説明

発光体駆動装置及びこれを用いた照明機器

【課題】ブリーダ回路で生じる損失を軽減する。
【解決手段】光体駆動装置100は、整流電圧Va’の位相角S1と所定の基準位相角S2とを比較して調光器の有無を判定する調光器有無判定部115と、調光器有無判定部115の判定結果信号S3に応じてブリーダ回路BLDのイネーブル制御を行うブリーダ制御部140と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED[light emitting diode]などの発光体を駆動する発光体駆動装置、及び、これを用いた照明機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、トライアック(双方向サイリスタ)調光方式に対応したLEDドライバICが種々実用化されている。トライアック調光方式は、白熱電球などの調光方式として従来から採用されてきた調光方式である。従って、トライアック調光方式に対応したLEDドライバICを用いれば、既設のトライアック調光器を流用してLED照明機器の調光制御を行うことが可能となる。
【0003】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−73689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、トライアック調光器は、所定値以上の保持電流を流しておかなければ、誤動作を生じる構造である。そのため、トライアック調光方式に対応したLED照明機器(例えば、白熱電球と代替可能な白熱電球型LEDランプ)には、トライアック調光方式に対応したLEDドライバICと、これに外付けされてトライアック調光器の保持電流を維持するためのブリーダ回路と、を搭載した電源モジュールが組み込まれていた。
【0006】
ブリーダ回路は、トライアック調光器の誤動作を防止する手段として有効である。しかしながら、トライアック調光器を備えていない照明システムの光源として、ブリーダ回路搭載のLED照明機器を用いた場合には、ブリーダ回路に流れる電流が無意味な損失となってしまう。そのため、従来のLED照明機器としては、トライアック調光方式に対応した調光対応モデル(ブリーダ回路搭載モデル)と、調光非対応モデル(ブリーダ回路非搭載モデル)の2種類が用意されており、製造コストの増大やユーザの混乱を招いていた。
【0007】
本発明は、本願の発明者により見出された上記の問題点に鑑み、ブリーダ回路で生じる損失を軽減することのできる発光体駆動装置、及び、これを用いた照明機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る発光体駆動装置は、整流電圧の位相角と所定の基準位相角とを比較して調光器の有無を判定する調光器有無判定部と、前記調光器有無判定部の判定結果に応じてブリーダ回路のイネーブル制御を行うブリーダ制御部と、を有する構成(第1の構成)とされている。
【0009】
なお、上記第1の構成から成る発光体駆動装置において、前記調光器有無判定部は、前記整流電圧の位相角が前記基準位相角よりも小さいときに調光器ありと判定し、前記整流電圧の位相角が前記基準位相角よりも大きいときに調光器なしと判定する構成(第2の構成)にするとよい。
【0010】
また、上記第2の構成から成る発光体駆動装置にて、前記ブリーダ制御部は、調光器ありの判定結果に応じて前記ブリーダ回路をイネーブル状態とし、調光器なしの判定結果に応じて前記ブリーダ回路をディセーブル状態とする構成(第3の構成)にするとよい。
【0011】
また、上記第3の構成から成る発光体駆動装置において、前記ブリーダ制御部は、調光器ありの判定結果に応じて前記ブリーダ回路をイネーブル状態としたときには、前記整流電圧が閾値電圧を下回っている期間において、前記整流電圧の印加端から接地端に向けたバイパス電流を流すように前記ブリーダ回路を制御し、前記整流電圧が前記閾値電圧を上回っているものの、前記調光器に流れる電流が閾値電流を下回っている期間において、前記調光器にブリーダ電流を流すように前記ブリーダ回路を制御し、前記整流電圧が前記閾値電圧を上回っており、かつ、前記調光器に流れる電流が前記閾値電流を上回っている期間において、前記バイパス電流及び前記ブリーダ電流を停止するように前記ブリーダ回路を制御する一方、調光器なしの判定結果に応じて前記ブリーダ回路をディセーブル状態としたときには、常に前記バイパス電流及び前記ブリーダ電流を停止するように前記ブリーダ回路を制御する構成(第4の構成)にするとよい。
