。第2結合剤は裸の結合剤、またはコンジュゲート、誘導体化もしくは標識した結合剤(たとえば、療法剤および/または標識に結合した結合剤)を含むことができる。
【0043】
[0054] 療法標的は、細胞の外部ではなく細胞の内部にあってもよい。ある態様において、第1結合剤は細胞膜を越えた受動拡散または能動輸送により細胞膜を横切ることができるように選択される。ある態様において、第1結合剤は小分子である。好ましい態様において、第1結合剤は標識されており、続いて患者はイメージングされる。取込みが無いことまたは低いことは、標的の存在が無いかまたは弱いことの指標となる;標識された第1結合剤の取込みが中等度または高度であることは、標的の存在が増大していることの指標となる。標的の存在が弱いかまたは存在しない患者より優先して標的の存在が増大している患者を選択すると、療法用第2結合剤に応答する可能性がより大きいと推測される。
【0044】
[0055] 標識された第1結合剤の検出可能な標識は、本質的に、定性的、半定量的または定量的に検出または測定できるいかなる作用物であってもよい。検出可能な標識は、インビボイメージングに適したいかなる作用物であってもよい。ある態様において、検出可能な標識は、インビトロおよび/またはインビボイメージングに適したいかなる作用物であってもよい。イメージングには下記のうちいずれか1以上を含めることができる:平面放射性核種イメージング、陽電子放射断層撮影(PET)、エコー平面イメージング(EPI)、単一光子放射形コンピュータ断層撮影(SPECT)、超音波イメージング(たとえば、非放射性、コントラスト特異的、高周波数、二次元)、磁気共鳴イメージング(MRI;磁気共鳴断層撮影またはMRTとも呼ばれる)、X線、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、蛍光イメージング、近赤外イメージング、および医療に有用または適用できる他のイメージング法。
【0045】
[0056] 検出可能な標識は、選択したイメージング法に適した作用物であってもよい。たとえば、放射性標識は177Lu、99mTc、111In、67Cu、18F、124I、131I、および89Zrのうちの少なくとも1つ、標識試薬に関して後記に述べるいずれかの放射性標識、または医療に有用もしくは適用可能な他のいずれかの放射性標識であってもよい。ある態様において、検出可能な標識は十分な用量で投与された場合には療法効果をもつ。しかし、検出可能な標識または第1結合剤が何らかの独立した療法効果(たとえば、癌細胞を死滅させ、または排除する)をもつ必要はない。他の態様において、適切な検出可能な標識には、たとえば蛍光標識、近赤外標識、生物活性酵素標識、発光性標識、または発色団を含めることができる。
【0046】
[0057] ある態様において、標識された第1結合剤の検出可能な標識およびコンジュゲートした第2結合剤の療法剤は同一である。ある態様において、標識された第1結合剤の検出可能な標識およびコンジュゲートした第2結合剤の療法剤は177Luである。177Luは、比較的狭い治療範囲をもつ低いβエネルギー放射(たとえば、約0.497MeV)およびイメージングを可能にするガンマ線放射(たとえば、約0.113および0.208MeV)を有する放射性核種である。場合により、177Luは実質的な骨髄毒性なしに使用できる(比較的高い用量ですら)。場合により、177Luは小さな腫瘍(たとえば、約2〜3mm)を治療するのに適している。
【0047】
[0058] 多様な態様において、状態または癌は前立腺癌であり、細胞表面標的は前立腺特異的膜抗原(PSMA)である。他の態様において、癌は前立腺以外の癌であり、細胞表面標的は特定のタイプの癌の細胞上に存在することが知られているマーカーである。1例示態様において、前立腺以外の癌には、PSMAを発現する新生血管に付随する充実性腫瘍を含めることができ、細胞表面標的は新生血管細胞上のPSMAであってもよい。
【0048】
[0059] 1態様において、診断用量の検出可能な状態に標識された第1結合剤を患者に投与した後、患者に存在する検出可能な状態に標識された第1結合剤のレベルを、その検出可能な標識に適したアッセイ法または検出法により観察する。検出可能な標識のレベルは、たとえば患者に適切なイメージング法を施すことにより観察できる。他の態様において、患者から得た生体試料を検出可能な状態に標識された第1結合剤を用いてアッセイした後、試料中に存在する検出可能な状態に標識された第1結合剤のレベルを適切なアッセイ法または検出法により評価する。
【0049】
[0060] 細胞標的の発現レベルまたは量は、患者における、または患者から得た生体試料における、検出可能な状態に標識された第1結合剤のレベルを検出することにより観察できる。本明細書において証明するように、インビボで療法標的を結合またはターゲティングする第1結合剤のレベルは第2結合剤を用いる処置の効果と相関し、その効果を推定できることが示された。これにより、その療法標的に向けた処置に応答する可能性が最も大きい患者または患者集団を選択できる。検出された第1結合剤のレベル(診断効果)と治療効果の間に相関性があることは、多くの理由で予想外であった。第1に、100%の前立腺癌がPSMA陽性であり[Bostwick, D.G., et al., Cancer 82: 2256-2261, 1998]、転移性前立腺癌全体の98〜100%がPSMAに対するmAbによりイメージングされており[Bander et al, J. Clin. Oncol. 2005, 23: 4591-4601; Bander, N.H., et al., J. Urol. 2003, 170: 1717-1721]、一般原則としてすべての転移前立腺癌が局在病変部より高いレベルのPSMAを発現する[Wright, G.L. et al., Urol. Oncol. 1995, 1: 18-28; Wright, G.L., et al., Urology 48: 326-334, 1996.; Sweat, S.D. et al., Urol, 52: 637-640, 1998]と報告されていた。Horoszewicz, JS, et al., Anticancer Res. 1987. 7: 927-936; Silver D. A. et al., Clin Can Res 1997. 3: 81-85; Chang S.S. et al., Urology, 2001. 57: 1179-83; Bostwick, DG, et al., Cancer 1998. 82: 2256-2261; Ross, JS, et al., Clin Can Res 2003. 9: 6357-6362; Mannweiler, S, et al., Pathol. Oncol. Res. 2009. 15: 167-172;およびAnanias, Hildo J.K. et al., The Prostate 2009 10: 1101-1108も参照されたい。これは、臨床試験でPSMAに特異的なmAb J591を投与された137人の患者におけるイメージングデータとまさに一致し、これらのうち参加基準としてPSMA発現につきスクリーニングされた者はいない(Bander N.H. et al., J. Urol., 2003. 170: 1717-1721; Milowsky M.I. et al., J. Clin. Onc, 2004; 22: 2522-2531; Bander N.H. et al., J. Clin. Onc, 2005; 23: 4591-4601; Scott T. et al., ASCO Proceedings, 2008。これらの患者において、イメージングの成功率は約95%であった。実質的にあらゆる患者において、通常の骨CTおよび/またはMRIにみられたすべての病変がJ591スキャンでみられた。多数グループからのこの多量のインビトロおよびインビボデータにより、PSMA発現に基づいて同定できるサブセットの患者はいないと指摘された。さらに、前立腺癌のきわめて不均質な生態(剖検で初めて検出された無症状疾患を伴う患者から、患者がそれらの転移性疾患の結果として急激に死亡する他の極端な例にまで及ぶ)、ならびに癌全般、特に前立腺癌に固有の、特定の療法に対する応答の変動性からみて、PSMA発現についての診断試験(インビトロで、またはイメージングによりインビボで)が、PSMAターゲティング療法に対してより大きく(またはより小さく)応答する可能性のある患者の処置前選択を可能にするとは予想されなかった。さらに、ターゲティング療法剤(放射性標識したもの、または他の細胞毒素)に対する応答は、下記を含む多数の因子の関数であろうと考えられていた(これらに限定されない):結合剤が療法標的に到達する能力、療法用結合剤が腫瘍内へ透過する能力、腫瘍細胞からの結合剤のクリアランス、身体からの結合剤のクリアランス、および放射性標識または他の細胞毒素それぞれに対する癌の相対的な固有の感受性または抵抗性。さらに、腫瘍または身体におけるターゲティング剤のレベルを検出することにより放射性標識または他の細胞毒素に対する癌の相対的な感受性が推定されるとは予想されなかった。さらに、処置前イメージング試験または生体試料における結合アッセイの評価に基づいて癌療法の結果を推定できることはこれまで示されていなかった。
【0050】
