説明

発光印刷が施された多層抄き合わせ紙

【課題】 本発明は、貴重製品に適用することが可能な発光印刷が施された多層抄き合わせ紙に関するものである。
【解決手段】 紫外線透過率が4〜70%の上層、不織布から成る中間層及び紫外線透過率が4〜70%の下層から成る多層抄き合わせ紙であって、多層抄き合わせ紙は、中間層の片面に施された第1の発光印刷画像と、多層抄き合わせ紙の表面及び多層抄き合わせ紙の裏面の少なくとも一方に施された第1の発光印刷画像と異なる発光色を有する第2の発光画像とを有し、第1の発光印刷画像及び第2の発光印刷画像は、上層、中間層及び/又は下層を介して少なくとも一部が重なって配置されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、パスポート、有価証券、印紙類、商品タグ、有料道路等の回数券及び各種チケット等の貴重製品に適用することが可能な発光印刷が施された多層抄き合わせ紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、銀行券、パスポート、有価証券、印紙類、商品タグ、有料道路等の回数券及び各種チケット等には様々な偽造防止技術が用いられている。例えば、紙自体に施される偽造防止技術の一つとしては、多層抄き合わせ紙が挙げられる。また、印刷によって施される技術の一つとしては、通常可視光下では確認できない無色発光インキで印刷を行い、紫外線を照射した場合にR(赤色系)、G(緑色系)又はB(青色系)に発光し、その発光の有無によって真偽判別が行われている。
【0003】
多層抄き合わせ紙としては、抄紙機の無端抄紙網上で中間層にシートを挿入し上下を複数の原料層流で挟み混み、無端抄紙網上で多層のウェットウェブを構成し、中間層にはあらかじめ光学的、電気的又は磁気的な特定物質のいずれか一つ以上を混抄又は印刷して図柄等を形成し、あるいは中間層に孔によって文字や図柄を形成した多層抄き合わせ紙、その製造方法及び多層抄き合わせ紙の製造装置に関する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、基体上に少なくとも1層の蛍光画像形成層と少なくとも1層の可視画像形成層を有する蛍光画像形成物であって、蛍光画像形成層は、紫外線照射により可視光領域の波長の蛍光を発光する蛍光体を含有し、可視光に対して実質的に透明であり、可視画像形成層の形成する画像と関連する画像を形成している蛍光画像形成物であって、蛍光画像形成層が、青色発光蛍光画像形成層、緑色発光蛍光画像形成層及び赤色発光蛍光画像形成層の3層を有する蛍光画像形成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
基体上に少なくとも2層以上の画像形成層を有する画像印刷物であって、紫外線を照射することにより蛍光を発光する蛍光体を含有し、かつ可視光に対して実質的に透明である第1の蛍光画像形成層と、第1の蛍光画像形成層に含有される蛍光体の発光する蛍光の色と異なる色の蛍光を発光する蛍光体を含有し、かつ可視光に対して実質的に透明である第2の蛍光画像形成層とを有する構成とし、紫外線を照射して蛍光画像を形成する画像印刷物が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
さらに、少なくとも二層以上の多層構造のシートにおいて、第1蛍光発色材を含む第1蛍光発色層が上面に近い位置に、また第1蛍光発色材とは異なる色相で発色する第2蛍光発色材を含む第2蛍光発色層が下面に近い位置に各々設けられ、上面側から紫外線を照射したときには第1蛍光発色層の蛍光発色材のみが蛍光発色して上面側から観察され、下面側から紫外線を照射したときには少なくとも第2蛍光発色層の蛍光発色材が蛍光発色して上面側から観察され、異なる照射面からの紫外線照射によって異なる蛍光発色が観察されることを特徴とする偽造防止用シートが開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2003−13395号公報(第1頁、第1−9図)
【特許文献2】特開平10−250211公報(第1−10頁、第1図)
【特許文献3】特開平10−250212公報(第1−11頁、第1図)
【特許文献4】WO00/20220公報(第1−22頁、第1−4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特開2003−13395号公報は中間層に蛍光印刷を施すものであり、上層及び下層に中間層とは異なる発光色を有する蛍光印刷領域を形成するものではなかった。上層、下層及び中間層にそれぞれ異なった発光色を有する蛍光印刷領域を形成する技術である特開平10−250211公報は、基体上に蛍光画像形成層が積層された構成でありながら、蛍光画像形成物の片面のみの反射光で画像を確認するものであった。さらに、特開平10−250212公報は、基体上に紫外線吸収層があるために、画像印刷物は片面のみしか蛍光画像を形成しない。異なる照射面からの紫外線照射によって異なる蛍光発色が観察されるWO00/20220公報は、上面側から紫外線を照射した場合、第1蛍光発色材の単色の発光色のみが確認できるものであり、第1蛍光発色材及び第2蛍光発色材の混色による発光色が確認できるものではなかった。
【0009】
本発明は前述した問題点を解決することを目的としたもので、多層抄き合わせ紙の表面から紫外線を照射し、多層抄き合わせ紙の表面又は裏面から肉眼で観察した場合と、異なる照射面である多層抄き合わせ紙の裏面から紫外線を照射し、多層抄き合わせ紙の表面又は裏面から肉眼で観察した場合とでは発光印刷画像の発光色が異なって確認できる発光印刷が施された多層抄き合わせ紙を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、紫外線透過率が4〜70%の上層、不織布から成る中間層及び紫外線透過率が4〜70%の下層から成る多層抄き合わせ紙であって、多層抄き合わせ紙は、中間層の片面に施された第1の発光印刷画像と、多層抄き合わせ紙の表面及び多層抄き合わせ紙の裏面の少なくとも一方に施された第1の発光印刷画像と異なる発光色を有する第2の発光画像とを有し、第1の発光印刷画像及び第2の発光印刷画像は、上層、中間層及び/又は下層を介して少なくとも一部が重なって配置されたことを特徴とする発光印刷が施された多層抄き合わせ紙である。
【0011】
また、本発明は、紫外線透過率が4〜70%の上層、不織布から成る中間層及び紫外線透過率が4〜70%の下層から成る多層抄き合わせ紙であって、多層抄き合わせ紙は、中間層の片面に施された第1の発光印刷画像と、多層抄き合わせ紙の表面に前記第1の発光印刷画像と異なる発光色を有する第2の発光印刷画像と、多層抄き合わせ紙の裏面に第1の発光印刷画像及び第2の発光印刷画像と異なる発光色を有する第3の発光印刷画像とを有し、第1の発光印刷画像、第2の発光印刷画像及び第3の発光印刷画像は、上層、中間層及び/又は下層を介して少なくとも一部が重なって配置されたことを特徴とする発光印刷が施された多層抄き合わせ紙である。
【0012】
また、本発明は、発光印刷画像が紫外線長波の波長を照射すると蛍光発光する蛍光印刷インキ、紫外線中波の波長を照射すると蛍光発光する蛍光印刷インキ及び紫外線短波の波長を照射すると蛍光発光する蛍光印刷インキの少なくとも一つで印刷されたことを特徴する発光印刷が施された多層抄き合わせ紙である。
【0013】
また、本発明は、第1の発光印刷画像が紫外線長波の波長を照射すると蛍光発光する蛍光印刷インキ、紫外線中波の波長を照射すると蛍光発光する蛍光印刷インキ及び紫外線短波の波長を照射すると蛍光発光する蛍光印刷インキのいずれかで印刷され、第2の発光印刷画像が第1の発光印刷画像で印刷した蛍光印刷インキとは異なるインキで印刷され、第3の発光印刷画像が第1の発光印刷画像及び第2の発光印刷画像で印刷した蛍光印刷インキとは異なるインキで印刷されたことを特徴する発光印刷が施された多層抄き合わせ紙である。
【0014】
また、本発明は、第1の発光印刷画像が施されていない中間層の他方の面に第4の発光印刷画像を有することを特徴とする発光印刷が施された多層抄き合わせ紙である。
【0015】
また、本発明は、中間層が光学的、電気的又は磁気的な特定物質のいずれか一つ以上を混抄又は印刷されていることを特徴とする発光印刷が施された多層抄き合わせ紙である。
【発明の効果】
【0016】
