説明

発光ダイオード照明回路及び照明装置

【課題】精度の高い短絡故障検出が可能な発光ダイオード照明回路及び照明装置を提供する。
【解決手段】電力により発光する照明装置510に備えられた発光ダイオード照明回路501は、夫々複数の発光ダイオードを有するLED回路502a〜502dが設けられた発光部502と、LED回路502a〜502dに夫々直列に接続されLED回路502a〜502dの両端電圧の低下を検出する電圧検出回路を有する故障検出部505と、電圧検出回路によるLED回路502a〜502dの両端電圧の低下の検出に基き警報を発する故障警報部506とを備え、LED回路502a〜502dの故障を検出すると故障警報部6が警報を発するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードの短絡故障を検出する機能を有する発光ダイオード照明回路及び該回路を備えた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道等の室内灯具として、光源として発光ダイオードが多数接続されて構成された発光ダイオード照明装置がある。このような発光ダイオード照明装置は、発光ダイオードに短絡モードの故障が発生した場合には、故障した発光ダイオードのみでなく他の発光ダイオードに流れる電流も増大するため、当初に短絡故障した発光ダイオード以外の発光ダイオードや駆動電流供給部等の故障を誘発する虞があった。例えば、当初に短絡故障した発光ダイオードに直列に接続されている他の発光ダイオード等に、過電流が流れて破損する可能性がある。
【0003】
これに対し、特許文献1によれば、ダイオード破損によって内部インピーダンスによる電力消費が無くなることからダイオードの発熱が無くなる特性を利用し、回路中に設けられたダイオードの温度上昇の有無を温度センサを用いて監視してダイオード故障を検知する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−327120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のダイオード故障検出回路によれば、電圧または電流を直接検出しないので、LED故障以外の要因で温度低下が発生した場合にも故障と判断される可能性があり、故障検出の精度が低かった。また、温度センサのみによる検出では、断線故障であるのか、短絡故障であるのかが特定できなかった。短絡故障の場合には、上記のように過電流の発生によって他の発光ダイオードなどにも故障が派生する虞があるため、短絡故障を確実に検出することが求められていた。
【0006】
上記の実情を鑑み、本発明は、短絡故障を高精度で検出する故障検出回路を備えた発光ダイオード照明回路及び該回路を備えた照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、発光ダイオードを光源とする照明装置に設けられる発光ダイオード照明回路であって、直列または並列に接続される複数の発光ダイオードに駆動電流を供給するLED回路を複数備えた発光部と、前記複数のLED回路に流れる各駆動電流が所定の故障電流値以上であるか否かを前記複数のLED回路ごとに検出する故障検出部と、前記各駆動電流の少なくとも一つが前記故障電流値以上であると前記故障検出部により検出された場合には所定の警報動作を行う故障警報部と、を具備する発光ダイオード照明回路である。
【0008】
本発明によると、故障検出部により、複数のLED回路に流れる各駆動電流が所定の故障電流値以上であるか否かを複数のLED回路ごとに検出し、各駆動電流の少なくとも一つが故障電流値以上であると故障検出部により検出された場合には故障警報部によって所定の警報動作を行う。
【0009】
これにより、LED回路中のいずれかの発光ダイオードに短絡故障が生じた場合、LED回路の内部インピーダンスが低下して駆動電流が増加し故障電流値以上になると故障警報部によって所定の警報動作を行うことから、このような短絡故障の検出が可能となる。従って、短絡故障発生を高い精度で検出することができる。
【0010】
また、本発明の発光ダイオード照明回路は、前記故障検出部は、前記駆動電流が流れるように前記LED回路に直列に接続される第一抵抗と、前記駆動電流により前記第一抵抗に生じる電圧を取り出し可能に前記第一抵抗の高電位側に接続される第二抵抗と、前記駆動電流に比例しかつ前記第一抵抗と前記第二抵抗とにより定まる検出電圧が所定の電圧値以上であるか否かを検出する検出手段と、を前記複数のLED回路ごとに備え、前記検出手段は、前記検出電圧が前記所定の電圧値以上である場合には前記駆動電流が前記故障電流値以上であることを検出する、構成を採り得る。
【0011】