[0061] 前立腺以外の癌の症例において、PSMAを発現する新生血管が95%の症例に存在すると報告され[Liu H. et al., Cancer Res. 1997, 57(17): 3629-34; Chang, S.S. et al., Cancer Res., 59: 3192-3198, 1999; Chang S.S. et al., Clin. Cancer Res. 1999, 5(10): 2674-81]、Morris, M. et al. [Clin. Can. Res. 2007; 13: 2707-2713]はPSMAに対する放射性標識抗体が転移性充実性腫瘍を伴う未選択患者の95%をインビボでターゲティングできることを見出した。より最近になって本発明者らは、ほぼ転移性胃癌の65%および転移性結腸直腸癌の85%がPSMAを発現する新生血管を含むことを見出し[Haffner, M et al., Hum. Pathol., 40: 1754-1761, 2009]、同様な結果を乳癌、卵巣癌および子宮内膜癌において見出した−すなわち、前立腺以外の腫瘍を伴う多様なサブセットの患者がPSMA陽性の新生血管をもつ。その結果、PSMA陽性である前立腺以外の腫瘍を伴う患者の亜集団(非侵襲性イメージング試験または生体試料アッセイにより立証したもの)をPSMAターゲティング療法により処置するために選択でき、その腫瘍がPSMA陰性である患者より良好に応答する可能性がある。
【0051】
[0062] 検出可能な状態に標識された第1結合剤を用いてインビボで療法標的のレベルを観察することは、療法が有益であると推定される患者を選択し、療法が有益であると推定されない患者を除外するために使用できる。療法が有益であると推定されない患者は、それにもかかわらず本発明が有益となる可能性がある;彼らを有益な可能性のない療法の潜在的副作用から逃れさせることができ、かつ彼らに有益な可能性のある別の処置に彼らをより早期に差し向けることができるからである。療法が有益であると推定される患者はその療法を受けることができる。さらに、その療法が有益であると推定される患者を臨床試験に参加させることができる。特に、検出可能な状態に標識された第1結合剤のイメージングまたは読取りは、たとえば標的抗原の発現レベルの相異を同定することにより(たとえば、標的のレベルまたは量をスコアリングすることにより)患者を分別することができる。標的のレベルと療法に対する予想応答との仮説的または経験的相関性に基づいて、標的の前決定閾値を設定することができる(たとえば、閾値を超えるPSMA発現は療法のために選択すべき患者の指標となる)。同様に、本発明は種々の態様において組織生検を必要としないインビボ診断法を含むので、患者に有益となることができる(たとえば、免疫組織化学的検査、FISH、PCRなどのインビトロアッセイ法と異なる;これらはトラスツヅマブ(trastuzumab)および/または抗−EGFrなどのターゲティング処置のための患者を選択するのに使用できる)。他の有益性は、侵襲性で潜在的にリスクを伴う生検を受けている単一の病変部だけでなく患者のすべての病変部について本発明が情報を提供することである。本発明はさらに、生検により到達できる病変部を伴わない患者にも有益である。他の有益性は、より早期の化学療法および/またはより攻撃力の大きな化学療法剤もしくは治療法のために患者を選択できることである。さらに他の有益性は、PSMA発現が付随する前立腺以外の癌(たとえば、充実性腫瘍の新生血管において)を伴う患者に、既知の前立腺癌PSMAターゲティング療法を提供できることである。
【0052】
[0063] 多様な態様において、療法に適した患者の選択を、療法のための適量の選択と区別することができる(たとえば、抗体療法剤、たとえばヨウ素131−トシツモマブ(Tositumomab)(BEXXAR(登録商標)としても知られる)を用いる放射免疫療法は適量の判定に限定され、患者を処置するか否かを判定するのではなく、あるいは患者が処置に対してどのように応答するかを推定するのではない)。
【0053】
[0064] 多様な態様において、診断(たとえば、同定または選択)法はいずれも、患者への療法用量の第2結合剤の投与を含むことができる。第1結合剤および/または第2結合剤は、抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体であってもよい。この抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体は、PSMAの細胞外ドメインを結合することができる。
【0054】
[0065] 新生血管内皮細胞および/または腫瘍細胞に隣接する結合組織細胞上に標的が存在すれば同じ方法を適用できることは明らかであろう。標識した第1結合剤を同様に用いて個々の患者の腫瘍における標的分子の存在および相対量または絶対量を判定し、それを基準として用いて、療法用第2結合剤による処置を行なうためのより高い標的レベルをもつ患者を選択することができる;これらは療法用第2結合剤に対して応答する可能性がより大きいサブセットの患者であると思われるからである。
【0055】
[0066] ある態様において、検出可能な標識には、177Lu、111インジウム、67Cu、18F、99mTc、124I、125I、および131Iからなる群から選択される同位体が含まれる。検出可能な標識は、陽電子放射断層撮影(PET)剤であってもよく、これには124I、89Zrなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
[0067] 特定の態様において、第1および/または第2の抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体は放射性標識されている。放射性標識は、177Lu、111インジウム、67Cu、18F、99mTc、124I、125I、131I、89Zrおよび99mTcのうち少なくとも1つであってもよい。他の態様において、第1結合剤は当業者に既知の色素または他のいずれかの検出可能な作用物で標識されていてもよい。
【0057】
[0068] 多様な態様において、抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体は、ATCC寄託受理番号HB−12101で寄託されたハイブリドーマ、ATCC寄託受理番号HB−12109で寄託されたハイブリドーマ、ATCC寄託受理番号HB−12127で寄託されたハイブリドーマ、ATCC寄託受理番号HB−12126で寄託されたハイブリドーマからなる群から選択されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体である。第1結合剤および/または第2結合剤は、標的(たとえば細胞表面標的)に対して少なくとも約10−9Mの親和性をもつ。第1結合剤と第2結合剤は実質的に同一であってもよい。
【0058】
[0069] ある態様において、患者の選択は患者の腫瘍部位の標的(たとえば細胞表面標的)の量を定量することを含む。定量には定量法および半定量法を利用できる。患者の選択は、検出可能な状態に標識された第1結合剤のインビボイメージングを含むことができる。患者の選択は、患者における標的(たとえば細胞表面標的)の定性分析を含むことができる。本方法は、診断用量の検出可能な状態に標識された第1結合剤と併せた造影剤の投与を含むことができる。それは、他の形の解剖学的イメージング様式(たとえば、CTおよび/またはMRI)をも含むことができ、これらを第1結合剤のイメージングと組み合わせることができる(たとえば、PET−CT、SPECT−CT、平面イメージ−MRなど)。
【0059】
[0070] 多様な態様において、診断用量の検出可能な状態に標識された第1結合剤の投与と患者における検出可能な状態に標識された第1結合剤のレベルの観察との間に、ある期間が必要な場合がある。検出可能な状態に標識された第1結合剤の投与と患者における検出可能な状態に標識された第1結合剤のレベルの観察との間の期間は、第1結合剤および/または検出可能な標識の性質に基づいて当業者が決定できる。たとえば、レベルの観察に適した期間は、検出可能な状態に標識された第1結合剤の位置、検出可能な状態に標識された第1結合剤の信号に付随するバックグラウンドノイズの量、療法標的に対する検出可能な状態に標識された第1結合剤の親和性、検出可能な状態に標識された第1結合剤の代謝、検出可能な状態に標識された第1結合剤のサイズを含めた要因により決定できる。適切な期間は、数時間または数週間の規模であってもよい(たとえば、約1もしくは2時間、数日間または数週間)。
【0060】
[0071] ある態様において、患者における検出可能な標識のレベルを観察し、存在すると考えられる標識の相対量に基づいて患者に定性スコアを割り当てる。たとえば、イメージング法を用いて患者における検出可能な標識を観察する場合、得られたイメージを0、1+、2+、または3+とスコアリングすることができ、その際3+は検出された標識の最高レベルに割り当てられ、0は目視できる病変部のターゲティングを示さなかった患者のイメージに割り当てられる。ある態様において、イメージを視覚スコアリングする(たとえば、放射線専門医または腫瘍専門医などの医療専門家による)。他の態様において、イメージを自動スコアリングする(たとえば、コンピューターソフトウェアによる)。1態様において(たとえば、111In−J591または177Lu−J591)、患者のイメージを医師が下記のように視覚スコアリングする:0=腫瘍を検出できない、1+=微量または微弱な腫瘍取込みを観察できる、2+=中等度の腫瘍取込み(たとえば、肝臓より低い)、3+=強い腫瘍取込み(たとえば、肝臓と同等)。
【0061】