【0012】
また、上記第1〜第4いずれかの構成から成る発光体駆動装置において、前記調光器有無判定部は、調光器ありの判定結果についてはこれを維持する一方、調光器なしの判定結果についてはこれを維持することなく前記調光器の有無判定を定期的に繰り返す構成(第5の構成)にするとよい。
【0013】
また、上記第1〜第5いずれかの構成から成る発光体駆動装置は、前記整流電圧と前記閾値電圧とを比較して比較信号を生成するコンパレータと、前記比較信号のハイレベル期間とローレベル期間を計測するサンプリングカウンタと、前記サンプリングカウンタの出力に基づいて前記整流電圧の位相角を算出する位相角算出部と、前記基準位相角を格納する基準位相角格納部と、をさらに有する構成(第6の構成)にするとよい。
【0014】
また、本発明に係る照明機器は、発光体と、交流電圧を整流して前記整流電圧を生成する整流回路と、前記整流電圧から直流電圧を生成して前記発光体に供給する平滑回路と、トライアック調光器の保持電流を維持するブリーダ回路と、前記発光体の駆動電流が流れる電流経路を導通/遮断するスイッチ素子と、前記整流電圧の位相角に応じて前記スイッチ素子のオン/オフ制御を行う上記第1〜第6いずれかの構成から成る発光体駆動装置とを有する構成(第7の構成)にするとよい。
【0015】
また、上記第7の構成から成る照明機器において、前記発光体は、LED素子を含む構成(第8の構成)にするとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ブリーダ回路で生じる損失を軽減することのできる発光体駆動装置、及び、これを用いた照明機器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】LED照明機器の一構成例を示す図
【図2】デコーダ部110、ブリーダ制御部140、及び、ブリーダ回路BLDの一構成例を示す図
【図3】コンパレータ111及びサンプリングカウンタ112の一動作例を示す図
【図4】基準位相角S2の一設定例を示す図
【図5】調光器有無判定動作の一例を示すフローチャート
【図6】ブリーダ制御モードの第1切替例(調光器あり)を示す図
【図7】ブリーダ制御モードの第2切替例(調光器なし)を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<LED照明機器>
図1は、LED照明機器の一構成例を示す図である。本構成例のLED照明機器1は、LEDモジュール10と、電源モジュール20と、を有する。
【0019】
LEDモジュール10は、昼光色(色温度5000K程度)や電球色(色温度3000K程度)の光を発するLED照明機器1の光源であり、直列ないしは並列に接続された複数のLED素子を含む。
【0020】
電源モジュール20は、商用交流電源30(例えばAC90〜220V)から供給される交流電圧VINを直流電圧VOUT(例えばDC50V)に変換してLEDモジュール10に供給する。電源モジュール20は、LEDドライバIC100と、これに外付けされる種々のディスクリート部品(ダイオードブリッジDB、ブリーダ回路BLD、抵抗R1〜R5、ダイオードD1〜D4、ツェナダイオードZD、キャパシタC1〜C3、npn型バイポーラトランジスタQ1、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタN1、及びトランスTR)をプリント配線基板上に搭載して成る。
【0021】
商用交流電源30の第1出力端は、ダイオードブリッジDBの第1入力端に接続されている。商用交流電源30の第2出力端は、交流電圧VINの位相制御を行うトライアック調光器40を介して、ダイオードブリッジDBの第2入力端に接続されている。ダイオードブリッジDBの第1出力端は、ダイオードD1のアノードに接続される一方、ブリーダ回路BLDを介して接地端にも接続されている。ダイオードD1のカソードは、LEDモジュール10のアノードに接続されている。ダイオードブリッジDBの第2出力端は、ブリーダ回路BLDを介して接地端に接続されている。ブリーダ回路BLDの制御端は、LEDドライバIC100の外部端子T2に接続されている。
【0022】
