説明

発光体及び発光装置

【課題】電源装置が不要である一方、効果的に発光可能な低コストの発光体を提供する。
【解決手段】第1電極13a及び第2電極13bを有する蛍光放電ランプ10と、第1電極と電気的に接続され、蛍光放電ランプから延出する第1リード線14aと、第2電極と電気的に接続され、蛍光放電ランプから第1リード線が延出する方向とは異なる方向へ延出する第2リード線14bと、を備え、蛍光放電ランプは、誘導電場を発生する物体の周囲に設けられ、第1リード線及び第2リード線は、第1電極及び第2電極の電位を異ならせる方向へ延出する、ことを特徴とする発光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば架空送電線等において海峡を横断するように延在する部分を上空や海上等から認知可能とするための手段(以後、これを「海峡横断送電線認知装置」と称する)として使用される発光体及び発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば我が国の航空法によれば、所定高さを有する物件の設置者は、航空機に対しこの物件の存在を認識させるために、航空障害標識(航空障害灯及び昼間障害標識の総称)を設置しなければならないとされている。特に、物件が架空送電線の場合、航空障害標識として、架空送電線に直接取り付けられて発光する発光体を備えた様々な標識灯が提案されている。
【0003】
例えば、架空送電線を流れる交流電流からコイルを通じて誘導電流を発生させ、この誘導電流を配線回路により発光ダイオード(LED:Light-Emitting Diode)等の発光体に供給してこれを発光させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に開示される標識灯は、架空送電線の外周囲に配置される複数のLEDと、前述したコイル及び配線回路とを備えて構成されている。
【0004】
或いは、例えば、昼間に太陽電池から得られる起電力を蓄電池に蓄電し、外部が暗くなったことが光センサにより検出されると、架空送電線に設けられたLED等の発光体に蓄電池から給電してこれを発光させる技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2に開示される標識灯は、主として、複数のLEDからなる発光体と、前述した太陽電池及び蓄電池とを備えて構成されている。
【特許文献1】特開平8−126177号公報
【特許文献2】特開平6−269118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述した特許文献1、2に開示される標識灯は、発光体を発光させるための電源装置として、コイル及び配線回路や太陽電池及び蓄電池等が必須の構成となっている。これらの構成は、標識灯を嵩高く複雑なものにするとともに、設備コストが嵩むという問題がある。また、これらの標識灯を前述した海峡横断送電線認知装置として使用する場合、発光体の光量を所定レベルにするには、例えばLEDであればこれを多数必要とする。よって、これも、標識灯を嵩高く複雑なものにするとともに、設備コストが嵩むという問題を引き起こす。
【0006】
尚、前述した発光体(例えばLED)は、架空送電線等の海峡横断送電線認知装置として使用されるものであったが、これに限らず、一般に誘導電場を発生する物体の表面に設けられてこの物体を識別する目的で発光するものを意味する。
【0007】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電源装置が不要である一方、効果的に発光可能な低コストの発光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための発明は、第1電極及び第2電極を有する蛍光放電ランプと、前記第1電極と電気的に接続され、前記蛍光放電ランプから延出する第1リード線と、前記第2電極と電気的に接続され、前記蛍光放電ランプから前記第1リード線が延出する方向とは異なる方向へ延出する第2リード線と、を備え、前記蛍光放電ランプは、誘導電場を発生する物体の周囲に設けられ、前記第1リード線及び前記第2リード線は、前記第1電極及び前記第2電極の電位を異ならせる方向へ延出してなる発光体である。
この発光体によれば、第1リード線及び第2リード線は、蛍光放電ランプ内に電位差を発生させるように延出しているため、この電位差により蛍光放電ランプが発光する。また、この発光体は、物体が発生する誘導電場を電気エネルギーの唯一の供給源としているため、電源装置を別途用意する必要がない。更に、たとえ物体が発生する誘導電場が一定であっても、蛍光放電ランプ内の電位差がより大きくなるように第1リード線及び第2リード線の延出の方向等を設定すれば、この発光体は効果的に発光し得る。以上から、電源が不要である一方、効果的に発光可能な低コストの発光体が提供される。
【0009】
また、かかる発光体において、前記蛍光放電ランプは、前記第1電極及び前記第2電極が両端に設けられるとともに前記両端が閉塞される直管型のガラス管と、前記ガラス管の内面に塗布される蛍光被膜と、前記ガラス管の内部に封入される放電媒体と、を有する、こととしてもよい。
この発光体によれば、第1電極及び第2電極の間の電位差によりガラス管の両端の間で放電媒体に放電が発生し、例えばこの放電により電子励起された放電媒体の一部が紫外光を放出する。この紫外光を吸収した蛍光被膜が放出する可視光は、ガラス管の内部から外部に放出される。即ち、発光体が発光する。
【0010】
また、かかる発光体において、前記誘導電場を発生する物体は、電力を送電するための送電線である、ことが好ましい。
この発光体によれば、送電線にかかる交流電圧が形成する誘導電場の下で発光し得る。よって、この発光体は、例えば送電線の海峡横断送電線認知装置となり得る。
【0011】
また、かかる発光体において、前記第1リード線は、絶縁体を介して前記物体に接続され、前記第2リード線は、前記物体に接続されない、こととできる。
この発光体によれば、例えば絶縁体を薄くするほど、この絶縁体を介して物体と接続される第1リード線は、物体に電気的に接続されることなく、この物体が発生する誘導電場のより高い場所に位置し得る。一方、第2リード線は、少なくとも前記第1リード線の場所よりは誘導電場の低い場所に位置し得る。よって、例えば第1リード線に物体から電流が流れる等の事故を回避しつつ、第1電極及び第2電極の間の電位差をより大きく設定できる。従って、この発光体は、耐久性を有するとともに、より効果的に発光するものとなる。
