説明

発光材料として二核金属化合物を利用する有機発光デバイス

【課題】アノード、カソード、及びアノードとカソードの間に配置され、電気的に接続された発光層を有するデバイスを提供する。
【解決手段】発光層は1つ以上の中心金属を持つ発光材料を有する。一例では、第1及び第2の中心金属はd7、d8、及びd9金属からなるグループから独立に選択される。架橋配位子は第1の中心金属と第2の中心金属に配位する。一例では、第1及び第2の中心金属は少なくとも3の配位数を持ち、より望ましくは、各々4の配位数を持つ。一例では、光活性な配位子は第1及び第2の中心金属に配位する。一例では光活性な配位子がない。一例では、電気的に中性の二核発光材料が提供される。一例では、第1及び第2の中心金属はコフェイシャル形態(co-facial configuration;共対面形態)、望ましくは正方平面状コフェイシャル形態を有する。一例では、中心金属は40以上の原子番号を持つ金属から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機発光デバイス(OLED)に関わり、より詳しくは、そのようなデバイスにおいて使用される燐光性の有機金属系材料に関する。また、より詳しくは、本発明はOLEDであって、発光層が複数の中心金属を持つ燐光性の発光材料を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料を利用するオプトエレクトロニクス・デバイス(光電子デバイス)が、多くの理由からますます要求されている。このようなデバイスを作製するのに使用される材料の多くが比較的安価であり、そのため、有機オプトエレクトロニクス・デバイスは無機のデバイスを凌ぐコスト有利性の可能性を有している。さらに、それらの柔軟性などのような有機材料固有の特性は、フレキシブル基板上に形成されるような特殊な適用にそれらをよく適合させることができる。有機オプトエレクトロニクス・デバイスの例としては、有機発光デバイス(OLED)、有機フォトトランジスター、有機光起電力電池、および有機光検出器が含まれる。OLEDに関しては、有機材料は従来材料を凌ぐ性能の有利性を備えることができる。例えば、有機発光層が発光する波長は、一般に、適切なドーパントで容易に変えられる。
【0003】
ここで使用されるように、「有機」という用語は、有機オプトエレクトロニクス・デバイスを作製するのに使用できる小分子有機材料だけでなく高分子(polymeric)材料をも含む。「小分子」は高分子でない何らかの有機材料のことを言い、また「小分子」は実際にはかなり大きいこともある。小分子はある状況下では繰り返し単位を有することができる。例えば、置換基としての長鎖アルキル基を使用することは、「小分子」類から分子を取り外さないことである。小分子は、例えば高分子(polymer)骨格上のペンダント基(pendent group)として、または骨格の一部として高分子類に組み込むこともできる。小分子は、核部分に構築された一連の化学殻(chemical shell)からなるデンドリマー(dendrimer)の核部分としての役割も果たすことができる。デンドリマーの核部分は蛍光性または燐光性の小分子エミッタ(emitter;放出源)であることが可能である。デンドリマーは「小分子」であることが可能で、そして現在OLEDの分野で使用されているすべてのデンドリマーが小分子であると信じられている。
【0004】
OLEDはデバイスを挟んで電圧が掛けられる時に発光する薄い有機膜を利用する。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明(イルミネーション)、バックライトなどの用途における使用に対して、益々興味深い技術になっている。いくつかのOLED材料と構成は、参考としてここにその全体が組み込まれている特許文献1、特許文献2および特許文献3で説明されている。
【0005】
OLEDデバイスは、一般に(しかしいつもそうではないが)、少なくとも1つの電極を通して発光することを意図されており、1つ以上の透明電極を有機オプトエレクトロニクス・デバイスにおいて役立てることができる。例えば、インジウムすず酸化物(ITO)などの透明電極材料が下部電極として使用できる。参考としてその全体が組み込まれている特許文献4および特許文献3で開示されているような透明上部電極も使用できる。下部電極だけを通して発光することを意図されたデバイスに対しては、上部電極は透明である必要はなく、高い電気伝導性を有する厚くて反射性の金属層から成ることができる。同様に、上部電極だけを通して発光することを意図されたデバイスに対しては、下部電極は、不透明および/または反射性であることが可能である。電極が透明である必要のないところでは、より厚い層を使用することにより、より良好な導電率を提供でき、また反射性の電極を使用することで、透明電極に向かって光を反射させることによって他方の電極を通じて放出された光量を増加させることができる。また、両方の電極が透明である完全に透明なデバイスも作製することができる。側面発光型OLEDも作製することができ、このようなデバイスでは一方または両方の電極を不透明または反射性とすることができる。
【0006】
ここで使用されるように、「上部」とは基板から最も遠く離れていることを意味し、一方、「下部」とは基板に最も近いことを意味する。例えば、2つの電極に対して、下部電極は基板に最も近い電極であり、一般的に作製される最初の電極である。下部電極は、基板に最も近い下面と基板からより遠い上面の、2つの表面を有する。第1の層が第2の層の「上に配置される」状況では、第1の層は基板からより遠くに配置される。第1の層が第2の層に「物理的に接触する状態」であると特定されない場合には、第1の層と第2の層との間には他の層が存在できる。例えば、様々な有機物層が中間に存在していても、カソードがアノードの「上に配置される」ものとして記述できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,844,363号明細書
【特許文献2】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献3】米国特許第5,707,745号明細書
【特許文献4】米国特許第5,703,436号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、有機発光デバイス(OLED)において使用される燐光性の有機金属系材料、詳しくは、発光層が複数の中心金属を持つ燐光性の発光材料を有するものに関わり、アノード、カソード、および前記アノードおよび前記カソードの間に配置され、かつ電気的に接続された発光層を有するデバイスを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
アノード、カソード、および前記アノードおよび前記カソードの間に配置され、かつ電気的に接続された発光層を有するデバイスを提供する。発光層は1つより多い中心金属を備えた発光材料を有する。1つの実施の態様では、第1および第2の中心金属はd7、d8、およびd9金属からなるグループから独立に選択される。架橋配位子は第1の中心金属および第2の中心金属に配位される。1つの実施の態様では、第1および第2の中心金属は、それぞれ少なくとも3配位数をもち、より望ましくは、それぞれ4配位数を持つ。1つの実施の態様では、光活性な配位子が第1および第2の中心金属に配位する。1つの実施の態様では、光活性な配位子の存在がない。1つの実施の態様では、電気的に中性な二核発光材料が提供される。1つの実施の態様では、第1および第2の中心金属はコフェイシャル形態(co-facial configuration;共対面形態)を持ち、また望ましくは、正方平面状形態のコフェイシャル形態を持つ。1つの実施の態様では、40に等しいかまたはそれ以上の原子番号を持つ金属から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】分離電子輸送層、正孔輸送層、および発光層、さらにその他の層を有する有機発光デバイスを示す。
【図2】分離電子輸送層を持たない反転した有機発光デバイスを示す。
【図3】CBPに5%ドーピングした(Fppy)Pt(SPy)の薄膜のフォトルミニセント発光スペクトル(photoluminescent emission spectrum)を示す。
【図4】605nmの発光に設定した状態での、CBPに5%ドーピングした(Fppy)Pt(SPy)の薄膜の励起スペクトルを示し、500nmの吸収バンドを見ることができる。
【図5】FPt、FPtdpm、および(Fppy)Pt(SPy)のフォトルミニセント発光スペクトルを比較したものであって、CBPにそれぞれ5%ドーピングしたFPt、FPtdpm、および(Fppy)Pt(SPy)の発光膜がスピンコーティングによって準備され、370nmで励起された。
【図6】ITO/NPD(400Å)/二核錯体、9%:CBP(300Å)/BCP(120Å,任意選択)/Zrq(350Å)/Li:Al(1000Å)のデバイスの概略図を示す。
【図7】図6に示された構成を有するデバイスの、電流密度に対する量子効率のプロット曲線を示す。
【図8】図6に示された構成を有するデバイスの、電流密度対電圧のプロット曲線を示す。
【図9】図6に示された構成を有するデバイスの、電界発光スペクトルのプロット曲線を示す。
【図10】図6に示された構成を有するデバイスの、光度対電圧のプロット曲線を示す。
【図11】ITO/NPD(400Å)/mCP(200Å,任意選択)/二核錯体、9%:mCP(300Å)/Zrq(350Å)/Li:Al(1000Å)のデバイスの概略図を示す。
【図12】図11に示された構成を有するデバイスの、電流密度に対する量子効率のプロット曲線を示す。
【図13】図11に示された構成を有するデバイスの、電流密度対電圧のプロット曲線を示す。
【図14】図11に示された構成を有するデバイスの、電界発光スペクトルのプロット曲線を示す。
【図15】図11に示された構成を有するデバイスの、光度対電圧のプロット曲線を示す。
【図16】FPt、FPtdpm、および(Fppy)Pt(SPy)の化学構成を示す。
【図17】X線結晶学法(X-ray crystallography)で決定された(Fppy)Pt(SPy)の構成を示す。
【図18】溶液中のPtSpyのPL発光スペクトルを示す。