[0072] 患者における検出可能な標識のレベルに基づいて、細胞外または細胞内の標的を結合できる療法用量の第2結合剤を投与するための患者を選択する。ある態様において、第2結合剤は細胞表面標的の細胞外部分を結合できる。特に、選択した患者が検出可能な状態に標識された第1結合剤について陽性の読みを示す場合、療法用量の第2結合剤を投与するためにその患者を選択する。多様な態様において、陽性の読みは予め定めた応答(たとえば、一定の閾値を超えるスコア)であってもよい。陽性の読みは経験的なもの(たとえば、患者が処置に対して応答する妥当な確率をもつスコアを超えるスコア)であってもよい。特定の態様において、検出可能な状態に標識された第1結合剤について陽性の読みは定量アッセイを含むことができる(たとえば、予め定めたレベルまたは量の標的)。ある態様において、検出可能な状態に標識された第1結合剤について陽性の読みは定性アッセイを含むことができる(たとえば、標的の存在または不存在)。閾値は、たとえば一連の患者において第1結合剤から得られた読みを比較し、それらの読みを療法用第2結合剤による療法から得られた応答についての読みと比較することにより、当業者が決定できる。こうして、それより下では応答の可能性により第2結合剤の投与の価値が小さくなるポイントに閾値を設定および/または調整することができる。観察された検出可能な標識のレベルに基づいて患者を選択した後、療法用量の第2結合剤を投与することができる。
【0062】
[0073] 多様な態様において、療法用量の投与とその後の患者の選択との間に、ある期間を経過させる。患者の選択と療法用量の第2結合剤の投与との間の期間は、例えば、患者の状態、第1結合剤の性質、および/または第2結合剤(第2結合剤と会合したいずれかの療法剤を含む)の性質に基づいて当業者が決定できる。1態様において、患者における検出可能なレベルを観察した直後に療法用量を投与することができる。この選択肢には、癌の迅速な処置および経費削減の可能性(たとえば、病院または診療所への通院回数がより少なく、医師および患者が費やす時間がより短い)を含めることができる。ある態様において、診断用量および療法用量を病院または診療所への1回の来院に際して投与することができる。他の態様において、療法用量の投与を、患者における検出可能な標識のレベルの観察時点から数日間、数週間または数ヶ月間分離することができる。特定の状況では、そのような分離が望ましい可能性がある(たとえば、貧血その他の身体状態を克服することにより、患者が療法のためのより強力な候補となるのを待つ)。
【0063】
[0074] 前立腺癌または癌性障害を治療または進行阻止するために、療法用量の第2結合剤を患者(本明細書中で対象とも呼ぶ)に1回または多数回投与することができる。投与回数は種々のパラメーターに従って、特に使用する投与様式および対象の状態に従って選択することができる。他の要因には、目的とする処置期間、およびこの療法用量と併せて他の処置形態を併用または採用する予定かどうかが含まれる。
【0064】
[0075] ある態様において、療法用量の第2結合剤は、癌細胞の増殖を阻害するかまたは癌細胞を死滅させるのに十分な量で投与される。一般に、第2結合剤が抗体またはその抗原結合部分である場合、療法用量は約1から約1000mgまでの範囲であってもよい。ある態様において、抗体は少なくとも約0.005〜5μg/mLの抗体血清濃度を対象において達成するのに十分な量で患者に投与される。ある態様において、抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体は、10、25、50、100または200μg/mLの血清濃度を達成するのに十分な量で投与される。ある態様において、抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体は抗体の抗原結合部分、たとえば(Fab’)であり、少なくとも約0.003ないし少なくとも約3.3μg/mLのその抗原結合部分または誘導体の血清濃度を対象において達成するのに十分な量で患者に投与される。ある態様において、(Fab’)は6.6、10、20、40または80μg/mLの血清濃度を達成するのに十分な量で投与される。ある態様において、抗体またはその抗原結合部分は、目的量の持続的な血清濃度を達成するのに十分な量および頻度で投与される。
【0065】
[0076] 第2結合剤を、第2結合剤の血清レベルが目的期間持続するように対象に投与することができる。目的とする血清レベルは、血液、血清または血漿の試料において測定できる第2結合剤の量を基準とすることができ、あるいはたとえば目的とする予後、たとえば癌細胞の増殖阻害(たとえば細胞静止作用)または癌細胞の死滅(たとえば細胞毒作用)を基準とすることができる。第2結合剤の用量は、たとえば結合剤のサイズ、および結合剤と標的の結合親和性に基づいて、当業者が調整できる。血清中の結合剤の適切なレベルは、反復投与により維持できる。
【0066】
[0077] ある態様において、次回の結合剤を投与する前に、結合剤のトラフ(谷)および/またはピーク血清レベルを測定することができる。トラフおよび/またはピーク血清レベルは、当技術分野で既知の標準法を用いて測定できる。トラフおよび/またはピーク血清レベルを用いて、個々の患者または患者グループに対する結合剤の処方量を調整できる。
【0067】
[0078] 種々の経路を用いて第1結合剤または第2結合剤を投与することができる。選択する具体的な様式は、選択する具体的な薬物、処置される疾病状態の重症度、および必要な診断用量または療法用量に依存するであろう。本発明方法は、一般に、医療用として許容できるいずれかの投与様式を用いて実施できる:これは、臨床的に許容できない有害作用を引き起こすことなく有効化合物の有効レベルを生じるいずれかの様式を意味する。そのような投与様式には、経口、直腸、舌下、局所、鼻、経皮または非経口経路が含まれる。用語“非経口”には、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、または注入が含まれる。療法用量の第2結合剤を、1回で、たとえば連続ポンプによって連続的に、または周期的間隔で投与することができる。周期的間隔は毎週、2週毎、3週毎、または毎月であってもよい。適切な療法応答を誘発するために、投与を1ヵ月間、2ヵ月間、3ヵ月間、またはより長期間にわたって行なうことができる。特定の組成物の多数回投与の目的とする時間間隔は、当業者が多大な実験を行なうことなく決定できる。
【0068】
[0079] ある態様において、第1結合剤および/または第2結合剤を他の分子体、一般に検出可能な標識または療法剤(たとえば、細胞毒または細胞静止剤)にコンジュゲートまたは連結させることができる(たとえば、開裂性リンカーまたは非開裂性リンカーによる)。第1結合剤および/または第2結合剤を、1以上の他の分子体(たとえば、診断剤または療法剤)に機能性連結させることができる(たとえば、化学結合、遺伝子融合、非共有結合その他による)。開裂性リンカーの使用により、コンジュゲートした第2結合剤がインターナリゼーションした際に細胞内の細胞質中へ療法剤を放出させることができる。非開裂性リンカーは、コンジュゲートした第2結合剤が消化された際に放出するのを可能にし、あるいは第2結合剤から放出される必要のない作用剤と共に使用できる。
【0069】
[0080] ある態様において、第2結合剤は有毒療法剤を含む。療法剤は、たとえば癌細胞の増殖を阻害するかまたは癌細胞を死滅させることにより状態を処置するのに適したいかなる化合物であってもよい。適切な療法剤には、たとえば細胞毒性部分、たとえば療法薬、放射性同位体、植物、真菌もしくは細菌に由来する分子、または生体タンパク質(たとえば、タンパク質毒素)または粒子(たとえば、ナノ粒子、または組換えウイルス粒子、たとえばウイルスのコートタンパク質)、あるいはその混合物が含まれる。療法剤は、本明細書に記載するように細胞内活性薬物、または他の作用剤、たとえば短距離放射線エミッター(たとえば、短距離高エネルギーα−エミッターを含む)であってもよい。適切な放射性同位体には、α−、β−もしくはγ−エミッター、またはβ−及びγ−エミッターが含まれる。療法剤として有用な放射性同位体には、イットリウム(90Y)、ルテニウム(177Lu)、アクチニウム(225Ac)、アスタチン(211At)、レニウム(186Re)、ビスマス(212Biまたは213Bi)、およびロジウム(188Rh)が含まれる。標識として有用な放射性同位体(たとえば、診断剤に使用するためのもの)には、ヨウ素(131I、124Iまたは125I)、インジウム(111In)、テクネチウム(99mTc)、リン(32P)、炭素(14C)、トリチウム(H)、およびジルコニウム(89Zr)、または前記に挙げた療法用同位体のいずれかが含まれる。ある態様において、第2結合剤を植物または細菌または真菌に由来する分子(またはその誘導体)、たとえばメイタンシノイド(maytansinoid)(たとえば、メイタンシノール(maytansinol)またはDM1メイタンシノイド)、タキサン(taxane)、カリケアマイシン(calicheamicin)またはドュオカルマイシン(duocarmicin)にカップリングさせることができる。第2結合剤が抗体またはその抗原結合部分である場合、第2結合剤を他の抗体またはその抗原結合部分に連結させて、たとえば二重特異性抗体または多重特異性抗体を形成することができる。
【0070】
[0081] ある態様において、第2結合剤をプロテオソーム阻害薬またはトポイソメラーゼ阻害薬にカップリングさせる(たとえば、共有結合による)。[(1R)−3−メチル−1−[[(2S)−1−オキソ−3−フェニル−2−[(3−メルカプトアセチル)アミノ]プロピル]アミノ]ブチル]ボロン酸は適切なプロテオソーム阻害薬である。N,N’−ビス[2−(9−メチルフェナジン−1−カルボキサミド)エチル]−1,2−エタンジアミンは適切なトポイソメラーゼ阻害薬である。ある態様において、第2結合剤を他の療法と併用できる。
【0071】
