説明

発光制御システム、発光制御装置、および発光制御プログラム

【課題】基準となる速度を提示することにより、交通渋滞の発生をより低減する。
【解決手段】複数の発光体3を制御する発光制御システムであって、道路に沿って設置される前記複数の発光体3と、複数の発光体3の点滅をそれぞれ制御する制御装置1とを有し、制御装置1は、少なくとも1つの点灯状態の発光体が、道路の進行方向に向かって所定の速度で移動しているかのように、所定のタイミングで複数の発光体3の各々を点灯状態または消灯状態に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の発光体の点滅を制御する発光制御システム、発光制御装置、および発光制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
NEXCO東日本が公開している統計情報によれば、交通集中渋滞の約55%が上り坂及びサグ部で生じている。上り坂やサグ部おいて無意識のうちに速度が低下する車がいることが原因とされており、対策として「速度低下注意」などの標識が設置されている。
【0003】
また、特許文献1には、交通渋滞を防止するために加速を促すサインまたは速度低下の抑制を促すサインを表示する交通渋滞防止システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−259046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、「速度低下注意」などの標識や、特許文献1に記載されたサインの表示では、無意識に上り坂やサグ部で速度を低下させる運転者にとっては、自分が速度を低下しているかどうか気がつかない場合がある。また、速度低下に気がついた場合であっても、どの程度、加速すればよいのかは、運転手の主観的な判断に委ねられる。この結果、依然として渋滞が発生してしまう。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、基準となる速度を提示して、交通渋滞の発生をより低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、複数の発光体を制御する発光制御システムであって、道路に沿って設置される前記複数の発光体と、前記複数の発光体の点滅をそれぞれ制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、少なくとも1つの点灯状態の発光体が、前記道路の進行方向に向かって所定の速度で移動しているかのように、所定のタイミングで前記複数の発光体の各々を点灯状態または消灯状態に制御する。
【0008】
本発明は、道路に沿って設置された複数の発光体を制御する発光制御装置であって、少なくとも1つの点灯状態の発光体が、前記道路の進行方向に向かって所定の速度で移動しているかのように、所定のタイミングで前記複数の発光体の各々を点灯状態または消灯状態に制御する。
【0009】
本発明は、前記発光制御装置としてコンピュータを機能させるための発光制御プログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基準となる速度を提示することにより、交通渋滞の発生をより低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る発光制御システムの全体構成図である。
【図2】発光体の状態遷移の一例を示すものである。
【図3】複数の発光体の各々の状態番号の遷移を説明するための説明図である。
【図4】発光制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る発光制御システムの全体構成図である。図示する発光制御システムは、発光制御装置1と、複数の発光体3とを有する。
【0014】
各発光体3は、例えば、上り坂、サグ部など渋滞が発生しやすい道路に沿って配置される。なお、サグ部は、下り坂から上り坂にさしかかる部分である。本実施形態では、N個の発光体3が、所定の間隔(d[m])で道路脇に設置されるものとする。
【0015】
また、本実施形態の各発光体3は、ネットワークを介して発光制御装置1と接続され、発光制御装置1から送信される制御命令(点灯命令または消灯命令)を受信し、受信した制御命令に応じて当該発光体3を点灯または消灯する。なお、発光体3には、例えば、LED(Light Emitting Diode)、白熱灯などを用いることが考えられる。
【0016】
発光制御装置1は、各発光体3にネットワークを介して制御命令を送信し、各発光体3の点滅を制御する。すなわち、発光制御装置1は、少なくとも1つの点灯状態の発光体3が、あたかも道路の車両進行方向に向かって所定の速度で移動しているかのように見えるように、所定のタイミングで複数の発光体3の各々を点灯状態または消灯状態に制御する。図示する発光制御装置1は、制御部11と記憶部12とを有する。
【0017】
なお、発光制御装置1には、例えば、CPUと、メモリと、HDD等の外部記憶装置と、入力装置と、出力装置とを備えた汎用的なコンピュータシステムを用いることができる。このコンピュータシステムにおいて、CPUがメモリ上にロードされた発光制御装置1用のプログラムを実行することにより、発光制御装置1の各機能が実現される。
【0018】
また、発光制御装置1用のプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVD−ROMなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶することも、ネットワークを介して配信することもできる。
【0019】
次に、本実施形態の発光制御装置1の動作について説明する。
