説明

発光素子、それを用いた表示装置および照明装置、ならびに発光素子の製造方法

【課題】各半導体発光素子列における明るさのバラツキを抑制する。
【解決手段】電極12と、発光層13と、電極14と、屈折率分布レンズ17とが積層されてなる積層構造を有し、屈折率分布レンズ17は、同心円状の輪帯部31,32をそれぞれ複数備えている。
屈折率分布レンズ17において、同心円の中心から半径方向外側に向かって1つの輪帯部31および1つの輪帯部32毎に区分した領域を1つのゾーン30としている。各ゾーン30では、屈折率の異なる透明材料A,Bが用いられていて、各ゾーン30内の輪帯部31が高屈折率透明材料Bで形成され、輪帯部32が低屈折率透明材料Aで形成されている。各ゾーン30の幅cは、発光層13からの光の波長以下であって、同心円の中心から半径方向外側に向かうにつれてゾーン30での有効屈折率が小さくなるように、1つのゾーン内の輪帯部31および輪帯部32の各幅の比率を設定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子、それを用いた表示装置および照明装置、ならびに発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やデジタルカメラなどのディスプレイでは、より薄型化、高輝度化、省エネルギー化を進めるために、EL(ElectroLuminescence)素子が用いられている。EL素子は、例えば透明基板上に、透明電極層と、発光層と、電極層とをこの順で積層した積層構造を有している。このような積層構造では、透明電極層および透明基板の屈折率が互いに異なり、発光層から出射された光のうち、透明電極層と透明基板との界面に対してある程度大きい入射角度をもって到達する光に全反射が生じる。また、透明基板に入射した光のうち、透明基板における透明電極層とは反対側の界面に対してもある程度大きい入射角度をもって到達する光に全反射が生じる。このため、EL素子においては、光の取り出し効率が低いという課題がある。
【0003】
このような界面における光の全反射成分を抑制するために、透明基板と透明電極層との間にマイクロレンズを備えた発光素子が提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載された発光素子では、マイクロレンズによって、発光層から出射された光を屈折させることにより発光層からの光の発散角を抑制して、透明基板に対する光の入射角度を小さくしている。これによって、透明基板の界面における全反射成分が抑制され、発光素子における光の取り出し効率が改善できるとされている。
【特許文献1】特開2007−280699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のマイクロレンズを備えた発光素子では、マイクロレンズの径が数十μmから数百μmオーダーと非常に微細であるので、マイクロレンズの作製に、例えば、レンズ用の透明樹脂素材を加熱によって溶融し、当該素材の表面張力を利用して目的のレンズ曲面を形成する加熱リフロー処理が用いられている。加熱リフロー処理では、通常、複数の発光素子が、リフロー炉の内部に同時に搬入され加熱されるが、炉内のどの場所であっても温度を均一に保つことは難しく、その温度管理には限界がある。そのため、複数の発光素子を加熱する温度に差が生じてしまい、表面張力により形成されるレンズ曲面の形状にバラツキが生じるという問題がある。複数の発光素子において、マイクロレンズの曲面形状にバラツキが生じると、発光層からの光の発散角を抑制する効果が異なるために、光取り出し効率にバラツキが生じる問題となる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、光取り出し効率のバラツキを抑制できる発光素子、それを用いた表示装置および照明装置、ならびに発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発光素子は、第1電極層と、発光層と、第2電極層と、屈折率分布レンズとがこの順で積層されてなる積層構造を有し、前記屈折率分布レンズは、同心円状の輪帯部を複数有し、前記同心円の中心から半径方向外側に向かって所定数の輪帯部毎に1ゾーンとして区分され、各ゾーンでは、少なくとも1つの輪帯部の屈折率は他の輪帯部の屈折率と異なり、各ゾーンの幅は、前記発光層から出射される光の波長以下であり、前記同心円の中心から半径方向外側に向かうにつれてゾーンの有効屈折率が小さくなるように、1つのゾーンに含まれる所定数の輪帯部の各幅の比率が設定されていることを特徴とする。
【0007】
なお、ここでの「輪帯部」とは、輪状の形状を有する輪帯部はもちろんのこと、同心円の中心部分であって円形の中心部も輪帯部に含むものとする。
また、ここでの「所定数」とは、各ゾーンを構成する輪帯部の数であり、ゾーン毎の輪帯部の数を全て同じ設定とする所定数はもちろんのこと、ゾーン毎の輪帯部の数が異なるように設定した所定数も含むものとする。
【発明の効果】
【0008】
上記構成の屈折率分布レンズを備えることにより、当該屈折率分布レンズの有効屈折率の勾配によって通過する光を曲げることができるので、発光素子の有する発光層から出射された光の発散角を抑制することができる。
また、上記構成の屈折率分布レンズの作製では、加熱リフロー処理に比べて高精度に加工可能な処理、例えばリソグラフィを採用することができる。したがって、複数の発光素子におけるレンズ形状のバラツキを抑えて、複数の発光素子における光取り出し効率にバラツキが生じるのを抑制することができる。
【0009】
また、本発明に係る発光素子の別の一態様では、第1電極層と、発光層と、第2電極層と、回折レンズとがこの順で積層されてなる積層構造を有し、前記回折レンズは、同心円状の輪帯部を複数有し、前記同心円の中心から半径方向外側に向かって所定数の輪帯部毎に1ゾーンとして区分され、各ゾーンでは、少なくとも1つの輪帯部の屈折率は他の輪帯部の屈折率と異なり、各ゾーンの幅は、前記発光層から出射される光の波長以下であり、前記同心円の中心から半径方向外側に向かってゾーンの有効屈折率が周期的に鋸歯状に変化するように、1つのゾーンに含まれる所定数の輪帯部の各幅の比率が設定されていることを特徴とする。
【0010】
上記構成の回折型レンズによれば、上記の屈折率分布型レンズと同等の効果を有するとともに、屈折率を周期的に鋸歯状に変化させて光の回折作用を利用するため、屈折率分布レンズに比べて、短い焦点距離を実現することができる。したがって、発光素子をより小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る発光素子、それを用いた表示装置および照明装置、ならびに発光素子の製造方法について、添付図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
<発光素子の全体構成>
図1は、本発明の実施の形態1に係る発光素子としてトップエミッション型発光素子10の構成を示す模式断面図である。この発光素子10は、基板11と、陽極である電極12(第1電極層)と、発光層13と、陰極である透明電極14(第2電極層)と、レンズ層15とをこの順で備え、さらに、各層12〜15の形成領域を規定する、基板11上に形成された複数のバンク21と、レンズ層15および各バンク21の上に形成された封止層23およびガラス板24とを有している。
【0012】
発光層13は、電極12側から順に正孔輸送層、有機EL層、電子輸送層が順次積層されて構成されている。
封止層23は、ガラス板24とレンズ層15とを接着固定して、発光素子10の各層12〜15に、外気中の水分や酸素などが浸入するのを防止している。
<詳細構成:レンズ>
次に、レンズ層15について説明する。
【0013】
レンズ層15は、透明電極14側から順に、低屈折率層16、屈折率分布レンズ17および高屈折率層18の3層で構成されている。これら3層16〜18は、屈折率が異なる低屈折率透明材料Aと高屈折率透明材料Bとからなる。このうち低屈折率層16は、低屈折率透明材料Aのみで形成され、高屈折率層18は、高屈折率透明材料Bのみで形成されている。一方、屈折率分布レンズ17には、透明材料A,Bが用いられている。図2は、屈折率分布レンズ17を説明するための図であって、(a)は、屈折率分布レンズ17の模式断面図であり、(b)は、屈折率分布レンズ17の模式平面図である。屈折率分布レンズ17は、同心円状に形成された輪帯部31,32をそれぞれ複数備えている。このうち輪帯部31は、高屈折率透明材料Bで形成され、輪帯部32は、低屈折率透明材料Aで形成されている。これら低屈折率輪帯部32と高屈折率輪帯部31とが同心円の中心OCから半径方向外側に向かって交互に繰り返し配列されており、1つの低屈折率輪帯部32および1つの高屈折率輪帯部31がこの順で繰り返す周期毎に区分した領域によって複数のゾーン30が構成されている。各ゾーン30において、中心OCから半径方向外側に並ぶゾーン30の順番をkとし、順番kは1以上の整数としている。なお、中心OCを含む円形の中心部CP1は、高屈折率輪帯部31の1つであり、本実施形態において、1番目(k=1)のゾーン30を構成している。また、中心OCを通り、屈折率分布レンズ17の厚さ方向に延びる直線は、屈折率分布レンズ17の光軸と一致する。
【0014】
各ゾーン30の幅cは、発光層13から出射される光の波長以下であって、本実施の形態においては、200[nm]の一定値に設定されている。
低屈折率透明材料Aは、SiOであり、高屈折率透明材料Bは、TiOである。SiOの屈折率は1.46、TiOの屈折率は2.53である。
<屈折率分布>
次に、屈折率分布レンズ17の屈折率分布の設計思想について説明する。
【0015】
一般的に、屈折率分布(GRIN)型レンズの屈折率n(r)は、光軸からの距離をr[μm]、光軸上の屈折率をn0、焦点距離をf[μm]、屈折率分布レンズの厚みをL[μm]、屈折率分布レンズの光入射面側に隣接する層の屈折率をniとした場合に、次の(1)式で決定される。
【0016】
【数12】

