説明

癌治療

【課題】本発明は癌治療を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、一般に癌治療および特に、活性な薬剤としてまたは、化学保護剤および/または放射線保護剤として低分子量抗酸化剤(たとえばスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の擬態)を使用して、癌を予防または治療する方法に関する。また、本発明は、このような方法のための化合物および適切な組成物に関する。本発明は、加えて、メチン(ieメソ)置換されたポルフィリンおよびテトラピロールを含む、このような方法に使用するために適した薬剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、癌治療に関し、特に、活性な薬剤として、または化学−および/もしくは放射性−保護剤として低分子量抗酸化剤(たとえば、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の擬態)を使用し、癌を予防または治療する方法に関する。また、本発明は、このような方法における使用に適した化合物および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
オキシダントは、全ての細胞の正常な代謝の一部として産生されるだけでなく、多くの疾患プロセスの発病の重要な成分である。活性酸素種は、たとえば肺、心血管系、胃腸系、中枢神経系および骨格筋の疾患の発病における重要なエレメントである。酸素フリーラジカルも、一酸化窒素(NO-)の効果を調整する役割を演ずる。この意味で、これらは、血管障害、炎症性疾患および加齢プロセスの発病に貢献する。
【0003】
正常な細胞および器官の機能を維持するために、オキシダントに対して防御的な酵素のきわどいバランスが必要とされる。スーパーオキシドジスムターゼ(SODs)は、細胞内および細胞外におけるO2-からH2O2とO2への変換に触媒作用を及ぼす金属酵素のファミリーであり、スーパーオキシドラジカルの有害効果に対する防御の第一線にある。哺乳類は、3つの異なったSODsを産生する。1つは、全ての細胞のサイトゾルにおいて見られる二量体の銅-および亜鉛-含有酵素(CuZnSOD)である。第2は、ミトコンドリア内に見られる四量体のマンガン-含有SOD(Mn SOD)であり、第3は、細胞外液において見られる四量体の、グリコシル化された銅および亜鉛-含有酵素(EC-SOD)であり、細胞間マトリックスに結合する。カタラーゼおよびグルタチオンペルオキシダーゼを含むその他の重要ないくつかの抗酸化酵素は、細胞内に存在することが知られている。細胞外液および細胞間マトリックスは、これらの酵素を少量だけ含むが、アスコルビン酸、尿酸およびα−トコフェロールなどの、ラジカルスカベンジャーおよび脂質過酸化阻害剤を含むその他の細胞外の抗酸化剤も、既知である(Halliwellet al, Arch. Biochem. Biophys. 280: 1 (1990))。
【0004】
本発明は、SODの低分子量擬態の使用を含む癌の予防および治療の方法を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
本発明は、細胞内または細胞外のオキシダントのレベルを調整する方法に関する。一つの態様において、本発明は、SODの擬態を使用して、遺伝子治療、免疫療法、薬物療法および/または放射線療法と付随した毒性作用から癌患者の正常組織を保護する方法に関する。さらなる態様において、本発明は、低分子量抗酸化剤を使用して、このような治療を必要とする患者の癌を予防または治療する方法に関する。本発明は、加えて、メチン(ieメソ)置換されたポルフィリンおよびテトラピロールを含む、このような方法に使用するために適した薬剤に関する。したがって、本発明は、以下をも提供する。
(1)哺乳類において癌を治療する方法であって、前記治療に効果を及ぼすのに十分な活性酸素種の酵素スカベンジャーの擬態の量を、その必要のある哺乳類に投与することを含む方法。
(2)前記擬態がスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼまたはペルオキシダーゼの擬態であることを特徴とする、項目1に記載の方法。
(3)前記擬態がSODの擬態であることを特徴とする、項目2に記載の方法。
(4)前記擬態がメチン置換されたポルフィンもしくメチン置換されたテトラピロールまたはその薬学的に許容される塩であることを特徴とする、項目1に記載の方法。
(5)前記擬態が金属に結合されていることを特徴とする、項目1に記載の方法。
(6)前記金属がマンガン、鉄、コバルト、銅、ニッケルおよび亜鉛からなる群より選択されることを特徴とする、項目5に記載の方法。
(7)前記金属がマンガンであることを特徴とする、項目6に記載の方法。
(8)前記擬態がマンガンに結合したメチン置換されたポルフィンであることを特徴とする、項目7に記載の方法。
(9)前記擬態が10110、10111、10112、10113、10123、10143、10150、10151、10153、10158および10201であることを特徴とする、項目8に記載の方法。
(10)項目2に記載の方法であって、前記擬態は、下式またはその薬学的に許容される塩であることを特徴とする方法、
【化1】

式中、
R1およびR3は、同じであり、かつ:
【化2】

であり、
R2およびR4は、同じであり、かつ:
【化3】

であり、
Yは、ハロゲンまたは-CO2Xであり、並びに、
Xは、同じかまたは異なっており、かつアルキルであり、およびそれぞれのR5は、同じかまたは異なっており、かつHまたはアルキルであり、かつ任意には、マンガン、鉄、コバルト、銅、ニッケルおよび亜鉛からなる群より選択される金属と複合体が形成される。
(11)哺乳類の正常組織を、遺伝子治療、免疫療法、放射線療法または化学療法に関連した毒性効果から保護する方法であって、前記治療に効果を及ぼすのに十分な活性酸素種の酵素スカベンジャーの擬態の量を、その必要のある哺乳類に投与することを含む方法。(12)前記擬態がスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼまたはペルオキシダーゼの擬態であることを特徴とする、項目11に記載の方法。
(13)前記擬態が、SODの擬態であることを特徴とする、項目12に記載の方法。
(14)前記擬態がメチン置換されたポルフィンもしくはメチン置換されたテトラピロールまたはその薬学的に許容される塩であることを特徴とする、項目11に記載の方法。
(15)前記擬態が金属に結合されていることを特徴とする、項目11に記載の方法。
(16)前記金属がマンガン、鉄、コバルト、銅、ニッケルおよび亜鉛からなる群より選択されることを特徴とする、項目15に記載の方法。
(17)前記金属がマンガンであることを特徴とする、項目16に記載の方法。
(18)前記擬態がマンガンに結合したメチン置換されたポルフィンであることを特徴とする、項目17に記載の方法。
(19)前記擬態が、10110、10111、10112、10113、10123、10143、10150、10151、10153、10158および10201であることを特徴とする、項目18記載の方法。
(20)哺乳類において癌を予防または癌の再発を予防する方法であって、前記治療に効果を及ぼすのに十分な活性酸素種の酵素スカベンジャーの擬態の量を、その必要のある哺乳類に投与することを含む方法。
(21)前記擬態がスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼまたはペルオキシダーゼの擬態性であることを特徴とする、項目20に記載の方法。
(22)前記擬態がSODの擬態であることを特徴とする、項目21に記載の方法。
(23)前記擬態がメチン置換されたポルフィンもしくはメチン置換されたテトラピロールまたはその薬学的に許容される塩であることを特徴とする、項目20に記載の方法。
