説明

癌処理への使用のためのキメラアデノウィルス

本発明は、治療用途を有する腫瘍崩壊性アデノウィルスに関する。組換えキメラアデノウィルス、それらの生成方法が提供される。本発明のキメラアデノウィルスは、サブグループB〜F内に分類されるアデノウィルス血清型に由来する核酸配列を含んで成り、そして増強された治療指数を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
本明細書に記載される発明は一般的に、分子生物学の分野、及びより特定には、治療用途を有する腫瘍崩壊性アデノウィルスに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景:
癌は、アメリカ合衆国及び他の国々において主な死の原因である。癌の型に依存して、それは、手術、化学療法及び/又は放射線により典型的には処理される。それらの処理はしばしば失敗しており、そして単独で又は従来の技術と組合して使用される新規療法が必要であることは明白である。
【0003】
1つのアプローチは、アデノウィルスの単独での使用、又は腫瘍細胞に抗−癌治療タンパク質を供給できるベクターとしての使用であった。アデノウィルスは、約36キロ塩基対の線状ゲノムを有する、非エンベロープの二十面体二本鎖のDNAウィルスである。ウィルスゲノムの個々の末端は、ウィルス複製のために必要とされる、逆方向末端反復体(又はITR)として知られている短い配列を有する。
【0004】
今日まで試験されたすべてのヒトアデノウィルスゲノムは、同じ一般的な機構を有し、すなわち特定機能をコードする遺伝子がウィルスゲノム上の同じ位置に位置する。ウィルスゲノムは、5種の初期転写単位(E1A, E1B, E2, E3及びE4)、2種の遅延された初期単位(IX及びIva2)、及び5種のファミリーの後期mRNA(L1-L5)を生成するためにプロセッシングされる1つの後期単位(主要後期)を含む。所期遺伝子によりコードされるタンパク質は複製に関与し、そして後期遺伝子はウィルス構造タンパク質をコードする。ウィルスゲノムの部分は、外来性起源のDNAにより容易に置換され得、そして組換えアデノウィルスは、それらのウィルスを、遺伝子療法のために実質的に有用にする構造的に安定した性質である(Jolly, D. (1994) Cancer Gene Therapy 1 :51-64を参照のこと)。
【0005】
現在、臨床学的に有用なアデノウィルス療法を生成するための研究努力は、アデノウィルス血清型Ad5に向けられて来た。このヒトアデノウィルスの遺伝学は、十分に特徴でけられており、そしてシステムはその分子操作について良く記載されている。高い能力の生成方法が、臨床学的用途を支持するために開発されており、そして剤によるいくらかの臨床学的経験が利用できる。Jolly, D. (1994) Cancer Gene Therapy, 1 :51-64を参照のこと。癌処理におけるヒトアデノウィルス(Ad)の使用に関連する研究が、特定腫瘍細胞型において高い能力を有するか、又はそれに対して選択的に標的化されるAd5−に基づくアデノウィルスの開発に向けられており、そしてアデノウィルス療法が臨床学的設定において実質的に適用される場合、より有能な腫瘍崩壊性ウィルスの生成の必要性がある。
【0006】
Ad5は、それらの血球凝集性質を包含する種々の特性に基づいて、サブグループA-Fに分類される、51の現在知られているアデノウィルス血清型の1つである(Shenk, "Adenoviridae: The Viruses and Their Replication," in Fields Virology, Vol.2, Fourth Edition, Knipe, ea., Lippincott, Williams & Wilkins, pp. 2265-2267 (2001 )を参照のこと)。それらの血清型は、種々のレベル、例えばヒト及び齧歯動物における病理学、結合のために使用される細胞受容体で異なるが、しかしそれらの差異がより有能な腫瘍崩壊性アデノウィルスを開発するための可能性ある手段としてほとんど無視されて来た(ファイバー変更の例外に関しては、Stevenson など. (1997) J. Virol. 71 :4782- 4790; Krasnykh など. (1996) J. Virol. 70:6839-6846; Wickham など. (1997) J. Virol. 71 :8221-8229; Legrand など. (2002) Curr. Gene Ther. 2:323-329; Barnett など. (2002) Biochim. Biophys. Acta 1- 3:1-14; アメリカ特許出願2003/0017138号を参照のこと)。
【0007】
アデノウィルス血清型間の差異の活用が、高められた選択性及び能力を有する新規アデノウィルスを用いて、より効果的なアデノウィルスに基づく治療源を提供することができる。そのような改良されたアデノウィルスに基づく療法についての必要性ある。
【発明の開示】
【0008】
発明の要約:
本発明は、ウィルスに基づく療法のために有用な、新規キメラアデノウィルス、又はその変異体又は誘導体を提供する。特に、本発明は、E2B領域を含んで成るゲノムを有する組換えキメラアデノウィルス、又はその変異体又は誘導体を提供し、ここで
前記E2B領域は、第1アデノウィルス血清型に由来する核酸配列、及び第2アデノウィルス血清型に由来する核酸配列を含んで成り;
前記第1及び第2血清型は、アデノウィルスサブグループB, C, D, E又はFからそれぞれ選択され、そしてお互い異なり;そして
前記キメラアデノウィルスが腫瘍崩壊性であり、そして腫瘍細胞に対して増強された治療指数を示す。
【0009】
1つの態様においては、前記キメラアデノウィルスは、ファイバー、ヘキソン及びペントンタンパク質をコードする領域をさらに含んで成り、前記タンパク質をコードする核酸がすべて同じアデノウィルス血清型からである。もう1つの態様においては、本発明のキメラアデノウィルスは、修飾されたE3又はE4領域を含んで成る。
【0010】
もう1つの態様においては、キメラアデノウィルスは、結腸、乳房、膵臓、肺、前立腺、卵巣又は造血腫瘍細胞において、増強された治療指数を示す。特に好ましい態様においては、キメラアデノウィルスは、結腸腫瘍細胞において増強された治療指数を示す。
好ましい態様においては、キメラアデノウィルスのE2B領域は、配列番号3を含んで成る。特に好ましい態様においては、キメラアデノウィルスは、配列番号1を含んで成る。
【0011】
本発明は、E2B領域を含んで成るゲノムを有する組換えキメラアデノウィルス、又はその変異体又は誘導体を提供し、ここで
前記E2B領域は、第1アデノウィルス血清型に由来する核酸配列、及び第2アデノウィルス血清型に由来する核酸配列を含んで成り;
前記第1及び第2血清型は、アデノウィルスサブグループB, C, D, E又はFからそれぞれ選択され、そしてお互い異なり;
前記キメラアデノウィルスが腫瘍崩壊性であり、そして腫瘍細胞に対して増強された治療指数を示し;そして
前記キメラアデノウィルスが、E1, E2, E3又はE4から成る群から選択されたアデノウィルス複製に関連するタンパク質をコードする1又は複数のアデノウィルス領域の欠失を通して複製欠失にされている。
【0012】
1つの態様においては、本発明のキメラアデノウィルスは、前記アデノウィルスにより感染された細胞内に発現される、治療タンパク質をコードする異種遺伝子をさらに含んで成る。好ましい態様においては、前記治療タンパク質は、サイトカイン及びケモカイン、抗体、プロドラッグ転換酵素、及び免疫調節タンパク質から選択される。
【0013】
本発明は、治療目的のためへの本発明のキメラアデノウィルスの使用方法を提供する。1つの態様においては、キメラアデノウィルスは、癌細胞の増強を阻害するために使用され得る。特定の態様においては、配列番号1を含んで成るキメラアデノウィルスは、結腸癌細胞の増殖を阻害するために有用である。
もう1つの態様においては、本発明のアデノウィルスは、治療タンパク質を細胞に供給するためのベクターとして有用である。
【0014】
本発明は、
a)アデノウィルスサブグループB-Fを表すアデノウィルス血清型をプールし、それにより、アデノウィルス混合物を作製し;
b)段階a)からのプールされたアデノウィルス混合物を、腫瘍細胞の活動的に増殖する培養物上に、血清型間の組換えを促進するのに十分に高いが、しかし早熟細胞死を生成するほどは高くない、粒子/細胞の比率で通し;
c)段階b)からの上清液を収得し;
d)段階c)において収得された上清液により、腫瘍細胞の休止培養物を感染し;
e)CPEの徴候の前、段階d)からの細胞培養物上清液を収得し;
f)段階e)において収得された上清液により、腫瘍細胞の休止培養物を感染し;そして
g)段階f)において収得された上清液から請求項1記載のウィルスを、プラーク精製により単離する;
ことを含んで成る、本発明のキメラアデノウィルスの生成方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
発明の特定の記載:
本明細書において言及されるすべての出版物、例えば特許及び特許出願は、個々の出版物が特別に且つ個々に、引用により組込まれることを示されているかのように同じ程度に引用により本明細書に組込まれる。
【0016】
定義
特にことわらない限り、本明細書に使用されるすべての技術的及び科学的用語は、当業者により通常理解されるのと同じ意味を有する。一般的に、本明細書に使用される命名法及び下記実験方法は、当業界において良く知られており、そして通常使用されるそれらである。
【0017】
本明細書において使用される場合、“アデノウィルス”、“血清型”又は“アデノウィルス血清型”とは、現在知られているか、又は未来において単離される51種のヒトアデノウィルス血清型のいずれかを意味する。例えば、Strauss, "Adenovirus infections in humans," in The Adenoviruses, Ginsberg, ea., Plenum Press, New York, NY, pp. 451-596 (1984)を参照のこと。それらの血清型は、サブグループA-Fに分類される(下記表1に示されるように、Shenk, "Adenoviridae: The Viruses and Their Replication," in Fields Virology, Vol.2, Fourth Edition, Knipe, ea., Lippincott Williams & Wilkins, pp. 2265-2267 (2001)を参照のこと)。
【0018】
【表1】

【0019】
本明細書において使用される場合、“キメラアデノウィルス”とは、核酸配列が、上記アデノウィルス血清型の少なくとも2種の血清型の核酸配列から構成されるアデノウィルスを意味する。
本明細書において使用される場合、“親アデノウィルス血清型”とは、キメラアデノウィルスのゲノムの大部分が由来する血清型を表すアデノウィルス血清型を意味する。
