説明

発光セラミックおよびそれを使用する発光装置

いくつかの実施形態は、従来の発光セラミックスより低い量のドーパントを有する発光セラミックスを提供する。いくつかの実施形態では、発光セラミックは、希土類元素および少なくとも1つの希土類ドーパントを含むホスト材料を含み、希土類ドーパントは、材料中に存在する希土類原子の約0.01%〜0.5%であってもよい。いくつかの実施形態は、式(A1−x12によって表わされる多結晶蛍光体を含む発光セラミックを提供する。いくつかの実施形態は、本明細書で開示された発光セラミックを含む発光装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2009年6月1日に出願された米国仮出願第61/183,004号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、発光装置等で使用される発光セラミックスに関する。
【背景技術】
【0003】
白色発光ダイオード(LED)は、公知の固体照明デバイスであり、広く実用化されている。LEDの用途の例としては、種々の機器のための表示器、携帯電話で使用されるLCDディスプレイの背面照明、掲示板、装飾的な照明などが挙げられる。いくつかの用途について、その用途で望まれる色範囲の光を放射するLEDを得ることは困難である。例えば、多数のLEDは青色光を放射するが、しばしば、白色光が装置のために望まれる。これらの状況では、蛍光体は、放射光の色を変更するために使用することができる。これは、LEDから放射された青色光またはいくつかの他の着色光が蛍光体を通ることを可能にすることによってなされる。光の一部は変質することなく蛍光体を通るが、光の一部は蛍光体に吸収され、次いで、異なる波長の光を放射する。このように、蛍光体は、光の一部を異なる波長の光に変換することによって、放射光の見かけの色を調整する。多数の白色発光装置は、この種の色変換に基づく。例えば、1つのタイプの従来の白色発光装置は、エポキシ樹脂やシリコーンなどのカプセル材料樹脂中に分散された青色LEDおよび黄色発光YAG蛍光体粉末を含む。
【0004】
LEDの発光効率は、近年改善されている。その結果、LEDの使用は、自動車用ヘッドライト、中〜大型サイズのLCDディスプレイ用の背面照明、現在の蛍光灯および白熱灯に置き換わる一般的な照明などのより強い輝度強度を必要とする白色発光装置に拡大している。これらの用途については、それは、より高い駆動状態およびより大きな放射束下でその放出効率を維持する発光装置を有用に有していてもよい。場合によっては、より高い駆動状態は、LED装置内の発熱を大幅に増大させる可能性があり、この上昇した温度は、LED効率および装置寿命の両方を低減する可能性がある。例えば、温度上昇は、LED半導体チップの内部量子効率の低減およびカプセル材料樹脂の寿命の短縮を引き起こす可能性がある。最近、粉末の代わりに発光セラミックプレートを使用するLED装置が準備されている。これは、樹脂中に分散された粉末に比較して、おそらくは、プレートのより良好な熱伝導率により、多少温度消光を低減することに役立っていた。しかし、温度消光は、セラミックプレートであることを考慮に入れても問題となっている。
【発明の概要】
【0005】
いくつかの実施形態は、発光装置用発光セラミックスを提供する。これらのセラミックスは、一般に使用されている従来の発光セラミックスより低い量のドーパントを有する傾向がある。いくつかの実施形態では、発光セラミックは、希土類元素および少なくとも1つの希土類ドーパントを含むホスト材料を含み、希土類ドーパントは、材料中に存在する希土類原子の約0.01%〜0.5%であってもよい。いくつかの実施形態は、式(A1−x12によって表わされる多結晶蛍光体を含む発光セラミックを提供し、ここで、Aは、Y、Gd、La、Lu、Tb、又はそれらの組み合わせであり、xは、約0.0001〜約0.005の範囲であり、Bは、Al、Ga、In、又はそれらの組み合わせであり、Eは、Ce、Eu、Tb、Nd、又はそれらの組み合わせであり、セラミックは、約420nm〜約480nmの範囲に最大吸収波長を有する。
【0006】
いくつかの実施形態は、式(Y1−(x+y)GdCe12によって表される多結晶蛍光体を含む発光セラミックを提供し、xおよびBは、上記のものと同様であり、yは、約0.005〜約0.05の範囲にある。
【0007】
いくつかの実施形態は、約420nm〜約480nmの範囲に最大放射波長を有する発光ダイオードと、本明細書に開示された発光セラミックと、を含み、発光セラミックは、発光ダイオードから放射された光の少なくとも一部を受け、約500nm〜約700nmの範囲に最大放射波長を有する光に変換するために位置する、発光装置を提供する。
【0008】