抵抗R1及びR2は、ダイオードブリッジDBの第1出力端と接地端との間に直列接続されている。抵抗R1及びR2の接続ノード(整流電圧Vaの印加端)は、LEDドライバIC100の外部端子T1に接続されている。キャパシタC1は、ダイオードD1のカソードと接地端との間に接続されている。抵抗R3の第1端は、ダイオードD1のカソードに接続されている。抵抗R3の第2端は、ツェナダイオードZDのカソードとトランジスタQ1のベースに接続されている。ツェナダイオードZDのアノードは、接地端に接続されている。トランジスタQ1のコレクタは、抵抗R4を介してダイオードD1のカソードに接続されている。トランジスタQ1のエミッタは、LEDドライバIC100の外部端子T3とダイオードD2のカソードに接続されている。ダイオードD2のアノードは接地端に接続されている。
【0023】
ダイオードD3のカソードは、ダイオードD1のカソードに接続されている。ダイオードD3のアノードは、トランジスタN1のドレインに接続されている。トランジスタN1のソースは、抵抗R5を介して接地端に接続される一方、LEDドライバIC100の外部端子T5にも接続されている。トランジスタN1のゲートは、LEDドライバIC100の外部端子T4に接続されている。キャパシタC2の第1端は、LEDモジュール10のアノードに接続されている。キャパシタC2の第2端は、LEDモジュール10のカソードに接続されている。
【0024】
トランスTRを形成する一次巻線L1の第1端は、LEDモジュール10のカソードに接続されている。一次巻線L1の第2端は、トランジスタN1のドレインに接続されている。トランスTRを形成する二次巻線L2の第1端は、ダイオードD4のアノードに接続されている。二次巻線L2の第2端は、接地端に接続されている。ダイオードD4のカソードは、LEDドライバIC100の外部端子T3に接続されている。キャパシタC3はダイオードD4のカソードと接地端との間に接続されている。
【0025】
<電源モジュール>
上記構成から成る電源モジュール20の基本動作について詳細に説明する。
【0026】
ダイオードブリッジDBは、交流電圧VINを全波整流して整流電圧Vaを生成する整流回路である。ダイオードD1及びキャパシタC1は、ダイオードブリッジDBの出力を平滑化して直流電圧VOUTを生成し、これをLEDモジュール10に供給する平滑回路である。このように、ダイオードブリッジDB、ダイオードD1、及び、キャパシタC1は、交流電圧VINを直流電圧VOUTに変換してLEDモジュール10に供給するAC/DC変換部として機能する。なお、ダイオードブリッジDBの前段に、ノイズやサージを除去するためのフィルタ回路を設けてもよい。
【0027】
トランジスタN1は、LEDモジュール10のカソードから接地端に至る電流経路を導通/遮断するスイッチ素子である。LEDドライバIC100は、トランジスタN1及び抵抗R5を介して接地端に流れる電流(LEDモジュール10の駆動電流ILED)が目標値と一致するようにトランジスタN1のオン/オフ制御を行う半導体集積回路装置である。トランジスタN1がオンされているときには、ダイオードD1のカソードからLEDモジュール10、トランスTRの一次巻線L1、トランジスタN1、及び、抵抗R5を介して接地端に向けた駆動電流ILEDが流れる。一方、トランジスタN1がオフされているときには、トランスTRの一次巻線L1、ダイオードD3、及び、LEDモジュール10を介してループ状に駆動電流ILEDが流れる。
【0028】
トランジスタQ1、抵抗R3及びR4、ダイオードD2、並びに、ツェナダイオードZDは、LEDドライバIC100の起動時にダイオードD1のカソードからキャパシタC3の充電電流を引き込んで、LEDドライバIC100の電源電圧Vbを生成するための簡易レギュレータ(エミッタフォロワ)として機能する。トランスTRは、LEDモジュール10に流れる駆動電流ILEDを利用してLEDドライバIC100への電力供給を行う。従って、LEDドライバIC100の起動後には、トランスTRの二次巻線L2からダイオードD4を介する電流経路でキャパシタC3の充電動作が行われ、LEDドライバIC100への電力供給が継続される。なお、トランスTRの巻線比については、LEDドライバIC100の動作に必要な電源電圧Vbを鑑みて適宜設定すればよい。
【0029】
<LEDドライバIC>
次に、LEDドライバIC100の内部構成について説明する。LEDドライバIC100には、デコーダ部110と、減電圧保護部120と、レギュレータ部130と、ブリーダ制御部140と、駆動電流制御部150と、ドライバ部160と、が集積化されている。なお、LEDドライバIC100には、上記以外の回路ブロック(温度保護部、過電圧保護部、過電流保護部、LEDショート保護部、LEDオープン保護部、天絡/地絡保護部など)を集積化することも可能である。
【0030】