(24)前記擬態が、金属に結合されていることを特徴とする、項目20に記載の方法。
(25)前記金属が、マンガン、鉄、コバルト、銅、ニッケルおよび亜鉛からなる群より選択されることを特徴とする、項目24に記載の方法。
(26)前記金属が、マンガンであることを特徴とする、項目25に記載の方法。
(27)前記擬態が、マンガンに結合したメチン置換されたポルフィンであることを、項目26に記載の方法。
(28)前記擬態が、10110、10111、10112、10113、10123、10143、10150、10151、10153、10158および10201であることを特徴とする、項目27に記載の方法。
【0006】
本発明の目的および利点は、以下の記載から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1A】図1A-1Hは、本発明における使用に適した化合物のいくつかの一般的かつ特定の定義の構造を示す。
【図1B】図1A-1Hは、本発明における使用に適した化合物のいくつかの一般的かつ定の定義の構造を示す。
【図1C】図1A-1Hは、本発明における使用に適した化合物のいくつかの一般的かつ特定の定義の構造を示す。図1Cに関して、本発明の擬態が製剤Iもしくは製剤IIまたはその二量体形態であることもでき、二量体形態の例は、図1Dに示す。
【図1D】図1A-1Hは、本発明における使用に適した化合物のいくつかの一般的かつ特定の定義の構造を示す。図1Cに関して、本発明の擬態が製剤Iもしくは製剤IIまたはその二量体形態であることもでき、二量体形態の例は、図1Dに示す。
【図1E】図1A-1Hは、本発明における使用に適した化合物のいくつかの一般的かつ特定の定義の構造を示す。
【図1F】図1A-1Hは、本発明における使用に適した化合物のいくつかの一般的かつ特定の定義の構造を示す。
【図1G】図1A-1Hは、本発明における使用に適した化合物のいくつかの一般的かつ特定の定義の構造を示す。
【図1H−1】図1Hに関して、表された化合物のいくつかのSOD活性を表1に示す(シトクロムC法によって測定されたもの)。
【表1】

【図1H−2】図1Hに関して、表された化合物のいくつかのSOD活性を表1に示す(シトクロムC法によって測定されたもの)。
【図1H−3】図1Hに関して、表された化合物のいくつかのSOD活性を表1に示す(シトクロムC法によって測定されたもの)。
【図2A】図2A-2C。(図2A)B16メラノーマ腫瘍をSOD擬態で処理した。擬態は、6mg/kgの用量の10113であり、腹膜内に5日間qdを与えた。20日における腫瘍の割合および腫瘍増殖が5倍になるための日数により測定すると、3つの治療の全てが、対照と比べて腫瘍増殖を阻害した(p<0.05)が、互いに異なるというわけではなかった。
【図2B】(図2B)乳腺癌をSOD擬態で処理した。10113は、6mg/kg/dayの用量で腹膜内に16日間与えた。放射線療法(RT)(21Gy)は、8または9日間与えた。20日における腫瘍の割合および腫瘍増殖が5倍になるための日数により測定すると、3つの治療の全てが、対照と比べて腫瘍増殖を阻害した(p<0.05)が、互いに異なるというわけではなかった。
【図2C】(図2C)皮下に植設されたR3230AC乳腺癌を有するフィッシャー344ラットには、放射線治療(21Gy、1日)、AEOL 10113(6mg/kg/日、IP1〜20日)、放射線併用、およびAEOL10113(上記のとおり)、または対照治療を受けさせた。20日における腫瘍の割合および腫瘍増殖が5倍になるための日数により測定すると、3つの治療の全てが、対照と比べて腫瘍増殖を阻害した(p<0.05)が、互いに異なるというわけではなかった。
【図3】図3。6mg/kgの3つの異なった化合物の腹腔内注射後のフィッシャー344ラットにおける、腫瘍成長遅滞アッセイを使用した腫瘍成長阻害。
【図4】図4。動物は、Z-チャンバーに2.5mil./mlのR3230乳腺癌細胞を移植する24時間前に、種々のSOD擬態(6mg/kgのi.p.)で前処理した。腫瘍発生の有意な(p<0.01)阻害は、10113(マンガン(III)テトラキス(N-エチルピリジニウム-2-イル)ポルフィリン)および10150(マンガン(III)テトラキス(N-ジエチルイミダゾリウム-2,5-イル)ポルフィリン)化合物で処理した動物において観察された。
【図5】図5。抗血管形成:動物は、Z-チャンバーに2.5mil./mlのR3230乳腺癌細胞を移植する24時間前に、種々のSOD擬態(6mg/kgのi.p.)で前処理した。腫瘍脈管形成の有意な阻害は、10113化合物で処理した動物において観察された。
【図6】図6は、触媒作用的抗酸化剤(マンガン(III)テトラキス(4-安息香酸)ポルフィリン(MnTBAP))の化学構造を示す。
【図7】図7は、単一の10mg/kgip用量を与えられたマウスにおけるMnTBAPの薬物動態学的なプロフィールを示す。血清(黒四角)および肺組織(白四角)のMnTBAPレベルは、薬物療法後0.3、0.5、1、2、4、6、および24時間に測定した。結果は、3匹のマウスの平均+SEMである。データは、曲線適合データ推定2-区画薬物速度論モデルから算出した。MnTBAPは、マウスの血流および肺中で迅速に平衡化された。
【図8】図8は、MnTBAPがブレオマイシンで誘導されるマウスの体重減少を減弱することを示す。対照(1ml/kgリン酸緩衝食塩水、ip、毎日2回;白四角)およびMnTBAP(5mg/kg、ip毎日2回;白三角)で処理されたマウスは、研究期間の全体にわたって同じ重量変化を有した。ブレオマイシン(黒三角)処理されたマウスは、対照マウスよりも体重減少が有意に多く、これは、ブレオマイシンとMnTBAP(黒ダイアモンド)で処理したマウスにおいて、処理の5日後に減弱され、かつ研究の終わりまで継続した。結果は、5匹のマウスの平均+SEMである。
【図9A】9A図および9Bは、MnTBAPがブレオマイシンで誘導される気道狭搾およびコラーゲン蓄積を減弱することを示す。図9A。気道機能不全の非観血的な指標として、全身体圧のプレチスモグラフィを使用し、増強された息つぎ(PENH)を使用した。対照(リン酸緩衝食塩水、1ml/kg、ip、毎日2回;白バー)およびMnTBAP(5mg/kg、ip、毎日2回;ハッチバー)で処理したマウスは、治療の14日後、同様のPENK値を有した。ブレオマイシン(黒バー)で処理されたマウスでは、対照マウスと比較して有意に増加したPENH値を有し、これは、ブレオマイシンとMnTBAP(クロスハッチバー)で処理したマウスで減弱された。
【図9B】9A図および9Bは、MnTBAPがブレオマイシンで誘導される気道狭搾およびコラーゲン蓄積を減弱することを示す。図9B。肺線維症は、コラーゲン蓄積の指標としてヒドロキシプロリンを使用して生化学的に評価した。対照およびMnTBAPで処理されたマウスは、治療の14日後、同じヒドロキシプロリン値を有した。ブレオマイシン処理されたマウスでは、対照マウスと比較して有意に増加したPENH値を有し、これは、ブレオマイシンとMnTBAPで処理されたマウスで減弱された。結果は、5匹のマウスの平均+SEMである。種々の文字を伴うバーは、お互いに有意に異なっているp<0.05。
【図10】図10A-lOHは、MnTBAPがブレオマイシンで誘導される肺の外傷を減弱することを示す。マウスは、リン酸緩衝食塩水(PBS、1ml/kg、ip、14日間毎日2回)、MnTBAP(5mg/kg、ip、14日間毎日2回)、ブレオマイシン(3.5U/kg、it、1回)、またはブレオマイシンとMnTBAPで処理して、14日後に屠殺した。肺は、中性の緩衝化された10%のホルマリン中で膨張固定した。5-ミクロン厚の切片をヘマトキシリン‐エオジンで染色して顕微鏡によって調査した。図10A。PBS/PBS処理したマウス由来の代表的な肺切片。図10B。PBS/MnTBAP処理したマウス由来の代表的な肺切片。図10C。ブレオマイシン/PBS処理したマウス由来の代表的な肺切片。図10D。ブレオマイシン/MnTBAP処理したマウス由来の代表的な肺切片。バーは、100ミクロンを表す。5-ミクロン厚の切片をマッソントリクロームで染色して顕微鏡によって調査した。図10E。ブレオマイシン/PBS処理したマウス由来の代表的な肺切片。図10F。ブレオマイシン/MnTBAP処理したマウス由来の代表的な肺切片。図10G。PBS/PBS処理したマウス由来の代表的な肺切片。図10H。PBS/MnTBAP処理したマウス由来の代表的な肺切片。バーは、20ミクロンを表す。