多層抄き合わせ紙の表面から紫外線を照射し、多層抄き合わせ紙の表面又は裏面から肉眼で観察した場合と、異なる照射面である多層抄き合わせ紙の裏面から紫外線を照射し、多層抄き合わせ紙の表面又は裏面から肉眼で観察した場合とでは第1の発光印刷画像、第2の発光印刷画像及び第3の発光印刷画像の少なくとも一部が重なり合った領域(混色となる)の発光色が異なって確認される。発光印刷画像の少なくとも一部が重なり合った領域の発光色は、異なる視覚的効果が得られるため、偽造防止効果の高い発光印刷が施された多層抄き合わせ紙となる。
【0017】
さらに、紫外線長波(365nm付近にピーク波長を有する)の波長を照射すると蛍光発光する蛍光印刷インキ、紫外線中波(302nm付近にピーク波長を有する)の波長を照射すると蛍光発光する蛍光印刷インキ及び紫外線短波(254nm付近にピーク波長を有する)の波長を照射すると蛍光発光する蛍光印刷インキによって、それぞれ異ならせて各層の発光印刷画像を形成することによって、多層抄き合わせ紙の表面から紫外線長波、紫外線中波又は紫外線短波を照射し、多層抄き合わせ紙の表面又は裏面から肉眼で観察した場合と、異なる照射面の多層抄き合わせ紙の裏面から紫外線長波、紫外線中波又は紫外線短波を照射し、多層抄き合わせ紙の表面又は裏面から肉眼で観察した場合とでは第1の発光印刷画像、第2の発光印刷画像及び第3の発光印刷画像の少なくとも一部が重なり合った領域の発光色が各励起波長ごとに異なって確認される。第1の発光印刷画像、第2の発光印刷画像及び第3の発光印刷画像は複数の色彩、励起波長ごとに異なった発光印刷画像が確認できる視覚的効果が得られ、偽造防止効果の高い発光印刷が施された多層抄き合わせ紙となる。
【0018】
発光印刷が施された多層抄き合わせ紙の第1の発光印刷画像、第2の発光印刷画像及び第3の発光印刷画像は機械検出が可能である。例えば、紫外線長波照射時に第1の発光印刷画像が機械検出され、紫外線中波照射時に第2の発光印刷画像が機械検出され、紫外線短波照射時に第3の発光印刷画像が機械検出された場合は対象物を本物と判断し、検出されなかった場合は偽と判断することが可能となる。また、紫外線長波と紫外線中波の照射時、紫外線中波と紫外線短波の照射時、紫外線長波と紫外線短波の照射時又は紫外線長波と紫外線中波と紫外線短波の照射時において、第1の発光印刷画像、第2の発光印刷画像及び第3の発光印刷画像の重なった領域は、混色となる発光色が異なり、その違いによっても真偽判別が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0020】
本発明における発光印刷画像を形成する発光とは、紫外線を照射すると蛍光発光するもの、紫外線を照射すると蛍光発光し、更に照射後に残光を有する燐光発光及び暗室で発光する蓄光発光を含むものである。
【0021】
(発光印刷が施された多層抄き合わせ紙A1)
図1に多層抄き合わせ紙A1とその断面図を示す。図1は先行紙料から得られる下層の懸濁液状の紙層から成る下層紙層1、第1の発光印刷画像4が印刷された中間層のシート2、及び後紙料から得られる上層の懸濁液状の紙層から成る上層紙層3から成り、多層抄き合わせ紙A1の表面に第2の発光印刷画像5、多層抄き合わせ紙A1の裏面の第3の発光印刷画像6が印刷される発光印刷が施された多層抄き合わせ紙A1である。下層紙層1は紫外線透過率が4〜70%であり、中間層のシート2はレーヨン又はPVA等から成る不織布であり、上層紙層3は紫外線透過率が4〜70%である。第1の発光印刷画像4、第2の発光印刷画像5及び第3の発光印刷画像6は下層紙層1、中間層のシート2及び/又は上層紙層3を介して少なくとも一部が重なって配置され、混色領域を有している。例えば、図面では第1の発光印刷画像4と第2の発光印刷画像5は上層紙層3を介して少なくとも一部が重なっている。また、第1の発光印刷画像4と第3の発光印刷画像6は、下層紙層1及び中間層のシート2を介して少なくとも一部が重なっている。また、第2の発光印刷画像5と第3の発光印刷画像6は、下層紙層1、中間層のシート2及び上層紙層3を介して少なくとも一部が重なっている。
【0022】
第1の発光印刷画像4及び第2の発光印刷画像5が重なった混色領域を第1の混色領域c1とする。第1の発光印刷画像4及び第3の発光印刷画像6が重なった混色領域を第2の混色領域c2とする。第2の発光印刷画像5及び第3の発光印刷画像6が重なった混色領域を第3の混色領域c3とする。第1の発光印刷画像4、第2の発光印刷画像5及び第3の発光印刷画像6が重なった混色領域を第4の混色領域c4とする。重なった領域がない第1の発光印刷画像4は第1の単色領域d1とする。重なった領域がない第2の発光印刷画像5は第2の単色領域d2とする。重なった領域がない第3の発光印刷画像6は第3の単色領域d3とする。図1では第1の発光印刷画像4、第2の発光印刷画像5及び第3の発光印刷画像6が重なった混色領域の第4の混色領域c4を有しているが、第1の発光印刷画像4、第2の発光印刷画像5及び第3の発光印刷画像6の少なくとも一組の混色領域を有していれば良い。また、第1の発光印刷画像4、第2の発光印刷画像5及び第3の発光印刷画像6が全て領域において重なっている混色領域c4のみを有する形態でも良い。
【0023】
発光印刷が施された多層抄き合わせ紙A1の表面又は異なる照射面である裏面から紫外線を照射して肉眼で観察した場合に、第1の発光印刷画像の第1の単色領域d1、第2の発光印刷画像の第2の単色領域d2及び第3の発光印刷画像の第3の単色領域d3は、それぞれの層に形成した発光色が確認できる。ただし、第2の発光印刷画像の第2の単色領域d2及び第3の発光印刷画像の第3の単色領域d3において、表面から照射し、表面で見た場合と裏面から見た場合とでは発光強度が異なる。同様に、第2の発光印刷画像の第2の単色領域d2及び第3の発光印刷画像の第3の単色領域d3において裏面から照射し、表面で見た場合と裏面から見た場合とでは発光強度が異なる。
【0024】
次に、第1の発光印刷画像4及び第2の発光印刷画像5が重なった第1の混色領域c1は、第1の発光印刷画像4の発光色及び第2の発光印刷画像5の発光色の混色が確認できる。第1の発光印刷画像4及び第3の発光印刷画像6が重なった第2の混色領域c2は、第1の発光印刷画像4の発光色及び第3の発光印刷画像6の発光色の混色が確認できる。第2の発光印刷画像5及び第3の発光印刷画像6が重なった第3の混色領域c3は、第2の発光印刷画像5の発光色及び第3の発光印刷画像6の発光色の混色が確認できる。第1の発光印刷画像4、第2の発光印刷画像5及び第3の発光印刷画像6が重なった混色領域の第4の混色領域c4は、第1の発光印刷画像4の発光色、第2の発光印刷画像5の発光色及び第3の発光印刷画像6の発光色の混色が確認できる。
【0025】
さらに、上層紙層3は紫外線透過率が4〜70%であり、下層紙層1は紫外線透過率が4〜70%であるため、紙層中で紫外線を一部遮断することになり、発光印刷が施された多層抄き合わせ紙A1の表面又は異なる照射面である裏面から紫外線を照射し、多層抄き合わせ紙の表面から肉眼で観察した場合と、裏面から肉眼で観察した場合とでは第1の発光印刷画像、第2の発光印刷画像及び第3の発光印刷画像の少なくとも一部が重なり合った領域(混色となる)の発光色が異なって確認される。上層紙層3から紫外線を照射した場合、混色領域の発光色の色相は、上層紙層3に形成される第2の発光印刷画像5の色相が主体色となる。これは、中間層のシート2に形成される第1の発光印刷画像4及び下層紙層1に形成される第3の発光印刷画像6は紫外線透過率が4〜70%である上層紙層3及び紫外線透過率が4〜70%の下層紙層1によって励起光が一部吸収され、発光強度が低くなるためである。下層紙層1から紫外線を照射した場合、混色領域の発光色の色相は、下層紙層1に形成される第3の発光印刷画像6の色相が主体色となる。これは、中間層のシート2に形成される第1の発光印刷画像4及び上層紙層3に形成される第2の発光印刷画像5は紫外線透過率が4〜70%の上層紙層3及び紫外線透過率が4〜70%の下層紙層1によって励起光が一部吸収され、発光強度が低くなるためである。
【0026】
(発光印刷が施された多層抄き合わせ紙A2)
図2に多層抄き合わせ紙A2とその断面図を示す。図2は先行紙料から得られる下層の懸濁液状の紙層から成る下層紙層1、第1の発光印刷画像4が印刷された中間層のシート2及び後紙料から得られる上層の懸濁液状の紙層から成る上層紙層3から成り、多層抄き合わせ紙の裏面に、第2の発光印刷画像5が印刷された層抄き合わせ紙A2である。下層紙層1は紫外線透過率が4〜70%であり、中間層のシート2はレーヨン又はPVA等から成る不織布であり、上層紙層3は紫外線透過率が4〜70%である。第1の発光印刷画像4及び第2の発光印刷画像5は、下層紙層1及び中間層のシート2を介して少なくとも一部が重なって配置され、混色領域を有している。
