説明

発光素子及びその製造方法

【課題】優れた輝度を有する発光素子を提供する。
【解決手段】陽極32、発光層50、電子注入層44及び陰極34を有する発光素子10であって、前記電子注入層は、アニオン性のイオン性基を有する有機化合物を含み、前記陰極は、アスペクト比が1.5未満の導電性材料を含む、発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子等の発光素子において、輝度を向上させるためには、陰極からの電子注入性を向上させることが重要である。陰極からの電子注入性を向上させるために、カチオン性化合物を含む材料を用いた塗布法により形成された電子注入層を有する発光素子が報告されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Journal of the American Chemical Society 2007, 129, 10976
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記発光素子は、輝度が十分ではなかった。
【0005】
そこで、本発明は、輝度が優れた発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を進めたところ、本発明を完成するに至った。本発明によれば、下記〔1〕〜〔11〕が提供される。
〔1〕 陽極、発光層、電子注入層及び陰極を有する発光素子であって、
前記電子注入層は、アニオン性のイオン性基を有する有機化合物を含み、前記陰極は、アスペクト比が1.5未満の導電性材料を含む、発光素子。
〔2〕 前記陰極が、イオン性化合物を含む、〔1〕に記載の発光素子。
〔3〕 前記イオン性化合物が、下記式(hh−1)で表される構造を有する、〔2〕に記載の発光素子。
m’+aX’n’−b (hh−1)
(式(hh−1)中、
m’+は、金属カチオンを表す。
X’n’−はアニオンを表す。
a及びbは、それぞれ独立に、1以上の整数である。Mm’+及びX’n’−が複数個存在する場合には、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
〔4〕 前記金属カチオンが、アルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンである、〔3〕に記載の発光素子。
〔5〕 前記有機化合物のポリスチレン換算の数平均分子量が、3×10以上である〔1〕〜〔4〕のいずれか1つに記載のに記載の発光素子。
〔6〕 前記有機化合物が共役化合物である〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載のに記載の発光素子。
〔7〕 前記共役化合物が下記式(XI)で表される構造単位を有する共役化合物である〔6〕に記載の発光素子。
【化1】


(式(XI)中、
Arは(n+2)価の芳香族基であり、
は単結合又は(m+1)価の基であり、
は式:−SMで表される基、式:−C(=O)SMで表される基、式:−CS2Mで表される基、式:−OMで表される基、式:−CO2Mで表される基、式:−B(OM)2で表される基、式:−BR3Mで表される基、式:−B(OR)3Mで表される基、式:−SOMで表される基、式:−SOMで表される基、式:−OP(=O)(OM)2で表される基、式:−P(=O)(OM)2で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基である。Rは水素原子、又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。Mは金属カチオン又は置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンを表す。
及びnは、それぞれ独立に、1以上の整数である。)
〔8〕 前記Xが、式:−CO2Mで表される基である、〔7〕に記載の発光素子。
〔9〕 前記有機化合物が、
カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、ヒドロカルビルアミノ基、シアノ基、ピロリドニル基、1価の複素環基及び下記式(I)〜式(IX)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1種である極性基を有する、
〔1〕〜〔8〕のいずれか1つに記載の発光素子。
−O−(R’O)−R’’ (I)
【化2】