本明細書において使用される場合、用語“相同組換え”とは、相同性の領域において交差するか又は組換えを受ける、相同配列をそれぞれ有する2種の核酸分子を意味する。
【0020】
本明細書において使用される場合、用語“能力”とは、ウィルスの溶解能力を意味し、そして複製し、溶解し、そして分散するその能力を表す。本発明に関しては、能力とは、同じ細胞系におけるAd5の細胞溶解活性に対して、本発明の所定のアデノウィルスの細胞溶解活性を比較する値、すなわち能力=AdXのIC50/Ad5のIC50(ここで、Xは試験される特定のアデノウィルス血清型であり、そしてAd5の能力は1の値を与えられる)である。
【0021】
本明細書において使用される場合、用語“腫瘍崩壊性ウィルス”とは、正常な細胞に比較して、癌細胞を選択的に殺害するウィルスを意味する。
本明細書において使用される場合、用語“治療指数”又は“治療窓”とは、所定のアデノウィルスの腫瘍崩壊能力を示す数を意味し、そして癌細胞系におけるアデノウィルスの能力を、正常(すなわち、非癌)細胞系における同じアデノウィルスの能力により割ることにより決定される。
【0022】
本明細書において使用される場合、用語“修飾された”とは、天然に存在する、例えば野生型ヌクレオチド又はアミノ酸配列とは異なるヌクレオチド又はアミノ酸配列を有する分子を意味する。修飾された分子は、野生型分子の機能又は活性を保持することができ、すなわち修飾されたアデノウィルスはその腫瘍崩壊活性を保持することができる。修飾は、下記のように核酸に対する突然変異誘発を包含する。
【0023】
本明細書において使用される場合、ポリヌクレオチド又はポリペプチドに関する“突然変異誘発”とは、それぞれ対照ポリヌクレオチド又はポリペプチドに比較して(例えば、野生型ポリヌクレオチド又はポリペプチドに比較して)、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの一次、二次又は三次構造への天然に存在する、合成、組換え又は化学的変化又は差異を意味する。突然変異誘発は、例えば欠失、挿入又は置換のような変化を包含する。そのような突然変異を有するポリヌクレオチド及びポリペプチドは、当業界において良く知られている方法を用いて、単離されるか、又は生成され得る。
【0024】
本明細書において使用される場合、“欠失”とは、1又は複数のポリヌクレオチド又はアミノ酸残基がそれぞれ不在である、ポリヌクレオチド又はアミノ酸配列のいずれかにおける変化として定義される。
本明細書において使用される場合、“挿入”又は“付加”とは、それぞれ天然に存在するポリヌクレオチド又はアミノ酸配列に比較して、1又は複数のポリヌクレオチド又はアミノ酸残基の付加をもたらした、ポリヌクレオチド又はアミノ酸配列の変化である。
本明細書において使用される場合、“置換”は、それぞれ、異なったポリヌクレオチド又はアミノ酸による1又は複数のポリヌクレオチド又はアミノ酸の置換に起因する。
【0025】
本明細書において使用される場合、用語“アデノウィルス誘導体”とは、付加、欠失又は置換がウィルスゲノムに対して又はそのゲノムにおいて行われるよう修飾されている本発明のアデノウィルスを意味し、その結果、得られるアデノウィルス誘導体は、親アデノウィルスの能力及び/又は治療指数よりも高いその能力及び/又は治療指数を示すか、又は他の手段においては、より治療的に有用である(すなわち、低い免疫原性の改良されたクリアランスプロフィール)。例えば、本発明のアデノウィルの誘導体は、ウィルスゲノムの初期遺伝子の1つに、例えばウィルスゲノムのE1A又はE2B領域(但し、それだけには限定されない)に欠失を有することができる。
【0026】
本明細書において使用される場合、ポリヌクレオチオ又はポリペプチドに関する“変異体”とは、それぞれ、対照ポリヌクレオチオ又はポリペプチドに比較して(例えば、野生型ポリヌクレオチオ又はポリペプチドに比較して)、一次、二次又は三次構造で変化できるポリヌクレオチオ又はポリペプチドを意味する。例えば、アミノ酸又は核酸配列は、対照アミノ酸又は核酸配列とは異なる突然変異又は修飾を含むことができる。いくつかの態様においては、アデノウィルス変異体は、異なったイソフォーム又は多形現象である。変異体は、当業界において良く知られている方法を用いて単離されたか又は生成された、天然に存在し、合成、組換え又は化学的に修飾されたポリヌクレオチオ又はポリペプチドであり得る。変異体のポリヌクレオチド配列の変化はサイレントであり得る。すなわち、それらはポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸を変更することはできない。
【0027】
変更がこのタイプのサイレント変化に制限される場合、変異体は対照として同じアミノ酸配列を有するポリペプドをコードするであろう。他方では、変異体のポリヌクレオチド配列におけうそのような変化は、対照ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を変更することができ、下記に記載されるように、保存性又は非保存性アミノ酸変化をもたらす。そのようなポリヌクレオチド変化は、対照配列によりコードされるポリペプチドにおけるアミノ酸置換、付加、欠失、融合及び切断をもたらすことができる。種々のコドン置換、例えば種々の制限部位を生成するサイレント変更が、特定の原核又は真核系におけるプラスミド又はウィルスベクターのクローニング、又はそこにおける発現を最適化するために導入され得る。
【0028】
本明細書において使用される場合、“アデノウィルス変異体”とは、上記のように、ポリヌクレオチド配列が対照ポリヌクレオチド、例えば野生型アデノウィルスとは異なるアデノウィルスを意味する。差異は制限され、その結果、親及び変異体のポリヌクレオチド配列は、全体的に類似し、そしてほとんどの領域において、同一である。本明細書において使用される場合、第1ヌクレオチド又はアミノ酸配列は、2種の配列の比較が、それらがほとんど配列差異を有さないことを示す場合(すなわち、第1及び第2配列がほぼ同一である)、第2配列に対して“類似する”と言われる。本明細書において使用される場合、アデノウィルス変異体と対照アデノウィルスとの間に存在するポリヌクレオチド配列差異は、能力及び/又は治療指数における差異をもたらさない。
【0029】
本明細書において使用される場合、用語“保存性”とは、類似する化学性質を有する異なったアミノ酸残基によるアミノ酸残基の置換を意味する。保存性アミノ酸置換は、イソロイシン又はバリンによるロイシン、グルアミン酸によるアスパラギン酸、又はセリンによるトレオニンの置換を包含する。挿入又は付加は典型的には、約1〜5のアミノ酸の範囲である。
【0030】
本明細書において使用される場合、用語“非保存性”とは、異なった化学性質を有する異なったアミノ酸残基によるアミノ酸残基の置換を意味する。非保存性置換は、グリシン(G)によるアスパラギン酸(D)の置換;リシン(K)によるアスパラギン(N)の置換;又はアルギニン(R)によるアラニン(A)の置換を包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0031】
アミノ酸残基についての一文字コードは次のものを包含する:A=アラニン、R=アルギニン、N=アスパラギン、D=アスパラギン酸、C=システイン、Q=グルタミン、E=グルタミン酸、G=グリシン、H=ヒスチジン、I=イソロイシン、L=ロイシン、K=リシン、M=メチオニン、F=フェニルアラニン、P=プロリン、S=セリン、T=トレオニン、W=トリプトファン、Y=チロシン、V=バリン。
【0032】
ポリペプチドはしばしば、20個の天然に存在するアミノ酸として通常言及される20個のアミノ酸以外のアミノ酸を含み、そして多くのアミノ酸、例えば末端アミノ酸は、天然の工程、例えばグリコシル化及び他の後−翻訳修飾、又は当業界において良く知られている化学的修飾技法のいずれかにより、所定のポリペプチドにおいて修飾され得ることが認識されるであろう。ポリペプチドにおいて天然で生じる通常の修飾でさえ、本明細書においてすべて列挙するには多過ぎるが、しかしそれらは、基本テキスト及びより詳細な研究論文、並びに多くの研究文献において十分に記載されており、そしてそれらは、当業者に良く知られている。
【0033】
本発明のポリペプチドに存在することができる既知の修飾は、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム成分の共有結合、ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスファチジリノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メルチ化、共有架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、γカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質加水分解プロセッシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、タンパク質へのアミノ酸のトランスファーRNA介在性付加、例えばアルギニル化、及びユビキチン化を包含する。
【0034】
そのような修飾は、当業者に良く知られており、そして科学文献に詳細に記載されている。いくつかの特に共通する修飾、すなわちグリコシル化、脂質結合、硫酸化、グルタミン酸残基のγ−カルボキシル化、ヒドロキシル化及びADP−リボシル化は、多くの基本的テキスト、例えばProteins−Structure and Molecular Properties, 2nd ed. , T. E. Creighton, W. H. Freeman and Company, New York (1993)に記載されている。多くの詳細な再考は、Wold, F., Posttranslationail Covalent Modification of Proteins, B. C. Johnson, Ed. , Academic Press, New York 1-12 (1983); Seifter et aL (1990) Meth. Enzymol. 182: 626-646 及び Rattan など. (1992) Ann. N. Y. Acad. Sci. 663: 48-62により入手できる。
【0035】
ポリペプチドは常に完全には線状ではないことが、良く知られているように及び上記に示されるように、認識されるべきであろう。例えば、ポリペプチドは、ユビキチン化の結果として枝分れされ得、そしてそれらは後−翻訳現象、例えば天然のプロセッシング現象及び天然に存在しないヒト操作により引き起こされた現象の結果として、枝分れを伴ってまたは伴わないで、環状であり得る。環状、枝分れ及び枝分れ環状のポリペプチドは、非翻訳の天然の工程及び完全に合成の方法により合成され得る。
【0036】
