説明

発光素子及び発光装置

【課題】酸化モリブデンの含有量を減らさずに酸化モリブデンを含む正孔注入層(または正孔輸送層)の導電性を低下させてクロストークの発生を防止する。
【解決手段】陽極と陰極の間に少なくとも正孔注入層と、発光層と、を有するEL層が挟持され、前記正孔注入層は前記陽極と前記発光層の間に配され、前記正孔注入層は酸化モリブデンと添加物を含む発光素子とする。前記添加物は、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属、LUMO準位が−5.8eV以下の物質、またはホール移動度が10−7cm/Vs以下の物質であればよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子と発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光装置であるEL表示装置の開発が進められており、次第に実用化されつつある。その一方で、照明器具として、EL表示装置に設けられる発光素子と同様の発光素子を用いたEL照明装置についても開発が進められている。
【0003】
このような発光素子の作製に際して、発光材料などの被蒸着面である下部電極の平坦性を維持しつつ発光素子のホール注入性を向上させるために、正孔注入層に酸化モリブデンを添加する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−9205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
正孔注入層(または正孔輸送層)に酸化モリブデンを添加すると発光素子の導電性(ホール注入性)が向上する。しかし、発光素子の導電性が向上することで、正孔注入層(または正孔輸送層)を介して隣接する画素の発光素子に電流が流れるため、当該隣接する画素の発光素子が発光してしまう。すなわち、クロストークを生じる。このとき、導電性の向上を抑制するために正孔注入層(または正孔輸送層)における酸化モリブデンの含有量を単純に減らしてしまうと、正孔注入層(または正孔輸送層)が結晶化しやすくなる。正孔注入層(または正孔輸送層)などのEL層に含まれる層が結晶化すると、正孔注入層(または正孔輸送層)の厚さにばらつきが生じてしまい、発光素子の信頼性が低下するという問題がある。
【0006】
本発明の一態様は、正孔注入層(または正孔輸送層)における酸化モリブデンの含有量を減らすことなく酸化モリブデンを含む正孔注入層(または正孔輸送層)の導電性を低下させて、クロストークの発生を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、酸化モリブデンが添加された正孔注入層(または正孔輸送層)に添加物を添加することで、正孔注入層(または正孔輸送層)の結晶化を抑制しつつ、隣接する画素間のクロストークの発生を防止した発光素子、発光装置、及びその作製方法である。前記添加物は、蒸着可能な材料であればよい。
【0008】
本発明の一態様では、前記添加物として、例えばドナー性物質を用いることができる。ドナー性物質は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である。ドナー性物質として、好ましくはLiまたはCaを用いるとよい。Liは、正孔注入層を形成する材料に均一に混合させることが容易だからであり、Caは、Liよりも空気及び水との反応性に乏しく、取り扱いが容易だからである。前記添加物としてLiを用いる場合には、Liの濃度は1重量パーセント以上10重量パーセント以下とすることが好ましい。
【0009】
本発明の一態様では、前記添加物として、例えば酸化モリブデンとの反応性が乏しい物質を用いてもよい。前記添加物として用いる物質は、正孔注入層の導電性を低下させるために用いるものであるため、サイズが大きい(ホスト材料と同程度以上である)ことが好ましい。
【0010】
なお、酸化モリブデンとの反応性が乏しい前記物質は、HOMO準位が−5.8eV以下、好ましくは−5.9eV以下の物質であればよく、ジベンゾキノキサリン系、フェナントロリン系、トリアゾール系、オキサジアゾール系の物質を用いることができる。
【0011】
ジベンゾキノキサリン系の物質としては、例えば、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン、2−[4−(3,6−ジフェニル−9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−3−フェニルジベンゾ[f,h]キノキサリン、7−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン、2ーフェニルジベンゾ[f,h]キノキサリン、2−[3−(3,6−ジフェニル−9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン、2−[4−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f、h]キノキサリン、2−[3−(3´−ジベンゾチオフェン−4−イル)ビフェニル]ジベンゾ[f、h]キノキサリン、2−[3−(ジベンゾフラン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f、h]キノキサリン、6−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−ジベンゾキノキサリン、2−[4−(ジベンゾチオフェン−2−イル)フェニル]ジベンゾ[f、h]キノキサリンが挙げられる。
【0012】
フェナントロリン系の物質としては、例えば、2,9−ジメチル−4,7―ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2−(4−t−ブチルフェニル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2−ナフチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2−(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンが挙げられる。
【0013】
トリアゾール系の物質としては、例えば、9−[4−(3,5−ジフェニル−1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)]フェニル−9H−カルバゾール (略称:CzTAZ(1H)、9−[4’’’−(3,5−ジフェニル−1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−[1,1’:2’,1’’:2’’,1’’’]クアテルフェニル−4−イル]−9H−カルバゾール (略称:Z−CzPTAZ(1H)、3−[4−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル)]−4,5−ジフェニル−4H−1,2,4−トリアゾール(略称:DBTTAZ−2)が挙げられる。