これらおよび他の実施形態が、より詳細に以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本明細書に開示される発光セラミックを含む装置のいくつかの例の概略図である。
【図2】図2は、本明細書に開示される発光セラミックおよびプレート形態のさらなるセラミックを含む装置の例の概略図である。
【図3】図3は、本明細書に開示される発光セラミックおよび粉末形態のさらなるセラミックを含む装置の代替例の概略図である。
【図4】図4は、本明細書に開示される発光セラミックを含む装置の代替例の概略図である。
【図5】図5は、本明細書に開示される発光セラミックを含む装置の代替例の概略図である。
【図6】図6は、本明細書に開示される発光セラミックを含む装置の代替例の概略図である。
【図7】図7は、発光セラミックプレートを介して全光線透過率を測定するための装置の1つの実施形態の概略図を示す。
【図8】図8は、20mAの駆動状態で、LED装置のいくつかの実施形態の放射スペクトルを示す。
【0010】
図面は正確な縮尺ではない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に開示された実施形態のいくつかは、通常使用される従来の発光セラミックスより低い量のドーパントを有する発光セラミックを含む発光装置を提供する。いくつかの実施形態では、発光セラミックは、限定されないが、(A1−x12、(Y1−x12;(Gd1−x12;(La1−x12;(Lu1−x12;(Tb1−x12;(A1−xAl12;(A1−xGa12;(A1−xIn12;(A1−xCe12;(A1−xEu12;(A1−xTb12;(A1−xNd12などの式によって表わされる低いドーパント濃度を有する多結晶蛍光体を含む。いくつかの実施形態では、セラミックは、低いドーパント濃度を有するイットリウム・アルミニウム・ガーネットなどのガーネットを含む。いくつかの実施形態は、式(Y1−xCeAl12によって表わされる組成物を提供する。いくつかの実施形態は、式(Y1−(x+y)GdCeAl12によって表わされる組成物を提供する。上記式のいずれかにおいて、xは、約0.0001〜約0.005の範囲、約0.0005〜約0.004、または代わりに約0.0008〜約0.0025であってもよい。いくつかの実施形態では、yは、約0.005〜約0.05の範囲、約0.01〜約0.03、または代わりに0.015〜約0.025であってもよい。
【0012】
本明細書に開示された発光セラミックスは、発光ダイオードから放射された光を吸収し、異なる色の光を放射するのに有用であり、したがって、色の調整を可能にする。いくつかの実施形態では、発光セラミックは、青色光を吸収し、黄色光を放射してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、セラミックは、約420nm〜約480nmの範囲に最大吸収波長、および約500nm〜約750nmまたは代わりに約500nm〜約600nmの範囲に最大放射波長を有する。
【0013】
発光セラミックの吸収放射プロフィールおよびドーパント濃度は、発光装置の色に影響する可能性があるが、これらは、色を調整するために利用できる唯一のツールではない。例えば、限定されないが、色は、発光セラミックの厚さを変えることによって、および/または緑、青、および赤などの種々の色のさらなる発光セラミックスを加えることによって調整されてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、発光セラミックは、より厚くされて、異なる波長の光に変換された発光ダイオードから放射された光の量を増加させてもよい。したがって、観察された光が、発光ダイオードの色さらにはセラミックの色のように見えない。または、発光セラミックは、薄くされて、変換された光の量を減少させてもよく、したがって、その色を発光ダイオードの色により類似して見せてもよい。例えば、発光ダイオードが青色光を放射し、発光セラミックが黄色である、または黄色光を放射する場合には、より薄いセラミックは、より青に見える光を生じてもよく、より厚いセラミックは、より白くまたは黄色に見える光を生じてもよい。いくつかの実施形態では、発光セラミックは、約50μm〜約5mmの範囲、約0.2mm〜約2mm、または代わりに約1mmの厚さを有する。発光セラミックの有効な厚さが、光がセラミックを通る経路に依存し得るので、発光セラミックの形状も、放射光の色に影響するかもしれない。いくつかの実施形態では、発光セラミックは水平プレートである。他の実施形態では、発光セラミックは、ドーム形状、凸状、凹状、キャップ状、凹凸構造を備えたプレート、マイクロレンズ構造を備えたプレートなどである。