【0027】
第1の発光印刷画像4及び第2の発光印刷画像5が重なった混色領域を第1の混色領域c1とする。重なった領域がない第1の発光印刷画像4は第1の単色領域d1とする。重なった領域がない第2の発光印刷画像5は第2の単色領域d2とする。図2では第1の発光印刷画像4及び第2の発光印刷画像5が全ての領域において重なっていないが、第1の発光印刷画像4及び第2の発光印刷画像5が全ての領域において重なっていても良い。
【0028】
発光印刷が施された多層抄き合わせ紙A2の表面又は異なる照射面の裏面から紫外線を照射して肉眼で観察した場合に、第1の発光印刷画像の第1の単色領域d1、第2の発光印刷画像の第2の単色領域d2は、それぞれの層に形成した発光色が確認できる。ただし、第2の発光印刷画像の第2の単色領域d2において、表面から照射し、表面で見た場合と裏面から見た場合とでは発光強度が異なる。同様に、第2の発光印刷画像の第2の単色領域d2において、裏面から照射し、表面で見た場合と裏面から見た場合とでは発光強度が異なる。
【0029】
次に、第1の発光印刷画像4及び第2の発光印刷画像5が重なった第1の混色領域c1は、第1の発光印刷画像4の発光色及び第2の発光印刷画像5の発光色の混色が確認できる。
【0030】
さらに、上層紙層3は紫外線透過率が4〜70%であり、下層紙層1は紫外線透過率が4〜70%であるため、紙層中で紫外線を一部遮断することになり、発光印刷が施された多層抄き合わせ紙A2の混色領域に対して表面から紫外線を照射した場合と、裏面から紫外線を照射した場合には混色領域の発光色の色相が異なる。上層紙層3から紫外線を照射した場合、混色領域の発光色の色相は、上層紙層3には発光印刷画像が形成されていないため、中間層のシート2に形成される第1の発光印刷画像4の色相が主体色となる。これは、下層紙層1に形成される第2の発光印刷画像5は紫外線透過率が4〜70%の上層紙層3及び紫外線透過率が4〜70%の下層紙層1によって励起光が一部吸収され、発光強度が低くなるためである。下層紙層1から紫外線を照射した場合、混色領域の発光色の色相は、下層紙層1に形成される第2の発光印刷画像5の色相が主体色となる。これは、中間層のシート2に形成される第1の発光印刷画像4は、紫外線透過率が4〜70%の下層紙層1によって励起光が一部吸収され、発光強度が低くなるためである。
【0031】
(発光印刷が施された多層抄き合わせ紙A3)
図3に多層抄き合わせ紙A3とその断面図を示す。図3は先行紙料から得られる下層の懸濁液状の紙層から成る下層紙層1、第1の発光印刷画像4が印刷された中間層のシート2及び後紙料から得られる上層の懸濁液状の紙層から成る上層紙層3から成り、多層抄き合わせ紙の表面の第2の発光印刷画像5が印刷される発光印刷が施された多層抄き合わせ紙A3である。下層紙層1は紫外線透過率が4〜70%であり、中間層のシート2はレーヨン又はPVA等から成る不織布であり、上層紙層3は紫外線透過率が4〜70%である。第1の発光印刷画像4及び第2の発光印刷画像5は、上層紙層3を介して少なくとも一部が重なって配置され、混色領域を有している。
【0032】
第1の発光印刷画像4及び第2の発光印刷画像5が重なった混色領域を第1の混色領域c1とする。重なった領域がない第1の発光印刷画像4は第1の単色領域d1とする。重なった領域がない第2の発光印刷画像5は第2の単色領域d2とする。図3では第1の発光印刷画像4及び第2の発光印刷画像5が全ての領域において重なっていないが、第1の発光印刷画像4及び第2の発光印刷画像5が全ての領域において重なっていても良い。
【0033】
発光印刷が施された多層抄き合わせ紙A3の表面又は異なる照射面の裏面から紫外線を照射し肉眼で観察した場合に、第1の発光印刷画像の第1の単色領域d1、第2の発光印刷画像の第2の単色領域d2は、それぞれの層に形成した発光色が確認できる。ただし、第2の発光印刷画像の第2の単色領域d2において表面から照射し、表面で見た場合と裏面から見た場合とでは発光強度が異なる。同様に、第2の発光印刷画像の第2の単色領域d2において、裏面から照射し、表面で見た場合と裏面から見た場合とでは発光強度が異なる。
【0034】
次に、第1の発光印刷画像4及び第2の発光印刷画像5が重なった第1の混色領域c1は、第1の発光印刷画像4の発光色及び第2の発光印刷画像5の発光色の混色が確認できる。
【0035】
さらに、上層紙層3は紫外線透過率が4〜70%であり、下層紙層1は紫外線透過率が4〜70%であるため、紙層中で紫外線を一部遮断することになり、発光印刷が施された多層抄き合わせ紙A3の混色領域に対して表面から紫外線を照射した場合と、裏面から紫外線を照射した場合には混色領域の発光色の色相が異なる。下層紙層1から紫外線を照射した場合、混色領域の発光色の色相は、下層紙層1には発光印刷画像が形成されていないため、中間層のシート2に形成される第1の発光印刷画像4の色相が主体色となる。これは、上層紙層3に形成される第2の発光印刷画像5は紫外線透過率が4〜70%の上層紙層3及び紫外線透過率が4〜70%の下層紙層1によって励起光が一部吸収され、発光強度が低くなるためである。上層紙層3から紫外線を照射した場合、混色領域の発光色の色相は、上層紙層3に形成される第2の発光印刷画像5の色相が主体色となる。これは、中間層のシート2に形成される第1の発光印刷画像4は、紫外線透過率が4〜70%の上層紙層3によって励起光が一部吸収され、発光強度が低くなるためである。
【0036】
発光印刷が施された多層抄き合わせ紙A1、A2及びA3の中間層のシート2は、不織布である。不織布は、レーヨン又はPVA等であることが好ましい。シートの目付は、10〜30g/m2程度が好ましい。不織布の厚さは、20〜100μm程度が好ましい。
【0037】
発光印刷が施された多層抄き合わせ紙を形成する下層紙層1の坪量は、10〜40g/m程度が好ましい。また、発光印刷が施された多層抄き合わせ紙を形成する上層紙層3の坪量は、10〜40g/m2程度が好ましい。上層紙層又は下層紙層の坪量が40g/mまでの紫外線透過率を図4(a)に示す。紫外線透過率が4%未満の場合、紫外線は紙層内で大部分が吸収されてしまうため、混色効果を発現することが難しくなる。また、紫外線透過率が71%以上の場合、混色効果は発現するが、混色の色彩が用紙表裏面で異なる色相を得ることが難しくなる。よって、紫外線透過性及び吸収性を有する物質の密度の差異により、それぞれの発光印刷画像に達する紫外線量が異なることから、それぞれの発光印刷画像の発光強度が変化し、混色領域の混合発光色が変化するものである。
【0038】
上層紙層の坪量が40g/m、下層紙層の坪量が40g/mまでの多層紙の紫外線透過率を図4(b)に示す。多層紙において混色効果を発現する紫外線透過率の範囲は、0.5〜53%までである。紫外線透過率が0.5%未満の場合、紫外線は紙層内で大部分が吸収されてしまうため、混色効果を発現することが難しくなる。また、紫外線透過率が54%以上の場合、混色効果は発現するが、混色の色彩が用紙表裏面で異なる色相を得ることが難しくなる。また、この範囲内であれば、上層紙料及び下層紙料の坪量を同一にするのみならず、異ならせることで混色効果のバリエーションが増す。
【0039】
本発明の発光印刷が施された多層抄き合わせ紙の第1の発光印刷画像4、第2の発光印刷画像5及び第3の発光印刷画像6は、少なくとも一つの画像の発光色が異なっていればよいが、混色効果を高めるためには、それぞれの発光印刷画像の発光色が異なっていることが好ましい。
【0040】
本発明の発光印刷が施された多層抄き合わせ紙は、第1の発光印刷画像が施されていない中間層の他方の面に第4の発光印刷画像を設けても良い。この場合は、第1の発光印刷画像4、第2の発光印刷画像5及び/又は第3の発光印刷画像6と下層紙層1、中間層のシート2及び/又は上層紙層3を介して少なくとも一部が重なって配置される。さらに、第4の発光印刷画像は、第1の発光印刷画像4、第2の発光印刷画像5及び第3の発光印刷画像6のいずれかの発光色と同色又は異なった発光色のどちらであっても良い。
【0041】
