説明

発光素子およびそれを用いた表示装置

【課題】 駆動電圧が低く、また従来の発光素子よりもさらに長寿命化できる発光素子およびそれを用いた表示装置を提供することを課題とする。
【解決手段】対向するように設けられた一対の電極間に挟まれた複数の層を有し、複数の層の少なくとも一層は発光物質を含む層からなり、発光物質を含む層を挟むように、酸化物半導体および金属酸化物の中から選ばれた一の化合物からなる物質と電子よりも正孔の輸送性が高い物質とを含む層と、酸化物半導体および金属酸化物の中から選ばれた一の化合物からなる物質と正孔よりも電子の輸送性の高い物質と当該正孔よりも電子の輸送性の高い物質に電子を供与することができる物質とを含む層とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の電極間に複数の層が挟まれた構成を有する発光素子に関する。また、当該発光素子を用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロルミネッセンス素子(発光素子)からの発光を利用した装置は、表示用または照明用等の装置として注目されている。これらの装置に用いられる発光素子としては、一対の電極間に発光性化合物を含む層が挟まれた構成を有するものがよく知られている。
【0003】
このような発光素子では、一方の電極側から注入された正孔と、他方の電極側から注入された電子とが再結合して励起状態の分子を形成し、それが基底状態に戻るときに光を放出する。
【0004】
ところで、近年急速に開発が進んだ各種情報処理機器に組み込むための表示装置においては、特に低消費電力化への要求が高く、これを達成するために発光素子の低駆動電圧化が試みられている。また、商品化を踏まえれば、低駆動電圧化のみならず発光素子の長寿命化もまた重要であり、これを達成するための発光素子の開発が進められている。
【0005】
例えば、特許文献1では、モリブデン酸化物等の仕事関数の高い金属酸化物を陽極に用いることによって、発光素子の低駆動電圧化および長寿命化の実現を目指している。
【0006】
しかし、特許文献1に示されている手段では素子の信頼性が十分であるとはいえず、実用化レベルには達していない。従って、素子の信頼性やさらなる長寿命化を達成するための技術開発を必要としていた。
【特許文献1】特開平9−63771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、駆動電圧が低く、また従来の発光素子よりもさらに長寿命化できる信頼性の高い発光素子およびそれを用いた表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発光素子は、対向するように設けられた一対の電極間に挟まれた複数の層を有し、複数の層のうち少なくとも一層は発光物質を含む層からなり、発光物質を含む層を挟んで、酸化物半導体または金属酸化物と電子よりも正孔の輸送性が高い物質とを含む層と、酸化物半導体または金属酸化物と正孔よりも電子の輸送性の高い物質とを含む層とが設けられていることを特徴としている。
【0009】
なお、上記の構成における複数の層は、電極から離れたところに発光領域が形成されるように、キャリア注入性の高い物質やキャリア輸送性の高い物質等からなる層を組み合わせて構成されたものである。
【0010】
また、本発明の発光素子の他の構成として、対向するように設けられた第1の電極と第2の電極との間に順に積層された第1の層と、第2の層と、第3の層とを有し、第1の層は、酸化物半導体または金属酸化物と電子よりも正孔の輸送性が高い物質とを含み、第2の層は、発光物質を含み、第3の層は、酸化物半導体または金属酸化物と正孔よりも電子の輸送性の高い物質とを含んでいることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の発光素子の他の構成として、対向するように設けられた第1の電極と第2の電極との間に順に積層された第1の層と、第2の層と、第3の層と、第4の層とを有し、第1の層は、酸化物半導体または金属酸化物と電子よりも正孔の輸送性が高い物質とを含み、第2の層は、発光物質を含み、第3の層は、酸化物半導体または金属酸化物と正孔よりも電子の輸送性の高い物質とを含み、第4の層は、酸化物半導体または金属酸化物と正孔よりも電子の輸送性の高い物質と前記正孔よりも電子の輸送性の高い物質に電子を供与することができる物質とを含んでいることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の発光素子の他の構成として、対向するように設けられた第1の電極と第2の電極との間に順に積層された第1の層と、第2の層と、第3の層と、第4の層とを有し、第1の層は、酸化物半導体または金属酸化物と電子よりも正孔の輸送性が高い物質とを含み、第2の層は、発光物質を含み、第3の層は、酸化物半導体または金属酸化物と正孔よりも電子の輸送性の高い物質と前記正孔よりも電子の輸送性の高い物質に電子を供与することができる物質とを含み、第4の層は、酸化物半導体または金属酸化物と電子よりも正孔の輸送性が高い物質とを含んでいることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の発光素子の他の構成として、上記発光素子の構成において、第2の電極と接するように、酸化物半導体または金属酸化物と電子よりも正孔の輸送性が高い物質とを含む層を新たに設けることを特徴としている。なお、新たに設ける層は、第1の層と同じ材料を用いて形成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
電子よりも正孔の輸送性が高い物質または正孔よりも電子の輸送性の高い物質を含む有機物質と無機物質を混合して層を形成することで、その相乗効果により、発光素子の層の厚膜化に伴う抵抗の増加が少ない発光素子を得ることができる。その結果、駆動電圧の増加を伴わずに、一対の電極間に挟まれた発光素子の膜厚を厚く形成して電極間の距離を大きくとることができるため、電極間の短絡を防止し、発光素子の信頼性を向上することができる。
【0015】
また、本発明によって得られた発光素子を、表示装置に適用することによって、電極間の短絡に伴う欠陥を防止し、長時間の使用に耐える信頼性の優れた表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同じものを指す符号は異なる図面間で共通して用いる。
【0017】
(実施の形態1)
本実施の形態では、発光素子の一態様について図1を用いて以下に説明する。
【0018】
本実施の形態において、発光素子110は、これを支持するための基板101上に設けられており、第1の電極102と、第1の電極102の上に順に積層した第1の層103、第2の層104、第3の層105と、さらにその上に設けられた第2の電極106とから構成されている(図1)。
【0019】
基板101は、例えばバリウムホウケイ酸ガラスや、アルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、石英基板、セラミック基板等を用いることができる。また、プラスチック等の可撓性を有する合成樹脂からなる基板を用いてもよい。なお、基板101の表面を、あらかじめCMP法などの研磨により平坦化しておいても良い。
【0020】
第1の電極102は、仕事関数の大きい(仕事関数4.0eV以上が好ましい)金属、合金、電気伝導性化合物またはこれらの混合物などで形成されていることが好ましい。具体的には、インジウム錫酸化物(ITO:Iindium Tin Oxide)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、珪素を含有したインジウム錫酸化物、ガリウムを添加した酸化亜鉛(GZO)等の透光性酸化物導電材料を用いることができる。また、他にも金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)等から選ばれた一種の元素、当該元素を複数含む合金または当該元素と炭素(C)を含んだ層からなる単層または積層構造を用いることができる。上記元素を複数含んだ合金としては、例えば、AlとTiとCを含んだ合金、AlとNi、AlとCを含んだ合金、AlとNiとCを含んだ合金またはAlとMoを含んだ合金等を用いることができる。なお、Alを電極として用いた場合、発光層から放出された光を反射させたい場合に反射率がよくなるといった利点がある。
【0021】
