説明

発光表示装置付きバックミラー

【課題】発光表示装置を組み込んだバックミラーにおいて、ミラー素子の背後に暗色マスク部材を配置する場合に光の干渉が発生するのを防止する。
【解決手段】透明基板16の片面に半透過反射膜18を形成してミラー素子14を構成する。ミラー素子14の裏面に暗色マスク部材20を配置する。暗色マスク部材20に開口部20aを形成する。ミラー素子14の背後に、発光表示装置22を開口部20aに臨ませて配置する。暗色マスク部材20の前面20bの周縁部全周にスペーサを構成する凸部20cを構成する。スペーサ20cにより半透過反射膜18と暗色マスク部材20の間に空隙19が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は発光表示装置を組み込んだバックミラーに関し、ミラー素子の背後に暗色マスク部材を配置する場合に光の干渉が発生するのを防止したものである。
【背景技術】
【0002】
発光表示装置を組み込んで情報を表示するようにしたバックミラーとして下記特許文献1〜4に記載されたものがあった。
【0003】
【特許文献1】特開2000−153736号公報
【特許文献2】特開2000−255321号公報
【0004】
特許文献1記載のバックミラーは、ミラー基板の裏面に誘電体多層膜による半透過反射膜を形成し、該半透過反射膜の裏面の全領域のうち一部を除いた領域に有色塗膜を形成し、該半透過反射膜の裏面の前記有色塗膜が形成されていない領域に透明塗膜または半透明塗膜を形成し、ミラー基板の前記透明塗膜または半透明塗膜が形成された領域の裏面側にモニター装置を配置して構成されている。モニター装置がオフのときに有色塗膜とモニター装置の画面とがほぼ同色(黒色)をなすように両者の色彩が設定されている。これによりモニター装置がオフのときに有色塗膜とモニター装置の画面との境界線を不明瞭にして、該境界線によるミラーの視認性の低下を防止している。
【0005】
特許文献2記載のバックミラーは、ミラー基板の裏面に誘電体多層膜による半透過反射膜を形成し、該半透過反射膜の裏面側の全領域のうち一部を除いた領域に該半透過反射膜に接して有色板を配置し、該半透過反射膜の裏面側の前記有色板が配置されていない領域にモニター装置を配置して構成されている。モニター装置がオフのときに有色板とモニター装置の画面とがほぼ同色(黒色)をなすように両者の色彩が設定されている。これによりモニター装置がオフのときに有色板とモニター装置の画面との境界線を不明瞭にして、該境界線によるミラーの視認性の低下を防止している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載のバックミラーによれば、半透過反射膜の裏面に塗膜を形成すると半透過反射膜の裏面反射が弱くなる(光の損失が大きい)。そこでバックミラーとして必要な反射率を得るためには半透過反射膜自体の反射率を高くする必要があり、そうすると今度は透過率が低下してモニター装置がオンのときの表示の視認性が低下する。特許文献2記載のバックミラーによれば、半透過反射膜の裏面に塗膜を形成した場合と異なり半透過反射膜の裏面反射が強く得られる(光の損失が少ない)ため、バックミラーとしての性能を満足する反射率とモニター装置がオンのときの表示の視認性を両立させることができる。しかしその反面ミラー基板と有色板との接触が不均一な部分(例えばミラー基板に外力が加わった場合やミラー基板あるいは有色板に歪みが生じていた場合にミラー基板と有色板との接触が不均一になる)で光の干渉が起きやすく、意匠性およびミラーの視認性が悪くなる問題があった。
【0007】
この発明は上述の点に鑑みてなされたもので、ミラー素子の背後に暗色マスク部材を配置する場合に光の干渉が発生するのを防止した発光表示装置付きバックミラーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は透明基板の片面に半透過反射膜を形成したミラー素子と、面内に開口部が形成され、前記ミラー素子の裏面側の、前記開口部に対面する領域を除く全域または前記開口部に対面する領域を除く適宜の領域に対向して配置された少なくとも前面が暗色の暗色マスク部材と、前記透明基板と前記暗色マスク部材との間に配置され、該透明基板と該暗色マスク部材との間に空隙を形成するスペーサと、前記ミラー素子の背後位置で表示面を前記暗色マスク部材の前記開口部に臨ませて配置された発光表示装置とを具備してなり、前記空隙の距離が、前記ミラー素子を透過した光と該光が前記暗色マスク部材の前面で反射された光とによる光の干渉を生じさせない距離に設定されているものである。この発明によれば透明基板と暗色マスク部材との間にスペーサを配置して該透明基板と該暗色マスク部材との間に、光の干渉を生じさせない距離の空隙を形成したので、光の干渉が発生するのを防止して、意匠性およびミラーの視認性を改善することができる。
