発光活性を有する融合蛋白質
【課題】化学修飾法により修飾可能であり、汎用性が高いルシフェラーゼを提供する。
【解決手段】(1)特定のアミノ酸配列からなる第1の領域と、(2)チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドのアミノ酸配列からなる第2の領域;とを含有する、融合蛋白質。前記融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。前記ポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。前記組換えベクターが導入された形質転換体。
【解決手段】(1)特定のアミノ酸配列からなる第1の領域と、(2)チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドのアミノ酸配列からなる第2の領域;とを含有する、融合蛋白質。前記融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。前記ポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。前記組換えベクターが導入された形質転換体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下に示す、融合蛋白質、ポリヌクレオチド、組換えベクター、形質転換体、融合蛋白質の製造方法、融合蛋白質に他の有用な化合物を結合した複合体などに関する。
【背景技術】
【0002】
ガウシアルシフェラーゼは、深海コペポーダ(copepoda)であるガウシア・プリンセス(Gaussia princeps)が産生する分泌酵素であって、酸素と基質(セレンテラジン等のルシフェリン)のみの存在下での発光反応を触媒する単純発光系の酵素である。
【0003】
ガウシアルシフェラーゼが触媒する発光反応では、ATP、マグネシウムイオン等が必須であるホタルルシフェラーゼが触媒する発光反応に比べて、発光反応が単純でかつ強い青光を放つため、ガウシアルシフェラーゼは今後様々な用途での利用が期待されている。
【0004】
ガウシアルシフェラーゼは、アミノ末端に分泌のための17残基のシグナルペプチド配列を有し、触媒部分としてアミノ酸168個から構成されるペプチド配列を有する単純蛋白質である。ガウシアルシフェラーゼは、一分子中に10個のシステインを有し、システインの割合が全体の約6%を占める、非常に特殊なルシフェラーゼである。ガウシアルシフェラーゼをメルカプトエタノールやジチオスレイトール等の還元剤で処理することにより、ガウシアルシフェラーゼの発光触媒活性が完全に失活することから、ガウシアルシフェラーゼの発光触媒活性にとって分子内−S−S−結合が必須であることが報告されている(非特許文献1)。しかし、これまでのところ、ガウシアルシフェラーゼの分子内−S−S−結合部位あるいは遊離のチオール基に関する情報はほとんどない。
【0005】
ガウシアルシフェラーゼの分子内のチオール基を利用してガウシアルシフェラーゼを化学修飾法によりリガンドで直接修飾すること、すなわち、ガウシアルシフェラーゼを構成するアミノ酸由来のチオール基を介してガウシアルシフェラーゼにリガンドを導入し、そして、リガンドを導入したガウシアルシフェラーゼを用いて、ガウシアルシフェラーゼの発光反応を頼りに、リガンドに特異的に結合する物質を検出することが考えられる。しかし、これまでのところ、ガウシアルシフェラーゼを化学修飾法によりリガンドで直接修飾した例は報告されていない。
【0006】
本発明者らは、ガウシアルシフェラーゼを構成するアミノ酸由来のチオール基を介してガウシアルシフェラーゼにリガンドを導入した場合、リガンドを導入したガウシアルシフェラーゼの発光触媒活性が著しく低下することを見いだした。また、チオール基以外にも、ガウシアルシフェラーゼを構成するアミノ酸由来のアミノ基、またはカルボキシル基を介してガウシアルシフェラーゼにリガンドを導入することも試みたが、同様に、ガウシアルシフェラーゼの発光触媒活性が著しく低下するなどした。このように、化学修飾法によりリガンドを導入したガウシアルシフェラーゼで、ガウシアルシフェラーゼの本来の発光強度を維持したままのものを得ることができなかった。これは、ガウシアルシフェラーゼ分子内のアミノ酸由来のチオール基、アミノ基またはカルボキシル基を介してリガンドを導入することで、ガウシアルシフェラーゼの発光反応に関与する蛋白質触媒部位へ影響を与え、発光反応を阻害したためと考えられる。
【0007】
一方、ガウシアルシフェラーゼの分子内あるいは、アミノ末端やカルボキシ末端にシステイン残基を導入した場合は、細胞内での発現蛋白質のリホールディングによる正確な分子内−S−S−結合の形成を阻害すると考えられる。
【0008】
リガンドを導入したガウシアルシフェラーゼとして、唯一、ビオチン化酵素によるビオチン化修飾ガウシアルシフェラーゼのみが報告されている。これは、修飾可能なビオチン認識配列を有する融合ガウシアルシフェラーゼ遺伝子を大腸菌内で発現し、大腸菌内酵素によりビオチン化することで、調製したものである (非特許文献2)。しかしながら、この方法のような生細胞内での酵素的修飾法では、ビオチン化ガウシアルシフェラーゼを均一かつ大量に供給するには難点がある。更に、この方法では、ガウシアルシフェラーゼに導入できるリガンドはビオチンのみであり、アビジン、ストレプトアビジン、酵素、抗体、抗原、核酸、多糖類、レセプター等の他のリガンドや、蛍光物質などをガウシアルシフェラーゼに導入することができない。導入できるリガンドがビオチンのみであるので、その用途も限定される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Inouye, S. & Sahara, Y. (2008) Biochem. Biophys. Res. Commun. 365, 96−101.
【非特許文献2】Verhaegen, M. & Christopoulos, T. K. (2002) Anal. Chem. 74, 4378−4385.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記状況において、化学修飾法により修飾可能であり、高い発光触媒活性を持ち、かつ汎用性が高いルシフェラーゼが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ガウシアルシフェラーゼとチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドとを含む融合蛋白質が、ガウシアルシフェラーゼの発光触媒活性を保持しつつ、化学修飾法により修飾可能であり、汎用性も高いルシフェラーゼであることを見出した。これらの知見に基づいてさらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下に示す、融合蛋白質、ポリヌクレオチド、組換えベクター、形質転換体、融合蛋白質の製造方法、融合蛋白質に他の有用な化合物を結合した複合体などを提供する。
[1](1)以下の(a)〜(d)からなる群から選択される第1の領域:
(a)配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域、
(b)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、
(c)配列番号:18のアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、および
(d)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域;と
(2)チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドのアミノ酸配列からなる第2の領域;と
を含有する、融合蛋白質。
[2] 前記第2の領域が以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域、
(f)配列番号:20のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域、
(g)配列番号:20のアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域、および
(h)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域;
から選択される、上記[1]記載の融合蛋白質。
[3] 前記第2の領域が以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域、
(f)配列番号:20のアミノ酸配列において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域、
(g)配列番号:20のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域、および
(h)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域;
から選択される、上記[2]記載の融合蛋白質。
[4] 前記第1の領域が以下の(a)〜(d)からなる群:
(a)配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域、
(b)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、
(c)配列番号:18のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、および
(d)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域;
から選択される、上記[1]〜[3]のいずれか1項記載の融合蛋白質。
[5](1)前記第1の領域が配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域であり、
(2)前記第2の領域が配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域である、上記[4]記載の融合蛋白質。
[6] さらに、翻訳促進のためのアミノ酸配列および/または精製のためのアミノ酸配列を含有する、上記[1]〜[5]のいずれか1項記載の融合蛋白質。
[7] 配列番号:4、6または8のアミノ酸配列からなる融合蛋白質。
[8] 上記[1]〜[7]のいずれか1項記載の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
[9](1)以下の(a)〜(d)からなる群から選択される第1のコード配列:
(a)配列番号:17の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなるコード配列、
(b)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(c)配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、および
(d)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列;と
(2)チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる第2のコード配列;と
を含有する、ポリヌクレオチド。
[10] 前記第2のコード配列が以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:19の塩基配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(f)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(g)配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード領域、および
(h)配列番号:20のアミノ酸において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード領域;
から選択される、上記[9]記載のポリヌクレオチド。
[11] 前記第2のコード配列が以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:19の塩基配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(f)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(g)配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、および
(h)配列番号:20のアミノ酸において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列;
から選択される、上記[10]記載のポリヌクレオチド。
[12] 前記第1のコード配列が以下の(a)〜(d)からなる群:
(a)配列番号:17の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなるコード配列、
(b)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(c)配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、および
(d)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列;
から選択される、上記[9]〜[11]のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
[13](1)前記第1のコード配列が配列番号:17の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなるコード配列であり、
(2)前記第2のコード配列が配列番号:19の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなるコード配列である、上記[12]記載のポリヌクレオチド。
[14] 配列番号:3、5または7の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
[15] 上記[8]〜[14]のいずれか1項記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
[16] 上記[15]記載の組換えベクターが導入された形質転換体。
[17] 上記[16]記載の形質転換体を培養し、上記[1]〜[7]のいずれか1項記載の融合蛋白質を生成させる工程を含む、上記[1]〜[7]のいずれか1項記載の融合蛋白質の製造方法。
[18] 上記[1]〜[7]のいずれか1項記載の融合蛋白質に、該融合蛋白質の第2の領域のシステイン残基のチオール基を介して、他の有用な化合物を結合した複合体。
[19] 他の有用な化合物が蛍光物質および/または検出すべき物質に特異的なリガンドである、上記[18]記載の複合体。
[20] 上記[1]〜[7]のいずれか1項記載の融合蛋白質を含むキット。
[21] 上記[8]〜[14]のいずれか1項記載のポリヌクレオチド、上記[15]記載の組換えベクターまたは上記[16]記載の形質転換体を含むキット。
[22] 上記[18]または[19]記載の複合体を含むキット。
[23] さらにルシフェリンを含む、上記[20]〜[22]のいずれか1項記載のキット。
[24] ルシフェリンがセレンテラジン類である、上記[23]記載のキット。
[25] セレンテラジン類がセレンテラジンである、上記[24]記載のキット。
[26] 上記[1]〜[7]のいずれか1項記載の融合蛋白質または上記[18]または[19]記載の複合体と、ルシフェリンとを接触させることを含む、発光反応を行う方法。
[27] 上記[1]〜[7]のいずれか1項記載の融合蛋白質または上記[18]または[19]記載の複合体をドナー蛋白質として用いて、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)法を行うことを特徴とする、生理機能の解析または酵素活性の測定方法。
[28] 上記[19]記載の複合体を用いる、リガンドに特異的な物質を測定する方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の融合蛋白質は、化学修飾法により修飾可能であり、汎用性も高いルシフェラーゼである。本発明の好ましい態様の融合蛋白質は、ガウシアルシフェラーゼの発光触媒活性を保持する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明で用いられるヒンジ配列とマルチクローニングサイトを有する発現ベクターpPICZα−hgLinkerを示す概略図である。
【図2】図2は、本発明で用いられる酵母での発現を目的としたhg−ガウシアルシフェラーゼ発現ベクターpPICZα−hgGL−Hを示す概略図である。
【図3】図3は、本発明で用いられる大腸菌での発現を目的としたhg−ガウシアルシフェラーゼ発現ベクターpCold−hg−GLを示す概略図である。
【図4】図4は、本発明で用いられる大腸菌での発現を目的としたhgA−ガウシアルシフェラーゼ発現ベクターpCold−hgA−GLを示す概略図である。
【図5】図5は、hgガウシアルシフェラーゼ可溶性画分の精製過程におけるSDS−PAGE分析の結果を示す図である。レーン1:蛋白質分子量マーカー(テフコ社)、レーン2:pCold−hgガウシアルシフェラーゼを発現させた大腸菌の形質転換株の超音波破砕物を12,000gで20分間遠心して得られた上清(蛋白質量18.5μg)、レーン3:ニッケルキレートカラムからの溶出画分(蛋白質量7.4μg)、レーン4:ブチルカラムからの溶出画分(蛋白質量 1.1μg)。
【図6】図6は、hgAガウシアルシフェラーゼ可溶性画分の精製過程におけるSDS−PAGE分析の結果を示す図である。レーン1:蛋白質分子量マーカー(テフコ社)、レーン2:pCold−hgAガウシアルシフェラーゼを発現させた大腸菌の形質転換株の超音波破砕物を12,000gで20分間遠心して得られた上清(蛋白質量17.7μg)、レーン3:ニッケルキレートカラムからの溶出画分(蛋白質量 14.5μg)、レーン4:ブチルカラムからの溶出画分(蛋白質量 0.72μg)。
【図7】図7は、ビオチン化hgガウシアルシフェラーゼ濃度と発光強度の関係を示す図である。
【図8】図8は、ビオチン化hgガウシアルシフェラーゼを用いたAFP標準曲線を示す図である。実線は、バックグラウンド値を示し、AFPの濃度0ng/mlの時の平均+3SDの値である。
【図9】図9は、ビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼ濃度と発光強度の関係を示す図である。
【図10】図10は、ビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼを用いたAFP標準曲線を示す図である。実線は、バックグラウンド値を示し、AFPの濃度0ng/mlの時の平均+3SDの値である。
【図11】図11は、hgAGL−Ab1D5濃度と発光強度の関係を示す図である。
【図12】図12は、hgAGL−Ab1D5を用いたAFP標準曲線を示す図である。実線は、バックグラウンド値を示し、AFPの濃度0ng/mlの時の平均+3SDの値である。
【図13】図13は、蛍光標識化ガウシアルシフェラーゼによる生物発光エネルギー移動を示す図である。点線は、ガウシアルシフェラーゼの発光スペクトルである。実線は、蛍光標識化ガウシアルシフェラーゼの発光スペクトルである。
【図14】図14は、ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142C発現ベクター(pCold−GL−AQ−S142C)および発現融合蛋白質を示す図である。(a)は発現ベクターの概略図であり、(b)は発現融合蛋白質のアミノ酸配列の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
1.本発明の融合蛋白質
本発明の融合蛋白質は、(1)配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域および配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域と実質的に同一の活性もしくは機能を有する領域から選択される第1の領域と、(2)チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドのアミノ酸配列からなる第2の領域とを含有する融合蛋白質である。
【0016】
本発明の融合蛋白質は、第1の領域と第2の領域とが「N末端−第1の領域−第2の領域−C末端」の順で並んでいるものであっても、あるいは「N末端−第2の領域−第1の領域−C末端」の順で並んでいるものであっても良い。本発明の好ましい態様の融合蛋白質は、第1の領域と第2の領域とが「N末端−第1の領域−第2の領域−C末端」の順で並んでいるものである。
【0017】
(1)第1の領域
第1の領域とは、配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域または配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域と実質的に同質の活性もしくは機能を有する領域を意味する。
実質的に同質の活性もしくは機能とは、例えば、ルシフェリン(例えば、セレンテラジン類)を基質とする発光触媒活性(以下、「発光活性」という場合がある。)、すなわち、ルシフェリン(例えば、セレンテラジン類)が酸素分子で酸化されてオキシルシフェリンが励起状態で生成する反応を触媒する活性を意味する。なお、励起状態で生成したオキシルシフェリンは可視光を発して基底状態となる。
【0018】
上記の発光触媒活性の測定は、例えば、文献Inouye, S. & Sahara, Y. (2008) Biochem. Biophys. Res. Commun. 365, 96−101などに記載の方法によって測定することができる。具体的には、例えば、本発明の融合蛋白質をルシフェリンと混合することにより発光反応を開始させ、発光測定装置を用いて発光触媒活性を測定することができる。発光測定装置としては、市販されている装置、例えばLuminescencer−PSN AB2200(アトー社製)、Centro 960 luminometer (ベルトール社製)などを使用することができる。
【0019】
本発明で用いられるルシフェリンとしては、本発明の融合蛋白質の基質となるルシフェリンであればよい。本発明で用いられるルシフェリンとしては、具体的にはセレンテラジン類が挙げられる。
【0020】
本明細書において、セレンテラジン類とは、セレンテラジンおよびセレンテラジン誘導体を意味する。セレンテラジン誘導体としては、例えば、h−セレンテラジン、hcp−セレンテラジン、cp−セレンテラジン、f−セレンテラジン、fcp−セレンテラジン、n−セレンテラジン、Bis−セレンテラジン、MeO−セレンテラジン、e−セレンテラジン、cl−セレンテラジンch−セレンテラジンなどがあげられる。これらのセレンテラジン類の中でも、本発明では、セレンテラジンが特に好ましい。これらのセレンテラジン類は、公知の方法で合成してもよく、あるいは、市販のものを入手することもできる。
【0021】
セレンテラジン類の合成方法としては、例えば、Shimo mura et al. (1988) Biochem.J. 251, 405-410、Shimomura et al. (1989) Biochem.J. 261, 913-920、Shimomura et al. (1990) Biochem.J. 270, 309-312などに記載の方法またはそれに準ずる方法が挙げられる。
また、セレンテラジン類の市販品に関しては、例えば、チッソ株式会社製のセレンテラジンおよびh−セレンテラジン;シグマ社製のhcp−セレンテラジン、cp−セレンテラジン、f−セレンテラジン、fcp−セレンテラジンおよびn−セレンテラジンなどを挙げることができる。
【0022】
第1の領域は、具体的には、以下の(a)〜(d)からなる群:
(a)配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域、
(b)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、
(c)配列番号:18のアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、および
(d)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域;
から選択される。
【0023】
第1の領域において、「1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加」とは、同一配列中の任意かつ1もしくは複数のアミノ酸配列中の位置において、1または複数のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入および/または付加があることを意味する。
【0024】
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、o−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン;
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸;
C群:アスパラギン、グルタミン;
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸;
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン;
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン;
G群:フェニルアラニン、チロシン。
【0025】
第1の領域において、「1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列」における「1〜複数個」の範囲は、例えば、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個(1〜数個)、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個である。欠失、置換、挿入もしくは付加したアミノ酸の数は、一般的に少ないほど好ましい。上記アミノ酸残基の欠失、置換、挿入および付加のうち2種以上が同時に生じてもよい。このような領域は、“Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)”、“Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987−1997)”、“Nuc. Acids. Res., 10, 6487 (1982)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409 (1982)”、“Gene, 34, 315 (1985)”、“Nuc. Acids. Res., 13, 4431 (1985)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)”等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、取得することができる。
第1の領域において、「70%以上の同一性を有するアミノ酸配列」における「70%以上」の範囲は、例えば、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上である。上記同一性の数値は、一般的に大きいほど好ましい。なお、塩基配列またはアミノ酸配列の同一性は、BLAST(例えば、Altzshul S. F. et al., J. Mol. Biol. 215, 403 (1990)など参照)等の解析プログラムを用いて決定できる。BLASTを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
【0026】
第1の領域において、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、配列番号:17の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは配列番号:18のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの全部または一部をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法またはサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるポリヌクレオチド(例えば、DNA)をいう。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のポリヌクレオチドを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0mol/LのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(Saline-sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/L塩化ナトリウム、15mmol/Lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドをあげることができる。
【0027】
ハイブリダイゼーションは、Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)、Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987-1997)、Glover D. M. and Hames B. D., DNA Cloning 1: Core Techniques, A practical Approach, Second Edition, Oxford University Press (1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0028】
「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5(w/v)%SDS、50%(v/v)ホルムアミド、50℃の条件である。条件を厳しくするほど、二本鎖形成に必要とする相補性が高くなる。具体的には、例えば、これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するポリヌクレオチド(例えば、DNA)が効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0029】
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は、キットに添付のプロトコールにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1% (w/v) SDSを含む1次洗浄バッファーで洗浄後、ハイブリダイズしたDNAを検出することができる。
【0030】
これ以外にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとしては、BLAST等の解析プログラムにより、デフォルトのパラメータを用いて計算したときに、配列番号:17の塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは配列番号:18のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドと約60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、92%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.3%以上、99.5%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の同一性を有するDNAをあげることができる。なお、塩基配列またはアミノ酸配列の同一性は、前述した方法を用いて決定できる。
【0031】
本発明の好ましい態様においては、第1の領域は、以下の(a)〜(d)からなる群:
(a)配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域、
(b)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、
(c)配列番号:18のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、および
(d)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域;
から選択される。
【0032】
さらに好ましくは、第1の領域は、配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域である。
【0033】
(2)第2の領域
第2の領域は、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドのアミノ酸配列からなる領域である。前記「チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する」における「1つ以上」とは、例えば、1個、2個、または3個であり、好ましくは、1個または2個であり、特に好ましくは、1個である。本発明の融合蛋白質に、第2の領域に含まれるシステイン残基由来のチオール基を介して化学修飾により他の有用な化合物を導入することが可能である。本発明の好ましい態様の融合蛋白質は、第1の領域の発光触媒活性にほとんど影響を与えずに、第2の領域に含まれるシステイン残基由来のチオール基を介して化学修飾により他の有用な化合物を導入することが可能である。
【0034】
第2の領域のポリペプチドの長さは、例えば、2〜40アミノ酸であり、好ましくは、5〜35アミノ酸であり、より好ましくは、7〜30アミノ酸であり、さらに好ましくは、10〜20アミノ酸であり、最も好ましくは、15アミノ酸である。
【0035】
第2の領域に結合させるための他の有用な化合物としては、蛍光物質、検出すべき物質に特異的なリガンド(例、ビオチン、ビオチン結合蛋白質、酵素、基質、抗体、抗原、核酸、多糖類、レセプター、またはこれらに結合能を有する化合物等)等を挙げることができる。
「蛍光物質」および「リガンド」としては、後述のものが挙げられる。
【0036】
本発明のいくつかの態様では、第2の領域は、以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域、
(f)配列番号:20のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域、
(g)配列番号:20のアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域、および
(h)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域;
から選択される。
【0037】
第2の領域において、「1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加」とは、同一配列中の任意かつ1もしくは複数のアミノ酸配列中の位置において、1または複数のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入および/または付加があることを意味する。
【0038】
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、o−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン;
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸;
C群:アスパラギン、グルタミン;
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸;
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン;
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン;
G群:フェニルアラニン、チロシン。
【0039】
第2の領域において、「1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列」における「1〜複数個」の範囲は、例えば、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個である。欠失、置換、挿入もしくは付加したアミノ酸の数は、一般的に少ないほど好ましい。上記アミノ酸残基の欠失、置換、挿入および付加のうち2種以上が同時に生じてもよい。このような領域は、“Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)”、“Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987−1997)”、“Nuc. Acids. Res., 10, 6487 (1982)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409 (1982)”、“Gene, 34, 315 (1985)”、“Nuc. Acids. Res., 13, 4431 (1985)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)”等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、取得することができる。
【0040】
第2の領域において、「70%以上の同一性を有するアミノ酸配列」における「70%以上」の範囲は、例えば、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上である。上記同一性の数値は、一般的に大きいほど好ましい。なお、塩基配列またはアミノ酸配列の同一性は、BLAST(例えば、Altzshul S. F. et al., J. Mol. Biol. 215, 403 (1990)など参照)等の解析プログラムを用いて決定できる。BLASTを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
【0041】