第1の層103は、酸化物半導体または金属酸化物と正孔輸送性の高い物質とを含む層で形成する。酸化物半導体または金属酸化物の具体例としては、モリブデン酸化物(MoOx)、バナジウム酸化物(VOx)、ルテニウム酸化物(RuOx)、タングステン酸化物(WOx)、コバルト酸化物(CoOx)、ニッケル酸化物(NiOx)、銅酸化物(CuOx)等が挙げられる。この他、インジウム錫酸化物(ITO)や亜鉛酸化物(ZnO)等を用いることができる。また、正孔輸送性の高い物質としては、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:α−NPD)や4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:TPD)や4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)や4,4’−ビス(N−(4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)などの芳香族アミン系(即ち、ベンゼン環−窒素の結合を有する)の化合物やフタロシアニン(略称:H2Pc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)、バナジルフタロシアニン(略称:VOPc)等のフタロシアニン化合物を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性が高い物質であれば、上記した物質以外のものを用いてもよい。
【0022】
上記のような構成を有する第1の層103は、正孔注入性の高い層である。第1の層103においては、層に含まれる正孔輸送性の高い物質によって酸化物半導体または金属酸化物の凝集が抑制されている。つまり、第1の層103の結晶化が抑制されている。なお、第1の層103は、上記のような単層のものだけでなく、例えば半導体と正孔輸送性の高い化合物を含み、その混合比が異なる層が二層以上積層下構造としてもよい。なお、このような構成とすることにより、酸化物半導体または金属酸化物と電子よりも正孔の輸送性の高い物質とを含む層の結晶化を抑制することができるため、層を厚く形成した場合でも抵抗の増加が少ない層を形成することができる。
【0023】
また、第1の層103は、酸化物半導体または金属酸化物と正孔輸送性の高い化合物とに加えて、さらに立体障害の大きな(平面構造とは異なり空間的な広がりを有する構造をもつ)化合物を有するものであってもよい。立体障害の大きな化合物としては、5,6,11,12−テトラフェニルテトラセン(略称:ルブレン)が好ましい。但し、これ以外に、ヘキサフェニルベンゼン、t−ブチルペリレン、9,10−ジ(フェニル)アントラセン、クマリン545T等も用いることができる。この他、デンドリマー等も有効である。
【0024】
第2の層104は、発光性の高い物質を含む層で形成する。発光材料を含む第2の層104には大きく分けて2つの種類ある。一つは発光物質の有するエネルギーギャップよりも大きいエネルギーギャップを有する材料からなる層に発光中心となる発光材料を分散して含む層と、もう一つは発光材料のみで発光層を構成する層であるが、前者を用いると濃度消光が起こりにくく、好ましい構成である。発光中心となる発光物質としては、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJT)、4−ジシアノメチレン−2−t−ブチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン、ペリフランテン、2,5−ジシアノ−1,4−ビス[2−(10−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]ベンゼン、N,N’−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)、クマリン6、クマリン545T、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、9,9’−ビアントリル、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPA)や9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン(略称:TBP)等が挙げられる。また、上記発光材料を分散してなる層を形成する場合に母体となる材料としては、9,10−ジ(2−ナフチル)−2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)等のアントラセン誘導体、4,4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)等のカルバゾール誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ピリジナト]亜鉛(略称:Znpp2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:ZnBOX)などの金属錯体等を用いることができる。また、発光物質のみで第2の層104を構成することのできる材料としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)等がある。
【0025】
また、第2の層104は単層で形成しても複数層で形成しても構わず、第2の層104における発光材料が分散された層と第1の層103との間に正孔輸送層を設け、第2の層104における発光材料が分散された層と第3の層105との間に電子輸送層を設けても良い。これらの層は、そのどちらか一方のみが設けられていても良いし、両方設けてもよいし、どちらも設けなくてもよい。正孔輸送層の材料としては、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:α−NPD)や4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:TPD)や4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)や4,4’−ビス(N−(4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)などの芳香族アミン系(即ち、ベンゼン環−窒素の結合を有する)の化合物やフタロシアニン(略称:H2Pc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)、バナジルフタロシアニン(略称:VOPc)等のフタロシアニン化合物を用いることができる。また、電子輸送層の材料としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)等キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等からなる材料を用いることができる。また、この他、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体などの材料も用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)等の化合物等を用いることができる。
【0026】
第3の層105は、酸化物半導体または金属酸化物と、電子輸送性の高い物質とを含む層で形成することができる。この場合、酸化物半導体または金属酸化物としては、例えば、リチウム酸化物(LiOx)、ナトリウム酸化物(NaOx)等を用いることができる。
【0027】
また、上記構成に限られず、第3の層105として他にも、酸化物半導体または金属酸化物と、電子輸送性の高い物質と、当該電子輸送性の物質に電子を供与することができる電子供与性の物質とを含む層で形成してもよい。この場合、酸化物半導体または金属酸化物としては、モリブデン酸化物(MoOx)、バナジウム酸化物(VOx)、ルテニウム酸化物(RuOx)、タングステン酸化物(WOx)、コバルト酸化物(CoOx)、ニッケル酸化物(NiOx)、銅酸化物(CuOx)等が挙げられる。この他、インジウム錫酸化物(ITO)や亜鉛酸化物(ZnO)、リチウム酸化物(LiOx)、ナトリウム酸化物(NaOx)等を用いることができる。
【0028】
また、上記構成において、電子輸送性の高い物質としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)等キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等からなる材料を用いることができる。また、この他、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体などの材料も用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質である。但し、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記した物質以外のものを第3の層105として用いることができる。また、電子輸送性の物質に電子を供与することができる電子供与性の物質として、リチウム(Li)、セシウム(Cs)等のアルカリ金属、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、エルビウム、イッテルビウムなどの希土類金属、または、それらの酸化物やハロゲン化物等の化合物等を用いることができる。また、第3の層105は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。また、上記構成以外にも、酸化物半導体または金属酸化物と、正孔輸送性の高い物質と、当該正孔輸送性の物質に電子を供与することができる電子供与性の物質(電子注入を促す機能を有する物質)とを含む層を第3の層105に用いてもよい。
【0029】