修飾は、ポリペプチド、例えばポリペプチド主鎖、アミノ酸側鎖及びアミノ又はカルボキシル末端のいずれかの位置で存在することができる。実際、ポリペプチドにおけるアミノ又はカルボキシル基、又は両者の共有修飾による封鎖は通常、天然に存在し、そして合成のポリペプチドであり、そしてそのような修飾は本発明のポリペプチドに存在することができる。例えば、タンパク質分解プロセッシングの前、E. コリにおいて製造されるポリペプチドのアミノ末端残基は、ほとんど一定してN−ホルミルメチオニンであろう。
【0037】
ポリペプチドに存在する修飾はしばしば、それがいかにして製造されるのかの機能であろう。宿主においてクローン化された遺伝子を発現することにより製造されるポリペプチドに関しては、修飾の性質及び程度は大部分、宿主細胞の後−翻訳修飾能力、及びポリペプチドアミノ酸配列に存在する修飾シグナルにより決定されるであろう。例えば、良く知られているように、グルコシル化はしばしば、細菌宿主、例えばE. コリにおいて存在しない。従って、グリコシル化が所望される場合、ポリペプチドは、グリコシル化宿主、一般的に真核細胞において発現されるべきである。昆虫細胞はしばしば、哺乳類細胞と同じ後翻訳グリコシル化を行い、そしてこの理由のために、昆虫細胞発現システムは、活性パターンのグリコシル化を有する哺乳類タンパク質を効果的に発現するために開発されて来た。類似する考慮が他の修飾に適用される。
【0038】
同じタイプの修飾が所定のポリペプチドにおけるいくつかの部位で同じか又は種々の程度で存在することは認識されているであろう。また、所定のポリペプチドは、多くのタイプの修飾を含むことができる。
【0039】
本明細書において使用される場合、次の用語が、複数のポリヌクレオチド又はアミノ酸配列間の配列関係を記載するために使用される:“対照配列”“比較窓”、“配列同一性”、“配列同一性の%”、“実質的な同一性”、“類似性”、及び“相同”。“対照配列”は、配列比較のための基礎として使用される定義された配列であり;対照配列は配列の列挙に与えられる十分な長さのcDNA又は遺伝子配列のセグメントとしての大きな配列のサブセットであり得るか、又は完全なcDNA又は遺伝子配列を含んで成ることができる。一般的に、対照配列は、少なくとも18個の長さのヌクレオチド、又は6個の長さのアミノ酸、時折少なくとも24個の長さのヌクレオチド又は8個の長さのアミノ酸、及びしばしば少なくとも48個の長さのヌクレオチド又は16個の長さのアミノ酸を含んで成ることができる。
【0040】
2個のポリヌクレオチド又はアミノ酸配列はそれぞれ、(1)2個の分子間で類似する配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド又はアミノ酸配列の一部)を含んで成り、そして(2)2個のポリヌクレオチド又はアミノ酸配列間で異なる配列をさらに含んで成り、2種(又はそれ以上)の分子間の配列比較は典型的には、配列類似性の局部領域を同定し、そして比較するために、“比較窓”にわたって、2種の分子の配列を比較することにより行われる。
【0041】
“比較窓”とは、本明細書において使用される場合、少なくとも18個の連続したヌクレオチド位置又は6個のアミノ酸のセグメントを意味し、ここでポリヌクレオチド配列又はアミノ酸配列が少なくとも18個の連続したヌクレオチド又は6個のアミノ酸配列の対照配列に比較され得、そして比較窓におけるポリヌクレオチド配列の一部が、2種の配列の最適な一列整列に関して対照配列(付加又は欠失を包含しない)に比較して、20%又はそれ以下の付加、欠失、置換及び同様のもの(すなわち、ギャップ)を含んで成ることができる。
【0042】
比較窓を一列整列するための配列の最適な一列整列は、Smith and Waterman, Adv.Appl. Math. 2: 482 (1981)の局部相同性アルゴリズムにより、Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48: 443 (1970)の相同性一列整列アルゴリズムにより、Pearson and Lipman, Proc.Natl. Acad. Sci. (U. S.A.) 85: 2444 (1988)の類似性方法についての研究により、それらのアルゴリズム(GAP, BESTFIT, FASTA, and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, (Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis. ), Geneworks, or MacVector software packages)のコンピューター処理された実施により、又は調査により行われ得、そして種々の方法により生成される最良の一列整列(すなわち、比較窓にわたって相同性の最高百分率をもたらす)が選択される。
【0043】
本明細書において使用される場合、用語“配列同一性”とは、2種のポリヌクレオチド又はアミノ酸配列が比較窓にわたって同一である(すなわち、ヌクレオチド対ヌクレオチド又は残基に基づいて)ことを意味する。用語“配列同一性の%”は、比較窓にわたって2種の最適に一列整列された配列を比較し、同一の核酸塩基(例えば、A, T, C, G, U又はI)又は残基が適合した位置の数を得るために両配列において存在する位置の数を決定し、比較窓(すなわち、窓サイズ)における位置の合計数により適合した位置の数を割り算し、そして配列同一性の%を得るために前記結果に100を掛け算することにより計算される。
【0044】
用語“実質的な同一性”とは、本明細書において使用される場合、ポリヌクレオチド又はアミノ酸配列の特徴を示し、ここでポリヌクレオチドアミノ酸配列は、少なくとも18個のヌクレオチド(6個のアミノ酸)位置の比較窓にわたって、時折、少なくとも24〜48個のヌクレオチド(8〜16個のアミノ酸)位置の比較窓にわたって、対照配列に比較して、少なくとも85%の配列同一性、好ましくは少なくとも90〜95%の配列同一性、より通常には少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含んで成り、ここで配列同一性の%は、比較窓にわたって、対照配列の合計20%又はそれ以下である欠失又は付加を包含する配列に対照配列を比較することにより計算される。対照配列は、大きな配列のサブセットであり得る。
【0045】
用語“類似性”とは、ポリペプチドを説明するために使用される場合、第2のポリペプチドの配列に対して1つのポリペプチドのアミノ酸配列及び保存されたアミノ酸置換基を比較することにより決定される。用語“相同”とは、ポリヌクレオチドを記載するために使用される場合、2種のポリヌクレオチド又はその企画された配列が、最適に一列整列され、そして比較される場合、少なくとも70%のヌクレオチド、通常約75〜99%のヌクレオチド、及びより好ましくは少なくとも約98〜99%のヌクレオチドにおいて、適切なヌクレオチド挿入又は欠失を伴って、同一であることを示す。
【0046】
本明細書において使用される場合、“相同”とは、ポリヌクレオチドを記載するために使用される場合、2種のポリヌクレオチド、又はその企画される配列が、最適に一列整列され、そして比較される場合、ヌクレオチドの少なくとも70%、通常約75%〜99%、及びより好ましくは、ヌクレオチドの少なくとも約98〜99%において、適切なヌクレオチド挿入又は損失を伴って、同一であることを示す。
【0047】
本明細書において使用される場合、“ポリメラーゼ鎖反応”又は“PCR”とは、DNAの特異的断片がアメリカ特許第4,683,195号に記載のようにして増幅される方法を意味する。一般的に、興味あるか又はそれ以外のポリペプチドフラグメントの末端からの配列情報は、オリゴヌクレオチドプライマーを企画するために入手する必要があり;それらのプライマーはお互いの方向に向き、そして増幅される鋳型の反対の鎖に配列において同一であるか又は類似するであろう。2種のプライマーの5’末端ヌクレオチドは、増幅された材料の末端と一致するであろう。PCRは、全ゲノムDNAからの特異的DNA配列、全細胞RNAから転写されるcDNA、プラスミド配列、等を増幅するために使用され得る(Mullis など., Cold Spring Harbor Symp. Quant.Biol., 51: 263, 1987; Erlich, ed. , PCR Technology, Stockton Press, NY, 1989を参照のこと)。
【0048】
本明細書において使用される場合、“緊縮性”は典型的には、約Tm(溶融温度)〜5℃(プローブのTmよりも5℃低い)〜約20℃〜Tmよりも25℃低い温度の範囲で存在する。当業者により理解されるように、緊縮ハイブリダイゼーションは、同一のポリヌクレオチド配列を同定するか又は検出するために、又は類似するか又は関連するポリヌクレオチド配列を同定するか又は検出するために使用され得る。本明細書において使用される場合、用語“緊縮条件”とは、配列間に少なくとも95%及び好ましくは少なくとも97%の同一性が存在する場合のみ、ハイブリダイゼーションが生じるであろうことを意味する。
【0049】
本明細書において使用される場合、“ハイブリダイゼーション”とは、本明細書において使用される場合、“ポリヌクレオチド鎖が塩基対合を通して相補的鎖と連結するいずれかの工程”を包含する(Coombs, J., Dictionary of Biotechnology, Stockton Press, New York, N. Y. , 1994)。
【0050】
本明細書において使用される場合、“治療的有効用量”とは、疾病状態の徴候又は病状を改善する、アデノウィルスの量を意味する。用量は、被検体に関する寿命の拡張を導くために、腫瘍又は転移増殖が遅延されるか又は停止されるか、又は腫瘍又は転移がサイズ的に縮小することが見出される場合、癌又はその転移の処理における治療的有効用量と見なされる。
【0051】
本発明のアデノウィルス:
本発明は、キメラアデノウィルスのE2B領域のヌクレオチド配列が、少なくとも2種のアドレノウィルス血清型(アデノウィルスサブタイプB, C, D, E及びFからそれぞれ選択され、そしてお互い異なる)に由来する核酸配列を含んで成るゲノムを有する、キメラアデノウィルス、又はその変異体又は誘導体を提供する。本発明のキメラアデノウィルスは、腫瘍崩壊性であり、そして腫瘍細胞に対して増強された治療指数を示す。
【0052】
キメラアデノウィルスの単離
本発明のキメラアデノウィルス、又はその変異体又は誘導体は、所望する性質、例えば増強された腫瘍崩壊性又は細胞型特異性を有するアデノウィルスが調節された条件下で遺伝子選択の使用を通して生成される、“生物選択”として言及される技法の変法を用いて、生成され得る(Yan など. (2003) J. Virol.77:2640-2650)。
【0053】
本発明においては、異なった血清型のアデノウィルスの混合物が、プールされ、そして血清型間での組換えを増強するのに十分高いが、しかし早熟細胞死を生成するほど高くない粒子/細胞の比率で、腫瘍細胞の集密性以下の培養で少なくとも2度、継代される。好ましい粒子/細胞の比率は、約500個の粒子/細胞であり、そして当業者により容易に決定される。本明細書において使用される場合、細胞の“集密性以下の培養”とは、細胞が活動的に増殖する単層又は懸濁培養を言及する。単層として増殖される細胞に関しては、例は、細胞増殖のために利用できる面積の約50%〜80%が細胞により被覆されている培養である。増殖面積の約75%が細胞により被覆されている培養が好ましい。