【図11】図11。MnTBAPは、組織病理学的な解析によって決定したとおり、ブレオマイシンで誘導される肺外傷を減弱する。マウスは、ブレオマイシン(3.5U/kg、it)またはリン酸緩衝食塩水(PBS、50μl)のいずれかで処理し、次いでMnTBAP(5mglkg、ip、毎日2回)またはPBS(1ml/kg、ip、毎日2回)を14日間与えた。肺は、中性の緩衝化された10%のホルマリン中で膨張固定した。5-ミクロン厚の切片をヘマトキシリン‐エオジンまたはマッソントリクロームで染色して顕微鏡によって調査した。スライドは、X10対物を使用した顕微鏡において、全体にわたって走査した。それぞれの連続した視野では、それぞれ間質性線維症の重篤さを評価してスコアを0〜8の間に割り当てた。視野からのスコアを平均して、それぞれの動物について病理スコアを得た。星印を伴うバーは、PBS/PBS群とは統計学的に異なっている(p<0.05)。短剣符は、MnTBAPおよびブレオマイシン間の有意な(p<0.05)相互作用を示す。
【図12】図12。MnTE-2-PyP(AEOL10113)(LOCFデータセット)を伴ったおよび伴わない28Gyの右半胸照射後、対、対照(照射なし)の6月にわたる呼吸速度の変化。
【図13A】13A図および13B。(図13A)照射後肺線維症の評価。28Gyの右半胸照射の6月後の湿性肺のグラムあたりの右上肺葉のヒドロキシプロリン含量。
【図13B】(図13B)組織病理学由来の線維症スコア。結果は、5匹のラットの平均±SEMである。
【図14】図14。28Gyの右半胸照射後の、TGF-βの血漿レベルの相対変化。
【図15】図15。放射線誘導される肺外傷の体重に対する効果。
【図16】図16。A549細胞は、24穴プレートにおいて完全培地中で50%コンフルエントに培養した。次いで、細胞を上記濃度の薬剤および3H-チミジン(DNA合成を評価するため)と24時間インキューベートした。PBSで3回洗浄後、細胞をホモジナイズして、放射活性を計数した。4pMMnTE-2-PyPにおいて、3H-チミジンの取込みの50%の阻害があった。
【図17A】図17A〜17E。ヒト腫瘍細胞(A549)における金属ポルフィリンの効果。
【図17B】ヒト腫瘍細胞(A549)における金属ポルフィリンの効果。
【図17C】ヒト腫瘍細胞(A549)における金属ポルフィリンの効果。
【図17D】ヒト腫瘍細胞(A549)における金属ポルフィリンの効果。
【図17E】ヒト腫瘍細胞(A549)における金属ポルフィリンの効果。
【図18】図18。時間を通じた粘膜炎スコアの分布。
【図19】図19。粘膜炎スコア≧3の日の割合に対するSOD擬態の効果。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明の詳細な記載
本発明は、活性な薬剤として、または化学−および/もしくは放射性−保護剤として、低分子量抗酸化剤(たとえば、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の擬態)を使用して癌を予防または治療する方法に関する。また、本発明は、さらに、このような方法における使用に適した製剤に関する。
【0009】
本発明の方法における使用に適した活性酸素種スカベンジャーの擬態は、メチン(すなわち、メソ)置換されたポルフィンおよび置換されたテトラピロール、または薬学的に許容されるその塩(たとえば、塩化物塩または臭化物塩)を含む。誘導体を含むそのをした。本発明は、金属フリーおよび金属結合のポルフィンおよびテトラピロールを含む。金属結合ポルフィンおよびテトラピロールの場合、マンガン酸誘導体が好ましいが、鉄(IIもしくはIII)、銅(IもしくはII)、コバルト(IIもしくはIII)またはニッケル(IもしくはII)などのマンガン以外の金属も、使用することができる。選択される金属は、種々の価電子状態を有することができ、たとえば、マンガンII、III、IVまたはVを使用することができることが認識される。また、亜鉛(II)は、これが原子価変化を受けず、したがって直接スーパーオキサイドを除去しないであろう場合であっても、使用することができる。金属の選択は、除去される酸素種の選択性に影響を及ぼし得る。このような擬態の例は、図1に示されており、USP5,994,339、USP 6,127,356およびUSP 6,103,714において、並びに米国出願番号09/184,982および09/880,124、09/296,615、09/490,537および09/880,075(60/211、857)に記載されている(これらの特許および出願は、参照によってそれらの全部が援用される)。合成の適切な方法は、これらの特許および出願に記載されている。
【0010】
上記確認した特許および出願に記載された擬態に加えて、マンガンサレン化合物も使用することができる(Baudry et al, Biochem. Biophys.Res. Commun. 192: 964 (1993))。Rileyら(Inorg. Chem. 35 : 5213 (1996))Deuneら(PlasticReconstr. Surg. 98: 712 (1996))、Lowら(Eur. J. Pharmacol. 304: 81 (1996))およびWeissら(J.Biol. Chem. 271: 26149 (1996))に記載されたものなどのマンガン大環状化合物を使用することもできる(USP 6,084,093、5,874,421、5,637,578、5,610,293および6,087,493も参照されたい)。
【0011】
本発明による治療の影響を受けやすい癌のタイプは、白血病、骨髄腫、並びにメラノーマ、リンパ腫、肉腫、および肺、胸部、前立腺および大腸の腫瘍などの固形の腫瘍を含む。
【0012】
また、癌治療に有用なことに加えて、本願明細書に記載された化合物、たとえば、扁平上皮化生、首再形成(displasia)および大腸ポリポーシスなどの新生物発生前の状態と診断された個体に、化学的予防剤として使用することもできる。さらに、本化合物は、腫瘍発生の可能性を減少するために、癌にかかりやすいか、または寛解傾向の個体に、投与することもできる。
本発明の化合物は、単独で、またはブレオマイシン、シスプラチン、アドリアマイシンおよびカンプトセシン(camptothicen)などの、その他の化学療法剤と組み合わせて使用することもできる。併用療法に使用される場合、本化合物は、化学療法の抗癌効果を増加し、並びにブレオマイシン、シスプラチンおよびアドリアマイシンなどの薬剤によって産生されるフリーラジカルから生じる毒性を、全部あるいは部分的に防ぐことができる。また、本化合物は、放射線療法と併用して使用することができ、かつ放射線療法の効率を増加することができ、正常組織を放射線療法の効果から保護するために役立つ。擬態は、さらに熱治療法、遺伝子治療、免疫療法または上記抗腫瘍治療のいずれの組み合わせと共に使用することもでき、フリーラジカル生成により生じる損傷(たとえば、炎症)を防ぐことにより、抗癌効果および減少した毒性を正常組織において増加することを介して中毒性/治療可能比を改善することができる。肺組織、粘膜、胃腸管組織、白血球、毛嚢、皮膚および骨髄を含む多種多様な正常組織は、本擬態の使用を通して保護することができる。
【0013】