なお、このような構成とすることにより、第3の層105の結晶化を抑制することができるため、層を厚く形成した場合でも抵抗の増加が少ない層を形成することができる。
【0030】
第2の電極106は、仕事関数の小さい(仕事関数3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。このような、陰極材料の具体例としては、元素周期律の1族または2族に属する元素、すなわちLiやCs等のアルカリ金属、およびMg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(Mg:Ag、Al:Li)や化合物(LiF、CsF、CaF2)の他、希土類金属を含む遷移金属を用いて形成することができる。また、他にもこれらの材料と上記第1の電極102で示したいずれかの材料との積層により形成することもできるし、上記第1の電極102で示したいずれかの材料を用いて形成することもできる。
【0031】
また、第1の層103、第2の層104、第3の層105の形成方法としては、蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法等を用いることができる。また、これらの層において、複数の材料を含む層は、各々の材料を同時に成膜することにより形成することができ、抵抗加熱蒸着同士による共蒸着法、電子ビーム蒸着同士による共蒸着法、抵抗加熱蒸着と電子ビーム蒸着による共蒸着法、抵抗加熱蒸着とスパッタリングによる成膜、電子ビーム蒸着とスパッタリングによる成膜など、同種、異種の方法を組み合わせて形成することができる。また、3種類以上の材料を含む層を形成する場合も同様に組み合わせて行うことが可能である。
【0032】
また、他の形成方法として、スピンコートや液滴吐出法等を用いてもよいし、上記方法とこれらを組み合わせて形成してもよい。なお、液滴吐出法とは、導電膜や絶縁膜等の材料を含んだ組成物の液滴(ドットともいう)を選択的に吐出(噴射)して任意の場所に形成する方法であり、その方式によってはインクジェット法とも呼ばれている。各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
【0033】
以上のような構成を有する発光素子は、第1の電極102と第2の電極106との間に生じた電位差により電流が流れ、発光性の高い物質を含む層である第2の層104において正孔と電子とが結合し、発光するものである。つまり第2の層104に発光領域が形成されるような構成となっている。但し、第2の層104の全てが発光領域として機能する必要はなく、例えば、第2の層104の層のうち第1の層103側または第3の層105側にのみ発光領域が形成されるような構成であってもよい。
【0034】
第2の層104から放出される光は、第1の電極102または第2の電極106のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極102または第2の電極106のいずれか一方または両方は、透光性を有する物質からなる。第1の電極102のみが透光性を有する物質からなる場合、図1(A)に示すように、第2の層104から放出された光は第1の電極102を通って基板101側から取り出される。また、第2の電極106のみが透光性を有する物質からなるものである場合、図1(B)に示すように、第2の層104から放出された光は、第2の電極106を通って基板101と逆側から取り出される。第1の電極102および第2の電極106がいずれも透光性を有する物質からなるものである場合、図1(C)に示すように、第2の層104から放出された光は、第1の電極102および第2の電極106を通って、基板101側および基板101と逆側の両方から取り出される。
【0035】
なお、本実施の形態では、基板101上に順に、第1の電極102、第1の層103、第2の層104、第3の層105、第2の電極106とが積層して設けられた構成となっているが、この構成に限られず基板101上に上記構成とは逆に積層した構成としてもよい。つまり、図5に示すように基板101上に、第2の電極106と、第2の電極106の上に順に積層した第3の層105、第2の層104、第1の層103と、さらにその上に設けられた第1の電極102とから構成してもよい。このような構成にした場合でも、第1の電極102または第2の電極106のいずれか一方または両方に透光性を有する電極とすることによって、図5(A)〜図5(C)に示すように、第2の層104から放出される光を、第1の電極102または第2の電極106のいずれか一方または両方を通って外部に取り出すことができる。
【0036】
本実施の形態においては、ガラスやプラスチック等からなる基板上に発光素子を作製している。基板上にこのような発光素子を複数作製することで、パッシブ型の表示装置を作製することができる。また、ガラス、プラスチック等からなる基板以外に、例えば薄膜トランジスタ(TFT)アレイ基板上に発光素子を形成してもよい。これにより、TFTによって発光素子の駆動を制御するアクティブマトリクス型の表示装置を作製できる。なお、TFTの構造は特に限定されず、スタガ型のTFTでもよいし、逆スタガ型のTFTでもよい。また、TFTアレイ基板に形成される駆動用回路についても、N型およびP型のTFTからなるものでもよいし、N型またはP型のいずれか一方からのみなるものであってもよい。
【0037】
以上のように、第1の層と第3の層を有機物質と無機物質とを混合した構成とすることによって、これらの層を厚く形成した場合でも抵抗の増加が少ないため、厚膜化しても駆動電圧が増加しない発光素子を形成することができる。また、上記構成とすることにより、第1の層と第3の層の結晶化を防止することができるため発光素子の寿命を向上させることができる。さらに、発光素子の膜厚を厚く形成することによって、電極間の短絡を防止し、信頼性の高い発光素子を得ることができる。
【0038】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態とは異なる発光素子の一態様について図2を用いて以下に説明する。なお、本実施の形態において、上記実施の形態と同じものを示す場合は、同様の符号を用いて表す。
【0039】
本実施の形態で示す発光素子の構成は、発光素子210が、これを支持するための基板101上に設けられており、第1の電極102と、第1の電極102の上に順に積層した第1の層103、第2の層104、第3の層205、第4の層206と、さらにその上に設けられた第2の電極106とから構成されている(図2)。なお、第4の層206は図1における第3の層105と同じ材料で形成する。つまり、本実施の形態では、図1で示した発光素子110の構成において、第2の層104と第3の層105との間に新たに層を設けた構成となっている。
【0040】
第3の層205は、酸化物半導体または金属酸化物と、電子輸送性の高い物質とを含む層で形成する。酸化物半導体または金属酸化物としては、モリブデン酸化物(MoOx)、バナジウム酸化物(VOx)、ルテニウム酸化物(RuOx)、タングステン酸化物(WOx)、コバルト酸化物(CoOx)、ニッケル酸化物(NiOx)、銅酸化物(CuOx)等が挙げられる。この他、インジウム錫酸化物(ITO)や亜鉛酸化物(ZnO)、リチウム酸化物(LiOx)、ナトリウム酸化物(NaOx)等を用いることができる。また、電子輸送性の高い物質としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)等キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等からなる材料を用いることができる。また、この他、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体などの材料も用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質である。但し、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記した物質以外のものを第3の層205の材料として用いることができる。また、第3の層205は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0041】
このような構成とすることにより、第3の層205の結晶化を抑制することができるため、層を厚く形成した場合でも抵抗の増加が少ない層を形成することができる。
【0042】
なお、第1の電極102と、第2の電極106と、第1の層103と、第2の層104と、第4の層206は、それぞれ上記実施の形態で示した材料のいずれかを利用することができる。また、第2の層104から放出される光は、第1の電極102または第2の電極106のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極102または第2の電極106のいずれか一方または両方は、透光性を有する物質からなる。第1の電極102のみが透光性を有する物質からなる場合、図2(A)に示すように、第2の層104から放出された光は第1の電極102を通って基板101側から取り出される。また、第2の電極106のみが透光性を有する物質からなるものである場合、図2(B)に示すように、第2の層104から放出された光は、第2の電極106を通って基板101と逆側から取り出される。第1の電極102および第2の電極106がいずれも透光性を有する物質からなるものである場合、図2(C)に示すように、第2の層104から放出された光は、第1の電極102および第2の電極106を通って、基板101側および基板101と逆側の両方から取り出される。