【0014】
オキサジアゾール系の物質としては、例えば、9−[4−(3−フェニル−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)]フェニル−9H−カルバゾール (略称:CzOd)、2,5−[4−(ジベンゾチオフェン−1−イル)ジフェニル]−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−[4−(2,7−ジフェニルジベンゾチオフェン−4−イル)ジフェニル]−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス[4,4´´(ジベンゾチオフェン−1−イル)フェニル]−1,3,4−オキサジアゾールが挙げられる。
【0015】
本発明の一態様では、前記添加物としてホール移動度が10−7cm/Vs以下の物質を用いてもよい。ここで、前記添加物は、有機物であることが好ましい。
【0016】
なお、発光素子の陽極と陰極に挟持された部分には少なくとも正孔注入層と発光層が設けられていればよく、その他の層は必要に応じて適宜設けられていればよい。ここで、電子注入層、電子輸送層及び正孔輸送層などが、その他の層に相当する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、正孔注入層(または正孔輸送層)における酸化モリブデンの含有量を減らすことなく正孔注入層(または正孔輸送層)の導電性を低下させてクロストークの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一態様である発光素子を説明する図。
【図2】本発明の一態様である発光装置を説明する図。
【図3】本発明の一態様である発光装置を説明する図。
【図4】本発明の一態様である発光装置を説明する図。
【図5】本発明の一態様である発光装置を説明する図。
【図6】本発明の一態様である発光装置を説明する図。
【図7】本発明の一態様である発光装置を搭載した電子機器を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光素子と発光装置について説明する。
【0021】
図1は、本実施の形態の発光素子の構造を示す。図1に示す発光素子は、基板100上に設けられた陽極102と、陽極102上に設けられた正孔注入層104と、正孔注入層104上に設けられた正孔輸送層106と、正孔輸送層106上に設けられた発光層108と、発光層108上に設けられた電子輸送層110と、電子輸送層110上に設けられた電子注入層112と、電子注入層112上に設けられた陰極114と、を有する。
【0022】
基板100は、発光素子の支持体として用いられるものである。基板100としては、例えばガラス基板、石英基板、プラスチック基板などを用いることができる。
【0023】
ガラス基板の具体例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、またはアルミノシリケートガラスなどのフュージョン法やフロート法で作製される無アルカリガラス基板及びセラミック基板の他に、本作製工程の処理温度に耐えうる耐熱性を有するプラスチック基板などを用いることができる。例えば、成分比として酸化ホウ素(B)よりも酸化バリウム(BaO)を多く含み、歪み点が730℃以上のガラス基板を用いることが好ましい。発光素子とともに設けられるトランジスタの半導体層を700℃程度の高温で熱処理する場合でも、ガラス基板を歪ませないからである。
【0024】
基板100がマザーガラスの場合、第1世代(320mm×400mm)、第2世代(400mm×500mm)、第3世代(550mm×650mm)、第4世代(680mm×880mm、または730mm×920mm)、第5世代(1000mm×1200mmまたは1100mm×1250mm)、第6世代(1500mm×1800mm)、第7世代(1900mm×2200mm)、第8世代(2160mm×2460mm)、第9世代(2400mm×2800mm、2450mm×3050mm)、第10世代(2950mm×3400mm)のいずれを用いてもよい。
【0025】
また、ステンレス合金などの金属基板の表面に絶縁膜を設けた基板を適用してもよい。また、プラスチック基板は軽量であり、可撓性を有し、可視光を透過するなどの発光素子の基板として魅力的な特徴を有する。また、プラスチック基板に防湿性を有する膜を形成し、または貼り付け、発光素子を水などの不純物から保護できる基板を用いてもよい。
【0026】
また、基板100上に下地膜として絶縁膜を形成してもよい。下地膜は、CVD法またはスパッタリング法などを用いて、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜または窒化酸化シリコン膜を単層で、または積層して形成すればよい。
【0027】
なお、「窒化酸化シリコン」とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多いものであって、好ましくは、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)及び水素前方散乱法(HFS:Hydrogen Forward scattering Spectrometry)を用いて測定した場合に、酸素が5〜30原子%、窒素が20〜55原子%、シリコンが25〜35原子%、水素が10〜30原子%の範囲で含まれるものをいう。
【0028】
なお、「酸化窒化シリコン」とは、窒素よりも酸素の含有量が多いものであって、好ましくは、RBS及びHFSを用いて測定した場合に、酸素が50〜70原子%、窒素が0.5〜15原子%、シリコンが25〜35原子%、水素が0.1〜10原子%の範囲で含まれるものをいう。
【0029】
ただし、酸化窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンを構成する原子の合計を100原子%としたとき、窒素、酸素、シリコン及び水素の含有比率が前記範囲内に含まれるものとする。
【0030】
陽極102は、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物などにより設けられた電極である。このような陽極102の材料として、具体的には、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、シリコン若しくは酸化シリコンを含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウムなどが挙げられる。この他、陽極102の材料としては、金、白金、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、チタンまたは該金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)などが挙げられる。