【0009】
前記空隙の距離は例えば0.3mm以上、5mm以下に設定することができる。前記スペーサは例えば、前記暗色マスク部材の前記ミラー素子との対向面の周縁部に突出形成された凸部で構成することができる。あるいは前記スペーサは暗色マスク部材とは別体で構成することもできる。前記ミラー素子と対向する前記暗色マスク部材の表面は平滑であることが望ましく、該表面の算術平均粗さRaを例えば0.6μm以下とすることができる。暗色マスク部材の表面を平滑にすることにより暗色マスク部材の表面での光の散乱を抑制して、意匠性およびミラーの視認性をより良好にすることができる。前記半透過反射膜は例えば誘電体多層膜で構成することができる。前記ミラー素子の可視光域での反射ピーク波長は例えば430nm〜630nm好ましくは500nm〜550nmに設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
《実施の形態1》
この発明の実施の形態1を説明する。図1はこの発明が適用された車両用インナーミラーの内部構造の概要を示す。(a)は正面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。インナーミラー10はハウジング12の前面開口部12aにミラー素子14を嵌め込み装着して構成されている。ミラー素子14は透明ガラス、透明光学樹脂等で構成される透明基板16の裏面全体に誘電体多層膜からなる半透過反射膜18を形成した裏面鏡として構成されている。ミラー素子14の裏面側には所定距離dの空隙19を隔てて暗色(例えば黒色)の暗色マスク部材20が対向配置されている。暗色マスク部材20の適宜の領域(図1ではミラー素子14の面内の運転者の視点に近い右隅部)には開口部20aが形成されている。暗色マスク部材20は開口部20aの位置を除いてミラー素子14の裏面全域に対面して配置されている。ハウジング12内の空間13にはミラー素子14の背後位置に発光表示装置22が表示面22aを暗色マスク部材20の開口部20aに臨ませて配置されている。発光表示装置22とミラー素子14とが対面する位置の空隙19の距離はいずれの部分でも暗色マスク部材20とミラー素子14とが対面する位置の空隙19の距離dと同じかまたはそれ以上に設定されている。つまり発光表示装置22は暗色マスク部材20の前面20bよりも前方に突出していない。発光表示装置22は液晶表示装置、EL表示装置等で構成される。発光表示装置22の表示面22aは発光表示装置22がオフのときに暗色マスク部材20の前面20bとほぼ同色(例えば黒色)をなすようにその色彩が設定されている。発光表示装置22は暗色マスク部材20に装着して支持されあるいはハウジング12内の適宜の箇所に装着して支持される。
【0011】
暗色マスク部材20はPP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニール)、ASA(アクリルニトリルスチレンアクリルゴム)、PS(ポリスチレン)、ABS(アクリルニトリルブタジエンスチレン)等による暗色の樹脂や少なくとも前面に暗色の塗装をした樹脂のほか、Al、Fe等の金属板に暗色の塗装をしたもの等で構成することができるが、発光表示装置22がオフのときの表示面22aと最も近い色調が得られるものが好ましい。また軽量化の観点からは金属材料よりも樹脂材料の方が好ましい。
【0012】
暗色マスク部材20の構造を図2に示す。(a)は正面図、(b)は(a)のB−B矢視断面図である。暗色マスク部材20は全体が暗色の樹脂板等で一体に構成されている。暗色マスク部材20は正面形状がミラー素子14と同一外形を有し、その前面(ミラー素子14との対向面)20bの周縁部全周にスペーサを構成する凸部20cが一体に形成されている。スペーサ20cは断面が矩形状でありその高さdは形成しようとする空隙19の距離dに等しく設定されている。暗色マスク部材20のスペーサ20cで囲まれた面内には前記開口部20aが形成されている。
【0013】