第2の領域において、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、配列番号:19の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは配列番号:20のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの全部または一部をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法またはサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるポリヌクレオチド(例えば、DNA)をいう。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のポリヌクレオチドを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0mol/LのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(Saline-sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/L塩化ナトリウム、15mmol/Lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドをあげることができる。
【0042】
ハイブリダイゼーションは、Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)、Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987-1997)、Glover D. M. and Hames B. D., DNA Cloning 1: Core Techniques, A practical Approach, Second Edition, Oxford University Press (1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0043】
「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5(w/v)%SDS、50%(v/v)ホルムアミド、50℃の条件である。条件を厳しくするほど、二本鎖形成に必要とする相補性が高くなる。具体的には、例えば、これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するポリヌクレオチド(例えば、DNA)が効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0044】
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は、キットに添付のプロトコールにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1% (w/v) SDSを含む1次洗浄バッファーで洗浄後、ハイブリダイズしたDNAを検出することができる。
【0045】
これ以外にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとしては、BLAST等の解析プログラムにより、デフォルトのパラメータを用いて計算したときに、配列番号:19の塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは配列番号:20のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドと約60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、92%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.3%以上、99.5%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の同一性を有するDNAをあげることができる。なお、塩基配列またはアミノ酸配列の同一性は、前述した方法を用いて決定できる。
【0046】
本発明の好ましい態様においては、第2の領域は以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域、
(f)配列番号:20のアミノ酸配列において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域、
(g)配列番号:20のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域、および
(h)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域;
から選択される。
【0047】
本発明のさらに好ましい態様においては、第2の領域は配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域である。
【0048】
本発明の好ましい態様の融合蛋白質は、
(1)配列番号:18のアミノ酸配列からなる第1の領域と、(2)配列番号:20のアミノ酸配列からなる第2の領域とを含有する融合蛋白質である。
本発明のさらに好ましい態様の融合蛋白質として、例えば、配列番号:4, 6または8のアミノ酸配列からなる融合蛋白質などがあげられる。
【0049】
本発明の融合蛋白質は、配列番号:4, 6および8のアミノ酸配列のように、さらに他のペプチド配列をN末端および/またはC末端、好ましくはN末端に含んでいてもよい。他のペプチド配列としては、例えば、翻訳促進のためのペプチド配列、精製のためのペプチド配列、分泌シグナルペプチド配列、本発明の融合蛋白質を可溶性蛋白質として発現するためのペプチド配列、抗体認識可能なエピトープ配列などからなる群から選択される少なくとも1つのペプチド配列を挙げることができる。他のペプチド配列は、好ましくは、精製のためのペプチド配列および/または分泌シグナルペプチド配列である。本発明の別の好ましい態様では、他のペプチド配列は、精製のためのペプチド配列、分泌シグナルペプチド配列、および本発明の融合蛋白質を可溶性蛋白質として発現するための配列からなる群から選択される少なくとも1つの配列である。
本発明の融合蛋白質は、配列番号:4, 6および8のアミノ酸配列のように、さらに、制限酵素サイトのリンカー配列が含まれていても良い。
【0050】
翻訳促進のためのペプチド配列としては、当技術分野において用いられているペプチド配列を使用することができる。翻訳促進のためのペプチド配列としては、例えば、TEE配列などが挙げられる。
【0051】
精製のためのペプチド配列としては、当技術分野において用いられているペプチド配列を使用することができる。精製のためのペプチド配列としては、例えば、ヒスチジン残基が4残基以上、好ましくは6残基以上連続したアミノ酸配列を有するヒスチジンタグ配列、グルタチオン S−トランスフェラーゼのグルタチオンへの結合ドメインのアミノ酸配列、プロテインAのアミノ酸配列、アビジンタグ配列などが挙げられる。
【0052】
分泌シグナルペプチドとは、当該分泌シグナルペプチドに結合された蛋白質を、細胞膜透過させる役割を担うペプチド領域を意味する。このような分泌シグナルペプチドのアミノ酸配列およびそれをコードする核酸配列は、当技術分野において周知であり、報告されている(例えばvon Heijine G (1988) Biochim. Biohys. Acra 947: 307−333、von Heijine G (1990) J. Membr. Biol. 115: 195−201など参照)。分泌シグナルペプチドとしては、より具体的には、例えば、大腸菌の外膜蛋白質A由来の分泌シグナルペプチド(OmpA)(Ghrayeb, J. et al. (1984) EMBO J. 3:2437−2442)、コレラ菌由来コレラトキシン由来の分泌シグナルペプチドなどが挙げられる。
【0053】
本発明の融合蛋白質を可溶性蛋白質として発現するためのペプチドとしては、例えば式(Z)nで表されるポリペプチドを挙げることができる。式(Z)nで表されるポリペプチドのアミノ酸配列およびそれをコードする核酸配列は、例えば、特開2008−99669号公報に記載している。
【0054】
制限酵素サイトのリンカー配列としては、当技術分野において用いられているペプチド配列を使用することができる。
【0055】
本発明の融合蛋白質は、第1の領域と第2の領域とが「N末端−第1の領域−第2の領域−C末端」の順で並んでいるものである場合、第1の領域からC末端までの間の第1の領域を除く部分の長さが、例えば、4〜50アミノ酸、好ましくは、7〜45アミノ酸であり、より好ましくは、14〜43アミノ酸であり、さらに好ましくは、17〜40アミノ酸であり、最も好ましくは、21〜36アミノ酸である。
【0056】
本発明の融合蛋白質は、第1の領域と第2の領域とが「N末端−第2の領域−第1の領域−C末端」の順で並んでいるものである場合、N末端から第1の領域までの間の第1の領域を除く部分の長さが、例えば、4〜50アミノ酸、好ましくは、7〜45アミノ酸であり、より好ましくは、14〜43アミノ酸であり、さらに好ましくは、17〜40アミノ酸であり、最も好ましくは、21〜36アミノ酸である。
【0057】
本発明の融合蛋白質の取得方法については特に制限はない。本発明の融合蛋白質としては、化学合成により合成した融合蛋白質でもよいし、遺伝子組換え技術により作製した組換え蛋白質であってもよい。本発明の融合蛋白質を化学合成する場合には、例えば、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等により合成することができる。また、アドバンスドケムテック社製、パーキンエルマー社製、ファルマシア社製、プロテインテクノロジーインストゥルメント社製、シンセセルーベガ社製、パーセプティブ社製、島津製作所社製等のペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。本発明の融合蛋白質を遺伝子組換え技術により作製する場合には、通常の遺伝子組換え手法により作製することができる。より具体的には、本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチド(例えば、DNA)を適当な発現系に導入することにより、本発明の融合蛋白質を作製することができる。本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチド、本発明の融合蛋白質の発現系での発現などについては、後記する。
【0058】
2.本発明のポリヌクレオチド
本発明は、前述した本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドも提供する。本発明のポリヌクレオチドとしては、本発明の融合蛋白質をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよいが、好ましくはDNAである。DNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、細胞・組織由来のcDNA、細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAなどが挙げられる。ライブラリーに使用するベクターは、特に制限はなく、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前記した細胞・組織からtotalRNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接 Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction(以下、RT-PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
【0059】
本発明のポリヌクレオチドとしては、具体的には、
(1)以下の(a)〜(d)からなる群から選択される第1のコード配列:
(a)配列番号:17の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなるコード配列、
(b)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(c)配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、および
(d)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列;と
(2) チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる第2のコード配列;と
を含有するポリヌクレオチドなどが挙げられる。
【0060】
前記第2のコード配列は、好ましくは、以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:19の塩基配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(f)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(g)配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード領域、および
(h)配列番号:20のアミノ酸において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード領域;
から選択される。
【0061】
ここで、第1および第2のコード配列における「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、配列番号:17または19の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは配列番号:18または20のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの全部または一部をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法またはサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるポリヌクレオチド(例えば、DNA)をいう。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のポリヌクレオチドを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0mol/LのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(Saline-sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/L塩化ナトリウム、15mmol/Lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドをあげることができる。
【0062】
ハイブリダイゼーションは、Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)、Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987-1997)、Glover D. M. and Hames B. D., DNA Cloning 1: Core Techniques, A practical Approach, Second Edition, Oxford University Press (1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0063】
「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5(w/v)%SDS、50%(v/v)ホルムアミド、50℃の条件である。条件を厳しくするほど、二本鎖形成に必要とする相補性が高くなる。具体的には、例えば、これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するポリヌクレオチド(例えば、DNA)が効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0064】
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は、キットに添付のプロトコールにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1% (w/v) SDSを含む1次洗浄バッファーで洗浄後、ハイブリダイズしたDNAを検出することができる。
【0065】
これ以外にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとしては、BLAST等の解析プログラムにより、デフォルトのパラメータを用いて計算したときに、配列番号:17または19の塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは配列番号:18または20のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドと約60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、92%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.3%以上、99.5%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の同一性を有するDNAをあげることができる。なお、アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、前述した方法を用いて決定できる。
【0066】
第1および第2のコード配列における、「1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列」とは、それぞれ、前記第1および第2の領域で説明した通りである。
【0067】
あるアミノ酸配列に対して、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を有する領域をコードするポリヌクレオチドは、部位特異的変異導入法(例えば、Gotoh, T. et al., Gene 152, 271-275 (1995)、Zoller, M.J., and Smith, M., Methods Enzymol. 100, 468-500 (1983)、Kramer, W. et al., Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456 (1984)、Kramer W, and Fritz H.J., Methods. Enzymol. 154, 350-367 (1987)、Kunkel,T.A., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 82, 488-492 (1985)、Kunkel, Methods Enzymol. 85, 2763-2766 (1988)、など参照)、アンバー変異を利用する方法(例えば、Gapped duplex法、Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456 (1984)、など参照)などを用いることにより得ることができる。
【0068】
また目的の変異(欠失、付加、置換および/または挿入)を導入した配列をそれぞれの5’端に持つ1組のプライマーを用いたPCR(例えば、Ho S. N. et al., Gene 77, 51 (1989)など参照)によっても、ポリヌクレオチドに変異を導入することができる。
【0069】
また欠失変異体の一種である蛋白質の部分断片をコードするポリヌクレオチドは、その蛋白質をコードするポリヌクレオチド中の作製したい部分断片をコードする領域の5’端の塩基配列と一致する配列を有するオリゴヌクレオチドおよび3’端の塩基配列と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて、その蛋白質をコードするポリヌクレオチドを鋳型にしたPCRを行うことにより取得できる。
【0070】
本発明の好ましい態様のポリヌクレオチドでは、第1のコード配列が、以下の(a)〜(d)からなる群:
(a)配列番号:17の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなるコード配列、
(b)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(c)配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、および
(d)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列;
から選択される。
【0071】
本発明の好ましい態様のポリヌクレオチドでは、第2のコード配列が、以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:19の塩基配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(f)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(g)配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、および
(h)配列番号:20のアミノ酸において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列;
から選択される。
【0072】
本発明のさらに好ましい態様のポリヌクレオチドは、
(1)配列番号:17の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなる第1のコード配列と、(2)配列番号:19の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなる第2のコード配列とを含有するポリヌクレオチドである。
【0073】
本発明の特に好ましい態様のポリヌクレオチドとして、例えば、配列番号:4, 6または8のアミノ酸配列からなる融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドなどがあげられる。配列番号:4のアミノ酸配列からなる融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドとしては、例えば、配列番号:3の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドなどが挙げられる。配列番号:6のアミノ酸配列からなる融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドとしては、例えば、配列番号:5の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドなどが挙げられる。配列番号:8のアミノ酸配列からなる融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドとしては、例えば、配列番号:7の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドなどが挙げられる。
【0074】
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号:3、5、7の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドのように、他のペプチド配列をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを含んでいてもよい。他のペプチド配列としては、例えば、翻訳促進のためのペプチド配列、精製のためのペプチド配列、分泌シグナルペプチド配列、本発明の融合蛋白質を可溶性蛋白質として発現するためのペプチド配列、抗体認識可能なエピトープ配列などからなる群から選択される少なくとも1つのペプチド配列を挙げることができる。
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号:3、5および7の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドのように、さらに、制限酵素サイトのリンカー配列を含んでいてもよい。
【0075】
翻訳促進のためのペプチド配列をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドとしては、当技術分野において用いられている翻訳促進のためのペプチド配列をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを使用することができる。翻訳促進のためのペプチド配列としては、前記したものなどが挙げられる。
【0076】
精製のためのペプチド配列をコードするポリヌクレオチドとしては、当技術分野において用いられている精製のためのペプチド配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドを使用することができる。精製のためのペプチド配列としては、前記したものなどが挙げられる。
【0077】
分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドとしては、当記述分野において知られている分泌シグナルペプチドをコードする核酸配列を含有するポリヌクレオチドを使用することができる。分泌シグナルペプチドとしては、前記したものなどが挙げられる。
【0078】
本発明の蛋白質を可溶性蛋白質として発現するためのペプチド配列をコードするポリヌクレオチドとしては、例えば式(Z)nで表わされるポリペプチドを挙げることができる。式(Z)nで表わされるポリペプチドのアミノ酸配列およびそれをコードする核酸配列としては、前記したものなどが挙げられる。
【0079】
制限酵素サイトのリンカー配列としては、当技術分野において用いられている制限酵素サイトのリンカー配列を使用することができる。
【0080】
3.本発明の組換えベクターおよび形質転換体
さらに、本発明は、上述した本発明のポリヌクレオチドを含有する組換えベクターおよび形質転換体を提供する。
【0081】
組換えベクターの作製
本発明の組換えベクターは、適当なベクターに本発明のポリヌクレオチド(DNA)を連結(挿入)することにより得ることができる。より具体的には、精製されたポリヌクレオチド(DNA)を適当な制限酵素で切断し、適当なベクターの制限酵素部位またはマルチクローニングサイトに挿入して、ベクターに連結することにより得ることができる。本発明のポリヌクレオチドを挿入するためのベクターは、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミド、バクテリオファージ、動物ウイルス等が挙げられる。プラスミドとしては、例えば、大腸菌由来のプラスミド(例えばpBR322, pBR325, pUC118, pUC119等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110, pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13, YEp24, YCp50等)などがあげられる。バクテリオファージとしては、例えば、λファージなどがあげられる。動物ウイルスとしては、例えば、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、昆虫ウイルス(例えば、バキュロウイルスなど)などがあげられる。また、pCold Iベクター、pCold IIベクター、pCold IIIベクター、pCold IVベクター(以上、タカラバイオ社製)、PICZ aベクター(インビトロジェン社製)なども好適に使用することができる。
【0082】
本発明のポリヌクレオチドは、通常、適当なベクター中のプロモーターの下流に、発現可能なように連結される。用いられるプロモーターとしては、形質転換する際の宿主が動物細胞である場合には、SV40由来のプロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、SRαプロモーターなどが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、Trpプロモーター、T7プロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーターなどが好ましい。宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなどが好ましい。宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADH1プロモーター、GALプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
【0083】
また、低温で発現誘導可能なプロモーターも好適に使用することができる。低温で発現誘導可能なプロモーターとしては、例えば、コールドショック遺伝子のプロモーター配列などが挙げられる。コールドショック遺伝子としては、例えば、大腸菌コールドショック遺伝子(例えば、cspA、cspB、cspG、cspI、csdAなど)、Bacillus caldolyticusコールドショック遺伝子(例えば、Bc−Cspなど)、Salmonella entericaコールドショック遺伝子(例えば、cspEなど)、Erwinia carotovoraコールドショック遺伝子(例えば、cspGなど)などが挙げられる。低温で発現誘導可能なプロモーターとしては、なかでも、例えば、cspAプロモーター、cspBプロモーター、cspGプロモーター、cspIプロモーター、csdAプロモーターなどを好適に使用することができる。
【0084】
本発明の組換えベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、リボソーム結合配列(SD配列)、選択マーカーなどを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子などがあげられる。
【0085】
形質転換体の作成
このようにして得られた、本発明のポリヌクレオチド(すなわち、本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチド)を含有する組換えベクターを、適当な宿主中に導入することによって、形質転換体を作成することができる。宿主としては、本発明のポリヌクレオチド(DNA)を発現できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、シュードモナス属菌、リゾビウム属菌、酵母、動物細胞または昆虫細胞などがあげられる。エシェリヒア属菌としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)などがあげられる。バチルス属菌としては、例えば、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)などがあげられる。シュードモナス属菌としては、例えば、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)などがあげられる。リゾビウム属菌としては、例えば、リゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti)などがあげられる。酵母としては、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)などがあげられる。動物細胞としては、例えば、COS細胞、CHO細胞などがあげられる。昆虫細胞としては、例えば、Sf9、Sf21などがあげられる。
【0086】
組換えベクターの宿主への導入方法およびこれによる形質転換方法は、一般的な各種方法によって行うことができる。組換えベクターの宿主細胞への導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法(Virology, 52, 456−457 (1973))、リポフェクション法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413 (1987))、エレクトロポレーション法(EMBO J., 1, 841−845 (1982))などがあげられる。エシェリヒア属菌の形質転換方法としては、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110 (1972)、Gene, 17, 107 (1982)などに記載の方法などがあげられる。バチルス属菌の形質転換方法としては、例えば、Molecular & General Genetics,168, 111 (1979)に記載の方法などがあげられる。酵母の形質転換方法としては、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75, 1929 (1978)に記載の方法などがあげられる。動物細胞の形質転換方法としては、例えば、Virology,52, 456 (1973)に記載の方法などがあげられる。昆虫細胞の形質転換方法としては、例えば、Bio/Technology, 6, 47−55 (1988)に記載の方法などがあげられる。このようにして、本発明の蛋白質をコードするポリヌクレオチド(本発明のポリヌクレオチド)を含有する組換えベクターで形質転換された形質転換体を得ることができる。
【0087】
低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターおよび形質転換体
発現ベクターとしては、なかでも低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターが好ましい。
低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターとは、具体的には、次のプロモーター配列、およびコード配列を含有する発現ベクターを意味する:
(1)低温で発現誘導可能なプロモーター配列;および
(2)本発明のポリヌクレオチドを含有するコード配列。
低温で発現誘導可能なプロモーター配列とは、宿主細胞を増殖させる培養条件から、温度を下げることによって融合蛋白質の発現を誘導可能なプロモーター配列を意味する。低温で発現誘導可能なプロモーターとしては、例えば、コールドショック蛋白質をコードする遺伝子(コールドショック遺伝子)のプロモーターが挙げられる。コールドショック遺伝子のプロモーターとしては、前記したものが挙げられる。
【0088】
本発明で用いられる低温で発現誘導可能なプロモーターが発現誘導しうる温度としては、通常30℃以下、好ましくは25℃以下、より好ましくは20℃以下、特に好ましくは15℃以下である。ただし、より効率良く発現を誘導させるため、通常は5℃以上、好ましくは10℃以上、特に好ましくは約15℃で発現誘導させる。
【0089】
本発明の低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターを作製する場合、本発明のポリヌクレオチドを挿入するためのベクターとしては、pCold Iベクター、pCold IIベクター、pCold IIIベクター、pCold IVベクター(以上、タカラバイオ社製)などを好適に使用することができる。これらのベクターを使用して、原核細胞を宿主として発現させた場合、融合蛋白質を宿主細胞の細胞質中に可溶性蛋白質として産生させることができる。
【0090】
低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターを導入する宿主としては、原核細胞が好ましく、さらに大腸菌が好ましく、特にBL21株、JM109株が好ましく、なかでもBL21株が好ましい。
【0091】
低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターが導入された形質転換体を細胞増殖させる培養温度は、通常25〜40℃、好ましくは30〜37℃である。発現誘導させる温度は、通常4〜25℃、好ましくは10〜20℃、より好ましくは12〜18℃、特に好ましくは15℃である。
【0092】
4.本発明の融合蛋白質の製造
また、本発明は、前記形質転換体を培養し、本発明の融合蛋白質を生成させる工程を含む、本発明の融合蛋白質の製造方法を提供する。本発明の融合蛋白質は、例えば、前記形質転換体を本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチド(DNA)が発現可能な条件下で培養し、本発明の融合蛋白質を生成・蓄積させ、分離・精製することによって製造することができる。
【0093】
形質転換体の培養
本発明の形質転換体の培養は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。該培養によって、形質転換体によって本発明の融合蛋白質が生成され、形質転換体内または培養液中などに本発明の融合蛋白質が蓄積される。
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する培地としては、該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デンプンなどの炭水化物、酢酸、プロピオン酸などの有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類が用いられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどの無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩またはその他の含窒素化合物のほか、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカーなどが用いられる。無機塩類としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウムなどが用いられる。培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、Lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)などを、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養するときにはインドールアクリル酸(IAA)などを培地に添加してもよい。
【0094】
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行い、必要により、通気や撹拌を加える。宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加える。
【0095】