【0031】
陽極102は、スパッタリング法を用いて形成すればよい。例えば、陽極102の材料が酸化インジウム−酸化亜鉛である場合には、酸化インジウムに1重量パーセント以上20重量パーセント以下の酸化亜鉛が加えられたターゲットを用いればよい。または、陽極102の材料が酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウムである場合には、酸化インジウムに0.5重量パーセント以上5重量パーセント以下の酸化タングステンと、0.1重量パーセント以上1重量パーセント以下の酸化亜鉛が加えられたターゲットを用いればよい。その他、ゾル−ゲル法などを応用して、インクジェット法またはスピンコート法などにより形成してもよい。
【0032】
なお、陽極102は、反射電極と透光性の電極が積層されて設けられた構成であってもよい。
【0033】
陽極102上のEL層の材料には公知の物質を用いればよく、低分子系化合物及び高分子系化合物のどちらを用いることもできる。なお、EL層の材料には、有機化合物のみからなるものだけでなく、無機化合物を一部に含むものも用いることができる。
【0034】
正孔注入層104は、ホール移動度が10−6cm/Vs以上の有機化合物と、酸化モリブデンと、添加物と、を含む混合層を用いることができる。
【0035】
有機化合物には低分子系化合物及び高分子系化合物のどちらも用いることができる。低分子系化合物としては、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’−ビス{4−[ビス(3−メチルフェニル)アミノ]フェニル}−N,N’−ジフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)などを用いることができる。
【0036】
また、高分子系化合物としては、オリゴマー、デンドリマーまたはポリマーなどを用いることができる。例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物を用いることができる。
【0037】
正孔輸送層106は、正孔輸送性の高い物質(正孔移動度が10−6cm/Vs以上であることが好ましい)を含む層である。正孔輸送性の高い物質としては、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層で形成してもよいし、前記物質からなる層が二層以上積層して形成されていてもよい。
【0038】
また、正孔輸送層106には、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、9−[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)のようなカルバゾール誘導体や、t−BuDNA、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)のようなアントラセン誘導体を用いてもよい。
【0039】
また、正孔輸送層106には、PVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPDなどの高分子化合物を用いることもできる。
【0040】
発光層108は、発光材料を含む層である。発光材料としては、例えば、蛍光を発光する蛍光性化合物や燐光を発光する燐光性化合物を用いることができる。発光層108に用いることができる蛍光性物質としては、例えば、青色系の発光材料として、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)]−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)などが挙げられる。また、黄色系の発光材料としては、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)などが挙げられる。また、赤色系の発光材料としては、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)などが挙げられる。
【0041】
また、発光層108に用いることができる燐光性化合物としては、例えば、緑色系の発光材料として、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy)3)、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)2(acac))、ビス(1,2−ジフェニル−1H−ベンゾイミダゾラト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pbi)2(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)2(acac))、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:Ir(bzq)3)などが挙げられる。また、黄色系の発光材料としては、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)2(acac))、ビス[2−(4’−パーフルオロフェニルフェニル)ピリジナト]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p−PF−ph)2(acac))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)−5−メチルピラジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdppr−Me)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス{2−(4−メトキシフェニル)−3,5−ジメチルピラジナト}イリジウム(III)(略称:Ir(dmmoppr)2(acac))などが挙げられる。