発光装置、及びこれを備えた電子機器
【課題】 例えば、有機EL素子の放熱特性を高める。
【解決手段】 有機EL素子72が発光する際に生じる熱は、第2バンク部47bに設けられた放熱膜61によって熱伝導及び熱放射を利用して放熱される。したがって、放熱膜61によれば、熱伝導だけで放熱することに加えて、熱放射という手段を用いて有機EL層50で発生した熱を効率良く放熱することが可能である。
【解決手段】 有機EL素子72が発光する際に生じる熱は、第2バンク部47bに設けられた放熱膜61によって熱伝導及び熱放射を利用して放熱される。したがって、放熱膜61によれば、熱伝導だけで放熱することに加えて、熱放射という手段を用いて有機EL層50で発生した熱を効率良く放熱することが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば有機EL装置等の発光装置、及びそのような発光装置を備えた電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Electro-luminescence)素子は、高温で動作させると寿命が著しく低下することが知られている。したがって、有機EL素子の寿命を高めるためには、有機EL素子が発光する際に生じる熱や配線抵抗等によるジュール熱を素子外部に効率良く放熱することが重要になる。例えば、有機EL素子は、熱伝導率は低いガラス基板或いは合成樹脂基板上に形成されることが多く、有機EL素子で生じた熱を十分に放熱することが困難である技術的問題点がある。このような技術的問題点を解決するために、例えば特許文献1乃至6は放熱特性を高めるための各種技術を提案している。また、有機EL素子に限定されず、IC等の半導体素子が形成される半導体基板では熱放射を利用して放熱特性を高め、熱による素子の特性劣化を抑制する技術(例えば、特許文献7参照。)、或いは基板の材質或いは組成を選択することによって熱放射率或いは熱伝導率を高める技術も開示されている(例えば、特許文献8乃至10。)。
【0003】
尚、有機EL素子は、基板上に形成されたバンクと称される素子分離部で区画された領域に発光材料を塗布することによって形成されることが多く、このような素子分離部の詳細な構造は、例えば特許文献11に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−186045号公報
【特許文献2】特開2002−63985号公報
【特許文献3】特開2001−237062号公報
【特許文献4】特開2001−237063号公報
【特許文献5】特許3553672号公報
【特許文献6】特開2002−56986号公報
【特許文献7】特開2004−172542号公報
【特許文献8】特許第2698036号公報
【特許文献9】特開平5−129082号公報
【特許文献10】特開平10−144468号公報
【特許文献11】特開2003−249375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1乃至6に開示された技術は、熱伝導を利用して放熱特性を高める技術であり、更なる放熱特性の向上を求める技術的要請に対して十分に対応するものとは言い難い。特に、有機EL装置等の発光装置が大型化するに従い、基板中央付近は基板の端に比べて放熱されにくくなる問題点がある。より具体的には、基板中付近に局所的に蓄積された熱によって、装置全体で有機EL素子等の表示素子の寿命にバラツキが生じ、その結果発光装置が高品質の画像を表示できる期間、即ち装置の寿命を十分な長い期間に維持できなくなる技術的問題点が生じる。このような技術的問題点に対して、本願発明者は有機EL素子の電極表面に、素子の放熱特性を高める熱放射層或いは熱伝導層を設けることを検討したが、素子構造の大幅な変更による製造プロセスの煩雑化及び発光特性の低下を伴う場合があり、有機EL素子及びこれを備える有機EL装置等の発光装置の駆動時における温度上昇を十分低く抑えることができていないのが実情である。また、特許文献7乃至10に開示された技術を応用して、有機EL素子から出射される光が遮られない領域に熱放射層を形成することが考えられるが、有機EL層で生じた熱や配線抵抗等によるジュール熱を熱放射層に速やかに伝達できなければ有機EL層の温度上昇の抑制効果は十分に発揮されない場合もある。加えて、本願発明者は、熱放射を利用して有機EL素子等の発光素子を備えた発光装置の放熱特性を高める技術が記載された公知文献等の存在を本願出願時までに確認していない。また、特許文献11に開示されたバンクは、樹脂等の有機物で構成される場合が多いため熱伝導率が低く、発光素子で生じた熱を装置外部に逃すことが十分にできていないのが実情である。
【0006】
よって、本発明は上記問題点及び実情等に鑑みてなされたものであり、放熱特性を高めることによって長期間に亘って高品質の画像を表示できる有機EL装置等の発光装置、及びこのような発光装置を備えた電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1の発明に係る発光装置は上記課題を解決するために、基板と、前記基板上に設けられており、前記基板上の画像表示領域を構成する複数の画素領域の各々内に設けられた複数の凹部を規定する隔壁部と、前記複数の凹部の夫々に設けられており、前記複数の凹部内の夫々に発光材料を塗布することによって形成された複数の発光部と、前記発光部に接するように前記隔壁部の表面に設けられており、前記発光部で生じた熱を前記発光部の外側に逃がす放熱膜とを備え、前記放熱膜は、前記隔壁部より熱伝導率が高い熱伝導材料と、前記隔壁部より熱放射率が高い熱放射材料とを含んでいる。
【0008】
本発明に係る発光装置においては、基板上の画素領域内に設けられた複数の凹部に発光材料を塗布することによって、画素領域内に複数の発光部が設けられている。凹部を規定する隔壁部とは、凹部の周囲が隔壁部に囲まれていることを意味している。隔壁部は、例えば複数の隔壁部が基板上に積層された積層構造を有していてもよい。より具体的には、隔壁部は、例えば、基板上に形成された無機材料からなる隔壁部と、その上に形成された有機材料からなる隔壁部を有していてもよい。
【0009】
発光部は、発光材料を凹部に塗布することによって形成されている。発光材料を塗布する際には、例えば、インクジェット法等の塗布法を用いて、発光材料が凹部に塗布される。また、本発明に係る発光装置は、複数の発光部に夫々異なる色に発光する発光材料を塗布することによって、カラー表示可能であってもよい。
【0010】
放熱膜は、発光部と接しているため、発光部で生じた熱が放熱膜に直接伝達され発光部の外側に逃がされる。ここで、放熱膜は隔壁部の表面に形成されているため、例えば、隔壁部がアクリル樹脂或いはポリイミド樹脂等の有機材料のように熱伝導性が十分でない材料を用いて形成されている場合でも、隔壁部を介した熱伝導路とは別の熱伝導路を構成し、発光部から速やかに熱を逃がすことが可能である。加えて、放熱膜は、隔壁部より高い熱伝導率を有する熱伝導材料及び隔壁部より高い熱放射率を有する熱放射材料とを含んでいるため、熱伝導及び熱放射現象の両方を利用して発光部から熱を効率良く逃がすことが可能である。尚、発光部は塗布法を用いて形成されるため、予め隔壁部に放熱膜を形成しておけば、放熱膜の表面に塗布された発光材料が若干濡れ上がり、これにより発光部が放熱膜と接することになる。
【0011】
放熱膜は、例えば、熱伝導材料、熱放射材料及び基材を混合して得られる混合材が隔壁部の表面に塗布されることによって形成される。また、放熱膜は、塗布法に限定されず、各種膜形成方法を用いて形成可能であれば如何なる方法を用いて形成されていてもよい。
【0012】
本発明に係る発光装置によれば、隔壁部に形成された放熱膜によって各発光部から放熱できるため、画像表示領域全体で発光部から放熱することが可能であり、且つ画像表示領域内の位置の違いによって各発光部の放熱効率に差が生じることを低減でき、画像表示領域内の各画素領域に含まれる発光部全体の温度上昇を均一に低減できる。これにより、発光装置の温度上昇に伴う輝度バラツキを低減できると共に装置寿命を延ばすことが可能になり、例えば高品質の画像を表示できる発光装置を長期間使用可能な状態に維持できる。加えて、放熱膜は隔壁部に設けられるため、発光部の構造を変更することなく駆動時における発光部の温度上昇を抑制できる。尚、本発明の「画素領域」とは、一色に発光する発光部を一つ含む画素部が設けられる領域、或いはR(赤色)、G(緑色)、B(青色)の夫々(青色)の夫々の色の波長を有する光を発生するサブ画素部を一組としてなる画素部が設けられる領域の両方を意味する。また、発光色毎に異なる発光材料を各凹部に塗布することによって発光部を形成する場合、これら発光部が所定の色の光を発光するように放熱膜の放熱能力を調整することも可能である。より具体的には、発光部で生じる各色の光の輝度及び波長が狙いの値になるように、例えば装置仕様に応じて且つ製造技術における凹部をパターニングする際のプロセスに応じて、放熱膜に含まれる熱伝導材料及び熱放射材料の量を決定してもよい。
【0013】
このように、本発明に係る発光装置によれば、放熱膜を用いて熱伝導及び熱放射現象の両方を利用して放熱することにより、発光時における発光部の温度上昇を低減でき、高画質の画像を表示できる状態を維持しつつ発光装置の寿命を延ばすことが可能になる。したがって、信頼性に優れた高性能の発光装置を提供することが可能である。
【0014】
本発明に係る発光装置の一の態様においては、前記放熱膜は、前記複数の発光部のうち前記隔壁部を介して隣接する一の発光部及び他の発光部の夫々に接するように前記隔壁部の表面に設けられていると共に、前記一の発光部及び前記他の発光部が少なくとも互いに独立して発光するように前記隔壁部の表面に沿って前記一の発光部及び前記他の発光部を互いに電気的に絶縁していてもよい。
【0015】
この態様によれば、放熱膜は一の発光部及び他の発光部と接しているため、これら複数の発光部間を介して放熱することができ、例えば、画像表示領域全体で放熱膜を介した熱伝導路が構成されることになる。このような熱伝導路として機能する放熱膜によれば、画像表示領域の中央付近及びで端付近の夫々に設けられた発光部における放熱効率を均一にでき、画像表示領域内における温度バラツキを一因とする画質の低下を抑制できる。ここで、放熱膜に含まれる熱伝導材料が金属等の電気抵抗が低い材料を含む場合がある。このような場合、各発光部が少なくとも独立して発光するように、例えば熱伝導材料の含有量が調整される。ここで、「独立して発光するように」とは、例えば、各発光部を含む画素部の夫々が、少なく個別に発光可能な程度に発光部間における放熱膜の電気抵抗が低減されていることを意味する。より具体的には、例えば発光部を発光させるために駆動回路から供給される信号が異なる発光部に供給されないように発光部間が互いに絶縁されている場合、或いは例えば有機EL層等を含む発光部を駆動されるための駆動電流が異なる発光部間でリークしないようにすることを意味する。尚、複数色の発光部を含んで一つの画素部を構成する場合には、異なる画素部に夫々含まれる発光部が独立して発光可能なように異なる画素部間で絶縁性が維持されていればよい。
【0016】
この態様によれば、隔壁部のみを介した放熱に比べて格段に放熱効率を高めることができ、発光部の輝度等の発光特性が温度上昇に伴って低下することを抑制できる。
【0017】
本発明に係る発光装置の他の態様においては、前記放熱膜は、前記熱伝導材料としてAl、Cu、Ag、Auから選ばれた少なくとも一種の材料を1乃至15vol%含んでいてもよい。
【0018】
この態様によれば、Al、Cu、Ag、Auの金属材料の熱伝導率は、例えば樹脂を含む隔壁部の熱伝導率に比べて高く、放熱膜は熱伝導を利用して発光部から効率良く熱を逃がすことが可能である。加えて、これらの金属材料を含む放熱膜は、これら金属材料を含まない場合に比べて電気抵抗が低くなるため、発光部間の絶縁性が維持される程度に含有量が調整されている。例えば、Al、Cu、Ag、Auの金属材料から選ばれた少なくとも一種の材料は、放熱膜に1乃至15vol%含まれるように含有量が調整されていれば、熱伝導による放熱効果を相応に得ながら実使用上問題ない水準に発光部間を絶縁できる。
【0019】
本発明に係る発光装置の他の態様においては、前記放熱膜は、前記熱放射材料としてAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、MgO、SiCから選ばれた少なくとも一種の材料を5乃至40vol%含んでいてもよい。
【0020】
この態様によれば、隔壁部による熱放射に比べて放熱膜による熱放射が高くなるように放熱膜に含まれる熱放射材料が設定される。例えば、放熱膜が、Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、MgO、SiCから選ばれた少なくとも一種の材料を5乃至40vol%含んでいることにより、放熱膜の熱放射率を樹脂等で構成される隔壁部に比べて高くすることが可能であり、且つ熱放射材料の含有量を制限することによって膜形成プロセス上支障なく放熱膜を形成できる。
【0021】
本発明に係る発光装置の他の態様においては、前記放熱膜は、前記隔壁部の表面に沿って夫々延在するように設けられると共に互いに電気的に絶縁された第1放熱膜及び第2放熱膜を備えており、前記第1放熱膜は、前記一の発光部と接しており、前記第2放熱膜は、前記他の発光部と接していてもよい。
【0022】
この態様によれば、第1放熱膜及び第2放熱膜が電気的に絶縁されているため、第1及び第2放熱膜の夫々に接する発光部間を電気的に絶縁できる。これにより、例えば放熱膜に含まれる、金属等の熱伝導材料の含有量を増やした場合でも放熱膜の電気抵抗の低下を考慮することなく熱伝導による放熱特性の向上を享受することが可能である。したがって、熱伝導による放熱量を増大させつつ、複数の発光部を誤って発光させる事態を回避でき、各発光部を所要のタイミング、且つ輝度で発光させることが可能である。