【図19】溶液中のPtSpyとSpyの吸収スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一般に、OLEDは、アノードとカソードとの間に配置され、かつ電気的に接続された少なくとも1つの発光層を有する。ここで使用されるように、「間に配置され、かつ電気的に接続された」という用語は、記載された層が必ずしも隣接あるいは直接接触することを指したものではない。むしろ、それは記載された層の間に追加の層を配置することを可能にする。電流がデバイスに流されると、アノードが正孔を注入し、カソードが有機物層に電子を注入する。注入された正孔と電子は、それぞれ反対極性に帯電された電極に向かって移動する。電子と正孔が同一の分子上に局在化すると、励起されたエネルギー状態を持ち局在化された電子正孔対である「励起子」が形成される。励起子は光電子放出機構(photoemissive mechanism)で緩和すると光が放たれる。いくつかの場合、励起子はエキシマ(excimer;励起二量体)またはエキシプレクス(exciplex;励起錯体)上に局在化することができる。熱的緩和などの非放射機構も起こりうるが、一般には望ましくないと考えられている。
【0012】
初期のOLEDは、例えば参考としてその全体が組み込まれている米国特許第4,769,292号明細書に開示されているような、それらの一重項状態(「蛍光」)から光を発する発光分子を使用していた。一般に、蛍光発光は10ナノ秒未満の時間枠中に起こる。
【0013】
より最近では、三重項状態(「燐光」)から光を発する発光材料を有するOLEDが明らかにされた。Baldoら著,「Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices」,Nature,第395巻,p151-154,1998年;(以下「Baldoの文献−I」)、およびBaldoら著,「Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence」,Appl.Phys.Lett.,第75巻,第3号,p4-6,1999年;(以下「Baldoの文献−II」)は、参考としてその全体が組み込まれている。燐光は、遷移がスピン状態の変化を必要とするので、「禁制」遷移と呼ばれ、そして量子力学ではそのような遷移は好ましくないと指摘されている。その結果、燐光は、一般に、少なくとも10ナノ秒を超える時間枠、通常100ナノ秒を超える時間枠中に起こる。燐光の自然放射寿命が長過ぎるならば、三重項は光が全く放出されないような非放射型機構で緩和できる。有機物の燐光は、極低温における電子の非共有電子対をもったヘテロ原子を含んだ分子においてもしばしば観測される。2,2’−ビピリジンがそのような分子である。非放射型遷移機構は、通常、液体窒素温度で燐光を示す材料が室温では燐光を示すことができないような温度依存型である。しかし、Baldoの文献によって示されるように、室温で燐光をする燐光性の化合物を選択することによって、この問題を解決できる。
【0014】
一般に、OLEDにおける励起子は、約3:1の比率で、すなわち約75%の三重項と25%の一重項で生成されると信じられている。参考としてその全体が組み込まれているAdachiら著,「Nearly 100% Internal Phosphorescent Efficiency In An Organic Light Emitting Device」,J. Appl. Phys.,90,5048(2001年)を参照されたい。多くの場合、一重項励起子は容易にそれらのエネルギーを、「項間交差(intersystem crossing)によって三重項励起された状態に遷移することができるが、三重項励起子はそれらのエネルギーを一重項励起状態に容易に遷移することができない。その結果、100%の内部量子効率が燐光性のOLEDによって理論的に可能である。蛍光デバイスでは、三重項励起子のエネルギーは、一般に、デバイスを昇温させて、内部量子効率をより低下させる結果となる非放射性減衰過程に失われる。三重項励起状態から放射される燐光性の材料を利用するOLEDは、例えば、参考としてその全体が組み込まれている特許文献2に開示されている。
【0015】
燐光よりも、三重項励起状態から発光崩壊が起こる中間非三重項状態に遷移することが先行する。例えば、ランタノイド元素に配位された有機分子は、ランタノイド金属上に局在化した励起状態からしばしば燐光を発する。しかしながら、そのような材料は、三重項励起状態から直接燐光を発するのではなく、その代わりにランタノイド金属イオンに集中した原子励起状態から放出される。ユウロピウム・ジケトナート錯体はこのタイプの種の1グループを例証する。
【0016】
三重項からの燐光は、大きな原子番号の原子に極めて接近した有機分子を、望ましくは結合によって、閉じ込めることによって、蛍光を超えて強めることができる。重原子効果と呼ばれるこの現象はスピン軌道結合として知られている機構によって引き起こされる。このような燐光性の遷移状態は、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)などの有機金属分子の、励起された金属から配位子への電荷移動(MLCT)状態から、観測できる。
【0017】
図1は有機発光デバイス100を示している。この図は必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子障壁層(electron blocking layer)130、発光層135、正孔障壁層140(hole blocking layer)、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、およびカソード160を含むことができる。カソード160は、第1導電層162と第2の導電層164持った複合カソードである。デバイス100は説明された層を順番に蒸着(堆積)することによって、作製することができる。
【0018】
基板110は必要な構造特性を提供するのに適切ないかなる基板とすることもできる。基板110は軟質(フレキシブル)または硬質とすることができる。基板110は透明、半透明または不透明とすることができる。プラスチックおよびガラスが、好適な硬質基板材料の例である。プラスチックおよび金属薄片が好適なフレキシブル基板の材料の例である。基板110は、回路構成の作製を容易にするために半導体材料とすることができる。例えば、基板110は、回路が作製され、基板上へのその後のOLED蒸着を制御できるシリコンウエハとすることができる。他の基板も使用できる。必要な構造上のおよび光学的な特性を得るように、基板110の材料と厚さを選ぶことができる。
【0019】
アノード115は、正孔を有機物層に輸送するのに十分な導電性の、適切な何らかのアノードであることが可能である。アノード115の材料は、望ましくは、約4eVよりも高い仕事関数を持っている(「高仕事関数材料」)。好適なアノード材料は、インジウムすず酸化物(ITO)およびインジウム亜鉛酸化物(IZO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AlZnO)、および金属などのような導電性金属酸化物を含む。アノード115(および基板110)は下部発光型デバイスを作製できるほどに十分に透明であることが可能である。好適な透明基板とアノードの組み合わせは、ガラスまたはプラスチック(基板)上に蒸着した市販のITO(アノード)である。フレキシブルで透明の基板アノードの組み合わせは、参考としてその全体が組み込まれている特許文献1に開示される。アノード115は不透明、および/または、反射性であることが可能である。反射性のアノード115は、デバイスの上部から放出された光量を増加させるための、何らかの上部発光型デバイスにとって好ましい。アノード115の材料と厚さは、必要な導電性の、および光学的特性を得るために選ぶことができる。アノード115が透明である状況では、必要な導電性を提供できる程度に十分に厚いが、なおも必要な程度の透明性を提供する程度に薄いような、特定の材料のための厚さの範囲が存在しうる。他のアノード材料および構造も使用できる。
【0020】
正孔輸送層125は正孔を輸送できる材料を含むことができる。正孔輸送層130は、それ自体(非ドーピング)で用いるか、またはドーピングできる。ドーピングは導電性を高めるのに使用できる。α−NPDおよびTPDはそれ自体(本来)の正孔輸送層の例である。pドーピングされた正孔輸送層の例は、参考としてその全体が組み込まれているForrestらの米国特許出願公開第10/173,682号明細書に開示されているような、50:1のモル比でF−TCNQによりドーピングされたm−MTDATAである。他の正孔輸送層も使用できる。
【0021】
発光層135は、電流がアノード115とカソード160の間を流れるときに発光できる、少なくとも1つの発光材料を有することになる。望ましくは、発光層135としては燐光性の発光材料を含むが、蛍光発光材料を使用できる。燐光性の材料は、そのような材料に関連したより高い発光効率のために好ましい。電子および/または正孔を輸送でき、電子、正孔、および/または励起子を捕獲することができる発光材料でドーピングしたホスト材料を、発光層135は有することもでき、それにより励起子が発光材料から光電子放出機構によって緩和することができる。発光層135は輸送特性と発光特性とを結合する一つの材料を有することができる。発光材料がドーパントであるか主要成分であるかにかかわらず、発光層135は、発光材料の発光を調整するドーパントなどのような他の材料を有することができる。発光層135は、必要な光のスペクトルを組み合わせで放出することができる複数の発光材料を有することができる。したがって、本発明の1つの実施形態では、発光層は二核発光材料および第2の発光材料を有し、それにより結合した発光が可視スペクトルに白色発光を与えることができるのに十分な範囲となる。蛍光発光材料の例はDCMとDMQAを含む。ホスト材料の例はAlq、CBP、およびmCPを含む。発光とホストの材料の例は、参考としてその全体が組み込まれているThompsonらの特許文献2で開示されている。発光材料は多くの方法で発光層135に含めることができる。例えば、発光小分子を高分子に組み込むことができる。他の発光層材料と構造も使用できる。
【0022】
電子輸送層140は電子を輸送できる材料を含むことができる。電子輸送層140は、それ自体(非ドーピング)で用いるか、またはドーピングできる。ドーピングは導電性を高めるのに使用できる。Alqはそれ自体が電子輸送層の例である。nドーピングされた電子輸送層の例は、参考としてその全体が組み込まれているForrestらの米国特許出願公開第10/173,682号明細書に開示されているような、1:1のモル比でLiによりドーピングされたBPhenである。他の電子輸送層も使用できる。
【0023】