デコーダ部110は、抵抗R1及びR2の接続ノードから外部端子T1に印加される整流電圧Va’(整流電圧Vaの分圧電圧)を監視して調光信号とブリーダ制御信号を生成する。デコーダ部110を備えたLEDドライバIC100によれば、交流電圧VINの位相制御を行うトライアック調光器40を用いて、LED照明機器1の調光制御を行うことが可能となる。
【0031】
減電圧保護部120は、外部端子T3に印加される電源電圧Vbが所定の閾値電圧を下回っているか否かを監視して減電圧保護信号を生成する。
【0032】
レギュレータ部130は、外部端子T3に印加される電源電圧Vbから所定の内部電源電圧を生成してLEDドライバIC100の各部に供給する。
【0033】
ブリーダ制御部140は、デコーダ部110から入力されるブリーダ制御信号に基づいてブリーダ回路BLDの駆動制御を行う。このような構成とすることにより、トライアック調光器40の保持電流が不足するときには、ブリーダ回路BLDを介してブリーダ電流IBを流すことにより、トライアック調光器40の正常動作を維持することができる。
【0034】
駆動電流制御部150は、デコーダ部110から入力される調光信号に応じてLEDモジュール10の駆動電流ILEDを制御する。具体的に述べると、駆動電流制御部150は、外部端子T5の印加電圧(=ILED×R5)が所定の目標値と一致するようにトランジスタN1のオン/オフ制御信号を生成する。なお、上記の目標値は、デコーダ部110から入力される調光信号に基づいて設定される。このような構成とすることにより、トライアック調光器40を用いて、LED照明機器1の調光制御を行うことが可能となる。
【0035】
ドライバ部160は、駆動電流制御部150から入力されるオン/オフ制御信号の電流能力を増幅してトランジスタN1のゲート信号を生成する。
【0036】
<デコーダ部及びブリーダ制御部>
図2は、デコーダ部110、ブリーダ制御部140、及び、ブリーダ回路BLDの一構成例を示す図である。本構成例のデコーダ部110は、コンパレータ111と、サンプリングカウンタ112と、位相角算出部113と、基準位相角格納部114と、調光器有無判定部115と、を含む。また、本構成例のブリーダ制御部140は、コンパレータ141と、ドライバ142と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ143と、制御部144と、を含む。また、本構成例のブリーダ回路BLDは、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタN2と、抵抗R6〜R8と、を含む。
【0037】
トランジスタN2のドレインは、抵抗R6(例えば1kΩ)を介してダイオードブリッジDBの第1出力端(整流電圧Vaの印加端)に接続されている。トランジスタN2のゲートは、LEDドライバIC100の外部端子T2aに接続されている。トランジスタN2のソースは、LEDドライバIC100の外部端子T2bに接続される一方、直列接続された抵抗R7及びR8を介して接地端にも接続されている。抵抗R7及びR8の接続ノード(電流検出電圧Vcの印加端)は、LEDドライバIC100の外部端子T2cに接続される一方、ダイオードブリッジDBの第2出力端にも接続されている。
【0038】
コンパレータ111は、非反転入力端(+)に印加される整流電圧Va’と、反転入力端(−)に印加される所定の閾値電圧Vth1を比較して比較信号CMP1を生成する。比較信号CMP1は、整流電圧Va’が閾値電圧Vth1よりも高いときにハイレベルとなり、逆に、整流電圧Va’が閾値電圧Vth1よりも低いときにローレベルとなる。比較信号CMP1は、サンプリングカウンタ112に送出される一方、ブリーダ制御信号の一つとして制御部144にも送出される。なお、閾値電圧Vth1にはヒステリシス特性を持たせておくとよい(例えば、比較信号CMP1をハイレベルに立ち上げるときの閾値電圧:420mV、比較信号CMP1をローレベルに立ち下げるときの閾値電圧:300mV)。
【0039】
サンプリングカウンタ112は、比較信号CMP1のハイレベル期間THとローレベル期間TLを計測する。ハイレベル期間THは、比較信号CMP1の立上がりエッジから立下りエッジまでの期間を計測することにより取得することができる。ローレベル期間TLは、比較信号CMP1の立下りエッジから立上がりエッジまでの期間を計測することにより取得することができる。
【0040】
図3は、コンパレータ111及びサンプリングカウンタ112の一動作例を示す図であり、上から順に、整流電圧Va’と比較信号CMP1の電圧波形が描写されている。