−S−(R’S)−R’’ (III)
−C(=O)−(R’−C(=O))−R’’ (IV)
−C(=S)−(R’−C(=S))−R’’ (V)
−N{(R’)R’’}2 (VI)
−C(=O)O−(R’−C(=O)O)−R’’ (VII)
−C(=O)−O−(R’O)−R’’ (VIII)
−NHC(=O)−(R’NHC(=O))−R’’ (IX)
(式(I)〜式(IX)中、
R’は置換基を有していてもよいヒドロカルビレン基を表す。
R’’は水素原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、−NRc2で表される基、シアノ基又は−C(=O)NRc2で表される基を表す。
R’’’は置換基を有していてもよい3価の炭化水素基を表す。
mは1以上の整数を表す。qは0以上の整数を表す。
cは置換基を有していてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素原子数が6〜50のアリール基を表す。前記R’、R’’及びR’’’の各々が複数個存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)
〔10〕 前記発光層と陽極との間に配置された正孔注入層を備える、〔1〕〜〔9〕のいずれか1つに記載の発光素子。
〔11〕 前記導電性材料の数平均のフェレー径が、1000nm以下である、〔1〕〜〔10〕のいずれか1つに記載の発光素子。
〔12〕 前記導電性材料が、
金属、金属酸化物及び炭素材料からなる群から選ばれる1種類以上の材料を含む、
〔1〕〜〔11〕のいずれか1つに記載の発光素子。
〔13〕 前記導電性材料が、銀である、〔12〕に記載の発光素子。
〔14〕 陽極、発光層、電子注入層及び陰極を有する発光素子の製造方法であって、
アニオン性のイオン性基を有する有機化合物を含む第1の液状組成物を塗布成膜して前記電子注入層を形成する工程と、
アスペクト比が1.5未満の導電性材料を含む第2の液状組成物を塗布成膜して前記陰極を形成する工程と
を含む、発光素子の製造方法。
〔15〕 前記第2の液状組成物が、イオン性化合物をさらに含む、〔14〕に記載の発光素子の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の発光素子によれば、発光素子の輝度を向上させることができる。本発明の発光素子の好ましい実施形態では、発光素子が所期の輝度に達するまでの応答速度を速くすることができ、かつ、発光素子の安定性を向上させることができる。
また、本発明の発光素子の製造方法によれば、電荷注入層の形成工程及び引き続いて行われる陰極の形成工程が、大気雰囲気下で実施できる簡便な塗布法として実施される。よって、工程を連続的に実施できるため、簡便な工程で、かつ、高い生産性で、輝度が優れた発光素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、発光素子の構成の一例を概略的に示す断面図である。
【図2−1】図2−1は、光電変換素子の構成例(1)を示す概略的な断面図である。
【図2−2】図2−2は、光電変換素子の構成例(2)を示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。なお各図は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさ及び配置が概略的に示されているに過ぎない。なお、以下の説明に用いる各図において、同様の構成要素については同一の符号を付して示し、重複する説明を省略する場合がある。本発明の発光素子は、必ずしも図示例の配置で、製造されたり、使用されたりするわけではない。なお以下の説明において、特に基板の厚さ方向の一方を上といい、厚さ方向の他方を下ということがある。
【0010】
<発光素子の構成例>
図1を参照して、発光素子の構成の一例について説明する。
【0011】
本発明は、陽極、発光層、電子注入層及び陰極を有する発光素子であって、前記電子注入層は、アニオン性のイオン性基を有する有機化合物を含み、前記陰極は、アスペクト比が1.5未満の導電性材料を含む。
【0012】
図1は、発光素子の構成の一例を概略的に示す断面図である。
【0013】
図1に示されるように、発光素子10は、基本構成としての陽極32と、陰極34と、これら陽極32及び陰極34に挟持された積層構造体60を備えている。
【0014】
積層構造体60は複数の有機層が積層されて構成され、複数の有機層のうちの少なくとも1層は発光層50である。また積層構造体60は、複数の有機層のうちの少なくとも1層の有機層として電子注入層44を有する。この電子注入層44は、陰極34及び発光層50の間に配置される。
【0015】
なお積層構造体60は複数の有機層のみから構成されていてもよいが、無機材料からなる無機層、有機材料と無機材料とが混合された層を更に備えていてもよい。
【0016】
本実施形態では、第1の基板22の厚さ方向に対向する2つの主表面の一方に、陽極32が設けられている。正孔注入層42aは、陽極32に接合するように設けられている。
正孔輸送層42bは、正孔注入層42aに接合するように設けられている。発光層50は、正孔輸送層42bに接合するように設けられている。電子注入層44は、発光層50に接合するように設けられている。陰極34は、電子注入層44に接合するように設けられている。第2の基板24は、陰極34に接合するように設けられている。
【0017】
陽極32上には積層体60が積層されている。積層構造体60は、第1の基板22、第2の基板24、陽極32及び陰極34を除く、この構成例では正孔注入層42a、正孔輸送層42b、発光層50及び電子注入層44から構成され、陽極32及び陰極34に挟持される複数の有機層から構成されている。
【0018】
発光素子10は、陰極34がアスペクト比が1.5未満である導電性材料を含み、かつ電子注入層44がアニオン性のイオン性基を有する有機化合物を含む。
【0019】
陽極は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層等に正孔を供給する電極であり、陰極は、電子注入層、電子輸送層、発光層等に電子を供給する電極である。
発光層とは、電界を印加した際に、陽極又は陽極側に隣接する層より正孔を受け取り、陰極又は陰極側に隣接する層より電子を受け取る機能、受け取った電荷を電界の力で移動させる機能、電子と正孔の再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能を有する層をいう。
電子注入層とは、陰極に隣接する層であって、陰極から電子を受け取る機能を有する層であり、更に必要に応じて電子を輸送する機能、陽極から注入された正孔を障壁する機能、発光層へ電子を供給する機能のいずれかを有する層をいう。電子輸送層とは、主に電子を輸送する機能を有する層であり、更に必要に応じて、陰極から電子を受け取る機能、陽極から注入された正孔を障壁する機能、発光層へ電子を供給する機能のいずれかを有する層をいう。
正孔注入層とは、陽極に隣接する層であって、陽極から正孔を受け取る機能を有する層であり、更に必要に応じて正孔を輸送する機能、発光層へ正孔を供給する機能、陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれかを有する層をいう。正孔輸送層とは、主に正孔を輸送する機能を有する層であり、更に必要に応じて、陽極から正孔を受け取る機能、発光層へ正孔を供給する機能、陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれかを有する層をいう。
電子輸送層と正孔輸送層を総称して電荷輸送層と呼ぶことがある。電子注入層と正孔注入層を総称して電荷注入層と呼ぶことがある。
【0020】
以下、発光素子10の構成要素について説明する。
−基板−
発光素子10を構成する基板20(第1の基板22及び第2の基板24)は、陽極32及び陰極34のうちの一方が接合するように設けることができ、電子注入層、発光層等の他の層を形成する際に化学的に変化しない材料により構成されていればよい。この材料の例としては、ガラス、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等のプラスチック、シリコンが挙げられる。
【0021】
−陰極−
発光素子10において、陰極34の材料としては、塗工液を用いる塗布法により基板20上に塗布形成可能である材料が選択され、かつ陰極34の材料は、アスペクト比が1.5未満の導電性材料を含む。
導電性材料の例としては、金属、金属酸化物及び炭素材料からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む導電性材料が挙げられる。導電性材料の例としては、アルミニウム、金、白金、銀、銅等の金属及びそれらの合金、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらを含む複合体であるインジウムスズ酸化物(ITO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、スズアンチモン酸化物、NESA等の金属酸化物、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック等の炭素材料が挙げられる。これらの導電性材料は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0022】
金属としては、安定性が良好となるので、遷移金属が好ましく、周期表第11族金属がより好ましく、銀が更に好ましい。銀は、銀粒子であることが特に好ましい。
【0023】
金属酸化物としては、ITO、IZOが好ましい。
【0024】
炭素材料としては、カーボンブラックが好ましい。
【0025】
アスペクト比とは、棒状体、ワイヤー状体等において、最も長い径と最も短い径との比率(最も長い径/最も短い径)を意味し、このアスペクト比に分布がある場合には平均値である。ここでいう平均値とは、算術平均値である。導電性材料のアスペクト比は、走査型電子顕微鏡による写真を用いて特定することができる。
【0026】
アスペクト比は、分散性が良好となるので、1.4以下が好ましく、1.3以下がより好ましい。アスペクト比が1.5以上である場合、分散性が低下することがある。
【0027】
アスペクト比が1.5未満である導電性材料は、ナノ構造体であることが好ましい。
ナノ構造体とは、ナノ単位の径を有する金属、金属酸化物若しくは炭素材料、又は、これらの2種以上の組み合わせである。ナノ構造体の最も短い径は、通常1nm以上、1000nm未満である。ナノ構造体の最も短い径は、ナノ構造体の導電性及び分散性が良好となるので、好ましくは800nm以下であり、より好ましくは500nm以下であり、更に好ましくは300nm以下であり、特に好ましくは100nm以下であり、とりわけ好ましくは50nm以下である。
【0028】
ナノ構造体の最も長い径は、ナノ構造体の分散性が良好となるので、好ましくは1000nm以下であり、より好ましくは800nm以下、更に好ましくは500nm以下、特に好ましくは300nm以下、とりわけ好ましくは100nm以下、殊更に好ましくは50nm以下である。
【0029】
導電性材料の数平均のフェレー径(Feret径)は、好ましくは1000nm以下であり、より好ましくは800nm以下、更に好ましくは500nm以下、特に好ましくは300nm以下、とりわけ好ましくは100nm以下、殊更に好ましくは50nm以下である。
なお、フェレー径とは、粒子を挟む一定方向の二本の平行線の間隔(一定方向径)を意味し、銀粒子のフェレー径は、走査型電子顕微鏡(SEM)もしくは透過型電子顕微鏡(TEM)による写真から測定することができる。
【0030】
アスペクト比が1.5未満の導電性材料は、市販されている導電性材料でもよいし、従来公知の方法で製造した導電性材料でもよい。アスペクト比が1.5未満の導電性材料の製造には、液相法、気相法等の製造方法を用いることができる。
【0031】
ナノ構造体の製造方法は、例えば、Material Matters 2010、vol.5、No.2、Material Matters 2009、vol.4、No.1に開示されている。
【0032】
アスペクト比が1.5未満の導電性材料を含有する塗工液を塗布成膜する、塗布法により陰極を形成する場合には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、 ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、キャピラリーコート法、ノズルコート法等を採用して成膜することができる。
【0033】
塗工液に用いる溶媒としては、陰極に用いる陰極材料を溶解できるか、又は均一に分散できる溶媒が好ましい。溶媒の例としては、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル溶媒、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0034】
陰極34は1層のみからなる単層構造、又は、2層以上の層からなる積層構造である。
陰極が2層以上の層からなる積層構造である場合、例えば、塗布法により2層以上の層を順次に積層するか、キャスティング法等により別個に形成した2層以上の層をラミネート法により張り合わせることにより、該陰極34を作製する。
【0035】
陰極34は、アスペクト比が1.5未満である導電性材料の他に、イオン性化合物(「塩」と呼ばれることもある。)を含んでいることが好ましい。
【0036】
ここでいうイオン性化合物は、カチオン性のイオン性化合物とアニオン性のイオン性化合物とを含む。イオン性化合物には、水和水、中性配位子等が含まれていてもよい(イオン性に、水和水、中性配位子等が結合していてもよい)。中性配位子とは、配位結合可能な孤立電子対を有する非イオン性の化合物であり、イオン性化合物と結合した場合、イオン性化合物の酸化数を変化させない化合物をいう。中性配位子となり得る化合物としては、例えば、ピリジン、2,2’−ビピリジル、フェナントロリン、ターピリジン、トリフェニルホスフィン、一酸化炭素、クラウンエーテルが挙げられる。
【0037】
カチオンの例としては、金属カチオン、有機カチオン、アンモニウムカチオンが挙げられる。カチオンとしては、カチオンの安定性が優れるので、金属カチオンが好ましい。
【0038】
金属カチオンの例としては、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、典型金属カチオン、遷移金属カチオンが挙げられる。金属カチオンとしては、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオンが好ましい。
【0039】
アルカリ金属カチオンの例としては、Li+、Na+、K+、Rb、Cs+、Frが挙げられる。アルカリ金属カチオンとしては、Li+、Na+、K+、Rb、Cs+が好ましく、Cs+が更に好ましい。
【0040】
アルカリ土類金属カチオンの例としては、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+が挙げられる。
【0041】
典型金属カチオンの例としては、Zn2+、Cd2+、Hg+、Hg2+、Al3+、Ga3+、In3+、Ge4+、Sn2+、Sn4+、Pb2+、Pb4+、Bi3+、Tl、Tl3+が挙げられる。
【0042】
遷移金属カチオンの例としては、Sc3+、Ti4+、V3+、V5+、Cr2+、Cr3+、Mn2+、Mn3+、Fe2+、Fe3+、Co2+、Co3+、Ni2+、Ni3+、Cu、Cu2+、Y3+、Zr4+、Nb3+、Nb5+、Mo4+、Mo6+、Ru4+、Rh3+、Pd、Pd2+、Ag、Sb3+、La3+、Ce3+、Ce4+、Eu3+、Hf4+、Ta5+、W6+、Re6+、Os2+、Os4+、Ir4+、Pt2+、Pt4+が挙げられる。
【0043】
有機カチオンの例としては、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン等の含窒素芳香環を有するオニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオンが挙げられる。
【0044】
アニオンの例としては、F-、Cl-、Br-、I-、OH-、CN-、NO3-、NO2-、ClO-、ClO2-、ClO3-、ClO4-、CrO2−、HSO4-、SCN-、BF4-、PF6-、式:R3-で表されるアニオン、式:R4COO-で表されるアニオン、式:R5SO3-で表されるアニオン、式:R6OCO2-で表されるアニオン、式:RSO2-で表されるアニオン、式:R-で表されるアニオン、式:B(Rで表されるアニオン、CO32-、S2-、SO42-、S2-、PO43-及びO2-が挙げられる。
アニオンとしては、好ましくは、F-、Cl-、Br-、I-、OH-、NO3-、BF4-、PF6-、式:R3-で表されるアニオン、式:R4COO-で表されるアニオン、式:R5SO3-で表されるアニオン、式:R6CO3-で表されるアニオン、式:RSO2-で表されるアニオン、CO32-、SO42-及びPO43-であり、より好ましくは、F-、Cl-、Br-、I-、OH-、NO3-、BF4-、PF6-、式:R3-で表されるアニオン、式:R4COO-で表されるアニオン、式:R5SO3-で表されるアニオン、CO32-及びSO42-であり、更に好ましくは、F-、Cl-、Br-、I-、OH-、NO3-、BF4-、PF6-、式:R4COO-で表されるアニオン、式:R5SO3-で表されるアニオン、CO32-及びSO42-であり、特に好ましくは、F-、OH-、NO3-、式:R4COO-で表されるアニオン及びCO32-である。
上記式中、R3、R4、R5、R6、R、R及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。
【0045】
3、R4、R5、R6、R、R及びRで表される置換基を有していてもよいヒドロカルビル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基等の炭素原子数が1〜50のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボニル基、アダマンチル基等の炭素原子数が3〜50の環状飽和ヒドロカルビル基;エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基、2−ドデセニル基等の炭素原子数が2〜50のアルケニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基等の炭素原子数が6〜50のアリール基;フェニルメチル基、1−フェニレンエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、3−フェニル−1−プロピル基、4−フェニル−1−ブチル基、5−フェニル−1−ペンチル基、6−フェニル−1−ヘキシル基等の炭素原子数が7〜50のアリールアルキル基が挙げられる。
置換基を有していてもよいヒドロカルビル基としては、炭素原子数が1〜50のアルキル基、炭素原子数が6〜50のアリール基が好ましく、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が6〜18のアリール基がより好ましく、炭素原子数が1〜6のアルキル基、炭素原子数が6〜12のアリール基が更に好ましい。
【0046】
ヒドロカルビル基が有し得る置換基の例としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、メルカプト基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
ヒドロカルビル基が有し得る置換基としては、アミノ基、1価の複素環基、メルカプト基、ヒドロキシル基、カルボキシル基が好ましく、アミノ基、ピリジル基、メルカプト基、ヒドロキシル基、カルボキシル基がより好ましい。ヒドロカルビル基中に置換基が複数個存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0047】
ヒドロカルビル基が有し得る置換基であるアルコキシ基は、直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。アルコキシ基の炭素原子数は、通常、1〜20(環状アルコキシ基の場合は、通常、3〜20)であり、1〜10(環状アルコキシ基の場合は、3〜10)が好ましい。ヒドロカルビル基が有し得るアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基及びラウリルオキシ基が挙げられる。
ヒドロカルビル基が有し得るアルコキシ基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。フッ素原子で置換されたアルコキシ基としては、例えば、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基、メトキシメチルオキシ基、及び、2−メトキシエチルオキシ基が挙げられる。
【0048】
ヒドロカルビル基が有し得る置換基であるアリールオキシ基の炭素原子数は、通常、6〜60であり、6〜48が好ましい。ヒドロカルビル基が有し得るアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、C1〜C12アルコキシフェノキシ基(ここで、Cは炭素原子を表す。付された数字は炭素原子数を表す。「C1〜C12」との記載は、炭素原子数が1〜12であることを表す。以下同じ。)、C1〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、及び、ペンタフルオロフェニルオキシ基が挙げられる。
1〜C12アルコキシフェノキシ基の例としては、メトキシフェノキシ基、エトキシフェノキシ基、プロピルオキシフェノキシ基、イソプロピルオキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、イソブトキシフェノキシ基、sec−ブトキシフェノキシ基、tert−ブトキシフェノキシ基、ペンチルオキシフェノキシ基、ヘキシルオキシフェノキシ基、シクロヘキシルオキシフェノキシ基、ヘプチルオキシフェノキシ基、オクチルオキシフェノキシ基、2−エチルヘキシルオキシフェノキシ基、ノニルオキシフェノキシ基、デシルオキシフェノキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシフェノキシ基、及び、ラウリルオキシフェノキシ基が挙げられる。
1〜C12アルキルフェノキシ基の例としては、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、プロピルフェノキシ基、1,3,5−トリメチルフェノキシ基、メチルエチルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、ブチルフェノキシ基、イソブチルフェノキシ基、sec−ブチルフェノキシ基、tert−ブチルフェノキシ基、ペンチルフェノキシ基、イソアミルフェノキシ基、ヘキシルフェノキシ基、ヘプチルフェノキシ基、オクチルフェノキシ基、ノニルフェノキシ基、デシルフェノキシ基、及び、ドデシルフェノキシ基が挙げられる。
【0049】
ヒドロカルビル基が有し得る置換基である置換アミノ基としては、例えば、アミノ基における水素原子の1個以上が、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び1価の複素環基からなる群から選択される1種以上の基で置換されたアミノ基が挙げられる。置換アミノ基の炭素原子数は、通常、1〜60であり、2〜48が好ましい。
ヒドロカルビル基が有し得る置換アミノ基の例としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ラウリルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ピロリジル基、ピペリジル基、ジトリフルオロメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル)アミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、ペンタフルオロフェニルアミノ基、ピリジルアミノ基、ピリダジニルアミノ基、ピリミジルアミノ基、ピラジルアミノ基、トリアジルアミノ基、フェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基、及び、2−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基が挙げられる。
【0050】
ヒドロカルビル基が有し得る置換基である置換シリル基の例としては、シリル基における水素原子の1個以上が、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び1価の複素環基からなる群から選択される1種以上の基で置換されたシリル基が挙げられる。置換シリル基の炭素原子数は、通常、1〜60であり、2〜48が好ましい。
【0051】
ヒドロカルビル基が有し得る置換基であるハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0052】
ヒドロカルビル基が有し得る置換基であるイミン残基は、式:H−N=C<又は式:−N=CH−で表される構造を有するイミン化合物から、この構造中の水素原子1個を除いた残基を意味する。
イミン化合物の例としては、アルジミン、ケチミン及びアルジミン中の窒素原子に結合した水素原子が、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基等で置換された化合物が挙げられる。イミン残基の炭素原子数は、通常2〜20であり、2〜18が好ましい。
ヒドロカルビル基が有し得るイミン残基としては、例えば、一般式:−CRβ=N−Rγ又は一般式:−N=C(Rγ2で表される基が挙げられる。一般式中、Rβは、水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、又はアリールアルキニル基を表し、Rγは、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、又はアリールアルキニル基を表し、2個存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。ただし、Rγが2個存在する場合、2個のRγは相互に結合し、それぞれが結合する炭素原子と一体となって2価の基、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の炭素原子数2〜18のアルキレン基として環を形成してもよい。ヒドロカルビル基が有し得るイミン残基としては、以下の基が挙げられる。
【0053】
【化3】