【0020】
発光制御装置1は、発光体3が設置された道路を走行する車両(自動車)の運転手に、点灯状態の発光体3があたかも車両進行方向に向かって移動しているかのように見せるように、各発光体3を点滅させる。この見かけ上の発光体3の移動速度を、渋滞の発生を防止するための基準となる基準速度(例えば、法定最高速度)とする。道路を走行する車両の各運転手が、発光体3の見かけ上の移動速度と同期するように車両の速度をそれぞれ調整することにより、無意識に速度が低下してしまうことを防止し、渋滞の発生を防止することができる。
【0021】
発光体3の設置間隔をd[m]とし、基準とする速度をv[m/s]とすると、時間間隔(t[s])は、下記の式で表わすことができる。
【0022】
t[s]=d[m]/v[m/s]
このとき、各発光体3の点灯と消灯とを、例えば図2に示すように、2tの点灯と3tの消灯との周期(5t)を繰り返すこととする。
【0023】
図2は、各発光体3の状態遷移の一例を示すものである。図示する例では、t秒毎に、発光体3の状態番号が「1」→「2」→「3」→「4」→「5」→「1」→「2」・・・に繰り返し遷移することを示している。また、状態番号が「1」および「2」のときの発光体3は点灯状態に制御され、状態番号が「3」、「4」および「5」のときの発光体3は消灯状態に制御されることを示している。すなわち、発光制御装置1は、t秒毎に各発光体3の状態番号を順次遷移させ、「1」および「2」の状態番号に遷移した場合は、点灯命令を当該発光体3に送信し、「3」、「4」および「5」の状態番号に遷移した場合は、消灯命令を当該発光体3に送信する。発光体3は、発光制御装置1から送信される点灯命令または消灯命令に応じて、当該発光体3を点灯または消灯する。
【0024】
図3は、図1に示す複数の発光体3の各々を、図2に示す状態遷移に従って、状態番号を遷移させた図である。各発光体3は、d[m]間隔で進行方向に向かって、発光体3−1、発光体3−2、発光体3−3、・・・と設置されている。
【0025】
図3(a)に示す初期状態においては、発光体3−1、3−2、3−3の状態番号は、それぞれ「5」、「4」、「3」に設定されている。このとき、発光制御装置1はこれらの発光体に消灯命令を送信し、消灯状態に制御する。また、発光体3−4、3−5の状態番号は、それぞれ「2」、「1」に設定されている。このとき、発光制御装置1はこれらの発光体に点灯命令を送信し、点灯状態に制御する。
【0026】
同様に、発光体3−6、3−7、3−8の状態番号は、それぞれ「5」、「4」、「3」に設定され、このとき発光制御装置1は、これらの発光体に消灯命令を送信し、消灯状態に制御する。また、発光体3−9、3−10の状態番号は、それぞれ「2」、「1」に設定され、このとき発光制御装置1は、これらの発光体に点灯命令を送信し、点灯状態に制御する。図示しない発光体3についても、同様に、連続する5個の発光体3を1つグループ(セット)として、進行方向に対して各発光体3の状態番号が降順となるように、繰り返し設定される。
【0027】
なお、図3に示す例では、5個の発光体3を1つのグループとし、3個の消灯状態の発光体3と、隣り合う2個の点灯状態の発光体3としたが、1グループの発光体3の個数は、5個以外であってもよい。また、グループ内の点灯状態の発光体3は2個に限定されるものではなく、例えば、1個でも3個以上でもよい。
【0028】
図4は、発光制御装置1の処理を示すフローチャートである。なお、発光制御装置1の記憶部12には、図3(a)に示すような初期状態の各発光体3の状態番号が記憶されているものとする。
【0029】
まず、発光制御装置1の制御部11は、記憶部12に記憶された初期状態の各発光体3の状態番号を読み出し、当該状態番号に応じて各発光体3に点灯命令または消灯命令を送信する(S11)。例えば、図3(a)に示す初期状態の場合、「5」、「4」、「3」が設定されている発光体3−1、3−2、3−3、3−6、3−7、3−8については消灯命令を送信し、「2」、「1」が設定されている発光体3−4、3−5、3−9、3−10については点灯命令を送信する。各発光体3は発光制御装置1から送信された消灯命令または点灯命令に従って、当該発光体3を消灯または点灯する。
【0030】
そして、所定の時間(t秒)が経過すると(S12:YES)、記憶部12に記憶された各発光体3の状態番号を、図2に示す順序に従ってそれぞれ更新し、更新後の状態番号に応じて各発光体3に点灯命令または消灯命令を送信する(S13)。各発光体3は発光制御装置1から送信された消灯命令または点灯命令に従って、当該発光体3を消灯または点灯する。
【0031】
図3(b)には、t秒後に更新された各発光体3の状態番号が示されている。図3(b)では、「5」、「4」、「3」が設定されている発光体3−2、3−3、3−4、3−7、3−8、3−9については消灯命令を送信し、「2」、「1」が設定されている発光体3−1、3−5、3−6、3−10については点灯命令を送信する。この場合、図3示すように、初期状態における点灯状態の発光体3の部分31A、32Aが、t秒後にはd[m]進行方向に移動している。
【0032】
そして、制御部11は、S12に戻り、S13から所定の時間(t秒)が経過すると(S12:YES)、S13で更新された記憶部12の各発光体3の状態番号を、図2に示す順序に従ってそれぞれ更新し、更新後の状態番号に応じて各発光体3に点灯命令または消灯命令を送信する(S13)。各発光体3は発光制御装置1から送信された消灯命令または点灯命令に従って、当該発光体3を消灯または点灯する。
【0033】
