説明

発光素子

【課題】燐光発光できる有機金属錯体のバリエーションを豊富にする。また、発光スペクトルがシャープで、発光効率の高い有機金属錯体を提供する。さらに、それらの有機金属錯体を用いて発光素子を作製することで、発光色のバリエーションに富んだ発光素子を提供する。また、色純度が高く、発光効率の高い発光素子を提供する。
【解決手段】下記一般式(G1)で表される構造を有する有機金属錯体を合成し、発光素子に適用する。


(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基、または炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基のいずれかを表す。また、RおよびRは水素、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、Arは炭素数6〜25のアリーレン基を表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機金属錯体に関する。特に、三重項励起状態を発光に変換できる有機金属錯
体に関する。また本発明は、前記有機金属錯体を用いた発光素子、発光装置、並びに電子
機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機化合物は、光を吸収することで励起状態となる。そして、この励起状態を経由するこ
とにより、種々の反応(光化学反応)を起こす場合や発光(ルミネッセンス)を生じる場
合があり、様々な応用がなされている。
【0003】
光化学反応の一例として、一重項酸素の不飽和有機分子との反応(酸素付加)がある(例
えば、非特許文献1参照)。酸素分子は基底状態が三重項状態であるため、一重項状態の
酸素(一重項酸素)は直接の光励起では生成しない。しかしながら、他の三重項励起分子
の存在下においては一重項酸素が生成し、酸素付加反応に至ることができる。この時、三
重項励起分子を形成できる化合物は、光増感剤と呼ばれる。
【0004】
このように、一重項酸素を生成するためには、三重項励起分子を光励起により形成できる
光増感剤が必要である。しかしながら、通常の有機化合物は基底状態が一重項状態である
ため、三重項励起状態への光励起は禁制遷移となり、三重項励起分子は生じにくい。した
がって、このような光増感剤としては、一重項励起状態から三重項励起状態への項間交差
を起こしやすい化合物(あるいは、直接三重項励起状態へ光励起されるという禁制遷移を
許容する化合物)が求められている。言い換えれば、そのような化合物は光増感剤として
の利用が可能であり、有益と言える。
【0005】
また、そのような化合物は、しばしば燐光を放出することがある。燐光とは多重度の異な
るエネルギー間の遷移によって生じる発光のことであり、通常の有機化合物では三重項励
起状態から一重項基底状態へ戻る際に生じる発光のことをさす(これに対し、一重項励起
状態から一重項基底状態へ戻る際の発光は、蛍光と呼ばれる)。燐光を放出できる化合物
、すなわち三重項励起状態を発光に変換できる化合物(以下、燐光性化合物と称す)の応
用分野としては、有機化合物を発光物質とする発光素子が挙げられる。
【0006】
この発光素子の構成は、電極間に発光物質である有機化合物を含む発光層を設けただけの
単純な構造であり、薄型軽量・高速応答性・直流低電圧駆動などの特性から、次世代のフ
ラットパネルディスプレイ素子として注目されている。また、この発光素子を用いたディ
スプレイは、コントラストや画質に優れ、視野角が広いという特徴も有している。
【0007】
有機化合物を発光物質とする発光素子の発光機構は、キャリア注入型である。すなわち、
電極間に発光層を挟んで電圧を印加することにより、電極から注入された電子およびホー
ルが再結合して発光物質が励起状態となり、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する
。そして、励起状態の種類としては、先に述べた光励起の場合と同様、一重項励起状態(
)と三重項励起状態(T)が可能である。また、発光素子におけるその統計的な生
成比率は、S:T=1:3であると考えられている。
【0008】
一重項励起状態を発光に変換する化合物(以下、蛍光性化合物と称す)は室温において、
三重項励起状態からの発光(燐光)は観測されず、一重項励起状態からの発光(蛍光)の
みが観測される。したがって、蛍光性化合物を用いた発光素子における内部量子効率(注
入したキャリアに対して発生するフォトンの割合)の理論的限界は、S:T=1:3
であることを根拠に25%とされている。
【0009】
一方、上述した燐光性化合物を用いれば、内部量子効率は75〜100%にまで理論上は
可能となる。つまり、蛍光性化合物に比べて3〜4倍の発光効率が可能となる。このよう
な理由から、高効率な発光素子を実現するために、燐光性化合物を用いた発光素子の開発
が近年盛んに行われている(例えば、非特許文献2参照)。特に、燐光性化合物としては
、その燐光量子収率の高さゆえに、イリジウム等を中心金属とする有機金属錯体が注目さ
れている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】井上晴夫、外3名、基礎化学コース 光化学I(丸善株式会社)、106−110
【非特許文献2】Zhang、Guo−Lin、外5名、Gaodeng Xuexiao Huaxue Xuebao(2004)、vol.25、No.3、397−400
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
非特許文献2で開示されているような有機金属錯体は、項間交差を起こしやすいため光増
感剤としての利用などが期待できる。また、三重項励起状態からの発光(燐光)を生じや
すいため、発光素子へ応用することにより、高効率な発光素子が期待される。しかしなが
ら、このような有機金属錯体の種類はまだ少ないのが現状である。
【0012】
例えば、非特許文献2で開示されている有機金属錯体の配位子として用いているピラジン
誘導体は、エチレンジアミンとα−ジケトン(ベンジル)との脱水縮合反応、およびそれ
に続く脱水素反応により合成されるが、原料として用いることのできるエチレンジアミン
誘導体やα−ジケトンの種類が限られているため、ピラジン誘導体の種類は限られてしま
う。したがって、該ピラジン誘導体を配位子とする有機金属錯体の種類も、自ずと限定さ
れてしまう。
【0013】
また、非特許文献2で開示されている有機金属錯体は、発光スペクトルがブロードである
という問題点もある。このことは色純度の低下を招くため、フルカラーディスプレイなど
への応用を考慮した場合、色再現性の観点で不利な要素となる。また、この有機金属錯体
は赤橙色の発光であるが、発光スペクトルがブロードだとスペクトルが深赤色〜赤外の領
域まで広がってしまい、発光効率(視感効率(cd/A))を低下させる要因ともなる。
【0014】
以上のことから、本発明では、種々の誘導体を容易に合成できる有機化合物を配位子とし
て適用することで、燐光発光できる有機金属錯体のバリエーションを豊富にすることを課
題とする。また、発光スペクトルがシャープな有機金属錯体を提供することを課題とする
。また、発光効率の高い有機金属錯体を提供することを課題とする。
【0015】
さらに、このような有機金属錯体を用いて発光素子を作製することで、緑色〜赤色に至る
まで、発光色のバリエーションに富んだ発光素子を提供すること課題とする。また、色純
度の高い発光素子を提供することを課題とする。また、発光効率の高い発光素子を提供す
ることを課題とする。また、消費電力の低減された発光装置および電子機器を提供するこ
とを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(G0)で表されるピラジン誘導体が、
第9族または第10族の金属イオンに対してオルトメタル化することにより、有機金属錯
体を形成できることを見出した。また、一般式(G0)がオルトメタル化した構造を有す
る有機金属錯体が、項間交差を起こしやすく、また燐光発光できることを見出した。
【0017】
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基、または
炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基のいずれかを表す。また、RおよびRは水素
、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、Arは炭素数6〜25のア
リール基を表し、前記アリール基は置換基をさらに有していてもよい。)
【0018】
したがって本発明の構成は、下記一般式(G1)で表される構造を有する有機金属錯体で
ある。
【0019】
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基、または
炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基のいずれかを表す。また、RおよびRは水素
、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、Arは炭素数6〜25のア
リーレン基を表し、前記アリーレン基は置換基をさらに有していてもよい。また、Mは中
心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、αは、前記ア
リーレン基において前記中心金属と結合している炭素の位置を表す。)
【0020】
また、上述の一般式(G0)におけるRが水素の場合、一般式(G0)で表されるピラ
ジン誘導体は立体障害が小さくなるため金属イオンにオルトメタル化しやすく、合成の収
率の観点で好ましい。したがって、本発明の好ましい構成は、下記一般式(G2)で表さ
れる構造を有する有機金属錯体である。
【0021】
【化3】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基、または
炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基のいずれかを表す。また、Rは水素、または炭
素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、Arは炭素数6〜25のアリーレン基
を表し、前記アリーレン基は置換基をさらに有していてもよい。また、Mは中心金属であ
り、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、αは、前記アリーレン基
において前記中心金属と結合している炭素の位置を表す。)
【0022】
なお、上述の一般式(G1)または(G2)において、アリーレン基(Ar)としてはフ
ェニレン基が好ましい。フェニレン基に置換基を導入することにより、緑色から赤色に至
るまで幅広い領域の発光色を実現できるためである。したがって、本発明の好ましい構成
は、下記一般式(G3)または(G4)で表される構造を有する有機金属錯体である。な
お、(G4)は(G2)と同様の理由で、合成の収率の観点でさらに好ましい。
【0023】
【化4】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基、または
炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基のいずれかを表す。また、RおよびRは水素
、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R〜Rは水素、または
炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基、またはハロゲン基、ま
たはトリフルオロメチル基、または炭素数6〜12のアリール基、または炭素数2〜8の
ジアルキルアミノ基、または炭素数12〜24のジアリールアミノ基のいずれかを表す。
また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。)
【0024】
【化5】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基、または
炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基のいずれかを表す。また、Rは水素、または炭
素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R〜Rは水素、または炭素数1〜
4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基、またはハロゲン基、またはトリフ
ルオロメチル基、または炭素数6〜12のアリール基、または炭素数2〜8のジアルキル
アミノ基、または炭素数12〜24のジアリールアミノ基のいずれかを表す。また、Mは
中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。)
【0025】
また、上記一般式(G4)において、RおよびRが水素の場合、ピラジン誘導体の立
体障害がさらに小さくなるため、合成の収率の観点でさらに好ましくなる。また、異性体
(isomer)が生じにくくなることもメリットとなる。したがって、本発明のより好
ましい構成は、下記一般式(G5)で表される構造を有する有機金属錯体である。
【0026】
【化6】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基、または
炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基のいずれかを表す。また、Rは水素、または炭
素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、Rは水素、または炭素数1〜4のア
ルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基、またはハロゲン基、またはトリフルオロ
メチル基、または炭素数6〜12のアリール基、または炭素数2〜8のジアルキルアミノ
基、または炭素数12〜24のジアリールアミノ基のいずれかを表す。また、Mは中心金
属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。)
【0027】
なお、上述の一般式(G1)または(G2)で表される構造を有する有機金属錯体におい
て、アリーレン基(Ar)の共役を拡張することにより、赤色の発光を得ることができ、
有用である。したがって、本発明の他の構成は、上述した一般式(G1)または(G2)
で表される構造を有する有機金属錯体において、前記アリーレン基が下記式(G6)〜(
G9)のいずれかで表される有機金属錯体である。
【0028】
【化7】