【0054】
式中、Meはメチル基を示し、以下、同様である。
【0055】
ヒドロカルビル基が有し得る置換基であるアミド基は、炭素原子数が通常1〜20であり、2〜18であることが好ましい。ヒドロカルビル基が有し得るアミド基としては、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、ジペンタフルオロベンズアミド基等が挙げられる。
【0056】
ヒドロカルビル基が有し得る置換基である酸イミド基は、酸イミドからその窒素原子に結合した水素原子を除いて得られる残基である。酸イミド基は、炭素原子数が通常4〜20であり、4〜18であることが好ましい。酸イミド基の例としては、以下の基が挙げられる。
【0057】
【化4】

【0058】
ヒドロカルビル基が有し得る置換基である1価の複素環基は、置換基を有していてもよい複素環式化合物から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子を1個取り除いた残りの原子団である。複素環式化合物における複素環の例としては、ピリジン環、1,2−ジアジン環、1,3−ジアジン環、1,4−ジアジン環、1,3,5−トリアジン環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、アザジアゾール環等の単環式複素環;単環式芳香環から選ばれる2個以上の環が縮合した縮合多環式複素環;2個の複素環、又は1個の複素環と1個の芳香環とを、メチレン基、エチレン基、カルボニル基等の2価の基で橋かけした構造を有する有橋多環式芳香環等が挙げられる。複素環としては、ピリジン環、1,2−ジアジン環、1,3−ジアジン環、1,4−ジアジン環、1,3,5−トリアジン環が好ましく、ピリジン環、1,3,5−トリアジン環がより好ましい。
【0059】
イオン性化合物は、下記式(hh−1)で表される構造を有することが好ましい。
m’+aX'n’−b (hh−1)
【0060】
式(hh−1)中、Mm’+は、金属カチオンを表す。X'n’−はアニオンを表す。a及びbは、それぞれ独立に、1以上の整数である。Mm’+及びX'n’−が複数個存在する場合には、各々、同一であっても異なっていてもよい。
式(hh−1)で表されるイオン性化合物は、水和水、既に説明した中性配位子を含んでいてもよい。
【0061】
式(hh−1)中、a及びbは、それぞれ独立に、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは1又は2である。但し、a及びbは、式(hh−1)で表されるイオン性化合物の全体としての電荷の偏りがない組み合わせである。
【0062】
式(hh−1)中、m’は1以上の整数を表す。Mm’+で表される金属カチオンの定義、具体例、好ましい例は、前記の通りである。
【0063】
式(hh−1)中、n’は1以上の整数を表す。X'n−で表されるアニオンの定義、具体例、好ましい例は、前記の通りである。
【0064】
イオン性化合物が水和水を含む場合、イオン性化合物は下記式(hh−2)で表される構造を有することが好ましい。
m’+aX'n’−b・n’’(HO) (hh−2)
【0065】
式(hh−2)中、n’’は、1以上の整数を表す。Mm’+、X'n’−、a、bの定義、具体例、好ましい例は、前述の通りである。
【0066】
イオン性化合物の例としては、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム、フッ化ガリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、炭酸水素バリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸銅、炭酸鉄、炭酸銀、炭酸アンモニウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸銀、酢酸銅、酢酸アンモニウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸セシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸アンモニウム、硫酸銀、硫酸銅、硫酸鉄、硫酸鉛、亜硫酸カリウム、チオ硫酸ナトリウム、硝酸リチウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸セシウム、硝酸カルシウム、硝酸アンモニウム、硝酸銀、硝酸鉄、硝酸銅、硝酸コバルト、硝酸鉛、亜硝酸カリウム、リン酸リチウム、リン酸三カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸アルミニウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、過塩素酸カリウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸カリウム、シアン酸カリウム、チオシアン酸カリウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム、ヘキサフルオロリン酸アンモニウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸亜鉛、グルタル酸二ナトリウム、6−アミノヘキサン酸ナトリウム、チオリンゴ酸ナトリウム、4−アミノシクロヘキサンカルボン酸ナトリウム、リノール酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸セシウム、テレフタル酸ナトリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム塩化物、1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルアンモニウム塩化物、トリメチルブチルアンモニウム塩化物、1−ヘキシル−1−メチルピロリジニウム塩化物、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられ、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム、フッ化ガリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸セシウム、テレフタル酸ナトリウム、1-ブチル−3−メチルイミダゾリウム塩化物、1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルアンモニウム塩化物、トリメチルブチルアンモニウム塩化物、1−ヘキシル−1−メチルピロリジニウム塩化物、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェートが好ましく、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム、フッ化ガリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸セシウム、テレフタル酸ナトリウムがより好ましく、フッ化セシウム、水酸化セシウム、安息香酸セシウムが更に好ましく、水酸化セシウムが特に好ましい。これらのイオン性化合物は、上記の水和水、中性配位子を含んでいてもよい。
【0067】
前記式(hh−2)で表される化合物の例としては、水酸化セシウム1水和物、塩化コバルト6水和物、硫酸銅1水和物、硫酸銅3水和物、硫酸銅5水和物、硫酸ナトリウム10水和物、炭酸ナトリウム10水和物、炭酸ナトリウム1水和物、硫酸アルミニウム16水和物、塩化ニッケル6水和物、塩化スズ2水和物、ヨウ化コバルト6水和物、塩化ロジウム3水和物が挙げられ、水酸化セシウム1水和物が好ましい。
【0068】
イオン性化合物は、1種類のみ用いても2種類以上を併用してもよい。イオン性化合物は、分子量が1000未満であることが好ましく、800未満がより好ましく、500未満が更に好ましく、300未満が特に好ましい。
【0069】
本発明の発光素子の陰極34において、イオン性化合物の添加量は、陰極の材料(アスペクト比が1.5未満の導電性材料を意味する。)100重量部に対して、通常、0.01重量部〜1000重量部であり、好ましくは0.1重量部〜100重量部であり、より好ましくは0.1重量部〜50重量部であり、更に好ましくは0.1〜30重量部である。
【0070】
陰極材料は、陰極34の導電性を妨げないことを条件として、他の材料と混合して用いてもよい。他の材料を混合して用いる場合、該他の材料は、陰極を形成する前に混合してもよいし、形成後に混合(積層であってもよい。)してもよい。
【0071】
陰極34の厚さは、電気伝導度を考慮して調整すればよい。陰極34の厚さは、通常10nm以上であり、好ましくは20nm以上であり、より好ましくは100nm以上である。陰極34の厚さは、通常、30μm以下であり、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは1μm以下であり、特に好ましくは500nm以下である。
【0072】
塗布法で形成した陰極34の表面は滑らかであって、陰極34の表面の凹凸が少ない方が好ましい。この凹凸において高い部分と低い部分の高低差は、通常、1μm以下であり、100nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。
【0073】
陰極の表面の凹凸を少なくする方法の例としては、塗布形成された膜を導電性材料の融点以上での加熱する方法、塗布形成された膜の表面に対して圧力を印加する方法、一旦仮の基板に塗布した塗工液の膜を所定の基板に転写する方法、塗布形成された膜の凹部に他の材料を充填する方法が挙げられる。
【0074】
−陽極−
発光素子10において、陽極32は陽極材料を用いて、基板上に形成可能である。導電性材料を用いて形成された導電性の薄膜が予め設けられた基板を準備して、導電性の薄膜を所定のパターンにパターニングすることにより陽極を形成してもよい。
【0075】
陽極32を構成する陽極材料の例としては、導電性の金属酸化物、金属、炭素材料、導電性高分子材料が挙げられる。陽極32を構成する陽極材料としては、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらを含む複合体であるITO、AZO、IZO、NESA等の金属酸化物、金、白金、銀、銅等の金属、カーボンナノチューブ、グラファイト等の炭素材料、ポリアニリン、ポリチオフェン(例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)・ポリスチレンスルホン酸)、ポリピロール等の導電性高分子及びこれらを含む重合体等の導電性高分子材料が挙げられる。陽極は1層のみからなる単層構造、又は、2層以上の積層構造である。
【0076】
陽極32の厚さは、電気伝導度及び耐久性を考慮して調整すればよく、通常、10nm以上であり、好ましくは20nm以上であり、より好ましくは100nm以上である。陽極32の厚さは、通常、10μm以下であり、好ましくは1μm以下であり、より好ましくは500nm以下である。
【0077】
陽極32の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、又は金属薄膜を熱圧着するラミネート法、塗布法が挙げられ、塗布法が好ましい。陽極32と正孔注入層42aとの間に、導電性高分子材料からなる層、又は、金属酸化物、金属フッ化物、若しくは、有機絶縁材料からなる層を設けてもよい。
【0078】
陽極32の形成方法としては、塗工液を塗布成膜する塗布法を用いる場合に、塗工液に用いられる溶媒の例は、既に説明した陰極を塗布法で形成する場合の溶媒の例と同じである。
【0079】
陽極材料は、陽極の導電性を妨げないことを条件として、他の材料と混合して用いてもよく、該他の材料は、陽極を形成する前に混合してもよく、形成後に混合(積層であってもよい。)してもよい。本発明において、陽極材料とその他の材料とを混合した組成物から形成される層であっても陽極としての機能を有する層は陽極である。
【0080】
陽極材料と混合してもよい他の材料としては、正孔注入材料が好ましく、陽極材料と正孔注入材料とを混合した組成物から形成される層は、正孔注入層及び陽極の両方の機能を有する層である。
【0081】
塗布法で形成された陽極の表面は滑らかであって、凹凸が少ない方が好ましい。陽極の表面の凹凸において高い部分と低い部分との高低差は、通常、1μm以下であり、100nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。
【0082】
陽極の表面の凹凸を少なくする方法の例は、前述の陰極の表面の凹凸を少なくする方法の例と同じである。
【0083】
−電子注入層−
電子注入層44は、アニオン性のイオン性基を有する有機化合物を含有する。
【0084】
アニオン性のイオン性基を有する有機化合物のポリスチレン換算の数平均分子量は、通常、3×10以上であり、3×103〜1×107が好ましく、3×103〜1×106がより好ましい。ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、求めることができる。
【0085】
アニオン性のイオン性基を有する有機化合物は共役化合物であることが好ましく、芳香族化合物であることがより好ましい。
【0086】
共役化合物とは、共役系を有する化合物を意味するが、電子輸送性が良好になるので、多重結合、窒素原子、酸素原子、硫黄原子又はリン原子が有する非共有電子対、ホウ素原子が有する空のp軌道又はケイ素原子が有するシグマ結合性のd軌道が1つの単結合を挟んで連なっている構造を含む化合物が好ましい。こうした点を考慮すると、下記式を用いて計算される値が50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
式:{(多重結合、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子が有する非共有電子対ホウ素原子が有する空のp軌道、又はケイ素原子が有するシグマ結合性のd軌道が一つの単結合を挟んで連なっている領域に含まれる母骨格若しくは主鎖上の原子の数)/(母骨格若しくは主鎖上の全原子の個数)}×100
【0087】
電子注入層は1層のみからなる単層構造、又は2層以上からなる積層構造である。
【0088】
電子注入層が含有するアニオン性のイオン性基を有する有機化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0089】
アニオン性のイオン性基を有する有機化合物が共役化合物である場合、該共役化合物は、下記式(XI)で表される構造単位を有する共役化合物であることが好ましく、下記式(XI)で表される構造単位からなる共役化合物であることがより好ましい。
【0090】
【化5】