この構成によると、検出手段により、駆動電流に比例しかつ第一抵抗と第二抵抗とにより定まる検出電圧が所定の電圧値以上であるか否かを検出し、検出電圧が所定の電圧値以上である場合には駆動電流が故障電流値以上であることを検出する。LED回路中のいずれかの発光ダイオードに短絡故障が生じた場合、LED回路の抵抗値が低下して駆動電流が増加すると、駆動電流に比例しかつ第一抵抗と第二抵抗とにより定まる検出電圧が増加するので、検出電圧が所定の電圧値以上である場合には駆動電流が故障電流値以上であることを検出する。これにより、第一抵抗及び第二抵抗の抵抗値の組み合わせにより検出電圧を定めることができるので、何個の発光ダイオードが短絡故障をしたら故障警報部を動作させるのかなどをこれらの抵抗の組み合わせによって容易に設定することができる。
【0012】
また、本発明の発光ダイオード照明回路によれば、前記検出手段は、制御端子、入力端子および出力端子を備え、前記制御端子に入力される前記検出電圧が所定の閾値電圧以上である場合には前記入力端子と前記出力端子と間を導通状態にし、前記検出電圧が所定の閾値電圧未満である場合には前記入力端子と前記出力端子と間を遮断状態にする半導体スイッチング素子である、構成を採り得る。
【0013】
ここで、半導体スイッチング素子がバイポーラ・トランジスタであれば、「制御端子」はベースを意味し、「入力端子」はコレクタを意味し、「出力端子」はエミッタを意味する。また半導体スイッチング素子が電界効果トランジスタであれば、「制御端子」はゲートを意味し、「入力端子」はドレインを意味し、「出力端子」はソースを意味する。半導体スイッチング素子の種類が限定されることはなく、任意に選択してもよい。
【0014】
この構成によると、検出手段は、制御端子、入力端子および出力端子を備えた半導体スイッチング素子で、制御端子に入力される検出電圧が所定の閾値電圧以上である場合には入力端子と出力端子との間を導通状態にし、検出電圧が所定の閾値電圧未満である場合には入力端子と出力端子との間を遮断状態にする。LED回路中のいずれかの発光ダイオードに短絡故障が生じた場合、LED回路の内部インピーダンスが低下して駆動電流が増加すると、駆動電流に比例しかつ第一抵抗と第二抵抗とにより定まる検出電圧も増加するので、この検出電圧が所定の閾値電圧以上であれば入力端子と出力端子と間を導通状態にして「駆動電流が故障電流値以上であること」を検出する。これにより、駆動電流が故障電流値以上であるか否かを半導体スイッチング素子のオンオフ動作により検出することができるので、当該半導体スイッチによって故障警報部の警報動作を制御することができる。
【0015】
また、本発明の発光ダイオード照明回路によれば、前記故障警報部は、警報状態を表示する警報表示LEDを備え、前記所定の警報動作としてこの警報表示LEDを点灯させる、構成を採り得る。
【0016】
この構成によると、故障警報部が動作すると、警報表示LEDが点灯するので、簡素な構成によって視覚的に認識可能に警報を行うことができる。
【0017】
さらに、本発明の発光ダイオード照明回路によれば、前記駆動電流を供給する駆動電流供給部に接続されて前記駆動電流を減少させる制御信号を出力可能なフォトカプラを備え、前記所定の警報動作としてこのフォトカプラから前記制御信号を出力させる、構成を採り得る。
【0018】
この構成によると、故障警報部が動作すると、駆動電流を減少させる制御信号がフォトカプラから出力されるので、増加した駆動電流を減少させることで、正常な発光ダイオードに過電流が流れることを防止することができる。
【0019】
本発明の発光ダイオード照明回路を具備する照明装置によれば、LED回路のいずれかの発光ダイオードに短絡故障が生じると、LED回路の内部インピーダンスが低下して駆動電流が増加する。これにより、増加した駆動電流が故障電流値以上になると故障警報部によって所定の警報動作を行うことから、このような短絡故障の検出が可能となる。
【0020】
従って、照明装置の光源である発光ダイオードに短絡故障が生じた場合には、照明装置に組み込まれた故障検出部が故障を検出し、検出結果に基き故障警報部が故障警報動作を行うことによって、比較的早期に照明装置の修理や交換の必要性を示唆できるので、短絡故障で生じた過電流によってさらに故障被害が拡大する虞を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、故障検出部によって、複数のLED回路に流れる各駆動電流が所定の故障電流値以上であるか否かを複数のLED回路ごとに検出することにより、LED回路に含まれる発光ダイオードの短絡故障を高い精度で検出することが可能な発光ダイオード照明回路及び照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】発光ダイオード照明装置の構成を示すブロック図である。
【図2】発光ダイオード照明回路の主要部を示す回路図である。
【図3】本発明の第二の実施形態の主要部を示す回路図である。
【図4】LED回路周辺の構成を示す回路図である。
【図5】本発明の第三の実施形態の主要部を示す回路図である。