【0043】
なお、図2では、基板101上に順に、第1の電極102、第1の層103、第2の層104、第3の層205、第4の層206、第2の電極106とが積層して設けられた構成を示しているが、この構成に限られず基板101上に上記構成とは逆に積層した構成としてもよい。つまり、基板101上に、第2の電極106と、第2の電極106の上に順に積層した第4の層206、第3の層205、第2の層104、第1の層103と、さらにその上に設けられた第1の電極102とから構成してもよい。
【0044】
以上のように、第1の層と第3の層と第4の層を有機物質と無機物質とを混合した構成とすることによって、これらの層を厚く形成した場合でも抵抗の増加が少ないため、厚膜化しても駆動電圧が増加しない発光素子を形成することができる。また、上記構成とすることにより、第1の層と第3の層と第4の層の結晶化を防止することができるため発光素子の寿命を向上させることができる。さらに、発光素子の膜厚を厚く形成することによって、電極間の短絡を防止し、信頼性の高い発光素子を得ることができる。
【0045】
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
【0046】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態とは異なる発光素子の一態様について図3を用いて以下に説明する。なお、本実施の形態において、上記実施の形態と同じものを示す場合は、同様の符号を用いて表す。
【0047】
本実施の形態で示す発光素子の構成は、図3に示すように、発光素子310が、これを支持するための基板101上に設けられており、第1の電極102と、第1の電極102の上に順に積層した第1の層103、第2の層104、第3の層205、第4の層207と、さらにその上に設けられた第2の電極106とから構成されている。つまり、上記図2で示した発光素子210の構成において、第4の層206が異なる材料を用いて形成された層に置き換わった構成となっている。
【0048】
第4の層207は、電子輸送性の高い物質と当該電子輸送性の材料に電子を供与することができる電子供与性の物質(電子注入を促す機能を有する物質)の両方を含む層で形成する。上記電子輸送性の物質としては例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)等キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等からなる材料を用いることができる。また、この他、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体などの材料も用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)等を用いることができる。また、これら電子輸送性の材料に電子を与えることができる電子供与性の物質としては、例えば、リチウム(Li)、セシウム(Cs)等のアルカリ金属、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、エルビウム、イッテルビウムなどの希土類金属、または、それらの酸化物やハロゲン化物等の化合物等を用いることができるが、電子輸送性の材料との組み合わせによってそれぞれ電子供与が可能な電子供与性の材料を選択する。
【0049】
また、上記構成に限られず、電子を供与することができる電子供与性の材料のみで第4の層207を形成してもよい。
【0050】
なお、本実施の形態において、第1の電極102と、第2の電極106と、第1の層103と、第2の層104と、第3の層205は、それぞれ上記実施の形態で示した材料のいずれかを利用することができる。また、第2の層104から放出される光は、第1の電極102または第2の電極106のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極102または第2の電極106のいずれか一方または両方は、透光性を有する物質からなる。第1の電極102のみが透光性を有する物質からなる場合、図3(A)に示すように、第2の層104から放出された光は第1の電極102を通って基板101側から取り出される。また、第2の電極106のみが透光性を有する物質からなるものである場合、図3(B)に示すように、第2の層104から放出された光は、第2の電極106を通って基板101と逆側から取り出される。第1の電極102および第2の電極106がいずれも透光性を有する物質からなるものである場合、図3(C)に示すように、第2の層104から放出された光は、第1の電極102および第2の電極106を通って、基板101側および基板101と逆側の両方から取り出される。
【0051】
なお、図3では、基板101上に順に、第1の電極102、第1の層103、第2の層104、第3の層205、第4の層207、第2の電極106とが積層して設けられた構成を示しているが、この構成に限られず基板101上に上記構成とは逆に積層した構成としてもよい。つまり、基板101上に、第2の電極106と、第2の電極106の上に順に積層した第4の層207、第3の層205、第2の層104、第1の層103と、さらにその上に設けられた第1の電極102とから構成してもよい。
【0052】
以上のように、第1の層と第3の層を有機物質と無機物質とを混合した構成とすることによって、これらの層を厚く形成した場合でも抵抗の増加が少ないため、厚膜化しても駆動電圧が増加しない発光素子を形成することができる。また、上記構成とすることにより、第1の層と第3の層の結晶化を防止することができるため発光素子の寿命を向上させることができる。さらに、発光素子の膜厚を厚く形成することによって、電極間の短絡を防止し、信頼性の高い発光素子を得ることができる。
【0053】
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
【0054】
(実施の形態4)
本実施の形態では、上記実施の形態とは異なる発光素子の一態様について図4を用いて以下に説明する。なお、本実施の形態において、上記実施の形態と同じものを示す場合は、同様の符号を用いて表す。
【0055】
本実施の形態では、上記実施の形態で示した構成において、第2の電極と接するように新たに層を設ける(図4)。つまり、図4(A)は、図1において、第3の層105と第2の電極106との間に第4の層208aを新たに設けた構成となっている。図4(B)は、図2において、第4の層206と第2の電極106との間に第5の層208bを新たに設けた構成となっている。図4(C)は、図3において、第4の層207と第2の電極106との間に第5の層208cを新たに設けた構成となっている。
【0056】
新たに設けた層208a〜208cの材料としては、第1の層103の材料と同じものを用いて形成する。つまり、酸化物半導体または金属酸化物と正孔輸送性の高い物質とを含む層で形成する。
【0057】
なお、本実施の形態においても上記実施の形態で示したように、第1の電極102または第2の電極106のいずれか一方または両方に透光性を有する物質を用いることによって、第2の層104から放出される光は、第1の電極102または第2の電極106のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。
【0058】
また、図4(A)では、基板101上に順に、第1の電極102、第1の層103、第2の層104、第3の層105、第4の層208a、第2の電極106とが積層して設けられた構成となっているが、この構成に限られず基板101上に上記構成とは逆に積層した構成としてもよい。つまり、基板101上に、第2の電極106と、第2の電極106の上に順に積層した第4の層208a、第3の層105、第2の層104、第1の層103と、さらにその上に設けられた第1の電極102とから構成してもよい。また、図4(B)も同様に、基板101上に、第2の電極106と、第2の電極106の上に順に積層した第5の層208b、第4の層206、第3の層205、第2の層104、第1の層103と、さらにその上に設けられた第1の電極102とから構成してもよい。図4(C)も同様に、基板101上に、第2の電極106と、第2の電極106の上に順に積層した第5の層208c、第4の層207、第3の層205、第2の層104、第1の層103と、さらにその上に設けられた第1の電極102とから構成してもよい。
【0059】
以上のように、有機物質と無機物質とを混合した層を設けることによって、これらの層を厚く形成した場合でも抵抗の増加が少ないため、厚膜化しても駆動電圧が増加しない発光素子を形成することができる。また、上記構成とすることにより、有機物質と無機物質とを混合した層の結晶化を防止することができるため発光素子の寿命を向上させることができる。さらに、発光素子の膜厚を厚く形成することによって、電極間の短絡を防止し、信頼性の高い発光素子を得ることができる。