【0091】
式(XI)中、Arは、(n+2)価の芳香族基であり、Rは、単結合又は(m+1)価の基であり、Xは、式:−SMで表される基、式:−C(=O)SMで表される基、式:−CS2Mで表される基、式:−OMで表される基、式:−CO2Mで表される基、式:−B(OM)2で表される基、式:−BR3Mで表される基、式:−B(OR)3Mで表される基、式:−SOMで表される基、式:−SOMで表される基、式:−OP(=O)(OM)2で表される基、式:−P(=O)(OM)2で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基である。Rは水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。Mは金属カチオン又は置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンを表す。m及びnは、それぞれ独立に、1以上の整数である。
【0092】
上記式(XI)中、Ar2で表される(n2+2)価の芳香族基は、芳香族化合物から環を構成する炭素原子に直接結合する(n2+2)個の水素原子を取り除いた残りの原子団であって、置換基を有していてもよい基を意味する。
【0093】
アニオン性のイオン性基を有する有機化合物の例としては、下記式(1)〜式(95)で表される有機化合物が挙げられ、有機化合物の合成が容易であるので、下記式(1)〜式(12)、式(15)〜式(22)、式(24)〜式(31)、式(37)〜式(40)、式(43)〜式(46)、式(49)、式(50)、式(59)〜式(76)、式(92)〜式(95)で表される有機化合物が好ましく、式(1)〜式(3)、式(8)、式(10)、式(15)、式(17)、式(21)、式(24)、式(30)、式(59)〜式(61)で表される有機化合物がより好ましく、式(1)〜式(3)、式(8)、式(10)、式(59)で表される有機化合物が更に好ましく、式(1)、式(2)、式(8)、式(59)で表される有機化合物が特に好ましい。
【0094】
【化6】

【0095】
【化7】

【0096】
【化8】

【0097】
【化9】

【0098】
上記式(1)〜式(95)で表される有機化合物中の1個以上の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。これらの有機化合物が有し得る置換基の例としては、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、メルカプト基、メルカプトカルボニル基、メルカプトチオカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルチオ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルチオカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルジチオ基、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニル基、アミノ基、ヒドロカルビル基中の水素原子が置換基により置換されていてもよいヒドロカルビルアミノ基、ヒドロカルビル基中の水素原子が置換基により置換されていてもよいジヒドロカルビルアミノ基、ホスフィノ基、ヒドロカルビル基中の水素原子が置換基により置換されていてもよいヒドロカルビルホスフィノ基、ヒドロカルビル基中の水素原子が置換基により置換されていてもよいジヒドロカルビルホスフィノ基、1価の複素環基、ホルミル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ニトロ基、式:−OP(=O)(OH)2で表される基、式:−P(=O)(OH)2で表される基、カルバモイル基、ヒドロカルビル基中の水素原子が置換基により置換されていてもよいヒドロカルビルカルバモイル基、ヒドロカルビル基中の水素原子が置換基により置換されていてもよいジヒドロカルビルカルバモイル基、式:−C(=S)NR2で表される基、式:−B(OH)2で表される基、式:−BR2で表される基、ホウ酸エステル残基、式:−Si(OR)3で表される基、スルホ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルホ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルホニル基、スルフィノ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルフィノ基、式:−NRC(=O)ORで表される基、式:−NRC(=O)SRで表される基、式:−NRC(=S)ORで表される基、式:−NRC(=S)SRで表される基、式:−OC(=O)NR2で表される基、式:−SC(=O)NR2で表される基、式:−OC(=S)NR2で表される基、式:−SC(=S)NR2で表される基、式:−NRC(=O)NR2で表される基、式:−NRC(=S)NR2で表される基が挙げられる。これらの基において、Rは、前記と同じ意味を表す。複数個存在する置換基同士は、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成してもよい。
【0099】
上記有機化合物が有し得る置換基の例としては、更に、シアノ基、ピロリドニル基、下記式(I)〜式(IX)で表される基、式:−NR3M’で表される基、式:−PR3M’で表される基、式:−OR2M’で表される基、式:−SR2M’で表される基、式:−IRM’で表される基、及び、下記式(n−1)〜式(n−13)で表される芳香族化合物中の芳香環から1個の水素原子を取り除いた残りの原子団からなる基が挙げられる。
−O−(R’O)−R’’ (I)
【0100】
【化10】

【0101】
−S−(R’S)−R’’ (III)
−C(=O)−(R’−C(=O))−R’’ (IV)
−C(=S)−(R’−C(=S))−R’’ (V)
−N{(R’)R’’}2 (VI)
−C(=O)O−(R’−C(=O)O)−R’’ (VII)
−C(=O)−O−(R’O)−R’’ (VIII)
−NHC(=O)−(R’NHC(=O))−R’’ (IX)
【0102】
【化11】

【0103】
上記式中、Rは、前記と同じ意味を有する。複数個存在する置換基同士は、互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成してもよい。
【0104】
式(I)〜式(IX)中、R’は、置換基を有していてもよいヒドロカルビレン基を表す。R’’は、水素原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、−NRc2で表される基、シアノ基又は−C(=O)NRc2で表される基を表す。R’’’は、置換基を有していてもよい3価の炭化水素基を表す。mは、1以上の整数を表す。qは、0以上の整数を表す。Rcは、置換基を有していてもよい炭素原子数が1〜30のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素原子数が6〜50のアリール基を表す。R’、R’’、及びR’’’の各々は複数個存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0105】
上記有機化合物が有し得る置換基であるハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。
【0106】
上記有機化合物が有し得る置換基又はR’’で表されるヒドロカルビル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基等の炭素原子数が1〜50のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボニル基、アダマンチル基等の炭素原子数が3〜50の環状飽和ヒドロカルビル基;エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基、2−ドデセニル基等の炭素原子数が2〜50のアルケニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基等の炭素原子数が6〜50のアリール基;フェニルメチル基、1−フェニレンエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、3−フェニル−1−プロピル基、4−フェニル−1−ブチル基、5−フェニル−1−ペンチル基、6−フェニル−1−ヘキシル基等の炭素原子数が7〜50のアリールアルキル基が挙げられる。
ヒドロカルビル基としては、炭素原子数が1〜50のアルキル基、炭素原子数が6〜50のアリール基がより好ましく、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が6〜18のアリール基が好ましく、炭素原子数が6〜12のアルキル基、炭素原子数が6〜12のアリール基が更に好ましい。
【0107】
上記有機化合物が有し得る置換基であるヒドロカルビルチオ基とは、基を構成する1個の水素原子が、前記ヒドロカルビル基で置換されたチオ基である。
上記有機化合物が有し得る置換基であるヒドロカルビルチオカルボニル基とは、基を構成する1個の水素原子が、前記ヒドロカルビル基で置換されたチオカルボニル基である。
上記有機化合物が有し得る置換基であるヒドロカルビルジチオ基とは、基を構成する1個の水素原子が、前記ヒドロカルビル基で置換されたジチオ基である。
上記有機化合物が有し得る置換基であるヒドロカルビルオキシ基とは、オキシ基の2個の結合手のうちの1個に、前記ヒドロカルビル基が結合したオキシ基である。
上記有機化合物が有し得る置換基であるヒドロカルビルカルボニル基とは、基を構成する1個の水素原子が、前記ヒドロカルビル基で置換されたカルボニル基である。
上記有機化合物が有し得る置換基であるヒドロカルビルオキシカルボニル基とは、基を構成する1個の水素原子が、前記ヒドロカルビル基で置換されたオキシカルボニル基である。
上記有機化合物が有し得る置換基であるヒドロカルビルカルボニルオキシ基とは、基を構成する1個の水素原子が、前記ヒドロカルビル基で置換されたカルボニルオキシ基である。
【0108】
上記有機化合物が有し得る置換基であるヒドロカルビルアミノ基、ジヒドロカルビルアミノ基とは、基を構成する1個又は2個の水素原子が、前記ヒドロカルビル基で置換されたアミノ基である。ヒドロカルビルホスフィノ基、ジヒドロカルビルホスフィノ基とは、基を構成する1個又は2個の水素原子が、前記ヒドロカルビル基で置換されたホスフィノ基である。
【0109】
上記有機化合物が有し得る置換基であるヒドロカルビルカルバモイル基、ジヒドロカルビルカルバモイル基とは、基を構成する1個又は2個の水素原子が、前記ヒドロカルビル基で置換されたカルバモイル基である。
【0110】
上記有機化合物が有し得る置換基である式:−BR2で表される基及び式:−Si(OR)3で表される基において、Rは前記と同じ意味を有する。
【0111】
上記有機化合物が有し得る置換基であるホウ酸エステル残基の例としては、以下の式から選ばれる基が挙げられる。
【0112】
【化12】