さらに、第1の発光印刷画像は、紫外線長波(365nm付近にピーク波長を有する)の波長を照射すると蛍光発光する蛍光印刷インキ、紫外線中波(302nm付近にピーク波長を有する)の波長を照射すると蛍光発光する蛍光印刷インキ及び紫外線短波(254nm付近にピーク波長を有する)の波長を照射すると蛍光発光する蛍光印刷インキのいずれかで印刷され、第2の発光印刷画像は、第1の発光印刷画像で印刷した蛍光印刷インキとは異なるインキで印刷され、第3の発光印刷画像は、第1の発光印刷画像及び第2の発光印刷画像で印刷した蛍光印刷インキとは異なるインキで印刷し、本発明の発光印刷が施された多層抄き合わせ紙の表面又は裏面から紫外線長波、紫外線中波及び紫外線短波を照射し、多層抄き合わせ紙の表面又は裏面から肉眼で観察した場合に各励起波長ごとに第1の発光印刷画像、第2の発光印刷画像又は第3の発光印刷画像の異なった種類の画像が確認され、さらに、第1の発光印刷画像、第2の発光印刷画像及び第3の発光印刷画像の少なくとも一部が重なり合った領域の発光色が異なって確認される。第1の発光印刷画像、第2の発光印刷画像及び第3の発光印刷画像は複数の色彩、励起波長ごとに異なった発光印刷画像が確認できる視覚的効果が得られ、偽造防止効果の高い発光印刷が施された多層抄き合わせ紙となる。
【0042】
例えば、図5は中間層のシート2に形成される第1の発光印刷画像4は、紫外線中波(302nm付近にピーク波長を有する)の波長を照射すると赤色発光する蛍光印刷インキで印刷し、上層紙層3に形成される第2の発光印刷画像5は、紫外線長波(365nm付近にピーク波長を有する)の波長を照射すると青色発光する蛍光印刷インキで印刷し、下層紙層1に形成される第3の発光印刷画像6は、紫外線短波(254nm付近にピーク波長を有する)の波長を照射すると緑色発光する蛍光印刷インキで印刷した多層抄き合わせ紙である。
【0043】
図5(a)に示すように紫外線長波を照射した場合に、第2の発光印刷画像5のみが青系発光する。図5(b)に示すように紫外線中波を照射した場合に、第1の発光印刷画像4のみが赤系発光する。図5(c)に示すように紫外線短波を照射した場合に、第3の発光印刷画像6のみが緑系発光する。図5(d)に示すように紫外線長波及び紫外線中波を同時に照射した場合に、第1の発光印刷画像4及び第2の発光印刷画像5の混色であるマゼンタ系発光する。図5(e)に示すように紫外線長波及び紫外線短波を同時に照射した場合に、第2の発光印刷画像5及び第3の発光印刷画像6の混色であるシアン系発光する。図5(f)に示すように紫外線中波及び紫外線短波を同時に照射した場合に、第1の発光印刷画像4及び第3の発光印刷画像6の混色であるイエロー系発光する。図5(g)に示すように紫外線長波、紫外線中波及び紫外線短波を同時に照射した場合に、第1の発光印刷画像4、第2の発光印刷画像5及び第3の発光印刷画像6の混色である白系発光する。なお、前述したように上層面から紫外線を照射した場合と、下層面から紫外線を照射した場合では、紫外線透過率が4〜70%の上層紙層3及び/又は紫外線透過率が4〜70%の下層紙層1によって励起光が一部吸収されるため、色彩が異なって確認できる。
【0044】
第1の発光印刷画像、第2の発光印刷画像及び第3の発光印刷画像ごとに画像のデザインを変更することで各励起光ごとに異なったデザインの画像が確認でき真偽判別することが容易にできる。また、前述した各励起光ごとに変化する発光色と各励起光ごとに変化する画像デザインを組み合わせることでより高い視覚的効果が得られ、偽造防止効果が向上する。また、発光印刷が施された多層抄き合わせ紙の第1の発光印刷画像、第2の発光印刷画像及び第3の発光印刷画像は機械検出が可能である。例えば、紫外線長波の照射時に第1の発光印刷画像が機械検出され、紫外線中波の照射時に第2の発光印刷画像が機械検出され、紫外線短波の照射時に第3の発光印刷画像が機械検出された場合は、対象物が本物と判断し、検出されなかった場合は偽と判断することが可能なる。さらに、発光画像のデザインが同一の場合は、紫外線長波の照射時に第1の発光色が機械検出され、紫外線中波の照射時に第2の発光色が機械検出され、紫外線短波の照射時に第3の発光色が機械検出された場合は、対象物が本物と判断し、検出されなかった場合は偽と判断することが可能なる。また、紫外線長波と紫外線中波の照射時、紫外線中波と紫外線短波の照射時、紫外線長波と紫外線短波の照射時、紫外線長波と紫外線中波と紫外線短波の照射時において、第1の発光印刷画像、第2の発光印刷画像及び第3の発光印刷画像の重なった領域は、混色となる発光色が異なり、その違いによっても真偽判別が可能である。
【0045】
中間層のシートは、赤外吸収インキ等による光学的、電気的又は磁気インキによる磁気的な特定物質のいずれか一つ以上を混抄又は印刷することによって偽造防止効果が向上した発光印刷が施された多層抄き合わせ紙となる。
【0046】
また、本発明の発光印刷が施された多層抄き合わせ紙のいずれかの層に、有色繊維又は細片、無色発光繊維又は細片、有色発光繊維又は細片、磁性繊維又は細片、金属繊維又は細片、アルミ繊維又は細片、赤外吸収特性を有する繊維又は細片、赤外反射特性を有する繊維又は細片及びサーモクロミック繊維又は細片等を少なくとも一種類を混抄することが可能である。さらに、スレッド、複数のすき入れ等を施すことができる。また、上層紙層3の紙料と、下層紙層1の紙料で紙料の種類又は色彩等を異ならせてもよい。
【0047】
さらに、第1の発光印刷画像4、第2の発光印刷画像5及び第3の発光印刷画像6は、一般的な印刷方式によって印刷することができる。印刷方式は特に限定されるものではない。
【0048】
当然、発光印刷が施された多層抄き合わせ紙の表面又は裏面には、発光印刷画像の他に一般的な印刷方式によって印刷模様を付与することができる。また、多層抄き合わせ紙の表面又は裏面には、赤外吸収インキ等による光学的、電気的又は磁気インキによる磁気的な特定物質のいずれか一つ以上を印刷することができる。印刷方式は特に限定されるのもではない。
【0049】
先行紙料から得られる下層の懸濁液状の紙層及び後紙料から得られる上層の懸濁液状の紙層は、特に限定されるものではないが、例えば、木材や木綿等の植物繊維を原料とするKP法やSP法によって得られる化学パルプ、GP、TMP、CTMP、CGP、SCP等の機械パルプ、漂白パルプ又は古紙再生パルプ等のいずれかのパルプを適宜、選択して使用できる。
【0050】
次に、多層抄き合わせ紙Bをウェブ状で作製する場合において中間層のシートに形成されている第1の発光印刷画像4の位置合わせの一例を示す。
【0051】
下層紙層1に施されるすき入れと中間層のシートに形成されている第1の発光印刷画像4の位置合わせの一例を示す。
【0052】
図6に示すように多層抄き合わせ紙Bは、すき入れ7が施されている。多層抄き合わせ紙Bは、すき入れ7の位置r(図面では、すき入れ7の一つの角部の位置としたが、あらかじめ決めておけば中心位置等でもよい。)に対して、第1の発光印刷画像位置q(図面では、第1の発光印刷画像4の一つの角部の位置としたが、あらかじめ決めておけば中心位置等でもよい。)を、多層抄き合わせ紙Bの長手方向に、第1の発光印刷画像位置qとすき入れ7の位置rの所定間隔sと定め、幅方向に第1の発光印刷画像位置qとすき入れ7の位置rの所定間隔tと定め、すき入れ7と第1の発光印刷画像4が所定の位置になるように、第1の発光印刷画像4が印刷された中間層のシート2が挿入され定着される。つまり、第1の発光印刷画像4が印刷された中間層のシート2は、多層抄き合わせ紙Bの長手方向の第1の発光印刷画像位置qとすき入れ7の位置rの所定間隔s及び幅方向の第1の発光印刷画像位置qとすき入れ7の位置rの所定間隔tのいずれか一方又は両方を調整して挿入する。よって、第1の発光印刷画像4は、すき入れ7と所定の位置で定着される。
【0053】
(変形例1)
図7に示すように、多層抄き合わせ紙Bは、すき入れ7と所定の位置関係にある十字マークで示したような、白すき入れから成るレジスターマーク又はIJP(インクジェットプリンタ)によるマーク8が抄造方向に一定間隔で複数箇所に付与されている。変形例1ではこのレジスターマーク又はIJPによるマーク8に着目している。多層抄き合わせ紙Bは、このマーク8の位置v(十字マークの交差中心点)に対して、第1の発光印刷画像位置q(図面では第1の発光印刷画像4の一つの角部の位置としたが、あらかじめ決めておけば中心位置等でもよい。)を、多層抄き合わせ紙Bの長手方向に第1の発光印刷画像位置qとマーク8の位置vの所定間隔sと定め、幅方向に第1の発光印刷画像位置qとマーク8の位置vの所定間隔tと定め、すき入れ7が第1の発光印刷画像4と所定の位置になるように、第1の発光印刷画像4が付与された中間層のシート2が挿入され定着される。つまり、第1の発光印刷画像4が印刷された中間層のシート2は、多層抄き合わせ紙Bの長手方向の第1の発光印刷画像位置qとマーク8の位置vの所定間隔s及び、幅方向の第1の発光印刷画像位置qとマーク8の位置vの所定間隔tのいずれか一方又は両方を調整して挿入する。よって、第1の発光印刷画像4は、すき入れ7と所定の位置で定着される。
