説明

発光表示体

【課題】外部エネルギー源を必要とせず、太陽光が入らない暗い場所においても利用可能であり、持ち運び、および設置が容易な形状、および重さを有する発光表示体を提供する。
【解決手段】表面に表示内容が描かれている、透光性を有する表示パネルと、電力によって発光する、薄型の有機EL膜と、前記有機EL膜と電気的に接続され、前記EL有機膜に電力を供給する、薄型の一次電池とを有する発光表示体であって、発光表示体の厚さが、15mm以下であることを特徴とする発光表示体を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光の届かない場所、例えば、建造物内部、トンネル内、地下鉄の駅構内、地下街等に設置される発光表示体であって、薄型の有機EL膜と薄型の一次電池から構成されているために設置、取り外しが簡便な発光表示体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電力源から供給される電力によって発光する発光体により、暗い場所でもはっきりと情報が表示される発光表示体が知られている。この発光表示体は、例えば、建造物内部、トンネル内、地下鉄の駅構内、地下街等の暗い場所や、夜間の屋外等の場所に設置されており、案内標識、地図、交通標識、視線誘導標、避難経路、広告等の情報を表示する。
【0003】
従来の発光表示体の電力供給源としては、配電網、大型バッテリー、ジェネレーター等の外部エネルギー源を主電源とし、停電時のバックアップとして、二次電池が備え付けられたものが知られている。
【0004】
あるいは、太陽電池と、二次電池や電気二重層コンデンサ等の充電装置から構成される電力源が備え付けられた発光表示体が提案されている(特許文献1、および特許文献2)。太陽電池において日中の太陽光により発電された電力を充電装置に蓄電し、必要に応じて発光のために利用することで、外部エネルギー源を利用することなく、長期間の利用を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2712323号
【特許文献2】特許第4490683号
【0006】
しかしながら、配電網に発光表示体を接続するには、配電網の設置工事、および、発光表示体の配電網への接続工事が必要なために高コストであり、独立電源で稼働する発光表示体の開発が求められていた。
【0007】
また、太陽電池と充電装置が備え付けられた発光表示体は、太陽光、またはそれに代わる強い光が一定時間放射される場所に設置場所が限られるため、建造物内部、トンネル内、地下鉄の駅構内、地下街等の暗い場所に設置することは不可能であった。
【0008】
ところで、発光表示体は、状況に応じて急に設置されたり、急に撤去されたり、または設置場所が変更される場合がある。
【0009】
例えば、案内標識、地図については、地下街においてイベントや特別展示が開催される場合、イベント内容とその開催場所を紹介する案内標識、地図をイベント前日の夜からイベント当日の朝にかけて設置し、また、イベント終了後に素早く撤去する必要がある。あるいは、視線誘導標、避難経路については、催し会場や美術館等、会場のレイアウトや通路が頻繁に変更される場所においては、視線誘導標、避難経路の設置場所をその都度変更する必要がある。また、広告については、広告主からの要望に応じて、広告効果が最も高い場所に発光表示体を移動させたり、広告掲載期間終了後は素早く撤去する必要がある。
【0010】
しかしながら、外部エネルギー源を利用する従来の発光表示体においては、発光表示体を設置、撤去するたびに工事が必要となる。また、太陽電池と充電装置が備え付けられた従来の発光表示体においては、設置場所が太陽光、またはこれに代わる強い光の届く範囲に限られ、また、設置の方向が光の向きに依存するために、自由な設置が困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上を踏まえ、本発明が解決しようとする課題は、外部エネルギー源を必要とせず、太陽光が入らない暗い場所において利用可能であり、持ち運び、および設置が容易な形状、および重さを有する発光表示体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明では、表面に表示内容が描かれている、透光性を有する表示パネルと、電力によって発光する、薄型の有機EL膜と、前記有機EL膜と電気的に接続され、前記EL有機膜に電力を供給する、薄型の一次電池とを有する発光表示体であって、発光表示体の厚さが、15mm以下であることを特徴とする、発光表示体を提案する。
【0013】
本発明では、一次電池が、前記有機EL薄膜を少なくとも72時間発光させるのに必要な放電容量(Ah)、およびエネルギー容量(Wh)を有することが好ましい。
【0014】
本発明では、一次電池の正極活物質が、二酸化マンガン、またはフッ化カーボンであり、一次電池の負極活物質が、リチウム、またはリチウム合金であり、一次電池の電解質が、有機固体電解質、または有機液体電解質であることが好ましい。
【0015】
本発明では、一次電池の正極活物質が、酸素であり、一次電池の負極活物質が、金属元素であってもよい。
【0016】
本発明では、一次電池の充放電は、電解質内を酸素イオンが移動することで行われるものであってもよい。
【0017】