電子輸送層の電荷輸送成分は、カソードから電子輸送層のLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital;最低非占有分子軌道)レベルに電子を効率的に注入できるように選択できる。「電荷輸送成分」は実際に電子を輸送するLUMOに関与する材料である。この成分はベース材料、またはドーパントであることが可能である。有機材料のLUMOレベルは、一般に、その材料の電子親和力によって特徴付けることができ、関連する電子のカソードの効率的な注入は、一般に、カソード材料の仕事関数の観点から特徴付けることができる。これは、電子輸送層および隣接するカソードの好適な特性が、ETLの電荷輸送成分の電子親和力およびカソード材料の仕事関数の観点から特徴付けることができる、ということを意味する。特に、高い電子注入率を達成するために、カソード材料の仕事関数は、望ましくは、電子輸送層の電荷輸送成分の電子親和力より約0.75eVほども大きくなく、さらに望ましくは大きくとも約0.5eVほど大きいくらいである。最も望ましくは、電子輸送層の電荷輸送成分の電子親和力はカソード材料の仕事関数より大きい。同様の問題が電子が注入されているいかなる層にも適用される。
【0024】
カソード160は、当技術分野で知られているどんな適切な材料またはどんな材料の組み合わせとすることもでき、それによりカソード160は電子を伝えることができ、デバイス100の有機物層にそれらを注入することができる。カソード160は、透明または不透明とすることができ、反射性とすることができる。金属と金属酸化物は適切なカソード材料との例である。カソード160は単一層であることが可能であり、または複合構造を有することができる。図1は、薄い金属層162と、より厚い導電性金属酸化物層164を有する複合カソード160を示す。複合カソードでは、より厚い層164のための好適な材料は、ITO、IZO、および当技術分野で知られている他の材料を含む。参考としてその全体が組み込まれている特許文献4および特許文献3は、Mg:Agなどの金属薄膜層を有し、透明で、電気伝導性で、スパッタリング蒸着されたITO層を上部に積層した複合カソードを含むカソードの例を開示している。カソード160の下部に積層した有機物層に接触する部分は、それが単一層カソード160であるか、複合カソードの金属薄膜層162であるか、その他の部分であるかに関わりなく、約4eVよりも低い仕事関数を有する材料(「低仕事関数材料」)で作られていることが望ましい。他のカソード材料および構造も使用できる。
【0025】
障壁層は、電荷キャリア(電子または正孔)の数、および/または、発光層から離れる励起子の数、を減少させるのに使用できる。電子障壁層130は、電子が発光層135から正孔輸送層125の向きに離れるのを妨げるために、発光層135と正孔輸送層125との間に配置できる。同様に、正孔障壁層140は、正孔が発光層135から電子輸送層140の向きに離れるのを妨げるために、発光層135と電子輸送層145との間に配置できる。障壁層は、励起子が発光層から拡散するのを妨げるのにも使用できる。障壁層の理論および使用については、参考としてその全体が組み込まれているForrestらの米国特許第6,097,147号明細書、および米国特許出願公開第10/173,682号明細書においてさらに詳細に説明されている。
【0026】
一般に、注入層は、電極や有機物層のような1つの層から隣接する有機物層中への電荷キャリアの注入を向上できる材料よりなる。注入層は電荷輸送機能をも実行できる。デバイス100では、正孔注入層120は、アノード115から正孔輸送層125への正孔の注入を向上する何らかの層であることが可能である。CuPcは、ITOアノード115および他のアノードからの正孔注入層として使用できる材料の例である。デバイス100では、電子注入層150は、電子輸送層145への電子の注入を向上させる何らかの層であることが可能である。LiF/Alは、隣接する層から電子輸送層への電子注入層として使用できる材料の例である。他の材料または材料の組み合わせが注入層に使用できる。特定のデバイスの構成に応じて、注入層がデバイス100に示されたのとは異なった位置に配置できる。参考としてその全体が組み込まれているLuらの特許出願公開第09/931,948号明細書に、注入層のより多くの例が提供されている。正孔注入層は、例えばPEDOT:PSSなどの、スピンコーティングされた高分子のような蒸着材料の溶液を有することができ、あるいはそれは、例えばCuPcまたはMTDATAなどの蒸気で蒸着された小分子材料であることが可能である。
【0027】
正孔注入層(HIL)は、アノード表面を平坦化したり濡らしたりするだけでなく、アノードから正孔注入材料への効率的な正孔注入を提供するのに使用できる。正孔注入層は、ここで説明されたそれらの相対的なイオン化ポテンシャル(ionization potential;IP)エネルギーによって定義されるように、HILの1つの側に隣接するアノード層およびHILの反対側上の正孔輸送層に都合よく調和するHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital;最高占有分子起動)エネルギー準位を持つ電荷輸送成分を有することもできる。「電荷輸送成分」は、実際に正孔を輸送するHOMOに関与する材料である。この成分は、HILのベース材料であることが可能であり、またはそれはドーパントであることが可能である。ドーピングされたHILを使用することにより、電気的性質のためにドーパントを選択することが可能となり、また濡れ性、柔軟性、靭性などのような形態学(morphological)的特性のためにホスト選択することが可能となる。HIL材料に対する好適な特性は、正孔がアノードからHIL材料に効率的に注入できることである。特に、HILの電荷輸送成分は、望ましくは、大きくてもアノード材料のIPよりも約0.7eVほど大きなIPを有する。より望ましくは、電荷輸送成分は、アノード材料より大きくても約0.5eVほど大きなIPを有する。同様の考え方が、正孔が注入されているいかなる層にも適用される。HIL材料は、そのようなHIL材料が従来の正孔輸送材料の正孔伝導性より実質的に小さな正孔伝導性を持ちうるという点で、OLEDの正孔輸送層において通常使用される材料を輸送する従来の正孔とは、さらに区別される。本発明のHILの厚さは、アノード層の表面を平坦化したり濡らしたりするのに十分な厚さであることが可能である。例えば、10nm程度のHILの厚さは、非常に滑らかなアノード表面に対して許容されうる。しかしながら、アノード表面は非常に粗い傾向があるので、最大50nmのHILのための厚さが、場合によっては必要となりうる。
【0028】
保護層は、その後の作製工程の間、下部の層を保護するのに使用できる。例えば、金属または金属酸化物の上部電極を作製するための過程は有機物層を損傷する可能性があり、保護層はそのような損傷を減少するか、または排除するのに使用できる。デバイス100においては、保護層155はカソード160の作製の間、下部の有機物層に対する損傷を減らすことができる。望ましくは、保護層は、それが輸送するキャリアのタイプ(デバイス100内の電子)に対して、高いキャリア移動性を有し、それにより、デバイス100の動作電圧を大きく増加させない。CuPc、BCP、および様々な金属フタロシアニン(phthalocyanine)は保護層で使用できる材料の例である。他の材料および構造も使用できる。保護層155の厚さは、有機保護層160が蒸着された後に行われる作製工程に起因した下部の層に対する損傷がわずかであるか、全くない程度に厚いことが望ましいが、デバイス100の動作電圧を大きく増加させるほどには厚くない。保護層155はその導電性を増加させるためにドーピングできる。例えば、CuPcまたはBCP保護層160はLiでドーピングできる。さらなる詳細な保護層の説明は、参考としてその全体が組み込まれているLuらの米国特許出願公開第09/931,948号明細書に見いだされる。
【0029】
図2は反転したOLED200を示す。このデバイスは基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、およびアノード230を含む。デバイス200は、説明された層を順次蒸着することによって作製することができる。最も一般的なOLED構成がアノードの上に配置されたカソードを有し、またデバイス200がアノード230の下に配置されたカソード215を有するので、デバイス200は「反転した」OLEDと呼ぶことができる。デバイス100について説明されたものと同様の材料が、デバイス200の対応する層に使用できる。図2は、デバイス100の構造からいくつかの層をどのように省略できるか、に関する1つの例を提供する。
【0030】
非限定的な方法の例によって、図1および図2に示された簡単な積層構造が提供され、そして、本発明の実施形態が広く様々な他の構成に関連して使用できることがを理解される。説明された特定の材料と構成は実際には典型的なものであり、また他の材料および構造も使用できる。異なった方法で説明された様々な層を組み合わせることによって、機能的なOLEDが実現され、あるいは、設計、性能およびコスト要因に基づいて層は全く除外される。明確に説明されなかった他の層も含むことができる。明確に説明されたもの以外の材料も使用できる。ここに提供された多くの例は、単一の材料を有する様々な層を説明しているが、ホストとドーパントの混合物などの材料の組み合わせ、またはより一般的に混合物が使用できる、ということが理解される。また、層が様々なサブ層(下位の層)を有することもできる。ここで様々な層に与えられた名称は、厳密に限定することを意図してない。例えば、デバイス200では、正孔輸送層225は正孔を輸送し、発光層220に正孔を注入するもので、正孔輸送層または正孔注入層として記述できる。1つの実施形態では、OLEDは、カソードとアノードの間に配置された「有機物層」を有するものとして記述できる。この有機物層は、単一層を含むことができ、または、例えば図1および図2に関して説明されたように、異なった有機材料の複数の層をさらに含むことができる。
【0031】
参考としてその全体が組み込まれているForrestらの米国特許第5,247,190号明細書で開示されているような高分子材料料(PLED)からなるOLEDなどの、明確に説明されなかった構造と材料も使用できる。さらなる例として、単一の有機物層を有するOLEDが使用できる。OLEDは、例えば、参考としてその全体が組み込まれているForrestらの特許文献3で説明されたようにして積層できる。OLEDの構成は、図1および図2に示された簡単な層構造から逸脱することができる。例えば、基板は、いずれも参考としてその全体が組み込まれているForrestらの米国特許第6,091,195号明細書で開示されているメサ構造、および/または、Bulovicらの米国特許第5,834,893号明細書で開示されているピット(pit)構造のような、結合光取り出し効率(out-coupling)を向上するための傾斜した反射面を含むことができる。