また、橙色系の発光材料としては、トリス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(pq)3)、ビス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pq)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(3,5−ジメチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr−Me)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(5−イソプロピル−3−メチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr−iPr)2(acac))などが挙げられる。また、赤色系の発光材料としては、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)2(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)2(acac))、(ジピバロイルメタナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)2(dpm))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)などの有機金属錯体が挙げられる。また、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)3(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)3(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)3(Phen))などの希土類金属錯体は、希土類金属イオンからの発光(異なる多重度間の電子遷移)であるため、燐光性化合物として用いることができる。
【0042】
また、発光材料として高分子化合物を用いてもよい。具体的には、青色系の発光材料として、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)(略称:PFO)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)](略称:PF−DMOP)、ポリ{(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−[N,N’−ジ−(p−ブチルフェニル)−1,4−ジアミノベンゼン]}(略称:TAB−PFH)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料としては、ポリ(p−フェニレンビニレン)(略称:PPV)、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−alt−co−(ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,7−ジイル)](略称:PFBT)、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−alt−co−(2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−フェニレン)]などが挙げられる。また、橙色〜赤色系の発光材料としては、ポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン](略称:MEH−PPV)、ポリ(3−ブチルチオフェン−2,5−ジイル)(略称:R4−PAT)、ポリ{[9,9−ジヘキシル−2,7−ビス(1−シアノビニレン)フルオレニレン]−alt−co−[2,5−ビス(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン]}、ポリ{[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−ビス(1−シアノビニレンフェニレン)]−alt−co−[2,5−ビス(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン]}(略称:CN−PPV−DPD)などが挙げられる。
【0043】
また、発光性の有機化合物を含む層を複数設け、それぞれの層の発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、発光性の有機化合物を含む層を2つ有する発光素子において、第1の発光性の有機化合物を含む層の発光色と第2の発光性の有機化合物を含む層の発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることもできる。なお、補色とは、混合すると無彩色になる色をいう。つまり、補色の関係にある色を発光する物質から得られた光を混合すると、白色発光を得ることができる。また、発光性の有機化合物を含む層を3つ以上有する発光素子の場合でも同様である。
【0044】
電子輸送層110は、電子輸送性の高い(好ましくは電子移動度が10−6cm/Vs以上の)物質を含む層である。電子輸送性の高い物質としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、BAlq、Zn(BOX)2、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などの金属錯体が挙げられる。また、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、4,4’−ビス(5−メチルベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン(略称:BzOs)などの複素芳香族化合物も用いることができる。また、ポリ(2,5−ピリジン−ジイル)(略称:PPy)、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(ピリジン−3,5−ジイル)](略称:PF−Py)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,2’−ビピリジン−6,6’−ジイル)](略称:PF−BPy)のような高分子化合物が挙げられる。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、前記物質以外のものを電子輸送層の材料として用いてもよい。
【0045】
また、電子輸送層110は、単層のものだけでなく、前記物質からなる層が二層以上積層されたものであってもよい。
【0046】
電子注入層112は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層112には、リチウム、セシウム、カルシウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム若しくはリチウム酸化物などのようなアルカリ金属、アルカリ土類金属またはこれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウムのような希土類金属化合物を用いてもよい。または、電子輸送層110を構成する物質を用いてもよい。