【図6】本発明の第四の実施形態の主要部を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の第一の実施形態である照明装置10について、図1及び図2に基き説明する。図1は、発光ダイオード照明装置の構成を示すブロック図であり、図2は、LED照明装置の発光ダイオード照明回路の主要部を示す回路図である。
【0024】
以下、図1に基き説明する。照明装置510は、発光ダイオード照明回路501を備えており、鉄道車両の客室に設置される照明装置である。発光ダイオード照明回路501は、LED回路502a,502b,502c,502dを並列に備えた発光部502と、発光部502に対して電源線路514で接続されており発光部502に所定の直流電流を供給する駆動電流供給部503と、発光部502及び駆動電流供給部503に接続されておりLED回路502a〜502dに故障が生じたことを検出する故障検出部505と、LED回路502a〜502dに並列に接続されており故障検出部505の検出結果に基いて故障発生を報知する故障警報部506とを備えている。また、駆動電流供給部503には、発光ダイオード照明回路501に対して外部から電力を供給する電源504が接続されている。
【0025】
図2に示すように、LED回路502aは、直列に接続された4個の発光ダイオードD1〜D4によって構成されている。LED回路502b〜502dの構成は、LED回路502aと同様である。従って、発光部502は、各々4個の発光ダイオードが直列に接続された4つのLED回路502a〜502dが並列に接続されて構成されている。
【0026】
故障検出部505は、相互に並列に接続された電圧検出回路505a〜505dによって構成されている。電圧検出回路505aは、LED回路502aに対して直列に接続される第一抵抗601と、LED回路502aと第一抵抗601との間に挿入された結節点602で分岐し、第一抵抗601に対して並列にゲートが接続されたNチャネルMOSFET(検出手段、半導体スイッチング素子)であるFET604と、FET604及び結節点602の間に配設された第二抵抗603とを備えている。同様に、電圧検出回路505bは、第一抵抗611と、結節点612で分岐して第一抵抗611に対して並列にゲートが接続されたFET614と、FET614及び結節点612の間に配設された第二抵抗613とを備えている。また、電圧検出回路505cは、同様に第一抵抗621と、結節点622で分岐して第一抵抗621に対して並列に接続されたFET624と、FET624及び結節点622の間に配設された第二抵抗623とを備えている。また、電圧検出回路505dは、同様に第一抵抗631と、結節点632で分岐して第一抵抗631に対して並列に接続されたFET634と、FET634及び結節点632の間に配設された第二抵抗633とを備えている。
【0027】
LED回路502a〜502dには、故障検出部505の電圧検出回路505a〜505dが夫々接続されている。LED回路502aと電源線路514との間に電圧検出回路505aが設けられており、LED回路502bと電源線路514との間に電圧検出回路505b、LED回路502cと電源線路514との間に電圧検出回路505c、LED回路502dと電源線路514との間に故障検出回路505dが夫々設けられている。FET604のゲートは第二抵抗603に接続されており、FET604のドレインは、信号線路521を介して故障警報部506に接続され、FET604のソースは電源線路514に接続されている。LED回路502b〜502dも、LED回路502aと同様であり、FET614のゲートは第二抵抗613に接続されており、FET614のドレインは、信号線路521を介して故障警報部506に接続され、FET614のソースは電源線路514に接続されている。FET624のゲートは第二抵抗623に接続されており、FET624のドレインは、信号線路521を介して故障警報部506に接続され、FET624のソースは電源線路514に接続されている。FET634のゲートは第二抵抗633に接続されており、FET634のドレインは、信号線路521を介して故障警報部506に接続され、FET634のソースは電源線路514に接続されている。
【0028】
なお、第二抵抗603,613,623,633は、いずれも、第一抵抗601,611,621,631よりも抵抗値が十分大きく、駆動電流供給部503から定格内の直流電流が供給されてLED回路502a〜502d中の発光ダイオードが正常に機能しているときには、FET604,614,624,634は導通しないように設定されている。
【0029】
故障警報部506は、直列に接続された警報表示LED561及び電流制限抵抗562を備えており、発光部502(電源線路513)に対して信号線路521を介して接続され、電圧検出部505に対して信号線路521を介して接続されている。FET604,614,624,634のいずれかが導通して警報表示部506に電流が流れた場合には、電流制限抵抗562が電流を制限し、過電流による警報表示LED561の破損を防ぐ。