【0032】
特別の定めのない限り、様々な例によるいかなる層も何らかの適切な方法よって蒸着できる。有機物層に関する好ましい方法は、参考としていずれもその全体が組み込まれている米国特許第6,013,982号明細書および米国特許第6,087,196号明細書で説明されているような熱蒸散(thermal evaporation)やインクジェット、参考としてその全体が組み込まれているForrestらの米国特許第6,337,102号明細書で説明されているような有機物気相蒸着(OVPD)、参考としてその全体が組み込まれている米国特許出願公開第10/233,470号明細書で説明されているような有機物蒸気ジェット印刷(OVJP)による堆積(蒸着)、を含む。他の適切な堆積法は、スピンコーティングおよび溶液に基づく他の処理を含む。溶液に基づく処理は、望ましくは、窒素雰囲気または不活性ガス雰囲気で行われる。他の層に対して、望ましい方法は熱蒸散を含む。好適なパターン付与方法はマスクを通した堆積、いずれも参考としてその全体が組み込まれている米国特許第6,294,398号明細書および米国特許第6,468,819号明細書で説明されているような冷間圧接、およびインクジェットおよびOVJDなどのいくつかの堆積方法に関連するパターンニングを含む。他の方法も利用できる。堆積されるべき材料は特定の堆積法と矛盾しないようにするために変更されうる。例えば、分岐しているかまたは分岐していない、そして望ましくは少なくとも3個の炭素を含むアルキル基やアリル基などの置換基が、溶液処理に耐えるその能力を高めるために小分子状態で使用できる。20個またはそれより多い炭素を有する置換基が使用でき、3〜20個の炭素が好適な範囲である。非対称の材料は再結晶する傾向が低いので、非対称構造の材料は対称構造を持つものよりも良好な溶液処理能力を持つことができる。デンドリマー置換基は、小分子が溶液処理に耐える能力を高めるのに使用できる。
【0033】
本発明の実施形態によって作製されたデバイスは、フラットパネルディスプレイ、コンピュータモニタ、テレビ、掲示板、屋内や屋外照明および/または信号伝達のための光、ヘッドアップ表示装置(heads up display)、完全透明ディスプレイ(fully transparent display)、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンタ、電話、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダ(camcorder)、ファインダ、超小型ディスプレイ、車両、大画面または劇場またはスタジアムのスクリーン、または標識を含む広く様々な消費者製品に組み込むことができる。パッシブマトリクスおよびアクティブマトリクスを含む様々な制御機構が、本発明に従って作製されたデバイスを制御するのに使用できる。多くのデバイスは、18℃から30℃、またより望ましくは室温(20〜25℃)のような人間にとって快適な温度範囲における使用を対象としている。
【0034】
ここで説明された材料と構成は、OLED以外のデバイスにおける用途を有することができる。例えば、有機太陽電池および有機光検出器などの他のオプトエレクトロニクス装置にその材料と構成を使うことができる。より一般的には、有機トランジスタなどの有機デバイスにその材料と構成を使うことができる。
【0035】
ここで使用されるように、「溶液処理可能」は、溶液か懸濁液のいずれかにおいて溶媒に溶解され、分散され、またはそこで移送され、および/または、そこで堆積されることが可能なことを意味する。
【0036】
ここで使用される「二核」という用語は、まさに2つの中心金属を持つ錯体のことを言う。本発明の二核化合物は2つの中心金属を含み、その状況で、各中心金属が両方の中心金属に結合する少なくとも1つの架橋配位子に結合する。1つの実施形態では、各中心金属は,少なくとも1つの架橋配位子に付加した少なくとも1つの「光活性な」配位子にも結合している。各中心金属に結合した配位子は、その中心金属に概ね正方形の平面構造を提供できる。本発明のいくつかの実施形態では、2つを超える中心金属が存在できるが、そのような実施形態は「二核」として記述されないであろう。
【0037】
本発明の実施形態による発光材料は少なくとも1つの「架橋配位子」を有することができる。この配位子は、2つの異種の金属中心に結合するので、架橋と呼ばれる。架橋配位子は、2つの中心金属が極めて接近した状態、通常4Å以下に接近した状態となるよう、2つの中心金属に結合できる。中心金属の間が4Å以下の距離であることにより、個々の金属原子のd軌道がかなりオーバラップすることが可能になる。望ましくは、二核錯体の2つの中心金属が約2.5から約2.8Å離れている。架橋配位子を選択することにより、2つの中心金属間の距離の調整が可能になる。架橋配位子を変えることによって、二核錯体からの発光エネルギーを調整できる。
【0038】
いくつかの実施形態では、2つの中心金属は1つ以上の架橋配位子によってコフェイシャル形態に結合される。中心金属間の距離、したがって分子の発光スペクトルが、コフェイシャル形態において一層容易に調整できるので、コフェイシャル形態は好ましい。例えば、架橋配位子の選択に応じて、コフェイシャル形態は2Å以下の金属−金属距離もたらしうる。これほどわずかな距離は、コフェイシャルでない形態によって実現することは難しい可能性がある。「コフェイシャル」とは、2つの中心金属間の軸に垂直な平面を規定する少なくとも3つの結合が各中心金属から存在することを意味する。好適なコフェイシャル形態は正方平面状コフェイシャル形態であって、それは、例えばd金属で実現できる。正方平面状形態において、各中心金属は、すべてがほぼ同一の平面にあり、かつお互いに約90度だけ離れている4つの結合手を持つ。図10および図11に示される(Fppy)Pt(SPy)が正方平面状コフェイシャルの二核金属化合物の例である。
【0039】
望ましくは、中心金属は、第一遷移金属でなく、むしろ、第二周期金属、および元素周期表上のそれより大きい金属、すなわち40に等しいかまたはそれ以上の原子番号を持つ金属、から選択される。第二周期およびそれより大きい金属は、より高い燐光の収率を持つ発光材料につながる、より高いスピン軌道結合を有する。
【0040】
いくつかの実施形態は、両方の中心金属と配位する光活性な配位子有する。そのような実施形態の発光は、異なる中心金属に配位された2つの光活性な配位子のπ軌道間の相互作用を調整および制御するために、架橋配位子を使用することによって調整できる。大きなπ−π相互作用は、3.5Å以下の距離で共に保持されると、2つの光活性な配位子の間に起こると信じられている。
【0041】
架橋配位子が二座配位子として機能できないことも望ましい。したがって、架橋配位子が、同一の中心金属ではなくむしろ2つの異なる中心金属に優先的に結合されるように選択されることが望ましい。
【0042】
架橋配位子は、光活性な特性に直接寄与することとは対照的に、分子の光活性な特性を変更できると信じられているので、架橋配位子は「付属」と呼ぶことができる、しかしながら、架橋配位子が発光システムの部分であることは可能である。光活性および付属の定義は非限定的な理論を意味する。
【0043】
架橋配位子は、二核の発光化合物の2つの中心金属間の安定した連携を提供する。架橋配位子は、対称(すなわち中心金属への結合位置が同一)、または非対称(すなわち中心金属への結合位置が非同一)であることが可能である。したがって、架橋配位子は配位のための少なくとも2つのサイトがある分子である。適切な架橋配位子は、安定した二核種を提供できるような当技術分野で知られたものから選ぶことができる。このような状況において、安定という用語は、発光デバイスに組み込まれる時の、また特にそのようなデバイスの動作の際の、二核錯体の安定性のことを言う。いくつかの適切な配位子は、それぞれが参考として組み込まれている:Matsumotoら著,「Organometallic chemistry of platinum-blue derived platinum III dinuclear complexes,Coordination Chemistry Reviews 231 (2002年) p229-238;およびTejelら著,「From Platinum Blues to Rhodium and Iridium Blues」 Chem. Eur. J. (1999年) 5,第4号,p1131-1135;Belittoら著,「Metal-Metal Interactions in One Dimension. 3. Segregated Canted Stacks of Tetrakis (dithioacetato) diplatinum (11)」,Inorg. Chem. (1980) 19, p3632-3636;さらにOskuiら著,「Di-and Tripalladium (II) and-platinum (II) Complexes Containing 7-Amino-l,8-naphthyridin-2-one as a Bridging Ligand-Oxidation of a [Pt3]6+ Core to [Pt3]8+」,Eur. J. Inorg. Chem. (1999年)135-1333;Navarroら著,「Binuclar Platinum (II) triazolopyrimidine Bridged Complexes. Preparation, Crystal Sturcture, NMR Spectroscopy, and ab Initio MO Investigation on the Bonding Nature of the Pt(II).... Pt (II) Interaction in the Model Compound {Pt2[NHCHN(C(CH2)(CH3))]4}」,Inorg. Chem. (1996年) 35,7829-7835;Lewisら著,「Oligomerization and Two-Center Oxidative Addition Reactions of a Dimeric Rhodium (1) Complex」,J. Am. Chem. Soc. (1976年) 98,7461-7463に開示されている。
【0044】
本発明の好適な実施形態では、架橋配位子は化学式IIIの化合物である。
【0045】
【化1】