【0060】
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
【0061】
(実施の形態5)
本実施の形態では、上記実施の形態で示した発光素子を含む表示装置の断面図の一態様について、図6を用いて説明する。
【0062】
図6において、四角の点線で囲まれているのは、本発明の発光素子12を駆動するために設けられているトランジスタ11である。発光素子12は、複数の層が積層された層15が第1の電極13と第2の電極14との間に挟まれて設けられており、上記実施の形態で示したいずれかの構造を有している。トランジスタ11のドレインと第1の電極13とは、第1層間絶縁膜16(16a、16b、16c)を貫通している配線17によって電気的に接続されている。また、発光素子12は、隔壁層18によって、隣接して設けられている別の発光素子と分離されている。このような構成を有する表示装置は、本実施の形態において、基板10上に設けられている。
【0063】
なお、図6に示されたトランジスタ11は、半導体層を中心として基板と逆側にゲート電極が設けられたトップゲート型のものである。但し、トランジスタ11の構造については、特に限定はなく、例えばボトムゲート型のものでもよい。またボトムゲートの場合には、チャネルを形成する半導体層の上に保護膜が形成されたもの(チャネル保護型)でもよいし、或いはチャネルを形成する半導体層の一部が凹状になったもの(チャネルエッチ型)でもよい。なお、21はゲート電極、22はゲート絶縁膜、23は半導体層、24はn型の半導体層、17は電極、16aは保護膜である。
【0064】
また、トランジスタ11を構成する半導体層は、結晶性、非結晶性のいずれのものでもよい。また、セミアモルファス等でもよい。
【0065】
なお、セミアモルファスな半導体とは、次のようなものである。非晶質と結晶構造(単結晶、多結晶を含む)の中間的な構造を有し、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する結晶質な領域を含んでいるものである。また少なくとも膜中の一部の領域には、0.5〜20nmの結晶粒を含んでいる。ラマンスペクトルが520cm-1よりも低波数側にシフトしている。X線回折ではSi結晶格子に由来するとされる(111)、(220)の回折ピークが観測される。未結合手(ダングリングボンド)を減らすために水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。所謂微結晶半導体(マイクロクリスタル半導体)とも言われている。珪化物気体をグロー放電分解(プラズマCVD)して形成する。珪化物気体としては、SiH4、その他にもSi26、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4などを用いることが可。この珪化物気体をH2、又は、H2とHe、Ar、Kr、Neから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希釈しても良い。希釈率は2〜1000倍の範囲。圧力は概略0.1Pa〜133Paの範囲、電源周波数は1MHz〜120MHz、好ましくは13MHz〜60MHz。基板加熱温度は300℃以下でよく、好ましくは100〜250℃。膜中の不純物元素として、酸素、窒素、炭素などの大気成分の不純物は1×1020/cm3以下とすることが望ましく、特に、酸素濃度は5×1019/cm3以下、好ましくは1×1019/cm3以下とする。なお、セミアモルファスなものを有する半導体を用いたTFT(薄膜トランジスタ)の移動度はおよそ1〜10m2/Vsecとなる。
【0066】
また、半導体層が結晶性のものの具体例としては、単結晶または多結晶性の珪素、或いはシリコンゲルマニウム等から成るものが挙げられる。これらはレーザー結晶化によって形成されたものでもよいし、例えばニッケル等を用いた固相成長法による結晶化によって形成されたものでもよい。
【0067】
なお、半導体層が非晶質の物質、例えばアモルファスシリコンで形成される場合には、トランジスタ11およびその他のトランジスタ(発光素子を駆動するための回路を構成するトランジスタ)は全てNチャネル型トランジスタで構成された回路を有する表示装置であることが好ましい。それ以外については、Nチャネル型またはPチャネル型のいずれか一のトランジスタで構成された回路を有する表示装置でもよいし、両方のトランジスタで構成された回路を有する表示装置でもよい。
【0068】
さらに、第1層間絶縁膜16は、図6(A)、図6(C)に示すように多層でもよいし、または単層でもよい。なお、16aは酸化珪素や窒化珪素のような無機物から成り、16bはアクリルやシロキサン樹脂等のシロキサン材料、塗布成膜可能な酸化珪素等の自己平坦性を有する物質から成る。さらに、16cはアルゴン(Ar)を含む窒化珪素膜から成る。シロキサン材料は、Si−O−Si結合を含む材料に相当する。シロキサンは、シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される。置換基として、少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)が用いられる。置換基として、フルオロ基を用いてもよい。または置換基として、少なくとも水素を含む有機基と、フルオロ基とを用いてもよい。なお、各層を構成する物質については、特に限定はなく、ここに述べたもの以外のものを用いてもよい。また、これら以外の物質から成る層をさらに組み合わせてもよい。このように、第1層間絶縁膜16は、無機物と有機物の両方を用いて形成されたものでもよいし、または無機膜と有機膜のいずれか一で形成されたものでもよい。
【0069】
隔壁層18は、エッジ部において、曲率半径が連続的に変化する形状であることが好ましい。また隔壁層18は、アクリルやシロキサン樹脂等のシロキサン材料、レジスト、酸化珪素等を用いて形成される。なお隔壁層18は、無機膜と有機膜のいずれか一で形成されたものでもよいし、または両方を用いて形成されたものでもよい。
【0070】
なお、図6(A)、(C)では、第1層間絶縁膜16のみがトランジスタ11と発光素子12の間に設けられた構成であるが、図6(B)のように、第1層間絶縁膜16(16a、16b)の他、第2層間絶縁膜19(19a、19b)が設けられた構成のものであってもよい。図6(B)に示す表示装置においては、第1の電極13は第2層間絶縁膜19を貫通し、配線17と接続している。
【0071】
第2層間絶縁膜19は、第1層間絶縁膜16と同様に、多層でもよいし、または単層でもよい。19aはアクリルやシロキサン樹脂等のシロキサン材料、塗布成膜可能な酸化珪素等の自己平坦性を有する物質から成る。さらに、19bはアルゴン(Ar)を含む窒化珪素膜から成る。なお、各層を構成する物質については、特に限定はなく、ここに述べたもの以外のものを用いてもよい。また、これら以外の物質から成る層をさらに組み合わせてもよい。このように、第2層間絶縁膜19は、無機物と有機物の両方を用いて形成されたものでもよいし、または無機膜と有機膜のいずれか一で形成されたものでもよい。
【0072】
発光素子12において、第1の電極および第2の電極がいずれも透光性を有する物質で構成されている場合、図6(A)の白抜きの矢印で表されるように、第1の電極13側と第2の電極14側の両方から発光を取り出すことができる。また、第2の電極14のみが透光性を有する物質で構成されている場合、図6(B)の白抜きの矢印で表されるように、第2の電極14側のみから発光を取り出すことができる。この場合、第1の電極13は反射率の高い材料で構成されているか、または反射率の高い材料から成る膜(反射膜)が第1の電極13の下方に設けられていることが好ましい。また、第1の電極13のみが透光性を有する物質で構成されている場合、図6(C)の白抜きの矢印で表されるように、第1の電極13側のみから発光を取り出すことができる。この場合、第2の電極14は反射率の高い材料で構成されているか、または反射膜が第2の電極14の上方に設けられていることが好ましい。
【0073】
第1の電極または第2の電極に透光性を有する物質で構成する場合には、第1電極または第2の電極の材料として、インジウム錫酸化物(ITO:Iindium Tin Oxide)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、珪素を含有したインジウム錫酸化物、ガリウムを添加した酸化亜鉛(GZO)等の透光性酸化物導電材料を用いることができる。
【0074】
一方、第1の電極または第2の電極に反射率の高い材料で構成する場合には、第1の電極または第2の電極の材料として、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、炭素(C)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)等から選ばれた一種の元素または当該元素を複数含む合金からなる単層または積層構造を用いることができる。また、他にも、例えば、AlとTiとCを含んだ合金、AlとNi、AlとCを含んだ合金、AlとNiとCを含んだ合金またはAlとMoを含んだ合金等を用いることができる。AlまたはAl合金を電極として用いた場合、高い反射率を得ることができる。また、反射膜を形成する場合も同様の材料を用いて形成することができる。