【0054】
好ましい態様においては、アデノウィルス混合物は、アデノウィルスサブグループB, C, D, E及びFの代表であるアデノウィルス血清型を含む混合物である。グループAアデノウィルスは、それらが齧歯動物において腫瘍形成に関連する場合、混合物には含まれない。生物選択工程において有用な、好ましい腫瘍細胞系は、乳房、結腸、膵臓、肺及び前立腺由来のそれらの細胞系を包含するが、但しそれらだけには限定されない。アデノウィルス混合物の“生物選択的”継代のために有用な固形腫瘍細胞系のいくつかのサンプルは、MDA231、HT29, PAN-1及びPC-3細胞を包含するが、但しそれらだけには限定されない。造血細胞系は、Raji及びDaudi B-リンパ細胞、K562赤芽球細胞、U937骨髄性細胞、及びHSB2 T-リンパ細胞を包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0055】
それらの初期継代の間、生成されるアデノウィルスは、1以上のアデノウィルスによる細胞の感染を可能にするのに十分に低い粒子/細胞の比率で休止腫瘍細胞を感染するために使用される。それらの条件下での20回までの継代後、最後の継代からの上清液が、高い能力のウィルスの選択を高めるために、可視細胞編成効果(CPE、Fields Virology, Vol.2, Fourth Edition, Knipe, ea., Lippincott Williams & Wilkins, pp. 135-136を参照のこと)の前、収得される。収得された上清液は、当業者に知られている技法により濃縮され得る。休止細胞を得るための好ましい方法、すなわち活性細胞増殖が単離培養において停止されている方法は、集密性に続いて、3日間の培養物の増殖を可能にし、ここで集密性とは細胞増殖のために利用できる全領域が支配されている(細胞により被覆されている)ことを意味する。同様に、懸濁培養は、活性細胞増殖の不在により特徴づけられる密度に増殖され得る。
【0056】
生物選択されたアデノウィルスプールを含む濃縮された上清液の血清型プロフィールが、異なったアデノウィルス血清型が特徴的保持時間を有することが知られている(Blanche など. (2000) Gene Therapy 7:1055-1062)、アニオン交換カラム上での収得されたウィルスプールの保持時間を測定することにより試験され得る;例3、図1A及びBを参照のこと。本発明のアデノウィルスは、希釈及びプラーク精製、又は当業界において良く知られている他の技法により、濃縮された上清液から単離され、そしてさらなる特徴化のために増殖され得る。当業界において良く知られている技法は、単離されたキメラアデノウィルスの配列を決定するために使用される(例5を参照のこと)。
【0057】
本発明のキメラアデノウィルスの例は、生物選択工程においてHP29結腸細胞を用いて単離されたキメラアデノウィルスColoAd1である。ColoAd1は、配列番号1の核酸配列を有する。ColoAd1のヌクレオチド配列の大部分は、Ad11血清型のヌクレオチド配列(配列番号2)と同一である(Stone など. (2003) Virology 309: 152- 165; Mei et al. (2003) J. Gen. Virology 84:2061-2071)。Ad11に比較して、ColoAd1ヌクレオチド配列に2つの欠失が存在し、1つはゲノムのE3転写単位領域内の2444個の長さの塩基対(配列番号2の塩基対27979〜30423)であり、そして2つ目は、E4orf4遺伝子内の小さな欠失、すなわち25個の長さの塩基対(配列番号2の塩基対33164〜33189)である。
【0058】
アデノウィルスタンパク質DNAポリメラーゼ及び末端タンパク質をコードする、ColoAd1のE2B転写単位領域(配列番号3)は、配列番号1の塩基対5067〜10354の間に位置し、そしてAd11とAd3血清型との間の相同組換えの領域である。ColoAd1のこの領域内に、Ad11の配列(配列番号1)に比較して、198個の塩基対の変化が存在する。この変化は、Ad3のE2B領域の一部内の配列(配列番号8)に相同である、ColoAd1のE2B領域内のヌクレオチドの拡張をもたらし、そしてColoAd1とAd3との間の相同性の最長の拡張は、414bpの長さである。ColoAd1のE2B領域(配列番号3)は、修飾されていないAd11アデノウィルスに比較して、ColoAd1アデノウィルスに、増強された能力を付与する(例6、図7を参照のこと)。他の態様においては、本発明のキメラアデノウィルスは、複数のアデノウィルス血清型の核酸配列を含んで成ることができる。
【0059】
本発明のキメラアデノウィルス、又はその変異体又は誘導体は、アデノウィルスプールが最初に継代された同じ組織に由来する腫瘍細胞のパネルにおけるその溶解能力の試験により、特定の腫瘍型におけるその選択性について評価され得る。例えば、HT-29結腸腫瘍細胞系上で継代されたアデノウィルスプールに最初に由来するキメラアデノウィルスColoAd1(配列番号1)が、HT-29細胞、及びDLD-1 , LS174T, LS1034, SW403, HCT116, SW48, 及び Colo320DMを包含する他の結腸由来の腫瘍細胞系のパネルの両者において再試験された(図3Bを参照のこと)。
【0060】
いずれの入手できる結腸腫瘍細胞系でも、そのような評価のために均等に有用であろう。他の腫瘍細胞型に対して選択されたアデノウィルスプールからの単離されたアデノウィルスクローンが、適切な腫瘍細胞パネル、例えば前立腺細胞系(例えば、Du145及びPC-3細胞系);乳癌細胞系(例えば、MDA231細胞系)及び卵巣細胞系(例えば、OVCAR-3細胞系)(但し、それらだけには制限されない)において、同様にして試験され得る。他の入手できる腫瘍細胞系は、本発明のアデノウィルスの単離及び同定のために均等に有用である。
【0061】
本発明のキメラアデノウィルスは、それが由来するアデノウィルス血清型に比較して、増強された治療指数を有する。(キメラアデノウィルスColoAd1とAd11pとの細胞溶解活性を比較する図6を参照のこと)。
【0062】
本発明はまた、当業界者に良く知られている組換え技法を用いて構成されるキメラアデノウィルスを包含する。そのようなキメラアデノウィルスは、第2アデノウィルス血清型のゲノム中に組換え技法により組込まれる1つのアデノウィルス血清型に由来するヌクレオチド配列の領域を含んで成る。組込まれる配列は、親アデノウィルス血清型に、1つの性質、例えば腫瘍特異性又は増強された能力を付与する。例えば、ColoAd1のE2B領域(配列番号3)が、Ad35又はAd9のゲノム中に組込まれ得る。
【0063】
アデノウィルス誘導体
本発明はまた、他の治療的に有用なキメラアデノウィルスを提供するために修飾される本発明のキメラアデノウィルスも包含する。修飾は、下記に記載されるそれらを包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0064】
1つの修飾は、E1B−55Kタンパク質をコードするアデノウィルス遺伝子における突然変異の結果として、p53を結合する能力を実質的に欠いている本発明のキメラアデノウィルスの誘導体の生成である。そのようなウィルスは一般的に、欠失されたE1B-55K領域のいくらか又はすべてを有する(アメリカ特許第5,677,178を参照のこと)。アメリカ特許第6,080578号は、中でも、p53の結合を担当するE1B−55Kタンパク質の領域に欠失を有するAd5変異体を記載する。本発明のキメラアデノウィルスに対するもう1つの好ましい修飾は、アメリカ特許第5,801,029号及び第5,972,706号に記載されるように、E1A領域における突然変異である。それらのタイプの修飾は、腫瘍細胞に対して高い選択性を有する本発明のキメラアデノウィルスの誘導体を提供する。
【0065】
本発明により包含される修飾のもう1つの例は、アメリカ特許第5,998,205号に記載されるように、組織特異的プロモーターの制御下へのウィルス複製の配置により、増強された程度の組織特異性を示すキメラアデノウィルスである。本発明のキメラアデノウィルスの複製はまた、アメリカ特許第09/714,409号に記載されるように、E2F応答要素の制御下に配置され得る。この修飾は、E2Fの存在に基づいてウィルス複製制御機能を付与し、増強された腫瘍組織特異性をもたらし、そして組織特異的プロモーターにより実現される制御とは異なる。それらの両態様においては、組織特異的プロモーター及びE2F応答要素は、アデノウィルスの複製のために必須であるアデノウィルス遺伝子に作用可能に結合される。
【0066】
本発明により包含されるもう1つの修飾は、新規複製−欠失アデノウィルスベクターの生成のための主鎖としての本発明のキメラアデノウィルス、例えばColoAd1の使用である。Lai など. ((2002) DNA Cell Bio. 21 :895-913に記載されるように、複製欠失のアデノウィルスベクターは、治療遺伝子を供給し、そして発現するために使用され得る。本発明のキメラアデノウィルスに由来するアデノウィルスベクターの第1生成(E1及びE3−領域が欠失される)及び第生成(E4領域がさらに欠失される)の両者が本明細書に提供されている。そのようなベクターは、当業者に良く知られている技法を用いて容易に生成される(lmperiale and Kochanek (2004) Curr. Top. Microbiol. Immunol. 273:335-357; Vogels など. (2003) J. Virol. 77:8263-8271を参照のこと)。
【0067】
本発明により包含されるさらなる修飾は、ウィルス感染の効率を追跡するためのマーカー又はレポーターとして有用な異種遺伝子の挿入である。このタイプの修飾の1つの態様は、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子の挿入である。感染された細胞内でのTKの発現が、TK反応の放射性ラベルされた基質を用いて、ウィルス感染に続いて、細胞に残るウィルスのレベルを追跡するために使用され得る(Sangro など. (2002) MoI. Imaging Biol. 4:27-33)。
【0068】
修飾されたキメラアデノウィルスの構成方法は一般的に当業界において知られている。Mittal, S. K. (1993) Virus Res. 28:67-90 and Hermiston, T. など..(1999) Methods in Molecular Medicine: Adenovirus Methods and Protocols, W.S.M. Wold, ed, Humana Pressを参照のこと。標準技法が、組換え核酸方法、ポリヌクレオチド合成、及び微生物培養及び形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)のために使用される。