【0113】
上記有機化合物が有し得る置換基であるヒドロカルビルスルホ基とは、基を構成する1個の水素原子が、前記ヒドロカルビル基で置換されたスルホ基である。
上記有機化合物が有し得る置換基であるヒドロカルビルスルホニル基とは、基が有する2個の結合手のうちの1個に、前記ヒドロカルビル基が結合したスルホニル基である。
上記有機化合物が有し得る置換基であるヒドロカルビルスルフィノ基とは、基を構成する1個の水素原子が、前記ヒドロカルビル基で置換されたスルフィノ基である。
【0114】
上記有機化合物が有し得る置換基である式:−NRC(=O)ORで表される基、式:−NRC(=O)SRで表される基、式:−NRC(=S)ORで表される基、式:−NRC(=S)SRで表される基、式:−OC(=O)NR2で表される基、式:−SC(=O)NR2で表される基、式:−OC(=S)NR2で表される基、式:−SC(=S)NR2で表される基、式:−NRC(=O)NR2で表される基及び式:−NRC(=S)NR2で表される基において、Rは前記と同じ意味を有する。
【0115】
上記有機化合物が有し得る置換基である1価の複素環基は、置換基を有していてもよい複素環式化合物から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子を1個取り除いた残りの原子団である。複素環式化合物の複素環の例としては、ピリジン環、1,2−ジアジン環、1,3−ジアジン環、1,4−ジアジン環、1,3,5−トリアジン環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、アザジアゾール環等の単環式複素環;単環式芳香環から選んだ2個以上の環が縮合した縮合多環式複素環;2個の複素環、又は1個の複素環と1個の芳香環とを、メチレン基、エチレン基、カルボニル基等の2価の基で橋かけした構造を有する有橋多環式芳香環が挙げられ、ピリジン環、1,2−ジアジン環、1,3−ジアジン環、1,4−ジアジン環、1,3,5−トリアジン環が好ましく、ピリジン環、1,3,5−トリアジン環がより好ましい。
【0116】
前記式(I)〜式(IX)中、R’で表されるヒドロカルビレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基、1,9−ノニレン基、1,12−ドデシレン基等の炭素原子数が1〜50の飽和ヒドロカルビレン基、エテニレン基、プロペニレン基、3−ブテニレン基、2−ペンテニレン基、2−ヘキセニレン基、2−ノネニレン基、2−ドデセニレン基等の炭素原子数が2〜50の不飽和ヒドロカルビレン基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロノニレン基、シクロドデシレン基、ノルボニレン基、アダマンチレン基等の炭素原子数が3〜50の環状飽和ヒドロカルレン基、エテニレン基、プロペニレン基、3−ブテニレン基、2−ブテニレン基、2−ペンテニレン基、2−ヘキセニレン基、2−ノネニレン基、2−ドデセニレン基等の炭素原子数が2〜50のアルケニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ビフェニル−4,4’−ジイル基等の炭素原子数が6〜50のアリーレン基が挙げられる。
【0117】
R’で表されるヒドロカルビレン基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、前記ヒドロカルビル基が有していてもよい置換基と同じ置換基が挙げられる。置換基が複数個存在する場合には、複数個存在する置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0118】
前記式(I)〜式(IX)中、Rcは、溶媒への溶解性が優れるので、メチル基、エチル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が好ましい。
【0119】
前記式(I)及び式(II)中、mは、1〜20が好ましく、3〜20がより好ましく、3〜15が更に好ましく、6〜10が特に好ましい。
前記式(III)〜式(IX)中、qは、前記式(III)においては、0〜30が好ましく、3〜20がより好ましく、3〜10が更に好ましく、6〜10が特に好ましい。
qは、前記式(IV)〜式(VII)においては、0〜30が好ましく、0〜20がより好ましく、0〜10が更に好ましく、0〜5が特に好ましい。qは、前記式(VIII)においては、0〜30が好ましく、0〜20がより好ましく、3〜20が更に好ましく、3〜10が特に好ましい。qは、前記式(IX)においては、0〜30が好ましく、0〜20がより好ましく、0〜15が更に好ましく、0〜10が特に好ましい。
【0120】
前記式中、M’は、アニオンを表し、その例としては、F-、Cl-、Br-、I-、OH-、ClO-、ClO2-、ClO3-、ClO4-、SCN-、CN-、NO3-、SO42-、HSO4-、PO43-、HPO42-、H2PO4-、BF4-、PF6-、CH3SO3-、CF3SO3-、[(CF3SO22N]-、テトラキス(イミダゾリル)ボレートアニオン、8−キノリノラトアニオン、2−メチル−8−キノリノラトアニオン、2−フェニル−8−キノリノラトアニオンが挙げられる。
M’で表されるアニオンとしては、F-、Cl-、Br-、I-、BF4-、PF6-、CH3SO3-、CF3SO3-、[(CF3SO22N]-、テトラキス(イミダゾリル)ボレートアニオンが好ましく、BF4-、PF6-、CH3SO3-、CF3SO3-、[(CF3SO22N]-、テトラキス(イミダゾリル)ボレートアニオンがより好ましく、CH3SO3-、CF3SO3-、[(CF3SO22N]-、テトラキス(イミダゾリル)ボレートアニオンが更に好ましい。
【0121】
上記有機化合物が有し得る置換基の好ましい例としては、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、ヒドロカルビルアミノ基、シアノ基、ピロリドニル基、1価の複素環基、前記式(I)で表される基、前記式(II)で表される基が挙げられ、より好ましい例としては、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、ヒドロカルビルアミノ基、シアノ基、ピロリドニル基、ピリジル基、1,3,5−トリアジル基、前記式(I)で表される基が挙げられ、更に好ましい例としては、カルボキシル基、スルホ基、メルカプト基、アミノ基、ピロリドニル基、ピリジル基、前記式(I)で表される基が挙げられ、特に好ましい例としては、カルボキシル基、メルカプト基、アミノ基、ピロリドニル基、ピリジル基、前記式(I)で表される基が挙げられ、とりわけ好ましい例としては、カルボキシル基、メルカプト基、ピリジル基、前記式(I)で表される基が挙げられ、とりわけ特に好ましい例としては前記式(I)で表される基が挙げられる。
【0122】
式(XI)中、Xで表される基としては、式:−SMで表される基、式:−C(=O)SMで表される基、式:−CS2Mで表される基、式:−OMで表される基、式:−CO2Mで表される基、式:−B(OM)2で表される基、式:−BR3Mで表される基、式:−B(OR)3Mで表される基、式:−SOMで表される基、式:−SOMで表される基、式:−OP(=O)(OM)2で表される基、式:−P(=O)(OM)2で表される基が挙げられ、式:−CO2Mで表される基、式:−SOMで表される基、式:−SOMで表される基、式:−OP(=O)(OM)2で表される基、式:−P(=O)(OM)2で表される基が好ましく、式:−CO2Mで表される基がより好ましい。
【0123】
式(XI)中、R2で表される(m2+1)価の基の例としては、前記置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、又は前記1価の複素環基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、式:−O−(R’O)−で表される基が挙げられる。これらの基同士は、互いに結合して環を形成してもよい。(m2+1)価の基としては、好ましくは置換基を有していてもよいアルキル基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、置換基を有していてもよいアリール基から環を構成する炭素原子に直接結合するm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、1価の複素環基から環を構成する炭素原子に直接結合するm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、1価の複素環基で置換されたアルキル基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、1価の複素環基で置換されたアリール基から環を構成する炭素原子に直接結合するm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団であり、より好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、フェニル基から環を構成する炭素原子に直接結合するm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、トリアジニル基から環を構成する炭素原子に直接結合するm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、トリアジニル基で置換されたアルキル基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、トリアジニル基で置換されたアリール基から環を構成する炭素原子に直接結合するm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団であり、更に好ましくはヘキシル基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、フェニル基から環を構成する炭素原子に直接結合するm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、トリアジニル基で置換されたフェニル基から環を構成する炭素原子に直接結合するm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団である。
【0124】
式(XI)中、mは1以上の整数であり、2以上の整数が好ましい。
【0125】
式(XI)中、nは1以上の整数であり、2以上の整数が好ましい。
【0126】
前記Rで表される(m2+1)価の基は、前記芳香環を有する有機化合物が有していてもよい置換基で置換されていてもよい。置換基の定義、具体例、好ましい例は、前記の通りである。
【0127】
アニオン性のイオン性基を有する有機化合物は、電子注入性が良好となるため、アニオン性のイオン性基の他に、極性基を有することが好ましい。
【0128】
前記極性基としては、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、ヒドロカルビルアミノ基、シアノ基、ピロリドニル基、1価の複素環基及び前記式(I)〜式(IX)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基が挙げられる。
【0129】
前記の極性基の好ましい例としては、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、ヒドロカルビルアミノ基、シアノ基、ピロリドニル基、1価の複素環基、前記式(I)で表される基、前記式(II)で表される基が挙げられ、より好ましい例としては、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、ヒドロカルビルアミノ基、シアノ基、ピロリドニル基、ピリジル基、1,3,5−トリアジル基、前記式(I)で表される基が挙げられ、更に好ましい例としては、カルボキシル基、スルホ基、メルカプト基、アミノ基、ピロリドニル基、ピリジル基、前記式(I)で表される基が挙げられ、特に好ましい例としては、カルボキシル基、メルカプト基、アミノ基、ピロリドニル基、ピリジル基、前記式(I)で表される基が挙げられ、とりわけ好ましい例としては、カルボキシル基、メルカプト基、ピリジル基、前記式(I)で表される基が挙げられ、殊更に好ましい例としては前記式(I)で表される基が挙げられる。
【0130】
電子注入層44に使用可能な電子注入材料の例としては、以下の式(c−13)〜式(c−33)、式(d−1)〜式(d−45)で表される構造単位を有する共役化合物が挙げられる。これらの式中、n3は2以上の整数を表し、2〜30の整数が好ましく、2〜20の整数がより好ましく、6〜10の整数が更に好ましい。n4は1以上の整数を表し、1〜10の整数が好ましく、2〜6の整数が更に好ましい。Rは、前記と同じ意味を表すが、炭素原子数が1〜6のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が更に好ましい。
【0131】
これらのアニオン性のイオン性基を有する有機化合物の例において、構造単位中の1個以上の水素原子は置換基で置換されていてもよく、置換基の定義及び例は、前記の通りである。
【0132】
【化13】

【0133】
【化14】

【0134】
【化15】

【0135】
アニオン性のイオン性基を有する有機化合物としては、電荷注入性がより優れるので、式(c−13)〜式(c−15)、式(c−17)、式(c−20)〜式(c−22)、式(c−24)〜式(c−27)、式(c−29)〜式(c−32)、式(d−1)〜式(d−6)、式(d−9)、式(d−11)〜式(d−16)、式(d−22)、式(d−31)〜式(d−39)、式(d−41)〜式(d−45)で表される構造単位を有する共役化合物が好ましく、式(c−13)〜式(c−15)、式(c−20)〜式(c−22)、式(c−25)〜式(c−27)、式(c−30)〜式(c−32)、式(d−1)、式(d−2)、式(d−5)、式(d−6)、式(d−9)、式(d−11)、式(d−13)、式(d−22)、式(d−31)〜式(d−38)、式(d−41)、式(d−42)で表される構造単位を有する共役化合物がより好ましく、式(c−15)、式(c−22)、式(c−27)、式(d−6)、式(d−22)、式(d−34)〜式(d−38)、式(d−41)、式(d−42)で表される構造単位を有する共役化合物が更に好ましく、式(d−6)、式(d−34)、式(d−36)〜式(d−38)、式(d−41)、式(d−42)で表される構造単位を有する共役化合物が特に好ましく、(d−38)、(d−41)、(d−42)で表される構造単位を有する共役化合物がとりわけ好ましい。
【0136】
アニオン性のイオン性基を有する有機化合物は、ドーパントをドープして使用することができる。このドーパントは、共役化合物100重量部あたり、1重量部〜50重量部の割合で用いることが好ましい。
【0137】
ドーパントとしては、ハロゲン、ハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸、ニトリル化合物、有機金属化合物、アルカリ金属、アルカリ土類金属等が挙げられる。
ハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
ハロゲン化合物としては、塩化ヨウ素、臭化ヨウ素、フッ化ヨウ素等が挙げられる。
ルイス酸としては、五フッ化リン、五フッ化ヒ素、五フッ化アンチモン、三フッ化硼素、三塩化硼素、三臭化硼素、無水硫酸等が挙げられる。
プロトン酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、硼フッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等の無機酸と、カルボン酸、スルホン酸等の有機酸が挙げられる。
有機カルボン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等のカルボニル基を有する酸、例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフェニル酢酸が挙げられる。
有機スルホン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等のスルホ基を有する有機スルホン酸、例えば、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸等の分子内に1つのスルホ基を有するスルホン酸化合物と、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸等のスルホ基を複数個有するスルホン酸化合物が挙げられる。
【0138】
有機酸はポリマー酸であってもよい。ポリマー酸としては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアリルスルホン酸、ポリメタリルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸が挙げられる。ニトリル化合物としては、共役結合に2つ以上のシアノ基を含む化合物が挙げられる。この化合物としては、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレン等が挙げられる。
有機金属化合物の例としては、トリス(4−ブロモフェニル)アンモニウムヘキサクロロアンチモネート、ビス(ジチオベンジル)ニッケル、ビス(テトラブチルアンモニウム)ビス(1,3−ジチオール−2−チオン−4,5−ジチオラト)亜鉛錯体、テトラブチルアンモニウムビス(1,3−ジチオール−2−チオン−4,5−ジチオラト)ニッケル(III)錯体が挙げられる。
アルカリ金属としては、Li、Na、K、Rb、Csが挙げられる。
アルカリ土類金属としては、Be、Mg、Ca、Sr、Baが挙げられる。
【0139】
電子注入層44の形成方法の例としては、真空蒸着法、塗布法が挙げられる。電子注入層44の形成方法としては、塗布法が好ましい。塗布法の定義及び例は、前記の通りである。
【0140】
−発光層−
発光素子10の発光層50は、1層のみからなる単層構成、又は、2層以上からなる積層構成である。発光層に用いられる発光材料としては、有機化合物を含む公知の低分子量の化合物、有機化合物を含む高分子量の化合物、有機化合物を含む三重項発光錯体が挙げられる。
【0141】
前記低分子量の化合物の例としては、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系等の色素類、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体、8−ヒドロキシキノリン誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン及びその誘導体、テトラフェニルブタジエン及びその誘導体が挙げられる。
【0142】
前記高分子量の化合物としては、フルオレンジイル基を構造単位とする重合体及び共重合体(以下、「(共)重合体」という。)、アリーレン基を構造単位とする(共)重合体、アリーレンビニレン基を構造単位とする(共)重合体、2価の芳香族アミン残基を構造単位とする(共)重合体等が挙げられる。
【0143】
前記三重項発光錯体の例としては、下記式で表されるイリジウムを中心金属とするIr(ppy)、BtpIr(acac)、アメリカンダイソース社(American Dye Source, Inc)から市販されているADS066GE(商品名)、白金を中心金属とするPtOEP、ユーロピウムを中心金属とするEu(TTA)phenが挙げられる。
【0144】
【化16】