宿主が酵母である形質転換体を培養する培地としては、たとえばバークホールダー(Burkholder)最小培地(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77, 4505 (1980))や0.5%(w/v)カザミノ酸を含有するSD培地(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, 5330 (1984))があげられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0096】
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する培地としては、たとえば約5〜20%(v/v)の胎児牛血清を含むMEM培地(Science, 122, 501 (1952)),DMEM培地(Virology, 8, 396 (1959))などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃〜40℃で約15〜60時間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0097】
宿主が昆虫細胞である形質転換体を培養する培地としては、Grace's Insect Medium(Nature,195,788(1962))に非働化した10%(v/v)ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0098】
なお、低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターが導入された形質転換体を細胞増殖させる培養温度および発現誘導させる温度は、前記した通りである。
【0099】
本発明の融合蛋白質の分離・精製
上記培養物から、本発明の融合蛋白質を分離・精製することによって、本発明の融合蛋白質を得ることができる。ここで、培養物とは、培養液、培養菌体もしくは培養細胞、または培養菌体もしくは培養細胞の破砕物のいずれをも意味する。本発明の融合蛋白質の分離・精製は、通常の方法に従って行うことができる。
【0100】
具体的には、本発明の融合蛋白質が培養菌体内もしくは培養細胞内に蓄積される場合には、培養後、通常の方法(例えば、超音波、リゾチーム、凍結融解など)で菌体もしくは細胞を破砕した後、通常の方法(例えば、遠心分離、ろ過など)により本発明の融合蛋白質の粗抽出液を得ることができる。本発明の融合蛋白質がペリプラズムスペース中に蓄積される場合には、培養終了後、通常の方法(例えば浸透圧ショック法など)により本発明の融合蛋白質を含む抽出液を得ることができる。本発明の融合蛋白質が培養液中に蓄積される場合には、培養終了後、通常の方法(例えば、遠心分離、ろ過など)により菌体もしくは細胞と培養上清とを分離することにより、本発明の融合蛋白質を含む培養上清を得ることができる。
【0101】
このようにして得られた抽出液もしくは培養上清中に含まれる本発明の融合蛋白質の精製は、通常の分離・精製方法に従って行うことができる。分離・精製方法としては、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、透析法、限外ろ過法などを単独で、または適宜組み合わせて用いることができる。本発明の融合蛋白質が上述した精製のためのペプチド配列を含有する場合、これを用いて精製するのが好ましい。具体的には、本発明の融合蛋白質がヒスチジンタグ配列を含有する場合にはニッケルキレートアフィニティークロマト法、S−トランスフェラーゼのグルタチオンへの結合ドメインを含有する場合にはグルタチオン結合ゲルによるアフィニティークロマト法、プロテインAのアミノ酸の配列を含有する場合には抗体アフィニティークロマト法を用いることができる。
【0102】
5.本発明の複合体
前記本発明の融合蛋白質(以下、「本発明のルシフェラーゼ」という場合がある。)は、他の有用な化合物(例、蛍光物質、検出すべき物質に特異的なリガンド等)と結合し、複合体を形成することができる。
【0103】
本発明の複合体は、他の有用な化合物を、本発明のルシフェラーゼの第2の領域のシステイン残基のチオール基を介して結合したものである。本発明のいくつかの態様では、複合体は、本発明のルシフェラーゼと、蛍光物質または検出すべき物質に特異的なリガンドとが結合したものである。本発明のいくつかの態様の複合体では、ルシフェラーゼのチオール基と蛍光物質またはリガンドとの結合比率は、1:1の比率、またはそれに近い比率である。
【0104】
他の有用な化合物のうち、蛍光物質としては、Hoechist3342、Indo−1、DAP1などの有機化合物;緑色蛍光蛋白質(GFP)、青色蛍光蛋白質(BFP)、変異GFP蛍光蛋白質、フィコビリンなどの蛍光蛋白質を挙げることができる。
【0105】
検出すべき物質に特異的なリガンドは、検出すべき物質に直接的に結合する物質、または、検出すべき物質に間接的に結合する物質の何れであっても良い。リガンドとしては、例えば、ビオチン、ビオチン結合タンパク質、酵素、基質、抗体、抗原、核酸、多糖類、レセプター、またはこれらに結合能を有する化合物を挙げることができる。
【0106】
このうち、ビオチン結合蛋白質としては、アビジン、ストレプトアビジン、変異型アビジン(ニュートラアビジン)等を挙げることができる。これらのビオチン結合蛋白質は市販のものを入手することができる。常法により、市販のビオチン結合蛋白質を修飾可能なように調製することもできる。
【0107】
抗原および抗体としては、これまで、様々な物質(例、腫瘍マーカーやホルモンなどといったヒトや動植物の生体内微量成分や、環境中の微量汚染物質など)の抗原、およびこれらの抗原に対する抗体が市販されており、測定したい被検体を抗原とする抗体を適宜必要に応じて入手し、使用することができる。
【0108】
中でも、腫瘍の増殖に伴って血清や尿中に増加する腫瘍マーカーとしては、胎児性抗原、CA19−9、シリアルLex−i抗原、シリアルTn抗原、チミジンキナーゼ活性、組織ポリペプチド抗原、塩基性フェトプロテイン、免疫抑制酸性蛋白、CA72−4、CA125、DUPAN−2、SPan−1、エラスターゼ1、BCA−225、CA15−3、SCC抗原、サイトケラチン19フラグメント、前立腺特異抗原、γ−セミノプロテイン、前立腺酸性フォスファターゼ、α−フェトプロテイン、AFPレクチン分画、PIVKA−II、神経特異エノラーゼ、NCC−ST−439、CA130、I型コラーゲン−C−テロペプチドなど、各器官における腫瘍の生成に伴って特異的に増加するマーカーがこれまでに知られている。これらの抗原は市販されており、血清あるいは尿中の該マーカーを測定する上での標準物質として適宜利用することができる。更に、これらの抗原に対する種々のクラスあるいはサブクラスからなる抗体が市販されており、これらを適宜使用することができる。
【0109】
核酸としては、任意の相補的DNAおよびRNAが挙げられ、例えば、病原性遺伝子の検出、遺伝子診断等に使用可能な塩基配列を有するDNAおよびRNAを挙げることができる。これらの核酸は、常法により、適宜化学合成することができる。
【0110】
物理化学的特性等により異なるが、本発明のルシフェラーゼの分子サイズおよび他の有用な化合物との立体障害を考慮して、直接的にまたはリンカーもしくはスペーサーを介して、他の有用な化合物を本発明のルシフェラーゼに結合させる。
【0111】
本発明において用いるリンカーまたはスペーサーは、−SH基と特異的に反応しうるものであれば特に限定されないが、20オングストローム以上の長さを有するものが好ましい。リンカーもしくはスペーサーとして使用しうる種々の−SH基修飾試薬は市販されており、これらを適宜利用することができる。
【0112】
システインのチオール基(「スルフヒドリル基」ともいう。)と反応する官能基を有する架橋試薬は、特に限定されるものではないが、具体的には、N-(4-[p-アジドサリシルアミド]ブチル)-3´-2´ピリジルジチオ)プロピオンアミド(APDP)、1,4−ジ-(3´-[2´ピリジルジチオ]プロピオンアミド)ブタン、1,6−ヘキサン-ビス-ビニルスルホン(HBVS)、スクシンイミジル3-(ブロモアセタミド)プロピオネート(SBAP)、N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、N-(α‐マレイミドアセトキシ)-スクシンイミドエステル(AMAS)、スクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン(SMCC)、SMCCのスルホン化誘導体(スルホ−SMCC)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、MBSのスルホン化誘導体(スルホ−MBS)、スクシンイミジル 4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB)、SMPBのスルホン化誘導体(スルホ−SMPB)、スクシンイミジル−6−(N−マレイミド−n−ヘキサノエート)、スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)、N−ヒドロキシスクシンイミジルブロモアセテート、ビス−(マレイミド)メチルエステル、ビス−マレイミドヘキサン(BMH)などを挙げることができる。本発明においては、その中でもスルフヒドリル基と反応する官能基としてマレイミド基を有する架橋試薬が好ましい。
【0113】
本発明のルシフェラーゼに他の有用な化合物を結合させる反応は、Hermanson G.T.著“Bioconjugate Techniques, 2 nd Edition (2008) ElsevierInc.等に記載されている方法のように当該分野で公知の方法により行うことができる。より具体的には、検出すべき物質に特異的なリガンドの場合、反応は、30 ℃以下、好ましくは25 ℃以下、pH6〜8、好ましくはpH7〜7.5で行うのが望ましい。蛍光物質の場合、反応は、25 ℃以下、好ましくは4 ℃以下、pH6〜8、好ましくはpH7〜7.5で行うのが望ましい。
【0114】
特に、ビオチン結合蛋質の場合、反応は、25 ℃以下、好ましくは4 ℃以下、pH6〜8、好ましくはpH7〜7.5で行うのが望ましい。抗体の場合、反応は、25 ℃以下、好ましくは4 ℃以下、pH6〜8、好ましくはpH7〜7.5で行うのが望ましい。核酸の場合、反応は、25 ℃以下、好ましくは4 ℃以下、pH6〜8、好ましくはpH7〜7.5で行うのが望ましい。
【0115】
6.本発明の融合蛋白質および複合体の利用
発光による検出マーカーとしての利用
本発明の融合蛋白質または本発明の複合体は、ルシフェリン存在下、発光による検出マーカーとして利用することができる。本発明の検出マーカーは、例えば、イムノアッセイ、ハイブリダイゼーションアッセイなどにおける目的物質の検出に利用することができる。本発明の複合体を検出マーカーとして利用する場合、本発明の複合体中の他の有用な化合物は、検出すべき物質に特異的なリガンドである。
【0116】
本発明の複合体をイムノアッセイで利用する場合、本発明の複合体のリガンドは、例えば、目的物質を特異的に認識する1次抗体である。本発明の複合体における1次抗体は、試料中に存在する検出すべき物質(抗原)に特異的に結合するので、本発明の複合体における融合蛋白質の発光を測定することにより、試料中の検出すべき物質の部位や量が検出できる。
【0117】
検出の感度を高めるために、1次抗体を特異的に認識する2次抗体を使う方法も周知である。この場合、本発明の複合体中のリガンドは、例えば、2次抗体である。
【0118】
また、2次抗体にビオチンを結合し、このビオチン化2次抗体と、本発明の融合蛋白質と結合したアビジンまたはストレプトアビジンとを反応させることもできる。この場合、本発明の複合体中のリガンドは、アビジンまたはストレプトアビジンである。
【0119】
さらに、1分子のアビジンまたは1分子のストレプトアビジンが、4分子のビオチンと結合する性質を利用することもできる。すなわち、ビオチン化2次抗体と、アビジンまたはストレプトアビジンとを反応させ、さらに、本発明の融合蛋白質と結合したビオチンと反応させるものである。この場合、本発明の複合体中のリガンドは、ビオチンである。
【0120】
本発明の複合体を用いてレセプターを検出する場合においては、レセプターに結合するシグナルペプチド(インシュリンのようなホルモン、サイトカイン、TNF、Fasリガンド等)を、本発明の複合体中のリガンドとすることができる。一方、シグナルペプチドを検出する場合には、レセプターを構成する蛋白質を、本発明の複合体中のリガンドとすることができる。すなわち、ある薬物が結合するレセプターを検出する場合には、その薬物を本発明の複合体中のリガンドとすることができ、あるレセプターに結合する薬物を検出する場合は、そのレセプターを本発明の複合体中のリガンドとすることができる。
【0121】
本発明の複合体を用いて酵素を検出する場合には、その酵素の基質を本発明の複合体中のリガンドとすることができる。一方、その酵素の基質を検出する場合には、その酵素を本発明の複合体中のリガンドとすることができる。
【0122】
本発明の複合体をハイブリダイゼーションアッセイで利用する場合、ある核酸に対して特異的に結合する他の核酸を検出するために、検出する核酸に相補的な核酸を、本発明の複合体中のリガンドとすることができる。
【0123】
本発明の複合体を用いて多糖類に対して特異的に結合する他の物質を検出する場合には、多糖類を、本発明の複合体中のリガンドとすることができる。
【0124】
この他、血液凝固因子と特異的に結合しうるレクチンや転写因子等のDNA結合性蛋白質等も、本発明の複合体中のリガンドとすることができる。
【0125】
本発明の複合体は、上記のようにリガンドを介して目的物質に直接的または間接的に結合することができるので、ルシフェリン存在下、発光による検出マーカーとして利用することができる。このような検出マーカーを用いた目的物質の検出は通常の方法により行うことができる。
【0126】
また、本発明の融合蛋白質は、例えば、目的蛋白質との融合蛋白質として発現させ、マイクロインジェクション法などの手法により細胞内に導入することによって、前記目的蛋白質の分布を測定するために利用することもできる。このような目的タンパク質などの分布の測定は、発光イメージング等の検出法などを利用して行うこともできる。なお、本発明の融合蛋白質は、マイクロインジェクション法などの手法により細胞内に導入する以外に、細胞内で発現させて用いることもできる。
【0127】
レポーター蛋白質としての利用
本発明の融合蛋白質は、レポーター蛋白質としてプロモーターなどの転写活性の測定に利用することもできる。本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチド(すなわち、本発明のポリヌクレオチド)を、目的のプロモーターまたは他の発現制御配列(例えば、エンハンサーなど)に融合したベクターを構築する。前記ベクターを宿主細胞に導入し、ルシフェリン存在下、本発明の融合蛋白質に由来する発光を検出することにより、目的のプロモーターまたは他の発現制御配列の活性を測定することができる。
本発明のポリヌクレオチドは、上述のようにして、レポーター遺伝子として利用することができる。
【0128】
アミューズメント用品の材料
本発明の融合蛋白質は、ルシフェリンが酸素分子で酸化されてオキシルシフェリンが励起状態で生成される反応を触媒する活性を有する。励起状態のオキシルシフェリンは可視光を発して基底状態となる。よって、本発明の融合蛋白質などは、アミューズメント用品の材料の発光基材として好適に使用することができる。アミューズメント用品としては、たとえば、発光シャボン玉、発光アイス、発光飴、発光絵の具等があげられる。本発明のアミューズメント用品は、通常の方法によって製造することができる。
【0129】
生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)法
本発明の融合蛋白質または本発明の複合体は、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)法による分子間相互作用の原理を利用した生理機能の解析や酵素活性の測定等の分析方法に利用することができる。
【0130】
例えば、本発明の融合蛋白質または本発明の複合体において、本発明の融合蛋白質または本発明の複合体(「本発明のルシフェラーゼ」という場合がある。)をドナーとして使用し、蛍光物質(例、有機化合物、蛍光蛋白質等)をアクセプターとして使用して、両者の間で生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)を起こすことによりドナーとアクセプターとの間の相互作用を検出することができる。
【0131】
本発明のある態様では、アクセプターとして使用する有機化合物は、Hoechist3342、Indo−1、DAP1などである。本発明の別の態様では、アクセプターとして使用する蛍光蛋白質は、緑色蛍光蛋白質(GFP)、青色蛍光蛋白質(BFP)、変異GFP蛍光蛋白質、フィコビリンなどである。
【0132】
本発明の好ましい態様において、解析する生理機能は、オーファン受容体(特にG蛋白質共役受容体)、アポトーシス、または遺伝子発現による転写調節などである。また、本発明の好ましい態様において、分析する酵素は、プロテアーゼ、エステラーゼまたはリン酸化酵素などである。
【0133】
BRET法による生理機能の解析は、公知の方法で行うことができ、例えば、Biochem. J. 2005, 385, 625−637、またはExpert Opin. Ther Tarets, 2007 11: 541−556などに記載の方法に準じて行うことができる。また、酵素活性の測定も、公知の方法で行うことができ、例えば、Nature Methods 2006, 3:165−174、またはBiotechnol. J. 2008, 3:311−324などに記載の方法に準じて行うことができる。
【0134】
本発明のいくつかの態様の複合体は、本発明の融合蛋白質に、他の有用な化合物として蛍光物質を結合したものである。蛍光物質としては、前記したものが挙げられる。この複合体中の本発明の融合蛋白質をドナーとし、同一複合体中の蛍光物質をアクセプターとして、両者の間でBRETを起こすこともできる。
【0135】
7.本発明のキット
本発明は、本発明の融合蛋白質、本発明のポリヌクレオチド、本発明の組換えベクター、本発明の形質転換体および本発明の複合体から選択されるいずれかを含むキットも提供する。本発明のキットには、さらにルシフェリン(例えば、セレンテラジン類)を含んでいてもよい。本発明のキットは、通常用いられる材料および方法で製造することができる。本発明のキットは、例えば、サンプルチューブ、プレート、キット使用者に対する指示書、溶液、バッファー、試薬、標準化のために好適なサンプルまたは対照サンプルを含んでもよい。本発明のキットには、さらに、ハロゲン化物イオンを含む塩などを含んでいてもよい。
【0136】
本発明のキットは、上述したレポーター蛋白質もしくはレポーター遺伝子を用いた測定、発光による検出マーカー、BRET法による生理機能の解析または酵素活性の測定などに利用することができる。
【0137】
8.発光反応方法
発光触媒活性
本発明の融合蛋白質または本発明の複合体(以下、「本発明の融合蛋白質等」とする場合がある。)は、ルシフェリン(例えば、セレンテラジン類)を酸素分子で酸化して励起状態のオキシルシフェリンを生成させる反応を触媒する活性を有する。励起状態のオキシルシフェリンは、基底状態となる際に可視光を発する。すなわち、本発明の融合蛋白質等は、ルシフェリン(例えば、セレンテラジン類)を基質とする発光反応を触媒し、発光を生じさせる活性を有する。この活性を、本明細書において、「発光触媒活性」と称することがある。
【0138】
発光反応
本発明の融合蛋白質等を用いた、ルシフェリン(例えば、セレンテラジン類)を基質とする発光反応は、本発明の融合蛋白質等とルシフェリンとを接触させることにより行うことができる。反応条件としては、ガウシアルシフェラーゼを用いた発光反応に通常用いられる条件またはそれに準じた条件で行うことができる(例えば、WO99/49019、J. Biol. Chem. 279, 3212−3217 (2004)、およびそれらの引用文献など参照)。
【0139】
具体的には、反応溶媒としては、例えば、Tris−HCl緩衝液、リン酸ナトリウム緩衝液などの緩衝液、水、などが用いられる。
【0140】
反応温度は、通常約4℃〜約40℃、好ましくは約4℃〜約25℃である。
反応溶液のpHは、通常約5〜約10、好ましくは約6〜約9、より好ましくは約7〜約8、特に好ましくは約7.5である。
【0141】
ルシフェリンとしては、セレンテラジン類が好ましく、特にセレンテラジンが好ましい。
ルシフェリンは、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキシド等の極性溶媒や、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール溶液として反応系に加えてもよい。
【0142】
発光活性の活性化
本発明の融合蛋白質等の、ルシフェリン(例えば、セレンテラジン類)を基質とする発光活性(発光触媒活性)は、ハロゲン化物イオンにより活性化される。
ハロゲン化物イオンとしては、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなどがあげられ、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンが好ましい。
ハロゲン化物イオンの濃度は、通常約10μM〜約100mM、好ましくは約100μM〜約50mM、特に好ましくは約1mM〜約20mMである。
【0143】
反応系にハロゲン化物イオンを添加する方法としては、塩として添加する方法などがあげられる。用いられる塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩などがあげられる。より具体的には、NaF、NaCl、NaBr、NaI、KF、KCl、KBr、KI、CaF2、CaCl2、CaBr2、CaI2、MgF2、MgCl2、MgBr2、MgI2などがあげられる。
【0144】
実施の形態および実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いる場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。
【0145】
なお、本明細書に記載した全ての文献及び刊行物は、その目的にかかわらず参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする。
【0146】
また、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を実施できる。発明を実施するための最良の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図ならびに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々に修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【実施例】
【0147】
以下に実施例により本発明を説明するが、実施例は本発明を制限するものではない。
【0148】
実施例1 ヒンジ配列を有する酵母発現用新規発現ベクターの構築
ヒンジ配列を有する新規発現ベクターの構築は以下の通りである。まずpPICZα A (Invitrogen社)において、制限酵素部位であるXhoI/SalI部位に、化学合成したマルチクローニング配列をもつ以下のリンカーpPICZα Linker−FおよびpPICZα Linker−Rを挿入して新規ベクターpPICZα −Linkerを構築した。
【0149】
pPICZα Linker−F (5’ TC GAA AAA AGA GAG GCT GAA GCT GGT ACC GAA TTC CTG CAG CTC GAG TCT AGA G 3’)(配列番号:9)
pPICZα Linker−R (5’ TC GAC TCT AGA CTC GAG CTG CAG GAA TTC GGT ACC AGC TTC AGC CTC TCT TTT T 3’)(配列番号:10)
【0150】
次いでpPICZα −Linkerベクターの制限酵素部位PstI/SalI部位に、化学合成したマルチクローニング配列をもつ以下のリンカーhinge Linker−Fおよびhinge Linker−Rを挿入することにより、図1に示すヒンジ配列を有する新規発現ベクターpPICZα −hgLinkerを構築した。
【0151】
hinge Linker−F (5’ Gagc tta tcc acc ccg ccg acc ccg tcc ccg tcc acc ccg ccg TGc CTC GAG TCT AGA G 3’、アンダーラインは、新規システイン残基)(配列番号:11)、
hinge Linker−R (5’ TC GAC TCT AGA CTC GAG gCA cgg cgg ggt gga cgg gga cgg ggt cgg cgg ggt gga taa gct CTG CA 3’、 アンダーラインは、新規導入システイン残基)(配列番号:12)
【0152】
なお、DNAシークエンサー(ABI社製)により塩基配列を決定することにより、挿入DNAの確認を行った。発現ベクターpPICZα −hgLinkerのDNA配列を配列番号:1に示す。また、発現ベクターpPICZα −hgLinkerのDNA配列にコードされる蛋白質のアミノ酸配列を配列番号:2に示す。
【0153】
実施例2 酵母発現用ガウシアルシフェラーゼ発現ベクターの構築および発現
酵母での発現を目的としたヒンジ配列を有するガウシアルシフェラーゼ発現ベクターの構築は以下の通りである。pcDNA3−hGLを鋳型として以下の2種のPCRプライマーを用いて、PCRキット(タカラバイオ社製)にてPCR(サイクル条件25サイクル;1分/94℃、1分/50℃、1分/72℃)を実施して、所望のDNA領域を増幅した。
【0154】
プライマー:GL6−N/EcoRI(5’ gcc GAA TTC AAG CCC ACC GAG AAC AAC GAA 3’)(配列番号:13)、および
プライマー:GL26C−TAA/PstI(5’ ggc CTG CAG GTC ACC ACC GGC CCC CTT GAT 3’)(配列番号:14)
【0155】
得られた断片をPCR精製キット(キアゲン社製)で精製し、常法により制限酵素EcoRI/PstIにて消化した後、実施例1で構築したpPICZα −hgLinkerの制限酵素EcoRI/PstI部位に連結することによって、図2に示す酵母発現ベクターpPICZα −hgGL−Hを構築した。
【0156】
なお、DNA シークエンサー(ABI社製)により塩基配列を決定することにより、挿入DNAの確認を行った。発現ベクターpPICZα −hgGL−Hに挿入されたhg−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質をコードするDNA配列を配列番号:3に示す。また、発現ベクターpPICZα−hgGL−Hに挿入されたhg−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質のアミノ酸配列を配列番号:4に示す。
【0157】
酵母での発現は、酵母X33株(インビトロジェン社製)に,常法のエレクトロポレーション装置(バイオラッド社製)により、発現ベクターpPICZα−hgGL−Hを導入し、Zeocin (100 mg/ml)を含むYM培地(Difco社製)の寒天培地で30℃で2日間培養することにより、形質転換体を得た。10mlのZeocin (100 mg/ml)を含むYM培地(Difco社製)液体培地で、30℃で18 時間培養し、遠心後菌体分離を行ない、清上液に発光基質セレンテラジン(チッソ株式会社、以下同じ)を添加し、発光活性を確認した。
【0158】
実施例3 大腸菌発現用ガウシアルシフェラーゼ発現ベクターの構築
大腸菌での発現を目的としたヒンジ配列を有するガウシアルシフェラーゼ発現ベクターの構築は以下の通りである。実施例2で構築した発現ベクターpPICZα−hgGL−Hを常法により制限酵素Asp718I/XbaIにて消化した後、pColdII(タカラバイオ社製)の制限酵素Asp718I/XbaI部位に挿入することにより、図3に示す発現ベクターpCold−hgGLを構築した。
【0159】
なお、DNA シークエンサー(ABI社製)により塩基配列を決定することにより、挿入DNAの確認を行った。発現ベクターpCold−hgGLに挿入された、hg−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質をコードするDNA配列を配列番号:5示す。発現ベクターpCold−hgGLに挿入された、hg−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質のアミノ酸配列を配列番号:6に示す。
【0160】
実施例4 ヒンジ配列とアビジンタグ配列を有する大腸菌発現用ガウシアルシフェラーゼ発現ベクターの構築
ヒンジ配列とアビジンタグ配列を有するガウシアルシフェラーゼ発現ベクターの構築は以下の通りである。実施例3で構築した発現ベクターpCold−hgGLの制限酵素部位であるXhoI/XbaI部位に、化学合成したマルチクローニング配列をもつ以下のリンカーAvitag−Xho/Xba−Fおよび AviTag−Xho/Xba−Rを挿入することにより、図4に示す新規発現ベクターpCold−hgA−GLを構築した。
【0161】
Avitag−Xho/Xba−F (5’ TC GAG ggt ctg aac gac atc ttc gaa gct cag aaa atc gaa tgg cac gaa T 3’)(配列番号:15)
AviTag−Xho/Xba−R (5’ CT AGA ttc gtg cca ttc gat ttt ctg agc ctc gaa gat gtc gtt cag acc C 3’)(配列番号:16)
【0162】
なお、DNA シークエンサー(ABI社製)により塩基配列を決定することにより、挿入DNAの確認を行った。発現ベクターpCold−hgA−GLに挿入された、hg−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質をコードするDNA配列を配列番号:7に示す。発現ベクターpCold−hgA−GLに挿入された、hg−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質のアミノ酸配列を配列番号:8に示す。
【0163】
実施例5 ヒンジ配列を有する組換えガウシアルシフェラーゼの大腸菌での発現、精製法
ヒンジ配列を有する組換えガウシアルシフェラーゼ(hg−ガウシアルシフェラーゼ)は、発現ベクターpCold−hgGLを用いて大腸菌にて組換えhg−ガウシアルシフェラーゼを発現させ、ニッケルキレートカラムクロマトグラフ法、次いで疎水性カラムクロマトグラフ法にて、組換えhg−ガウシアルシフェラーゼを精製した。
【0164】
1)ヒンジ配列を有する組換えガウシアルシフェラーゼの大腸菌での発現
大腸菌において組換えhg−ガウシアルシフェラーゼを発現させるために、実施例3で構築したガウシアルシフェラーゼ遺伝子発現ベクター pCold−hgGLを用いた。常法により大腸菌BL21株に導入し、得られた形質転換株をアンピシリン(50μg/ml)を含有する10mlのLB液体培地(水1リットルあたり、バクトトリプトン10g、イーストイクストラクト5g、塩化ナトリウム5g、pH7.2)に植菌し、37℃で18時間培養を行った。次いで、その培養物を新たなLB液体培地400ml x 5本(総量2000mL)に添加して37℃で5時間培養した後、氷水上で冷却して、イソプロピル−β−D(−)−チオガラクトピラノシド(IPTG、和光純薬工業社製)を最終濃度0.1mMになるように培養液に添加し、15℃で17時間培養を行った。培養後、菌体を遠心回収(5,000rpm、5分)し、蛋白質抽出の出発材料とした。
【0165】
2)培養菌体上清からのhg−ガウシアルシフェラーゼの抽出およびニッケルキレートゲルカラムクロマトグラフ法
集菌した培養菌体を200mlの50mM Tris−HCl (pH7.6)で懸濁し、氷冷下で超音波破砕処理(ブランソン社製、Sonifier model cycle 250)を3分間、3回行い、その菌体破砕液を10,000 rpm(12,000×g)で4 ℃、20分間遠心した。得られた可溶性画分を、50mM Tris−HCl (pH 7.6)で平衡化したニッケルキレートカラム(アマシャムバイオサイエンス社、カラムサイズ:直径2.5×6cm)に供しhg−ガウシアルシフェラーゼを吸着させた。300mlの50mM Tris−HCl (pH7.6)で洗浄後、0.1Mイミダゾール(和光純薬工業社製)によりhg−ガウシアルシフェラーゼを溶出した。800mLの培養菌体より50.4mgのhgGLを得た。SDS−PAGE分析の結果、純度は95%以上であった。
【0166】
3)hgガウシアルシフェラーゼの疎水性カラムクロマトグラフ法による精製
ニッケルキレートゲルカラムより溶出したフラクション63ml(50.4mg蛋白質)に、最終濃度が1.2Mになるように(NH4)2SO4を加え、10,000 rpm(12,000×g)で4 ℃、20分間遠心した。得られた可溶性画分を、1.2M (NH4)2SO4、2mM EDTAを含む10 mM Tris−HCl (pH 7.6)で平衡化したブチルセファロースカラム(アマシャムバイオサイエンス社、カラムサイズ:直径2.5×5.5cm)に供し、hgガウシアルシフェラーゼを吸着させた。1.2M (NH4)2SO4、2mM EDTAを含む10 mM Tris−HCl (pH 7.6)で110 mlで洗浄後、0.4M (NH4)2SO4、2mM EDTAを含む10 mM Tris−HCl (pH 7.6)によりhgガウシアルシフェラーゼを溶出した。6.5mgのhgガウシアルシフェラーゼを得た。SDS−PAGE分析の結果、純度は95%以上であった。
【0167】
4)蛋白定量
蛋白質濃度は、Bradford法にもとづく市販のキット(バイオラッド社製)を用い、ウシ血清アルブミン(ピアス社製)を標準物質として決定した。
それぞれの精製過程画分について、還元状態で12%ポリアクリルアミドゲルを用いたSDS−PAGEによる分析を行った。図5に示すように、最終精製画分は分子量22kDa蛋白質に相当する単一バンドが検出され、純度95%以上であると明らかとなった。表1に示すように、2000mLの培養菌体の可溶性画分からのhgガウシアルシフェラーゼの活性回収率は38.4%、収量6.5mgであった。
【0168】
5)発光活性の測定
ガウシアルシフェラーゼの発光測定は、基質セレンテラジン0.5μgを含む、0.1mlの0.01% Tween20、10 mM EDTA(和光純薬社製)を含むPBS(シグマ社製;0.137M塩化ナトリウム、0.0027M塩化カリウム、pH7.4、以降PBST−Eと表記)に、ガウシアルシフェラーゼ溶液1μlを添加後、発光測定装置Luminescencer−PSN AB2200(アトー社製)で10秒間発光活性を測定した。発光活性は、最大発光値(Imax)で示した。
【0169】
【表1】
【0170】
実施例6 アビジンタグ配列を有する組換えガウシアルシフェラーゼの大腸菌での発現、精製法
アビジンタグ配列を有する組換えガウシアルシフェラーゼ(hgAガウシアルシフェラーゼ)は、発現ベクター pCold−hgAGLを用いて大腸菌にて組換えhgAガウシアルシフェラーゼを発現させ、ニッケルキレートカラムクロマトグラフ法、次いで疎水性クロマトグラフ法にて、組換えhgAガウシアルシフェラーゼを精製した。
【0171】
1)アビジンタグ配列を有する組換えhgAガウシアルシフェラーゼの大腸菌での発現
大腸菌において組換えhgAガウシアルシフェラーゼを発現させるために、実施例4で構築したガウシアルシフェラーゼ遺伝子発現ベクター pCold−hgAGLを用いた。常法により大腸菌BL21株に導入し、得られた形質転換株をアンピシリン(50μg/ml)を含有する10ml×2本のLB液体培地(水1リットルあたり、バクトトリプトン10g、イーストイクストラクト5g、塩化ナトリウム5g、pH7.2)に植菌し、37℃で18時間培養を行った。次いで、その培養物を新たなLB液体培地400ml x 2本(総量800mL)に添加して37℃で3時間培養した後、氷水上で冷却して、イソプロピル−β−D(−)−チオガラクトピラノシド(IPTG、和光純薬工業社製)を最終濃度0.1mMになるように培養液に添加し、15℃で19時間培養を行った。培養後、菌体を遠心回収(5,000rpm、5分)し、蛋白質抽出の出発材料とした。
【0172】
2)培養菌体上清からのhgAガウシアルシフェラーゼの抽出およびニッケルキレートカラムクロマトグラフ法
集菌した培養菌体を80mlの50mM Tris−HCl (pH 7.6)で懸濁し、氷冷下で超音波破砕処理(ブランソン社製、Sonifier model cycle 250)を3分間、4回行い、その菌体破砕液を10,000 rpm(12,000×g)で4 ℃、20分間遠心した。得られた可溶性画分を、50mM Tris−HCl (pH 7.6)で平衡化したニッケルキレートカラム(アマシャムバイオサイエンス社、カラムサイズ:直径2.5×6cm)に供しhgAガウシアルシフェラーゼを吸着させた。50mM Tris−HCl (pH7.6)で洗浄後、0.1Mイミダゾール(和光純薬工業社製)によりhgAガウシアルシフェラーゼを溶出した。800mLの培養菌体より19.9mgの蛋白質を得た。
【0173】
3)hgAガウシアルシフェラーゼの疎水性カラムクロマトグラフ法
ニッケルキレートカラムより溶出したフラクション39ml(19.9mg蛋白質)に、最終濃度が1.2Mになるように(NH4)2SO4を加え、10,000 rpm(12,000×g)で4 ℃、20分間遠心した。得られた可溶性画分を、1.2M (NH4)2SO4、2mM EDTAを含む10 mM Tris−HCl (pH 7.6)で平衡化したブチルセファロースカラム(アマシャムバイオサイエンス社、カラムサイズ:直径2.5×5.5cm)に供し、hgAガウシアルシフェラーゼを吸着させた。1.2M (NH4)2SO4、2mM EDTAを含む10 mM Tris−HCl (pH 7.6)で洗浄後、0.4M (NH4)2SO4、2mM EDTAを含む10 mM Tris−HCl (pH 7.6)によりhgAガウシアルシフェラーゼを溶出した。0.92mgのhgAガウシアルシフェラーゼを得た。SDS−PAGE分析の結果、純度は95%以上であった。
【0174】
4)蛋白定量
蛋白量濃度は、Bradford法にもとづく市販のキット(バイオラッド社製)を用い、ウシ血清アルブミン(ピアス社製)を標準物質として用いて決定した。
それぞれの精製過程画分について、還元状態で12%ポリアクリルアミドゲルを用いたSDS−PAGEによる分析を行った。図6に示すように、最終精製画分は分子量29kDa蛋白質に相当する単一バンドが検出され、純度95%以上であった。表2に示すように、800mLの培養菌体の可溶性画分からのhgAガウシアルシフェラーゼの活性回収率は15.8%、収量0.92mgを得た。
