説明

発光素子、表示装置および電子機器

【課題】各発光層をバランスよく発光させて、白色発光させることができる発光素子、この発光素子を備えた信頼性の高い表示装置および電子機器を提供すること。
【解決手段】発光素子1は、陰極12と、陽極3と、これら陰極12と陽極3との間に設けられた、赤色に発光する赤色発光層6と、青色に発光する青色発光層8と、緑色に発光する緑色発光層9とを有し、赤色発光層6と青色発光層8との間に設けられ、赤色発光層6と青色発光層8との間での正孔および電子の移動を調整する第1の中間層7Aと、青色発光層8と緑色発光層9との間に設けられ、青色発光層8と緑色発光層9との間での正孔および電子の移動を調整する第2の中間層7Bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子、表示装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネセンス素子(いわゆる有機EL素子)は、陽極と陰極との間に少なくとも1層の発光性有機層を介挿した構造を有する発光素子である。このような発光素子では、陰極と陽極との間に電界を印加することにより、発光層に陰極側から電子が注入されるとともに陽極側から正孔が注入され、発光層中で電子と正孔が再結合することにより励起子が生成し、この励起子が基底状態に戻る際に、そのエネルギー分が光として放出される。
【0003】
このような発光素子としては、例えば、陰極と陽極との間に、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3色に対応する3層の発光層を積層し、白色発光させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような白色発光する発光素子は、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3色が画素ごとに塗り分けられたカラーフィルタと組み合わせて用いることで、フルカラー画像を表示することができる。
【0004】
また、特許文献1にかかる発光素子では、発光層同士の間に中間層を設けることで、発光層間での励起子のエネルギーの移動を防止することができる。その際、中間層を電子および正孔がともに移動可能なバイポーラ性を有するものとすることで、電子および正孔に対する中間層の耐性を優れたものとしつつ、各発光層に電子および正孔を注入することができることから、白色発光させることができる。
しかしながら、特許文献1にかかる発光素子では、各色に発光する発光層間に設ける中間層が同一の構成のものとなっているため、各発光層に注入される電子および正孔の数に発光層ごとでバラツキが生じ、その結果、各発光層をバランスよく発光させることができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−172762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、各発光層をバランスよく発光させて、白色発光させることができる発光素子、この発光素子を備えた信頼性の高い表示装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の発光素子は、陰極と、
陽極と、
前記陰極と前記陽極との間に設けられ、ホスト材料と、該ホスト材料に添加され、第1の色として赤色に発光する赤色発光材料であるゲスト材料とを含んで構成された第1の発光層と、
前記第1の発光層と前記陰極との間に設けられ、ホスト材料と、該ホスト材料に添加され、第2の色に発光する第2の色発光材料であるゲスト材料とを含んで構成された第2の発光層と、
前記第2の発光層と前記陰極との間に設けられ、ホスト材料と、該ホスト材料に添加され、第3の色に発光する第3の色発光材料であるゲスト材料とを含んで構成された第3の発光層と、
前記第1の発光層と前記第2の発光層との間にこれらに接するように設けられ、前記第1の発光層の前記ホスト材料と同一または同種の材料を含み、かつ、発光性を有する材料を実質的に含まずに構成され、前記第1の発光層と前記第2の発光層との間での正孔および電子の移動を調整する第1の中間層と、
前記第2の発光層と前記第3の発光層との間にこれらに接するように設けられ、前記第2の発光層の前記ホスト材料および前記第3の発光層の前記ホスト材料のうちの少なくとも一方のホスト材料と同一または同種の材料を含み、かつ、発光性を有する材料を実質的に含まずに構成され、前記第2の発光層と前記第3の発光層との間での正孔および電子の移動を調整する第2の中間層とを有することを特徴とする。
これにより、発光素子は、各発光層をバランスよく発光させて、白色発光させることができるものとなる。
【0008】
本発明の発光素子では、前記第2の発光層の前記ホスト材料と、前記第3の発光層の前記ホスト材料とは、同一であることが好ましい。
これにより、双方の発光層において、それぞれ、第2の色の光と第3の色の光とをバランスよく発光させることができるようになる。
本発明の発光素子では、前記第2の中間層の前記ホスト材料は、前記第2の発光層の前記ホスト材料と同一であることが好ましい。
これにより、ホスト材料が同一である第2の発光層と第2の中間層との間でのキャリア(電子または正孔)の受け渡しが円滑に行われるようになり、発光素子の駆動電圧の上昇を的確に抑制または防止することができるとともに、励起子の拡散を的確に抑制または防止することができる。
【0009】
本発明の発光素子では、前記第2の中間層は、その厚さが、2nm以上、10nm以下であることが好ましい。
第2の中間層の厚さをかかる範囲内に設定することにより、励起子の拡散を抑制または防止して、キャリア(正孔および電子)の移動を確実に調整することができる。
本発明の発光素子では、前記第2の中間層は、前記ホスト材料としてアセン系材料を含有することが好ましい。
これにより、第2の発光層および第3の発光層の双方を高い発光効率で発光させることができるため、これらをバランスよく発光させることができるとともに、双方の発光層の長寿命化を図ることができる。
【0010】
本発明の発光素子では、前記第1の中間層は、前記ホスト材料の他に、アミン系材料を含有することが好ましい。
アミン系材料は、正孔輸送性に優れ、また、ホスト材料は電子輸送性に優れる。これにより、第1の中間層は、電子輸送性および正孔輸送性の双方を有するものとなる。すなわち、第1の中間層は、バイポーラ性を有するものとなる。
本発明の表示装置は、本発明の発光素子を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い表示装置を得ることができる。
本発明の電子機器は、本発明の表示装置を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の発光素子の縦断面を模式的に示す図である。
【図2】本発明の表示装置を適用したディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。
【図3】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【図6】各実施例および比較例の発光素子から放出された波長400〜800nmにおける光の強度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の発光素子、表示装置および電子機器を添付図面に示す好適な実施形態について説明する。
(発光素子)
図1は、本発明の発光素子の縦断面を模式的に示す図である。なお、以下では、説明の都合上、図1中の上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
【0013】
図1に示す発光素子(エレクトロルミネッセンス素子)1は、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)を発光させて、白色発光するものである。
このような発光素子1は、陽極3と陰極12との間に、正孔注入層4と正孔輸送層5と赤色発光層(第1の発光層)6と第1の中間層7Aと青色発光層(第2の発光層)8と第2の中間層7Bと緑色発光層(第3の発光層)9と電子輸送層10と電子注入層11とがこの順に積層されてなるものである。
【0014】
言い換えすれば、発光素子1は、正孔注入層4と正孔輸送層5と赤色発光層6と第1の中間層7Aと青色発光層8と第2の中間層7Bと緑色発光層9と電子輸送層10と電子注入層11とがこの順に積層された積層体15が2つの電極間(陽極3と陰極12との間)に介挿されて構成されている。
そして、発光素子1は、その全体が基板2上に設けられるとともに、封止部材13で封止されている。
【0015】
このような発光素子1にあっては、赤色発光層6、青色発光層8、および緑色発光層9の各発光層に対し、陰極12側から電子が供給(注入)されるとともに、陽極3側から正孔が供給(注入)される。そして、各発光層では、正孔と電子とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、エキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を放出するため、赤色発光層6、青色発光層8、および緑色発光層9がそれぞれ赤色、青色、および緑色に発光する。これにより、発光素子1は、白色発光する。
【0016】
特に、本発明では、発光素子1は、赤色発光層6と青色発光層8との間および青色発光層8と緑色発光層9との間にそれぞれ第1の中間層7Aおよび第2の中間層7Bを有しているので、赤色発光層6と青色発光層8との間での正孔および電子の移動を調整し、さらに、青色発光層8と緑色発光層9との間での正孔および電子の移動を調整することができるため、赤色発光層6と青色発光層8との間での励起子のエネルギー移動を阻止し、さらに、青色発光層8と緑色発光層9との間での励起子のエネルギー移動を阻止することができる。その結果、赤色発光層6、青色発光層8および緑色発光層9がそれぞれバランスよく発光することとなり、発光素子1は、より確実に白色発光するものとなる。
【0017】
基板2は、陽極3を支持するものである。本実施形態の発光素子1は、基板2側から光を取り出す構成(ボトムエミッション型)であるため、基板2および陽極3は、それぞれ、実質的に透明(無色透明、着色透明または半透明)とされている。
基板2の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料や、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような基板2の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜30mm程度であるのが好ましく、0.1〜10mm程度であるのがより好ましい。
【0018】
なお、発光素子1が基板2と反対側から光を取り出す構成(トップエミッション型)の場合、基板2には、透明基板および不透明基板のいずれも用いることができる。
不透明基板としては、例えば、アルミナのようなセラミックス材料で構成された基板、ステンレス鋼のような金属基板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成したもの、樹脂材料で構成された基板等が挙げられる。
この基板2上に、発光素子1が形成されている。以下、発光素子1を構成する各部を順次説明する。
【0019】
(陽極)
陽極3は、後述する正孔注入層4を介して正孔輸送層5に正孔を注入する電極である。この陽極3の構成材料としては、仕事関数が大きく、導電性に優れる材料を用いるのが好ましい。
陽極3の構成材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような陽極3の平均厚さは、特に限定されないが、10〜200nm程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。
【0020】
(陰極)
一方、陰極12は、後述する電子注入層11を介して電子輸送層10に電子を注入する電極である。この陰極12の構成材料としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。
陰極12の構成材料としては、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rbまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、複数層の積層体等)用いることができる。
【0021】
特に、陰極12の構成材料として合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるのが好ましい。かかる合金を陰極12の構成材料として用いることにより、陰極12の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。
このような陰極12の平均厚さは、特に限定されないが、100〜10000nm程度であるのが好ましく、200〜500nm程度であるのがより好ましい。
なお、本実施形態の発光素子1は、ボトムエミッション型であるため、陰極12に、光透過性は、特に要求されない。
【0022】
(正孔注入層)
正孔注入層4は、陽極3からの正孔注入効率を向上させる機能を有するものである。
この正孔注入層4の構成材料(正孔注入材料)としては、特に限定されないが、例えば、下記化学式(1)で表わされる化合物(N,N,N’,N’−テトラフェニル−p−ジアミノベンゼン)およびその誘導体等のアミン系化合物が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
【化1】