図1(b)に示すようにハウジング12の開口部12aの内壁面には1本の溝12bが全周にわたり形成されており、ミラー素子14と暗色マスク部材20とは相互に重ね合わせて溝12b内に嵌め込み装着される。このときミラー素子14はその裏面の周縁部全周がスペーサ20cの頂面に当接した状態となる。これによりミラー素子14と暗色マスク部材20とは距離dの空隙19を隔てて対向した状態に保たれる。空隙19の距離dはミラー素子14の裏面の反射光と暗色マスク部材20の表面の反射光との間で光の干渉を生じさせない大きさであり、例えば0.3mm以上が好適である。また空隙19の距離dがあまり大きいとハウジング12の厚みが大きくなってしまうので、該距離dは5mm以下が望ましい。
【0014】
図3は半透過反射膜18の膜構成を模式的に示す。透明基板16は例えばソーダライムガラスで構成される。透明基板16の裏面には半透過反射膜18が成膜されている。半透過反射膜18は透明基板16の裏面に高屈折率材料膜26、低屈折率材料膜28、高屈折率材料膜30の3層を順次積層した誘電体多層膜で構成されている。各層26,28,30は可視光の吸収がないかまたはきわめて吸収が少ない材料で構成されている。高屈折率材料膜26,30は例えばTiO2、Ta25、ZrO2、Nb25等で構成することができる。低屈折率材料膜28は例えばSiO2、Al23、MgF2等で構成することができる。各層26,28,30の光学膜厚はそれぞれλ/4(λ=430nm〜630nm好ましくは500nm〜550nm)であり、ミラー素子14の可視光域での反射ピーク波長は430nm〜630nm好ましくは500nm〜550nmに設定されている。
【0015】
高屈折率材料膜26,30をそれぞれTiO2で構成し、低屈折率材料膜28をSiO2で構成した場合の図3のミラー素子14の反射率特性および透過率特性例を図4に示す。この特性は可視光域に単一の反射ピークを持っている。この特性によれば車両用ミラーとして必要な反射率が得られている。また可視域での反射ピーク波長は約530nmであり、その時の反射率は約60%である。したがってコールドミラーのような眩しさを運転者に与えることがない。また反射率が反射ピーク波長の両側でなだらかに減衰しているので、ディスチャージランプの青みの強い短波長域の光とハロゲンランプの赤みがかった長波長域の光の双方の光に対して反射光強度を低減させることができ、より高い防眩効果が得られる。なお半透過反射膜18の高屈折率材料膜をTiO2で構成し、低屈折率材料膜をSiO2で構成する場合は、5層以上積層させると可視域での積分球反射率が高くなりすぎて、夜間後方からのヘッドライト光が運転者に眩しさを感じさせることになる。また層数を増やすにつれて、反射光の分光スペクトル形状が急激な変化をするため、自然な色調にならず鏡に適さなくなり、そのうえ視野角依存性が大きくなって反射光の色調に不連続な箇所が生じるなどの不都合が生じる。したがって半透過反射膜18の積層数は3層または4層が適当である。
【0016】
ここでミラー基板の裏面に特許文献1記載のバックミラーのように有色塗膜と透明塗膜または半透明塗膜を形成した場合と図1のバックミラーように暗色マスク部材20を配置した場合(有色塗膜、暗色マスク部材20はいずれも黒色とする)の反射率の違いについて説明する。図5(a)は特許文献1のバックミラーによる光の反射を模式的に示す(図1と共通する部分には同一の符号を用いる)。透明基板16の裏面に半透過反射膜18が形成されている。半透過反射膜18の裏面には発光表示装置22を配置する領域に透明塗膜または半透明塗膜32が形成され、それ以外の領域に黒色の有色塗膜34が形成されている。透明基板16をソーダライムガラスで構成し、半透過反射膜18をTa25(高屈折率材料膜)−Al23(低屈折率材料膜)−TiO2(高屈折率材料膜)の3層の誘電体多層膜で構成するものとする。このとき積分球反射率は、
・半透過反射膜18の裏面に何も形成しない場合:46%
・半透過反射膜18の裏面に透明塗膜32として透明アクリル塗膜を形成した領域:34%
・半透過反射膜18の裏面に有色塗膜34として黒色アクリル塗膜を形成した領域:31%
であった。すなわち半透過反射膜18の裏面に何も形成しない場合は半透過反射膜18の表面反射のほかその裏面反射がミラー素子全体としての反射率に寄与するのでバックミラーとしての性能を満足する反射率が得られる。これに対し半透過反射膜18の裏面に透明塗膜または半透明塗膜32あるいは有色塗膜34を形成した場合は、半透過反射膜18の表面反射は強く得られミラー素子全体としての反射率に寄与するものの、その裏面反射は弱くなりミラー素子全体としての反射率にほとんど寄与しないためバックミラーとしての性能を満足する反射率が得られない。また有色塗膜34が形成された領域は透明塗膜32が形成された領域に比べて反射率が3%ほど低くなる(誘電体多層膜による反射膜では反射率の低下は顕著である)。このため発光表示装置22がオフのときに、有色塗膜34が形成された領域の反射光と透明塗膜32が形成された領域の反射光とに色調の違い(不自然な濃淡)が現れ、両領域が目視で識別し易く意匠性が悪い。