【0041】
位相角算出部113は、サンプリングカウンタの出力(TH、TL)に基づいて、周期毎に整流電圧Va’の位相角S1(デジタル値)を算出する。整流電圧Va’の位相角S1はオンデューティ(=TH/(TH+TL))に相当するので、位相角算出部113をデューティ算出部として理解することもできる。
【0042】
基準位相角格納部114は、位相角S1と比較参照される所定の基準位相角S2(デジタル値)を格納する。基準位相角格納部114としては、ROM[Read Only Memory]やフラッシュメモリなどの不揮発性メモリを用いることができる。
【0043】
調光器有無判定部115は、整流電圧Va’の位相角S1と所定の基準位相角S2とを比較してトライアック調光器40の有無を判定し、その判定結果に応じた調光器有無判定信号S3をブリーダ制御信号の一つとして制御部144に送出する。
【0044】
図4は、基準位相角S2の一設定例を示す図である。トライアック調光器40が設けられていない場合、整流電圧Va’の位相角S1は、180deg.(100%)となる。一方、トライアック調光器40が設けられている場合、整流電圧Va’の位相角S1は、最大でも135deg.(75%)程度までしか大きくならない。従って、基準位相角S2を適切な値(例えば150〜160deg.)に設定することにより、整流電圧Va’の位相角S1と基準位相角S2との比較結果に基づいて、トライアック調光器40の有無を判定することが可能となる。
【0045】
具体的に述べると、調光器有無判定部115は、整流電圧Va’の位相角S1が基準位相角S2よりも小さいときにトライアック調光器40が設けられていると判定し、整流電圧Va’の位相角S1が基準位相角S2よりも大きいときにトライアック調光器40が設けられていないと判定する。調光器有無判定信号S3は、調光器ありの判定が下されたときにハイレベルとなり、逆に、調光器なしの判定が下されたときにローレベルとなる。
【0046】
コンパレータ141は、反転入力端(−)に印加される電流検出電圧Vcと、非反転入力端(+)に印加される所定の閾値電圧Vth2とを比較して比較信号CMP2を生成する。電流検出電圧Vcは、抵抗R8に流れる電流Isupが大きいほど低くなり、同電流Isupが小さいほど高くなる負電圧である。比較信号CMP2は、抵抗R8に流れる電流Isupが閾値電流よりも大きく、電流検出電圧Vcが閾値電圧Vth2よりも低いときにハイレベルとなり、逆に、抵抗R8に流れる電流Isupが閾値電流よりも小さく、電流検出電圧Vcが閾値電圧Vth2よりも高いときにローレベルとなる。比較信号CMP2は、制御部144に送出される。なお、閾値電圧Vth2にはヒステリシス特性を持たせておくとよい(例えば、比較信号CMP2をハイレベルに立ち上げるときの閾値電圧:−100mV、比較信号CMP2をローレベルに立ち下げるときの閾値電圧:−50mV)。
【0047】
ドライバ142は、制御部144から入力されるオン/オフ制御信号の電流能力を増幅して外部端子T2aからトランジスタN2のゲート信号を生成する。
【0048】
トランジスタ143は、制御部144から入力されるオン/オフ制御信号に応じて外部端子T2bと接地端との間を導通/遮断する。
【0049】
制御部144は、調光器有無判定信号S3に応じてブリーダ回路BLDのイネーブル制御を行う。具体的に述べると、制御部144は、調光器ありの判定結果(S3:ハイレベル)に応じてブリーダ回路BLDをイネーブル状態とし、調光器なしの判定結果(S3:ローレベル)に応じてブリーダ回路BLDをディセーブル状態とする。なお、ブリーダ回路BLDがディセーブル状態とされているときには、比較信号CMP1及びCMP2に依ることなく、トランジスタN2が常にオフ状態とされる。このような構成とすることにより、トライアック調光器40が設けられていない場合には、ブリーダ電流IBを停止して電力の浪費を抑えることが可能となる。
【0050】
また、制御部144は、調光器ありの判定結果に応じてブリーダ回路BLDをイネーブル状態としたときには、比較信号CMP1及びCMP2に応じてブリーダ制御モードの切替処理(ストロングブリーダ/ウィークブリーダ/オフ)を行う。この点については、後ほど詳細に説明する。
【0051】
図5は、調光器有無判定動作の一例を示すフローチャートである。フローがスタートすると、まずステップS101において、LEDドライバIC100の電源オン判定(例えば減電圧保護信号の論理レベル確認)が行われる。ここで、イエス判定が下された場合には、フローがステップS102に進められて、LEDドライバIC100が起動される。一方、ノー判定が下された場合には、電源オン判定が継続される。