【0015】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのさらなる成分、例えば、発光セラミックが、装置に加えられて、装置によって放射された光の色を調整する。さらなる成分は、任意のタイプの発光セラミックを含んでいてもよく、それは、赤、青、緑などの任意の色であってもよい。いくつかの実施形態は、発光セラミック、または希土類ドーパントを備えた希土類ホスト材料を含むさらなる発光セラミックを提供し、希土類ドーパントの量は、約0.01%〜約0.05%の範囲にあり、または代わりにセラミック中の希土類原子の約0.01%〜0.02%の範囲にある。いくつかの実施形態は、(Sr、Ca、Ba)SiO:Eu、CaScSi12:Ce、CaSc:Ce、CaSiOCl:Eu、SrSiO:Eu、LiSrSiO:Eu、CaSi:Eu、CaAl1219:Mn、SrAl:Eu、BaMgSi:Eu、BaMgAl1017:Eu、LaS:Eu、SrGa:Eu、CaAlSiN:Eu、CaSi:EuおよびCaSiAlON:Euを含む発光セラミックを提供し、ここで、コロンに続く元素はドーパントである(例えば、Ceは、CaScSi12:Ce中のドーパントである)。さらなる成分、例えば、発光セラミックは、任意の形態であってもよい。いくつかの実施形態では、さらなる発光セラミックは、水平プレートなどの発光セラミックのための上記任意の形態である。いくつかの実施形態では、さらなる発光セラミックは、装置を封入する樹脂などの装置の他の部分に分散された粒子の形態である。
【0016】
いくつかの実施形態では、発光セラミックの低いドーパント濃度は、温度消光を低減することができる。いくつかの実施形態では、これは、発光装置に発光効率のより良好な熱的安定性を提供することができ、または言いかえれば、高温でより安定した発光効率を提供することができる。いくつかの実施形態では、これは、色の熱的安定性を改善することができ、または言いかえれば、より高温でより安定な色を提供することができる。いくつかの実施形態では、発光セラミックは、200℃で第1の発光効率および25℃で第2の発光効率を有し、第1の発光効率は、第2の発光効率の少なくとも約80%、82%、85%、87%または代わりに90%である。いくつかの実施形態では、これらの発光効率は、発光セラミックのピーク放射波長で決定される。特定の値は、蛍光体材料および活性剤濃度によって変化してもよい。いくつかの実施形態では、Ceでドープされたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG:Ce)を含む発光セラミックの発光効率は、約450〜470nmで、または代わりに約460nmでセラミックを照射し、約500〜600nmで、約510〜550または代わりに約530nmで発光を測定することによって決定される。
【0017】
発光セラミックは、透明または半透明であってもよい。しかし、場合によっては、空気の細孔などの発光セラミック中の小さな欠陥は、発光ダイオードからの光の後方散乱損失を引き起こす可能性がある。通常、発光セラミック材料中の欠陥の数は少なく、後方散乱損失は最小である。しかし、場合によっては、欠陥の数が少ない可能性があるので、セラミックにおいて一貫した散乱レベルを得ることが困難である可能性がある。このように、いくつかの実施形態では、さらなる欠陥が加えられる可能性があり、それは散乱を増大させる可能性があるが、あるセラミックから他のセラミックに散乱のより良好な一貫性を提供することが可能である。いくつかの実施形態では、発光セラミックの約800nmで測定された全光線透過率は、約50%以上、または代わりに約60%〜約70%、または代わりに約80%である。いくつかの実施形態では、さらなる散乱が、空気細孔密度または異種の結晶相成長(非多結晶相材料)を制御することによって提供されてもよい。いくつかの実施形態では、発光セラミックは、さらに、第2の成分、例えば、少なくとも第2のセラミック材料を含む。いくつかの実施形態では、第2のセラミック材料は、イットリウム・アルミニウム・ガーネット粉末;イットリウム、アルミニウム、酸素、および/またはセリウムを含む非晶質粉末;YAlO:Ce;Al粉末;アルミナ;イットリア;および酸化イットリウム・アルミニウムの少なくとも1つから選択される。
【0018】