【0046】
ここで、XおよびYは中心金属へのドネイティブ結合 (donative bond)を形成できる原子あるいは部分から選択され、Bは5員環または6員環である。破線は任意の二重結合を表す。好適な架橋配位子は:
【0047】
【化2】

【0048】
および、それらの派生物を含む。他の好適な架橋配位子は、カルボキシル基(carboxylates;RCOO)、チオカルボキシル基(thiocarboxyloic acid;RCSS)、ピロリン酸基(pyrophosphate;P−O−PO)、または化学式
【0049】
【化3】

【0050】
からなる化合物、およびそれらの派生物である。
【0051】
しかし、他の好適な架橋配位子は以下を含む:
【0052】
【化4】

【0053】
ここで、XおよびZは、C、CR、O、N、NR、S、およびPからなるグループから選択され;
Yは、C、N、S、およびPからなるグループから選択され;
Rは、Hまたは何らかの有機物置換基であり;そして、
NおよびN’は、4〜8の員環数(member)を持つ炭化水素鎖であって、望ましくは、ヘテロ原子を含む。
【0054】
架橋配位子は、二核発光材料の2つの中心金属が互いに近接して保持されることを保証する。これにより、二核発光材料が、単一金属(モノマー)種からでなく、むしろ集団的な励起状態から発光することが可能となる。2つの中心金属は、基底状態で強くも弱くも結合できる。この状況は非常に異なった光物理的過程をもたらすことができる。
【0055】
基底状態で弱く相互作用している二核種(M−M距離:3Å)は、励起状態のようなエキシマを持っていると思われる。一般に、エキシマは、個々のルモフォア(lumophore;またはluminophore;発光源)が励起状態で結合されているが、基底状態では結合されていない時に形成される。エキシマは、2つの分子または構成種に亘って広がる励起状態波動関数を持った二量体である。本発明の目的のために、「構成種」とは、それに付いている中心金属および配位子類個々の金属錯体のことを指す。本発明の二核発光材料に対して、エキシマを有する2つの金属錯体は、架橋配位子によって比較的近接して保持される。この系の励起状態波動関数は両方の金属錯体に亘って広がり、一般的に核間隔の著しい減少に通じる。励起状態が緩和すると、この分子の2つの部分が互いに反発し、そして、この系は基底状態に見られたものよりも大きな核間距離に戻る。2つの構成種が、架橋配位子の制限が原因で完全に解離できるというわけではないので、この弱い相互作用システムは、真のエキシマを表現していない。しかしながら、光物理学的過程はエキシマ的な過程すなわち、1つの金属錯体の励起、両方の金属錯体の励起状態波動関数の拡張、収縮、緩和(発光)、および最終的に膨脹することである。
【0056】
金属錯体に強く相互作用する二核種は異なった光物理学過程を示しうる。この場合、基底状態の形態は、M−M結合軌道の形成に関わることができる。d金属錯体に関しては、この結合軌道が各中心金属からの2つの電子の寄与に係わり、σ結合とσ反結合性(σ)軌道を形成し、この0相互作用に対する正味の結合次数をもたらす。この結合の図式は以前に述べたもので、当業者にはよく知られている。いずれも参考として組み込まれているSiu-Wai Laiら著,「Probing d8-d8 Interactions in Luminescent Mono-and Binuclear Cyclometalated Platinum (II) Complexes of 6-Phenyl-2,2'-bipyridines」,Inorg. Chem. (1999年) 38, 4046-4055;Mannら著,「Characterization of Oligomers of Tetrakis (phenyl isocyanide) rhodium (I) in Acetonitrile Solution」,J. Am. Chem. Soc. (1975年) 97,3553-3555、を参照されたい。
【0057】
基底状態では、最高位の充填された軌道は一般にσ軌道である。この状況に対する光物理学的過程はM−Mσ軌道から配位子のπ軌道への、またはさらに高位のM−M結合軌道への電子の昇格に関わる。
【0058】
受け入れ側軌道がπ軌道である場合、この遷移状態はMMLCT(金属−金属から配位子への電荷移動(metal-metal-to-ligand-charge-transfer))と言われる。π軌道は、二核錯体の単量体バージョンであるMLCT遷移に関わるのと同じ状態であって、一般に、「光活性な配位子」に関連している。M−M距離のいくらかの収縮は、MMLCT励起状態に励起される。というのは、σ軌道が空いても、遷移の特性は、弱い相互作用システムに対して説明したエキシマ的な遷移とは非常に相違するからである。いずれも参考として組み込まれているNovozhilovaら著,「Theoretical Analysis of the Triplet Excited State of the [Pt2(H2P2O5)4]4-Ion and Comparison with Time-Resolved X-ray and Spectroscopic Results」,J. Am. Chem. Soc. (2003年) 125, 1079-1087;Riceら著,「Electronic Absorption and Emission Spectra of Binuclear Platinum (I1) Complexes. Characterization of the Lowest Singlet and Triplet Excited States of [Pt2(H2P205)4]4-」,J. Am. Chem. Soc. (1983年) 105, 4571-4575、を参照されたい。
【0059】
弱い相互作用システムの励起が単量体バージョンと同じである一方で、MMLCTはσからπへの遷移のための新しい吸収を起こすが、その吸収は単量体錯体の吸収スペクトルに存在しない。例えば、この新しいバンドは、二核白金錯体(Fppy)Pt(SPy)の励起スペクトル中、500nmに見られる(図4参照)。
【0060】
二核材料は基底状態で起こるいくらかの金属−金属結合を持つことができる。OLEDの作成のために使用されるタイプの分子複合薄膜中にドーピングされる場合に、二核放出源を有する構成種が基底状態で直接結合されるか否かを決定することは、実際には困難な可能性がある。いくつかの放出源にとって、真実は両極端の間のどこかにあるかも知れない。例えば、二核放出源を有する構成種は基底状態における弱い金属−金属結合を持つことができるが、励起状態では結合は短縮し、種は強く結合するようになる。この場合、構成種が基底状態で結合されるので、放出源は「真の」エキシマでない。構成種は、たぶん、ドーピングされた薄膜におけるπ−π積層および金属−金属相互作用に関与して、エキシマまたはMMLCT励起状態のいずれかに通じるだろう。このように、いくつかの場合、ここで使用される「エキシマ」という用語は強く結合した励起状態と弱く結合した基底状態を持つ構成種のことを言うことができる。
【0061】
エキシマ・エネルギーはそれを作る2つの構成種のどちらかに局在化した励起子のエネルギーよりも低く、通常、その発光は比較的広い。エキシマは結合した基底状態を欠いているので、それらは、電荷を運ぶホストマトリックスから光放出核までの効率的なエネルギー伝達を実現するための唯一の解決法を提供する。確かに、2つの発光材料の場合に対し、エキシマの利用は2つの放出源間のエネルギー伝達を禁止し、複数のドーパントを使用した色の均衡化を問題の多いものにするような、そのような複雑な分子間相互作用を排除する。エキシマと励起子の特性の概説に関しては、Andrew GilbertおよびJim Baggott著,「Essentials of Molecular Photochemistry」,1991年,CRC Press, Boston, p145-167を参照されたい。
【0062】
光活性な配位子は、それが電子にπ軌道を提供することによって発光材料の光活性な特性に寄与すると信じられているので、光活性であると言われる。電子が、配位子ベースの軌道に、配位子ベースのπ軌道からイオン化されようと、金属ベースの軌道から移動しようと、配位子は光活性であると考えられる。光活性な配位子は、二座または三座であることが可能であり、その状況で、二座および三座という用語は、単一中心金属に対する配位子の結合の数のことを言う。光活性な配位子に関しては、望ましくは中心金属への結合の少なくとも1つが、炭素−金属結合になる。本発明の好適な実施形態では、光活性な配位子は1つ以上の芳香環を有する。本発明のいくつかの実施形態では、第1の中心金属に配位された第1の光活性な配位子と第2の中心金属に配位された第2の光活性な配位子は、架橋配位子によって近接して保持され、第1および第2の中心金属は第1および第2の光活性な配位子間のπ−π相互作用を可能にする。適切ないかなる光活性な配位子でも使用できる。いくつかの実施形態では、第1および第2の光活性な配位子は同じ構造を持つことができる。
【0063】
本発明の一実施形態において、二核の発光化合物は2つの中心金属を有し、その状況で、各中心金属は三座の光活性な配位子と架橋配位子の結合位置の1つに結合され、化学式Iの化合物を生じる。
【0064】
【化5】

【0065】
ここで、Aは三座の光活性な配位子、Lは架橋配位子、各々のMは中心金属である。この実施形態では、中心金属はそれぞれ正方平面状形態を持つ。光活性な三座配位子Aは、3つの結合を介して中心金属に結合され、その結合の少なくとも1つは炭素−金属結合、残りの金属への結合はドネイティブ(ヘテロ原子金属)結合である。好適な三座配位子は三環式芳香族化合物である。本発明の一実施形態では、Aは化学式IIaの三座の光活性な配位子である。
【0066】
【化6】

【0067】
ここで、Arは5員環数または6員環のアザ環(azacyclic ring)であり、その状況で、その環は中心金属にドネイティブ結合を形成できる2-位置に窒素原子を有する。ここでは、2-位置は、環において中央のピリジン環への結合に隣接する位置と定義される。好適な実施形態では、Arはピリジンか置換ピリジンであり、Arはフェニルか置換フェニルである。
【0068】
本発明の他の実施形態では、Aは化学式IIbの三座の光活性な配位子である。
【0069】
【化7】

【0070】
ここで、ArおよびArは独立に選択された5員環数または6員環のアザ環であり、その状況で、各環は中心金属にドネイティブ結合を形成できる2-位置に窒素原子を有する。好適な実施形態では、環ArとArの一方はピリジンか置換ピリジンの1つである。特に好適な実施形態では、ArとArの両方がピリジンか置換型ピリジンである。
【0071】
本発明の1つの実施形態では、二核の発光化合物は2つの中心金属を含み、その状況で、各中心金属は二座の光活性な配位子および2つの架橋配位子に結合され、化学式IIIの化合物を生じる。
【0072】
【化8】