【0024】
なお、上記化学式(1)で表わされる化合物の誘導体としては、特に限定されないが、例えば、下記化学式(2)〜(10)で表わされるものが挙げられる。
【0025】
【化2】

【0026】
【化3】

【0027】
【化4】

【0028】
【化5】

【0029】
【化6】

【0030】
【化7】

【0031】
【化8】

【0032】
【化9】

【0033】
【化10】

【0034】
このような正孔注入層4の平均厚さは、特に限定されないが、5〜150nm程度であるのが好ましく、10〜100nm程度であるのがより好ましい。
なお、この正孔注入層4は、省略することができる。
【0035】
(正孔輸送層)
正孔輸送層5は、陽極3から正孔注入層4を介して注入された正孔を赤色発光層6まで輸送する機能を有するものである。
この正孔輸送層5の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、下記化学式(11)で表わされる化合物(N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン)およびその誘導体等のアミン系化合物が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
【化11】

【0037】
また、上記化学式(11)で表わされる化合物の誘導体としては、特に限定されないが、例えば、下記化学式(12)〜(16)で表わされる化合物等が挙げられる。
【0038】
【化12】

【0039】
【化13】

【0040】
【化14】

【0041】
【化15】

【0042】
【化16】

【0043】
このような正孔輸送層5の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、10〜100nm程度であるのがより好ましい。
なお、この正孔輸送層5は、省略することができる。
【0044】
(赤色発光層)
この赤色発光層(第1の発光層)6は、赤色(第1の色)に発光する赤色発光材料を含んで構成されている。
このような赤色発光材料としては、特に限定されず、各種赤色蛍光材料、赤色燐光材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0045】
赤色蛍光材料としては、赤色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、下記化学式(17)で表わされる化合物(ジインデノペリレン誘導体)等のペリレン誘導体、ユーロピウム錯体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、ポルフィリン誘導体、ナイルレッド、2−(1,1−ジメチルエチル)−6−(2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H−ベンゾ(ij)キノリジン−9−イル)エテニル)−4H−ピラン−4H−イリデン)プロパンジニトリル(DCJTB)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)等を挙げられる。
【0046】
【化17】