【0175】
5)発光活性の測定
ガウシアルシフェラーゼの発光測定は、基質セレンテラジン0.5μgを含む、0.1mlの0.01% Tween20、10 mM EDTA(和光純薬社製)を含むPBS(シグマ社製;0.137M塩化ナトリウム、0.0027M塩化カリウム、pH7.4、以降PBST−Eと表記)に、ガウシアルシフェラーゼ溶液1μlを添加後、発光測定装置Luminescencer−PSN AB2200(アトー社製)で10秒間発光活性を測定した。発光活性は、最大発光値(Imax)で示した。
【0176】
【表2】
【0177】
実施例7 マレイミド活性化ビオチンによるビオチン化hgガウシアルシフェラーゼの調製
1mM EDTAを含んだPBS溶液(以下PBS−Eと記載)500μlに、PBS−Eにて1mMに調製したマレイミド活性化ビオチン(ピアス社製、EZ−Link PEO−Maleimide− activated Biotin、スペーサーの長さ:29.1オングストローム)4.4μl(4.4 nmol)を加え、次いで精製したhgガウシアルシフェラーゼ500μl(2.2 nmol)を添加して修飾反応を開始させ、暗所で25℃にて一晩反応を行った。システイン溶液を最終濃度0.2mM加えて室温にて30分静置させ、未反応のマレイミド活性化ビオチンを不活化させた。不活化マレイミドビオチン試薬はアミコンウルトラカラム(ミリポア社製)を用いて除去し、ビオチン化hgガウシアルシフェラーゼを調整した。
また、上述のようにして得られたビオチン化hgガウシアルシフェラーゼと、反応前のhgガウシアルシフェラーゼの発光活性を比較した結果、ビオチン化による発光活性への影響はほとんどなく、ビオチン化hgガウシアルシフェラーゼは98%以上の発光活性を保持していた。
【0178】
実施例8 ビオチン化hgガウシアルシフェラーゼの蛋白質量と発光活性の相関
ビオチン化hgガウシアルシフェラーゼを検出用プローブとして使用するためには、蛋白量と発光活性とが直線性を示すことが必要である。ビオチン化hgガウシアルシフェラーゼの濃度を100フェムトグラムから1ナノグラムとして、基質セレンテラジン(0.5 ng/μl)100μlを注入し、発光測定装置Centro LB960(ベルトールド社製)で発光活性を測定した。発光活性の最大値(Imax)と蛋白質濃度の相関を図7に示した。発光強度とビオチン化hgガウシアルシフェラーゼとの間に直線性の相関が認められた。この結果から、ビオチン化hgガウシアルシフェラーゼの量を、発光によって定量することが可能であることが示された。
【0179】
実施例9 ビオチン化hgガウシアルシフェラーゼを用いたα−フェトプロテイン(AFP)の発光イムノアッセイ
1)抗−フェトプロテイン抗体(抗−AFP抗体)のコーティング法
抗−AFP抗体(日本医学臨床検査研究所製、クローンNo.6D2、サブクラスIgG2a−κ、以下「6D2」と記載)を、0.05%アジ化ナトリウムを含む50mM炭酸緩衝液(pH9.6)にて5μg/mlに調製し、96穴マイクロプレート(Nunc社製、#437796)に100μl/ウェル分注し、室温にて一晩静置してコートした。静置後、炭酸緩衝液を除去し、150mM NaCl(和光純薬工業製)、20mM Tris−HCl(和光純薬工業製)(以降TBSと記載)に1%牛血清アルブミン(シグマ製、以下BSAと記載)、2mM EDTA(EDTA・2Na、同仁化学研究所製)、0.05%アジ化ナトリウム(和光純薬工業製)を含む溶液(以降ポストコーティング溶液と記載)を200μl/ウェル分注し、4℃にて一晩静置した。
【0180】
2)ビオチン化hgガウシアルシフェラーゼによるAFPの検出法
静置後、ポストコーティング溶液を除去し、0.01% Tween 20と2mM EDTAを含有したTBS(TBST−Eと略す)340μlで3回洗浄した後、10% ブロックエース(雪印乳業社製)、2mM EDTAを含有したTBSにて、0.0125ng/mlから125ng/mlに希釈調製したα−フェトプロテイン(Dako製、AFPと記載)を96穴マイクロプレートに50μl/ウェル分注し、さらに74.5ng/mlに希釈調製したビオチン化抗−AFP抗体(日本医学臨床検査研究所製、クローンNo.1D5、サブクラスIgG1−κ、以下1D5と記載)を50μl/ウェル分注し、30℃にて1時間静置した。前記プレートから反応溶液を除去し、340μlのTBST−Eで3回洗浄した。10% ブロックエース、0.01%Tween20(バイオラッド社製)、10mM EDTAを含有するPBS(以下PBSE−TBと記載)にて200pmol/mlに希釈調製したストレプトアビジン50μlと、400pmol/mlに希釈調製したビオチン化hgガウシアルシフェラーゼ50μlを混合し、室温にて30分反応させた後、PBSE−TBにて80倍希釈した溶液を前記プレートに100μl/ウェル分注し、30℃にて30分静置した。反応溶液を除去し、340μlのTBST−Eで3回洗浄した後、PBST−Eで0.5ng/μlに調製した基質セレンテラジンを、発光測定装置Centro LB960(ベルトールド社製)にて100μl/ウェル注入し、発光強度を0.1秒間隔で10秒間測定し、最大発光強度値(Imax)を算出した。求めたImaxとAFPの濃度よりAFPの標準曲線を図8に示した。
【0181】
実施例10 マレイミド活性化ビオチンによるビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼの調製
650μlのPBS−Eに、PBS−Eにて1mMに調製したマレイミド活性化ビオチン(ピアス社製、EZ−Link PEO−Maleimide− activated Biotin、スペーサーの長さ:29.1オングストローム)4.2μl(4.2nmol)を加え、次いで精製したhgAガウシアルシフェラーゼ350μl(2.1nmol)を添加して修飾反応を開始させ、暗所で25℃にて2時間反応を行った。システイン溶液を最終濃度0.2mM加えて室温にて30分静置させ、未反応のマレイミド活性化ビオチンを不活化させた。不活化マレイミドビオチン試薬はアミコンウルトラカラム(ミリポア社製)を用いて除去し、ビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼを調製した。
また、上述のようにして得られたビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼと、反応前のhgAガウシアルシフェラーゼの発光活性を比較した結果、ビオチン化による発光活性への影響はほとんどなく、ビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼは98%以上の発光活性を保持していた。
【0182】
実施例11 ビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼの定量性
ビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼを検出用プローブとして使用するためには、蛋白量と発光量とが直線性を示すことが必要である。ビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼ変異体の濃度を200フェムトグラムから200ピコグラムとして、基質セレンテラジン(0.5 ng/μl)100μlを注入し、発光測定装置Centro LB960(ベルトールド社製)で発光活性を測定した。発光活性の最大値(Imax)と蛋白質濃度の相関を図9に示した。発光強度とビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼとの間に直線性の相関が認められた。この結果から、ビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼの量を、発光によって定量することが可能であることが示された。
【0183】
実施例12 ビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼを用いたα−フェトプロテイン(AFP)の発光イムノアッセイ
1)抗−フェトプロテイン抗体(抗−AFP抗体)のコーティング法
抗−AFP抗体(6D2)を、0.05%アジ化ナトリウムを含む50mM炭酸緩衝液(pH9.6)にて5μg/mlに調製し、96穴マイクロプレート(Nunc社製、#437796)に100μl/ウェル分注し、室温にて一晩静置してコートした。静置後、炭酸緩衝液を除去し、ポストコーティング溶液を200μl/ウェル分注し、4℃にて一晩静置した。
【0184】
2)ビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼによるAFPの検出法
静置後、ポストコーティング溶液を除去し、340μlのTBST−Eで3回洗浄した後、10% ブロックエース、2mM EDTAを含有したTBSにて、0.0125ng/mlから125ng/mlに希釈調製したAFPを96穴マイクロプレートに50μl/ウェル分注し、さらに74.5ng/mlに希釈調製したビオチン化抗−AFP抗体(1D5)を50μl/ウェル分注し、30℃にて1時間静置した。前記プレートから反応溶液を除去し、340μlのTBST−Eで3回洗浄した。PBSE−TBにて200pmol/mlに希釈調製したストレプトアビジン50μlと、400pmol/mlに希釈調製したビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼ50μlを混合し、室温にて30分反応させた後、PBSE−TBにて80倍希釈した溶液を前記プレートに100μl/ウェル分注し、30℃にて30分静置した。反応溶液を除去し、340μlのTBST−Eで3回洗浄した後、PBST−Eで0.5ng/μlに調製した基質セレンテラジンを、100μl/ウェル注入し、発光測定装置Centro LB960にて、発光強度を0.1秒間隔で10秒間測定し、最大発光強度値(Imax)を算出した。求めたImaxとAFPの濃度よりAFPの標準曲線を図10に示した。
【0185】
実施例13:hgAガウシアルシフェラーゼ標識抗体の調製法
1)スルフヒドリル反応性抗体(マレイミド化抗体)の製造(抗−AFP抗体とマレイミド基を有する架橋試薬との結合)
50μg(0.3nmol)の抗−AFP抗体(日本医学臨床検査研究所製、クローンNo.1D5、サブクラスIgG1−κ、以下「1D5」と言うことがある)を、78.3μlの0.1mM EDTAを含む66mMリン酸緩衝液(pH7.4、以降「緩衝液A」と記載)に溶解したものに、緩衝液Aにて1mMに調製したスルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(スルホ−SMCC、PIERCE社)を3μl(スルホ−SMCC 3nmol、1D5/スルホ−SMCC=1/10)加え、4℃にて2時間反応させた。反応後、10mMグリシンを1μl(10nmol)加え25℃にて10分以上静置して、反応を停止した。不活性化スルホ−SMCCをアミコンウルトラ−4スピンカラム(ミリポア社製、分画分子量10,000)を用いて4℃、6000rpmにて15分間遠心して(日立製作所製、CR20B2)除去し、抗−AFP抗体とマレイミド基を有する架橋試薬との結合体(以下「マレイミド化1D5」と言うことがある。)を得た。E1%280nm=14から算出したマレイミド化1D5の回収率は70.6%(0.24nmol、35.3μg)であった。
【0186】
2)hgAGLとスルフヒドリル反応性抗体(マレイミド化1D5)との反応
得られた0.24nmolのマレイミド化1D5に、精製hgAガウシアルシフェラーゼ(以降、hgAGLと言うことがある)を0.72nmol加え、4℃にて一晩反応させた。反応後、10mMシステイン水溶液を1μl(10nmol)加え、hgAGLとマレイミド化1D5との結合体(以下「hgAGL−Ab1D5」と言うことがある。)を得た。
【0187】
hgAGL−Ab1D5に発光活性の低下はほとんど起こらず、96%の発光活性を保持していた。得られたhgAGL−Ab1D5を還元条件下で,12%分離ゲル(テフコ社製)を用いてSDS−PAGE分析に供した。その結果、hgAGL(29kDa)と1D5由来のH鎖(55kDa)が結合して生成した84kDaにバンドを確認した。
【0188】
実施例14:hgAGL−Ab1D5の定量性
hgAGL−Ab1D5を検出用プローブとして使用するためには、蛋白量と発光量とが直線性を示すことが必要である。hgAGL−Ab1D5を3ピコグラムから3000ピコグラムとして、基質セレンテラジン(0.5μg/ml)100μlを注入し、発光測定装置Centro LB960(ベルトールド社製)で発光活性を測定した。発光活性の最大値(Imax)と蛋白質濃度の相関を図11に示した。発光強度とhgAGL−Ab1D5との間に直線性の相関が認められた。この結果から、hgAGL−Ab1D5の量を、発光によって定量することが可能であることが示された。
【0189】
実施例15:hgAGL−Ab1D5によるAFPの発光イムノアッセイ
1)抗−AFP抗体のコーティング法
抗−AFP抗体(クローンNo.6D2、サブクラスIgG2a−κ、日本医学臨床検査研究所、以下「6D2」と言うことがある。)を、0.05%アジ化ナトリウムを含む50mM 炭酸緩衝液(pH9.6)にて5μg/mlに調製し、96穴マイクロプレート(Nunc社製 #437796)に100μl/ウェル分注し、25℃にて一晩静置してコートした。
【0190】
2)ポストコーティング法
静置後、炭酸緩衝液を除去し、1%牛血清アルブミン(シグマ社)、2mM EDTA(EDTA・2Na、同仁化学研究所)、0.05%アジ化ナトリウム(和光純薬工業)を含む150mM NaCl(和光純薬工業)、20mM Tris−HCl(和光純薬工業)(以降TBSと記載)(以降ポストコーティング溶液と記載)を200μl/ウェル分注、4℃にて一晩静置した。
【0191】
3)AFPとhgAGL−Ab1D5の反応法
ポストコーティング溶液を除去し、340μlのTBST−Eで3回洗浄した後、10%ブロックエース(大日本製薬)、5mM EDTAを含むTBS(以降希釈液と記載)で110μg/ml AFP(Dako)を希釈、10pg/mlから200ng/mlまでの希釈系列を作製し、50μl/ウェル分注し、更に希釈液で74.5ng/mlに調製したhgAGL−Ab1D5を50μl/ウェル分注後、25℃にて1時間静置した。
【0192】
4)発光の測定法
静置後、反応液を除去し、340μlのTBST−Eで3回洗浄した後、PBST−Eにて0.5μg/mlに調製した基質セレンテラジンを100μl/ウェル注入し、発光測定装置Centro LB960(ベルトールド社製)にて、発光強度を0.1秒間隔で10秒間測定し、最大発光強度値(Imax)を算出した。
【0193】
hgAGL−Ab1D5を用いたAFPの生物発光イムノアッセイによるスタンダードカーブを図12に示した。その結果、AFPの検出限界は4×10−2ng/ml、ダイナミックレンジは4×10−2〜102ng/mlを示し、イムノアッセイに優れていることが示された。
【0194】
実施例16:蛍光標識化ガウシアルシフェラーゼの調製法
精製hgガウシアルシフェラーゼ2.2 nmolを10mM EDTAを含むPBS(シグマ社製;0.137M塩化ナトリウム、0.0027M塩化カリウム、pH7.4)の1 mlとし、ジメチルホルムアミドに溶解したフルオレセイン−5−マレイミド (ピアス社製)22nmol添加後、4℃で16時間反応させる。反応溶液をアミコンウルトラ−4スピンカラム(ミリポア社製、分画分子量10,000)を用いて4℃、6,000rpmにて10分間遠心して、濃縮後、10mM EDTA及び0.01%Tween20を含むPBS溶液2mlで2回洗浄後、全量を1mlとする。蛍光標識ガウシアルシフェラーゼ活性の回収率は、92%であった。
【0195】
実施例17:蛍光標識化ガウシアルシフェラーゼによる生物発光エネルギー移動法
10mMEDTA及び0.01%Tween20を含むPBS溶液0.99mlに、5μlのエタノールに溶解したセレンテラジン5μgを添加した後、5μlの蛍光標識ガウシアルシフェラーゼ1μg添加することにより、発光反応を開始すると同時に、発光スペクトルをJasco (日本分光株式会社製)のFP−6500の励起光をオフにして測定した。測定条件は、蛍光用石英セル(光路長10mm)を用い、バンド幅:20mm、レスポンス:0.2秒、走査速度:2000nm/分、22〜25℃で行なった。測定スペクトル結果を図13にしめした。ガウシアルシフェラーゼのみの発光は、467nmの最大のみを示すが、蛍光標識ガウシアルシフェラーゼの場合、新たに510nmに新規ピークが生成する。これは、ガウシアルシフェラーゼによるセレンテラジン酸化の結果生じる発光エネルギーが、ガウシアルシフェラーゼに結合している蛍光色素フルオレセインへのエネルギー移動の結果生じる為である。そのエネルギー移動効率は、約50%と推定される。
【0196】
参考例1:ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142C発現ベクターの構築
ガウシアルシフェラーゼ遺伝子とアポイクオリンの142番目のセリン残基をシステイン残基に置換したアポイクオリン−S142C遺伝子を有するガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142C融合遺伝子発現ベクターの構築は以下の通りである。
【0197】
ガウシアルシフェラーゼ遺伝子(hGL遺伝子)は、ガウシアルシフェラーゼ遺伝子を有するpcDNA3-hGL(LUX社製)から、PCR法により調製した。アポイクオリンの142番目のセリン残基をシステイン残基に置換したアポイクオリン−S142C遺伝子は、アポイクオリン遺伝子を有するpAQ440(特開昭61-135586号公開公報参照)のHindIII-EcoRI 領域をpUC9のベクターにサブクローニングして得たpAM-HEから、PCR法により調製した。発現ベクターとしては、pCold II(タカラバイオ社)を使用した。
【0198】
アポイクオリンの142番目のセリン残基のシステイン残基への置換は以下の手順で行った。pAM-HEを鋳型として以下の2種類のPCRプライマー:AQ-20N/XhoIおよびAQ-S142C-Rを用いて、PCRキット(タカラバイオ社製)にてPCR(サイクル条件25サイクル;1分/94℃、1分/50℃、1分/72℃)を実施して、所望のDNA領域を増幅した。
【0199】
AQ-20N/XhoI(5’ ccg CTC GAG ACA TCA GAC TTC GAC AAC CCA 3’;XhoI制限酵素部位はアンダーライン)(配列番号:21)、
AQ-S142C-R(5’ ATC TTC GCA TGA TTG GAT GAT3’)(配列番号:22)。
【0200】
同様に以下の2種類のPCRプライマー:AQ-S142C-FおよびAEQ-C-PstIを用いて、PCRキット(タカラバイオ社製)にてPCR(サイクル条件25サイクル;1分/94℃、1分/50℃、1分/72℃)を実施して、所望のDNA領域を増幅した。
【0201】
AQ-S142C-F(5’ CAA TCA TGC GAA GAT TGC GAG 3’)(配列番号:23)、
AEQ-C-PstI(5’ cgg CTG CAG TTA GGG GAC AGC TCC ACC GTA GAG CTT 3’ ;PstI制限酵素部位はアンダーライン)(配列番号:24)
【0202】
得られた2種類のPCR産物を鋳型として、PCRプライマー:AQ-20N/XhoI(配列番号:21)およびAEQ-C-PstI(配列番号:24)を用いて、PCRキット(タカラバイオ社製)にてPCR(サイクル条件25サイクル;1分/94℃、1分/50℃、1分/72℃)を実施して、142番目のセリン残基をシステイン残基に置換したアポイクオリン遺伝子を得た。得られた断片をPCR精製キット(キアゲン社製)で精製し、常法により制限酵素XhoI/PstIにて消化した後、pBluescript II SK (+)(Straragene社)の制限酵素XhoI/PstI部位に連結することによって、ベクターpBlue-AQ-S142Cを構築した。
【0203】
次いで、ガウシアの遺伝子はpcDNA3-hGL(プロルミ社製)を鋳型として以下の2種類のPCRプライマー:GL-25N/Kpn-EcoRIおよびGL-24N-TAA/XhoIを用いて、PCRキット(タカラバイオ社製)にてPCR(サイクル条件25サイクル;1分/94℃、1分/50℃、1分/72℃)を実施して、ガウシア遺伝子を増幅した。
【0204】
GL-25N/Kpn-EcoRI(5’ ggc GGT ACC GAA TTC AAG CCC ACC GAG AAC AAC 3’;Asp718I制限酵素部位はアンダーライン)(配列番号:25)、
GL-24N-TAA/XhoI(5’ ccg CTC GAG GTC ACC ACC GGC CCC CTT GAT 3’ ;XhoI制限酵素部位はアンダーライン)(配列番号:26)
【0205】
得られた断片をPCR精製キット(キアゲン社製)で精製し、常法により制限酵素Asp718I/XhoIにて消化した後、pBlue-AQ-S142Cの制限酵素Asp718I/XhoI部位に連結することによって、ベクターpBlue-GL-AQ-S142Cを構築した。
【0206】
このベクターpBlue-GL-AQ-S142Cを常法により制限酵素EcoRI/PstIにて消化した後、pColdIIの制限酵素EcoRI/PstI部位に連結することによって、発現ベクターpCold-GL-AQ-S142Cを構築した(図14)。なお、DNA シークエンサー(ABI社製)により塩基配列を決定することにより、挿入DNAの確認を行った。
【0207】
挿入DNAの塩基配列を配列番号:27に、挿入DNAがコードする融合蛋白質のアミノ酸配列を配列番号:28に示す。
【0208】
参考例2:組換えガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142C融合蛋白質の精製法
組換えガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142C融合蛋白質は、以下に示すように、発現ベクターpCold-GL-AQ-S142Cを用いて、大腸菌にて組換えガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cを発現させ、ニッケルキレートカラムクロマトグラフ法にて精製を行い、アポイクオリン部分を再生することで、組換えガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142Cを得た。
【0209】
1)組換えガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリンS142Cの大腸菌での発現方法
大腸菌において組換えガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cを発現させるために、ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142C遺伝子発現ベクターpCold-GL-AQ-S142Cを用いた。このベクターを常法により大腸菌BL21株に導入し、得られた形質転換株をアンピシリン(50μg/ml)を含有する10mlのLB液体培地(水1リットルあたり、バクトトリプトン10g、イーストイクストラクト5g、塩化ナトリウム5g、pH7.2)に植菌し、37℃で18時間培養を行った。次いで、その培養物を新たなLB液体培地400ml x 5本(総量2L)に添加して37℃で5時間培養した後、氷水上で冷却して、イソプロピル−β−D(−)−チオガラクトピラノシド(IPTG、和光純薬工業社製)を最終濃度0.2mMになるように培養液に添加し、15℃でさらに17時間培養を行った。培養後、菌体を遠心回収(5,000rpm、5分)し、蛋白質抽出の出発材料とした。
【0210】
2)培養菌体からのガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cの抽出方法
集菌した培養菌体を100mlの50mM Tris-HCl (pH7.6)で懸濁し、氷冷下で超音波破砕処理(ブランソン社製、Sonifier model cycle 250)を3分間、3回行い、その菌体破砕液を10,000 rpm(12,000×g)で4 ℃、20分間遠心し、不溶性沈殿画分を得た。得られた不溶性沈殿画分を、100mlの6M尿素を含む50mM Tris-HCl (pH7.6)に懸濁し、この懸濁液を氷冷下で超音波破砕処理を行い、10,000 rpm(12,000×g)で4 ℃、10分間遠心した。得られた尿素可溶性画分をガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142C精製の出発材料とした。
【0211】
3)尿素可溶性画分からの組換えガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cの精製方法
組換え発現蛋白質は、アミノ末端に6個のヒスチジン配列を有するので、ニッケルキレートゲルによるアフィニティクロマト法により精製が可能である。
まず、6M尿素可溶性画分を、6M尿素を含む50mM Tris-HCl (pH7.6)で平衡化したニッケルキレートカラム(アマシャムバイオサイエンス社、カラムサイズ:直径2.5×6cm)に供し、ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cを吸着させた。ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142C吸着カラムを、150mlの6M尿素を含む50mM Tris-HCl (pH7.6)で洗浄後、6M尿素と0.1Mイミダゾール(和光純薬工業社製)を含む50mM Tris-HCl (pH7.6)でガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cを溶出した。蛋白量濃度は、Bradford法にもとづく市販のキット(バイオラッド社製)を用い、また、ウシ血清アルブミン(ピアス社製)を標準物質として用いて決定した。2Lの培養菌体より106mgのガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cが得られた。
【0212】
4)ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cからガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142Cへの調製法
ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cからのガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142Cへの再生は以下に示すように、ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cを、まず還元剤2−メルカプトエタノールで処理後、発光基質(セレンテラジン)と接触させることによりイクオリンを再生する。その後、透析処理にて還元剤を除去して、ガウシアルシフェラーゼをリフォールディングし活性型に変換させることにより、ガウシアルシフェラーゼ活性およびイクオリン活性を有するガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142C蛋白質を得た。
【0213】
具体的には、0.1M イミダゾールおよび6M尿素によりニッケルキレートカラムより溶出したガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリンS142C溶液(50μg/10μl)を10mM EDTAを含む30mM Tris-HCl (pH7.6) 990μl に溶解し、これを2-メルカプトエタノールと最終濃度が0.35%(v/v)になるように混合する。37℃で30分放置した後、ガウシアルシフェラーゼの発光活性が失活した事を確認し、エタノールに溶解した5μg基質セレンテラジン(1μg/μl)を添加して、4℃にて一晩イクオリンの再生反応を行った。次いで、得られたイクオリン再生溶液を4Lの10mM EDTAを含む100mM炭酸アンモニウム溶液(pH8.0)にて4℃で一晩透析を行い、組換えガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142C蛋白質(40μg)を得た。
【0214】
実施例18:発光活性の比較
上記実施例5の3)に記載の方法で得られたhgガウシアルシフェラーゼ、実施例6の3)に記載の方法で得られたhgAガウシアルシフェラーゼ、および上記参考例2の4)に記載の方法で得られた組換えガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142C蛋白質について、各融合蛋白質間での発光活性の比較を行った。具体的には、各融合蛋白質間での発光活性は、実施例5の5)に記載の方法に準じて行った。その結果を、下記表3に示す。
【0215】
表3から、第1の領域とC末端との間の第1の領域を除く部分のアミノ酸残基の数が21〜36残基であるhgガウシアルシフェラーゼおよびhgAガウシアルシフェラーゼは、第1の領域とC末端との間の第1の領域を除く部分のアミノ酸残基の数が188残基である組換えガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142C蛋白質に比べ、約500倍高い発光の比活性を示すことが分かる。
【0216】
【表3】
【0217】
以上の実施例より、本発明のルシフェラーゼ(融合蛋白質)は、高い発光触媒活性を有することが分かる。また、本発明のルシフェラーゼに導入されたシステインのチオール基を介して他の有用な物質(蛍光物質;ビオチン、抗体などのリガンド等)と結合することができるため、生物発光エネルギー移動法や、リガンドに特異的な物質の検出などに利用することができることが分かる。
【配列表フリーテキスト】
【0218】
[配列番号:1]実施例1で作製したヒンジ配列とマルチクローニングサイトを有する発現ベクターpPICZα−hgLinkerのDNA配列を示す。
[配列番号:2]実施例1で作製したヒンジ配列とマルチクローニングサイトを有する発現ベクターpPICZα−hgLinkerのDNA配列にコードされる蛋白質のアミノ酸配列を示す。
[配列番号:3]実施例2で作製した発現ベクターpPICZα−hgGL−Hに挿入された、hg−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質をコードするDNA配列を示す。
[配列番号:4]実施例2で作製した発現ベクターpPICZα−hgGL−Hに挿入された、hg−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質のアミノ酸配列を示す。
[配列番号:5]実施例3で作製した発現ベクターpCold−hgGLに挿入された、hg−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質をコードするDNA配列を示す。
[配列番号:6]実施例3で作製した発現ベクターpCold−hgGLに挿入された、hg−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質のアミノ酸配列を示す。
[配列番号:7]実施例4で作製した発現ベクターpCold−hgA−GLに挿入された、hgA−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質をコードするDNA配列を示す。
[配列番号:8]実施例4で作製した発現ベクターpCold−hgA−GLに挿入された、hgA−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質のアミノ酸配列を示す。
[配列番号:9]実施例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:10]実施例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:11]実施例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:12]実施例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:13]実施例2で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:14]実施例2で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:15]実施例4で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:16]実施例4で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:17]ガウシアルシフェラーゼの触媒部分をコードするDNA配列を示す。
[配列番号:18]ガウシアルシフェラーゼの触媒部分のアミノ酸配列を示す。
[配列番号:19]ヒンジをコードするDNA配列を示す。
[配列番号:20]ヒンジのアミノ酸配列を示す。
[配列番号:21]参考例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:22]参考例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:23]参考例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:24]参考例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:25]参考例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:26]参考例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:27]参考例1で作製した発現ベクターpCold-GL-AQ-S142Cに挿入された、ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142C融合蛋白質をコードするDNA配列を示す。
[配列番号:28]参考例1で作製した発現ベクターpCold-GL-AQ-S142Cに挿入された、ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142C融合蛋白質のアミノ酸配列を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下に示す、融合蛋白質、ポリヌクレオチド、組換えベクター、形質転換体、融合蛋白質の製造方法、融合蛋白質に他の有用な化合物を結合した複合体などに関する。
【背景技術】
【0002】
ガウシアルシフェラーゼは、深海コペポーダ(copepoda)であるガウシア・プリンセス(Gaussia princeps)が産生する分泌酵素であって、酸素と基質(セレンテラジン等のルシフェリン)のみの存在下での発光反応を触媒する単純発光系の酵素である。
【0003】
ガウシアルシフェラーゼが触媒する発光反応では、ATP、マグネシウムイオン等が必須であるホタルルシフェラーゼが触媒する発光反応に比べて、発光反応が単純でかつ強い青光を放つため、ガウシアルシフェラーゼは今後様々な用途での利用が期待されている。
【0004】
ガウシアルシフェラーゼは、アミノ末端に分泌のための17残基のシグナルペプチド配列を有し、触媒部分としてアミノ酸168個から構成されるペプチド配列を有する単純蛋白質である。ガウシアルシフェラーゼは、一分子中に10個のシステインを有し、システインの割合が全体の約6%を占める、非常に特殊なルシフェラーゼである。ガウシアルシフェラーゼをメルカプトエタノールやジチオスレイトール等の還元剤で処理することにより、ガウシアルシフェラーゼの発光触媒活性が完全に失活することから、ガウシアルシフェラーゼの発光触媒活性にとって分子内−S−S−結合が必須であることが報告されている(非特許文献1)。しかし、これまでのところ、ガウシアルシフェラーゼの分子内−S−S−結合部位あるいは遊離のチオール基に関する情報はほとんどない。
【0005】
ガウシアルシフェラーゼの分子内のチオール基を利用してガウシアルシフェラーゼを化学修飾法によりリガンドで直接修飾すること、すなわち、ガウシアルシフェラーゼを構成するアミノ酸由来のチオール基を介してガウシアルシフェラーゼにリガンドを導入し、そして、リガンドを導入したガウシアルシフェラーゼを用いて、ガウシアルシフェラーゼの発光反応を頼りに、リガンドに特異的に結合する物質を検出することが考えられる。しかし、これまでのところ、ガウシアルシフェラーゼを化学修飾法によりリガンドで直接修飾した例は報告されていない。
【0006】
本発明者らは、ガウシアルシフェラーゼを構成するアミノ酸由来のチオール基を介してガウシアルシフェラーゼにリガンドを導入した場合、リガンドを導入したガウシアルシフェラーゼの発光触媒活性が著しく低下することを見いだした。また、チオール基以外にも、ガウシアルシフェラーゼを構成するアミノ酸由来のアミノ基、またはカルボキシル基を介してガウシアルシフェラーゼにリガンドを導入することも試みたが、同様に、ガウシアルシフェラーゼの発光触媒活性が著しく低下するなどした。このように、化学修飾法によりリガンドを導入したガウシアルシフェラーゼで、ガウシアルシフェラーゼの本来の発光強度を維持したままのものを得ることができなかった。これは、ガウシアルシフェラーゼ分子内のアミノ酸由来のチオール基、アミノ基またはカルボキシル基を介してリガンドを導入することで、ガウシアルシフェラーゼの発光反応に関与する蛋白質触媒部位へ影響を与え、発光反応を阻害したためと考えられる。
【0007】
一方、ガウシアルシフェラーゼの分子内あるいは、アミノ末端やカルボキシ末端にシステイン残基を導入した場合は、細胞内での発現蛋白質のリホールディングによる正確な分子内−S−S−結合の形成を阻害すると考えられる。
【0008】
リガンドを導入したガウシアルシフェラーゼとして、唯一、ビオチン化酵素によるビオチン化修飾ガウシアルシフェラーゼのみが報告されている。これは、修飾可能なビオチン認識配列を有する融合ガウシアルシフェラーゼ遺伝子を大腸菌内で発現し、大腸菌内酵素によりビオチン化することで、調製したものである (非特許文献2)。しかしながら、この方法のような生細胞内での酵素的修飾法では、ビオチン化ガウシアルシフェラーゼを均一かつ大量に供給するには難点がある。更に、この方法では、ガウシアルシフェラーゼに導入できるリガンドはビオチンのみであり、アビジン、ストレプトアビジン、酵素、抗体、抗原、核酸、多糖類、レセプター等の他のリガンドや、蛍光物質などをガウシアルシフェラーゼに導入することができない。導入できるリガンドがビオチンのみであるので、その用途も限定される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Inouye, S. & Sahara, Y. (2008) Biochem. Biophys. Res. Commun. 365, 96−101.