【0012】
一方、かかる発光体において、前記第1リード線は、前記物体に接続され、前記第2リード線は、前記物体に接続されない、こととしてもよい。
この発光体によれば、第1リード線は物体に電気的に接続されるため、第1電極の電位は物体の電位と同電位になる。一方、第2リード線は物体に接続されないため、第2電極は第1電極よりも低電位である。よって、第2リード線の延出の方向等を設定すれば、第1電極及び第2電極の間の電位差をより大きく設定することができ、これは発光体の効果的な発光をもたらす。
【0013】
また、かかる発光体において、前記物体に接続されない前記第2リード線は、前記物体から離れる方向へ延出する、ことが好ましい。
この発光体によれば、第2リード線は、物体から離れる方向へ延出するほど、誘導電場のより低い場所に位置し得るため、第1電極及び第2電極の間の電位差がより大きくなる。これにより、発光体はより効果的に発光する。
【0014】
また、かかる発光体において、前記第1リード線及び前記第2リード線は、前記物体から離れる方向へ延出する、こととしてもよい。
この発光体によれば、第1リード線及び第2リード線は、ともに物体と電気的に接続する虞がない上に、それぞれの場所に誘導電場の大きさの差が生じるように延出させることができる。よって、第1リード線及び第2リード線に関して、例えば双方に物体から電流が流れる等の事故を回避しつつ、第1電極及び第2電極の間に電位差が生じるようにそれぞれの延出方向等を設定することができる。従って、この発光体は、耐久性を有しつつ発光可能である。
【0015】
また、かかる発光体において、前記蛍光放電ランプは、第3リード線が電気的に接続される第3電極を更に備え、前記第1リード線は、前記物体に接続され、前記第2リード線及び前記第3リード線は、前記物体から離れる方向へ延出する、こととしてもよい。
この発光体によれば、第1電極に対し第2電極及び第3電極は低電位となるため、第1電極及び第2電極の間と、第1電極及び第3電極の間との双方で放電が生じ得る。よって発光体がより効果的に発光する。
【0016】
また、前記課題を解決するための発明は、第1電極及び第2電極を有する蛍光放電ランプと、前記第1電極と電気的に接続され、前記蛍光放電ランプから延出する第1リード線と、前記第2電極と電気的に接続され、前記蛍光放電ランプから前記第1リード線が延出する方向とは異なる方向へ延出する第2リード線と、をそれぞれが有する複数の発光体と、前記複数の発光体が誘導電場を発生する送電線の周囲を取り囲むように、前記複数の発光体を保持する保持体と、を備え、前記複数の発光体の前記第1リード線及び前記第2リード線は、それぞれの前記第1電極及び前記第2電極の電位を異ならせる方向へ延出してなる発光装置である。
この発光装置によれば、複数の発光体は、電源が不要である一方、効果的に発光可能である。これらの発光体により周囲を取り囲まれている送電線は明るく照らされる。よって、この発光装置は、例えば送電線の海峡横断送電線認知装置となり得る。
【0017】
また、かかる発光装置において、前記複数の発光体の前記第1リード線及び前記第2リード線は、それぞれ1以上のリード線束に結束される、ことが好ましい。
この発光装置によれば、リード線束に結束された複数の第1リード線にそれぞれ接続される第1電極の電位は互いに同電位になり、リード線束に結束された複数の第2リード線にそれぞれ接続される第2電極の電位も互いに同電位となる。よって、各発光体における蛍光放電ランプ内の電位差が等しくなるため、各発光体の輝度も等しくなり得る。よって、これら複数の発光体を備えた発光装置は、明るさにむらの少ない優れた発光装置となる。
【0018】
また、かかる発光装置は、前記複数の発光体の発光出力を上空側へ反射する反射板、を更に備えたことが好ましい。
この発光装置によれば、複数の発光体の上空側への光と、複数の発光体の反射板側への光がこの反射板で反射された光とは、送電線に発光体のみが設置されている場合の光よりも、反射光の分だけ輝度が高くなる。
【0019】
また、かかる発光装置は、前記複数の発光体の発光出力及び前記反射板の反射出力を上空側へ透過する透過面を有し、前記複数の発光体を保持する保持体及び前記反射板を収容するべく前記送電線に結合されるケース、を更に備えたことが好ましい。
この発光装置によれば、複数の発光体の上空側への光と、複数の発光体の反射板側への光がこの反射板で反射された光とは、ケースの透過面を透過して上空側から認識可能となる。この上空側から認識される光は、送電線に発光体のみが設置されている場合の光よりも、反射光の分だけ輝度が高い。また、発光体が同じでも、反射板の反射効率、透過面の透過率、ケースの形状等を調節することにより、上空から発光装置をより認識し易いものにすることができる。更に、ケースは、その内部の経年劣化を低減する上に、所定の形状とすれば、ケース自体の経年劣化を低減することもできる。例えば、屋外に設置された発光装置のケースが球形であれば、直方体等の場合に比べて、これにかかる風圧を低減できるため、ケース自体の経年劣化を低減できるとともに、風による発光装置の揺れも低減できる。また、ケースが球形の場合、ケースの内面で反射する発光体からの光が、直方体等の場合に比べて乱反射し難いといった利点もある。以上から、この発光装置は、例えば送電線の海峡横断送電線認知装置となり得る。
【0020】
また、かかる発光装置において、前記複数の発光体を保持する前記保持体は、前記送電線に2以上設けられる、ことが好ましい。
この発光装置は複数の発光体をそれぞれに備えた保持体から構成されるため、発光体の数の増加に応じた発光装置の輝度の向上が望める。また、これらの発光体を備えた保持体を2以上収容可能なケースを容易に用意できるため、発光装置は、発光体の数の増加に容易に対応できる。
【発明の効果】
【0021】
電源装置が不要である一方、効果的に発光可能な低コストの発光体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本実施の形態の発光装置の構成例について説明する。