[0082] ある態様において、他の療法には対象に細胞毒または化学療法剤を投与することが含まれる。細胞毒の例には、抗微小管剤、トポイソメラーゼ阻害剤、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、挿入剤、シグナル伝達経路を妨害することができる作用剤、アポトーシスを促進する作用剤、葉酸代謝を妨害する作用剤、および放射線照射が含まれる。ある態様において、細胞毒は下記のものであってもよい:タキソール(taxol)、タキソテール(taxotere)、サイトカラシンB(cytochalasin B)、グラミシジンD(gramicidin D)、臭化エチジウム(ethidium bromide)、エメチン(emetine)、マイトマイシン(mitomycin)、エトポシド(etoposide)、テニポシド(tenoposide)、ビンクリスチン(vincristine)、ビンブラスチン(vinblastine)、コルヒチン(colchicin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、メトトレキセート(methotrexate)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、ミトラマイシン(mithramycin)、アクチノマイシンD(actinomycin D)、1−ジヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン(procaine)、テトラカイン(tetracaine)、リドカイン(lidocaine)、プロプラノロール(propranolol)、ピューロマイシン(puromycin)、メイタンシノイド、たとえばメイタンシノール(参照:U.S.Patent No.5,208,020)、CC−1065(参照:U.S.Patent No.5,475,092、5,585,499、5,846,545)、および/またはその類似体または同族体。
【0072】
[0083] 本明細書に提示する方法および組成物を用いて、前立腺障害、たとえば前立腺癌を伴う患者を処置する場合、第2結合剤は、PSMAの細胞外ドメインに結合できる抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体であってもよく、既存の治療法、たとえば前立腺切除(病巣、部分的または根治的)、放射線療法、前立腺アブレーション療法(たとえば、ホルモン療法、凍結手術、レーザーアブレーション、高強度集束超音波など)、および前記の細胞毒による化学療法と併用できる。一般に、ホルモン療法は患者のアンドロゲンのレベルを低下させる作用をし、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)の類似体またはアゴニスト(たとえば、Lupron(登録商標)、Zoladex(登録商標)、ロイプロリド(leuprolide)、ブセレリン(buserelin)、またはゴセレリン(goserelin))およびアンタゴニスト(たとえば、Abarelix)の投与を伴うことができる。フルタミド(flutamide)、ビカルタミド(bicalutimade)、またはニルタミド(nilutamide)を含む非ステロイド系抗アンドロゲン薬もホルモン療法に使用でき、ステロイド系抗アンドロゲン薬(たとえば、酢酸シプロテロン(cyproterone acetate)または酢酸メガストロール(megastrol acetate))、エストロゲン(たとえば、ジエチルスチルベストロール)、外科的性腺切除、二次的もしくは三次的ホルモン操作(たとえば、コルチコステロイド(たとえば、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、またはデキサメタゾン)、ケトコナゾール(ketoconazole)、アビラテロン(abiraterone)、MDV3100および/またはアミノグルテチミド(aminogluthethimide))、5a−レダクターゼ阻害剤(たとえば、フィナステリド(finasteride)、デュタステリド(dutasteride))、薬草製剤、下垂体切除、および副腎切除も使用できる。さらに、ホルモン療法は連続的に、間欠的に、または前記のいずれかの処置と併用して(たとえば、ロイプロリドとビカルタミドの併用)実施できる。
【0073】
[0084] 本明細書に提示する癌の処置方法を用いて、いずれかの癌、たとえば前立腺癌、またはPSMAをそれらの細胞の表面に発現する少なくとも若干の細胞を含む充実性腫瘍を処置することができる。ヒトにおいてPSMAは、正常、良性過形成前立腺上皮細胞(たとえば、良性前立腺分泌−腺房上皮)、癌性前立腺上皮細胞(たとえば、前立腺上皮内新生物および前立腺腺癌)、および特定の癌細胞の近辺の血管内皮細胞の表面に発現する。PSMA陽性血管を含むそのようなタイプの癌には下記のものが含まれる(ただし、これらに限定されない):たとえば、腎癌、尿路上皮(たとえば膀胱)癌、睾丸癌、大腸癌、直腸癌、肺癌(たとえば、非小細胞性肺癌)、乳癌、肝癌、神経(たとえば神経内分泌)癌、神経膠癌(たとえば神経膠芽細胞腫)、膵臓(たとえば膵管)癌、卵巣癌、子宮内膜癌、黒色腫(たとえば、悪性黒色腫)、または軟組織肉腫癌の細胞。治療または予防できる前立腺障害の例には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:尿生殖器炎症(たとえば前立腺炎)、良性腫脹、たとえば結節性過形成(良性前立腺肥大または過形成);ならびに前立腺の癌(たとえば、腺癌または癌腫)および/または睾丸腫瘍:再発性前立腺癌を含む。“再発”または“再発性”前立腺癌は、抗癌処置(たとえば、前立腺切除および/または放射線照射)後に、1か月の間隔を置いた2回の連続検査においてPSAレベルが0.4ng/dL(または、より高感度のアッセイ法を用いた場合、0.4ng/dL未満のPSAレベル)を超えて上昇することを表わす。癌の再発は、抗癌処置から短期間以内に起きる可能性がある(たとえば、処置の直後、数週間または数カ月後、あるいは抗癌処置の数年後に起きる可能性がある)。たとえば、前立腺癌患者において、再発は抗癌処置の数年後(たとえば、最高で約4、5、6、7、8、9、10、12、14、15年後、またはより多数年後)に起きる可能性がある。再発は“局所再発”、“限局性再発”または“遠隔再発”として分類できる。“局所再発”は、原発性癌の組織または臓器に隣接または近接した組織または臓器に再発する癌を表わす。たとえば、前立腺癌を伴う対象において、局所再発は前立腺に隣接する組織、前立腺窩、精嚢、前立腺に隣接する筋肉、および/または直腸壁に起きる可能性がある。限局性再発は、骨盤および/または骨盤壁の周囲リンパ節を伴う可能性がある。“遠隔再発”は、癌の組織または臓器から離れた部位に再発する癌を表わす。たとえば、前立腺癌を伴う対象において、遠隔再発は原発部位から離れた部位の骨または他の臓器に拡散した癌を含む。用語“癌”には、浸潤の組織学的タイプまたは段階に関係なく、すべてのタイプの癌性増殖もしくは発癌プロセス、転移組織、または悪性トランスフォームした細胞、組織もしくは臓器が含まれる。ある態様において、癌細胞または癌細胞に近接した細胞(たとえば血管内皮細胞)がそれらの細胞表面にPSMAを発現する。
【0074】
[0085] 本明細書に提示する癌の処置方法を用いて、前立腺以外の癌を処置することができる。前立腺以外の癌性障害の例には、充実性腫瘍、軟組織腫瘍、および転移性病変が含まれるが、これらに限定されない。充実性腫瘍の例には、種々の臓器系の悪性疾患、たとえば肉腫、腺癌および癌腫、たとえば肺、乳房、リンパ系、消化器系(たとえば結腸)、および尿生殖路(たとえば、腎細胞、尿路上皮細胞)、咽頭などを冒すものが含まれる。腺癌には、大部分の大腸癌、直腸癌、腎細胞癌、肝癌、非小細胞性肺癌、小腸癌、および食道癌などの悪性疾患が含まれる。上記の癌の転移性病変も、本明細書に提示する方法および組成物を用いて治療または予防することができる。
【0075】
[0086] 用語“抗体”には、少なくとも1つ、好ましくは2つの免疫グロブリン重(H)鎖可変部(本明細書中でVHと略す)、および少なくとも1つ、好ましくは2つの免疫グロブリン軽(L)鎖可変部(本明細書中でVLと略す)を含むタンパク質が含まれ、これは特定の抗原に特異的に結合できる。本明細書中で用いる“誘導体”は、分子の1以上の原子または部分が基準構造から変化したことを意味する。本明細書中で用いる“特異的結合”は、抗体が抗原(たとえばPSMA)に少なくとも10−1の親和性で結合する性質を表わす。ある態様において、特異的結合は、特異的抗原(たとえばヒトPSMAタンパク質)に、特異的抗原以外のまたは無関係な非関連抗原への結合についての親和性より少なくとも2倍、10倍、50倍、100倍、1000倍、またはそれ以上大きい親和性で結合する能力を表わす。したがって、ある態様において、PSMAへの特異的結合は、特異的PSMA(たとえばヒトPSMAタンパク質)に、PSMA以外のまたは無関係な非関連抗原(たとえば、BSA、カゼインなど)への結合についての親和性より少なくとも2倍、10倍、50倍、100倍、1000倍、またはそれ以上大きい親和性で結合する能力を表わす。
【0076】
[0087] VHおよびVL部はさらに、“相補性決定領域”(“CDR”)と呼ばれる超可変部に下位分類することができ、これらの間にはより保存された“枠組み構造領域”(FR)と呼ばれる領域が散在する。枠組み構造領域およびCDRの範囲は厳密に規定されている(参照:Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242, およびChothia, C. et al. (1987) J. Mol. Biol. 196: 901-917)。ある態様において、VHおよびVLはそれぞれ3つのCDRおよび4つのFRから構成され、これらはアミノ末端からカルボキシ末端へ下記の順序で配列している:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0077】