【0073】
ここで、A’は二座の光活性な配位子、Lは架橋配位子、またMは中心金属である。二座の光活性な配位子A’は、1つの金属−炭素結合と1つのドネイティブ(ヘテロ原子金属)結合を含み、そして当技術分野でよく知られている広範囲のものから選択できる。特に好適な実施形態では、A’は2フェニルピリジンおよびその派生物から選択される。多くの好適な二座の光活性な配位子は、参考としてその全体が組み込まれている米国特許第2003−0017361号明細書に開示されたようなシクロメタレート(cyclometallate)された有機金属化合物を形成するために、金属によって配位された以下に示される部分構造を含む。
【0074】
【化9】

【0075】
Mは何らかの適切な金属、例えばd7、d8またはd9金属であることが可能で、点線は残りの光活性な配位子への結合を表す。
【0076】
本発明の1つの実施形態では、二核の発光化合物は架橋配位子によって結合した2つの中心金属を含む。この実施形態はいかなる光活性な配位子も持つことができない。例えば、2つの中心金属が4つの架橋配位子に結合できて、化学式IVの化合物を生じる。
【0077】
【化10】

【0078】
ここで、Mは中心金属であり、Lは架橋配位子である。
【0079】
二核化合物を含んだ2つの中心金属を持つ化合物が、光活性な配位子を全く持っていない状況では、光放出は、光活性な配位子に関連したπ軌道に関与しない機構で起こることが可能である。明らかに、光活性な配位子を全く持っていない二核化合物のHOMOは、支配的に金属dz軌道からなるσ軌道でもありうる。非励起状態のLUMOは、σ軌道(高位の金属P軌道のオーバラップによって形成されたσ結合軌道)であることができ、よって、電子がσ軌道からσ軌道へ移動すると励起状態が起こる。このような遷移は、2つの理由によって2つの中心金属間距離を縮小することができる。第1に、反結合σ軌道が空くようになるからで、第2に、結合σ軌道が占められるようになるからである。発光は、σ軌道からσ軌道への電子の緩和によって起こることができる。このタイプの発光は燐光(phosphorescent)であると予想される。
【0080】
一般に、光活性な配位子を持つ分子は、σ軌道ではなくπ軌道に関連したLUMOをもつであろう。燐光性の青い発光材料を得るための過去の多くの努力が、光活性な配位子に関連するπ軌道とσ軌道の間の差を調整するのに関与した。本発明の実施形態では、光活性な配位子なしで二核分子または多核分子を設計することによって青い材料を得ることが可能となり、その結果、LUMOはもはやπ軌道でない。むしろ、LUMOはσ軌道であり、発光スペクトルはσ軌道とσ軌道の間のエネルギー差により決定される。このエネルギー差はいくつかの方法で調整できる。第1に、中心金属間距離が架橋配位子の選定により制御できる。この距離はσ軌道とσ軌道の間のエネルギー差、したがって発光スペクトルに強い効果がある。他のすべてを同一にしたなら、一般に、より短い距離は、より低いエネルギーと赤色にシフトした発光をもたらし、一方で、より長い距離は、より高いエネルギーと青色にシフトした発光をもたらすであろう。第2に、架橋配位子を選択して中心金属の電子的構造を調整できる。例えば、二核分子におけるσ軌道とσ軌道は個々の中心金属のdz軌道の間の相互作用の結果である。いくつかの架橋配位子は、配位子場の相互作用にもかかわらず、金属dおよびp軌道のエネルギーにかなり影響を及ぼすことが可能である。軌道エネルギーのこのような配位子場「調整」は、架橋配位子と結合配置の性質に応じて、個々の金属dおよびp軌道のエネルギーを下げるか、または上げることができる。したがって、このような配位子場の効果は2つの中心金属の原子軌道間のエネルギー差を増加させ、そしてσ軌道とσ軌道の間のエネルギー差を増加させることが可能で、その結果、分子の発光スペクトルが青色にシフトする。
【0081】
好適な実施形態では、二核発光材料は、光活性な配位子を持たず、4つの架橋配位子によってお互いに結合された2つの中心金属を持つ。Ptは、同一平面上(coplanar)に4つの配位サイトがあるので、中心金属のための好適な金属である。
【0082】
望ましくは、二核発光材料の中心金属は、少なくとも3つの配位サイト、より望ましくは少なくとも4つの配位サイトを有する。3つまたは4つの配位サイトを持った中心金属を有する材料は、それより少ない配位サイトを持った材料よりも安定している傾向がある、と信じられている。少なくとも4つの配位サイトを持った中心金属は、特に安定している傾向がある、と信じられている。白金などの、同一平面上の位置にまさに4つの配位サイトを持った金属は、特に安定した二核分子をもたらすことができる。
【0083】
本発明の実施形態による化合物は2つの中心金属を含む。その金属は、40以上の原子量をもった重金属から選択できる。中心金属の好適な電子配置には8つのd電子(例えばPt(II)、Pd(II)、Ni(II)、Ir(I)、Rh(I)、Ag(III)、Au(III)など)があるが、本発明はこれらの金属または酸化状態に限定しない。これらの中心金属は「d8」中心金属と呼ばれる。d8中心金属は、基底状態では全く結合がないが、d8中心金属の間には一般に強い相互作用があるので好ましい。白金は特に好ましいd8中心金属である。使用しうる他の電子配置は、7d電子を持った中心金属(「d7」中心金属)、および9d電子を持った中心金属(「d9」中心金属)を含む。d10中心金属は好ましくない。というのは、一般に、基底状態では長距離の相互作用を持ち、結合は全くがないからである。いくつかの実施形態では、二核錯体は、異なった数のd電子を持つ2つの金属から形成できる。すなわち、d7金属をd8金属と対にすることができる。望ましくは、2つの金属は同一のd電子を持つ。最も望ましいのは、作製を容易にするために、二核錯体の2つの中心金属は同一金属とする。
【0084】
いくつかの実施形態では、発光材料は二核の電気的に中性な化合物である。電気的に中性な化合物は、いくつかの用途のために好ましい。というのは、それらが昇華(sublime)および真空蒸着しやすいからである。それにより、一定の方法による素子作製が容易になる。他の実施形態において電気的に中性でない化合物が使用できるが、そのような化合物の昇華は難しい可能性があるので、そのような化合物としては溶液処理が好まれる。
【0085】
ここで説明された様々な実施形態は例としてのみ示すものであり、本発明の範囲を制限することを意図していない、ということが理解される。例えば、ここで説明された材料および構造の多くが、本発明の精神から逸脱することなく、他の材料と構造で代用できる。本発明が機能する理由に関する様々な理論は、制限されることを意図していない、ということが理解される。例えば、電荷移動に関連する理論は、制限されることを意図していない。
【0086】
材料の定義:
ここで使用されるように、材料に対する略称は以下の通りである:
CBP: 4,4’−N,N−ジカルバゾール−ビフェニル
m−MTDATA:4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェンリアミノ)トリ
フェニルアミン
Alq3: 8−トリス−ヒドロキシキノリン・アルミニウム
Bphen: 4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン
n−BPhen: nドーピングしたBPhen(リチウムでドーピング)
−TCNQ: テトラフルオロ−テトラシアノ−キノジメタン
p−MTDATA:pドーピングしたm−MTDATA(F−TCNQでドーピング)
Ir(ppy) :トリス(2−フェニルピリジン)−イリジウム
Ir(ppz) :トリス(1−フェニルピラゾラト,N,C(2’)イリジウム(III