(式中、RおよびRは炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、αは、前記アリーレ
ン基において前記中心金属と結合している炭素の位置を表す。)
【0029】
ここで、上述の一般式(G1)で表される構造を有する有機金属錯体として、より具体
的には、下記一般式(G10)で表される有機金属錯体が合成が容易なため好ましい。
【0030】
【化8】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基、または
炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基のいずれかを表す。また、RおよびRは水素
、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、Arは炭素数6〜25のア
リーレン基を表し、前記アリーレン基は置換基をさらに有していてもよい。また、Mは中
心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、αは、前記ア
リーレン基において前記中心金属と結合している炭素の位置を表す。また、Lはモノアニ
オン性の配位子を表す。また、前記中心金属が第9族元素の時はn=2であり、第10族
元素の時はn=1である。)
【0031】
また、上述の一般式(G2)で表される構造を有する有機金属錯体として、より具体的
には、下記一般式(G11)で表される有機金属錯体が合成が容易なため好ましい。
【0032】
【化9】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基、または
炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基のいずれかを表す。また、Rは水素、または炭
素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、Arは炭素数6〜25のアリーレン基
を表し、前記アリーレン基は置換基をさらに有していてもよい。また、Mは中心金属であ
り、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、αは、前記アリーレン基
において前記中心金属と結合している炭素の位置を表す。また、Lはモノアニオン性の配
位子を表す。また、前記中心金属が第9族元素の時はn=2であり、第10族元素の時は
n=1である。)
【0033】
また、上述の一般式(G3)で表される構造を有する有機金属錯体として、より具体的
には、下記一般式(G12)で表される有機金属錯体が合成が容易なため好ましい。
【0034】
【化10】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基、または
炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基のいずれかを表す。また、RおよびRは水素
、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R〜Rは水素、または
炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基、またはハロゲン基、ま
たはトリフルオロメチル基、または炭素数6〜12のアリール基、または炭素数2〜8の
ジアルキルアミノ基、または炭素数12〜24のジアリールアミノ基のいずれかを表す。
また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、
Lはモノアニオン性の配位子を表す。また、前記中心金属が第9族元素の時はn=2であ
り、第10族元素の時はn=1である。)
【0035】
また、上述の一般式(G4)で表される構造を有する有機金属錯体として、より具体的
には、下記一般式(G13)で表される有機金属錯体が合成が容易なため好ましい。
【0036】
【化11】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基、または
炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基のいずれかを表す。また、Rは水素、または炭
素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R〜Rは水素、または炭素数1〜
4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基、またはハロゲン基、またはトリフ
ルオロメチル基、または炭素数6〜12のアリール基、または炭素数2〜8のジアルキル
アミノ基、または炭素数12〜24のジアリールアミノ基のいずれかを表す。また、Mは
中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、Lはモノア
ニオン性の配位子を表す。また、前記中心金属が第9族元素の時はn=2であり、第10
族元素の時はn=1である。)
【0037】
また、上述の一般式(G5)で表される構造を有する有機金属錯体として、より具体的
には、下記一般式(G14)で表される有機金属錯体が合成が容易なため好ましい。
【0038】
【化12】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基、または
炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基のいずれかを表す。また、Rは水素、または炭
素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、Rは水素、または炭素数1〜4のア
ルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基、またはハロゲン基、またはトリフルオロ
メチル基、または炭素数6〜12のアリール基、または炭素数2〜8のジアルキルアミノ
基、または炭素数12〜24のジアリールアミノ基のいずれかを表す。また、Mは中心金
属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、Lはモノアニオン
性の配位子を表す。また、前記中心金属が第9族元素の時はn=2であり、第10族元素
の時はn=1である。)
【0039】
なお、上述の一般式(G10)または(G11)で表される有機金属錯体において、アリ
ーレン基(Ar)の共役を拡張することにより、赤色の発光を得ることができ、有用であ
る。したがって、本発明の他の構成は、上述した一般式(G10)または(G11)で表
される有機金属錯体において、前記アリーレン基が下記式(G6)〜(G9)のいずれか
で表される有機金属錯体である。
【0040】
【化13】

(式中、RおよびRは炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、αは、前記アリーレ
ン基において前記中心金属と結合している炭素の位置を表す。)
【0041】
なお、上述のモノアニオン性の配位子Lは、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性
の二座キレート配位子、またはカルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配
位子、またはフェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、または
2つの配位元素がいずれも窒素であるモノアニオン性の二座キレート配位子のいずれかが
好ましい。特に好ましくは、下記の構造式(L1)〜(L8)に示すモノアニオン性の配
位子である。これらの配位子は、配位能力が高く、また、安価に入手することができるた
め有効である。
【0042】
【化14】

【0043】
また、より効率よく燐光発光させるためには、重原子効果の観点から、中心金属として
は重い金属の方が好ましい。したがって本発明では、上述した本発明の有機金属錯体にお
いて、中心金属Mがイリジウムまたは白金であることを特徴とする。
【0044】
ところで、上述の一般式(G1)〜(G5)で表される構造を有する有機金属錯体(す
なわち、上述の一般式(G10)〜(G14)で表される有機金属錯体も含む)は、一般
式(G0)で表されるピラジン誘導体が金属イオンにオルトメタル化しているという配位
構造が、燐光発光という機能に大きく寄与する。したがって、本発明の他の構成は、以上
で述べたような有機金属錯体を含む発光材料である。
【0045】
また、本発明の有機金属錯体は燐光発光できる、すなわち三重項励起エネルギーを発光
に変換することが可能であるため、発光素子に適用することにより高効率化が可能となり
、非常に有効である。したがって本発明は、本発明の有機金属錯体を用いた発光素子も含
むものとする。
【0046】
この時、本発明の有機金属錯体は、発光物質としての利用法が発光効率の面で効果的で
ある。したがって本発明は、本発明の有機金属錯体を発光物質として用いた発光素子を特
徴とする。
【0047】
また、このようにして得られた本発明の発光素子は高い発光効率を実現できるため、こ
れを発光素子として用いた発光装置(画像表示デバイスや発光デバイス)は、低消費電力
を実現できる。したがって本発明は、本発明の発光素子を用いた発光装置や電子機器も含
むものとする。
【0048】
なお、本明細書中における発光装置とは、発光素子を用いた画像表示デバイスもしくは発
光デバイスを指す。また、発光素子にコネクター、例えば異方導電性フィルムもしくはT
AB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tap
e Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやT
CPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子にCOG(Chip
On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発
光装置に含むものとする。さらに、照明器具等に用いられる発光装置も含むものとする。
【発明の効果】
【0049】
本発明を実施することで、燐光発光できる有機金属錯体のバリエーションを豊富にするこ
とができる。また、発光スペクトルがシャープな有機金属錯体を提供することができる。
また、発光効率の高い有機金属錯体を提供することができる。
【0050】
さらに、本発明の有機金属錯体を用いて発光素子を作製することで、緑色〜赤色に至るま
で、発光色のバリエーションに富んだ発光素子を提供することができる。また、色純度の
高い発光素子を提供することができる。また、発光効率の高い発光素子を提供することが
できる。
【0051】
また、本発明の有機金属錯体を用いることにより、消費電力の低減された発光装置および
電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の有機金属錯体を用いた発光素子の素子構造を説明する図。
【図2】本発明の有機金属錯体を用いた発光素子の素子構造を説明する図。
【図3】本発明の有機金属錯体を用いた発光素子の素子構造を説明する図。
【図4】本発明の発光素子を用いた発光装置について説明する図。
【図5】本発明の発光装置を用いた電子機器について説明する図。
【図6】本発明の有機金属錯体[Ir(mppr)(acac)]のH−NMRチャートを示す図。
【図7】本発明の有機金属錯体[Ir(mppr)(acac)]の紫外・可視吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示す図。
【図8】合成例1と比較例1の発光スペクトルを比較する図。
【図9】本発明の有機金属錯体[Ir(mppr)(acac)]を用いた発光素子の発光効率を示す図。
【図10】本発明の有機金属錯体[Ir(mppr)(acac)]を用いた発光素子のNTSC色度座標を示す図。
【図11】本発明の有機金属錯体[Ir(mppr)(acac)]を用いた発光素子の発光スペクトルを示す図。
【図12】本発明の有機金属錯体[Ir(mppr−Me)(acac)]のH−NMRチャートを示す図。
【図13】本発明の有機金属錯体[Ir(mppr−Me)(acac)]の紫外・可視吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示す図。
【図14】本発明の有機金属錯体[Ir(mppr−Me)(acac)]を用いた発光素子の電流密度−輝度特性を示す図。
【図15】本発明の有機金属錯体[Ir(mppr−Me)(acac)]を用いた発光素子の電圧−輝度特性を示す図。
【図16】本発明の有機金属錯体[Ir(mppr−Me)(acac)]を用いた発光素子の発光効率を示す図。
【図17】本発明の有機金属錯体[Ir(mppr−Me)(acac)]を用いた発光素子の発光スペクトルを示す図。
【図18】本発明の有機金属錯体[Ir(mppr−iPr)(acac)]のH−NMRチャートを示す図。
【図19】本発明の有機金属錯体[Ir(mppr−iPr)(acac)の紫外・可視吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下では、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明
は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及
び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発
明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0054】
(実施形態1)
本実施形態1では、本発明の有機金属錯体について説明する。
【0055】
≪一般式(G0)で表されるピラジン誘導体の合成法≫
本発明の有機金属錯体は、下記一般式(G0)で表されるピラジン誘導体が、第9族また
は第10族の金属イオンに対してオルトメタル化することにより、有機金属錯体を形成し
ている。
【0056】
【化15】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基、または
炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基のいずれかを表す。また、RおよびRは水素
、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、Arは炭素数6〜25のア
リール基を表し、前記アリール基は置換基をさらに有していてもよい。)
【0057】
一般式(G0)で表されるピラジン誘導体は、以下のような簡便な合成スキームにより
合成できる。例えば、下記スキーム(a)に示すように、アレーンのハロゲン化物(A1
)をアルキルリチウム等でリチオ化し、ピラジン(A2)と反応させることにより得られ
る。あるいはまた、下記スキーム(a’)に示すように、アレーンのボロン酸(A1’)
とピラジンのハロゲン化物(A2’)とをカップリングすることによっても得ることがで
きる。なお、式中Xはハロゲン元素を表す。
【0058】
【化16】