【0017】
図5(b)は図1のバックミラーによる光の反射を模式的に示す。図5(a)と同様に透明基板16をソーダライムガラスで構成し、半透過反射膜18をTa25(高屈折率材料膜)−Al23(低屈折率材料膜)−TiO2(高屈折率材料膜)の3層の誘電体多層膜で構成するものとする。このとき積分球反射率は、
・半透過反射膜18の裏面に何も配置しない場合:46%
・半透過反射膜18の裏面に黒色の暗色マスク部材20(表面の算術平均粗さRa=0.6μm以下)を配置した領域:47%
・半透過反射膜18の裏面に発光表示装置22(オフ時の表示面22aの色彩は黒色)を配置した領域:46%
であった。すなわち半透過反射膜18の裏面には空隙19が形成されているので、暗色マスク部材20を配置した領域、発光表示装置22を配置した領域のいずれにおいても、半透過反射膜18の表面反射のほかその裏面反射が強く得られて両反射光ともミラー素子全体としての反射率に寄与するので、バックミラーとしての性能を満足する反射率が得られる。また暗色マスク部材20を配置した領域と発光表示装置22を配置した領域の反射率の差が小さいので、発光表示装置22がオフのときに、暗色マスク部材20を配置した領域の反射光と発光表示装置22を配置した領域の反射光の色調の違いが小さく、両領域が目視で識別し難く意匠性がよい。
【0018】
次に暗色マスク部材20の表面粗さが及ぼす影響について説明する。図6は暗色マスク部材20の前面20bが粗い場合と平滑な場合の、該前面20bでの光の反射の違いを示す。(a)は前面20bが粗い場合(表面の算術平均粗さRa=0.6μmより大)である。このとき入射光は前面20bで反射して多くの散乱光を発生させ、反射光は白みを帯びた色調になる。前面20bの粗さが顕著になると、発光表示装置22がオフのときに、表面が粗い暗色マスク部材20を配置した領域と表面が平滑な発光表示装置22を配置した領域とで色調に違いが生じてしまい、両領域が目視で識別しやすくなり意匠性が悪くなる。この散乱光は特に入射光の強度が強い場合には運転者に眩しさや不快感を与えてしまい、安全運転に支障をきたす。これに対し(b)は前面20bが平滑な場合(表面の算術平均粗さRa=0.6μm以下)である。前面20bが平滑な場合は散乱光の発生が抑制されるため、表面が平滑な暗色マスク部材20を配置した領域と表面が平滑な発光表示装置22を配置した領域の色調の違いが小さくなり、両領域が目視で識別し難く意匠性が良好となる。また暗色マスク部材20の表面が粗い場合に比べて散乱光の発生が少ないので運転者に与える眩しさや不快感を軽減することができ、より安全な視界を提供することができる。
【0019】
各種樹脂材料で暗色マスク部材20の試料を作製して表面の算術平均粗さRaと散乱光の量を測定した結果を次表に示す。なおこの測定では、表面の算術平均粗さRaをキーエンス製レーザー顕微鏡を用いて測定し、散乱光の量は目視にて観察した。

暗色マスク部材の試料(樹脂材料) 表面粗さRa(μm) 散乱光の量
試料1(PP) 0.06 少ない
試料2(塩化ビニール) 0.06 少ない
試料3(ABS+PMMA) 0.07 少ない
試料4(PS) 0.43 少ない
試料5(PS) 0.63 少ない
試料6(PP) 0.8 多い
試料7(PS) 1.27 多い
試料8(PS) 1.73 多い
試料9(PS) 2.69 多い
試料10(PS) 2.92 多い
試料11(PS) 3.32 多い

この測定結果によれば表面の算術平均粗さRaが0.6μm以下(小数点第2桁を四捨五入した値)であれば散乱光が少なく、暗色マスク部材として最適であることがわかる。
【0020】
次に半透過反射膜18と暗色マスク部材20との間に生じる干渉光について説明する。図7はスペーサ20cが無い場合と有る場合の反射の違いを示す。(a)はスペーサ20cが無い場合である。ミラー素子14に外力が加わり、あるいはミラー素子14や暗色マスク部材20に元々歪みが生じている等の原因により半透過反射膜18と暗色マスク部材20の対向面どうしが不均一に接触すると半透過反射膜18の裏面18aからの反射光と暗色マスク部材20の前面20aからの反射光どうしが干渉して干渉光が発生する。これに対し(b)はスペーサ20cが有る場合である。このとき半透過反射膜18と暗色マスク部材20との間には空隙19が形成されるので半透過反射膜18と暗色マスク部材20とは十分に離れており、半透過反射膜18の裏面18aからの反射光と暗色マスク部材20の前面20aからの反射光どうしは干渉せず、干渉光は発生しない。スペーサ20cの高さdを0.3mm以上に設定すればミラー素子14に外力が加わっても半透過反射膜18と暗色マスク部材20の接触を十分に回避して、干渉光の発生を防止することができる。またスペーサ20cの高さdがあまり高いとハウジング12(図1)の厚みが大きくなってしまうので、スペーサ20cの高さdは5mm以下であることが望ましい。