【0145】
発光層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なる。発光層の厚さは、駆動電圧と発光効率とが適度な値となるように選択すればよく、通常1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、より好ましくは5nm〜200nmであり、更に好ましくは50nm〜150nmである。
【0146】
発光層50の形成方法としては、真空蒸着法、塗布法が挙げられる。発光層50の形成方法としては、塗布法が好ましい。塗布法の定義及び例は、前記の通りである。
【0147】
−正孔注入層−
本発明の発光素子10において、正孔注入層42aは正孔注入材料を用いて形成可能である。本発明の発光素子は、発光層と陽極との間に正孔注入層を備えることができる。正孔注入層は1層のみからなる単層構成、又は2層以上からなる積層構成である。
【0148】
正孔注入材料としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、スターバースト型アミン、フタロシアニン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、有機シラン誘導体、及びこれらを含む重合体;酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の導電性金属酸化物;ポリアニリン、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子材料及びオリゴマー;ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)・ポリスチレンスルホン酸、ポリピロール等の有機導電性材料及びこれらを含む重合体;アモルファスカーボン;2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン等のテトラシアノキノジメタン誘導体、1,4−ナフトキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ポリニトロ化合物等のアクセプター性有機化合物;オクタデシルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が好適に使用できる。
【0149】
正孔注入材料は単一の成分で用いても複数の成分からなる組成物として用いてもよい。
前記正孔注入層は、単一の前記正孔注入材料のみからなる単層構造、或いは、同一組成又は異種組成の正孔注入材料により構成される複数層からなる多層構造である。
【0150】
正孔注入層42aの厚さは、用いる材料によって最適値が異なる。正孔注入層の厚さは、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよく、通常1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、より好ましくは5nm〜200nmであり、更に好ましくは5nm〜100nmである。
【0151】
正孔注入層42aの形成方法としては、真空蒸着法、塗布法が挙げられる。正孔注入層の形成方法としては、塗布法が好ましい。塗布法の定義及び例は、前記の通りである。
【0152】
−その他の層−
本発明の発光素子は、基板、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層等を更に有していてもよい。
【0153】
これら各層の形成方法の例としては、真空蒸着法、塗布法が挙げられる。これらの形成方法の中でも、塗布法が好ましい。塗布法の定義及び例は、前記の通りである。
【0154】
−発光素子の製造方法−
本発明の発光素子は、如何なる方法で製造してもよいが、好ましくは、アスペクト比が1.5未満の導電性材料を含む塗工液を塗布成膜して陰極を形成する工程を含む方法で製造することができ、より好ましくは、アニオン性のイオン性基を有する有機化合物を含む第1の液状組成物を塗布成膜して前記電子注入層を形成する工程と、アスペクト比が1.5未満の導電性材料を含む第2の液状組成物を塗布成膜して前記陰極を形成する工程とを含む方法で製造することができる。第2の液状組成物は、イオン性化合物を含んでいることが好ましい。
【0155】
発光素子は、例えば、前記各層を順次に積層することにより製造することができる。各層の形成方法は前記の通りである。
【0156】
本発明の発光素子の製造方法の一実施形態は、陰極を塗布成膜して形成する工程を含む。発光素子の製造方法の一実施形態は、好ましくは、陰極を塗布成膜して形成する工程に加えて、陽極以外の残りのすべての層の各々を塗布成膜して形成する工程を含む。言い換えれば、発光素子の製造方法の一実施形態は、陰極を塗布成膜して形成する工程と、陽極以外の残りのすべての層の各々を塗布成膜して形成する工程とを含む。発光素子の製造方法の一実施形態は、より好ましくは、更に陽極を塗布成膜して形成する工程を含む。言い換えれば、発光素子の製造方法の一実施形態は、陽極及び陰極の各々を塗布成膜して形成する工程、又は、陰極及び陽極に加え、その他残りのすべての層の各々を塗布成膜して形成する工程を含む。
【0157】
本発明の発光素子の実施形態において、発光素子は、陰極が塗布成膜して形成される。
好ましい実施形態では、陰極に加え、更に陽極以外の残りのすべての層の各々が塗布成膜して形成される(言い換えれば、陰極及び陽極以外の残りのすべての層の各々が塗布成膜して形成される。)。より好ましい実施形態では、更に陽極が塗布成膜して形成されるか(言い換えれば、陽極及び陰極の各々が塗布成膜して形成される。)、又は、陰極及び陽極に加え、その他残りのすべての層の各々が塗布成膜して形成される(言い換えれば、すべての層の各々が塗布法により形成される。)。
【0158】
−発光素子の構造−
発光素子の構造には、順積層構造と逆積層構造とがある。順積層構造は、陽極から陰極へ向かって電極及び有機層を順次に積層していく製造方法により製造された構造であって、例えば、基板上に陽極、発光層、電子注入層、陰極がこの順に積層された構造である。
逆積層構造は、陰極から陽極に向かって電極及び有機層を順次に積層していく製造方法により製造された構造であって、例えば、基板上に陰極、電子注入層、発光層、陽極がこの順に積層された構造である。
【0159】
本発明の発光素子の構造の例としては、以下の式a)〜式d)の構造が挙げられる。逆積層構造の例としては、式a)及び式b)の構造が挙げられ、順積層構造の例としては式c)及び式d)の構造が挙げられる。
a)陰極/電子注入層/発光層/陽極
b)陰極/電子注入層/(電子輸送層/)発光層/(正孔輸送層/)(正孔注入層/)(電荷発生層/)(電子注入層/)(電子輸送層/)(発光層/)(正孔輸送層/)(正孔注入層/)陽極
c)陽極/発光層/電子注入層/陰極
d)陽極/(正孔注入層/)(正孔輸送層/)発光層/(電子輸送層/)(電子注入層/)(電荷発生層/)(正孔注入層/)(正孔輸送層/)(発光層/)(電子輸送層/)電子注入層/陰極
ここで、記号「/」は記号「/」を挟む各層が隣接して接合されていることを示す。小括弧内の層は、それぞれ独立に、設けられていなくてもよい。但し、陰極と電子注入層とは必ず隣接して接合されるものとする。
【0160】
前記各層は、複数の機能を有する層、即ちその他の層の機能を併せ持つ層としてもよい。
【0161】
陽極及び陰極のうちの少なくとも一方は、通常光透過性を有している。
【0162】
発光素子は、基板の厚さ方向について基板とは反対側の露出面から発光するトップエミッション型、基板側の露出面から発光するボトムエミッション型のいずれの構造としてもよい。
【0163】
発光素子は、基板を備え、この基板に陽極が接合されており、基板の厚さ方向について基板とは反対側の前記陰極寄りの側から発光するトップエミッション型の構造であることが好ましい。
【0164】
発光素子を逆積層構造とする場合には、基板として光透過性を有する透明な基板を用い、この透明な基板に陰極が接合されており、陰極寄りの側(基板側)から発光するボトムエミッション型の構造としてもよい。
【0165】
−発光素子の応用−
本発明の発光素子を用いてディスプレイ装置や照明装置を製造することができる。ディスプレイ装置は、発光素子を1画素単位として備える。画素単位の配列は、テレビ等のディスプレイ装置で通常採用される配列とすることができ、多数の画素が1枚の基板上に配列された態様とすることができる。ディスプレイ装置において、基板上に配列される画素は、バンクで規定される画素領域内に形成してもよい。
【0166】
<光電変換素子>
上記発光素子について説明したアニオン性のイオン性基を有する有機化合物を含む電子注入層及びアスペクト比が1.5未満の導電性材料を含む陰極は、光電変換素子にも適用することができる。以下、光電変換素子について説明する。
図2−1及び図2−2を参照して、光電変換素子の構成例について説明する。
図2−1は、光電変換素子の構成例(1)を示す概略的な断面図である。図2−2は、光電変換素子の構成例(2)を示す概略的な断面図である。
【0167】
本発明の実施形態の光電変換素子は、陽極、電荷分離層、電子注入層及び陰極を有する光電変換素子であって、前記電子注入層は、アニオン性のイオン性基を有する有機化合物を含み、前記陰極は、当該アスペクト比が1.5未満の導電性材料を含む。
【0168】
導電性材料の数平均のフェレー径は、好ましくは1000nm以下であり、より好ましくは800nm以下であり、更に好ましくは500nm以下であり、特に好ましくは300nm以下であり、とりわけ好ましくは100nm以下であり、殊更に好ましくは50nm以下である。
【0169】
陰極及び陽極のうち、少なくとも一方の電極、特に、少なくとも光が入射する側の電極は、透明又は半透明の電極とすることが好ましい。
【0170】
構成例(1)
図2−1に示すように、構成例(1)の光電変換素子10は、陽極32及び陰極34からなる一対の電極と、該一対の電極間に挟持された電荷分離層70とを備えている。構成例(1)の光電変換素子10は、バルクヘテロジャンクション型の光電変換素子である。
【0171】
光電変換素子は、通常、基板上に形成される。光電変換素子10は、基板20の主面上に設けられている。
【0172】
基板20が不透明である場合には、陽極32と対向する、基板側とは反対側に設けられる陰極34(即ち、基板20から遠い方の電極)が透明又は半透明であることが好ましい。
【0173】
電荷分離層70は、陽極32と電子注入層44とに接して挟持されている。電荷分離層70は、電子受容性化合物と電子供与性化合物とを含有する有機層であって、光電変換機能を有する層である。
【0174】
基板20の主面上には、陽極32が設けられている。電荷分離層70は、陽極32を覆って設けられている。電子注入層44は、電荷分離層70に接合させて設けられている。陰極34は、電子注入層44に接合させて設けられている。
【0175】
前記構成例(1)の光電変換素子10は、電荷分離層70が電子受容性化合物と電子供与性化合物とを単一の層に含有する構成を備えているため、ヘテロ接合界面をより多く含み、光電変換効率がより向上するので好ましい。
【0176】
構成例(2)
図2−2に示すように、構成例(2)の光電変換素子は、陽極32及び陰極34からなる一対の電極と、前記一対の電極間に挟持される電荷分離層70であって、電子受容性化合物を含む電子受容性層74と、この電子受容性層74に接合され、電子供与性化合物を含む電子供与性層72とからなる前記電荷分離層70を備えている。構成例(2)の光電変換素子10は、ヘテロジャンクション型の光電変換素子である。
【0177】
光電変換素子10は、基板20の主面上に設けられている。基板20の主面上には陽極32が設けられている。
【0178】
電荷分離層70は、陽極32と電子注入層44とに接して挟持されている。構成例2の電荷分離層70は、電子受容性化合物を含有する電子受容性層74と、電子供与性化合物を含有する電子供与性層72とが接合された積層構造とされている。
【0179】
電子供与性層72は、陽極32に接合されて設けられている。電子受容性層74は、電子供与性層72に接合されて設けられている。電子注入層44は電子受容性層74に接合されて設けられている。陰極34は、電子注入層44に接合されて設けられている。
【0180】
−電荷分離層−
電荷分離層70は、電子供与性化合物、電子受容性化合物の各々を1種単独で含んでいても2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。なお、電子供与性化合物、前記電子受容性化合物は、これらの化合物のエネルギー準位のエネルギーレベルから相対的に決定される。
【0181】
電子供与性化合物の例としては、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、共役高分子化合物が挙げられる。共役高分子化合物の例としては、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体が挙げられる。
【0182】
電子受容性化合物の例としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、C60フラーレン等のフラーレン類及びその誘導体、バソクプロイン等のフェナントレン誘導体、酸化チタン等の金属酸化物、カーボンナノチューブが挙げられる。
【0183】
電荷分離層の厚さは、好ましくは1nm〜100μmであり、より好ましくは2nm〜1000nmであり、更に好ましくは5nm〜500nmであり、特に好ましくは20nm〜200nmである。
【0184】
電荷分離層は如何なる製造方法で製造してもよく、電荷分離層の製造方法の例としては、真空蒸着法、塗布法が挙げられ、塗布法が好ましい。塗布法については上記の説明の通りである。
【0185】
−電荷分離層以外の層−
光電変換素子10には、陽極32及び陰極34のうちの少なくとも一方の電極と電荷分離層との間に、例えば、電荷注入性・輸送性を高める機能等を有する付加的な層を設けてもよい。
付加的な層の例としては、電子注入層及び正孔注入層、正孔輸送層及び電子輸送層が挙げられる。
電荷分離層以外の層、陰極、陽極、基板、電子注入層、正孔注入層、正孔輸送層及び電子輸送層等の構成については、既に説明した発光素子と同様の構成とすることができる。
【0186】
−光電変換素子の製造方法−
本発明の実施形態にかかる光電変換素子の製造方法は、陽極、電荷分離層、電子注入層及び陰極を有する光電変換素子であって、前記電子注入層を、アニオン性のイオン性基を有する有機化合物を含む第1の液状組成物を塗布成膜することによって形成する工程と、前記陰極を、当該アスペクト比が1.5未満の導電性材料を含む第2の液状組成物を塗布成膜することによって形成する工程とを含む。
【0187】
光電変換素子は、例えば、基板上に上述の各層を順次に積層することにより製造することができる。電荷分離層以外の前記の各層の形成方法については、既に説明した発光素子と同様に実施することができる。
【0188】
本発明の光電変換素子の製造方法の実施形態は、陰極を塗布成膜して形成する工程を含む。好ましい実施形態では、陰極を塗布成膜して形成する工程に加えて、更に陽極以外の残りのすべての層の各々を塗布成膜して形成する工程を含む(言い換えれば、光電変換素子の製造方法の一実施形態は、陰極を塗布成膜して形成する工程と、陽極以外の残りのすべての層の各々を塗布成膜して形成する工程とを含む。)。より好ましい実施形態では、更に陽極を塗布成膜して形成する工程を含むか(言い換えれば、光電変換素子の製造方法の一実施形態は、陽極及び陰極の各々を塗布成膜して形成する工程を含む。)、又は、陰極及び陽極に加え、その他残りのすべての層の各々を塗布成膜して形成する工程を含む(言い換えれば、すべての層の各々を塗布成膜して形成する工程を含む。)。
【実施例】
【0189】
以下、実施例及び比較例を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0190】
<分析方法>
共役化合物の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製、商品名:HLC−8220GPC)を用いて、ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量として求めた。また、測定する試料は、約0.5重量%の濃度になるようにテトラヒドロフランに溶解させ、GPCに50μL注入した。更に、GPCの移動相としてはテトラヒドロフランを用い、0.5mL/分の流速で流した。検出波長を254nmに設定した。
【0191】
共役化合物の構造分析は300MHzNMRスペクトロメーター(Varian社製)を用いた、1H−NMR解析によって行った。また、1H−NMR解析は、20mg/mLの濃度になるように試料を可溶な重溶媒に溶解させて行った。
【0192】
<合成例1>(共役化合物P−3の合成)
2,7−ジブロモ−9−フルオレノン52.5g(0.16mol)、サリチル酸エチル154.8g(0.93mol)、及び、メルカプト酢酸1.4g(0.016mol)を容量3000mLのフラスコに入れ、該フラスコ内の気体を窒素ガスで置換した後、メタンスルホン酸(630mL)を添加し、混合物を75℃で終夜撹拌した。得られた反応液を放冷し、氷水に添加して1時間撹拌したところ固体が生じた。生じた固体をろ別し、加熱したアセトニトリルで洗浄した。洗浄した固体をアセトンに溶解させ、得られたアセトン溶液から固体を再結晶させて、ろ別した。得られた固体(62.7g)、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ−p−トルエンスルホネート86.3g(0.27mol)、炭酸カリウム62.6g(0.45mol)、及び1,4,7,10,13,16−ヘキサオキサシクロオクタデカン(「18−クラウン−6」と呼ばれることもある。) 7.2g(0.027mol)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(670mL)に溶解させ、得られた溶液をフラスコへ移して105℃で終夜撹拌した。得られた反応液を室温まで放冷し、フラスコに氷水を加え、1時間撹拌した。その後、得られた反応液にクロロホルムを加えて分液抽出を行い、溶液を濃縮することで、下記式で表される2,7−ジブロモ−9,9−ビス[3−エトキシカルボニル−4−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]フェニル]−フルオレン(化合物B)(51.2g)を得た。収率は31%であった。
【0193】
【化17】