【0059】
【化17】

【0060】
上述の化合物(A1)、(A2)、(A1’)、(A2’)は、様々な種類が市販されて
いるか、あるいは合成可能であるため、一般式(G0)で表されるピラジン誘導体は数多
くの種類を合成することができる。したがって、本発明の有機金属錯体は、その配位子の
バリエーションが豊富であるという特徴がある。
【0061】
≪一般式(G1)で表される構造を有する本発明の有機金属錯体の合成法≫
次に、一般式(G0)で表されるピラジン誘導体をオルトメタル化して形成される本発
明の有機金属錯体、すなわち下記一般式(G1)で表される構造を有する有機金属錯体に
ついて説明する。
【0062】
【化18】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基、または
炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基のいずれかを表す。また、RおよびRは水素
、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、Arは炭素数6〜25のア
リーレン基を表し、前記アリーレン基は置換基をさらに有していてもよい。また、Mは中
心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、αは、前記ア
リーレン基において前記中心金属と結合している炭素の位置を表す。)
【0063】
まず、下記合成スキーム(b)に示すように、一般式(G0)で表されるピラジン誘導
体と、ハロゲンを含む第9族または第10族の金属化合物(金属ハロゲン化物や金属錯体
)とを適当な溶媒中で加熱することにより、一般式(G1)で表される構造を有する本発
明の有機金属錯体の一種である複核錯体(B)を得ることができる。ハロゲンを含む第9
族または第10族の金属化合物としては、塩化ロジウム水和物、塩化パラジウム、塩化イ
リジウム水和物、塩化イリジウム水和物塩酸塩、テトラクロロ白金(II)酸カリウム等
が挙げられるが、これらに限定されることはない。なお、スキーム(b)では、Mは第9
族元素または第10族元素、Xはハロゲン元素を表す。また、αは、アリーレン基Arに
おいて中心金属Mと結合している炭素の位置を表す。また、Mが第9族元素の時はn=2
、Mが第10族元素の時はn=1である。
【0064】
【化19】

【0065】
さらに、下記合成スキーム(c’)に示すように、複核錯体(B)と一般式(G0)で表
されるピラジン誘導体を、グリセロール等の高沸点溶媒中で200℃程度の高温で加熱す
ることにより、一般式(G1)で表される構造を含む本発明の有機金属錯体の一種(C’
)を得ることができる。また、下記合成スキーム(c’’)に示すように、複核錯体(B
)と、フェニルピリジンのようなオルトメタル化可能な化合物(より一般的には、シクロ
メタル化可能な化合物)とを、グリセロール等の高沸点溶媒中で200℃程度の高温で加
熱することにより、一般式(G1)で表される構造を含む本発明の有機金属錯体の一種(
C’’)を得ることができる。なお、スキーム(c’)および(c’’)では、Mは第9
族元素または第10族元素、Xはハロゲン元素を表す。また、αは、アリーレン基Arに
おいて中心金属Mと結合している炭素の位置を表す。また、Mが第9族元素の時はn=2
、Mが第10族元素の時はn=1である。
【0066】
【化20】

【0067】
【化21】

【0068】
≪一般式(G10)で表される本発明の有機金属錯体の合成法≫
ここで、上述した一般式(G1)で表される構造を有する有機金属錯体の中でも、好ま
しい具体例である下記一般式(G10)で表される有機金属錯体について説明する。
【0069】
【化22】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基、または
炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基のいずれかを表す。また、RおよびRは水素
、または炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、Arは炭素数6〜25のア
リーレン基を表し、前記アリーレン基は置換基をさらに有していてもよい。また、Mは中
心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、αは、前記ア
リーレン基において前記中心金属と結合している炭素の位置を表す。また、Lはモノアニ
オン性の配位子を表す。また、前記中心金属が第9族元素の時はn=2であり、第10族
元素の時はn=1である。)
【0070】
上記一般式(G10)で表される本発明の有機金属錯体は、下記スキーム(c)により
合成することができる。すなわち、上述のスキーム(b)で得られる複核錯体(B)と、
モノアニオン性の配位子の原料HLとを反応させることにより、HLのプロトンが脱離し
て中心金属Mに配位し、一般式(G10)で表される本発明の有機金属錯体が得られる。
なお、スキーム(c)では、Mは第9族元素または第10族元素、Xはハロゲン元素を表
す。また、αは、アリーレン基Arにおいて中心金属Mと結合している炭素の位置を表す
。また、Mが第9族元素の時はn=2、Mが第10族元素の時はn=1である。
【0071】
【化23】

【0072】
≪一般式(G1)で表される構造を有する本発明の有機金属錯体、および一般式(G10
)で表される本発明の有機金属錯体の具体的な構造式≫
次に、上述した一般式(G1)で表される構造を有する本発明の有機金属錯体、および
一般式(G10)で表される本発明の有機金属錯体の具体的な構造式を開示する。
【0073】
まず、中心金属であるMは、第9族元素および第10族元素から選ばれるが、発光効率の
観点からはイリジウム(III)および白金(II)が好ましい。特に、イリジウム(I
II)を用いると熱的に安定であるため好適である。
【0074】
次に、下記一般式(G1)および(G10)において、破線で囲った配位子部分Pについ
て説明する。なお、Mは先に述べた通り、第9族元素、または第10族元素のいずれかを
表す。また、αは、前記アリーレン基において前記中心金属と結合している炭素の位置を
表す。また、Lはモノアニオン性の配位子を表す(具体例は後述)。また、Mが第9族元
素の時はn=2であり、第10族元素の時はn=1である。
【0075】
【化24】

【0076】
【化25】

【0077】
の具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基等のアルキ
ル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基等のアルコキシ基、
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブト
キシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基が挙げられる。Rにこれらの置換基を導
入することにより、Rが水素の場合に比べ、有機金属錯体の合成の収率を向上させるこ
とができる。また、Rに共役基(フェニル基等)を導入したものに比べ、発光スペクト
ルをシャープにすることができ、色純度の向上に寄与する。
【0078】
また、RおよびRの具体例としては、水素の他、メチル基、エチル基、イソプロピル
基、n−ブチル基等に代表されるアルキル基を用いることができる。
【0079】
また、Arの具体例としては、フェニレン基、メチル基等のアルキル基で置換されたフェ
ニレン基、メトキシ基等のアルコキシ基で置換されたフェニレン基、フルオロ基等のハロ
ゲン基で置換されたフェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基、フ
ェニル基で置換されたフェニレン基、ジメチルアミノ基等のジアルキルアミノ基で置換さ
れたフェニレン基、ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基で置換されたフェニレン
基が挙げられる。特に、Arをハロゲン基やトリフルオロメチル基で置換されたフェニレ
ン基とすることで、Arが無置換のフェニレン基の場合に比べ、発光波長を短波長側にシ
フトすることができる。また、Arをジアルキルアミノ基やジアリールアミノ基で置換さ
れたフェニレン基とすることで、Arが無置換のフェニレン基の場合に比べ、発光波長を
長波長側にシフトすることができる。さらに、Arとして、ジュロリジレン基、ナフチレ
ン基、スピロフルオレン−ジイル基、9,9−ジメチルフルオレン−ジイル基のような9
,9−ジアルキルフルオレン−ジイル基を適用することもできる。その場合、Arが無置
換のフェニレン基の場合に比べ、発光波長を長波長側にシフトすることができる。
【0080】
上述の一般式(G0)および(G10)における配位子部分Pの構造として、より具体的
には、下記配位子群1〜7に示したいずれかの構造を適用することができる。ただし、本
発明はこれらに限定されることはない。なお、αは、中心金属Mと結合している炭素の位
置を表す。また、βは、中心金属Mに配位している窒素の位置を表す。
【0081】
【化26】

【0082】
【化27】

【0083】
【化28】

【0084】
【化29】

【0085】
【化30】

【0086】
【化31】

【0087】
【化32】

【0088】
次に、上述の一般式(G10)におけるモノアニオン性の配位子Lについて説明する。モ
ノアニオン性の配位子Lは、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の二座キレート
配位子、またはカルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、またはフ
ェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、または2つの配位元素
がいずれも窒素であるモノアニオン性の二座キレート配位子のいずれかが配位能力が高く
好ましい。より具体的には、以下の構造式(L1)〜(L8)に示すモノアニオン性の配
位子が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0089】
【化33】

【0090】
以上で述べたような中心金属M、配位子群1〜7、モノアニオン性の配位子Lを適宜組
み合わせることにより、本発明の有機金属錯体は構成されるが、以下では、本発明の有機
金属錯体の具体的な構造式を列挙する(下記構造式(1)〜(56))。ただし、本発明
はこれらに限定されることはない。
【0091】
【化34】

【0092】
【化35】

【0093】
【化36】

【0094】
【化37】

【0095】
【化38】

【0096】
【化39】

【0097】
【化40】

【0098】
【化41】

【0099】
【化42】

【0100】
【化43】

【0101】
【化44】

【0102】
【化45】

【0103】
【化46】

【0104】
【化47】

【0105】
【化48】

【0106】
【化49】

【0107】
【化50】

【0108】
【化51】

【0109】
【化52】

【0110】
【化53】

【0111】
【化54】

【0112】
【化55】

【0113】
【化56】

【0114】
【化57】

【0115】
【化58】

【0116】
【化59】

【0117】
【化60】

【0118】
【化61】

【0119】
【化62】

【0120】
【化63】

【0121】
【化64】

【0122】
【化65】

【0123】
【化66】

【0124】
【化67】

【0125】
【化68】

【0126】
【化69】

【0127】
【化70】

【0128】
【化71】

【0129】
【化72】

【0130】
【化73】

【0131】
【化74】

【0132】
【化75】

【0133】
【化76】

【0134】
【化77】

【0135】
【化78】

【0136】
【化79】

【0137】
【化80】

【0138】
【化81】

【0139】
【化82】

【0140】
【化83】

【0141】
【化84】

【0142】
【化85】

【0143】
【化86】

【0144】
【化87】

【0145】
【化88】

【0146】
【化89】

【0147】
なお、上記構造式(1)〜(56)で表される有機金属錯体には、配位子の種類によっ
ては幾何異性体と立体異性体が存在しうるが、本発明の有機金属錯体にはこれらの異性体
も全て含まれる。
【0148】
また、構造式(55)で示される有機金属錯体は、facial体とmeridion
al体の2つの幾何異性体が存在する。本発明の有機金属錯体にはいずれの異性体も含ま
れる。
【0149】
以上で説明した本発明の有機金属錯体は、項間交差が可能なため光増感剤として利用でき
る。また、燐光発光が可能であるため、発光材料や発光素子の発光物質として利用できる