【0023】
本発明に係る発光装置の他の態様においては、前記第1放熱膜及び前記第2放熱膜は、前記隔壁部の表面で互いに離間されていてもよい。
【0024】
この態様によれば、前記第1放熱膜及び前記第2放熱膜が物理的に離間されているので、例えば、放熱膜に含まれる熱伝導材料が金属材料であっても、熱伝導材料量を調整することなく、熱伝導による放熱効果を高めることに注力して放熱膜の組成を設定できる。
【0025】
本発明の第2の発明に係る発光装置は上記課題を解決するために、基板と、
前記基板上の画像表示領域を構成する複数の画素領域の各々内に設けられた複数の凹部を規定する隔壁部と、
前記複数の凹部の夫々に設けられており、前記複数の凹部内の夫々に形成された複数の発光部とを備え、
前記隔壁部は、基材と、前記基材より高い熱放射率を有する熱放射材料と、前記基材より高い熱伝導率を有する熱伝導材料とを含んでいる。
【0026】
本発明に係る発光装置によれば、本発明の第1の発明に係る発光装置と同様に、隔壁部における熱伝導及び熱放射現象の両方を利用して放熱することにより、発光時における発光部の温度上昇を低減でき、高画質の画像を表示できる状態を維持しつつ発光装置の寿命を延ばすことが可能になる。したがって、信頼性に優れた高性能の発光装置を提供することが可能である。
【0027】
本発明に係る発光装置の一の態様においては、前記隔壁部は、前記複数の発光部のうち前記隔壁部を介して隣接する一の発光部及び他の発光部が少なくとも互いに独立して発光するように高い電気抵抗を有していてもよい。
【0028】
この態様によれば、隔壁部は一の発光部及び他の発光部と接しているため、これら複数の発光部から隔壁部に直接熱が伝達され、この熱が隔壁部を介して放熱される。これにより、画像表示領域全体で隔壁部を介した熱伝導路が構成されることになる。このような熱伝導路として機能する隔壁部によれば、画像表示領域の中央付近及びで端付近の夫々に設けられた発光部における放熱効率を均一にでき、画像表示領域内における温度バラツキを一因とする画質の低下を抑制できる。隔壁部に含まれる熱伝導材料が金属等の電気抵抗が低い材料を含む場合には、各発光部が少なくとも独立して発光するように、例えば熱伝導材料の含有量が調整され、隔壁部の電気抵抗が高く設定される。ここで、「独立して発光するように」とは、上述した第1の発明に係る発光装置と同様の意味である。
【0029】
したがって、本発明に係る発光装置によれば、従来の発光装置に比べて隔壁部を介して格段に発光部からの放熱効率を高めることができ、発光部の輝度等の発光特性が温度上昇に伴って低下することを抑制できる。
【0030】
本発明に係る発光装置の他の態様においては、前記熱伝導材料は、前記基材より電気抵抗率が低い導電材料としてAl、Cu、Ag、Auから選ばれた少なくとも一種の材料を1乃至15vol%含んでいてもよい。
【0031】
この態様によれば、Al、Cu、Ag、Auの金属材料の熱伝導率は、例えば樹脂のみを含む隔壁部の熱伝導率に比べて高く、発光部から効率良く熱を逃がすことが可能である。加えて、これらの金属材料を含む放熱膜は、これら金属材料を含まない場合に比べて電気抵抗が低くなるため、発光部間の絶縁性が維持される程度に含有量が調整される。この態様によれば、熱伝導による放熱効果を相応に得ながら実使用上問題ない水準に発光部間を絶縁できる。
【0032】
本発明に係る発光装置の他の態様においては、前記隔壁部は、前記熱放射材料として、Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、MgO、SiCから選ばれた少なくとも一種の材料を5乃至40vol%含んでいてもよい。
【0033】
この態様によれば、樹脂等で構成される隔壁部に比べて熱放射率を高くすることが可能であり、熱放射材料の含有量を制限することによって支障なく隔壁部を形成できる。
【0034】
本発明の第1及び第2の発明に係る発光装置の他の態様においては、前記発光部は、有機EL層を有していてもよい。
【0035】
この態様によれば、熱によって特性劣化が生じやすい有機EL層の輝度を長期間維持することができ、これに伴い発光装置の寿命を延ばすことが可能である。
【0036】
本発明に係る電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の第1及び第2に係る発光装置を具備している。
【0037】
本発明に係る電子機器によれば、上述した本発明に係る発光装置を具備してなるので、長期間に亘って高品位の表示が可能な、携帯電話又は電子手帳等の携帯機器、投射型表示装置、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネル、更には電気光学装置を露光用ヘッドとして用いたプリンタ、コピー、ファクシミリ等の画像形成装置などの各種電子機器を実現できる。また、本発明に係る電子機器は、高い信頼性が要求される車載用のカーナビゲーション又はインパネに用いられる表示部に適用である。加えて、本発明に係る電子機器によれば、放熱構造を簡略化することが可能になり、結果として電子機器を小型化することも可能になる。
【0038】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、図面を参照しながら、本発明の第1及び第2の発明に係る発光装置、及びこれを備えた電子機器の実施形態について詳細に説明する。尚、以下では本発明の第1の発明に係る発光装置の夫々一例である有機EL装置を第1及び第2実施形態において説明し、第2の発明に係る発光装置の一例である有機EL装置を第3実施形態において説明する。
【0040】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の有機EL装置10の全体構成を示すブロック図である。有機EL装置10は、駆動回路内蔵型のアクティブマトリクス駆動方式で駆動される表示装置であり、有機EL装置10が有する各画素部70は有機EL素子72を備えている。
【0041】
有機EL装置10の画像表示領域110には、縦横に配線されたデータ線114及び走査線112が設けられており、それらの交点に対応する各画素部70はマトリクス状に配列されている。更に、画像表示領域110には各データ線114に対して配列された画素部70に対応する電源供給線117が設けられている。
【0042】
画像表示領域110の周辺に位置する周辺領域には、走査線駆動回路130及びデータ線駆動回路150が設けられている。走査線駆動回路130は複数の走査線112に走査信号を順次供給する。データ線駆動回路150は、画像表示領域110に配線されたデータ線114に画像信号を供給する。尚、走査線駆動回路130の動作とデータ線駆動回路150の動作とは、同期信号線160を介して相互に同期が図られる。電源供給線117には、外部回路から画素駆動用電源が供給される。図1中、一つの画素部70に着目すれば、画素部70には、有機EL素子72が設けられると共に、例えばTFTを用いて構成されるスイッチング用トランジスタ76及び駆動用トランジスタ74、並びに保持容量78が設けられている。スイッチング用トランジスタ76のゲート電極には走査線112が電気的に接続されており、スイッチング用トランジスタ76のソース電極にはデータ線114が電気的に接続され、スイッチング用トランジスタ76のドレイン電極には駆動用トランジスタ74のゲート電極が電気的に接続されている。また、駆動用トランジスタ74のドレイン電極には、電源供給線117が電気的に接続されており、駆動用トランジスタ74のソース電極には有機EL素子72の陽極が電気的に接続されている。尚、図1に例示した画素回路の構成の他にも、電流プログラム方式の画素回路、電圧プログラム方式の画素回路、電圧比較方式の画素回路、サブフレーム方式の画素回路等の各種方式の画素回路を採用することが可能である。
【0043】
図2は、有機EL装置10の概略構成を示す断面図である。
【0044】
図2において、有機EL装置10は、基板1、基板1上に形成された有機EL素子72、駆動用トランジスタ74、放熱膜61、バンク部47及び封止部20を備えて構成される。尚、有機EL素子72は、図中上側に光を出射するトップエミッション型の有機EL素子であるが、ボトムエミッション型の有機EL素子を備えた有機EL装置でも本発明の発光装置は適用可能であることは言うまでもない。
【0045】
基板1は、例えば、ガラス基板等で構成されている。有機EL素子72は、トップエミッション型の発光素子であるため、基板1における有機EL素子72の下側の領域に、図1に示す駆動用トランジスタ74及びスイッチング用トランジスタ76が設けられていてもよい。基板1は、基板1上に有機EL素子72が形成されているだけでなく、図1に示す走査線駆動回路130及びデータ線駆動回路150の各種回路を備えている。このような回路は、基板1における画像表示領域110の周辺領域に設けられる。
【0046】
有機EL素子72は、本発明の「発光部」の一例である有機EL層50、陰極49、及び陽極34を備えて構成されている。
【0047】
有機EL層50は、後述するように発光層を含む複数の有機層を備えており、これら有機層は、複数の有機EL層50を互いに隔てるための素子分離部として機能するバンク部47に囲まれた凹部62に有機材料を塗布することによって形成されている。より具体的には、有機EL層50は、塗布法の一例であるインクジェット法を用いて各有機層を形成するインクを凹部62に順次塗布することによって形成されている。有機EL層50の端部、即ち後述するバンク部47と接する部分は有機EL層50の中央付近の膜厚より若干厚めに形成されている。したがって、有機EL層50は、その端部において陰極49及び陽極34間がショートすることを抑制できる。加えて、有機EL層50の中央付近は平坦であるため、有機EL層50の中央付近で均一な輝度で発光することが可能である。
【0048】
バンク部47は、第1バンク部47a及び第2バンク部47bから構成されており、有機EL層50が形成される凹部62を規定する。第1バンク部47aは、SiO、SiO2又はTiO2等の無機材料で構成される無機材料層であり、例えば、保護層45上にCVD(Chemical Vapor Deposition;化学蒸着)法、コート法、スパッタ法等の膜形成法を用いて形成されている。第2バンク部47bは、アクリル樹脂、又はポリイミド樹脂等の有機材料で構成される有機材料層であり、図中上側に向かって先細りとなるテーパー形状を有している。第2バンク部47bは、第1バンク部47a上に有機材料層を形成した後、この有機材料層をフォトリソグラフィ技術等を用いてパターニングすることによって形成されている。第2バンク部47bは、その底部が図中横方向に沿って第1バンク部47aより小さめとなるように形成されている。
【0049】
陽極34は、基板1上に順次形成されたゲート絶縁層2、層間絶縁膜41、保護層45、及び第1バンク部47aのうち第1バンク部47aに埋め込まれるように形成されている。陽極34は、例えば、有機EL層50から図中下側に出射される光を上側に反射するようにAl等の金属薄膜で構成されている。
【0050】
陰極49は、基板1上に形成された各有機EL素子72で共通とされる共通電極である。より具体的には、陰極49は、例えば、基板1上で平面的に見て複数の有機EL素子72間で物理的に接続された電極、或いは一枚の連続した電極として延在しているため、陰極49を介して基板1上の各有機EL素子72から放熱膜61に熱を伝達できる。陰極49は、例えばITO等の透明材料で構成された透明電極であり、有機EL層50から出射された光を図中上側に透過させる。加えて、陰極49は、赤外線等の電磁波も透過させる材料で形成されている。陰極49は、有機EL層50の上面から各有機EL層50を互いに隔てる第2バンク部47bの上面に渡って形成されており、陰極49及び第2バンク部47b間には、放熱膜61が介在する。
【0051】
放熱膜61は、発光層を含む有機EL層50に接するように第2バンク部47bの表面に形成されており、有機EL層50で発生した熱を熱伝導及び熱放射を利用して装置外部に逃がす。尚、有機EL層50は塗布法を用いて形成されるため、予め第2バンク部47bの表面に放熱膜61を形成しておけば、放熱膜61の表面に発光材料が若干濡れ上がり、これにより有機EL層50が放熱膜61と接する。放熱膜61は、アクリル樹脂或いはポリイミド樹脂等の有機材料のように熱伝導性が十分でない材料を用いて形成されている第2バンク部47bとは別の熱伝導路を構成し、熱伝導を利用して各有機EL層50から熱を逃がし、有機EL層50の温度が上昇することを抑制する。これにより、例えば有機EL装置10は、高品質の画像を表示できる状態を長期間に亘って維持でき、装置の寿命を延ばすことができる。
【0052】
放熱膜61は、基板1上に設けられた複数の有機EL層50のうちバンク47を介して隣接する有機EL層50の夫々に接するように形成されている。このため、図1に示す画像表示領域110全体で放熱膜61を介した熱伝導路が構成されることになる。放熱膜61によれば、画像表示領域110の中央付近及びで端付近の夫々に設けられた有機EL層50における放熱量を均一にでき、画像表示領域110内における温度バラツキを一因とする画質の低下を抑制できる。
【0053】