【0047】
中でも、赤色発光材料としては、ジインデノペリレン誘導体を用いるのが好ましい。これにより、赤色発光層6をより高輝度で赤色発光させることができる。
赤色燐光材料としては、赤色の燐光を発するものであれば特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられ、これら金属錯体の配位子の内の少なくとも1つがフェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格、ポルフィリン骨格等を持つものも挙げられる。より具体的には、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C’]イリジウム(アセチルアセトネート)(btp2Ir(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−12H,23H−ポルフィリン−白金(II)、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C’]イリジウム、ビス(2−フェニルピリジン)イリジウム(アセチルアセトネート)が挙げられる。
【0048】
また、赤色発光層6中には、前述した赤色発光材料の他に、赤色発光材料をゲスト材料とするホスト材料が含まれている。
ホスト材料は、正孔と電子とを再結合して励起子を生成するとともに、その励起子のエネルギーを赤色発光材料に移動(フェルスター移動またはデクスター移動)させて、赤色発光材料を励起する機能を有する。このようなホスト材料を用いる場合、例えば、ゲスト材料である赤色発光材料をドーパントとしてホスト材料にドープして用いることができる。
【0049】
このようなホスト材料としては、用いる赤色発光材料に対して前述したような機能を発揮するものであれば、特に限定されないが、赤色発光材料が赤色蛍光材料を含む場合、例えば、下記化学式(18)〜(21)で表わされる化合物等のナフタセン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体のようなアセン誘導体(アセン系材料)、ジスチリルアリーレン誘導体、ペリレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアミン誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)等のキノリノラト系金属錯体、トリフェニルアミンの4量体等のトリアリールアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、シロール誘導体、ジカルバゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ベンゾピラン誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0050】
【化18】

【0051】
【化19】

【0052】
【化20】

【0053】
【化21】

【0054】
中でも、赤色発光層6のホスト材料としては、アセン誘導体(特に、ナフタセン誘導体)を用いるのが好ましい。特に、赤色発光材料としてジインデノペリレン誘導体を用いる場合、赤色発光層6がナフタセン誘導体を含んで構成されていると、赤色発光層6をより高輝度かつ高効率で赤色発光させることができる。
また、赤色発光材料が赤色燐光材料を含む場合、ホスト材料としては、例えば、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニルカルバゾール、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)等のカルバゾール誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0055】
前述したような赤色発光材料(ゲスト材料)およびホスト材料を用いる場合、赤色発光層6中における赤色発光材料の含有量(ドープ量)は、0.01〜10wt%であるのが好ましく、0.1〜5wt%であるのがより好ましい。赤色発光材料の含有量をこのような範囲内とすることで、発光効率を最適化することができる。
このような赤色発光層6の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、10〜100nm程度であるのがより好ましい。
また、前述したような赤色の発光材料は、バンドギャップが比較的小さく、正孔や電子を捕獲しやすく、発光しやすい。したがって、陽極3側に赤色発光層6を設けることで、バンドギャップが大きく発光し難い青色発光層8や緑色発光層9を陰極12側とし、各発光層をバランスよく発光させることができる。
【0056】
(第1の中間層)
この第1の中間層7Aは、前述した赤色発光層6と後述する青色発光層8との層間にこれらに接するように設けられている。そして、第1の中間層7Aは、赤色発光層6のホスト材料と同種または同一の材料を含み、かつ、発光性を有する材料を実質的に含まずに構成され、赤色発光層(第1の発光層)6と青色発光層(第2の発光層)8との間でキャリア(正孔および電子)の移動を調整する機能を有する。この機能により、赤色発光層6および青色発光層8をそれぞれ効率よく発光させることができる。
【0057】
このような第1の中間層7Aの構成材料としては、第1の中間層7Aが、赤色発光層6のホスト材料と同種または同一の材料を含み、かつ、発光性を有する材料を実質的に含まずに構成され、前述したようなキャリア調整機能を発揮することができるものであれば、特に限定されないが、赤色発光層6のホスト材料と同種または同一の材料として、アセン系材料を含むものが好適に用いられる。
【0058】
かかる材料を用いれば、第1の中間層7Aの最高被占軌道(HOMO)のエネルギー順位を、赤色発光層6および青色発光層8の双方の最高被占軌道(HOMO)のエネルギー順位よりも低く設定することができ、さらに、第1の中間層7Aの最低空軌道(LUMO)のエネルギー順位を、赤色発光層6および青色発光層8の双方の最低空軌道(LUMO)のエネルギー順位よりも高く設定することができる。その結果、赤色発光層6と青色発光層8との間での励起子のエネルギー移動がより確実に阻止されることとなる。
【0059】
アセン系材料としては、アセン骨格を有し、かつ、前述したような効果を発揮するものであれば、特に限定されず、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、テトラセン(ナフタセン)誘導体、ペンタセン誘導体、ヘキサセン誘導体、ヘプタセン誘導体等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、テトラセン(ナフタセン)誘導体を用いるのが好ましい。
【0060】
テトラセン(ナフタセン)誘導体としては、特に限定されないが、前述した赤色発光層6のホスト材料で説明したナフタセン誘導体と同様のものを用いることができる。
このようなナフタセン誘導体は、バイポーラ性を有する。したがって、第1の中間層7Aは、赤色発光層6から青色発光層8へ正孔を円滑に輸送するとともに、青色発光層8から赤色発光層6へ電子を円滑に輸送することができる。また、第1の中間層7Aは、電子および正孔に対して優れた耐性を有する。そのため、第1の中間層7Aの劣化を防止し、その結果、発光素子1の耐久性を向上させることができる。
【0061】
このような第1の中間層7A中におけるアセン系材料の含有量は、特に限定されないが、10〜90wt%であるのが好ましく、30〜70wt%であるのがより好ましく、40〜60wt%であるのがさらに好ましい。
さらに、第1の中間層7Aの構成材料としては、前述したアセン系材料の他に、アミン系材料(アミン誘導体)を含むのが特に好ましい。
【0062】
アミン系材料(すなわちアミン骨格を有する材料)は正孔輸送性に優れ、また、前述したアセン系材料(すなわちアセン骨格を有する材料)は電子輸送性に優れる。これにより、第1の中間層7Aは、電子輸送性および正孔輸送性の双方を有するものとなる。すなわち、第1の中間層7Aは、バイポーラ性を有するものとなる。このように第1の中間層7Aがバイポーラ性を有すると、赤色発光層6から第1の中間層7Aを介して青色発光層8へ正孔を円滑に受け渡すとともに、青色発光層8から第1の中間層7Aを介して赤色発光層6へ電子を円滑に受け渡すことができる。その結果、赤色発光層6および青色発光層8にそれぞれ電子および正孔を効率的に注入して発光させることができる。
【0063】
また、このような第1の中間層7Aは、バイポーラ性を有するため、キャリア(電子、正孔)に対する耐性に優れている。その上、アセン系材料が励起子に対する耐性に優れていることから、第1の中間層7A中で電子と正孔が再結合して励起子が生成しても、第1の中間層7Aの劣化を防止または抑制することができる。これにより、第1の中間層7Aの励起子による劣化を防止または抑制し、その結果、発光素子1の耐久性を優れたものとすることができる。
【0064】
このような第1の中間層7Aに用いられるアミン系材料としては、アミン骨格を有し、かつ、前述したような効果を発揮するものであれば、特に限定されず、例えば、前述した正孔輸送材料のうちのアミン骨格を有する材料を用いることができるが、ベンジジン系アミン誘導体を用いるのが好ましい。
特に、ベンジジン系アミン誘導体のなかでも、第1の中間層7Aに用いられるアミン系材料としては、2つ以上のナフチル基を導入したものが好ましい。このようなベンジジン系アミン誘導体としては、例えば、下記化22で表されるようなN,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン(α−NPD)や、下記化23で表されるようなN,N,N’,N’−テトラナフチル−ベンジジン(TNB)などが挙げられる。
【0065】
【化22】