本明細書に開示された発光セラミックスを準備するために適用されてもよい技術分野において一般的に公知の多数の方法がある。いくつかの実施形態では、発光セラミックスは、成形されたセラミック圧粉体の準備を含めて、一般的に公知のセラミック体の製造手順などの方法によって準備される。いくつかの実施形態では、ポリマー系バインダ材料および/または融剤(SiOおよび/またはMgOなど)、分散剤および/または溶媒が適切に添加されたセラミックス原料粉末を使用する従来の成形セラミック成形体製造方法が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、粒子サイズは重要である可能性がある。例えば、粒子サイズが大きくなりすぎる場合には、大きな粒子は高い焼結温度でさえ互いに容易に凝集または融解しない可能性があるため、所望の高密度セラミックを達成することが困難になる可能性がある。さらに、増大した粒子サイズは、セラミック層中の空気細孔の数を増大させる可能性がある。他方では、より小さなナノサイズの粒子は、互いに融解させる増大した能力を有している可能性があり、高密度および空気細孔がないセラミック元素をもたらす可能性がある。いくつかの実施形態では、発光セラミックスを準備するために使用される原料粉末は、平均粒子径が約1000nm以下または代わりに約500nm以下であるナノサイズ粒子であってもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、バインダ樹脂、分散剤、および/または溶媒が、混合および/または成形の間に原料粉末に添加されて、製造工程を促進してもよい。いくつかの実施形態では、混合工程は、乳鉢および乳棒、ボールミル粉砕機、ビーズ粉砕機などの装置を使用してもよい。いくつかの実施形態では、成形工程は、単純型成形、一軸成形、熱間等静圧圧縮成形(HIP)、冷間等静圧圧縮成形(CIP)などの方法を利用する。いくつかの実施形態では、セラミックの層の厚さを制御するために、制御された多量の原料粉末が型に入れられ、その後に圧力を加える。いくつかの実施形態では、スラリー溶液のスリップキャストが、成形されたセラミック圧粉体を作製するために利用することができる。いくつかの実施形態では、発光セラミックは、多層セラミックコンデンサ製造工程で広く使用されるようなテープ・キャスティング方法によって準備された柔軟なセラミックグリーンシートを使用することによって準備されていてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、成形されたセラミック素地は、空気などの酸素雰囲気中で熱処理されて、バインダ樹脂または他の残留物を取り除いてもよい。熱処理は、バインダ樹脂の分解が開始する温度より高いが、サンプルの表面上の気孔が封鎖される温度より低いいかなる温度で実行されてもよい。いくつかの実施形態では、熱処理は、約10分から約100時間の範囲の時間、500℃〜1000℃の範囲の温度での加熱を含んでいてもよい。条件は、バインダ樹脂分解速度に依存し、セラミック素地のそりおよび/または変形を防ぐために調節されてもよい。
【0021】
次に、いくつかの実施形態では、焼結が、制御された雰囲気下で行なわれて、空隙のない発光セラミックスを提供してもよい。焼結温度領域は、焼結されるセラミック材料、原料粉末の平均粒子サイズ、およびセラミック圧粉体の密度に依存する。セラミックがYAG:Ceを含むいくつかの実施形態では、焼結温度は、約1450℃〜約1800℃の範囲にあってもよい。いかなる適切な焼結周囲条件がいくつかの実施形態で使用されていてもよい一方、焼結周囲条件は、真空;ヘリウム、アルゴン、および窒素などの不活性ガス;または水素や水素と不活性ガスの混合物などの還元ガスであってもよい。
【0022】
本明細書に開示された発光セラミックスを含む発光装置は、光を放射するいずれかの装置であってもよい。1つの実施形態では、発光装置は、発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、または無機エレクトロルミネセント素子(IEL)であってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、発光セラミックスは、青色LEDに実装されて、より白く見える光を放射する装置を生じてもよい。図1は、そのような装置の構造のいくつかの例を示す。この装置では、青色LED5は、基板1に固定されており、発光セラミック10は、青色LED5がセラミック10と基板1の間にあるように位置する。青色LED5およびセラミック10は、樹脂15によって封入され、それは、基板1に取り付けられている。セラミック10の形状は限定されない一方、セラミック10のための形状の2、3の例が、平面プレート(図1a)、凸状(図1b);凹状(図1c)、およびテクスチャード加工プレート(図1d)である。
【0024】
いくつかの実施形態は、さらなる発光セラミックを含む。例えば、1つの実施形態が図2に示されており、基板1に固定された青色LED5を有する。赤色発光セラミック11は、青色LED5が赤色発光セラミック11と基板1との間にあるように位置する。黄色発光セラミック13が、赤色発光セラミック11によって放射され、または赤色発光セラミック11を通る光が次いで黄色発光セラミック13を通るように、赤色発光セラミック11の上方に配置されている。青色LED5、赤色発光セラミック11、および黄色発光セラミック13が樹脂15によって封入され、基板1に取り付けられている。
【0025】