ここで、放熱膜61を介した熱伝導によって放熱特性を高めるために、例えば放熱膜61がバンク部47より高い導電率を有する金属等の導電材料を含んでいる場合、隣接する有機EL層50間で駆動電流がリークし、有機EL層50で誤った発光が行われる誤動作が生じる可能性が想定される。また、図1に示す駆動用トランジスタ74又はスイッチング用トランジスタ76のゲート電極に供給される信号が、これらトランジスタを含む画素部70と隣接する画素部70に供給され、本来発光するべきでない有機EL層50が発光する誤動作が生じる可能性もある。これら誤動作を防止するために、放熱膜61は、隣接する有機EL層50が独立して発光されるようにこれら有機EL層50間の絶縁性を維持する。より具体的には、放熱膜61は、隣接する有機EL層50の誤動作を防止し、且つ各有機EL層50からの放熱量を高めるために、熱伝導材料としてAl、Cu、Ag、Auから選ばれた少なくとも一種の材料を1乃至15vol%含んでいる。Al、Cu、Ag、Au等の金属材料の熱伝導率は、第2バンク47bを含むバンク部47の熱伝導率に比べて高く、バンク部47のみを介して放熱する場合に比べて効率良く有機EL層50から熱を逃がすことが可能である。
【0054】
したがって、放熱膜61によれば、有機EL素子72の誤った発光を防止しつつ、各有機EL層50の放熱量を高めることが可能である。また、図1に示す画素部70の夫々が異なる色に発光する有機EL素子を含んでいる場合には、放熱膜61における熱伝導材料の含有量を調整することによって各放熱膜61の放熱能力を調整することも可能である。これにより、有機EL素子72で生じる各色の光の輝度及び波長が狙いの値になるように、有機EL層50の温度を調整でき、有機EL装置10の表示性能を高めることも可能である。
【0055】
放熱膜61は、上述した熱伝導材料に加えてバンク部47より高い熱放射率を有する熱放射材料を含んでおり、有機EL層50の発光時に生じた熱を赤外線に変換して装置外部に逃がす。ここで、放熱膜61上に形成された陰極49は、赤外線を透過させる材料で形成されているため、放熱膜61から出射された赤外線は陰極49を透過し、装置外部に放出される。尚、図中陰極49の上側に配置される封止部20もガラス板等の赤外線を透過させる材料で構成されているため、放熱膜61から出射された赤外線は図中上側に向かって装置外部に放出される。放熱膜61は、熱放射材料としてAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、MgO、SiCから選ばれた少なくとも一種の材料を5乃至40vol%含んでおり、バンク部47の熱放射率に比べて高い熱放射率を有している。このような割合で熱放射材料を含む放熱膜61は、樹脂等で形成される第2バンク部47bより高い熱放射率を有している。したがって、放熱膜61によれば、熱放射を利用して有機EL層50から放熱でき、有機EL素子72を発光させた際に生じる熱によって有機EL層50が劣化することを抑制することが可能である。放熱膜61は、基材中に上述した割合で熱伝導材料及び熱放射材料を混合した混合剤を第2バンク部47bの表面に塗布し、所定の形状にパターニングされることによって形成されるため、熱放射材料が放熱膜61に含まれる割合は放熱膜61を形成した際の膜質或いは膜形成プロセス等を考慮して設定されている。
【0056】
このように、放熱膜61によれば、熱伝導及び熱放射現象の両方を利用して放熱することができる。これにより、発光時における有機EL層50の温度上昇による有機EL層50の劣化及び有機EL層50に含まれる発光層の結晶化を抑制でき、高画質の画像を表示できる状態を維持しつつ有機EL装置10の寿命を延ばすことが可能になる。
【0057】
また、放熱膜61は、バインダに熱放射材料を配合した液状体を第2バンク部47bの表面に塗布したもの、或いは第2バンク部47bの表面にバインダを塗布した後、塗布されたバインダの表面に上述した熱放射材料を吹き付けたものであってもよい。放熱膜61は、赤外線の放射率が高いコージェライト焼結体等のセラミック粉体をバインダに配合して塗布したもの、或いは第2バンク部47bの表面にバインダを塗布した後、このバインダ上にセラミック粉体を吹き付けたものであってもよい。また、放熱膜61は、熱放射材料としては、例えば、赤外線の放射率が高い赤外線放射体材料の夫々一例である、二酸化マンガン(MnO2)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化コバルト(CoO)、酸化銅(CuO)等の遷移元素の酸化物、カーボンブラック、セラックα(登録商標)のうち少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0058】
このように、放熱膜61によれば、第2バンク部47bの表面に放熱膜61を一層形成するだけで有機EL素子72の素子構造を大きく変更することなく、素子から効率良く放熱することができる。加えて、放熱特性を高めるために煩雑な工程を追加する必要もない。
【0059】
駆動用トランジスタ74のソース電極74sは、図1に示す電源供給線117に電気的に接続されており、ドレイン電極74dは陽極34に電気的に接続されている。駆動用トランジスタ74は、図1に示すデータ線114を介してゲート電極3aに供給されるデータ信号に応じてオンオフされ、駆動電流を有機EL素子72に供給する。このような素子を含む回路は、有機EL素子50から基板1側に出射される光を遮らないように、有機EL素子50の下側を避けるように設けられている。また、駆動用トランジスタ74と同様に図1に示すスイッチング用トランジスタ76も基板1上に形成されている。
【0060】
半導体層3は、例えば低温ポリシリコン技術を用いて形成された多結晶シリコン層或いはアモルファスシリコン層である。半導体層3上には、半導体層3を埋め込んで、スイッチング用トランジスタ76及び駆動用トランジスタ74のゲート絶縁層2が形成されている。駆動用トランジスタ74のゲート電極3a及び図1に示す走査線112は、ゲート絶縁層2上に形成されている。走査線112の一部は、スイッチング用トランジスタ76のゲート電極として形成されている。ゲート電極3a及び走査線112は、Al(アルミニウム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)、Ti(チタン)、銅(Cu)、クロム(Cr)等のうち少なくとも一つを含む金属材料を用いて形成されている。
【0061】
走査線112や駆動用トランジスタ74のゲート電極3aを埋め込んで、ゲート絶縁層2上には図2に示す層間絶縁層41が形成されている。層間絶縁層41及びゲート絶縁層2は例えばシリコン酸化膜から構成されている。層間絶縁層41上には、例えばアルミニウム(Al)又はITO(Indium Tin Oxide)を含む導電材料から夫々構成される、データ線114及び電源供給線117、更には駆動用トランジスタ74のソース電極74sが形成されている。層間絶縁層41には、層間絶縁層41の表面から層間絶縁層41及びゲート絶縁層2を貫通して、駆動用トランジスタ74の半導体層3に至るコンタクトホール501及び502が形成されている。電源供給線117及びドレイン電極74dを構成する導電膜は、コンタクトホール501及び502の各々の内壁に沿って半導体層3の表面に至るように連続的に形成されている。層間絶縁層41上には、電源供給線117及びドレイン電極74dを埋め込んで、保護層45として例えばシリコン窒化膜(SiNx)ないしシリコン酸化膜(SiOx)が形成されている。保護層45上には、例えばシリコン酸化膜よりなる第1バンク部47aが形成され、更に第1バンク部47a上に第2バンク部47bが形成されている。第1バンク部47a及び第2バンク部47bによって、画素部における有機EL層50の形成領域が規定されている。
【0062】
封止板20は、本発明に係る「封止部」の一例であり、水分が有機EL装置10の外部から備える有機EL層50に浸入することを防止する。より具体的には、封止板20は、基板1上に接着剤によって接着されており、有機EL装置10の外気が有機EL素子72に触れないように有機EL素子72を封止する。基板1上に封止板20を接着する接着剤は、熱硬化樹脂或いは紫外線硬化樹脂を含んでおり、例えば、熱硬化樹脂の一例であるエポキシ樹脂を封止板20の周縁部にディスペンサ等の塗布手段を用いて塗布される。
【0063】
封止板20の熱放射層51に臨む側の面において、封止板20の周縁部は中央部に対して凸状となっており、封止板20が第1バンク部47aの上面に接着された状態で封止部20の中央部及び有機EL素子72の間に一定の空間が介在する。封止板20及び有機EL素子72間の空間には、不活性ガス、樹脂或いはオイル等の充填材が充填され、この充填材により装置外部から侵入する水分を低減する。また、封止板20及び有機EL素子72間の空間は、封止板20及び基板1で封止された真空であってもよい。封止板20は、放熱膜61から放射される赤外線を透過する透明板であり、例えば、ガラス板、又は防湿処理を施したプラスチック板を用いることができる。特に、封止板20としてガラス基板を用いた場合には、ガラス基板である基板1及び封止板20の熱膨張率が同等であることから、熱膨張率の違いに起因するこれら板間のひずみを低減することができ、装置全体の信頼性を高めることが可能である。
【0064】
次に、図3及び図4を参照して、有機EL素子72の詳細な構成について説明する。図3は、有機EL素子72を含む任意の画素部の平面図であり、図4は図3に示す画素部のA−A´線断面図である。尚、図3及び図4においては、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。尚、図3及び図4に加えて、随時図1及び図2も参照する。
【0065】
図3において、図2に示す基板1上には、駆動用トランジスタ74の半導体層3が形成されている。尚、本実施形態では詳細な説明を省略するが、駆動用トランジスタ74と同様に図1に示すスイッチング用トランジスタ76も基板1上に形成されている。半導体層3は、例えば低温ポリシリコン技術を用いて形成された多結晶シリコン層或いはアモルファスシリコン層である。半導体層3上には、半導体層3を埋め込んで、スイッチング用トランジスタ76及び駆動用トランジスタ74のゲート絶縁層2が形成されている。更には、ゲート絶縁層2上に、駆動用トランジスタ74のゲート電極3a及び走査線112が形成されている。走査線112の一部は、スイッチング用トランジスタ76のゲート電極として形成されている。ゲート電極3a及び走査線112は、Al(アルミニウム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)、Ti(チタン)、銅(Cu)、クロム(Cr)等のうち少なくとも一つを含む金属材料を用いて形成されている。
【0066】
走査線112や駆動用トランジスタ74のゲート電極3aを埋め込んで、ゲート絶縁層2上には図2に示す層間絶縁層41が形成されている。層間絶縁層41上には、電源供給線117及びドレイン電極74dを埋め込んで、図2に示す保護層45が形成されている。
【0067】
保持容量78の下部容量電極は、走査線112と同一の層に、例えば同様の材料を用いて形成され、電源供給線117の一部が保持容量78の上部容量電極として形成されている。層間絶縁層41は誘電体膜として形成されており、層間絶縁層41の一部分が下部容量電極及び上部容量電極の間に挟持される。
【0068】
有機EL装置10の駆動時、走査線112を介して走査信号が供給されることにより、スイッチング用トランジスタ76がオン状態になる。スイッチング用トランジスタ76がオン状態となると、データ線114より画像信号が保持容量78に供給される。この保持容量78に供給された画像信号の電圧に応じて、駆動用トランジスタ74の電気的な導通状態が決まる。保持容量78に供給された画像信号に応じた電流が、駆動用トランジスタ74のチャネルを介して電源供給線117より有機EL素子72に供給されると、供給された電流に応じて有機EL層50に含まれる発光層が発光する。
【0069】
図4において、有機EL素子72は、基板1上に順次形成された陽極34、有機EL層50、及び陰極49を備えて構成されており、有機EL層50は正孔注入層50c、発光層50a及び電子注入層50bを備えて構成されている。
【0070】
有機EL層50を構成する正孔注入層50c、発光層50a及び電子注入層50bはこの順で陽極34上に形成されている。
【0071】
電子注入層50bは、カルシウム(Ca)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ストロンチウム(SrF2)、マグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)等の仕事関数の低い材料を用いて形成されている。電子注入層50bによれば、電流駆動型の発光層50aに電子を効率良く注入でき、発光層50aの発光効率を高めることが可能である。尚、電子輸送層が陰極49及び発光層間に設けられていてもよいし、電子注入層50bが電子輸送層を含んで構成されていてもよい。
【0072】
発光層50aは、有機EL材料を用いて構成されている。このような有機EL材料としては、例えば(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、またはこれらの高分子材料にルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープした材料を用いることができる。
【0073】
正孔注入層50cは、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸等の混合物を用いて形成されている。
【0074】
有機EL層50を構成する各材料は、有機EL素子72が駆動されるに伴って生じる熱によって高温に曝されると特性劣化を生じ易い。したがって、本実施形態の有機EL装置10によれば、有機EL素子72から効率良く放熱でき、有機EL装置10の寿命を延ばすことが可能である。尚、陰極49を介した熱伝導によっても相応の放熱効果は得られる。
【0075】
(第2実施形態)
次に、図5を参照しながら本実施形態の有機EL装置100を説明する。図5は、本実施形態の有機EL装置100の構成を示す断面図である。尚、以下で説明する各実施形態の有機EL装置では、第1実施形態の有機EL装置と共通する部分に共通の参照符号を付して説明し、共通部分についての詳細な説明は便宜省略する。
