説明

発光デバイス

【課題】色むらの少ない光を出射することが可能な発光デバイスを提供する。
【解決手段】本発明に係る発光デバイスは、発光素子1と、該発光素子1を搭載するためのパッケージ10とを具え、該パッケージ10にはキャビティ30が凹設され、該キャビティ30に発光素子1が収容されている。ここで、キャビティ30の底面33には、1種又は複数種の蛍光体を含む蛍光体層4が形成される一方、キャビティ30内には、発光素子1を覆って、該発光素子1から発せられる光及び蛍光体層4中の蛍光体から発せられる光を拡散する光拡散層5が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子を具えた発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の発光デバイスは、図5に示す様に、LED等の発光素子(101)と、該発光素子(101)を搭載するためのパッケージ(100)とを具えている(例えば、特許文献1参照)。該パッケージ(100)は、セラミック製の基体(102)と、セラミック製の枠体(103)とから構成され、枠体(103)が基体(102)の上面(102a)に接合一体化されることにより、発光素子(101)を収容するためのキャビティ(103a)が形成されている。発光素子(101)は、パッケージ(100)のキャビティ(103a)に収容されて、基体(102)の上面(102a)の内、キャビティ(103a)の底面となる領域に、ダイアタッチパッド(107)を介して設置されている。
【0003】
従来、上記発光デバイスにおいて、キャビティ(103a)内には、蛍光体を含む樹脂材(108)が充填されていた。蛍光体は、発光素子(101)から発せられた光を受けて該光とは波長が異なる新たな光(蛍光)を発する。従って、発光デバイスからは、発光素子(101)の光と蛍光とが混ざり合って生成された光が出射されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−201156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の発光デバイスにおいては、樹脂材(108)中の蛍光体の濃度にむらが生じていた。このため、発光デバイスから出射される光には、色むらが発生し易かった。
【0006】
そこで本発明の目的は、色むらの少ない光を出射することが可能な発光デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る発光デバイスは、発光素子と、該発光素子を搭載するためのパッケージとを具え、該パッケージにはキャビティが凹設され、該キャビティに前記発光素子が収容されている。ここで、前記キャビティの底面には、1種又は複数種の蛍光体を含む蛍光体層が形成される一方、前記キャビティ内には、前記発光素子を覆って、該発光素子から発せられる光及び前記蛍光体層中の蛍光体から発せられる光を拡散する光拡散層が形成されている。
【0008】
上記発光デバイスにおいては、発光素子から全方位に光が発せられる。発光素子から発せられた光の内、上方に向けて進行する光は、光拡散層に入射して該光拡散層によって拡散されることにより、その一部の光が光拡散層を上方へ通過する一方、残りの光が、光拡散層で反射されて下方へ進行した後、蛍光体層に入射する。又、発光素子の光の内、斜め下方に向けて出射された光も、蛍光体層に入射する。ここで、蛍光体層中の蛍光体は、発光素子の光を受けて該光とは波長が異なる新たな光(蛍光)を発する。蛍光体から発せられた光は、上方に進行して光拡散層に入射し、該光拡散層により拡散される。そして、一部の蛍光が光拡散層を通過して上方へ進行することになる。
【0009】
よって、上記発光デバイスによれば、発光素子の光と蛍光とが光拡散層により拡散されることになる。従って、発光素子の光と蛍光とがむらなく混ざり合い、その結果、発光デバイスからは、色むらの少ない光が出射されることになる。
【0010】
上記発光デバイスの具体的構成において、前記光拡散層は前記キャビティの内周面まで拡がり、該内周面に光拡散層の外周縁が接触している。これにより、発光素子の光及び蛍光が、光拡散層により効率良く拡散されることになる。
【0011】
上記発光デバイスにおいて、前記キャビティ内には光拡散剤が充填され、該光拡散剤により前記光拡散層が形成されていてもよい。
【0012】
本発明に係る他の発光デバイスは、基体と、該基体の表面に設置された発光素子とを具え、前記基体の表面には、1種又は複数種の蛍光体を含む蛍光体層が形成される一方、前記基体の表面上には、前記発光素子を覆って、該発光素子から発せられる光及び前記蛍光体層中の蛍光体から発せられる光を拡散する光拡散層が形成されている。
【0013】
上記他の発光デバイスにおいては、発光素子から全方位に発せられた光の内、光拡散層に向けて進行する光は、光拡散層に入射して該光拡散層によって拡散されることにより、その一部の光が光拡散層を通過する一方、残りの光が、光拡散層で反射されて蛍光体層に入射する。又、発光素子の光の内、蛍光体層に向けて出射された光も、蛍光体層に入射する。ここで、蛍光体層中の蛍光体は、発光素子の光を受けて該光とは波長が異なる新たな光(蛍光)を発する。蛍光体から発せられた光は、光拡散層に向けて進行して光拡散層に入射し、該光拡散層により拡散される。そして、一部の蛍光が光拡散層を通過することになる。