【0017】
屈折率分布レンズ17では、ゾーン30毎の有効屈折率neffが、当該ゾーン30の内周半径を距離r、中心OCを含むゾーン30の有効屈折率をn0として、上記(1)式より決定された屈折率n(r)に一致するように設定されている。この有効屈折率neffを実現するには、当該ゾーン30における高屈折率輪帯部31の線幅aおよび低屈折率輪帯部32の線幅bの比率の調整が必要である。
【0018】
線幅aおよび線幅bの調整の仕方について、以下に説明する。
各ゾーン30において、その有効屈折率neffは、高屈折率輪帯部31の屈折率をnhigh、低屈折率輪帯部32の屈折率をnlowとして、次の(2)式で求められる。
【0019】
【数13】

【0020】
線幅aと線幅bの合算値は、ゾーン30の幅cであるので、線幅bの代わりに幅cを用いた場合には、有効屈折率neffが次の(3)式で求められる。
【0021】
【数14】

【0022】
上記(2)および(3)式より、幅c内で線幅aの割合を大きくすると、当該ゾーン30における有効屈折率neffを高くすることができ、逆に、線幅aの割合を小さくすると、有効屈折率neffを低くすることができる。
これらより、ゾーン30毎の有効屈折率neffを、目的とする屈折率n(r)に一致させるためには、当該ゾーン30の内周半径を距離rとして、線幅aを、次の(4)式で求められる値にすればよい。
【0023】
【数15】