【0066】
【化23】

【0067】
このようなアミン系材料は、一般に、正孔輸送性に優れており、アミン系材料の正孔移動度は、後述するアセン系材料の正孔移動度よりも高い。したがって、赤色発光層6から第1の中間層7Aを介して青色発光層8へ正孔を円滑に受け渡すことができる。
このような第1の中間層7A中におけるアミン系材料の含有量は、特に限定されないが、10〜90wt%であるのが好ましく、30〜70wt%であるのがより好ましく、40〜60wt%であるのがさらに好ましい。
【0068】
また、第1の中間層7Aの平均厚さは、特に限定されないが、1〜100nmであるのが好ましく、3〜50nmであるのがより好ましく、5〜30nmであるのがさらに好ましい。これにより、駆動電圧を抑えつつ、第1の中間層7Aが赤色発光層6と青色発光層8との間での正孔および電子の移動を確実に調整することができる。
これに対し、第1の中間層7Aの平均厚さが前記上限値を超えると、第1の中間層7Aの構成材料等によっては、駆動電圧が著しく高くなったり、発光素子1の発光(特に白色発光)が難しくなったりする場合がある。一方、第1の中間層7Aの平均厚さが前記下限値未満であると、第1の中間層7Aの構成材料や駆動電圧等によっては、第1の中間層7Aが赤色発光層6と青色発光層8との間での正孔および電子の移動を確実に調整するのが難しくなるおそれがある。
【0069】
(青色発光層)
青色発光層(第2の発光層)8は、青色(第2の色)に発光する青色発光材料を含んで構成されている。
このような青色発光材料としては、例えば、各種青色蛍光材料および青色燐光材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0070】
青色蛍光材料としては、青色の蛍光を発するものであれば、特に限定されず、例えば、下記化学式(24)で示されるジスチリルジアミン系化合物等のジスチリルアミン誘導体、フルオランテン誘導体、ピレン誘導体、ペリレンおよびペリレン誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、テトラフェニルブタジエン、4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル(BCzVBi)、ポリ[(9.9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジヘキシルオキシフルオレン−2,7−ジイル)−オルト−コ−(2−メトキシ−5−{2−エトキシヘキシルオキシ}フェニレン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(エチルニルベンゼン)]等が挙げられる。
【0071】
【化24】