【0075】
また、発光素子12は、第1の電極13の電位よりも第2の電極14の電位が高くなるように電圧を印加したときに動作するように層15が積層されたものであってもよいし、或いは、第1の電極13の電位よりも第2の電極14の電位が低くなるように電圧を印加したときに動作するように層15が積層されたものであってもよい。前者の場合、トランジスタ11はNチャネル型トランジスタであり、後者の場合、トランジスタ11はPチャネル型トランジスタである。
【0076】
以上のように、本実施の形態では、トランジスタによって発光素子の駆動を制御するアクティブ型の表示装置について説明したが、この他、トランジスタ等の駆動用の素子を特に設けずに発光素子を駆動させるパッシブ型の表示装置であってもよい。パッシブ型の表示装置においても、低駆動電圧で動作する本発明の発光素子を含むことによって、低消費電力で駆動させることができる。
【0077】
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
【0078】
(実施の形態6)
本実施の形態では、表示機能を有する表示装置の回路構成について図7〜9を用いて説明する。
【0079】
図7は上記実施の形態で示した発光素子を適用した表示装置を上面からみた模式図である。図7において、基板6500上には、画素部6511と、ソース信号線駆動回路6512と、書込用ゲート信号線駆動回路6513と、消去用ゲート信号線駆動回路6514とが設けられている。ソース信号線駆動回路6512と、書込用ゲート信号線駆動回路6513と、消去用ゲート信号線駆動回路6514とは、それぞれ、配線群を介して、外部入力端子であるFPC(flexible printed circuit)6503と接続している。そして、ソース信号線駆動回路6512と、書込用ゲート信号線駆動回路6513と、消去用ゲート信号線駆動回路6514とは、それぞれ、FPC6503からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。またFPC6503にはプリント配線基盤(PWB)6504が取り付けられている。なお、駆動回路部は、上記のように必ずしも画素部6511と同一基板上に設けられている必要はなく、例えば、配線パターンが形成されたFPC上にICチップを実装したもの(TCP)等を利用し、基板外部に設けられていてもよい。
【0080】
画素部6511には、列方向に延びた複数のソース信号線が行方向に並んで配列している。また、電流供給線が行方向に並んで配列している。また、画素部6511には、行方向に延びた複数のゲート信号線が列方向に並んで配列している。また画素部6511には、発光素子を含む一組の回路が複数配列している。
【0081】
図8は、一画素を動作するための回路を表した図である。図8に示す回路には、第1のトランジスタ901と第2のトランジスタ902と発光素子903とが含まれている。
【0082】
第1のトランジスタ901と、第2のトランジスタ902とは、それぞれ、ゲート電極と、ドレイン領域と、ソース領域とを含む三端子の素子であり、ドレイン領域とソース領域の間にチャネル領域を有する。ここで、ソース領域とドレイン領域とは、トランジスタの構造や動作条件等によって変わるため、いずれがソース領域またはドレイン領域であるかを限定することが困難である。そこで、本形態においては、ソースまたはドレインとして機能する領域を、それぞれ第1電極、第2電極と表記する。
【0083】
ゲート信号線911と、書込用ゲート信号線駆動回路913とはスイッチ918によって電気的に接続または非接続の状態になるように設けられている。また、ゲート信号線911と、消去用ゲート信号線駆動回路914とはスイッチ919によって電気的に接続または非接続の状態になるように設けられている。また、ソース信号線912は、スイッチ920によってソース信号線駆動回路915または電源916のいずれかに電気的に接続するように設けられている。そして、第1のトランジスタ901のゲートはゲート信号線911に電気的に接続している。また、第1のトランジスタの第1電極はソース信号線912に電気的に接続し、第2電極は第2のトランジスタ902のゲート電極と電気的に接続している。第2のトランジスタ902の第1電極は電流供給線917と電気的に接続し、第2電極は発光素子903に含まれる一の電極と電気的に接続している。なお、スイッチ918は、書込用ゲート信号線駆動回路913に含まれていてもよい。またスイッチ919についても消去用ゲート信号線駆動回路914の中に含まれていてもよい。また、スイッチ920についてもソース信号線駆動回路915の中に含まれていてもよい。
【0084】
また画素部におけるトランジスタや発光素子等の配置について特に限定はないが、例えば図9の上面図に表すように配置することができる。図9において、第1のトランジスタ1001の第1電極はソース信号線1004に接続し、第2の電極は第2のトランジスタ1002のゲート電極に接続している。また第2トランジスタの第1電極は電流供給線1005に接続し、第2電極は発光素子の電極1006に接続している。ゲート信号線1003の一部は第1のトランジスタ1001のゲート電極として機能する。
【0085】
上記実施の形態で示した発光素子は、発光時間の蓄積に伴った駆動電圧の増加が少なく信頼性の高い素子であるため、画素部に適用することで、消費電力の増加の少ない表示装置を得ることができる。また、上記実施の形態で示した発光素子は駆動電圧の上昇を抑えたまま厚膜化が可能であり、電極間の短絡を防ぐことが容易なため、上記実施の形態で示した発光素子を画素部に適用することで、短絡に起因した欠陥の少ない良好な画像を表示できる表示装置を得ることができる。
【0086】
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
【0087】
(実施の形態7)
上記実施の形態で示した発光素子を用いて形成された表示装置として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話機、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDVD(digital versatile disc)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)などが挙げられる。それら表示装置の具体例を図10に示す。
【0088】
図10(A)はテレビ受像機であり、筐体2001、支持台2002、表示部2003、スピーカー部2004、ビデオ入力端子2005等を含む。上記実施の形態に示した発光素子を表示部2003に用いることによって、テレビ受像機を作製することができる。本発明の発光素子を表示部2003に用いることによって、欠陥の少ない鮮明な画像を低駆動電圧で表示することができる。
【0089】
図10(B)はデジタルカメラであり、本体2101、表示部2102、受像部2103、操作キー2104、外部接続ポート2105、シャッター2106等を含む。上記実施の形態に示した発光素子を表示部2102に用いることによって、デジタルカメラを作製することができる。本発明の発光素子を表示部2102に用いることによって、欠陥の少ない鮮明な画像を表示することができる。また、低駆動電圧で表示することができるため、バッテリーの寿命を延ばすことが可能となる。
【0090】
図10(C)はコンピュータであり、本体2201、筐体2202、表示部2203、キーボード2204、外部接続ポート2205、ポインティングマウス2206等を含む。上記実施の形態に示した発光素子を表示部2203に用いることによって、コンピュータを作製することができる。本発明の発光素子を表示部2203に用いることによって、欠陥の少ない鮮明な画像を低駆動電圧で表示することができる。また、低駆動電圧で表示することができるため、バッテリーの寿命を延ばすことが可能となる。
【0091】
図10(D)はモバイルコンピュータであり、本体2301、表示部2302、スイッチ2303、操作キー2304、赤外線ポート2305等を含む。上記実施の形態に示した発光素子を表示部2302に用いることによって、モバイルコンピュータを作製することができる。本発明の発光素子を表示部2302に用いることによって、欠陥の少ない鮮明な画像を低駆動電圧で表示することができる。また、低駆動電圧で表示することができるため、バッテリーの寿命を延ばすことが可能となる。
【0092】
図10(E)は記録媒体を備えた携帯型の画像再生装置(DVD再生装置など)であり、本体2401、筐体2402、表示部A2403、表示部B2404、記録媒体(DVD等)読み込み部2405、操作キー2406、スピーカー部2407等を含む。表示部A2403は主として画像情報を表示し、表示部B2404は主として文字情報を表示する。上記実施の形態に示した発光素子を表示部A2403や表示部B2404に用いることによって、画像再生装置を作製することができる。なお、記録媒体を備えた画像再生装置にはゲーム機器なども含まれる。本発明の発光素子を表示部A2403や表示部B2404に用いることによって、欠陥の少ない鮮明な画像を低駆動電圧で表示することができる。また、低駆動電圧で表示することができるため、バッテリーの寿命を延ばすことが可能となる。