【0024】
線幅bは、上記(4)式で求められた線幅aおよび幅cから算出できる。
<屈折率分布の例示>
図3は、屈折率分布レンズの屈折率分布を示す図である。図3において、縦軸は有効屈折率neffを、横軸は、中心OCからの距離rを示している。この距離rは、中心OCからの任意の方向をプラス(+)とし、その逆方向をマイナス(−)として表わされている。
【0025】
図3に示す屈折率分布曲線40は、上記(1)式による屈折率に基づいて設定された有効屈折率neffを有している。なお、この例における各パラメータは次の通りである。屈折率分布レンズ17の焦点距離fを1000[μm]、屈折率分布レンズ17の厚みLを1[μm]、発光層13から出射される光の波長λを532[nm]、この波長λにおける中心OCを含む1つ目のゾーン30の有効屈折率n0を2.53および屈折率niを1.46としている。このうち有効屈折率n0には、中心OCが含まれる1つ目のゾーンとなる中心部CP1の屈折率(TiO=2.53)が適用されている。屈折率niには、低屈折率層16の屈折率(SiO=1.46)が適用されている。なお、屈折率分布レンズ17は、有効径70[μm]に設定され、350個のゾーン30を有している。
【0026】
屈折率分布曲線40は、中心OCでの有効屈折率を最大値として、中心OCから半径方向外側に離れるに従い有効屈折率が漸次小さくなる曲線形状を有している。
図4は、図3の屈折率分布を実現するための各ゾーンでの線幅aをプロットした図である。図4において、縦軸は高屈折率輪帯部31の線幅aの大きさ、横軸は、中心OCからの距離rを示している。
【0027】
線幅aは、中心OCを含むゾーン30(CP1)において最大の200[nm]となり、中心OCから半径方向外側に離れるに従い短くなる。この例において、線幅aの最小は32.8[nm]であり、フォトリソグラフィ等を用いて作製することができる大きさである。
<レンズの原理説明>
図5は、屈折率分布レンズ17の原理を説明する模式断面図である。
【0028】
図5において、屈折率分布レンズ17の光軸を50とし、この光軸50上の焦点距離fに位置する発光層13の光源を51としている。また、点光源51から出射された光の光線を52、点光源51から出射された光の屈折率分布レンズ17への入射波面を53としている。光線52は、光軸50上を通過する光線52aと、光軸50から離れた位置を通過する光線52bとに分けて示されている。
【0029】
本実施の形態において、屈折率分布レンズ17における各ゾーン30の幅cが発光層13からの光の波長よりも短いため、光にとっては、屈折率分布レンズ17と連続的に屈折率が変化する屈折率分布(GRIN)型レンズとは等価である。そのため、屈折率分布レンズ17において、光軸50から離れた位置を通過する光ほど屈折作用を受けて、図5に示す光線52bのように、光軸50側へ屈折することになる。
【0030】
以上の構成からなる発光素子10は、屈折率分布レンズ17によって発光層13から出射された光の発散角を抑制して、屈折率分布レンズ17、高屈折率層18、封止層23およびガラス板24との各界面における光の全反射成分を抑制することができる。これによって、発光素子10における光取り出し効率を向上させることができる。
なお、本実施の形態において、低屈折率透明材料AにSiO、高屈折率透明材料BにTiOを用いた構成を示したが、低屈折率および高屈折率透明材料として、例えば、ZrOなどの酸化ジルコニウム系、Nbなどの酸化ニオブ系、Siなどの窒化シリコン系およびSiなどの酸化珪素系の材料を用いることができる。
<詳細構成:基板、電極、発光層>
以下に、この発光素子10を構成する基板11、電極12、発光層13および透明電極14に用いられる材料について説明する。
《基板》
基板11には、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラスなどのガラス板、石英板、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコーン系樹脂などのプラスチック板およびプラスチックフィルム、アルミナなどの金属板および金属ホイル等を用いることができる。
【0031】
なお、基板11側から光を取り出すいわゆるボトムエミッションの場合には、基板11はガラス基板等のように透明基板であることが必要とされる。
《電極》
電極12としては、例えばナトリウム、リチウムなどのアルカリ金属単体、又はその合金を用いることが出来る。また、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、またはその合金を用いることが出来る。合金はアルミニウム、銀、インジウムなどとなされる。また、ガリウム、インジウムなど一部の第3族金属を用いることも出来る。
【0032】
透明電極14は、発光層13で発生した光に対して十分な透光性を有する導電性材料により構成されている。材料としては、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide:ITO)や酸化インジウム亜鉛(Indium Zinc Oxide:IZO)などが好ましい。室温で成膜しても良好な導電性を得ることができるからである。
《発光層》
発光層13としては、一層の場合に限られず多層構造であってもよい。また、発光層は、有機発光体を含む有機EL層を含んでもよい。さらに、有機EL層を挟持する電子輸送層と正孔輸送層をさらに含んでもよい。またさらに、電子注入層、及び/又は、正孔注入層を備えてもよい。電子注入層及び正孔注入層は、蒸着法、スピンコート法、キャスト法などにより形成できる。
・有機EL層
このうち有機EL層の具体例としては、特開平5−163488号公報に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属鎖体、2,2’−ビピリジン化合物の金属鎖体、シッフ塩とIII族金属との鎖体、オキシン金属鎖体、希土類鎖体などの蛍光物質を使用することができる。有機EL層は蒸着法、スピンコート法、キャスト法などにより形成できる。
・電子輸送層
また、電子輸送能を有する電子輸送層の具体例としては、特開平5−163488号公報のニトロ置換フルオレノン誘導体、チオピランジオキサイド誘導体、ジフェキノン誘導体、ペリレンテトラカルボキシル誘導体、アントラキノジメタン誘導体、フレオレニリデンメタン誘導体、アントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリノン誘導体、キノリン錯体誘導体などの化合物を使用することができる。
・正孔輸送層
正孔輸送層の具体例としては、特願平3−333517号に記載のトリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、ブタジエン化合物、ポリスチレン誘導体、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、テトラフェニルベンジン誘導体などを使用することができるが、特に好ましくは、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物である。
<製造方法>
次に、屈折率分布レンズ17の製造方法について具体的に説明する。
【0033】
上記の構成の屈折率分布レンズ17は、フォトリソグラフィ技術を用いて作製することができ、図6(a)〜(d)は、その作製工程を説明する説明図である。
《レジスト塗布、パターニング》
先ず、図6(a)に示すように、透明電極14の上に、スパッタ装置を用いて低屈折率透明材料A(SiO)からなる低屈折率材の膜44を形成し、低屈折率材の膜44の上に、レジストを塗布しレジスト膜45を形成する。これら低屈折率材の膜44およびレジスト膜45の厚みは、それぞれ1[μm]である。
【0034】
その後、電子線描画装置を用いて、レジスト膜45上に同心円状のパターニング46を行う。このパターニング46において、レジスト膜45の上面の各選択位置が、低屈折率輪帯部32および高屈折率輪帯部31のうちいずれの輪帯部を形成する領域に属するかの判定が電子線描画装置により行われ、高屈折率輪帯部31を形成する領域と判定した場合に電子線の照射が行われる。
《領域の判定手順》
以下、電子線描画装置による領域の判定手順について説明する。
【0035】
図7は、パターニング工程における領域の判定手順を示すフロー図である。
〔1〕先ず、電子線描画装置に、作製するレンズにおける設計上の次の基本情報を入力する(S01)。
{基本情報}
焦点距離f[μm]、屈折率分布レンズの厚みL[μm]、屈折率分布レンズの光入射面側に隣接する層の屈折率ni、高屈折率輪帯部の屈折率nhigh、低屈折率輪帯部の屈折率nlow、中心OCを含むゾーンの有効屈折率n0、屈折率分布レンズのサイズなど。
〔2〕レジスト膜45の上面において、光軸となるべき位置を基準位置(x,y)として設定する(S02)。
〔3〕レジスト膜45の上面のうち領域の判定が行われていない任意の位置を選択し、選択位置(x,y)とする(S03)。
〔4〕選択位置(x,y)の基準位置(x,y)からの距離rを、次の(5)式で算出する(S04)。
【0036】
【数16】

【0037】
〔5〕算出された距離rおよびゾーン30の幅cを用いて、選択位置(x,y)が含まれるゾーン30の順番kを、次の(6)式より求める(S05)。
【0038】
【数17】

【0039】
上記(6)式における(k−1)cは、順番kのゾーン30の内周半径であり、kcは、外周半径である。
〔6〕算出された距離rおよびゾーン30の順番kを用いて、当該ゾーン30における高屈折率輪帯部31の線幅aを、次の(7)式で算出する(S06)。
【0040】
【数18】

【0041】
なお、上記(7)式は、上記(4)式の距離rを、順番kのゾーン30の内周半径(k−1)cに置き換えたものである。
〔7〕算出された線幅aより求められる高屈折率輪帯部31の内周半径と、ステップS04で算出された距離rとを次の(8)式で比較する(S07)。
【0042】
【数19】