【0014】
よって、上記他の発光デバイスによれば、発光素子の光と蛍光とが光拡散層により拡散されることになる。従って、発光素子の光と蛍光とがむらなく混ざり合い、その結果、発光デバイスからは、色むらの少ない光が出射されることになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る発光デバイスは、色むらの少ない光を出射することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る発光デバイスを示す断面図である。
【図2】図2は、LEDから発せられる光の経路を説明するための断面図である。
【図3】図3は、上記発光デバイスの第1変形例を示した断面図である。
【図4】図4(a)は、上記発光デバイスの第2変形例の一例を示した断面図であり、図4(b)は、該第2変形例の他の例を示した断面図である。
【図5】図5は、従来の発光デバイスを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る発光デバイスを示す断面図である。図1に示す様に、本実施形態の発光デバイスは、LED(1)と、該LED(1)を搭載するためのパッケージ(10)とを具えている。
【0018】
パッケージ(10)は、セラミック製の基体(2)と、セラミック製の枠体(3)とから構成され、枠体(3)が基体(2)の上面(21)に接合一体化されている。これにより、枠体(3)の内周面(31)と基体(2)の上面(21)とから、LED(1)を収容するためのキャビティ(30)が形成されている。斯くして、パッケージ(10)には、キャビティ(30)が凹設されている。
【0019】
上記パッケージ(10)において、基体(2)及び枠体(3)を構成するセラミック材には、熱伝導性及び/又は導電性を有する金属材料(例えば、銀(Ag)や、銀(Ag)と白金(Pt)の合金)との同時焼成が可能な低温同時焼成セラミック(LTCC)が用いられている。本実施形態においては、低温同時焼成セラミック(LTCC)として、アルミナとガラスが所定の割合で含まれたものが用いられている。尚、銀や合金等の金属材料は、例えば発光デバイスの放熱性を高めるべく基体(2)に形成されるサーマルビア(図示せず)の熱伝導材として用いられる。
【0020】
LED(1)は、キャビティ(30)の底面(33)上に、ダイアタッチパッド(11)を介して設置されている。LED(1)からは、全方位に光が発せられることになる。
【0021】
キャビティ(30)の底面(33)の内、ダイアタッチパッド(11)の設置領域とは異なる領域には、1種又は複数種の蛍光体を含む蛍光体層(4)が形成されている。又、キャビティ(30)内において、蛍光体層(4)上に、LED(1)の表面をも被覆した第1樹脂層(321)が形成され、該第1樹脂層(321)上に、枠体(3)の上面(34)に露出した第2樹脂層(322)が形成されている。ここで、第1樹脂層(321)及び第2樹脂層(322)は、蛍光体を含まない樹脂材から形成されている。
【0022】
図1に示す様に、第1樹脂層(321)と第2樹脂層(322)との間には、光拡散層(5)が介在しており、光拡散層(5)は、LED(1)を覆って、該LED(1)上の領域からキャビティ(30)の内周面(31)まで拡がっており、該内周面(31)に光拡散層(5)の外周縁が接触している。ここで、光拡散層(5)は、セラミックパウダー等、光吸収率が低くて且つ光反射率の高い光拡散剤から形成されており、LED(1)から発せられる光及び蛍光体層(4)中の蛍光体から発せられる光を拡散する。
【0023】
図2は、LED(1)から発せられる光の経路を説明するための断面図である。尚、図2では、LED(1)から発せられた光を実線矢印によって示し、蛍光体から発せられた光を破線矢印により示している。
図2に示す様に、LED(1)から発せられた光の内、上方に向けて進行する光は、光拡散層(5)に入射して該光拡散層(5)によって拡散されることにより、その一部の光が光拡散層(5)を上方へ通過する一方、残りの光が、光拡散層(5)で反射されて下方へ進行した後、蛍光体層(4)に入射する。又、LED(1)の光の内、斜め下方に向けて出射された光(図示せず)も、蛍光体層(4)に入射する。ここで、蛍光体層(4)中の蛍光体は、LED(1)の光を受けて該光とは波長が異なる新たな光(蛍光)を発する。蛍光体から発せられた光は、上方に進行して光拡散層(5)に入射し、該光拡散層(5)により拡散される。そして、一部の蛍光が光拡散層(5)を通過して上方へ進行することになる。
【0024】