BCP: 2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリ

TAZ: 3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4
−トリアゾール
CuPc: 銅フタロシアニン
ITO: インジウムすず酸化物
NPD: ナフチル−フェニル−ジアミン
TPD: N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス−(フェニ
ル)ベンジジン
BAlg: アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フ
ェニルフェノレート
mCP: 1,3−N,N−ジカルバゾール−ベンゼン
DCM: 4−(ジシアノエチレン)−6−(4−ジメチルアミノスチリル−2
−メチル)−4H−ピラン
DMQA: N,N’−ジメチルキナクリドン
PEDOT:PSS:ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスル
ホン酸(PSS)の水分散液
FPt: 白金(II)(2−(4−,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−
N,C)(2,4−ペンタンジオナト−O,O)
FPtdpm: 白金(II)(2−(4−,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−
N,C)(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナ
ト−O,O)
(Fppy)Pt(SPy):ジ−白金(II),ビス(2−(4−,6−ジフルオ
ロフェニル)ピリジナト−N,C)ビス[μ−(2−ピリジンチオナ
ト−N1:S2)]
PtSpy: ジ−白金(II),テトラキス[μ−(2−ピリジンチオナト−N1
:S2)
Spy: 2−チオピリジン
【0087】
実験:
さて、本発明の特定の代表的な実験例を、そのような実験例をどのように成されるかを含めて説明する。特定の方法、材料、条件、処理パラメータ、デバイスなどは、必ずしも本発明の範囲を制限しない、ということが理解される。
【0088】
実験例1
2メルカプトピリジン(0.53g、4.80mmol)を、参考としてその全体が組み込まれているBrooksら著,「Synthesis and Characterization of Phosphorescent Cyclometalated Platinum Complexes」,Inorganic Chemistry,2002年,41 (12),3055-3066に開示されたような、4,6−dfppy白金ダイマー(dimer)(2.00g、2.38mmol)のメタノール溶液に追加した。炭酸カリウム(0.50g)をその溶液に追加し、18時間の間60℃に加熱した。次に、その溶液を冷却し、減圧下で溶剤を取り除いた。未精製の生成物をアセトンに溶かし、溶離剤としてのアセトンと共にシリカゲル・コラムに通した。溶剤をもう一度減圧下で取り除き、メタノールから生成物を再結晶させ、82%収率で(Fppy)Pt(SPy)を赤い結晶化合物として生じさせた。
【0089】
実験例2
ガラス基板を洗浄剤で洗浄し、脱イオン水で、続いてアセトンですすぐことによって準備した。次に、ガラスを、窒素の流れの下で乾燥し、次に、オゾン・オーブン中に10分間置いた。100ml計量フラスコ中のトルエンに5.00mgの(Fppy)Pt(SPy)と100mgのCBPを溶解して(Fppy)Pt(SPy)/CBPの100mlの溶液を準備した(溶液A)。100ml計量フラスコ中のトルエンに5.00mgのFPtと100mlのCBPを溶解してFPt/CBPの100ml溶液を準備した(溶液B)。2つの薄膜をこれらの溶液から準備した。溶液Aを、40秒間、40000rpmでガラス基板上にスピンコートし、(Fppy)Pt(SPy)薄膜を得た。溶液Bを、40秒間、40000rpmで他のガラス基板上にスピンコートし、FPt薄膜を得た。
【0090】
CBPにドーピングされた(Fppy)Pt(SPy)の薄膜を2つのスペクトルで励起した、一方のピークは370nmで他方のピークは500nmである。これら2つのスペクトルは、CBPと(Fppy)Pt(SPy)のそれぞれの吸収スペクトルにほぼ一致するよう選択された。結果として得られたPLスペクトルが図3に示されている。プロット曲線310は370nmの励起に対するPLスペクトルを示す。プロット曲線320は500nmの励起に対するPLスペクトルを示す。370nmの励起に対するプロット曲線は、CBPによって吸収されたエネルギーが、(Fppy)Pt(SPy)に移動して、光として放たれることを示す。
【0091】
図4は、CBPに5%でドーピングした(Fppy)Pt(SPy)薄膜の、605nmに設定した発光による励起スペクトルを示している。プロット曲線420はプロット曲線410と同じデータに基づいているが、さらに詳細を見ることができるように、その値に20が乗じられた。プロット曲線410で最も明確に認められる350nm付近のピークは、CBPによる吸収のためである。プロット曲線420で最も明確に認められる500nm付近のピークは、(Fppy)Pt(SPy)による吸収のためであって、基底状態における2つのPt中心金属の間の相互作用を示す。
【0092】
図5は、FPt、FPtdpm、および(Fppy)Pt(SPy)の発光スペクトルの比較を示している。CBP中にそれぞれ5%でドーピングされたFPt、FPtdpm、および(Fppy)Pt(SPy)のフォトルミニセント(photoluminescent)薄膜を、上述のようにスピンコーティングにより準備し、370nmで励起した。FPt、FPtdpm、および(Fppy)Pt(SPy)それぞれに対するPLスペクトルがプロット曲線510、520、および530として示されている。
【0093】
実験例3
100nm程度の厚さの20Ω/□のシート抵抗を持ったインジウムすず酸化物(ITO)を用いて、予め被覆したガラス基板上に有機発光デバイスを成長させた。基板を溶剤で脱脂し、次に、UVオゾン環境に10分間さらして清浄化した。清浄化の後、直ちに基板をベース圧力約1x10−6Torrで作動する熱蒸散システムに設置した。いくつかの異なったデバイス構成を図6および図8で示されるように作製した。第1に、400Å厚さの4−4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)正孔輸送層(HTL)を蒸着した。いくつかのデバイスでは、200Å厚さのmCPの層を電子障壁層(EBL)として蒸着した。次に、9%(重量比)の(Fppy)Pt(SPy)をmCPかCBPのどちらかと共に蒸着して、300Å厚さの発光層を形成した。いくつかのデバイスでは、120Å厚さのBCPの層を電子障壁層(EBL)として蒸着した。最終的に、ジルコニウム(IV)テトラ(8−ヒドロキシキノリン)(Zrq)からなる350Å厚さの電子輸送層(ETL)を蒸着した。10Å厚さのLiFの層からなるデバイスカソードに続いて1000Å厚さのアルミニウムの層をシャドウマスクによって蒸着した。デバイス活性面積は2×2mmであった。以下の4つの構成が作製された:
構成1:ITO/NPD/(Fppy)Pt(SPy):CBP/ZrQ/LiF:Al
構成2:ITO/NPD/(Fppy)Pt(SPy):CBP/BCP/ZrQ/
LiF:Al
構成3:ITO/NPD/(Fppy)Pt(SPy):mCP/ZrQ/LiF:Al
構成4:ITO/NPD/mCP/(Fppy)Pt(SPy):mCP/ZrQ/
LiF:Al
【0094】
図6は、構成1と2を持ったデバイスの概略表示を示す。構成1は、アノード615、正孔輸送層625、発光層635、電子輸送層645、およびカソード660を有する。構成2は、構成1と同じであるが、発光層635と電子輸送層645との間に配置された追加の正孔障壁層640を有する。様々な層の材料および厚さは、前出のパラグラフで示されたようであった。
【0095】
図7は、構成1と2を有するデバイスの、電流密度に対する量子効率のプロット曲線を示す。プロット曲線710は、構成1に対するデータを、そしてプロット曲線720は構成2に対するデータを示している。両方のデバイスは最大約6.0%の量子効率を示している。
【0096】
図8は、構成1と2を有するデバイスの、電流密度対電圧のプロット曲線を示す。プロット曲線810は構成1に対するデータを、そしてプロット曲線820は構成2に対するデータを示している。
【0097】
図9は、構成1と2を有するデバイスの、電界発光スペクトルのプロット曲線を示す。プロット曲線910は構成1に対するデータを、そしてプロット曲線920は構成2に対するデータを示している。
【0098】
図10は、構成1と2を有するデバイスの、光度対電圧のプロット曲線を示す。プロット曲線1010は構成1に対するデータを、そしてプロット曲線1020は構成2に対するデータを示している。構成1は、6ボルトで約100のCd/mのより高い明るさを示している。
【0099】
図11は、構成3と4を持ったデバイスの概略表示を示す。構成3は、アノード1115、正孔輸送層1125、発光層1135、電子輸送層1145、およびカソード1160を有する。構成4は、構成3と同じであるが、正孔輸送層1125と発光層1135との間に配置された追加の電子障壁層1130を有する。様々な層の材料および厚さは、前出のパラグラフで示されたようであった。
【0100】
図12は、NPD/mCP/EL/ZrqとNPD/EL/Zrqの構成(構成3と4)を有するデバイスの、電流密度に対する量子効率のプロット曲線を示す。プロット曲線1210は、構成3に対するデータを、そしてプロット曲線1220は構成4に対するデータを示している。両方のデバイスは最大約3.1%の量子効率を示している。
【0101】
図13は、NPD/mCP/EL/ZrqとNPD/EL/Zrqの構成(構成3と4)を有するデバイスの、電流密度対電圧のプロット曲線を示す。プロット曲線1310は構成3に対するデータを、そしてプロット曲線1320は構成4に対するデータを示している。
【0102】
図14は、NPD/mCP/EL/ZrqとNPD/EL/Zrqの構成(構成3と4)を有するデバイスの、電界発光スペクトルのプロット曲線を示す。プロット曲線1410は構成3に対するデータを、そしてプロット曲線1420は構成4に対するデータを示している。
【0103】
図15は、NPD/mCP/EL/ZrqとNPD/EL/Zrqの構成(構成3と4)を有するデバイスの、光度対電圧のプロット曲線を示す。プロット曲線1510は構成3に対するデータを、そしてプロット曲線1520は構成4に対するデータを示している。
【0104】
図16は、FPt、FPtdpm、および(Fppy)Pt(SPy)の化学構成を示す。
【0105】
図17は、X線結晶学法(X-ray crystallography)で決定された(Fppy)Pt(SPy)の構成を示す。
【0106】
PtSpy(n)およびSpy(n)は、参考としてその全体が組み込まれているUmakoshiら著,「Binuclear Platinum (II) and- (III) Complexes of Pyridine-2-thiol and Its 4-Methyl Analogue, Synthesis, Structure, and Electrochemistry」,Inorg. Chem. 1987年,26,3551-3556で説明されたようにして準備された。
【0107】
図18は、2−メチル−テトラ−ヒドロ−フラン(2−メチル−THF)中、1nM未満の濃度のPtSPyのPL(フォトフミニセント)発光スペクトルを示す。プロット曲線1810は2−メチル−THFの発光ピークを示し、そしてプロット曲線1220はPtSPyの発光ピークを示している。プロット曲線1820のピークは400nm付近にあり、そしてその裾(tail;テール)は470nmでかなり減衰しており、光活性な配位子を全く持たない二核材料による深い青色発光を実現することが可能であることを示している。
【0108】
図19は、溶液中のPtSpyとSpyの吸収スペクトルを示す。プロット曲線1910はSpyの吸収スペクトルを示している。プロット曲線1920はPtSpyの吸収スペクトルを示している。
【0109】
本発明は、特定の実験例と好適な実施形態について説明されたが、本発明がこれらの実験例と実施形態に制限されない、ということが理解される。したがって、請求された本発明は、ここで説明された特定の実験例と好適な実施形態とから、当業者に明らかであるように変化したものを含む。
【符号の説明】
【0110】
100 有機発光デバイス
110 基板
115 アノード
120 正孔注入層
125 正孔輸送層
130 正孔輸送層
130 電子障壁層
135 発光層
140 正孔障壁層
145 電子輸送層
150 電子注入層
155 保護層
160 カソード
162 金属層
164 導電性金属酸化物層
200 デバイス(OLED)
210 基板
215 カソード
220 発光層
225 正孔輸送層
230 アノード
615 アノード
625 正孔輸送層
635 発光層
640 正孔障壁層
645 電子輸送層
660 カソード
1115 アノード
1125 正孔輸送層
1130 電子障壁層
1135 発光層
1145 電子輸送層
1160 カソード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードと、
カソードと、
前記アノードおよび前記カソードの間に配置され、かつ電気的に接続された発光層であって、さらに、
d7、d8、およびd9金属からなるグループから選択された第1の中心金属、
d7、d8、およびd9金属からなるグループから選択された第2の中心金属、および
前記第1の中心金属と前記第2の中心金属に配位された架橋配位子、を含む発光材料を備えた発光層と、
を有することを特徴とする有機発光デバイス。
【請求項2】
前記第1の中心金属および前記第2の中心金属はd8金属からなるグループから共に選択されることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第1の中心金属と前記第2の中心金属の間の距離は、前記第1の中心金属のd8軌道と前記第2の中心金属におけるd8軌道との間に、大きな重なりがあるようなものであることを特徴とする請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第1の中心金属と前記第2の中心金属は共に同一の金属であることを特徴とする請求項2に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第1の中心金属と前記第2の中心金属は共にPtであることを特徴とする請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記発光材料は、
第1の中心金属、
第2の中心金属、および
4つの架橋配位子であって、各架橋配位子が前記第1の中心金属および前記第2の中心金属に配位する架橋配位子、
を含む二核材料であることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記発光材料は、
第1の中心金属、
第2の中心金属、
2つの架橋配位子であって、各架橋配位子が前記第1の中心金属および前記第2の中心金属に配位する架橋配位子、
前記第1の中心金属に結合された第1の二座の光活性な配位子、および
前記第2の中心金属に結合された第2の二座の光活性な配位子、
を含む二核材料であることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1の光活性な配位子および前記第2の光活性な配位子は前記架橋配位子によって近接して保持され、前記第1および第2の中心金属は前記第1および第2の光活性な配位子間の大きなπ−π相互作用を可能にすることを特徴とする請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1および第2の光活性な配位子は同一の構造を持つことを特徴とする請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記発光材料は、
第1の中心金属、
第2の中心金属、
1つの架橋配位子であって、その架橋配位子が前記第1の中心金属および前記第2の中心金属に配位する架橋配位子、
前記第1の中心金属に結合された第1の三座の光活性な配位子、および
前記第2の中心金属に結合された第2の三座の光活性な配位子、
を含む二核材料であることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第1の光活性な配位子および前記第2の光活性な配位子は前記架橋配位子によって近接して保持され、前記第1および第2の中心金属は前記第1および第2の光活性な配位子間の大きなπ−π相互作用を可能にすることを特徴とする請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記第1および第2の光活性な配位子は同一の構造を持つことを特徴とする請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記発光層はさらにホスト材料を有し、前記発光材料がホスト材料内のドーパントとして存在していることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
アノードと、
正孔輸送層と、
電子輸送層と、
カソードと、
発光層であって、前記発光層が前記正孔輸送層と前記電子輸送層との間に配置される発光層と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
デバイスから放たれたほぼ全ての前記デバイスの光がエキシマ発光から生じることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
前記発光分子は燐光性の発光材料であることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
前記第1および第2の光活性な配位子は、以下の部分構造を持つことを特徴とする請求項7に記載のデバイス:
【化1】