【0150】
(実施形態2)
本実施形態2では、実施形態1で述べた本発明の有機金属錯体を発光物質として用いた
発光素子の態様について、図1を用いて説明する。
【0151】
図1は、第1の電極101と第2の電極102との間に発光層113を有する発光素子
を示した図である。そして、発光層113には、先の実施形態1で述べたような本発明の
有機金属錯体が含まれている。
【0152】
このような発光素子に対して電圧を印加することにより、第1の電極101側から注入
された正孔と第2の電極102側から注入された電子とが、発光層113において再結合
し、本発明の有機金属錯体を励起状態にする。そして、励起状態の該有機金属錯体が基底
状態に戻る際に発光する。このように、本発明の有機金属錯体は発光素子の発光物質とし
て機能する。なお、本実施形態2の発光素子において、第1の電極101は陽極として機
能し、第2の電極102は陰極として機能する。
【0153】
ここで、発光層113は、本発明の有機金属錯体を含んでいる。発光層113の構成は
、本発明の有機金属錯体よりも大きい三重項励起エネルギーを有する物質をホストとして
用い、本発明の有機金属錯体をゲストとして分散してなる層であることが好ましい。これ
によって、本発明の有機金属錯体からの発光が、濃度に起因して消光してしまうことを防
ぐことができる。なお、三重項励起エネルギーとは、基底状態と三重項励起状態とのエネ
ルギー差である。
【0154】
本発明の有機金属錯体を分散状態にするために用いる物質(すなわちホスト)について
特に限定はないが、2,3−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)キノキサリン(略称
:TPAQn)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェ
ニル(略称:NPB)のようなアリールアミン骨格を有する化合物の他、4,4’−ジ(
N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、4,4’,4’’−トリ(N−カルバ
ゾリル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)等のカルバゾール誘導体や、ビス[2−
(2−ヒドロキシフェニル)ピリジナト]亜鉛(略称:Znpp)、ビス[2−(2−
ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:ZnBOX)、ビス(2−メチ
ル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)、
トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)等の金属錯体が好ましい。
また、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)のような高分子化合物を用いる
こともできる。
【0155】
なお、本発明の有機金属錯体は、緑色〜赤色に至るまで発光色のバリエーションに富んで
いるので、緑色〜赤色に至るまで様々な発光色を呈する発光素子が得られる。また、本発
明の有機金属錯体は発光スペクトルがシャープであるため、色純度の高い発光素子が得ら
れる。また、本発明の有機金属錯体は燐光発光の効率が高いため、発光効率の高い発光素
子が得られる。
【0156】
また、第1の電極101について特に限定はないが、本実施形態2のように、陽極とし
て機能する際は仕事関数の大きい物質で形成されていることが好ましい。具体的には、イ
ンジウム錫酸化物(ITO)、または酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)、
2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム(IZO)の他、金(Au)、白金(P
t)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、
鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)等を用いることができ
る。なお、第1の電極101は、例えばスパッタ法や蒸着法等を用いて形成することがで
きる。
【0157】
また、第2の電極102について特に限定はないが、本実施形態2のように、陰極とし
て機能する際は仕事関数の小さい物質で形成されていることが好ましい。具体的には、ア
ルミニウム(Al)やインジウム(In)の他、リチウム(Li)やセシウム(Cs)等
のアルカリ金属、マグネシウム(Mg)やカルシウム(Ca)等のアルカリ土類金属、エ
ルビウム(Er)やイッテルビウム(Yb)等の希土類金属を用いることができる。また
、アルミニウムリチウム合金(AlLi)やマグネシウム銀合金(MgAg)のような合
金を用いることもできる。なお、第2の電極102は、例えばスパッタ法や蒸着法等を用
いて形成することができる。
【0158】
なお、発光した光を外部に取り出すために、第1の電極101と第2の電極102のい
ずれか一または両方は、ITO等の可視光を透過する導電膜から成る電極、または可視光
を透過出来るように数〜数十nmの厚さで形成された電極であることが好ましい。
【0159】
また、第1の電極101と発光層113との間には、図1に示すように正孔輸送層11
2を設けてもよい。ここで、正孔輸送層とは、第1の電極101から注入された正孔を発
光層113へ輸送する機能を有する層である。このように、正孔輸送層112を設け、第
1の電極101と発光層113とを離すことによって、発光が金属に起因して消光するこ
とを防ぐことができる。ただし、正孔輸送層112は必ずしも必要ではない。
【0160】
正孔輸送層112を構成する物質について特に限定はないが、代表的には、4,4’−
ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、4,
4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:T
PD)、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニ
ルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4’,4’’−トリス(N,N−
ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリ
ス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:m
−MTDATA)などの芳香族アミン化合物を用いることができる。また、ポリ(4−ビ
ニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)などの高分子化合物を用いることもでき
る。
【0161】
なお、正孔輸送層112は、二層以上の層を積層して形成された多層構造であってもよ
い。また、二種類以上の物質を混合して形成してもよい。
【0162】
また、第2の電極102と発光層113との間には、図1に示すように電子輸送層11
4を設けてもよい。ここで、電子輸送層とは、第2の電極102から注入された電子を発
光層113へ輸送する機能を有する層である。このように、電子輸送層114を設け、第
2の電極102と発光層113とを離すことによって、発光が金属に起因して消光するこ
とを防ぐことができる。ただし、電子輸送層114は必ずしも必要ではない。
【0163】
電子輸送層114を構成する物質について特に限定はないが、代表的には、トリス(8
−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノ
ラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリ
ナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−
フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)、ビス[2−(2−ヒドロキシフ
ェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒド
ロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などの金属錯体が
挙げられる。また、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)
−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert
−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OX
D−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニ
リル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェ
ニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリア
ゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキ
ュプロイン(略称:BCP)、4,4’−ビス(5−メチルベンゾオキサゾール−2−イ
ル)スチルベン(略称:BzOs)などの複素芳香族化合物も用いることができる。また
、ポリ(2,5−ピリジン−ジイル)(略称:PPy)のような高分子化合物を用いるこ
ともできる。
【0164】
なお、電子輸送層114は、二層以上の層を積層して形成された多層構造であってもよ
い。また、二種類以上の物質を混合して形成してもよい。
【0165】
さらに、第1の電極101と正孔輸送層112との間には、図1に示すように正孔注入
層111を設けてもよい。ここで、正孔注入層とは、陽極として機能する電極から正孔輸
送層112へ正孔の注入を補助する機能を有する層である。ただし、正孔注入層111は
必ずしも必要ではない。
【0166】
正孔注入層111を構成する物質について特に限定はないが、バナジウム酸化物(VO
x)、ニオブ酸化物(NbOx)、タンタル酸化物(TaOx)、クロム酸化物(CrO
x)、モリブデン酸化物(MoOx)、タングステン酸化物(WOx)、マンガン酸化物
(MnOx)、レニウム酸化物(ReOx)、ルテニウム酸化物(RuOx)等の金属酸
化物を用いることができる。また、フタロシアニン(略称:HPc)や銅フタロシアニ
ン(CuPC)等のフタロシアニン化合物を用いることができる。また、上述した正孔輸
送層112を構成する物質を用いることもできる。また、ポリ(エチレンジオキシチオフ
ェン)とポリ(スチレンスルホン酸)の混合物(略称:PEDOT/PSS)のような高
分子化合物を用いることもできる。
【0167】
あるいは、正孔注入層111に、有機化合物と電子受容体とを混合してなる複合材料を
用いてもよい。このような複合材料は、電子受容体によって有機化合物に正孔が発生する
ため、正孔注入性および正孔輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生
した正孔の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した正孔輸
送層112を構成する物質(芳香族アミン化合物等)を用いることができる。電子受容体
としては、有機化合物に対し電子受容性を示す物質であればよい。具体的には、遷移金属
酸化物であることが好ましく、例えば、バナジウム酸化物(VOx)、ニオブ酸化物(N
bOx)、タンタル酸化物(TaOx)、クロム酸化物(CrOx)、モリブデン酸化物
(MoOx)、タングステン酸化物(WOx)、マンガン酸化物(MnOx)、レニウム
酸化物(ReOx)、ルテニウム酸化物(RuOx)等が挙げられる。また、塩化鉄(I
II)、塩化アルミニウム(III)のようなルイス酸を用いることもできる。また、7
,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F
4−TCNQ)等の有機化合物を用いることもできる。
【0168】
なお、正孔注入層111は、二層以上の層を積層して形成された多層構造であってもよ
い。また、二種類以上の物質を混合して形成してもよい。
【0169】
また、第2の電極102と電子輸送層114との間には、図1に示すように電子注入層
115を設けてもよい。ここで、電子注入層とは、陰極として機能する電極から電子輸送
層114へ電子の注入を補助する機能を有する層である。ただし、電子注入層115は必
ずしも必要ではない。
【0170】
電子注入層115を構成する物質について特に限定はないが、フッ化リチウム(LiF
)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)、リチウム酸化物(Li
Ox)のようなアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を用いることができる
。また、フッ化エルビウム(ErF)のような希土類金属化合物を用いることができる
。また、上述した電子輸送層114を構成する物質を用いることもできる。
【0171】
あるいは、電子注入層115に、有機化合物と電子供与体とを混合してなる複合材料を
用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生する
ため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生
した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸
送層114を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電
子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、
アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネ
シウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金蔵
酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物(LiOx)、カルシウム
酸化物(CaOx)、バリウム酸化物(BaOx)等が挙げられる。また、酸化マグネシ
ウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:T
TF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0172】
以上で述べた本発明の発光素子において、正孔注入層111、正孔輸送層112、発光
層113、電子輸送層114、電子注入層115は、それぞれ、蒸着法、またはインクジ
ェット法、または塗布法等、いずれの方法で形成しても構わない。また、第1の電極10
1または第2の電極102についても、スパッタリング法、蒸着法等、インクジェット法
、または塗布法等、いずれの方法を用いて形成しても構わない。
【0173】
(実施形態3)
本発明の発光素子は、複数の発光層を有するものであってもよい。複数の発光層を設け
、それぞれの発光層から発光させることで、複数の発光が混合された発光を得ることがで
きる。したがって、例えば白色光を得ることができる。本実施形態3では、複数の発光層
を有する発光素子の態様について図2を用いて説明する。
【0174】
図2において、第1の電極201と第2の電極202との間には、第1の発光層213
と第2の発光層215が設けられており、第1の発光層213における発光と第2の発光
層215における発光が混合された発光を得ることができる。第1の発光層213と第2
の発光層215との間には、分離層214を有することが好ましい。
【0175】
第1の電極201の電位が第2の電極202の電位よりも高くなるように電圧を印加す
ると、第1の電極201と第2の電極202との間に電流が流れ、第1の発光層213ま
たは第2の発光層215または分離層214において正孔と電子とが再結合する。生じた
励起エネルギーは、第1の発光層213と第2の発光層215の両方に分配され、第1の
発光層213に含まれた第1の発光物質と第2の発光層215に含まれた第2の発光物質
を励起状態にする。そして、励起状態になった第1の発光物質と第2の発光物質とは、そ
れぞれ基底状態に戻るときに発光する。
【0176】
第1の発光層213には、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)
ペリレン(略称:TBP)、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(
略称:DPVBi)、4,4’−ビス[2−(N−エチルカルバゾール−3−イル)ビニ
ル]ビフェニル(略称:BCzVBi)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−
フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)、ビス(2−メチル−8−キノリ
ノラト)ガリウムクロリド(GamqCl)などの蛍光性化合物や、ビス{2−[3,
5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト−N,C2’}イリジウム(II
I)ピコリナート(略称:Ir(CFppy)(pic))、ビス[2−(4,6−
ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナ
ート(略称:FIr(acac))、ビス[2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジ
ナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス[
2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)テ
トラ(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)などの燐光性化合物に代表される第
1の発光物質が含まれており、450〜510nmに発光スペクトルのピークを有する発
光(すなわち、青色〜青緑色)が得られる。また、第1の発光層213の構成は、第1の
発光物質が蛍光性化合物の場合、第1の発光物質よりも大きい一重項励起エネルギーを有
する物質を第1のホストとして用い、第1の発光物質をゲストとして分散してなる層であ
ることが好ましい。また、第1の発光物質が燐光性化合物の場合、第1の発光物質よりも
大きい三重項励起エネルギーを有する物質を第1のホストとして用い、第1の発光物質を
ゲストとして分散してなる層であることが好ましい。第1のホストとしては、先に述べた
NPB、CBP、TCTA等の他、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:
DNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:
t−BuDNA)等を用いることができる。なお、一重項励起エネルギーとは、基底状態
と一重項励起状態とのエネルギー差である。また、三重項励起エネルギーとは、基底状態
と三重項励起状態とのエネルギー差である。
【0177】
一方、第2の発光層215は、本発明の有機金属錯体を含んでおり、緑色〜赤色の発光が
得られる。第2の発光層215の構成は、実施形態2で述べた発光層113と同様の構成
とすればよい。
【0178】
また、分離層214は、具体的には、上述したTPAQn、NPB、CBP、TCTA、
Znpp、ZnBOX等を用いて形成することができる。このように、分離層214を
設けることで、第1の発光層213と第2の発光層215のいずれか一方のみの発光強度
が強くなってしまうという不具合を防ぐことができる。ただし、分離層214は必ずしも
必要ではなく、第1の発光層213の発光強度と第2の発光層215の発光強度との割合
を調節するため、適宜設ければよい。
【0179】
なお、本実施形態3では、第2の発光層215に本発明の有機金属錯体を用い、第1の
発光層213に他の発光物質を適用したが、逆に第1の発光層213に本発明の有機金属
錯体を用い、第2の発光層215に他の発光物質を適用してもよい。
【0180】
また、本実施形態3では、図2のように2つの発光層が設けられた発光素子について記
載しているが、発光層の層数は2つに限定されるものでは無く、例えば3つあってもよい
。そして、それぞれの発光層からの発光が混合されればよい。その結果、例えば白色光が
得られる。
【0181】
なお、第1の電極201は、先の実施形態2で述べた第1の電極101と同様の構成と
すればよい。また、第2の電極202も、先の実施形態2で述べた第2の電極102と同
様の構成とすればよい。
【0182】
また、本実施形態3では、図2に示すように、正孔注入層211、正孔輸送層212、電
子輸送層216、電子注入層217を設けているが、これらの層の構成に関しても、先に
実施形態2で述べた各層の構成を適用すればよい。ただし、これらの層は必ずしも必要で
はなく、素子の特性に応じて適宜設ければよい。
【0183】
(実施形態4)
本実施形態4では、複数の発光層を設け、かつ実施形態3とは異なる素子構造でそれぞ
れの発光層から発光させる発光素子を例示する。したがって、本実施形態4においても、
複数の発光が混合された発光を得ることができる。すなわち、例えば白色光を得ることが
できる。以下、図3を用いて説明する。
【0184】
図3の発光素子は、第1の電極301と第2の電極302との間に、第1の発光層31
3と第2の発光層323を設けている。また、第1の発光層313と第2の発光層323
との間には、電荷発生層としてN層315およびP層321とを設けている。
【0185】
N層315は電子を発生する層であり、P層321は正孔を発生する層である。第1の
電極301の電位が第2の電極302の電位よりも高くなるように電圧を印加したとき、
第1の電極301から注入された正孔とN層315から注入された電子が、第1の発光層
313において再結合し、第1の発光層313に含まれた第1の発光物質が発光する。さ
らに、第2の電極302から注入された電子とP層321から注入された正孔が、第2の
発光層323において再結合し、第2の発光層323に含まれた第2の発光物質が発光す
る。
【0186】
第1の発光層313は、先の実施形態3における第1の発光層213と同様の構成でよ
く、450〜510nmに発光スペクトルのピークを有する発光(すなわち青色〜青緑色
)が得られる。また、第2の発光層323は、先の実施形態3における第2の発光層21
5と同様の構成でよく、本発明の有機金属錯体を含んでおり、緑色〜赤色の発光が得られ
る。
【0187】
N層315は電子を発生させる層であるため、実施形態2で述べた有機化合物と電子供
与体とを混合してなる複合材料を用いて形成すればよい。このような構成とすることで、
電子を第1の発光層313側へ注入することができる。
【0188】
P層321は正孔を発生させる層であるため、実施形態2で述べた有機化合物と電子受
容体とを混合してなる複合材料を用いて形成すればよい。このような構成とすることで、
正孔を第2の発光層323側へ注入することができる。また、P層321には、MoOx
、VOx、ITO、ITSOといったような正孔注入性に優れた金属酸化物を用いること
もできる。
【0189】
また、本実施形態4では、図3のように2つの発光層が設けられた発光素子について記
載しているが、発光層の層数は2つに限定されるものでは無く、例えば3つあってもよい
。そして、それぞれの発光層からの発光が混合されればよい。その結果、例えば白色光が
得られる。
【0190】
なお、第1の電極301は、先の実施形態2で述べた第1の電極101と同様の構成と
すればよい。また、第2の電極302も、先の実施形態2で述べた第2の電極102と同
様の構成とすればよい。
【0191】
また、本実施形態4では、図3に示すように、正孔注入層311、正孔輸送層312およ
び322、電子輸送層314および324、電子注入層325を設けているが、これらの
層の構成に関しても、先に実施形態2で述べた各層の構成を適用すればよい。ただし、こ
れらの層は必ずしも必要ではなく、素子の特性に応じて適宜設ければよい。
【0192】
(実施形態5)
本実施形態5では、本発明の有機金属錯体を増感剤として用いた発光素子の態様につい
て、図1を用いて説明する。
【0193】
図1には、第1の電極101と第2の電極102との間に発光層113を有する発光素
子が表されている。そして、発光層113には、先の実施形態1で述べたような本発明の
有機金属錯体と、本発明の有機金属錯体よりも長波長の発光を呈することのできる蛍光性
化合物とが含まれている。
【0194】
このような発光素子において、第1の電極101から注入された正孔と第2の電極10
2側から注入された電子とが、発光層113において再結合し、蛍光性化合物を励起状態
にする。そして、励起状態の蛍光性化合物は基底状態に戻るときに発光する。この時、本
発明の有機金属錯体は、蛍光性化合物に対して増感剤として作用し、蛍光性化合物の一重
項励起状態にある分子の数を増幅する。このように、本発明の有機金属錯体を増感剤とし
て用いることによって発光効率の良い発光素子を得ることができる。なお、本実施形態5
の発光素子において、第1の電極101は陽極として機能し、第2の電極102は陰極と
して機能する。
【0195】
発光層113は、本発明の有機金属錯体と、本発明の有機金属錯体よりも長波長の発光
を呈することのできる蛍光性化合物とを含んでいる。その構成は、本発明の有機金属錯体
よりも大きい三重項励起エネルギーを有すると同時に該蛍光性化合物よりも大きい一重項
励起エネルギーを有する物質をホストとして用い、本発明の有機金属錯体および該蛍光性
化合物をゲストとして分散してなる層であることが好ましい。
【0196】
本発明の有機金属錯体と蛍光性化合物とを分散状態にするために用いる物質(すなわちホ
スト)については特に限定はなく、先の実施形態2においてホストとして挙げた物質等を
用いることができる。
【0197】
また、蛍光性化合物についても特に限定はないが、4−ジシアノメチレン−2−イソプ
ロピル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル
]−4H−ピラン(略称:DCJTI)、マグネシウムフタロシアニン、マグネシウムポ
ルフィリン、フタロシアニン等の赤色〜赤外の発光を示す化合物が好ましい。
【0198】
なお、第1の電極101、第2の電極102共に、先の実施形態2で述べた第1の電極
、第2の電極と同様の構成とすればよい。
【0199】
また、本実施形態5では、図1に示すように、正孔注入層111、正孔輸送層112、電
子輸送層114、電子注入層115を設けているが、これらの層の構成に関しても、先に
実施形態2で述べた各層の構成を適用すればよい。ただし、これらの層は必ずしも必要で
はなく、素子の特性に応じて適宜設ければよい。
【0200】
以上に述べた発光素子は、本発明の有機金属錯体を増感剤として用いることによって、
高効率の発光が得られるものである。
【0201】
(実施形態6)
本実施形態6では、本発明の発光素子を含む発光装置の一態様について、図4を用いて
説明する。図4は、該発光装置の断面図である。
【0202】
図4において、四角の点線で囲まれているのは、本発明の発光素子12を駆動するため
に設けられているトランジスタ11である。発光素子12は、第1の電極13と第2の電
極14との間に発光層を含む層15を有する本発明の発光素子であり、該発光層は本発明
の有機金属錯体を含んでいる。具体的には、発光素子12は、実施形態2で示したような
構成である。トランジスタ11のドレイン領域と第1の電極13とは、第1層間絶縁膜1
6(16a、16b、16c)を貫通している配線17によって電気的に接続されている
。また、発光素子12は、隔壁層18によって、隣接して設けられている別の発光素子と
分離されている。このような構成を有する本発明の発光装置は、本実施形態6において、
基板10上に設けられている。
【0203】
なお、図4に示されたトランジスタ11は、半導体層を中心として基板と逆側にゲート
電極が設けられたトップゲート型のものである。但し、トランジスタ11の構造について
は、特に限定はなく、例えばボトムゲート型のものでもよい。またボトムゲートの場合に
は、チャネルを形成する半導体層の上に保護膜が形成されたもの(チャネル保護型)でも
よいし、或いはチャネルを形成する半導体層の一部が凹状になったもの(チャネルエッチ
型)でもよい。
【0204】
また、トランジスタ11を構成する半導体層は、結晶性、非結晶性のいずれのものでも
よい。また、セミアモルファス等でもよい。
【0205】
なお、セミアモルファスな半導体とは、次のようなものである。非晶質と結晶構造(単
結晶、多結晶を含む)の中間的な構造を有し、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有
する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する結晶質な領域を含んでいるもの
である。また少なくとも膜中の一部の領域には、0.5〜20nmの結晶粒を含んでいる
。L−Oフォノンに由来するラマンスペクトルが520cm−1よりも低波数側にシフト
している。X線回折ではSi結晶格子に由来するとされる(111)、(220)の回折
ピークが観測される。未結合手(ダングリングボンド)を終端させるため水素またはハロ
ゲンを少なくとも1原子%含んでいる。いわゆる微結晶半導体(マイクロクリスタル半導
体)とも言われている。珪素を含む気体をグロー放電分解(プラズマCVD)して形成す
る。珪素を含む気体としては、SiH、その他にもSi、SiHCl、Si
HCl、SiCl、SiFなどを用いることができる。この珪素を含む気体をH
、又は、HとHe、Ar、Kr、Neから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希
釈しても良い。希釈率は2〜1000倍の範囲、圧力は概略0.1Pa〜133Paの範
囲、電源周波数は1MHz〜120MHz、好ましくは13MHz〜60MHzである。
基板加熱温度は300℃以下でよく、好ましくは100〜250℃である。膜中の不純物
元素として、酸素、窒素、炭素などの大気成分の不純物は1×1020atoms/cm
以下とすることが望ましく、特に、酸素濃度は5×1019atoms/cm以下、
好ましくは1×1019atoms/cm以下とする。なお、セミアモルファスなもの
を有する半導体を用いたTFT(薄膜トランジスタ)の移動度はおよそ1〜10cm
Vsecとなる。
【0206】
また、半導体層が結晶性のものの具体例としては、単結晶または多結晶性の珪素、或い
はシリコンゲルマニウム等から成るものが挙げられる。これらはレーザー結晶化によって
形成されたものでもよいし、例えばニッケル等を用いた固相成長法による結晶化によって
形成されたものでもよい。
【0207】
なお、半導体層が非晶質の物質、例えばアモルファスシリコンで形成される場合には、
トランジスタ11およびその他のトランジスタ(発光素子を駆動するための回路を構成す
るトランジスタ)は全てNチャネル型トランジスタで構成された回路を有する発光装置で
あることが好ましい。それ以外については、Nチャネル型またはPチャネル型のいずれか
一のトランジスタで構成された回路を有する発光装置でもよいし、両方のトランジスタで
構成された回路を有する発光装置でもよい。
【0208】
さらに、第1層間絶縁膜16a〜16cは、図4(A)、(C)に示すように多層でも
よいし、または単層でもよい。なお、16aは酸化珪素や窒化珪素のような無機物から成
り、16bはアクリルやシロキサン(シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造
が構成され、置換基に少なくとも水素を含む有機基)、塗布成膜可能な酸化珪素等の自己
平坦性を有する物質から成る。さらに、16cはアルゴン(Ar)を含む窒化珪素膜から
成る。なお、各層を構成する物質については、特に限定はなく、ここに述べたもの以外の
ものを用いてもよい。また、これら以外の物質から成る層をさらに組み合わせてもよい。
このように、第1層間絶縁膜16a〜16cは、無機物または有機物の両方を用いて形成
されたものでもよいし、または無機膜と有機膜のいずれか一で形成されたものでもよい。
【0209】
隔壁層18は、エッジ部において、曲率半径が連続的に変化する形状であることが好ま
しい。また隔壁層18は、アクリルやシロキサン、レジスト、酸化珪素等を用いて形成さ
れる。なお隔壁層18は、無機膜と有機膜のいずれか一で形成されたものでもよいし、ま
たは両方を用いて形成されたものでもよい。
【0210】
なお、図4(A)、(C)では、第1層間絶縁膜16a〜16cのみがトランジスタ1
1と発光素子12の間に設けられた構成であるが、図4(B)のように、第1層間絶縁膜
16(16a、16b)の他、第2層間絶縁膜19(19a、19b)が設けられた構成
のものであってもよい。図4(B)に示す発光装置においては、第1の電極13は第2層
間絶縁膜19を貫通し、配線17と接続している。
【0211】
第2層間絶縁膜19は、第1層間絶縁膜16と同様に、多層でもよいし、または単層で
もよい。19aはアクリルやシロキサン(シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格
構造が構成され、置換基に少なくとも水素を含む有機基)、塗布成膜可能な酸化珪素等の
自己平坦性を有する物質から成る。さらに、19bはアルゴン(Ar)を含む窒化珪素膜
から成る。なお、各層を構成する物質については、特に限定はなく、ここに述べたもの以
外のものを用いてもよい。また、これら以外の物質から成る層をさらに組み合わせてもよ
い。このように、第2層間絶縁膜19は、無機物または有機物の両方を用いて形成された
ものでもよいし、または無機膜と有機膜のいずれか一で形成されたものでもよい。
【0212】
発光素子12において、第1の電極および第2の電極がいずれも透光性を有する物質で
構成されている場合、図4(A)の白抜きの矢印で表されるように、第1の電極13側と
第2の電極14側の両方から発光を取り出すことができる。また、第2の電極14のみが
透光性を有する物質で構成されている場合、図4(B)の白抜きの矢印で表されるように
、第2の電極14側のみから発光を取り出すことができる。この場合、第1の電極13は
反射率の高い材料で構成されているか、または反射率の高い材料から成る膜(反射膜)が
第1の電極13の下方に設けられていることが好ましい。また、第1の電極13のみが透
光性を有する物質で構成されている場合、図4(C)の白抜きの矢印で表されるように、
第1の電極13側のみから発光を取り出すことができる。この場合、第2の電極14は反
射率の高い材料で構成されているか、または反射膜が第2の電極14の上方に設けられて
いることが好ましい。
【0213】
また、発光素子12は、第1の電極13の電位よりも第2の電極14の電位が高くなる
ように電圧を印加したときに動作するように層15が積層されたものであってもよいし、
或いは、第1の電極13の電位よりも第2の電極14の電位が低くなるように電圧を印加
したときに動作するように層15が積層されたものであってもよい。前者の場合、トラン
ジスタ11はNチャネル型トランジスタであり、後者の場合、トランジスタ11はPチャ
ネル型トランジスタである。
【0214】
以上のように、本実施形態6では、トランジスタによって発光素子の駆動を制御するア
クティブ型の発光装置について説明したが、この他、トランジスタ等の駆動用の素子を特
に設けずに発光素子を駆動させるパッシブ型の発光装置であってもよい。
【0215】
本実施形態6で示した発光装置は、本発明の発光素子を用いているため、様々な発光色
を実現できるという特徴がある。また、色純度の高い発光色を実現できるという特徴があ
る。また、発光効率が高く、ひいては消費電力が低いという特徴がある。
【0216】
(実施形態7)
本発明の発光素子を用いた発光装置は良好な画像を表示することができるため、本発明
の発光装置を電子機器の表示部に適用することによって、優れた映像を提供できる電子機
器を得ることができる。また、本発明の発光素子を含む発光装置は発光効率が良いため、
低消費電力で駆動できる。したがって、本発明の発光装置を電子機器の表示部に適用する
ことによって、消費電力の少ない電子機器を得ることができ、例えば、待受時間等の長い
電話機等を得ることができる。以下に、本発明の発光素子を適用した発光装置を実装した
電子機器の一例を示す。
【0217】
図5(A)は、本発明を適用して作製したコンピュータであり、本体511、筐体51
2、表示部513、キーボード514などによって構成されている。本発明の発光素子を
有する発光装置を表示部として組み込むことでコンピュータを完成できる。
【0218】
図5(B)は、本発明を適用して作製した電話機であり、本体522には表示部521
と、音声出力部524、音声入力部525、操作スイッチ526、527、アンテナ52
3等によって構成されている。本発明の発光素子を有する発光装置を表示部として組み込
むことで電話機を完成できる。
【0219】
図5(C)は、本発明を適用して作製したテレビ受像機であり、表示部531、筐体5
32、スピーカー533などによって構成されている。本発明の発光素子を有する発光装
置を表示部として組み込むことでテレビ受像機を完成できる。
【0220】
以上のように本発明の発光装置は、各種電子機器の表示部として用いるのに非常に適し
ている。
【0221】
なお、本実施形態7では、コンピュータ等について述べているが、この他に、ナビゲイ
ション装置、或いは照明機器等に本発明の発光素子を有する発光装置を実装しても構わな
い。
【実施例1】
【0222】
≪合成例1≫
本合成例1では、実施形態1の構造式(1)で表される本発明の有機金属錯体、(アセ
チルアセトナト)ビス(2−メチル−3−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(
略称:[Ir(mppr)(acac)])の合成例を具体的に例示する。
【0223】
【化90】