いくつかの実施形態では、さらなる発光セラミックは、粉末形態である。図3は、そのような装置の構造の例を示す。この装置では、青色LED5は、基板1に固定され、黄色発光セラミック13は、青色LED5が黄色発光セラミック13と基板1との間にあるように位置する。青色LED5および黄色発光セラミック13は、樹脂15によって封入され、基板1に取り付けられている。樹脂15内では、粉末形態12の赤色発光セラミックは、黄色発光セラミック13によって放射された、または黄色発光セラミック13を通る光が、その後、粉末形態12の赤色発光セラミックを通るように、黄色発光セラミック13上方に位置する。
【0026】
いくつかの実施形態では、多数のLEDが発光装置に組み入れられていてもよい。例えば、図4に示された1つの実施形態は、基板1に固定されたいくつかの青色LED5を有する。この実施形態における発光セラミック10は、青色LED5がすべて基板1と発光セラミック10との間に位置するように構成されている。青色LED5および発光セラミック10は、樹脂15によって封入されており、基板1に取り付けられている。
【0027】
他の実施形態では、青色LED5および発光セラミック10を含む複合放射ユニットが、基板1上に実装されている。例えば、図5に示された他の実施形態が、基板1に固定されたいくつかの青色LED5を有する。多数の発光セラミックス10が、1つの青色LED5が基板1と発光セラミックス10の1つとの間に位置するように各々位置する。発光セラミックス10および青色LED5は、樹脂15によって封入されており、基板に取り付けられている。
【0028】
いくつかの実施形態では、配列型放射ユニットが発光装置を形成するために組み立てられてもよい。図6に表されるように、配列された青色LED5が基板1に実装される。対応する配列された蛍光体透光性セラミックス10が、カプセル材料樹脂15内に蛍光体透光性セラミックスプレートを埋め込むことによって形成されている。一致する配列された蛍光体透光性セラミックスプレートおよび青色LEDが次いで組み合わされて、白色光を放射する発光装置を形成する。
【0029】
実施例1
誘導結合RF熱プラズマ熱分解を使用することによる原料粒子の準備
【0030】
硝酸イットリウム(III)六水和物(0.5988mol、229.346g、純度99.9%、Sigma−Aldrich)、硝酸アルミニウム九水和物(1.0mol、375.14g、純度99.97%、Sigma−Aldrich)、および硝酸セリウム(III)六水和物(0.0012mol、0.521g、純度99.99%、Sigma−Aldrich)を、脱イオン水1000mlに溶解した。この実施例において、Ceドーピング量は0.2mol%であった。
【0031】
この1.6Mの前駆体溶液を、液体ポンプを使用して霧化プローブ経由でプラズマ反応チャンバに輸送した。
【0032】
堆積実験は、3.3MHzで動作するRF誘導プラズマトーチ(TEKNAPlasma System社、PL−35[カナダ、ケベック州])で行った。RF発生プレートの電力は12〜15kWの範囲であった。反応物質の注入を、ラジアル霧化プローブ(TEKNAPLASMA SYSTEM社、SDR−772)を使用して行った。堆積された粒子の結晶相を、Rigaku Miniflex(Rigaku Americas、米国、テキサス州、ウッドランズ)(CuKα)で得られたX線回折(XRD)スペクトルを使用して調査した。得られたサンプルの結晶相は、非晶質およびイットリウム・アルミニウム・ペロブスカイト(YAP)の混合物と同定された。
【0033】
Micrometriticsの型番Gemini2365ガス収着計(米国、ジョージア州、ノークロス)により得られたデータに基づいて、BET表面積測定から平均粒径(Dave)を求めた。サンプルについて得られたDaveは、87nmであった。得られた粉末は、次いで、水中で3mmのイットリア安定化ジルコニアボールを使用して、遊星ボールミルで解凝集された。得られた粉末は、H/N=3%/97%混合物ガス環境下で2時間1000℃で予めアニールされた。XRDは、純粋相YAG構造を示し、BET測定によって得られたDaveが103nmであった。
【0034】
発光セラミックサンプルの準備
上記準備された原料粉末(4g、Dave=103nm)、ポリ(ビニルブチラール−コ−ビニルアルコール−コ−酢酸ビニル)(0.21g、平均Mwが90,000〜120,000の粉末、Sigma−Aldrich)、ヒュームドシリカ粉末(0.012g、CAB−O−SIL(登録商標)HS−5、CabotCorporation、米国、イリノイ州、タスコラ)、およびメタノール10mlが、ボールミルによって混合された。ドライヤで高温の空気を吹き付け、乳棒を動かし続けることによって、メタノールを完全に除去して、乾燥粉末を得た。乾燥粉末(400mg)を、13mmの直径を有するダイセット(製品番号:0012−6646、3mm KBr Die Set、International Crystal Laboratories,Inc、米国、ニュージャージー州、ガーフィールド)へと広げ、その後に油圧プレスを用いて5000psiの圧力を加えた。その結果生じるセラミック圧粉体を、バインダ樹脂を取り除くために空気中で800℃で1時間加熱処理した(加熱速度は4℃/分である)。