【0093】
図10(F)はゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)であり、本体2501、表示部2502、アーム部2503を含む。上記実施の形態に示した発光素子を表示部2502に用いることによって、ゴーグル型ディスプレイを作製することができる。本発明の発光素子を表示部2502に用いることによって、欠陥の少ない鮮明な画像を低駆動電圧で表示することができる。また、低駆動電圧で表示することができるため、バッテリーの寿命を延ばすことが可能となる。
【0094】
図10(G)はビデオカメラであり、本体2601、表示部2602、筐体2603、外部接続ポート2604、リモコン受信部2605、受像部2606、バッテリー2607、音声入力部2608、操作キー2609、接眼部2610等を含む。上記実施の形態に示した発光素子を表示部2602に用いることによって、ビデオカメラを作製することができる。本発明の発光素子を表示部2602に用いることによって、欠陥の少ない鮮明な画像を低駆動電圧で表示することができる。また、低駆動電圧で表示することができるため、バッテリー2607の寿命を延ばすことが可能となる。
【0095】
図10(H)は携帯電話機であり、本体2701、筐体2702、表示部2703、音声入力部2704、音声出力部2705、操作キー2706、外部接続ポート2707、アンテナ2708等を含む。上記実施の形態に示した発光素子を表示部2703に用いることによって、携帯電話機を作製することができる。本発明の発光素子を表示部2703に用いることによって、欠陥の少ない鮮明な画像を低駆動電圧で表示することができる。また、低駆動電圧で表示することができるため、バッテリーの寿命を延ばすことが可能となる。
【0096】
なお、上述した電子機器の他に、フロント型若しくはリア型のプロジェクターに用いることも可能となる。
【0097】
以上の様に、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の表示装置に用いることが可能である。なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
【実施例1】
【0098】
本実施例では、上記実施の形態で示した素子構造の特性について以下に説明する。
【0099】
本実施例では、基板上にシリコンを含有したインジウム錫酸化物をスパッタリング法によって成膜し、第1の電極を形成した。次に、第1の電極上に、モリブデン(VI)酸化物とNPBとを共蒸着法によって成膜し、モリブデン酸化物(MoOx)とNPBとを含む第1の層を形成した。ここで、第1の層は、モリブデン酸化物とNPBとの質量比が1:4となるように調節し、膜厚が50nmとなるように形成した。なお、共蒸着とは、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。次に、第1の層上に、NPBを真空蒸着法によって成膜し、膜厚が10nmとなるようにNPBを含む第2の層を形成した。次に、第2の層上にトリス(8−キノリノラート)アルミニウム(略称:Alq3)とクマリン6とを、共蒸着法によって成膜し、Alq3とクマリン6とを含む第3の層を形成した。ここで、Alq3とクマリン6との質量比は1対0.005となるように調節した。これによって、クマリン6はAlq3の中に分散された状態となる。また、膜厚は40nmとなるようにした。次に、次に第3の層上に、Alq3を真空蒸着法によって成膜し、膜厚が20nmとなるようにAlq3を含む第4の層を形成した。次に、第4の層上に、Alq3とLi2O(リチウム酸化物)とを共蒸着法によって成膜し、Alq3とLi2Oとを含む第5の層を形成した。ここで、第5の層は、Alq3とLi2Oとの質量比が1:0.01(素子構造1)または1:0.05(素子構造2)となるように調節し、膜厚がどちらも10nmとなるように形成した。次に、第5の層上に、アルミニウムを真空蒸着法によって成膜し、膜厚が200nmとなるように第2の電極を形成した。
【0100】
以下に、上記素子構造1および素子構造2のそれぞれの素子構造の特性を図13に示す。なお、図13(A)は電流密度−輝度特性を示しており、図13(B)は電圧−輝度特性を示しており、図13(C)は輝度−電流効率特性を示している。
【0101】
素子構造1については、4.6Vの電圧を印加すると、11.1mA/cm2の電流密度で電流が流れ、960cd/m2の輝度で発光した。このときの電流効率は、8.7cd/Aであった。また、素子構造2については、4.6Vの電圧を印加すると、12.3mA/cm2の電流密度で電流が流れ、1100cd/m2の輝度で発光した。このときの電流効率は、8.9cd/Aであった。このように、本発明を実施することによって、低い電圧で高輝度が得られることがわかった。
【実施例2】
【0102】
本実施例では、上記実施の形態で示した、酸化物半導体または金属酸化物と正孔輸送性の高い物質とを含む層において、酸化物半導体または金属酸化物の濃度を変化させた場合の素子の特性ついて以下に説明する。
【0103】
本実施例では、酸化物半導体または金属酸化物としてモリブデン酸化物(MoOx)を用い、正孔輸送性の高い物質としてDNTPDまたはα−NPDの2つの物質を用いた。そして、それぞれ素子構造3および素子構造4からなる2つの素子構造を作製し、それぞれの素子構造に関してモリブデン酸化物の濃度を変化させた場合の素子の特性を考察した。
【0104】
はじめに、素子構造3の作製方法に関して以下に説明する。
【0105】
まず、基板上にシリコンを含有したインジウム錫酸化物を、スパッタリング法によって成膜し、第1の電極を形成した。次に、第1の電極上に、モリブデン酸化物とDNTPDとルブレンを、共蒸着法によって成膜し、モリブデン酸化物とDNTPDとルブレンとを含む第1層を形成した。ここで、膜厚は120nmとなるようにした。なお、共蒸着法とは、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。次に、第1の層上に、α−NPBを、真空蒸着法によって成膜し、α−NPBを含む第2の層を形成した。ここで、膜厚は10nmとなるようにした。次に第2の層の上に、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(略称:Alq3)とクマリン6とを、共蒸着法によって成膜し、Alq3とクマリン6とを含む第3の層を形成した。ここで、Alq3とクマリン6との質量比は1対0.005となるように調節した。これによって、クマリン6はAlq3の中に分散された状態となる。また、膜厚は40nmとなるようにした。次に第3の層上に、Alq3を、真空蒸着法によって成膜し、Alq3を含む第4の層を形成した。ここで、膜厚は40nmとなるようにした。次に第4の層上に、LiFを、真空蒸着法によって成膜し、LiFを含む第5の層を形成した。ここで、膜厚は1nmとなるようにした。次に第5の層上に、アルミニウムを、真空蒸着法によって成膜し、第2の電極を形成した。膜厚は、200nmとなるようにした。上記の構成から成る構造を素子構造3とする。
【0106】
次に、素子構造4の作製方法に関して以下に説明する。
【0107】
まず、基板上にシリコンを含有したインジウム錫酸化物を、スパッタリング法によって成膜し、第1の電極を形成した。次に、第1の電極上に、モリブデン酸化物とα−NPDとルブレンを、共蒸着法によって成膜し、モリブデン酸化物とα−NPDとルブレンとを含む第1層を形成した。ここで、膜厚は120nmとなるようにした。なお、共蒸着法とは、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。次に、第1の層上に、α−NPBを、真空蒸着法によって成膜し、α−NPBを含む第2の層を形成した。ここで、膜厚は10nmとなるようにした。次に第2の層の上に、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(略称:Alq3)とクマリン6とを、共蒸着法によって成膜し、Alq3とクマリン6とを含む第3の層を形成した。ここで、Alq3とクマリン6との質量比は1対0.0025となるように調節した。これによって、クマリン6はAlq3の中に分散された状態となる。また、膜厚は37nmとなるようにした。次に第3の層上に、Alq3を、真空蒸着法によって成膜し、Alq3を含む第4の層を形成した。ここで、膜厚は37nmとなるようにした。次に第4の層上に、CaF2を、真空蒸着法によって成膜し、CaF2を含む第5の層を形成した。ここで、膜厚は1nmとなるようにした。次に第5の層上に、アルミニウムを、真空蒸着法によって成膜し、第2の電極を形成した。膜厚は、200nmとなるようにした。上記の構成から成る構造を素子構造4とする。
【0108】