上記した、金属結合型および金属遊離型の化合物は、本方法に使用するための適切な医薬組成物中に処方されることができる。このような組成物は、薬学的に許容されるキャリア、賦形剤または希釈液と共に活性な薬剤(擬態性)を含む。組成物は、用量単位形態(たとえばタブレット、カプセルまたは坐薬)で存在することもできる。また、組成物は、注射(たとえば、皮下、i.p.またはi.v.)または噴霧療法に適した無菌液の形態であることもできる。組成物は、また、眼の使用に適した形態であることもできる。また、本発明は、局所的投与のために処方される組成物を含み、このような組成物は、たとえばローション、クリーム、ジェルまたは軟膏の形態である。組成物に含まれる活性な薬剤の濃度は、薬剤の性質、薬剤投与計画および得ようとする結果に基づいて選択すこともできる。また、化合物は、リソソームにカプセル化され、これにより、ターゲットされて腫瘍へのデリバリーを強化することもできる。
【0014】
投与される本発明の組成物の用量は、過度の実験なしで決定することができ、活性な薬剤の性質を含む種々の因子(金属結合または金属フリーであるかどうかを含む)、投与の経路、患者および達成しようとした結果に依存するであろう。点滴または局所的に投与される擬態の適切な用量は、約0.01〜50mg/kg/日、好ましくは0.1〜10mg/kg/日、より好ましくは、0.1〜6mg/kg/日の範囲であると予想することができる。エアロゾル投与については、用量は、0.001〜5.0mg/kg/日、好ましくは0.01〜1mg/kg/日の範囲であると予想することができる。適切な用量は、たとえば化合物により、および得ようとする結果により、変化するであろう。
【実施例】
【0015】
本発明のある側面は、以下の限定されない実施例により詳細に記載されるであろう。
【実施例1】
【0016】
腫瘍増殖に対するSOD擬態の効果および放射線療法に対する反応
呼吸器機能障害を引き起こす急性肺炎(pneuxnonitis)および慢性線維症は、胸の照射(TRT)の用量を制限する毒性がある。この状況は、肺の癌腫を有する患者(〜160000新規症例/年)に対して至適用量の照射を送達する能力を極度に制限する。肺非小細胞癌(NSCLC)のための標準的な放射線療法は、典型的には66〜70Gyからなる。しかし、この用量では、腫瘍制御率が非常に低い。臨床的な課題は、疾患治療のために局所制御が絶対に必要なことである。より高い用量では、より良い局所制御率を生じるが、しばしば合併症の増加を伴った。また、胸照射による肺の毒性は:ホジキン病および食道癌の集学療法、乳癌における高用量化学/ABMT(自家骨髄移植)後の胸壁照射、並びに全身照射を伴う骨髄移植、を含むその他の設定における有意な課題でもある。
【0017】
放射線で誘導された正常組織の外傷を防ぎ、および/または改善するであろう方法の開発が必要である。これまで認識された多くの放射線防護剤の中で、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)は、特に興味深い。SODは、齧歯類における肺の放射線障害の重篤さを緩和することが示された。しかし、この天然に存在する酵素の臨床応用は、短い血漿半減期のために制限される。本研究は、放射線で誘導される正常組織の外傷の程度の緩和の防止に、SOD擬態がより有効かどうかを決定するために行われた。
【0018】
2つの腫瘍モデルにおける腫瘍増殖および放射線反応に対するMnTE-2-PyP(マンガン(III)テトラキス(N-エチルピリジニウム-2-イル)ポルフィリン)の効果を試験した。ヒトメラノーマ腫瘍(B16)を有するマウスにおける腫瘍増殖の有意な阻害は、i.pに与えられた6mg/kgのSOD擬態を受けた動物において観察された。対照群の動物における腫瘍倍加時間は、2日であったが、治療を受けた動物における腫瘍倍加時間は、4日に増加した。放射線で誘導される正常組織外傷の修飾因子に由来する治療的な利点は、放射線防護剤では腫瘍を保護しない場合にも達成されることのみである。腫瘍増殖および放射線反応に対するSOD擬態(MnTE-2-PyP)の効果を、ラットモデルにおいて試験した。SOD擬態を受けたラット群において、腫瘍増殖(>50%)のすばらしい阻害が観察された。放射線療法(21Gy)の後、有意な腫瘍反応が観察されたことは、SOD擬態薬剤が腫瘍を照射から保護しないことを示唆している。擬態を受けたラットが、照射後の腫瘍再増殖の有意な阻害を有したことは、明らかである。
【0019】
結果は、図2Aおよび2Bに示した。
【0020】
同様の実験(図2C)では、AEL 10113処理が腫瘍増殖を制限し、腫瘍増殖に対する放射線の効果を緩和しなかったことを示した。
【実施例2】
【0021】
腫瘍増殖および血管形成に対する擬態の効果
実験の詳細
動物
実験は、雌Fisher-344ラットで行った。全ての動物は、ケージあたり4匹収容して、同一の標準的な実験室条件下で、この間、食物および水を適宜提供して維持した。150〜170gの重さのラットには、腫瘍またはチャンバーの移植前にケタミン(67.5mg/kg)およびキシラジン(4.5mg/kg)の腹腔内投与によって麻酔をかけた。
【0022】
腫瘍
R3230 AC乳腺癌を右後肢に移植した。腫瘍が直径0.8〜1cmに達したときに、ラットを4つの群に無作為化して、1)塩類溶液(対照);2)薬10150;3)薬10113;4)薬10201を受けさせた。薬剤は、毎日6mg/gの用量でi.p.に与えた。腫瘍の大きさは、週に2回測定した(図3)。
【0023】
Z-チャンバー:
これらのチャンバーは、10mmの内径を有する特別注文のプレクシグラス環から造られ、側面に細孔を有する。2つの開いた表面は、ナイロンメッシュ(180ミクロン細孔径、Millipore、MA)によってカバーして環に接着した。フィブリノーゲン(プラスミノーゲン枯渇されたヒトフィブリノーゲン、CalBiochem)は、DMEM(Gibco、BRL)中に調製し、4〜5mg/ml濃度を研究に利用する。研究に使用したフィッシャーラットは、免疫適格性であるにもかかわらず、この精製されたフィブリノーゲンのバッチは、認識されて、生物種株を越えて非常によく保存されていた。ヒトフィブリノーゲンに対する初期の血管形成反応がフィブリンゲルチャンバーにおけるラットフィブリノーゲンとよく似ていることは、すでに示されている。また、フィブリノーゲンの2つの異なったタイプをZ-チャンバーにおいて試験したが、血管形成および治癒反応に相違は見られなかった。ヒトフィブリノーゲンを使用した。
【0024】
フィブリンZ-チャンバーは、細孔を介して、チャンバー内に注がれたフィブリノーゲン溶液とその後の2ユニットのトロンビンとを有する。腫瘍Z-チャンバーについては、組織培養で培養した第一のR3230Acラット乳房の癌細胞を標準的な手順によって回収し、反応生成物ペレットをDMEMで3回洗浄した。フィブリノーゲン溶液をペレットに添加して、細胞終濃度を約2,500,000細胞/mlにした。この腫瘍細胞/フィブリノーゲン溶液を細孔を介してチャンバーに添加し、かつその後に再び2ユニットのトロンビンを添加した。トロンビンの添加後、フィブリンを動物に移植する前に、チャンバー内で15分間ゲル化させた。フィッシャー344ラットには麻酔をかけて、クリッパーを使用して毛を除去し、表面を外科的に調製した。2つの小切開は、背の正中に沿って約4cm間隔で行った。筋膜を鈍麻解剖して、小ポケットを正中切開の両側に沿ってつくった。動物あたり4つのZチャンバーをこれらのポケットにうまく植設した。4つのチャンバー/動物の間に、および1つの群におけるチャンバー/動物の間の応答(生じた肉芽または腫瘍組織の量)には、少しの相違しかない。また、このモデル系による最初の研究では、動物あたりに1つまたは4つのチャンバー(フィブリンまたは腫瘍Z-チャンバー)を植設したかどうかにかかわらず、応答の相違は観察されなかった。
【0025】
Z-チャンバーは、手術の1日または12日後に回収した。組織をチャンバーから取り除いて、パラフィン包埋のために10%のホルマリン中で保存した。Z-チャンバーの評価のために、ヘマトキシリン‐エオジンで染色した各試料の切片写真を10Xで撮った。写真は、切片で観察される組織の最大深度で撮った。腫瘍組織(腫瘍増殖)または肉芽組織(創傷治癒)の深さは、4X6インチのプリント上でノギスで測定した。この測定方法では、多くの治療された試料において、組織がその深さで同質にチャンバーを満たさなかったので、治療された組織に意図的に偏りが与えられた。全ての測定は、盲検法で行った(図4)。