【0076】
図5において、本実施形態の有機EL装置100は、放熱膜61を構成する第1放熱膜61a及び第2放熱膜61bが電気的に絶縁されている点で第1実施形態の有機EL装置10と相違する。
【0077】
より具体的には、第1放熱膜61a及び第2放熱膜61bは、第2バンク部47bの表面で互いに離間されている。第2バンク部47bの表面で物理的に離間された第1放熱膜61a及び第2放熱膜61bによれば、第1放熱膜61a及び第2放熱膜61bの夫々に含まれる熱伝導材料が金属材料であっても、熱伝導を高めることに注力して第1放熱膜61a及び第2放熱膜61bに含まれる熱伝導材料の含有量を増やすことができ、放熱膜61の熱伝導率を高めることが可能である。即ち、放熱膜61の熱伝導率を高めつつ、第1放熱膜61a及び第2放熱膜61bの夫々に接する有機EL層50間でリークする駆動電流及び有機EL素子72を駆動するために供給される各種信号の漏れを防止できる。また、陰極49は、図5に示した断面を除く第2バンク部47bの他の部分で互いに電気的に接続されていればよい。
【0078】
尚、第1放熱膜61a及び第2放熱膜61bは、互いに電気的に絶縁されていればよく、一定の隙間を設けて互いに離間されている場合に限定されるものではない。例えば、第1放熱膜61a及び第2放熱膜61b間にこれら放熱膜より電気抵抗が高い絶縁部を設けてもよい。第1放熱膜61a及び第2放熱膜61bは、互いに絶縁されるように形成されていれば、第1バンク部47bの表面において所要の形状にパターニングされていてもよい。
【0079】
(第3実施形態)
次に、図6を参照しながら本実施形態の有機EL装置200を説明する。図6は、本実施形態の有機EL装置200の構成を示す断面図である。有機EL装置200は、放熱膜を設ける代わりに熱伝導材料及び熱放射材料を含む第2バンク部47b´を含んでいる点で第1及び第2実施形態の有機EL装置と相違する。
【0080】
図6において、第2バンク部47b´は、基材と、基材より高い熱伝導率を有する熱伝導材料と、基材より高い熱放射率を有する熱放射材料を含んでいる。第2バンク部47b´は、基材、熱伝導材料及び熱放射材料を混合して得られる塗布材を、例えばスピンコート等の塗布法を用いて第1バンク部47a上に塗布することによって形成される。第2バンク部47b´は、熱伝導材料としてAl、Cu、Ag、Auから選ばれた少なくとも一種の熱伝導材料を1乃至15vol%含んでいる。Al、Cu、Ag、Auの金属材料の熱伝導率は、例えば、アクリル樹脂又はポリイミド樹脂等の樹脂で構成される基材に比べて熱伝導率が高く、これら樹脂のみで第2バンク部47b´を形成した場合に比べて第2バンク部47b´の熱伝導率を高めることが可能である。加えて、第2バンク部47b´は、Al、Cu、Ag、Auの金属材料を上述した割合で含んでいるため、隣接する有機EL層50間を第2バンク部47b´で実使用上支障ない程度に絶縁することが可能である。したがって、隣接する有機EL層50間で駆動電流のリーク等が生じることなく、各有機EL素子72の夫々を所要のタイミングで発光させることが可能である。第2バンク部47b´は、熱放射材料として、Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、MgO、SiCから選ばれた少なくとも一種の材料を5乃至40vol%含んでいる。第2バンク部47b´は、これら熱放射材料の他に赤外線の放射率が高いコージェライト焼結体等のセラミック粉体をバインダに配合して塗布したもの、或いは第1バンク部47aの表面にバインダを塗布した後、このバインダ上にセラミック粉体を吹き付けることによって形成されていてもよい。また、第2バンク部47b´は、熱放射材料として、例えば赤外線の放射率が高い赤外線放射体材料の夫々一例である、二酸化マンガン(MnO2)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化コバルト(CoO)、酸化銅(CuO)等の遷移元素の酸化物、カーボンブラック、セラックα(登録商標)のうち少なくとも一つを含んでいてもよい。第2バンク部47b´に加えて或いは代えて、第1バンク部47aが熱放射材料及び熱伝導材料を含んでいてもよい。
【0081】
このように、熱伝導材料及び熱放射材料を含む第2バンク部47b´によれば、有機EL装置200及び有機EL素子72の構造を大きく変更することなく、有機EL素子72及び有機EL装置200から効率良く放熱することが可能である。したがって、有機EL層地200によれば、第1及び第2実施形態の有機EL層装置と同様に有機EL層50における温度上昇を低減でき、高画質の画像を表示できる状態を維持しつつ有機EL装置の寿命を延ばすことが可能になる。
【0082】
(実験結果)
次に、表1を参照しながら第3実施形態の有機EL装置について行った実験結果を説明する。表1は、従来構造の有機EL装置と、第3実施形態の有機EL装置とを駆動させた際の夫々の基板表面の温度を測定した結果を示す。尚、基板の表面温度は、各有機EL素子の陰極が形成された基板表面に熱電対を取り付けて測定された値である。試料1は、アクリル樹脂又はポリイミド樹脂で構成される基材に、熱放射材料を30vol%熱伝導材料を5vol%混合した混合材料をスピンコートで第1バンク部47a表面に塗布することによって形成した。熱放射材料にはAl2O3、SiO2、及びMgOの混合物を用い、熱伝導材料にはCuを用いた。試料2は、基材としてSiO2を含む第1バンク部47aに熱放射材料が30vol%含まれ、且つ熱伝導材料が5vol%含まれている。熱放射材料にはAl2O3、ZrO2、及びTiO2の混合物を用い、熱伝導材料にはCuを用いた。
【0083】
【表1】
【0084】
表1に示すように、本願発明者が行った実験によれば、試料1は従来構造の有機EL装置に比べて10℃だけ基板表面温度を下げることができ、試料2は従来構造より13℃温度を下げることが可能であることが分かった。このように、本実施形態の有機EL装置によれば、駆動時における温度上昇を大幅に抑制でき、高温で駆動されることによる有機EL装置の輝度低下を抑制することが可能である。この結果、有機EL装置の寿命を延ばすことが可能である。また、バンク部47に熱伝導材料及び熱放射材料を含ませたことに加えて、第2バンク部47b´上に放熱膜を設けることにより更に有機EL素子の温度上昇を抑制でき、有機EL装置の寿命を延ばすことが可能であることは本実験の結果から明らかである。
【0085】
(電子機器)
次に、上述した有機EL素子を含む有機EL装置を備えた各種電子機器について説明する。
【0086】
<A:モバイル型コンピュータ>
図7を参照しながらモバイル型のコンピュータに上述した有機EL装置を適用した例について説明する。図7は、コンピュータ1200の構成を示す斜視図である。
【0087】
図7において、コンピュータ1200は、キーボード1202を備えた本体部1204と、図示しない有機EL装置を用いて構成された表示部1005を有する表示ユニット1206とを備えている。表示部1005は、素子内の温度上昇に起因する発光層等の特性劣化が低減されており、装置全体の信頼性も高められている。また、上述した有機EL素子を含んだ表示部1005は、熱伝導のみで放熱を行う従来の表示部に対して放熱構造を簡略化できるため、表示ユニット1206を小型に構成できる。よって装置全体の小型化につながり、装置の携帯性が改善される。また、表示部1005が備える複数の有機ELディスプレイ基板に赤、緑、青の光の三原色の光を発光する有機EL素子を形成しておくことによって、該表示部1005はフルカラー表示で画像表示を行うことができる。
【0088】
<B:携帯型電話機>
更に、上述した有機EL装置を携帯型電話機に適用した例について、図8を参照して説明する。図8は、携帯型電話機1300の構成を示す斜視図である。
【0089】
図8において、携帯型電話機1300は、複数の操作ボタン1302と共に、本発明の一実施形態である有機EL装置を有する表示部1305を備えるものである。
【0090】
表示部1305は、上述の表示部1005と同様に発光層等の特性劣化が低減されていることから、高品質の画像を表示することができると共に信頼性が高められている。これにより、携帯型電話機1300の耐久性も高められている。また、表示部1305が備える複数の有機EL素子が夫々赤、緑、青の光の三原色の光を発光することによって、該表示部1305はフルカラー表示で画像表示を行うこともできる。
【0091】
尚、本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う発光素子及び発光装置並びに電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1実施形態に係る有機EL装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る有機EL装置の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る有機EL装置の画素部の構成を示す平面図である。
【図4】図3のA−A´線断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る有機EL装置の構成を示す断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る有機EL装置の構成を示す断面図である。
【図7】本発明に係る電子機器の一例の斜視図である。
【図8】本発明に係る電子機器の他の例の斜視図である。
【符号の説明】
【0093】
10,100,200・・・有機EL装置、20・・・封止板、34・・・陽極、47・・・バンク部、49・・・陰極、50・・・有機EL層、61・・・放熱膜、72・・・有機EL素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば有機EL装置等の発光装置、及びそのような発光装置を備えた電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Electro-luminescence)素子は、高温で動作させると寿命が著しく低下することが知られている。したがって、有機EL素子の寿命を高めるためには、有機EL素子が発光する際に生じる熱や配線抵抗等によるジュール熱を素子外部に効率良く放熱することが重要になる。例えば、有機EL素子は、熱伝導率は低いガラス基板或いは合成樹脂基板上に形成されることが多く、有機EL素子で生じた熱を十分に放熱することが困難である技術的問題点がある。このような技術的問題点を解決するために、例えば特許文献1乃至6は放熱特性を高めるための各種技術を提案している。また、有機EL素子に限定されず、IC等の半導体素子が形成される半導体基板では熱放射を利用して放熱特性を高め、熱による素子の特性劣化を抑制する技術(例えば、特許文献7参照。)、或いは基板の材質或いは組成を選択することによって熱放射率或いは熱伝導率を高める技術も開示されている(例えば、特許文献8乃至10。)。
【0003】
尚、有機EL素子は、基板上に形成されたバンクと称される素子分離部で区画された領域に発光材料を塗布することによって形成されることが多く、このような素子分離部の詳細な構造は、例えば特許文献11に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−186045号公報
【特許文献2】特開2002−63985号公報
【特許文献3】特開2001−237062号公報
【特許文献4】特開2001−237063号公報
【特許文献5】特許3553672号公報
【特許文献6】特開2002−56986号公報
【特許文献7】特開2004−172542号公報
【特許文献8】特許第2698036号公報
【特許文献9】特開平5−129082号公報
【特許文献10】特開平10−144468号公報
【特許文献11】特開2003−249375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1乃至6に開示された技術は、熱伝導を利用して放熱特性を高める技術であり、更なる放熱特性の向上を求める技術的要請に対して十分に対応するものとは言い難い。特に、有機EL装置等の発光装置が大型化するに従い、基板中央付近は基板の端に比べて放熱されにくくなる問題点がある。より具体的には、基板中付近に局所的に蓄積された熱によって、装置全体で有機EL素子等の表示素子の寿命にバラツキが生じ、その結果発光装置が高品質の画像を表示できる期間、即ち装置の寿命を十分な長い期間に維持できなくなる技術的問題点が生じる。このような技術的問題点に対して、本願発明者は有機EL素子の電極表面に、素子の放熱特性を高める熱放射層或いは熱伝導層を設けることを検討したが、素子構造の大幅な変更による製造プロセスの煩雑化及び発光特性の低下を伴う場合があり、有機EL素子及びこれを備える有機EL装置等の発光装置の駆動時における温度上昇を十分低く抑えることができていないのが実情である。また、特許文献7乃至10に開示された技術を応用して、有機EL素子から出射される光が遮られない領域に熱放射層を形成することが考えられるが、有機EL層で生じた熱や配線抵抗等によるジュール熱を熱放射層に速やかに伝達できなければ有機EL層の温度上昇の抑制効果は十分に発揮されない場合もある。加えて、本願発明者は、熱放射を利用して有機EL素子等の発光素子を備えた発光装置の放熱特性を高める技術が記載された公知文献等の存在を本願出願時までに確認していない。また、特許文献11に開示されたバンクは、樹脂等の有機物で構成される場合が多いため熱伝導率が低く、発光素子で生じた熱を装置外部に逃すことが十分にできていないのが実情である。
【0006】