【0043】
上記(8)式を満たす場合に、選択位置(x,y)が低屈折率輪帯部32を形成する領域に属すると判定し、逆に上記(8)式を満たさない場合に、選択位置(x,y)が高屈折率輪帯部31を形成する領域に属すると判定する(S08)。
〔8〕ステップS08において、低屈折率輪帯部32を形成する領域に属すると判定した場合には、電子線を照射することなくステップS10に進み、高屈折率輪帯部31を形成する領域に属すると判定した場合には、選択位置(x,y)に電子線を照射する(S09)。
〔9〕レジスト膜45の上面の全ての位置に対して上記領域の判定が行われたかどうかをチェックする(S10)。未判定の位置があれば、S03〜S09の一連のステップを繰り返す。
【0044】
このような電子線を用いることで、線幅を30[nm]程度とする精緻なパターニングを施すことができる。
《現像、エッチング、レジスト除去》
図6に戻って、図6(b)に示すように、上記の判定手順により電子線が照射されたレジスト膜45を現像して、低屈折率材の膜44にエッチング47を施してレンズの微細パターンを形成する。この微細パターンが、屈折率分布レンズ17における低屈折率輪帯部32である。本実施の形態では、透明電極14と屈折率分布レンズ17との間に低屈折率層16を設けるため、エッチング47によって低屈折率材の膜44に貫通孔が形成されないように設定されている。なお、透明電極14と屈折率分布レンズ17との間に低屈折率層16など他の層を設けない場合には、エッチング47によって低屈折率材の膜44を貫通させて、透明電極14の上に屈折率分布レンズ17を形成するように設定することになる。
【0045】
次に、レジスト膜45を除去する。このようにして複数の低屈折率輪帯部32および低屈折率層16が現れた状態が図6(c)に示されている。
《プラズマCVD、ポストベーク》
この後、プラズマCVDを用いて、図6(d)に示すように、複数の低屈折率輪帯部32の各間に高屈折率透明材料B(TiO)を堆積させる。このとき、各低屈折率輪帯部32の上にも、さらに高屈折率透明材料B(TiO)を堆積させる。これによって、複数の高屈折率輪帯部31および高屈折率層18を形成することができる。
【0046】
そして、高屈折率層18の表面研磨を行い、最後に、屈折率分布レンズ17、低屈折率層16および高屈折率層18にポストベークを行うことにより、屈折率分布レンズ17が出来上がる。
以上の構成からなる屈折率分布レンズ17の製造方法によれば、フォトリソグラフィ技術を用いているので、屈折率分布レンズ17の各輪帯部31,32を、30[nm]程度の線幅までならバラツキなく精度よく加工することができる。そのため、ゾーン30毎の輪帯部31,32の各線幅a,bの調整を細かく行うことができるので、有効屈折率neffを、当該ゾーン30の内周半径を距離rとして上記(1)式により決定された屈折率n(r)に精度よく一致させることができる。これにより、屈折率分布レンズ17による発光層13から出射される光の発散角を抑制する効果を高めることができる。その結果、発光素子10において、屈折率分布レンズ17、高屈折率層18、封止層23およびガラス板24の各界面における光の全反射成分を抑制することができ、光取り出し効率を向上させることができる。
(実施の形態2)
<発光素子の全体構成2>
図8は、本発明の実施の形態2に係る発光素子60の構成を示す模式断面図である。
【0047】
この発光素子60は、上記実施の形態1に係る発光素子10が屈折率分布レンズを有しているのに対して、回折レンズを有している点が異なっている。なお、図1に示す発光素子10と同じ構成要素については、簡単のため、同じ符号で示し、その説明を省略する。
発光素子60の有するレンズ層65は、透明電極14側から順に、低屈折率層66、回折レンズ67および高屈折率層68の3層で構成されている。
<詳細構成2:レンズ>
図9は、回折レンズ67を説明するための図であって、図9(a)は、回折レンズ67の模式断面図であり、図9(b)は、回折レンズ67の模式平面図である。
【0048】
回折レンズ67は、同心円状に交互に繰り返し配列された低屈折率輪帯部72および高屈折率輪帯部71を備え、この回折レンズ67において、同心円の中心から半径方向外側に向かって、1つの低屈折率輪帯部72および1つの高屈折率輪帯部71がこの順で繰り返す周期毎に区分した領域によって複数のゾーン70が構成されている。各ゾーン70において、中心OCから半径方向外側に並ぶゾーン70の順番をkとし、順番kは1以上の整数としている。なお、中心OCを含む円形の中心部CP2は、高屈折率輪帯部71の1つであり、本実施形態において、1番目(k=1)のゾーン70を構成している。
【0049】
各ゾーン70の幅cは、発光層13から出射される光の波長以下であって、本実施の形態において200[nm]に設定されている。
本実施の形態において、低屈折率層66および低屈折率輪帯部72が、SiOからなる低屈折率透明材料Aで形成され、高屈折率層68および高屈折率輪帯部71が、TiOからなる高屈折率透明材料Bで形成されている。
<屈折率分布2>
次に、回折レンズ67の屈折率分布の設計思想について説明する。
【0050】
回折レンズ67は、中心OCから半径方向外側に向かってゾーン70の有効屈折率が周期的に鋸歯状に変化するように設定されている。ここで、「鋸歯状」とは、ノコギリの歯のような形状であって、有効屈折率分布において、有効屈折率が、中心OCから半径方向外側にかけて、急激に高くなる部分と、高くなったところから漸次低くなる部分とを組み合わせた形状をいう。また、「周期的に」とは、繰り返す態様を示しており、有効屈折率における鋸歯状の変化が繰り返すことを意味している。有効屈折率が周期的に変化するレンズは、光に対して回折作用を有することができる。
【0051】
回折レンズ67において、ゾーン70毎の有効屈折率neffは、当該ゾーン70の内周半径を距離r[μm]、中心OCを含むゾーン70の有効屈折率をn0、屈折率の変化における鋸歯状の周期の順番を0から始まる整数のm、発光層13からの光の波長をλとして、次の(9)式で決定される屈折率n(r)に一致するように設定されている。なお、焦点距離をf[μm]、回折レンズ67の厚みをL[μm]、回折レンズ67の光入射面側に隣接する層の屈折率をniとしている。
【0052】
【数20】

【0053】
当該ゾーン70が含まれる周期の順番mを、小数点以下を切り下げる関数のFloorを用いて、次の(10)式で求めることができる。
【0054】
【数21】

【0055】
ゾーン70毎の有効屈折率neffを、上記(9),(10)式により決定された屈折率n(r)に一致させるには、上記実施の形態1における屈折率分布レンズ17と同様、当該ゾーン70における高屈折率輪帯部71の線幅aおよび低屈折率輪帯部72の線幅bの比率の調整が必要である。具体的には、ゾーン70毎の内周半径を距離rとして、
当該ゾーン70の線幅aを、次の(11)式で求められる値にすればよい。
【0056】
【数22】

【0057】
線幅bは、上記(11)式で求められた線幅aおよびゾーン70の幅cから算出できる。
なお、上記(10)式では、中心OCから距離rの位置が含まれた鋸歯状の周期の順番mが求まるだけでなく、鋸歯状部分の現れる周期間隔が決定されている。
<屈折率分布の例示2>
図10は、回折レンズの屈折率分布を示す図である。
【0058】
図10において、縦軸は有効屈折率neffを示し、横軸は、中心OCからの距離rを示している。図10に示す屈折率分布曲線42は、上記(9),(10)式に基づいて設定された有効屈折率neffを有している。この例における各パラメータは次の通りである。焦点距離fを100[μm]、回折レンズ67の厚みLを1[μm]、発光層13から出射される光の波長λを572[nm]、この波長λにおける中心OCを含む1つ目のゾーンの有効屈折率n0を2.53および屈折率niを1.46としている。このうち有効屈折率n0には、中心部CP1の屈折率(TiO=2.53)が適用され、屈折率niには、低屈折率層66の屈折率(SiO=1.46)が適用されている。なお、屈折率分布レンズ67は、有効径70[μm]に設定され、350個のゾーン70を有している。
【0059】
屈折率分布曲線42は、中心OCから半径方向外側に向かって有効屈折率neffが周期的に鋸歯状に変化する曲線形状を有している。鋸歯状の周期間隔は、中心OCから1つ目の周期(m=0)が最も大きく、半径方向外側に向かうにつれて周期間隔が漸次小さくなっている。このように鋸歯状の周期間隔を、中心OCから漸次小さくすることによって、回折レンズ67において、中心OCから離れた位置を通過する光ほど回折作用を受け、光軸側へ回折することになる。
【0060】
以上の構成からなる発光素子60は、上記実施の形態1の屈折率分布レンズ17と同様に、回折レンズ67によって発光層13から出射された光の発散角を抑制して、当該回折レンズ67、高屈折率層18、封止層23およびガラス板24との各界面における光の全反射成分を抑制することができる。これによって、発光素子60における光取り出し効率を向上させることができる。
【0061】
また、回折レンズ67は、周期的に鋸歯状に変化する屈折率の周期間隔を変えることによって、焦点距離を調整することができるので、屈折率分布レンズ17と比べて、焦点距離を短くすることができる。したがって、発光素子をより小型化することができる。
<屈折率の高次式>
本実施の形態において、屈折率n(r)の計算精度をさらに高めるために、上記(9)式に3次以上の高次の項を追加した次の(12)式を用いることができる。
【0062】
【数23】