【0030】
以下、LED回路502a及び電圧検出回路505aを例に採って、電圧検出回路505aの通常の作動状態について説明する。LED回路502aが正常であるときには、駆動電流供給部503から所定の電流が供給されると、LED回路502aの両端電圧は所定の値となり、発光ダイオードD1〜D4は点灯する。このとき、第二抵抗603の抵抗値R2は、第一抵抗601の抵抗値R1よりも十分に大きく、FET604のゲートにおける電圧は、FET604が導通する閾値電圧よりも小さいため、FET604のドレイン-ソース間に電流が流れることなく、故障警報部506の警報表示LED561は点灯しない。
【0031】
次に、発光部502の発光ダイオードに短絡故障が生じた場合のLED回路502a〜502d及び電圧検出回路505a〜505dの作動状態について、LED回路502a及び電圧検出回路505aを例に採って説明する。発光ダイオードD1〜D4のいずれか1個以上に短絡故障が生じると、発光ダイオードの内部インピーダンスの低下により、当該LED回路の両端電圧が低下する。LED回路502aには電圧検出回路505aが直列に接続されており、電圧検出回路505aに流れる電流が増加する。電圧検出回路505aに流れる電流が増加すると、結節点602の電位は上昇する。FET604のゲートの電圧が所定の閾値電圧よりも大きくなると、FET604のドレインーソース間が導通して電流が流れ、故障警報部506の警報表示LED561が点灯する。
【0032】
電圧検出回路505aに流れる電流が増加し、第一抵抗601及び第二抵抗603の電圧が上昇する際に、第一抵抗601の抵抗値R1及び第二抵抗603の抵抗値R2の比に応じてFET604のゲートにおける電圧が決定される。すなわち、第一抵抗601の抵抗値R1が、第二抵抗603の抵抗値R2に比して相対的に大きくなるほど、FET604のゲートにおける電圧は上昇しやすく、閾値電圧を超えやすくなる。第一抵抗601の抵抗値R1が大きいほど、発光ダイオードD1〜D4の短絡故障を検出するための検出感度は高くなる。第二抵抗603の抵抗値R2が大きいほど発光ダイオードD1〜D4の短絡故障を検出するための検出感度は低くなる。検出感度が高いと、電流検出回路505aは、発光ダイオードの短絡故障発生に対して敏感となり、比較的少数のLEDの短絡故障発生で故障警報部506が警報を発する。一方、短絡故障を検出する検出感度が低いと、故障警報部506が警報を発するまでに発光ダイオードの故障がある程度進行することを要する。これにより、第一抵抗601と第二抵抗603の抵抗の抵抗値の比によって検出感度を予め定め、何個の発光ダイオードが短絡故障したかというLED回路502aの故障の度合いに応じて故障警報部6が警報を発するようにできる。
【0033】
LED回路502b〜502dはLED回路502aと同等であり、電圧検出回路505b〜505dは電圧検出回路505aと同等であるので、電圧検出回路505b〜505dの通常時及び短絡故障発生時の作動状態は、上記の電圧検出回路505aのそれと同様である。電圧検出回路505a〜505dは、相互に並列に備えられているので、夫々独立して作動し、直列に接続されたしED回路502b〜502dにおける短絡故障発生を検出する。
【0034】
以上のように、本発明の第4実施形態である発光ダイオード照明回路501によれば、電圧検出回路505a〜505dがLED回路502a〜502dに夫々直列に接続されており、LED回路502a〜502dを流れる電流を直接検出するため、誤って他の要因による変化を検出する虞が小さく、発光ダイオードの短絡故障の検出精度が高い。
【0035】
また、並列に設けられたLED回路502a〜502dについて、電圧検出回路505a〜505dが夫々個別に短絡故障を検出するので、電圧検出回路505a〜505dの各FETについてドレインーソース間の電流が流れているか否かを確認することで、LED回路502a〜502dのどれが故障したかを容易に特定することができる。
【0036】
また、発光ダイオード照明回路501によれば、FETが導通して故障警報部506に電流が流れると、警報表示LED561が発光して視覚的に認識可能に警報を行うことができる。
【0037】
また、照明装置510によれば、光源の発光ダイオードに短絡故障が生じた場合に、照明装置510に組み込まれた電圧検出回路505a〜505dが故障を検出し、検出結果に基き故障警報部506の警報表示LED561が点灯する。短絡故障による過電流の発生のために派生的に発光ダイオードが故障する前に、警報表示LED561の点灯で照明装置の修理や交換の必要性を示唆することで、短絡故障で生じた過電流のためにさらに故障被害が拡大する虞を防ぐことができる。また、警報表示LED561が点灯した状態でも直ちに使用停止とはならず、一時的に使用を継続することも可能である。
【0038】