【0194】
内部の気体をアルゴンガスで置換した容量1000mLのフラスコに、化合物B(15g)、ビス(ピナコラート)ジボロン(8.9g)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン錯体(0.8g)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(0.5g)、酢酸カリウム(9.4g)、及び、ジオキサン(400mL)を入れて混合し、110℃に加熱して、10時間加熱して還流させた。放冷後、得られた反応液をろ過し、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をメタノールで3回洗浄した。洗浄した濃縮物をトルエンに溶解させ、溶液に活性炭を加えて攪拌した。その後、混合物をろ過し、ろ液を減圧濃縮することで、下記式で表される2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル-1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ビス[3−エトキシカルボニル−4−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]フェニル]−フルオレン(化合物D)(11.7g)を得た。
【0195】
【化18】

【0196】
内部の気体をアルゴンガスで置換した容量100mLのフラスコに、化合物B(0.55g)、化合物D(0.61g)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.01g)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ製、商品名Aliquat336(登録商標))(0.20g)、及び、トルエン(10mL)を混合し、105℃に加熱した。得られた反応液に2M炭酸ナトリウム水溶液(6mL)を滴下し、8時間還流させた。得られた反応液に4−tert−ブチルフェニルボロン酸(0.01g)を加え、6時間還流させた。次いで、そこに、ジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液(10mL、濃度:0.05g/mL)を加え、2時間撹拌した。得られた反応液をメタノール300mL中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥させ、テトラヒドロフラン20mLに溶解させた。得られた溶液をメタノールと3重量%酢酸水溶液との混合溶媒中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過し、テトラヒドロフラン20mLに溶解させた。こうして得られた溶液をメタノール200mLに滴下して30分間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して固体を得た。この固体をテトラヒドロフランに溶解させ、アルミナカラム、シリカゲルカラムを順番に通すことにより精製した。カラムから回収したテトラヒドロフラン溶液を濃縮した後、メタノールに滴下し、析出した固体をろ過して、乾燥させることにより、共役化合物(以下、「共役化合物P−3」という。)を520mg得た。
【0197】
NMRの結果から共役化合物P−3は、下記式で表される構造単位を有する。共役化合物P−3のポリスチレン換算の数平均分子量は5.2×104であった。
【0198】
【化19】

【0199】
<合成例2>(共役化合物P−4の合成)
共役化合物P−3(200mg)を容量100mLのフラスコに入れ、該フラスコ内の気体を窒素ガスで置換した。そこに、テトラヒドロフラン(20mL)、及び、エタノール(20mL)を添加し、混合物の温度が55℃となるように加熱した。そこに、水酸化セシウム(200mg)を水(2mL)に溶解させた水溶液を添加し、55℃で6時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、そこから溶媒を減圧留去したところ、固体が生じた。この固体を水で洗浄し、減圧乾燥させることで、下記式で表される構造単位を有する共役化合物(以下、「共役化合物P−4」という。)を150mg得た。
【0200】
【化20】

【0201】
NMRスペクトルにより、共役化合物P−3のエチルエステル部位のエチル基由来のシグナルが完全に消失していることを確認した。
【0202】
<合成例3>(正孔輸送材料Bの合成)
フラスコ内の気体を不活性ガス雰囲気とした後、2,7−ジブロモ−9,9−ジ(オクチル)フルオレン(1.4g、2.5mmol)、2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル-1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ(オクチル)フルオレン(6.4g、10.0mmol)、N,N−ビス(4−ブロモフェニル)−N’,N'−ビス(4−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(4.1g、6mmol)、ビス(4−ブロモフェニル)ベンゾシクロブテンアミン(0.6g、1.5mmol)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(1.7g、2.3mmol)、酢酸パラジウム(4.5mg、0.02mmol)、トリ(2−メトキシフェニル)ホスフィン(0.03g、0.08mmol)、及び、トルエン(100mL)を混合し、混合物を100℃で2時間加熱しながら攪拌した。次いで、そこに、フェニルボロン酸(0.06g、0.5mmol)を添加し、得られた混合物を10時間撹拌した。放冷後、得られた反応液から水層を除去し、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液を添加し攪拌した後、水層を除去し、有機層を水、3重量%酢酸水溶液で順次洗浄した。有機層をメタノールに注いだところ、沈殿物が生じた。
濾取した沈殿物を再度トルエンに溶解させ、シリカゲルカラム及びアルミナカラムに通液した。トルエン溶液を回収し、メタノールに注いだところ、沈殿物が生じた。この沈殿物を濾取後、50℃で真空乾燥させることにより、高分子化合物(以下、「正孔輸送材料B」と言う。)(12.1g)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによれば、正孔輸送材料Bのポリスチレン換算の重量平均分子量は3.0×105であり、分子量分布指数(Mw/Mn)は3.1であった。
【0203】
正孔輸送材料Bは、下記式:
【0204】
【化21】