【0069】
一般的に、酵素反応及び精製段階は、製造業者の規定に従って行われる。その技法及び方法は一般的に、当業界における従来の方法、及び種々の一般的文献(一般的に、Sambrook など., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd. edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y.を参照のこと)に従って行われる。本明細書において使用される命名法、及び下記に記載される分析化学、有機合成化学及び医薬配合における実験方法は、当業界において良く知られており、そして通常使用されるそれらである。
【0070】
治療能力の決定
本発明のキメラアデノウィルス、又はその変異体又は誘導体は、治療標的物として興味ある組織由来の腫瘍細胞におけるそれらの溶解能力の試験によるそれらの治療有用性について評価され得る。そのようなアデノウィルスを試験するために有用な腫瘍細胞は、結腸細胞系、例えばDLD-1 , HCT116, HT29, LS1034 及び SW48細胞系;前立腺細胞系、例えばDU145及びPC-3細胞系;膵臓細胞系、例えばPanc-1細胞系;乳癌細胞系、例えばMDA231細胞系、及び卵巣細胞系、例えばOVCAR-3細胞系を包含するが、但しそれらだけには限定されない。造血細胞系は、Raji及びDaudi B-リンパ細胞、K562赤芽球細胞、U937骨髄性細胞及びHSB2 T-リンパ球細胞を包含するが、但しそれらだけには限定されない。入手できるいずれの他の腫瘍細胞系も、新形成の処理への使用のために本発明のアデノウィルスの評価及び同定に使用され得る。
【0071】
本発明のアデノウィルスの細胞溶解活性は、代表的な腫瘍細胞系、及び能力の測定値に転換されたデータにおいて決定され、そしてサブグループCに属するアデノウィルス、好ましくはAd5が標準として使用される(すなわち、1の能力を付与する)。細胞溶解活性を決定するための好ましい方法は、MTSアッセイである(例4、図2を参照のこと)。
【0072】
特定の腫瘍細胞系における本発明のアデノウィルスの治療指数は、腫瘍細胞系における所定のアデノウィルスの能力と、非癌性細胞系における同じアデノウィルスの能力とを比較することにより計算され得る。好ましい非癌性細胞系は、上皮に起因するSAEC細胞及び内皮に起因するHUVEC細胞である(図4を参照のこと)。それらの2種の細胞型は、それぞれ器官及び血管系が由来する正常細胞を表し、そしてアデノウィルスの供給モードに依存して、アデノウィルス治療の間、たぶん毒性の部位の代表である。しかしながら、本発明の実施は、それらの細胞の使用に制限されず、そして他の非癌性細胞系(例えば、B細胞、T細胞、マクロファージ、単球、線維芽細胞)がまた使用され得る。
【0073】
本発明のキメラアデノウィルスは、同等の新形成細胞負荷を有する未処理のマウスに比較して、新形成細胞の移植物を有するヌードマウスにおける腫瘍形成又は新形成細胞負荷を低めるそれらの能力により、新形成細胞増殖(すなわち、癌)を標的化するそれらの能力について、さらに評価され得る(例7を参照のこと)。
【0074】
本発明のアデノウィルスの評価はまた、腫瘍異種移植研究を用いて通常、生成され得ない腫瘍に存在する試験条件を提供する、一次ヒト腫瘍外植片(Lamなど. (2003) Cancer Gene Therapy ; Grill など. (2003) MoI. Therapy 6:609- 614)を用いて実施され得る。
【0075】
治療利用性:
本発明は、腫瘍細胞増殖の阻害への本発明のキメラアデノウィルスの使用、及び新形成及び他の疾病状態の処理において有用な治療タンパク質を供給するためへのそれらのキメラアデノウィルス由来のアデノウィルス又はベクターの使用を提供する。
【0076】
医薬組成物及び投与
本発明はまた、患者への治療投与のために配合される、本発明のキメラアデノウィルス、又はその変異体又は誘導体を含んで成る医薬組成物に関する。治療使用に関しては、医薬的有効用量のアデノウィルスを含む無菌組成物は、例えば新形成状態の処理のためにヒト患者又は家畜の非ヒト患者に投与される。一般的に、組成物は、水性懸濁液に約1011又はそれ以上のアデノウィルス粒子を含むであろう。医薬的に許容できるキャリヤー又は賦形剤がしばしば、そのような無菌組成物に使用される。
【0077】
種々の水溶液、例えば水、緩衝水、0.4%塩溶液、0.3%グリシン及び同様のものが使用され得る。それらの条件は、無菌であり、且つ所望するアデノウィルスベクター以外の粒状物質を実質的に含まない。組成物は、生理学的条件に近づけるために必要とされる医薬的に許容できる補助物質、例えばpH調節及び緩衝剤、毒性調節剤、及び同様のもの、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム、等を含むことができる。アデノウィルスによる細胞の感染を増強する賦形剤が含まれ得る(アメリカ特許第6,392,069号を参照のこと)。
【0078】
本発明のアデノウィルスはまた、リポソーム又は免疫リポソーム供給により新形成細胞に供給され得;そのような供給は、新形成細胞集団上に存在する細胞表面性質(例えば、免疫リポソームにおける免疫グロブリンを供給する細胞表面タンパク質の存在)に基づいて、新形成細胞に選択的に標的化され得る。典型的には、ビリオンを含む水性懸濁液はリポソーム又は免疫リポソームに封入される。
【0079】
例えば、アデノウィルスビリオンの懸濁液は、従来の方法により免疫リポソームを形成するためにミセルに封入され得る(アメリカ特許第5,043,164号, アメリカ特許第4,957,735号, アメリカ特許第4,925,661号 ; Connor and Huang, (1985) J. Cell Biol. 101 : 581 ; Lasic D.D. (1992) Nature 355: 279; Novel Drug Delivery (eds. Prescott and Nimmo, Wiley, New York-, 1989); Reddy et al. (1992) J. Immunol. 148:1585)。個人の癌細胞上に存在する癌細胞抗原(例えば、CALLA、CEA)に特異的に結合する抗体を含んで成る免疫リポソームは、それらの細胞にビリオンを標的化するために使用され得る(Fisher (2001) Gene Therapy 8:341-348)。
【0080】
本発明のアデノウィルスの効率をさらに高めるために、それらは、特定の腫瘍細胞型に対して増強された向性を示すよう修飾され得る。例えば、RCT/US98/04964号に示されるように、アデノウィルスの外部コート上のタンパク質が、正常細胞よりも強い程度に腫瘍細胞上に存在する受容体に結合する化学剤、特にポリペプチドを示すよう修飾され得る(アメリカ特許第5,770,442号及び第5,712,136号を参照のこと)。ポリペプチドは、抗体であり得、そして好ましくは、一本鎖抗体である。
【0081】
アデノウィルス療法
本発明のアデノウィルス、又はその医薬組成物は、新形成療法又は癌の治療処理のために投与され得る。治療用途においては、組成物は、特定の新形成疾患によりすでに影響されている患者に、その病状及びその合併症を治療するか又は少なくとも特に、阻止するのに十分な量で投与され得る。これを達成するための適切な量は、“治療的有効用量”又は“効果的用量“として定義される。この使用のための効果的量は、患者の状態の重症度、患者の一般的状態、及び投与の経路に依存するであろう。
【0082】
例えば、制限的ではないが、固形又は血液学的新形成患者(例えば、膵臓、結腸、卵巣、肺又は乳癌、白血病又は多発性硬化症)を有するヒト患者又は非ヒト哺乳類は、治療的有効用量の本発明の適切なアデノウィルス、すなわちその組織型のための改良された治療指数を有することが示されているアデノウィルスを投与することにより処理され得る。例えば、結腸癌の処理のための好ましいキメラアデノウィルスは、アデノウィルスColoAd1(配列番号1)である。感染性のアデノウィルス粒子の懸濁液が、種々の経路、例えば静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下及び局部経路により、新形成組織に供給され得る。
【0083】
ml当たり約103〜1012又はそれ以上のビリオン粒子を含むアデノウィルス懸濁液が、注入(例えば、卵巣癌の処理のために腹腔中に、悪性肝癌又は他の非肝臓一次腫瘍からの肝臓転移を処理のために門静脈中に)、又は他の適切な経路、例えば腫瘍塊状物(例えば、乳癌)中への直接的な注入、注腸(例えば、結腸癌)、又はカテーテル(例えば、膀胱癌)により投与され得る。投与の他の経路、すなわちミストとしての吸入(例えば、気管支原性癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌又は喉頭癌を処理するための肺供給のための)、又は腫瘍部位(気管支原性癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、頸部癌)への直接的適用が、他の起源の癌のために適切であり得る。
【0084】
本発明のアデノウィルスを用いてのアデノウィルス療法は、他の抗腫瘍プロトコール、例えば特定癌を処理するための従来の化学療法又はX−線療法と組合され得る。処理は、同時又は連続的であり得る。好ましい化学療法剤は、シスプラチンであり、そして好ましい用量は、処理される癌の性質、及びシスプラチンの投与において通常考慮される他の因子に基づいて実施者により選択され得る。好ましくは、シスプラチンは、50〜120mg/m2の用量で3〜6時間にわたって静脈内投与されるであろう。より好ましくは、それは、80mg/m2の用量で4時間にわたって静脈内投与される。第2の好ましい化学療法剤は、シスプラチンと組合して、しばしば投与される5−フルオロクラシルである。5−フルオロウラシルの好ましい用量は、5日間の連続した時間、1日当たり800〜1200mg/m2である。
【0085】
アデノウィルスベクターとしての本発明のアデノウィルスを用いてのアデノウィルス療法はまた、ウィルスに基づく療法において有用であることが知られている他の遺伝子と組合され得る。アメリカ特許第5,648,478号を参照のこと。そのような場合、キメラウィルスはさらに、ウィルスゲノム内に組込まれる、治療タンパク質をコードする異種遺伝子を含んで成り、その結果、その異種遺伝子は感染された細胞内で発現される。治療タンパク質とは、本明細書において使用される場合、所定の細胞において発現される場合、いくらかの治療有益性を提供すると思われるタンパク質を言及する。
【0086】
