説明

発光ダイオード

【目的】 LEDの樹脂に波長変換材料を含有させて発光チップの波長変換を行う際、まず変換された発光の集光をよくしてLEDの輝度を高めることを目的とし、また蛍光顔料を使用した際、波長の異なるLEDを近接して設置しても混色の起こらないLEDを提供する。
【構成】 LEDの封止樹脂が、カップ3内部を充填する第一の樹脂11と、その第一の樹脂を包囲する第二の樹脂12とからなり、第一の樹脂11には発光チップの発光波長を他の波長に変換する蛍光物質、または発光波長を一部吸収するフィルター物質等の波長変換材料5が含有されていることにより、波長変換光がカップ3に反射されるため輝度、集光効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は発光ダイオード(以下LEDという。)に係り、特に発光チップの発光波長を異なる波長に変換する、または発光チップの発光を一部吸収するLEDに関する。
【0002】
【従来の技術】図2は従来のLEDの一構造を示す模式断面図であり、1は化合物半導体よりなる発光チップ、2はリードフレーム、3は発光チップの発光を発光観測面側に反射させる目的で設けられたカップ、4は発光素子全体を封止する樹脂である。通常、樹脂4は発光チップの発光を空気中に効率よく放出する目的で透明度の高い樹脂が選択されるが、他にその発光チップの発光色を変換する目的で、あるいは色を補正する目的で、その樹脂4の中に発光チップの発光を他の波長に変換する蛍光物質、または発光波長の発光波長を一部吸収するフィルター物質5(以下、波長変換材料5という。)が混入される場合がある。この場合、波長変換材料5は樹脂4に均一に分散するように混入されるのが通常である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の目的で波長変換材料5を樹脂4中に均一に分散させると、この図に示すように、波長変換された光、または不要な波長がカットされた光は樹脂4中で四方八方に散乱してしまい、集光が悪くなるという問題がある。図2の矢印は発光チップの光が波長変換材料5にあたり、波長変換された光が散乱する様子を模式的に示した図である。つまり、波長変換された光が散乱されることにより、発光観測面側の光量が減少して輝度が低くなるのである。
【0004】また、波長変換材料5を蛍光物質に限定した場合、新たな問題点として、異なる発光色のLEDを接近して設置した際に、他のLED発光による蛍光物質のよけいな発光の問題がある。例えば、青色発光チップで緑色発光が得られる蛍光物質を含む緑色LEDと、単なる青色発光チップのみからなる青色LEDとを同一平面上に水平に近接して並べた場合、緑色LEDを消灯して、青色LEDを点灯すると、青色LEDから洩れ出る光、つまり散乱する光により、緑色LEDの蛍光物質が励起され、消灯した緑色LEDがあたかも点灯したような状態となり、両LEDの混色が発生する。
【0005】従って本発明の目的とするところは、LEDの樹脂に波長変換材料を含有させて発光チップの波長変換を行う際、まず変換された発光の集光をよくしてLEDの輝度を高めることを目的とし、また蛍光顔料を使用した際、波長の異なるLEDを近接して設置しても混色の起こらないLEDを提供することをもう一つの目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のLEDは、発光チップの発光を発光観測面側に反射するカップの底部に発光チップが載置された発光素子全体を、樹脂で封止してなるLEDであって、前記樹脂は前記カップ内部を充填する第一の樹脂と、その第一の樹脂を包囲する第二の樹脂とからなり、前記第一の樹脂には発光チップの発光波長を他の波長に変換する蛍光物質、または発光チップの発光波長を一部吸収するフィルター物質が含有されていることを特徴とする。
【0007】
【作用】本発明のLEDは、発光チップの発光を第一の樹脂内において所望の波長に変換、または不要な波長を一部吸収する。このようにして波長変換された光は四方八方に散乱するが、散乱した光のほとんどはカップにより反射され、発光観測面側に集光される。つまり本願のカップは第一の樹脂内で波長変換材料により波長変換された光を反射して集光できるので、変換光の集光効率が格段に向上する。
【0008】さらに、波長変換材料を蛍光物質とした場合、蛍光物質を含む第一の樹脂をカップの縁部の水平面よりも低くなるように充填すると、外部から入射する光がカップの縁で遮られ、蛍光物質にまで到達しないことにより、LED間の混色を防止することができる。簡単にいうと、カップ深さを深くして蛍光物質を含む第一の樹脂がカップからはみ出さないようにすることにより、蛍光物質の励起源を発光チップの発光波長のみに制限できる。
【0009】