図1及び図2に例示されるように、本実施の形態の発光装置1は、発光体2と、保持体16とを備えて構成されている。尚、図1(a)は、電線Lに設置された本実施の形態の発光装置1の正面の構成例を示す平面図であり、図1(b)は、同発光装置1の側面の構成例を示す平面図である。図2は、本実施の形態の蛍光放電ランプ10の基本構成例を示す平面図である。
【0023】
<<<発光体>>>
発光体2は、両端が閉塞された直管型であり且つ可視光が透過可能なガラス管11、ガラス管11内面に塗布された蛍光被膜12、ガラス管11内に封入された気体の放電媒体及び所定量の気体の水銀、及びガラス管11両端の電極13a(第1電極)及び電極13b(第2電極)を有する蛍光放電ランプ10と、電極13a、13bそれぞれに直接接続されたリード線14a及びリード線14bとを備えて構成される(図2)。電極及びリード線は、図2に例示されるように、電位差を有する少なくとも2組が必要である。放電媒体は、例えばXeの単体希ガス又はXe及びArの混合希ガス等、特開平11−307049号公報や特開平11−354079号公報等に開示されているものである。例えば、特開平11−354079号公報に開示されているように、両電極13a、13b間の電位差によりガラス管11内の放電媒体に放電現象が生じ、この放電現象により電子励起された水銀が紫外線を放出する。この紫外線がガラス管11内面の蛍光被膜12により可視光に変換され、この可視光がガラス管11外部に放出される。前述した放電媒体における水銀の所定量とは、この可視光が効率良く放出される周知の量である。尚、放電下で紫外線を放出する物質は、水銀に限定されるものではなく、例えば水銀以外の金属であってもよいし、或いは、例えば所定の圧力を有していれば放電媒体自体であってもよい。水銀以外の金属は、例えばナトリウムやスカンジウム等である。
【0024】
尚、図2に例示される蛍光放電ランプ10は、電極13a、13bがガラス管11内にある内部電極冷陰極管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)である。詳しくは、ガラス管11の長手方向の両端内部に金属製の電極13a、13bが埋め込まれ、電極13a、13bにそれぞれ接続されたリード線14a、14bは、ガラス管11内部の放電媒体が外部に漏れないように、ガラス管11の内部から外部に当該ガラス管11の両端で封止されつつ突き抜ける構成をなしている。但し、蛍光放電ランプ10は、前記構成に限定されるものではなく、例えば後述する外部電極冷陰極管であってもよい。或いは、蛍光放電ランプ10は、以上の冷陰極型の構成(内部電極冷陰極管及び外部電極冷陰極管)に限定されるものではなく、例えば熱陰極型の構成をとってもよい。
【0025】
一方、蛍光放電ランプ10が外部電極冷陰極管(EEFL:External Electrode Fluorescent Lamp)の場合、その構成が前述の内部電極冷陰極管の構成と異なる点は、電極17a、17bがガラス管11外面にあることである(図3)。尚、図3は、本実施の形態の蛍光放電ランプ10の基本構成例を示すもう一つの平面図である。電極17a(第1電極)及び電極17b(第2電極)には、導電性の金属や導電性ペースト等の導電材が用いられる。或いは、電極17a、17bは、例えばガラス管11外面に導電性塗料を塗布しその上に金属キャップを被せた構成であってもよい。この場合、金属単体又は導電性ペースト単体で構成された電極17a、17bと比べて、リード線14a、14bとの導電性がより向上する。
【0026】
例えば電線Lの近傍において、電場の大きさに差のある2つの場所が存在する場合、本実施の形態では、2本のリード線14a、14bのうちの一方(例えばリード線14a(第1リード線))を、2つの場所のうちのより高い電場が発生する場所に延出させる一方、2本のリード線14a、14bのうちの他方(例えばリード線14b(第2リード線))を、2つの場所のうちのより低い電場が発生する場所に延出させる。或いは、例えば、リード線14aを電線Lに対し絶縁体を介して接続させる一方、リード線14bを電線Lに対し物理的に接続させない。或いは、例えば、リード線14aを電線Lに対し直接接続させる一方、リード線14bを電線Lに対し物理的に接続させない。要するに、本実施の形態のリード線14a、14bは、電極13aと電極13bとの間に電位差が生じるように配置される。同様に、本実施の形態のリード線14a、14bは、電極17aと電極17bとの間に電位差が生じるように配置される。一般に、この電位差がより大きいほど、蛍光放電ランプ10の輝度はより向上する。
【0027】
尚、電極は、前述したようなガラス管11の両端に1個ずつという構成に限定されるものではない。電極の個数及びそれぞれのガラス管11における位置に関しては、一方の電極をその他の電極に対してより低電位側に設定できるような個数及び位置であれば、それ以外に特に制約はない。図1の例示では、複数の蛍光放電ランプ10がそれぞれ備える一方のリード線14aを1箇所又は複数箇所で束ねてリード線束15aとし、このリード線束15aを、前述したより高い電場が発生する場所に延出させるか、或いは電線Lに直接又は絶縁体を介して接続させる。複数の蛍光放電ランプ10がそれぞれ備える他方のリード線14bは、前述したより低い電場が発生する場所に延出させる。或いは、他方のリード線14bは、1箇所又は複数箇所で束ねリード線束15bとし、このリード線束15bを、前述したより低い電場が発生する場所に延出させる。
【0028】
<<<保持体>>>
前述の保持体16は、前述のガラス管11、電極13a、13b(17a、17b)及びリード線14a、14bを電線Lに固定するための手段である。保持体16は、例えば硬質性の透明な樹脂からなる。図1に例示される保持体16は、一対のドーナツ型の円板形状をなす透明樹脂であり、これにより直管型の複数の発光体2(又は発光体3)の両端を挟持するようになっている。同図の例示では、一対の円板のそれぞれに対し、保持する発光体2(又は発光体3)の個数に応じた穴が円周に沿って穿設されている。発光体2(又は発光体3)は、一対の円板の対向する一対の穴に両端が嵌挿されることによって、保持体16に保持される。尚、前述したドーナツ型の円板は、既存の電線Lに後から設置するために、例えば、分離可能な2つの半円板から構成されるものであってもよい。この2つの半円板は、電線への設置時に相互に接着されるものであってもよいし、図1(b)において分離線として例示されるように、分離可能な面どうしが、相互に嵌合可能な凹部や凸部等を有するものであってもよい。