【0072】
青色燐光材料としては、青色の燐光を発するものであれば、特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられ、具体的には、ビス[4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C’]−ピコリネート−イリジウム、トリス[2−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジネート−N,C’]イリジウム、ビス[2−(3,5−トリフルオロメチル)ピリジネート−N,C’]−ピコリネート−イリジウム、ビス(4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C’)イリジウム(アセチルアセトネート)等が挙げられる。
【0073】
また、青色発光層8中には、前述した青色発光材料の他に、青色発光材料をゲスト材料とするホスト材料が含まれている。
このようなホスト材料としては、前述した赤色発光層(第1の発光層)6で説明したホスト材料と同様のものを用いることができる。
また、このような青色発光層8のホスト材料は、赤色発光層6のホスト材料と同様に、アセン誘導体(アセン系材料)を用いるのが好ましい。これにより、青色発光層8をより高輝度かつ高効率で青色発光させることができる。
【0074】
(第2の中間層)
この第2の中間層7Bは、前述した青色発光層8と後述する緑色発光層9との層間にこれらに接するように設けられている。そして、第2の中間層7Bは、青色発光層8のホスト材料および緑色発光層9のホスト材料のうちの少なくとも一方のホスト材料と同一または同種の材料を含み、かつ、発光性を有する材料を実質的に含まずに構成され、青色発光層(第2の発光層)8と緑色発光層(第3の発光層)9との間でキャリア(正孔および電子)の移動を調整する機能を有する。この機能により、青色発光層8と緑色発光層9との間での励起子のエネルギー移動を阻止することができることから、青色発光層8から緑色発光層9へのエネルギー移動を抑制して、青色発光層8および緑色発光層9をそれぞれ効率よく発光させることができる。すなわち、青色発光層8および緑色発光層9をバランスよく発光させることができるので、発光素子1を白色発光させることができる。
【0075】
なお、この第2の中間層7Bの形成を省略した場合、上述した青色発光層8から緑色発光層9へのエネルギー移動は、発光素子1を低輝度領域で発光させた際に、顕著に認められるが、本発明では、これらの発光層間に第2の中間層7Bを設けていることから、発光素子1を低輝度領域で発光させた際にも、青色発光層8から緑色発光層9へのエネルギー移動を抑制して、青色発光層8および緑色発光層9をそれぞれ確実に発光させることができる。
【0076】
このような第2の中間層7Bの構成材料としては、第2の中間層7Bが、青色発光層8のホスト材料および緑色発光層9のホスト材料のうちの少なくとも一方のホスト材料と同一または同種の材料を含み、かつ、発光性を有する材料を実質的に含まずに構成され、前述したようなキャリア調整機能を発揮することができるものであれば、特に限定されないが、前記ホスト材料と同種または同一の材料として、アセン系材料を含むものが好適に用いられる。
【0077】
かかる材料を用いれば、第2の中間層7Bの最高被占軌道(HOMO)のエネルギー順位を、青色発光層8および緑色発光層9の双方の最高被占軌道(HOMO)のエネルギー順位よりも低く設定することができ、さらに、第2の中間層7Bの最低空軌道(LUMO)のエネルギー順位を、青色発光層8および緑色発光層9の双方の最低空軌道(LUMO)のエネルギー順位よりも高く設定することができる。その結果、青色発光層8と緑色発光層9との間での励起子のエネルギー移動がより確実に阻止されることとなる。その結果、青色発光層8および緑色発光層9の双方を高い発光効率で発光させることができるためこれらをバランスよく発光させることができるとともに、双方の発光層8、9の長寿命化を図ることができる。
アセン系材料としては、前述した第1の中間層7Aで説明したのと同様のものを用いることができる。
【0078】
また、このような第2の中間層7Bに含まれるホスト材料は、青色発光層8のホスト材料と同一であるのが好ましい。これにより、ホスト材料が同一である発光層と第2の中間層7Bとの間でのキャリア(電子または正孔)の受け渡しが円滑に行われるようになり、発光素子1の駆動電圧の上昇を的確に抑制または防止することができるとともに、励起子の拡散を的確に抑制または防止することができる。
【0079】
また、かかる構成の第2の中間層7Bにおいて、第2の中間層7Bが形成されている第1の部位は、島状(散点状)をなしているのが好ましい。これにより、第2の中間層7Bが形成されている第1の部位と、形成されていない第2の部位とを確実に形成することができるとともに、第2の中間層7Bが形成されていない第2の部位において、青色発光層8と緑色発光層9とを確実に接触させることができるようになる。
【0080】
さらに、第2の中間層7Bが形成されている第1の部位または第2の部位は、散点状をなしているが、第1の部位は、その面方向において、ほぼ均一に設けられているのが好ましい。これにより、第2の中間層7Bの各部において、その特性にバラツキが生じるのを確実に防止することができるので、第2の中間層7Bが局所的に変質・劣化するのを効果的に防止できる。
また、第2の中間層7Bの厚さは、特に限定されないが、2nm以上、10nm以下程度であるのが好ましく、3nm以上、7nm以下程度であるのがより好ましい。第2の中間層7Bの厚さをかかる範囲内に設定することにより、励起子(正孔および電子)の拡散を抑制または防止して、励起子の移動を確実に調整することができる。
【0081】
(緑色発光層)
緑色発光層(第3の発光層)9は、緑色(第3の色)に発光する緑色発光材料を含んで構成されている。
このような緑色発光材料としては、特に限定されず、例えば、各種緑色蛍光材料および緑色燐光材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0082】
緑色蛍光材料としては、緑色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、クマリン誘導体、下記化学式(25)に示すキナクリドン誘導体等のキナクリドンおよびその誘導体、9,10−ビス[(9−エチル−3−カルバゾール)−ビニレニル]−アントラセン、ポリ(9,9−ジヘキシル−2,7−ビニレンフルオレニレン)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(1,4−ジフェニレン−ビニレン−2−メトキシ−5−{2−エチルヘキシルオキシ}ベンゼン)]、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−オルト−コ−(2−メトキシ−5−(2−エトキシルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン)]等が挙げられる。
【0083】
【化25】