【実施例】図1は本願の一実施例のLEDの構造を示す模式断面図であり、図2と同様に、カップ3を有するリードフレーム2上に化合物半導体よりなる発光チップ1を載置した発光素子全体を、樹脂で封止した構造としている。しかし、図2と異なるところは、封止樹脂がカップ3内部を充填する第一の樹脂11と、その第一の樹脂を包囲する第二の樹脂12とからなり、第一の樹脂11には発光チップの発光波長を他の波長に変換、または一部吸収する変換する波長変換材料5が含有されている。
【0010】本発明のLEDにおいて、第一の樹脂11と第二の樹脂の材料は同一材料でもよく、例えば両方ともエポキシ樹脂で構成し、第一の樹脂にのみ蛍光物質5を含有させればよい。さらに、第二の樹脂12の材料は図2の樹脂4と同一でもよいことはいうまでもない。また、波長変換材料5は蛍光物質であれば蛍光染料、蛍光顔料、蛍光体等、発光チップの発光波長を他の波長に変換できる材料であればどのようなものを使用してもよく、またフィルター物質であれば発光チップの発光の不要な波長を吸収し、色純度をよくする材料が選択され、通常発光チップの発光色と同一色を有する無機、有機のフィルター顔料が使用される。
【0011】このような構造のLEDを得るには、例えばLED製造工程において、通常カップ3の空気を追い出す目的で、予め発光チップ1を載置したカップ内部を樹脂でプレディップするのであるが、プレディップする際に第一の樹脂11に波長変換材料5を含有させておき、波長変換材料5を含む第一の樹脂11が硬化した後、第二の樹脂12で封止することにより得ることができる。また予め波長変換材料5を含む第一の樹脂11をカップ3内部に注入してもよい。このようにして、波長変換材料5を含む第一の樹脂11をカップの3の内部に充填し、第一の樹脂11で波長変換された光のほとんどがカップ3の反射鏡内に戻り、発光観測面に反射することによりLEDの集光が格段に向上する。
【0012】また第一の樹脂11と第二の樹脂12とを異なる材料とし、第一の樹脂11、第二の樹脂12の屈折率を順に小さくして空気の屈折率1に近くなるように設定することにより波長変換された光の外部量子効率が向上する。なおこの場合、第一の樹脂11の材料には、発光チップ1の屈折率よりも小さい材料を選定することは言うまでもない。
【0013】図3、および図4は本発明の他の実施例に係るLEDのカップ3の部分を拡大して示す模式断面図であり、図3は第一の樹脂11の表面が凸状になって硬化してカップ3に充填された状態、図4は逆に凹状となって硬化して充填された状態を示している。いずれの状態においても、波長変換材料5を蛍光物質とした場合、その蛍光物質を含む第一の樹脂11がカップ3の縁部の水平面よりも低くなるように充填されており、カップ3からはみ出していないので、カップ3の縁部により蛍光物質を励起する外部光を遮断でき、LEDの混色を防止することができる。
【0014】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のLEDはカップ内部に波長変換材料を含有する第一の樹脂を充填しているため、変換光がカップ内部で反射して集光されるため、輝度は倍以上に向上する。また、蛍光顔料を第一の樹脂に含有させて波長変換を行う場合、カップ深さを深くして、第一の樹脂がカップからはみ出さないようにすることにより、LED間の混色が発生せず、例えばLEDで平面ディスプレイを実現した際には、非常に解像度のよい画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一LEDの構造を示す模式断面図。
【図2】 従来のLEDの構造を示す模式断面図。
【図3】 本発明の他の実施例に係るLEDのカップ3の部分を拡大して示す模式断面図。
【図4】 本発明の他の実施例に係るLEDのカップ3の部分を拡大して示す模式断面図。
【符号の説明】
1・・・発光チップ 2・・・リードフレーム
3・・・カップ 5・・・波長変換材料
11・・・第一の樹脂 12・・・第二の樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】 発光チップの発光を発光観測面側に反射するカップの底部に発光チップが載置された発光素子全体を、樹脂で封止してなる発光ダイオードであって、前記樹脂は前記カップ内部を充填する第一の樹脂と、その第一の樹脂を包囲する第二の樹脂とからなり、前記第一の樹脂には発光チップの発光波長を他の波長に変換する蛍光物質、または発光チップの発光波長を一部吸収するフィルター物質が含有されていることを特徴とする発光ダイオード。
【請求項2】 前記第一の樹脂の樹脂に含まれる物質が蛍光物質であって、前記第一の樹脂は前記カップの縁部の水平面よりも低くなるように充填されていることを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平7−99345
【公開日】平成7年(1995)4月11日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−241449
【出願日】平成5年(1993)9月28日
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)