図3(c)には、初期状態から2t秒後に更新された各発光体3の状態番号が示されている。図3(c)では、「5」、「4」、「3」が設定されている発光体3−3、3−4、3−5、3−8、3−9、3−10については消灯命令を送信し、「2」、「1」が設定されている発光体3−1、3−2、3−6、3−7については点灯命令を送信する。この場合、図3に示すように、t秒後の点灯状態の発光体3の部分31B、32Bが、2t秒後にはd[m]進行方向に移動している。
【0034】
そして、制御部11は、S12に戻り、t秒毎に以降の処理を繰り返す。なお、図3(d)には、初期状態から3t秒後に更新された各発光体3の状態番号が示されている。
【0035】
以上説明した本実施形態では、所定のタイミングで各発光体3を点滅させることにより、基準となる速度を車両の運転手に提示し、交通渋滞の発生をより低減することができる。
【0036】
すなわち、本実施形態では、所定の時間間隔で各発光体3の状態番号を更新し、各発光体3の点滅状態を変化させることにより、少なくとも1つの点灯状態の発光体3(本実施形態では、連続する2つの発光体3)が、前記道路の進行方向に向かって所定の速度(基準速度)で移動しているかのように見せることができる。道路を走行する各車両の運転手が、発光体3の見かけ上の速度と同期するように車両の速度をそれぞれ調整することにより、無意識に速度が低下してしまうことを防止し、渋滞の発生を防止することができる。
【0037】
また、本実施形態では、点灯状態の発光体3が進行方向に向かってあたかも移動しているように提示するため、運転者は基準となる速度を直感的に把握することができる。また、運転手は、発光体3の見かけ上の移動により、無意識に行っている速度低下に気がつかき、基準となる発光体3の見かけ上の移動に合わせて速度調整を行うため、より効果的に渋滞の発生を減少させることができる。
【0038】
また、本実施形態では、発光体3の点滅により基準となる速度を提示するため、速度低下の抑制を運転者に促すだけでなく、法定最高速度を超える車両の運転手に対しても適切な速度での運転を促すことができる。すなわち、発光体3を設置する道路を上り坂やサグ部などの渋滞の発生しやすい道路だけでなく、それ以外の道路(例えば、スピードの出し過ぎによる事故が多発している道路など)に設置することにより、事故を防止することができる。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、発光体3は、上り坂、サグ部など渋滞が発生しやすい道路に配置し、当該発光体3の点滅により基準となる速度を提示して渋滞の発生を防止するものとしたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、渋滞防止以外の様々な用途にも適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 :発光制御装置
11:制御部
12:記憶部
3 :発光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光体を制御する発光制御システムであって、
道路に沿って設置される前記複数の発光体と、
前記複数の発光体の点滅をそれぞれ制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、
少なくとも1つの点灯状態の発光体が、前記道路の進行方向に向かって所定の速度で移動しているかのように、所定のタイミングで前記複数の発光体の各々を点灯状態または消灯状態に制御すること
を特徴とする発光制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の発光制御システムであって、
前記制御装置は、前記各発光体に設定された、点灯状態または消灯状態を示す状態番号を所定のタイミングで更新し、更新後の状態番号に基づいて点灯命令または消灯命令を各発光体に送信すること
を特徴とする発光制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の発光制御システムであって、
所定の個数の発光体を1つのグループとし、グループ内の各発光体の状態番号は、前記道路の進行方向に対して降順となるように設定されること
を特徴とする発光制御システム。
【請求項4】
道路に沿って設置された複数の発光体を制御する発光制御装置であって、
少なくとも1つの点灯状態の発光体が、前記道路の進行方向に向かって所定の速度で移動しているかのように、所定のタイミングで前記複数の発光体の各々を点灯状態または消灯状態に制御すること
を特徴とする発光制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の発光制御装置であって、
前記各発光体に設定された、点灯状態または消灯状態を示す状態番号を所定のタイミングで更新し、更新後の状態番号に基づいて点灯命令または消灯命令を各発光体に送信すること
を特徴とする発光制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の発光制御装置であって、
所定の個数の発光体を1つのグループとし、グループ内の各発光体の状態番号は、前記道路の進行方向に対して降順となるように設定されること
を特徴とする発光制御装置。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の発光制御装置としてコンピュータを機能させるための発光制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−248427(P2011−248427A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118033(P2010−118033)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】