【0026】
免疫組織化学:
免疫組織化学は、Hsuらによって記載された手順を使用して行った(Hsuet al., j, Histochem.Cytochem.29:577-580 (1981))。簡単には、パラフィン包埋された組織を切片(5ミクロン)にし、Biogenex(SanRamon, CA)のクエン酸塩緩衝液を使用して抗原回収を行った。組織は、組織トランスグルタミナーゼに対する一次抗体(TG100、1:10、血管内皮細胞マーカー、FactorXIIIaに非反応性)(Neomarkers、CA)で37℃において1時間処理した。二次抗体(Jackson ImmunoResearch, PA)および三次抗体(Vector,CA)は、37℃において25分間インキューベートし、反応の位置は、3,3-ジアミノベンジジンテトラヒドロクロライド Sigma(St. Louis, MO)で視覚化した。スライドをヘマトキシリンで対比染色し、カバーグラスでマウントした。免疫組織化学のため対照は、一次抗体の代わりにマウスIgGで処理し、いずれの反応性についてもネガティブであった。ヘマトキシリン&エオシン、およびマッソントリクローム(MT)は、Sheehanによって記載されたとおりに行い(Sheehanet al, In: Theory and Practice of Histotechnology, Battelle Press, Columbus, OH(1980))、フィブリンZ-チャンバー断面におけるコラーゲン(緑色)を評価した。微小血管密度は、Weidnerらによって記載されたとおりに算出した(Weidneret al,J. New Engl. J.Med. 324:1-8 (1991))。簡単には、試料切片につき、強拡大(400X)の一視野で血管マーカーによってマークされた最も多い血管を有する6つのホットスポットまたは領域を選択して、血管の数を計数した。次いで、対照および処理組織について、データをプールして、それぞれの群の平均値を得た。全ての測定は、2人の別々の病理学者によって盲検法でなされた(図5)。
【実施例3】
【0027】
ブレオマイシンで誘導される肺線維症の減弱
実験の詳細
マンガン(III)テトラキス-(4-安息香酸)ポルフィリン(MnTBAP)の調製。1.5Mの過剰塩化マンガン(Fisher, Fair Lawn, NJ)を、水に溶解して0.1N水酸化ナトリウムでpHを7.0に滴定したテトラキス-(4-安息香酸)ポルフィリン(H2TBAP,Aldrich, Milwaukee, WI)とインキューベートした。反応混合液を撹拌して、80℃に加熱した。反応液のpHを毎時モニターして、0.1N水酸化ナトリウムで7.0に再調整した。金属結合を分光測光法で追った(UV-2101PC, Shimadzu, Columbia, MD)。全時間に渡り、H2TBAPに対するソーレー帯(λ=415nm)は、吸光係数ε=9.3×104M-1cm-1を有するMnTBAP(λ=468nm)に対するソーレー帯の出現に伴って消えた(Harrimanet al, J. Chem. Soc. Faraday Trans. 275: 1532-42 (1979))。過剰金属は、chelex100樹脂(BioRad,Hercules, CA)でバッチ吸着することによって除去した。生成物を0.22μのフィルター(Millipore, Bedford, MA)に通して、使用するまで暗闇に4℃で貯蔵した。MnTBAPの純度が90%より大きいことは、HPLC解析によって見出された。
【0028】
動物および処置。6-8週齢であるBalb/c雄マウスを、本研究に利用した(Taconic, Germantown, NY)。マウスは、処置の少なくとも6日前に、環境的に制御された部屋(12時間の光サイクル)において22℃に慣れさせた。毒性研究には、Weilによって以前に記載された移動平均法を使用し(Weil,Biometrics 8 : 249-263 (1952))用いた。4匹のマウス群には、MnTBAP(50、88、153および268mg/kg、ip)を与えて、48時間の期間にわたって観察した。マウスには、リン酸緩衝食塩水(PBS)に溶解したMnTBAP(10mg/kg、ip)の1大量瞬時投与用量を与え、薬物動態学的な解析のために、MnTBAPの血液および肺組織レベルをいくつかの異なった時点で決定した。肺線維症研究のために、マウスの別々のセットを使用した。マウスを10匹のマウスの2群に無作為化し、気管内ブレオマイシン(3.5U/kg、ICN,Aurora, OH)または同体積の塩類溶液(50μl)を受けさせた。また、これらの群の半分の動物には、毎日2回、14日間、MnTBAP(5mg/kg、ip)または同体積のPBS(1ml/kg、ip)も受けさせた。
【0029】
血清および肺ホモジェネートにおけるMnTBAPの解析。マウスには、ペントバルビタール(60mg/kg、ip)で麻酔をかけて、血液を心穿刺によって得た。血液試料を1.5mlのチューブに置いて、室温で30分間放置して血餅にした。血液試料を1000×gで10分間回転した後、血清を除去した。血清試料は、使用するまで-20℃に貯蔵した。肺は、リン酸緩衝食塩水で肺動脈を介して灌流し、血管から血液を除いた。肺を除去して、pH7.5でポリトロンを有する(Turrax-25, Janke & Kunkel, Germany)1.15%の塩化カリウムを含むトリス-HCl10mM緩衝液でホモジナイズした。肺ホモジェネートは、使用するまで-20℃に貯蔵した。MnTBAPを血清(50μl)および肺ホモジェネート(100μl)から800μlのメタノールで抽出し、2分間ボルッテックスして、7,000×gで遠心した。最上部層を除去して、該抽出方法を2回繰り返した。プールされた画分を乾燥蒸発して、100μlの水に再溶解した。次いで、これを解析のためのHPLCバイアルへ移した。標準は、対照肺または血清試料において調製し、上記の通りに抽出した。MnTBAPは、λ=468nmのUV-1検出器セットを備えたHPLC(Ranin、Emeryville、CA)を使用して、1ml/分の流速で定量した。定常相は、YMCODS C-18カラムから(1.4×100mm)なり、移動相は、60%の溶液Aおよび40%の溶液B(溶液A:水+0.1%トリフルオロ酢酸、溶液B:アセトニトリル/水(90:10)+0.1%トリフルオロ酢酸)からなる。肺ホモジェネートおよび血清から抽出されたMnTBAPは、5.9分で溶出された。上記抽出法を使用した、試料からのMnTBAPの回収は、85-91%の範囲であった。標準曲線の線形回帰分析では、r2>0.99であった。
【0030】
薬物動態。血清および組織半減期を算出するために、標準的な2-区画モデルを使用した(Shargel et al, AppliedBiopharmaceutics and Pharmacokinetics. New York: Appleton-Century-Crofts (1980))。データを以下の方程式にあてはめた:Cd= Ae-at + Be-bt;ここで(a)および(b)は、それぞれ分布相および除去相の速度定数である。定数(A)および(B)は、それぞれ曲線の指数関数的な区域のy軸における切片である。定数(B)は、それぞれ血清および肺MnTBAPレベルのピークの評価として使用した。計測値は、Prizm3.0(GraphPad, San Diego, CA)からコンピュータで作製した。
【0031】