【0063】
この場合には、周期の順番mを、次の(13)式で求めることができる。
【0064】
【数24】

【0065】
<高屈折率輪帯部の線幅の大きさの限定>
なお、本実施の形態における高屈折率輪帯部71の線幅aおよび低屈折率輪帯部72の線幅bの大きさは、特に限定するものではないが、回折レンズ67を作製し易くするための範囲を限定するのが好ましい。
ゾーン70毎の有効屈折率neffは、輪帯部71,72の線幅a,bを互いに調整することで設定できること、各ゾーン70のうち中心OCを含む1つ目のゾーン70において輪帯部71の線幅aが最も大きいことから、有効屈折率n0および回折レンズ67の厚みLを用いて、間接的に、各ゾーン70の輪帯部71,72の線幅a,bの範囲を限定することができる。すなわち、有効屈折率n0および厚みLを、次の(14)〜(16)式を満たすように、それぞれ設定するのが好適である。
【0066】
【数25】

【0067】
【数26】

【0068】
【数27】

【0069】
このうち上記(14)式は、有効屈折率n0の範囲を限定するものであって、中心OCを含む1つ目のゾーンにおける高屈折率輪帯部の線幅aの比率を示している。これによって、各ゾーンにおける低屈折率輪帯部の線幅bの比率の最小値を設定している。なお、上記(14)式により有効屈折率n0の範囲を限定した場合には、高屈折率輪帯部のみで構成された中心部CP2とは異なり、中心OCを含む1つ目のゾーンにも低屈折率輪帯部が含まれた構成となる。
【0070】
図11は、上記(14)〜(16)式を満たす有効屈折率n0および回折レンズ67の厚みLの限定範囲を示す図である。図11において、有効屈折率n0が縦軸で、回折レンズ67の厚みLが横軸で示され、有効屈折率n0および厚みLが限定された範囲80が斜線で示されている。
この図11には、有効屈折率n0および厚みLの組み合わせとなる、次のケース81〜85が示されている。
【0071】
ケース81:n0=0.85 nhigh ,L=1.5[μm]
ケース82:n0=0.9 nhigh ,L=1.5[μm]
ケース83:n0=0.9 nhigh ,L=0.9[μm]
ケース84:n0=0.875nhigh ,L=1.2[μm]
ケース85:n0=0.85 nhigh ,L=0.9[μm]
ケース81〜84が、限定範囲80以内であり、ケース85が、限定範囲80の外側とされている。
【0072】
図12(a)〜(e)は、図11のケース81〜85の場合の屈折率分布を実現するための各ゾーンでの線幅aをプロットした図である。図12(a)〜(e)において、縦軸は高屈折率輪帯部の線幅aの大きさ、横軸は、中心OCからの距離rを示している。なお、各線幅aは、上記(11)式より求められており、有効屈折率n0および厚みLを除く他のパラメータは、図10に示す屈折率分布と同じ値に設定されている。
【0073】
図12(a)〜(e)に示す線幅aにおいて、最大値および最小値は次の通りである。
図12(a)の線幅a:最大値=129.0[nm],最小値=63.2[nm]
図12(b)の線幅a:最大値=152.7[nm],最小値=86.9[nm]
図12(c)の線幅a:最大値=152.7[nm],最小値=43.0[nm]
図12(d)の線幅a:最大値=140.8[nm],最小値=58.6[nm]
図12(e)の線幅a:最大値=129.0[nm],最小値=19.4[nm]
以上のように、図12(a)〜(d)に示す、ケース81〜84における高屈折率輪帯部の線幅aは、40〜160[nm]の範囲内であり、したがって、低屈折率輪帯部の線幅bも40〜160[nm]の範囲内となる。このように、線幅a,bの最小値をそれぞれ40[nm]以上に設定することができるので、輪帯部の形成が容易であり、回折レンズの作製が容易となる。
【0074】
一方、図12(e)に示す、ケース85における高屈折率輪帯部の線幅aは、19〜130[nm]と、フォトリソグラフィ技術を用いて輪帯部の形成が可能な範囲ではあるが、30[nm]未満となる微細な線幅aの形成が必要になることがわかる。
<製造方法2>
次に、回折レンズ67の製造方法について説明する。
【0075】
上記の構成の回折レンズ67は、上記実施の形態1に係る屈折率分布レンズ17の製造方法と同様、フォトリソグラフィ技術を用いて作製することができる。
この回折レンズ67の製造方法においては、回折レンズ67の有効屈折率neffが周期的に鋸歯状に変化するように、ゾーン70毎の高屈折率輪帯部の線幅aおよび低屈折率輪帯部の線幅bを設定している点が、屈折率分布レンズ17の製造方法と異なっている。その他の点については、図6および図7に示す屈折率分布レンズ17の作製手順と同じであり、簡単のため、その説明を省略する。
【0076】
屈折率分布レンズ17における製造方法では、図7に示すステップS06において、高屈折率輪帯部31の線幅aを上記(7)式を用いて算出しているのに対して、回折レンズ67の製造方法では、高屈折率輪帯部71の線幅aを次の(17)式で算出する。
【0077】
【数28】