[0088] 抗体のVHまたはVL鎖はさらに、免疫グロブリンの重鎖または軽鎖の定常部の全部または一部を含むことができる。1態様において、抗体は2つの免疫グロブリン重鎖および2つの免疫グロブリン軽鎖の四量体である。ある態様において、重鎖および軽鎖はジスルフィド結合により相互に連結している。ある態様において、重鎖定常部は3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3からなる。ある態様において、軽鎖定常部は1つのドメイン、CLからなる。重鎖および軽鎖の可変部は、抗原、たとえばPSMAの細胞外部分またはその一部と相互作用する、結合ドメインを含む。ある態様において、抗体の定常部は、免疫系の種々の細胞(たとえばエフェクター細胞)および古典的補体系の第1補体(C1q)を含めた宿主の組織または因子への結合を仲介する。こうして、抗体は抗体依存性の細胞性細胞毒性応答および/または補体仲介性細胞毒性を誘発することができる。用語“抗体”には、IgA、IgG、IgE、IgD、IgMのタイプ(およびそのサブタイプ)の無傷の免疫グロブリンが含まれ、その際、免疫グロブリンの軽鎖はカッパまたはラムダのタイプのものであってもよい。
【0078】
[0089] 用語“その抗原結合部分または誘導体”には、抗原(たとえば、PSMA、またはPSMAの細胞外部分)に特異的に結合する、抗体分子のいずれかの部分が含まれる。たとえば、抗体の抗原結合部分には、1以上の免疫グロブリン鎖が完全長ではないけれども抗原に特異的に結合できる分子が含まれる。用語“その抗原結合部分または誘導体”に含まれる結合部分の例には、たとえば下記のものが含まれる:(i)Fabフラグメント、たとえばVL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価フラグメント;(ii)F(ab’)フラグメント、すなわち2つのFabフラグメントがヒンジ部でジスルフィド結合により連結したものを含む二価フラグメント;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント;(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al., (1989) Nature 341 : 544-546);ならびに(vi)抗原に特異的に結合できるのに十分な枠組み構造をもつ単離した相補性決定領域(CDR)、または可変部の抗原結合部分。軽鎖可変部の抗原結合部分および重鎖可変部の抗原結合部分、たとえばFvフラグメントの2つのドメインVLおよびVHを組換え法により合成リンカーで結合させて、これらをVL部およびVH部が対合して一価分子を形成したタンパク質一本鎖として作成することができる(一本鎖Fv(scFv)として知られる;たとえば、Bird et al. (1988) Science 242: 423-426;およびHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 5879-5883を参照)。そのような一本鎖抗体も用語“その抗原結合部分”に含まれるものとする。用語“その抗原結合部分または誘導体”には、抗体から作成または誘導された構造バリアント、たとえばディアボディ、ミニボディ、一本鎖抗体なども含まれる。本明細書中で用いる用語“ミニボディ(minibody)”は、重鎖および軽鎖の可変部が同一ポリペプチド鎖の一部である組換え抗体を表わし、これは重鎖ヒンジ部および1つの重鎖定常ドメインをも含む。この一本鎖をたとえばジスルフィド結合により二量体化することができる。本明細書中で用いる用語“ディアボディ(diabody)”は、フレキシブルペプチドリンカーにより連結した重鎖および軽鎖の可変部を含む組換え抗体を表わし、このリンカーはこれらのドメインを分離するのに十分なほど長く、したがって2つのこれらのポリペプチドを二量体に組み立てて抗体を二価にすることができる。これらの抗体フラグメントおよび/または抗体構造バリアントは当業者に既知の一般的な方法を用いて得られ、それらのフラグメントおよび構造バリアントを各抗原(たとえばPSMA)への結合能についてスクリーニングおよび選択する。
【0079】
[0090] 多数のタイプの抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体が、本明細書に提示する方法および組成物に有用である。抗体は下記のものを含む種々のイソ型であってもよい:IgG(たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgM、IgA1、IgA2、IgDまたはIgE。好ましくは、抗体はIgGイソ型(たとえばIgG1)である。抗体分子は全長であってもよく(たとえば、IgG1またはIgG4抗体)、あるいは抗原結合部分のみを含むことができる(たとえば、Fab、F(ab’)、Fvまたは一本鎖Fvフラグメント)。これらには、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、脱免疫抗体(deimmunized antibody)、およびヒト抗体、ならびに上記の抗原結合部分が含まれる。好ましくは、モノクローナル抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体はPSMAの細胞外ドメインまたはその一部(たとえば、細胞膜の外側にある、PSMAのエピトープ)に結合する。PSMAを結合できる好ましいモノクローナル抗体の例には、ATCC寄託番号HB−12101をもつハイブリドーマ細胞系により産生されるJ415、およびATCC寄託番号HB−12126をもつハイブリドーマ細胞系により産生されるJ591が含まれる。
【0080】
[0091] 抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体を、当技術分野で既知の方法によりヒト化することができる。ネズミ抗体を入手すると、その可変部の配列を決定することができる。CDRおよび枠組み構造残基の位置を決定することができる(参照:Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242, およびChothia, C. et al. (1987) J. Mol. Biol. 196: 901-917)。場合により、軽鎖および重鎖の可変部を対応する定常部にライゲートさせることができる。
【0081】
[0092] 抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体を修飾して、特異的ヒトT細胞エピトープを欠失させることもできる(本明細書中で“脱免疫”とも言う)。抗体を脱免疫するのに適した方法は、たとえばWO 98/52976および WO 00/34317に記載されている。要約すると、抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体(たとえば、ネズミ抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体)の重鎖および軽鎖の可変部を、MHCクラスIIに結合するペプチドについて分析することができる;これらのペプチドは潜在的なT細胞エピトープである(WO 98/52976およびWO 00/34317に定義)。潜在的なT細胞エピトープの検出のために、コンピューターモデリング法を適用でき、さらにヒトMHCクラスII結合ペプチドのデータベースをネズミVおよびV配列中に存在するモチーフについて検索することができる。これらのモチーフは、18の主要MHCクラスII DRアロタイプのいずれかに結合し、したがって潜在的なT細胞エピトープを構成する。検出された潜在的なT細胞エピトープはいずれも、可変部のアミノ酸残基類の置換により、または単一アミノ酸置換により排除できる。可能な限り保存的置換を行ない、しばしば、ただしそれに限らないが、ヒト生殖細胞系列の抗体配列においてこの位置に共通なアミノ酸を使用できる。ヒト生殖細胞系列の配列は、Tomlinson, I. A. et al. (1992) J. Mol. Biol. 227: 776-798; Cook, G. P. et al. (1995) Immunol. Today Vol. 16 (5): 237-242; Chothia, D. et al. (1992) J. Mol. Bio. 227: 799-817に示されている。V BASEダイレクトリーは、ヒト免疫グロブリン可変部配列の包括的ダイレクトリーを提供する(編集:Tomlinson, I. A. et al. MRC Centre for Protein Engineering, 英国ケンブリッジ)。脱免疫されたVおよびV配列を構築した後、変異させた可変部配列を場合によりヒト定常部に融合させることができる。
【0082】
[0093] 他の態様において、抗体またはその抗原結合部分は、ATCC寄託番号HB−12126をもつ細胞系により産生されたJ591抗体、またはATCC寄託番号PTA−3709をもつ細胞系により産生された脱免疫J591(deJ591)抗体の軽鎖または重鎖の可変部に由来する、少なくとも1、2、好ましくは3つのCDRをもつことができる。
【0083】
[0094] 他の態様において、抗体またはその抗原結合部分は、ATCC寄託番号HB−12109をもつ細胞系により産生された抗体J415、またはATCC寄託番号PTA−4174をもつ細胞系により産生された脱免疫J415の軽鎖または重鎖の可変部に由来する、少なくとも1、2、好ましくは3つのCDRをもつことができる。さらに他の態様において、抗体またはその抗原結合部分は、ATCC寄託番号HB−12127をもつ細胞系により産生された抗体J533、またはATCC寄託番号HB−12101をもつ細胞系により産生された抗体E99の軽鎖または重鎖の可変部に由来する、少なくとも1、2、好ましくは3つのCDRをもつことができる。
【0084】