【非特許文献2】Verhaegen, M. & Christopoulos, T. K. (2002) Anal. Chem. 74, 4378−4385.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記状況において、化学修飾法により修飾可能であり、高い発光触媒活性を持ち、かつ汎用性が高いルシフェラーゼが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ガウシアルシフェラーゼとチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドとを含む融合蛋白質が、ガウシアルシフェラーゼの発光触媒活性を保持しつつ、化学修飾法により修飾可能であり、汎用性も高いルシフェラーゼであることを見出した。これらの知見に基づいてさらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下に示す、融合蛋白質、ポリヌクレオチド、組換えベクター、形質転換体、融合蛋白質の製造方法、融合蛋白質に他の有用な化合物を結合した複合体などを提供する。
[1](1)以下の(a)〜(d)からなる群から選択される第1の領域:
(a)配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域、
(b)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、
(c)配列番号:18のアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、および
(d)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域;と
(2)チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドのアミノ酸配列からなる第2の領域;と
を含有する、融合蛋白質。
[2] 前記第2の領域が以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域、
(f)配列番号:20のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域、
(g)配列番号:20のアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域、および
(h)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域;
から選択される、上記[1]記載の融合蛋白質。
[3] 前記第2の領域が以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域、
(f)配列番号:20のアミノ酸配列において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域、
(g)配列番号:20のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域、および
(h)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域;
から選択される、上記[2]記載の融合蛋白質。
[4] 前記第1の領域が以下の(a)〜(d)からなる群:
(a)配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域、
(b)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、
(c)配列番号:18のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、および
(d)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域;
から選択される、上記[1]〜[3]のいずれか1項記載の融合蛋白質。
[5](1)前記第1の領域が配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域であり、
(2)前記第2の領域が配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域である、上記[4]記載の融合蛋白質。
[6] さらに、翻訳促進のためのアミノ酸配列および/または精製のためのアミノ酸配列を含有する、上記[1]〜[5]のいずれか1項記載の融合蛋白質。
[7] 配列番号:4、6または8のアミノ酸配列からなる融合蛋白質。
[8] 上記[1]〜[7]のいずれか1項記載の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
[9](1)以下の(a)〜(d)からなる群から選択される第1のコード配列:
(a)配列番号:17の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなるコード配列、
(b)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(c)配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、および
(d)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列;と
(2)チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる第2のコード配列;と
を含有する、ポリヌクレオチド。
[10] 前記第2のコード配列が以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:19の塩基配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(f)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(g)配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード領域、および
(h)配列番号:20のアミノ酸において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード領域;
から選択される、上記[9]記載のポリヌクレオチド。
[11] 前記第2のコード配列が以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:19の塩基配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(f)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(g)配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、および
(h)配列番号:20のアミノ酸において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列;
から選択される、上記[10]記載のポリヌクレオチド。
[12] 前記第1のコード配列が以下の(a)〜(d)からなる群:
(a)配列番号:17の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなるコード配列、
(b)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(c)配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、および
(d)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列;
から選択される、上記[9]〜[11]のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
[13](1)前記第1のコード配列が配列番号:17の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなるコード配列であり、
(2)前記第2のコード配列が配列番号:19の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなるコード配列である、上記[12]記載のポリヌクレオチド。
[14] 配列番号:3、5または7の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
[15] 上記[8]〜[14]のいずれか1項記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
[16] 上記[15]記載の組換えベクターが導入された形質転換体。
[17] 上記[16]記載の形質転換体を培養し、上記[1]〜[7]のいずれか1項記載の融合蛋白質を生成させる工程を含む、上記[1]〜[7]のいずれか1項記載の融合蛋白質の製造方法。
[18] 上記[1]〜[7]のいずれか1項記載の融合蛋白質に、該融合蛋白質の第2の領域のシステイン残基のチオール基を介して、他の有用な化合物を結合した複合体。
[19] 他の有用な化合物が蛍光物質および/または検出すべき物質に特異的なリガンドである、上記[18]記載の複合体。
[20] 上記[1]〜[7]のいずれか1項記載の融合蛋白質を含むキット。
[21] 上記[8]〜[14]のいずれか1項記載のポリヌクレオチド、上記[15]記載の組換えベクターまたは上記[16]記載の形質転換体を含むキット。
[22] 上記[18]または[19]記載の複合体を含むキット。
[23] さらにルシフェリンを含む、上記[20]〜[22]のいずれか1項記載のキット。
[24] ルシフェリンがセレンテラジン類である、上記[23]記載のキット。
[25] セレンテラジン類がセレンテラジンである、上記[24]記載のキット。
[26] 上記[1]〜[7]のいずれか1項記載の融合蛋白質または上記[18]または[19]記載の複合体と、ルシフェリンとを接触させることを含む、発光反応を行う方法。
[27] 上記[1]〜[7]のいずれか1項記載の融合蛋白質または上記[18]または[19]記載の複合体をドナー蛋白質として用いて、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)法を行うことを特徴とする、生理機能の解析または酵素活性の測定方法。
[28] 上記[19]記載の複合体を用いる、リガンドに特異的な物質を測定する方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の融合蛋白質は、化学修飾法により修飾可能であり、汎用性も高いルシフェラーゼである。本発明の好ましい態様の融合蛋白質は、ガウシアルシフェラーゼの発光触媒活性を保持する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明で用いられるヒンジ配列とマルチクローニングサイトを有する発現ベクターpPICZα−hgLinkerを示す概略図である。
【図2】図2は、本発明で用いられる酵母での発現を目的としたhg−ガウシアルシフェラーゼ発現ベクターpPICZα−hgGL−Hを示す概略図である。
【図3】図3は、本発明で用いられる大腸菌での発現を目的としたhg−ガウシアルシフェラーゼ発現ベクターpCold−hg−GLを示す概略図である。
【図4】図4は、本発明で用いられる大腸菌での発現を目的としたhgA−ガウシアルシフェラーゼ発現ベクターpCold−hgA−GLを示す概略図である。
【図5】図5は、hgガウシアルシフェラーゼ可溶性画分の精製過程におけるSDS−PAGE分析の結果を示す図である。レーン1:蛋白質分子量マーカー(テフコ社)、レーン2:pCold−hgガウシアルシフェラーゼを発現させた大腸菌の形質転換株の超音波破砕物を12,000gで20分間遠心して得られた上清(蛋白質量18.5μg)、レーン3:ニッケルキレートカラムからの溶出画分(蛋白質量7.4μg)、レーン4:ブチルカラムからの溶出画分(蛋白質量 1.1μg)。
【図6】図6は、hgAガウシアルシフェラーゼ可溶性画分の精製過程におけるSDS−PAGE分析の結果を示す図である。レーン1:蛋白質分子量マーカー(テフコ社)、レーン2:pCold−hgAガウシアルシフェラーゼを発現させた大腸菌の形質転換株の超音波破砕物を12,000gで20分間遠心して得られた上清(蛋白質量17.7μg)、レーン3:ニッケルキレートカラムからの溶出画分(蛋白質量 14.5μg)、レーン4:ブチルカラムからの溶出画分(蛋白質量 0.72μg)。
【図7】図7は、ビオチン化hgガウシアルシフェラーゼ濃度と発光強度の関係を示す図である。
【図8】図8は、ビオチン化hgガウシアルシフェラーゼを用いたAFP標準曲線を示す図である。実線は、バックグラウンド値を示し、AFPの濃度0ng/mlの時の平均+3SDの値である。
【図9】図9は、ビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼ濃度と発光強度の関係を示す図である。
【図10】図10は、ビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼを用いたAFP標準曲線を示す図である。実線は、バックグラウンド値を示し、AFPの濃度0ng/mlの時の平均+3SDの値である。
【図11】図11は、hgAGL−Ab1D5濃度と発光強度の関係を示す図である。
【図12】図12は、hgAGL−Ab1D5を用いたAFP標準曲線を示す図である。実線は、バックグラウンド値を示し、AFPの濃度0ng/mlの時の平均+3SDの値である。
【図13】図13は、蛍光標識化ガウシアルシフェラーゼによる生物発光エネルギー移動を示す図である。点線は、ガウシアルシフェラーゼの発光スペクトルである。実線は、蛍光標識化ガウシアルシフェラーゼの発光スペクトルである。
【図14】図14は、ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142C発現ベクター(pCold−GL−AQ−S142C)および発現融合蛋白質を示す図である。(a)は発現ベクターの概略図であり、(b)は発現融合蛋白質のアミノ酸配列の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
1.本発明の融合蛋白質
本発明の融合蛋白質は、(1)配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域および配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域と実質的に同一の活性もしくは機能を有する領域から選択される第1の領域と、(2)チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドのアミノ酸配列からなる第2の領域とを含有する融合蛋白質である。
【0016】
本発明の融合蛋白質は、第1の領域と第2の領域とが「N末端−第1の領域−第2の領域−C末端」の順で並んでいるものであっても、あるいは「N末端−第2の領域−第1の領域−C末端」の順で並んでいるものであっても良い。本発明の好ましい態様の融合蛋白質は、第1の領域と第2の領域とが「N末端−第1の領域−第2の領域−C末端」の順で並んでいるものである。
【0017】
(1)第1の領域
第1の領域とは、配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域または配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域と実質的に同質の活性もしくは機能を有する領域を意味する。
実質的に同質の活性もしくは機能とは、例えば、ルシフェリン(例えば、セレンテラジン類)を基質とする発光触媒活性(以下、「発光活性」という場合がある。)、すなわち、ルシフェリン(例えば、セレンテラジン類)が酸素分子で酸化されてオキシルシフェリンが励起状態で生成する反応を触媒する活性を意味する。なお、励起状態で生成したオキシルシフェリンは可視光を発して基底状態となる。
【0018】
上記の発光触媒活性の測定は、例えば、文献Inouye, S. & Sahara, Y. (2008) Biochem. Biophys. Res. Commun. 365, 96−101などに記載の方法によって測定することができる。具体的には、例えば、本発明の融合蛋白質をルシフェリンと混合することにより発光反応を開始させ、発光測定装置を用いて発光触媒活性を測定することができる。発光測定装置としては、市販されている装置、例えばLuminescencer−PSN AB2200(アトー社製)、Centro 960 luminometer (ベルトール社製)などを使用することができる。
【0019】
本発明で用いられるルシフェリンとしては、本発明の融合蛋白質の基質となるルシフェリンであればよい。本発明で用いられるルシフェリンとしては、具体的にはセレンテラジン類が挙げられる。
【0020】
本明細書において、セレンテラジン類とは、セレンテラジンおよびセレンテラジン誘導体を意味する。セレンテラジン誘導体としては、例えば、h−セレンテラジン、hcp−セレンテラジン、cp−セレンテラジン、f−セレンテラジン、fcp−セレンテラジン、n−セレンテラジン、Bis−セレンテラジン、MeO−セレンテラジン、e−セレンテラジン、cl−セレンテラジンch−セレンテラジンなどがあげられる。これらのセレンテラジン類の中でも、本発明では、セレンテラジンが特に好ましい。これらのセレンテラジン類は、公知の方法で合成してもよく、あるいは、市販のものを入手することもできる。
【0021】
セレンテラジン類の合成方法としては、例えば、Shimo mura et al. (1988) Biochem.J. 251, 405-410、Shimomura et al. (1989) Biochem.J. 261, 913-920、Shimomura et al. (1990) Biochem.J. 270, 309-312などに記載の方法またはそれに準ずる方法が挙げられる。
また、セレンテラジン類の市販品に関しては、例えば、チッソ株式会社製のセレンテラジンおよびh−セレンテラジン;シグマ社製のhcp−セレンテラジン、cp−セレンテラジン、f−セレンテラジン、fcp−セレンテラジンおよびn−セレンテラジンなどを挙げることができる。
【0022】
第1の領域は、具体的には、以下の(a)〜(d)からなる群:
(a)配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域、
(b)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、
(c)配列番号:18のアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、および
(d)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域;
から選択される。
【0023】
第1の領域において、「1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加」とは、同一配列中の任意かつ1もしくは複数のアミノ酸配列中の位置において、1または複数のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入および/または付加があることを意味する。
【0024】
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、o−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン;
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸;
C群:アスパラギン、グルタミン;
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸;
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン;
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン;
G群:フェニルアラニン、チロシン。
【0025】
第1の領域において、「1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列」における「1〜複数個」の範囲は、例えば、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個(1〜数個)、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個である。欠失、置換、挿入もしくは付加したアミノ酸の数は、一般的に少ないほど好ましい。上記アミノ酸残基の欠失、置換、挿入および付加のうち2種以上が同時に生じてもよい。このような領域は、“Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)”、“Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987−1997)”、“Nuc. Acids. Res., 10, 6487 (1982)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409 (1982)”、“Gene, 34, 315 (1985)”、“Nuc. Acids. Res., 13, 4431 (1985)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)”等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、取得することができる。
第1の領域において、「70%以上の同一性を有するアミノ酸配列」における「70%以上」の範囲は、例えば、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上である。上記同一性の数値は、一般的に大きいほど好ましい。なお、塩基配列またはアミノ酸配列の同一性は、BLAST(例えば、Altzshul S. F. et al., J. Mol. Biol. 215, 403 (1990)など参照)等の解析プログラムを用いて決定できる。BLASTを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
【0026】
第1の領域において、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、配列番号:17の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは配列番号:18のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの全部または一部をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法またはサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるポリヌクレオチド(例えば、DNA)をいう。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のポリヌクレオチドを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0mol/LのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(Saline-sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/L塩化ナトリウム、15mmol/Lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドをあげることができる。
【0027】
ハイブリダイゼーションは、Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)、Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987-1997)、Glover D. M. and Hames B. D., DNA Cloning 1: Core Techniques, A practical Approach, Second Edition, Oxford University Press (1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0028】
「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5(w/v)%SDS、50%(v/v)ホルムアミド、50℃の条件である。条件を厳しくするほど、二本鎖形成に必要とする相補性が高くなる。具体的には、例えば、これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するポリヌクレオチド(例えば、DNA)が効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0029】
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は、キットに添付のプロトコールにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1% (w/v) SDSを含む1次洗浄バッファーで洗浄後、ハイブリダイズしたDNAを検出することができる。
【0030】
これ以外にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとしては、BLAST等の解析プログラムにより、デフォルトのパラメータを用いて計算したときに、配列番号:17の塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは配列番号:18のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドと約60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、92%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.3%以上、99.5%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の同一性を有するDNAをあげることができる。なお、塩基配列またはアミノ酸配列の同一性は、前述した方法を用いて決定できる。
【0031】
本発明の好ましい態様においては、第1の領域は、以下の(a)〜(d)からなる群:
(a)配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域、
(b)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、
(c)配列番号:18のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、および
(d)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域;
から選択される。
【0032】
さらに好ましくは、第1の領域は、配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域である。
【0033】
(2)第2の領域
第2の領域は、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドのアミノ酸配列からなる領域である。前記「チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する」における「1つ以上」とは、例えば、1個、2個、または3個であり、好ましくは、1個または2個であり、特に好ましくは、1個である。本発明の融合蛋白質に、第2の領域に含まれるシステイン残基由来のチオール基を介して化学修飾により他の有用な化合物を導入することが可能である。本発明の好ましい態様の融合蛋白質は、第1の領域の発光触媒活性にほとんど影響を与えずに、第2の領域に含まれるシステイン残基由来のチオール基を介して化学修飾により他の有用な化合物を導入することが可能である。
【0034】
第2の領域のポリペプチドの長さは、例えば、2〜40アミノ酸であり、好ましくは、5〜35アミノ酸であり、より好ましくは、7〜30アミノ酸であり、さらに好ましくは、10〜20アミノ酸であり、最も好ましくは、15アミノ酸である。
【0035】
第2の領域に結合させるための他の有用な化合物としては、蛍光物質、検出すべき物質に特異的なリガンド(例、ビオチン、ビオチン結合蛋白質、酵素、基質、抗体、抗原、核酸、多糖類、レセプター、またはこれらに結合能を有する化合物等)等を挙げることができる。
「蛍光物質」および「リガンド」としては、後述のものが挙げられる。
【0036】
本発明のいくつかの態様では、第2の領域は、以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域、
(f)配列番号:20のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域、
(g)配列番号:20のアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域、および
(h)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域;
から選択される。
【0037】
第2の領域において、「1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加」とは、同一配列中の任意かつ1もしくは複数のアミノ酸配列中の位置において、1または複数のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入および/または付加があることを意味する。
【0038】
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、o−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン;
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸;
C群:アスパラギン、グルタミン;
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸;
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン;
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン;
G群:フェニルアラニン、チロシン。
【0039】
第2の領域において、「1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列」における「1〜複数個」の範囲は、例えば、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個である。欠失、置換、挿入もしくは付加したアミノ酸の数は、一般的に少ないほど好ましい。上記アミノ酸残基の欠失、置換、挿入および付加のうち2種以上が同時に生じてもよい。このような領域は、“Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)”、“Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987−1997)”、“Nuc. Acids. Res., 10, 6487 (1982)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409 (1982)”、“Gene, 34, 315 (1985)”、“Nuc. Acids. Res., 13, 4431 (1985)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)”等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、取得することができる。
【0040】
第2の領域において、「70%以上の同一性を有するアミノ酸配列」における「70%以上」の範囲は、例えば、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上である。上記同一性の数値は、一般的に大きいほど好ましい。なお、塩基配列またはアミノ酸配列の同一性は、BLAST(例えば、Altzshul S. F. et al., J. Mol. Biol. 215, 403 (1990)など参照)等の解析プログラムを用いて決定できる。BLASTを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
【0041】
第2の領域において、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、配列番号:19の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは配列番号:20のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの全部または一部をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法またはサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるポリヌクレオチド(例えば、DNA)をいう。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のポリヌクレオチドを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0mol/LのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(Saline-sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/L塩化ナトリウム、15mmol/Lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドをあげることができる。
【0042】
ハイブリダイゼーションは、Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)、Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987-1997)、Glover D. M. and Hames B. D., DNA Cloning 1: Core Techniques, A practical Approach, Second Edition, Oxford University Press (1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0043】
「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5(w/v)%SDS、50%(v/v)ホルムアミド、50℃の条件である。条件を厳しくするほど、二本鎖形成に必要とする相補性が高くなる。具体的には、例えば、これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するポリヌクレオチド(例えば、DNA)が効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0044】
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は、キットに添付のプロトコールにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1% (w/v) SDSを含む1次洗浄バッファーで洗浄後、ハイブリダイズしたDNAを検出することができる。
【0045】
これ以外にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとしては、BLAST等の解析プログラムにより、デフォルトのパラメータを用いて計算したときに、配列番号:19の塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは配列番号:20のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドと約60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、92%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.3%以上、99.5%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の同一性を有するDNAをあげることができる。なお、塩基配列またはアミノ酸配列の同一性は、前述した方法を用いて決定できる。
【0046】
本発明の好ましい態様においては、第2の領域は以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域、
(f)配列番号:20のアミノ酸配列において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域、
(g)配列番号:20のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域、および
(h)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域;
から選択される。
【0047】
本発明のさらに好ましい態様においては、第2の領域は配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域である。
【0048】
本発明の好ましい態様の融合蛋白質は、
(1)配列番号:18のアミノ酸配列からなる第1の領域と、(2)配列番号:20のアミノ酸配列からなる第2の領域とを含有する融合蛋白質である。
本発明のさらに好ましい態様の融合蛋白質として、例えば、配列番号:4, 6または8のアミノ酸配列からなる融合蛋白質などがあげられる。
【0049】
本発明の融合蛋白質は、配列番号:4, 6および8のアミノ酸配列のように、さらに他のペプチド配列をN末端および/またはC末端、好ましくはN末端に含んでいてもよい。他のペプチド配列としては、例えば、翻訳促進のためのペプチド配列、精製のためのペプチド配列、分泌シグナルペプチド配列、本発明の融合蛋白質を可溶性蛋白質として発現するためのペプチド配列、抗体認識可能なエピトープ配列などからなる群から選択される少なくとも1つのペプチド配列を挙げることができる。他のペプチド配列は、好ましくは、精製のためのペプチド配列および/または分泌シグナルペプチド配列である。本発明の別の好ましい態様では、他のペプチド配列は、精製のためのペプチド配列、分泌シグナルペプチド配列、および本発明の融合蛋白質を可溶性蛋白質として発現するための配列からなる群から選択される少なくとも1つの配列である。
本発明の融合蛋白質は、配列番号:4, 6および8のアミノ酸配列のように、さらに、制限酵素サイトのリンカー配列が含まれていても良い。
【0050】
翻訳促進のためのペプチド配列としては、当技術分野において用いられているペプチド配列を使用することができる。翻訳促進のためのペプチド配列としては、例えば、TEE配列などが挙げられる。
【0051】
精製のためのペプチド配列としては、当技術分野において用いられているペプチド配列を使用することができる。精製のためのペプチド配列としては、例えば、ヒスチジン残基が4残基以上、好ましくは6残基以上連続したアミノ酸配列を有するヒスチジンタグ配列、グルタチオン S−トランスフェラーゼのグルタチオンへの結合ドメインのアミノ酸配列、プロテインAのアミノ酸配列、アビジンタグ配列などが挙げられる。
【0052】
分泌シグナルペプチドとは、当該分泌シグナルペプチドに結合された蛋白質を、細胞膜透過させる役割を担うペプチド領域を意味する。このような分泌シグナルペプチドのアミノ酸配列およびそれをコードする核酸配列は、当技術分野において周知であり、報告されている(例えばvon Heijine G (1988) Biochim. Biohys. Acra 947: 307−333、von Heijine G (1990) J. Membr. Biol. 115: 195−201など参照)。分泌シグナルペプチドとしては、より具体的には、例えば、大腸菌の外膜蛋白質A由来の分泌シグナルペプチド(OmpA)(Ghrayeb, J. et al. (1984) EMBO J. 3:2437−2442)、コレラ菌由来コレラトキシン由来の分泌シグナルペプチドなどが挙げられる。
【0053】
本発明の融合蛋白質を可溶性蛋白質として発現するためのペプチドとしては、例えば式(Z)nで表されるポリペプチドを挙げることができる。式(Z)nで表されるポリペプチドのアミノ酸配列およびそれをコードする核酸配列は、例えば、特開2008−99669号公報に記載している。
【0054】
制限酵素サイトのリンカー配列としては、当技術分野において用いられているペプチド配列を使用することができる。