【0078】
なお、上記(17)式は、上記(11)式における距離rを、順番kのゾーン70の内周半径(k−1)cに置き換えたものである。
異なる点は以上である。
以上の構成からなる回折レンズ67の製造方法によれば、屈折率分布レンズ17の製造方法と同様に、フォトリソグラフィ技術を用いているので、回折レンズ67の各輪帯部71,72を、30[nm]程度の線幅までならバラツキなく精度よく加工することができる。したがって、発光素子60においても、上記実施の形態1の発光素子10が得られる効果と同等の効果が得られる。
(実施の形態3)
<表示装置の全体構成3>
図13は、本発明の実施の形態3に係る表示装置の一例として、有機ELディスプレイ100の要部を示す模式断面図である。
【0079】
有機ELディスプレイ100は、RGBの各画素を構成する発光素子を備え、各発光素子が、それぞれの画素の光の波長に応じて設定された有効屈折率を有する屈折率分布レンズを備えている点が特徴とされている。なお、図1に示す発光素子10と同じ構成要素については、簡単のため、同じ符号で示し、その説明を省略する。
本実施の形態において、発光素子110が画素Rを、発光素子120が画素Gを、発光素子130が画素Bを構成している。
【0080】
各発光素子110,120,130は、上記実施の形態1に係る発光素子10と同様の構成からなり、基板上に、電極と、発光層と、透明電極と、低屈折率層と、屈折率分布レンズと、高屈折率層とがこの順で積層されてなる積層構造を有している。
また、各発光素子110,120,130は、バンク101によって規定されており、図示しないが、マトリックス状に配列されている。各発光素子110,120,130および各バンク101の上には、封止層103およびガラス層104が形成されている。
<詳細構成3>
発光素子110は、赤色の光を出射する発光層113と、当該赤色の光の波長に応じた有効屈折率を有する屈折率分布レンズ117とを備えている。発光素子120は、出緑色の光を出射する発光層123と、当該緑色の光の波長に応じた有効屈折率を有する屈折率分布レンズ127とを備えている。発光素子130は、青色の光を出射する発光層133と、当該青色の光の波長に応じた有効屈折率を有する屈折率分布レンズ127とを備えている。
【0081】
図14は、RGB各画素の屈折率分布レンズ117,127,137を示す模式平面図である。図14において、高屈折率輪帯部が斜線の領域で示され、低屈折輪帯部が無地の領域で示されている。
各屈折率分布レンズ117,127,137における有効屈折率は、上記実施の形態1と同様に、上記(1)式により決定された屈折率(r)に一致するように設定されている。上記(1)式における屈折率niは、対象となる光の波長によって変動するので、屈折率分布レンズ117,127,137における有効屈折率の分布の仕方が互いに異なる。したがって、同心円の中心から半径方向外側に向かうにつれて小さくなる高屈折率輪帯部の線幅の変化が、屈折率分布レンズ117,127,137間において互いに異なっており、図14に示すように、画素Rを構成する屈折率分布レンズ117において当該変化の度合いが最も大きく、画素Bを構成する屈折率分布レンズ137が当該変化の度合いが最も小さくなる。なお、図14では、分かり易くするため、高屈折率輪帯部の線幅の変化が誇張されて示されている。
【0082】
以上の構成からなる有機ELディスプレイ100は、RGBの画素毎の波長に応じた有効屈折率の分布を有する屈折率分布レンズを備えることにより、どの色の画素においても発光層から出射された光の発散角を抑制して、各界面における光の全反射成分を抑制することができる。これによって、画素毎の光取り出し効率を向上させることができるので、有機ELディスプレイ100の省電力化を図ることができる。
<製造方法3>
次に、上記構成の屈折率分布レンズ117,127,137の製造方法について説明する。
【0083】
本実施の形態に係る屈折率分布レンズ117,127,137の製造方法は、パターニングの工程において、複数の画素の屈折率分布レンズを作製する同心円状パターンをレジスト膜上にパターニングする点と、レジスト膜の上面の各選択位置が属する輪帯部の領域を判定する前に、当該選択位置が属する画素の領域を判定する点とが、上記実施の形態1に係る屈折率分布レンズ17の製造方法との主な相違点である。
【0084】
図15は、本実施の形態のパターニング工程における領域の判定手順を示すフロー図である。図15の判定手順においては、ステップS03とステップS04との間に、レジスト膜の上面の任意の選択位置(x,y)が属する画素領域(i,j)を判定するためのステップS20を設けている点が、図7に示す屈折率分布レンズ17の作製手順と大きく異なっている。
【0085】
また、他のステップにおいても、複数の同心円状パターンをレジスト膜上にパターニングすることにより、屈折率分布レンズ17の製造方法との相違点を有しているので、以下にこの相違点について説明する。なお、図6および図7に示す屈折率分布レンズ17の作製手順と同じ構成については、簡単のため、その説明を省略する。
〔1〕ステップS01の基本情報の入力では、RGBの画素毎のレンズの設計上の基本情報を入力する。また、本実施の形態において、各画素の屈折率分布レンズのサイズはxL,yLとする。
〔2〕ステップS02の基準位置の設定では、レジスト膜の上面において、画素毎の光軸となるべき位置をそれぞれ基準位置(x,y)として設定する。
【0086】
ここで、i,jは、マトリックス状に配列される画素領域のうちi,j番目の画素領域を示している。
〔3〕ステップS03は、上記実施の形態1と同様である。
〔4〕ここで、ステップS04に進む前に、選択位置(x,y)の属する画素領域(i,j)を、次の(18),(19)式より求める(S20)。
【0087】
【数29】

【0088】
【数30】

【0089】
〔5〕ステップS04では、求められた画素領域(i,j)において、選択位置(x,y)の基準位置(x,y)からの距離rを、次の(20)式で算出する。
【0090】
【数31】