[0095] ある態様において、抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体は、下記のものを含む本明細書に記載する抗体のエピトープの全部または一部を結合する:J591(ATCCに寄託したハイブリドーマHB−12126により産生)、E99(ATCCに寄託したハイブリドーマHB−12101により産生)、J415(ATCCに寄託したハイブリドーマHB−12107により産生)、およびJ533(ATCCに寄託したハイブリドーマHB−12127により産生)。これらの抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体は、本明細書に記載する抗体、たとえばJ591、E99、J415およびJ533がヒトPSMAに結合するのを阻害する(たとえば競合阻害する)ことができる。ある態様において、抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体は、J415により認識されるエピトープに結合する。ある態様において、抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体は、J591により認識されるエピトープに結合する。ある態様において、抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体は、E99のエピトープに結合する。ある態様において、抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体は、J533により認識されるエピトープに結合する。
【0085】
[0096] 2つの抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体が同一またはオーバーラップするエピトープに特異的に結合できるかどうかは、スキャッチャード(Scatchard)分析および/または競合結合アッセイを用いて判定できる。抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体の“特異的結合”は、その抗体が抗原または好ましいエピトープに対して十分な親和性を示し、かつ好ましくは有意の交差反応性を示さないことを意味する。“特異的結合”には、たとえば少なくとも10、10、10、または1010−1の親和性での抗体の結合が含まれる。有意の交差反応性を示さない抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体は、抗体の特異性を測定するのに適した条件下で目的外のもの(たとえば、目的外のタンパク質性のもの)には感知できるほど結合しないものである。たとえば、PSMAに特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体は、感知できるほどにPSMAを結合するが、PSMA以外のタンパク質またはペプチドとは有意に反応しないであろう。好ましいエピトープに対して特異的な抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体は、たとえば同一のタンパク質またはペプチド上の離れた位置にあるエピトープと有意には交差反応せず、またはそのエピトープへの結合を競合阻害しないであろう。同一エピトープを認識する抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体は、ある抗体が標的抗原への他の抗体の結合を遮断する能力を示す簡単な免疫アッセイ(たとえば競合結合アッセイ)で同定できる。競合結合は、被験抗体が共通抗原、たとえばPSMAへの標準抗体の特異的結合を阻害するアッセイで判定される。多数のタイプの競合結合アッセイが知られている:たとえば、固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(参照:Stahli et al., Methods in Enzymology 9: 242 (1983); Kim, et al., Infect. Immun. 57: 944 (1989)も参照); 固相直接ビオチン−アビジンEIA(参照:Kirkland et al., J. Immunol. 137: 3614 (1986)); 固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(参照:Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press (1988) pp 567-569 and 583); I−125標識を用いる固相直接標識RIA(参照:Morel et al., Mol. Immunol. 25(1): 7 (1988)); 固相直接ビオチン−アビジンEIA(Cheung et al., Virology 176: 546 (1990));直接標識RIA(Moldenhauer et al., Scand. J. Immunol. 32: 77 (1990); および(Belanger L. et al. Clin. Chim. Acta., 48: 15-18 (1973))。一般にそのようなアッセイは、固体表面に結合した精製抗原、または抗原を保有する細胞表面、標識していない被験免疫グロブリン、および標識した標準免疫グロブリンの使用を伴う。競合阻害は、被験抗体の存在下で抗原に結合した標識の量を、被験抗体の不存在下で抗原に結合した標識の量と比較して決定することにより測定される。
【実施例】
【0086】
実施例1
[0097] 32人の患者をこの試験のために選択した。患者に標準的な骨スキャンのための99mTc−MDP、および177Lu−J591を、異なる日に投与した。試験を2つのコホートに分けた。コホート1(n=15)には65mCi/mの量の177Lu−J591を投与した。コホート2(n=17)には70mCi/mの量(たとえば、ほぼ最大耐容量)の177Lu−J591を投与した。標準的な骨スキャンのための99mTc−MDPを静脈内投与した後、約3時間目に、患者に平面ガンマカメラで平面放射性核種イメージングを実施した。放射性核種による骨イメージング法は核医療において当業者に周知である。
【0087】
[0098] 各患者について177Lu−J591および99mTc−MDPの全身イメージを得た。さらに、患者にCTスキャンおよび/またはMRスキャンを実施して、骨スキャンで見えない軟組織を視覚化した。各患者の177Lu−J591イメージ/スキャンを、処置後5〜8日目の腫瘍部位への放射性標識のターゲティングについて盲目法でスコアリング/グレーディングした。イメージグレーディングシステムにより、ターゲティングした177Lu−J591剤の結合または取込みの強さを測定した。イメージを盲目法で下記のようにグレーディングした:ターゲティングなしにつき0+;弱いイメージングの病変部につき1+;中等度のイメージングの病変部につきにつき2+;著しい/強いイメージングの病変部につきにつき3+。各患者について177Lu−J591および99mTc−MDPの投与前および試験経過中にわたってPSAレベルも求めた。盲目法によるスコアリングの後、患者のスコアをそれぞれ、処置後の患者の各PSA応答(たとえば、時間の関数としてのPSAレベルの変化)と比較した。疾患の進行を、最低値(nadir)(少なくとも5ng/mL)からのPSAの少なくとも25%のPSA増加、またはラジオグラフィーにおける進行(1つの新たな骨スキャン病変部、またはRECIST(Response Evaluation Criteria In Solid Tumors、充実性腫瘍における応答評価基準)による軟組織病変部の直径が>20%、または新たな病変部(単数または複数)の出現)と定義した。
【0088】
[0099] 図1〜10に示すように、患者らは療法に対して、応答なし(たとえば、疾患進行の継続)から約90%のPSA減少にまで及ぶ広範な応答(たとえば、177Lu−J591に対する抗腫瘍応答)を現わした。
【0089】
[00100] 図1は、グレード1+のJ591スキャン(すなわち、弱いイメージング)を伴う1患者を示す。99mTc−MDP骨スキャンおよび177Lu−J591mAbスキャンに示すように、この患者は右骨盤に大きな病変部、および後骨スキャンにさらに数か所の病変部(脊椎、肋骨、骨盤)をもち、これらはJ591スキャンでは弱くイメージングされるにすぎない。治療剤(たとえば、療法用量の第2結合剤)を0日目に投与した。この処置に対する患者の応答をPSA(ng/mL)の変化として測定したものを図2に示す。図1および図2に示すように、患者はこの処置に対して実質的に応答しなかった(すなわち、PSAの軌道は影響を受けなかった)。
【0090】
[00101] 図3および4は、PSAの変化または進行として測定して処置に応答しなかったグレード1+のJ591スキャンを伴う他の2人の患者のPSA結果を示す。
[00102] 図5は、グレード2+のJ591スキャン(すなわち、中等度のイメージング)を伴う患者を示す。99mTc−MDP骨スキャンおよび177Lu−J591mAbスキャンに示すように、この患者は骨スキャンにおいて大きな病変部を右股関節部に(大きなにより表示する)、およびより小さな病変部を左股関節部に(小さな)もち、これらは両方とも中等度のイメージング強度を示す。治療剤(たとえば、療法用量の第2結合剤)を0日目に投与した。PSAの変化として測定したこの処置に対する患者の応答を図6に示す。図5および図6に示すように、患者はこの処置に対して良好な応答を示した(すなわち、PSA濃度は0日目に療法用量の第2結合剤の投与と一致して上昇を停止した)。
【0091】