よって、本発明は上記問題点及び実情等に鑑みてなされたものであり、放熱特性を高めることによって長期間に亘って高品質の画像を表示できる有機EL装置等の発光装置、及びこのような発光装置を備えた電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1の発明に係る発光装置は上記課題を解決するために、基板と、前記基板上に設けられており、前記基板上の画像表示領域を構成する複数の画素領域の各々内に設けられた複数の凹部を規定する隔壁部と、前記複数の凹部の夫々に設けられており、前記複数の凹部内の夫々に発光材料を塗布することによって形成された複数の発光部と、前記発光部に接するように前記隔壁部の表面に設けられており、前記発光部で生じた熱を前記発光部の外側に逃がす放熱膜とを備え、前記放熱膜は、前記隔壁部より熱伝導率が高い熱伝導材料と、前記隔壁部より熱放射率が高い熱放射材料とを含んでいる。
【0008】
本発明に係る発光装置においては、基板上の画素領域内に設けられた複数の凹部に発光材料を塗布することによって、画素領域内に複数の発光部が設けられている。凹部を規定する隔壁部とは、凹部の周囲が隔壁部に囲まれていることを意味している。隔壁部は、例えば複数の隔壁部が基板上に積層された積層構造を有していてもよい。より具体的には、隔壁部は、例えば、基板上に形成された無機材料からなる隔壁部と、その上に形成された有機材料からなる隔壁部を有していてもよい。
【0009】
発光部は、発光材料を凹部に塗布することによって形成されている。発光材料を塗布する際には、例えば、インクジェット法等の塗布法を用いて、発光材料が凹部に塗布される。また、本発明に係る発光装置は、複数の発光部に夫々異なる色に発光する発光材料を塗布することによって、カラー表示可能であってもよい。
【0010】
放熱膜は、発光部と接しているため、発光部で生じた熱が放熱膜に直接伝達され発光部の外側に逃がされる。ここで、放熱膜は隔壁部の表面に形成されているため、例えば、隔壁部がアクリル樹脂或いはポリイミド樹脂等の有機材料のように熱伝導性が十分でない材料を用いて形成されている場合でも、隔壁部を介した熱伝導路とは別の熱伝導路を構成し、発光部から速やかに熱を逃がすことが可能である。加えて、放熱膜は、隔壁部より高い熱伝導率を有する熱伝導材料及び隔壁部より高い熱放射率を有する熱放射材料とを含んでいるため、熱伝導及び熱放射現象の両方を利用して発光部から熱を効率良く逃がすことが可能である。尚、発光部は塗布法を用いて形成されるため、予め隔壁部に放熱膜を形成しておけば、放熱膜の表面に塗布された発光材料が若干濡れ上がり、これにより発光部が放熱膜と接することになる。
【0011】
放熱膜は、例えば、熱伝導材料、熱放射材料及び基材を混合して得られる混合材が隔壁部の表面に塗布されることによって形成される。また、放熱膜は、塗布法に限定されず、各種膜形成方法を用いて形成可能であれば如何なる方法を用いて形成されていてもよい。
【0012】
本発明に係る発光装置によれば、隔壁部に形成された放熱膜によって各発光部から放熱できるため、画像表示領域全体で発光部から放熱することが可能であり、且つ画像表示領域内の位置の違いによって各発光部の放熱効率に差が生じることを低減でき、画像表示領域内の各画素領域に含まれる発光部全体の温度上昇を均一に低減できる。これにより、発光装置の温度上昇に伴う輝度バラツキを低減できると共に装置寿命を延ばすことが可能になり、例えば高品質の画像を表示できる発光装置を長期間使用可能な状態に維持できる。加えて、放熱膜は隔壁部に設けられるため、発光部の構造を変更することなく駆動時における発光部の温度上昇を抑制できる。尚、本発明の「画素領域」とは、一色に発光する発光部を一つ含む画素部が設けられる領域、或いはR(赤色)、G(緑色)、B(青色)の夫々(青色)の夫々の色の波長を有する光を発生するサブ画素部を一組としてなる画素部が設けられる領域の両方を意味する。また、発光色毎に異なる発光材料を各凹部に塗布することによって発光部を形成する場合、これら発光部が所定の色の光を発光するように放熱膜の放熱能力を調整することも可能である。より具体的には、発光部で生じる各色の光の輝度及び波長が狙いの値になるように、例えば装置仕様に応じて且つ製造技術における凹部をパターニングする際のプロセスに応じて、放熱膜に含まれる熱伝導材料及び熱放射材料の量を決定してもよい。
【0013】
このように、本発明に係る発光装置によれば、放熱膜を用いて熱伝導及び熱放射現象の両方を利用して放熱することにより、発光時における発光部の温度上昇を低減でき、高画質の画像を表示できる状態を維持しつつ発光装置の寿命を延ばすことが可能になる。したがって、信頼性に優れた高性能の発光装置を提供することが可能である。
【0014】
本発明に係る発光装置の一の態様においては、前記放熱膜は、前記複数の発光部のうち前記隔壁部を介して隣接する一の発光部及び他の発光部の夫々に接するように前記隔壁部の表面に設けられていると共に、前記一の発光部及び前記他の発光部が少なくとも互いに独立して発光するように前記隔壁部の表面に沿って前記一の発光部及び前記他の発光部を互いに電気的に絶縁していてもよい。
【0015】
この態様によれば、放熱膜は一の発光部及び他の発光部と接しているため、これら複数の発光部間を介して放熱することができ、例えば、画像表示領域全体で放熱膜を介した熱伝導路が構成されることになる。このような熱伝導路として機能する放熱膜によれば、画像表示領域の中央付近及びで端付近の夫々に設けられた発光部における放熱効率を均一にでき、画像表示領域内における温度バラツキを一因とする画質の低下を抑制できる。ここで、放熱膜に含まれる熱伝導材料が金属等の電気抵抗が低い材料を含む場合がある。このような場合、各発光部が少なくとも独立して発光するように、例えば熱伝導材料の含有量が調整される。ここで、「独立して発光するように」とは、例えば、各発光部を含む画素部の夫々が、少なく個別に発光可能な程度に発光部間における放熱膜の電気抵抗が低減されていることを意味する。より具体的には、例えば発光部を発光させるために駆動回路から供給される信号が異なる発光部に供給されないように発光部間が互いに絶縁されている場合、或いは例えば有機EL層等を含む発光部を駆動されるための駆動電流が異なる発光部間でリークしないようにすることを意味する。尚、複数色の発光部を含んで一つの画素部を構成する場合には、異なる画素部に夫々含まれる発光部が独立して発光可能なように異なる画素部間で絶縁性が維持されていればよい。
【0016】
この態様によれば、隔壁部のみを介した放熱に比べて格段に放熱効率を高めることができ、発光部の輝度等の発光特性が温度上昇に伴って低下することを抑制できる。
【0017】
本発明に係る発光装置の他の態様においては、前記放熱膜は、前記熱伝導材料としてAl、Cu、Ag、Auから選ばれた少なくとも一種の材料を1乃至15vol%含んでいてもよい。
【0018】
この態様によれば、Al、Cu、Ag、Auの金属材料の熱伝導率は、例えば樹脂を含む隔壁部の熱伝導率に比べて高く、放熱膜は熱伝導を利用して発光部から効率良く熱を逃がすことが可能である。加えて、これらの金属材料を含む放熱膜は、これら金属材料を含まない場合に比べて電気抵抗が低くなるため、発光部間の絶縁性が維持される程度に含有量が調整されている。例えば、Al、Cu、Ag、Auの金属材料から選ばれた少なくとも一種の材料は、放熱膜に1乃至15vol%含まれるように含有量が調整されていれば、熱伝導による放熱効果を相応に得ながら実使用上問題ない水準に発光部間を絶縁できる。
【0019】
本発明に係る発光装置の他の態様においては、前記放熱膜は、前記熱放射材料としてAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、MgO、SiCから選ばれた少なくとも一種の材料を5乃至40vol%含んでいてもよい。
【0020】
この態様によれば、隔壁部による熱放射に比べて放熱膜による熱放射が高くなるように放熱膜に含まれる熱放射材料が設定される。例えば、放熱膜が、Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、MgO、SiCから選ばれた少なくとも一種の材料を5乃至40vol%含んでいることにより、放熱膜の熱放射率を樹脂等で構成される隔壁部に比べて高くすることが可能であり、且つ熱放射材料の含有量を制限することによって膜形成プロセス上支障なく放熱膜を形成できる。
【0021】
本発明に係る発光装置の他の態様においては、前記放熱膜は、前記隔壁部の表面に沿って夫々延在するように設けられると共に互いに電気的に絶縁された第1放熱膜及び第2放熱膜を備えており、前記第1放熱膜は、前記一の発光部と接しており、前記第2放熱膜は、前記他の発光部と接していてもよい。
【0022】
この態様によれば、第1放熱膜及び第2放熱膜が電気的に絶縁されているため、第1及び第2放熱膜の夫々に接する発光部間を電気的に絶縁できる。これにより、例えば放熱膜に含まれる、金属等の熱伝導材料の含有量を増やした場合でも放熱膜の電気抵抗の低下を考慮することなく熱伝導による放熱特性の向上を享受することが可能である。したがって、熱伝導による放熱量を増大させつつ、複数の発光部を誤って発光させる事態を回避でき、各発光部を所要のタイミング、且つ輝度で発光させることが可能である。
【0023】
本発明に係る発光装置の他の態様においては、前記第1放熱膜及び前記第2放熱膜は、前記隔壁部の表面で互いに離間されていてもよい。
【0024】
この態様によれば、前記第1放熱膜及び前記第2放熱膜が物理的に離間されているので、例えば、放熱膜に含まれる熱伝導材料が金属材料であっても、熱伝導材料量を調整することなく、熱伝導による放熱効果を高めることに注力して放熱膜の組成を設定できる。
【0025】
本発明の第2の発明に係る発光装置は上記課題を解決するために、基板と、
前記基板上の画像表示領域を構成する複数の画素領域の各々内に設けられた複数の凹部を規定する隔壁部と、
前記複数の凹部の夫々に設けられており、前記複数の凹部内の夫々に形成された複数の発光部とを備え、
前記隔壁部は、基材と、前記基材より高い熱放射率を有する熱放射材料と、前記基材より高い熱伝導率を有する熱伝導材料とを含んでいる。
【0026】
本発明に係る発光装置によれば、本発明の第1の発明に係る発光装置と同様に、隔壁部における熱伝導及び熱放射現象の両方を利用して放熱することにより、発光時における発光部の温度上昇を低減でき、高画質の画像を表示できる状態を維持しつつ発光装置の寿命を延ばすことが可能になる。したがって、信頼性に優れた高性能の発光装置を提供することが可能である。
【0027】
本発明に係る発光装置の一の態様においては、前記隔壁部は、前記複数の発光部のうち前記隔壁部を介して隣接する一の発光部及び他の発光部が少なくとも互いに独立して発光するように高い電気抵抗を有していてもよい。
【0028】
この態様によれば、隔壁部は一の発光部及び他の発光部と接しているため、これら複数の発光部から隔壁部に直接熱が伝達され、この熱が隔壁部を介して放熱される。これにより、画像表示領域全体で隔壁部を介した熱伝導路が構成されることになる。このような熱伝導路として機能する隔壁部によれば、画像表示領域の中央付近及びで端付近の夫々に設けられた発光部における放熱効率を均一にでき、画像表示領域内における温度バラツキを一因とする画質の低下を抑制できる。隔壁部に含まれる熱伝導材料が金属等の電気抵抗が低い材料を含む場合には、各発光部が少なくとも独立して発光するように、例えば熱伝導材料の含有量が調整され、隔壁部の電気抵抗が高く設定される。ここで、「独立して発光するように」とは、上述した第1の発明に係る発光装置と同様の意味である。
【0029】
したがって、本発明に係る発光装置によれば、従来の発光装置に比べて隔壁部を介して格段に発光部からの放熱効率を高めることができ、発光部の輝度等の発光特性が温度上昇に伴って低下することを抑制できる。
【0030】
本発明に係る発光装置の他の態様においては、前記熱伝導材料は、前記基材より電気抵抗率が低い導電材料としてAl、Cu、Ag、Auから選ばれた少なくとも一種の材料を1乃至15vol%含んでいてもよい。
【0031】
この態様によれば、Al、Cu、Ag、Auの金属材料の熱伝導率は、例えば樹脂のみを含む隔壁部の熱伝導率に比べて高く、発光部から効率良く熱を逃がすことが可能である。加えて、これらの金属材料を含む放熱膜は、これら金属材料を含まない場合に比べて電気抵抗が低くなるため、発光部間の絶縁性が維持される程度に含有量が調整される。この態様によれば、熱伝導による放熱効果を相応に得ながら実使用上問題ない水準に発光部間を絶縁できる。
【0032】
本発明に係る発光装置の他の態様においては、前記隔壁部は、前記熱放射材料として、Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、MgO、SiCから選ばれた少なくとも一種の材料を5乃至40vol%含んでいてもよい。
【0033】
この態様によれば、樹脂等で構成される隔壁部に比べて熱放射率を高くすることが可能であり、熱放射材料の含有量を制限することによって支障なく隔壁部を形成できる。
【0034】
本発明の第1及び第2の発明に係る発光装置の他の態様においては、前記発光部は、有機EL層を有していてもよい。
【0035】
この態様によれば、熱によって特性劣化が生じやすい有機EL層の輝度を長期間維持することができ、これに伴い発光装置の寿命を延ばすことが可能である。
【0036】
本発明に係る電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の第1及び第2に係る発光装置を具備している。
【0037】