【0029】
但し、これに限定されるものではなく、蛍光放電ランプ10の発光面積を著しく小さくするほどの大きさでなければ、保持体16は、例えば不透明又は半透明な樹脂であってもよい。何れにせよ、例えば金属ではなく樹脂であることにより、誘導電場に対する保持体16の影響が小さくなる。
【0030】
尚、前述の発光装置1では、保持体16の構成は図1の例示に限定されるものではない。例えば、保持体16は、電線Lに対し蛍光放電ランプ10を直接接着する絶縁性の接着剤等であってもよい。
また、前述した発光装置1は、複数の発光体2のみの発光装置1、或いは、複数の発光体3のみの発光装置1であったが、これに限定されるものではない。発光装置1は、例えば、相互に異なる2種類以上の発光体(たとえば、発光体2及び発光体3)を複数備えて構成されるものであってもよい。
【0031】
<<<発光装置の機能>>>
電線Lの交流電圧によりその周囲に誘導電場が形成される。この誘導電場は所定の空間分布を有するため、電線Lの周囲の空間には、誘導電場の大きさが異なる場所が存在し得る。そこで、例えば2つの場所のうちのより高い電場の場所に一方の端部が位置するリード線束15aに対応する電極13a(17a)と、2つの場所のうちのより低い電場の場所に一方の端部が位置するリード線束15bに対応する電極13b(17b)との間に電位差が生じる。電極13a(17a)と電極13b(17b)との間の電位差により、前述したように、可視光がガラス管11外部に放出される。電極13a(17a)と電極13b(17b)との間の電位差がより大きくなるようにリード線束15a、15bを配置するほど、発光装置1の輝度をより向上させることができる。次に、リード線束15a、15bの配置と発光装置1の輝度との関係に係る実験について延べる。
【0032】
<<<発光実験1>>>
前述したリード線14a、14bそれぞれの延出方向を変化させつつ、電線Lに相当する棒電極(図4)に交流電圧を印加して発光体2の輝度を測定した。実験装置は、主として、接地された平板電極(不図示)と、電線Lに相当する棒電極と、この棒電極に交流電圧を印加可能な電源(不図示)と、発光体2の輝度を測定するための周知の輝度測定手段(不図示)とを備えるものであった。本実施の形態の実験装置では、棒電極に対し平板電極が鉛直方向下側に配置されている。尚、図4は、本実施の形態の発光体2の発光実験におけるリード線14a、14bと棒電極との配置関係を示す正面図及び上面図である。同図の紙面左側では、紙面の上下が鉛直方向に対応する。一方、同図の紙面右側では、紙面の表側が鉛直方向の上側に対応し、紙面の裏側が鉛直方向の下側に対応する。
【0033】
実験に使用した発光体2における蛍光放電ランプ10は、市販の内部電極冷陰極管(株式会社ハイベック、型式TCC20−050)である。ガラス管11の直径は2mmであり長さは50mmである。この発光体2を棒電極に設置して、電源から棒電極に交流電圧を印加して発光体2の輝度を測定した。詳しくは、図4に例示されるように発光体2のリード線14aと棒電極との接続の有無及び発光体2のリード線14bの延出方向の条件を変えて、発光体2の輝度を測定した。
【0034】
以下、図4(a)乃至図4(e)において、発光体2はその長手方向が棒電極の長手方向と平行となるように設置される。
【0035】
図4(a)に示すリード線14a、14bの配置の条件1Aでは、端部が前述したより高い電場の場所に位置するべきリード線14a(以後、「高電位側のリード線14a」と称する)の当該端部を、棒電極に巻かれた絶縁テープTの表面に貼付する(リード線14aと棒電極とは絶縁体を介して接続されているが、直接接続されていない)。また、条件1Aでは、端部が前述したより低い電場の場所に位置するべきリード線14b(以後、「低電位側のリード線14b」と称する)を、棒電極の長手方向と平行且つ棒電極の表面との距離を例えば1mmに保って延出させる。
【0036】
図4(b)に示すリード線14a、14bの配置の条件1Bでは、棒電極と高電位側のリード線14aとの配置関係は前述の条件1Aの配置関係と同じである。条件1Bでは、低電位側のリード線14bを、途中で折り曲げてその端部が棒電極の長手方向と垂直となるように延出させ、棒電極の表面と前記端部の先端との距離を例えば25mmとしている。
【0037】
図4(c)に示すリード線14a、14bの配置の条件1Cでは、棒電極と低電位側のリード線14bとの配置関係は前述の条件1Aの配置関係と同じである。条件1Cでは、高電位側のリード線14aを、絶縁テープT等を介することなく棒電極の表面に直接接続させて、電極13aに高電圧が印加されるようにしている。
【0038】
図4(d)に示すリード線14a、14bの配置の条件1Dでは、棒電極と高電位側のリード線14aとの配置関係は前述の条件1Cと同じであり、棒電極と低電位側のリード線14bとの配置関係は前述の条件1Bと同じである。
【0039】
図4(e)に示すリード線14a、14bの配置の条件1Eでは、棒電極と高電位側のリード線14aとの配置関係は前述の条件1C、1Dと同じである。条件1Eでは、低電位側のリード線14bを、途中で折り曲げてその端部が棒電極の長手方向と垂直となるように延出させ、棒電極の表面と前記端部の先端との距離を例えば50mmとしている。
【0040】
尚、本実験では、棒電極の表面と物理的に接続されていないリード線14bの延出方向は、この棒電極の長手方向と平行又は垂直のみであったが、これに限定されるものではない。例えばリード線14bの延出方向と棒電極の表面とのなす角度は垂直に限定されるものではなく、要するに、リード線14bは、棒電極の表面から離れる方向に延出していればよい。また、リード線14bは、例えば途中で曲がりつつ棒電極の表面から離れる方向に延出してもよい。
【0041】
表1に示されるように、以上の条件1A乃至1Eの下で、棒電極に10万Vの交流電圧を印加したときの発光体2の輝度(cd/m)を測定した。
【表1】

【0042】