[00103] 図7は、グレード2+のJ591スキャンを伴う他の患者を示す。99mTc−MDP骨スキャンおよび177Lu−J591mAbスキャンに示すように、骨盤の2つの顕著な病変部が良好にイメージングされる。治療剤(たとえば、療法用量の第2結合剤)を0日目に投与した。PSAの変化として測定したこの処置に対する患者の応答を、同様に半対数(図8A)および算術(図8B)両方のプロットに示す。患者はこの処置に対して良好な応答を示した(すなわち、PSAは約58%減少した)。
【0092】
[00104] 図9は、グレード3+のJ591スキャンを伴う患者を示す(すなわち、著しい/強いイメージング)。99mTc−MDP骨スキャンおよび177Lu−J591mAbスキャンに示すように、多数の顕著な強い病変部がJ591で良好に標識される。治療剤(たとえば、療法用量の第2結合剤)を0日目に投与した。PSAの変化として測定したこの処置に対する患者の応答を、半対数(図10A)および算術(図10A)両方のプロットに示す。患者はこの処置に対して卓越した応答を示した(すなわち、PSAは約90%減少した)。
【0093】
[00105] 図11は、J591イメージングスコアと処置後の応答(PSAの変化に反映される)との相関性を示し、これによりJ591スキャンのスコアに基づいて処置に対する応答を推定することができる。図12も、J591イメージングスコアと処置後の応答との相関性を示し、これによりJ591スキャンのスコアに基づいて処置に対する応答を推定することができる(処置後のPSA応答をy軸に示し、スコアをx軸に示す)。特にグレード1+のJ591スキャンを伴う患者は処置にもかかわらず疾患進行を示し(たとえばPSAの増加、図12、1201)、グレード2+または3+のスキャンを伴う患者は処置に対して有意の応答を示した(たとえばPSAの減少、図12、1202)。
【0094】
実施例2
[00106] 半定量的な0〜3+のスコアリング尺度に代わるものの一例は、定量腫瘍ターゲティング指数(tumor targeting index)(TTI)を計算することである。これは下記により実施できる:患者のJ591スキャンについて最も顕著な腫瘍病変部(単数または複数)におけるカウント密度をそれら各病変部のピクセル面積で割ったものを測定する。次いで、同じ計算を行うことにより、病変部カウント密度をバックグラウンドカウント密度(一般に右前大腿の病変部陰性面積を用いて当該領域(region of interest(ROI))のピクセル面積でカウント密度を割る)について補正する。全身密度を、ピクセル当たりの前および後のイメージングカウントの幾何平均と定義する。TTI=(病変部ROIカウント密度−バックグラウンドカウント密度)/(全身カウント密度)。特定の腫瘍について、その腫瘍面積における腫瘍カウントを計算する:
【0095】
【数1】

【0096】
特定の領域について、その領域面積におけるバックグラウンドカウントを計算する:
【0097】
【数2】

【0098】
前および後について、全身カウントを計算する。
【0099】
【数3】

【0100】
[00107] 合計64の病変部において半定量腫瘍ターゲティング指数(TTI)値を測定し、療法に対する患者の応答(PSAの減少または安定化)を判定した。図13Aは良好な腫瘍ターゲティングの例(図9および図10と同じ患者)を示し、これはグレード3のスキャン(前記に従ってグレーディング)および9.8のTTI値(上記に示したように計算)に対応する。図13Bは腫瘍ターゲティング不良の例を示し、これはグレード1+のスキャンおよび2.4のTTI値に対応する。
【0101】
[00108] PSAの減少または安定化が被験患者の64%に起きた。レスポンダーはベースラインの67±24%の平均PSA最低値をもっていた。PSAの最大減少は87%であった。表1に示すように、≧2とグレーディングされたスキャンを伴う患者13人のうち、7人(54%)がPSA減少を示し、3人(23%)が安定化を示した。表1に示すように、<2とグレーディングされたスキャンを伴う患者9人のうち、2人(22%)がPSA減少を示し、2人(22%)が安定化を示した。64の病変部のTTI値と処置に対する応答(PSA値の変化)との相関性を表2に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
実施例3:イメージングのための陽電子放射断層撮影(PET)の使用
[00109] 前記の平面イメージング、またはSPECT(単一光子放射形コンピュータ断層撮影)の使用と同様に、陽電子放射断層撮影(PET)もイメージングのために使用できる。PETイメージングは、第1結合剤の取込みを反映する直接的な定量データを提供する。PETイメージングは、陽電子放射剤、たとえば124ヨウ素、89ジルコニウム、86イットリウム、または当業者に既知の他の陽電子放射剤を第1結合剤に結合させたものを用いて実施できる。前記と同様に、PETで得られる定量“標準取込み値(standard uptake value)”(SUV)により、その病変部が低い取込みを示すものまたは取込みを示さないものと対比してより高い取込みを示す患者を同定できる。より高いSUVを示す病変部を伴う患者は、療法用第2結合剤のより高い取込みを示すと推定され、これに伴って療法が有益である可能性が増大する。PETなどの直接定量イメージング法の使用により、取込みを視覚スコアリングする(たとえば、0〜3+)必要性または前記のようにTTIを計算する必要性が避けられる。療法用第2ターゲティング剤に応答しないかまたはそれが有益でない患者のSUVを、療法用第2ターゲティング剤に実際に応答しまたはそれが有益である患者のSUVと比較することにより、当業者は閾値を決定でき、それ未満では第2療法剤による処置がその閾値を超えるSUVをもつ患者と比較してほとんど価値がない。
【0105】
[00110] 本発明を特定の態様に関して特に提示および記載したが、特許請求の範囲に定めた本発明の精神および範囲から逸脱することなく形態および細部における多様な変更をなしうることは当業者に理解されるはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌療法のための患者を同定する方法であって、
第1分子標的を結合できる第1結合剤を付与し、その際、第1分子標的は癌に関連する経路から選択され;
患者の組織、細胞または体液中における第1結合剤の存在を評価し;
第2分子標的を結合できる療法用量の第2結合剤を投与するための患者を選択し、その際、患者は第1結合剤が存在すれば選択される
ことを含む方法。
【請求項2】
癌療法のための患者を同定する方法であって、
癌に関連する経路から第1分子標的および第2分子標的を選択し;
第1分子標的を結合できる第1結合剤を付与し;
患者の組織、細胞または体液中における第1結合剤の存在を評価し;
第2分子標的を結合できる療法用量の第2結合剤を投与するための患者を選択し、その際、患者は第1結合剤が存在すれば選択され、第1結合剤の存在は癌の指標となる
ことを含む方法。
【請求項3】
癌療法のための患者を同定する方法であって、
癌に関連する経路から第1分子標的および第2分子標的を選択し;
第1分子標的を結合できる第1結合剤を付与し;
患者の組織、細胞または体液中における第1結合剤の量を評価することにより患者をスコアリングし;
第2分子標的を結合できる療法用量の第2結合剤を投与するための患者を選択し、その際、患者はスコアが閾値を超えれば選択され、閾値を超えるスコアは癌の指標となる
ことを含む方法。
【請求項4】
第1結合剤が検出可能な標識を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
評価する段階が、さらに
患者に診断用量の検出可能な状態に標識された第1結合剤を投与し、この検出可能な状態に標識された結合剤は第1分子標的を結合することができ;そして
検出可能な状態に標識された第1結合剤を患者においてインビボイメージングする
ことを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
検出可能な状態に標識された第1結合剤をラジオシンチグラフィー、磁気共鳴イメージング(MRI)、コンピューター断層撮影(CTスキャン)、または陽電子放射断層撮影(PET)により検出する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
評価する段階が、さらに
患者から得た生体試料を第1結合剤と接触させ;そして
第1結合剤の存在をアッセイする
ことを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
第1結合剤が検出可能な標識を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第1分子標的と第2分子標的が実質的に同一である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
第1分子標的および第2分子標的が癌に関連する同一経路の構成要素である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
癌が前立腺癌であり、第1分子標的がPSMAである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの分子標的が細胞外にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの分子標的が細胞内にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
癌が前立腺癌であり、検出可能な状態に標識された第1結合剤が前立腺特異的膜抗原(PSMA)の細胞外ドメインに結合できる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
検出可能な状態に標識された第1結合剤が、充実性腫瘍の新生血管における前立腺特異的膜抗原(PSMA)の細胞外ドメインに結合できる、請求項4に記載の方法。