1つの態様においては、異種遺伝子は、プロドラッグ活性化遺伝子、例えばシトシンデアミナーゼ(CD)である(アメリカ特許第5,631 ,236号; 第5,358,866号;及び第5,677,178号を参照のこと)。他の態様においては、異種遺伝子は、細胞死の既知インジューサー、例えばアポプチン又はアデノウィルス死亡タンパク質(ADP)、又は融合タンパク質、例えば融合膜糖タンパク質である(Danen-Van Oorschot など. (1997) Proc. Nat. Acad. Sci. 94:5843-5847; Tollefson など.(1996) J. Virol. 70:2296- 2306; Fu など. (2003) MoI. Therapy 7: 48-754, 2003; Ahmed など. (2003) Gene Therapy 10:1663- 1671 ; Galanis など. (2001) Human Gene Therapy 12(7): 811-821)。
【0087】
異種遺伝子、又はそのフラグメントのさらなる例は、免疫調節タンパク質、例えばサイトカイン又はケモカインをコードするそれらを包含する。例としては、インターロイキン2、アメリカ特許第4,738,927号又は第5,641 ,665号;インターロイキン7、アメリカ特許第4,965,195号又は第5,328,988号;及びインターロイキン12、アメリカ特許第5,457,038号;腫瘍壊死因子α、アメリカ特許第4,677,063号 又は第5,773,582号;インターフェロンγ、アメリカ特許第4,727,138号又は第4,762,791号;又はGM CSF、アメリカ特許第5,393,870 号又は第 5,391 ,485号, Mackensen など. (1997) Cytokine Growth Factor Rev. 8:119-128が包含される。
【0088】
追加の免疫調節タンパク質はさらに、マクロファージ炎症タンパク質、例えばMIP-3を包含する。単球走化性タンパク質はさらに、マクロファージ炎症タンパク質、例えばMIP-3を包含する。単球走化性タンパク質(MCP-3α)もまた使用され得;異種遺伝子の好ましい態様は、正常細胞でなく、癌に対して選択的に毒性であるタンパク質をコードする遺伝子に融合される細胞膜を横断するタンパク質をコードする遺伝子、例えばVP22又はTATから成るキメラ遺伝子である。
【0089】
本発明のキメラアデノウィルスはまた、治療的に有用なRNA分子、すなわちsiRNAをコードする遺伝子を供給するためにベクターとして使用され得る(Dorsett and Tuschl (2004) Nature Rev Drug Disc 3:318-329)。
【0090】
いくつかの場合、遺伝子は、腫瘍自体に対していずれの直接的な影響も有さないが、腫瘍を根絶する腫瘍崩壊ウィルスの能力をさらに増強するために本発明のキメラアデノウィルス中に導入され得;それらは、MHCクラスI提供物を処理し(Hewitt など. (2003; Immunology 110: 163-169)、補体を阻止し、IFN及びIFN−誘発された機構を阻害するタンパク質、ケモカイン及びサイトカイン、NK細胞に基づく殺害(Orangeなど., (2002) Nature Immunol. 3: 1006-1012; Mireille など. (2002) lmmunogenetics 54: 527-542; Alcami (2003) Nature Rev. Immunol. 3: 36-50; down regulate the immune response e.g. IL-10, TGF- Beta, Khong and Restifo (2002) Nature Immunol. 3: 999-1005; 2002)、及び細胞外マトリックスを分解でき、そして腫瘍内のウィルス拡散を増強するメタロプロテアーゼ(Bosman and Stamenkovic (2003) J. Pathol. 2000: 423-428; Visse and Nagase (2003) Circulation Res. 92: 827- 839)をコードする遺伝子を含む。
【0091】
キット
本発明はさらに、本発明の前述の組成物中の1又は複数の成分により充填された、1又は複数の容器を含んで成る医薬パック及びキットに関する。製造を規定する政府機関により処方される形、製造の機関による許可に影響を及ぼす医薬又は生物学的製品の使用又は販売、ヒト投与のための製品の使用又は販売の注意が、そのような容器に付随される。
本発明はさらに、本発明の特定の態様及びその種々の使用を例示する次の例により記載される。本発明の特定の観点を例示するそれらの例は、開示される発明の範囲を制限するものではない。
【0092】
特にことわらない限り、本発明の実施は、当業者の範囲内である。細胞培養、分子生物学、微生物学、組換えDNA操作、免疫学科学の従来の技法を使用する。そのような技法は、次の文献に十分に説明されている。例えば、Cell Biology: a Laboratory Handbook: J. Celis (Ed).Academic Press. N. Y. (1996); Graham, F. L. and Prevec, L. Adenovirus-based expression vectors and recombinant vaccines. In: Vaccines: New Approaches to Immunological Problems. R.W. Ellis (ed) Butterworth. Pp 363-390; Grahan and Prevec Manipulation of adenovirus vectors. In: Methods in Molecular Biology, Vol. 7: Gene Transfer and Expression Techniques. EJ. Murray and J. M. Walker (eds) Humana Press Inc., Clifton, N.J. pp 109-128, 1991 ; Sambrookなど. (1989), Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press; Sambrook など. (1989), and Ausubel など. (1995), Short Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sonsを参照のこと。
【実施例】
【0093】
方法:
標準技法が、組換え核酸方法、ポリヌクレオチド合成、及び微生物培養及び形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リボフェクション)のために使用される。一般的に、酵素反応及び精製段階は、製造業者の規定に従って行われる。技法及び方法は一般的に、当業界における従来の方法及び種々の一般的文献(一般的に、Sambrook など., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd. edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y.を参照のこと)に従って行われる。本明細書において使用される命名法、及び分析化学、有機合成化学及び医薬製剤及び供給、及び患者の処理は、当業者に良く知られている。
【0094】
アデノウィルス変異体の構成方法は一般的に、当業界において知られている。Mittal, S. K., Virus Res., 1993, vol: 28, pages 67-90; and Hermiston, T. など., Methods in Molecular Medicine: Adenovirus Methods and Protocols, W.S.M. Wold, ed, Humana Press, 1999を参照のこと。さらに、アデノウィルス5ゲノムは、Genbank 10受託番号M73260として登録されており、そしてそのウィルスは、受託番号VR-5として、American Type Culture Collection, Rockville, Maryland, U. S. A.から入手できる。
【0095】
ウィルス及び細胞系:
Ad血清型Ad3 (GB 株), Ad4 (RI-67株), Ad5 (Adenoid 75株), Ad9 (Hicks株), Ad11 p (Slobitski株), Ad16 (Ch. 79株)及び次のものを除くすべての細胞系は、ATCCからすべての購入された:MDA231-mt1(MDA231細胞の急速に増殖する皮下移植された異種移植片からDr. Deb Zajchowskiにより単離された誘導体)及びPanc1-sct (Panc1細胞の急速に増殖する皮下移植された異種移植片からDr. Sanchra Birocにより誘導された)、及びSAEC (Clonetics, Walkersville, MD)。Ad40は、St. Louis UniversityでDr. William S.M. Woldからの贈与物であった。
【0096】
例1.ウィルス精製及び定量化
ウィルスストックを、293細胞上で増殖し、そしてCsClグラジエント上で精製した(Hawkinsなど., 2001)。ウィルス粒子を定量化するために使用される方法は、Shabramなど. (1997) Human Gene Therapy 8:453-465の方法に基づかれているが、但し、アニオン交換TMAE FractogelがResource Qの代わりに使用された。手短には、1.25mlのカラムを、Fractogel EMD TMAE-650 (S) (カタログ番号116887-7 EM Science, Gibbstown, NJ 08027)により充填した。
【0097】
HPLC分離を、次の条件を用いて、Agilent HP1100 HPLC上で行った:緩衝液A=50mMのHEPES, PH7.5;緩衝液B=緩衝液A中、1.0MのNaCl;流速=1ml/分。緩衝液Aにおける30分以上のカラム平衡化の後、約109〜1011個のウィルス粒子を、10〜100μlの体積、続いて4カラム体積の緩衝液Aと共に負荷した。16カラム体積にわたって延長し、そして100%緩衝液Bにおいて終結する線状グラジエントを適用した。
【0098】
カラム溶出液を、A260及びA280nmでモニターし、ピーク面積を計算し、そして260:280nm比を決定した。ウィルスピークを、1.33に近いA260/A280比を有するそれらのピークとして同定した。ウィルス標準が、個々のサンプルシリーズと共に包含された。ml標準当たりのウィルス粒子の数を、Lehmberg など. (1999) J. Chrom. B, 732:411-423の方法を用いて決定した。使用されるウィルス濃度範囲においては、個々のサンプルのA260nmピーク面積は、サンプルにおけるウィルス粒子の数に直接的に比例した。個々の試験サンプルml当たりのウィルス粒子の数を、標準のA260nmウィルスピーク面積に対するサンプルのA260nmウィルスピーク面積の比により、標準におけるml当たりウィルス粒子の既知数を掛け算することにより計算した。
【0099】
2カラム体積の0.5NのNaOH、続いて2カラム体積の100%緩衝液A、3カラム体積の100%緩衝液B及び次に4カラム体積の100%緩衝液Aにより洗浄することにより、個々のサンプルグラジエントの後、カラムを再生した。
【0100】
例2.生物選択