【0047】
陰極114は、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物またはこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極114の材料として具体的には、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわち、リチウムやセシウムなどのアルカリ金属、及びマグネシウム、カルシウム、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属並びにこれらを含む合金(例えば、MgAgまたはAlLi)、ユーロピウム、イッテルビウムなどの希土類金属並びにこれらを含む合金などが挙げられる。
【0048】
なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはこれらを含む合金を用いて陰極114を形成する場合には、真空蒸着法またはスパッタリング法を用いることができる。また、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いてもよい。
【0049】
なお、本実施の形態の発光素子は、図1に示す構成に限定されない。
【0050】
本実施の形態の発光素子では、図1に示すものとは陽極側と陰極側が逆であってもよい。すなわち、本実施の形態の発光素子は、基板上に設けられた陰極と、該陰極上に設けられた電子注入層と、該電子注入層上に設けられた電子輸送層と、該電子輸送層上に設けられた発光層と、該発光層上に設けられた正孔輸送層と、該正孔輸送層上に設けられた正孔注入層と、該正孔注入層上に設けられた陽極と、を有する構成であってもよい。
【0051】
また、本実施の形態の発光素子では、少なくとも正孔注入層と発光層が設けられていればよく、電子注入層、電子輸送層及び正孔輸送層が設けられていなくてもよい。
【0052】
図1に示す本実施の形態の発光素子は、発光装置に適用することができる。図2は、図1に示す発光素子を適用した発光装置の構造の一例を示す。
【0053】
図2に示す発光装置は、基板150上に第1のトランジスタ152A及び第2のトランジスタ152Bを有し、第1のトランジスタ152Aのソース及びドレインの一方には第1の陽極154Aが電気的に接続され、第2のトランジスタ152Bのソース及びドレインの一方には第2の陽極154Bが電気的に接続され、第1の陽極154A上には正孔注入層156を有し、正孔注入層156上の第1の陽極154Aと重畳する部分の一部(発光領域)には第1の発光層158Aを有し、正孔注入層156上の第2の陽極154Bと重畳する部分の一部(発光領域)には第2の発光層158Bを有し、正孔注入層156の発光層が設けられていない部分、第1の発光層158A及び第2の発光層158B上には電子注入層160を有し、電子注入層160上には陰極162を有する。
【0054】
なお、図2には、EL層として正孔注入層156、第1の発光層158A、第2の発光層158B、電子注入層160を有する一形態例を示したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、図1にて説明したように正孔輸送層及び電子輸送層を有していてもよいし、電子注入層160が設けられていなくてもよい。なお、電子注入層160が設けられていない形態を図3に示す。
【0055】
図2に示す発光装置は、第1の画素と、該第1の画素に隣接する第2の画素と、を有する。第1の画素の発光領域は第1の発光層158Aを用いて設けられ、第2の画素の発光領域は第2の発光層158Bを用いて設けられている。
【0056】
なお、第1のトランジスタ152A及び第2のトランジスタ152Bとしては、トップゲート型トランジスタを示しているが、本発明はこれに限定されない。第1のトランジスタ152A及び第2のトランジスタ152Bは図示したようにトップゲート型であってもよいし、ボトムゲート型であってもよい。更には、第1のトランジスタ152A及び第2のトランジスタ152Bを構成する半導体層の材料も特に限定されず、第1のトランジスタ152A及び第2のトランジスタ152Bを構成する半導体層の材料はシリコンであってもよいし、酸化物半導体であってもよい。
【0057】
なお、陰極162は、所定の電位に固定されている。
【0058】
ここで、第1の画素を発光させ、第2の画素を発光させない場合について説明する。第1の画素を発光させる場合には、第1の陽極154Aと陰極162の間に電位差を生じさせ、第1の陽極154Aから陰極162まで電流を流す(第1の電流経路170)ことで発光させる。
【0059】
しかし、図2に示す発光装置において、正孔注入層156は、第1の画素上から第2の画素上まで繋がって設けられている。そのため、正孔注入層156が低抵抗である場合には、第1の画素を発光させると、電流は正孔注入層156及び第2の発光層158Bを通過して陰極162まで流れて(第2の電流経路172)第2の画素も発光させることがあるという問題がある。このようにして隣接する画素が発光することでクロストークが発生する。
【0060】
そこで、本実施の形態では、酸化モリブデンを含む正孔注入層に添加物を添加することで、正孔注入層の結晶化を抑制しつつ、隣接する画素間のクロストークの発生を防止する。前記添加物は、蒸着により形成可能な材料であればよい。
【0061】
前記添加物としては、例えばドナー性物質を用いることができる。ドナー性物質は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である。ドナー性物質として、好ましくはLiまたはCaを用いる。Liは、正孔注入層を形成する材料に均一に混合させることが容易だからである。前記添加物としてLiを用いる場合には、Liの濃度は1重量パーセント以上10重量パーセント以下とすることが好ましい。Caは、Liよりも空気及び水との反応性に乏しく、取り扱いが容易である。
【0062】
また、前記添加物としては、例えば酸化モリブデンとの反応性が乏しい物質を用いてもよい。前記添加物として用いる物質は、正孔注入層の導電性を低下させるために用いるものであるため、サイズが大きい(ホスト材料と同程度以上である)ことが好ましい。
【0063】
なお、酸化モリブデンとの反応性が乏しい前記物質は、HOMO準位が−5.8eV以下、好ましくは−5.9eV以下の物質であればよく、ジベンゾキノキサリン系、フェナントロリン系、トリアゾール系、オキサジアゾール系の物質を用いることができる。
【0064】