【0052】
LEDドライバIC100の起動後、ステップS103では、調光器有無判定部115において、S1≦S2という関係式が満たされているか否かの判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合には、調光器ありと判定されてフローがステップS104に進められる。一方、ノー判定が下された場合には、調光器なしと判定されてフローがステップS106に進められる。
【0053】
ステップS103で調光器ありと判定された場合、ステップS104ではブリーダ回路BLDがイネーブル状態とされて、ブリーダ制御モードの切替処理が行われる。その後、ステップS105では、LEDドライバIC100の電源オフ判定(例えば減電圧保護信号の論理レベル確認)が行われる。ここで、ノー判定が下された場合には、フローがステップS104に戻されて、ブリーダ制御モードの切替処理が継続される。一方、イエス判定が下された場合には、フローがステップS101に戻されて、先に述べたLEDドライバIC100の電源オン判定に移行される。
【0054】
一方、ステップS103で調光器なしと判定された場合、ステップS106ではブリーダ回路BLDがディセーブル状態とされて、ブリーダ電流IBが停止される。その後、ステップS107では、LEDドライバIC100の電源オフ判定(例えば減電圧保護信号の論理レベル確認)が行われる。ここで、ノー判定が下された場合には、フローがステップS103に戻されて、トライアック調光器40の有無が再度判定される。一方、イエス判定が下された場合には、フローがステップS101に戻されて、先に述べたLEDドライバIC100の電源オン判定に移行される。
【0055】
上記したように、調光器有無判定部115は、調光器ありの判定結果については、LEDドライバIC100の電源がオフされるまで、その判定結果を維持する一方、調光器なしの判定結果については、LEDドライバIC100の電源がオフされなくても、その判定結果を維持することなく、トライアック調光器40の有無判定を定期的に繰り返す。
【0056】
このような構成とすることにより、トライアック調光器40を用いて基準位相角S2よりも大きい位相角S1を設定することが可能であった場合に、一旦調光器なしの誤判定を下してしまったとしても、その後、基準位相角S2よりも小さい位相角S1が設定された時点で、改めて調光器ありの正しい判定を下すことが可能となる。ただし、基準位相角S2が十分に大きい値(例えば180deg.(100%)近傍)に設定されている場合には、ステップS107でノー判定が下されたときに、フローをステップS106に戻す構成(図5の破線矢印を参照)としても構わない。
【0057】
<ブリーダ制御モードの切替処理>
図6は、ブリーダ制御モードの第1切替例(調光器あり)を示す図であり、上から順番に、整流電圧Va’、比較信号CMP1、電流検出電圧Vc、比較信号CMP2、及び、ブリーダ制御モードが描写されている。なお、説明を簡単とするために、図6では閾値電圧Vth1及びVth2にヒステリシス特性が与えられていないものとする。
【0058】
トライアック調光器40が設けられており、S1≦S2という関係式が成立している場合、制御部144は、調光器ありの判定結果(S3:ハイレベル)に応じてブリーダ回路BLDをイネーブル状態とし、比較信号CMP1及びCMP2に応じてブリーダ制御モードの切替処理(トランジスタN2とトランジスタ143のオン/オフ制御)を行う。
【0059】
具体的に述べると、制御部144は、比較信号CMP1がローレベルである期間、すなわち、整流電圧Va’が閾値電圧Vth1を下回っている期間において、トランジスタN2とトランジスタ143をいずれもオン状態とする。この動作状態は、ブリーダ制御モードがストロングブリーダモード(図6では「SB[Strong Bleeder]」と標記)に設定された状態に相当する。整流電圧Va’のオフ期間にもトライアック調光器40には電流が流れている。従って、ダイオードブリッジDBに接続される負荷が大きいと、上記オフ期間に整流電圧Va’が持ち上がり、閾値電圧Vth1を意図せずに上回って誤動作を生じるおそれがある。一方、整流電圧Va’のオフ期間において、ブリーダ制御モードをストロングブリーダSBに設定する構成であれば、ダイオードブリッジDBの第1出力端(整流電圧Vaの印加端)から抵抗R6(例えば1kΩ)を介して接地端に至る電流経路でバイパス電流Ixを流すことができる。従って、ダイオードブリッジDBに接続される負荷を小さく見せることができるので、上記オフ期間における整流電圧Va’の持ち上がりを防止することが可能となる。なお、ブリーダ制御モードがストロングブリーダSBに設定されているときには、ブリーダ回路BLDからトライアック調光器40にブリーダ電流IBが流されることはない。