さらに、発光ダイオード照明回路501は、コンピュータやIC(集積回路)を使用せず、簡素なアナログ回路で構成されているので安価にて製造可能である。また、メンテナンスにおいても検査や修理が容易である。
【0039】
また、第一抵抗601,611,621,631の抵抗値に応じて、LED回路502a〜502dの電圧低下を判定する基準値が決定されるので、第一抵抗601,611,621,631の抵抗値を調節することで警報表示LED561が点灯に至る基準値、すなわち何個のLEDが短絡故障したら警報を発するかという基準を設定することができる。これにより、LEDの特性や数に応じて、あるいは照明器具の特性に応じて、短絡故障検出の精度を適宜設定することができる。
【0040】
なお、上述した第一実施形態等では、駆動電流供給部503は所定電流を供給する定電流源であり、かつ駆動電流供給部503から駆動電流の供給を受ける発光部502は、複数のLED回路502a〜502dを備えている。このため、LED回路502aを構成する4個の発光ダイオードD1〜D4のうち、例えば発光ダイオードD3に短絡故障が生じると次のような現象が生じ得る。短絡故障をした発光ダイオードD3の内部インピーダンスがほぼゼロに低下すると、当該発光ダイオードD3を含むLED回路502aの内部インピーダンスが、他の正常なLED回路502b〜502dよりも低くなるため、LED回路502aに流れる駆動電流が増加する。すると、短絡故障をした発光ダイオードD3を含むLED回路502aの両端電圧は、駆動電流の増加に伴い上昇することになるが、当該LED回路502aは、他の正常なLED回路502b〜502dとともに互いに並列に接続されている。このため、当該LED回路502aの両端電圧は正常なLED回路502b〜502dの両端電圧と等しくなる。
【0041】
以上から、正常な発光ダイオードの順方向電圧をVf、順方向電流(=駆動電流)を1、短絡故障等を生じた異常な発光ダイオードの順方向電圧をVf'、その順方向電流を1'、LED回路2a等を構成する発光ダイオードの個数をn、短絡故障等を生じた異常な発光ダイオードの個数をm、LED回路2a等に直列に接続される第一抵抗101等の抵抗値をR1とすると、次式(1)が成立する。なお、発光ダイオードの順方向電圧Vf、Vf'や順方向電流1,1'は当該発光ダイオードの製造元等から提供されるデータシートに基づくものである。
n×Vf+R1×I = (n−m)×Vf’+R1×I’ … (1)
そして、この式(1)を変形すると、短絡故障等を生じた異常な発光ダイオードの個数mを求める次式(2)を得ることができる。
m=[n×(Vf'−Vf)+R1×(1'−1)]/Vf' … (2)
【0042】
これにより、例えば、発光ダイオードの順方向電流である駆動電流の各電流値に対応した順方向電圧の各Vf'をメモリーC等による記憶空間に格納される2次元マップとして持ち、さらに各LED回路502a〜502dを流れる異常時の駆動電流1'を夫々に検出可能な電流センサ、またはそれを電圧に変換した後の電圧センサを設けることにより、上式(2)に基づいて短絡故障等を生じた異常な発光ダイオードの個数mをマイコン等により算出することが可能となる。そして、これにより算出された個数mに基づいて、駆動電流供給部3から発光部2に供給される駆動電流の値を減少させ得るように当該駆動電流供給部3を構成することによって、短絡故障が生じた発光ダイオードの個数分だけ駆動電流を下げることで他の正常な発光ダイオードに適正電流値を超えた過電流が流れないようにすることが可能となる。これらの構成を実現するには、第一の実施形態のものに比べ、マイコン等によるロジック回路を付加する必要があるが、短絡故障のある発光ダイオードの個数まで正確に検出できるので、より一層高精度な短絡検出が可能となる。
【0043】
次に、第二実施形態である発光ダイオード照明回路530について、図3及び図4に基づき説明する。発光ダイオード照明回路530は、発光ダイオード照明回路501と同様に車両の客室に設置される照明器具のための回路である。図3に示すように、発光ダイオード照明回路530は、発光ダイオード照明回路501の発光部502に代えて発光部700を備える点を除いては発光ダイオード照明回路501と同様である。従って、図3において、図2の構成と実質的に同一の構成部分については同一符号を付して以下は発光部700についてのみ説明する。
【0044】
発光部700は、LED回路700a,700b,700c,700dが並列に接続されて構成されている。図4に示すように、LED回路700aは、各々3個の発光ダイオードが並列に接続された発光ダイオード群701〜704が、直列に接続されている。発光ダイオード群701は、発光ダイオードD11〜D13からなり、発光ダイオード群702は、発光ダイオードD21〜D23からなり、発光ダイオード群703は、発光ダイオードD31〜D33からなり、発光ダイオード群704は、発光ダイオードD41〜D43からなる。LED回路700b〜700dは、LED回路700aと同様の構成であるので説明を省略する。