マウスにおける気道狭搾の非観血的測定。無拘束の意識があるマウスにおけるベースライン耐性は、全身気圧脈波検査(Buxco Electronics, Troy,NY)によって評価した。使用した技術は、Zhuら、J. Clin. Invest. 103 (6): 779-88 (1999)に記載されたものと同様であった。マウスを全身脈波検査内におき、コンピュータに入出力が行われる高速示差変換器(fastdifferential transducers)に配置した。測定は、呼吸数、1回の呼吸量および増強された息つぎ(PENH)で表した。気道狭搾は、PENH=(Te/0.3Tr)-1]x[2Pef/3Pif]として表し、ここでTe=呼息の時間(秒)、Tr=緩和時間(秒)、Pef=最大呼気流量(ml)、およびPif=は、最大吸気流量(ml/秒)である。動物をチャンバー内で15分間平衡化し、次いで5分間にわたってPENHを見積もった。
【0032】
ヒドロキシプロリン測定。恒量が得られるまで80℃で肺を乾燥した。乾燥した肺を、ガラスバイアル内の1mlの12N HCl中で、減圧下で120℃においてオーバーナイトで加水分解した。試料を凍結乾燥して、前述したように、クロラミンTを使用してヒドロキシプロリン含量についてアッセイした(Woessner,Arch. Biochem. Biophys. 93 : 440-447 (1961))。
【0033】
組織病理学。肺を4%のパラホルムアルデヒド中で24時間固定し、次いでパラフィン包埋のために加工した。肺の切片をルーチンのヘマトキシリン‐エオジンで、またはマッソントリクローム染色法で染色し、線維症の程度を評価した。肺外傷および線維症の程度は、4人の病理学者により、治療群に関して盲検になるように、1(外傷なし)〜10(重傷/線維症)のスケールに等級分けした。検討した主要な判定基準は、間質肥厚、コラーゲン沈着、タイプ2細胞過形成および炎症性細胞浸潤を含んだ。
【0034】
統計解析。データは、二元分散解析(ANOVA)、または二元ANOVAで有意な相互作用が見られない場合は、一元ANOVAを使用して解析した。群間の有意差は、ニューマン-ケウルス多重比較試験を使用して評価した。データは、コンピュータプログラム、Prizm(GraphPad Software, San Diego, CA)を使用して解析した。統計的有意差は、p<0.05にセットした。
【0035】
結果
マウスにおけるMnTBAPの毒性および薬物動態学的な評価。
【0036】
肺線維症モデルにおける触媒的な抗酸化剤MnTBAPの効果を試験するために(図6)、薬の毒性がないMnTBAP肺レベルを生じるであろう合理的な用量療法を確立する必要があった。MnTBAP毒性は、4匹のマウスの4つの幾何学的な用量群(50、88、153および268mg/kg,ip)からなる移動平均法を使用して、それぞれ48時間以上にわたって評価した。50mg/kgの群と関連した死亡はなく、88mg/kgの群において1匹の死亡があった。2つの最も高い用量は、マウスに対して致死的であった。MnTBAPは、100mg/kgの算出されたLD50を有し、98〜104mg/kgの95%の信頼区間を有した。次いで、10mg/kgip用量のMnTBAPを選択し、毒性データに基づく薬物動態学的なな研究を行った。MnTBAPの血清および肺組織レベルは、薬処理の0.3、0.5、1、2、4、6および24時間後に決定した。データは、2区画薬物速度論モデルにあてはめて、分布および除去半減期は、カーブフィッティングされたデータから算出した(図7)。MnTBAPは、大量瞬時投与ip注射から、14分(表2)の分布半減期で、肺において迅速に平衡化された。評価したMnTBAPピークの血清および肺組織中の濃度は、それぞれ42mg/Lおよび80μg/gタンパク質であった。血清および肺からのMnTBAPの除去半減期は、9.5時間であると同定された。これらのデータは:1)、MnTBAPは肺に蓄積しないこと;および2)1日2回の用量法は、9.5時間のその半減期に基づいていることを示す。
【0037】
【表2】

MnTBAPによる、ブレオマイシン誘導肺線維症の減弱
マウスを2×2の分割表を使用して4つの群に無作為化し、2つの群には、気管内点滴によって塩類溶液またはブレオマイシン(3.5U/kg体重)を受けさせた。2つの群には、14日間、毎日2回ip注射によって塩類溶液またはMnTBAP(5mg/kg体重)も受けさせた。ブレオマイシンを受けさせた群は、14日間にわたって、担体の対照よりも有意に多くの重量を減少し、それらの最初の体重の20%の最大平均減少であった(図8)。MnTBAP処理は、塩類の対照群と比べて、体重減少を生じなかった。ブレオマイシンおよびMnTBAPを受けさせたマウスの群は、5〜14日において、ブレオマイシン群より少ない体重を減少し、10%の最大平均減少であった。
【0038】
気管内点滴によって与えられたブレオマイシンは、気道および肺胞の著しい線維形成反応を生じる(Evans et al, Am Rev. Respir. Dis.125 (1) : 89-94 (1982))。マウスでは、非観血的な全身気圧プレチスモグラフィーを使用して、気道狭小化のマーカーである増強された息つぎ(PENH)を測定することにより、気道機能の変化について評価した。気管内のブレオマイシン処理では、14日後において気道狭搾のPENH指標の3倍の増加を生じた(図9A)。MnTBAP処理単独では、PENHマーカーに影響を及ぼさないが、ブレオマイシンによって生じる気道狭搾に30%の減少が生じた。また、肺線維症は、コラーゲン蓄積の指標として肺におけるヒドロキシプロリン含量を測定することによって評価した。ブレオマイシン処理では、14日後において肺のヒドロキシプロリン含量に2倍の増加を生じた(図9B)。MnTBAP処理では、肺のヒドロキシプロリン含量にあまり効果を有さなかったが、ブレオマイシンによって生じたヒドロキシプロリン含量に23%の減少を生じた。PENHおよびヒドロキシプロリン含量の増加は、組織病理学的評価によって見られる繊維性の変化とよく相関した。
【0039】
それぞれのマウスからの1つの肺を4%パラホルムアルデヒドを滴下して固定し、組織病理学的評価のためにパラフィン包埋した。肺外傷/線維症の程度を評価するために、組織切片をヘマトキシリン‐エオジンで、またはマッソントリクローム染色法で染色した。ブレオマイシン処理では、対照肺(図10C)と比較して、実質的な肥厚および正常胞状構造の減少、タイプ2細胞過形成、並びに肺胞腔および間隙(図10A)における激しい急性炎症性反応、によって特徴づけられる炎症性反応を生じた。トリクローム染色法でコラーゲンを染色した肺切片では、主に厚くなった肺胞領域および小細気管支のまわりの狭い範囲(図10G)に、対照肺(図10E)と比較して著しく増加したコラーゲンの蓄積を示した。MnTBAP処理では、単独で肺組織学に対する効果を有さないが(図10Bおよび10F)、ブレオマイシンによって生じる著しい腸管の肥厚および炎症性反応を減弱した(図10D)。また、トリクローム染色によって評価すると、MnTBAP処理でもコラーゲンの蓄積を減少した(図10H)。肺切片では、繊維性反応について、正常肺を表す1のスコア〜非常に重篤な繊維性を表す8のスコアによる0-8のスケールで半定量的に評価した。肺切片は、無作為化して盲検法でスコアした。ブレオマイシン処理では、対照群と比べて、病理学スコアに2倍の増加を生じた(図11)。MnTBAP処理では、病理学スコアに対して効果を有さなかったが、ブレオマイシンの病理学スコアを28%減らした。これらの結果は、生理学的および生化学的指標をかなり支持し、ブレオマイシンは、種々の指標において約2倍の増加を生じ、MnTBAPは、これらの増加をほぼ30%減弱した。
【実施例4】
【0040】
SOD擬態を使用した、放射線で誘導される肺外傷の保護および放射線照射後の肺線維症の評価