表1によれば、条件1Aの輝度よりも条件1Cの輝度が高いこと、及び、条件1Bの輝度よりも条件1Dの輝度が高いことから、高電位側のリード線14aは棒電極に接続された方が発光体2の輝度が高くなると言える。また、表1によれば、条件1C、条件1D、条件1Eの順にその輝度がより高くなることから、低電位側のリード線14bの先端は棒電極からの距離が離れるほど、即ち電位の低い方に延出するほど発光体2の輝度が高くなると言える。更に、表1によれば、条件1Bの輝度に対し条件1Dの輝度はおよそ1.7倍向上している一方、条件1Cの輝度に対し条件1Dの輝度はおよそ6.4倍向上している。これは、高電位側のリード線14aと棒電極の接続の有無よりも、低電位側のリード線14bの延出方向及び棒電極からの距離の方が、輝度に対する効果がより大きいことを意味する。低電位側のリード線14bをより電位が低い所まで延出させることにより、リード線14aとリード線14bとの間の電位差、即ち電極13aと電極13bとの間の電位差がより大きくなる。これにより、ガラス管11内の放電がより強くなって、蛍光放電ランプ10を効率よく発光させることができる。即ち、発光体2の輝度がより向上する。
【0043】
尚、前述した発光実験における5つの条件1A乃至1Eに示されるようにリード線14a、14bが配置される発光体2は何れも、例えば電線Lに適用可能な本実施の形態の発光体2である。
【0044】
条件1A及び1Bの発光体2は、リード線14aが所定の絶縁体を介して電線Lに接続される一方、リード線14bは電線Lに物理的に接続されない発光体2に適用できる。この発光体2によれば、例えば絶縁体を薄くするほど、リード線14aは、電線Lに直接接続されることなく、誘導電場のより高い場所に位置し得る。一方、リード線14bは、誘導電場のより低い場所に位置し得る。よって、例えばリード線14aに電線Lから電流が流れる等の事故を回避しつつ、電極13a、13b間の電位差をより大きく設定できる。従って、この発光体2は、耐久性を有するとともに、より効果的に発光するものとなる。
【0045】
条件1C、1D、及び1Eの発光体2は、リード線14aが電線Lに直接接続される一方、リード線14bは電線Lに物理的に接続されない発光体2に適用できる。この発光体2によれば、リード線14aは電線Lに直接接続されるため、電極13aの電位は電線Lの電位と同電位になる。一方、リード線14bは電線Lに接続されないため、電極13bは電極13aよりも低電位である。よって、リード線14bの延出の方向等を設定すれば、電極13a、13b間の電位差をより大きく設定することができ、これは発光体2の効果的な発光をもたらす。
【0046】
条件1B、1D、及び1Eの発光体2は、リード線14bが電線Lから離れる方向へ延出する発光体2に適用できる。この発光体2によれば、リード線14bは電線Lから離れる方向へ延出するほど、誘導電場のより低い場所に位置し得るため、電極13a、13b間の電位差がより大きくなる。これにより、発光体2はより効果的に発光する。
【0047】
<<<発光実験2>>>
電極17a、17bがガラス管11外面にある外部電極冷陰極管(EEFL)についても前述した発光実験1と同様の実験を行った。即ち、発光体3(図5)における電極17a、17b及びリード線14a、14bを変化させつつ、電線Lに相当する棒電極に交流電圧を印加して発光体3の輝度を測定した。実験装置は、前述した発光実験1で使用した実験装置と同じである。尚、図5は、本実施の形態の発光体3の発光実験におけるリード線14a、14bと棒電極との配置関係を示す正面図及び上面図である。同図の紙面左側では、紙面の上下が鉛直方向に対応する。一方、同図の紙面右側では、紙面の表側が鉛直方向の上側に対応し、紙面の裏側が鉛直方向の下側に対応する。
【0048】
実験に使用した発光体3における蛍光放電ランプ10は、市販の外部電極冷陰極管(株式会社KDT m&s、型式5049311000)である。ガラス管11の両端部の外面には導電性ペーストからなる電極17a、17bが塗布されており、ガラス管11の直径は5mmであり長さは493mmである。この発光体3を棒電極に設置して、電源から棒電極に交流電圧を印加して発光体3の輝度を測定した。詳しくは、図5に例示されるように発光体3のリード線14aと棒電極との接続の有無及び発光体3のリード線14bの延出方向の条件を変えて、発光体3の輝度を測定した。
【0049】
以下、図5(a)乃至図5(e)において、発光体3はその長手方向が棒電極の長手方向と平行となるように且つ電極17a、17bが棒電極の表面と接触しないように(電極17a、17bが棒電極と直接接続されないように)設置される。
【0050】
図5(a)に示す条件2Aでは、発光体3は電極17a、17b及びリード線14a、14bを備えていない。
【0051】
図5(b)に示すリード線14a、14bの配置の条件2Bでは、前述と同様の高電位側のリード線14aを、棒電極に巻かれた絶縁テープTの表面に貼付する(リード線14aと棒電極とは直接接続されていない)。また、条件2Bでは、低電位側のリード線14bを、途中で折り曲げてその端部が棒電極の長手方向と垂直となるように延出させ、棒電極の表面と前記端部の先端との距離を例えば25mmとしている。
【0052】
図5(c)に示すリード線14a、14bの配置の条件2Cでは、棒電極と低電位側のリード線14bとの配置関係は前述の条件2Bの配置関係と同じである。また、条件2Cでは、高電位側のリード線14aも、途中で折り曲げてその端部が棒電極の長手方向と垂直となるように延出させ、棒電極の表面と前記端部の先端との距離を例えば25mmとしている。
【0053】
図5(d)に示すリード線14a、14bの配置の条件2Dでは、棒電極と低電位側のリード線14bとの配置関係は前述の条件2B及び2Cの配置関係と同じである。また、条件2Dでは、高電位側のリード線14aを、絶縁テープT等を介することなく棒電極の表面に直接接続して、電極17aに高電圧が印加されるようにしている。
【0054】
図5(e)に示すリード線14a、14bの配置の条件2Eでは、棒電極と高電位側のリード線14a及び低電位側のリード線14bとの配置関係は、条件2Dの配置関係と同じである。更に条件2Eでは、蛍光放電ランプ10の長さを略2等分する位置に電極17c及びこれと接続されたリート線14cを設け、このリード線14cの端部を棒電極の長手方向に垂直になるように延出させ、棒電極の表面と前記端部の先端との距離を例えば25mmとしている。