【0091】
〔6〕ステップS05は、上記実施の形態1と同様である。
〔7〕ステップS06の高屈折率輪帯部の線幅aの算出では、上記(7)式において、RGBの各画素に応じた屈折率niを用いる。
〔8〕以降のステップS07〜S10は、上記実施の形態1と同様である。
以上の構成からなる屈折率分布レンズ117,127,137の製造方法によれば、屈折率分布レンズ17の製造方法と同様に、フォトリソグラフィ技術を用いているので、複数の画素における屈折率分布レンズの各輪帯部を、30[nm]程度の線幅までならバラツキなく精度よく加工することができる。したがって、有機ELディスプレイ100の有するRGBの画素毎の発光素子においても、上記実施の形態1の発光素子10が得られる効果と同等の効果が得られる。
【0092】
本実施の形態では、各発光素子が屈折率分布レンズを有した構成を示したが、上記実施の形態2における回折レンズを有した構成とすることもできる。もっともこの場合においても、RGBの画素毎の波長に応じて、回折レンズの有効屈折率を設定する必要があるので、ステップS06における線幅aの算出には、上記実施の形態2と同様に、上記(17)式を用いる。
【0093】
また、本実施の形態3に係る製造方法は、有機ELディスプレイなどの表示装置が備える発光素子に限定するものではなく、パターニングの工程において、複数の屈折率分布レンズ(回折レンズ)を作製するときには、本実施の形態3に係る製造方法を用いるのが好ましい。
(実施の形態4)
<照明装置の全体構成4>
図16(a)および(b)は、本発明の実施の形態4に係る照明装置の一例として、上記実施の形態1に係る発光素子10を備えた照明装置150の概略構成を示している。図16(a)は、照明装置150のY−Z断面を示す模式図であり、図16(b)は、照明装置150のX−Z断面を示す模式図である。
【0094】
照明装置150は、ベース151とベース151の上に配列された複数の発光素子10と反射部材152とから構成されている。複数の発光素子10は、ベース151上に形成された導電パターンに電気的に接続されており、導電パターンにより供給された駆動電力によって発光される。複数の発光素子10から出射された光の一部は反射部材152によって、配光が制御される。
【0095】
以上の構成からなる照明装置150は、屈折率分布レンズによって出射光の発散角が抑制された発光素子10を備えているので、光取り出し効率のよい照明装置を実現できる。また、複数の発光素子10において、屈折率分布レンズをバラツキなく精度よく加工できるので、出射光の発散角を抑制する効果のバラツキを抑えて、光取り出し効率にバラツキが生じるのを抑制することができる。
【0096】
照明装置150に、発光素子10に替えて上記実施の形態2に係る発光素子60を用いた場合でも、上記と同等の効果が得られる。
<変形例>
以上、本発明に係る発光素子、それを用いた表示装置および照明装置、ならびに発光素子の製造方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限られない。例えば、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施の形態では、低屈折率層と、屈折率分布レンズ(回折レンズ)と、高屈折率層とからなるレンズ層を備えた発光素子の構成を示したが、レンズ層が屈折率分布レンズ(回折レンズ)のみからなる構成であってもよい。例えば、図17に示すように、発光素子160は、例えば、基板11上に、電極12と、発光層13と、透明電極14と、屈折率分布レンズ167とがこの順で積層されてなる積層構造を有する構成とすることができる。もっとも、この場合には、上記各式で用いられている屈折率niには、透明電極14の屈折率が適用される。
(2)上記実施の形態では、透明電極の上に、低屈折率層と、屈折率分布レンズ(回折レンズ)と、高屈折率層とがこの順で積層されたレンズ層の構成を示したが、高屈折率層と低屈折率層との順序を変えて、透明電極の上に、高屈折率層と、屈折率分布レンズ(回折レンズ)と、高屈折率層とがこの順で積層されたレンズ層の構成としてもよい。
(3)上記実施の形態では、基板と反対側から光を取り出すトップエミッション構造としたが、基板側から光を取り出すボトムエミッション構造としてもよい。この場合には、透明基板を用いて、この透明基板と発光層との間に、屈折率分布レンズ(回折レンズ)を配置することでトップエミッションの場合と同等の効果が得られる。
(4)上記実施の形態では、各ゾーンが、1つの高屈折率輪帯部と1つの低屈折率輪帯部とからなる構成を示したが、各ゾーンが、低屈折率輪帯部および高屈折率輪帯部をそれぞれ複数備える構成にすることもできる。この場合には、上記各式のうちの一部の式で用いられている線幅aのパラメータaおよび線幅bのパラメータbには、ゾーン毎の各高屈折率輪帯部の線幅aの合算値、および各低屈折率輪帯部の線幅bの合算値が用いられることになる。
(5)上記実施の形態では、低屈折率透明材料Aからなる低屈折率輪帯部と、高屈折率透明材料Bからなる高屈折率輪帯部で構成されたゾーンを説明したが、屈折率の異なる3つ以上の透明材料のうち、1つの透明材料で形成された輪帯部と、他の透明材料で形成された輪帯部と、さらに他の透明材料で形成された輪帯部とを有するゾーンの構成とすることができる。各ゾーンの幅が発光層から出射される光の波長以下である限り、ゾーンを構成する輪帯部の数および透明材料の種類を適宜変更することができる。
【0097】
また、ゾーン毎に、輪帯部の数、透明材料の種類およびゾーンの幅を適宜変更することができる。例えば、屈折率分布レンズまたは回折レンズが、1つ輪帯部からなるゾーンを有する構成とすることもできる。
(6)上記実施の形態では、低屈折率透明材料AとしてSiO、高屈折率透明材料BとしてTiOを用いた構成を示したが、低屈折率透明材料Aおよび高屈折率透明材料Bを、TiO,ZrO,Nb,Si,SiおよびSiOの中から選択することができる。さらに、低屈折率透明材料Aとして空気を用いた構成としてもよい。もっともこの場合には、レンズ層において、透明電極側に高屈折率層を配置させた構成とするのが良い。
(7)上記実施の形態における製造方法では、パターニングの工程において、レジスト上に直接電子線描画を行う構成を示したが、フォトマスクに電子線描画による同心円状パターンを形成し、このフォトマスクを用いた露光によってレジストに同心円状パターンを転写する構成としてもよい。
(8)上記実施の形態において、各ゾーンの有効屈折率neffが、当該ゾーンの内周半径を距離rとして算出される構成を示したが、当該ゾーンの外周半径を距離rとして算出してもよく、また、当該ゾーンの内周および外周の中間の位置における同心円の中心からの距離をrとして算出してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、平面光源及びフラットディスプレイなどに用いられる有機EL表示装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の実施の形態1に係る発光素子の構成を示す模式断面図である。
【図2】図1の発光素子が備える屈折率分布レンズであって、(a)は、その模式断面図であり、(b)は、その模式平面図である。
【図3】図2の屈折率分布レンズの屈折率分布を示す図である。
【図4】図2の屈折率分布レンズにおけるゾーン毎の高屈折率輪帯部の線幅を示す図である。
【図5】屈折率分布レンズの原理を説明する模式断面図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る製造方法であって、屈折率分布レンズの作製工程を説明する説明図である。
【図7】屈折率分布レンズの作製工程の要部であって、パターニング工程の領域の判定手順を示すフロー図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る発光素子の構成を示す模式断面図である。
【図9】図8の発光素子が備える回折レンズであって、(a)は、その模式断面図であり、(b)は、その模式平面図である。
【図10】図9の回折レンズの屈折率分布を示す図である。
【図11】図9の有効屈折率n0および回折レンズの厚みLの限定範囲を示す図である。
【図12】図9の回折レンズにおけるゾーン毎の高屈折率輪帯部の線幅を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態3に係る有機ELディスプレイが備える発光素子の模式断面図である。
【図14】図13の発光素子が有する屈折率分布レンズの模式平面図である。
【図15】本発明の実施の形態3に係る製造方法であって、パターニング工程の判定の手順を示すフロー図である。
【図16】本発明の実施の形態4に係る照明装置であって、(a)は、そのY−Z断面を示す模式図であり、(b)は、そのX−Z断面を示す模式図である。
【図17】変形例に係る発光素子の模式断面図である。
【符号の説明】
【0100】
10 発光素子
11 基板
12 電極
13 発光層
14 電極
14 透明電極
15 レンズ層
16 低屈折率層
17 屈折率分布レンズ
18 高屈折率層
21,22 バンク
23 封止層
24 ガラス板
30 ゾーン
31 高屈折率輪帯部
32 低屈折率輪帯部
40 屈折率分布曲線
42 屈折率分布曲線
44 低屈折率材の膜
45 レジスト膜
46 電子線描画
47 エッチング
50 光軸
51 点光源
52 光線
53 入射波面
60 発光素子
66 低屈折率層
67 回折レンズ
68 高屈折率層
70 ゾーン
71 高屈折率輪帯部
72 低屈折率輪帯部
80 限定範囲
81〜85 ケース
100 有機ELディスプレイ
101 バンク
103 封止層
104 ガラス層
110,120,130 発光素子
113,123,133 発光層
117,127,137 屈折率分布レンズ
150 照明装置
151 ベース
152 反射部材
160 発光素子
167 屈折率分布レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極層と、発光層と、第2電極層と、屈折率分布レンズとがこの順で積層されてなる積層構造を有し、
前記屈折率分布レンズは、同心円状の輪帯部を複数有し、
前記同心円の中心から半径方向外側に向かって所定数の輪帯部毎に1ゾーンとして区分され、各ゾーンでは、少なくとも1つの輪帯部の屈折率は他の輪帯部の屈折率と異なり、
各ゾーンの幅は、前記発光層から出射される光の波長以下であり、
前記同心円の中心から半径方向外側に向かうにつれてゾーンの有効屈折率が小さくなるように、1つのゾーンに含まれる所定数の輪帯部の各幅の比率が設定されている
ことを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記屈折率分布レンズにおいて、前記ゾーン毎の有効屈折率は、
前記同心円の中心から当該ゾーンまでの距離をr[μm]、前記同心円の中心を含むゾーンの有効屈折率をn0、当該屈折率分布レンズの焦点距離をf[μm]、当該屈折率分布レンズの厚みをL[μm]、前記屈折率分布レンズの光入射面側に隣接する層の屈折率をniとした場合に、
【数1】