【0045】
発光ダイオードD11〜D43に含まれる発光ダイオードが短絡故障した場合には、短絡故障した発光ダイオードを含むLED回路700a〜700dの両端電圧は低下する。発光部700には合計48個の発光ダイオードが備えられているのであるが、各LED回路700a〜700dに対応して電圧検出回路705a〜705dが設けられているので、48個の発光ダイオード全てではなく12個の発光ダイオードにおける電圧変化を監視すればよいので、簡素な回路構成であっても誤作動の虞が小さい。従って、発光部700の全体に対して一つの電圧検出回路が設けられている場合と比較すると、発光ダイオード照明回路530によれば、より精度良く異常電圧検出を行うことができる。
【0046】
続いて、第三の実施形態である発光ダイオード照明回路540について、図5に基づいて説明する。図5に示す発光ダイオード照明回路540は、図2を参照しながら説明した第4実施形態の発光ダイオード照明回路501のFET604,614,624,634をバイポーラ・トランジスタに置き換えたものである。このため、図5において、図2の構成と実質的に同一の構成部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
発光ダイオード照明回路540では、故障検出部640として、相互に並列に接続された電圧検出回路640a〜640dを備えている。例えば、電圧検出回路640aは、LED回路502aに対して直列に接続される第一抵抗641と、LED回路502aと第一抵抗641との間に挿入された結節642で分岐し、第一抵抗641に対して並列にベースが接続されたNPNトランジスタ(検出手段、半導体スイッチング素子)であるTR644と、TR644及び結節642の間に配設された第二抵抗643とを備えている。また、これと同様に、電圧検出回路640b,640c,640dも図略の第一抵抗、第二抵抗及びNPNトランジスタを備えている。なお、第一抵抗641は、第一の実施形態で説明した第一抵抗601と同様にLED回路502aを流れる駆動電流値によって抵抗値が設定されている。また、第二抵抗643は、MOSFETよりもバイポーラ・トランジスタの方が入力インピーダンスが低いぶん、第一の実施形態で説明した第二抵抗603よりも抵抗値が高めに設定されている。このようにバイポーラ・トランジスタによっても、第一の実施形態の故障検出部510と同様に機能する故障検出部640を構成することができる。
【0048】
さらに、本例の第四の実施形態である発光ダイオード照明回路550について、図6に基づいて説明する。図6に示す発光ダイオード照明回路550は、図1を参照しながら説明した第一の実施形態の故障警報部506から制御信号を出力し得るように構成し、当該制御信号を駆動電流供給部503に戻す、つまりフィードバック制御可能に構成したものである。このため、図6において、図1の構成と実質的に同一の構成部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
発光ダイオード照明回路550では、第一の実施形態で説明した発光ダイオード照明回路501の故障警報部506による警報表示LED561に代えて(または加えて)駆動電流を減少させる制御信号を信号線路665を介して駆動電流供給部503に出力し得るフォトカプラ660を故障警報部661として設けてもよい。この場合、フォトカプラ660の入力側660aは信号線路521を介して故障検出部505に接続されており、またフォトカプラ660の出力側660bは、信号線路665を介して駆動電流供給部503に接続されている。また、駆動電流供給部503には、当該制御信号を受けると発光部502に供給する駆動電流を所定電流値まで減少させ得る出力調整回路等を備えている必要がある。なお、図6に示す構成ではフォトカプラ660を用いているが、図2に示す警報表示LED561の発光を検出可能な光センサ(例えばフォトトランジスタやフォトダイオードあるいは硫化カドミウムセルCdS)により警報表示LED561による発光を検出しその検出信号を制御信号として信号線路165を介して駆動電流供給部3に出力するように構成してもよい。これにより、短絡故障に伴って生じる過電流を抑制し、半導体素子の破損等による被害の拡大を防ぐことができる。
【0050】
上記の第一の実施形態乃至第四の実施形態においては、いずれも4個のLED回路が並列に接続された例を示したが、これに限定されるものではなく、LED回路が3個以下、または5個以上接続されているものであってもよい。また、第二の実施形態においては発光ダイオード群は3個の発光ダイオードが並列に接続されたものを示したが、これに限定されるものではなく、発光ダイオード群に含まれる発光ダイオードの数及び接続関係は異なる構成であってもよい。また、同一構成のLED回路が複数接続されているものでなく、異なる構成のLED回路が並列に接続されていてもよい。
【0051】