【0055】
尚、本実験では、棒電極の表面と物理的に接続されていないリード線14bの延出方向は、この棒電極の長手方向と平行又は垂直のみであったが、これに限定されるものではない。例えばリード線14bの延出方向と棒電極の表面とのなす角度は垂直に限定されるものではなく、要するに、リード線14bは、棒電極の表面から離れる方向に延出していればよい。また、リード線14bは、例えば途中で曲がりつつ棒電極の表面から離れる方向に延出してもよい。
【0056】
表2に示されるように、以上の条件2A乃至2Eの下で、棒電極に10万Vの交流電圧を印加したときの発光体3の輝度(cd/m)を調べた。
【表2】

【0057】
表2によれば、条件2Aのように、電極17a、17b及びリード線14a、14bを有さない外部電極型冷陰極管を棒電極に設置しても、効率良くガラス管11内で放電が起こらないため、発光体3はほとんど発光しない。一方、条件2B、2D、及び2Eのように、リード線14aを高電位側に延出させ、リード線14b、14cを低電位側(棒電極の長手方向に垂直)に延出させることにより、電極17aと電極17b、17cとの間の電位差がより大きくなり、これにともないガラス管11内の放電がより強くなって、蛍光放電ランプ10を効率よく発光させることができる。即ち、発光体3の輝度がより向上する。
【0058】
尚、前述した発光実験における4つの条件2B乃至2Eに示されるようにリード線14a、14bが配置される発光体3は何れも、例えば電線Lに適用可能な本実施の形態の発光体3である。
【0059】
条件2Bの発光体3は、リード線14aが所定の絶縁体を介して電線Lに接続される一方、リード線14bは電線Lに物理的に接続されない発光体3に適用できる。この発光体3によれば、例えば絶縁体を薄くするほど、リード線14aは、電線Lに直接接続されることなく、誘導電場のより高い場所に位置し得る。一方、リード線14bは、誘導電場のより低い場所に位置し得る。よって、例えばリード線14aに電線Lから電流が流れる等の事故を回避しつつ、電極17a、17b間の電位差をより大きく設定できる。従って、この発光体3は、耐久性を有するとともに、より効果的に発光するものとなる。
【0060】
条件2Dの発光体3は、リード線14aが電線Lに直接接続される一方、リード線14bは電線Lに物理的に接続されない発光体3に適用できる。この発光体3によれば、リード線14aは電線Lに直接接続されるため、電極17aの電位は電線Lの電位と同電位になる。一方、リード線14bは電線Lに接続されないため、電極17bは電極17aよりも低電位である。よって、リード線14bの延出の方向等を設定すれば、電極17a、17b間の電位差をより大きく設定することができ、これは発光体3の効果的な発光をもたらす。
【0061】
条件2B及び2Dの発光体3は、リード線14bが電線Lから離れる方向へ延出する発光体3に適用できる。この発光体3によれば、リード線14bは電線Lから離れる方向へ延出するほど、誘導電場のより低い場所に位置し得るため、電極17a、17b間の電位差がより大きくなる。これにより、発光体3はより効果的に発光する。
【0062】
条件2Cの発光体3は、リード線14a及びリード線14bが電線Lから離れる方向へ延出する発光体3に適用できる。この発光体3によれば、リード線14a及びリード線14bが、ともに電線Lと直接接続される虞がない上に、それぞれの場所に誘導電場の大きさの差が生じるように延出させることができる。よって、リード線14a及びリード線14bに関して、例えば双方に電線Lから電流が流れる等の事故を回避しつつ、電極17a、17b間に電位差が生じるようにそれぞれの延出方向等を設定することができる。従って、この発光体3は、耐久性を有しつつ発光可能である。
【0063】
条件2Eの発光体3は、リード線14cが直接接続される電極17cを更に備え、リード線14aは電線Lに直接接続され、リード線14b及びリード線14cは、電線Lから離れる方向へ延出する発光体3に適用できる。この発光体3によれば、電極17aに対し電極17b及び電極17cは低電位となるため、電極17a、17b間と、電極17a、17c間との双方で放電が生じ得る。よって発光体3がより効果的に発光する。
【0064】
<<<発光装置1を1以上用いた発光装置4の構成例>>>
図6を参照しつつ、前述した発光装置1を1以上用いた発光装置4の構成例について説明する。尚、同図は、本実施の形態の発光装置4の構成例を示す平面図である。
【0065】
図6に例示されるように、本実施の形態の発光装置4は、発光装置1と、凸面鏡(反射板)50と、ケース40とを備えて構成されている。同図に例示される発光装置4では、電線Lに設置された発光装置1が、内側底部に凸面鏡50を有するケース40に収容されるように構成されている。
【0066】
本実施の形態のケース40は、2つの例えば樹脂製の半球部40a、40bの開口部どうしが組み合わさって球形状をなすものであり、特に上空側(+Y側)の半球部40a(透過面)は透明になっている。半球部40bの内側底部には、支持体51を介して凸面鏡50が設けられている。この凸面鏡50は、光の反射面が半球部40bの開口面に見えるように、この半球部40bに設けられている。ここで、凸面鏡50は、例えば凸形状をなす樹脂を鏡面コートしたものである。
【0067】
半球部40aの開口部には、電線Lを把持するための一対の把持片41aが設けられている一方、半球部40bの開口部にも、前記一対の把持片41aにそれぞれ係合可能な一対の把持片41bが設けられている。把持片41a及び把持片41bは、例えば上下に係合することにより電線Lを把持可能な筒形状をなす周知の電線クランプ41である。この電線クランプ41は、確実に電線Lを把持するべく、把持片41a、41bどうしを例えばボルト(不図示)及びナット(不図示)で固定するようになっていてもよい。
【0068】
また、半球部40aの開口部には、例えば一対の凸片42aが設けられている一方、半球部40bの開口部にも、例えば、前記一対の凸片42aによりそれぞれ嵌合可能な一対の凹片42bが設けられている。凸片42aは例えば−Y側に突起している一方、凹片42bは例えば−Y側に窪んだ形状をなし、クリップ42を構成するものである。例えば作業者は、電線Lに設置された発光装置1を囲繞するように一対の半球部40a、40bの開口部どうしを合わせて、2つの凸片42aを2つの凹片42bにそれぞれ嵌合させることにより、ケース40を閉じた状態とする。また、必要に応じて、作業者は、前述したボルト及びナットを用いて電線クランプ41の電線Lに対する把持力を強化する。