【0055】
本発明の融合蛋白質は、第1の領域と第2の領域とが「N末端−第1の領域−第2の領域−C末端」の順で並んでいるものである場合、第1の領域からC末端までの間の第1の領域を除く部分の長さが、例えば、4〜50アミノ酸、好ましくは、7〜45アミノ酸であり、より好ましくは、14〜43アミノ酸であり、さらに好ましくは、17〜40アミノ酸であり、最も好ましくは、21〜36アミノ酸である。
【0056】
本発明の融合蛋白質は、第1の領域と第2の領域とが「N末端−第2の領域−第1の領域−C末端」の順で並んでいるものである場合、N末端から第1の領域までの間の第1の領域を除く部分の長さが、例えば、4〜50アミノ酸、好ましくは、7〜45アミノ酸であり、より好ましくは、14〜43アミノ酸であり、さらに好ましくは、17〜40アミノ酸であり、最も好ましくは、21〜36アミノ酸である。
【0057】
本発明の融合蛋白質の取得方法については特に制限はない。本発明の融合蛋白質としては、化学合成により合成した融合蛋白質でもよいし、遺伝子組換え技術により作製した組換え蛋白質であってもよい。本発明の融合蛋白質を化学合成する場合には、例えば、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等により合成することができる。また、アドバンスドケムテック社製、パーキンエルマー社製、ファルマシア社製、プロテインテクノロジーインストゥルメント社製、シンセセルーベガ社製、パーセプティブ社製、島津製作所社製等のペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。本発明の融合蛋白質を遺伝子組換え技術により作製する場合には、通常の遺伝子組換え手法により作製することができる。より具体的には、本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチド(例えば、DNA)を適当な発現系に導入することにより、本発明の融合蛋白質を作製することができる。本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチド、本発明の融合蛋白質の発現系での発現などについては、後記する。
【0058】
2.本発明のポリヌクレオチド
本発明は、前述した本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドも提供する。本発明のポリヌクレオチドとしては、本発明の融合蛋白質をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよいが、好ましくはDNAである。DNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、細胞・組織由来のcDNA、細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAなどが挙げられる。ライブラリーに使用するベクターは、特に制限はなく、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前記した細胞・組織からtotalRNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接 Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction(以下、RT-PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
【0059】
本発明のポリヌクレオチドとしては、具体的には、
(1)以下の(a)〜(d)からなる群から選択される第1のコード配列:
(a)配列番号:17の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなるコード配列、
(b)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(c)配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、および
(d)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列;と
(2) チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる第2のコード配列;と
を含有するポリヌクレオチドなどが挙げられる。
【0060】
前記第2のコード配列は、好ましくは、以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:19の塩基配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(f)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(g)配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード領域、および
(h)配列番号:20のアミノ酸において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード領域;
から選択される。
【0061】
ここで、第1および第2のコード配列における「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、配列番号:17または19の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは配列番号:18または20のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの全部または一部をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法またはサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるポリヌクレオチド(例えば、DNA)をいう。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のポリヌクレオチドを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0mol/LのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(Saline-sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/L塩化ナトリウム、15mmol/Lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドをあげることができる。
【0062】
ハイブリダイゼーションは、Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)、Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987-1997)、Glover D. M. and Hames B. D., DNA Cloning 1: Core Techniques, A practical Approach, Second Edition, Oxford University Press (1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0063】
「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5(w/v)%SDS、50%(v/v)ホルムアミド、50℃の条件である。条件を厳しくするほど、二本鎖形成に必要とする相補性が高くなる。具体的には、例えば、これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するポリヌクレオチド(例えば、DNA)が効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0064】
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は、キットに添付のプロトコールにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1% (w/v) SDSを含む1次洗浄バッファーで洗浄後、ハイブリダイズしたDNAを検出することができる。
【0065】
これ以外にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとしては、BLAST等の解析プログラムにより、デフォルトのパラメータを用いて計算したときに、配列番号:17または19の塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは配列番号:18または20のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドと約60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、92%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.3%以上、99.5%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の同一性を有するDNAをあげることができる。なお、アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、前述した方法を用いて決定できる。
【0066】
第1および第2のコード配列における、「1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列」とは、それぞれ、前記第1および第2の領域で説明した通りである。
【0067】
あるアミノ酸配列に対して、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を有する領域をコードするポリヌクレオチドは、部位特異的変異導入法(例えば、Gotoh, T. et al., Gene 152, 271-275 (1995)、Zoller, M.J., and Smith, M., Methods Enzymol. 100, 468-500 (1983)、Kramer, W. et al., Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456 (1984)、Kramer W, and Fritz H.J., Methods. Enzymol. 154, 350-367 (1987)、Kunkel,T.A., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 82, 488-492 (1985)、Kunkel, Methods Enzymol. 85, 2763-2766 (1988)、など参照)、アンバー変異を利用する方法(例えば、Gapped duplex法、Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456 (1984)、など参照)などを用いることにより得ることができる。
【0068】
また目的の変異(欠失、付加、置換および/または挿入)を導入した配列をそれぞれの5’端に持つ1組のプライマーを用いたPCR(例えば、Ho S. N. et al., Gene 77, 51 (1989)など参照)によっても、ポリヌクレオチドに変異を導入することができる。
【0069】
また欠失変異体の一種である蛋白質の部分断片をコードするポリヌクレオチドは、その蛋白質をコードするポリヌクレオチド中の作製したい部分断片をコードする領域の5’端の塩基配列と一致する配列を有するオリゴヌクレオチドおよび3’端の塩基配列と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて、その蛋白質をコードするポリヌクレオチドを鋳型にしたPCRを行うことにより取得できる。
【0070】
本発明の好ましい態様のポリヌクレオチドでは、第1のコード配列が、以下の(a)〜(d)からなる群:
(a)配列番号:17の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなるコード配列、
(b)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(c)配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、および
(d)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列;
から選択される。
【0071】
本発明の好ましい態様のポリヌクレオチドでは、第2のコード配列が、以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:19の塩基配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(f)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(g)配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、および
(h)配列番号:20のアミノ酸において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列;
から選択される。
【0072】
本発明のさらに好ましい態様のポリヌクレオチドは、
(1)配列番号:17の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなる第1のコード配列と、(2)配列番号:19の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなる第2のコード配列とを含有するポリヌクレオチドである。
【0073】
本発明の特に好ましい態様のポリヌクレオチドとして、例えば、配列番号:4, 6または8のアミノ酸配列からなる融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドなどがあげられる。配列番号:4のアミノ酸配列からなる融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドとしては、例えば、配列番号:3の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドなどが挙げられる。配列番号:6のアミノ酸配列からなる融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドとしては、例えば、配列番号:5の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドなどが挙げられる。配列番号:8のアミノ酸配列からなる融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドとしては、例えば、配列番号:7の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドなどが挙げられる。
【0074】
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号:3、5、7の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドのように、他のペプチド配列をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを含んでいてもよい。他のペプチド配列としては、例えば、翻訳促進のためのペプチド配列、精製のためのペプチド配列、分泌シグナルペプチド配列、本発明の融合蛋白質を可溶性蛋白質として発現するためのペプチド配列、抗体認識可能なエピトープ配列などからなる群から選択される少なくとも1つのペプチド配列を挙げることができる。
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号:3、5および7の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドのように、さらに、制限酵素サイトのリンカー配列を含んでいてもよい。
【0075】
翻訳促進のためのペプチド配列をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドとしては、当技術分野において用いられている翻訳促進のためのペプチド配列をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを使用することができる。翻訳促進のためのペプチド配列としては、前記したものなどが挙げられる。
【0076】
精製のためのペプチド配列をコードするポリヌクレオチドとしては、当技術分野において用いられている精製のためのペプチド配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドを使用することができる。精製のためのペプチド配列としては、前記したものなどが挙げられる。
【0077】
分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドとしては、当記述分野において知られている分泌シグナルペプチドをコードする核酸配列を含有するポリヌクレオチドを使用することができる。分泌シグナルペプチドとしては、前記したものなどが挙げられる。
【0078】
本発明の蛋白質を可溶性蛋白質として発現するためのペプチド配列をコードするポリヌクレオチドとしては、例えば式(Z)nで表わされるポリペプチドを挙げることができる。式(Z)nで表わされるポリペプチドのアミノ酸配列およびそれをコードする核酸配列としては、前記したものなどが挙げられる。
【0079】
制限酵素サイトのリンカー配列としては、当技術分野において用いられている制限酵素サイトのリンカー配列を使用することができる。
【0080】
3.本発明の組換えベクターおよび形質転換体
さらに、本発明は、上述した本発明のポリヌクレオチドを含有する組換えベクターおよび形質転換体を提供する。
【0081】
組換えベクターの作製
本発明の組換えベクターは、適当なベクターに本発明のポリヌクレオチド(DNA)を連結(挿入)することにより得ることができる。より具体的には、精製されたポリヌクレオチド(DNA)を適当な制限酵素で切断し、適当なベクターの制限酵素部位またはマルチクローニングサイトに挿入して、ベクターに連結することにより得ることができる。本発明のポリヌクレオチドを挿入するためのベクターは、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミド、バクテリオファージ、動物ウイルス等が挙げられる。プラスミドとしては、例えば、大腸菌由来のプラスミド(例えばpBR322, pBR325, pUC118, pUC119等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110, pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13, YEp24, YCp50等)などがあげられる。バクテリオファージとしては、例えば、λファージなどがあげられる。動物ウイルスとしては、例えば、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、昆虫ウイルス(例えば、バキュロウイルスなど)などがあげられる。また、pCold Iベクター、pCold IIベクター、pCold IIIベクター、pCold IVベクター(以上、タカラバイオ社製)、PICZ aベクター(インビトロジェン社製)なども好適に使用することができる。
【0082】
本発明のポリヌクレオチドは、通常、適当なベクター中のプロモーターの下流に、発現可能なように連結される。用いられるプロモーターとしては、形質転換する際の宿主が動物細胞である場合には、SV40由来のプロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、SRαプロモーターなどが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、Trpプロモーター、T7プロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーターなどが好ましい。宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなどが好ましい。宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADH1プロモーター、GALプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
【0083】
また、低温で発現誘導可能なプロモーターも好適に使用することができる。低温で発現誘導可能なプロモーターとしては、例えば、コールドショック遺伝子のプロモーター配列などが挙げられる。コールドショック遺伝子としては、例えば、大腸菌コールドショック遺伝子(例えば、cspA、cspB、cspG、cspI、csdAなど)、Bacillus caldolyticusコールドショック遺伝子(例えば、Bc−Cspなど)、Salmonella entericaコールドショック遺伝子(例えば、cspEなど)、Erwinia carotovoraコールドショック遺伝子(例えば、cspGなど)などが挙げられる。低温で発現誘導可能なプロモーターとしては、なかでも、例えば、cspAプロモーター、cspBプロモーター、cspGプロモーター、cspIプロモーター、csdAプロモーターなどを好適に使用することができる。
【0084】
本発明の組換えベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、リボソーム結合配列(SD配列)、選択マーカーなどを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子などがあげられる。
【0085】
形質転換体の作成
このようにして得られた、本発明のポリヌクレオチド(すなわち、本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチド)を含有する組換えベクターを、適当な宿主中に導入することによって、形質転換体を作成することができる。宿主としては、本発明のポリヌクレオチド(DNA)を発現できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、シュードモナス属菌、リゾビウム属菌、酵母、動物細胞または昆虫細胞などがあげられる。エシェリヒア属菌としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)などがあげられる。バチルス属菌としては、例えば、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)などがあげられる。シュードモナス属菌としては、例えば、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)などがあげられる。リゾビウム属菌としては、例えば、リゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti)などがあげられる。酵母としては、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)などがあげられる。動物細胞としては、例えば、COS細胞、CHO細胞などがあげられる。昆虫細胞としては、例えば、Sf9、Sf21などがあげられる。
【0086】
組換えベクターの宿主への導入方法およびこれによる形質転換方法は、一般的な各種方法によって行うことができる。組換えベクターの宿主細胞への導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法(Virology, 52, 456−457 (1973))、リポフェクション法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413 (1987))、エレクトロポレーション法(EMBO J., 1, 841−845 (1982))などがあげられる。エシェリヒア属菌の形質転換方法としては、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110 (1972)、Gene, 17, 107 (1982)などに記載の方法などがあげられる。バチルス属菌の形質転換方法としては、例えば、Molecular & General Genetics,168, 111 (1979)に記載の方法などがあげられる。酵母の形質転換方法としては、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75, 1929 (1978)に記載の方法などがあげられる。動物細胞の形質転換方法としては、例えば、Virology,52, 456 (1973)に記載の方法などがあげられる。昆虫細胞の形質転換方法としては、例えば、Bio/Technology, 6, 47−55 (1988)に記載の方法などがあげられる。このようにして、本発明の蛋白質をコードするポリヌクレオチド(本発明のポリヌクレオチド)を含有する組換えベクターで形質転換された形質転換体を得ることができる。
【0087】
低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターおよび形質転換体
発現ベクターとしては、なかでも低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターが好ましい。
低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターとは、具体的には、次のプロモーター配列、およびコード配列を含有する発現ベクターを意味する:
(1)低温で発現誘導可能なプロモーター配列;および
(2)本発明のポリヌクレオチドを含有するコード配列。
低温で発現誘導可能なプロモーター配列とは、宿主細胞を増殖させる培養条件から、温度を下げることによって融合蛋白質の発現を誘導可能なプロモーター配列を意味する。低温で発現誘導可能なプロモーターとしては、例えば、コールドショック蛋白質をコードする遺伝子(コールドショック遺伝子)のプロモーターが挙げられる。コールドショック遺伝子のプロモーターとしては、前記したものが挙げられる。
【0088】
本発明で用いられる低温で発現誘導可能なプロモーターが発現誘導しうる温度としては、通常30℃以下、好ましくは25℃以下、より好ましくは20℃以下、特に好ましくは15℃以下である。ただし、より効率良く発現を誘導させるため、通常は5℃以上、好ましくは10℃以上、特に好ましくは約15℃で発現誘導させる。
【0089】
本発明の低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターを作製する場合、本発明のポリヌクレオチドを挿入するためのベクターとしては、pCold Iベクター、pCold IIベクター、pCold IIIベクター、pCold IVベクター(以上、タカラバイオ社製)などを好適に使用することができる。これらのベクターを使用して、原核細胞を宿主として発現させた場合、融合蛋白質を宿主細胞の細胞質中に可溶性蛋白質として産生させることができる。
【0090】
低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターを導入する宿主としては、原核細胞が好ましく、さらに大腸菌が好ましく、特にBL21株、JM109株が好ましく、なかでもBL21株が好ましい。
【0091】
低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターが導入された形質転換体を細胞増殖させる培養温度は、通常25〜40℃、好ましくは30〜37℃である。発現誘導させる温度は、通常4〜25℃、好ましくは10〜20℃、より好ましくは12〜18℃、特に好ましくは15℃である。
【0092】
4.本発明の融合蛋白質の製造
また、本発明は、前記形質転換体を培養し、本発明の融合蛋白質を生成させる工程を含む、本発明の融合蛋白質の製造方法を提供する。本発明の融合蛋白質は、例えば、前記形質転換体を本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチド(DNA)が発現可能な条件下で培養し、本発明の融合蛋白質を生成・蓄積させ、分離・精製することによって製造することができる。
【0093】
形質転換体の培養
本発明の形質転換体の培養は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。該培養によって、形質転換体によって本発明の融合蛋白質が生成され、形質転換体内または培養液中などに本発明の融合蛋白質が蓄積される。
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する培地としては、該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デンプンなどの炭水化物、酢酸、プロピオン酸などの有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類が用いられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどの無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩またはその他の含窒素化合物のほか、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカーなどが用いられる。無機塩類としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウムなどが用いられる。培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、Lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)などを、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養するときにはインドールアクリル酸(IAA)などを培地に添加してもよい。
【0094】
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行い、必要により、通気や撹拌を加える。宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加える。
【0095】
宿主が酵母である形質転換体を培養する培地としては、たとえばバークホールダー(Burkholder)最小培地(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77, 4505 (1980))や0.5%(w/v)カザミノ酸を含有するSD培地(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, 5330 (1984))があげられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0096】
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する培地としては、たとえば約5〜20%(v/v)の胎児牛血清を含むMEM培地(Science, 122, 501 (1952)),DMEM培地(Virology, 8, 396 (1959))などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃〜40℃で約15〜60時間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0097】
宿主が昆虫細胞である形質転換体を培養する培地としては、Grace's Insect Medium(Nature,195,788(1962))に非働化した10%(v/v)ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0098】
なお、低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターが導入された形質転換体を細胞増殖させる培養温度および発現誘導させる温度は、前記した通りである。
【0099】
本発明の融合蛋白質の分離・精製
上記培養物から、本発明の融合蛋白質を分離・精製することによって、本発明の融合蛋白質を得ることができる。ここで、培養物とは、培養液、培養菌体もしくは培養細胞、または培養菌体もしくは培養細胞の破砕物のいずれをも意味する。本発明の融合蛋白質の分離・精製は、通常の方法に従って行うことができる。
【0100】
具体的には、本発明の融合蛋白質が培養菌体内もしくは培養細胞内に蓄積される場合には、培養後、通常の方法(例えば、超音波、リゾチーム、凍結融解など)で菌体もしくは細胞を破砕した後、通常の方法(例えば、遠心分離、ろ過など)により本発明の融合蛋白質の粗抽出液を得ることができる。本発明の融合蛋白質がペリプラズムスペース中に蓄積される場合には、培養終了後、通常の方法(例えば浸透圧ショック法など)により本発明の融合蛋白質を含む抽出液を得ることができる。本発明の融合蛋白質が培養液中に蓄積される場合には、培養終了後、通常の方法(例えば、遠心分離、ろ過など)により菌体もしくは細胞と培養上清とを分離することにより、本発明の融合蛋白質を含む培養上清を得ることができる。
【0101】
このようにして得られた抽出液もしくは培養上清中に含まれる本発明の融合蛋白質の精製は、通常の分離・精製方法に従って行うことができる。分離・精製方法としては、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、透析法、限外ろ過法などを単独で、または適宜組み合わせて用いることができる。本発明の融合蛋白質が上述した精製のためのペプチド配列を含有する場合、これを用いて精製するのが好ましい。具体的には、本発明の融合蛋白質がヒスチジンタグ配列を含有する場合にはニッケルキレートアフィニティークロマト法、S−トランスフェラーゼのグルタチオンへの結合ドメインを含有する場合にはグルタチオン結合ゲルによるアフィニティークロマト法、プロテインAのアミノ酸の配列を含有する場合には抗体アフィニティークロマト法を用いることができる。
【0102】
5.本発明の複合体
前記本発明の融合蛋白質(以下、「本発明のルシフェラーゼ」という場合がある。)は、他の有用な化合物(例、蛍光物質、検出すべき物質に特異的なリガンド等)と結合し、複合体を形成することができる。
【0103】
本発明の複合体は、他の有用な化合物を、本発明のルシフェラーゼの第2の領域のシステイン残基のチオール基を介して結合したものである。本発明のいくつかの態様では、複合体は、本発明のルシフェラーゼと、蛍光物質または検出すべき物質に特異的なリガンドとが結合したものである。本発明のいくつかの態様の複合体では、ルシフェラーゼのチオール基と蛍光物質またはリガンドとの結合比率は、1:1の比率、またはそれに近い比率である。
【0104】
他の有用な化合物のうち、蛍光物質としては、Hoechist3342、Indo−1、DAP1などの有機化合物;緑色蛍光蛋白質(GFP)、青色蛍光蛋白質(BFP)、変異GFP蛍光蛋白質、フィコビリンなどの蛍光蛋白質を挙げることができる。
【0105】
検出すべき物質に特異的なリガンドは、検出すべき物質に直接的に結合する物質、または、検出すべき物質に間接的に結合する物質の何れであっても良い。リガンドとしては、例えば、ビオチン、ビオチン結合タンパク質、酵素、基質、抗体、抗原、核酸、多糖類、レセプター、またはこれらに結合能を有する化合物を挙げることができる。
【0106】
このうち、ビオチン結合蛋白質としては、アビジン、ストレプトアビジン、変異型アビジン(ニュートラアビジン)等を挙げることができる。これらのビオチン結合蛋白質は市販のものを入手することができる。常法により、市販のビオチン結合蛋白質を修飾可能なように調製することもできる。
【0107】
抗原および抗体としては、これまで、様々な物質(例、腫瘍マーカーやホルモンなどといったヒトや動植物の生体内微量成分や、環境中の微量汚染物質など)の抗原、およびこれらの抗原に対する抗体が市販されており、測定したい被検体を抗原とする抗体を適宜必要に応じて入手し、使用することができる。
【0108】
中でも、腫瘍の増殖に伴って血清や尿中に増加する腫瘍マーカーとしては、胎児性抗原、CA19−9、シリアルLex−i抗原、シリアルTn抗原、チミジンキナーゼ活性、組織ポリペプチド抗原、塩基性フェトプロテイン、免疫抑制酸性蛋白、CA72−4、CA125、DUPAN−2、SPan−1、エラスターゼ1、BCA−225、CA15−3、SCC抗原、サイトケラチン19フラグメント、前立腺特異抗原、γ−セミノプロテイン、前立腺酸性フォスファターゼ、α−フェトプロテイン、AFPレクチン分画、PIVKA−II、神経特異エノラーゼ、NCC−ST−439、CA130、I型コラーゲン−C−テロペプチドなど、各器官における腫瘍の生成に伴って特異的に増加するマーカーがこれまでに知られている。これらの抗原は市販されており、血清あるいは尿中の該マーカーを測定する上での標準物質として適宜利用することができる。更に、これらの抗原に対する種々のクラスあるいはサブクラスからなる抗体が市販されており、これらを適宜使用することができる。
【0109】
核酸としては、任意の相補的DNAおよびRNAが挙げられ、例えば、病原性遺伝子の検出、遺伝子診断等に使用可能な塩基配列を有するDNAおよびRNAを挙げることができる。これらの核酸は、常法により、適宜化学合成することができる。
【0110】
物理化学的特性等により異なるが、本発明のルシフェラーゼの分子サイズおよび他の有用な化合物との立体障害を考慮して、直接的にまたはリンカーもしくはスペーサーを介して、他の有用な化合物を本発明のルシフェラーゼに結合させる。
【0111】
本発明において用いるリンカーまたはスペーサーは、−SH基と特異的に反応しうるものであれば特に限定されないが、20オングストローム以上の長さを有するものが好ましい。リンカーもしくはスペーサーとして使用しうる種々の−SH基修飾試薬は市販されており、これらを適宜利用することができる。
【0112】
システインのチオール基(「スルフヒドリル基」ともいう。)と反応する官能基を有する架橋試薬は、特に限定されるものではないが、具体的には、N-(4-[p-アジドサリシルアミド]ブチル)-3´-2´ピリジルジチオ)プロピオンアミド(APDP)、1,4−ジ-(3´-[2´ピリジルジチオ]プロピオンアミド)ブタン、1,6−ヘキサン-ビス-ビニルスルホン(HBVS)、スクシンイミジル3-(ブロモアセタミド)プロピオネート(SBAP)、N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、N-(α‐マレイミドアセトキシ)-スクシンイミドエステル(AMAS)、スクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン(SMCC)、SMCCのスルホン化誘導体(スルホ−SMCC)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、MBSのスルホン化誘導体(スルホ−MBS)、スクシンイミジル 4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB)、SMPBのスルホン化誘導体(スルホ−SMPB)、スクシンイミジル−6−(N−マレイミド−n−ヘキサノエート)、スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)、N−ヒドロキシスクシンイミジルブロモアセテート、ビス−(マレイミド)メチルエステル、ビス−マレイミドヘキサン(BMH)などを挙げることができる。本発明においては、その中でもスルフヒドリル基と反応する官能基としてマレイミド基を有する架橋試薬が好ましい。
【0113】
本発明のルシフェラーゼに他の有用な化合物を結合させる反応は、Hermanson G.T.著“Bioconjugate Techniques, 2 nd Edition (2008) ElsevierInc.等に記載されている方法のように当該分野で公知の方法により行うことができる。より具体的には、検出すべき物質に特異的なリガンドの場合、反応は、30 ℃以下、好ましくは25 ℃以下、pH6〜8、好ましくはpH7〜7.5で行うのが望ましい。蛍光物質の場合、反応は、25 ℃以下、好ましくは4 ℃以下、pH6〜8、好ましくはpH7〜7.5で行うのが望ましい。
【0114】
特に、ビオチン結合蛋質の場合、反応は、25 ℃以下、好ましくは4 ℃以下、pH6〜8、好ましくはpH7〜7.5で行うのが望ましい。抗体の場合、反応は、25 ℃以下、好ましくは4 ℃以下、pH6〜8、好ましくはpH7〜7.5で行うのが望ましい。核酸の場合、反応は、25 ℃以下、好ましくは4 ℃以下、pH6〜8、好ましくはpH7〜7.5で行うのが望ましい。
【0115】
6.本発明の融合蛋白質および複合体の利用
発光による検出マーカーとしての利用