サブグループAds B-Fを表すウィルス血清型をプールし、そして高い粒子/細胞の比で、2回、標的腫瘍細胞系の集密性以下の培養上で継代し、血清型間での組換えを生ぜしめた。次に、2回の高いウィルス粒子/細胞の感染の集密性以下の培養物からの上清液(1.0, 0.1, 0.01, 0.001ml)を用いて、標的腫瘍細胞系PC-3, HT-29, Panc-1 及び MDA-231の一連の過集密性T-75組織培養フラスコを感染せしめた。過集密性を達成するために、個々の細胞系を、接種の後24〜40時間、細胞系の集密性への到達を可能にする分割比率で接種し、そして細胞を、感染の前、接種後、合計72時間、増殖した。これを実施し、細胞の集密性を最大化し、ヒト固形腫瘍における増殖条件を模倣した。
【0101】
細胞培養上清液を、感染の3又は4日後、CPEのいずれの徴候も示さなかった、10倍希釈シリーズにおける最初のフラスコから収得した(HT-29及びPC-3の場合、これは、第2フラスコを収得し、すなわち感染の後3日目までにCPEが検出できた100倍以下の希釈溶液を収得するために、継代10〜20のために修飾された)。個々の収得物は、ウィルスの連続的継代のための出発材料として作用した。この方法を、ウィルスプールが20の生物選択性継代を達成するまで、反復した。
【0102】
個々の生物選択されたプールからの個々のウィルスを、標準の方法(Tollefson, A., Hermiston, T.W., and Wold, W.S.M.; "Preparation and Titration of CsCI-banded Adenovirus Stock" in Adenovirus Methods and Protocols. Humana Press, 1999, pp 1-10, W.S.M. Wold, Ed)を用いて、A549細胞に対する2回のプラーク精製により単離した。手短には、個々の標的腫瘍系に対する20回目の継代からの収得された上清液の希釈溶液を用いて、標準のプラークアッセイにおいてA549細胞を感染した。十分に個別化されたプラークを収得し、そして同じプラークアッセイ方法を用いて、それらの収得物から2回の個々のプラークを精製した。2回のプラーク精製からの十分に単離されたプラークは純粋であると思われ、感染された培養物を、それらの精製されたプラークを用いて調製し、そしてそれらの培養上清液の腫瘍崩壊能力を、記載のようにしてMTSアッセイにより決定した。
【0103】
例3.血清型の特徴化
ウィルスプール又は単離されたColoAd1アデノウィルスを含んで成る親アデノウィルス血清型を、Shabramなど. (1997) Human Gene Therapy 8:453:465に記載されるクロマトグラフィーに類似する(但し、アニオン交換体TMAE Fractogel 培地 (EM Industries, Gibbstown, NJ)が、例1に記載のようなResoupce Qの代わりに使用された)アニオン交換クロマトグラフィーを用いて同定した(図1に参照のこと)。
アデノウィルスタイプは、グラジエントの間、約60%緩衝液Bで溶出した。他の血清型(3, 4, 9, 11p, 16, 35及び40)は、Q Sepharose XL published by Blanche など. (2000) Gene Therapy 7:1055- 1062に基づく保持時間と一致する特徴的保持時間で、それぞれ溶出した。
【0104】
例4.細胞溶解アッセイ
ウィルス溶解能力を、MTTアッセイ(Shen et al., 2001 )の変法を用いることにより測定した。手短には、MTSアッセイ(Promega, CellTiter 96(商標) Aqueous Non-Radioactive Cell Proliferation Assay)を、可溶性水性ホルマザンへの細胞によるMTSの転換が時間を低め、そしてMTTアッセイに関連する揮発性有機溶媒の使用を排除するので、MTTアッセイの代わりに使用した。
【0105】
アッセイを行うために、細胞を、24時間以内に集密性単層を生成するここの腫瘍細胞系のために定義される密度で接種した。それらの密に接種される細胞を、試験ウィルスへの暴露の前、さらに2日間、増殖せしめた。腫瘍及び−次の正常細胞の両者の感染を、100の粒子/細胞比で開始し、そして0.005の粒子/細胞比で終結する一連の3倍希釈度で四重反復して実施した。感染された細胞を、37℃でインキュベートし、そしてMTSアッセイを、個々の一次細胞又は腫瘍細胞系のために示される時点で行った。Mock−感染される細胞は、負の対照として作用し、そして所定のアッセイについて100%生存点を確定した。
【0106】
例5.DNA配列決定
Ad11p (配列番号2)及び CoIoAdI (配列番号1)ゲノムDNAのDNA配列決定を次の通りに行った。手短には、ColoAd1及びAd11pからの精製されたアデノウィルスDNAを、制限エンドヌクレアーゼSau3A1により部分的に消化し、そしてプラスミドベクターpBluescript Il (Stratagene, La JoIIa, CA)中にショットガンクローン化した。陽性クローンを増殖し、そしてプライマーM13R 及び KS (Stratagene, La JoIIa, CA)を用いて配列決定した。個々の配列反応を、SequencherTM (Gene Codes Corp., Ann Arbor, Michigan)を用いて、切除し、編集し、そしてアセンブリーした。適用範囲におけるギャップを、注文のオリゴヌクレオチドプライマーにより増幅し、そして配列決定した。ウィルスゲノムの末端を、直接的に配列決定し、アデノウィルスDNAを除いた。すべてにおいて、個々のゲノムを、3×+適用範囲で配列決定し、そして2×適用範囲で431個の塩基を配列決定した。
【0107】
ColoAd1 E2B領域の起点を決定するために、2種のプライマー組を生成し、すなわち、1つのE2B pTP 遺伝子 (bp9115, 5'GGGAGTTTCGCGCGGACACGG3' (配列番号4) 及びbp 9350, 5' GCGCCGCCGCCGCGGAGAGGT3' (配列番号5))、及び1つのDNAポリメラーゼ遺伝子(bp 7520 5'CGAGAGCCCATTCGTGCAGGTGAG3' (配列番号6) 及びbp 7982, 5'GCTGCGACTACTGCGGCCGTCTGT3' (配列番号7))を生成し、そしてAdvantage 2 PCR キット (Clonetics, Walkersville, MD; Cat #K1910-Y)からの試薬を用いて、種々の血清型(Ad3, 4, 5, 9, 11p, 16及び40)からのDNAフラグメントをPCR単離するために使用し、そしてMJ Research (Watertown, MA)からのPTC−200サーモサイクラー上で行った。続いて、それらのフラグメントを、ABI3100遺伝子分析機として色素ターミネーター配列決定を用いて、Ad3のDNA配列と共に配列決定した。
【0108】
Ad3のE2B領域を、単離されたAd3 DNA及びオーバーラッピングプライマーを用いて配列決定した。
配列情報を、Vector NTI プログラム (Informatix)を用いて分析した。
【0109】
例6.組換えウィルスの構成
Ad11p (配列番号2) 及び CoIoAdI (配列番号1)のゲノムDNAを、CsClグラジエント−結合されたウィルス粒子から精製した。ゲノムDNAを、PacIにより消化し、ウィルスゲノム内を、それぞれわずか1度、切断した。Pac1切断は、ColoAd1ヌクレオチド配列(配列番号1)上の塩基18141で、及びAd11ヌクレオチド配列(配列番号2)上の塩基18140で生じる。消化されたDNAを、等量で混合し、そして16℃で一晩、T4 DNAリガーゼの存在下で連結した。この連結混合物により、Invitrogen, Carlsbad, CA (Cat #K2780-01)からのCaPO4トランスフェクションキットを用いて、A549細胞をトランスフェクトした。単離されたプラークを採取し、そして制限酵素消化及びPCR分析によりスクリーンし、4種のウィルス集団(Ad11p, ColoAd1, 左端のAd11p/右端のColoAd1(ColoAd1.1)及び左端のColoAd1/右端のAd11p(ColoAd1.2)を区別した。
【0110】
個々の集団のウィルス溶解能力を、例3に記載のようにして、いくつかの細胞系、例えばHT29及びHUVEC細胞において決定した。結果は、Ad11 p, CoIoAd1.2, CoIoAd1.1 , CoIoAd1として、最少能力〜最大能力の順序を示す(HT29細胞における結果については図7を参照のこと)。
【0111】
それぞれ、野生型Ad11p E3及び及びE4領域が回復されている十分な長さのColoAd1ゲノムを含むキメラアデノウィルスpCJ144及びpCJ146をまた構成した。それらの修飾を、BJ5183E. コリ中に、相同組換えにより導入した(Chartier など. (1996) J. Virol. 70:4805-4810)。それらのキメラアデノウィルスの両者は、ColoAd1又はColoAd1.2に比較して、HT29及びHUVEC細胞において低められた溶解能力を示した。
【0112】
例7.アデノウィルスのインビボ効能
典型的なヒト腫瘍異種移植片ヌードマウス実験においては、5×106個の細胞を、マウスの後部わき腹中に皮下注入した。腫瘍が100〜200μlのサイズに達する場合、それらに、ビークル(PBS)又は2×1010個の粒子でのウィルスを、5日間連続して注入する(合計1×1011個の粒子)。腫瘍のサイズの低下が、PBS対照及び追加の対照ウィルス(Ad5, ONYX-015)に対して示された。
【0113】
例8.一次ヒト組織外植片に対するCokoAd1選択性
手術の間に除去された、結腸直腸腫瘍及び隣接する正常組織からの組織検体を、培養培地に配置し、そして等数のColoAd1又はAd5ウィルスのいずれかにより感染せしめた。培養上清液を、感染後、24時間で集め、そして生成されるウィルス粒子の数を決定した。ColoAd1は、腫瘍組織に対してAd5よりも多くの入力粒子当たりのウィルス粒子を生成し、そしてそれは、正常組織に対しては、Ad5よりも少ない入力粒子当たりの粒子を生成した。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1A】図1Aは、TMAE HPLCカラム上でのAd保持時間プロフィールを示す。オリジナル開始ウィルスプールを生成するために使用された個々のAd血清型についての保持プロフィール。
【図1B】図1Bは、TMAE HPLCカラム上でのAd保持時間プロフィールを示す。それぞれ、HT-29, Panc-1 , MDA-231 ,及び PC-3細胞系に由来する継代20プールの保持プロフィール。