により得られる屈折率n(r)と一致する
ことを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記所定数は2であることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項4】
前記屈折率分布レンズと前記第2電極層との間に、透明層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項5】
前記透明層の屈折率が、前記複数の輪帯部の屈折率のうち最も低い屈折率と同じ値であることを特徴とする請求項4に記載の発光素子。
【請求項6】
第1電極層と、発光層と、第2電極層と、回折レンズとがこの順で積層されてなる積層構造を有し、
前記回折レンズは、同心円状の輪帯部を複数有し、
前記同心円の中心から半径方向外側に向かって所定数の輪帯部毎に1ゾーンとして区分され、各ゾーンでは、少なくとも1つの輪帯部の屈折率は他の輪帯部の屈折率と異なり、 各ゾーンの幅は、前記発光層から出射される光の波長以下であり、
前記同心円の中心から半径方向外側に向かってゾーンの有効屈折率が周期的に鋸歯状に変化するように、1つのゾーンに含まれる所定数の輪帯部の各幅の比率が設定されている
ことを特徴とする発光素子。
【請求項7】
前記回折レンズにおいて、前記ゾーン毎の有効屈折率は、
前記同心円の中心から当該ゾーンまでの距離をr[μm]、前記同心円の中心から1つ目のゾーンの有効屈折率をn0、当該回折レンズの焦点距離をf[μm]、当該回折レンズの厚みをL[μm]、前記有効屈折率の変化における鋸歯状の周期の順番を0から始まる整数のm、前記発光層からの入射光の波長をλ、前記回折レンズの光入射面側に隣接する層の屈折率をniとした場合に、
【数2】

により得られる屈折率n(r)と一致する
ことを特徴とする請求項6に記載の発光素子。
【請求項8】
前記周期の順番mが、小数点以下を切り下げる関数のFloorを用いて、
【数3】

で求められることを特徴とする請求項7に記載の発光素子。
【請求項9】
前記所定数は2であることを特徴とする請求項6に記載の発光素子。
【請求項10】
前記各ゾーンに含まれる輪帯部のうち屈折率の高い方の輪帯部の屈折率をnhighとした場合において、
前記有効屈折率n0が、
【数4】

の範囲内に設定され、かつ前記厚みLが、
【数5】

の範囲内に設定され、さらに、有効屈折率n0と前記厚みLとの関係が、
【数6】

を満たすように、前記同心円の中心から1つ目の前記ゾーンに含まれる2つの輪帯部の各幅の比率および前記厚みLが設定されている
ことを特徴とする請求項9に記載の発光素子。
【請求項11】
前記回折レンズと前記第2電極層との間に、透明層が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の発光素子。
【請求項12】
前記透明層の屈折率が、前記複数の輪帯部のうち最も低い屈折率と同じ値であることを特徴とする請求項11に記載の発光素子。
【請求項13】
前記各ゾーンの幅が、一定値に設定されていることを特徴とする請求項1または6に記載の発光素子。
【請求項14】
前記各輪帯部の幅が、40nm以上に設定されていることを特徴とする請求項1または6に記載の発光素子。
【請求項15】
前記回折レンズにおいて、
前記同心円の中心から当該ゾーンまでの距離をr[μm]、前記同心円の中心から1つ目のゾーンの有効屈折率をn0、当該回折レンズの焦点距離をf[μm]、当該回折レンズの厚みをL[μm]、前記有効屈折率の変化における鋸歯状の周期の順番を0から始まる整数のm、前記発光層からの入射光の波長をλ、前記回折レンズの光入射面側に隣接する層の屈折率をni、前記発光層からの入射光の波長をλ、nを3以上の整数、anを第n次の係数とした場合に、
【数7】

により得られる屈折率n(r)と一致する
ことを特徴とする請求項6に記載の発光素子。
【請求項16】
前記周期の順番mが、小数点以下を切り下げる関数のFloorを用いて、
【数8】

で求められることを特徴とする請求項15に記載の発光素子。
【請求項17】
前記複数の輪帯部が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、窒化シリコン、酸化珪素、および空気のうちのいずれかで透明材料で形成されている
ことを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項18】
複数の画素を有し、各画素は請求項1〜17のいずれか1項に記載された発光素子で構成されたことを特徴とする表示装置。
【請求項19】
前記発光素子において、前記発光層から出射される赤(R)、緑(G)または青(B)の光に応じて、前記各ゾーンに含まれる所定数の輪帯部のそれぞれの幅の比率が設定されている
ことを特徴とする請求項18に記載の表示装置。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれか1項に記載された発光素子を備えたことを特徴とする照明装置。
【請求項21】
第1電極層と、発光層と、第2電極層と、屈折率分布レンズとがこの順で積層されてなる積層構造を有し、
前記屈折率分布レンズは、同心円状の輪帯部を複数有し、低屈折率と高屈折率の2種類の輪帯部が同心円の中心から半径方向外側に向かって交互に繰り返し配列され、同心円の中心から2個の輪帯部毎に1ゾーンとしたとき各ゾーンの幅は一定である発光素子の製造方法であって、
前記屈折率分布レンズに含まれる2種類の輪帯部の一方に対応するレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンを用いて前記屈折率分布レンズを形成する工程とを含み、
前記レジストパターンを形成する工程は、
レジスト膜を形成するサブ工程と、
レジスト膜上面の任意の位置(x,y)を選択するサブ工程と、
レジスト膜の前記同心円の中心に相当する基準位置(x,y)と前記選択位置(x,y)との距離rを算出するサブ工程と、
算出された距離rおよびゾーンの幅cを用いて、前記選択位置(x,y)を含むゾーンの中心からの順番kを算出するサブ工程と、
ゾーンの順番k、ゾーンの幅c[nm]、低屈折率nlow、高屈折率nhigh、屈折率分布レンズの光入射面側に隣接する層の屈折率ni、屈折率分布レンズの焦点距離をf[μm]、屈折率分布レンズの厚みをL[μm]、同心円の中心から1番目のゾーンの有効屈折率をn0としたとき、各ゾーンにおける高屈折率の輪帯部の幅aを次の式を用いて算出するサブ工程と、
【数9】

算出された距離rが次の式を満たすか否かにより前記選択位置(x,y)のレジスト膜を除去するか否かを判定するサブ工程と
【数10】

を含むことを特徴とする発光素子の製造方法。
【請求項22】
第1電極層と、発光層と、第2電極層と、回折レンズとがこの順で積層されてなる積層構造を有し、
前記回折レンズは、同心円状の輪帯部を複数有し、低屈折率と高屈折率の2種類の輪帯部が同心円の中心から半径方向外側に向かって交互に繰り返し配列され、同心円の中心から2個の輪帯部毎に1ゾーンとしたとき各ゾーンの幅は一定である発光素子の製造方法であって、
前記回折レンズに含まれる2種類の輪帯部の一方に対応するレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンを用いて前記回折レンズを形成する工程とを含み、
前記レジストパターンを形成する工程は、
レジスト膜を形成するサブ工程と、
レジスト膜上面の任意の位置(x,y)を選択するサブ工程と、
レジスト膜の前記同心円の中心に相当する基準位置(x,y)と前記選択位置(x,y)との距離rを算出するサブ工程と、
算出された距離rおよびゾーンの幅cを用いて、前記選択位置(x,y)を含むゾーンの中心からの順番kを算出するサブ工程と、
ゾーンの順番k、ゾーンの幅c[nm]、低屈折率nlow、高屈折率nhigh、回折レンズの光入射面側に隣接する層の屈折率ni、回折レンズの焦点距離をf[μm]、回折レンズの厚みをL[μm]、同心円の中心から1番目のゾーンの有効屈折率をn0としたとき、各ゾーンにおける高屈折率の輪帯部の幅aを次の式を用いて算出するサブ工程と、
【数11】

算出された距離rが次の式を満たすか否かにより前記選択位置(x,y)のレジスト膜を除去するか否かを判定するサブ工程と
【数10】

を含むことを特徴とする発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−135212(P2010−135212A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310984(P2008−310984)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】