【0060】
また、制御部144は、比較信号CMP1がハイレベルであるものの、比較信号CMP2がローレベルである期間において、トランジスタN2をオン状態とする一方、トランジスタ143をオフ状態とする。この動作状態は、ブリーダ制御モードがウィークブリーダモード(図6では「WB[Weak Bleeder]」と標記)に設定された状態に相当する。すなわち、制御部144は、整流電圧Va’が閾値電圧Vth1を上回っているものの、トライアック調光器40に流れる電流Isupが閾値電流を下回っており、電流検出電圧Vcが閾値電圧Vth2を上回っている期間において、ブリーダ回路BLDからトライアック調光器40にブリーダ電流IBを流すようにブリーダ回路BLDを制御する。このような動作により、トライアック調光器40に十分な保持電流を流すことが可能となる。
【0061】
また、制御部144は、比較信号CMP1及びCMP2がいずれもハイレベルである期間において、トランジスタN2とトランジスタ143をいずれもオフ状態とする。この動作状態は、ブリーダ制御モードがオフオード(図6では「OFF」と標記)に設定された状態に相当する。すなわち、制御部144は、整流電圧Va’が閾値電圧Vth1を上回っている期間であって、かつ、トライアック調光器40に流れる電流Isupが閾値電流を上回っている期間(電流検出電圧Vcが閾値電圧Vth2を下回っている期間)において、バイパス電流Ix及びブリーダ電流IBを停止するようにブリーダ回路BLDを制御する。このような動作により、トライアック調光器40に十分な電流Isupが流れているときには、バイパス電流Ix及びブリーダ電流IBを停止して、ブリーダ回路BLDによる電力の浪費を抑えることが可能となる。
【0062】
図7は、ブリーダ制御モードの第2切替例(調光器なし)を示す図であり、図6と同じく、上から順番に、整流電圧Va’、比較信号CMP1、電流検出電圧Vc、比較信号CMP2、及び、ブリーダ制御モードが描写されている。なお、最下段に示した括弧付きのブリーダ制御モードは、ブリーダ回路BLDがディセーブル状態とされない場合の様子を参考として描写したものである。
【0063】
トライアック調光器40が設けられておらず、S1>S2という関係式が成立している場合、制御部144は、調光器なしの判定結果(S3:ローレベル)に応じてブリーダ回路BLDをディセーブル状態とし、比較信号CMP1及びCMP2に依ることなく、バイパス電流Ixとブリーダ電流IBを常に停止させる。この動作状態は、ブリーダ制御モードが先述のオフオード(OFF)に設定された状態に相当する。このような構成とすることにより、トライアック調光器40が設けられていない場合には、バイパス電流Ix及びブリーダ電流IBを停止して、ブリーダ回路BLDによる電力の浪費を抑えることが可能となる。
【0064】
<その他の変形例>
なお、上記の実施形態では、LEDドライバICに本発明を適用した構成を例に挙げて説明を行ったが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、他の発光体(例えば有機EL[electro-luminescence])を駆動する発光体駆動装置全般に広く適用することが可能である。
【0065】
また、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば、バイポーラトランジスタとMOS電界効果トランジスタとの相互置換や、各種信号の論理レベル反転は任意である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、例えば、トライアック調光方式に対応したLEDドライバICやLED照明機器の汎用性を高めるための技術として好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 LED照明機器
10 LEDモジュール
20 電源モジュール
30 商用交流電源
40 トライアック調光器
100 LEDドライバIC
110 デコーダ部
111 コンパレータ
112 サンプリングカウンタ
113 位相角算出部
114 基準位相角格納部
115 調光器有無判定部