【図2】図2は、個々のウィルスプールの細胞溶解活性を示す。A) HT-29, B) MDA-231 , C) Panc-1 及び D) PC-3細胞を、100〜0.01のVP/細胞比で、それらのそれぞれのウィルスプールにより感染せしめた。MTSアッセイを、細胞系に依存して、感染後(示されるような)、異なった日で実施した。パネルにおける個々のデータ点は、四重反復して行われたアッセイを表し、そしてその結果は、平均+/−SDとして表される。パネルは、1つの代表的な実験を示し、そしてすべてのウィルスプールは、標的腫瘍細胞系に対して、少なくとも3度、独立してアッセイされた(図の説明:−●−Ad5;−□−初期ウィルスプール;−〔黒正方形〕−特定の細胞由来のプール、継代20)。
【0115】
【図3A】図3Aは、ヒト腫瘍細胞系に対するColoAd1及びAd5の細胞溶解活性を示す。MTSアッセイが、ヒト腫瘍細胞系の広いパネルに対して行われた。MTSアッセイが、細胞系に依存して、異なった日に行われた。個々のパネルは、少なくとも3度、反復された代表的実験である。パネルにおける個々のデータ点は、四重反復して行われたアッセイを表し、そして結果は、平均+/−SDとして表される(図の説明:−●−Ad5;−□−ColoAd1)。
【図3B】図3Bは、ヒト腫瘍細胞系に対するColoAd1及びAd5の細胞溶解活性を示す。MTSアッセイが、その可能性ある能力特異性を決定するためにヒト結腸癌細胞系のパネルに対して行われた。MTSアッセイが、細胞系に依存して、異なった日に行われた。個々のパネルは、少なくとも3度、反復された代表的実験である。パネルにおける個々のデータ点は、四重反復して行われたアッセイを表し、そして結果は、平均+/−SDとして表される(図の説明:−●−Ad5;−□−ColoAd1)。
【0116】
【図4】図4は、正常細胞のパネルに対するColoAd1及びAd5の細胞溶解活性を示す。HS-27, HUVEC及びSAEC細胞(それぞれ、一次線維芽細胞、内皮及び上皮細胞)を、ColoAd1及びAd5により、100〜0.01のVP/細胞比で感染せしめた。MTSアッセイが、細胞系に依存して、感染後、異なった日に行われ、そして個々のパネルは、少なくとも3度、反復された代表的実験である。パネルにおける個々のデータ点は、四重反復して行われたアッセイを表し、そして結果は、平均+/−SDとして表される(図の説明:−●−Ad5;−□−ColoAd1)。
【0117】
【図5】図5は、一次正常内皮細胞(HUVEC)及び結腸腫瘍細胞系(HT-29)に対する、CoIoAdI , Ad5 及び ONYX-015の細胞溶解活性を示す。個々のパネルは、少なくとも3度、反復された代表的実験である。パネルにおける個々のデータ点は、四重反復して行われたアッセイを表し、そして結果は、平均+/−SDとして表される(図の説明:−●−Ad5;−□−ColoAd1;−〔黒正方形〕−Onyx-015)。
【0118】
【図6】図6は、正常上皮細胞(SAEC)及びヒト結腸腫瘍細胞系(HT-29)に対する、CoIoAd1 , Ad 11 p 及びAd5の細胞溶解活性を示す。個々のパネルは、少なくとも3度、反復された代表的実験である。パネルにおける個々のデータ点は、四重反復して行われたアッセイを表し、そして結果は、平均+/−SDとして表される(図の説明:−●−Ad5;−□−Ad 11 p;−〔黒正方形〕−CoIoAd1)。
【図7】図7は、組換えウィルスの細胞溶解活性を示す。4種のウィルス集団を表す組換えウィルス(Adp11, ColoAd1, 左端Ad11p/右端ColoAd1(ColoAd1.1)及び左端ColoAd1/右端Ad11p(ColoAd1.2)が、例6に記載のようにして構成された。HT29細胞における個々の集団の細胞溶解活性が、前記のようにして決定された(図の説明:−●−Ad5;−□−Ad11p;−〔黒正方形〕−ColoAd1;−△−ColoAd1.1;−〔黒三角〕−ColoAd1.2)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
E2B領域を含んで成るゲノムを有する組換えキメラアデノウィルス、又はその変異体又は誘導体であって、
前記E2B領域は、第1アデノウィルス血清型に由来する核酸配列、及び第2アデノウィルス血清型に由来する核酸配列を含んで成り;
前記第1及び第2血清型は、アデノウィルスサブグループB, C, D, E又はFからそれぞれ選択され、そしてお互い異なり;そして
前記キメラアデノウィルスが腫瘍崩壊性であり、そして腫瘍細胞に対して増強された治療指数を示す;
ことを特徴とするアデノウィルス。
【請求項2】
ファイバー、ヘキソン及びペントンタンパク質をコードする領域をさらに含んで成り、前記アデノウィルスのファイバー(fiber)、ヘキソン(hexon)及びペントン(penton)タンパク質をコードする核酸が同じアデノウィルス血清型からである請求項1記載のアデノウィルス。
【請求項3】
修飾されたE3領域をさらに含んで成る請求項1記載のアデノウィルス。
【請求項4】
修飾されたE4領域をさらに含んで成る請求項1記載のアデノウィルス。
【請求項5】
前記腫瘍細胞が、結腸、乳房、膵臓、肺、前立腺、卵巣又は造血腫瘍細胞である請求項1記載のアデノウィルス。
【請求項6】
前記腫瘍細胞が、結腸腫瘍細胞である請求項5記載のアデノウィルス。
【請求項7】
前記アデノウィルスのE2B領域のヌクレオチド配列が、配列番号3又はその一部を含んで成る請求項1記載のアデノウィルス。
【請求項8】
前記アデノウィルスのヌクレオチド配列が、配列番号1を含んで成る請求項1記載のアデノウィルス。
【請求項9】
E2B領域を含んで成るゲノムを有する組換えキメラアデノウィルス、又はその変異体又は誘導体であって、
前記E2B領域は、第1アデノウィルス血清型に由来する核酸配列、及び第2アデノウィルス血清型に由来する核酸配列を含んで成り;
前記第1及び第2血清型は、アデノウィルスサブグループB, C, D, E又はFからそれぞれ選択され、そしてお互い異なり;
前記キメラアデノウィルスが腫瘍崩壊性であり、そして腫瘍細胞に対して増強された治療指数を示し;そして
前記キメラアデノウィルスが、E1, E2, E3又はE4から成る群から選択されたアデノウィルス複製に関連するタンパク質をコードする1又は複数のアデノウィルス領域の欠失を通して複製欠失にされている;
ことを特徴とするアデノウィルス。
【請求項10】
前記E1及びE3領域が欠失されている請求項9記載の複製欠失アデノウィルス。
【請求項11】
前記E4領域の欠失をさらに含んで成る請求項10記載の複製欠失アデノウィルス。
【請求項12】
前記アデノウィルスにより感染された細胞内に発現される異種遺伝子をさらに含んで成る請求項1又は9記載のアデノウィルス。
【請求項13】
前記異種遺伝子が、チミジンキナーゼである請求項12記載のアデノウィルス。
【請求項14】
前記異種遺伝子が、サイトカイン及びケモカイン、抗体、プロドラッグ転換酵素、及び免疫調節タンパク質から成る群から選択された治療タンパク質をコードする請求項12記載のアデノウィルス。
【請求項15】
請求項1記載のアデノウィルスにより癌細胞を感染せしめることを含んで成る、癌細胞の増殖の阻害方法。
【請求項16】
前記癌細胞が、結腸癌細胞である請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記アデノウィルスのヌクレオチド配列が、配列番号1を含んで成る請求項16記載の方法。
【請求項18】
請求項14記載のアデノウィルスにより細胞を感染せしめることを含んで成る、治療タンパク質を細胞に供給するための方法。
【請求項19】
請求項1記載のアデノウィルスの単離方法であって、
a)アデノウィルスサブグループB-Fを表すアデノウィルス血清型をプールし、それにより、アデノウィルス混合物を作製し;
b)段階a)からのプールされたアデノウィルス混合物を、腫瘍細胞の活動的に増殖する培養物上に、血清型間の組換えを促進するのに十分に高いが、しかし早熟細胞死を生成するほどは高くない、粒子/細胞の比率で通し;
c)段階b)からの上清液を収得し;
d)段階c)において収得された上清液により、腫瘍細胞の休止培養物を感染し;
e)CPEの徴候の前、段階d)からの細胞培養物上清液を収得し;
f)段階e)において収得された上清液により、腫瘍細胞の休止培養物を感染し;そして
g)段階f)において収得された上清液から請求項1記載のウィルスを、プラーク精製により単離する;
ことを含んで成る方法。
【請求項20】
段階b)が、段階c)における上清液を収得する前に2回実施される請求項19記載の方法。
【請求項21】
段階e)及びf)が、段階g)の前に20回まで反復される請求項19記載の方法。
【請求項22】
2回目のプラーク精製が、段階g)に続いて行われる請求項19記載の方法。
【請求項23】
前記腫瘍細胞が、結腸、乳房、膵臓、肺、前立腺、卵巣又は造血腫瘍細胞である請求項19記載の方法。
【請求項24】
a)アデノウィルスサブグループB-Fを表すアデノウィルス血清型をプールし、それにより、アデノウィルス混合物を作製し;
b)段階a)からのプールされたアデノウィルス混合物を、腫瘍細胞の活動的に増殖する培養物上に、血清型間の組換えを促進するのに十分に高いが、しかし早熟細胞死を生成するほどは高くない、粒子/細胞の比率で通し;
c)段階b)からの上清液を収得し;
d)段階c)において収得された上清液により、腫瘍細胞の休止培養物を感染し;
e)CPEの徴候の前、段階d)からの細胞培養物上清液を収得し;
f)段階e)において収得された上清液により、腫瘍細胞の休止培養物を感染し;そして
g)段階f)において収得された上清液から請求項1記載のウィルスを、プラーク精製により単離する;
ことを含んで成る方法により生成される、E2B領域を含んで成るゲノムを有する組換えキメラアデノウィルス、又はその変異体又は誘導体であって、ここで
前記E2B領域は、第1アデノウィルス血清型に由来する核酸配列、及び第2アデノウィルス血清型に由来する核酸配列を含んで成り;
前記第1及び第2血清型は、アデノウィルスサブグループB, C, D, E又はFからそれぞれ選択され、そしてお互い異なり;そして
前記キメラアデノウィルスは腫瘍崩壊性であり、そして腫瘍細胞に対して増強された治療指数を示す;
ことを特徴とするアデノウィルス。
【請求項25】
段階b)が、段階c)における上清液を収得する前に2回実施される請求項24記載の方法。
【請求項26】
段階e)及びf)が、段階g)の前に20回まで反復される請求項24記載の方法。
【請求項27】
2回目のプラーク精製が、段階g)に続いて行われる請求項24記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−500051(P2008−500051A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515285(P2007−515285)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2005/018301
【国際公開番号】WO2005/118825
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(300049958)バイエル・シエーリング・ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】