上記素子構造3および素子構造4の発光素子の輝度1000cd/m2時における、モリブデン酸化物濃度−駆動電圧特性を図11に、モリブデン酸化物濃度−電流効率特性を図12にそれぞれ示す。なお、図11において、横軸はモリブデン酸化物濃度(wt%)、縦軸は輝度1000cd/m2時の駆動電圧(V)を表す。また、図12において、横軸はモリブデン酸化物濃度(wt%)、縦軸は輝度1000cd/m2時の電流効率(cd/A)を表す。図11、12において、●印は素子構造3の発光素子(発光素子1)、▲印は素子構造4の発光素子(発光素子2)の特性を表す。
【0109】
図11より、発光素子1および発光素子2の輝度1000cd/m2時における駆動電圧は、MoOx濃度が10〜30wt%で急激に低下し、その後は一定の電圧となっている。一方、図12より、発光素子1および発光素子2の輝度1000cd/m2時における電流効率はMoOx濃度が高くなるにつれて減少している。このため、本実施の形態で示した素子構造3および素子構造4を用いる場合には、第1の層に含まれるMoOxの濃度を、好ましくは5〜50wt%、より好ましくは15〜40wt%になるように調整して素子構造を形成すればよい。
【0110】
なお、本実施例は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の発光素子の構成を示す図。
【図2】本発明の発光素子の構成を示す図。
【図3】本発明の発光素子の構成を示す図。
【図4】本発明の発光素子の構成を示す図。
【図5】本発明の発光素子の構成を示す図。
【図6】本発明の発光素子を用いた表示装置の断面を示す図。
【図7】本発明の表示装置のパネルの上面を示す図。
【図8】本発明の表示装置における画素部の回路を示す図。
【図9】本発明の発光素子を用いた表示装置の画素部を示す図。
【図10】本発明の発光素子を用いた表示装置を示す図。
【図11】発光素子のMoOx濃度−駆動電圧特性を示す図。
【図12】発光素子のMoOx濃度−電流効率特性を示す図。
【図13】本発明の素子構造の特性を示す図。
【符号の説明】
【0112】
101 基板
102 第1の電極
103 第1の層
104 第2の層
105 第3の層
106 第2の電極
205 第3の層
206 第4の層
207 第4の層
110 発光素子
210 発光素子
310 発光素子
208a 第4の層
208b 第5の層
208c 第5の層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向するように設けられた一対の電極間に挟まれた複数の層を有し、
前記複数の層のうち少なくとも一層は発光物質を含む層からなり、
前記発光物質を含む層を挟んで、酸化物半導体または金属酸化物と電子よりも正孔の輸送性が高い物質とを含む層と、酸化物半導体または金属酸化物と正孔よりも電子の輸送性の高い物質とを含む層とが設けられていることを特徴とする発光素子。
【請求項2】
対向するように設けられた一対の電極間に挟まれた複数の層を有し、
前記複数の層のうち少なくとも一層は発光物質を含む層からなり、
前記発光物質を含む層を挟んで、酸化物半導体または金属酸化物と電子よりも正孔の輸送性が高い物質とを含む層と、酸化物半導体または金属酸化物と正孔よりも電子の輸送性の高い物質と前記正孔よりも電子の輸送性の高い物質に電子を供与することができる物質とを含む層とが設けられていることを特徴とする発光素子。
【請求項3】
対向するように設けられた第1の電極と第2の電極との間に順に積層された第1の層と、第2の層と、第3の層とを有し、
前記第1の層は、酸化物半導体または金属酸化物と電子よりも正孔の輸送性が高い物質とを含み、
前記第2の層は、発光物質を含み、
前記第3の層は、酸化物半導体または金属酸化物と正孔よりも電子の輸送性の高い物質とを含んでいることを特徴とする発光素子。
【請求項4】
対向するように設けられた第1の電極と第2の電極との間に順に積層された第1の層と、第2の層と、第3の層とを有し、
前記第1の層は、酸化物半導体または金属酸化物と電子よりも正孔の輸送性が高い物質とを含み、
前記第2の層は、発光物質を含み、
前記第3の層は、酸化物半導体または金属酸化物と正孔よりも電子の輸送性の高い物質と前記正孔よりも電子の輸送性の高い物質に電子を供与することができる物質とを含んでいることを特徴とする発光素子。
【請求項5】
対向するように設けられた第1の電極と第2の電極との間に順に積層された第1の層と、第2の層と、第3の層と、第4の層とを有し、
前記第1の層は、酸化物半導体または金属酸化物と電子よりも正孔の輸送性が高い物質とを含み、
前記第2の層は、発光物質を含み、
前記第3の層は、酸化物半導体または金属酸化物と正孔よりも電子の輸送性の高い物質とを含み、
前記第4の層は、酸化物半導体または金属酸化物と正孔よりも電子の輸送性の高い物質と前記正孔よりも電子の輸送性の高い物質に電子を供与することができる物質とを含んでいることを特徴とする発光素子。
【請求項6】
対向するように設けられた第1の電極と第2の電極との間に順に積層された第1の層と、第2の層と、第3の層と、第4の層とを有し、
前記第1の層は、酸化物半導体または金属酸化物と電子よりも正孔の輸送性が高い物質とを含み、
前記第2の層は、発光物質を含み、
前記第3の層は、酸化物半導体または金属酸化物と正孔よりも電子の輸送性の高い物質とを含み、
前記第4の層は、正孔よりも電子の輸送性の高い物質と前記正孔よりも電子の輸送性の高い物質に電子を供与することができる物質とを含んでいることを特徴とする発光素子。
【請求項7】
対向するように設けられた第1の電極と第2の電極との間に順に積層された第1の層と、第2の層と、第3の層と、第4の層とを有し、
前記第1の層は、酸化物半導体または金属酸化物と電子よりも正孔の輸送性が高い物質とを含み、
前記第2の層は、発光物質を含み、
前記第3の層は、酸化物半導体または金属酸化物と正孔よりも電子の輸送性の高い物質とを含み、
前記第4の層は、酸化物半導体または金属酸化物と電子よりも正孔の輸送性が高い物質とを含んでいることを特徴とする発光素子。
【請求項8】
対向するように設けられた第1の電極と第2の電極との間に順に積層された第1の層と、第2の層と、第3の層と、第4の層とを有し、
前記第1の層は、酸化物半導体または金属酸化物と電子よりも正孔の輸送性が高い物質とを含み、
前記第2の層は、発光物質を含み、
前記第3の層は、酸化物半導体または金属酸化物と正孔よりも電子の輸送性の高い物質と前記正孔よりも電子の輸送性の高い物質に電子を供与することができる物質とを含み、
前記第4の層は、酸化物半導体または金属酸化物と電子よりも正孔の輸送性が高い物質とを含んでいることを特徴とする発光素子。
【請求項9】
請求項7または請求項8において、
前記第1の層と前記第4の層は、同じ材料で形成されていることを特徴とする発光素子。
【請求項10】
対向するように設けられた第1の電極と第2の電極との間に順に積層された第1の層と、第2の層と、第3の層と、第4の層と、第5の層とを有し、
前記第1の層は、酸化物半導体または金属酸化物と電子よりも正孔の輸送性が高い物質とを含み、
前記第2の層は、発光物質を含み、
前記第3の層は、酸化物半導体または金属酸化物と正孔よりも電子の輸送性の高い物質とを含み、
前記第4の層は、酸化物半導体または金属酸化物と正孔よりも電子の輸送性の高い物質と前記正孔よりも電子の輸送性の高い物質に電子を供与することができる物質とを含み、
前記第5の層は、酸化物半導体または金属酸化物と電子よりも正孔の輸送性が高い物質とを含んでいることを特徴とする発光素子。
【請求項11】
対向するように設けられた第1の電極と第2の電極との間に順に積層された第1の層と、第2の層と、第3の層と、第4の層と、第5の層とを有し、
前記第1の層は、酸化物半導体または金属酸化物と電子よりも正孔の輸送性が高い物質とを含み、
前記第2の層は、発光物質を含み、
前記第3の層は、酸化物半導体または金属酸化物と正孔よりも電子の輸送性の高い物質とを含み、
前記第4の層は、正孔よりも電子の輸送性の高い物質と前記正孔よりも電子の輸送性の高い物質に電子を供与することができる物質とを含み、
前記第5の層は、酸化物半導体または金属酸化物と電子よりも正孔の輸送性が高い物質とを含んでいることを特徴とする発光素子。
【請求項12】
請求項10または請求項11において、
前記第1の層と前記第5の層は、同じ材料で形成されていることを特徴とする発光素子。
【請求項13】
請求項3乃至請求項12のいずれか一項において、
前記第1の層は、モリブデン酸化物と、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルとを有していることを特徴とする発光素子。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載の発光素子を画素部に含むことを特徴とする表示装置。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−128660(P2006−128660A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283626(P2005−283626)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】