【0224】
<ステップ1; 2−メチル−3−フェニルピラジン(略称:Hmppr)の合成>
まず、窒素雰囲気にて、フェニルリチウムのジブチルエーテル溶液((株)和光純薬工業
製、2.1mol/L)50mLとジエチルエーテル250mLを混合し、氷冷しながら
この溶液に2−メチルピラジン((株)東京化成工業製)8.98gを滴下し、室温にて
3時間撹拌した。反応溶液に水を加え、ジエチルエーテルにて有機層を抽出した。得られ
た有機層を水で洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒を留去した後、得られた残
渣を、ジクロロメタンを展開溶媒とするカラムクロマトグラフィーにより精製し、ピラジ
ン誘導体Hmpprを得た(黄色油状物、収率22%)。ステップ1の合成スキームを下
記(a−1)に示す。
【0225】
【化91】

【0226】
<ステップ2; ジ−μ−クロロ−ビス[ビス(2−メチル−3−フェニルピラジナト)
イリジウム(III)](略称:[Ir(mppr)Cl])の合成>
次に、2−エトキシエタノール30mLと水10mLとの混合液を溶媒として、上記ステ
ップ1で得たピラジン誘導体Hmpprを3.61g、塩化イリジウム水和物(IrCl
・HO)(Aldrich社製)を2.35g混合し、窒素雰囲気下で15時間還流
することにより、複核錯体[Ir(mppr)Cl] を得た(暗緑色粉末、収率7
4%)。ステップ2の合成スキームを下記(b−1)に示す。
【0227】
【化92】

【0228】
<ステップ3; (アセチルアセトナト)ビス(2−メチル−3−フェニルピラジナト)
イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr)(acac)]の合成>
さらに、2−エトキシエタノール60mLを溶媒として、上記ステップ2で得た複核錯体
[Ir(mpq)Cl] を1.57g、アセチルアセトンを0.43mL、炭酸ナ
トリウムを1.47g混合し、窒素雰囲気下にて16時間還流した。反応溶液を室温まで
放冷し、ろ過して得られた粉末をジクロロメタンで再結晶することにより、本発明の有機
金属錯体[Ir(mppr)(acac)]を得た(橙色粉末、収率26%)。ステッ
プ3の合成スキームを下記(c−1)に示す。
【0229】
【化93】