【0054】
巻取装置で巻き取られた多層抄き合わせ紙Bは、切断する際に、後に切断される予定のすき入れが施された多層抄き合わせ紙の辺の位置から第1の発光印刷画像位置qまでが所定間隔となるように切断する。
【0055】
多層抄き合わせ紙Bの表面及び裏面に、中間層のシート2に形成された第1の発光印刷画像4と少なくとも一部が重なるように施される第2の発光印刷画像5及び/又は第3の発光印刷画像6は、巻取装置で巻き取られる前、所定間隔となるように切断される前に印刷を行っても良い。また枚葉に切断されてから第2の発光印刷画像5及び/又は第3の発光印刷画像6の印刷を行っても良い。
【0056】
(製造装置)
次に本発明を実施するための最良の形態の多層抄き合わせ紙Bの製造装置を図8で説明する。図8は、多層抄き合わせ紙の製造装置の全体構成を示す図である。図8において、多層抄き合わせ紙の製造装置9は網帯から成り、循環するエンドレスな抄紙用のワイヤ10を有する。このワイヤ10は、従動用プーリ11と駆動用プーリ12と間に架け渡され、さらに図示しないが、ワイヤ10に沿っての内側に配置された複数の支持や案内をするロールにより支持され、案内されて循環移動する。
【0057】
ワイヤ10の上流部13(ワイヤの上面における移動始端部)には、上流側から下流側に向けて、下層紙料供給槽14、中間層のシート供給装置15及び上層紙料供給槽16が間隔をおいて順次、配設されている。
【0058】
下層紙料供給槽14及び上層紙料供給槽16内には、それぞれ下層の懸濁液状の紙料17及び上層の懸濁液状の紙料18が充填され、適宜、図示しない供給源から補給され、所定の液位を維持するように制御されている。下層の懸濁液状の紙料17及び上層の懸濁液状の紙料18は、下層紙層1及び上層紙層3の素材となる材料であり、主にパルプ繊維、水及び添加剤から成る。
【0059】
下層紙料供給槽14及び上層紙料供給槽16のそれぞれにおける下流部分には、下層紙料用目止め板19及び上層紙料用目止め板20が配置されている。下層紙料用目止め板19及び上層紙料用目止め板20とワイヤ10との間の隙間を通して、それぞれワイヤ10上に下層の懸濁液状の紙料17及び上層の懸濁液状の紙料18を供給し抄紙を可能とする。
【0060】
中間層のシート供給装置15による中間層のシート供給部位は、下層紙料供給槽14の下流側であって、上層紙料供給槽16の上流側に設けられており、中間層のシート2をワイヤ10上に形成される下層の懸濁液状の紙層21上に向けて供給する。この中間層のシート供給装置15は、中間層のシート供給ドラム22、テンションロール23及び第1の発光印刷画像4が印刷された中間層のシート2の抄造方向への挿入位置を修正するための位置修正装置24内の位置修正ロール27を備えている。
【0061】
中間層のシート供給ドラム22には、帯状の中間層のシート2が巻きつけられており、この中間層のシート2をワイヤ10に向けて繰り出しながら供給する。帯状の中間層のシートには、前述のとおり、その長手方向に一定の間隔をおいて第1の発光印刷画像4があらかじめ印刷されている。ただし、中間層のシートに第1の発光印刷画像4が付与されていない場合は、中間層のシート供給ドラム22から中間層のシート2をワイヤ10に向けて繰り出しながら供給する間に、中間層のシートに印刷機器36によって長手方向に一定の間隔をおいて第1の発光印刷画像4が印刷される。
【0062】
中間層のシート供給装置15から供給される帯状の中間層のシート2の横幅は、下層紙料用目止め板19からワイヤ10の上面(搬送面)に供給されて形成される下層の懸濁液状の紙層21の横幅とほぼ同じであり、さらに上層紙料用目止め板20から下層の懸濁液状の紙層21の上面に供給されて形成される上層の懸濁液状の紙層25の横幅とほぼ同じである。
【0063】
中間層のシートの位置修正装置24は、位置修正ロール27を制御するための位置制御器26を有する。位置修正ロール27は、多層抄き合わせ紙Bのすき入れ7の位置rと第1の発光印刷画像位置qの間隔が、長手方向にあらかじめ設定された第1の発光印刷画像位置qとすき入れ7の位置rの所定間隔sからずれた場合に、中間層のシート2の送り速度を調整して長手方向の第1の発光印刷画像位置のずれを修正する。変更例1では、第1の発光印刷画像位置qとレジスターマーク又はIJPによるマークの位置vの間隔が、長手方向にあらかじめ設定された第1の発光印刷画像位置qとマークの位置vの所定間隔sからずれた場合に、中間層のシート2の送り速度を調整して長手方向の第1の発光印刷画像位置のずれを修正する。
【0064】
位置修正ロール27は、位置制御器26からの制御信号で速度制御可能なモータにより駆動され、中間層のシート2の送り速度を積極的に増減できる送り制御の可能なロールで構成する。
【0065】
中間層のシート供給ドラム22は、その軸心の長手方向、即ち中間層のシート2の幅方向に、巻き付けてある中間層のシートごと移動して幅方向に位置を調整できるように、図示しない中間層のシート供給ドラム幅方向位置調整装置で調整される構成となっている。これにより、中間層のシート供給ドラム幅方向位置調整装置は、第1の発光印刷画像位置qとすき入れ7の位置rの間隔が、幅方向にあらかじめ設定された第1の発光印刷画像位置qとすき入れ7の位置rの所定間隔tからずれた場合に、多層抄き合わせ紙Bに対して中間層のシート2を幅方向に移動して幅方向の第1の発光印刷画像位置のずれを修正する。変更例1では、第1の発光印刷画像位置qとレジスターマーク又はIJPによるマークの位置vの間隔が、幅方向にあらかじめ設定された第1の発光印刷画像位置qとマークの位置vの所定間隔tからずれた場合に、多層抄き合わせ紙Bに対して中間層のシート2を幅方向に移動して幅方向の第1の発光印刷画像位置のずれを修正する。
【0066】
ワイヤ10の下流部(ワイヤの上面の移動終端部)の下側には、搾水ボックス28が配置されている。この搾水ボックス28は、抄紙工程におけるワイヤ10の下流部において、下層の懸濁液状の紙層21、中間層のシート2及び上層の懸濁液状の紙層25内に含まれている水を吸引して搾水するものである。
【0067】
ワイヤ10で形成された多層抄き合わせ紙Bは、図示しないガイドロールで案内され最終製品として巻取ロールで巻き取られるが、ワイヤ10と巻取ロールの間には、上流側から、プレスロール29、乾燥装置30(図8中、想像線で示す。)及び位置ずれ検出装置31が配設されている。プレスロール29は多層抄き合わせ紙にすき入れを施す。
【0068】
プレスロール29は、多層抄き合わせ紙Bを挟持してさらに下流の巻取ロール側に送る。すき入れは、周知のプレスロール29又はダンディロール33によって形成される。乾燥装置30は、周知の乾燥装置を利用する。
【0069】
位置ずれ検出装置31は、位置検出器32と位置ずれ判別器34とを備えている。位置検出器32は、CCDカメラ等を有する透過光画像を検知できる検知手段であり、検出対象の多層抄き合わせ紙Bを挟んで反対側に配置されたライトテーブル35からの透過光を利用し、すき入れ7の位置rと第1の発光印刷画像位置qを検出することによって両者の間隔を測定し、これを電気信号として位置ずれ判別器34に送るものである。変形例1では、レジスターマーク又はIJPによるマークの位置vと第1の発光印刷画像位置qを検出する。
【0070】
位置ずれ判別器34は、位置検出器32から送られてきた第1の発光印刷画像位置qとすき入れ7の位置rの間隔と、あらかじめ設定されている長手方向の第1の発光印刷画像位置qとすき入れ7の位置rの所定間隔s及び/又は幅方向の第1の発光印刷画像位置qとすき入れ7の位置rの所定間隔tとのずれの大きさ及びそのずれの方向を判別し、位置ずれ情報として位置制御器26に送るものである。変形例1は、第1の発光印刷画像位置qとレジスターマーク又はIJPによるマーク8の位置vの間隔と、あらかじめ設定されている長手方向の第1の発光印刷画像位置qとマーク8の位置vの所定間隔s及び/又は幅方向の第1の発光印刷画像位置qとマーク8の位置vの所定間隔tとのずれの大きさ及びそのずれの方向を判別し、位置ずれ情報のデータを位置制御器26に送る例である。