【0018】
本発明では、電力によって発光する、1以上の補助発光源と、一次電池の残り放電容量、または電圧、またはその両方を測定する測定回路と、測定値に基づき、前記補助発光源への電力供給を制御する制御回路とを有する電池管理装置とを有していてもよい。
【0019】
本発明では、補助発光源の数が2以上あり、前記電池管理装置が、各補助発光源への電力供給を独立に制御するものであってもよい。
【0020】
本発明では、前記表示パネル上の、補助発光源近傍に、電池の交換方法、電池の交換を補助する個人または法人の連絡先、および電池交換の際の注意事項のうち、少なくともいずれか1つが描かれているものであってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、発光源として用いられる有機EL膜、および電力源として用いられる一次電池は薄型であるために、発光表示体全体を薄く保つことができ、さらに、外部エネルギー源を必要としないために、持ち運びや設置が容易である。また、有機EL膜は消費電力が従来の発光源と比較して小さく、また一次電池は高容量であるために、3日以上の連続発光が可能である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0022】
図1に、実施例の組立図を示す。表示パネル11は発光表示体の表面に位置する。表示パネル11の表面には表示内容が描かれており、透光性を有する。表示パネルの裏面側に、有機EL膜22が位置する。有機EL膜22は基板21に支持されており、電極23を有する。有機EL膜22の裏面側に、一次電池31が位置する。一次電池は電極33を有する。電極33は電極23と電気的に接続されている。有機EL膜22は一次電池31から供給される電力により発光する。有機EL膜22から発せられる光により、表示パネル11に描かれている表示内容が発光する。一次電池31の裏面側に背面パネル41がある。背面パネル41は一次電池31を外部環境から保護することを主な役割とする。背面パネル41は接着層42を有し、一次電池31に接着する。
【0023】

少なくとも72時間発光させるのに必要な放電容量(Ah)、およびエネルギー容量(Wh)を有するものが用いられる。一次電池の具体的な例としては、正極活物質として二酸化マンガン、またはフッ化カーボンを有し、負極活物質としてリチウム、またはリチウム合金を有し、電解質として有機固体電解質、または有機液体電解質を有する、リチウム一次電池が挙げられる。
【0024】
あるいは、一次電池は、正極活物質が酸素であり、負極活物質が、金属元素である、金属空気電池であってもよい。負極活物質の金属元素としては、例えば、Li、Na、K、Mg、Ca、Fe、Al、Zn、Sn、Inが挙げられる。また、金属空気電池は、電解質内を酸素イオンが移動することで充放電が行われるものであってもよい。
【0025】
一次電池31は、1つでも、2つ以上が直列に接続されたものであってもよい。例えば、一次電池31の公称電圧が3Vであり、有機EL膜の駆動電圧が6Vであれば、一次電池31を2つ直列に接続して配置する。
【0026】
電池管理装置52は、一次電池31と直列または並列に電気接続されており、一次電池の残り放電容量、または電圧、またはその両方を測定する測定回路を有する。補助発光源51は電池管理装置と電気接続されている。補助発光源への電力供給は、電池管理装置52に含まれる制御回路により制御される。
【0027】
補助発光源51、および電池管理装置52の目的は、発光表示体の管理者に対し、一次電池31の残り放電容量が少なくなったことを伝えることにある。例えば、電池管理装置52で測定した放電容量、または電圧値が一定値以上の場合は、補助発光源51への電力供給を行わず、放電容量、または電圧値が一定値以下になった場合に、補助発光源51への電力供給を行うよう、電池管理装置52を設定することで、発光表示体の管理者に対し、一次電池31を交換する必要があることを通知することが可能となる。
【0028】
あるいは、2つ以上の補助発光源51を配置し、電池管理装置52で測定した放電容量、または電圧値が一定値以上の場合は、全ての補助発光源に電力を供給し、放電容量、または電圧値が減少するにつれて、電力を供給する補助発光源の数を減らすよう、電池管理装置52を設定することで、発光表示体の管理者に対し、一次電池31の残量を視覚的に分かりやすく通知することが可能となる。
【0029】
あるいは、発色がそれぞれ異なる2つ以上の補助発光源51を配置し、電池管理装置52で測定した放電容量、または電圧値が一定値以上の場合は一方の補助発光源(例えば緑色)に電力を供給し、放電容量、または電圧値が一定値以下の場合は他方の補助発光源(例えば赤色)に電力を供給するよう、電池管理装置52を設定することで、発光表示体の管理者に対し、一次電池31の残量を視覚的に分かりやすく通知することが可能となる。
【0030】
あるいは、表示パネル上の、補助発光源近傍に、電池の交換方法、電池の交換を補助する個人または法人の連絡先、および電池交換の際の注意事項を記載しておき、放電容量、または電圧値が一定値以下の場合に補助発光源51に電力を供給するよう、電池管理装置52を設定することで、発光表示体の管理者に対し、一次電池31の交換方法を分かりやすく通知することが可能となる。
【0031】
本実施例において、例えば、発光表示体全体の大きさを縦120mm横250mmであるとして、発光表示体の厚さおよび発光可能時間の見積もりを行う。有機EL22は表示パネル11と合わせても、その厚さは高々5mmである。またその消費電力は、電池管理装置52および補助発光源51による消費電力を考慮しても、発光表示体全体の消費電力を高々1Wとできるまた、一次電池31として、正極活物質にフッ化カーボンを、負極活物質にリチウムを含むリチウム電池を利用するとすると、縦120mm横120mm厚さ4mmの一次電池を2つ直列接続することで、起電力6V、放電容量13Ah、すな