本発明の融合蛋白質または本発明の複合体は、ルシフェリン存在下、発光による検出マーカーとして利用することができる。本発明の検出マーカーは、例えば、イムノアッセイ、ハイブリダイゼーションアッセイなどにおける目的物質の検出に利用することができる。本発明の複合体を検出マーカーとして利用する場合、本発明の複合体中の他の有用な化合物は、検出すべき物質に特異的なリガンドである。
【0116】
本発明の複合体をイムノアッセイで利用する場合、本発明の複合体のリガンドは、例えば、目的物質を特異的に認識する1次抗体である。本発明の複合体における1次抗体は、試料中に存在する検出すべき物質(抗原)に特異的に結合するので、本発明の複合体における融合蛋白質の発光を測定することにより、試料中の検出すべき物質の部位や量が検出できる。
【0117】
検出の感度を高めるために、1次抗体を特異的に認識する2次抗体を使う方法も周知である。この場合、本発明の複合体中のリガンドは、例えば、2次抗体である。
【0118】
また、2次抗体にビオチンを結合し、このビオチン化2次抗体と、本発明の融合蛋白質と結合したアビジンまたはストレプトアビジンとを反応させることもできる。この場合、本発明の複合体中のリガンドは、アビジンまたはストレプトアビジンである。
【0119】
さらに、1分子のアビジンまたは1分子のストレプトアビジンが、4分子のビオチンと結合する性質を利用することもできる。すなわち、ビオチン化2次抗体と、アビジンまたはストレプトアビジンとを反応させ、さらに、本発明の融合蛋白質と結合したビオチンと反応させるものである。この場合、本発明の複合体中のリガンドは、ビオチンである。
【0120】
本発明の複合体を用いてレセプターを検出する場合においては、レセプターに結合するシグナルペプチド(インシュリンのようなホルモン、サイトカイン、TNF、Fasリガンド等)を、本発明の複合体中のリガンドとすることができる。一方、シグナルペプチドを検出する場合には、レセプターを構成する蛋白質を、本発明の複合体中のリガンドとすることができる。すなわち、ある薬物が結合するレセプターを検出する場合には、その薬物を本発明の複合体中のリガンドとすることができ、あるレセプターに結合する薬物を検出する場合は、そのレセプターを本発明の複合体中のリガンドとすることができる。
【0121】
本発明の複合体を用いて酵素を検出する場合には、その酵素の基質を本発明の複合体中のリガンドとすることができる。一方、その酵素の基質を検出する場合には、その酵素を本発明の複合体中のリガンドとすることができる。
【0122】
本発明の複合体をハイブリダイゼーションアッセイで利用する場合、ある核酸に対して特異的に結合する他の核酸を検出するために、検出する核酸に相補的な核酸を、本発明の複合体中のリガンドとすることができる。
【0123】
本発明の複合体を用いて多糖類に対して特異的に結合する他の物質を検出する場合には、多糖類を、本発明の複合体中のリガンドとすることができる。
【0124】
この他、血液凝固因子と特異的に結合しうるレクチンや転写因子等のDNA結合性蛋白質等も、本発明の複合体中のリガンドとすることができる。
【0125】
本発明の複合体は、上記のようにリガンドを介して目的物質に直接的または間接的に結合することができるので、ルシフェリン存在下、発光による検出マーカーとして利用することができる。このような検出マーカーを用いた目的物質の検出は通常の方法により行うことができる。
【0126】
また、本発明の融合蛋白質は、例えば、目的蛋白質との融合蛋白質として発現させ、マイクロインジェクション法などの手法により細胞内に導入することによって、前記目的蛋白質の分布を測定するために利用することもできる。このような目的タンパク質などの分布の測定は、発光イメージング等の検出法などを利用して行うこともできる。なお、本発明の融合蛋白質は、マイクロインジェクション法などの手法により細胞内に導入する以外に、細胞内で発現させて用いることもできる。
【0127】
レポーター蛋白質としての利用
本発明の融合蛋白質は、レポーター蛋白質としてプロモーターなどの転写活性の測定に利用することもできる。本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチド(すなわち、本発明のポリヌクレオチド)を、目的のプロモーターまたは他の発現制御配列(例えば、エンハンサーなど)に融合したベクターを構築する。前記ベクターを宿主細胞に導入し、ルシフェリン存在下、本発明の融合蛋白質に由来する発光を検出することにより、目的のプロモーターまたは他の発現制御配列の活性を測定することができる。
本発明のポリヌクレオチドは、上述のようにして、レポーター遺伝子として利用することができる。
【0128】
アミューズメント用品の材料
本発明の融合蛋白質は、ルシフェリンが酸素分子で酸化されてオキシルシフェリンが励起状態で生成される反応を触媒する活性を有する。励起状態のオキシルシフェリンは可視光を発して基底状態となる。よって、本発明の融合蛋白質などは、アミューズメント用品の材料の発光基材として好適に使用することができる。アミューズメント用品としては、たとえば、発光シャボン玉、発光アイス、発光飴、発光絵の具等があげられる。本発明のアミューズメント用品は、通常の方法によって製造することができる。
【0129】
生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)法
本発明の融合蛋白質または本発明の複合体は、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)法による分子間相互作用の原理を利用した生理機能の解析や酵素活性の測定等の分析方法に利用することができる。
【0130】
例えば、本発明の融合蛋白質または本発明の複合体において、本発明の融合蛋白質または本発明の複合体(「本発明のルシフェラーゼ」という場合がある。)をドナーとして使用し、蛍光物質(例、有機化合物、蛍光蛋白質等)をアクセプターとして使用して、両者の間で生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)を起こすことによりドナーとアクセプターとの間の相互作用を検出することができる。
【0131】
本発明のある態様では、アクセプターとして使用する有機化合物は、Hoechist3342、Indo−1、DAP1などである。本発明の別の態様では、アクセプターとして使用する蛍光蛋白質は、緑色蛍光蛋白質(GFP)、青色蛍光蛋白質(BFP)、変異GFP蛍光蛋白質、フィコビリンなどである。
【0132】
本発明の好ましい態様において、解析する生理機能は、オーファン受容体(特にG蛋白質共役受容体)、アポトーシス、または遺伝子発現による転写調節などである。また、本発明の好ましい態様において、分析する酵素は、プロテアーゼ、エステラーゼまたはリン酸化酵素などである。
【0133】
BRET法による生理機能の解析は、公知の方法で行うことができ、例えば、Biochem. J. 2005, 385, 625−637、またはExpert Opin. Ther Tarets, 2007 11: 541−556などに記載の方法に準じて行うことができる。また、酵素活性の測定も、公知の方法で行うことができ、例えば、Nature Methods 2006, 3:165−174、またはBiotechnol. J. 2008, 3:311−324などに記載の方法に準じて行うことができる。
【0134】
本発明のいくつかの態様の複合体は、本発明の融合蛋白質に、他の有用な化合物として蛍光物質を結合したものである。蛍光物質としては、前記したものが挙げられる。この複合体中の本発明の融合蛋白質をドナーとし、同一複合体中の蛍光物質をアクセプターとして、両者の間でBRETを起こすこともできる。
【0135】
7.本発明のキット
本発明は、本発明の融合蛋白質、本発明のポリヌクレオチド、本発明の組換えベクター、本発明の形質転換体および本発明の複合体から選択されるいずれかを含むキットも提供する。本発明のキットには、さらにルシフェリン(例えば、セレンテラジン類)を含んでいてもよい。本発明のキットは、通常用いられる材料および方法で製造することができる。本発明のキットは、例えば、サンプルチューブ、プレート、キット使用者に対する指示書、溶液、バッファー、試薬、標準化のために好適なサンプルまたは対照サンプルを含んでもよい。本発明のキットには、さらに、ハロゲン化物イオンを含む塩などを含んでいてもよい。
【0136】
本発明のキットは、上述したレポーター蛋白質もしくはレポーター遺伝子を用いた測定、発光による検出マーカー、BRET法による生理機能の解析または酵素活性の測定などに利用することができる。
【0137】
8.発光反応方法
発光触媒活性
本発明の融合蛋白質または本発明の複合体(以下、「本発明の融合蛋白質等」とする場合がある。)は、ルシフェリン(例えば、セレンテラジン類)を酸素分子で酸化して励起状態のオキシルシフェリンを生成させる反応を触媒する活性を有する。励起状態のオキシルシフェリンは、基底状態となる際に可視光を発する。すなわち、本発明の融合蛋白質等は、ルシフェリン(例えば、セレンテラジン類)を基質とする発光反応を触媒し、発光を生じさせる活性を有する。この活性を、本明細書において、「発光触媒活性」と称することがある。
【0138】
発光反応
本発明の融合蛋白質等を用いた、ルシフェリン(例えば、セレンテラジン類)を基質とする発光反応は、本発明の融合蛋白質等とルシフェリンとを接触させることにより行うことができる。反応条件としては、ガウシアルシフェラーゼを用いた発光反応に通常用いられる条件またはそれに準じた条件で行うことができる(例えば、WO99/49019、J. Biol. Chem. 279, 3212−3217 (2004)、およびそれらの引用文献など参照)。
【0139】
具体的には、反応溶媒としては、例えば、Tris−HCl緩衝液、リン酸ナトリウム緩衝液などの緩衝液、水、などが用いられる。
【0140】
反応温度は、通常約4℃〜約40℃、好ましくは約4℃〜約25℃である。
反応溶液のpHは、通常約5〜約10、好ましくは約6〜約9、より好ましくは約7〜約8、特に好ましくは約7.5である。
【0141】
ルシフェリンとしては、セレンテラジン類が好ましく、特にセレンテラジンが好ましい。
ルシフェリンは、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキシド等の極性溶媒や、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール溶液として反応系に加えてもよい。
【0142】
発光活性の活性化
本発明の融合蛋白質等の、ルシフェリン(例えば、セレンテラジン類)を基質とする発光活性(発光触媒活性)は、ハロゲン化物イオンにより活性化される。
ハロゲン化物イオンとしては、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなどがあげられ、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンが好ましい。
ハロゲン化物イオンの濃度は、通常約10μM〜約100mM、好ましくは約100μM〜約50mM、特に好ましくは約1mM〜約20mMである。
【0143】
反応系にハロゲン化物イオンを添加する方法としては、塩として添加する方法などがあげられる。用いられる塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩などがあげられる。より具体的には、NaF、NaCl、NaBr、NaI、KF、KCl、KBr、KI、CaF2、CaCl2、CaBr2、CaI2、MgF2、MgCl2、MgBr2、MgI2などがあげられる。
【0144】
実施の形態および実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いる場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。
【0145】
なお、本明細書に記載した全ての文献及び刊行物は、その目的にかかわらず参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする。
【0146】
また、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を実施できる。発明を実施するための最良の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図ならびに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々に修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【実施例】
【0147】
以下に実施例により本発明を説明するが、実施例は本発明を制限するものではない。
【0148】
実施例1 ヒンジ配列を有する酵母発現用新規発現ベクターの構築
ヒンジ配列を有する新規発現ベクターの構築は以下の通りである。まずpPICZα A (Invitrogen社)において、制限酵素部位であるXhoI/SalI部位に、化学合成したマルチクローニング配列をもつ以下のリンカーpPICZα Linker−FおよびpPICZα Linker−Rを挿入して新規ベクターpPICZα −Linkerを構築した。
【0149】
pPICZα Linker−F (5’ TC GAA AAA AGA GAG GCT GAA GCT GGT ACC GAA TTC CTG CAG CTC GAG TCT AGA G 3’)(配列番号:9)
pPICZα Linker−R (5’ TC GAC TCT AGA CTC GAG CTG CAG GAA TTC GGT ACC AGC TTC AGC CTC TCT TTT T 3’)(配列番号:10)
【0150】
次いでpPICZα −Linkerベクターの制限酵素部位PstI/SalI部位に、化学合成したマルチクローニング配列をもつ以下のリンカーhinge Linker−Fおよびhinge Linker−Rを挿入することにより、図1に示すヒンジ配列を有する新規発現ベクターpPICZα −hgLinkerを構築した。
【0151】
hinge Linker−F (5’ Gagc tta tcc acc ccg ccg acc ccg tcc ccg tcc acc ccg ccg TGc CTC GAG TCT AGA G 3’、アンダーラインは、新規システイン残基)(配列番号:11)、
hinge Linker−R (5’ TC GAC TCT AGA CTC GAG gCA cgg cgg ggt gga cgg gga cgg ggt cgg cgg ggt gga taa gct CTG CA 3’、 アンダーラインは、新規導入システイン残基)(配列番号:12)
【0152】
なお、DNAシークエンサー(ABI社製)により塩基配列を決定することにより、挿入DNAの確認を行った。発現ベクターpPICZα −hgLinkerのDNA配列を配列番号:1に示す。また、発現ベクターpPICZα −hgLinkerのDNA配列にコードされる蛋白質のアミノ酸配列を配列番号:2に示す。
【0153】
実施例2 酵母発現用ガウシアルシフェラーゼ発現ベクターの構築および発現
酵母での発現を目的としたヒンジ配列を有するガウシアルシフェラーゼ発現ベクターの構築は以下の通りである。pcDNA3−hGLを鋳型として以下の2種のPCRプライマーを用いて、PCRキット(タカラバイオ社製)にてPCR(サイクル条件25サイクル;1分/94℃、1分/50℃、1分/72℃)を実施して、所望のDNA領域を増幅した。
【0154】
プライマー:GL6−N/EcoRI(5’ gcc GAA TTC AAG CCC ACC GAG AAC AAC GAA 3’)(配列番号:13)、および
プライマー:GL26C−TAA/PstI(5’ ggc CTG CAG GTC ACC ACC GGC CCC CTT GAT 3’)(配列番号:14)
【0155】
得られた断片をPCR精製キット(キアゲン社製)で精製し、常法により制限酵素EcoRI/PstIにて消化した後、実施例1で構築したpPICZα −hgLinkerの制限酵素EcoRI/PstI部位に連結することによって、図2に示す酵母発現ベクターpPICZα −hgGL−Hを構築した。
【0156】
なお、DNA シークエンサー(ABI社製)により塩基配列を決定することにより、挿入DNAの確認を行った。発現ベクターpPICZα −hgGL−Hに挿入されたhg−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質をコードするDNA配列を配列番号:3に示す。また、発現ベクターpPICZα−hgGL−Hに挿入されたhg−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質のアミノ酸配列を配列番号:4に示す。
【0157】
酵母での発現は、酵母X33株(インビトロジェン社製)に,常法のエレクトロポレーション装置(バイオラッド社製)により、発現ベクターpPICZα−hgGL−Hを導入し、Zeocin (100 mg/ml)を含むYM培地(Difco社製)の寒天培地で30℃で2日間培養することにより、形質転換体を得た。10mlのZeocin (100 mg/ml)を含むYM培地(Difco社製)液体培地で、30℃で18 時間培養し、遠心後菌体分離を行ない、清上液に発光基質セレンテラジン(チッソ株式会社、以下同じ)を添加し、発光活性を確認した。
【0158】
実施例3 大腸菌発現用ガウシアルシフェラーゼ発現ベクターの構築
大腸菌での発現を目的としたヒンジ配列を有するガウシアルシフェラーゼ発現ベクターの構築は以下の通りである。実施例2で構築した発現ベクターpPICZα−hgGL−Hを常法により制限酵素Asp718I/XbaIにて消化した後、pColdII(タカラバイオ社製)の制限酵素Asp718I/XbaI部位に挿入することにより、図3に示す発現ベクターpCold−hgGLを構築した。
【0159】
なお、DNA シークエンサー(ABI社製)により塩基配列を決定することにより、挿入DNAの確認を行った。発現ベクターpCold−hgGLに挿入された、hg−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質をコードするDNA配列を配列番号:5示す。発現ベクターpCold−hgGLに挿入された、hg−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質のアミノ酸配列を配列番号:6に示す。
【0160】
実施例4 ヒンジ配列とアビジンタグ配列を有する大腸菌発現用ガウシアルシフェラーゼ発現ベクターの構築
ヒンジ配列とアビジンタグ配列を有するガウシアルシフェラーゼ発現ベクターの構築は以下の通りである。実施例3で構築した発現ベクターpCold−hgGLの制限酵素部位であるXhoI/XbaI部位に、化学合成したマルチクローニング配列をもつ以下のリンカーAvitag−Xho/Xba−Fおよび AviTag−Xho/Xba−Rを挿入することにより、図4に示す新規発現ベクターpCold−hgA−GLを構築した。
【0161】
Avitag−Xho/Xba−F (5’ TC GAG ggt ctg aac gac atc ttc gaa gct cag aaa atc gaa tgg cac gaa T 3’)(配列番号:15)
AviTag−Xho/Xba−R (5’ CT AGA ttc gtg cca ttc gat ttt ctg agc ctc gaa gat gtc gtt cag acc C 3’)(配列番号:16)
【0162】
なお、DNA シークエンサー(ABI社製)により塩基配列を決定することにより、挿入DNAの確認を行った。発現ベクターpCold−hgA−GLに挿入された、hg−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質をコードするDNA配列を配列番号:7に示す。発現ベクターpCold−hgA−GLに挿入された、hg−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質のアミノ酸配列を配列番号:8に示す。
【0163】
実施例5 ヒンジ配列を有する組換えガウシアルシフェラーゼの大腸菌での発現、精製法
ヒンジ配列を有する組換えガウシアルシフェラーゼ(hg−ガウシアルシフェラーゼ)は、発現ベクターpCold−hgGLを用いて大腸菌にて組換えhg−ガウシアルシフェラーゼを発現させ、ニッケルキレートカラムクロマトグラフ法、次いで疎水性カラムクロマトグラフ法にて、組換えhg−ガウシアルシフェラーゼを精製した。
【0164】
1)ヒンジ配列を有する組換えガウシアルシフェラーゼの大腸菌での発現
大腸菌において組換えhg−ガウシアルシフェラーゼを発現させるために、実施例3で構築したガウシアルシフェラーゼ遺伝子発現ベクター pCold−hgGLを用いた。常法により大腸菌BL21株に導入し、得られた形質転換株をアンピシリン(50μg/ml)を含有する10mlのLB液体培地(水1リットルあたり、バクトトリプトン10g、イーストイクストラクト5g、塩化ナトリウム5g、pH7.2)に植菌し、37℃で18時間培養を行った。次いで、その培養物を新たなLB液体培地400ml x 5本(総量2000mL)に添加して37℃で5時間培養した後、氷水上で冷却して、イソプロピル−β−D(−)−チオガラクトピラノシド(IPTG、和光純薬工業社製)を最終濃度0.1mMになるように培養液に添加し、15℃で17時間培養を行った。培養後、菌体を遠心回収(5,000rpm、5分)し、蛋白質抽出の出発材料とした。
【0165】
2)培養菌体上清からのhg−ガウシアルシフェラーゼの抽出およびニッケルキレートゲルカラムクロマトグラフ法
集菌した培養菌体を200mlの50mM Tris−HCl (pH7.6)で懸濁し、氷冷下で超音波破砕処理(ブランソン社製、Sonifier model cycle 250)を3分間、3回行い、その菌体破砕液を10,000 rpm(12,000×g)で4 ℃、20分間遠心した。得られた可溶性画分を、50mM Tris−HCl (pH 7.6)で平衡化したニッケルキレートカラム(アマシャムバイオサイエンス社、カラムサイズ:直径2.5×6cm)に供しhg−ガウシアルシフェラーゼを吸着させた。300mlの50mM Tris−HCl (pH7.6)で洗浄後、0.1Mイミダゾール(和光純薬工業社製)によりhg−ガウシアルシフェラーゼを溶出した。800mLの培養菌体より50.4mgのhgGLを得た。SDS−PAGE分析の結果、純度は95%以上であった。
【0166】
3)hgガウシアルシフェラーゼの疎水性カラムクロマトグラフ法による精製
ニッケルキレートゲルカラムより溶出したフラクション63ml(50.4mg蛋白質)に、最終濃度が1.2Mになるように(NH4)2SO4を加え、10,000 rpm(12,000×g)で4 ℃、20分間遠心した。得られた可溶性画分を、1.2M (NH4)2SO4、2mM EDTAを含む10 mM Tris−HCl (pH 7.6)で平衡化したブチルセファロースカラム(アマシャムバイオサイエンス社、カラムサイズ:直径2.5×5.5cm)に供し、hgガウシアルシフェラーゼを吸着させた。1.2M (NH4)2SO4、2mM EDTAを含む10 mM Tris−HCl (pH 7.6)で110 mlで洗浄後、0.4M (NH4)2SO4、2mM EDTAを含む10 mM Tris−HCl (pH 7.6)によりhgガウシアルシフェラーゼを溶出した。6.5mgのhgガウシアルシフェラーゼを得た。SDS−PAGE分析の結果、純度は95%以上であった。
【0167】
4)蛋白定量
蛋白質濃度は、Bradford法にもとづく市販のキット(バイオラッド社製)を用い、ウシ血清アルブミン(ピアス社製)を標準物質として決定した。
それぞれの精製過程画分について、還元状態で12%ポリアクリルアミドゲルを用いたSDS−PAGEによる分析を行った。図5に示すように、最終精製画分は分子量22kDa蛋白質に相当する単一バンドが検出され、純度95%以上であると明らかとなった。表1に示すように、2000mLの培養菌体の可溶性画分からのhgガウシアルシフェラーゼの活性回収率は38.4%、収量6.5mgであった。
【0168】
5)発光活性の測定
ガウシアルシフェラーゼの発光測定は、基質セレンテラジン0.5μgを含む、0.1mlの0.01% Tween20、10 mM EDTA(和光純薬社製)を含むPBS(シグマ社製;0.137M塩化ナトリウム、0.0027M塩化カリウム、pH7.4、以降PBST−Eと表記)に、ガウシアルシフェラーゼ溶液1μlを添加後、発光測定装置Luminescencer−PSN AB2200(アトー社製)で10秒間発光活性を測定した。発光活性は、最大発光値(Imax)で示した。
【0169】
【表1】
【0170】
実施例6 アビジンタグ配列を有する組換えガウシアルシフェラーゼの大腸菌での発現、精製法
アビジンタグ配列を有する組換えガウシアルシフェラーゼ(hgAガウシアルシフェラーゼ)は、発現ベクター pCold−hgAGLを用いて大腸菌にて組換えhgAガウシアルシフェラーゼを発現させ、ニッケルキレートカラムクロマトグラフ法、次いで疎水性クロマトグラフ法にて、組換えhgAガウシアルシフェラーゼを精製した。
【0171】
1)アビジンタグ配列を有する組換えhgAガウシアルシフェラーゼの大腸菌での発現
大腸菌において組換えhgAガウシアルシフェラーゼを発現させるために、実施例4で構築したガウシアルシフェラーゼ遺伝子発現ベクター pCold−hgAGLを用いた。常法により大腸菌BL21株に導入し、得られた形質転換株をアンピシリン(50μg/ml)を含有する10ml×2本のLB液体培地(水1リットルあたり、バクトトリプトン10g、イーストイクストラクト5g、塩化ナトリウム5g、pH7.2)に植菌し、37℃で18時間培養を行った。次いで、その培養物を新たなLB液体培地400ml x 2本(総量800mL)に添加して37℃で3時間培養した後、氷水上で冷却して、イソプロピル−β−D(−)−チオガラクトピラノシド(IPTG、和光純薬工業社製)を最終濃度0.1mMになるように培養液に添加し、15℃で19時間培養を行った。培養後、菌体を遠心回収(5,000rpm、5分)し、蛋白質抽出の出発材料とした。
【0172】
2)培養菌体上清からのhgAガウシアルシフェラーゼの抽出およびニッケルキレートカラムクロマトグラフ法
集菌した培養菌体を80mlの50mM Tris−HCl (pH 7.6)で懸濁し、氷冷下で超音波破砕処理(ブランソン社製、Sonifier model cycle 250)を3分間、4回行い、その菌体破砕液を10,000 rpm(12,000×g)で4 ℃、20分間遠心した。得られた可溶性画分を、50mM Tris−HCl (pH 7.6)で平衡化したニッケルキレートカラム(アマシャムバイオサイエンス社、カラムサイズ:直径2.5×6cm)に供しhgAガウシアルシフェラーゼを吸着させた。50mM Tris−HCl (pH7.6)で洗浄後、0.1Mイミダゾール(和光純薬工業社製)によりhgAガウシアルシフェラーゼを溶出した。800mLの培養菌体より19.9mgの蛋白質を得た。
【0173】
3)hgAガウシアルシフェラーゼの疎水性カラムクロマトグラフ法
ニッケルキレートカラムより溶出したフラクション39ml(19.9mg蛋白質)に、最終濃度が1.2Mになるように(NH4)2SO4を加え、10,000 rpm(12,000×g)で4 ℃、20分間遠心した。得られた可溶性画分を、1.2M (NH4)2SO4、2mM EDTAを含む10 mM Tris−HCl (pH 7.6)で平衡化したブチルセファロースカラム(アマシャムバイオサイエンス社、カラムサイズ:直径2.5×5.5cm)に供し、hgAガウシアルシフェラーゼを吸着させた。1.2M (NH4)2SO4、2mM EDTAを含む10 mM Tris−HCl (pH 7.6)で洗浄後、0.4M (NH4)2SO4、2mM EDTAを含む10 mM Tris−HCl (pH 7.6)によりhgAガウシアルシフェラーゼを溶出した。0.92mgのhgAガウシアルシフェラーゼを得た。SDS−PAGE分析の結果、純度は95%以上であった。
【0174】
4)蛋白定量
蛋白量濃度は、Bradford法にもとづく市販のキット(バイオラッド社製)を用い、ウシ血清アルブミン(ピアス社製)を標準物質として用いて決定した。
それぞれの精製過程画分について、還元状態で12%ポリアクリルアミドゲルを用いたSDS−PAGEによる分析を行った。図6に示すように、最終精製画分は分子量29kDa蛋白質に相当する単一バンドが検出され、純度95%以上であった。表2に示すように、800mLの培養菌体の可溶性画分からのhgAガウシアルシフェラーゼの活性回収率は15.8%、収量0.92mgを得た。
【0175】
5)発光活性の測定
ガウシアルシフェラーゼの発光測定は、基質セレンテラジン0.5μgを含む、0.1mlの0.01% Tween20、10 mM EDTA(和光純薬社製)を含むPBS(シグマ社製;0.137M塩化ナトリウム、0.0027M塩化カリウム、pH7.4、以降PBST−Eと表記)に、ガウシアルシフェラーゼ溶液1μlを添加後、発光測定装置Luminescencer−PSN AB2200(アトー社製)で10秒間発光活性を測定した。発光活性は、最大発光値(Imax)で示した。
【0176】
【表2】
【0177】
実施例7 マレイミド活性化ビオチンによるビオチン化hgガウシアルシフェラーゼの調製
1mM EDTAを含んだPBS溶液(以下PBS−Eと記載)500μlに、PBS−Eにて1mMに調製したマレイミド活性化ビオチン(ピアス社製、EZ−Link PEO−Maleimide− activated Biotin、スペーサーの長さ:29.1オングストローム)4.4μl(4.4 nmol)を加え、次いで精製したhgガウシアルシフェラーゼ500μl(2.2 nmol)を添加して修飾反応を開始させ、暗所で25℃にて一晩反応を行った。システイン溶液を最終濃度0.2mM加えて室温にて30分静置させ、未反応のマレイミド活性化ビオチンを不活化させた。不活化マレイミドビオチン試薬はアミコンウルトラカラム(ミリポア社製)を用いて除去し、ビオチン化hgガウシアルシフェラーゼを調整した。
また、上述のようにして得られたビオチン化hgガウシアルシフェラーゼと、反応前のhgガウシアルシフェラーゼの発光活性を比較した結果、ビオチン化による発光活性への影響はほとんどなく、ビオチン化hgガウシアルシフェラーゼは98%以上の発光活性を保持していた。
【0178】
実施例8 ビオチン化hgガウシアルシフェラーゼの蛋白質量と発光活性の相関
ビオチン化hgガウシアルシフェラーゼを検出用プローブとして使用するためには、蛋白量と発光活性とが直線性を示すことが必要である。ビオチン化hgガウシアルシフェラーゼの濃度を100フェムトグラムから1ナノグラムとして、基質セレンテラジン(0.5 ng/μl)100μlを注入し、発光測定装置Centro LB960(ベルトールド社製)で発光活性を測定した。発光活性の最大値(Imax)と蛋白質濃度の相関を図7に示した。発光強度とビオチン化hgガウシアルシフェラーゼとの間に直線性の相関が認められた。この結果から、ビオチン化hgガウシアルシフェラーゼの量を、発光によって定量することが可能であることが示された。
【0179】
実施例9 ビオチン化hgガウシアルシフェラーゼを用いたα−フェトプロテイン(AFP)の発光イムノアッセイ
1)抗−フェトプロテイン抗体(抗−AFP抗体)のコーティング法
抗−AFP抗体(日本医学臨床検査研究所製、クローンNo.6D2、サブクラスIgG2a−κ、以下「6D2」と記載)を、0.05%アジ化ナトリウムを含む50mM炭酸緩衝液(pH9.6)にて5μg/mlに調製し、96穴マイクロプレート(Nunc社製、#437796)に100μl/ウェル分注し、室温にて一晩静置してコートした。静置後、炭酸緩衝液を除去し、150mM NaCl(和光純薬工業製)、20mM Tris−HCl(和光純薬工業製)(以降TBSと記載)に1%牛血清アルブミン(シグマ製、以下BSAと記載)、2mM EDTA(EDTA・2Na、同仁化学研究所製)、0.05%アジ化ナトリウム(和光純薬工業製)を含む溶液(以降ポストコーティング溶液と記載)を200μl/ウェル分注し、4℃にて一晩静置した。
【0180】
2)ビオチン化hgガウシアルシフェラーゼによるAFPの検出法
静置後、ポストコーティング溶液を除去し、0.01% Tween 20と2mM EDTAを含有したTBS(TBST−Eと略す)340μlで3回洗浄した後、10% ブロックエース(雪印乳業社製)、2mM EDTAを含有したTBSにて、0.0125ng/mlから125ng/mlに希釈調製したα−フェトプロテイン(Dako製、AFPと記載)を96穴マイクロプレートに50μl/ウェル分注し、さらに74.5ng/mlに希釈調製したビオチン化抗−AFP抗体(日本医学臨床検査研究所製、クローンNo.1D5、サブクラスIgG1−κ、以下1D5と記載)を50μl/ウェル分注し、30℃にて1時間静置した。前記プレートから反応溶液を除去し、340μlのTBST−Eで3回洗浄した。10% ブロックエース、0.01%Tween20(バイオラッド社製)、10mM EDTAを含有するPBS(以下PBSE−TBと記載)にて200pmol/mlに希釈調製したストレプトアビジン50μlと、400pmol/mlに希釈調製したビオチン化hgガウシアルシフェラーゼ50μlを混合し、室温にて30分反応させた後、PBSE−TBにて80倍希釈した溶液を前記プレートに100μl/ウェル分注し、30℃にて30分静置した。反応溶液を除去し、340μlのTBST−Eで3回洗浄した後、PBST−Eで0.5ng/μlに調製した基質セレンテラジンを、発光測定装置Centro LB960(ベルトールド社製)にて100μl/ウェル注入し、発光強度を0.1秒間隔で10秒間測定し、最大発光強度値(Imax)を算出した。求めたImaxとAFPの濃度よりAFPの標準曲線を図8に示した。
【0181】
実施例10 マレイミド活性化ビオチンによるビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼの調製
650μlのPBS−Eに、PBS−Eにて1mMに調製したマレイミド活性化ビオチン(ピアス社製、EZ−Link PEO−Maleimide− activated Biotin、スペーサーの長さ:29.1オングストローム)4.2μl(4.2nmol)を加え、次いで精製したhgAガウシアルシフェラーゼ350μl(2.1nmol)を添加して修飾反応を開始させ、暗所で25℃にて2時間反応を行った。システイン溶液を最終濃度0.2mM加えて室温にて30分静置させ、未反応のマレイミド活性化ビオチンを不活化させた。不活化マレイミドビオチン試薬はアミコンウルトラカラム(ミリポア社製)を用いて除去し、ビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼを調製した。
また、上述のようにして得られたビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼと、反応前のhgAガウシアルシフェラーゼの発光活性を比較した結果、ビオチン化による発光活性への影響はほとんどなく、ビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼは98%以上の発光活性を保持していた。
【0182】
実施例11 ビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼの定量性
ビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼを検出用プローブとして使用するためには、蛋白量と発光量とが直線性を示すことが必要である。ビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼ変異体の濃度を200フェムトグラムから200ピコグラムとして、基質セレンテラジン(0.5 ng/μl)100μlを注入し、発光測定装置Centro LB960(ベルトールド社製)で発光活性を測定した。発光活性の最大値(Imax)と蛋白質濃度の相関を図9に示した。発光強度とビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼとの間に直線性の相関が認められた。この結果から、ビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼの量を、発光によって定量することが可能であることが示された。
【0183】
実施例12 ビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼを用いたα−フェトプロテイン(AFP)の発光イムノアッセイ
1)抗−フェトプロテイン抗体(抗−AFP抗体)のコーティング法
抗−AFP抗体(6D2)を、0.05%アジ化ナトリウムを含む50mM炭酸緩衝液(pH9.6)にて5μg/mlに調製し、96穴マイクロプレート(Nunc社製、#437796)に100μl/ウェル分注し、室温にて一晩静置してコートした。静置後、炭酸緩衝液を除去し、ポストコーティング溶液を200μl/ウェル分注し、4℃にて一晩静置した。
【0184】
2)ビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼによるAFPの検出法
静置後、ポストコーティング溶液を除去し、340μlのTBST−Eで3回洗浄した後、10% ブロックエース、2mM EDTAを含有したTBSにて、0.0125ng/mlから125ng/mlに希釈調製したAFPを96穴マイクロプレートに50μl/ウェル分注し、さらに74.5ng/mlに希釈調製したビオチン化抗−AFP抗体(1D5)を50μl/ウェル分注し、30℃にて1時間静置した。前記プレートから反応溶液を除去し、340μlのTBST−Eで3回洗浄した。PBSE−TBにて200pmol/mlに希釈調製したストレプトアビジン50μlと、400pmol/mlに希釈調製したビオチン化hgAガウシアルシフェラーゼ50μlを混合し、室温にて30分反応させた後、PBSE−TBにて80倍希釈した溶液を前記プレートに100μl/ウェル分注し、30℃にて30分静置した。反応溶液を除去し、340μlのTBST−Eで3回洗浄した後、PBST−Eで0.5ng/μlに調製した基質セレンテラジンを、100μl/ウェル注入し、発光測定装置Centro LB960にて、発光強度を0.1秒間隔で10秒間測定し、最大発光強度値(Imax)を算出した。求めたImaxとAFPの濃度よりAFPの標準曲線を図10に示した。
【0185】
実施例13:hgAガウシアルシフェラーゼ標識抗体の調製法
1)スルフヒドリル反応性抗体(マレイミド化抗体)の製造(抗−AFP抗体とマレイミド基を有する架橋試薬との結合)
50μg(0.3nmol)の抗−AFP抗体(日本医学臨床検査研究所製、クローンNo.1D5、サブクラスIgG1−κ、以下「1D5」と言うことがある)を、78.3μlの0.1mM EDTAを含む66mMリン酸緩衝液(pH7.4、以降「緩衝液A」と記載)に溶解したものに、緩衝液Aにて1mMに調製したスルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(スルホ−SMCC、PIERCE社)を3μl(スルホ−SMCC 3nmol、1D5/スルホ−SMCC=1/10)加え、4℃にて2時間反応させた。反応後、10mMグリシンを1μl(10nmol)加え25℃にて10分以上静置して、反応を停止した。不活性化スルホ−SMCCをアミコンウルトラ−4スピンカラム(ミリポア社製、分画分子量10,000)を用いて4℃、6000rpmにて15分間遠心して(日立製作所製、CR20B2)除去し、抗−AFP抗体とマレイミド基を有する架橋試薬との結合体(以下「マレイミド化1D5」と言うことがある。)を得た。E1%280nm=14から算出したマレイミド化1D5の回収率は70.6%(0.24nmol、35.3μg)であった。
【0186】
2)hgAGLとスルフヒドリル反応性抗体(マレイミド化1D5)との反応
得られた0.24nmolのマレイミド化1D5に、精製hgAガウシアルシフェラーゼ(以降、hgAGLと言うことがある)を0.72nmol加え、4℃にて一晩反応させた。反応後、10mMシステイン水溶液を1μl(10nmol)加え、hgAGLとマレイミド化1D5との結合体(以下「hgAGL−Ab1D5」と言うことがある。)を得た。
【0187】
hgAGL−Ab1D5に発光活性の低下はほとんど起こらず、96%の発光活性を保持していた。得られたhgAGL−Ab1D5を還元条件下で,12%分離ゲル(テフコ社製)を用いてSDS−PAGE分析に供した。その結果、hgAGL(29kDa)と1D5由来のH鎖(55kDa)が結合して生成した84kDaにバンドを確認した。
【0188】
実施例14:hgAGL−Ab1D5の定量性
hgAGL−Ab1D5を検出用プローブとして使用するためには、蛋白量と発光量とが直線性を示すことが必要である。hgAGL−Ab1D5を3ピコグラムから3000ピコグラムとして、基質セレンテラジン(0.5μg/ml)100μlを注入し、発光測定装置Centro LB960(ベルトールド社製)で発光活性を測定した。発光活性の最大値(Imax)と蛋白質濃度の相関を図11に示した。発光強度とhgAGL−Ab1D5との間に直線性の相関が認められた。この結果から、hgAGL−Ab1D5の量を、発光によって定量することが可能であることが示された。
【0189】
実施例15:hgAGL−Ab1D5によるAFPの発光イムノアッセイ
1)抗−AFP抗体のコーティング法