本発明に係る電子機器によれば、上述した本発明に係る発光装置を具備してなるので、長期間に亘って高品位の表示が可能な、携帯電話又は電子手帳等の携帯機器、投射型表示装置、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネル、更には電気光学装置を露光用ヘッドとして用いたプリンタ、コピー、ファクシミリ等の画像形成装置などの各種電子機器を実現できる。また、本発明に係る電子機器は、高い信頼性が要求される車載用のカーナビゲーション又はインパネに用いられる表示部に適用である。加えて、本発明に係る電子機器によれば、放熱構造を簡略化することが可能になり、結果として電子機器を小型化することも可能になる。
【0038】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、図面を参照しながら、本発明の第1及び第2の発明に係る発光装置、及びこれを備えた電子機器の実施形態について詳細に説明する。尚、以下では本発明の第1の発明に係る発光装置の夫々一例である有機EL装置を第1及び第2実施形態において説明し、第2の発明に係る発光装置の一例である有機EL装置を第3実施形態において説明する。
【0040】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の有機EL装置10の全体構成を示すブロック図である。有機EL装置10は、駆動回路内蔵型のアクティブマトリクス駆動方式で駆動される表示装置であり、有機EL装置10が有する各画素部70は有機EL素子72を備えている。
【0041】
有機EL装置10の画像表示領域110には、縦横に配線されたデータ線114及び走査線112が設けられており、それらの交点に対応する各画素部70はマトリクス状に配列されている。更に、画像表示領域110には各データ線114に対して配列された画素部70に対応する電源供給線117が設けられている。
【0042】
画像表示領域110の周辺に位置する周辺領域には、走査線駆動回路130及びデータ線駆動回路150が設けられている。走査線駆動回路130は複数の走査線112に走査信号を順次供給する。データ線駆動回路150は、画像表示領域110に配線されたデータ線114に画像信号を供給する。尚、走査線駆動回路130の動作とデータ線駆動回路150の動作とは、同期信号線160を介して相互に同期が図られる。電源供給線117には、外部回路から画素駆動用電源が供給される。図1中、一つの画素部70に着目すれば、画素部70には、有機EL素子72が設けられると共に、例えばTFTを用いて構成されるスイッチング用トランジスタ76及び駆動用トランジスタ74、並びに保持容量78が設けられている。スイッチング用トランジスタ76のゲート電極には走査線112が電気的に接続されており、スイッチング用トランジスタ76のソース電極にはデータ線114が電気的に接続され、スイッチング用トランジスタ76のドレイン電極には駆動用トランジスタ74のゲート電極が電気的に接続されている。また、駆動用トランジスタ74のドレイン電極には、電源供給線117が電気的に接続されており、駆動用トランジスタ74のソース電極には有機EL素子72の陽極が電気的に接続されている。尚、図1に例示した画素回路の構成の他にも、電流プログラム方式の画素回路、電圧プログラム方式の画素回路、電圧比較方式の画素回路、サブフレーム方式の画素回路等の各種方式の画素回路を採用することが可能である。
【0043】
図2は、有機EL装置10の概略構成を示す断面図である。
【0044】
図2において、有機EL装置10は、基板1、基板1上に形成された有機EL素子72、駆動用トランジスタ74、放熱膜61、バンク部47及び封止部20を備えて構成される。尚、有機EL素子72は、図中上側に光を出射するトップエミッション型の有機EL素子であるが、ボトムエミッション型の有機EL素子を備えた有機EL装置でも本発明の発光装置は適用可能であることは言うまでもない。
【0045】
基板1は、例えば、ガラス基板等で構成されている。有機EL素子72は、トップエミッション型の発光素子であるため、基板1における有機EL素子72の下側の領域に、図1に示す駆動用トランジスタ74及びスイッチング用トランジスタ76が設けられていてもよい。基板1は、基板1上に有機EL素子72が形成されているだけでなく、図1に示す走査線駆動回路130及びデータ線駆動回路150の各種回路を備えている。このような回路は、基板1における画像表示領域110の周辺領域に設けられる。
【0046】
有機EL素子72は、本発明の「発光部」の一例である有機EL層50、陰極49、及び陽極34を備えて構成されている。
【0047】
有機EL層50は、後述するように発光層を含む複数の有機層を備えており、これら有機層は、複数の有機EL層50を互いに隔てるための素子分離部として機能するバンク部47に囲まれた凹部62に有機材料を塗布することによって形成されている。より具体的には、有機EL層50は、塗布法の一例であるインクジェット法を用いて各有機層を形成するインクを凹部62に順次塗布することによって形成されている。有機EL層50の端部、即ち後述するバンク部47と接する部分は有機EL層50の中央付近の膜厚より若干厚めに形成されている。したがって、有機EL層50は、その端部において陰極49及び陽極34間がショートすることを抑制できる。加えて、有機EL層50の中央付近は平坦であるため、有機EL層50の中央付近で均一な輝度で発光することが可能である。
【0048】
バンク部47は、第1バンク部47a及び第2バンク部47bから構成されており、有機EL層50が形成される凹部62を規定する。第1バンク部47aは、SiO、SiO2又はTiO2等の無機材料で構成される無機材料層であり、例えば、保護層45上にCVD(Chemical Vapor Deposition;化学蒸着)法、コート法、スパッタ法等の膜形成法を用いて形成されている。第2バンク部47bは、アクリル樹脂、又はポリイミド樹脂等の有機材料で構成される有機材料層であり、図中上側に向かって先細りとなるテーパー形状を有している。第2バンク部47bは、第1バンク部47a上に有機材料層を形成した後、この有機材料層をフォトリソグラフィ技術等を用いてパターニングすることによって形成されている。第2バンク部47bは、その底部が図中横方向に沿って第1バンク部47aより小さめとなるように形成されている。
【0049】
陽極34は、基板1上に順次形成されたゲート絶縁層2、層間絶縁膜41、保護層45、及び第1バンク部47aのうち第1バンク部47aに埋め込まれるように形成されている。陽極34は、例えば、有機EL層50から図中下側に出射される光を上側に反射するようにAl等の金属薄膜で構成されている。
【0050】
陰極49は、基板1上に形成された各有機EL素子72で共通とされる共通電極である。より具体的には、陰極49は、例えば、基板1上で平面的に見て複数の有機EL素子72間で物理的に接続された電極、或いは一枚の連続した電極として延在しているため、陰極49を介して基板1上の各有機EL素子72から放熱膜61に熱を伝達できる。陰極49は、例えばITO等の透明材料で構成された透明電極であり、有機EL層50から出射された光を図中上側に透過させる。加えて、陰極49は、赤外線等の電磁波も透過させる材料で形成されている。陰極49は、有機EL層50の上面から各有機EL層50を互いに隔てる第2バンク部47bの上面に渡って形成されており、陰極49及び第2バンク部47b間には、放熱膜61が介在する。
【0051】
放熱膜61は、発光層を含む有機EL層50に接するように第2バンク部47bの表面に形成されており、有機EL層50で発生した熱を熱伝導及び熱放射を利用して装置外部に逃がす。尚、有機EL層50は塗布法を用いて形成されるため、予め第2バンク部47bの表面に放熱膜61を形成しておけば、放熱膜61の表面に発光材料が若干濡れ上がり、これにより有機EL層50が放熱膜61と接する。放熱膜61は、アクリル樹脂或いはポリイミド樹脂等の有機材料のように熱伝導性が十分でない材料を用いて形成されている第2バンク部47bとは別の熱伝導路を構成し、熱伝導を利用して各有機EL層50から熱を逃がし、有機EL層50の温度が上昇することを抑制する。これにより、例えば有機EL装置10は、高品質の画像を表示できる状態を長期間に亘って維持でき、装置の寿命を延ばすことができる。
【0052】
放熱膜61は、基板1上に設けられた複数の有機EL層50のうちバンク47を介して隣接する有機EL層50の夫々に接するように形成されている。このため、図1に示す画像表示領域110全体で放熱膜61を介した熱伝導路が構成されることになる。放熱膜61によれば、画像表示領域110の中央付近及びで端付近の夫々に設けられた有機EL層50における放熱量を均一にでき、画像表示領域110内における温度バラツキを一因とする画質の低下を抑制できる。
【0053】
ここで、放熱膜61を介した熱伝導によって放熱特性を高めるために、例えば放熱膜61がバンク部47より高い導電率を有する金属等の導電材料を含んでいる場合、隣接する有機EL層50間で駆動電流がリークし、有機EL層50で誤った発光が行われる誤動作が生じる可能性が想定される。また、図1に示す駆動用トランジスタ74又はスイッチング用トランジスタ76のゲート電極に供給される信号が、これらトランジスタを含む画素部70と隣接する画素部70に供給され、本来発光するべきでない有機EL層50が発光する誤動作が生じる可能性もある。これら誤動作を防止するために、放熱膜61は、隣接する有機EL層50が独立して発光されるようにこれら有機EL層50間の絶縁性を維持する。より具体的には、放熱膜61は、隣接する有機EL層50の誤動作を防止し、且つ各有機EL層50からの放熱量を高めるために、熱伝導材料としてAl、Cu、Ag、Auから選ばれた少なくとも一種の材料を1乃至15vol%含んでいる。Al、Cu、Ag、Au等の金属材料の熱伝導率は、第2バンク47bを含むバンク部47の熱伝導率に比べて高く、バンク部47のみを介して放熱する場合に比べて効率良く有機EL層50から熱を逃がすことが可能である。
【0054】
したがって、放熱膜61によれば、有機EL素子72の誤った発光を防止しつつ、各有機EL層50の放熱量を高めることが可能である。また、図1に示す画素部70の夫々が異なる色に発光する有機EL素子を含んでいる場合には、放熱膜61における熱伝導材料の含有量を調整することによって各放熱膜61の放熱能力を調整することも可能である。これにより、有機EL素子72で生じる各色の光の輝度及び波長が狙いの値になるように、有機EL層50の温度を調整でき、有機EL装置10の表示性能を高めることも可能である。
【0055】
放熱膜61は、上述した熱伝導材料に加えてバンク部47より高い熱放射率を有する熱放射材料を含んでおり、有機EL層50の発光時に生じた熱を赤外線に変換して装置外部に逃がす。ここで、放熱膜61上に形成された陰極49は、赤外線を透過させる材料で形成されているため、放熱膜61から出射された赤外線は陰極49を透過し、装置外部に放出される。尚、図中陰極49の上側に配置される封止部20もガラス板等の赤外線を透過させる材料で構成されているため、放熱膜61から出射された赤外線は図中上側に向かって装置外部に放出される。放熱膜61は、熱放射材料としてAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、MgO、SiCから選ばれた少なくとも一種の材料を5乃至40vol%含んでおり、バンク部47の熱放射率に比べて高い熱放射率を有している。このような割合で熱放射材料を含む放熱膜61は、樹脂等で形成される第2バンク部47bより高い熱放射率を有している。したがって、放熱膜61によれば、熱放射を利用して有機EL層50から放熱でき、有機EL素子72を発光させた際に生じる熱によって有機EL層50が劣化することを抑制することが可能である。放熱膜61は、基材中に上述した割合で熱伝導材料及び熱放射材料を混合した混合剤を第2バンク部47bの表面に塗布し、所定の形状にパターニングされることによって形成されるため、熱放射材料が放熱膜61に含まれる割合は放熱膜61を形成した際の膜質或いは膜形成プロセス等を考慮して設定されている。
【0056】
このように、放熱膜61によれば、熱伝導及び熱放射現象の両方を利用して放熱することができる。これにより、発光時における有機EL層50の温度上昇による有機EL層50の劣化及び有機EL層50に含まれる発光層の結晶化を抑制でき、高画質の画像を表示できる状態を維持しつつ有機EL装置10の寿命を延ばすことが可能になる。
【0057】
また、放熱膜61は、バインダに熱放射材料を配合した液状体を第2バンク部47bの表面に塗布したもの、或いは第2バンク部47bの表面にバインダを塗布した後、塗布されたバインダの表面に上述した熱放射材料を吹き付けたものであってもよい。放熱膜61は、赤外線の放射率が高いコージェライト焼結体等のセラミック粉体をバインダに配合して塗布したもの、或いは第2バンク部47bの表面にバインダを塗布した後、このバインダ上にセラミック粉体を吹き付けたものであってもよい。また、放熱膜61は、熱放射材料としては、例えば、赤外線の放射率が高い赤外線放射体材料の夫々一例である、二酸化マンガン(MnO2)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化コバルト(CoO)、酸化銅(CuO)等の遷移元素の酸化物、カーボンブラック、セラックα(登録商標)のうち少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0058】
このように、放熱膜61によれば、第2バンク部47bの表面に放熱膜61を一層形成するだけで有機EL素子72の素子構造を大きく変更することなく、素子から効率良く放熱することができる。加えて、放熱特性を高めるために煩雑な工程を追加する必要もない。
【0059】
駆動用トランジスタ74のソース電極74sは、図1に示す電源供給線117に電気的に接続されており、ドレイン電極74dは陽極34に電気的に接続されている。駆動用トランジスタ74は、図1に示すデータ線114を介してゲート電極3aに供給されるデータ信号に応じてオンオフされ、駆動電流を有機EL素子72に供給する。このような素子を含む回路は、有機EL素子50から基板1側に出射される光を遮らないように、有機EL素子50の下側を避けるように設けられている。また、駆動用トランジスタ74と同様に図1に示すスイッチング用トランジスタ76も基板1上に形成されている。