放射線で誘導される肺外傷のラットモデルにおいて、AEOL 10113を試験し(6mg/kg/日を照射日に開始して5日間)、呼吸の割合(肺外傷をもつ動物は、より速い呼吸数を有する)、並びに線維症の化学的および顕微鏡測定によって評価した。6月の経過観察期間の間に、放射線照射を受けた9匹のラットのうちの4匹のみが、重篤な呼吸困難を発生し、安楽死した。放射線およびAEOL10113で処理したラット群において、9匹のラットのうちの1匹のみが呼吸困難を発症し、安楽死した。呼吸速度データは、前の(LOCF)データセットで行った最後の観測について解析し、呼吸困難によって安楽死したラットについての最後の観測は、次の週に行った。AEOL10113で処理した動物において放射線で誘導される肺外傷の発生(呼吸速度の増加によって評価される)に有意な遅れ(約3.4週)(対数ランク、p=0.0011)があった(図12)。さらに、呼吸速度の増加の大きさは、終末点で平均34%減少されたことは、機能欠損の重篤さを有意に緩和するAEOL10113の能力が、放射線で誘導される肺外傷と関連することを示している。
【0041】
放射線照射の6月後、残りの全ての動物が安楽死した。その時、右上の肺葉を除去してヒドロキシプロリン含量に基づいて肺線維症の程度を定量するためにプロセスした。図13Aは、対照群(照射なし、AEOL10113なし)の動物と放射線照射を伴わずにAEOL 10113を受けさせたものとの間の右上葉のヒドロキシプロリン含量に相違がなかったことを示す。しかし、乾燥状態または湿った状態の肺のグラムあたりのヒドロキシプロリン含量の有意な増加は、放射線だけを受けた動物において観察された(28Gyの1回量)。したがって、放射線照射前および4日後におけるAEOL10113の投与は、湿った状態および乾式状態の右上葉におけるヒドロキシプロリン含量の有意な減少(p<0.05)を生じた。
【0042】
また、放射線で誘導される肺線維症は、組織病理学を使用して評価した(図13B)。肺を中性の緩衝化した10%のホルマリンで固定した。5-ミクロン厚の切片をヘマトキシリン‐エオジンまたはマッソントリクロームで染色して顕微鏡で調査した。スライドは、X10対物を使用した顕微鏡において、全体にわたって走査した。それぞれの連続した視野では、それぞれ間質性線維症の重篤さを評価してスコアを0〜8の間に割り当てた。これらのデータは、AEOL10113も放射線で誘導される肺線維症を緩和したことを示す。
【実施例5】
【0043】
RTで誘導された肺外傷の指標としてのTGF-βの血漿レベルの変化
処置の際の血漿中TGF-βの測定が、放射線で誘導されるTGF-P発現の局所的変化を反映するかどうか、および肺毒性の改変がTGF-の血漿レベルに反映されるかどうかは、特に興味がある。以前に、血漿TGF-βレベルとRTで誘導された肺の外傷の発生との間の関係を決定するために、広範な研究を行った。ラットにおける血漿TGF-βレベルの有意な変化は、18Gyの半胸照射の20週後に生じることが見出された。血漿TGF-レベルの増加は、照射後22〜28週の間で最も顕著であった呼吸頻度の増加と一致した。免疫組織化学の結果は、照射の4週間後においてTGF-β染色を増加し、炎症性および繊維性段階の両方において持続して過剰発現することを示した。これらのデータは、ラットにおいて血漿TGF-レベルが半胸照射後の正常組織外傷の潜在的なマーカーであることを示す(図14を参照されたい)。
【実施例6】
【0044】
放射線で誘導された肺の外傷の、体重の効果
ラットにおいて、照射後の体重の変化を評価するため、および放射線で誘導される肺の外傷に対するMnTE-2-PyPの放射線防護効果を評価するために研究を行った。動物の体重および肺機能は、3群の動物:対照、放射線単独および放射線+MnTE-2-PyPの照射後に、2週ごとに測定した。1回用量の28Gyを右半胸に送達させて、6mg/kgのMnTE-2-PyPを照射後の5日間i.p.で毎日与えた。拘束されていないラットを、呼吸速度測定のための圧力トランスデューサに連結された1500mlの全身プレチスモグラフチューブに配置した。空気圧の変化を記録し、調整されたチャートレコーダに示した。それぞれの動物において、5回の測定の平均を行った。照射後の第一週の間に、半胸照射を受けた動物の両群において体重の有意な減少が観察された。しかし、放射線に加えてMnTE-2-PyPを受けた動物は、半胸に照射後の体重減少の回復が、放射線だけを受けた動物より非常に良かった。結果は、図15に示す。
【実施例7】
【0045】
マンガン酸ポルフィリンは、差次的に腫瘍細胞増殖を阻害する
2種の非腫瘍細胞株(ラット肺上皮細胞(L2);ウシの血管内皮細胞、CPA-47)、および腫瘍株(ヒト腺癌肺細胞、A549)では、マンガン酸ポルフィリンの有無における細胞増殖について検討した(図16を参照されたい)。細胞は、100μMMnTBAP、MnTM-4-PyP、およびそれらの亜鉛類似体の存在下または非存在下において、24穴プレートにウェルあたり10,000細胞として48時間プレートにまいた。化合物のいずれも、この濃度では細胞毒性を生じなかった(LDH放出によって測定した)。マンガン酸ポルフィリンは、マンガン酸ポルフィリンを伴わない腫瘍細胞増殖と比較して、50%まで選択的に腫瘍細胞増殖を阻害した。対照的に、マンガン酸ポルフィリンは、非腫瘍細胞増殖を抑制する効果を有していなかった。この所見は、マンガン酸ポルフィリンが選択的に腫瘍細胞増殖を阻害することができ、効率的な化学療法剤であろうという、インビボにおける活腫瘍移植研究を支持する。
【実施例8】
【0046】
マンガン酸ポルフィリンは、腫瘍細胞におけるレドックスサイクリング細胞毒性剤の細胞毒性効果を選択的に強化する2種の非腫瘍細胞株(ラット肺上皮細胞(L2);ウシの血管内皮細胞、CPA-47)、および腫瘍株(ヒト腺癌肺細胞、A549)では、マンガン酸ポルフィリンの有無における細胞増殖について検討した。細胞は、細胞毒性剤(0〜10mMパラコート)の存在下において、MnTBAP、MnTM-4-PyPおよびそれらの亜鉛類似体の濃度を増加して、24穴プレートにウェルあたり10,000細胞として24〜48時間プレートにまいた。MnTBAPおよびMnTM-4-PyPは共に、MnTBAPを伴う腫瘍細胞(A549)のパラコートを介した細胞毒性を強化し、MnTM-4-PyPより有効であった。対照的に、両方のマンガン酸ポルフィリンは、非腫瘍細胞をパラコートの細胞毒性から保護した。これらの所見は、マンガン酸ポルフィリンが腫瘍細胞において、ブレオマイシンおよびアドリアマイシンなどのその他のレドックスサイクリング細胞毒性化学療法剤の選択的な増強を提供し、その一方でこれらの細胞毒性剤の損傷効果から非腫瘍細胞を保護しているかもしれないことを示唆する(図17を参照されたい)。
【実施例9】
【0047】
ハムスターにおける急性放射線によって誘導される経口粘膜炎の発症率および経過に対するSOD擬態の効果口の潰瘍性の粘膜炎は、共通の、痛く、癌のための薬剤および放射線治療の用量を制限する毒性がある。該疾患は、口腔粘膜の分解によって特徴づけられ、潰瘍性病巣の形成を生じる。顆粒球減少性の患者において、粘膜炎を伴う潰瘍形成は、敗血症または菌血症をしばしば引き起こす常在性の経口細菌が頻繁に侵入する入り口である。粘膜炎は、抗悪性腫瘍剤療法を受けた患者の3分の1以上である程度生じる。頻度および重篤さは、白血病のための誘導治療法または骨髄移植体のためのコンディショニング養生法で治療された患者の間で有意に高い。これらの個体の中で、中程度〜重篤な粘膜炎は、4分の3以上の患者では珍しい。中程度〜重篤な粘膜炎は、頭頸部の腫瘍の放射線療法を受ける全ての患者において実質的に起こり、典型的には、15Gyの累積的照射により開始され、次いで60Gy以上の全量に達すると悪化する。
【0048】
臨床的に、粘膜炎は、3つの段階を介して進行する:
局所麻酔剤に応答することができる、痛い粘膜紅斑を伴った炎症。
【0049】
偽膜形成を伴う痛い潰瘍形成および骨髄抑制性の治療の場合には、抗菌物質治療法を必要とする生命の危険の可能性のある敗血症。非経口の麻薬性鎮痛薬を要求するような強さの痛みがしばしばある。
【0050】
抗悪性腫瘍剤療法の休止後2〜3週間で生じる自発的治癒。
【0051】
粘膜炎のための標準的な治療法は、主に一時的であり、リドカインなどの局所的鎮痛剤の適用、および/または麻酔剤および抗生物質の全身投与を含む。現在、粘膜炎のために承認された治療はない。