【0035】
セラミック成形体を、真空で1600℃、5時間焼結した(加熱速度は2℃/分であった)。厚さが約1mmの黄色の透光性YAG:Ceセラミックディスクを得た。
【0036】
実施例2
硝酸塩前駆体の組成を変更することによって、Ceドーピング量を0.2mol%から0.05mol%に変更した以外は実施例1の基本手順を繰り返した。黄色の透光性YAG:Ceセラミックディスクを得た。セラミックディスクの色は、実施例1において得られたサンプルと比較して、わずかに淡黄色であった。
【0037】
実施例3
硝酸塩前駆体の組成を変更することによって、Ceドーピング量を0.2mol%から0.4mol%に変更した以外は実施例1の基本手順を繰り返した。黄色の透光性YAG:Ceセラミックディスクを得た。セラミックディスクの色は、実施例1において得られたサンプルと比較して、わずかに濃かった。
【0038】
実施例3A
硝酸イットリウム(III)六水和物(0.5912mol、226.449g、純度99.9%、Sigma−Aldrich)、硝酸ガドリニウム(III)六水和物(0.0189mol、8.553g、純度99.99%、Sigma−Aldrich)、硝酸アルミニウム九水和物(1.0mol、375.14g、純度99.97%、Sigma−Aldrich)、および硝酸セリウム(III)六水和物(0.0012mol、0.521g、純度99.99%、Sigma−Aldrich)を、脱イオン水1000mlに溶解した以外、実施例1の基本手順を繰り返した。この実施例において、イットリウム量は97.8mol%であり、ガドリニウム量は2.0mol%であり、Ceドーピング量は0.2mol%であった。黄色の透光性Y/Gdアルミニウム・ガーネット:Ceセラミックディスクを得た。セラミックディスクの色は、実施例1において得られたサンプルと比較してわずかに淡黄色だった。
【0039】
比較例1
硝酸塩前駆体の組成を変更することによって、Ceドーピング量を0.2mol%から0.8mol%に変更した以外は実施例1の基本手順を繰り返した。黄色の透光性YAG:Ceセラミックディスクを得た。セラミックディスクの色は、実施例1において得られたサンプルと比較して、濃かった。
【0040】
比較例2
硝酸塩前駆体の組成を変更することによって、Ceドーピング量を0.2mol%から2.0mol%に変更した以外は実施例1の基本手順を繰り返した。黄色の透光性YAG:Ceセラミックディスクを得た。セラミックディスクの色は、実施例1において得られたサンプルと比較して、濃かった。
【0041】
比較例3
硝酸塩前駆体の組成を変更することによって、Ceドーピング量を0.2mol%から5.0mol%に変更した以外は実施例1の基本手順を繰り返した。黄色の透光性YAG:Ceセラミックディスクを得たが、より低い透光性を示した。セラミックディスクの色は、実施例1において得られたサンプルと比較して、はるかに濃かった。
【0042】
比較例4
約6.6μmの中央値の粒子サイズを有する市販のYAG:Ce蛍光体粉末(Kasei Optonix社、P46−Y3[日本国、神奈川県、小田原市])を、13mmの直径を有するダイセット(製品番号:0012−6646、3mm KBr Die Set、International Crystal Laboratories,Inc)へと広げ、その後に油圧プレスを用いて5000psiの圧力を加えた。約1mmの厚さのYAG:Ce蛍光体粉末錠剤を得た。
【0043】
実施例4
(33.81g、99.99%)、Al(25.49g、99.99%)、CeO(0.1033g、99.9%)、および0.5gのテトラエチル・オルトシリケート(TEOS、99.99%、Sigma−Aldrich)を、メタノール中で遊星ボールミルによって混合した。ポリ(ビニルブチラール−コ−ビニルアルコール−コ−酢酸ビニル)(2.5g、平均Mwが90,000〜120,000の粉末、Sigma−Aldrich)を、次いでバインダとして添加した。この実施例において、Ceドーピング量は、約0.2mol%であった。
【0044】
ドライヤで高温の空気を吹き付け、乳棒を動かし続けることによって、メタノールを完全に除去して、乾燥粉末を得た。乾燥粉末(400mg)を、13mmの直径を有するダイセット(製品番号:0012−6646、3mm KBr Die Set、International Crystal Laboratories,Inc)へと広げ、その後に油圧プレスを用いて5000psiの圧力を加えた。次いで、得られたセラミックス圧粉体を、バインダ樹脂を取り除くために空気中で800℃で1時間、加熱処理した(加熱速度は4℃/分である)。