【0060】
半導体層3は、例えば低温ポリシリコン技術を用いて形成された多結晶シリコン層或いはアモルファスシリコン層である。半導体層3上には、半導体層3を埋め込んで、スイッチング用トランジスタ76及び駆動用トランジスタ74のゲート絶縁層2が形成されている。駆動用トランジスタ74のゲート電極3a及び図1に示す走査線112は、ゲート絶縁層2上に形成されている。走査線112の一部は、スイッチング用トランジスタ76のゲート電極として形成されている。ゲート電極3a及び走査線112は、Al(アルミニウム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)、Ti(チタン)、銅(Cu)、クロム(Cr)等のうち少なくとも一つを含む金属材料を用いて形成されている。
【0061】
走査線112や駆動用トランジスタ74のゲート電極3aを埋め込んで、ゲート絶縁層2上には図2に示す層間絶縁層41が形成されている。層間絶縁層41及びゲート絶縁層2は例えばシリコン酸化膜から構成されている。層間絶縁層41上には、例えばアルミニウム(Al)又はITO(Indium Tin Oxide)を含む導電材料から夫々構成される、データ線114及び電源供給線117、更には駆動用トランジスタ74のソース電極74sが形成されている。層間絶縁層41には、層間絶縁層41の表面から層間絶縁層41及びゲート絶縁層2を貫通して、駆動用トランジスタ74の半導体層3に至るコンタクトホール501及び502が形成されている。電源供給線117及びドレイン電極74dを構成する導電膜は、コンタクトホール501及び502の各々の内壁に沿って半導体層3の表面に至るように連続的に形成されている。層間絶縁層41上には、電源供給線117及びドレイン電極74dを埋め込んで、保護層45として例えばシリコン窒化膜(SiNx)ないしシリコン酸化膜(SiOx)が形成されている。保護層45上には、例えばシリコン酸化膜よりなる第1バンク部47aが形成され、更に第1バンク部47a上に第2バンク部47bが形成されている。第1バンク部47a及び第2バンク部47bによって、画素部における有機EL層50の形成領域が規定されている。
【0062】
封止板20は、本発明に係る「封止部」の一例であり、水分が有機EL装置10の外部から備える有機EL層50に浸入することを防止する。より具体的には、封止板20は、基板1上に接着剤によって接着されており、有機EL装置10の外気が有機EL素子72に触れないように有機EL素子72を封止する。基板1上に封止板20を接着する接着剤は、熱硬化樹脂或いは紫外線硬化樹脂を含んでおり、例えば、熱硬化樹脂の一例であるエポキシ樹脂を封止板20の周縁部にディスペンサ等の塗布手段を用いて塗布される。
【0063】
封止板20の熱放射層51に臨む側の面において、封止板20の周縁部は中央部に対して凸状となっており、封止板20が第1バンク部47aの上面に接着された状態で封止部20の中央部及び有機EL素子72の間に一定の空間が介在する。封止板20及び有機EL素子72間の空間には、不活性ガス、樹脂或いはオイル等の充填材が充填され、この充填材により装置外部から侵入する水分を低減する。また、封止板20及び有機EL素子72間の空間は、封止板20及び基板1で封止された真空であってもよい。封止板20は、放熱膜61から放射される赤外線を透過する透明板であり、例えば、ガラス板、又は防湿処理を施したプラスチック板を用いることができる。特に、封止板20としてガラス基板を用いた場合には、ガラス基板である基板1及び封止板20の熱膨張率が同等であることから、熱膨張率の違いに起因するこれら板間のひずみを低減することができ、装置全体の信頼性を高めることが可能である。
【0064】
次に、図3及び図4を参照して、有機EL素子72の詳細な構成について説明する。図3は、有機EL素子72を含む任意の画素部の平面図であり、図4は図3に示す画素部のA−A´線断面図である。尚、図3及び図4においては、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。尚、図3及び図4に加えて、随時図1及び図2も参照する。
【0065】
図3において、図2に示す基板1上には、駆動用トランジスタ74の半導体層3が形成されている。尚、本実施形態では詳細な説明を省略するが、駆動用トランジスタ74と同様に図1に示すスイッチング用トランジスタ76も基板1上に形成されている。半導体層3は、例えば低温ポリシリコン技術を用いて形成された多結晶シリコン層或いはアモルファスシリコン層である。半導体層3上には、半導体層3を埋め込んで、スイッチング用トランジスタ76及び駆動用トランジスタ74のゲート絶縁層2が形成されている。更には、ゲート絶縁層2上に、駆動用トランジスタ74のゲート電極3a及び走査線112が形成されている。走査線112の一部は、スイッチング用トランジスタ76のゲート電極として形成されている。ゲート電極3a及び走査線112は、Al(アルミニウム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)、Ti(チタン)、銅(Cu)、クロム(Cr)等のうち少なくとも一つを含む金属材料を用いて形成されている。
【0066】
走査線112や駆動用トランジスタ74のゲート電極3aを埋め込んで、ゲート絶縁層2上には図2に示す層間絶縁層41が形成されている。層間絶縁層41上には、電源供給線117及びドレイン電極74dを埋め込んで、図2に示す保護層45が形成されている。
【0067】
保持容量78の下部容量電極は、走査線112と同一の層に、例えば同様の材料を用いて形成され、電源供給線117の一部が保持容量78の上部容量電極として形成されている。層間絶縁層41は誘電体膜として形成されており、層間絶縁層41の一部分が下部容量電極及び上部容量電極の間に挟持される。
【0068】
有機EL装置10の駆動時、走査線112を介して走査信号が供給されることにより、スイッチング用トランジスタ76がオン状態になる。スイッチング用トランジスタ76がオン状態となると、データ線114より画像信号が保持容量78に供給される。この保持容量78に供給された画像信号の電圧に応じて、駆動用トランジスタ74の電気的な導通状態が決まる。保持容量78に供給された画像信号に応じた電流が、駆動用トランジスタ74のチャネルを介して電源供給線117より有機EL素子72に供給されると、供給された電流に応じて有機EL層50に含まれる発光層が発光する。
【0069】
図4において、有機EL素子72は、基板1上に順次形成された陽極34、有機EL層50、及び陰極49を備えて構成されており、有機EL層50は正孔注入層50c、発光層50a及び電子注入層50bを備えて構成されている。
【0070】
有機EL層50を構成する正孔注入層50c、発光層50a及び電子注入層50bはこの順で陽極34上に形成されている。
【0071】
電子注入層50bは、カルシウム(Ca)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ストロンチウム(SrF2)、マグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)等の仕事関数の低い材料を用いて形成されている。電子注入層50bによれば、電流駆動型の発光層50aに電子を効率良く注入でき、発光層50aの発光効率を高めることが可能である。尚、電子輸送層が陰極49及び発光層間に設けられていてもよいし、電子注入層50bが電子輸送層を含んで構成されていてもよい。
【0072】
発光層50aは、有機EL材料を用いて構成されている。このような有機EL材料としては、例えば(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、またはこれらの高分子材料にルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープした材料を用いることができる。
【0073】
正孔注入層50cは、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸等の混合物を用いて形成されている。
【0074】
有機EL層50を構成する各材料は、有機EL素子72が駆動されるに伴って生じる熱によって高温に曝されると特性劣化を生じ易い。したがって、本実施形態の有機EL装置10によれば、有機EL素子72から効率良く放熱でき、有機EL装置10の寿命を延ばすことが可能である。尚、陰極49を介した熱伝導によっても相応の放熱効果は得られる。
【0075】
(第2実施形態)
次に、図5を参照しながら本実施形態の有機EL装置100を説明する。図5は、本実施形態の有機EL装置100の構成を示す断面図である。尚、以下で説明する各実施形態の有機EL装置では、第1実施形態の有機EL装置と共通する部分に共通の参照符号を付して説明し、共通部分についての詳細な説明は便宜省略する。
【0076】
図5において、本実施形態の有機EL装置100は、放熱膜61を構成する第1放熱膜61a及び第2放熱膜61bが電気的に絶縁されている点で第1実施形態の有機EL装置10と相違する。
【0077】
より具体的には、第1放熱膜61a及び第2放熱膜61bは、第2バンク部47bの表面で互いに離間されている。第2バンク部47bの表面で物理的に離間された第1放熱膜61a及び第2放熱膜61bによれば、第1放熱膜61a及び第2放熱膜61bの夫々に含まれる熱伝導材料が金属材料であっても、熱伝導を高めることに注力して第1放熱膜61a及び第2放熱膜61bに含まれる熱伝導材料の含有量を増やすことができ、放熱膜61の熱伝導率を高めることが可能である。即ち、放熱膜61の熱伝導率を高めつつ、第1放熱膜61a及び第2放熱膜61bの夫々に接する有機EL層50間でリークする駆動電流及び有機EL素子72を駆動するために供給される各種信号の漏れを防止できる。また、陰極49は、図5に示した断面を除く第2バンク部47bの他の部分で互いに電気的に接続されていればよい。
【0078】
尚、第1放熱膜61a及び第2放熱膜61bは、互いに電気的に絶縁されていればよく、一定の隙間を設けて互いに離間されている場合に限定されるものではない。例えば、第1放熱膜61a及び第2放熱膜61b間にこれら放熱膜より電気抵抗が高い絶縁部を設けてもよい。第1放熱膜61a及び第2放熱膜61bは、互いに絶縁されるように形成されていれば、第1バンク部47bの表面において所要の形状にパターニングされていてもよい。
【0079】
(第3実施形態)
次に、図6を参照しながら本実施形態の有機EL装置200を説明する。図6は、本実施形態の有機EL装置200の構成を示す断面図である。有機EL装置200は、放熱膜を設ける代わりに熱伝導材料及び熱放射材料を含む第2バンク部47b´を含んでいる点で第1及び第2実施形態の有機EL装置と相違する。
【0080】
図6において、第2バンク部47b´は、基材と、基材より高い熱伝導率を有する熱伝導材料と、基材より高い熱放射率を有する熱放射材料を含んでいる。第2バンク部47b´は、基材、熱伝導材料及び熱放射材料を混合して得られる塗布材を、例えばスピンコート等の塗布法を用いて第1バンク部47a上に塗布することによって形成される。第2バンク部47b´は、熱伝導材料としてAl、Cu、Ag、Auから選ばれた少なくとも一種の熱伝導材料を1乃至15vol%含んでいる。Al、Cu、Ag、Auの金属材料の熱伝導率は、例えば、アクリル樹脂又はポリイミド樹脂等の樹脂で構成される基材に比べて熱伝導率が高く、これら樹脂のみで第2バンク部47b´を形成した場合に比べて第2バンク部47b´の熱伝導率を高めることが可能である。加えて、第2バンク部47b´は、Al、Cu、Ag、Auの金属材料を上述した割合で含んでいるため、隣接する有機EL層50間を第2バンク部47b´で実使用上支障ない程度に絶縁することが可能である。したがって、隣接する有機EL層50間で駆動電流のリーク等が生じることなく、各有機EL素子72の夫々を所要のタイミングで発光させることが可能である。第2バンク部47b´は、熱放射材料として、Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、MgO、SiCから選ばれた少なくとも一種の材料を5乃至40vol%含んでいる。第2バンク部47b´は、これら熱放射材料の他に赤外線の放射率が高いコージェライト焼結体等のセラミック粉体をバインダに配合して塗布したもの、或いは第1バンク部47aの表面にバインダを塗布した後、このバインダ上にセラミック粉体を吹き付けることによって形成されていてもよい。また、第2バンク部47b´は、熱放射材料として、例えば赤外線の放射率が高い赤外線放射体材料の夫々一例である、二酸化マンガン(MnO2)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化コバルト(CoO)、酸化銅(CuO)等の遷移元素の酸化物、カーボンブラック、セラックα(登録商標)のうち少なくとも一つを含んでいてもよい。第2バンク部47b´に加えて或いは代えて、第1バンク部47aが熱放射材料及び熱伝導材料を含んでいてもよい。
【0081】
このように、熱伝導材料及び熱放射材料を含む第2バンク部47b´によれば、有機EL装置200及び有機EL素子72の構造を大きく変更することなく、有機EL素子72及び有機EL装置200から効率良く放熱することが可能である。したがって、有機EL層地200によれば、第1及び第2実施形態の有機EL層装置と同様に有機EL層50における温度上昇を低減でき、高画質の画像を表示できる状態を維持しつつ有機EL装置の寿命を延ばすことが可能になる。
【0082】
(実験結果)