【0084】
緑色燐光材料としては、緑色の燐光を発するものであれば特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられ、具体的には、ファク−トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)、ビス(2−フェニルピリジネート−N,C’)イリジウム(アセチルアセトネート)、ファク−トリス[5−フルオロ−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジン)フェニル−C,N]イリジウム等が挙げられる。
【0085】
また、緑色発光層9中には、前述した緑色発光材料の他に、緑色発光材料をゲスト材料とするホスト材料が含まれている。
このようなホスト材料としては、前述した赤色発光層(第1の発光層)6で説明したホスト材料と同様のものを用いることができる。
また、このような緑色発光層9のホスト材料は、赤色発光層6のホスト材料と同様に、アセン誘導体(アセン系材料)を用いるのが好ましい。これにより、緑色発光層9をより高輝度かつ高効率で緑色発光させることができる。
さらに、この緑色発光層9のホスト材料は、前述した青色発光層8のホスト材料と同一であるのが好ましい。これにより、双方の発光層8、9において、緑色の光と青色の光とをバランスよく発光させることができるようになる。
【0086】
(電子輸送層)
電子輸送層10は、陰極12から電子注入層11を介して注入された電子を緑色発光層9に輸送する機能を有するものである。
電子輸送層10の構成材料(電子輸送材料)としては、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)等の8−キノリノールなしいその誘導体を配位子とする有機金属錯体などのキノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
電子輸送層10の平均厚さは、特に限定されないが、0.5〜100nm程度であるのが好ましく、1〜50nm程度であるのがより好ましい。
【0087】
(電子注入層)
電子注入層11は、陰極12からの電子注入効率を向上させる機能を有するものである。
この電子注入層11の構成材料(電子注入材料)としては、例えば、各種の無機絶縁材料、各種の無機半導体材料が挙げられる。
【0088】
このような無機絶縁材料としては、例えば、アルカリ金属カルコゲナイド(酸化物、硫化物、セレン化物、テルル化物)、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらを主材料として電子注入層を構成することにより、電子注入性をより向上させることができる。特にアルカリ金属化合物(アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物等)は仕事関数が非常に小さく、これを用いて電子注入層11を構成することにより、発光素子1は、高い輝度が得られるものとなる。
【0089】
アルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、LiO、LiO、NaS、NaSe、NaO等が挙げられる。
アルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、MgO、CaSe等が挙げられる。
アルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、CsF、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl、NaCl等が挙げられる。
アルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF、BaF、SrF、MgF、BeF等が挙げられる。
【0090】
また、無機半導体材料としては、例えば、Li、Na、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Cd、Mg、Si、Ta、SbおよびZnのうちの少なくとも1つの元素を含む酸化物、窒化物または酸化窒化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
電子注入層11の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜1000nm程度であるのが好ましく、0.2〜100nm程度であるのがより好ましく、0.2〜50nm程度であるのがさらに好ましい。
【0091】
(封止部材)
封止部材13は、陽極3、積層体15、および陰極12を覆うように設けられ、これらを気密的に封止し、酸素や水分を遮断する機能を有する。封止部材13を設けることにより、発光素子1の信頼性の向上や、変質・劣化の防止(耐久性向上)等の効果が得られる。
【0092】
封止部材13の構成材料としては、例えば、Al、Au、Cr、Nb、Ta、Tiまたはこれらを含む合金、酸化シリコン、各種樹脂材料等を挙げることができる。なお、封止部材13の構成材料として導電性を有する材料を用いる場合には、短絡を防止するために、封止部材13と陽極3、積層体15、および陰極12との間には、必要に応じて、絶縁膜を設けるのが好ましい。
【0093】
また、封止部材13は、平板状として、基板2と対向させ、これらの間を、例えば熱硬化性樹脂等のシール材で封止するようにしてもよい。
以上のように構成された発光素子1によれば、赤色発光層6と青色発光層8との間および青色発光層8と緑色発光層9との間にそれぞれ前述したような第1の中間層7Aおよび第2の中間層7Bを有することから、赤色発光層6と青色発光層8との間での正孔および電子の移動を調整し、さらに、青色発光層8と緑色発光層9との間での正孔および電子の移動を調整することができるので、赤色発光層6と青色発光層8との間での励起子のエネルギー移動を阻止し、さらに、青色発光層8と緑色発光層9との間での励起子のエネルギー移動を阻止することができる。その結果、赤色発光層6、青色発光層8および緑色発光層9をそれぞれ効率よく発光させることができるため、発光素子1は、より確実に白色発光するものとなる。
【0094】
なお、本実施形態では、青色発光層8と第2の中間層7Bと緑色発光層9とは、陽極3側と陰極12との間で、この順で積層される場合について説明したが、かかる順序に限定されず、陽極3側と陰極12との間で、緑色発光層9、第2の中間層7Bおよび青色発光層8の順で積層されていてもよい。
すなわち、本実施形態では、第2の発光層が青色発光層8で構成され、第3の発光層が緑色発光層9で構成される場合について説明したが、第2の発光層が緑色発光層で構成され、第3の発光層が青色発光層で構成されていてもよい。
【0095】
(発光素子の製造方法)
以上のような発光素子1は、例えば、次のようにして製造することができる。
[1] まず、基板2を用意し、この基板2上に陽極3を形成する。
陽極3は、例えば、プラズマCVD、熱CVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着等の乾式メッキ法、電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
【0096】
[2] 次に、陽極3上に正孔注入層4を形成する。
正孔注入層4は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
また、正孔注入層4は、例えば、正孔注入材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる正孔注入層形成用材料を、陽極3上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
【0097】
正孔注入層形成用材料の供給方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いることもできる。かかる塗布法を用いることにより、正孔注入層4を比較的容易に形成することができる。
正孔注入層形成用材料の調製に用いる溶媒または分散媒としては、例えば、各種無機溶媒や、各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
【0098】
なお、乾燥は、例えば、大気圧または減圧雰囲気中での放置、加熱処理、不活性ガスの吹付け等により行うことができる。
また、本工程に先立って、陽極3の上面には、酸素プラズマ処理を施すようにしてもよい。これにより、陽極3の上面に親液性を付与すること、陽極3の上面に付着する有機物を除去(洗浄)すること、陽極3の上面付近の仕事関数を調整すること等を行うことができる。
ここで、酸素プラズマ処理の条件としては、例えば、プラズマパワー100〜800W程度、酸素ガス流量50〜100mL/min程度、被処理部材(陽極3)の搬送速度0.5〜10mm/sec程度、被処理部材を支持する支持体の温度70〜90℃程度とするのが好ましい。
【0099】
[3] 次に、正孔注入層4上に正孔輸送層5を形成する。
正孔輸送層5は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
また、正孔輸送材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる正孔輸送層形成用材料を、正孔注入層4上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
【0100】
[4] 次に、正孔輸送層5上に、赤色発光層6を形成する。
赤色発光層6は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
[5] 次に、赤色発光層6上に、第1の中間層7Aを形成する。
第1の中間層7Aは、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
また、第1の中間層7Aは、例えば、その構成材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる第1の中間層形成用材料を、赤色発光層6上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
【0101】
[6] 次に、第1の中間層7A上に、青色発光層8を形成する。
青色発光層8は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
[7] 次に、青色発光層8上に、第2の中間層7Bを形成する。
第2の中間層7Bは、前記工程[5]で説明した、第1の中間層7Aの形成方法と同様の方法を用いて形成される。
【0102】
[8] 次に、第2の中間層7B上に、緑色発光層9を形成する。
緑色発光層9は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
[9] 次に、緑色発光層9上に、電子輸送層10を形成する。
電子輸送層10は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
また、電子輸送層10は、例えば、電子輸送材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる電子輸送層形成用材料を、緑色発光層9上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
【0103】
[10] 次に、電子輸送層10上に、電子注入層11を形成する。
電子注入層11の構成材料として無機材料を用いる場合、電子注入層11は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセス、無機微粒子インクの塗布および焼成等を用いて形成することができる。
[11] 次に、電子注入層11上に、陰極12を形成する。
陰極12は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、金属箔の接合、金属微粒子インクの塗布および焼成等を用いて形成することができる。
以上のような工程を経て、発光素子1が得られる。
最後に、得られた発光素子1を覆うように封止部材13を被せ、基板2に接合する。
【0104】
以上説明したような発光素子1は、例えば光源等として使用することができる。また、複数の発光素子1をマトリックス状に配置することにより、ディスプレイ装置(本発明の表示装置)を構成することができる。
なお、ディスプレイ装置の駆動方式としては、特に限定されず、アクティブマトリックス方式、パッシブマトリックス方式のいずれであってもよい。
【0105】
(表示装置)
次に、本発明の表示装置を適用したディスプレイ装置の一例について説明する。
図2は、本発明の表示装置を適用したディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。
図2に示すディスプレイ装置100は、基板21と、サブ画素100R、100G、100Bに対応して設けられた複数の発光素子1R、1G、1Bおよびカラーフィルタ19R、19G、19Bと、各発光素子1R、1G、1Bをそれぞれ駆動するための複数の駆動用トランジスタ24とを有している。ここで、ディスプレイ装置100は、トップエミッション構造のディスプレイパネルである。
【0106】
基板21上には、複数の駆動用トランジスタ24が設けられ、これらの駆動用トランジスタ24を覆うように、絶縁材料で構成された平坦化層22が形成されている。
各駆動用トランジスタ24は、シリコンからなる半導体層241と、半導体層241上に形成されたゲート絶縁層242と、ゲート絶縁層242上に形成されたゲート電極243と、ソース電極244と、ドレイン電極245とを有している。
平坦化層上には、各駆動用トランジスタ24に対応して発光素子1R、1G、1Bが設けられている。
【0107】
発光素子1Rは、平坦化層22上に、反射膜32、腐食防止膜33、陽極3、積層体(有機EL発光部)15、陰極12、陰極カバー34がこの順に積層されている。本実施形態では、各発光素子1R、1G、1Bの陽極3は、画素電極を構成し、各駆動用トランジスタ24のドレイン電極245に導電部(配線)27により電気的に接続されている。また、各発光素子1R、1G、1Bの陰極12は、共通電極とされている。
【0108】
なお、発光素子1G、1Bの構成は、発光素子1Rの構成と同様である。また、図2では、図1と同様の構成に関しては、同一符号を付してある。また、反射膜32の構成(特性)は、光の波長に応じて、発光素子1R、1G、1B間で異なっていてもよい。
隣接する発光素子1R、1G、1B同士の間には、隔壁31が設けられている。また、これらの発光素子1R、1G、1B上には、これらを覆うように、エポキシ樹脂で構成されたエポキシ層35が形成されている。
【0109】
カラーフィルタ19R、19G、19Bは、前述したエポキシ層35上に、発光素子1R、1G、1Bに対応して設けられている。
カラーフィルタ19Rは、発光素子1Rからの白色光Wを赤色に変換するものである。また、カラーフィルタ19Gは、発光素子1Gからの白色光Wを緑色に変換するものである。また、カラーフィルタ19Bは、発光素子1Bからの白色光Wを青色に変換するものである。このようなカラーフィルタ19R、19G、19Bを発光素子1R、1G、1Bと組み合わせて用いることで、フルカラー画像を表示することができる。
【0110】
また、隣接するカラーフィルタ19R、19G、19B同士の間には、遮光層36が形成されている。これにより、意図しないサブ画素100R、100G、100Bが発光するのを防止することができる。
そして、カラーフィルタ19R、19G、19Bおよび遮光層36上には、これらを覆うように封止基板20が設けられている。
以上説明したようなディスプレイ装置100は、単色表示であってもよく、各発光素子1R、1G、1Bに用いる発光材料を選択することにより、カラー表示も可能である。
このようなディスプレイ装置100(本発明の表示装置)は、各種の電子機器に組み込むことができる。
【0111】
図3は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部を備える表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100において、表示ユニット1106が備える表示部が前述のディスプレイ装置100で構成されている。
【0112】
図4は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、表示部を備えている。
携帯電話機1200において、この表示部が前述のディスプレイ装置100で構成されている。
【0113】
図5は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0114】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ディジタルスチルカメラ1300において、この表示部が前述のディスプレイ装置100で構成されている。
【0115】
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0116】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0117】
なお、本発明の電子機器は、図3のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図4の携帯電話機、図5のディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
以上、本発明の発光素子、表示装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。
【0118】
例えば、前述した実施形態では、発光素子が3層の発光層を有するものについて説明したが、発光層が2層または4層以上であってもよい。また、発光層の発光色としては、前述した実施形態のR、G、Bに限定されない。発光層が2層または4層以上である場合でも、各発光層の発光スペクトルを適宜設定することで、白色発光させることができる。
また、中間層は、発光層同士の少なくとも1つの層間に設けられていればよく、2層以上の中間層を有していてもよい。
【実施例】
【0119】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.発光素子の製造
(実施例1)
<1> まず、平均厚さ0.5mmの透明なガラス基板を用意した。次に、この基板上に、スパッタ法により、平均厚さ100nmのITO電極(陽極)を形成した。
そして、基板をアセトン、2−プロパノールの順に浸漬し、超音波洗浄した後、酸素プラズマ処理を施した。
【0120】
<2> 次に、ITO電極上に、真空蒸着法を用いて前述した化学式(7)で表わされる化合物で構成される平均厚さ40nmの正孔注入層を形成した。
<3> 次に、正孔注入層上に、真空蒸着法を用いて前述した化学式(13)で表わされる化合物で構成される平均厚さ10nmの正孔輸送層を形成した。
<4> 次に、正孔輸送層上に、真空蒸着法を用いて以下に示す赤色発光層の構成材料で構成される平均厚さ10nmの赤色発光層(第1の発光層)を形成した。
【0121】
ここで、赤色発光層の構成材料としては、赤色発光材料(ゲスト材料)として前述した化学式(17)で表わされる化合物(ジインデノペリレン誘導体)を用い、ホスト材料として前述した化学式(18)で表わされる化合物(ナフタセン誘導体)を用いた。また、発光層中の赤色発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、1.0wt%とした。
【0122】
<5> 次に、赤色発光層上に、真空蒸着法を用いて以下に示す第1の中間層の構成材料で構成される平均厚さ7nmの第1の中間層を形成した。
ここで、第1の中間層の構成材料としては、ホスト材料として前述した化学式(18)で表わされる化合物(アセン系材料)を用い、アミン系材料として前述した化学式(13)で表わされる化合物を用いた。また、第1の中間層中のホスト材料の含有量は、50wt%とした。
【0123】
<6> 次に、第1の中間層上に、真空蒸着法を用いて以下に示す青色発光層の構成材料で構成される平均厚さ10nmの青色発光層(第2の発光層)を形成した。
ここで、青色発光層の構成材料としては、青色発光材料(ゲスト材料)として前述した化学式(24)で表わされる化合物を用い、ホスト材料として下記に示す化学式(26)で表わされる化合物(アセン系材料)を用いた。また、青色発光層中の青色発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、6.0wt%とした。
【0124】
【化26】