ラスチック等の薄板を、接着層42に両面テープを利用すれば、背面パネルと接着層を合わせた厚さは高々2mmである。
【0032】
従って、この場合、発光表示体全体の厚さは高々11mmである。また、発光表示体は、エネルギー容量78Whの一次電池31で1Wの電力を連続的に消費し続けるから、その発光可能時間は、78時間、すなわち3.25日である。従って、表示部が120mm×250mmと比較的大面積であり、厚さが合計11mmときわめて薄型の発光表示体は、外部電源を用いることなく、3日以上の連続発光が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】発光表示体の実施例に関する組立図である。
【符号の説明】
【0034】
11 表示パネル
21 基板
22 有機EL膜
23 電極
31 一次電池
32 電極
41 背面パネル
42 接着層
51 補助発光源
52 電池管理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に表示内容が描かれている、透光性を有する表示パネルと、
電力によって発光する、薄型の有機EL膜と、
前記有機EL膜と電気的に接続され、前記EL有機膜に電力を供給する、薄型の一次電池と
を有する発光表示体であって、
発光表示体の厚さが、15mm以下である
ことを特徴とする、発光表示体。
【請求項2】
前記一次電池が、前記有機EL薄膜を少なくとも72時間発光させるのに必要な放電容量(Ah)、およびエネルギー容量(Wh)を有する
ことを特徴とする、請求項1に記載の発光表示体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発光表示体であって、
前記一次電池の正極活物質が、二酸化マンガン、またはフッ化カーボンであり、
前記一次電池の負極活物質が、リチウム、またはリチウム合金であり、
前記一次電池の電解質が、有機固体電解質、または有機液体電解質である
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の発光表示体。
【請求項4】
請求項1または2のいずれかに記載の発光表示体であって、
前記一次電池の正極活物質が、酸素であり、
前記一次電池の負極活物質が、金属元素である
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の発光表示体。
【請求項5】
請求項4に記載の発光表示体であって、
前記一次電池の充放電は、電解質内を酸素イオンが移動することで行われる
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の発光表示体。
【請求項6】
前記一次電池が、1つ以上の一次電池を直列に接続したものである
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の発光表示体。
【請求項7】
電力によって発光する、1以上の補助発光源と、
前記一次電池の残り放電容量、または電圧、またはその両方を測定する測定回路と、測定値に基づき、前記補助発光源への電力供給を制御する制御回路とを有する電池管理装置とを有する
ことを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の発光表示体。
【請求項8】
前記補助発光源の数が2以上あり、前記電池管理装置が、各補助発光源への電力供給を独立に制御する
ことを特徴とする、請求項7に記載の発光表示体。
【請求項9】
前記表示パネル上の、補助発光源近傍に、電池の交換方法、電池の交換を補助する個人または法人の連絡先、および電池交換の際の注意事項のうち、少なくともいずれか1つが描かれている
ことを特徴とする、請求項7または8に記載の発光表示体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−37852(P2012−37852A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190069(P2010−190069)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(510138246)
【Fターム(参考)】