次に、表1を参照しながら第3実施形態の有機EL装置について行った実験結果を説明する。表1は、従来構造の有機EL装置と、第3実施形態の有機EL装置とを駆動させた際の夫々の基板表面の温度を測定した結果を示す。尚、基板の表面温度は、各有機EL素子の陰極が形成された基板表面に熱電対を取り付けて測定された値である。試料1は、アクリル樹脂又はポリイミド樹脂で構成される基材に、熱放射材料を30vol%熱伝導材料を5vol%混合した混合材料をスピンコートで第1バンク部47a表面に塗布することによって形成した。熱放射材料にはAl2O3、SiO2、及びMgOの混合物を用い、熱伝導材料にはCuを用いた。試料2は、基材としてSiO2を含む第1バンク部47aに熱放射材料が30vol%含まれ、且つ熱伝導材料が5vol%含まれている。熱放射材料にはAl2O3、ZrO2、及びTiO2の混合物を用い、熱伝導材料にはCuを用いた。
【0083】
【表1】
【0084】
表1に示すように、本願発明者が行った実験によれば、試料1は従来構造の有機EL装置に比べて10℃だけ基板表面温度を下げることができ、試料2は従来構造より13℃温度を下げることが可能であることが分かった。このように、本実施形態の有機EL装置によれば、駆動時における温度上昇を大幅に抑制でき、高温で駆動されることによる有機EL装置の輝度低下を抑制することが可能である。この結果、有機EL装置の寿命を延ばすことが可能である。また、バンク部47に熱伝導材料及び熱放射材料を含ませたことに加えて、第2バンク部47b´上に放熱膜を設けることにより更に有機EL素子の温度上昇を抑制でき、有機EL装置の寿命を延ばすことが可能であることは本実験の結果から明らかである。
【0085】
(電子機器)
次に、上述した有機EL素子を含む有機EL装置を備えた各種電子機器について説明する。
【0086】
<A:モバイル型コンピュータ>
図7を参照しながらモバイル型のコンピュータに上述した有機EL装置を適用した例について説明する。図7は、コンピュータ1200の構成を示す斜視図である。
【0087】
図7において、コンピュータ1200は、キーボード1202を備えた本体部1204と、図示しない有機EL装置を用いて構成された表示部1005を有する表示ユニット1206とを備えている。表示部1005は、素子内の温度上昇に起因する発光層等の特性劣化が低減されており、装置全体の信頼性も高められている。また、上述した有機EL素子を含んだ表示部1005は、熱伝導のみで放熱を行う従来の表示部に対して放熱構造を簡略化できるため、表示ユニット1206を小型に構成できる。よって装置全体の小型化につながり、装置の携帯性が改善される。また、表示部1005が備える複数の有機ELディスプレイ基板に赤、緑、青の光の三原色の光を発光する有機EL素子を形成しておくことによって、該表示部1005はフルカラー表示で画像表示を行うことができる。
【0088】
<B:携帯型電話機>
更に、上述した有機EL装置を携帯型電話機に適用した例について、図8を参照して説明する。図8は、携帯型電話機1300の構成を示す斜視図である。
【0089】
図8において、携帯型電話機1300は、複数の操作ボタン1302と共に、本発明の一実施形態である有機EL装置を有する表示部1305を備えるものである。
【0090】
表示部1305は、上述の表示部1005と同様に発光層等の特性劣化が低減されていることから、高品質の画像を表示することができると共に信頼性が高められている。これにより、携帯型電話機1300の耐久性も高められている。また、表示部1305が備える複数の有機EL素子が夫々赤、緑、青の光の三原色の光を発光することによって、該表示部1305はフルカラー表示で画像表示を行うこともできる。
【0091】
尚、本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う発光素子及び発光装置並びに電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1実施形態に係る有機EL装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る有機EL装置の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る有機EL装置の画素部の構成を示す平面図である。
【図4】図3のA−A´線断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る有機EL装置の構成を示す断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る有機EL装置の構成を示す断面図である。
【図7】本発明に係る電子機器の一例の斜視図である。
【図8】本発明に係る電子機器の他の例の斜視図である。
【符号の説明】
【0093】
10,100,200・・・有機EL装置、20・・・封止板、34・・・陽極、47・・・バンク部、49・・・陰極、50・・・有機EL層、61・・・放熱膜、72・・・有機EL素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられており、前記基板上の画像表示領域を構成する複数の画素領域の各々内に設けられた複数の凹部を規定する隔壁部と、
前記複数の凹部の夫々に設けられており、前記複数の凹部内の夫々に発光材料を塗布することによって形成された複数の発光部と、
前記発光部に接するように前記隔壁部の表面に設けられており、前記発光部で生じた熱を前記発光部の外側に逃がす放熱膜とを備え、
前記放熱膜は、前記隔壁部より熱伝導率が高い熱伝導材料と、前記隔壁部より熱放射率が高い熱放射材料とを含んでいること
を特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記放熱膜は、前記複数の発光部のうち前記隔壁部を介して隣接する一の発光部及び他の発光部の夫々に接するように前記隔壁部の表面に設けられていると共に、前記一の発光部及び前記他の発光部が少なくとも互いに独立して発光するように前記隔壁部の表面に沿って前記一の発光部及び前記他の発光部を互いに電気的に絶縁していること
を特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記放熱膜は、前記熱伝導材料としてAl、Cu、Ag、Auから選ばれた少なくとも一種の材料を1乃至15vol%含むこと
を特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記放熱膜は、前記熱放射材料としてAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、MgO、SiCから選ばれた少なくとも一種の材料を5乃至40vol%含むこと
を特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記放熱膜は、前記隔壁部の表面に沿って夫々延在するように設けられると共に互いに電気的に絶縁された第1放熱膜及び第2放熱膜を備えており、
前記第1放熱膜は、前記一の発光部と接しており、
前記第2放熱膜は、前記他の発光部と接していること
を特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第1放熱膜及び前記第2放熱膜は、前記隔壁部の表面で互いに離間されていること
を特徴とする請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
基板と、
前記基板上の画像表示領域を構成する複数の画素領域の各々内に設けられた複数の凹部を規定する隔壁部と、
前記複数の凹部の夫々に設けられており、前記複数の凹部内の夫々に形成された複数の発光部とを備え、
前記隔壁部は、基材と、前記基材より高い熱放射率を有する熱放射材料と、前記基材より高い熱伝導率を有する熱伝導材料とを含んでいること
を特徴とする発光装置。
【請求項8】
前記隔壁部は、前記複数の発光部のうち前記隔壁部を介して隣接する一の発光部及び他の発光部が少なくとも互いに独立して発光するように高い電気抵抗を有すること
を特徴とする請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記熱伝導材料は、前記基材より電気抵抗率が低い導電材料としてAl、Cu、Ag、Auから選ばれた少なくとも一種の材料を1乃至15vol%含むこと
を特徴とする請求項7又は8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記隔壁部は、前記熱放射材料として、Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、MgO、SiCから選ばれた少なくとも一種の材料を5乃至40vol%含むこと
を特徴とする請求項7から9の何れか一項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記発光部は、有機EL層を有すること
を特徴とする請求子1から10の何れか一項に記載の発光装置。
【請求項12】
請求項1から11の何れか一項に記載の発光装置を具備してなること
を特徴とする電子機器。
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられており、前記基板上の画像表示領域を構成する複数の画素領域の各々内に設けられた複数の凹部を規定する隔壁部と、
前記複数の凹部の夫々に設けられており、前記複数の凹部内の夫々に発光材料を塗布することによって形成された複数の発光部と、
前記発光部に接するように前記隔壁部の表面に設けられており、前記発光部で生じた熱を前記発光部の外側に逃がす放熱膜とを備え、
前記放熱膜は、前記隔壁部より熱伝導率が高い熱伝導材料と、前記隔壁部より熱放射率が高い熱放射材料とを含んでいること
を特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記放熱膜は、前記複数の発光部のうち前記隔壁部を介して隣接する一の発光部及び他の発光部の夫々に接するように前記隔壁部の表面に設けられていると共に、前記一の発光部及び前記他の発光部が少なくとも互いに独立して発光するように前記隔壁部の表面に沿って前記一の発光部及び前記他の発光部を互いに電気的に絶縁していること
を特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記放熱膜は、前記熱伝導材料としてAl、Cu、Ag、Auから選ばれた少なくとも一種の材料を1乃至15vol%含むこと
を特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記放熱膜は、前記熱放射材料としてAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、MgO、SiCから選ばれた少なくとも一種の材料を5乃至40vol%含むこと
を特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記放熱膜は、前記隔壁部の表面に沿って夫々延在するように設けられると共に互いに電気的に絶縁された第1放熱膜及び第2放熱膜を備えており、
前記第1放熱膜は、前記一の発光部と接しており、
前記第2放熱膜は、前記他の発光部と接していること
を特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第1放熱膜及び前記第2放熱膜は、前記隔壁部の表面で互いに離間されていること
を特徴とする請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
基板と、
前記基板上の画像表示領域を構成する複数の画素領域の各々内に設けられた複数の凹部を規定する隔壁部と、
前記複数の凹部の夫々に設けられており、前記複数の凹部内の夫々に形成された複数の発光部とを備え、
前記隔壁部は、基材と、前記基材より高い熱放射率を有する熱放射材料と、前記基材より高い熱伝導率を有する熱伝導材料とを含んでいること
を特徴とする発光装置。
【請求項8】
前記隔壁部は、前記複数の発光部のうち前記隔壁部を介して隣接する一の発光部及び他の発光部が少なくとも互いに独立して発光するように高い電気抵抗を有すること
を特徴とする請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記熱伝導材料は、前記基材より電気抵抗率が低い導電材料としてAl、Cu、Ag、Auから選ばれた少なくとも一種の材料を1乃至15vol%含むこと
を特徴とする請求項7又は8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記隔壁部は、前記熱放射材料として、Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、MgO、SiCから選ばれた少なくとも一種の材料を5乃至40vol%含むこと
を特徴とする請求項7から9の何れか一項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記発光部は、有機EL層を有すること
を特徴とする請求子1から10の何れか一項に記載の発光装置。
【請求項12】
請求項1から11の何れか一項に記載の発光装置を具備してなること
を特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2006−244847(P2006−244847A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58520(P2005−58520)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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