ジベンゾキノキサリン系の物質としては、例えば、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン、2−[4−(3,6−ジフェニル−9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−3−フェニルジベンゾ[f,h]キノキサリン、7−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン、2ーフェニルジベンゾ[f,h]キノキサリン、2−[3−(3,6−ジフェニル−9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン、2−[4−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f、h]キノキサリン、2−[3−(3´−ジベンゾチオフェン−4−イル)ビフェニル]ジベンゾ[f、h]キノキサリン、2−[3−(ジベンゾフラン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f、h]キノキサリン、6−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−ジベンゾキノキサリン、2−[4−(ジベンゾチオフェン−2−イル)フェニル]ジベンゾ[f、h]キノキサリンが挙げられる。
【0065】
フェナントロリン系の物質としては、例えば、2,9−ジメチル−4,7―ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2−(4−t−ブチルフェニル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2−ナフチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2−(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンが挙げられる。
【0066】
トリアゾール系の物質としては、例えば、9−[4−(3,5−ジフェニル−1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)]フェニル−9H−カルバゾール (略称:CzTAZ(1H)、9−[4’’’−(3,5−ジフェニル−1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−[1,1’:2’,1’’:2’’,1’’’]クアテルフェニル−4−イル]−9H−カルバゾール (略称:Z−CzPTAZ(1H)、3−[4−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル)]−4,5−ジフェニル−4H−1,2,4−トリアゾール(略称:DBTTAZ−2)が挙げられる。
【0067】
オキサジアゾール系の物質としては、例えば、9−[4−(3−フェニル−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)]フェニル−9H−カルバゾール (略称:CzOd)、2,5−[4−(ジベンゾチオフェン−1−イル)ジフェニル]−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−[4−(2,7−ジフェニルジベンゾチオフェン−4−イル)ジフェニル]−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス[4,4´´(ジベンゾチオフェン−1−イル)フェニル]−1,3,4−オキサジアゾールが挙げられる。
【0068】
または、本発明の一態様では、前記添加物としてホール移動度が10−7cm/Vs以下の物質を用いてもよい。ここで、前記添加物は、有機物であることが好ましい。
【0069】
なお、第1の発光層158A及び第2の発光層158Bと重畳する平坦部における正孔注入層156の厚さと、隔壁157上の平坦部における正孔注入層の厚さは、概略等しいものとするとよい。
【0070】
ところで、本実施の形態の発光装置は、アクティブマトリクス型であってもよいし、パッシブマトリクス型であってもよい。図4には、本実施の形態の発光装置の一例であるアクティブマトリクス型の構成を示す。
【0071】
図4(A)は発光装置を示す上面図であり、図4(B)は図4(A)をP−Qで切断した断面図である。図4(A)及び(B)に示す発光装置は、ソース側駆動回路201、画素部202、ゲート側駆動回路203、封止基板204及びシール材205を有し、シール材205で囲まれた内側は、空間207である。
【0072】
なお、引き回し配線208はソース側駆動回路201及びゲート側駆動回路203に入力される信号を伝送し、外部入力端子となるFPC209からビデオ信号、クロック信号、スタート信号及びリセット信号などを受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにプリント配線基板(PWB)が取り付けられていてもよい。
【0073】
次に、断面構造について図4(B)を用いて説明する。基板210上にはソース側駆動回路201、ゲート側駆動回路203及び複数の画素を有する画素部202が設けられているが、ここでは、ソース側駆動回路201と画素部202に複数形成された画素のうち一つの画素が示されている。
【0074】
なお、ソース側駆動回路201は、nチャネル型トランジスタ223とpチャネル型トランジスタ224を組み合わせたCMOS回路を有することが好ましいが、PMOS回路またはNMOS回路のみにより構成されていてもよい。
【0075】
なお、図4には、基板上に駆動回路(ソース側駆動回路201及びゲート側駆動回路203)が設けられている構成を示しているが、これに限定されず、異なる基板に設けられた駆動回路(ソース側駆動回路201及びゲート側駆動回路203)を用いてもよい。
【0076】
また、画素部202は、スイッチング用トランジスタ211と、電流制御用トランジスタ212と、電流制御用トランジスタ212のドレインに電気的に接続された第1の電極213と、を含む複数の画素により構成されている。なお、第1の電極213の端部を覆って隔壁214が設けられている。隔壁214は、例えばポジ型の感光性アクリル樹脂材料により形成すればよい。
【0077】
また、隔壁214上のカバレッジを良好なものとするため、隔壁214の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにするとよい。例えば、隔壁214の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、隔壁214の上端部に曲率半径が0.2μm〜3μmの曲面が設けられていることが好ましい。また、隔壁214の材料としては、露光によってエッチャントに対して不溶性となるネガ型の感光性材料を用いてもよいし、露光によってエッチャントに対して溶解性となるポジ型の感光性材料を用いてもよい。