で表される構造単位と、下記式:
【0205】
【化22】


で表される構造単位と、下記式:
【0206】
【化23】


で表される構造単位と、を62.5:30:7.5のモル比(原料の仕込量からの理論値)を有する共重合体である。
【0207】
<合成例4>(発光材料Bの合成)
フラスコ内の気体を不活性ガス雰囲気とした後、2,7−ジブロモ−9,9−ジ(オクチル)フルオレン(9.0g、16.4mmol)、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(4−tert−ブチル-2,6−ジメチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(1.3g、1.8mmol)、2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ(4−ヘキシルフェニル)フルオレン(13.4g、18.0mmol)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(43.0g、58.3mmol)、酢酸パラジウム(8mg、0.04mmol)、トリ(2−メトキシフェニル)ホスフィン(0.05g、0.1mmol)、及び、トルエン(200mL)を混合し、混合物を90℃で8時間加熱しながら攪拌した。次いで、そこに、フェニルボロン酸(0.22g、1.8mmol)を添加し、得られた混合物を14時間撹拌した。放冷後、得られた反応液から水層を除去し、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液を添加し、撹拌した。その後、得られた反応液から水層を除去し、有機層を水、3重量%酢酸水溶液で順次洗浄した。得られた有機層をメタノールに注いだところ、沈殿物が生じた。濾取した沈殿物をトルエンに溶解させ、シリカゲルカラム及びアルミナカラムに通液した。トルエン溶液を回収し、メタノールに注いだところ、沈殿物が生じた。この沈殿物を50℃で真空乾燥させることにより、高分子化合物(以下、「発光材料B」と言う。)(12.5g)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによれば、発光材料Bのポリスチレン換算の重量平均分子量は3.1×105であり、分子量分布指数(Mw/Mn)は2.9であった。
【0208】
発光材料Bは、下記式:
【0209】
【化24】


で表される構造単位と、下記式:
【0210】
【化25】


で表される構造単位と、下記式:
【0211】
【化26】


で表される構造単位と、を50:45:5のモル比(原料の仕込量からの理論値)を有する共重合体である。
【0212】
<実施例1>(発光素子k−1の作製)
陽極としてITO膜が成膜されたガラス基板のITO膜上に、正孔注入材料溶液であるポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)・ポリスチレンスルホン酸(H.C.Starck製、PEDOT:PSS溶液、商品名:CLEVIOS(登録商標) P VP AI 4083)0.5mLを塗布し、スピンコート法によって、厚さが70nmになるように成膜した。こうして得られたガラス基板を空気中で、200℃で10分間加熱した後、室温まで自然に冷却させることにより、正孔注入層が形成されたガラス基板Aを得た。
【0213】
前記正孔輸送材料Bを5.2mgと1mLのキシレンとを混合し、正孔輸送材料Bを0.6重量%含有する正孔輸送層用組成物を調製した。
【0214】
正孔輸送層用組成物をスピンコート法により、前記正孔注入層が形成されたガラス基板A上に塗布し、厚さ33nmの塗膜を形成した。この塗膜を形成したガラス基板を窒素ガス雰囲気下、200℃で20分間加熱し、塗膜を不溶化させた後、室温まで自然に冷却させることにより、正孔輸送層が形成されたガラス基板Fを得た。
【0215】
前記発光材料B(11.3mg)と1mLのキシレンとを混合して、発光材料Bを1.3重量%含有する発光層用組成物を調製した。
【0216】
この発光層用組成物をスピンコート法により、正孔輸送層が形成されたガラス基板F上に塗布し、厚さ99nmの塗膜を形成した。この塗膜を形成した基板を窒素ガス雰囲気下、130℃で15分間加熱し、溶媒を蒸発させた後、室温まで自然に冷却させることにより、発光層が形成されたガラス基板Gを得た。
【0217】
共役化合物P−4(2.0mg)と1mLのメタノールとを混合し、0.2重量%の電子注入層用組成物を調製した。
【0218】
この電子注入層用組成物をスピンコート法により、発光層が形成されたガラス基板G上に塗布し、厚さ10nmの塗膜を形成させた。この塗膜を形成した基板を窒素ガス雰囲気下で、130℃で10分間加熱して、溶媒を蒸発させた後、室温まで自然冷却させることにより、電子注入層が形成されたガラス基板Hを得た。
【0219】
数平均フェレー径が7nmの銀ナノ粒子の分散液である陰極用組成物(NPS−JL、ハリマ化成製、銀粒子のアスペクト比:1.0)をキャスティング法により、電子注入層が形成されたガラス基板H上に塗布し、厚さ約30μmの塗膜を形成した。この塗膜を形成した基板を、窒素ガス雰囲気下で、150℃で60分間加熱し、溶媒を蒸発させた後、室温まで自然冷却させることにより、陰極が形成されたガラス基板Iを得た。
【0220】
最後に、この陰極が形成されたガラス基板Iを、窒素雰囲気下、封止ガラスと2液混合型エポキシ樹脂(Robnor resins社製、商品名:PX681C/NC)を用いて封止することにより、発光素子(以下、「発光素子k−1」という。)を作製した。
【0221】
発光素子k−1に14Vの順方向電圧を印加し、ガラス基板の厚さ方向について陽極寄りの側からの出射光の発光輝度を測定した。結果として、発光輝度は1.49cd/mであった。
【0222】
<比較例1>(発光素子k−2の作製)
実施例1において、電子注入層用組成物を用いなかった以外は、実施例1と同様にして、発光素子(以下、「発光素子k−2」という。)を作製した。発光素子k−2に14Vの順方向電圧を印加した。しかしながら、発光は観測されなかった。
【0223】
<実施例2>(発光素子k−3の作製)
実施例1において、正孔注入材料溶液であるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)・ポリスチレンスルホン酸(H.C.Starck製、PEDOT:PSS溶液、商品名:CLEVIOS(登録商標) P VP AI 4083)の代わりに、Plextronics社から入手した、ポリチオフェン・スルホン酸系の正孔注入材料であるAQ−1200を用い、数平均フェレー径が7nmの銀ナノ粒子の分散液である陰極用組成物(NPS−JL、ハリマ化成製、銀粒子のアスペクト比:1.0)の代わりに、数平均フェレー径が80nmの銀ナノ粒子の分散液である陰極用組成物2(MDot-SLP(三ツ星ベルト社製、銀粒子のアスペクト比:1.0)とメタノールとが、それぞれ、25.0wt%と75.0wt%で含有されている。)を用いた以外は、実施例1と同様にして、発光素子(以下、「発光素子k−3」という。)を作製した。
発光素子k−3に12Vの順方向電圧を印加し、ガラス基板の厚さ方向について陽極寄りの側からの出射光の発光輝度を測定した。結果として、発光輝度は3.66cd/mであった。
【0224】
<実施例3>(発光素子k−4の作製)
実施例2において、陰極用組成物2の代わりに、陰極用組成物3(MDot-SLP(三ツ星ベルト社製、銀粒子のアスペクト比:1.0)と3−ピリジンカルボン酸セシウムとメタノールとが、それぞれ、24.95wt%と0.20wt%と74.85wt%で含有されている。)を用いた以外は、実施例2と同様にして、発光素子(以下、「発光素子k−4」という。)を作製した。
発光素子k−4に12Vの順方向電圧を印加し、ガラス基板の厚さ方向について陽極寄りの側からの出射光の発光輝度を測定した。結果として、発光輝度は2.61cd/mであった。
【符号の説明】
【0225】
10 発光素子、光電変換素子
20 基板
22 第1の基板
24 第2の基板
32 陽極
34 陰極
42a 正孔注入層
42b 正孔輸送層
44 電子注入層
50 発光層
60 積層構造体
70 電荷分離層
72 電子供与性層
74 電子受容性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極、発光層、電子注入層及び陰極を有する発光素子であって、
前記電子注入層は、アニオン性のイオン性基を有する有機化合物を含み、前記陰極は、アスペクト比が1.5未満の導電性材料を含む、発光素子。
【請求項2】
前記陰極が、イオン性化合物を含む、請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記イオン性化合物が、下記式(hh−1)で表される構造を有する、請求項2に記載の発光素子。
m’+aX’n’−b (hh−1)
(式(hh−1)中、
m’+は、金属カチオンを表す。
X’n’−は、アニオンを表す。
a及びbは、それぞれ独立に、1以上の整数である。Mm’+及びX’n’−が複数個存在する場合には、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項4】
前記金属カチオンが、アルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンである、請求項3に記載の発光素子。
【請求項5】
前記有機化合物のポリスチレン換算の数平均分子量が、3×10以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項6】
前記有機化合物が、共役化合物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項7】
前記共役化合物が、下記式(XI)で表される構造単位を有する共役化合物である、請求項6に記載の発光素子。
【化1】


(式(XI)中、
Arは、(n+2)価の芳香族基であり、
は、単結合又は(m+1)価の基であり、
は、式:−SMで表される基、式:−C(=O)SMで表される基、式:−CS2Mで表される基、式:−OMで表される基、式:−CO2Mで表される基、式:−B(OM)2で表される基、式:−BR3Mで表される基、式:−B(OR)3Mで表される基、式:−SOMで表される基、式:−SOMで表される基、式:−OP(=O)(OM)2で表される基、及び、式:−P(=O)(OM)2で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基である。Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。Mは金属カチオン又は置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンを表す。
及びnは、それぞれ独立に、1以上の整数である。)
【請求項8】
前記Xが、式:−CO2Mで表される基である、請求項7に記載の発光素子。
【請求項9】
前記有機化合物が、
カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、ヒドロカルビルアミノ基、シアノ基、ピロリドニル基、1価の複素環基及び下記式(I)〜式(IX)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1種である極性基を有する、
請求項1〜8のいずれか一項に記載の発光素子。
−O−(R’O)−R’’ (I)
【化2】


−S−(R’S)−R’’ (III)
−C(=O)−(R’−C(=O))−R’’ (IV)
−C(=S)−(R’−C(=S))−R’’ (V)
−N{(R’)R’’}2 (VI)
−C(=O)O−(R’−C(=O)O)−R’’ (VII)
−C(=O)−O−(R’O)−R’’ (VIII)
−NHC(=O)−(R’NHC(=O))−R’’ (IX)
(式(I)〜式(IX)中、
R’は、置換基を有していてもよいヒドロカルビレン基を表す。
R’’は、水素原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、−NRc2で表される基、シアノ基又は−C(=O)NRc2で表される基を表す。
R’’’は、置換基を有していてもよい3価の炭化水素基を表す。
mは、1以上の整数を表す。qは、0以上の整数を表す。
cは、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基、又は、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜50のアリール基を表す。
前記R’、R’’及び前記R’’’の各々が複数個存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項10】
前記発光層と陽極との間に配置された正孔注入層を備える、請求項1〜9のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項11】
前記導電性材料の数平均のフェレー径が、1000nm以下である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項12】
前記導電性材料が、
金属、金属酸化物及び炭素材料からなる群から選ばれる1種類以上の材料を含む、
請求項1〜11のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項13】
前記導電性材料が、銀である、請求項12に記載の発光素子。
【請求項14】
陽極、発光層、電子注入層及び陰極を有する発光素子の製造方法であって、
アニオン性のイオン性基を有する有機化合物を含む第1の液状組成物を塗布成膜して前記電子注入層を形成する工程と、
アスペクト比が1.5未満の導電性材料を含む第2の液状組成物を塗布成膜して前記陰極を形成する工程と、
を含む、発光素子の製造方法。
【請求項15】
前記第2の液状組成物が、イオン性化合物をさらに含む、請求項14に記載の発光素子の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2−1】
image rotate

【図2−2】
image rotate


【公開番号】特開2012−216531(P2012−216531A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−74895(P2012−74895)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】