【0069】
この発光装置4によれば、発光装置1の上空側(+Y側)への光と、発光装置1の地上側(−Y側)への光がこの凸面鏡50で反射された光とは、半球部40aを透過して上空側から認識可能となる。特に、この発光装置4によれば、上空側でない側(半球部40b側)に放出される光が、凸面鏡50で上空側に放出される。よって、この発光装置4からの光は、例えば電線Lに発光装置1のみが設置されている場合の光よりも輝度が高い。また、図6に例示されるように、1つのケース40が2個の発光装置1を収容する構成をとれば、発光装置4の光は、2個の発光装置1の光を合わせて放出することになり、輝度がより高まる。ここで、ケース40内の発光装置1の個数は、図6に例示される2個に限定されるものではなく、例えば、3個以上であってもよいし、或いは1個であってもよい。
【0070】
一般にケース40はその内部の経年劣化を低減する上に、特に本実施の形態のケース40の所定の形状(例えば、球形状)は、ケース40自体の経年劣化の低減をもたらす。例えば球形であれば、直方体等の場合に比べて、これにかかる風圧を低減できるため、ケース自体40の経年劣化を低減できるとともに、風による発光装置4の揺れも低減できる。また、球形であれば、ケース40の内面で反射する発光装置1からの光が、直方体等の場合に比べて乱反射し難いといった利点もある。これにより、発光装置4をより視認し易くなる。更に、本実施の形態のケース40は、発光装置1をより多く収容したり、より大きな凸面鏡50を収容したりすることが可能なサイズのケースにすることが容易である。これにより、発光装置4は、発光装置1の数の増加に容易に対応できる。
【0071】
尚、前述した発光装置4は、透明な半球部40aを備えたものであるが、これに限定されるものではない。例えば、発光装置1と、凸面鏡50と、これらを収納する半球部40bとを備えているだけでもよい。また、前述した発光装置1からの光を反射する反射板は、前述した凸面鏡50に限定されるものではなく、例えば、半球部40bの内面を鏡面コートして反射板とするものであってもよい。これにより、発光装置4のコストを低減できる。
【0072】
<<<発光装置1を1以上用いた発光装置4の設置例>>>
前述した発光装置4は、例えば送電線の海峡横断送電線認知装置となり得る。そこで、図7を参照しつつ、海峡横断送電線認知装置としての発光装置4の送電線Lに対する設置例について説明する。尚、図7(a)は、本実施の形態の発光装置4の設置例を示す模式図であり、図7(b)は、本実施の形態の発光装置4のもう一つの設置例を示す模式図である。
【0073】
図7(a)の例示によれば、鉄塔T1、T2の間の直線距離Sを4等分するような送電線L上の3つの地点に対し、発光装置4a、4b、4c(以上、図6に例示される発光装置4と同じ)を設置している。
図7(b)の例示によれば、鉄塔T3、T4の間の送電線における最下点を基準として、送電線の支持点の高い方(鉄塔T3)から最下点までの発光装置4の設置間隔を相対的に密にし、最下点から送電線の支持点の低い方(鉄塔T4)までの発光装置4の設置間隔を相対的に粗くしている(発光装置4d、4e、4f、4g、4h)。つまり、より高い位置にある送電線の方が、航空機等にとってより危険性が高いため、限られた個数の発光装置4を送電線に設置する場合、より高い位置にある側に発光装置4を密に設置している。
尚、同図に例示されるように、送電線は、鉄塔T3、T4間で所定の弛度を有しているものとする。
【0074】
<<<電源装置が不要である一方、効果的に発光可能な低コストの発光体>>>
前述した実施の形態によれば、両端を閉塞される直管型のガラス管11、このガラス管11内に塗布された蛍光被膜12、ガラス管11内に封入された放電媒体、及び電極13a、13bを備えた蛍光放電ランプ10と、リード線14a、14bとを備えた発光体2が誘導電場を発生する電線Lの周囲に設けられることにより、ガラス管11内の蛍光被膜12が誘導電場下で発光し得る。この発光体2は、電線Lが発生する誘導電場を電気エネルギーの唯一の供給源としているため、電源装置を別途用意する必要がない。また、電線Lが発生する誘導電場の大きさが一定であっても、電極13aと電極13bとの間の電位差がより大きくなるようなリード線14a、14bの延出方向等を設定すれば、この発光体2は所定の光量を維持し得る。以上から、この発光体2は、電源装置が不要である一方、所定の光量を維持可能であり、且つ低コストでもある。尚、以上は、電極が電極17a、17b、17cであり、これに応じたリード線がリード線14a、14b、14cである発光体3についても同様である。
【0075】
また、前述した発光装置1では、複数の発光体2のリード線14a、14bは、それぞれ1以上のリード線束15a、15bに結束されている。この発光装置1によれば、リード線束15aに結束された複数のリード線14aにそれぞれ接続される電極13aの電位は互いに同電位になり、リード線束15aに結束された複数のリード線14bにそれぞれ接続される電極13bの電位も互いに同電位となる。よって、発光体2における蛍光放電ランプ10内の電位差が等しくなるため、各発光体2の輝度も等しくなり得る。よって、これら複数の発光体2を備えた発光装置1は、明るさにむらの少ない優れた発光装置となる。尚、以上は、電極が電極17a、17bであり、これに応じたリード線がリード線14a、14bである発光体3についても同様である。
【0076】
尚、蛍光放電ランプ10は、図2及び図3に例示される構成に限定されるものではない。蛍光放電ランプ10は、ガラス管の形状は直管型に限定されるものではないし、また、ガラス管に限定されるものではない。要するに、誘導電場を発生する物体の周囲に設けることができる形状をなし、その内部で放電が可能でありこれにより可視光が外部に放出可能であれば、いかなる形状、材質、及び機能を有する蛍光放電ランプであってもよい。
【0077】