【0071】
図8に示す製造装置で得られた多層抄き合わせ紙Bの表面及び裏面に、中間層のシート2に形成された第1の発光印刷画像4と少なくとも一部が重なるように施される第2の発光印刷画像5及び/又は第3の発光印刷画像6は、巻取装置で巻き取られる前、所定間隔となるように切断される前に印刷を行っても良い。また枚葉に切断されてから第2の発光印刷画像5及び/又は第3の発光印刷画像6の印刷を行っても良い。
【0072】
(製造方法)
発光印刷が施された多層抄き合わせ紙の製造方法について、以下、順次説明する。
【0073】
(1)下層紙料供給槽14内の下層の懸濁液状の紙料17は、下層紙料供給槽14から下層紙料用目止め板19とワイヤ10の隙間を通して、循環移動中のワイヤ10の上面に供給される。ワイヤ10上に供給された下層の懸濁液状の紙層21は、下層の懸濁液状の紙層21として抄造方向に送られる。
【0074】
(2)第1の発光印刷画像4が印刷された帯状の中間層のシート2は、この下層の懸濁液状の紙層21の上面に、中間層のシート供給装置15から連続的に供給される。ただし、中間層のシートにあらかじめ第1の発光印刷画像4が印刷されていない場合は、中間層のシート供給ドラム22から中間層のシート2をワイヤ10に向けて繰り出しながら供給する間に、中間層のシートに印刷機器36によって長手方向に一定の間隔をおいて第1の発光印刷画像4が付与される。すると、帯状の中間層のシート2は、下層の懸濁液状の紙層21とワイヤ10上で抄造方向に送られながら重なり、下層の懸濁液状の紙料17は中間層のシート2の繊維間に入り込み、下層の懸濁液状の紙料17のパルプ繊維と中間層のシート2の繊維が絡み合う。
【0075】
(3)次に、上層紙料供給槽16内の上層の懸濁液状の紙料18は、上層紙料供給槽16から上層紙料用目止め板20とワイヤ10の隙間を通して、下層の懸濁液状の紙料17のパルプ繊維と重ねられた帯状の中間層のシート2の更に上面に供給される。すると、上層の懸濁液状の紙料18は、ワイヤ10上で上層の懸濁液状の紙層25として抄造方向に送られながら中間層のシート2と重なり、上層の懸濁液状の紙料18は、中間層のシート2の繊維間に入り込む。このように、ワイヤ10上に順次、下層の懸濁液状の紙料17、第1の発光印刷画像4が印刷された中間層のシート2及び上層の懸濁液状の紙料18を供給し、多層に重ね合わせて抄紙する。なお、中間層のシート2の第1の発光印刷画像4が施された領域は、下層の懸濁液状の紙料17の繊維と上層の懸濁液状の紙料18の繊維が互いに入り組んで絡み合い、多層抄き合わせ紙Bの抄造が行われる。
【0076】
(4)多層抄き合わせ紙Bは、搾水ボックス28を通過し、プレスロール29により、すき入れ7を施す。このすき入れ7は、第1の発光印刷画像位置qから多層抄き合わせ紙Bの長手方向にあらかじめ設定された第1の発光印刷画像位置qとすき入れ7の位置rの所定間隔sの位置に施されるようにする。このように調整することによって、すき入れ7は第1の発光印刷画像4と所定の位置に配置される。即ち、すき入れ7は、ワイヤの送り速度及び中間層のシート内の第1の発光印刷画像位置を考慮して、プレスロールの回転速度等を制御して形成される。しかしながら、実際は、中間層のシート挿入時において、第1の発光印刷画像位置qは、予定されるすき入れ7の位置rに対してあらかじめ設定されている長手方向の第1の発光印刷画像位置qとすき入れ7の位置rの所定間隔s及び/又は幅方向の第1の発光印刷画像位置qとすき入れ7の位置rの所定間隔tの位置からずれる場合があるので、後述のようなずれ位置の修正が必要となる。
【0077】
(5)このように形成された多層抄き合わせ紙Bは、さらに乾燥装置内を通過して乾燥され、最終製品として完成される。そして、多層抄き合わせ紙Bを製品として巻き取る巻取装置に送る途中で、位置ずれ検出装置31により、当該多層抄き合わせ紙のすき入れ7の位置rと第1の発光印刷画像位置qの実際の間隔について、あらかじめ設定されている長手方向の第1の発光印刷画像位置qとすき入れ7の位置rの所定間隔s及び/又は幅方向の第1の発光印刷画像位置qとすき入れ7の位置rの所定間隔tからのずれの量を検出し、位置ずれ情報も生成して位置修正装置24の位置制御器26に送る。
【0078】
すき入れで位置合せを行わない場合は、製品として巻き取る巻取装置に送る途中で、位置ずれ検出装置31により、レジスターマーク又はIJPによるマークの位置vと、第1の発光印刷画像位置qの実際の間隔について、あらかじめ設定されている長手方向の第1の発光印刷画像位置qとマークの位置vの所定間隔s及び/又は幅方向の第1の発光印刷画像位置qとマークの位置vの所定間隔tからのずれの量を検出し位置ずれ情報を生成して、位置修正装置24の位置制御器26に送る。
【0079】
(6)位置制御器26は、この位置ずれ情報を受けて位置修正ロール27を制御して、中間のシート2の送りを制御する。即ち、位置修正ロール27は、位置制御器26の命令によって、モータを介し、送り速度を調整することで、帯状の中間層のシート2の送り速度を上げたり下げたりすることが可能となる。よって、中間のシート2に付与された第1の発光印刷画像の位置については、下層の懸濁液状の紙層21に対する抄造方向の相対的な位置を調整することができる。位置修正ロール27は、所定間隔sからずれた場合に、長手方向の第1の発光印刷画像位置qとすき入れ7の位置rの間隔、又は第1の発光印刷画像位置qとレジスターマーク又はIJPによるマークの位置vの間隔が、あらかじめ設定された長手方向の第1の発光印刷画像位置qとすき入れ7の位置r、又は第1の発光印刷画像位置qとマークの位置vの所定間隔sになるように中間層のシート2の送り速度を調整して長手方向の第1の発光印刷画像位置のずれを修正する。
【0080】
中間層のシート供給ドラム22は、その軸心の長手方向、即ち中間層のシート2の幅方向に、巻き付けてある中間層のシートごとに移動して幅方向に位置を調整できるように、図示しない中間層のシート供給ドラム幅方向位置調整装置で調整することができる。中間層のシート供給ドラム幅方向位置調整装置は、所定間隔tからずれた場合に、幅方向の第1の発光印刷画像位置qとすき入れ7の位置rの間隔又は第1の発光印刷画像位置qとレジスターマーク又はIJPによるマークの位置vの間隔が、あらかじめ設定された幅方向の第1の発光印刷画像位置qとすき入れ7の位置r、又は第1の発光印刷画像位置qとマークの位置vの所定間隔tになるように中間層のシート2を幅方向に移動して幅方向の第1の発光印刷画像位置のずれを修正する。このように調整することによって、すき入れ7は第1の発光印刷画像4と所定の位置に配置される。
【0081】
(7)多層抄き合わせ紙Bの表面及び裏面に、中間層のシート2に形成された第1の発光印刷画像4と少なくとも一部が重なるように施される第2の発光印刷画像5及び/又は第3の発光印刷画像6は、巻取装置で巻き取られる前又は所定間隔となるように切断される前に印刷を行っても良い。また枚葉に切断されてから第2の発光印刷画像5及び/又は第3の発光印刷画像6の印刷を行っても良い。
【0082】
多層抄き合わせ紙は、下層紙料供給槽14又は上層紙料供給槽16に貯留された原料の紙料特性を異ならせて、色、坪量又は繊維構成を異ならせることも可能である。色の調節については繊維の種類の違い、顔料、染料の混合及び漂白するか未漂白にとどめるか等の操作により可能である。坪量の調節については原料濃度、原料吐出部の調整により可能である。繊維構成の調節については繊維の種類、配合割合、繊維長及び叩解度等を変化させることで可能である。
【実施例】
【0083】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の内容は、これらの実施例の範囲に限定されるものではない。
【0084】
(実施例1)
実施例1の発光印刷が施された多層抄き合わせ紙は、図8に示した多層抄き合わせ紙の製造装置を用いて作製した。まず、針葉樹晒クラフトパルプの叩解度をカナディアンスタンダードフリーネス550mlに調整し、下層の懸濁液状の紙料17を得た。下層の懸濁液状の紙料17は、下層紙料供給槽14から下層紙料用目止め板19とワイヤ10の隙間を通して、下層の懸濁液状の紙料17を循環移動中のワイヤ10の上面に供給され、ワイヤ10上に供給された下層の懸濁液状の紙料17は、下層の懸濁液状の紙層21として抄造方向に送った。
【0085】