ここで、Mは中心金属である。
【請求項18】
各架橋配位子は、カルボキシル基(carboxylates;RCOO)、チオカルボキシル基(thiocarboxyloic acid;RCSS)、ピロリン酸基(pyrophosphate;P−O−PO)、または化学式
【化2】

からなる化合物、およびそれらの派生物からなるグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
前記架橋配位子は、以下の化学式からなるグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載のデバイス:
【化3】

ここで、XおよびZは、C、CR、O、N、NR、S、およびPからなるグループから選択され;
Yは、C、N、S、およびPからなるグループから選択され;
Rは、Hまたは何らかの有機物置換基であり;そして、
NおよびN’は、4〜8の員環数(member)を持つ炭化水素鎖である。
【請求項20】
NおよびN’がヘテロ原子を含むことを特徴とする請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
前記発光分子が以下の構造を持つことを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【化4】

【請求項22】
前記第1の中心金属と第2の中心金属との間の距離は約4オングストローム未満であることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項23】
前記第1の中心金属と第2の中心金属との間の距離は約2.5オングストロームから約2.8オングストロームであることを特徴とする請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
前記発光材料は光活性な配位子を含まないことを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項25】
アノードと、
カソードと、
前記アノードおよび前記カソードの間に配置され、かつ電気的に接続された発光層であって、さらに、
少なくとも3配位数をもつ第1の中心金属、
少なくとも3配位数をもつ第2の中心金属、および
前記第1の中心金属と前記第2の中心金属に配位された架橋配位子、を含む二核発光材料を備えた発光層と、
を有することを特徴とする有機発光デバイス。
【請求項26】
前記第1の中心金属および前記第2の中心金属は共に少なくとも4配位数を持つことを特徴とする請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
前記第1の中心金属および前記第2の中心金属は共に4配位数を持つことを特徴とする請求項26に記載のデバイス。
【請求項28】
前記発光材料は光活性な配位子を含まないことを特徴とする請求項25に記載のデバイス。
【請求項29】
前記第1の中心金属および前記第2の中心金属は同一の配位数を有し、
前記発光材料は、前記第1の中心金属および前記第2の中心金属に配位された複数の架橋配位子をさらに有し、前記架橋配位子の数は前記第1の中心金属の配位数と等しいようなものであることを特徴とする請求項25に記載のデバイス。
【請求項30】
アノードと、
カソードと、
前記アノードおよび前記カソードの間に配置され、かつ電気的に接続された発光層であって、さらに、
第1の中心金属、
第2の中心金属、
前記第1の中心金属および前記第2の中心金属に配位された架橋配位子、
前記第1の中心金属に結合された第1の光活性な配位子、および
前記第2の中心金属に結合された第2の光活性な配位子、を含む二核発光材料を備えた発光層と、
を有することを特徴とする有機発光デバイス。
【請求項31】
前記第1および第2の光活性な配位子は、以下の部分構造を持つことを特徴とする請求項30に記載のデバイス:
【化5】

ここで、Mはd7、d8またはd9金属である。
【請求項32】
各架橋配位子は、カルボキシル基(carboxylates;RCOO)、チオカルボキシル基(thiocarboxyloic acid;RCSS)、ピロリン酸基(pyrophosphate;P−O−PO)、または化学式
【化6】

からなる化合物、およびそれらの派生物からなるグループから選択されることを特徴とする請求項30に記載のデバイス。
【請求項33】
前記架橋配位子は、以下の化学式からなるグループから選択されることを特徴とする請求項30に記載のデバイス:
【化7】

ここで、XおよびZは、C、CR、O、N、NR、S、およびPからなるグループから選択され;
Yは、C、N、S、およびPからなるグループから選択され;
Rは、Hまたは何らかの有機物置換基であり;そして、
NおよびN’は、4〜8の員環数(member)を持つ炭化水素鎖である。
【請求項34】
NおよびN’がヘテロ原子を含むことを特徴とする請求項33に記載のデバイス。
【請求項35】
アノードと、
カソードと、
前記アノードおよび前記カソードの間に配置され、かつ電気的に接続された発光層であって、さらに、
第1の中心金属、
第2の中心金属、および
前記第1の中心金属と前記第2の中心金属に配位された架橋配位子、を含む二核発光材料を備えた発光層と、
を有し、
前記二核発光材料が電気的に中性であることを特徴とする有機発光デバイス。
【請求項36】
アノードと、
カソードと、
前記アノードおよび前記カソードの間に配置され、かつ電気的に接続された発光層であって、さらに、
第1の中心金属、
第2の中心金属、および
前記第1の中心金属と前記第2の中心金属に配位された架橋配位子、を含む二核発光材料を備えた発光層と、
を有し、
前記中心金属が前記架橋配位子によってコフェイシャル形態に保持されることを特徴とする有機発光デバイス。
【請求項37】
前記第1および第2の中心金属はそれぞれ正方平面状形態を持つことを特徴とする請求項36に記載のデバイス。
【請求項38】
アノードと、
カソードと、
前記アノードおよび前記カソードの間に配置され、かつ電気的に接続された発光層であって、さらに、
40に等しいかまたはそれ以上の原子番号を持つ金属からなるグループから選択された第1の中心金属、
40に等しいかまたはそれ以上の原子番号を持つ金属からなるグループから選択された第2の中心金属、
前記第1の中心金属と前記第2の中心金属に配位された架橋配位子、を含む発光材料を備えた発光層と、
を有することを特徴とする有機発光デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−109140(P2011−109140A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39905(P2011−39905)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【分割の表示】特願2006−509471(P2006−509471)の分割
【原出願日】平成16年3月29日(2004.3.29)
【出願人】(502023332)ザ ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア (20)
【Fターム(参考)】