説明

癌免疫増強剤

【課題】癌に対する免疫を増強できる薬剤を提供する。
【解決手段】水溶性のビタミンE/デキストリン複合体を有効成分とする癌免疫増強剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性のビタミンE複合体を有効成分とする癌免疫増強剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毎年、60万人以上の人が癌に罹患している。癌の予防は人類の緊急の研究課題である。特に成人の癌罹患率が高いのは、癌に対する免疫活性が加齢と共に低下するからであると考えられている。
【0003】
癌への免疫増強剤としては種々のものが提案されている。本発明者らもニトロトリアゾール誘導体を有効成分とする免疫増強剤を提案している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第00/51601号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、癌に対する免疫を増強させるための有効成分として、天然または合成の種々の化合物を検討し、その結果、水溶性にしたビタミンE複合体が免疫力を増大させることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
すなわち本発明は新たな免疫増強剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の癌免疫増強剤は、水溶性のビタミンE−デキストリン複合体を有効成分とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の癌免疫増強剤によれば、癌に対する免疫力の目安である白血球数、胸腺細胞数、骨髄細胞数の増大が認められ、また、抗癌剤による治療の間においても免疫力の増強が確認できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の有効成分である水溶性のビタミンE−デキストリン複合体は、全く水に溶解しない脂溶性ビタミンEをデキストリンに包摂させ複合化することで水溶性化したものである。このビタミンEの水溶性化は、特開2010−46002号公報に記載された方法で行うことができる。
【0010】
水溶性のビタミンE−デキストリン複合体を製剤化する場合、さらに中鎖脂肪酸トリグリセライド、乳化剤などを配合した粉末の形態とすることが、水溶化したときの安定性が良好な点から好ましい。本発明で用いるビタミンE−デキストリン複合体の水に対する溶解度(飽和濃度)は約50質量%である。
【0011】
本発明の免疫増強剤は水溶性であるので、粉剤、液剤、錠剤などに製剤化でき、経口投与、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与など種々の投与方法を選択できる。
【0012】
ビタミンEおよびデキストリンはいずれも毒性がなく、本発明で用いるビタミンE−デキストリン複合体も毒性がない。その投与量は、投与方法などによって、10〜1000mg/kg体重、さらには50〜500mg/kg体重の範囲で適宜選定すればよい。
【実施例】
【0013】
つぎに実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0014】
なお、癌に対する免疫力の評価は、白血球数、胸腺細胞数、骨髄細胞数などで行うことができる。
【0015】
対照例
6週齢の雌性CB57/6マウス(体重約25g:1群6匹)に、食塩水(0.9質量%水溶液)0.2mlを1日1回で7日間、経口投与した。
【0016】
7日後、被験マウスの白血球数、胸腺細胞数および骨髄細胞数を調べたところ、白血球数(106個/ml)は194.4、胸腺細胞数(106個/胸腺)は146.3、骨髄細胞数(106個/大腿骨)は27.8であった。
【0017】
比較例1
抗癌剤であるシクロホスファミド(エンドキサン)を250mg/kg体重を腹腔内に投与した6週齢の雌性CB57/6マウス(体重約25g:1群6匹)に、食塩水(0.9質量%水溶液)0.2mlを1日1回で7日間、腹腔内に投与した。
【0018】
7日後、被験マウスの白血球数、胸腺細胞数および骨髄細胞数を調べたところ、白血球数(106個/ml)は194.7(対照例とほぼ同じ)、胸腺細胞数(106個/胸腺)は27.0(対照例の約0.18倍)、骨髄細胞数(106個/大腿骨)は28.0(対照例とほぼ同じ)であった。
【0019】
実施例1
6週齢の雌性CB57/6マウス(体重約25g:1群6匹)に、ビタミンE−デキストリン複合体(ビタミンE13.5質量%、デキストリン64.5質量%、中鎖脂肪酸トリグリセライド13.5質量%、乳化剤0.8質量%。以下、「VEDコンプレックス」という)100mg/kg体重を1日1回で7日間経口投与した。
【0020】
7日後、被験マウスの白血球数、胸腺細胞数および骨髄細胞数を調べたところ、白血球数(106個/ml)は272.0(対照例の約1.4倍)、胸腺細胞数(106個/胸腺)は148.0(対照例とほぼ同じ)、骨髄細胞数(106個/大腿骨)は32.3(対照例の約1.16倍)であった。
【0021】
実施例2
抗癌剤であるシクロホスファミド(エンドキサン)を250mg/kg体重を腹腔内に投与した6週齢の雌性CB57/6マウス(体重約25g:1群6匹)に、VEDコンプレックス100mg/kg体重を1日1回で7日間経口投与した。
【0022】
7日後、被験マウスの白血球数、胸腺細胞数および骨髄細胞数を調べたところ、白血球数(106個/ml)は266.5(比較例1の約1.4倍)、胸腺細胞数(106個/胸腺)は48.7(比較例1の約1.80倍)、骨髄細胞数(106個/大腿骨)は36.6(比較例1の約1.31倍)であった。
【0023】
これらの結果から、ビタミンE−デキストリン複合体を投与するときは、癌に対する免疫力の目安である白血球数、胸腺細胞数、骨髄細胞数の増大が認められ、また、抗癌剤による治療の間においても免疫力の増強が確認できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性のビタミンE/デキストリン複合体を有効成分とする癌免疫増強剤。

【公開番号】特開2011−219418(P2011−219418A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90659(P2010−90659)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(503266079)株式会社京都ライフサイエンス研究所 (7)
【出願人】(305007551)株式会社毛髪クリニックリーブ21 (6)
【Fターム(参考)】