次に、坪量12g/m、厚さ35μm、JISの透気度試験法で測定限界以下の透気性が高いPVA繊維で構成される、あらかじめ第1の発光印刷画像4が印刷された巻取状の中間層のシート2を、中間層のシート供給ドラム22にセットし、この下層の懸濁液状の紙層21の上面に、中間層のシート供給装置15から、あらかじめ第1の発光印刷画像4が施された帯状の中間層のシート2を連続的に供給した。あらかじめ印刷された第1の発光印刷画像4は、下記の配合割合で作製したスクリーンインキによってスクリーン印刷機で印刷した。発光顔料は赤色系に発光するものである。図9にSPD−116Sの分光スペクトルを示す。
発光顔料(東芝社製、SPD−116S) 25重量部
メジウム(セイコーアドバンス社製、UVA9117) 74.9重量部
消泡剤 (東レ・ダウコーニングシリコン社製、SC5540)
0.1重量部
【0086】
下層の懸濁液状の紙料17のパルプ繊維と重ねられた帯状の中間層のシート2の更に上面に、針葉樹未晒クラフトパルプを、カナディアンスタンダードフリーネス570mlに調整した上層の懸濁液状の紙料18を上層紙料供給槽16から上層紙料用目止め板20とワイヤ10の隙間を通して上層の懸濁液状の紙料18を供給した。
【0087】
多層抄き合わせ紙は、搾水ボックス28を通過し、プレスロール29によりすき入れ7を施した。第1の発光印刷画像位置とすき入れ7の位置の関係は、長手方向にあらかじめ設定された第1の発光印刷画像位置とすき入れ7の位置の所定間隔及び幅方向にあらかじめ設定された第1の発光印刷画像位置とすき入れ7の位置の所定間隔となるようにした。さらに乾燥装置内を通過して乾燥され、巻取の多層抄き合わせ紙が完成された。巻取の多層抄き合わせ紙は、所定の位置で断裁し、枚葉の発光印刷が施された多層抄き合わせ紙を得た。上層紙層の坪量は、15g/mである。下層紙層の坪量は、15g/mである。坪量が15g/mの時の紫外線透過率は、365nm照射では57%程度、302nm照射では48%、254nm照射では41%程度であった。
【0088】
得られた多層抄き合わせ紙は、多層抄き合わせ紙の表面に下記の配合割合で作製したスクリーンインキにより第2の発光印刷画像5をスクリーン印刷機で印刷した。発光顔料は青色系に発光するものである。D1230の分光スペクトルを図10に示す。
発光顔料(根元特殊化学社製、D1230) 16重量部
メジウム(セイコーアドバンス社製、UVA9117) 83.9重量部
消泡剤 (東レ・ダウコーニングシリコン社製、SC5540)
0.1重量部
【0089】
また、得られた多層抄き合わせ紙は、多層抄き合わせ紙の裏面に下記の配合割合で作製したスクリーンインキで第3の発光印刷画像6をスクリーン印刷機で印刷した。発光顔料は緑色系に発光するものである。図11に緑色発光の分光スペクトルを示す。
発光顔料(根元特殊化学社製:緑色発光) 3重量部
メジウム(セイコーアドバンス社製、UVA9117) 96.9重量部
消泡剤 (東レ・ダウコーニングシリコン社製、SC5540)
0.1重量部
【0090】
紫外線照射ランプ(ULTRA-VIOLET PRODUCTS社製:3UV-34)を使用し、励起波長365nmの紫外線を照射した場合、第1の発光印刷画像、第2の発光印刷画像及び第3の発光印刷画像のいずれかが重なりあう部分では表裏で異なる発光色を確認した。なお、上層紙層3の紫外線透過率は57%程度であり、下層紙層1の紫外線透過率は57%程度であった。図1の構成による第4の混色領域c4では、紫外線は上層紙層3及び下層紙層1を通過するたびに吸収されるため、上層面から照射し下層面から視認した場合は、紫色を確認した。逆に、下層面から照射し上層面から視認した場合は、赤味を帯びた水色を確認した。
【0091】
上層に発光顔料(D1230)が配合されたインキによって形成された第2の発光印刷画像5、中間層に発光顔料(SPD−116S)が配合されたインキによって形成された第1の発光印刷画像4、下層に発光顔料(緑色発光)が配合されたインキによって形成された第3の発光印刷画像6から成る図1の多層抄き合わせ紙を用いて、三つの発光印刷画像の混色領域について、多層抄き合わせ紙の表裏からの分光スペクトル(日立ハイテクノロジーズ社製:F−4500形分光蛍光光度計)を測定した。図13に長波紫外線照射時の用紙表裏の分光スペクトルを示す。混色領域の発光印刷画像の混色効果及び表裏で混色の色彩が異なることを分光スペクトルから確認できる多層抄き合わせ紙であった。また、図14に中波紫外線照射時の用紙表裏の分光スペクトル、図15に短波紫外線照射時の用紙表裏の分光スペクトルを示すが、同様に混色領域における混色効果及び色彩の変化が確認できた。
【0092】
次に、図13及び図14において650nm付近における発光強度が表裏でほぼ同一であった。この効果を用いることで、従来の機械認証技術である発光体自体の発光強度のピークを用いた認証や、認証波長を限定する認証技術とは異なり、用紙表裏の発光スペクトルの一致性で認証が可能となる。このため、経時変化に伴う発光強度の変化に影響されることなく、かつ、長波及び中波の2波長を用いた認証方法が可能となる。よって、認証精度が向上した多層抄き合わせ紙であり、かつ、偽造防止効果の高い用紙が得られた。
【0093】
また、紫外線透過性及び吸収性を有する物質を挟んで重ね合わせた構成による用紙であるため、発光体の経時による発光強度の低下割合は、用紙表面に露出したものと比べ低くなることから、製品としての寿命も長く保つことができる。
【0094】
(実施例2)
実施例2は、実施例1と同様な方法で、実施例1とは異なったインキにより発光印刷画像を印刷した例である。中間層のシート2に励起波長が302nm及び254nmの紫外線で発光する第1の発光印刷画像4を印刷した。あらかじめ印刷された第1の発光印刷画像4は、下記の配合割合で作製したスクリーンインキによってスクリーン印刷機で印刷した。発光顔料は赤色系に発光するものである。図12にYPV−Fの分光スペクトルを示す。
発光顔料(根元特殊化学社製、YPV−F) 0.75重量部
メジウム(セイコーアドバンス社製、UVA9117) 99.15重量部
消泡剤 (東レ・ダウコーニングシリコン社製、SC5540)
0.1重量部
【0095】
多層抄き合わせ装置を用いて、発光印刷が施された多層抄き合わせ紙を作製し、上層紙層3に第2の発光印刷画像5及び下層紙層1に第3の発光印刷画像6を印刷した。
【0096】
得られた多層抄き合わせ紙は、多層抄き合わせ紙の表面に下記の配合割合で作製したスクリーンインキで第2の発光印刷画像5を印刷した。発光顔料は青色系に発光するものである。
発光顔料(根元特殊化学社製、D1230) 16重量部
メジウム(セイコーアドバンス社製、UVA9117) 83.9重量部
消泡剤 (東レ・ダウコーニングシリコン社製、SC5540)
0.1重量部
【0097】
また、得られた多層抄き合わせ紙は、多層抄き合わせ紙の裏面に下記の配合割合で作製したスクリーンインキで第3の発光印刷画像6を印刷した。発光顔料は緑色系に発光するものである。
発光顔料(根元特殊化学社製、緑色発光) 3重量部
メジウム(セイコーアドバンス社製、UVA9117) 96.9重量部
消泡剤 (東レ・ダウコーニングシリコン社製、SC5540)
0.1重量部
【0098】
紫外線照射ランプ(ULTRA-VIOLET PRODUCTS社製:3UV-34)を使用し、励起波長302nmの紫外線を照射した場合、発光印刷画像が重なりあう部分では表裏で異なる発光色を確認した。なお、上層紙層3の紫外線透過率は48%程度であり、下層紙層1の紫外線透過率は48%程度であった。図1の構成による第4の混色領域c4では、紫外線は上層紙層3及び下層紙層1を通過するたびに吸収されるため、上層面から照射し下層面から視認した場合は桃色を確認した。逆に、下層面から照射し上層面から視認した場合は白色を確認した。
【0099】
また、紫外線照射ランプ(ULTRA-VIOLET PRODUCTS社製:3UV-34)を使用し、励起波長254nmの紫外線を照射した場合、発光印刷画像が重なりあう部分では表裏で異なる発光色を確認した。なお、上層紙層3の紫外線透過率は41%程度であり、下層紙層1の紫外線透過率は41%程度であった。図1の構成による第4の混色領域c4では、紫外線は上層紙層3及び下層紙層1を通過するたびに吸収されるため、上層面から照射し下層面から視認した場合は青紫色を確認した。逆に、下層面から照射し上層面から視認した場合は緑味を帯びた水色を確認した。
【0100】