【請求項16】
検出可能な状態に標識された結合剤が陽電子放射断層撮影(PET)剤を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項17】
第1結合剤または第2結合剤が放射性標識を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
放射性標識が、177Lu、111インジウム、67Cu、18F、99mTc、124I、125I、131I、89Zrおよび99mTcのうち少なくとも1つである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
第1結合剤または第2結合剤が、PSMAの細胞外ドメインを結合できる抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体が、ATCC寄託受理番号HB−12101で寄託されたハイブリドーマ、ATCC寄託受理番号HB−12109で寄託されたハイブリドーマ、ATCC寄託受理番号HB−12127で寄託されたハイブリドーマ、ATCC寄託受理番号HB−12126で寄託されたハイブリドーマからなる群から選択されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
第1結合剤または第2結合剤が、少なくとも第1分子標的または第2分子標的に対して少なくとも約10−9Mの親和性を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
評価またはスコアリングの段階が第1分子標的の量を定量することを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
さらに、造影剤を診断用量の検出可能な状態に標識された第1結合剤と併せて投与することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項24】
さらに、療法用量の第2結合剤を患者に投与することを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
さらに、診断用量の検出可能な状態に標識された第1結合剤を投与して約1日ないし約3カ月以内に、選択した患者に療法用量の第2結合剤を投与することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
癌療法のための、下記のものを含むキット:
患者に対する診断用量の検出可能な状態に標識された第1結合剤:この検出可能な状態に標識された結合剤はある分子標的を結合できる;および
ある分子標的を結合できる療法用量の第2結合剤を投与する患者を選択するための指示:その際、この選択された患者は検出可能な状態に標識された第1結合剤について陽性の読みを示す。
【請求項27】
癌療法のための、下記のものを含むキット:
検出可能な状態に標識された第1結合剤:この検出可能な状態に標識された結合剤はある分子標的を結合できる;および
第2分子標的を結合できる療法用量の第2結合剤を投与する患者を選択するための指示:その際、この選択された患者は検出可能な状態に標識された第1結合剤について陽性の読みを示す。
【請求項28】
癌が前立腺癌であり、分子標的が前立腺特異的膜抗原(PSMA)の細胞外ドメインを含む、請求項26または27のいずれか1項に記載のキット。
【請求項29】
さらに、療法用量の第2結合剤を含む、請求項28に記載のキット。
【請求項30】
さらに、造影剤を含む、請求項28に記載のキット。
【請求項31】
第1分子標的と第2分子標的が実質的に同一であるように選択される、請求項28に記載のキット。
【請求項32】
癌療法のための患者を同定する方法であって、
診断用量の検出可能な状態に標識された第1結合剤を患者に投与し、この検出可能な状態に標識された結合剤は第1分子標的を結合することができ;そして
第2分子標的を結合できる療法用量の第2結合剤を投与する患者を選択し、その際、この選択された患者は検出可能な状態に標識された第1結合剤について陽性の読みを示す
ことを含む方法。
【請求項33】
癌が前立腺癌であり、検出可能な状態に標識された第1結合剤が前立腺特異的膜抗原(PSMA)の細胞外ドメインに結合できる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
検出可能な状態に標識された第1結合剤が、充実性腫瘍の新生血管における前立腺特異的膜抗原(PSMA)の細胞外ドメインに結合できる、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
検出可能な標識が陽電子放射断層撮影(PET)剤を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
第1結合剤または第2結合剤が放射性標識を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
放射性標識が、177Lu、111インジウム、67Cu、18F、99mTc、124I、125I、131I、89Zrおよび99mTcのうち少なくとも1つである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
第1結合剤または第2結合剤が、PSMAの細胞外ドメインを結合できる抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体が、ATCC寄託受理番号HB−12101で寄託されたハイブリドーマ、ATCC寄託受理番号HB−12109で寄託されたハイブリドーマ、ATCC寄託受理番号HB−12127で寄託されたハイブリドーマ、ATCC寄託受理番号HB−12126で寄託されたハイブリドーマからなる群から選択されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体またはその抗原結合部分もしくは誘導体を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
第1結合剤または第2結合剤が分子標的に対して少なくとも約10−9Mの親和性を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
第1結合剤と第2結合剤が実質的に同一である、請求項32に記載の方法。
【請求項42】
患者の選択が患者において分子標的の量を定量することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項43】
患者の選択が、検出可能な状態に標識された第1結合剤をインビボイメージングすることを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項44】
さらに、造影剤を診断用量の検出可能な状態に標識された第1結合剤と併せて投与することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項45】
さらに、療法用量の第2結合剤を患者に投与することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項46】
さらに、診断用量の検出可能な状態に標識された第1結合剤を投与して約1日ないし約3カ月以内に、選択した患者に療法用量の第2結合剤を投与することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項47】
癌を処置する方法であって、
第1分子標的および第2分子標的を癌に関連する経路から選択し;
患者の組織、細胞または体液中における検出可能な状態に標識された第1結合剤の存在を評価し、その際、第1結合剤は第1分子標的を結合でき、第1結合剤の存在は癌の指標となり;
第2分子標的を結合できる療法用量の第2結合剤を選択された患者に投与し、その際、患者は第1結合剤が存在すれば選択される
ことを含む方法。
【請求項48】
癌が前立腺癌であり、分子標的が前立腺特異的膜抗原(PSMA)の細胞外ドメインを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
第1分子標的と第2分子標的が実質的に同一である、請求項47に記載の方法。

【図3】
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【図4】
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【図8A】
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【図8B】
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【図11】
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【図12】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−518187(P2012−518187A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551190(P2011−551190)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/024475
【国際公開番号】WO2010/096486
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(592035453)コーネル・リサーチ・ファンデーション・インコーポレイテッド (39)
【氏名又は名称原語表記】CORNELL RESEARCH FOUNDATION, INCORPORATED
【Fターム(参考)】