【0078】
第1の電極213上には、EL層216及び第2の電極217が設けられている。第1の電極213は、図2における第1の陽極154A及び第2の陽極154Bに相当し、第2の電極217は、図2における陰極162に相当する。
【0079】
EL層216の特徴に関しては、図2を用いて説明した通りである。
【0080】
なお、図4では、シール材205で封止基板204と基板210を貼り合わせることにより、基板210、封止基板204及びシール材205で囲まれた空間207に発光素子218が備えられた構成になっている。なお、空間207は、不活性気体(窒素またはアルゴンなど)により充填されていてもよいし、シール材205により充填されていてもよい。
【0081】
なお、発光素子218の劣化を防ぐために、空間207を囲む構造物である基板210、封止基板204及びシール材205は、水分及び酸素を透過しにくいものであることが好ましい。
【0082】
封止基板204は、ガラス基板または石英基板であってもよいし、プラスチック基板であってもよい。封止基板204として用いられるプラスチック基板の材料としては、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(PolyVinyl Fluoride)、ポリエステル(Polyester)またはアクリル樹脂などが挙げられる。
【0083】
封止基板204として、好ましくは水蒸気透過率が1.0×10−7g/m/day以下であるバリア性の高い樹脂フィルムを用いることが好ましい。このようなバリア性の高い樹脂フィルムは、水蒸気透過率がガラス基板と同程度の低さであるにも関わらず可撓性を有するため、可撓性のデバイスを作製することができる。更には、可撓性を有するため巻き取ることができ、生産性が高く、低コスト化できる。なお、二枚の封止基板で挟んで発光素子218を含むデバイスを密封してもよい。
【0084】
図5(A)乃至(C)には、本実施の形態の発光装置の一例であるパッシブマトリクス型の構成を示す。図5(A)は、パッシブマトリクス型の発光装置の斜視図を示し、図5(B)は、図5(A)のS−Tにおける断面図を示し、図5(C)は、図5(A)のX−Yにおける断面図を示す。
【0085】
図5(A)乃至(C)において、基板251上には、第1の電極252、第2の電極257、第1の電極252と第2の電極257に挟持された正孔注入層255及び発光層256が設けられている。そして、第1の電極252の端部は絶縁層253で覆われ、絶縁層253上には隔壁254が設けられている。
【0086】
図5(A)及び(B)に示すように、隔壁254の側壁は、基板251に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなるような傾斜を有する。つまり、隔壁254の短辺方向の断面は、逆台形であり、底辺(絶縁層253に接する側の辺)の方が上辺(正孔注入層255に接する側の辺)よりも短い。このように、隔壁254を設けることで、静電気などに起因した発光素子の不良を防ぐことができる。
【0087】
図5(C)に示すように、隣接する画素間の正孔注入層255は繋がっている。そのため、正孔注入層255が低抵抗である場合には、一の画素を発光させると、前記画素に隣接する画素も発光させることがある。このようにして隣接する画素間でクロストークが発生する。図2を参照して説明したように、本発明の一態様により、このクロストークの発生を防止することができる。
【0088】
なお、本発明の一態様である発光装置は、トップエミッション型とすることが好ましい。トップエミッション型とすることで、発光した光を配線層などによって遮光されることなく取り出せるため、開口率を高くすることができる。
【0089】
なお、本発明の一態様である発光装置は、白色光を発光させ、発光素子と重畳して設けられたカラーフィルターにより赤色、青色、緑色の光をそれぞれ取り出すことができる構成とすることが好ましい。このような構成とすると、発光素子を各色で塗り分ける必要がないからである。
【0090】
このように、白色光を発光させ、発光素子と重畳して設けられたカラーフィルターにより赤色、青色、緑色の光をそれぞれ取り出す構成とすると、偏光板が不要となるため好ましい。
【0091】
また、白色光を発光させ、発光素子と重畳して設けられたカラーフィルターにより赤色、青色、緑色の光をそれぞれ取り出す構成とすると、各色の発光素子を塗り分ける場合と比較して隔壁の幅を狭くすることができるため、開口率が向上し、好ましい。
【0092】
また、白色光を発光させ、発光素子と重畳して設けられたカラーフィルターにより赤色、青色、緑色の光をそれぞれ取り出す構成とすると、各色の発光素子を塗り分ける工程を行わないため、発光素子の塗り分けに用いるメタルマスクが不要となり、好ましい。また、メタルマスクが不要であると、発光素子を大型基板上に形成することができ、好ましい。
【0093】
また、白色光を発光させ、発光素子と重畳して設けられたカラーフィルターにより赤色、青色、緑色の光をそれぞれ取り出す構成とすると、各色の発光素子を塗り分ける工程が不要となるため、好ましい。また、工程が簡略化するため歩留まりが向上し、好ましい。
【0094】
このように、白色光を発光させ、発光素子と重畳して設けられたカラーフィルターにより赤色、青色、緑色の光をそれぞれ取り出す構成とすると、発光素子を各色で塗り分ける必要がないなど数多くのメリットを有する。このような構成とする場合には、隣接する画素間で発光層が繋がっていてもよい。しかし、隣接する画素間で発光層が繋がっていると、隣接する画素間で発光層が導通することによるクロストークも生じうる。
【0095】
図6に示す発光装置は、第1の画素と、該第1の画素に隣接する第2の画素と、を有する。第1の画素の発光領域及び第2の画素の発光領域は連続した発光層158を用いて設けられている。
【0096】
図6に示す発光装置において、隣接する画素間での発光層の導通は、発光層に中間層が含まれている場合に起こりうる。これは中間層に酸化モリブデンを含ませるために起こる。
【0097】
中間層は、少なくとも電荷発生領域を含んで形成されていればよく、電荷発生領域以外の層と積層された構成であってもよい。例えば、電荷発生領域、電子リレー層及び電子注入バッファーが陰極側からこの順に設けられた構造を適用することができる。
【0098】
中間層における電子とホールの挙動について説明する。陽極と陰極の間に、発光素子のしきい値電圧より高い電圧を印加すると、電荷発生領域において、ホールと電子が発生し、ホールは陰極へ移動し、電子は電子リレー層へ移動する。電子リレー層は電子輸送性が高く、電荷発生領域で生じた電子を電子注入バッファーに速やかに受け渡す。電子注入バッファーは電子注入バッファーに隣接する陽極側の層に電子を注入する障壁を緩和し、電子注入バッファーに隣接する陽極側の層への電子注入効率を高める。従って、電荷発生領域で発生した電子は、電子リレー層と電子注入バッファーを経て、電子注入バッファーに隣接する陽極側の層のLUMO準位に注入される。