【0045】
セラミック成形体を、次いで、真空で1700℃、5時間焼結した(加熱速度は2℃/分であった)。厚さが約1mmの黄色の透光性YAG:Ceセラミックディスクを得た。
【0046】
温度消光特性の評価
積分球、光源、モノクロメータ、光ファイバ、および温度制御可能サンプルホルダなどの関連光学部品とともに大塚電子社MCPD7000多チャンネル光検出器システムで温度消光測定を行った。
【0047】
得られた発光セラミックディスクまたは粉末錠剤を、モノクロメータを通った後に、460nmでXeランプ(150W、L2274)で照射した。発光スペクトルを、積分球を使用することによって得た。この測定を、同じ測定条件を維持しながら25℃〜200℃の範囲にわたって25℃ずつ行った。放射スペクトルのピーク値は、25℃の値によって正規化し、次いで、表1にまとめた。
【表1】

【0048】
実施例5
実施例1では、より薄い発光セラミックディスクを、前記乾燥粉末95mgを13mmの直径の同じダイセットへと広げることによって準備した。真空で1600℃、5時間焼結した後、厚さが約240μmの黄色の透光性YAG:Ceセラミックディスクを得た。
【0049】
得られた発光セラミックディスクの全光線透過率を、図7に示す光学構成を使用して測定した。図7は、上記のように準備された発光セラミック45を介して全光線透過率を測定するために使用される装置の概略図を示す。積分球20を、散乱光を含む透過光線50をすべて集めるために使用する。バッフル25は、検出器30と球体20への入口との間に介在されており、入射光線40による検出器30への直接の衝突を防止する。後方散乱光35は、積分球に送られず、したがって、検出器30によって検出できない。発光セラミックプレート45が、実質的空気細孔や欠陥を含む場合には、全光線透過率は低い傾向がある。入射光線40の波長が焼結されたセラミックプレート45を作製するために使用される蛍光体材料の吸収範囲と重なる場合には、入射光線が蛍光体吸収によってほとんど消散されるので、透過率は測定されない。したがって、全光線透過率測定を、発光セラミックが衝突光を吸収しない波長を選択することによって行った。
【0050】
積分球、光源、光ファイバ、およびサンプルホルダなどの関連光学部品とともに大塚電子社MCPD7000多チャンネル光検出器システムを用いて、図7の測定システムを構成した。800nmの波長で得られた全光線透過率は、73.9%であった。
【0051】
セラミックディスクを、ダイヤモンドカッターを使用することによって、約1.5mm×1.5mmのサイズに注意深く切断した。小さなセラミックディスクを下記手順によって青色LEDチップに実装した。一体成型エポキシ樹脂(日東電工株式会社、NT8080)をカプセル材料樹脂として使用した。非常に少量のエポキシ樹脂をトゥースピックを使用することによってLEDチップ上に置いた。次いで、蛍光体ディスク片をLEDチップ上に注意深く実装し、続いて135℃で5時間硬化する。セラミックディスクを備えたLED装置を駆動し、白色放射が観察された。
【0052】
比較例5
一体成型エポキシ樹脂(0.4g)を、市販のYAG:Ce蛍光体粉末(0.6g、Kasei Optonix社、P46−Y3)と混合した。混合溶液を、実施例5で使用した同じタイプの青色LEDチップ上に実装し、続いて、135℃で30分間一時的に硬化した。放射色が白ではなく黄色がかっていたので、蛍光体を分散したエポキシ樹脂層を、放射色が白くなるまで、サンドペーパーを使用することによって注意深くこすった。これに続いて135℃で5時間、十分に硬化した。
【0053】
市販のYAG:Ce蛍光体粉末を備えたLED装置を駆動し、白色放射が観察された。
【0054】
比較例6
プラズマ処理(Dave=87nm)直後に得られた実施例1に記載されたものに類似するナノサイズ粉末を、H/N=3%/97%混合ガス環境下で1400℃で2時間アニールした。得られた粉末は単一YAG相を示した。色は黄色であったが、比較例6で使用される市販のYAG:Ce粉末よりもはるかに青白かった。
【0055】
一体成型エポキシ樹脂(0.5g)を、YAG:Ce粉末(0.5g)と混合した。比較例6に記載された同じ方法によって、YAG:Ce蛍光体粉末を備えたLED装置を駆動し、白色放射が観察された。
【0056】
LED性能テスト
積分球、光ファイバ、およびDC光源などの関連光学部品とともに大塚電子社MCPD7000多チャンネル光検出器システム(日本国、大阪)を使用して各LEDに関する白色光放射スペクトルを得た。20mAの駆動状態下で放射スペクトルを各LED装置に関して得た。