【0021】
《実施の形態2》
前記実施の形態1では暗色マスク部材20の前面20bの周縁部に一体に形成した凸部20cでスペーサを構成したが、暗色マスク部材20と別体の部材でスペーサを構成することもできる。そのように構成した実施の形態を図8に示す。図8は図1のA−A矢視位置に相当する位置で切断した断面図である。図1と共通する部分には同一の符号を用いる。このインナーミラー36はミラー素子14と暗色マスク部材20との間の周縁部全周にスペーサ38を挟み込んで距離dの空隙19を形成している。スペーサ38は環状の暗色(例えば黒色)の樹脂部材等で構成される。
【0022】
前記各実施の形態ではこの発明をインナーミラーに適用した場合について説明したが、アウターミラーその他の車両用バックミラーにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明のバックミラーの実施の形態1を示す正面図および断面図である。
【図2】図1の暗色マスク部材20の構造を示す正面図および断面図である。
【図3】図1の半透過反射膜18の膜構成を模式的に示す断面図である。
【図4】図3のミラー素子による反射率および透過率の特性例を示す図である。
【図5】ミラー基板の裏面に特許文献1記載のバックミラーのように有色塗膜と透明塗膜または半透明塗膜を形成した場合と図1のバックミラーように暗色マスク部材20を配置した場合の光の反射の強さの違いを模式的に示す図である。
【図6】暗色マスク部材の前面が粗い場合と平滑な場合の、該前面での光の反射の違いを示す図である。
【図7】スペーサ20cが無い場合と有る場合の光の反射の違いを示す図である。
【図8】スペーサを暗色マスク部材と別体の部材で構成したこの発明のバックミラーの実施の形態2を示す断面図である。
【符号の説明】
【0024】
10,36…発光表示装置付きバックミラー(インナーミラー)、14,40…ミラー素子、16…透明基板、18…半透過反射膜、19…空隙、20…暗色マスク部材、20a…開口部、20c…スペーサ(凸部)、22…発光表示装置、22a…表示面、38…スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板の片面に半透過反射膜を形成したミラー素子と、
面内に開口部が形成され、前記ミラー素子の裏面側の、前記開口部に対面する領域を除く全域または前記開口部に対面する領域を除く適宜の領域に対向して配置された少なくとも前面が暗色の暗色マスク部材と、
前記透明基板と前記暗色マスク部材との間に配置され、該透明基板と該暗色マスク部材との間に空隙を形成するスペーサと、
前記ミラー素子の背後位置で表示面を前記暗色マスク部材の前記開口部に臨ませて配置された発光表示装置とを具備してなり、
前記空隙の距離が、前記ミラー素子を透過した光と該光が前記暗色マスク部材の前面で反射された光とによる光の干渉を生じさせない距離に設定されている発光表示装置付きバックミラー。
【請求項2】
前記空隙の距離が0.3mm以上、5mm以下である請求項1記載の発光表示装置付きバックミラー。
【請求項3】
前記スペーサが、前記暗色マスク部材の前記ミラー素子との対向面の周縁部に突出形成された凸部で構成されている請求項1または2記載の発光表示装置付きバックミラー。
【請求項4】
前記ミラー素子と対向する前記暗色マスク部材の表面の算術平均粗さRaが0.6μm以下である請求項1から3のいずれか1つに記載の発光表示装置付きバックミラー。
【請求項5】
前記半透過反射膜が誘電体多層膜で構成されている請求項1から4のいずれか1つに記載の発光表示装置付きバックミラー。
【請求項6】
前記ミラー素子の可視光域での反射ピーク波長が430nm〜630nm好ましくは500nm〜550nmに設定されている請求項1から5のいずれか1つに記載の発光表示装置付きバックミラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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