また、上記の第一の実施形態乃至第四の実施形態においては、警報表示LED561を各LED回路と並行に備え、各電圧検出回路505a〜505dの検出結果を1個の警報表示LED561にて一括して表示するものを例示したが、これに限定されるものではなく、各電圧検出回路505a〜505dに対応して1個ずつ警報表示LEDを備えるようにしてもよい。これによれば、警報表示LEDとLED回路及び電圧検出回路とが1対1で対応するため、短絡故障が生じたLED回路を速やかに特定することができる。
【0052】
本例の第一の実施形態乃至第四の実施形態は、以下のような技術的思想を具現化したものである。
【0053】
(技術的思想A)発光ダイオードを光源とする照明装置に設けられる発光ダイオード照明回路であって、直列または並列に接続される複数の発光ダイオードに駆動電流を供給するLED回路を複数備えた発光部と、前記複数のLED回路に流れる各駆動電流が所定の故障電流値以上であるか否かを前記複数のLED回路ごとに検出する故障検出部と、前記各駆動電流の少なくとも一つが前記故障電流値以上であると前記故障検出部により検出された場合には所定の警報動作を行う故障警報部と、を具備する発光ダイオード照明回路。
【0054】
(技術的思想B)前記故障検出部は、前記駆動電流が流れるように前記LED回路に直列に接続される第一抵抗と、前記駆動電流により前記第一抵抗に生じる電圧を取り出し可能に前記第一抵抗の高電位側に接続される第二抵抗と、前記駆動電流に比例しかつ前記第一抵抗と前記第二抵抗とにより定まる検出電圧が所定の電圧値以上であるか否かを検出する検出手段と、を前記複数のLED回路ごとに備え、前記検出手段は、前記検出電圧が前記所定の電圧値以上である場合には前記駆動電流が前記故障電流値以上であることを検出する、技術的思想Aに記載の発光ダイオード照明回路。
【0055】
(技術的思想C)前記検出手段は、制御端子、入力端子および出力端子を備え、前記制御端子に入力される前記検出電圧が所定の閾値電圧以上である場合には前記入力端子と前記出力端子と間を導通状態にし、前記検出電圧が所定の閾値電圧未満である場合には前記入力端子と前記出力端子と間を遮断状態にする半導体スイッチング素子である、技術的思想Bに記載の発光ダイオード照明回路。
【0056】
(技術的思想D)前記故障警報部は、警報状態を表示する警報表示LEDを備え、前記所定の警報動作としてこの警報表示LEDを点灯させる、技術的思想A乃至技術的思想Cのいずれか一つに記載の発光ダイオード照明回路。
【0057】
(技術的思想E)前記故障警報部は、前記駆動電流を供給する駆動電流供給部に接続されて前記駆動電流を減少させる制御信号を出力可能なフォトカプラを備え、前記所定の警報動作としてこのフォトカプラから前記制御信号を出力させる、技術的思想A乃至技術的思想Cのいずれか一つに記載の発光ダイオード照明回路。
【0058】
(技術的思想F)発光ダイオードを光源とする照明装置であって、技術的思想A乃至技術的思想Eのいずれか一つに記載の発光ダイオード照明回路を具備する照明装置。
【0059】
なお、本発明を具現化した技術的思想において、発光ダイオード照明回路は、照明装置510のような車載照明装置以外の用途に用いることも可能である。一例を挙げると、懐中電灯やヘルメット装着の携帯式ライトに適用することができる。この場合には、一部の発光ダイオードが故障した段階で早期に故障を検出することができるため、例えば坑道内や災害場所等の危険性を伴う状況で使用中に急に機能しなくなって、照明不足のために事故を誘発するといった事態を防ぐことができる。
【0060】
また、本発明を具現化した技術的思想において、発光ダイオード照明回路は、「警報表示LEDの発光を検出する光センサと、駆動電流供給部に設けられ、光センサの検出結果に基いて前記駆動電流供給部の出力を制御する出力調整回路とをさらに具備し、前記光センサによる前記警報表示LEDの発光の検出に基き前記駆動電流供給部の直流電流出力を減少させるフィードバック制御を行う」ものとしてもよい。
【0061】
上記の構成によれば、発光ダイオードに短絡故障が生じた場合、警報表示LEDが発光したことを光センサで検出する。当該検出結果に基き、駆動電流供給部中の出力調整回路は、直流電流の出力を減少させ、過電流の発生を速やかに抑制する。これにより、短絡故障発生時に発光ダイオード照明回路の破損の進行を防ぎ、安全性を高めることができる。
【0062】
また、本発明を具現化した技術的思想において、発光ダイオード照明回路は、「発光ダイオードを光源とする照明装置に設けられる発光ダイオード照明回路であって、直列または並列に接続される複数の発光ダイオードに駆動電流を供給するLED回路を複数備えた発光部と、前記複数のLED回路に流れる電流値を検出する電流検出部と、前記複数の発光ダイオードのうち短絡故障をしている発光ダイオードの故障個数を前記各駆動電流の電流値に基づいて各LED回路ごとに算出する演算部と、前記各LED回路ごとに算出された前記故障個数に基づいて前記LED回路により前記複数の発光ダイオードに供給される前記駆動電流の電流量を前記複数のLED回路ごと制御する制御部と、を具備する」ものとしてもよい。