上層に発光顔料(D1230)が配合されたインキによって形成された第2の発光印刷画像5、中間層に発光顔料(YPV−F)が配合されたインキによって形成された第1の発光印刷画像4、下層に発光顔料(緑色発光)が配合されたインキによって形成された第3の発光印刷画像6から成る図1の多層抄き合わせ紙を用いて、三つの発光印刷画像の混色領域について、多層抄き合わせ紙の表裏からの分光スペクトル(日立ハイテクノロジーズ社製:F−4500形分光蛍光光度計)を測定した。図17に中波紫外線照射時の用紙表裏の分光スペクトル、図18に短波紫外線照射時の用紙表裏の分光スペクトルを示す。紫外線の励起波長が変化した場合でも、多層抄き合わせ紙の表裏での発光印刷画像の混色効果及び色彩の変化が生じる多層抄き合わせ紙が得られた。また、図16に長波紫外線照射時の用紙表裏の分光スペクトルを示す。中間層の発光印刷画像を利用しない用紙表裏の発光印刷画像による混色領域においても、混色効果及び色彩の変化が得られることが確認できた。
【0101】
次に、図17において620nm付近における発光強度が表裏で同一であった。この効果を用いることで、従来の機械認証技術である発光体自体の発光強度のピークを利用した認証技術ではなく、用紙表裏からの発光スペクトルの一致性で認証が可能となる。このため、経時変化に伴う発光強度の変化に影響しない認証方法が可能となる。
【0102】
また、実施例1及び実施例2において作製した用紙は、印刷適正や印刷品質及び用紙の厚みをある程度維持した形態を目標としているため、紫外線短波で中間層の発光印刷画像が発光せず、紫外線短波による中間層の機械認証が機能しない形態であるが、メジウムを紫外線短波吸収能の低い水性ワニスに変更し、上層と下層の用紙坪量を減らすことで、紫外線短波によっても中間層画像を発光させて機械認証を行うことが可能となることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】発光印刷が施された多層抄き合わせ紙A1とその断面図である。
【図2】発光印刷が施された多層抄き合わせ紙A2とその断面図である。
【図3】発光印刷が施された多層抄き合わせ紙A3とその断面図である。
【図4】単層紙又は多層紙による紫外線透過率を示す図である。
【図5】発光印刷が施された多層抄き合わせ紙に紫外線長波、紫外線中波及び紫外線短波の波長を照射した場合の発光色の一例である。
【図6】帯状の多層抄き合わせ紙Bを長手方向で観察した場合及びそのX−X’断面を示す図である。
【図7】白すき入れからなるレジスターマーク又はIJP(インクジェットプリンタ)によるマーク8が抄造方向に一定間隔で複数箇所に付与されている例を示す図である。
【図8】本発明を実施するための最良の形態の多層抄き合わせ紙の製造装置を示す図である。
【図9】SPD−116Sの分光スペクトルを示す図である。
【図10】D1230の分光スペクトルを示す図である。
【図11】緑色発光の分光スペクトルを示す図である。
【図12】YPV−Fの分光スペクトルを示す図である。
【図13】実施例1の発光印刷が施された多層抄き合わせ紙の長波紫外線照射時の用紙表裏の分光スペクトルを示す図である。
【図14】実施例1の発光印刷が施された多層抄き合わせ紙の中波紫外線照射時の用紙表裏の分光スペクトルを示す図である。
【図15】実施例1の発光印刷が施された多層抄き合わせ紙の短波紫外線照射時の用紙表裏の分光スペクトルを示す図である。
【図16】実施例2の発光印刷が施された多層抄き合わせ紙の長波紫外線照射時の用紙表裏の分光スペクトルを示す図である。
【図17】実施例2の発光印刷が施された多層抄き合わせ紙の中波紫外線照射時の用紙表裏の分光スペクトルを示す図である。
【図18】実施例2の発光印刷が施された多層抄き合わせ紙の短波紫外線照射時の用紙表裏の分光スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0104】
1 下層紙層
2 中間層のシート
3 上層紙層
4 第1の発光印刷画像
5 第2の発光印刷画像
6 第3の発光印刷画像
7 すき入れ
8 レジスターマーク又はIJPによるマーク
9 多層抄き合わせ紙の製造装置
10 抄紙用のワイヤ
11 従動用プーリ
12 駆動用プーリ
13 ワイヤの上流部
14 下層紙料供給槽
15 中間層のシート供給装置
16 上層紙料供給槽
17 下層の懸濁液状の紙料
18 上層の懸濁液状の紙料
19 下層紙料用目止め板
20 上層紙料用目止め板
21 下層の懸濁液状の紙層
22 中間層のシート供給ドラム
23 テンションロール
24 位置修正装置
25 上層の懸濁液状の紙層
26 位置制御器
27 位置修正ロール
28 搾水ボックス
29 プレスロール
30 乾燥装置
31 位置ずれ検出装置
32 位置検出器
33 ダンディロール
34 位置ずれ判別器
35 ライトテーブル
36 印刷機器
A1、A2、A3 発光印刷が施された多層抄き合わせ紙
B 多層抄き合わせ紙
q 第1の発光印刷画像位置
r すき入れの位置
v マークの位置
s 長手方向の所定間隔
t 幅方向の所定間隔
c1 第1の混色領域
c2 第2の混色領域
c3 第3の混色領域
c4 第4の混色領域
d1 第1の単色領域
d2 第2の単色領域
d3 第3の単色領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線透過率が4〜70%の上層、不織布から成る中間層及び紫外線透過率が4〜70%の下層から成る多層抄き合わせ紙であって、前記多層抄き合わせ紙は、前記中間層の片面に施された第1の発光印刷画像と、前記多層抄き合わせ紙の表面及び前記多層抄き合わせ紙の裏面の少なくとも一方に施された前記第1の発光印刷画像と異なる発光色を有する第2の発光画像とを有し、前記第1の発光印刷画像及び前記第2の発光印刷画像は、前記上層、前記中間層及び/又は前記下層を介して少なくとも一部が重なって配置されたことを特徴とする発光印刷が施された多層抄き合わせ紙。
【請求項2】
紫外線透過率が4〜70%の上層、不織布から成る中間層及び紫外線透過率が4〜70%の下層から成る多層抄き合わせ紙であって、前記多層抄き合わせ紙は、前記中間層の片面に施された第1の発光印刷画像と、前記多層抄き合わせ紙の表面に前記第1の発光印刷画像と異なる発光色を有する第2の発光印刷画像と、前記多層抄き合わせ紙の裏面に前記第1の発光印刷画像及び前記第2の発光印刷画像と異なる発光色を有する第3の発光印刷画像とを有し、前記第1の発光印刷画像、前記第2の発光印刷画像及び前記第3の発光印刷画像は、前記上層、前記中間層及び/又は前記下層を介して少なくとも一部が重なって配置されたことを特徴とする発光印刷が施された多層抄き合わせ紙。
【請求項3】
前記発光印刷画像は、紫外線長波の波長を照射すると蛍光発光する蛍光印刷インキ、紫外線中波の波長を照射すると蛍光発光する蛍光印刷インキ及び紫外線短波の波長を照射すると蛍光発光する蛍光印刷インキの少なくとも一つで印刷されたことを特徴する請求項1又は2記載の発光印刷が施された多層抄き合わせ紙。
【請求項4】
前記第1の発光印刷画像は、紫外線長波の波長を照射すると蛍光発光する蛍光印刷インキ、紫外線中波の波長を照射すると蛍光発光する蛍光印刷インキ及び紫外線短波の波長を照射すると蛍光発光する蛍光印刷インキのいずれかで印刷され、前記第2の発光印刷画像は、前記第1の発光印刷画像で印刷した蛍光印刷インキとは異なるインキで印刷され、前記第3の発光印刷画像は、前記第1の発光印刷画像及び前記第2の発光印刷画像で印刷した蛍光印刷インキとは異なるインキで印刷されたことを特徴する請求項2又は3記載の発光印刷が施された多層抄き合わせ紙。
【請求項5】
前記第1の発光印刷画像が施されていない中間層の他方の面に前記第4の発光印刷画像を有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の発光印刷が施された多層抄き合わせ紙。
【請求項6】
前記中間層は、光学的、電気的又は磁気的な特定物質のいずれか一つ以上を混抄又は印刷されていることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の発光印刷が施された多層抄き合わせ紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−75218(P2008−75218A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256958(P2006−256958)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】