前述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更、改良されるとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0078】
前述した実施の形態では、誘導電場を発生する物体を電線Lとしたが、これに限定されるものではない。要するに、周囲に誘導電場を発生すれば如何なる物体でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】(a)は、電線Lに設置された本実施の形態の発光装置の正面の構成例を示す平面図であり、(b)は、同発光装置の側面の構成例を示す平面図である。
【図2】本実施の形態の蛍光放電ランプの基本構成例を示す平面図である。
【図3】本実施の形態のもう一つの蛍光放電ランプの基本構成例を示す平面図である。
【図4】本実施の形態の発光体の発光実験におけるリード線と棒電極との配置関係を示す正面図及び上面図である。
【図5】本実施の形態のもう一つの発光体の発光実験におけるリード線と棒電極との配置関係を示す正面図及び上面図である。
【図6】本実施の形態の発光装置の構成例を示す平面図である。
【図7】(a)は、本実施の形態の発光装置の設置例を示す模式図であり、(b)は、本実施の形態の発光装置のもう一つの設置例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0080】
1、4 発光装置 2、3 発光体
10 蛍光放電ランプ 11 ガラス管
12 蛍光被 13a、13b、17a、17b 電極
14a、14b リード線 15a、15b リード線束
16 保持体 40 ケース
40a、40b 半球部 41 電線クランプ
41a、41b 把持片 42 クリップ
42a 凸片 42b 凹片
50 凸面鏡 51 支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極及び第2電極を有する蛍光放電ランプと、
前記第1電極と電気的に接続され、前記蛍光放電ランプから延出する第1リード線と、
前記第2電極と電気的に接続され、前記蛍光放電ランプから前記第1リード線が延出する方向とは異なる方向へ延出する第2リード線と、を備え、
前記蛍光放電ランプは、誘導電場を発生する物体の周囲に設けられ、
前記第1リード線及び前記第2リード線は、前記第1電極及び前記第2電極の電位を異ならせる方向へ延出する、
ことを特徴とする発光体。
【請求項2】
前記蛍光放電ランプは、
前記第1電極及び前記第2電極が両端に設けられるとともに前記両端が閉塞される直管型のガラス管と、
前記ガラス管の内面に塗布される蛍光被膜と、
前記ガラス管の内部に封入される放電媒体と、を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の発光体。
【請求項3】
前記誘導電場を発生する物体は、電力を送電するための送電線である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の発光体。
【請求項4】
前記第1リード線は、絶縁体を介して前記物体に接続され、
前記第2リード線は、前記物体に接続されない、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の発光体。
【請求項5】
前記第1リード線は、前記物体に接続され、
前記第2リード線は、前記物体に接続されない、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の発光体。
【請求項6】
前記第2リード線は、前記物体から離れる方向へ延出する、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の発光体。
【請求項7】
前記第1リード線及び前記第2リード線は、前記物体から離れる方向へ延出する、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の発光体。
【請求項8】
前記蛍光放電ランプは、第3リード線が電気的に接続される第3電極を更に備え、
前記第1リード線は、前記物体に接続され、
前記第2リード線及び前記第3リード線は、前記物体から離れる方向へ延出する、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の発光体。
【請求項9】
第1電極及び第2電極を有する蛍光放電ランプと、前記第1電極と電気的に接続され、前記蛍光放電ランプから延出する第1リード線と、前記第2電極と電気的に接続され、前記蛍光放電ランプから前記第1リード線が延出する方向とは異なる方向へ延出する第2リード線と、をそれぞれが有する複数の発光体と、
前記複数の発光体が誘導電場を発生する送電線の周囲を取り囲むように、前記複数の発光体を保持する保持体と、を備え、
前記複数の発光体の前記第1リード線及び前記第2リード線は、それぞれの前記第1電極及び前記第2電極の電位を異ならせる方向へ延出する、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項10】
前記複数の発光体の前記第1リード線及び前記第2リード線は、それぞれ1以上のリード線束に結束される、
ことを特徴とする請求項9に記載の発光装置。
【請求項11】
前記複数の発光体の発光出力を上空側へ反射する反射板、
を更に備えたことを特徴とする請求項9又は10に記載の発光装置。
【請求項12】
前記複数の発光体の発光出力及び前記反射板の反射出力を上空側へ透過する透過面を有し、前記複数の発光体を保持する保持体及び前記反射板を収容するべく前記送電線に結合されるケース、
を更に備えたことを特徴とする請求項11に記載の発光装置。
【請求項13】
前記複数の発光体を保持する前記保持体は、前記送電線に2以上設けられる、
ことを特徴とする請求項12に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−164995(P2008−164995A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355273(P2006−355273)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】