抗−AFP抗体(クローンNo.6D2、サブクラスIgG2a−κ、日本医学臨床検査研究所、以下「6D2」と言うことがある。)を、0.05%アジ化ナトリウムを含む50mM 炭酸緩衝液(pH9.6)にて5μg/mlに調製し、96穴マイクロプレート(Nunc社製 #437796)に100μl/ウェル分注し、25℃にて一晩静置してコートした。
【0190】
2)ポストコーティング法
静置後、炭酸緩衝液を除去し、1%牛血清アルブミン(シグマ社)、2mM EDTA(EDTA・2Na、同仁化学研究所)、0.05%アジ化ナトリウム(和光純薬工業)を含む150mM NaCl(和光純薬工業)、20mM Tris−HCl(和光純薬工業)(以降TBSと記載)(以降ポストコーティング溶液と記載)を200μl/ウェル分注、4℃にて一晩静置した。
【0191】
3)AFPとhgAGL−Ab1D5の反応法
ポストコーティング溶液を除去し、340μlのTBST−Eで3回洗浄した後、10%ブロックエース(大日本製薬)、5mM EDTAを含むTBS(以降希釈液と記載)で110μg/ml AFP(Dako)を希釈、10pg/mlから200ng/mlまでの希釈系列を作製し、50μl/ウェル分注し、更に希釈液で74.5ng/mlに調製したhgAGL−Ab1D5を50μl/ウェル分注後、25℃にて1時間静置した。
【0192】
4)発光の測定法
静置後、反応液を除去し、340μlのTBST−Eで3回洗浄した後、PBST−Eにて0.5μg/mlに調製した基質セレンテラジンを100μl/ウェル注入し、発光測定装置Centro LB960(ベルトールド社製)にて、発光強度を0.1秒間隔で10秒間測定し、最大発光強度値(Imax)を算出した。
【0193】
hgAGL−Ab1D5を用いたAFPの生物発光イムノアッセイによるスタンダードカーブを図12に示した。その結果、AFPの検出限界は4×10−2ng/ml、ダイナミックレンジは4×10−2〜102ng/mlを示し、イムノアッセイに優れていることが示された。
【0194】
実施例16:蛍光標識化ガウシアルシフェラーゼの調製法
精製hgガウシアルシフェラーゼ2.2 nmolを10mM EDTAを含むPBS(シグマ社製;0.137M塩化ナトリウム、0.0027M塩化カリウム、pH7.4)の1 mlとし、ジメチルホルムアミドに溶解したフルオレセイン−5−マレイミド (ピアス社製)22nmol添加後、4℃で16時間反応させる。反応溶液をアミコンウルトラ−4スピンカラム(ミリポア社製、分画分子量10,000)を用いて4℃、6,000rpmにて10分間遠心して、濃縮後、10mM EDTA及び0.01%Tween20を含むPBS溶液2mlで2回洗浄後、全量を1mlとする。蛍光標識ガウシアルシフェラーゼ活性の回収率は、92%であった。
【0195】
実施例17:蛍光標識化ガウシアルシフェラーゼによる生物発光エネルギー移動法
10mMEDTA及び0.01%Tween20を含むPBS溶液0.99mlに、5μlのエタノールに溶解したセレンテラジン5μgを添加した後、5μlの蛍光標識ガウシアルシフェラーゼ1μg添加することにより、発光反応を開始すると同時に、発光スペクトルをJasco (日本分光株式会社製)のFP−6500の励起光をオフにして測定した。測定条件は、蛍光用石英セル(光路長10mm)を用い、バンド幅:20mm、レスポンス:0.2秒、走査速度:2000nm/分、22〜25℃で行なった。測定スペクトル結果を図13にしめした。ガウシアルシフェラーゼのみの発光は、467nmの最大のみを示すが、蛍光標識ガウシアルシフェラーゼの場合、新たに510nmに新規ピークが生成する。これは、ガウシアルシフェラーゼによるセレンテラジン酸化の結果生じる発光エネルギーが、ガウシアルシフェラーゼに結合している蛍光色素フルオレセインへのエネルギー移動の結果生じる為である。そのエネルギー移動効率は、約50%と推定される。
【0196】
参考例1:ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142C発現ベクターの構築
ガウシアルシフェラーゼ遺伝子とアポイクオリンの142番目のセリン残基をシステイン残基に置換したアポイクオリン−S142C遺伝子を有するガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142C融合遺伝子発現ベクターの構築は以下の通りである。
【0197】
ガウシアルシフェラーゼ遺伝子(hGL遺伝子)は、ガウシアルシフェラーゼ遺伝子を有するpcDNA3-hGL(LUX社製)から、PCR法により調製した。アポイクオリンの142番目のセリン残基をシステイン残基に置換したアポイクオリン−S142C遺伝子は、アポイクオリン遺伝子を有するpAQ440(特開昭61-135586号公開公報参照)のHindIII-EcoRI 領域をpUC9のベクターにサブクローニングして得たpAM-HEから、PCR法により調製した。発現ベクターとしては、pCold II(タカラバイオ社)を使用した。
【0198】
アポイクオリンの142番目のセリン残基のシステイン残基への置換は以下の手順で行った。pAM-HEを鋳型として以下の2種類のPCRプライマー:AQ-20N/XhoIおよびAQ-S142C-Rを用いて、PCRキット(タカラバイオ社製)にてPCR(サイクル条件25サイクル;1分/94℃、1分/50℃、1分/72℃)を実施して、所望のDNA領域を増幅した。
【0199】
AQ-20N/XhoI(5’ ccg CTC GAG ACA TCA GAC TTC GAC AAC CCA 3’;XhoI制限酵素部位はアンダーライン)(配列番号:21)、
AQ-S142C-R(5’ ATC TTC GCA TGA TTG GAT GAT3’)(配列番号:22)。
【0200】
同様に以下の2種類のPCRプライマー:AQ-S142C-FおよびAEQ-C-PstIを用いて、PCRキット(タカラバイオ社製)にてPCR(サイクル条件25サイクル;1分/94℃、1分/50℃、1分/72℃)を実施して、所望のDNA領域を増幅した。
【0201】
AQ-S142C-F(5’ CAA TCA TGC GAA GAT TGC GAG 3’)(配列番号:23)、
AEQ-C-PstI(5’ cgg CTG CAG TTA GGG GAC AGC TCC ACC GTA GAG CTT 3’ ;PstI制限酵素部位はアンダーライン)(配列番号:24)
【0202】
得られた2種類のPCR産物を鋳型として、PCRプライマー:AQ-20N/XhoI(配列番号:21)およびAEQ-C-PstI(配列番号:24)を用いて、PCRキット(タカラバイオ社製)にてPCR(サイクル条件25サイクル;1分/94℃、1分/50℃、1分/72℃)を実施して、142番目のセリン残基をシステイン残基に置換したアポイクオリン遺伝子を得た。得られた断片をPCR精製キット(キアゲン社製)で精製し、常法により制限酵素XhoI/PstIにて消化した後、pBluescript II SK (+)(Straragene社)の制限酵素XhoI/PstI部位に連結することによって、ベクターpBlue-AQ-S142Cを構築した。
【0203】
次いで、ガウシアの遺伝子はpcDNA3-hGL(プロルミ社製)を鋳型として以下の2種類のPCRプライマー:GL-25N/Kpn-EcoRIおよびGL-24N-TAA/XhoIを用いて、PCRキット(タカラバイオ社製)にてPCR(サイクル条件25サイクル;1分/94℃、1分/50℃、1分/72℃)を実施して、ガウシア遺伝子を増幅した。
【0204】
GL-25N/Kpn-EcoRI(5’ ggc GGT ACC GAA TTC AAG CCC ACC GAG AAC AAC 3’;Asp718I制限酵素部位はアンダーライン)(配列番号:25)、
GL-24N-TAA/XhoI(5’ ccg CTC GAG GTC ACC ACC GGC CCC CTT GAT 3’ ;XhoI制限酵素部位はアンダーライン)(配列番号:26)
【0205】
得られた断片をPCR精製キット(キアゲン社製)で精製し、常法により制限酵素Asp718I/XhoIにて消化した後、pBlue-AQ-S142Cの制限酵素Asp718I/XhoI部位に連結することによって、ベクターpBlue-GL-AQ-S142Cを構築した。
【0206】
このベクターpBlue-GL-AQ-S142Cを常法により制限酵素EcoRI/PstIにて消化した後、pColdIIの制限酵素EcoRI/PstI部位に連結することによって、発現ベクターpCold-GL-AQ-S142Cを構築した(図14)。なお、DNA シークエンサー(ABI社製)により塩基配列を決定することにより、挿入DNAの確認を行った。
【0207】
挿入DNAの塩基配列を配列番号:27に、挿入DNAがコードする融合蛋白質のアミノ酸配列を配列番号:28に示す。
【0208】
参考例2:組換えガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142C融合蛋白質の精製法
組換えガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142C融合蛋白質は、以下に示すように、発現ベクターpCold-GL-AQ-S142Cを用いて、大腸菌にて組換えガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cを発現させ、ニッケルキレートカラムクロマトグラフ法にて精製を行い、アポイクオリン部分を再生することで、組換えガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142Cを得た。
【0209】
1)組換えガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリンS142Cの大腸菌での発現方法
大腸菌において組換えガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cを発現させるために、ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142C遺伝子発現ベクターpCold-GL-AQ-S142Cを用いた。このベクターを常法により大腸菌BL21株に導入し、得られた形質転換株をアンピシリン(50μg/ml)を含有する10mlのLB液体培地(水1リットルあたり、バクトトリプトン10g、イーストイクストラクト5g、塩化ナトリウム5g、pH7.2)に植菌し、37℃で18時間培養を行った。次いで、その培養物を新たなLB液体培地400ml x 5本(総量2L)に添加して37℃で5時間培養した後、氷水上で冷却して、イソプロピル−β−D(−)−チオガラクトピラノシド(IPTG、和光純薬工業社製)を最終濃度0.2mMになるように培養液に添加し、15℃でさらに17時間培養を行った。培養後、菌体を遠心回収(5,000rpm、5分)し、蛋白質抽出の出発材料とした。
【0210】
2)培養菌体からのガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cの抽出方法
集菌した培養菌体を100mlの50mM Tris-HCl (pH7.6)で懸濁し、氷冷下で超音波破砕処理(ブランソン社製、Sonifier model cycle 250)を3分間、3回行い、その菌体破砕液を10,000 rpm(12,000×g)で4 ℃、20分間遠心し、不溶性沈殿画分を得た。得られた不溶性沈殿画分を、100mlの6M尿素を含む50mM Tris-HCl (pH7.6)に懸濁し、この懸濁液を氷冷下で超音波破砕処理を行い、10,000 rpm(12,000×g)で4 ℃、10分間遠心した。得られた尿素可溶性画分をガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142C精製の出発材料とした。
【0211】
3)尿素可溶性画分からの組換えガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cの精製方法
組換え発現蛋白質は、アミノ末端に6個のヒスチジン配列を有するので、ニッケルキレートゲルによるアフィニティクロマト法により精製が可能である。
まず、6M尿素可溶性画分を、6M尿素を含む50mM Tris-HCl (pH7.6)で平衡化したニッケルキレートカラム(アマシャムバイオサイエンス社、カラムサイズ:直径2.5×6cm)に供し、ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cを吸着させた。ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142C吸着カラムを、150mlの6M尿素を含む50mM Tris-HCl (pH7.6)で洗浄後、6M尿素と0.1Mイミダゾール(和光純薬工業社製)を含む50mM Tris-HCl (pH7.6)でガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cを溶出した。蛋白量濃度は、Bradford法にもとづく市販のキット(バイオラッド社製)を用い、また、ウシ血清アルブミン(ピアス社製)を標準物質として用いて決定した。2Lの培養菌体より106mgのガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cが得られた。
【0212】
4)ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cからガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142Cへの調製法
ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cからのガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142Cへの再生は以下に示すように、ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142Cを、まず還元剤2−メルカプトエタノールで処理後、発光基質(セレンテラジン)と接触させることによりイクオリンを再生する。その後、透析処理にて還元剤を除去して、ガウシアルシフェラーゼをリフォールディングし活性型に変換させることにより、ガウシアルシフェラーゼ活性およびイクオリン活性を有するガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142C蛋白質を得た。
【0213】
具体的には、0.1M イミダゾールおよび6M尿素によりニッケルキレートカラムより溶出したガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリンS142C溶液(50μg/10μl)を10mM EDTAを含む30mM Tris-HCl (pH7.6) 990μl に溶解し、これを2-メルカプトエタノールと最終濃度が0.35%(v/v)になるように混合する。37℃で30分放置した後、ガウシアルシフェラーゼの発光活性が失活した事を確認し、エタノールに溶解した5μg基質セレンテラジン(1μg/μl)を添加して、4℃にて一晩イクオリンの再生反応を行った。次いで、得られたイクオリン再生溶液を4Lの10mM EDTAを含む100mM炭酸アンモニウム溶液(pH8.0)にて4℃で一晩透析を行い、組換えガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142C蛋白質(40μg)を得た。
【0214】
実施例18:発光活性の比較
上記実施例5の3)に記載の方法で得られたhgガウシアルシフェラーゼ、実施例6の3)に記載の方法で得られたhgAガウシアルシフェラーゼ、および上記参考例2の4)に記載の方法で得られた組換えガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142C蛋白質について、各融合蛋白質間での発光活性の比較を行った。具体的には、各融合蛋白質間での発光活性は、実施例5の5)に記載の方法に準じて行った。その結果を、下記表3に示す。
【0215】
表3から、第1の領域とC末端との間の第1の領域を除く部分のアミノ酸残基の数が21〜36残基であるhgガウシアルシフェラーゼおよびhgAガウシアルシフェラーゼは、第1の領域とC末端との間の第1の領域を除く部分のアミノ酸残基の数が188残基である組換えガウシアルシフェラーゼ−イクオリン−S142C蛋白質に比べ、約500倍高い発光の比活性を示すことが分かる。
【0216】
【表3】
【0217】
以上の実施例より、本発明のルシフェラーゼ(融合蛋白質)は、高い発光触媒活性を有することが分かる。また、本発明のルシフェラーゼに導入されたシステインのチオール基を介して他の有用な物質(蛍光物質;ビオチン、抗体などのリガンド等)と結合することができるため、生物発光エネルギー移動法や、リガンドに特異的な物質の検出などに利用することができることが分かる。
【配列表フリーテキスト】
【0218】
[配列番号:1]実施例1で作製したヒンジ配列とマルチクローニングサイトを有する発現ベクターpPICZα−hgLinkerのDNA配列を示す。
[配列番号:2]実施例1で作製したヒンジ配列とマルチクローニングサイトを有する発現ベクターpPICZα−hgLinkerのDNA配列にコードされる蛋白質のアミノ酸配列を示す。
[配列番号:3]実施例2で作製した発現ベクターpPICZα−hgGL−Hに挿入された、hg−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質をコードするDNA配列を示す。
[配列番号:4]実施例2で作製した発現ベクターpPICZα−hgGL−Hに挿入された、hg−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質のアミノ酸配列を示す。
[配列番号:5]実施例3で作製した発現ベクターpCold−hgGLに挿入された、hg−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質をコードするDNA配列を示す。
[配列番号:6]実施例3で作製した発現ベクターpCold−hgGLに挿入された、hg−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質のアミノ酸配列を示す。
[配列番号:7]実施例4で作製した発現ベクターpCold−hgA−GLに挿入された、hgA−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質をコードするDNA配列を示す。
[配列番号:8]実施例4で作製した発現ベクターpCold−hgA−GLに挿入された、hgA−ガウシアルシフェラーゼ融合蛋白質のアミノ酸配列を示す。
[配列番号:9]実施例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:10]実施例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:11]実施例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:12]実施例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:13]実施例2で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:14]実施例2で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:15]実施例4で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:16]実施例4で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:17]ガウシアルシフェラーゼの触媒部分をコードするDNA配列を示す。
[配列番号:18]ガウシアルシフェラーゼの触媒部分のアミノ酸配列を示す。
[配列番号:19]ヒンジをコードするDNA配列を示す。
[配列番号:20]ヒンジのアミノ酸配列を示す。
[配列番号:21]参考例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:22]参考例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:23]参考例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:24]参考例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:25]参考例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:26]参考例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:27]参考例1で作製した発現ベクターpCold-GL-AQ-S142Cに挿入された、ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142C融合蛋白質をコードするDNA配列を示す。
[配列番号:28]参考例1で作製した発現ベクターpCold-GL-AQ-S142Cに挿入された、ガウシアルシフェラーゼ−アポイクオリン−S142C融合蛋白質のアミノ酸配列を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)以下の(a)〜(d)からなる群から選択される第1の領域:
(a)配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域、
(b)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、
(c)配列番号:18のアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、および
(d)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域;と
(2)チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドのアミノ酸配列からなる第2の領域;と
を含有する、融合蛋白質。
【請求項2】
前記第2の領域が以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域、
(f)配列番号:20のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域、
(g)配列番号:20のアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域、および
(h)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域;
から選択される、請求項1記載の融合蛋白質。
【請求項3】
前記第2の領域が以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域、
(f)配列番号:20のアミノ酸配列において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域、
(g)配列番号:20のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域、および
(h)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域;
から選択される、請求項2記載の融合蛋白質。
【請求項4】
前記第1の領域が以下の(a)〜(d)からなる群:
(a)配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域、
(b)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、
(c)配列番号:18のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、および
(d)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域;
から選択される、請求項1〜3のいずれか1項記載の融合蛋白質。
【請求項5】
(1)前記第1の領域が配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域であり、
(2)前記第2の領域が配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域である、請求項4記載の融合蛋白質。
【請求項6】
さらに、翻訳促進のためのアミノ酸配列および/または精製のためのアミノ酸配列を含有する、請求項1〜5のいずれか1項記載の融合蛋白質。
【請求項7】
配列番号:4、6または8のアミノ酸配列からなる融合蛋白質。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
【請求項9】
(1)以下の(a)〜(d)からなる群から選択される第1のコード配列:
(a)配列番号:17の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなるコード配列、
(b)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(c)配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、および
(d)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列;と
(2)チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる第2のコード配列;と
を含有する、ポリヌクレオチド。
【請求項10】
前記第2のコード配列が以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:19の塩基配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(f)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(g)配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード領域、および
(h)配列番号:20のアミノ酸において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード領域;
から選択される、請求項9記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
前記第2のコード配列が以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:19の塩基配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(f)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(g)配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、および
(h)配列番号:20のアミノ酸において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列;
から選択される、請求項10記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
前記第1のコード配列が以下の(a)〜(d)からなる群:
(a)配列番号:17の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなるコード配列、
(b)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(c)配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、および
(d)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列;
から選択される、請求項9〜11のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
(1)前記第1のコード配列が配列番号:17の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなるコード配列であり、
(2)前記第2のコード配列が配列番号:19の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなるコード配列である、請求項12記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
配列番号:3、5または7の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
【請求項15】
請求項8〜14のいずれか1項記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
【請求項16】
請求項15記載の組換えベクターが導入された形質転換体。
【請求項17】
請求項16記載の形質転換体を培養し、請求項1〜7のいずれか1項記載の融合蛋白質を生成させる工程を含む、請求項1〜7のいずれか1項記載の融合蛋白質の製造方法。
【請求項18】
請求項1〜7のいずれか1項記載の融合蛋白質に、該融合蛋白質の第2の領域のシステイン残基のチオール基を介して、他の有用な化合物を結合した複合体。
【請求項19】
他の有用な化合物が蛍光物質および/または検出すべき物質に特異的なリガンドである、請求項18記載の複合体。
【請求項20】
請求項1〜7のいずれか1項記載の融合蛋白質を含むキット。
【請求項21】
請求項8〜14のいずれか1項記載のポリヌクレオチド、請求項15記載の組換えベクターまたは請求項16記載の形質転換体を含むキット。
【請求項22】
請求項18または19記載の複合体を含むキット。
【請求項23】
さらにルシフェリンを含む、請求項20〜22のいずれか1項記載のキット。
【請求項24】
ルシフェリンがセレンテラジン類である、請求項23記載のキット。
【請求項25】
セレンテラジン類がセレンテラジンである、請求項24記載のキット。
【請求項26】
請求項1〜7のいずれか1項記載の融合蛋白質または請求項18または19記載の複合体と、ルシフェリンとを接触させることを含む、発光反応を行う方法。
【請求項27】
請求項1〜7のいずれか1項記載の融合蛋白質または請求項18または19記載の複合体をドナー蛋白質として用いて、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)法を行うことを特徴とする、生理機能の解析または酵素活性の測定方法。
【請求項28】
請求項19記載の複合体を用いる、リガンドに特異的な物質を測定する方法。
【請求項1】
(1)以下の(a)〜(d)からなる群から選択される第1の領域:
(a)配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域、
(b)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、
(c)配列番号:18のアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、および
(d)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域;と
(2)チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドのアミノ酸配列からなる第2の領域;と
を含有する、融合蛋白質。
【請求項2】
前記第2の領域が以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域、
(f)配列番号:20のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域、
(g)配列番号:20のアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域、および
(h)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域;
から選択される、請求項1記載の融合蛋白質。
【請求項3】
前記第2の領域が以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域、
(f)配列番号:20のアミノ酸配列において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域、
(g)配列番号:20のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域、および
(h)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含有し、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域;
から選択される、請求項2記載の融合蛋白質。
【請求項4】
前記第1の領域が以下の(a)〜(d)からなる群:
(a)配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域、
(b)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、
(c)配列番号:18のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域、および
(d)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域;
から選択される、請求項1〜3のいずれか1項記載の融合蛋白質。
【請求項5】
(1)前記第1の領域が配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域であり、
(2)前記第2の領域が配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域である、請求項4記載の融合蛋白質。
【請求項6】
さらに、翻訳促進のためのアミノ酸配列および/または精製のためのアミノ酸配列を含有する、請求項1〜5のいずれか1項記載の融合蛋白質。
【請求項7】
配列番号:4、6または8のアミノ酸配列からなる融合蛋白質。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
【請求項9】
(1)以下の(a)〜(d)からなる群から選択される第1のコード配列:
(a)配列番号:17の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなるコード配列、
(b)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(c)配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、および
(d)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列;と
(2)チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる第2のコード配列;と
を含有する、ポリヌクレオチド。
【請求項10】
前記第2のコード配列が以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:19の塩基配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(f)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(g)配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード領域、および
(h)配列番号:20のアミノ酸において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード領域;
から選択される、請求項9記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
前記第2のコード配列が以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:19の塩基配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(f)配列番号:19の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(g)配列番号:20のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、および
(h)配列番号:20のアミノ酸において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつチオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列;
から選択される、請求項10記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
前記第1のコード配列が以下の(a)〜(d)からなる群:
(a)配列番号:17の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなるコード配列、
(b)配列番号:17の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、
(c)配列番号:18のアミノ酸配列からなる領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列、および
(d)配列番号:18のアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する領域をコードするポリヌクレオチドからなるコード配列;
から選択される、請求項9〜11のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
(1)前記第1のコード配列が配列番号:17の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなるコード配列であり、
(2)前記第2のコード配列が配列番号:19の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなるコード配列である、請求項12記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
配列番号:3、5または7の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
【請求項15】
請求項8〜14のいずれか1項記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
【請求項16】
請求項15記載の組換えベクターが導入された形質転換体。
【請求項17】
請求項16記載の形質転換体を培養し、請求項1〜7のいずれか1項記載の融合蛋白質を生成させる工程を含む、請求項1〜7のいずれか1項記載の融合蛋白質の製造方法。
【請求項18】
請求項1〜7のいずれか1項記載の融合蛋白質に、該融合蛋白質の第2の領域のシステイン残基のチオール基を介して、他の有用な化合物を結合した複合体。
【請求項19】
他の有用な化合物が蛍光物質および/または検出すべき物質に特異的なリガンドである、請求項18記載の複合体。
【請求項20】
請求項1〜7のいずれか1項記載の融合蛋白質を含むキット。
【請求項21】
請求項8〜14のいずれか1項記載のポリヌクレオチド、請求項15記載の組換えベクターまたは請求項16記載の形質転換体を含むキット。
【請求項22】
請求項18または19記載の複合体を含むキット。
【請求項23】
さらにルシフェリンを含む、請求項20〜22のいずれか1項記載のキット。
【請求項24】
ルシフェリンがセレンテラジン類である、請求項23記載のキット。
【請求項25】
セレンテラジン類がセレンテラジンである、請求項24記載のキット。
【請求項26】
請求項1〜7のいずれか1項記載の融合蛋白質または請求項18または19記載の複合体と、ルシフェリンとを接触させることを含む、発光反応を行う方法。
【請求項27】
請求項1〜7のいずれか1項記載の融合蛋白質または請求項18または19記載の複合体をドナー蛋白質として用いて、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)法を行うことを特徴とする、生理機能の解析または酵素活性の測定方法。
【請求項28】
請求項19記載の複合体を用いる、リガンドに特異的な物質を測定する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−147442(P2011−147442A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284981(P2010−284981)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【Fターム(参考)】
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