【0230】
なお、上記ステップ3で得られた橙色粉末の核磁気共鳴分光法(H−NMR)による分
析結果を下記に示す。また、H−NMRチャートを図6に示す。図6(a)の縦軸を拡
大したものを図6(b)に示した。図6より、本合成例1において、上述の構造式(1)
で表される本発明の有機金属錯体[Ir(mppr)(acac)]が得られたことが
わかった。
【0231】
H−NMR.δ(CDCl):1.79(s,6H),3.10(s,6H),5.
23(s,1H),6.24(dd,2H),6.73(td,2H),6.90(td
,2H),7.92(d,2H),8.21(d,2H),8.42(d,2H).
【0232】
また、得られた本発明の有機金属錯体[Ir(mppr)(acac)]の分解温度T
を示差熱重量同時測定装置((株)セイコー電子製、TG/DTA 320型)によ
り測定したところ、T =332℃であり、良好な耐熱性を示すことがわかった。
【0233】
次に、[Ir(mppr)(acac)]の吸収スペクトルおよび発光スペクトル(励
起波長:468nm)を測定した。吸収スペクトルの測定は紫外可視分光光度計((株)
日本分光製 V550型)を、発光スペクトルの測定は蛍光光度計((株)浜松ホトニク
ス製 FS920)を用いた。また測定は、脱気したジクロロメタン溶液(0.19mm
ol/L)を用いて、室温で行った。測定結果を図7に示す。横軸は波長、縦軸はモル吸
光係数および発光強度を表す。
【0234】
図7に示す通り、本発明の有機金属錯体[Ir(mppr)(acac)]は、320
nm、360nm(sh)、408nm(sh)、496nm、536nm(sh)、お
よび570nm(sh)に吸収ピークを有している。また、発光スペクトルは589nm
にピークを有しており、橙色発光であった。また、発光スペクトルの半値幅は70nmで
あり、シャープなスペクトル形状であった。
【0235】
なお、本発明の有機金属錯体[Ir(mppr)(acac)]は、可視光領域にいく
つもの吸収ピークが観測される。これは、オルトメタル錯体のようないくつかの有機金属
錯体に見られる独特の吸収であり、一重項MLCT遷移、三重項π−π遷移、三重項M
LCT遷移などに対応すると類推される。特に、最も長波長側の吸収ピークが可視光領域
においてブロードな裾を引いており、三重項MLCT遷移であると考えられる。すなわち
、本発明の有機金属錯体[Ir(mppr)(acac)]は、三重項励起状態への直
接光励起や項間交差が可能な化合物であることが分かった。したがって、得られた発光も
三重項励起状態からの発光、すなわち燐光であると考えられる。
【0236】
≪比較例1≫
発光スペクトルを比較するため、下記構造式(i)で表される従来の有機金属錯体、(ア
セチルアセトナト)ビス(2,3−ジフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称
:[Ir(dphp)(acac)])を合成した。なお、この[Ir(dphp)
(acac)]は、参考文献2で開示されている化合物である。
【0237】
【化94】

【0238】
[Ir(dphp)(acac)]のジクロロメタン溶液中における発光スペクトル(
励起波長:468nm)を図8に示す。横軸は波長、縦軸は発光強度である。なお、図8
には、先の合成例1で合成した本発明の有機金属錯体[Ir(mppr)(acac)
]の発光スペクトルも合わせて載せた。
【0239】
図8の通り、[Ir(dphp)(acac)]の発光スペクトルの半値幅は80nm
であり、合成例1にて合成した本発明の有機金属錯体[Ir(mppr)(acac)
]に比べ、スペクトルがブロードであることがわかる。
【実施例2】
【0240】
本実施例2では、実施例1の合成例1にて合成した本発明の有機金属錯体[Ir(mpp
r)(acac)]を、発光物質として用いた発光素子の例を具体的に例示する。素子
構造を図1に示す。
【0241】
まず、110nmの膜厚で酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)が成膜された
ガラス基板を用意する。ITSO表面は、2mm角の大きさで表面が露出するよう周辺を
絶縁膜で覆った。なお、ITSOは発光素子の陽極として機能する第1の電極101であ
る。この基板上に発光素子を形成するための前処理として、多孔質樹脂のブラシを用いて
基板表面を洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0242】
次に、ITSOが形成された面が下方となるように、基板を真空蒸着装置内に設けられた
ホルダーに固定した。
【0243】
真空装置内を10−4Paに減圧した後、下記構造式(ii)で表されるNPBと酸化モ
リブデン(VI)とを、NPB:酸化モリブデン(VI)=4:1(質量比)となるよう
に共蒸着することにより、正孔注入層111を形成した。膜厚は50nmとした。なお、
共蒸着とは、異なる複数の物質をそれぞれ異なる蒸発源から同時に蒸発させる蒸着法であ
る。次に、NPBを10nm蒸着することにより、正孔輸送層112を形成した。さらに
正孔輸送層112上に、下記構造式(iii)で表されるCBPと合成例1で合成した[
Ir(mppr)(acac)]とを、CBP:[Ir(mppr)(acac)]
=1:0.05(質量比)となるように共蒸着することにより、発光層113を形成した
。膜厚は30nmとした。次に、下記構造式(iv)で表されるBCPを10nm蒸着す
ることにより、電子輸送層114を形成した。さらに電子輸送層114上に、下記構造式
(v)で表されるAlqとリチウム(Li)とを、Alq:Li=1:0.01(質
量比)となるように共蒸着することにより、電子注入層115を形成した。膜厚は45n
mとした。最後に、陰極として機能する第2の電極102としてアルミニウムを200n
m成膜し、本発明の発光素子を得た。なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗
加熱法を用いた。
【0244】
【化95】

【0245】
この発光素子を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されな
いように封止する作業を行った後、発光素子の動作特性について測定した。なお、測定は
室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0246】
この発光素子の輝度−電流効率特性を図9(a)に示す。図9(b)は、図9(a)の
縦軸を外部量子効率に換算したものである。この発光素子は、7.80mA/cmの電
流密度で電流を流すと、2600cd/mの輝度で発光した。この時の電流効率は33
.3cd/A、外部量子効率は13.2%であり、高い発光効率を示した。また、この時
のCIE色度座標を図10に示す。色度座標は(x,y)=(0.54,0.45)であ
り、橙色発光であった。また、本実施例の発光素子の色度座標は、図10に示す通り、N
TSC規格による色再現領域(図中の三角形の内側)の外側に位置しており、色純度が高
いことがわかる。
【0247】
また、この発光素子に25mA/cmの電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを
、図11に示す。図11の通り、発光スペクトルは584nmにピークを有しており、本
発明の有機金属錯体である[Ir(mppr)(acac)]の発光に由来しているこ
とが示唆される。
【実施例3】
【0248】
≪合成例2≫
本合成例2では、実施形態1の構造式(28)で表される本発明の有機金属錯体、(ア
セチルアセトナト)ビス(3,5−ジメチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(I
II)(略称:[Ir(mppr−Me)(acac)])の合成例を具体的に例示す
る。
【0249】
【化96】

【0250】
<ステップ1; 3,5−ジメチル−2−フェニルピラジン(略称:Hmppr−Me)
の合成>
まず、窒素雰囲気にて、フェニルリチウムのジブチルエーテル溶液((株)和光純薬工業
社製、2.1mol/L)50mLとジエチルエーテル250mLを混合し、氷冷しなが
ら、この溶液に2、6−ジメチルピラジン10.33gを添加し、室温にて24時間撹拌
した。この混合物に水を加え、ジエチルエーテルにて有機層を抽出した。得られた有機層
を水で洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥した。乾燥した後の溶液をろ過した。このろ液
の溶媒を留去した後、得られた残渣を、ジクロロメタンを展開溶媒とするシリカゲルカラ
ムクロマトグラフィーで精製し、目的のピラジン誘導体Hmppr−Meを得た(赤褐色
液体、収率16%)。ステップ1の合成スキームを下記(a−2)に示す。
【0251】
【化97】

【0252】
<ステップ2; ジ−μ−クロロ−ビス[ビス(3,5−ジメチル−2−フェニルピラジ
ナト)イリジウム(III)](略称:[Ir(mppr−Me)Cl])の合成>
次に、2−エトキシエタノール30mLと水10mLとの混合液を溶媒として、上記ステ
ップ1で得たピラジン誘導体Hmppr−Meを2.88g、塩化イリジウム水和物(I
rCl・HO)(Sigma−Aldrich社製)を1.49g混合し、窒素雰囲
気にて15時間還流し、反応させた。反応溶液より析出してきた粉末をろ過し、エタノー
ルにて洗浄することにより、複核錯体[Ir(mppr−Me)Cl] を得た(茶
色粉末、収率89%)。ステップ2の合成スキームを下記(b−2)に示す。
【0253】
【化98】

【0254】
<ステップ3; (アセチルアセトナト)ビス(3,5−ジメチル−2−フェニルピラジ
ナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr−Me)(acac)]の合成

さらに、2−エトキシエタノール30mLを溶媒として、上記ステップ2で得た複核錯体
[Ir(mppr−Me)Cl]を1.51g、アセチルアセトンを0.39mL、
炭酸ナトリウムを1.35g混合し、窒素雰囲気下にて18時間還流し、反応させた。反
応溶液を室温まで放冷し、ろ過した。得られたろ取物をエタノールにて洗浄し、ジクロロ
メタンに溶解させて再結晶することにより、本発明の有機金属錯体[Ir(mppr−M
e)(acac)]を得た(橙色粉末、収率24%)。ステップ3の合成スキームを下
記(c−2)に示す。
【0255】
【化99】