【0099】
なお、図6に示す発光装置は、隣接する画素間の発光層が繋がっていることを除けば、図2に示す発光装置の構成と同様である。
【0100】
(実施の形態2)
本発明の一態様である発光素子を適用した電子機器として、ビデオカメラやデジタルカメラなどのカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポなど)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍など)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的には、Digital Versatile Disc(DVD)などの記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を図7に示す。
【0101】
図7(A)は、本発明の一態様である発光素子を適用したテレビ装置であり、筐体301、支持台302、表示部303、スピーカ部304、ビデオ入力端子305などを含む。このテレビ装置において、表示部303は、実施の形態1で説明した発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。
【0102】
図7(B)は、本発明の一態様である発光素子を適用したコンピュータであり、本体311、筐体312、表示部313、キーボード314、外部接続ポート315、ポインティングデバイス316などを含む。このコンピュータにおいて、表示部313は、実施の形態1で説明した発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。
【0103】
図7(C)は、本発明の一態様である発光素子を適用した携帯電話であり、筐体321に組み込まれた表示部322の他、操作ボタン323、外部接続ポート324、スピーカ325、マイク326などを備えている。表示部322を指などで触れることで、情報を入力することができる。また、電話を掛ける、或いはメールを打つ操作は、表示部322を指などで触れることにより行うことができる。この携帯電話において、表示部322は、実施の形態1で説明した発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。
【0104】
図7(D)は、本発明の一態様である発光素子を適用したカメラであり、本体331、表示部332、筐体333、外部接続ポート334、リモコン受信部335、受像部336、バッテリー337、音声入力部338、操作キー339、接眼部340などを含む。このカメラにおいて、表示部332は、実施の形態1で説明した発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。
【0105】
なお、本実施の形態では、発光装置を用いた表示装置のみを記載しているがこれに限定されず、照明器具に本発明の一態様である発光装置を用いてもよい。
【符号の説明】
【0106】
100 基板
102 陽極
104 正孔注入層
106 正孔輸送層
108 発光層
110 電子輸送層
112 電子注入層
114 陰極
150 基板
152A 第1のトランジスタ
152B 第2のトランジスタ
154A 第1の陽極
154B 第2の陽極
156 正孔注入層
157 隔壁
158 発光層
158A 第1の発光層
158B 第2の発光層
160 電子注入層
162 陰極
170 第1の電流経路
172 第2の電流経路
201 ソース側駆動回路
202 画素部
203 ゲート側駆動回路
204 封止基板
205 シール材
207 空間
208 配線
209 FPC
210 基板
211 スイッチング用トランジスタ
212 電流制御用トランジスタ
213 第1の電極
214 隔壁
216 EL層
217 第2の電極
218 発光素子
223 nチャネル型トランジスタ
224 pチャネル型トランジスタ
251 基板
252 第1の電極
253 絶縁層
254 隔壁
255 正孔注入層
256 発光層
257 第2の電極
301 筐体
302 支持台
303 表示部
304 スピーカ部
305 ビデオ入力端子
311 本体
312 筐体
313 表示部
314 キーボード
315 外部接続ポート
316 ポインティングデバイス
321 筐体
322 表示部
323 操作ボタン
324 外部接続ポート
325 スピーカ
326 マイク
331 本体
332 表示部
333 筐体
334 外部接続ポート
335 リモコン受信部
336 受像部
337 バッテリー
338 音声入力部
339 操作キー
340 接眼部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極の間に少なくとも正孔注入層と、発光層と、を有するEL層が挟持され、
前記正孔注入層は前記陽極と前記発光層の間に配され、
前記正孔注入層は酸化モリブデンと添加物を含むことを特徴とする発光素子。
【請求項2】
請求項1において、
前記添加物はアルカリ金属またはアルカリ土類金属であることを特徴とする発光素子。
【請求項3】
請求項2において、
前記添加物はLiであることを特徴とする発光素子。
【請求項4】
請求項3において、
前記Liの濃度は、1重量パーセント以上10重量パーセント以下であることを特徴とする発光素子。
【請求項5】
請求項2において、
前記添加物はCaであることを特徴とする発光素子。
【請求項6】
請求項1において、
前記添加物のホール移動度は10−7cm/Vs以下であることを特徴とする発光素子。
【請求項7】
請求項1において、
前記添加物のLUMO準位が−5.8eV以下であることを特徴とする発光素子。
【請求項8】
請求項6または請求項7において、
前記添加物のサイズは前記正孔注入層のホスト材料のサイズよりも大きいことを特徴とする発光素子。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一に記載の発光素子を有する発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−182443(P2012−182443A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−23576(P2012−23576)
【出願日】平成24年2月7日(2012.2.7)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】