よって、上記発光デバイスによれば、LED(1)の光と蛍光とが光拡散層(5)により拡散されることになる。ここで、上記発光デバイスにおいては、光拡散層(5)が、LED(1)上の領域からキャビティ(30)の内周面(31)まで拡がり、該内周面(31)に光拡散層(5)の外周縁が接触している。このため、LED(1)の光及び蛍光が、光拡散層(5)により効率良く拡散されることになる。従って、図2に示す様に、LED(1)の光(実線矢印)と蛍光(破線矢印)とがむらなく混ざり合い、その結果、発光デバイスからは、色むらの少ない光が出射されることになる。
【0025】
具体例として、LEDから発せられる光が青色であり、蛍光体から発せられる光が黄色である場合、上記発光デバイスからは、色むらの少ない白色の光が出射されることになる。
【0026】
図3は、上記発光デバイスの第1変形例を示した断面図である。図3に示す様に、上記発光デバイスにおいて、第1樹脂層(321)及び第2樹脂層(322)を設けずに、キャビティ(30)内に、セラミックパウダー等、光吸収率が低くて且つ光反射率の高い光分散剤を充填することにより、キャビティ(30)全域に光拡散層(5)を形成してもよい。本変形例に係る発光デバイスにおいても、図1に示す発光デバイスと同様、LED(1)の光と蛍光とが光拡散層(5)により効率良く拡散されることになる。従って、本変形例に係る発光デバイスからも、色むらの少ない光が出射されることになる。
【0027】
図4(a)は、上記発光デバイスの第2変形例の一例を示した断面図であり、図4(b)は、該第2変形例の他の例を示した断面図である。図4(a)に示す様に、上記発光デバイスは、枠体(3)のない構成を有していてもよい。尚、図4(a)に示す発光デバイスでは、光拡散層(5)上に第2樹脂層(322)が形成されていない。勿論、枠体(3)のない構成において、光拡散層(5)上に第2樹脂層(322)が形成されていてもよい。又、図4(b)に示す様に、枠体(3)のない構成において、光拡散層(5)がドーム状に湾曲することにより、該光拡散層(5)の外周縁が基体(2)の上面(21)に接触していてもよい。
【0028】
上記第2変形例に係る発光デバイスによれば、図1に示す発光デバイスと同様、LED(1)の光と蛍光とが光拡散層(5)により拡散されることになる。よって、第2変形例に係る発光デバイスからも、色むらの少ない光が出射されることになる。
【0029】
一方、図4(a)及び図4(b)に示す様に枠体(3)のない構成を有する発光デバイス、即ちキャビティ(30)のない構成を有する発光デバイスは、キャビティ(30)を有する発光デバイス(図1参照)に比べて、出射される光の指向性が低くなる。従って、図4(a)及び図4(b)に示す如く発光デバイスは、例えば室内を広範囲に亘って照明する照明装置に適用することが好ましい。
【0030】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記発光デバイスに採用したセラミック材、光拡散剤等には、上記実施形態で説明した材料に限らず、種々の材料を採用することが出来る。又、上記発光デバイスに採用した各種構成は、LED以外の発光素子を具えた発光デバイスにも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0031】
(1) LED(発光素子)
(10) パッケージ
(2) 基体
(3) 枠体
(30) キャビティ
(31) 内周面
(33) 底面
(4) 蛍光体層
(5) 光拡散層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、該発光素子を搭載するためのパッケージとを具え、該パッケージにはキャビティが凹設され、該キャビティに前記発光素子が収容されている発光デバイスにおいて、前記キャビティの底面には、1種又は複数種の蛍光体を含む蛍光体層が形成される一方、前記キャビティ内には、前記発光素子を覆って、該発光素子から発せられる光及び前記蛍光体層中の蛍光体から発せられる光を拡散する光拡散層が形成されていることを特徴とする発光デバイス。
【請求項2】
前記光拡散層は前記キャビティの内周面まで拡がり、該内周面に光拡散層の外周縁が接触している請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項3】
前記キャビティ内には光拡散剤が充填され、該光拡散剤により前記光拡散層が形成されている請求項1又は請求項2に記載の発光デバイス。
【請求項4】
基体と、該基体の表面に設置された発光素子とを具えた発光デバイスにおいて、前記基体の表面には、1種又は複数種の蛍光体を含む蛍光体層が形成される一方、前記基体の表面上には、前記発光素子を覆って、該発光素子から発せられる光及び前記蛍光体層中の蛍光体から発せられる光を拡散する光拡散層が形成されていることを特徴とする発光デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−93340(P2013−93340A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41290(P2010−41290)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(397016714)三洋電波工業株式会社 (22)
【Fターム(参考)】