【0057】
図8は、20mAの駆動状態での各LED装置の放射スペクトルを示す。得られたデータを正規化することなくスペクトルを得た。その後、駆動電流は、100mA、200mA、300mA、400mA、および500mAで段階的に増加した。LEDの温度を安定させることを可能にするために、放射スペクトルは、駆動電流を変更した後の約1分後に得られた。異なる駆動状態で実施例5の装置の放射色の変化は、比較例5の装置ほど敏感でなかった。
【0058】
実施例5および比較例5の駆動電流上のCIE色度変化を表Aに付与している。
【表2】

【図1a】

【図1b】

【図1c】

【図1d】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Al−x12
(式中、Aは、Y、Gd、La、Lu、Tb、又はそれらの組み合わせであり;xは、約0.0001〜約0.005の範囲であり;Bは、Al、Ga、In、又はそれらの組み合わせであり;Eは、Ce、Eu、Tb、Nd、又はそれらの組み合わせである)
によって表わされる多結晶蛍光体を含み、
約420nm〜約480nmの範囲に最大吸収波長を有する、発光セラミック。
【請求項2】
約500nm〜約750nmの範囲に最大放射波長を有する光を放射する、請求項1のセラミック。
【請求項3】
前記セラミックは、200℃で第1の発光効率および25℃で第2の発光効率を有し、第1の発光効率は、第2の発光効率の少なくとも約80%である、請求項1又は2に記載のセラミック。
【請求項4】
Eは、Ceを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミック。
【請求項5】
Aは、YおよびGdを含み、Aの約0〜約0.05のモル%は、Gdである、請求項1〜4のいずれかに記載のセラミック。
【請求項6】
前記蛍光体が、さらに、式(Y1−(x+y)GdCe12
(式中、xは、約0.0001〜約0.005の範囲にあり、yは、約0.005〜約0.05の範囲にある)、
によって表される、請求項1〜5のいずれかに記載のセラミック。
【請求項7】
xは、約0.0001〜約0.003の範囲にある、請求項1〜6のいずれかに記載のセラミック。
【請求項8】
前記蛍光体が、さらに、式Y0.978Gd0.02Ce0.002Al12によって表わされる、請求項1〜7のいずれかに記載のセラミック。
【請求項9】
前記多結晶蛍光体と異なる第2の成分をさらに含む、請求項1〜8のいずれかに記載のセラミック。
【請求項10】
前記第2の成分は、アルミナ、イットリア、および酸化イットリウム・アルミニウムから選択される、請求項9に記載のセラミック。
【請求項11】
約420nm〜約480nmの範囲に最大放射波長を有する発光ダイオードと、
請求項1に記載の発光セラミックと、
を含み、
発光セラミックは、発光ダイオードから放射された光の少なくとも一部を受け、約500〜約700nmの範囲に最大放射波長を有する光に変換するために位置する、発光装置。
【請求項12】
前記発光セラミックは、約50μm〜約5mmの範囲の厚さを有する、請求項11に記載の発光装置。
【請求項13】
前記発光セラミックの全光線透過率は、約50%以上である、請求項11又は12に記載の発光装置。
【請求項14】
Eは、Ceを含み、Aは、Yを含み、Bは、Alを含む、請求項11〜13のいずれかに記載の発光装置。
【請求項15】
xは、約0.0001〜約0.002の範囲にある、請求項11〜14のいずれかに記載の発光装置。
【請求項16】
Eは、Ceであり、Aは、YおよびGdを含み、Bは、Alを含む、請求項11〜15のいずれかに記載の発光装置。
【請求項17】
蛍光体は、さらに、式(Y1−(x+y)GdCe12
(式中、xは、約0.0001〜約0.005の範囲にあり、yは、約0.005〜約0.05の範囲にある)
によって表わされる、請求項11〜16のいずれかに記載の発光装置。
【請求項18】
少なくとも第2のセラミックの成分をさらに含む、請求項11〜17のいずれかに記載の発光装置。
【請求項19】
第2の成分は、アルミナ、イットリア、および酸化イットリウム・アルミニウムから選択される、請求項19に記載の発光装置。



【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−528920(P2012−528920A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513986(P2012−513986)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/036224
【国際公開番号】WO2010/141291
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】