【0125】
<7> 次に、青色発光層上に、真空蒸着法を用いて以下に示す第2の中間層の構成材料で構成される平均厚さ2nmの第2の中間層を形成した。
ここで、第2の中間層の構成材料としては、ホスト材料として前述した化学式(26)で表わされる化合物(アセン系材料)を用いた。
<8> 次に、第2の中間層上に、真空蒸着法を用いて以下に示す緑色発光層の構成材料で構成される平均厚さ30nmの緑色発光層(第3の発光層)を形成した。
ここで、緑色発光層の構成材料としては、緑色発光材料(ゲスト材料)として前述した化学式(25)で表わされる化合物を用い、ホスト材料として下記に示す化学式(27)で表わされる化合物(アセン系材料)を用いた。また、緑色発光層中の緑色発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、1.0wt%とした。
【0126】
<9> 次に、発光層上に、真空蒸着法を用いて以下に示す電子輸送層の構成材料で構成される平均厚さ10nmの電子輸送層を形成した。
ここで、電子輸送材料としては、前述したAlqを用いた。
<10> 次に、電子輸送層上に、真空蒸着法を用いてフッ化リチウム(LiF)で構成される、平均厚さ1nmの電子注入層を形成した。
【0127】
<11> 次に、電子注入層上に、真空蒸着法を用いてAlで構成される、平均厚さ150nmの陰極を形成した。
<12> 次に、形成した各層を覆うように、ガラス製の保護カバー(封止部材)を被せ、エポキシ樹脂により固定、封止した。
以上の工程により、図1に示すような発光素子を製造した。
【0128】
(実施例2)
前記工程<7>において、形成する第2の中間層の平均厚さを5nmとしたこと以外は、前記実施例1と同様にして、図1に示す発光素子を製造した。
(実施例3)
前記工程<7>において、形成する第2の中間層の平均厚さを10nmとしたこと以外は、前記実施例1と同様にして、図1に示す発光素子を製造した。
【0129】
(実施例4)
前記工程<7>において、第2の中間層の構成材料として、ホスト材料として下記に示す化学式(27)で表わされる化合物(アセン系材料)を用いて、平均厚さ5nmの第2の中間層を形成したこと以外は、前記実施例1と同様にして、図1に示す発光素子を製造した。
【0130】
【化27】