120 減電圧保護部(UVLO部)
130 レギュレータ部
140 ブリーダ制御部
141 コンパレータ
142 ドライバ
143 Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ
144 制御部
150 駆動電流制御部
160 ドライバ部
DB ダイオードブリッジ
BLD ブリーダ回路
R1〜R8 抵抗
D1〜D4 ダイオード
ZD ツェナダイオード
C1〜C3 キャパシタ
Q1 npn型バイポーラトランジスタ
N1、N2 Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ
TR トランス
L1 一次巻線
L2 二次巻線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流電圧の位相角と所定の基準位相角とを比較して調光器の有無を判定する調光器有無判定部と、
前記調光器有無判定部の判定結果に応じてブリーダ回路のイネーブル制御を行うブリーダ制御部と、
を有することを特徴とする発光体駆動装置。
【請求項2】
前記調光器有無判定部は、前記整流電圧の位相角が前記基準位相角よりも小さいときに調光器ありと判定し、前記整流電圧の位相角が前記基準位相角よりも大きいときに調光器なしと判定することを特徴とする請求項1に記載の発光体駆動装置。
【請求項3】
前記ブリーダ制御部は、調光器ありの判定結果に応じて前記ブリーダ回路をイネーブル状態とし、調光器なしの判定結果に応じて前記ブリーダ回路をディセーブル状態とすることを特徴とする請求項2に記載の発光体駆動装置。
【請求項4】
前記ブリーダ制御部は、
調光器ありの判定結果に応じて前記ブリーダ回路をイネーブル状態としたときには、
前記整流電圧が閾値電圧を下回っている期間において、前記整流電圧の印加端から接地端に向けたバイパス電流を流すように前記ブリーダ回路を制御し、
前記整流電圧が前記閾値電圧を上回っているものの、前記調光器に流れる電流が閾値電流を下回っている期間において、前記調光器にブリーダ電流を流すように前記ブリーダ回路を制御し、
前記整流電圧が前記閾値電圧を上回っており、かつ、前記調光器に流れる電流が前記閾値電流を上回っている期間において、前記バイパス電流及び前記ブリーダ電流を停止するように前記ブリーダ回路を制御する一方、
調光器なしの判定結果に応じて前記ブリーダ回路をディセーブル状態としたときには、常に前記バイパス電流及び前記ブリーダ電流を停止するように前記ブリーダ回路を制御することを特徴とする請求項3に記載の発光体駆動装置。
【請求項5】
前記調光器有無判定部は、調光器ありの判定結果についてはこれを維持する一方、調光器なしの判定結果についてはこれを維持することなく前記調光器の有無判定を定期的に繰り返すことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発光体駆動装置。
【請求項6】
前記整流電圧と前記閾値電圧とを比較して比較信号を生成するコンパレータと、
前記比較信号のハイレベル期間とローレベル期間を計測するサンプリングカウンタと、
前記サンプリングカウンタの出力に基づいて前記整流電圧の位相角を算出する位相角算出部と、
前記基準位相角を格納する基準位相角格納部と、
をさらに有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の発光体駆動装置。
【請求項7】
発光体と、
交流電圧を整流して前記整流電圧を生成する整流回路と、
前記整流電圧から直流電圧を生成して前記発光体に供給する平滑回路と、
トライアック調光器の保持電流を維持するブリーダ回路と、
前記発光体の駆動電流が流れる電流経路を導通/遮断するスイッチ素子と、
前記整流電圧の位相角に応じて前記スイッチ素子のオン/オフ制御を行う請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の発光体駆動装置と、
を有することを特徴とする照明機器。
【請求項8】
前記発光体は、LED素子を含むことを特徴とする請求項7に記載の照明機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−33651(P2013−33651A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169379(P2011−169379)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】