【0256】
なお、上記ステップ3で得られた橙色粉末の核磁気共鳴分光法(H−NMR)による分
析結果を下記に示す。また、H−NMRチャートを図12に示す。図12(a)の縦軸
を拡大したものを図12(b)に示した。図12から、本合成例1において、上述の構造
式(28)で表される本発明の有機金属錯体[Ir(mppr−Me)(acac)]
が得られたことがわかった。
【0257】
H−NMR.δ(CDCl):1.80(s,6H),2.65(s,6H),3.
09(s,6H),5.22(s,1H),6.21(dd,2H),6.70(td,
2H),6.87(td,2H),7.86(d,2H),8.29(s,2H).
【0258】
また、得られた本発明の有機金属錯体[Ir(mppr−Me)(acac)]の熱重
量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogravimetry−Differ
ential Thermal Analysis)を行った。測定には高真空差動型示
差熱天秤(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、TG−DTA2410SA)を用い
た。常圧、窒素雰囲気下で測定したところ、重量と温度の関係(熱重量測定)から、測定
開始時における重量に対し95%以下の重量になる温度は、292℃であり、良好な耐熱
性を示すことが分かった。
【0259】
次に、[Ir(mppr−Me)(acac)]の吸収スペクトルを測定した。吸収ス
ペクトルの測定は紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V550型)を用い、[Ir
(mppr−Me)(acac)]のジクロロメタン溶液(0.13mmol/L)を
調整し、脱気した後、室温で測定を行った。また、[Ir(mppr−Me)(aca
c)]の発光スペクトル(励起波長:465nm)を測定した。発光スペクトルの測定は
蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を用い、[Ir(mppr−Me)
(acac)]のジクロロメタン溶液(0.47mmol/L)を調整し、脱気した後
、室温で測定を行った。測定結果を図13に示す。横軸は波長、縦軸はモル吸光係数およ
び発光強度を表す。
【0260】
図13に示す通り、本発明の有機金属錯体[Ir(mppr−Me)(acac)]は
、ジクロロメタン溶液中において、605nmに発光ピークを有しており、赤橙色の発光
を示すことがわかった。
【実施例4】
【0261】
本実施例4では、実施例3の合成例2にて合成した本発明の有機金属錯体[Ir(mpp
r−Me)(acac)]を、発光物質として用いた発光素子の例を具体的に例示する
。素子構造を図1に示す。
【0262】
素子構造は、発光層113を以下のような構成とした以外は、実施例2と同様に作製し
た。発光層113は、CBPと、合成例2で合成した[Ir(mppr−Me)(ac
ac)]とを、CBP:[Ir(mppr−Me)(acac)]=1:0.06(質
量比)となるように共蒸着することにより形成した。膜厚は30nmとした。
【0263】
この発光素子を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されな
いように封止する作業を行った後、発光素子の動作特性について測定した。なお、測定は
室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0264】
この発光素子の電流密度−輝度特性を図14に、電圧−輝度特性を図15に示す。本実
施例の発光素子は、7.4Vの電圧を印加すると、6.94mA/cmの電流密度で電
流が流れ、2600cd/mの輝度で発光した。また、図16(a)は電流効率−輝度
特性であり、図16(b)は、図16(a)の縦軸を外部量子効率に換算したものである
。これらの図から、2600cd/mの輝度で発光した際の電流効率は37.8cd/
A、外部量子効率は13.3%であり、高い発光効率を示すことがわかる。また、この時
のCIE色度座標は(x,y)=(0.53,0.47)であり、黄橙色発光であった。
【0265】
また、この発光素子に25mA/cmの電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを
、図17に示す。図17の通り、発光スペクトルは571nmにピークを有しており、本
発明の有機金属錯体である[Ir(mppr−Me)(acac)]の発光に由来して
いることが示唆される。また、本実施例4の発光素子は、実施例2の発光素子に比べ、1
3nmほど発光スペクトルが短波長シフトしている。このように、本発明の有機金属錯体
は、分子設計による発光色の調節が容易に可能である。
【実施例5】
【0266】
≪合成例3≫
本合成例3では、構造式(57)で表される本発明の有機金属錯体、(アセチルアセト
ナト)ビス(5−イソプロピル−3−メチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(I
II)(略称:[Ir(mppr−iPr)(acac)])の合成例を具体的に例示
する。なお、構造式(57)は、一般式(G10)において、Arとしてフェニレン基を
、Rとしてメチル基を、Rとしてイソプロピル基を、Rとして水素を、Lとして構
造式(L1)を、Mとしてイリジウムを適用し、n=2とした場合の化合物である。
【0267】
【化100】

【0268】
<ステップ1; 5−イソプロピル−3−メチル−2−フェニルピラジン(略称:Hmp
pr−iPr)の合成>
まず、脱水エタノール20mL、1−フェニル−1,2−プロパンジオン2.22g、お
よび無水エチレンジアミン0.90gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、フラスコ
内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz 1〜100W)を10分
間照射し、反応させた。次に、この反応溶液に、アセトン2.20mLと水酸化カリウム
1.01gを添加し、さらにマイクロ波(2.45GHz 1〜100W)を20分間照
射した。この混合物に水を加え、酢酸エチルにて有機層を抽出した。得られた有機層を水
で洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥した。乾燥した後の溶液をろ過し、ろ液の溶媒を留
去した。得られた残渣を、ジクロロメタンを展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグ
ラフィーで精製し、目的のピラジン誘導体Hmppr−iPrを得た(橙色液体、収率3
5%)。なお、マイクロ波の照射はマイクロ波合成装置(CEM社製 Discover
y)を用いた。また、ステップ1の合成スキームを下記(a−3)に示す。
【0269】
【化101】

【0270】
<ステップ2; ジ−μ−クロロ−ビス[ビス(5−イソプロピル−3−メチル−2−フ
ェニルピラジナト)イリジウム(III)](略称:[Ir(mppr−iPr)Cl
)の合成>
次に、2−エトキシエタノール24mL、水8mL、上記ステップ1で得たピラジン誘導
体Hmppr−iPr1.12g、および塩化イリジウム水和物(IrCl・HO)
(Sigma−Aldrich社製)0.72gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ
、フラスコ内をアルゴン置換した。その後、マイクロ波(2.45GHz 150W)を
30分間照射し、反応させた。反応溶液より析出してきた粉末をろ過し、エタノールにて
洗浄することにより、複核錯体[Ir(mppr−iPr)Cl]を得た(濃い橙色
粉末、収率52%)。ステップ2の合成スキームを下記(b−3)に示す。
【0271】
【化102】

【0272】
<ステップ3; (アセチルアセトナト)ビス(5−イソプロピル−3−メチル−2−フ
ェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr−iPr)(ac
ac)]の合成>
さらに、2−エトキシエタノール30mL、上記ステップ2で得た複核錯体[Ir(mp
pr−iPr)Cl] 0.81g、アセチルアセトン0.19mL、および炭酸ナ
トリウム0.66gを、還流管を付けたナスフラスコに入れ、フラスコ内をアルゴン置換
した。その後、マイクロ波(2.45GHz 150W)を30分間照射し、反応させた
。反応溶液を室温まで放冷し、ろ過を行った。得られたろ液を濃縮・乾固させ、析出した
残渣をエタノールにて再結晶することにより、本発明の有機金属錯体[Ir(mppr−
iPr)(acac)]を得た(橙色微結晶、収率57%)。ステップ3の合成スキー
ムを下記(c−3)に示す。
【0273】
【化103】

【0274】
なお、上記ステップ3で得られた橙色粉末の核磁気共鳴分光法(H−NMR)による分
析結果を下記に示す。また、H−NMRチャートを図18に示す。図18(a)の縦軸
を拡大したものを図18(b)に示した。図18から、本合成例3において、上述の構造
式(57)で表される本発明の有機金属錯体[Ir(mppr−iPr)(acac)
]が得られたことがわかった。
【0275】
H−NMR.δ(CDCl):1.36(m,12H),1.79(s,6H),3
.06(s,6H),3.13(m,2H),5.23(s,1H),6.22(d,2
H),6.70(td,2H),6.87(t,2H),7.86(d,2H),8.3
3(s,2H).
【0276】
また、得られた本発明の有機金属錯体[Ir(mppr−iPr)(acac)]の分
解温度を高真空差動型示差熱天秤(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、TG−DT
A2410SA)により測定した。昇温速度を10℃/minに設定し、昇温したところ
、300℃にて5%の重量減少が見られ、良好な耐熱性を示すことがわかった。
【0277】
次に、[Ir(mppr−iPr)(acac)]の吸収スペクトルを測定した。吸収
スペクトルの測定は紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V550型)を用い、ジク
ロロメタン溶液(0.11mmol/L)を用いて、室温で測定を行った。また、[Ir
(mppr−iPr)(acac)]の発光スペクトル(励起波長:467nm)を測
定した。発光スペクトルの測定は蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を
用い、脱気したジクロロメタン溶液(0.41mmol/L)を用いて、室温で測定を行
った。測定結果を図19に示す。横軸は波長、縦軸はモル吸光係数および発光強度を表す

【0278】
図19に示す通り、本発明の有機金属錯体[Ir(mppr−iPr)(acac)]
は、586nmに発光ピークを有しており、溶液からは橙色の発光が観測された。
【符号の説明】
【0279】
10 基板
11 トランジスタ
12 発光素子
13 第1の電極
14 第2の電極
15 層
16 層間絶縁膜
17 配線
18 隔壁層
19 層間絶縁膜
101 第1の電極
102 第2の電極
111 正孔注入層
112 正孔輸送層
113 発光層
114 電子輸送層
115 電子注入層
16a 層間絶縁膜
201 第1の電極
202 第2の電極
211 正孔注入層
212 正孔輸送層
213 発光層
214 分離層
215 発光層
216 電子輸送層
217 電子注入層
301 第1の電極
302 第2の電極
311 正孔注入層
312 正孔輸送層
313 発光層
314 電子輸送層
315 N層
321 P層
323 発光層
325 電子注入層
511 本体
512 筐体
513 表示部
514 キーボード
521 表示部
522 本体
523 アンテナ
524 音声出力部
525 音声入力部
526 操作スイッチ
531 表示部
532 筐体
533 スピーカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に、式(G3)で表される構造を有する有機金属錯体を有する発光素子。
【化1】


(式中、R1はメチル基を表す。また、R2〜R6は水素を表す。また、Mはイリジウムを表す。)
【請求項2】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に、式(G3)で表される構造を有する有機金属錯体を有する発光素子。
【化2】


(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、R2〜R6は水素を表す。また、Mはイリジウムを表す。)
【請求項3】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に、式(G3)で表される構造を有する有機金属錯体を有する発光素子。
【化3】


(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、R2およびR3は水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、R4〜R6は水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、又は炭素数12〜24のジアリールアミノ基のいずれかを表す。また、Mはイリジウムを表す。)
【請求項4】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に、式(G1)で表される構造を有する有機金属錯体を有する発光素子。
【化4】


(式中、R1はメチル基を表す。また、R2およびR3は水素を表す。また、Arは炭素数6〜25のアリーレン基を表す。また、Mはイリジウムを表す。また、αは、前記アリーレン基において前記中心金属と結合している炭素の位置を表す。)
【請求項5】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に、式(G1)で表される構造を有する有機金属錯体を有する発光素子。
【化5】


(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、R2およびR3は水素を表す。また、Arは炭素数6〜25のアリーレン基を表す。また、Mはイリジウムを表す。また、αは、前記アリーレン基において前記中心金属と結合している炭素の位置を表す。)
【請求項6】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に、式(G1)で表される構造を有する有機金属錯体を有する発光素子。
【化6】


(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。また、R2およびR3は水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。また、Arは炭素数6〜25のアリーレン基を表す。また、Mはイリジウムを表す。また、αは、前記アリーレン基において前記中心金属と結合している炭素の位置を表す。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−62538(P2013−62538A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−277882(P2012−277882)
【出願日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【分割の表示】特願2012−88084(P2012−88084)の分割
【原出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】