【0131】
(比較例)
前記工程<7>において、第2の中間層の形成を省略したこと以外は、前記実施例1と同様にして、図1に示す発光素子を製造した。
2.評価
各実施例および比較例の発光素子に対して、それぞれ、陽極と陰極との間に直流電源により電流密度10mA/cmの電流を流し、発光素子にかかる電圧、発光素子から放出された光の電流効率を測定した。
各実施例および比較例の発光素子に対して、それぞれ、陽極と陰極との間に直流電源により電流密度0.0003mA/cmの電流を流し、発光素子から放出された波長400〜800nmにおける光の強度を測定した。
これらの結果を表1および図6に示す。
【0132】
【表1】

【0133】
表1から明らかなように、電流密度が10mA/cmのように高輝度域であるときには、各実施例および比較例の発光素子における電圧および電流効率に大きな差は認められず、何れの発光素子も白色発光するものであった。
しかしながら、電流密度を0.0003mA/cmのように低輝度域とすると、比較例の発光素子では、図6に示すように、青色発光層8から緑色発光層9へエネルギーが移動することに起因して、青色が発光せず緑色が優先的に発光する結果が得られた。
【0134】
これに対して、各実施例の発光素子では、これら同士の間に、中間層を設けることにより、青色発光層8から緑色発光層9へエネルギーの移動が的確に抑制することができ、その結果、青色および緑色の双方を好適に発光させ得ることが判った。
なお、このような傾向は、第2の中間層のホスト材料として青色発光層(第2の発光層)および緑色発光層(第3の発光層)のホスト材料と同一のものを用い、さらに、第2の中間層の膜厚を適切な範囲に設定した実施例2、3においてより顕著に認められた。
【符号の説明】
【0135】
1、1B、1G、1R……発光素子 2……基板 3……陽極 4……正孔注入層 5……正孔輸送層 6……赤色発光層 7A……第1の中間層 7B……第2の中間層 8……青色発光層 9……緑色発光層 10……電子輸送層 11……電子注入層 12……陰極 13……封止部材 15……積層体 19B、19G、19R……カラーフィルタ
100……ディスプレイ装置 20……封止基板 21……基板 22……平坦化層 24……駆動用トランジスタ 241……半導体層 242……ゲート絶縁層 243……ゲート電極 244……ソース電極 245……ドレイン電極 27……配線 31……隔壁 32……反射膜 33……腐食防止膜 34……陰極カバー 35……エポキシ層 36……遮光層 1100……パーソナルコンピュータ 1102……キーボード 1104……本体部 1106……表示ユニット 1200……携帯電話機 1202……操作ボタン 1204……受話口 1206……送話口 1300……ディジタルスチルカメラ 1302……ケース(ボディー) 1304……受光ユニット 1306……シャッタボタン 1308……回路基板 1312……ビデオ信号出力端子 1314……データ通信用の入出力端子 1430……テレビモニタ 1440……パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極と、
陽極と、
前記陰極と前記陽極との間に設けられ、ホスト材料と、該ホスト材料に添加され、第1の色として赤色に発光する赤色発光材料であるゲスト材料とを含んで構成された第1の発光層と、
前記第1の発光層と前記陰極との間に設けられ、ホスト材料と、該ホスト材料に添加され、第2の色に発光する第2の色発光材料であるゲスト材料とを含んで構成された第2の発光層と、
前記第2の発光層と前記陰極との間に設けられ、ホスト材料と、該ホスト材料に添加され、第3の色に発光する第3の色発光材料であるゲスト材料とを含んで構成された第3の発光層と、
前記第1の発光層と前記第2の発光層との間にこれらに接するように設けられ、前記第1の発光層の前記ホスト材料と同一または同種の材料を含み、かつ、発光性を有する材料を実質的に含まずに構成され、前記第1の発光層と前記第2の発光層との間での正孔および電子の移動を調整する第1の中間層と、
前記第2の発光層と前記第3の発光層との間にこれらに接するように設けられ、前記第2の発光層の前記ホスト材料および前記第3の発光層の前記ホスト材料のうちの少なくとも一方のホスト材料と同一または同種の材料を含み、かつ、発光性を有する材料を実質的に含まずに構成され、前記第2の発光層と前記第3の発光層との間での正孔および電子の移動を調整する第2の中間層とを有することを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記第2の発光層の前記ホスト材料と、前記第3の発光層の前記ホスト材料とは、同一である請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記第2の中間層の前記ホスト材料は、前記第2の発光層の前記ホスト材料と同一である請求項1または2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記第2の中間層は、その厚さが、2nm以上、10nm以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の発光素子。
【請求項5】
前記第2の中間層は、前記ホスト材料としてアセン系材料を含有する請求項1ないし4
のいずれかに記載の発光素子。
【請求項6】
前記第1の中間層は、前記ホスト材料の他に、アミン系材料を含有する請求項1ないし4のいずれかに記載の発光素子。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の発光素子を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項7に記載の表示装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−151011(P2011−151011A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283364(P2010−283364)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】