【0052】
生物学的過程としての粘膜炎の複雑さが、最近認められただけであった。該症状は、口粘膜細胞および組織、炎症誘発性のサイトカインおよび唾液などの局所因子、並びに口腔微生物嚢の逐次の相互作用を示すことが示唆されていた。上皮の変性および分解は、最終的に粘膜潰瘍形成を生じるが、放射線で誘導される粘膜毒性に関連した初期変化は、粘膜下組織の内皮および結合組織内で生じる。放射線照射の1週間以内の粘膜の電子顕微鏡評価では、内皮および結合組織の両方の損傷を示すが、上皮では示さない。このような外傷は、おそらくフリーラジカル形成によって媒介される。粘膜炎発生の全体的な機構は、放射線および薬物療法の両者と同様である(Eldoret al, Semin. Thromb. Hemost. 15: 215-225 (1989))。
【0053】
口粘膜炎の開始に反応種が関与することは、この有害な結果の癌治療の症状を予防または軽減するために抗酸化剤が有効であるかもしれないとの仮定を理にかなったものとする。実際に、いくつかの文献が存在することは、口粘膜炎を治療するために抗酸化剤を効果的に使用し得ることにを示唆する。これらの所見は、放射線で誘導される皮膚の損傷またはいくつかの抗酸化剤によるオキシダントを介した発癌の減衰を示す多くの研究と一致している(Plevova、OralOncol 35:453-470 (1999))。
【0054】
このように、口粘膜炎における抗酸化剤の使用を調査した研究は、特に、一貫して有効な標準的な治療が共存しないことに鑑みて、是認される。しかし、現在までに試験された抗酸化剤は、非特異的なスカベンジャーの反応種を有する。触媒的抗酸化剤では、癌治療で誘導される粘膜炎の過程に及ぼす効果について、検討または提案されていなかった。
【0055】
後述した本研究の目的は、局所的および注射によって投与された2用量の独自の触媒的抗
酸化剤について、急性放射線によって誘導される口粘膜炎の頻度、重篤さ、および期間に対する効果を評価することであった。
【0056】
実験の詳細
40匹のハムスターには、それらの口腔粘膜に急性放射線用量を与えた。試験物質は、注射によってまたは局所的に(1日3回)適用し、放射線照射の前日に開始して20日まで続ける。粘膜炎は、6日(0日=照射日)に開始して28日の実験の終わりまで続け、1日おきに評価した。40匹(40)のハムスターを使用した。ハムスターは、それぞれ8匹(8)の動物の5群(5)に無作為化した。それぞれの群は、以下のように0.2mltidの種々の治療を割り当てた:
群1 水またはPBSの対照 1日〜20日。
【0057】
群2 10150,0.25mg/ml、tid、局所的(1.5mg/kg/日) 1日〜20日。
【0058】
群3 10150,1mg/ml、tid、局所的(6mg/kg/日) 1日〜20日。
【0059】
群4 10150,0.25mg/ml、tid、ip(1.5mg/kg/日) 1日〜20日。
【0060】
群5 10150,1mg/ml、tid、(6mg/kg/日)1日〜20日。
【0061】
粘膜炎のスコアリング
測定されるパラメータは、粘膜炎スコア、重量変化および生存を含んだ。粘膜炎の評価のために、動物には吸入麻酔薬(フェノバルビタールまたはハロタン)で麻酔をかけて、左の嚢を外転させた。粘膜炎は、研究の実験室部分の際には臨床的に、および盲検法(研究の結論として)に、両方でスコアした。臨床スコアリングは、確認した写真のスケールと視覚的に比較し、正常の0から重篤な潰瘍形成の5までの範囲で行った。
【0062】
記載された用語において、このスケールは、以下のように定義される:
スコア:記載:
0 完全に健康な嚢。紅斑または血管拡張がない。
【0063】
1 軽微〜重篤な紅斑および血管拡張。粘膜の浸食がない。
【0064】
2 重篤な紅斑および血管拡張。剥皮領域を残す粘膜表面の浸食。
【0065】
減少した粘膜の斑点。
【0066】
3 1つまたは複数の場所にオフホワイトの潰瘍。潰瘍は、偽膜のために黄色/グレイを有してもよい。潰瘍の累積サイズが嚢の約l/4と等しいべきである。重篤な紅斑および血管拡張。
【0067】
4 潰瘍の累積サイズが嚢の1/2に等しいべきである。柔軟性の減少。重篤な紅斑および血管拡張。
【0068】
5 実質的に全ての嚢が腐敗する。柔軟性の減少(嚢は、部分的に口から抽出することができるだけである)。
【0069】
1〜2のスコアは、疾患の軽症段階を表すと想定されるが、3〜5は、中程度から重篤な粘膜炎を示すと想定される。
【0070】
結果
IPで投与した10150(0.2mlの25mg/ml溶液TID, 1.5mg/kg/日)は、表3で示したとおり、粘液性スコア≧3の日の割合の59%の減少によって証明されたように、重篤な粘膜炎の発生率を非常に減少した。同様の減少は、より高い用量のIP群において観察されるが、どちらの群においてもこれらの濃度では局所的投薬によって治療されなかった。
【0071】
【表3】

それぞれの群における動物が3以上のスコアに費やした総日数のカイ自乗解析。この統計は、臨床的に重要な結果である潰瘍形成の重篤さの測定である。有意な効力は、赤に示される。
【0072】
繰り返した研究では、表4に記載した結果を与えた。
【0073】
【表4】

図18は、実験時全体にわたるスコアの分布である。これらのデータから、10150の効果が粘膜炎の開始に現れ、約14日のピーク時に潰瘍の発症率を減少すると思われる。図19は、スコア≧3(すなわち重篤な粘膜炎)の日数のパーセントに対する10150の効果を示す。
【0074】
これらの所見は、癌治療において使用されているように、10150が放射線療法に関連した粘膜炎の重篤さを有意に緩和することを示した。この効果は、IP投与で治療された群において最も顕性であった。しかし、図19から分かるように、統計学的に有意でないが、高用量局所治療は、粘膜炎の重篤さを緩和する傾向があり、およびより高濃度で局所的に使用されると、対応してより高い組織中濃度で、IP投与で見られるものと同様の効果を生じ得ることを示唆する。
【0075】
上で引用された全ての文書は、本明細書に、参照によってこれらの全体が援用される。
【0076】
当業者は、この開示を読むことにより、形態および詳細における種々の変化が本発明の真の範囲から逸脱することなくなされ得ることを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H−1】
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【図1H−2】
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【図1H−3】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図17D】
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【図17E】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−87148(P2012−87148A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−15864(P2012−15864)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【分割の表示】特願2009−162200(P2009−162200)の分割
【原出願日】平成14年1月22日(2002.1.22)
【出願人】(501292854)ナショナル ジュウィッシュ ヘルス (5)
【出願人】(503261719)アイオロス・サイエンシズ・インコーポレーテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】AEOLUS SCIENCES,INC.
【出願人】(507189666)デューク ユニバーシティ (25)
【Fターム(参考)】