【0063】
上記の構成によれば、短絡故障が生じた発光ダイオードの個数分だけ駆動電流を下げることで他の正常な発光ダイオードに適正電流値を超えた過電流が流れないようにすることが可能となるので、短絡故障のある発光ダイオードの個数まで正確に検出できるので、より一層高精度な短絡検出が可能となる。
【符号の説明】
【0064】
501,530,540,550…発光ダイオード照明回路、502,600…発光部、502a〜502d,600a〜600d…LED回路、503…駆動電流供給部、504…電源、505…故障検出部、505a〜505d…電圧検出回路、506…故障警報部、510…照明装置、514…電源線路、521…信号線路、561…警報表示LED、601,611,621,631,641…第一抵抗、602,612,622,632,642…結節点、603,613,623,633…第二抵抗、604,614,624,634,644…FET(半導体スイッチング素子)、640…故障検出部、640a…電圧検出回路、640b…電圧検出回路、660…フォトカプラ、660a…入力側、660b…出力側、661…故障警報部、665…信号線路、700…発光部、700a〜700d…LED回路、701,702,703,704…発光ダイオード群、705a…電圧検出回路、D1〜D4,D11〜D13,D21〜D23,D31〜D33,D41〜D43 発光ダイオード、Vcc…入力電圧としての電源電圧(直流電圧)、Vout…交流電圧としての高周波交流電圧(高周波電圧)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードを光源とする照明装置に設けられる発光ダイオード照明回路であって、
直列または並列に接続される複数の発光ダイオードに駆動電流を供給するLED回路を複数備えた発光部と、
前記複数のLED回路に流れる各駆動電流が所定の故障電流値以上であるか否かを前記複数のLED回路ごとに検出する故障検出部と、
前記各駆動電流の少なくとも一つが前記故障電流値以上であると前記故障検出部により検出された場合には所定の警報動作を行う故障警報部と、
を具備する発光ダイオード照明回路。
【請求項2】
前記故障検出部は、
前記駆動電流が流れるように前記LED回路に直列に接続される第一抵抗と、
前記駆動電流により前記第一抵抗に生じる電圧を取り出し可能に前記第一抵抗の高電位側に接続される第二抵抗と、
前記駆動電流に比例しかつ前記第一抵抗と前記第二抵抗とにより定まる検出電圧が所定の電圧値以上であるか否かを検出する検出手段と、
を前記複数のLED回路ごとに備え、
前記検出手段は、前記検出電圧が前記所定の電圧値以上である場合には前記駆動電流が前記故障電流値以上であることを検出する、請求項1記載の発光ダイオード照明回路。
【請求項3】
前記検出手段は、制御端子、入力端子および出力端子を備え、前記制御端子に入力される前記検出電圧が所定の閾値電圧以上である場合には前記入力端子と前記出力端子と間を導通状態にし、前記検出電圧が所定の閾値電圧未満である場合には前記入力端子と前記出力端子と間を遮断状態にする半導体スイッチング素子である、請求項2記載の発光ダイオード照明回路。
【請求項4】
前記故障警報部は、警報状態を表示する警報表示LEDを備え、前記所定の警報動作としてこの警報表示LEDを点灯させる、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の発光ダイオード照明回路。
【請求項5】
前記故障警報部は、前記駆動電流を供給する駆動電流供給部に接続されて前記駆動電流を減少させる制御信号を出力可能なフォトカプラを備え、前記所定の警報動作としてこのフォトカプラから前記制御信号を出力させる、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の発光ダイオード照明回路。
【請求項6】
発光ダイオードを光源とする照明装置であって、請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の発光ダイオード照明回路を具備する照明装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−12487(P2013−12487A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−187357(P2012−187357)
【出願日】平成24年8月28日(2012.8.28)
【分割の表示】特願2011−534297(P2011−534297)の分割
【原出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000144544)レシップホールディングス株式会社 (179)
【Fターム(参考)】